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1998-05-13 第142回国会 衆議院 大蔵委員会 第27号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月十三日(水曜日)     午後二時十一分開議 出席委員   委員長 村上誠一郎君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 坂井 隆憲君 理事 浜田 靖一君    理事 池田 元久君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 谷口 隆義君       今村 雅弘君    岩永 峯一君       大石 秀政君    大野 松茂君       鴨下 一郎君    桜田 義孝君       杉浦 正健君    砂田 圭佑君       中野 正志君    根本  匠君       能勢 和子君    松本 和那君       宮路 和明君    村井  仁君      吉田六左エ門君    渡辺 具能君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       上田 清司君    海江田万里君       北脇 保之君    末松 義規君       中川 正春君    日野 市朗君       藤田 幸久君    赤松 正雄君       河合 正智君    並木 正芳君       一川 保夫君    鈴木 淑夫君       西田  猛君    佐々木憲昭君       佐々木陸海君    濱田 健一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 松永  光君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房長 武藤 敏郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長   原口 恒和君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省証券局長         心得      山本  晃君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君         大蔵省国際金融         局長      黒田 東彦君  委員外出席者         法務大臣官房司         法法制調査部司         法法制課長   河村  博君         文部省初等中等         教育局高等学校         課長      素川 富司君         運輸省自動車交         通局保障課長  大野 裕夫君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      山口  泰君         参  考  人        (日本銀行理事) 安斎  隆君         参  考  人        (日本銀行理事) 引馬  滋君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十三日  辞任         補欠選任   河井 克行君     松本 和那君   日野 市朗君     海江田万里君   小池百合子君     一川 保夫君 同日  辞任         補欠選任   松本 和那君     大野 松茂君   海江田万里君     日野 市朗君   一川 保夫君     小池百合子君 同日  辞任         補欠選任   大野 松茂君     能勢 和子君 同日  辞任         補欠選任   能勢 和子君     河井 克行君     ――――――――――――― 五月十三日  納税者権利憲章の制定に関する陳情書  (第二二九号)  恒久的所得減税等に関する陳情書外一件  (第二六七号)  景気回復のための十兆円減税早期実施に関す  る陳情書外六件  (第二六八号)  消費税減税、恒久的な所得税減税などによる不  況対策の推進に関する陳情書  ( 第二六九号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  金融システム改革のための関係法律整備等に  関する法律案内閣提出第八六号)  特定目的会社による特定資産流動化に関する  法律案内閣提出第八七号)  特定目的会社による特定資産流動化に関する  法律施行に伴う関係法律整備等に関する法  律案内閣提出第八八号)  金融機関等が行う特定金融取引一括清算に関  する法律案内閣提出第八九号)      ――――◇―――――
  2. 村上誠一郎

    村上委員長 これより会議を開きます。  内閣提出金融システム改革のための関係法律整備等に関する法律案特定目的会社による特定資産流動化に関する法律案特定目的会社による特定資産流動化に関する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び金融機関等が行う特定金融取引一括清算に関する法律案の各案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁山口泰君、日本銀行理事安斎隆君及び日本銀行理事引馬滋君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 村上誠一郎

    村上委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。海江田万里君。
  5. 海江田万里

    海江田委員 民主党の海江田でございます。  大蔵大臣、連日大変御苦労さまでございます。今も息せきを切って本委員会に駆けつけたということで、本当に御苦労がよくわかるのでございます。  さて、昨日、予算委員会山一証券の前社長三木淳夫さんですか、この方の証人喚問があったわけでございますが、その証人喚問内容がどんなものであったかということは、大臣、ある程度は認識をしておられますね。いかがですか。
  6. 松永光

    松永国務大臣 文字どおりある程度、新聞等で見ました。詳細なことは見ておりませんけれどもポイントポイントは承知いたしております。
  7. 海江田万里

    海江田委員 恐縮でございますが、そのポイントポイントでよろしゅうございます、御自分の頭の中で今理解をされておる証人喚問の中身につきまして、二つ三つ、ここでお話しいただきたいと思います。
  8. 松永光

    松永国務大臣 要するに、当時の松野証券局長三木社長とが証券局長室で会った。そのときの話の内容が、松野氏の委員会における証言内容と、それからきのうの三木社長証言内容とに食い違いがある。松野氏としては何かを示唆したということはないというのが松野氏の証言内容ではなかったかというふうに記憶いたしておりますが、きのうの三木社長証言示唆を受けたという形の証言ではなかったかなという私の認識であります。
  9. 海江田万里

    海江田委員 ありがとうございました。  まさに一番のポイントはその点ではないだろうかと思います。これは大蔵省証券局長部屋の中での、いわば密室話し合いということでございますから、しかもそのお二人の当事者の言い分が、これは正直申し上げまして真っ向食い違っているというのが現状なわけでございますが、実は、ここに一人、その場に居合わせた当時の証券局の方がおられるわけですね。これは、三木証人もあるいは松野証券局長も同じように、証言をしたり、あるいは参考人としての発言をしているわけでございます。  当然当時の並びからいきますと証券局業務課長ではないだろうかというふうに推測をしたわけでございますが、当時の証券局業務課長というのは今証券取引等監視委員会堀田事務局長で、この堀田事務局長は衆議院の予算委員会にもおいでになりまして、そして、自分ではないということをはっきり言っておるわけですね。  これはよもや事実と違うことではないと思いますから、業務課長ではないとすると、そうしますと業務課長補佐なのか、あるいは業務課以外の証券局の方なのか、いずれにしろ当時の証券局の課員の方が、あるいは課長補佐の方が、こういう方がその場に居合わせたということは事実なんですね。  この証人として呼ばれた二人が真っ向から食い違っているわけですから、それならば、当然その証券局の当時その場所に居合わせた方から事情聴取をしてみるのが、これがやはり大蔵省のこの山一問題の真相解明の務めの第一歩ではないだろうかというふうに私は考えるわけでございますが、大臣はいかがでしょうか。
  10. 松永光

    松永国務大臣 今の御質問に対する直接の答えにはならぬかもしれませんけれども、この問題については大蔵省としても松野局長に確認もし、また後任局長に何らかの事務引き継ぎがあったかどうかという点の問い合わせもしたわけでありますが、松野局長言い分は、国会において証言したとおりであるということであり、それから後任局長は、この山一との関係での引き継ぎ等は受けていないということであったわけでございます。
  11. 海江田万里

    海江田委員 もし、証券局長――まだ局長になっておられませんね。何と言うのですか。心得ですか。その方でもよろしゅうございます。  私がお尋ねをしておりますのは、松野さんの後の局長の小川さん、これはまたいずれ問題になりますが、別のところで問題になるのですが、少なくとも、一番大事な密室の中の協議といいますか、面談といいますか、あるいは示唆といいますか、それが果たしてどういう状況であったのかということを知るためには、もうお一方、いたということは、これは事実なんです。松野さんもそういうふうに言っているのです。だれだかはわからないけれどもということを言っているのです。  しかも、この問題というのは、松野局長がそういうような飛ばしの示唆をしたということだけではありません。新聞なんかにはいろいろな見出しもございますけれども大蔵省がこれは大変強く関与をしたということで、松野局長一個人の問題ではなしに、大蔵省の問題ということになっているわけですから、大蔵省はその場に居合わせたのがだれなのかということをお調べになっても当然だろうと思いますが、そういうお調べはしたのかどうなのか、教えてください。
  12. 山本晃

    山本(晃)政府委員 お答えいたします。  松野証券局長証言、また昨日の山一三木、当時は副社長であったかと思いますが、この証言、いずれももう一人いたのではないかということでございます。  その点につきまして、私どもといたしましても、実は当時の関係者、まさに業務課補佐、あるいは各課の課長以上、そういった方々に聞き取りをさせていただきました。ところが、我々が調査をした範囲では、その一人がだれであるかということは実は特定ができなかったというのが実態でございます。
  13. 海江田万里

    海江田委員 大変おかしな話でございますね。一応調査をしたけれども、それがだれだか特定できなかったということですが、では具体的に、こういう方々について調査をしたのかどうなのか。  今一番可能性があると言われておりますのは、証券局業務課の当時課長補佐をやっておりました塩屋公男さんですね。この方は今民間の証券会社にもう天下りといいますか転職をされておりますが、この方については聞き取りをしたのかどうなのか。  それから、当時の課長補佐というのは随分有名な方がいらっしゃるのですね。あの例の宮野敏男さんでありますとか、それから榊原隆さんでありますとか、この方たちも全部堀田業務課長の下で課長補佐をやっておられたのですが、こういう方々について聞き取りをやったのでしょうか、どうなのでしょうか。
  14. 山本晃

    山本(晃)政府委員 今お話のありました塩屋につきましては聞き取りをしております。また、当時の業務課総括補佐である厚木にも聞き取りをしております。榊原宮野につきましては、今御承知のような状況でもあり、またなおかつ担当外でございますので、しておりません。
  15. 海江田万里

    海江田委員 厚木さん、確かにこれは総括課長補佐で、あと塩屋さんが担当、一番の直結ですから、その二人についてはそういう事実がないということを言っているのですね。  そうなりますと、これは非常に重要なんですよ。全く二人だけだったら水かけ論になるわけですけれども、もう一方いたわけですから、これは場合によっては、予算委員会なりあるいは当委員会でもよろしいわけでございますが、真相解明のためにその方の意見を聞くということは大変大事でございますから、やはり一日も早く、一体だれなのかということを、当然大蔵省は究明をしてしかるべきだと私は思うのです。  そういうことをさらに努力をして、あと一名がだれであるかということを今後引き続き一生懸命にやって究明する努力をするというようなおつもりがあるかどうか、教えてください。
  16. 山本晃

    山本(晃)政府委員 いずれにいたしましても、本問題は今裁判等もあるわけでございます。そういったこともあり、私どもといたしましても、決していいかげんな聞き取り調査をしたわけではございません。もちろん、今後も必要に応じ調べていきたいとは存じまずけれども、何分裁判の段階に入っているということでもございますので、それを私どもとしては見守ってまいりたいというふうに考えております。
  17. 海江田万里

    海江田委員 大臣、今お聞きになっていただいたように、きちっと、だれがその第三者、第三番目のザ・サードマンであるか、第三の男であるか、女性かもしれませんけれども、これについてはまだ大蔵省の少なくとも事務方の方は、これをできるだけ早くはっきりさせるということは言っていないわけですね。  それから、裁判とおっしゃっていましたけれども、確かに、宮野さんと榊原さんは裁判を抱えています。それから、もちろん三木さんも裁判を抱えていますが、私が今お話をした証券局長部屋でどういう話があったかということなんかについては裁判に何も関係ありませんよ。これからもし松野さんが偽証などで告発をされればまさにそれは裁判になってきますけれども、今現在、あそこでのやりとりが何か裁判関係していますか。どこが裁判関係しているのですか、あそこのやりとりが。  関係していないからこそ三木さんは、きのうあの予算委員会に来て、御自分記憶をたどりながらあれだけ正確に話を述べたわけですよ。御自分裁判関係をしておったら、あんなところで話ができるはずがないですよ。弁護士さんもちゃんと脇にいたわけですから、とめるわけですから。あれだけ言えたということは、これはまさに三木さんの裁判には関係ないのですよ。裁判ということは言いわけでして、これは一切通用しないと思いますが、いかがでしょうか。何が裁判関係するのですか。
  18. 松永光

    松永国務大臣 三木氏は有価証券報告書虚偽記載罪ということで起訴されて裁判中なわけですが、このときのことは恐らく時効にかかっているものだから起訴の対象になっていないのじゃなかろうか、こう思います。  ただし、簿外債務ですね、それはこのときから続いているのかどうか、そういった問題はあろうかと思いますが、そういう意味では三木氏の裁判と全く無関係か、あるいは継続したものになっておるのか、これはわかりませんが、いずれにしろ、当時の大蔵省局長言い分三木氏の言い分とが食い違っているということであれば、今までのところは食い違ったままでどれが真実かということはわからないままになっておりますけれども委員御指摘のように、だれかそこにいた人がいれば、そしてその人の記憶が、六年前でありますけれども、ある程度定かな記憶があれば、それは真相解明に役立つもの、こういうふうに思います。  そこで、その人間がだれなのか、特定できるように一実際問題とすれば、別の事件でも被告人になっている者についていろいろ聞くのは聞きにくい点もありますけれども、いずれにせよ、だれだったのかということは判明するように調査をしてみたい、その努力をしたい、私自身はそう思っています。
  19. 海江田万里

    海江田委員 私自身とおっしゃいまずけれども、それは大蔵省全体の意思としてやはりそういうことをやっていただきたい、できるだけ早くこれは特定をしていただきたいと思うのですね。それは何もその場に立ち会っただけじゃなくて、これまでの証言でも明らかなように、まさにその人がキーパーソンになって山一証券と何度も連絡をとり合っているのですよ。  それから、これはきょうの朝日新聞社説でございますけれども、「疑問つのる松野証言」ということでるる書いてございます。この後段のところを読みますけれども、「三木松野会談に同席した大蔵省の役人と見られる人物を特定し、事情をきく努力も続けるべきだろう。証券局長大手証券の首脳との話し合いの場に立ち会うような官僚は限られるのではないか。局長室でのやりとり内容を突き止めるため、大蔵省国会に協力すべきだ。」こういうふうに書いてあるわけでございますね。  ですから、これはあの証人喚問を見た人の当然の声だろうと思いますので、これはぜひ、恐縮でございますが、大臣、重ねて、この点はなるべく速やかに調査をして、そしてそれを国会報告をするということをお約束いただきたいと私は思います。
  20. 松永光

    松永国務大臣 国会審議には協力するというのが本旨であろうと思いますので、努力をしてみます。  ただ、六年前だという困った問題が一つあるということは御理解願いたい。そのことも念頭に置きながら努力をしてみます。
  21. 海江田万里

    海江田委員 六年前の何月何日、朝飯に何を食べたか、夕飯に何を食べたかという話ならば、大臣おっしゃるように、それは記憶おぼろげになりますよ。ところが、これだけ大きな問題になって、そしてそれが今、そうすれば当然記憶を思い出しますよ。これはわかるはずですよ。それはそうですよ。いや、わかりますよ。しかもその人は一人しかいないわけですから。  それから、この社説にも書いてありますけれども、そんなに何百人もいて、あるいは何千人もいて、その中から一人を特定するのではなくて、私はここに当時の大蔵省の職員の配置録を持っておりますけれども、これで当たっていけばいいわけですよ。銀行局の人なんか立ち会っていないのですから。これは証券局ですから。証券局、当時で何人ですか。何十人ですよ。しかも、普通の係長以下がそこに立ち会うはずもないわけですから、課長補佐なのか審議官なのか、そのあたりのクラスなわけですから、これは十人にも当たればわかるわけですよ。  これくらいのことは、きのうのきょうだといって、もう本当はきょうまでだって調べようと思えば調べられるわけですから、そんな悠長なことを言わずに、やるんだ、大蔵省、やる気があるんだということを言いませんと、これはやはり今後の証券行政とも大変大きくかかわってくる問題ですから、大蔵大臣、ぜひそういう認識を持っていただきたい。もう一回、たび重なって恐縮ですが、前向きに調査する、わかれば発表する、わからせるように努力するとおっしゃってください。
  22. 松永光

    松永国務大臣 今事務の方に聞きましたら、別の事件で、すなわち収賄罪で起訴されている二人、これ以外の人についてはいろいろ話を聞いたんだそうです。しかし、この二人は、この事件とは関係ないけれども、別のことで逮捕、起訴され、そして裁判中であるということから、今まで接触を持たずにおったというのが真実のようであります。  しかし、委員の強い要請でありますので、その要請にこたえる意味で、榊原宮野、両人だけが実はまだその話を聞いていない二人だそうでありますので、この二人について、急いで話を聞いて、そしてその様子を、本委員会というよりはまず委員の方にお知らせするという形に持っていきたいな、こう思っております。
  23. 海江田万里

    海江田委員 この問題については、山一証券は、これは大臣もごらんになったと思いますけれども、社内に調査委員会をつくって、そして立派な報告書を書いているわけですね。もちろん、その報告書には、きのう三木証人証言をした内容でずっと書かれておるわけでございますが、本来でしたら、大蔵省の中にこの問題の調査委員会ぐらいつくって、もちろん、接待の問題で調査委員会をつくったり、接待の問題で聞き取りをやるのも、これも重要でございますけれども、それと同じくらいに、あるいはそれ以上に、私は、この問題をはっきりさせるということは、今後の金融行政、あるいは今後の証券行政を行っていく上で大変重要だと思うのですね。ですから、そういうような調査委員会ども発足をさせるというようなことについてはいかがでしょうか。
  24. 山本晃

    山本(晃)政府委員 山一証券のいわゆる飛ばしにかかわる問題につきましては、既にいろいろな国会における質疑あるいは監視委員会調査などによりまして明らかになった事実もあるわけでございます。こういつたことを踏まえつつ、私どもとしても、当時の処理を振り返って、行政上反省すべき点、あるいは教訓とすべき点、これは多々あるのではないかというふうに思っております。  そういう観点に立ちましても、私ども、いわゆる従来の事前予防型の行政というものを事後チェック型の透明な行政手法に転換をしていかなければいけないということも、またこの問題の教訓として重く受けとめて、今後、行政運営に遺漏のないように、また大蔵省、さまざまな批判を浴びているわけでございますけれども、私ども行政そのものも国民からの信頼というものを損なわないように頑張ってまいりたい、かように考えております。
  25. 海江田万里

    海江田委員 それでは、話題を変えまして、今議題になっております金融システム改革のための関係法関係した質問に入らせていただきますが、ただ、先ほど来お話をしておりますように、この松野さんの行政指導の問題も、これは実は大きな関係がもちろんあるわけでございます。  今こういう御時世でございますから、こういう御時世というのは、要するに景気が悪くて、人々の収入ども実質可処分所得などが減っておるわけでございます。そうなると、例えば、これは私の周りで実際に起きた話でございますが、いろいろな保険に入っておる。恐らく大臣もいろいろな関係どもあって保険に入っているのではないだろうかと思われますが、収入も余りふえないから、しかも、毎月の払いでありますとか半年ごとの払いでありますとなかなか厳しいから、これを何とかもう払うのをやめてしまいたい。  ところが、払うのをやめてしまった場合、実は、これはやめ方には二通りがあります。払うのは、もうこれからはお金を払いたくないけれども、せっかくこれまで積んできたんだ。しかも、これからの時代というのはまだまだ不確実な時代ですから、不安な時代ですから、やはり自分にもし何かありたときのために保障だけは残しておきたい。例えば、一千万円ぐらいの保障でありますとか、二千万円ぐらいの保障でありますとか、保障だけは残しておきたいというケースが結構あるわけですね。  そうしたときに、やり方が二通りありまして、一つやり方というのは、これまでの例えば一般生命保険満期保険金もあるし、死亡のときの保険金もあるというような一般保険から、今度は死亡のときだけの保険乗りかえをする。これまであったこの保険を一たんそこで解約をして、そして新規死亡保障だけのついた保険に、乗りかえといいますけれども乗りかえをするという方法が一つあるのです。.それからもう一つは、乗りかえをやりませんで、これまで払っていた保険を、もう新規保険料を払わないけれども払い済み保険にするというやり方があるのですよ。これは契約自体は切らないわけですね。だから解約はしないわけです。前者の方が、解約をして保障だけの保険にまさに乗りかえをする。車の下取りなんかと同じです。下取りに出して新しいものに契約をし直す。それからもう片一方は、解約をしないで保障だけを残すということ。  実は、このどちらをとるのかということは、まさにそれはその契約者の選択なわけですけれども、ただ、一つ言えますことは、払い済み保険にした場合と、それから一回解約をして新規契約をし直した場合では、同じ今やめたときの保障の額が違うのですよ。もちろん、どっちが保障が大きいかといえば、払い済み保険にした方が保障は大きいわけですよ。だから、私なんかも実際にそういう形でやっているわけですけれども、私の友人も、本来でしたら、その払い済み保険にしたい、保障だけを残したいといって、そして保険会社に行ったわけですね。  ところが、素人ですから、払い済みという言葉はわからなかった。保障だけを残したいということで保険会社に行った。そうしたら、保険会社に行きましたら、保険会社から、すぐに営業所から外交員の方が飛んできて、そして、わかりました、では、こういうふうに全部書いてくれるわけです。ここだけ判こを押してください、ここだけ判こを押してくれればそういう手続ができますからと言って、それで、この人は実際には判こを押さなかったわけです。判こを押さなかったからよかったのですが、そのまま判こを押していたらどういうことになるかというと、払い済み保険ではなしに、まさに保険解約して、そして新規保険乗りかえをさせられるわけですよ。いろいろな保険の種類がありまして、この人の場合は、先ほどお話をした払い済み保険にすれば死亡時の保障が大体千四百万円ぐらいあった。ところが、こうやって乗りかえをやると、その死亡保障というのは一千二百万円ぐらいになってしまう、こういうことがあるわけですね。  ところが、そこのところで、保険会社はまさに今言ったようなやり方をしているということがあるわけですけれども、大蔵当局の方は、そういうような事例というのはお聞きになっていますか。どうでしょうか。
  26. 福田誠

    ○福田政府委員 具体的な事例の御指摘でございますが、乗りかえそのものについて、いろいろ誤解を招くような募集行為が時折あるというような話は伺ったことはございますが、具体的に今のような直接該当するような例は私はまだ聞いたことがございません。
  27. 海江田万里

    海江田委員 これは大臣お話、わかるでしょう。
  28. 松永光

    松永国務大臣 わかる。わかるけれども……
  29. 海江田万里

    海江田委員 わかるような顔をしておるのですが、最後のところでわからぬような顔をしておる。  では、これから質問にしますけれども保険会社の方とすれば、特に保険の外交員の方たちというのは、新規契約をとって幾らの世界ですね。そうすると、今までの払い済み保険では新規契約はとれないわけですよ。だから、どうしてもやはり外務員の人たちは、勢い、乗りかえにした方が有利ですから、乗りかえをしたがるのですよ。基本的にそういう仕組みになっているのです。しかも、これは現行の保険業法ですけれども、現行の保険業法の中の消費者保護の項目の中で、わざわざ乗りかえについては一項目を設けて、これは注意をしなさいよということを喚起しているわけですよ。特にこの乗りかえというのは大変問題があるわけですよ。  今の場合は同じ会社のケースでお話をしましたけれども、別な会社のものを持ってきて、これはだめだよ、こっちに乗りかえればこれだけ得だよというような勧誘をする嫌いがありますから、ですから、この乗りかえについては、既契約がある場合の禁止行為ということで、これは法律の三百条一項四号にあるわけですよ。だから、ここのところは非常に注意をしなければいけない問題だろうと思うわけでございます。  特に質問はありませんけれども、今のお話で大体わかりますね、どうしてそういうことが多くなるというか、どうしてそういうふうになるかということは。この委員会というのは逆質問というのばなしですから、これはやるわけにはいきませんが、はっきり言ってそういうことがあるのですよ。  ちょっとお名前を私は存じ上げませんけれども、今御答弁をいただいたようなことでいいのか。あるいは、今私がお話をしたようなことを、細かい事例を話すといろいろ細かい話になりますけれども、特にこの既契約がある場合の禁止行為というのをわざわざ一項目を設けたというのは、この乗りかえに対していろいろな問題が発生する可能性があるということでそういう一項目を設けたというような認識を私は持っておるのですが、それでよろしいかどうか。
  30. 福田誠

    ○福田政府委員 今御指摘の保険業法の第三百条に「保険契約の締結又は保険募集に関する禁止行為」ということで具体的に幾つか列挙しております。列挙しておりますということは、やはりこのようなことが行われがちである、それを厳しく禁止しなければならないということでございます。  特に、今御指摘のありました保険契約者に対して不利益となるべき事実を告げずに、既に成立している保険契約を消滅させて新たな保険契約の申し込みをさせる等々のことは禁止行為でございますが、確かに営業募集員が自分の実績を上げるためにそのような行為をとることもたまにあるようでございますし、保険会社におきましても、そういうことが行われますと、もしそれが事実であれば業法違反でございますし、さらに中期的にも保険契約そのものに対して信頼を傷つけるものでございますので、社内的にはそれぞれかなり厳しくその辺は規制しているわけでございますが、残念ながら、そのような苦情が時々あることは事実でございます。
  31. 海江田万里

    海江田委員 苦情が時々あるということですが、これははっきり言いまして気がつかないのですよ。だって、そうでしょう。まさに払い済みにしてくださいということを言って払い済みにしなければ、これは問題だということがわかるのですが、当然のことながら、払い済みなんという言葉は一般の人は知らないのですよ。それから、今言った違いというのも、私がお話をすれば大臣もおわかりをいただけたと思うわけですけれども一般の人は知らないわけですよ。  ですから、そういう意味においては、これはむしろ本当に厳しく一々調べていって、この間、そういう乗りかえのケースなどは非常に多いはずなんですね。これも、もしそういうケースがあれば後でちょっとお尋ねをしたいと思いますけれども、そういう一つ一つについて、あなたはその乗りかえでよかったのですかということを聞いてみれば、いや、私はそんなつもりじゃない。あるいは、もう一つこういうようなやり方もあるのですよ。もうこれ以上保険料払いたくないから、だから保険料を払わないで、しかも保障だけは残したい、これは現代人のニーズなわけですよ。そういうニーズに合うためにはこういうやり方もあるのですよ、あるいはこういうやり方もあるのですよ、こっちの特徴はこれですよ、こっちの特徴はこれですよということを言って、そして本当に契約をさせれば、そこで初めていわゆる契約者の利益というものは守られるわけですけれども、今やはりそういうふうになっていないということですね。このことは、苦情として出てきたのが少ないからとか少なくないからということではなしに、かなり広範に存在をする、私はそういう認識を持っておるのですね。  その乗りかえの件数がふえているとかふえていないとかいうデータは、保険部長、お持ちですか、どうですか。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  32. 福田誠

    ○福田政府委員 申しわけございません。今手元にございません。
  33. 海江田万里

    海江田委員 それは調べようと思えばもうデータとしてはあるわけですか、それともデータとして全くないのですか。保険契約の数というのはわかるわけですけれども乗りかえの件数というのは把握をしておられるのですか、しておられないのですか。
  34. 福田誠

    ○福田政府委員 今現在把握しておりません。  それで、そのような計数がとれるかどうかも含めて、きょうの段階ではお答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  35. 海江田万里

    海江田委員 わかりました。  それでは、ぜひそういうデータも少し調べてください。  それから、今私がお話をしましたのは、今たまたま保険お話をしましたけれども保険ですとか金融というのは、そういう意味では大変専門性の高いものなんですね、証券もそうですけれども。そういうときに、いわゆる契約者保護でありますとかあるいは預金者保護でありますとか投資家保護というものを、基本的な認識として一体どういう形で保護をしていけばいいかということは、かなり基本的な哲学がなければいけないと私は思うのですね。  片一方は専門的な知識を持ったいわゆる企業の、あるいは保険会社でありますとか証券会社でありますとか銀行でありますとか、そういう人と、一人一人のいわば契約者でありますとか預金者との間に、その判断をするための情報量でありますとか、それから知識の蓄積でありますとか、こういうものが非常に差がある。そういうような発想からスタートをして、それでどうやってそれぞれの契約者でありますとか預金者でありますとかあるいは投資家でありますとか、こういうものを守っていかなければいけないかということをまず考えるべきではないだろうか、そういう基本的な認識を持っておるのですが、これは銀行局長にお尋ねをしましょうか。山日銀行局長、どういう認識を持っておられるか、お話しください。
  36. 山口公生

    山口政府委員 この点につきましては海江田先生とは予算委員会でも数度御議論をさせていただいたところでございますが、我が国のこれまでの法制の歴史は、各業態ごとに業法でもってそういった点を解決しようとしてきた歴史がございます。  例えば、銀行法、これは銀行のあるべき姿はどういうものか、健全性を確保するためにどういうことをすればいいのか、あるいは適正な業務運営はどういう指導でもって実現すればいいのかという考え方。もう一つ保険について申し上げますと、これはまた保険業法というのがありまして、また今おっしゃった、もとで言うと募取法のようなやや取引法的なものを入れてあるということ。半ば業法的、半ば取引法的なものが混在をしている。証取法になりますと、これも混在しておりますが、どちらかと言うと取引法的な色彩が大分強くなってきているというように、各業態によっていろいろと違っておる。  法律はそれだけではございませんで、あと投資信託法、商品ファンド法、特定債権法、不動産特定共同事業法、投資顧問業法、金融先物取引法、商品取引所法等、すべて金融商品を扱っているものがそれぞれの業法の形あるいは取引法の形でこれまで発展してまいったわけでございます。  先生がおっしゃるような考え方というのは、どちらかと言うとそれをやや取引法的に、横断的に眺めて、何か取引に共通するルールというものが必要ではないかという御指摘ではないかというふうに推察するわけでございます。そのとき、相手がプロなのかアマなのか、必要なものは何かというような点で、一口で言うと金融サービス法的な考え方があってもいいじゃないかという御指摘であります。  早速私どもとしても、いろいろ今研究会をやっておりますが、何せ業法の体系が物すごい広範囲にわたり、各省庁、随分絡み合っているということで、非常に難しい問題でありますが、真剣に取り組んでおるところでございます。  その際、非常に難しい問題として、これからはやや私見にわたるわけでございますが、今、業法の歴史でもってそれぞれの業態に一番適した形のエンフォースメントをやっているわけでございます。何か困った事態に陥らないように、どういうふうなやり方でそれを担保していくかということをそれぞれの業法が考えているわけです。それが一つの横割りの取引法になったときにエンフォースメントをどうするのか。それはもう全部司法の場で解決すればいいというふうに考えていいのかどうか。あるいは、全部自主規制機関をつくらせてやったらいいのか。例えば銀行におきましては自主規制機関というのはないわけですね。ところが、証券取引においては自主規制機関があるわけでございます。そういったいろいろ、ばらばらになっております。  しかし、問題点としてはそういうふうな意識を持ちながら、今回の法改正でもその点を考慮させていただきまして、銀行法としては私としてはちょっと異例な考え方だと思うのでございますが、顧客への説明義務というのを入れさせていただきました。  そのほか、預金者保護、投資家保護のためにはディスクロージャーというのが大切だということで、ディスクロージャーにつきましては、この委員会でのいろいろな御意見も踏まえましてこれも義務化するというような、投資家あるいは預金者に少し目を向けた法律改正をこの業法の体系の中でお願いしているというのが現状でございます。
  37. 海江田万里

    海江田委員 私がこれから質問をしょうということを先取りをしてるる述べていただいて、それは感謝にたえないわけでございますが、時間の節約になったということでございます。  ただ、私は、確かに業法がそれぞれあって、それには歴史もあって、そして投資家保護とか契約者保護とか、実は、投資家保護とか契約者保護と一々言いかえをしなければいけないのも大変面倒というか煩雑なんですね、本当のことを言いまして。だから、先ほど局長の方からむしろお話が出た金融サービス法とか、そういう意味では、預金者も投資家もそれから契約者も、これらはすべからく、これは大臣もお聞きいただきたいのですけれども、いわゆる金融サービスの受け手である、金融サービスの消費者であるということに立てはそういう意味での違いというのはない。そうしないと、あるときは投資家、あるときは預金者、だからこれはわざわざ預金者等とか書いたり、契約者等とか一々書いたり、やり分けをしなければいけない。  それから、銀行だとか証券会社とか、それだけでない、今もうビッグバンの時代ですから、垣根が外れていろいろな会社もできてくるわけですから、基本的な発想として、そういう人たちが押しなべて、自分たちは金融サービスを提供する人たちだよ、そういう金融機関を利用する人たちは押しなべて、自分たちは金融サービスの受け手であるよ、消費者であるよという認識に立つと、本当はこれは整理がしやすいのですね。けれども、現状はそういうふうになっていない。そういうふうになっていないから、ここは預金者でここは契約者でと、大臣も答弁するのに一々大変でしょうけれども、一々そういう煩雑なことをやらなければいけない。  しかも、今局長がおっしゃったのは、それぞれに歴史もあっていろいろな保護のされ方が違う。はっきり言えば、銀行法と証券業法と保険法でいえば、一番細かく書いているのはどちらかと言えばやはり証券法ですよ。次は保険法なのですよ。証券には取引業法もある。それから、保険法については取引業法はないけれども保険法でもって大体カバーをしておるということですから、投資家の保護の点でいうと今言った順番で、証券業法が一番詳しくて、その次が保険法ですよ。それから銀行法が一番少ないわけですね。  そういうふうにそれぞれ、保護の歴史も違うからどこで線を引っ張ったらいいのかということもなかなか難しいというようなことも恐らくおっしゃりたいのだろうと思いますが、それならば、保護の観点からいえば、一番事細かに書いております証券業法で線を引けばいいわけですよ。  そして、これは一つ大きな問題ですが、確かにおっしゃるように今度の新しいこの法案の中で、「預金者等に対する情報の提供等」ということで、銀行法第十二条の二関係でそういう項目が盛り込まれておるのです。ただ、ここで書いてありますのは、あくまでも預金者等に対する情報の提供ということで、銀行とのつき合いというのは実は預金する立場だけではありませんよ。借り手の立場もあるわけですね。ローンを借りるということ、融資を受ける。今度の改正法でもこの借り手の立場というのが全く抜け落ちているわけですね。  それで、確かに、これも予算委員会で議論をしたと思うのですが、我が国には幽霊を取り締まる法律はないと。これはそうですね。それは何でないのかといえば、幽霊が実存しないからないのですよ。銀行法も今までそういう意味では、預金者保護ですとかそれから借り手の保護とかいうことは、まさに銀行が倒産をすることはない、それから銀行が悪いことをやって過剰な融資をすることもない、そういう前提に立っていましたから、わざわざそのときに銀行のそういう融資だとかあるいは預金に対して法律をつくったら、それはまさに幽霊を取り締まる法律と同じような法律になってしまうということでつくらなかったわけです。  ところが、この間、その幽霊がまさに出てしまったわけですよ。そうなったときに、これはまさに幽霊ではなくなって、現実に銀行が倒産をするし、それから貸している場合だって異常な貸し付けだとかという例があるわけですよ。そういうときにこれまでと同じような認識でいいのかどうか。とりわけ貸し手に対しては、片一方では貸金業者に対しては非常にきつい縛りをやっているわけですよ。あるいはカードを使った融資などについても、これは厳しい縛りをやっているわけですよ。けれども、同じ貸し出し行為、同じ融資行為でありながら、今度銀行法、銀行の行う貸し出しに対して一切言及がないということはどういうことなんですか。お尋ねをします。
  38. 山口公生

    山口政府委員 確かに、消費者が運用者となる場合は先ほどのお話、今度は調達者といいますか借り手側、つまり信用保護という観点からの御指摘でございます。それも大変重要な点だと思います。  今のお尋ねの、例えば貸金業法と恐らく割賦販売法を指しておられると思いますが、それと比べて銀行法が随分違うねということですけれども、銀行法の体系がもともと、厳しい参入条件をつけて免許制、しかも数年に一回は必ず当局の厳しい検査があって、しかも行政命令が出るというような、しかもそういう厳しいチェックがいつもなされるというものと、貸金業法のように、登録制であり、行為規制で例えば取り立て行為の規制等を課しておりまして、それに違反すればすぐ警察に検挙される、こういう法体系のものとで若干考え方が違う。銀行法の場合は、したがって、銀行そのものがそういうことをやることすら許されない存在なのだという前提に立っていると思うのですね。  ただ、先生がおっしゃいますように、銀行が完全無欠な存在であればそれはそれで成り立つ議論ではございますけれども、では、はてそうかということ。当委員会でもいろいろ変額保険等の話を挙げられまして御批判もございました。私どもも謙虚に受けとめ、それは注意喚起をしているわけでございますけれども、この借り手の保護ということについては、いろいろな観点がありますが、できるものから手を打っていこうというような考え方でありまして、まず第一に考えるべきことは、約款で縛っている部分、銀行の約款というものをやはり早急に見直してもらう必要があるということで、これは法律マターではありませんが、早速やっておるわけでございます。  それと、もう一つ難しいのは、最近よくありますのは、信用情報がよく漏れてしまう。これは別に銀行の情報だけではありませんが、どうも、ある人が銀行に行って断られたというとノンバンクから一斉にダイレクトメールが来たという話を最近聞いたことがありまして、一体どうなっているんだというような、そういう信用情報が非常に漏えいしがちであるということ、こういうのが緊急の課題としてありまして、早速取り組もうとしておりますが、いろいろこれも法律的な立て方の難しさというものを考えますときに、早急に結論が出ればいいのでございますけれども、やや頭を悩ませつつも、こういう問題に取り組んでいくべき時期だなということを痛感しているのが現状でございます。
  39. 海江田万里

    海江田委員 今私がお話をしました借り手に対する保護ということが特に銀行については全く抜け落ちているというのは、私はこれは今回の法案の一つの大きな欠点ではないだろうかという気がするのですね。  まさに、今局長からもお話がありましたけれども、これからはまさにビッグバンで銀行の活動というのが非常に活発になっていくわけですから、そういうときにやはり何らかの形で、しかも、消費者保護をうたってそして銀行法の改正をやるわけですから、そのときに一言でも借り手に対する保護の考え方、もちろん、先ほどもお話をしましたけれども、トータルな金融サービス法、これは金融サービスを提供する側もそれから受ける側も、そのサービス法にのっとったところで、それを一つのルールとして自由な取引をやりなさいということで、それができるのが一番いいわけですけれども、今お話がありましたように、それができないということであれば、ファーストステップとして今回の法改正をどういうふうにするかということを考えて、できるだけやはりファーストステップで次のステップにつながるようにということで考えて、今私たちの党でもいろいろな議論をしているところでありまして、何も反対だということでなしに、できるだけいいところを見ていこうということで議論をしているのです。  けれども、それにしてもやはり私は、貸し手、貸す側あるいは借り手、そういう金融サービスを受ける側の、とりわけ銀行の融資を受ける立場について全く触れていないというのは大変大きな瑕疵だというふうに思うわけでございます。これは大蔵大臣に、今の話を聞いておりまして感想なり御意見なりをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  40. 松永光

    松永国務大臣 私は、海江田先生の博識というものを前から知っておりましたけれども、今保険の話等も聞きまして、なるほど博識な方だな、こう思いました。  実は私も三十年ぐらい前に、これはもう選挙をやる初めのころでございました。ある保険会社の勧誘業をやっている人が、この保険に入ってくれれば応援するから、こう言うものですから、そこで生命保険に入ったことがありますが、その後、掛金を払うのが嫌になってしまって、売ってしまったのがあります。今どうなっているか知りませんけれども。その後というものは、勧誘員が来た場合でも全部女房任せにしておりますから、さて、生命保険に私が入っているかどうかすら私にはわかりません。  現在入っているのは、ホール・イン・ワンをした場合の保険があります。それには、友達がそれが切れたときにまた勧誘に来ますので、それは入っております。それからまた、私の友人が火災保険の代理店をやっていますので、自宅と事務所の火災保険は入っておりますけれども、そのほかには保険は入っておりません。ただ、国会に団体生命保険というのが入っていて、それは入っているようであります。いずれにせよ、海江田先生の博識には、今さらのごとく感銘をしたような次第でございます。  今の話を聞いておりまして私が感じましたことは、ちょっと話にも出ておりましたけれども、貸し手責任ということの中に、あの人には当銀行は幾ら融資しているよ、こういつたことが外に漏れた日には、その融資を受けている人は大変な迷惑をこうむるかもしれません。あるいはまた、あの人の預金残高はこの程度だなどということも外に漏らしてもらっては、漏らされた人は迷惑をこうむるかもしれません。そういう意味で、それを法律で禁止するか、あるいはモラルとして守るべきものとするのか、いろいろ検討すべき点はあろうかと思います。  いずれにせよ、消費者といいますか、あるいは借り手といいますか、さらには、場合によっては消費者が同時に投資家という立場にもなるわけでありまして、その場合の投資家保護あるいは消費者保護、借り手保護、こういったものは必要最小限、法律として必要ではなかろうか。  先ほどの局長の話によりますというと、それぞれの業法の中でそれはおおよそは整備されているということでありますけれども、もし足らざる点があれば、これは検討を加えて補充すべきことであろう、こういうふうに思います。同時にまた、金融サービス法という一つ法律で、金融に関連する消費者、投資家あるいはまた借り手、こういった者に対する保護規定というものを一本の法律でつくるべきという意見が随分出ております。  ただしかし、金融サービス業の中にいろいろ業種があるわけでありまして、それぞれで保護の仕方もいろいろあるでしょうから、そのために、役所の方もほかの役所との関係もあるものですから、関係者で今盛んに勉強を始めているということでありますので、その勉強の成果が早くまとまって、そして必要ならば統一した金融サービス法というものの制定に向けて努力する必要があるというふうに思います。  ただ、物は考えようで、一つ一つ業種が違いますから、一本の法律でやるのが妥当なのか、あるいはそれぞれの業種の特色に応じて、消費者あるいはまた投資家、契約者、それぞれに保護規定を設けるのが本当は正しいのか、いろいろ議論もあろうと思いますけれども、いずれにせよ、自由に金融商品の売買がなされるという状態が来ることを想定すれば、消費者保護、投資者保護あるいは契約者保護、こういったものは整備する必要があるというふうに考えます。
  41. 海江田万里

    海江田委員 私は、別に大臣保険契約の現状をお尋ねしたわけではございませんが、つまびらかにしていただきましてありがとうございました。  ただ、やはり問題なのは、大臣、今度のこの法案も大変不自然なんですね。それは、御案内のように、税法まで入れますと二十四本の法律の改正案を出して、そしてそれを一つの議論でやっておるわけですが、この二十四の法律案一つ一つを事細かにやっていったら、とてもではありませんけれども、こんな短時間でできるはずもありませんし、やはり等という字一つとっても、ここの等というのはどういう意味なんですかといろいろ事細かに聞いていこうとすれば、幾らだって時間もかかるわけでございまして、やはりそれは、まさに今やるものとしてこういうことを、かなりこれはこのビッグバンの時代に、そういう意味では、本当を言うと無理があるのですよ。  それが、やはり本当は一つ法律にしてしまえば、その一つ法律案を出してそれを議論をしていって、そしてそれで新しい時代の到来だということを、やはり私どももそういう認識を持つし、それから、そういう法律をつくることによって業界にもそういう認識が行き渡るし、それを通じてやはり金融サービスの受け手の側にもそういう情報が伝わっていくということで、私は、今回こういう形で、二十二本プラス租特と地方税法を入れて二十四本、これをまさに金融システム改革のための関係法というくくりでもってやるところに、実はまだまだ我が国の金融システムというものが果たして本当に変わったのだろうかどうなんだろうかという疑念をやはり持ってしまうのですね。  まさに一番いい時期でありまして、しかも、もうそういう業法で縛れなくなっているわけです、子会社もできるし、垣根が取り崩れるしということで。そういう時代なのに、もう既にビッグバンは始まっておって、そういう時代が進んでいるのにもかかわらず、やはり今回こういうような形でそれぞれの業法の手直しをやって、これは本当にまたやらなければならないことになると思いますよ。  しかも、それが、例えば損保の料率の算定なんかもう外れるからいつ幾日までにやらなければいけないとかいう、そっちの方から事態の進展に後追いをしている話でしょう、今のこの議論というのは。これはやったところで、これで法案を、あしたかいっかわかりませんけれども、通したところで、すぐまた、七月一日とか十二月一日まではそれで間に合うけれども、そこから先というのは事態の変化に応じて法案の議論をやっていかなければいけない、法案の改正作業をやっていかなければいけない。  大蔵省だって、これは大変な、まさにさいの河原の石積みのような努力をやっているというような認識を私は持っております。時間もおおよそ来たようでございますから、もうこれ以上るる申し述べませんけれども、そういう意味では、やはり一日も早く金融サービス法というような法律をつくっていただいて、これはもうつとに御案内だろうと思いますけれども、平成九年六月十三日の大蔵省金融システム改革のプランの中ではっきりと書いているわけですね。金融サービス法等の検討ということで書いているわけですけれども、その検討から、これは去年の六月ですから、もう一年たとうとしているわけですから、やはりこの金融サービス法というものを私は一日も早くつくっていただきたいという切なる思いがありますので、なるべく早くつくるというような御発言を、局長でもよろしゅうございますし、大臣でもよろしゅうございます、いただけるものなら、それを最後に私の質問を終えたいと思います。
  42. 山口公生

    山口政府委員 努力させていただきます。
  43. 海江田万里

    海江田委員 簡単ですね。ありがとうございました。
  44. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 次に、藤田幸久君。
  45. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 昨日に続きまして、G7からお帰りになりました大蔵大臣、それから、けさ外国からお帰りになったというふうに伺っておりますけれども日本銀行山口副総裁を中心に質問をさせていただきたいと思います。  きのう私が主に質問をさせていただきましたのは、日本の行政あるいは近代国家としての統治能力に対する信用ということをベースにお話をさせていただいたわけですけれども、結局、世界最大の債権国の金融とか財政というものがなぜ破綻してしまったんだろうか。市場経済というものは、その分配の最適のシステムであるべきところが最悪の配分になってしまった。書生っぽい話になるかもしれませんが、アメリカの独立宣言とか日本国憲法の十三条というようなことも申し上げまして、生命、自由、幸せの追求、こういう自明の理というようなことも申し上げたわけでございます。  それから、私はずっと、沖縄の銀行とか北海道の銀行とか不良債権の問題についてお話をしてまいりましたけれども、結局、その際に、会計原則ということを政府の方もおっしゃるわけですが、その基本になっておるところの真実性の原則とか明瞭性の原則あるいは継続性の原則といったことも申し上げまして、その延長上できのう質問を始めたのが、企業における危機対応能力を示す基準が自己資本比率ということになるんだろうというところまでいったわけでございます。  最近、昨年からいろいろな意味での政策の失敗といいますか、今日の不況に至ったいろいろな流れがあるわけですが、その過程の中で、いわゆる自己資本比率というものが諸悪の根源であるかのような言われ方をしてきているわけでございます。つまり、自己資本比率を満たすために公的資金導入云々というような議論も随分きたわけですけれども、その自己資本比率をカバーするかどうかということの議論、あるいは問題が出てきた原点をさかのぼりますと、株の含み損が我が国の金融機関の経営を脅かしているわけです。  そもそも、バーゼル合意というものが一九八七年十二月に合意をされたわけですけれども、株式の含み益といわゆるBIS基準についてお尋ねをしたいと思うわけであります。  つまり、銀行の信用創造能力が後退したまま今日の貸し渋りに至って、御承知のとおり、非常に自殺者もふえたりというようなことも起こっておるわけですけれども、この金融機関の含み損を考える上で重要なのは、BIS基準が、自己資本のいわゆるティア1ではなくてティア2の補完的項目の中に、株式など保有有価証券の含み益を四五%も算入しているわけです。実は、この八七年の合意に至るプロセスにおいて、日本側の方からこの四五%の含み益というものをティア2に加えるということを主張したということになっておるわけですが、BISというのは中央銀行の集まりでございますから日本銀行が参加をしておられるわけですので、まずその事実関係について、お帰りのところ恐縮でございますが、山口副総裁の方からお答えをいただきたいと思います。
  46. 山口泰

    山口参考人 お答えいたします。  当時、日本銀行がBISという場におきまして、国際的な自己資本についての考え方、ルールをつくっていくという議論に参加しておりましたけれども、その場合、私どもといたしましては、株式のいわゆる含み益というものを広い意味での自己資本の中に算入するのが適当であろうというふうに考えまして、そういう考え方を会議の場でも主張し、また各国の理解を得られるように努力した、そういう経緯がございます。  なお、一言だけつけ加えさせていただきますと、BISという組織そのものは各国中央銀行が集まつてつくっている組織でございますが、この中に幾つかの委員会がございまして、今委員御指摘のバーゼル銀行監督委員会という組織につきましては、これは中央銀行だけではございませんで、政府の銀行監督に携わっている当局も一緒になって参加しておる、そういう委員会でございます。
  47. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 この際に、きのういただいた資料ですけれども、その前の、一年前になるのでしょうか、八六年の五月以降は、日本自身の自己資本比率規制では有価証券含み益の七〇%を算入し得ることとされていたということでございますが、この点についてもあわせて御説明をいただければ幸いです。
  48. 山口泰

    山口参考人 ただいま御指摘の有価証券含み益の七〇%を自己資本に算入するという規制、これは八六年五月以降、我が国の国内における基準としてそういう比率が採用されておったというふうに理解しております。
  49. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 そういうことがございましたから、ということは、その七〇%を例えばゼロにするということではなくて、せめて四五%ぐらいまで下げて、含み益というものをこのティア2に入れることが、先ほども御答弁の中にありましたように、広い意味での資産の一部だということで合意をしたということでございます。  当時、日本の都市銀行その他の方から、七〇%をゼロにするのではなくて、イギリスとアメリカの間でこういつた動きがあったということもあるようですけれども、やはりゼロにしないでほしい、パーセントは別にしましてぜひ含み益に入れてほしいというような要望が、日本銀行、あるいは先ほどバーゼルの委員会には大蔵省も入っておられるということでございますけれども、民間銀行の方からもそれなりの陳情といいますか働きかけがあったのでございましょうか。
  50. 山口泰

    山口参考人 民間の金融機関の中からもそのような強い要望がございました。当時の我が国の金融機関の自己資本というのを見てみますと、有価証券の含み益というものを全く度外視いたしました場合には、もともと資産に対する自己資本の比率が非常に低い水準にございました。したがいまして、含み益算入なしということで国際的な統一基準というものができました場合には、当時我が国の金融機関が国際的な業務展開を行う上で非常に大きな制約がかかり、国際業務の広範な展開ということ自体が恐らくかなり難しいことになっていったのではないかというふうに思われました。  民間金融機関の主張というのもそういうことを踏まえた主張だったと思いますし、当時の我が国の当局といたしましても、そういうことも念頭に置きまして、冒頭申し上げましたような考え方を国際的な場で述べておったということでございます。
  51. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 民間の業界の方から働きかけがあったと。  それから、BISそのものは中央銀行の集まりであるけれども、バーゼルの委員会大蔵省の方もかかわっておられたということですが、銀行局長、やはり大蔵省も民間の銀行からのそういう訴えにかんがみて、日本銀行に対してといいますか、あるいはバーゼルの委員会において、その含み益をティア2に加えるというようなことについて積極的な発言あるいは動きをされたのでしょうか。
  52. 山口公生

    山口政府委員 この問題につきましては、民間からの要請、希望ということもあったとは思いますが、加えて、我が国における保有有価証券のウエートといいましょうか、そういったものの実情が諸外国と大分違っておるという現状にあったわけでございます。したがって、それがかなりの含みを持っておる、また売却すれば損失の処理にも活用できるわけでございますから、どうしてもそこは当然入れてもらうべきであるという主張を我が国としてはやったように思います。
  53. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 一九八七年五月に、当時全国銀行協会の会長行であった三井銀行が、自己資本比率についてのアメリカとイギリスの共同提案について論評しております。この中で、金融機関が保有する有価証券含み益を自己資本として算入することというのが一。それから第二として、金融機関が保有するほかの機関の株式等自己資本調達手段を自己資本から控除することに反対すること。それから第三点として、担保つき貸し出し、特に不動産担保つき貸し出しのリスクウェートを低くすること。この三点を申し入れているわけでございます。  今副総裁と局長の方から御説明がありまして、二つの理由を挙げていただいたわけです。確かに、国際展開の問題とか、それから売れば損失の処理になるというような理由もおっしゃっていただいたわけですが、とはいえ、三井銀行、当時の銀行協会の会長行さんがこの三つの点を主張されたわけですが、その当時の民間業界がバブルに浮かれていたと言ってはなんですけれども、やはり目先の利益を重視し過ぎていたという傾向が既に出てきたのではないか。そういう時点で行政の方で見通しがきかなかったのかということが、今から考えてみますと残念である気がするわけでございます。  私がきのうからこの問題を取り上げておりますのは、やはり将来に対する教訓を生かすという意味で、ここでどういう要因あるいはプロセスで意思決定がされたのかということを明らかにしておくことが今後非常に重要じゃないかと思って御質問しているわけです。  それで、例えば八七年以降どういうことが起こったかということをちょっと調べてみたわけですけれども、そもそもリスクアセットは八九年三月段階で八七年に比べて約四十一兆円になっています。それから、九二年三月には二二%の六十二兆円もふえているわけです。ですから、非常に投機的な、ぬれ手にアワのような利益が既に八七年以降、こういうバーゼル合意の後起こっているわけですね。それで、このBIS規制を用いた銀行のいわゆるバブル時代における利益の急増というものが、結局一たん株価が下がり始めるとどんでん返しになるということが後に起こってくるわけです。したがって、含み益を自己資本に算入することによって信用供与額をふやしたわけですけれども、含み益が減り始めますと今度はBIS規制の信用収縮メカニズムが実は起こってしまったということが、ですからこのバーゼル合意というのが初めに当たるのだろうと思うのですね。  それから、システム上、政策当局の方でその辺が、先ほど、売却をすれば損失の処理になるというふうにおっしゃったわけですけれども、ちょっと私もいろいろ調べてみますと、含み益が幾ら多くても自己資本のティア1の方を超えて補完的項目には算入できないということがあるわけです。ということは、バブル時代の銀行でございますので、これは増資をした方がいいということになるわけですね。つまり、銀行が増資を通して例えばコア項目を一億円拡大しますと、自己資本に未算入となっていた含み益が存在しているならば、それを補完項目、つまりティア2に入れることが可能になるわけですから、一億円だけ増資したにもかかわらず、自己資本は合計で二億円の増加ということになるわけです。したがって、銀行はこの一億円の増資で二億円の自己資本の増加になるわけですから、与信能力を十二・五倍ではなくて増資の二十五倍ふやすことができるということになるのだろうと思うのです。  したがいまして、八七年のバーゼル合意の後には増資が急増したわけですね。私が調べた数字ですと、八八年度には二兆円、九〇年度には二・六兆円ぐらいの大量の株式発行が行われているわけであります。  ですから、こうやって見ますと、含み益の自己資本への分類とそれから八%ルールからBIS基準が成っているわけですけれども、結局こうした銀行の資本政策の根源がこのバーゼル合意に結果的になってしまったのではないかということなわけですが、この辺についての認識と、こういったことになり得るということについて、つまり、八七年に合意ができた途端にこういった現象が、八八年、八九年と大量な株式発行とか出てきているわけですけれども、こういつたことはまるで予想もされなかったのか。もし仮に予想されなかったとしたならば、こういう優秀な方々が、日本銀行にも大蔵省にも、あるいは民間企業にもマスコミにも、いろいろな方がいらっしゃっても、国全体としてこういつた間違いをしてしまうということを今度は避けなければいけない。どういうふうにすればこういつた節目節目の予想もつかないような事態に対応できるかということに大変関心がありますものですから、御質問しているわけです。  もう一度言い直しまずけれども、まさにこういった現象が合意をした途端に起こってしまったというようなことがまるで予想がつかなかったかどうかということと、こういう現象がすぐにもう八八年ぐらいから起こり始めているわけですが、起こり始めたときに、実はそういった失敗をしたな、あるいはおかしいぞというようなことにすぐに気がつかれなかったのか、その辺について、副総裁と局長からそれぞれお答えをいただきたいと思います。
  54. 山口泰

    山口参考人 バーゼル銀行監督委員会というような場で、八〇年代の後半になりまして金融機関の自己資本というものについての問題意識が急速に高まりまして、国際的な合意に行き着いたわけでございますけれども、その根底には、やはり金融機関が業務を行う上で当然リスクというものが伴うわけでございます。損失が発生する場合もあるわけでございますが、そういうものについてきちんとした十分なバッファーを持って活動することが望ましい、そうでないと、万一の場合に、これは一国の金融だけではなくて、世界的に金融市場、金融システムというのが非常に大きな動揺を来すおそれがないとは言えない、そういう理解があったのではないかと思います。  したがいまして、私どもは、その自己資本というものを強調していく、それも損失に対するきちんとしたバッファーとして使えるような自己資本というものを強調していくという考え方は当然のことであろうというふうに思います。  繰り返しになって恐縮でございますけれども、含み益を算入することが適当ではないかという主張を当時いたしましたのも、我が国におきましては、それまで事実上金融機関の保有する有価証券の含み益というのが大きな金額に上りまして、それが不幸にして金融機関に損失が発生したような場合のバッファーとして機能していた、含み益が実質的に自己資本の役割を果たしていたという事実がまず第一にあったということを申し上げさせていただきたいと思います。  それで、こういう合意をつくった途端に、我が国ではいわゆるバブルという現象が起きたわけでございますけれども、先ほど御指摘いただきましたような非常に大きな株式の新規発行、増資というものは、このバブルの中で株価が急速に上昇するというような環境があり、そのもとでそういうような大きな増資が可能であったのではないか、そういう部分が大きいのではないかというふうに考えます。バーゼルにおいてこういう自己資本の合意をつくったこと、それ自体が御指摘のような金融機関による大きなエクイティーファイナンスを直ちに生み出したということよりも、当時の我が国における客観的な環境のなせる部分というのがかなり大きかったのではないかというふうに思います。  また、こういうおかしなことに気がつくということがなかったのかという御質問もあったと存じますけれども、これは、別の言葉で申しますと、現在の自己資本についての国際的なルールというものが、景気の上昇期には上昇をさらに促進してしまうような効果を持つ、景気の下降期には景気が弱くなっていくのに拍車をかけてしまうような効果を持つ、そういう意味景気の変動を増幅するような効果を持ちはしないかという問題でもございまして、実はそういうような効果をあるいは持つかもしれないというような予想といいますか予感というのは、つくった当時にも、我が国だけではなく、国際的にも結構ございました。含み益を算入したことによりまして、含み益の四五%でございますが、算入が認められましたことによりまして、あるいはそのような景気増幅的な効果というのが多少は強まった可能性はあろうかと存じます。  その点は、実はきちんとした実証分析をしてみませんとなかなか明確なことは申し上げられませんけれども、このバーゼル自己資本合意というものの中にそのような要素が、どの程度かという程度問題は明確に申し上げられませんが、要素として含まれているという認識はございます。
  55. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  今、副総裁がおっしゃいましたこととほとんど同じ感じでございますが、いずれにせよこのBISの取り決め、合意は国際的な合意でございまして、我が国だけが特例として認められているものではない。すなわち、国際的な会議で合理性があるということで認められているものでございますので、そうした前提に立ったときに、先生がおっしゃったように、それがその後のバブル期にある 意味では増幅効果を助長したのではないかというような御指摘については、それは私も否定はすべきではないだろうと思いますが、ではそのBISのことが原因でこういうバブルが起きたのか、あるいはより増幅された主因なのかということになりますと、私はちょっと違うような感じを持っております。  それは、もう先生の御意見を尊重しながら申し上げたいと思いますが、当時地価の上昇というものが非常に大きな要因でございました。それで、資本市場におきましても含み資産株というようなものがもてはやされました。株価はどんどん上昇する。そうしますとエクイティーファイナンス、増資等がどんどん行われる。非常に安いコストで、一見安いコストで、将来にわたると重いコストになってしまうのですが、そういう安いコストで資金調達が資本市場からできるということでバブルが再生産され、それでまた金融機関が貸し出しをどんどんふやす、また土地がどんどん上がるという、今になってみますとそうした展開が裏目に出るもとだったという反省はあるのですけれども、そういった現象が起きたのではないかと思います。  バーゼル合意と直接的な関係ということについては否定はいたしませんけれども、それが主因であるということについてはちょっと違った考えを私は持っております。
  56. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 山口副総裁の方の御答弁では予感もしたというお話がございました。つまり、景気増幅の効果ということ。銀行局長の方では、土地の問題の方が主因であって、このバーゼル合意というのはむしろ誘因ではないかということでございますけれども、一たん現象が出てきますと、主因は土地であっても、仮にそういう見方が正しいとしましても、効果上は主因でないことの方が影響が大きいということもあるのだろうと思うのです。  例えば、一たん株価が急落し始めました一九九〇年ですけれども、含み益は八九年の三月期の三十九兆円から翌九一年には二十二兆円、つまり二年間で半減したわけです。次の一年でさらに半減して十兆円、ことしの三月期には大手十九行のうち五行で含み益が消えまして、十九行全体で四兆八十億円というふうに下がってきているわけですね。  仮に、そういう土地の問題も非常に大きな要因であったかもしれませんけれども、実際にこういった現象が出てきますと、つまり、そもそもの大泥棒はだれかと。泥棒どいう表現はどうか知りませんけれども、しかしながら、現象としてこういう状況になってきますと、やはり対応すべき対象としてのこの含み益ということについて、政策当局の方で、例えば先ほど副総裁の方は予感もあったということでございますけれども、これはぜひ実証分析をでき得ればしていただきたい。つまり、実証分析をすることが今後の日本全体にとっての、あるいは世界の金融全体にとっての共有財産になると思います。  やはり、日本の場合に、特にだれが政策を決定したかというのは非常にわかりづらいわけですね。今度のビッグバンその他、きょうあるいはきのうから書生っぽい話をしていますのは、やはりその責任の所在を明確にするためには、哲学といいますかルール、考え方をはっきりさせておくということが責任の所在という面でも重要だと思って申しているわけですが、そういった意味で、どういつだ形で意思決定がされていったのか、あるいは予感がしたときに、それが日本政府全体としての政策に、どういうふうに可能であったのかという意味でも、ぜひ実証分析をしていただきたいと思いますけれども、予感がどこの段階で、日本銀行としてあるいは副総裁としては、この辺からやはりおかしくなってきた、それに対してどういう対応が可能かというふうな、例えばこのBIS規制の問題に関して起こり始めたのかということについて、認識があればお答えいただきたいと思います。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 山口泰

    山口参考人 ただいまの御質問、大変難しい御質問でございまして、いつごろからと明確なタイミングをお示し申し上げるのは、やはりこれはきちんとした実証分析を踏まえた上でのことで申し上げるべきことではないかと存じます。  先ほどちょっと、予感というような表現で申し上げましたのは、自己資本のルールの中で景気と一緒に動いてしまう要素というのが、一つは有価証券の含み益というところに潜んでいたのだろうと思いますが、私の理解しているところでは、各国の議論の中で、それ以外のところにもあるいはそういうような要素があるのかもしれないというような議論が当時あったように記憶しております。  例えば、景気がよくなるということは、金融機関にとりましても収益がふえる、つまり自己資本がふえるということにつながっていくわけでございまして、もし、そのふえた自己資本を土台にして信用の拡張が起こりますと、これは景気の拡大をその局面では促進するということになるわけでございまして、そのような幾つかの側面というのを総合的に考えました場合に、景気に対して同じ方向に動くような性格をこの合意は持っているのかもしれない、そういうような認識が当時あったように記憶しております。
  58. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ある意味では、先ほど山日銀行局長の方で、BIS規制よりも土地のお話をされましたけれども、結局、株価にしても土地にしても、下がるということはあり得ない、あるいは想像をしていらっしゃらなかったのではないかということがあるのではないかという気がいたしますが、その辺はいかがでしょうか。
  59. 山口公生

    山口政府委員 確かに、右肩上がりの経済をずっと続けてきておったその延長線上で土地がますます高騰している、こういう現象が起きたわけです。それにつられた形で株価も上がってまいりました。つまり、資産価格がみんな上がっていったわけでございます。そのときのみんなの心理、私も含めてでございますが、何か日本経済は新しい経済に構造が変わったのではないかとすら思うような論調がありました。今から振り返ってみるとそれが全く違っていたということになりますけれども、当時として、バブルの真っ最中におきましては、土地というのは希少価値である、これはそう簡単に下がるものではないというような雰囲気があったということをよく覚えております。
  60. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 だとしますと、決して揚げ足をとるわけではございませんが、大臣にもちょっと、これは教訓として重要なことでございますの考えていただきたいわけですが、先ほど銀行局長の方で、これは国際公約であるのでとおっしゃいましたけれども、このバーゼル合意に参加をした国々においては、日本のように株とか土地というものはずっと右肩上がりで上がり続けるものだろうと思っていた国というのは少ないのじゃないか。むしろ、株とか土地というものは上下をするものだという認識のもとでこの合意をつぐつたのではないか。それが国際公約をつくる際の合理性になるわけで、説得力になるわけですから、恐らくほかの国々にとっては、日本と違いまして、土地というものは上がり下がりをするものだ、株というのは非常にリスクもあるものだ、ハイリスク・ハイリターン、そういったことを織り込み済みでこの国際公約に合意をされたわけでしょうが、ところが日本の場合には、恐らく日本のほとんどの方々がそういう認識がなかった。  したがって、もちろん仮に主因が土地の問題であったにしても、バブルが起こったときにこういった現象ができてしまったということは、やはりこの国際公約をつくる際に基本的なことについての認識が一緒でないと、結果として日本が今日のような状況に至ってしまったということになるのではないかと思うのですが、その辺の認識についてはいかがでしょうか。どちらでも結構でございます。
  61. 山口公生

    山口政府委員 当時のバーゼル合意のときの参加国がどういうことを考えていたかは知る由もございませんが、当時においては、やはり各国の銀行、とりわけ国際的に活動している銀行がどういう条件であれば有資格か、俗に言うとそういうような議論をしたわけでございます。したがって、我が国は我が国の特色を反映した主張をするのは当然でございまして、当時の担当者が我が国の事情も説明し、参加国の人たちと意見を調整した上で合意を得たということは必然の成り行きであったと思います。その後の変化について、その議論が、その決定自体を間違いだというような性格のものではないと私は思います。
  62. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 いや、私は、それは非常に難しいことであったかもしれませんけれども、金融ということの重大性から考えますと、やはり株価は下がることもあり得るということを考えて、少なくても可能性の中には、気持ちの上では難しくても頭の中では考えて臨むべきではなかったかという気がするわけです。  お二人山口さんがいらっしゃるのですが、日本銀行の方の山口副総裁、この点について、今、銀行局長の方は当時の決定は間違いではなかったということでございますけれども、副総裁はいかがでしょうか。つまり、BISそのものは基本的には日本銀行が主たる参加者であることには間違いないと思いますので、副総裁の方からお答えいただきたいと思います。
  63. 山口泰

    山口参考人 今御指摘の点は、バーゼル合意の中で申し上げますと、有価証券含み益の中の何%までをいわゆるティア2のキャピタルとして算入を認めるかという掛け目の問題にかかわっている部分が大きいのではないかというふうに思います。  含み益を算入すること自体については、各国の合意がここで成立したわけでございますから、例えば日本なら日本において、さっき申し上げたような次第で、含み益というのが事実上自己資本として機能していたというようなことがやはり認められたというふうに了解していいのではないかと思います。  その場合に、これは価格変動が非常に大きい商品についての含み益でございますから、そこはやはりかた目に見込む必要があるというのは当然の前提だったと思いますし、そのような理解の上で四五%という掛け目が決定されたのではないかと存じます。
  64. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 そういう流れであったかとは思いますけれども、先ほど、当時の、八七年の全銀協の会長行の三井銀行の方の論評が出ておりますけれども、もう一度言います。金融機関が保有する有価証券含み益を自己資本に算入すること、それから、金融機関が保有する他の機関の株式等自己資本調達手段を自己資本から控除することに反対すること、それから、担保つき貸し出し、特に不動産担保つき貸し出しのリスクウェートを低くすること、この辺が四五%にする上であったのだろうと思いますけれども、やはり先ほどの副総裁の方のお話の中で、国際業務をする上での観点というのがございましたけれども、仮に、株が下がること、あるいは土地が下がることをそんなに予想できなかったにしても、民間銀行の方が極めてアンビシャスに展開をしょうとしているというぐらいのことも予想ができなかったのか。  実際に現在の銀行の状況を見ていますと、海外でもうけているところは恐らくないのだろうと思うのです。むしろ海外の方が今大変な負担になっているわけです。したがって、これをさかのぼってみますと、やはりその辺の問題点が非常にこの辺によく出ているような気がするわけでございますけれども、その辺の民間金融機関の動向についてどういう認識を持っておられたのかについても、副総裁の方からお伺いしたい。
  65. 山口泰

    山口参考人 ただいま委員が引用されました当時の三井銀行からのコメントでございますけれども、恐らくこれは三井銀行が、この自己資本合意ルールについて、BISの委員会の方から各国の金融界に対しまして、こういう案についてどういうふうに考えるかというような原案を示し、それについて金融界の意見を求めたときに提示されたコメントではないかと存じます。  それは、各国において同じような手続を踏んで、いろいろなコメントが各国の金融界から原案に対して寄せられたわけでございますけれども、そういう最終的な合意につくり上げていく過程で金融界のコメントを求めるような場合には、当然その国の金融界なりのいろいろな事情、要望というものがそこに反映されてまいります。そのことが直ちに最終的な合意に組み込まれるということではございませんで、やはり全体としての整合性、合理性というものがないと最終的な合意には取り入れられないわけでございまして、私、ちょっと詳しいことはすぐ答弁申し上げる用意はございませんけれども取り込まれた部分と取り込まれなかった部分といろいろそれぞれの国についてあるのではないかと存じます。  焦点は、恐らく株式の含み益を例えば四五%なら四五%というような率で算入した場合に、その後の株価の下落の幅に比べましてちょっとかた目に見込む度合いが小さかったのではないか、そのことが金融機関の与信の拡張を途中の段階で招いてしまったのではないか、そういう点にも一つあるのかなという気がして御質問を拝聴しておったわけでございます。  確かに、我が国ではその後問もなくバブルという現象が始まってしまいましたので、九〇年代初めのバブルのピークに比べますと、その後の株価とか地価の下落率は、これはだれの予想をも超えてはるかに大きなものになっていったわけでございますが、これはどの国をとりましても、これだけ大きな振幅が起きますのは、それこそバブルという非常に特異な現象があったような特別の場合に限られるのではないかというふうに私は思っております。したがいまして、このときのバーゼル合意における含み益の数え方というものが、少しその後の状況を考えると緩きに過ぎたのではないかというようなことは、当時の判断としてそこまで言うのは少し酷ではないかなというふうに思っております。
  66. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 確かに、バブルが出て、その後の現象を先ほどいろいろ数字を申し上げましたが、その程度の段階であれば、当時とすれば酷という考え方ももっともかなという気もしないでもないわけです。ただ、ここ一、二年のこういった金融デフレといいますか不況になってきまして、実際に貸し渋りが起こってきて、その結果たくさんの方が自殺をされたりとか、あるいは今後もまたいろいろな倒産が出るかもしれない。事ここに至ったということから考えますと、私はきょうは将来に対する教訓ということで言っておるわけですけれども、そのバブルというのが仮に極めてほかの国に比べて特異であったにしても、まさにここ数週間はビッグバンの話をしているわけですから、ビッグバンというのはいろいろなことが起こり得るわけですね。ですから、それに対応するような政策をしていくという意味では、こういう大きな節目節目の対策というものは、やはりいろいろなことを予想しながらやっていただかなければいけない。  そういう観点から見ますと、間違いだったと言うか言わないかは、これは表現の問題がありますが、何が当時でき得たのかということをやはり考えていただく必要があると思うのです。当時、一歩とまって、こういった政策もとり得た、少なくてもこういう点は配慮が足りなかった、あるいは十分勘案していなかったという点から、今から考えてみますと、ここまで現象が悪くなっているということを考えますと、まるで間違いがなかったというふうに言い切れるのか、あるいはここで言い切ってしまったのでは将来に教訓として残れないのではないか。  たまたま最近出ました文芸春秋で梶山前官房長官が、非常にざんげの気持ちからというようなこともおっしゃって、それから、住専のときに銀行は大丈夫なんだというふうに言われてそれを信用してしまったというようなお話もございましたけれども、今から考えてみますと、こういった点を政策として妥当な政策をいろいろな金融機関等を含めて施行していくためには、何を教訓として生かさなければいけないのか。当時についてその反省の弁が全然ないということでは、今一生懸命やっているこのビッグバンもいろいろなリスクがありますから、非常に難しいのではないかという気がするわけです。  そこで、大臣、きょうこのバーゼル合意について、あるいはきのうから御質問をしてきたわけですけれども、今日のいろいろな貸し渋りの問題、それからこの土地再評価法によって、含み益の出る土地は含み益の出ている企業が時価で計算して、それから一方、含み損の出ている株は簿価にするというのは、これはやはりおかしいと思うのですが、こういつたことも含めて、こういう政策の節目節目における意思決定、そしてその妥当性の正否について将来に生かすということが非常に重要だろうと思うのです。  その点について、きょうはこのことについてのみ随分細かく質問してきたわけですが、大臣、お聞きになって、非常に重要な点でございますので、本当にこのバーゼル合意というものは日本政府にとって妥当であったのかということも含めてお答えをいただければ幸いです。
  67. 山口公生

    山口政府委員 先生が一貫して御主張されていることはよくわかりますけれども、私自身は、バーゼル合意の適否というよりも、私どもが今振り返っていろいろ考えなければいけないことといえば、含み益というものをどういうふうに評価していたかということだろうと思うのでございます。  これは、私どもを含め、また金融機関の経営者も含めまして、含み益というものがいかにもたんすに置いてある現金の束のようなつもりで、ちょっと表現が悪いのでございますので、不適切であれば取り消しますが、もしそんなような感じでいたとすれば、それは経営の例えばリストラへの取りかかりがおくれたとかいうことにつながったかもしれないというような意味で、バブルが生んだそういった含みというものを日本経済全体が当てにしておったということであれば、それは今後経験として生かしていかなければいけないことだろうと思うわけでございます。
  68. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 その場合に、まだ若干時間がありますが、その含みに関して、土地と株の含みに対する対応が今ちょっと申しましたように違っているわけですね。この辺もやはり一貫性がないと、含みに対する認識が間違っていたというか甘かったということですが、その教訓が生かされないのじゃないでしょうか。
  69. 山口公生

    山口政府委員 それは若干私ども意見を異にすることになると思います。土地につきましては、商法の規定により簿価でございますが、この簿価と現在の時価というものが非常に乖離している、したがって、簿価をこの機会に再評価して、一回評価がえをしょうということでございます。  株の方は、もともと商法の原則は簿価かあるいは低価かという形に原則なっております。ところが、私どもの銀行の経理の健全性、より健全なものが好ましいという観点から低価法、つまり売り買いしないものも全部、値段が下がったら全部それを損したものと見て利益で埋めて、それで簿価を修正しなさいという低価法を強制的にとっていただいていたわけです。それを、三月三十一日の株価で経営が全く振り回されてしまう、それによってまた貸し渋り現象まで起きるということで、経済全体に対して余りにも健全な経理が逆にあだになってしまうということがありまして、商法の原則に戻してどちらでもいいということにしたわけであります。  したがって、今先生がおっしゃったことも、そういう御主張があることも承知しておりますけれども、私どもとしてはそれはあくまで原則に戻す。そうするとよくわからなくなるじゃないかという御批判があります。これはむしろディスクロージャーをきちっとやるということで透明性は確保しておるわけでございます。
  70. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  71. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、上田清司君。
  72. 上田清司

    ○上田(清)委員 どうもお疲れさまです。  前回、保険契約者保護機構並びに投資者保護基金の一定の評価を私なりにさせていただきまして、金融ビッグバンの中でいわば消費者の保護のネットが必要だ、セーフティーネットが必要だということを論点の一つとして申し上げながら、全体を大くくりにするようなシステムをつくったらなおいいのではないかという御提言もさせていただいた経緯がございます。それもまた順次検討させていただきたいという御答弁もいただいておりますが、ここでちょっと気になっているところが、それぞれの機構、基金に日銀から借り入れができるという論点であります。  従来、金融の最後のとりでとして、中央銀行の役割という点において、そうした預金保険機構を初めさまざまな金融決済システムの中に日銀が常に担保しているということを、非常にそれはそれとして評価しなければならないというふうに思いますが、いわゆる生保、損保あるいはまた証券という分野に至るまで日銀から借り入れができるというところについて、これは決済システムとはちょっと違う、そういう認識の中で、ここはちょっと踏み込み過ぎではなかろうかという考え方を持ちます。こういう非常時においてやむを得ないのではないかという御意見もありますが、私自身としてはちょっとこれは行き過ぎではなかろうか、こういう見方を持ちます。  この法案が出てきたとき、当然日銀と大蔵とのすり合わせ、議論、そういうものがあったと思いますし、当然日銀の政策委員会などでしっかり議論もされたのではなかろうかと思いますので、この辺の経過について、それからまた日銀としての考え方、この二点について日銀側からお話を承りたいと思います。
  73. 安斎隆

    安斎参考人 お答えします。  まず、日本銀行としての考え方でございますけれども、先生もおっしゃいましたように、証券会社及び保険会社は資金の決済機能を担っていません。ですから、仮に破綻が生じても、通常それは直接システミックリスクにつながるということは考えにくいわけです。しかし、御承知のように、現在の状況というのは我が国の金融システムに対する信頼が低下している。こういう状況のもとでは、証券会社とか保険会社の破綻であっても、それが円滑に処理されない場合に、金融システム全体に対する不安をあるいは呼び起こすかもしれない。そうなりますと金融あるいは資本市場全体の機能も損なわれるな、こういうことが我々の物の考え方より完全に排除できないわけでございます。  そういうことで我々も関与するということなんですけれども、それでも日本銀行としての考え方はちゃんと出させていただきます。それは、何よりも信用の秩序を図る場合に実施するということが一つでございますし、しかも二〇〇一年の三月までの特例措置であるということですし、三つ目は政府保証がつけられる、これを求めるということでございますし、四つ目は民間から資金調達する、そこで不足が生じる場合に限る、こういうこと、この四つを前提としまして、投資者保護基金並びに保険契約者保護機構が日本銀行からの借り入れを可能とする仕組みを設けることに我々としては同意した次第です。(上田(清)委員「三つ目がよく聞こえなかった」と呼ぶ)三つ目は、政府保証をつけてくださいということを求めるということでございます。  それから、先生の御質問にもう一つ、どういう手続でやったのかという御質問があったと思います。それについてお答えしますと、この法案というのは政府により作成されたものでございますけれども、こういう保護基金あるいは保護機構が日本銀行からの借り入れを可能にする規定を盛り込むということについては、あらかじめ大蔵省から相談がございました。この御相談を受けまして、我々日本銀行では、我が国金融システムに対する信頼が低下している、こういう現状を踏まえて政策委員会にこれを報告しました。その上で、二〇〇一年三月までの特例措置として基金や機構が日本銀行からの借り入れを可能とする仕組みを設けることにつきまして同意した、こういうことでございます。  ただ、条文上はそういうふうに日本銀行からの借り入れが可能であるという条文にすぎません。したがって、日本銀行は、基金や機構が実際に資金調達を行う際に、その都度貸し出し実施の適否を政策委員会で判断していくということでございます。  以上です。
  74. 上田清司

    ○上田(清)委員 非常に明快な御答弁をいただきましてありがとうございます。  幾つか考え方を整理していただきました。政府保証を求めるという部分に関しては、金額だとかそういう想定とか、そういうのはなさっているのですか。
  75. 安斎隆

    安斎参考人 規模等については議論しておりません。想定もしておりません。
  76. 上田清司

    ○上田(清)委員 考え方も、やむを得ない部分もあるというふうに私も認めます。評価はいたします。ただ、どこまでも、民間からの資金調達の後にという部分がありますので、やたら拡大するというふうにも思えませんが、まさにモラルハザードにならないように、そういう条件的なものを何らかの形で政策委員会で御検討されなかったのかな、この辺がちょっと気になるところなんですが、この点についていかがですか。
  77. 安斎隆

    安斎参考人 申しわけありません。私、担当を先週からやっておりますので。  先ほど、四つの条件がございます。こういう条件をそれぞれ満たせばそのこと自体が限度になる、こういう考え方を我々としてはとっているわけでございます。
  78. 上田清司

    ○上田(清)委員 政策委員会で論議されたかどうかを聞いているんですよ。だから、イエスかノーかだけでいいのです。論議されたなら、されたとか。
  79. 安斎隆

    安斎参考人 先ほど、日本銀行の政策委員会報告をしたということを申し上げました。報告を受けて、政策委員会としてはこういう四つの条件を付したということだけでございまして、金額等のめど等、その議論があったというふうには聞いておりません。
  80. 上田清司

    ○上田(清)委員 時間ももったいないので、どうもいま一つ、答弁者側の不安感を感じますので。  政策委員会の月報ですか、この論点はあれに記述が入っているのでしょうか。私も時々読んではいるつもりなんですが、見逃しておりますので。
  81. 安斎隆

    安斎参考人 政策委員会報告は三月十日にやっております。これは、私どもの手続上は政策委員会に対する報告という案件にしておりまして、決定案件ではございませんので、政策委員会の月報でその議論の内容が出るということはございません。ですから、政府の方でこういうことを決定するという報告がされて、それで、政策委員会としてはこういう四つの条件があるということが議論されたということを述べておりまして、月報にはそういうことは出ません。
  82. 上田清司

    ○上田(清)委員 今の答弁、非常に大事なことだと思うのですよ。日銀の本質にかかわるような話だとあなた自身も最初に申し上げたでしょう。私も申し上げた。これは、日銀の中央銀行としての一番本質にかかわる話の中の一つだと思います。  そういう点で、これはむしろ政策委員会マターじゃないか、こういう議論が、大蔵から原案が上がってきたときに、そういうマターじゃないかという認識を私は持つんですけれども、何か、理事になられたばかりだということで、用意されてきた部分は明確ですが、そうじゃない話になってくると何か不安感を感じますので、これはまたの機会に避けます。これは非常に大事な議論ですので、どうもだめだということがわかりましたので、これで終わりにいたします。  大蔵側にちょっとお尋ねしますが、このすり合わせについて、大蔵側は日銀に対して、だれに、どの機関に対してすり合わせをお願いしたのでしょうか。
  83. 福田誠

    ○福田政府委員 正確に網羅的に申し上げることはちょっとできないかもしれませんが、少なくとも私保険部長が、当初は信用機構局長お話しさせていただきましたし、最終的に本間理事とも御相談しております。それから、銀行局長からも、日本銀行のしかるべきレベルの方にお願いをしたと存じます。  もちろん、今、日本銀行から答弁ございましたように、この借入規定を盛り込むことにつきましては大変重要でございますので、あらかじめ、日本銀行と今申し上げたような協議をいたしたということでございます。
  84. 上田清司

    ○上田(清)委員 まさに、政府、大蔵省の方から原案がつくられてきて、日銀の新法に基づく独立性という意味においても、これは日本銀行の存在そのものが問われる議論になってきまずから、内部で報告をして、余り議論はしなかったようなニュアンスのことを言われたら困るんですね、これは本質にかかわる問題ですから。政策委員会マターだと私は思っておりますので、もう一回確認して、議論の場にさせていただきたいということを申し上げたいと思います。  安斎さんはどうぞ、お時間、お急ぎだったら結構です。  それで、先般の大蔵委員会で問題提起だけさせていただくということで、副総裁の御感想だけお求めした件でございます。  まず、我が委員会の与党の議員でもあります砂田議員から、昨年の四月の日銀法改正のところで、職員で二千万円以上の方々は八十人でございますという御答弁があったんですが、実際は違いますねということを申し上げたところ、それは削減計画でありますというような数字を言われましたけれども、それでは虚偽の答弁に近いよという議論を私はしております。  もう一度この点について、例えば八年度の決算をもって言われたのか、九年度の予算をもって言われたのか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  85. 引馬滋

    ○引馬参考人 お答えをいたします。  昨年の四月二十五日の衆議院大蔵委員会におきます砂田委員のお尋ねというものは、今、年収が二千万円以上の職員は何名いるか、こういうものであったかと思います。  当時私どもでは、職員の中で、幹部クラスの者を中心にして給与の減額調整を実施している過程にございました。この基本的認識、その背景でございますけれども、やはり給与が高いのではないか、そういう基本的認識のもとで幹部クラスを中心に減額の調整を実施していたわけでございまして、そういう過程の中では、年収二千万円以上の職員の数というものも当時年々減少をいたしておりました。したがいまして、当時、八年度の実績人数をお答えするというのは、今申し上げましたような給与減額調整の実情にかんがみますと必ずしも適当ではない、このように考えたところでございます。  そうした中で、当時、九年度につきましては、定例給与、職務手当、それから賞与、これは標準的な支給率を掛けて算定をした賞与でございますが、これらの合計額が二千万円を超えるというのは局長、次長あるいは支店長など、資格でいいますと参事クラスという層に限定する、こういう方針を策定いたしておりまして、したがいまして、参事クラスの数、当時約八十名というものをもってお答えをさせていただいたというのが経緯でございます。  その後判明いたしました九年度の年収の実績というのを見てみますと、この三月末時点の在籍者の中で年収二千万円を超えております者は、参事クラスを中心に九十九名でございます。  当時の八十名と九十九名というものの差でございますが、課長クラスで二千万円を超える者が出たということでございますが、これは、賞与につきまして、業績評価というものを基準に加給制度というものをとっておりまして、こういう加給が加わってきたとか、あるいは単身赴任手当など、流動的な要因で収入がふえた結果ということでございます。
  86. 上田清司

    ○上田(清)委員 常にそうですが、日銀は給与が高いという伝説がありまして、常に出される資料は低目低目の数字を持ってこられる、こういう傾向があるのですよ、はっきり申し上げまして。そういう答弁の、あるいは資料の出し方がずっと一貫してありまして、最初に年収を出したときには、このところでは職務手当と定例給与と賞与にすると。本当にそうですがということで今度は細かく追及していくと、それ以外の手当が出てくるという形で、実際はそれよりも高い。こういう資料の出し方をされますし、八年度の決算の部分で、多分、私は平均年収を出されたのではなかろうかなというふうに思っているのです。  その当時であれば、課長級だけでも、多分に推測ですけれども、五十人や六十人おられたというふうに思いますから、八十人という数字と全く合わない。多分、合計で百三十人から百五十人ぐらいいらっしゃったのではないか、局長、支店長クラス。そういう認識と、八十人に減らしたいという、局長、支店長クラスまでにしたいという認識との差というのは余りにも違い過ぎる。これはもう後知恵的な詭弁にしかすぎないとしか思いようがないような認識を私は持っております。そういうふうに思われても仕方がないというようなことを、まずここの席で申し上げておきたいと思います。  それと、年収の代表的な層と平均年収というふうな形でこの資料を出してこられました。この平均年収というものと階層というもので代表的な階層というときに、この代表的な階層というのは何をもって代表的な階層にされているのか、これをお伺いしたいと思います。
  87. 引馬滋

    ○引馬参考人 代表的な階層というお尋ねでございますが、これは、例えば局長級であれば平均的な局長の職務を担っている者、課長であれば同じく平均的な職務を担っている者ということでございまして、ちなみに局長級ということでありますと、中央銀行の職務の中では最も重要な職務であります発券局長等々がこれに該当するということでございます。
  88. 上田清司

    ○上田(清)委員 そうすると、日銀の月報も出ていますし、短観も出ておりますが、この資料統計になじまないやり方をなさっているというふうに私は思います。  なぜそういうふうにして持ってこられるのか、私にはわかりませんが、例えば、一人当たりの平均給与は幾らですかと。三十四歳で十三年、三十四万でございます、こういう数字が出てきます。それで掛け算していくと、この間私がパネルを見せましたように、合いませんねという話になってきたら、事務方の打ち合わせの中で、いや、それには職務手当が入っておりませんというお話が出てくる。いいですか。しかし、この職務手当のところでの説明は、一般企業で言うところの管理職手当と同じものですというふうな言い方を説明の中で書いてありますよ。それはまさしく平均年収の中に入れていくのですよ。都合のいいときだけは違うところに置いて、もう本当にいいところ取りなのですよ。常に資料の中で出されてくる部分が少な目、少な目に見えるように出されてくるから、余計に疑いで見られてしまうのですね。それと同じように、つい私も疑って見ざるを得なくなりまして、もともと私は性格いいのに、性格悪くなってしまうのですよ。  この笑いは、評価されて笑っているのか、嫌みで笑っていらっしゃるのかわかりませんが、一般事務費の中に諸報酬というのがあるのですね。このことについてちょっと、事前に中身は何ですかということを調べておいてくださいということを言っておりますので、予算書の中での諸報酬、これは一体何なのかとお尋ねしたいと思います。
  89. 引馬滋

    ○引馬参考人 諸報酬でございますが、これは、私どもが業務を進めていきます上でのもろもろの作業等の委託の契約を行いました外部の者に対して支払われる経費を計上する、こういう科目でございます。  具体的には、例えば最近私どもの業務、かなり機械化を進めているわけでございますが、こうした我が国の決済システムの改善に係りますシステム開発などのために作業を委託しております外部業者に対する支払いというものはこの諸報酬の科目に計上されておりまして、諸報酬の相当程度がこういうシステム開発のための費用というものが占めているわけでございます。そのほか、営業所関係の食堂の運営あるいは清掃等々の委託を行っております外部業者に対する支払いなどが含まれております。
  90. 上田清司

    ○上田(清)委員 例えば、内部の手当類には全く類しないものでありますね。
  91. 引馬滋

    ○引馬参考人 ただいま諸報酬については御説明申し上げましたけれども日本銀行の職員以外の外部の者に対しての支出が計上されているということでございまして、いわゆる日本銀行の職員の人件費に充当するということはあり得ないことでございます。
  92. 上田清司

    ○上田(清)委員 今までに、予算管理上の人数、実人員という以外に、平均人数という概念を私の方に説明の過程の中で持ってこられました。平均的にその年度にいた人数だという新しい概念で、なかなか私も戸惑っているところで、まだ十分精査し切っていませんが、一つだけちょっとお尋ねしておきたいと思います。  平成八年度に、予算作成時に六千百五十八人、それから実績で六千二十五人、百三十三人、実績の方が少ないわけですね。これはいただいている資料の数字のとおりでございますが、予算額よりも決算額が多分百三十三人、予算想定時の平均人員よりも実績で百三十三人少なければ、約九百二十万という説もございますが、退職金だとかそういうのもございますから、退職金の中にまた年金が入っているという、びっくりしましたけれども、そういう計算を概算で適当に計算しまして、仮に一人一千万だとしても十三億ぐらい、やはりこういうときには減額になるのでしょうかね、決算で。
  93. 引馬滋

    ○引馬参考人 ただいま人員の点で幾つが御指摘をいただいたわけでございますが、先生の問題意識としては、平均の一人当たり年収というものを算定するに当たってどの数字を使うのが正しいのか、こういう御質問の御趣旨かと思います。  私どもの場合、まず全体の人員の推移でございますけれども、近年、人員を削減するという方針をとってまいりまして、傾向的には人員は減少傾向にあるわけでございます。年度末の人員を発射台にいたしまして、年度初に新卒の採用を行いまして大量の人員が入ってきて人員がふえるわけでございますが、その後、年度末にかけまして徐々に職員が退職していくわけでございまして、この出入りは、傾向として見ますと、今申し上げましたように、人員の削減方針をとっているというもとでは、年度末対比では、前年度よりも当年度末の方が人員が減るというのは一般的な傾向でございます。こういう事情を考えますと、年度中の平均人員というのは一般的には年度末の人員を上回る、こういう形になるというのが背景でございます。
  94. 上田清司

    ○上田(清)委員 正しく私の質疑にお答えになっていないので、ちょっとわかりやすい方に変えます。  平成二年でいきましょう。平成二年の平均人員の実績が七十人、見込みより多くなってしまったのですね。どっちかというといつも実績が少ないのです。しかし、この年は実績が多くなってしまったのですね。そうすると、当然、予算より決算の方が大きくならなくてはいけませんね。そうでしょう。これだけはちょっと確認させていただきたいと思います。
  95. 引馬滋

    ○引馬参考人 御指摘のとおり、私どもが提出いたしました資料では、平成二年につきましては、年度末の見込みの人員と実績というものが七十名の差がございまして、実績の方が上回っております。  予算、決算の関係でまいりますと、先ほど言いましたように、給与支払い総額というものは月々の人員掛ける給与水準額になりますので、いわば積数になってくるわけでございます。そういう意味からしますと、この年度末の人員をもって給与の支払い総額を算定するということではなくして、平均の人員というものがかぎを握るということでございまして、予算策定時の人員と実績の、平成二年度であれば七十名の差が先生が御指摘のような差の背景になっているというものではないというぐあいに御理解をいただきたいと思います。
  96. 上田清司

    ○上田(清)委員 私が聞いているのは、最小限度、予算よりも決算の方が大きくなるのではないですかということを聞いているのですよ。
  97. 引馬滋

    ○引馬参考人 御指摘のとおり、この人員でいきますと七十名差ということでございますので、実績人員が予算策定時の想定人員を上回っているという意味では決算額が多くなるということでございます。
  98. 上田清司

    ○上田(清)委員 時間が来ましたが、実はこの年、決算額の方が少なくなっているのですよ。こういうことが多いということなのです、あなたたちが出している資料というのは。  終わります。また後で細かく詰めましょう。
  99. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、並木正芳君。
  100. 並木正芳

    ○並木委員 平和・改革の並木でございます。本日もまたお疲れのことかと思いますけれども、よろしくお願いいたします。  ただいまもいろいろ厳しい質問があったわけですけれども金融システム改革の中、金融行政そのものも当然改革されていかなければならない、不祥事がいろいろ続いておりますけれども、早くそういったものから立ち直ってほしい、不良債権等を一日も早くクリアしてほしい、こういうふうに思うわけです。先ほどの大臣の話の中では、松野三木発言の食い違いも調べていくというような前向きなお答えもいただきました。ぜひ、そういうような中で国民に信頼される大蔵行政であってほしいと思います。  昨日に続いてまた質問させていただくわけですけれども、昨日もお話が出ましたが、拓銀があっけなくつぶれたわけでございます。政府はこれまで二十行はつぶさないという中で来たわけですけれども、その二十番目の銀行でございますが、つぶれてしまいました。これからビッグバンの中で優勝劣敗というのは続いていくのではないかなというふうに思います。  優良な外国のプレーヤーが、これは来てもらわないと困るわけですけれども、来る中で、日本の銀行というのがこれまでの体制を維持し続けられるのかというのは極めて疑問であるわけであります。これが破綻なく存続し、いわゆるグローバルなプレーヤーに日本の金融機関が育っていくためには、邦銀間の合併とか、あるいは外資との提携、あるいは業態、業界、分野を超えての合併、提携、こういうものが進められていくと思いますけれども、まずその点の見通しはいかがでしょうか。     〔委員長退席、浜田(靖)委員長代理着席〕
  101. 山口公生

    山口政府委員 今回いろいろお願いしてございます法案を含む金融システム改革が進みますと、一言で言うと選択肢が広がるということだと思います。選択肢が広がるということは、選択を迫られるということになるわけであります。選択肢が広がるから全部やるということにならないと思います。  結局、各金融機関が自分の得意分野を伸ばし、不得意分野は他でカバーをするということだろうと思います。それが、並木先生がおっしゃいましたように合併とかあるいは提携とか、それはまた日本の銀行、証券同士もありましょうし、外資系とのものもありましょう。いろいろな形で、再編成といったら少し大げさになるかもしれませんが、そういったことは起こってくるのではないかというふうに考えます。
  102. 並木正芳

    ○並木委員 これまではそうした合併構想の中には常に、もちろん水面下の話もあるわけですけれども、大蔵の関与というのが取りざたされたわけです。今後は、こうした中では提携構想等盛んに行われていくと思いますけれども、大蔵としては今後、そうした合併、提携等にどういうかかわりを持っていくのか。市場原理に任せていくという、あくまでそういう形でいくのか。だとするならば、もともとは二十行体制ですけれども、十九行体制というのは大蔵の考え方の中では終えんしました、あとは市場原理の中でのそれぞれの自律的な努力でございますとか、そういうふうになっていくのでしょうか。
  103. 山口公生

    山口政府委員 各金融機関が将来をみずから判断し、合併あるいは提携等を進めていく、これは市場原理といいましょうか、金融機関独自の経営判断そのものだと思います、それを尊重してまいります。そのことと金融システムが揺らいではならないということとは、またある意味では別問題でございます。  後者については、私どもとしては万全を期していかなければいけないということで、その辺はレッセフェールだけでいいという面だけでもいけない部分が残っている。しかし、御批判を受けているような過剰な介入をするとか、あるいはこちらが絵をすべて描いていくというようなことはなくなるというふうに思います。
  104. 並木正芳

    ○並木委員 なかなかその辺は、いずれにしても不良なというか、どこら辺が不良かというのはあれですけれども、そういう金融機関が市場から撤退していく、どこに関しても全く金融システムに影響がないということは考えられないと思います。ですから、そのあたりの判断というのがなお明確とは言えないわけなんですけれども、基本的には、結局市場原理というのが大きくこれからは左右してくる、そういうふうに考えてよろしいのかと思いますけれども、そういう中で推移をぜひ見守っていきたいとも思います。  そうしたグローバルプレーヤーというか、そういうものが成長する一方で、今度は、ローカルなサービスを充実した国内業務専念というような、そういう金融機関が育っていくと思います。また、その必要もあると思います。  最近では、コンビニ等で振り込みの業務をやったり、キャッシュディスペンサーというのがあらゆる駅とかデパートとかそういうところにもいろいろあるわけなんですけれども、いっそのこと銀行がコンビニ化するといいますか、コンビニが銀行業務をかなり扱っていく、今後ドルの交換等も行われるのではないかとか、そういうことも可能だということになるわけなんですけれども、この辺については、現状で問題点があるのかどうか、どういうふうな形ならば恐らくそうなっていくだろうというふうにお考えなのか、お聞きいたします。
  105. 山口公生

    山口政府委員 銀行のコンビニ化というような言葉をよく新聞紙上等で私どもも目にいたします。これはちょっと概念的には二つ分けて考える必要があると思います。  一つは、コンビニで銀行業務をやるという概念で伝えられる場合がよくあります。このケースでは、コンビニが銀行業務をやるということはないと思います。これは銀行法をごらんいただきますと、銀行は免許制で、しかも他業の禁止がございますから、片手間で銀行業をやるというものではありません。したがって、そういう意味ではコンビニがすぐ銀行をやるということはちょっと不可能だと思います。  もう一つ言われるコンビニ化というのは、コンビニというのが非常に便利で何でもあるという概念、つまり銀行がいろいろなサービスをワンストップショッピング的にやるという意味で使われる場合があります。これは今回の法案でもその内容がいろいろ含まれておりますけれども、将来かなりそういったものが普及してくるだろうなというふうに感じております。そうしますと預金者や投資家の利便性が図られる、こういうことだろうと思うわけでございます。
  106. 並木正芳

    ○並木委員 金融ビッグバンというのはどういうものかというのがいろいろな方の質問の中でだんだん明らかになってくるかと思いますけれども、ちょっと心配事というか、その辺でお聞きさせていただきます。  ゼロ%台の低金利が続いております。そして、不良債権だとかスキャンダルとか、再三言われますとおり、日本の金融機関の信頼が大変揺らいでおります。そうした中で、外国系の金融機関に個人資産が相当流入することが考えられると思います。  九五年の日銀の数字だと、その国の居住者の外貨建て預金というのが、アメリカが七%、ドイツが一七%、イギリスが八%ということで、日本はこの時点で〇・四%ということでありますけれども、それからすると、外為の自由化という中で当然この数字が上がってくるのじゃないかと思います。四月一日から自由化になったということで、まだその辺期間が短いわけですけれども、そうした兆候は今のところあらわれているのでしょうか。
  107. 山口公生

    山口政府委員 例えば外国銀行の在日支店の預金残高がどのように推移しているのかというようなことを、私ども大変興味がありますけれども、統計がまだそろっておりませんので、ちょっと把握をしておりませんことを申しわけなく思っておりますが、先生の御質問があるということで、外国銀行の大手でございますが、在日支店にちょっと聞いてみた感じでは、四月に入ってから急に預金がふえたという特段の動きはあらわれておりませんということを言っておりました。ただ、サンプルが少のうございますので、確定的なことを申し上げる段階にはございません。
  108. 並木正芳

    ○並木委員 また、例えば日本の銀行のアメリカの支店、子会社といいますか、そこに外貨建てでなくても円預金をする、それでも日本より高い金利であり、またアメリカでは利子の源泉分離課税がないということですから、また二百万以下はチェックもされないということで、円預金でも海外にした方が有利だ、こういうふうなメリットが出てきてしまうと思います。ですから、日本のそうした税制のデメリットといいますか、こういうものもあるいは変えていかなければならないかと思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  109. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今の先生のお尋ねは、同じような円預金を国外にする場合、捕捉がなかなか難しいのじゃないかというようなお話であったかと思います。  先生の方から既にお話がございましたように、昨年の秋にまさに国外送金等につきましては、二百万円以上という限度がございますが、送金情報を税務当局に提出していただくという新しい制度を設けたところでございます。今年の四月一日より外国為替の自由化とあわせて施行になっているところでございます。  執行当局といたしましては、私の方から言うのは適当かどうかわかりませんが、そのような不正な状況になりませんように、適正な課税が行われるよう、今の資料情報制度等を利用しながら適正な課税に努めてまいりたいというふうに考えております。
  110. 並木正芳

    ○並木委員 適正な課税もわかるのですけれども、例えば、アメリカでは利子の源泉分離課税がない、こういうメリットで、金が、小さい金といえば小さいお金かもしれませんけれども、あちらへ行きやすい。そういう意味では、日本でもこういった、グローバルといってもアメリカ化というような一方の見方もあります、つまり、アメリカにはない税制を日本でもなくしてしまう、そういうような考え方はあるのかないのかというところなんです。
  111. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 米国の制度でございますが、米国は御承知のように納税者番号制度をつかまえまして、それでまさに名寄せをし、総合課税を行っているという国でございます。したがいまして、基本的に、我が国の納税者が非居住者としての取り扱いを受けようということでありますならば、そのまさに納税者番号制度のもとに入ってくるわけでございます。  なお、金融が大変国際化してまいりまして、このような課税をどう適正化していくんだということが、実はOECDの場でも議論されているわけでございます。今申し上げました、先生の御指摘がありましたように、一つ納税者番号制度のような国もございますし、日本のようにまさに源泉徴収をとっている国もございます。これを今直ちに一本にあわせるというのは国際的に難しいだろうというのがOECDの判断でございまして、したがいまして、一つは、納税者番号制度等をとっている国は資料情報を国際的に、こういう人がこういう預金をしていますよというようなことを通知する、あるいは源泉徴収なら源泉徴収で完結した形で課税関係をおしまいにする、どちらかとりなさいというのが今の状況になっているということを報告させていただきたいと思っております。
  112. 並木正芳

    ○並木委員 税制デメリットとか低金利とか金融不信とか、そういう中でビッグバンが進行していけば当然、汗水流してというか、日本の場合は過労死なんというのが労災になるとか最近いろいろ論議されるぐらい、大変今まで削ってためたそうした資産が海外に持ち出されていく。これがビッグバンといえばそうなんでしょうけれども、しかし、それは場合によっては高い買い物をさせられるというか、海外で失っていくということにもなりかねないのかなという危惧もあるわけです。過去にも、八〇年に外為管理法が一回改定されました。その後、八五年のプラザ合意の後、財テク企業とかもう盛んに、まさにバブルということでしょうけれども、機関投資家がアメリカのビルやホテルあるいは世界のリゾートを買いまくった、そのあげく、結局高い買い物をさせられて、今日の状況からすれば、悪い言葉かもしれませんけれども、カモになってしまったような状態であるわけです。  当時は、主として法人の企業が出ていったわけですけれども、今度はさまざまな形で個人の貯蓄が出ていってしまう。金持ちで世間知らず、非常に過保護な金融行政の中で来た。金融機関もそうですけれども、国民そのものもそうしたところで育ってきている。いろいろな商品を選ぶという目も育っていないわけです。そういうふうな意味では、国民のガードというのもかなり弱いのじゃないかなというふうに心配しているわけです。  ですから、こういう金融知識に関して国民に情報提供をしていく、こういう点についてはどういうふうに考えるのか。やはりこれも市場に任せていくのがビッグバンだ、そういうお考えでしょうか。
  113. 山本晃

    山本(晃)政府委員 金融知識に関する情報提供の問題でございます。  今回の金融システム改革法案では、基本的にはその中に、やはり自己責任原則というものを充実していかなければいかぬというような文脈があるわけでございますが、やはりその前提としては、適切な情報提供ということが当然のことながら必要であるわけでございます。こういう中にございまして、現在御審議いただいている法案におきましては、ディスクロージャーの拡充であるとか、あるいは顧客に対する商品等の説明義務等の充実、こういった措置を盛り込んだところでございます。
  114. 並木正芳

    ○並木委員 もちろんそういう中で、投資の自由とか、しない自由もあるわけであります。しかし、日本の個人資産家というのが、自己責任意識というか能力、これが十分に育っているとはなかなか、今までの環境が環境ですから言えないのじゃないかなというふうに思うわけです。そして、こうしたお金の多くが恐らく、景気が絶好調と言われる、そして市場が大変大きいアメリカへと注ぎ込まれていくと思います。  今回のG7でも、アメリカの景気等について先行き懸念の声というのもあったようですけれども、その辺のお話も含めて、アメリカの景気について、今後の推移も含めてどのように観測されているのか、もしG7等でのお話があれば大臣の方からお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  115. 松永光

    松永国務大臣 アメリカの経済状態、景気の動向については、持続可能な軌道にとどまるようにしてもらいたい、そういう点についての警戒が必要であるというふうにみんなの意見はなったわけであります。すなわち、余り過度に上昇しますというと、これは労働市場がタイト化してきたりすることもあり得るわけでありますから、したがって、ずっとこのいい状態が続いてもらいたい、そのことを期待するような感じでありました。それが言葉としては警戒という言葉になっておりますけれども、とにかくアメリカの経済が持続可能な軌道で行ってもらいたい、こういう感じの議論であったわけでございます。
  116. 並木正芳

    ○並木委員 それは同時に、やはり少し加速がつき過ぎているというところで懸念があるということで、日本の政府にとってもその辺の危惧というのはあるということでよろしいのでしょうか。
  117. 松永光

    松永国務大臣 そこまでの話じゃないのですよ。あくまでもアメリカの経済が景気のいい状態が長続きしてもらいたいという期待でございます。その期待が保持されるようにやってもらいたい、こういう意見であったわけでありまして、アメリカの経済や景気状況について厳しい話をしたということではありません。このいい状態ができるだけ長続きするようにしてもらいたいという希望的な意見が述べられた、こういうふうに理解していただきたいと思います。
  118. 並木正芳

    ○並木委員 それでは次に移りますが、さまざまな新しい金融商品が生まれてくると思います。そういう中で、当然、詐欺まがいの商法というのもまかり通りかねない心配も、過渡期というか、そういうところではあるかと思います。  不公正取引を取り締まる陣容というのは、金融監督庁というものができますけれども、これは職員は証券取引等監視委員会を含めても四百人ぐらいじゃないかと言われております。それで、アメリカでは証券取引委員会だけでも三千人、連邦とか州レベル、いろいろ合わせると一万を超え、二万近いとも言われています。また、イギリスでも二千人程度のそうした担当がおると言われているわけですけれども、日本の場合、この人員をいきなりふやしていくというわけにはいかないと思います。今後、省庁再編等々、あるいはいろいろな融通ができるというようになればそういうことも考えられるのかもしれませんけれども、現状においては業界団体の自主規制に頼りながらやっていく、そういうことかと思います。  これまでの業界の不祥事等を考えますと、これもいささか心もとない、そんな気もするのですけれども、当局として、こうした不公正取引を取り締まる形というものについてどのようにお考えか、お聞かせいただきます。
  119. 松永光

    松永国務大臣 我が国の金融機関に対する監督あるいは検査、あるいは監視、そういった分野の人員が十分であるとは言いがたいわけでありまして、あらゆる機会を通じて増員をお願いしておるわけでありますが、ただ、アメリカとの比較についていえば、アメリカは金融機関の数が日本の十数倍、十五、六倍と言われております。我が国の場合には、先ほど言ったように金融監督庁が、証券取引等監視委員会も含めて四百何名という程度であります。しかし、御存じのとおり、日本では地方財務局の人間も信用金庫等については検査等をするわけでありますので、その比率からいえば、アメリカに比べれば少ないということはそのとおりなのでありますけれども、何せ、アメリカの金融機関の数が日本の十五、六倍ということでありますから、その単純な数字だけで日本が極端に少ないとは言えない面もあるわけです。しかし、冒頭申したとおり、日本の場合に十分とは言えません。機会をとらえてもう少し増員になるように努力をしていきたい、こう考えているところでございます。
  120. 並木正芳

    ○並木委員 事後チェック型になるわけですから、当然そこの人材は必要になると思います。いわゆる省庁再編というと必ずリストラ、人を減らせということだけが強く言われるのですけれども、まさに必要なところには配置し、不必要な部分は大胆に削るということだと思います。その辺については今後の推移の中では必ず必要な部分になってくるかと思いますので、大臣もそう要望されるようなあれですけれども、ぜひ、私もそのようになっていくべきだと思います。  さらには、こうした監視していくという体制もあれなんですけれども、当然、外国系の金融機関が、今まで開発した魅力的な商品、こういうものを持って参入してくる、そういうふうに予想されます。そうした場合、なかなか説明が行き届かないというか、そういう中で個人投資家とこうした外国系金融機関とのトラブル、また、委託手数料が完全自由化になると、ディスカウントブローカーというのでしょうか、安くあれして仲介していく、そういう者もあらわれたりしてくると思います。そうしたトラブルとか、商品が新しいためになかなか説明が行き届かないトラブル、さまざまな問題が起こってくると思います。  そうした処理というのを、これは原則的にはやはり司法にゆだねていくということになるのだと思いますけれども、こうした場合に、もう既にバブルにまつわって多くの訴訟が起きているわけです、ワラントの問題だとかなんとかですね。今後そういうトラブルが必ずふえてくると思います。こういうような紛争処理について、これは法務省の方の、きょうは司法法制課長ですか、おいでいただいているようでございますけれども、やはり法務省も、金融のこういった問題に対する体制を、人材を育てていく必要があると思いますけれども、このような対応については現在どのように考えられているか、お聞きしたいと思います。
  121. 河村博

    ○河村説明員 法律実務家でございます法曹の養成につきまして御説明いたします。  今後、規制緩和を初めといたします社会のさまざまな変化に伴いまして、国家の基礎を支える司法の役割というのは一層重要なものになると考えられるわけでございまして、個々の取引に入ります前、あるいはその後、そして訴訟に至ります前の段階から法的な助言を与えるなど、紛争の予防などの関係でも法曹の関与というものは必要になりましょうし、最終的な解決という意味で司法は重要な役割を果たすことになると考えられるわけでございます。  そのため、法務省におきましても、社会のさまざまな法的なニーズにこたえるというために、この通常国会に、法曹人口増加のための司法試験合格者増加の措置に伴います裁判所法などの改正案を提出させていただきましたが、先月二十四日に可決、成立いたしました。これによりまして、これまで七百人程度でございました司法試験合格者が、本年度は八百人程度、そして来年度からは年間千人程度に増加することになるわけでございますけれども、これにとどまりませんで、さらに司法試験合格者の千五百人程度への増加につきましても、修習の内容や方法の改善などにつきまして調査検討を継続した上、協議してまいりたいと考えているところでございます。
  122. 並木正芳

    ○並木委員 はい、ありがとうございます。  いずれにしましても、今後一層の金融商品拡大、市場の拡大がなされていく中で、アカウンタビリティーとそして自己責任原則に基づいた市場原理を確立する、こういうことが必要になってくるわけですけれども、先ほどもディスクロージャーの問題とかいろいろ、今回の法律にも入っています。ただ、業態別でなくて総括的な、当然だと思いますけれども、いわば日本版金融サービス法、これを整備していかなければならないというふうに思います。そして、これは早急な課題だと思いますけれども、現状において、その手順についてはどのように考えておられるか、この辺についてお聞きします。
  123. 山口公生

    山口政府委員 しばしば御議論を賜っておりまして、金融サービス法と言われるような横断的な法制の必要性ということを御指摘いただいております。  私どもとしましては、各省庁にまたがっている話でもありますので、各省庁かなり幅広く、今勉強会に出ていただき、学識経験者の方々の御意見を聞いております。ただ、ここで一本化した結論が出るかどうかはちょっと予断を許しませんが、いずれにせよ、そこでいろいろ出てくる考え方を少し整理しまして、それで、今御指摘のような考え方にどうやってまとめていくのかということを議論したいと思っております。  ただ、今し方御指摘がありましたいわゆる司法を含めたエンフォースメント、そういった法律をつくるのはいいのだけれども、実際にどうやってそれを実行に移すかというまた難しい問題もございますので、精力的に取り組んでいきたいというふうに思っております。
  124. 並木正芳

    ○並木委員 では、次に移らせていただきます。  銀行等での投信販売のことでございますけれども、千二百兆円の個人金融資産の運用というのが、これはもう再三言われていることですけれども、非常に預金に偏っている。五六%が預金だということでございます。アメリカ等では八・九%、それに比べて日本は二・七%、圧倒的に違うように、この日本の投信販売というのは非常に停滞しているというようなことです。  それは、証券会社にもあるいは責任があるのかな。手数料稼ぎの手段として、投資信託組み入れ株式というのでしょうか、これらについて必要以上に頻繁な売買を繰り返して、手数料稼ぎというようなことで顧客の不信感を買って、なかなか中長期的な投資の場として投信が育ってこなかったというようなことであると思います。  今回、銀行の窓口販売ということになると、非常に利便性が高まるという中では、ほかの金融機関に行くよりはついでに銀行で買いましょう、しかも、低金利等を考えるとこの方がずっといいのじゃないかというようなことになるかと思いますけれども、その場合、銀行が扱うというものが、今までの形がありますから、銀行預金のように元本保証もされているのじゃないかというような誤解が起きはしないか。皆さんからすれば非常に低いレベルでの話かもしれませんけれども、まさに消費者の中での問題として。アメリカでさえそういう誤解が起きているというようなことであります。  そういう意味で、アメリカではリスク開示ということで、投資信託というのは連邦預金保険つきじゃない、あるいは銀行が取り扱っているけれども預金とは違います、銀行の負債でもない、あるいは銀行によって保証されている商品でないとか元本割れを含む投資リスクがある、こういうことを最低限投資家に提示しなさい、そういうふうに義務づけを、SECとか銀行監督局、こういうものが今の四つの点を義務づけしているということなんですけれども、日本についてはこの辺、リスク開示についてどういうふうに義務づけ化していくのでしょうか。
  125. 山本晃

    山本(晃)政府委員 証券投資信託を銀行等の金融機関の窓口で販売するに当たりましては、顧客に、証券投資信託というものが、銀行の扱う預金商品とは異なりまして、元本保証のないリスクキャピタル商品であるという商品性の違いについて十分認識をしていただいた上で販売されるということが重要であるというふうに考えております。  このような観点に立ちまして、証券取引法上、有価証券の販売に係る誠実公正義務というのが新しい法律の三十三条にございますが、こういった販売ルール、あるいは銀行法等におきます顧客に対する預金との誤認防止ルール等が適用できるような手だてを、これは実際には省令で行うということになりますが、そういった手だてを講じた上で銀行等の金融機関による証券投資信託の窓口販売を導入したいというふうに考えているところでございます。  なお、今委員から御指摘がございましたように、アメリカについてもこの投資信託について、アメリカではいわゆるミューチュアルファンドというふうにいっておりまずけれども、いろいろと誤認の問題が出まして、一九九四年に、アメリカの財務省の通貨監督局、OCC、あるいは連邦預金保険公社、FDIC、それから連邦準備制度理事会、FRB、さらに財務省の貯蓄金融機関監督局、OTSという四者が合同で、委員御指摘になられましたようなガイドラインを発出したところでございます。私どもも、こういったアメリカでのガイドラインを参考としながら所要の整備を図ってまいりたいというふうに考えております。
  126. 並木正芳

    ○並木委員 いずれにしても、リスク開示というのはかなり重要になりますけれども、しかし反面、そういうふうにリスク開示がされた場合に、日本人というのは非常に安全志向であるというところで、そうした商品を手控えてしまうのじゃないかな。そもそも、今よく言われる金融派生商品、デリバティブ、こういうものも、投機性が強いということがもともと何かばくちだというような感覚が強い、そういうことで厳しく制限されてきた、こういう先入観が日本の中にありますので、解消されないのじゃないか。  そういうふうに考えますと、果たしてこの個人金融資産が預金から投信へと必ず比重をどんどん増していくのかなというのは疑問もあるわけなんです。銀行が、店舗貸しとかで投資信託委託会社の直接販売、いわゆる間貸し方式ですか、こういうものもやっていくということですけれども、こういうのはまずどの程度行われると見ているのでしょうか。そして、銀行が獲得していくシェアといいますか、そういうものもどの程度というふうに考えているのでしょうか。アメリカでは、販売で一二・九%、残高で一四・六%、ちょっと古いですけれども、そんな例がありますけれども、日本においてはどの程度と考えているのでしょうか。
  127. 山本晃

    山本(晃)政府委員 今並木先生からいろいろな御指摘があったわけでございます。リスクの開示が行われると、かえってまた投信にもそんなに移らないのではないか、こういうような御指摘がございました。  確かに、証券投資信託には、これはハイリスク・ハイリターン型の商品からローリスク・ローリターン型の商品など、さまざまな特徴を持った商品がございます。投資家がこういった各種の証券投資信託の商品性につきまして十分理解をされた上で自分のニーズに合いました商品を選択をしていただく、こういうことになろうかと思います。  したがいまして、リスクをきちんと開示するということによりまして投資信託の購入が手控えられるのかどうかという点について、確たることは申し上げられませんけれども、アメリカにおいては、先ほども先生から御指摘がありました、投資家の誤認を防止するためのガイドラインというものが整備をされてリスク開示が充実する中において、ミューチュアルファンドの個人金融資産に占めるシェアというのは、八五年の五%程度から、九六年が一〇%程度へと増加をしているわけでございます。  いずれにいたしましても、販売チャネルの多様化によりまして、私どもとしましても投資信託の比重が増すということを期待をしているところでございます。  それから、昨年の十二月から行われております銀行の店舗貸しによります投信の直接販売、いわゆる間貸し方式による販売はどの程度行われているかということでございますが、まだ五カ月ちょっとでございます。本年の四月末時点で、間貸し方式による投資信託会社の直接販売実施会社は十六社、店舗は六十七店舗となっておりまして、三月末時点での販売高は五十億円になっているという数字でございます。  また、銀行の窓口販売、投信の窓口販売が実施された場合、日本では銀行の獲得シェアはどうなるのかという点でございます。  これは、なかなか確たることは申し上げられないわけでございますけれども、現在は、委員も先ほど御指摘になりましたように、証券会社しか基本的には販売されていなかった。それに加えまして、銀行による販売チャネルの拡大によりまして、投資家の多様な資産運用ニーズにこたえまして投資家の利便性の向上を図ることが可能になるのではないかということでございます。  先ほど先生からアメリカの数字がございました。果たして日本でどのぐらいになるかということはわからないわけでございますけれども、全体としてパイが大きくなる中でということかと思いますけれども、日本においてもアメリカ並みになれば、やはりそれだけ投資信託というものが、逆に言いますと、国民から迎えられる商品になるのかなということを期待をしているところでございます。
  128. 並木正芳

    ○並木委員 余り時間がございませんけれども、セーフティーネットとしての預金保険機構とか投資家保護基金とか保険契約者保護機構への横並びの出資について、外国系金融機関から納得が得られない、こういうような声が出ているという報道がありますけれども、そうした中で、これはそのとおりなのかと思いますけれども、時間がないので、その辺、実態はどうなのか、まずお聞きしておきます。  それと、ついでにもう一つ聞いてしまいますが、そういうことになると、この問題だけでも本当は大変時間がかかるのですが、郵貯というのが、こういった破綻の際の保険など、これは全く払い込みの必要がないということです、もちろん公的金融機関ですから。ですから、民間金融機関と非常に公平性を欠いているわけです。  そもそも、二百四十兆円もの個人資産を吸収していく公的な巨大な金融機関、こういうものが、ビッグバンという中での市場原理、そして民業を育てなければならないというような中では、非常にビッグバンのフリー、フェア、グローバルという趣旨に反するのではないかと考えるわけなんですけれども、この辺、他の管轄という中では、縦割りでございますけれども、ビッグバンを遂行していく大蔵省としてどのように考えるか。その辺、大臣、お答えできればお答えしていただきたいと思います。
  129. 福田誠

    ○福田政府委員 お尋ねのうち、保険契約者保護機構についてちょっと触れさせていただきます。  これにつきましては全社強制加入を前提としておりますが、当然のことながら、これは保険業に対する信頼が確保されることによって、国内社、外国社を問わず、我が国で保険業を営む保険会社が業務を円滑に遂行できると考えられるわけでございまして、外国系の保険会社にも十分理解が得られるものと認識しております。  ちなみに、現在、現行法では契約者保護基金がございます。これは任意加入でございますが、再保険専門会社等を除きまして、外国保険会社も含めてすべての社が加入しているところでございまして、今般の支払い保証機構についても十分に御理解いただけると思っておりますし、現在のところ、この点について格別の異論は出ていないものと承知しております。
  130. 山本晃

    山本(晃)政府委員 投資者保護基金につきましてお答えさせていただきます。  外国証券会社数社の方から、投資者保護基金の負担金の算出方法等につきまして、日本証券業協会に意見書が提出されたということは承知をしております。この投資者保護基金の負担金の算定方法というのは、今回御審議いただいている法案におきましては、特定証券会社に対して差別的な取り扱いをしないものであることということが求められておりまして、その具体的内容について、現在業界において検討が開始されているところでございます。  私どもとしましては、今後、投資者保護基金の設立準備過程におきまして、各証券会社意見を内外を問わず十分に酌み取りまして、早期に具体案が取りまとめられることを期待をしているところでございます。
  131. 並木正芳

    ○並木委員 それでは、時間でございますけれども、近代において我が日本が屈服されたのが、暴言かもしれませんけれども、すべてアメリカだったなというふうに思います。すなわち、幕末においては黒船により開国を迫られた、そして次には第二次大戦、いわゆる太平洋戦争での敗北、そして今回はいわば金融戦争で敗北しかねないというようなところでございますけれども、黒船は明治維新での近代化、そして敗戦もその後の民主化、危機をすべてチャンスに変えてきた、そして飛躍的発展をから取ってきたのが日本であります。  そうした意味で、今回の金融ビッグバンというのも大変厳しい状況で、危機的状況とも言われるわけですけれども、日本の二十一世紀への扉を開く大きなチャンスとなることを強く期待して、質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  132. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員長代理 次に、赤松正雄君。
  133. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 新党平和の赤松正雄でございます。  金融ビッグバンにかかわる金融システム関連四法案の質疑に具体的に入ります前に、二点ほど大蔵大臣に、ここのところ大蔵省をめぐる重要な問題が幾つかありますので、その辺について、ちょっと時間をとっていただいてお話をお伺いしたい、こう思います。  まず、第一点目でございますが、これは貸し渋りの問題でございます。  さきに大蔵大臣、たしか四月二十七日だったと思いますが、大蔵不祥事をめぐる処分発表と同じ日に、私は新聞を見ておりましたら、銀行の首脳を集められて、集められたか、たまたま集まられる機会があったのか、ちょっとその辺は定かではありませんが、貸し渋りの状況について、大臣の方から各銀行首脳に対して、厳しくか優しくかは知りませんが、注意を喚起する、しっかり貸し渋りをなくす方向でやってもらいたいというお話をされたというニュースに接しました。  また、蔵相は、昨日の財政演説におきましても、総合経済対策における金融の措置という項目の中で、貸し渋り問題に対応するために、「金融システム改革を着実に推進していくほか、中小企業金融公庫等の政府系金融機関に対して、追加出資、融資の拡充等の措置を講じます。」こういうふうに述べられております。  ここで私がお聞きしたいのは、後で申し上げます学識者を集めての懇談会、これは前回大臣と少しお話を交わしましたけれども、その同じ日に銀行首脳を集めて、貸し渋りをやめよ、こういうお話をされたことの意味、それから、具体的にその効果というものがどういうふうにあったと認識されているかという問題、それから、金融システム改革の着実な推進というふうにきのうさらっとおっしゃいましたけれども、後ろの方の、金融公庫などの政府系金融機関に対する追加出資云々は具体的でよくわかるのですが、金融システム改革の着実な推進の具体的な中身についてお聞かせを願いたいと思います。
  134. 松永光

    松永国務大臣 まず、二十七日に民間銀行の代表者に大蔵省に来てもらって貸し渋り解消についての強い要請をしたのでありますが、二十七日の日になぜなったのかというと、あの日が国会審議がない日だということが数日前にわかりましたから、その日に設定をしたわけであります。  そして、私が強く申したことは、そもそも銀行というのは、健全な企業に対してその求める資金需要に応じて融資をするというのが本来的な任務ではないのか、その任務を遂行する機関であるがゆえに公共性があるというふうになっているのではないか、さすれば、健全な企業からの融資の申し込みに対しては、いわゆる貸し渋りなどという批判を受けないように適切な融資をしてもらいたいものだと相当強く要請をしたところであります。  実は、三月末で資本注入をしたわけでありますが、もう既に五月になりました。その後の状況はどうであるか、細かい点は銀行局長に必要に応じて答弁してもらっていいと思うのでありますが、我々の要請というものは相当重く受けとめてくれたと思うのでございます。  問題は、金融機関の代表に来てもらったわけでありますから、それがそれぞれの団体の銀行にきちっと通知をしてもらわなければいけません。そしてまた、その銀行は支店に対しても通知をしてもらわなければなりません。そういったことはきちっとやりましたという返事が来ております。さようなわけで、強く要請したことはそういう手続面ではきちっといっているな、その後の貸し出し状況がどうであるかということはまだ把握しておりませんけれども、それだけのことをしたわけでありますから、それなりの効果は出てくるのではなかろうか、こういうふうに思います。  同時にまた、私はほかでも言うことでありますが、健全な企業に対して融資を渋るというと、せっかくのお客さんが政府系金融機関にとられてしまうぞ、こういうふうに申しておる場合も実はあるわけであります。  これは、貸し渋り対応ということもあって、中小企業、中堅企業等に対する融資制度を実は設けることになりましたし、それからまた、中小企業の定義を改正をする法律案が実は提案をされたわけでありまして、卸売業については資本金七千方まで、小売、サービスについては五千万まで引き上げるというふうになりましたので、これが中小企業金融公庫の融資の対象企業になります。  こういった措置をして貸し渋りの対策を進めておるところでありまして、今後とも、この点については十分注視をして、適切な要請活動その他をしていきたい、こう思います。なぜそうするかというと、やはり景気浮揚のためには企業に対して資金需要が円滑に満たされるということでなければ、景気回復の面でも非常に支障になるものですから、その点は特に注意をしながら今後とも努力をしていきたい、こう考えておるわけであります。    〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
  135. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 大臣、先般、たしか同僚議員、河合議員だったと思いますが、宮澤元総理の昨年末の衆議院予算委員会での議論を引き合いに出して、いわゆるインターバンク市場におけるところの日銀と各銀行との関係、つまり、わかりやすく言いますと、貸し渋りには二段階があって、銀行といわば中小企業者一般との関係の貸し渋りと、それから日銀と銀行間との貸し渋りと二つある。言ってみれば、昨年末の金融機関の倒産、拓銀を初めとして幾つかの大きな金融機関が倒産した一つの大きな原因は、やはり日銀サイドにおけるところのいわゆるサドンデスというものですか、そういう貸し渋りというものがあるのだという話が大分展開されたと思うのです。  このことに関して、最近、週刊誌ですから余りここで取り上げたくないのですが、私が今申し上げたようなこと、あるいは、以前に恐らく河合委員取り上げただろうと思うのですが、いわば銀行が日銀から貸してもらえない、だから中小企業にも貸さないのだというふうな話が、今、具体的な名前は避けますが、よく一般に流れている週刊誌等に書かれていますね。  つまり、そういう点で、ここで何を言いたいかというと、余りこれに時間を割くつもりはないのですが、大蔵省が金融機関をいじめている構図がそこにうかがえるなんという話が書いてあるのですが、では、その辺のくだりについて、局長
  136. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  銀行は、貸し出しをするためには資金の調達が必要なわけです。普通は預金を集めて貸します。しかし、日々の資金繰りということになりますと、お金の余っている銀行から借りてきてその資金手当てをする。それがコール市場、インターバンク市場なのでございます。そこに潤沢に資金がありませんと非常にそこに不安定性がある、そうすると貸せない、こういう状況が確かに去年はあったように思います。日本銀行も適切に対応をしてくれました。  したがって、現時点においては、インターバンク市場が非常に締まって、そういう不安感から貸し渋りが起きているということはないと思います。私どもも大変貴重な経験をさせていただいたと思っております。
  137. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 その点、よくわかりました。  二点目は、大蔵不祥事をめぐる学識者の懇談会ということについて、先般も取り上げたのですが、その後も二回目の会合が開かれたということですね。その二回目の会合、一回目の会合、あわせていろいろなことが指摘をされたのだろうと思うのです。例えば、私が接した新聞報道によりますと、先般私が大臣に、大蔵官僚、若手のキャリアの官僚を若くして税務署長という形で送り出すというシステムはもうやめられたらどうかというふうな話を申し上げましたが、同じようなことを指摘されたという部分があったようでございます。  これからのスケジュールの中で、学識経験者の皆さんからさまざまな指摘を受けられるのだろうと思いますが、ここでお聞きしたいのは、今後のスケジュール、それからそういったところで指摘をされた報告書をどういう形でまとめようとされるのか。  それからもう一点は、私たち、特に野党の議員は、こういう場でさまざまなことを提言させていただいたり、いろいろ苦情を申し上げたり、あの点をこうした方がいいのではないか、こうすべきだというようなことを言うわけですが、どうもなかなかそれが実現するということが少ない。たまたまつい先ほど、大蔵省の通達というものをなくすという話が新聞等でも報道されて、おお、これは聞き入れられたというか、実現をしたことなんだなと思って、一つの新鮮な関心を持って聞いたわけですが、つまり、私たち、国民の代表としてここへ出てきている国会議員の言う、特に現時点でいえば大蔵省に対するさまざまな注文、要求、こうすべきだ、ああすべきだということの中身の重さと、それから、わざわざ学識者を集められていろいろ聞かれることの重さと、両方とも重いと多分おっしゃるのでしょうが、その辺の位置づけというものを改めて聞きたいと思います。  といいますのは、それこそ、多くは言いませんが、昨年からことしにかけてさまざまな議論が大蔵委員会でもあったわけですけれども、申しわけないあれですが、朝令暮改的な雰囲気が非常に強い。急に変わってしまうということがあるわけですね。そういった点で、国会軽視であってはならないという、そういう意味合いを込めてこの質問をさせていただくわけでございます。
  138. 松永光

    松永国務大臣 私は、この委員会を中心に、予算委員会でもそうでありますが、与党、野党を問わず、貴重ないい意見は、余りいい頭ではありませんけれども、メモしたりして承知いたしております。  そして、これも、二十七日になったのは、あの日が国会がない日でありましたので、第一回だけは私は自分で出たいと思ったものですから、朝早くその会を開かせていただきました。そして、この委員会予算委員会における意見も踏まえて、私の考え方も一、二申し上げて、そして検討をお願いしたわけであります。  まず一つは、不祥事の根絶をするためにはどういうことが必要か、どうやるべきかという点が一つ。それから、その中に、やはりよく言われることは、官僚の中の官僚とかあるいは官庁の中の官庁とか、一段大蔵省を上に置くような、そういう風潮が今まであったのではないのか。それからまた、上級職を合格して大蔵省に入ると特段偉いのだというふうにはなから思う傾向はないのか。そして一番甚だしいのが、二十代の後半で税務署長になる。税務署長になりますというと、その地域の名士中の名士で、そして非常にちやほやされる、それがその人の悪い性格をつくりはせぬか。これはよく委員会で指摘されたところでありますから、そういう意見が強い。そういう点もそのまま続けていいのか、それはよくないということで別な方法にすべしとなるのか、そういう点についてもぜひひとつ議論をしていただきたいということを申し上げましたし、それから、行政運営のあり方についても忌憚のない意見を闘わせていただいて、そしてまとめた答申の中に織り込んでもらいたいと。  それからもう一つは、さはさりながら、大蔵省の役人が使命感に燃えて積極的に仕事をする、勉強もする、あるいは政策提言もする、こういうことでなければならぬわけでありまして、大蔵省内の活性化を図るためにはどういったことをやるべきか。  要約すれば以上三点を中心にして、実は、それに絞るわけではありませんけれども、学識経験者というか、各界の代表的な人を網羅して委員にお願いしたわけでありますが、議論をしていただいて、それをまとめて三カ月以内ぐらいに答申をちょうだいできればありがたい、こういったことでその会議をやりました。  委員会とか国会とかを軽視するつもりは毛頭ありません。やはり各界の代表的な人の意見を聞くということは非常な参考になる、こう思ってお願いをしたわけであります。そして、その答申をちょうだいいたしましたならば、それを参考にしながら文字どおり生まれ変わった大蔵省をつくり上げたい、こう私は思っているわけであります。そういう趣旨でやったわけでありますから、ぜひひとつ御理解賜りたいというふうに思います。
  139. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 ぜひそういうふうな毎度でいってもらいたいと思いますが、今までも多くの大蔵大臣が出られたわけで、松永大蔵大臣も永遠にされるわけではないわけですから、これからの新しい大蔵省のまさに礎を築く、そういう思いでこれから先にもずっと永続していく形でやっていただきたい。学識経験者の場をつくる話をしたときに、私はそのときはいなかったからわからないという話をされていましたけれども、次の大蔵大臣にそういうことを言わせないようにしていただきたいなということを思います。  それで、この金融ビッグバン関連法案のお話に入りますが、昨年七月、実は衆議院欧米各国金融・税制調査団の報告というものが出されております。これは、実はもう既にこの委員会でも話題になって、古い話かもしれませんが、村上委員長を初めとして、当委員会では日野元郵政大臣とか佐々木憲昭議員とか、私も参加をさせていただいたのですが、現メンバーの中に、現在の経済企画庁長官とか、あるいは労働大臣もその直後に誕生しているということで、相当この報告書を参考にされたのではないのか、こう思います。余りそのことについて詳しく聞くいとまはありませんけれども、私自身この税制調査団に参加をして、大変に多くのことを感じました。  私事にわたって恐縮ですが、私は銀行員の息子でございまして、銀行にかかわる話は若き日よりたくさん聞いていたのですが、御多分に漏れず、そういう銀行員の息子であるがゆえに銀行に反発をして育ちましたので、結果、銀行をめぐる問題で苦しむ羽目になっているのかなという気もしますけれども、いずれにしても、私のおやじなんかが生きていたら目を丸くして驚くんじゃないかというぐらいの、銀行を初めとして金融機関を取り巻く状況というのはもう本当に大きく変わっているということを、そういう場面に参加をさせていただいて感じました。  大専門家の方々を前にして、私、本当に金融の問題について、泥棒を捕まえて縄をなう感じで勉強している状況でございますので、偉そうなことを言う資格はないのですけれども、立場上、若干指摘をさせていただきたいのです。  私は、もともとこの金融ビッグバンに関する問題については、いつぞや一番最初のこの委員会で山日銀行局長にもお話を申し上げましたが、要するに、いわゆる民族の違い、文明の違いによるところの、この金融という問題に対する受けとめ方、感じ方、だから、今言われているところの荒々しい資本主義と言われるような形で、特にアメリカ、イギリスというものが日本を初めとするいわば金融後進国に対して挑みかかってくるという問題は、一にかかってそういう文明論的な部分によるところが大きいというふうに私は理解をしていて、これはだれがやっても大変だ、こんなふうに思っていたのですが、どうもいろいろ勉強してみると、そうでもないなという感じに実はなってまいります。  そのことをこうやってべらべらしゃべっているとあれなので、まず私は、後で申し上げますけれども、その文明の違いとか民族の違い、アングロサクソン対いわゆる大和民族の違いというようなことも、まあそれは全くないわけではないのでしょうけれども、やはりこの十数年における日本国の、言ってみれば大蔵当局というか、大蔵省の皆さんの、今言われているところの金融ビッグバンに関するテーマについて、やはり後手後手に回ったというか、取り組みの姿勢というものがやはり非常に問題の多いところがあったのではないかという、具体的な指摘は後でさせていただこうと思うのですが、まず大きい話で恐縮でございますが、そういう金融ビッグバンをめぐる、今日この関連法案を出されている、今大急ぎで、それこそ一日も早く通してほしいというお気持ちでしょうけれども、そういう状況に至った今日までの大蔵省の責任というものをどういうふうに感じておられるのか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  140. 山口公生

    山口政府委員 確かに、この報告書を改めて読ませていただきますと、かなりの点でもっと頑張らなければいけないという気持ちを私どもも強く持ちます。恐らく、これを民間の方が読まれても同じことをお感じになるのだと思います。  そこで、おまえの責任はどうだというようなお尋ねかと思いますけれども、責任論となりますといろいろと萎縮した言い方しかできませんので、もう少し自由に言わせていただきますと、やはりこれまでの我が国のたどった道が、いろいろな山あり谷あり、バブルあり、バブルの崩壊ありということでやってまいったわけでございますけれども、ついつい発想が内向きになりがちな部分もあった。海外はどんどんその間に進んでいっておったというような点については、確かに国内でもいろいろな問題がありました。今まで破綻というものを見たこともなかったのが、小さい信用組合の話でも大騒ぎだったのです。住専の処理でもまた大変な議論になりました。意識していなかったわけではありませんが、その間に各国は、もう次の手、次の手、次の手という動きをしておりました。ただ、私どもとしては、そういったことについて、率直にやはり取り返さなければいけないというような気持ちが今しておるというのが正直なところでございます。
  141. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 率直なお話を聞きました。  それで、この報告書の中で、私も当時は、まさに蒼蠅驥尾に付すという感じで、大先輩の後にくっついていっていろいろなお話を聞かせていただいたという側面が強いのですが、今振り返ってみますと、今の銀行局長のお話とも関連するのですが、実は、アメリカ通貨監督局、OCCでアボット副長官に現在の尾身経済企画庁長官が質問されたこと、あるいは同じ尾身さんがアメリカのバンカーズートラスト・カンパニー、ニューマン会長に質問されたこと、あるいはイギリスの証券投資委員会、SIBのブレア理事に原田昇左右団長が質問されたこと、あるいはイギリスの大蔵省のホワイティング次長に村上委員長質問されたこと、この四つがいずれも共通をしている。詳しく見るといろいろな御質問があるのですが、この重要な場面で三人の方が四人の相手に質問されているのが実は共通している。  その中身は何かというと、要するに、グローバル化によって各国監督当局問の協力が必要であって、具体的にどのような措置でもって、いわゆる国境を越えるお金の移動というものに対してそれをどう把握することができるのかということについて、アメリカやイギリスの当局者に聞いているわけですね。ということは、つまり、これは一年前の話なのですが、委員長を初めとしてあのとき参加したみんなの一番強い関心は実はここにあったということが一つ、それだけではないのですが、言えると思うのですね。  それが結局、そのことと、別に三人の先輩のことをどうこう言うつもりはないのですが、恐らく私の勉強した範囲内で言いますと、金融ビッグバンを推進していく、金融ビッグバンという言い方はともかくとしまして、今日のそういういわゆる銀行、証券、保険の垣根をなくしていく、さっき銀行局長が、一言で言えば選択肢をふやすこと、こうおっしゃいましたけれども、そういうものを進めていく上に当たって、大蔵省の中に根強くあったおそれというのが今三人の先輩たちの発言と共通している部分があるのではないのかなという気がするわけです。  つまり、日本のお金は日本に納めさせる、いわゆる徴税の論理ですね。あるいはまた、日本の金の流れが外と一体化してしまうと、いずれは税制まで国際基準、グローバルスタンダードという形にされてしまうのではないかというふうないわばおそれというものが、この種の問題の一番最初のころに、一番根っこの部分に大蔵省にあったのではないのか。これは、私がこういうふうに言っているのではなくて、私もそう思いますし、それなりの専門家の人がそういう指摘をしている。  つまり、日本独自の税制を基盤としている大蔵省主税局は、マネーの国境の廃止など認めがたいという考え方が、結局、金融ビッグバンをおくれさせた一番大きな原因ではないのかという指摘があるのです。私も、その指摘を見て、うん、なるほどな、それは言えるな、こういうふうにも思っているのですが、主税局はどういうふうに思われますでしょうか。
  142. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 主税局の担当者がおりませんで、税のところはちょっと私の方から申しかねるわけでございますが、クロスボーダーの取引は外為法の自由化の過程でずっとやってまいりまして、今回の外為法の改正もその延長線上にあるわけでございまして、クロスボーダーの取引が突然ふえるわけではございませんで、それだけがビッグバンがやや日本がおくれていったという原因だとは思っていないわけでございますけれども、そういう面もあるいはあったのかと思います。
  143. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 もちろん、こっちもそれだけだとは言わないのですが、一つは、今申し上げた点。だれとは申しませんが、いわば専門家に言わせますと、一つの指摘は、一九八〇年に行われた外国為替管理法改正時における今申し上げたような点。二つ目は、一九八四年の日米円・ドル委員会時において、アメリカから、日本が金融改革の勢いの上で金融自由化を迫られた。日本も同意したけれども、言ってみれば余り本気ではなかった。まともな対応を怠った。これが二つ目。それから三つ目に、一九九二年に決まった金融制度改革時である。このときも、やはり中途半端な相互乗り入れで、改革とは言いづらいものでお茶を濁した。さっき銀行局長が正直におっしゃっていました。内向きに目が向き過ぎたということをおっしゃっておりました。  恐らく、この識者の指摘する点は三つのポイントがあって、その三つの時点で、大きく日本の金融政策の部分で、今から思えば、そのときにきちっと対応していれば今日ほどおくれた状況の中で苦しまなくてもよかったのではないかという指摘があって、もちろんそれには多くの言い分がおありでしょうけれども、私は、そういう指摘もあるのだなという思いを実は感じたわけでございます。  そこで、ひとつぜひ聞きたいと思いますのは、今も、いみじくもというか、主税局が来ておられなかった、直接私は主税局ではないですがということで審議官がおっしゃいましたけれども、要するに、今まで銀行のことは銀行局、証券のことは証券局、税金を集めることについては主税局というふうな形で、それぞれの部局が担当されていたわけです。その総合調整能力が欠如しているということがいろいろな場面で言われるのですが、これからこういう金融ビッグバンといった場合に、今まではこういう問題はだれが担当していたのか。それはそれぞれが担当されて、事務次官が調整されていたのでしょうけれども、これからこういう問題を、個別具体的なことよりも、もっと総合的に、戦略として日本の行き方というものをがちっと責任を持って考える人というのはだれになるのですか。
  144. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 御指摘の問題につきましては、自由化ということでいえば、日米の円・ドル委員会というのが一九八〇年代に始まったわけですけれども、そのときの状況からずっと今日に至るまで見ていますと、関係しますのは銀行局証券局、主税局、理財局、国際金融局、いろいろございますが、その中で、やはり今私がおります官房もその一員となりまして担当しているわけでございます。  今回のビッグバンの当初の段階でも、官房の審議官が全体をまとめまして、全体の構図をつくって進めてまいったということがございまして、今後とも、最終的には次官、大臣の指揮のもとでございますけれども、官房もそういう機能を果たし、さらに強化していくべきだというふうに考えております。
  145. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 ということは、従来型のシステム、特に新たにこの場面に対応してスクラップ・アンド・ビルド的なもので、壊して何か特別なものをつくるということはないということですね。
  146. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 金融監督庁の発足に伴いまして、個別の金融機関に対する行政は監督庁に移りまして、制度にかかわります企画立案の部分が金融企画局に残るわけでございまして、金融企画局ができた暁には、金融企画局におきまして証券あるいは銀行も、両方を見るということにもなります。それから、審議会につきましても、ビッグバンを始めるときに、証券取引審議会、金融制度調査会あるいは保険審議会と、いろいろありましたが、そこら辺も一緒に議論をするということを始めたわけでございますけれども、金融企画局ができますとその審議会が一つになる予定でございまして、そういう面でも総合調整が強化されていくというふうに考えております。
  147. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 その総合調整のことが、文字どおり、言葉どおり、字義どおりの役割を果たすようにしっかりと考えていっていただきたいと思います。  具体的な問題に入ります。  実は、昨日も同僚委員がこの問題を取り上げられたので重なることになるんですが、ちょっとまた少し違った角度でお話をしたいと思います。  それは、損保の算定会料率遵守義務廃止に伴う問題点でございます。これは特に、今回の金融ビッグバンの問題に関して言うと、やはり一般庶民の感覚、若い人の感じからいくと、実は損害保険、自動車保険に関することは非常に関心が高いということが言えると思います。損害保険、特に自動車保険は、算定会料率遵守義務廃止に伴って、横並びであった保険料率が崩れていく可能性があって、確かに保険料が安くなることも考えられるのですけれども、一方で、きのうも指摘がありましたように、アメリカのように、年齢あるいは車種、地域等によって高い保険料を払わなければならない人が出てくる、この議論。要するにここでお聞きしたいことは、究極を言うと、保険に入らない、入らない方がいいという人が出てくる。保険に入らない人の運転による被害者の補償についてどう考えておられるかという問題です。  きのう保険部長が、要するにそれは自賠責、強制的に入っている自賠責でお願いするしかないということをおっしゃっておりましたけれども、対人賠償限度額は死亡の場合は三千万ということで、これでは低過ぎるのではないかという指摘があります。任意保険保険車による被害者の救済という意味でこの限度額をぐっと引き上げるということは考えられていないのかどうか。このテーマは運輸省マターになるんでしょうか。では、運輸省の方にお願いします。
  148. 大野裕夫

    大野説明員 お答えいたします。  御指摘のとおり、自賠責保険は、自動車事故の被害者に対する基本的な損害賠償の励行をするということで設けている制度でございますから、今回、金融ビッグバンの中でもそういった形での運用を図っていくことは当然だろうと思っております。  ただいま御指摘がございましたような弊害が実際出てくるのかどうかというのは、これから見ていかなければいけないわけでございますけれども、私どもの考え方としましては、もし御指摘のような問題が保険料率自由化に伴って発生するとすれば、これはやはり問題視せざるを得ない。現にアメリカなどでも、やはり保険に入っていない 車にはねられた被害者の方々というのが大変にかわいそうな目に遭っている、こういうふうに考えております。  その中で、保険金の支払い限度額につきましては、これまで運輸省におきましては、賃金とか消費者物価指数、こういったものの推移を勘案いたしまして必要に応じて引き上げを図っているところでございますけれども、今後も定期的に見直しを行ってまいりますし、御指摘のような事態が発生した場合には、その問題というのは、支払い限度額の引き上げの検討に当たって十分考慮すべき問題だというふうに考えておるところでございます。
  149. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今の運輸省大野課長のこの問題に対する指摘は、私はそのとおりだろうと思います。これは大臣課長と並んで答弁をしていただくのは申しわけないのですけれども、ぜひ大臣もしっかり銘記をしておいていただきたいという感じがいたします。  算定会料率の遵守義務撤廃という問題は、日米保険協議で決まって、その段階で日本の自動車保険はリスク区分の自由化に踏み出した、こういうことであろうと思うのですが、一方で、去年大蔵省はリスク細分化に対する当局の認可方針を示すガイドラインを損保各社に通知をされたということで、このことは、中途半端に認可制度によって規制しようとすることは保険会社の経営の選択肢を狭めるのじゃないか、こういうふうな考えがするんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。これは保険部長ですか。
  150. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えいたします。  ガイドラインには確かに両面ございまして、リスク細分型の商品を日本に導入するに当たって、余りいきなり大きなリスク区分の格差が生じてはいけないということで、その定着を見きわめるプロセスにおいて設けさせていただいているものでございます。そういうことで、昨日申し上げましたように、ガイドラインの性格は、料率等に関する法令上の審査基準を補完する意味で、認め得る料率格差の上限等を規定しているものでございますから、御指摘のように、見方によりましては、損保会社の選択肢を部分的に制限しているという面がございます。  しかし、今申し上げたとおり、このガイドライン、何せ初めて我が国で導入されるリスク細分型自動車保険が、国民生活に不可欠な保険の安定的な供給とかあるいは被害者救済に万が一にも支障を生じさせてはなりませんので、そういう意味で最小限の措置を規定しているつもりでございます。円滑な自由化の進展を確保するための措置であることを御理解いただきたいと存じます。  また、当局といたしましては、各損保会社が、料率、料金の設定以外にも、例えば担保危険の範囲などに創意工夫を凝らす等々でさまざまな消費者のニーズにこたえる多様な商品の開発、提供に積極的に取り組む余地が十分あるのではないかと考えているわけでございます。
  151. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 過渡的な形態としてそういうことをしているということなんだろうと理解をします。  先日、この問題と絡むのですが、保険業に携わる方を対象にして、私の事務所の方で、インターネット上を通じましてビッグバンに関連するアンケート、狭い小さなうちの事務所ですから、そんなにたくさんの数というわけにはいきませんが、保険業に携わる方を対象にしてアンケート調査をやりました。そこでさまざまな意見が寄せられたわけですけれども、中で一番多かったのが、保険会社の代理店を営む方からの比較販売についての意見というのが多かったのです。  若干紹介しますと、複数社の商品の比較販売が一つの代理店の窓口でできて初めてビッグバンの一面が完成するというふうな意見や、あるいは、生命保険の募集規制は恐ろしく旧態依然としている、比較販売の独自の企画書は認められないのですという意見があった。あるいはまた、例えばあるお客さんがいて、A社のセールスレディーから頼まれていて、つき合いも深いけれども、あなたのところもつき合いがあるから入ろうと思っている、こういうケースは多いんです。そこで、お客さんの要望で企画書をつくるわけです。A社の場合、入院するとこれだけの額が出ます、うちですとこれだけの額ですよ。でもそれはお客様のところには置いていけないんです。もし、A社のセールスレディーがそのお客さんのところに来てその企画書を見られて、それを財務局に送られるということになりましたら、最悪の場合、大蔵省財務局から募集人の資格を取り上げられることになるんです。こちらは別にA社がよくないと書いているわけではなく、客観的に書いている。また、お客さんにすれば、自分だけでは決められないから、だんなさん、主人と相談をしないと決められないので、その企画書を置いていってほしいということに必ずなるんです。でも、今はできないんです、非常に困っているんです、こういう意見もありました。  確かに以前は、保険募集の取締に関する法律があって、他社商品との比較をすることが禁じられていた。それが、一九九六年の保険業法の施行に伴って一部解禁になったということでございますけれども、この比較販売というのは改善されないのかどうか、損保の比較販売についてはどうなのか、この点についてお願いしたいと思います。
  152. 福田誠

    ○福田政府委員 お答え申し上げます。  現行保険業法におきましては、比較販売自体を禁止しているわけではございません。  禁止されておりますのは、契約者を誤解させるおそれのある対応で比較販売を行うというものでございまして、きょうも同じような御質問があったかと存じますが、例えば誤解を招くおそれのある比較表示としましては、客観的事実に基づかない事実とか数値を表示するようなもの、あるいは必要な事項の一部のみを表示する場合、あるいは保険契約内容について、長所のみを殊さらに強調したり、全体で優良であるような表示等々、いろいろな面で消費者に誤解を招くおそれのある比較表示は差し控えていただくということでございますが、比較販売自体を禁止しているわけではございません。  むしろ、金融システム改革の今後の進展によりまして消費者ニーズにこたえるいろいろな商品が今後開発されていく中で、代理店を含めまして保険募集を行う者が、契約者の自己責任に基づいて商品を選択していただくためにも、適切な説明や情報提供を行っていくように、私どもとしては十分留意してまいりたいと思うわけでございます。
  153. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今も保険部長から自己責任という言葉があり、先ほど同僚委員質問に対して山本証券局長心得の方からも、この法案の中に、いわゆるさまざまな契約をめぐる問題について説明をしっかりするような、そういう説明の充実といったことも盛り込んでいます、こういうふうなお話がありましたけれども、私、やはりこの自己責任という言葉は、簡単に言えてなかなか難しい側面を持っていることだろうと思います。  先ほど冒頭に指摘させていただきましたように、いろいろな理由はあったにせよ、さまざまな要因はあったにせよ、日本国の金融行政というものに携わってこられた大蔵省の皆さんたちの、言ってみれば対応のおくれというものが一つの大きな原因になって、金融業界にしてもあるいは一般の国民にしましても、急に金融ビッグバンなんということでその対応に大わらわになっているというのが現状です。それで、いろいろやっていますと言われても、そういう長い間の習慣というものと、それから急に新しい時代の流れの中でのそういう自己責任ということに基づくさまざまな対応というのは、なかなか一朝一夕にいかないという側面があろうかと思うのですね。  そういう点で何ができるかということでございます。今までいろいろな角度からあったわけですが、さまざまなことが言えると思いますが、一つの側面として証券、特に証券・金融、さらには保険という、こういったものをめぐる証券・金融教育という側面というものが日本では先ほど来申し上げていますように非常におくれている。まあ、私自身もそういう教育を受けたという自覚は余りなくて、大学でも金融の講義はほとんどわからなかったというあれでございますから推して知るべしなのですが、例えばアメリカでは、個人にかかわる証券・金融教育に関する記述が、どういう基準か知りませんが、例えば百十ページある。教科書全体で二〇%ぐらい占めている。そんなに多いのかなという気もしますが、日本では同じ記述が行数の合計でいえば一ページぐらいしかない。非常に少ない。どの部分を指してこのデータが出たのかちょっと定かではありませんけれども、そういう指摘があります。  そういう点で、それこそこれから始まる金融ビッグバン、もちろん二十一世紀までは少しまだ時間がありますが、これからの日本の教育の現場の中で、こういった部分を含めて、自己責任を問う前に、こういう金融・証券の教育というものにもう少し力を注いでいくというふうな考えをお持ちかどうか。これは文部省の方に来ていただいておりますね。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  154. 素川富司

    ○素川説明員 金融・証券に関する教育についてのお尋ねでございます。  学校教育におきましては、現代の社会について理解を深める、それから国家や社会の有為な形成者として必要な資質を養うということが重要であると考えておりまして、生徒の発達段階に応じまして、例えば高等学校の公民科のような教科におきまして、現代の経済と国民生活に関する学習の中で金融や証券について取り扱っているところでございます。例えば高等学校の公民科、政治・経済という教科がございますけれども、そういった中では、市場経済の仕組みや資金の循環、金融機関の働きなどについて理解させるということにいたしておるわけでございます。  先生御指摘の教科書の量でございますけれども、例えば高等学校の政治・経済などの教科書におきましては、金融・証券の仕組みなどについては四ページ程度の記述がなされておりますけれども、投資家の立場からの証券に関する記述というのはそれほど多くないというのが実態であるわけでございます。  これからの社会におきましては、証券・金融に関する正しい理解を生徒が持つということが一層重要になってくるというふうに存じておりますので、このための教育が十分行われるということが重要であると考えておる次第でございます。
  155. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 最後に大蔵大臣に、今の問題について、教育という分野でありまずけれども大蔵大臣としての概括的なお考えを一つ。それからあと、さっきも出た問題ですが、金融検査官について、大臣は、現状について十分ではない、増員をお願いしている、こういうふうなお話、ただアメリカとの比較の中で単なる数字の比較は無理だというお話がありました。村岡官房長官が先日千人ほどに大幅に増員するというお話をされているようですが、例えばその千人という数字についてどう考えられるか。この二点について最後にお聞きをして、終わりたいと思います。
  156. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  先ほども申し上げましたが、金融機関に対する検査官の数等々でございますが、十分ではないというふうには思っております。したがいまして、これは毎年予算時期になりますというと増員要求をするわけでありますけれども、村岡官房長官が言ったほどの数にはなかなかなりにくいとは思いますけれども、もう少し充実するように努力をしていきたい、こう考えております。  実際のところは、今大蔵省の官房金融検査部の検査官、それから証券取引等監視委員会の職員、それに財務局の職員と合わせれば大体六百名ぐらいの体制のようでありますが、これから金融監督庁ができますというと向こうの方の増員要求になろうかと思いますけれども、私どもとしてももう少し充実するように努力をしていきたい、こう考えておるわけであります。  それから、さっきの文部省の話の関連ですが、実は一番大事なのは、自己責任原則ということを学校教育の中で教えていくことが大事なことであろう、私はこういうふうに思っております。  と申しますのは、先ほど委員の方はアングロサクソンと日本民族というふうに対比してお話しになりましたが、私は農耕民族と狩猟民族の差があるような気がするのです。昔からの農耕民族は、何でも一緒にみんなでやろうという感じがあるわけであります。ところが自由化という時代になってまいりますというと、個人個人が自己責任を持って行動をするということになってくるのだろうと思うのでありまして、その点もありましてこのビッグバンのおくれがあったのではないかな、こう思うのでありますが、これからは教育の場では、大事なのは自己責任よ、そのかわりよく情報を得て、自分で判断して、そして結論を出しなさい、結論を出したならばもうかっても損しても自己責任よ、こういつたことが教えられていくことが大事ではないかなというふうに私は感じておるわけであります。
  157. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 次に、西田猛君。
  158. 西田猛

    ○西田(猛)委員 自由党の西田猛でございます。それでは、質問をさせていただきます。  まず冒頭、この大蔵委員会で実はいろいろと、委員長にも与党の理事の方にも野党の理事の方にもお話をさせていただきたいと思うのです。昨日の本会議で緊急経済対策に関する特別委員会というのが設置されて、そこでいわゆる減税法案それから財政構造改革法の改正法案、あるいは補正予算などについて審議がされることとなっているのでありますけれども、これはやはりどう考えてもおかしいのではないのかなと我々思うのですね。今、村上委員長いらっしゃいませんけれども、きっと村上委員長もそう思っておられるでしょうし、今座っておられる委員長代理もそう思っておられると思うのですね。  何となれば、去年の年末にやった二兆円の特別減税、あれはどこの委員会審議したのでしたっけね。たしかこの大蔵委員会だったと思うのです。それがなぜ今回の減税法案は大蔵委員会でやらないのだろうかということなんですね。  もちろん、いろいろな言い方はできます。緊急経済対策なのです、だから緊急経済対策に関する特別委員会でやるんですというふうなお話もできるでしょう。しかし、そのようなことは、これはためにする議論であって、事の本質をわきまえていない議論と言わざるを得ません。国会法の四十五条に違反するあるいは違背する可能性もあるでしょうし、ここはやはり粛々と、減税法案は我が大蔵委員会で、そして財構法は財構に関する特別委員会、それで、補正予算は予算委員会もあるわけですから、それぞれのところで審議をする、それが国会の本来の姿である、そういうことを冒頭申し上げておきたいと思います。これは、きょう来ておられる大臣を含めた政府の方にお話をするということよりも、国会みずからのあり方として我々が肝に銘じておかなければならないことだと私は思いますので、強くこのことを冒頭申し上げておきたいと思います。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕  そこで、では、なぜ減税法案などなどをこの大蔵委員会でちゃんと審議したいなというふうに思うかといえば、昨年の減税法案のときにもいろいろと、それから、今金融システム改革のための法律案をやっているわけですけれども、その以前にありました金融システム安定化のための緊急対策に関する法律などについてもこの大蔵委員会審議を行ったわけです。そこでいろいろと議論した経緯がありますし、そこでむしろ積み残した問題点もあったはずです。そして、私どもが要求した資料、私どもが要求した問いに対して真っ正面からお答えいただけなかった、あるいは出していただけなかった資料などなどもあるわけでございますから、そういうものも全部ひっくるめてこの減税法案の審議などを通じてまた明らかにできるわけでありまして、ぜひともこの大蔵委員会で粛々と審議をしていただくべきだったなということを再三申し上げておきたいと思います。  ここで、なぜそういう今までの審議経過が重要かということをひとつ明らかにするために、橋本内閣総理大臣がこれまでずっと発言してこられた経緯を少し追ってみました。そして、これは新聞の、言ってみれば川柳というか、「素粒子」というふうな新聞のコラムもあるようですけれども、そういうところにも載ってしかるべきのようななかなかおもしろいジョークなのですね。本当に、読んでいて、大変失礼ながら笑えてしまいます。申し上げますね。  昨年一月二十日の施政方針演説で、橋本総理大臣はこうおつしゃいました。平成九年度を財政構造改革元年と位置づける。果たしてそうだったでしょうか。皆さんよく思い起こしていただければわかると思います。  そして、昨年十月一日の衆議院本会議では、橋本総理はこうおつしゃいました。景気の動向は確かに厳しい状況にあるが、今年度後半に景気の回復傾向が見られると考える。果たして当たっていたでしょうか。  そして、十月二日の衆議院本会議では、財政構造改革は短期的には痛みを伴うが、中長期的には経済の活性化に資する。経済の活性化に資するのでしたら、そのままやっていればいいのじゃないでしょうかね。なぜここで弾力条項などを設けて財構法の見直したとかいうことを言い出すのでしょうか。経済の活性化に資するとおっしゃっていたはずでございます。  それから、昨年十月十三日の衆議院の予算委員会では、所得減税をする大きな財源を持っているわけではない、赤字国債の発行はあってはならない。ここに至っては、もう本当に読んでいる人の心を和ませてくれる文章となっておるわけでございます。  さらに、昨年十二月十七日、二兆円の特別減税実施の表明時のお言葉でございます。財政構造改革は今後も見据えていかなければならないが、経済の現状を踏まえ、思い切った施策を考えた、財政構造改革が極めて重要な位置づけであることは変わらない、批判が出ることを覚悟で決断した。なぜ今になってこの財構法の改正を言い出さなければならないのでありましょうか。まことに奇妙な話だと言わざるを得ません。  そして、事ここにきわまれりは、本年の、もうこれはことしになってからでございますよ、本年一月十二日、衆議院本会議での御発言でございます。補正予算と金融システム安定化対策などと相乗的な効果を発揮し、我が国経済の力強い回復をもたらすものと確信していると高らかにうたわれたわけでございまして、株価の現状、そして世界各国が見る我が国の経済の実態はもう皆様御承知おきのとおりでございまして、今私がほんの少しですけれども紹介をさせていただいた、この政府の最高責任者の方のお話でございました。心が寒くなったとき、そしてどうも怒りに心が打ち震えるときは、この文言などを読み返してみれば、何となく心がほのぼのとしてきて温かい気持ちにさえなってくるような、もう本当に何の言葉もない状況だと私は思っております。  そこで、今回の法律案、いろいろと内容は盛りだくさんでございまして、経済改革の一環として構造的な金融改革をしていかなければならないということは私どもがもう以前から申し上げてきたところでございますので、その個々の内容をとってみれば、私ども一つ一つ反対をする理由は特には見当たりません。  ただ、これは本質的な議論として、やはり根本が違うわけでございますね。今回も、この金融システム改革のための関係法律整備等に関する法律案で書いているのは、やはり業法のいろいろなところをいじっていく、業法のいろいろな部分を改正していくということの積み重ねでございます。私どもが主張しているのは、もう業法はやめましょう、そして、マーケット、市場に関する法律があって、そこにオープンでフェアでそしてフリーな原則があって、その市場原理そしてルールを厳正にマーケットプレーヤーに守らせる政府の監視機関があればそれでよいという考え方でございます。一刻も早くそういう方向にこの法律案が近づいていき、システムそのものがそういう方向に向かっていくことを強く願っている次第でございます。  それから、大蔵大臣が今いらっしゃいますので、実は、大蔵省をめぐるいろいろな諸問題がここのところかまびすしく社会で言われておりました。そこで、私は一つ大蔵大臣にお聞きしたいと思っているのであります。  実は、せんだっての行政改革特別委員会大蔵大臣に御質問をさせていただきたかったのですけれども大蔵大臣がプレサミットに出席しておられていらっしゃらなかったものですから、かわりと申し上げてはなんですが、やはり同じく許認可権がたくさんおありで、そしていわゆる天下りをたくさん毎年輩出しておられる運輸省の藤井運輸大臣にお聞きをいたしました。藤井大臣は藤井大臣としてのお考えを交えてお答えになっていただきましたけれども、私の質問というのはこういうことなんですね。  公務員制度というものがそもそも大きな見直しを迫られているのではないだろうかというふうに思うのでございます。いわゆる試験に受かった、上級職あるいはⅠ種職などを通った、あるいはそれ以外の試験に受かって公務員になった、それはそれでいいのだと思いますけれども、しかし、公務員というものは、本来、この大蔵委員会でもいろいろと議論がありましたように、強い身分保障法律で定められていて、基本的には原則としての終身雇用も、本当の意味で終身雇用が可能である、あるいはそれが予定されている、そういう職種ですから、そういうものが公務員でありますから、もう公務員の方は定年までどうか国民のために、国のために、社会のためにお仕事をしていただいて、そして、もちろん私のように全く道を変えるのは結構ですよ、水平移動は。これは結構なんです。むしろ私なんかは公務員やっていたら食いつぶすと思ったから違う道に進んだわけでございますけれども、また違った形で国家、国民、社会のために役に立とうとする、それは結構です。  しかし、同期で次官が出たから、もうそれまでには同期入省の方はみんなやめますとか、あるいは、本当に私も役所の中で見ていて大変だなと思ったのは、四十代前半で一人欠け二人欠け、こうなっていくわけですね。私と同期の入省の方でも、もう既にいわゆる外郭団体、関係法人に移ってしまわれた方もいます。四十代前半にしてそうでございます。特に、私がいた自治省のように、そんなに課長職、局長職の多くないところは大変厳しい状況があります。そんな中で、ポスト数も多く、むしろ恵まれている大蔵省においては、これはもう皆さんずっと最後までお仕事をしていただく、たとえ後輩が次官になっても、自分課長じゃちょっとあんまりかもしれませんけれども自分局長審議官でも別にいいのだと思うのですね、その仕事さえちゃんと自分で誇りを持ってこなしておられれば。  そこで、いわゆる定年退職後の再就職については、その役所、大蔵省なら大蔵省はもう一切あっせんをしない、今でも業としてはやっていない、もちろん大蔵省が業として職業のあっせんはしていないとは思うのですけれども、今事実上、そこは幾らお言葉で濁されても、実態としてそういう実態があるのだということはみんな知っていますから、それはもう隠されても仕方のないことだと思うのですね。ですから、そういうことはだんだんと改めていって、そして、定年退職までお勤めになった方が御自分で、全く関係のない仕事、あるいは関係があるかもしれないけれども自分で見つけてきて再就職する、それはもう自由です。自由ですけれども、勤めている役所が事実上のあっせんをするということは、これはもうやめていいのではないかなというふうに考えます。そういうふうな公務員のライフスタイルも出てくるのだと思います。  また、国家公務員においては、高齢者対策委員会ですかができて、また、地方公務員についても、自治省と都道府県、市町村などを中心としたそういう高齢者に関する研究会ができておると思います。そのような方向に行くものと私は考えています。  さて、そこで、一番天下りと言われている再就職などの多い大蔵省松永大蔵大臣に、やはりこれからの公務員制度、公務員というもののあり方は、今私が申し上げたように、粛々と国民のために落ちついて仕事をしていただく、出世競争だけが人生ではないと腰を落ちつけて公務に従事していただいて定年までお勤めになっていただくのがよろしいのではないかというふうに考えているのですけれども大臣、お考えいかがでございましょうか。
  159. 松永光

    松永国務大臣 公務員を経験された委員の話でございますから、やや実感がこもっているような感じを私は受けましたが、私自身の考え方は、大蔵省がこの間多数の不祥事を犯した人が出たわけでありますから、今ここで言うのはいかがかと思いますけれども、明治以降、日本という国が比較的短期間の間にいわゆる近代国家の形をつくり上げて、そして、やるべからざる戦争をやって大災害を受けたけれども、これまた比較的短い期間内に経済の回復を遂げて、先進国中経済の強さでは二番とか三番とか言われるまでになった、その背景には、日本の公務員の優秀さと、そして職務に精励してきたということが私はあったことは事実だろうと思います。戦後いろいろな国で新しい国ができましたけれども、日本の明治以降の発展のスピードに比べれば相当スピードは落ちているというふうに私は思います。そういう意味で、優秀な人が公務員になってくれた、そして職務に専念してきたというのは、これは私は事実だろうと思う。  その背景に何があるかというと、今委員御指摘のとおり、身分の保障があった、同時にまた、職務専念義務というのを課せられておって、それを忠実に守って職務に専念してきたということは事実だろうと思うのです。そして、かつては恩給という仕組みがあって老後の生活は保障されておった。こういつたことで、日本の公務員、官吏がよく仕事をしてきたというのは事実だろうと思う。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕  ところが、昨今指摘されておりますのは、今委員御指摘のとおり、組織というのはある意味ではピラミッド形であることが組織としての体をなすわけでありまして、円筒形ではなかなか組織としては能率的なやり方ができないというのが今までの組織の考え方ではなかろうか。スポーツの社会でも、監督がおって助監督がおってコーチが何名かおって、あとは全部平選手という形で指揮命令が行き届くという感じが私はあるような感じがいたします。民間会社でも公務員の社会でも、やはり組織がよく機能するのは指揮命令系統というのがしつかりしている場合だと思うのでありまして、そういう意味では、途中である程度の人が別の方に転職していくというのも、これは認めなければならぬのだろうというふうに思いますし、また、そうしなければ下の方がいつまでたっても長のポストにつけないということがあって、下の人が希望が持てないというようなことがあるかもしれません。  とにかく、公務員の社会は、委員自身も御経験と思いますが、役所に入って十五年、二十年の間は、それこそその日のうちには帰れない、翌日になってから家に帰るぐらいの大変なたくさんの仕事に耐えながら頑張ってきておるのが実情だろうと思います。そういったことを考えますと、その期間を過ぎれば課長になりあるいは部長になるということでなければ、それは希望が持てないですわな。そうすると、上の方がある程度やめていってくれぬことにはそれが回ってこないということもあるというふうに、現実の姿はそうなっているように感じます。  ただ、しかし、今委員御指摘のように、自分の先を見て、自分はもうどうしても局長にはなれぬわい、それならば今のうち転職したいという人が出てきた場合には、できることならばいい転職先をみずから発見して転職していくというのがあってもいいのだろうというふうに思いますが、ただ、役所の方で、自分が監督する業界等に圧力をかけて、あるいは圧力に近いような状態であっせんするということは、これは好ましいことではないというふうに思います。  同時にまた、公務員制度のあり方そのものとしても、先ほど申したとおり、組織をいつまでも若々しく活気のあるものにしていくためには、ある人たちが局長になれば同期の人はできることならば転職をする。そうでないと、同期の局長でないのがいっぱいごろごろしておると、局長としても仕事がやりにくいでしょうから。しかもそれに加えて、日本人の寿命が延びまして、今までは六十になりますというと大体引退の時代が、七十になっても、それを超しても元気かくしゃくとしているというのがたくさんおるわけでありますから、そういったことを考えますと、人間の寿命、働ける年代が上まで来たということを考えて、公務員のあり方というものは、これはやはり根本的に考えていかなければならぬ問題があるのではなかろうか。  そういったことで、総理が主唱して公務員制度のあり方についての検討会というのをおつくりになっておるわけでありまして、その検討の結果を私どもとしては十分に受けとめて、そして世間から後ろ指を指されるようなことがないように措置していかなければならぬというふうに私は考えておるわけでございます。
  160. 西田猛

    ○西田(猛)委員 基本的に大臣認識を同じゅうしていただいておりますので、大変ありがとうございます。そのとおりだと思います。  若干私ども認識を異にしていると思いますのは、私がここで答弁してもしようがないのですけれども大臣のおっしゃるとおり、組織というのはピラミッド型でなければいけない、これはもうそのとおりだと思いますし、活力を持っていなければいけない、そのとおりだと思います。入った人間に上への希望を持ってもらわなければいけない、全くそのとおりです。  問題は、私が申し上げているのは、同期入省、要するに、入省年次でそれをはかるというメルクマールしかないというところが問題なんですね。大臣も、もう言わずもがな、おわかりだと思いますけれども、そうではなくて、仕事ぶりで、この人は局長、この人は局次長、この人は課長と、役所ももうそうなっていかなければいけない。だから、入省年次だけがこの人は局長、では何年下は局次長というメルクマールだった時代はもう過ぎたということだと僕は思います。  ですから、おっしゃるとおりなんです。ピラミッド型で結構なんですけれども、年齢や入省年次ではなく、いわゆるその人の仕事ぶり。だって、法律にもちゃんと書いてございます、国家公務員法でも地方公務員法でも、成績主義と。成績主義ということは、入省年次主義ではありません。入省年次主義とは書いておりません。そういうことだと思います。  大変ありがたくも、私どもが入ったころは本当にそうでした。一週間も家に帰れずに役所で毛布にくるまって寝ていたという状況がありました。もちろん、その方が家に帰るより楽だったし、きれいだという状況もあったのですけれども、そんなのを踏まえて、我々も、やはり実績を上げて成績を上の方にわかってもらえれば若くても抜てきされる、ぼやぼやしていると後輩に追い抜かれる。これは役所もそうならないと、そうなってこそ活性化が図られると思いますので、大臣、ぜひ政治家としてのリーダーシップを発揮していただいて、公務員制度の活性化と皆さんの今後ますますの御繁栄を期していただきたいというふうに思うわけでございます。  そこで、今回も、大蔵省で一生懸命まとめられた法律でございますけれども、その中で一つ、ノンバンクというものの存在が日本の金融秩序の中で今非常にクローズアップされてきているのだなというふうに私は思うのですね。  というのは、ノンバンクというのは、御存じのようにいわゆるサラリーマン金融、消費者金融などなどと言われているものの総体でありまして、俗に貸金業と呼ばれているのだと思います。これは、貸金業法という法律がございまして、そして、出資法という法律においてもある種の規制がなされているものでございます。ところが、貸金業というのは実は業法ではなくして行為を規制する行為規制法でありまして、言うならば、その限りにおいては、これはマーケットの自主性に任されていた社会だというふうにも考えられるわけでございます。  ところが、ノンバンクの現況でありますけれども、平成八年三月末の消費者向け貸金業の融資残高は、何と八兆五千六百八十億円にも上っておりまして、前年度比で一二・七%の伸びを示しています。このように、金融秩序の中における大変大きな地位を占めるに至っております。  もう一つ申し上げますと、全国の銀行の貸出金の合計を一〇〇とした場合、平成八年三月末のいわゆる貸金業の融資残高は一四・三にも上る、それだけの大きな地位を占めてきております。そして、特にその中でも、消費者だけではなくて、事業者に対する融資も、平成八年三月末で五十四兆九百六十億円の融資残高にも上っているというふうな状況でございます。  そこでお聞きしたいのですけれども、こういう貸金業の資金調達状況というのはどのようになっているのでしょうか。
  161. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  今先生が御紹介いただきました貸金業というものは、通常、消費者金融を頭に置く方が多いのでございますけれども、今先生いみじくも御紹介いただきましたように、消費者向け貸金業、事業者向け貸金業、信販、リース、その他とたくさんございます。  ノンバンクというのは非常に広い概念でございますが、それを総体として申し上げさせていただきますと、貸付残高が五百億円超のノンバンク、これは二百二十八社ございます。これからのアンケートをとってみましたら、そのうち、金融機関からの借り入れが八四・六%でございました。関連会社からが六・四%、事業会社からが五・八%、その他からが三・一%というのが資金調達の現状でございます。
  162. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今銀行局長言われたように、貸金業に対する資金供給としては、銀行からの融資がその大宗を占めているわけでございます。今御紹介のあった数字でございますが、八四・六%、これが金融機関からノンバンクに資金として供給されているわけです。その際のノンバンクへの貸出金利というのはどういう体系になっているのでしょうか。
  163. 山口公生

    山口政府委員 これは当事者間の問題でございまして、金利は個々に貸出先の信用度に応じまして定められているということでございます。
  164. 西田猛

    ○西田(猛)委員 当然そうなのですけれども一般的に申し上げて、例えば、東京コール市場で銀行間レートとかよりも高いとか低いとか、そういう水準の話をちょっとしていただきたいのですが。
  165. 山口公生

    山口政府委員 これは、先ほど申し上げましたように、ノンバンクというのは非常に幅が広うございますから、主要ノンバンクという概念でとらせていただきますと、大体今の平均調達金利、これはノンバンク側から見た数字ですが、現在はおおむね一%強から三%程度という感じになっております。
  166. 西田猛

    ○西田(猛)委員 一%強から三%強とおっしゃったということは、その金利で銀行はノンバンクに貸し付けているということなんですね。
  167. 山口公生

    山口政府委員 そういうふうに御理解いただいて結構でございます。
  168. 西田猛

    ○西田(猛)委員 この問題を私が取り上げるのは、要するに、問題意識の根底としてはこういうことなんですね。今、銀行、それから銀行に次ぐ金融機関などなどのいわゆる貸し渋りが大変な問題になっている。そして、中小企業の方を中心として事業者の方がなかなか金融機関からお金を借りられない。そんな中で、いわゆるノンバンクに頼っている事業者の方の数が物すごくふえてきているわけですね。今これは、私は数字で若干申し上げました。  いわゆるノンバンク、貸金業者の内訳を詳しく見ていくと、消費者向けの貸金業の融資残高が八兆五千億円ですけれども、いわゆる事業者向けの貸金業の融資残高も、これは何ともう三十六兆六千三十億円にまで上っているわけです。この三十六兆六千億円という数字そのものは平成八年三月末の数字で、平成七年三月末の数字は四十兆円ということなんですね。若干減ってはいまずけれども、四十兆円前後で推移しているという、非常に大きな数字になっています。すなわち、ここで何が見られるかというと、中小企業の方を中心として事業者の方が銀行からお金を借りられない。その分、こういうノンバンクに頼っていらっしゃる。ノンバンクから融資を受けている。  ところで、もうおわかりのように、怨嗟の声が出ているわけですよ。銀行からだったら要するに三%、四%ぐらいの金利で借りられるはずなのに、ノンバンクから借りると金利は、これはもう皆さんよく御存じのように、非常に高いわけです。  ここでちょっと紹介すれば、貸金業規制法の中でも言っておることですけれども、そういう貸金業者に対して、債務者、借りた人が利息を任意に支払った場合には、利息制限法の制限の利息を超える部分についても有効な利息の債務の弁済とみなすというふうに貸金業規制法そのものにも書いてあるわけですね。そこで、これは金銭消費貸借になりますから、その契約書ですとか約定書とかで何%なんですよと書いてあって、それをもううのみにして払ってしまえば、利息制限法を超えている金利でももうそれでいいのだということでありまして、これが非常に高い。  例えば、利息制限法の制限利息は、元本が十万円未満であれば年利二〇%、十万円以上で百万円未満であれば年利一八%、百万円以上であれば年利一五%。これそのものも非常に高いですけれども、これすらも超えてしまっている。出資法の上限金利は何と年利四〇・○〇四%ですよ。そこまで実は上限を目いっぱい取ったとしたら取れてしまうわけです。そういうふうな状況なんですね。  ここが非常に今中小企業の皆さんから怨嗟の声が上がっているところですし、しかも、単純に考えても、本来であれば銀行が貸し付けていれば一もっと低い金利で済むものが、これだけの金利を中小企業者を中心として日本の産業が払わされているということは、国民経済的なロスだとも言えるのだと思うのですね。このような状況について、当局としてはどのように考えておられるでしょうか。
  169. 山口公生

    山口政府委員 この点については、私どももそういう点の懸念がないかどうかということを注意深く見ておりまして、いろいろ調べてはみました。  そうすると、いろいろノンバンクがあります。銀行系のノンバンク、つまり銀行がバックについていて銀行系のノンバンクというのがございますね。例えば、住友でいいますと住銀ファイナンスとかいうような名前のもの、こういったものは実は業務は概して縮小傾向にあります。それから、独立系の事業者向けのノンバンク、これも実はバブルの後遺症で苦しんでいるところが多いわけでございますが、この中に一部、銀行の貸し渋りといいましょうか、銀行から融資していただけないということでその需要が来ているという話も聞いておるところはございます。それから、消費者向けノンバンクについて言いますと、これはちょっと、金融機関が貸す貸さないの問題とは別に、今かなり伸びているという点があります。  貸し出しの金利については、確かに個社によっては高いところはありますが、やや低下傾向にあります。  総じて見ますと、私どもも非常に心配してその辺はよく見ているつもりですけれども、貸し渋り現象が急にノンバンクの融資をふやし、それが高利で、ある意味では中小企業者から大変な負担を求めているという図式は、頭の中では非常にそういう図式があるのじゃないかと考えますけれども、現実にそれがないとは言いませんが、そういった動きは個々に見ていきますとそれほどでもないということなんです。  それで、先生がおっしゃいました、確かに事業者向けのノンバンクでも、ちょっと名前は秘させていただきますが、あるところは五%ぐらいで貸しているのです。それから、あるところは実は二割ぐらいの金利で貸しているのですね。つまり、何でそんな金利が差がつくかというと、結局リスクの度合いなんです。リスクの度合いで、銀行で貸しているところは、大体三%とか、今だと四%ぐらいで貸しても、倒産リスク等からいうと十分にペイするというところが相手だと思うのでございますね。だから、ノンバンクの中でも、例えば五%程度で貸しているところというのは貸し倒れ率の低いところ、ところが、二割とかになりますとかなり貸し倒れ率が高いということだと思うのですね。  この議論は、ある意味では大変社会問題につながりやすいという先生の御指摘も私もよくわかりますし、その感覚は共有する面もあるのですけれども、ただ、けしからぬという話になっていきますと、そういう資金需要がある、リスクは結構高い、しかし銀行はリスク管理上相手にしてくれない、ノンバンクでも高い金利なら貸すよというところしかないというときに、それは高い金利を取ってはいけないと言ったら、もう貸すなということに逆になるわけですね。行き過ぎたら、確かに出資法で四〇・〇〇四%のような、これ以上取ったらそれはもう反社会的なことだ。一方で、利息制限法で、ある程度の期間に応じて、例えば二割とか一五%とかいうのを超えたら、払ってしまったらそれは有効だけれども、請求はできないという、そういうグレーゾーンがあるという関係なんですね。どこまでそれを強行規定でもって下げさせるのかということは非常に難しい問題だと思うのですね。  この辺につきましては、やはり時代時代によって少しずつそれを下げていくという方向だろうとは思うのでございますけれども、余り一遍にそれを強行的に下げてしまいますと、今度はやみ金融になってしまうのです。つまり、だれも相手にしてくれない人たちが、本当に年間一〇〇%とか二〇〇%とかいうような金利で、違法なそういうやみ金融に走ってしまうということも恐れるわけでございます。  だから、私どもとすれば、今先生の御指摘のようないろいろな社会現象がこういうところにいろいろな形で悪い面であらわれないか、よくチェックしていきたいとは思っておりますけれども、一概に余りそこに価値判断を入れて強行的にやって判断をしていきますと、ちょっとその辺の社会的なひずみが思いがけない部分で出てくるということも頭に置いておく必要があるなというのを痛感している次第でございます。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  170. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今銀行局長が言われたように、ここらあたりの社会現象については、それこそが行政の役割だと思いますので、厳しく監視をしていく必要があると思いますから、ぜひそこは監視を怠っていただかないようにお願いをしたいと思います。  今銀行局長も言われました、私は四〇・〇〇四%まで取るのがいけないと言っているのじゃなくて、現に取り得る状況にあるということでありまして、そういう高利を、これを無理やりにでもたたいて低くさせよう、あるいはさせてくださいと言っているのではないのですね。  だから、私の問題意識、これはもうわかっていただいていると思いますけれども局長も今の御答弁の中で言われたように、銀行が貸してくれない、ではどこか貸してくれるかといったら、借り手のリスクを見てとって、五%では貸せないよ、一〇%では貸せない、けれども三〇%なら貸せるよというところがある、その三〇%をいけないとは言えないですよ。私も言いませんよ。けれども、そういう状況が今のこの銀行の貸し渋り、金融秩序の大きな不安の中で一番しわ寄せを食らっていらっしゃるのは中小の事業法人の方だというところですよ。ここは問題意識を共通していただけるでしょうね。
  171. 山口公生

    山口政府委員 全く先生のおっしゃることは同感であります。  結局、貸し渋り現象というもとのところを解決をしていくということがそういった問題を引き起こさないで済むということだろうと思います。したがって、銀行にも、特に中小企業の貸せるところには貸してもらいたいという要請をしばしば、行政の範囲としてはぎりぎりかもしれませんが、やらせていただいておりますので、そういった先生と同じような考え方で施策をやらせていただいておるところでございます。
  172. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ぜひそういう意味で、貸し渋りがあって、そして日本の活力であるところの中小を中心とした事業法人が高い金利を払わされる、あるいは払わなければ資金が取れないという状況については厳しく見ていく必要があるなというふうに思いますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。  特に、プロフェッショナルの方でしたらそういう議論でいいのでしょうけれども、片や銀行は貸してくれないではないか、けれども、言っても貸してくれない銀行に、何と金融危機管理勘定で十三兆円、そして特例業務勘定で十七兆円まで予定して、いわば三十兆円の自分たちの税金を大銀行にはどんとつぎ込もうという準備までしている、片やその銀行たちはそういうノンバンクにある程度高利で融資している、そしてその銀行からの融資を受けたノンバンクが自分たち事業法人から高い金利を取っているという構図がつながれば、これはやはり一般の方から見れば、税金を銀行につき込み、銀行がそれらのお金をノンバンクにつき込んで、ノンバンクは自分たちから三〇%、四〇%だと高い金利を取っている。これは世の中一体どうなっているのだ、こういう構図が頭の中で描かれても、それは私は非難することはできないと思うのです。  やはり、そういうふうにお考えになられること自体がこの世の中の先行きの経済に対する不安をも助長している面もあるでしょうし、そんな筋書きが頭の中でできてきてしまうということ自体が命の日本の問題点なのだと私は思いますので、ぜひともこういうことこそ行政当局は厳しい監視を続けていっていただきたいというふうに思います。  そこで、一つだけ、この問題に区切りをつける意味でもおもしろい問題だなと思ったのは、今ノンバンクはいわゆるコマーシャルペーパーというものは発行できないような規定になっています。これは、出資法第二条第三項で規定されています。これは、ノンバンクが社債の発行により不特定かつ多数の者から貸付資金を受け入れるときは、その業務が銀行業務的性質を帯びることになり、銀行などのように法令の厳重な規制を受けないノンバンクにこれを認めることとなって著しい弊害を生ずるためということが、昭和二十九年の立法当時の解説としてなされている。かなり大時代がかった解説ではありますけれども、そういう考え方が今までずっと踏襲されてきたわけでございます。  これに対して、金融制度調査会などなどで「我が国金融システムの改革について」といういろいろな御提言があって、このように言われているのです。「しかしながら、今日、商法、証券取引法等による市場ルールや投資者保護のための諸制度が格段に整備され、また、企業部門の資金不足が解消されたことに鑑みると、同項により」、第二条第三項により「ノンバンクの融資業務向け社債等の発行を禁止する意義は失われつつあると考えられる。」ということで、早晩いわゆるノンバンクに対してもCPそれから社債などの発行を認めていこうという方向になりつつあるというふうに聞いています。今回の金融システム改革の中には含まれておりませんけれども一つの金融改革の方向かなと思うのです。  私は、それそのものはむしろいいことだ、システム改革ですから、フリーなためにいいとは思うのですけれども、この金融制度調査会の平成九年六月十三日の答申の中でやはり一つ引っかかるのはこういうところなんです。今も私読みましたけれども、また、企業部門の資金不足が解消されたことに鑑みるとこというここです。  ところが、今の状況は全然逆なのでしょうね。もちろん日本の金融資産あるいは流動性資金がどこに向かっているのかという、マクロ的に見れば、企業部門の資金不足が解消されたというのは戦後から比べればそうだと思います。しかし、ミクロの目でもって個々の現場の経済事象を見てみれば、とても企業部門の資金不足が解消されたということではないわけです。先ほど来いろいろとお話をしているように、全然、企業部門の資金不足が解消されてはいない。であれば、この金融制度調査会の答申はちょっと現実と遊離したものではないのかなという疑念も出てこざるを得ません。  もちろん、だからといってノンバンクに融資業務向けの社債等の発行を禁止を続ける、こういうことではありません。ありませんけれども、企業部門の資金不足ということは今現実に起こっているのだということを踏まえてこの金制調の答申などは現実化をしていっていただきたい。逆に言えば、これを現実化していくためには、その前提条件として企業部門に潤沢に資金が行き渡るのだという担保がなされていないといけないと思いますので、そこは局長いかがでしょうか。    〔委員長退席、浜田(靖)委員長代理着席〕
  173. 山口公生

    山口政府委員 先生のおっしゃることはよくわかりますが、この金制調の答申の言っていることは、恐らくもう少し長いタイムレンジでの議論をしていたと思うのです。  昔、高度成長期には企業の資金不足ということが非常に言われまして、傾斜的な配分をする必要がある、あるいは間接金融に資金を集中して効率的に配分をしなければいけない、こういう時代だったと思うのです。それが、現在の資金循環表でごらんいただきますとわかりますように、企業の借り入れ需要というのは総体としては減ってきているわけでございます。  先生が今おっしゃったのは、確かにミクロの、個々の、例えば中小企業のということでございますが、それは正しいのですけれども、この金制調で言っていることは、そういうふうに社債等あるいはCP等での資金調達は企業の方に優先させてという時代ではなくなったというふうにとれば、そこはロングレンジでは矛盾のない話だとは思うわけでございます。  短期的に見ますと、確かに資金余剰時代の資金不足時代というふうな表現ができるかもしれません。そういうことをよく心しておきたいと思っております。
  174. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そのようにお願いしたいと思います。  よくおっしゃっていただいたように、金融余り時代の事業法人の資金逼迫というか、そういう状況が現に現出しているわけですから、そういうことをやはり一つ一つ解消していって、そして制度の深化を試みるということがシステムとしてあるべき姿だと思いますので、そのようにこの制度を進めていっていただきたいというふうに考えます。  ところで、今審議しております法律案では不公正取引規制が非常に強化されてきております。証券取引法百六十一条の二あたりとか非常に不公正取引規制の強化がなされております。そこで、一つの例としてお聞きしたいのですけれども、顧客とのトラブルが発生したときに証券会社がどういうビヘービアをとるかというふうなことなんですけれども、特に信用取引による株式売買などにおいてそのトラブルの生じる余地が多いというふうに私も聞いております。  そこで、全くのイントロとして、導入部としての一つの例ですけれども、顧客が信用取引による株式売買などを指示したことはないと言っている他方、その証券会社は、いえ、お客さんの指示があったから信用取引で株式売買を行ったのですと主張している中で、そうしたら顧客が、信用取引口座開設の約定書というのでしょうか、何かしらそういう書類を見せてくれよと言ったのに対し、会社が、いや、それはないのです、もしもこういうふうに答えたとしたならば、それは見せられない、ありませんというふうに言ったときに、この本件信用取引についてはどのように考えるのが本筋なんでしょうか。
  175. 山本晃

    山本(晃)政府委員 今委員御指摘のような、売買の指示があったのかなかったのかという、そういうトラブルの事例におきましては、現実にはその当事者間でさまざまなやりとりが恐らくあったのだろうというふうに思われます。最終的には訴訟あるいは証券業協会のあっせん、こういった場を含めまして、当事者間で解決が図られるということが必要なんではないかというふうに思われます。  今、委員は約定書と、恐らく約諾書のことだろうと思います。これは、取引開始に当たって出されるものでございます。そして、顧客と証券会社との間の取引がどうであったかということになるわけでありまずけれども、その後取引があれば、恐らく取引報告書があるのではないのかなというふうに思われます。こういった一連の取引をとらえた上で、先ほども申し上げましたが、最後は民事的に判断すべきことになるのかなと。  ただ、その際に、この約諾書がないということもその一つの判断材料にはなり得るのではないかというふうに思われますけれども、いずれにいたしましても、売買の指示があったかどうかということにつきましては、その約諾書があるかないかといった一つの面のみをとらえて判断をするということはやや難しいのかなという感じはしております。
  176. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今、大蔵大臣が戻られましたので、早速で恐縮ですけれども、実は先ほど来、いわゆるノンバンクの事業法人向けの融資がかなりふえている。当局からは、縮小ぎみの傾向も見えるというふうなお話もありましたけれども、他方、ノンバンクの金利というのは非常に高いわけですね。これは、利息制限法を超えても、四〇・〇〇三%まででしたか、相手、債務者が任意に払えば取ってもいいというふうなことでございます。  他方、この大蔵委員会でも重々議論したように、三十兆円もの金融システム安定化のための資金を税金で用意して、大銀行に用意している。現に申請があって、劣後債だ何だのと資金が入っているわけですね。そうして銀行に税金が入っていながら銀行は中小法人に貸してくれない、貸し渋りがある。そして、今、銀行はその資金をノンバンクに融資しているわけです。ノンバンクの資金調達の八四%近くが銀行からの融資であります。そのノンバンクは、今度は高利で中小企業者等に貸しているという、この構図を見れば、一般の国民の皆さんは、自分たちの税金が銀行に投入され、その銀行の資金がノンバンクに投入され、それでノンバンクは高利で自分たちから金利を取っている、これはもうとんでもない話だということになるわけですね。そういう構図ができ上がってきます。  必ずしも全部がそういうことだということではありませんけれども、中には、やはり現実の問題として、銀行でお金を借りられないから仕方なくノンバンクに行って高い金利を渋々払っているという中小企業者の方からの怨嗟の声が非常に出ています。  これについて、先ほど当局からも、厳しいチェックをしながら監視を進めていきたいというお話がございました。ぜひノンバンクの実態を調査し、そして、ゆめゆめ銀行から貸し渋りを受けた人たちがその高金利のノンバンクで苦しめられたりすることのないように、まずは銀行の貸し渋りが解消されることが第一ですけれども行政の監視を強めていっていただきたいというふうに思いますので、大臣、一言それについて決意をお述べいただきたい。
  177. 松永光

    松永国務大臣 委員の御指摘、まことにごもっとも、こう思います。  私、かれこれ四十数年、弁護士をしておりまして、いろいろな中小企業者の倒産の事件等の処理をしたこともありますが、その多くが、高利貸しといえば高利貸しですが、高利貸しから金を借りて、そしてそれが常に複利計算等になって、それが原因で倒産したという例をしばしば私は事件として担当したことがあります。そしてまた、中小企業者等から相談を受ける場合には、どんなことがあっても高利の金を借りてはだめ、こういうふうに注意しているぐらいなんでありまして、今委員御指摘のように、三割、四割、あるいはそれ以上という金利を払って融資を受けてうまくいくはずがないのですね。私は、そういう業者の存在自身が、私個人の考え方としては、ある意味では許されてはならぬと思っているぐらいなんです。  したがって、委員のおっしゃるように、そのノンバンクの中にも、いわゆる高利貸しでないのもあるかもしれませんけれども、高利貸しと言われるような金貸し業者であれば、そこに銀行の方から資金が行っているなどということは甚だ好ましくないことだというふうに私は思います。したがって、そういう事例があるとすれば厳しく注意する必要があるというふうに私は思います。
  178. 西田猛

    ○西田(猛)委員 大臣、御答弁の趣旨を体して行政に当たっていただきたいと強く思います。  実は今回、日本のいわゆるピックバン法と呼ばれておりますけれども、この法律で、日本の東京、特に資本市場を、世界に伍していける、オープンな、フリーでフェアなキャピタルマーケットにしていこうということなんですけれども、八〇年代の後半に東京市場がそのような世界市場になり得るチャンスは十分にあったのですね。これはもう何度も議論が出てきていることだと思います。  八〇年代には、東京資本市場がニューヨーク、ロンドンと並ぶような三極の一つとまで現に言われたわけです。当時、外国の銀行ですとか証券会社がたくさん日本に進出してきて、そして支店の店舗を求め、出張所の場所を求めた。それがある意味で日本の土地家屋等の高騰を招いてバブルの一因になったという意見もあります。外国証券がそれぐらいにどんどん入ってきたわけですね。そして、東京証券取引所における会員権なんというのは本当に垂涎の的であったわけですけれども、今や外国証券は皆撤退して、会員権要りませんかということで売りに出ているぐらいの時代となってしまいました。  今、このビッグバン法で東京市場を世界のグローバルマーケットにしょうとしているのですけれども、なぜあの八〇年代の後半に、私は物すごいビッグチャンスだったと思うのですよ。これは、むしろ東京市場が世界の三極の一つになり得るのだと我々は本当に喜びましたよ。実は当時、私はある政府系の金融機関でインベストメントバンカーのような仕事をしていたものですから、実際にマーケットのパーティスパントとして、もう本当に毎日毎日目まぐるしい動きを目の当たりにしていて、東京はすごいなと思っていたのですけれども、今はもう全然だめですね。  一体なぜ、あのとき東京市場が世界のグローバルマーケットたり得る勢いにあったのにそうなれなかったのかという、その原因をどのようにお考えになられますでしょうか。
  179. 山本晃

    山本(晃)政府委員 お答えいたします。  いわゆる八〇年代後半のバブル経済、こういつたものを背景といたしまして、特に一九八九年が、まさに株価が一番最高値を更新した時期でございますけれども、東京証券取引所の株式売買規模というものがニューヨークの証券取引所を凌駕するといったような状況があったわけでございます。確かに、おっしゃられますように、こういつた日本の資本市場、これが活性化したということを受けて、外資系の銀行あるいは証券会社の進出が活発になったということであったかと思います。  その後の推移を見てみますと、実は、バブル経済の崩壊とともに東京市場はまさに急坂を駆け落ちるように取引も少なくなって、そして、ニューヨーク、ロンドンには大きくおくれをとっていったわけでございます。確かに、一つはバブルの崩壊というのがあるかもしれませんが、むしろそれ以上に大きいのは、やはり日本の市場のあり方というものが、規制や慣行、あるいはいわゆる事前予防的な行政手法と言われておりますが、そういった行政手法、そういったものも含めまして、市場関係者が創意工夫を発揮していくという、そういう創意工夫の芽を摘み取っていたのではないか。そのために、多様なサービスあるいは商品の提供なり開発も行われなかった。そして、その横並び的な状況というものを依然として残すことになったのではないかという、やはりそういった問題点が多々あったのではないかというふうに考えているわけでございます。  確かに今までも、特に八〇年代後半にいろいろと活況を呈したということ、これも事実でございますが、今までの日本の市場の、いろいろな新商品を取り入れていくなりあるいは新たな制度を導入していく、そのやり方そのものも、いろいろとみんなで議論をして、そして各審議会に諮り、というような形で、いわば非常に漸進的、段階的に行われてきたということが結局おくれをとってしまったのではないのかなという感じがしているわけでございます。    〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
  180. 西田猛

    ○西田(猛)委員 おっしゃるとおりだと思うのです。要するに、官そのものが、官の規制そして金融秩序の仕組みそのものが、その当時、本当に日本の国際化、資本市場の国際化を阻害したのだと言わざるを得ないのでございます。  当時、日本市場はよくなるぞと思ってどっと来た外国勢が気づいたわけですよ。何をするにしても規制でがんじがらめ、事前に認可が要る、許可が要る。それでもう嫌気が差してどんどん帰っていってしまったというところで、今東京市場は閑古鳥が鳴いているわけであります。  これを本当にグローバル化していく、世界市場たらしめんとしていくというのは物すごい努力が要ると私は思うのですよ。本当に千載一遇のチャンスを逃してしまった。逆に言えば、実はあれは見せかけのチャンスであって、そのチャンスに値しない場でしがなかったという見方だってあるわけですね。自分たちの国、自分たちの資本市場に対して、こんな言い方は自分たちはしたくないわけですけれども、あれはもう本当に見せかけでしかなくて、日本の市場というのは実はそうじやなかったんだというささやきが世界各国から聞こえるわけでございます。  そこで、私たちも常々提唱しておりますけれども、早く金融機関の不良債権を処理して、経営の合理化によって各金融機関の競争力を高め、国際的に開かれた、自由で公正な金融・資本市場のプレーヤーに育てるための金融の抜本的な改革をしなければなりません。そのための本法律案は、まあ、おくればせであり、そして余りにもテンポの遅い法律ではございますけれども、ぜひこれを進めていかなければならないと私どもは思っているわけです。真の市場経済原理の構築ができていなかったわけであります。特に金融市場、資本市場において日本は全くと言っていいほど市場原理が働かない、機能しない、そういう時代であります。ですから、これを真の市場原理が構築されるようにしていくためには、まことに時間とそしてコストがかかると思います。思い切って、ちゅうちょすることなく、我々は前に進まなければいけないと思います。  そこで、当局からでも結構ですけれども、今後、この東京資本市場がロンドンやニューヨークと並ぶような、そういう世界的な資本市場になるために具体的にどういうふうにしていったらいいのか、その方策をお伺いできるでしょうか。
  181. 山本晃

    山本(晃)政府委員 お答えいたします。  東京資本市場が世界の三極の一つの国際市場として再生するためには、まず第一に、市場関係者が多様な選択ができるということ、そして第二に、市場が利用者を引きつける魅力があること、第三に、市場が公正で信頼されること、こういつた条件を日本の市場が満たしていることが必要であるというふうに考えているわけでございます。このため、フリー、フェア、グローバル、こういった三大原則のもとに、現在御審議をいただいております金融システム改革法案につきましては、こうした条件を我が国市場が満たし得るように、総合的かつ抜本的な改革というものを盛り込んでいるところでございますので、何とぞ、早期の成立をぜひともお願いをしたいというふうに考えております。
  182. 西田猛

    ○西田(猛)委員 それでは最後に、ヨーロッパではユーロというふうな、あろうことか単一通貨ができ上がっていってしまいます。大臣は、この問も国際会議出席されて、それを目の当たりにしてこられたんだと思います。そのように、アメリカ・ドル、そしてユーロというふうな二大基軸通貨ができつつある中で、円の今後が非常に危惧されるわけであります。アジアのローカルカレンシーで終わってしまうのか、世界の基軸通貨の一つたり得ていくのかというところは非常に難しい問題でございます。  そういうことも含めて、そして、今の証券局長心得の方からのお話もございましたけれども、この東京資本市場をどのようにしたらグローバル化していけるのかということについて、今法律案はございますけれども、政治のリーダーシップとしての大臣のお心構えを聞かせていただいて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  183. 松永光

    松永国務大臣 我が国の通貨である円、これをドルやユーロと並ぶ、利用しやすい、そういったものにすることは非常に大事なことだ、こういうふうに思っております。したがって、円の運用、調達の場としての東京市場を活性化させることが大切である。この御審議を願っておる法律案もそのことのために必要不可欠の法律案だというふうに思うわけでありまして、この法律が成立したならば、魅力のある東京市場になるように、そして信頼性の高い、そういう市場になるように努めていくことが大事だろうと思う。そういったことを通じて、円は言うなればドルやユーロと並び称されるような通貨になっていくであろう、そういう方向に向かって努力することが必要であるというふうに思います。
  184. 西田猛

    ○西田(猛)委員 この法律案が成立したからといって、大臣、もう全くそれでどうこう変わるというものではないと思います。そこから先でございますね。そこから先どうするかということです。  もう時間がありません。時間がないというのは、私の質問時間がないのじゃなくて、日本にはもう時間がありません。ですから、本当にこれを強力に、そしてテンポをアップして、日本の国際化に向けて、世界化に向けて進めていかなければならないと思いますので、ぜひ御奮迅をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  185. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、佐々木陸海君。
  186. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。  本日最後の質問です。どうぞよろしくお願いいたします。  今、ビッグバンを前にいたしまして、金融機関では一斉にリストラが始まっております。中身を見ると、店舗の統合や役員給与の引き下げなどとあわせて、労働者に照準を当てたリストラ、合理化が進んでおります。一般行員に対するリストラは、賃金カットや仕事の過密化など、労働条件の切り下げに直結するものであります。これは激しい形で進められていて、中には、これまでの労使協定を経営側が一方的に破棄してまでリストラを進めよう、こういう銀行が出てきております。  あさひ銀行ではことし三月にリストラ計画を発表いたしましたが、その中で、ことし夏の賞与を昨年十二月賞与の九〇%の資金量で支給するという方針を打ち出しました。削減幅は最大二五%、一般行員では一〇%カットになるということであります。あさひ銀行は暮れ夏型という年間協定を結んでいるということでありまして、したがって、今年夏の賞与は昨年十一月に労使で合意をしていたということであります。その合意をほごにする提案を経営側が行ってきたわけであります。労働者側は、当然のことながら、受け入れられないとしてその撤回を求めており、現在、労使間で交渉が行われているというふうに聞いております。  そこで、大蔵大臣に見解を求めたいのですが、労使で既に合意して協定していることを一方的にほごにしてまで進めるというリストラ、そういう進め方、そういうやり方が好ましいと大臣はお思いになりますか。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  187. 松永光

    松永国務大臣 民間金融機関の労使問題は民間金融機関の労使の間で円満に解決、処理してもらいたい、大蔵省の方でああしろこうしろという指示が出せる問題ではないというふうに思います。
  188. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 しかし、このリストラ案というのは、例の公的資金による資本注入策が直接のきっかけになっているものであります。経営側の発表した見解の中でも、金融システム安定化に向けた公的資金導入の議論の中で、銀行の経営効率化に対する自助努力が強く求められているというふうに説明をされております。  大蔵省が提出した金融安定化法は、資本注入の条件としてリストラ計画の提出を義務づけました。あさひ銀行が提出した銀行の経営改善計画を見ますと、ここにございますけれども、「行員処遇の見直し」として、「行員処遇については、最大二五%程度の賞与カットを行うほか、給与体系の変更などを実施いたします。これらの施策により、年収ベースで全行員(含む組合員)では、一〇%程度の処遇水準の引き下げとなる見通し」というふうに書いております。このとおりのことが今具体化されて、労使協定を破棄する形で労働者側に提案をされているわけであります。  この賞与カットの提案は、そういう意味では、政府による銀行への資本注入策が契機になっているわけであります。合意されていた労使協定に行政が割って入ったという形になっているわけでありまして、これは、労使間の問題に、今大臣として介入してはいけないというふうにおっしゃいましたけれども行政が不当に介入をしたということになるのじゃありませんか。
  189. 松永光

    松永国務大臣 今国会でもいろいろな委員会で、民間金融機関の給与水準が高過ぎる、こういった指摘がしばしばなされたところであります。我が国の経済を順調に発展させていくためには、銀行にはそれなりの力をつけて、そして中小企業を初め企業の要請に基づいて必要な資金を円滑に融資する、そういう働きを民間金融機関にはしてもらわなければなりません。そのためには、民間金融機関に経費の節減合理化も図ってもらって力をつけてもらう必要があるというのは、私は、それが本当の銀行のあり方だろうというふうに思います。  資本注入の場合に、経営の合理化あるいは経費の節減等々については要請したことなのでありますけれども、個別的な給与の引き下げ、こういつたことまで強制したものではありませんで、一般論として、銀行がほかの業界の給与水準よりもはるかに高いということについては、国民の批判もあることであるから、経費の節減合理化という形を通じて国民の側から見て理解できるような状態にしてもらいたいという一般的なことを申し上げたにすぎないわけであります。
  190. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その銀行の給与がはるかに高いという問題については後で触れますが、そうすると、銀行に対する資本注入を審査した、あの審査委員会が承認したリストラ計画というのは、私たちの見るところでは、あくまで経営者側の方針をまとめて銀行が提出したものであって、それを実行しようとすれば、当然労使交渉が必要になるわけですね。あのリストラ計画を提出したものを実行しようとすれば労使交渉が必要になる。労使交渉次第では、審査委員会に提出した計画どおりにならないこともあり得ると思うのですよ。その場合は、銀行に対してペナルティーが科せられるのかという問題があります。もしペナルティーが科せられるということならば、まさに大蔵省は、労使交渉の当事者として、経営者と一緒になって労働者に労働条件の切り下げを強要していることになりますけれども、その辺の法律的な関係は、銀行局長、いかがでしょうか。
  191. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  審査委員会に対する申請、経営の健全性確保のための計画などの構成及び履行につきましては、特に罰則で担保するというような仕組みにはなっておりません。履行状況報告の公表などを通じまして金融機関の自主的な対応を求めるという仕組みになっておるわけでございます。
  192. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 つまり、経営健全性確保計画は労使交渉を直接的に拘束するようなものにはなっていないということだと思います。  我が党は資本注入にそもそも反対でありまして、公的資金受け入れの責任は経営陣がとるべきものだ、そのしわ寄せを一般行員に押しつけたり、労働者を公的資金受け入れの人柱にするようなことは大変問題だということを強く申し上げておきたいと思います。  しかし、大蔵省はこれまでも、そういう意味ではリストラの後押しをしてきた。昨年十月に大蔵省は、「金融機関経営のあり方等について」という、銀行にリストラの徹底を求める事務連絡を出しています。その中でも、役員報酬などと並んで従業員給与を問題にしております。  一体、大蔵省に、労働者の賃金カットを強要するどういう権限があるのか、お答え願いたいと思います。
  193. 山口公生

    山口政府委員 事務連絡を御披露いただきましたが、よく読んでいただきますと、「従業員給与、福利厚生施設等が他の業種に比べ依然高い水準にあり、リストラの徹底が未だ不十分ではないか、等の指摘がある。」というふうに申しております。従業員給料を切り下げろということを命令しているわけではありません。  そういう声が強い、特に国会等で強く出たということを私は意識しておりまして、それで、こういう事務連絡、文書を出したということでございます。
  194. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 わかりました。この通達は、従業員給与を他の業種に比べて依然高い水準というふうに決めつけるのではなくて、という指摘があるというふうに書いております。大蔵大臣予算委員会の答弁で、一般行員の賃金は相当に高いという答弁をしております。今は、はるかに高いと先ほどはおっしゃいました。  しかし、一般の銀行労働者の賃金は本当に高いのか。実態をよく見てみると、大臣のように、はるかに高いとか相当に高いとかは私は言えないと思います。きょうは、その点では大臣認識を新しくしていただきたいと思います。  一つは、大臣予算委員会で、高いことの根拠として、製造業その他の従業員よりも二割あるいは三割ぐらいかな、そのぐらい高いのじゃないかなというふうな知識は私にはあるというふうに、これは二月の二十七日の衆議院予算委員会で答弁をされております。  確かに、製造業に比べれば高いでしょう。しかし、日本の製造業と非製造業との間には、もともと構造的な格差があります。二割近く非製造業の方が高いのであります。製造業の賃金が低いのは、一次下請から二次、三次といった下請構造のもとで賃金が低く固定されているからであります。その低さの是正が問題になっている層と比較して賃金が高いといっても、それは表面的なものと言わざるを得ません。非製造業の中だけで比較すると、銀行の年間賃金は非製造業の平均値に近いところにあります。さらに、銀行の九割以上が従業員規模千人以上でありますから、規模が千人以上の他産業と比べると平均値にすぎないというところに落ちつきます。よく新聞などに、全産業との比較で銀行員の給与が高いとの記事が出ていますが、これもそういった事情を考慮していないものであります。  もう一つは、銀行員が平均として給与が高いということも言われますが、これも、銀行内、特に都市銀行では、行内に激しい賃金格差があることを見ない議論であります。確かに、役員クラスは高いです。幹部職員や一部のエリートの職員は高い。しかし、こういう平均値を引き上げているのは一部の人たちであって、一般行員や女性行員は本当に低い給与水準に置かれている、そういうふうに私は思っています。世間の銀行に対するイメージとは実態は全く違う。  例えば、あさひ銀行の一般行員の賃金の例を聞いていただきたいと思います。ある四十六歳の男性は、月額の基本給が三十五万九千四百円、昨年末の賞与が税引き後で八十七万二千七百二十三円、ある五十四歳の男性は、月額の基本給が二十七万三千六百円、年末賞与が七十五万四千百三十四円、五十歳代になると賃金が上がらなくなり、五十五歳になると四割カットということが実際に行われています。  女性はもっと低くて、四十九歳で月額基本給が二十三万六千四百円、年末の賞与額、税引き後は四十四万三千二百四十三円、五十二歳で月額二十三万七千円、年末賞与額、税引き後は四十四万五千円という実態だ、こういうふうに聞きました。特に、女性への賃金差別はひどい状況であります。  また、ある都市銀行の労働者が年収の聞き取り調査をしています。それによると、上級管理職や管理職クラスを除く一般行員は年収が三百数十万円から八百万円程度、女性では三百万円から五百万円程度だという結果が出ております。この都市銀行で働く従業員のうち、六割を占める人たちが実際にはこういう状況に置かれているというのが実態であります。  大臣、これでも高い、はるかに高いというふうにおっしゃいますか。     〔坂井委員長代理退席、井奥委員長代理着席〕
  195. 松永光

    松永国務大臣 私は、議員のおっしゃっていることは世間の常識とは少しかけ離れているような感じがいたします。私の持っている資料、これは平成九年五月の労働大臣官房政策調査部の調査でございますが、産業別賃金の状況、千人以上でございますけれども、全産業平均を一〇〇とした場合に、銀行、信託業は一二七、すなわち二七%高いわけであります、全産業平均と比べれば。製造業は八九であります。したがって、この製造業八九と比べれば三割以上高い、そういう数字になるわけであります。
  196. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今大臣、反論されたつもりになっておりますけれども、私は、先ほど製造業と非製造業の区別の問題、そして千人以上の規模の問題、そして、一つの銀行の中でも、管理職クラス、特別に高いクラスとそうでないクラスの問題、全部区別して実態を申し上げたわけですよ。私の申し上げた実態が高いか低いかということについてはお答えになっていらっしゃらない。まあ結構です。  今私が挙げた数字は、それぞれの都市銀行の労働者が聞き取り調査をしたその結果であります。関係者によると、こういう傾向はほとんどの都市銀行に共通する実態だと言います。一般行員や女性行員は、本当に高いとは言えない賃金実態に置かれております。一部のエリート職員は優遇するが、一般行員や女性行員を冷遇する差別的な賃金体系になっています。  しかも、大事な問題は、ほとんどの銀行は、経営陣も含めて、こういう賃金実態を全く公表しておりません。そこで働く人でも自分以外の賃金実態がわからない。そのもとでこういう状況になっているわけであります。一方で、銀行員の給与が高いという議論だけが振りまかれているわけであります。  そこで、大臣要請したいのですが、各銀行に対して賃金実態の開示を求めるべきではありませんか。
  197. 山口公生

    山口政府委員 各銀行のディスクロージャー誌をごらんいただきますと、男子と女子に分かれ、平均年齢、それから月額給与がおおむねディスクローズされております。
  198. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 実態は先ほど申し上げたとおりなのです。高くない賃金を一層切り下げられる。しかも、この公的資金を投入される銀行は、つぶれそうな銀行、だめになりそうな銀行というわけではないのですよ、そういう銀行には公的資金は投入されないわけですから。そういう銀行で高くもない賃金が一層切り下げられる。一般の職員のことを言っているのですよ。これは道理がない、私はそう申し上げざるを得ない。  昨年のリストラ通達は、銀行の社会的責任を適正に果たすためにリストラをしろというふうに言っております。しかし、銀行の社会的責任ということを言うのであれば、大蔵省は、こういう差別的な賃金体系の是正や長時間労働の是正こそ求めるべきであります。今の大蔵省行政は、言ってみれば労働者犠牲促進行政というものであって、全く逆立ちしていると言わざるを得ません。  銀行では、長時間労働も大変深刻であります。昨年十一月には、東京中央労働基準監督署が、銀行の本社労務担当と支店長を集めて、サービス残業と長時間労働の残業防止を要請したということが言われております。大蔵省は、そういう労働実態を把握した上でリストラを求めているのかと言いたいのです。  そこで、大蔵大臣に申し上げたいのですが、大蔵省が労働条件の一層の悪化を銀行に求める、そういう行政は改めるべきではありませんか。
  199. 山口公生

    山口政府委員 私ども行政は、金融機関をよりしっかりしたものにして、国民の皆様に役立つような金融システムにつくり上げるということだろうと思います。労使問題ということは労働省で御所管いただいておりまして、いろいろ個別の問題があればそこで解決される問題だと思います。
  200. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今のリストラは、本質的にはビッグバンへの対応策であります。あさひ銀行の経営陣は、リストラ提案の中で、日本版ビッグバンに勝ち抜くためにも、徹底した効率化を実現し、競争力の強化を図ることが最善であるとの結論に達したと述べています。大手都銀は、ビッグバンの中で、自己資本比率の一〇%台への引き上げによる国際競争力の強化や利益の一層の拡大を図っております。そういう収益第一主義の経営の中で、労働者の賃金カットや人減らしによる長時間労働が進んでいるわけであります。公的資金を受け入れた二十一の銀行だけでも、二〇〇〇年度までに約一万七千人の従業員を削減して、八行で平均給与の減額を表明しているわけであります。  大銀行が国際競争に勝ち抜くために労働者に犠牲を強いる、ここに金融機関を優勝劣敗の大競争に巻き込んでいくビッグバンの問題が浮き彫りになっているというふうに私たちは考えます。私たちは、これは到底認められないということを強調しておきたいと思います。  次に、今度のビッグバン法案の中での規制緩和、大分行われている投資信託の問題について伺いたいと思います。  これは、言ってみれば今度のビッグバンの大きな柱になるものだと思いますし、証券市場に流通する商品中、初心者にもなじみやすい、利便性、安全性も高いというふうに宣伝されているものであります。  その投資信託ですが、日本で現在一番最新の純資産残高がいかほどで、それが例えばこの十年間ぐらいでどういう推移をたどってきたか。簡単で結構ですけれども、お示しをください。
  201. 山本晃

    山本(晃)政府委員 証券投資信託の純資産残高につきましては、ピークが平成元年でございます。五十八兆六千五百億円でございました。最近におきましては減少の傾向にございまして、平成六年、四十三兆四千億円、平成七年が四十七兆九千五百億円、平成八年が四十八兆六千六百億円、平成九年が四十兆六千五百億円程度ということになってございます。
  202. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するにこれから花形になつてくると言われているのですけれども、投資信託というのは低迷をしている、今のところそうなつていると言わざるを得ないと思うのです。  長野前証券局長は、四月十日のこの委員会の答弁の中で、ミューチュアルファンドなどが「広くアメリカの国民に受け入れられているという現実を、私どもはいささかうらやましい思いで眺めております。」というふうに言っていましたけれども、実際日本の現状に照らしてうらやましいと思うだろうと思うのですが、日本の現実がさえないのは、今こんなふうに低迷しているのはなぜか。規制が厳しいから規制を緩和しさえずればアメリカのようになるというのか、それとももっと別の理由もあるというのか、その辺の理由をどうとらえているか、説明をしていただきたいと思います。
  203. 山本晃

    山本(晃)政府委員 先ほど、簡単にということだったものですから、総額しか申し上げませんでしたけれども、平成元年約五十八兆六千五百億円でございますが、このうち株式投信が四十五兆五千億円でございました。平成九年末、約四十兆六千五百億円ぐらいでございますが、実はこの株式投信が九兆九千八百六十五億円ということで、約十兆円、十兆円を切っているということでございます。要すれば、株式投信が非常に落ち込んでいる。他方で公社債投信、これはMMFというものが平成四年に創設されたということもありまして、こちらの方はおおむね好調に推移をしてきているわけでございます。  結局、この株式投信の不調に尽きるわけでございますけれども、これは近年の株式市場の低迷といったことがその要因ではなかろうかというふうに考えておるところでございます。
  204. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 株式投信の不振がこういう投資信託全体の低迷を招いている、その理由は株式市場の低迷だ、非常に単純明快でありますけれども、ただ、この株式投信の不振などという問題についてもいろいろなことが指摘されていると思うのですよ。  例えばシステム上の問題として、委託会社の多くが証券会社の子会社であるという点。委託会社が支配下にあるということから、証券会社が信託財産に対する委託会社の運用方針を支配してファンドマネジャーの自主的運用をゆがめるという事態が起こっていた。だから、不人気な銘柄を投資家から買い取ってはめ込んだり、あるいは逆に特定銘柄の大量買い付けを行って価格操作をするなど、親の証券会社の都合で投資信託が運用されたという問題も指摘されておりますし、それから手数料の取り方が先取りであるために、売買手数料増加のために、短期の売買、回転売買、つけかえが頻繁に行われてきた。その結果、中長期の投資が保証されないという問題があった等々の問題も指摘されておりますけれども、こういう問題は今度きちんと解決されることになるのでしょうか。
  205. 山本晃

    山本(晃)政府委員 委員も御案内のように、証券投資信託というものは、専門的能力を活用した簡便かつ効率的な資産運用手段を提供いたしまして個人投資家等の証券市場への参加というものを容易にするものであるということで、今後の国民の資産運用手段としては中核的な役割を果たしていくということが期待をされているわけでございます。このため、今回の金融システム改革におきましては、証券投資信託というものを国民にとってより魅力あるものとするために、証券投資信託の商品の多様化などを図るということにしているわけでございます。  具体的には、新しい商品といたしまして、私募投資信託や証券投資法人制度、いわゆる会社型投信でございますが、これの導入であるとか、あるいはその投資家のニーズの多様化、グローバル化にこたえて効率的な運用を可能とするために、投信委託業者の運用の指図に係る権限の外部委託というものを導入する、あるいは証券投資信託の利便性の向上を図るために販売チャネルの拡充を図ることといたしまして、銀行等の金融機関による投資信託の窓口販売の導入というものを図っていこう、さらには、投資家の多様なニーズにこたえまして、商品設計の自由化を図るための信託約款、今までは大蔵大臣の承認制でございましたが、これを届け出制に移行する、こういうことを御提案をさせていただいているわけでございます。  先ほど委員の方から、株式投信が不振なのは単に株式市場の低迷だけではないのではないかという何点かにわたっての御指摘がございました。確かにそういう指摘というものは従来からも非常に根強かったわけでございます。実は、こういった点に関しましては、平成六年だったと思いますが、投信研究会といういわゆる証券局長の私的な研究会がございますが、そこでもっていろいろな議論をいたしました。そして少なくとも、法律改正以外で、制度改正といいますか改革ができるものについてはいろいろと手がけたわけでございます。そういった抜本的な改革もやり、そして今回と、こういうことに相なるわけでございます。  最近では投信会社、先ほど証券系が多いというお話でございましたが、確かに出発点はそうでございました。ところが、その後、いわゆる外国系あるいはその他銀行あるいは保険とか金融機関系、こういったものも入ってまいっておりまして、その参入が非常に活発となってきておりますので、そういう面からも大分事態は改善されているのではないのかな、そんな感じがしております。
  206. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その研究会の答申というのか、あれが出てからいろいろな手を打っていたというのですけれども、それによってどれだけ改善されたか、なかなか疑問であります、詳しいことはおきますけれども。株式市場の低迷ということがありました。これがやはり根本要因だろうと思うのです。  証券取引審議会の答申でも、  商品の組成面での工夫を行っても、投資対象の  魅力は、究極的には証券の発行体たる企業等に  どれだけの魅力があるかによって決まる、とい  う点である。資本を調達する側が資本を有効に  活用でき、その果実を投資家に十分に還元する  意志があって初めて、金融技術を駆使すること  により、さらに魅力のある投資対象を生み出す  ことができるというふうに指摘をしています。これはある意味では根本問題であって、利益をもっと株主に有利な形で還元していくような、そういう株主を重視した経営への転換なしに市場の活性化はあり得ないという問題にも結びついてくる問題だろうと思います。  さらに言えば、証券会社と総会屋のやみのつながりだとか、山一証券の破綻に至る簿外債務問題と大蔵省当局の関与問題など、金融システム全体への国民の信頼を揺るがせている現状、こういつた根本的な問題は何ら今解決をされていないわけでありますし、今度の法案によって解決されるという問題でもないわけであります。国民の不信はむしろ今拡大するような事態でありまして、ここに抜本的なメスを入れないと本当のシステム改革にはなっていかない、市場活性化にはなっていかないというふうに私は言わざるを得ない。  そういう意味でいいますと、この法案はむしろ、こういう根本問題から目をそらして、文字どおり金融技術ばかりに走らせて、根本問題への対処を先送りさせるような危険も持つのではないかということまで私は言わざるを得ないのではないかという感じを持っておりますけれども、いかがでしょうか。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  207. 山本晃

    山本(晃)政府委員 金融システム改革と申しますものは、基本的には、私ども、今回のこの法案の底に流れている考え方というものをお話をさせていただきますと、一つは、先ほども話が出たわけでございますけれども、従来の事前予防的な規制というもの、これが市場の創意工夫の芽を摘み取ってきた、そして横並びを助長させ、また利用者の選択の幅を狭めてきたんではないか。こういつた点につきまして、まさに多様な創意工夫の発揮を促すために、いわゆる事前的な商品あるいは業務規制ではなくて、競争的な環境を整備をしよう。  ただ、競争といいましても、当然のことながらこれは公正な競争でございます。市場原理、市場原理と申しましても、市場の基本というものは、公正さを担保するルールが守られている、こういう信頼感、これが大事でございます。そういう意味で、ディスクロージャーの整備あるいは公正取引ルールの整備、こういったものはまさに不可欠であるというふうに考えておるところでございます。  上物といいますか、改革の法案の枠組みは枠組みといたしまして、しかし、やはり何といいましても、市場というものを支えるのは市場のまさに参加者でございます。そのまさに参加者、これは自由という中で、やはり自己規律の精神というもの、これも大事なのではないのかな。最終的にはまさに市場参加者が制度を動かしているわけでございますので、そういった点が肝要ではないかなというふうに考えておるところでございます。
  208. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その参加者の根本的な精神がちっとも変わってはいないわけでありまして、そういうところにこのフリーということが盛んに強調されてくる、その危険性を考えざるを得ないわけであります。  これまでの投資信託の販売でのトラブルの中心点は何だったでしょうか。
  209. 山本晃

    山本(晃)政府委員 証券投資信託をめぐるトラブルにつきましては、私どもそのすべてを詳細に把握をしているわけではございませんけれども、訴訟になったものといたしましては、受益証券説明書、運用報告書の不交付、あるいは元本割れの危険性の不告知などの説明義務違反による損害賠償請求であるとか、あるいは収益の分配について利回りを保証するといった断定的判断の提供による損害賠償請求、こういったものがあるというふうに承知をしております。
  210. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私がいろいろ調べてみたところでは、やはり、不正な勧誘、販売行為の中でも、特に元本割れの危険性についての説明義務違反というのが訴訟でも一番大きい問題だろうというふうに思います。  そして、こういう問題が生じる原因としては、投資信託販売が証券会社にとって利益の多いシステムであり、そのために外交員に高いノルマが課されて無理な勧誘行為に結びつきやすいという問題があった、そして、勧誘において説明義務の履行としてのリスク告知が法制度としても不十分であった、そして、投資者にわかりやすいディスクロージャーが十分に行われていなかったというような問題が指摘をされているわけであります。  今回は、よりリスクの大きな商品が解禁され、商品が多様化する。しかも、それが銀行本体の窓口でも販売されることになる。銀行で売られることになるから、まさにこれから投信が大きな流れになるだろうという見方さえあるわけですが、証券会社という基本的に元本保証商品を扱わない会社の販売ですら、投資信託が元本保証されると誤認して被害を受けるというケースがこれまで多々あった。これが、基本的に元本保証商品しか扱ってこなかった銀行で販売されるようになるわけですから、元本保証があると誤認される危険は一層増大する。これはもう非常に明らかでありまして、そのためにいろいろな手段を講じるということも考えられてはいるわけです。  私は今、一つここに九四年九月八日の東京地裁の判決を持っているんですが、ここでは、いわば素人ともいうべき相手に、あえてハイリスクな取引を勧誘するに当たっては、単に当該取引の危険性に言及し、その点についての理解を得るだけでは足りず、明確かつ詳細に、最悪の場合にどのような事態になるかを説明し、その事態についての十分な理解をさせた上、それを承知の上でなお取引するのかを確認すべき義務があるということまで判示した判例もあるわけです。こういうのに照らしてみると、今回の法律の規定はまだまだ非常に不十分だと言わざるを得ないと思うのですが、  いかがでしょうか。
  211. 山本晃

    山本(晃)政府委員 お答えいたします。  証券投資信託は、先ほどもお話をいたしましたが、国民の資産運用手段として中核的な役割を果たしていくということが期待をされているわけでございまして、こういった意味におきまして、投資家保護のための措置あるいはトラブル解決のための措置も、これまでの状況も踏まえて充実をさせていきたいというふうに考えております。  投資家保護のための措置といたしましては、信託約款の届け出制への移行に伴いまして、証取法の公衆縦覧型ディスクロージャー、これを適用いたします。そうなりますと、目論見書というもの、これが契約者に交付される。これは義務化されるわけでございます。こういうことに加えまして、投資信託法におきましても、信託約款の重大な内容の変更または解約に関する書面の投資家への交付の義務づけであるとか、あるいは運用報告書の交付の義務づけを行います。  また、第二に、銀行等による投資信託の窓口販売の導入に伴いまして、証取法上の誠実公正義務等の販売ルール、あるいは銀行法等における顧客に対する預金との誤認防止ルール等の適用、こういった措置を講じます。  また、第三に、投信委託業者のファンドの運用につきまして、投信委託会社の親会社などの利害関係人等との間の利益相反行為、いわゆる回転売買といった行為、そういった行為の禁止の法定化、こういった措置を講ずることとしているわけでございます。  また、トラブルの解決のための措置といたしましては、証券投資信託協会につきまして、証券投資信託の販売等に関する苦情の解決に係る業務の創設、そして日本証券業協会によるあっせんの導入、こういった措置を講ずることにしているところでございます。
  212. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今の説明義務の問題ですね。私はそれに限って聞いたんですけれども、いろいろお答えになりましたけれども、地裁判決が言うような形まできちんと詰められるというふうには当然なっていないというふうに言わざるを得ないと思うのです。  先ほど、事前規制型からいわば事後チェック型というようなことを言われましたが、この監視体制についてもどうかといいますと、大きな話ですけれども事後チェック型にふさわしい新しい検査監督方法が提出されているわけでもないと思うのです。金融監督庁の人員は証券取引等監視委員会を含めて約四百人ですが、アメリカでは包括的な証券規定のもとでSECを中心にした約一万人の強力な監視体制、イギリスでも九七年から監督機関が金融サービス庁、FSAに一本化されて総勢約二千人になっている。  だから、フリーというだけでなくてフェアな市場ということになれば、公正なルールのもとで、自由な競争のもとで違法ないし不正を徹底的に排除できるという監視体制が不可欠でありまして、それがなければ本当に弱肉強食になってしまう。しかし、日本の想定されている監視の体制はおよそグローバルの基準にも合わないのではないかと私は思わざるを得ない。だから、フリーばかりが大手を振ってまかり通って、フェアは余り保証がないのじゃないかというのが実態ではないかと思わざるを得ません。  さて、時間がなくなりましたが、大臣に最後にお聞きします。  前の委員会で、大臣はビッグバンについて、一千二百兆円の個人資産の争奪戦になるのではないということをえらくこだわって反論をされまして、国民が蓄えた資産を有利に運用するチャンスを国民に与えるものだということを強調されました。それならお聞きしますが、国民はそもそもビッグバンでいろいろな商品が出てくることを期待している、運用の機会がふえることを待ち望んでいるという御認識でしょうか。
  213. 松永光

    松永国務大臣 千二百兆円のお金の争奪戦になるということについて私は余りいい感じを持たないという意味で申し上げたわけです。国民一人一人が待ち望んでいるかどうかは別として、少なくとも自分が勤労によって蓄えたお金、そのお金を、六割近くは銀行に預けておるという状態なのでありますけれども、それ以外により有利に運用できるというチャンスが提供されることになる、こう申し上げておるわけであります。
  214. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 世論調査のいろいろな結果を見ましても、四月二日付の読売の世論調査では、七一・七%の人が「もうけが少なくても安全なもの」というふうに答えています。「多少危険でももうけが多いもの」と答えた人は六・三%にすぎません。そして朝日の世論調査では、ビッグバンについて不安を表明する人が期待する人を上回っております。ですから、率直に言って、今のビッグバンの方向というのは、国民が求めているというものとは言えないのじゃないかというふうに私は思うのですが、大臣、いかがですか。
  215. 松永光

    松永国務大臣 安全性を求める人は求めてそれで結構なんですよ。多少の心配があるならば、もう私はそれはやらぬという人はそれで結構なんですよ。しかし、いろいろ情報を集めた上で、多少のリスクはあるかもしれぬけれども利益が多い、そっちの方にお金を向けてみようという希望者はその希望に基づいて行動すればいいのです。別に政府が、大蔵省がああしろこうしろと言うわけではない。文字どおり自分のお金を有利に運用するという機会が、選択肢が非常に広がる、こういう意味なのです。自分の意思に基づいて行動なさればそれでいいのです。  ただし、その場合に、リスクについての説明も必要でありますし、誤解がないようにした上での金融商品の販売でなければならぬ、こういうことになろうかと思います。
  216. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 いろいろな雑誌で、預金をおろしてこれを買え、ビッグバン投資商品ガイドというのが出ていたり、ビッグバンが投信を変えた、無視していてはもうけ損なうというようなことをやったり、そういう中で、大蔵省が宣伝しているわけではありませんが、大蔵省もビッグバンだ、ビッグバンだというふうに大騒ぎをしているわけです。  そして、推進しようとしているビッグバンでは、本当にこういうものにとらわれていった人たちを救うような体制が極めて弱いのじゃないか。その危惧を表明しておかなければならぬし、国民は投機の波にこういう形で巻き込まれてはならないのだということを私は強調をしておきたいと思います。  終わります。
  217. 村上誠一郎

    村上委員長 次回は、来る十五日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時四分散会