○
蓮見参考人 御
紹介をいただきました
蓮見でございます。
本日は、
教育職員養成審議会の答申を踏まえまして、現在この
委員会で御審議いただいております
教育職員免許法の
改正に関しまして、答申の取りまとめに当たりました者の立場としまして
意見を述べる機会をいただきましたことと存じております。大変ありがとうございます。
簡単に、私の考えでいるところを申し上げたいと思います。
まず第一に、
教育職員養成審議会におきます審議の経過につきまして、簡単に御説明をいたしたいと思います。
平成八年七月から、文部
大臣の諮問を受けまして審議を行ってまいりましたが、その諮問されました事項は三点ございまして、
教員養成課程のカリキュラムの
改善、修士課程を積極的に
活用した養成のあり方、そのほかといたしまして、養成と採用、研修との連携の円滑化などを検討するということでございました。
そのうちの
教員養成カリキュラムの問題とその他の中に含まれております
特別非常勤講師制度につきましてり審議を先行するということが求められましたので、まず、審議会におきまして、カリキュラム等特別
委員会という
委員会を設置いたしまして審議を行いました。これと並行いたしまして、総会におきましても審議を行いまして、総会、
委員会を含めまして合わせて三十四回の
会議を開きまして、慎重な審議を行ったところでございます。
この間、
関係者の
方々の御
意見を可能な限り反映するということを考えまして、関係団体からのヒアリング、
大学におきます教職
教育の実施状況の調査、都道府県等の
教育委員会を対象といたします調査などを行いました。
それらの検討を含めまして、
平成九年五月末に特別
委員会報告がまとまりましたので、その後、重ねて、この報告に対します関係団体の
意見聴取を含めて総会審議を行い、七月二十八日に開かれました総会におきまして「新たな
時代に向けた
教員養成の
改善方策について 第一次答申」という形で取りまとめまして、文部
大臣に答申をいたしました。
その後、養護教諭の養成カリキュラムなどについての審議を続けて行いまして、十二月に結論を得ましたので、これを文部
大臣に御報告申し上げました。
今こちらで御審議いただいておりますのは、これらの答申それから報告に基づきます
改正であろうかと思っております。
二番目に、今日こうした
改正を行う必要性ということについて申し上げたいと思います。
いろいろな理由が挙げられると思いますけれ
ども、私の感じておりますところでは、一応三つの点があろうと思っております。
一部には、前回の免許法の
改正以降まだ時間が余りだっていないということで、今回の
改正について時期尚早であるという御
意見もございますけれ
ども、私
どもはそうは考えておりませんで、やはり非常に重要な問題があるということと、それからもう一点は、今回こちらで御審議をいただきまして、これが国会を通過したといたしましても、実際に
大学におきましてその対応ができますのは
平成十二年の入学生ということになります。前回の
改正によりまして、
平成二年の入学生から今の
制度になっているわけでございますが、十年という期間になりますので、この変化の激しい
時代の中で、十年という期間はやはり非常に重い期間であるというふうに考えているところでございます。
理由といたしまして、まず第一点は、
平成八年七月の文部
大臣の諮問の直前に、御存じのように中央
教育審議会が第一次答申をまとめまして、新たな
時代の
教育の実現のために
教員の資質の向上を非常に強くその中で求めているところがございます。この中教審の答申は、御存じのように、国際化、情報化、科学技術の進展などが急速に進んでいくこれからの
社会におきまして、一人一人の
子供たちの個性をはぐくみ、生きる力を育てる、こういう新しい
時代の
教育に
学校教育が転換をしていかなければならないということを強く求めたものでございます。そうなりますと、やはりそうした
教育を担う
教員の養成ということについても新しい考え方が導入されなければならないであろうということが一点ございます。
第二番目に、しかし、それ以上に差し迫った問題といたしまして、現在、
学校におきまして非常に困難な問題が生じている。生徒指導等をめぐりまして非常に困難な問題が生じ、
子供たちを理解するということについて、
先生方が今非常に困難を来しておられるということがございます。これらに対する対処というのが今非常に強く迫られているということがあるかと思います。
三番目に、
大学教育の方におきましては、
平成三年に設置基準の
改正が行われまして、
教育改革が進められているわけであります。選択科目をふやすとかあるいは
一般教育と専門
教育の区分を廃止するとかいうふうな形で、各
大学の裁量を拡大するという方向が進んでいるのでございますが、免許基準につきましては、
平成二年から実施されておりますので、大綱化以前の形のままが残っているということで、これらの整合を図るということが必要であろうかと思っているところでございます。
さて、
改善案の検討に当たって私
どもが留意した点は何かということでございますが、この点につきましては、まず、
教員の資質ということが非常に大きな問題になります。
これにつきましては、非常に
一般的に言われますように、
教育者としての
使命感、
人間の成長、発達についての深い理解、幼児、児童、生徒に対する
教育的な愛情、
教科に対する専門的な
知識、広く豊かな教養、それらを基盤とした実践的
指導力というふうなものがいつの
時代にも必要な資質、能力というふうなことでとらえられるかと思います。これからの
時代を考えてまいりますと、地球や人類のあり方をみずから課題として考えていけるような、そういう課題解決能力を持った
教員でなければならないであろうというふうに考えますし、あるいは
人間関係の調整能力というふうなものを強く持った者でなければならないのではないかというふうに思うところでございます。
非常に多様な要望が
教員の資質についてはあるわけでありますけれ
ども、それらを全部含み込みまして免許基準を考えるということになりますと、非常に過大な負担を学生に背負わせるということになってしまうかと思います。それは避けなければならないということで、新しい考え方をここに導入いたしました。
たくさんの
社会的な要請と、それから
大学としてのカリキュラムとの調和ということから考えまして、これまでは、いずれかと申しますと、一人一人の
教員にすべて同じような資質を求めるということでございましたけれ
ども、それを、学生の志向によりまして個性豊かな
教員を育てるというふうなことで、それらが協力し合うことによって、
学校全体として高いレベルの
教育が実現できるようにしていくべきではないか。そういう
意味で、最低限はそれぞれ共通な資質を持っていただくとしましても、その上で得意な
分野をそれぞれ持っていただくような形をぜひお考え願いたいというふうなことは考えていました。
そのため、第一番目に、これまでの
免許制度では、修得すべき科目、単位数が法令で非常に細かく定められておりましたのに対しまして、それをなるべく緩和する、選択履修
制度を導入する、各
大学の創意、学生の志向によりまして個性豊かな
教員を養成できるようにするということ。
第二番目に、特に義務
教育段階にありまして、発達段階からも生徒指導等の課題が非常に重要になっております
中学校につきまして、従来よりも
教科指導、生徒指導等の教職に関する実践的な
指導力の向上を目指す。
第三番目に、今日の
社会的要請、今後の
社会において特に求められる
教員の資質を育てることを重視いたしまして、そのために必要な科目を幾つか新設あるいは拡充するというふうなことにいたしました。
これに加えまして、
社会人の方が教壇に立てるような方法といたしまして、
特別非常勤講師制度、特別
免許状制度というふうなものについて、いずれも緩和措置を考えるというふうなことを考えたところでございます。
ところで、答申に先立ちまして、先ほ
ども申しましたように、特別
委員会が報告をまとめたのでございますが、それを公表いたしまして、関係の団体から
意見をお伺いいたしました。全体といたしましては、その審議の方向に対しまして御賛成をいただいたのでありますが、しかし、特に私立
大学を中心といたします
一般大学の
関係者の
方々から、これでは
大学や学生の負担が大きくなり過ぎるというふうな御
意見がございまして、反対ないしは慎重な考え方をというふうな御
意見がございました。
そこで、それを受けまして、その後の総会の審議の中で幾つかの検討を加えまして、これらに対する配慮をいたしました。その結果、関係団体からも
一定の御理解をいただいたというふうに私
ども理解しているところでございます。
ただ、まだ幾つか慎重な御
意見もございますので、
指摘されております問題点につきまして、どういう問題があるか、それに対して私
どもはどう考えているかということを、二、三申し上げたいと思います。
まず第一点は、教職に関する科目の単位数が増加いたしまして、その結果、
一般大学では
教員養成に対する負担が大きくなり過ぎて、結果として
一般大学の
教員養成を阻害することになるのではないか。いわゆる
開放制を崩壊させることになるのではないか、こういう御懸念でございます。
これにつきましては、現在、
学校におきましていろいろ難しい問題が生じております中で、こうした教職科目を拡充して、実践的な
指導力の高い
教員を養成してほしいという御要望が、特に
教育委員会、校長会、PTAなどから非常に強く求められたところでございます。そういった科目を余りふやしますと、
一般大学、学生の負担になることは考えなければなりませんので、そこで、特別
委員会の御報告をいただきましてから後の総会におきます検討の中で、三つほどの対応を考えております。
教職科目を卒業基準単位の中に加えてもよろしいということ。それから、課程認定に当たりまして、もしその
大学の中で適切な教官が得られないというふうなことがあるのであれば、単位互換というふうな形を通じて他
大学等の教官の協力を得てもよろしいということ。それから、課程認定に当たりまして、専任
教員の数についての制限を緩和するというふうなこと、基準を緩和するというふうなこと、こういうことを配慮したところでございます。
もちろん、たくさんの
大学から
開放制のもとで
教員が供給されるということは非常に重要なことであるというふうに私
ども考えておりますけれ
ども、同時に、今日の
学校教育の課題に対応できるような
教員養成を行うための努力というものはやはり
大学に求められるのではないかというふうに考えるところでございます。
二番目に、これと裏腹のことになるわけでございますけれ
ども、教職科目を増加させたことによって、
教科に関する科目というふうなものの単位数を削減いたしました。これが
教科の専門性を低下させるのではないかという御懸念でございます。確かに、今回の
改正をごらんいただきますと、
教科に関する科目の単位数はかなり、半分ほどに減っております。
特に問題は、
中学校教員の養成についてそうしたことが大きく出てくるのでございますけれ
ども、この場合に、
中学校教員の非常に大きな
部分はいわゆる
一般大学において養成されているということをお考えいただく必要がございます。文学部ですとか理学部ですとかそういうところで養成されている方が三分の二ほどを占めております。
これらの場合には、当然、例えば文学部国文科を出て国語の
先生になるという場合に、その国文科を卒業するための百二十四単位という基準の中で、かなりたくさんの国語の科目を履修されるということが当然考えられるわけでありまして、
教員免許に要する基準が下がったからといって、
教科の専門性が低下するということにはならないのではないか。
この場合にどういう効果があるかということを考えますと、それはむしろ規制緩和というふうな側面が強いのではないか。今までは、
教科の専門科目として何を履修するかということが非常に細かく決めてございましたけれ
ども、それを大ぐくりにする。それから、その決めてある分の単位数を小さくするということによりまして、各
大学において
教科専門科目についても相当創意を凝らしていただくことができるようになるのではないかというふうに考えているところでございます。
第三点は
教育実習に関してでございますが、これを、
中学校の場合、四週間に延長いたします。このことについていろいろな問題点を
指摘されているところがございます。
まず一つは、実習校の受け入れが難しいのではないかという御懸念でございますけれ
ども、これにつきましては、私
どもの総会におきます審議の中で、
中学校長会の関係の方から全面的に協力をするというふうな御
指摘をいただいておりますので、恐らく十分対応していただけるであろうというふうに信じております。
また、
大学の方の
授業日程等に影響が出るというふうなことの御懸念が一方にございますけれ
ども、これにつきましては、
教育実習を四年生になって一時期に四週間やるというのは確かに難しい点があろうかと思います。そういう形ではなくて、答申の中でも、実習の回数ですとか時期ですとか実施先、方法等についていろいろ工夫をしていただくことができるのではないかということを申し上げているところでございます。
それからもう一つは、専任
教員、教職科目を担当する
教員が確保できるのかどうかというふうな問題がございますけれ
ども、もし
教員がいないから新しい科目ができないということであると、これはやはり、
大学としては批判を受けることにならざるを得ないだろうと思います。ただ、教職課程、いずれの
大学も必ずしも十分なスタッフを持っておりませんので、その点について今後拡充をしていかなければならない。そういう面についての御理解はいただきたいというふうには思っているところでございます。
その他
指導力の養成については、養成段階よりもむしろ研修等で高めるべきだという御
意見もございますが、これにつきましては、冒頭申しましたように、諮問の中にも含まれておりますので、これから引き続いて検討をするというふうなことになっております。恐らくその中で、採用や研修についての拡充というふうなことについても
一定の方向を出すことができるのではないかと思っております。
以上、簡単に御
意見を述べさせていただきました。
委員長を初めといたしまして、
委員の皆様方におきまして、どうぞこういった
改正の趣旨を御理解いただきますようお願い申し上げたいと思います。若干時間が延びまして恐縮でございました。
どうもありがとうございました。(拍手)