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1998-01-21 第142回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年一月二十一日(水曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 村上誠一郎君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 坂井 隆憲君 理事 浜田 靖一君    理事 池田 元久君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 谷口 隆義君       今村 雅弘君    岩永 峯一君       大石 秀政君    鴨下 一郎君       河井 克行君    桜田 義孝君       杉浦 正健君    砂田 圭佑君       中野 正志君    根本  匠君       能勢 和子君    宮路 和明君       村井  仁君   吉田六左エ門君       渡辺 具能君    渡辺 博道君       渡辺 喜美君    上田 清司君       北脇 保之君    末松 義規君       中川 正春君    日野 市朗君       藤田 幸久君    赤松 正雄君       河合 正智君    並木 正芳君       小池百合子君    鈴木 淑夫君       西田  猛君    佐々木憲昭君       佐々木陸海君    秋葉 忠利君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 三塚  博君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房長 武藤 敏郎君         大蔵大臣官房金         検査部長    原口 恒和君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主計局次         長       藤井 秀人君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君         大蔵省国際金融         局長      黒田 東彦君         国税庁課税部長 乾  文男君  委員外出席者         経済企画庁調査         局内国調査第一         課長      古川  彰君         参  考  人         (日本銀行総裁松下 康雄君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 一月二十一日  辞任         補欠選任   中野 正志君     能勢 和子君 同日  辞任         補欠選任   能勢 和子君     中野 正志君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  預金保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一号)  金融機能安定化のための緊急措置に関する法  律案内閣提出第二号)      ————◇—————
  2. 村上誠一郎

    村上委員長 これより会議を開きます。  内閣提出預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案の両案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁松下康雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 村上誠一郎

    村上委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河井克行君。
  5. 河井克行

    河井委員 皆さん、おはようございます。元気よく始めさせていただきたいと思います。  今紹介いただきました自由民主党河井克行といいます。本委員会におきましては、金融システムの緊急的な安定化関連二つ法案提出をされております。まさに日本経済の浮沈がかかった大変重要な審議の際にこのように質問の機会をいただきましたことを、まずもって本当に心から感謝を申し上げたいと思います。もっとも時間はたった十分間でございますので、どうか簡明な御答弁をいただければ大変ありがたいと思います。  さて、私たち自由民主党は、昨年の秋以来、特に十一月の相次ぐ金融機関の破綻以降、毎朝のように、早朝、党本部に集まりまして、どうずれば日本金融機関が再び本当にしっかりと安定を取り戻し、国民信頼信用を再び得ることができるのかという方策を、けんけんがくがくの議論をずっと行ってまいりました。そして、その結果といたしまして、今回こうやって提出をしていただいております総額三十兆円にも上る緊急的な金融システム安定化法案、この二本にそういった議論が実を結んだものだというふうに思っております。一日といえども、一時間、一分、一秒でも早期にこの二つ法案成立をする必要性があるというふうに考えております。  といいますのも、今の日本経済状況、これをもう一回振り返ってみますと、まさに信用収縮中小企業中堅企業は三月の決算期を越せるかどうか、倒産の不安も高まっておりますし、一般庶民の中でもたんす預金というのが最近はやっております。たんす預金が余りふえますと、国家全体の健全な資金循環にもそごを来すということもありますし、既に水面下では、いろいろな金融機関の相互の間で預金等の移しかえの動き発生をしてきております。  今の橋本内閣におきましては、さまざまな、いろいろな景気対策をしっかりと打ち出していただいておりますけれども、根本的には、金融資本主義経済のまさに精髄でありますから、金融不安を取り除かない限り抜本的な景気対策にはなり得ない、実効が上がらないというふうに考えております。そして万が一この法案早期成立をしない場合に、まさに日本経済が破局を迎えるんじゃないか、そのように考えております。  といいますのも、日本金融システムに対する内外の不安がますます増幅し、預金を全額保護してもらえるかという国民の不安と動揺も高まり、ひいては日本民間金融機関のいわゆる信用力、そして格付もさらに低下をすることによりまして、健全な経営を行っている金融機関ですら再び内外金融市場での資金調達が本当にしんどくなり、もう一回ジャパン・プレミアムというものが急上昇していく。そして昨年十一月に発生したような風評等による特定の金融機関をねらい撃ちをした株価、債券の下落、そして短期かつ大量の預金の流出が起きかねないということになりまして、まさに貸し渋りではなくて、もう既に現場の方は、貸しどまりどころか貸し付けた債権を回収する、そういう動きすら発生をしてきておりますので、一分でも一秒でもこの二つ法案早期成立をしていっていただきたいというふうに考えております。  そして、その中で、しかしそうはいいましても、私もお正月以降、ずっといろいろな地元回りをしました。そして自分自身後援会の新年会等でもこの法案中身をいろいろと説明を申し上げましたけれども、その一方で、やはり庶民一般感情の中では、何で銀行ばかりこのように保護されるのか、そういうふうな感情があることも、これは否定できない事実でございます。  より多くの方々に、多くの国民に今回のこの法案をしっかり理解していただくためにも、例えば銀行役職員リストラ、特に給料が随分高いんじゃないかというふうな指摘もあります。その点については、私は、こうやって皆様の税金をこれから使うわけですから、純粋な資本主義原則でいうところの民間企業経営とは少し色彩が変わってくるというふうに思っておりますけれども、現下のいわゆる役職員給与水準等について、具体的な数字がございましたら教えていただきたいと思います。
  6. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  労働省の統計によりますと、産業別賃金状況、これは銀行及び信託業賃金が八百八十六万円となっておりまして、全産業平均が六百九十九万円でございますので、約二七%他の産業に比べれば高い、こういう統計になっております。
  7. 河井克行

    河井委員 今の数字で全平均よりも二七%高いということでありまして、どうしても人間というのは人の財布の中はよく見えるものでありますので、その数字をもってどうのこうのということは難しいかもしれませんけれども、先ほど言いましたように、今度から税金を、皆さん公的資金を投入するわけですから、これまでとは違うような考え方を持っていただきたい。  昨年秋に銀行局長名事務連絡というものを、通達といいましょうか、そういうものを発送されているというふうに思いますけれども、銀行局長、あれを発送されて少しは効果があったというふうにお思いでしょうか、教えていただきたいと思います。
  8. 山口公生

    山口政府委員 国会内での厳しい御指摘もありましたので、昨年十月に事務連絡を発出させていただきました。  具体的な計数としては、銀行決算期を迎えておりませんのでまだ定かにはわかりませんが、各銀行とも現下の情勢を十分認識している、それに対して対応をしつつあるというふうに思っておりますし、また期待をしておるところでございます。
  9. 河井克行

    河井委員 本法案に載っかっておりますけれども、いわゆる審査委員会優先株等買い付け申請を行う際に、経営全般についての改善計画というものも同時に精緻な形で提出をしなくてはいけないというふうになっておりますけれども、当然役職員給与を含めたいわゆる人員削減、そして店舗整理を含めて総合的なリストラ、これもしっかりとその中に入っているというふうに理解しておりますけれども、それでよろしいでしょうか。お願いいたします。
  10. 山口公生

    山口政府委員 これは審査委員会基準を決め、また審査委員会健全化のための計画を求めますので、ケースケースでいろいろ違うこともあるかと思いますけれども、基本的には先生のおっしゃるような考え方が含まれることは大いにあるだろうというふうに私も考えるわけですが、最終的には審査委員会が決めます。
  11. 河井克行

    河井委員 どうかその点、なかなか人間、理屈ではわかっておりましても感情面でついていけないという部分も率直に言ってございますので、特に今厳しい日本経済状況でありますから、こういった点について、金融機関役職員給与、そして総合的リストラをしっかりと図っていっていただくことが、本法案が本当の意味で多くの国民から期待をされることの一つの証左になるのではないかな、そういうふうに思っております。  もう余り時間がないものですから、あと一点だけ中身について質問をさせていただきたいと思うのです。  審査委員会優先株等買い付け申請をすることについては条文でも随分詳しく説明をしてありますけれども、最終的に、幾ら遅くても西暦二〇〇一年の三月末ということですけれども、数年後、本法案によって日本経済が再び本当に強さと活力を取り戻し、金融不安も一掃された暁には、できるだけ早くこういった優先株等について処分をするべきだというふうな文言が入っております。  できるだけ早くということを考えましたところ、やはりこれは、先ほど言いましたように、資本主義原則からいいましても、国家資金がそういういわゆる民間金融機関に入るということは、ある意味、正常ではないというふうな状況だと思いますので、できるだけ早くということはわかるんですけれども、一方では、本当に金融不安をしっかり全部ぬぐい去った後そういったものを売却しなくてはいけない。それから納税者立場からいいますと、結果的に、買ったときよりもそれを売ったときの方が高いふうに売れたら、それだけ納税者の負担も軽減されるわけでありますので、審査委員会基準だというふうにまたおっしゃるかもしれませんけれども、その辺、処分あるいは売却についての見通し、そして基準等について少し教えていただければありがたいと思います。
  12. 山口公生

    山口政府委員 御指摘のように、審査委員会の方で最終的な審査がされるわけでございますけれども、売却についても審査委員会が決めることになります。  ただ、先生がおっしゃったように、基本的には資本主義経済でございますので、できるだけ早く処分をする。仮に値上がりしているというようなことになりますと、早く処分をするという方向になるのではないかというふうに思うわけでございます。
  13. 河井克行

    河井委員 残念ながら時間が参りましたので、これにて失礼をいたしたいと思います。どうもありがとうございました。しっかり頑張っていただきたいと思います。
  14. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、秋葉忠利君。
  15. 秋葉忠利

    秋葉委員 社会民主党の秋葉でございます。  金融システムへの信頼を取り戻すということが一つ目的ですけれども、金融システム全体への信頼を回復するためにも、やはり大蔵省自体信頼ということが非常に重要になってまいります。  最近も大きく報じられました道路公団における接待の問題、大蔵省のOBがかかわっているということ、その詳細が報道されておりますけれども、これについて三塚大蔵大臣の方では、接待疑惑解明のために徹底調査をする、そういう指示を出されたということで、そのことは大変歓迎をしたいと思いますが、実は社民党としては、こういった疑惑解明と、それから大蔵省だけではありませんけれども、こういった不祥事を根絶するための構造的ないろいろな問題提起をしてまいりましたが、その中で大蔵省に、やはり省内調査をすべきではないかという問題提起を何度もしてまいりました。  そのたびに私たちに戻ってきた答えというのは、省内調査をしても、それはうそを言われればということではないと思いますけれども、本人が何も話さなければ何も出てこないから、省内調査をしても意味がないということが基本的なお答えだったように思いますが、この際大蔵大臣のかけ声でその意味のない調査をされるということはどういう意味があるんでしょうか、伺いたいと思います。
  16. 武藤敏郎

    武藤政府委員 このたび、道路公団理事不祥事件に絡みまして大蔵大臣から、大蔵省としてもみずから調査を行って、その結果に基づいて、問題があれば厳正な処分を行うべしという御指示をいただきました。  委員指摘のとおり、任意調査でございますので限界がある。その信憑性、いわゆる裏をとるというのでしょうか、そういうことがなかなか難しいわけでございますので、自主的な申告を求めるという調査には限界があるということは従来から申し上げてまいりました。  しかしながら、現時点におきましては、この問題が捜査当局捜査の対象になっているというふうに私どもは理解をしております。このような状況のもとでありますので、任意調査という限界はやはりあるわけでございますけれども、できる限り精度の高い調査をいたしたい、このように考える次第でございます。
  17. 秋葉忠利

    秋葉委員 危機はチャンスですね。ピンチはチャンスという言葉がありますが、大蔵省でも、今回の問題は非常に深刻である、したがって、調査そのものは一〇〇%満足できないにしろ、何かをしなくてはいけないというふうに現状認識されたということは大変いいことだと思うのですが、それを今度は逆にチャンスにするためには、例えば、今おっしゃったような限界のある調査だけれどもやってみるということではなくて、改めて本当に信頼に足るような調査を行って、それをこれから官庁の中での綱紀粛正一つのモデルにする。そのことによって官庁体制そのものが、官僚不祥事ということがこれからなくなるというようなことになればこれはすばらしいことでして、例えば内部調査といっても、外部からの調査員によって、外部の目によって大蔵省内部調査をするということも可能だと思いますし、そこまでいかなくても、外からの調査方法の導入、いろいろな外からの視点ということを入れることは可能だと思います。その辺もぜひまた工夫をお願いしたいと思います。  それと同時に、例えば今の大蔵省の権威の失墜というのは非常に深刻だと思います。ただ単に悪いことをした人間がいるのかいないのかということを調べる程度では、私は信頼は回復できないんじゃないかと思います。  それで、昨夜のテレビを見ていましたら山日銀行局長が、接待の席には出ないけれども、出る場合には例えば割り勘にしているということをおっしゃっている。これはかなり前に委員会お答えになった、予算委員会だったと思いますが、お答えになった答えですけれども、大蔵省の中でも、一切の接待には応じない、お中元、お歳暮も全部返しているというような人が何人かいると思うのですが、例えばこういう形で仕事をやっている人もいるんだ、こういった接待問題についても官僚の範たる生き方をしてきた人がいるということを探し出して、そういった人たちが何人いるか天下に公表しても、それは信頼回復のための一つ方法じゃないかと思います。  一人もいなかったらそれは問題ですが、そういうふうに、これはある意味で悪い冗談になればいいんですが、そういうことさえ心配しなくてはいけないような状況に置かれているということをもう一度考えて、ぜひいろいろと知恵を絞って、今後の将来の指針たる調査をお願いしたいと思います。  二つ法案がありますけれども、法案中身に入る前に、不良債権全体のディスクロージャーについて一つ質問したいと思います。  ディスクロージャーについて非常におくれておりましたし、先日、自主査定の結果、大蔵省でまとめたものが公表されました。しかしながら、不良債権そのものの全体像について十分に公開されたという意識を持っている人はまだ少ないんじゃないかと思います。  その理由はいろいろあると思いますが、例えば公開基準のつくり方。アメリカ日本とを比較しますと、アメリカの場合には、SECがつくった基準によって各銀行自分たち不良債権の実態というものを報告している。日本の場合には、全銀協がつくった基準によって銀行不良債権報告をする。いわば自分たちでつくった基準報告をするというその前提のところ、姿勢そのものから、大前提のところがら甘さがある。そこがやはり大きいところではないかと思います。  当然、大蔵なりあるいはこれからできる金融監督庁金融庁が公的な意味を添えた基準をつくって、それに従って不良債権公開が行われる、開示が行われるということが必要だと思いますけれども、この点についてどうお考えになるか、大蔵考え方をお示しください。
  18. 山口公生

    山口政府委員 ディスクロージャーが大変大切だということは、ますますその重要性が高まっておることを認識いたしております。  全銀協で今統一開示基準の見直しをやってもらっております。これはSEC並みでやってくれということを昨年暮れ強く言いまして、それで対応してもらっておりますが、かなり実務に詳しく精通していないと基準がつくれないという面もありますので、そう対応しておるわけでございます。また、自主的にやっていくべきものという基本的な考え方があったためでもありますけれども。  ただ、今先生がおっしゃいますように、それを公的な形でやるというのも一つ考え方でございますけれども、日進月歩で、また市場のより高い評価を得られるためにディスクロージャーを進め、またそれを技術的な面でもプログラムの組み方にしても、かなり専門的、技術的な問題もクリアしながらやる、その兼ね合いをどうしていくかということは今後の検討課題でございますが、現実問題として、全銀協もこのディスクロージャー重要性を十分認識し、SEC並みで対応するという意思決定をしておりますので、当面、それを強く期待しておるわけでございます。
  19. 秋葉忠利

    秋葉委員 それはそれで努力をしてくれることはいいのですけれども、問題点認識が全然違うのですね。  要するに、全銀協当事者ですから、当事者としての努力はしなくちゃいけない。しかしながら、問題は、それでは国民に納得のいく十分な情報が得られなかったということが現実問題としてあるわけですから、それに対して、公的資金を導入するのであれば、これは政府の側できちんとした開示が行われるような措置をとらなくちゃいけない。それを保証しなくちゃいけないし、それに客観性を持たせるためには、当事者基準をつくるのではなくて、第三者がつくる。前にもここで申し上げましたけれども、要するに、コンフリクト・オブ・インタレストがあるわけですから、それを回避する形で基準をつくらないと意味がないということを申し上げているのです。  ここでももう一つ申し上げたいのですが、SEC基準に合わせてというのは、それはそれで進歩ですからいいのですけれども、これからグローバル化ということをおっしゃっているわけですがヘビッグバンということも出てきている。その中で、ただ単にアメリカに追随すれば、あるいはイギリスの金融システムに追随すればいいという時代ではなくて、ビッグバン目的というのは、例えば日本公開基準について世界デファクトスタンダードをつくって世界を引っ張るんだというようなところにならないと、本当にビッグバン意味がない。  ある意味で、我々が、日本としておくれているということは、そういったデファクトスタンダードを新たにつくって実行をして世界に模範を示すということのいいチャンスなわけですから、例えばそういった立場で新しい方向性をぜひ出していただきたい。それがなければ、本当にビッグバンということの意味は半分ぐらいなくなってしまうというふうに思うのですけれども、そういった点について、これからそのくらいの気持ちで頑張っていく意思がおありなのかどうか、伺いたいと思います。
  20. 山口公生

    山口政府委員 いろいろな意味で、我が国の金融機関、あるいは金融行政もそうでございますが、ややそのグローバルスタンダードから離れておくれておったという面も否定できないと思います。  今先生がおっしゃったような考え方気持ち、そういうことで、ビッグバンというものはそう一朝一夕に成るものではありませんけれども、積極的な形で取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  21. 秋葉忠利

    秋葉委員 時間が参りましたので、これで質問を終わります。どうもありがとうございました。
  22. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、中川正春君。
  23. 中川正春

    中川(正)委員 おはようございます。民友連中川正春です。  順次、質問に入らせていただきます。  予算委員会でも今回の金融政策についてはそれぞれの立場から議論が進んでおりますが、その論点というか共通した論旨というのは、一つは、政府政策の間違い、これがあったんだということを素直に認めて、政策転換をしていくんだという一つのメッセージというのを日本国内にしても世界に対してもはっきりと送るべきだということ。それからもう一つは、政策を小出しにするということがかえって状況を泥沼化してしまって、せっかくのツールそのものが有効に働かない、こういう状況を起こしているということ。そういうことを踏まえて、それこそ政策主体内閣あり方そのものも含めて、大転換をしていくべきだというのが世論の論調でありますし、我々の議論の争点なんだろうというふうに思います。  そんなことを踏まえて、私もこの国会が勝負だというふうに思っておりまして、それこそ国民の声を代表する形で、きょうも質問をさせていただきたいというふうに思っております。  まず、法案そのものの論議に入る前に、この法案を出すに至った背景とそれに対する現状認識説明がないことには、いわゆる公的資金を使わないとこれまで言明していた政府が百八十度議論転換して、しかもその保証額たるや、去年の暮れには私たちここで、例えば日銀特融の額なんというのは二兆円から三兆円、それで多過ぎるじゃないか、その日銀信用不安を起こすじゃないか、そういう議論をやっていたわけなのでありますが、それが突然、今回は三十兆円という、そういう額になって新しい政策としてあらわれてきた、こういうことであります。  これを国民立場から見ていると、何で急にそうなるんだ。正式な現在の経済状況認識というのがちゃんと説明されて、納得のいく根拠というのがないことには、税を使うという前提からいけば納得できないじゃないか、こういう観点が一つあります。  それからもう一つは、税を使うという意味は、その前提に、業界そのものがどれだけ自助努力をしてその成果を上げてきたか、それと同時に、指導官庁として大蔵省自体もそれに対してどのようなスタンスでかかわってきたかということ、これがやはりはっきりさせられなければならないということだと思うのです。  それから三つ目に、信頼性です。こうした、ここまで三十兆円という額を打ち出してくる、その政策主体大蔵省政府というのが国民に対して信頼があって初めて納得をしてもらえる、こういうことであろうかと思うのです。  この三点について、それぞれお聞きをしていきたいと思うのですが、まず一番目に、経済状況認識であります。  一遍、公式に、具体的にどういう根拠を持って今の経済を把握されておるのかということ、これをひとつ聞きたいのと、それから、その背景に、住専国会のときに、公的資金はいわゆる住専処理と信用組合の破綻処理以外には一切使っていきませんよ、こうして言明をしておったものが今回の前提で覆っているわけです。政策転換があるわけですね。これに対してはっきりとした説明あるいは責任のとり方、これが要るだろうと思うのですが、そこのところがら説明をしてください。
  24. 山口公生

    山口政府委員 広範な御指摘でございますが、まず、この法案を提案させていただいております背景等の御説明を申し上げたいと思います。  昨年の十一月ごろ、金融破綻、大型の破綻が相次ぎました。当時、株価につきましてもかなりの乱高下をしておりました。特に、特定の銀行がややねらい撃ちされたようなケースもございました。同時に、格付機関というものが格付を下げるあるいはウォッチングをするというようなことが報道されました。また報道機関におきましても、金融の危機というような報道が数多くなされました。その結果、三つぐらいの動きになったわけでございます。  一つは、ちょうど十一月のたしか二十日過ぎのころだと思いますが、特定の銀行の窓口に多くの預金者の方が並ばれました。これは風説あるいは風聞がもとではありましたけれども、特定の一行だけではありません、各地方銀行におきましても、そういうことが起きました。預金者の皆さんが非常に不安を持たれたということのあらわれだと思います。大蔵大臣日銀総裁共同で、預金は守るということを改めて言っていただいたのも、そういった時期でございました。  同時に、当時、コール市場、インターバンク市場での大変な逼塞感といいましょうか、資金の偏りといいましょうか、流れが悪くなりました。したがいまして、特定の銀行だけではございませんが、非常に資金が取りにくくなる。銀行は資金が取れませんと貸し付けができません。黒字倒産をしてしまうという恐怖感を非常に招くわけでございます。  もう一つありましたのは、海外での資金調達であります。外貨が取れなくなりそうになりました。これは期末越えの外貨を取ろうとしたときに、外国の銀行は、日本銀行はどうも韓国の銀行と同じように問題ではないかというふうに言われたわけでございます。どうも日本銀行に貸すには相当なジャパン・レート、ジャパン・プレミアム、当時一%まで上がりましたが、それをつけて、なおかつクレジットラインを切られるという緊迫した局面がありました。そうした動きが出てきたわけでございます。  そうした場合、金融の持つ特徴でございますが、大変不安感が醸成されました。プロの中までも不安感を醸成したわけでございます。その結果、非常に好ましくないことでありますが、貸し渋りあるいは回収現象というのも極端に起き出しました。いわゆる信用収縮でございます。また、こういった動きというものが、企業の倒産、かなり大手の商社の倒産にもつながりました。また、それが株価の下落にはね返りました。  金融界の問題が産業界の問題になり、産業界の問題がまた株価を下げ、株価を下げたことによってまた金融機関が含みがなくなり、また貸し渋りをする。悪い循環が始まりそうになりました。これは不安が不安を呼ぶという心理の問題が物すごく大きかったわけでございます。ちょっとくどくなって大変恐縮でございますが、そうした経済活動全体の収縮を招きかねない状況でございました。現在もそういった根はまだあるわけでございます。  しかも、次の三月期の末というのは、今度は本当にBIS基準あるいは四%の国内基準をクリアしなければいけないという大きな、試験でいうと入学試験みたいなものがあるわけでございます。  例えば国際的に活動している銀行が八%をクリアできませんと、それはそれでいいじゃないかということをおっしゃる方がいますが、海外から資金が取れません。そうしますと、本当に黒字倒産をしてしまうということになる。いや、海外から撤退すればいいじゃないかという方がいらっしゃいます。しかし、ある日突然やめましたということに変わりますと、日本から海外に出ていっている企業は資金がとまってしまいます。じゃ、ほかの銀行で肩がわりすればいいじゃないか。しかし、ほかの銀行もぎりぎりでクリアしょうとしている。資金の余裕はありません。そういった大変に逼迫した状況というのが可能性としてあるわけでございます。  そういった背景のもとで、やはり全般的に、危機管理といいましょうか、安心をしていただくための措置をぜひお願いしたい。それは預金者の保護でもあり、もう一方では、金融システムを守るという点でございます。今回いろいろ御議論をお願いしている法案の背景は、そういったものでございます。  ちょっと長くなって申しわけございません。
  25. 中川正春

    中川(正)委員 私はどうも残念でならないのでありますが、そうした現状のもう一つの背景として、不良債権の処理が進んできていなかった、それがのどにとげが刺さったように絶えずうごめいているということ。  そして、そのもう一つの背景として、今のいわゆる経済活動そのものの萎縮といいますか、これの認識ですね。いわゆる大本営政府発表では、絶えず、逆に何とか今の状況というのをそう悪い意味で解釈をしてはならじ、こういう気持ちがあふれる余り、現状を反映した形になっていない。それだけに政策としてそれが第一義に考えられてこなかった、それよりも国の借金が気になって財政政策の方に偏りが見られたということ、そういう二つの要因というのがあるわけですね。  それはどっちもやはり政策から端を発するところでありまして、その間違いが現状のような信用不安というふうなことにまで至ってきておるということ、これをみずからがしっかりと認識をするということからこの政策が始まってこないとだめなんだ、こういうふうに思うのです。  そこで、もう一つは自助努力の方なんでありますが、先ほどもちょっと話が出ましたが、国民としてはこの十年間低金利でずっと抑え込まれてきた。特に、その結果、生活弱者というか、金利をしっかりと当てにしなければならない年金生活者あるいはその他、恐らくはいろいろなNPOの団体で基金をもとにして活動をしていこうじゃないかという活発な社会活動の部分、これが非常に大きな閉塞感となってあらわれてきている。それは、結局は自分たちが当然得るべき利益というものが銀行に回っていって、銀行がその利益でそれこそ不良債権を償却をしてきたはずだ、こういうふうに思っているわけです。  ところが、今回発表されたものは、この二、三年と全く違うのです。この二、三年は三十八兆円から二十兆円台に来ました、現在は二十二兆円に来ていますよ、こういう発表をしていたものが、突然ここに来て、不良債権を見る基準が変わったから、結局のところ七十六兆円になるんですよということで、ぽんとはね上がってしまったわけです。しかも、前の基準でやっている部分も現在ではふえかけていますよ、減っているんじゃないですよというこの一、二年の現象が出てきているということであります。これは国民にとっては、それじゃ一体これまでの我々の犠牲は何だったんだ、こういう感情がわいてくるのは当然だと思うのです。ここが納得できないというのが、一つちまたで、我々が現実接したところで必ず出てくる議論であります。  それと同時に、この十年間、先ほども出ましたが、銀行自体の役員の給与や退職金は努力して一体どれだけ下がったのか、あるいは遊休資産の処分や店舗等々のリストラというのは一体どれだけ進んでいるのか、あるいは職員の給与レベルやいわゆる人員については国内の他産業やあるいは国際的な比較の中で今どういう位置になってきたのか、こういうのは当然監督官庁としてしっかり認識をしてつかんだ上で国民にやはり説明をする、そこが必要になってきているんだろうと思うのです。  どういう認識をお持ちですか。
  26. 山口公生

    山口政府委員 国民サイドからの御疑問ということで問題点を御提起されました。  一つ不良債権の問題でございます。低金利を続けているにもかかわらず、不良債権がまたふえたではないかという御指摘でございますけれども、一つ御理解賜りたいのは、不良債権ディスクロージャーというものにつきましてこれまでやってきておりますこと、また今後も続けますが、これは比較可能性の問題、比較できる数字を統一的な基準で出す、それで比較してもらうという意味でのディスクロージャーでございます。各銀行がそれをやるもの、それは一つ基準でもって破綻、延滞、金利減免ということで、統一的にやっております。  したがいまして、その基準でとっていきますと、当時三十八兆ぐらいあったものが今二十八兆ぐらいになっている。一方で、引き当てがどんどんまたふえて要処理が減っている。したがって、その同じ統計で見ると、不良債権の処理は進んできたということは申し上げたとおりでございます。ただ、今度の九月期においては横ばいないし微増になったということも御指摘のとおりでございます。しかし、その二十八兆、あるいはそのうち十四兆が引き当ててあるというような数字は、一つ基準でもって統一的に、またそれを時間的にずっとフォローしていくための数字でございまして、アメリカも基本的にはその考え方でやっております。  アメリカSECと今の日本基準の違いは何かといいますと、延滞のとり方が、六カ月延滞という税法上の基準に沿っているのが今の日本で、アメリカの場合は三カ月となっている。あるいは当時の、約定改定時の金利を公定歩合以下と日本はしていますが、アメリカの場合はもう条件を変更したら出すというふうに、そういう違いがあります。したがって、そのような違いがあるので、アメリカSEC並みにしたらふえるのではないかという議論があります。したがって、それは、今度の全銀協でそれを採用してもらうべく強く言っているということでございます。  一方で、もう一つ、私どもが今回の審議に供するために出しました自己査定の集計値というのは、今回初めて、早期是正措置を控えての各銀行の回収可能性から見た実質判断での数字でございます。一分類、これは健全で特段のリスク管理も必要としないもの、二分類は、個別のリスク管理をしなければならないもの、三分類は、これは回収に重大懸念があって将来取れなくなる可能性があるもの、四分類は、もうこれは回収ができないと思われるものというふうなジャンルで分けまして、各銀行が自主的にやっている分類で統計をとったわけでございます。  新聞の報道等によりますと、その二から四まで全部足すと七十六兆でこれは全部不良債権だ、こういうふうに決めつけておりますが、これは、そういう見方が完全に間違っていると私は言いませんけれども、二分類の中にも正常化するものもありますし、また回収が十分可能なものがいっぱい含まれております。しかし、先ほど申し上げた統一基準でのディスクロージャーでは全体がどうなっているかわからない、その基準に漏れるものがいっぱいあるではないかという御疑問がいろいろ出されておりました。それに対するお答えとして、全部の貸付債権及び保証債権を見たときに、その回収がどの程度可能かを分類して集計したらこうなりましたよということをお示ししたわけでございます。  では、過去はどうしてなかったかというと、そういう統計をつくっておりませんからないわけで、今回、自己査定をやっておりますので出しております。したがって、不良債権が二十八兆から七十六兆にふえたというのは、これは当たらないというふうに思います。  それで、もちろん最近は、特に不良債権の処理を各銀行は必死にやっております。必死にやっておる結果、自己資本が大分下がってきているというまた別の問題も出ておりますけれども、不良債権が多いということは格付機関の格付が悪いということにつながりますので、大変その辺は気にしてやっているということであるわけでございます。  それから、もちろんそれに伴い、リストラ等を十分やってもらう必要がある。先ほど御質問でもございましたけれども、我々もそれを要請しておりますし、各金融機関とも、それがどんどん迫られてきている時期だというふうに思うわけでございます。
  27. 中川正春

    中川(正)委員 国民税金を注入するという前提は、この辺の自助努力というのが果たされて納得ができることであります。これはいずれにしたって政府を通じて金を流すわけですから、その意味で、何らかの体制をつくりながらどのようにリストラがされていくのかという、そのフォローしていく組織なり体制というものをつくっていく必要があると思うのですが、それについてはどうお考えですか。
  28. 山口公生

    山口政府委員 リストラにつきましては、各金融機関がそれぞれの自己の状況のもとでできるだけのことをやるということだと思います。したがいまして、どういう努力をしたかということを各金融機関ができるだけ公表して、預金者あるいは国民皆さんにわかっていただくようにしてもらう必要があるだろうというふうに思います。そうした開示というものについて、私どもも強く促してまいりたいというふうに思っております。
  29. 中川正春

    中川(正)委員 結果としてお金を流すかどうかというのは、今回特別の委員会をつくって決めますよ、こういうことですよね。ところが、そこに采配を国民が任すという前提なんですが、その国民自体は、この自助努力が目に見えてやはり納得をするという状況なんですよね。だとすれば、何らかの形でここへ向いて、それがしつかりチェックができて公表がされるようなメカニズムをやはりつくるべきだというふうに思うのです。そういう観点でどうしていきますかということなんです。
  30. 山口公生

    山口政府委員 今回御審議を賜っております法律におきましても、資本注入をする場合には、各金融機関から経営に関する計画を出していただきまして、それを公表するという形の規定を設けさせていただいております。したがって、国民の皆様にも、それが目に見える形になるわけでございます。
  31. 中川正春

    中川(正)委員 言いかえれば、リストラ努力がなければ資金注入もしませんよ、こういうふうに解釈していいわけですね。
  32. 山口公生

    山口政府委員 七名の審査委員会委員全員が一致しなければいけません。その全員が、それぞれこの計画をよく見まして、それで計画を了としなければ議決に入れないということになっております。
  33. 中川正春

    中川(正)委員 大臣、どうですか。さっきは官僚としての答弁なんだろうと思うのですが、しかし、国民気持ちからいうと、ここのところが納得できないと、そんなに勝手に金を使ってもらったら困るわなということですよね。これは、それこそ政治が判断するところだと思うのです。そういう条件をつけられませんか、どうですか。
  34. 三塚博

    三塚国務大臣 段々の御質疑を聞いておりました。問題は、この事態をどう判断し、国家的な危機を回避して国民経済を安定せしめるかという、この現状認識の中でスタートを切っておりますことは御承知のとおりでございます。  政府とすれば、ここまで至りました経過に的確な分析をしていくことは当然であります。既に本会議におきましても総理から、その流れとして、アジア金融の危機的な不安定は、IMF、我が国のサポート等を加えまして今小康を得、この解決が前に進んでほしいということであります。それと、秋以降の大型破綻等が我が国経済に与えた重要な影響、これに対してどう対応するか。御質疑にもありましたとおりの認識を共有しながら、まず金融危機の回避のために全力を尽くさなければならない、こういうことの大前提がございます。  そういう中で、ただいま御指摘のように、公的資金が投入されることについて、その負担をどう考えるか、同時に、銀行に対する資本注入についてどう考えるか、この点であろうと思いますが、資本注入については、御案内のとおり、健全化計画を出させ、審査委員会が全員一致の前提のもとで可決決定をされた場合、そして閣議決定、こういう措置を講じておるわけでございます。そういう法制上の仕組みを、公的資金を使わさせていただくわけでございますから、国民各位の理解を得られますように取り進めるということでございまして、御懸念のようなことはないと考えております。
  35. 中川正春

    中川(正)委員 御懸念のようなことはないということは、十分に、いわゆる経営者の責任と銀行自体のリストラ責任、これを勘案して、その委員会が判断していきます、こういうことですね。
  36. 三塚博

    三塚国務大臣 全くそのとおりであります。健全化計画提出というのは、そういうことであります。
  37. 中川正春

    中川(正)委員 次に、今回のこの政策を打ち出してきた過程と、その政策主体に対する国民信頼政府に対する国民信頼、こういうところでありますが、これがないのだという事態ですね。  それは、一つには、先ほどから指摘の出ています大蔵省自体不祥事、OBも含めてさまざまな問題が今噴出してきております。それと同時に、今回の政策議論の背景にある、いわゆる自民党の部会で中心的な役割を担った元大蔵官僚の新井将敬さん自体が不当な利益を受けていたというようなことまでが出てきた。こういう状況の中で政策決定された今回のこの法案について、これからどうしていくかということも含めて、あるいは国民に対してどう信頼を得ていくかということについては、これはしっかりと腹をくくった体制をつくっていかないとだめなんだろうというふうに思うのです。そこについての認識と、現在いろいろ起こっている不祥事に対する対応、それから、これからの体制ですね、これを総合的に聞かしていただきたいというふうに思います。
  38. 三塚博

    三塚国務大臣 政治は信頼が基本であることは御指摘のとおりであります。ましてや、こういう深刻な危機的状況の中にありましては、絶えず理解を求めるアクションがなければございません。同時に、過去への反省も必要であります。こういう観点から、バブル発生と崩壊という事態に対する的確な認識、対応が不十分であったと私は分析をいたしております。  また、政策決定が不透明で、金融機関との癒着、護送船団方式であったのではないか、こういう御指摘に対しましても、十分反省をしながら対応していかなければなりませんし、私自身、護送船団からの決別が、金融行政大蔵の行政、政府の行政の基本的なポイントであると考えておるところであります。大蔵省としては、個別金融機関経営問題が発生した場合には、この金融政策経済政策の基本を守り、預金者の保護に万全を期すということは何回も申し上げてまいりました。システム全体に波及するということになりますと深刻な事態になりますから、この維持のために全力を尽くすことは当然であり、努めてまいったつもりであります。  以上のような反省に立ちながら、金融行政のあり方ということについては、ビッグバンの推進による透明性と信頼性の高い金融システムを構築しなければならぬという基本は毫も変えておりません。  同時に、御案内のとおり、御審議をいただきました金融監督庁、七月には正式スタートするものと存じます。検査・監督の機能、金融の機能がここに移管をされていくと思っておりますし、日本銀行法改正はまさに独立性の付与ということであったと思っております。  御指摘のとおり、ディスクローズは、情報開示は極めて重要な問題でございますから、そういう点で透明性の高い行政手法というのが望まれる。そのための最大の努力をいたしておりますし、早期是正措置もその前提として取り入れさせていただいたことは御承知のとおりであります。  以上のような視点を、認識をしっかりと踏まえながら、まずは預金者保護、そしてその大前提である金融システムの維持安定、内外信頼を得るということであれば、破綻していく金融機関は自助努力の足りないものはそういうことになっていくでしょうし、大前提をそこに置きながら、安定法の中にも厳しい審査段階を設け、健全計画提出という、項目はこれから法律が制定された後に選ばれた七人の委員がつくり上げていくということになるわけでありますが、基本はリストラであります。信頼される銀行経営の基本が明示をされる、そして明らかにそのことが国民間の御批判にこたえられ、理解が得られるものということになると思っております。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  39. 中川正春

    中川(正)委員 なべて言えば、すべての今の行政、これまでの大蔵省のあり方に対する国民の不信感というのは、実は三塚蔵相自体に対する信頼感がどれだけあるかということに凝縮されてきているのですよね。そこのところを、どうぞひとつ肝に銘じて対応されたいと思いますし、思い切った、言うべきことは言う、責任をとるところはとる、そういうスタンスに早く変わっていただきたい。心からお願いをする次第です。それがひいては日本というものの信頼に結びついてくるんだということ、ここを改めて指摘をさせていただきたいと思います。  以上、入り口議論ですが、これから中身の問題に入っていきます。  今回の法案のそのスキームを図式でいただいて、それでいろいろ勉強しながら整理をしてきたのですけれども、これは話を聞けば聞くほど、あるいはその中に入り込めば入り込むほど、結果的には、何だ、これは何でもありなんだなということで、整理ができないぐらいにいろんな話が錯綜をしているのが今回の法案のような気がいたします。  そこで、私なりにちょっとその話を整理させていただきたいというふうに思うのです。  どういうケースで、要は、こういう金融機関の処理をしていく過程の中で、公的資金を前提にした、公的資金というのは政府保証を前提にした資金で、いわゆる預金保護をどんな形でやっていくのかということが一つ。それからもう一つは、資本注入の方ですね。優先株をどのケースで買っていって、どのケースには買っていかないのかということを、私なりの区分の中で説明をしていただきたいというふうに思うのです。  大きく分けて二つケースがあるのですね。金融機関が債務超過になってしまって、その債務超過になってしまった金融機関の処理をしていくケース一つ。それからもう一つは、債務超過にはならないけれども、十分な信用が確保できない、そういう金融機関を処理していく場合。それからもう一つ、あえて言えば健全な金融機関。二通りと言いましたけれども、大きく分けてこの三通りあるわけであります。  最初に、債務超過になってしまった金融機関の処理のケースですが、これは大きく分けて二つに分かれます。これはいわゆる預金法に基づいたスキームでありますが、一つは完全に清算をしてしまうというケース、それからもう一つは健全な金融機関による吸収合併、こういうケースに分かれます。  その場合の、まずは清算業務の方でありますが、この清算業務をする場合に、今回前提としている資金はいわゆる不良債権の買い取り、これを通じて預金保護をしていく、こういうことに限られるという解釈でいいわけですか。
  40. 山口公生

    山口政府委員 債務超過に陥った金融機関の破綻処理につきまして、清算とおっしゃいましたが、これは受け皿銀行へ営業譲渡をやる場合も含まれているというふうに解釈してよろしゅうございますね。  そういうことで申し上げますと、預金保険から出ていく形は、ロスがありますとロスは穴埋めをします。それは贈与になります。それから、不良債権そのものを預保あるいは整理回収銀行が時価で買い取るという行為もやります。なぜならば、優良債権あるいは正常債権は受け皿銀行が引き継いでくれますが、不良債権は引き継いでもらえませんので、それは預金保険がファイナンスを受けた上で買い取るあるいは整理回収銀行がファイナンスを受けた上で買い取る。そのファイナンス資金として、今おっしゃった政府保証の資金が使われるということがあるということでございます。
  41. 中川正春

    中川(正)委員 言いかえれば、債務超過分と不良債権の買い取り、この二つにこの資金を使う、こういうことですね。  次に、いわゆる健全な金融機関による吸収合併の場合には、公的資金はどのように使われますか。
  42. 山口公生

    山口政府委員 合併の場合は債務超過ではないというケースに限られますから、それは商法上債務超過では合併というのはおよそ認められませんので、そうしますと、不良債権の買い取り、先ほど申し上げた二番目のケースだけになるというふうに思うわけでございます。
  43. 中川正春

    中川(正)委員 こういうケースが起きないと言われましたけれども、実際には、吸収合併の話をするときには、さっきの話、ディスクロージャーレベルでは債務超過になっていませんよ、こういう前提でいったのが、途中でふたをあけてみたら、これはもう完全に債務超過ですよというケースは出てきますよね。そういう可能性はありますよね。
  44. 山口公生

    山口政府委員 合併である場合におきましては、資産超過という前提でございます。債務超過でありますと破綻処理という形になりまして、資本金は全額債務処理に充てられ、なおかつロスがあればそれは預金保険がカバーする、こういうことです。
  45. 中川正春

    中川(正)委員 それじゃ、その場合の優先株の買い取りについてはどうなるのですか、資本注入の方は。いわゆる受け皿金融機関に対する資本注入は。
  46. 山口公生

    山口政府委員 破綻処理の場合の受け皿金融機関、例えば北拓の例で申し上げますと、北洋銀行が北海道の部分を引き継ぐことになると思いますけれども、そのときには、この資本注入を北洋銀行になすことができるという形をお願いしておりますが、これはあくまで、北洋銀行が手を挙げた場合でございますが、審査委員会審査して決める、こういうことでございます。
  47. 中川正春

    中川(正)委員 さっき、債務超過にはならないけれども十分な信用が確保できない金融機関の処理として、いわゆる健全な金融機関による吸収合併の話が出ましたが、その次には、いわゆる経営悪化金融機関同士の新設合併、これは前回の法案の改正のときに新設をされたスキームでありますが、この場合に不良債権の買い取りをしていきましょうと、これはあの法案のときの議論としてやりますよと、こういうことですよね。  もう一つ、資金援助と優先株の買い取りについては、このスキームではどういうふうに解釈するのですか。
  48. 山口公生

    山口政府委員 資金援助は起こり得ません。不良資産の買い取りというのが、その消滅する両方の銀行から起きます。ただ、時価での買い取りでございます。それで新しい銀行が発足する、そこが事業を引き継ぐ、こういう形になるわけでございます。
  49. 中川正春

    中川(正)委員 優先株の買い取りについてはどうですか。
  50. 山口公生

    山口政府委員 優先株の場合は、新しい金融機関がその危機対応時の一般金融機関となりますので、審査委員会が判断をするというものの対象になります。
  51. 中川正春

    中川(正)委員 もう一つ、吸収合併も新設合併もできないままに、そのままの形でずっと経営努力を重ねている銀行というのが存在するわけですね。これについてはどのように考えるのですか。これは優先株の買い取りで資本注入をすると考えるのですか。
  52. 山口公生

    山口政府委員 今先生の御指摘は、資金繰りに窮した金融機関経営を続けるという場合でございますか。  資金繰りに窮するとなかなか経営は続けられない場合が多いわけですけれども、辛うじて何らかの形で続けているという場合でございますが、それは破綻状況ではございませんので、預金保険の発動ということにはなりません。
  53. 中川正春

    中川(正)委員 もう一回確認しますが、預金保険の発動とはなり得ないけれども、ということは、特例業務勘定ではこれは救済しないけれども、こちらの金融危機管理勘定の方ではどうなんですか。
  54. 山口公生

    山口政府委員 法律をお読みいただきますと、経営が著しく悪化している金融機関以外の金融機関で、こう書いてありますので、そこは認定の問題になると思います。  今おっしゃったケースが、例えば債務超過に非常に近づいているというようなケースでありますと、およそそういったものの対象にはならないだろうというふうに思うわけでございます。
  55. 中川正春

    中川(正)委員 こうした金融機関以外に健全な金融機関があるわけですね。これに対しては、今回の法案はどのように解釈されますか。
  56. 山口公生

    山口政府委員 ずっと整理してお話しいただいておりますので、私どもも整理してお話ししなければいけないと思いますが、まず、預金保険の本来の預金者保護の方の発動はもちろんございません。それから資本注入の方の、二通りありますが、受け皿銀行になる場合は受け皿銀行、それから一般金融機関で危機対応の場合は、それは健全な金融機関であっても、そうした危機のときにそういった資本注入をすることがシステムの安定あるいは信用秩序の維持、あるいは今起きておりますようないろいろな貸し渋り等の経済的な危機に対応するという、いわゆるシステミックなリスクにそれが必要だという場合においては、それは対象になるということでございます。
  57. 中川正春

    中川(正)委員 そうすると、先ほど整理された答弁を拝見しまして、その中で幾つかの問題点指摘していきたいというふうに思うのです。  一つは、破綻銀行を解散させる場合というのは、これは預金保護、それを不良債権の買い取りという形でやって預金保護をしていきますよ、これははっきりと区別ができるわけですね。しかも経営責任も法に基づいて処理ができますし、ここについては私は問題がないというふうに思うのですね。  ところが、吸収合併の場合ですね。吸収合併でいきますと、不良債権と、それからこの不良債権の中にいわゆる株主の保護分、これが入ってくるわけですね。これは実際の北拓、北洋だとかあるいは京都共栄銀行と幸福銀行、これの営業譲渡なんかを見てみますと、株主の権利分も結局のところはこちらが負担をしながら保証をしていくというような形になっていくわけでありますが、いわゆる預金者保護プラス株主の保護、これについてはやはり問題があるわけです。預金保険の中で、いわゆる保険料として集めた制度でこれをやっていくということであればこれでいいのでしょう。しかし、公的資金が入るということになると、この株主保護というのは、これは目的に反するという区別をしていく必要があると思うのですが、これについてはどうですか。
  58. 山口公生

    山口政府委員 今おっしゃいましたような、合併に際しまして預金保険機構の資金援助が行われる場合におきましては、通常、破綻金融機関不良債権を買い取る形での資金援助が行われることとなることは、先ほど申し上げたとおりでございます。この買い取った不良資産に回収の過程で仮に二次損失が発生すれば、その分、預金保険機構または整理回収銀行に損失が生じる、その点の御指摘だと思います。もちろん一益になれば問題は全くないわけです。  こうした損失に対して全面的に公的資金をもって充てることは、やはり私どもも適当ではないというふうに考えられることから、今回の預金保険法の改正に際しましては、仮に今申し上げたこの二次的な損失が発生した場合でも、本来、株主が負担すべき分まで公的資金からその財源が賄われることがないように、規定の手当てをすることといたしております。それによりまして、破綻金融機関のいわゆるまだ残っている資本相当部分には公的資金を充てず、保険料にて手当てするという形をとるつもりでございます。
  59. 中川正春

    中川(正)委員 次に、資本注入の方でありますが、こうして見ていますと、この優先株の買い取りというのは、吸収合併のケース、それからさっき言われましたが新設合併のケースも該当する、それから健全な金融機関に対しても該当する、こういう答弁であったのですが、これは基準はどこに持っていくのですか。  というのは、いわゆる経営悪化した金融機関同士の合併といったって、新しくできてくる新設金融機関が、それこそここで言われるような健全な金融機関というような見方はだれもしないだろうと思うのですが、それに対しても優先株の買い取りばしますよと。これはそれこそこの金融の構造自体、いわゆる信用秩序を取り戻すためにやっていく施策というものと貸し渋りの施策というものが混同しながら両方の中で基準のないままで使われるという、いわば思いつき程度の施策で恐らくこれは出発したのだろう、だからこういった混乱が出てきているのだろうと思うのですが、そこの一ところをしっかり整理をしていく必要があるのじゃないかということが一つ。  それからもう一つは、健全な金融機関に対して優先株の買い取りをやっていきますよというさっきのお話ですが、その前提は危機対応ですよということですね。この危機対応の定義というのは何なのですか、実際は。例えば今の状況が危機的状況なのですか。ちまたで、東京三菱が手を挙げて私のところの分買ってくださいよ、こういう話が出ている、こういうことをとらえて、今の状況が危機的状況であるからそういう銀行に対しても注入しますよ、具体的にはそういうことなんですか。
  60. 山口公生

    山口政府委員 資本注入についての基準考え方のお尋ねがございましたけれども、法律でまず対象の前提を書いてございます。経営状況が著しく悪化している金融機関でないということが前提でありますので、その財務状況等でまず判断されるということでございます。それから状況についても規定がございまして、一言で言えば、システミックリスクを招くようなケースなどを想定している、そういう状況のもとだということでございます。  審査基準につきましては、破綻する蓋然性が高いと認められる場合であってはならないとか、あるいは取得した優先株などの処分が相当期間経過しても著しく困難であるというようなケースであってはならないというようなことを書き、それらを含めた基準審査委員会が決めます。できるだけ具体的に決めていただくということになろうかと思いますが、そこで、国会での御議論も踏まえながら、そういったものが決められると思います。  それで、今先生の御指摘につきましては、今が危機なのかという認識の問題とかかわってくると思います。  私が先ほどるる申し上げましたように、現在の金融を取り巻く状況はやや不安定であると認めざるを得ないと思います。それは、我が国のみならずアジアの経済全体のことを見渡してもそういうことでございますし、また三月の期越えの資金がなかなかまだ手当てが十分になされていないという話もあるような、非常にインターバンク等の取引にゆがみを生じる、あるいは逼塞感を生じがちな不安定性をまだ保っているというふうに思います。しかも、八%基準等あるいは四%基準等の存在によりまして、四%の方はかなり弾力的な扱いをしますけれども、八%は国際的な基準ですので動かせません。これがあるおかげで、今度は貸し渋りあるいは回収というような、産業界まで含めた経済全体のシステミックなリスクというものを引き起こしかねない、あるいは引き起こしつつあるという御指摘すらあるわけでございます。  そうしたときに、やはり信用秩序をまずしっかりしないと、あるいは金融システムが安定しないと、そういったものに対応できない。貸し渋りそのものというよりは、そういったことをやらないと、どんどん経済全体が悪い方向に行く、不安が不安を呼ぶ、あるいは信用の収縮が起きるという危険性を否定できないと思うわけでございます。そうしたことから、こういった手段を与えていただきたいということでございます。
  61. 中川正春

    中川(正)委員 これは大切なことなんですよね。現在の経済状況認識金融危機だというふうに定義をするのは、局長じゃないと思うんですよ。大臣なんだというふうに思うんですよね。大臣はその認識なんですかということが一つと、それからもう一つは、これは二〇〇一年までの時限立法になっていて、その時点で清算をしていく、こういうことでありますが、そのときに二次損失の処分の話が出てきます。この二次損失と、それから国債部分、それの整理というものが出てくるわけでありますが、これはどのような基準で国が負担をして持っていこうとするのかということと、それからもう一つは、その財源をどのように想定をしているのか、この三点、これは大臣から答弁をお願いします。
  62. 三塚博

    三塚国務大臣 第一点は、金融危機なのかどうか、こういうことでありますが、まさに深刻な状況にあることは間違いございません。実体経済が、よく言われますとおり、一千二百兆の預貯金を初めきちっとしたベースが出ておりますのにもかかわりませず、今日の不況、そして金融危機ということについての認識は、まさに深刻な状況でありますから、この危機は回避をしていかなければならない。橋本さんがいつも言われる日本発恐慌は起こさないというのは、国の政治として最大の基本であり、また大蔵省としても、金融危機というものを起こしてはならない、このことは国民経済に深刻な影響を与えるという観点でございます。  そういう点で、昨年の秋以降の複数の金融機関の破綻というものが、アジアの通貨不安とダブルになりまして、不安感を市場に与えたということは、ストレートに見ていかなければなりません。  さらに、消費が御案内のように停滞をしておる、反動減が依然として不安感の中で続いておるという分析もあろうと思うのでありますが、この不安感を何としても収束をして信頼に変えていかなければならないということでございます。  同時に、我が国の金融システムに対する内外信頼も揺らいでおるという指摘、この指摘を、そうではないという信頼に変えていかなければなりません。そのままにしておくことは、まさに実体経済に深く影響を及ぼすことになります。こういう認識のもとに、全力を尽くしていかなければなりません。  注入する三十兆の枠組みも、十兆は国債の交付でございますが、資金繰りはそれぞれが、預金者保護勘定のところで十兆、危機管理も十兆、こういうことでありますから、このことによりまして金融システムの安定維持、これに取り組むわけでございまして、優先株を購入いたしまして資本力増強に寄与する。そのことは、個別の銀行を救うことではなく、前段申し上げました、金融危機に対応して、これ以上の深刻な状態に歯どめをかげながら正常な姿を一日も早く取り戻す、ここに最大のポイントがあるということであります。
  63. 中川正春

    中川(正)委員 肝心のところが答えが全くなかったので、いつものことですが、残念です。  きょうちょっとここで観点が違うのは、危機対応。いわゆる金融危機という表現とシステミックリスクというのは、これは局長の方から、この金融危機の内容はシステミックリスクですよ、こういう話があったんですが、これはちょっと認識が違っているんだろうと思うんです。ここのところが、我々としても納得ができない部分であります。  それから、ちょっと時間がなくなってきましたので最後に申し上げたいんですが、自己資本比率を改善するということ、これは必要なことであります。だがしかし、やみくもにすぐに政府資金で資本を注入するということ以外に、基本的な政策としては、政策オプションというのはさまざまあるんだろうというふうに思うんです。それの最たるものが、株価ということを中心にしたいわゆる本来の経済運営、もっと言いかえれば、今までの財政再建ということを中心にした経済運営から経済の再建ということに主眼を置きかえて、それを、財政再建は棚上げにしても経済の再建をまず優先させていこう、減税も一年ということじゃなくて恒久減税に踏み切りていこう、その額も、国民が、じゃ、やろうかと納得できるぐらいのものにしていこうということ、こういうことも一つのオプションであります。  そういう議論が自民党の中からも今出てきておりますが、そうした積極的な話を私たちは野党としてずっとし続けてきた。それの結果が、前にもちょっと指摘したように、それこそ大蔵省の中の主計局の頑固さというのが日本の今の経済運営の中で大きく壁として立ちふさがっているということ、これも指摘をしておきたいと思うのです。  そんな中で、実は、この間予算委員会で自由党の鈴木淑夫委員からも指摘をされたことでありますが、私も手元にスミスバーニー証券の試算を持っておりまして、株価千円の変動で日本の主要十九行で大体どれくらいの自己資本が充実できるか、こういうことですね。千円変動すると二・三兆円の効果がある、こういうことなのですよね。こういうことを前提にしていって一覧表を見ていきますと、株価が大体一万五千円を境にして、それより下がるとほとんどの銀行が含み益がマイナスに転じてくる、いわゆるターニングポイントになってきている、これがよく指摘されることであります。  そんなことから考えてくると、今回の措置というのは、いわゆる政府の株価に対するPKOも、一万五千円台を割り込んでいく可能性がある。いわゆるPKOも限界に来ておってこれも効き目がない。それこそ一万五千円台も割り込んでいく可能性があるから、ここで公的資金を注入しなければ全体の銀行としても再生の道がつかめないという、そんなメッセージを市場に流しているのだということにも解釈ができるわけであります。それだけに非常に危険なのですよ。  そうした意味から、本来の株価対策というのは、さっき言いましたような政策転換と、その政策転換のもう一つ背景として、内閣が交代をしていく、そこで責任も、そして新しい、いわばこれからの政策というものもはっきりさせていく、そこまで私たちは真剣に今の事態というのをとらえていかなければならないということだと思うのです。  そういうことを踏まえて、時間が来ておりますので、これからの議論を深めていきたいというふうに思っております。ありがとうございました。
  64. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 次に、赤松正雄君。
  65. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 おはようございます。新党平和の赤松正雄でございます。  まず冒頭に、大蔵大臣に政治姿勢という観点からひとつお聞きをしたいと思います。  この国会、本会議また予算委員会と補正予算をめぐる論議が展開をしているわけですけれども、そこにおける論議を聞きながら、私は強く感じることがございます。それは、私、国会議員になった時点で先輩から言われたことは、要するに、野党の質問の基本というのは、政府が過去に発言をしてきた議事録というものを点検をして、その中から、その当時の発言と今現在やっていること、言っていることとの違いを際立たせること、そこから政府の姿勢を追及する野党の質問のありようというものが生まれてくるのだ、こういうことを先輩から教えられたわけであります。  そういう観点に立ちますと、この国会は絵にかいたような、はっきりと過去の政府の発言と現在やろうとしていることの食い違いというものが明々白々にわかる国会であります。そういう観点から、本会議におきましても、あるいは予算委員会におきましても、私たちの同僚、仲間たち質問をしているわけです。  例えば、きのうも平和・改革の西川知雄議員が、主に経済企画庁長官、総理大臣を相手に、減税をやるやらない、やらないと言ったのをやるというふうな議事録を通しての質問をしておりました。また、公的資金導入というものを、住専国会のときにやらないと言っていたのを今やるようになっている。  こういうふうな実例、まさに一昨年の住専国会から昨年の財政構造改革法案国会といいますか、これに至る流れの中で、今申し上げたような、政府の言っていたことと今やろうとしていることが違っているという指摘。この指摘に対して、なかなか言を左右にしてまじめにきちっと認めようとされない。この現実は非常に国民に対する政治不信というものを増長させる、私はこういうふうに思います。  総理は、今日変えるに至った背景としておっしゃっていることは、要するにバンクーバーやクアラルンプールに行って、国際会議における現状、各国からの現況を聞いて非常に厳しいものを感じたということを再三再四おっしゃっているようであります。それは裏返せば、今も同僚議員からお話がありましたけれども、今日までの国会の中で、我々野党の側、主に新進党がいろいろな角度から追及してきた、指摘をしてきた、提案をしてきた、こういうことに対して一顧だにしないで、要するにそういう外国の状況、外圧を受けて方向転換をする、こういったことでは際立って国会軽視である。  今回非常に特徴的なのは、ともかく一日も早くこの法案を通してほしいということを、総理も大蔵大臣も、先ほど自民党の質問の方も言っておられましたけれども、即採決というやじも飛んだぐらいでありますけれども、私はそうじゃない。この問題をめぐって、一体どこに原因があったのか、なぜこういう事態を招いたのかということについて、しっかりとこの国会議論をしていくということがやはり大事だろうと思います。  まず冒頭、今申し上げたようなことにつきまして、大蔵大臣から大所高所に立った御意見を聞かせていただきたい、そんなふうに思います。
  66. 三塚博

    三塚国務大臣 御指摘は、予算委員会でも、ただいま赤松委員からも、政治運営の基本、議会政治のあり方という哲学の中での御開陳、このことについては承っておきます。今後の活動にそのことが展開されますようにと存じます。  問題は、完全に食い違ってきておるのではないか、こういうことでありますが、国の政治の原点は何か、議会政治の原点は何かという基本論からいいますと、国家が危機に瀕するという深刻な状況になりました場合には、その危機を回避するためにありとあらゆる選択肢を駆使いたしまして、安定への方途を確立をしなければならぬという基本論は、赤松委員も御理解いただけると思います。  そういう中で、減税についてのしない、するの二兆円の御指摘公的資金投入しないということに対する今日の公的資金の投入、この言やいかにと。この言の点について申し上げますと、前段の基本に返らざるを得ないわけであります。政治が放置をしたということで国民経済に大混乱をもたらすことは絶対に回避をしなければなりません。それと同時に、その時点における基本をどうするか。政策転換かという御指摘もございます。政策転換は、まさに原点においての危機管理という観点でそれをどう受けとめるか。政治の原点ですから、その点はしっかり踏まえてやるということでなければなりません。  しかし、財政構造改革という基本論は、あれだけの長期の御論議をいただいて御確定をいただきました。法律に従って忠実にこれを取り進めるというのも政府に課せられた義務になるわけでありますから、その点について、その基本をしっかりと踏まえ、しかしながら危機管理でございますから、整合性と選択肢はありとあらゆるものを取り込んで、解決に貢献をせしめなければならない。  こういう意味で、御指摘がありました一日でも早くこの緊急対策を成立させていただきますことが、この深刻な状態に打開の道を与え、御安心をいただける状態になるのではないか、こういうことであります。
  67. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 危機管理あるいはこの深刻な状態を一日も早く脱するために法案成立を、こういう言葉だけを聞いていますと、国民皆さんは錯覚をするというか、そういう感じになるわけですけれども、やはりここで、危機管理をどうしていくかということについて、正確な現状認識というものが大事になってくるだろうと思います。  そこでまず冒頭、私は、政府経済に対する基本的な考え方を示す一つの基本としての経済白書ということについてちょっと取り上げてみたいと思います。  九七年の経済白書、ここでは、景気、金融に対する極めて楽観的な見方が際立っていた内容であったと思います。例えばこういう記述があります。「日本経済が思い切った改革に踏み切ることのできる体力がついてきた今こそ、積極的に構造改革を進め、自由で透明な市場を創出し、発展基盤の再構築を行うときであります。」あるいは「日本経済は自律回復過程への移行を完了しつつある。」また「景気回復の連鎖メカニズムが動き出していると考えられることから、これらの影響も景気回復を逆回転させるような力はなく、その一巡後は日本経済は再び自律回復テンポを取り戻すものと期待される。鈍い動きを続けていた金融・資本市場の諸指標も、このところ好転が目立つようになった。」こうあります。  どうしてこの見通しが狂ったのか。大臣、お聞かせ願いたいと思います。
  68. 古川彰

    ○古川説明員 経済白書の、この夏に発表いたしましたものの記述、御指摘のとおりでございます。  その後、私どもの経済、景気判断につきましても、情勢に応じまして厳しくしてまいったわけでございますが、やはりそこで二つ大きな問題、私どもちょっと過小評価したということがございます。  一つは、消費税率の引き上げ前の駆け込み需要及びその反動減というものにつきまして、その当時の四−六月期ぐらいまでである程度一巡するというふうに考えておりましたのが、その見通しが、駆け込み需要も反動減もより大きなものであったということでございます。  それから第二点につきましては、金融システムのバブルの後遺症としての不良債権問題、それに伴います金融機関の貸し出し態度の厳しさといったことにつきまして、やはり若干評価が足りなかったということで考えております。
  69. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 大臣にお答え願う前に、要するに消費税の駆け込み需要あるいはまたさまざまな点で見通しを誤ったということを今おっしゃったのだろうと思うのですけれども、やはり景気の回復力が十分ではない。確かに若干の上向き状況にあったのだろうと思いますけれども、まだまだ弱くて、バブルの後遺症が十分に回復し切っていないという状況の中で、私はフォーシーズン・フォーデフレセットというふうな言い方をしたいと思っているのですが、要するに春に消費税の引き上げ、夏に特別減税のいわゆる打ち切り、そして秋に医療費などの負担増、そして冬には財政構造改革法による公共事業減というものの追い打ち、この春夏秋冬、御丁寧に四回にもわたってこういうデフレ政策を打ったということが、やはり景気が後退局面に入っていかざるを得ないそういう大きな原因をつくったのだろう、こんなふうに思います。  まさに誤れる経済見通し、そうした認識の上に立っての政策展開というものが今日のこういう事態を招いた、このことを認めるということが率直に言って国民信頼をかち取る第一歩だ、こんなふうに思います。大臣、お願いします。
  70. 三塚博

    三塚国務大臣 今日の世界経済、アジアの金融・通貨不安等、我が国も含めてでございますが、情報化時代、一瞬にして世界状況が知らされます。それだけに、一日一日、一刻一刻、緊張した構えの中で経済運営というものがなされていかなければならぬということであろうと深く認識をいたしておるところであります。  委員指摘のように、春夏秋におけるお話がございました。九年度政府見通しは一・九と御案内のとおり明示をしながら、そのための努力が、経済高コスト構造改革を初め、体力のあるうちに財政構造改革の基本的な仕組みをつくり実行に入ろう、少子・高齢化時代を迎えて福祉国家としての実現を期するためにはと、こんなこともあり、ビッグバンもそうでございました。そういう中で、アジア金融、また我が国の金融機関の破綻等がございまして、消費者、企業の先行き不安感、これに加えてマインドが働いたことも事実でございます。  こういう経済分析の中で、やはりこの循環を断ち切って不安感を何としても解消しなければならないということで、考えられる選択肢を実は橋本さんもやり出したし、私自身、このアジア通貨不安の夏ごろから大蔵の幹部諸君に、危機管理という基本的な論点に立ってありとあらゆる選択肢を準備しろ、こう命じてきたところでございます。  やり得るものは、会計基準の変更等も含めてやらさせていただいておりますし、それと橋本首相イニシアによる辞別減税、各界の御要望にありましたことについて断行する。私もそれは緊急的な措置として必要であるということで、仕組みをつくり、万全の態勢をとらさせていただいたというところでございます。  どうぞ、この危機を回避するために格段の御審議の中で御理解を賜りますよう心から願うものであります。
  71. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 私が先ほど指摘した点に加えて、より根本的な問題として、私は、バブルの崩壊に対する政府認識の誤りというものがいまだに尾を引いているんだというふうなことを強く感じます。非常に大局的なお話になって恐縮ですけれども、ただ、非常に重要なポイントだと思うので申し述べるわけでございます。  かつて、宮崎義一現京都大学名誉教授がその著「複合不況」の中で、これは一九九二年に発行された本でありまずけれども、  今回の不況は、新しいタイプの不況であって、  まず金融の自由化の帰結(バブルの崩壊)とし  て金融資産一ストック)の調整過程が先行し、  それによって実質GNP(フロー)のマイナス  成長が誘発されたものであって、在来型の有効  需要不足による在庫調整であるばかりでなく、  それに先だって金融の自由化によってもたらさ  れたバブル崩壊の結果、不良金融資産の調整過  程が進行し、クレジット・クランチを発生させ、  やがて在庫調整と重なりあい連動する複合不況  であると認識してきたこういう指摘をした。  これは有名な指摘でありますけれども、実はこの宮崎教授の主張を受けて、その主張を認めようとしない政府に対して、さまざまな場面で私なんかの先輩、衆議院では市川雄一、参議院では鶴岡洋といった先輩が国会の場面で政府認識の変更を迫りました。結局一年半ぐらいたった末、九三年十一月になって当時の宮澤首相が、ついに当面の不況について、従来景気循環に加えて金融、証券面での要素が入っていることが事態を複雑にしており複合不況と呼ぶに値すると思う、こういうふうに初めて当時の宮澤総理が複合不況というものの位置づけを認めたという経緯があるわけでございます。  要約すると、日本政府のいわば皮相な状況認識というものが今回の不況の性格を見えにくくしてしまった、公共投資をつぎ込むということによっては解決し得ない新しいタイプの不況、殊にこの金融の問題というものに一体どう対応するのか、こういう指摘を私たちの先輩がやり続けてきて五年たったわけですけれども、事態はよくなるどころか、金融危機というのはより一層ひどくなって、非常に悲惨な状態に、先ほど来大蔵大臣がしきりにおっしゃっているような危機管理という言葉が出てくるように、今非常に重要な場面に直面してしまっている。  それで、根本のところは、先ほど来私が申し上げていますように、複合不況の源であるいわば金融機関の責任、そして金融当局の政治的ミスリードというものをあいまいにしてきたことにある。そういうことをあいまいにしたままでいて、事態が大変だからこのつくった法的枠組みを早く通してくれ、そうすればよくなるんだということを幾ら言われても、国民は理解できない。もともとのそれを発信する本体そのものが非常に経済状況認識を誤ってきたし、そして、それに対する対応というものをしていないということが言えるんじゃないかというふうに思うわけです。  その辺について、今宮崎義一さんの「複合不況」の話をしましたけれども、それ以降約五年たっての今日までの流れ、その辺の認識を聞かせていただきたいと思います。
  72. 三塚博

    三塚国務大臣 ただいまの御懸念、また問題指摘、私はそれを間違っているなどと言うつもりは全くありません。政策はやはり検証を絶えず行いながら前進をしていかなければなりません。そういう点で、バブルの後遺症の深刻な問題提起というものにつきましては、当時決して厳格にそれを行ってきたとは私も思いません。バブルの発生、崩壊、対応が不十分であったなと、これは就任以来そう感じておるところであります。  また、金融機関及び金融当局の対応についての御指摘がございました。この行政のあり方につきましても、金融機関のとってまいりました金融融資態度というものも銀行としての基本を踏み外したものが見られたことは事実でございます。  そういう中で、今後は、企画立案と検査・監督を分離いたしましてスタートを切るという金融監督庁法をお通しいただき、最後の準備を進め、完璧なものとして取り進めなければならぬということになっておりますし、日本銀行法の改正も、まさに日銀が本来の独立した機関としての政策遂行ができるようにせしめなければならぬということでございまして、今後とも、金融政策に当たりましては、信認を得るための諸政策、情報開示、大事であります。また自助努力、まさに企業の根幹であります。そういうリストラを断行することによりまして信認を得ていかなければならぬ事態に来ておると思います。  反省を深め、その反省の中から出た教訓を大事に今後も政策の中で生かしていかなければならないと思っています。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  73. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 反省をこれからの政策の中に生かすというお言葉はいいんですけれども、若干さらに追加的に申し上げます。  例えば、一つは九七年の経済白書。こだわりまずけれども、これはお答えいただかなくてもいいんですけれども、九七年経済白書の中にも、やはり依然として在庫調整の要因だけで九〇年代の景気動向を考えていこう、こういう記述なわけです。つまり、先ほど来申し上げているような、五年前に宮澤総理が認められた複合不況からくるところの景気判断というものが経済白書にあらわれていないということは、やはり政府認識というものが非常に甘いということが言えると思います。  それからもう一つは、今大蔵大臣、反省の上に立ってとおっしゃいましたが、反省にもいろいろありますから、どういう反省かということが問題なわけですけれども、例えば今回の財政演説、本会議で総理と一緒になさった財政演説の中で、私はやはり余り信用できないなと思う記述があります。  それは、「最近の経済金融情勢を概観しますと、家計や企業の先行きに対する信頼感の低下等から、景気は足踏み状態となっております。」こういう記述があります。「家計や企業の先行きに対する信頼感の低下」、これ、すっと読んだらすっと読める記述なんですけれども、これは実は経済白書にも共通しているんですけれども、一貫しているのは、家計や企業云々ということばかり出てくるわけです。  そこには一その複合不況の最大の原因になっている金融機関のとった行動、あるいはまたそれをリードしていく金融担当当局の政策のありようというものに対する反省というものが見られない。もちろん、それは言外にあるんだとおっしゃるかもしれませんけれども、我々から見れば、そういう今回の事態をもたらした責任のある金融機関に対するとらえ方というものがやはりあいまいだ。そういうことが根本にある。  つまり、宮崎理論、これがすべてだとは言いませんけれども、複合不況という現在の経済状況に対するとらえ方、学問的なとらえ方で一応一番私は基本的にきちっとしたとらえ方だと思います。これに立ては、企業や家計の責任、企業や家計の先行きに対する云々ということではなくて、やはりすべての政策の基本に金融機関の責任というものをきちっとしていくということが大事じゃないか、そういうふうに思います。  そういう観点から今回の法案を見ますと、あたかも責任の追及が終わったかのように、預金保険機構拡大の陰で大蔵省の権限を拡大しようとする雰囲気が見られます。まさに大蔵改革の歯車を逆転するような、そういうものが入っている。あるいはまた、不良銀行の救済に政府が金を出すというのはビッグバンの精神に反するし、また先ほど来、また先日来話がというよりも、もうずっと出ている護送船団方式そのものじゃないのかという批判を惹起する、引き起こすということにつながってくるわけであります。つまりそういった意味で、基本的な政府の姿勢に大きな問題がある。  こういうことについて改めて御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  74. 三塚博

    三塚国務大臣 経済白書との関連の中で、財政演説の私の部分を引用されましての御指摘でございます。  総括的に申し上げたつもりであります。やはり消費が経済の根幹でありますことにかんがみ、消費は御家庭と、こうなります。そして企業と。この動向が国の経済方向を決めていくという前提がここにあるわけであります。そういう意味で、家計や企業国民全般と、こういうことになるわけでございますが、先行きに対する不安感、不透明感というものが今日の渋滞、混迷をもたらしておるという認識の中で、家計や企業経済の先行き、公経済、私経済が中心でありますが、両々相まっていくという認識もここに持っておるつもりであります。  「信頼感の低下」という言葉の中に、私ども政府も含めまして、この信頼感を回復をしなければならぬ、こういう視点でありましたことについて御理解を得たいと思いますし、そのことがありまして、昨年の補正予算の編成に当たりましても、また税制の改革、改善にありましても、所要の措置をとらさせていただいたところであります。
  75. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 先ほど来申し上げた点にもう一つ加えて、私は基本的な問題点指摘したいと思います。  先ほど冒頭でも言いましたが、政策運営を誤った理由を野党の側から指摘されて、総理は、アジアの通貨危機のいわば際どさ、危うさというものを予測し得なかったということを再三再四述べておられますけれども、私は、この点は、今後の日本金融経済というものを考えるときに、非常に根本的な問題点を浮き彫りにしていると思います。  それは、世界資本主義市場経済の質的変化、これは今さまざまな論壇で各方面から指摘されていることですけれども、実需、実物、実体からかけ離れてマネーが動いて、それに伴って利潤が発生するという、いわば今までと違った種類の市場経済の台頭ということが世界経済の新しい動きということだと思います。これはいわばカジノ資本主義という言葉で呼ばれたり、あるいはまた最近ではむき出しの資本主義、また荒々しい投機的資本主義。それに続けて言えば、今言われているグローバルスタンダードというのは、グローバルと言うからわかりづらいのであって、アメリカンスタンダードだ。こういう言葉で代表されるような、いわば全く新しい世界資本主義市場経済の展開、こういうものが今ある。  その中で、日本は一体どうやって生きていくんだ。日本はこういう部分に非常に弱いということが私は指摘できると思うのです。先ほども山日銀行局長がそういった趣旨のことをおっしゃっておりましたけれども、そういう非常に弱い分野でこれから日本は戦っていかなくちゃいけない。  そういうときに、この法案中身をめぐって首相や大蔵大臣は今日まで、いわば個別の銀行を救って護送船団方式ではないのかという質問に対して、そうじゃない、個別の銀行を救うのじゃなくて金融システムそのものを守るんだ、こういうふうに言っておられるわけですけれども、私は、果たしてそんなにねらいどおりにうまくいくのかな、こういうふうに強く思うわけでございます。  今や日本は一国経済から世界経済——一国平和主義から世界平和主義ということがようやく人口に膳表してきたといいますか、あのPKO国会から今日に至るまでの流れの中で、一国平和主義じゃなくて世界平和主義なんだということが世の中に定着してきましたけれども、経済の分野でいえば一国経済主義から世界経済主義といいますか、そういうふうな観点でとらえなければ、今までどおりの日本のやり方じゃだめだということがはっきりしてきている。そういう状況の中で、私は、今回の法案、非常にやはり心配な部分が多い、こんなふうに指摘をさせていただきたい。  これに対してもう一遍お答えを願いたいと思います。
  76. 山口公生

    山口政府委員 大臣の御答弁の前にちょっと申し上げたいと思いますが、今先生の御指摘になった点は大変重要な点だと私どもも思います。  市場というものがこれから大きな力を持ってまいります。その市場に任せるのを基本にするという考え方は今後も続くと思います。それで、市場が最適の選択をするという考え方で世の中は大体動いていくと思いますが、しかし完璧ではないわけでございます。  先ほど、市場のやや暴力的な動き、むき出しの、荒々しいという御表現をされました。そういったようなものも頻繁にあらわれできます。それをうまくこなしてすぐ修復できれば市場市場として機能します、最適な資源配分が可能となります。しかし、昨年の十一月から引き続いています金融不安におきましては、例えばマネーマーケットですくみ現象が起きている、こう言われております。国際市場でもそうです。市場というものは、正常に働けば、合理的かつ一人一人が自己責任で正常な判断をすれば最適な解決をもたらすものというのが原則なんです。しかし、現実問題は先生がおっしゃったとおりいろいろなケースが出てまいります。それに的確に対応するには何か力をかしてあげなきゃいけない場合もあるわけでございます。  それで、今回法案をお願いしておりますのは、そういった観点からの危機対応ということでございまして、そういった問題を絶えず我が国は、これからいつも、市場を基礎としながらも、また市場で解決できないものをどうやってカバーしていくかというところを絶えず悩みつつ、また、それを克服していかなければ我が国自体が本当の市場経済にうまくマッチできない。私どもの気持ちの中にも、市場というものに対する理解というのが十分であるかどうかというのは私自身も含めてあります。そういったものをどんどん学んでいく時期がこれからは続いていくということは、先生のおっしゃるとおりだと私は思います。
  77. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 大臣に最後にお答えいただく前に、今そういった非常に厳しい経済金融状況の中で、あろうことか、元大蔵官僚のまさに非常に重要な元金融検査部長という立場にあった方が、本当に、まさに言うも恥ずかしい、聞くも恥ずかしい、情けない事件を起こされた。このことについて私は、単純に、特殊な一人の人間の許されざる行為であったということでは済まされない問題だろうと思います。この法案、一日も早く通せというお言葉もいいのですけれども、いいというか、そういうお気持ちはわかりますけれども、同時に、こういった問題、事件というものを一日も早く、いっときも早くこういったものを起こさない体質に大蔵省を変えていただきたい。  こういう問題について最後にお伺いして、終わりたいと思います。
  78. 三塚博

    三塚国務大臣 もう御指摘のとおり、全く同感であります。  特に、公団理事とはいえ、銀行検査部部長を経験をいたしたというこの重さがございます。一人のそういう違法行為をもって我関せずということであってはなりません。全体として深い反省の中で真剣に取り組まなければならない。綱紀保持の原点であります。八年の十二月、接待受けない、ありとあらゆる詳細に書いた倫理規程を作成、それを全職員に徹底をしておるところではございますが、昨今の大蔵省に対する厳しい批判というのはまともに受けながら、そういう中において多くの職員は頑張り抜いておるわけでございます。そのことの頑張りが正しかったと、信任に続くということになりますように点検を厳しく行いながら、また、全体の状況が報道で先行しておりますけれども、こういう問題についても、できる限りの調査を進めることによりまして信頼回復の一助に、まずやり得るところがらスタートを切らなければなりませんし、大蔵省として今後どういうさらなる手だてがあるか等も含め、真剣に対応をし、てまいりたい、こう思っております。
  79. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 終わります。
  80. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、西田猛君。
  81. 西田猛

    ○西田(猛)委員 自由党の西田猛でございます。  今回の金融システム対策について御質問を申し上げたいと思います。  今回の金融システム対策、非常に重要なことでございます。日本経済の、あるいは世界経済のと言っても過言ではない我が国の金融システム、これは根本であり、大動脈でございます。それが今危機に瀕しているということに対して、早急に対策をとっていかなければならないわけでございます。  今回の金融システム対策については、二つに分けて考える必要があるのではないかというふうに私は考えます。  まず、預金保険法の一部を改正する法律案によるところのシステム、それから金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案、今後金融機能安定化新法とでも呼びますけれども、それによるところのシステムというものの二つでございます。  まず、十兆円の政府保証つき借入枠と七兆円の交付国債、合計十七兆円で預金保険機構の特別勘定を拡大して、保険料だけでは増加する破綻金融機関預金を全額保証できなくなる場合に備えようという、これ自体は、これは例えば破綻金融機関経営責任の追及と買い取り不良債権の回収強化を伴っている限りにおいては、私どもも是認することができるわけであります。また、むしろ遅きに失した公的資金投入の枠組みづくりではないかなというふうに考えているわけであります。  と申しますのは、私どもは新進党の時代から、この我が国の金融システムの不安状況、それから日本が直面している大きな不況対策のためにバブル期の不良債権を払拭しなければいけない、そのために必要とあらば、そして必要な限りにおいて公的な資金も導入するべきではないかということをつとに主張してきたところでございます。今もその主張に変わりはございません。  しかしながら、橋本内閣は常々、かって預金者というものを持たない住専に対して公的な資金を導入して国民の大きな批判を得たという観点から、公的資金の導入については非常に否定的でありました。そして、信用組合以外には公的資金を導入しなくても預金を全額保護できると豪語してきた経緯もあるわけであります。  それについての今日の政策の変更と申しましょうか、政策の変更ではないというふうに強弁されるのかもしれませんけれども、例えば平成八年六月七日の衆議院本会議で、橋本総理大臣はこうおっしゃっておられるわけです。「今後の金融機関の破綻を現時点で予想することは困難でありますが、特別保険料の徴収及びその三年後の適切な見直し等にかんがみれば、仮に財政支出が必要となる場合でも多額にはならないのではないかと考えている」ということであります。  三十兆円という金額、これはいわゆる新法の部分とそれから預金保険法の部分と合わせてでありますけれども、その三十兆円というものが多額であるのかどうかということについては議論があるかもしれません。  まず大蔵省にお聞きしたいのですけれども、なぜ三十兆円なのか、その根拠をお聞かせ願いたいと思います。
  82. 三塚博

    三塚国務大臣 国家の危機回避、その原点に今回の場合は金融の深刻な状況展開があります、こういうことであろうと思います。  簡明に申し上げますと、この三十兆円の枠組みは、国民の不安感を払拭をするということにまずあります。安心をいただくということでありまして、十兆円の国債を、預金保険機構を改正強化することによってそこに二つの特別勘定を設けて、御安心をいただこう。このことが市場に対する内外の信認につながる。当然、不安感の中には企業皆さんの不透明感からくる不安感もあるわけでございますから、国民経済によき影響を与えてこの危機を脱出いたしたいということで、まず国債を十兆円といたしたところでございます。  そして、それぞれの勘定に政府保証を付与することによりまして資金繰りに万全を期する、こういうことであります。特に、危機管理勘定に同額の十兆円の政府保証をつけましたのは、資本力増強により金融界の安定を期するということが一つございまして、その段取りを同額にさせていただいたということでございます。基本的にはこのことに尽きると思います。
  83. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ただいまの御説明では何らその算定の根拠にはなっていないのです。全体としての、三十兆円ということについての、これは大蔵省の事務当局からでも結構ですが、算定の根拠のようなものはございますでしょうか。
  84. 山口公生

    山口政府委員 大臣が御答弁されましたように、まずは金融の不安が不安を呼ぶという状態を払拭するためでございますので、これは万全の体制を組むということで三十兆を用意させていただいているということでございます。  それで、三十兆の中で十兆は国債の交付、それから残りの二十兆が借り入れに対する政府保証ということでございます。ファイナンスでございます。  それで、十兆の国債の交付ということにつきましては、破綻の場合のロス埋め等に使われるという部分と、それからキャピタルインジェクションといいますか、資本注入したときに仮にロスが出たときに埋める財源にも使える、こういう部分が分かれてございます。それぞれ七兆と三兆に分かれてございます。  七兆について、万全の構えをしているということでございますので、どことどこの銀行が今後破綻して幾らになるから七兆円という、もちろんそういう査定をして積み上げたものではございません。これだけ用意すればいいだろうということでございますけれども、私どもが十二月に発表しました公表不良債権、いろいろまだ不十分だという御批判もありますが、そのときごらんいただきました残りの要処理額が四、五兆ございました。御記憶いただいていると思います。これも全部の金融機関が破綻するというわけではございませんので、全くその数字をもってどうこうではありませんが、それがまた破綻すれば若干ふえるということも勘案して、七兆の用意があれば十二分に対応できるという考え方一つは成り立つと思います。  それで、三兆円の方も、十兆の融資枠がございます。そういったものをもし主要行の十九行の、マネーセンターバンクの半分に入れた場合と仮にします。それを現実にするかどうかということとは別に、また審査委員会が全部決めますから、そういうことを軽々に私が申し上げるべきではありませんが、そのときの水準が一三%ぐらいになりますと、世界の一流の銀行の自己資本比率と同じぐらいにはなるという、そこまで準備が十分にあれば国際的な信認も十二分に図られる、こういうことは言えるかと思います。  ただ、基本として、大臣が申し上げましたように、これだけの準備をしますということで安心をしていただいて、先ほど来申し上げている、金融不安が不安を呼んで産業界にまで不安をもたらすというのを断ち切るための準備ですということをぜひ御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。
  85. 西田猛

    ○西田(猛)委員 特例業務勘定における十七兆円のいわば公的な資金の設定につきましては、冒頭申し上げましたように、私どももむしろ遅きに失したぐらいの公的資金導入の枠組みであるというふうに考えておるわけであります。  そこで、先ほど申し上げましたが、大臣、信用組合以外には公的資金を導入しなくても預金を全額保護できるというふうに言い続けてきたあなたが所属しておられる橋本内閣の政治的な責任ということについては、いかがにお考えでしょうか。
  86. 三塚博

    三塚国務大臣 政策方向転換があったのではないかという前提の御質問だと存じます。  本件については、自由主義市場を持つ経済国家でございますから、基本は、市場において、またそれぞれの金融機関が自己責任においてこれを行うということにありますことは御案内のとおりであります。住専の論議の中で最終的に決定いたしましたのは預金者保護ということで、信用組合に限る、住専、信用組合、こういうことになった経過は私も承知をいたしております。  同じことを申し上げて恐縮です。前段も委員各位に答弁をさせていただきましたとおり、国家には国家の危機を回避する義務がございます。象徴的に、議院内閣制ですから政府ということになります。最重要課題に向けて万全を期してまいりますのが政府の責任であるわけでございまして、このことはこのこととして尊重しつつも、この危機を回避して、これが金融危機から経済恐慌に転化をして深刻な状態になることだけは歯どめをかけていかなければならない。  そういう認識のもとに、いついかなる、またどんな状態でも回避できる陣構えとして、十兆プラス二十兆の政府保証をそれぞれの勘定に入れさせていただきまして対応する。国民各位、企業者の安心をここでキープし、国際間の信認も得たい、ここにありましたことを理解を賜りたいと存じます。
  87. 西田猛

    ○西田(猛)委員 大臣、私はこの大蔵委員会で、預金保険法の一部を改正する法律案、それから新法について粛々と審議をしたいと思っているのです。なぜならば、これは非常に我が国の経済にとって大切な制度であるからであります。  しかし、先ほど大蔵省銀行局長も言われました。私がこのことを問題にしているのは、金融というものの持つ特徴から、心理的な要因が非常に強いわけであります。不安が不安を呼ぶのであります。したがって、住専処理のときにも、預金者さえ持たない住専にも六千八百五十億円の公的資金を導入した。国民は怒りました。その後、信用組合以外には公的資金の導入は必要ないだろう、あっても少額だろうと言っていた内閣が、今ここでこの三十兆円というスキームを左右あわせて打ち出してきたわけですね。国民の心理、あるいは国民経済に与える影響というものを考えれば、政策転換と言おうが方向転換とされましょうが、これは看過することができないのではないかというふうに私は考えるのであります。  したがって、金融、財政をお預かりになられる大蔵大臣として、そういう国民の不安感を増長するような内閣方向転換、あるいはダッチロール的現象について一言、国民の皆様に、どういう経緯であったのか、明確にその経緯を御説明いただけませんでしょうか。
  88. 三塚博

    三塚国務大臣 限られた時間でありますから、長く申し上げるつもりはございません。  九年度の経済見通しは一・九という実質成長を見込んでおりました。その背景は御案内のとおりであります。そういう中で、アジア金融金融不安が深刻な状態になりました。秋以降、大型破綻が金融セクターを中心に我が国にも起きていくということから、金融市場に対する、また金融に対する不信感、不安感が増幅されたことは事実であります。そのことが株式市場にも反映をすることによって、深刻な状態にさらにマインドとしてプラスなるものもこれありまして、深刻な状態に相なりました。  自由経済国家でございますから、金融国民生活の血液でありますことは御承知のとおりであります。預金は完全に保護される、当然のことであります。本来の金融セクターの活躍、市場の機能によりまして破綻が起きない状況であればこんな状況にならないわけでありますが、現実は厳しかったわけでございますから、これに対する万全の備えは、やはり国民各位に御理解を、御安心をいただくために、七兆プラス十兆の政府保証と手厚くさせていただいた心はそこにあります。  そして、危機管理という、それぞれの銀行が資本注入のための、獲得のための金融債発行の場合には、それを買うことによりまして資本力を増強することにより本来の銀行業務が果たされるように、またその果たされることによって、金融システム破壊が起きないように、金融危機が起きないようにその手だてを講ずることが、とりもなおさず国民生活の安定、国民経済の進展につながる、こういうことでこの措置をとらさせていただいたところでございます。
  89. 西田猛

    ○西田(猛)委員 きょうは、この大変重要な法律案審議でありますので、わざわざお忙しいところを日本銀行総裁にもお越しをいただいております。  このスキームの中で、二十兆円の日銀融資に対しての政府保証がございますけれども、これは日本銀行からのこれらの二つの勘定に対する借り入れをなし崩し的に拡大していくというおそれがあるのではないかなという懸念もあります。そのことがもし実現したとすれば、過度の日銀貸し出しが日本銀行の財務体質の悪化、ひいては国際信用の失墜を招いて、我が国のレンダー・オブ・ザ・ラスト.リゾートがそういう体質に陥れば、これはもう日本経済の崩壊を意味いたしますから、私たちは大変に懸念をしておるわけでございますが、総裁、この辺についての御懸念はいかがでありますか。
  90. 松下康雄

    松下参考人 私ども、中央銀行としましての財務体質の維持強化につきましては、常に細心の注意を持ちまして努力をしてまいってきているところでございます。  今回の二法案におきまして当行の行いますところの貸し付けば、法律案の中に詳細にその要件が定められておりますけれども、現状におきましてそういう貸し付けがどの程度の規模となるかという点につきましては、これは民間金融機関の借り入れやあるいは債券発行というようなこととの関係もございまして、現時点でなお見通すことは困難であると思っております。  ただ、本行の財務の健全性に関しましては、まず両勘定の借り入れに政府保証が付されることになっているという点がございます。また、その際、買い取りました不良資産とかあるいは引き受けを行いました優先株等処分において損失が生じました場合には、交付国債の現金化による補てんもなされることとなってございます。  したがいまして、私どもは、こうした貸し付けを実行することによりまして本行の財務の健全性が損なわれるということにはならないと考えております。
  91. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今総裁が言われた中で、もしもその貸し付けに何らかの問題が生じたときには、交付国債の十兆円、これが償還されることによって補てんされるだろうという御趣旨の御発言もありました。ということは、その制度を逆から考えてみると、政府が十兆円の交付国債をこの二つの勘定に与えておいて、その間日銀が二十兆円を限度として両勘定に資金を貸し出している、そのことが問題なく回っているうちはこの十兆円の国債というのは実現化されないわけですね。  そういうシステムを見てみますと、これは実際のところ十兆円を限度として国債を日銀が引き受けたということと効果的には同じになるのではないかというふうに考えられるのですが、もしそうだとすれば、これは財政法五条で日銀が国債を引き受けることを禁止しておるのですけれども、その趣旨に反するのではないかなというふうにも考えられるのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  92. 松下康雄

    松下参考人 預金保険機構の日本銀行等からの借り入れに関します政府の保証措置と交付国債によります損失補てんとの関係でございますけれども、政府の保証措置につきましては、これは、いかなる事態が生じましても損失の補てんによりまして資金の借り入れに関する債務の履行に対応できる備えといたしまして、特例業務勘定、金融危機管理勘定におきます資金調達を円滑に行えるようにとられた措置でございます。  私どもの貸し付けば、貸し付けを行いました時点ではいまだ損失が発生していない状態でございますので、一応この交付国債の問題とは別に貸し付けを実行いたしまして、そして、それが仮に将来損失が発生をいたしまして、交付国債が現金化をし損失の補てんが行われるという場合におきましては、既に当行自身の方の借り入れにつきましては、原則として、特例業務勘定におきましては特別保険料あるいは機構の買い取り資産の処分かわり金によりまして、また、金融危機管理勘定におきましては優先株等処分のかわり金によりまして返済をされるという建前のものでございます。  そういった制度の枠組みで行われる貸し出してございますので、これは、政府に対する直接の信用供与を行い、その形が何らか政府の発行する国債と直接結びついている仕組みとは異なっている。私どもの貸し付けと交付国債による損失の補てんとはそこに直接の関連がないというふうに理解をいたしております。
  93. 西田猛

    ○西田(猛)委員 この国民の皆様向けの簡単なパンフレットによりましても、今回のスキームは個別の金融機関を救済するシステムではないというふうに書いておられるわけですね。もちろん私たちも、今回のスキームでやはり救うべきことは、それは預金者の保護とそれから金融のシステミックリスクを回避することである、この二つのことに尽きるのだと思います。  すなわち、本来、金融機関の破綻というものがもしあったとすれば、それはマーケットの選別を受けてのことでありますから、この市場メカニズムを尊重して、今申し上げた預金者の保護とシステミックリスクの回避にのみ万全を期すのが正しい政策の態度であって、極力行政介入を少なくしていくということが、今、例えば橋本政権も標榜している六つの改革の中の金融改革にも書いておられることだと思うのですね。しかも、そういう透明性の増した市場があることが、国民経済のより一層の信頼を取り戻していく唯一の方策なのであるというふうに考えるのです。  この点については後ほど大臣からもお聞きしたいのですけれども、総裁、まずこの考え方についてはいかがお考えでしょうか。
  94. 松下康雄

    松下参考人 我が国の金融機関が、今後、市場メカニズムに基づきます市場規律のもとでリストラの推進やディスクロージャーの拡充、あるいは収益力強化などに自助努力を積み重ねていくということが最も必要であるという点につきましては、全くそのとおりであると考えております。  ただ、今般の公的資金導入の中におきまして、預金保険機構の財源強化のための部分につきましては、これは金融機関が不幸にして破綻のやむなきに至った場合に、預金者保護に万全を期することによりまして、預金者の不安を解消し金融システムの安定を確保するというものでございますし、また、優先株等の引き受けにつきましては、経営悪化しております個別金融機関の救済を目的とするというようなことがあってはならないわけでございまして、あくまでも、昨年の秋以降の我が国の金融システムに対します内外からの不安感を払拭し、信用秩序の維持と国民経済の円滑な活動に支障のないように対処をしてまいるというための、これは緊急の特例措置として行われるものであると理解をしているところでございます。  したがいまして、法律の適用に当たりまして、金融機関の救済につながることがないような厳正な運営が確保されるような措置を講ずることが制度上も定められているように考えております。したがいまして、この措置は、私どもも、ただいま申し述べましたような趣旨から極めて重要な意義を持ったものであると判断をいたしております。
  95. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今おっしゃられたうち、十七兆円の特例業務勘定の方については私も意見を異にするものではないのでありますけれども、十三兆円の方の金融危機管理勘定については、やはりこれからじっくりと審議をしていく必要があるのではないかなというふうに考えるわけです。  と申しますのは、十兆円の政府保証つきの借入枠と三兆円の交付国債で民間金融機関の優先株や劣後債を引き受けて資本充実を助け、貸し渋りを解消しようという案であります。もちろん、巷間、一説には、ある経済評論家などによれば、資本をこれだけ注入することによって、逆に言えば八%のBISの基準をクリアして、逆数としての一二・五%の貸し出しの膨張を図ることができるという意見もあるようですけれども、果たしてそのとおりに、数字どおり動いていくのかなという懸念もあります。  例えば、金融システム安定に寄与する受け皿銀行、今回拓銀の破綻、整理に伴って健全な部分の資本・負債を継承する北洋銀行に、これが例えば市場資金調達できない場合に公的資金で優先株などを引き受けようというスキームについては、これは理解できます。  しかし、何らそういうものを引き受けるのではない普通の銀行一般銀行政府が資本注入をするということは、非常に社会的な不公正を助長するのではないかなと。橋本内閣の言っておられるフェア、フリー、グローバルのフェアという観点からして非常に問題があることではないか。例えば銀行が社会化されてしまうということ、あるいは市場で資金を調達できない不良行の場合には、その後行政裁量によって経営救済することにもなるしというふうな点が多々出てまいります。  この点についてどうお考えか大臣にお聞きしたいのですけれども、なかなか時間がないので大臣の御答弁をまとめて後でいただくといたしまして、この点で問題になってくるのは、今まで大蔵省銀行等の金融検査をどういうふうに行っていたのかというところが問題になるわけです。すなわち、やはりディスクロージャーを徹底的に今後進めていかなければならないという観点であります。  そこで、大臣、銀行法二十五条等で大蔵省は立ち入りあるいは質問等の検査を行うことができるというふうにされているのですけれども、その検査の結果を、個別の検査の結果すべてをということではありません、何らかの形で検査の結果を国民の前にディスクローズするお考えはありませんか。
  96. 原口恒和

    ○原口政府委員 個別の金融機関の検査等何らかの形でという御提案でございますけれども、前々からお答えしておりますように、一つは、検査時というものがばらばらでございますので、ある特定の時期におけるいわば生の情報を公開するということを信用秩序維持等の面からどう考えるか。それから、発表の仕方によりましては、金融機関等の取引先などに不測の損害を与えるおそれ、あるいはプライバシーの侵害の問題といったようなことがございます。そういうことから、米国、英国、フランス、ドイツ等の海外当局においても原則として公表されていないというような形について御理解をいただきたいと思います。  ただ、おっしゃいますように、金融機関経営状況等の情報の開示、これは非常に重要な問題でございます。これは、原則としてはやはりディスクロージャー制度をどういうふうに充実をしていって、その中で金融機関みずからにより適切にディスクロージャーの充実に努めていくということが肝要ではないかというふうに考えております。
  97. 西田猛

    ○西田(猛)委員 システミックリスクという点では、銀行に限りません。保険それから証券等いろいろございますが、証券については取り次ぎが主であるという点から、保護するべきものは何かという議論からまず始めなければならないと思うのですけれども、特に生命保険については、預金保険機構に銀行が支払う預金保険料とは別に、生命保険会社が今強制されていない支払い保証機関に加入して支払う負担金というものがございます。この負担金を今後強化といいますか、義務づけて、そして支払い保証機関というものを強化していくべきだと思いますけれども、負担金について税制上の考慮を今後行っていくことについていかがお考えでしょうか。
  98. 薄井信明

    ○薄井政府委員 議員御指摘のように、現在そういったことについて議論が行われていると聞いております。その仕組みがどうなるかということによって税制上も決めていかなければなりませんが、例えば、現在の場合には事後拠出、そして拠出したときに損金という形式でできるわけですが、今後、事前ということになった場合に、その負担金の性格についてチェックをさせていただくことになろうかと思います。ただし、税制上対応が可能な仕組みというものもあろうと思います。で、その辺は十分詰めていきたいと思っております。
  99. 西田猛

    ○西田(猛)委員 内外の格付会社というものがございまして、これが我が国の金融機関の格付を下げる方向で検討して、その情報が流れるたびに当該金融機関の株価の下落等を招いて、我が国全体の金融システムに対する不安材料となっているということがよくございます。  先ほど検査のお話もございましたけれども、もしも、大蔵省金融検査をやって、万全だと思われる内容なんだけれども、格付会社が、いやいやこの銀行についてはあるいはこの金融機関については格付を下げるというふうなことを、理由を言っていて、大蔵省の検査と内容が違っている場合に、大蔵省はこの格付会社あるいは格付に対して何らかのことを言っていかないと、我が国の金融機関に対する致命的なことにもなりかねないと思うのです。そういう事態に立ち至った場合、当局としてどのように措置をとられることができますか。
  100. 原口恒和

    ○原口政府委員 一般論として、検査の公表についての問題点は先ほど申し上げました。また、金融機関への検査は、金融機関の業務、財産の健全性、適切性を確保するために、資産内容を初めとして内部管理あるいは法令遵守等、幅広い観点から行っております。  他方、格付は、民間企業たる格付機関が債券等の元本、利子の支払いの安全度に関する評価を簡単な記号を用いてわかりやすく投資家に提供するということで、その目的方法等においてかなり差があるという問題、それから、先ほど申しましたように、検査というのはかなりアトランダムに時期を置いてやっておりますので、そういう時期の問題もあろうかと思います。  そういうことから、個々の格付の適正性については、格付機関がみずからにおいて示している格付が市場信頼を得られるかどうかという問題でございますので、その判断は基本的に市場にゆだねられるもの、また、その市場信頼を得られるように金融機関の方でディスクロージャー等の適切な努力を行うことによって対処するということが基本ではないかと考えております。
  101. 西田猛

    ○西田(猛)委員 最後に、この三十兆円のスキームが全額国民の負担となった場合、財政赤字が拡大します。毎年財政赤字を縮小するという財政構造改革、これの法律に違反するのではないか。特に、きょうの新聞によれば、これは自民党の幹事長でありますから政府に対して求めるのはどうかとは思いますけれども、「財政再建目標延期も」というふうなことを言っておられるようであります。  そこで、大蔵大臣、自民党の一員とされて、また政府の責任者として、その政治責任について橋本内閣はとる用意があるのかどうか、お答えいただけますか。
  102. 三塚博

    三塚国務大臣 財政構造改革を延期するという趣旨の発言があったと報道されていることは知っております。赤字公債からの脱却というのは中長期的目標の最大の、財政健全化への道でございます。そういう中で、この基本は変えず、全力を尽くすというのが財構法の基本的原則の柱でありますので、そのとおり取り進めてまいりたいと思っております。
  103. 西田猛

    ○西田(猛)委員 時間が参りましたので、終わります。
  104. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、佐々木陸海君。
  105. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。  今回の二つ法案金融問題に対処する三十兆円の公的資金投入計画を定めた法案、大変重要な法案だと思います。昨日の理事会でも、重要な法案とみなして十分な時間をかけて審議をするということが確認されたそうでありますが、きょうは、私の時間は二十一分ということですから、その十分な時間のうちのごくごく一部分であるということで、基本的な問題についてお聞きをしたいと思います。  この二つ法案が私たち重大だと考える第一の理由は、公約違反という問題であります。  一昨年のあの住専国会の中で、本来母体行が負担すべき六千八百五十億円、これを国民税金で負担するということで、本当に国民の中に強い批判の声が起こりまして、これはもう最後まで世論調査でも批判のパーセンテージは変わらなかった。八〇%から九〇%の批判があったという中で、政府は、財政基盤の弱い信用協同組合に対しては、将来、若干公的資金を投入することがあるかもしれないけれども、それ以外の問題ではもう投入することはないんだ、基本的にこういう約束をしてこの問題を押し切った、こういう公約があった。  そして、先ほどからの三塚大蔵大臣のお話を聞きますと、国家的危機ということも言っておられますけれども、ともかく、理由は何であれ、この住専国会当時の政府の約束というものを今回は変えざるを得ないことになったんだ、住専国会のときにそういう約束があったということを今回変えることになったんだということ。  この二点を大蔵大臣、お認めになりますか。
  106. 三塚博

    三塚国務大臣 基本的な金融三法があります。そのことはそのことといたしまして、先ほど来申し上げておりますとおり、信用秩序の不安感というものが金融危機に結びつきかねない深刻な状態にあります。これを放置いたすということになりますと経済の大混乱すら予想される昨今でありますものですから、この法律を提出させていただいたところであります。  金融秩序の維持、国民経済に深くかかわる大前提でございますから、安定をしなければなりません。よって、国民各位、預貯金者の皆様の御安心をいただく、不安感を取り除くためにということで、二つの特別勘定をつくらせていただき、時限法として三年間に限りこれを行う、こういうことでありまして、まさに特別措置法の性格のものであります。
  107. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 全然お答えになっていないのです。要するに、住専のときには約束はあったけれども、今回、今おっしゃったようないろいろな事情もあって、特例措置としてこういうことを提案するということは、そのときの約束とは違うかもしれないけれどもやむを得ないんだということを言っておられるわけですね。
  108. 三塚博

    三塚国務大臣 その趣旨を申し上げたわけです。
  109. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 じゃ、今の金融危機と言われるような状況がどうかということはいずれ後の議論でやっていくことにして、しかし、そんな大ざっぱなことでこの公約を変えられてしまっては困るわけでありまして、少し……(三塚国務大臣「変えてないんだよ」と呼ぶ)変えてないと言うの。(三塚国務大臣「危機対策です」と呼ぶ)しかし、公的資金を出さないと言ったわけでしょう、もうこれ以上は。出すことになったわけですよね。だから、当時言っていたことは今は、いろいろな事情はある、事情はいいですよ、事情はあるけれども変わっているということでしょう。そこは認めてもらわないと話にならないですよ。
  110. 三塚博

    三塚国務大臣 先ほど申し上げたとおり、そのことは、緊急かつ緊要、危機的な状況を脱却するための緊急措置を講ずることは政府の責任である。よって、金融三法はあります。今度の安定法、預保の改正法、関連でありますから提出をさせていただいたところであります。
  111. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 余りぐだぐだやってもしようがないから、少し具体的に聞きましょう。  住専国会の中で、九六年の五月二十一日、本会議での答弁で橋本首相は、破綻金融機関の処理、預金者保護は「金融システム内の負担により賄われることが原則」ということを言いました。それからまた、同じ年の六月十三日、これは参議院の金融問題特別委員会ですが、ここで当時の銀行局長は、  私どもは破綻金融機関の処理に当たりまして税金を使う、財政措置を講ずるということは原則として行わない。すなわち、原則として預金取り扱い金融機関の破綻処理に際しては金融システムの中で処理する。別の言い方をするならば、預金保険料によって対処すると、こういう考え方に立っているわけでございます。 と言っております。  首相も銀行局長も、金融システムの内部で金融機関の破綻処理、預金者保護は対応する、それが原則だと言っているわけですね。この原則は変えるのですか、.変わるのですか、大蔵大臣
  112. 山口公生

    山口政府委員 その原則という言葉をどういう意味先生が御指摘になっているかによりますけれども、考え方としては、それは変わっていないと思います。  ただ、預金の全額を保護するということが、現下経済情勢において大変大切なことでございますので、預金者の方々に不安を与えないような備えをする、こういう意味での臨時の措置というふうにお考えいただければ結構だと思います。
  113. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 原則というのは例外があるわけですよ。ですから、金融システム内で解決するのが原則である、しかし場合によってはその原則どおりはいかない、例外的な措置をとることもあり得るということで、今度の措置は、時限的な措置あるいは緊急異例の措置、そういうものとして提案されているということなんですね。それでよろしいですか。
  114. 三塚博

    三塚国務大臣 委員、何回も答弁していて、どうして御理解いただけないのでしょうかね。  金融三法、これも預金者保護、そして金融システムの安定維持のためにスタートを切りました。今回は、緊急な危機的深刻な状況にあることにかんがみまして、万全の備えをとることにより国民各位に理解を得ていく、こういうことで出させていただきました。これも大目的は、金融システムの安定維持、預金者保護の徹底、内外の信認をこれによって得させていただくということですから、基本的理念は一貫して通っております。  よって、新しく安定法をつくらさせていただきまして、さらにそれを深める。危機管理ということで三兆円の備えをする。同時に、十兆円の危機勘定に対する政府保証をつけることによって万全の備えをつくらさせていただきたい。これができ上がりますと、深刻な状態を脱出できまして、我が国の金融市場は安定をしてまいります。こういうことであります。
  115. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 わかっていらっしゃらないのは大蔵大臣の方なんですよ。  つまり、金融システム内で解決するのが原則だ、賄うのが原則だ。当時の銀行局長も、預金者保護、そのための金が足りなくなったら、預金保険料を上げて金融システムの中で解決するのが原則だと言っているわけですよね。  今提案されているのは、システムの中だけで解決するのじゃなくて、国民税金も投入して対応しようということを提案しているわけですから、そういう当時橋本首相や銀行局長が言っていた原則とは違ったことが提案されているわけですから、これは原則を変えることなのか。それとも、今事態が大変だからということで、例外のない原則はないのだから、ちょっと例外的な措置をとっているけれども、しかし原則は変わらないんだよ、先の先までの原則というのは、システムの中で解決するんだよということなのかどうなのかということを聞いているわけですよ。
  116. 三塚博

    三塚国務大臣 ですから、時限法にいたしたわけです。
  117. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それならそれで結構です。要するに、原則は変わっていない、しかし今事態が大変だから、時限的な法律として、特例の法律としてこういうことを提案しているのだということですよね。そこはそういうことで確認をしたいと思います。  そこで、私……(発言する者あり)きょうは第一回ですからいいんですよ。その基本をまず確認しておきたいと思います。
  118. 村上誠一郎

    村上委員長 静粛に。
  119. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そこで、大蔵大臣、お聞きしたいと思うのですが、この原則は変わっていないとすれば、それは先ほど山口銀行局長が言われたように、去年の十一月以来いろいろな事態が起こっている、不安も増して大変だということがある。しかし、その場合でも、まず第一義的にやらなければならぬのは、金融システム内での解決ということが探求されなければならなかったはずだと思うのですよ。  先ほど挙げた西村銀行局長、今は早稲田大学教授という肩書で、この一月五日付の「金融財政事情」に文章を書いておられます。  まず当事者——それは金融界全体を含む——が最大限の努力をすることが、公的な資金を投入する場合の大前提のはずだ。   奉加帳がまずければ、たとえば預金保険料負担を増やすとか、金融機能が弱体化した地域の金融機関として、取引相手のために、資産の承継について協力する、あるいは破綻金融機関と関係の深い金融機関がそれなりの責任を果たすなど、方法はいろいろある。   そうした可能な限りの手段を尽くして、なおこれしか方法がないというときに初めて公的資金導入が許されると、国民は考えているように思う。 こういうふうに当時の西村銀行局長、一月五日の「金融財政事情」で言っているわけですね。  つまり、住専国会で彼もいろいろ苦労した結果として、最大限金融機関の内部での努力預金保険料をふやすなどの努力、それをした上で公的資金ということが許されるんだということを言っているわけですが、それじゃこの十一月以来、そういう努力金融機関に果たさせるために大蔵省は何をやってきたのでしょう。
  120. 山口公生

    山口政府委員 御承知のとおり、平成八年度から保険料を一挙に七倍に引き上げております。  これは、今一流の米銀は保険料はゼロになっております。そういう状況のもとで、日本金融機関は、それは過去のこういったバブル崩壊の、また不良債権処理あるいは破綻処理という問題がありますので、今大変苦しい状態にあることも事実でございますけれども、預金者を保護するという観点から、八年度から七倍に引き上げさせていただいているということでございます。
  121. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 八年度からというのは、おととしからですよ。危機が起こってきたのは、あなたのさっきの言っているのでも、去年の十一月からでしょう。だから、それをやっているからといって、それで過ごされるはずないじゃないですか。去年からのそういう事態に対応して、金融業界自身の努力として何をやるか検討したのですか。
  122. 山口公生

    山口政府委員 法律及び施行令にございますように、十年度末までに保険料は種々の状況等を勘案し見直すということになっております。
  123. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 十年度末というのは今も含むわけですよ。去年の十一月以降だって十年度末までということに入るわけでしょう。金融機関にとって本当に重大な事態が起こってきているわけだから、までなんて言っていないで、急いでそういうことも検討させることが当然できるはずじゃありませんか。しなきやならぬはずじゃありませんか。それをしないで、いきなり国民に負担をかぶせるというのはおかしいのじゃありませんか。
  124. 山口公生

    山口政府委員 金融機関の体力、特に邦銀の国際競争力等、あるいは中小金融機関の疲弊等が問題になっている状況でもございます。そういったときに、七倍に引き上げ相当な重い負担、国際的に見てもかなり、国際的信認からいってもぎりぎりとも言える負担というものを今負わせているわけでございます。一方で、種々のリストラあるいは不良債権処理を一生懸命やらせているということでございます。  ただ、これは保険料を見直さないということを言っているわけではありません。それは十年度末までに諸状況を判断し適切に見直すということになっております。
  125. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今銀行局長銀行業界を代弁するようなことをおっしゃっているわけですけれども、銀行業界に、ちゃんとこの危機に対応する業界自身の努力として、保険料のさらなるアップまで含めて検討せよということは指導したのですか、この去年の十一月以来の経過の中で。
  126. 山口公生

    山口政府委員 今、代弁しているとおっしゃいましたけれども、そうではありませんで、今、金融機関金融機能がいろいろ問題になって、かなり不安感が不安感を呼んでいる状態であります。一般産業界にもその影響は及んでおります。そうした事態であることを十分認識して、法律、政令に書いてあるような手続を踏んでいきたいと考えております。
  127. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 法律、政令に書いてあるといったって、あなた方は今こういう新しい法律を提案しているわけですから、その法律だって、どんなふうにだって変えたりして対応していく提案ができるわけでしょう。  そして、その法律によれば、政令によれば、十年度末までに検討するとなっているのですから、その末までというのは、別に末に検討しなくたっていいのですから、先に早く検討して、金融業界としても、例えば、二年前にかなり大幅に上げたけれども、しかしまた新しい事態が生じているからそれに対応してこういうふうに上げるのだという検討をした上で、国民にさらに助けてくれというならわかりますよ。そうじゃなくて、銀行業界大変だろうからそういうことはやっていないのだというようなことをあなたは説明されるから、業界の代弁者というふうに私は言わざるを得ないと思うのです。  要するに、全然そういうことは検討していないわけですね。
  128. 山口公生

    山口政府委員 この問題につきましては、広くいろいろな要素を考えながら検討すべきことだろうというふうに思います。現在の金融が置かれている状況、あるいは金融機能がいろいろ問題になっている状況を十分に勘案してやりませんと、それは逆に、市場からの見方の問題、あるいは産業界へのはね返り、いろいろな問題も生じます。  私は、検討を一切しないとかいうことを言っているわけではありません。そのときそのときの状況を十分に見てやりませんと、これはまた思わぬ問題を招来してしまう。日本経済全体に対してまた影響を及ぼす。国際的な、例えばジャパン・プレミアム一つとりましても、一時期一・〇%にまで上がりました。決して私はこれを自慢して言うわけじゃありません。非常に残念なことです。これは国全体が非常に不信の目で見られるということでもございます。  そういったことをよく考えますと、国全体が海外からどう見られているか、日本金融機関がどう見られているかということも十分勘案しながら、適切な時期に適切な対応をさせていただきたいというふうに思っているわけでございます。
  129. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 適切な時期、適切な対応と言うのですけれども、適切な時期の判断の問題があると思うのですよ。この三十兆円投入の方向を今度の法案で全部決めた上で、業界に君たちどうするのだと言えば、もうそれでいいということになるのですから、自分たち預金保険料を上げましょうなどということにならないに決まっているじゃありませんか。おかしいですよ、それは。順番が違うのですよ。  まずそういう金融業界、つまり、原則を投げ捨てたわけじゃないわけですから、システムの内部での解決ということに全力を挙げさせる指導をして、それでもなおかつだめだったら国民の負担ということになるということを西村前銀行局長もこの論文の中で言っているわけですね。その順序が違うのじゃないですか。
  130. 山口公生

    山口政府委員 今私はマネーセンターバンクのことを主に申し上げましたが、中小金融機関のこともひとつ御考慮いただきたいのでございます。中小金融機関は、利益に対する比率からいうと、これは相当高くなっております。あるところによりますと九%、平均してもう九%ぐらいを超えております。  そうしますと、また保険料の引き上げということをやった場合に、中小金融機関はたくさんの中小企業を抱えております。その保険料の負担によってまた中小金融機関のビヘービアが変わる、それによって中小企業に大きな影響が及ぶということも十分に考え、懸念しなければいけない要素だというふうに思うわけでございます。  預金保険法では、保険料は差別的であってはならないと書いてあります。したがって、マネーセンターバンクのことだけを議論するだけではなくて、中小金融機関の今置かれている負担の重さということも十分に考え、それに頼っている中小企業のことも十分考えなければならない時期であるということを御運解いただきたいということでございます。
  131. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 一昨日の予算委員会でもうちの書記局長がパネルを示してはっきりさせましたけれども、確かに中小金融機関の負担は高くなっておりますが、大手の銀行などはまだアメリカのピークに比べれば大きく低い。ああいうのに比べてみれば余力はあるわけですよ。  法律で、預金保険法で差別的であってはならないと定められているからと。しかし、そこもちゃんと、山口さん前にも言っておられるように、この預金保険機構というのは相互の扶助の組織だということも言っているわけですから、そういう中小金融機関には中小金融機関なりに配慮したような率にできるような法律の改正だって当然提案できるはずじゃありませんか。だから、順序が狂っているということを私は重ねて強調したいと思うのです。  そして、もう時間がないようですから、さっきジャパン・プレミアムというようなこともおっしゃいましたけれども、この西村前局長は、全部彼の言うことに賛成するわけじゃありませんけれども、金融界も今の事態を自力で収拾して初めて世界の一流プレーヤーになるべく努力する資格を持つというふうに国民は思っているだろうと言っていますよ。  自力で、ともかく苦しい中でも、今日本金融機関が危ないのだという中で金融機関の自助努力としてどれだけのことをぎりぎりやるのかということを、一昨年七倍に上げましたというだけで、それ以上のことを何にもやらないということで国民税金を投入するというのでは筋が通らないし、そんなことをやったのでは、結局また新しい護送船団行政といいますか、日本金融機関自身が本当に自分の力でどうするのかという努力もできないということで、世界からも、結局また政府に助けてもらっているのだということにならざるを得ない。それでは本当の解決にならないのだということを、きょうは第一回目ですから、その程度のことを申し上げて、これではだめだということをはっきりさせて、質問を終わりたいと思います。
  132. 村上誠一郎

    村上委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時九分散会