○神崎武法君 私は、新党平和並びに
改革クラブの
統一会派であります平和・
改革を代表して、
橋本総理並びに三塚
大蔵大臣の
演説に対し、
質問をいたします。
まず最初に、去る十日、中国河北省北部で
発生した地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。ちょうど三年前の阪神・淡路大震災の折には中国の方々からも多大な御
支援をいただいており、その友情にこたえるためにも、今回の震災に際し、
我が国として最大限の援助をしていくべきであります。
政府におかれましても、迅速かつ積極的な対応をされることを望むものであります。(
拍手)
私
たちは、
政党・会派の名称に「平和」を掲げました。そこで、まず若干の所信を申し述べ、
総理の御意見を伺いたいと思います。
現在の世界情勢、
日本国民を取り巻く
環境は、平和とはほど遠いものと言わざるを得ません。確かに、冷戦の終結によって全面的な核戦争の危険性は低下しましたものの、地域紛争、テロ、さらには核兵器、生物・化学兵器の拡散などの不確実性はむしろ高まってきております。また、地球
環境問題、貧困、飢餓、難民、エイズなどの地球的諸問題は深刻の度を増しております。
一方、
我が国は、現在のところ戦争、紛争が起きる危険性は極めて低いものの、
国民生活を見たとき、将来に対する先行き不安、凶悪犯罪の増加、いじめなど教育の荒廃、薬物乱用問題など、平和
社会とは言いがたい、根の深い
原因を有する現象が広く存在しております。
著名な平和学者ヨハン・ガルトゥング博士の、戦争や紛争などの直接的暴力の根源には、抑圧とか搾取とかの構造的暴力が存在し、さらには、それらを正当化するところの文化的暴力があるとの
考え方は、極めて本質を突いたものと
考えます。
我が国の現実を客観視したとき、そこには博士の
主張する構造的、文化的暴力の傾向性も少なくなく、それらを防止する強い決意が必要であります。
我が国が今進めております経済活動に対する規制撤廃や緩和は、大競争時代を創出し、優勝劣敗の厳しい
社会を覚悟しなければなりません。人が生きるには、経済原理だけではない、別の原理をもまた必要といたします。大競争時代に入る
我が国において、もし仮に競争に任せ、
政治が温かい手を差し伸べることをしなければ、せっかくの
改革も構造的暴力を
発生させる懸念があります。
政治は、今こそ公正な機会と情報を与えるとともに、弱い立場にある生活者や中小企業者の自助努力に加えて、共助、公助の
社会的なセーフティーネットをつくることとあわせて、
国民が将来の生活に安心できるための明確なビジョンを打ち出すことが肝要だと
考えます。(
拍手)
平和・
改革会派は、
我が国社会をあらゆる面で大競争時代に耐え得る平和
社会として建設するために、全力で取り組む決意であります。
若干の所信を申し述べました。私
たちは、こうした認識は
政治に携わる者の基本的な認識であるべきだと
考えております。
総理の御
見解を賜ります。
以下、順次、最
重要課題に絞り御
見解を伺います。
まず最初に、
国民生活に関してであります。
国民は今、少子・高齢
社会を迎える中で、将来の老後のみならず、毎日の生活を憂い、大きな不安を抱いたまま生活を送っています。日々深刻な経済危機の到来におびえ、金融不安によって、刻々の株価や為替の動向に神経をとがらせております。空前の超低
金利の継続で利益を
銀行に最大限に提供する傍ら、年金生活者などの
預金者の生活費を大幅に目減りさせました。こうした中で、
国民はみずからの生活防衛のために消費を極力抑えているというのが
我が国経済社会の現状であります。
一方、企業活動も史上最悪の倒産を記録し、失業は増大の一途。
金融機関は、
不良債権の一層の増大や
早期是正措置の導入によって信用は収縮し、貸し渋りは甚だしく、中小企業は
資金繰りのために完全に苦境に陥っております。要するに、企業も個人生活もすべてが萎縮してしまい、
我が国すべてが縮こまってしまっているのであります。
我が国経済社会がこのような危機的
状況に陥ることは事前に十分予測できたことであります。現に、一昨年の臨時
国会以来、我々は幾度となくそのことを
指摘してまいりました。約九兆円に上る
国民負担の増大と公共投資の削減を含む
平成九年度デフレ
予算、そして
金融機関ではない普通の民間企業である
住専に対して血税を注ぎ込み、
金融機関は最も経営体質の脆弱な信用組合と農協系
金融機関だけを救済した金融
政策の誤り。今日の経済金融危機は、
橋本内閣のこうした、ことごとくと言ってよい経済失政のいわば当然の結末と断ぜざるを得ません。(
拍手)
さらに、今日、グローバルエコノミーの進展は驚異的であります。特に金融の
分野においては、その技術革新とも相まって、一日に一兆ドルもの巨額のマネーが地球の裏側までも駆けめぐるという段階に至っております。こうしたマネーの世界と実物経済とが相互に影響し合っているのが現在の国際経済の実態であります。にもかかわらず、
政府の認識は旧態依然として、何か金融
分野にまで従来と同じようにコントロールすることが可能だと錯覚しているとしか受け取れません。それが護送船団方式を継続するという今回の
措置となっているのであります。
総理、みずからを省みて、
国民生活よりも国の財布を優先したとの反省はないのでしょうか。現在の経済金融危機を招いた
責任をどう感じておられるのか。さらには、経済
財政運営における時代おくれと先見性のなさ、そして、その結末に対し恥じるところは全くないのでありましょうか。(
拍手)
総理の率直な御
見解をお伺いしたいのであります。
次に、当面する
金融システム安定化策並びに経済
財政運営について伺います。とりわけ
特別減税、
公的資金の導入についてであります。
今回の
政府の
措置は、これはまさに
財政赤字削減最優先路線の
破綻そのものを示すものと言わざるを得ません。
従来、
政府は、
財政均衡の観点から、
景気対策としての
財政出動はしない、大幅
減税も行わない、
金融機関に
公的資金を投入することはしない、また大手
銀行はつぶさないと繰り返し明言してきました。しかし、
さきの北海道拓殖
銀行や山一証券の
破綻、また今回
措置する二兆円の
特別減税法案や、さらには十兆円の
交付国債と二十兆円の
政府保証を使った
金融システム対策等を見ても、
政府はこれら従来言ってきたことすべてを覆しております。しかも、これほどの巨額の税金を使う
対策を講じたにもかかわらず、従来の
政策路線に変更はないと繰り返し
説明しております。
総理、これは一体どう
理解すればいいのでしょうか。
そもそも今回の
補正予算は、一体何のために編成されたのでしょうか。
さきの
財政構造改革法の
審議の際には、
景気対策として
財政出動することはないと明言したにもかかわらず、今回は
景気対策として
補正予算を組む、朝令暮改そのものであります。どう見ても
財政運営の路線変更だと思えるにもかかわらず、そうではないと言われる。しかも、緊急性があるとは到底思えないウルグアイ・ラウンド
対策費までも計上されている。これは、九年度の
補正予算では
措置しないと三塚
大蔵大臣は明言してきたのではなかったのでしょうか。
橋本内閣は、言ってきたこととやっていることが余りにも違い過ぎると言わざるを得ません。
金融システム対策として
予算総則へ盛り込んだのは、
見せ金という
意味なのか、緊急性があるということなのですか。この二つは両立し得ない要素だと
考えます。それぞれにつき、
総理並びに
大蔵大臣の明確な
答弁をお願いいたします。
公的資金の導入について、具体的に伺います。
一昨年の
住専処理の際、六千八百五十億円の税金を
金融機関ではない
住専につぎ込んで、九割を超える
国民の猛烈な反対を受けました。以来、連立内閣は、一貫して
不良債権処理における
公的資金は信用組合以外には投入しないと公約としてきました。現に法律もそうした仕組みとなっております。
ところが、今回突然、
橋本内閣は、従来の方針を一変して、三十兆円もの巨額の税金を、これまで否定してきた
銀行救済に充てようとしております。まず、大蔵
検査や
日銀考査の結果を公表すべきであります。これら
不良債権の全容についての情報公開もなく、
政治や
行政の
責任、
銀行などの経営
責任などについても全く追及されないまま、また今回の
措置の具体的な必要性や必要額に対する根拠の
説明も何らないままに、税金を
銀行救済に使うことに
政策を百八十度変更いたしました。これは、
国民や
国会に対する明らかな公約違反であります。しかも、
内容的には、
優先株購入についての
権限など、従来の護送船団方式を継続するだけでなく、一層強化拡充する
内容となっております。まさに、
橋本総理が言ってきた
金融改革、金融ビッグバンへの逆行であります。(
拍手)
橋本内閣にはみずからの不明を恥じるけじめも節度もないのでしょうか。
住専処理のときと同じく、こうした
国民無視の問答無用の
銀行救済などの
政策変更は、食言そのものであります。
総理の
見解を伺います。
私
たちは、
金融システム対策としての
公的資金は
破綻金融機関の経営救済に使うのではなく、預貯金の支払い
資金の不足分だけに投入し、その上で、
不良債権の強力な
回収によって投入額を極力小さくすべきだと
考えます。そうした構想の
一つが、二年前に私
たちが提案した
不良債権整理公社案であります。今からでも決して遅くはありません。速やかに
日本版RTC、
不良債権処理公社を設立するなど、経営
責任の追及と表裏一体となった
公的資金投入の枠組みをつくるべきであります。
総理の御
見解をお伺いしたいと思います。
次に、
特別減税について伺います。
まず何よりも伺いたいことは、昨年の通常
国会で、私
たちが提出いたしました二兆円の
特別減税の継続
法案を廃案に追い込んだにもかかわらず、今回、全く同じ二兆円規模の
特別減税法案を提出する理由は何かということであります。
同じく連立
与党によって廃案に追い込まれた消費税率の据え置きとあわせ、この二兆円の
特別減税を昨年から継続していれば、
我が国経済はこれほどまでに落ち込まず、株価や円相場もここまでは下がることはなく、
金融機関の
破綻も見ることはなかったと思うのであります。この一年間のおくれは、
我が国にとって取り返しのつかない経済的な
損失をもたらしたと言わざるを得ません。現在だけでなく、将来の
国民に対しても多大な禍根を残す失政であります。
さらに言えば、二兆円の
特別減税といっても、単年度限りであり、その効果も五月雨的にしかあらわれないことは明らかであります。しかも、再び増税になることを予告したものであります。
私
たちは、経済効果の点からも、グローバルスタンダードの点からも、また今後の税体系のあり方から
考えましても、この
特別減税は
恒久減税として制度化すべきであり、その規模につきましては、トータルな税制
改革として、所得税、
法人税減税など、合わせて六兆円規模とすべきであると
考えます。
総理の御
見解を伺います。
また、ここ数日の報道によれば、森総務会長など
自民党の最高首脳からも、
恒久減税化の必要性が示されております。さらには、加藤幹事長は、
国債の分類について、
建設国債、
赤字国債の区分基準をなくす
見解を示されたと伝えられております。もしこれが事実だとすれば、それは、私
たちが厳しく反対してきた
財政構造改革法そのものを、推進者である
与党の
責任者みずからが否定することになります。これらの点について、
橋本総理並びに三塚
大蔵大臣の明確な御
見解を伺うものであります。
いずれにしろ、今回の二兆円
特別減税や
銀行などへの
公的資金の投入は、間違いなく
政府・
自民党の
政策の方針転換であり、これまでの判断とそれに基づく
政策の誤りを認めたことをみずから証明するものであります。
橋本総理は、そう受け取っていただいても結構だなどと逃げ口上を打っておりますが、そうした姿勢こそが問題なのであります。
まさに、現在の金融
破綻は、株、為替、インターバンクなどの内外の市場から発せられた
橋本内閣の経済失政に対するいわば退陣の布告であり、その
意味で、まさに
日本売り、
橋本売りだということを強く認識すべきであります。(
拍手)
総理、結論して言うならば、
橋本総理は、その
責任を自覚するならば退陣しかあり得ません。
政権の判断ミスに基づく
政策のおくれと、それがもたらした甚大な経済的、
社会的な
損失の
責任についてどう認識しておられるのか、みずからの進退に関する御
見解も含めて、
総理の明確な
答弁を求め、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕