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1998-05-12 第142回国会 衆議院 大蔵委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月十二日(火曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 村上誠一郎君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 坂井 隆憲君 理事 浜田 靖一君    理事 池田 元久君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 谷口 隆義君       今村 雅弘君    岩永 峯一君       大石 秀政君    鴨下 一郎君       河井 克行君    桜田 義孝君       杉浦 正健君    砂田 圭佑君       中野 正志君    根本  匠君       萩野 浩基君    宮路 和明君       村井  仁君   吉田六左エ門君       渡辺 具能君    渡辺 博道君       渡辺 喜美君    上田 清司君       川内 博史君    北脇 保之君       中川 正春君    日野 市朗君       藤田 幸久君    横路 孝弘君       赤松 正雄君    河合 正智君       並木 正芳君    西川 知雄君       小池百合子君    鈴木 淑夫君       西田  猛君    佐々木陸海君       辻  第一君    濱田 健一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 松永  光君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房長 武藤 敏郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長   原口 恒和君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主計局次         長       細川 興一君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長         心得      山本  晃君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君         大蔵省国際金融         局長      黒田 東彦君         国税庁課税部長 乾  文男君 委員外出席者         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      藤原 作弥君         参  考  人         (日本銀行理事安斎  隆君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十二日  辞任         補欠選任   河井 克行君     萩野 浩基君   北脇 保之君     横路 孝弘君   末松 義規君     川内 博史君   並木 正芳君     西川 知雄君   佐々木憲昭君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   萩野 浩基君     河井 克行君   川内 博史君     末松 義規君   横路 孝弘君     北脇 保之君   西川 知雄君     並木 正芳君   辻  第一君     佐々木憲昭君     ――――――――――――― 五月十二日  所得税などの大幅減税に関する請願石田幸四  郎君紹介)(第一二号)  同(漆原良夫紹介)(第一三号)  同(太田昭宏紹介)(第一四号)  同(河合正智紹介)(第一五号)  同(坂口力紹介)(第一六号)  国民の生活安定のための十兆円減税実施に関す  る請願長内順一紹介)(第一九九三号)  同(丸谷佳織紹介)(第一九九四号)  同(丸谷佳織紹介)(第二〇一四号)  同(丸谷佳織紹介)(第二一〇三号) は緊急経済対策に関する特別委員会に付託替えされた。     ――――――――――――― 五月十二日  内需を喚起し景気を回復するための減税実施  に関する陳情書外七件  (第一五  号)  新たな総合景気浮揚対策に関する陳情書  (第  一六号) は緊急経済対策に関する特別委員会に送付替えさ れた。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  金融システム改革のための関係法律整備等に  関する法律案内閣提出第八六号)  特定目的会社による特定資産流動化に関する  法律案内閣提出第八七号)  特定目的会社による特定資産流動化に関する  法律施行に伴う関係法律整備等に関する法  律案内閣提出第八八号)  金融機関等が行う特定金融取引一括清算に関  する法律案内閣提出第八九号)      ――――◇―――――
  2. 村上誠一郎

    村上委員長 これより会議を開きます。  内閣提出金融システム改革のための関係法律整備等に関する法律案特定目的会社による特定資産流動化に関する法律案特定目的会社による特定資産流動化に関する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び金融機関等が行う特定金融取引一括清算に関する法律案の各案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁藤原作弥君及び日本銀行理事安斎隆君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 村上誠一郎

    村上委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川内博史君。
  5. 川内博史

    川内委員 おはようございます。民主党の川内でございます。  本委員会の常任のメンバーではございませんけれども、理事委員皆様方にお許しをいただきまして、この九時から十時までという一時間の時間をいただいて質問をさせていただけますことに、まずもって感謝を申し上げたいと思います。  私は鹿児島から出てきておるのですが、鹿児島といえば西郷さんで、この委員会委員長も体格だけは西郷さんに大変よく似ていらっしゃるわけでありますが、西郷南洲遺訓というのがございまして、その南洲遺訓の中に、制度方法を論ずるときその人にあらざれば行われがたしというのがあるのです。制度方法を論ずるときにその人であらざれば行われがたし、すなわち、だれが何を言うのかということが大変大事なことで、信頼がなければ何を言っても始まらないということであろうというふうに思うわけであります。  まず、この通常国会の中において、本委員会に今かかっております法案を含めて、大蔵委員会、大事な問題を議論をしてきていただいているわけでありますが、その前提として、よく大蔵省に対する信頼とか、大蔵省で働いていらっしゃる方々に対する信頼感とかいうことが大変に問題になっているわけでございます。ついせんだっての委員会の中でも、私の同僚議員であります上田委員の方から、大蔵省の、いわゆる渦中の人であった証券局長長野さんと銀行局審議官であった杉井さん、四月二十七日付で辞職をされたわけでありますが、このお二人の退職金がどうなるのかというようなことについて質問をさせていただいたわけでございまして、その後、このお二人の退職金問題についてはどのように経過が推移をしているのかということからまず質問を始めさせていただきたいと思います。
  6. 松永光

    松永国務大臣 委員もよく御承知と思いますが、国家公務員がやめた場合の退職金の問題については、国家公務員退職手当法という規定がございまして、国家公務員法第八十二条の規定による懲戒免職の処分、これを受けた場合には退職手当を支給しないということになっておりますが、これ以外の場合につきましては、国は退職手当を支給する、そういう義務があるという規定になっております。  しかしながら、本件のような場合においては、その規定どおり処理していいかどうか、いろいろ考えなければならぬ、こう思っておるわけであります。しかし、法的に言えば、退職金については、まず、退職した人が、言うなれば国に対して退職金の支給を求める権利があるという形になっておるわけです。すなわち、やめた人が債権者、国の方が言うなれば債務者という形に法律上はなっておる、こういうことでありますので、私としては、まず法的には債権者という形になっておる本人気持ちを聞いてみるのが先だ、こう考えておるわけでありまして、近いうちに本人気持ちを聞いて、その上で結論を出したいというのが現在の私の心境であります。
  7. 川内博史

    川内委員 御本人の、お二方のお気持ちお尋ねになられた上でという大臣の御答弁でありましたが、その近いうちにというのはいつごろでございますか。
  8. 松永光

    松永国務大臣 御存じのように、今、重要法案審議をして、なかなか私の体があかないものですから、もうちょっと待っていただいて、本人に来てもらって、そして気持ちを聞きたいという気持ちでおるわけでございます。
  9. 川内博史

    川内委員 大臣重要法案審議もございますけれども、飯食う時間もあれば、ほんの五分、十分、休憩をする時間もあるわけでございますから、御本人をお呼びになられて、どういう気持ちでいるのかということは今すぐにでもできることであろうというふうに思われますので、ぜひ大臣、御答弁のとおりに実行をしていただきたいというふうに思うわけでございます。  それに関連をいたしまして、ある写真週刊誌に、長野証券局長に対して、いまだに、辞職後も大蔵省黒塗りの車が自宅まで迎えに来ているというような報道が写真週刊誌にされておりました。それで、私は、これは事実でないことを念願しているのですが、長野氏が辞職後にも大蔵省が車を出していたのかどうか、その事実があるのかないのかどうかをお尋ねをさせていただきます。
  10. 松永光

    松永国務大臣 私は、その写真週刊誌なるものを見てはおりません。しかし、話は聞きました。その週刊誌に書いてあることは事実と異なりますというふうに事務方の調査の結果を聞きました。  それはどういうことかというと、長野局長がやめたのは四月二十七日の夕刻であったかと思うのでありますが、事務引き継ぎ等のために三日間だけ、三日間だけ、事務引き継ぎ等仕事があったので使用させたようでありますが、その後は使わせていないということでありますので、三日間だけのことでその後はないというふうに私は承知しておりますし、そのとおりあなたも理解してもらいたい、こういうふうに思います。
  11. 川内博史

    川内委員 四月二十七日の夕刻付辞職をされて、その時点で身分は大蔵省職員ではなくなるわけですよね。  ちょっと事務当局からもう一度、詳細なというか御説明をいただければ。事実と違うというふうに、大臣、今おっしゃいましたけれども、二十七日の夕刻付辞職をしたということは、その時点大蔵省職員ではなくなるわけですから、三日間だけ事務引き継ぎのためにということであれば、辞職するのを三日後にすればよかったんじゃないですか。
  12. 武藤敏郎

    武藤政府委員 今大臣から御説明申し上げたとおりでございますけれども、一般に、退職いたしました幹部が、その退職後、わずかな期間でありますけれども、事務引き継ぎということがどうしても必要でございます。その間に限りまして車が出るという扱いになっておりまして、三日間に限りまして、長野局長の場合にも事務引き継ぎが行われた、そのために車が出された、こういうことでございます。(発言する者あり)
  13. 川内博史

    川内委員 いや、今、何か武士の情けという声が聞こえたのですが、私は思うのですけれども、大変に今問題になっているというか、国民皆さん方関心の高い、大蔵省の大変にお偉い方たちが、あるいは責任ある立場にある方たちがどういう身の処し方をするのかということに関して、どんな言いわけをしても、それは結局言いわけにしかすぎなくて、それは、大蔵省の車を使うのであれば、引き継ぎが終わった後退職をすればいいだけの話ですから、そういうけじめとかいうことをしっかりまずつける。トイレへ入っておしりをふかなくて、二時間、三時間たってからおしりをふくようなことはおやめになられた方がいいというふうに私は申し上げておきたいと思います。  もう一点、法案中身に入る前に確認をさせていただきたいことがございます。私、昨年五月の行革特委員会の際に、第一勧銀特殊株主総会屋の方に対する融資大蔵省把握をしていたのではないかという質問をさせていただきました。その際の御答弁としては、個別の検査内容については答弁できないという御答弁でございました。  私はそのときから、どうもおかしいなと、金融検査部は、第一勧銀小池さんに対する、総会屋に対する融資を、あるいはそれが不良債権化しているということを知っていたのではないかということを感じていたのです。その後金融検査部宮川さんが残念なことに逮捕され、金融検査部銀行業界との大変密接な関係というものが明らかになったわけでございまして、その密接な関係になるに当たっては、その宮川さんが銀行倒から大変な接待を受けていたということであるわけですけれども、そういう大変密接な関係になっていたということは、銀行の中のいろいろな事柄についても聞かされていたのではないか。その宮川さん並びに金融検査部が、第一勧銀小池容疑者に対する不良債権化している融資というものを本当に知らなかったのか、検査でそれを確認することはできなかったのかということを、再度お尋ねをさせていただきたいと思います。
  14. 原口恒和

    原口政府委員 お答えをいたします。  いわゆる第一勧銀小池隆一容疑者関係融資というのは、大ざっぱに分けて二系統といいますか、二本ございます。  そのうち、小甚ビルディングに対する貸し付け、これに対しましては、検査過程で問題のある融資である、いわゆる分類すべき融資であるということを指摘をしておりまして、その後、第一勧銀の方も発表しておりますが、その小甚ビルディング向け貸出金につき有税償却を行っているということでございます。  この分については検査過程把握をしておったということで、ただ、その過程銀行側とどういうやりとりがあったか等については、現在、これはちょうど公判中でございますので、その辺における事実関係確定を我々も待ちたいと思っております。  もう一方、いわゆる検査忌避の対象となりました小池嘉矩に対する貸し付けという、この辺については、検査過程において、ラインシート等資料提出されなかったということで、遺憾ながら検査では発見をすることができなかった。これにつきましては、昨年の七月に、銀行法第六十三条に定める検査忌避に該当するものとして、銀行法違反で告発を行い、これについては有罪が確定をしておるということで、逆に申しますと、検査過程では把握をできなかったということでございます。
  15. 川内博史

    川内委員 事実関係確認をさせていただきますけれども、小池隆一さんの方の融資に対しては把握をしていたということですね。今そう御答弁されたと思うのですが。
  16. 原口恒和

    原口政府委員 把握をしておったのは、いわゆる小池嘉矩氏が代表を務める株式会社小甚ビルディングに対する貸出金については把握をしておったということでございます。(川内委員「金額は幾らでしたか」と呼ぶ)これは、検査時点において、貸出残高四十億円の貸し付けでございます。
  17. 川内博史

    川内委員 どうも何かはぐらかされているような気がするのですが、平成六年の十月に宮川さんが第一勧業銀行検査に入っているわけですね、平成六年の十月に。その翌年の平成七年の三月に、その小池容疑者に対する不良債権化している融資というものを第一勧銀有税償却をしている。二本しているのですね。二十六億と十何億、合わせて四十億ということなんでしょうかね。そういうことですか。
  18. 原口恒和

    原口政府委員 お話のありました七年三月期、これは先ほど御説明しました小池嘉矩氏が代表者となっております株式会社小甚ビルディングに対する融資、これは四十億円ございましたが、このうち、担保等によって回収が見込まれるものを除きました二十六億円強を有税償却をしたというふうに聞いております。
  19. 川内博史

    川内委員 この検査提出資料の中には、以前この大蔵委員会の中でも御指摘があったわけでございますが、特殊株主に対する項目等もあって、当然、その有税償却をするに当たって、この融資がどういう融資であったのかというようなことに関しても、私は、宮川さんが御存じであったのではないかなというふうに今でも思っておりますし、宮川さんが知っているということは金融検査部が知っていたということになるのではないかなというふうに思うのですが、その辺については、公判中でもあり、お答えをいただけないということでございます。  今、法案中身に入る前に、三点お尋ねをさせていただいたわけでありますが、私も余り申し上げたくはないのですが、世間の人たちが、国民皆様方大蔵省の一挙手一投足に今大変に注目をしておりますので、くれぐれも、公明正大にされていらっしゃると思いますが、より一層の公明正大さをお願いさせていただいて、自民党の委員の中から法案中身をやれという声がさっきございましたので、法案中身に移らせていただきたいと思います。  本日かかっております金融システム関連法案に関して、私は、枠組み自体は、ビッグバンに対応して、規制緩和をさらに一層進めて、お金動きやすくなる大変すばらしい法案であると。きのうも私の部屋に若手の方が五人ほどお運びをいただいて、大変に熱っぽい御説明をいただきまして、本当に一生懸命につくられた法律なんだなということを感じまして、この枠組みが、この制度がより有効に使われることを望む一人であります。  特定目的会社のことについてお尋ねをさせていただきます。  このSPCというものの設立を認める。そうすると、そういうSPCがいっぱいできて、資産流動化が進んで、お金の流れがよくなる。そうすることによって、不良債権の整理、あるいはなかなか動いていかない、動きの鈍い不動産動きがよくなる。そのことによって、ひいては景気を刺激していく。理屈で考えれば、大変すばらしいことのように思われるわけでありますが、果たして、この法律が予定しているように、特定目的会社みたいなものがたくさんできるのかどうか。  そういうような見込みについて、大蔵省さんとしてはどのように御判断をされていらっしゃるのかということについてお尋ねをさせていただきたいと思います。     〔委員長退席井奥委員長代理着席
  20. 松永光

    松永国務大臣 資産流動化が進むという言葉を使いますというと、一般国民にはややわかりにくい言葉だと思うのですよ。私は、わかりやすい言葉として使えば、銀行融資をしましたね、そうすると、それには担保がついているわけです。ところが、担保価値が下がっている。そのままの状態になっているのが不良債権不良債権がそのまま残っておるというと、銀行はなかなか貸し出しを新たにはしない。私は、これが日本経済活性化を非常に阻害していると。  それで、資産流動化という言葉が使われていますけれども、実際はどういうことかというと、不良債権になっている、それには抵当権がついている不動産がある、それを一緒に第三者に売却するわけですね。そして、第三者すなわち特定目的会社が買い受けて、その不動産利用を図る、あるいは利用したい人にさらなる売却を図る、そういう手続を一括して資産流動化と言っているのだというふうに私は理解しております。  そうしますと、一方においては、銀行は実質上の不良債権処理ができる、そしてある程度の金は銀行に入る、したがって、銀行は新たなる貸し出しができるようになる。一方、抵当権がついているために、利用されないで放置してある不動産がある、土地がある、建物がある、それを特定目的会社が実はきれいな状態にして、その土地を使いたい、その建物を使いたい、その人が使えるようになる。これが、我が国経済活性化にとって非常に効果が出てくるというふうに私は思うわけです。その意味で、これは大変大事な制度をつくることになるなと。  問題は、どれだけそういう会社を始める人が出てくるかという問題は一つあります。  当然のことながら、法律関係が絡んでくるわけでありますから、弁護士その他が関係することが必要であろうと思います。同時にまた、不動産をいじる話でありますから、いじるという言葉が適当かどうか知りませんが、不動産処理について知識のある人、そういうグループがそういう会社をつくって活動を始めるという仕組みができることは、土地有効利用の面からも、あるいは銀行の貸し渋りがなくなるという状態に持っていくためにも大変有効だ、こういうふうに思うわけでありますし、やりようによってはうまみのある仕事でもありますから、したがって、そういう会社はぼちぼち出てくるのではなかろうか、こういうふうに私は思うわけであります。
  21. 川内博史

    川内委員 大臣から、そういう会社はぼちぼち出てくるのではなかろうかと。私は、ちょっと楽観的なのかなというふうに思うのですけれども。  枠組み自体は私もすばらしいと思うのですが、もともと不良債権化している担保不動産を使って、そこで収益事業を営めるという前提がなければ、その土地を買う人もいないし、引き受ける人もいない。したがって、その不動産を証券化して、小口に分けて投資家を募っても、なかなか投資家は集まらないし、日本の中において、不動産証券化市場というか、証券市場というのもまだまだ未整備な部分があるのではないか。いっぱいいろいろな問題があると思うのです。現在の経済状況の中では、そう簡単にこの枠組みが有効に使えるようにはなっていかないのではないか。せっかくすばらしい枠組み制度ができたけれども、その枠組みの中に、要するにお金がいっぱい流れ込んでくるような経済状況には、今、日本の、この国の経済状況を考えると、なかなかないのかなというふうに思うわけでございます。  現在の経済状況については、委員会や本会議等でも、デフレスパイラルを起こしていてというような御指摘があるわけでございまして、橋本総理並びに大蔵大臣改革に向けて大変な御努力をいただいているわけでありますが、残念ながら、なかなか経済状況が上向く気配を見せていない。そういう中で、この法律というものが本委員会提出をされているわけでございますが、大前提として、この枠組みの中に、お金が流れ込む、お金が回っていく、そういう経済状況というものが前提になければならないのではないか。やはり金融システムの不安というものが私たちの前に重くのしかかっているのだなということを私は感じるわけでございます。  お金を回すために、金融システムの安定を図るためにということで、金融安定化の二法案がことしに入ってこの大蔵委員会、本会議を通過をして、銀行、今二十一行に対して資本注入が行われたわけでございまして、まず、この法律前提として、この金融二法が通り、システム安定化二法が通って、銀行に対して資本注入が行われた。これは、ある意味では、貸し渋りに対しても効果がありますよ、お金を回していくためには大変に効果がありますよという前宣伝もあったわけでございまして、貸し渋りがどの程度解消されつつあるのか、国民皆さん方大変関心があると思います。  そこで、お伺いをさせていただきますけれども、三月末、四月末における大手二十行と呼ばれる銀行預金、貸し金の推移に関して、御説明をいただきたいと思います。
  22. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  本年三月末におきます部長銀、信託の預金残高が二百十三兆円で、対前年比四・二%の増加。一方、貸出金残高は二百八十六兆円で、対前年比一・八%の減少になりました。四月末におきます同数字では、預金残高が二百十五兆円で、四・八%の増加。貸出金残高は二百八十九兆円で、対前年比〇・三%の減少でございます。  なお、こうした統計にはやや注意すべき点がございまして、債権流動化をかなり進めておるということ、それから、貸出金の直接償却により貸出残高減少する、すなわちバランスシートが落ちるという要因がございますので、そういった点を勘案しますと、四月末の貸出金はそうした特殊要因が約九兆円ぐらいございますので、引いてみますと、前年度末に比べて二・八%の増加になっている、三月よりは四月の方がよくなっている、こんな感じでございます。
  23. 川内博史

    川内委員 今の山日銀行局長の御答弁を拝聴しておりますと、特殊要因があったがために、それほど、心配するほどの貸し渋りではないのだよというようなニュアンスにとれるわけですけれども、決してそうではないと思うのです。  実態として、大手の都市銀行十行で、二月末から三月末にかけては七兆五千億の融資が引き揚げをされているわけでございます。四月に入ってやや若干の増加ということでございまして、経済が順調に成長しているならば融資を引き揚げるということは余り考えられないことでありますが、この二月末から三月末にかけて七兆五千億引き揚げをされて、ちょうど三月末に資本注入が行われているわけです。  これはどういうことかというと、恐らく三月末で各銀行は決算を迎えるわけでありますから、BIS規制の問題等もあり、三月末はとりあえず融資の回収に走った。期をまたいでの融資はだめだけれども、期末で一たん落としてもらえれば、四月にまた融資をしますよというような約束のもとに、四月は若干融資増加したというのが正しい見方なのではないかなというふうに私は思うわけでありますが、銀行局長、どうでしょう。
  24. 山口公生

    山口政府委員 今の御質問をお聞きしまして、川内先生、相当現場の様子を御存じだなという感じがいたしましたが、現に、そういった動きをかなり金融機関は、特に都銀はやっておりました。当時、二月、三月の彼らの心理というのは、まず自己資本比率のクリアが最大の問題だったわけでございます。そういう点につきましては、当委員会でも金融二法をやらせていただいておりましたが、確定的ではないということで、かなりやはり絞り込みをやっておったという感じがいたします。  それからもう一つ、コール市場等の不安定性が残っておりましたので、資金の調達ができるだろうか、貸し出しの裏には必ず資金調達が要りますから、そういった不安感もあったというふうに思います。金融システムが、本当にこれで安心だというコンフィデンスがまだなかったということがあったと思います。この点につきましては、やはりある程度現時点においては、緩和され、クリアしたという安心感があると思います。  それでは、貸し渋りは全くなくなるはずではないかという御議論が出てくるのですが、ここで出てきますのが、今度は資産の効率的運用、つまり、海外と競争するには資産効率を上げなければいけない、不稼働資産を減らさなければいけない、これから不良債権をつくらないようにしなければいけない、こういうことになるわけでございます。そうしますと、どうしても金融機関としては、中期的課題としましては、やはりリスク管理を強くして、やや貸し渋りとすれすれのようなことをやるという現象が起きてくるわけです。  それで私どもは、大臣からも、直接銀行代表をお呼びいただきまして、健全なところに貸さないというのは、これは銀行の役割ではないと強く言っていただきました。その結果、最近出ておりますのは、大企業の方はCPとか社債の方にややシフトさせる、そして中小企業の方で、これは伸びるなというところは、きっちり銀行融資で手当てするという方向に行きつつあると思います。ただ、それが十分かどうかという点については、引き続き、私どももよく注意して、ウォッチして、見ていく必要があるというふうに考えております。
  25. 川内博史

    川内委員 そこが議論になるところだと思うのですけれども、健全なところに貸さないということはないのだ、それはもう当然だと思うのですね。健全なところは、どんな状態であっても、資金繰りにも余裕があるし、利益も出していれば、必ずそれ相応の資金調達というのはできるわけでございます。  日本の企業が二百何十万社かあるそうですけれども、そのうち、大部分、六割五分ぐらいが中小企業、そのうちの八割ぐらいが赤字法人になるのでしょうかね、ちょっと私のうろ覚えですから数字が間違っていたら申しわけないのですが。そういう大変厳しい経営を続けているけれども、地域の経済とか雇用とか発展とかには十分に貢献をしている、頑張っている会社というのがいっぱいあるわけでございまして、それが大部分だと言ってもいいと思うのです、赤字は出しているけれども頑張っている。そういうところが資金調達がなかなかうまくいかないというのが現状であると思うのです。  だから、経済が成長していれば、お金が回っていれば、多少のことがあっても銀行も今までは融資してきたと思うのですが、どうも経済全体の状況が余りよくないので、これは注意しろよということが貸し渋りの根本にあるのだろうと私は思うのですね。  やはりバブル崩壊後の銀行不良債権問題に端を発する金融システム全体に対する信頼感が、この安定化二法で銀行自体はとりあえず息をついたというところはあるのだと思うのです、資本注入を受けることによってとりあえず息をした。しかし、それがまだまだ本当の意味信頼感とか安心感にまでつながっていっていないのではないのかな。というのは、各銀行不良債権をどのくらいまだ抱えているのだろうという根本的な、潜在的な不安感というのが国民の側にもあると思うのですよ。  それで、この資本注入を行うに当たって、新たにSECの基準で、グローバルスタンダードで不良債権額を資料の中に書き込みなさいという審査委員会の基準がつくられたそうでありますけれども、現状のところ、SECの基準に基づいて額を算出したところが二十一行のうち三行あったというふうに聞いております。その三行のSEC基準に基づく額と従前の基準による開示額とどのくらいの開きがあるのか、それぞれ具体的に御説明をいただきたいと思います。
  26. 山口公生

    山口政府委員 銀行によって若干ばらつきがございますが、一番差が少なかったところが九%増し、一番多かったところが三六%増しということでございました。  いずれ五月末になりますと、全主要行はSEC基準でも公表いたしますので、そこでごらんいただけると思いますが、恐らく三割とかいうような数字が出てくるのではないか。  つまり、今までのディスクロージャーの基準では漏れていた。例えば、六カ月基準というのが税法基準に合わせてあったのですが、それを三カ月以上にしたということから生まれるもの。あるいは、条件の緩和したものはすべてというふうにいたしましたので、そういったもので新たに不良債権という定義になるもの。不良債権という定義にしますと非常に誤解があるというので、リスク管理、リスクを有する管理債権というふうに呼ばせていただくことにしておりますけれども、従来の考え方からいうと不良債権という概念ですが、若干そういう意味ではふえる数字が公表されるということを見込んでおります。
  27. 川内博史

    川内委員 SEC基準でリスク管理を要する債権の額、SEC基準で出してきた三行のトータルで結構ですからそのトータルの額と、従来の六カ月を基準にとった場合の三行のトータルのリスク管理を要する債権の額、具体的にその数字を対比していただけますでしょうか。
  28. 山口公生

    山口政府委員 ちょっと集計する時間がもったいのうございますので、今やらせておきます。後で御報告いたします。
  29. 川内博史

    川内委員 今銀行局長から、SECの基準では二割から三割多いというふうに御答弁があって、不良債権とかいう言葉はちょっと適当ではないかもしれないというお言葉もあったわけであります。  とにかく、もしかしたら取りっぱぐれるかもしれないという債権の額が七十何兆円だとか、第二分類だとか第三分類だとか第四分類だとか、基準がいっぱいあって国民の側からすれば非常にわかりにくいと思うのですね。また今回、新たにSECの基準を使ったらまた額がふえた。恐らく五月末には、SEC基準でとったら不良債権が三割ふえる。それだけがまたマスコミで報道されて数字がひとり歩きするというように、基準がいっぱいあって、いろいろな数字がひとり歩きしていて、どうも一体どうなっておるのだろうというのが国民皆様方の思いだと思うのですね。  こういう状況の中で、日本経済に対して世界の市場も注目をしているし、また、日本の国内においても、企業、家計というものの政府に対する信頼感というものがちょっと薄らいできてしまっているのではないかなというふうに思うのです。  その信頼を回復するというのは、私は冒頭、私の持ち時間の中で三点お伺いをした、最後に公明正大にやっていただきたいということを申し上げたわけです。そこと関連していて、金融システムの安定化二法についても、金融システムを安定させるためであって個別銀行の救済ではないということを大蔵省さんは盛んにおっしゃるわけですけれども、私は、結果として、救済という言い方が正しくなければ、金融システム安定のためには個別銀行の支援もしていかなければならないというふうにやはり正直におっしゃられた方がいいのだと思うのです、資本注入をするということは支援するということでしょうから。  そういう一つ一つの事柄に対して、言葉というのは非常に大事ですから、正直に国民に対して語りかけをしていくことがまず、大蔵省さんがせっかく、今審議をしております特定目的会社法案とかいい法律を、規制緩和法律を出されていらっしゃるわけですから、お金がじゃんじゃん回るようにするには、銀行、心配しなくてもいいですよ、支援していきますよということを泥臭くおっしゃられた方がいいのではないかなというふうに思うのですけれども、大蔵大臣いかがでしょうか。
  30. 松永光

    松永国務大臣 なかなか難しい質問をなさるなという感じでございます。  弱っている銀行が仮にあるとして、そこに公的資金を入れて救済するなどということを国民が理解するだろうか、そういう面があります。しかし、日本金融システムを全体として安定させるのだ、それを通じて日本経済を安定させるのだという言い方ならば、国民は理解すると思うのです。資本注入というのも、ある意味では救済ではないのです。  去る三月末に行った資本注入、これは、いわゆる国民の税金は使っていないのです。政府保証によって預金保険機構が日銀等から〇・何%かの融資を受けて、そのお金をもって資本注入をしたのでありますが、これは、ただで注入したんじゃないんです。相場の金利をずっとちょうだいするという形での注入であるわけなんです。そういう意味では、救済という言葉は当たらないし、救済ではないんです。  よく言われるように、強い銀行ならば、あえてそういう形での注入を受けなくとも、市場で劣後債も売れたかもしれないし、あるいは優先株の発行をして、それが売れたかもしれない。しかし、それをみずからしょうとしないから、そこで、自己資本比率をさらに高めて資本を充実をして、そして貸出量がふえるということであるならば、これは経済にプラスになるということで、実は相場の利息はちょうだいするという形での資本注入、こういうことになっておるわけであります。  したがいまして、あくまでも、日本金融システムを全体として安定させると同時に、自己資本を充実をしてもらうことによって必要な分野での融資をどんどんやってもらう、そういうことのための実は資本注入であったというふうに私は思っておりますし、委員もそういうふうに理解をしてもらえばありがたい、こう思うわけです。
  31. 川内博史

    川内委員 私も、大臣の御答弁よくわかるんですけれども、ですから、救済という言い方が適当でなければ、支援するという言い方でいいじゃないですかということを申し上げたわけでございます。  弱っている銀行には資本注入をしないというふうに、もちろんその辺の、どこの銀行資本注入するかは、大臣もお入りになられて御決定をされることでありますから、最終的には審査委員会の判断になるわけであります。しかし、今実際に資本注入を受けた二十一行の中には、私たちが、一般国民が見て、弱っていると思われていた銀行も幾つかあるわけでございまして、それは、あるいはBIS規制をクリアするために、グローバルな市場でプレーヤーとしてやっていくために資本注入が必要であった、支援する必要があった、金融システムの安定をさせるが銀行は支援しないんだ、弱っている銀行は支援しないんだ。それはそうでしょう。そうなんですけれども、その言葉遣いが非常にわかりにくいんですよ。  結局、国民の側から見れば、いや、銀行お金を入れるというのは、銀行を支援するんでしょう。そのことによって銀行が元気になって、中小企業あるいは住宅ローンというところに銀行がじゃんじゃんお金を回してくれるようになれば、それはハッピーなわけですから、銀行を支援してなるべく銀行をつぶさないようにする、そして、銀行を元気にして、そのことによってお金を回していくようにするんですよという正直なお言葉遣いをされた方が、国民にわかりやすいし、大蔵省が打ち出す政策というものが国民皆様方に大変によく浸透していくのではないのかなということを私は考えるわけでございます。  きょうは、日銀の藤原副総裁にも大変お忙しい中をお運びいただいておりますので、お伺いをさせていただきます。きょうはありがとうございます。  四月二十四日の政策委員会において、公定歩合は現状のままという決定がなされたようでありますが、新しい日本銀行になって、私は、一体だれが公定歩合を決定をしているのかということが非常に興味があるんですけれども、新生日本銀行になってからの政策決定のメカニズムに関して、まず副総裁から簡単に御説明をいただきたいと思います。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  32. 藤原作彌

    藤原参考人 お答えいたします。  新しい日銀法になりましてから、金融政策の独立性と透明性向上の観点から、幾つかの制度的な手当てが講じられております。  具体的には、金融政策決定会合という会合を、政策委員会のルーチンの会合のほかに月に二回設けておりまして、そこで金融調節、預金準備率、公定歩合等のいわゆる金融政策の決定について審議しております。  その政策決定会合では、執行部から金融経済情勢について詳細な説明を受けまして、委員、合計九名でございますけれども、その九名の間で、その情報をもとに突っ込んだ議論をしまして、それを踏まえた上で採決をします。それで政策を決定いたします。そういう方式をとっております。
  33. 川内博史

    川内委員 政策決定会合の中で採決をして最終的に決定をするということでありますが、そうすると、最終的な責任の所在というものが、政策決定会合という九人の人々が集まった会合が責任を持つのかというと、ちょっとよくわかりにくいんですね。私はやはり、その政策決定会合の中で日本銀行総裁、副総裁がどういう発言をするのかということを他のメンバーはじっと見ていると思うんですよ。そういう中で、日本銀行のスタンスを持ってその会合に御出席をされるんだろうというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  34. 藤原作彌

    藤原参考人 お答えいたします。  私ども正副総裁三人は、執行部の代表でありますが、同時に政策委員というステータスを持っております、一人二役といいますか。そのほかの六人の委員審議委員という名称で呼ばれていまして、内閣の任命で各界から御出馬いただいた委員の方々です。合計九名ですので、その中で議論をした結果、採決をいたします。九人ですので、必ず結果は出ます。その出た結果が政策の結論になるわけです。  ですから、政策を決定するのは政策委員会であるわけです。もちろん、速水総裁も私も山口副総裁も、それぞれ意見は申し上げますが、それぞれの意見は九分の一の意見というウエートを持つわけです。
  35. 川内博史

    川内委員 今の御説明だと、結局、それぞれが九分の一で、だったら、日本銀行の総裁というお役目あるいは副総裁というお役目は何のためにあるのかなと、つい純粋に思ったりするんです。ちょっと、私もう時間があと一問しかないので、公定歩合を政策決定会合では現状のまま、どちらかというと公定歩合下押し圧力の方が強まっているというような御議論であったようでありますが、私は、公定歩合を今引き上げるべきである、えいやと引き上げるべきであるというふうに思っておりますが、それでは、副総裁の、九分の一の政策委員の立場として、公定歩合に関してどういうふうに、政策決定会合で決まった意見ではなくて副総裁が政策決定会合で述べられた個人的な見解で結構ですから、公定歩合に対する見解をいただきたいと思います。
  36. 藤原作彌

    藤原参考人 お答えします。  政策委員会における個々人の発言については、その一言一句を外部に公表することは守秘義務に違反することになりまして、私もその責任を問われますが、たまたま就任のとき申し上げた意見が今でも続いておりますので申し上げますと、私も外から見ていまして、今の金利は超低金利状態がかなり長く続いているので、それがいろんな問題を惹起しているということは承知しております。できるなら、その問題を解決するために是正したいものだなという気持ちも持っております。  特に、我が家でいえば家内なんかはそういうふうに私にも言いますし、一般預金者だけではなくて、ファンドとか基金とかで仕事を運営している団体なんかも、かなり苦しい状況のところがあるということは承知しております。  しかし、金利を上げますと、例えば家計部門のネットの利息収入を増加させるというメリットはあると思います。しかし反面、現下の厳しい経済情勢をも見ますと、企業収益の減少とか投資採算の悪化とか資産価格への下押しなどという、いわゆる下押し要因がメジロ押しにありまして、結局、経済活動を抑制することになつちゃうんじゃないかという疑いが生じてくるわけですね。それがひいては雇用の悪化や給与所得の減少にまで回り回ってつながりまして、家計部門に対しても、結局、総体としてマイナスの影響を及ぼすんじゃないかという危惧の方が強く感じられるわけです。  したがって、いろいろ悩みはありますけれども、現状のところは、政府が経済対策を打ち上げられたわけでもありますし、そういったことを通じまして、いましばらく経済情勢の推移を見守りたいということで、現状維持というのが現下の判断であります。それは私の判断でもあります。
  37. 川内博史

    川内委員 最後に、先ほどのことを局長から。
  38. 山口公生

    山口政府委員 簡単に御報告します。  三行の不良債権のディスクロージャーですが、従来基準だと約二兆五千、SEC基準だと三兆三千でございます。
  39. 川内博史

    川内委員 残念ながら時間が参りましたので、これで私の質問を終わらせていただきますが、本委員会にかかっております法律案で予定をしております枠組みが十分に機能するような経済状況というものを、私たち一体になってまずつくっていかなければならぬだろうなということを強く感じておりますし、また、藤原副総裁にもますます頑張っていただいて、公定歩合を引き上げていただくようにお願いいたします。  どうもありがとうございます。
  40. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、藤田幸久君。
  41. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 大蔵大臣、G7からお帰りになりまして、お疲れさまでございます。  今回、国際会議を通しまして、ビッグバンということが今回の法案に関してもございますけれども、ビッグバンというのはいろんな見方がございますが、世界のマーケットが一つになるというふうに言っても過言ではないと思います。ということは、世界が一つになるわけですから、日本の政治家が世界の政治家と信頼をつなぐということが非常に重要ではないかと思います。  今回、非常に逆風の中でロンドンの会議に参加をされまして、日本のこういう政策あるいは大蔵大臣に対する信頼が各国の大蔵大臣から得られたかどうかということについて、まずお伺いしたいと思います。
  42. 松永光

    松永国務大臣 大蔵大臣信頼というよりは、日本国の財政責任者の信頼が得られたかどうかという問題だろうと思うのでありますが、今回のG7におきましては、我が国が現在の停滞した状況を速やかに打開し克服するための事業規模十六兆円超の経済対策を策定をし、そしてそれを速やかに実行すべく努力しているということにつきましては、G7各国から信頼は得られた、こういうふうに私は理解をしておるわけであります。
  43. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 いろいろ報道等によりますと、二月とか四月のG7に比べまして、今回は日本に対する批判が和らいだというような報道もございますけれども、これはある意味では、ほかの参加国は日本に対して執行猶予を与えたというような気がしておるわけでございまして、このいわば猶予期間に日本が何をなしていくべきかということについて幾つか質問をしたいと思います。  まず大臣は、いろいろな国の大蔵大臣から、日本がなぜ今日のような不況に陥っているかという、その原因についても恐らく議論があったかと思いますけれども、今日の日本の不況の原因についてどういう御説明をなさいましたでしょうか。
  44. 松永光

    松永国務大臣 不況の原因等についての議論というものは、これはありませんでした。それから、執行猶予云々という言葉がございましたけれども、それに類するような議論もありませんでした。  問題は、日本が決定をした十六兆円強の経済対策を速やかに実行すること、それに対する期待は表明されたわけであります。同時にまた、金融部門の強化、こういったものの議論はありましたし、また、これはG7蔵相会合結論文書の中にも出ておるわけでありますが、金融システムの一層の強化ということが議論をされたわけであります。
  45. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 執行猶予と申しましたのは、やはり政府が昨年以来いろいろな政策を打ち出してきておりますが、小出しに小出しに出してこられた。つまり、状況が変わるに応じて、今まで出しておりました政策とある意味では矛盾するような政策も含めて小出しに出してきておるわけです。したがいまして、景気の動向についてもなかなか明快な答えが出せない。  ただその一方で、今回のG7の会議におきまして、今回の総合経済対策によって、ことしの上半期には我が国の内需が拡大して景気が回復するというふうに公約をされたという報道がございますが、それは事実でしょうか。
  46. 松永光

    松永国務大臣 G7の会合というのは、約束をするとか公約をするとかという会合ではないのでございまして、自由な立場から各国の経済情勢等々について実は議論をする場なのです。そして、それぞれの国の代表が自分の国の経済状況について報告をし、かつ、それに対する対策について報告をする、それに対してほかの国からは質問がある、そういう議論の末、共同ステートメントが発表される、こういう形になっておるわけでありまして、何かを約束するというふうな会合ではないのですよ。議論の結果、議論の取りまとめをするという形での文書が発せられる、こういう会合なのでございます。  先ほど執行猶予という言葉がありましたが、そんな感じの言葉は全く出ておりませんから、御理解を願いたいと思います。
  47. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 議論をする前に、つまりロンドンに行かれる前に、実際には内容は、この文書については決まっていたのではないかという気がいたしますが、それはさておきまして、ロンドンにいらっしゃる間に、会議の席、あるいはほかの大蔵大臣、あるいはほかの国の政府の関係者との会談等々において、ことしの上半期には我が国の内需が拡大して景気が回復するというような発言はされましたでしょうか。
  48. 松永光

    松永国務大臣 実は今回のG7の会合の場合には、その前に、委員も御承知のとおり、我が党の政策責任者あるいは経企庁長官、こういう人たちがアメリカに参りまして、ルービン財務長官を初め関係者に、いろいろ我が国のとろうとしておる政策についての説明を十分しておられたということもありますので、そういったことから、前回のG7に比べると、日本に対する風当たりは非常に和らいでおったという雰囲気はございました。
  49. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 重ねてお聞きしますが、今回ロンドンにおられる間に、各国の方々とお話をされた中で、上半期に景気が回復するというような発言をされましたでしょうか。
  50. 松永光

    松永国務大臣 G7の会合の前に、個別の会談としてはルービン長官、それから英国のブラウン大蔵大臣、それからドイツのワイゲル蔵相等々と個別の会談をいたしましたが、そのときに私が申し上げたことは、先ほど申したように、今回の十六兆円強の経済対策の概要を説明し、これを速やかに実行するという決意を実は伝えたわけであります。それに対して、ブラウンさんもルービンさんもあるいはワイゲル蔵相も、これを評価し、早く実行することが望ましいという発言がございました。  私としては、これを実行することによって日本は内需主導の経済成長が実現する、したがってそれに向けて法案を、あれは土曜日であったわけでありますけれども、週明け早々、すなわち十一日の日には財政構造改革法に弾力条項を入れるという法律案あるいは減税法案そして補正予算、これを提出する予定になっております、提出した後は、野党の方々の御協力をいただければ速やかに成立をして実行に移せる、そのことのためにも最大限の努力をする決意でありますということを申し上げたわけでありまして、いっ景気が回復するかという時期のことは申し上げておりません。  いずれにせよ、これをやることによって速やかな景気回復がもたらされるというふうに申し上げてきたわけであります。
  51. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 いっとはおっしゃっていないけれども、速やかに景気が回復するということは具体的にどういうことでございますでしょうか。     〔委員長退席、浜田(靖)委員長代理着席〕
  52. 松永光

    松永国務大臣 これも、野党の皆さん方法案成立に関する御協力がどれだけ得られるかによって変わってくるわけでありますけれども、我々としては、何とかして特別減税の中の地方税の減税分、これは、もし五月中に減税法案が成立すれば、前に決めておる地方税の減税分と一緒に六月中に減税が実行できます。その分だけ国民の方に減税効果を届けることができる。したがって、問題は、減税法案の速やかな成立が大事なんです。同時にまた、それが成立すれば八月にも国税分の特別減税国民に届けることができる。そういう日程になるわけでありまして、それが実現できるように、国会の審議について野党の御協力をいただいて、何とかしてそうなるようにやっていきたいということは申し上げました、時期の点について言えばですね。  そしてまた、既に成立をさせていただいた平成十年度の予算の中での公共事業については、上期に、九月までの間に八一%契約が成立するようにというわけで一生懸命努力をしているということ。そしてさらに、真に必要な社会資本整備ということで補正予算の中にも、あれは六兆円強だったかな、公共事業費が盛り込まれるはずでありますけれども、それも補正予算が成立すればできるだけ早く実行に移すようにしていきたい。そうしたもろもろの政策が相乗効果を発揮して、そして日本景気は回復に向かうだろう、こういったことを申し上げてきたわけであります。
  53. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 今おっしゃられたようなことを例えば同時通訳で英語でやっていたのか、ドイツ語でやっていたのか、フランス語でやっていたのか、あるいは三つでやったのかわかりませんが、今のように、野党がこういうふうになったらこうなるであろう、あるいはこの見通しであるだろう、あるいは努力をしている、できるだけ速やかにというような言い方をしていたのでは、とてもロンドンでは恐らく話にならなかったのではないか。そういう言葉を連発しておられたのであるならば、まるで日本に対する信用というものは得られなかったのではないか。恐らく、実際にロンドンでおっしゃっていたような言葉については、今おっしゃったような何か他力本願的な話では、これはいつまでたっても日本景気は回復しないという印象を持たれてしまったのではないかと思いますが、本当に今答弁されたような表現をロンドンでおっしゃったのでしょうか。
  54. 松永光

    松永国務大臣 実は、減税法案の成立も補正予算の成立も、国会で決めていただくわけでありますから、私が決めるわけじゃありません。したがいまして、国会における審議がスムーズに進むことによって、何とか五月中に成立を図るように努力をするのだ、減税法案あるいは補正予算。そういうふうに申し上げたわけであります。  外国に行っても国会を無視した発言は、私は議会人でありますから、するわけにはまいりません。したがって、議会における各党の協力をいただいて、その上で五月中の減税法案の成立、そして速やかな補正予算の成立、こういうふうに実は申し上げたわけであります。常に議会人として、国会の審議の結果そうなるわけでありますから、いかなる場合でも、野党の皆さん方の神経を逆なでするような発言は極力しないという立場で私は会議には臨んでおります。
  55. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 最近、大蔵委員会でも自己責任という言葉がいろいろ言われます、経営者の自己責任とか。そうすると、外国に、ロンドンに出ていって財政金融当局者の自己責任はどうなっておるのかという気が今の答弁を聞いてせざるを得ないわけです。例えば、ロンドンの会議においていろいろな方とG7以外でも個別にお会いされた際に、ルービンさんなりあるいはブラウンさんなりが、いや、英国議会において野党がこういう状況である、あるいはアメリカの議会において議会がこういう状況である、したがってなかなか大変だとかいうような話をほかの大蔵大臣はされましたか。
  56. 松永光

    松永国務大臣 私は、外国の代表に対して、日本の国会が大変だという言葉を使いません。国会の審議をできるだけスムーズにさせていただいて、そして五月中の成立を期しておるのだ、あるいは早い補正予算の成立を願っておるのだ、こういう発言の仕方をしておるわけであります。  なお、お聞きいたしましたら、ルービン財務長官などは、議会に出て答弁したりするのは一年のうちに何回かしかない、こういうふうに言っておられました。また、英国のブラウン蔵相も、議会での予算の審議などは非常に短時間に終わるというようなことを言っておられました。日本には、長い日本のいい伝統がございまして、よく審議をして、そして採決がなされるという形になっておりますので、その形の中で、できるだけ早い成立を院の皆さん方にお願いするというのが私の立場でありますから、その立場をきちっと守って私は発言をしてきたつもりでございます。
  57. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 このロンドンの会議において、話の中心は、各国における手続の問題ではなくて、日本政府がまさに出しております、あるいは今までやってきた政策の中身についての話が中心だったのじゃないですか。それを、先ほどから私は、例えば景気がいつ回復するかというお話をされたかという、内容そのものについて単純明快に質問しているわけですが、手続の話と、それから私が質問した以外のことについて、るる説明をされておられる。先ほど来の御答弁は手続の話ばかりなわけですよ。  私は、むしろ内容について聞いているわけで、私は別に大蔵大臣の揚げ足をとるつもりではなくて、今まさに世界が注目をしております今回のG7におきましても日本問題が中心になって、日本問題の中心というのは、手続ではなくて、日本問題の経済の政策の中身であり、その責任であるわけです。民間人が出ていっているのであるならば、民間企業の経営者の自己責任ということになるわけですが、まさに政府の責任者として行っておられるわけで、それに対する質問に対するお答えが手続ばかりのお答えということでは、ちょっとお答えになっていないと思うのですが、改めて答弁を求めたいと思います。
  58. 松永光

    松永国務大臣 冒頭申し上げましたように、特別減税の追加、継続、それから真に必要な社会資本の整備を中心にした補正予算の提出、そしてそれの成立、こういつたことが実は経済対策の中身なのでありますが、その中身は、当然のことながらまずそれを説明したのですよ。  問題は、速やかな実施をというのが諸外国の意見でありましたので、我々も速やかな成立を願っておるのだ。速やかなという意味は、特別減税について言えば、五月中に法案が成立させていただければ、地方税の方は六月に実行できるのです、国税の方は八月に実行できるのです、補正予算の方は成立次第速やかな実行に移せるのだ、こう申し上げたわけであります。別に、手続論をくどくど申し上げたわけじゃありません。  G7の国々が速やかな実行を期待するという発言でありましたので、我々は、国会で成立させていただければ、五月に成立させていただければ、六月に地方税の減税、そして八月に給与所得者に関する所得税の特別減税、それが実行できるのです、それに向けての最大限の努力、こう申し上げたわけであります。
  59. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 きょうは余り時間がありませんので、これ以上質問してもまともな答えが返ってまいりませんので、別の観点からの質問の仕方にしたいと思います。  今、やはり世界じゅうが日本に注目をしておりますのは、そもそもこれまでの日本のシステムあるいは官僚のいろいろな意味でのコンタクトということに対する信用の問題ではないか。それから、日本の政府というものが近代国家における政府の役割というものを本当に果たしているのだろうか。それから、本当の意味での市場というものが日本に存在し、あるいは機能しているのであろうかということに対する、いわば信用不安ではないかというふうに私は思うわけです。  と申しますのは、まず市場経済というのは、資源といいますか富を最適に配分するということにあるわけですが、日本の場合に、世界最大の債権国であるわけですが、金融と財政も破綻してしまっている。いわば資源の最悪配分が行われてきたということがあるわけであります。  私はこの大蔵委員会でも、沖縄の銀行から、それからつい先週は北海道の銀行まで、不良債権隠しの仕組みとか、あるいは不良債権が出た後も実は大蔵省とその銀行との間によって分割償却がなされてしまっている、そういった事実関係の具体例を示してきたわけですけれども、結局そういったことが行われているということは、日本という国が近代国家として統治能力を持っているのかということに対する、やはり不安があるのではないかと思うのです。  それで、先週もちょっと申し上げましたけれども、例えば近代国家の成り立ちの哲学といいますか、よって来るところの要素としては、これはアメリカの独立宣言とか、日本の憲法では十三条にございますけれども、いわば近代国家というのは、国民の生命、自由及び幸せの追求ということ、その権利を政府が保障する。いわばこれは自明の理ということになっているわけですが、今回G7にいらっしゃったような国々というのは、こういう基本的なことを押さえた上でのマーケットあるいは国の役割ということを前提としてとらえた上で出てきていると思うわけです。  したがって、今回、日本はビッグバンを始めるわけですけれども、いわばそのビッグバンに日本も加わるということは、先ほど申しましたけれども世界が一つになるということです。ですから、こういつたそもそも近代の文明の大競争に加わることについて、大臣は実際にロンドンでいろいろな方々と意見交換をされて、そもそもほかの国の方々はこういったことを自明の理として、いわばアクセプトした上で出てこられていると思うのです。日本の場合にはどうもその辺が、はっきり理解して政策をされてロンドンに来ておられるのかということに対する、実は不信があるのではないかという気がするのですが、こういつたことについて議論されたことはございますか。あるいは、こういった点について、実際にほかの国の当局者とお話をされておられまして、そういった認識をお持ちでしょうか。
  60. 松永光

    松永国務大臣 委員は、日本の国会、日本の行政府に対する諸外国の信任が非常に低いみたいにおっしゃっているけれども、そういうことはありませんよ。  議会制民主主義の国として、特に国会は立派に機能しているという、そういう前提をG7の国は持っていらっしゃいます。ただ、予算案その他の審議の仕方についてはそれぞれ方式が違いますから、例えば英国などは非常に短い期間に予算は成立するようでありますが、我が国の場合には十分議論をした上で、これは国の将来を左右する一番大事な項目は予算でありますから、しかし、その予算につきましても、きちっきちっと詳細な議論をした上で成立を見ておるわけでありますから、そういう日本の議会政治についての諸外国の信任は決して低くないです。行政に対しても信任は低くないです。私は、別に自信過剰になる必要はありませんけれども、決して卑屈になる必要はないというふうに感じます。  同時にまた、G7蔵相会合結論文書にありますように、経済政策について歓迎をしていただいたわけでありますが、金融システムの一層の強化の重要性、こういうことについての発言が諸外国からありました。その場合に、同時にまた日本のこの公的資金を活用しての金融システムの強化策、これも実は諸外国は評価をしてくれておるわけなのです。これをもっと活用して日本金融システムの強化を図るべしという意見はありました。したがって、それは我々は、法律の制定をしていただき、そして予算措置もしてあるので、これからもこれは着実に進めますということも申し上げてきたわけであります。
  61. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 非常に短い質問に対して随分時間をとって御答弁になられますので、時間が余りなくなってまいりましたので、ちょっと別の、このシステムの根源にあることについて一つ質問したいと思います。  昨年来、公的資金の導入にしましても、あるいは今度の総合経済政策を立てるに当たっても、一つキーになってきている言葉がございまして、それは銀行の自己資本比率でございます。これは株式会社の究極的な危機対応能力を示す一つの指標であるわけですが、どうも公的資金導入に関しましても、三月末の決算までとかいうことに関しましても、その自己資本比率八%というようなことが何か諸悪の根源であるかのように言われてきた面もあるわけです。そもそもこの自己資本比率に関しましては、八七年のバーゼル合意によってBIS規制というものができているわけですけれども、今回のロンドンでも問題になった不良債権なんかにも関係するわけですが、我が国の金融機関の含み損を考える上で、この自己資本比率、どういう形で国際基準ができてきたかということが重要な意味を持つわけであります。  ティア1、ティア2というのがございますけれども、いわばそのティア2の方の自己資本の補完的項目の中に株式など保有有価証券の含み益を四五%も算入しているということに、この八七年の合意でなっているわけですが、こういうBIS基準の策定の交渉の際に日本側がそういった含み益の四五%を算入するように主張したということが言われておりますけれども、この事実関係について、きょうは日本銀行安斎理事にお越しいただいておりますので、この点についてまず確認をしていただきたいと思います。
  62. 安斎隆

    安斎参考人 お答えいたします。  いわゆるBIS基準におきましては、自己資本の補完的項目に先生おっしゃいますように含み益の四五%相当額を算入することが認められております。これについて、当時のバーゼル銀行監督委員会においては、次のような考え方があったものと承知しています。  一つは、銀行が多額の株式を保有し、その時価が帳簿価格を上回っている場合には、それを時価で売却することにより実現した利益でその損失を補てんすることができる、そういうことですので、含み益というのは銀行が営業を継続する中にあって損失を吸収し得るものであり、自己資本の項目に含めることができると考えられたことが一つあります。  ただし、この場合、市況の変動が激しかったり、あるいは含み益を実現する場合には必ず税金が課されます、そういう税金を反映させるために十分な掛け目を付することが適当であるという考えがありました。それからまた、従来も、金融機関が損失を処理するに当たって実際に有価証券の含み益が活用されてきた事例も多かったものと理解しています。  いずれにしましても、有価証券の含み益は、その一部はあくまでも補完的項目として算入し得るということにすぎません。また、価格変動に伴う不安定性を有するということも事実でございますので、金融機関としては、これに過度に依存することなく、自己資本の充実に努めることが何よりも重要であると考えております。
  63. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 私はそういうことを聞いているのではなくて、交渉の際に、その四五%を入れる、ティア2に入れるように日本側が主張したかどうかということを聞いているのに、ほかの説明でそれだけ時間を使われたわけですが、実際に日本側は主張されたのですか。
  64. 安斎隆

    安斎参考人 何分にも、私自身、十年前のことでございますので、日本側が主張したかどうか、私は知りません。
  65. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 それはおかしいのではないですか。私の方は質問通告をして来ていただいているわけで、十年前に安斎さんがどういう立場にあったかということではなくて、日本銀行として主張したかどうかということを質問通告をして聞いているわけです。  というのは、これがまさに今日の経済状況をもたらしている自己資本比率に関係しているわけですよ。含み益というものがティア2の中に含まれることによって、日本の企業はぬれ手にアワのように含み益で利益を得て信用供与を得たわけです。ところが、一たんそれが減ってきた段階で、今度含み益というものが減って、それで結局自己資本比率が達成できないということで今日に至っているわけですよ。それを十年前に私は知らなかったで済まないのではないですか。答えてください。  安斎さんに聞いているのです。
  66. 安斎隆

    安斎参考人 まことに申しわけありませんけれども、いろいろな議論があったということは聞いております。それが日本サイドからどういう形で出たのかということについて、私は今そういう知識を持っていませんということでございます。  その議論の過程では、現実に、先ほど申し上げましたように、含み益が果たしてきた機能も踏まえて、それで、掛け目の掛け方、価格変動が激しいよ、あるいは実現した場合は税金に持っていかれるよ、いろいろなことがあって……(藤田(幸)委員「理由を聞いているんじゃないんですよ、事実関係を聞いているんです」と呼ぶ)ええ。そういうことで、掛け目の議論もいろいろなところでいろいろな議論があったということは知っておりますけれども、日本側からそういうものを、四五%なら四五%の主張をしたかどうか、これについては、私、知識を持っておりません。
  67. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 私は評論家に聞いているのではないので、知識を持っているか持っていないかということではなくて、日本銀行として、あるいは日本政府としてその段階で主張したかどうかということは、単に安斎さん一個人の知識の問題で済まないことではないですか。  これは、実際、そのことによってこれだけ経済状況が悪くなって、銀行もいろいろな苦労をして、そして、不良債権もあるいは貸し渋りも、まさに自己資本比率ということから貸し渋りになっているわけですよね。それで倒産も起きて、自殺者も出ているわけですよ。それを、一個人としてその知識がある、ないで済まされるものではないのではないですか。日本銀行としてはっきり後でお答えください。  委員長、これは、ぜひ大蔵委員会としても取り上げていただきまして、日本銀行からきちっと回答が出るようにお計らいをいただきたいと思います。
  68. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員長代理 理事会で協議させていただきます。
  69. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 それでは、時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。今の点ははっきりとお答えいただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  70. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員長代理 次に、西川知雄君。
  71. 西川知雄

    西川(知)委員 西川でございます。  この問の質問は早期是正措置ということについて主に質問をさせていただきましたが、きょうは、今度の金融システム改革ということについて、具体的に市場が関心を持っていることについて、大蔵大臣なり大蔵当局の確認と御見解をお尋ねをしたいと思います。  たしか二、三日前の報道でございますけれども、大蔵省の方としては、金融に関するいろいろな個々の通達というものを基本的には廃止をする、そして規制緩和というものも、そういう通達行政ではなくて、もっと基準を明確にした省令、告示というもののレベルでいろいろと規制をしていく、または監督をしていく、こういう報道がありました。そういうことが事実かどうか、そういう方針であるかどうか、これをまず大蔵大臣から、重要なことでございますので、お答え願いたいと思います。
  72. 松永光

    松永国務大臣 行政の透明性を図るということを主たる眼目として、今委員申されたような措置をするようになりまして、今それを進めているところでありますが、その具体的な内容は局長から答弁させます。
  73. 山口公生

    山口政府委員 大臣の御指示によりましてそういった方向で考えておりますが、通達といいましても大きく言って二つ種類があると思うのです。一つは、よく通達行政ということを批判されております、関係金融機関あてにこうしなさい、ああしなさいという指導通達的なものというのがあります。もう一つは、例えば本省と財務局というように、同じ行政機関内で取り扱いが違ったりしたら困りますので、きちっとした意思の伝達をするという講学上の通達がございます。  そういったジャンルに分けてみますと、特に問題になるのは前者だと思うのでございます。前者につきましては、できるだけ省令とか告示とかいう形でやっていく、しかも要らないものはなくす、原則としてはなくすという考え方でやっていくべきだろうと思うのですね。  後者の方につきましては、やはりこれは本省で言っていることと出先とが全然違うことを言うということになりますと問題がありますので、これはこれできちっとした事務のガイドライン的なものはつくるということにさせていただく。しかし、そのガイドライン的なものもできれば公表をする。そうしますと、役所が何を考えているかということがはっきりするというふうに思うわけでございます。  基本的にはそういったような考え方で物事を一回ちょっと整理してみて、全部整理し切れればそれはきれいな形になりますが、しかし、これまでのいろいろな国会での御議論等を踏まえて、そういった方向でのすべての見直しを監督庁が発足するまでにはめどを立てたいというふうに考えております。
  74. 西川知雄

    西川(知)委員 一つ確認でございますけれども、今いわゆる講学上の通達、例えば地方の機関との間の通達ということについてはできる限り公表するというようなことをおっしゃいましたが、金融関係の通達集というものがございます。私も弁護士として仕事をしているときはそういうものをよく見ておったわけで、それはどういう形の公表かは別として、既に一般に知られていたのじゃないかというふうに思うのですが、今、山口局長がおっしゃったことは、そうすると今まではそういう通達、いわゆる講学上の通達の中で一般に我々の目に触れていないものもあったのでしょうか。
  75. 山口公生

    山口政府委員 ほとんどそれは公表しておったというふうに考えております。それが今度きっちりと整理した形で公表をしていく。そうすると、これはどういう位置づけの文書かということがより明確になるだろうと思うわけでございます。そういった意味では、より透明性を高めるための努力ということをいたしたいというふうに考えております。
  76. 西川知雄

    西川(知)委員 その辺をもう少しはっきりとしていただきたいのですが、今までも私が通達集を読んでいた経験からいたしますと、かなり整理した形でその通達集というものがつくられている、または、いたというふうに思います。  そうすると、今一番重要なのは、前者のいわゆる業界を指導するというような形の通達というものは基本的にはやめよう、これは今改めて言われることじゃなくて前々から言われていたことであるというふうに思いますが、特に重要なのは後者の方で、これはこういうふうにやりますよということを各地方の下部の機関がそれぞれ別途解釈すると困るので、そういう形で出しているというのは、それはそれなりに意味があるのですが、実際は業界の方も、それが大蔵省の見解である、金融当局の見解であるということで、それに実際上は拘束をされる、実際はそれに従って行動するというふうになっているわけで、ここの部分が実質的には極めて大切な部分じゃないかというふうに思われるのです。そこの部分を少なくとも前の部分と同じように、もっと明らかな形で、それこそ省令とか告示の形でそういうところも把握するというふうにしないと、実際、金融業界はやはり依然、前と同じような体制がとられているのじゃないかというふうに思うと思うのですが、その点について局長大臣の御意見はいかがでしょうか。
  77. 山口公生

    山口政府委員 西川先生、かなり実務に精通しておられますので、当然そういう御疑問あるいはそういう懸念を金融機関が持つのじゃないかということの御指摘でございますが、私どももその辺は十分認識してやらなければいけないと思います。  なぜこういうふうに通達の形を変えていくかということにつきましては、やはり基本的な行政の手法が事前予防的なものから基本的には事後チェック的なものになるという考え方でございますので、一応私どもの考え方の基準はきちっと中で固めておくということが事後チェックの原則でありますから、そういう意味では、内部のそういった通達をきちっと透明性のある形で目に触れていただけるようにするということが大切だと思うのですね。  したがって、内容的にどこがどう違ってくるのかと言われますと、それはそのときそのときによって徐々に内容は変わると思いますが、まず大きく変えなければいけないのは、そういう形式も変え、事前行政的なものから事後行政的なというふうに私どもの考え方も変える、こういうことを重視した見直したというふうに思うわけでございます。  したがって、今先生が御懸念のような、かえって金融機関がよくわからなくなって、戸惑って、その都度その都度何か解釈が求められて、またある人はこう言う、ある人はこう言う、本省はこう言うけれども現場はこう言うというようなことにはならぬようにしないと、何のための通達の整理かがわからなくなってくるというふうに認識をしながら進めたいというふうに思います。
  78. 西川知雄

    西川(知)委員 具体的問題に入ります前に、そうすると通達の公表の仕方ですけれども、具体的にはどういうふうに公表をされるのでしょうか。
  79. 山口公生

    山口政府委員 大臣の御指示で今始めたばかりでございますので、その点を先生の御指摘も踏まえて十分考えてまいります。
  80. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、いろいろと実務上のことについて金融機関等がどうなんだろうなとか疑問に思っていることとか内容について、今どういう大蔵省の見解かということを具体的にお尋ねしたいと思います。  銀行と生保なり保険会社との間で、不動産の所有とか賃貸、特に銀行については詳しい通達がございまして、不動産の空きスペース、これを第三者へ賃貸するときにはどういうふうな賃貸の仕方をしないといけないとか、こういうふうな細かい規制がありまして、銀行の方としては非常に、機動的な営業はできないということをいろいろと聞きます。一方、生保については例えば宅地の販売等もできるということで、これは少し緩目である、こんなふうに言われておるのです。  まず、こういうような銀行等に対する不動産の賃貸等の規制、これを今後撤廃されていくのかどうするのかということが一点と、生保との違いというものをこれから解消されていくのかどうか。生保は資金の長期性がありますから少し違うとは思うのですが、その辺のところを具体的に、今度通達を改正されるそうでございますから、この辺についてどうしていくのかということをお答え願いたいと思います。
  81. 山口公生

    山口政府委員 まず、私の方から銀行の営業用不動産の賃貸に関する規制について申し上げます。  これまでは、営業用不動産の一部を第三者に賃貸する場合、これが無制限に行われますと銀行法第十二条、他業禁止に抵触するおそれがあるということで、いわゆるセーフ・ハーバー・ルールとして、一定の条件のもとにこれを行うというふうにしておりました。しかしながら、今般、金融機関の自主性と自己責任の徹底を図る観点から、こうした事前指導的な規制を廃止すべく、先般三月三十一日の閣議決定の規制緩和に盛り込みまして、これを廃止するということを決めたわけでございます。
  82. 福田誠

    ○福田政府委員 保険の方についてお答えいたします。  御指摘のように、生命保険で申しますと、銀行預金と異なりまして契約が大変長期のものでございまして、お預かりしたお金資産運用に当たりましては長期安定的な投資先が望まれるところでございます。そのため、不動産への資産運用というものは、生命保険会社の運用先として適当なものの一つとして従来から考えられてきておりまして、法令上も不動産の取得というものが資産運用の一方法として認められているわけでございます。  そういう意味で、銀行との差はその資金の性格の差にあるものと考えられるわけでございますが、こうした事情ですので、生保会社資産運用につきましては、不動産を取得してそれを長期に保有し、賃貸収入を得るというのが基本になるものと考えております。
  83. 西川知雄

    西川(知)委員 それでは、ちょっと違うことを聞きます。  デリバティブが、今度、証取法のところでも重要な取引の一つとして掲げられているわけでございます。また、国税庁の方でも各デリバティブの税務上の取り扱いをどうするかということについて研究も進んでおるというふうに聞きますが、デリバティブ取引について、現在どういうふうなデリバティブが行われているのかということについての大蔵当局による報告の徴収、これは現在どういうふうに行われているのか。  ある金融機関の話ですと、個別契約ごとに報告を求められるというようなことも言われておりまして、実際は、実際というか、大蔵省の方から基本的にはそういうような個別の報告は求めていないということではないかとは思うのですけれども、その辺について一つ確認と、さっきの、いわゆる口頭指導ではございませんが、これについても、一定期間ごとに求めればいいのだけれども、実際は個別ごとに持ってこいと。そんなことがないようにということも含めまして、お答えを願いたいと思います。
  84. 山口公生

    山口政府委員 現在におきましても、デリバティブ取引に係る想定元本額等を年に一回ないし二回、当局に報告することを求めております。今御指摘のような個別契約ごとに報告を求めることはしておらないということでございます。よほど何か個別にとらなければいけないような事情がある場合は、そのときは、行政上の必要性があればとることもあると思いますけれども、通常、そういう事情がないときは、この原則どおりでやらせていただきたいと思います。
  85. 西川知雄

    西川(知)委員 それから、今度、金融機関がいわゆるクレジットデリバティブ、この取引を日本で行うことが可能かどうかということをちょっと確認したいのですが、大蔵大臣でも当局でも結構ですから、御答弁願います。
  86. 山口公生

    山口政府委員 クレジットデリバティブという取引は、一般金融機関が行い得る業務とは考えられますけれども、法令上明示的な規定がないことから、リーガルリスクが払拭できないという問題があったわけでございます。  金融機関の業務として銀行法等の業法に明記していけば、そういった懸念が払拭できるのではないかということで、今回のシステム改革法案におきまして銀行法の改正法案をお願いしてございますが、金融関連のデリバティブ取引につきまして包括的な規定を置きまして、具体的な取引の内容については、これは今度の監督庁の方と大蔵省の共同省令で規定することとしておりますけれども、今後、当該共同省令においてクレジットデリバティブ取引を明記する方向で関係省庁と協議してまいりたいというふうに考えております。
  87. 西川知雄

    西川(知)委員 次に、金融機関がコモディティーデリバティブ、これの取引を行うということは可能かどうかということで、多分それは業務として明確化されているということで可能ではないかと思うのですが、その点についてもちょっと確認をしたいと思います。
  88. 山口公生

    山口政府委員 コモディティーデリバティブの取引につきましても、先ほど先生がお尋ねになりましたクレジットに関するデリバティブと同じように、リーガルリスクの問題がございました。したがって、これも同じように、共同省令におきまして、原資産の受け渡しを伴わない範囲においてコモディティーデリバティブ取引を明記する方向で関係省庁と協議してまいりたいというふうに考えております。
  89. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、デリバティブ取引のヘッジ等を行う場合に、公共債の空売りというものは可能だけれども、社債の空売りはできない、そんなことを聞くわけですが、これは事実でしょうか。
  90. 山本晃

    ○山本(晃)政府委員 お答えいたします。  社債につきましては、空売りを禁止するという規定はございませんけれども、国債と比較した場合、国債は大体一ロット一兆円とかという、そのくらいの規模がございます。それに対しまして、社債の場合には、この一ロット当たりの発行量というものが、平均すると百五十億円ぐらいでございましょうか、ということで少なく、いわば流動性が限られるということから、空売りは事実上余り行われていないというふうに聞いております。特に規制はあるわけではございません。
  91. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、今ちょっと社債の話が出ましたので、ちょっとABSの話を確認したいのですが、この問もあるインベストメントバンカーと話しておりましたら、そのABSの市場といいますか、第一次の市場ができるのは非常に好ましいことだけれども、結局これが、セカンダリーマーケットがないと、これは第一次取得者が持ち切りになって余り意味がないというようなことを言っておりまして、これをまず整備しないことには、法制だけできても余り意味ないのじゃないか。  今、社債の話が出まして、国債と比較した場合、非常に流通の量が少ない、発行規模も小さいということで、この辺のことを私も懸念しているわけですが、この辺についてどういうふうに大蔵省としては考えておられるのでしょうか。
  92. 山本晃

    ○山本(晃)政府委員 社債につきましては、先ほど一ロット当たりの発行量が少ないというふうに申し上げましたけれども、最近では、いろいろな規制緩和で、社債商品については、発行面では自由化が完全に完了しております。そういったこともございまして、発行量の伸びとともに売買高そのものも増加傾向にございます。  特に、この社債の流通市場につきましては、今まで整備がおくれていたわけでございますけれども、昨年の十二月に債券決済ネットワークというものができまして、本年七月からはDVPもできるようになったということもございまして、売買高そのものも増加傾向にあるというふうに認識をしております。平成九年度は約十九兆七千億円の売買高でございまして、対前年度比で九%の増加ということでございます。  今後は、今ちょっとお話に出ましたけれども、SPCが発行するこの特定社債、ABSを含めまして市場規模がさらに拡大するというふうに見込まれることから、こうした傾向は続いていくのではないかというふうに私どもは考えております。
  93. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、もう一つだけ確認なんですが、ABSの販売ということについて、これは銀行とかほかの金融機関、これも可能になるのでしょうか。
  94. 山本晃

    ○山本(晃)政府委員 お答えいたします。  いわゆるABSにはさまざまなものがございまして、例えば貸付債権信託受益証券などのABSは現在でも銀行等の金融機関が取り扱うことができることとされております。  今回、御提案申し上げておりますSPC法の制定等に伴いまして、この法律に基づいて発行されます指名金銭債権を裏づけとするABS等につきましては、銀行、保険会社等の金融機関による取り扱いというものが認められるということになるわけでございます。  具体的には、今回のそのSPC関連整備法によります証取法六十五条二項の改正によりまして、この規定は九月一日から一応可能にしたいということで今御提案を申し上げているところでございます。
  95. 西川知雄

    西川(知)委員 ちょっとほかの質問でございますが、金融先物取引について、依然として持ち高規制があるというふうに聞いておりますが、これは事実でしょうか。また、今後はどういうふうになるのでしょうか。
  96. 山口公生

    山口政府委員 銀行が行います金融先物取引につきましては、銀行経営の健全性の確保という観点から、通達によって建て玉規制を行ってきたところでございますけれども、昨年三月の規制緩和推進計画の再改定において示した方針に従いまして、本年の三月三十一日付で建て玉の規制を撤廃したところでございます。
  97. 西川知雄

    西川(知)委員 それから、ローン債権についてでありますけれども、これは法律上は、当然のことながら、譲渡というのは可能なんですけれども、これが実際には規制をされているのじゃないかというような話を金融機関から聞くわけですが、これは事実かどうかということと、間違いであればそういう規制はしていないという確認をしたいと思うのですが。
  98. 山口公生

    山口政府委員 貸付債権第三者に譲渡することにつきましては、民法の指名債権譲渡の規定に基づき、これまでも可能であったところでございます。また、つけ加えさせていただきますと、今後ますますこのニーズはふえると思います。  今回御審議をお願いしております特別目的会社SPC法案も、こうした債権等の流動化に大変寄与するものというふうに期待しております。
  99. 西川知雄

    西川(知)委員 ちょっと保険のことについて聞きたいのですけれども、生保の構成員契約規制、いろいろな議論があることは私も承知しておるのですが、今後どういうふうになっていくのか、また、していくつもりなのか、その点について御見解を。
  100. 福田誠

    ○福田政府委員 お答え申し上げます。  生命保険の構成員契約ルールは、法人募集代理店が手数料収入を求めるために、自分の会社あるいは関連会社の従業員に対して、その職制を利用した募集、いわゆる圧力募集と言っておりますけれども、こういうような募集を行うことを排除するために、消費者保護の観点から、その会社の構成員への販売を制限しているというルールでございます。  これにつきましては、御指摘のようにいろいろな意見がございまして、規制緩和の方の意見では、圧力募集の防止のためにはこれは過剰規制ではないか、販売チャネルについて消費者の選択を狭めるものであるというような規制緩和の御意見もございます。  他方で、消費者、この場合従業員でございますが、この保護の観点からは、職制を利用した圧力募集を行うことを排除する必要性は依然としてあるのではないかという規制維持の御意見もございます。  そのようなことで、昨年十二月の行政改革委員会の最終意見ではこういう記述がございまして、「今後、保険業法等において、消費者の意見を踏まえつつ、「圧力募集」に対処する他の実効性のある透明なルールを検討するとともに、構成員契約規制の撤廃の可否を含めた検討を行っていくべきである。」との提言がなされております。  したがいまして、御指摘の構成員契約規制につきましては、今後、消費者の意見等を踏まえつつ検討を行ってまいりたいと思っております。
  101. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、ちょっと保険のことをお尋ねしたいのですが、銀行、証券、保険、いろいろな新しいそれぞれの分野での金融商品が開発されて、市場に出すというときに、どうも、保険だけというとあれかもしれませんが、保険は特に、新しい商品を出すたびに大蔵省の方で認可をするということになっている。それも事業方法書とか普通約款とか保険料等々が原則的に認可の対象になっているので、それが変わるということで認可だという理屈だと思うのです。  ただ、事業方法書とか約款等は当然昔決められたわけで、新しい商品が出てきたら、そういうことには対応できないのは当たり前なわけで、それを一々認可の対象とするということは、ちょっと余り、保険と銀行、証券も、証券はちょっとおきまして、それぞれいわゆるファイナンスの要素が非常に多くて、商品的にそんなに銀行の商品と変わらないのじゃないかと実際上は思われるのです。  保険だけこういうふうに規制が多いのはいかがなものかというふうに私は思いますが、その点について、保険部長銀行局長の御見解をお伺いしたいと思います。
  102. 福田誠

    ○福田政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、全体としては規制緩和の流れが必要だと考えております。ただ、銀行、証券等で基本的に商品認可等が行われておりませんが、保険の商品につきましては、保険の商品の特性から、ほかの金融商品に比べますと商品内容を理解することが難しく、商品知識に乏しい契約者の保護あるいは契約者間の公平性の確保というような観点から、法令上は原則認可制がとられているわけでございます。  ただ、そのような流れもございまして、実は、平成八年四月から実施されております新保険業法の中では、契約者保護の観点から特に問題ないと思われるものにつきましては既に届け出制を導入しておりまして、順次、認可制から届け出制に移行している過程にございます。  例えば生命保険ですと、法人が契約者となります団体保険の系統は既に認可から届け出になっておりますし、損害保険ですと、船舶保険、航空保険、原子力とか運送とか賠償保険等のようなものについては、もうかなりの種目について届け出制に移行しているわけでございます。  また、認可制が残っている商品につきましても、おっしゃるように、これが過度な規制にならないように、審査基準を法律上明確に定めることで透明性の確保に努めておりますし、認可の期間も、行政手続法に基づいて、できるだけ速やかに認可するようにいたしております。  また、ある会社に既に認可した商品と類似の商品が申請された場合には、これも迅速に認可を行うようにということで、申請者側の負担等も勘案して業務を行っているところでございます。  大きな流れとしては、今後とも届け出制を拡大することを考えております。
  103. 山口公生

    山口政府委員 御指名でございますので、お答え申し上げます。  私も、以前、保険業法の改正をお願いして、そうした御議論をしばしばちょうだいいたしました。今、銀行全体を含めて見させていただいておりますが、やはり振り返ってみましても、保険というものの商品が、確かに貯蓄性のものもふえておりますけれども、基本は保障性のものというのが必ず含まれているわけです。そうすると、それを、例えば保険約款を読んでみたところで、では、わかるかということなんです。物すごく複雑で、私自身も保険部長をやっていてよくわからないような、頭が痛くなるような内容なんです。  それはなぜかというと、保険数理がそこにあるということと、もう一つは、非常に期間が長いということ。銀行預金等は、一年たったら幾らで回して幾らで利息を払いますよ、これは私でもよく理解、すぐできます。しかし、保険商品についてはなかなかそこまで、難しいという性質があると思うのですね。  それについて、一般の個人の方々にどこまで自己責任を問うべきかという問題がついて回ると思うのです。そのときに、サプライヤー側だけの事情で商品をつくられる、それはまたいろいろ問題が生じるのではないかという面があるわけです。それで、それを中立的な立場でチェックするという考え方が従来からもあるし、そういうことで、保険業法のときも認可制というのを残していただいたのです。  ただ、保険部長が申し上げたように、例えば企業間のもののようなものとか、あるいは定型化したもの、どこかがもうやっているようなものというのはケースによってはどんどん届け出制へ移すとかいうことで、そこはやや過剰な関与はなくしていくという考え方ではないだろうかというふうに私は感じております。
  104. 福田誠

    ○福田政府委員 申しわけございません。先ほど、答弁でちょっと間違えたことを申し上げました。  生命保険の方の、既に届け出に移行している商品として団体保険と申しましたが、正確には団体年金保険でございますので、おわび申し上げます。
  105. 西川知雄

    西川(知)委員 一つだけ確認なんですけれども、届け出制ということの意味なんですが、時折、私のいろいろな昔の経験によりますと、届け出といっても、届け出を受理しない、内容がいいというまでは受理しないというようなこともございましたが、その点は今後ないということだけはちょっと、これは全体の話ですから、大蔵大臣の方からお答え願えますか。
  106. 松永光

    松永国務大臣 私は、保険の方は余り知りませんけれども、一般的に言って、形式が整っておれば受理するというのが役所としては当然のことではないか、こう思っております。
  107. 西川知雄

    西川(知)委員 保険約款の話が出ました。そこで、銀取約定書、銀行の方ですけれども、これは、銀行取引を始めるときには必ずこちらから差し入れるという形で、もう典型的なフォームは全銀協でできておりまして、それを変えようとしようものなら取引はできない。そして、書いてあることが、一方的に銀行に有利なことばかり書いてある。いつでも何でも好きなことを銀行はできるということが書いてあるということは、大臣も何回かお読みになったことだと思うのですが、これが今、全銀協の方でも、これではちょっとあれなので、改正をしていこうというふうな動きがあると思うのです。  大臣、今のままの約定書の内容によりますと、これは、それこそ一銭も貸さないで、ちょっと貸したらいろいろな担保をとれて、そしていつでも期限の利益を喪失させて、全額を返してもらうというようなこともできかねないというような約定が入っておるわけで、これが現実的に、社会的にも大きな問題になってくるのだと思うのです。  その辺について、大臣としてはどういうふうにお考えなのか。法律家ですから、その有効性等も含めまして、今後どういうふうに変えていくことが望ましいのか、その辺のところ、ちょっと御意見をお伺いしたいと思います。
  108. 松永光

    松永国務大臣 私は、銀行の約款などというのは見たことがないのですよ。取引したことはありませんし、預金とか貯金とかというのは全部女房にやらせておりますから、私は見てないのです。  ただ、一般論からいえば、新しい時代でございますから、やはり、消費者すなわち預金者が不利にならぬように公正な約款になるべきだと思いますが、何でも、全銀協の方でその点については検討しておるというふうに聞いております。  委員の目から見て、なるほどこれは妥当なものだ、そういうふうなものになることを私は期待したいと思います。
  109. 西川知雄

    西川(知)委員 保険約款もそうでして、私も保険約款というのは何度か読んだことがありまして、なれていくとそんなに難しくはないのですけれども、みんな読まない。大蔵大臣も、実は約款を差し入れていらっしゃるはずなのですけれども、だれも読まないということで、読まなければ、何か好きなことを金融機関が取引の立場上の差を利用してできるというのは、これはまずいというふうに私は思います。  金融当局の権限というものはどういうふうな場合に及ぶのか、また、どういう場合にそういうところに介入すべきかということについて、若干今まで感じが違ったのではないかと思う。消費者とかそういう立場の弱い一般国民がこういう約款なんかを締結するというときに、公正な、いわゆる平等な立場での約款にすべきだ、逆にそういうような指導というものはあってもいい。ほかのいろいろの商売に口を出すという指導はない方がいいですけれども、そういう消費者を守る、一般国民の権利を保護する、不当に金融機関が有利な状況に立つような約款でございますからそういうことがないように、ひとつそういうことは指導していただきたいというふうに思うので、これは山日銀行局長と福田保険部長に、ちょっと確認お答え願いたいと思います。
  110. 山口公生

    山口政府委員 私どもも、行政の力点というものを、業界の秩序の維持とかあるいはそれを通した信用不安を起こさないための仕組みづくりというものからもう少し広げ、消費者等を視野に入れた公平な観点から行政を行っていくという方向に努めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  111. 福田誠

    ○福田政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、まさに保険商品の場合は認可制が残っているというのも、そういう事情もございまして、例えば保険業法の商品の認可基準の中に、契約者等の保護に欠けるおそれのないことという項目、あるいは保険契約者の権利義務その他保険契約の内容が、保険契約者等にとって明確かつ平易に定められたものであることというのも認可基準でございます。  私どもといたしましては、そういう意味で、約款については消費者保護上問題ないかどうかという観点から認可制のもとでチェックをしてまいったわけでございますが、ただ、平易かどうかということも含めまして、やはりこれからもできるだけ改善すべき事柄、課題であるというふうに認識をしております。
  112. 西川知雄

    西川(知)委員 個別の問題はまだたくさんあるのですけれどもこれだけにしまして、最後に大臣、私は、この間の質問のときに、早期是正措置、銀行ですね、金融機関、これについて御質問をしました。  そのときには、三つの査定がある。一つは金融機関自身が自己の方法によって自己査定をする。それからもう一つは外部監査をやる。そのときには、日本公認会計士協会が出している実務指針というものがある。また今度は、金融検査についての、これは九年三月五日ですけれども、検査部の「資産査定について」というものがある。この三つがどうもその整合性がよくわからないということで、これについてこの間、大臣に、ぜひこの文章は簡単でございますからお読みになって、そして次の機会にその三つの整合性について御説明をお伺いしたいということを申し上げておいたと思うので、この辺について大臣、読まれて、そしてその三つの関係、どういうふうに整合性を保つか、ちょっとお答え願いたいのです。
  113. 山口公生

    山口政府委員 この三つの査定というのは、確かにそういう考え方は合っていると思います。  まず、一番目の金融機関自身の査定というものについて、それでは二番目、三番目と無関係でやっているかというとそうではありません。それはむしろ、三番目の資産査定という検査部の話、これの、私どもの考え方というのをある程度反映していただく。別に強制するものではありません。しかし、考え自身は反映させていただく。例えば、私どもは、四分類、四つに分けております。これを十、二十に分けてもそれは構いません。しかし、いずれにせよそういった何らかの形で、回収可能性でチェックする。そうすると、今先生がおっしゃった一と三が結びついてくる。  そうすると、二も、一を見ながら、今度は回収可能性から償却引き当てでやりますから、ただ、二は、これはある意味では独立した、公認会計士という専門機関の方々でございますので、これについて当局からあれこれ言うのはちょっと差し控えるべきだと思います。そうすると、二と三とのすり合わせみたいなことになりますが、どちらかというと、私は感じとしては、償却引き当ては二の考え方を優先していくものではないかという感じを持っております。  いずれにせよ、これから早期是正措置、いろいろな形でスタートしておりますが、いろいろな試行錯誤もあるかもしれません、しかし、よりよき形にしていきたいと思っております。     〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
  114. 西川知雄

    西川(知)委員 質問時間が終了いたしましたが、今の見解で、そういう方向でやっていかれるという確認大臣から最後にお伺いいたしまして、質問を終わります。
  115. 松永光

    松永国務大臣 今局長答弁を申し上げたような方法でやっていくことになるというふうに思います。
  116. 西川知雄

    西川(知)委員 では質問を終わります。
  117. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、谷口隆義君。
  118. 谷口隆義

    ○谷口委員 自由党の谷口隆義でございます。  まず初めに、金融債についてお聞きいたしたいというように思います。  資金運用部月報によりますと、平成十年三月末日現在、金融債の残高が四兆三百五十三億円、前期末残高に対しまして四兆六千百八十七億円の減少となっております。対前年比で五三・四%の減少というようになっております。  まず初めにお聞きしたいわけでございますが、なぜこのような減額が起こったわけでございましょうか。
  119. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えを申し上げます。  今先生が御指摘されましたとおり、平成十年三月末の資金運用部の金融債保有残高は四兆三百五十三億円で、九年三月末に比べて確かにそういう減少になっております。  私ども、資金運用部資金は、先生御存じのように、資金運用部資金法第一条に基づきまして確実かつ有利な運用を行っているところでございますが、財政投融資計画に計上されます資産のほかには、この同じ法律の第七条に規定されております運用対象がございまして、そこに国債と並びまして、今御指摘金融債も第七条九号に列挙されておるわけでございます。これらの運用対象のうちに、具体的にどの資産にどの程度の運用をするか。したがって、今言われました増加とか減少、これはその時々の資金運用部資金の資産負債の状況や金利調整等の環境に応じまして、その時々に私ども判断しているところでございます。
  120. 谷口隆義

    ○谷口委員 これは従来私も当大蔵委員会質問したことでもございますが、長期信用銀行三行ございますが、状況はやはり大変経営が厳しい、また格付機関等から格下げを行われておったというようなことがございました。今回この質問をさせていただいたことは、本年四月二十一日の日本経済新聞に、金融債の残高が五三%減少した、この内容は、長期信用銀行の発行する金融債の新規購入を停止したため、このようにあるわけでございますが、この理由をお聞きしたいわけでございます。よろしくお願いいたします。
  121. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、資金運用部資金の運用に当たりまして、その時々の資金需要動向等を総合的に勘案して行っているところでございますが、現実に、資金運用部資金のうち金融債に対して運用されている金額が減少しております。  これは資金運用部資金の方の事情がございまして、先生御存じ資産負債総合管理、いわゆるALMの観点などから、一年から五年程度のいわゆる金融債ゾーンと言われております。その運用の必要性は最近乏しくなってきております。  いま一つは、最近の財政投融資をめぐる改革論議の中で、預託の廃止とかこれに伴います能動的な資金調達の必要性が指摘されているようなこともございまして、資金運用部資金の財政投融資計画外の運用につきましては特にこれから流動性を重視する必要がある。これらの事情等を総合勘案したことによる、理由はそういうことによるものだということで御理解いただきたいと思います。
  122. 谷口隆義

    ○谷口委員 長期信用銀行三行あるわけでございますが、この各行別の資金運用部の持っていらっしゃる残高について明細を御報告をお願いいたしたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  123. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今先生が御質問されました資金運用部が保有いたしております金融債の金融機関別の内訳につきましては、これは御理解いただきたいことでございますが、個別の金融機関のデータに関することでございますので、私どもとしては差し控えさせていただきたいと考えております。  なお、かつてこの内訳につきまして、国会での御審議の用に供するために衆議院の予算委員会の御要求がございました。九年の二月でございましたが、そのときには、政府の方から非公表の資料として委員会に、理事の先生方限りということで資料提出させていただいたという経緯はございます。
  124. 谷口隆義

    ○谷口委員 この金融債の各行別残高について委員長にお願い申し上げたいわけでございますが、ぜひ理事会で諮っていただきまして、各行別の残高を、明細を提出してもらうようによろしくお取り計らいのほどお願い申し上げたいというように思います。
  125. 村上誠一郎

    村上委員長 後日理事会で協議させていただきます。
  126. 谷口隆義

    ○谷口委員 それで、これはどの銀行ということになりますと極めて信用の問題がありますのであれですが、この長期信用銀行の新規発行の分がなかなか消化し切れない。ですから、償還ばかりが入って新規発行ができないということで、かなり資金繰りが大変な状況になっておるのではないかということが、市場の声と申しますか、市場で聞こえてくるわけでございます。  そうなりますと、私は、その内容はどの程度どうなっておるかわかりませんが、例えば貸出金を回収する、この回収したものを資金調達で不足が生じた分に充当するということになってまいりますと、まさにこれが貸し渋りの大きな原因になってくるわけでございます。このような状況が起こっておるのか起こっておらないのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  127. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  貸し渋りという言葉で表現しますと非常に微妙な表現になりますので、それとは別に事実関係だけを申し上げますと、長信銀三行の資金調達額は減っております。一方、貸出金の方も減少になっております。
  128. 谷口隆義

    ○谷口委員 いずれにしても、私が指摘したような状況に、どういう原因かはこれはまた別にして、現実の事態としてそういうようになっておる。  これは、今松永大蔵大臣でございますが、三塚前大蔵大臣の折に、この金融債が預金保険の対象になるかどうかということでかなり議論がございまして、預金保険の対象になるというように答弁をされたわけであります。  再度大蔵大臣にお伺いいたしたいわけでございますが、金融債については預金保険料の拠出がないわけでございます。ですから、論理的に言うと、これが預金保険の対象になるというのは若干論理矛盾を起こすわけでありますが、そういう状況の中で、この金融債について預金保険の対象として大臣が考えていらっしゃるのかどうか、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  129. 山口公生

    山口政府委員 さきの国会でもしばしば御質問をちょうだいし、しばしば同じ答弁を申し上げましたが、現行の預金保険法の本則では対象としておりません。しかし、破綻等が起きたときに特別資金援助という形で結果として救済できるという形になっているということでございまして、今先生がおっしゃいましたように、現時点においてそれに見合った保険料を負担していないということも事実でございます。  ただ、今後ペイオフ制度という問題も視野に入れながら、預金保険の対象のあり方、負担の仕方ということはこれから早急に検討をさせていただきたいという考えでございます。
  130. 松永光

    松永国務大臣 今局長が申し上げたとおりでありまして、それ以上つけ加えることはございません。
  131. 谷口隆義

    ○谷口委員 これはもうかなり私は厳しい状況になっておるのではないかというように思います。前国会、以前からのこの議論の中でも、さっき私が申し上げましたように、論理矛盾を起こすようなことになって、要するにあれはいけるのか、これはいけるのかというような形で議論したわけであります。それで、この法的根拠はなく、とにかくこれは預金保険の対象にするというようなお話でございましたので、そういう状況を十分勘案してこれはやらざるを得ないわけでありますが、新しい大蔵大臣も、そういうことで、これは預金保険の対象だというようにおっしゃったわけでございますので、そのように受け取らせていただきたいというように思います。  それで、次は、この金融システム改革関連法案に入るわけでございますが、先日参考人に来ていただいていろんなお話をお伺いをいたしました。その折に、私大変おもしろいなと思ったのは、池尾参考人がおっしゃったんですが、我が国の金融改革は欧米に比べると一周おくれだ、一周おくれているので横に一緒に走っているんだがしかしおくれているということがわからない、こういうような表現をされたわけであります。新しい束をつくるのに旧来の束をほぐさなければいけない、アンバンドリングというようにおっしゃいました。欧米では八〇年代から九〇年代にこのようなことが行われた、今我が国はアンバンドリングを行っておる、しかしもう既に欧米ではりバンドリングが行われておる、もう一周おくれているんだ、十分とは言えないが、しかし、今、この急速な金融情勢、金融環境の変化に対応してやっていかなければいけない、これは私も大変理解できたわけであります。  その折に、金融というのはドッグイヤーで計算しなければいけないものだと。ドッグイヤーというのは、人間の一年は犬の六年間ぐらいになるようですね、そのくらい速く、どんどんどんどん金融状況が激変しておる。そういうような激変した環境に合わせていくというのは、これは大変な状況で、我が国が、今ビッグバンということでこの四月から始まっておるわけでございますが、そういう状況の中で、欧米に合わせていかなければいけない、しかし一方で欧米は今我が国以上に進んでおる、ですから永遠になかなか追いつくことができないんじゃないか、こういうような議論になるわけでございます。  だから、この我が国の金融機関、金融を取り巻く環境の中で欧米に伍して戦っていくためには、大変な金融状況の激変が必要なんだろうというようなことで、今回のこの金融システム関連法案は、十分とは言えないまでもこれはやっていかなければいかぬ、このように考えておるところでございます。  それで、個別の問題に入ってまいりたいわけでございますが、まず初めに、SPCについてお伺いいたしたいというように思います。  このSPCというのは、商法上の法人とは異なって、この法案に基づき設立された特定資産流動化のみを業務内容とする法人である、取締役は一名以上で設立ができ、最低資本金は三百万円以上、現行は一千万円以上でございますので、簡略化されて設立ができるというようなことのようでございます。また、株式型と債券型とがある、優先出資証券と特定社債券、またCP等があるというようなことでございまして、不良債権を債券化するというようなことのようでございます。  それで、まず初めに、このSPC特定目的会社についてお聞きしたいわけでございます。金融機関が不良債権を持っておる、この不良債権SPCに販売しますね、SPCはそれを証券化する、こういうような流れになるんだろうと思いますが、金融機関とSPCの間は、金融機関から見るとこのSPCというのは果たして連結の対象になるのかどうか、これをまず初めにお聞きいたしたいと思います。
  132. 山本晃

    ○山本(晃)政府委員 お答えいたします。  企業会計におきます連結の範囲につきましては、昨年の六月に、企業会計審議会の方から「連結財務諸表制度の見直しに関する意見書」が公表されたわけでございます。この中で、いわゆるこの連結の範囲につきましては、親会社に意思決定機関を支配されている会社及び会社に準ずる事業体がこれに含まれるということとされたところでございます。  御指摘の、特定目的会社による特定資産流動化に関する法律案に定めますこのSPC、これは株式会社ではないために、この連結財務諸表制度における会社に準ずる事業体に含まれるのかどうかということが問題になるわけでございます。この点につきましては、国際的にも会計実務上議論が行われているところでもございますので、我が国における取り扱いにつきましては、この法案の御審議も踏まえまして、今後具体的に検討してまいりたいというふうに考えております。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  133. 谷口隆義

    ○谷口委員 金融機関がありますね、金融機関が不良債権を持っておる、この不良債権SPCに、先ほども申し上げたように売却する。仮にこのSPCが連結対象に入らないということになりますと、このある金融機関が持っておる不良債権を、十か二十か三十かわかりませんがSPCにばんばんばんばん譲渡していく。そうしていくと、御存じのとおり、今回の中にも入っておりますが、企業は今まで財務諸表のディスクロージャーは個別ベースでございましたが、今回連結ベースになるわけでございまして、この個別単体の今までの金融機関では不良債権を持っておった、ところがこれをSPCに売却する、これが連結対象に入っておらないということになりますと、この金融機関は形の上ではきれいになったということになるわけであります。それが要するにこのSPCの方に行って、これを債券化、証券化して販売するわけでありますが、なかなか売れない可能性がある。不良債権のことでありますので、不良資産、なかなか価格を下げないとマーケットで販売できないということになりますと、例えばずっとSPCで持ったままであるというような場合も生じるでしょうし、仮にまた金融機関が、その親会社の方がその証券化されたものをまた取得するというようなことになって、この一連の行為で見ると、これは一つの、この金融機関本体をきれいにすると申しますか、損出しするというかというような形に使われはしないのか。本来の目的から逸脱した形でSPCが使われるというようなことが行われはしないのか。  私が今申し上げたのは、一連の内部取引みたいなものが、一応外部を通じて、外部を通じてと申しますか、外部に売却したみたいな形になっておるが、一連の行為を見るとこれは内部取引ではないのか、このようなことが行われはしないのかということについてお聞きいたしたいと思います。
  134. 山口公生

    山口政府委員 かなりSPC法の本質の部分の議論だと私も思います。  確かに、先生がおっしゃいますように、これが連結になりますと意味がないんです。これはある銀行が、結局その連結ベースのものからオフバランス化するための手段なんですね。したがって、連結されてしまうとまず余り意味がない。つまり、自分の右手から左手に移したという感じになるだけで自分の体には違いない、こんな感じになるわけです。  そうした上で、今度はそのオフバランス化したもの、つまり他人に渡したもの、他人に渡したもののリスクを自分が最後にとってしまう。例えば、先ほど先生がおっしゃいました、デット部分とエクイティー部分がある、エクイティー部分はかなりリスクが高うございます、この分をみんな引き受けますというようなことをすれば、これはまた意味がないんです。つまり、リスクを遮断したものがリスクが遮断されていないということになります。したがって、その場合は、BISでもそれは認めないのです。つまり、一〇〇%それはリスクとして乗せなきゃいけないというふうになるわけです。  したがって、理想型としては、完全にオフバランスして他人様に渡し、それでそれ自体がファイナンスを受けて、それで事業を、あるいはキャッシュフローを得るというものでなければならないわけなんです。  したがいまして、その内部取引的なものが一時疎開的に使われるとかいうことになっても、それは企業会計上も意味のないことにしますし、BIS上もそういう取り扱いをするわけでございますので、本当にこのSPCにおけるABSというものが意味あるためには、そういった形をきっちりとる必要があるということであります。
  135. 谷口隆義

    ○谷口委員 今おっしゃったのは理解できるのですが、従来、抵当証券というのがございました。あの仕組みとこのSPCはちょっと似ているのですね。  おっしゃるように、エクイティー部分については損が発生します。確定ではありませんので、これは利益が出たり損が出たりするわけであります。デットの部分は、社債でやっている部分については、これは確定利回りがありますから問題ないわけでありますが、優先出資証券の場合には、企業収益の結果、下がったり上がったりするわけでございますので、そういうような問題が起こり得る。例の、先ほども申し上げたスキレムが抵当証券のスキームに似ているわけでございまして、法律的な問題がないわけですよ。優先出資証券というのは出資なので、そのリスクを負って出資するわけですから。  しかし、それが大きな社会的な問題に仮になった場合に、すべてが損ばかり出る、至るところで損が出るといった場合に、それに対する補償と申しますか、損失補てんみたいなものを社会的に出資者が求めるというような事態、これは法律的には私はおかしいと思いますが、このような事態も考えられないのかというように思っておるわけでございます。これについてお考えをお願いいたしたいと思います。
  136. 山口公生

    山口政府委員 先生のイメージしておられる懸念というのは私もわかる気がしますが、ただ、SPC資産を譲渡するときに、適正な価格で時価評価され渡っておれば、それはもう不良債権でも何でもないのです。それに見合ったボンドあるいはエクイティーが発行できて資金調達ができるということですから、その譲渡価格がきちっとした評価を経て、適正な価格であれば、それは、投資家としては何も不良債権に投資するわけでも何でもないわけでございますので、そうした形でこのSPCが使われませんと、先生がおっしゃいましたように、何か損を外に散らしただけで解決しようと、それはマーケットが受け付けません。それはマーケットとして育たない。そうすると、そういったものはできない、こういうことだと思うわけでございます。  しかも、ディスクロージャーをまたSPC自身も十分にやることにしておりますので、結局、市場が不良債権あるいは担保不動産を時価に評価し直して、それを通常の取引に乗せてしまう、こういうふうに私どもとしては理解をしたいところでございます。
  137. 谷口隆義

    ○谷口委員 おっしゃるとおりなんですが、現実の問題として、これはマーケットがまだ育ってないのですね。  私が申し上げましたように、企業というか銀行が、いろいろ思惑、企業でございますので収益を追求するわけでございますね。先ほども申し上げましたように、不良債権を損出ししたいとか、外部に一応出した形にしたいというためにこのSPC利用して、一連の取引を内部取引、先ほども申し上げたような形にして、連結からも外す。一応形の上ではきれいになったというような形で利用されるようなことはないのか。政府の方も、緊急国民経済対策として、何かこのSPCに公的資金を導入したらどうかというような話があるということのようであります。  これは、その前提が、余りマーケットが育ってないですから、このような状況も十分認識した上でこのようなことをおっしゃったのではないかというように私は思うわけでございます。  ですから、目的、理想とされておるところはよく理解できるわけでございますが、現実の対応は、必ずしもそういうようにいくのかどうか極めて疑問である。その最大のところは、私、連結対象に含めるかどうかということが大きな一つの問題で、これをクリアできればそういうことが起こらないわけでございますので、乗り越えなければいけないとすると、これは一つの大きな問題だというように思っております。  ですから、先ほど山口局長おっしゃったように、連結の問題になじまないというような、ちょっと私が答弁をお聞きしたようなことで判断しますと、そういうようにおっしゃったように思ったのですが、これはやはり私は、SPCを連結対象に入れてやるべきではないかというように思うわけでございますが、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  138. 山口公生

    山口政府委員 結果として、SPCをつくって、それが連結ベースでしか企業会計上は認められないというのが出てくるかもしれません。それを私は否定するものではありません。  しかし、もしこのSPCの本来の機能を発揮させようとするのであれば、それは私が先ほど申し上げましたように、連結ベースにならないようなものにしておかなければ、同じ体の一部分にしかすぎないということでありますから、資産だけを分離して、それに見合った、適正価格に見合った債券を発行するという意味がなくなるわけでございますので、こちらでなければいけないとかいうことを申し上げているわけでございませんが、資産を売却する側にとってみれば、連結ベースであっては余り意味がない、こういうことが実情だろうと思います。
  139. 谷口隆義

    ○谷口委員 おっしゃることは理解できるのですけれども、実務の、これからこの法案が成立して行われる場合に、私が申し上げたようなことも、これは十分行われるような可能性もあるということであります。  それと、今回、SPC不動産を移転する場合に、登録免許税、不動産取得税が通常の半分かかるというようなことのようであります。これは要するに、商品コストが上がるということで、不動産流動化をそういう意味では妨げる。また、これにつけ加えて、法人をつくるわけでございますので、法人、最低資本金が三百万ですか、このコストもかかってくる。こういうことで、流通をする上で、これは無視できないと思うわけでございますが、このようなことについて、どのようにお考えでございましょうか。
  140. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  今委員からお尋ねの点は、SPCができるときの、いろいろな資産の移転等に係る税制についての考え方がどうかということかと思います。  今先生がお話しございましたように、登録免許税を半分にする、あるいはSPCの設立登記について三万円、その他移転についての税金は、御指摘のような課税関係になっております。これらの税と申しますのは、外形に着目したといいましょうか、まさに資産の移転なら移転というところに着目した税でございますので、これを全くかけないというわけにはいかない。そういう中で、SPCが現実のものとして円滑に動ぐためにどうずればいいか、こういう観点から軽減を図るという形をとったところでございます。
  141. 谷口隆義

    ○谷口委員 SPCをつくりますね、SPCをつくって、その後増資はできないのですね、増資は。ですから、資金調達コストを低減をしたいと思って増資をするというようなことはできないというように聞いておるわけでございますが、これについて御見解をお願いいたしたいと思います。
  142. 山口公生

    山口政府委員 SPCの性格からしまして、当初からこういう計画を立ててということで、投資家が投資をしていただくわけでございますので、その内容を置きかえるという意味での増資等はできないというものでございます。
  143. 谷口隆義

    ○谷口委員 ちょっと何か意味がわからなかったのですが。  これは増資を認めてもいいのではないかというように私は思っておるのです。それはいいです、ちょっと時間がかかりますので。  先ほど主税局長から御答弁いただきましたので、また税の関係をお聞きしたいのです。  銀行の貸国債権SPCに売却する、そのときの時価が問題なんですね。客観的な時価というのはありませんから、取引事例も御存じのとおり今ほとんどございませんので、この時価が難しい。  そうしますと、通常言われている一般的な時価よりも安い価格で時価を設定して譲渡した場合に、これはいわゆる低廉譲渡、普通、関係会社問で取引をする場合に一般的に認められている、いわゆる時価よりも安く売買した場合には、これは低廉譲渡ということで課税されるわけでありますが、このような低廉譲渡として課税をされるような場合があるのでしょうか。
  144. 乾文男

    ○乾政府委員 国税庁からお答えさせていただきたいと思います。  SPC金融機関がその保有する貸国債権を譲渡いたします場合に、私ども国税庁といたしましては、それが適正な時価評価、適正な評価、例えば不動産鑑定士でございますとか、そうした専門家によります中立的な、客観的な評価によりましてなされましたものであります場合には、それによりまして簿価との間に生じました差額は益金または損金の額に算入されることになるというふうに考えております。
  145. 谷口隆義

    ○谷口委員 それは、要するに、企業間ですから、寄附金認定されるということですか。
  146. 乾文男

    ○乾政府委員 先ほど先生御指摘になりました時価から外れまして、時価よりも低い価格で、いわゆる低廉譲渡ということになりました場合には、その時価との譲渡価額の差額は原則として寄附金になるという仕組みが別途ございます。  今私がお答えいたしましたのは、SPC金融機関からその債権が適正な価格で譲渡されました場合には、そういう問題は生じずに、通常のとおり、その譲渡価額が簿価を上回った部分については金融機関の方の益金、下回った場合には損金算入になるということを申し上げたわけでございます。
  147. 谷口隆義

    ○谷口委員 要するに、私が言っているのは、極めて一般的に、土地ですから、売買事例がない一と、さっき申し上げているようになかなか時価は決めにくいのですね。だけれども、一般的にどう見てもこれはこんな価格ではないよというような価格をつけた場合に、いわゆる極めて安い価格で低廉譲渡した場合に、その低廉譲渡した部分については寄附金認定はされるのかどうかということなんです。
  148. 乾文男

    ○乾政府委員 これは、一般論でということになりますと、時価から外れて低い価格ということになった場合には、先ほど申し上げましたように寄附金ということになるわけでございます。  私ども、このSPCの問題につきまして、まさに時価評価の問題、国税庁がそこまでお答えするのがいいかどうかと思いますけれども、時価評価の問題でございまして、不動産鑑定士あるいは公認会計士等によりまして適正な評価というものがされました場合には、寄附金課税としての扱いはしないというふうに考えておるわけであります。
  149. 谷口隆義

    ○谷口委員 私が言っていることに答えていないじゃないですか。  要するに、そういう場合はどうするのですかと言っているわけですよ。そういうような場合があれば、市場価格から見て、これはそんな価格ではとてもじゃないけれどもおかしいというような場合にどうするのかということを言っているわけでありまして、それについて明確に答弁してくださいよ。
  150. 乾文男

    ○乾政府委員 一般論としての議論ということになりますと、それは、適正評価から外れた低廉な価格であります場合には、その差額は寄附金課税ということになるわけでございますけれども、問題は、繰り返しになりますけれども、適正な評価の問題。これは、国税庁の問題とはちょっと離れるかもしれませんけれども、適正な評価の問題だろうというふうに考えているわけでございます。
  151. 谷口隆義

    ○谷口委員 だから、結論的に言うと、評価がおかしい場合は寄附金認定が行われるというようなことだろうと思います。  これは、資産流動化計画等にこの時価も入れるのだろうというように思いますが、この時価についても時価の妥当性を検討するというようなことはあるのでしょうか。
  152. 山口公生

    山口政府委員 もちろんこれは、例えば担保不動産の適正な評価というものが一件一件認定されるものではないと思いますが、手続としましては、不動産鑑定士による収益還元法を活用した評価というものが、よくデューデリジェンスという概念で言われまずけれども、適正な価格として認められるようになるのではないかと思います。  債権については、恐らく公認会計士、先生御専門でいらっしゃいますが、そういう方々の客観的な評価というものが適正な価格ということになろうかと思います。
  153. 谷口隆義

    ○谷口委員 客観的、妥当な価格というのはなかなか難しいわけで、いずれにしても、そういう申請が入るわけでございますので、私が申し上げた質問の意図は、どう見てもおかしいというような場合に、それは税制上何らかの対応が行われてしかるべきだということで、そういう対応だというように認識したわけであります。  それと、SPCが一定の要件を満たす事業年度に支払う配当金について、損金に算入する。これは所得の百分の九十以上を配当として支払う場合ということでございますが、この百分の九十というのはどういう根拠で出てきたのでしょうか。
  154. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今、このSPCでございますが、まさに資産流動化という特定の目的のためにのみ存在し得る会社、また、少し言いかえますと、権利義務の主体としてのみ存在する、あるいは導管であるということで、通常の商法上の会社とは異なります。  そこで、九割の要件でございますが、要は、留保することなくほとんどの部分をまさに配当するというものに限って、その部分について損金算入を認める、こういう趣旨でございます。  なお、同じような制度はアメリカにREITというものがあるようでございまして、そこでも同種の措置がとられているというふうに承知しているわけでございます。
  155. 谷口隆義

    ○谷口委員 これは、税理論からして果たして正しいのかどうかというのがあるのではないかと思うのです。  というのは、この配当利益というのは課税済みの利益ですから、もう既に税金を払ったものから配当するわけでしょう。SPCも、これはそういう意味において税金を払う対象になっているわけでございますので、もう既に課税済みの利益をまた配当する、この配当をまた損金に落とすというようなことについては、税制の理論からするとちょっと私は理解しにくいのですが、これはどういうように御説明をされるのでしょう。
  156. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  先生のお話をちょっと取り違えている点があるかもしれませんが、先生のお尋ねは、九割以外の部分に法人税がかかるではないかというお尋ねかなというふうに思いました。  実は、このような制度をつくります場合、やはり法人である限りは法人という税制を基本に置かざるを得ません。しかし同時に、このSPCが所期の目的を達成するためには、まさに導管としての存在でございますから、導管として、外に配当として出される部分、これは損金算入をしないと、この機能は円滑に動かないわけでございます。  そのための要件として、九割分配される場合に、その配当された部分は、支払い配当を損金にするという形で課税対象からのけるわけでございます。それはあくまでも要件でございまして、まさに、少しでもたまった部分に税金がかかるのが困るということであるのならば、投資家の方はなるべく配当してほしいというわけでございますから、九割を超して、できる限り一〇〇%に近い配当をしてもらえば、今のような二重課税の問題は生じないわけでございます。  我々は九割という要件をつくりましたけれども、それは、内部留保をせずにどんどん外に、まさに配当していただくのが本質であろう、そこに着目してこの要件を決めたものでございます。したがいまして、九割以上配当していただく分には何ら差し支えない、こういうふうに考えているわけでございます。
  157. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたので、これで終わりたいと思いますが、今まさに主税局長おっしゃったように、これは二重課税の問題だと思うんですね。税制全体から見ると、こういうことで若干理解しにくい問題であるというように申し上げて、私の質問を終わりたいというように思います。
  158. 坂井隆憲

    ○坂井委員長代理 次に、佐々木陸海君。
  159. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 まず初めに、前回の質問に引き続いて、金融消費者保護施策、特に統一的消費者信用保護法の問題についてお聞きをしたいと思います。  私は前回の質問で、昨年六月の金制調答申が、銀行消費者ローンの利用者保護など消費者信用保護の諸施策として、九七年度中に結論を得て、速やかに所要の措置を講ずることが望ましいとして、その際に、欧米の統一的な消費者信用保護法のような法制の構築を視野に入れ検討すべきというふうにしていたことを指摘いたしました。そして、答申が九七年度中に結論を得るとしていたこの問題の具体化がどうなっているかということを質問したつもりでありました。  ところが、銀行局長の答弁は、全銀協において各種約款の見直しを行うことになっているということと、信用情報の保護について懇談会で検討しているということでありました。質問には全く正面から答えていないものであります。約款の見直しは、答申が、消費者信用保護施策の検討とは別の項目を起こして求めているものであります。銀行局長、その点では、まともに答申を読んでいるのかと言いたくなるような状況であります。もう一つの答弁で言った信用情報保護の問題も、答申が消費者信用保護施策として具体的に三つ述べているうちの一つにすぎません。だから、これでは答弁したことにならないわけであります。  私が特に問題にしているのは、バブルの時期の銀行の行動が引き起こした消費者被害から教訓を酌み取って、銀行に対する行為規制が必要ではないかという点であります。そして、金制調答申がその必要を認めて、期限を九七年度中に区切ってその具体化を求めていたじゃないかという点であります。  改めてお聞きしますけれども、答申が求めている銀行に対する行為規制の具体化と、統一的な消費者信用保護法の検討はどうなっているのか、その点についてきちんと答えでいただきたいと思います。
  160. 山口公生

    山口政府委員 せんだっても、先生からいろいろな御意見をちょうだいいたしました。  私どもの行政も、こういった、消費者の方に目を向けた行政を志向しているということは十分におわかりいただけると思います。  現在お示ししております法律におきましても、細かいことは、もし必要であればまた御紹介しますが、消費者のための種々の施策を織り込んでおります。したがいまして、現実問題として、まず、消費者にどう対応していくべきかということを私どもは真剣に考え、対応をしているわけでございます。  確かに、金融制度調査会においては、「九七年度中に結論を得、」と書いてあり、また、消費者信用保護法のように云々、法制を構築することを視野に入れて検討する、視野に入れてということでありますので、必ずしも九七年度中につくれとは書いていない。こういう言いわけをしょうとは思っておるわけでありませんけれども、確かに、統一的な消費者のための信用保護の仕組みというのは、アメリカにありますし、ヨーロッパにもイギリスにもあります。言ってみれば、私どもが所管しております貸金業法のような規定がずっと並んでいるような認識を持っております。  これはこれで貸金業法の方で規制しておりますけれども、あと消費者信用となりますと、先生おっしゃった銀行それから割賦販売、ローン、いろいろございます。そういったものの各業態を横断的にやっていくということは、もちろん視野に入れて考えていかなければいけませんけれども、現実に起きていることにまず対処していくというためにも、例えば約款の見直しとか信用情報の検討とかいうこととあわせて、今回の法案にも説明義務を入れるとか、消費者のためのいろいろなセーフティーネットを整備するとかいうことを種々やらせていただいておりますので、方向としては御評価いただけるんじゃないかと思うわけでございます。
  161. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今回の法案で具体化している問題については、後でお聞きします。  しかしいずれにしても、この統一的な信用保護法というようなものをつくるという方向は、視野に入れてということだからまともには検討していないということに、この問題については尽きると思うんです。  しかし、銀行に対する規制、消費者信用保護法の整備についての答申は、昨年六月が初めてじゃありません。  一九七九年の金制調答申でも、銀行取引の適正化ということを上げて、各国の立法状況にかんがみると、我が国では整備が進んでいるとは言えない、金融取引における消費者保護規制について、今後早急に具体的な検討が行われる必要があるということを求めておりました。  一九八四年の金融問題研究会報告では、総合立法化の方向で消費者信用に関する総合政策を樹立すべきだということを提言しておりました。  さらに一九八七年の金制調の専門委員会報告でも、重ねてそういう方向での検討を求めております。  つまり、こういう問題では幾たびも法規制の検討が求められていたけれども、大蔵省が具体的な実行を怠ってきたとこの問題では言わざるを得ないと思います。だから、そのために、八〇年代半ば以降の金融自由化の中で、銀行融資をめぐる被害が続出したわけであります。  国民生活センターに寄せられている銀行取引に関する相談件数は、近年ではバブル以降の三倍以上になっている。銀行融資をめぐり、変額保険では自殺者も出ている。なすべきことをしてこなかった大蔵省の責任は重いと私は思いますし、今回また同じことを繰り返す、これでは罪の上塗りだということを言わざるを得ないと思うのです。  この問題では日弁連も、一昨年の人権擁護大会で銀行融資行為規制の立法化を要求する決議を採択して、昨年六月以来、重ねて立法化の提言を発表しているところであります。  大蔵大臣、だから、この問題の引き延ばしはこれ以上許されないんじゃないか。やはり官僚任せにしておいては法制化が進まないわけですから、あなたがイニシアチブをとって、直ちに消費者信用保護法の立法化ということに明確に踏み出すべきじゃありませんか。大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  162. 山口公生

    山口政府委員 私どももいろいろな観点から、この消費者保護の、特に信用保護のことについて検討を深めてまいりたいと思っておりますけれども、銀行法のこれまでの体系というものが行為規制法ではないんですね。結局銀行を、しっかり、きちっとやってもらう経営体にしていくということで、間接的にそれを担保していた、こういう法制なのでございます。一つ一つ、銀行がやることを、これはいかぬ、これはいい、これはいかぬ、これはいいというふうにしているものではありません。したがって、例えば苦情処理とかあったときも、銀行は必ず相談窓口をつくって、それは先生がよくおっしゃる社会的責任ということで対応しているわけであります。みんな行為規制で、司法に行ってくださいとは言っていないわけです。  だからといって、先生がおっしゃる問題点を看過していいとは言いません。業態によってどういう対応をすれば一番エンフォースメントができるか、実効性が上がるかということを十分念頭に置きながら検討していきたいというふうに思っております。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  163. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それでは答弁にならぬわけですよ。  今の銀行法ではまさにそういうふうに個々の問題を解決できないからこういう統一的なものが必要だということを私は言っているわけでして、大蔵大臣、どうですか、こういう立法化を進めるという方向にあなたは踏み切れませんか。
  164. 松永光

    松永国務大臣 消費者信用保護の諸施策のうちで、この信用情報の保護については、現在……(佐々木(陸)委員「それはもう聞きました」と呼ぶ)聞いたのですか。では、答弁は必要ないのですか。(佐々木(陸)委員「こういう立法化を進めるかどうかを聞いているのですよ」と呼ぶ)そのことについてこれから申し上げようと思っていたわけなんです。(佐々木(陸)委員「では、簡単に述べてください」と呼ぶ)  統一的な消費者信用保護法、これにつきましては、前に言うべきことは省略いたしますが、いろいろの取り組みを踏まえてさらに検討を深めていく必要がある。その際、欧米の統一的消費者信用保護法のように、消費者信用を行うすべての業態に横断的に適用される法制を構築することも選択肢の一つとして現在検討を進めているところでございます。
  165. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そんなことでは困るわけですけれども。  それでは、今回の法案の中でできる限り消費者保護の規定を盛り込んだというので、その中身を少し検討させてもらいたいと思うのです。  思うに、バブル以来の銀行の振る舞いが提起している問題として、銀行の過剰融資への規制、取り立て行為への規制、それから投資勧誘行為への規制、こういうものを含んだ行為規制が私は必要だというふうに思いますけれども、こういうものは今回の改正では盛り込まれていません。個別の業法でできる限り対応していくというのだったら、こういうものも銀行法の改正の中に本来は盛り込まなければならぬはずだと私は思うのですね。いかがですか。
  166. 山口公生

    山口政府委員 銀行がいろいろな融資活動におきまして社会的にも批判を受けるというようなことがあってはならないと思います。そうした場合におきましては、その銀行に、例えば融資体制にどういう問題があるのかということを検討し、それを是正してもらうということで対応をしているわけでございます。  例えば、今先生、過剰融資とか取り立てとおっしゃいました。では、過剰かどうかということを一件一件行為規制としてやった場合に、これはお客さんが貸してくれと言ったから貸したんだよというだけだったら、では過剰じゃないのかというふうなことになってしまいます。だから、銀行にとってみると、やはり全体として、相手が貸してくれと言っても貸さぬも親切という場合もあるでしょうし、そういったことのビヘービアとしてどうかということをやはりきっちり見ていくということが、少なくともこれまでは有効であったと思います。  例えば、取り立てにしても、大きい声を出したらそれは過剰取り立てかということになりますと、それぞれ、一件一件、それは違うとかそうだということになります。およそ銀行と名のつくところはそういった取り立てをすべきではないという、健全なあるいは適正な業務運営という形でそれを確保していくということが今のエンフォースメントとしては一番いいのではないかというふうに私どもは考えております。  もし、それで足りないような事態があるということでありますれば、それは先生がおっしゃるように、行為規制でやっていくということになろうかと思います。
  167. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 足りないという事態がもうさんざんこの間に立証されてきていると私は思っているのですよ。  銀行の行為を、法律じゃなくて通達で規制するという現行法の仕組み、銀行被害がそれによって随分生まれてきた。今の法形式では、違反があっても、それは行政処分の対象にはなるけれども、しかし司法上の効果は全然及ばないということになっていますよね。だから、消費者センターの相談員の方なんかにも聞きますと、銀行被害は相談を受けても解決が大変難しい、銀行が約款と契約書を盾に非を認めないで、裁判に持ち込む。銀行は、現行法では裁判に持ち込めば勝てると思っているわけです。これが現実の姿なんですよ。だから、銀行局長は前回の答弁の中で、銀行が悪い対応をすれば評判が悪くなるから、よい対応をするというようなことを言われましたけれども、そんな単純な現実じゃないのですよ、実際の問題は。  だから、今必要なことは、銀行への厳格な行為規制を法定化すること、違反行為に重い罰則を付与すること、その上で、規制違反に対しては契約解除権や損害賠償請求権などの司法上の効果を付与すること。これは、当面、銀行法の改正でも本当にやる気になればできることであって、そういうことをやる必要があるということを私は強く求めたいというふうに思うのです。  その上で、それでは、今回の法案で盛り込まれた預金者や顧客への説明義務規定というのがありますが、それについて聞きたいと思います。この規定が実効性を発揮するかどうかという問題をお聞きしたいと思います。  この銀行法十二条の二の規定では、政令で定めるところにより、顧客への説明や適切、健全な運営確保の措置を講ずるというふうになっていますけれども、政令ではどんな規定を考えているのでしょうか。
  168. 山口公生

    山口政府委員 例えば、銀行等による投資信託等のリスクのある商品の取り扱いが可能となります。この商品は、ある意味では元本保証がないわけですから、よく説明しませんと、お客様は、銀行で売ったのだからこれは元本が保証されているはずだと思い込むかもしれないということで、誤認を防止する必要があります。そういったことを具体的に省令で書いていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  169. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 極めてありきたりのことしかおっしゃらないのですけれども、では、どういう場合に説明義務違反となるのか具体的に聞きたいと思います。  四月から改正外為法が施行されて、その意味ではビッグバンが始まったわけですが、いろいろなマスコミで外貨預金が国内預金に比べて非常に利回りがいいという宣伝をされております。  ここに、ある外資銀行が外貨預金を勧めるパンフレットがあります。フリーダイヤルに電話して資料を送ってくれと言えば、直ちにこのパンフレットが郵送されてまいります。ここには口座開設申込書が最初からついておりまして、「郵送でカンタンにお申し込み!いますぐ口座をご開設いただけます。超低金利時代のいま、最も注目を集めている外貨預金。まずは一カ月定期から、どうぞお気軽に始めてみてください。」と書いてある。ここで必要な事項を書いて郵送すれば、それでもう口座ができてしまうわけですよ。だから、銀行から電話一本で資料を取り寄せれば口座が開設できるということになっているわけですね。  しかし、言うまでもなく、外貨預金には為替リスクがあり、円高になれば元本割れになります。確かにこのパンフレットの中には為替リスクのことも触れてあります。しかし、このパンフレットを郵送されて読んだ、そして申し込みをしたということで、銀行は既に為替リスクの説明義務をこれを送ったことによって果たしたことになるのかどうかという問題がありますね。  それからまた、この銀行は、一番最後に小さな字で書いてあるのですが、預金残高が三十万以下になると、その預金者からは月々消費税込みで千五十円の口座維持手数料をいただきますよということが一番最後に小さな字で書いてあるのです。これに気づかずに申し込んでしまって、一カ月後に千五十円引き落とされていた、これは何だということになった場合も、よく読まなかった預金者の方の責任になるのかという問題があります。  こういう具体的なケースの場合に、銀行法に盛り込んだ説明義務は、これを送った、その中にちゃんと書いてあるということで既に十分に果たされたということになるのでしょうか、ならないのでしょうか。
  170. 山口公生

    山口政府委員 それは個々のケースによって判断すべきだと思いますが、お客様がそういった情報を知り得る、それが虫眼鏡で見なければわからないような状況であればちょっと別問題かもしれませんが、きちっと提示されている。お客さんとしても、自己責任でそれは読まれる。それから、外貨預金に為替リスクがあるということは、最近はマスコミ等でも広く知られております。口頭で、電話をかけなかったからそれが説明義務違反だということにすべきかどうかというのは、いかがなものでしょうか。その辺はある程度の常識的な線で、説明義務、すなわち大事な情報をきちんと相手に伝えるべく努力をしてあればそれはよろしかろうと思います。  ただ、それはあくまで個々の案件で判断すべきですから、私がそう言ったからといって銀行が一切為替リスクを説明しないと困りますので、それでいいと言っているわけではありませんけれども、そういうふうなことではないでしょうか。非常に難しい、よく聞いてみなければわからないことを単にちょこちょこっと書いてあるぐらいではどうかという問題は、それはあるかもしれません。
  171. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 甚だ心もとないという感じがいたします。  これから本当に元本割れの商品やハイリスクの商品がどんどん出回るということになるわけです。説明義務の内容は当然問題になってくるわけです。今度の新しい法でそれも盛り込んであるというのですけれども、しかし、例えば商品の内容とリスクについて、それから書面交付の義務、契約の重要事項の告知義務、最大限のリスクの説明義務、消費者が商品とリスクについて理解したことを確認する義務、適合性原則遵守の義務、事後的な助言義務などをきちんと義務づけることが私は必要だと思うのです。  政令の中にそういう義務規定などを盛り込むことは考えていますか。
  172. 山口公生

    山口政府委員 今先生いろいろな義務を教えていただきましたが、物によるのではないかと思います。例えば一年の定期預金にそういった義務がずっとある必要があるのかということになると、それは違うと思います。しかし、かなりリスクの高い商品である、あるいはみんなが余り知らない要素を含んでいる商品だということになりますと、そういったものはかなり厳しく要求されると思います。  いずれにせよ、そういった御意見もいろいろ参考にしながら検討していきたいと思っております。
  173. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 銀行法第十二条の二で規定した義務に違反した場合罰則はないのです。違反は行政処分の対象になるだけということであります。だから、説明義務規定を法定化しても、大蔵省大蔵省としてこの違法行為をきちんと摘発しなければ、これは全く空文になってしまうわけです。消費者個々がその問題をどうこうすることができないわけです。  これまでも銀行が違法行為をしても大蔵省は私たちから見ると厳正な対処をしてこなかった。例えば変額保険では銀行が保険の勧誘をした。明確な銀行の他業禁止規定違反だけれども、しかし、大蔵省銀行法違反として摘発したことは一度もないし、それどころか銀行による勧誘の事実さえこれまで認めようともしてこなかったわけであります。  ですから、本当にこういう規定が盛り込まれたからといって消費者大丈夫だというようなことが言えるようなものでは全然ないと私ははっきり申し上げなければならぬと思うのです。今の金融行政に欠けているのは、金融取引での現実の消費者の立場をしっかりと踏まえることだというふうに私は思います。  金融商品というのは高度な専門知識を必要とするものがこれからもっとふえてくるわけです。本来そういうものです。それにもかかわらず、説明義務規定の適用に当たって、買うときによく注意しなかった消費者が悪いのだということでは、結局アマチュアである消費者が重大な責任を負わされてしまうということになってしまいます。  日弁連の消費者問題対策委員長の沢藤統一郎弁護士は、製造物責任法が製品事故に関して買い手注意から売り手注意へと転換したように、金融商品についても事業者と消費者の力の格差を踏まえて売り手注意への原則の転換が当然ではないかというふうに主張をしております。  大蔵大臣、最後の質問になりますが、売り手注意原則への転換が必要だというこの指摘に異論がおありでしょうか。
  174. 松永光

    松永国務大臣 金融商品についてどの商品を購入するかというのは、購入者自身がどちらが有利だろうか、どちらが安全だろうかということをまずは考えて購入しなければならぬのでしょうね。購入することについて誤解を与えないように売り手の方は説明義務がある、こういうふうな法体系になっているのではないでしょうか。  高い収益がある、そのことにばかり目をとられておってリスクがあるということを忘れておるというとその人は損をする、それが自己責任というのでしょう。したがいまして自己責任という原則が一つ。それから、売り手の方はきちっとした説明責任がある。その説明を読んだ上で、聞いた上で、自分で判断してどの商品を購入するか、こういつたことで運営されていくのが少なくとも自由主義経済のもとにおける金融商品の売買であろうというふうに私は思います。  何もかにも法律で縛るということでは規制緩和という時代に逆行するのではないでしょうかというふうに私は感じます。
  175. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今お聞きしたのは、何もかも法律で縛るというようなことをお聞きしたのではなくて、工業製品でも今買い手注意から売り手注意というふうに転換している。だから、もっとわかりにくいものも含む金融商品では売り手注意への原則の転換が必要だ、そう思わないかという話ですが、余りお思いになっていらっしゃらないようです。  消費者保護には説明義務規定をつくっただけでは大変不十分であります。行政が売り手注意の原則、貸し手責任の原則を立脚点とすること、そしてそういう原則に立った制度整備を早急にやることがどうしても必要だということを申し上げて、質問を終わります。
  176. 村上誠一郎

    村上委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後六時一分開議
  177. 村上誠一郎

    村上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。横路孝弘君。
  178. 横路孝弘

    横路委員 金融システム改革のための関係法律整備関連してちょっとお尋ねをしたいと思います。  昨年の十一月十七日に拓銀が倒産した直後に、大蔵省のある幹部の方とばったり会館で顔を合わせたことがあるのです。そのときに、いや、大変な事態だよと言いましたら、その方は、いや、これは市場の選択なんだ、これがビッグバンですよということを言われて、こちらの方がびっくりしたのですけれども、橋本総理もこのときに記者団にこういうコメントをされているのですね。北海道内の多くの預金者だけでなく、優良な企業の保護はされている、これで一つ不安要因が整理されたと。まるでつぶれたのがよかったかのようなコメントを当日されておられるわけでございますが、しかし、やはり拓銀という地域のメーンのバンクが倒産するということの影響は大変大きいわけでございまして、経済はその後大変混乱をしております。  最近の民間の調査ですと、一九九七年度の倒産件数が対前年で三〇%増の一千十九件、金額で見ますと四・七倍の一兆三千六百三十億ということになっておるわけでございますが、拓銀の倒産から今日までの状況をどのように大蔵省として見ておられるのか、まずそこのところがらお話をお伺いしたいと思います。
  179. 松永光

    松永国務大臣 市場の選択だというのはちょっと冷たい言い方じゃないかと思うのでありますが、特に感じますことは、ことしになりまして、金融機関が破綻した場合の預金者保護を中心にした破綻処理の仕組みが国会で成立をいたしました。そしてまた、日本金融システムを強化、安定させるための仕組みもできました。そういった仕組みができる前のことでありましただけに、余計地域の経済界の人は心配があっただろう、こういうふうに思うわけであります。  しかしその後、新しい仕組みができてから、その仕組みも活用しながら、できる限り地域の人の迷惑が少なくなるように、そして少しでも地域の経済が立ち直るようにというわけで、いろいろな措置はしておるわけであります。  実際問題として、拓銀という比較的大きな銀行、北海道を中心にした銀行が破綻をしたこと、それからまた関西方面で一、二の銀行が破綻をしたこと、それの影響で、どうも北海道地区と関西地区の方が金融関係では非常な苦労をしているというのは事実のようであります。それを念頭に置きながら、大蔵省としても、預金保険機構等と連絡をとりながら善後処理には一生懸命努力をしておるというのが現状であると思います。  詳しいことは、後で局長から必要に応じて答弁させます。
  180. 横路孝弘

    横路委員 拓銀などが倒産して、この影響の大きさでその後の対応策が出てきたということも言えるわけですけれども、金融ビッグバンという場合に、やはり現状の日本経済とか国民生活がどういう金融証券市場というものを必要としているのか、その辺のところを明らかにするということがとても大事だったと思うのですね。地域の金融でありますとか中小企業の金融というのがこの間ないがしろにされてきたと言えるのではないかと思うのですけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  181. 松永光

    松永国務大臣 これは、横路委員、私は実はその方面の知識のそれほどある男じゃないわけでありますが、まず、言葉が先行したような感じを私は持っておるのです。しかしながら、世界の流れでもあるわけであります。  そういったことを前提にして考えますと、地域の金融機関というものは、金融活動の分野も自由化が徹底して進むということを前提にして、地域の金融機関は地域の金融機関らしく地域に根差した経営を行って、そして地域の利用者からしっかり信用と信頼を得る、そして、地域の企業に対してきめ細かいサービスの提供、それに重点を置いた経営をやっていく。こういつたことをすることによって地域の金融機関も実は着実に発展していける、同時にまた地域の中小企業を中心にした企業も活動していける、こういう状態になるのだろう、こう思うわけであります。  それぞれみずからの特色を生かして、そして地域に特化した形での金融機関の活躍が望まれると  いうふうに私は考えます。
  182. 横路孝弘

    横路委員 自由化を進める上で、一つには、預金者を含めたセーフティーネットをどうするかということと、それから、自由になればなるほどいわば検査監督の体制をどう強化するかという課題があろうかと思うのです。  ここで、九四年にこれは予算委員会の方に提出された資料ですけれども、前の大蔵検査で、それまで八七年の検査で問題債権というのが二千二百六十億ぐらい、九一年の検査で二千八百五十一億というのが、九四年検査で二兆四百九十九億円と、この間バブルがあるわけでございますが、急激に問題債権がふえているわけですね。これを検査の結果知った大蔵省の方は、では、どういう拓銀の経営改善を求めたのか、何かやったのか、やらないのか、そして、今日の事態を迎えたということについてこの検査というものがどのように生かされたのか、これは局長からで結構でございますので、お答えいただきたいと思います。
  183. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  確かに先生がおっしゃいますように、バブルの崩壊後いろいろな形で北拓の資産状況が悪くなってまいったわけでございます。検査をした結果、非常に不良債権がふえているということで、検査の結果の示達という形で不良債権処理を早く進めるようにという指導を強くやったわけでございます。  ただ、先生よく御存じのように、不良債権処理をするといっても、体力がなければなかなかできない。地域経済が回復しないとそれがおくれるという要素もあります。拓銀としてはかなり努力はしたつもりだと思います。私どもに言わせると、もう少し頑張ってもらいたいという気持ちは常々あったわけでございますが。  ただ、私がちょうど局長になってから後でございますが、ひとつ道銀と合併してリストラ合併で生き残りを図ろうという努力をしたわけでございますけれども、しかし、不良債権の存在というものが両者の認識の違いとなって表面化いたしました。その結果、合併話が延期された。延期されたことによって、今度は市場の方が非常にマイナスの評価をいたしました。そこで、コール市場からお金がとれなくなったという実態で非常に私は残念だったんでございますけれども、そういう事態に立ち至ったということでございます。私どもも拓銀の北海道における位置というものを非常に重要視しておりましたので、何とか拓銀に立ち直ってもらいたいとは思っておりましたけれども、私どもの指導も十分じゃなかったのかもしれませんが、その効果が十分にあらわれる前に破綻をしてしまった、こういうことでございます。
  184. 横路孝弘

    横路委員 これから検査の体制、人材の養成でありますとか人員の面でも強化しなければいけないだろうと思うんですけれども、今後、大蔵としてはその辺の検査体制の強化ということについてはどのようにお考えですか。
  185. 山口公生

    山口政府委員 これは、検査部長があれば一番適任者でございますけれども、おりませんので私がかわって申し上げますと、これからの検査、これは六月中に金融監督庁ができますので、監督庁の重要な仕事になるわけでございますが、ただ、限られた人員であることも否めません。その限られた人員でどういうふうに検査の実効を上げるかということで、私どもとしては、できる限り銀行自体の自己規制を働かせてもらって、それをどうチェックするかという形でいきたい、事後チェックという言葉でしばしば御答弁申し上げておりますけれども、そういったチェック機能を十分に働かせるという形で、少ない人数で最大の効果を上げるべく努力をいたしたいと思っております。
  186. 横路孝弘

    横路委員 もちろん少ない人数、効率的に活用されることも大事ですけれども、必要ならばやはり必要な体制をとるべきだというように私は思います。  そこで、今の状況で拓銀から北洋への引き継ぎの話が引き継ぎ検討委員会がつくられて両者間で行われているわけでございますが、現在の時点における状況はどのような状況になっているのでしょうか。
  187. 山口公生

    山口政府委員 昨年の十一月十七日に破綻と同時にスキームを発表したわけでございますが、北洋銀行が北海道地区の受け皿銀行として営業譲渡を受けるということが明らかにされました。今先生御紹介いただきましたように、引き継ぎ委員会というものを設置し、連日精力的に作業を行っておるところでございます。  北洋銀行におきましては、地域経済への影響を回避していく観点から、いわゆる正常債権に加えまして、個別に適切なリスク管理を必要とするいわゆる二分類債権についても一定の条件のもとでできる限り承継していくという方針を本年の二月に表明しております。正常債権の中でも引き継ぎたくないというのが若干あるかもしれませんが、通常は二分類の債権は引き継がないのがこれまでの例でございますけれども、北海道の置かれている経済、北洋銀行としてはできる限りの引き継ぎをしてあげたいということで、今具体的に個々の債権につきまして関係者間で検討が行われている段階でございます。
  188. 横路孝弘

    横路委員 北洋銀行は合理的な融資行為に徹して堅実な収益を上げてきた企業でございますけれども、今おっしゃいますように地域経済のことも考えて、一応二月でしたか、二分類についても幾つかの条件を付した上で引き受けようということなんです。  私の聞いている方ではもう既に一分類については大体結論が出たということになっているようでございますが、一分類というのは全体でどのぐらいの企業があって、一億以下それから三億以上、一億−三億というようなことで詳細わかりましたら、どれぐらいの企業数でそしてどんな結果になっているのかということを明らかにしていただきたいと思います。
  189. 山口公生

    山口政府委員 これで固まったかどうかの確認がちょっととれませんが、いわゆる正常債権としております俗に一分類の債権で約二千二百件程度のいわゆる正常債権があるようでございます。金額で言うと一兆二千億程度。この中で一部、一割にはなりませんが、一部が承継がちょっと難しい。それは、例えば最近に至って業況が悪くなってしまった、個別企業としては好調だけれどもグループとしてちょっと借り入れが過大だから勘弁してほしいというようなものが若干あるようでございますが、そのほかのものにつきましては、今申し上げた一兆二千億のかなりの部分は北洋銀行に引き継がれるというふうに聞いております。
  190. 横路孝弘

    横路委員 非分類の企業は全部で二千二百ですか。
  191. 山口公生

    山口政府委員 道内のいわゆる非分類債権は、正確に言うと二千百八十一という数字が私のところにございます。約二千二百でございます。
  192. 横路孝弘

    横路委員 三億以上の企業が大体八百三十五で、最近の、私の承知しておるところではそのうち七百十四の企業に丸がついて受けますよ、二十五については条件つき、それから六十六についてはバッテン、三十が考慮中というのが三億以上ですね。それから一億以下は原則として受けるということのようですが、一億と三億が千三百四十六ですか、そのうちの千十七が受ける、七十三は条件つき。条件というのは、金利の問題があるとか担保の新たな提供とかということのようです。そして、八十八の企業についてバッテン、北洋として受けられない、百六十八は個人の事業ということのようでございます。  これを見ますと、非分類の中にも、今大蔵で検査されたとき以降の経済状況の変化ということなんだと思いますが、百五十ほどの企業が承継しない、北洋で受けませんよということになっているようでございますが、これは大体数字としてはこんなところでしょうか。
  193. 山口公生

    山口政府委員 おおよそそういう感じでございます。
  194. 横路孝弘

    横路委員 二分類についてはもう結論が出たんでしょうか。まだ結論が出ないで検討中ということでしょうか。     〔委員長退席井奥委員長代理着席
  195. 山口公生

    山口政府委員 二分類の債権の承継について申し上げますと、一億円未満の債権は全件承継をすると聞いております。  また、一億円以上の債権の承継の可否につきましては三つ条件を出しておられるようでございます。  一 道内を営業基盤とする道内企業であること  二 三年以内に再建可能な計画であること  三 関係金融機関が協調して再建支援を約束し   ていることこの三つの条件に照らし検討が行われつつあるところと承知しております。  まだこの二分類の承継については最終的な結論が出ておらないやに聞いております。
  196. 横路孝弘

    横路委員 三分類はこれはもうほとんど破綻しているわけですが、二百七十五で、これは一つ二つオーケーになっているだけですね。あとは承継しない。それから四分類は、もちろんこれは破綻していますので、五十二ですか。  この三分類と四分類で債権額というのはどのぐらいになるんでしょうか。わかりますか。
  197. 山口公生

    山口政府委員 三、四分類合わせますと、金額で九千四百億ぐらいになると思います。これはほとんどが預金保険機構に買い取られる、こういうことになります。
  198. 横路孝弘

    横路委員 それで、今この話し合いが拓銀と北洋の間で行われているわけですね。本人たちの方にはもちろん、受けられませんよという北洋から返事が来たものについては企業の方に連絡をしているわけでありますけれども、企業からすると、確かにこの半年の経過の中でいろいろな経済状況が変わったわけです。しかし、例えば、減収減益にどういう理由でなったのかとか、あるいは自分たちの方で行っているリストラの進行度とか、あるいは新しいビジネスプランなどを説明する機会が全然与えられていないのですね。説明する機会なしに承継できませんよというので、これは、北洋にバッテンつけられたらもうあとほかの銀行に行ったってだめですから。そういう状況にあるわけです。もちろん北洋の方は北洋の方で、自分たちの企業のことも考えて慎重に検討はしているとは思いますけれども、そういう意見もまた最近寄せられてきているのですね。  これは、ただバッテンだから、それではい終わりということにもなりませんで、例えば拓銀メーンでかわりの引き受けてくれる金融機関がほかにもあったとすれば、そういうことを話をするということもできるのでしょうけれども、しかし多くは拓銀メーンで、ほとんど取引の銀行はないというような企業もあるわけです。この辺のところをどういうぐあいにしていくのか。ほっておきますとそのままこれはつぶれてしまうわけで、とても大きな影響を地域に与えるということになるわけなんです。  後で幾つかの具体的な、いわゆる環境整備に関して御質問したいとは思いますけれども、ともかくどこにも相談に行くところもないという状況でございます。何か、道などを含めて、日銀も入り、財務局も入った協議会みたいなものをつくったようでございますけれども、これは何か企業にとって相談する場所になるのでしょうか。
  199. 山口公生

    山口政府委員 今の先生の御指摘の点は、非常にある意味では胸の痛む話でもございまして、北洋銀行としては精いっぱいのことをやっていただいておりまして、これにできるだけのことはやってくださいというお願いはいたしておりますが、それを無理ができない。そうしますと、企業としては行き先がないという問題に逢着してしまう。当局としても、個別の企業の取引に云々はできませんけれども、これまでも政府系の金融機関とか、あるいは今先生もおっしゃいました地域の他の民間金融機関に対しまして、拓銀の融資先に対する円滑な資金供給についてひとつ考えていただきたいということを要請しておりますし、また銀行協会には相談窓口を設置しておりますので、それは最終的な解決にならないかもしれませんけれども、そういうところに御相談をいただければと思うわけでございます。  あわせて、先生が御指摘されました北海道金融問題協議会、これは道庁を中心に、今おっしゃいましたように日銀とか財務局とか通産局とか入っております。そういったところが大きな意味でそういった問題にも対応していただけるものと思いますので、当局よりさらに先生のそういった御意見があったこと等も伝えてまいりたいというふうに考えます。
  200. 横路孝弘

    横路委員 承継のための環境づくりという点では、一つは、債権譲渡のときになるわけでございますけれども、いわば割引率をどうするか、どうなるかということが受け皿銀行としては非常に大きいわけですね。これは、現在拓銀と北洋との間で話が行われているようでございますが、しかし、預金保険機構としてもこれは大いにかかわりのある話でございまして、できるだけここをしっかり見てもらうということも大事じゃないかと思うのですね。  例えば、親会社と子会社があって、親会社の方はしっかりしているけれども子会社に幾つか問題点がある、何とかそこのところをうまく、切り離すことができればいいわけですけれども、債務保証などしているとなかなか切り離しもできないというようなケースなどございます。割引の問題について、政府としてはどのようにお考えになっておられますか。両方の話し合いにある程度任せるという方向性を出していただけると一番いいわけですけれども。
  201. 山口公生

    山口政府委員 確かに、二分類の債権を北洋銀行が承継する際に、幾らの買い取り価格を設定するかということは大変重要な点だと思います。  これにつきましては、私どもは次のようなプロセスでもって公正を期していきたいと思っております。一つは、金融監督庁による清算検査を改めて行いまして、債権の分類を行います。さらに、拓銀の資産内容について、拓銀、北洋、両行の監査法人によってチェックをしまして、その資産内容に応じた適切な引き当てというものを指導していただく、そうしたものを預金保険機構がチェックをする、こういうプロセスで、結局、北拓と北洋と預保と、その前提となる事実関係については金融監督庁のチェックを受けるというような形でもって二分類を承継する際の買い取り価格を決めていきたいと思っております。  具体的にどういうことをするかといいますと、一〇〇という債権がありますと、仮に引き当てを八〇したとしますと、北洋銀行は一〇〇という債権を二〇の価格で買う、逆のケースが多いかもしれません、二〇引き当ててあったら、今度は八〇を買い取り価格にして一〇〇の債権を買い取る。そうすると、ある意味では実質的にディスカウントされた時価、こういうことになるわけでございます。これが余りにも偏していますと、預金保険の方に余計負担がかかったり、あるいは北洋の方に過剰な負担がかかったりということになりますので、そういった手続で進めていきたいというふうに考えております。それが一番公平な処理ではないかというふうに考えております。     〔井奥委員長代理退席、浜田(靖)委員長代理着席〕
  202. 横路孝弘

    横路委員 引当金の積み増しをした上で北洋に引き継ぐという場合に、やはり原資がありませんから、これは預金保険機構の方から資金支援ということになるわけですか。
  203. 山口公生

    山口政府委員 先生の御指摘のとおりです。
  204. 横路孝弘

    横路委員 もう一つ、北洋の自己資本を強化するということが大切でして、これは大蔵省の方も従来から協力すると言ってきているわけですね。北洋の頭取の話ですと、八百億を二千億にいたしたいということで、今あちこち飛び回ってできるだけ自己努力をしょうということで努力されているようでございますが、生損保の劣後ローンと信金などの劣後債について、北洋の方は、例えば劣後ローンについて、一たん全額返済して、それを改めて出資をということを考えているようでござ  います。  従来、日債銀などの関係でさまざまな支援を大蔵としてもしてきたと思うのですけれども、この点についてはどのようにお考えでしょうか。これはやはり北洋に引き受けさせる以上、やはり大きさも違いますし、なかなか苦労されておられるわけでして、ここのところも大変大きなポイントの一つになるのではないかと思いますが、どんな状況ですか。
  205. 山口公生

    山口政府委員 今先生の御指摘にもありましたように、拓銀には劣後債務がございました。永久劣後債あるいは期限つきの劣後債、あるいは期限つきの劣後ローンというものがあったわけでございます。  そうしたものに関しましても、全額返済した後に、永久劣後債についてはその五割をめどに受け皿銀行、つまり北洋銀行に資金提供をしてもらいたいというふうに北洋は期待をしております。期限つきの劣後債、期限つき劣後ローンの提供者に対しましては、全額返済した後にその二五%をめどに同じように北洋銀行に資金の提供を協力してほしいというふうに北洋は願っております。今、関係者間でそういう線で話し合いが進められておりまして、私どももいい話ではないかというふうに思っておるわけでございます。  さらに、先ほどちょっとお触れになりましたが、ことしの年初から御議論いただきました金融の安定二法、これの中に受け皿銀行に対する資本注入という公的資金の注入をお認めいただきました。北洋銀行が手を挙げられるかどうか、これはわかりません。もし同行から公的資金の申請が行われる場合におきましては、我が方の大臣もメンバーであります金融危機管理審査委員会においてその審査が行われるものと考えております。
  206. 横路孝弘

    横路委員 今、北洋の方は、できるだけ自己努力をする、余り他から介入、干渉を受けるような環境はつくりたくないということで頑張っておられます。それも一つの考えなわけですけれども。問題は、従来大蔵省としてもこの辺については協力しますよということを外に向かっては言ってきたわけですが、ここのところどうもさっぱり協力してくれないという声もあるのです。この辺のところはどんな協力をされているのですか。
  207. 山口公生

    山口政府委員 実は、私どもも北拓の処理が北海道経済に対して悪い影響をできるだけ及ぼさないようにということを考えておるわけでございます。そういう観点から、関係者の話し合いが十分にスムーズに進捗していくことを願っておりまして、例えば、先ほどから御紹介ありましたいろいろな対策の委員会枠組みのつくりとかいろいろなこと、それからいろいろな御相談に応じたりしてできるだけの環境づくりを心がけているところでございます。結局は当事者間での話し合いというものが基本でございますので、それがうまくいくようにいろいろな形でやらせていただいております。今後とも精いっぱい御協力を申し上げたいというふうに考えております。
  208. 横路孝弘

    横路委員 一つは、やはり早く結論を出すということも大事なんです。善意に考えますと、北洋の方も、特に二分類にはかなりの大物がたくさんおりますから、これを何とか生かそうとして苦労されていて結論が出ていないということも言えるわけで、その点は理解しているのですけれども、しかし、その企業の経営者は、要するに結論が出るのをじっと見守っているわけですよ。それで、何の連絡も来ない、一体どうなるのだろうかという不安におびえながら、拓銀をメーンバンクとしていた企業というのは北洋銀行以外に選択できる金融機関を持っていないという状況にあるわけです。  一つは、北洋だけではなかなか全部を引き受けるわけにいかない。先ほど、二分類の一億円以上の債権の条件に、関係金融機関が協調して再建支援を約束することということがありましたが、どうもこの協調融資体制というのもそんなに簡単にうまくいっていないわけです。この辺のところは現地の財務局なりなんなりどんなお考えでおられるのか。もちろん、それぞれ金融機関の自主性といえば自主性なわけですけれども、ここに先ほど御答弁いただきました関係金融機関の協調ということが再建の一つの条件になっているわけでありまして、その条件は北洋だけでつくるというのはなかなか難しいわけでございます。やはり、こちらの方、本店の支店、これなどについても、やはりどんな協力をするかということが大変大事なわけでございますので、一たんだめだよと言って拒否されてしまうとその時点で対外的な信用というものを企業は喪失してしまうわけでございますので、そんな意味で、北洋銀行を含めてほかの金融機関ももっと企業との間で積極的な取引関係を構築しなければいけないと思うのですが、政策的に金融機関に対してそういう指導というものを期待をいたしたいと思うのですが。
  209. 山口公生

    山口政府委員 今御指摘のございました点については、できるだけのことをやる、これが北海道経済全体のためになるという認識は私どもも持っておりますが、この問題につきましては、先ほど御紹介いたしました北海道金融問題協議会、ここがうまくワークしていくということがかなり有効なんではないかという感じがいたしております。北海道庁も非常に真剣に対応していただいておりますし、その構成員を見ましても、重立ったところが皆構成員になって、北海道のことを憂い、考える人たちの集まりでございますので、もちろん私どもの財務局もここに積極的に参加しております。改めてそうした問題に積極的に取り組むべく、道にもお願いし、私どももできるだけの努力をさせていただきたいというふうに思います。
  210. 横路孝弘

    横路委員 これから大体いつごろをめどに最終的な結論を出して、受ける、受けないの結論がやや出てからも、実際の承継までの間にはある程度の期間、例えば半年なら半年とか、先ほどのお話ですと金融監督庁の方でもう一度検査を行って分類をし直すというお話もございましたが、これからの段取りがどうなるか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  211. 山口公生

    山口政府委員 定かにいつまでに終わるということをちょっと今の時点では申し上げにくいのでございますが、今の私どもの見込みでは、遅くとも十一月までにはすべてが完了してほしいというような感じでおります。したがって、できるだけ前倒しでこういつた事務を進める必要があるだろうなというふうに考えております。
  212. 横路孝弘

    横路委員 今は拓銀がいろいろとその融資をしているわけですね。もちろん、業務監査委員会ですか、あそこのチェックを受けながら融資しているわけですけれども、しかし、だんだんやはり厳しくなっているというように聞いています。つまり、新しい融資というのは本来ならば北洋でちゃんとやってもらえとか、これは絶対割り引きませんよとか、いろいろ言われてきてだんだん細くなってきている。一方、他の銀行は、なかなかこういう環境でございますので、やはり貸し渋りという問題もあるわけです。  ですから、十一月ぐらいまでといっても、これは本当に資金繰りがっかなくてつぶれてしまうような企業が出てくるわけでして、できるだけ早く、少なくとも結論は各企業にある程度伝達をしながら、そしてその上でどういう対応策がとれるのか。企業によってはいろいろな企業があるわけです。累積の赤字がたくさんだまっている、しかし、この間、バブル以降、リストラなどもやりまして企業としては黒字の体質に変わっている。だから、資金繰りさえあればちゃんと回っていって、景気の回復の中で、債務の方も支払っていくことができますよというような企業があっても、例えば北洋がそういう企業とつき合いが全くなければ、数字だけ見て、これはもうだめだということでバッテンつけられてしまうわけです。そういうケースが実は個別に出てきているわけです。きょうはちょっと個別の議論はしませんけれども。  したがって、先ほど来話していますように、一つは早くやっていただくということと、それから、企業の方の声もどこかでちゃんと受けとめて、バッテンだからそれで終わりということではなくて、復活交渉なのか折衝なのかわかりませんけれども、話のできる場ぐらいはやはりちゃんとつくるように拓銀と北洋の方にお話しいただければ、このように思います。
  213. 山口公生

    山口政府委員 私よりは武井頭取に来ていただきたいような話にだんだんなってまいりましたけれども。先生のおっしゃっていることは理解はできるわけでございますが、結論を出すのは北洋銀行の方でございますし、できるだけ早く結論を出してほしいということや、敗者復活といいますか、あるいは復活の機会、話し合いの機会というような意見があったということはお伝えをしたいと思います。  ただ、事実関係だけちょっと御紹介させていただきますと、拓銀は破綻をいたしましたが、やはり店を閉めるということは余りにも北海道に対する影響が大きいということで、店をあけたまますなわち日銀の特融でつないでやってまいりました。その結果、ことしの三月末の貸出金の残高は、対前年比でプラスの〇・一なんでございます。北洋はプラスの一二・六でございます。北海道の方々に対して拓銀もそれなりの、過去を背負いながらも、今の時点でのやはり健全な融資先に対する資金のつなぎはやってくれているわけでございますし、北洋銀行もそういった形でかなり大幅、二けたの貸出金残高の伸びを示しておるわけでございます。そうした努力を北海道の金融機関はやっております。ちなみに、道銀もプラスの一・八%となっております。  また、この間、信用金庫等にも伺いました。北海道で拓銀の融資先であったところが今度は私どものお客さんになりましたという話を聞きまして、ひとつよろしくお願いしますと私からも言っておきましたけれども、そういった形で、拓銀がなくなる穴をほかの金融機関がしっかり受けとめていくという姿勢は強く感じております。  またもとに戻りますが、先ほどおっしゃった点はよくお伝えをしておきます。
  214. 横路孝弘

    横路委員 貸し渋りについて、総合経済対策の発表の後で、大蔵大臣も各金融機関にその点についての是正の要請といいますか要望をされたようでございますけれども、北海道の通商産業局が調べた数字を見ますと、やはり全国に比べて道内金融事情というのは厳しいという数字が、これは四月十五日の調査ですけれども出ております。  それで、話を聞きますと、今、拓銀と北洋で話が進んでいるところに本州の方の都市銀行が出ていって優良債権をとるというのはどうもいかがかなという遠慮も確かにあることはあるようですが、ぴったりとまっているのですね。話を聞きますと、既に約束されていた取引もキャンセルになったり、どうもそれは本社の方から、しばらく様子を見るためにストップしろという指示が来ているという話もあちこちで聞くわけでございます。この辺のところにつきまして、再度、貸し渋り是正、特にこの地域のこういう事情のもとにございますので、その辺の徹底をひとつ大臣の方にお願いをいたしたいと思います。
  215. 松永光

    松永国務大臣 私が、銀行協会の代表に来てもらって、少なくとも健全な企業からの融資申し込みに対して正当な理由なく融資を拒むなどということは絶対ないようにしてもらいたい、まして、いわんや健全な企業から既に融資した分の回収を図るなどということはやめてもらいたい、銀行としての公共性、社会性という使命感をしっかり持ってやっていただきたいということを懇切に要請をしたわけであります。  それで、その要請をしたことについて、一部の新聞は私の行為を非難する記事も書いておられたようでありますけれども、大変残念なことだなというふうに思いました。  いずれにせよ、銀行というものは、やはり健全な企業に対して必要な資金を円滑に供給していくというのがその社会的な使命であるわけでありますから、その使命はしっかり果たしてもらいたいということを要請したわけであります。  北海道につきましては、先ほど、北拓の関係で北洋銀行が受け皿銀行となって一生懸命努力をしているというところでありますから、そこに本州に本店のある都市銀行が出ていくことがどういうことになるかという問題もあるかと思いますので、これはよく事務方とも相談をして、北海道の健全な企業が資金繰りに難渋するなどという状態は避けなければならぬ、こういうふうに思っておりますが、どういうことができるか、あるいはどういうことをしていいのかということをよく検討して対応していきたいというふうに思います。  なお、民間金融機関じゃありませんが、政府系金融機関等についても、北海道の関係ではほかの地区よりも重点を置いた対応策をするように通産省等も配慮しておるはずであります。これは政府系の話でございますが、民間金融機関についても道内の企業の必要な資金が円滑に流れるように今後ともしっかり努力はしていきたい、こう思っているところでございます。
  216. 横路孝弘

    横路委員 ぜひそれはしっかりやっていただきたいと思うのです。政府系金融機関の場合も、例えば日本開発銀行などの場合、破綻した金融機関と取引があった企業の設備投資計画に必要な資金の五〇%を融資するというような制度を創設したわけですけれども、メーンがつぶれてしまっていますから、どこかちゃんと日常的に面倒を見る金融機関はあるのですかと、結局そこに帰着して、そこがはっきりしないとこういう制度もせっかくありながら利用ができないということになりますので、先ほど辛くどいように繰り返していますが、やはりできるだけ早く結論を出される。  ただ、みんなバッテンで結論を出されても困りますから、そこはいろいろと苦労されているのはわかっているのです。特に親会社、子会社というような関係で、親会社は何とか子会社と切り離せばできる。子会社がたくさんあってみんないろいろな問題を抱えている、しかし債務保証を親会社の方がしているとか、代表も一緒だという場合になかなか切り離すことも難しい。さて、どうしたらいいだろうかということ。確かに、今企業の方と金融機関サイドともいろいろな話し合いをしているという過程でありますから、余りそこをいいかげんに、早く適当に切り上げてということには、これはなりません。やはりしっかり話をして何とか生き残る方策を考えてもらいたいというように思うのですが。しかし、それにしても、企業サイドから見ますと、どうなるのかわからないという状態がずっと続いているというのも、これは大変でございまして、そんな意味ではさらに努力をしていただきたいなと思います。  それで、最後に、ちょっとこういう問題もあるわけですね。  先日テレビでもやっていましたエイペックスとかテルメとか、倒産したわけですね、ホテルなどが。そうすると、そこに従業員がいまして、もちろん、新しい職場を見つけることもやっていますけれども。ただ、こういうホテルにしてもあるいはゴルフ場にしてもそうですけれども、ほっておきますと、もうその機能というのは非常に低下してしまうわけですね。それで今何とか買い手がないだろうかということで探しているわけです。倒産した企業ですけれども、管財人などがいまして。ただ、買い手といっても、これは非常に安くたたくわけですね。この辺のところで、どういう価格ならばいいのか、結局は、うまくいかなかった場合、最後は預金保険機構にやはり行ってしまうわけで、そこでいわゆる競売だ何だかんだという手続をとって債権回収をやるというと時間もかかりますから、そういうことをトータルで考えますと、ある程度安い価格でも引き受けてくれるところがあるならば引き受けてもらった方が、全体的に少し時間を見て考えると、その方がプラスだという場合もあり得るわけです。そういうところをよく預金保険機構の方でも考えて対応していただきたいというのが一つ要望としてございますが、この点、いかがでございますか。
  217. 山口公生

    山口政府委員 突然の御質問でございますので、ちょっと、確たる御返答を申し上げる自信はございませんが、預金保険機構の機能としてはそういうのは余りない。そうすると、では、ほっておいていいかということは別問題でございまして、できれば、そういった問題も先ほどの連絡会等でひとつ出していただいて、何かいい方法がないか探ってみるのも一案かなと思うわけでございます。
  218. 横路孝弘

    横路委員 具体的ケースというよりも一般論としてお伺いしたのですが、ただ、先ほどの協議会も実は余り動いてませんで、今日だんだん話が詰まってきて、一体どうなるのかという心配をみんながしている大変大事なときに来ていますので、せっかくある組織を、形だけのものじゃなくて、動かして、そして各企業などからの要望もそこで受けとめて解決できるような、そういう役割をぜひ果たしていただきたいというように思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  219. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員長代理 次に、並木正芳君。
  220. 並木正芳

    並木委員 平和・改革並木でございます。お疲れのことと思いますが、よろしくお願いいたします。  ただいま、横路議員のお話にも拓銀のいろいろな問題があったわけですけれども、かくのごとく金融界は混乱をしている、あるいは非常な不安を抱えているわけであります。そうした中でビッグバンが始まる、いよいよそういう段階になるわけでございますけれども、今、日本経済が置かれた状態、まさに前門の虎というのが不良債権であり、後門の狼というのがビッグバンであるというふうに言われております。つまり、引くも進むもイバラの道、かといってここにとどまっているわけにはいかない、こういうようなありさまであるかと思います。  ビッグバンを想定したときに、一昨年十一月橋本総理が発言され、いよいよビッグバンに突入ということになったわけですけれども、その際には、今日的な景気の低迷、不良債権はわかっていた部分もあるかもしれません、あるいは金融不祥事の連続、あるいはその後のアジア危機の深刻化、こういうようなものが、率直に言って予見できなかったんじゃないかな、そういうところで見通しというのをかなり間違えたのではないか、私はそういうふうに思っているわけです。  各論に入る前に、その辺の点、いわゆる各論で、規制を緩和する云々、いろいろな問題があるわけですけれども、それ以前に、まさにこうした見通しを誤ったということに関して極めて率直に認めていく、そして変えるべきものは変える。ここで財政構造改革法の改正の問題も出てきたわけですけれども、いわゆるなし崩し的にやっていくというのはまさに日本的手法であって、フリー、フェア、グローバルを掲げたこのビッグバンにふさわしくないのではないか、そのように私は思うわけであります。  その点において、この際、その責任をむしろ明確にして、見通しと施策のおくれというか、そういうものをはっきりとすることによって、政府への信頼、いわゆる市場の信頼も回復されるのじゃないか。そういうものがなければ、これまでも盛んに橋本総理あるいはそれ以外の人がかなりのアナウンスをしても、株価もごらんのとおりであるし、円についてもそういうものである。  その辺についてまずはっきりと、この見通し、今日的なビッグバンを想定したときに、構想を立てたときに、今日的見通しというものがどの程度予見できたのかどうか、その辺の状況についてお聞きしたいと思います。
  221. 松永光

    松永国務大臣 金融ビッグバンというものを、平成八年十一月でしたか、総理が打ち出されたわけでありますが、その当時の我が国の経済は今日とは相当違っておりまして、回復の動きが続いておったという時期でありました。同時にまた、世界の情勢を見ますというと、金融の分野でも規制を撤廃し、そして自由な競争をし、それを通じて国民の勤労によって蓄積した千二百兆と言われる金融資産をより有利に活用できる、利用できるという機会を広げていこう。それを通じて日本金融市場を盛んにしていく。そういたしますというと、ベンチャー企業を中心にして新しい企業も必要な資金の調達が容易にできるようになる。それがまた日本経済活性化につながる。こういう発想のもとで始まったものが今回の金融ビッグバンであったというふうに思うわけでありまして、その発想、構想自身は誤りではなかったというふうに私は思います。  ただ、その後、いろいろな事情もあって経済が厳しい状況になってきたわけでありますけれども、しかし、日本の将来を考えると、やはり多少の紆余曲折はあるにしても、自由化あるいはまた規制緩和、そしてまたグローバルスタンダードという、そういう基本原則であらゆる分野の規制を緩和し、活性化していく、それが二十一世紀の日本を力強い日本にするために必要な基本的な方策だというふうに私は思っております。     〔浜田(靖)委員長代理退席、井奥委員長代理着席
  222. 並木正芳

    並木委員 一般論的なことをお話しいただいたのですけれども、やはり明確な反省というのがなければ、まさに今、日本の、特に大蔵省が問われているのは信頼ということであり、その信頼というのはやはりきちっとした責任に基づいてなければならないわけです。その辺についてあいまいなために大蔵省も自信を持てないというふうな、自信と市場からの信頼、それと将来への明るい展望、これをつくらなければ、ビッグバンというものの中で、恐らく日本金融界というのはもみくちゃにされていってしまうのではないか。むしろ、そういうようなきちっとした透明性とはっきりとした展望を描くべきじゃないか、そういうふうに思うわけなんです。  このたび、大臣、G7あるいはG8に行かれたわけなんですけれども、そうした中でも、日本の言っていることがよくわからない、果たして恒久減税もやるんだかやらないんだかわからぬとか、いろいろな施策をやるようなことも言っているしゃらぬようなことも言っているみたいな、そういう報道も一部にはされています。もちろん、これはG7の会議だけでなくて、個別会談において、例えばアメリカなんかの方では、そういった声が今になっていろいろ出てきている。あるいは、加藤さん、これは政府の方ではないですけれども、そういうような方が政府の補助的な説明にアメリカに行かれて、立場は違うわけですけれども、行かれた中でも、どうもはっきりしない、こういうようなことが盛んに言われています。  大臣は、G7において、世界に何と何を明確に約束してこられたのでしょうか。二%の成長というのはこのたびの十六兆円の経済対策で必ず達成できる、そういうようなものも約束されたのでしょうか。その辺についてお話しいただければと思います。
  223. 松永光

    松永国務大臣 G7の会合における日本の信用とか信頼、これは決して揺らいでいないのです。もし日本の新聞の報道にそういうのがあれば、それは必ずしも正確ではないというふうに思います。  G7というところは、本来、一国と一国あるいは一国と数カ国が何かを約束する場所ではないのですよ。そこで、世界の経済あるいはそれぞれの国の経済状況について自由な議論をするところなのです。その議論の集約を共同声明といいますか、あるいはまたそういう形で対外的に発表する、こういう仕組みに実はなっておるわけであります。  その前に、G7の正式な会合の前に、私は、ルービン財務長官と個別の会談を、二十分の予定が四十分になったわけでありますが、率直な感じが、先月行ったときは少しお互いにかたかったのです。しかし今度は、私がお会いする前に、自民党の政策担当者である山崎政調会長が、あるいはまた尾身経済企画庁長官がルービン長官と会って、今度の経済対策についての説明もしましたし、あるいは特別減税の話もしてありましたので、ある程度ルービンさんは日本の政策について事前の知識を持っておられました。そういったこともありまして、今度の経済対策、事業規模十六兆円のことについては理解をし、歓迎をされたというのは事実であります。  なお、前回のときには、減税関係では、恒久減税ということを言葉の中に入れたわけでありますけれども、そのときに私は、実はある文書をルービンさんに渡したのです。それは、数年前に鈴木先生あたりが政府の税調の委員をしておられまして、個人の所得税につきましては、税率をフラット化する、こういった政府税調の結論が出まして、それを実行したのですね。残っているのは、三千万以上になりますか、高額所得者の最高税率六五%、あそこのところだけが残っているので、少なくとも二千万あるいは千五百万以下の税につきましては、これは相当な改革が既になされておるわけなのですね。そのこともルービンさんに、前回に行ったときに申し上げてきていることなのです。  したがいまして、現在、日本の所得課税というのは、アメリカと比べますと、七百万程度だというと半分ぐらいになっておるわけなのです。そういう状況のもとで、恒久減税をどういう形でやるかということは、これはしっかり議論をしなければならぬ問題なのですよ。  よく恒久減税、恒久減税とおっしゃいますが、どの部分を減税するのか。私の想像では、鈴木先生あたりのおっしゃることは私にはわかる点があるのですけれども、しかし、これはなかなか難しい問題なのです。鈴木先生というか、野田君の話にした方がいいかもしれませんけれども、大体似たような話でわかるのです。  そういうこともありまして、今度また恒久減税の話がもしルービンさんから出たならば、少なくとももう一回、日本所得税の課税最低限は、アメリカやイギリスに比べればはるかに高いところになっている。そして、千五百万、二千万近くまでフラットな所得税課税になっている。ここは、減税するといったって、どうするのかなと非常に頭をひねるところなのですね。その上の方については非常に高い税になっている。そこを直すことによって、非常に投資意欲が出てくるとかなんとかという問題はあるわけなのですね。それは理論的に私にはわかりますけれども、しかし、政治的にそれがやれるかという問題は重大問題なのですね。  そういったこともありますので、恒久減税と言われた場合に、どういうふうな説明をしようかと思っておりましたら、今度は恒久減税の話はなかった、そういうことなのですよ。したがって、政府のあの十六兆円の事業規模の経済対策、その話を概括しただけで向こうは理解したのですよ。それは、先ほど言ったように、事前にもう説明がしてありましたから。そこで、その結果においては、既に新聞にも出ておりました。これは歓迎をするという結論になったわけであります。  また、金融部門の強化が必要ですよということは同時に言われたことでありまして、その点は、我々は、金融システム安定化に対する法律をつくって実行に移しておる、その点もルービンさんは評価してくれたのですよ。これから残っているのは金融部門の規制緩和だ。まさに、今審議を願っている法案を成立させることによって、金融部門の活性化を図る、これは指摘をされた点であります。その他の点は特別に指摘はなかったのです。非常に気持ちのいいG7の会合であったということでございました。
  224. 並木正芳

    並木委員 気持ちがいいと言われてもあれなのですが、もちろん契約的な約束をするところではないわけですけれども、日本が何を果たすのかといヶのは非常に注目されてきたということですね。  ただむしろ、日本に余り自信をなくさせてはいけないからというようなところでの思いやりが逆にあったのかもしれませんけれども、いわゆるその後のアナウンスでは、そういうところは日本もはっきりしていない。あるいはアジア危機に対して日本が一体何をできるのかというのも、何か様子見のようではっきりしないのではないか、そういうような声が聞かれてくるということなのです。まさに、それこそがこれまでの体質が変わっていない、その中でビッグバンに突入して大丈夫なのですか、そういういろいろな不安が生まれるところなのです。  その辺を何度お聞きしても同じかもしれませんけれども、そういうふうに言われているところをぜひ頭の中に入れて、日本の一つの、もっと確たる責任、役割というのを明確にしていかなければならないのではないか、そういうふうに思います。  それで、次に移らせてもらいます。  初めに申し上げておけばよかったのですけれども、きょうは大変時間がないということで、明日また私質問させていただきます。  そういった点では、二十七分間ということですから、各論についてはあしたまたお聞きすることもあるのですけれども、そうした中で、現状での最優先課題は、これはもう再三いろいろな方が言われているわけですけれども、不良債権というのをいかに早くクリアしていくか、その時期がもう待ったなしで来ているということであろうかと思います。  SPC等の問題でも、稼働させるためには、かなりの不良債権的な不動産等を整理して、移していかなければ有効に機能していかないわけですけれども、それについて、移管する際に登録免許税の減免とか、そういうのもありますけれども、あるいは税制的にさらにプラスアルファの措置というのを今後考えられているのか。さらには、SPCに限りませんけれども、そうした不良債権処理していく中で、それを促進するための税制、その辺についてはどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。
  225. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  SPCにつきましては、まさに円滑にこの制度利用できるようにということで、九割以上配当されるものについては、その配当について損金算入できるような措置を今回講ずることとしております。また、今回の総合経済対策の中で、同じように不良債権処理という観点から、不動産担保つきの不良債権についての債権債務関係を整理いたします臨時不動産関係権利調整委員会整備に向けて検討を行うということにされているわけでございます。  この際、税制といたしましては、この調整委員会によるあっせん、調停等によって債権者及び債務者の合意が図られ、債務者の合理的な再建計画が策定される場合には、債権者について、まず債権放棄した場合、その損失を損金の額に算入することとする。また、債務者につきましては、その債権放棄による債務免除益をそれまでの累積欠損金と相殺することができることとするというような方向で検討することとしておりまして、税制面でも債権処理についてできるものは前向きに取り組むこととしているわけでございます。
  226. 並木正芳

    並木委員 時間があと少しですので、あと二点だけお聞きします。  景気対策ということで非常にこの景気が、これも言われるところでございますけれども、九兆円の国民負担増というか、消費税をある意味ではたった二%上げたその二%の重みというか、これが五兆円ぐらいと言われています。減税そのもののカットというのは約束されていたことです。ですから、医療費の負担が二兆円、そうすると七兆円。減税カットも入れて九兆円余りというようなことですけれども、これが、タイミングもあったと思いますけれども、決定的に消費を冷やしてしまった、それが今日的な景気の低迷にまさに一番原因している。ですから、五百二十兆円ものGDPのあるところにこれだけで相当ダメージが、ボディーブローというよりも完全にノックアウト寸前のダメージになった、この辺のことをじっくり考えてみなければならないのじゃないかな。  きょうは日銀の藤原副総裁にもおいでいただいているわけですけれども、まず、これは大蔵省としては嫌がることかと思いますけれども、この医療費負担二兆円というだけで国民にとってはすごく将来不安になっていったというようなことからして、まさにそういう不安を払拭する、そういうような意味では、消費税を福祉目的税化していく、つまり、高齢化高齢化と言われて、日本人そのものは、我々ずっとこの資源小国、島国、とにかく働いて一生懸命ため込まなければ日本はつぶれてしまう、せっせせっせと働いてというような教育をさせられてきています。それが美徳でもあるわけで、それが消費というよりもすごく貯蓄性向の強い国民性になってきている。その辺に輪をかけて、少子・高齢化、年をとったらどうしょうというようなことで、大変消費に影響をしている。  そういうことからすれば、消費税を福祉のために使いますというようなことで、むしろそうした将来不安を払拭していく、これが大きな景気対策にもつながっていくのじゃないか、こういうふうに思うわけなんですけれども、その辺について、大蔵省としてははいそのとおりとはいかないかもしれませんけれども、大臣からでもお答えをいただければと思います。
  227. 細川興一

    ○細川(興)政府委員 ただいま委員おっしゃいました消費税の福祉目的税化という考え方につきましては、政府税調の答申で、第一番目に、財政の一般論としては目的税は資源の適正な配分をゆがめ財政を硬直化させる傾向を持つ、第二番目に既存の目的税に見られるような受益と負担の直接的な対応関係を見出しがたい、第三番目に福祉が税収によって逆に制約を受けるのではないかという福祉関係団体の懸念がある等の指摘を踏まえて判断する必要があると答申では述べられております。我々としても、この点を踏まえて慎重に考えるべきものと考えております。
  228. 並木正芳

    並木委員 今のあれはまさに役所的なところだし、大蔵の範疇からすればそういうことなのかもしれませんけれども、やはり政治的な発想からすればまた別の観点が、特に今の福祉ということをこの日本国民性の中でいかに将来的に安心させてあげられる施策として、税そのものという、しかも最もわかりやすい消費税という中で考えていくということは必要である、私はそのように考えております。それは恐らく何度やってもこれまた同じかもしれませんけれども、私はそのように思います。  時間が二、三分しかございませんので、せっかく藤原副総裁においでいただきましたので、またこれも日銀としても頭の痛いところかもしれませんけれども、とにかくゼロ%台で、何か視力検査金利というような言葉があるそうなんですけれども、そのように呼ばれる低金利が続いているわけです。そういう中で、外為が自由化されてお金が流出していく、こういうことも起き得るなということがあるわけでございますけれども、日銀でもやはりさっきお話ししたような声も、議事録等を見せていただくとやはり九兆円というものがなぜこう影響したかをもう一度考えてみる必要があるのではないかというような声も出ておるようでございます。  この過去最低の〇・五%という金利、これが九五年の九月八日ですか、ここで決められて、これは緊急避難的なものがかなりあったと思うのです。それがもう三年近くなってしまうわけですけれども、ここまで来てこの金利の問題というのをもう一度考えてみないと、まあ金利を下げるという話まであるそうですけれども、もうそれはなかなかできにくいのかと思います。明るさというものを国民に与えるためには、やはり金利低迷が一ずっと続いているというイメージなんですね、金利が上がらないというのは。さらに下がるというと、これはもうどうしようもない。将来生活は暗いよ。特に年金生活者とかそういう者からすればそういうことになりますし、消費を大きく負っているような人たちがいわゆる金利というものに敏感にマインドが働いていると思います。  そういった点で、そろそろ今までの手法を変えて脱皮するときじゃないかな、そういうふうに私は国民的な視点の中で思うわけなんですけれども、その辺についてはいかがでしょうか。
  229. 藤原作彌

    藤原参考人 お答えいたします。  委員が御指摘なさいましたように、GDPに占める消費の割合は非常に高い。預金金利を引き上げれば消費につながるんじゃないか、その大もとである公定歩合を引き上げてはどうかという御提案がいろいろな方面からなされているということは我々も承知しています。それはやはり金利に頼っている方々からの、もしかしたら怨嗟に似た声かもしれないということもよく承知しております。  しかし、私ども、金利は一律的に動かすものと考えていまして、その預金金利だけ、または消費につながるような金融商品の金利だけを上げられればいいのですけれども、一律に上げると貸出金利の方も上がる理屈になるわけです。そうしますと、メリットとデメリットを比較考量しなければいけないというジレンマに陥るわけです。  現下の経済情勢を考えますと、これも御指摘のように非常に厳しい情勢にありまして、我々はそのことに絶えず点検の目を怠りなく検討しているのですけれども、やはりその金融緩和の基調をもうちょっと続けて景気を下支えして、この景気が上向いてこなければ金利はいじれないという状況に今あるわけです。その悩みがどのくらい続くか。たまたま政府の方から大型の経済対策も打ち出されたことではありますし、いましばらくその効果等を見守って判断したいと私どもは考えております。
  230. 並木正芳

    並木委員 時間でございますので、ありがとうございました。
  231. 井奥貞雄

    井奥委員長代理 次に、谷口隆義君。
  232. 谷口隆義

    ○谷口委員 自由党の谷口でございます。  午前中の質問に引き続きましてお聞きいたしたいと思います。  午前中にSPCについて何点かお伺いをいたしました。それで、初めにSPCについて残余の質問をいたしたいというように思います。  この特定目的会社SPCは、午前中にも申し上げたように、金融機関から不良債権を買って、これを証券化する、こういうようなことで、流動化策というような目的でつくられたわけでありますが、この不動産証券化を不良債権処理策として期待するのは無理ではないかというような指摘もございます。収益性の見込める優良土地であればいいわけでありますが、不良な土地、よくない土地SPCはまず買わないのではないか、こういうようなことが巷間言われております。  そうしますと、当初目的の不良債権処理というような目的を達せられないのではないか。また、地上げの終わっておらないような虫食いの土地があって、この虫食いの土地SPCに売却されて一枚の証券に化けるということになりますと、投資家はわからないわけであります。その際には、徹底したディスクロージャーがなされなければ投資家はわからないということになりますから、情報開示がぜひとも必要になるわけでございますが、そもそも、情報開示があったとしても、そのような虫食いの土地を証券化したものを果たして買う人が、投資家がおるのかというような危惧があるわけでございます。このようなことに関しまして、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  233. 山口公生

    山口政府委員 谷口先生の御質問は、SPCが成功するかどうかの一番のポイントだと思います。これは、最近の現象を見ましたときに、必ずしも悲観的になる必要はないんじゃないかという気がしております。  それは、今SPCの形じゃなくても、いわゆる担保不動産のバルクセールということをやっております。これは、一〇〇のものを一〇とかあるいは一五とかそういった値段で売るということになりますと、それから生み出されるキャッシュフローが七%、八%に回ると、外国系のそういう投資家あるいは金融機関の判断は、七だとちょっとどうかな、八だとやってみようかというような感じでやっているやにも聞きます。私は正確じゃありませんから、六%でも手を出すところはあるかもしれません。いずれにせよ、外国の投資家あたりには、かなり今の地価の相場感等でもってやや底値圏かなというようなことで、そういったものに手を出そう、しかし、あくまで採算に乗るベースでなければならないという考え方で投資しております。  したがって、確かに先生おっしゃるように、一〇〇のものを一〇〇で買え、あるいは八〇で買えと言ったって、買う人はいません、不良債権であれば。しかし、それが二〇ですよ、あるいは一〇ですよ、そうするとキャッシュフローが九%に回りますと言ったら、それは手を出す人はいるかもしれません。そういう、つまり適正な価格といいましょうか、時価を適正に評価する、あるいはそれが採算に乗るような形で評価されれば、それは不良債権であっても、その時点からは、今度はもうけが出る債権になるわけで、もうけが出る不動産になるわけでございます。  そういうことを見ますと、確かに、SPCをつくって証券化したときに、では、一般大衆がすぐ買うかというと、私はそれはやや疑問に思います。まず、相対ないしは私募の形態でかなり機関投資家関心を持ってしょう。しかし、一般投資家、例えば私が、SPCのあの債権がどうもよさそうだから買ってみようなかなかそういう発想はすぐには出てこないと思います。しかし、いずれはそういった市場も広がると思いますが。  したがって、先生の御心配の向きは私どもの心配でもありますが、それは、適正な評価をすることによって実現されるだろうというふうに考えております。
  234. 谷口隆義

    ○谷口委員 まさにおっしゃるとおりで、今外資系の金融機関が百万のものを十万とか十分の一程度で買いあさっているというような情報もございます。ですから、それが時価であればそれでいいわけでございますが、これは午前中にもちょっと質問したわけでありますが、低廉譲渡の問題をお話をいたしました。  これは、金融機関が不良債権不動産を持っておる、それでSPCに売却する。このときに十分の一の時価で果たして売却するのかということなんですね、十分の一というのは最終的に証券化されたものを買う価格かもわかりませんが。いずれにしても、今一般的に時価と言われているものからすると、かなり低い価格で買わないとペイできない、要するに投資家は買わないというようなことが想定されはしないのか。そうしますと、そこに税務上の低廉譲渡、寄附金認定の問題などは出はしないのかということで、午前中お伺いをしたわけでございます。  これについてはほぼ国税庁の方も、仮にそういうようなことがあれば、時価というのは極めて大事な問題でございますので、この時価が一般の売買事例に基づく時価ではなくてそれよりも極めて低い価格で売買されるというような状況になったときに、これは問題である、税務上はそういう対応になるだろうと思うんですね。しかし、一般的には、ほとんど価値のない土地であるかもわかりません。先ほど私が申し上げたのは、虫食いの土地などと表現をしたわけでありますが、優良の土地ではないわけで、こういうような場合に、時価をめぐっていろいろ議論が生じるのではないかというように私は思うわけでございますが、これについてどのようにお考えでございましょう。
  235. 山口公生

    山口政府委員 確かに、時価というものの決め方というのは大変難しいと思います。特に、土地の評価につきましては、近隣の売買実例を持ってきたような場合には、かなり高く高どまりする傾向があります。しかし、私が先ほど御説明申し上げましたように、結局はその資産がどういうキャッシュフローを生むかという考え方に立ちますと、これはやはり、最終的には収益還元価格というもので地価を決めていく、譲渡価格を決めていくということになろうかと思います。  先生はすぐ、その次の御質問は恐らく、そういう価格をどうやって決めるのかという問題を御指摘になるかもしれません。確かに、我が国においてはそういうもののノウハウが比較的欠けております。具体的に、建物あるいは土地を見たときに、ああ、これは幾らの価値があって、何年間でどれくらいのキャッシュフローが生み出されるということをぱっと計算できるというノウハウは残念ながらおくれていると思います。  しかし、これからそういった考え方でもってそういった土地とか債権を評価していくということが積み重なっていきますと、そこにはやはり実例というものが出てくるわけでございますから、そこに対してはかなりの関心が集まり、そこに一つのマーケット価格というものが、正しいプライシングを伴ってでき上がるものというふうに私は考えております。     〔井奥委員長代理退席、浜田(靖)委員長代理着席〕
  236. 谷口隆義

    ○谷口委員 収益還元価値、賃貸料からはじき出すものですね。一般的に、賃貸料というのは下方硬直性があると言われていまして、急激に下がらないのですね。  ですから、私が申し上げておるのは、賃貸料からはじき出す収益還元価値で時価をはじき出した、これは先ほど銀行局長がおっしゃったように、投資家の方は極めて低廉な価格であれば、例えば仮に十分の一だとすればこれは購買意欲が出てくるのだろうと思いますが、余り高ければ、また、その土地もよくないというような不動産が証券化されたものが出てくれば、これは余り乗ってこないのではないか、こういう危惧を私は先ほどから申し上げておるわけでございます。  ですから、論理的には局長のおっしゃることはよくわかるわけでございますが、今の日本の現状を見ますと、収益還元価値がリーズナブルな価格になっておるかというと必ずしもそうではない。先ほども申し上げたように、下方硬直性があって実際はそんなに下がらない。不動産価格は下がってもいわゆる収益還元価値は下がらない、こういうような実態もあるということをまず申し上げたいというように思います。  この問題ばかりやっておりますと長いことかかりますので、次の問題に移ります。  銀行法の改正の中で、銀行経営の健全性を確保する観点で今回連結ベースになりますね。銀行があって、銀行の子会社がございますが、従来は個別のディスクロージャーというようになっておりましたが、これを連結ベースでディスクローズしていこう、こういうように変わるわけでございます。その一環で、今回自己資本比率の規制を連結ベースで行うというようになっております。このことについてお聞きしたいわけであります。  御存じのとおり、自己資本比率は一般社会に極めて大きな影響を及ぼしております。いわゆる自己資本比率を維持するために貸出金を減らさなければいけないということで貸し渋りが起こっておるというようなことが言われております。  そういうような状況の中で、個別の自己資本比率は国内基準四%、国際基準八%をクリアしておる。ところが、これはあくまでも個別の財務諸表をベースにしたものでございますので、これを連結ベースにした場合に、仮に極めて大きな赤字を持っておる子会社があった、これを連結した折に、連結ベースでは自己資本比率が四%、八%の基準を割り込むというような場合はないのか。そういうような場合を想定しておられるのかどうか、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  237. 山口公生

    山口政府委員 今回の銀行法の改正によりまして、広く金融関連分野の子会社を持つことを認めることといたしました。そういたしますと、やはりグループ全体の財務状況というものが銀行の経営の健全性に大変大きな影響を及ぼすという結果になります。  したがいまして、先生の御指摘のように、これまでは単体で十分であったというところが、やはり連結ベースでも見ないと健全性という観点からは十分ではないということでございますので、両方の観点からチェックをしていくということは必要だろうというふうに考えております。
  238. 谷口隆義

    ○谷口委員 参考人で前に東京三菱の岸頭取が来られた折に私は同じ質問をしたのですね。そのときに岸頭取は、子会社は本体から、本体というかその親会社からするとそんなに大きくはない、ですから無視できるような状況だろう、こういうような御答弁だったのです。  私は、いろいろ銀行業界状況を見ておりますと、中に極めて大きな子会社を持っている場合もあるし、これは決して無視できない。そこに今回連結ベースの開示の方法も、従来の形式基準のみならず実質支配力基準というのがあって、これは連結に組み込まなければいけないのですね。実質的に支配しておるというような認定がされますと連結ベースの中へ入るわけでございまして、連結される銀行の子会社が極めて経営状況が悪化しておるというような場合に、また今起こっているような、小康状態になったと私は理解しておるわけですが、こういうような問題が再燃してくるようなことはないのか。要するに、連結ベースの自己資本比率が悪化するようなことはないのかということを前お聞きしたわけでございます。  その御答弁をお願いしたいのですが、それにつけ加えて、今までのバーゼルの合意がありますね、BIS基準。今まで私は個別財務諸表を前提で考えておりましたが、これは連結財務諸表を前提としてやられたものであるのかどうかということも含めてお答えをお願いしたいと思います。    〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
  239. 山口公生

    山口政府委員 まず後者の方からお答えいたしますが、BISは連結ベースでやっております。  それから前者のお答えでございますが、子会社が小さいから無視できるというのは、小さければ連結しても小さい影響しかありませんから、それは無視できる連結かもしれません。問題は、先生おっしゃいましたように、無視できないような子会社を持っている銀行があった場合に、それはそれこそ無視ができないということになるわけでございます。  そうすると、先生の御心配いただいておりますのは、連結ベースでも基準を満たせということになると、またそういう貸し渋りのような社会的な批判を浴びる現象を生じないか、こういう御指摘だろうと思いますが、私どものこの対策は、対策というよりはこの施策は、長期的な視点をとらまえ、そういう法体系の中での位置づけでございます。  貸し渋り対策等は今いろいろな措置をとらせていただいているところでございまして、その辺は、貸し渋り現象が起きるからといってこの連結ベースを緩やかにするということはとりにくい話ではないかという感じがいたします。
  240. 谷口隆義

    ○谷口委員 今そういうような問題があるということを指摘したいと思います。  それで、次に移りたいのですが、投資者保護基金の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  これは、従来寄託証券補償基金でございましたが、これを証取法上の法人に改組をして投資者保護基金、このようにやっていこうというようなことのようでございます。  何点かお伺いしたいのですが、これは全証券会社が対象になるということでございますので、当然外資系証券会社も含まれるというように解釈するわけでございますが、後でまた御答弁をお願いいたしたいと思います。これはどのような割合で拠出金を負担するようになるのか、具体的に教えていただきたい。また三点目は、三洋証券、丸荘証券、この両証券の経営破綻のときに二十億という補償枠を外して無制限に補償をしたというようなことのようでございますが、今現在の残高がどの程度あるのか、これを教えていただきたい。この三点を御答弁お願いいたしたいと思います。
  241. 山本晃

    ○山本(晃)政府委員 お答えいたします。  この投資者保護基金でございますけれども、今回御審議いただいている法案では、外国証券会社、内国証券会社を問わず投資者保護基金に加入を義務づけるということにしております。  それから、どういう拠出割合にするのか、こういうことでございます。投資者保護基金の規模そのものは前にもお答えをさせていただいたところでございますけれども、発足時三百億円、二〇〇一年三月時点で五百億円という規模を考えておるわけでございますけれども、どういう負担割合で何を基準にしてという点につきましては、現在業界内で検討しているという、まさにその最中でございます。寄託証券補償基金の場合には、これは、今現在は休止をしておりますが、平成六年ぐらいまでは積み立てをしておりました。そのときには取引高というものを中心に基金を拠出していたという経緯がございます。  それから、現行の寄託証券補償基金というのは、今谷口委員指摘のように、本則では一社当たり二十億円という限度を設けていたわけでございます。ただ、三洋証券及び丸荘証券についてはこの限度を取り払っているわけでございます。これは、まさに顧客の資産を保護するという観点から、この二十億円という限度というものを外しまして投資家保護に万全を期す、こういうことでやられたわけでございます。  それで、この寄託証券補償基金の残高は、現時点におきましては三百六十二億円程度ございます。ただ、昨年、丸荘証券、三洋証券以外に二つの証券、小川証券と越後証券、これもこの寄託証券補償基金の発動がございまして、これはいずれも二十億円の以内でおさまったわけでございます。そういったことからいいますと、三百六十二億から約四十億弱でございますが引いたのが、その三洋証券及び丸荘証券以外の残高になるわけでございます。この三洋証券と丸荘証券につきましては、現在まさにいろいろな顧客の資産の返還作業中でございますので、金額的には一体どのくらいになるのかということはまだ定かでないというのが実態でございます。  いずれにいたしましても、恐らく三洋証券につきましては三百億円を超えるのではないか、あるいは丸荘証券につきましては、これはまだはっきりとは言えませんけれども、数十億単位になるのではないかということが言われておるわけでございます。  そうなりますと、足りなくなるではないか、こういうお話かと思いますけれども、これにつきましては、昨年、三洋証券が会社更生法適用を申請いたしましたときに、野村証券からは百億円既に拠出をいただいております。また、残りの三社のうちの、山一はああいう事態になったものですから、大和証券、日興証券にも今それぞれお願いをしている、こういう段階でございます。
  242. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたので、あと、最後に一問だけ大蔵大臣にお伺いしたいんですが、今回、保険版の早期是正措置が始まるというようなことで、先日も私、これは参考人のときに質問したんですが、早期是正措置を金融機関の場合はやりまして、極めてタイミングが悪くて大変な状況になっておるわけでございますが、保険業界はより一層悪いと。日産生命が経営破綻して、東邦生命もGEキャピタルの傘下に入る等々、優勝劣敗が明確になってきて、大変業況の悪い保険会社がある。  こういう状況の中で、ソルベンシーマージン基準に基づいて業務停止命令を行い得るという保険版の早期是正措置を平成十年度から導入するということについては、これは時期尚早ではないかというような考え方があるわけでございます。まず初めに経営の立て直しが必要ではないか、こういうような考え方があるわけでございますが、大蔵大臣、これについて御答弁をお願いいたしたいと思います。
  243. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えいたします。  保険会社の早期是正措置でございますが、今御指摘のように、ソルベンシーマージン比率という客観的な指標を用いまして早期是正措置を適切に発動することによりまして、早目早目に保険会社の経営改善を求める仕組みでございますので、むしろ、日産生命の一つの教訓をもとにぜひできるだけ早く導入したいというものでございます。銀行より既に一年おくれているわけでございます。  この仕組みを導入することになりましたので、保険会社の総合的なリスク管理の充実に資するということでございますし、各保険会社も早期是正措置の導入を視野に入れておりまして、この三月決算等におきましても自己資本の充実等々の対応を行ってきておりまして、経営の健全化に取り組んでいるところでございます。  そういう意味で申しますと、確かに保険業界の状況は悪うございますが、かつ、今後ともその辺の経営環境については十分注視してまいる必要があると存じますけれども、予定どおり来年度から早期是正措置を導入させていただきたいというふうに考えているわけでございます。
  244. 谷口隆義

    ○谷口委員 大蔵大臣から一言。
  245. 松永光

    松永国務大臣 今保険部長が申したとおりの考え方でございます。
  246. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  247. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、佐々木陸海君。
  248. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 本日最後の質問ですが、時間が限られております。保険料率の自由化の問題についてお聞きをしたいと思います。  今回の金融システム改革法案において、火災保険それから自動車保険等について算定会の料率の使用義務を廃止して、料率団体を独禁法適用除外法の適用対象から除くということが提案をされております。  そこで質問ですが、今回の金融システム改革法案施行日が原則として本年十二月一日となっているのに対して、この保険料率の自由化は本年七月一日となっておりますが、なぜでしょうか。端的にお答えください。
  249. 福田誠

    ○福田政府委員 端的にお答え申します。  まず国際的な事情でございますが、平成八年十二月の日米保険協議の決着におきまして、政府は算定会制度の抜本的な改革を、一九九八年、すなわち本年の七月一日までに実施する旨の意図表明を行っておりまして、さらに、昨年、平成九年十二月のWTO金融サービス交渉の決着時におきましても、日米保険協議において合意した自由化措置の実施を改めて約束しているところでございます。これらの国際約束は、我が国としてスケジュールどおり誠実に履行する必要があるというのが一つでございます。  また、国内的な側面におきましても、政府の規制緩和推進三カ年計画あるいは金融システム改革のための保険審議会報告等におきまして、今申し上げたスケジュールにより改革実施する方針を明確にしているところでございます。
  250. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 アメリカとの交渉の結果が一つのきっかけになっているわけですが、その交渉相手であったアメリカは、保険の自由化では日本よりもかなり先を行っているわけであります。しかし私は、アメリカと比べて日本の損害保険制度がそんなに大きな問題があるとは思われないわけであります。日本の保険料は諸外国に比べて極めて安い、安定的に提供されているという面もあるのではないかと思います。  日本損害保険協会が出している「ファクトブック一九九七」というのがここにございますが、これを見ますと、自動車保険の保険料というのは、簡単に言いまずけれども、既婚男性、三十六歳、契約歴十年の場合に、ニューヨークでは保険料が二十六万三千六百二十円、ロンドンでは十二万九千七百二十円に対して、東京では六万五千七百五十円、かなり安くなっています。そういう意味では、自動車保険に限って言えば、日本の保険制度国民にとっては悪くない制度だと。  一方、この自由化で先を行っているアメリカでは、自動車保険の分野ではどんな状況になっているかというと、保険をめぐるさまざまな問題が起こっておりますけれども、自動車保険の問題では無保険車の問題が深刻化しているということも伝えられております。大蔵省は、アメリカにどのくらいの自動車保険の無保険車がいるのか把握しておられますか。
  251. 福田誠

    ○福田政府委員 ただいま御指摘ございましたように、米国において自動車保険に加入していない自動車ないし契約者が存在するということは承知しておりますが、全米でまとまった統計の存在は確認できておりませんで、申しわけございませんが、そのような統計については承知しておりません。
  252. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 アメリカの何かそういう統計、なかなかないんですよね、恥ずかしいことを隠しているのか、よくわかりませんけれども。  「海外保険情報」というものがありますが、これもちょっと古いですけれども、カリフォルニア州の二千万人を超える自動車運転者の約二八%が無保険で車を運転しており、無保険者の水準は低所得者層の居住地域では著しく高いことが州保険庁の調査で判明したというような数字が、私の知る限りでは目にとまりました。つまり、全米で一番草の多い州と言われているカリフォルニア州で二八%ということであります。伝えられている数字によりますと、全米では約二千五百万台の保険に加入していない車が走っているということも言われております。相当な数のものがあるのじゃないか。  カリフォルニア州ではこの大量の無保険車問題に頭を抱えていて、車両の没収とかあるいは無保険車両運転者への補償額の削減などの法的措置によって何とか解決を図ろうとしてきているようですけれども、多数の運転者が高額な費用を払うことができないため保険に加入できないでいる、さらに、採算がとれない相手に対しては保険の引受拒否ということも起こっているということであります。  こういうアメリカの実態について、大臣、多少は認識しておられるでしょうか。
  253. 松永光

    松永国務大臣 私は、アメリカの法秩序維持と日本の法秩序維持とを比べた場合に、日本が断然、法秩序は維持されているという考え方に立っております。  一つは、日本の場合には、今は随分規制が緩和されましたけれども、昔は車検という制度がありましたね。アメリカの場合には車検という仕組みがない州もあるそうです。あの問題のときにいろいろ知っておる人から話を聞きましたが、車検制度がない州では十分整備されていない車が走っておる、そのために事故が起こる、したがって事故率が高い、日本の場合には車検制度があるから事故率が極めて低いという話も聞いたことがあります。日本の場合には自賠責保険の仕組みが徹底しておりまして、そして、またその上に上乗せして任意保険に入っているということで、何といいましょうか、日本人の生活態度の正しさというのがいい点だな、アメリカに比べてそっちの点は日本の方がすぐれているな、私はそう思っているところでございます。
  254. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 自動車保険の問題をお聞きしたのですけれども。そうすると、今の日本の方が状況はいいわけですよね。何もわざわざアメリカの言いなりに、言いなりにというのはちょっと語弊があるかもしれませんが、自由化をしなくても、今、日本では適正な保険料のもとで、自動車の保険に入っていない自動車なんかないという状況が実現しているわけですから、これは何も変える必要はないんじゃないですか、そうすると。
  255. 福田誠

    ○福田政府委員 御指摘のように、我が国では、外国に比しても比較的低廉な料金で、安定的に自動車保険が供給されてきたことは事実でございます。ただ、先ほど申し上げましたように、やはり今後の規制緩和、自由化の過程におきましては、保険会社間の適正な競争を促進することによりまして、消費者ニーズに柔軟にこたえられるような活発な商品開発が必要であるということでございまして、そういう意味で申しますと、現在の算定会制度では、算定会のはじいた料率を、経費の部分を含めて、各社がすべて画一的に守らなければならないということはやや競争制限的に過ぎるということで、今回、使用義務を廃止することにいたしたわけでございます。  それから、大臣答弁申し上げましたように、日本の場合はすぐれた自賠責保険制度がございまして、これは強制加入でございまして、基本的に、無保険車が発生するという余地はないと考えております。
  256. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 もちろん、自賠責は結構ですけれども、それだけでは国民は満足していないわけで、任意保険の方も入らなければ心配だということで、それも広く普及をしているわけであります。だから、自賠責の問題はさておいて、そういう任意保険の方ですけれども、新しい制度施行されると、料金が高騰して保険に加入しない者が出てくるというようなことは心配ないというふうに言い切れますか。
  257. 福田誠

    ○福田政府委員 自由化のメリット、デメリット両方あるわけでございますが、御指摘のように、自動車保険というのはほかの損害保険種目と比べまして被害者救済という特殊性がございます。そこで、私どもは、算定会改革後におきましても行政上必要最低限の監督は継続する必要があると思っておりまして、具体的には、契約者等の保護のために、商品や料率に関して現在ございます法令上の基準に照らして、審査はきちっと行ってまいりたいということでございます。  それから第二番目に、実は、昨年六月三十日付で、リスク細分型自動車保険の認可に先立ち、既にガイドラインというものを発出しているところでございまして、これは、余り差別的な料率にならないようなガイドラインでございます。私どもとしましては、今後このガイドラインについては、御指摘のような、もし保険の安定供給に支障があるようなことがあってはなりませんので、必要な期間、このガイドラインを維持する予定でございまして、万が一にも被害者救済に支障が生じないように努力してまいりたいと思っております。
  258. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 昨年六月の保険審議会の答申においても、「一部保険料の高騰により安定供給が阻害されるのではないか、リスクの高い消費者に対する引受拒否が起きるのではないか、等の懸念がある」ということが指摘されていますね。そういうことを認めた上で、それに対してこの答申は、対人賠償のみの任意自動車保険を積極的に提供することなどを促す、いわば公然とサービスの低下を認めているという状況もあるわけであります。  わざわざ今ガイドラインを定めたというのですけれども、ガイドラインで一定の基準を設けているとはいいますけれども、この基準にしても、法律で定められているわけではないし、大蔵省の判断次第で、格差を広げることも廃止することもできるというものになっているわけで、大体、この保険審議会の答申でも、引受拒否が発生しそうな保険分野については、その発生が懸念される間、ガイドラインを設けておる。だから、このガイドラインというのも本当に一時的なものとして言われているだけの話でありまして、本当に将来にわたってこれで安心だと言えるのですか。
  259. 福田誠

    ○福田政府委員 自動車保険にいろいろな差別的な、リスク区分を細分化することを導入してまいりましたその影響がどのように出るかにつきましては、まだわからない面もございまして、日本でどの程度定着するかということもございます。しかし、そのような懸念は、保険審議会でも指摘されておりますが、その懸念の可能性をもって自由化を否定することは適当でないというくだりもございまして、私どもはやはりこのガイドラインで、日本でその辺がうまく定着していくかを見きわめてまいりたいと思っておりますし、先ほどその根拠についてもお尋ねがございましたが、このガイドライン自体は、私どもの行政上は保険業法におきます審査基準を補完するものとして、一応法令上そういう位置づけをしておるわけでございます。
  260. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 任意自動車保険以外に独自のガイドラインは、今必要な分野はないというふうにお考えでしょうか。
  261. 福田誠

    ○福田政府委員 自動車保険と同じような性格の商品は今のところないと考えております。
  262. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私は、そもそも保険業、特に損害保険業に競争原理を持ち込むこと自体に大きな根本的な問題があるというふうに考えています。アメリカでの経験でもこの問題を雄弁に物語っているんじゃないかというふうに思うのですね。  アメリカでは、一九八〇年代の半ばに、保険危機と呼ばれる深刻な状況が生まれております。もちろんアメリカの特殊性もありますけれども、競争原理が過当競争を生み出して、妥当な保険料率を無視したダンピング競争が行われて、保険会社は、安い料金で少しでも多くの顧客を獲得し、それを運用することによってもうけを出すという方針をとりましたが、うまくいかないで、経営悪化とかあるいは倒産に追い込まれて、かえってその後の保険料が高くなるという事態が八〇年代の半ばには生まれております。そして、それが深刻な社会的な影響ももたらしておりまして、保険料を払えない企業の倒産が相次ぎ、保険料に見合わない分野についてはサービスを停止するということも行われたことは御存じのとおりであります。  当時の「タイム」、これは八六年ですけれども、「お気の毒にアメリカさん、あなたの保険はキャンセルされましたよ」というような表題のものまで出るような深刻な事態でありまして、例えば、ここで言われていることは、ハワイ諸島のモロカイ島の五人の医師は、医療過誤保険の保険料が産科の診察料収入を上回ってしまったため、新生児の分娩手術をやめてしまっただとか、だから妊婦はそのために飛行機で別の島へ行かなきゃならなくなったとか、あるいは、ニューヨーク市のルーズベルト島とマンハッタン島を六分間で結ぶケーブルカーの賠償責任保険の年間保険料が八十万ドルから九百万ドルにはね上がって運行休止に追い込まれた、その結果、島民五千二百五十人はバスや地下鉄で一時間かけて通勤を強いられるような事態が起こった、こういうことも報道されております。  だから、日本は一周おくれだか三周おくれだか何だか知りませんけれども、しかし、今後の保険業を展望する上でもこういう教訓は本当にしっかり学ばなきゃいかぬわけで、競争が妥当な保険料率から保険会社の乖離を促して、ダンピングの横行とかそれによる経営悪化や倒産、そして保険料の高騰、こういうことが起こらないようにする必要が私はあると思います。  大臣にお聞きしたいんですけれども、そもそも保険業と競争原理というのはうまく融合するんですか。
  263. 福田誠

    ○福田政府委員 特に損害保険の場合には、御指摘のように、ダンピングが行われやすい、あるいは逆に料率が高騰する、あるいは引受拒否が行われるというような、そういう弊害が、競争が余りに激しく行われますと諸外国の歴史を見てもございます。他方で、保険会社にもう少し競争原理を導入するということも、これまでの日本の保険業界でいいますとまだその余地があるということでございますので、その辺につきまして、今後も、御指摘のような課題が重要な点であると受けとめて適切に運営してまいりたいと思っているわけでございます。
  264. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 もう終わりますが、アメリカでは、やはり今逆に競争に一定の制限を加えるという方向が顕著になってきて、カリフォルニア州では事前認可制が取り入れられたり、ニューヨーク州では保険料率の変更は前年のプラス・マイナス七%までにするという規制が取り入れられたりしているわけでありまして、そういう点では、保険業が公的性格に見合った運営がなされるようにすることを本当に最大限に考えていかなきやならぬということを述べまして、質問を終わります。
  265. 村上誠一郎

    村上委員長 次回は、明十三日水曜日午後二時理事会、午後二時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三分散会