○宮地
委員 この点については、また
大臣のいらっしゃるときにいろいろ
議論したいと思います。
きょうは限られた少ない時間でございますから端的にお伺いしてまいりますが、先日、JAでも、今、
畜産酪農家が一番困っていることは何か、こういうことで
調査をされたようであります。
こうした
調査の中で、一番困っているのは
ふん尿処理の問題である。
二番目に困っているのはいわゆる
労働過重の問題である。特に、この
労働過重については、平均二千三百時間、大変な
労働時間。日曜日も休みもなく、大変な御苦労をしておる。ヘルパーを使っても、月に二日ぐらい使えるかどうか、使えばお一人二万円かかる。大変な
労働過重です。今ILOなどでは千五百時間ぐらいにしようということで、連合を初め勤労者の皆さんにおいても、千八百時間を切って千五百時間に向けて大変な努力をしている。しかし、いまだに二千三百時間、もう大変な
過重労働。
また、
負債問題。金融業界等、不良債権を抱えて、国からの大変な、金融機関に対しては預金保険機構を初め金融システムの安定化などといって、今回三十兆円に上るいわゆる公的資金の導入も行われているさなか、まさにこの
酪農家の
負債問題というのも大変な問題である。特に、
平成三年の牛肉の自由化以降、大変な設備
投資を初め政府の方針に沿ってやってきた
酪農家は、今、
負債を抱えて火だるまの実態であります。私も、牛肉自由化の直後、北海道羊蹄山のふもとで行ってい
る
酪農家の方を激励に行ったこともありますけれども、政府の方針に沿ってやればやるほど
経営は赤字になっている、政府と反対のことをしなければ赤字の解消はできない、こういう悲痛な声を聞いたこともあります。
さらに、
高齢化と
後継者難の問題。
この
四つの大変な問題で今
酪農家は、生産
農家は、
経営の悲痛な叫びを上げているわけであります。
さらに、これから、先ほど申し上げたようなWTOの見直しによって、牛肉も五〇%の関税から二年後は三八・五%まで落ちて、そこで再びそこを見直さなければならない。これは、最大の課題を
我が国は迎えるわけであります。
こうした問題に対して、単に
補助事業だとか補給金制度だとか、ただ財政、金融、税制上のフォローアップ、これだけで解決するのかどうか。私は、今大変難しい実態に生産
農家は置かれていると思うのであります。
例えば、養豚の
経営の場合、
一つの事例でございますけれども、いわゆる堆肥の
施設をつくったり、あるいは浄化の
処理施設をつくりますと、今大体平均四千万円かかる。金利二%でもって借りてもこれは大変な負担なんです。
さらに、百頭の母豚を飼っている例とした場合に、この
処理をする
経費が年間百二十万。年間約二千頭の肉豚を出荷するといたしましても、一頭当たり二千二百円、減価償却あるいは
処理費がかかります。肉豚一頭当たりの所得は大体三千円から六千円ぐらい、こう言われている。これをざっと計算いたしますと、一頭当たり三千円ということで所得があるとすれば六百万ぐらい。六千円としても千二百万ぐらい。大体六百万から千二百万ぐらいの所得といたしましても、先ほど申し上げた
処理費だとか人件費だとか設備
投資の返済費等を引いていくと、もうほとんどの
農家は赤字
経営だ。そういう中で今回政府が答申を受けて
価格を決定していく。
先日私も、乳牛の、埼玉県でも有能なある牧場を視察させていただきました。百五十頭。その方も、埼玉県の中でもトップレベルの牧場です。いい牛を欲しいということで、ブラウンスイスというアメリカの乳牛を一頭百万円で買ってきた。今、幸いにして七頭ぐらいブラウンスイスがふえた。非常にすばらしいお乳を出す。普通の牛は、大体四頭から五頭、四年か五年、それも、お乳を搾るだけ搾って、そして子供を産ませる、牛も大変な
過重労働です。もう
人間以上です。その中でも、ブラウンスイスというのは非常に優秀な牛だということで買ってきた。
それで、立派な牛舎もつくった。あるいは、最近はコンピューターシステムのすばらしいお乳搾り機がある。その設備
投資といったら数億かかる。お乳搾り機だけで七千万ぐらいする。牛がどんどん列をなして行って、何日の何時に一回搾ったら、次は、ちゃんと行ってもだめよとコンピューターで全部インプットされて自動的に、衛生的にもすばらしい。有限会社で、こうした
施設に対しては、利子補給あるいは融資の制度、減価償却という税制上の措置はある。ところが、これは
団体じゃないからということで
補助金の制度はない。
ところが、ちょっと前に来たら、その方は、
生乳だけでなくて、今度はヨーグルトも、来年からはチーズをつくろうと。関越高速道路から車で降りてちょうど十分ぐらいの非常に地の利のいいところです。最近は、観光客も来て、牛を見ながらそこでヨーグルトを食べたり牛乳を飲んだりして、そうした
経営を家族総出で、十人未満の家族でやっておる。
その方でさえ、この設備
投資を返すのに大変な苦労だ。埼玉県は北海道と違いますから、いわゆる近郊
酪農です。観光客に牛を見せたり実際の生産工場を見せることによって情操教育も担って、そうした子供の情操教育にもつながるということで、今埼玉県は近郊
酪農家に大変力を入れている。
私は、こういう実態を見まして、もっともっとやはり農水省が現場の意見を、また現場をしっかり把握して、審議会の答申はそれなりに尊重して結構です、しかし、もっと地についた、新しい時代の新しい
畜産農家の、あるいは
日本の
酪農のあり方について
政策づくりに励んでいただきたい。まさに市場原理の、あるいは競争原理のこういう経済哲学至上主義でこの
酪農問題の
政策づくりをしてはならない。
食糧の安全保障という
観点、あるいは自給率の
向上という
観点、あるいは
日本国民に安心して質のよい食肉なり牛乳を飲んでいただくのだ、そのための哲学と方針を二十一世紀に向けて明確にしていくのだ、裏づけとして法律の中にも、きちっと新
農業基本法の中に
位置づけるのだ、この強い姿勢と方針があってしかるべきだ、私はこう
考えておりますが、政務次官、いかがでございますか。