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1998-01-23 第142回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年一月二十三日(金曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 村上誠一郎君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 坂井 隆憲君 理事 浜田 靖一君    理事 池田 元久君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 谷口 隆義君       今村 雅弘君    岩永 峯一君       大石 秀政君    鴨下 一郎君       河井 克行君    桜田 義孝君       杉浦 正健君    砂田 圭佑君       中野 正志君    根本  匠君       宮路 和明君    村井  仁君      吉田六左エ門君    渡辺 具能君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       上田 清司君    北脇 保之君       末松 義規君    中川 正春君       日野 市朗君    藤田 幸久君       赤松 正雄君    河合 正智君       並木 正芳君    小池百合子君       鈴木 淑夫君    西田  猛君       佐々木憲昭君    佐々木陸海君       吉井 英勝君    秋葉 忠利君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 三塚  博君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      塩谷 隆英君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房長 武藤 敏郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長   原口 恒和君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主計局次         長       藤井 秀人君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君  委員外出席者         経済企画庁調整         局財政金融課長 奥田 宗久君         経済企画庁調査         局内国調査第一 古川  彰君         課長         厚生省社会・援         護局企画課長  大泉 博子君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君 l 委員の異動 一月二十三日  辞任         補欠選任   佐々木憲昭君     吉井 英勝君 同日  辞任        補欠選任   吉井 英勝君    佐々木憲昭君     ————————————— 一月二十三日  平成十年分所得税特別減税のための臨時措置  法案内閣提出第三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  預金保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一号)  金融機能安定化のための緊急措置に関する法  律案内閣提出第二号)  平成十年分所得税特別減税のための臨時措置  法案内閣提出第三号)      ————◇—————
  2. 村上誠一郎

    ○村上委員長 これより会議を開きます。  内閣提出預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案の両案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。根本匠君。
  3. 根本匠

    根本委員 自由民主党の根本匠であります。私は、金融法案について質疑をさせていただきます。  今回の金融法案、これは公的資金を導入するということでありますから、国民の理解を得ることが大前提であります。したがって、今回の金融安定化法案、これがなぜ必要なのか、どのようなねらいなのか、そして、これを講じなければどうなるのか、私は、法案審議の中でわかりやすく明確にすべきだと思います。論点幾つかに絞られるわけでありますが、論点整理しながら一つ一つ明確にさせていただきたい、こう思います。  今回の対策の骨子でありますが、これは二本柱で成っておりまして、一つは、金融機関破綻した場合の預金者の保護、そして預金は全額保護する。もう一点は、一つ銀行破綻が他の健全な銀行波及することを防ぐ、健全な銀行体力を増強できるように自己資本を充実して金融システム全体の不安を解消し、安定を確保する、これが大きなねらいであります。  特に、今回の最大のポイントは、金融機関自己資本充実支援として優先株劣後債公的資金で購入できることにした、健全な金融機関連鎖破綻地域経済やあるいは日本経済世界経済への波及を防ぐ、これが大きなポイントであります。特に、健全な金融機関への公的資金投入、これが大きな論議を呼んでいるわけでありますが、私は、これは政争の具にすることなく、その必要性背景、内容、効果について冷静な政策論議をすべきだと思います。  この金融安定化法案の大きな争点論点は、私は大きく言えば二つあると思いますが、一つは、現在の経済景気危機的状況、あるいは金融不安、金融危機状況をどのように認識するのか。もう一点は、不測の事態が生じてから後手後手対応をするのか、そうではなくて、最悪の事態を想定して、政治は責任でありますから、万全の政策の備え、制度を仕組む、これが大切な点だと私は思います。  このような現状認識のもとに、幾つかの論点についてお伺いしたいと思います。  一つは、現在の景気状況あるいは金融危機状況金融不安の状況、これをどう認識しているかということでありますが、第一点として、これは経企庁にお尋ねをしたいと思いますが、現在の景気経済状況をどのように認識し、判断しているか。  私の認識を言わせていただければ、バブル不況、これは、九五年、九六年のGDP成長率がそれぞれ二・八%、三・二%でありますように、九七年の半ばまでは従来の景気循環型の景気回復過程をたどってきたのだと思います。ただし、今回のバブル不況は、景気循環型と資産デフレの複合型、しかも不良債権が滞る、こういう特質がありますから、バブル後遺症、特に株、土地の資産価格下落資産デフレ、そして不良債権の足かせ、これが重荷になっていたわけであります。  不良債権処理してきてはいたものの、不良債権処理が十分に進まない中で、九八年四月からの自己資本比率の規制、早期是正措置金融ビッグバンへの対応、こういう状況が参りましたから、金融機関経営体質強化のためにいわゆる貸し渋りを行って、年末から金融不況の様相を呈してきた。さらに、ここにタイ、香港、アジア金融危機が重なる、こういう状況であったと思います。特に、山一拓銀破綻拓銀破綻は一上位二十行はつぶさない、こう言ってきただけに、金融不安心理を引き起こしてきた、こういう状況であると思います。  今私が大変懸念しておりますのは、消費者のマインド。金融不安が景気先行きを悲観的なものとして、今、たんす預金消費者が財布のひもを締める、こういう現象が起こっております。消費の萎縮が起こりつつある。たんす預金金融機関信用創造機能収縮につながってまいりますし、消費の停滞は景気をさらに悪化させる、マイナス連鎖が懸念されるわけでありますが、この現状景気の動向を、多少の経緯を踏まえて、どのように認識しておられるのか、経企庁にお伺いをいたします。
  4. 古川彰

    古川説明員 お答え申し上げます。  委員指摘のように、昨年ぐらいから日本景気はある程度上昇過程に入ってはいたわけですが、昨年度の消費税率引き上げ前の駆け込み需要あるいはその反動減ということがありまして、今年度当初これが予想以上ありまして、大きなマイナス成長に四−六月期はなったわけでございます。  その後、ある程度回復動きというのは一時的には見られたわけでございますけれども、秋口になりますとまた、御指摘ありましたように、バブル後遺症ともいうべき不良債権問題あるいは不良資産問題ということの顕在化がありまして、企業倒産株価下落金融機関破綻といったことを背景にいたしまして、家計経済先行きに対する不透明感も大きくなりまして、このところ消費は弱含んでいるということでございます。  それから住宅建設も、いわゆる駆け込み需要反動減下げどまりの方には向かっておるとは思いますけれども、なお弱い動きが続いているということでございます。  こうしたことで、景気はこのところ足踏みという状況でありますけれども、特に株価下落金融機関経営破綻、それからアジア情勢の急速な変化ということを背景にいたしまして、家計とか企業景況感は低下している。御指摘いただきましたように、やはり個人消費などの実体経済にも影響を及ぼしているということで、ますます厳しさが増しているというふうに認識してございます。
  5. 根本匠

    根本委員 私は今、景気経済は正念場だと思うのですね。  さらに、この状況認識の中で、今回、金融システム安定化のための緊急措置を講じたわけでありますが、その緊急措置を講ずるに当たっての経済認識、今一般的な状況を答弁されましたけれども、特に金融不安の状況あるいは金融危機状況、この状況があったから今回の金融安定化法案をつくったわけであります。  私は、この法案をつくる前提としての金融不安、金融危機状況、これが非常に大事なポイントだと思いますが、昨年、山一拓銀破綻をいたしました。ここのポイントは、特に重大なのは、コール市場インターバンク市場資金の流れ、ここで資金が取りにくくなった。山一拓銀破綻は、コール市場資金が取れなくなって資金繰り破綻をした。  この破綻後、ここが大事な点でありますが、金融市場では一部金融機関に対する信用供与が急激に絞り込まれる。海外ではジャパン・プレミアム問題が再燃する。内外インターバンク市場信用収縮動きが出てきて、日本金融システムに対する不安が異常なほど高まった。ここが私は危機状況認識だと思います。  一番の問題は、金融機関連鎖破綻が起こることであります。金融機関本質決済機能でありますから、一つ金融機関破綻が他の金融機関破綻波及するシステミックリスクが存在する、これが非常に怖いわけですね。インターバンク市場で三洋証券に見られるようなデフォルトが起きた。資金の出し手が資金を絞り込んだため、拓銀資金繰り破綻をした。こういうことが続けば危機連鎖していく、システミックリスクが現実化する。この辺が非常に重要な状況認識だと私は思います。  金融機関破綻、これは借り手実体経済に大きな影響を与えます。日本の場合、どういうことか。アメリカのRTCの初代総裁のウィリアム・シードマンさんに言わせると、日本企業には系列関係があるため、一つ金融機関が倒れると系列企業への波及が大きい、金融危機経済全体に与える影響の深刻さはアメリカの二倍、三倍になるだろう、こう言っております。  例えば日本金融機関、ビッグスリーの金融機関の例えば一つ銀行が一社五千万以上を融資している取引先企業売上高を合計いたしますと六百兆円に及ぶ、こう言われておりまして、国内経済のみならず世界経済にも大きな影響がある。要は、金融システムというのはそれだけ経済根幹部分、ここに大きな危機的状況が懸念されるのではないか、こう思いますが、現在の金融不安の状況をどのように認識しておられるのか、その点をお伺いいたします。
  6. 山口公生

    山口政府委員 今根本先生の御指摘を聞きながら、いろいろ複雑な仕組みで複雑な現象を起こしておりますが、大きく話を分けてみたときに、御指摘のとおり、この金融不安の問題は、分けられる面、側面があると思うのです。  一つは、マーケットのすくみ現象、今先生がコールでおっしゃいましたすくみ現象、これが体でいいますと血流機能不全に陥らせる、こういうことを御指摘いただいたと思うのですね。それからもう一つは、悪循環を通じた実体経済への壊滅的な悪影響といいましょうか、そういったことの御指摘だと思います。  例えば、株価が下がりますと金融不安が高まる、そうすると貸し渋り等の現象が起きる、そうすると倒産がふえる、そうするとまた不良債権がふえる、そうするとまた金融不安になる、それでまた株が下がる、こうぐるぐるぐるぐると回ってしまう。それがだんだんらせん状的に悪い方向へ行ってしまうという、金融が持っている、血流と申し上げましたが、血流であるがゆえに経済全体に影響がどんどん及んでいく、それが悪循環を及ぼして、金融だけの世界ではなくて実体経済にまで大きな悪い影響、場合によっては雇用の問題にまで発展するということを先生指摘になったと思います。まさに私もそういうふうに思います。  市場が完全であればそれはすぐ治癒されるかもしれません。マーケットも、賢明な、優秀な人たちマーケットを担っておりますから、流れないところがあったら、すぐそこはプレミアムがついてすぐ資金が流れる、そういう状態でありますといいのですが、そういうことがないということを今御指摘になりました。私の方も、そういうふうな観点から、今の経済あるいは金融情勢は非常に警戒をしておかなければならないというふうに思います。
  7. 根本匠

    根本委員 危機危機だと言うとなかなか難しい点があるのですが、いろいろな影響がありますから。ただ、確かに警戒をしておかなければいけない状況にあるわけですね。  私は、局長の言ったとおりだと思いますが、そういうことになりますと、この金融不安に対応するためには、破綻した場合の対処システムをどうするか、これを明確にしなければいけませんし、金融システム全体の安定を図る、こういうスキームを明確化しなければいけない、こういう必要性が非常に出てくると思うのですね。  ですから、今回の案は、日本発金融破綻世界恐慌は起こさない、これは橋本総理もかたい決意で表明しておられますが、やはり我々政治家ですから、金融危機管理、この発想が必要だと思います。今回の案は、その意味ではぎりぎりの、未然の防止策をあらかじめ用意した、これが今回の案の基本的な考え方であると思います。  次に、具体的な今回の法案論点幾つか挙げていきたいと思います。  幾つか柱はあるわけですが、一番の大きな論点は、金融安定化策の柱としての自己資本注入金融機関自己資本充実支援を、優先株劣後債、これを公的機関で時限的に、審査機関判断によって行う、これが一つの大きなポイントであり、争点だと思います。  この自己資本注入二つのケースがあって、破綻処理受け皿金融機関への資本注入と、一般金融機関への資本注入、この二つのケトスがあるわけですが、最も争点となっておるのが一般金融機関についての資本注入であります。この際の資本注入基準、どのような金融機関を対象にどのような場合に優先株等を購入するか、この考え方をお聞きしたいと思います。  金融不安の大きな要因一つは、金融機関自己資本、これが不良債権処理あるいは株価下落で目減りしていることでありまして、金融問題の本質部分自己資本であります。自己資本が薄いと破綻のおそれも強まりますし、国内外での信用も下がる。本来は、銀行が増資によって独自で自己資本をふやすべきでありますが、現状では市場でなかなか調達しにくい。事態緊急性、こういうことにかんがみて、政府自己資本を補ってやろう、貸し渋り現象も回すようにしてやろう、こういうことであります。  自己資本の増強は、あくまでこれはシステミックリスク対応する、金融システムを守ることが本質でありまして、金融ビッグバンの時代ですから、当然ずさんな経営金融機関破綻しても仕方がない、市場から退出してもらう、これが原則であります。健全な金融機関破綻して、健全な企業借り手が黒字倒産して破綻する、こういうシステミックリスクを回避しなければならない、これが本質でありますが、今回の資本注入考え方については、要は、健全な金融機関注入しましょうと。  これはいろいろな要因があるわけですが、手を挙げると、手を挙げた金融機関が危ないと思われる可能性、そんなこともありますから、なかなか手も挙げにくいのかな。健全な金融機関に、希望するところに資本注入して、体力に余裕を持たせて金融システム全体に安心感を与える一これは、あわせて不良債権処理も進むし、貸し渋りにも効果があるだろう。破綻するような金融機関には注入しない、資本注入考え方はこういう考え方だと私は思いますが、この点についての御答弁をお伺いしたいと思います。
  8. 山口公生

    山口政府委員 今先生の問題にされました一般金融機関に対する資本注入システミックリスク対応部分でございますが、確かに、破綻するような、あるいは破綻が見込まれるような銀行注入するということは個別銀行救済そのものでございますので、そういうことはしないという前提に立っております。  そうでない銀行についてシステミックリスクが生じるような場合に対応するということでございますけれども、先ほど先生もちょっとおっしゃいましたが、手を挙げると危ないと思われるんじゃないか、そういう気持ちは彼らにもあるかもしれません。しかし、システミックリスクあるいはそれに近い状態というのは、そうは言っていられないということになるわけです。  それはなぜそういうことになるかといいますと、例えば、三月末の株価というのはわからないんですね、今一万六千数百円ありまずけれども。じゃ、それで仮置きしていいのかというと、ひょっとしたらまた一万幾らに下がるのではないかという不安感というのは絶えずついて回るわけです。  そうすると、ある一瞬で決着がつくとなりますと、やはりそこには防衛的な気持ちといいますか、余計に準備をするという気持ちが働くわけでございます。そうすると、やはりいろいろな手だてを備えて危機管理をやっておくことがそういった不安感を除去する。いざとなったらこういうことをお願いできるということがありますと、それは銀行の行動にも大分違いが出てくると思うのです。  貸し渋り現象をおっしゃいました。これは、かなり激しく不安感が高まりますと激しく起きてくるわけでございます。それは経済全体に悪い影響を及ぼすという御指摘もしばしばあります。そういったことを考えたときに、やはり十分なる危機管理対応をしておく。  しかも、キャピタルを、自己資本を充実させるといっても、整理回収銀行がずうっと株を持ち続けるとかずうっと劣後債を持ち続けるということはあり得ません。これは一時的なものでございますので、それはいずれ市場に返すということでございますので、そういった措置はぜひお認めいただきたいと思っております。
  9. 根本匠

    根本委員 今、金融システム安定感を与える、あるいは一瞬で決着がつく、こんなこともありますから、確かに金融システム安心感を与える、そして優先株は、おっしゃるようにいつまでも持っているわけじゃありませんから、事態が改善したら政府がまた戻せばいいということでありますから、私もこのスキームが、要はここが一番の分かれ道になるのですが、このスキームは私もぜひ用意すべきだろう、こう思います。  ただ、これに関連して出てくるのがモラルハザードの問題であります。  今、これは個別金融機関救済ではない、これは当然そうでありますが、安易な資本投入モラルハザードを招きますから、このモラルハザードをいかに防ぐか、この策が大事であります。当然情報公開情報開示、これが必要ですし、とにかく経営状況は徹底的に開示して、リストラなどの改善計画、これも必須の条件。要は、この資本注入に当たっては、金融機関経営合理化、これが大前提になります。  徹底的な経営リストラを含めて、健全な金融機関としてやっていける金融ビッグバンの備え、これも公的資金投入に当たっては準備すべきでありまして、このモラルハザードの問題、特に資本注入に当たっては、人員削減あるいは店舗の整理あるいは給与の問題、いろいろあると思いますが、金融機関経営合理化努力の義務づけなどのモラルハザードを防ぐための考え方、これについてお伺いをいたします。
  10. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  モラルハザードということそのものは、その経営者気持ちの問題でございますのでなかなかその対応は難しいわけでございますけれども、基本的に、モラルハザードを起こさないための有効な手段は、私も、先生がおっしゃいましたように、情報が開示される、あるいは事柄が明らかになって国民皆様の目に触れるということが一番効果があるような気がいたします。  したがって、今回の御提案申し上げております法律におきましても、公正中立審査委員会を設置しまして、そこで審査基準を決めていただき公表すると同時に、議事録も公表しますし、それから今御指摘の、計画提出を義務づけるのですが、その議決に当たっては、これを基本的には公表するというふうにしておりますので、そうした場合に、国民皆様に公表される形がある以上は、モラルハザードは生じにくい仕組みにはなっているのではないかというふうに考えております。     〔委員長退席浜田(靖)委員長代理着席
  11. 根本匠

    根本委員 確かにモラルハザードを防ぐための仕組みは担保されているわけでありますが、モラルハザードが私は一番のこの運用の問題であると思いますので、国民の皆さんがわかりやすいように、スキームは用意はされておりますが、透明に、そしてわかりやすく、しっかりとこれは取り組んでもらいたいと思います。  次に、今回の金融安定化対策を講ずるに当たっての金融機関不良債権状態、これをどのように把握して判断しているのか、この点についてお伺いをしたいと思います。  我が国金融機関経営実態については、内外マーケットから、特に不良債権実態が明らかでないという強い不信感があります。不良債権のディスクロージャー、これは前々から言われておりますが、これが非常に重要であります。  現状判断で重要なのは、実際の不良債権、取り組むべき、処理すべき不良債権の額がどの程度か、つまりボリュームが大事だと思いますが、最近三つ数字が出てきておりまして、一つは去年の九月の二十八兆、最近は、SEC基準を適用すると、例えば延滞債権の期間を六カ月を三カ月ぐらいに絞り込むと、さらにふえて三十四兆になる、こういう数字も出てきておりますし、それから自己査定で七十七兆円という三つ数字が表に出ました。  ほかにもさまざまな数字が躍っていて、不良債権の数は八十兆から百二十兆であるとか、百兆ぐらいあるだろう、こういうことが躍っているわけですが、やはり具体的に明らかにしないと私はいたずらな混乱を招くと思います。要は、隠しているのか、定義の問題なのか、あるいは両方なのか。本来処理を要する不良債権は何かをきちんと明らかにすべきであると思います。  私が申し上げましたこの二十八兆、三十四兆、七十七兆、それぞれの数字の取り扱いと意味を少し明確にお答えいただきたいという点と、処理を要する不良債権は今まで減少してきておりますが、その処理されている状況。  それから最後に、三十兆円の今回の枠組みを用意したわけですが、それとの政策の当たりをつける意味での関連、この三点についてお伺いをいたします。
  12. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  今先生三つ数字をお挙げになりました。二十八兆、三十四兆、七十七兆とおっしゃいましたが、二十八兆という数字は毎半期ずつに公表しております公表不良債権で、これは客観的基準でもって、こういう条件に当たったものはみんなピックアップしなさいということで、各行が全部共通の土俵でもって出してきている統一基準による不良債権というものでございます。これは、三十八兆ぐらいあったのが、今二十八兆ぐらいになっています。しかも、それについてはかなり引き当ても進んできておる、こういうような状態、これが二十八兆で、これはまた私どもも発表している数字でございます。したがって、その同じ系列を見る限りにおいては、減ってきているということは万人がお認めいただけると思います。  ただ、その数字自体が、ちょっとそのピックアップするものが少し漏れがあって、もうちょっと拾い上げるべきだという議論があって、今度三月期からSEC基準並みでひとつやってみてくださいということを強く要請している、その額はまだどこもやっていません。今これから大急ぎで作業をするわけで、プログラムを組んだりしないといけませんから、作業をやるのですが、それを推計した、だれかなさった方がいらっしゃるのかもしれません。  それで、ちょっと新聞等に出ていたということで、これはどういう発想かなと私が推測するに、東京三菱銀行という、個別名を挙げるのは語弊があるかもしれませんが、実はSEC基準アメリカにも上場している銀行としては東京三菱銀行があるのですね。国内での基準と向こうでの基準が一・二倍とか一・三倍、二割とか三割増しぐらいだというふうに言われているというので、ばっと掛け算をしたという推定値でありますから一この三十四兆とかおっしゃったのは、これは全く今の段階ではないはずの数字でございます。  それから、七十七兆と申されたものは、これはそういう客観基準でもってピックアップしたものというよりは、貸付債権及び保証債権を回収可能性でもって四つに分類してもらったというものであります。それで、本当は七十七というのは、二から四を足したのが七十七になるのですが、人によっては三と四の十一兆という人ももちろんおります。  それで、第一分類にしておりますのは、これは全く問題ない。例えば住宅ローンなどで、もういつも給料から天引きされているようなものというのは、これは取りっぱぐれはほとんどありませんから、そういうものは第一分類ということになる。第二分類が、個別にちょっと管理が必要ですよという、個別管理の必要な債権。それで第三分類が、やはり回収の面からいうとかなりの懸念があるなというもの。それから第四分類が、もう絶対取れないというものです。  そうすると、三と四を足すと十一兆ぐらいで、二まで足すと七十七兆という。だから、考え方基準が全然違いまして、それで三と四の中でも、もう引き当てているとか担保があるものは、どれくらいロスが出るかの判断でやっているものでございますので、そこはもう除外したりほかの分類に入れたりというものでありますから、もともと比較すること自体がやや問題でありますけれども、ただ、そういういろいろなとり方があるということは認めざるを得ないと思うのです。  それで一先生のおっしゃいました三十兆の話との関連からいいますと、特に今の不良債権数字は、主に破綻処理でどれくらい預金者の保護のためにお金が必要かという部分に当たる議論であります。それは三十兆のうちの、国債で七兆を交付する部分に当たるのですけれども、先ほど申し上げたような二十八兆ベースの数字で要処理が、担保とかそういうのが全然ないものがあと四、五兆ぐらいはあるだろうという数字の感覚。それから、先ほど申し上げました三と四、つまりロスになりそうなのが十一兆。ただ、これももう今期で償却しますから大分減ると思いますが、そういった数字の感覚。  それが全部ロスになればそうなんですけれども、ほとんどの金融機関はそれを将来の利益で埋めていくわけです。つまり、全部倒産するわけじゃありません。ごく一部の倒産にしかすぎませんので、七兆の御準備をいただければまあ大丈夫だろう。昨年の大型破綻があって非常に国民の皆さんに御心配をおかけしておりますけれども、これだけの備えをさせていただければ御安心いただけるのじゃないかというものでございます。
  13. 根本匠

    根本委員 今私は、ちょっと不良債権処理不良債権と言われていろいろと数字が躍っていて、巷間いろいろな数字が出るものですから、ここのところはきちんと整理して、政策のターゲットをはっきりさせた方がいいというつもりで質問をさせていただきました。  ですから、二、三、四合わせると七十七兆ぐらいになるわけですが、これはどうも八十から百二十兆とか百兆とか言われる数字に相応するのだろう、こう思います、隠していない限り。だんだん実際の数字に近づいてきてはいるのであろう。特に、この要処理額はどういう額か、今局長から御答弁いただきましたように、やはり本当に要処理になるのがどの程度かという政策の当たりもきちんとつけた方がいいということで今不良債権の質問をさせていただいたわけです。  もう時間がありませんので終わりますが、もう一つ大事なのは後始末の問題。住専処理機構が今非常にきちんとやっていただいておりますが、要は後始末の問題が大事なんで、今回、住専処理機構と同じような立入調査権も付与して、債権回収を整理回収銀行がしっかりやるような仕組みも整えていただきました。大事なのは、あの住専処理機構が随分優良な実績、ノウハウも積んでいるでありましょうから、債権の回収、そして借り手、貸し手の責任、経営責任と刑事責任を、住専処理機構のノウハウも活用しながら、連携して、きちんと厳しくやっていただきたいと思います。  最後に、今回の法案でありますが、諸外国の例でも今回のような資本注入、これはアメリカのRFC、復興金融公社、これも大恐慌の際に自己資本増強を支援するための優先株の買い上げをやっておりますし、北欧三国でも、金融危機の際に民間銀行資本注入したり、あるいは買収したりしております。  今回,公的資金投入に当たって、あくまでも預金者保護に限るべきである、資本注入銀行救済だから認めない、こういう議論もありますが、私はここは状況認識の差だと思うのです。前段で申し上げましたように、今の金融危機状況をどう認識するか、この辺の差が対応策の差になってあらわれてきていると思います。金融危機実態を重視して厳しく認識するか、まあ言葉は語弊がありますが、甘くとらえるのか、この差と、やはり政治の責任感、重い決意の差だろうと思います。  私は、政治は権力ではなくて責任だと思っておりますので、今最も求められるのは最悪の事態を想定した金融危機管理経済危機管理金融システムを守るという国家の強い決意であるということを申し上げまして、法案の早急な成立を念願をいたしまして、終わります。ありがとうございました。
  14. 浜田靖一

    浜田(靖)委員長代理 次に、河合正智君。
  15. 河合正智

    ○河合委員 新党平和の河合正智でございます。金融二法について大蔵大臣に御質問申し上げます。  この日本がいまだかつて遭遇したことのない大きな金融危機にありまして、この二法で想定されておりますこのスキーム、これを実行していくためには、三十兆円という巨大な金額からしましても、国民の信任が得られなければそれは実現不可能なことだと思います。一九二九年のアメリカの恐慌におきまして、フーバー政権は信任されず、ルーズベルト政権によって初めてこの金融危機が乗り越えられたという歴史的経緯からも明らかでございます。  その意味におきまして、私は、このスキームに対して政権を国民が信頼されるかどうか、もっと突き詰めて言えば、大蔵大臣、大蔵省が国民からきちっと信頼されるかどうかというのが非常に大きなかぎを握っているのではないかと思います。その意味におきまして、冒頭に、大蔵省をめぐって、私からしましたら余りにも落胆するような不祥事が引き続いて起きております。  例えば一九九五年三月、二信組事件に絡み、東京税関の田谷税関長、また当時の中島主計局次長、過剰接待を受けていたことが発覚いたしまして訓告処分を受けております。同じく中島氏につきましては、その後辞職をされております。それから関東信越国税局調査査察部長、これも訓告処分を受けております。また、涌井官房長に厳重注意処分がなされております。薄井主税局長には、同じく厳重注意処分がなされております。第一勧銀への検査で当時の検査官二人が国家公務員法違反で戒告処分を受けております。  こういった一連の事件に対しまして、大蔵大臣はどのようにお考えでございますか。まず最初にお伺いさせていただきます。
  16. 三塚博

    ○三塚国務大臣 国家公務員は誠実に職務に専念をする、もって国民のサーバントとしての責任を果たす、こういうことにあろうかと思います。  そういう観点から考えますと、数々の事例を引用されての御質問でありますが、まことにざんきでありますし、遺憾千万なことであった、こう存じますと同時に、それぞれ公務員法上の処分等を行ってきたわけでございますが、この事態を原点に戻す努力を必死になってやり遂げていかなければならない、こういうことで、就任以来、職員各位を督励、激励、時に叱咤をいたしまして、今日的課題に全力を尽くしてきたところであります。  当然のことながら、そういう必死の頑張りで信任を少しずつ回復をしていかなければならないということであります。改めて、信任を、信頼の基盤を大変揺るがすようなことが相続きましたことに対し、国民各位に対し深くおわびを申し上げるものであります。
  17. 河合正智

    ○河合委員 ただいま大臣はサーバントという言葉をお使いになりました。パブリックサーバント、私は、パブリックサーバントであれば、これは起こりようがない事件だと思います。  引き続きまして、大蔵省OBの日本道路公団理事が、野村証券から総額二百六十万円の接待を受けたとして収賄容疑で東京地検に逮捕された。これは、報道によりますと、日本道路公団理事になってからだけではなく、大蔵の検査部長当時も供応接待を受けていたということがマスコミによって報道されておりますが、それが仮に事実だとしましたら、これはゆゆしき、大蔵省にとって私は電撃的な衝撃が走る一つの事件ではないかと思います。  私は、この一連の事件を見まして、よく頭の中で整理がつきません。例えば、私の部屋にいろいろ説明に来てくださる大蔵省のお役人の方、まことに若く優秀で、どんな問題をお聞きしても全部その場で答える。夜も遅くまでお仕事をされていて、自宅に帰らない日もある。そういう姿と、それからこの一連の不祥事、特に本件、収賄容疑で逮捕された事件、頭の中で結びつかないのですね。  しかしこれは、これだけたび重なって起きているということは、むしろ大蔵省の構造的な腐敗を象徴しているのではないか。官庁の中の官庁と言われている大蔵省は、明治以来、日本を、国を背負ってつくってきたという自負があると思いますが、こういう優秀な人材と精密な組織というのは外からはつぶれない。歴史の教訓が残すように、内部から崩壊を始めている証左ではないかと思います。  私は、その点も踏まえまして、この点について大蔵大臣として、このまま放置すれば、若い諸君、大蔵省の職員の皆さんというのは本当にやる気をなくすと思いますよ。例えば公務員倫理法を橋本内閣で制定するとか、そういう、国民が見て本当によくわかる対策をどのようにお考えか、大臣からお聞きしたいと思います。
  18. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいま大蔵官僚の仕事ぶりについての御紹介をいたしながら、構造的な事件ではないのか、こういう指摘であります。必ずしも全体がそうだとは思いませんが、しかし、起きた事件の経過を見てまいりますと、そう言われても反論のできない深刻な問題として私自身受けとめなければならぬと思っておるところであります。  昨今の世論、それを代表して、国会の論議というものはまさにそこに集中いたしておりますし、それも、多くの職員はまなじりを決して職務に精励をしておりますことも委員から御紹介をいただいたところであります。私もそう思っておるわけでございますが、やはり国家公務員法の基本、憲法に定める基本、こういうものにのっとって、絶えず緊張感の中で全力を尽くしていくというのが大事な心構えでなければなりません。  そういう点で、本件について、ただいま倫理法なども思い切ってどうだという御提案もいただきました。御提案はそのままちょうだいいたしておるわけでございますが、既に御承知のとおり、このほど公団の経理担当の事件が起きました直後に、大蔵省としてみずからの調査を行い公表すべし、こう申し上げたところであります。  そして再発防止という、ありきたりの言葉でありますが、これを真剣にとらえながら取り進めるということになりますと、綱紀の厳正な保持であります。綱紀粛正の徹底であります。よって、私は、新たな手だてを真剣に今検討いたしております。事務責任者にも命じてあるところでございます。格段のまた御鞭撻を賜りたいと存じます。
  19. 河合正智

    ○河合委員 みずから調査されているということでございます。現職、現役官僚の疑惑がやはり報道されておりますが、もし現職官僚が逮捕されるというような事態になりましたときはどうされますか。
  20. 三塚博

    ○三塚国務大臣 そうならないことを願っております。祈念しておると言った方が率直な心情でありますが。  仮に、そういう場合どうするかということでありますが、捜査上の決定という冷厳な事実を踏まえてのことでございますから、その捜査の進行を最大の関心を持って見詰めることは当然でございますが、厳正な対処が望まれることは当然のことであります。ただいまの段階でありますので、これだけ申し上げさせていただきます。毅然とした態度で対応しなければならぬ、こういうことであります。
  21. 河合正智

    ○河合委員 それでは、二法の問題に入らせていただきます。  前回のこの委員会におきまして、私どもの同僚の赤松委員の質問に答えられまして、山日銀行局長は、今回の金融危機というのは複合不況、宮崎義一教授のお述べになったいわゆる複合不況という構造であるという答弁がなされまして、また同じように三塚大蔵大臣は、バブルの発生と崩壊に対する対応が不十分であったと率直にお述べになっております。  大臣、この点、御異論ございませんですね。席からで結構でございます。その前提に立ちまして、いろいろ質問をさせていただきたいと思います。  御案内のように、複合不況は、金融自由化という選択を行ったことから帰結している結果だと言われております。またそれは、そのまま従来型の単純な在庫循環的な景気後退とは異なるという認識であることも、また御案内のとおりでございます。これは、一九八四年六月の円転換規制の撤廃、一九八五年九月二十二日のプラザ合意、このときの大幅な円高による巨額な外国為替差損の発生、それを教訓としました日本の機関投資家によるアメリカ財務証券の大量売りが引き金となってアメリカのブラックマンデーの株価暴落が引き起こされた、これも検証されているところでございます。  この複合不況の特徴といたしましては、政府が複合不況であるということをお認めになった当時、宮澤大蔵大臣の時代から既にはつぎりしておりましたのは、複合不況であるというからには金融不良債権が累積してくる、そして貸し渋り現象が起きてくる、これが一番大きな特徴とされておりました。それによって民間の設備投資が長期にわたって停滞する、これもまた指摘されていたとおりでございます。  また、この複合不況という事実を検証されたことから明らかになってまいりましたのは、一九九〇年の東京株式の大幅の下落、そして一九九〇年、同じ年、三月、四月に起きましたニューヨーク市場のトリプル安というのが、これは東京、ニューヨーク市場のトリプル安がフランクフルト市場のトリプル高を招来していたということも検証されております。  東京とニューヨークの資金がフランクフルトに流入していたというこのマネーの流れでございますが、これはドラッカーが言うように、我々の前に残されているのは、経済のダイナミクスが決定的に、国民経済、一国経済主義から世界経済に移行してしまったという結論であるということでございます。  そして、やはり赤松委員指摘しましたように、スーザン・ストレンジが申しましたカジノ資本主義というのがある意味アジア通貨危機を引き起こしているとも言われておりますが、しかし、そのアジア通貨危機の根底にありますのは、日本と同じようにバブル崩壊による複合不況であることは、これは根底として見定めなければならないと思います。  したがいまして、こういう物の取引よりも金の取引の方に重点が移ってきている。一九九五年、WTO発表の年間の世界貿易額は五兆ドルでありますのに対しまして、IMFが調査した年間外国為替取引額は五百兆ドル。物の取引の百倍、金の取引が動いているというこの実態に対しまして、大臣は、今私が申し上げましたような認識に立たれておりますかどうか、イエス、ノーで簡潔にお答えいただきたいと思います。時間の関係で簡潔によろしくお願いいたします。
  22. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいまの経済学説、指摘を交えての先生の御見解であります。私も、その基本はそのとおり踏まえております。
  23. 河合正智

    ○河合委員 そういう認識に立ちますと、この日本が直面しており、また、この二法案で提起されている今回のスキームというのは、バブルの清算という点と、日本が抱えている金融システムを、グローバルスタンダードに向けて金融ビッグバンをしなければいけないという、この二つの要請が同時に重なっているという認識でこのスキームを私はとらえたいと思いますが、この点につきまして、大臣、どのようにお考えでしょうか。
  24. 山口公生

    山口政府委員 今、河合先生の、非常に歴史的に踏まえ、また非常に奥深い分析、敬意を持って聞いておりましたが、今回のスキームとの関係からいいますと、バブルの清算期にあるということは、私もそう思います。  そのときに、もう一つ考える必要があるのは、先ほど先生もいみじくもおっしゃいました、金の取引がすごい勢いで、また、時には暴力的な力でもって世界をめぐっているということでございます。それに対して市場が完全に対応し得る、つまりすぐ最適な均衡値を探り得れば、さほどそれは、投機家もそう一方的には動けないということだと思うのです。  ところが、昨年の十一月ごろから、私ども感じましたのは、市場においてもすくみ現象、つまり偏りが起きるわけです。マーケットというのは、もともと違った意見の人がいろいろなことを言うから、投機が起きても、すぐそれを違うと言う人がいて、それで損得チャラぐらいになるというのが普通のマーケットの感覚ですが、すくみ現象が起きますと、そこにはすき間がある。すき間があるとそこにはもっともっと投機が入ってくる。入ってくるだけではなくて、実体経済に悪い影響を及ぼす。この辺について、今、先生がその次におっしゃったグローバルスタンダードへ移行している過程だというところの問題とのぶつかり合いという点があると思います。  だから、いろいろなことを私ども学んでおりますし、日本経済全体がいろいろ経験しているということでございます。そのときにやはりこの危機をどうやって乗り越えるかということでいろいろな対応を考えさせていただいている、こういうふうに理解させていただきたいと思います。
  25. 河合正智

    ○河合委員 銀行局長の答弁を聞きますと、非常に頭のいい答弁ですから、決して失言されませんですね。お見事だとは思いますが。  私は今回のスキームを考えます場合に、やはり橋本総理みずからがおっしゃっている二〇〇一年三月に金融ビッグバン、これを世界に向かって宣言されているわけでございますので、金融ビッグバンは、総理みずからおっしゃっておりますように、フリー、フェア、グローバル。その二年後を想定してこのスキームを見てみますと、私は、このスキームというのはいろいろな問題を抱えておりますけれども、特に、一般金融機関救済するという金融危機管理勘定を設けまして、一般金融機関金融危機時も救済していくというこのスキームというのは、私は、今大臣がお述べになり、銀行局長が控えめにおっしゃった点からしますと矛盾する、このように思えてなりません。  といいますのは、二年間、仮に、このスキームというのは、大蔵省の護送船団方式と言われておりますけれども、護送船団方式というのは一番ゆっくり進む艦船を基準として護送していくわけでございますから、二年間、一番ゆっくり進む艦船に照準を合わせて、そして二年後にいきなりビッグバンを起こしたときの日本金融機関というのは、ある意味ではひとたまりもなく世界金融資本のえじきになるのではないかと深く懸念しているところでございます。その点について、大臣、いかがお考えですか。
  26. 三塚博

    ○三塚国務大臣 政府委員政府委員の立場で答弁されたわけですが、国務大臣、大蔵大臣として、また政治家として物事を考えていかなければなりません。  危機管理という言葉は一面のものをとらえて言うこともあると思いますが、まさに経済危機管理というのは、グローバルな今日にどう対応するか、一国経済を既に通り越えて展開をしておる現実、大きなお金が動いておる現実でございます。  今日の置かれておる信用不安、そしてこれが危機的状況になるであろうという認識、私も共通であります。ですから、危機に逢着をいたしまして混乱をする前に、十二分の手だてを講じて、国民各位の安心をいただく、経済の運営がスムーズに行われる基盤をつくり上げていくということに尽きると思っております。  まさに、今日のこの法律は、危機的状況の基本的な認識の中で、例外的な緊急措置ということで、国民経済を守り抜くという断固たる決意の中で取り組む、それ以外に政治として、内閣として、政府として責任を果たすことはあり得ないのではないだろうか、こういう認識のもとで取り組まさせていただいておることであります。  金融システムの安定維持が国民生活のすべての前提であるということは、既に御案内のとおりであります。雇用もそうであります。また同時に、政治安定、社会的安定をもたらす日本の民主主義が正常に回転をしていく基盤でもあろうかと存ずるわけでございまして、全力を尽くして成案をつくり、提案をさせていただいたところでありますので、格段の御審議を賜りたいと存じます。
  27. 河合正智

    ○河合委員 よくわかりました。よくわかりましたけれども、大臣の今の考え方の中にこのスキームが非常によくあらわれているなと思いました。危機管理だと。だから、前回のこの委員会でも答弁されておりましたように、ありとあらゆる選択肢を用意するように指示したと。これは精神訓話としては非常にいいのですけれども、ある意味で哲学と理念がないといいますか、ここのスキームは、例えばアメリカにおけるRFC、一九三〇年代、それからRTC、一九八〇年代でしょうか、この二つ考え方をそのまま何の矛盾もなく並べたという、ありとあらゆる選択肢にはなっておりますけれども、しかし、これで本当にいいのでしょうか。  といいますのは、一九三〇年代におけるいわゆる銀行と、現在、特に日本が置かれている銀行業務のあり方というのは全く、先ほどの、物の流れから金の流れに変わってきたという経済実態の中で、例えば国民が期待しているのは、そんな一九三〇年代にあった銀行そのものを期待しているのじゃないと思いますね。もっと端的に言いますと、リスクはそんなに大きくない、しかも有効に資金を活用できる、そういう金融商品というものを期待しているのではないかと思います。  そうしますと、RFCで救済してきた考え方というのは現在にそのまま当てはまっているかどうかという検証を大蔵省はなされたかどうか、私は非常に疑問を感ずるわけでございます。これは答弁を求めますと、大臣の答弁は途中から、私理解力が弱いものですから、頭が混乱してまいりますので、この次の質問とまとめてお答えいただきたいと思います。  そして、そういう大きなスタンスに立ってこのスキームを考えました場合に、先ほどの委員が御指摘のように、やはりこの不良債権の総額というものが非常に不明確といいますか、先ほども山日銀行局長、私言葉じりをつかんで揚げ足をとるわけではございませんが、七兆円というところで感覚という言葉をお使いになりました。これは、あらゆる変化に対応するという意味でお使いになったのであればそういうことになるかもしれませんが、三十兆円というスキームの根拠のあいまいさといいますか、検証されてないままに出されてきている実態というものを私は端的に感じ取ったわけでございます。  私は非常に疑問に思いますのは、大蔵検査それから日銀考査、この段階で、先ほどのバブル崩壊後の金融破綻だという認識に立ては、検査の中ですべての不良債権を検証するということはできないかもしれませんけれども、しかし、そういう認識に立って大蔵検査、日銀考査がなされていれば、私はこの不良債権の総額というものももっと明確につかめたのではないかと思います。  大蔵検査に関しまして、報道されているところは非常に恐るべき実態が報道されておりますけれども、なぜ不良債権実態というものを明確に国民に公表できないのか。これを公表しない限り私は国民はこのスキームに対して支持することはないと思いますが、近々その辺の、先ほど申されました統一基準、新基準に基づきます不良債権というものを国民にわかりやすく提示される用意があるかどうか、お伺いさせていただきます。
  28. 山口公生

    山口政府委員 不良債権の公表につきましては、先ほどもるる御説明申し上げて繰り返しになりまずけれども、今までの基準でピックアップしていたものではまだ隠れているもの等があるのではないか、不十分ではないかという御指摘が当委員会で、さきの国会でも御指摘がございました。  そういうことで、アメリカSEC基準 これが世界で一番厳しいと言われておりますので、この基準でひとつやれないかということで強く要請しておりまして、全銀協の方もそれで努力をして、三月期からやるようにしますということで努力するようなことにしておりますので、そうしますと、アメリカSEC基準に準じた形での公表がされるということになります。  それから、全体像としては、先ほどの七十七兆というお話があったときに御説明したようなものが全体像でございますが、今先生、これを検査の結果でというふうにおっしゃいましたが、その検査というものは、検査官の数が少ないということもありますけれども、三年に一回とか、そういうことでやっています。そうすると、三年前の数字と、ある銀行は今やったばかりというものを単純に足してみても、それはちょっとどうかなということで、したがって今回、大蔵省の検査で分けているような形で自己査定を今回から始めているんだから出してみてくださいということで集計しました。  これが本当かどうかという検証まではできておりません。しかし、それ以外に数字のとりょうがないということで、それで今回、この審議に供するために私どもとしては出して御批判を受ける、御審議に供していただくということで出したわけでございます。
  29. 河合正智

    ○河合委員 これは国民にとって非常にわかりにくい話ですね。例えば大臣も山口局長も、お子さんから、幾らかかるかわからないけれどもこのためにお金をくれと言われても、何に幾ら使うんだとお聞きになりませんか。三十兆というスキームをつくるためには、やはりこれだけのものがあるから、これだけの不良債権があるからこれだけのスキームが必要だということを明確に提示しなければ、私どもはこれは非常に賛成しかねる法案だなという認識は変えることができません。  それから、先ほど申し上げましたRFCのスキーム一般金融機関優先株劣後債を使って資本注入していくというこのスキームでございますけれども、私、これ、説明を受けましたけれどもよくわかりません。  例えば一般金融機関の場合に、金融市場における資金調達が極めて困難な状況にある、それから、連鎖破綻を発生させるなどにより当該地域・分野の経済活動に著しい障害が生じる事態の場合に資本注入していくということになっておりますけれども、例えば、一般論としてで結構でございますが、北海道拓殖銀行の場合はこれに該当するのですか、しないのですか。
  30. 山口公生

    山口政府委員 経営破綻に陥るようないわゆる財務状況に問題がある銀行は除外をされておりますので、対象にならないと思います。
  31. 河合正智

    ○河合委員 このRFCに似たスキームといった場合に、ここでこのスキームに出ておりませんのは、RFCの場合には、まず一つは議決権を行使させた。それによって、経営の全事項に対してRFCの議決権を行使し、また人事、給与などに介入し、主要銀行経営者全員を交代させる、こういつた経営責任を明確にしたわけでございますけれども、このスキームからは、経営責任の明確化とか行政責任といったことについてはどこも感じ取ることができませんが、これは意図的に外してあるんですか。それとも問題にならないのですか。それとも経営責任は、また行政責任も明確にしていくおつもりですか。これは大臣からお聞きしたいと思います。
  32. 山口公生

    山口政府委員 大臣の御答弁の前にちょっと御説明をお許し賜りたいのでございますが、アメリカのRFCのときには、確かにそういったことをやっていたという記録もありますが、当時、いわゆる預金保険機構に相当するような機構がちょうど一九三四年から発足しております。したがって、ある意味では破綻処理とキャピタルインジェクションが同じような形で、二割ぐらいの銀行がつぶれた状態で、五割の銀行に入れたというような危機的な状況をこれで一挙に解決したという、今とかなり事情が違うということを御認識いただきたいのです。  今回は、個別銀行救済のため、助けるためということよりはシステミックリスク経済全体に対するシステミックリスク、例えば貸し渋り現象も極端に行きますとそういうことになりますし、雇用問題にまで広がるとまたそういうことにもなりますし、全体のシステミックリスクを防ぐために自己資本比率を上げて、余裕を持たせてまた貸し出しをしてもらうということでございますので、アプリオリに責任問題というよりは、手を挙げたところがきちっと計画を出して、その計画を審査委員一人一人がどういうことをやるのかというのをよく見て、そこに責任の問題というのが含まれる場合もありましょう、そうでない場合もいろいろあるかもしれません。それはケース・バイ・ケースで審査委員がよく御判断いただいて、先生のおっしゃったような趣旨が徹底されるものというふうに考えております。
  33. 河合正智

    ○河合委員 それでは、時間がなくなりましたので、最後に、経営責任また大蔵省の監督責任、こういつたことを国民に明らかにする意味で、公的資金を導入する金融機関に対する大蔵省の検査、これを全部公表する、また同じように、経営責任につきましては、公的資金を導入することになりました金融機関の稟議書、決裁書も公表する、こういうふうにすれば、非常に情報公開といった点からもわかりよく、国民もその上であればという納得がいくと思いますが、大臣、最後にお答えいただきたいと思います。
  34. 山口公生

    山口政府委員 ちょっと大臣の御答弁の前に事実関係でございますが、これは資金をそのまま贈与してあげるというような性格のものではありません。それは、優先株にしても一時的に受けるわけでございます。後、市場に放しますし、劣後ローンあるいは劣後債もそうでございます。そういう形でございますので、ちょっとその辺のことを御理解賜れれば幸いでございます。
  35. 三塚博

    ○三塚国務大臣 法律には、御承知のとおり、購入をする前提に立ちました折に、発行銀行の健全化計画提出を義務づけております。監査委員会がこれを精査をし、七人の委員が全員一致で決定したときのみ引き受けるわけでありますことも御承知のとおり。その議事録は公表しますということであります。引き受けをいただいた以上、それぞれの銀行は、その後も誠実に経営内容の公表を行っていくものと期待いたしております。
  36. 河合正智

    ○河合委員 質問時間が終わりましたので、終わります。
  37. 浜田靖一

    浜田(靖)委員長代理 次に、西田猛君。
  38. 西田猛

    ○西田(猛)委員 自由党の西田猛でございます。一昨日に引き続きまして、この金融法案について御質疑を申し上げたいと思っております。まず、今ちょうど河合委員質疑をしておられました点から引き続き、銀行の検査という点について御質疑を申し上げたいと思うのであります。  一昨日のこの委員会でもお尋ねを申し上げました。もう一度確認の意味を込めてお聞きしたいのですけれども、通常的に銀行法等に基づいて行われている金融機関の検査について、個々の検査の結果をすべてつまびらかにするべきではないかという意味ではありませんが、何らかの形でその金融検査の内容を国民の皆さんの前に公表をされるお考えはありませんでしょうか。
  39. 原口恒和

    ○原口政府委員 前回もお答えをいたしましたが、何らかの形で金融検査の概要を公表できないかというお話でございます。  一つの問題としては、検査というのは非常にばらばらの期間でやっております。また、今後早期是正措置を導入いたしますと、金融機関自己査定をもとにこれをチェックしていくというふうに検査機能も変わります。そういう中で、また一方で、これまで検査期間はかなり定期的な感じでやっておりましたので、ぼつぼつ検査が来るころではないかというふうに金融機関も準備をするというような問題点も指摘をされている。こういうことを踏まえて、今後は少しめり張りをつけていく。問題のない金融機関と常時ウォッチをしなきゃいかぬ金融機関、これを検査期間についても用いる。もとより限られた人員のもとですので、効率的にやるためにめり張りをつけていこうということになりますと、一層検査期間がばらばらになると思います。  そういう中で、これを取りまとめてということも、また場合によっては無用の誤解を呼ぶ可能性もあると思いますし、前回お答えいたしましたように、もちろん金融機関のディスクロージャーということは非常に大事でございますので、それについてはディスクロージャー制度の充実の中で対応していくということが基本ではないかと思います。  ただ、金融検査の状況等について、国民の皆さんにいろいろ状況を理解していただくという努力はしていく必要があるというふうに考えております。
  40. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そういう意味での金融検査というものの、行政として行われるわけですけれども、目的意識はどういうところにあって行っておられるのでしょうか。
  41. 原口恒和

    ○原口政府委員 検査の基本として、銀行法にも、金融機関の健全性を確保するためということでございますが、最近においては大きく分けると二つの点かと思います。  一つは、非常に金融機関の資産内容というのが問題になっておりますので、資産の健全性、これを確保するために、資産査定というものを中心とした検査のカテゴリー。それから第二番目は、やはり今度は、金融機関の業務運営面での健全性を確保するということで、例えばリスク管理がきちっとできているか、あるいは内部の管理体制がちゃんとなっているかとか、さらには、最近問題になっておりますが、法令遵守の面できちっとこれをチェックできるような体制になっているかというようなことに重点を置いて検査をしているところでございます。
  42. 西田猛

    ○西田(猛)委員 例えば、銀行法によりますと、二十五条にその検査の定めがあるわけですけれども、銀行そのものの目的の中に「この法律は、銀行の業務の公共性にかんがみ、信用を維持し、預金者等の保護を確保するとともに」云々とあるわけですが、要するに銀行法としては、預金者等の保護を確保するということも一番大きな目的の一つに挙げているわけなんですね。その中の枠組みとしての検査であれば、やはり預金者の保護を確保するための検査であってしかるべきだというふうに考えられるのですけれども、その検査というものがどのような形で預金者の保護に役立っているのか、あるいはいたのかということについてお答えいただきたいと思います。
  43. 原口恒和

    ○原口政府委員 今のお答えとややダブるところがあると思いますが、一つは、やはり資産の内容あるいはその資産、貸し出しに当たる審査体制をチェックするということによって銀行の資産面での健全性を見ていく、これによって、資産の劣化、そういうことが最終的に預金者に損害を与えることのないようにチェックをしていくということに重点を置いてまいりました。  それから最近では、やはり特にリスク管理というような面では、非常に金融取引が複雑化しているとか大型化しておりますから、諸外国の例あるいは日本の例でも、ちょっとした管理の不十分で大きな金額のロスが発生するというような事例もございます。そういうようなことからリスク管理の面にもウエートを置く、こういうことをやることによって、先生が御指摘になりましたように、銀行法にも規定されている銀行の健全性を確保していくということを検査の面からもチェックをしていくということかと思います。
  44. 西田猛

    ○西田(猛)委員 なぜ私がこの問題を深く取り上げたいと思うかといいますと、銀行法等の中で検査というものがちゃんと書いてあって、その検査が十分に行われて機能していれば今のような金融不安の状態を招いていっていないのではないかなと。もちろんバブル経済というものに日本国じゆうがまみれていた経済的な状況がありまして、それが崩壊した後の、ですから金融機関のみならず日本の産業全体、これは産業界もいろいろな業種も含めてでありますけれども、危機的な状況に陥ってはおります。  しかし、金融というものは、これはもう銀行局長がるる、大臣も言われておるように大動脈でありまして、血流であるわけですから、ここのところを一番しっかりと押さえておくためにもこの検査という機能が法律にも付与されているわけであると思うのでありますね。ですから、それがなぜ十分に機能しなかったのかなという反省は、やはりここで踏まえていかなければならないのではないかな。  特に今般、金融危機管理勘定で協定銀行であるところの整理回収銀行優先株等を引き受けるということにおいて、また、その優先株等の発行元である銀行がどういう状況にあるのかということは、大きな意味国民の目の前にディスクローズしていかなければならないと思うからこの問題を深く取り上げているわけなんです。  それで、個別の銀行名あるいは個別の金融機関名を挙げることは恐らくできないでありましょうからそれは結構ですけれども、過去の例において、銀行法等の検査でその金融機関がある程度の問題を持っているということを認識して、行政として措置をとられて、その金融機関の業務の健全性あるいは適切な運営を確保することができたという例を、個別の名前がわからない形で結構ですから、こういう例があったのだというところをひとつ教えていただければ、国民の皆さんもなるほどこういうことだったのだなということがわかると思いますけれども、いかがでしょうか。
  45. 原口恒和

    ○原口政府委員 まず一般論として申し上げますと、金融検査の結果、検査対象金融機関における問題点、これを把握いたしまして、これは示達という形で問題点を整理して金融機関指摘をする、それから、その是正改善を求めて、またその改善の状況というものを報告していただくという形をとっております。  そういう意味で、個別にどういう銀行のどうということはあれでございますが、例えば資産の審査体制が不十分ではないかという指摘に対して、こういう組織、こういうチェック体制にしましたという回答をいただいて、その後はそれに従っているとか、あるいはリスク管理の面で、例えばディーリングをやっている際のフロントオフィスとバックの監視、これが十分に分離をされていないというようなことに対してそれを改めるようにということで、そういうきちっとした監視体制をその後はとっていただいているとか、個々に申し上げますといろいろな例がございますが、そういうようなことを通じて銀行の健全な運営を確保するように努めてきたところでございます。
  46. 西田猛

    ○西田(猛)委員 それで、今回の金融システム安定化のための緊急対策スキームの中でも、いろいろな金融機関等に対する検査、それから指導監督のスキームが用意されているのですけれども、まず、一昨日も申し上げましたように、預金保険機構の特例業務勘定におけるところの十七兆円で預金者の保護あるいはシステミックリスクの回避を行っていくという点については、私どもは、新進党の時代から自由党に至りましても、むしろ遅きに失したぐらいの公的資金の導入であるというふうに考えております。ですから、この部分については早急にスキームを立ち上げることによって、国民の皆さんに、そして金融信用秩序の維持に努めてまいる必要があると思います。  他方、十三兆円の金融危機管理勘定につきましては、これについてはやはり慎重に今後とも審議を続けていかなければならないと思うのであります。それは何も、日本銀行が今まで好き放題をしてきたから、あるいはほかの産業界に比べて賃金水準が高いからとか、そういう怨嗟の声でもちろん言っているのでは全くなくして、銀行というものも日本の大切な産業である以上、これは個々の銀行にしっかりと経営を行っていただいて、雇用も確保した上で頑張っていただかなければならない。したがって、一つ銀行もつぶれていただきたくないわけであります。できることならば、皆、どの金融機関も健やかに今後とも運営継続していただきたいと思います。  しかし、事が国民の財産を預かり、そしてそれを正常に運用し、かつ金融信用秩序を維持していくという大きな役割を持っている個々の企業でありますから、この企業について情報の公開なくして国民が何も知らされないままに、その経営内容が非常に悪化し、あるいは破綻している状況にあるにもかかわらず長らえさせておくということは、今の時代の流れに大きく逆行するものだと言わざるを得ないわけであります。  ですから、私ども申し上げているのは、信用秩序の維持、これはどうしても図らなければならない。しかし、そういう観点からすると、今回の協定銀行によるところの優先株等の引き受けによって個々の金融機関資本注入を行うということは、果たして適切なことなのかどうかということをもう一度検証していかなければならないと思います。  大臣、この公的資金によるところの優先株等の引き受けが、橋本内閣でも標榜しておられる金融改革の一つの柱であるグローバルな方策であるとお考えになっておられますか。
  47. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ビッグバンは、グローバルスタンダードを目指し、自由にして公正な市場、この基本は明示をし、全力を尽くしていく大きな目標でありますし、達成をしていかなければなりません。  ただいまこれはそれに合うのかという御指摘でありますが、国家的危機をはらんでおります今日の状況の中で、国民生活の安定また国家の安泰、これを期することは政治に課せられました最大の課題でございます。そういう視点に立ちまして、この危機を回避していかなければならない。危機を起こして、その収拾は途方もない困難と不透明さが漂いまして、国家の未来、国民生活の安心という点からいいましても、深刻、想像を超えるものになっていくのではないだろうかという認識を小生も橋本さんも持っておるところでございます。  そういう点で、国家は、主権国家でございますから、その国の展望をしっかりと分析、見詰め、危機が存在するならこの危機を摘除していかなければなりませんし、回避するための各手だてが必要であるという原則論に立ちましてこれに対応をさせていただく、そういう大前提に立つわけですから、委員指摘のとおり、情報公開、みずから進んで発表をしていくということも大事なことになります。そういうことであります。     〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
  48. 西田猛

    ○西田(猛)委員 大臣が今おっしゃった中で、改革は進めなければなりません。二十一世紀ももう間近であります。二十一世紀の世界的な大競争時代の中で、日本あるいは一億三千万の日本国民が健やかに生活をしていくために私たちは変わらなければならないわけであります。  しかし、それと他方、今大臣も言われた、あるいはもう国民の皆さんが認識している、今そこにある目の前の危機、これがあります。しかし、当面する危機を、全体の改革を棚上げすることとか全体の改革を延期することの理由にしてはならないわけであります。むしろこの当面の危機こそが大きな改革のチャンスだということを我々は認識するべきだと思うのですね。  そこで大臣、お伺いしたいのですけれども、今このような形で当面の目の前の危機をしのいだといたしましょう。その後の日本金融界の絵図というのはどういう様相が想像できますか。例えば、政府公的資金によってキャピタルインジェクションを受けた銀行がいる、他方、受けていない銀行がいる。もちろん、恐らく大蔵省の事務当局からは、十三兆円の公的資金を使って購入する優先株あるいは劣後債等については、その後市場において売却してうまく整理していくことができるはずだという御意見が出てくると思います。  しかし、必ずしもそのように、我々が考えているように制度がうまく十分に機能していくかどうかわかりません。公的資金を導入した上で、それでもやはりどうしても経営が上向かない個別の金融機関も出てくるかもしれません。そうやって、政府が助けるところ、政府が助けないところ、いろいろ出てきた後の日本の全体的な金融様相、金融秩序というものは一どういう世界が予測できるとお思いになられますか、大臣。
  49. 三塚博

    ○三塚国務大臣 もともとビッグバン、金融システム大改革は宇宙大爆発という、そのとおり新しい創造であります。新しい創造は、困難から創造ということになるんだと思います。その大前提大前提としてあるわけでございまして、ドラスチックな形で進めるのも改革、整合性をもって軟着陸させるのも改革の範囲に入るのかな。しかし私どもは、これだけ内外に向けて金融システム大改革、ビッグバンを表明をいたしました。この原理は守らなければなりませんし、ただいまも堅持をいたしておるわけでございます。  そういう中で、その後の金融界はどうなるのであろうか、こういうことでありますが、資本注入を受ける側、また資本注入をすることによって金融危機を回避する。毎回申し上げておることですが、個々の銀行救済ではなく、目的は金融システムの安定維持、イコールそしてそのことは預貯金の安心、安定、完全保護というこの基本の下支えの中にあるわけでございますが、両々相まってそれがいくのであろうと思います。  そんな点で、今後はその後の展望ということになるわけでございますが、健全なものは健全として取り進んでいくと思います。経営の基本理念、モラルハザードのようなあなた任せ、あなた頼りの経営ということでは到底生き延びることはできないだろう、こう思いますし、そういうことの中で、みずからの努力と改善で、リストラで生き延びていく金融機関、おのれの限界を感じまして、系列、統合、こういう道を選ぶのか、また転進を図るのか、それは金融機関それぞれの判断でありましょう。  イギリスの前例をまつまでもなく、ニューヨークの前例をまつまでもなく、統廃合を中心に系列化が行われていく中で進むでありましょうし、日本のようにこの危機的状況の中の銀行経営金融機関経営いかんという基本的な理念をしっかりと持って取り進むということでありますれば、よき競争関係の中で切磋琢磨が行われる、基本的にはそのことが一番大事であるわけでありますが、それぞれの機関がそれぞれの経営判断で行うことでありますが、そのことを決して行政がチェックをしたり介入をしたりすることだけはない、こういうことでいかなければなりません。
  50. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今の大臣の御発言は矛盾に満ち満ちているところがございます、大変失礼ながら。二〇〇一年の三月までこの制度は続くわけです。他方、二〇〇一年の三月までしか預金の全額保護は規定していないわけです。ということは、二〇〇一年度からは、二〇〇一年四月一日からは本当に銀行の淘汰の時代であり、預金者の自己責任の原則が要求され、全き金融機関の開示が必要とされるときであるわけですね。その二〇〇一年三月までの間このスキームが続いて、しかもその後すぐに、はいこれからは、ただいまからはもう大競争の時代です、生き残れる銀行、生き残れない銀行ありますよ、預金者の皆さん、自己責任の原則ですよ、気をつけてください、こういうことを言えるでしょうかね。要するに、そのときまで必要な銀行があれば公的資金を導入しということですよね、今おっしゃっておられるのは。  それから、フェアネスという点からすれば、今、市場資金を調達できない金融機関があったとしたらば、その金融機関が発行する優先株等を回収銀行が引き受けることによって資本注入する、そうやって自己資本比率を高めるなりした銀行がここにある。他方、政府からの公的資金注入されることなくしてもみずから市場資金を調達することのできる銀行がある。それらの銀行市場という同じ土俵の中で競争する、これはフェアということですか。イエスかノーかを。
  51. 三塚博

    ○三塚国務大臣 本件は時限は切っております。時限法にすることの方がめり張りがききますし、お互いの決心と努力がそこに結集するだろうと考えます。  問題は、現在の危機状況をどう認識するかということであります。まさに深刻な危機的状況であります。よって、ビッグバンはビッグバンとしてこれは取り組まなければなりません。経営の理念はまさにそこにあると思います。よって、この金融危機的状況を打開するためには、例外的な緊急措置としてこれを行うものであります。世に言う三月危機とよく言われます。大変な時期だと言われます。そこを、視点をまずしっかりとにらみながらやるというのも政治のなさなければならない義務じゃないでしょうか。  そういうことの中で、まずそれに全力を尽くしてまいります、こう申し上げ、例外的な緊急措置をこの際お認めをいただきたい。終わってしまつてからの大混乱の中では何もできなくなります。こういう危機認識の中にありますことを御認識いただきますればと存じます。
  52. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そのような認識は皆持っておるわけです。今、三月危機と大臣みずからおっしゃいました。どういう内容の危機意味しておられるのかお聞きしたいと思うのですけれども、そういう意識は皆持っているわけですね。  それと、今大臣言われた、これは緊急的な措置だと。そうしたら、じゃ、三月を越えましょう。ことしの四月以降は、銀行には大競争してもらうわけですか。リストラ、吸収合併、そういうこともおっしゃいました。じゃ、それを進めて再編をしていくわけでしょうか。なぜ今であってはいけないんでしょう。  もう一つ銀行が倒れたら、あるいは金融機関がおかしな状況になったら日本は大変なことになつて、本当に金融恐慌になってしまうんじゃないか。そんなことはないんです。あと一つどうなろうと、二つどうなろうと、そういう問題ではありません。もう既に国民全体の意識は、これは大変なことだという意識はわかっているわけです。しかも、なぜこういう状態に立ち至ったのかという根本的な原因、それと、その理由が根本的に除去されていないというところの方が問題なわけですね。  公的資金を導入した日本金融機関が、それじゃ、世界的な資本市場資金を調達しようとしたときに、果たして、自己資本比率数字上上がつたから、じゃ、ジャパン・プレミアムなしです、どうぞお貸しいたしましょう、コールを出しましょう、取れるでしょうかね、そういうことが。根本的な日本の問題が解決されていない以上、信用されませんよ、幾ら自己資本比率なんという数字が上がっても。コールも出さない、市場での資金調達もできない。  ごらんになっていてください。間違いなく、ことしの四月以降でも、たとえこのスキームができても、日本金融機関世界的な資本市場資金を取ろうと思っても、そうたやすくできるものじゃありません。なぜならば、それは日本の全体の信用秩序に対する信用がないからなんです、世界的に。それは、一刻も早く問題点をすべて出して、不良債権の額は政府の見解としてこうだ、それを全体的に払拭するためにはこうしなければいけない、日本はこうなるんだということを示さないと、このようなスキームだけで、三月危機はとりあえず乗り切りました、そして資本市場での資金調達もできるようになります、そんなふうになるものではないと思いますけれども、いかがでしょうか。
  53. 山口公生

    山口政府委員 西田先生の御指摘、いろいろと示唆的なものが多いと思いますけれども、私の方からちょっと申し上げたいのは、企業としての銀行銀行そのものの議論と、銀行が果たしている機能をどうするかという議論を少し分けて御議論賜れば幸いだと思うのでございます。  確かに、競争時代というのは、個々の銀行が、どこが勝ってどこが負けるかというような競争、 これはビッグバンが伴う現象だと思いますけれども、今ここで審議をお願いしておりますのは、今銀行が果たしているこの機能を維持しなければ危機になるおそれがあるということでございまして、個々の銀行が、こっちは勝つ、こっちが負けるという議論は、もちろん捨象できるものではありません。しかし、今大臣からるる申し上げましたのは、今、危機を乗り越えなきゃいけない。  なぜこういう危機が生じているかといいますと、非常に不良債権処理が大きくて、それを格付機関も、不良債権をどこまで済ませたかということで格付を決める傾向が最近強くなっているのです。そうすると、不良債権をそういう利益でもって償却しますと、自己資本比率がぐっと下がるわけですね。株価等の含みが割と高い状況のもとではそれがスムーズにできるわけですけれども、ところが、株価がぐっと下がったりしますと、もともとクロス商いで大分簿価が上がってきていますので、非常に含みがないという状況に立ち入るわけですね。  そうすると、そういう現象が起きますと、今度は貸し出しを減らさないとBIS基準を、あるいは国内基準を満たせなくなるんじゃないかという恐怖感といいますか不安感が生じる。それが今度は、機能としての金融の役割ができなくなってしまう。それから、市場へのすくみ現象が起きてくるという悪循環に陥るということでございますので、今ぜひお願いしたいというのは、その機能を回復させてやらないとビッグバンどころでない話になってしまうということであります。  銀行のお話を今おっしゃいましたけれども、例えば八%を仮にクリアできないという状況に最終的になってしまうと、外貨が取れないんです。要するにBISで決めている基準で、何ら拘束力はありません。しかし、マーケットはそこで排除してしまうんです。そうすると、海外でドルで貸し出し、ポンドで貸し出しているところが資金が取れないと、我が国から出ている企業が倒れてしまうんです。そうすると、健全な銀行に、じゃ、あなたのところ、ちょっとかわりにやってよと急に頼んでも、そこもぎりぎりしか資金が取れないということになるわけであります。だから、そう簡単にいかない。それはまた機能が発揮できないということになります。  したがって、そういう状態を今はクリアしておかないと全体が、金融が原因で、あるいは仲介した形でそういうまずい結果になる可能性が非常にあると。国内銀行におきましても貸し渋り現象ということを強く御指摘いただいておりまずけれども、そういったものもやはり不安が不安を呼んでというプロセスでございますので、確かにビッグバンは競争時代、これは個々の銀行の存立の問題であります。それはそれで、こういった危機を脱し、経済が安定してきますと、それぞれ自分の得意な分野を伸ばす、あるいは再編の動きも出てくるでしょう。それで体力をつけて、株価がどうこうしたぐらいではびくともしないような経営体質に変えていくということで競争していくわけでございます。  そこには、先生の御指摘のような、やはり本当の競争時代というのは当然ありますし、そういうことによってまた機能がより効率的になる。機能がより効率的になるということと、機能が今底割れるおそれがあるということとをちょっと御説明させていただきたいというふうに思ったわけでございます。
  54. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今銀行局長が言われたようなことを私どもは十分認識した上でお話を申し上げているわけなんですよ。  ですから、じゃ、どうして今まで、戦後五十年もあって、日本金融機関というのはそういう体質になかったんですか。今ちょっとおっしゃったじゃないですか、ここをしのがせてくれと。そうしたら、その後ビッグバンに向けてみんなで競争して、それは市場原理の働く金融機関、これも企業としてなっていくのだというふうなお話がありました。だから私は金融検査のこともお伺いしたわけです。  じゃ、今まではどういう行政を行っておられたんですか。反省の弁も含めて、どうしてこういう事態に立ち至ったかについてお答え願いたいと思います。
  55. 山口公生

    山口政府委員 バブル経済が発生しまして、そのバブル経済後遺症というのはいろいろなところで出てくると思います。それは最終的には、お金の面では銀行あるいはノンバンク等に集まってくるわけでございます。それから、雇用の面でもいろいろなところに出てくると思っておりますけれども、いずれにせよ、金銭面あるいは帳簿面では銀行のところに最終的にはしわが寄らざるを得ないという面があります。したがって、そういうことをよく見越して、もっと早くから体力をつけさせ、合理化をさせということの御指摘はごもっともで、私どももそれは、もっともっと先を読んでやるべきだったという御指摘は、素直に受けざるを得ない話だと私は思います。  ただ、金融機関とてもそこは努力はしておりました。まだ含みがありました。そこで何とかしのいできたということでありますけれども、そういうことが可能でない時代になったということでこういう事態になってしまったということでございまして、今後とも、そういったまた競争時代になりますともっともっと厳しい時代に入りますので、私どもも一層、その辺をよく将来を読み、また指導すべきはきちんと指導するということで対処させていただきたいというふうに思っております。
  56. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今まさにおっしゃったように、そのとおりなんですね。ですから、大競争時代はもう来ているわけです。  したがって、今の御答弁を聞いていると、大臣もおっしゃった、この三月だけはしのがせてほしい、そうしたら、あとはリストラ、吸収合併、それも含めてもう大競争時代に皆さんに船出していただきましょうよ、こういう御趣旨だと受けとめられるわけです。  私どもはもう去年の四月から、預金者の完全な保護と、そして日本信用秩序というシステムの保護、これは万全な対策をとらなければいけない、これは口を酸っぱくして言ってまいりました。そのために公的資金を早期に導入するべきであると。橋本内閣はなかなかそのことを聞いてくれませんでした。しかし私どもは、日本の全体的な信用秩序の維持と、それに伴って起こる破綻についての預金者の保護は絶対すべきだと。しかし、日本は変わらなければいけない。金融機関であろうとも、あるいは預金者であろうとも、日本信用市場であろうとも、世界的なスタンダードになって立ち向かっていけるように変わらなければいけないということを申し上げていたわけです。  その観点からいくと、どうしてもこの十三兆円の金融危機管理勘定の方は、やはり今おっしゃったような三月危機だけをしのぐためのびほう策としか映らないわけでして、これは一刻も早くもう我々が意識を変えて、左側の特例業務勘定をより充実させることに重点を置いていくべきではないかなと思っておりますが、最後に、時間が参りましたので、大臣にお聞きしたいのです。  そうすると、この金融危機管理勘定におけるマックス十三兆円の公的資金の導入以上に公的資金を導入して、個々の金融機関、あるいはシステミックリスクの回避と申しましょうか、を助けるために公的資金が導入されることはないということを言明できますか。
  57. 三塚博

    ○三塚国務大臣 御承知のとおり、金融の高度化、グローバル化、大競争時代という御指摘、ここは認識が一致であります。しかるがゆえに、その安定性の確立、これは経済社会の大前提になるということで対応しておるところでございまして、三兆プラス政府保証十兆、この枠組みはそのとおり変えません。(西田(猛)委員「いや、変えませんって、それだけでよろしいのですね。もうないのですね」と呼ぶ)それで万全を期してまいります。
  58. 西田猛

    ○西田(猛)委員 引き続きにしたいと思います。  終わります。
  59. 村上誠一郎

    ○村上委員長 次に、末松義規君。
  60. 末松義規

    ○末松委員 民主党の末松義規です。きょうは、民友連を代表いたしまして、質問をさせていただきます。  公的資金の導入ですけれども、これは、国民、市民の立場から見ると、どうもやはり国民や市民の御理解、御納得をいただかないとなかなかできるものではありません。その意味で、慎重かつ真剣な審議が必要であります。  そのときに、まずちょっと大臣の方にお伺いしたいのですけれども、不良債権に端を発する今回の金融危機ですが、これは端的に、一般国民に責任があるのかないのか、これは突然の質問ですが、簡単な、シンプルなことですから、まずお伺いしたいと思います。
  61. 三塚博

    ○三塚国務大臣 基本的な第一次責任それと第二次責任、国民経済でございますから全体の中で物事が判断されなければなりませんが、金融機関の融資態度、経営理念、これをコントロールできなかった行政、政治というものもあるでしょう。
  62. 末松義規

    ○末松委員 いや、私がお聞きしているのは、一般国民に責任があるのかないのかということです。
  63. 三塚博

    ○三塚国務大臣 一般国民にあるのかないのかという質問は漠としておりまして、それで国民に責任があるということなのか、ないという視点でやっているのか、こういうことであります。国民は、政府政治に信頼を置いてお任せをしておるわけでございますから、基本的に、国民各位の責任というのは、取り出してやるべきものではございませんし、私の考え方政治に責任があった、私はこう認識をいたしております。
  64. 末松義規

    ○末松委員 そうしますと、一般国民というのは漠としているという話ですが、実際に我々も生活している国民の一人ですから、そこの観点からいきますと二点あるのですね。  自分の生活の安全性を確保したい、自分の預金とかあるいは自分の資産を守りたい、これは当然のことであると思いますし、もう一点は、まず、自分が直接手を下していない責任に関して負担をしたくない、それも私は当然のことであろうと思いますが、その点についてはいかがでございますか。  ちょっと答えにくいということであれば、実際に、もし一般国民が、自分とは関係ない、金融機関、具体的に言えばそういうことですが、これがやったことあるいは政治や行政がやったことに対して、自分が責任がないと思ったら、当然国民としては負担をしたくないと思うわけですが、それについて御意見はございますでしょうか。
  65. 山口公生

    山口政府委員 末松先生の御指摘は、ある意味では私ども一人一人が時には持つ気持ちだと思いますけれども、国家を一応なしておる以上、例えば、私はあの橋を一回も渡っていないから、私はあの公共事業は反対だ、こういうわけにもいかないわけだと思うのですね。  こういう金融システム預金者保護もそうだと思います。絶対につぶれないという自信のある銀行は、つぶれた銀行処理に何で私が保険料を七倍も出さなければいけないのかと。それを言い出しますと、もうみんなそのときだけの、それぞれの人が自分で自分を守るしかないとなりますと、それはもう社会の組織にならないと思うのでございます。先生は、それは重々御承知の上での御指摘でございますけれども。  だから今私どもが守りたいのは、そういう信用秩序とかあるいは金融が果たしている機能というもの、やはり考えてみますと、私どもが安心して銀行にお金を預けて他の人に送金をお願いするとかいうことはもう自由にやっているわけです。それが信用できなかったら、一々向こうに私が持っていってお金を渡さなければいけないということになるわけです。そういう信用秩序というのは、もうお金では計算できない価値をもたらしていると。  逆に、それが損なわれますとはかり知れないまた損を私どもは負うことになるというふうに考えますと、確かにそういう気持ちは私も時々は持つことはありますけれども、しかしそこは、やはりそれぞれが社会のシステムを守っていくという気持ちで負担をするのが至当ではないだろうかというふうに思うわけでございます。
  66. 末松義規

    ○末松委員 一番最初に申し上げたように、この公的資金の導入については国民の理解が重要だという位置づけから言っているわけで、今山口局長が言われたように、私が申し上げた個人の生活の安定、安全というものが、実は、自分の責任でないことであってもそれを負担しなければ私たちの生活が脅かされるということであるがゆえのジレンマといいますか、それが今の私たちの議論の中核になっているわけです。そこへ調整原理が働いて、政府とか政治が調整をしなければいけないということなのだろうと思うのですね。  ただ、そのときに、国民に負担を求めるに当たっては、やはり政策の執行者、つまり与党と行政ですが、及びあと金融関係者がやはりきちんと、こういつたことでこうなりました、そこでこの責任がございますということを明らかにした上で、そしてまず第一義的には、とれれば政治責任、あるいは金融関係者が負担をまずして、その上で、最後にその不足分を国民にお願いしますということをきちんと言わないと、国民に対する正当な手続にはならないのだろうと思うわけです。  その観点から、私ども民友連の方でいろいろと議論をしてきたわけですけれども、三点ほど我々の議論の結果の原則を申し上げますと、まず第一点が、公的資金投入というものをまず最小限に抑えなきゃいけないだろう。その面から、公的債権回収機関、日本版のRTCというのですか、そういうものを創設して、不良債権の回収を強力に推し進める必要があるだろうということをまず第一原則に置きまして、第二原則に、この金融関係者、つまり銀行にも負担をきちんと求めていかなければいけないだろうというのが第二の視点になっております。そして第三点目に、その金融関係者の責任追及をもきちんとやっていかなければいけないだろう。そうしますと、借り手のみならず、関係金融機関への立入調査権を持って、それで経営者とか金融関係者の不正を調査してきちんと告発するというようなこと、アメリカでも行われましたが、そういうこともきちんとやっていかなければいけないだろう、こういうふうな原則を我々としてつくったわけでございます。  以下、与党及び行政の責任、そして金融業界の負担、また政府スキームについて、順を追いまして質問をさせていただきます。  まず最初に、先ほどからるる質問も出ておりますけれども、不良債権が発端ですから、不良債権処理に当たって、処理の規模、それをまず見きわめなければいけない。  先ほどから何回も言われておりますが、昨年の九月に、不良債権の要処理見込み額ということで、大蔵省が四兆三千四百八十億円を計上しております。これにつきまして、最新の数字というのはあるのでしょうか。例えば、拓殖銀行とか徳陽シティ分、こういうふうなものは入っているものがあるのか、あるいはその後ふえているのかいないのか、それについてお伺いをいたします。
  67. 山口公生

    山口政府委員 今先生指摘の、昨年九月時点での不良債権の要処理額を四兆三千という資料をお配りしましたが、その際、ちょっと注書きにも書かせていただいておりますけれども、この九月期ぐらいから、ピックアップした公表不良債権以外の部分についてもかなり積極的な引き当てをしておりますので、ややこの要処理額自身の意味づけが変わってきておりますので、それは御理解賜った上でお聞きいただきたいのですけれども、大体の感じをずうっと趨勢的に見ていますと、ずっと減ってきているということでございます。  それで、北拓は実は決算をやる前に破綻しておりますので、この中には入っておりません。この数字前提には入っておりません。(末松委員「それを入れたものは」と呼ぶ)徳陽は、ちょうど集計がその前だったと…うことで徳陽は入っております。したがって、北拓がこれには入っていないという感じでございます。(末松委員「入るとどのくらいになります」と呼ぶ)入りますと、その要処理という概念が御銀行さんの生きているときの概念でございますので、そのまま、どの数字を申し上げればいいかちょっとよくわかりませんが、この間の検査で、破綻先・延滞債権が九千二百九億円でございます。金利減免等債権が二千二百十二億円、合計一兆一千四百二十一億円がこの公表不良債権ベースに入っていないということであります。  したがって、先生がおっしゃった要処理額というところは、それから引き当てとかいうのを引いてということでございますので、それは生きている銀行の話でございますので、これはそのままその公表不良債権を申し述べさせていただいたということであります。  ちょっと、済みません、これは当時までの拓銀が公表していた不良債権で、これが破綻しましたので入っていないということでございます。その数字が一兆一千四百二十一億円ということです。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席
  68. 末松義規

    ○末松委員 そうしますと、一・一兆円、丸々じゃないけれども、四・三兆円からまた要処理額がふえると基本的に考えていいのですか。
  69. 山口公生

    山口政府委員 要処理額というのは、各銀行が一応自分の業務純益等で埋めていくというべき性格のものでございますね。したがって、この破綻処理の方は、欠損部分預金保険の負担、それから、不良債権預金保険あるいは整理回収銀行が時価で買い取ったときにその二次ロスが出ますと、それは預金保険の負担になる、ロスが出ませんければそれは負担はありません、こういうことで、ちょっとその要処理額の概念とは少し違った意味数字だというふうに御理解をいただきたい……(末松委員「何千億か上がるのね、結局。よくわからないのだけれども」と呼ぶ)申しわけございません。ちょっと私の御説明もおわかりにくいのかもしれませんが、各銀行基準に合った数字不良債権額を出しております。  そうすると、その債権の中でも、例えば引き当てが済んでいる部分、あるいは土地等の担保があって確実だと思われる部分、これは差っ引きますと、残りがやはりその本当の不良債権として残っているのではないかということで要処理額として計上しているわけでございます。  したがって、それは今存続している銀行の話でございまして、今先生がおっしゃった北拓の方の話になりますと、これは今検査が入りまして、ロスが幾ら、不良債権が幾らというふうにやっていますが、それは今度は預金保険の破綻処理の方の負担の話になるということでございます。
  70. 末松義規

    ○末松委員 この場で質問する気はなかったのですが、そういうふうに言われるとちょっと質問しなきゃいけなくなってきますけれども、交付国債の七兆円がありますよね。それの積み上げの中に、大蔵省の説明で四・三兆円プラスということでそれを積み上げていっている。つまり、要処理額ですから積み上げさせていただいていますという説明があったのですよ。  とすると、北拓についても、それはつぶれて、その債権債務を整理して、債務超過についてはそこの負担になってくるわけでしょう。そうじゃないのですか。
  71. 山口公生

    山口政府委員 先国会でもしばしば申し上げましたように、五年間の財源が二・七兆円あって、今一・四兆ぐらい使っております、あと一・三兆ぐらいあります、それから、信用組合の方は政府保証がついています、こういうふうな御説明をしておりました。そういう預金保険の財源の状況にあるわけでございます。  それは今も変わらないわけですが、こういった大型の破綻が生じまして、北海道拓殖銀行処理あるいは徳陽シティ銀行処理になりますと、残りの保険料から入ってくる財源が使われるわけでございますね。  例えば北海道拓殖銀行でのロスは、今の検査の時点では、先ほどちょっと私が言いかけました八千四百億ぐらいになっております。そうすると、またそういう財源が必要だということでございます。その財源について、保険料の改定問題というのはもちろんありますけれども、国民の皆さんに本当に大丈夫ですという安心感を与えるために今回この措置をお願いしたわけでございます。  そのときに、七兆円という、いつでも現金化できる財源を加えて用意させていただいたんですが、そのときの考え方としては、もう北拓はそういうことで必ず出ていきますけれども、今後どれくらい出ていくだろうかということとのかかわりで七兆円を議論せざるを得ないわけです。ただ、積み上げて、どこの銀行破綻するとかどこの銀行破綻しないとかいうことが今決められるものじゃありませんし、そういうことが予測できるものでもございません。  したがって、大まかに見て、四兆三千億あるいは四、五兆の要処理見込み額が、全部の銀行破綻したとしてもその程度のものではあるけれども、北海道拓殖銀行の例で見るように、この不良債権の公表ベース、今の統一基準による公表ベースの額から見ると、実際、破綻してみると、取引先が倒れたり、あるいは支援していた先が、ノンバンクが倒れたりで膨らむではないかということで、少し余裕を持ってそういう処理の財源を用意させていただいた。これを、七兆円を全部使うということで積算をして、何々銀行分幾ら、何々銀行分幾らというわけではないことは当然御承知の上での御質問だとは思いますけれども、それぐらいの準備をさせていただいておけばいつでも換金できますので御安心いただけるのではないか、こういうことでございます。
  72. 末松義規

    ○末松委員 私も、ここでこれほど時間を使うとは思っていなかったんですが、つまり一・三兆円、使っていませんねと、二〇〇一年まで。プラス七兆円、つまり八・三兆円ですか、これを財源にしてこの金融機関破綻に財源として使いましょうねと。  そのとぎの説明の中に、大蔵省さん、銀行局長の部下さんが、四・三兆円、要処理額があります、それに幾つかの破綻が加わります、さらに安全率を掛け合わせて、公表の不良債権とそれから実際の破綻したときの額を見ますと、その関係が約五割増しですねということだから、それに一・五を掛けて大体七兆円ですかねという説明をお伺いしたんです。それが局長の言われる余裕、余裕といいますか、ということをお聞きしたんですが、これは別に私が理解しても、国民の皆さんが理解しないとだめなんで、それでいいのか、改めてお聞きします。
  73. 山口公生

    山口政府委員 いずれにせよ、備えでございますので、そういったかなりの余裕を見た形での資金をお願いしているということでございます。  四・三兆円という数字も、一方では、ピックアップしている基準が甘いんじゃないか、それを厳しくSEC基準にすれば四・三じゃなくてもっと上がるじゃないかという御指摘ももちろんあるかもしれません。そういったことを考えましても、すべての金融機関が一斉に破綻するということでもございませんし、それくらい御用意をお願いすれば、国民の皆さんには安心していただけるのではないかということでございます。
  74. 末松義規

    ○末松委員 私の次の質問は、一月十二日の銀行自己査定ということで、先ほどからるる話題になっておりますが、七十七兆円ですか、第二、第三、第四分類を足すと。そして、この七十七兆がそのまま不良債権で焦げつくという話ではないにしてもという御説明をお伺いしましたが、局長自身も言われたように、特に第三分類と第四分類、つまり債権の回収に重大な懸念、損失の発生可能性が高いというのが第三分類で、第四分類は回収不能だ。これを合わせると十一・四兆あるんですけれども、これを一月十二日のこの時期に、ばんと発表したわけですよ。それとさつきの四・三兆との整合性というか、どういうふうにこれは整理されるんでしょうか。
  75. 山口公生

    山口政府委員 先ほどもちょっと長々と御説明させていただきましたように、この統計のとり方、考え方が違いますので、AからBを引いたらCになるというものではございませんが、四・三兆、四、五兆という、要するに公表ベースでの数字から引き当て済み等を引いたものというものは、回収可能性からいうと恐らく相当悪いものだろうと思うのでございますね。そうしますと、三、四にかなりそれは含まれているというふうに私は考えるべきだと思います。三、四、特に三の方がちょっと多いわけですね。  それはどういうことかというと、逆に言いますと、形式的基準のピックアップではのってこないけれども、どうも回収に本当に懸念があるな、かなり問題あるなというものが三にのっていると思うんですね。例えば貸し出して、事業を開始しますよと言って、金利は返ってきていますが、ところが事業がちっとも始まらない。例えばそういうケースになりますと、金利は入ってきていますから、六カ月以上入らないとピックアップされますが、これは公表不良債権の方に入らないわけですね。ところがよくよく見ると、どうも事業の開始のめどが立っていないとなると、ちょっと三ぐらいに入れておかないとこれは取れないかもしれない、こういうものがあると思うんですね。  それから、十一兆を御指摘いただきましたけれども、このうち四あたりは今期で全部償却しなきゃいけないんです。これは、公認会計士の先生もいらっしゃいますけれども、そういうふうな目でごらんになると、そういうものはもう今期で償却しなさいと。それから三分類の中でも、やはり償却すべきであろうというものも含まれているわけです。だから、十一兆がずっと引きずるわけじゃなくて、それは当然利益の中から消して償却していくしかない、あるいは引き当てしていくしかないわけですけれども。だから、十一兆は九月期を越えた後では少し減っているんだろうと思いますけれども……。  いずれにせよ、しばしば御質問あって、私ども、説明が非常に難しいんですけれども、基準が違いますので、大まかな感じではそういった数字の性格のものだろうというふうに思います。
  76. 末松義規

    ○末松委員 基準が違う、基準が違うと先ほど何回も聞かされたんですが、どう基準が違うんですか。
  77. 山口公生

    山口政府委員 いわゆる二十八兆ベースの方一は、破綻先、延滞先、金利減免というジャンルで、例えば延滞となりますと、六カ月以上利子が入ってきていない場合という、これは税務との、会計からのつながりがあるんですが、そういう基準でもって形式的に、だから、どこの銀行でも同じ基準でピックアップしている不良債権なんです。  その中には、例えば一〇〇という不良債権があったときには、そのうち担保価値が五〇は確実にあるものももちろん含まれているわけです。それは全体が一〇〇なんですけれども、その全体の一〇〇をピックアップしていって集計すると二十八になった。ところが、引き当て済みあるいは担保済みのものを引いた残りの五〇だけをやると、要処理ということで先ほど四兆幾らとおっしゃった数字ということなんですね。  もう一つの、今回御審議のために集計いたしましたのは、今回初めて、ことしの四月からの早期是正措置を控えまして、各銀行自己査定をやっております。その自己査定を四つにちょっと分類してみてくださいということでお願いしたわけです。  それで、それはロスがどれくらい出るだろうかという、これは企業会計的な考え方なんですけれども、どれだけ償却すべきかというところがら出発しています。ロスがどれくらい確実に出るか、あるいはロスが出るおそれがかなり高いか、ロスが出る可能性はあるけれども個別に管理すればいいというもの、それから全然大丈夫という四つ。それは四、三、二、一になりますが、そういう見方で見たものが、先ほど申し上げた今度発表させていただいたものでございます。  だから、先ほどの一〇〇という話があって、仮にそれが、回収可能性からいうと、やはり五〇は取れない、担保価値がある分は取れる、その分は回収できるといえば、その五〇の分がもう絶対取れないのであれば四に入るし、多分取れないおそれが高いなというと三に五〇部分は入る、それから下の五〇部分は二の方に入ったりという、そういう観点から、ロスがどれくらいの確率で出るかを各銀行が自分で判断して出してきたもの、それを集計したものであります。  そうすると、公認会計士のチェックを受けて、例えば、四はもう取れないことははっきりしているから企業会計上これはもう償却をすべきである。それから、三の中でもこういつたものはもう償却をすべきであるということで、そこで償却すべきものがはっきり決まるわけです。そうしますと、企業会計上それを償却しますから、自己資本比率もそれでやっときちっとしたものがはじける、こういうことになるわけで、したがって、性格が違うというのは、そういう趣旨を申し上げていることでございます。
  78. 末松義規

    ○末松委員 いや、ちょっと今の御説明を聞いていて、何かわかったようなわからないような、それぞれの説明はわかるのですけれども、実際に不良債権という形で把握しようとしたら、これは大蔵省でその辺の取りまとめはできないものなんですかね、それだけ計数を扱っておられて。結局最後は、銀行はある程度自分で見なければいけない部分があるし、すべての銀行に大蔵省の検査官が張りついて検査するわけにはいかないのでしょうから、それは自分の申告という話になるわけです。  例えば、アメリカだったら、一九九〇年十二月に、当時のシードマンという米国連邦預金保険公社の長官が下院の銀行委員会で証言しまして、どういうふうな証言をしたかというと、一九九一年の倒産処理に約百億ドル、さらに四百億ドルあれば九二年と九三年の銀行倒産に対処し得るという詳しい見通しを明らかにしたのですよ。そして、三年間で五百億ドルという要処理額のうち百八十億ドルは預金保険料収入で賄うから、足りない部分については国民にお願いしたいという位置づけの発言をきちんとはっきりしているわけです。  ここで、大蔵委員会で審議する場合も、そういったある程度の額がやはりはっきりしないとなかなか、一体どれだけあるのかどうか、基準幾つもたくさんありますよと、そういうことで、いたずらに何かどうも議論を拡散させているような、そういう気が私にはするのです。ある意味ではアメリカよりも日本の方が銀行業界に対しては大蔵省の統制色がむしろ強いわけですから、そういった意味基準を、こういうところはこういうふうな基準でということを定めて、そして計数を処理していただくというわけにはいかないのですかね。
  79. 山口公生

    山口政府委員 末松先生の御質問は、率直な疑問として出てくることは私もよくわかりますけれども、アメリカの場合のように、Sアンドしが相当数破綻して、処理すべきものが、こういったものがありますということで、それでSアンドL用の預金保険みたいなものがパンクしまして、それでどうするかという事態になったときの話かというふうに思います。  翻って我が国の場合を考えますと、確かにいろいろ破綻が起きました。二十数件起きておると思いますし、それから大型の破綻もありました。ただ、今は、先ほどちょっと数字で申し上げたような形で参っておるわけでございます一二・七兆で一・四兆使って、まだ予備軍として処理すべきものが既にあります。  しかし、それ以降、私は余りないことを願っておりますけれども、どれくらい破綻を強いられるかというのはわからないわけです。だから備えの議論になってくる。だから逆に、シードマンさん流に言えば、七兆円を用意していただければ大丈夫ですという、そういう言い方になるわけでございまして、あらかじめ、例えばビッグバンが進んだらこれくらいの破綻率が起きるだろうということを私どもが大胆に推測するわけにもまいりません。また、そういうことをすべきでもないわけでございますので、その辺の事情はちょっと、備えをさせていただくということに尽きるのだと思うのです。  積み上げて七兆円というのは、かくかくしかじかの理由でこういう見込みをしておりますから七兆円を使いますと言うべき問題ではないような気がして、そこはぜひ御理解賜りたいと思いますけれども。
  80. 末松義規

    ○末松委員 そうすると、この七兆円という数字も実は根拠はないという話になるのですよね、ある意味では。そこまではしかし、実際はそうではないでしょう。  もうちょっと聞きたいのですが、早期是正措置基準で、仮に今それをやったとして、自己資本比率が二%以下の危険な銀行というのですか、そういうふうな銀行が何行くらいあるかというとまた問題になるでしょうけれども、そのようなものの試算というのはしているのですか。あるいは、そういうふうなのはほとんどない、何もないというふうに試算していらっしゃるのですか。
  81. 山口公生

    山口政府委員 もちろん、破綻した銀行はもう論外だと思いますけれども、破綻を引き継いだ銀行で、特殊な例としてそういうことがある場合もあると思います、それはこれから新しい銀行としてやっていくわけですから。  ただ、そういう例外的なものを除きまして、ずうっと継続的にやっている銀行の場合は、今御指摘のような銀行は一行ありますけれども、それはもう既にその銀行も親銀行からの支援が決まっておりまして、自己資本比率は相当高い八%程度になるということでありますので、実質的には、少なくとも今の時点では、自己査定をする前の話ですけれども、そういったところはないということでございます。  今自己査定をしてきっちりと自分の債権を把握して、公認会計士のチェックを受けて、これから自己資本比率もはじくわけですから、軽々に、何行がどうと言う時期ではないように私は思っております。少なくとも私どもがこれまでの公表されているもので見る限りにおいては、そういった状況だということでございます。
  82. 末松義規

    ○末松委員 そうしますと、それほど今そういうふうな銀行は、問題になるような銀行破綻するような銀行はありませんと。ありませんというか、ないでしょうねという位置づけであれば、七兆もの金を用意する必要もない。むしろこれは国民に対する安心材料だというだけの話と受け取らせていただきますけれども、よろしいですか。
  83. 山口公生

    山口政府委員 先生の御指摘のように、まず安心していただくというようなことが一番でありますけれども、ただ、銀行の場合の特色の一つとして、財務状況破綻状況になっていなくても、資金繰りでとまるということもあるわけですね。資金繰りで続かないということがある。  なぜかといいますと、貸し付けを一方でやっています。期限がありますからすぐ回収はできない。ところが、預金等は解約がどっと来る。あるいは足りない分はいつもコール市場で調達している。そうすると、コール市場からお金が取れなくなったら資金がショートして払い戻しに応じられない、こういう状況になるわけです。そうすると、銀行銀行としての機能を果たせなくなる。  そうすると、黒字倒産かということになりますが、そのときに往々にして見られるのですけれども、銀行が破産した場合には、今度は自分が、その銀行がメーンバンクになっている企業がそのあおりを受けて倒れるということがあるのです。それから、自分の系列のノンバンク等が完全に倒れてしまうということがあるわけです。だから、清算価値で今度はバランスシートを組んでしまう、組まざるを得ないということになるわけですね。そういうケースというのは、それはないとは言えないのです。  しかし、総体的に見て、私は不安感をあおるつもりは全くありません。しかし、そういうケースはやはりあるということは頭に置いていただいた上で、基本的には安心感を、どんな事態になっても預金者皆様方に、安心をして全額保護をやります、こういう意思表示だというふうにお受け取りいただきたいというふうに思います。
  84. 末松義規

    ○末松委員 一月十二日の銀行自己査定ではそういうふうなところまでは入っていないのですか、不安になる材料のようなものは。
  85. 山口公生

    山口政府委員 その辺についての大変重要な点の御指摘だと思いますけれども、各銀行はリスク管理をずっとやっておりますが、自分の銀行が継続していくという前提でリスク管理をやっております。したがって、資金繰りがある日突然とまるという前提でその分類をやってはいないというふうに考えます。
  86. 末松義規

    ○末松委員 それほど銀行局長は敏感であってほしいのです。  海外、インドネシアとかタイとか韓国とか、大変な国家破産の手前ではないかと言われているような、そんなところもありますけれども、その辺のことについても全部いろいろと情報を収集した上での話なんですね。今いろいろ銀行局長が言われている不安材料の中にはそういう国際的なものが入っていますね。  何か大蔵省とかあるいは大臣がアジア各国を回って、あるいは財務官が回って、そういうアジア各国の状況を逐一調べてきているとか、あるいは私の不勉強なのかもしれませんけれども、そういう情報は余り入ってこないし、G7があるということでずうっと話し合っているのはわかるけれども、その辺のところがほとんど何もわかってなくて、何かどうもちょっと不安なんですけれどもね。
  87. 山口公生

    山口政府委員 御指摘のように、確かにアジア経済の問題というのは私どもも十分にウォッチをすべきことだというふうに思います。これは、アジア経済が大変調子のよかった時代から、いろいろと問題を惹起している時代に変わったという指摘もあります。そこに我が国の金融機関も貸し出しをやっております。やっている先は、日系企業が進出してそこに貸しているものも結構ございますし、それから一部は現地の大きな企業等に貸しております。  そういったものの債権についても当然各銀行自己査定をしてやっておるわけでございますが、それが、今まで問題ないと思っていた債権が、これはちょっと分類を変えなければいけないなということがやはり出てこないとも限らないと思います。したがいまして、そういったことも十分に考慮しながら、これからよく見ていく必要があるということでございます。  では、アジアに対する貸し付けがどれくらいあるかという問題ともかかわるのですけれども、確かに、私の記憶では二十兆から三十兆ぐらいの話だと思います。全体で五%ぐらいのウエートだったと思っておりますけれども、そのウエートを持っている貸し付け、信用供与でございますので、先生の御指摘のように、アジア経済というものについても十分目を離さないで見ていく必要があるだろうな。私はいたずらに不安を強調しているわけではございません。そういうことではなくて、客観的な情勢として、客観的によく見ていく必要があるというふうに考えております。
  88. 末松義規

    ○末松委員 実は私の心の中に、大蔵省の数字というのは余り信用がないのですよ。といいますのは、不良債権の回収は進んでおるのだと声高らかに言っていたのがわずか二、三カ月前ですよね。それがどうも話が違うじゃないかという話なんですよ。  二カ月前、私も質問したときに、実は今回のこのシステミックリスクを含めた金融危機は、先ほど局長がおっしゃっておられた二〇〇一年三月までその余りの一・三兆円と、あと十年度に預金保険機構の保険料率を改定といいますか見直して、それで対応できるのですということを橋本総理も言っておられたし、三塚大蔵大臣も言っておられた。この見通しというのは正しかったのですか。
  89. 山口公生

    山口政府委員 確かに、当時は二・七兆の保険料の収入見込みがあって、九六年度末までに一・四兆を支出しました、残りは一・三兆でございます、それから、信用組合勘定の方は政府保証がありますという前提でお話を申し上げておりました。  その後、北拓の破綻がありまして、破綻した当時はどういう状況か、財務状況も定かではありませんでした。ちょうど検査が入って一月もたたないうちの破綻資金繰り破綻だったのですけれども、その後、清算検査、先ほどくどくど申し上げて恐縮だったのですが、ゴーイングコンサーンの検査ではなくて清算検査に切りかえまして、それで、倒れたという前提でのロスを全部算出したわけでございます。  破産処理でございますので、北洋銀行に引き取ってもらう場合、ロスを引き取ってもらうわけにいきませんので、そこはやはり預金保険の負担にお願いせざるを得ないということでございます。今の時点で、それが最低でも八千四百という数字が出てまいっておる。これが十二月の終わり、暮れ近くということでございまして、その点については、そんな大きかったのかということについては私どもとしても不明を恥じざるを得ないのかもしれませんが、ただ、これはゴーイングコンサーンの場合と清算する場合とではかなり違ってまいりますので、そういうことも御理解賜れれば幸いでございます。  いずれにせよ、そうしますと、では一・三兆と信用組合の政府保証のところで十分かという話がやはり出てきて、それで、この間の十一月半ばの金融不安で大変うわさが広まったときも預金者の方々がかなり銀行に並ばれたのですね。取りつけとまではいきませんけれども、そういうふうに非常に心配な事態もありました。だから、大臣からの御指示もありまして、十分な対応をするようにということで今回こういう措置をお願いしているということで、御安心を願いたいという措置でございます。
  90. 末松義規

    ○末松委員 今、不明を恥じるというお話がございました。見通しが甘かったということは、これはある意味では客観的な事実でしょう。そこはもう何らこれに対して異論があるわけじゃないと思うのですね。  ただ問題は、この見通しが間違ったことに対してだれも責任をとらない。行政も責任をとらない。政治も責任をとらない。結局、そういうふうに見通しを誤っても、また同じ人が大臣になって、同じ人が銀行局長になっている、そういう方を前にして恐縮ですけれども。  そうしますと、今度は七兆円やります、七兆円で、例えば金融危機がまた拡大しました、それでまた、危機がもっと深刻化しました、七兆円では足りませんでしたというお話になったときに、また責任をとらないのかという位置づけになるのですよ。  要するに、これまでも見通しが甘くて、その対応が甘かったがゆえにさらにシステミックリスクのようなところまで来たんだ。山一だって本当はつぶれなくたってよかったんだと言う市場の関係者はたくさんいますよ。そのようにやっていて、実際に政策ミスでああいう形になったと私は考えています。それなのに、今度は、十兆円の交付国債を原資として、また七兆円と三兆円に分けてやるという。これは国民の財産を、NTT株の売却とかそういうのが入っていますから、国民の財産をどんどん使っていこうとしているわけですね。そういった十兆円というのはそんなに低い額じゃないですよ。  それが、政策の見通しが甘いがゆえに引き起こされたという面があるにもかかわらず、これをすべて市場が決めたものです、我々はそこまで知りませんでしたと言うのであれば、大蔵省は要らないですよ。それはすべて市場に任せればいいということなのです。  例えば利子率の問題だってそうです。民友連の中川議員も指摘されましたけれども、超低金利政策で、本当は国民に与えるべき利子を与えずに、年間数十兆円ですよ、ある意味では、これを銀行不良債権処理にも充ててきたことも事実ですよ。それでもここ数年間、実際に不良債権処理が進んでこなかったじゃないですか。  これは、国民にとってある意味での隠れた税金ですよ。それを政策的にうまくやれなくて、そして国民も、年間数十兆円というから消費もそれでポシャってしまって、消費意欲もないというような状況になって、それでも全く責任をだれもとろうとしない。これだったら大蔵大臣だってここにおられる一年生や二年生議員の方でも務まりそうだ、そういうふうに思うようなことにならざるを得ないのだろうと思うのです。  政策をやって誤っても、また、いやあ、もう危機危機だと、事情が違うんだ、だから、今度さらに一歩進んで政策をやる、そしてまた失敗したら危機危機だと騒いでいるのだったら、一体何め意味があるのですか。
  91. 山口公生

    山口政府委員 結局、信用秩序を必ず守らなければいけない、そのために預金者を保護する、それからシステム不安が起きないようにするということが一番今大切なわけでございます。したがって、足りる、足りないの議論はいろいろ今後の見通しによってあるでしょう。そのときに不安を与えないということがまず一番大事なのです。不安がありますとまた不安を呼んで悪い方向に行く、これをとめるのがまず私どもの仕事、最もやらなければいけない仕事だというふうに思います。したがって、その点について御理解を賜りたい。  それから、不良債権について金融機関処理をしていないというような御指摘でございますけれども、債権償却特別勘定の積極的な引き当てとか不良債権自体の償却とか、例の二十八兆ベースの数字でごらんになっても、これはずうっとトレースできる数字でございますから、現実にかなり進んできていることはお認めいただけると思います。  それから、利子収入の話の御指摘がございました。確かに、私も預金者の一人でございます。私の家族も、預金ということについては、預金者であります。そういう点からいうと、やはり先生のおっしゃるようなそういった理論というのもそれは成り立つと思いますけれども、一方で、中小企業を含めた借り手側、企業側の人たちにとってみますと、今は、非常に金利が上がって負担がふえることについてどうだという問題になります。したがって、これは一方的な議論では不十分だと思います。一面では真理であっても、他にとってみると、それはちょっと困ったよということになります。  それで、時に金融機関のみが利益を受けているような感じでございますが、貸出金利も相当下がっておりますので、その点については、一般企業の方も低金利ということでぜひ頑張っていただきたいと思っております。
  92. 末松義規

    ○末松委員 大臣は、コメントはございますか。大臣、今の聞いておられませんでしたか。
  93. 三塚博

    ○三塚国務大臣 低金利政策ということから申し上げますと、政府だけではなく、専管の日銀総裁がいつも言われていますことが、今日の経済的な状況政府見通しを達成するためにとっておるところですと、簡単に言いますとそういうことでありまして、専管のことではありますが、私自身も、不良債権だけではなく、経営の安定性、そのことが雇用にもつながる、またそのことが賃金の下支えアップにもつながる、こういうことの基本で理解を示しておるといつも申し上げておるところであります。  不良債権の問題が明確にならないのではないか、不透明ではないのかという御指摘でありますが、全力を尽くしてやっておることだけは御理解をいただけると思います。全銀行に客観的な基準において報告をさせる。同時に、それは各行が公開をしておるところ、その集計でお出しをいただいて公表をいたしておるところであります。  改めて、自己査定部分については、銀行局長説明のとおり、自己査定プラス外部監査を加えてやっておるわけでございまして、比較性においてずれがございますけれども、その方向は出てきておると思いますし、また、こういうものを即国民各位に公開をしていく、国会の皆様方にも出すということで今後の盛んな議論をいただくことによって、その議論の中から公開資料がより正確になるように、また、必要があればその分析をまたやらなければなりませんし、基準のあり方も、どうとるのか等も論議の中で確立されていくのではないでしょうか。今考えられる基準の中でただいまはやっておるということであります。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  94. 末松義規

    ○末松委員 大臣の方はちょっと前の議論についてお答えいただいたのですが、私の方は責任論について話をしたのです。その辺は時間がないので先に進みます。  十兆円の交付国債の財源についてお伺いします。  大蔵省からいただいたこの表の中にありますけれども、七兆と三兆を足した十兆のこの交付国債の話ですが、これは赤字国債と同じ機能を持つものなのか、それとも、見合いの資産という意味で、資産に実際にカウントされているのでしょうか。
  95. 藤井秀人

    藤井政府委員 お答えいたします。  今先生おっしゃいました十兆円、具体的には、特例業務勘定の七兆円と、それから金融危機管理勘定の三兆円ということでございますが、それぞれこれらにつきまして、例えば破綻金融機関がいつどのように出てくるのか、あるいはまた、金融危機管理勘定で申し上げますと、具体的な優先株等についてどのような需要が出てくるのか、あるいはさらに二次ロスがどの段階で具体的に出てくるのか、あるいはどの程度の金額が出てくるのか、これらについては、実は具体的にはこれからの話でございます。  あえてそれらを前提として申し上げますと、今般の十兆円の国債の償還のための財源といたしましては、先生御承知のとおり、国債整理基金特会に所属いたしますNTT株式の今後の売り払い収入、これが優先的に充てられることとなっております。さらに、これに加えまして、国債整理基金特会が現在、九年度末で約三兆円ということでございますが、持っております準備資金、これにつきましてもこの国債の償還に充てられるということになっております。  具体的なこれらの金額に加えまして、さらに足らざる部分が今後出てくるのかどうか、これは予測はできないわけでございますけれども、仮に足らざる部分が出てくるといたしますと、これは一般会計からの繰り入れということになるわけでございますが、それぞれその段階におきまして歳入あるいは歳出、これらにつきまして格段の努力を行いまして適切な繰り入れを行っていくということでございますので、先生おっしゃいましたように、これが直ちに特例公債の発行、赤字国債の発行につながるというわけではございません。
  96. 末松義規

    ○末松委員 NTTの売却益は、これは入っていないのですか。
  97. 藤井秀人

    藤井政府委員 先ほど申し上げましたように、NTTの売却収入、これはこの国債の償還のために優先的に充てられることになっております。  ちなみに申し上げますと、十年度の売り払い収入見込み額、約四千百億円でございますが、これらは当然のことながらこの国債の償還財源として優先的に充てられるということでございます。
  98. 末松義規

    ○末松委員 そうしますと、これでは足らないときは一般会計からの繰り入れ、これがなかなか難しいときは赤字国債の発行ということも考えられるという位置づけでいいですか。
  99. 藤井秀人

    藤井政府委員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、具体的にそれぞれどのような段階で、さらにどのような金額が政府に対しまして預金保険機構から現金償還の請求があるのか、これは予測はできないわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、例えば、優先株の購入に当たりましては適正な価格で購入をされるでしょうし、あるいは不良資産の買い取り等も適正な価格で購入され、かつ回収努力が当然のことながらなされるわけでございますので、今申し上げましたような、当面、三兆円の準備資金、さらに先ほど申し上げましたNTTの売り払い収入等々でもって対応はあるいはできるのではないだろうかというようには思っておりますが、先ほど申し上げましたように、仮にそれで足らざる場合におきましては、その段階で適切な歳入歳出両面にわたっての努力がなされるということでございます。
  100. 末松義規

    ○末松委員 特例業務勘定に入る七兆円なんですけれども、今度は政府保証の話です。政府保証で限度を十兆円にしていますけれども、これが何か一時金ということで、日銀特融の機能と非常に似ているのですね。一時的にお金を払って、そして、それが資産の売却とか債券の売却等によってまた回収されるということで、特に焦げつくことは全くないのであるという説明を受けておりますけれども、日銀特融の機能との関係でいけば、これはどういうふうに違うのでしょうか、お答え願います。
  101. 山口公生

    山口政府委員 日本銀行の特融は、日銀法の二十五条、今度四月から新しい法律だと条文は変わりますけれども、今の法律ですと二十五条に基づいて、信用秩序維持のために必要な業務として、日銀が金融機関等に対して、預金者や健全な融資先などに支障が生じないように資金繰りをつけるものであります。  例えば、北拓の例を申し上げます。北拓が破綻しました。そうすると、預金は入ってきません。それで貸し出しは、やはり取引先の関係もありますから続けていいですよと、こういう形にしていますから、日銀特融をつないであげませんとそれこそ店を閉めなければいけません。個別銀行のそういったときのための資金繰りとして無担保で出しております。これが日銀特融でございます。  今回の十兆円の政府保証の借り入れというのは、日銀借り入れ、それから市中借り入れ、両方とも可能でございますが、政府保証をして借りやすくするということもありますが、これはあくまで預金保険機構が、例えば買い取り資金、北拓の不良債権を時価で買い取りますね、そのときの買い取り資金を用意しなければいけません。そのための資金繰り等に使うためのものでございます。  だから、余り定義的な言い方はできないと思いますけれども、日銀特融の現在の使われ方は、個別の金融機関等に対して、そういった種々の支障が生じないようにしている緊急措置だということでございます。
  102. 末松義規

    ○末松委員 機能的に、一時金という意味では、これで焦げつくことはないということは、これはそうなんですか。
  103. 山口公生

    山口政府委員 それは、御指摘のとおりです。
  104. 末松義規

    ○末松委員 焦げついた場合にはこの七兆円の中から支払われる、こういう理解でよろしいですか。
  105. 山口公生

    山口政府委員 おっしゃるとおりです。
  106. 末松義規

    ○末松委員 そうしますと、原資もないわけですよね、政府保証ですから。別に十兆円に限る必要もなくて、これ自体を三十兆円、五十兆円、百兆円にしても、焦げつくことはないということであれば、それはそれで問題ないようにも思うのですけれども、いかがですか。
  107. 山口公生

    山口政府委員 これは、政府の姿勢としまして、いつでも換金できる国債、つまり現金化ができるものを用意してありますということで国民の皆さんに御安心いただくというスキームでございます。
  108. 末松義規

    ○末松委員 そうすると、いわゆる見せ金ですよね。だから、そうであれば別に十兆円に限る、何か十兆円に限った根拠はありますか。
  109. 山口公生

    山口政府委員 それは、政府保証の十兆円でございますか、それとも国債……(末松委員「そうです、政府保証の十兆円」と呼ぶ)政府保証の十兆円は、それは預金保険の、預金者保護のための措置でありますと、破綻金融機関からの不良資産の買い取り資金でございますので、十兆円程度の規模を確保すればまずは大丈夫だというふうに考えます。  それから、もう一方の危機管理勘定の方も、それで優先株劣後債、劣後ローン等の対応が十分できるというふうに考えております。
  110. 末松義規

    ○末松委員 次に話題を転じまして、この公的資金投入について、私が最初に述べましたとおり、まず最小化しなければいけないと。そのときに、アメリカのRTCのようにきちんとした公的な位置づけを持った債権回収機構をやはりつくって、そしてある意味では公的な権力を背景として、例えば警察が国税庁なんかと連携して、それで債権回収をきちんと強力に推し進めていくということが我々必要だと考えているのです。  もちろん、預金保険機構の中に回収体制の強化ということで罰則つきの立入調査権なんかもありますけれども、これであれば金融機関経営者の責任に関する調査とか告発義務、そういったものがどうも不足しているように思いますが、その点いかがでしょうか。
  111. 山口公生

    山口政府委員 今回の法案で権限をいろいろと付与をさせていただいておりますが、債権回収の過程で明らかになってきます破綻金融機関経営者あるいは借り手などの刑事、民事責任を厳格に追及する必要があるということで、その体制整備を図ります。  組織面でも、預金保険機構内に新しく責任解明委員会、これは名前はちょっとまだ仮称でございますが、それから実際に動く機構として機動調査課、これも仮称でございますが、そういったものを設置しまして、今先生のおっしゃったところをきっちりとやっていきたいというふうに考えております。
  112. 末松義規

    ○末松委員 その人数とか予算はどのぐらいのものですか、体制的には。
  113. 山口公生

    山口政府委員 まだその辺については、今そういう体制整備を図ろうとしているところでございます。もちろん、法案をお認めいただいて、きちっとした形でやっていきたいというふうに思っております。
  114. 末松義規

    ○末松委員 今、厳格な責任追及をされるという話でしたけれども、住専の場合、経営者の責任等について、実績は、どのくらい責任追及をなした例がございますか。
  115. 山口公生

    山口政府委員 住専について簡潔に申し上げますと、住宅金融債権管理機構による民事上の保全処分がこれまでに十七件、同機構の告発により競売妨害等で検挙をされたものが十八件というふうになっております。さらに、今後ともこの責任追及問題は真剣に取り組んでいくというふうに聞いております。
  116. 末松義規

    ○末松委員 ちょっと時間がないので、先に進めさせていただきます。  銀行の負担なんですけれども、民友連でも、銀行にもきちんと負担を求めよということで、第二原則で今議論が進んでおりますが、アメリカの場合、預金保険料率が可変料率で、危機時において〇%から〇・二七%まで保険料率をやっておりまして、ピーク時であった九二年から九三年の保険料の加重平均値は約〇・二五%です。これに対して、現在の我が国の特別保険料を加えた保険料率は〇・〇八四%、アメリカの三分の一程度なんです。  まず、国民の負担を求めると同時に、銀行業界にもきちんとした対応をとっていただく、負担をとっていただくということで、九八年度中の見直しということがよく言われておりますけれども、その保険料率の見直しについてはどうお考えか、お伺いしたいと思います。
  117. 山口公生

    山口政府委員 保険料の見直しにつきましては、十年度中にその検討を行うことといたしております。その際、いろいろなことを勘案して検討をさせていただきたいと思っておりますけれども、今、米国の例を申されました。  確かに、保険料率という形でのピーク時を見ますとそういう結果になりますが、これは対象となる預金の量の問題もありますし、結局、利益との関係で見るとなりますと、当時、七倍に上げたときは八%という水準が米国のピークでありましたので、そういったところを勘案して決めたわけでございますが、現在、中小金融機関におきましては、かなりその負担も大きくなってきております。だからといって見直しをしないと申し上げているわけではありませんけれども、そういったことも十分考える必要があるということ。.それから、国際的な活動をしている金融機関においては、今、米銀等はもう〇%でやっております。優良なところは〇%、今はです。それで同時に、今、競争すべき金融機関が七倍に引き上げたということ、これも一つ考慮する必要がある。それから、海外からの保険料負担が金融界にまたかかっていくということについての信認の問題等もある。しかし、そういうことを全部総合勘案した上で、前も種々この委員会でも御議論ありますけれども、十年度中に見直しを検討していきたいというふうに思っております。  アメリカのように可変的な料率という問題もありますけれども、今の預金保険法は差別的であってはならないとなっておりますので、今一律にやっておりますけれども、可変的な保険料率についての可能性ということも時々聞かれるのですけれども、今、優良な銀行は低くて、悪い銀行は高くしなさいとなると、かなりこれは逆に問題ではないかという感じもいたすわけでございます。ちょっとまだ時期が早いかなという感じをいたしております。
  118. 末松義規

    ○末松委員 まだ可変料率については聞いていなかったのですけれども、では、一応これ、急場をしのいで、ある程度経営的に安定するということであれば可変料率の導入についても検討をしようか、今局長の方で、ちょっと時期が早いかなという話がありましたけれども、これは二〇〇一年以前なのか、それとも以降なのか、その辺はいかがなんですか。
  119. 山口公生

    山口政府委員 これはちょっと何ともお答えしづらい話でございますが、したがいまして、可変料率という話もよくアメリカの例を引き合いに出して御指摘がありますけれども、今そういったことをとれる状況ではないように思っております。
  120. 末松義規

    ○末松委員 時間がないので次に移らせていただきます。  この金融システム安定化特別措置法で、資本注入についてですけれども、優先株の引き受けで、破綻時の受け皿銀行資本注入以外の引き受けについては、よくよく考えてみると、どうもこれはやはり金融機関救済、貸し渋りの対策としても、理屈的には金融機関救済じゃないかと思わざるを得ないのです。一方で政府は、公的資金預金者保護に限って使われるのだということを明らかにしておりますけれども、これとの整合性といいますか、金融機関救済は行わない、そう一方で言いながら、実際は金融機関救済になっているのではないかという気がするわけですね。  言葉を遊ぶつもりは全くありませんが、先ほどから局長は、これはシステミックリスク対応したものであるということを余りに強調されますから、システミックリスクの場合は基本的に金融機関がやはりプレーヤーになります。それをやはり救済していくということであれば、公的資金預金者保護以外には使いませんというようなこの旗頭は、これはどうも使えないのではないか、そういう気がしますが、いかがでしょうか。
  121. 山口公生

    山口政府委員 これはせんだっての予算委員会でも同じような御議論がありましたけれども、総理も、そういう発言はしていないというお話でございましたけれども。  いずれにせよ、公的資金を今回お願いしておりますのは、システムを守るためであります。それは、預金者を守る、それから金融の全体の安定性を確保することによって取引先、経済全体を守るということであります。  そういうことは、広く言いますと、預金者の保護であり、また信用秩序の安定のためでありまして、ひとり預金者保護だけというふうに分けて考えるよりは、経済全体がそういった形でうまくワークして、信用秩序全体が預金者保護を含めて健全になることが大切なのであろうというふうに思っております。
  122. 末松義規

    ○末松委員 では、位置づけとして、広い意味では預金者保護なんだけれども、狭い意味では銀行の保護だというふうな解釈でよろしいですね。
  123. 山口公生

    山口政府委員 銀行の保護ではないと思います。これは、銀行が持っている機能を守らなきゃいけないというためのものであります。
  124. 末松義規

    ○末松委員 ちょっと、余り言葉を遊ばないでください。  要するに、そういう機能を果たしている銀行、その機能を守るためにその果たしているプレーヤーも守るということじゃないですか、それは。そうでしょう。
  125. 山口公生

    山口政府委員 手法としては、個別金融機関に対する資本注入という手法はおっしゃるとおりですけれども、その目的が金融機関を助けるためというのではなくて、先ほどもるる申し上げたように、金融の不安が不安を呼んでという悪い循環が起きないように、あるいはそれを食いとめるようにという目的のためにこれをやるわけでございます。  したがいまして、資金注入しましても、ずうっとそれを政府が持ち続けるというものでもありません。市場がすくみ現象を起こしている、それが経済全体に悪い影響を及ぼすというときのために、これをやらないと経済全体が大変な損失をこうむる、国民全体が困った事態になるということをぜひ御理解いただきたいと思います。
  126. 末松義規

    ○末松委員 まあ、これ以上言葉をいろいろと弄する気はないのですけれども、ただ、今の答弁にしても、もしあれだったら、ある意味では率直に、プレーヤーである金融機関救済しながらシステムを守るんだ、それがひいては預金者の保護につながるんだという言い方をすればいいじゃないですか。何かあたかも、実際に優先株を購入するというか、要するに優先株を引き受けてもらった銀行は助かるわけですよね、まさしく。そして、その銀行が本当に困ったときに優先株政府が引き揚げるわけでもないわけでしょう。だからマクロの善は結局ミクロの善だという位置づけにならざるを得ないと思うのですけれども、どうも今の局長の話、わかったようでわからない。もう一回、ちょっときちんと論理を組み立ててほしいと思います。  それから、時間がないので先を続けます。先ほどから出ておりますけれども、東京三菱とか三和とか、いわゆる優良と言われている銀行に対して優先株の引き受けが可能なんだろうか、それが意図なのかということなんですが、法案では、優先株引き受けの条件として、金融機関等が内外金融市場において資金の調達をすることが極めて困難な状況に至るとか、あるいは金融機関等が破綻し、それが他の金融機関等の連鎖破綻を発生させることとなる場合に優先株の引き受けを行うとあります。これは先ほどの質問でもちょっと出たのですけれども、私もあえて質問させていただきますが、その基準は、この一月現在において当てはまるというふうにたしかおっしゃったような気がしますが、それはそういう理解でよろしいですか。
  127. 山口公生

    山口政府委員 まず、状況としてこういう状況でなければならない、先生が御指摘いただいたような状況のもとでございます。  それから、基準につきましては、最終的には審査委員会がお決めになり、それを公表されます。そのときぜひこの項目は加えるようにというのが法律に書いてございます。だから、詳細にわたっては審査委員会がお決めになる話でございます。
  128. 末松義規

    ○末松委員 すべてが審査委員会の決定事項だよということなんですが、銀行局長認識として、先ほど私が環境を申しましたよね、二点。例えば資金調達が極めて困難とか、あるいは金融機関連鎖破綻を発生させる、そういうふうな環境の認識なんですが、今現在はそういう環境にあるとお思いですかというのが私の質問だったのですけれども。
  129. 山口公生

    山口政府委員 これは、私見を申し上げるよりは、審査委員会委員先生方が御認識をどう持たれるかということが大切だというふうに思います。
  130. 末松義規

    ○末松委員 この審査委員会はいつごろできるのですか。
  131. 山口公生

    山口政府委員 まず、この法律をお通しいただいて成立させていただけませんと審査委員会はもちろんできません。それで、もし成立させていただきますれば、できるだけ早くおつくりいただくように我々としても力を尽くしたいと思います。
  132. 末松義規

    ○末松委員 時間がないので最後の質問になるかと思いますが、その審査委員会ですけれども、もしこれ、優先株を買い取って、そしてその株がかなり下がってロスを生じたといった場合には、金融危機管理勘定の中の三兆円の方から処理されるのでしょうけれども、そういった場合、審査委員会の責任といいますか、そういう責任というのは生じるのでしょうか。それは全く責任のない体制なんでしょうか。
  133. 山口公生

    山口政府委員 これは何のための制度かということを考えましたときに、これがなければ国民が重大な損失を受ける状況を防ぐということでありますれば、危機対応でございますので、そこで、もし値下がりしたら審査委員会が責任をとれというような性格のものでは私はないと思います。それでもって国民皆様が安心していただき、経済が円滑に進み、貸し渋りあるいは雇用問題等に大きな利益がもたらされれば、それは審査委員会人たちがどうこう言うべき話ではないと思います。
  134. 末松義規

    ○末松委員 その意味で恣意的でない対応を望んで、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  135. 村上誠一郎

    ○村上委員長 次に、佐々木憲昭君。
  136. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  提案されている金融二法というのは、三十兆円の公的資金投入の枠組みをつくるという重大な内容のものであります。私は二つの問題があると思うのです。  まず第一は、金融機関破綻処理に当たりまして、財政資金公的資金というのを住専以外のノンバンクには使わない、信用組合以外の一般金融機関にも使わない、原則として金融システムの中の負担によって賄う、こう言ってきたわけだけれども、この公約に真っ向から反している。これが第一であります。  第二に、預金保険機構の特例業務として新たに金融危機管理勘定を設けまして、破綻しない健全な金融機関資本増強のためにも十三兆円もの公的資金投入する仕組みをつくろうとしていることであります。  それで大臣に、まず前提として基礎的なことをお聞きしたいわけですが、今度の金融安定化法案、ここで資本注入の対象にならないのはどのような金融機関か、まずお答えを願いたいと思います。
  137. 山口公生

    山口政府委員 まず考えられますのは、この法律に書いてありますように、財務内容等が非常に悪くて破綻が見込まれるようなそういったものは、もう当然除外されると思います。
  138. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 ここに大蔵省からいただきました資料があります。「自己資本比率の分布状況」というものでございます。これは平成九年九月末現在のものでありますけれども、これによりますと、大手十九行、このうちで国際活動を行っている十七行というのは、すべてBIS基準八%をクリアしております。八から九%が五行、九から一〇%が七行、一〇%以上が五行あります。  常識的に考えて、こんなに体力のある銀行にはこれ以上でこ入れする必要はないというふうに思うわけですけれども、この十九行、とりわけ十七行、この銀行優先株購入の対象になるのかならないのか、まずその枠組みとしてこの点をお聞きしたいと思います。
  139. 山口公生

    山口政府委員 結果として申し上げますと、それは排除をされておりません。なぜならば、九月期でそうした八%を維持しておる銀行も、例えば昨年十一月ごろの状況を思い起こしていただきたいのでございますが、大型の破綻があり、その後ジャパン・プレミアムが一%にまではね上がりました。  ジャパン・プレミアムはお金を出せば何とか解決する問題です。しかし、資金の供与をとめられそうになった銀行もあります。そうなりますと、各銀行は、これは大手銀行ですけれども、競って資金を取ろうとするわけです。そうすると、余計にそこに不安感が生じるわけです。したがって、BIS基準を仮にクリアしていてもそういったことが起こり得るということです。まして、先ほど申し上げましたように、八%を切ったりしますと、本当にクレジットを切られてしまうということもあるわけです。  では、今の状況はどうかといいますと、八%が本当にクリアできるかどうかという問題がいつもついて回るわけです。三月末の時点での数字でございますから、九月末の時点で、今先生おっしゃいましたけれども、償却をどんどんやります。そうすると、自己資本は下がってまいります。株が下がると評価、含みも下がります。時価法をとりますと、そこは償却もしなきゃいけない。したがって、貸し渋り現象と言われる貸し出しの回収等まで出てくるわけです。それは心配になるからです。  したがって、今先生がおっしゃった九月末の数字は確かにそうです。しかし、今度の三月末等を見たときに、絶対それが大丈夫かということをいったときに、彼らとしては不安を持つ、その不安感を持たせないためにはあらゆる手だてがあるということを示す必要がある、こういうことなのでございますので、アプリオリにそういった銀行は排除するということではないと思います。
  140. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 結局、大手の十七行、体力のある銀行も排除されていない、資本注入の対象になるという御答弁であります。  この金融安定化法の第三条には、発動要件として、自己資本の充実の改善がなければ、我が国における金融の機能に対する内外の信頼が大きく低下するということを挙げています。つまり、こういう体力のある銀行も対象にし、しかもその自己資本の充実を図ってやる、改善しなければならない状況に今ある、こういうことでありますから、まさに大銀行支援、大銀行優遇ということになると思うわけですけれども、それでよろしいですね。
  141. 山口公生

    山口政府委員 大銀行を優遇するための措置とは思いません。これは、銀行の果たしている機能が広く国民生活全般にまでかかわりがあるからでございます。それが、自己資本が毀損される、あるいは自己資本比率が低下する現象、あるいはその危惧でもって大変大きな影響を及ぼしているからであります。したがって、大銀行を助けるためにこの制度があるわけではありません。  それは、手法としてはその銀行に対する資本注入という形はとりますけれども、そこで私どもが守りたいのは、そういったシステミックなリスク、それで失われる、毀損されることのないように、守らなければいけない我々の国民の生活なり企業活動なり、そういったものを守るためであります。  それは自己責任ではないかという御議論もあるかもしれません。それは、自分で調達できればそれはそれでいいわけですけれども、市場のすくみ現象等が起きたときにそれがうまくいかない。しかもラッシュするのです。不安が不安を呼ぶとラッシュする。ラッシュしたらすくみはよりすくみます。そういうことをぜひ解消しないと、本当に国民全部が困った事態になるというふうなことを懸念するからでございます。
  142. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 手法として個別銀行を通じてシステムの安定を図る。しかし、現実にこの法案の成立を前提として大手の主要な銀行が着々と優先株の発行の準備をしている、劣後債発行の準備をしているということが報道されております。中小の金融機関でどんどんこういう準備をしているという報道はありません。  例えば、ここに一月二十一日付のある新聞を持ってまいりましたが、「都市銀行、長期信用銀行、信託銀行など国内の主要行は、早ければ来月中旬にも公的資金により優先株劣後債を一斉に発行し、自己資本の強化を図る見通しとなった。」こういうふうに報道されております。また、上位都銀の話として、「国際的に広く活動する大手行が足並みをそろえ新制度を活用し、財務基盤を固めることで「金融システムに対する心理的な不安を取り除く効果を期待できる」」と述べている、こう紹介されております。現実の動きは、大手銀行が中心になって、今か今かといわば口をあけて待っている、そういう状況現状だと思うのです。  ですから、この法案は来月中旬にもこういう大手銀行が活用できる、そういう法律になっている、そのための法律だというふうに現実になっていると思いますけれども、そういうふうに理解してよろしいでしょうね。
  143. 山口公生

    山口政府委員 この法律は、各金融機関が申請を行った段階で、審査委員会が厳正な審査基準に基づいて引き受けをするかどうかを決めるものであります。  今いろいろな報道という形で御指摘されましたけれども、これはあくまで当該銀行がそれぞれ申請をし、審査委員会が、適合するか、その必要性があるかを審査して決めるというものであります。
  144. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今は仕組みの説明をしただけでありまして、現実にこういう動きがあり、この法案が成立をすれば真っ先に申請をする、これが大手主要銀行動きだという点については否定されなかったわけであります、  そこで、山日銀行局長は国会での答弁で、例えば十兆円を使いますと、仮に今の主要十九行に十兆円を全部入れるとしますと、自己資本比率が、私のざっとした計算では一三%ぐらいになる、あるところでは、十九行の半分に入れれば一三%ぐらいになる、こういう御答弁もありますけれども、国際的レベルからいうとかなり高い方の数字になります。それくらいの備えというものを準備しておけば、国際的ないろいろな横波あるいは横風が当たっても対応できるということが言えるのではないかというふうに考えております、このように述べておられるわけでありますけれども、そこで、大蔵大臣にちょっとお聞きをしたい。  大蔵大臣も、大体十兆円程度を資本注入すれば主要なところは十数%、一三%、このぐらいの水準に上がる、こういう感触をお持ちでしょうか。
  145. 山口公生

    山口政府委員 私の答弁を引用されましたので先に。確かに私は、ちょっと正確に言いますと、半分の銀行に対してということのつもりで言ったわけです。  それで、なぜそういう御答弁を申し上げたかというと、十兆円の用意がある、その十兆円というのはどういう考え方なんだというお尋ねがありましたので、そうすると、十兆円というもののイメージがどう皆様方におわかりいただいているかということで、仮にこういった形で計算すればというふうに申し上げたわけです。  したがって、十九行の半分と申し上げましたが、半分に入れると私が言ったわけでもありませんし、また、それが全部自己資本の充実だけに使われて、貸し付けの方の財源の方には回らないとかいうことを言っているわけじゃありません。すなわち、十兆円という規模のイメージをわかっていただくために、これくらいの用意をすればいいと思いますということを申し上げたので、何も私は、十九行の半分に入れますとか、あるいは自己資本を上げるためだけに、これをどんどん高めるためにだけ使うということを申し上げているわけではないことは、ぜひ御理解いただきたいと思います。
  146. 三塚博

    ○三塚国務大臣 委員は、銀行はどうやら悪者だという視点を持ってやられておるのではないかと懸念を持ちますということなんです。  要すれば、今回のことは銀行を救うのでは全くないということは何回も申し上げてきております。システム不安を解消していくこと、そして、個人の預貯金を完全に保護するということ、これは国の業務であります。不安感が醸成されることによってさらに不安が不安を呼ぶというこの事態を回避することが大事、こういうことで申し上げておるわけでございまして、要求があれば、監査委員会がしっかりとした……(「審査委員会じゃないの」と呼ぶ者あり)審査委員会がしっかりとした協議の中で決定をされることであります。会議の内容は公表されるわけでございますから明確になるわけであります。
  147. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私が質問したのは、十兆円を十九行のうちの半分ぐらいに入れると大体一三%程度に上がる、こういう感触は大臣も同じようにお持ちでしょうかと聞いたんですが、質問に対しては一言もそれにお答えになりません。  私が申し上げておりますのは、結局、大手を中心としてこれを利用するというのが現実に進み、そして、試算とおっしゃいましたが、その試算の根拠には一つ考え方というのがあって、それがそこに反映していると見なければならないと思ったからであります。現実に、大手六都銀が先行をして申請する見通したという報道もあります。  ・例えば、読売新聞の一月十四日、ここでは、「東京三菱、三和、住友、第一勧業、さくら、富士の大手都銀六行が、関連法案の成立を待ってほぼ同時に、公的資金投入審査機関が置かれる預金保険機構に申請する見通しだ。」、このように言っているわけであります。つまり、大手がまさに先行をして準備をしている。まだ成立もしていないのに、法案が成立すれば直ちにそれが可能になるように、こういうことをやっているわけですよね。  しかも、これに対して三塚大蔵大臣はどのように評価をしているかという点が報道されています。日経の一月十五日付で、「大手都市銀行公的資金による優先株劣後債の買い取りなど資本強化策に前向きに取り組み始めたことについて「外国にも安心感を与えることが大事という意味で、大変歓迎できる」と述べ、金融システム安定化につながるとの認識を表明した。」つまり、大手銀行が先行して取り組んでいることについて、大変歓迎できる、このようにおっしゃっていますけれども、これは事実ですね。
  148. 三塚博

    ○三塚国務大臣 先ほどの十九行、十兆円は、機械的計算によれば一三%、それはわかっていることでありますから原則論を申し上げました。  ただいまの私の発言については、記者会見においてさように申し上げました。
  149. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 大手中心の現実の動きについてはそのとおりであった。そして、それを歓迎した。  さあそれでは、このように大手の、つまり国際市場で活動をしている巨大銀行がさらに資本注入を受けて、そしてますます体力を強めていく、そういうのがこの法案のねらいであります。そして問題なのは、なぜそこに国民の税金が使われなければならないのかという問題です。  全くこれは私は不公平だと思うんですよ。大銀行にはつかみ金がどんどん入ってくる。しかし国民は、欲しくもない株を無理やり買わされて、負担だけは一方的に押しつけられる、こういうことになるんじゃありませんか、いかがですか。
  150. 山口公生

    山口政府委員 先生、なぜ税金がと決められましたけれども、これはあくまで優先株の購入とか劣後債の購入とか劣後ローンの供与であります。それはロスが出た場合にはそういうことにつながりますけれども、それで何をしようかという目的を考えますと、国がしなければ大変に失うことになる経済的な損失をこれで防ごうということでございます。これは大手銀行であっても、三月期末が不安になりますとどんどん資産の圧縮を迫られていくんです。これをやめろと言っても、それは彼らがそういう行動をとる。安心感を与えてあげればそれがとまる可能性が高くなるわけですから、ひとつぜひ……。
  151. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 ロスが出た場合には国民の負担になるということはお認めになりました。実際に、法案の第三十条を見ますと、取得価額を下回る価額で処分された場合、つまり損失補てんする。損失補てんは結局国民の負担になっていくわけであります。ですから、損失が出ないなら初めからこういう条文は必要ないわけでありまして、損失が出るということを想定して法案がつくられている。  非常に明確になったのは、金融機関を中心とするこういう体力増強、そういうところに国民の税金が使われ、そして負担は国民に押しつけられる。大銀行はますます資本を増強し、利益だけを受けていく。これでは、もう国民は二重三重の負担を強いられるということになるわけであります。  これまでも大銀行を中心として投機に走り、バブル経済をつくり出し、その結果、庶民は大きな被害を受けました。そしてその後、長期にわたる低金利政策が行われ、この六年間だけでも家計から約二十九兆円の利子所得が奪われました。つまり、家計からの所得移転というのが大規模に行われた。しかも、その上に九兆円の負担増が行われました。もう国民は二重三重に踏んだりけったりの状況にあるわけであります。そしてその一方で、大銀行をますます優遇する。しかも大手を中心に優遇するということが極めて明確になったと思うのです。  私はこのような国民犠牲の法案は撤回すべきだということを最後に申し上げまして、質問を終わります。
  152. 山口公生

    山口政府委員 一言だけ発言をお許しいただきたいと思いますが、優先株等の売却によって益が出る場合もありますし、アメリカでのRFCの場合は、国を救った上でなおかつ益が出たというふうに聞いております。(佐々木(憲)委員「損をした場合には国民がかぶるということですね」と呼ぶ)
  153. 三塚博

    ○三塚国務大臣 銀行を助けるのではなく、金融システムを安定させる。貸し渋りをなくしたり、回収するなどということのありません金融情勢をつくり上げますことが政府として重要なことであります。そのために全力を尽くしてこの法律提出をし、御審議をいただいております。
  154. 村上誠一郎

    ○村上委員長 これにて佐々木君の質疑は終局いたしました。  午後二時三十分に委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ————◇—————     午後二時三十二分開議
  155. 村上誠一郎

    ○村上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出預金保険法の一部を改正する法律案金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案及び本日付託になりました内閣提出平成十年分所得税特別減税のための臨時措置法案を議題といたします。  まず、平成十年分所得税特別減税のための臨時措置法案について趣旨の説明を聴取いたします。大蔵大臣三塚博君。     —————————————  平成十年分所得税特別減税のための臨時措置   法案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  156. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ただいま議題となりました平成十年分所得税特別減税のための臨時措置法案の提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、当面の金融経済情勢に対応するため、平成十年分の所得税について、特別減税を実施することとし、本法律案提出した次第であります。  以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  この特別減税は、平成十年分の所得税について、定額による特別減税を実施することとしております。この特別減税の額は、本人について一万八千円、控除対象配偶者または扶養親族一人について九千円の合計額としております。ただし、その合計額がその者の特別減税前の所得税額を超える場合には、その所得税額を限度としております。  この特別減税の具体的な実施方法に関しましては、給与所得者については、平成十年二月一日以後最初に支払われる主たる給与等に対する源泉徴収税額から特別減税額を控除し、控除し切れない部分の金額は、以後に支払われる主たる給与等に対する源泉徴収税額から、順次控除することにより実施することとしております。最終的には、平成十年分の年末調整の際に、年税額から特別減税額を控除することにより精算することとしております。  次に、公的年金等の受給者については、給与等の特別減税に準じた方法によりまして実施することとし、最終的には、来年の確定申告の際に、特別減税の額を精算することとしております。  また、事業所得者等については、原則として、平成十年分の所得税として最初に納付する平成十年七月の予定納税額から特別減税額を控除し、控除し切れない部分の金額は、第二期の予定納税額から控除することにより実施することとしております。なお、予定納税の必要のない者を含め、最終的には、来年の確定申告の際に、特別減税の額を精算することとしております。  以上が、平成十年分所得税特別減税のための臨時措置法案の提案の理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
  157. 村上誠一郎

    ○村上委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  158. 村上誠一郎

    ○村上委員長 これより各案を一括して質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西田猛君。
  159. 西田猛

    ○西田(猛)委員 自由党の西田猛でございます。ただいま提案されました平成十年分所得税特別減税のための臨時措置法案につきまして御質問を申し上げたいと思います。  今回提出されました法案の内容では二兆円の所得税特別減税を含んでおりますけれども、これはもう皆様よく御存じのように、二兆円の特別所得税減税は、昨年三月の通常国会におきまして、当時の新進党が、平成七年、八年と続いてきた所得税の特別減税についての継続法案提出いたしたものでございました。そのときには、残念ながら、与党三党に加え、野党の一部も加わって反対をされた、廃案に追い込まれたものでありまずけれども、その後一年たって、景気が悪くなったというよりも、廃案に追い込まれたからこそ、減税法案がなかったからこそこういう事態を招いたわけであります。ここに至ってこの所得税特別減税法案を出してくるということについての責任、これはやはりここではっきりとけじめをつけておかなければならないのだと思っているものであります。  午前中にも質問させていただきました金融機能安定化のための二法案、これも大切なものではございます。また、所得税の特別減税法案も大切なものではございます。しかし、物にはそれぞれ、その時宜を得たタイムリーな場面、場所というものがございます。それを失した政府の責任、そして、今現在のこの我が国の経済状況を招いた政府の責任というものは、非常に重く受けとめられなければなりません。  そこで、大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、この所得税、税金についての、あるいはそれの基礎となる経済を見る洞察力のなさ、そして政策の誤り、ここに陥らせた原因について、その責任をいかに明確にお認めになっておられるかをお話しいただきたいと思います。
  160. 三塚博

    ○三塚国務大臣 御主張は御主張として承らさせていただきます。  今次の平成九年特別減税は、当時の経済財政事情を踏まえて実施しないこととしたものでございます。  今回提案しましたこの特別減税は、御案内のとおり、夏以降のアジアの通貨・金融不安、だれしもが予想をしなかった動きでございました。そして、秋以降の我が国の金融機関経営問題といった予期せざる事態を招来したところでございます。こういう、予想をはるかに超えた経済の流れの中で、企業景況感の悪化、また家計に対する不安感、こういうものが出てまいりました。  各党が言われる、株式市場のメッセージを聞けと、いろいろ言われるわけでございますが、それらもしかと踏まえながら、財政、経済の全体を見ながら、緊急の措置として実施するものとしたわけであります。かねがね申し上げておりますとおり、政治は、緊急な措置、必要というときには俊敏にこれに対応することでなければならぬわけであります。  このほか、この特別減税は、法人課税、有価証券取引税、地価税の減税等の内容を盛り込んだ十年度税制改正や、金融システム安定化のための三十兆円の公的資金の活用など、ワンセットでつくらさせていただきました。  小出し、出しおくれと言われますけれども、議会制民主主義の中におきましては、手続が大事であります。法律によってこの確定をいただく、それが国民各位の理解をいただくということにも通ずるわけでございますから、そういう点で、小出し、立ちおくれということではなく、まともに国民危機を救うためにこのことに到達をしたという、その点の御理解をいただきたいと思います。  これが成立することによりまして、御案内のとおり、家計企業経済に対する不透明感を払拭することだけは間違いありません。また、不安感もこれで解消されるということを期待をしながら、力強い経済の発展を促していかなければならないと思っておるところであります。  責任をとれということは、まさにそのために、政治の原点に返りまして、御批判を承知の上に与えられたこの仕事をしっかりとやる、こういうことであります。
  161. 西田猛

    ○西田(猛)委員 大臣、開き直りともとれるような御答弁をいただきまして、私は、粛々とこの減税法案について審議をさせていただこうかと思ったのですけれども、そのようなお答えをいただくのであれば、ここで二点お伺いしたいと思うのですね。  まず第一点は、私どもはこの減税法案が出てきたことを何も批判しているものではないのですよ。今、批判は批判として受けとめながらとおっしゃいました。そんなことは批判しておりません。遅いと言っているのです。なぜ去年の四月にこの減税ということをお考えにならなかったのか、これがまず第一点です。  それから、第二点に、その理由としてるる先ほど来あるいは午前中もおっしゃいました、いや、予期しなかったアジア経済不安だとか、予期しなかった不況が起こったんだとかおっしゃいました。とんでもない話です。アジア経済不安、アジア金融不安は、我が国の金融システムにも大きな原因があったわけです。アジアの諸国に出ていった我が国の金融機関の余りにも逃げ足の速い金融資産が、向こうで資産を形成しないうちにすっと逃げたわけですよ。それが特にタイにおいて顕著に発生してタイの金融不安を招き、それが香港に移行して香港通貨の下落を招いたから、香港政府は金利をばんと上げて株価が急落した、そこからアジア金融不安は始まったわけです。我が国にだって原因はあることなんですよ。  この二点について、大臣からのお答えをお聞きしたいと思います。
  162. 三塚博

    ○三塚国務大臣 ですから、四月に提出をいたしました、なぜそれをやらないのか、こういうことは御批判として承る、こう申し上げたわけであります。  それと、アジアに起きました金融不安の速さというものについて、委員指摘のように、立地しておりました邦銀の貸し渋り、撤退、こういうものもあったことは承知をいたしておりますけれども、それだけではない経済運営の種々の問題もありましたことは、委員も御承知のとおりでございます。  そういう中で、タイ・バーツに発しまして、インドネシア・ルピア、そして香港、そして韓国、こういう状況が出てまいったことにかんがみまして、当然、アジアは一体でございますから、我が国のマーケットにもその影響は及ぶことは御承知のとおりであります。  そういう点で、この深刻な状態をどうするかといえば、やはり日本がしっかりとして、市場の安定、通貨の安定、そして経済不安感市場不透明感からくる不安感、こういうものを解消していかなければならない、こういうことを申し上げさせていただいたところであります。
  163. 西田猛

    ○西田(猛)委員 それと、先ほど蔵相は、この減税法案が成立すれば国民のこの経済等に対する不安は一掃されるであろうというふうにお答えになりました。果たして、昨年の十二月十七日に橋本内閣総理大臣が突如この二兆円の特別減税を公表されたときに、確かに、翌日には株価が、東証株価がいっとき上がったと思います。しかし、その後ずっと下落を続けてきておりました。そのことのマーケットの反応について大臣はどのように御判断されましたですか。
  164. 三塚博

    ○三塚国務大臣 これもいろいろな要素があろうと思います。橋本首相がマレーシアにおけるAPEC首脳会議、その前のカナダにおける会議、連続して、アジア通貨の不安、このことがアジア全体に及ぼす影響、そしてヨーロッパ、アメリカ、このことも影響を強めるであろう、こういうこと。特に、マレーシアにおけるAPEC会議におきましては、個々の首脳からバイの会談を要請され、またこちらからみずからもバイの会談をしながら懇談をした中で、通貨安定に対する日本の役割、十二分に果たしてほしい、こういうこと。とにかく、こもごも、日本経済が、日本市場が安定をしていく、こういうことがアジアの安定、我々の安定にもつながります、こういう点の要請を深刻に受けたことを考えまして最終決断をした、こういうことであります。  その結果、株式市場もこれに反応をしてそれなりのアップがあったことは御承知のとおり。その翌日、東食が、日本を代表する商社、食料品商社でありますが、御案内のとおり、メーンバンク及び協力バンクの足並みがそろうことが難しくなり、破綻をして会社更生への道、今苦悩されておるわけでございます。  日本のメーンバンクと言われる大きな銀行その他がこれだけの会社について手だてを講ずることができなかったのかということが、市場に大きな不安をもたらしたことは間違いがないのではないだろうかという大方の分析を、私は委員に紹介をしながら、私もそのことはやはり、全部が全部ではございませんけれども、一つの理由であったな、そういうことでそう申し上げさせていただきます。
  165. 西田猛

    ○西田(猛)委員 これは、もう各般のエコノミストの方あるいは世界的な世論にもあらわれておりますけれども、我が国が平成九年中に行いました消費税率の引き上げ、特別減税の打ち切り、その他健康保険制度の国民負担の増加とか等々で九兆円余りの国民負担が増加をし、しかも、公共投資の削減を含んだ九七年度の当初予算で日本景気は非常に冷え込んだのではないかというふうに思われて、現下の状況が招かれたわけです。そこへもってきまして、財政構造改革法ができて平成十年度の政府の原案が今のような形ででき上がって、デフレ経済を助長しているということが言われているわけです。  こういう状況で今の日本経済が苦しんでいる以上、この二兆円の特別減税、単年度限りというところで本当に景気回復していくのかということについては、我が国のみならず、アメリカだって世界的な国だって、みんな心配をしているところであります。我々も、何もここで減税をしてはいけないとか言っているわけじゃないのです。もっと早くにするべきだったし、どうしたらもっと抜本的な、根本的な、我が国の経済を上向かせる方策がとれるのかということを、今この危機の時期に真剣に考えなければいけないのではないかということを申し上げているわけなのであります。  したがって、この二兆円の特別減税、これを十年度以降も何らかの形で恒久化というか制度化というかしていくということを、ここで国民皆様に対してメッセージをお送りになれば、それはそれなりの効果が出てくると思います。しかし、九年度限りです、こういう話をすれば、ああ、そうか、そうしたら、手元へ戻ってきた一家庭当たり六万幾ら、何がしの金を、それでは次のときに備えてということで、これまたたんす預金してしまうということで消費が喚起されない、消費が興らなければ、またぞろ景気は上向かないわけでありましょう。したがって、大蔵大臣、この減税制度について平成十年度以降にも恒久化する、もしくは制度化することを考えていくということをお話しできますでしょうか。
  166. 三塚博

    ○三塚国務大臣 これは、ただいまの本会議の総理及び各議員の議論の中で、橋本首相から、そのようにならないよう最大の努力をする、こういうことでございました。私も基本はそうであります。  そういう点で、ぜひとも一日も早い成案として実行に移させていただきますよう、これは心を込めてお願いを申し上げる、こういうことでございますので、御理解をいただきたいと存じます。
  167. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ここで、きょうは経済企画庁及び通産省の局長の方にも来ていただいておりますので、同じ政府部内でありますけれども、それぞれ、経済を企画あるいは産業政策を考えるお立場から御意見をいただきたいと思います。  今の、蔵相も言われた、あるいは私も申し上げたような我が国の経済状態の中で、この二兆円の平成十年分所得税特別減税によって、今蔵相が言ったように、果たして本当に日本国民の皆さんの不安が一掃されて、解消されて、景気は桜が咲くころにはばつと上向いているのかなという点について御意見をいただきたいと思うのです。
  168. 江崎格

    ○江崎政府委員 お答えいたします。  先生御提案の減税の問題でございますけれども、政府としましては、ただいま大蔵大臣がお答えになっておられましたように、現在の我が国の経済状況対応するために、二兆円の特別減税を含む予算、税制面の措置を講ずることとしているわけでございますし、また、いわゆる貸し渋り対策といたしまして、信用保証をあわせまして平成九年度に十二兆円、平成十年度には十三兆円、総額二十五兆円の資金を用意する、こういう対策をとるということにしております。また、金融システム安定化のために、あわせて三十兆円の公的資金の活用をできるようにするということで、税制、金融両面にわたりましてさまざまな措置を講ずることにしているわけでございます。  こうした取り組みなどのすべてが、相乗効果をもちまして、消費者のマインドあるいは企業のマインドを好転させるという効果を期待しておりまして、こうした状況のもとではこの特別減税の二兆円も大きな効果を持つものというふうに私ども考えております。
  169. 塩谷隆英

    ○塩谷政府委員 お答えをいたします。  景気の動向でございますが、現在足踏みとも言える状態が続いておりまして、昨年秋以降の株価下落金融機関経営破綻アジア経済情勢の急速な変化などを背景に、家計企業景況感が低下をいたしておりまして、個人消費や設備投資にも影響を及ぼすなど、厳しさが増しているものと認識をいたしております。  このような事態に対しまして、政府といたしましては、昨年十一月には、経済構造改革を推進いたしまして民間需要中心の自律的安定成長を図る方向で、規制緩和を初めとする緊急経済対策を実施いたしました。それとともに、平成十年度税制改正においては、土地譲渡益課税の重課制度の撤廃、地価税凍結など土地の有効利用促進及び取引活性化のための税制改正に加えまして、魅力ある事業環境整備という観点から、法人課税や有価証券取引税等の改革が行われることとなっております。  しかしながら、これらの規制緩和や税制改正につきましては、法律改正等国会での御審議を経て成立していただくことが必要でありまして、その執行は春以降となるわけであります。  一方、秋口以降の複数の金融機関経営破綻によります金融システムに対します信頼感の低下、あるいは金融機関の貸し出し態度の一層の慎重化、アジア経済危機の深刻化が見られる中で、この一−三月期が経済運営にとって極めて重要な時期となると判断をいたしております。  この一−三月期という重要な時期におきまして所得課税の特別減税を行うことは、金融システム安定化策などのさまざまな措置と相まって、相乗的に、消費者企業経済先行きに対する信頼感の回復につながりますことから、景気効果的に作用するというふうに考えております。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席
  170. 西田猛

    ○西田(猛)委員 この一−三月期にこの対策をとることについて、おのおのある程度の効果が期待できるという当然のことのお話ではあると思います。それでは、去年の四月にこの二兆円減税を継続するという話が出ていたら、もちろん後ろを振り返って言ってもわからないのですけれども、その効果のほどについて、今と比べてどのようにお考えになられるか。これは産業政策局長、いかがでしょうか。
  171. 江崎格

    ○江崎政府委員 私ども、作業としてそのようなことをやりておりませんので、今ここで断定的なことを申し上げるのはちょっと差し控えたいと思います。
  172. 西田猛

    ○西田(猛)委員 作業としてということだそうですけれども、しかし、政府のこれからの財政あるいは経済運営、産業政策のあり方について私たちは今ここで真剣に議論をしているわけであります。  そこで、午前中からもお話がありましたけれども、金融法案、これは、例えば橋本総理大臣は衆議院の本会議での答弁の中でも、今回の法による二兆円の特別減税の復活の措置、それと三十兆円の金融安定化対策によって春ごろには景気回復してくるだろうと述べておられるわけですけれども、これについては、私たちは、実は逆なのではないかなというふうに考えているわけです。  実は、経済景気の悪化がそれぞれの金融危機を招いてきたのだというのが本因であるというふうに考えているわけです。九兆円の国民負担を増加した、そして公共投資削減を含む本年度のデフレ予算、それらと、財政構造改革法に従って支出が削減される来年度以降のデフレ予算、これらが相まって我が国に大変不況を招き、それが金融危機の原因にもなっている。したがって、今申し上げたような国民負担の増加、それから本年度のもう既にデフレ予算、それから来年度のデフレ予算、これらを修正して、我が国経済が今陥りかけようとしている自律的な景気後退のメカニズムに歯どめをかけなければ景気は上向かないだろうし、そして金融危機も回避されないのではないかという危惧を持っているわけです。  したがって、我々としては、二兆円の特別減税、それと、いろいろな法人税減税等々のワンセットはあるというお話ではございます、金融法案による三十兆円の公的資金注入ということもあります、しかしそれだけではまだ不十分だ。これは、金融法案のときのいわゆる右側の危機管理勘定の方でも申し上げましたが、十三兆円というものは本当に必要なのだろうか。逆に言うと、十七兆円の方は本当にそれでいいんだろうか。使うべきところに使う、やるべきところにやるということこそが、先ほど来大臣が言っておられる政府の責任なのではないのかというふうに考えるのですね。  ですから、我々は何も、政府がやることが、これはいけない、これもいけない、そういうことを言っているのではありません。四月のことを云々しているのも、そのときの責任を持って云々しろということを言っているのではありません。私は、この減税法案とか金融法案については、大変大切な法案ですから、いわば政争の具にしてはいけない、このことをもって政治の中に引き込んではいけない、これを我々は粛々と国民皆様のために議論をしていくべきだと思うのであります。  しかし、あの四月の時点にやっておくべきだったんじゃないかということは、今の内閣がしなかったことなんですね、今の内閣がしなかったことを今になってする。しかしながら、朝も申し上げました、不良債権の額もまだ確定できない、十七兆円で十分ですよと胸を張っているけれども、それじゃ、これ以上お金を使うことは、公的資金を使うことは絶対ないのですねと午前中の終わりに私は大臣にお聞きしましたら、そうならないように努力したいと、やはりまだ確たる言明はいただけなかった。そうすると、また次の時点になったら、一−三月期、危機を超えた、じゃ、四月になって、また、いやいや実は不良債権がこんなにありまして、ちょっと国民の皆さんお願いしたいとまた出てくるのではないか。  あるいは、世界のマネーマーケットにおいて、個々の金融機関資金を取れないということよりは、日本企業である、日本金融機関であるということにおいてもう既に信用度が下がってきているというまことにゆゆしい事態になってきているわけです。私どもは、ここで思い切って、この危機を契機として、奇貨として、抜本的な対策をとり、今までの繁栄を続けるために我々は変わらなければいけないのだということをここで申し上げているわけなんです。  したがって、私どもは、既に皆様方報道でよく御存じかもしれません。しかし、もう一度よく見ていただくために、私ども、今自由党が主張している減税策についてお話を申し上げたいと思います。  まず第一に、二兆円のみならず、総額で、総額の話は後にしますけれども、四兆円の法人課税を軽減したいと思っております。これは実効税率を、国、地方合わせた四九・九八%程度を四〇%程度に引き下げる。  それから、第二に所得課税の最低二兆円減税であります。これは最高の限界税率、現行六五%を五〇%に引き下げる、そして税率をフラット化して簡素化していこうということでありまして、これは制度的な減税として導入をしたいと思います。  そして、三番目に有価証券取引税、それから地価税、土地譲渡益の重課税の凍結、不動産取得税、登録免許税の軽減を行いたい。  そして、四番目にはNPO、ノンプロフィットオーガナイゼーションの寄附金に対して所得税控除を行い、国民の皆さんが税金を納めてそれの所得再配分機能を政府だけが得るのじゃなくて、国民皆様それぞれが、ノンプロフィットオーガナイゼーションがみずからの意思で、ある意味で自分が納める税金の一部を公共のために使っていただくというふうな制度をつくって経済を活性化していきたいということでございます。  以上のような私どもの減税案で、最低でも六兆円、合計では十兆円の減税を視野に入れておるわけでございます。  財源という話が出てくると思います。財源は、まずもって今や七十七兆円になんなんとする国の予算、これの洗い直しとか見直しとかいうことではなくして、もう徹底的な組み直しによって不要不急の予算の部分を削っていく、そのことによってこの減税等も可能になっていくし、公共投資もいろいろと見直していけるのではないかというふうに考えているわけであります。  私どもは、建設的な提言を行っていく政党としてこのことを今後とも強く主張していきたいと思っておりますし、この二兆円の今の時期での特別減税ではもう無理だ、足らない、四月だったら、去年だったらまだどうだったかわからない、それはもちろん九兆円等々の国民負担の削減ということとセットでありましたけれども、ということを考えております。  この私どもが今申し上げました六兆円、最高にしても十兆円程度の減税規模について、まず大蔵省の方から御意見を賜りたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  173. 薄井信明

    ○薄井政府委員 御存じのように、税金が何のためにあるかといえば、行政サービスの財源としてあるわけでございます。そうしますと、国民経済力なり国全体の経済力に応じて適切な負担というものをまず考えなければいけない、トータルとして。あわせて、そのトータルをどのように負担していただくかという公平の観点からの各税目間の構成ということを考えなければいけないと思います。  そういう観点から今の御指摘を分析いたしますと、現在、日本の租税負担率は二四・五%でございます。ヨーロッパに比べて一〇%も低い、アメリカよりも低いわけです。そのもとで赤字公債を上乗せして歳出を拡大しているわけです。したがって、この六兆円とか十兆円という減税ができるような税負担を今していただいている状況であるかどうかということについてまずお考えいただきたいと思います。  もう一つは、各税日ごとにはいろいろな考え方があると思います。私どもも所得課税、個人と法人がございますけれども、それぞれについてこの時代はこれでいいのかなということをいろいろと考えております。したがいまして、今回もいろいろ改正させていただいておりまして、方向性としては、個人所得課税の最高税率の軽減といったようなことは、政府税調も含めて全体として考えられるときにはやりたいなと思っていることでもございます。  ただし、今申し上げましたように、日本の税負担率あるいは所得課税の現状というようなことを考えたときに、今回提案させていただいているところがぎりぎりであって、景気対策ということからは減税すればするほどいいに決まっているように私は思いますけれども、税が何のためにあるかということも含めて考えていただきたいと思います。
  174. 西田猛

    ○西田(猛)委員 経済企画庁、お願いします。
  175. 塩谷隆英

    ○塩谷政府委員 ただいまの御提案につきましては、一つ、有価証券取引税とか取引所税の廃止、地価税、譲渡益の重課税の凍結等々は、政府といたしましても十年度税制改正の政府案にかなり盛り込まれていると思います。  それともう一点、特別減税か恒久減税かということでございますが、一時的な減税と恒久減税の効果に関して申し上げますと、その実施の時期でありますとか消費者マインドに及ぼす影響などをどう見るかにもよりますけれども、一般的には恒久減税の方が消費に与える影響が大きいというふうには考えられます。  しかしながら、今主税局長もおっしゃっておりますように、恒久減税にはそのための恒久的な財源をどこに求めるのかという問題が存在をいたしておりまして、今の御提案でありますと歳出削減ということであるようでございますけれども、そのタイミングとか規模等によりまして経済全体に与える影響は異なるというふうに思います。  したがいまして、特別減税か恒久減税かというその効果の違いを一概に申し上げることは困難であろうというふうに思っております。
  176. 西田猛

    ○西田(猛)委員 通産省にもちょっと。
  177. 江崎格

    ○江崎政府委員 税制改正の御提案でございますけれども、現在御審議をいただいております税制改正におきまして、平成九年度の二兆円の所得税、住民税の特別減税のほかに、平成十年度におきまして、法人課税の税率の引き下げですとかあるいは有価証券取引税とか取引所税の半減、地価税の課税の停止あるいは土地譲渡益課税の停止などの思い切った内容が幅広く織り込まれているというふうに思っております。  私ども通産省としましては、これらの措置が当面の景気対策として有効だというふうに考えておりますし、また、我が国の中期的な経済構造改革を進める上でも大きな効果を発揮するというふうに考えております。  御提案の減税案でございますけれども、これらの政府の提案の措置に加えましてさらなる措置を講ずるものというふうに認識をしております。先ほど来御議論がありましたけれども、この財政構造改革との整合性などにも十分配慮する必要があるというふうに考えております。  法人課税の問題でございますが、これにつきまして通産省としては、今後の経済の活力を維持していくためには法人課税の実効税率を国際水準並みにしていくということが重要であるというふうに思っております。  平成十年度の改革は、その一環として法人税率の引き下げを行おうというものでございますが、今後さらに国際的に魅力のある事業環境をつくり出していくということを目指しまして、経済構造改革を進めていくという観点からは、地方の法人課税の改革を初めとしまして引き続きこの問題について検討を行っていく必要がある、このように考えております。
  178. 西田猛

    ○西田(猛)委員 それぞれの三省庁の局長さん、本当にお忙しいところありがとうございました。  もちろん政府部内でありますから、私どもの提案に対してその方がいいというお答えはきっと出ないわけでありましょうし、今政府として提案しておられるこの平成十年分の所得税の特別減税、これで効果が出ると思いますよというお答えしかない、これはもうそのとおりでございましょう。  しかしながら、今経企庁局長も言われたように、恒久化するのか特別なのかというところにはそれぞれやはりメリット・デメリットがあるよというようなお話もあります。したがって、これは主税当局のみならず主計当局においても、政府全体として一度真摯に御検討いただきたいということを私ども自由党は御提案を申し上げたいわけなのです。  何も、国会の場は政府から出てきた法案をああだこうだ言う、最後は数ではんと、もうこれからそういうことではない時代ではないかなと私どもは思っております。私どもは新進党をつくったときにも、やはり国会の場で政権党とオポジションが議論をする、その中でいいものをつくっていこう、それが本当の国民のために開かれた選択肢を与える国会ではないかということを提言してまいりました。なかなか不幸にして政治状況はそれを許していない現下でありますけれども、私どもは粛々とこれからもあらゆる提言を行って、そしてそのことを政府の皆さんにも考えていただいて、そして今皆さんがお持ちの案とのいろいろな差を考えていっていただきたい、そういうふうに提言を持っていきたいと思っております。  そこで、時間が参りましたので最後に大蔵大臣にお伺いしたいのですけれども、これはいろいろ議論がありました額賀副長官が米国でどういうことをおっしゃったとか、あるいは加藤紘一自民党幹事長が財政構造改革の目標年次を少し先延べしてもいいのではないかというふうなことから、我が国の株価が、若干、きのうは下がりましたけれども、六日連騰したり、円が高くなっております。これらは間違ったマーケットの価格形成になっていくおそれがあるのではないかなということも踏まえて、大蔵大臣にここでひとつ、これからの日本経済それから金融に対して、大臣の、きょうでもうこの減税法案の審議は終わりだそうですから、少し国民に対するメッセージを最後にいただきたいと思います。
  179. 三塚博

    ○三塚国務大臣 昨日、ルービンさんのスピーチが外電で入ってきて、若干解釈をめぐって、内需主導を要請したのではないかなど言われておりますが、それはそれとして、なかなかいい言葉だなと思いましたのは、弱い日本アジアにとっても幸せなことではない、強い日本アジアにとってもプラスだろうし、日本国にとっても利益であろうし、世界についても利益である、大変含蓄のある言葉を並べております。  日本経済の現況ということになりますと、やはりそれだけASEANからも期待を持って、首脳も私もカウンターパートから強く要請を受けているところであります。  往年の実体経済が反映できる状態日本が早く復活することが大事、こう思っておるわけでありまして、率直に言いまして、いろいろ御批判があったことに対し、政治の原点を踏まえてやるべきことは何でもやらなければならないという、危機的な状況、深刻な経済を受けとめてスタートを切っておることだけは御理解をいただきたいと思いますし、そのことによって、ただいま委員指摘のように、いいものはいいものとして取り進める、こういうことでありますので、ぜひともそういう形で、一日も早い決定がなされて実施に移されていくということでありますと、経済の下支えができ上がりまして、正直言って、三月危機と言われること、これを乗り越えることができるのではないだろうか、こう思っております。  神頼みではなく、ワンパッケージで、それだけのものをつくらさせていただきましたが、国会の協賛を得ませんければ実行できません。こういうことの中で、協賛を得て実行ができるということにならさせていただきますと、我が国経済もその辺から不安感というのが解消をされつつ前進をしていき、国民各位の安心感にもつながるのかな。  手前勝手なことを言ったなと言われる方もあろうかと思いますが、ここまで参りますと、率直に心情を吐露して申し上げました。総力を挙げてこれを押し上げていく。これは、今提案をしておる諸法案の成立を期していく、そして年度予算を年度内に決定をいただくことが極めて大事、制度改正、税制もまたしかり、こういうことであります。  いろいろ御要望がありました。党対党の中で御協議をいただくことにもなるでありましょうし、政府もそれぞれ、政策提案というのは、門前払いなどということは政党政治にないわけでありますから、真摯に分析をしていくというのは大事な心構えでなければなりません。そういう意味で、二十一世紀に向けて、新しい政党政治のあり方なども模索をされるということは大変大事だし、そのことを御期待、また私も政治家の一人として努力をしなければならぬのかなと思っております。  重ねて、今回御提案をさせていただきました安定化法二法、税制、補正予算、よろしくお願いを申し上げさせていただきます。
  180. 西田猛

    ○西田(猛)委員 我が党の減税案についてもよく御検討いただくことをお祈りしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  181. 坂井隆憲

    ○坂井委員長代理 次に、並木正芳君。
  182. 並木正芳

    ○並木委員 改革クラブの並木正芳でございます。  統一会派としては平和・改革ということでやらせていただいておるわけですけれども、よろしくお願いしたいと思います。  減税法案の方はきようで審議が終了する予定であるということですので、そちらを中心に、三十九分というお時間をいただいておりますので、質問をさせていただきたいと思います。  日本は大変外圧に弱い国だということが言われております。さまざまな点で指摘されるわけですけれども、今回の減税ということにつきましても、御案内のとおり、橋本総理が、ASEANの非公式首脳会議、こうしたものを踏まえて、アジア経済不況というのは大変深刻である、そういう認識のもとに、大変すばらしい言葉ですけれども、世界恐慌の引き金を日本から引かないというようなことでこの減税に踏み切ったということであります。この辺について、総理はそうした会議に出て初めてこの深刻さをいかにも実感したということで、そうしたことから逆に考えますと、大蔵省初め日本というのは、もっと今の景気に楽観的な見方をしていたのかなというふうにとれないこともないわけであります。  その辺についてはどのように三塚大臣は考えてきたのか。そして、まさにそのアジア状況を現場で感じなければ今回の減税が出てこないというような状況についても、大蔵省としてどう考えていたのか。その辺についてまずお聞きしたいと思います。
  183. 三塚博

    ○三塚国務大臣 このアジア通貨不安につきましては、タイのバーツが不安定になってきた、こういうこと、これがスタートです。デンバー・サミットも一緒でありましたので、アジア通貨の問題、期せずして話になりました。それで、橋本首相も、タイのバーツが不安定なようだが心配だな、ぜひフォローして協議していこう、こういうことで、そこが始点であります。  その後、御案内のとおり、タイ・バーツが不安定になり、我が国が中心となって東京会議を開き、安定への一つの布石を立てさせていただきました。返還から一国二制度でスタートを切った香港が、次に不安定の形になりました。インドネシア、フィリピン、マレーシア、表面化しませんでしたけれども、そして韓国、こういう諸状況の中で、アジアの中の日本でございます。  あれだけの提携と綿密な連携ができ上がったアジアとASEAN、こういうことで、経済も彼我の輸出入の中で大きく影響し合うわけでございますし、ポテンシャルの高いアジア、二十一世紀は間違いなくアジアの時代と言われる中の、昨年の夏以降のこの不安定というのは、委員も御言及をいただいておられる、大蔵委員の方々はほとんどそういう点で共通の御理解はあったと承知をいたしておるわけでございまして、そこが起点でありまして、いわゆるマレーシア・クアラルンプールにおける首脳会議が、深刻なきわめつけのミーティングであったと承知をいたしております。そこが決心の基本、こういうことだろうと思います。
  184. 並木正芳

    ○並木委員 大蔵省としてもその深刻さを常々感じてきたというようなことかと思いますけれども、結果、橋本総理の決断があったわけであります。  大蔵省として財革路線を進み始めたというときに、まさにこの二兆円減税が突然に降ってわいたということも考えられるわけなんですけれども、この辺の整合性については、大蔵省としてはこうしたものも織り込み済みで考えていたのか、その辺についてはいかがなんですか。
  185. 三塚博

    ○三塚国務大臣 これは全く、青天のへきれきという言葉がありますが、財政構造改革法、長い論議の中で成立いたした直後、そう時間のたたないところであります。大蔵省は、大蔵原案をつくるために各省の概算の最後の査定の見直し等についての作業中でありましたし、基本方針は財革法の条項に従って取り進めておるわけでございます。  それともう一つは、税制、政府税調、特に政党政治という観点で自民党税調がスタートがいつでも早いわけでございますが、最終案をつくり、与党三党の協議で税制の基本というのを政府に、議院内閣制の中で出してくるわけでございます。これで本年度減税はおしまいという、ほっとしたところで特別減税、十七日早朝からスタートを切るわけでございます。会見で表に出るわけでございますから、率直に言いまして、大蔵省にとりまして青天のへきれきという感じでありました。  十七日の早朝、橋本さんから伝達を受けまして、私もアジア状況、それと日本経済の停滞、不透明感というものについて危機感を持っておりましたし、総理がそこまですべてをかけて決心をしたということであれば、大蔵大臣としてこれをサポートするのは、政治家として、主務大臣として当然だなということで、早速事務次官、関係局長に伝達を申し上げ、ぎりぎりのところではあるが全力を尽くしてくれ、こういうことでお願いした、指示をしたというのが現況であります。
  186. 並木正芳

    ○並木委員 そのような形で二兆円減税が行われるという運びになっていくわけなんですけれども、橋本総理も、これで決め手だとはおっしゃっていない。これ以上追加策を打たないで済むようになればいいなというような、あいまいとも言える表現で本会議でもお答えをされていたわけです。  そういう中で、これまた外圧と言ってよいかもしれませんけれども、額賀官房副長官がアメリカに行って、事のいきさつはすべてつまびらかではないわけですけれども、追加策を既に考えていくというようなお話もあるわけです。  大蔵省としては、この新聞等、副長官の、まあ取材の事実関係はともかくとして、その辺についてはどういうふうに考えているのか。二兆円で効果はありませんでした、だからまた水を差します ということでは、まさに焼け石に水という言葉がありますけれども、その焼け石をみずからつくっていって、それで水をやっていくということでは仕方がないのだと思います。  経済政策、私どもが申すまでもなく、やはり先手を打っていかなければならないわけでありますけれども、その辺について、額賀副長官がアメリカに答えたらしい言葉、それと大蔵省の今の考え、それはどうなんですか。
  187. 三塚博

    ○三塚国務大臣 それは、朝日の夕刊に先週末出たことをきっかけにいろいろ取りざたされるようになりましたが、私のところには、朝日の夕刊に記載されて、三塚大蔵大臣、お読みになりましたかというので本人から直接電話がありました、副長官から。いや、まだ見ておらない、正直言って見ておりませんでした。すぐ取り寄せて見まして、実はこれは事実無根であります、私は本音から大蔵大臣には申し上げますと。早速、茨城に、実家の方に用事があって行っておられたようで、これから東京に戻って、官邸詰め記者団に来ていただき、実態をお話をし、真実でないということを訂正をさせますので、こういう電話でございました。  額賀副長官と私、まあ官房長官もそうですが、財政構造改革法成立までのお互いの努力、そして予算編成、システム安定のための法律、宮澤本部長を中心に党の各位が真剣にこれまた論議をいただいている中でございますし、そういうことで、これをぜひひとつ、次、この国会において御理解を得て、成立を期さなければならない、こういうことでありましたので、私は額賀副長官のその話をまともに受けました。  額賀副長官という人の人物論ではありませんが、極めて誠実な方でありますので、大変だろうけれども、しっかりとあなたの真意を記者団に理解をいただくように頑張ってくださいと、その旨担当局長に私も、こういう伝言がありましたよ、秘書官を通じて官房長にすぐ伝えてくれと、こういうことであります。
  188. 並木正芳

    ○並木委員 額賀官房副長官は前大蔵委員長でもありますので、そのお人柄は知っておりますが、私が質問しているところは、必ずしも言った言わない、これまた国会というものを重視するか軽視するかということでは、それはそれでゆゆしき問題であるわけですけれども、しかしアメリカがさらなる追加策を求めているという状況は現にあるわけです。その辺のいきさつからして言った言わないのことになったのかもしれませんけれども、やはり二兆円のこの減税では不十分であるという認識内外ともにあるわけです。それに対して大蔵省が、つまり、これの効果をしばらく見てから対応をとるという姿勢でいるのか、やはり即応態勢として次なるものを考えているのか、そういうことをお聞きしたいわけです。  新年度予算、これからまた論議があると思いますけれども、その中でも法人税の減税あるいは有取税の半減とかこういうものも盛り込んでいくというような内容をお聞きしております。先ほど西田委員の方も、四〇%ぐらいまで実質法人税を下げられないか。私どもも、その辺については、法人の、企業の活動を活発化する上でもその辺はどうなんだろうという主張もあるわけでありますけれども、そうした次なる策というのを今の新年度予算に盛り込む、そういうものだけで考えているのが現状なのかどうか、それをもう一度確かめたいと思います。
  189. 三塚博

    ○三塚国務大臣 また同じ答弁になって恐縮です。  橋本さんが言われるとおり、また私も財政を預かる者として今日まで参りましたのは、後世に借金を繰り延べをして積み上げていくことだけは、何としてもこれはやめなければならない、世代間ギャップを埋めることによって国民が一体となつていくためにも大事なこと、少子・高齢化時代に対応し、人生の幸せを全うできるような福祉国家、こういうものが根底にあると言い続けてきたわけでございます。よって、危機的状況認識の中で、システム安定特別措置法でありますが、提出をさしていただき、御審議をいただく。  その枠組みが交付国債十兆、そして政府保証二十兆。預金者保護とシステム安定のための段取りをさせていただきました。貸し渋り対策で二十五兆、二年度にわたる体制をとり、政府関係機関のフル動員で中小、中堅企業皆様への融資の道を確立をしよう、こういうことであり、制度減税八千四百でございますが、これまた来年度をにらみながら、十一年度税制改正をにらみながら、グローバルスタンダードにこれも仕上げたい。  こういうパッケージの経済財政運営方針を出さしていただいておりますものですから、何とぞその点は深い御理解をいただき、取り進めさせていただきますように。これが必ず私は日本経済の下支えになり、国民各位の不安感、これの解消に向かいまして、御家庭、企業の動向が上向いていく、こう思っております。
  190. 並木正芳

    ○並木委員 大臣にもう一度お聞きします。証券市場動きを見てですが、二兆円減税では一時株価も上がったわけですけれども、またすぐに落ちていってしまった。さらに、今のいわゆる株価、これはある意味では、一万五千円を割る、そういうところがらすれば良好な水準に戻りつつある、維持しつつあるというところなんですけれども、これはまさに次なる追加策、景気浮揚策を期待して、あるいは額賀官房副長官が、これは事実かどうかというのはまだ明らかではありませんけれども、アメリカに対して答えたというような報道、そういうものも踏まえて株価が維持されているんじゃないかというふうに考えるわけです。そういうことからしたら、市場は明らかに次の策を要求しているんじゃないかと思いますが、その辺について、市場動きについてどうお考えなんでしょうか。
  191. 三塚博

    ○三塚国務大臣 並木さんも相当詳しい方であることは知っております。私は余り詳しくないのでありますけれども、財政、経済金融、こういうことで、担当でありますから、勉強さしていただいてきました。  さまざまな要素でマーケットが動くことはおわかりのとおりでございます。同時に、さまざまなメッセージを出してくるのもそのとおりでございます。主管大臣でありますから、具体的なことは、財研の記者各位その他の記者の皆さんから聞かれましても、講演でも、私はそのレベルに言及したことはございません。  そういうことの中で、市場市場動き、無残にして残酷なほどきついメッセージを出してくるわけでありますから、またマインド、こういうことにもなります。そういうことに、政府として、大蔵大臣として何がやれるかというと、冷静な態度の中でやるべきことは一つずつ積み上げていく。しかし、小出しになります。どうしても議会は、法案提出日というのは、御案内のとおり、予算関連、予算非関連でも、議員立法以外は三月の上旬までは出せとか途中からは認めないとか、こういうことであります。  そういう中で、メッセージを分析をしながら、エッセンスで、集約して言えと言われれば、不安感であります、経済不透明感であります。この不安感不透明感をどうやって解消するか、ここに視点を合わせまして、党とも相談を申し上げ、宮澤本部長とも協議をさせていただきながら、安定という法律、党においておつくりをいただき、政府提案でしなければなりませんから、事務当局、この法律政府提案としての法制局審議を終えて提案をさせていただいたということであります。  今度は私自身の考え方でありますが、マーケットは着実にこの努力を理解をしてくれておるのではないだろうか。安定化法は二つで、いろいろ御議論、午前の審議でもございました。それはそれとして、それだけの決心をして、交付国債、そして政府保証、両特別勘定に十兆ずつきっちりと配置をした。これは内閣、政治の全責任で勝負に出るわけでございますから、これをやることで必ず安定への道が出る、こういう信念で出さしていただいておるところでございます。  それと、補正予算、一・五の国庫債務負担行為をぎりぎりいっぱいで加えさしていただきました。制度減税も、私も政治家の一人としていろいろと連携をとらさしていただきましたし、考え方を党の責任者の各位にお話し申し上げました。グローバルスタンダードという一ビッグバンとそれから法人税等の話についてお話をさしていただきましたところであり、大蔵の関係当局の諸君も、そのことについて、それぞれ税調の各位、また安定化本部の各位とのミーティングをいたしたところであり、経済界に対しましても、それぞれに、代表の方に私からも説明を申し上げ、事務方からも説明を申し上げるという努力をいたしました。決してペーパーカンパニーではない形であります。  しかし、これ、法律になりませんければスタートを切れませんのでということであります。マーケットは少しずつこの真剣なことに御理解をいただきつつあるのかな、こう思っております。先生方から、そういう意味で、どうやら政府も命がけになってきたなというアドバイスをいただきますと、それが信認のベースにプラスになるのではないでしょうか。  大蔵委員会ですから政党人同士の議論でありますので、あえて申し上げさしていただきました。     〔坂井委員長代理退席、井奥委員長代理着席
  192. 並木正芳

    ○並木委員 率直に言って、今、二兆円はたんす預金になってしまう、こういう報道等も盛んにされているわけであります。我々は、ここまで消費マインドが冷え込んでしまったそういう実態を踏まえると、思い切って、法人税も含めてでございますけれども、六兆円規模の減税をしてはどうかというような提案をしているわけであります。  これに対しては、確かに六兆円規模の減税ということになりますと、まあ財革の目標年限二〇〇三年には当然GDP三%のラインを守れないというようなところから、恐らく今の時点でそういうことにこだわれば是とするわけにはいかないというような考え方かもしれませんけれども、むしろ、このデフレギャップによる、あるいは消費税等の増税、国民負担増による消費マインドの冷え込み、こういうことからすれば、やはりもう一度成長軌道に乗せていくために、ここは思い切った減税の方が、将来的には税収もふえて、財革路線にもあるいはなっていくだろう。ここでむしろ減税を、荒療治かもしれませんけれども、あえてすることによって、日本の税制における累進性の問題とか所得税における累進性の問題、さまざまな形での税制の改革等も、あるいは構造改革として進んでいくんじゃないか、このように思うわけです。  六兆円減税ということは盛んにもうお聞きになっているところだと思いますけれども、大臣からのコメントをお願いしたいと思います。
  193. 薄井信明

    ○薄井政府委員 経済の成長が非常に大きくて、税収がかなり出てくるという中にあって減税をしながら構造改革をしていくというのは、一つの方法だと思います。かつて日本もそういう手法をとってまいりました。  ところが、残念ながら、現在の日本の税収の動向を見ますと、先ほども申し上げましたけれども、国民所得に対して国、地方合わせて二四・五%でございます。アメリカよりも低いわけです。ヨーロッパに比べて一〇%、まあ、五%なり一〇%低い。そういった実情を踏まえていかないと、今後、私どもの子供たちの時代あるいはそれから先を考えたときに、お金の要る状況になってくるわけです。そういったときに、今の経済景気対策とのバランスをどう考えるかというときに、その両面を考えていただかなければならないと思います。  もう一点申し上げますと、所得課税のフラット化というのは、私は方向だと思います。  ただ、それならば、アメリカとかイギリスの所得課税を見ますと、そちらの国の出だしの所得税率というのは一五%とか二〇%、また、課税最低限は日本よりずっと低いわけです。つまり、税率の低い、上のところだけをまねしますと、日本の所得負担というのは極めて低くなってしまいます。そういうことでは、私どもが、国民が求めている行政サービスを将来賄っていけない、今も賄っていけないわけですけれども。  そういうことも考えながら、一方で、経済も大事です。そのバランスを考えていくと、小さいとは言われますが、精いっぱいのものである。また今後、経済状況次第でいろいろ考えるということもあっても、これを税だけで考えるのかどうか、いろんなことを考えていただきたいと思っております。
  194. 並木正芳

    ○並木委員 今のように、アメリカ云々とかいうお話も比較しますと、まあ痛い部分もあるわけなんですが、私ども改革クラブは、消費税をもとの三%に、これは四だとか二だとかいうと大混乱もありますので、もとの三%というのは、これは既にそういったコンピューターの経理的なプログラミングもあるものですから、もう一度もとに戻したらいかがかというような提案をさせていただいておるわけです。  もちろん、今、薄井主税局長のおっしゃったように、将来的に高齢化あるいは少子化社会というのを考えますと、こうした消費課税、間接税を大きくしていくというような考え方も、我々は容認するところなんです。しかし、今のこの消費マインドを何とか上向かせなきやならない、そういう点においては、直接的にむしろ効果があり、なおかつ物を買っていただくことによって税収も結果的には多少なりとも上がっていく、こういうことで、消費税をもとへ戻したらいかがかと。これは別に一年間ということではなく、一年なり二年なりということになるのかもしれませんけれども、その辺についてはいかがお考えでしょうか。
  195. 薄井信明

    ○薄井政府委員 もともと、平成元年に消費税を導入させていただいたときの御議論を私ども思い返しますと、あのときあれだけ国民的な御議論を経ながら、やはり必要だ、間接税にある程度負担を求める、そういう手だてが日本の税制の中にきちんとないとこれからの日本がうまくいかないということで入れさせていただいたわけでございます。  記憶が間違っているか知りませんが、国の税金、国税の中でいわゆる直接税に依存している部分が、当時七四、五%ございました。これはちょっと行き過ぎであると。間接税の国にすることはないと思いますけれども、もっと直接税から間接税に負担を移してもいいんではないかということで、国民的な御議論を呼んでしまったわけですが、ことし、平成十年の今回提案している税法によりますと、これがたしか六三%ぐらいまで下がってきております。いわゆる直間比率がこの十年間で一〇%ほど直接税から間接税に移っているわけです。  それにしても、まだというのはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、六三%は直接税に頼っているわけです。したがって、所得減税あるいは法人減税ということをおっしゃっているんだと思います。  にもかかわらず、消費税について、これを景気対策という短期の対策のために三に戻すとした場合、景気にはあるいはいいかもしれませんけれども、これは国民にとっては混乱を招くのではないかと思います。  いずれ五に戻すということですから、それこそ、御指摘のように、将来五になるのに本当に消費に向かうんだろうかということもあろうと思いますし、国民の見方からも、五%というのは決して高いと思っていないかどうかはちょっと別ですけれども、これを三にしてまたもとに戻していくということは混乱を招く。  あとは、極めて技術的ですけれども、間接税、特に消費税というのはすべてのものの価格の中に入っております。これをもとに戻していくということは、しかも短期的にそれを二回行ったり来たりするというのは、混乱のもとだと思います。  さらにもう一つ申し上げると、地方消費税一%というのを、地方分権、いろんなことから入れま した。この部分をもとに戻すということは、とても、私は混乱が大き過ぎて無理だと思っております。
  196. 並木正芳

    ○並木委員 この議論はさらに続けさせていただければと思いますけれども、時間もありませんので、一応要求というようなことでさせていただければと思います。  厚生省の方からもせっかくきょうおいでいただいたんですけれども、実は、この減税で恩恵といいますか、を受けない、そういう方たちがいらっしゃるわけです。それに対しては、福祉の給付金ということで、臨時措置として三万円なり一万円なり、一万円の方が千三百六十万人ぐらいですか、対象になるようですけれども。  これに対しての景気浮揚効果ということからすれば、今までの議論でもありました、減税が必ずしもすぐに購買に、消費に結びつかない、今がそういう時代だというようなことなんですけれども、こういった方たちは、むしろ大変窮乏されているということからすると、消費に回りやすいお金かと思いますし、そうした方たちが非常に苦境にあるということからすれば、さらなる措置を考えてもいいのかと思いますけれども、その辺について御答弁をお願いしたいと思います。
  197. 大泉博子

    ○大泉説明員 先生がおっしゃいましたさらなる措置と申しますのは、今回の給付金の増額というふうにとらえさせていただきましたけれども、今回の給付金の額そのものは、与党間で、昨年実施されました臨時福祉給付金の支給を再度実施するという確認が昨年末に行われました。この確認を踏まえまして、その支給額は前年度の実施内容を勘案して決めたものでございます。  そして、私どもといたしましては、この趣旨は、社会的弱者の生活の安定と福祉の向上を図るために講ずる臨時特例の措置であるというふうに理解しております。  先生おっしゃいましたように、低所得の方々は、ふだんないお金が来ますので、そのお金を使ってふだん買えないものを買って、消費につながって、それがすなわち景気刺激にもなるというふうに私ども考えております。
  198. 並木正芳

    ○並木委員 大蔵の論議としてはちょっと影の部分になるわけなのですけれども、そうした弱者の方といいますか、そういう方にもぜひ格段の御配慮を願えればということを申し述べておきたいと思います。  時間があと五分ということでございますけれども、最後に、金融関連の不祥事についてのお話を少しお聞きしたいと思います。  経済を浮揚させる、景気を浮揚させるという意味では、まさにそのリーダーたる者の信頼性というのが重要になってくるわけです。そうしたことからすると、昨今の情勢、我々もともに政界にある一人として反省をしていかなきやならないわけなのですけれども、今、大蔵省の方々がいろいろ問題になっているわけです。  実は、昨年の私の質問の中で、MOF担という言葉があります、それを大臣御存じですかというようなことでしたら、国会論議で知りましたというようなことなのですけれども、こういうMOF担というようなものが億に及ぶような資金を決裁できる、しかも、銀行、証券会社に必ずと言っていいほどそういう者がおるというようなことが関係筋では当たり前のこととして今日までされてきた。非常にこの辺、本音、建前を使い分けるのは、日本人としても、こういうものを当たり前としてきた風潮というのは、ここで大いに反省しなければならないと思うわけです。日本人というのはとかく、物事がうまくいくにはそれなりのおつき合いも必要ですと、そういうふうな風潮がいまだにあるのじゃないかと思うわけです。  山口局長、失礼なのですけれども、割り勘ならというような、そういう意味で言ったのではないと思うのですけれども、割り勘でやっていますというようなことで、おつき合いをしているような、予算委員会等の答弁もあったわけですけれども、割り勘ならいいじゃないかというようなやり方よりも、人間関係スムーズにという一面を、こういうときには、これはオープンな場ならともかく、プライベートなときにまでそういうおつき合いをするよりは、むしろゼロである、お茶やコーヒー以外はおつき合いしないというようなものの方がむしろ健全なのじゃないか。  ノンキャリアの人は、私も二十年ほど前、関財の、関東財務局のお仕事にもかかわったことがあるのですが、ケーキさえごちそうになるのははばかる、コーヒーぐらいでしたらというような、そのころにもう既にそういう良識もあったわけです。それが、キャリアと言われる人たちがむしろ高額の接待を受けて、ある面では麻痺してしまっている。  こういうことから考えますと、この際、ゼロというようなところまで踏み込んでのそうしたものを考えていくべきじゃないかと思うのですけれども、どう考えますか。
  199. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 公務員の一般的な倫理規定という観点からお答えを申し上げたいと思うのでございますけれども、平成八年の十二月に大蔵省の職員倫理規程というものをつくりました。そこでは、関係業者等との間で接待を受けること、そのことを行ってはならないというふうに決めさせていただきました。接待というと、もてなしを受けるということだと思います。そういうことはこれはもう一切やってはいけないということでございます。  ただ、会食、これは集まって食事をするということなのでございますけれども、これも原則禁止でございますが、場合によりますと、職務として必要な会議で何か食事が出るといったようなことはあり得るわけでございます。こういう場合には、対価を支払うか、あるいは金額によりましてはそこまで言うのもかえって社会常識に反するようなこともあるかもしれない。そういう場合には、いわゆる服務管理官というのが各局にありますけれども、そこに申し出をして、承認を得たら例外として認めるというような扱いになっておるわけでございます。  そういう意味で、現時点におきましては、いわゆる接待というのは全面的に禁止になっておるということでございます。
  200. 並木正芳

    ○並木委員 山口局長の名前を出しましたけれども、その辺誤解なきようになのですが、たまたま割り勘というようなことで、そういった場で処理されているというようなお話もあったということなので、特別に山口局長の問題がどうこうというわけではありません。そういうことは言い添えておきたいと思います。  最後に、大臣にお聞きしますけれども、新井代議士が証券会社から利益供与を受けたというような疑惑を持たれて、人の名前を使ったり、そういう利益供与を受けることは、大蔵行政のエキスパートだろうと言われた新井代議士が知らなかったというような話もあったわけです。これでは国民はやはり納得しないと思うのですが、大臣は、こういうことはもしあるとすればいけないというようなことをぜひ国民の前に、当然知っているということを大臣の口からお聞きしたいと思いますし、そういうようなことが大臣の関連の中で決して起こり得ないし、もし起こる場合にはしかるべく襟を正す、そういうふうなこともぜひ最後にお伺いして、質問を終わらせていただきたいと思います。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  201. 三塚博

    ○三塚国務大臣 政治家それぞれ、国民の選任によりまして就任に至るわけであります。政治行動にかかわる問題はみずからが誤解を解く努力をしていく、こういうことであろうと思いますし、特別に議員を固定してお聞きいただいておるわけでありますが、私からは一般論として申し上げ、議員として心がけるべきことは、疑念を受けてはなりませんし、そういうときにはみずからそのことの解明に当たる、これが大事なこと、こういうことであります。
  202. 並木正芳

    ○並木委員 ありがとうございました。
  203. 村上誠一郎

    ○村上委員長 次に、北脇保之君。
  204. 北脇保之

    ○北脇委員 民友連の北脇保之でございます。  私は、所得税の特別減税法案金融安定化緊急特別措置法案、この二つについて質問を申し上げます。  まず最初に、特別減税についてですが、私のこの問題についての基本的な考え方を述べさせていただきたいと思います。  私は、昨年の通常国会でもこの問題を取り上げたのですが、やはり今の日本経済にとって、経済再建なくして財政再建なし、これを基本とするべきだという考え方でございます。確かに、日本の財政が、国、地方を合わせて五百兆円を超えるような累積債務を抱えている、そういう財政状態を改善していかなければならない、そういうことは大きな課題である、それは認めます。  しかし、その一方で、今の日本経済、昨年来の経済を見ますと、当時は、昨年の通常国会のころは回復基調にあるというふうに政府は言っていたわけですが、その回復の足取りが非常におぼつかない。したがって、とにかく景気回復を確かなものにして、そのことによって税収の増も図りながら財政再建を果たしていく、こういう順序、これが大変大事だということをこの大蔵委員会でも指摘をいたしたところでございます。その政策の順序を考えないと結局アブハチ取らずになってしまう、そのことがひいては、かえって財政再建のための国民の負担、コストというものを大きくしかねないんだということを申し上げてきたわけです。  その点を考えると、今回の特別減税、二兆円という案が出されたわけでございますが、この二兆円というものが今の景気対策ないし我が国の経済再建にとって十分であるかどうか、大変大きな議論があるわけでございます。私は、これは非常に不十分だという考えに立っているわけでございますが、このこと一つを例にとっても、昨年の通常国会で平成九年度予算を論議していたときは、二兆円の特別減税を継続するかどうかという、二兆円という金額の問題であった。それがそのまま継続されていれば、二兆円という財政的な負担でもって所定の効果を上げ得たと思うんですね。それが、先送りをしてタイミングを間違えたために、今この平成九年度の補正予算で住民税を含めて二兆円減税をやるといっても、果たしてこれで十分かどうかという議論を招いている。  したがって、経済再建なくして財政再建なし、これがまさに重要だということが明らかになっていると思うんです。経済再建をしていきながら、その中で税収の増を図って財政再建をしていくということであれば、その時点における減税というものが小さな規模でも経済再建という目的を果たし得たものが、時期がずれて、経済再建がおくれればおくれるほど財政再建のための道が長くなってしまって、そのために財政的なコストもかえって負担が多くなってくる、こういうことが今回言えるんではないかというふうに思います。  まず最初に、私の意見等を余り長く述べているのもちょっとどうかと思いますので、今申し上げたように、経済再建なくして財政再建なしなんだ、経済再建のタイミングを誤ると財政再建にも時間がかかるし、かえってコストもかかってくる、その一つのあらわれが今回の特別減税。この特別減税については、二兆円では不十分だという議論を招いている。これが今私が申し上げたような考え方一つのあらわれではないか、こう思いますので、大臣、ちょっと席を外されているときのお話で申しわけないんですが、お答えをいただきたいと思います。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席
  205. 三塚博

    ○三塚国務大臣 言わんとする御趣旨を私が今日の段階で否定する気は全くありません。橋本さんがかねがね緊急措置、それと本来の基本方針、それに基づく予算編成とはおのずから対立する概念ではなく、タイムスパンの問題が残る、こういうことでその整合性をどうとるかということが大事なポイント、私も全く同感であります。私はいつも、財政構造改革が法律という形になりまして、政府はこの法律に縛られる、特に財政当局は財政運営の責任者でありますから、これをしかと踏まえながら取り組まなければなりません。  御案内のとおり、予算編成におきましては一・三の歳出カットをやりました。これはただ切るのではなく、中身の再点検、制度の見直しを含める、新規採用については費用対効果をしっかりと踏まえる、終わったものに対してはその検証のシステムをしっかりとやり抜きます、時のアセスメントと言われるところでございます。  そういうことを取り進めて対応をいたしておるわけでありまして、この基本的理念は、やはり内外の信任を得るためにもこれは大事にしなくちゃいけない。そのためには、行政改革が財政運営と一体化しまして、まさにリストラの徹底、規制緩和、時に規制の撤廃を図るという決心がなければならない、こう思っております。  また、撤廃の効果は、撤廃の場合には両様ありますけれども、生命、健康にかかわるものについてはしばらく改善でと、こういう象徴的なこともよく御案内のとおりであります。両々相まって取り組んでいかなければなりませんし、タイムスパンはタイムスパンとして大事にしなくちゃいけない。これは、議会手続等、執行くのタイムがあるわけでございます。  そういう点で、政治は、前段の質疑でも申し上げましたとおり、全体を見て、危機的な問題であれば適時適切な手だてを講ずるのは当然のこと、しかし、だからといって基本的な理念を没にするということはあってはなりません。こういうことの基本方針であります。
  206. 北脇保之

    ○北脇委員 今の大臣の御答弁で二つお聞きしたいことがございます。  一つは、冒頭に、私の申し上げたことを否定はしないというふうにおっしゃられました。私の申し上げたかった趣旨は、経済状況を見ますと、昨年、平成九年度予算を議論していた時点の日本経済状況と現在の日本経済状況を比べれば、明らかに今の日本経済状況の方が悪いわけです。当時も日本経済の再建、景気回復ということは課題であり、今も同じ課題が続いている。その課題を達成するための政策手段としてまあどれだけのコスト、コストという言い方は余り適切な表現ではないんですが、わかりやすく言えば、減税がどれだけ必要かというようなことを考えたときに、当時、一年前であれば二兆円の特別減税の継続、その他消費税のこともありましたけれども、その議論であった。しかし、今景気が悪化してきている中で減税という手段を考えたときに、二兆円の特別減税では十分ではないんではないかという非常に大きな議論を招く事態になっている。  ですから、経済再建ということが適切にこの一年の間に行われてこなかったために、経済再建という目標を達成するための減税の規模も大きくならざるを得なくなった、こういうことをお認めいただいたかのように思うんですが、いかがでしょうか。
  207. 三塚博

    ○三塚国務大臣 一昨年年末の九年度予算編成、これは経済見通しをしっかりと立てた中で編成を行うことは御案内のとおりであります。そのときはまさに、先ほど主税局長が言われましたとおり、消費税二%アップの準備段階の中で、それぞれの税制の制度改革、また臨時減税などをやりながら、体力を付与しながら取り組んできましたし、一・九は達成可能であろうと大方がスタート台はそう見たことであったと私は思います。もちろん、当時の新進党の各位を中心に、またその他の政党もございましたが、減税は続けろ、特別減税は続けろ、その他等々ありましたことも承知はいたしております。  その後、はるかに予想を超える問題が起きました。もうくどいですから省略します。アジア通貨の不安定、それを引きずって秋以降の大型倒産等々、不安、不透明、マインドの問題、こういうことで急速な変化は変化として認めるということでございまして、そういう中で、二十一世紀を展望しておる我が国の財政運営の基本というものは、やはり大事にしていかなければならない。そして、脱高コスト構造の規制緩和、これは真剣に新しい産業の誕生を促し、ベンチャービジネスがさらに前進をするような環境をつくることは当然、これに向けての所要の措置は講じなければならない、こういうことでありまして、緊急な、危機を回避をする施策というものは、その都度時の政府に与えられておる業務であり、大事な仕事であろうと思っておるわけでございます。  そのことによって見通しが誤ったというのであれば、結果として、それはそれとして受けとめるということであります。しかしながら、予想を超えた、そういうことでありましたことに対して、内閣として、政治としてのやり得べきことは全力を尽くさせ措置をさせていただいたということで御理解を得たいと思います。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  208. 北脇保之

    ○北脇委員 今御答弁の中で、予測しなかったこともあり、結果として受けとめるということでございましたので、そのことは確認させていただきます。  もう一つ、今の大臣の御答弁の中でちょっとお尋ねしたいことは、財政構造改革と景気対策はタイムスパンの問題だとおっしゃられました。おっしゃる意味は、本会議などでも橋本総理がたびたび答弁されているように、財政構造改革というのは中長期的な課題である、景気対策というのは短期的な当面の課題である、ですからそれは二者択一ではなくて相互に矛盾するものではないんだ、このようなことの意味かなというふうに受けとめたんですが、大臣それで間違いないでしょうか。
  209. 三塚博

    ○三塚国務大臣 タイムスパンという意味はそうであります。  危機的状況に適時適切に対応する、ぎりぎりいっぱいの措置を講ずる、財構法の基本は決して放棄するものではなく、それは堅持をしながら前に進まなければ、あれだけの大議論の中で成立させていただいたものでございますから、政府とすれば忠実にその基本的理念を体して、その中で節減がどうできるか、税収がどうあるべきかということ、規制緩和をどう前進せしめるか、こういうことであろうかと思います。
  210. 北脇保之

    ○北脇委員 私は、財政構造改革法案には反対をいたしました。そして、今大蔵大臣、そして総理大臣がおっしゃっているような財政構造改革と景気対策というのは矛盾するものではないんだというこの議論は、私は論理的には誤りだと思っております。  というのはどういうことかと申し上げますと、確かに財政構造改革の目標というのは二〇〇三年に置かれております。赤字国債の発行をゼロにする、そして財政赤字をGDPの三%以内に抑える、これは確かに二〇〇三年ですから、今から五年先の目標で、それだけを見れば中期的な目標といいますか、課題というふうに見えるかもしれません。しかし、そこの、二〇〇三年の目標を達成するためには、もう直ちにそれに取り組んでいかなければいけない。少なくとも平成十年度予算からその目標を達成するような予算を組まざるを得ないということで、平成十年度予算は大変な緊縮予算になっているわけです。ですから、公共投資を一つとってみても、七%を超える削減ということをやらざるを得ない。  また、減税ということについても、やはり減税財源ということになれば、どうしたって赤字国債が必要になってくる。そういったことで、平成十年度の予算の税制改正についても、非常にその減税規模というのは、一兆円に満たないというようなところに抑えられている。ですから、現下の必要な景気対策、これは公共投資だってそんなにむやみやたらとカットしていくというのではなくて、確かにその効率的な施行とか、そういう課題があります。しかし、量的にこれを急激にカットしていったら景気対策にならない、足を引っ張る。  また、減税についても、私ども民友連としての主張は、六兆円の恒久減税だ。少なくとも所得税、住民税は三兆円制度減税ということを言っているわけで、こういった減税をやろうとすれば、今の財政構造改革法案が足かせになるのは当然のことなんです。  ですから、もう一度申し上げますが、総理大臣それから大蔵大臣がたびたびおっしゃっているように、財政構造改革と景気対策というのは、片や中長期的な課題であり、片や当面の課題なのでこれは矛盾しない、両方相まって追求できるんだという考え方は、私は理論的に破綻していると思います。この点、大蔵大臣、どうでしょうか。
  211. 三塚博

    ○三塚国務大臣 考え方は、何回も同じことを言わざるを得ないのでありますが、中長期的に三%をフローで達成をする、こういうことで六カ年計画、今度は五カ年計画になるわけでございます。そういう中で、今公共事業のお話も出ましたが、公共事業は、前通常国会におきましてそのあり方について大変な論戦が行われたことは御承知のとおりであります。  そういう中で、財構法のキャップは七%ということで、十年度予算編成はその費用対効果等を初め全体のアセスメントをやるということの中で縮減、あるいはダムのように停止、断念、こういう意味も含めて、やるもの等も思い切ってスリム化をいたしたわけでございます。  そういうことで、国会の論議を踏まえながら、また財構法の基本的方針を深めながら、効率的な公共事業のあり方というものに検討を加えまして、実効性が上がり、めり張りのきいたものをつくらせていただいたと実は思っております。  科学技術立国の日本であります。そういう点で四・九%プラス、基礎研究、応用研究を含め、その分野に手厚く措置を講ずる。夢がございませんと、また展望が確実につながる科学技術というものを大事にしていきませんと、即効性のものだけで勝負をするということは、世界の競争の中で信頼をされないということにもなりかねませんので、そのような措置を講じさせていただきました。  言わんとするところは、経済政策はイコール国民生活に直結するわけでございますから、その全体を展望しながら、辛抱できる限界と危機的状況だという認定をした場合には、これに対して危機管理の観点に立って効果的な手だてを講じなければならない。  まさに今回、日本を覆う不安感、これが消費行動に大きなブレーキをかけておりましたことは御案内のとおり。企業活動全般は着実に前進をいたしておったのでありますが、これが足踏み状態になる、その根っこに金融という問題が指摘されるようになり、産業の血液である金融、生活の血液である金融が回転をしなくなったところに、強いマインドがさらにプラスになって、日本がどこに行くんだろうと。日本売り、日本売りというようなことが言われるような中で、これに歯どめをかける手法は何か。  ありとあらゆる手だてを講ずるということで、株式の評価の問題等々を含め手だてを講じ、総合的なパッケージとして三十兆の安定策、二十五兆の貸し渋り対策。民業が働かないわけでありますから、機能しない、しているんですが不十分、貸し渋り、回収等。ならば、政府系機関が成りかわって二十五兆の陣立ての中で融資を展開をしていこう、こういうことと補正予算、本予算、こういうことであります。いずれもぎりぎりいっぱいのところで取り進めさせていただきました。  財政構造改革、赤字解消、特例公債の発行をゼロにする目標は捨てておりません。本年度八十年度、三千四百億円の縮減のみしか達成できませんでしたけれども、中期に見て着実にその前進を期そうと。それは、安定をすることによって不安感が解消されることによりまして、経済が下支えをされまして前進するという見通し、ですから政府見通しも十年度は一・九、こういうことがその根底にありますと私は理解をしているところであります。
  212. 北脇保之

    ○北脇委員 私は、今の大臣の答弁を伺って大変残念に思います。というのは、この委員会での議論というのは、やはり議論が議論として成り立つためには筋を通して議論し合う、どちらの言っていることが正しいか、正しくないかということが国民の皆さんに判断していただけるような、そういう議論をしなかったら、私は国会で議論する意味がなくなってしまうと思うのです。ですから、私は、できるだけあいまいな聞き方をしないように、理屈を通す聞き方をしているつもりです。  ですから今、私のお聞きしたことは、財政構造改革というのは既にもう当面の、来年度予算というところに影響が出ているといいますか、拘束されているわけですから、それは決して中期的な問題ではなくて、当面の、現下の経済に対してどう経済財政運営をしていくかという問題なので、これはもう今の景気対策に直結していると。だから、何というか、矛盾しないとか二者択一ではないんだということは間違いじゃないですかと申し上げているので、そこのことは私の考え方が違うというのでしたらそういうふうにおっしゃっていただければ結構なんですけれども、もし私の考え方が間違っているとすれば、どういう点において間違っているというか、大臣と見解を異にするのか、それをちょっとお教えいただきたいと思うのですが。
  213. 三塚博

    ○三塚国務大臣 二者択一のところをもう一回お聞かせください。
  214. 北脇保之

    ○北脇委員 私どもの考え方は、財政再建を優先するか、景気対策を優先するか、これが私は二者択一だと思うのです。景気対策を優先するんだったら財政再建は当面棚上げせざるを得ない、だからこれは二者択一になっているんだと思うのですね。しかし、総理それから大蔵大臣は、二者択一ではないと言われるので、私はそれが理解できない。  ですから、二者択一ではないという、つまり財政再建も、新年度予算で財政再建を追求しながら景気対策も同時にやるということができるのか。私は、これはできないと思います。そこのところのお考えをお聞かせいただきたいということなんですけれども。
  215. 三塚博

    ○三塚国務大臣 その前提の置き方と考え方が違うんじゃないでしょうか、という理由を申し上げます。  財政構造改革法成立による初年度の編成でございました。よって、先ほど具体的な例を申し上げたわけですが、簡明に言いますと、実効性、効率がしっかりと保てる予算編成をしなければならない。額は、七%を超える額のカットになりましたけれども、公共事業の場合は。しかし、内容的に精査をしていただければ、そのことは社会資本充実という観点で効果が上がっておるもの、こういう言い方を申し上げさせていただいたところであります。  既に編成を終えて、法案として平成十年度予算案、財政投融資計画案、これを提示し、関係法律も出させていただいておるわけでございまして、特に税制、制度改革については八千四百億円、法人税、土地税制、証券税制、ネット減税を含めてこれをやらさせていただいたわけでございます。このことによってもたらされる経済効果等、経済に活力を与えるでありましょうし、と思っておるわけでございまして、総合的にぎりぎりいっぱいの手だての中でそれをやり抜いたことだけは間違いございません。  そのことをまず成立を期して、執行をしていくことによって経済運営に資していかなければならないのではないでしょうか、こう申し上げておりまして、委員言われるとおり、これは一時休止して新たに予算編成をもう一回補正のような形でやられたらどうですかというふうに意味をとったものですから、それは到底でき得ないことでありますと。本予算を出して、本予算の審議をお願いしておるのに、また、政府の基本方針を法律に従って出させていただいておるわけですから、それに違背することは困難でございまして、大変な事態になることだけは間違いありません。  ですから、ワンパッケージで補正予算、そして二兆円減税をしっかりと下支えにさせていただきながら、三十兆体制の金融不安解消、危機管理に徹して、日本の産業の血である金融が盤石の体制を何としてもつくらなければならない、こういうことで二法の提出をさせていただいておるということでございます。
  216. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいまのお話の中で、私、別に新年度予算について、補正予算云々というようなことを申し上げるつもりはありませんので、それはそう申し上げておきたいと思います。  また、具体的なお話として公共投資のことにお触れになりました。それで七%のカットを実行しているけれども効率的な執行に努めるんだ、こういうお話でしたけれども、では、そのことが経済成長ないしは景気回復にどういう影響があるかということを考えれば、公共投資というのが国民総生産を決める一つの要素であるわけですから、それは個人消費であるとか設備投資であるとか住宅投資であるとか、そういったものと並んだものとしてあるわけですから、そこのところの公共投資の金額が量的にカットされれば、幾ら中での公共投資、公共事業の執行を効率化したって、その公共投資の減額そのもの経済成長にとってはマイナス要因になる、そして景気回復をおくらせることになるという、このことはもうどうしても否定しようのないことだと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  217. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 おっしゃいますように、公共投資の支出を削減いたしますと、有効需要としてはマイナスにきいてまいります。財政構造改革の中で、公共投資も効率的に実行しなければいかぬという要請がございます。それから、財政構造改革は、中長期的、まあ二〇〇三年までに財政の赤字を三%まで、GDPに対する赤字を削減するという目標がございます。  そうしますと、公共事業について見ますと、むしろ過去におきまして、バブルの崩壊の後、景気対策のために非常な拡大をしたわけでございます。公共投資のGDPに対する割合は、この間に非常に高くなっておる。あるいは、そういう中でむだなことは行われていないかということを見直すべきだという声はたくさんあるわけでございまして、そういう要請にこたえるために、量を削減しつつも、配分を見直すとか、あるいは価格を見直すとか、あるいはやり方を見直すとか、そういう改革はやっていかなければいかぬわけです。そういう改革をやることによりまして、必要なところに公共事業が回りますと、それは質がよくなりますから、経済の拡大にも役立つ面はあるわけでございます。  他方、量につきましては、補正予算におきまして、必要な災害復旧の関係の事業として一兆円、それから、景気のこういう状況にかんがみまして、公共事業の契約を前倒しをするということで、いわゆるゼロ国債というのを一・五兆円、補正予算に計上いたしまして、そういう公共事業の効率化を進めつつも、景気の情勢には配慮をしておるわけでございます。  そういう意味で、金融に対する対策、それから、税制、予算による対策、全体として景気をよくするようにあらゆる努力を払っている。  ただし、中長期的な財政構造改革、財政の仕組みあるいはやり方を効率的にするという地道な作業は続けながらそういう景気対策は講じているという意味で、二者択一じゃなくて、両方の目的をぎりぎり追求していこうという趣旨だと理解しております。
  218. 北脇保之

    ○北脇委員 今のお話の中で、公共投資をできるだけ前倒ししていくというようなことにも触れられましたけれども、そのことをやれば新年度後半になって公共投資が少なくなるということで、またそこを埋めるために補正予算を組むとかという話に必ずなってくると思うのですね。私、景気対策という立場から、そのことを否定しているわけじゃないのですが、ただ、そういういかにも苦し紛れの方策をとらなければいけないということが問題だと思うのです。そういうことをやっているから、まさに日本政府経済、財政運営に対して信任が与えられないわけですよ。何をやらんとしているのかということを政治の意思としてはっきり出すべきです。  そのためには、今はやはり景気対策経済再建に万全の措置をとるんだと大蔵大臣、たびたび力を込めておっしゃるわけですから、そこを、万全の措置を込めるという、そういう気持ちじゃなくて、その政策自体が客観的に内外から見ても、いや、もう日本政府経済再建、景気対策に本当に本気なんだなとわかることをやれば、別に一人一人が力を込めて答弁しなくたって、それはメッセージとして伝わるわけですよ。そこのところがはっきりしないものだから、政府の打ち出してくるいろいろな政策が、思ったほどのマーケットの反響を得られないということが続いている、そういうふうに思います。  このことは、大分冒頭のところで時間をかけましたので、私の意見としてそのことを申し上げておきます。  それで、次に今度の減税策の基本のことでございますので、大蔵大臣に改めてお聞き申し上げるのですが、これはもうたびたび同僚委員からも申し上げていることです。さきの臨時国会までは財政再建が重要だということで特別減税を否定していたわけですけれども、今回実施することとした理由というのをもう一度端的にお教えいただきたいと思います。
  219. 薄井信明

    ○薄井政府委員 端的に申し上げまして、昨年の例えばこの時期、総合的な経済状況判断した際に、景気に対して税制で何をすべきかということに関しては、結論的には九年度の税制改正で行ったことがベストであると考えたわけです。その背景には、御存じのように、平成六年、七年、八年と、むしろ五兆円とか五・五兆円のネット減税を制度減税なり特別減税でやってきたわけでございます。  私は、税制面からだけ申し上げますけれども、財政なり赤字公債がたくさん出てしまった財政構造が経済自体に悪影響を与えるのではないかということが、むしろ私ども心配でございました。  したがいまして、その制度減税と一緒にやることを決めておりました消費税率の引き上げにつきましても、予定どおりさせていただくことが大事である。確かに、九年度と十年度では、その境目では大きな増税ということになるかと思いますけれども、その前に五・五兆円の減税を三年続けて、十六・五兆円やってきた。もうそろそろ大丈夫かなと思ったのが去年の状況でございます。  結果的には、この夏、秋に、それではだめであるということで、特別減税を今回させていただいているという状況でございます。
  220. 北脇保之

    ○北脇委員 今の税の方の説明では、何というか、一面しかとらえられてないという感じがしますので、今まで、本会議などでの答弁、それから総理大臣の記者発表などを見ますと、日本経済状況とかアジア経済の問題、そういうことが特別減税の大きな要因になっているというふうにちょっと受けとめております。ですので、そこのところの日本経済との関係、そしてアジア経済との関係をどのように見て今度の特別減税に踏み切られたかという、そこをちょっと答えていただきたいと思います。
  221. 薄井信明

    ○薄井政府委員 御指摘の点と私が先ほど述べた点が違うことを説明しているつもりではございませんでした。  言葉足らずでしたので補充いたしますが、去年の四月以降の経済動きを見ますと一私どもが去年の今ごろ考えていた状況と違う状況になってきた。それがアジア経済状況であり、あるいは金融をめぐる新しいいろいろな情勢であったということでございまして、そのことが経済全体、例えば先行きに対する不安から消費が落ちているのではないかといったような形で、秋以降濃厚にこれが出てきた。  これにどう対応するかという際に、いろいろな手だてが経済政策としてはあり得ると思いますけれども、現在、金融政策はとりにくい状況にある、また財政に関しても、公共事業等については、これを拡大するのは適切でないという状況のもとで、減税というところに経済対策が結んだというのが去年からことしにかけての状況と見ております。
  222. 北脇保之

    ○北脇委員 そうしますと、今のお話ですと中間の部分が、説明がかなり省略されているのかなという感じがするのですが。というのは、減税することによって個人消費を拡大して、そのことによって日本景気回復景気対策に資する。そのことが円安に歯どめをかけて、アジアの通貨不安の連鎖、これの防波堤になろう、そういうような考え方という理解でよろしいのでしょうか。  つまり、ポイントは、もともとのところで、減税をすればそのことが個人消費の増加につながり、それが景気対策になるということを認めて、それを出発点に今度の特別減税を実施されようとしているのか、そこをもう一度確認させていただきたいと思います。
  223. 薄井信明

    ○薄井政府委員 純粋に経済的な見方をすれば、私はそういうことだと思います。ただ、一面、いい意味での政治的な意味合いを含めて日本は新しい決断をしたんだということは、そのアナウンスメント効果というものも総理はお考えになったかとは思いますが、純粋に経済的な面で言えば、減税をすればその分消費に結びつくことは間違いがないと思っております。
  224. 北脇保之

    ○北脇委員 今の点で、私は昨年、財政構造改革の特別委員会経済政策のことでちょっと質問いたしたことがあります。  そのときの答弁は、経済企画庁長官と大蔵大臣から御答弁があったのですが、経済企画庁長官の方の答弁では、景気対策ということについても、いわゆる財政出動というような、赤字国債あるいは建設国債を発行して、そのお金で減税をするなり公共事業をして、そのお金でまた物を買っていただくという方向ではなしに、むしろ国際的な経済の展開の中で、日本を生産拠点として選んでいただけるようなイコールフッティングの経済的な条件を整える、あるいは規制緩和を促進する、そういうような方向で景気回復経済対策をやっていくんだという御答弁がありました。そして大蔵大臣からも、この経済対策景気回復ということについても、健全財政が確立をされることが我が国経済の持続的安定成長をもたらすことだという御答弁がございました。  ですから私は、この当時の、財政構造改革特別委員会の当時の政府経済財政運営の基本的な考え方は、片方に財政再建ということも課題としてあり、減税とかそれから公共投資の増ということについては非常に否定的であって、規制緩和であるとかいわゆる経済構造改革ということとあわせて、財政再建そのものをやることが当面の景気対策経済対策としても最良の政策なんだ、こういうふうに言っていたと思うのですね。ですから、そこのところで、当時は減税の景気対策効果というのを否定していたのじゃないかと思うのです。  今回はそれが変わったのかどうかということをお聞きします。
  225. 薄井信明

    ○薄井政府委員 純粋に、経済理論的に、減税をすればこれが消費に幾ばくかは結びついていくという意味で、これを否定される方はいないと思うのです。  ただ、先ほども私申し上げましたように、ここ平成六、七、八年と、税の世界でいえば、三年にわたって五・五兆円のネット減税を続けてきている。一方で赤字国債もたくさん出させていただいている。そういう財政がこのままいくとすれば、これは金利を通じて経済マイナスになる、財政が赤字を拡大していく場合には経済マイナスになる、これも事実です。これも経済理論的にはそうだと思います。したがって、財政構造改革というものに手をつけたということでございます。  そうした中で、では、税ではどういうことを考えたか。構造的に何をするかというときに、私どもここ二、三年考えていたことは、例えば法人税について、課税ベースを広げてでも税率を下げることが経済構造にプラスである。例えばベンチャー企業とかこれから発展するような産業にとってみれば、税率が低い方が、課税ベースが、引当金などがなくても非常に有効である。そういう意味で、私どもは構造的な改革として法人税の改革に手をつけておりました。そういう財政構造改革あるいは経済構造改革あるいは金融システム改革、そういうことをやりつつきましたから、去年のこの時期には特別減税はもうやめさせてくださいということを申し上げました。  しかし、その後、アジア状況あるいは金融をめぐる状況の中で、このままではどうにもならないという状況の中で、追加的に減税をすれば、それはそれなりにプラスの点がありますから、財政構造改革が許す範囲内で何ができるかといったときに、二兆円の特別減税であろうということで結びついた。  先ほど来、言葉足らずで、三度も御答弁申し上げて申しわけありませんが、決してあることが絶対だめだということではなくて、それぞれプライオリティーなりその状況に応じて判断していくものだと思います。そういう意味で、私ども、特別減税をしないで済むような状況であることを望んでいたわけですけれども、そうではないということで、今回の状況になっているということでございます。
  226. 北脇保之

    ○北脇委員 次に、経済企画庁の方に、今度の二兆円の特別減税経済効果ということについてどのように見ているかということをお尋ねいたします。  というのは、最近出ました日銀の一月の金融経済月報などを見ても、今、家計部門で雇用・所得環境が非常に悪化してきているということがあるものですから、所得を形成するメカニズムというのでしょうか、それが弱まっているので、特別減税が実施に移された場合、ある程度現在の低迷からは持ち直すことが期待できるけれども、基本的に個人消費の目立った回復は期待しがたいと考えられるというような見方が出されております。  ですから、そういう全体的な経済状況、特に所得とか雇用の伸びが非常に鈍化しているという中で、それから金融の不安、先行き不透明さ、そういうものもある中で、この二兆円の減税というものの経済効果をどのように考えているかということをお聞きしたいと思います。
  227. 奥田宗久

    ○奥田説明員 御説明申し上げます。  景気はここのところ足踏みとも言える状態が続いておりますが、このような事態に対しまして、政府としましては、民間需要中心の自律的安定成長を図る方向で、規制緩和を初めとする緊急経済対策を実施するとともに、平成十年度税制改正におきましては、土地譲渡益課税の重課制度の撤廃、地価税凍結等、土地の有効利用促進及び取引活性化のための税制改革に加え、魅力ある事業環境整備という観点から、法人課税や有価証券取引税等の改革が行われることとなっております。  これらの規制緩和や税制改正につきましては、法律改正等、国会での御審議をいただき成立しますことが必要でありまして、その施行は春以降となります。  一方、秋口以降の複数の金融機関経営破綻による金融システムに対する信頼感の低下、本年四月一日からの早期是正措置の導入を控えての金融機関の貸し出し態度の一層の慎重化、アジア経済危機の深刻化が見られる中で、本年一−三月期が経済運営にとって極めて重要な時期となると判断しております。  この一−三月期という重要な時期より所得課税の特別減税を行いますことは、金融システム安定化策等のさまざまな措置と相まって、消費者企業経済先行きに対する信頼感の回復につながることから、景気効果的に作用すると考えております。
  228. 北脇保之

    ○北脇委員 今の答弁では、この一−三月期に今の特別減税効果があるというふうに見ているという御答弁だったと思うのですが、それに対して、先ほどもほかの委員が御指摘になっていましたけれども、十二月十七日にこれを発表したときに、その日は株価が非常に上がったのだけれども、翌日また下がってしまったということで、マーケットの見方としては、この二兆円の特別減税効果というのを余り評価してないのじゃないかなという感じが一つあります。  それともう一つ、二兆円ということのアナウンスがあった後の年末商戦なんかを見ると、百貨店とかスーパーとか家電量販店、そういったところはどこもよくない。百貨店とかスーパーなんかはバーゲンを例年よりも繰り上げてやっているというような状態だということなので、そこら辺は、今国民は二兆円減税ということを、まだ実施されてなくても、もう織り込み済みだと思うのです。にもかかわらず、年末商戦がそういうような状況であるという、反証みたいなものがあると思うのです。  ですから、このことを踏まえて、仮に二月以降、住民税も含めれば、ことしの六月までかけてこの減税が本当に実施されたときに、ではどれだけ消費の押し上げ効果があるかということに疑問なしとしないので、こういった反証になるような事実を踏まえて、どのように考えられているかということを、これはちょっと大蔵省の方でも結構ですから、お聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席浜田(靖)委員長代理着席
  229. 薄井信明

    ○薄井政府委員 率直に申し上げて、なかなか計数的に申し上げることはできないわけでございますが、先ほど来申し上げているように、財政構造改革というものの重要性を踏まえつつ、この時期に何ができるかという最大限の工夫をすると、今の二兆円減税という手だてになったわけでございまして、これがもう組み込まれているというならば、それだけにぜひともこれを早く実施させていただいて、この効果を見たいという気持ちでおります。
  230. 北脇保之

    ○北脇委員 私の立場といいますか考えとしては、先ほど来申し上げているように、この減税についてもっと規模を大きくして、そして制度化するといいますか恒久化していくのが必要だという考えでございます。  あわせて、政府経済財政運営についても、基本的な政策転換をするんだということを明確にアナウンスするべきだと思うんです。財政再建ということももちろん課題ではあるけれども、当面、景気対策経済再建を優先する。その限りにおいては、赤字国債の発行が一時ふえても、そういうことももうやむを得ないと割り切ってやっていくんだ、そういう一貫したメッセージが必要なんではないかということを申し上げて、この点の質問は終わりたいと思います。  次に、景気対策のことに関連してなんですが、追加景気対策ということについてどうお考えになっているかということを、ちょっと答えにくい問題かとは思うんですが、お尋ねしておきたいと思います。  と申しますのは、この一月二十一日まで株価が六日続けて上昇した。これは久しぶりのことだということなんですが、これは私は、今既に対策として提案されている政府景気対策、それを好感して株価が伸びたんではなくて、それはもう当然織り込み済みだと。そうではなくて、それにプラスアルファがあるということの期待による株価の上昇だと思うんです。  その材料を与えているのは、例えば自民党の幹事長が一月二十日の講演で、状況が思わしくなければ財政構造改革の目標を先送りしてでも追加景気対策を講じることもあり得るという、それを示唆する発言をしている。それから、政調会長も一月二十二日に、三月末には株価対策をやるんだ、検討しているというような発言をした、こういつたような発言があって、これは政府側ではなくて与党側の発言ではありますけれども、そういうことがマーケットに好感されているんじゃないかと思うんです。  追加景気対策あり得べしという期待で株価が今週はよかったという見方を私はするし、そういう見方がマスコミでもかなり支配的だと思うんですが、この見方そのものについては政府はどういうふうにお考えでしょうか。
  231. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 株式市場におきましてはいろんな投資家が参加をするわけでございます。国内の投資家ももちろん参加いたしますし、海外の投資家も参加するわけです。またマーケットでは、マーケットトークスと言われますけれども、いろんなことが材料にされます。そういうものを報道が整理をされて、こういう要因で上がっているということがささやかれていると言われているということが報道されるわけでございまして、そういう要因もあるかと思いますけれども、何が動かしているかというのは、これはいろんな取引がいろんなところで、いろんな理由で行われているわけでございますから、一概に言うのは難しいと思います。当局としてお答えできるとすればこういうことかと思います。
  232. 北脇保之

    ○北脇委員 マーケットというのは、いろんな政府対応に対する印象で敏感に反応するものだと思いますので、政府当局者としての発言というものは非常に大きな影響力があるので、やはり基本的には慎重でないといけないと思いますから、私が質問すること自体も、一つのそういう機会をつくってしまうということだというごとは重々承知しておりますが、ただ、やはりマーケットが期待で動く以上は、その期待を裏切るとまた非常にその反動が恐ろしいということもありますので、その辺のところは誤りのないような対応をお願いしたいと思います。  それと関連して、これもほかの委員もちょっと触れた件ですけれども、二十一日にアメリカのルービン財務長官が講演で、日本に対する金融安定と経済成長に向けた行動を要請した、そういう報道があります。原文の発言に直接当たることができていないので、マスコミ報道での質問では若干不十分かとは思うんですけれども、報道されているところによれば、アジア経済の安定に果たす日本の役割を強調して景気追加策を促した、こういうふうな報道がされているわけです。これについて、政府の方としては、このルービン長官の講演での発言というのは、現在の提案されている景気対策を速やかに確実に実行してほしいという意味で言っているのか。それとも、もうそういったものは発表されているわけですから、それはもう当然のこととして、さらに上乗せする景気追加策というものを要請したというふうに受けとめられているのか。そこのところをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  233. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 報道等で見ておりますと、二十一日に、ルービン長官がワシントンで、ジョージタウン大学というところだったと思いますけれども、アジアの通貨の危機だとかそういう問題について講演をされたようでございます。  アメリカの国内におきましては、なぜアメリカアジアにそんなに支援をするのかとか、あるいはそういうことに関連いたしまして、IMFの増資というのがアメリカの国内で議論されています。そういう国際機関の増資にアメリカはそんなに関与すべきじゃないという議論はあるようでございますが、行政府は、これはやはり世界経済にとって大事だからアメリカ政府としてやっていかなきゃいかぬという、説得といいますか、そういうことをいろいろやっておるようでございます。そういう一環として演説が、報道等によりますとなされたようでございます。  アジアのそういう支援の要素として四つぐらいあるということをルービン長官は挙げられまして、一つは、支援せられる国自体がリフォーム、改革を行わなきゃいかぬ。それから二番目に、そういう改革を行う国に対しては支援を行わなきゃいかぬ。それから三番目には、日本に限らず先進工業国、インダストリアルネーションズと言っておりますけれども、そういう国も、自分の国の経済を強くして、それで世界経済にもいい影響があるようにしなきゃいかぬというようなことを言っておられます。四番目に、途上国自身も国内の金融システムを安定させるようにいろんな努力をしなきゃいかぬ。  そういう四つのことを挙げまして、今の三番目の中で、先進工業国もいろいろ国内を強くするために努力をしなきゃいかぬということを言われて、その中で、日本については、世界第二の経済大国である日本の果たす役割は重要なので、日本金融システムの問題、内需主導による経済成長、それから市場開放のために必要な措置を講ずることが重要であるというような発言をされたわけです。  そういう中で、弱い日本アジアの弱さの一因であり、強い日本アジア地域の強さの一因となり得るということでございまして、いわば日本自身が市場開放とかあるいは経済を強くするために構造改革等いろいろやっておるわけでございますけれども、そういう意味で、一般的に、そういうことをすることが世界経済にとっても大事だしアジアにとっても大事だというふうに言われたものだ、こう理解をしております。
  234. 北脇保之

    ○北脇委員 追加景気対策については、マーケットも要請しているし、また、アメリカのルービン長官の真意もやはりもっと思い切ってやってほしいというようなことだろうと私は受けとめます。そういうことですので、やはり政策転換をはっきりしていくべきだと思います。  ただ、それは、私どもの立場からすれば、なし崩しにやればいいということではなくて、やはりきちっとした、政治が責任を明確にしてやっていく、一内閣一仕事なんという言葉もありますけれども、一つの内閣というのは、内閣の明確な意思で自分たちはこれをやるのだ、例えば財政再建なら財政再建をやるのだということでいいと思うのですね。それがうまくいかないといいますか状況に合わなくなってきたら、また別の内閣で、別の内閣一仕事でやっていくというような、そういうことが政治の力強さであり、わかりやすさだと思うのですね。  ですから、そういうこと、政治の責任の問題が生じてくるということをちょっと申し上げて、政策転換を求めて私の質問は終わります。後、関連質問がございますのでよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
  235. 浜田靖一

    浜田(靖)委員長代理 次に、北橋健治君。
  236. 北橋健治

    ○北橋委員 本会議の質問準備がありまして、皆様に内容について十分にお知らせすることができませんで大変恐縮でございますが、わずかな時間でございます、若干重なるかもしれませんが、減税法案について質問させていただきます。  それにしましても、本当に突然の記者会見でございまして、驚きでございました。ちょうどお昼のNHKのニュースを私は連合の事務局長のお部屋で一緒に見たのですが、この一年間、不況の中で生活防衛のために連合の皆さん初め一生懸命運動してきましたので、総理の政治責任という問題は別にいたしまして、その減税を決断されたこと自体は、これは大変喜ばしい、評価をすべきことではないか、そういう意見が連合の中にもございました。しかし、それにしましても、この減税につきましてはいろいろと不審に思える点もあるものですから、お答えできる範囲内でおっしゃっていただきたいのですが。  まず大蔵大臣は、この突然の記者会見、我々にとっては記者会見しかわかる方法はないのですが、総理がこの特別減税を決断したということをいつお知りになられたのでしょうか。
  237. 三塚博

    ○三塚国務大臣 十六日の深夜ですか十七日の未明ですか、とにかくASEANから十六日遅く帰りまして、早朝だと私は思っております。
  238. 北橋健治

    ○北橋委員 前の日は自民党税制調査会で大綱を取りまとめた日だったと思いますが、そうしますと、その与党の税調の大詰めのときだったと思いますが、そのときには総理のその考え方は伝わっていなかったわけですね。突然のお話だったということであります。本当にクアラルンプールで二日間、考えに考え抜かれて決断されたことなんでしょうか。
  239. 三塚博

    ○三塚国務大臣 総理大臣に質問していただきますが、それはそれとしてせっかくの御質問ですから、先ほど来各委員質疑に答弁申し上げておりますとおり、トップとしてこの国の未来展望、現在と、こうなるわけですが、総合判断の中で、またアジアの首脳との話を十四、十五と行って、十六日の深夜東京に着くわけでございます。  そういう中で、アジアの安定は日本の安定、こういうことであったようでありますし、そういう中で十七日、官邸において三党の代表招集、そこで橋本さんの決意表明、そして直後、三十分後でしたでしょうか、官邸記者団との会見、すべてを挙げてやらせていただくということで、報道されたとおりであります。
  240. 北橋健治

    ○北橋委員 総理の記者会見で知る限り、なぜその決断をしたのか。それによりますと、アジア経済、通貨危機が深刻であることがしみじみとわかったということと、予想外に国内経済が悪くなったからということを挙げておられます。  要するに、日本国内の景気をよくするためにやらなければならぬということだと思うのですが、その場合、二兆円という赤字国債まで出して対策を打つわけでございますから、なけなしの大事なお金だと思います。特別減税のよしあしはさておきまして、限られた厳しい財政の枠で仮に二兆円を使うという場合に、いろいろな選択肢があると思います。  よく昔から言われてきたことは、設備投資減税というのは一番効果があるのではないか、二番目に公共投資なのかな、三番目に所得減税かなということは、これはいろいろなモデルがあるようでございますので、どれが一概に正しいとかよく私はわかりませんが、しかし私は、所得税減税がこの時点において一番いいアイテム、選択肢であったかどうかというのは、これは疑問でございます。  そういった意味で、景気対策経済対策だけを考えた場合には、ほかにも選択肢があったのではないか。総理が決断されたわけですから主税局の方もその準備に入られるわけでございますけれども、そういった議論はないのでしょうか。
  241. 薄井信明

    ○薄井政府委員 本件につきましては、総理の御決断を受けて準備させていただいたということで選択の余地がないわけですが、推測するのも失礼なことになるかもしれませんが、その前日にまとまりました平成十年度の税制改正の内容が、それこそ昭和四十年以来の法人税改革であった。確かにネット減税分は三千三百億円で、私は大きいと思いますが、これをどう見るかは別にして、税率を三七・五から三四・五に下げるということは私どもの経験からすると極めて大きな決断を法人税については行っている。また、ビッグバンということで、金融関係税制につきましても長年議論してきた話に決着をつける。さらには、土地税制についても御存じのような改正を行った。  そういったものが前日にまとまっている中での所得減税ではなかったのかなと私が個人的に推測いたします。
  242. 北橋健治

    ○北橋委員 減税の効果がどの程度あるのかというのは、民間のエコノミストもいろいろ計算していますし、いろいろな見方があると思います。総理が決めたことですから事務当局としてはその方向で走らざるを得ませんが、私はどう考えても、現時点において同じ額の対策を打つ場合に、所得税減税よりもほかにもっと景気浮揚効果のあるものがあるのではないかと思うのです。もう現実決まっているものですからいかんともしがたいのですが、きょうは経済企画庁を特に呼んではいないのでお答えいただけません、大蔵省からお答えいただけるのでしょうか。  大蔵省の見方としまして、例えば公共投資であるとか設備投資減税だとかいろいろな選択肢がありますが、やはり今の、景気が冷え込んで、消費者マインドが物すごく氷のように冷えついているというときは、同じ規模の減税を考えるのであれば、私は、例えば法人税の減税であるとかあるいは土地関係の税であるとか、もっとほかの選択肢の方が効果があるのじゃないかと思うのですけれども、その点、御教示いただけますか。
  243. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 いろいろな対策も、経済状況によって非常にきく場合ときかない場合、いろいろ区々だろうと思います。  ただ、非常に平均的なケースでモデルを使って、いわばモデルというのは平均的なケースを算出しているわけですけれども、そういうモデルを使って乗数効果などをはじきますと、公共事業の場合は支出そのものが既に有効需要にカウントされましてそれが乗数効果を通じて波及していくという面で、減税の場合は、通常は所得税の減税でございますと、平均的な場合は平均的な消費性向があって、消費性向に見合う消費支出があって、それが乗数効果を通じて波及していくので、平均的なケースの場合は公共事業の方が景気刺激効果というのがあるというようなこともございます。  ただ、政策を選択する場合にはそういう平均的なケースだけじゃございませんで、経済状況あるいは資源配分の観点からどういう政策を講すべきかということも検討しなければいかぬわけでございます。例えば公共事業につきましては効率化というようなことで、見直しあるいは配分の見直しという要請もございます。  それから減税については、いろいろな税体系のバランスということもございます。選択肢としてはあると思いますけれども、そういうことをもろもろ考えまして、さらに経済状況でいいますと、ちょうどあのころ山一倒産があり、あるいは北拓の倒産があり、ああいう大企業倒産することがあり得るというようなことで消費者のマインドが非常に低下をし、それが個人消費の伸び悩みに大きく影響していた。そうすると、経済をよくするためには、やはり個人消費に着目した個人のマインドを回復するような施策も必要だというような配慮もあります。  したがいましていろいろな要素を考えた上で総理がそういう御決断をされたんだというふうに理解をしております。
  244. 北橋健治

    ○北橋委員 総理のお気持ちの中というのは、これは御本人に聞かないとわかりませんが。私の理解では、同じ財源を使って今景気対策をやろうと思ったら、最も低い効果に分類されるのが所得税減税じゃないのですか。公共事業だとか設備投資減税とかそういったものの方がずっと効果がある、そう理解してよろしいのでしょう。  もう一遍、端的にお答えください。総理がどうお考えになっているかではないのです。現時点において同じ財源を使ってやるときというのは、昔から官も民もエコノミストも大体そういう線で見ていたのですけれども、それは違っているのでしょうか、今。
  245. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 先ほど申し上げましたように、状況により有効需要に与える効果というのも違うと思います。違うと思いますけれども、その面だけ、有効需要に与える影響という観点だけ見ますと、例えば昨年の時点あるいは最近に至る時点を見ますと、個人の消費に対するマインドが非常に影響を受けている、これは事実でございますから、そういう意味では普通の平常時よりも効果が大きいというようなことは、推測でございますけれども言えるのではないかというふうに考えます。
  246. 北橋健治

    ○北橋委員 今おっしゃっている根拠というのは、何か数字的な裏づけというのがあるのですか。
  247. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 申し上げましたように推測でございますけれども、個人消費が秋にかけまして急激に落ち込んできているというような情報はございました。例えば、乗用車の十一月の登録台数などが非常に落ちた、特に高額の商品に対する需要が消費者先行き不安感を感じて落ちたのではないかというようなことはいろいろ言われていたと思います。傍証でございますけれども、そういうことはあったと思います。
  248. 北橋健治

    ○北橋委員 私が今申し上げているのは、例えば共同通信の世論調査なのですが、本会議で申し上げましたけれども、減税分を消費に回すと答えた人は三二%なのですね。そして、金融安定化対策、当時十兆円の国債の問題も一緒にセットに実施された場合、景気はよくなると思いますかという質問に対して、七五%は景気回復しないと答えています。相当に冷え込んでいるのではないかと思うのですね。  私は今、最初なぜこういうことを聞いているかというと、今回の税の動きの中で、アメリカ政府日本政府との間の関係というのがいろいろとあるのです。これは、額賀副長官がいらっしゃるところでお伺いしませんと何とも言えないのですけれども、ルービン長官なんかも今度は名指しで日本のあり方についてもいろいろと言及されているわけです。そういった意味では、今回、二兆円の減税という選択肢をとられたわけでありますけれども、それはいろいろな理由があるかは知りませんが、たまたま朝日新聞の報道したことではありますけれども、単に打ち消せばいいというものではない。やはり公の報道機関でございますから、日本政府としてもきちんとしたシグナルを発信しないと、やはりそういった意味ではこの問題をきちんと解決せねばならぬということで、前段に聞かせてもらいました。  お伺いしますが、サマーズさんと斉藤大使が総理の決断の一週間前にお会いになられている、これも報道しか私ども知りようがないわけでございますが。何でも、アメリカのサマーズさんの方から大使に会いたいと、行ってみると、もっと景気対策やってもらわなければ困るというようなことが言われたのではないか、そこでこの減税という話が出たのではないか、そのように推測しているわけですね。これは正しいかどうかは、会談メモは恐らく外務省が持っているでしょうけれども、きょうの外務大臣もそれを出さない、こう言っているわけですから、我々知りようがないのですけれども。しかし、そんなふうに米国政府から、その新聞を読めば、何か言われて日本もそれをやったのではないかというふうになってしまう。  そういった意味では、きちんと政府の方も、それはうそであるとか打ち消す、そういうことだけではなくて、やはりその辺をきちんとしてもらった方がいいと思うのですけれども、何かそのサマーズさんと斉藤さんの話の中で、そんな話が出たのでしょうか。所得税減税という選択肢についてアメリカが希望されるようなそんなお話、聞いておられますか。
  249. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 今のその会談について、私の記憶に余り残っていないわけでございまして、今お答えをすることは私ではできませんが、外務省の方が所管でございますから、外務省の御答弁のとおりではないかというふうに考えます。
  250. 北橋健治

    ○北橋委員 もしそういった報道されたようなことが本当にあれば、アメリカ政府高官から日本政府に対して、今が大事なときだ、景気刺激対策やれ、何でも、所得税減税やれと言っていたという話は当然大蔵省に行くわけですから、もし本当にあれば、大蔵省の方は知っていますよね。審議官の耳に入っていますよね。ということは、知らないということは、それはないのですね。確認しておきます。大蔵省は、そのサマーズ・斉藤会談で所得税減税の話が出たという話は一切知らないのですね。
  251. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 私は記憶にございません、先ほど申し上げましたように。いや、そういうことがあったのかどうかというのも、今ございませんし、ないと思います。
  252. 北橋健治

    ○北橋委員 いずれにしても、この事実関係というのは副長官を含めましてもう一度予算委員会の方でやらせていただきますが、私はやはり連合と一緒になって運動した立場からすると、たとえ消費マインドが冷えていることによって経済波及効果が小さいとしても、これはこれとして歓迎をすべきことだ、こう思っております。  しかしたまたま、ある新聞によりますと、その総理大臣の記者会見の写真の真下に、アメリカ政府日本政府との間にそういうやりとりがあってあたかも外圧を受けて日本政府がその選択肢をやったようなことが書かれている。それが政治問題化してこの国会で取り上げられて、そして結局新聞社に抗議をする、あるいは打ち消すというレベルで終わっているのですけれども、それは果たしてそういうレベルの問題であろうか。やはりそれはきちんとして、与野党の政争の具にせずに解決をしていかなければいけないのではないか、こう思いまして、その前段としていろいろとお伺いいたしました。  さて、今度はいろいろと、自民党税調そして政府税調の中でも、私も若干ながら細川政権のときに末席を汚させていただいて勉強させていただきましたが、本当に厳しい財源の中でいろいろな対策を前進されていると、評価すべきことはたくさんあると思っております。  そういう中で、土地税制の問題については、住宅とあわせていろいろと対策が講ぜられております。急ぎの質問だったものですから十分通告させていただかなくて大変恐縮でございますけれども、私どもも、学者や評論家の言い分もいろいろと時間のある限り勉強させていただきますけれども、いわゆる庶民感覚といいますか、そういった感覚でいろいろな方にお話を聞きますと、どんなことをすれば景気はよくなるのかという話をします。そのときに、やはり住宅というのは大変まだまだ大きな可能性があると思うんですけれども、その中でリフォームというもの、こういったものについて思い切って援助をしていくというのは、まだ理論的に大変難しい壁があるとお考えでしょうか。
  253. 薄井信明

    ○薄井政府委員 住宅取得促進税制というのがございまして、これが昨年度の改正ですけれども、かなりまた拡充し、また一方で整理もしているのですが、この中でリフォーム部分も、限度はありますけれども、対応していると承知しております。
  254. 北橋健治

    ○北橋委員 これは拡充すればするほど相当の波及効果があるんではないかなという気がするんですが、そういった見通しといいますか、考え方はお持ちでないですか。
  255. 薄井信明

    ○薄井政府委員 景気対策の話と似たところがありまして、やればやる分だけその分プラスだという論理もそれは否定できないんですけれども、私ども、税全体を担当している立場からしますと、どちらかというと、個人所得課税について言うと、最高税率を下げていく、そのために財源を求めるとしたら、むしろ租税特別措置を削っていく、今回法人税でやったような手法がいいと思うんです。  そういう意味でいうと、住宅に対する特別措置というのは、極めて今大きい。六千億とか七千億に近いものがあります。一方で、歳出で数千億出しておりまして、一兆円近い対応をしております、これが悪いという意味ではなくて。したがって、これをどんどん拡大していくことが適当かと言われると、税の立場からはちゅうちょしてしまう。住宅政策上何が大事かということを詰めていただいて、絞っていただいた税制対策をしていただきたいなと思っております。
  256. 北橋健治

    ○北橋委員 ありがとうございました。中途半端で終わってしまうんですけれども、時間が参りましたので、終わらせていただきます。
  257. 浜田靖一

    浜田(靖)委員長代理 次に、吉井英勝君。
  258. 吉井英勝

    吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。  私は、きょうは特別減税の問題について、議題となっておりますこの問題で、いろいろ質問もし、深めていきたいというふうに思います。  まず、今日の景気現状の方ですが、帝国データバンクの調査によりますと、九七年の不況型倒産というのは一万七百四十八件。一万件突破は八五年以来十二年ぶりということです。構成比で見れば過去最悪を更新する六五・七%。五年連続して六〇%を超えています。販売不振による不況型倒産の増加というのは、これは消費購買力の低下によるものであり、消費の落ち込みが今いかに深刻になっているかということをよく示しているというふうに思うんです。  また、九七年度の実質民間最終消費支出というのは、政府の実績見込みによれば、前年度比マイナス〇・四%で、これは、五五年以降では初めて前年度比マイナスとなっているという本当に深刻な事態です。消費の落ち込みは大変な事態だということが言えると思います。  一方で、来年度の経済見通しの方では、実質民間最終消費支出の伸びを二・五%と、極めて大きな伸びを見込んでいるわけですが、一年限りで二兆円の特別減税で、民間最終消費二・五%の伸びを大蔵大臣は本当にこれが実現できるとお考えなのか、まずこの辺のところがら質問をやっていきたいと思います。
  259. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 御指摘のように、政府見通しにおきましては、九年度の消費マイナスが見込まれております。それから十年度は、やや戻りまして、実質で二・五ぐらいの成長が見込まれております。政府見通しの作業の中心は経企庁でございますけれども、私どもも参画してやっておるわけでございまして、その観点から申し上げますと、九年度の消費の伸び悩みは二つの要素があると思います。  一つは、九年度の伸びの低さは、消費税の駆け込み需要が八年度にございましたから、八年から九年度を比較しますと、その分だけで九年度の伸びは低くなります。  もう一つは、先ほど私申し上げましたけれども、年末にかけまして、消費マインドが……(吉井委員「それで二・五%は達成できるんですか」と呼ぶ)それで、十年度につきましては、一つは、消費税引き上げの要素というのは、九年度と十年度の関係ではなくなります。それから駆け込み需要の関係もなくなります。  それから、政府景気対策とかいろいろございまして、全体的に所得の伸びが期待されるわけでございまして、それに伴いまして消費回復は見込まれるということでございます。
  260. 吉井英勝

    吉井委員 もう先ほど紹介しましたように、不況型倒産、非常に深刻な事態にあり、実質民間最終消費支出も本当に落ち込んでいるわけなんです。そういう中で、大臣、特別減税を一年で打ち切れば、その後はまた事実上二兆円増税ということになるわけですが、大臣は、一年で打ち切っても大丈夫だ、特別減税をやめても景気回復して、景気の腰折れはない、こういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。少なくとも二兆円の特別減税は、九八年分だけじゃなしに九九年分以降も継続するべきじゃないかと思うんですが、大臣、これはどうですか。
  261. 三塚博

    ○三塚国務大臣 毎回、ただいま委員が言われました趣旨の御質問には同じことを、基本をお話をして恐縮なんでありますが、それが基本でありますから、また私も、そう進めることが極めて我が国経済を不安、不透明から解放しまして、下支え、前進をするものと信じておるゆえんからであります。  ワンパッケージで、安定化システム、特別措置法、預金保険法改正案とともに三十兆の安定化策、金融システムの安定、国民各位の預貯金に対する安心、経済に対する、生活に対する安心の備えであります。それと、政府機関を駆使しまして、二十五兆の緊急融資体制、貸し渋り対策でございますが、民業の補完、こういうときにこそ政府機関が全力を尽くすことが大事でありますから、督励をして取り組んでおるところであります。それと補正予算。まず、このワンパッケージを何としてもお通しをいただく。二月一日から減税がスタートを切るわけでございますから、今月中の成立を補正予算とともに、システム安定とともに一括で御審議を賜るというお願いを申し上げているところであります。  それが成立をして前に進みますと実効があらわれてくるでありましょうし、倒産につきましても、御心配のような増勢ではなく、安定した方向で取り進められるかな、こう思っております。  特に、この際委員に、貸し渋り、回収などということが行われておるということで、予算委員会でも御党から御指摘をいただきました。そんな点で、全力を尽くしてやっておるところでありますので、また御連携をいただければしっかりと対応します。
  262. 吉井英勝

    吉井委員 私は、実質民間最終消費支出の問題を言ってきたわけですね。これは、民間のさまざまなシンクタンクなども数値等を出しておりますが、特別減税効果は限定的だと見ているわけですよ。  例えば、第一生命研究所は、政府見通しの一・九%成長を実現するにはさらに十兆円程度の特別減税が必要であるというふうな試算を出したりもしておりますが、消費購買力を高めて個人消費を拡大することこそ今一番求められている景気対策であるし、そうしてこそ実質民間最終消費支出を伸ばす力になるのに、ここのところについて、二・五%という数字は挙げられたのだが実現できるのかといったら、ワンパッケージの話は出てくるが、具体的にはここは出てこないのですね。  ところが、政府のやろうとしているのは、法人税減税や地価税凍結など、大企業の方は恒久減税なのですね。消費に結びつく所得税、住民税の減税、国民向けの方は一年限りの特別減税だけだと。これでは話は本末転倒じゃありませんか、大臣。
  263. 薄井信明

    ○薄井政府委員 平成六年度に、私どもは、所得課税について三・五兆円の減税を制度減税としてやりました。このときは、法人税についても土地税制についても大きな手は加えていないわけでございます。  このように、税制は制度でございまして、そのプロセスといいますか、何年かかけて全体をよりよい税体系に持っていっているということについても御認識いただきたいと存じます。
  264. 吉井英勝

    吉井委員 全然違う話をしているのですよね。  それで、日経新聞の昨年の十二月十七日付に、法人税減税についての経団連の試算というのを掲載しておりました。それによると、例えばトヨタ自動車は、法人税減税を強力に主張してきた経団連会長を務めた企業ですが、そのトヨタは四年連続増益で、九七年三月期の経常利益は六千二百億円で日本一ですよ。そのトヨタが、来年度の法人税減税で八十四億円の減税となります。  それだけじゃないのですね。国税庁が発表した地価税の申告税額というのを見ますと、トヨタは、九七年度の地価税納税額は三億三千五百五十五万円、九三年から九七年までの五年間に合計四十一億一千三百万円を納税しているわけですが、地価税凍結で、九八年度からはこれがゼロになるわけです。  日本一の利益を上げているトヨタの方は、法人税減税と地価税凍結で、それだけで年間九十億円近い減税を受けるわけです。こっちは恒久減税なのです。国民の方には、今回の特別減税で、夫婦と子供二人の四人家族という平均的な家庭で、減税額はわずか六万五千円、それも一年ぽっきりですね。大臣、これは余りにもひどい話じゃありませんか。大臣、そうは思いませんか。     〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
  265. 薄井信明

    ○薄井政府委員 先ほど申し上げましたが、個人所得課税について三・五兆円の減税をしました。その結果、今の、例えば平均的なサラリーマンの個人所得課税の負担というのは、実にアメリカの半分の低さです。したがって、日本の所得課税が税負担の水準として重いか軽いかという議論をしたときには、これは十分に日本は低いと考えております。  御指摘は、景気対策ということでおっしゃっているのか、負担が適当であるかどうかということでおっしゃっているのか、これによって議論は変わってくるのではないかと思います。  また、法人税につきましては、逆に言うと、日本の負担は諸外国に比べて重いわけです。これは日本経済全体の今後を考えたときに、課税ベースを広げて税率を下げるという形で対応することが日本経済全体にとってプラスになるわけで、一企業のためにやっているつもりはございません。
  266. 吉井英勝

    吉井委員 まず、租税負担の問題につきましては、これは国民負担全体、それから国民サービスの問題が全体として比較されないと、全然比較の対象にならないわけです。それから、法人税問題につきましても、これは課税ベースの違いというものがあるわけですから、その率の話では全くそれは議論にならないということはこれまで論じてきたところであります。現実の問題を私は提起しているのですね。  実際に、今度法人税課税で、日本一の経常利益を上げているところで、法人税減税で八十四億円、そして地価税がゼロになることによって、両方合わせて九十億円近い非常に大きな恩恵を受ける、減税になる。しかも、今度は恒久減税をやろうとしているのだと。一方、国民の方というのは六万五千円で一年ぽっきりだ、このことを言っているのであります。  さて、最近の景気の悪化に歯どめをかけるためには、やはり大臣、大銀行への三十兆円の公的資金投入や大企業への減税ではなくて、庶民の懐を直接暖めて、国内総生産の六割を占める個人消費の拡大に直接役立つ二兆円所得減税を、一年限りではなくて九九年度分以降も継続することとし、そして消費税率を三%に戻して五兆円の消費税減税を行うこと、こういうふうにやはり直接消費購買力を高めて不況を打開する、そこにこそ進むべきなのじゃありませんか。
  267. 薄井信明

    ○薄井政府委員 景気あるいは消費を拡大するという観点からの御指摘だと思いますが、それを総合的にいろいろな手だてを講じてやることによって政府見通しのような経済を想定しているのが政府の立場でございます。  税制から申し上げますと、景気対策だからまさに単年度でやっているわけでございまして、もし恒久的な減税を個人所得課税についてするべきだとおっしゃるならば、それは恒久的な所得階層別の負担のあり方を議論すべきであって、それは、先ほど申し上げたように、日本の通常の所得者の場合、主要先進国に比べて格段に低いという実情にあって、それが悪いということではなくて、その実情を踏まえて御議論いただきたいと思います。
  268. 吉井英勝

    吉井委員 今私が言っているのと全然違うことを言っていらっしゃるのね。  それで、私は、まず恒久減税の話ではなくて、今とりあえず言ったのは、九九年度分も引き続いてこれをやるということを考えるべきじゃないかということを言っているのですよ。大体論点が、景気悪化に歯どめをかけるためには、まず消費を暖める、そこにこそ力を入れるべきじゃないかということを言っているわけですよ。  それで、大蔵大臣、橋本総理は二十日の予算委員会で、私に対して、特別減税を「継続しないでも大丈夫な経済状態にしたい」と答弁をされました。あなたも聞いていらっしゃったと思うのです。ところが、経済実態は今どうなのか。  日本銀行は二十日、今度初めて金融経済月報を公表しましたが、景気現状については、「家計支出を中心とする内需減速の影響が、生産面や雇用・所得面に及びつつあり、企業マインドも悪化している。」景気先行きについては、「今暫くは停滞色の強い展開が続くものとみられる。」「企業家計のコンフィデンスの一層の低下、などの景気下押しリスクが発生することがないか、十分な注意を払っていく必要がある。」としておりますし、朝日が今月の中旬に行った主要百社緊急アンケートでは、景気は緩やかに下降あるいは悪化しているという企業が七十二社、七二%ですね。今後の景気の懸念材料に個人消費の低迷を挙げているのは七十社、七〇%ですよ。景気対策の要求では八割近い企業が減税に言及しました。中でも、所得税減税の拡大や恒久化による消費の刺激というのが圧倒的ですよ。  大蔵大臣、やはりこういう不況が長引いて景気がさらに悪化しても特別減税など追加的減税は必要ないという立場に立つのか、そういうことが断言できるのかどうか。私は、ここのところは大臣の方にきちんと伺いたいと思います。
  269. 三塚博

    ○三塚国務大臣 橋本首相の言を引いてあなたも聞いておっただろうと、全くそのとおり、聞いておりました。  何回も申し上げるわけですが、ワンパッケージのこの緊急対策景気下支えの補正予算、それと、貸し渋り対策の解消のためにこれまた二十五兆円の段取りをしておるわけであります。十年度当初予算も、めり張りをきかして効果的な実効性の上がる事業体系をと、こういたしておりますし、財投計画によってそれぞれの公社公団がこれまた実効性の上がることで全力を尽くす、こういうことでありますから、この段取りが、今月中に、減税関連法案と安定関係法案が補正とともにワンパッケージなものですから、成立をさせていただきますこと、まさに緊急対策景気対策、こういうことに相なろうと思います。
  270. 吉井英勝

    吉井委員 大蔵大臣は昨年の通常国会のときにも、「四半期の第一期にはそれなりの影響は受けますが、後半は一・九%の成長が達せられる」と確信に満ちた答弁をされました。しかし現実は、実績は政府見込みでも〇・一%と大臣の見通しは完全に間違っていました。その責任をどう感じていらっしゃるかということがあるわけです。  また政府は、来年度の経済見通しで国内総生産、GDPの伸びを一・九%と見込んでいるんです。結局、先ほど、二・五%の実質民間最終家計消費支出についての目標が本当に実現できるのかと聞いても、これは自信がないから答えがなかったのかどうか知りませんが、なかったわけですが、民間のシンクタンクは軒並み大体〇%台から一%前後の見通しを出しています。  だから、この一年限り二兆円の特別減税に固執すれば、これは、やはり昨年犯した見通しの誤りを再び繰り返すことになるというふうに思いますよ。私は、そこのところについては、大臣の方に特別減税の継続など、きちんとした考えが必要じゃないかと思うんですが、これは大臣、どうですか。
  271. 三塚博

    ○三塚国務大臣 景気の見通し、経済成長の見通し、御紹介はそのとおりでありました。予想をはるかに超える現象の中で、九年度は〇・一%という見通しも先般発表したところであります。  それはそれとして、十年度、着実に一・九が実現できるように、ただいま申し上げましたワンパッケージ、万全の態勢で臨んでおりますので、ここで橋本首相の言葉を引用します。一分一秒でも早く成立させていただきますよう、私からも心を込めてお願いを申し上げます。
  272. 吉井英勝

    吉井委員 昨年は、「一・九%の成長が達せられる」と非常に自信を持って断言をされました。きょうは、ことしは達成できるようにと努力目標に、断言から大臣も大分変わってきたのかなと思いますが。  最後に私は、九兆円の負担増が今日の事態をもたらしたのですから、本来はやはり九兆円以上の対策は必要なんですよ、今のこの冷え込んだ深刻な消費不況を打開するには。せめて、国民の懐を直接暖める二兆円の特別減税継続と、消費税率をもとの三%に戻して五兆円、合わせて七兆円の庶民減税を実施することを決断すべきだと思うんです。  最後に、このことについて大臣の決意を伺っておきたいと思うんです。
  273. 三塚博

    ○三塚国務大臣 前段申し上げましたことをまた御懇請を申し上げさしていただきます。  同時に、倒産しますと雇用の問題が深刻になります。この問題を、労働大臣、通産大臣、この間も閣僚懇談会の中で強く申し述べ、また、私は事務方に、この雇用体制の完璧を期するように、こういうことで全力を尽くさせていただいてまいりたいと思います。  もちろん、倒産しないようにこれを下支えをしっかりとしていかなくちゃいけませんし、貸し渋りで倒産がありませんように激励をしておるところであります。
  274. 吉井英勝

    吉井委員 時間が参りました。終わります。
  275. 村上誠一郎

    ○村上委員長 次に、岩永峯一君。
  276. 岩永峯一

    ○岩永委員 大臣のお言葉のように、一分一秒でも早くこの法案が成立するようにということで、昨日も約九時間ここで早く始まらないかなとお待ちをしておったわけでございますが、委員長を初め理事諸公の皆さん方できょうはスムーズに動いておりますことを大変喜んでいる次第でございます。  私は、今回の経済に対する政治的な対応を次のように理解をいたしております。  御承知のとおり、五十年間に及ぶ制度疲労が日本全体の各分野に及んでまいりました。このために、橋本総理は六つの改革を掲げて選挙をし、そして自由民主党は約半数の信頼を得て、自由民主党だったらやってくれるだろう、そして大きな期待を込められて負託を受けたわけであります。  しかし、今の日本の国全体の国体の制度は、疲労もございますし、バブル経済破綻ということ を含めて、人の体に例えれば、私は、成人病にかかったのではないか、こんなことで、その対応を六つの改革でしてきたと。成人病というのは、御承知のとおりに、食事療法もしなきやならぬし、また、運動して体力回復もしなきやならぬということで、かなり中長期的な見通しで人体の回復を見ていかなきやならぬ、このように思っていたわけでございます。  そこで、診断を受ければがんが出てきたというようなことで、早速がん治療をしなきやならぬということが私は今の橋本内閣のとられている緊急対策ではないか、このように思っておるわけでございます。銀行そして証券の倒産金融不安、急速な景気の低迷、貸し渋り等による一般企業への波及アジア各国の急速な金融景気の悪化等が私はがんだ、このように例えてみたい、このように思っておるわけでございます。  それで、今対応しているのが三十兆円の金融対策、二兆円の減税、そして各種の税制、そして補正をも含めたかなり大きなパッケージであろう。私ども、国会に一年余りではありますけれども、率直に申し上げまして、五百兆円に及ぶ財政構造改革のための精いっぱいの審議を昨年してまいりましたし、それに加わってまいりました。だから、むしろ我々が国会へ来た使命というのは、この大きな借金を次の世代に絶対送ってはならない。そして、今の青年あたりに話を聞きますと、岩永さん、何をしてくれなくてもいいから、ひとつ借金だけはないように、そして七〇%に及ぶ国民負担率というものを解消してほしい、こういう責務を帯びて上がってきたと思うのですが、景気が、また今回の金融破綻というものがそれに大きな問題を提起してくるということでございますので、私どもはそのことに対する対応を緊急にしながら、財政改革もやってもらわなきゃならぬ、こういうような思いでございます。  だから、野党の皆さん方が質問されているように、急に提案されてきたではないか、このようにおっしゃるわけでございますが、私どもは、このことに至った総理の決断というのは本当に、大変厳しい環境の中で、そして全体が財政構造改革をしていかなきやならぬというムードの中で、この提案についてはかなりの決断をもってなされた、このように思っております。  その十七日、二兆円減税の決断をされたときでございますけれども、相当な国民からのタイムリーな決断だという賛同があったわけでございますし、私はずっと新聞を調べておりまして一番関心を持って見たのは、連合の笹森清事務局長が、先ほどもお話がございましたけれども、首相の決断を高く評価する、そして二兆円規模では十分とは言い切れないけれども、これを即時実施して国民先行き不安を一日も早く解消すべきだ、こういう談話を発表しておられますし、牛尾経済同友会の代表幹事、日経連の根本会長、そして私どもの関西の経済人もほとんどそれに同調をしておられるわけでございます。私自身も、総理というもの、一国のリーダーというものはこういう決断が大変大事だ、そして、それをされたリーダーとしての資質に大きく感心をしたわけでございます。  そこで、大蔵大臣に、ずっと先ほどから同じ質問ばかりを受けておられるわけでございまして大変恐縮に思うわけでございますが、私ども一生懸命に税制をやってきた、そしてその中で急にこの話が出てきた、そして、結果はすばらしいものであったが、あのときには私自身も驚きを覚えた、こういうことでございまして、三塚大臣が最初に総理からこの話を聞かれたときに、今の財政構造改革、そしてずっと進めてきた党の中の状況、そして大臣も大蔵大臣として大蔵省の先頭に立っていろいろと対応してこられた、そういう背景を踏まえて、あの当時どういうようにお感じになられたか、最初にお聞きをしたい、このように思います。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席
  277. 三塚博

    ○三塚国務大臣 岩永議員も橋本総理の性格、政治家の理念、よくおわかりの中で、激励と共鳴をしながらの御質問であろうと思っております。  内閣の首班は、国家の安泰のために万般の気配りを、また決断をしなければならない立場にあります。アジア通貨が日本に不安定をもたらす、日本も秋以降の大型倒産等々で不透明さを一段と増していく、そういう中で、市場に対する、経済に対する不安感国民各位の中に浸透していく。景気は気からとよく言われますとおり、まさに気であります。不安感を除去するということがこの際の基本であると、橋本首相の会見のときにも言われたところであります。  全般を通覧し分析をして、一大決心をしたことであります。すべて政治の結集として決断をし、これが不安感を除去し国民生活の安定、国民経済の伸展につながるものと、こう決心したことを高く私も共鳴をしながら、事務方を督励をし、制度減税が終わった後の決断でありましたけれども、これに全力を尽くしていただき、三党の協力、自民党の税調の本件に対する対応、こういうことの中で決着を見ることをでき得ましたこと、大変幸せなことであったし、政治はやはり安定してこそ力が出ます。  政治が混乱をしますと経済は混乱をするわけでございますから、そういう点で、今次の関係法案の成立に全力を尽くしていかなければなりませんし、委員各位にはずっと御審議に御参加をいただく、これ当然のことでありますけれども、そういう中で、敬意を表しながら、万般の御支援を賜りますようお願いを申し上げます。
  278. 岩永峯一

    ○岩永委員 できるだけ質問を詰めてまいりたいと思っております。  私自身は、野党の皆さん方が六兆円の減税を言っておられますけれども、これは基本的に財政構造改革をきっちりしなきやならぬ、こういうように思っておりますので、むしろ今のこの二兆円という金額でも相当多額である、このように考えております。ましてや、二月の源泉徴収からその効果が出てくることになるわけでございますが、大蔵省は経済の現況をどのようにとらえておられて、そして今後をどう見通しておられるかということが第一点。  そして第二点は、本委員会でこの減税法案金融安定のための法案を審議中でございますけれども、金融システムが全体に健全にならなきやならぬわけでございまして、そのために、これの相乗効果というのがどういう形で出てくるとお考えになっておられるか。  そして三つ目は、経済は生き物でございます。景気回復が、私は、現在講じておられるパッケージでもって十分に効果は上がってくる、このように信じておりますが、万一今後とも景気低迷が続くということになった場合に、さらに大幅な減税を行うというような、新たな景気対策を考えられるという考え方があるのかどうかということ。そして最後。その一方で、財政構造改革法があるが、それとの関連をどう考えておられるか。  こういうことを御質問申し上げまして、簡単で結構でございますので、きょうは六時に終わりたいという理事の皆さん方の御要望でございますので、できるだけ切り詰めて御答弁をいただければそれで結構でございます。
  279. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 最初に、経済現状と見通してございますが、現状につきましては、バブルの後のいろいろな問題を抱え、構造問題を抱えた上に、夏以降アジアの通貨問題、あるいは秋以降金融機関破綻等によりまして、企業家計景況感に厳しさが見られ、これが実体経済影響を及ぼしてきておる、そういうことで、景気は足踏み状態にあるということでございますが、こういう状況を踏まえまして、こういう緊急の事態に対処するために、先ほど来申し上げております財政、金融両面にわたる措置をとったわけでございます。こういうものが予算、補正予算に含まれておるわけでございまして、こういうことを実施することによって、景気政府見通しにありますように回復の方向に向かっていくというふうに考えております。
  280. 山口公生

    山口政府委員 金融対策との相乗効果でございますが、やはり、例えばたんす預金のお話もい ろいろ出ておりました。不安が不安を呼ぶと非常に皆さんが保守的になってくる、そういうことで、今回の金融対策も、安定化対策をお認めいただきますと、そこに気持ちが、安定の方に向かうというふうなことで、大変効果は相乗的にあるのであろうというふうに思います。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  281. 岩永峯一

    ○岩永委員 大臣、ありがとうございました。我々、総理初め大臣のもと、精いっぱいついてまいりますし、一日も早い審議がされますように最大の努力をしたい、このように思いますので、国家国民のために景気浮揚の御尽力をひとつ、大変でございましょうけれどもお願い申し上げまして、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  282. 村上誠一郎

    ○村上委員長 岩永委員、審議促進のための御協力ありがとうございました。  次に、秋葉忠利君。
  283. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 私も、持ち時間十分ですが、できるだけ審議促進に協力をしたいと思いますが、何点か大事な点ですので伺いたいと思います。  今回の特別減税、総理が最終的に決断をされたわけですが、それに至ったプロセスで、きょうも本会議質疑にもありましたし、この委員会でも何度か指摘されている点ですけれども、その中で、社会民主党としても特別減税を行うべきであるという主張をずっとしてまいりました。野党の皆さん、それからその他国民的にも非常に広い範囲での減税の提案があったわけですが、それを無視した理由、最終的には総理決断で減税することになったわけですけれども、その時点から振り返って、我々の提案を無視したことをどういうふうに正当化されるのか、その点をまず大蔵大臣に伺いたいと思います。
  284. 三塚博

    ○三塚国務大臣 無視、正当化した理由はいかんと、無視はしておりません。それぞれの事由によりまして、財政構造改革法制定に向けての審議中もこれあり、年度当初予算、九年度でありますが、昨年一月から全体会議、与党三党の幹部を中心に、政府も入りまして真剣な論議を進めておりました。そういう中で、財政構造改革の実を上げるためには、こういうことで、三党協議の中でそのことを取り進めてきたところでございます。そういう中で、正当性を主張する、声高にやるなどという気はありません。  政治の原点は、この国の危機国民の生活の危機、こういうものをしかと認識したときに有効な手だてを講ずるということは当然のことでありますので、報道等で秋葉委員も御案内のとおりの経過の中で、ASEANから帰りました十六日の未明、そういう伝達がそれぞれになされまして、十七日の朝の会議、三党幹部がいるところで改めて橋本首相からその決心の経過と決意を申し述べ、協力の要請があって決定が行われた、こういうことであります。
  285. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 これは過ぎたことですから、過ぎたことについて愚痴を言ってみても始まらない話なのですが、この経験から実はより建設的な教訓が得られるのではないかと思いますので、その点について問題提起をして、お考えを伺わせていただきたいと思います。  それは、我々は、閣外協力という形ですけれども、連立政権を形成しております。社会民主党は、自由民主党といろいろな違うところがあるのですが、私たちの党のアイデンティティーといいますか、一つの方向性として、やはり社会的に弱い立場にある人たちの声を代弁するということを一つ党の中心に据えてやっております。ほかの政党がそれをやっていないということを申し上げているのではなくて、私たちは特に力を入れてきているつもりです。  例えば、今回のような危機にあっても、あるいはその他さまざまな問題が生じた場合に、こういった弱い立場にある人たちのところに最も早くその兆候があらわれる。かつて大江健三郎さんは、文学者は、例えば核の危機について、ちょうどカナリアのように時代の先取りをしてその危機を訴えているのだということをおっしゃいましたけれども、社会的に弱い立場にある人たちは、自分たちの痛みを通じて、身をもってそれを感じ、その声を出しているわけですが、例えば我々の特別減税の要求、主張というのは、そういった声が何とか現実のものにならないかという党の立場でありました。  そういった立場を、いわば危機が大規模に訪れる兆候としての危機にもう少し耳を傾ける態度というのが大蔵省にあり、あるいは自民党の側にももっとあれば、その謙虚さというものがあれば、より有効なタイミングでこの減税が行えたのではないか、そんな気がいたします。  つまり、連立政権のメリットをもっと生かす方法があるのじゃないか。そのために、やはり大蔵大臣にも、自民党の一員でもいらっしゃいますし、大蔵省の代表でもあるわけですから、そういった形での連立政権を生かすといった方向で、ぜひこの教訓を、将来の、危機がないことは祈りますが、危機あるいは政策決定の上で生かしていただきたいと思いますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  286. 三塚博

    ○三塚国務大臣 御趣旨はそのとおりであります。御党が、弱者を大事にしながらこの国の安泰、国民生活の安心を期するということで、党首を中心に御活躍をいただいております。  至らぬところも時にあったのかなと秋葉委員の御質疑を聞きながら感ずるところもあります。それぞれのところにそれぞれにまた私は伝達をしてまいりたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いを申し上げます。
  287. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 もう一つ、今回の減税の効果について伺いたいのですけれども、詳細については野党の皆さんがいろいろと詳しい数字を挙げたりして質問なさっていますので申し上げません。例えば、特別減税を行うよりは消費税の税率を下げるといった方が景気刺激策としてはより有効であろう、どちらかというともう常識になっていると考えてもいいと思いますけれども、どうしても現在の規模の、今の時点での二兆円の特別減税では十分な効果が期待できないのじゃないか、そんな声が非常に広範にあります。  それを象徴的に示しているのが、きょうニュースが流れましたけれども、自民党、そして大蔵省としては、この後できるだけ早く、二月のどこかの時点で、できるだけ早い時点で追加策をとることを決定した、それも、株価のいわゆるPKOというのが一つと、公共事業に投資を行うという、その二本立てたというニュースが流れてまいりました。大蔵省としてはこういったことについて、こういった景気刺激のための追加策、これを大蔵省も一緒に協力をしてやっていらっしゃるのかどうか、伺いたいと思います。
  288. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 御指摘の報道の事実は、事実関係については承知しておりません。  政府といたしましては、先ほど来申し上げております財政、金融両面にわたる措置を提案しているわけでございますから、これが一刻も早く成立いたしまして、それが実施に移せるということが大変大事ではないかというふうに考えております。
  289. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 確認しますが、その追加策というものは考えていないということでよろしいわけですね。
  290. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 ちょっと言葉足らずでございましたが、御質問が、自民党がそういう景気対策を考えているという報道があるがどうだということだったと思います。(秋葉委員「大蔵も一緒にやっているのかと聞いたのです」と呼ぶ一まず自民党の方でそういうことをやっていることを承知していませんから、その後の話も同じだと思うわけでございます。
  291. 秋葉忠利

    ○秋葉委員 質問時間が終わりましたので、これで質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  292. 村上誠一郎

    ○村上委員長 ただいま議題となっております各案中、内閣提出平成十年分所得税特別減税のための臨時措置法案に対する質疑は、これにて終局いたしました。  次回は、来る一月二十七日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十一分散会      ————◇—————