○奥津
参考人 ただいま御
紹介いただきました奥津と申します。
情報公開法を求める
市民運動というグループをずっと続けてまいりました。私
たちは、与野党の国
会議員を招いてのシンポジウムとかを開催してきましたが、あともう
一つは、各地にある
情報公開条例を私
たち自身が利用し、さらには各地の
市民、
住民に、サポート、アドバイスをやってきました。さらに最近では、各地の
情報公開条例の
制定や改正が相次いでおりまして、そういった動向についてもかなり
情報を収集しまして、
自治体や
市民、そういった人
たちに積極的な
情報提供をやっています。きょうは、主にそうした
条例利用、さらには
情報公開についての
情報センター的な役割を果たしてきたそういう立場から、十五分以内で話をまとめさせていただきたいと思います。
それで、まず第一点でありますけれども、これは、
委員の皆様、さらには
委員長にもお願いであります。それは何かというと、やはり
情報公開法の
審議は、十分な
情報、十分な資料に基づいてやっていただきたいという点です。
先ほども午前の
審議を傍聴させていただきましたけれども、
目的規定の中に、
行政の
監視、
参加というのが欠けている。
要綱案ではずっとその
言葉は入っていたわけですが、最後の最後、
政府提案の中で、
行政の
監視、
参加という極めて重要な
言葉が欠けてしまったわけです。
塩野参考人が言っていましたが、
法制局かまたは
法制を担当なさった方がやったのじゃないかという話なのですが、この
行政の
監視、
参加が一体どういう経緯で変わっていったのか、何ら明らかにされないまま
審議が行われるというのは非常に問題があるというふうに思っております。
特に、この
行政の
監視と
参加がなぜ重要かというと、既に
政府案にも
説明責任が入っておりますが、
行政が
国民に対して
説明責任を負う、それと対の形で、
国民は
行政を
監視、
参加するという形で入っているわけです。ですから、本来は、
説明責任と
行政の
監視、
参加というのがワンセットになっていなければならないのですが、それが、最後の最後、
政府案の策定の過程で削られてしまった。これは大変重要な
言葉であるのですが、全く経緯が不透明であって、これは奇異という以外にないというふうに思っております。
特に、この
行政の
監視と
参加、その
言葉があること、またはないことによって、具体的な
情報公開の
範囲が広くなる、狭くなるということはないかもしれません。しかし、法の目的というのは法の理念をあらわす非常に重要な部分でもありますので、これが、最後の最後、まあプロパガンダ的な言い方をして申しわけないのですが、官僚主導の
法案づくりによって、最後の最後、この
言葉が削られたのだとすれば、これは非常に遺憾であるし、やはり議会の真の役割というのは、そうした官僚主導のゆがみを是正することにあるわけですから、何としてでも、
国会の皆さん方の
審議を通じて、
行政の
監視と
参加という
言葉をぜひ復活していただきたいというふうに思っております。
二点目、十分な
情報が入っていないということについて、それは何かというと、
特殊法人でございます。
政府案は、
特殊法人について別途
検討するということになっているようなのですが、一体、
特殊法人、どこからどこまでが入ってくるのか、また、
救済制度はどのようなものがあるのか、そういったことについて、何ら
国会に
情報や考えが示されないまま
特殊法人の
情報公開の是非を論じても、まあ
意味はないとは言いませんけれども、非常にむなしいところがあると思います。
加えて、これは御存じだと思いますが、
行政管理研究センターというところで、この三月までに諸外国の事例をもとに
特殊法人の
情報公開についてかなり調査
審議をなさってきた。総務庁の
職員の方もそこに
参加なさっていたわけですから、そういった調査研究の結果、三月にもう終わっていて、その間の資料、さらには研究の取りまとめはできているはずですから、国権の最高機関である
国会には当然それが
提出されてしかるべきであるし、そういったものももとにしながら、
特殊法人の
情報公開について、ぜひこれから皆さん方の積極的な議論をお願いしたいというふうに思っております。
ちなみに、これは余計な話でありますが、
行政管理研究センターは
特殊法人ではありません。もちろん、今回の
政府案さらには
野党案が
規定する
行政機関の
範囲にも入っておりません。つまり、これは、
情報公開法ができても、
行政管理研究センターでどんな調査研究をしたのかというのは、だれも
情報公開を求めることができないというところもありますので、これはぜひ
国会の力で、そういった資料を
提出させ、議論をしていただきたいと思っております。
さて、以下、私は、手数料と
裁判管轄さらには文書管理について、
意見を述べさせていただきます。
まず一点目は、手数料であります。
午前中も
高橋参考人の方から具体的な話があったと思いますが、やはりここで繰り返しておきたいのは、手数料は我々
制度を利用する側の人間にとってその利用の妨げになる。これ塗
自治体の経験から明らかなことであります。そこをまず強調しておきたいということです。
さらに、これはまた先ほどの、十分な
情報、資料が出ていないということと関連しますが、例えば
政府案は政令でこれを定めるとなっておりますけれども、一体この
法律が動き出した暁にはどれだけの手数料がかかるのか、何ら示されていないわけですね。あけてみなければわからない、政令にゆだねているわけですから。
国会審議は、では、その辺を踏まえないでよろしいのでしょうか。やはりこれは、
政府案によるならば、政令によって手数料を取るということであれば、一体どういう単位で、またどのくらいの額の手数料を取るのか。
例えばコピー代という非常にささいな話をしましょう。
自治体では今コピー代を十円、というのは、コンビニエンスストアでもコピー代は十円の時代であります、ですから、そういうようなところがふえております。
政府は、一体、このコピー代を幾らになさるおつもりなのですか。
また、
自治体の中ではこういうのがありますね。そのコピー代に人件費を含めて、三十円、四十円にする。これはなぜかというと、コピーをする
職員の手間がかかったので、コピー代の原価に手間賃を乗せて三十円、四十円とする。
政府は果たして、そういう手数料、コピー代を考えているのでしょうか。この辺、全く明らかではない。ぜひこの
審議の中で明らかにしながら、手数料の是非を議論していただきたいというふうに思っております。
さらに、
政府がそういうような形で、手数料について何らまだ今の
段階では具体的な姿を描いていないので、私どもで知っている
範囲の話をさせていただきます。動燃というのがあります。動燃は、実は昨年六月に
情報公開のガイドラインをつくりました。そして、七月一日にそれをスタートさせております。
早速、それに基づいて
市民グループが
情報公開の要求をしたところ、やはり
政府案と同様に、実費の
範囲内での手数料を取るとなっていたために、手数料を要求されました。その額、私どもで知っている
範囲で話をさせていただきますが、実費として、資料内容
検討費という名目で、文書一枚当たり二百円です。一件じゃないですよ、一冊でもないです、一枚当たり二百円です。
その結果、その
市民団体が請求した
情報を見るために一体幾らかかったかというと、何と五十九万七千円です。こんな額を払わなければ
情報公開ができない。動燃は今一生懸命改革を進めているところです。そういうような改革を進めているところですら、こうした実費の
範囲内での手数料というのを、これだけの法外な額を払わされている。もちろん、コピー代は別であります。コピー代は、動燃では一枚三十円で、手数料のほかに別途九万八百四十円かかったというふうに報告されております。
こういつたようなことが、この
法案、
政府案または
野党案ができた暁に起きるようなことがあってはいけないし、
委員の皆さん方には、そういったことを防ぐために、ぜひ熱心な御議論をお願いしたいというふうに思っております。もちろん、動燃は動燃であり、
政府は
政府でありますので、別途の
考え方もあるかもしれません。ただ、少なくとも、現
段階ではどういう手数料かがわかりませんから、過重な負担にならないという保証は全くないということが言えます。
そして次に、三点目に、
裁判管轄の問題の話をしたいと思います。
裁判管轄がなぜ重要なのかというと、これは、先ほど
高橋参考人の方からも話があったと思います。特に
自治体の
情報公開というのは、やはり
裁判を通じてその
範囲を拡大させてきたということであります。今でこそ
官官接待、食糧費の
公開は当たり前のように思われておりますが、十年前はそんなに
公開している
自治体は少なかったのです。
公開の
範囲も狭かったのです。しかし、最高裁が、大阪府の水道部の食糧費をめぐって、全部
公開しろというような
判決を出して以降、
公開が広がっていった。その他のケースも、
裁判を通じて
情報公開が広がってきております。
ですから、国においても、
政府の
職員は慎重に
開示請求について判断し、不当な非
公開はしないと信じたいと思いますけれども、やはり、不当な非
公開、不合理な非
公開があった場合に、
裁判を通じてそれを是正していかなきゃいけないわけです。ところが、今回、
裁判管轄は特別
規定が設けられていないために、地方在住者には相当な負担になる。これは、先ほど
高橋参考人の方から話があったと思います。
そこで、きょう、
委員の皆様方のお手元には、私どもがつくった試算をお配りしております。
裁判管轄によってどんな地域格差が生じるのか。論より証拠でありまして、なおかつ、その資料はちょっと細かいので、ここにパネルを持ってまいりました。
論より証拠というやつでありますが、要するに、
裁判管轄は地方在住者にどういう負担をもたらすのか。これは交通費だけで算定をしております。また、試算の
基準についてまず申し上げておきます。地方
裁判所が、
判決や提訴を含めて十回の期日、高等
裁判所が五回の期日というふうに計算をしました。あとは、
裁判にかかわる人を原告一人、代理人二人、計三人で計算をしました。
これを見ていただけるとおわかりだと思いますが、ベストファイブとしましたが、要するに、安く済む
自治体はどこか。当たり前の話ですね。
東京地方
裁判所、
東京高等裁判所でありますから、新宿区に住んでいる方は、最高裁まで行く間に一万七千百円で足ります。ところが、ワーストファイブ、それの一番、ワーストワンは、那覇市に住んでいる方です。那覇市に住んでいる方が全く同じ条件で
裁判をやった場合、交通費だけで二百八十七万一千円もかかるわけです。これが地域格差でなくて何でしょうか。
こういうようなデータをもとに、ぜひ、先ほども
塩野参考人の方からも話がありました、これはやはり
国会でやる議論の問題です。ですから、これは、ぜひこの格差を是正していただきたい。
さらに余計な話をしておきますが、那覇市から来る方は、これは交通費だけです。つまり、日帰りだけでこれだけかかるということでありまして、その他宿泊費さらには弁護士の日当、そういったものを含めるとすさまじい額の負担を強いられるということになります。
ちなみに、私ども、今回は試算として示しておりませんが、宿泊費や弁護士日当、これは着手金とかは含めておりません、そういったものを含めると、大体、皆さん方にお示ししたデータの一・七倍、つまり那覇市の方は大体五百万円ぐらいないと最高裁まで行けないのです。多分、
東京地方
裁判所に行くまでの間にもう三百万円ぐらい使い果たして、
東京地裁の
判決がどうであれ、もはやもう断念、財布の底がついちゃったということになりかねないですから、ぜひここのところは、こういうデータをもとに議論をしていただきたい。
さらに強調しておきたいのは、こういったデータを選挙民の方にお示しできるでしょうか。特に九州の方は深刻だと思うのですね。いや、うちらは三百万かかるから、まあしょうがない、あきらめてくれやと言えるのかどうか。ぜひそれは有権者の立場に立って、この負担を考えていただきたいというふうに思っております。
時間が迫っておりますので、最後に、四点目、文書管理の問題について、簡単に話をさせていただきます。
これは
政府の方には大変申しわけない言い方になりますけれども、今回の
政府案は、
一つ評価できる点があります。それは何かというと、
施行日以前のもの、つまり
情報公開法がスタートする前の文書も全部
対象にしているということであります。これは多くの
自治体がやっていないことであり、大変評価をしたいというふうに思っているわけですが、問題は、ならばどうなるか。
ある学者がこんなことを言っていました。
日本で
情報公開法ができたときには霞が関から煙が上がるだろう。この煙は何かというと、焚書坑儒というんですか、坑儒はありませんね、焚書ですね、つまり
情報公開したくない資料を処分してしまうんじゃないか。これはあくまでも笑い話でありますけれども、少なくとも、何らかの措置を講じなければ、
情報公開法がスタートするときまでに、こうした重要な文書が捨てられてしまうおそれが十分にあるわけです。
ですから、
情報公開法がスタートする前から、そうした文書管理がきちっと行き届くように、ぜひ、
国会で
審議するなり、文書管理法といったものをつくるなり、措置を講じていただきたいというふうに思っております。
もちろん、
政府案の中でも、文書管理については政令で行う旨を定めておりますけれども、政令で行うということが果たしてよいことなのでしょうかということです。多くの
自治体では、文書管理規則で文書管理を行っていますが、こっそりと食糧費の
関係文書の保存期間を縮めたりとか、そういった
情報隠しが行われてきました。せっかく新しい
制度をつくるわけですから、そういうようなせこい
情報隠しをさせてはならないし、それをどうなさるかというのは、国
会議員の皆さん方の
審議さらには決断にかかっているというふうに思います。
大体これで十五分になりましたので、私の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)