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1998-05-20 第142回国会 衆議院 法務委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月二十日(水曜日)     午前十時七分開議  出席委員   委員長 笹川  堯君    理事 太田 誠一君 理事 橘 康太郎君    理事 八代 英太君 理事 与謝野 馨君    理事 北村 哲男君 理事 熊谷  弘君    理事 上田  勇君 理事 達増 拓也君       安倍 晋三君    遠藤 利明君       鴨下 一郎君    河井 克行君       木村 義雄君    小林 多門君       下村 博文君    菅  義偉君       谷川 和穗君    谷畑  孝君       野田  実君    渡辺 喜美君       枝野 幸男君    佐々木秀典君       福岡 宗也君    漆原 良夫君       安倍 基雄君    木島日出夫君       保坂 展人君    園田 博之君       左藤  恵君    笹山 登生君  出席国務大臣         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君  出席政府委員         警察庁刑事局長 佐藤 英彦君         警察庁警備局長 伊達 興治君         法務大臣官房長 但木 敬一君         法務省民事局長 森脇  勝君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省矯正局長 坂井 一郎君  委員外出席者         警察庁交通局交         通志藤課長   渡邉  晃君         大蔵大臣官房秘         書課長     渡辺 博史君         最高裁判所事務         総局刑事局長  白木  勇君         最高裁判所事務         総局家庭局長  安倍 嘉人君         法務委員会専門         員       海老原良宗君     ————————————— 委員の異動 五月二十日  辞任         補欠選任   奥野 誠亮君     河井 克行君   加藤 紘一君     小林 多門君   古賀  誠君     遠藤 利明君   谷畑  孝君     安倍 晋三君   中川 秀直君     野田  実君 同日  辞任         補欠選任   安倍 晋三君     谷畑  孝君   遠藤 利明君     古賀  誠君   河井 克行君     奥野 誠亮君   小林 多門君     加藤 紘一君   野田  実君     中川 秀直君     ————————————— 本日の会議に付した案件  債権譲渡対抗要件に関する民法特例等に関  する法律案内閣提出第二六号)  裁判所司法行政法務行政及び検察行政、国  内治安人権擁護に関する件      ————◇—————
  2. 笹川堯

    笹川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出債権譲渡対抗要件に関する民法特例等に関する法律案議題といたします。  本案に対する質疑は、去る十五日に終局いたしております。  これより討論に入ります。  討論申し出がありますので、順次これを許します。八代英太君。
  3. 八代英太

    八代委員 私は、自由民主党を代表しまして、債権譲渡対抗要件に関する民法特例等に関する法律案につきまして、賛成立場討論を行う  ものであります。  この法律案は、法人による債権譲渡を円滑にするため、債権譲渡第三者対抗要件に関する民法特例として、法人がする金銭債権譲渡等につき登記による新たな対抗要件制度を創設するとともに、その登記手続を整備する等の措置を講じようとするものであります。  この法律案に基づく債権譲渡登記制度が創設されることによりまして、債権譲渡第三者対抗要件簡素化が図られる結果、我が国において、法人による債権譲渡が円滑に行われることになり、いわゆる債権流動化を初めとする法人資金調達手段多様化状況にかない、その促進に資する制度となることが期待されるところであります。  なお、当法務委員会の審議におきましては、この法律案に基づく債権譲渡登記制度を創設することにより、複数譲受人に対し債権譲渡が行われた場合の法律関係が不安定なものになり、債務者等利害関係人にとって不利益になるおそれがあるのではないかということが指摘されました。  しかし、この法律案では、債権譲渡登記の効力を債務者に及ぼすためには、個別に債務者に対する登記事項証明書を交付した通知または債務者承諾を要することとするなど、債務者保護する観点からの手当ても十分に行われているものでありますし、仮に、複数譲受人に対し債権譲渡が行われ、異なる対抗要件が競合した場合であっても、譲受人優劣関係判断基準は明確なものであり、この法律案に基づく債権譲渡登記制度を設けたことにより債務者等利害関係人にとって不利益になることはないと考えておるのであります。  以上のことから、私どもといたしましては、この法律案賛成の意を表するものであります。  これをもちまして、私の賛成討論を終わります。(拍手
  4. 笹川堯

  5. 福岡宗也

    福岡委員 民主党福岡宗也でございます。  反対立場から意見陳述を申し上げます。  現在の指名債権譲渡対抗要件といたしましては、民法譲渡人通知債務者承諾、こういう制度と、特定債権法クレジット債権等譲渡を対象とする新聞紙上公告制度、すなわち公告をしたときに民法確定日付証書による通知があったものとみなすという、この二本立て制度となっているわけであります。  このような全く異質な制度を組み合わせたことによりまして、公告があった債権に別個に民法確定日付証書による通知がなされるいわゆる二重譲渡があった場合に、いずれが優先をするのか判断を極めて困難にし、二重弁済のおそれが生じております。  また、特定債権法による公告制度では、債務者の全く知らぬうちに対抗要件が具備をされまして、登記の日以後に生じました譲渡人に対する対抗事由というものを主張し得なくなり、債務者保護上からも取引の安全上からも問題がある、こういう指摘がなされておるわけであります。  本法案は、このような問題のある民法特定債権法の二つの対抗要件をそのまま存続をさせた上で、債権譲渡登記がなされたときに民法確定日付証書による通知があったものとみなすという第三の登記による対抗要件というものを新設しようとするものであります。  前述をしたごとく、現在の二本立て対抗要件でも譲受人債務者、ともに判断が極めて困難であるのに、さらに三本立ての対抗要件を定めることによりまして、二重譲渡それから抗弁権がどこで切断されるか等の判断を著しく困難にすることは間違いがありません。これは、取引上の安全、債務者保護上、極めて問題であります。  また、債権譲渡登記申請は、譲渡人譲受人共同申請となっておりまして、債務者が不知の間にこれがなされるために、債権成立について問題がある、例えば瑕疵がある、無効原因がある、それから、弁済相殺等によって債権が消滅しておるというような事由が存する場合でも、一方的に債権存在するがごとき登記がなされてしまうおそれが大きくあります。しかも債務者はこれに対して、異議申し立て登記抹消登記請求もする方法がございません。  確かに債権譲渡登記には公信力はないけれども公的機関による登記でありまして、債権存在等について事実上の推定力が生ずることは間違いありません。債務者の信用を害し、プライバシーの侵害にもなりかねないということになるわけであります。また、登記を信じまして債権を譲り受けた譲受人の安全を害するおそれもございまして、消費者被害が出る可能性もございます。  このように、本法律案は、取引の安全、債務者保護の面から見て極めて問題があり、このままでは賛成をしがたいのでございます。  この際、債権譲渡対抗要件を一本化、単純化して、取引安全等を図るべきであると考えます。  以上であります。(拍手
  6. 笹川堯

  7. 木島日出夫

    木島委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました債権譲渡対抗要件に関する民法特例等に関する法律案に対し、反対討論を行います。  反対の第一の理由は、本法案が、金融ビッグバンという内外大資本による金融再編成を進めるための地ならし法案であり、バブル期過剰投資と違法、不正な融資の不始末をした金融機関責任を免罪し、国民に犠牲をしわ寄せする公的資金導入とともに、金融機関不良債権特別目的会社をつくって一括譲渡し、債権流動化の名による不良債権処理の道具にしようとするものだからであります。  これは、現在検討されている政府・自民党の不良債権最終処理策にも出ておりますように、サービサーなる取り立て屋の新機関検討を含め、この処理策の中での矛盾の解決公的資金導入を見つつ、金融再編をさらに加速しようというのであります。  反対の第二の理由は、本法案が極めて重大な欠陥を持っているからであります。  本法案成立によって、リース、クレジットにかかわる債権譲渡対抗要件制度は、民法による通知特定債権事業規制法による新聞公告、そして本法による登記の三制度鼎立になります。クレジット会社破産寸前の状態の中で、債権の二重、三重譲渡のおそれは常に存在します。そして、通知公告登記の各対抗要件が同日になされた場合、どの譲受人が法的に有効な権利者となるのか、債務者はだれに支払いをすればよいのか、第三者対抗要件優劣が調整されておりません。三制度の調整のないまま本法案成立することは、経済的な混乱を引き起こすことになります。暴力団など無法な取り立て屋がばっこすることに手をかすことにもなりかねません。  これは欠陥法案であります。少なくとも、特定債権事業規制法債権譲渡にかかわる規定を削除する改正を含め提案すべきでありました。  本来、指名債権は顔の見える債権と言われ、これまでの取引関係事情、従来の債権者に対して有していた相殺抗弁権など極めて重要な要素が内包されておりますから、民法では、債務者保護見地から、債権譲渡対抗要件について、確定日付ある通知という原則を定めているのであります。この規定のほかに安易に特例を定めることは特に慎重でなければなりません。  本法案は、債権流動化の名のもとに、債権の顔をなくし、取り立て専門会社によって情け容赦なく債務者から取り立てようとするもので、到底容認することはできません。  以上が反対理由であります。  金融機関責任を放置し、金融不祥事の根本的な解決を図らず、国民にツケを回すような処理策は到底認めるわけにはまいらないことを申し述べて、反対討論といたします。(拍手
  8. 笹川堯

    笹川委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  9. 笹川堯

    笹川委員長 これより採決に入ります。  内閣提出債権譲渡対抗要件に関する民法特例等に関する法律案について採決いたします。  本案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  10. 笹川堯

    笹川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  11. 笹川堯

    笹川委員長 この際、本案に対し、北村哲男君外六名から、自由民主党民主党、平和・改革、自由党、社会民主党市民連合新党さきがけ及び左藤恵君の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議提出されております。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。八代英太君。
  12. 八代英太

    八代委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして案文を朗読し、趣旨説明といたします。     債権譲渡対抗要件に関する民法特例等に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、この法律案に基づく債権譲渡対抗要件制度導入に当たり、次の諸点につき格段の努力をすべきである。  一 債権譲渡対抗要件に関し、この法律案に基づく制度のほか、特定債権等に係る事業規制に関する法律その他の法律に基づく公告による制度等運用状況を常特注視し、必要に応じ、対抗要件制度全体の在り方について取引の安全の一層の確保を図るという見地から、更なる検討を行うこと。  二 この法律案規定に基づく登記譲渡に係る債権存在を公示するものではないことの周知徹底を図るための適切な方策を講ずること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  13. 笹川堯

    笹川委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  北村哲男君外六名提出動議賛成諸君起立を求めます。     (賛成者起立
  14. 笹川堯

    笹川委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下稲葉法務大臣
  15. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきまして、その趣旨を踏まえ一適切に対処してまいりたいと存じます。     —————————————
  16. 笹川堯

    笹川委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 笹川堯

    笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————      〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  18. 笹川堯

    笹川委員長 次に、裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  この際、警察庁から発言を求められておりますので、これを許します。伊達警備局長
  19. 伊達興治

    伊達政府委員 いわゆる緒方宅事件につきましては、昭和六十二年当時の東京地方検察庁捜査において、警察官による盗聴行為があったと認められ、また、その後の民事訴訟におきましても同様の行為があったことが推認されておるわけでありますが、このことにつきましては、警察としても厳粛に受けとめており、まことに残念なことであると考えているところでございます。警察としましては、本件の反省を踏まえ、今後とも国民の信頼を裏切ることのないよう厳しく戒めてまいる所存であります。  それはそれとしまして、警察としましては、盗聴などという違法行為は、現に行っていないし、もとより今後とも行わない、このように明言できるものでございます。
  20. 笹川堯

  21. 佐藤英彦

    佐藤(英)政府委員 昨日のいわゆる松本サリン事件に関しますところの河野さん問題に関するお尋ねについて、私ども答弁が不十分であったことについて大変恐縮に存じております。  まず、冒頭に申し上げておきたいと存じますけれども、私ども警察捜査は、組織的に推進されるものでございますけれども、多くの捜査員が携わるそういう捜査でございます。したがって、しょせん人の行う活動であり、そこに一点の誤りも生じないということがあろうはずはないというぐあいに考えているところであります。  ただ、そのような誤りを犯さないように慎重に捜査を推進するということを旨として実施をしてまいっておりますけれども、仮にそのような事態が発生いたしました場合には、それを直ちに是正すべく、また、今後そのようなことが生じないように配意すべきだというぐあいに考えて、今日その捜査に努めているところであります。  ところで、見込み捜査ということを批判されたことが過去にございました。犯罪が発生したときに、だれが犯人であるかということをあらかじめ予断を持って捜査をすることの危険性を説かれたものというぐあいに考えております。そのようなことのないように努めてまいったところであります。  ところで、今回の松本サリン事件でございますけれども、この事件につきましては、過去に例を見ない特異な重大犯罪であるということから、直ちに捜査本部を設置して捜査をしてまいったわけでありますけれども、その異例な事件であったということからだと思いますけれども、発生の翌日から毎日一回ないし四回程度の記者会見実施をされておりました。通常の事件ではこのようなことはございません。  その記者会見過程でたびたび、河野さんが、河野宅のだれかが容疑者ではないのかとか、あるいは河野さんに被疑者として話を聞く予定はないのかということが毎回、会見質問が行われておりますけれども、その都度、そういうことはない、あくまでも被害者であり、参考人として話を聞くものである、また、他の参考人事情聴取と同様である旨、再三にわたり答弁をしてまいったところでございます。  そして、この事件は、御案内のとおり、河野氏宅の敷地の中におきまして、飼い犬でありますとかザリガニでありますとか、あるいは小鳥の死骸が多数発見されるというようなこと、そして、その実況見分過程で、河野氏のお宅の中に薬品様の物が存在するということ、そしてまた、近辺で多数の死者が出たということから、翌日、これもまた異例でございますけれども犯人が、被疑者特定できないという意味の被疑者不詳ということで検証令状及び捜索令状発付を受けまして、直ちに検証捜索実施いたしたものであります。  その際、今申し上げました経緯がございますことから、河野氏宅に対しまして捜索実施したということであります。あくまでも被疑者不詳という令状であります。  その後の記者会見におきまして、そのような捜索を行ったということは被疑者として考えたからこそではないのかという趣旨質問がなされたのでありますけれども、これに対しまして、今申し上げましたような事情説明の上、あくまでも事情聴取参考人として行うものであることを捜査本部として言明してまいったところであります。  しかしながら、特異な事件であったとはいえ、そのような捜査活動というものが通例は行われないということからだと思いますけれども河野氏に対して捜査本部として容疑を持っているのではないかという印象を持たれたということは否めない事実であります。  したがいまして、私どもといたしましては、捜査は適正に実施してきた、やるべき捜査をやってきたというぐあいに信ずるものでありますけれども、その捜査の結果において、またその捜査過程においてそのような受け取りをされるという結果が生じたということについてはまことに申しわけなく考えるということで、国会におきましても、第一通報者である河野さんに対しまして、多大な心労と迷惑をかけることになったことに対して申しわけなく思う旨、当時の刑事局長、さらには国家公安委員長から表明をさせていただいたというものでございます。  そして、それは、河野さんから、また河野さんの委任を受けた弁護士の方からも、どうか警察責任者において公的な場でその旨を表明してほしいというような要望もあったようでありまして、それを受けて今申し上げましたような表明をさせていただいたということでございます。  以上が本件に関します経緯でございまして、御理解を賜りたいというぐあいに存じます。     —————————————
  22. 笹川堯

    笹川委員長 この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所白木刑事局長安倍家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  23. 笹川堯

    笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  24. 笹川堯

    笹川委員長 質疑申し出がありますので、順次これを許します。上田勇君。
  25. 上田勇

    上田(勇)委員 平和・改革上田勇でございます。きょうは、一般質疑で大きく二点お聞きしたいというふうに思っております。  まず最初に、六月末の上場企業株主総会集中日が近づいてきておりますが、特定の日に大多数の株主総会が集中するというこの我が国の特異な現象につきましては、これまでも内外の各方面から、株主軽視経営ではないかという批判が相次いでおりました。  この法務委員会におきましても、昨年の十一月の参考人質疑に御出席いただきました評論家佐高さんからも、ちょっと引用させていただきますが、次のような発言がありました。「私は、このほぼ九割の同じ日の同じ時刻に株主総会をやった企業というのは、すべて総会屋関係があると言って差し支えないと思います。」というような発言がありましたし、さらにそれに引き続きまして、これでは「株主総会を全くやっていないということと同じなわけですね。それで日本がまともな経済社会だというふうなことは言えない。」というような発言がありました。  さらに、私もこの問題につきまして、去年の五月の委員会質問させていただいたところ、松浦法務大臣も次のようにお話をしていただいています。「株主総会一定の日に多数集中することは決して好ましいことだとは思っておりません。したがって、どのような形になるかはそれぞれ企業がお決めになることでございますけれども、できるだけ分散して、株主の利益が守られるようになっていくという方向が出てくるように期待をいたしております。」という答弁がございました。  特定日に集中するという現象理由一つとして、マスコミ等では、いわゆる総会屋対策一つ理由だというふうに言われております。昨年来、商法も改正されまして、大物総会屋にかかわる数件の事件も一山越えたという、ことし、株主総会開催状況はどうなっているかということを 見てみますと、先日、新聞報道によりますと、大手銀行についても、これは昨年からずっと不祥事が続いて経営内容への関心が非常に高く、株主総会が、ことしこそ非常に重要なものだと思うのです。  その大手銀行でも、一部を除きますとやはり同じ日に開催されるのが圧倒的に多いようでありますし、その他の業種の企業も大多数が同じ日に開催予定だというふうに仄聞しております。これを見ますと、依然として、企業として総会屋による妨害などについての対策が必要なのか、依然として、一般株主による経営の参画を軽視するような体質が改まっていないのか、この辺大変疑問に思うわけであります。  大臣に、こうした事態についてどのようにお考えなのか、まずひとつ御所見を伺いたいというふうに思います。
  26. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 御承知のとおり、株主総会会社最高意思決定機関でありますから、多数の株主が出席することができる日に開催されることが望ましいということは当然のことでございます。したがって、六月の末ごろの特定の日に定時総会が集中することは、三月期決算会社が多いといたしましても好ましいことではない、このように思います。今回の集中日は六月二十六日であると聞いておりますけれども複数の大企業においては、この日とは異なる日に株主総会を開催するところもあるというふうに聞いております。  私どもといたしましては、今後とも、株主権利を保障する観点から、このように株主総会開催日が分散することを期待いたしておりますし、昨年来の総会屋をめぐる一連事件にかんがみましても、会社側もこの辺の事情を十分認識して、そして、今申し上げましたような対応をしてほしいと強く期待いたします。
  27. 上田勇

    上田(勇)委員 ちょっと今のことに関して法務省にお伺いしたいのですけれども一連総会屋にかかわる事件が明るみに出まして、ことしも株主総会が同じ日に集中する一つの大きな理由が、企業総会屋対策を講じなければいけないということだというふうに一般によく言われるのですけれども、ことしもやはり依然として、総会屋に対する企業としての対策というのでしょうか、妨害が予想されるがゆえに集中日に開催するというふうにお考えなのかどうか。その辺‘これは会社の決めることなので法務省としてはわからぬと言うかもしれませんけれども、御認識があればひとつお伺いさせていただきたいと思います。
  28. 森脇勝

    森脇政府委員 従来から、株主総会が、三月期決算会社についてある一定の日に特定してしまうということに対する批判があったわけでございます。ただ、それに対しまして、今委員御指摘のとおり、一定日に集中させる方が総会屋の出席も制約されるという考えからでしょうか、そういう方向に動く要因があるんだという説明が確かになされておりました。  私どもとしては、それがどれぐらい正当に的を得たものかどうかという点に多少疑問はございました。ただ、昨年来の不祥事、さらには商法改正の立法を通じまして、企業総会屋との絶縁ということが強く叫ばれましたし、それはそれなりに効果を上げてきたものだというふうに考えております。  ことしの株主総会の期日につきましては、現在まだ全部の企業株主総会の日がいつになるのかということは確定していない状況でございますが、一方では、最終の金曜日、ことしていいますと六月二十六日をずらすという企業が出てきたという反面、相変わらずこの特定の六月二十六日の日にかなりの会社株主総会を開催するということのようでございます。  そういたしますと、総会屋との絶縁が図られた後においてもなおかつ総会の日がかなりの企業集中日に集まるということになりますと、企業の体質として、いよいよ株主軽視の傾向のあらわれではないかという見方も出てくるところでございまして、今後、実際ことしの株主総会の集中度がどうなのかという点につきましても、私ども関心を持って見守ってまいりたいというふうに考えております。
  29. 上田勇

    上田(勇)委員 昨年は商法の改正も行われまして、総会屋に対する対策の法制度の面での対応がされました。また、検察それから警察の大変な御努力によりまして、総会屋事件が次々と摘発、明るみに出されました。そういう実績を踏まえまして、これは法務省だけで対応できることではありませんが、ことしも引き続き、政府としてこの総会屋対策につきましてはひとつまた万全の対策を講じていただくように御要望させていただきたいというふうに思います。  次に、全く異なる問題に移らせていただきますが、これは裁判所の方にお伺いしたいと思うのです。  先日、新聞報道によりますと、写真週刊誌がオウム真理教裁判で被告人の様子を含みます法廷内での写真撮影を行ったという問題が報道されております。この記事では、このことに対して東京地裁が抗議したという報道になっておりますけれども、その事実関係、また、そうしたことがあったとすれば、抗議を受けた出版社の方はどのように対応したのか、そのあたりについて御報告をいただければというふうに思います。
  30. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  今月十五日発売のフライデー五月二十九日号に、平成十年五月七日の松本被告人に対する第七十七回公判期日における同被告人の様子を隠し撮りした写真が掲載されるという事実がございました。東京地裁では、五月十四日、これは発売の前日でございますが、この日にこの事実を知りまして、即日フライデーに厳重に抗議をするとともに、所長代行名で発売の中止と回収を申し入れました。翌五月十五日には、フライデーの編集長らを呼びまして、同じく所長代行が同様の厳重抗議を行っております。  以上が、現在までの事実関係でございます。
  31. 上田勇

    上田(勇)委員 この記事には抗議を受けましたフライデーの編集長のコメントも出ておるのですけれども、それを読む限りにおいては、特にこの件について、抗議を受けたことに反省をしているというようなことではなくて、むしろ、「今後も法廷内の写真取材の必要性を訴え続ける。」というコメントが出ております。  ここでちょっとお伺いしたいのですが、法廷内での被告人の様子を含みます写真撮影、これは許可を得ればできるというふうに規則上はなっているようでありますが、実質的に、被告人の様子を含みます開廷中の写真撮影については禁止をされておるというふうに聞いておりますが、その理由を御説明いただければというふうに思います。
  32. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 刑事訴訟規則二百十五条によりますと、「公判廷における写真の撮影、録音又は放送は、裁判所の許可を得なければ、これをすることができない。」とされているわけでございます。  このように規制されております理由は、何らの規制もなくこれらの行為が放置されますと、往々にして法廷の秩序を乱し、審理に悪影響を及ぼし、あるいは被告人ら訴訟関係人の名誉や肖像権を侵すなどの事態を招くことになりかねませんので、法廷での写真撮影等を裁判所の許可に係らしめまして、許可のない場合にはこれをすることができないとしたものであると理解をいたしております。
  33. 上田勇

    上田(勇)委員 このように法廷内での写真撮影を事実上禁止しているというのは、これは我が国だけなんでしょうか。それとも、アメリカやヨーロッパ諸国ではどのように取り扱っているのか、その辺を伺いたいと思います。
  34. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 アメリカにおきましては、州の裁判所では、法廷内の写真撮影を認めるかどうか、各州によってまちまちのようでございます。ただ、連邦の裁判所につきましては、法廷内の写真撮影は禁止されているところであると承知をいたしております。  それからイギリスにおきましては、法廷内の写真撮影が禁止されておりますことはもとより、裁判所の建物内部にカメラを持ち込むこと自体が禁止されているようでございます。  それからフランス、ドイツにおきましては、法廷内における審理の模様そのものを撮影することにつきましてはいずれも認められていないようでございます。ただ、審理を開始する前に、法廷内の裁判官、検察官、弁護人、被告人等を撮影することにつきましては、受訴裁判所の裁量的判断によって許可される場合があるというふうに承知をいたしております。
  35. 上田勇

    上田(勇)委員 ということは、我が国での対応というのは欧米先進国と大体同じ、あるいは比較的マスコミに対しては開かれた対応をしているというお話だったというふうに思います。  それで、先ほど引用いたしました記事によりますと、この写真週刊誌は九六年四月の初公判の際にも同じような行為があったというふうに報じられておるのですが、このときは裁判所としてはどのように対応されたのか。また、そのとき出版社の方は、裁判所の何か行為があったとすれば、それに対してどのような対応があったのかお聞かせいただければと思います。
  36. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 フライデーは、平成八年四月二十六日発売のフライデー五月十日・十七日合併号に、平成八年の四月二十四日の松本被告人の第一回公判期日におきまして何者かが被告人を隠し撮りした写真を掲載いたした事実がございます。  これにつきまして東京地裁は、四月二十五日に、フライデーとそれから講談社に厳重に抗議をいたしまして、発売の中止と回収を申し入れたわけでございます。  五月十日に至りまして、講談社の方から遺憾の意を表する文書が東京地裁に提出されました。それから、五月十七日発売のフライデー誌上に遺憾の意を表する文書が掲載されております。  なお、五月二十日になりまして、講談社も加盟しておりますが、日本雑誌協会では、講談社に対しまして、法廷における代表取材を一カ月間参加させないという処分がなされたと承知いたしております。
  37. 上田勇

    上田(勇)委員 ずっとお話を伺いまして、裁判所内での撮影というのは、私はやはり被告人にもプライバシーの権利がありますし、また、裁判所内で被告人の様子を撮影することが、私は何も社会的にその報道が必要なことだというふうにはとても感じられないわけであります。写真週刊誌の方も、一回目のときには多分そういう認識において裁判所の抗議に対して対応したのではないかというふうに思うのですが、確かに、非常に社会的な関心を呼んだ事件でありますので、やはり市民の関心が集まるというのは事実でしょうし、そこで、何とかその写真を撮りたいという気持ちがあったのかもしれません。  最後に一つお伺いしたいのですが、この写真週刊誌の編集長の方も言っているのですが、もっとその辺、法廷内での写真撮影を認めてもいいのではないか。仮に被告人や弁護人の同意があれば、もう少し緩やかにしてもいいのではないかというような意見も一部にはあるようですけれども、それについてはどのようにお考えか、最後に伺いたいと思います。
  38. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 現在の運用といたしましては、報道機関に対しまして、開廷前の二分間、被告人の在廷しない状態で代表撮影を認めるというのが一般的なところでございます。それ以上どこまで撮影等を認めるかということは、実際に審理に当たります裁判所が決すべきことになるわけでございますが、被告人の在廷の状態であるとか審理の内容を撮影させることにつきましては、これを認めないこととしているわけでございまして、被告人を初め訴訟関係者のプライバシーであるとか審理に与える影響等を考えますと、その運用は合理的な理由があるものと考えております。
  39. 上田勇

    上田(勇)委員 時間ですので、これで終わります。ありがとうございました。
  40. 笹川堯

    笹川委員長 達増拓也君。
  41. 達増拓也

    達増委員 自由党の達増拓也でございます。  きょうは、私は、検察審査会について質問をさせていただきたいと思います。  前回の委員会で私は検察問題を取り上げたわけですけれども、検察のあり方について、いわば市民、国民の目からそれをチェックし、また補っていく、そういう制度として検察審査会がある。また、いわゆる隼ちゃん事件、世田谷区の小学生がダンプカーにひかれて亡くなった、その事件についても今問題が検察審査会に上がっているということで、社会的にも大変注目されているものだと思います。  なお、アメリカには陪審制度というものがあって、日本でも一時採用されたけれども定着しなかったわけですけれども、自立した個人が自由な活動をしていく、そういう世の中を目指す自由党といたしましては、直ちに日本に陪審制度導入しろとは言わないわけですけれども、陪審制度が機能するような、そういう日本にしていきたいなという気持ちがありまして、その意味で、陪審制度に極めて近い検察審査会制度というものには、そういう日本の社会のあり方、日本人の意識のあり方の点からも強い関心を抱いているところであります。その割には、この検察審査会というもの、今回のような何か事件があったときにちょっと新聞に載ったりしますが、ふだんなかなか注目されていないわけでありますけれども、これは非常に重要な制度だと思うのですね。  まず基本的な質問からさせていただきますけれども、この検察審査会というものは大体どのくらいの頻度で開かれているものなのか、また、これは基本的に申し立てによってそれを審議するということですけれども、その申し立てというのは全国でどのくらいの数あるものなのか教えていただきたいと思います。
  42. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 検察審査会の会議の頻度がどのくらいかということは、各検察審査会の手持ち事件数でございますとかあるいは係属しております事件の規模等、その時々における各庁の実情に応じまして必要な頻度で会議を開催しておりますので、一概には申し上げられないわけでございますが、繁忙な庁におきましては週一回程度の割合で会議を開催していると聞いております。全国の平均で見ますと、大体月一回ぐらいということになっているようでございます。  それから、審査会への申し立ての件数でございますが、過去五年間で見てみますと、申し立ての件数は、多少のばらつきはございますが、年間おおむね一千百件から一千六百件くらいとなっております。  以上でございます。
  43. 達増拓也

    達増委員 一年間に大体一千百件から一千六百件ということでありますけれども、この検察審査会、事件が起こってそれが不起訴になったときにそれに不服のある被害者が申し立てをするわけでありますけれども、それによって起訴になるケースというのは一体どのくらいあるのか伺いたいと思います。  検察審査会においては、不起訴に対して、不起訴不当だという決定、また起訴が相当だという決定、これが検察官の裁量によって、それに基づいて起訴するかどうか改めて考え直す、そういう決定になると思うのですけれども、それらの数字について伺いたいと思います。
  44. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 起訴相当という議決のございました件数は、毎年十件未満でございます。それに対しまして、不起訴不当という議決がございました件数は、これはまた大変ばらついておりますが、過去五年間で見ますと、六十件から二百件くらいの間というふうになっております。  この起訴相当の議決があった事件あるいは不起訴不当の議決があった事件のうち、どれくらいが起訴されているかということでございますが、これは、その事件そのものをフォローいたしておるわけではございませんので正確な数字としては申し上げられないわけでございますが、今まで、制度発足以来、すべての事件で見てみますと、起訴相当、不起訴不当の議決を受けてその後起訴された事件の割合としては、平均いたしますと大体六、七%ということになっているようでございます。
  45. 達増拓也

    達増委員 普通はその申し立てがあって審議するということなのですけれども最高裁でつくっている資料によれば、申し立てがなくても審査会が進んで不起訴になった事件について調査するということもあるとのことですけれども、その数はどのくらいあるのか、また、例えばどういう事件についてそういう審査が行われているのか教えてください。
  46. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 検察審査会に審査を申し立てることができますのは、被害者あるいは告訴、告発をした者などと定められております。そこで、例えば死亡した被害者の遺族などは、広い意味では被害者に当たる方でございますけれども法律上は被害者そのものではないために申し立て権がないとされるわけでございますが、そういった遺族の方などから検察官の不起訴処分の当否を判断してほしいという申し立てを受けたような場合には、検察審査会は、その事件につきまして、申し立て事件として審査を行うことはできませんが、職権によりその事件を取り上げることとして審査を開始することができるわけでございます。  これが多いわけでございますが、そのほか、新聞等のマスコミ報道を端緒として、審査会の方でこれを職権で取り上げようという場合もございます。このように職権で取り上げられます件数は、年間百件を少し超えたところでございます。
  47. 達増拓也

    達増委員 その職権で取り上げて審査する場合、例えばですけれども、今社会的に問題になっている大蔵省の官僚の過剰接待問題、収賄に当たるかどうかということで問題になっているわけでありますけれども、その中で、週刊誌等でこれは絶対逮捕だとか、そう言われている人について起訴されていない、これを受けて、検察審査会がみずから進んでそれを、証人を呼んだりとか証拠を集めて審査するということは、これはできるのでしょうか。
  48. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 職権で取り上げるかどうかということを決めるのも検察審査会議そのものでございまして、仮に職権で取り上げられました場合には、検察審査会としては証人を呼んだり検察官から事情を聞いたりということができる制度になっております。
  49. 達増拓也

    達増委員 検察審査会法を見ますとかなり広範な権限があって、照会権ですとか証人尋問ですとか検察官の協力義務も規定されております。その気になればかなりいろいろなことができる制度なのだと思います。ただそれだけに、一般の裁判官と違って制度的に保護されていないし、また社会的にも普通の、例えば主婦ですとか学生とかがやることもあるわけで、一たん社会的に重要な事柄の審査に乗り出した場合に、例えばその検察審査員が、どこの審査会の審査員は今だれがやっているということが明らかになれば、いろいろな人がそこに殺到して、絶対起訴にしてほしいとかあるいは起訴にしないでほしいとか、いろいろそういうことも起こってくると思うのです。  今、その検察審査員というのが、そういう意味で、身分を守るというのとは直接違うのですが、いわばある程度の匿名性を保てるのか、冷静に審査ができるのか、その辺はどういう状況になっているのでしょう。
  50. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 まことに委員仰せのとおりでございまして、審査員の氏名を公表いたしますと、具体的な事件に関連しまして審査員に対してどのような圧力が加えられるか知れないところでございます。法律的にも、検察審査会法によりますと、検察審査員の候補者、これは選管で選ぶわけでございますが、候補者は大変人数が多うございます、この候補者につきましてはその氏名を告示するという規定になっておりまずけれども、実際に選ばれました審査員につきましては、その氏名を公表することを予定した規定を置いていないわけでございます。そういったことから、法は具体的な審査員の氏名を非公開とする趣旨であると理解されておりまして、実務でもそのように取り扱われております。したがいまして、どこから照会がございましても、審査員の氏名等を公表することはございませんで一切秘密とされております。
  51. 達増拓也

    達増委員 検察審査会法では審査員の守秘義務が規定されておりまして、審査の内容を、秘密を漏らした場合には罰則を受ける旨規定されておりますが、会議録、裁判の場合ですと、判決の内容とかその途中の経過というのは公表されるわけですけれども、検察審査会の審査の中身というのは公表されないということなんでしょうか。
  52. 白木勇

    白木最高裁判所長官代理者 検察審査会法では、審査会議は公表しないとされておりまして、これに違反した場合の罰則も定められております。したがいまして、審査の中身は厳重に秘匿されるわけでございます。  ただ、一切合財外に明らかにしないかと申しますと、そうではございませんで、審査の結果議決をいたしますと、理由を付した議決書を作成することになっておりまして、その謄本を検事正に送付することとなっております。その後、七日間でございますが、検察審査会事務局の掲示場に議決の要旨を掲示するという扱いで一般に知らしめるようにいたしております。
  53. 達増拓也

    達増委員 今回、隼ちゃん事件についてでありますけれども、本当に冷静な審査、審査員の皆さんの良心に従った審査が行われることを期待したいと思います。  刑事事件そして刑罰というものは、犯人、加害者が二度と罪を犯さないようにということ、また、同じような罪をほかの人が犯さないようにということ、それらのほかに、やはり伝統的な応報刑的な考え方といいますか、通俗的な表現では恨みを晴らす、またその関係者以外でも、やはり悪いことをすればそれ相当の罰を受けるものなのだ、世の中そういうものなのだという社会の秩序安定に対する気持ちの問題、心の問題、そういうのも刑罰ということについては大事だと思うのですね。  今回の隼ちゃん事件については、一つは、適正に捜査、また不起訴の判断が行われたのかという非常にクールな、理詰めの問題があるわけでありますけれども、同時に、遺族の方々が十分納得いくような説明を受けなかった、十分納得できていない、そういう心の問題もあり、その心の問題に共鳴する人たちが署名運動を行ったり、インターネットを通じた議論を行っている。こういう心の問題については、やはり政府、行政あるいは裁判所のような、お上だけでそういう心の問題を解決していくというのではなく、社会として、市民社会としてもそういう心の問題に取り組んでいく、そういう社会であり国家であることが望ましいのだと思います。  そういう意味で、検察審査会というのは、そういう心の問題、納得できるできないという心の問題についても本当に重要な役を担っているわけで、匿名性の高いものでありますから、その審査員の人一人一人に訴えることはできませんし、またそういうプレッシャーをかけてもいけないのでありましょうから、こういう形で一般的に私は発言するわけでありますけれども、本当に責任の重さと社会に対する重要性を認識されて、選ばれた、それは特権であると同時に社会に対する義務でもあると思います。その職務を遂行していただきたいというふうに思います。  また、この隼ちゃん事件に限らず、一般的にアメリカで行われている陪審制度に通ずる、市民、国民が自分たちの手で法と秩序を守って正義と真実を実現する非常に重要な制度であり、審査員の皆さんのやっていることというのは大事なことだと思いますので、審査員の皆さんに頑張っていただきたいということと、またこの検察審査会制度というものが健全に発展してうまく運用されていくこと、そうでなければならないということを訴えまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  54. 笹川堯

  55. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  先ほどの同僚議員からの質問、そして先般私自身も他の同僚議員からも、世田谷区の小学生が痛ましくも大型ダンプカーにひかれて、そして運転手はそのまま四十分後に逮捕されるという事件について、重ねてお尋ねをしたいと思います。  昨日、法務大臣並びに刑事局長も、窓口の対応については適切ではなかったという旨答弁をいただいたと思いますが、本日は当法務委員会質疑を御遺族が見守っているということも踏まえまして、もう一度、ちょっと質問が重複することを委員長にお許しいただいて、この事件、検察が本当に命の重さ、事件の重大さに照らして、本来ならばきちっと説明をして誠意を尽くすという対応が求められたにもかかわらず、門前払いというような対応であった、そして、昨日でもう既に三万五千人近い方が署名をされているという状況で、物すごく世論も高まっているということを踏まえて、この件について大臣がお感じになって、そして強く心されていることをお話しいただきたいと思います。よろしくお願いします。
  56. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お答えいたします。  昨日るる詳しく委員にお答えしたとおりでございまして、既にきょうの報道等にも出ておりますけれども、東京地検においてはそういうふうな意味の窓口をつくったという報告を受けておりますし、私どもとしては、繰り返し申し上げまずけれども被害者立場と同じ目線で、同じ気持ちでそのような事案の解決に当たる、対処するという基本的な姿勢でやってまいりたい、被害者には本当に心からお悔やみ申し上げたい、このように思います。
  57. 保坂展人

    ○保坂委員 昨日、質疑の中で、確かに組織の長である法務大臣が、この件について被害者の方に対して、とりあえず窓口の対応において多々問題があった、したがって、きょうの新聞等にも出ておりますけれども、二度とこういうことがないように全国的に指令ですか、直すようにということで早速解決に当たられているということを大変ありがたいと思いますと同時に、窓口で対応が適切でなかったということをぜひ被害者の方にもお示しいただきたいということでございますが、いかがでしょうか。
  58. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 お答えいたします。  昨日もるる申し上げましたとおり、それは極めて不十分であったと思いますし、心から、御迷惑をかけ、また御不快な思いをおかけしたことに対しましておわび申し上げます。
  59. 保坂展人

    ○保坂委員 私は、御遺族、御両親にお会いをして、いろいろと事情を聞いてまいりました。そしてまた、事件の詳細にわたる資料も短時間でしたけれども目を通してみて、やはりどうしてこれが不起訴になるのかなという思いが、新聞報道で最初に読んだ時点で多くの人が感じたのと同時に、しかも深く疑問を持ったわけなのですけれども、お子さんを持つ親としては、まさに突然我が子を奪われたわけですから、この決着がどうなるのかということについて説明を求める、当然のことだったと思います。  このことについて、今大臣が不適切である旨、これは本当によくなかったとお認めいただいたわけですけれども、いまだに検察当局から連絡や説明がないということなのです。  もう一点なのですけれども事件の取材に当たる報道関係者によると、本件責任部署に当たっている方から、子供の動きが極めて不自然だったのではないか、車の方にみずから歩いていったのではないかというような発言が非公式にされて、これが間接的に御両親に伝わるということで、大変な被害者感情の侵害ということが行われているわけです。  大臣も長らく警察の場におられて、小学校の二年生、八歳という少年が、いきなりダンプカーが動いてきたときにとっさの判断でどういうふうに動いていいかわからない、とりあえず一生懸命走ったということだと私は思うのですけれども、少なくても誠意ある説明、連絡ということを求めたいし、非公式な発言であってもそういうことがあってはならないと私は思うのでありますけれども、いかがでしょうか。
  60. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 具体的な事件の中身、またそれについてのさまざまな反響と申しますか、それを踏まえての御指摘で、事務当局からとりあえず御答弁させていただきます。  具体的な事件捜査処理に当たる検察官の立場といたしまして、やはり刑事事件でございますから、さまざまな証拠に基づいて、最終的に有罪の判決ができるまでのほとんど合理的な疑いがないまでの証拠を確保できませんと、そのような処分ができないということについて、一般的な形での御理解を賜りました上で、なお、本件につきまして委員また本委員会でたびたび御指摘をいただいて、結論的に亡くなられた子供さんの御遺族の方に十分な御理解が、また納得が得られていないということを重く受けとめさせていただきたいと存じます。  その上で、そのさまざまな交渉と申しますかやりとりの過程でどういうことが語られ、どういうことが言われたかということについて、ただいま論評することは慎重にしなければならないと思います。いずれにいたしましても、そのような形での、いわば情報が不用意な形で御遺族の方に届いているということ自体、私は大変申しわけなかったという気がいたします。  その上で、やはり検察といたしましては、現在本件については検察審査会で審査中という状況を踏まえまして、今後ともその審査を見守りながら十分対応をしていき、そして最終的に御理解を得るための誠意ある努力をしなければいけないというふうに考えております。
  61. 保坂展人

    ○保坂委員 今の御答弁を踏まえて、法務大臣、いかがでしょうか。
  62. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 先日来御答弁いたしておりますように、この事件には二つの側面がある。一つは刑事事件としての問題でございまして、それは今検察審査会にかかっているということです。具体的な事件の内容につきまして法務大臣としての意見を申し上げるということは、差し控えさせていただきたいと思っております。  それから、二番目の取り扱いの問題につきましては、これはもう不十分であったということを先ほど来申し上げているわけでございますし、御遺族の方々の御心情を思いますと、それは察するに余りあるわけでございます。そういうふうな点は、やはりこういうふうな貴重な事件を契機といたしまして、ただそれだけに終わらせるのではなくて、やはり全国的な問題としてとらえて、そして検察行政の中に十分そういうふうな方々に対する対応というものがなされるように、具体的にもう指示をしたところでございまして、進めてまいりたい、このように思います。
  63. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、警察の方に来ていただいていると思うのですが、御遺族の方によると、捜査は大変熱心に、かつ本当に真剣に丁寧に行われた。そして、同じお子さんを持つ警察官の方が、ともにいわばこの事件に対して非常に強く、人間としてそして捜査官としても誠意を尽くしてやっていただいた。  ところが、この捜査終結はいつだつたのかという問題をちょっとお尋ねしたいのです。と申しますのは、一月八日に御遺族が司法警察員から被害者調書の聴取を受けているわけなのです。そのときには、これまで何度もお会いしてきた警察官との関係において考えると、不起訴だったことを知っていて聴取していたとは思えないというわけです。それならそれできっと伝えてくれるだろう。そのことを知らずに調書がつくられていたのではないかということも指摘をされていますが、いつ捜査は終結したのでしょうか。それから不起訴という御連絡はいつの時点であったのでしょうか。これは大変な関心事ですのでお答えいただきたいと思います。二月の末にはもう既に目撃者捜しの看板も撤去されたというふうにも聞いておりますので、これらのところをぜひ簡潔にお答えいただ きたいと思います。
  64. 渡邉晃

    ○渡邉(晃)説明員 所轄警察署におきましては、一月八日に父親からいわゆる遺族調書を作成いたしております。その作成時期は、一般的に申し上げますと、例えば四十九日を過ぎてから作成をお願いするというように、御遺族の心情に配慮をしてその判断をいたしておるところでございます。本件につきましても、所轄警察署におきましてそのような判断のもとに行われた、このように考えております。  また、御指摘のように、本件事故につきまして、情報提供を呼びかけるために事故発生当日から二月の下旬まで事故現場におきまして立て看板を掲出していたという報告を受けております。  なお、不起訴処分という処分結果をいつ知ったのかということにつきましては、昨日お答えいたしましたように、まだ調査中ということでございます。
  65. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは法務大臣に再度伺いまずけれども、これが署名用紙なのです。お子さんの写真があって「ひき逃げ犯をなぜ不起訴にしたのですか」と、これが街頭で、あるいは人伝えでどんどん集まっているという状態が今あります。  もし仮に逆の立場に立ったときに、本当にどこに訴えてどう叫んでいいのかわからないという立場に置かれるわけです。こうした訴えが広がっている、そして大臣はこういうことが起こらないように指示をお出しになったということは、やはり交通事故そのものを、いわばたくさんあるのだから簡略に処置していこうという部分で、考え直さなければいけない転換点が来ているのではないかというふうに思います。  ですから、これだけの訴えをされて、恐らく、検察庁の窓口で教える義務はないよと言われた段階で、涙をのんで引き下がる、無念の思いを胸に秘めながらその後の人生を過ごされる方も中にはいらっしゃるはずだと思います。しかし、御両親は、やはりこれはおかしいのじゃないかということで幅広く訴えて、そして、我々議員もそうですけれども、世論がそのとおりであるというふうに沸き上がってきて、そして大きく転換を求めているという事態が現在あると思いますけれども、このあたりについて、法務大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  66. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 交通事故による業務上過失致死傷の事件でございますが、これは、正直申し上げまして、全刑法犯の七〇%になっているわけでございます。それほど多うございます。  そこで、その処理の扱いでございますが、業務上過失致死事件、亡くなった方の事件につきましては、これは数字で見ますと、起訴率というのは六〇%前後でずっと変わっておりません。けがをなさった方の処理が、昭和六十二年にある程度の基準を示しまして、それ以降、けがをなさった方の起訴率というのが減っているのは事実でございます。  これはどういうことかといいますと、交通事故というようなものは大変多いわけでございまして、昨日もお話し申し上げましたように、死者だけでも年間一万人になるかならないか、何とか下げようということで、各方面でいろいろ努力して、ここ一、二年は一万名を下回っている。負傷者は非常に多いわけでございます。  したがいまして、私どもは、そういうふうな悪質、重大な事件につきましては、やはり厳正に処理するというふうな方針でまいっているわけでございますが、他面、軽微な事件についても、これは大体略式が多いわけですけれども、そうしますと、一億総前科者、ほとんどの方が免許証を持っているわけですから、そういうふうなことにもなりかねない。やはりその辺のところは考えていかなくてはならないということでございまして、悪質な事件については、今回の事件みたいなものにつきましては、これはやはり峻厳に処置すべきものである、このように思います。
  67. 保坂展人

    ○保坂委員 法務大臣、今回の事件は大変悪質、つまり、無線交信中に前方もよく見ずに、そして、何かを踏んだかもしれないということを思いつつも予定の進路を運行したということで、これはひき逃げということになるわけですけれども、交通事故の中でも最も重大な、最も厳正に行われなければならないこの捜査について、あるいは不起訴処分について、相当ほうはいと声が上がっているのは御存じのとおりです。  最後、時間がありませんので、大臣に先ほどお尋ねしたがったのは、こうして片山隼君の御両親が声を上げたことで世論が巻き起こって、そして、大臣が今おっしゃる、悪質な事件については厳正に事に当たるという契機にぜひしていただきたいし、そう受けとめていただきたい。  この遺族の上げた声をどういうふうに受けとめられるのかということだけに絞ってお答えいただきたいと思います。
  68. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 ひしひしと感じております。十分重く受けとめて対処いたしたい、このように思います。
  69. 保坂展人

    ○保坂委員 この件に関しては、次々と署名が集まるということ自体が、私も交通事故に遭った経験がありますけれども、そして恐らく、委員の皆さんのごく身近で、交通事故で亡くなった方や大けがをされた方は多いわけです。それほど身近だというところの中で、やはり悪質な運転あるいは人を死亡させるというような重大事故を起こしたことについて、扱いをもう一度ここで再考するという時点が現在やってきたのだと思います。  大変重い政治の課題だと思いますので、今後とも、これは速やかな吟味、検討を当法務委員会でもぜひ続けていただきたいということを委員長に要望して、私の質疑を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  70. 笹川堯

  71. 木島日出夫

    木島委員 日本共産党木島日出夫でございます。  先週の水曜日の一般質疑、五月十三日でありますが、大蔵省の接待問題について質問をいたしました。大蔵省、参っておるようであります。  大蔵省の方に、滝本豊水氏が日本生命から下記三件について接待を受けたのは事実かと。一つ、平成七年一月十九日、サロン・ド・ミネルバ。二つ、同年二月九日、氷川。三つ、同年二月十四日、氷川。そして、事実だとすれば、同氏の処分事由の会食回数としてカウントされているのか。私がこの点を質問したのですが、法務委員長からも大蔵省に資料要求という形で出ていると思うので、改めて、その事実の有無について、きょう大蔵省から篤と承りたいと思います。
  72. 渡辺博史

    渡辺(博)説明員 お答え申し上げます。  先週、御質問委員からいただきまして、また委員長の方からも御指導をいただきまして、それを踏まえまして、お答えをさせていただきます。  ただいま御質問をいただきました者につきましては、平成六年七月からの約一年間、銀行局保険部保険第一課長の職にあったわけでありますが、その間、その職から見ての、職務上の関連ある民間金融機関に該当いたします複数の生命保険会社との間でかなり頻繁に会食が行われていたということを把握しておりますし、さらに、御質問のありました個別の会社との間でも会食を相当回数行っていたということを把握しております。  これは、御質問の対象であります本人の記憶に基づいて行われました自主申告においても認めているところでございますし、それを踏まえました当方の調査、さらには、相手方民間金融機関への照会を通じて、当方として把握したところでございます。  しかしながら、今、保険第一課長在職中の期間内に行われたのではないかとされております御指摘の三回の会食のように、日時、場所を特定しての御質問につきましては、この点についての本人の記憶も、現時点から三年以上も前ということもありまして、必ずしも定かではなく、また相手方民間金融機関からも、日時へ場所については正確な確認がとれておりません。  したがいまして、個別の会食への参加の有無について、国会の場で正確にお答えすることは困難であると考えております。  以上、まとめて申し上げれば、御質問の対象となりました者が、御指摘の個別の会社との間で、御質問の時期を含む期間中に会食を行ったという事実及びその回数については把握しておりますが、具体的な個別の、今の例示であれば、三回の会食へ参加したかどうかの有無については確認ができておりません。  以上でございます。
  73. 木島日出夫

    木島委員 きょうはこの問題で余り時間を使いたくないのでありますが、不満であります。わずか三年前であります。そして、もう既に大蔵省も承知のように、時間、場所、そして週刊誌の報道によれば、そこに同席していた者まで名前が出ておる。週刊誌には政治家の名前までが出ておる。  そして、前回大蔵省からの答弁にもありましたように、五十五年ぶりの保険業法の大改正の直前であったということ、その他その他、三年前の飲食であり、もし事実とすれば到底忘れることのできない会食だと私は指摘せざるを得ないのです。十数年前の話じゃないわけです。保険業法という大改正の直前の時期の、しかもその担当部署の職責にあった時期で、保険業界の最大手の幹部との会食が指摘をされているわけです。  前回の質問後、大蔵省は滝本氏から直接、もっと詳しく事実関係を思い出すようにという調査はやられたのですか。それを受けて今のような御答弁なのですか。
  74. 渡辺博史

    渡辺(博)説明員 お答えいたします。  先日の御質問を受けましてから本人に確認をいたしまして、それを踏まえましての今の答弁でございますが、本人の方からも、御引用になりました写真週刊誌に記載されております先方会社の幹部と会食を行ったということ自体は記憶にありますが、何年何月、それがどこの場所でということまでの確認は、本人としては手帳等に記載がない以上記憶がないということでありますが、そこに記載のありました幹部との会食があったということは記憶にあると。  したがって、それは回数としてはカウントをされているというふうには私どもとしては認識をしております。
  75. 木島日出夫

    木島委員 大分事実が明らかになってまいりました。それでは、きょうは時間と場所を詰めるのは私はやめます。  そして、今の答弁の中で、保険会社の幹部との会食は認めておったという答弁でありますが、それでは、あの週刊誌に出ていた政治家がそこに同席していたかどうかという、その点での事情聴取はされましたか。それに対する滝本氏の回答はどんなものだったのでしょうか。
  76. 渡辺博史

    渡辺(博)説明員 お答え申し上げます。  今回の一連の我が省の職員と民間金融機関との関係についての調査及びそれに基づく処分という関係におきまして、私どもの方としては、職員本人と相手方の金融機関、そして相手方金融機関出席者がだれであるか、あるいは我が省の者としてその場に同席した者がだれであるかという相互のチェックをしておりますけれども、それ以外の方についての確認はしておりませんし、今回もそういう点についての確認は行っておりません。
  77. 木島日出夫

    木島委員 今検察当局は、大蔵省を中心とするさまざまな金融機関との接待関係について捜査もし、そして、それが贈収賄事件になる職務に関しての接待だというところまで事実が把握できた者に対しては、起訴までしておるわけですね。起訴をしているわけです。検察はそこまでやっているわけですね。  そうしますと、大蔵省としても、単純なる接待を受け飲食をしただけなのか、請託を受け一定の行政行為等に対しての要望を受けていたのか、これはもう重大なものであり、当然調査すべきであろうと思うのですね。そして、その受けた請託は政治的なものだ、国会にかかわるものだというふうになれば、そういう接待の場に政治家がいたのかいないのか、まさに重大な問題だ。  この問題の解明なしに、接待の回数だけで処分が行われているとすれば、大蔵省の今回の処分というのはまことに不十分と言わざるを得ないと思うのです。回数の問題ではない、もっと重大な、たった一回の回数でも請託を受け職務が曲げられれば、処分は重くて当然なわけでありますから、やはり私は今の答弁には納得するわけにはいかない。  どういう会食であったのか、政治家が関与したのか。特に、前回保険業法の改正の直前だ、その担当に当たる職員と保険業界最大手との会食だということがきょうの答弁でも明らかになってきたわけですから、やはりこれは調査すべきなのじゃないでしょうか。大蔵省、どうですか。
  78. 渡辺博史

    渡辺(博)説明員 お答え申し上げます。  今回の調査におきましては、相手方金融機関がどのような趣旨で会食あるいはそれ以外の接触を持ったとか、そういう点での聞き取りを特に行ったわけではございませんけれども、まさに委員御指摘のように、それぞれの場において会食、あるいはそれ以外の場においても個別の請託あるいは便宜供与の依頼等があったということについては我々も関心を持って調べております。  これにつきましては先週の委員会で私が既に答弁申し上げておりますので、重ねて申し上げますが、今回の御質問の対象となっている人物につきまして、職場での接触あるいはそれぞれの会食等の場においてどのようなことが話されていたかということの中において、具体的な請託あるいは便宜供与の依頼があったのかどうかということについては、本人に個別に確認を行いましたけれども、これにつきましてはそのようなものはなかった、そういうような例は確認されていないということは先週もお答え申し上げたとおりであります。
  79. 木島日出夫

    木島委員 では、その問題については質問をやめますが、しかし、保険業法の改正の直前で、担当に当たる職務に従事している大蔵省の職員が業界の幹部と飲食していた、週刊誌には政治家も一緒にいたのじゃないかということが指摘されている、それは重大なのですね。だから、直接具体的な請託があったかどうかについては、私はきょうは質問いたしません。保険業法の改正の直前ですから、政治家がいたかどうかというのは、その事実だけでも私は重大だと思うので、少なくともそこは調べておくべきではないか、どうでしょうか。
  80. 渡辺博史

    渡辺(博)説明員 お答え申し上げます。  今回の調査全体におきまして、多くの人間に対しまして調査を行ったわけでございますが、それがそれぞれ個別の相手方の民間金融機関との間でどのような接触を行っていたかというのは、会食あるいはゴルフをともにしたというだけではなくて、それ以外の接触も含めて関心を持って調べているところでありますけれども、その際に、私どもとしては、先ほど申し上げましたように、こちら側の、大蔵省側の出席者あるいは先方の民間金融機関出席者については可能な限り明らかにしようということでございますけれども、それ以上の方あるいは第三者という方がどのような形でそこにかんでいたかということまで具体的に調査をするということは現在まで行っておりませんし、今後ともこの調査の一環として行うということは考えておりません。
  81. 木島日出夫

    木島委員 大変不満であります。自分の不利益になるような事実については調査を受けても答えたくないというのが一般的な心情であろうと思うわけでありますから、ひとつそこは、きょうは質問をこれで打ち切りますけれども、調査するつもりはないという答えでありますが、ぜひ重大問題として調査をやっていただきたいということを重ねて大蔵省にお願いだけしておきまして、この問題は打ち切ります。大蔵省はお帰りいただいて結構であります。  続いて、翻って、検察あるいは法務省当局の接待問題について、私は、法務委員会でも質問をしたことがあるわけで、きょうはその問題は質問いたしません。ただ、最近週刊誌等々によって、やはり検察の姿勢も手ぬるいのではないかという大変厳しい指摘が出始めているのではないかと思います。  これは、ことしの五月二十二日付の週刊ポストという週刊誌の記事でありますが、「ならば検察の疑惑はどうなんだ!」という見出しの文書でありまして、ちょっと気になる記事がありますので指摘をし、こういう事実を法務・検察当局はつかんでおるのか、重大な関心を持って見ておるのかについてお聞きしたい。読みます。  私が前回取り上げた、法務省から出向した二人の検事に対する処分に深くかかわった同省幹部がこう言う、「職務上関連する業者との会合を接待というのであれば、法の番人たる検察は、すべての国民法人が《関連業者》にあたるはずだ。そうした飲食は検察でも日常化していた。杉井審議官」、大蔵省ですが、これは「辞任したが、それなら、一緒に会食していた東京地検の石川検事正はどうなのか。週刊ポストでも報道していたように、長野証券局長が北新地」、大阪であります、「北新地で行きつけだったクラブ『A』に、検察首脳が入り浸って一緒に接待を受けていたことも省内では知らぬ者がいない話だ。」こんな記事が公然と出ているのですね。これは、もう検察・法務当局にとっても見過ごすことのできない事実だと私は考えます。  そこで、法務大臣、法務当局にお尋ねしたいのですが、こういう記事が出ていることは承知しておるのでしょうか。そして私は、これが事実ならゆゆしいことなので、やはり大蔵省だけの問題だと、大蔵省の問題をよそ目に見て知らぬふりしているのじゃなくて、他山の石として法務・検察当局、省内、庁内でも、大蔵省以上に検察は襟を正さなければいかぬわけでありますから、やはりそういう接待がないか、改めて徹底した内部調査が行われてしかるべきだと思うのでありますが、御所見をお伺いしたい。     〔委員長退席、八代委員長代理着席〕
  82. 但木敬一

    ○但木政府委員 御指摘のような報道がなされているのは承知しております。しかしながら、一つの報道機関がそういう事実を報じたということをもって、調査あるいは捜査を開始すべきであるというふうにはならないというふうに考えております。
  83. 木島日出夫

    木島委員 私は、ここに法務省倫理規程、平成八年十二月二十七日制定、これを持ってきているわけであります。検察官も法務省職員も当然ながら国家公務員でありますから、ほかの大蔵省その他の省庁と同じ立場でつくられた倫理規程とお見受けをいたしました。この倫理規程の第三条には、「関係業者等とは、次に掲げるものをいう。」ということで、「当該職員の職務に利害関係のある業者及び個人」と、ほかの省庁と全く同じレベルの倫理規程だと思うのです。  やはり私は、法務省職員は一般の大蔵省の職員と同じでいいと思うのですが、検察官という身分を持って検察庁や法務省の幹部にいる者、また、前回私問題にしましたが、検察官という身分を持ちつつ証券取引等監視委員会などに出向している方、これは検察官という身分を持って出ていっているというので、やはり一般職員と違うと思うので、検察官についてはこの倫理規程よりももう一段厳しい、独自の倫理規程があってもいいのじゃないか。みずから身を律するということが必要じゃないかと思うのですが、そんな私の提案に対してはどうでしょうか。
  84. 但木敬一

    ○但木政府委員 御指摘のとおり、検察官は厳正公平でなければならず、また人の非違をただす職にある者ですから、他に増して常に自粛自戒しながら職務に当たらなければならないと考えております。また、検察官の身分にある者が法務省の中で働き、あるいは他省庁に出向して働いている場合にありましても、検察官としてその行動を律しなければならないというのは、まことに御指摘のとおりであると思います。  そのような観点から、今回の事件が起きまして、また当委員会でも木島先生を初め何人かの方の御指摘を受けまして、官房長名で、出向先の管理職の御了解を得た上で各出向者に対しまして、検事としての身分を保有して出向していることについて常に自粛自戒されたいという旨の注意を、私の名前で出したところでございます。  ただ、それを何らかの規程として書くべきかという問題につきましては、やはり、常に検察官として自粛自戒した行動をとるべきだということであると私は考えておりますし、検察官である者は当然そうした信条で自分を律していかなければならないものと考えております。
  85. 木島日出夫

    木島委員 時間ですから、終わります。
  86. 八代英太

    八代委員長代理 どうも御苦労さまでした。  次に、左藤恵君。
  87. 左藤恵

    左藤委員 私、今無所属ということで、きょうはこうした時間をつくっていただきましたので、最近の少年問題につきまして、若干お尋ねをいたしたいと思います。     〔八代委員長代理退席、委員長着席〕  最近、中学生の事件が多発しているということから、少年法に定める規定で、十四歳という年齢を境にして、法を犯した少年の送致先が、少年院、最近また名前が変わりまして、今まで教護院と言っておりましたが、児童自立支援施設ですか、こういうようなところに送られるということであります。  例えば、神戸で起こりました、小学校六年生の子供を殺害した中学三年生の子は、医療少年院ですか、そこへ送致された。栃木県で女性の先生を刺殺しました中学一年生の子は、これも児童自立支援施設ですか、そこへ送致されるというようなととが家裁で決定されているわけですが、一般の人々の中には、少年院は法務省の管轄で少年法に基づいて少年を更生させる施設である、教護院は今までの場合は厚生省の管轄で、児童福祉法に基づいて児童の更生を図る施設であるという区別も御存じない方も多いような状態であるわけです。  最近、これから少年法を改正するというようなことでいろいろ論議をされておることに関連しまして、またそういう報道もあることに関連いたしますが、まず第一には、社会のいろいろな変化というものがあるわけであります。  そして、それは、例えば都市化とか工業化とかいうようなことで、自然から隔離されている環境の子供たちが多くなっている。それから、そのほかにもいろいろ問題があると思いますが、核家族化していく、少子化の過程に伴って、祖父母とか兄弟とか、そういったものからの影響とか、そういうものを受ける機会が少ないとか、いろいろ家庭の生活様式も変わってくる。  あるいはまた、子供たちが受ける情報の大部分は学校の生活で受けることが多いのでありましょうが、マスコミのいろいろな影響もある。こういうことについて、それを正しく理解するだけの力がない、そういう段階の子供の犯罪というものが多様化していると同時に非常に凶悪化しているというような状況もあるわけであります。  こうしたことについて更生をさせるための矯正指導というものは、いろいろ法務省の方で御苦労されておると思いますが、こういうことについて、教育的な問題をどういうふうにして考えていくかということに関連して若干のお尋ねをいたしたいと思います。  その前に、近年、犯罪の低年齢化ということがしばしば言われるわけでありますが、最近三年間なら三年間、家裁が扱われた犯罪を犯した非行少年の数ですが、平成六年から九年の統計があれば、ことしの分があってもありがたいのですが、そういうことについてどういう数字になっておるか。そしてその内訳は、少年院へ送ったのはどれだけあるか、教護院へ送ったのはどれだけあるか。これは最高裁判所の方からお伺いしたいと思います。
  88. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  ただいま委員御指摘の、家庭裁判所に送致される少年事件の概況でございますけれども、交通関係事件を含めた少年保護事件の総数で見ますと、平成九年には三十一万六千件余りの事件が送致されております。  このうち、交通関係事件を除いた一般事件につきましては、約半分でございますが、十六万七千件余りが送致されているところでございます。この事件につきましては、昭和五十九年ころから減少傾向をたどっていたわけでございますけれども、平成八年に若干の増加が見られ、さらに平成九年には、前年に比べて一四%の増加という顕著な増加傾向が見られるところでございます。  また、委員御指摘のございました凶悪事件関係を若干見てみますと、平成九年の凶悪事件の送致件数は二千四百九十五件でございまして、これは、先ほど申し上げた一般事件のうちに占める比率としては一・五%でございます。この凶悪事件の件数につきまして、昭和五十七年ごろから減少傾向が続きまして、平成四年にある意味のボトムになったわけでございますが、その後増加傾向に転じまして、最近は顕著な増加傾向を示しているところでございます。もっとも、この凶悪事件の内数といたしましては、殺人、放火、強盗、強姦でございますけれども、そのうち強盗事件が約四分の三を占めているという状況にございます。  さらに、これらの少年事件の処分の結果についてのお尋ねでございますけれども、終局に至りました事件のうちに占める保護処分、これは保護観察でございますとか少年院送致とかでございますが、この比率は、昭和五十九年以降徐々にではございますが増加傾向にございまして、平成九年には一二%という比率を示しております。  そして、このうちで少年院送致になった事件関係でございますけれども、この傾向は、五十九年には二・四%でございましたものが減少傾向を示しておりましたが、六十三年ころから二%前後を推移いたしまして、その後平成五年には二・五%、そして八年、九年と上昇いたしまして、平成九年には二・八%の比率を占めているところでございます。  一方、御指摘のございました児童自立支援施設、以前の名前でいいますと教護院でございますが、この送致事件の比率は比較的低うございまして、昭和五十九年から六十三年ころまで〇・一%前後を推移しておりました。その後、六十三年から平成九年まで、ほぼ一貫して〇・二%という数字でございます。  以上でございます。
  89. 左藤恵

    左藤委員 大変ありがたいのですが、私は最近は覚せい剤等の薬物、そういったものの影響も非常に大きなことになっているのじゃないかな、このように思います。このことについては、時間もありませんので、また別の機会に伺いたいと思います。  少年院の問題についてきょうはお伺いしたいのですが、過般に予算委員会の分科会で私は教護院の関係のことについて質問をさせていただきました。その段階で、児童福祉法の改正があって、そしてこれは児童権利条約の問題だろうと思いますが、義務教育を教護院の方の新しい施設でするということになった。これに対して、厚生省の所管のことであり、文部省の方が、義務教育のことを実施するならば、当然そういった教員の配置の問題、定数の問題というふうなことについて十分準備もしないでこの四月からの改正に当たられたということについて、私は、来年からそういうことのないように予算措置も十分してほしい、こういうことを要望しておきました。  今度は少年院の場合に、現在高校に在籍している子供もあれば中途退学をしている子供もありますが、こうした子供たちが少年院へ行ったときに、学習指導というものをどういうふうな形で保障しておられるのか。今は高等学校の資格を得るといいますか、卒業ということが当たり前の時代になっておるというふうなこともありますが、特に気にかかるのは、中途退学をした子供について高校卒業の資格を取らせるような措置というものが講じられておるのかどうか。少年院の実際の運営の中でこういつたことをやっておられるかどうか、これをまず伺いたいと思います。
  90. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 先生御案内のとおりでございますけれども、少年院は種別として初等、中等、特別、医療というものがございますが、それと同時に、これは期間によりまして短期処遇、それと長期処遇という分け方をいたしております。その処遇ごとにいかなる処遇をするのかという処遇課程というのがそれぞれ設けられておりまして、例えば短期処遇の中の一般短期処遇という中には教科教育課程というのがございますし、それから長期処遇の中にも教科教育課程という処遇課程を設けております。  その中におきまして、もちろん義務教育を終了していない人につきましては義務教育を終了させるような教育をいたしますし、それから高校進学をしたいという者があれば、あるいは高校在学中であればその高校教育をいたしますし、それから中には、そんなに数は多くはございませんけれども、大学入学検定試験を受けたいという生徒もございまして、これには通信教育でそういう対応をする、こういうふうになっております。  御案内だと思いますけれども、少年院の教官の大体四割はいわゆる教員免許を持っておりますし、それから部外からも約百名ぐらいの部外講師、例えば音楽であるとか特別授業につきましては、必ずしも少年院の教官だけで賄うことができないという事情もございますので、そういう人たちについては、そういう科目については部外講師をお願いして教育に当たるというような体制をとっております。  以上でございます。
  91. 左藤恵

    左藤委員 いろいろ御努力いただいておるわけですが、そうしたことについて、文部省の実際の教育課程と十分連絡をとって、法務省だけでなくて、私は、社会へ出た後の、そういった子供たちの少年院の中における教育というものについて御配慮いただきたいと思います。  そして、これは根本論として、非常に難しい刑罰論の問題に関連してくるだろうと思います。応報刑論であるとか教育刑論というふうな論議のことを考えますと、非常に難しい問題があるだろうと思いますけれども、要するに、子供自体が小さくてまだ十分わかっていなかったということもあるでしょうけれども、いろいろなことで社会に対して非常に申しわけないことをした、そのことに対する反省といいますか、そういうようなものをして、それじゃどういうことをして自分が社会に対して少しでも役立つような、出たらそういうことをしなければならないのだというようなもの、これが本当の教育だろうと思います。  そういうことを少年院に収容されている子供が収容されている期間にやるような努力をしないと、また出ましたら、今保護司法の改正もありましたけれども、そういうところへ預けっ放しにしてしまっている。実際問題としては、それぞれの矯正管区の皆さんも御苦労しておられると思います。  思いますけれども、そういうことで、預けたときに、暴力団とかそういうようなところの準組員みたいな形にされてしまって、結局やっているということで、ちっともそのことについての改善ができないというようなことになってきたのでは意味がないと思いますので、これをどういうふうにしてやっていくかについて、教育の面で考えていただくということだけでなくて、そういう精神教育ということが一つあると思う。  それからもう一つは、医療少年院ですか、そういうところのことにつきましても、これは、もちろんそういうことについて配慮しておられると思いますが、精神科のお医者さんのいろいろな治療というようなものを受けながら、子供たちの再生を図らなければいかぬだろう、こう思います。その点についても、これはいろいろな意見があるだろうと思いますが、単に外部講師というのではなくて、その中に、実際にそういうことをやられるような、いわゆるカウンセラーですか、非常に程度の高い方をそういうところへ配置してやっていただきたい。  こうしないことには、そういうところを出てからも、再犯したときには、今度はまた精神病者による犯罪ということになって、案際問題としてはまた無罪になるとか、あるいは減軽になるとかいうふうなことを起こした場合、社会に対して、皆さん御努力されていても、少年院で一体何をしておったんだ、こういうことにもなりかねませんので、この点についてのことをやっていただきたい。  特に、一般的な問題として、私もきょうは余り時間がありませんから詳しく申し上げられませんが、前に法務大臣をさせていただいたときにも、少年院とか刑務所とかを視察させていただいたとき、矯正というのは非常に大変な仕事であるということも痛切に感じており、今までは、日本が世界で最も治安のいい国であるということが言われていたのも、そういったことでの御努力があったわけなんです。  一つは、凶悪犯といいますか、そういうようなもの、それから年齢の低下というような問題が起こってきたときに、先ほどお話あった長期とか短期の問題がありましても、例えば、今まで平均で十カ月とか一年ぐらいしか収容させていないというようなことで、その時分はそれでも十分いけたのかもしれませんけれども、このところ、非常に凶悪で、しかも年齢が低下するという形になってきたときに、どちらへ送致するかということを家裁で決定されるにしましても、送られた方の側が、教護院のような形のものと、それから少年院の形のものと、受け入れられないような体制であっても困るわけなので、この辺のところについて。  それに関連して、再犯率ですが、これについて何かわかっておれば、ちょっと教えていただきたいと思います。
  92. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 再犯率につきましては、統計的に若干難しいところがございまして、一つはまず、例えば少年院なら少年院を出て、一体どれだけの期間をとったときに再犯をしたのかということが、十年、二十年の長さと一年の長さと、若干違うところが一つございます。そういう統計的な難しさがございます。  それからもう一つは、いわゆる出院した、少年院から出た人間が、一体今どういう生活をしているのかということを調べるということが、果たして妥当かどうかという場面がありまして、例えば、出て普通の生活をしているところに行って、あなたは何をしているんですかということを、例えば手紙ででも聞くというのもなかなか難しいということがございます。  統計的に非常に難しい面はあるのでございますけれども、例えば、一つ数字的に申し上げますと、いわゆる少年院を仮退院した少年が、その後三年間の期間でまた何らかの犯罪を犯して少年院に舞い戻ってきた、あるいは、成人に達して刑務所に入ったというような、専門的に言いますと、いわゆる二号観察に付された者の成り行き調査というものがございまして、それがらいたしますと、ほぼ三年の期間をとりますと、二割程度が何らか、また少年院に戻ったり、あるいは刑務所、要するに入るかどうかは別にして、そういう刑事事件にひっかかったということではなかろうかと考えております。  これは、恐らく少年院の教官の人たちの、統計的ではありませんけれども、実感に合う、大体五人に一人は三年間の間にまたほかの犯罪を犯すという確率ではないかというふうに考えておりまして、大ざっぱに申し上げますと、そのようなことでございます。
  93. 左藤恵

    左藤委員 今、教育問題がいろいろ論じられておりますが、学校教育ということでありましても、たくさんのいろいろな問題がありますし、また、それを全部先生の方で解決することは非常に難しい。家庭の問題やいろいろな問題があるわけですが、やはり一般的な教科を勉強させるということだけでなくて、豊かな情操教育といいますか、そういうようなものについては、少年院の場合、普通の学校でできないようなことまでもお願いするのは非常に大変なんでしょうけれども一般の中学校、高等学校でやる以上のことを配慮していただかなければならないんじゃないか。  そういう意味でやっていただくと同時に、文部省で、少年犯罪の未然の防止に係ることについてもいろいろと配慮していただいています。例えばナイフの所持をどうするかというようなことについてもあるわけですけれども、これについて、最近のいろいろな状況を見ていますと、教育評論家か何かわかりませんが、無責任な人が、自分でその立場に立っていろいろ苦労をしておられる方のことを本当に調べて、そして正しいところで発言してもらうならばいいわけなんですけれども、余りそうでないようなことがある。  それがまたいろいろ報道されてくるというふうなことになりますと、その人たちが非常に自信を失ってしまったりして、一般的な学校の先生もそうでしょう。少年院の先生なんか、そういったことに当たられる方は特に、そのことについて御努力されると同時に、自信を持ってやっていただく。  そのためにももう一つは、法務省としては、そういったところに対する定員の確保といいますか、今リストラをされなければいかぬときであっても、これは非常に御苦労が多いだろうと思いますが、今法務省の定員の問題で、入国管理の問題とそういった矯正関係の定員の問題、これについては特に努力をしていただきたいということを私は要望いたしまして、時間が来ましたので、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  94. 笹川堯

    笹川委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時八分散会