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1998-03-18 第142回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十八日(水曜日)     午前十時五分開議 出席委員   委員長 笹川  堯君    理事 鴨下 一郎君 理事 橘 康太郎君    理事 八代 英太君 理事 与謝野 馨君    理事 北村 哲男君 理事 熊谷  弘君    理事 上田  勇君       太田 誠一君    奥野 誠亮君       木村 義雄君    古賀  誠君       下村 博文君    園田 修光君       谷川 和穗君    谷畑  孝君       中川 秀直君    横内 正明君       渡辺 喜美君    石毛 鍈子君       枝野 幸男君    左藤  恵君       佐々木秀典君    福岡 宗也君       漆原 良夫君    安倍 基雄君       谷口 隆義君    木島日出夫君       保坂 展人君    園田 博之君       笹山 登生君  出席国務大臣         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君  出席政府委員         法務政務次官  横内 正明君         法務省民事局長 森脇  勝君  委員外出席者         議     員 大原 一三君         参  考  人         (早稲田大学法         学部教授)   上村 達男君         参  考  人         (明海大学不動         産学部教授) 長谷川徳之輔君         法務委員会専門         員       海老原良宗君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十八日  辞任         補欠選任   加藤 紘一君     園田 修光君   枝野 幸男君     石毛 鍈子君   安倍 基雄君     谷口 隆義君 同日  辞任         補欠選任   園田 修光君     加藤 紘一君   石毛 鍈子君     枝野 幸男君   谷口 隆義君     安倍 基雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  土地の再評価に関する法律案大原一三君外五  名提出衆法第七号)  株式消却手続に関する商法特例に関する  法律の一部を改正する法律案太田誠一君外七  名提出衆法第六号)      ――――◇―――――
  2. 笹川堯

    笹川委員長 これより会議を開きます。  大原一三君外五名提出土地の再評価に関する法律案及び太田誠一君外七名提出株式消却手続に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、両案審査のため、参考人として早稲田大学法学部教授上村達男君、明海大学不動産学部教授長谷川徳之輔君の両名の方に御出席いただいております。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  両参考人には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序及び発言について御説明申し上げます。  まず、上村参考人長谷川参考人の順に、各十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、まず、上村参考人にお願いいたします。
  3. 上村達男

    上村参考人 早稲田大学上村と申します。商法証券取引法を専攻いたしております。  本日は、このような最も権威ある場所におきまして意見を述べる機会を与えていただきましたことを、まことに光栄に存じております。  このたび議員立法によって提出されました法案のりち、特に株式消却特例法改正案につきまして私見を述べさせていただきます。  文章にしてまいりましたので、読ませていただきます。ちょっと早口になるかもしれませんが。  現在の経済状況には極めて深刻なものがございますので、こうした事態に対する対策といたしまして、何でも可能性のあることをすべて実行することで国民の期待にこたえたいとの思いから、こうした議員立法を提案されたその気持ちは十分に理解できるところでございます。  しかしながら、それにもかかわらず、今回の法案が用意している対策は、そうした目的を達成する手段としては不適切であり、これには反対せざるを得ないというのが正直なところでございます。私は商法学者を代表するような者ではございませんが、この気持ちは恐らくは多くの会社法専門家に共通のものと思われます。  申すまでもございませんが、株式会社という制度はすべての出資者有限責任利益を享受する会社制度でございます。すべての出資者有限責任ということは、会社負債を抱えて倒産した場合に、債権者はたとえ個々の株主が多くの個人財産を有していてもそれを当てにはできないということでございます。株式会社という制度は、俗っぽく申しますと、要するに、究極的には他人に迷惑をかけても仕方がないという制度でございます。  こうした病理的なあるいは非倫理的な側面をもともと内包した制度であります株式会社が世界じゅうでかくも普及いたしましたのは、そうした制度的な弱点とも見える特徴がむしろ大きなパワーを生み出す源泉足り得るからでございます。出資者たる株主責任が有限であるために安心して大衆個人にまで出資を求めることができ、証券市場の形成が可能となり、巨大な資金を大胆な投資や経営に投入することが可能となります。確かに株主有限責任制は究極的には債権者犠牲にするわけでございますが、そのことが国民経済に必要な消費財生産財、雇用、サービスを提供し、研究開発技術革新の担い手ともなりまして、国民の生活に貢献すると考えられているわけでございます。  このように、株式会社制度は定型的な犠牲者を想定しておりますが、そうした犠牲の反面の利益国民経済全体が享受するわけでございますので、犠牲者たる会社債権者立場に最大限の配慮がなされなければなりません。この点では、有限責任といったぐいまれな利益を得ている株主立場債権者よりも明らかに劣後しております。  株式会社制度が有するこうした弱点をカバーするための制度的な手当てといたしましては、債権者信頼のよりどころを保障する制度である法定資本制度法定準備金制度利益からの配当のみを認め、出資金からの配当を禁止する配当規制含み益は計上せず、含み損は計上させる保守主義的な会計制度、恣意的な経営を排除するための経営監督制度会計監査制度、十分な情報開示制度、厳格な経営者責任制度、公正な証券市場存在といったものが用意されております。  しかし、中でも最も基本的な制度資本制度でございます。株主が何十万人おりましても、株主の中には大金持ちがおりましても、だれも債権者に対して出資金を超える責任を負わない以上、すなわち、人に対する信頼がない以上、会社債権者といたしましては、物、財産存在を信じるほかはございません。  法定資本制度とは、会社に対して財産が詰まったプールの大きさを宣言させ、少なくともその.プールには財産が詰まっていることを懸命に保障しようという制度でございます。そこから財産があふれていることはいいのですが、財産の方が少ないことは認めないという形で債権者立場を守ろうとしたものでございます。  もとより、営業活動がうまくいかず、プールよりも財産の方が少なくなることはあり得るわけでございますが、そうした場合にプールを小さくするのが資本減少でございます。五十億円のプール財産が詰まっていますと言って取引をしたにもかかわらず、二十億円のプールに変更するということは、債権者にとっては重大なことでございますから、これには慎重な債権者保護手続が用意されているわけでございます。そして、法定準備金制度は、こうした場合にも、これを資本欠損てん補に充てることで、あるいは準備金資本組み入れを行うことで、いわば資本予備軍、あるいはバッファーとしての極めて重要な意義を有しているわけでございます。  法定準備金には、払込剰余金等原資とする資本準備金と、利益の十分の一を資本の四分に一になるまで積み立てることを要する利益準備金がございますが、法定準備金資本欠損てん補に充てる場合には、商法二百八十九条により、まずは利益準備金を使い、なお不足する場合に初めて資本準備金を使うことになっております。このたびの法案は、利益は使わずに資本準備金は使いたいという発想を認めるものでございまして、会社法基本的精神に反するものと考えます。  株式会社法の歴史は、一六〇二年のオランダ東インド会社、あるいはそれ以前にまでさかのぼりますが、こうした今日の資本制度法定準備金制度は、株式会社制度の濫用、悪用に対する数百年にわたる挫折や失敗を繰り返して到達してきた、まさに人類の英知の結晶でございます。まさに株式会社法制度基礎根幹に係る制度、建物でいえば土台の鉄骨のようなものでございます。  今回の法案は、資本準備金を使って株式消却し、そのことにより一株当たりの価値を上げようというものでございます。ROEを上げようということ自体企業金融的見地から選択肢として認められてよいのでございますが、これは株主ないし投資家立場に立った発想でございまして、そこには債権者保護対策が十分に存在し機能しているという前提があってのROEでございます。土台への信頼に立った株主保護策でございます。しかし、今回の法案は、株主ないし株価のためになることを債権者保護のための根幹を動かすことで実現しようとするものでございますので、問題の次元を異にするわけでございます。  このように申しますと、恐らくは、現行法のもとでも資本減少は認められておりますし、今回の法案債権者保護手続を用意しておりますから、簡便な減資手続を認めるだけであるとの反論があるかもしれません。しかし、そうでありますと、現行法のままでも、資本準備金資本に組み入れて資本減少を行えば全く同じことが実現いたしますから、特に今回のような法案を用意する必要はないわけでございます。  資本準備金資本組み入れ取締役会決議だけでできますので、手続的にも問題はないと思われます。資本準備金資本組み入れをする場合には登録免許税がかかるというのが法案提出の理由であるとしますと、これは税法を変えれば済む問題でございます。税法を回避するために基本法の改正をするといたしましたら、まさに本末転倒でございます。あるいは資本減少は聞こえが悪いというのが本音だといたしますと、これはさらに問題でございます。  確かに資本減少債権者を害する行為でございますので、資本欠損が生じた会社で、かつ法定準備金も不十分な会社が最後にやることという印象がございます。私は、こうした印象を持つこと自体は、株式会社法の基本的なあり方からいたしまして貴重な感覚であると思っておりますが、しかし、それでもなおかつ経営陣がこれを行いたいというのであれば、株主債権者に対しまして、この際、企業金融上の見地債権者保護よりも優先することを力を込めて説得すべきであります。日本証券市場はそうした措置を理解できない者の集まりであると考えられているといたしますと、それは、日本証券市場株主を真の会社関係者として認知していないことの証左でございます。  資本準備金の中心は株主出資金でございますので、これを使って自己株式を取得し消却することは、出資の払い戻しであり、実質的な資本減少にほかなりません。しかるに、これを資本減少と呼ばないで済む抜け道を認めようというのが今回の法案のようでございます。私は、資本減少には後ろめたさが伴うという感覚を大切にしつつ、これを企業金融上の見地から利用しようとクールに考える会社には、その感覚を乗り越える覚悟を求めるべきと考えます。  また、今回の法案は、利益ないし利益準備金を留保しつつ資本準備金を使うことを認めようというものでございます。しかし、資本ないし資本準備金制度が有している本質的な意義からいたしますと、利益を使うことには抵抗があるが資本準備金を使うことには抵抗感が少ないという発想は、相当に問題であります。  昨日の日経金融新聞によりますと、新日鉄は一兆円に相当する株と土地含み益を有しているそうでございますが、利益利益準備金も有するこうした企業が、まずは資本準備金を安易に使おうということだとしますと、やはり慎重な論議が必要ではないかと考えます。このことは、急に現金が必要な家庭が、目の前にあるダイヤモンドを売らないで、家の基礎の鉄骨を売って金にかえようとするようなものだからでございます。  まして、もともと日本上場企業自己資本比率は、平成七年で一八・九%。アメリカの三八・五%、ドイツの三八・七%に比べても大変低い状況にございます。資本金の総資産に占める比率も五・三%しかなく、アメリカの一三・四%、ドイツの一二・四%に比べて相当に見劣りがします。  今回の法案は、日本企業には過大な資本準備金が蓄積されているとの認識に基づくもののようでございますが、資本準備金はもともと原則として全額が資本になるべきものでありますところ、そのような処理がなされていれば日本企業の、国際的に見て低水準にある資本比率を高めることができるわけでございます。したがいまして、資本準備金が過大であるとの認識には首肯しがたいものがございます。  もともと、昭和五十六年の商法改正の際に、当初は額面株式、無額面株式を問わず払込金額の総額が資本になることを前提に、四分の一を超えざる額を資本にしなくてよいとしようとしておりましたところ、これを二分の一を超えざる額に修正することで多額の資本準備金を求めたのは経済界でございます。それは、高値での時価発行増資で大量の資金調達をしながら、その後公募価格割れが続くという事態の中で、配当額面基準で行うという慣行を維持しつつ、準備金資本組み入れによる株式無償交付によって株主に対する利益還元を行うというのが理由でありました。しかるに、今日資本準備金が過大であり需給バランスを欠いたとし、これを自己株式消却に使うということは、株主に対する約束不履行とも言える状況でございます。  法案によりますと、法律施行後最初の株主総会の終結までは、定款に定めがなくても取締役会限りで自己株消却ができることになっており、株主総会には事後承認でよいとされております。このこと自体、三月期の決算対策を優先させて株式会社法根幹に係る制度を左右させるという前代未聞の規定であり、到底納得できるものではございませんが、本来は資本準備金株主への事実上の増配のために用いないことにつきまして、あらかじめ株主への十分な説明をなすべきが道理であると存じます。  いずれにいたしましても、当時時価発行増資で手に入れた資金は、外国の不動産や絵画、債券に回り、多くは失敗の憂き目を見ておりますが、こうした多量な資金商法原則どおり資本金とすることで資本拘束を強めていれば、資本準備金は少なくなっていたはずでございます。資本金が多過ぎるから株式需給バランスが崩れているとは恐らく言わないと思われます。いずれにいたしましても、大量のエクイティーファイナンスの結果株式需給バランスが崩れたのは、この間の企業行動に対する市場の正当な評価を反映するものと受けとめるほかはないと思われます。  ところで、このように資本金法定準備金意義評価することに対しましては、アメリカの一部の州法に見られますように、法定資本金概念を廃棄する立法例があることを強調し、資本概念を重視する日本の基本的な立場自体がおくれているのではないかとの疑問があるかもしれません。  しかし、第一にアメリカ会社法はすべて州法でございまして、連邦会社法を持たない近時まれな連邦国家でございます。そして州会社法は、税収確保のために会社法緩和競争を行い、下へ向けての競争、レース・ツー・ザ・ボトムを繰り広げてきたことで知られております。債権者保護投資家保護もコーポレートガバナンスも、州会社法の知るところではなかったのでございます。したがいまして、この間の間隙を埋めてまいりましたのが連邦証券諸法証券取引所規則その他の連邦法でございまして、最近やっと州の会社法レベルでガバナンスに対する関心が高まってきたというにすぎないのでございます。  ここでの問題につきましては、かねてより、株主への分配から債権者優先株主を保護する点で、法はほとんど意味を持っていないと言われてきたのでございます。法定資本の観念はありましても、額面の拘束がなかったり、ほとんど自由気ままな状態でございまして、資本欠損が生ずる場合でも、当該営業年度利益があれば配当してよいという制度すらございました。  したがいまして、第二に、債権者を中心とする利害関係人が契約により自衛するという慣行が行き渡り、法律とは別に配当制限条項などを定めてきたのでございます。  一九七七年カリフォルニア州会社法法定資本概念を廃棄いたしましたのは、そうした資本としての意義を有しない制度にかえて、財務比率流動資産比率等による、より実質的に意義のある配当規制を実現するところに目的があったわけでございまして、十分に機能していた法定資本概念を廃棄したのではございません。しかも、これが実現するためには、会社法会計規則をやめて、GAAPと呼ばれる会計原則への依拠を法律上定め、より容易になる数字の操作による配当規制の潜脱を防ぐために、資産負債概念流動資産流動負債概念を見直す等の対策が必要であったのでございます。  ECも資本概念を堅持しておりますし、アメリカでもそうした州は依然として多いわけではございますが、もとより私は、資本概念を廃棄する法制の方がすぐれているならば、それを検討の対象とし、勇気を持ってこれを導入することも頭から避けるべきではないと存じます。しかし、そうしたことのためには十二分の検討が必要であり、容易には実行できるものではございません。いずれにいたしましても、こうしたアメリカ状況は、現在の日本資本法定準備金制度を極めて重視すべきことに対する批判たり得ないものでございます。  本法案時限立法でございますが、利益はいずれ増大し得るといたしましても、資本準備金原資は簡単には出てまいりませんので、この時限立法の後遺症は相当に尾を引くものと思われます。私個人といたしましては、この法案は勇気を持って廃案にしていただきたく存じますが、しかし、それにもかかわらず成立するということになります場合には、同様のことを繰り返さないとの決意を附帯決議において表明すべきであると存じます。     〔委員長退席橘委員長代理着席〕  日本は、明治時代の富国強兵から戦後の富国強財の時代を経て、今や富国強法という非西欧国家としては最後の壁に挑戦しようとしているように思われます。金融ビッグバンは、ルール型、司法型社会への備えを繰り返し強調しております。金融機関も、まずは立派な株式会社であり、次に立派な上場会社すなわち証券取引法適用会社であることを前提に、初めて立派な金融機関証券会社たり得るわけでございます。  日本は、株式会社法上の貴重な概念が形成される過程で各国が経験してきた深刻な失敗を実感として知らないだけに、ともすると、当面の問題を解決するために人類の遺産ともいうべき貴重な概念を軽視する誘惑に駆られがちでございます。景気対策証券市場対策は、まさに政治の存在を誇示する形で大胆に行われるべきでございますが、そこには簡単に越えてはならない一線があるように思います。私は、本法案提出された議員の方々の思いは、現状に対する危機感からくる善意のものであると信じますが、我々の先達たちが数百年をかけて築いてまいりました基礎理論根幹であります資本法定資本が軽々に扱われているとの感を抱かざるを得ないところでございます。  以上、勝手なことを申しましたが、こうしたささやかな私見が、本委員会での審議材料として何らかの意義がございましたら幸いでございます。  ありがとうございました。(拍手)
  4. 橘康太郎

    橘委員長代理 ありがとうございました。  それでは、次に、長谷川参考人にお願いを申し上げます。
  5. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 明海大学長谷川と申します。  私は、会計専門家ではございませんが、土地政策立場でお話をさせていただきたいと思います。  お手元にメモをつくりましたのでごらんいただきたいと思いますが、今回の土地の再評価に関する法律につきまして、現下経済情勢から緊急避難としていろいろなことをしなければならないという事情はよく理解しておりますし、これに関する皆様方の努力については大変ありがたく思っておりますし、大いにやっていただきたいと思っております。  しかしながら、対策は労多くして功少なしという、そういう面もなくはないかと思います。本質的な対策というものが等閑視されて、やや部分的な、技術的な対応が行われているということに対する危惧を持っております。この土地の再評価に関する法律も、大きな流れとしては、私はその方向に行くべきだと思いますが、現下情勢からこの三月三十一日の決算対策のみに志向するということは、やや労多くして功少なしという感じがいたしますので、そういうふうに最初に申し上げておきたいと思います。  ペーパーは、第一に問題点として、今回の法律についての問題点を指摘し、それから第二にこの問題点に対する、問題点はありますけれども時価評価としての方向については賛意を表するという点が第二点でございますし、第三点で本質的な対策として、不良資産対策不良債権対策、本質的な、本格的な対策を講すべきだという点を申し上げたいと思っております。  第一の問題点でございますが、なぜ今拙速土地の再評価が必要なのかということでございます。  この本質的な論議がなかなか見えてこないということでございまして、先ほどの株式と同じでございまして、土地の再評価についても基本的なルールが実は必要だと思いますが、この基本的なルールについて、なぜ今拙速にそれを変えなければならない必要があるかということだと思います。  法律を見ますと、目的が「金融の円滑に資するとともに、企業経営健全性の向上に寄与する」とありますが、どうも並べ方を見ますと、金融円滑化すなわち貸し渋り対策金融機関決算対策ということになっておるのじゃないかという感じがします。本来、企業会計原則というのは企業経営健全化透明性を確保するために存在するものであり、短期的な金融とか貸し渋り対策目的にするのでは余りにも便宜的に過ぎるのじゃないかという感じがいたします。  さらに、こういう問題は、いわば国家のあるいは企業根幹的ルールでございますから、広く会計学専門家意見、あるいは法制審議会企業会計審議会等の幅広い論議というのが必要だろう。こういう方向に行くことについては、方向としては是認できますが、その前提として、国民的な議論あるいは学問的な議論が必要ではないか。そういう意味ではやや拙速に過ぎる。議員立法で行うのでなくて、本来商法税法の本則で対応するのが筋ではないかという感じがいたします。  さらに、政策的に昨今出ておるところを見ますど、土地時価評価を認めて、逆に株式については原価法を認める、こういうふうな動きがあるようでございますが、大変御都合主義ではないだろうか。こういうことをすることは、政府が、国が粉飾決算を奨励するというふうに思われないか。これが実は逆に、国民のみならず海外からの信用を喪失することにならないかというふうに思います。基本的なルールについて、それをあえて短期的な便宜で曲げることは、逆にそういう評価を受けるのではないかということを危惧するわけであります。  本来、実は金融機関の貸し渋り対策あるいはBIS規制対策として行われるものを、金融機関以外の一般の企業をも道連れにしているということでございますが、一般の企業の必要性なりあるいは要望なりというものがあるのかどうか、その必要性があるかどうかということについて、やや疑問を持っているところであります。  それから、昭和二十二年から二十九年に資産評価が行われました。確かにこの作業が行われましたが、それは、戦争による極端なハイパーインフレということを前提にしたものであったわけでございまして、今のように短期的な、金融政策上の視点からではなかったはずでありまして、その状況についてどういうふうに我々は理解するかということだと思います。  それから、私は、一番問題なのは再評価の方法だろうと思うのです。大変重要な事項ですが、法律を見ますとこれは政令で定めるということで、再評価に関する基本的なルールというのは、実は法律上は見えていないわけでございます。一番肝心なのはそこだと思います。  バブル経済の時期の地価の動きでございますが、御案内のとおり、短期的に三倍に上昇して、かつ三分の一に下落する、こういう極端な地価の変動の中で、一体、時価そのものを明確に把握できる状況にあるかどうかということだろうと思います。地価公示あるいは基準地価格あるいは路線価というものがございます。それなりに私は土地政策としての機能を果たしているとは思います。しかし、現実の地価公示が本当に信頼度が高く、これを一つのルールとして確定し、これを普遍化できるという、そういう地価水準を今我々が持っているかどうかでございます。  正常時であれば、固定資産評価なり路線価評価なり地価公示評価なりというのが一つの流れとして理解できるわけでございますが、昨今のように異常な上昇、異常な下降の中で、果たして専門家といえども、実は明確に時価というものを把握できない状況にあるのではないか。そのときに、この三月三十一日でそのことが明確にとらえられて、すべての金融機関に対してそれが適切に、かつ公平に、均衡を持って評価ができるかどうか。大変実は私は危惧するところであります。  確かに、路線価を前提にした地価税の評価はできました。そのようなことが、例はありますけれども、本当に企業会計全体について、銀行の資産全体についてできるかどうか、大変私は危惧するところであります。  それから、資産評価による利益の顕在化に対して課税をしないということであります。課税を繰り延べる、土地の処分時に繰り延べるということになっておりますが、果たしてこの資産評価という目的に適合するかどうかであります。いわばキャピタルゲインが顕在化したということになれば、当然、実は課税があってしかるべきだと思いますが、それを課税しないというのは、やややはり政策的な便宜に使っているんじゃないかという感じがしてならないわけであります。  このように実は問題点もあります。緊急避難の措置としてやらなきやならないという事情もある程度理解できます。しかし、私は、労多くして功少なしということになると思いますので、本質的な対策というものを、やはり議会や政党でもう少し本格的な対策を立てて、その一環として実はこういうものを位置づけるというならまだ理解できます。しかし、根本的な不良資産対策不良債権対策が見えない段階で、部分的に、技術的に、さほど効果があるものとは思えない対策をすることに対するやはり問題というのは指摘せざるを得ないというふうに思っております。  第二に、しかしながらでございますが、時価評価というのは一つの時の流れだというふうに思います。  国際会計原則でも欧米の会計原則でも時価評価が採用がされておりますし、我が国の資産評価が取得原価によって評価されていることは、含み益経営という不健全な経理を許してきたということから、早晩、この企業会計について、資産については時価評価によるのは当然の動きだろうというふうに私は思っております。この場合には、実は、金融資産を含めた資産全体の時価評価の導入が必要であるでしょうし、あるいは土地だけ便宜的に選んでということではないかと思います。  金融システムの安全性確保のために、資産時価評価の考え方は極めて重要な意味を持ちますし、その中でも重要なのは金融資産時価評価であり、土地不動産時価評価の役割は相対的には小さいんだろうというふうに思います。  こういうふうに、資産評価をする場合に、その機能でございますが、現在、我が国が直面している金融機関の不良債権問題の解決にとって、不良債権の時価評価は重要なステップになるとは思います。現在の我が国の金融機関は、その実情に即した不良債権の流動化を求められておりますが、償却によって不良債権のバランスシート上の簿価を十分に時価に近づける、さらに、不良債権が市場性を持つように、その不動産の利用に即した現実的な価格を設定する、こういうことが時価評価だろうと思います。  第二に、時価評価の考え方を採用することは、取得原価主義が助長したこれまでの含み益依存型の経営を是正することにつながると思います。金融機関含み益を実現するために無理に有価証券等の売却を進めることは、内部留保を必要以上に流出させ、その経営体力を弱らせる可能性もあるし、現実にそうやっているわけであります。不良債権対策でそのようにやってきました。それは、今の評価問題点の裏返したと思います。時価評価は、こういうような益出し自体を無意味なものにすると思います。  第三に、金融自由化が進み、資産価格の変動が高まるにつれて、金融機関はマーケットリスクにさらされるようになっていますが、金融資産の時価の評価の把握は、金融機関にとってはリスクの管理上不可欠な条件になってきております。特に、トレーディング目的金融資産については時価主義会計の導入が喫緊の課題として求められているのは、専門家の間でよく論議されているところであります。  さらに、時価評価によって期待される経済効果として、金融資産であれ営業資産であれ、収益性の評価は時価ベースの投下資本に対する利益率であることが必要であります。金融資産の収益性を評価するときは、時価ベースの投下資本に対する未実現の評価損益を含めて、トータルリターンの比率が必要だと思います。そういう意味で、時価評価方向というのは一つの流れとして十分理解できるわけであります。  また、時価評価のリスク管理支援機能もございますし、リスクにさらされている金融資産負債を並行的に時価評価すれば、ヘッジ機能の効果があると思われます。  さらに、これまでの原価主義のもとで生じた投資のゆがみあるいは非効率な益出し、投資対象選択のゆがみ、こういった問題点の解消につながってくるという意味では、資産時価評価というのは大いに評価できるところだろうと思いますし、また、私は会計学は専門ではございませんが、会計学専門家においてもそういう意見が主流だろうというふうに思っております。  しかしながら、実は、今回の対策が不良債権、不良資産対策に加えて貸し渋り対策という点で行われている。これはまさに政策目標がそうなっておりますが、果たしてこの制度でもってそれが解消できるかどうかということについては、かなりの問題があるところだろうと思います。  最大の問題である金融機関の不良資産、不良債権について、残念ながら、いろいろな対策が出ましたが、しょせんは不良資産の、不良債権の帳簿上の償却ということに終始してきたと思います。帳簿上の償却ができないときはそれを税金に転嫁する、こういうやり方で実はこの数年不良債権対策をやってきました。  本質的には、実はこの不良債権対策より、むしろ不良資産というものをどうやって流動化し、有効利用し、これの付加価値を高め、これをエンドユーザーに渡し、これから資金を回収していくか、こういうスキームというか全体像が必要であって、その上に立って、それぞれの施策がどういう効果をそれに対して上げるのかということを論議すべきではないでしょうか。  部分的な、技術的なものを取り上げて、それがどういう効果があるかよくわからないけれども、とにかくやってみたらやらないよりましじゃないかということでは、それでは全体にとっては大変不幸だろうと思うのです。本質的な議論、本質的な計画があって、展望があって、この制度がそれに幾らかでも寄与するということであれば、それはそれなりに私は評価ができると思いますが、基本的に必要な全体像が見えずに、部分的な、テクニカルな手段でこれを何とか乗り切ろうというのは、いささか実は問題を逆に複雑にするのではないだろうか。  ということで、最後にぜひ先生方にお願いしたいのは、本質的な問題、不良債権対策、不良資産の流動化、有効利用に対する本質的な対策を出していただきたい。これをやはり、これからの低成長の中で、着実に実需を回復して、経済を回復して、その実需によってこの不良資産、不良債権を処理していくしか方法がないわけでありますが、そういう展望をぜひお示しいただいて、その上で本法案の採択をいろいろ御議論いただければありがたいと思います。  この法案緊急避難である、現在の経済の状況からして何とかしたいという気持ちは痛いほどよくわかります。そういう意味では、御努力については大いに多とするところでありますが、ぜひ、不良資産対策不良債権対策の全体像が見え、日本経済がもう一度健全な姿に立ち戻っていく、そういうスキーム、プロセスをお示し願いたいというふうに思っております。  以上であります。(拍手)
  6. 橘康太郎

    橘委員長代理 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 橘康太郎

    橘委員長代理 これより質疑を行います。  質疑者にお願いいたします。  質疑の際は、まずお答えをいただく参考人のお名前を御指名の上、質疑にお入りください。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木秀典君。
  8. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民友連の佐々木秀典でございます。きょうは、上村先生、長谷川先生、お忙しい中をお越しいただきまして貴重な御意見を拝聴させていただきましたこと、心からお礼を申し上げます。時間が限られておりますので、端的にお尋ねをしたいと思います。  私も、実は、今回のこの法改正、それから土地評価法につきましても、非常に拙速に過ぎるのではないかという疑問を抱いております。特に、自己株の消却の問題は、お話がありましたように、我が国の商法では自己株の取得については原則として、大原則として禁止をしていた。しかし、その後さまざまな経緯の中で、法制審議会でもあらゆる角度からの御審議などもあって、平成六年に、規制の緩和と申しますか、自己株の取得を限定的に認めるようになった。さらに昨年は、これも私は非常に問題があるとして審議の中でも異議を唱えたのですが、議員立法として、いわゆるストックオプションを認めるこの自己株の取得の問題が論議をされまして、これが通ったということで、これまた原則の緩和がございました。  さらに加えて、その延長線上に今回の議員立法の提案、こういうことになったと私は思っておりますけれども、これについても、非常に拙速だ、やはり緊急の必要性があるにしても原則を変えるからには慎重な論議が必要だし、関係方面からの御意見を十分に聞くということが必要ではなかろうか。少なくとも平成六年の法改正のときには、相当の関係者の皆さんからの御意見の聴取ということに政府としても随分留意をした。それが昨年の場合にもへまして今回の場合には、きのり提案者からのお話を聞きますと、年が明けて一月になってから経団連その他から御要望があって、自己株の消却の問題についてはこの決算期対策として必要だということで緊急にこの法律の作成にかかったというお話だったわけで、こういう状況の中では各方面の御意見を聞くなんてことは到底なかったと私は思っておるわけです。  そこで、お話がありましたように、緊急の必要性があるとしても、これほど拙速にやるだけの効果が果たして上げられるのだろうかということになると、上村先生からも御指摘をいただいたのではないかと思いますけれども、果たしてそれだけの効果が上がるのだろうかというように思います。  それからまた、一部からは、こういうようなやり方については国際的な観点からも問題がある、あるいは日本のこうしたやり方に対する批判があるのではないかという御指摘もあります。提案者をして言わしめれば、こういうことが議員立法の形でできるようになった日本は大したものだというプラスの評価があるんだと言われているのですけれども、この辺のバランスというのは一体どうなのかということ、まずこのことを上村先生にお尋ねしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  9. 上村達男

    上村参考人 お答えいたします。  今の議員立法評価ということでございましょうか。我々商法学者がストックオプションのときに反対声明を出しまして、我々のような者はほとんどそういう問題には手を出さないで来たわけでございますから、あれはあれで大変な一つの意見表明だったわけでございます。その場合でもやはり、こういう株式会社法という最も基本的な土台に関する法制改正につきましては、やはり専門家意見を十分に聞いた上で、たとえ議員立法であったとしても、アメリカ議員立法は、アメリカは大統領は法律をつくる存在ではありませんで、議院内閣制ではございませんので、国会が法律をつくる場所でございますから、日本は議院内閣制でございますので、もちろん国会が法律をつくるところでございます。しかし、つくる過程ですね、そこでやはりたくさんの専門的なスタッフを持ち、そこで立法作業をしていくというのが、これは普遍的な考え方だろうというふうに思います。  仮に、これがほかの面倒くさい、訴訟法であるとかあるいは医療関係の法であるとか、複雑な法ですと専門家意見を聞くということになるだろうと思います。商法だと専門家意見を聞かないということになりますのは、これは、商法というのは、やはり昔からそうですが、経済の最前線と常に接しておりますので、なかなか学問的な独立性というものが保ちにくい分野でございますので、どうしても実態を知らなきゃいけない、しかしそこに一定の学問としての立場も持たなければいけないということでございますのでなかなか難しいわけでございます。  しかし、先ほど申しましたように、株式会社法というのはまさに数百年の歴史を持って少しずつ少しずつ失敗を繰り返してできてきたものでございますので、私は法制審の委員でも何でもございませんので自由に申し上げますが、やはりそこには学問的な自負心というものは十分持っているわけでございます、それなりの蓄積もあるわけでございますので、それはやはり十分尊重した上で、その上で、もちろん最終的には、学者が何と言おうと、これはとらない、これはとる、これは国会で決めることだというふうに思っております。
  10. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 それから、先生の御指摘では、結局この資本準備金を財源に充てるということは、要するにやはり実質的にはその会社資本構成、これを減らすことになるんだ、一種の出資の払い戻しということになる、債権者を害する危険がある。もちろん提案者の方でもそのことを意識して債権者保護策を立てているんだ、こういう話なんですが、その保護策というのは、会社の合併のときの手当てですね、それと同じようなもので、これに対して十分かと私どもも思っておるのですが、先生のお話だと、どうもこれまで企業というのは余り利益の方には手をつけたがらなかったということですけれども、準備金は、資本準備金のほかに利益準備金もありますね。仮に、今回のようなこのもくろみを達成する手段として、資本準備金ではなくて利益準備金を財源にするということもあり得るのでしょうか。その辺はどうでしょうか。
  11. 上村達男

    上村参考人 お答えいたします。  商法でずっとその資本概念とか配当規制を行ってきたときには、配当できるお金がないけれども配当しちゃうということに対する試行錯誤の連続の中で、資本配当してはいけない、タコ配当はいけない、そういう観念をつくってきたわけでございます。ですから、それを、利益があるし利益準備金もあるけれども資本準備金をまず使いましょうというのは、私は基本的に非常に望ましくない姿ではないかというふうに思っております。したがいまして、それをもし仮に利益準備金を使おうとしましても、現行法では、これは時限立法でございますので、その後また積立義務が課されますのでどうせ同じだということで、使いやすい資本準備金の方から使おうということだろうと多分思いますけれども、我々がずっと学んできたやはり資本規制というものは、利益が十分あっても資本の方に食い込んでいくということは経験がなかったわけでございます。  ただしかし、では現行法では減資ということは認めているわけでございますから減資をやればいいわけですが、減資というのも、これも最後最後の手段で、非常に何か恥ずかしいことだといいましょうか、非常に企業評価を下げることだという印象がありまして、ROEを上げるというようなのは、これは株主のためでございますし、株価のためでございますが、しかし、資本というのは債権者のためでございます。債権者というのは、これは先ほど言いましたように定型的な制度犠牲者でございますから、これが最も大事にされるというのが商法原則でございます。  ですから、そういう意味では、減資そのものは現行法認められておりますから、それはそれで、これはイメージは悪いけれども自信を持って、これこれこういう理由でやるんだ。  私は、本当は前の株式消却のときも、利益消却というのはほとんど清算の前段階で行うような現象というふうに考えられておりまして、企業金融上の見地から利益消却をやるということについては、また新しい角度からもう一回見直して検討したわけでございますが、資本減少につきましても、これは最後の手段というのではなくて、企業金融上の見地から、割と、利益があっても行うんだということになった場合には、例えば、先ほど先生がおっしゃいました債権者保護手続にいたしましても合併でかなり緩和化されておりまして、官報でやった場合には個別の催告が必要だけれども、時事に関する日刊新聞紙の場合には個別の催告も必要ないということになっております。  これは、合併の場合にはいろいろな手続を踏んでおりますのでいいと思うのですけれども、資本減少の場合には、これを露骨に、先ほど申しましたようにプールの大きさそのものを小さくするような現象でございますから、緩和されたばかりの債権者保護手続で本当にいいんだろうかとか、そういうことも含めて本来は十分検討されるべきだというふうに思っております。
  12. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 もう一つ、この特例の関係でお伺いしたいと思いますけれども、今回のこの法改正では、今回に限ってといいますか、今年度に限ってということに、私はきのりも提案者に確かめたのですけれども、本来この手続をやるためには株主総会の特別決議を要することになると思うのですけれども、それを待たないで、この三月の決算期に取締役会で決定して、それで、来るべき株主総会では事後報告を求めることにしよう、これは今期限り、こういうことになるわけですね。  そうすると、仮にこの法律が、この決算期、つまり三月中に通れば、それはできるのだろうと思うのですけれども、この決算期を過ぎてしまうと、この特例意味はなさないということになるでしょうか。その点、いかがですか。
  13. 上村達男

    上村参考人 お答えいたします。  先生おっしゃいましたように、特例はまさに三月期の決算対策ということで、総会まで待っておられないという理由だと思いますので、もし法律が決算期までに成立しないということであれば、その根拠を失うというふうに思います。
  14. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 ありがとうございました。  それでは、時間がなくなりましたけれども、長谷川先生にもひとつお伺いをさせていただきたいと思います。  先生の先ほどのお話ですと、資産評価については時価主義というのがこれから考えるべき方向である、国際的な潮流にも合致しているということを認めながらも、それは土地だけではなくて他の資産についても一様にそうあるべきだ。これは株などについてもそうだというようにお伺いしていいわけですね。(長谷川参考人「はい」と呼ぶ)しかし、それを原則にするためには、そういう総体的な方向に向かっための十分な議論なりそれからコンセンサスが必要だ、それが今回の場合には、あくまでも貸し渋り対策、決算期に向けての部分的な、しかも便宜的なものになっている、こういうことでいいのかというようにお伺いしたのですが、それでよろしいでしょうか。もう一度確認させていただきたいと思います。
  15. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 そのとおりだと思います。  私は、日本経済のこの含み益経済に依存したこれまでのやり方が、決して褒められたやり方ではなかった、企業経営のあり方もかなりゆがめてきたと思います。そういう意味では、明確な、透明度を高める意味で、時価評価に行くのは、これは大きな流れだとは思います。  それには、実は三百万社の企業全員のかかわることであります。すべての人がこれにかかわるわけでございますから、やはり国民的な論議というか、さまざま、専門家論議、あるいは審議会の論議、こういうのを経て、その上で共通のルールとしてつくるべきだろうと思いますね。ここに適用してここに適用しないとかというのは、国際的にもルール違反でしょうし、国内的にも不信を買うということになることを危惧いたすわけであります。
  16. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 きのう、提案者の大原先生が、実はこの土地評価法については、自己株の場合と違って、業界などからの要請を受けたわけでもない。むしろ、外国の例などを参考にしながら、この貸し渋り対策などに役に立つのだろうという思いを持って、提案者の方で積極的に考えたものなんだ。最近になって経済界などからも、勉強してみたら大変これが役に立ちそうだ、早くできることを期待していますという声が非常に広がってきているということのお話がきのう実はあったわけです。業界の方で要望していないのだということは、余りこういうことについても検討していなかったのだろうということになるのだろうと思うのですが、大原先生はそちらの方は勉強不足だということを御指摘したのです。しかし、この貸し渋り対策は、私は北海道なのですが、北海道でも、今は拓銀などの倒産で、本当に中小企業がみんな困っているわけです。  そんな中で、金融機関の貸し渋りということが、私どもも調査をしたのですけれども、現にある。部分的なこの土地評価をやることが本当に貸し渋り対策になるのかというのがどうももう一つぴんとこないのですけれども、もう一度その点について、その効果の点、お話しいただけますか。
  17. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 私もよくわからないわけでありまして、確かにBIS規制の貸出枠だろうと思うのでございます。多分、これによって資本がふえるとなれば、八%条項の解消にやや役に立つかもしれないということで、非常に大きな意味での対応だと思いますし、個々の貸し渋り対策に直接これが寄与する可能性はあるのだろうと思うのですけれども、具体的にどうなのかというのは私にもわかりませんし、金融機関の方がどういうふうな態度をとるかということだと思いますし、また貸し渋りそのものは、単純にバランスシートの問題だけじゃなくて、日本経済全体のものだろうと思います。  今の景気低迷あるいは企業の収益性の低下というさまざまな問題があっての話だと思いますので、これによって、これがカンフル剤になる、救世主になって、貸し渋りがなくなって、経済が、景気が上昇していくということには、残念ながら実は期待が薄いだろうというふうに思います。
  18. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 上村先生にも、もう最後に、端的にお伺いをいたします。  今、貸し渋り対策その他の面でも、その対策として救世主たり得ないというお話がありました。自己株の方についても、一定の効果を考えながらの御提案だと思いますけれども、これは今の、例えば株式市場の活性化などのために、それから日本の経済の上昇のために、この自己株の取得の財源としてこの資本準備金を使うことが救世主たり得るかということについてはいかがでしょうか。
  19. 上村達男

    上村参考人 お答えいたします。  私、先ほど来申し上げておりますことは、会社法の本当に基本的な概念といいましょうか、それを動かすについてはやはり相当慎重な手続が要るということを申しておりまして、仮に何十兆円というお金が株に、全部出るとは思いませんけれども、出て活性化したとしましても、その活性化したときに、その企業土台が虫が食った状態になっている。仮に、一つ一つの個々の会社とか金融機関の本当の資本とか法定準備金とか、そういうものがもろくなっても、株式市場が活性化していいという判断なのかどうかということが問題でございまして、法定資本とか法定準備金制度は、何といいましょうか、中立的な会社法制度でございますので、仮に、具体的にこういういいことがある、ああいういいことがあるということがあったとしても、それでも使ってはいけないというのが法定資本制度でございます。  したがいまして、仮に活性化したとしても、それはいろいろな手段がある中で、最もしてはいけない方法であるというのが私の考えでございます。
  20. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 時間が参りました。少し過ぎましたことを恐縮いたします。  両先生に心からお礼を申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。
  21. 橘康太郎

    橘委員長代理 上田勇君。
  22. 上田勇

    ○上田(勇)委員 平和・改革の上田勇でございます。  上村先生、長谷川先生におかれましては、本日は大変お忙しい中お越しをいただきまして、心から御礼申し上げます。また、大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして大変ありがとうございました。  両先生の御発言の中で、何点か御質問をさせていただきたいのですが、まず上村先生にお伺いしたいと思います。  上村先生の今の御意見は、資本準備金、これが債権者保護の役割を果たしている部分であって、そこまで食い込んでのいわゆる株主への措置をやるのは問題が多いという御意見だったというふうに思います。  そこで、まず自己株式取得の範囲ということは別といたしまして、この自己株式取得という行為自体について、これはアメリカなどでは、ある意味では現金の配当のかわりに含み益での配当というような形で結構広く行われているのですが、こうした自己株式の取得・消却ということが、一つは株主重視の経営という意味からどのように評価されるのか。また、この行為自体はどういう御評価をいただくのか。それから、この取得・消却をすることによって株式市場が、確かに取引が出ますので活性化されるという意見もありますし、されるのでしょうけれども、そのことによって実際に株価がやはり上昇し、同時に市場も活性化されるのだろうか。その辺について、その取得・消却に充てる資金の範囲ということは除いて考えていただいて、その行為自体についての御評価をちょっと伺いたいというふうに思うのです。
  23. 上村達男

    上村参考人 お答えいたします。  かつては、利益による自己株消却というのは、先ほども申しましたように清算の先取りといいましょうか、そういう非常に限定的なものとしてとらえられておりました。ところが、その後、やはり増資という手段が、企業規模を拡大する手段として認められるのであれば、自己株消却によって企業規模を縮小するという手段も企業金融上の見地から認められてしかるべきであるという意見が非常に強くなってまいりまして、そこで、理論的に申しますと、要するに増資の反対概念である減資というものも、減資といいましても先ほどの資本減少法定資本の減少ではなくて、要するに企業規模の縮小という株を買い取って消却するという行為も、これも利益の範囲内であれば企業にとって一つの重要な選択肢として認められるべきであるというのが今一定の共通の理解を得ていると思います。  ただ、もともと商法学者が、理論的にはそういうことはあり得るけれども危惧の念を持っていたというのは、例えば自己株を消却するときにインサイダー取引とか相場操縦のようなことに対するチェックが十分に働いているだろうかとか、自己株消却をすることによって株式の量は減りますけれども、そのことによって例えば支配株主の持ち分比率が上昇して支配を歪曲するのではないかとか、それに対して例えば経営の監督とか監視がちゃんと行き届くだろうかとか経営責任がきちっと追及されるだろうかとか、そういういろいろな、もろもろの日本が今持っております法的な総合力といいましょうか、そういう全体の総合力を危惧して、いや、ちょっとこれはそういう条件が整うまで待ってはどうかというのが当時の多くの御意見だったと思います。  しかし、少なくとも今日は、自己株消却ということ自体は、原資はともかくといたしまして、企業金融上の見地として認められるべきであるという意見が一般の意見ではないかというふうに思っております。
  24. 上田勇

    ○上田(勇)委員 そこで、今回の法案というのは、資本準備金をその原資に充てるという内容になっておりますが、要はこの資本準備金というのが、先ほど先生もおっしゃったように、これは資本に性格としては限りなく近いものであるというのはそのとおりであると思うのですが、これは商法上はその適正水準なり目標なりについての規定がないものであります。利益準備金については目標が示されているのですが、資本準備金というのは増資をしていく経過の中で自動的に積み上がっていくという形だと思います。  ある意味で、時価発行増資をしている会社はどんどん積み上がるし、そうでない経営判断をしたところというのはゼロという場合もあり得るものなんですが、これが商法上は、この会社資本からするとこのぐらいが適正な水準なんじゃないかというような規定がないのですけれども、その辺について、資本に対して資本準備金率はこの程度あるべきなのではないかとか、そういう御見解があればお伺いしたいと思うのです。
  25. 上村達男

    上村参考人 お答えいたします。  資本準備金は、現行商法原則によりますと、時価発行した場合には全額が資本になるというのが原則でございます。当初、五十六年の商法改正のときは四分の一を超えざる額、これは無額面株式のときにそういう規定だったものですから、にしてはどうかというのを、これを二分の一を超えざる額にして資本準備金をなるべく多くして、無償交付株主に対する利益還元はしたい、これが経済界の要求だったわけです。したがいまして、もともとは全額が資本であるというのが原則でございますので、仮に全額が資本になっていたとすると、資本が多過ぎるから需給バランスを欠いたということは多分言わないだろうと思うのですね。  それから、資本準備金原資というのは、合併差益とか減資差益とか、それから払込剰余金でございますので、しょっちゅう起こることではございません。ですからそもそも、これが適正であるということを規定していないというのはむしろ当然ではないかというふうに思っております。
  26. 上田勇

    ○上田(勇)委員 上村先生にもう一つお伺いしたいのですが、これは昨今の問題として、今、各企業が決算期対策として株式を放出するということと、それから、株式の持ち合いを解消するという意味株式が大量に市場に出てきておりますし、またその傾向が強まっていくんじゃないかというふうに言われているのです。そのとき、もちろんそれが大量に市場に出回れば、株価は当然需給のバランスが変わりますので低下すると思うのですけれども、そのときの対策として自己株式の取得・消却というのが、そのための対策という意味合いもあるかと思うのですけれども、それに対して、有効なのかどうか、その辺、もしお考えがあればお伺いしたいというふうに思います。
  27. 上村達男

    上村参考人 お答えいたします。  確かに株の持ち合いというのは大変な規模になっておりまして、これは国際的に見ても例のないほどでございます。そして、証券市場に売買として出てくる株の量というのは本当に一部でございまして、その一部の中で成立した価格が参加していないほかの持ち合い株の価格でもあるという前提で我々今までやってまいりましたので、これを放出して、実はそれは虚構のような株価であったのだということを明らかにしていきますと、どんどん株価は低下していくわけでございます。ですから、そういう意味で、そういう問題にどう対処したらいいかということは大変大きな問題だというふうに私は思っております。  これは、特に一つは株式の価格の、つまり証券市場の問題とガバナンスの問題があると思います。  証券市場の問題としては、やはり証券市場の価格が一斉に下がってくる。これは戦後の日本の経済発展の裏側の面でございますので、裏側がはっきり出てくると戦後の経済発展の部分が損なわれていくような、こういう印象がどうしても出てくると思います。したがいまして、それに対して本格的な何らかの対策をすべきであるということは当然でございますが、これは何といいましょうか、一つは持ち株会社あるいは自己株の取得というのが一定の重要な意味を持つだろうというふうに思っております。原資の問題は別といたしまして、一定の意義は有するというふうに思っております。  もう一つは、実は持ち合いというのは、一番私が問題だと思いますのは、何社が相互に持ち合っておりましてもそのグループの中で資金が移動しているだけでございますので、実は出資はゼロであるということもあるのですね、一定の部分につきましては。私が例えば給料の中から百万円で買った株というのは、私の給料ですから実があるわけですが、たとえ百億円でもただぐるぐる回っただけの場合ですと実がないかもしれない。しかし、議決権は何十%も持っていると。これはガバナンスの根幹にかかわる問題でございます。  ですから、持ち合いについては、証券市場対策としてその消却は一定の意味を持つというふうに思っておりますが、もう一つ重要なのはガバナンスの観点ではないかというふうに思っております。
  28. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ありがとうございます。  長谷川先生の方にお伺いしたいと思いますが、今回の土地の再評価というのは、いわゆるBIS基準をなかなか金融機関がクリアできない。その意味で、自己資本を充実させるのに手っ取り早い方法として、今までの資産を再評価すれば、補完的な項目の中が充実されて、その結果として、八%規制であればその逆の十二・五倍の貸し出し余力ができるという理屈なのですけれども、私は、今の金融の収縮というのは、金融機関が流動性が非常に低下しているということと、それから、やはり投資先がこうした経済状況の中で融資をする相手を選別せざるを得ない、それがもう非常に強まってきた。その意味で貸し渋りというのが生じているので、必ずしもBIS基準だけがその元凶になっているというふうには考えていないのです。  先ほどもちょっと佐々木先生からの質問にもあったのですが、いわゆる流動性を高める、融資を拡大するという意味で、この資産評価がどの程度の効果があるのか。  よく言われるのは、BIS基準ぎりぎりの金融機関は、決算期に株価が下がったときのための保険になるので、これが再評価されれば無理な資金回収はなくなる。その意味では、とりわけ中小企業に対して効果があるのではないかということも言われるのですけれども、その辺、先生、もうちょっとここを詳しく御意見をいただければと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  29. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 この問題は、実は金融機関しかわからないのだろうと思うのです。どういう対応をとるかは個々の金融機関の問題でしょうし、これを一般的に、こうしたらこうなるだろうというのは想像するというだけであって、そのとおり金融機関が動くわけではございませんでしょうし、BIS規制だけが貸し渋りの対策ではないのだと思うのです。資本がふえれば十二・五倍動くはずだという話であって、動かすか動かさないかは、やるかやらないかは金融機関の問題で、外からは知ることができないのだろうと思うのです。  ただし私は、今の経済情勢や不良債権へ不良資産対策が進まないという大きなマクロ的な解決が進まないことが最大の問題だろうと思いますので、こういうテクニックというか、非常に矮小的、矮小的と言っては申しわけございませんが、そうした手段でそれを達成できるというふうにはどうも思えないというふうに考えております。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  30. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ありがとうございます。  もう一つお伺いしたいのですが、今度のこの法案では、再評価を行うかどうか選択制になっております。報道等によると、金融機関相当会社が再評価するというようなことを言われておりますけれども、これはあくまで選択制だと、やってもやらなくてもいいわけですので、同じ業態、業種の中でも再評価したところとしないところが出てくる。そうすると、財務諸表の中身が横並びしたときに比較しにくくなるというような懸念もあるのですけれども、その辺について何か御意見があればお伺いしたいと思います。
  31. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 こういう会計基準のルールというのは、言ってみれば、外から見てわかる、透明度が高いということと信頼度が高いということが大事だろうと思うのですね。国際的にこういうものをそろえようというのも国際的に見て統一しようということでしょうし、国内的に見ても、さまざまな制度でそういう方向の統一ということは、わかりやすくする、第三者が評価できるようにするということだと思うのです。  ある機関はし、ある機関はしない。したときにはしたと書くということになっていますけれども、ただ、評価にしても、どういうふうにしたかということはよくわからないわけでございまして、これから政令がどうできるかわかりませんけれども、どういうふうに評価するかによって、またその評価が現実に合うか合わないかもわからないわけでございますから、私は、やはりAはし、Bはしないとか、そういう選択というのは決して望ましいというかあるべき姿ではないのだろうと思います。  基本的には、実は横並びで、どの財務諸表も同じスタンダードで見られるということが肝心だろうと思います。それを政策的に便宜に使うのは本来の会計原則というものからずれるのではないかという感じを持っております。
  32. 上田勇

    ○上田(勇)委員 もう一つ、今回、再評価を行うことになりますと、時価に近づく。これは、昭和二十年代につけた簿価から、特に金融機関などは相当な開きが出ているので、実態をより近くあらわすという意味で私もいいことだと思うのです。ただし、今回の再評価というのは、原則を簿価から時価に変える、取得原価から時価に変えるというわけではなくて、原価の時点を移すということだと思うのですね。  そうすると、また今後、これまでのような地価の異常な高騰というのはあり得ないのかもしれませんが、やはり年月がたっと評価額が変わってくることになると思います。そうすると、たとえ今回評価しても、将来また、今の再評価した原価とそのときの時価というものの差が出てくる。  そういうことを考えると、この再評価というのは、今回だけじゃなくて、やはりある時期に価格がだれが見てもかなり差が出てきたのかなというようなときには、一斉にもう一回やらなければいけないのかなというふうにも思うのですけれども、先生の御意見をいただければと思います。
  33. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 二十二年から二十九年の再評価というのは、確かに戦時のハイパーインフレへの対応があったと思いますし、それなりに周りから全部理解できたと思います。また、今回の再評価が、そういう全体の中で行われるなら一つのルールだと思いますし、わかりますが、主として銀行だけに限って、二年間に限って、それから選択的に行うということになると、余りにも便宜的に過ぎるのじゃないかというふうにも思います。さらに、評価そのものも、二年間やったものはこれからずっとその評価が維持できるかどうかということは、現下の地価の状況からかなり難しいのじゃないかと思います。  今は、バブルとバブルの崩壊の波がまだおさまっておりません。そういう段階で、共通するというかみんなが信頼できる時価評価が果たして可能かどうかということについて、やや私は疑問を持っておりますし、特に今地価そのものが収益還元価格に戻っていく。かつてのように、バブルの時代までのように、キャピタルゲインがどんどん上がって地価が上がる、そういうことじゃなくて、収益還元価格、利回りが回ったり、あるいは購入できる水準に戻っていくという中ですから、それを見きわめないと、本当は私は地価が実は見えないのだろうと思うのです。今見えない中で、便宜的にするというのができるだろうかということを実は大変危惧するというのが現実的な問題だろうと思います。
  34. 上田勇

    ○上田(勇)委員 もう時間が参りましたので、両先生には大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。
  35. 笹川堯

  36. 谷口隆義

    谷口委員 自由党の谷口隆義でございます。  本日は、両参考人、大変お忙しいところおいでいただきまして、ありがとうございました。先ほどは、大変貴重なお話をお伺いいたしまして、ありがとうございました。  先ほどお話を聞いておりますと、長谷川参考人でございましたか、今回のこの二つの法案につきましては、国民的な議論のもとで行わなければいけないというようなお話をお伺いいたしました。私も、今回の法案の重さを感じますと、そのように思うところでございまして、そういう意味では、拙速であるという感じはぬぐえないわけでございますが、現下金融機関状況等を勘案しますと、若干そういうところも考えてやらなければいけないのかなというようなことも感じるところでございます。  実は、昨日私は、この土地評価法案につきまして、大原提案者に何点かお伺いいたしました。今回、土地の再評価をする、これは、大きな目的は貸し渋り対策ですね。自己資本比率の改善を図りたい、こういう目的でやりたいのだ、こういうことで、この法案は、追加的なマネーフローは起こらないというようなことで、大変やりやすいというか上げやすい法案だと思います。私は、一方では、そういう安易さが逆に金融機関のモラルハザードを惹起するのじゃないか、このように思うところでございます。  そういうようなことで、まず初めに上村参考人にお聞きいたしたいところでございますが、土地評価に伴う再評価差金が出るわけでございますが、これについて提案者の方は、実は、昨日お聞きしておりましたら、明確に決まっていないようでございましたが、おっしゃっておったのは、仮勘定で置きたいというようなお話でございました。一方、どうもマスコミの報道等を聞いておりますと、この法案作成者の方に経団連あたりが要望をいたしておるということを聞いておりまして、これは資本準備金準備金に再評価差額を上げたい、こういうようなお話のようでございますが、まず初めに、このようなことにつきまして御意見をお伺いいたしたいと思います。
  37. 上村達男

    上村参考人 お答えいたします。  再評価の差額を準備金にしたといたしましても、準備金に対する規制といいましょうか、その使用の仕方が、現行法のままの規制がそのまま及ぶのであれば構わないと思うのですが、私はどうもその辺の事情がよくわかりませんので、むしろお聞きしたいぐらいなのでございますけれども、それを使って例えば自己株を買うとか、そういう話になってきますと、ちょっと話は違ってくるのじゃないかなという感じでございます。
  38. 谷口隆義

    谷口委員 多分そういうことなのだろうと思うのですね。  要するに、自己株式利益による消却は、現行法におきましては配当可能限度額で行う。ところが今度の改正案は、これにつけ加えて準備金まで拡大したい、こういうような法案のようでございますので、現行の各企業準備金が、私どの程度あるのかちょっと把握しておらないところでございますが、仮に準備金がそれほど余裕はないというような場合に、先ほど先生がおっしゃったように、株価がどんどん上がっておるときにエクイティーファイナンスを各企業はどんどんやりましたので、市中に流出しておる株が大変多数になっておる。これが一つは株式市場に大きな影響を与えて株価に大きな影響を与えておるというようなこともございますので、この市中の株を、どういう方法があるか、いろいろあるわけでございますが、これを消却していくということにつきましては、私は賛成をいたしておるところなのです。  そういうことで、また話はもとに戻りますが、準備金に余裕のないところは再評価を行う。この再評価差金を、資本準備金なり、基本的に資本準備金なのでしょうね、準備金に入れる。そうしますと消却余力がここに出てくるわけでございまして、そうすると、セットになると効果があるのじゃないか、こういうような要望をどうも経団連の方がなさっているということを聞いたわけでございますが、こういう観点で、上村先生、もう一度ちょっと御答弁をお願いいたしたいと思います。
  39. 上村達男

    上村参考人 お答えいたします。  先ほど申しましたように、当初、自己株の消却については清算の先取りであるというのを、これを企業金融上の観点から認知した。これは一連の改正の過程でございます。  今回は、減資、資本減少というものを最後最後の手段ではなくて、利益があっても、利益準備金があっても、企業金融的な見地で使う。つまり、ROEとか株主のために使う。しかし、資本とか資本準備金というのは債権者のためのものでございますし、家でいえば土台鉄骨のようなものでございますから、そちらに了解を得る必要があるということでございますので、したがって、その場合の債権者保護手続というのは、今回緩和されたあのようなものでいいかというようなことも含めまして、いろいろ検討すべきことはたくさんあるかと存じております。  したがいまして、これは減資という実質を持つものでありますので、聞こえが悪くてもきちっと説得をしてやっていくということであれば、これは現行法では認めていることでございますから、それは構わないというふうに思います。  しかし、そういう形でなくて、実質減資で、債権者のための制度をある意味では崩していくようなものでございますから、株主という観点ではないわけでございますので、これを企業金融上の見地から、利益があっても資本準備金を使うという発想をどういうふうに位置づけるかということは、かなり会社法の歴史は、利益がないときに資本資本準備金に食い込んで配当できるか、こういう議論をずっとしてきたわけでございますので、かなり本格的な手続を含めて議論が必要だというふうに思っております。  したがいまして、再評価の差額金を準備金にしてということは、それをさらに延長するということでございますから、仮に株価対策として一定の意味があったとしましても、それに歯どめをかけるのが資本法定準備金意味でございますから、私はもともと原則が望ましくないというふうに申し上げておりますので、そういう対策についても望ましくない。そういうことで恐らく、準備金という言葉を使わないで差額という言葉を使っているのも、そういう意味なのかなと推測しているわけでございます。
  40. 谷口隆義

    谷口委員 結論的に申し上げますと、今先生がおっしゃったように難しいということになりますと、これはセットではなかなか使いにくいというようになるのではないかというように私は思います。  先ほど冒頭お話をさせていただきましたように、この法案が緊急に上がってきたものですから、十分な議論をなされておらないというのは、これは周知の事実でございます。ですが、上村先生がおっしゃったように、例えば商法の流れであるとか、また今議論をしておる大きな流れとは全く逆行するようなことであれば、これは大きな問題になるわけで、そのあたりの状況も十分勘案しながら、いわば大きな流れの中で、小手先のやり方であるというように認識をされた場合には、これはやはり何らかのことを考えなければいけないというように私は感じる次第でございます。  上村先生ばかりに質問を申し上げて申しわけないのですが、もう一点ちょっとお聞きしたいのです。  先ほどの質問者の質問にもございましたが、今市中に大変多く出回っておる株、過大な株式を、いずれにしてもある程度消却をしていかなければいけないという観点で、今回の自己株式消却は一つの大きな方法ではあると思います。私は、先ほど申し上げたように、これに今回の再評価の分が積み上がればかなり大きな効果があるなというように思っていたのですが、今のお話を聞きますと、若干難しいということになれば、次の段階として、果たしてその過大な株式を減少させるといいますか、消却するような方法が今あるのかないのか、教えていただければありがたいと思います。
  41. 上村達男

    上村参考人 まず、現在の証券市場を見ますと、確かに発行済み株式数はたくさんあるわけでございますが、しかし、現実に証券市場で売買されている証券の数はむしろ少なくて、市場に出ていないことがむしろ問題であるという指摘もあるわけでございます。ただ、多少持ち合いが崩れて市場に出てき始めたために、今まで出てこなかったものが少しずつでも、氷河が崩れるように出てきますと、やはりかなり大きなインパクトがあるということも事実だと思います。  先ほど申しましたように、持ち合いというのは、日本の戦後の経済発展のいわば裏側の問題でございます。逆に、証券市場というのは、ある程度そういうバブル的な要素といいましょうか、そういうものもあって国が発展してくるという面もございますので、そういうところに乗って日本の経済発展というのはしてきたと思います。したがいまして、持ち合いを全面的にもしなくすというようなことになりましたら、これは大変なことだ。日本の戦後の経済をある意味では部分的に清算するぐらいの問題だというふうに思います。ですから、それをそのまま全部、持ち合いはよくないからもとに戻して、しかし経済発展の成果だけはとっておこう、そういう対策というのは、なかなか妙案というのはないわけでございます。  ただ、これはやはり、現在考えられております持ち株会社であるとか自己株式の取得であるとかそういうものを十分に行っていくことで、そして仮に、十分な手続を十分に検討した上で減資を企業金融の観点から用いるということを真っ正面から検討しようということであれば、そういうことも将来的には一定の意味を持ち得るだろうというふうに思います。しかし、それはあくまでも、本来債権者のための制度である資本とか法定準備金というものを崩して、それを犠牲にしてでもこういうことが必要なんだということを、やはり証券市場株主に対してあるいは債権者に対して公然と説得する、そういう責任を負った上で行うべきことではないかというふうに思っております。
  42. 谷口隆義

    谷口委員 わかりました。  次に、長谷川参考人にお聞きしたいのですが、先ほどから何回か出ておりますが、時価の問題ですね。先生がおっしゃったように時価が明確でなくて、これは政令事項にしたい、こういうお話でございました。  時価は、先ほど先生のお話にもございましたように、公示地価であるとか相続税の評価の路線価、また固定資産評価額、また売買事例のないところは収益還元による地価もあると思いますが、仮にこの法案ができたときに、時価は今挙げたような地価の中で何が望ましいのか。これは時価ですから売買事例が一番いいのでしょうけれども、先生はどのようにお考えでございましょうか。
  43. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 株価と違って地価は非常につかみにくいといいますか、マーケットが事実上ないわけですし、取引所があるわけじゃありませんから、時価はとらえられないというのが現実だと思うのです。  地価公示も一つのフィクションだろうと思うのです。そもそも、そのフィクションについて国民的に、まあこんなものだろうということを全員がひとつ、ほかに手段がないのだからこれでいくしかないねというのが実は今の信認だろうと思うのですね。やはり地価についても理論と実証に基づいて行われて、それが信認されるということが一番大事だと思うのです。その意味で、私は、地価公示は確かに、地価の上昇、下降の中でやや問題があったことは事実だと思います。近く地価公示がまた発表されますが、なお実はバブルの崩壊の過程にあるわけでございまして、なかなかとらえられないということは事実だと思うのです。  しかしながら、実は今、収益還元価格に戻っていくということは大きな流れだろうと思うのです。戦後四十年、五十年の土地神話が崩れて、これから地価は、まさに買えて幾ら、使えて幾らという時代になっていきます。そういう意味では収益還元価格に戻っていくのでしょうけれども、今その過程にあるのだろうと思うのです。非常にわかりにくいときにあるわけです。  あえてこの三月三十一日にそれを見出せというのがどだい無理だろうと思いますので、私は、地価公示がその方向に向かうことを期待しつつ、当面、もしおやりになるとすれば、地価公示の八掛けが路線価であります、路線価をとればやや安全サイドに行くかもしれませんが、それは単なるテクニックにすぎないだろうと思うのですね。それよりもむしろ、本格的な不良債権対策の方がはるかに重要であるというふうに思っております。
  44. 谷口隆義

    谷口委員 確かに、先生おっしゃるように本格的な不良債権対策、例えば不良債権の債券化、証券化というような問題もあるのだろうと思いますが、今おっしゃったように、地価というのはいろいろばらばらでございまして、収益還元がやはり一番いいのだろうと思いますが、手間が一つはかかるということがございます。  実務的に使う場合に、手間がかからないで地価が早くわかれば一番いいわけですが、現行、今地価税が行われておりまして、これはもう今度の税制改革で凍結というようなことになるわけでございますが、地価税の対象になっている企業は毎年それを計算してやっておるわけでございます。今回の法案を見ますと、一たん評価をする、その段階で評価はもういいのだということではなくて、含み損が出る場合がございますね、当然ながら。地価の今後の動向、先日も「エコノミスト」を見ておりますと、エコノミスト八人の中でやはりすべての方が、必ずしもこれからは上昇しない、むしろ下落する可能性もある、まだ一段の下落があるというようにおっしゃっている方がいらっしゃいます。  それは、そういう意味におきましては、むしろ注記をしなければいけないということになっております含み損を持つということになるわけでございまして、そのような状況の中で、今後、企業経営が、企業の財務健全性の観点からしますと、やはり含み益がある、目に見えない含み益があるのだということが、まだ含み損を持っているというよりもいいのだろうというように思うわけでございますが、そういう事態が招来することが想定されるわけでございます。  そういう状況の中で、地価の動向と申しますか、今先生の御見識の中で、今後地価がどういうような状況になるかどうかということにつきまして一言、御意見がございましたら。
  45. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 地価がどうなるかは、実は私も十数年そういうことをずっと考えてきたわけでございますが、非常に、わからないというのが正確だろうと思うのです。  しかし大きな流れとしては、土地神話が崩壊し、それから人々の意識が、土地の見方が、従来のキャピタルゲイン信仰から利用価値、企業個人もそうでございますが、使って幾ら、買えて幾ら、住んで幾らという意識に変わったわけでございますから、これは欧米流の収益還元価格に戻っていく。収益還元価格であれば、これは経済の変動に応じて上昇することもあるし下降することもある。しかし、その上昇のスピードとかは非常に穏やかなものになるだろうと思うんですね。  そういうのが実は正しいわけでして、今までの四十年間の地価の高騰というのが大変異常だったということでございましょうし、今は正常化に行く過程ですから、その正常化に行く過程の中で大事なのは、やはり制度や仕組みを国民信頼する、それに対して信認があってそれで成り立つのだと思うのです。今はその過程にあると思います。  私は、地価の底打ちというのはあるでしょうし、その後に、経済成長程度の穏やかな変動が進んでいくというのが流れだろうと思っております。
  46. 谷口隆義

    谷口委員 ありがとうございました。  先ほど上村先生もおっしゃったのですが、株の持ち合いのお話がございました。  我が国は、御存じのとおり外国に比べまして、持ち合いという制度があって、それが原因で例えば株主総会が形骸化するとかいろいろな問題が残っておるので、これは将来、解消の方向に持っていかなければいけない。そうすると、先ほどおっしゃったように、これは日本全体が大きく変わるような事態になる、まさに私もそのように思います。今までの日本経営ということを変えていかないと、こういうようなことは起こらない。そういう方向にいずれにしても持っていかなきゃいかぬわけでございますが、その際に、やはり先ほど長谷川先生おっしゃったように、今回の土地評価は時価会計の一つの入り口になるかもわからぬというようなお話がございました。  これは将来、時価会計が導入されますとどのようなことになるだろうというように考えますと、これは多分、時価会計が導入されて、有価証券の含み益また土地含み益が排出される、表面化してくる。そうすると、相対的にROEが低下する。低下すると、企業評価が下がるわけでございますので、多分企業含み益の持っておるものを売却するだろう。そうしますと、売却するのは不動産ではなくてむしろ有価証券、株あたりを売却するだろう。  そういうようなステップで考えてまいりますと、時価会計が導入されるということは将来大きな、株の持ち合いの解消につながるというように私は考えておりまして、一刻も早く、国際的な会計の流れの中でのこの時価会計を導入すべきだというように考えておるところでございますが、もう時間が参りましたから最後の質問でございますが、長谷川参考人、御意見ございましたら。
  47. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 私は会計専門家ではありませんが、戦後の含み益経済に依存した日本経済の、プラスの点もあったと思いますけれども、バブルの崩壊でマイナスの点が非常にあらわれたと思うのです。  そういう意味で、一つの方向として金融資産土地も含めて時価会計になるのは当然の動きだろう、ぜひその論議国民論議で広めてもらい、国民の信認をもってこれが制度化されるということが非常に大事だろうと思っております。
  48. 谷口隆義

    谷口委員 どうもありがとうございました。
  49. 笹川堯

  50. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。両参考人、大変御苦労さまでした。  最初に、上村参考人にお伺いをいたしたいと思います。  株式消却特例法についての反対意見は、私も全面的に賛成であります。そこで、もう一つの土地評価法についての商法学者としての御意見をぜひお聞かせいただきたいと思うわけです。  法案は届けられているかと思うのですが、この法案は、再評価するか否かを選択制にしている、任意だ、それから事業用資産のみだ、それから非課税であるということ、二年の時限立法だということ、時価を何をもって評価するかの基準が非常にまだあいまい、不明確だということ、下がったときの処理方法についても、貸借対照表上に注記するだけだという、そういうやり方、そして昨日のこの委員会でも大変論議になったところですが、再評価差額金、その金額をバランスシートの貸方の資本勘定に入れるべきなのか、負債勘定に入れるべきなのか、昨日の段階ではまだ方向が定まっていなかった、こういう状況であります。  今、私のところに伝えられた報告によりますと、大蔵省は政令をつくって再評価差額金を負債勘定に入れさせるのだというふうに、決めたのですか、というふうに伝わってきておりますが、そういう全体について、この土地評価法についての商法学者としての御意見をぜひ賜りたい。時間はそうありませんが、たっぷり述べていただきたいと思います。
  51. 上村達男

    上村参考人 お答えいたします。  私は会計法を専門にやってきているわけではございませんが、大体、従来時価か時価でないかという場合には、まず情報の開示の対象として時価か時価でないかということが一つございます。これは、情報開示の対象として時価を開示してくるということについては、これはすべての資産について共通の理解があるのではないかというように思います。配当との関係で、うまり決算との関係で時価を入れるかということになりますと、従来我が国で議論をしてまいりましたのは、例えば今大蔵省と法務省が一緒になって、会計制度に関する研究会がございますが、ここで中心になって議論しておりますのは、金融商品とかデリバティブどかそういうものについての時価評価の問題でございまして、不動産については議論をしたことがないというのが従来の経緯ではないかというふうに思います。  ただ、国際的には、不動産についても時価をという動きがないわけではないということは聞いておりますけれども、少なくとも今までの日本での議論というのは、やはり金融商品について時価、そして不動産については議論してこなかったというのが実情ではないかなと思います。  特に、時価評価を決算に反映させるということになりますと、極めて権威のある会計原則が極めて権威のある会計監査によって常に検証されているという、そういうインフラといいましょうか、そういうものが必要になってまいりますし、やはりいろいろと十分に検討すべき点があるというふうに思います。  その意味では、今回、金融機関については、低価法を原価法でもいいという形で、含み損があっても計上しなくていい、こちらについてはすべての企業に低価法を全面的に強制すべきだというのが恐らく国際的な流れではないかというふうに思いますから、そこから見るとまさに普通ない話であるというふうに思います。  ですから、含み損は計上しなくていい、それで、旧来議論してこなかった土地の方の含み益は計上していいということになってまいりますので、今までの企業会計の流れとしてはむしろ逆なのではないかなという感じがしております。  会計は、会社法会計にしましても証取法の会計にしましても、特に証取法会計の場合には、マーケットの共通の物差してございますので、共通の物差しとして時価情報が重要であるということは確かですけれども、決算という話になりますと、いろいろとやはりじっくり議論しなければいけないのではないかというふうに考えておりますので、少なくとも、一回だけ時価評価をするということになりますと、いわば会計学者の生命線であります継続性の原則というのに一つ風穴をあけるということにもなりますので、やはり慎重であるべきではないかなというのが私の感想でございます。
  52. 木島日出夫

    ○木島委員 再評価差額金をどう評価するか、決算上、貸借対照表上どう表現するかという点についての先生の御意見、どうですか、もしありましたら。
  53. 上村達男

    上村参考人 先ほど申しましたように、本当は再評価積立金というのは資本準備金的な性格のものだと思いますが、そしてその上で拘束がかかるというものだったと思うのです。しかし、今回のように資本準備金を使って自己株消却ができるという話になると、ちょっと話が違ってくると思います。  ですから、私は、本来はそういう性格のものだけれども、本当は資本拘束がかかるべきものではないかというふうに思っております。
  54. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。  長谷川参考人にお伺いいたしますが、時価主義は世界の流れだとお話もありました。しかし、本法案に対してはさまざまな問題点を指摘されました。それで、余り詰めるつもりはないのですけれども、総体的な参考人評価としてこの法案をどう評価するか、大きな時価主義という世界の流れに向かって一歩前進の法案なんだ、いろいろ問題点はあるけれども向きは前進だから総体として賛同できるのか、それとも逆に、時価主義は世界の流れ、潮流だが、本法案は問題が大き過ぎてとても賛同できるものでないという立場なのか、この法案についての評価全体、率直に参考人の御意見を述べていただければありがたいと思います。
  55. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 お答えします。  多分皆さん方と全く同じように、揺れているのだと思うのです。大変揺れている心でして、そういう方向については大いに議論すべきだというふうに思います。しかし、余りにも拙速過ぎる、余りにも国民議論専門家議論なしのままに二年間の短期に景気対策、あるいはもっと狭く言えば貸し渋り対策のみに志向している。そこはやはり目的と手段の関係があって、どうしても解せないところである。  しかし、一たん法律案としてこのように、まあいわば皆さん方はまさに国民の代表として御論議されているわけですから、その論議されていること自体、私は評価したいと思います。これが極めて短期的な政策である、国際的に見てもろもろ問題があっても、この際効果があるという自信があれば、私は一つの方向だと思うのですが、果たして自信があるかどうか。「目的」に書いてある金融円滑化とそれから企業会計の合理化がこれで図られるという本来の目的に達成できるかどうかということです。その判断というのは、まさに皆さん方が御判断することではないだろうか。  大変私も揺れている心でございまして、やめてしまえということも言えませんし、それからやれとも言えないというのが、正直言って非常にジレンマでございます。ぜひ皆さん方の賢明なる御判断をお願いしたいというふうに思います。
  56. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。  少なくとも、慌てて決めてしまうなということであるわけですね。  私、この土地評価法が、それを導入するかどうかが任意だということ、これはやはり根本的な欠陥だと思うのですね。  これは、やはり含み益を持ってそれを表に出したが有利だと思えば、それは採用する。しかし、逆に、バブルの時代にどんどん土地を買い占めて、地価が下がった、それが表に出たら不利益だと思った企業は、絶対にこれは採用しませんね。そういう御都合主義のきわみというような選択制へ任意だということ、これなんかはとても、時価主義は世界の流れなので、それに一歩前進なんだとは私は評価できるものじゃないと思うのですが、参考人の御意見を。
  57. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 私もそう思います。  会計制度やなんかは、公平で公正で透明でなければいけないと思いますね。ある場合にいわばダブルスタンダードを使って、都合のいいときに都合のいいように利用するというのは、信頼を失うもとだろうと思うのです。それは、単に企業信頼だけじゃなくて、いわば制度信頼を実は揺るがすことになるし、国際的な信頼も揺るがすことになるだろうと思います。  大事なことは、やはり会計制度やこういうシステムに対する信認だろうというふうに思います。その信認に反するということは逆効果になってしまうのじゃないか。せっかく貸し渋り対策をやったのに、いいかげんなことをしているじゃないかというふうに言われやせぬかという心配はございます。
  58. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。  あと、これは両参考人の御意見をお聞きしたいのですが、この再評価法は特例法上の大会社金融機関についてのみ適用するのです。その保有する土地について適用するのですが、土地も全部じゃないのですね。事業用土地についてのみ再評価を認める。そうすると、非事業用の土地は再評価を認めないというわけですね。  何が事業用で何が非事業用かの区別も、昨日私は質問したのですが、もう一つ提案者からも明確な答弁がありませんでした。同じ保有する土地を二つに分けて、片っ方は時価で含み損や含み益を吐き出させる、片やそれは含み益、含み損を持ったままにさせておく、これも御都合主義のきわみだと私は思うのですが、こんなことが今の商法並びに証券取引法上の企業会計原則から許されるのか、私は根本的な疑問を持っているわけですが、上村参考人と、この点については長谷川参考人の御意見もお聞きしておきたいと思うのです。
  59. 上村達男

    上村参考人 消却特例法の方は、公開会社というのが適用会社になっております。公開会社というのは、証券取引法の適用会社という意味だと思います。土地の方は、特例法の大会社、これは商法特例法ですから、これは商法の方でございます。会計監査人の監査は入りますけれども、証取法の財務諸表の監査、連結の監査というものは入っていないということでございますので、貸し渋りということですと、商法特例法の大会社すべてに適用し、かつ事業用土地だけということはどういう理由なのか、ちょっと私としては理解できないという印象でございます。
  60. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 この法律目的金融機関の貸し渋りの問題には、金融機関はバブルの時代にみずから土地を買ったことがない、むしろ長い間本店の敷地やあるいは保養所の敷地等の、そういうバブル以前の土地があるということが、実は事業用資産としてこれを時価評価すれば含みが出るのじゃないかということだろうと思うのですが、逆に、金融機関がバブルのときに貸した相手は、時価評価をするとマイナスになるわけでございまして、日本経済全体にとってみて、都合のいいところは時価評価し都合の悪いところはしないということで、果たして会計制度や今のシステムに対する信認が得られるかどうか、大変危惧するところであります。  そういう意味では、公平公正というか、透明度を高め、そのことが我々市民が納得できるような、そのことが一番大事じゃないかというふうに思っております。
  61. 木島日出夫

    ○木島委員 もう一つだけ上村参考人に。先ほどもちょっと私は指摘したのですが、再評価した土地がさらに値下がりしたときは、評価の金額は貸借対照表上に固定化しておいて、その下がった金額のみ注記するというのですが、こういうやり方については、先生、どんな御意見でしょうか。
  62. 上村達男

    上村参考人 値下がり分があった場合に、今は低価法をやめて原価法でもいいという話でございますから、多分そういう発想の延長なんだろうというふうに思いますが、注記だけでいいということですが、本来は、差額金といいましょうか準備金といいましょうか、そこから控除すべきものではないかというふうに思います。
  63. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございました。  もう時間も少ないのですが、株式消却特例法に関して上村参考人から一点、アメリカの将来の方向性についてちょっとお聞きしたいなと思うのですが、資本準備金、これはやはり大陸法の考えだと思うのですね。これをきっちり積ませる。アメリカの方は恐らく配当重視で、どんどん配当してしまう、そういう発想で組み立てられているのじゃないかと思うわけなんですが、先ほど州法連邦法の話をお聞きいたしました。全体の流れが、アメリカはこの問題でどういう方向に向かっているのか、もしおわかりでしたら教えていただきたいと思います。
  64. 上村達男

    上村参考人 お答えいたします。  先ほど最初の方で、私のお話の中で申し上げましたように、確かにアメリカでは、例えばカリフォルニア州の会社法に代表されますように、そもそも資本とか法定準備金という観念をやめてしまいまして、資産とか負債とか、流動資産とか流動負債とか、そういう数字的な指標を基準にして配当規制を行うという州がございます。  ただ、アメリカの場合には、それ以前の慣行が、先ほど申しましたように州会社法は、州が税収確保のために会社法緩和競争をずっとしてまいりましたので、これで最後に勝ったのはデラウェア州でございますけれども、ですから州の会社法というのは、投資家保護とか債権者保護とかガバナンスとかという観点はそもそもないと言われてきたものでございます。その分を連邦証券法でカバーしてきたというのがアメリカの事情でございます。  オーストラリアでもカナダでも、連邦国家連邦会社法州会社法と両方持っております。ECですら各国の会社法とは別にEC会社法がございますが、アメリカは、あれだけの大規模な企業を抱えている国でありますが、連邦会社法を持っていない国でございます。そして、会社法というのは州権の問題であるという原則前提にして、そして州の会社法緩和競争をずっとやってきた。その中で、先ほど申しましたように、配当とか債権者保護について会社法は何もしてこなかったと言われてきたわけでございます。そこで、欠損があってもその年に利益があれば配当していいとか、そういうこともやられていた。その中で、それでは余りにも、資本という概念はあったわけでございますけれども、ルーズだということで、カリフォルニアのようなものが出てきたと思います。  そういう意味では、日本ドイツ的な、かっちりと完成していた資本法定準備金概念を廃棄して数字の指標による配当規制になったというのではなくて、もともとその前の、州の会社法の規制というのが非常にルーズであったということの反省から来たものだというふうに思っております。  それから、どうしても、総資産とか総負債とか、あるいは流動資産とか流動負債とか、資産が一・二五倍であるとか、そういう形で配当規制をやりますと、資産とは何か、負債とは何か、流動資産とは何か、流動負債とは何か。例えば繰り延べ資産なんか減らないことになりますし、つまり、何が資産かとか何が流動資産かということによって簡単に数字の操作ができるようにむしろなりやすいわけでございます。  ですから、そういう意味では、アメリカの場合には、カリフォルニア州でそういう観念が入ったときには、GAAPというアメリカ企業会計原則法律的な要件にまで高めてやってきたというのが実情でございますので、そこには会計原則の権威と会計監査の権威というものがあって、しかもその概念が非常にはっきりしているといいましょうか、そういう前提でないとできない。  それで、アメリカの場合には、先ほど申しましたように州レベルでのそういう配当規制というのは行われてきませんでしたので、債権者がみずから配当制限条項みたいなものを契約で締結してみずからを守るという慣行がずっとでき上がってきておりますので、そういうものがあって初めて可能な制度ではないかというふうに思っております。
  65. 木島日出夫

    ○木島委員 どうもありがとうございました。
  66. 笹川堯

  67. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  両参考人は、本当に御苦労さまです。ありがとうございました。  早速伺いますけれども、まず長谷川参考人の方にお話をお聞きしたいのですが、ことしになってから、企業の社長が誘い合って亡くなったり、あるいは、現在三月の年度末を迎えて、本当に融資をしてもらえないという悲鳴が日本じゅうに広がっているわけです。貸し渋り対策ということでこの土地評価ということが出てきて、金融機関がいわば貸し渋りをやめるということが議員立法目的としてうたわれているわけですけれども、これは果たしてどのように見通されるのか。あるいは、こういう法案が出てきて今日審議があることをもって、そういう効果があらわれているのかどうか。そこらあたりも含めて、ちょっとお願いしたいと思います。
  68. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 私は、実務というか現実の経済の方から離れておりますから推測するしかないわけでございますが、今、世の中の現象というのはへもし貸し渋りがなければ、この法律ができることによってそういうことがなければ、そういう現象も少しは薄いだろうと思うのですけれども、現実には、この法律ができるということを前提にしても世の中にはそういう悲劇が起きて、さまざまな問題があるようでございます。  この法律が、そういう貸し渋り対策に期待するということは、やはり法律をつくる人たちが、こういうものを金融機関に対して少なくとも意思表示をするとか、そういうのが必要じゃないでしょうか。そういう目的でつくったのに、金融機関が全然それとは無関係に動くということであれば、つくった意味はないわけでございますから、こういうものをつくる以上は、金融機関の方々が、こういうことによって少なくとも従来と違った対応はするという宣明があってしかるべきであろう。宣明がないときに、それは、そうなるだろうということを推察するしかないわけであります。  しかし私は、不良債権や不良資産対策がちゃんと進むということが一番肝心でありまして、そこを抜きのままに、こういう部分的なもので貸し渋り対策等が進むというようにはなかなか思えないわけでございます。これはワン・オブ・ゼムだと思うのですね。全体のことをぜひやってほしいというふうに思います。
  69. 保坂展人

    ○保坂委員 もう一問、長谷川参考人に伺いたいのですが、まさに後段述べられた、小手先のという表現がありましたけれども、今回のこういう措置で、いろいろな新聞記事等を見ていますと、リストラしなければならないことが引き延ばしされるのではないかという指摘であるとか、あるいは、私も例えば大蔵省のOBの方の不祥事などをずっと追跡していきますと、バブルの時代にもう本当に何十億というお金が木の葉のように動いて、莫大な不良債権を形成していった。信じられない思いで、決算表なんか見てみますと思うのですが、今先生おっしゃった不良資産、不良債権の問題、金融機関の根本的な体質改善ということと土地評価ということの絡みをどのように考えられるのか、もう一度お願いしたいと思います。
  70. 長谷川徳之輔

    長谷川参考人 バブルの崩壊の後、もう七年たちます。この七年間、その対応としては、不良債権、不良資産の実情を非常に不明確にしたままに、非常に不透明にしたままに先延ばしをしてきた。先延ばししてきた中で唯一やってきたのが、不良資産の債権の償却という、まさに益出しで償却しました。今回の法律改正もその益出しに絡む話でございますから益出しで償却するということだけをやってきました。肝心の、不良資産をどういうふうに流動化し、有効利用し、資金を回収するかというスキームがないままに来ました。今でもございません。  今度は金融安定化法によって対応ができますが、しかし、それでも、実はそこにあるのは不良債権の帳簿面の整理ということでございまして、あるいはそれを、だれかにそのツケを転嫁するということでありまして、本質的な流動化、有効利用の対策はいまだに見えておりません。そこがなければ、いわばこの部分が幾ら機能しようと思ってもだめだと思うのですね。だから、全体像を示した上で、この債権対策が、今度の法律が一部分こういうところに機能しますということになれば納得できるのだろうというふうに思います。
  71. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、次に上村参考人にお聞きしたいのですが、これは一年ほど前になりますけれども、ストックオプションをいわば規制緩和してやっていこうという議員立法が、これもかなりの速さで実現をしたわけですね。その後に、いろいろ商法学者の方などから、こういう拙速はよくないという御意見もいただきました。さて、そのことの効果あるいは日本経済の企業経営に与えた影響といいますか、一年振り返って、現在どのようにごらんになっているか、あるいはそういった法改正がよかったのかどうかも含めて教えていただきたいと思います。
  72. 上村達男

    上村参考人 お答えをいたします。  ストックオプションは、その後、何といいますか、そんなに使われてはいないというふうに聞いておりますが。  我々商法学者としては、当時、こういう問題については衆知を結集して、議員立法といえども、やはり専門家意見を聞いた上でやるというのが必要ではないかということで、意見を述べさせていただいたということでございます。  特に、商法というのはどうしても企業の力が強いわけでございますので、学問的な、何といいましょうか、襟を正すことがなかなか難しい分野でございまして、これが医学とかそういうところですと、勝手に議員立法なんか多分しないと思うのですが、商法ですと、やはり現実に実体経済を知っている人たちがこうしてほしいと言いますと、そこと学問的な評価とがどうも混同されてしまうといいましょうか、もっとも、商法学者がそれだけのことをやってきたかどうかと言われれば、必ずしもそうでもないかもしれません。私も、法制審の委員ではございませんので、むしろ、伝統的な商法学や証取法を批判してきた方でございますから、そうは思います。しかし、我々は、頭からいろいろなことに反対しようという気は最初からないわけでございますので、やはり一緒に英知を結集してやっていくことが必要ではないかということで、あのようなことをしたわけでございます。  ストックオプションというのは、やはりベンチャーのように、ベンチャーの場合ですと、十あれば、二つぐらい成功するかもしれない、八つぐらいつぶれるかもしれない。でも、成功したらストックオプションを上げましょうと。それから、アメリカの場合のストックオプションもやはり、取締役会経営者を首にしたり首にしなかったりという力がございますので、下手をすれば首になる、だけれども、うまくやればストックオプションで利益が上がる、そういう性格のものだと思います。  ところが、日本の場合には、何といいましょうか、どちらが馬車の御者で、どちらが馬なのか、逆転しているという傾向がありますので、馬の方が御者の方にストックオプションを配るようなことになりがちでございますので、そういう意味ではやはり、経営監視体制といいましょうか経営監督体制といいましょうか、そういうものの強化とか充実を見合わせながら、これからもその使い方については検討していくべきだというふうに思っております。
  73. 保坂展人

    ○保坂委員 もう一問お尋ねをいたしますけれども、ここで繰り返すまでもなく、昨年から四大証券全体を巻き込んだ事件、第一勧銀も、そして大蔵省であるとか日銀であるとか、大体、連日逮捕という、新聞は何か逮捕新聞じゃないかというぐらいに、いろいろな日本経済あるいはそのシステムの不明朗な部分が出ているわけです。  昨日の提案議員との質疑でも指摘させていただいたのですけれども、例えば野村証券新宿支店を舞台にした鉄砲事件というようなことも、構造が十分解明されないまま放置されているというふうに、今のところきちっと究明されていない、少なくとも証券会社は詐欺罪の被害者ということで取り扱いを受けているようだ、こういうことでは世界のマーケットの信用は生まれないのではないかということを言わせていただいたのです。  全体として日本という国あるいはその経済が、ほとんど考えられない、表向きのルールとは裏腹の、深い無法地帯というか、やみの部分に包まれているということが世界じゅうにここまで来ると周知されていると思うのですけれども、今回の自社株消却の方のこういった対策で、総合的に見て日本経済にどういう作用が生まれるのだろうかという点について伺いたいと思います。
  74. 上村達男

    上村参考人 お答えいたします。  先ほど最初に私が申し上げた中でもちょっと触れたわけでございますが、ちょっと大げさな話でございますが、やはり日本は戦後ゼロからの出発でございますので、どうしても開明君主型といいましょうか、やはり経営者それから官僚が開明君主でいられたといいましょうか、ゼロの状態ですから、何をやっても喜ばれた。  ところが、今のような企業経済規模になってまいりますと、次に何をやれば正しいのか、何をしてはいけないのかということがわからなくなってきます。そこで、やはり市場に聞くといいましょうか、そういう形になってきまして、ですから、戦後の日本の経済発展の中で、ルールとか司法とか構成とか配分とか整理とか、そういうことを言っている暇はなかったわけでございます。  その中で、司法といいましょうか、そういうものを中心にしたシステムなしにやってきましたので、相当、あらゆる部分でいろいろなものがたまっていて、それがあちこちから噴き出してくる、こういう状況だと思います。それをこれからルール型、司法型に変えていこう、こういう状況でございます。  例えば、金融機関一つとりましても、先ほど申しましたように、まず株式会社として真っ当である。これは、会社の監査制度であるとか総会屋問題であるとか。次に、証取法適用会社として立派である。これは、情報開示であるとか証取法監査。その上に、例えば銀行法とか証券取引法上の制度がかぶさってくるわけでございますので、例えば銀行の検査であるとか日銀考査というものは下にあることを前提にして、一番高度なことをやるのが本来でございます。ところが、実際には、金融機関は、例えば総会屋であるとか何だとかという、会社法レベルとか証取法レベルとか、全部やっていかなくてはいけない。そういう意味では、これからの日本は、まさに日本が持っている法的な総合力というものがすべて試されるといいましょうか、そういう状況にあると思います。  そこで、最初にちょっと申しましたように、明治時代に富国強兵だとすれば、戦後は富国強財である。これからは富国強法、やはりルールとかシステムとかそういうものが大事でありまして、もしそういうものを抜きにして何か当面の利益を得たとしましても、それは国際社会の中では別な形で全部取り上げられてしまうということになると思います。そういう意味では、日本富国強法という壁を乗り越える最初の非西欧国家たり得るかどうかというぐらいに大げさに私は考えているわけでございます。  その中では、やはり最も基本的な概念を、何百年もかけてつくってきた概念の重みといいましょうか、あるいは公正な価格形成とか、そういう抽象的な価値といいましょうか、自己資本比率とか、そういうものについて、その基本的な概念を変えることについては相応のやはり慎重な対応というものが私は求められていると。  特に、日本の場合の金融とか産業組織とか、大企業公開会社の場合には、中立、独立のシンクタンクがないわけでございます。いろいろな何とか総合研究所とか、みんな企業の調査部でございます、実態は。しかも、アメリカの場合には、国会議員の多くの方や経営者のトップも大体ロースクールを出たような方が多い。ある意味では、法的な観点を持っている人が経済を論じているということがございますが、日本は、そういう意味では法律家というのは大変ささやかな声しか出さないということもございます。  そういう意味では、世論形成をしていく上で大変小さな声でしかないわけでございますので、それだけに、やはり大事にしていただきたいというふうに思っているところでございます。
  75. 保坂展人

    ○保坂委員 大変貴重な御意見、お二人の参考人に感謝を申し上げて、私の質疑を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  76. 笹川堯

    笹川委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ――――◇―――――     午後四時二分開議
  77. 笹川堯

    笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、大原一三君外五名提出土地の再評価に関する法律案について、理事会の申し合わせによりまして、提案者の大原一三君に委員長から確認の質問をさせていただきます。  土地の再評価に関することでありますが、再評価の方法が幾つかございますが、どういう方法で再評価をするかということが政令にどういうふうに盛り込まれるかということの御説明をひとつ委員の皆さんにしていただきたい。  それからもう一つは、再評価の差額金が出ますが、この差額金は貸借対照表の負債の部に計上することについての御説明をお願いしたいと思います。
  78. 大原一三

    大原議員 いろいろお手数を煩わせて申しわけございません。  既に、我々としては政令を、これは私の仕事ではありませんで役所の仕事でありますが、準備をさせていただいております。お手元にお配りしてございますが、再評価の方法でございますが、企業もいろいろ対応があると思いますので、そこに第二条というのがございますが、書いてございますように、五つの基準を設けております。  第一は、当該事業用土地の地価公示価格を基準としていただきますということが第一点でございます。  地価公示価格の点数が非常に少ないということでございますので、さらに府県単位で発表されております、国土利用計画法施行令に基づく基準地というのがございまして、これも準用をしてください、こういうことでございます。  この二つは時価に限りなく近い価格でございます。  それから、地方税法の固定資産税の評価を基準とされる場合には、その固定資産税価格を基準に、近くに売買実例があれば売買実例が一番参考になるのでありますが、現在の固定資産税の評価は、時価に対して七掛けというのが相場になっております。これをも基準に、合理的な時価にいたしてください。  第四番目は、地価税法というのがございますが、これで評価をしていただいている方、これも「時価」と書いてあるのでありますけれども、これは相続税の評価基準の「路線価による」、こういうふうに書いてございますので、この路線価というのは公示価格の大体八掛けになっております。そういった実態を踏まえて、時価を算定していただくのも結構でございます。  それから、一番簡単な方法は、不動産鑑定士または不動産鑑定士補による鑑定評価参考にしていただきます。  以上、五つの基準でございますけれども、税制上税金をいただくわけではございませんので、これに基づいて公認会計士等と御相談をいただいて適正合理価格を算定してくださいということになっております。  それから、第二点につきましては、きのうも大変難しい御議論がございました。資本の部に計上すべきではないのかなという議論がございましたけれども、この議論はまだ余り会計上も熟していない議論のようでございまして、質問者の方とも、専門家でございますが、十分お打ち合わせをいたしました。理事会でも、それをきょうお諮りをいたして、御了解をいただいたのでありますが、一応昭和二十五年から二十九年にやりました資産評価の例にかんがみ、負債の部に計上をさせていただきたい。  これは、資本の部に入れますと、現在の法人税の実効税率が四九・九%でございますので、約半分は税金、つまり負債であります。残りの半分が資本だと。これは非常にややこしい議論をしなければなりません。それが一つ。もう一つは、この法律目的が、負債の勘定に入れても、BISの規制の対象に、資本の勘定に入れられるということになっております。ちなみに、劣後ローンは負債でございますけれども、その四五%はBISの資本勘定に繰り入れられることになっております。  そういったことを参酌しながら、この四五%ないし五〇%相当をBISの規制対象の資本勘定に入れていただく、こういうことでございまして、大変申しわけないのでございますが、お手元の附帯決議に、きのうの御議論も踏まえまして、入れていただくことに理事会で一応御承認をいただいております。  その附帯決議は、私が今申し上げたことでございますが、非常に表現が難しいことが書いてございますが、「再評価差額金の貸方計上の在り方については、税効果会計に係る考え方の進展や他の評価益に係る会計上の位置づけの展開等を踏まえて、時宜に即した取扱いとなるよう検討を進めること。」これは私はわからないのです。これは専門家の言葉だそうでございます。  言ってみれば、昭和二十九年までにやりました資産評価については、後日税金を納めてから資本勘定に入れてくださいという措置をとっております。いずれの日かこういう措置をすることになると思いますが、じゃ、税金を納めてくれと言った途端に、この再評価をする企業は一人もおりません。いきなりふやしてしまって、税金を納めろと言ったら、そんなことがあるのなら、帳面上ふやしただけで税金を取られるだけでは損だということで、この法律が、今の金融機関資本を充実して、いわゆる貸し渋り対策をやろうということが目的でございますので、税金をいただきますと言った途端にやりませんので、この法律自体が要らない、こういうことになるわけでございますから、ひとつそういったことで処理をお願いをしたい。というのも先例がございますので、どうかひとつよろしくお願いをいたします。  以上が私の説明でございます。
  79. 笹川堯

    笹川委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  80. 笹川堯

    笹川委員長 まず、大原一三君外五名提出土地の再評価に関する法律案について議事を進めます。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。木島日出夫君。
  81. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました土地の再評価に関する法律案に対し、反対討論を行います。  本法案は、自民党第四次国民経済対策としてまとめられた緊急対策の一つでありますが、金融経済不安の現況をつくった財界、大企業責任を棚に上げ、金融機関への三十兆円の公的資金導入とともに、これと相まって大企業利益のみを図ろうとするものであります。マスコミでさえ、市場原理かなぐり捨てとか、ツケ回し、将来不安とか書き立てております。帳簿をわずかばかりいじって、あたかも資産がふえたかのごとくみなして、貸し渋りの解消に役立つと言っても、だれが信用できるでしょうか。まさに当面の金融危機を乗り切るための、真の解決策を糊塗するびほう策と言わなければなりません。  反対の第一の理由は、商法原則にかかわる変更であるにもかかわらず、財界の要望に従って、三月期決算に間に合うようにということで、法制審議会の議も経ず、極めて短時間、不十分な審議で成立を図ろうとしている点であります。  法案は、十三兆円もの公的資金を投入して、銀行等の優先株等の購入措置や資本準備金を取り崩しての自社株取得・消却措置とセットで実施されるものであり、銀行等がみずからの格付を引き上げ、株価収益率を引き上げることをねらって、一方では自己資本増強でBIS規制対策を進め、他方では自社株消却で株価対策も進めるもので、極めて御都合主義的なものと言わなければなりません。  第二に、法案は、我が国の会計原則の原価主義の臨時特例措置として、事業用の土地評価を時価主義に変えてよいとするものでありますが、再評価企業の選択に任せていますから、会社資産状態がかえって外部から見えなくなる、すなわちディスクロージャーの点で後退のおそれが大いにあるという点であります。  本日、再評価基準を示す施行令案が大蔵省から提出されました。五つの評価の方法が示されましたが、そのうちの一号から四号まではいずれも「合理的な調整を行う」と、いわゆるさじかげん一つで再評価額が決められることが示されております。また、五つの基準のうちどの基準を選択するかは当該企業が任意に選ぶことができるという御説明も受けましたが、こんないいかげんな基準で再評価が進められる、とんでもないことだと言わなければなりません。  第三に、法案では、再評価の方法、再評価差額金について貸借対照表の資本の部に載せるかあるいは負債の部に載せるか、根本的な事項について政令にゆだねております。審議の中では大変あいまいでありましたが、ただいま大蔵省から政令案が提示され、負債の部に計上するとのことでありますが、これは商法上、企業会計上大きな疑念が残されたままであることを指摘しておきたいと思います。  以上述べたように、本法案は、財界、大企業の要求に従って、金融関連法案の一環として、国民意見も聞かず、議員立法という形で強引に押し通そうとするもので、その内容も到底法律としての体裁を整えておらない、断じて賛成するわけにはいかないということを申し述べまして、私の反対討論を終わります。  以上であります。
  82. 笹川堯

    笹川委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  83. 笹川堯

    笹川委員長 これより採決に入ります。  大原一三君外五名提出土地の再評価に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  84. 笹川堯

    笹川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  85. 笹川堯

    笹川委員長 この際、本案に対し、八代英太君外六名から、自由民主党、民友連、平和・改革、自由党、社会民主党・市民連合、新党さきがけ及び笹山登生君の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。北村哲男君。
  86. 北村哲男

    ○北村(哲)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     土地の再評価に関する法律案に対する附     帯決議(案)   本法の施行に当たっては、政府は次の事項に  ついて格段の配慮をすべきである。  一 事業用土地の再評価に当たっては、帳簿価   額と時価の乖離を是正することにより、企業   経営健全性の向上に寄与するとともに、い   わゆる貸し渋りを是正し、金融円滑化が図   られるよう法の趣旨及び内容を周知徹底する   こと。  二 商業帳簿の適正な処理及び管理・保存が行   われるよう指導するとともに、ディスクロー   ジャーの一層の推進を図ること。  三 公正な会計監査と監査の的確性が確保され   るよう指導を強化すること。  四 再評価差額金の貸方計上の在り方について   は、税効果会計に係る考え方の進展や他の評   価益に係る会計上の位置づけの展開等を踏ま   えて、時宜に即した取扱いとなるよう検討を   進めること。以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。  以上でございます。
  87. 笹川堯

    笹川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  八代英太君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  88. 笹川堯

    笹川委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下稲葉法務大臣。
  89. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  90. 笹川堯

    笹川委員長 次に、太田誠一君外七名提出株式消却手続に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。木島日出夫君。
  91. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました株式消却手続に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案に対し、反対討論を行います。  法案は、近年の大量のエクイティーファイナンスの結果、株式需給バランスが崩れ、株式市場が低迷する一方で、会社内に必要以上の資本準備金が積み立てられている。そこで、公開会社について、資本準備金の一部を自己株式の取得・消却の財源に充てることができる特例を認めると述べています。これは財界、大企業の身勝手な言い分と言わなければなりません。原因となった大企業責任を放置して、改めて企業利益に奉仕する手法は認めるわけにはいきません。  反対の第一の理由は、商法根幹にかかわる改正なのに、法制審議会にも諮らず、十分な審議もせずに強引に成立させようとしている点であります。  自己株式取得を中心とする商法改正は九四年に行われましたが、基本六法の一つであることから、法制審議会で慎重審議され、認められたのは比較的限定的なものでした。ところが、三年後の九七年、いわゆるストックオプション制度の導入とあわせ、自己株式の取得・消却をさらに緩和する自己株消却特例法がつくられました。このとき、法制審議会の審議を回避するため議員立法という手法がとられ、しかも短時日で国会を通過させたことに、多くの商法学者から極めて強い批判が起こったことはまだ記憶に新しいところであります。  本改正案は、より一歩進めて、資本準備金の取り崩しという商法根幹にも触れる内容を含むものでありながら、またしても議員立法という手法が採用され、法制審議会の審議を回避したもので、手続的にも大きな問題があり、到底賛成するわけにはいきません。  第二は、三十兆円の銀行支援二法に続く大銀行への奉仕策という点であります。  すなわち、三十兆円のうち十三兆円もの財政資金で優先株などを買ってもらいながら、そのことで銀行株が下落することを恐れ、自社株を消去して発行株式を減らすというもので、全くの御都合主義と言わなければなりません。このことは、優先株や劣後債の買い取りを通じて注入された公的資金が自社株買いの原資に回ることを意味し、金融機関の体力増強のためにここまで公的資金を使うのかという国民の批判を改めて呼び起こすものと思います。  第三は、商法では自己株式の取得は原則として禁止されており、極めて例外的に、限定的に認められてきましたが、その財源を拡大して資本準備金の一部を充てることを認めるとした点であります。  現行法では、資本準備金利益準備金から成る法定準備金は、資本金に組み入れるかあるいは損失補てんのためにしか使うことができないわけであります。そもそも法定準備金は、企業健全化会社債権者の保護の立場から積み立てられており、これを取り崩すことは、株式会社資本維持・充実の原則に反し、まさに商法根幹部分に穴をあけるものと言わなければなりません。  第四は、改正特例法の施行後、最初株主総会までは、取締役会の決議だけで、定款の変更をしなくても自社株が取得できるとする特例すら設けて、来る三月期決算への配慮を加えるという本当に虫のいいもので、事実上、取締役会の意のままに自己株取得・消却を実施できるようにするという点であります。  第五は、自己株式の取得規制を緩和することによる株価操作は、いかに証券取引法で新たな規制の規定をつくろうが、インサイダー取引を助長するおそれのあるものと言わざるを得ないという点であります。バブルの崩壊で泣いた一般大衆投資家犠牲を放置したまま、さらに同様の犠牲を生み出す危険を増すものと言わなければなりません。  以上、反対理由といたします。
  92. 笹川堯

    笹川委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  93. 笹川堯

    笹川委員長 これより採決に入ります。  太田誠一君外七名提出株式消却手続に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  94. 笹川堯

    笹川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  95. 笹川堯

    笹川委員長 この際、本案に対し、安倍基雄君外六名から、自由民主党、民友連、平和・改革、自由党、社会民主党・市民連合、新党さきがけ及び笹山登生君の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。上田勇君。
  96. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ただいま議題となりました附帯決議案について、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     株式消却手続に関する商法特例に     関する法律の一部を改正する法律案に対     する附帯決議(案)   本法の施行に当たっては、政府は次の事項に  ついて格段の配慮をすべきである。  一 法定準備金制度の適正化を期し、自己株式   の取得・消却による資本の効率化を促進する   ために法改正の趣旨及び内容を周知徹底し、   法の円滑な施行を図ること。  二 株主債権者等の保護並びに企業経営の健   全化を図るために、ディスクロージャーを十   分行うよう指導に努めること。  三 自己株式の取得・消却に際して、相場操縦   やインサイダー取引による弊害が引き起こさ   れることのないように監視体制を強化すると   ともに、不正取引に対しては証券取引法を厳   格に適用すること。以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  97. 笹川堯

    笹川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  安倍基雄君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  98. 笹川堯

    笹川委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。下稲葉法務大臣。
  99. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。     ―――――――――――――
  100. 笹川堯

    笹川委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 笹川堯

    笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  102. 笹川堯

    笹川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十四分散会