○北村(哲)
委員 現場では、今、
情報公開法の中では
裁判官のインカメラとか、これはだれにも見せないで
裁判官だけが例えばリストを見てこれは大丈夫だという判断に任せるというやり方とか、そのほかのあるいは不要なものは黒塗りにして出すとか、さまざまな工夫はあると思うので、そういう
現場の判断を尊重して、既にこれは終わった事件、刑期もそれなりに終了し、世間に出て結婚されて幸福な生活をしておられる。事件自体はもう既に風化している。風化という言葉が適当かどうかわかりませんけれ
ども、三十五年ぐらい前の事件であるし、ですから、贖罪というか、刑も適正に
執行されてきた、残るは本当に石川さん自身の名誉だけ。あとは名誉回復の問題だけなんですから。
その点については、あれだけの重大な事件、三十五年前の事件で、それからずっと無罪を争っているのだけれ
ども、第一審の
死刑判決は、公判はわずか十二回しか行われていなくて、実質は五カ月で
死刑判決が出ている、そういう事案なんですね。後から高裁、最高裁、さまざまな長い年月を経ておりますけれ
ども、その第一審の誤りを何とか
指摘したいというのが御本人の願いでありますので、ぜひその辺について、すべての関係者は協力するという姿勢が必要だと思っております。
今の問題については、どうもいろいろとありがとうございました。ところで、若干この問題について敷衍してお聞きしておきたいと思います。
実は、この再審にかかわる証拠開示の問題では、指宿信さんという鹿児島大学助教授の方がジュリストで、一九九五年ですけれ
ども、「検察官の証拠開示義務を認めたカナダ最高裁」という論文で、カナダで最高裁が検察官の証拠開示義務を認めたことを報告しております。その中で、「開示に関わるプライバシー侵害の発生や危険論などに配慮した現実的かつ実質的開示論が構成されねばなるまい。その観点からは、カナダ最高
裁判決が示したように、全面開示を前提にしながら、不開示裁量を承認し、不開示
理由を具体的に検討していくことが結局、所期の目的を達成するうえで得策であろう。」そして、「弁護側において開示請求をおこなう前提として証拠の標目を提示することは、証拠請求のいかんにかかわらず当然おこなわれなければならない」と、この論文では
指摘しておられるわけです。
これはカナダの例でありますけれ
ども、
日本ではまた、一つの指針というか、立法論の問題として考えるべきであろうと思っております。そのあたりについては、
日本弁護士連合会なんかも証拠開示立法要綱ということでその辺を
指摘していることも私もここで御報告しておきたいと思います。
それで、カナダの刑事手続で未開示証拠の証拠開示が検察官に義務づけられたのは、いわゆるマーシャル事件というものがあったわけです。これは一九七一年の事件で、もう二十年以上前の事件ですけれ
ども、カナダでいわゆるネイティブ・カナディアンの人が間違って
殺人犯とされて終身刑を受けた冤罪事件でありまして、大きな問題となったわけです。
それで、十年後に真犯人が明らかになって再審で無罪となったけれ
ども、初期の正しい目撃証言が警察、検察によって隠されていたために誤判が起きた。州政府が冤罪の原因を究明するための
委員会を設置して検察官の証拠開示を義務づけるべきだと勧告を出した。その後、カナダでは検察官の証拠開示義務が制度化されたようでございます。
この冤罪事件の弁護人であったスティーブン・アーロンソンという弁護士が先ごろ来日しまして、弁護士会館などで講演されました。このアーロンソン弁護士は、
日本でこの狭山弁護団の
人たちと懇談をした際に、ああ、これはカナダの例によく似ているということで、いろいろな提言をされて帰りました。このアーロンソン弁護士がカナダに戻って、
日本大使あてに、
日本でも証拠開示が行われるよう勧告したいという書面を出しておられるのですけれ
ども、これは下稲葉
法務大臣あてにもその書簡を送ったというふうに聞いておりますけれ
ども、それは現実に届いておるのでしょうか。