○中村鋭一君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいまの
総理の
中間報告に関連して
質問をいたします。
まず、今日の
経済的危機を招いた橋本内閣の政治
責任の問題であります。
さきに
三塚議員は
大蔵大臣をおやめになりました。遅きに失したとは言い条、職を辞した点につきましては一定の評価をするものであります。しかしながら、私はこのことに一抹の物の哀れを感ぜずにはおれません。それは何ゆえか。
巷間、
三塚氏の辞任に関して、トカゲのしっぽ切りとの声を耳にいたします。トカゲの頭切りと言う人もいます。しっぽの場合は頭は
橋本総理大臣であり、頭切りの場合はその胴体は広く
大蔵官僚全般を指しているのではないでしょうか。人のよい
三塚さんを血祭りに上げて、こうかつな
大蔵官僚がこれでよかったとほっと胸をなでおろしているのではないか。これでは
三塚議員が余りにもかわいそうではありませんか。(
拍手)
「物いわじ父は長等の人柱、きじも泣かずば討たれざらまし」という歌がありますけれども、
三塚議員も、
大蔵官僚にいいように操られたあげくの果てに人柱にされてはたまったものではございません。「巨悪は眠らせない」、これは
東京地検特捜の有名な言葉でありますが、今回の大蔵
不祥事について、この間の消息や
徹底した調べについて下稲葉法務
大臣にお伺いすると同時に、
松永新
大蔵大臣の所感をお伺いするものであります。
さらに、私は、
三塚氏の辞任によってみずからの政策の失敗の責めを免れようとする
橋本総理の
責任は、まことに大きいものであることを指摘をしなければ相なりません。
総理は政治の最高
責任者であり、相次ぐ政策の失敗により今日の
経済危機と
金融不安を招き、失業率の上昇、倒産の多発、超低金利の持続などにより、
国民にこの上ない苦しみを強いている
責任があります。みずからはその
責任を省みず、
三塚氏の辞任をもって事足れりとしているその
総理の姿勢に、いすにしがみついているその姿に、
総理、あなたは良心の呵責を感じませんか。(
拍手)
総理は、過日、衆議院
予算委員会におきまして、「私がやめれば途端にぽんと景気が回復して、株価も上昇し、すべてがよくなるというんだったら、即刻でもかわります。」と
答弁されました。
橋本総理に政治の最高
責任者としての自覚と誇りと先見性があるなら、この
答弁を直ちに実行に移し、即刻やめるべきであります。そうすれば、政策の抜本的
転換を予期して株価と円相場は上昇し、年度末を控えて
金融機関の
自己資本比率も上昇し、
金融不安は和らぐでありましょう。間違いなく景気はよくなります。それが
国民とその生活を守る唯一の道であります。(
拍手)
また、額賀
官房副
長官のアメリカ
政府高官に対する大型補正の約束報道、野中自民党幹事長代理の六兆円景気
対策発言など、
政府・
与党幹部による九八年度予算案の補正に係る
発言が相次いでおります。成立後直ちに修正することが決まっているいわば欠陥予算案を我々に審議させようというのですか。
総理は、我々
国民や野党をそこまで侮辱をするおつもりですか。議会制民主政治を冒涜するも甚だしいと言わねば相なりません。まことに、言語道断、許しがたいところであります。(
拍手)九八年度予算案は直ちに撤回し、出し直すべきであります。同時にまた、強引に成立をさせた
財政構造
改革法も、弾力条項を加える等の改正案を提出すべきであります。それでなければ、審議には到底入ることはできません。
これら諸点についての
総理の見解をお伺いいたします。
次は、
行政の頂点に立ち、
官僚の中の
官僚と言われる
大蔵省の腐敗が構造的
体質としてしみついていることについてであります。
現在
大蔵省は、マスコミ等から、腐敗臭が漂う大蔵とまで酷評をされております。
大蔵省に対する週刊誌の報道で、現職
大蔵官僚に関する記事だけでも、長野
証券局長の五億円豪邸疑惑、中村主計局主計官の
収賄疑惑、口にするのもはばかられるしゃぶしゃぶ疑惑等々、数え切れないほどであります。検察がねらう疑惑の
大蔵官僚十二名との記事も掲載されましたが、その中から二名の逮捕者と一名の自殺者を出したことは、まことに遺憾きわまることであります。
逮捕者は
大蔵省大臣官房金融検査部所属でありますが、そもそも、この
金融検査部設置を決めたのは、当時
大蔵大臣であった
橋本総理御自身でありました。
平成三年、
橋本総理が蔵
相当時、御自身の秘書が関与した富士
銀行不正融資
事件で引責辞任をした際に、再発防止を名目として、ただでさえ権力の肥大が懸念されておりました
大蔵省に新たに
権限を与える
金融検査部の
設置を決め、およそ一年後にこれを発足させたのであります。
金融検査部最初の取り組みとなったのは富士
銀行不正融資
事件でありますが、
真相は全く解明をされず、そればかりか、初代部長は今回の日本道路公団汚職で逮捕され、そして、ついには現職
検査官の逮捕に至ったのであります。
大蔵官僚、ひいては橋本内閣に対する不信は頂点に達しています。
国民は、このような
橋本総理に疑惑の解明と再発防止ができるとは思っておりません。全く期待をいたしていないのであります。何が官に冠たる
大蔵省か。続発する
大蔵省不祥事についての
総理の見解をお伺い申し上げるものであります。(
拍手)
次は、
総理自身の疑惑、つまり富士
銀行の不正融資
事件についてであります。
橋本総理は、九一年、証券
不祥事と富士
銀行不正融資
事件の
責任をとり
大蔵大臣を辞任されました。富士
銀行不正融資
事件は、
総理みずからの秘書が赤坂の料亭「尾花」への不正融資に関与した
事件であり、この料亭「尾花」へは
総理もたびたび通い、その女性経営者とも懇意であったと伝えられております。
この富士
銀行不正融資
事件はいまだに係争中であり、全容が解明されたとは言えませんが、
事件発生当時から最大の関心の的は、
橋本総理自身の関与であり、現在
大蔵省大臣官房審議官の太田省三氏の名前が検事調書に登場する事実であります。
本件に関与した小林豊機氏は、確かに不正融資
事件の際に
橋本総理の秘書を辞任はしておりますが、以後も、復帰、辞任を繰り返した後、
橋本総理の後援会「溜池倶楽部」の代表に就任していたことがあったはずであります。
総理と小林豊機氏との今の
関係、小林氏の現在の消息を明確にお答えいただきたいと思います。
総理が
大蔵大臣を辞任された理由の一つに、自分の秘書の
監督責任があったはずであります。小林氏が
事件後も
橋本総理の周辺にいた、この事実は、やはり
総理と小林氏の間に他人に知られてはならない何かがあるのではないかと推測をされても当然であると思います。
また、この不正融資が迂回し、あるいは直接関与した多くの企業が住専の借り手であり、あなたの秘書であった小林氏は、これら企業や人たちと密接な
関係を持っていたのではないでしょうか。一昨年の住専国会におきまして、日本興業
銀行頭取や桃源社社長の参考人
質疑の際に、小林氏が桃源社への融資を興銀に働きかけたとしてまたもや名前が挙がっていたのであります。火のないところに煙は立たぬ、このことわざを思い出すゆえんであります。
総理は、さきの証券
不祥事では、再発防止策をつくるのが自分の務めであるとしておられました。しかしながら、その後も
大蔵省、
金融業界の
不祥事は一向に減る気配を見せません。昨年破綻した山一証券に至っては、いわゆる飛ばしがその引き金となっており、その海外への飛ばしを示唆したのが当時橋本
大蔵大臣の部下の松野
証券局長であったとの報道さえなされているのであります。
小林氏、松野元
証券局長、太田省三
官房審議官の例を見るまでもなく、
不祥事は、
橋本総理が
大蔵大臣、
総理大臣在任中に集中をしており、問われるべきは、まさに
橋本総理自身の政治姿勢であります。(
拍手)
御自身の秘書や当時の部下がこれだけ
事件に関与していた以上、元来あなたは
総理になるべきではなかった。あなたが
総理になったのがそもそも大きな間違いと言わねば相なりません。
この点について、
総理の御
所見をお伺いいたします。
次は、
総理と中国人女性との交際疑惑についてであります。
当の中国人女性は、中国北京公安局に
勤務したことを我が国の法廷で認めております。また、
橋本総理御自身も、同女性との交際は認めているのであります。
海の向こうで国を挙げて問題になっておりますクリントン大統領の女性問題とは次元が違い、
総理の行為ははるかに重大であると言わなければ相なりません。なぜならば、これは我が国の公安問題と安全保障の根幹を揺るがす重大問題だからであります。
イギリスやアメリカでは、このような疑惑が報道され、それに正面から弁明できなければ、国の
責任者は即刻辞任をしなければ相なりません。かつて英国のプロヒューモ陸相は、交際相手の女性がロシアの武官とも交際があったというだけで、その職を辞せざるを得なかったのであります。ノーブレスオブリージュとはこのような場合に用意をされた言葉であります。だからこそ、欧米のマスコミでも、
橋本総理の疑惑は非常な関心を持って報道されているのであります。
総理は、国益のために、逃げも隠れもせずに、同人との交際の一部始終を改めてこの議場におきまして
国民に説明すべきであると思います。
こういった事例を見て痛感することは、
総理、あなたが軽い、いかにも軽いということであります。いかに軽薄短小がもてはやされる時代とはいえ、二千有余年の歴史を誇る我が国の首相としては、私は、重厚長大なる指導者をよしとするものであります。
よくその人の
職務や素性を確かめもせず外国の女性と交際をする。人に言われたといって外国に対して簡単に謝り、事もあろうに女性のセミヌードカラー写真を載せた大衆紙に謝罪文を掲載する。我が党の西村眞悟議員の
質問に対し、あなたは、その国で、その国の首相とどのような会話が行われるかによっても異なるものであろうと存じますと
答弁をされております。ということは、相手次第で、国会や
国民に相談もなしに謝ることもあり得るということになりはしませんか。
このような際に、あなたは、世界に冠たる日本国の閣僚としての自覚がなかったのですか。いやしくも日本国の宰相の印綬を帯びる者として、あなたの背後に一億二千万人の
国民がいることを失念していたのですか。まことに情けない限りと言わなければ相なりません。
試みに、明治以来、名宰相、名首相とうたわれ、
国民の尊敬と
信頼を一身に集めた幾多の先人を思い起こしていただきたい。伊藤博文、大隈重信、原敬、吉田茂、石橋湛山、池田勇人、佐藤栄作、三木武夫など、まさに赫々たる大政治家がきら星のごとく名を連ねているのであります。あなたは、これらの人々に伍して御自身が青史にその名を残し得るとお
考えでございますか。
これらの先輩が、
総理大臣としてのあなたを見て一体どういう評価をし、どのような感懐を抱くかは、想像にかたくありません。
総理、願わくは、石橋湛山氏のあのすばらしい出処進退を思い起こしていただきたい。傾国の
総理として汚名を千載に残すよりは、さすがに引き際だけはきれいだったと評価をされるように、潔く職を辞されることを心から慫慂するものであります。これら先人と比較してのあなた御自身の感想と率直な御
答弁をお願いして、私の
質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕