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小野委員 ただいま
日本経済は本当に困難な中に置かれているわけでございますが、この
経済困難を考えております中に、
石油ショックの後の
福田内閣のもとで、果断なるいろいろな
政策が打ち出されながら
日本経済の
体質転換が行われた、こういうことを
思い出すわけでございますけれ
ども、そのときに、もう亡くなられました
福田先生が言われたのは、働こう
内閣ということでありました。
私は、
経済企画庁の
職員の方から
お話を承っておりますと、
尾身長官におかれましては、毎晩十一時過ぎまで
長官室の方におられて、
仕事にいそしんでおられる。国難のこういう
事態の中で、身も心もその中に投じていただいて、この困難を乗り切るために御努力いただいているお姿にます敬意を表し、これからの御活躍を御期待したいと
思います。
きのうも
緊急経済対策の
特別委員会が開催されておりまして、
尾身長官の登場される場面も非常に多くあったわけでございますが、その御
答弁をお伺いする中で、
一つ耳に残る
言葉というのが、
経済は
生き物という
表現でございました。
この
表現は本
会議の中でも御
答弁の中で使っておられた
言葉でございますが、この
言葉をお伺いしながら、私はふと
一つの
言葉が
思い浮かんだわけでございます。それは何かというと、やはり
混乱期でありました幕末の
時代でございますが、長州の
志士でありました
吉田松陰先生の
言葉であります。二十のころに、世間を知らずして
世の中を語ることはできないと言って九州の方へ旅立たれるわけでありますが、その旅立ちのときにこんなことを書き残しておられるのですね。
心はもともと
生き物、
生き物には必ず機がある。機というのは機会の機、チャンスの機ですね。機は触れるに従って発し、感にあって動く。感は感動するというときの感であります。こういう
言葉を語って、先ほど申しましたとおり、旅立っていき、
志士としての見識を広められ、
日本の国のあり方を考えていったわけであります。
そのことを
思い浮かべましたときに、私は、
日本経済という、ちょっと次元の違う話ではありますけれ
ども、この
日本の大きな
経済も今まさに旅をしている
段階ではなかろうかという
気持ちがしてならないのであります。新しい
時代の
経済の姿を求めての旅、この旅の中でいろいろなことに我が
経済が出会いながら、
自分自身をその中から脱皮をさせていくという
意味合いを持つ旅なのだろうという
気持ちがいたします。
そういうことを考えますと、私は今、
日本経済、またその
経済を構成するところのさまざまな
企業という
ようなものが、いろいろなものにどんどん出会いながら、その出会いの中に、みずからを打ち破っていく
ような取り組みをやっていくべきときであるという
思いを日々深めているわけであります。
しかしながら、そういう
意識を持ちましたときに、同時に
現実の問題というのも目の前に見えてくるわけでありまして、
日本経済社会を見ておりますと、やはり今まで
指摘がされてまいりました
ように、非常に
閉鎖性が強いということを御
指摘を申し上げなくてはならない
気持ちがいたします。みずから新しい
可能性を求め、そしてそこに挑戦をしていこうという姿勢が弱いということが、この
日本の国の
活力を弱めているということになっているのではなかろうかという
思いを持つわけであります。
この点は、考えてみますと、
日本列島の中で長い年月にわたって、一
民族とは申しませんけれ
ども、ほとんど同質の
方々がここに長い間住まわれ、同じ
言葉を語り、同じ
ような
文化の中に生きてきたわけでありますから、自然のうちに
連帯感が生まれているわけでありますし、そういう
社会でありますと、逆に
異質のものを積極的に、
意識的に求めて、そこに新しいものを生み出していこうという力がよほど
危機感が生まれないと出てこないということを考えねばならないと思うわけであります。
そこで、先ほど
吉田松陰先生のお
言葉を引用させていただきましたけれ
ども、二つの点の問題が出てくるのだろうと思うわけであります。
最初は、その周遊の中で出会い、機に触れて初めて新しいものへの目が開けるんだという
ような
指摘がありましたが、
異質のものを積極的にみずから求める
個々人の
意識が必ずしも
日本の国は高くないという問題であります。
それから、もう
一つの
問題点というのは、
社会的に見ました場合に、
相互に多様なものが交流しながら新しいものを生み出していくというシステムが必ずしもこの国の
社会の中で育っていない。これが育っていないがゆえに、感にあって動くという
表現が先ほどありましたが、共感しながら新しいものに向かって動いていこうというパワーがなかなか出にくいということなのだろうと
思います。
不況になると私
たちがよく使う
言葉は、
活性化という
言葉であります。この
言葉は、もともとは
化学用語、ケミカルの
用語でありまして、
分子が、それぞれの
エネルギーレベルが高くなり、そしていろいろな
分子がぶつかり合う頻度が高くなる
ような
状況になってぐると、お互いぶつかった
分子が反応を起こして新しい物質を生成しやすくなる、だから
活性化という
言葉はもともと
一つ一つのものの
エネルギーレベルが高まってくるという
ようなことにあることを考えますと、今申しました
ように、
日本社会も
活性化していこうということを言うならば、より
個々人が、また
個々の
企業が
エネルギーレベルを高める、それでそれらが
相互にぶつかり合っていける
ような
仕組みをうまく整えていくという
ようなことに取り組んでいくことが、現在の
日本社会についての
一つのヒントになるのではなかろうかという
気持ちがいたします。
本
会議の
答弁等でも、
皆さんが言われておりましたのは、
日本の国はまだまだ底力があるのだ。千二百兆円の
個人的資産、また
勤労精神、また優秀な
企業、さまざまな
科学技術、こういうものを総力を合わせてやっていくならばこの国はこの困難を乗り越えられるのだというふうな
お話でございましたが、その前提としての我々の持つべき
意識の問題、また
社会の
仕組みの問題等々もこれから考えながら
活性化した
社会をつくり上げていかねばならない、こんな
思いでございます。
ちょっと前段が長くなりましたけれ
ども、
長官にお尋ねをさせていただきたいと
思いますのは、この
ような
状況の中にありて、
日本経済ないし
日本企業の
体質的なところにおける
問題点というものをどういうふうに把握されながら
経済運営に臨んでおられるのかという点が一点でございます。
それから、もう一点は、
活力ある
経済を生み出すために必要なこの国の羅針盤、これは、最近
内閣等で
経済改革プランが打ち出されたりしまして、新規十六分野を育てますという
ような
議論ですとか税制だとか、きのうも土地の証券化問題だとか、
現実政策レベルの
議論というのは随分いろいろとなされてきているわけでございますが、その
現実制約を少し離れていただいて、
長官自身が持っておられる未来の
日本経済に対するイメージまた
ビジョン、こういうものをちょっと自由奔放に語っていただけたらありがたいなというふうに
思います。どうかよろしくお願いいたします。