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1998-03-17 第142回国会 衆議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十七日(火曜日)     午前九時二分開議 出席委員   委員長 笹川  堯君    理事 鴨下 一郎君 理事 橘 康太郎君    理事 八代 英太君 理事 与謝野 馨君    理事 北村 哲男君 理事 熊谷  弘君    理事 上田  勇君       太田 誠一君    奥野 誠亮君       木村 義雄君    下村 博文君       谷川 和穗君    谷畑  孝君       中川 秀直君    横内 正明君       渡辺 喜美君    枝野 幸男君       左藤  恵君    佐々木秀典君       福岡 宗也君    漆原 良夫君       若松 謙維君    安倍 基雄君       谷口 隆義君    木島日出夫君       保坂 展人君    園田 博之君  出席国務大臣         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君  出席政府委員         法務政務次官  横内 正明君         法務大臣官房司         法法制調査部長 山崎  潮君         法務省民事局長 森脇  勝君         法務省刑事局長 原田 明夫君         大蔵大臣官房審         議官      大武健一郎君  委員外出席者         議     員 大原 一三君         議     員 上田  勇君         議     員 保岡 興治君         議     員 太田 誠一君         議     員 濱田 健一君         議     員 杉浦 正健君         議     員 与謝野 馨君         議     員 園田 博之君         法務大臣官房参         事官      菊池 洋一君         大蔵省証券局企         業財務課長   三國谷勝範君         大蔵省銀行局銀         行課長     内藤 純一君         参  考  人         (預金保険機構         金融危機管理審         査委員会事務局         次長)     畑山 卓美君         法務委員会専門         員       海老原良宗君     ————————————— 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   漆原 良夫君     若松 謙維君   安倍 基雄君     谷口 隆義君 同日  辞任         補欠選任   若松 謙維君     漆原 良夫君   谷口 隆義君     安倍 基雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  土地の再評価に関する法律案大原一三君外五  名提出衆法第七号)  株式消却の手続に関する商法特例に関する  法律の一部を改正する法律案太田誠一君外七  名提出衆法第六号)      ————◇—————
  2. 笹川堯

    笹川委員長 これより会議を開きます。  大原一三君外五名提出土地の再評価に関する法律案議題といたします。  まず、提出者より趣旨説明を聴取いたします。大原一三君。     —————————————  土地の再評価に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 大原一三

    大原議員 ただいま議題となりました土地の再評価に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  本法律案は、現下の金融経済情勢にかんがみ、法人が所有している事業用土地の再評価に関し必要な事項を定めることにより、主としていわゆる貸し渋りを是正し、金融円滑化に資するとともに、法人が所有する事業用土地帳簿価額時価乖離を是正し、企業経営健全性向上に寄与することを目的とするものであり、その主な内容は、次のとおりであります。  第一に、株式会社監査等に関する商法特例に関する法律第二条に規定する株式会社である、いわゆる商法監査特例会社及び信用金庫、労働金庫信用協同組合農業協同組合など系統金融機関は、商法第三十四条第二号の規定にかかわらず、その所有する事業用土地について、時価による評価を行い当該事業用土地帳簿価額を改定するところの再評価を行うことができることとしております。  この再評価を行う場合には、その所有するすべての事業用土地について再評価を行わなければならないこととしております。  第二に、再評価は、この法律施行日から施行日以後二年を経過する日までの期間内のいずれか一の決算期において行うことができることとしております。  第三に、再評価を行った法人は、当該評価を行った事業用土地の再評価額から当該事業用土地の再評価直前帳簿価額を控除した金額を再評価差額金として、貸借対照表に計上しなければならないこととしております。  第四に、法人が、再評価を行った事業用土地売却等により処分した場合には、当該法人は、当該事業用土地に係る再評価差額金を取り崩さなければならないこととしております。  第五に、再評価を行った事業用土地の再評価後の決算期における時価合計額が、当該事業用土地帳簿価額合計額を下回った場合には、その差額貸借対照表に注記しなければならないこととしております。  以上が、本法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  4. 笹川堯

    笹川委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 笹川堯

    笹川委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北村哲男君。
  6. 北村哲男

    北村(哲)委員 民友連北村でございます。どうも御苦労さまでございます。  まず、私は、この法律案目的についてからお聞きしたいと思っております。  この法案の「目的」に、「金融の円滑に資するとともに、企業経営健全性向上に寄与する」と、ただいま提案者も言われましたけれども、具体的にはどのような効果をねらったのかというと、そこでもはっきり言われましたが、貸し渋り対策であるというふうに言っておられます。まさにそれがこの本来の目的ではないかと思われるのですけれども、本来の企業会計原則からいうと、このような改正は必ずしも必要ではないのではないかと私は思っております。すなわち、企業会計原則は、本来、企業経営健全化あるいは透明性を確保することのために存在するのであって、短期的な金融貸し渋り対策目的にするには余りにも便宜的ではないかと思うからであります。  したがって、企業健全性向上に寄与するというのであれば、広く会計学専門家あるいは法制審議会、さらに会計制度審議会などの幅広い論議を前提にする必要があるのではないかと思います。拙速な議員提案では、世の人々はほとんど、一体何のために、本当にこれが貸し渋り対策になるのだろうか、その内容を知らぬままにでき上がった法律を見て、そういう疑問が起こることも確かではないかと思います。  本来的には商法や税制の本則で定めるべきと考えるので、あえてこの目的について質問する次第でございます。
  7. 大原一三

    大原議員 委員がおっしゃった議論、当然だと私も思っております。商法固定資産に対する評価原則、本来どうあるべきかという議論は、いろいろの御議論があると思います。いわゆる時価主義をとるべきであるという時価主義会計議論も朝野にあることは、先生承知のとおりであります。  ただし、世界の潮流を見ますと、土地については取得原価主義というのが原則でございまして、この点について、特に金融機関自己資本充実の見地から先鞭をつけたのはECでございまして、ECの方は、土地について時価会計をとることを妨げない、これは、任意時価評価して結構でございますとやりましたのは、金融ビッグバンに備えての対応であったと私は解釈しております。  そういう意味で、大原則論先生のおっしゃったとおり今後御議論を願わなければいかぬのでありますが、当面の貸し渋り対策の一環として、まず金融機関を重点に置いて、そして特に日本長期保有土地についての時価取得価額との乖離が非常に大きい、そこに着目して、金融機関自分の持てるものはお出しください、いわゆるいろいろの自己資本対策をやる前にそれをお出しいただいたらどうだろうかということを、ヨーロッパの先例にかんがみてヒントを得たわけでございます。  したがって、先生のおっしゃるような商法の今後の固定資産に対する時価会計の問題、取得原価主義のありようというような問題は、これは、私も余り専門家ではございませんし、十分そういった専門家の御議論の要るところだと思いますが、いかにもこれは、政策的に、当面的に貸し渋り対策の是正のために着目した臨時法でございまして、その点御理解をいただけたらありがたいなと思っております。
  8. 北村哲男

    北村(哲)委員 ただいま最後に、まさに政策的かつ臨時的なものというふうに言われましたけれども、そうであるがゆえに、果たしてそれが本当に今の経済対策に役立つものかどうかということも、検証、あるいはそのあたり調査ということも必要かと思うのですが、再評価を実施すると見込まれる金融機関は一体どのぐらいあって、その効果はどのぐらいあると見込まれるのでしょうか。  一方、帳簿自己資本比率向上しても、金融機関資産圧縮をとめないという見方もあり、実際、本当に貸し渋り対策になるか否かは疑わしいという批判もあるようです。  例えば、欧米優良銀行自己資本比率は、八%という基準はあくまで最低のラインであって、現実は一〇%以上あるという報告もあります。すなわち、八%では不十分であるのではないかという国際的認識があるということを言っている人もおります。したがって、日本においても、八%は確かに帳簿上クリアできても、なお一〇%以上を達成することにきゅうきゅうとして、自己資本比率アップをさらにクリアしょうとして貸し渋りがとまらないのではないかという批判があるわけですね。現実に、そのあたり調査データというものを前提とした立法であるのか。  報道によると、ユニチカとか伊豆急土地評価をやろうとしている、しかし肝心の金融機関はどこからも声が聞こえてこない。先日も、経団連からある立法の要請が来られました。これは株式の方で、株式自己取得については強い要望がある。土地についてはどうですかと言ったら、さあ知りませんというふうなつれない返事をされるのですよ。  一体、どういうところがら要望があり、そしてどういうデータに基づいてこういう立法をされたのか。その全体的な面とあるいは個別的な面について、おわかりであれば御説明を願いたいと存じます。
  9. 大原一三

    大原議員 この法案は、特定の団体から要望があって企画したものではございません。先ほどおっしゃった、後で御議論になる株式消却の問題は経団連等々から要望があったものだと聞いておりますが。  参考にいたしましたのは欧米の例でございまして、イギリスが、サッチャーさんが政権をとられてからビッグバンをおやりになるその直前に、カンパニーアクトを改正されて、金融機関自己資本充実のために、八六年でございましたか、時偶会計の導入を任意にお認めになった。この際は、金融機関だけではございませんで、オーバーオール一般企業もカバーするという仕組みカンパニーアクトを改正された。また、九二年にはドイツが、金融機関だけについて自己資本充実を図ろうということで、金融機関のみ、あそこはユニバーサルバンクですから、証券会社銀行が一緒にやっているわけでありますから、銀行証券について、日本流に言えば、資本充実をやるために限定をした再評価をやらせた、こういう実例がございます。  先生御指摘のように、日本銀行というのは、私も最近の事例等を見ながらしみじみ思うのでありますが、護送船団で、自分の自主的な意見を余りお持ちでないのですね。大蔵省の言うなりに飼いならされて、ついてきたという面が多分にありまして、自分でいろいろ御意見を出すということはほとんどない集落ではないのかな、私は正直言ってそう思っております。したがって、うちの銀行はこれをやれば利益になるけれども、隣の銀行のことを考えるとかわいそうだなとか、そういう集団意識が非常に強くて、自主的な意見をお出しになるところではないようであります。  したがって、今、実証の数字はどうなっておるかというお話でございますけれども、正直に言いまして、四千近く金融機関対象がございます。農協が二千二、三百、それから漁協が千三百ぐらいございます。それを加えると金融機関の数は四千ぐらいになるのでありますが、我々が数字的に一応大蔵省を通じて把握しろと、あるいはまた経済紙等を通じて評価差益がどれぐらい出るかというのを検証してみますと、いろいろ数字がございまして恐縮でございますが、大蔵省に調べさせると、都市銀行十九行で三兆六、七千億ぐらい、それから民間の調査によりますと、これは日本経済新聞でございますが、五兆八千億ぐらいの評価益が出る。それから地方銀行については、アバウトでございますが、二兆円ぐらいの評価益が出る。  こういう数字が一応出ておりまして、その割合を何%、これは補完的な自己資本でございますから、いずれいわゆるバーゼルが言っているティア2になるわけでございますけれども、ドイツの場合は四五%、土地の再評価益は算入しておる、イギリスの場合は一〇〇%、ティア2に算入しておるという実態がございます。何割入れるかは各国の金融情勢金融政策とのバランスで決まることだと思います。仮に、日本が今とっております株式、この評価益は無条件にティア2に算入しているわけでございますが、これは貸借対照表にも何も明示してない、慣例上入れているわけですが、これが四五%の算入を認められております。  したがって、さきの数字に四五%ないし五割を掛けますと、外国支店を持っている、いわゆる八%の自己資本比率を決めておる、都市銀行中心でございますが、それのところではティア2の分子が一つふえますと、百分の八ですから十二・五倍の貸出枠がふえる。これは頭の体操でございまして、現実にふえるかどうかは、貸したり貸さなかったりするのは金融機関の裁量であります。それから、地方銀行の場合等は、四%をとっているところは、半分入れますと一兆円でございますから、一兆円の二十五倍の二十五兆円ぐらいの貸し渋りがなくなる。  これはマキシマムの話でございまして、つぶれかかった会社に、自己資本がふえたからといってじゃぶじゃぶ金を貸す金融機関もいないと思うのでありまして、これはマキシマム。とにかく土俵を広げてやろうということでありまして、現在国会を通過させていただいたいわゆる三十兆円の金融景気対策、これは金融機関マネーフローはふえます、キャッシュが行くのですから。私の方は一銭もマネーフローはふえません。ただ、その効果は、いわゆる金融機関からお金を借りる人のサイドマネーフローがふえていけばいいなというのがこの法案のねらいでございます。  細かい数字等は以上申し上げた程度のことしか、農協等はなかなか把握ができませんで、私の知っている農協の方から電話がありまして、いっこれをやるのですか、そして、できるだけ私たちもこれによって自己資本充実しないと非常に今経営が苦しいというお話も聞きましたが、そういったところも末端の金融機関にはあるのかな、こう思っております。
  10. 北村哲男

    北村(哲)委員 ただいまの数字からだけ言うと夢のような話なんですけれども、実際どれくらいあるかは、これもまた先のことだと思うのです。  この法律は、先ほどの御説明の中でも、主としていわゆる貸し渋り対策を是正しということを言われました。すなわち、金融機関対象である。ただいまの御説明でも、まさに金融機関だけを対象にしておられますね。  ところで、この法律は、金融機関以外にも適用しておられる。すなわち五億円以上の、特殊監査法人を必要とする企業対象としておられるということ。確かに、時価主義というのは世界流れでもある。そうであれば、これが緊急時限的なものであるというならば、なぜ金融機関だけにしないのかということ。一方、一つの世界流れに沿ってやっておられるというのであれば、なぜ一部だけではなくてすべてを対象にしないのかということをまずお聞きしたいと思います。
  11. 大原一三

    大原議員 私も最初は、先生のおっしゃるとおりドイツ方式銀行だけに、金融機関だけに限ったらいいじゃないかという議論をしておりました。  ところが、党内でも法務商工等の部会がございまして、そこで広く議論をいたしましたところ、通産省サイド経団連サイドから、非常にまじめな企業もあるのですよ、バブルに浮かれて新しい土地を買いあさったのじゃなくて、しっかりした企業経営の理念を持っている企業もあるので、せっかく商法特例を決めるのなら、最初はあの人たち税金まであると思っていたのです。特例は決める必要はなくて、法人税法本法において税金は非課税になっておりますので、そういった誤解も多少あったのかなという感じも持っていますが、ぜひ入れてくれという御要望がございましたので、これも、要するに時価取得価額乖離をずっと会計上担保していかなきやならぬのでございますので、一定規模以上の法人についてしか、個人等については将来どうなるかわかりませんが、本法目的趣旨に照らして、上場会社の中の、おっしゃった商法監査特例法人にだけ適用してあげたらどうかなという結論になったわけでございます。
  12. 北村哲男

    北村(哲)委員 私は、今の御説明、本来の目的には必ずしも合わないものを、そういういろいろな要望から入れられたということ、これは、確かに大きな意味では正しい姿ではないかという点が一面あるのですけれども、しかし、この法律が臨時的あるいは緊急的なものであるという目的であって、しかも時限的であるということから見ると、かえっておかしな現象を起こしてきている。それがまさに先ほど私が申しましたユニチカであり伊豆急であり、本来目的としないものがそれを使おうとしているということ。これがかえって将来的な混乱を起こすのじゃないか。あるいは、別の意味ではそれが中心になって正しい姿になっていくかもしれないのですけれども、その辺の展望は私はまだないのじゃないかという気がします。  そこで、この点について、将来的な展望として、資産評価方法を一体どうするのかという展望とかあるいは計画はあるのだろうか。今回の措置は、まさに将来の時価会計を見据えたものなのか、あるいは、二年の時限立法としておられますけれども、二年を経過した後は一体どうされるのかという点について、どのようにお考えなのでしょうか。
  13. 大原一三

    大原議員 この法律で、特に法務委員会と御関係の深い企業会計の大原則を修正しようというような大きな野心はいささかも持っておりません。大変ささやかな願いでございまして、現在の貸し渋り対策一助だということで御理解をいただけたらありがたいな。  ただし、イギリスにおきましては、一九八六年にカンパニーアクトを改正して、任意に、企業として希望するもの、強制ではございません、については、商法の大原則取得価額主義でありますが、時価会計を導入することにやぶさかでないというECの全体の考え方がそうなっているのですね。それから、アメリカも最近、私は専門家ではございませんが、企業会計流れを見ますと、時価主義というようなことが言われておる。ましてや日本においては、取得価額時価との差が余りにも大きい地価について、やはり時価主義を出して、企業実態投資家債権者に明瞭にすべきであるという議論も一方においてあることは承知をいたしております。  しかしながら、将来の日本時価主義会計をどうすべきかという議論は、これから幅広い御議論が必要ではないのかな。私は専門家ではありませんが、そういう印象を持っております。
  14. 北村哲男

    北村(哲)委員 確かに正直にそのようにおっしゃっていただくことはとても好感の持てることなんですけれども、今、土地については、まさに時価主義をここに一時的であれ導入しようとしておる。しかし、逆に、金融資産である株については原価法を認めているという点があります。  こういう一種の御都合主義というふうな見方をし、そして、これが政府一種粉飾決算を奨励しているのではないかという、誤解になるのかどうかわかりませんが、そういうふうに批判をする人もあります。そういうことはかえって、国民だけではなく海外信用を喪失するおそれはないのか、あるいは日本全体の信用にかかわるのではないかということを危惧する面もあるわけです。しかも、一方的かつ便宜的なルール変更海外市場不信感を増幅するのではないかというふうな批判も見当たるわけですけれども、そのあたりについては提案者はどのようにお考えでしょうか。
  15. 大原一三

    大原議員 その議論は主として、ECヨーロッパサイドではなくて、アメリカの方から出るのではないのかな。  アメリカは、私、余りよく知りませんが、日本のように狭いところで経済が密集した地域におけるほど時価取得価額との乖離が大きくないのではないのかな。企業が非常に流動化しておりまして、MアンドAとかそういった場合には恐らく時価評価をするのではないのかな。  そういった問題も考えられるし、さらに、時価会計という議論も主としてアメリカから起こっておることを考えますと、いわゆる粉飾決算というよりは、むしろ、先生そうはおっしゃいましたけれども、逆に、ある日本一流銀行の丸の内の地価が、これはこういう場所で申し上げていいかどうかわかりませんが、新聞によりますと、千六百平方メートルがたったの四百万円、坪七千何百円なんですね。そのすぐ近くの国鉄の本社が坪八千二百万円、一万数千倍。そういう乖離があることも事実でございまして、銀行さんは、先ほど先生おっしゃいましたけれども、都市銀行は特に、地方銀行でもそうでございますが、この法律が通ったら早速評価をかえたいという意見をお持ちになっておることを、協会筋からも私お聞きいたしました。地方銀行もおやりになるだろうと。  これらの銀行他業禁止になっておりますので、いわゆるやたら事業用以外の土地を買収した企業ではありません。一般企業というのは、どちらかというと、バブルのときに土地を拡幅されたり立派な店舗をおつくりになったりしておりますが、金融機関の場合は、本店のほか支店設置等についても限定があるし、さらに他業禁止でございますから、不必要な土地を持っていない、だから長期保有土地、こういう仕組みになるのではないのかなということに着目いたしまして、再評価を積んで、少なくとも、外国がやっているように、貸し渋り対策一助にしたらどうかなというのが発想の出発点でございます。
  16. 北村哲男

    北村(哲)委員 いずれにしても、企業会計ルール変更であることは間違いないのですけれども、これが任意ですよね。あるところはこの方法をとってもいいし一あるところはとらなくてもいいということで、現象としてはかえって、非常に立派な経営基盤のしっかりしたところはそんなことをする必要はない、ボーダーすれすれで危ういところはそうすることによってかさ上げができるというふうな現象というのが当然考えられますけれども、まず、任意という方法を採用されたのはどういう点からされたのでしょうか。
  17. 大原一三

    大原議員 日本も再評価の経験を既に持っておりまして、昭和二十五年にシャウプ勧告でございまして、それに基づいて再評価をさせなさい、それは土地並びに償却資産、ねらいは償却資産にございました。いわゆる戦前の時価価額のままで減価償却をしても再取得価額が調達できないから、資本充実のためにやりなさい、こういうことを二十五年に法律をつくってやらせたわけでございますが、なかなかおやりにならない。企業利益のないところへ幾ら減価償却したって損金参入できないのですから、これはやりっこないのです。  そういうことで、二十六年もこれを一年延長、二十八年にもう一年延長してやらせたのですけれども、なかなかおやりにならない。したがって、これは、マッカーサー司令部はもうそのころなかったわけでありますが、要するに上場企業について、二十九年の法律で、資本充実法という名前に体裁を変えまして強制をいたしたわけであります。  これは、ただし、減価償却資産についてだけ、五千万以上の資本金のものについて強制をしたという経緯がございます。それ以外のものは全部任意になっておりまして、土地もその間ずっと任意評価。それから、EC任意評価しなさい、こういうことになっておりまして、強制になっておりません。したがって、それぞれの企業の御都合というようなことが優先されておりまして、強制の掲記を入れたのは戦後、昭和二十九年の再評価上場会社だけでございまして、それも、償却資産だけであったことも事実でございます。  以上のようなことから、強制をやりますといろいろひずみも出てくるのではないのかな、こういう商法原則がまた、たまたま取得価額主義をとっているものですから、これを強制するというのはいかがなものかなという議論もあったのではないかと私はそんたくをしております。
  18. 北村哲男

    北村(哲)委員 その任意と強制化というのは、私自身もよくわからないので御説明を願ったわけですけれども、ある人に言わせるとこれは非常にまずいのではないかと言われるし、ある人に言わせると必要なのではないかと言われるし、私自身もはっきりどうするかという展望は今の段階では持っておらないのです。  ところで、非常に素朴な考えなのですけれども、今までも、マネーフローは関係ないというふうなお話がありました。再評価をしても、これは単なる帳簿上の操作であって、企業実態は変わるわけではないわけですね。しかも、単なる帳簿の書きかえであるということは当事者が一番よく知っているわけですけれども、そういうところがら、貸し渋り対策の実質的な効果があるのだろうかとつい思うのですけれども、そのあたりは率直に言って、いや大丈夫だというふうな答えになるのでしょうか。
  19. 大原一三

    大原議員 帳簿上の書きかえだけであることは事実でございます。ただ、日本金融機関が八%すれすれというところがかなりございます。私は、このBIS規制というものが、本来の議論をさせていただくならば、何で八%なんだ、何で四%なんだという議論からもう一回やるべきではないのかなと。ドイツは四五%入れ、イギリス土地の再評価を一〇〇%入れ、ドイツは、実は正直言いまして、貸借対照表に明記をしておりませんで、ずるいやり方で、注記をしている程度でございますのでバーゼルからクレームがついたというようなこともあるのではないのかなと。  いずれにしましても、帳簿価額変更は、名義上の変更でございますが、八%すれすれの金融機関にとっては、これが仮に四五%入れられるとすると、大体〇・五ぐらいの自己資本のアップになりそうでございます。その辺の数字実態を見ないとよくわからないのでありますが、頭の体操で計算しますと、全部入れていただいたとして、〇・五%程度。ヨーロッパの場合はこれをやりまして、たった〇・一%程度しか自己資本の増加になっていないということは、日本土地の含み益がいかに大きいかということがその数字を見てもわかるわけでございまして、〇・四%上乗せされるということは非常に大きな自己資本かさ上げになるのではないのかなということでございます。  八%というと、ことしから始まる早期是正措置で、八%を切ったら立入検査をするぞと。地方の場合は、四%を切ったら立入検査をする。地方だけは一年間延ばしましたけれども、四%のところだけは。これは一年間延長したぐらいで済む話かなという感じも持っておりまして、名目の変更でございますが、申し上げたような点からいくと、実質的な金融機関のゆとり、余裕というものが上昇するのではないのかな、こう思っております。
  20. 北村哲男

    北村(哲)委員 先ほど申しましたけれども、実際にこの法律を適用しようとして意味があるのは、自己資本比率四%ぎりぎりあるいは八%ぎりぎりの金融機関等だと思うのですけれども、これが単に帳簿上の操作で自己資本比率を上げることを認めれば、金融機関の自発的なリストラの意欲を減退させることにならないだろうか。そして、かえって企業企業競争力強化の妨げになるのではないかという危惧があります。  今政府を挙げて、あるいは企業のリストラをしょうという動きの中で、それをかえって、片方は不完全なまま、片方から別の手を差し伸べるようなことになってしまうのじゃないかというふうに思うのですけれども、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。
  21. 大原一三

    大原議員 お説のとおりだと思います。  私、この問題を提案いたしましたのは、九二年の、初めて緊急対策をやろうというときに御提案を申し上げたのでありますが、実は、いろいろ調べてみますと、銀行の給料が一般製造業の二倍とか、重役の報酬もえらく高い、そんなところへこれを入れてやったらリストラが進まないのではないかという議論がございまして、私は提案をしないということにしたわけでございます。  ところが、現在の金融情勢を見ますと、もうその貸し渋りというのは黒字倒産を生むまでひどい状況になっておる。八%ぎりぎりだから貸し渋りをして、これを現金化して資本充実をしない。いわゆる八%ラインを切れば早期是正措置をとられるぞというような一方のおどしがきいておるために、八%、四%という数字がひとり歩きいたしまして、金融機関の恐怖症を誘っているのではないのかなと。  現状はそういうことで、以前においては、私も、先生のおっしゃったとおり、こんなところで使っていい言葉かどうか知りませんが、銀行が緩ふんになるのじゃないか、そんなことしたらリストラが進まないのじゃないかという議論もございまして御遠慮申し上げたのでありますが、現状からいうと、特に、借り手にとって背に腹はかえられない状況が顕在化しておって、黒字倒産等々が頻発をしておるという実態を見たときに、これは二年間やるわけでございまして、その間に任意で御評価をしてください、あと、いつでもだらだらできるという制度ではありませんので、そういった緊急対策として本措置の導入をお願いしたわけでございます。
  22. 北村哲男

    北村(哲)委員 確かにそういうお話があっただろうし、あり得る話だと思います。  そこで、公的資金を導入する金融機関には、あるリストラ計画が強制されるということを言われておりますね。同じように、この再評価を行う金融機関には、厳格なリストラ計画の作成を義務づけるようなことをすることはいかがなものでしょうか。
  23. 大原一三

    大原議員 本来なら、これは金融機関が自主的におやりになるお話だったと思うのですね。もう少し余裕のあるときにこういう議論をしていただいて、抜本論から検討していただくべきではなかったのかなと私も思っておりますが、どうも背に腹はかえられぬ状況が現在のことになっておる。ただ、その際にリストラを要請するということがこの法律でできるのかなというような議論もございまして、一方、キャッシュをおやりになる金融特別法の関係においてはクレームをつけられるのでございましょうが、特にリストラを要請するというので……。  特に農協や、それから漁協というのは貸し渋りが起きていないのです。余っているのですよ。むしろ私は、二五%の員外利用というのをこの際広げていただいて、三〇%とか四〇%にして中小企業へ回していただいて、そっちの方の貸し渋りを緊急措置としてやるべきではないのかな、員外利用二五%の範囲内に切っているというのはおかしいなというようなことも、農林省に議論を吹っかけた経緯もございますが、貸し渋りはないのですね。  ですから、おっしゃるように、農協も二千二十幾つあるのでありますが、その中の八十四がもう既に危ないのです。これはもう、合併をして、そしてリストラをしょうというところに追い込まれております。そういった戦列に入りそうなのは、これで救われて、やれやれというところは、中には出てくる可能性もありますね、小さな金融機関でありますが。そういったことも、確かにおっしゃるとおり、この法律には盛っておる。  ただ、やはりねらいはあくまでも貸し渋り対策でございまして、ねらいの対象は、現在の八%、四%を救済することによって極端な貸し渋りをなくすることができないのかなというのが本法のねらいだ、こう御理解いただけたらありがたいなと思います。
  24. 北村哲男

    北村(哲)委員 ちょっと観点を変えますけれども、この法律で、貸借対照表時価主義をとろうとし、そして損益計算書は原価主義というふうに書きますね。これは会計原則からいったら矛盾だと思うのですけれども。本来、この二つのものは一体のものであって、両方見てその企業実態を知ろうとするのです。したがって、統一した会計原則に基づかなければならないのは当たり前なのですよね。しかも、この法案は二年の時限立法としているのですが、一たん時価主義にしたものは、これは永久にその矛盾を抱えたままになるのだと思うのですけれども、二年たった後は一体どうなってしまうのだろうか。大きな、恐らく半永久的に続く企業は、その矛盾を抱えたまま続いていくのだろうか。  そうなると、一つ、二つならいいのですけれども、多くの場合だったら、貸借対照表あるいは損益計算書というのは、債権者たちが見て企業実態を知ろうとするその有力な資料なのですけれども、そのあたりがねじれているわけですから、非常におかしなことになるのではないだろうか、矛盾を抱えたまま将来に禍根を残してしまうのではないだろうかという気もするのですけれども、その辺はどのようにお考えなのでしょうか。
  25. 大原一三

    大原議員 そこもまた、私、企業会計専門家ではありませんので、専門家面して申し上げられる自信はないのです、きょうはたくさんの専門家の方がいらっしゃるわけでありますから。  申し上げますけれども、実は、昭和二十五年から、先ほど申しました二十九年の資産評価法におきましても同じようなことが起きているわけでございます。いわゆる再評価任意にしたところは、再評価差額を積み立てたまま法人税は取らない、こうなっております。実はそのときに、再評価税というのがございまして六%を取った経緯があるのです。それは何かというと、法人税の延納分だという考え方ですね。法人税を納めていないから六%ぐらい納めろ。そのころの法人税はたしか表面税率で三五%ぐらいだったと思うのですね、それにかわる税金として六%を取った経緯がございます、それがあって再評価をしなかったという面もあるのですよ。  昭和四十年に、商法の改正に伴って、法人税法で、未実現の利益は課税しないという条文を入れてくれているのです、たしか二十五条と三十三条だったと思うのでありますが。再評価をいたしましても、未実現の利益ですから法人税の課税はしません。再評価損を出しても、未実現の損だから法人税法上の損金算入はいたしませんという規定を入れてくれておりまして、おかげさまで税金の方はそれで以前のような問題がない。  そこで、実は正直に申しまして、昭和三十二年でございましたが、自己資本の組み入れを認めているのです。六%の再評価税を納めたら自己資本に組み入れて結構でございますよという措置をとっているのですね。そこで一遍、これも任意でございまして、強制でございませんから、やった企業は、おっしゃったように乖離がなしに終わったのです。そのかわり、税金を納めなければなりませんよと。そうでない企業は、なお現状も残っておるという実態がございます。  したがって、今回の規定におきましては、明瞭に貸借対照表に載せなさい、そうして再評価差額と、それから取得価額というものを明記しておきなさい、税金はいただきませんが、売ったときは法人税を納めていただかなければなりませんということで、取得価額を永久保存するという仕組みにしているわけでございます。  それから先生御指摘の御懸念でありますが、例えば阪神大震災なんかの場合のように、土地が地割れをして値段が半減したというような場合は、損を貸借対照表に計上する、それから地価が下落をした場合は、貸借対照表の注記でもってその下落を明示しておきなさい、こういったことの細かい操作ができるようにしてあります。しかし、将来、法人税を納めていただいて、自己資本に本源的に算入するというようなことも、この再評価の二年後の実態を見ながら考えることもしていいのではないのかな。  つまり、三五%ではございません、現在、四九・九から三%、今度下がりますので、その分を納めていただければ、残りの分、一〇〇%の資産評価差益のうちから法人税相当額を引いた分を自己資本に算入していただくというようなことができる時代が来れば、これは再評価のやり方は実態を見ないとわかりませんので、昭和三十二年にやったような措置をこれについても導入すれば、先生のような、永久に乖離の御懸念がなくなるのではないのかなということも考えております。
  26. 北村哲男

    北村(哲)委員 ただいまの説明の中にも相当部分入っておったことなのですけれども、端的に言って、再評価したものがなぜ課税されないのかという話を方々から聞くのですけれども、その点について、もう端的に答えてください。
  27. 大原一三

    大原議員 これは大蔵省の主税局が来ているとえらいいいのでありますが、私はそれを最初知らなかったのですよ。税金特例をつくると、これはえらい法律になるなと、法人税を課税しないとか。よくよく調べてみましたら、私が主税局におったころは課税だったのです。四十年に未実現の利益と未実現の損失は課税しないということになっていまして、いや、これはありがたいなと。それから、固定資産税はどうだという、これも時価になっておりまして、こちらの方も時価と書きますのでそちらの課税関係も起きないということで、税金の方はフリーパスだなと。  何だったら主税局に説明を。これも私、聞いたけれども、余りはっきりしないのです。
  28. 大武健一郎

    ○大武政府委員 お答えさせていただきます。  本法案におきまして、今御説明ありましたように、再評価が行われた場合には、再評価益に相当する金額を再評価差額金という形で貸借対照表に計上しなければならないことになっております。  課税上は、今お話のございましたように、法人税法の二十五条並びに三十三条におきまして、再評価時の課税は行われず、再評価後も再評価前の帳簿価額が引き継がれるということになっております。そのような場合、将来再評価を行った土地を売却などをして処分した場合に、その時点で、再評価前の帳簿価額をもとにして計算される譲渡益の課税を行うことになっているということでございます。
  29. 北村哲男

    北村(哲)委員 理屈はわかりました。  ところで、次の質問なんですけれども、再評価によって、ROAすなわち総資産利益率、あるいはROE、自己資本利益率が低下することになるようですけれども、これはいわゆる財務格付ということには悪影響を及ぼさないのだろうか。すなわち、銀行のROEは下がって非効率になるんだという批判がありますけれども、そのあたりについてはどのようにお考えでしょうか。
  30. 大原一三

    大原議員 私も最初はそう思っていたわけでございます。そこで、戦後の実態、経理、会計処理、それから今回のことも、これは一貫して同じものにしなければいかぬのですが、仮勘定へ積んでいるのですね。仮勘定ということは負債勘定でございまして、ストレートには資本に入らない。バーゼルの方は、準備金等は入れているのですね。例えば、劣後債というのは債権債務でございますけれども、これも入れているのですね。自己資本に四五%入れて結構だということを言っているのです。だからそこは、バランスはバーゼルとは別の角度からやってくれているのでありますが、おっしゃるように、貸借対照表の上で負債勘定へ立てるようになると私は思いますので、当面はあれに関係はございません。  ただ、さっき私が申しましたように、何年か後にそれは自己資本に算入するという事態が来れば、法人税を納めていただいて、その残りを自己資本にするという事態、これはいつ来るのか、そういうこともわかりませんけれども、もしそういう事態が来れば自己資本に入りますから、おっしゃるとおり、自己資本利益率は下がらざるを得ない。その御心配をされる方が、よくこの法律をごらんにならないで、特に金融機関以外のところがら、経団連等から御質疑が来ておるように思います。だから、とりあえずは関係ないのですよということを申し上げているわけでございます。
  31. 北村哲男

    北村(哲)委員 この再評価益ティア2に算入されるということですが、ティア2はティア1と同額までしか算入できないということですね。それで、ティア1は限りがあって、都銀などでは既に、ティア1とティア2とが同額に近い数字になっているところが多いと聞いております。したがって、ティア2が幾らふえても頭打ちになって、自己資本比率はそれこそ頭打ちになってしまうということでそれほどの効果は上がらないという批判もありますけれども、この点についてはどのようにお答えでしょうか。
  32. 大原一三

    大原議員 お説のとおりでございます。本源的な自己資本、つまりティア1と、補完的な自己資本とは同額でなければならぬ、こういうことでございますが、今度優先株を出しますと、十三兆円、そのうちの二兆円ぐらい出そうでありますが、これはティア1がふえてしまうのですね。そうしますと、その分すき間ができる。  ただ、都市銀行等を調べますと、私も細かくチェックしたわけではございませんが、一、二行がティア1とティア2が同額になっておる。あとはすき間がありますよ。そのすき間がどれぐらいあるのだと聞きましたら、約一兆数千億あると。しかし、それも株価とのバランスでございまして、株が一万七千円に上がってしまうと、今度はそちらの方が埋め合わせの先に立つのか、これと競合すると思うのですね、株もティア2でございますから。したがって、それとの兼ね合いもあると思います。  ただ、地方銀行都市銀行を合わせますと、大体、地方銀行にすき間が非常に多いのです。都市銀行にすき間が一兆数千億、地方銀行には五兆円か四兆円あるのじゃないかと思うのですね。ですから、地方銀行の、さっき申しました評価差額二兆円、これは一〇〇%入れてもティア2はすき間がいっぱいございますと。東京の場合は、仮に六兆円、五兆八千億という数字が民間調査で出ていますが、六兆円としますと、その半分としても三兆円でございますから、すき間がない。一兆七、八千億、二兆円に近いと思ったのですが、詳しい数字は、必要であれば後でまた説明してもらいますけれども。  そうするとどういうことになるかというと、これも大蔵省に計算させたのでありますが、株が下がりますと、二兆三千億のティア2が減るのだそうであります、仮に一千円下がると。一万七千円が一万六千円になりますと、都市銀行十八行に二兆三千億すき間ができるのだそうです。だから、今後の株価の動向によっては、この二兆円ぐらいのものはすぐに埋め合わせがきくと。つまり、株価とのバランスなんですね。  したがって、バッファーとして繰り入れる余裕がなければ、株が下がったときにその埋め合わせができるように、いつでも出動できるバッファーとしての役割は、現在満杯になっておる一行か二行の都市銀行、十九行の中の一、二行というものはリザーブをしておいていただく。二年間で評価していただくわけですから、三年目はもうだめですよ、今やっておかなければ損だよということをはっきりさせてリザーブさせていただいて、株が下がったときに埋め合わせをしていただいて、貸し渋りをその分だけなくするように努力してもらうという仕組みになるのではないのかな、こう思っております。
  33. 北村哲男

    北村(哲)委員 実際、実務的で一番大きな問題なのは、これは土地の再評価金融機関みずからが行うことになると思うのですが、そうすると、土地時価というのは今はっきり言って基準がない。形はあります、固定資産評価額あるいは路線価、あるいは公示価格はあるのですけれども、実際それはほとんど通用していない。それからまた、売買価格についてもほとんど乱高下というか、まあ高はありませんけれども、どんどん下がったり非常に読みにくい状態であるのですけれども。  そうすると、金融機関自分評価するときに高目に評価してしまうおそれもあるわけですね、自分のためですから。そのあたりで、その評価基準は一体どうするのだろうか。あるいは第三者である不動産鑑定士を公に任命して、それに公正な評価をやらせるとか、そういう実務的なところで相当混乱、あるいはむちゃというか、ずるいやり方も出てくるのではないかと思いますけれども、その辺の信頼性の担保というのはどのようにお考えなのでしょうか。
  34. 大原一三

    大原議員 一応この法律では、評価の基準は時価と書かせていただきますが、先生承知のように、時価とは何ぞやという議論は非常に難しいのでございます。固定資産税も時価と書いてございますし、それから、今度凍結をされるのでありますが、地価税も時価と書いてありまして、地価税の時価は相続税の評価基準、路線価による、相続税の評価基準は何ぞやということになりますと、売買実例、つまり公示価格の八割程度、固定資産税は七割程度というようなことが実際にございます。将来は固定資産税も時価に持っていらっしゃるのだろうと思うのですが、段階的に上げている最中であります。いずれにしましても、時価というものの定義は非常に難しい。  そこで、この法律税金をいただくわけではございません。税金をいただくのでしたら、やはり厳格な評価方法を政令等で明示をしていかなければならぬのではないのかなと思うのですが、おっしゃいましたように、過当評価というのは商法で禁止されておりますし、これは商法原則上  いくのではないのかな。  それから、これは妙な法律でございまして申しわけないのでありますが、時価を最高限度とするというのですね。最高限度ですから、その内輪だったら幾らでもいいというような解釈も出てくるわけでございまして、恐らくおやりになる方は実際は時価の最高価格で評価をされると思うのです。その場合に、その時価を明示してくれないかというような議論が、私のところには来ませんけれども、大蔵省あたりには来ているようであります。  それで、政令で時価というものをはっきりさせるという形で書いてあげた方が親切だなという気持ちを私も、そういう説明を聞きながら、持っておりまして、例えば路線価の二割上乗せ部分を最高限度とか、そういった形のものをつくってあげた方が親切なのかなという気持ちも持っております。  時価と書かせていただくことは、申し上げたように、ほかの法律とのいろいろのややこしいでこぼこがございますので、どっちにしたらいいのですか、固定資産税をとるのですか、いやいや地価税の路線価をとるのですか。地価税は一万五千社がお納めになっていまして、なれていらっしゃるのですね、ほとんどのこれに対処する企業は。例えば、不動産鑑定士の評価、これも基準になるというようなことで、そのために監査特例法人という形をとらせていただかないといかぬなという面もそこにも一つあるわけでございます。
  35. 北村哲男

    北村(哲)委員 はっきり言ってよくわからないのですね。何か時価と言ってもはっきりしないというのは、すし屋の値段表みたいで、アワビとかエビとかは時価と書いてあってわからぬというようなものですね。しかも、税金を取らないから厳格でなくてもいいというのがいかにも不安ですね。では、幾らでもいいのだというふうなことになりかねないのです。  しかも、一番問題なのは、この法律だけではないのですけれども、今後時価主義をとったときのその時価の定め方、特に不動産の価格の定め方はいろいろな評価方法があるわけですから、それが確立してない中で、こういうふうな法律ができるということは、私は非常に不安な面も多く含んでいると思います。  時間がなくなりましたので、この程度にしたいと思います。どうも長い時間御苦労さまでございました。  これで質問を終わります。
  36. 笹川堯

  37. 若松謙維

    若松委員 平和・改革の若松謙維でございます。  私も議員立法に関する質疑は初めてですので、大原先生、ひとつよろしくお願いいたします。そして、私の次に、私の尊敬する先輩でもあります谷口先生が質問を続けられます。そういった流れの中で、私もかなり実務的な質問に集中させていただきますけれども、ひとつ御答弁をお願いいたします。  当初の予定の順番を若干変えて、先ほど北村委員の御質問ですか、時価評価時価とは何ぞやという、二条の二項のところですけれども、ひとつ提案者に私なりに提案したいのです。  当然これは政令対応になるわけですけれども、こういう時価については、例えばいわゆる専門家による、具体的に不動産鑑定士による評価、または公示価格による評価等を指す、さらにその場合には、その評価方法をきちんと注記させる、そういったところが政令に記帳されるべきではないか、そんなふうに思ったのですけれども、提案者としてはいかがですか。
  38. 大原一三

    大原議員 私もそう思っております。時価とは、正直言いまして公示価格なのですね、現在の制度は。公示価格でございますけれども、田舎の都市などに行きますと、公示価格の点が四つか五つしかございませんで、そこへはぐれるという形になりますので、公示価格を基準に、不動産鑑定士の評価を基準にしていただくというようなことになるのではないのかな。  また、この委員会のそういう御議論をいただきながら、政令もしっかりしたものを決めていかなければならぬ、こう思っております。
  39. 若松謙維

    若松委員 さらに、これから今回の法案に対しまして、さまざまな細かい規定につきましては政令等で対応するという仕組みになっておりますけれども、その際に、例えばこういう会計専門家であります公認会計士協会とか、また企業会計審議会とか、そういったところとの意見交換というのは当然なされるべきだと考えておりますけれども、この点についてはいかがですか。
  40. 大原一三

    大原議員 実は、そこまで手を回す暇がございませんで、大変申しわけないのでありますが、法務省との間では、これは議員立法でやりますよということを通告してあるわけでございまして、その辺のことはいろいろ御意見をお聞きしなければいかぬのでございましょうが、ひとつ今後の対応ということで御了解をいただけたら当面の改革に間に合うな、こんなふうに思っているわけであります。
  41. 若松謙維

    若松委員 そうしますと、政令、今後の決める形ですけれども、私もちょっと経験がないのでよくわからないのですが、こういう法案ができて、政令はそれぞれ大蔵省なり法務省が関係するわけですけれども、その政令を作成するに当たっても、やはり提案者との意見交換というのはなされる、そういう理解でいいわけですか。
  42. 大原一三

    大原議員 提案者は私初め与党の皆さん方でございますから、その政令をつくるときによく御相談を申し上げたい、こう思っております。
  43. 若松謙維

    若松委員 ぜひその政令の際には、そういった専門家の方々と打ち合わせをしていただきたいと思います。そうしないと、いざ監査証明の段階でかなり悩むのですよ。  卑近な例ですと、特に金融銀行並びに証券業、有価証券の低価法ですね。これは時価も選択適用できるという形なのですけれども、会計処理を変更する場合に、正当な理由から正当な理由じゃないとこれは認められないのですね。それじゃ、低価法が当たり前、それを原価法に戻す。それは、商法趣旨原価法ですけれども、さらに保守主義とか安全性とかいうところで低価法をあえて強制させている。そういうことを考えますと、果たして低価法をやっているところが原価法に戻すのが正当な理由かというと、理屈づけにかなり苦しむのですね。そういうこともぜひ頭に入れていただいて、今後のさらに政令化に関して、専門家との打ち合わせばくれぐれもよろしくお願いいたします。  それでは、今回の土地評価差額金ですけれども、これを貸借対照表に計上するというのは法案に出ておりますけれども、それじゃどこに記載すべきなのか。お話を聞きましたところ、資本と負債の間ぐらいかなという法務委員会に所属する方の御意見もあったのですけれども、結論から申し上げさせていただきますと、当然、大原委員がこういう形で提案されたのも、やはり、国際会計基準等で土地の再評価を計上するという国際会計基準が既にできている、そこら辺の事情をしんしゃくされたろうと思うのですね。  そうしますと、国際会計基準の十六号にはこういうふうに記述されておりまして、「資産帳簿価額評価替えの結果増加した場合、その増加額は評価替剰余金として」、この場合には再評価差額金ですね、「株主持分に直接貸記されなければならない」。株主持ち分というと資本の部です。ということで、かつ他の諸国の例をとっても、この土地の再評価差額金、これはすべて資本の部に計上されているのですね。私は、それは政令で今後対応になると思うのですけれども、そうすべきだと考えますが、提案者のお考えはいかがでしょうか。
  44. 大原一三

    大原議員 さっきもお答えしたので首尾一貫しないかもしれませんが、最初私もそんな考え方でスタートしておりまして、いろいろ議論してみますと、どうも前の再評価のときも資本の部に載っけていないのですね。仮勘定としておいて負債の部に計上されておるという解釈はありました、昭和二十五年から二十九年の資産評価法はですね。そこで、三十二年に、六%の法人税の延納分を納めた場合、延納分というのはおかしいのですが、再評価税を納めた場合には資本勘定へ組み入れて結構ですという特別の措置をやっているのですね。それで、私も、将来はこれは宙ぶらりんにしておかないで、そういった措置が必要になるのではないのかなという、前の前例を見ながらさように考えております。  外国の例、余り詳しく私知りませんので、何なら、大蔵省から来ておりますので、ひとつこれは御議論いただけたらありがたいなと思います。
  45. 若松謙維

    若松委員 大原先生、長年法律の御専門家でもありますし、ずっと戦後の流れを見ているのですけれども、会計的に見ますと、その昭和二十年代にとられたやり方というのは大きく変更されているのですね。  特に、これは、昭和五十七年四月二十日に企業会計審議会から出た、いわゆる負債性引当金以外の引当金ということで、こういった利益留保性というのですかの表示について、取り扱いについてどうしたらいいかということで、従来は、確かに、特定引当金という形でこういう利益留保性の引当金というのは負債の部に、負債があって特定引当金という形で、負債でもないのだけれども資本でもないみたいな形があったのですけれども、この五十七年以降、こういう特定引当金については一切認めないという形で大きく実務が変わって、かつ解釈も固定されたのですね。ですから、この流れだけは変えていただきたくない、歴史の逆行をしていただきたくないということなんですよ。  ですから、もし負債の部ということを今お考えであれば、提案者としてこの流れを御理解いただいて、ぜひ資本の部に入れていただきたい。これが、実は、きのうも同業者十数名に電話かけたのですけれども、全員が絶対にそれは負債の部はだめだと言っているのですよ。提案者、ひとつ資本の部ということを明言していただきたいのですよ。
  46. 大原一三

    大原議員 今まで事務当局、私の提案非常によく勉強してくれまして、ここまでこぎつけられたのでありますが、今の先生の御議論ですね、今のところは、とにかく仮勘定へ、負債の部だという議論をしておる段階でございまして、これから政令をつくるわけでございますが、そういった先生の御意見、先ほど審議会等にも聞けと言われた理由が那辺にあるのかなと思ったら、今のお話聞きながらわかったことでございまして、十分検討をさせていただきたいなと思います。
  47. 若松謙維

    若松委員 今後、そういうことで政令対応なので、実は、企業会計の観点からちょっと大蔵省に、今後どういう対応になるのか聞きたいと思います。
  48. 三國谷勝範

    ○三國谷説明員 お答えを申し上げます。  再評価差額金でございますが、これは、再評価が行われました場合の土地売却等を仮定した場合に発生いたします将来の利益、そしてまた、これに対します潜在的な納税債務といったものから成り立っていると考えられます。  そこで、戦後の資産評価法におきましては、このときに貸借対照表の貸方に直接計上する方法がとられたわけでございますが、実は、このような方法による場合を除きまして、これまでのところ、評価差額を貸方に直入する場合の会計上のルールというのは確立していないということもございます。  ただ、諸外国の中には土地評価差額資本に計上する基準を有する国もございますけれども、ただ、この場合でも、一般的にこの場合税効果会計というのを用いまして、繰り延べ税金債務を負債に計上した上でその残額を資本の部に計上している、こういった例が一般的かと思います。  我が国でございますが、現在のところ、個別と申しますか単体の財務諸表におきまして税効果会計が導入されていないという点が一点ございます。二点目でございますが、我が国の場合、比較的に資本の取り扱いがりジッドでございまして、資本の部に直接計上できるものは言うなれば資本取引に限定されているといった事情がございます。もう一つは、資本の部に計上した場合に、仮に再評価した土地が将来売却された場合に、そのときには納税債務分というものが発生いたしまして、その分資本が減少してしまう、こういった問題も抱えているところでございます。  このような状態でございまして、この再評価差額金につきましては、将来の利益と納税債務がまだ分離されていないような、いわば中間的な状態にある、こういう位置づけになるのではないかと考えているところでございます。このような中間的な勘定でございますが、これは、資本への計上が限定的となっている我が国の現行の会計処理からは、直ちにこれを資本の部に計上することは困難でございまして、負債の部に計上されることになるのではないかというぐあいに考えております。  なお、今後の問題でございますが、現在、その税効果会計の問題につきまして種々検討を重ねているところでございます。もう一つ、今、金融商品の時価評価の問題につきまして企業会計審議会においていろいろな検討が行われているところでもございます。将来、このような問題に対します、いわば時価評価に対します会計処理が変遷してまいりますと、それに応じまして再評価差額の処理のあり方、こういつたものにつきましても所要の再調整の検討、こういつたことがあり得るというぐあいに考えているところでございます。
  49. 若松謙維

    若松委員 先ほど課長の方から税効果会計お話をいただきましたけれども、基本的に、今回のこの土地評価というのは、いわゆる収益取引じゃなくて資本取引なんですね。貸借対照表だけの調整ということで、損益計算書を通らないから、基本的に、例えば税効果会計で前払い税金をやらなくちゃいけないとかということは必要ないんですよね。税効果会計というのは、例えば、一つの収入がありますと、実現利益が出ます。それに対して、本来、実効税率を掛けてこのくらいが法人税率ですと。ところが、それが非課税なので、実際の税金とかなり差が出る。そこら辺、いわゆる税金の期ずれというのですか、これを調整するのがかなりの大きな目的で税効果会計という形でやるわけですけれども、これは資本取引なので、そこまで考慮する必要はないと思うんですね。ですから、税効果会計では考慮する必要はないわけですよ。  かつ、この再評価ということは、先ほどの特定引当金、これはやらないというのがいわゆる世界に対する日本会計原則の公約なので、これを資本の部にまた再度設けるというのはどう考えてもおかしいと思うんです。やるのだったら、私たち専門家の観点からすれば、商法上は、資本金があって法定準備金があります。これは商法計算書類規則に出ているわけですね。商法計算書類規則の法定準備金の中に、資本準備金があって利益準備金がある。あえて言えば、その第三の法定準備金という形でこの再評価差額金を設ける、これが一つの考え方。もう一つは、資本金があって法定準備金があって、ここに入れないで、次は本当は剰余金になるわけですけれども、剰余金と法定準備金の間に再評価差額金という形で第四のカテゴリーを設ける、こういう対応の方が本来あるべきじゃないかと私は確信するんですよ。専門家が見てもそう答えるんですよ。ちょっと課長、ぜひこの場で考え直していただきたいんですよ。
  50. 三國谷勝範

    ○三國谷説明員 いずれにいたしましても、この再評価差額金というものを貸方に直入するというケースにつきましては、これは会計理論上は過去にそんなに例がないわけでございまして、この前例といたしましては、戦後の資産評価法の例があるわけでございます。  今回、政策的な判断からこういった再評価が行われるわけでございますけれども、この再評価差額金につきましては種々の見方があろうかと思います。一つには、それは評価自体が上がっているのではないかという点。他方、諸外国のいろいろな例を見ましても、やはり納税分あるいは税効果分というものが混然一体となっている分、そういったことを種々考慮する必要がありますとともに、我が国の場合、資本の取り扱いというのは比較的リジッドである、そういったこともいろいろ総合勘案しなくちゃいけない。さらに、先ほど申し上げましたけれども、実際問題といたしまして、これが将来売却された場合には、逆に資本はその段階で、納税差額分は減少してしまう、そういった実際的な問題も考慮する必要があろうかと思っております。  なお、こういった評価、税の問題につきましては、今後金融商品の問題あるいは税効果の問題、こういったものの検討が進んでまいりますと、それに応じまして、先ほど先生からもお話がありましたが、いわば再調整ということもあり得るというぐあいに考えております。
  51. 若松謙維

    若松委員 大原先生、今回の再評価差額金ですか、これは、実際に貸借対照表を見ますといわゆる負債の部と資本の部しかないわけなんですね。負債の部というのは、いわゆる会社の所有者以外に対する債務ですよね。それは従業員であったり、給与の未払い金とか、あとは買掛金であったり借入金であったり、そういったいわゆる対外的な債務。ところが、資本の部というのはやはり株主の持ち分なんですね。じゃ、この土地評価益というのは先ほどの第三者に対する持ち分なのかというと、そうじゃなくて、やはり株主のものなんですよ。実際に今のMアンドAとか会社を丸ごと取引するというところでこういう慣行がどんどんふえてきて、いわゆる会社時価情報も必要になってきた。そういう流れから考えると、やはり課長、資本の部、株主持ち分が素直な考え方でしょう。私はそう思うのですよ。提案者、どうですか、今の議論を聞かれて。
  52. 大原一三

    大原議員 非常に難しい議論のようでありますが、ただ、この中へ、約半分近い法人税を納めなければならぬ部分というのが入っているのですね。だけれども、その三菱銀行の本店の土地を売るという事態は永久にないと思うのです。永久にないのですが、しかし負債であることは間違いないので、売っちゃったら課税される、こういうことでございますから、その辺をどう解釈するのかなというのは、専門家お二人の御意見のすれ違いのような感じがいたしますので、まだ政令はすぐではありませんので、この辺は今後よく検討をさせていただきたい、また先生の御意見も十分しんしゃくしながら考えてみたい、こう思っております。
  53. 若松謙維

    若松委員 税法上でも、たしか法人税の七十四条ですか、確定決算主義という考え方がございまして、あくまでも債務というのはいわゆる確定したもの、債務の確定、こういつたところで損金にも認識するし、貸借対照表としても認識する、こんな考え方があるわけですけれども、この再評価差額金というのは、あくまでも、言い方は悪いですけれども、自己都合でやっているわけなんですね。ですから、そういうことであれば、先ほどの確定というところは余り意味がない、二の次三の次、これが実態だと思うのですね。だからこそ、これについて負債という認識は、実務感覚から見てかなり離れているんじゃないかな、私はこう思えて仕方がありません。  ぜひそれを認識していただいて、政令を決められるときに、先ほどの繰り返しになりますけれども、専門家の方々、やはり会計実務というのは、これは特にアングロサクソンの会計の先進国へ行きますと、法務省にも縛られていない、当然大蔵省にも縛られていない。そういった形で、会計のしっかりとしたオーソリティーがいろいろな原則を決めて、それを商法が追認し、税法が追認する、こういつた流れがもう世界の潮流ですので、それは政令対応のときに決してお間違えにならないでいただきたい、それを強く念願させていただきます。
  54. 三國谷勝範

    ○三國谷説明員 これから政令の策定に入るわけでございますが、一言申し上げますと、例えば、中間的なものにつきましては、我が国の場合に比較的、資本に計上しないものは負債にする。例えば、これは例が違いますが、新株引受権付社債のワラント相当部分とか、いろいろな例がございます。そういった現実の我が国の資本、負債の実務的な取り扱いといったものも十分勘案して検討しなければならないというぐあいに考えております。
  55. 若松謙維

    若松委員 わかりました。また、課長とは親しく議論させていただく関係だと思いますので、引き続き私も、議員の立場、そしてまた勉強不足ですけれども専門家の立場としても、これから議論を続けさせていただきます。くれぐれも、ぜひ専門家の団体の御意見をお忘れなく、よろしくお願い申し上げます。  そこで、こういう議論がこの法務委員会でされましたので、ぜひ、税効果会計というところ、先ほど課長もお話を出されましたけれども、せっかくの機会ですから触れさせていただきたいと思っております。  これは提案者には余り直接関係がないと思いますので特に政府委員の答弁になると思うのですけれども、今回の平成十年度の税制改革で、特に引当金、退職給与引当金、賞与引当金、これの特に退職給与引当金に関しては、税法の限度額、今まで要支給額の四〇%まで認められていたわけですけれども、それがたしか平成十四年度までに二〇%に減らされるということになっております。  先ほどの法人税法の七十四条になりますと、あくまでも確定決算主義という日本の慣行がまだあって、確定決算主義の趣旨というのは、いわゆる確定した取引、債務にしろ債権にしろ、それを帳簿に記帳して、それがあくまでも法人税法上申告すべき金額だという考え方ですから、いわゆる法人税法上の課税所得と通常の企業会計利益とはそんなに差がない、これが確定決算主義の根底にあるわけなんですね。  ところが、先ほどの退職給与引当金、実際、要支給額というのは、万が一会社がリストラ等で解雇しなくてはいけないとすると、それは実際は確定した債務なんですよ。恐らくそうじゃないと答弁をしょうとされていると思うのですけれども。そういうことで、やはり会計的にはこの要支給額で本来なら計上すべきだというところを、税法上では二〇%しか認めないとすると、数十%、実際に会計数字と税法の数字と差があるわけなんですね。  そうすると、今の税制ではこの確定決算主義というのはかなり原則が崩れております。だから、そういう状況だからこそ、今連結ベースでは税効果会計が認識されておりますけれども、私は、こういうこれからの税制を採用する以上、単体にも個別財務諸表にも税効果会計を導入すべきだと思いますけれども、お考え、いかがですか。大蔵省でしょうね。
  56. 三國谷勝範

    ○三國谷説明員 先生御指摘のとおり、税効果会計につきましては、既に連結には導入の方針が出ているわけでございますが、単体につきましても昨年六月の企業会計審議会の方で商法との調整を進める必要があるという提言をいただいているところでございます。  私どもも企業会計の立場からこの問題につきましては真剣に検討していく必要があると考えておりまして、現在、法務省と共同で商法企業会計の調整に関する研究会、事務的な研究会でございますが、これを行っているところでございまして、この研究会におきまして税効果会計の問題につきましても検討させていただいているところでございます。  なお一点、先生先ほど退職給与引当金の問題も御指摘になりましたが、そういった視点、あるいはまたその問題につきましては、今企業年金の問題も企業会計審議会で検討しておりますので、そういったものの中での取り扱い、そういった税効果会計というものは、いろいろな意味で、今問題になりましたような視点も含めまして、私ども真剣に検討してまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  57. 若松謙維

    若松委員 それでは、課長、いわゆる日本の税効果会計を連結財務諸表にまず最初に適用しました。個別はまだしておりません。ところが、欧米を見ますと、大体、税効果会計は税効果会計としていわゆる会計実務があって、それは当然連結にも個別財務諸表にもともに適用されるというのが常識であって、反対に、連結だけ適用して個別財務諸表には適用しないというのは世界にはありませんよね。そういう認識はいかがですか。
  58. 三國谷勝範

    ○三國谷説明員 御指摘のとおり、世界各国、単体でも税効果が入っておりまして、そういった過程で今回の再評価制の問題につきましても比較的そういった調整が容易であるといったこともあろうかと思っております。  御指摘のとおり、連結が先行してはございますが、単体の導入につきましては、これはまた一方で商法の解釈等あるいはそういったものとの調整が必要かと思っておりますので、これにつきましても本当に真剣に取り組んでまいりたいと考えております。
  59. 若松謙維

    若松委員 その真剣というのが、私は前向きに考えていただいていると理解しております。  今度は法務省の方にお聞きしたいのですけれども、最近いわゆる商法学者というのですかが、この税効果会計について、いわゆる商法上否定していない、こう意見を述べられる学者の方がかなりふえていると思うのです。その点についてはいかがですか。
  60. 森脇勝

    ○森脇政府委員 税効果会計につきましては、その会計基準が整備されるということになりますと、企業会計においてもこれが採用されるという関係になると思います。  そうなってまいりますと、商法上は、公正な会計慣行をしんしゃくする、こういう立場になっておりますので、その点から税効果会計商法上の会計基準としても認められる、こういうことになってくるのだろうというのが大まかな姿ではないかというふうに認識いたしております。
  61. 若松謙維

    若松委員 整理しますと、じゃ、大蔵省が認めると法務省も認める、そう理解していいのですか。ちょっと今わかりにくかったので。
  62. 森脇勝

    ○森脇政府委員 商法上は、公正な会計慣行をしんしゃくするという立場でございます。したがいまして、この公正な会計慣行に該当してくればよろしい、こういうことでございます。
  63. 若松謙維

    若松委員 わかりました。  そうしますと、この税効果会計はやはり会計情報としては当然必要な、会社にとって、利害関係者に大変有益な、有用な情報なので当然求められるべき情報であると。それに対して、一般的に行われているから私は公正な会計慣行だと認識します。どうですか。
  64. 三國谷勝範

    ○三國谷説明員 実は先般、企業会計審議会の総会がございまして、その中に第一部会というのがございますが、第一部会は、できるだけ早期に税効果会計の問題を審議するという方向を既に打ち出していただいておりまして、私ども、企業会計審議会ともどもこの問題を研究してまいりたいと考えております。
  65. 若松謙維

    若松委員 時間がかなり迫ってまいりましたけれども、ぜひこの税効果会計、先ほど言いましたように、もう税制がかなり確定決算主義から乖離しておりますので、早急な措置というものを要望する次第でございます。  提案者はいらっしゃらないのですけれども、これは法務省にお伺いします。  ちょっと先ほどの土地評価に戻るわけですけれども、これから資本の部、負債の部、どうするか検討されるわけですけれども、資本の部という形で第四のカテゴリーなりをもし設定するということであれば、当然商法計算書類規則もしっかりと対応しなければいけない、そう考えております。ぜひそこら辺も配慮していただきたいと思うのですけれども、いかがですか。
  66. 森脇勝

    ○森脇政府委員 これもまだ政令でどういう形になるかということがはっきりいたしておりませんので、計算書類規則上どうなるかというのは判然としない部分がございます。  ただ、資本の部に計上するということになってくれば資本準備金的な扱いになるのかなという感じがいたしますし、それから、負債の部に計上ということになりますと、これは他の特別法上の引当金または準備金に倣った扱いになるのかな、こういうスタンスでおります。
  67. 若松謙維

    若松委員 わかりました。  とにかく私は、五、六回繰り返しておりますけれども、やはり会計的に見れば資本の部が妥当、ぜひそれを商法計算書類規則にもしっかり対応していただきたい、それが私の主張であります。  そして、これは提案者にお聞きしたいのですけれども、今回のこの議員立法に関して、私自身やはりその御努力に敬意を表する次第でございます。  それで、今回、いわゆる二年間の時限立法という形で、一回きり再評価を認める、こういう内容になっておりますけれども、万が一この景気低迷が長期化した場合に、これを延長するというお考えをお持ちでこういう規定をつくられましたか。それはいかがでしょうか。
  68. 大原一三

    大原議員 実は、昭和二十五年から二十九年の再評価法を見ましても一年ぽっきりになつちゃっているのですね。それで、それをやらなかったからまた一年ぽっきり、また一年ぽっきりと。それでやらなかったから強制するというような仕組みが、前例がございまして、前例にこだわるわけではないのですけれども、やはりこの法律趣旨目的がとにかく当面の貸し渋り対策ということに重点を置いておりますので、これをずるずるやりますと、おやりにならないかもしれない。だから、期限を切った。したがって、金融機関の実行度合いを見ながらこれは判断すべき問題ではないのかな。それから先の延長ということは当面考えていないわけでございます。
  69. 若松謙維

    若松委員 これは意見を求めるというよりも、私自身の考えを述べさせていただきたいのですけれども、今回のこの土地評価、いわゆる固定資産の再評価というのは、どちらかというとイギリス中心とする英連邦で実務化されているのですね。それに対してECですかが異議を唱えなかったということで、イギリスでも適用されているわけです。  この再評価は、いわゆる固定資産時価的な表示をするというのは、先ほど言った英連邦では認められておりますけれども、やはり、日本では非常にマイナー。だからこそ一時期の処理。これも一つのやむを得ない、法律でやるのでしょうけれども、実質超法的な措置なのかな、こう思うわけです。  もう一つ、やるんだったらまさにこれも、ちょうどイギリス会計基準にも、今回の、このいわゆる有形固定資産の公正価値による再評価については、一九九〇年五月、イギリス会計基準委員会で公開草案五十一号というのがありまして、そこで、一度再評価をやるならば首尾一貫してやると。これもまた、一つの会計基準としての確立を目指す以上、首尾一貫性を持たせて継続的にやらせる。やはり、やるかやらないか。つまみ食いというのは余り好ましくないですよね。恐らく提案者もそういう認識だと思うのです。  私は、やるのだりたら継続、そして可能な限りつまみ食いはしていただきたくない。ちょっとその御見解だけ聞かせていただいて、質問を終わります。
  70. 大原一三

    大原議員 イギリスがまさにそういう仕組みをとっているわけでございまして、私は先生のような専門家ではありませんので、首尾一貫性という言葉が非常に大事に、先生には重みを持っていらっしゃると思うのでありますが、政策目的から見て、非常にずるい判断かもしれませんが、皆さん方のやりようを見ながら、これはやるやると言う銀行がたくさんあるのですけれども、本当にやってくれるのかな、余りやらなかったら意味がないなというような気持ちも私は持っておりまして、その辺の御判断はまた時期が来たら御相談をしなきやならぬことだと思っております。
  71. 若松謙維

    若松委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。     —————————————
  72. 笹川堯

    笹川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として預金保険機構金融危機管理審査委員会事務局次長畑山卓美君の出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 笹川堯

    笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  74. 笹川堯

    笹川委員長 質疑を続行いたします。谷口隆義君。
  75. 谷口隆義

    谷口委員 自由党の谷口隆義でございます。  本日は、土地評価法案につきまして、大変御尽力いただきました大原先生中心にお伺いいたしたいというように思うところでございます。  先ほどから御答弁をお聞きいたしておりますと、おっしゃったことで、追加的なマネーフローがない、かつ金融機関自己資本比率が間違いなく上がるわけでございますので、そういう意味におきましては大変評価されるべき法案であるというように認識いたしておりますが、一方で、全く問題がないのかどうかということにつきまして、今お二人の委員の御質問があったところでございますが、一部若干重複するようなところもあるとは思いますが、どうかお許しをいただきたいと思っております。  まず初めにお聞きいたしたいわけでございますが、今回のこの法案は、自民党の緊急国民経済対策、第四次の対策土地評価法の制定というようなことを前提として法案化されたものというようにお聞きしておるところでございます。  何を目的としてこの法案がつくられたのかということについてお聞きいたしたいところでございますが、この法案を見ますと、金融円滑化と、あと企業経営健全性というような二つの観点でつくられたということになっておるところでございますが、この点におきまして、提案者の御答弁を求めたいと思います。
  76. 大原一三

    大原議員 谷口先生専門家でありますから、私は答弁するのはちょっと気が引けるわけでありますけれども、先ほどからお答えしておりますが、当面の金融緊急対策の一環としてこういうことを考えてみたらどうかということを提案いたしまして、それを先ほど先生が御指摘いただいた党の金融緊急対策の中へ入れていただいたわけでございます。  私は、お金を使うのもいいけれども、お金を使わないで金融機関が御自分の力で自己資本充実される仕組みが必要ではないのかなということを常々感じておりました者の一人でございます。それを今回提案をいたしましたのは、余りにも現在の貸し渋りがひどいなということに着目いたしまして、何らかそういった措置の一助になればなという議論から出発をいたしたわけでございます。  それが主たる目的でございまして、それからいろいろ議論をしておるうちに、商法特例だから、そのほかの金融機関以外のものについても認めるべきではないのかなという議論がございまして、私は銀行だけ、金融機関だけという気持ちで出発したわけでございますが、なお商法特例を我が方にも適用しろという御議論がございましたので、そういった措置を進めたために、当面の貸し渋り対策以外の、公平性とか公開性とか企業会計健全性とかいうような文言を入れさせていただいたわけでございます。
  77. 谷口隆義

    谷口委員 大体御趣旨はわかったわけでございますが、第二点目の、商法特例会社対象になったということでございますが、企業経営健全化ということに対しまして今回のこの法案がどの程度影響があるかというのは、ちょっと私ははっきりわからないわけでございます。もう一度ちょっとわかりやすく御答弁をお願いいたします。
  78. 大原一三

    大原議員 健全性という言葉がいいのかどうかは、むしろ公開性と言った方が私はよかったんじゃないのかなという気持ちを持っておりますが、そういった意味を込めて健全性とうたわしていただいたわけでございます。  正直言いまして、健全性という言葉は私の作文じゃございませんで、議論しているうちにそういう作文が入っちゃったわけでございますが、先生のおっしゃるとおり、最初目的、一方の柱からいいますと、やや違和感のある表現だなとみずから反省をしているわけでございまして、申しわけないなという気持ちであります。
  79. 谷口隆義

    谷口委員 実は私は、この企業経営健全性というのは、またある意味では大変大きいのではないかというふうに考えておるのです。  今までお二人のやりとりを聞いておったところでございますが、先ほど若松委員も申しておりましたが、今回は、企業経営健全性という観点で、どこの部に再評価差額金を載せるのかというような議論が先ほどございました。大原先生の方は、資本の部ではないというようなお話でございましたが、これはきょうの午後また審議される予定になっております自己株式利益による消却、これは今回の自民党の緊急対策で打ち出されたものでございます。経団連の方は、もう先生もよく御存じだと思いますが、これを抱き合わせでやれるような方法はないのかというような要望があるというように聞いておるところでございます。これは、抱き合わせでやるというのは、その前提でこれが準備金にならなければ大きな意味がないわけでございます。  御存じのとおり、土地の再評価というのは、一般企業におきましてもかなり含み益を持っておりますから、この持っておる含み益を、今回、自己資本消却、きょうの午後審議される予定になっておるところでございますが、現行は配当可能利益の範囲内でしか自己株式消却できない、ところが今回の法案は、それにつけ加えて準備金のところまで拡大して自己株式消却ができるようにする。  目的は、企業が株価の高いところで資本調達をかなりやりまして、市中に株があふれかえっておるところでございまして、株価対策という観点で、市中の株式消却する必要があるだろうというようなことで行われたというように聞いておりまして、私は、この自己株式利益による消却も大変賛成しておるところでございます。  この法案を利用するということになりますと、現下の準備金がどの程度あるのか。まあ余り準備金のないところは消却ができないわけですね、現行とほとんど変わりがないというようになるわけでございまして。ところが、一方で今回のこの土地評価が行われて、これが準備金に持っていかれるというような状況になりますと、かなり大きく準備金が膨れるわけでございますから、それが自己株式消却する大きな財源になるというようなことでございますので、先ほどの議論で、再評価差金がどこに計上されるのかというようなことは、そういう意味において大変大きな意味があることでございます。  そういう意味において、私は、先ほど若松委員もおっしゃっておりましたが、これは本来、企業会計で申し上げますと損益取引と資本取引、このように大きく分けるわけでございますが、明らかに資本取引でございますので、そういう観点からすると、これを資本の部、準備金に入れてやられるというようなことが、これまた株式市場にも大変大きな影響があるというように考える次第でございますが、先生の御見解をお願いいたしたい。
  80. 大原一三

    大原議員 正直に申しまして、党の方でも、私の提案が先行しておりまして、後からそういう提案が出るということは私も意識をしておりませんでした。  それと同時に、先生専門家にあれでございますが、この準備金というやつは、法人税が半分入っているんですね、半分だから、負債性の部分が二分の一あるというようなことを考えますと、なかなか割り切れないではないのかなというような感じがせざるを得ないわけであります。  この前の資産評価法をずっと調べてみましたら、これは三十二年に資本組み入れを認めているんですね。その間、ありがたいことに六%でした、資産評価税というのは。ところが、今度は、五〇%近く取られちゃうんですね、これを資本に組み入れますと。五〇%を負債性の準備金にしておいて、残り分だけ組み入れるという手法はないことはないと私、思うんですね刀  そこらは、十分先生方の先ほどの御議論も勘案し、また後の提案の消却の問題等も勘案しながら今後考えていったらどうかな、自分でそう思うようになつちゃったんですね。これは一緒でよかったなという感じを持っておる。  私も、おっしゃるとおり、現在の持ち合いというのはインチキだと思うんですね。お互いにもう配当率を下げちゃって、三割か四割の市場でチャンチャンバラバラやらせているというのは、私は日本の市場というのはいびつだと思うんですね。正直言って、株主というのは法人資本主義であって個人資本主義じゃない。株式、空洞化しているなという意味では消却論に大変私も個人的には賛成であります。そういった問題も、将来、先生の御指摘もありますし、検討していっていいんじゃないのかな、こう思っております。
  81. 谷口隆義

    谷口委員 ただいまの問題は、大変重要な問題でございまして、いろいろ意見がございます、先ほどから聞いておりますと。  準備金にこの再評価差金を組み入れるということになりますと、これは資本の部に入るわけでございますので、先ほど申し上げました自己株式消却の原資になるという意味で大変大きい。  一方では、先ほど北村先生でございましたか、議論に出ておりましたが、ROEは低下するわけで、先ほど提案者の御答弁を聞いておりましたら、これは資本に入れないからROEは低下しないんだというようなお話であったように思うわけでございますが、仮に資本に入れるということになると、ROEは今大変企業評価の大きな基準でございますから、これが低下するということになりますと株価が大きく下落するというようになるわけで、これは痛しかゆしのところがあるわけでございます。  大体そういう観点で、このあたりをどう対応するかというのは極めて難しい問題でありますが、私は、再評価差金はやはり資本準備金、まあ準備金に入れるべきである、そうすることによって一層の株式市場の活性化を促すことになるだろうと。  また、ROEについては、一時的に低下するわけでございますが、先ほど提案者の方もおっしゃっておりましたが、今金融機関同士であるとか金融機関一般企業であるとかいうように、日本経営と申しますか、株式の持ち合いが一般的に行われております。それが今いろんな問題を惹起いたしておるところでございまして、一つは、株主総会を開く、これは大変形骸化した株主総会になっておって、個人株主がほとんどおらない。こういうような問題も起こっておるところでございますので、株式の持ち合いをやはり解消していく必要があるだろうというように、今方向がそういう方向にずっと流れておるわけでございますね。  また話は戻ります。このROEが一時的に低下するということになってまいりますと、多分企業のとる行動は、企業の保有しておる含み益のある有価証券を売却するだろう、持ち合いの株を放出せざるを得ないだろうというようなことになるのだろうと私は思っております。そうしますと、今回、この再評価準備金を資本に組み入れたところで、準備金に組み入れたところで、ROEの問題は、方向として正しいというか、いい方向に進むのではないかというように私は考えておるところでございまして、このようなことにつきまして、御見解がございましたらお願いします。
  82. 大原一三

    大原議員 そこらは私より先生の方が専門家ですから、私、答えるのはいかがかなと思うのでありますが、確かにおっしゃるような傾向が出てくると思うのですね。これは、資本に入れますといわゆる資本利益率は低下する、低下すれば株は下がる、下がればかえって持ち合いのために放出が有利になるというような議論は確かにあると思うのですね。ただ、株をこれ以上下げると、また金融機関の貸し渋りが増長するという面もあるのですね、一方において。だから、痛しかゆし。  だから、一万七千円なり一万六千円でとまっておいてくれればいいのですが、それが一万五千円になりますと、また銀行が二兆三千億の穴があく、二千円下がると四兆円の穴があく。これまた貸し渋り加速じゃないのかな。当面的な議論をするとそういう議論もあるわけでございまして、先生の御議論は非常に長期的な視野からの御議論だと思うので、私もなるほどなとお聞きをしているわけでございます。
  83. 谷口隆義

    谷口委員 それで、今度は詳細なところに入っていきたいのですが、土地の再評価が貸し渋りの防止にどの程度影響があるのかということにつきましてお聞きいたしたいところでございます。  実は、九八年二月十四日の週刊東洋経済がございまして、特集を組んでおるのですが、そこでティア2の追加でどの程度入れられるかという試算をいたしております。御存じのとおり、ティア1と同額までしかティア2は組み入れられないわけでございますので、それ以上は、例えばこの含み益が表に出てきたところで、実態的には余り意味がない、自己資本比率の改善という観点においては。それで、どのくらい一体余裕があるのかというようなことになるわけでございます。  それをお聞きする前に、本日は預金保険機構の方から来ていただいておりますので、まず預金保険機構の方にお尋ねしたいのです。  先日、金融機関二十一行のキャピタルインジェクション、資本注入が承認されたところでございます。状況を見ておりますと、初めに四行が承認されて、その後十七行が承認された。この四行については、一部、劣後債、劣後ローンが減額された。優先株が減額されるというところはないと思いますね、これはティア1でございますので。だからこのティア2のところが減額された。減額された理由は、先日も大蔵委員会で私、松田理事長にお聞きしたのですが、不必要な公的資金の投入はしないという観点からしますと、ティア1を超えるような劣後ローン、劣後債はやらないという観点で減額したのだというようなお話でございました。  その後、二日後に十七行の届け出に関してすべてそのまま承認されたところでございますが、この中にも劣後債、劣後ローンで申請しておる金融機関があるわけでございますが、大体どの程度の余裕があるのか、今現在の、この申請した二十一行で結構でございますが、教えていただきたいというふうに思います。
  84. 畑山卓美

    ○畑山参考人 お答えをいたします。  詳細の計数は本日夕方発表になる予定でございますけれども、私ども、申請ベースで承知している合計額で、大体一・二から一・三兆くらいの余裕額があるというふうに承知しております。
  85. 谷口隆義

    谷口委員 さっき私ちょっと申し上げましたが、四行が、初めに減額された理由というのは、もう一度、ちょっと繰り返し御答弁お願いいたしたいと思います。
  86. 畑山卓美

    ○畑山参考人 減額の背景は、今回の公的資金の投入でございますが、この上限を画するに当たりまして、できるだけ明快かつ客観的な基準ということを考えたということがございまして、それが国民の理解をいただく上で一番重要と考えたわけです。したがいまして、基準としましては、資本注入が直ちに自己資本の比率の向上につながるかどうかということを最大の基準にしたということがございます。  その結果、先生御指摘のように、初回につきましては二行が減額になったということがございますが、本日閣議決定の分につきましては減額がなかったというふうに承知しております。
  87. 谷口隆義

    谷口委員 今、大体一兆数千億の余裕があるというようなお話でございましたが、この二十一行で結構でございますが、全く余裕のないところとまだ余裕のあるところと分けて、行数で結構でありますから、銀行の何行がもういっぱいになって何行がまだ余裕があるということで御答弁をお願  いいたしたいのです。
  88. 畑山卓美

    ○畑山参考人 先ほど申し上げました一兆二千億余りという数字ですが、十四行がまだ余裕がござ  いますが、そのほかに地方銀行がございますので、若干数がふえるというふうに考えております。(谷口委員「二十一行のうち十四行」と呼ぶ)二十一行でございますと、十七行がゆとりがあるということになります。
  89. 谷口隆義

    谷口委員 二十一行のうち十七行。ですから、四行はもうほとんど目いっぱいになった。初めの四行ですね、おっしゃっているのは。  ですから、この四行については、大原先生、これもう今回含み益を出しても実態的には効果がないと思うわけでございますが、いかがでございましょう。
  90. 大原一三

    大原議員 私もその点承知をしているつもりでありますが、詳しい数字はまた、大蔵省も来ていますので、持っているかと思うのです。  今おっしゃったとおり、株式時価を幾らに見たのか、今の答弁の中身はよくわからないのですが、恐らく千七百円相場で見ているのかなと。そうしますと、一兆四、五千億か一兆六千億ぐらいのものしか出ないなと。満杯のところもありますので、それぞれ銀行によって格差が出てくる。  ただ、千円下がりますと、これも大蔵省の計算で、私は計算できないから聞いたのですが、二兆三千億のティア2の穴があく、こう言っております。それから二千円下がればその倍、当然そうなるわけであります。これによって評価しておいて、積み立てていただいて、株が下がったときの埋め合わせ、すき間のないところはバッファーに使っていただく。地方銀行はすごくあいているのですね。これは四兆円から五兆円のすき間がティア2自体にあるようであります。これは自己資本も恐らく少ないというような感じがいたします。そういう状況でありますが、申し上げたとおり、すき間のないところも評価をしていただいて、株が下がったときの用意をしておいていただく。  私は、おこがましいことを申すつもりはございませんで、今御答弁のありました金融出動の方をやはり皆さん選びたいですね、金が来るのですから。私の方は、一銭も行かないで勝手にやりやがれというのだから、余り喜ばない制度でありますけれども、何らかのプラスになるのじゃないのかなというつつましやかな希望、願望を寄せているわけであります。
  91. 谷口隆義

    谷口委員 私は、これも先日大蔵委員会で申し上げたのですが、劣後債、劣後ローンは、ティア2になって全部効果があるというわけじゃないのです。だから、これはプライオリティーの問題になるわけですけれども、土地の再評価がある、また一方でキャピタルインジェクションがある。自己資本比率を改善したいという意味においては両方同じなわけで、だから先生のおっしゃるように、土地の再評価をやる。これで目いっぱい、もう十分余裕があるというところはインジェクションをふやす必要がないじゃないか、わざわざむだな公的資金を投入する必要がないじゃないか、このように思っております。  ですから、順序でいくと、これが本当にぱっと上がって目いっぱいになった、それも余裕もある、そうしたら、どうして申請して公的資金をわざわざとるのかというようになるわけでございますが、先生、どのようにお考えでございましょうか。
  92. 大原一三

    大原議員 公的資金とけんかをするつもりはないのでありますけれども、やはり国の金を使う前に、これでしっかりやってもらいたいなというのが提案者の願望でありまして、それが私の正直な気持ちであります。
  93. 谷口隆義

    谷口委員 ただ、ちょっと今申し上げましたこの週刊東洋経済、これは地価税の評価で出しよる資料のようでございますが、これを見ると六行はもう既に満杯だということになっておりまして、これは、とる時点の株価によるかもわかりませんが、今四行はもう既にいっぱいだ、四行の中にはもう既に業況の悪いところがありますから、業況が悪くていっぱいになったというところも、いろいろな事情があると思いますが。ですから、これは精査していかなければいけないと思いますが、私が先ほども申し上げたように、公的資金をわざわざ入れないでも、このような状況で自己資本比率の改善は行い得るというようなところもあるというように認識をいたしておるところでございます。  それで、地価税のことが出ましたので、ちょっと私は申し上げたいのですが、先ほど実務的な対応のお話が出ておりました。この時価とは一体何をとるのか。提案者大原先生の方は、先ほど聞いておりましたら、例えば、固定資産評価でございましたか、いろいろ時価がある、それについては政令になるというようなことだということでございますが、これはこの再評価をする企業にとりましては大変面倒なことでございます。ですから、これがどのような時価をとらなければいけないのかということは、大変関心のあるところでございます。  今、地価税というのがございまして、地価税の対象になっておる企業は毎年評価を洗いがえておりますね。この地価税が今回の税制改正で凍結をされるというようなことになりまして、企業の方はそういう負担から逃れられたかなというように思ったわけでございますが、一方で、この土地評価ということになりますと、また違う評価方法でいずれにしてもこの土地評価していかなければいけない。  大変手間のかかることでございますが、先ほどいろいろこの時価、おっしゃっておりました。例えば、公示地価であるとか、相続税の路線価の価額であるとか、固定資産評価額であるとか、また一方で、地価のないようなところもあると思うのです、売買事例のないようなところ。その売買事例のないようなところは、収益還元地価みたいなもの、収益がどのくらい上がっておって、それを収益還元して地価を計算するというようなことも考えられると思うわけでございますが、先生が今考えていらっしゃる時価考え方について、念頭に置かれているようなことがございましたら。
  94. 大原一三

    大原議員 固定資産税と相続税はそれぞれ税の目的があって時価と書いてありますが、中身がちょっと違う。この時価というのは、限りなく公示価格に近い、売買実例に近い時価ということに相なると思います。  ただ、そういいましても、先ほど先生がおっしゃったとおりに、地価税の適用者が一万四、五千あるそうでございます。この中の企業の大部分は地価税で評価になれていらっしゃる。ただ、地価税の場合は相続税の路線価によっているわけでございますので、路線価と時価との開差がどれだけあるかな。路線価というのは、これはもう全国カバーできるわけでございますので、山の中の農協はどういうことかよくわかりませんが、市街地であればほとんど評価ができるわけでございますから、この路線価に対する倍率でもって時価と一応めどをつけてあげれば、地価税に習熟していらっしゃるので、簡単に出やしないかな、そういうことも腹づもりにして政令をつくってあげたらどうかなという気持ちでおります。
  95. 谷口隆義

    谷口委員 毎年やはりこの評価がえをやる必要があるわけでございますね。そうですね。これは、この法案にも書いておりますように、含み損が出るというのですか、時価合計額帳簿合計額を比べて、損が出る場合は貸借対照表に注記しなければいけないというようなことでございますので、毎年評価を出す必要があるというようなことであると思います。これは、この法案自体は二年の時限立法でございますが、評価の洗いがえというか、評価をずっと毎年やっていくという意味においては、今後ずっと続くわけでございましょうか。
  96. 大原一三

    大原議員 商法原則は、貸借対照表のあれが、できるだけ債権者あるいは株主等に対する公開制とかいうようなことが原則でありますから、そこは我々の法律でも毎年、一%というのはどうかな、五%というのは当然書いてもらわなければいかぬだろう。阪神大震災で半減した場合は、当然それは評価減していただかないと債権者が迷うということで、その辺は常識の範囲内で評価がえをしていただくということになりはしないかな。  したがって、これは商法上の監査法人とか監査人にお任せをしたらどうかな。税金いただくんだったら難しいことを書きますけれども、そうじゃないんですから、そこらはやや弾力的に考えていったらどうかなと思っております。
  97. 谷口隆義

    谷口委員 昭和の初期に行われた例の資産評価法に基づいて再評価されたものは、ほとんど償却資産が多かったんですね。土地対象になっておったようでございますが、ほとんど償却資産償却資産というのはどんどん償却してまいりますので、最終的にはなくなってしまうわけですが、今回の場合は残る。また、ほとんどが金融機関でございますので、売るということは多分ないだろう、今までのことを見ますと。事業用ということで、棚卸資産土地については除かれておるわけでございますので。  そうしますと、これが、さっき申し上げたように、もう四十年も五十年もずっと評価を毎年やらなければいかぬというような、今先生お話を聞いておりますと、そういうことになる。ですから、そういう意味においては、これは評価方法を余り複雑なことを行うと大変手間がかかる、一方で余りルーズになってしまうとこれまた大きな問題も出てまいりますので、そのあたりの観点も十分考慮に入れてやっていく必要があるのではないかというように考えております。  それとまた、ちょっと違う観点でお聞きしたいのですが、今回は、先ほど申し上げたように、金融機関商法特例会社対象になっておるというようになっておりますが、生命保険会社、損害保険会社証券会社、これはすべてが対象になっておるのでしょうか。
  98. 大原一三

    大原議員 商法監査特例法人でほとんどカバーできていると思います。  ただ、証券会社の中で、五、六人とか資本金が小さいというのは、これは入ってこないと思いますね。それから、相互会社でございますが、生命保険会社、損害保険にもございます。これらは二百億以上の負債というところで入ってくるわけでございまして、ほとんどカバーできるのではないのかなと思っております。
  99. 谷口隆義

    谷口委員 考えられるのは、証券会社の小さい、地場の証券会社が、これは、資本金五億以下で負債も二百億に至らないというようなところは除かれるわけでございますが、これはもう除いてもいいというようにお考えでございますか。
  100. 大原一三

    大原議員 土地を再評価して貸し渋りのメリットというのは余り出てこない相手でございますので、まあ、いいじゃなかろうかと。アバウトな議論ですけれども、そういう考えで省いたわけであります。
  101. 谷口隆義

    谷口委員 今回、だから、一つ批判が起こっておるのは、商法特例会社、大会社中心にして行ったと。ですから、例えば、負債も二百億に至らない、資本金も五億までに至らない、だけれども大きな商いをしている企業というのは、これはあるものでございます。ですから、もうちょっと、どうせやるのなら範囲を広げて、すべての法人対象にするとか個人も含めて対象にするというようなことも考えられたのではないかと思うわけでございますが、そのあたりについて御答弁お願いします。
  102. 大原一三

    大原議員 何回も申しますが、これは貸し渋り対策で、最初ドイツ方式の、九二年にやりました銀行だけにやりたかったわけでございます。ところが、やはり先生がおっしゃるように、金融機関以外でも非常に行儀のいい会社があると。何か私がいろいろ言っていたら、そんな行儀の悪いやつばかりじゃありませんよ、バブルのときに土地を買ってしまって会社を広くしたり、あるいはまた店舗をえらいところへ進出したような企業評価損が出るよ。評価損が出るようなところは、これはやりません、任意ですから。余りメリットがないのではないのかなというようなことで、こういうようにしたわけです。  それともう一つは、二重帳簿になりますので、先生がおっしゃったようにつぶれないですから、銀行の場合は。それを売っていかぬ。したがって、永久管理をしてもらわなければならぬという建前になっています。だから、取得原価と再評価差額時価というものが三つ出てくるわけでありますが、それを永久管理するに適当な法人というのは、やはり監査特例法人程度のものでないと無理ではないのかなと。これは、先生の御職業もありますし、そういう専門家でありますから、我々としてはそういう考え方から一応切らしていただいた。  それと同時に、昭和二十九年の資産評価法で五千万円以上の会社に、当時の五千万円というのは相当厳しい基準だと思うのですが、資産評価法を強制した例もありましたので、それも参酌しながら、どこかで限度を切らないといかぬなということで、そういう形にさせていただいたわけであります。
  103. 谷口隆義

    谷口委員 要するに、今までは、財務健全性の観点であるとかいうことで、含み益経営、含み経営というような話でございました。だから、実態はそんなよくないのだけれども、含みがあそこはたくさんあるよ、だから大丈夫だというようなことであったわけですね。今回、今後これで含み益を全部出すということになるわけですね、いわゆる目いっぱい、時価評価されるわけですから。そうしますと、逆に今度、地価が下落する、どうもエコノミストの状況を見ておりますと、一段まだ地価が下落するのではないか、こういうことを言われております。そうしますと、含み損を逆に持つ。だから、見た目より企業実態が悪いよというようになる可能性があるわけでございますが、これについてどのようにお考えでございましょうか。
  104. 大原一三

    大原議員 商法会計原則もやはり債権者、債務者のための基準だと私は思います。したがって、含み益が出る場合は注記は要らないのですね、これは。含み損が出た場合には注記をして、幾ら損がありましたということを貸借対照表に注記してください、そういうことにしているわけでございます。
  105. 谷口隆義

    谷口委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
  106. 笹川堯

  107. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  午前中からお聞きをしておりますと、この土地の再評価に関する法律案の提案理由は、基本的には二つ。一つは、いわゆるBIS基準、これを達成させることを通じて貸し渋りをなくす、これが基本的な目的だ。さらに二つ目には、企業健全性ということのようであります。  そこで、最初提案者にお聞きしたいのですが、この法律の施行期日は今月の三十一日ということになっておりますね。これは、どうしてもこの三月期決算の銀行金融機関にこの法律を提供して、資産土地の再評価をやってもらいたいのだ、そういう趣旨でありますか。
  108. 大原一三

    大原議員 まさに今のこの金融緊急事態ということを考えますと、これは一種金融特別措置でございまして、ぜひともこの三月三十一日に間に合うように御審議をお願いし、参議院まで通していただいたらありがたいな。決算は五月でございますから、法律が通ったことがわかれば、皆さん三月三十一日の時点での評価に取りかかれる、こう思いますので、ぜひよろしくお願いします。
  109. 木島日出夫

    ○木島委員 大変時間がない状況なわけでありますが、そうすると、提案者としては、先ほど非常につつましやかな法案なんだとおっしゃいました。我が党は反対したわけですが、公的資金導入の枠組みもつくられた、十三兆円用意したわけでありますが、今、実質二十一行が大体二兆円の公的資金投入の申請を出しているという状況ですね。そうすると、率直に言いまして、提案者は、この法律がつくられて今月末の時期で日本金融機関のうち何行ぐらいが土地の再評価の道を選ぶと考えておるのか、ちょっと述べていただきたいと思います。
  110. 大原一三

    大原議員 これは、銀行から陳情があって私つくった法律でございませんので、例えば全銀協とか地方銀行協とかいうのがあるのですが、余り私は連絡をとっておりません。大蔵省を通じて聞いているのでありますが、最初はよくわからなかったらしいです、この法律が。とにかく勉強していないですな、銀行というところは。私はそういう点で感心したわけでございます。自分から言ってきて、やってくれと言うのならわかるのですが、こっちが言い出してやって、跳び上がってしまって、最近は、もうこれはすごくいい法律だから何とか早く通してくれと。何を言っているのだ。まあ、そんなことをここで言ってはいかぬのでありますが。そういう気配になりつつあるなと。地方銀行の皆さん方も、聞くところによると早く通してくださいという。農協はちょっと趣旨が違うのでありますが、さっき申しましたように、つぶれかかったやつが早くやれというような話でありまして、これはちょっとおかしいなと思うのですが。  いずれにしましても、希望者がかなり、都市銀行はほとんどやると思いますね。それから、余裕のあるところは、地方銀行はほとんど余裕がありますので、金額はわずかです。二兆円ぐらいの数字しか私の手元には大蔵省を通じて来ておりませんが、これはやってみなければわからぬところがあります。  それから、都市銀行は五兆八千億という数字と三兆八千億という数字と両方出ていまして、民間の方と金融機関が出している方とで。それで金融機関の方は四五%ということでやる。ところが、何か銀行協会が私のところへこれを聞きつけてやってきましたときに、全額入れさせてくれというような陳情を持ってきた経緯がございます。おまえたち、それは大蔵省と話しているのかと言ったら、話しましたと言って、大蔵省はにべもなくそれを断ったらしいのですが。イギリスは一〇〇%繰り入れを認めているのですから、これから皆さん方と一緒にこの辺は議論していっていいところではないのかな、こう思っております。
  111. 木島日出夫

    ○木島委員 都市銀行は基本的にこれを使うという考えだと。地方銀行はどうですか、ちょっと御答弁をいただいていいですか。
  112. 大原一三

    大原議員 全部、私は調べたわけじゃないのでありますが、私は宮崎でございまして、田舎へ帰ると、何かのパーティーに出ておられるので、ありがとうございます、はようやってください、こんな声を二、三、私は聞きましたが、恐らく協会に聞いてもかなりの部分がおやりになるのではないのかな。  本当は、これは先生、やってもらいたいのですよね。ある銀行は含み益がある、ある銀行はないというのがよくみんなにわかるのですね。今まで隠していて、この銀行、大丈夫かなと。つぶれたときは株は相手になりませんで、土地が相手になるので。土地は値段があります、株は紙切れになるのですから。そういう意味では、これを全部やっていただいて、天下に公表していただくのが金融機関として筋だ、私はこう思っております。
  113. 木島日出夫

    ○木島委員 実は、この法案の基本的な問題として、選択制だ、再評価をするしないはその企業銀行に任されているということなんですね。それで、今提案者が心配されたように、再評価を導入する企業と導入しない企業が出てきて、債権者、第三者から見ますと非常にわけのわからないような状況になるということだと思うのです。  もう一つ、健全性の問題について、私一つだけマスコミの評価を披露したいと思うのですが、ことしの一月二十四日の読売新聞の夕刊ですか、こういうコラムが出ておりました。この法案を称して、「これはいつか来た道だ。」というのですね。「約十年前、国際決済銀行(BIS)の自己資本比率規制が導入されたとき、大蔵省日本の独自ルールとして「株式の含み益の四五%の導入」を認めさせた。」ティア2ですね。「大蔵省は鼻高々だったが、国際金融筋の一部は「変動の大きい株式資産を入れるなんて。いっかきっとしっぺ返しを受ける」と潮笑した。」まさにそのとおりの状況が今日本の株価をめぐって起きているわけですね。  それで、この法案についてもそういう評価をしているわけです。「株価、地価が下落し続けると、不良債権を償却するはずの株式土地の含み益もアベコベに含み損に変わる」んだ。それはそうですね。先ほども指摘があったとおりです。「保有株式や保有土地評価替えは、時間かせぎの一時的な効果しかない。土地の再評価は貸し渋りを一時的に緩めるだけで、中長期的には、銀行の財務体質の健全性を損なう。」ということです。この論者に言わせますと、これからも地価の下落に歯止めがかからないのじゃないかということも指摘しているわけです。  これから私は法案に即して幾つか問題点を指摘したいのですが、まず、基本的なこういう問題、一時しのぎじゃないか、結局、土地が下落していけば逆に大変なしっぺ返しを受けるのじゃないか、既に株の問題で受けたこのしっぺ返しがまた土地の再評価の問題をめぐりまして起きるのじゃないか、こういう根幹にかかわる指摘に対して提案者はどのようにお考えなんでしょうか。
  114. 大原一三

    大原議員 これから地価の動向が一体どうなるかというのは非常に難しい予測が要ると思うのですね。外国銀行が来て、日本銀行の不良債権を買いあさっている。それを証券化して、セキュリタイゼーションしてもうけたいというような動きもある。これで地価は限度に来たのじゃないのかなという議論も一方であります。  しかしながら、正直言って日本ほど帳簿価額時価が、バブルに比べて半分に地価が下がったとはいえ、大きな国は日本だけなのですね。こういった状況を考えると、ECでもおやりになった時価会計でございますから、今の貸し渋り対策考えると、この際、緊急事態だから、この政策を外国でもおやりになっておればやはり導入してもおかしくはないのじゃないのかな。  その読売の記事を私は読んでいませんが、どの程度その人は勉強をしているのか、わけのわからぬことをいきなり言っているのじゃないのかなという気持ちもしないではありません。
  115. 木島日出夫

    ○木島委員 名誉のために言っておきますと、経済評論家松本和男という人の論評であります。  法案に即して幾つかお聞きをいたします。  第二条の定義のところですが、この法律の適用になるのは事業用土地だけですね。事業用でない土地については再評価対象にならないということですが、これはどういう土地を指すのでしょうか。
  116. 大原一三

    大原議員 頭には銀行が置いてありまして、その銀行が持っている本店の敷地とか、あるいはまた虎ノ門に支店がございます。その支店の敷地。それから、地価税では入っておりませんでした福利厚生施設、例えば社宅それから運動場、それも入る。事業用土地はそのように定義をしております。
  117. 木島日出夫

    ○木島委員 要するに、継続事業体が事業に必要な土地ということかと思うのです。  それでは、バブルのときたくさんあったのですが、銀行が事業の一環として開発目的にゴルフ場用地なんかをたくさん取得する、そんな土地は、この二条の定義に言う事業用土地で、再評価対象になるのですか。
  118. 大原一三

    大原議員 銀行他業禁止ということで、先生御指摘の、どういう例があるか知りませんけれども、不動産売買はやってはならぬのですね。不動産業はしてはいけないということでありますから、棚卸資産というのはそんなに抱えていないですね、一般企業並みに。  ですから、本店の土地とか将来売ることない恒久的な土地というのがその対象になると私は思っております。  だから、販売目的、例えば、虎ノ門支店をやめちゃった、これは将来売るんだとはっきり意思表示があれば、それはアウトですね。この対象にならない。だけれども、将来事業用に何か使うということになれば入ってしまうということになるだろうと思うのですね。ややその辺判断に難しいところがございますけれども、事業用に使う部分というのは全部入りますよということであります。
  119. 木島日出夫

    ○木島委員 この法案銀行だけが対象じゃないわけですね。そこが一つ大問題だったわけですが、特例法に基づく大会社が全部対象になる。そうすると、不動産業界でない企業、たくさんありますね、そういう企業バブルの時代に事業を広げて手を出して取得したいろいろな土地、売るためじゃない、何か事業をやろうと思って取得して抱えている土地、それはこの二条の事業用土地になるのですか、ならないのですか。
  120. 大原一三

    大原議員 販売目的のものは事業用にならないのですけれども、そういうふうにたくさん抱え込んで、大部分はこれは販売用の土地ではないのかな、会社の工場、社宅あるいはまた店舗等に大分お使いなすったと思うのですね。そういうところは、バブルにほうけたところがあって、何でもきれいにしょうというようなことでおやりになったところは、これは評価損が出る可能性がありますので、任意でございますから、そういうところはほとんどおやりにならない。事業会社の中にはそういうのがたくさんあるのじゃないのかなという感じがいたします。  銀行の場合は他業禁止でございますから、不動産売買業はできないということになっておりますので、そういう余計な土地は比較的持っていない、こう判断をしております。
  121. 木島日出夫

    ○木島委員 対象に当たる土地か、対象から外れる土地か、それは政令でしっかり区分けはするつもりなんですか。それは今もうできているのですか。
  122. 大原一三

    大原議員 だから、そこは事業用ということで判定しているわけでございまして、さっき言ったような空閑地をどう判断するかは、税金をいただくわけじゃございませんので、そう難しい判断基準をぎくしゃく書くのもいかがかな、常識的な判断でわかる範囲でやっていただいたらいいんではないのかな、こう思っております。
  123. 木島日出夫

    ○木島委員 非常にあいまいなんですね。  次に、では時価についてもお聞きしたいと思うのですが、これはもう同僚委員から再三にわたって質問されておりますから、詳しくは聞かなくてもいいかと思うのですが、ただ、答弁を聞いてもあいまいですね。三月三十一日から動かしたいという法律でしょう。その法案審査を今ここでやっているわけでしょう。そうすると、少なくとも、提案者として、こういうふうな基準を時価として採用したいんだとはっきりと打ち出してもらわないと、法案審査できないですよね。できないんじゃないでしょうか。  そこで、いろいろな案、路線価とか公示価格とか固定資産評価とか不動産鑑定に任すとかそれの何掛けにするとか、いろいろなお話がありましたが、今どういう基準をやるべきなんだと提案者考えているのか。それをやはりはっきりここで打ち出してほしいのです。
  124. 大原一三

    大原議員 さっきも申しましたように、そこには不動産鑑定士がほとんどついていらっしゃるんですね。不動産鑑定士がいない方はそこにお願いをして、時価、つまり公示価格に準ずる価格ということに相なっておるわけでございます。  したがって、例えば農協とか漁協等でおやりになるという場合に、不動産鑑定士に一々頼むのかな。だから簡便法で、地価税のいわゆる路線価、路線価というのは全国をカバーできるわけでありますから、路線価格の二割増しというようなことも頭に置いて政令をつくりたいな、こう思っております。
  125. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、まだ政令の原案もないということですね。  大蔵省はどう考えているのですか、この基準。政令というと、大蔵省がつくるということになるのですけれども。
  126. 内藤純一

    ○内藤説明員 お答えいたします。  この法案におきましては、この再評価とは、法人の所有する事業用土地時価評価し直すということでございまして、その時価につきましては、この法案におきましては商法と同様に具体的な定義を行っておりませんが、この再評価方法に関して、必要な事項は政令で定めるということで、今後検討してまいりたいというふうに考えております。  具体的に申し上げますと、今回の再評価における事業用土地時価評価としては、例えば地価公示価格、固定資産評価額、路線価などに基づきまして合理的に算定した価額によることや、不動産鑑定士による鑑定価額によることなどが考えられますので、そういった内容を政令に盛り込むということで検討してまいりたいというふうに考えております。
  127. 木島日出夫

    ○木島委員 まだ大蔵省の方もはっきりした態度を決めていないようでありますが、これがあいまいに決められますと、また決め方が、いろいろな選択肢を与えますと、企業によって一番いいものをつまみ食いするということは当然起きてきまして、健全性透明性にとって重大な問題が生ずると思います。私は、それはともかくとしても、この法案審査のときに、時価評価の仕方についてすらきちっと提案できていないというのはやはり問題じゃないかというふうに指摘をしておきたいと思います。  次に、先ほど来の質問者からも提起されましたが、再評価差額金、これを貸借対照表に計上しなければならないと法案第七条で書いておきながら、この貸借対照表の貸方の資本の部なのか負債の部なのかはっきりしていないということは、はっきりしないままこんな法案を提案するというのは私は無責任だと思うのですが、どうなんですか。
  128. 大原一三

    大原議員 普通の資本利益と違って、半分は税金に取られる可能性のある部分ですね、四九・九%が法人税の実効税率でありますから。それが、資本でございますと開き直るのもいかがなものかな、それなら全部負債というのもいかがなものかなということで、仮勘定というのはいかがだということで私は結論を出したのでありますが、今後のありようは、先ほども申しましたように、私はすっきりしてもらいたい。そのためには、二十九年にやりましたように、法人税相当額を負債勘定に立てて残りを資本金に入れる、税金の負担は売ったときで結構です、そうやれば将来その資本はすっきりするなと。こういうことを現に前にやっておりますので、そういうことを考えてあげたらいかがなものか、こう思っております。
  129. 木島日出夫

    ○木島委員 負債か資本か、勘定科目がはっきりしない理由は、半分は税金が課税されてしかるべきものなんだ、半分は負債性の引き当て性のものだと。  しかし、それなら半分について課税すべきなんでしょうが、この法案は、一銭も課税しないわけですね、課税できないわけですね。だから、そこは非常に矛盾じゃないのでしょうか。矛盾というか、銀行優遇というか大企業優遇がそこにあらわれてきておると思うのです。  それで、売ったときに税金を取ればいいじゃないかと言うが、基本的にはこれは売らないことを前提にしている事業用資産のみについて再評価をするのでしょう。売ることを前提とする不動産については、この再評価対象から外すのでしょう。そうしたら、理屈が合わないのじゃないですか。
  130. 大原一三

    大原議員 これは、売ることを前提にしたものは、とにかく再評価差額というのはほとんど出ない資産が多いのですね。評価損が出てしまうのです。こんなもの、任意でもってやれと言ったって、やる人はいないわけでございますから、やはり売らないということを前提資本を明示しなさい、その明示に従って、あなたは貸し渋りをやっているじゃないかという批判ができるような仕組みをつくったらどうかなということで、今のところは、あの銀行は危ないそうだ、株は何か知らぬけれども戦後の株だから危ない、この銀行は古い株を持っているから株の内部留保はある、土地も何かどれぐらいあの銀行とこの銀行があるのかな、ないのかなというのがわからないのですね。  少なくとも株は明示しているのですから、それなら土地についても堂々と明示をしなさいというのがやはり自由市場では私は正しいのじゃないのかな、黙ってじっと隠しているというよりも、この方が私は銀行経営批判するのに役立つのじゃないのかな、こう思っております。
  131. 木島日出夫

    ○木島委員 売らないことを前提として資産の再評価を認めるというのなら、やはり私は、資本勘定、資本準備金というのが筋だ。日本会計士の皆さんや税理士の皆さん一致して、負債性の勘定に置くのはおかしいと言っているわけですから。大蔵省のさっきの答弁だと、そういう企業会計原則から全く反するような答弁なので、これは私もおかしいということを指摘しておきたいと思います。  第八条についてお聞きしたいのですが、第二項、資産評価を行った事業用土地について商法三十四条第二号の規定により帳簿価額の減額をした場合は取り崩さなければならないとありますが、商法第三十四条第二号の規定により帳簿価額の減額をした場合というのはどういう場合を想定しているんでしょうか。
  132. 大原一三

    大原議員 先ほどもちらっと申し上げたのでありますが、例えば阪神大震災のような地震があって地割れをした、それから、災害があって、洪水が来てその地価が全く値打ちがなくなったというようなものが商法に書いてあるんですね。  それで私たちは、それだけではなくて、いわゆる地価が減価をした場合の、それは商法の、さっきのやつは貸借対照表の本表に載っけてある評価額を変えろ、こう言っているわけですが、そうでない場合も、例えば五%下がったら貸借対照表に注記をして、減額を明記しなさい、こういうふうに書いてあるわけでございます。
  133. 木島日出夫

    ○木島委員 第八条の方は、阪神大震災のときのように、めったにあるわけじゃないですが、土地の形状が損なわれたときという場合ですね。それで、土地の価値が下がったとき、それは第八条に該当するんじゃなくて、第十条の方を使うということですね。そして、十条というのは、簿価そのものを変えるんではなくて、全体としての再評価額と新しい減価した額の差額を注記するということですね。そういう仕切り、区分けだということでいいんですか、間違いないですか。
  134. 大原一三

    大原議員 原則そのとおりでございます。
  135. 木島日出夫

    ○木島委員 先ほども同僚委員からも指摘されておりましたが、第十条によると、差額を注記しなければならないというんですから、極端なことを言えば、千円単位の差の出たときにもきちっと注記しなければならぬというふうに私は読み取れるんです。先ほどの提案者の答弁によると、何か何%か差が出たときに注記させようかというような御答弁なんですが、ちょっとそれは法の解釈から見ておかしいんじゃないんですか。大蔵省
  136. 内藤純一

    ○内藤説明員 お答えいたします。  十条の趣旨でございますけれども、先ほど申し上げましたように、再評価をした後に含み損を抱えたというような場合に、それはディスクロージャーをするという観点から注記をして、それで金融機関等の経営実態を明らかにするという趣旨でございます。  したがって、その価額につきましては、金融機関銀行の場合、あるいは商法監査法人の場合には外部監査というものがそこに加わってまいりますので、監査法人と十分チェックした上で合理的に算定したものを評価いたしまして、その含み損をそこに注記するという形で対応していくということだと思います。  したがいまして、千円かどうかというふうな議論はございますけれども、あくまでこれは、金融機関等と監査法人との関係で合理的に算定をしたものを評価して、それを注記するというふうなことだというふうに理解しております。
  137. 木島日出夫

    ○木島委員 先ほどの答弁でも、そもそも再評価の基準についてもあいまいもことしているわけですから、なおさら、再評価が行われた後の土地の下落等の評価、基準があいまいだ。あいまいなものとあいまいなものの差ですからあいまいになる。そうすると、この十条の、注記しなきゃいかぬといっても、本当に正しく実態が表へ出てくるかどうか私は本当に疑問だと思うんです。  このことだけ聞いていいですか。少なくとも、再評価の基準が、路線価でとるのか、公示価格でとるのか、あるいは鑑定士に鑑定をさせてその八掛けとかいう金額をとるのか、そういう一定のルールで再評価をした場合は、減価した場合のその減価を評価する基準も同じルールで貫くんだ、そのルールは絶対変えさせないんだということはいいですね、提案者、あるいは大蔵省
  138. 大原一三

    大原議員 それはむしろ当然だと思いますね。同じ考え方でやってもらいたい。商法だって会計原則だって一貫性ということを言っているわけですから、あのときはこう、このときはこうというのは私はおかしいと思います。最初にとった原則評価がえをしていただきたい、こう思います。
  139. 木島日出夫

    ○木島委員 もう時間が来たからやめますが、どうも法案そのものがまだ私は生煮えじゃないかと思いますし、またBIS基準を高めて貸し渋り対策にはほとんど役に立たないんじゃないかということも指摘を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  140. 笹川堯

    笹川委員長 午後二時三十分より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ————◇—————     午後二時三十分開議
  141. 笹川堯

    笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  太田誠一君外七名提出株式消却の手続に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、提出者より趣旨説明を聴取いたします。上田勇君。     —————————————  株式消却の手続に関する商法特例に関する   法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  142. 上田勇

    上田(勇)議員 ただいま議題となりました株式消却の手続に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。  本法律案は、近年の大量のエクイティーファイナンスの結果、株式需給のバランスが崩れ、株式市場が低迷する一方で、企業内部に多額の資本準備金が積み立てられ、資本市場における資金需給の硬直化と非効率化を招いている等の会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、公開会社について、従来の配当可能利益の範囲内で自己株式を取得して消却することができることとしていることに加え、資本準備金をもって自己株式を取得して消却することができるようにすることにより、資本市場の一層の効率化と活性化を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与しようとするものでありまして、その主な内容は、次のとおりであります。  第一に、公開会社は、定款をもって、経済情勢、当該会社の業務または財産の状況その他の事情を勘案して特に必要があると認めるときは取締役会の決議により資本準備金をもって自己株式を買い受けて消却することができる旨を定めることができることとしております。  この場合においては、定款をもって、その定めをした日後において取締役会の決議により資本準備金をもって買い受けて消却することができる株式の総数及び取得価額の総額を定めなければならないこととするとともに、この株式取得価額の総額は、資本準備金及び利益準備金の合計額から資本の四分の一に相当する額を控除した額を超えることができないこととしております。  第二に、資本準備金をもって自己株式を買い受けて消却する旨の取締役会の決議があった場合には、債権者保護手続をしなければならないこととするとともに、会社は、この手続をした場合には、その手続の終了後遅滞なく、その株式について失効の手続をしなければならないこととしております。  第三に、この法律の施行後最初に招集手続が開始される株主総会の終結のときまでは、会社は、定款に定めがなくても、取締役会の決議により資本準備金をもって自己株式を買い受けて消却することができることとしております。これにより株式を買い受けたときは、取締役は、株式消却の承認に関する議案をその最初の株主総会に提出しなければならないこととするとともに、その承認は、特別決議によらなければならないこととしております。  第四に、本法律案は、平成十二年三月三十一日までの限時法とすることとしております。  以上が、本法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  143. 笹川堯

    笹川委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  144. 笹川堯

    笹川委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木秀典君。
  145. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 民友連佐々木秀典です。  提案者法務省に対して御質問を申し上げます。大蔵省も見えているんですね。場合によりましたら、大蔵省にもお聞きすることになるかもしれません。  今回のこの議員立法、午前中には、土地の再評価のための法律も議員立法として本件と一緒に提案をされました。いずれも、目的とするところ、趣旨とするところをこれからお伺いをいたしますけれども、どうも、いわば現在の経済事情などの中の御要請を受けてというか、御要請などを考慮しての緊急的な対策として、議員立法として御提案になったんだということのようでございます。土地評価の方は、提案者お話によりますと、いわゆる金融機関の貸し渋り対策、これの解消に役に立つものだ、専らこの点に絞られてのようでございました。  ただ、私どもの同僚委員の質問にもございましたように、私自身も、それが本当に効果があるものかどうなのか、法律が通れば貸し渋りの現象というのがなくなるかということについては極めて疑念を持っておりまして、そんな決定的な、エース的な法律だとは思えないのですけれども、その点についてはまだこれからも審議がありますし、幸い、この株式消却の手続に関する商法特例の改正とともに、あすは再評価についても参考人が来られるということになりました。このことは去年に比べて大変結構なことだと思いますし、この勉強をさせていただいて、この法案に対する態度も実は私は決めさせていただこうと思っておりますので、きょうは、幾つかの疑問点、あるいは私の理解しがたい点などについてぜひ提案者に御教示を願いたい、こんなように思っております。  しかし、それにいたしましても、これもまた商法の改正でございます。今度の法案提案者の中でも有力な提案者でございます数名の方は、昨年のいわゆるストックオプションの商法改正についても御提案をなさいました。今度の改正も、この去年の商法改正、ストックオプションと私は同じ線上にあるものだと思います。そして、昨年の改正は実は、平成六年に政府法務省につくらせた商法の改正、自己株の取得を限定的に認めるようにした、これがまずスタートになっているということも私どもは認識をするわけであります。  今、提案者からこの法律が必要な理由について御説明があったわけですけれども、一応改めて念のために、この趣旨についてもう少し御説明をいただきたいと存じます。  と申しますのも、提案理由では、この趣旨として、近年の大量のエクイティーファイナンスの結果、株式の需給バランスが崩れている、それから株式の市場が低迷している。企業の内部に多額の資本準備金が積み立てられて、資本市場における資金需給の硬直化を招いているということになりますか、それと非効率化を招いている等の会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ、こうなっているわけですね。公開会社について、ですから非公開会社は入らない。公開会社についてのみ。従来の配当可能利益の範囲内で自己株式を取得して消却することができることとしている。これはそうですね。  依然として商法は、まだ自己株の取得ということについては禁止をしているわけです、大原則として。これを平成六年に一部条件つきで解禁し、さらにまた昨年の皆さんの提案のいわゆるストックオプションでさらに規制を緩和してきたわけですけれども、しかし、それについても、この原資は配当可能利益によるんだということになっているわけですね。ここのところを今度の法案ではさらに規制を緩和しよう。  つまり、資本準備金で自己株を一たん取得してそれを消却することができるようにする、そうすれば資本市場が効率化し活性化する、こういうことになるんですね。そしてまた国民経済も健全な発展に向かうであろう、この役に立つ、こういうことなんだけれども、その前段の状況と、それから、今度これで変えようとすることと、それによる効果ということは、本当に因果関係をきちんと持つものなんでしょうか。その辺について、まず提案者の御認識と御説明をいただきたい。
  146. 保岡興治

    ○保岡議員 佐々木委員がお述べになったように、平成六年に自社株の取得が認められたわけでございます。これは、株というのは発行するばかりじゃなく、ときには自己株を取得・消却して、そしていただいていたお金をまた市場に戻すというようなことで、ROEを高めるというようなこととか、あるいは株式市場を引き締めて需給バランスをとって活性化するとか、そういった株式の魅力や市場の引き締めによる活性化、こういった面とか、あるいは成熟企業から新規企業資本を移すとか、そんないろいろな機能が自社株取得.消却にはあるわけで、そういうことが実は平成六年で制度化された。  アメリカなどは、自社株消却と新株発行がほぼ拮抗していて株の需給バランスがよくとれているから、今日のような株の高い水準をとっておることができるのだとよく言われるわけです。日本の場合は、御案内のとおり、大きくすることはいいことだと、発行する方向でどんどん拡大してきたわけですね。そこで、今申し上げたような平成六年の商法改正があった。しかし、これがなかなか実行に移される気配がない。  しかし、一方で、持ち合いの解消という社会経済の構造改革ということも迫られてきておる、そういう受け皿としての制度の要請も強くなってきた。そこで、定時株主総会で一回こっきりで自社株消却を決めるという制度に加えて、取締役会で、総会で授権された範囲内において一定の限度で自社株消却を機動的に対応できるような制度を、昨年の議員立法で切り開いたわけです。  そういう仕組みができて以来なかなか進んでいなかった自社株消却が、昨年は実は三十三社、この特例で自社株消却をやっておりますし、定時株主総会で自社株消却をやったのが三十社、合わせて六十三社実行しました。しかしながら、定款で機動的な対応をしょうという制度を定めた会社が百十七社に上ったと聞いておりますけれども、そのうち三十三社しか実行できなかった。これは、景気が悪くて、予定はしたけれどもなかなか利益が出ずに自社株消却に至らなかったという事情も大いにあるのじゃないかというふうに考えました。  御案内のとおり、昨年の十一月以来、国民負担を求めたことの反動とかその回復が予想以上におくれたということに加えて、アジアの経済危機が韓国に飛び火してすぐそばに来た。そしてまた、大型の金融機関の破綻というようなことで一気に金融の安定が損なわれて、その結果、消費は一遍に急カーブで落ちる。そしてまた、そのために景気の先行きが全く不透明になって真っ暗になるというような、私たち経済危機、金融危機に直面したわけです。  昨年の暮れまでの金融安定化対策とかマクロ経済対策などを思い切って打ちまして、そして、この一月来何とか経済が、金融が底割れするような事態は防いでいるものの、三月期、期末に向かって、この期末の各会社経営状態をどう立て直して次年度につないでいくかという重大な問題がそこに横たわっているわけでございます。これは、東京ビッグバンが始まる、そしてアジアの金融経済不安に対応するのに、我が国にも責任がある。  いろいろなことを考えますと、これからの経済運営にとって、期末をどう過ごすかということは極めて重大な政治テーマだということで、実はファイナンスが近年、七〇年代から新株発行で時価発行ということが続いて、かなり資本準備金が大きくなってきておる。  一方で、先ほど申し上げたように、三月は各社が利益を出さなければいけない、経営の姿をよくするために。これは、株式を放出する、持ち合いを解消する方向に動く、あるいは計画的に持ち合いを解消するのも期末に合わせているという会社もあるということで、株式が相当緩む危険性がある。株価が下がるということは、それだけ企業の含み益にも影響して、決算にも影響するというようなことがありますので、ぜひこの際、従来の株式自己取得消却の持っている機能をさらに強くしていくために、しかも期末に合わせてできるだけ効果あらしめるために、今回提案を申し上げたような議員立法による特例臨時措置を時限立法でとらせていただいたような次第でございます。
  147. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 昨年の商法改正の論議は、私は極めて拙速で行われた、今でもそう思っておりますし、審議の日にちがないということを言えばこれは一言もないということを、実は太田議員もそのときおっしゃっておられたですね。衆議院では参考人を呼ぶことすらできなかった。その後、参議院の方の審議では参考人を呼んで、意見を聴取して質疑をするということもやったようですけれども、残念ながら衆議院の方ではそれすらもできなかった。中身についてもいろいろな御意見があったようですけれども、私は、やはり、幾ら議員立法だからといって、中身の議論をはしょるということはいけないと思っておるわけです。  それで、やはり国民に広く知らしめなければならないし、国民の多くがこうした法律作成の議論に参加をする機会というのを与えない。ともすれば議員立法は、みんながいいよと言えば、それで審議を全部はしょってやるということになると、国民に知らしめる機会や論議に参加する機会を結局与えないということになってしまう。そういう御指摘、御批判が、昨年の例の商法改正論議の中に随分あったですね。終わりましてからも、商法学者から、随分多くの方から、そういうやり方はおかしいというような声明も出されたりしたわけです。その中には、こういうような法律のつくり方というのは二度とやめてもらいたいという強い御意見まであった。  しかし、今度もまた非常に時間がない形の中で、これが議員立法の形で行われようとしている。しかも、去年もそうですけれども、何といっても商法というのは、商事あるいは会社についての基本法、六法の中の一つである法律ですから、この改正ということは大変大事なことだと思うのですね。しかも、この自社株取得の問題については、かねてから法務省も問題意識を持っておられ、各方面からの御意見もあり、また学者からの御意見もあって、数年前から法制審議会などを中心に、自己株取得の問題については全般的な検討をしてきていたわけですね。  昨年のストックオプションなんかも、当然のことながら政府の提案として出す用意ができていたけれども、議員立法でそれを前倒しにされたということがあったわけです。去年は、それを出すについては経済界からの強い御要請もあって、今、保岡議員からもお話があったように、緊急対策として、効果あらしめるためにこれを出したというお話だった。動機あるいは立法の経緯としてそういう御説明があったわけですね。  今度の場合には、自己株を取得して消却をする、その取得の財源として、今までのように利益だけではとても間に合わない、足りない。だから去年もストックオプションをつくったけれども、なかなかに実施する会社が多くなかった。もちろん、今おっしゃるような不景気な状況だとかいろいろな要因がそれに重なったからだろうとは思うわけですけれども、それを今度は資本準備金、いわゆる法定の積立金、これを財源に当てよう。これもまた今までの原則を大きく変えることになるわけですけれども、今度の場合に、これをまたやろうとすることについての動機それから経緯、これは去年の場合と同じようなのですか。やはりそれを求める経済界からの強い御要請があったということなのか。それはいつごろあったのか。その辺についてお話をいただけますか。
  148. 保岡興治

    ○保岡議員 いろいろたくさん質問されましたが、いつごろ経済界から要請があったか、私もはっきりつぶさに覚えておりませんが、一月の末ないし二月の初めごろだったか、あるいはもうちょっと早かったかということでございます。  今佐々木委員お話しの、昨年のストックオプションの一般化の法案、それから自社株消却の緩和の議員立法、これも確かにあの六月の定時株主総会に間に合わせたいということで、一年でも早く実施していただくためには、ちょっとおくれたらもう一年後になってしまうということで、事柄は急がれると思いまして、立案した結果、そしてまた提案を申し上げた結果、法制審議会に御議論いただく機会がなくて、そして法制審議会先生方から、自分たち意見を聞く機会を大切にしてほしいという趣旨を非常に強烈に言われたわけです。  我々は、もちろんそういう機会があることが望ましい、そしてできればそういう機会をつくるべきだとも思っておりますが、事柄が急がれて、急がれる理由が一つの政治判断として決断をいたしておりましたので、実はこういう商法は基本法だから、法制審議会の議を経ずに議員立法した例がないというお話もございましたが、急変する、激動する今の時代に、従来の法制審議会のペースで審議、答申をいただいていたのでは、この制度は恐らく来年あるいは来年以降になる可能性がある。事実、あのときに議員立法をしていなければ、今国会の法務委員会にそれが提案されたかどうか、甚だたくさん山積みの法案の前に、難しかったのではないかという気すらいたします。  今のような経済状況の中に、ストックオプションの一般化と自社株消却特例ができなかったならば、先ほど申し上げたようないろいろなストックオプションの動きも、あるいは自社株消却の三十三社の例も今ないことを考えますと、機動的な立法活動というのは今の時代に極めて重大だ。そういう意味では、今度は、先ほど申し上げたように危機的な状況に合った金融安定化、経済の回復という重大な現時の経済社会情勢を踏まえれば、今次の立法もまた政治的に時宜を得た立法であると私は確信を持っております。  そして同時に、議員が立法をすることは、これは立法府にある者として当然のことでございまして、お互いきょうの論議も、また先国会の国会での論議もそういう使命の重さを背負った上での真剣な論議でありまして、自分の国家を思う一つの考え方、社会情勢に対する認識、立法のニーズ、こういったものに対する見識は互いに大事にして、誇りとしてこれを行使していかなければならないものだと思います。  そういった意味では、今回、先ほど申し上げたような理由で法定準備金を一つの財源とする自社株消却の道を時限的に開いたことは、まさに時宜を得た立法措置だと考えます。
  149. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 提案者は自画自賛なさっているようですけれども、私はそんなに褒められるべきことなのかなと思ってまだ、いや、これをやったらあしたから株価がぐうんと上がって、それで株取引が活性化して、そしてまた企業もみんなよくなるなんて、そんなことにはとてもなるとは思えないのですよ。  さっき議員もおっしゃったように、去年だって、よかれと思ってやったストックオプションですけれども、実際には、決めたけれども実行されなかった。実行されなかったのは、不況がひどかったとか金融関係の企業が破綻したからだとか、いろいろな要因が重なったからだというお話もあるわけでしょう、もちろん財源も足りなかったというのだけれども。  それはしかし、幾ら気負って、去年もたしか保岡議員はそう言われたはずですよ。まだ決まっていない去年の審議の中で、もうここ数日の株価はぐんと上がっているというお話をされましたね。だけれども、その後また落ちたわけでしょう。低迷してきたわけでしょう。だからこれが唯一のものではない。もちろん何だってそうですね。今度だって、三十兆公的資金をつぎ込むといったって、あれで全部が完全によくなるなどということはとても思われない、だけれども相当程度の手当てにはなるということは間違いないだろうけれども、その中の一つの手段であるわけでしょう。だから余り大仰に考えることはいかがなものかと私は思うのです。  そのことを考えると、確かに政治家の決断というのは、ある場合には必要だろうとは思う。思うけれども、やはりその決断というのは、世論を広く喚起し、その中での国民の声を聞き、それをそんたくし、十分にそれをそしゃくして、その上での決断でなければ、そんなものは妄断になると私は思うのです。場合によって、政治は結果責任ということもあるわけですけれども、よかれと思ったって悪かったことができた、悪い結果が出てきた場合には、申し開きができないということになるわけです。しかも、去年もそうだし、今度の法改正もそうだし、原則を変えるということなのですから、このことには相当慎重であらねばならない、私はそう思っているわけです。  それで、実は平成六年の商法改正のときには、法務省は、法制審議会を通じてということになりますけれども、その議論の中でいろいろな団体から意見を聞きましたね。意見照会ということをやった。二百団体ぐらいに照会したのじゃないでしょうか。そして、その中でたしか七十団体ぐらいからの回答がその自己株の取得についてはあったのですね。例えば経済団体にしたって、経団連だけじゃない、同友会だとかあるいは各地の商工会議所だとか、それから中小企業の団体なんかにも問い合わせているのですね。それから、弁護士会はもちろんのこと、公証人連合会だとか公認会計士協会だとか税理士会だとか、いろいろなところに意見を聞いている。私はやはりそういう手段を尽くすことが大事だと思うのです。  アメリカだって、議員立法が多いと言われますけれども、私どもが調べたところによると、思いつきでぱっと短期間の間につくっているわけじゃないのですよ。その議員立法法律として出すまでの間には、いろいろなところの御意見を聞いて、長いときには七年ぐらい時間をかけて、その上で議員立法をつくったという例もあるやに聞いているのです。私は、議員立法というのは、責任を持つだけに、そういうものだと思うのです。それに比べると、率直に言って、去年の商法改正と今回のこの自己株の取得・消却についての法律のつくり方というのは、そういう点では非常に問題がある、私はやはりそう思っております。その思いは抜け切れません。  そこで、少しそういう苦情を申し上げながら、内容の問題もお伺いしたいと思うのですけれども、今度の問題には、資本準備金が一番問題になっているわけですね。  そこで、先ほどの提案の御趣旨の中には書かれていないのですけれども、私どもが提案者からちょうだいしました平成十年二月十三日付の自由民主党法務部会商法に関する小委員会からのペーパーを拝見いたしますと、この法案趣旨について、まず「必要以上の資本準備金が積み立てられている。」という御指摘があります。先ほどの御趣旨の方では、「企業内部に多額の資本準備金が積み立てられ、」こう書いてある。ところが、この自民党のペーパーの中では、「必要以上の資本準備金が積み立てられ」と書いてあります。「必要以上の資本準備金」というのはどういうことなんですか。  そもそも資本準備金というのは、積み立てについての原則法律の上では決まっていますけれども、幾らまでということはない。そうすると、必要か必要でないかというのはどこでどうやって判断するのですか。資本準備金というのは、積み立てられればられるほど、本来これは資本に組み入れられるべきものですから、それだけ企業健全性を示すものだということになって、資本準備金が多くなるということは決してマイナスじゃないわけなんですよ。ですから、それとの関連で、この「必要以上の資本準備金」という表現はどういう認識のもとに書かれているのか、これをちょっとお教えいただきたいのです。
  150. 保岡興治

    ○保岡議員 「必要以上の」というのは、必要でない資本準備金があるという意味ではありません。公開会社について、資本の欠損に備えるために必要とされる法定準備金の水準として、法定準備金は、たまたま時価発行とかいうことから、額面と発行価額の差を資本準備金として、資本に組み入れない部分をそこに積むというような仕組みから積み立てられていくわけですね。したがって、そういう資本取引のあり方から生まれてくるもので積み立てられるものである。一方利益準備金は、これは利益の処分をする際に一定の割合でこれを積み立てるということが義務づけられており、しかも資本の四分の一まで積み立てるべしという上限が決まっておる。  したがって、我々は資本を補完するものとしての法定準備金というものの性格を考えたときに、その法定準備金の必要最小限度の、安全弁としての法律が求めている水準はどこにあるかと見れば、それは法定されている利益準備金の、資本の四分の一を上限とする義務であろう。そういった意味で、その水準を指して、それ以上に大きくなっている資本準備金、その額の範囲内で今度の自社株消却の引き当て財源にしょうとするものでございます。  なお、先ほど佐々木委員からいろいろ議員立法について御意見がございましたが、我々も、もとより、例えば今回の自社株消却を行うのに資本準備金を引き当てするに際しては、資本充実原則あるいは維持の原則という大原則をどう守るかと。したがって、今回の改正の中でも、基本として、資本を減少させる減資の手続に必要な定款変更を伴うという意味での特別決議が求められていますから、同じように特別決議をもってすることをスタートにしておりますし、また債権者の保護手続という点も、減資の場合と同じような手続を担保しました。  そういった意味では、減資と同様の債権者保護、あるいは株主に対する平等原則を守るという手当てなど、きちっと手当てして制度改正をした。その辺は、十二分に議員立法の重要性を踏まえて、慎重に制度を組み立てているつもりでございます。
  151. 太田誠一

    太田(誠)議員 ちょっと数字を申し上げますけれども、資本準備金の総額は、東証第一部上場会社千三百八十社につきまして、昭和五十七年は、今から十六年前でございますけれども、七兆五千億であったわけです。それが平成九年の三月でございますけれども、三十一兆三千億、四倍以上に資本準備金はなっております。千三百八十社は我が国を代表する企業でございます。他方、この間にGNPがどうであったかというと、昭和五十七年には二百七十兆円、平成九年には五百七兆、一・八倍。GNPが一・八倍になった間に、資本準備金は四倍になっておりますので、バブルの後半のあの狂ったようなエクイティーファイナンスの時代に、必要以上の資本準備金が積み上がったというふうに私どもは認識をしております。  なお、多ければ多いほどいいのかというところは、あるいは先生もお気づきかもしれませんけれども、成熟した企業は投資の必要がないので、どんどん内部留保が厚くなってくるわけでございますが、他方、これから新しく経済界にデビューをしょうとするベンチャービジネスの方は資金不足になっておる。こちらの成熟産業の方に資金が固定化されておって、こちらが不足して困っておる。そのことを、何かの道をあけてあげることによって流れていくということをつくり出すことが、我が国の円滑な経済の構造変革、改革ということについて必要ではないかというふうに考えておる次第でございます。
  152. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 今太田議員から、資本準備金の現状について把握していらっしゃる情報について開示があったわけですけれども、じゃ、片っ方で、もう一つの準備金がある。利益準備金、これについてはどういうふうに認識していますか、把握していますか。その額ですね。
  153. 太田誠一

    太田(誠)議員 利益準備金につきましては、文字どおり、これは法定の努力目標があるわけでございますので、それに到達をしていない企業は別といたしまして、到達をしている企業はそれ以上持つ必要がないので、つまり、配当の十分の一を積み立てる必要がないわけでございますから、これはむしろ固定的に、資本金の四分の一というところに固定されているだろうというふうに思いまして、調べておりません。
  154. 保岡興治

    ○保岡議員 ちなみに、今、利益準備金は二十七兆三千百億、そして資本準備金は三十二兆八千四百九十四億であって、資本準備金は、ほぼ資本の額に匹敵するものでございます。
  155. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 利益準備金の方がやや下回るけれども、資本準備金とほぼ同程度、それより若干、何兆か少ないという程度ですね。どっちも積み上がっているわけですね。  要するに今度の法改正は、消却のための原資に資本準備金を使いたいということなんだけれども、株式消却というのは、実質的には、やはり株式を減少させるということは出資を払い戻すということですわね、実際問題としては。そうすると、出資はやはり多い方がいいので、それは資本の補てんのためにあるわけだから。だから、減少させ、出資を払い戻すとなるということを考えると、これはどちらかというと、準備金を充てるにしても、資本準備金よりは利益準備金の方からまず考えるべきじゃないかと思うのだけれども、このことを一切こっちへ置いておいて、資本準備金、資本準備金と、こうやっているというのは、ただ資本準備金が多いから、固定的になっているからこれを運用させたい、こういうことなんですか。利益準備金のことは議論にならなかったのですか。
  156. 保岡興治

    ○保岡議員 資本準備金は大きければ大きいほどいいじゃないか、債権者のためにそれだけ引き当てが大きい方がいいのじゃないかと。債権者の立場からいうとそういうことが言えなくもないと思いますが、それも必要以上に必要とされるものではないということは事実としてはあると思います。  しかし一方で、先ほど太田提案者からお話しのように、成熟企業に留保されているお金というものを、資源というものをできるだけ新企業に、資本市場に戻して投資に向けていく。それは経済構造の改革の重要なテーマでございまして、そういった意味で、自社株消却というのはそういう仕組みを背負っているのであります。  そういう意味では、いわゆる過大なファイナンスが行われて市場がだぶついてしまって、株も低迷し、ROEも低く、株式の魅力が低下している今の株式市場の状況を活性化し、あわせて経済構造の改革に資するという意味では、かような手段をもってする自社株消却も今の経済社会情勢に十分こたえ得るものであり、かつ、先ほどお話し申し上げたとおり、資本充実・維持の原則に即する点も留意して、減資の手続と同じような措置をとって株主や債権者の保護に備えているということを御理解賜りたいと思います。  そして、答え忘れましたが、利益準備金をなぜ引き当ての対象にまず考えなかったかということですが、これは、先ほど来申し上げているように、利益準備金は資本の四分の一までは必ず積まなければならないと義務づけられています。したがって、これが資本の四分の一を切るような状況になりますと、積まなくて済んでそれを配当に回せる状況が、また、配当よりかそこに積むことを義務づけられるという意味では、配当がそれだけ少なくなってしまう余地が生まれてくる。それは株主の配当請求権を毀損、侵害する結果につながるということで、過大なファイナンスで得た資本準備金、これを引き当てにするのが正しいということを考えた次第でございます。
  157. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 その辺の関係は、どうも聞いてみますと、私は有識者の中でもいろいろな意見があるように思われるのですよね。提案者は専ら積極的なメリットの点だけを言っているわけですけれども、やはりデメリットもかなりあるようにも伺っておるのです。  先ほども、六年の改正のときには各方面からの意見が随分聞けたということでしたが、先ほどの提案者お話だと、経済界といいますか、経団連さんからの御要請というのも、ことしの一月、年が明けてからだというお話でした。そうなると、とてもじゃないけれどもたくさんの関係団体から、あるいは識者から御意見を聞いたり、意見を照会するなんという暇は今度はなかったわけですね、ほとんど。自民党さんが中心になってやっていますから、私どもとしてはほとんど率直に言って時間がなかった。そしてまた、経団連の方々が、実は先月の、二月のたしか中旬を過ぎてからだろうと思いますけれども、初めて我が党にお見えになって、この法案についてぜひ共同提案者になることをお考えいただきたいという御要請を受けたのは初めてです、この問題については。自民党さんの方には何度も行って恐らく御協議をなさっているのかもしれないけれども。  そして、今度のものは、提案者お話を聞くと、これは決算期に間に合わせたいというんでしょう、三月決算に。それで、施行期日は、この法律は公布の日からということになっていますか。午前中の土地評価法案は、施行期日は平成十年三月三十一日から施行とはっきり打ち込んでいるんですね。これは決算期を目指しての対策だということが一目瞭然わかるのですが、こちらの方は公布の日からということになっているけれども、実は、その経済界の御要請も受けて、三月決算期に向けてやりたいんだ。そのために、本来は今度の改正でも、このことを企業が決定するためには株主総会の特別決議が必要なんですね。だけれども、株主総会はまだ先だ。そこで、三月決算期を控えて、とりあえず取締役会だけでこれをやっておいて、それで後から株主総会の特別決議で事後承認を得よう。非常にこれも特例中の特例措置を置いているわけですね。この点では、私は、これまた極めて異例なことだと思います。  時限立法になっている点は土地の再評価法と同じですけれども、何しろ取締役会で今度はクリアしょうというようなやり方まで非常に緊急のものとして考えるという割には、この間も経団連の方が私どものところへ来たのは二月ですからね。議員立法でどうしても早くやってもらいたいというのなら、各議員のみんなの理解が必要なはずなんだ。これは私は、与党だけではないと思うのです。まして自民党さんだけじゃないと思うのです。共産党まで含めた各党の御理解をいただいて、みんなで賛成して、それならわかりましたと言えるんだったらこんないいことはないわけですから。ところが、それを必要としている方々が私どもに来たのは、先月の末初めてですよね。ごめんなさい、三月の六日ですよ。今月ですよ。ついこの間ですよ。  だって、決算期来ることはわかっているんでしょう、経済界、各企業は。しかも、去年みんな苦労してストックオプションを通して、それでどこの会社もやるのかと思ったらそうでもなかったということでしょう、それはいろいろな要因が加わったけれども。だから、それだけではどうも仏つくって魂入れずみたいなものだから、ここで財源もう少し緩和してもらって、そしてやりたい。だけれども、これは原則を変えることなんですからね。  だとすると、それこそ議員立法でやる以上は、みんなの、法務委員全部が納得するような手だては要請側としてすべきだと私は思うのに、それをやっていないのじゃないですか。しかも、決算期来るなんというのはわかっているじゃないですか。三月の六日ですよ、今言ったように、私どもに来たのは。こういうことというのは、本当に真剣に財界にしても経済界にしても考えていることなんだろうか。  大原先生お話だと、土地評価法の方は、むしろそういう企業の御要請というよりも先生の方がいろいろお考えになって、それでむしろ企業の方が勉強してなくて、ああ、こんなにいい法律ができるのですかと喜んでいるというようなことなんだけれども。だけれども、どうもちぐはぐな気がしてならないわけですよ。ですから、私は、提案者の一生懸命やっている真摯なお気持ちにもかかわらず、果たして効果があるのか、そしてまた、本当に企業の側がそれだけ望んでいるのか、こういうような状況の中で原則を変えていいのかという危惧、心配、これをするわけです。  しかも、非常にその期間が短い。一月からということは、二、三、二カ月しかないわけですから、この法案をつくるのだって、法制局、いろいろ御協力いただいたり、恐らく法務省も協力したのだろうと思うけれども、御苦労はあったろうということはわかるけれども、余りにもこれは拙速だと私は思いますし、もっといろいろな方面の意見を聞くべきだと思うのです。そして、何も今度の取締役会でやらせなくたっていいじゃないですか、それなら。株主総会でやらせるぐらいまで審議をして、そこでじっくりやった方がいいんじゃないか、私はそんなふうに思えてならないのです。  そこで、法務省ですけれども、法務省の方へ御相談があって、その立法作業に参画をしたのはいつからですか。
  158. 森脇勝

    ○森脇政府委員 今回の法律案は、もともとは自由民主党が中心になっておつくりになるということでございまして、先ほど御紹介ありましたとおり、立法段階の当初、本年一月二十日ごろから、当局に対しまして自由民主党の方から、現行商法内容及びその趣旨、それから改正法をつくるとした場合の現行商法趣旨との整合性、こういった点についてお尋ねがございまして、当局では、商法を所管するという立場から御意見を申し上げてきたというところでございます。
  159. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 もちろん法務省としては、法制審議会での自己株取得をめぐっての研究の蓄積があるわけですね、いろいろな方々の御意見だとか、意見の照会もあるから。だから、今度、提案者の方から御相談をいただくについても、多分いろいろな意見を言ったんだろうと思う。  一つは、今局長言われたように、整合性の問題ということがありますね。それから、提案者からもお話が出たけれども、債権者保護の問題もありますね。それから、特例にすることの是非の問題もありますね、私は極めて異例だと思うけれども。こういうことについて、恐らくアドバイスもされたり、あるいは意見も述べられたり、あるいは意見を求められたりしているんだろうと思うんですけれども、幾つか挙げていただきたいのですが、どんなことが中心、あるいは法務省としては関心を持つポイントだったのですか。
  160. 森脇勝

    ○森脇政府委員 商法を所管する立場から申しますと、やはり、債権者を害する点がないかどう一か、株主を害する点がないかどうか、これが一番のポイントであろうと思っております。  こういう点から見ますと、資本準備金を充てるというのは、今まで確かに例のないことではございました。  ただ、御提案の御趣旨は、エクイティーファイナンスの結果、資本準備金は十分過ぎるといいますか、非常に急激な増加を示しておるという点から、これで安全な部分があるのではないかという御提言でございました。  その面から見ますと、言ってみれば、債権者を害するおそれというのは極めて少なくなるであろう。また、株主保護の点からいたしますと、今、資本減少手続がございますが、これと同様な手続を踏んでいただけるという形にして立法されるのであれば、債権者の保護あるいは株主の保護といった点から一応商法目的は果たされるのではないかという考え方でおりました。
  161. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 今の局長のお話を聞いても、やはり商法原則がここで緩和されることによる不安材料というのはあるわけですね。初めてのことなんだから、後でどういうツケが回ってくるかということはやってみないとわからないわけでしょう、恐らく。私は、メリットの点だけではなくてデメリットの点だってあるんだと思うのですよ。この資本準備金で自社株を買っていく、消却していく、その分だけいわゆる出資の払い戻しになる。時限立法にしているけれども、そのツケというのは、私は、その後だって後遺症として残るんじゃないかという心配をしないでもないのです。  それと同時に、今度の特例が、何としても私は気に入らないんだな、この取締役会だけでとりあえずできるというのが。もともと取締役会は、自社株の取得だとかこういうことについては現在やれないようになっているわけでしょう。大体、自社株の取得についてどうしてだめなのかということについては、もうここでさんざん去年も議論されたから言いませんよ。言いませんけれども、そういう心配がある。  そのことを今度は、株主総会で幾ら事後承認といっても、取締役会でやらせるということは、それこそまさにインサイダーとしてやるわけでしょう。そういう心配があるのではないですか。そこまで取締役会に任せてしまっていいのですか。もちろん、いろいろな規制はありますよ、罰則もあるけれども、それではやはり株主総会というものが形骸化されるということにますます拍車がかかっていくのではないでしょうか。その辺の御懸念はありませんか。
  162. 太田誠一

    太田(誠)議員 これはいいことじゃないと私は思っているのです。いいことじゃないんだけれども、それが、要するに政治家の判断というのは、今がどういう状況なのかということで、今が極めて経済全体が危険な状態にあると仮定をいたしますと、そのときに打つべき手が仮にそこにあったとしたときに、筋は通らない、おかしなことだけれども、自分たちの責任でやろうと。その結果、そこはちょっと問題は残るんだけれども、危機から救う一つの手だてになればということを判断するのが、役所ではなくて我々の仕事だろうと。  結局、それでもって国民が、とんでもないことをした、筋の通らないことをして、その結果、結果も大したものがなかったというふうになれば、我々の人間としての信用を失うわけでありますから、次の選挙で決着をつけられる、そういうことじゃないかと私は思っているのです。
  163. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 それは太田さん、ちょっと大げさな言い方なんで。有権者はこんなことわかりませんよ、幾ら説明したって。  そうじゃなくて、肝心なことは、筋を通すか通さないか、あなたが今おっしゃったようなこのことと、それから、筋を通さなくてもやらざるを得ないほどこちらが大変なのか、これをやることによってそれが生き返るほどのことなのか、てんびんにかけ、バランスにかけて考えることだと私は思うのです。  そして、私は手続の大事さというのは本当に大事だと思う。この間もテレビで後藤田さんがデュープロセスということを言っていましたよ。民主主義社会においてはいかに手続ということが大事なのかということを、本当に強調されておった。私はそうだと思います。  例えば、これをやらなかったら今この企業が倒産する、そしてそこの社員が全部路頭に迷う。山一なんかは倒産してしまった、あれだけの会社だって。いろいろな手当てはしたんだろうけれども、それだってだめになったわけでしょう。だけれども、今この商法改正で、こんな特例をつくるかつくらないかでそんな決定的なことが出てくるとは私は到底思えないのです。  しかも、それはことしだけだというのでしょう。来年は、これはまた原則へ戻るのでしょう。本当にこれが有効で大事なことだったら、何も特例でなくたって、来年からずっとやったっていいじゃないですか。ことしだけというのでしょう。僕はどうもそこが理解できないのです。
  164. 保岡興治

    ○保岡議員 太田議員が言われた、筋が通らないことをやっているということではないと思います。これは言い回しの問題であって、彼も、そういう筋の通らぬことをやっている、提案していると言っているのではない。  これは、我々としては、今佐々木委員が言われたように、一つの政策判断をし、それはその前提として、今の非常に危機的な状況の経済をどう将来に回復させていくかということの大きな問題意識があるわけです。それが前提になっている。  そして、確かに、委員が言われるように、原則変更するということは間違いないですよ。資本準備金を引き当てに自社株の消却をするがごときは、本来の筋からいえば大きく外れることだ。そういった意味太田議員も言っていることであって、あえてそういう原則から外れる特例をするについても、その特例をする政策的なニーズがあるという判断がそこにあるのと、それを行う際に、原則で必要とされている配慮というものをこの特例においてもきちっと貫いているかどうかということの、立法者としての良識による判断というものが当然あるのですよ。  だから、私は、委員お話を聞いていると、こういう迅速な議員立法あるいは緊急な議員立法というものが、すべて十分な長い時間をかけて検討するものだという前提があるような気がしてしようがない。私たちは……(佐々木(秀)委員「そんなこと言ってないよ」と呼ぶ)いやいや、そういうふうに聞こえます。  時間は短期間に、しかも中身濃く、正しい判断をお互い責任を持ってやるというのも一つの国会のあり方であって、私はこれからは、政府の提案で法制審議会とかいろいろな手順を踏んでいては間に合わないような、今までの役所のペースを考えると、これはとても世の中のスピードについていけないと。やるべきことがわかっていながら、一定の手続を踏まなければ、あるいは役所の中で調整を終えてこなければ提案がされない、それを政治家が待つ、それが本則だという考え方では、私はこの国は変えていくことができないと。  したがって、役所のテクニカルな、今までの行政の責任で実績を持っておられる、その経験からくる意見は十分聞かなければなりません。そしてまた、多くの国民の声も聞かなければならないが、むしろ、多くの国民のニーズにこたえるためにも迅速な議員立法の役割というのはこれからますますふえてくると思います。  そういった意味では、我々議員は誇りと自信を持って立法活動に当たっていく、そういうことがこれからもますます必要になると私たち考えて、こういうこともその一環だと考えております。  それと、この特例が何かことしだけで来年はなくなってしまうみたいなちょっと質疑をされた……(佐々木(秀)委員「だって、ことしだけなんでしょう」と呼ぶ)いえ、これは二〇〇〇年三月まで、二年間の特例でございます。
  165. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 時限立法意味じゃないですよ。違いますよ。だって、今度の特例というやつは今回限りでしょう、取締役会。.そうでしょう、一回。だから、来年は違うじゃないですか。おかしいですよ。(保岡議員「来年は必要ないよ」と呼ぶ)そんなこと来年になってみないとわからないじゃないですか、来年どうなるかというのは。ことし以上にもっと必要だということになるかもしれない。いいですよ、もう時間がないから。  それから、法制審議会お話もありましたし、どうも保岡議員、非常に気負っておられるけれども、議員立法だから何でもいいというものじゃないよ、そんなものは。議員立法であればあるほど謙虚になって慎重になるべきだと思います。  ただ、法制審議会にかけると時間がかかってというお話もあるけれども、これは、何が何でも全部が時間かかるわけじゃないでしょう。それと、行革審からの勧告もあって、今審議会の検討もやっているでしょう。殊に法制審議会というのはほかの行政庁の委員会とはちょっと違うよね、生い立ち、成り立ち、役割、やってきたこと、違うんだよ。ここのところをお互い認識しなければならないことと、何が何でも遅くしているということじゃないよ、遅くすればいいだなんて私は言っていませんよ。そして、今度は審議会も改革しようとやっているわけでしょう。例えば会長が法務大臣だというのを改めようと言っている。そんなことを含めて能率的な、効率的な審議会をやろうということに努めておられるだろうと思う。  時間がないからお答えは要りませんけれども、私どもはそういうことも望んでいます。しかし、やはりそういうところも大事にしなければ私はならないと思う。そしてまた、緊急、どうしてもやらなければならないというようなときでも、やはりその場その場で関係者からのお話を聞いたりというようなことはなければならないと思う。政治家が責任を持つにしても、私はそこは謙虚さがつきまとうべきだと思います。  そして、原則を変えるということについては、それなりのやはり手続も必要だし、皆さんの納得が得られるような少なくとも措置をとらなければならない。そうでないと、思い上がりになってしまう、あるいは蛮勇を振るうということになってしまう。そのことによって手続というものをないがしろにするということは私は決して許されないことだと思っています。中身の問題もさることながら、手続というのは民主主義社会においては大事にされなければならない、そうでなければ民主主義社会というのは私は成り立たない、こんなふうにも思っております。  あすは参考人も来られますから、また十分に私は勉強させていただきたいと思いますけれども、とりあえず、これは議論していけば切りがないのですけれども、一応、時間、ちょっと前かもしれませんけれども、この程度で私の質問は終わらせていただきます。どうもありがとう。
  166. 笹川堯

  167. 漆原良夫

    漆原委員 平和・改革の漆原でございます。  提案理由の中にこういう記載があります。「企業内部に多額の資本準備金が積み立てられ、資本市場における資金需給の硬直化と非効率化を招いている」、こういう記述がありまして、この多額の資本準備金の積み立てがどうして資金需給の硬直化と非効率化を招いているのか、その辺をちょっと具体的に御説明していただければと思うのです。
  168. 上田勇

    上田(勇)議員 お答えいたします。  先ほど提案理由説明の中で今委員の御指摘のような表現がございましたが、これは、現在の資本市場において、成熟企業では余剰資金がある。一方で、新しく出てくる新規企業の方においては、資金需要があるにもかかわらず、十分な資金が手当てできないということも現状にはあります。そういう意味で、この自社株の消却が活発に行われることによって、成熟企業から余剰資金が資本市場の方に流れて、それが資金需要のある新規企業の方にも提供される。そういった意味で、資金需要の効率化が図られるのではないかという意味であります。  企業内に多額の資本準備金が積み立てられたままで、自社株の消却が十分に行われていないために、余剰資金のある成熟した企業がその資金を十分に資本市場の方に還元することができなくて、余剰資金が効率的に活用されていない、そういうような状況をこういうような表現で御説明したわけであります。  これが提案理由の説明にありました硬直化と非効率化、若干その表現が適正を欠いていた面があるかもしれませんけれども、そういう意味での資金の、いわゆる余剰のあるところと需要のあるところのバランスが必ずしもうまくいっていないということを意味した意図であります。
  169. 漆原良夫

    漆原委員 よくわかりました。どうも上田さんが相手だとやりにくくてしょうがないのですが……。  この自己株の取得と消却についてなんですが、九四年に、配当可能利益の範囲内で株主総会決議をもって自己株を消却することが認められました。九七年にも、利益消却特例法が施行されて、中間配当財源によって消却することが認められた。今回、また三回目の消却に関する法律になるわけなんですが、東証一部上場企業のうち、今まで二つのこの特例といいますか、消却方法を実施している企業数はどのくらいあるのでしょうか。
  170. 太田誠一

    太田(誠)議員 ちょっと人によって言うことが違うのですけれども、四十七社という説でございます。実行したところは四十七社、定款を変えたところは百二十七社ぐらいだったと思います。定款に定めてやるということを一たん決議したところが上場企業の中で百二十七社だったと思います。
  171. 漆原良夫

    漆原委員 株主総会で決議をしたところはどのくらいあるのでしょうか。
  172. 太田誠一

    太田(誠)議員 株主総会で定款変更を決議したのは百二十四社でございます。失礼しました。百二十七社じゃなく、百二十四社ですね。実際に株式の取得・消却を行ったものは四十七社、こういうふうに聞いております。
  173. 漆原良夫

    漆原委員 一部上場会社は千百七十ちょっとということを聞いておるのですが、自己株消却会社が九四年から今日までの間にこの程度しか実施されていないことは、何か理由があるのでしょうか。
  174. 太田誠一

    太田(誠)議員 これは長年、我が国では自社株を取得することが悪いことのように思われてきたものですから、それを株主総会の決議に付するときに相当勇気が要るというのが実際のところらしいのです。  そういう意味では、勇気ある開明的な経営者がそういう決断をしているけれども、多くの企業においてはそれをやるかという決断がつかないというところが多いだろうと思いますし、また、こういう手段があるということを、我々は、新聞にも出ているし、官報にも出ているわけだから、当然、企業のトップやあるいは財務の担当者は知っているだろうというふうに思っておりますけれども、意外に知らないという人も多いんだと思います。そういう意味では、こういう手段が普及をしてくるにはやはりある程度時間がかかるんだというふうに思っております。それにいたしましても、こういう方法があるということを周知徹底する必要が、まだ十分余地があるというふうに思っております。
  175. 漆原良夫

    漆原委員 今回の特例法案は、消却の原資を資本準備金にまで広げよう、こういうことですね。今までにも余り実行されていなかったこの自己株消却、先ほど述べたとおりなんですが、これが今回の特例法案によって飛躍的に伸びるということが予想されるのかどうか。いかがでしょうか。
  176. 太田誠一

    太田(誠)議員 これは、さっきの百二十四社から実行した四十七社を引いた残りの約八十社はやるという決断をしたわけでありますので、たまたま今期は配当可能利益が非常に限られたものであったためにやる幅がなかったということですので、恐らく、この六月の、次の株主総会までの間に実行をしてくれるだろうというふうに思うのですね。  そこで、じゃ一体、残った八十社前後の会社資本金の四分の一を超える資本準備金をどれぐらい持っているかというのは、四兆一千億ぐらいだったと思いますけれども、相当の金額に上るわけでございます。したがって、全部やるかどうかは別といたしまして、相当やるだろうというふうに思います。  それから、先ほどの佐々木議員の御質問にもありましたけれども、平成六年の商法改正で初めてこの自社株の取得・消却に道を開いた後、あの時点ではたしか一けただったと思います。七社とか八社ぐらいしか実行しなかった。それが昨年の法改正によって四十七社になったわけでございますので、そこは、新しい枠組みであるという点では、極めてスピーディーに拡大している、普及しているというふうに思っていいんじゃないかと思うのです。倍々、一けたずつふえてくる。
  177. 漆原良夫

    漆原委員 全体として千百数十社あるわけですね。そのうち八十社はやってくれるだろうという御期待というふうに聞いたのですが、どうなんですか、ほかの千百社ぐらいの企業の方から、資本準備金を取り崩して何とか自己株を取得したいんだ、こういうふうな具体的な要望はあるんでしょうか。
  178. 太田誠一

    太田(誠)議員 さっき言いました八十社前後は大変悔しい思いをしたんだと思いますね。せっかく株主総会で議決をしたのに実行できなかったのは大変悔しかったと思います。そういう気持ちは、いろいろな、直接、間接の形で伝わってまいりますので、非常に切望をしているということがわかるわけでございます。  ただ、ほかの千数百社がどうかということについては、いろいろな会社があるでしょうから、それぞれの考えだと思います。だけれども、一般にはこういう、何か規制を緩和して、新たな手段を与えるということでありますので、実行しない会社においてもやはりそれは歓迎だろうというふうに思っております。
  179. 漆原良夫

    漆原委員 先ほど、佐々木委員の質問にもありましたが、非常に法的な問題点も含む、資本準備金を取り崩すという、ある意味では、今までなかった制度ですね。これを取り崩したり、非常に特例中の特例を設けたりするという法律。よほどの要請がなければ、商法原則を変えるような、あるいは特例中の特例を設けるような法案をつくってはならないのではないかと思うのですが、この点、今お聞きしたところ、八十社ぐらいは強い要望はあるけれども、あと千社ぐらいの要望はよくわからない、こういうこととお聞きしてよろしいのでしょうか。
  180. 太田誠一

    太田(誠)議員 よほどの強い要望がなければということでございますが、話の筋としては、私は、悪くないと思っているわけでございます。  一番最初にやるときの手続については、人によって考えが違いますので、私はちょっと筋が悪いかなと思いましたけれども、その本体の部分については、平成六年の改正のときからずっと、我が国もアメリカと同じように、自社株を取得し、そして、成熟産業からベンチャービジネスの方に資金が流れていくような自由闊達な資金市場というものをつくりたいというふうに思っておりますので、少しも悪いことじゃないというふうに思っているわけでございます。  しかし、我々は、資本準備金がそんなに巨額のものになっているということを、不明にして、つい最近まで知らなかったわけでありまして、その点を経済界から、こんなにあります、こんなに本当に要るのでしょうかというふうに言われて初めて、そこで事実を知った、現状を知ったということでございます。それを知ったからには、さっさとやった方がいいということでございます。
  181. 漆原良夫

    漆原委員 今回は公開の会社を基準にしているようなんですが、資本準備金がこんなにありますというのは、全社を対象にしておっしゃっているのですか。それとも、今おっしゃった八十社を基準にしておっしゃっているのでしょうか。
  182. 太田誠一

    太田(誠)議員 千三百社か千百社か、またすぐ忘れてしまいますけれども、一部、二部上場企業資本準備金の資本金を超える総額は三十六兆ぐらいだったと思います。ですから、このことに気がつき、そして勇気を持って実行した、定款を変えたという百社のほかに、そこが四兆幾らかで、その外側に三十何兆あるわけでございますから、それは、十分にみんなが使える枠組みになっておるというふうに思います。
  183. 漆原良夫

    漆原委員 今回の法案は、自己株取得・消却の原資を資本準備金に拡大するということなのですが、法務省にお伺いしたいと思います。  一月二十日にいろいろ整合性について相談を受けたという先ほどの御答弁がありましたが、一般論として、商法には資本充実・維持の原則があります。まず、この資本充実・維持の原則趣旨と、その内容を、一般的で結構でございますが、御説明をいただければと思います。
  184. 森脇勝

    ○森脇政府委員 資本充実・維持の原則と言われておりますのは、株式会社が有限責任でありますところから、特にその会社債権者保護のために、資本の額に相当する財産が現実会社に保有されなければならない、こういう原則であるというふうに心得ております。
  185. 漆原良夫

    漆原委員 法定準備金の中には、資本準備金と利益準備金があるわけでございますが、利益準備金には積み立ての限度と積立率の規定があります。しかし、資本準備金にはそのような規定はなく、資本剰余金が生ずれば、全額これを積み立てしなければならないという今の商法の構成になっておるわけなのですが、なぜ、資本準備金は、利益準備金と違って、全額積み立てなければならないのか。そして、際限なく積み立てていかなければならないという法律構成になっているのか。その辺は、いかがでしょうか。
  186. 森脇勝

    ○森脇政府委員 まず、利益準備金の方の限度でございますが、これは何も規定がございませんと、本来は配当可能利益を株主に配当する、こういう建前になっているわけです。ただ、将来的にも、その配当を継続できるようにするという趣旨から、配当するたびにその十分の一を積み立てさせるという形をとっておるものでございまして、いわば政策的な目的から積み立てを義務づけている、こういう性格のものでございますので、そういった性格から、積立限度額、具体的には資本の額の四分の一ということになっておりますが、これが定められているものというふうに考えられます。  次に、資本準備金の方ですが、今委員御指摘になりましたとおり、これは、株式の発行額中の資本に組み入れない額でありますとか、そういった資本取引から生ずるものでございます。これは、その取引の性格から、本来、配当資金に回されるべきものではない。つまり、機関の中の収益として出てきたものではない。そういう性格から、資本準備金という形で積み立てることを義務づけられておるものでございまして、これについては、今申しました資本取引から生じているという事の性質上、積み立てるべし、つまり配当に回してはいけないとされているもので、初めからこれに限度をつけるべき性格のものではない、こういうふうに商法はとらえているのだと思っております。
  187. 漆原良夫

    漆原委員 本法案は、準備金が資本の四分の一を超える場合に、その超過額の範囲内の資本準備金を自己株消却の原資とする、こういう条文になっておるわけですが、今お述べいただいた資本維持の原則から見て、法務省としては、どんな認識をお持ちでございましょうか。
  188. 森脇勝

    ○森脇政府委員 今回、自社株の消却のための取得に充てられる原資は、資本準備金ということでございますので、資本そのものではないということで、資本充実・維持の原則がそのまま適用されるものではないというふうに考えております。  しかし、資本準備金は、会社の財政基盤を維持するための、いわば安全弁としての機能を有しているわけでございますので、この機能がみだりに損なわれることがないようにしなければならない、こういった要請は当然考慮しなければならないと思っております。  ただ、現行法におきましても、資本減少手続というのが定められております。これは、株主総会の特別決議でありますとか、債権者保護手続といった一定の厳格な手続を履践することによりまして、資本金で株式を取得して消却する、こういう手続でございます。この手続は、実質、資本準備金を使って資本減少の手続をとることも可能にしているわけでございます。つまり、資本準備金を取締役会の決議によりまして資本に繰り入れるという手続をいたしますと、その繰り入れた額を加えた資本、これによって消却、つまり資本減少手続をとることが可能なわけです。  今回の法律で規定しておるところを見ますと、資本準備金を財源として株式消却に充てることができる、こういう規定でございまして、言ってみれば、資本に繰り入れるという手続は省略しておりますけれども、現行商法でも基本的には認められる事項を規定したものだというふうに解することができるわけであります。  資本減少手続の場合には、先ほど申しましたとおり、株主総会の特別決議でありますとか債権者保護手続といった厳格な手続が定められておるわけですが、今回の改正法においてはどうかといって見てみますと、定款変更をするという形で株主総会の特別決議を経る。さらに、取締役会が現実に決議をした場合には、それにつきまして債権者保護手続という手続もとられておる。さらに、法定準備金のうちの資本準備金の資本の四分の一を超える部分に買い入れ原資が限られておる。また、中間配当財源がない会社はこの手続を行うことができないといった手続が設けられておるところでございまして、これらからいたしますと、先ほど申しました資本準備金としての役割であります会社の財政基盤維持といった観点からも、一応の配慮がなされているのではないかというふうに考えておるところでございます。
  189. 漆原良夫

    漆原委員 資本準備金の制度は、先ほど局長がおっしゃったように、会社経営の安全弁という大きな役割があるわけですね。今までは、資本の欠損の補てんに充てるためにこの準備金の取り崩しということが認められていたわけですけれども、これが流出することによって、本来会社に残るべき、従来ならば残るべき資産が出ていくわけですね。  そういう意味では、やはり、会社の全体としての資産が減ってしまう会社健全化の問題、それから、会社経営が不安定になるかもしれないという一般債権者の保護の問題があると思うのですが、法務省は、この話を聞いて、全く問題ないというふうにお考えになったのか、問題はあるけれどもいろいろ措置が講じられているからやむを得ないなというふうにお考えになったのか、率直なところ、いかがでしょうか。
  190. 森脇勝

    ○森脇政府委員 大変難しい御質問でございます。  これをどの限度で各会社消却のために資本準備金をお使いになるかというのはわかりませんけれども、今まで健全であり十分準備金が積まれていた会社が、急激に事業の大失敗があるとか何かがあった場合に会社健全性を害す場合はないのかと言われると、それは皆無でございますというお答えはいたしかねるのではないかと思います。  ただ、この資本準備金を使うという今回の御発想のもとには、エクイティーファイナンスによって資本準備金が膨大な額に上ってきた、これは、実際の数字を見てみますと、非常な勢いでの伸びを示しているわけでございます。そういった観点から考えますと、今言ったような懸念される事態というのは、ほとんど考えにくいのが実情ではないかというふうに認識いたしております。
  191. 漆原良夫

    漆原委員 資本の四分の一を超える超過額は全部消却に充てることができるのだという規定になっておりますが、この四分の一というのはどこから出てきたのでしょうか。
  192. 太田誠一

    太田(誠)議員 従来の法定準備金も四分の一までが積み立て目標であって、それを二つの項目である資本準備金と利益準備金のうちの利益準備金だけに量的な制約が、努力目標としての規制がかかっていたわけでございますけれども、全体としては、もともと法定準備金の四分の一という制約しかなかったのだというふうに思っております。  そうすると、今回の、つまり資本準備金の方には量的な制約は何もないわけですから、これまで積み立てなさいという努力目標がなかったわけですから、両方を足したものが法定準備金であれば、その中身は利益準備金についての努力目標だけなのですね。ですから、量的に何か大きな緩和がなされたということではないわけです。現行の商法考え方、示されたガイドラインというものを、全体についてきちんとかけてみたということでございます。
  193. 漆原良夫

    漆原委員 よくわからないのですが、そもそも資本準備金というのは、先ほど局長の御説明があった、本来ならばこれは際限がないのだ、取り崩してはいけないのだ、その分は残しておかなければいけないのだ、こういう性格のものじゃないのですか。利益準備金は、これは万が一のことが、将来不景気になった場合には困るからちょっと預金しておこうということであって、資本準備金というのは、そういう不測のために備えるというよりは、そもそもその部分の財産は会社に残しておかなければならないのだという性格の違いがあるのじゃないですか、どうでしょうか。
  194. 太田誠一

    太田(誠)議員 これはそういう考え方ももともとの商法考え方にあると思いますけれども、現実に、株式時価発行をやった会社は巨額の資本準備金が積み上がる。株式時価発行をしなかった、たまたま経営者がそういう選択をしなかったところは非常に少ない資本準備金しかないということになるわけですね。  結局、資本準備金のもとになるのは、そういう時価発行的なものと、あと合併差益とかいろいろありますけれども、通常起こり得るのは、時価発行によるキャッシュのフローが入ってくるということが、半分は資本金に組み入れなければいけないけれども、半分は準備金としてとっておきなさいということだと思うのです。  そうすると、ある企業時価発行をやった、そうすると資本準備金はたくさんある、ある企業はやらなかったというと、その差というのは、私はそんなに、法律考え方として、結果として、すべての企業について資本準備金を十分積んでおきなさいというそういうあれはないのだと思いますね。現実企業について、片っ方はたまたま時価発行をやったからたくさんあって、片っ方はやらなかったからないというような違いでありますので、そんなに本質的なことではないというように思いますね。
  195. 漆原良夫

    漆原委員 そこのところをもう一度局長に説明していただいて、本質的なものかどうか。利益準備金というのは、先ほど申し上げましたように四分の一でいいのだ、資本準備金は本来残しておかなければだめなのだ、これは本質的な部分なのだというのが私の主張なのですが、その辺、もう一度わかりやすく説明していただければと思います。
  196. 森脇勝

    ○森脇政府委員 私は今でも、資本準備金というのは、資本取引から生ずることによるものだというふうに考えております。  ただ、資本準備金はどういう場合に取り崩せるか、そっちの面から考えますと、それは、資本に組み入れる場合、あるいは欠損が生じた場合にそれに対応するためということでございまして、利益準備金も欠損に対応するという形のものでございますので、その面では一致している。そういう意味では、会社の安全弁としての役割を果たすという面では共通の部分があるというふうに思っております。
  197. 漆原良夫

    漆原委員 もうちょっと。最終的に会社資本の欠損に充てる役割をなすということは、その部分においては資本準備金も利益準備金も私も同じだと思いますが、そもそも商法前提利益準備金については四分の一でいいのだ、資本準備金は無制限に積み立てていかなければならないのだというこの考え方の差は一体どこにあるのでしょうか。それがまさに今言う本質的な差だと私は思いますので、その差を説明していただければと思います。
  198. 森脇勝

    ○森脇政府委員 それは先ほどお答えしましたとおり、資本取引から生じた、いわば資本に組み入れざる部分という性格から来るものと思っております。
  199. 漆原良夫

    漆原委員 私は今のお答えで十分理解をしておりますが、提案者太田さんはいかがでしょう。  要するに、資本取引から来るものだから勝手に取り崩してはいけないのだという商法原則はあるのだ、一方は、利益の積み立てたからどんどん積み立てる必要はない、四分の一でいいのだ、こういう本質的な差があるのだという今の局長の説明なのですが、十分御理解いただけましたか。
  200. 太田誠一

    太田(誠)議員 よくわかりました。よくわかりましたが、法定準備金のない会社法の世界というものが海の向こうにはあるわけですね。そういうものがそもそもない世界、つまりアメリカがそういうものはないわけです。確かにそういう精神ということはわかりますけれども、自社株取得を平成六年以来、私も大事なことだと思って推進している一人でございますけれども、今おっしゃったようなことも含めて、そこはそんなに大事でもない、こういうふうに思っているわけでございます。
  201. 漆原良夫

    漆原委員 なぜ私がここでつつかえたかといいますと、四分の一を超える部分はいいのだ、四分の一までは残しておきなさいよということから来ているのですね。商法利益準備金が四分の一だから資本準備金も四分の一でいいのだというお答えだから、それはおかしいのじゃないか、ここから発生しているのですね。  商法利益準備金四分の一というのは、資本準備金は無制限に積み立てられるから、だから利益準備金は四分の一でいいのだ、こういう発想だと思うのです。先ほど来申し上げているように、資本準備金というのは会社の運営の安全弁ですから、これを四分の一まで下げていいというのは、ちょっと僕は理屈に合わないのじゃないかな、こう思いますが、いかがでしょうか。
  202. 菊池洋一

    ○菊池説明員 やや技術的な面もございますので、恐縮でございますが、私から御説明させていただきたいと思います。  ただいま漆原委員御指摘のとおり、資本準備金について積み立ての限度がないのは、その財源が資本取引から来るという性格の違いだろうと私どもは理解いたしております。ただ、これは株の発行であるとか資本減少とか合併とかそういうことがあった場合に積み立てろということでございますので、なければ商法上は資本準備金というのは一切ないということもあるわけで、法律的にはそういう性格のものである。  これに対しまして、利益準備金は、毎期利益を配当する都度その一〇%を資本の四分の一に達するまで積み立てろということでございますから、これはまさに資本の安全弁ということを直接の目的にしているということでございます。  積み立ての趣旨といいますか財源の性格は違っておりますが、積み立てた後の機能ということから見ますと、利益準備金も資本準備金もいずれも、商法上は資本の欠損の補てんか資本に組み入れる、この二つしか使ってはいけないということになっておりますので、今御審議いただいております法律案は、それに対する例外を定めるということになるわけでございます。  私ども、最初お伺いしたときは、ああ、例外だな、どういう考え方なのだろうかというふうに受けとめさせていただいたわけでございますが、準備金は、資本に組み入れるということは自由にできるわけでございます。そして、その資本は、一定の手続をとれば減資をすることができるわけでございまして、資本減少の方法として株式消却ということもできるわけでございますから、今回の法律案考え方は、準備金を資本に組み入れるという手続を、いわば比喩的に申し上げますと中間省略するという形になるのではないかというふうに思います。  それから、四分の一の点でございますが、法定準備金を他の目的に使うことを認めるという場合に、全額認めることにするのか、それとも一部は必ず残しておくということにするのかというのが一つ選択の問題だろうと思いますが、私どもといたしましては、株式会社の財政基盤の維持、あるいは最終的には債権者の保護という観点から、全部を使っていいということではなくて、やはり法定準備金の合計額資本の四分の一まではとっておいていただきたい。それはなぜかと申しますと、今の商法利益準備金は四分の一まで積んでくださいというふうに定めているからでございます。  したがいまして、利益準備金が既に資本の四分の一に達している企業につきましては、資本準備金は全額自己株式の取得財源として差し支えないということになるのではないかというふうに思っ  ております。
  203. 漆原良夫

    漆原委員 菊池参事官から大変理論的な丁寧なお答えをいただいて、よくわかったと言うとまたしかられますので。  ただ、四分の一というのがどうも、本来ならば全部残すべきものを利益準備金と同じように四分の一まででいいのだという物すごく大胆な商法上の原則の転換ではないかと思うのですね。せめて資本と同額ぐらいというふうになればなと思ったりしているのですが、いかがでしょうか。
  204. 菊池洋一

    ○菊池説明員 繰り返しになるかもしれませんが、確かに御指摘のとおり、資本準備金というのは、一たん積んだ以上は一定の定められた目的以外に使ってはいけないというふうに商法は定めております。ただ、先ほど御説明申し上げましたとおり、この資本準備金を取締役会の決議で資本に組み入れるということは現在の商法も認めているわけでございます。そして、その資本を株主総会の特別決議と債権者保護手続を行うことによって減資をするということも今の商法は認めているわけでございますので、その二つの手続をいわば一括して行うということになるのではないかというふうに考えております。  それから、四分の一の点でございますが、商法は、利益準備金は、どんな場合でも必ず資本の四分の一に達するまでは義務として積んでくださいというふうに定めているわけでございますが、資本準備金につきましては、一定の取引があった場合には積んでください、取引がなければゼロになると。一切資本準備金がないということも、つまり合併とか減資とか時価発行増資とかしなければ、資本準備金がゼロということも法律は予定しているわけでございますから、法定準備金合わせて資本の四分の一まで確保しておいていただければ今の商法考え方と整合性がとれるのではないかというふうに考えている次第でございます。
  205. 漆原良夫

    漆原委員 ちょっと言いたいこともあるのですが、時間がなくなったので、これで終わります。  ありがとうございました。
  206. 笹川堯

  207. 安倍基雄

    安倍(基)委員 法務大臣も来ていただきましてありがとうございました。  今の議論を聞いておりまして、いろいろ問題点があると思いますけれども、どういうメリットがあるかという話はそちらの提案者がいろいろ言われましたけれども、なぜ急ぐのかという問題があるのですね。  今まで商法の根幹にかかわるものはちゃんと審議会を通じて長い間かかってやる。ところが、さっきもお話が出ましたように、ことしの一月ぐらいになってから急に議論を初めて、我々の方には全然説明もなくて、私ども、去年ストックオプションが論議されたときに、こんな簡単にやってはいかぬぞ、こういうことは二度とあってはいかぬぞということを主張したつもりです。私は質問に出なかったのですけれども、正森君がるる言っていました。まさに私はあれでもっておしまいだなと思ったら、ことしまた同じことが、しかももっと大きな商法原則に対するいわば違反というか原則を外すものが出てきた。  さっき議員立法云々の話が出ましたけれども、たしかに議員立法というのは、本当にすごいスタッフを持って、それぞれの議員というのはスタッフを持っておりますから、しかも時間をかけて、何年もかけてやってこそ初めて議員立法の権威があるのであって、何か経団連に言われたらたちまち何となくできてしまった、しかもそれは商法原則を大きく曲げているということに本当に私はある意味から怒りを感じておるのです。もっとも、我が党は共同提案者になってしまったという話が出まして、中で大分議論をしまして、きょうははっきりその辺の筋道を立てて聞いてみるということで、私は非常に今度の法案に対して不信感を持っております。  まず、何でそんなに急ぐのか。一説によれば、株価対策というか、今年度末で例のBIS規制をあれするために株が余り下がってはいかぬ、そのためにさっきの土地の再評価なんというのもある。土地の再評価の方ははっきりわかるのですけれども、こちらの方は、何かその辺をうまくオブラートで包んで、いかにも余った資本をベンチャーキャピタルあたりに使わせると。それならそれでもっと腰を据えた審議があっていいのじゃないか。何でそんなに急ぐのかというのをまず教えてく、ださい。
  208. 太田誠一

    太田(誠)議員 これはどう現状を認識するかという問題だと私は思います。さまざまなことを考えておりますけれども、平成六年の商法改正のときに、あのときも実は、私どもは自民党の中で早くから自社株取得についてもっと緩和すべきであるという主張を掲げて、当時の法務省の当局を説得していたわけでございます。その法案審議の際も、たしか安倍先生はおられたように私は記憶しておるのですけれども……(安倍(基)委員「何年かな」と呼ぶ)平成六年。平成六年のときもおられたと思うのです。ですから、法務委員会の中では自社株の取得規制を緩和するというのは結構長い時間をかけて議論をしてきた方だと思うのでございます。  たまたま去年は、やや株余り、株過剰時代というのが常に株式市場を不安に陥れているという背景がございましたので、その状態から早く脱皮したいということで去年も急いでやったわけでございます。そして、そのときに……(安倍(基)委員「たくさん聞きたいから簡単に」と呼ぶ)そうですが。つまり去年、平成九年の法改正の延長線上であるというふうに思っておりますので、そのときにこれまでやっておけばよかったのですけれども、そのときにここまで思い至らなかったので、手直しをする意味でやったというふうに思っております。
  209. 安倍基雄

    安倍(基)委員 諸外国の例なのですけれども、しきりとあなたはアメリカあたりでやっておると。では、欧州はどうなのですか。というのは、アメリカの場合には法定準備金、余り詳しくなくて、利益が出たらどんどんと配当していってしまうのですよ、たまらないわけですよ。ところが、日本の場合にはきちっとためていく。  欧州の場合の法定準備金の問題はどうなっていますか。
  210. 太田誠一

    太田(誠)議員 欧州の場合は詳しく存じませんが、ドイツなどは日本と同じような法定準備金の制度を持っているというふうにお聞きをいたしております。
  211. 安倍基雄

    安倍(基)委員 ドイツにおける法定準備金のいわば使用制限はどうなっていますか、こういつたことに使えますか。
  212. 太田誠一

    太田(誠)議員 そこまでは存じ上げません。  ただそれは、今の株式市場の、我々はややこのモデルをアメリカの方にとりがちであるということでございます。
  213. 安倍基雄

    安倍(基)委員 ですから、こういう法を変えるときには、世界のいろいろなケースを全部調べて、それの上で考えなきゃいかぬのですよ、大体が。  アメリカの場合には、お話しいたしましたように、利益ができたらどんどん配当していくという慣習があるわけです。でございますから、全く法制の違うアメリカの例をとって、どんどん利益をいわば還元し、自己株を取得しておるというようなことを理由に、ただただ資本準備金がたまったと。そうであれば何で急ぐのですか。恐らく株価対策ではないですか。それをはっきりしてください。BISの関係もありまして、関係ないのですか。
  214. 太田誠一

    太田(誠)議員 貸し渋り対策というふうに直接つながるかどうかはわかりませんけれども、今は、急いだ理由の一つは、これは株式の持ち合いを解消しようという早急な動きが見られるわけでございます、去年の夏あたりから。長年、何十年と株を持っていた金融機関などがそれを手放し始めたということがあるわけでございます。特に、三月期決算に向けて、最終的に長い間の持ち合い状態のような株主が株を手放すということが起こりそうであるということで、やや慌てたというところはあるわけでございます。
  215. 安倍基雄

    安倍(基)委員 ですから、ここでさっき言われたように、本当に余裕がある資金を市場に還元して、ベンチャービジネスに使うというようなことであれば、それなりにじっくり時間をかけてやればいいのですよ。ところが、何か株価が落ちてしまうと例のBIS規制をクリアできなくなると。目先のことでこういう商法の基本原則を変えるようなことをしては本当に困ると思います。しかも、去年の延長線上と言いまずけれども、去年は、要するに配当利益の範囲内でやるわけですよ。今度は資本準備金を取り崩そうなんというのは、これは大変なことなのです。  今話に出ましたように、資本取引はそのまま積んでおくのだという話がございます。まさにそのとおりだと思いまして、アメリカのようにそういった資本準備金も何も区別のないようなところをまねして、どんどん使えるのだ、とんでもない話だ。  私は、そこでまず聞きたいのは、資本準備金は例の特別配当ができませんね、それはさっき言われましたね。ところが、今手続的には資本に組み入れて減資すればいいとおっしゃいまずけれども、基本的にはこのやり方は、自社株を買うということは、それだけ株価をつり上げて、現在の株主に対する実質的な配当と似ているのです。この点について、資本準備金はいわば特別配当には回せないという理屈と、資本に組み入れてそれを減資していわば還元すると、経済効果において変わりないと思いますから。逆に、さっき参事官が、今の手続上許されると言いまずけれども、実質的にはそれは資本準備金を配当に回すと似たことになるのではないですか。まず法務省から聞きましょう。
  216. 森脇勝

    ○森脇政府委員 先生が御指摘になる、資本準備金を株式消却の財源にすることが株主に配当するのと実質的に同じになるのではないかというのは、どの時点をどういうふうにつかまえるのか、ちょっと私ども理解できないのです。  株式消却と申しますのは、会社が特定の株式を有償または無償で消滅させるという行為でございます。また、利益配当というのは、毎決算期において確定した利益を株主に分配する、こういうものでございまして、法律的にはもとより、これは全く別個なものでございます。  株式消却いたしますと、これに応じた株主、これをとってみますと、それは有償消却の場合には株価相当額の利益を得るという関係が生じます。ただ、利益を受けると同時に、その反面、株式を失ってしまう、こういう関係でございますので、これを利益配当と同様に見るということはとてもできないのではないかと思っております。  また、株式消却の結果、残った株主、これを考えてみますと、発行済み株式総数が結果として減少いたしますので、一般には株価を上昇させる要因になるというふうに言われているところでございまして、仮に現実に株価が上昇した場合を考えますと、各株主は株価上昇額相当の経済的な利益を受けるということになりますので、株主側は経済利益を得るという点では利益配当と共通する面もないわけではございません。  ただ、利益配当は、株主に現金が交付されるので、その経済利益が確定したものでございます。それに対しまして、株価が上昇したことによる利益といいますのは、その後さらに株価は変動する可能性がございますので、経済利益が確定しているというものではございません。  こういつた各点から見ますと、利益配当と同視できるのではないかという御指摘がどのような点を指しているのか、私どもには理解しがたいところでございます。(太田(誠)議員「提案者にちゃんと聞いてください」と呼ぶ)
  217. 安倍基雄

    安倍(基)委員 では、簡単にしてくださいよ。長く答えるとすぐ時間がたってしまうから。
  218. 太田誠一

    太田(誠)議員 今言っているのは、資産が外に流出をするわけですね、自社株を買うことによって。そうすると、ある人は、ある種の考え方は、完全競争、完全情報という社会では、その仮定を置けば、純資産がそれだけ減るのだから、一株当たりの資産は変わっていないということで、その株の価値は少しも上がらないのだ、値段も上がらないのだという考え方があるわけですね。これはモディリアーニ・ミラーの仮説でありますけれども、そういう教科書的なことは我々も先生も、お互い経済学を勉強した者は知っているわけです。そこで、それ自体が新たな資産を株主に配当することにはならないわけです。  ただし、ROEのようなものは、当然発行済み株式が減るわけですから、同じ所得を稼ぐ力をこの企業が持っていれば、来期以降の配当については従来よりも大きな一株当たりの配当が期待できるということで、株が上がっていくということは期待できるわけであります。
  219. 安倍基雄

    安倍(基)委員 配当した場合とそれから自己株を消却した場合と、若干形式は違いますけれども、実質的に株主が利得を得ることにおいては変わりないんですよ。  でありますから、今までの当該配当の利益の範囲内で消却するというのは、まことにその理が合っているわけです。配当するか消却するかということなんですよ。それがやはりいわば消却の一つの原則であって、さっきの資本取引でたまった分をここで今自己株であれすると、実質的にはその分の利益資本準備金を使って特別配当するのと似た効果があるんですよ。形式は違うけれども、実質を見た場合に、私がもし、いわば発行当時たくさん株を持っておって、そしてどんどん売ってきた、少し残っている、現在になってずっと持っていれば、要するにそこそこの特別利益を得たと。  でございますから、ちょっと法務省にお聞きしたいんだけれども、いわゆるその得べかりし利益を得なかったという意味で、株主が現在、百万株持っておったのが五万株になってしまった、その男は、本来はこういう措置がないことの前提で買っていたわけですけれども、それが、現在そういったことで新しい制度が導入されて、資本準備金を使っていわば自己株消却できるという制度ができたら、おれは得べかりし利益を喪失したという訴訟も提起できるんじゃないですか、どうですか。
  220. 森脇勝

    ○森脇政府委員 一般に、株主の方が株を取得しあるいは売却するというのは、その方のその時点での御判断に基づいてなされているものだというふうに考えられます。今回、この法律によって株価が仮に上昇したということがあったとしても、それ以前に売られた株主の方は、その時点でいわば自己の危険においてその取引をしたわけでございますので、この法律によって得べかりし利益を失ったであるとか、あるいは、通常の場合のように代表取締役の行為によって得べかりし利益を喪失したという場合というのは想定しがたいのではないかと考えております。
  221. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これは複雑な話になりまずけれども、いわば損失補てんじゃないけれども、損失補てんというと大騒ぎしますけれども、結局、現在持っている株主の利益は大きい。むしろ、いわば過去の人の犠牲において現在の株主が得をする。というのは、さっきの資本勘定は本来とっておくべきだという議論がございましたね。  ですから、本当に私は、資本勘定そのものをいわば取り崩して、現実的には特別配当したと同じ結果になると。これはいろいろ、特別配当と必ずしも株価上昇がぴたり同じとは限らないけれども、本来そういった意味で、アメリカのように毎期毎期きちっとみんなが配当を受けてどんどん、そんなたまっていない場合なら別だけれども、現在のいわば役員なり取締役あるいは株主が、かつてたまった分のお金をみんなが分配していると言ったら変だけれども、それに似た効果があるんじゃないかと私は思うのです。  この議論を始めますと大分専門的になりますからあれですけれども、基本的にはこの新しい制度、というのは、去年までは要するに配当可能な利益でもって消却していたわけですよ。これはまさに理が合うのであって、配当するかいわば自己株を取得して消却するか、どちらかの問題ですから。過去のそういうものを全部そういったものに使うということは、要するに過去の蓄積をもって現在の株主が、あるいは取締役なりが利得を得るという結果になるんです。  つまり、私がしきりと言っていますのは、アメリカがこうだからというのは、アメリカと制度が違う。ドイツなど、日本はどっちかというと欧州の法制をまねしていますけれども、その司法知識が十分なくて、それを十分調べないでアメリカ方式がいいんだという考え、そういったことが、やはり法制審議会を通過させれば、いろんなところがら議論が出て、まあ妥当な結論が出る。恐らく私が今出したような議論は、法制審議会に出せば必ず出る問題だと思う。  でありますから、このいわば法定準備金、さっき法定準備金は本来全部、資本取引だから積んでおくべきものだ、これは筋だと思うんですが、いわばその資本取引によって生じた余剰を現在の株主が、株主総会あるいは取締役会で分けちまう。分けちまうと言っては変だけれども、経済利益を享受するということは否定できない。だからこそ私は、つまり法定準備金制度というのがきちっとあるんだと思っています。  一言。余り長くならない程度に。
  222. 太田誠一

    太田(誠)議員 そもそもエクイティーファイナンスのようなことが頻繁に行われるようになりましたのは最近のことであって、この商法ができたときに、今言ったような規定ができたときに、果たしてその資本準備金がそんなに大量に積まれるということが起こる事態は想定していなかったというふうに思いますよ。こういう資金の調達とかあるいは運用とかいう世界というのは、この十数年、二十年ぐらいの間に大変急速に変わってきたわけでありまして、言ってみれば、先ほど申しましたように、巨額の資本準備金が積み立てられたのはあのバブルの時期であって、バブルの時期に起きたことを我々は今是正をしておる、そういう時期ではないかと思っております。
  223. 安倍基雄

    安倍(基)委員 それならそれで、腰を据えて十分審議会で論議すればいいじゃないですか。この三月末までに間に合わせにゃいかぬと。私は、法務省が聞いたのがつい最近だと聞きまずけれども、法務省として、さっき、何か資本に繰り入れられる、そして減資できると。手続的にはできぬことはないでしょう。だけど、本当に繰り入れる原因があったのか、減資の理由はあったのか。それをやってみたら、まさに一種の、法形式をそのまま使った、いわば脱法と言っては言い方が悪いけれども、いわば形式的にできるということだけであって、それは実質的にそのやり方がいいのかどうかという基本問題があるんですよ。  でございますから、あなたがこういうことで今までそういったことは商法考えていなかったとおっしゃるならば、商法のその部分をどう直していくのか、これは法制審議会で論議すればいいじゃないですか。一カ月か二カ月、経団連にちょっと言われて慌ててやる。もしこれを続けますと、必ず悪い先例ですよ。  しかも、オプションならまだわかるけれども、こういう商法のいわば基本原則に触れるようなやり方をそう簡単に、例えばドイツのことは知らないよ、アメリカは知っているよと。こういう場合は、全世界を調べて、果たしてこれでいいのかどうか。さっき言ったようにいろんな団体の意見も聞き、その上で決めるべきことであって、きょう一日論議して、あした参考人呼んで、はい、オーケー、こういうことが許されるんだろうか。議員立法というのは、もっともっと何年もかけて、もしこれが大事ならば、去年の初めからずっと検討してよかったじゃないですか、我々に相談して。
  224. 太田誠一

    太田(誠)議員 安倍先生の御質問の最初に申し上げましたように、いっかは別として、大変緊急の事態であるというふうに実は認識をしておりましたので、外部からこの資本準備金の現状について指摘されたことに対して、速やかに反応するのが政治家の使命であろうというふうに思ったわけでございます。  なお、ちょっと先ほどから先生と私が思っていることが違うなというふうに思いますのは、憲法では我々に立法権が与えられているわけでありまして、立法権の中には、発議権もそれから審議権も議決権もみんな入っているわけでございますので、我々が発議をするということ自体は、これはむしろ憲法の精神に沿ったことをやっておるのだというふうに思っております。  ただ、その場合に、その審議の期間が短いということについては、実は私もそう思っているのですけれども、今回は、今回も前回もちょっとひどいなという感じを私、持っておりますよ。正直にそう思っておりますけれども、それは実は、ここで説明しているとあれでございますが、さまざまな今の政党の枠組みの手続からいうと、どうしてもこういう状態に立ち至ってしまうということで、ひとつまたゆっくりそういうお話をさせていただければと思っております。
  225. 安倍基雄

    安倍(基)委員 いや、もちろん僕はわかっていますよ。  立法する以上は、どこからつつかれても恥ずかしくない立法をすべきなんですよ。単に発議権ばかり主張して、その結果、後になったら訴訟が起こって、おれたちは損したじゃないか、だれがこういう制度を急に決めたのだという訴訟が起こったとき、だれを訴えるのですか。つまり、立法者はもっと慎重でなくてはいけないのですよ。発議権があるあると言ったら、発議権がある以上、世界に通用する法律をつくらなくてはだめですよ。それが、わずかの短期間で、しかも商法の根幹に触れるような問題。まさにそれは、資本準備金あたりは昔と比べるといろいろな問題があると思います。エクイティーファイナンスを考えていなかったという要素もあるかもしれません。しかし、少なくとも商法の大原則を変えるわけですから、この点においては。  しかも、私がさっき話しましたように、この前の改正の配当可能利益でもっていわば自己株を取得する、まさに論理が合うのです。配当するか、あるいはそのかわりに自己株を取得して株が上がるか、まさにその範囲内では整合性があるのです。その面では私はおかしいと思いません。  今度は、かつての資本取引の蓄積をそれに使うわけですから、これは取締役会あるいは株主の要するに同意を得るだろうといっても、それは今の取締役会あるいは株主は喜びますよ、過去の蓄積分が自分のあれになるのだから。一番怒るのは、かつて高いプレミアで買って、結局手放してしまっている、こういう制度がもしあるのならば、そのときの値段も変わっておったろう、制度が新しく導入されたために、得べかりし利益を喪失したという議論もあるのです。これは、そういった株主であれば訴訟を起こしますよ。その訴訟が最高裁までいくかどうかわかりませんけれども、そんな簡単な問題じゃない。  私、そういった意味で、この前オプションの話が起こったときに、もうこれでおしまいかなと思った。それ以上の話が出てきた。それももう二、三日の話だ。こういう軽率な議員立法をやっていたのじゃ、国会の権威は失墜しますよ。  私はまず念を押したいのは、私どもは最終的には時限立法だから我慢するかというような内部の議論になっていますけれども、まさにこれを続けようと思わないでしょうな。これは我々のやり方次第ですけれども、提案者はどう思っていますか。これはまさに時限立法を完全に守るわけですな。
  226. 太田誠一

    太田(誠)議員 一つの法律案時限立法になるというときには、さまざまな事情があると思うわけでございます。私は時限立法として提案をいたしましたのは、実は今先生がおっしゃったような資本準備金にかかわるかつての商法の精神が大切だという考え方も一方にあるのと同時に、もう一つは、そもそも資本準備金も、法定準備金というものが要らないのではないかという議論も、実は今回大変方々で盛んにあったわけでございます。  そういう論争について、ここ二年ぐらいの間に決着をつけるべきだというふうに思っておりまして、私はその後どうするかということは今考えておりませんし、そのとき私がまだここにいるかどうかもわからないわけでございますので、それはそのときにまた、幸い生き残っておれば、同僚の議員の皆様と相談して決めたい。次回はもっと時間をかけて、十分その意見を開陳し合って提案ができればというふうに思っております。
  227. 安倍基雄

    安倍(基)委員 そうすると、この原則を変えることについて、便宜的なものと必ずしも思っていないわけですな。  私は、商法は、あるいは欧州系の商法現実に本当に即しているかどうかという問題はなきにしもあらずと思いますよ。議論すべきかと思います。ただ、要するにこういう議員立法で今までの原則を本当に踏みにじるようなことをして、それでもって後はどういうことが起こるかわからぬよ、立法府のいわば権威だということは、まさに私は思い上がりだと思いますね。  何か今聞いていますと、いわばこの問題について、つい最近、一月になってですか、初めて法務省に話が出てきた。私は本来これは法制審議会マターだと本当は思いますし、法制審議会を経ないでこういつた種類の議員立法が行われる、しかも商法の根幹にかかわる議員立法であるということについて、所見をお伺いしたいと思います。
  228. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 先ほどからいろいろ委員の御指摘の点をお伺いいたしておりまして、所見をということでございますので申し上げますが、今回の法案は、先ほど来お話に出ておりますように、エクイティーファイナンスの結果、株式市場が低迷している現下の経済情勢にかんがみて、何とか対応できぬだろうかというふうなことでいろいろ検討された結果が、今お話しのような内容の議員立法になって出てきた、このように思います。  そこで、そのような議員立法をなさいました際の私どものスタンスとしては、国会は立法機関でございますので、議員立法をなさることは、これは当然のことでございますし、あるいは政府提案の閣法にいたしましても、いろいろ御審議いただくというふうなことでございます。ですから、議員立法をなさるということで私どもに相談いただいた段階では、私は事務当局には、可能な限りの御協力をいたしなさいということを申し上げております。そういうようなことで、事務当局もそういうような趣旨を酌んでやってくれたものだと思います。  そこで、私自身の反省といたしましては、例えば、いろいろ報道されておりますが、法制審なら法制審、これは大変歴史の古い、明治のころからできている審議会でございますし、伝統もございますし、その法制審が現在のこういうふうな激動の時代に対応できるかどうだろうかというふうなことも考えまして、実は内々部内で、今いろいろな審議会、たくさん審議会ございますが、そういうようなこと等も踏まえまして検討している最中でございます。  私は、基本法につきましては法制審でじっくり検討するようなシステムをつくらなくてはいけない。しかし、こういうふうな世の中に対応するためには、やはりそれはそれでテーマごとに時限を切って、そして検討するような部会と申しますか、法制審の中の部会というふうなものもつくって、弾力的に運用をしなくてはならない。まず、法制審の会長が私自身なのも、これは法務大臣が諮問するというのもおかしいから、まずこの辺から改めようじゃないかというふうなことでやっているわけでございます。  今回の問題につきまして私なりに考えてみますと、現行商法におきましても、取締役会の決議によりまして資本準備金を資本に組み入れることはできるわけでございますし、そして資本減少のために株式消却を行うことも商法で認められているわけでございます。今回の法案は、今申し上げましたような取締役会の決議に基づく資本準備金の資本組み入れという手続を省略いたしまして、資本準備金を財源とする株式の取得・消却を認めるものであるわけでございますけれども、株主だとか債権者保護の点について相応の配慮がなされているものだ、こういうふうに思いますし、そういうような角度から申し上げますと、商法原則を根幹から変えるものでもないのじゃないかなというふうな感じがいたします。
  229. 安倍基雄

    安倍(基)委員 形式的に資本に組み入れられる、形式的に減資ができる。それは形式的にはできるかもしれないけれども、それは本当に減資なら減資の理由があり、組み入れるなら組み入れるだけの理由がなくてはいけないのですよ。単に自社株を取得するためにその方法を使う、ということは逆に、資本準備金を特別配当に回すと似たようなことになるのです、基本的には。それはやはり法務大臣の答えとしては余り伺えません。  いずれにしましても、私はこの話は、確かに法制審がなかなかのろいこともあると思います。しかし、議員立法という以上、少なくとも一年から二年くらいの、しかも今回の改正は本当に商法の根幹にかかわるのですよ。根幹にかかわるとお思いになりませんか。資本準備金というのはもともと資本取引である、それは積み立てておくものだというのが現代の商法考えなのです。その商法考えがもし現代にそぐわないのならば、それなりの十分な検討をして対応すべき。ところが、単に株式市場がどうのこうのというようなことを念頭に持って、形の上では要するに余っている資本をベンチャーに使う。まさに小手先のために根本を見失っているというのが今回の問題ではないか。  私は、少なくとも前回のオプションのときに非常に怒ったわけです、こんな短い時間にやっていいのかと。それ以上に今度は怒っております。ただ、これは限時法だということで、我が党の中で、一応共同提案者になってしまったというので、私は後から、全権を委任してくれ、僕は何でも言うことは言うし、ここでくぎを刺しておく、その結果態度を決めましょうということにしたのであって、大臣はいわば商法の番人なのですよ。だから、協力してやれと言われても、基本的に協力していいところと悪いところがあるわけです。  しかも、今の事務当局のお話を受け入れたいと思いますけれども、資本に組み入れて、それでまた減資させればいいのだと。それはそれなりの理由があって組み入れがあり、減資もあるのですよ。その理由が、要するに基本的には過去の蓄積を吐き出すのだ、吐き出す方法は、特別配当はできない、自社株の購入によって、基本的には、経済的には株価は上がるわけですから、株主はだれも反対しませんよ、取締役も。  しかも、オプションによって取締役は自分が結構有利に自社株を持っているのですよ。まるでお手盛りではないですか。こういう問題は必ず起こりますよ。オプションによって自社株を持っている取締役がおる、それが要するにその価値を高めるために自社株を購入した、そう思われても仕方がない。となれば、私は、かつての資本取引で株を買った男は損害賠償請求してもいいと思っている。つまり、そのときはそういう制度がなかったわけですから、後からできた制度ですから。後からできた制度で利得を得る方が多いわけですから。これはそういった法制的な問題があるのです。  でございますから、最後のあれが来ましたからやめまずけれども、大臣、こういった種類の議員立法というのは十分注意しなければいかぬ、事前によく連絡し合って、法の根幹にかかわるものはそれなりに十分慎重な審議をしなくてはいかぬと思いますけれども、お考えいかがですか。
  230. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 事柄は商取引の根幹にかかわることでもございますし、慎重にまた扱わなくてはなりませんし、関係の皆さんと十分今後も協議を続けまして、しっかりしたものにいたしたい、このように思います。
  231. 安倍基雄

    安倍(基)委員 もう時間が来ました。もう二度とこういう、要するにちょっと言われてすぐやるようなことはしないように。しかも、これは私ども、限時法ということで一応オーケーするわけですから。論議をして、このまま続けるのだというのではなくて、一応これはこれで限時法であるということを確認していただきたいのですが、提案者、いかがですか。
  232. 太田誠一

    太田(誠)議員 もちろん時限立法ですので、よく踏まえて、ずっと続けていくということではな  いということです。
  233. 安倍基雄

    安倍(基)委員 これで終わります。
  234. 笹川堯

  235. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  この株式消却手続に関する商法特例法、これまでも自己株の取得問題については長い間、経済界、財界の方から要求があったわけですが、それ自体大変な弊害を伴う、主に四つの点が指摘されているわけですね。一つは、資本充実・維持の原則に、根本にかかわる問題ですが、資本資産の不健全化、二つ目は株主間の不平等の問題、三つ目は会社支配の不公正の問題、四つ目は不公正な株式取引、これは相場操縦とかインサイダー取引、こういう根本的な大きな問題が指摘されておったわけです。  それだけではなくて、今回の法案は、その取得原資に資本準備金を充てる、これが一つ。もう一つは、しかもその資本準備金を取り崩すに当たって、取締役会の決議だけでこれを当座として認めてしまうという重大な、商法の大原則からして到底認めることのできない、商法をねじ曲げてしまうようなことがその中身になっていると思うわけでありまして、私どもは当然賛成することはできないわけであります。  まず最初に、提案者に質問したいのですが、提案理由を読みますと、近年の大量のエクイティーファイナンスの結果、株式需給のバランスが崩れたということが理由になっているようでありますが、そもそもこういう状況をつくり出したのは、あのバブル経済のときに経済界、企業がどんどんとエクイティーファイナンスをやったこと。ある雑誌でありますが、むだに集めた大量資金、これは見事にこういう言葉だと思うのです。集める必要のない資本バブルに乗じてどんどん集めまくった。そのツケが今、過剰な株式、そして一株当たりの利益の減少、それが私はどういう理由で株価暴落につながっているのかよくわかりませんけれども、しかし、そういう状況を生み出している。すると、結局この法案というのは、経済界がみずからの責任でしでかしたことをしりぬぐいしてやるだけのものだと思うのですね。  すると、バブル時代に、むだにエクイティーファイナンスをやり上げて国民から大量資金を集めまくった、その責任というものをどう提案者考えているのか、まずその認識からお聞かせ願いたい。
  236. 太田誠一

    太田(誠)議員 恐らく、そのときの経営たちは、そういう手段といいますか、エクイティーファイナンスという形でもって、時価発行で大量の資金を集められるということになれていなかったんだと思うのですね、多くの日本経営者は。それで、そういう手段がとれるということで、やや有頂天になったというか、たまたまそのときに超金融緩和のようなことであったのだと思いますけれども、環境がそういうふうにあって、初めてそういうことを経験して、発行さえすればどんどん金が集まってくるというふうに有頂天になっていたと私は思いますね。  それは、例えばよその国においても、こういう資金の調達やあるいは運用という市場は、その都度その都度、十年ぐらいの単位で新機軸が打ち出されてまいりますから、その新機軸を導入した人は、それぞれ政府であったり立法者であったり、あるいは、要するに勇気のある経営者であったりするわけでありますけれども、後の人は恩恵にあずかって舞い上がってしまうというふうなことは、どの時代でもどの国でも起こることであって、そこを反省して、きちっとぜい肉を落として、肉体を引き締めてやり直すというところが、また歴史の中では繰り返されていくことではないかと思います。  ですから、経営者がそういうふうで有頂天になったということを責めるのはやはり私は酷だと思いますし、そこは、だれも経験してない世界に入っちゃって有頂天になったということだと思うのですね。  それについて、我々は、それこそ五十年、商法のできた最初から考えれば随分長い年月がたっているわけでありますけれども、そのころには想定していなかったことが起きたんだということに対して、今、臨時異例の措置も含めてこういうふうな時限立法をしているということは、立法者として一つの責任ではないかというふうに思っております。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  237. 木島日出夫

    ○木島委員 私は、提案者が、あの時代の経営たちがむだに集めた、そういう責任を全く追及することを棚に上げて、商法の大原則をねじ曲げて、それを免罪してやろう、救ってやろうという立場でこの法案を出してきたということは、まことにおかしな話だと思います。  そこで、では、提案者に続いてお聞きしたいのですが、日本株式会社制度の根本は何かと一言で問われたら、私は資本充実・維持の原則だと思うのです。それは、株式会社というのは多くの国民から大量の株を集めて事業をやる、大きな事業もやる。たくさんの債権者との関係ができる。有限責任ですから、債権者の権利を守る最後のよりどころが何といっても資本なんですね。だから、その資本を維持し、充実させるということがやはりこの株式会社制度を健全に発展させていくための根幹なんですね。そこが崩れたら、この制度は成り立たない、そのぐらいに重要な原則だ。今の日本商法にもそういう原則があらゆる分野に貫かれていると思うのですね。そういう非常に重要な原則資本充実・維持の原則なんだ、そういう認識は提案者はお持ちですか。
  238. 太田誠一

    太田(誠)議員 株式会社にとって何が一番大切なことかというのは、では、株式会社が何のためにだれによってつくられるのかということになると思うのですね。そうすると、それは株主が、言ってみれば、投資家あるいは資産を運用しようとする人たち自分のお金を出資して株式会社というものをつくるわけですから、本質的にこれは、会社は株主のものであって、株主主権というのが、これが株式会社の制度において一番最優先に置かれるべきものだと思うのです。  ただ、そうは言いながら、これは株式会社も、株主のことを第一に考えなければいけないけれども、そこに資金を提供する人もいれば、あるいは労働力を提供する人もいるわけでありますから、そういう方々のことも十分に考えなければいけない。それに対しては、例えば債権者保護についての手続があり、あるいはそこで働く人たちについては、勤労者としての保護の法律上の手当てというのが必要だろうとは思いますけれども、株式会社については、あくまでも株主の長期的な利益が第一だろうと思っております。
  239. 木島日出夫

    ○木島委員 資本充実・維持の原則は、決して債権者保護、債権者利益のためだけじゃなくて、それは何といっても株主の利益のためでもある。それは、会社が破綻し、破産し、消滅してしまったら、一番打撃を受けるのは株主でしょう。株式会社が健全に存続、発展する、それが株主の最大の利益であります。そのためにも資本充実・維持原則というのは一番大事な根本原則なんだ。そういう観点で商法は形づくられておると思うわけであります。  そこで、そういう観点からやはり私は、資本金また資本準備金、利益準備金、それの取り崩しの方法、積み立ての方法というのが商法上ずっと規定されておるのだと思うのですね。そういう観点からいきますと、先ほど来の提案者法務省の説明の中に、たくさんの間違いがあると私は思いますので、改めて一つ一つ質問をしていきたいと思うのです。  まず、資本準備金と利益準備金ですが、法定準備金はこの二つですね。いいですか。商法二百八十八条ノ二「資本準備金」、これは「左ニ掲グル金額ハ之ヲ資本準備金トシテ積立ツルコトヲ要ス」というのですよ。積み立てなきゃならぬのですよ。その第一号として「株式ノ発行価額資本ニ組入レザル額」、エクイティーファイナンスなんかまさに典型です。これは全部法律で、無条件で資本に組み入れなきゃいかぬのですよ。青天井ですよ。先ほどそれは答弁ありましたね。天井なしに積み上げなきゃいかぬ。  一方、利益準備金というのは、二百八十八条ですが、利益準備金については、会社資本の四分の一に達するまでは毎決算期利益の処分として支出する金額の十分の一以上を積み立てなさいよと。利益準備金の方は、その十分の一は、全部株主に配当しちゃうんじゃだめだ、資本金の四分の一までは残しておきなさいよと。この二つが資本充実・維持原則の典型的な例だと思うのですね。  ですから、さっき提案者の方が何か資本準備金と利益準備金をごちゃまぜにして、今度の法案は、資本の四分の一までは守るけれども、資本の四分の一以上はどんどん取り崩しちゃっていいんだ、自己株消却のために使っていいんだと。そのことについて、資本準備金も利益準備金も同じなんだというふうな言い方をしているのは、この商法の二百八十八条、二百八十八条ノ二、利益準備金と資本準備金の根本的な違いを全く理解しないか、無視するか、ねじ曲げているかと思うのですが、どうですか。
  240. 太田誠一

    太田(誠)議員 そこが先ほどから、木島先生とやや考えていることが違うと思うのですけれども、それは無制限にそういうものを積み立てていくべきだというふうには思わないわけで……(木島委員「書いてあるじゃないですか」と呼ぶ)いや、それは、さまざまなことがその商法の中には柱としてあるわけですから、これだけがすべてを支配するというものじゃないと私は思いますね。それは、ほかにも幾らでもあると思いますよ。そういう重要な柱になっている考え方が商法の中にあると思いますけれども、それだけを重視するという必要はないと私は思います。  特に、この資本準備金をどうするかということは、債権者の保護のために私は法定準備金があるというふうに思っておりますので、債権者保護のためにすべてを犠牲にするという理由は何もない。その分株主に還元してあげたらどうだろうかというふうに思うわけであります。  そういうふうに株主を重視する経営をするということが、私はこれからの我が国の経営者の基本的な心構えであると思うし、そのようになれば、我が国の株式市場そのものも、今のように株主を重視しないで非常に不安定な相場を続けるということもなくなるだろう。構造改革の必要があると思っておりますので、その点については、株主重視ということにむしろ商法の基本的な考え方があるというふうに認識をしておるということで繰り返し申し上げておきます。
  241. 木島日出夫

    ○木島委員 今のような考え商法二百八十八条ノ二の大原則を曲げることはとんでもないことだ。そんなこと許されるものではないと思いますね。  次に、法務省にお聞きします。  さっき法務省は、資本準備金と利益準備金は機能において同じだと言いました。欠損の補てんのために使われるという点では同じだとるる説明しておりました。これも私は全くの間違いと思います。  それが商法上書かれている。それは確かに両方とも欠損の補てんのために使われます。しかし、商法二百八十九条「法定準備金の使用」、第一項に、「前二条ノ準備金」、資本準備金と利益準備金は「資本ノ欠損ノ填補ニ充ツル場合ヲ除クノ外之ヲ使用スルコトヲ得ズ」、これは同じですね。しかし第二項、「利益準備金ヲ以テ資本ノ欠損ノ填補ニ充ツルモ勿不足スル場合ニ非ザレバ資本準備金ヲ以テ之ニ充ツルコトヲ得ズ」。二百八十九条の第二項は、この取り崩しの順序をきちっと定めているのですよ。まずは利益準備金を使いなさいよ。それを全部使い切った後、なお欠損があって、債権者保護ですね、欠損金を埋めなければならぬときに初めて資本準備金に手をつけることができる。これは資本準備金と利益準備金の違いの本質からくる大事な規定、原則だと思うのです。法務省、私の理解でいいですか。
  242. 森脇勝

    ○森脇政府委員 委員御指摘のとおりだと思っております。
  243. 木島日出夫

    ○木島委員 そのぐらいに資本準備金というのは重いのですよ、商法上位置づけが。  それともう一つ、じゃお聞きしましょう。これは提案者でも法務省でもいいですが。  長い間日本の財界からは自己株消却の要求が出ておりましたが、一九九四年の商法改正で、定時総会の決議により、株主に配当すべき利益をもってする場合、要するに利益が出たその利益を全部ばらまくのではなくて、株式消却、自己株取得のために使ってもいいという改正がなされた。そして、御案内の昨年の消却特例法、この本法の制定ですね。定款の定めがあるとき、取締役会の決議をもって発行済み株式の総数の一割の範囲内で自己株を取得してもいいですよ、そういう状況をつくり出した。  しかし、さすがに資本準備金をその原資に使っていいなんということはできなかったわけですよ。それは、やはり資本準備金というものはそんな自己株取得のために使ってはならぬ、そんなことで資本充実・維持の原則をねじ曲げてはいかぬ、そういう基本的な原則が貫かれていたからこそ、九四年の改正や九七年の改正でこういう状況になったと理解をしているわけでありますが、法務省、そういう理解でいいでしょうか。提案者でもいいです。
  244. 太田誠一

    太田(誠)議員 例えば銀行のように、最も債権者に対して、つまり預金者に対して神経質でなければいけないような事業においても、預金に対する準備率は一定のものにとどまるわけであります。同様にして、一般の企業についても資本金の四分の一というのは非常に意味のある数字だと私は思っておりまして、それ以上積まなければならないという大原則であるということをおっしゃられても、その当時の、その商法ができた、大原則と言われることが確立をされた時代に、一体、日本企業資本準備金の状態はどうだったのですかね。私はほとんどなかったのじゃないかと思いますね。エクイティーファイナンスのような手段が与えられていない古い戦後の日本の時代にそんなものはなかったわけでしょう、そんなに巨額なものはなかったわけだから。それが大事だ大事だとおっしゃるようなものが、現にどこの企業にもないものを大事だ大事だというふうに言うことは、ややちょっと観念論のような気がするわけですね。ですから、そんなにおっしゃるほどのことじゃないのじゃないか。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  245. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、今拓銀が破綻し山一が破綻する、ああいう巨大な企業が破綻をするという状況ですね。こんな状況だからこそ、最後のよりどころである資本並びに資本準備金、とりわけ資本準備金を資本の四分の一まで守っておけばいいんだ、資本の四分の一以上超えたらもう全部放出していいんだなんというそんな法改正は、今の拓銀破綻、山一破綻という状況を見たって、私は逆に出てこないと思うのですね。もっと資本充実・維持の原則を貫くことが求められているのじゃないかというふうに思うのです。  じゃ、もう一つ、資本充実・維持の原則がどんな形で商法の中に貫かれているか。さっきの質疑の中で出てきました。資本準備金はどういう場合に使えるかといったら、二つしかないのですよ。欠損の補てんと資本の組み入れですよ。さっきの質疑の中で、資本準備金を資本の組み入れに使う場合と、また一方では資本の減少ということもありました。何か同じような答弁をしていましたが、全然違う。  資本準備金を資本に組み入れるのは、これは資本充実強化するわけでしょう。だから、商法はどういう取り決めをしているかというと、取締役会の決議だけでいいのですよ。二百九十三条ノ三「準備金の資本組入れ」、「会社ハ取締役会ノ決議ニ依リ準備金ノ全部又ハ一部ヲ資本二組入ルルコトヲ得」と。だから、資本充実する方向に働くときは簡単でいいのですよ。取締役会の決議でいいのですよ。  しかし、じゃ資本を減殺する場合、資本減少、これはどういう決議が必要かといったら、商法三百七十五条「資本減少の決議」、これは「三百四十三条二定ムル決議ニ依ルコトヲ要ス」と。三百四十三条というのは特別決議です。特別決議。株主総会を開いて三分の二の多数の賛同がなければ資本減少はできない。それは資本を減少させるからでしょう。資本充実・維持の原則と逆さまの方向を向くときには縛りをかけるわけです、三分の二の多数での。これも資本充実・維持の原則のあらわれじゃないのでしょうか、法務省。このぐらいに商法資本充実・維持の原則というのを大事にしている。  いかがですか、私のこの言い方、間違いじゃないですか。
  246. 森脇勝

    ○森脇政府委員 御指摘のとおりだと思っております。
  247. 太田誠一

    太田(誠)議員 ですから、我々も、この資本準備金を使ってする定款の変更というものについては特別決議を求め、厳格な債権者保護の手続を付しているわけでありますので、先生の御主張と我々とはちっとも変わりがないと思いますね。
  248. 木島日出夫

    ○木島委員 いや、それなのにさっきの質問に対して資本準備金、利益準備金、ごっちゃまぜにしまして、ひっくるめて資本の四分の一まで守ればいいんだ、それを超えたら自己株消却に使っていいんだと。何で四分の一なんだという説明に対してまともな答弁が提案者からできていないと思うのです。  改めて、何で四分の一でいいんだという根拠、経済的な根拠あるいは法的な根拠を述べてください。
  249. 太田誠一

    太田(誠)議員 それはないのだと思いますね、主観的な話ですから。リスクをどう見るかということですから。リスクというのは主観的なものでありますので、主観的な確率の世界の中で、何が最適な準備率であるかということは決めようがないわけであります。  ですから、私の場合は、従来の商法の中に出てくる資本準備金を無制限に積みなさいということを書いているとは思わないものですから、法定準備金は、結果として利益準備金にかかっている量的な制約が法定準備金全体の制約になっているということに着目して、それをそのまま準用したということでございます。
  250. 木島日出夫

    ○木島委員 四分の一以上は取り崩していいという根拠がない、主観的なものなんだと。大変な答弁だと思うのです。そんな主観的な、いいかげんなことで資本充実・維持の原則を掘り崩してしまうなんということは、とてもじゃないけれども認めるわけにいかぬし、そんないいかげんなことでこの法案の提案をしてきているのですか。
  251. 太田誠一

    太田(誠)議員 それならば、では、現に時価発行もしていない会社は今でも、エクイティーファイナンスのときに舞い上がらなかった企業というのは、例えば資本準備金はほとんどないという会社もあるのだと私は思うのですよ。そういう会社にどうやって、今先生がおっしゃっている努力目標を達成せよということを強制できるのですかね。四分の一が根拠がないと言うのだったら、では、四分の一は、過去の商法に敬意を表して私は四分の一と言っているわけです。  それでは、例えば、各金融機関が持っている預金準備率が、これが根拠があるかということは説明できますか。そういうものはないはずですよ。それは、リスクに対する備えということについて客観的なものはないんだ、大体このぐらいのものだろうと。昔からの常識、今の常識、それからほかの人たちが賛成してくれるかどうかの常識によって定まるものでありますから、そこについて、客観的、科学的な根拠というのは、先生がこういう理由でもっと高くなくてはいかぬという代案を示されるのならいいけれども、何をおっしゃっても、それを客観的なものとは言えないのです。だから、そんなものはない、世の中には。
  252. 木島日出夫

    ○木島委員 ある会社経営陣が、うちの会社はエクイティーファイナンスはやらない、そういう余分な資本は集めなくてもしっかりやっていけると。そして、着実に経営をなされて利益が上がったと。そういう場合、商法は、利益を全部ばらまくのじゃなくて、資本の四分の一までは積み立てなさいよ、利益の一〇%までは残しておきなさいよ、毎年毎年。そういう原則です。それはそれでいいんですよ。  そうじゃなくて、エクイティーファイナンスをやる、国民大衆からあるいはまた世界から資本を集める。しかし、商法上、資本として蓄積されるのは額面だ、それを超えてしまった分は資本準備金にして残しておきなさいよと。資本取引による収入ですから、それは、さっき言った商法二百八十八条ノ二で、損失補てん以外は使ってはいかぬぞといって、蓄えておきなさいよ、そういう法律なんでしょう、原則なんでしょう。そういう道を選んだ会社に対してはそういう縛りをかける、使わせない。当たり前じゃないですか。今、提案者から私に逆質問があったことが、何で四分の一以上は取り崩しちゃっていいんだという説明には全然ならぬ。  ああいう大企業が次々に破綻している、建設会社なんかの経営も厳しい、そんな状況だからこそ、やはり資本充実・維持の原則というのは強化しなくてはいかぬのじゃないですか。それをこの法律は、強化しなくていいんだというようなことにお墨つきを与えるような方向に作用すると思うのですが、どうですか。
  253. 太田誠一

    太田(誠)議員 何が正しいのかということは後世が決めるのでしょうけれども、我が国は従来、先生のおっしゃるような考え方で来たと思うのですね。大変厚い内部留保を持って、大切なことだというふうにしてきたと思うわけであります。その分、我が国では株主が軽視をされて、大変低い配当性向というものであったわけです。そして、いわゆる株主収益率、ROEというふうなものを重視する経営が、やっと最近定着をしてきて出てきておるわけであります。そういうふうに、配当を重視する、そして、株主が喜んでインカムゲインを当てにして株を保有するということが相当広範囲に行われる社会の方が、私は望ましいと思っております。  そういう方向に世の中が向かっていく中の一つの仮定の話だと思いますので、山一や北海道拓殖銀行の破綻の話は、むしろ、公正な開かれた、ディスクローズされた企業社会というものがまだない状態で、大変いいかげんな経営をしておった。言ってみれば、あれで損をしたのは、従業員も大変だったかもしれませんけれども、株主だって大損をしているわけでありまして、株主のことを重視する経営をしていなかったからあのような目に遭った。  その他の、企業健全性、安全性というものを確保するのは、それこそBIS規制のような、自己資本比率規制というようなことも一つではあるし、あるいは、さまざまな指標をもって格付機関のようなものがやる、それ自体がまたマーケットになっておるというふうな世界もあるわけでございますから、そういうふうにして、株主を重視する経営にウエートを置いていくことがむしろ大切なのではないかというふうに思っております。
  254. 木島日出夫

    ○木島委員 きょうは実は、資本充実原則資本準備金を取り崩す問題と同様に重要な、こんな重大なことを取締役会決議で決めてしまうなんということが、いかにとんでもない、商法原則から踏み外れたことかということを質問するつもりだったんですが、もう時間も迫っています。  提案者は、盛んに株主の利益を追求するんだと言うのなら、何でこんな重要なことを株主総会に諮らず、取締役会決議だけでゴーサインを出しちゃうようにするんですか。その一点だっておかしいでしょう。株主の声が反映できないじゃないですか、取締役会決議でこんなことをされたら。
  255. 太田誠一

    太田(誠)議員 それは、たびたび本日も申し上げておりますとおり、やや内心じくじたるものはあるわけでございます。  ただ、今は幸いにして何もなければいいんだけれども、いわゆる持ち合い解消の動きがこの三月三十一日に向けて急であったとすれば、そこで、経済全体として、資本市場全体として冒すリスクというものと我々が大事にすべき筋というものとの間のトレードオフというふうなことはある。その悩みの中からこういう御提案を申し上げておるということでございます。
  256. 木島日出夫

    ○木島委員 もう時間が来たから終わりますが、商法のもう一つの大きな原則として、資本をいじる、資本を減殺する、その他、資本をいじるときには、株式会社の構成にかかわるものですから、定款で決める、あるいは最悪でも株主総会の議決で決めるという原則があるんです。利益をいじるなんというのは、取締役会で一定の方針を出して、株主総会でいいだろうと。そういうもう一つの大きな原則があるんですよ。  ところが、今回は、資本準備金をいじる、そして資本を減少させる、株主から自己株消却するんですかね、そういう株式会社の構成にかかわるこんな重大な問題を取締役会決議でやっていいんだなんということは、もう一つの基本原則から全く踏み外れるものだということを指摘だけをして、質問を終わらせていただきます。
  257. 笹川堯

  258. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  今回の審議に先立って、実は先刻この法務委員会で、詳しくは繰り返しませんけれども、野村証券の新宿支店を舞台に起きたいわゆる鉄砲事件ということについて御質問いたしました。この件については捜査継続中で、仕手筋の有名な会社社長の方が捕まっていて、そしてこれは詐欺罪という容疑なので、証券会社は被害者というような扱いも半ば受けていると思います。  ただ、今までの議論をずっと通して見ても、日本のマーケットが世界に本当に、透明性、公平性そしてグローバルスタンダード、どこにでも通用するマーケットであるのかどうかということで、前回の答弁では、このことについては、個別具体的な問題については余り詳細な状況は触れられないというあたりでとまっていると思いますので、ぜひ法務省に、この事件あるいはこの事柄の性格、大変重大だという指摘をいたしたわけで、こういつたことが、もし五十億円余りのお金がいわばそれこそ補てんされて、そして証券会社の関与なしにこういうことは行い得ないということ、これは常識なわけですけれども、そのあたりについて、事柄の重大性の認識をもう一度問いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  259. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 お答え申し上げます。  今委員お尋ねのように、この事件は大変重大な事件であるというふうに警察当局または送致を受けました検察当局も見ていると私は存じます。  鉄砲行為と言われている形態は、いろいろ恐らくあるんだろうと思います。株取引の仕組みをいわば悪用するものと考えられますし、御指摘のとおり、証券取引の公正の確保という観点から大変問題があると思われます。  検察当局におきましては、事案の解明に全力を尽くすというふうに考えておりまして、その上で適正に処理をするものと考えております。
  260. 保坂展人

    ○保坂委員 この事件について、提案議員の太田先生、そして同じく我が党の濱田議員にもお尋ねしたいと思います。  まさに株価対策ということで緊急にという御説明は何度もありましたけれども、本来必要なのは、世界のどの国でも適用されるルールを厳正に回復していくということではないか。私の指摘した今の件についても、また日本版SECの方が逮捕されたりもしていますけれども、これは詐欺罪の方が罪が重いから警視庁に任せますというようなことで果たしていいのかどうか。本来、ルールを回復していくためには、こういうことをまずはやらなければいけないのではないかと思うのですが、太田議員と濱田議員にお答えいただきたい。一言で結構です。
  261. 太田誠一

    太田(誠)議員 そうですね、おっしゃるとおりだと思います。
  262. 濱田健一

    ○濱田(健)議員 党内でも論議をしていますとおりでございますので、今委員がおっしゃるとおりだと思います。
  263. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、やはり太田議員にさらにお答えいただきたいと思うのです。  昨年のストックオプション、これは大変短い審議時間だったということで、その後、商法学者の方たち立法府に対する不信の声も上がったわけですけれども、附帯決議を振り返ってみますと、前回、昨年の附帯決議の中で、インサイダー取引などの不正取引に対して証取法の厳格な適用を行うということ、それから、罰則強化を含む法整備について、諸外国の制度や他の経済法規との整合性をきちっとやるんだということをうたっています。それから二番目には、株主総会について、株主の利益を保護するために、現在の株主総会のありようについて見直すんだということを決議をしていると思います。  これは短い中でもその審議の結果生み出されたものと考えますけれども、この二点が果たしてこの一年間守られたのか、あるいは成果が生まれているのか。繰り返しますと、インサイダー取引などの不正の禁止ということはきちっと徹底しているか、それから、特に株主総会、同一横並び開催ということも、これはちょっとおかしいですよねという話がされたと思います。その二点について太田議員に伺いたいと思います。
  264. 太田誠一

    太田(誠)議員 まず法律のことで申しますと、昨年の十二月に金融関係罰則整備法において、インサイダー取引、相場操縦など、不公正取引に対する罰則が格段に強化をされた、保坂先生や私どもの附帯決議は、このような形でもって実を結んでおります。  それから、ふだんのウォッチをどういうふうにしているかということについては、随分厳格に行われているだろうというふうに想像しておりましたが、そうじゃないという例もあるようでございます。それは、ぜひまた改めて証券市場を監督しておられる方々の御決意もお聞きをしたいと思っております。  それから、これは我々の附帯決議だけではありませんけれども、政界の中では、特に株の取引についてどのようにみずから節度を持つのかという議論は、特にここ最近大変大きな盛り上がりを見せているところでございます。  なお、株主総会のあり方でありますけれども、これは株主総会のあり方ももちろんですし、それから、今の企業の中での、企業みずからを統治するという、あるいは合理的な意思決定が行われるというふうなことについては、去年の夏以来私どもも取り組んでおりますけれども、容易に成案を得るところまではいっておりません。ぜひまた、保坂先生のお知恵も拝借しながら、よい制度を組み立ててまいりたいと思います。
  265. 保坂展人

    ○保坂委員 政治家と株はこの後質問するので、先にちょっとお答えの入り口をいただいたのですけれども。  先ほど株主総会について触れられましたけれども、今回の議員立法についても経団連などから強い要請を受けてという背景があると思いますが、同じ日にほとんどの会社が株主総会をやってしまう、そこには総会屋がいるからだ。総会屋が存在することを前提にして、そういうことが行われている。去年もそうだったのですよ。これは逆に強く、これはもう変えるべきだと要請されるというお気持ち、気持ちだけじゃなくて、そういうことを実現しようという、そのあたりはいかがでしょうか、太田議員。
  266. 太田誠一

    太田(誠)議員 私の理解では、もともとはばらばらであったものが同じ日になったということの一つの理由は、株主総会が長い、そしてもめる、紛糾するということを恥ずかしいというふうに思う向きがある。それからまた、報道などの取り上げ方が、株主総会が紛糾したということをおもしろおかしく取り上げるわけであります。ですから、会社の株主総会の責任者などは、充実した株主総会というふうに世間が受け取ってくれればいいけれども、うまくやる能力がなかったというふうに誹謗、中傷されるので、嫌がっているうちにああいう知恵を思いついたということでございます。  だから、私は、株主総会の話は、もちろんそれは同じ日にやるというのはできれば避けた方がいいし、また、相当の時間をとってやるべきだと思いますけれども、その場合には、報道の側が認識を変えてもらわなければいけない。株主総会というのは大変神聖な場所でありますから、そこでどんな議論をだれが来てしようが、それは開かれたものでなければいけないと思いますので、その辺も含んで改善をしていきたいと思っております。
  267. 保坂展人

    ○保坂委員 それは強く要請するべきだと思いますけれども、今回の議員立法の結果、要するに、大量の資本準備金をストックしている会社というのは、典型的にはどういつだ会社がございますでしょうか。太田議員、お願いします。
  268. 太田誠一

    太田(誠)議員 典型的な会社は、余り言うと何かの罪に問われるかもしれないけれども、もう大体みんなが知っていることでございますので、新日本製鉄が典型的だと思います。  新日本製鉄は資本金が四千億でございますので、我々の制約では、一千億まで資本準備金を持っていればいい、それを超える分については資本準備金を取り崩してもいいということでございますので、現状は二千億の資本準備金がありますので、新日本製鉄の場合は、一千億の自社株取得財源がそこにはある。それをどう使うかは、我々が聞くと、インサイダー取引になるわけでございます。
  269. 保坂展人

    ○保坂委員 事は大変微妙なことに入っていくわけですけれども、新日鉄の株が、一月十三日に終わりで百四十八円、一月二十三日に百九十円、二月三日二百七円、二月十三日二百二十八円、三月十三日は二百四十一円。ぐっと上がってきているわけですね。  これは、昨年の附帯決議でインサイダー取引ということを、太田先生さっき、それはこれ以上言うととおっしゃいましたけれども、マーケットインサイダー、究極のインサイダーと言われているのが、まさに企画立案そのもののところで、要するに、だれもが知り得ない情報があるわけです。  ここの件に関して、どうでしょうか、政治家と株ということを議論していく意味でも、例えば、私も株はやりませんけれども、新日鉄の株は上がるのかなというふうに素人ながら思うわけでありまして、こういうことを立法府で、議員立法で定める以上、政治家と株の厳正なルール、特に伺いたいのは、仮名、借名口座ということなどは厳密に法律で禁止していくというような、要するに、強い規制が必要だと思いますが、いかがでしょうか。
  270. 太田誠一

    太田(誠)議員 私は今度の件で、おっしゃるとおりでして、仮に一月二十日に、さっきそういう話がありましたが、一月二十日に我々がその話を聞いて、そして、自民党の商法の小委員会でできると見通しを立てたときに大量の新日鉄株を買っておけば、今ごろは私も大変な巨額の利益を得たであろうというふうに思っております。幸い私は株をやっていないものですから、幸いというか不幸にしてというか、持っていないので、ここで何も恥じることなく答弁ができるわけでございますが、私も非常に危険なことの瀬戸際にいた、今でもいるというふうに思っております。  ですから、その状況で、私は、政治家がこういう場合に、例えば私とか、あるいは先生もそうです、そういうことを知り得る、市場よりも世間よりも早く知り得る立場にある人は、その疑いをかけられる危険性は常にあるということは、我々は思っておかなくてはいけない。  そこで、株の借名口座の話なんですけれども、正直言ってよくわからないのですね。その借名口座というのはよくわからない。新聞を何回見てもよくわからないわけでありますし、今の証券市場の取引も、一体何をやっているのかも、私は正直言ってよくわからないわけでございます。だからそれは、どうもいかがわしいことであれば直ちに規制をしていくということは必要だろうというふうに一般論としては思っております。  ただ、政治家が株を持ってはいけないということ自体はまだどうかなと思うのは、それは、インサイダー取引にかかわったということならばその人をすぐに捕まえられるというようにしておくことが大事であって、だから、今どこかでもって協議をしておられるようでございますけれども、その中で、一つの考え方としては、一年に一回、自分の持っている株を全部、どこどこ社何株というのを公開するというやり方が一つのいいやり方ではないかと思います。株をすること自体が悪いというのは自由主義社会では言えないわけでございますから、それを政治家に義務づける。そうしたならば、例えば私がことしの一月に買っておってもうけたというふうなことが自動的にわかるようにしたらいいのではないかというふうに思っております。
  271. 保坂展人

    ○保坂委員 公開ということではもちろん賛成なんですが、公開は、要するに本人の名義ですね。ですから、もしそこに仮の名前だとか、あるいは友達の名前あるいは知人の名前、借名ですね、これは証券業協会で一応内規で禁止をされておりますが、法的には、一応よくないことだけれどもということになって、それ以上の追及はない。  ここはまず政治家みずからが、今太田議員おっしゃったように、立法府が襟を正すためにも、人の名前をかりて政治家が株の取引をするというようなこと、あるいは仮の名を使ってなんというのは問題外だという強い意思表明をいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  272. 太田誠一

    太田(誠)議員 私もそう思います。だから、自分自身に課しておるモラルを人に全部要求できるかどうかということは別として、私は、少なくともそうであるべきだと思います。  特に、友人であった新井将敬氏も亡くなる前に、もう二度とこういうことはしないということを遺言のようにして言っておりましたので、そんなことも踏まえながら、今後、証券業協会の内規だというふうなことにとどめておいてよいとは私も思いませんので、よくまた検討いたしたいと思います。
  273. 保坂展人

    ○保坂委員 では、この政治家と株の問題は、もちろん、政権与党が最もインサイダー情報に近いところにいるわけですけれども、しかし、だからといって、与党、野党の分け隔てなく、やはり政治家みずからの問題として問われなければならない大変大事な問題だと思いますので、ぜひ提案者上田議員と濱田議員に、先ほどの借名、仮名の問題も含めて、そしてこういった法改正も、証券業協会の内規にとどめておくべきじゃないと思うのですけれども、その辺の見解をお願いしたいと思います。
  274. 上田勇

    上田(勇)議員 保坂委員の所属される社民党におきましても、株取引について自粛するというような方針を決められたというふうに聞いておりますけれども、私ども平和・改革におきましても、現に保有する株の売却を除きましては、在職中においては株取引を自粛するという申し合わせを行ったところであります。  もちろんこれは、政治家、国会議員がインサイダー情報に接する機会があり得るという前提のもとでの申し合わせであります。ただし、もちろんこれは、申し合わせに参加されていない他党の議員の方々までこれで縛るという考えではございませんけれども、私個人としては、そういう考えでいる次第であります。  仮名、借名口座につきましては、これは違った名前を使ってするものということよりもむしろ、わざわざ人の名前を使うということは、何らかの犯罪的な行為と結びついているという可能性が極めて高いことであるというふうに思いますので、私個人といたしましては、これは法律において禁止すべきことであるというふうに考えているところであります。
  275. 濱田健一

    ○濱田(健)議員 私自身株に縁がありませんので、なかなかわからないところですけれども、やはり今政治と政治家に政治倫理、しっかり求められているときでございますので、正当な経済活動を制限するということはいかがかとは思うのです。今委員がおっしゃる、不信を買うような取引等々については、今、与党の政治改革プロジェクトでも懸案課題として論議をされておりますので、全議員が賛同できるような形でしっかりとした歯どめ策をつくっていっていただきたいというふうに思っております。  なお、委員御案内のとおりに、社会民主党の党内では、議員は在職中一切株取引はしない、株を持っている役員や一定程度の多量のものを持っている場合には、それをいわゆる預けるという意味での信託をするという方向性が決まりました。やむを得ず取引をしなければならないときには、党の機関にその透明性を届けるということも決定をさせていただきました。その範囲が配偶者や未成年の子供たちまで及ぶのだという形で、きちっとした透明性を確保する決意を示していることも申し添えておきたいと思います。
  276. 保坂展人

    ○保坂委員 時間なので終わりますけれども、本日の答弁の議員の方たちは皆意見が一致したわけですけれども、この問題、与党の協議会でなかなかまとまらないという段階でございますので、ぜひこういうことを、まず率先して、議員立法で、太田議員先頭で頑張っていただきたいというふうに思います。  終わります。     —————————————
  277. 笹川堯

    笹川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  大原一三君外五名提出土地の再評価に関する法律案及び太田誠一君外七名提出株式消却の手続に関する商法特例に関する法律の一部を改正する法律案審査のため、明十八日午前十時、参考人として早稲田大学法学部教授上村達男君及び明海大学不動産学部教授長谷川徳之輔君の出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  278. 笹川堯

    笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、明十八日水曜日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十二分散会      ————◇—————