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1998-05-07 第142回国会 衆議院 農林水産委員会 第16号
公式Web版
会議録情報
0
平成
十年五月七日(木曜日) 午前十時
開議
出席委員
委員長
北村
直人君
理事
赤城 徳彦君
理事
鈴木 俊一君
理事
松岡 利勝君
理事
松下 忠洋君
理事
小平 忠正君
理事
木幡 弘道君
理事
宮地 正介君
理事
一川 保夫君 石破 茂君
稲葉
大和
君 小野寺五典君 金田 英行君 熊谷 市雄君
小林
多門
君
桜井
郁三
君 園田
修光
君
田中
和徳
君
竹本
直一
君 中山 成彬君 仲村 正治君 丹羽 雄哉君 萩山
教嚴君
林
幹雄
君
二田
孝治
君
御法川英文
君
目片
信君
茂木
敏充君
石橋
大吉
君 今田 保典君
仙谷
由人君
鉢呂
吉雄君
堀込
征雄
君 漆原 良夫君 木村 太郎君
佐々木洋平
君
菅原喜重郎
君 二階 俊博君
中林よし子
君 春名 直章君 藤田 スミ君 前島 秀行君 岩浅
嘉仁
君
出席国務大臣
農林水産大臣
島村
宜伸君
出席政府委員
農林水産省農産
園芸局長
高木
賢君
農林水産省食品
流通局長
本田 浩次君
農林水産技術会
議事務局長
三輪睿太郎君
委員外
の
出席者
特許庁総務部総
務課工業所有権
制度改正審議室
長 山本 雅史君
農林水産委員会
専門員
黒木 敏郎君 ――
―――――――――――
委員
の異動 五月七日
辞任
補欠選任
木部
佳昭
君
稲葉
大和
君
高鳥
修君
目片
信君
中尾
栄一
君
桜井
郁三
君
二田
孝治
君
茂木
敏充君
宮本
一三
君
竹本
直一
君
矢上
雅義
君
田中
和徳
君 同日
辞任
補欠選任
稲葉
大和
君 林
幹雄
君
桜井
郁三
君
中尾
栄一
君
田中
和徳
君
小林
多門
君
竹本
直一
君
宮本
一三
君
目片
信君
高鳥
修君
茂木
敏充君
二田
孝治
君 同日
辞任
補欠選任
小林
多門
君
矢上
雅義
君 林
幹雄
君
木部
佳昭
君 ――
―――――――――――
四月三十日
国有林野事業
の
累積債務処理
に関する
請願
(羽
田孜
君
紹介
)(第二〇五一号) 新しい食料・
農業
・
農村政策
の確立に関する請 願(
木島日出夫
君
紹介
)(第二〇五二号) 同(
羽田孜
君
紹介
)(第二〇五三号) 林業・
木材産業振興
に関する
請願
(
木島日出夫
君
紹介
)(第二〇五四号) 同(
羽田孜
君
紹介
)(第二〇五五号) は本
委員会
に付託された。 五月七日
国有林野事業
の
累積債務処理
に関する
請願
(小
坂憲次
君
紹介
)(第三八五号) 同(
堀込征雄
君
紹介
)(第三八六号) 同(
宮下創平
君
紹介
)(第四六二号) 同(
木島日出夫
君
紹介
)(第六四八号) 同(
北沢清功
君
紹介
)(第七八六号) 同(
村井仁
君
紹介
)(第
一三
六五号) 同(
小川元
君
紹介
)(第一八七六号) 同(
羽田孜
君
紹介
)(第二〇五一号) は
日本国有鉄道清算事業団
の
債務処理
及び
国有林
野事業
の
改革等
に関する
特別委員会
に付託替えさ れた。 ――
―――――――――――
五月七日
林野行政
の
抜本的転換
に関する
陳情書
(第一六一号)
国有林野事業改革
に伴う適切な組織再編成に関 する
陳情書
(第一六二号)
中新田営林署
の
存続
に関する
陳情書
(第一九〇号)
函館営林支局
の存置に関する
陳情書
(第 二一〇号) は
日本国有鉄道清算事業団
の
債務処理
及び
国有林
野事業
の
改革等
に関する
特別委員会
に送付替えさ れた。 ――
―――――――――――
本日の
会議
に付した案件
種苗法案
(
内閣提出
第八三号) ――――◇―――――
北村直人
1
○
北村委員長
これより
会議
を開きます。
内閣提出
、
種苗法案
を議題といたします。 これより
質疑
に入ります。
質疑
の申し出がありますので、順次これを許します。
石橋大吉
君。
石橋大吉
2
○
石橋
(大)
委員
おはようございます。 きょうの
法案
の中身は、かなり専門的な、技術的な細部にわたる話でありますので、余り
大臣
に
お出かけ
をいただくようなことは考えておりませんでしたが、せっかく
大臣
が
お出かけ
になっていますから、最初に一言だけ
大臣
に質問をしておきたいと思うのです。 まず、この
制度
、昭和二十二年に
農産種苗法
が制定されまして、五十三年には
種苗法
と
名実とも
に
充実
されてから二十年の
実績
を持っているわけです。そういう意味で、この
制度
が
種苗
の
流通
の
適正化
、品質の
育成等
にどのような
効果
を上げ、また
農林水産業
の
発展
にどのように寄与してきたのか。また、今回の
法改正
において、
UPOV条約
の批准など国際的な情勢も踏まえて
植物品種登録制度
について抜本的な見直しを行い、
国際的調和
が図られる
内容
となるものとされていますが、今次
改正
は
種苗業者
、
生産業者等
にどのような面で
効果
が期待されているものか、
大臣
にお伺いします。
島村宜伸
3
○
島村国務大臣
お答え
申し上げます。 今回の
改正案
は、
植物
の新
品種
の
育成権
の
強化
を主な
内容
とするものでありますが、これを通じて
育種
の
振興
が図られ、優良な新
品種
がこれまで以上に多数
育成
され、それによって
農林水産業
の
発展
に大きく寄与することを期待しているところであります。 すなわち、
育成者
にとりましては適正に
権利
が
保護
されることになりますし、それゆえに
研究投資等
が安心して行うことができ、かつ
育種活動
が一層活発に行われることになるだろう、こう予測されるところでありますし、また
育種
の
振興
によりまして、
農業者
にとっては優良な
種苗
が
生産者
に多数供給されるようになることから、
農林水産業
の
発展
に寄与すること、これまた大きく期待されるところであります。 また、国際的には、
先進国
においては既にこれらに対してのいろいろな配慮がなされているところでありまして、
我が国
もこれに伍していわば国際的な水準を確保していくという意味合いでもこれは大変に意義のあることだ、こう考えておるところであります。
石橋大吉
4
○
石橋
(大)
委員
これから後は細かい話になりまして、かなり多岐にわたりますので、できるだけ私も簡単に質問したいと思っていますが、答弁の方もひとつ簡単にお願いしたいと思うのです。 次に、
保護対象植物
の
拡大
について二、三伺いますが、
現行法
においては、
品種登録制度
の
保護対象
は「
農産物
、林産物及び
水産物
の
生産
のために栽培される
植物
で
政令
で定めるもの」とされており、
平成
九年現在、
保護対象植物
の数は四百六十七
種類
となっているようであります。これまで
保護対象植物
について
政令
で定めることとなっていたが、すべての
農林水産物
とせず限定していたのは何か合理的な
理由
があったのかどうか、これが
一つ
。 それから、今回、
保護対象植物
としてすべての
植物
が取り込まれることはどのような
メリット
があるのか。また、国際的な
種苗
の
流通
が一層増加することが見込まれる中で、
対象
が
拡大
されることはどのような
効果
をもたらすのか、これが
二つ目
。
三つ目
に、今回の
改正
では
農林水産物
をかなり詳細に分類定義しているが、法文中「その他
政令
で定める
植物
」はどのようなものを想定しているか、また、それに限って
政令
にゆだねたのはどのような
理由
によるものか、これらの点について
お答え
をいただきたいと思います。
高木賢
5
○
高木
(賢)
政府委員
まず第一点の、これまでに
政令
で
指定
してきた
理由
はどういう
理由
かということでございますが、これは、従来
我が国
で
育種
、栽培される
植物
の
範囲
というものは余り変化していなかったわけでございます。したがいまして、
限定列挙方式
でも問題は生じないというふうに考えられたというのが第一点でございます。 それから、この
現行種苗法
の前身である
農産種苗法
におきましても、
対象植物
は
農林水産大臣
の
指定
するものに限定していたという
経過
があるということが第二点でございます。 それから三点目に、
UPOV条約
におきまして、七八年
条約
というものが
現行種苗法
のよりどころになった
条約
でございますが、この
条約
におきましては、
保護対象植物
は二十四
種類
以上の
植物
ということで、全
植物
を
対象
にするということが求められていなかったという三点の
理由
がございます。 そういうことから、
対象
となる
植物
の
範囲
を明確にする
方式
といたしまして、
政令
で
指定
する
方式
というものが適切であるというふうに考えられたというのが
経過
でございます。 次に、今回の
改正
ですべての
植物
を
保護対象植物
とするということの
メリット
、あるいは
効果
というものが何かという
お尋ね
でございます。 今回の
対象植物
の
拡大
によりまして、これまで
保護
の
対象
となっていなかった
植物
はもちろんでございますが、それに加えまして、種間の
雑種
あるいは属間の
雑種
というふうに、
指定
ということが技術的にも非常に難しいものにつきましても
品種
の
育成
が進む、
指定
ということを要せずに
対象
になるということで、
品種
の
育成
が進むということが期待されます。 それからもう
一つ
は、
海外
で
育成
された
植物品種
で
我が国
では
対象
となっていなかったもの、これが
保護
の
対象
から外れていたわけですけれども、これが
保護
の
対象
になるということによりまして、
海外
からの
植物
新
品種
の導入が容易になるという
効果
が期待できるというふうに考えております。これが大きな
お尋ね
の二番目でございます。 それから、今回、
シダ類
、
センタイ類
、多細胞の藻類以外の
植物
については
政令
で
指定
するという
法案
になってございますが、どういうものか、こういうことでございますが、
政令
の
指定
を予定しておりますものは、栽培されるキノコを想定いたしております。 これを
政令
で定めるものに限って
品種登録
の
対象
にするという
理由
につきましては、
植物
の
範囲
につきまして実は諸説がありまして、
限界
のところになりますと、それが
植物
であるのかないのかということについて議論のあるものがございます。それにつきまして、その
対象植物
の
外縁部
といいますか、その
範囲
がどこかということを明確にしておきませんと、
品種登録
の
対象
になるのかならないのかという
限界点
では
混乱
を生じかねないという問題がございます。 それから、微生物が予定をしておるものでございますが、
保護
の
対象
とするか否かというものが九一年
条約
上、
各国
の裁量に任された事項になっております。 こういうことを総合的に勘案いたしまして、
政令
で
指定
をするということにした案をつくったわけでございます。
石橋大吉
6
○
石橋
(大)
委員
次に、重要な
形質
の
取り扱い等
についてちょっと伺いますが、まず
一つ
は、
審査
に至る
手順
についてであります。
現行種苗法
においては
保護対象植物
は
政令
で
指定
されていたが、
改正種苗法
ではすべての
農林水産植物
が
保護対象
とされると。これに伴いまして、
形質
の
決定
に当たっても新たな対応が求められることになるが、
区分ごと
の
形質設定
に当たっては
基本的考え方
はどうなるのか。それから、
形質
の
設定
に当たっては、従来、その
重要性
にかんがみまして
農業資材審議会
の
意見
を聞いて行われてきたようでありますが、
現行制度下
における
農業資材審議会
の
構成
と
運営
がどうなっており、それが新
制度
の
もと
においてはどういうふうに変わっていくのか、この点についてお伺いいたします。
高木賢
7
○
高木
(賢)
政府委員
まず第一点の、
区分ごと
の
形質決定
に当たっての
基本的考え方
でございます。 御
指摘
のありましたように、
現行法
におきましては、重要な
形質
につきまして、まず
保護対象植物
が
政令
で
指定
されるということでございますから、その後、その
植物
につきまして重要な
形質
を
決定
する、こういう順序で行われてまいりました。これに対しまして、
改正種苗法
では、すべての
農林水産植物
が
保護対象
となるということでございますから、
事前指定
という
手順
がなくなるわけでございます。 したがいまして、従来
保護対象
とされていなかった
新規
の
植物種
につきましては、
食用植物
とか果樹とか野菜とか、こういう十数
種類
の大
ぐくりをいたしました植物
の
グループごと
にいわば包括的な重要な
形質
を定めて、これに基づいて
審査基準
を
作成
することにしております。しかしながら、かかる
方式
では
審査基準
の
策定
並びに
当該基準
に基づく
審査実施
上に問題があると考えられる
植物種
のときには、
審議会
の
意見
を聞いて
区分
を分割して別途重要な
形質
を定めるということにいたしております。 その
審議会
が、実は
お尋ね
のありました
農業資材審議会
の
種苗部会
というものを予定してございます。この
種苗部会
は、現在、
作物ごと
の
専門家
、それから
農業団体代表
、
種苗団体代表
、さらには
知的所有権
に関する有識者など、
品種登録
に関する幅広い
関係者
から
構成
されております。それぞれのお立場から、重要な
形質
の
設定
を初めといたしまして、
品種登録制度全般
についての御
意見
をいただいております。この
審議会
につきましては、今回の
改正
後も基本的にその
構成
を変える考えはありませんし、その役割をむしろ適正に果たしていただきたいというふうに考えております。 しかしながら、今後、
日本
で
栽培実績
のない
新規植物
などについて重要な
形質
を定めるというような必要が出てまいります。今のメンバーでそれができるかどうかということになりますので、
専門家
の
知見
が必要な場合には、
専門委員
というものを任命できる
制度
がありますので、
専門委員
としてその
知見
を求めるということなどを活用いたしまして、より適切な
審議会運営
になるように努めてまいりたいと考えております。
石橋大吉
8
○
石橋
(大)
委員
続いて、
新規植物
に係る
種類別審査基準
の
策定
について
お尋ね
をします。 今回、
保護対象植物
が
拡大
されることになることなどもありまして、
出願
される
植物
の
種類
は相当程度
拡大
することが考えられるわけです。従来の
審査方式
では
出願
されるすべての
植物種
に対応することは困難であると思いますが、迅速な
審査
のため、どのような
審査基準作成
の
方式
の採用を考えておられるのか、また、その
方式
によってどの程度の
効率化
が図られると考えておられるのか、この点をお伺いします。
高木賢
9
○
高木
(賢)
政府委員
御
指摘
のように、
改正種苗法
の
もと
におきましては
出願植物種類
は相当
拡大
するというふうに見込まれます。その中には、
我が国
では
栽培実績
の極めて少ない
種類
であるとか、あるいは
栽培条件
とか
特性
についての
データ
がほとんどない、こういったものも想定されるわけでございます。 したがいまして、
審査基準
の
作成
につきましては、これまでのところは、
農林水産省
から
委託
を受けました都道府県の
試験研究機関
が
栽培試験
を行いまして、その結果に基づいて、約二年をかけまして
種類別
の
審査基準
を
策定
してきているというのが実情でございます。 しかしながら、御
指摘
がありましたように、これまでの
方式
だけでは
出願
されるすべての
植物種
に対応することは困難というふうに考えられます。そこで、従来からの
委託方式
、これは活用するということでありますけれども、これに加えまして、国の
機関
であります
種苗管理センター
、これがより効率的な
種類別
の
審査基準
の
策定
をするという
方式
も採用いたしまして、
審査
の
迅速化
を図るということを考えております。 具体的に申し上げますと、
種苗管理センター
におきまして、
外国
の
審査機関
の
審査基準
がどうなっているかという情報を集める、それから、
出願者
からの
提供データ
を求める、さらには、各種の文献を
もと
にするということに加えまして、必要に応じて
現地調査
や
栽培試験
というものも取り入れまして、こういうことによって効率的に
審査基準
をつくっていきたいというふうに考えております。 なお、こういう
方式
を取り入れることにつきましては、去る一月に開催されました
農業資材審議会
におきましても、
委員
の方から御賛同をいただいておりまして、この方向でやれという旨の御
指摘
を得ているところでございます。
石橋大吉
10
○
石橋
(大)
委員
次に、
品種育成者
の
権利
の
強化
に関連をして
幾つ
か
お尋ね
をしたいと思いますが、まず
一つ
は、
権利
の
明確化
について。 今回の
法改正
によりまして、
登録品種
の
育成者
の
権利
を
育成者権
として他の
知的所有権
と同様に位置づけることになったわけであります。しかしながら、
種苗法
の場合、
対象
とするものは
農林水産植物
のすべてであり、それはまた
農林水産業
の
振興
と密接に関係しておるわけでありまして、
育成者
の
権利
と
農林水産業者
の
利益
の
均衡
を図ることが極めて重要になってくるわけであります。 このような観点から、以下の点についてどう考えておられるか、ただしておきたいと思いますが、
一つ
は、新たに位置づけられた
育成者権
についての基本的な
考え方
。
二つ目
に、
品種育成者
と
農業者
の
利益
の
調和
をどのようにして図っていくのか。
三つ目
には、今回の
法改正
による
育成者権
と従来の
品種登録
の
効力
として認められている
内容
との違いはどこにあるか。また、従来と比べて
育成者
の
権利
はどの程度
強化
されるものか。 まず
一つ
は、以上の点について伺っておきたいと思います。
高木賢
11
○
高木
(賢)
政府委員
まず、第一点の
育成者権
についての基本的な
考え方
ということでございます。
育成者権
は、
品種
という
知的行為
の
成果物
をつくり上げた
育成者
に
一定
の独占的な
権利
を与えまして、そのことによって
育種者
の
育種意欲
というものを喚起する、それを通じて
育種
を
振興
して、すぐれた
農産物
の
生産
などの
農林漁業生産
の
発展
を図ろうとするものでございます。 特に、近年、バイオテクノロジーの
発展
につきまして目覚ましいものがありますことは御案内のとおりでございます。
種苗
の
大量増殖技術
であるとか、
育種技術
であるとか、こういうものが大幅に
進展
をしております。加えて、
種苗
の
国際流通
の
進展
が見られる、こういう
状況
でございます。こういう
状況
の中で、
育成者
の
権利
をより適切に
保護
する
必要性
が高まっているというふうに認識しておりまして、これを受けまして、
改正法案
におきましては、
育成者
の
権利
を
育成者権
として
明確化
する、そして
権利
の
強化
を図るということをまず基本的な
考え方
の第一点にしてございます。 もう一点は、
特許
などの
工業所有権
における
取り扱い
と同様に
専用利用権
や
質権
の
設定
ができるということにすると同時に、
権利侵害
に対しましては、
育成者権者
がとり得る
対抗措置
の
充実
を図るということをしております。これが
育成者権
についての基本的な
考え方
でございます。 これにつきまして、
育成者権者
が強くなるのではないか、そうすると
農業者
との
利益
の
調和
がどのように図られるのかということでございますが、そもそも
品種登録制度
は、
育成者
の
権利
を
保護
して
育種者
の
意欲
を喚起するということによってすぐれた
農産物
の
生産
など
農業生産
の
発展
につなげよう、こういうものでございますから、基本的には、
品種登録制度
の
充実
ということは
農業者
の
利益
にもつながるというふうに考えております。 加えまして、
育成者権
の
保護
に当たりましても、これをやみくもに
保護
するということではなくて、
我が国
でこれまで行われてきた
農業生産
の実態に十分配慮いたしまして、まず
一つ
には、
農業者
の
自家増殖
でございますが、
一定
の
条件
の
もと
で
育成者権
が及ばないということにいたしまして、
育成者
の
許諾
なしで
自家増殖
が行い得るということを
明確化
しているとともに、
収穫物
に
権利
が及ぶ場合につきましては
種苗段階
で
権利
行使する
機会
がなかった場合に限定しておりまして、
権利者
から適正に
種苗
を入手さえしていれば、
生産段階
で
生産者
に問題がないというようにしているところでございます。 こういうことで、
農業生産面
に
混乱
が生じないように、
調和
の
措置
をとっているところでございます。 それから今回、従来とどのように
権利
が変わるのかということでございます。 基本的には、先ほど申し上げましたように、従来、
品種登録者
の地位という形であったのに対して、今回は、はっきり
育成者権
ということで
権利
として
明確化
すると同時に、他の
知的所有権
に倣った規定の整備を行うということにいたしております。 具体的な
権利内容
について申し上げますと、
現行種苗法
におきましては、
品種登録
の
効力
が基本的に販売などの
種苗
の
有償譲渡行為
と
有償譲渡目的
の
種苗
の
生産
などに限られていたものを、今回は大幅に
拡大
をしております。
幾つ
かございますが、第一点が、
種苗
の
有償譲渡
のほか、
生産
、
輸出入等
にも
権利
が及ぶこととしていることでございます。 それから二番目には、
種苗
の
段階
で
権利
を行使する適当な
機会
がない場合には、
収穫物
に関する
行為
にも
権利
が及ぶとするというのが第二点でございます。 それから三点目は、
登録品種
のわずかな
特性
のみを変更させた
品種
、これを
従属品種
というふうに呼んでおりますが、この
品種
にも、
もと
の
品種登録
をした人の
権利
が及ぶということにしているというのが三点目でございます。 それから四点目は、
育成者権
の
有効期間
、
現行
十五年、永年
性植物
では十八年ということでございますが、これを二十年、永年
性植物
では二十五年というふうに延長することにしていることでございます。 それから五番目には、
出願
から
登録
までの間の
品種
の
利用行為
につきまして、
登録
後、
補償金
の
請求
ができるというようにする、いわゆる仮
保護
の
制度
を採用しているという点が
権利
の
内容
の
拡大
の主な点でございます。
石橋大吉
12
○
石橋
(大)
委員
次に、今
育成者権
の
有効期間
の延長についていろいろ
お答え
がありましたが、この
期間
が延長されるということは、同時に、
利用者
である
農林漁業者
の
利益
、あるいは
利用
の
機会
を長期化する、こういうことにもなるわけですから、この辺の
調和
というか、
均衡点
をどこに求めるか、こういうことについて端的に
お答え
をいただきたいと思います。
高木賢
13
○
高木
(賢)
政府委員
育成者権
の
存続期間
、
現行
十五年を二十年、永年
性植物
について十八年を二十五年とする
法案
の
内容
になってございます。これは、
各国
における
育成者権
の
存続期間
が、大半の国におきまして二十年あるいは二十五年というものを採用しているという点が第一点でございます。それから、
我が国
におきますほかの
知的所有権
、例えば
特許
について見ますと、
出願
後二十年というふうになっております。こういういわゆる横並びが
一つ
ございます。 それから、何よりも
関係者
の
意向
ということでございまして、
農業団体
や
育種業界
の
意向
をいろいろ我々も聞いてみたわけでございますが、
農業者サイド
からは、今度の九一年
条約
では、
最低期間
二十年ということでございます。それでよろしいという
意向
であると同時に、
育種業界
の方も、もっと長くしろという御
意見
はございませんで、現在提出しております案の年数が
関係者
の合意であるというふうに思っております。
石橋大吉
14
○
石橋
(大)
委員
次に、
育成者
の
許諾
が必要な
行為
の
範囲
の
拡大
についてですが、
種苗
のほかに
収穫物
についても
権利
が及ぶものとしているが、この
収穫物
についての
権利
とは具体的にどのような
行為
を想定されているのか。また、
権利侵害
が行われた場合には、
種苗
や
収穫物
の廃棄や差しとめができることとなっているようでありますが、
輸入農林水産植物
の差しとめ
請求
は
輸入
時のみならず流適時にも可能かどうか、この点について
お尋ね
をしておきたいと思います。
高木賢
15
○
高木
(賢)
政府委員
収穫物
に
権利
が及ぶのはどのような場合かということでございますが、基本的には、
収穫物
に
権利
が及ぶのは
種苗
の
段階
で
権利
を行使する適当な
機会
がなかった場合ということになっております。 では、どういう場合かというのを典型的な例を申し上げますと、
登録品種
の
種苗
が
外国
で
権利者
の
許諾
なしに用いられる。その
収穫物
が
生産
されまして、それが
日本
に
輸入
された場合というのが、いわば
収穫物
について
権利
が及ぶ場合の典型的な例でございます。 また、もう
一つ
は、
日本
国内で、ひそかに
登録品種
の
種苗
が
権利者
の
許諾
なしに、いわば違法に
生産
されまして、それが販売された、そういう
種苗
を使って
生産
が行われ、
収穫物
が市場に出回ったという場合で、
種苗
の
段階
では
権利侵害
したということが不明確であった場合、こういう場合が
収穫物
について
育成者権
が及ぶ典型的な場合であるというふうに考えております。 それから、二番目の
お尋ね
の
輸入農林水産植物
の差しとめ
請求
が流適時にも可能であるかどうかということでございますが、
権利者
の
許諾
を受けずに
輸入
された
登録品種
の
収穫物
が国内で
流通
している場合、これは
収穫物
の譲渡という概念の中に入りますので、
育成者権
の
効力
が及びます。したがいまして、
法案
三十三条差しとめ
請求
というのがございますが、その三十三条の規定に基づきまして、
権利者
は
流通
段階
におきましても差しとめの
請求
をすることができるというふうに考えております。
石橋大吉
16
○
石橋
(大)
委員
次に、これもちょっと説明がありましたが、仮
保護
制度
の導入に関連をしてお伺いします。 今回の
法改正
によりまして、
登録
以降の
育成者
に対する
権利
保護
だけでなくて、
出願
公表から
品種登録
までの間に仮
保護
を認めることとなっているが、それによってどのような
メリット
を想定しているのか。また、仮
保護
制度
導入の趣旨が十分生かされるためには、どのような
品種
が
出願
されているか、
利用者
に十分認識されていることが極めて重要であります。
出願
公表
制度
の
運営
に際し、
出願
品種
の
内容
を周知するため、どのような手段、方法を講じようとされているのか、この点について明らかにしていただきたいと思います。
高木賢
17
○
高木
(賢)
政府委員
品種登録
の
出願
から
登録
までというのは、現実にはかなりの時間を必要といたします。それは、栽培してみて、その
植物
に区別性とか均一性とか安定性という新
品種登録
の要件を備えているかどうかということを
審査
する必要があるからでございます。 この
審査
期間
中に、特に
出願
品種
などの
種苗
を
育成者
以外の人が大量に増殖して販売してしまう、こういうことも、現在の技術の
発展
の中からは十分可能になっております。特に、草花など商品サイクルの短い
植物
につきましては、
出願
後の短
期間
で
種苗
が大量に増殖されまして
品種
が普及してしまいますと、
育成者
は何ら
権利
を行使できない、
育種
コストの回収もできない、こういうことが懸念されるわけでございます。したがいまして、
出願
公表から
登録
までの間にも何らかの
保護
というものがあることが、
品種
を開発する人にとっての
メリット
というふうに考えられます。 そこで、今回、
改正
UPOV条約
も踏まえまして、
出願
公表から
登録
までの間の
出願
品種
などの
種苗
の増殖、こういった
利用行為
につきましては、書面による警告を要件とした上で、
登録
後に
補償金
を
請求
することができる、こういう仮
保護
の
制度
を導入しているわけでございます。これによりまして、
出願
から
登録
までの間につきましても、
育成者
の
権利
が適正に
保護
されるということでございますから、
育種
をする人の
意欲
の喚起、こういうものに資するのではないか、ひいては
育種
の
振興
に資するのではないかというふうに考えております。 そういった
出願
公表の
制度
はまことに重要でございますから、その
内容
が広く知れ渡らなければならないということは全く御
指摘
のとおりだと存じます。 それで、この
出願
公表と申しますのは官報に告示をいたします。中身は、
出願者
の氏名、住所、
農林水産植物
の
種類
、
品種
名などというものを告示するわけでございますが、単に官報任せということではなくて、それに加えまして、
品種
に関する情報につきましては、印刷物を
作成
いたしまして関係
機関
とか団体へ配布を行うほか、インターネットによっても提供いたしまして、
利用者
に広く周知を図る、こういうことが必要であると考えておりまして、これを実行していきたいと思っております。なお、
出願
品種
の写真につきましても印刷物やインターネットで提供を行うという方向で検討しております。 こういったことで、
出願
品種
に関する情報提供の
充実
に努めていきたいと考えております。
石橋大吉
18
○
石橋
(大)
委員
次に、農家の
自家増殖
等について
お尋ね
をいたします。
現行法
において農家の
自家増殖
については
育成者
の
権利
の
効力
が及ばない、こうなっていたわけですが、
改正
条約
においては
育成者権
の
効力
が及ぶとされているわけであります。ただし、自己の経営地で栽培した
収穫物
を自己の経営地で繁殖の目的で使用することができるよう、
育成者権
の制限をしている。すなわち、
各国
は農家の
自家増殖
について特例規定を設けることができることとなっている。 本
法案
においては、これを受けて、「
農業
を営む者で
政令
で定めるもの」については
育成者権
を制限した。農家の
自家増殖
は従来から行われてきた慣行であることからすれば当然のことと考えますが、この「
政令
で定めるもの」の
範囲
は具体的にど ういうことになるのかということが
一つ
。 もう
一つ
は、今回の
法改正
において、
農林水産省
令で定める栄養繁殖
植物
について
育成者権
の
効力
が及ぶこととされている。この場合、
育成者権
が及ぶとされる
自家増殖
とは具体的にどのようなものを指すのか、お伺いをいたします。
高木賢
19
○
高木
(賢)
政府委員
九一年の
改正
UPOV条約
におきまして、
農業者
の
自家増殖
に関する特例が認められております。これは、御
指摘
ありましたように、農家を中心に、
農業者
が
収穫物
の一部を次期作付用の種子としてとっておくということが慣行として広く行われてきたことを踏まえて認められているものということでございます。 このような導入の趣旨とか
育成者権
の
保護
の観点を考えますと、
自家増殖
の特例が認められる
農業者
につきましては、
我が国
におきまして慣行として
自家増殖
が行われてきた
範囲
とするということが適当であろうと思います。 そこで、まず
農業
を営む者についての
政令
の
指定
でございますが、これは、
農業者
たる個人並びに
自家増殖
の前提となります農地を取得できる者としての
農業生産
法人、個人と
農業生産
法人、この二つを考えております。 それから、省令で定める栄養繁殖をする
植物
についての
お尋ね
でございます。 省令で定める
植物
につきましては、
我が国
の現実の
取り扱い
におきまして、契約などによりまして
自家増殖
の制限ということが慣行として定着しているものを定める考えでございます。これは、これらの
植物
につきましては、
育成者
と
農業者
の間に、
自家増殖
についても
育成者
の
権利
が及ぶという規範意識が形成されているものと考えられます。これが
育種
家と農家の間の接点であるというふうに考えておるわけでございます。 具体的にどうかということでございますが、これまで関係業界へのヒアリングなどの結果、草花、観賞樹の一部というものがこれに当たるというふうに考えております。具体的にはシンビジウムとかバラとかカーネーションなどでございますが、こういうものにつきましては、
我が国
では
自家増殖
の制限というものが
関係者
の間に定着しているというふうに認識をしております。 さらに、現在実施しております実態調査の結果を踏まえまして、最終的な具体的な
植物
を確定したいと考えております。
石橋大吉
20
○
石橋
(大)
委員
次に、
育種
素材の
利用
、さっきもちょっと触れられましたが、いわゆる
従属品種
の判断基準についてお伺いをしておきたいと思います。 今回の
法改正
によりまして、
登録品種
から変異体の選抜、戻し交雑、遺伝子組み換えなどの方法によって、
登録品種
とわずかな
特性
が異なる
品種
、いわゆる
従属品種
と言われているわけですが、これを
育成
した場合には原
品種
の
育成者
の
許諾
が必要だ、こういうふうになっているわけです。 このような
品種
の従属関係については、その判断が極めて難しい場合も想定されるのではないかと考えますが、どのような基準でその判断が行われるのか、この点をお伺いしたいと思います。
高木賢
21
○
高木
(賢)
政府委員
お尋ね
がありましたように、近年、バイオテクノロジーを用いた
育種技術
が
進展
しておりまして、ある
品種
のわずかな
特性
を変化させただけの新
品種
を
育成
するということが容易になっております。その場合、多くの費用と時間をかけて
育成
した
もと
の
品種
からわずかな
特性
を変えて新
品種
がつくられるということになりまして、
もと
の
品種
の
育成者
の
権利
が全く認められないということになりますと、公平を欠くという事態も生じてきているわけでございます。 このために、
改正
条約
におきましては、ある
品種
のわずかな
特性
を変化させて
育成
された
品種
で、変化した
特性
以外は
もと
の
品種
の
特性
をそのまま維持している、こういうものを
従属品種
といたしまして、
もと
の
品種
の
育成者
の
権利
が及ぶことにしております。 具体的には、例えば、専ら
もと
になる
品種
を
育種
素材として
利用
して、その
品種
の耐病性のみを高めた
品種
、ナシでいいますれば二十世紀に対しましてゴールド二十世紀というようなものがこれに該当するというふうに考えております。 この
従属品種
に該当するものとしては、実は極めて多様なものが今後あらわれるのではないかということが想定されますし、その主となるというか、
もと
の
品種
と従たる
品種
の関係というものも、作目なりによりまして非常に個別性が強いという特徴を持っておるわけでございます。 したがいまして、
従属品種
と
もと
の
品種
の関係といいますか、
従属品種
の判定というものは、以上の原則にのっとった上で、
もと
の
品種
の
育成者
と
従属品種
の
育成者
との間で
決定
されるべきであるというのが加盟
各国
を初め
UPOV条約
の事務局の
考え方
でございます。 そうは申しましても、材料がないということではございません。当然、
従属品種
の
出願
がありまして公表する場合には、その
品種
の
特性
なりの資料につきましてはすべて公表するわけでございますから、それを
もと
にして
関係者
が判定するこ上は十分可能であるというふうに考えております。 なお、それを支援するために、
農林水産省
といたしましては、国外を含めまして、
従属品種
の事例を収集し、その情報を提供するということで、この判定、判断に資したいというふうに考えております。
石橋大吉
22
○
石橋
(大)
委員
次に、
審査
の
効率化
についてお伺いをいたします。
出願
件数は年々増加の傾向にあるわけであります。これに対しまして、
登録
件数は年間五百件前後で推移しているわけですが、そういうことで、未処理件数が増加の一途をたどっている、こういう
状況
にあるようであります。平均
審査
期間
も、
栽培試験
などもしなければいかぬということもありまして、大体四年という
状況
にあるようであります。 今後、
出願
件数の増大、
品種登録
の国際化が見込まれる中で、
審査
期間
の短縮は、国内の
利用者
からのみでなくて国際的にも強く求められるであろう、こういうふうに思われるわけですが、この点に関連して、
審査
官の増員、その他、
審査
官の資質の向上、あるいは
データ
処理の仕方、いろいろあると思いますが、
審査
体制全体の整備あるいは
強化
についてどのように考えておられるのか、承っておきたいと思います。
高木賢
23
○
高木
(賢)
政府委員
出願
件数の増加に対応いたしまして、
審査
の
迅速化
を図るということは極めて重要であると思っております。ただ、残念ながら、若干
審査
の件数がふえてまいったのに対しまして、体制の整備がおくれたということもございまして、一件当たりの
審査
につきまして時間を要しているというのが実態でございます。 そこで、これまでのところ、
審査
官の増員とか、担当作物の専業化の推進とか、
登録品種
に関します
特性
値の
データ
ベースの構築など、
審査
体制の
充実
や
審査
の
効率化
を図ってきました。それらの
効果
があらわれまして、最近でございますが、
平成
九年度の
審査
登録
件数は七百七十九件ということでございまして、前年に対しまして四四%処理数が増加をしております。その過程で取り下げた件数も含めますと九百件処理したということでございまして、若干の改善は見られたというところでございます。 しかしながら、これでは到底十分ではございませんし、今回の
法改正
によりまして、
出願
数の一層の増大というものが見込まれることは御
指摘
のとおりでございます。これまで以上に
審査
の
迅速化
、
効率化
に努めることが重要であるというふうに考えております。 そこで、具体的にどう対応するかということでございますが、まずはやはり人員体制ということで、
審査
官の増員なり、研修等による資質の向上ということが第一点でございます。
審査
官につきましては、
平成
九年度に二名の増員をいたしましたが、
平成
十年度も三名の増員を予定をしております。これによりまして、副
審査
官を含め、合計十六名の体制に
平成
十年度にはなります。 それから二番目は、
種苗管理センター
におきます
栽培試験
の実施体制の
強化
ということでございまして、
栽培試験
の業務担当職員を十年前に比べまして約倍増しておりまして、三十二名というふうに
充実
をしております。さらに、その
栽培試験
に必要な施設の整備
充実
につきまして取り組んでいるところでございます。 それから三番目には、
新規植物
への対応といたしまして、
出願者
や
外国
審査機関
からの
データ
の提供を受けまして、それに基づいた、より簡便な
審査基準
の
策定
、並びに
審査
の実施ということにも取り組んでおります。 これらの
措置
を総合的に講じることによりまして、迅速で、かつ適切な
審査
ということに向けて、体制の整備に努めてまいりたいと考えております。
石橋大吉
24
○
石橋
(大)
委員
次に、
品種登録制度
のあり方についてお伺いをいたします。 これまで
UPOV条約
は
保護
方式
の単一規定、いわゆる二重
保護
の禁止が置かれていたが、今回の
UPOV条約
では、二重
保護
の
取り扱い
は
各国
にゆだねることとなった。これは
特許
と
品種登録
の関係のことでありますが、この点の変化に対応する
我が国
の今後の
植物
新
品種
保護
規定の
運営
等についてどのように考えているのか、伺っておきたいと思います。
高木賢
25
○
高木
(賢)
政府委員
植物
新
品種
の
保護
に関しまして、
種苗法
で行うのか、あるいは
特許
制度
で行うのかという問題につきましては、
改正
条約
上は特に規定されておりません。
各国
にゆだねられております。
我が国
におきますこの問題の整理につきましては、既に昭和五十三年の
種苗法
の
改正
の際に整理されておりまして、
種苗法
の
保護対象
が現実に存在する
植物品種
であるのに対しまして、
特許
法の
保護対象
は、自然法則を
利用
した技術的思想の創作であるということで、
保護
の
対象
と態様を異にしているということが第一点。それから、
UPOV条約
に対応する国内法は
種苗法
のみであるということ。それから、
植物
の
特性
から、
植物
の新
品種
それ自体を
対象
とする
特許
発明は事実上ほとんどないと考えられる、このように整理しているわけでございます。 今回の
改正
に際しましても、このような整理を変える特段の事情は生じておりませんので、この
改正種苗法
におきましても、基本的にこの整理は変わらない。したがって、
UPOV条約
を受けた
植物
新
品種
の
育成者権
の
保護
は
種苗法
のみにより行われるというふうに考えております。
石橋大吉
26
○
石橋
(大)
委員
一応、私が事前に通告をした質問は、大体以上ですね。大項目で八項目、中項目で十二、小項目で二十一ありまして、一時間ではとても消化し切れないんじゃないか、こう思っておりましたが、質問の仕方がよかったということと答弁の仕方がよかったということがありまして、非常に早く終わりました。 しかし、これから先、質問通告をしていないことで、現場の研究者たちが非常に心配していることを
幾つ
か。きのう話はしましたけれども、これは、質問はちょっと時間がないだろうからというので外しておりましたので、答えられなければいいですが、答えられるのであれば答えてほしい、こういうことで二つ、三つ申し上げます。 まず
一つ
は、今の最後の質問とも関係しますが、これからの
品種登録
等については、バイオテクノロジーだとか遺伝子組み換えなどの技術が大きく
進展
をすると、
品種登録
よりも
特許
の方がこれからは多くなるんじゃないか、こういうことを現場の研究者は、推定ですが、言っていました。これは私、
農業
試験場に行って、地元の
農業
試験場でいろいろ聞いてきたのですが、こういう見通しの問題がどうなるのか。 本当はそれに関連をして、
特許
庁でそういう体制が十分あるのかどうかということを聞きたかったのですが、きょうは
特許
庁、そういう意味で、初めの予定では、とてもじゃないが全部質問がこなし切れないだろうと思って呼んでいませんので、その辺の見通しなり
考え方
について、
農林水産省
としてどう考えているのか。もしあれでしたら
お答え
いただきたいのです。
高木賢
27
○
高木
(賢)
政府委員
ただいま御
指摘
ありましたように、遺伝子組み換えなどの高度なバイオ技術を
利用
してつくられた
植物
、つまり、それをつくる技術とともに、その
形質
転換
植物
に
特許
が認められる事例というのがあらわれていることは事実でございます。しかし、その場合でも、
特許
で申請されますのは、あえて特定の
品種
という狭い
範囲
ではなくて、
植物
を作出する技術とその
形質
転換
植物
と広い
範囲
でございまして、
品種
としての
保護
といいますか、開発した場合には、やはり
種苗法
に基づきます
品種登録制度
によって出てくるというふうに見ております。 実際にも、先ほど耐性のところでも
お答え
申し上げました、これから
植物
の
範囲
の
拡大
もありますし、
種苗法
に基づく
品種登録
の
出願
件数というものが相当ふえるというふうに見ております。
特許
ということは、先ほど言いましたように、技術的思想の創作ということで整理してございますので、それによって
種苗法
の新
品種
の世界が何か狭くなるというようなものではないと考えております。
石橋大吉
28
○
石橋
(大)
委員
二つ目
は、名称変更に関連をして、この点は現場の人がかなり心配をしておりますから念のために聞いておきますが、従来は
出願
をしてから名称変更はできなかった。
出願
をして名称変更ができないということは、そのまま
登録
をされるわけですから、最初に
出願
をした名称が全く名称変更できない、こういうことになるわけですね。 例えば米、稲だとか、特に酒米なんかがそのようですが、島根県なんかの場合ですと、島イ何号、
高木
局長は昔々の島根県の農政部長ですからよく御存じだと思いますが、そういう非常に学問的な名前をつけておるわけですね、ある意味で機械的な名前というか。それを実際に
利用
するときには、公募をして、名称を募集していろいろな名前をつける。米であればできるだけうまくて全国的に
拡大
をするような、例えばコシヒカリだとかササニシキだとか、いろいろな名前がありますが、そういう名前をつける。そういう名称変更が、一遍出してしまうとできないということで非常に困る、こういうようなことを言っていました。 きのう
種苗
担当官の話を聞きますと、今度の場合は、事前に
一定
の栽培もできるし、そういう意味では、多少の
実績
を踏まえて、
出願
後、名称変更するようなことは起こらない、こういうような話もちょっと聞いたのですが、現場の研究者はその辺を、従来の関係もあってかなり心配していますから、その辺について、念のために明らかにしていただきたいと思います。
高木賢
29
○
高木
(賢)
政府委員
御懸念の点でございますが、これまでは変更が事実上あったわけでございますが、今回、仮
保護
制度
を導入するということになりますと、仮
保護
の
効力
が及ぶ
品種
につきまして、
品種
識別の重要な手段であります名称が変わったということになりますと、仮
保護
の
対象
が何なのかということがわからなくなってしまうということで、かえって
種苗
の
流通
なり
生産
の現場に
混乱
を生じかねないということで、
出願
された名称を自分の都合で変えるということは認めておりません。 しかし一方で、
出願
の要件を緩和しておりまして、今までは、
出願
前に譲渡しているとそれは
登録
は認められないということでございましたが、今回の案では、譲渡してはいけないという要件を緩和いたしまして、
出願
の一年前までは譲渡することが認められるということでございますから、その間に、いわば試験販売をするなり、試験的に見本品を供与するなりして名称を公募いたしまして、その名前をつけた上で
出願
をするということ、一年という猶予がございますので、これを御活用いただければ、仮
保護
制度
ということと現場での御懸念ということが
調和
点があるのではないかというふうに考えております。
石橋大吉
30
○
石橋
(大)
委員
ちょっと早いですが、あともう
一つ
ぐらいありますが、これはちょっとややこし い話ですから、やめておきます。 大変多項目にわたりまして網羅的に適切な答弁をいただきまして、非常に後の審議の参考になろうかなと思っております。どうもありがとうございました。 以上で終わります。
北村直人
31
○
北村委員長
以上で、
石橋大吉
君の
質疑
は終わりました。 次に、木村太郎君。
木村太郎
32
○木村(太)
委員
おはようございます。
石橋
大先生が早く終わられましたけれども、三十分の与えられた時間で、
大臣
初め皆さんの方へ確認させていただきますので、よろしくお願いしたいと思います。 まず、今回の
種苗法
改正
につきまして、先般の
島村
農林水産大臣
の提案
理由
の中でも、
種苗
というのは
農林水産物
の
生産
に不可欠な基礎的な
生産
資材とし、また、その
種苗法
は、
種苗
流通
の
適正化
と優良新
品種
の
育成
振興
を図るため、こういうふうに
大臣
の提案
理由
でもありました。具体的にはどういう役割を果たしてきたと考えているのか、確認をさせていただきたいと思います。 また、
農林水産業
振興
を図る上で、
種苗
あるいは
種苗法
というこの法律の位置づけというものを
大臣
はどのように認識されているのか、まず
お答え
をいただきたいと思います。
島村宜伸
33
○
島村国務大臣
良質あるいは多収あるいは耐病性等にすぐれた
品種
の開発は、農林漁業の
発展
を支える重要な基盤であります。したがいまして、
育種
の
振興
と
育種
の成果としての新
品種
の
育成者
の
権利
の
強化
を図ることは、今後の農政の重要な柱であると我々は認識いたしております。このため、
我が国
におきます
育種
振興
の基盤を整備することを目的といたしまして、
保護対象植物
の
拡大
あるいは
育成者権
の
強化
等を
内容
とする
種苗法
の
改正
をお諮りしているところであります。 今回の
改正
によりまして、
我が国
における
育種
の
振興
が図られ、かつ、優良な新
品種
がこれまで以上に多数
育成
、提供されることを通じまして、
我が国
農林水産業
の
発展
に大きく資するものと期待しているところであります。
木村太郎
34
○木村(太)
委員
そうあってほしいと思いますし、またそのための今回の
法改正
、こう思っております。今回のこの
改正
は、
UPOV条約
の推進動向という諸
外国
の情勢にも対応するため、こういうふうにも私なりに理解しております。外務
委員会
の方でも既に議論されているようでありまして、
我が国
の
育種
振興
の現状というものは世界的にどのようになっているのか、この点も確認させていただきたいと思います。 また聞けば、このUPOV締結国というものが、私の感想からいいますとまだ数的に少ないような印象を持っております。こういう国際情勢の中で、
農林水産省
は外務省とも連絡を密にしながら、国際的に
我が国
の
育種
振興
というものをどのように図っていくつもりなのか、
お答え
をいただきたいと思います。
島村宜伸
35
○
島村国務大臣
お答え
いたします。
改正
UPOV条約
は、去る四月二十四日に、デンマークを初めとする六カ国の批准を得て発効いたしましたが、既に三十カ国で
改正
条約
に対応した国内法の整備がされておるところであります。
我が国
におきましても、今回の
種苗法
の
改正案
が成立すれば、国際的に
調和
のとれた形で新
品種
の
育成者権
が
強化
されることになるわけでありまして、
我が国
の
育種
につきましては、現在、作物
育種
推進基本計画にのっとりまして、計画的に推進しているところであります。今後、
法案
の成立を見ますれば、新しい
制度
の普及やその円滑な運用に努めますとともに、まず、国の
試験研究機関
による
品種
開発及び都道府県や民間
機関
による
育種技術
開発に対する支援や共同研究の推進、あるいはまたジーンバンク事業によります遺伝資源の収集、提供等によりまして、
育種
の一層の
振興
を図ることとしているところであります。 なお、
UPOV条約
の締結と、あるいは同
条約
適合法の制定
状況
がまだ世界的には極めて限られた数ではないか、こんな御
指摘
がございました。
改正
UPOV条約
の締結国につきましては、もう既に御存じかと思いますが、デンマーク、イスラエル、オランダ、スウェーデン、ブルガリア、ロシアでございますけれども、同
条約
適合法、要するに見込みですけれども、制定国といたしましては、ロシア、ボリビア、EU、エクアドル、オーストラリア、米国、ベラルーシ、ポーランド、デンマーク、スロバキア、イスラエル、南アフリカ、ペルー、オランダ、ブルガリア、モルドバ、モロッコ、スウェーデン、ドイツというような国々が、もう既にこれらへの対応をしているところでございまして、こういうことにおくれをとらないことが肝要であると我々は考えております。
木村太郎
36
○木村(太)
委員
今
大臣
から詳しく御説明がありました。現実にはまだ少ないような印象がありましたが、
日本
と同じように予定しているというか、それに対応しようとしている世界の国々もかなりあるということでありますので、ただいまの御答弁の最後にあったとおり、乗りおくれない対応としても、また一層努力をお願いしたい、こう思っております。 そこで、今度、
法案
の中身について少し触れていきたいと思います。まず、今回の
保護対象植物
数というのが、これまでは四百六十七
種類
だということでありましたけれども、今回の
改正
によってその
対象植物
というものを、栽培される
植物
は広く
対象
とする、こう言っておりますが、その
理由
をお聞かせいただきたいと思います。
高木賢
37
○
高木
(賢)
政府委員
御
指摘
のように、現在は
政令
で四百六十七
種類
の
指定
でございますが、こういう
指定
方式
ではぐあいが悪くなったという点が出てまいったわけでございます。
一つ
には、
栽培実績
がないということから
政令
で
指定
しなかった
植物
、しかしながら現場ではいろいろと
意欲
的に
品種
開発に取り組んでおられる方がございまして、
政令
で
指定
していない
植物
でも新
品種
の
育成
に取り組んでおられる方がございます。そういった場合に、新
品種
の
育成
のスピードと
政令
指定
のスピードが食い違う場合があり得る、迅速な対応ができない、こういう事態があるというのが第一点でございます。 それから二番目には、
我が国
で
保護対象
とはなっていない、しかし
海外
では
育成
された、
品種
がいいので導入したいという場合に、
保護
制度
が
我が国
にありませんと
海外
の人が
我が国
に出したがらない、こういうことで支障になるという点が第二点でございます。 それから、種と種の間の
雑種
、属と属との間の
雑種
というものは
政令
で書きぶりが大変難しゅうございまして対応が困難である、こういった事態が生じてまいりました。 こういう事情を踏まえまして、
改正種苗法
案におきましては
対象植物
を
拡大
いたしまして、栽培される
植物
、
農林水産植物
を広く
対象
とする、こういう案にしたわけでございます。
木村太郎
38
○木村(太)
委員
次に、今回の
法案
の中で、
品種
の
育成者
の
権利
強化
ということを
一つ
の柱にしておりますけれども、これまでは名称さえもなかったものを、
育成者権
としていわゆる
知的所有権
というものを位置づけているということであります。だとすれば、これまで何らかの被害的なもの、不
利益
的な問題があったのかどうか、具体的な答弁をいただければ、こう思います。
高木賢
39
○
高木
(賢)
政府委員
現在の
育成者
の地位というものは、
品種登録者
の地位という形でその
保護
が図られているわけでございますが、それだけでは十分でないという事態の変化があったというふうに私どもは考えております。 すなわち、どういうことかと申し上げますと、御案内のようなバイオテクノロジーの
発展
に伴いまして、
種苗
を大量かつ短
期間
に
生産
することとか類似の
品種
を創出するということが可能になりました。したがいまして、
育成者
の
権利
の侵害が大規模かつ広
範囲
に生ずるおそれというものが高まってきているというふうに考えております。こういう
状況
で
権利
の
範囲
が限定されておりますと、
育成者
の
育種
努力が十分
保護
されない、そういう懸念が生じてきたということから、世界的に もこれに何とか対処しようということで
UPOV条約
の
改正
が行われたわけでございます。 いわばそういったバイオテクノロジーの
発展
に伴う新しい事態に、今までの
権利
の
保護
のあり方では十分
保護
が図れない、こういう認識の
もと
に対応を図っているということでございます。
木村太郎
40
○木村(太)
委員
ごもっともな御答弁だと思います。 そこで、今の御答弁に対してもう少し突っ込んで考えた場合に
お尋ね
したいと思うのですけれども、もちろんその
強化
を図ろうとしていることは今御答弁にあったとおりだと思います。しかし、
強化
をする上で確認したいと思うのが、この
品種
育成者権者
にとってはよいことになっても、一方では
我が国
の
農業
の姿あるいはまた
生産
活動という実態にマイナスがあってもならない、こういうふうにも考えます。そして、
種苗
を通じて
利益
を考えた場合に、
品種
育成者権者
といわゆる
農業者
、
生産者
との整合性、バランスというものがある面では大事になってくると思いますが、この辺はどのように考えておられるでしょうか。
高木賢
41
○
高木
(賢)
政府委員
品種登録制度
は基本的には
育種
の
振興
につながりまして、すぐれた
農産物
が
生産
できる、そういう
種苗
がふえるわけでございますので、
農業生産
の
発展
につながるということでありますから、大きな目で見れば、基本的には
農業者
等の
利益
につながっていくものというふうに考えております。ただ、現場の実態に合わないようなことが仮にありますと、これは問題であります。 そこで、今回の
法案
の中で、現実的に
農業者
との
利益
の
調和
といいますか、
育成者
と
農業者
との間の
調和
の問題で
関係者
の最大の論議になりましたのが、いわゆる
自家増殖
についての
取り扱い
でございます。この
育成者権
の
保護
に当たりましても、その
自家増殖
につきましては現場の実態に配慮いたしまして、
農業者
の
自家増殖
につきましては
一定
の
条件
の
もと
で
育成者権
が及ばないということにいたしまして、
育成者
の
許諾
なしで
自家増殖
を行い得る、例外的には省令で定める栄養繁殖
植物
ということでございますが、そういうところで
農業者
と
育成者
との間の接点を見出したということでございます。 それからもう
一つ
、
収穫物
についてもこの
育成者権
の
権利
が及ぶということになりますが、これは
種苗段階
で
権利
行使をする
機会
がなかった場合に限定をするということでございまして、
農業者
が適正に
種苗
を入手さえしていれば、
生産段階
で何ら問題にされることはないということでございます。 こういうことで、
農業者
との具体的な
利益
の
調和
といいますか、調整を図っているところでございます。
木村太郎
42
○木村(太)
委員
ぜひそうしていただきたいと思います。 今の御答弁の中にも農家の
自家増殖
というものについてありましたので、これはその後聞こうと思っていたのですが、ちょっと今の御答弁があったのでここでお聞きします。農家の
自家増殖
については、先ほどあったとおり、
一定
の場合を除き
権利
の
効力
が及ばない、こういうふうにしておりますけれども、この表現、言い方を変えれば、
育成者権
の
効力
というのは原則として及ぶ、こういうふうにも言えると私は思います。
我が国
の農家の
自家増殖
というのがこれまでも慣行であったのはだれもが認めることだと思いますし、この
一定
の場合ということを
農林水産省
としては具体的にどういうことを考えておられるのか、ここでちょっと確認させていただきたいと思います。
高木賢
43
○
高木
(賢)
政府委員
この
一定
の場合というものは、
我が国
におきます
農業者
の
自家増殖
の実態を踏まえまして、現在のところで、契約による
自家増殖
の制限が定着しているというものの栄養繁殖
植物
を定めるということにしております。具体的には、草花とか観賞
植物
の一部、これがいわば慣行といいますか
農業者
と
種苗業者
との間で大体
自家増殖
の制限が行われている、一般化しているというものでございまして、そういう草花、観賞
植物
の一部を考えているところでございます。
木村太郎
44
○木村(太)
委員
もう
一つ
確認したいのですけれども、
登録品種
のわずかな
特性
の一部を変化させて
育成
された、そして、その
特性
によって
登録品種
と明確に
区分
することをいわゆる従属関係、こういうふうに認識しているようでありますけれども、この判断というのはどのように行われていくんでしょうか、確認させてください。
高木賢
45
○
高木
(賢)
政府委員
従属品種
の定義といいますか概念というものは、ある
品種
のわずかな
特性
を変化させて
育成
された
品種
で、変化した
特性
以外は
もと
の
品種
の
特性
をそのまま維持しているものというふうになっております。したがいまして、
もと
になる
品種
を
育種
素材として
利用
いたしまして、例えば耐病性のみを高めた
品種
、例えばササニシキにつきましてはササニシキBLというのがございますが、それは、ササニシキの中の
形質
は変化させないで、耐病性というところだけを高めたというものがこれに該当いたします。 概念としてはそういうことでございますが、これの判断に必要な、該当するか否かについての資料につきましては、
従属品種
につきまして、
出願
がありまして
登録
されるということになりますれば、
登録
された
品種
の
育成
に関する資料、
特性
、こういったものを公表いたします。したがいまして、こういった客観的資料を
もと
にすれば、ただいま申し上げた概念に該当するのか否か、あるいはどの程度
もと
の
品種
に依存しているのかということを、
関係者
はこれを判定し、確認することができるというふうに考えております。 ただ、それだけで十分かということもございますので、私ど
もと
しては、国外の事例も含めまして、
従属品種
というものに当たるものの事例の収集をし、
関係者
に情報を提供していきたいと考えております。
木村太郎
46
○木村(太)
委員
判断できるということでありますので、ぜひ適切な判断をする努力をお願いしたい、こう思います。 今の御答弁でも、
従属品種
という言葉でありますけれども、私たち、日常の生活の中でこの
従属品種
、従属品というような表現を使う
機会
が余りないというか、もう少し何かわかりやすいというか、一般的にも使えるような表現がないのかなというふうにも思っております。別にこれは答弁を求めるわけではないんですが、私の個人的な
考え方
ですけれども、こういった点もまたぜひ皆さん心していただければな、こう思います。 先ほど、
育成者権者
と、
生産者
つまり
農業者
との
利益
の整合性について
お尋ね
しましたけれども、いま
一つ
整合性ということで確認したいんです。今回、
育成者権
の
有効期間
というものを十五年から二十年、果樹などの永年
性植物
というのは十八年から二十五年、どのように延長するというふうにしておりますが、これを単純に考えれば、
利用者
がその
品種
を自由に扱えない
期間
もまた長くなる、こういうふうにも思います。 そこで確認したいんですけれども、延長の幅をなぜ今回五年としたのか、果樹などを七年としたのか、
お答え
いただきたいと思います。時間という視点でとらえた場合に、この
品種
育成者権者
と
農業者
、
利用者
との整合性というものをどのように考えておるのか、
お答え
をいただきたいと思います。
高木賢
47
○
高木
(賢)
政府委員
存続期間
についてでございますが、これはまず第一に、九一年の
UPOV条約
におきましては、
育種
に関するコストが増加してきているということから、投資の回収を適切に行えるようにするためには
育成者
の
権利
の
存続期間
を延長する必要があるという御議論が出されました。 それから、現実問題としては、欧州では大体こういう十五年以上の長い
保護
を与えてきているという実態がございまして、
条約
においても義務づけを現在より長くして、最低二十年、永年
性植物
については二十五年、こういったものにすべきであるということが議論の結果まとまったわけでございます。 そこで、
我が国
においてどうかということでご ざいますが、現実の
条約
を受けたヨーロッパなどにおいても二十年、二十五年というふうに、先ほど
お尋ね
がございましたが、この
条約
に合わせた
改正
を行った国では、大体二十年あるいは二十五年ということになっております。それから、
我が国
におきます
知的所有権
ということとのバランスを考えますと、
特許
につきましては
出願
後二十年、こういうことになっております。 加えてといいますか、一番大事な点でございますが、
関係者
がどういう御
意向
かということについてはいろいろ論議をいたしました。その結果、
育種業界
、
農業団体
とも、いわば
農業者
と
育成者
の
調和
の点としまして二十年、永年
性植物
については二十五年ということで、そういう御
意向
が示されたわけでございまして、それを
もと
に現在の
法案
を御提案申し上げたわけでございます。
木村太郎
48
○木村(太)
委員
今、
出願
ということも御答弁がありました。もう
一つ
確認したいんですけれども、調べてみましたら、最近の
出願
件数というのが増加傾向にあるというふうに考えております。ただ、それと並行した形で未処理の件数というものも増加してきて、いわゆる
審査
の
期間
というものも長期化している。聞けば、平均すると四年間ぐらいを費やしているというふうにも聞いております。 そこで、
品種登録制度
の
対象
となる
植物
の
範囲
が
拡大
されるという先ほどの答弁もありましたし、また、
出願
件数が一層ふえてくるのではないかなという予想もされます。そこで、先ほど来
幾つ
か
お尋ね
してきた中で正しい判断がさらに求められてくる、こういうことも考えれば、この
審査
体制というものをさらに万全に整えておく必要があると思いますが、この点はどのように考えておられるでしょうか。
高木賢
49
○
高木
(賢)
政府委員
御
指摘
がありましたように、一件当たり平均で四年ぐらいかかっているというのが実態でございます。欧米でありますと、長いものが四年というのはございますが、もう少し短い時間で当然対処しているということでございまして、これにきちんと対処しなければならないということで、特に、
平成
九年度から
審査
官の大幅な増員を図ったり、担当作物の専業化を推進して迅速に
審査
ができるようにする体制をつくるとか、あるいは
登録品種
などの
品種
につきましての
特性
値の
データ
ベースの構築をするというようなことで、
審査
の体制の
充実
と
効率化
を図ってきました。
平成
九年度につきましては、その結果、前年に比べまして四四%増の処理件数の
実績
を上げたということでございますが、御
指摘
がありましたように、今回の
法改正
案が成りますれば、
出願
数のさらなる増大が見込まれます。したがいまして、これまで以上に
審査
の
迅速化
、
効率化
を図る必要があるというふうに考えております。 具体的には、
審査
官の大幅な増員を図るということでございまして、既に九年度に二名を増員いたしましたが、十年度も三名増員をするという予定にしておりまして、副
審査
官を含めますと十六名の
審査
官の体制になります。 それから、現地の
栽培試験
の実施体制も
強化
いたしまして、これも十年前より倍増いたしまして、
平成
九年度には三十二名という体制にしております。 それから、新たな
植物
につきまして
出願
が出てくる可能性がふえるわけでございますが、これにつきましては、
出願者
並びに
外国
の
審査機関
から
データ
の提供を受けまして、より簡便な
審査
の基準の
策定
なり
審査
の実施ということに取り組んでいきたいと思います。 こういうことを総合的に実施いたしまして、より迅速で適切な
審査
ということに努めてまいりたいと考えております。
木村太郎
50
○木村(太)
委員
私も個人的には、行政改革イコールすべて小さくすればいいとか、一〇〇%そういう
考え方
は持っておりません。ですので、ただいま局長さんからお話があったとおり、必要に応じては適切に対応する、こういう
考え方
でぜひ今の答弁に即して対応していただきたいと思います。 時間がなくなってまいりましたので、聞こうと思ったんですが、いま
一つ
、答弁はいいですのでぜひお願いしたいんですけれども、今回のこの
法改正
を受けて、
種苗
産業に携わる方々、あるいはまた一般
農業
従事者の皆さんにも、今回のこの
改正
というものを周知徹底という面でも
農林水産省
の役割をぜひお願いしたい、こう思います。 最後に
お尋ね
したいと思いますが、
我が国
の
種苗
の輸出入の現状というのはどのようになっているんでしょうか。
高木賢
51
○
高木
(賢)
政府委員
種苗
の輸出入の動向でございますが、輸出金額といたしましては、おととし、
平成
八年に百二億円、
我が国
の
農産物
輸出の六%を占めております。十年前と比べますと一・三倍というふうになっております。 それから
輸入
金額は、
平成
八年に四百十一億円でございまして、
農産物
輸入
に占めます割合は〇・九%、十年前の昭和六十一年と比べますと二・七倍に伸びておるという
状況
でございます。
輸入
の内訳では、球根類が四割を占めておりまして百八十六億円、
輸入
先としては、欧州地域からの
輸入
が二百三十三億円ということで、全体の五割以上が欧州からということになっております。
木村太郎
52
○木村(太)
委員
私は、今の御答弁の数字を考えれば、決して小さな数値ではないと判断しております。 今の御答弁に引き続いて、
一つ
認識というか御見解を確認したいんですけれども、
農林水産物
、
農林水産業
、この分野においての国際的な協力をするということはもちろん大切なことだと思います。また一方では、現実に競争、これも私は現実の姿としてあると思っております。 例として言えば、いつも私の地元の話をして、地元の場合、リンゴの話を取り上げて今までも
幾つ
か
大臣
にも質問したことがあります。毎度このリンゴの話で恐縮でありますが、例えばリンゴの「ふじ」、実はこの「ふじ」という
品種
は、私の地元で藤崎町という大変小さな町で誕生したんです。しかし、このリンゴの「ふじ」が、現実には、今アメリカがある面では
日本
人向けの研究をしながらも、アメリカで
生産
して、今
輸入
解禁を求めている、こういう
状況
であります。もし、これが認められるとすれば、
我が国
国産のリンゴと競争が一層激化することが予想され、結果的には国内のリンゴ農家がさらに厳しい
状況
になるんではないかな、こう考えております。 もちろん、正反対に、
我が国
内においてこれまで
生産
されていなかった
品種
を今は積極的に
生産
しているということで頑張っているのもあるでしょうと、正反対の
考え方
、また
利用
というものもありますけれども、一方で競争、一方でまた国際的な協力、こういった中での
我が国
の
種苗
というものはどうあるべきと考えているのか、最後に
お尋ね
して終わります。
高木賢
53
○
高木
(賢)
政府委員
種苗
につきましては、輸出されて、輸出先の国で
我が国
と同じ
品種
の
生産
が行われる
機会
も増大するということは御
指摘
のとおりでございます。一方では、
輸入
をして、それを活用して
我が国
の
生産
を豊かにするという側面もあるわけでございまして、
種苗
の
国際流通
は優良
品種
が積極的に導入できるという側面もありまして、デ
メリット
だけでなく
メリット
もあるというふうに考えております。 それから、この
改正案
では、新
品種
の他国への輸出の
許諾
に当たりまして、
我が国
の
農業生産
あるいは
種苗
販売に悪影響を及ぼさないという観点から種々の
条件
を課する、例えば、
許諾
に係る
種苗
から
生産
された
収穫物
につきまして
我が国
へ逆輸出しないというような
条件
も課することができるわけであります。 したがいまして、こういうような法
制度
を踏まえた秩序ある優良
品種
の輸出と官民を通じた
育種
振興
を図ることによりまして、
我が国
の
品種
面での国際優位性が確保されるように今後とも努力してまいりたいと考えております。
木村太郎
54
○木村(太)
委員
ありがとうございました。
北村直人
55
○
北村委員長
以上で木村太郎君の
質疑
は終わりました。 次に、
菅原喜重郎
君。
菅原喜重郎
56
○菅原
委員
今回の
種苗法
改正
は、基本的には、一九九一年の
UPOV条約
の
改正
を踏まえ、その
改正
条約
を締結するために行うものであると聞いております。
我が国
がこの新たな国際的統一規則により新
品種
の
育成者
の
権利
保護
を
強化
することは、
育成者
の
育種
の
意欲
を高め、優良
品種
の
生産
を一層促すとともに、
海外
の優良
品種
の
利用
も容易になることなどから、
我が国
農業
の
発展
にとって非常に重要なことであります。ただしこれも、
各国
と歩調を合わせて行って、初めて十分な
効果
が期待できるのであります。 かつて、昭和三十年の半ばごろでありましたか、岩手県日詰の橋本君が光り輝くようなサンセット色のコスモスの新
品種
を開発しました。これがアメリカの花の品評会で一等賞を獲得し、全米に報道されたわけですが、そのままで終わっております。このような法律があったら、国のためにも個人のためにも大変な
利益
になったと、当時を思い起こし今昔の感がひとしおであります。 そこで、質問しますが、世界においては、
改正
UPOV条約
に基づいて現在
幾つ
の国が
育成者
の
権利
を
保護
しているのでしょうか。
条約
の批准国がまだ六カ国と少ないなど、世界的に、
条約
が目指す
育成者
の
権利
保護
の機運がいま
一つ
ではないかと聞いておりますが、今後のこの
各国
の対応の見込みについてまず
お尋ね
いたします。
高木賢
57
○
高木
(賢)
政府委員
九一年の
改正
UPOV条約
の適合法を既に制定している国は、
平成
十年三月末現在で十九カ国、一地域、この一地域というのがEUでございまして、その中の国を数えますと三十カ国を包含する
状況
になっております。 その中で、デンマーク、オランダ、イスラエル、スウェーデン、ブルガリア、ロシア、この六カ国が
条約
を既に締結しておりまして、本年四月二十四日に
条約
が発効いたしました。 このほかに、イギリス、フランスで国内法整備の手続が進んでいるというふうに聞いております。 今回の
条約
発効をきっかけといたしまして、今後、
改正
UPOV条約
の締結と国内法の整備が世界的に加速されるのではないかというふうに見ております。
菅原喜重郎
58
○菅原
委員
条約
の批准国はまだ多くはありませんが、
改正
UPOV条約
に適合した法律の制定国が既に三十カ国をカバーする
状況
であり、
我が国
も早急な対応をとる必要があることはよく理解できるところであります。むしろ、遅きに失したという感じもなくはありません。
条約
が
改正
されたのは七年も前の一九九一年でありますが、
我が国
の
改正
がなぜここまでおくれてしまったのか、あわせて
お尋ね
します。
高木賢
59
○
高木
(賢)
政府委員
九一年の
UPOV条約
の
改正
事項は、御案内のように大変広
範囲
にわたります。また、
権利
義務にも大きな影響を及ぼす
内容
になっております。したがいまして、
我が国
におきましても、この
条約
改正
以来、関係各界で幅広い検討が行われてまいりました。その結果、いろいろと議論もありましたが、
関係者
の合意も形成されまして、
法改正
の
条件
が整ったということで今国会に
改正案
を提出したわけでございます。
関係者
の理解を得るという点では
各国
もかなりの時間を要しておりまして、例えば、アメリカにおいても
法改正
ができたのが九四年十月、オランダで九六年、ドイツで九七年ということで、膨大な
内容
であることから、ある程度の時間が
関係者
の間で必要であったという事情は御理解賜りたいと存じます。
菅原喜重郎
60
○菅原
委員
現行法
では、
農業者
の
自家増殖
、自分で
生産
した
収穫物
の一部を次期作の
種苗
として使用することについては
育成者
の
許諾
を受ける必要がありませんでしたが、新しい法律では
一定
の規制を受けることとなりました。本
改正
の
もと
となる
UPOV条約
では、
農業者
の
自家増殖
に対しては、
各国
の実情に照らし合理的な
範囲
内で
育成者権
を制限できることとされております。そこで、
我が国
はどのような
考え方
に立って
農業者
の
自家増殖
の
取り扱い
を定めているのか、新しい
取り扱い
についての基本的な
考え方
を
お尋ね
します。 なお、この自己増殖の
取り扱い
については、
育種者
とその
種苗
のユーザーたる
農業者
との間では往々に利害が対立するものと推察されますが、これら
関係者
の
意見
を聞き、利害の調整等がきちんと反映されたのかどうか、あわせてお伺いします。
高木賢
61
○
高木
(賢)
政府委員
改正種苗法
案におきましては、九一年の
UPOV条約
を受けまして、
我が国
におきます
農業者
の
自家増殖
並びに
種苗
の
流通
慣行の実態を踏まえまして、また一方では、
育成者権
の
保護
の観点ということも考慮しながら整理したところでございます。 その結果といたしましては、契約による
自家増殖
の制限というものが、現在、草花なり観賞樹の一部で行われているわけでございますが、そういったものが定着している栄養繁殖
植物
、これを
農林水産省
令で規定いたしまして、これだけをいわば
農業者
の
自家増殖
につきまして
許諾
が必要な
行為
とすることにするという点が
一つ
でございます。それからなお、契約で別段の定めをしたということがあれば、それは当事者の意思でございますので
育成者権者
の
許諾
を必要とする、こういう整理をしてございます。 こういう
措置
は、
我が国
の
自家増殖
の現状、実態というものに即したものであるというふうに考えております。そのプロセスといたしましても、
生産者
団体などの
関係者
の
意見
を十分に聞いております。また、
生産者
団体あるいは
育種
の団体の方が参加しております
農業資材審議会
種苗部会
の御
意見
も、このような
取り扱い
について御賛同いただいておりますが、それは
関係者
が加わった
審議会
でございまして、
関係者
の合意プロセスは経ているというふうに考えております。
菅原喜重郎
62
○菅原
委員
御承知のように、
日本
の
農業者
、農家はまだ企業的経営の形態には十分に対応できるようになっておりませんので、この
自家増殖
の件につきましては、よほど
農業者
への啓蒙あるいはいろいろな指導が必要だと思いますので、この点は、よろしく今後対処をお願いいたしたい、こう思う次第でございます。 また、新法二十一条三項の、省令で定める栄養繁殖をする
植物
として、どのような考えに立って、どのような
植物
を
指定
するつもりか、
お尋ね
いたします。同時に、新法二十一条二項の、
政令
で定める
農業者
としてどのような
対象
を考えておるのかもお伺いいたします。
高木賢
63
○
高木
(賢)
政府委員
省令で定める
植物
につきましては、
我が国
の現実の
取り扱い
におきまして、契約などにより
自家増殖
の制限が慣行として定着しているもの、これを定める考えでございます。これは、これら
植物
につきましては、
育成者
と
農業者
との間で、
自家増殖
についても
育成者
の
権利
が及ぶという規範意識が既に形成されているというふうに考えられまして、これが
育成者
と
農業者
の間の接点であるというふうに考えております。 具体的なものとしては、草花、観賞樹の一部、シンビジウムとかバラ、カーネーションなどが考えられるわけで、これらが
我が国
で
自家増殖
の制限が定着している
植物
というふうに考えておりますが、現在実施しております実態調査の結果を踏まえまして、最終的に具体的な
植物
を確定していきたいと考えております。 それからもう
一つ
、
政令
で定める
農業者
でございます。
農業者
の
自家増殖
でということでございますから、農家、あるいは
自家増殖
の前提となる農地を取得できる
農業生産
法人ということで、
農業者
たる個人並びに法人としては
農業生産
法人というものを考えております。
菅原喜重郎
64
○菅原
委員
先ほどの質問にも関連しますが、これまで
農業者
は
育成者
の
許諾
を一々求めることなく自由に
自家増殖
ができたのに対し、今回、例外的とはいえ、
一定
の規制が行われることとなると、
農業
現場では
混乱
も予想されます。政府とし ては、これに対してどのような対応を図っていかれるつもりですか。
高木賢
65
○
高木
(賢)
政府委員
今回の
改正案
におきます
自家増殖
の
取り扱い
につきましては、
我が国
の
自家増殖
の現状あるいは実態に即したものというふうに考えておりまして、事柄としては
農業生産
現場へ特段の
混乱
をもたらすという性質のものではないというふうに考えております。 しかしながら、
制度
についての理解が行き届きませんと、いろいろと御心配も生ずるわけでございますので、やはりその周知徹底ということが
制度
の円滑な
運営
を担保するためには必要なことであろうと思います。したがいまして、法律が成立いたしましても、施行までの間に半年ぐらいは周知
期間
を設けなくてはならないのではないかと思います。その間に、
改正
内容
につきまして説明会を開催するとか、その他
関係者
の求めに応じてお話し申し上げるとか、周知徹底に相努めるということが
一つ
でございます。 それから、予算
措置
といたしましても、講習会の開催とか、
権利侵害
の未然防止などに関しましてマニュアルを
作成
する、こういう事業を
平成
十年度予算で計上してございます。この予算を早期適正に活用いたしまして、現場で
混乱
を生じないようにPRを適正に行っていくということに努めたいと考えております。 〔
委員長
退席、鈴木(俊)
委員長
代理着席〕
菅原喜重郎
66
○菅原
委員
何しろ、今回の法律は知的
権利
と同様の
保護
をなしていこうとしているものでありまして、やはり
日本
の農家も、近代化社会、国際化社会に対応するには意識の改革も必要でございますので、ひとつよきPR、指導を再度お願いする次第でございます。 次に、優良な新
品種
の開発普及は、今後の
農業生産
、
発展
にとって不可欠と考えます。このためには、今回の
種苗法
改正
などの環境整備を行うほか、国等が中心となって
育種
を積極的に進めるとともに、
育種
を進める上で不可欠な遺伝資源を確保していくことが極めて重要と考えます。 種子
法改正
の際にも質問しましたが、今回の
種苗法
審議に当たって、このことの一層の
重要性
、
充実
の
必要性
を痛感しますので、この農林水産ジーンバンクについて、どのような方策をその後検討されているのか、まず質問いたします。
三輪睿太郎
67
○三輪
政府委員
御
指摘
のように、遺伝資源を保全し、これを作物
育種
に活用することは重要であり、
農林水産省
としても、全国各地の
試験研究機関
、それに
種苗管理センター
等の行政
機関
を加えた全省的な体制の
もと
で、農林水産ジーンバンク事業を実施しております。現在、作物
育種
の基礎となります
植物
遺伝資源は約二十一万点を保有するに至っております。 これらの遺伝資源は、単に長期保存をして将来の
育種
に備えるということもありますが、何よりも現在の
育種
の現場に円滑に受け渡されることが重要と考えております。このため、こうした遺伝資源の配布体制を整備するとともに、個々の遺伝資源の持つ基礎的な
特性
に関する情報、こういったものをインターネット等を通じて広く提供しているところでございます。 このような遺伝資源確保の
重要性
にかんがみまして、今後とも農林水産ジーンバンク事業の
充実
を図ってまいりたいと考えております。
菅原喜重郎
68
○菅原
委員
ジーンバンクについては、何といいましてもお金のかかることでございますので、やはり予算の確保は、これは
大臣
によろしくとお願いしておくほかはないわけですので、ひとつこのことは重点的な政策の
一つ
に入れて、促進していくように要望しておきます。
我が国
では、地域地域で農民、個人
育種
家などにより多様な
品種
が
育種
されてまいりました。しかし、近年、このような地域
品種
は次第に減少してきていることが
指摘
されております。実際、私たちがかつて食してきた野性味のある野菜などを買おうとしても、どこにも売っておらないのも現状でございます。私の知っているハウス農家を経営している方が、かつての香りの高い、辛みのあるカラシナを今、昔あったのだからと思って探して探したのだけれども、ついに私たちの県南地方で見出しかねている、こういうことを痛切に私に訴えてもきました。 それで、国として、このような地域
品種
の保存、
育種
家への配布をもっと積極的に行うべきでないか。これはジーンバンクに関連することでございますが、これについてはどのようにお考えでありますか、お伺いします。
三輪睿太郎
69
○三輪
政府委員
御
指摘
のように、地域
品種
といいますか在来
品種
、こういった
我が国
固有の遺伝資源を確保すること、これは
海外
から導入するということに劣らず重要と考えております。在来
品種
につきましては、ただいまの御
指摘
もございましたように失われてしまうということがございますので、その前に収集することが大変重要でございます。
農林水産省
としましては、国内の遺伝資源の探索、収集、これにつきまして、毎年度
対象
作物を定めて計画的に取り組んでおります。ちなみに、
平成
九年度は豆類を中心に約三百点を収集いたしました。こうして収集した在来
品種
につきましては、
育種
家等の要請に対応して配布できるような体制を整えております。
菅原喜重郎
70
○菅原
委員
滅びていく
品種
を保存するということは、これは近代国家の大きな使命でもございますので、本当にこの点には力を入れていっていただきたいと思うわけでございます。 次に、
大臣
にお伺いしますが、
我が国
は
植物
の遺伝子組み換え技術や遺伝資源の保存などの分野で、アメリカなどに相当おくれをとっていると思いますが、今後どのような
育種
振興
施策をとっていかれるおつもりなのですか。
島村宜伸
71
○
島村国務大臣
お答え
いたします。 作物
育種
は、
農業
の
生産
性の向上や農作物の品質向上に重要な役割を果たしているところであります。一方で、
育種
は、その成果を生み出すまでに長
期間
を要することから、計画的な取り組みが重要であります。 このため、
農林水産省
といたしましては、作物
育種
推進基本計画を
策定
しておるところでありまして、今回、この
法改正
を踏まえて、新しい
種苗法
の普及や円滑な運用に努めますとともに、同計画を踏まえつつ、まず、国の
試験研究機関
による
品種
開発及び都道府県や民間
機関
による
育種技術
開発に対する支援や共同研究の推進を行っていくこと、第二にはジーンバンク事業による遺伝資源の収集、提供等に意を注ぐこと、第三にイネゲノム研究等先端研究を通じた優良遺伝子の確保等により、
育種
の一層の
振興
を図り、米国などにも十分対抗できるようにしていきたい、こう考えておるところでございます。
菅原喜重郎
72
○菅原
委員
新
品種登録制度
の運用に当たって、
育成者
が丹精を込めて開発した新
品種
については、国として速やかに
審査
し、要件を満たすものを遅滞なく
品種登録
することが重要であることは言うまでもありません。 最近の
品種登録
の
状況
を見ると、ハイテク技術の
進展
等を背景として
出願
件数が増大し、
平成
八年度で千二十七件と、十年前の約三倍にも上っております。さらに、新法では
保護
植物
が、栽培される
植物
のすべてが
対象
となることから、今までのテンポ以上に
出願
数がふえていくものと予想されます。 このような
状況
の
もと
で、
審査
体制の
充実
、
審査
の
効率化
などにより的確な
審査
を行っていくことが重要でありますので、行政手続法に基づく本
品種登録制度
の標準処理
期間
は三年と聞いておりますが、現在、実際にはどの程度の
期間
となっているのでしょうか。また、そのように
審査
期間
が延びている要因は何ですか、お伺いします。
高木賢
73
○
高木
(賢)
政府委員
近年の
審査
期間
でございますが、
平成
九年度には四・一年ということでございます。 その原因ですが、
出願者
が
審査
に必要な資料を長
期間
提出しないという、
出願者
側に原因がある場合も一部ありますけれども、主として言えば、草花を中心に
出願
件数が増大している、こういう事情であるということでございます。
菅原喜重郎
74
○菅原
委員
バブル崩壊前、一時、
日本
にやってくる
外国
人の数が急増いたしました。その際、出入国関係の手続で、全く
日本
の対応が人手不足でおくれたことがございます。これはもう国際的に恥ずかしいぐらいに思われたわけでございますが、それと同じように、今回もこの
審査
期間
の延伸
状況
に対して本当に国がしっかり対応できていくのか、このことについて今後の対処いかんということで質問させていただきます。
高木賢
75
○
高木
(賢)
政府委員
審査
の
迅速化
ということでやらなければならないと思います。したがいまして、
審査
体制を総合的に
強化
しなければいけないわけですが、まずその柱は、やはり何といっても
審査
官の増員ということであると思います。 それから、
栽培試験
がこの
植物
の新
品種
の
保護
制度
の場合重要な核をなしておりますので、
種苗管理センター
の
栽培試験
の実施体制を
強化
するということが二番目の柱だと思います。 それから三番目に、新しいいろいろな
植物
に関する
出願
に対応いたしまして、
出願者
とか
外国
審査機関
から
データ
の提供を受けて、より簡便な
審査基準
を
策定
し、これを実施するという
審査
の
効率化
ということが三番目のポイントかと思います。 こういったことを総合的に講じて、より迅速で適切な
審査
ということで対応してまいりたいと考えております。
菅原喜重郎
76
○菅原
委員
最後に
大臣
にお伺いしますが、今回の
法改正
により、
出願
件数の一層の増加が予想されますので、
審査
の
効率化
、促進を図っていく必要があると思います。他方、行政改革時期とはいえ、このように業務が増大している部門では、迅速かつ的確な
審査
のため、
審査
官の増員など
審査
体制の
充実
を図っていくことが大切であります。この件について
大臣
の所見をお伺いし、質問を終わりたいと思います。 〔鈴木(俊)
委員長
代理退席、
委員長
着席〕
島村宜伸
77
○
島村国務大臣
新
品種
の
出願
に対しましては、的確かつ迅速な
審査
を行うこと、これこそまさに
品種登録制度
の
運営
のかなめをなすものであると認識しております。
審査
の
迅速化
につきましては、ただいま局長からも御答弁申し上げたとおり、
審査
官の増員などの最近の体制整備によりまして
効果
があらわれてきていると認識しております。また、
法改正
による
出願
数の増大が見込まれる
状況
の
もと
で、
審査
を適正かつ迅速に行うことは極めて重要な課題であると考えております。 したがいまして、今回の
法改正
を契機に、
審査
の
効率化
、合理化と必要な体制の整備
充実
につきまして、十分意を用いていく所存であります。
菅原喜重郎
78
○菅原
委員
以上で終わります。
北村直人
79
○
北村委員長
以上で
菅原喜重郎
君の
質疑
は終わりました。 次に、
中林よし子
さん。
中林よし子
80
○中林
委員
今回の
法改正
は、
植物
品種育成者
の
権利
を
強化
して
育種
振興
の基盤
強化
を図るもので、必要かつ妥当なものだと考えております。 農水省の資料によれば、
品種登録
した
育成者
の内訳は、個人が三一・六%、企業五〇・〇%、農協二・四%、都道府県一〇・八%、国五・二%となっています。企業では、野菜でタキイ
種苗
、サカタのタネが代表的な会社で、市場
流通
のかなりの部分を占めていると言われております。
海外
でも、農薬会社が
種苗
会社を買い占めるなどの企業の寡占化が目立っていると
指摘
されています。
我が国
でも、近年のバイオテクノロジー等先端技術の
利用
進展
により、この傾向はますます強まるとも推測されます。
日本
共産党は、
権利
が企業にあるからといってこれを否定するものではありません。その技術力を
植物
育成
や
農業生産
に生かすという立場に立つものですが、同時に、寡占化が
進展
することによって、
種苗法
の目的である「
品種
の
育成
の
振興
と
種苗
の
流通
の
適正化
を図り、もって
農林水産業
の
発展
に寄与すること」、とりわけ
流通
の
適正化
が阻害されるような事態は避けなければならないと考えております。 個人の
育成者
が三一・六%と大変大きな役割を担っているわけです。私自身、島根で、白カブの
登録
を持っておられる方のお話を聞いたわけですけれども、この新種をつくり出すまでに三十年かかった、生活の大半は
育成
のために費やしていると、苦労話を語ってくださいました。企業の寡占化によってこうした個人の
育成者
の人たちの苦労が損なわれることがないようにすべきだと考えますが、
大臣
はこの点でどのようにお考えでしょうか。
島村宜伸
81
○
島村国務大臣
個人による
育種
につきましては、近年、年間の
出願
件数が二百件以上と、引き続き活発に取り組まれております。特に花あるいは野菜、果樹等の
育種
では、
種苗
会社の
育成
品種
と比べて遜色のない、特色ある新
品種
が
育成
されております。
改正種苗法
案は、このような個人の
育成者
の
権利
も他と全く平等に
充実
、
保護
するものでありまして、特に、みずから新
品種
を商品化する資力を持たない個人でも、
種苗
会社に
利用
権を
設定
することにより、
育成者
の成果を普及させることを可能とする
制度
を導入することとしております。このように、今回の
改正案
は、企業による
育種
の寡占化につながるものとは考えておりません。 また、
我が国
農業
の多様性にかんがみれば、新
品種
の
育成
におきまして個人
育種
家の果たす役割は今後も変わらず重要であると考えております。このため、国、県等の
試験研究機関
等による
育種技術
の開発普及、あるいはジーンバンク事業を通じた
育種
素材の提供等の
育種
支援策を講じてまいる考えであります。
中林よし子
82
○中林
委員
本
法案
では新たに
従属品種
という概念を導入されているわけですが、一部を変化させて
育成
された
登録品種
の
育成者権
の、そこにも
効力
が及ぶものになるわけですが、この一部の
範囲
をどうとるかというのが大変問題です。 この点で、
従属品種
の関係では、国際的にも議論になって、ガイドラインの
設定
の試みもされましたけれども、議論が煮詰まらなかったというふうに聞いています。結局、当事者同士の話し合いにゆだねることになったと聞いているわけですが、こうなると、力の強い企業が
従属品種
の
範囲
を大きく解釈して別の
育成者
の開発した
品種
に
権利
行使の圧力をかけるなど、
権利
の乱用が起こらないようにする、そういう歯どめのためのルールづくりが早急に求められていると思うのですけれども、この点について、どのようなスケジュールでガイドラインなりそういうものをおつくりになっていく考えなのか、
お答え
いただきたいと思います。
高木賢
83
○
高木
(賢)
政府委員
従属品種
というものの概念ははっきりしておりまして、ある
品種
のわずかな
特性
を変化させて
育成
された
品種
で、変化した
特性
以外は
もと
の
品種
の
特性
をそのまま維持しているものということでございます。 これにつきましては、
従属品種
になるものの
出願
がありましたときには、
登録
されるということになりますと、
登録
された
品種
の
育成
に関する資料とか
特性
を公表することになっております。したがいまして、これらの客観的資料を
もと
に、法で定める、ただいま申し上げた概念を充足するか、あるいは、どの程度
もと
の
品種
に依存しているかということは、当事者間で判定、確認できると思います。 ただ、そうはいっても、お話のように、まだ事例も少なく、あるいは、ガイドラインをつくるということではなくて、当事者間で
決定
されるべきである、こういうところが現
段階
でございます。 したがいまして、
農林水産省
といたしましては、そういった客観的資料で判定可能とは思っておりますが、なお国外を含めました事例を収集し、それを集積する、一種、判例を積み上げるようなものだと存じますけれども、そういうことで情報を提供し、
関係者
間の円満な関係の形成に努めてまいりたいと考えております。
中林よし子
84
○中林
委員
さらに
従属品種
の問題でお聞きするわけですけれども、親と子といいましょうか、二者の
育成者
の
権利
、
許諾
料について、
許諾
料の分 配、これはどのようにして決めていくのか。親から生まれた新しい
品種
と、双方に
許諾
料を払うことによって価格がはね上がらないか、こういう心配があるわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
高木賢
85
○
高木
(賢)
政府委員
一般的に申し上げまして、
種苗
の価格は売り手と買い手の間で決まるわけですけれども、販売価格がその
効果
に見合わないというごとであるとすれば、それは、その
種苗
は
農業者
に選択されない、別の
種苗
を用いる、こういうことになりますので、価格がその価値以上に上がるということは極めて考えにくいと存じます。これは、その
品種
が
従属品種
であっても全く同様の事情にあるというふうに考えられます。
種苗
の
利用
によって得られる
利益
、
許諾
料の配分についてでありますけれども、その場合には、二人の
権利者
の間で、要するに、
もと
の
品種
の持っている
特性
の価値がどの程度かということで、それが高ければ、
もと
の
品種
の
育成者
の取り分が多くなるということで、これはなかなか一概に、七対三だとか六対四だとかということは、非常に個別性が強いものですから、言いがたいというふうに思っておりますが、いずれにしても、寄与割合といいますか、そういうもので分配されるというふうに考えております。
中林よし子
86
○中林
委員
次に、仮
保護
制度
の導入についてお伺いするわけですけれども、これは
育成者
からは大変喜ばれる
制度
だというふうに、直接お話も聞いているのですが、これに伴った具体的な悩みも出てきております。
一つ
は、
出願
内容
の公表、周知徹底、これはどのようにされるのかという問題。 それから、先ほどの同僚議員の質問でも出ておりましたけれども、仮
保護
制度
の導入によって、申請のときに、もう
登録
される名称をつけておかなければならないということになるわけです。今までは、県の試験場などは、特産にしたいときなどは、広く愛称になる名称を一般公募してきたということで、かなりよい名前をつけてきた経緯があるわけですけれども、これなどはどういうぐあいに対応していけばいいとなるのでしょうか。
高木賢
87
○
高木
(賢)
政府委員
まず、
出願
の公表でございますが、官報に
出願者
の氏名とか住所とか
農林水産植物
の
種類
、
品種
名などを告示して行う考えでございます。官報だけでは不親切でございますので、その情報につきましては、印刷物を
作成
して関係
機関
や団体へ配布する、さらにはインターネットによっても提供して、
利用者
に広く周知を図るというふうに考えております。 次に、仮
保護
制度
との
調和
の問題でございます。 仮
保護
制度
というものの趣旨を貫徹するということになりますと、その
期間
におきまして
品種
の名称が自由に変更されるということですと、これは
保護
の
対象
が何であるかということにつきまして、
流通
あるいは
生産
現場に
混乱
を生じかねない。したがって、
出願
された名称を自己の都合で変更するということは認めておらないわけであります。 しかしながら、
改正種苗法
案では、これまで譲渡していると認めないとしていた要件を緩和いたしまして、未譲渡性の要件を緩和いたしまして、
出願
の一年前までは譲渡したものも認められるということになっております。
出願
の一年前までの
期間
内に、試験販売するなり試験供与するなり、見ていただいた上で、名称の公募を行って、そして
出願
するということが可能でありまして、これが両者の
調和
点であるというふうに思いますので、関係の方々によく御理解を賜って御活用いただくということにしたいと思います。
中林よし子
88
○中林
委員
条約
で二重
保護
禁止規定が削除されて、
各国
の裁量に任せられることになって、
育成者
が
特許
取得できる可能性が非常に大きくなったわけです。今までは、
特許
の方は余りなかったというふうにお聞きしているわけですけれども、今後、バイオ技術の
進展
あるいは遺伝子組み換えで開発されたものについて、その技術とあわせて、当該技術を組み込んだ
品種
そのものも
特許
になる可能性もある、そういうふうに考えるわけです。その際、
育成者
がどちらの法律によって
保護
を求めるか、また両方の申請をするのか、
特許
と
種苗法
の
品種登録
双方が適用されることもなしとは言えないというふうに思うわけです。 その場合、
特許
権は農家の
自家増殖
にも及ぶことになると思うのですね。そうすると、
農業生産
への
利用
が不自由となって
混乱
が生じるおそれも否定できないというふうに思うわけですが、この点について
特許
庁はどのようにお考えなのか、それからまた、農水省はどのようにお考えなのか、それぞれ御見解をお聞きしたいと思います。
山本雅史
89
○山本説明員
お答え
申し上げます。
特許
権の
効力
の
範囲
につきましては、最終的には司法の場で判断される問題でございますけれども、今、
特許
権の
効力
が
自家増殖
に及ぶかどうかということにつきましては、
特許
権者の方で、
種苗
の販売に当たって特に
自家増殖
を制限するというような旨の特段の意思表示を行わない場合には、逆に
許諾
があったものとみなされる、こういう解釈が
特許
法の方では一般的に行われておるわけでございます。 すなわち、
特許
権は、論理的には
自家増殖
に及ぶということになりますけれども、実際には、
自家増殖
を行っておられるというような農家の伝統あるいは習慣が尊重されるというふうに考えておりまして、実際の場面において問題が生じることはないんじゃないかというふうに考えておるところでございます。
高木賢
90
○
高木
(賢)
政府委員
農家の
自家増殖
につきましては、
特許
権者が
種苗
の販売に当たって
自家増殖
を制限するという旨の特段の意思表示を行わなければ、
許諾
があったものとみなされるということが、
特許
法の解釈として一般的であると、ただいま
特許
庁の方の御答弁がありましたが、私どももそのように考えておりまして、実際の現場で問題は生じないものと考えております。
中林よし子
91
○中林
委員
次に、今後バイオテクノロジーや遺伝子組み換えなどでさまざまな
品種
が生まれてくることが予想される件について、ちょっとお聞きしたいと思うのですが、特に遺伝子組み換えの安全面の懸念がいろいろな形で出されております。 そこで、
種苗
について、この点はどういうふうに表示をされるのかということが一点です。 それから、
大臣
にぜひ
お答え
いただきたいのですけれども、実は、昨年、我が党の藤田スミ議員がこの
委員会
で、遺伝子組み換え食品の表示の問題を
大臣
に要求したところ、当時の藤本
大臣
が検討を約束されて、そして昨年五月三十日に、食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会が設置され、遺伝子組み換え食品の
流通
実態を踏まえた表示のあり方を検討することを開始されたわけです。それから約一年が
経過
しようとしているんですけれども、いまだ、動きが私たちのところに伝わってきません。 しかし、今マスコミでも、表示は急げ、こういう論調になってきておりますし、それから、全国の地方議会なんですけれども、これは五月六日時点で、表示をすべきという
意見
書が九百十三自治体、それから消費者団体の要望書が二百二十八団体、署名が五十万人。ちなみに、厚生省に対しても実は
意見
書が出ておりまして、全国の地方自治体から、千四十二自治体から出てきております。 これは、新しい法律をつくらなくてもできるということでございますので、
大臣
の判断でできるはずだというふうに思うんですが、表示は直ちにやるべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。
島村宜伸
92
○
島村国務大臣
お答え
いたします。 遺伝子組み換え食品につきましては、一昨年、厚生省により、大豆、菜種等の安全性が確認され、市場
流通
が現実のものとなったことから、消費者等から、遺伝子組み換え食品であることの表示を求める声が高まっていることは承知をいたしております。 一方、遺伝子組み換え
農産物
につきましては、従来の
農産物
と実質的に同じものである場合には区別が困難なことから、表示を行うためには、生 産から
流通
の各
段階
において
区分
する必要があること、また、加工食品におきましては、すべての原材料について
もと
の
農産物
の素性にまでさかのぼることは極めて困難なことなどから、表示に関しては多くの問題が介在しているところであります。 このため、
農林水産省
といたしましては、昨年五月より食品表示問題懇談会を開催いたしまして、遺伝子組み換え食品の
流通
実態を踏まえた表示のあり方について検討を願っており、この検討結果を踏まえ適切に対処していくこととしております。 なお、これを
大臣
の権限で迅速に進めろ、こういう御要望でありますが、まず、本懇談会では、昨年五月から既に八回開催いたしておりまして、遺伝子組み換え食品の表示のあり方について、広く有識者、
関係者
からヒアリングを行うとともに、消費者の要望や
生産
、
流通
の実態、コーデックス
委員会
の検討
状況
、諸
外国
、すなわちEUなどの取り組み事例等を踏まえつつ議論を進めておるところであります。現在は、これまでの議論を踏まえて論点を整理しつつある
段階
でありまして、今後、
一定
の議論の集約が可能な
段階
で取りまとめを行っていただくこととしております。
高木賢
93
○
高木
(賢)
政府委員
種苗
の場合につきましては、例えば
種苗
が除草剤耐性の機能を持っている、そういう遺伝子組み換え技術を用いた
種苗
である、こういう情報は、それを購入、
利用
しようとする
農業者
にとっては
決定
的に重要な要素であります。むしろ、販売する人の意識におきましては、セールスポイントだということで積極的に表示を行っているのが実態であると思います。この点、食品の表示の問題とは全く
状況
が異なっているというふうに考えておりまして、現
段階
におきましては、
種苗
について表示義務を課するというところまでの必要はないと考えております。
中林よし子
94
○中林
委員
大臣
の御答弁で、もう一年かかっているわけですね。これだけ煮詰まってもきておりますので、あえて、きょうはその話ではありませんので御要望しておきますけれども、早急に表示をしていただくように要求をしておきます。 最後の質問になりますけれども、
品種登録
出願
件数が年々増加して、未処理の件数がかなりふえてきているということが先ほどから随分論議になっております。 私、農水省の方に聞きましたら、それを
審査
する
審査
官が現在十三人いらっしゃって、その内訳を聞いたら、分野別に見ますと、草花が十人、野菜が一人、果樹が一人、それから麦や米、大豆などが一人ということで、草花の十人はそれぞれ兼務もあるんだ、こういうお話でしたけれども、やはりいかにも少ないというふうに思いました。 しかも、年々
品種登録
件数がふえておりますから、一人の
審査
官の扱い件数ですけれども、これが膨大になっているということです。一九八八年、一人扱い件数が三十三件だったんですけれども、去年、九七年は六十四・九件になっている。確かにコンピューターの導入などで処理件数はふえたといっても、二倍近くになっているというのは、やはり労働
強化
になっているんじゃないかなというふうにも思えるわけです。 ですから、どうしても、ことし三人ふやすんだという答弁が先ほどからいろいろありましたけれども、やはりこれから
登録
件数がふえてくることにかんがみれば、もっともっと
審査
官はふやす必要があるのではないかというふうに思います。 最後に
大臣
にぜひ御答弁をいただきたいと思うんですけれども、
育成者
の方あるいは試験場の方から切実な声として、
農業者
や国民が求めていることに心を砕いて新種の開発に心がけても、申請から
登録
まで年数がかかり過ぎると時期を失することがある、開発までにかなりの年数をかけているので、ぜひ
審査
期間
は短くしてほしい、こういう要望です。 本
改正案
の趣旨と重大な意義を踏まえて、検査官等の増員について抜本的な対策をとり、
審査
期間
の短縮と未処理件数の一掃を図る必要があるというふうに思うのですけれども、
大臣
の御見解はいかがでしょうか。
島村宜伸
95
○
島村国務大臣
新
品種
の
出願
に対しまして的確かつ迅速な
審査
を行うことは、
品種登録制度
の
運営
のかなめである、こう認識しております。 そういう意味で、
審査
の
迅速化
につきましては、
審査
官の増員を図るなどいろいろ配慮しているところでございますし、最近それなりの
効果
が出ていると報告を受けておりますが、さらに、今後
出願
件数の増大等も予測されることから、これらに十分対応していけるような体制の整備に努めていきたい、こう考えます。
中林よし子
96
○中林
委員
以上で終わります。
北村直人
97
○
北村委員長
以上で
中林よし子
さんの
質疑
は終わりました。 次に、前島秀行君。
前島秀行
98
○前島
委員
二、三質問いたします。 今度の
法改正
が
保護対象
の
拡大
あるいは
育成者
の
権利
の
強化
ということでありますから、当然歓迎すべきことでありますが、同時に、このことが
農林水産業
の
振興
発展
に結びつかなくてはいかぬということは、皆さんの御主張はそのとおりだろうと思うし、同時にまた、最近特に観賞草花の
拡大
あるいは人気ということを考えると、消費者という概念、消費者の側ということも非常に大切な視点ではないだろうかな、私はこういうふうに思います。 片っ方で、
育成者
あるいは
専用利用権
者等の
保護
、
権利
を
拡大
していきますと、いわゆる
農業者
との調整というのは、
自家増殖
を認めるという形で
一定
の調整ができますけれども、結果的に、最終的な消費者の側の不
利益
というものも心配されなくはない。特に
流通
段階
におけるさまざまな
行為
といいましょうか、円滑に行われるのか、あるいは公平が確保されているのかということも大切なことだろうと私は思います。 そういう面で、今回の
法改正
、すなわち
対象
の
拡大
、
育成者
の
権利
の
拡大
が、
農業者
との調整もさることながら、消費者にとっても
利益
になるように、あるいは不
利益
をこうむらないように、とりわけ
流通
段階
における公平という観点も重視しなくてはいかぬのではないだろうか、そんな心配をいたします。 そういう面で、その辺のところの受けとめ方と対応についてどうするのか、ひとつ
考え方
をお聞かせいただきたい。
高木賢
99
○
高木
(賢)
政府委員
今回の
種苗法
の
改正案
は、
育種
の
振興
を目的としたものでございまして、新たな
品種
が開発されますと、それが
農業者
の
品種
選択の自由度を増したり、また、その結果できます
農産物
の
種類
が多種多様になりまして、消費者の
利益
にもかなうというふうにつながっていくであろうというふうに思います。 その場合に、
登録品種
が
農業者
なり消費者に広く
利用
される、あるいは消費されていかなければ、これは意味がないわけでございまして、そういった方に活用されていくようにしていかなければならないというのは御
指摘
のとおりだと思います。ただ、現実の問題といたしまして、競争の
状況
にもよるわけでございますが、非
登録品種
を含めまして、ほかの代替
品種
が多数
流通
しているというのが
我が国
の
状況
でございますから、
流通
の
段階
で
育成者権者
が
権利
を不当に乱用して、新
品種
の
利用
を制限するとか、不当に高く値段をつり上げて
利益
を得るということは、
我が国
の実態からするとそうそうはないのではないかというふうには見ております。しかし、もちろんその可能性がないということを言えるわけではありません。そのおそれに対しては適切に対処しなければならないということは御
指摘
のとおりだと思います。 そこで、そういう仕組みとしましては、この
種苗法案
の二十八条に裁定
制度
というものがありまして、
登録品種
の
利用
を行わないでいる場合、あるいは、需要があるのにもかかわらず二年以上
利用
がされていない場合とか公益上必要な場合、こういう場合につきましては、裁定
制度
で、
育成者権者
の意思にかかわらず、裁定によって通常
利用
権を
設定
できる、こういう
制度
がございますので、これの積極的活用によりまして、何といいま すか、活用渋りというのがあるとすればそれに対処する。 それから、不当な取引制限なり不公正な取引方法ということでありますれば、これは独占禁止法に触れる問題でありますので、積極的にこの運用をして対処したい、このように考えております。
前島秀行
100
○前島
委員
流通
段階
の公平ということは、ぜひいろいろ配慮していただきたいと思います。 それから次に、
育成者
の権限が侵害された場合の対応なんですが、三十三条で差しとめ
請求
ができる、あるいは予防
請求
ができるということになっているのでありますが、恐らくその辺のところの争いとなるのは、先ほどから議論になっている
自家増殖
だとか栄養繁殖だとか、あるいは従属関係等々の見方といいましょうか、判断の仕方だろうと。これは私なかなか正直言って、理屈では言うけれども、実態的には難しい側面があるのではないだろうかなと。それを裁判でとか、あるいは法律的に、こうなってくると、私は相当時間もかかるだろうし、あるいは経費的にもかかると。それで、結果として
育成者
が
権利
の侵害に対して十分な対抗ができないという事態が現実に想定されるような気がします。 そういうことを考えますと、やはり三十三条に基づいて、最終的にはそういう法的
措置
というのは保障されているのだが、日常的、現実的に、やはりそこのところをお互いに調整し合うといいましょうか、あるいは自主管理し合うとかというものがあることの方が、結果において、現実的には
育成者
の
権利
を
保護
していくような道になるのではないだろうかなというふうにも思ったりするわけであります。 そういう面で、三十三条の法的対応もありますけれども、日常的にといいましょうか、通常の利害の調整というふうなものをどう考えていくのか。何か
機関
的なもの、あるいは行政指導的なものを考えているのか、その辺のところの
考え方
をお聞かせいただきたいと思います。
高木賢
101
○
高木
(賢)
政府委員
育成者権
行使にかかわる問題につきましては、御
指摘
のとおり、当事者間で調整がつかない場合には、最終的には司法の判断にゆだねる、こういうことになるわけでございます。 しかしながら、当事者間で話し合って何とか解決が可能であるという限りは、それによることが好ましいものと考えております。したがいまして、今年度予算に計上いたしまして、紛争の当事者によります円滑な解決の指針となるマニュアル、この
作成
を進めたいと思います。 どういう
内容
かといいますと、
権利
行使あるいは
権利侵害
の未然防止、あるいは
権利侵害
に対する解決方法というものに関しましてのマニュアルづくりでございます。いろいろ、本当に難しい問題が多々ありまして、どの程度の精度に上がるかというのはいろいろな事例を積み重ねなければならない部分もございますが、
関係者
の
意見
も十分聞いて、できるだけ精度を上げていきたいと考えております。
前島秀行
102
○前島
委員
先ほどバイオテクノロジー、とりわけ遺伝子組み換えの安全性の問題について御議論がありました。時間がありませんから聞きませんけれども、私も、やはりここはいろいろ対応が求められているような気がいたします。今後のいろいろなことを想定しますと、このバイオの研究ということは必要でしょう。
種苗
の世界でも必要でしょうけれども、やはり国民の側から見ると、安全性について、まだ
一定
の不安があることは事実だろうと思います。それを単に表示というだけで対処するのではなくして、安全性そのものについて、やはりまだまだ議論が必要ではないだろうかな、そういう点もあろうと思いますので、その点について、ぜひ今後もやはり農林省としても検討を重ねてほしいなという要望を述べておきます。 最後に、
大臣
に伺います。やはりこの
種苗
産業の世界もなかなか厳しい側面があって、
輸入
の方が増加、輸出はどちらかというと横ばい、減少の傾向があるというふうな点も数字的に出ているようであります。また、
種苗
というのは
農業
にとっての基本的な資材でもあるし、非常に重要な産業と位置づけなければならぬだろうなとも思っています。そういう面で、この
種苗
産業を今後どういうふうにしていこうとするのか、この辺のところの考えをお聞かせいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
島村宜伸
103
○
島村国務大臣
お答え
いたします。
我が国
の
種苗
産業は、その
育種技術
が高く評価されている野菜や花卉の分野を初めといたしまして活発な事業を展開しており、優良な
種苗
の供給を通じて
農林水産業
の
発展
にも大きく貢献しているところであります。 この
種苗
産業の
振興
を図ることは、
農業生産
の
発展
を図る上でも重要なことでありまして、このため、遺伝資源の収集、提供、あるいはまたバイオテクノロジー等先端技術を応用した産業技術開発に対する助成
措置
、そして国立
試験研究機関
における共同研究の推進等の施策を講じ、
種苗
産業の
振興
を図っているところであります。
我が国
種苗
産業が優良
種苗
の供給という役割を果たしていけるよう、今後も適切な支援
措置
を講じていく所存であります。 以上であります。
前島秀行
104
○前島
委員
終わります。
北村直人
105
○
北村委員長
これにて本案に対する
質疑
は終局いたしました。 —————————————
北村直人
106
○
北村委員長
これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。 本案に賛成の諸君の起立を求めます。 〔賛成者起立〕
北村直人
107
○
北村委員長
起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。 お諮りいたします。 ただいま議決いたしました法律案の
委員会
報告書の
作成
につきましては、
委員長
に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。 〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
北村直人
108
○
北村委員長
御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。 ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕 —————————————
北村直人
109
○
北村委員長
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後零時二十八分散会