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古田(佑)
政府委員 お尋ねは二つの点ございます。
まず第一点の、
組織犯罪対策ということが
目的であるならば、マネーロンダリングあるいは
通信傍受につきましても、
団体の
活動を通してというふうな要件をつけ加えるのが相当ではないかという点でございます。
この点につきましては、いわゆる
組織的な
犯罪は、その形態が
組織的に行われるものに限らず、
暴力団等の
組織犯罪等の関連で行われるものの、
実行形態としてはごく少数の共犯あるいは単独犯であるというふうなことも少なくないわけでございまして、そういう
意味で、さまざまな形態のものを含むものだということをまず御理解いただきたいと
考える次第です。
ところで、いわゆるマネーロンダリングにつきましては、多くの
組織的な
犯罪が、
犯罪による不正な利益を上げることを
目的として行われ、その利益を用いて健全な経済
活動に侵入したり、あるいは
犯罪の再投資に使うというふうなことから、こういうことを規制することが
組織的な
犯罪の対策のために有効な方法というふうに認識されているわけでございます。
そういうことからいたしますと、例えば前提
犯罪に御
指摘のような要件を加えますと、
組織的な
犯罪といいますか、
犯罪組織等に関連して行われる
犯罪というのは大変幅が広いものですから、そういうものを全部取り込むことが一方では困難でありますとともに、
組織的な
犯罪対策としての実効性の面からどうしても問題が出てくるということになるわけでございます。
現実に、外国におきましても、マネーロンダリングにつきまして、その前提
犯罪を
組織的な形態で行われる
犯罪に限定しているという例は、私
どもとしては、現時点では承知しておらず、国際的な協調の
観点からも、前提
犯罪についてそういうふうな限定をするということは適当ではないと
考えている次第です。
次に、通信の傍受につきましては、例えば
団体の
組織によるものではありませんが、多数人が計画的に役割の分担等を定めて
組織的な形態で
実行する
犯罪もございますし、あるいは、先ほ
ども申し上げましたように、
暴力団等の
犯罪活動あるいはその他の不正な
活動に関連して、少数の者が
実行する
犯罪な
ども多いわけでございます。
そして、これから
事案を解明するという捜査の過程におきましては、共犯
関係や背後
関係が必ずしも明らかとなっていないということもございまして、そのような場合に通信の傍受を許さないということにいたしますと、
組織的な
犯罪に対処するための有効な手段としてはやはり問題があるというふうに
考えられたわけです。
そういうことで、通信の傍受につきましては、犯人間の相互連絡が
現実に想定されるような
場面ということも踏まえまして、「数人の共謀によるものであると疑うに足りる状況」ということを要件とすることとされたものでございます。
諸外国におきましても、通信の傍受が、例えばテロ
犯罪でありますとか
組織犯罪に対処するための方策として導入されている場合もあるように承知しておりますが、そういうふうな
犯罪の
組織性等、
立法の動機となる事情が必ずしも要件とはされていないというふうに承知しております。
次に、第二点の問題として、これを一本の
法案にまとめることはできなかったのかということでございますけれ
ども、何と申しましても、一本の
法案にまとめることになりますと、まず
法案自体が非常に膨大なものになって、しかも、その中にいわば
実体法
関係の
部分が主な
部分と、それから通信の傍受というある特定の手続的な
場面というものが混在するというふうな問題がございまして、
立法技術的にやはり通信の傍受という特定の手続に関する、しかも詳細な規定を持つ
部分というものは、別な
法律で定めることが適当というふうに判断をしたということでございます。