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1998-03-11 第142回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十一日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 斉藤斗志二君    理事 石原 伸晃君 理事 小此木八郎君    理事 岸田 文雄君 理事 茂木 敏充君    理事 伊藤 達也君 理事 松本  龍君    理事 太田 昭宏君 理事 西川太一郎君       甘利  明君    遠藤 武彦君       小川  元君    岡部 英男君       奥田 幹生君    栗本慎一郎君       古賀 正浩君    河本 三郎君       新藤 義孝君    竹本 直一君       武部  勤君    中山 太郎君       野田  実君    林  義郎君       村田敬次郎君    山口 泰明君       大畠 章宏君    川内 博史君       島   聡君    島津 尚純君       原口 一博君    古川 元久君       渡辺  周君    中野  清君       平田 米男君    宮地 正介君       青山  丘君    小池百合子君       達増 拓也君    大森  猛君       吉井 英勝君    横光 克彦君  出席国務大臣         通商産業大臣  堀内 光雄君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      尾身 幸次君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     根來 泰周君         公正取引委員会         事務総局経済取         引局取引部長  上杉 秋則君         経済企画政務次         官       栗本慎一郎君         経済企画庁調整         局長      塩谷 隆英君         経済企画庁国民         生活局長    井出 亜夫君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         通商産業政務次         官       遠藤 武彦君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官       岩田 満泰君         通商産業大臣官         房審議官    杉山 秀二君         通商産業省貿易         局長      今野 秀洋君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         通商産業省環境         立地局長    並木  徹君         通商産業省機械         情報産業局長  広瀬 勝貞君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君         中小企業庁長官 林  康夫君         中小企業庁次長 中村 利雄君         中小企業庁計画         部長      中澤 佐市君  委員外出席者         大蔵省証券局証         券市場課長   柏木 茂雄君         参  考  人         (日本銀行企画         局長)     川瀬 隆弘君         商工委員会専門         員       野田浩一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十一日   辞任        補欠選任    渡辺  周君    古川 元久君 同日   辞任        補欠選任    古川 元久君    渡辺  周君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横光克彦君。
  3. 横光克彦

    横光委員 社民党の横光克彦でございます。  先般の堀内通産大臣尾身経済企画庁長官所信表明に対しまして質問をさせていただきます。  最初質問させていただきますが、各党の皆様方の御配慮に感謝申し上げます。  さて、今私たちの国は、かつてのあの石油危機、そしてまたバブル不況、ああいった不況に匹敵するほどの不況に見舞われているというのが現状ではなかろうかと思っております。こういった中、今国民皆様方最大課題は、この不況からの脱出景気回復でございます。そういった意味から、政府、また政治に携わる私たちの責任も非常に重大だ、このように考えております。  去る六日に三月の月例経済報告が発表されました。景気総括判断からは、昨年十二月には回復という言葉が削られました。そしてまた、ことし二月からは停滞という表現が使われたわけですね。私は、この停滞という表現というのは、なかなか経企庁としては使いたくなかった言葉ではなかろうか、それほどこの停滞という言葉経済界、また国民にも大変心理的な、はかり知れない影響を与えるという意味で、停滞ということは本来なら避けたかったでありましょうが、今回使われた、これは思い切った表現の変更だと思っております。しかし、現実はさらに景気は急速に落ち込んでいるのじゃないか、私はそんな気がしてならないわけでございます。  と申しますのも、実体経済をいろいろな指標から見てみますと、景気動向指数は、昨年十一月から二カ月間連続でゼロになっている、ゼロ%を記録しておる。このゼロ%が二カ月間以上続くというのは、先ほど申しましたバブル崩壊後の不況期に当たります九二年の三月から五月、あれ以来ほぼ五年ぶりなんです。また、設備投資先行指標となります機械受注、これがまたほぼ五年ぶりに連続して前期より減っておるわけですね。  さらに、私が最も気になりますのは、一月の労働力調査で、男性の完全失業率が過去最高の三・七%となったということでございます。これは台湾やシンガポールやマレーシアに比べても高い水準でございます。調査内容が違うかもしれませんので、これはすべて正しいかといえばそうとも言えないかもしれませんが、それでも高い水準にある。また、あの経済混乱のさなかにありますタイの九八年の見通しと同程度なんですね、この三・七%。これはやはり大変な、驚くべきことではなかろうかと思っています。  また、政府は九七年度実質成長率実績見込みを〇・一%程度、九八年度見通しを一・九%程度としておりますが、実体経済を見ておりますと、九八年度も九七年度に引き続きマイナス成長と予測する向きもあるわけでございます。  以上申し上げましたような実体経済の数値から見ますと、今日までの政府景気認識は、非常に厳しい言葉になるかもしれませんが、大変甘かったと言わざるを得ないのじゃないか、私はそういう気がしてなりません。  経済企画庁長官、テレビ等いろいろなところで御発言されておりますが、改めまして我が国景気現状認識をお尋ねしたいと思います。
  4. 尾身幸次

    尾身国務大臣 ただいま横光委員がおっしゃいました、不況からの脱出最大政治課題であるという点については、まさに同感の思いでございます。  景気現状でございますが、純輸出は、輸出強含み輸入おおむね横ばいということで、増加傾向にございます。設備投資は、全体として伸びが鈍化しているという状況でございます。個人消費は、四月-六月の、いわゆる消費税引き上げに伴う駆け込み需要反動減が予想以上に大きかった、そしてその後、やや立ち直りの兆しが見られましたけれども、秋口にかけまして、アジア諸国金融経済状況あるいは相次ぐ金融関係機関破綻等によりまして、いわゆるマインドが非常に低下をいたしました。  家計調査によります消費性向で見ましても、九月の七一・九%から一月には六八・六%へと、四カ月間で三・三ポイント低下をしているという状況でございまして、三・三ポイントといいますと、概算でございますが、年率で約十兆円ぐらいの需要減でございます。したがいまして、消費者及び企業経済の先行きに対する信頼感というものが低下をしていることが大変大きな問題であるというふうに理解をしている次第でございます。  そこで、昨年の十月の初めころは、実は金融機関等の相次ぐ倒産によりまして、金融恐慌ではないかと、私自身、そのときにはそういう言葉は使わなかったのでありますが、そういう大変パニック的な状況がございました。それに対しまして、実は金融システム安定化法案を出して、預金者等の保護を図りつつ金融システムそのものを守るという対策を講じたところでございまして、その法案が二月に通りまして、現在その資金資本注入という段階に来ているわけでございます。  したがいまして、全体としてのムードは、つまり金融システム不安感ということに対するムードは上がってきておりまして、株価等に反映しているわけでございますが、しかし、その影響が今度は実体経済の方に来ているという状況でございまして、なお停滞している厳しい状況であると認識しております。  時間もございませんので詳しくは申し上げませんが、私どもといたしましては、十年度予算の予定どおりの通過も願いながら、万全の対策を講じてまいりたいと思う次第でございます。
  5. 横光克彦

    横光委員 今長官の、やはり非常に厳しい現状であるという認識だということでございます。  また、金融恐慌というお言葉を使われましたが、確かに、金融面では今、日経平均株価が一万七千円前後になり、最悪底割れは回避している現状ではなかろうか。さらに、今お話がございましたように、金融システム安定化法案によって、最悪事態は免れている状況にあると思います。  しかしながら、ここで一つ注意しておかなければなりませんことは、昨年秋以降のアジア経済混乱、これが現在の経済指標の中にはまだほとんど織り込まれていないわけです。それでも我が国経済は急速に落ち込んでいる現状なんですね。ですから、このアジア経済混乱影響が今後日本経済動向を一段と悪化させるおそれ、これはまた十分にあるということも認識しておかなければなりません。  また、もう一つ指摘したいことは、世界経済、とりわけアジア地域日本との相互依存が深化していることであります。現在、日本の対アジア貿易は、輸入輸出ともに四割の比重を占めているわけですね。昔は、日本風邪を引けばアジア経済風邪を引くと言われておりました。それが今はもう、アジア経済風邪を引けば日本風邪を引くというような状況にまで来ている。こうしたボーダーレス化した経済を通じて、円安傾向にあるにもかかわらず、輸入物価がこの二月には何と対前月比四・二%も減少している、これも驚くべきことだと思っております。完全な輸入デフレではなかろうか、このように思っております。  こういった構造的なデフレ、さらにまた、これに加えて、言うまでもありません、膨大な不良債権処理に伴う一層の資産デフレの進行、これらを見据えた政策をこれから構築することが必要でなかろうかと思っております。景気現状は、既に消費税導入に対する駆け込み需要反動減というような領域をはるかにもう通り過ぎている、それほど悪化している、そう認識すべきである、このように考えております。  時間がございませんので、通産大臣に一言お伺いいたしますが、省エネ促進についてちょっとお尋ねいたします。  今回、省エネ法改正案国会提出されたわけですが、別途環境庁温暖化防止法の検討を行っていると聞いております。内容によっては規制が重複することも懸念されております。つまり、工場やあるいは事業所が、温室効果ガスの削減あるいは合理化計画を、片や国の方に、片や都道府県の知事に提出するというようなことになりかねない。これは全国展開している企業にとっては、もしこのようなことになりましたら、二重規制になりまして大変厳しくなるわけですね。そういった意味からも、政府地球温暖化対策推進本部決定では省エネ法政府温暖化対策と私は認識していたのですが、政府の考え方及び通産大臣環境庁との調整への取り組みについてお伺いいたしたいと思います。
  6. 堀内光雄

    堀内国務大臣 お答えを申し上げます。  ただいま横光先生の御質問にございましたように、地球温暖化対策について、環境庁の方からも法案の案が出てくるのではないかというような御質問、統一されたものでなければいけないのではないかというお話がございました。  我が国地球温暖化対策につきましては、内閣に設置をされました、内閣総理大臣本部長とする地球温暖化対策推進本部というものが設けられておりまして、対策具体化とフォローアップをそこで行うことになっております。通産省提出をいたしております省エネ法改正というのは、昨年の関係審議会合会議報告書あるいは地球温暖化対策推進本部決定に基づきまして、関係業界及び関係省庁とも十分に相談をしながら条文案を完成して、現在関係省庁と最後の調整を行っているところでございます。  一方で、地球温暖化防止法案につきましては、中央環境審議会中間答申が出されたというふうに聞いておりますが、これを受けて環境庁として何らかの法案提出するのか、仮に提出をする場合にはどのような法案提出するかについては、私どものところはまだ承知をいたしておりません。  いずれにいたしましても、環境庁によって何らかの法案が立案されるということになりましたならば、地球温暖化対策推進本部総理本部長とするところでありますが、ここにおいて十分検討されることになると思いますので、先生の御心配のような整合性の合わないようなものにはならないというふうに考えていただきたいと思います。
  7. 横光克彦

    横光委員 どうぞひとつ、よろしくお願いいたします。  終わります。ありがとうございました。
  8. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次に、松本龍君。
  9. 松本龍

    松本(龍)委員 おはようございます。民友連松本龍と申します。  堀内通産大臣尾身経済企画庁長官、私は、臨時国会から質問をする機会がありませんでしたので、きょう、こういう政治状況経済状況の中でお二人が御努力をされていることに、まず心から敬意を表したいと思います。これからもしっかり汗を流していただきますように、まず御要望申し上げたいと思っております。  また、尾身経済企画庁長官には、この商工委員会で、以前、大変歯にきぬ着せぬ言い方で弁舌を振るわれた、そういう当時の尾身ファンとしては、今、少し歯にきぬを着せながらマスクでもかぶられたように、ちょっと物足りなさを覚えているところでありますけれども、きょうは元気を出して御答弁を願いたいと思っております。  今、横光委員も言われましたように、景気がかなり低迷をしております。一方、日銀に本格捜査でありますとか、大蔵省のキャリアの逮捕でありますとか、もう前代未聞という言葉が死語になりつつあるのじゃないかというくらい、毎日毎日大きな出来事があっているような状況でございます。  このごろ、結婚式に行きましても、不景気の話、貸し渋りの話等々で、そういうお祝いの席でもそういう暗い話が出ておるのは、私だけではなく、皆さんも十分御承知のことだというふうに思っております。公的資金導入等々で今対策を練られているわけで、私個人としては、銀行への公的資金導入は、これから迎える金融ビッグバン、これに対して時代に逆行しているのではないかという懸念を持っているものであります。  アメリカの例を取り上げてみますと、アメリカで一番最初に大きな金融破綻が起きまして、それを救済したという例は、一九八四年、コンチネンタルイリノイという銀行を救済した例があるのですが、これは、当時のお金でいわゆる百億ドル、一兆円以上のお金アメリカの預金保険機構から投入をされてまいりました。これは結局、経営陣がすべて入れかわって再建をしたわけですけれども、このコンチネンタルイリノイの例で二つの教訓があるというふうに言われています。  一つは、結果的に借金も返してしまったからいいじゃないかという議論と、もう一方では、こちらが多数を占めているのですけれども、このときにここを助けたから、ほかの金融機関経営再建あるいはリストラ、不良債権処理等々を怠ってきた。したがって、このことに対する評価がその時点で分かれて、しかも今、後ろの方の評価が多数を占めているようになっております。事実、八四年以降、八五年から九年にかけて、大体百から二百のオーダーで毎年銀行がつぶれてきて、その処理に対してアメリカも大きな痛手をこうむってきたという事実があったわけであります。  そういう中で、つまり、コンチネンタルイリノイを助けた理屈というのは、ツービッグ・ツーフェールといいますか、つぶすには大き過ぎるという、最初、ある意味では当たり前の議論があってやられたわけですけれども日本という国はそういうこともなかなか言われない状況があって、いわゆる場当たり的にずっとこの間対策がとられてきている、そのことが私は今日の状況を招いているのだというふうに思っております。そういう意味で、アメリカはこういう教訓を生かしながら練習問題を解いてきたわけですけれども日本はまた新しい状況を迎えているわけで、これから頑張らなければというふうに思っているところであります。  まず、通産大臣質問がありますけれども、今、貸し渋り対策ということが言われております。そういう中で、ここにおられる委員皆さんはすべて、年末から年始にかけていろいろ後援会や新年会等々で、貸し渋り対策に万全を期すというふうに言われておると思いますけれども、貸し渋り対策について、これは与野党問わず大きな課題でありますので、万全を期すという決意をまずお聞きしたいと思っております。
  10. 堀内光雄

    堀内国務大臣 お答えを申し上げます。  先生の御指摘のとおり、貸し渋りの問題は深刻な問題になっております。通産省が先月公表しました実態調査によりますと、中堅、大企業の約四割、これが貸し渋りを受けている、また貸し渋りの影響中堅、大企業にまで及んできているということが出てまいっておりまして、中小企業についても、約三割が貸し渋りを受け、五割を超える企業が今後の貸し渋りに非常な懸念を持っているという状態であります。  こういう状態を踏まえまして、政府としては、政府系金融機関、ここに新たな融資制度というものを創設をいたしまして、総額二十五兆円の資金量を確保する対策を実施をいたしておりまして、現下の厳しい状況を踏まえて、この体制をしっかりと守っていかなければならぬというふうに思っております。  去る二月の二十日には、今の中堅、大企業の問題も深刻な状態になるということも考えまして、日本開発銀行等の貸し渋りの関連融資につきまして、民間金融機関による協調融資が困難な場合には、今までの融資比率、五割を超えてはいかぬというような状態をさらに引き上げることにいたしまして、対策の拡充を決定をいたしたようなところでございます。  今度は年度末を控えまして、引き続き予断を許さない状況になってきているというふうに思いまして、当省としては、事業者のニーズを適切にくみ上げて、事態の推移を注意深く見守りながら、企業資金調達円滑化に万全を期してまいりたいと思っております。  また、金融システム安定化二法が成立をして現在その実行に移っているところでございますが、金融機関への資本注入などによりまして、民間銀行中心とした金融システム安定化対策を講じているところでございますので、私といたしましても、民間金融機関において企業への必要な資金調達を十分に行えるように、この制度を実施しただけで貸し渋りがなくなるというものではないと思いますので、大蔵省を通じ、またきょうは総理からも直接、各金融機関に対して貸し渋りをしないように要請をするなどの会議ども行うことになっておりまして、この年度末を控えての万全の措置をとってまいる覚悟でございます。
  11. 松本龍

    松本(龍)委員 さらなる万全の措置をとっていただきますように、再度お願いを申し上げたいと思っております。  経済企画庁長官にお伺いをしますけれども長官所信の冒頭に「金融機関経営破綻アジア地域における通貨金融市場混乱等を」というふうに書いてございます。今まさにアジア危機日本危機でもあるというのは、皆さんの一致する見解だと思います。  きのうちょっと福岡から来られたある方とお話をしたのですけれども、年末から年始にかけて韓国からのホテルのお客さんが、福岡はもとより、大分の別府でありますとか、キャンセルが相次いでいる。つまり、アジア不況は即こちらにも影響するという話があったわけですけれども、そういうマクロ的な意味で、アジア通貨危機、あるいは先ほどの貸し渋りも含めて、これからの経済に対する尾身長官決意のほどをまずお伺いしたいと思っております。
  12. 尾身幸次

    尾身国務大臣 先ほど松本委員がおっしゃいました金融対策の問題でございますが、公的資金導入というようなことで、ビッグバンに逆行するのではないかというお話でございまして、私はそういう御意見も十分理解できるところでありますが、あの十二月の初めの状況というのは、金融機関の相次ぐ破綻によっていわば経済全体、国民全体がパニック状態に陥っていたという感じもございまして、そういう意味では、緊急事態への対応であるというふうに御理解をいただきたいと思います。  その結果として、金融システム安定化法案が通り、各種の施策、そのことによります対応がなされることの中で、私は、株価等動向に見られるように、やや心理的な好転もある、少なくとも金融機関の相次ぐ破綻というような状況はそう心配ないなというふうに国民の意識が変わったという意味で、非常に大きなプラスであったというふうに考えております。  それから、アジアの問題につきましてはおっしゃるとおりでございまして、アジア経済は昨年中ごろ以降、急速に問題が生じてきておりまして、通貨価値が大幅に下落をしたり、あるいは幾つかの倒産生産低下等が起こっておりまして、これは日本経済にとりましても大変大きな問題でございますし、また、世界成長の一番の中心であると言われているアジア経済動向をそういう意味で立て直していくということが、日本にとっても大変大事なことであるというふうに考えております。  一つは、日本経済をしっかりと立て直して、そのことによってアジアを引っ張っていくということもございますし、もう一つは、インドネシア、タイ韓国等に対しますIMFを中心とするいろいろな意味での支援等を通じまして、アジア経済そのもの回復を手助けをしていく、そういうことも同時に行っていかなければならない、大変大事な課題であると考えておりまして、これからも全力で取り組むつもりでおります。
  13. 松本龍

    松本(龍)委員 先ほどの貸し渋り対策お話ですけれども、私は、今銀行がちょっと逆行していると言っているのは、いわゆる優良な企業債権すらも今回収しようとしているところがあるわけで、これは、いわゆる悪い資産をそのまま持ちながらよい資産を手放しているというふうな状況もあると私は思っております。  さらに、ある財界の方のお話ですけれども、こういう記事が載っておりました。「今度の金融システム安定化策は、結局、新手の護送船団方式ですね。欧米の銀行は、「日本金融機関は永久にだめだ。体質が改善されることもない、将来も競争相手としては全く取るに足らない」と思うでしょう。だから、格付け機関のレーティングもあまり上がらないでしょうね。彼らはその銀行体質が強化されるかどうかを見ている」、表面上の数字だけではないというふうに述べておられます。まさに、体質が改善をされなければならないということをまず申し添えておきたいというふうに思っております。  次に、昨今の話題でありますけれども政治家と株の関係がきのうも自民党の皆さん議論をされたというふうに聞いております。当初は百万の利益や損失が出たら公開をすべきだとか、すべての株取引を公開すべきであるとか、刑事罰を設ける、設けない等々いろいろ議論があるやに聞いておりますけれども通産大臣経済企画庁長官個人のお考えで結構ですから、政治家と株の関係、どう思われているのか、御質問をいたします。
  14. 堀内光雄

    堀内国務大臣 お答えを申し上げます。  我々閣僚は、同居の家族の分まで含めまして、すべて資産を公開すると同時に、すべて信託銀行に預けまして、一切株の取引をしてはいけないことになっております。  同時に、国会議員も資産の公表を行うことになっておりまして、国会議員としての立場で考えますと、少なくとも政治家は身辺を清潔にしていかなければならない立場のものだというふうに考えますので、株の取引、これは特に売買をしてもうけたりすることであるというふうに思いますが、そういう株の取引については全面的に公開をするということは、私も賛成でございます。
  15. 尾身幸次

    尾身国務大臣 いろいろな経済の情報をとり得る立場にある者として、インサイダー取引の可能性のあるような株取引は自粛すべきであるというふうに考えております。  閣僚についての株取引の問題は、先ほど通産大臣からお答えをいただきましたが、そのとおりでございます。  私自身は株は持っておりません。  ただ、経済企画庁長官として、実はこの点について大変に憂慮している点がございまして、政治家の株の保有が悪いことである、あるいは取引が悪いことであるというような議論の過程を通じて、国民一般に、株取引あるいは証券市場への参加参入ということに対して、何か悪いことをしているというような印象を与えることは、実を言いますと、大変経済に対してマイナスの効果を及ぼすものでございまして、そういう点については、やはり近代社会における株取引、それぞれの人が自分の資産運用という形で、あるいはそれぞれの企業が最善の効率を上げていくという観点で、正常な株取引あるいは証券市場の発達というものが日本経済にとって大変大事である、その点だけ、その一番の基本的なところはぜひ間違えないような形での御議論を願いたいというふうに感じている次第でございます。
  16. 松本龍

    松本(龍)委員 それぞれのお立場から今株についてお話があったわけですけれども、先般、新党平和さんが政治家の株取引はやめようということをアナウンスをされまして、これは私は一つの意義のあることだというふうに思っております。今経済企画庁長官がお立場からそういうことを言われるのは、私も理解はできます。しかし、このところ言われております一任勘定でありますとかつけかえとか、そういったものは、私はとてもひきょうでとてもアンフェアなことだというふうに思っております。こういったことに関してはしっかり皆さん声を上げていただきますように、心からお願いを申し上げたいと思っております。  話はがらりと変わりますけれども、今、長野の冬期パラリンピックをやっておりまして、三月九日にアイススレッジスピードスケートの女子千五百メートルで金メダルをとられました土田和歌子さんという方がおられて、映像で見られたと思いますけれども、ハンディを持たれながら、非常な努力をして金メダルをとられたわけですけれども、ここに至るまでは非常に多くの努力があったというふうに思っております。  彼女は高校二年のときに交通事故に遭って、九カ月間入院をして、そのときに言っていたのが印象的でしたが、早く車いすに乗りたかったということを言っていたそうです。ところが、早く車いすに乗りたかったというその基盤が日本の中にあるかというと、住居のつくりもそうですけれども、車いすで自由に動ける空間というのがなかなか今の日本の中にはない。  そういった意味で、今バリアフリーという言葉がありますけれども、私ども民友連としましても、バリアフリー社会の実現支援ということを打ち出しておりまして、これは建設省に限らずほかの省庁も、いわゆるバリアフリーということはキーワードになるというふうに思っておるわけですけれども通産大臣、このバリアフリーということに関して通産省としてのお取り組みがあっているのかどうか、あればどういうことなのか、お話を聞かせていただきたいと危います。
  17. 堀内光雄

    堀内国務大臣 バリアフリーの問題につきまして、高齢者の方々あるいは障害者の自立、社会参加の支援というようなニーズが非常に増大をいたしてきておりますから、通産省としても、バリアフリーの推進が非常に重要なことだというふうに認識をいたしているところでございます。  具体的には、情報機器の操作の問題あるいは障害者の方々への配慮のための技術的な指針、いろいろの制度の問題も含めまして、そういうような指針を定めてその普及に努めるとともに、バリアフリーの住宅に関連した技術開発等も推進をいたしているところでございます。  また、標準化の観点からも、本年の二月に、工業標準調査会にバリアフリー化への取り組みを行う特別委員会を設けまして、そこで今後その成果を日本工業規格、JIS規格でありますが、このJIS規格にするとともに、バリアフリーの製品の国際ガイドラインとして、国際標準化機構、ISOといいますが、これに提案をする予定でございます。これに加えまして、現在、産業分野として期待されておりますバリアフリーの製品につきましてもその市場規模を調査中でございまして、これに基づいて今後の施策の方向を取りまとめて、引き続き積極的にこのバリアフリーの問題の取り組みを進めてまいる覚悟でございます。
  18. 松本龍

    松本(龍)委員 バリアフリーというのは、住居の段差をなくすとか階段をスロープにつけかえるとか、そういうことではなくて、今おっしゃいましたように、まさに情報化の問題でありますとかさまざまな問題を含んでおります。  私もちょっと勉強して気がついたのですけれども、電話の五のところ、一、二、三、四、五、六、七、八、九と、下にゼロがありますけれども、五のところに突起がありまして、これもバリアフリーだ、つまり五を押さえると操作がしやすいということで、これもバリアフリーというふうに言われております。まさに、ユニバーサルデザインというふうな観点から取り組んでいただきますように、また、これからもほかの大きな役職につかれると思いますけれども、両大臣、こういうバリアフリーということを心に入れていただきながらこれからも取り組んでいただきたいということを申し上げたいと思います。  私は、この間新聞記事を読みましてちょっとびっくりしたことがありますので、そのことについて御質問をしたいと思っております。  毎日新聞の三月四日の記事ですけれども、「鉄塔大倒壊」というふうな記事がございました。これは二月の二十日の午後一時二十分ごろ、香川県坂出市の、四国電力の特別高圧送電鉄塔が根元から倒れた。高さが七十三メートル、重さが二十八トンの鉄塔が倒れたわけであります。しかも、これをずっと調べていきますと、いわゆるねじれとかそういうのではなくて、すっぽりボルトが抜けておったりして、これはいわゆる施工ミスとかそういうことではなくて、人為的なものだろうというふうに言われております。また、おとといのテレビでも、広島県でもそういうボルトが抜かれた例があったということを報道されておりました。  私は、これは、愉快犯だとしたらこの商工委員会で取り上げるのも何かなというふうに思ったのですけれども、人為的にやられたとしたら、結構これは命がけでやっているわけですから、何らかの意図があるのだろうし、またそこの下に人がいなくて幸いでしたけれども、これが住宅密集地で起きるということになればまた大きな事故になっていくということでありますので、資源エネルギー庁の方から、この事故の経過あるいはこれからの対策について御報告を願いたいと思います。
  19. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘のございました二月二十日の四国電力の送電鉄塔の件につきましては、当日、当省も鉄塔専門家あるいは当省職員を派遣をいたしまして、原因究明に取り組んできたところでございます。  これらの調査や四国電力からの状況の聴取等の結果で見ますと、鉄塔倒壊に際しまして、鉄塔基礎部分や、基礎部分と鉄塔を接続するボルトに大きな力が加わった形跡がございません。かような事実から、何者かによってボルトが倒壊前に抜き取られていたと推定をされまして、人為的な原因であると認識をいたしてございます。  さらなる原因究明につきましては、現在地元警察が捜査を進めておりまして、その捜査結果を見守ってまいりたいと考えてございます。  また、今後の対策につきましては、鉄塔倒壊事故に関連をいたしまして、電力各社に対しまして二月二十三日、巡視点検の強化を指示をいたしました。また、二月二十六日に再発防止対策の検討及びその報告を求めているところでございます。順次電力会社から対応方針の報告を受けておりますが、来週中には出そろう予定でございまして、ボルト、ナットの抜き取り困難化対策という内容でこの再発対策をとってまいりたい、かように考えてございます。
  20. 松本龍

    松本(龍)委員 再発対策ではなくて再発防止対策ですね。  今この質問をしましたのは、ニュージーランドの首相が今来られておりますけれども、オークランドシティーで実は四本のケーブルが切れて、あそこは全体を合わせると百万都市ですけれども、詳しくはわかりませんけれども、一カ月以上何か停電をしているそうです。それで実情を聞いてみますと、大きな企業が電気のあるところに、都市から郊外に引っ越しているというふうな状況があるというふうに聞いております。  そういうことを聞きましたので、それもあわせてちょっとお聞きをしたのですけれども、これは小さな事故のように見えて、私は、これから先のことを考えると、大きな意味を持っているというふうに思っております。溶接をする、接着する、あるいはキャップをする、コンクリートで固める等々いろいろありますけれども通産大臣、このことに関して一言だけ、万全を期すということの御発言を願いたいと思います。
  21. 堀内光雄

    堀内国務大臣 先ほどこの防止対策についてエネルギー庁長官の方から、現在調査をし、しっかりとする対策を行うということを申し上げましたが、電灯の問題というのは本当に民間にとりましても家庭におきましても大変な問題でございますので、この問題についてはさらに真剣に取り組みまして、万全を期してまいりたいと思っております。
  22. 松本龍

    松本(龍)委員 最後の質問でありますけれども尾身経済企画庁長官にお尋ねをいたします。  所信を読んでおりまして、非常に大事な言葉がありました。それは消費者契約法でありますけれども、私もこのことに関しては一日も早く今の消費者事業者のトラブル等々をなくしていく、消費者保護に万全を期していただきたいというふうに思っております。  これのスケジュール等々、いろいろあると思うのですけれども、一日も早くこの法律の制定に向けて万全を期すというふうなことがあろうかと思いますけれども、スケジュール等を含めて長官決意のほどをお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  23. 尾身幸次

    尾身国務大臣 経済政策の運営の基本が、いわゆる事前規制から市場ルールの整備、事後チェックという方向に進んでくることがございます。それから、消費者を取り巻く環境が急速に多様化、複雑化をしておりまして、トラブルが大幅に増大をしているわけでございます。そういう中で、販売方法とか契約、解約に関するものが近年急速にふえておりまして、平成八年度で約八割、二十七万件というのが消費生活センターに寄せられた苦情、相談になっているわけでございます。  このような状況のもとにおきまして、消費者事業者の間の契約の適正化を図るという課題が非常に大事になってまいりまして、そのために、いわゆる消費者契約法の立法化が極めて重要であるというふうに考えております。  この具体的内容につきましては、去る一月二十一日に国民生活審議会の消費者政策部会におきまして中間報告が出されました。その中間報告の内容でございますが、あらゆる契約につきまして、契約の基本的事項など、消費者の判断に必要な重要事項について情報提供が供給者側からなされなかった場合に、消費者が契約を取り消すことができる、それが第一点であります。  二点目が、長時間にわたる強引な勧誘あるいは威迫、威力を持って圧力を加えるという意味でありますが、または困惑させた場合に、これも消費者が契約を取り消すことができる。  それから三点目は、人身損害等について事業者を免責するような条項など、消費者に不当に不利益となる契約条項があった場合にはそれを無効とすることができるというような内容の中間報告が出されているわけでございます。  今後、さらに国民生活審議会におきまして、最終報告に向けまして検討を続けていただくわけでございますが、その間に関係各省やあるいは各界からの幅広い意見を求めまして、できるだけ速やかな法制化を図ってまいりたいと考えております。  私どもといたしましては、来年の通常国会には法案提出ができるように全力を尽くしてまいる所存でございまして、また、委員の皆様の御意見もそういう中からいろいろと承りながら正しい方向を決めてまいりたい、そのように考えている次第でございます。
  24. 松本龍

    松本(龍)委員 ありがとうございました。  終わります。
  25. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次に、伊藤達也君。
  26. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 引き続き質問をさせていただきます。伊藤達也でございます。  堀内通産大臣そして尾身経済企画庁長官所信に対して質問をさせていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いを申し上げます。  まず、通産大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。  所信の中にも、また、今の同僚の松本委員からの質問の中にも貸し渋りの問題、これは相当な決意を持って対策をしっかりやっていくのだというお話がございました。この点について、私はもう少し突っ込んでお話をお伺いをしたいというふうに思っております。  昨年もこの問題について質問をさせていただきました。そのとき私の方から、中小企業に対する貸し渋りだけではなくて、これはもう中堅企業に広がっていくのではないか、したがって、中堅企業に対する貸し渋り対策というのもしっかりやつてほしいというお話をさせていただきました。そのことにも、検討して早急に対応していくのだというお話を大臣からお伺いをしたわけでありますが、先ほど通産省としての最新の調査の結果についてもお話がございましたけれども、この貸し渋りという問題はもっと深刻化をして、中堅企業から大企業にまで広がっている、こういう状況であります。  先月も三菱重工が、これは黒字の企業であります、それが一千億資金不足に陥って社債を発行しなければいけない、こういうことが公表されたわけであります。三菱グループの中核企業ですらこういう状況になっている。これは大変厳しいといいますか、深刻な状況にあるのではないかというふうに思うわけでありますが、もう一度、この貸し渋りの現状について通産大臣がどのようにお考えになられているのか、お話をお伺いをしたいと思います。
  27. 堀内光雄

    堀内国務大臣 伊藤議員にお答えを申し上げます。  先ほども御答弁申し上げましたけれども、貸し渋りの対象というものが中堅、大企業まで及んできているということは、二月に行われました通産省調査によりましても、約四割の企業が貸し渋りを受けているということを言っております。また、この年度末に向かっては、さらに五割以上の中堅企業、大企業が貸し渋りの懸念を出しております。そういう意味で、大変厳しいものになってきているということを感じております。  そういう意味から、今度の金融法案というものをひとつ真っ先に御承認をいただいて、この数日の間に実行に移されているということになっておりまして、これは自己資本の充実というものと同時に、この貸し渋り対策に対しての対応としても大きな意義を持っておるというふうに思っております。  ただ、この二兆円何がしの自己資本充実というものによって貸し渋りが終わるというふうには思いません。当然、今までの銀行対応としては、こういう機会に選別融資を行うというような意図を持っているところもあるように聞いておりますし、そういう意味合いで、少なくとも公的資金を投入した以上は、各銀行の貸し出し姿勢というものを真っ当なものにしなければいけないということから、きょうは総理民間銀行をすべて呼びまして、そこで貸し渋りの対策を要請をするということも行っているところでございますし、我々もそれに向かって大いに協力をしながら、まず民間銀行の貸し渋りのないように努力をするということもいたしてまいりたいと思っております。  それに関連して、やはり民間銀行から貸し渋りのために流れてくるものがございます。そういう貸し渋り対策については、政府系金融機関がしっかりと受けとめてこれを万全の対策をしなきゃいかぬというふうに思いますが、先生御指摘のように、中堅企業あるいは大企業の方に回ってまいりますと、今の政府系金融機関においてはなかなか対応できないところがございます。制度上あるいは法律上できないものがございますので、今の開発銀行などにおきましても、制度を変えたりしながら、また資金の枠を渡したりしながら、こういう大企業中堅企業に対する融資の対応というものに万全を期するように政府としても取り組みを行っております。  中小企業につきましては、もちろん、前回も申し上げましたように、政府系金融機関、全力を挙げて約二十五兆円の資金を用意し、また保証の方もさらに大きな枠をつくりまして、今まで非常に保証の制度の中では、当事者以外に第三者の保証を設けなければいけないというような制度もありましたが、その第三者の保証を外すとか、いろいろな制度の弾力化を行いまして、この年度末に向かっての対応をしっかり行おうということで万全を期しているところでございます。
  28. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 今、大臣から、もう全力を尽くしてこの問題に取り組んでおられると。その様子はよくわかったわけでありますけれども、私はそれでも、今のこの貸し渋りの状況を本当に改善していくことができるのかなという非常に強い危機感というものを持っております。  選挙区に帰りますと、もう本当に中小企業の方々から悲鳴に近い声というものを、これは私だけではなくて、多くの議員の方々が聞いているのではないかというふうに思うわけであります。その貸し渋りのケースというのはいろいろあると思います。例えば、私もこの間地元に戻りまして、税理士さんやあるいは会計士さんから事細かに、民間の金融機関の貸し渋りということについての具体的なケースを聞かせていただきました。ここまで来ているのか、もうこれは貸し渋りを通り越して資金回収に入っているな、そういうふうに思わざるを得ないケースもあるわけであります。  例えば、今回も保証協会の保証の枠を大きくしました。保証協会の保証がおりても民間の金融機関がそれをなかなか引き受けてくれない、これをたらい回しにするわけです。自分のところでは、保証はついているけれどもやはり資金を出したくない、そういうケースがあります。恐らく大臣のお耳にもそういったことは上がってきているのではないかというふうに思いますが、それ以上に実態は厳しい。そういうことを含めますと、私は、今政府が万全を期しているというよりもさらに一歩進めて、特に中小企業に対するこの貸し渋り対策というものをやっていかなければいけないのではないかというふうに思います。  通産省からいただいた調査結果を見ても、例えば、政府系の金融機関は、融資の決定金額を見ると一二五%以上の伸びを示している。特に、担保不足に悩む中小企業を支援していくためのマル経融資、これは何と一六七%も伸びを示しているわけでありますね。このマル経融資についても限度額を一千方に引き上げたわけでありますけれども、私は、これでも足りないのじゃないかなというぐらいの問題意識を持っております。そういう意味では、もっと突っ込まなきゃいけないのじゃないかなという気持ちを持っているのですが、もう一度この点について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  29. 堀内光雄

    堀内国務大臣 先生のおっしゃるとおり、非常に厳しいことを私も各方面から報告を受けておりまして、役所といたしましても、昨日も中小企業庁長官を初めとして全員に集合してもらいまして、そして、現状でこういう問題、ああいう問題という具体的な問題を含めまして、制度上できないような問題もいろいろございますが、これを弾力的に、年度末ですから、まず、あと二十日間の問題に対して、これは弾力的行為を多少幅を広げても行うようにしなければいけない。  例えば、開発銀行においては設備資金に関連するものでなければだめだということになっておりますが、昔つくった設備に関連するものが現在資金不足になっているという理屈になって運転資金的なものが流れるようになっても、こういう時期にはやむを得ぬというふうに考えて、そこまで、いろいろなケースを含めて直接各金融機関に向かっての指導をするように、窓口においても、今までの制度のもとにおきますと、出てきたものを見て、これはだめだと言っておしまいになるようなものがあっても、それは必ず支店長まで持ち上げて、さらに支店長がそれに対して弾力的対応ができるものは弾力的対応をする、そして、それは担当者の責任にはしないようにするぐらいのことを考えろというような、いろいろなきめ細かい指示をいたしているところでございますが、さらにいろいろと問題がございましたら、お話しをいただきまして、具体的に対応をしてまいりたいと思っております。本当に全力を尽くして取り組んでまいります。
  30. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 今お話がございましたように、融資の使途でありますとか限度額でありますとか、あるいは期間について、これはもうできるだけ弾力的な運用、一時的であっても、今はもう全力を尽くさないといけないと思いますので、ぜひ、さらなる御努力、そしてきめ細かな対応をお願いしたいと思います。  それと、私は、貸し渋りの議論をしていくに当たって一つ欠落している議論があるのではないかというふうに思います。これは今までの予算委員会でも議論が出てこなかったのですが、郵貯の存在であります。  私もこれを調べてみますと、昨年、実は郵貯は一年間で約十四兆七千億円預金残高がふえているのですね。郵政の三事業についていろいろな議論がありました。そのときは、この郵貯の預金の残高の伸びは、とまったり、あるいは減少したりしているのです。しかし、この一連の金融破綻というものが起きて今日まで、例えば十二月、一月、二月、この三カ月間で何と七兆円も預金残高がふえているわけであります。本来であればこの七兆円は民間の金融機関に行っていたお金かもしれない、そのお金があれば、もっと積極的に民間の金融機関は融資を実行できたかもしれない。この問題は、私は、貸し渋りの問題を考えた場合にも、あるいはこれから金融ビッグバンということに挑戦をしていくことを考えた場合にも、もう避けては通れない問題として考えていかなければいけないのじゃないかなということを感じております。  そういう意味で、通産大臣は今の貸し渋りの現状を一番よく理解をされているわけでありますから、この問題を含めて、本当にどういうふうにして考えていかなければいけないのか、ぜひともここでお考えをお伺いしたいなというふうに思います。
  31. 堀内光雄

    堀内国務大臣 先生御指摘のとおり、十月の末から二月の末までの郵便貯金へのシフトの額は七兆三千億円、極端に言うと、拓銀一行分で六兆円でありますから、それ以上のものが流れているということになっているわけでありまして、そういう意味合いでまいりますと、非常に今の金融のシフトというものが偏在をしてしまっているという面もあると思います。  そういう意味で、郵便貯金への預金シフトについては、昨年の十一月以降の金融システムの不安というものから、民間金融機関への国民の不信というようなものが高まってきた結果がそちらに流れてきたのだろうというふうに認識をいたしておりまして、一つの大きな自然の流れをつくってしまったというふうに感じるわけでございます。  企業への影響という観点からまいりますと、こういう資金シフトは民間金融機関資金繰りが悪化していることには、先生のおっしゃるとおりつながっていると思います。貸し渋りの一因にもなっていると思います。このため、銀行預金の保護の徹底などを含めた、先ほどから申し上げておりますような金融システムの安定化法案をお通しいただき、それを実行に移して、今一般銀行への信頼感回復させるところの努力をしているところでございまして、そういう意味合いから考えますと、信頼感が戻ればまたシフトが戻ってくるのではないかというふうな期待をいたしているところでございます。  そういう意味で、公的金融については民業補完という基本的な位置づけが与えられておりまして、原資である郵便貯金の残高が増加したことをもってその位置づけが変わるものではないわけでございまして、これから民間金融機関の充実をしっかりしてもらうことによって対応を行えるようになるのではないかというふうに考えております。ただ、現状においては、そういう事態があらわれてきているということを考えますと、民間の補完というよりも、今の政府系金融機関が前面に立ってこの事態を解決していくために取り組んでいかなければならないというふうに思っているところでございます。
  32. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 次に、私も商工委員会で大変御指導いただきました尾身長官に御質問をさせていただきたいと思います。  私は、この貸し渋りを含めた金融の問題の広がりというのは、九七年度の行き過ぎた緊縮財政政策をとったことに大きな原因があるのではないかというふうに私個人は思っております。一連の金融機関経営破綻の直接の引き金を引いたのは、やはりマクロ経済政策運営というものが必ずしもうまくいかなかった、そのことによって景気が悪化をして、それが背景になって株価が急落をして、そのことによって起きたのではないかというふうに私は思っております。  こうした状況の中で一・九%の経済成長率を達成していく、確保していくということは、私は、よほど政策の転換をして、景気回復に向けての具体的な、マクロ経済政策の方向性を打ち出していかないとやはりなかなか難しいのではないかなという気持ちを非常に強く持っておりますので、これはどういう形で一・九%の成長をしていくのか。先ほど、大変厳しい経済状況にあるというお話長官からあったわけでありますけれども、この点についてお伺いをさせていただきたいと思います。
  33. 尾身幸次

    尾身国務大臣 今お話をお伺いしておりまして、貸し渋りの問題についてちょっと一言お話をさせていただきたいと思うのであります。  ただいま通産大臣からいろいろお話のございましたようなことが非常に大きな問題であると思っておりますが、いわゆる資産デフレ、株価及び土地の価格が非常に下がった。特に土地が、例えば中心部では三分の一とか二分の一になってしまったことによって、銀行の土地担保金融というものが限界に突き当たっているというふうな感じがするわけでございまして、土地担保金融中心とする貸し出しを資金供給チャネルだけとしているような金融システム全体のあり方について、再検討するべき時期であるというふうに考えております。  したがいまして、ベンチャーとかあるいは中小企業に対する資金供給は、単に銀行からの資金供給ということだけではなしに、あるいは出資とか、あるいは証券市場等を通じて資金供給が流れるようなことも経済構造改革の一環として考えていかなければならないのではないかというふうに考えて、現在、私どももその辺についての検討も進めているところでございます。  来年、経済運営の問題でございますが、私どもは、消費税の引き上げに伴います需要減というのは、実は九年度経済見通しを立てるときにも相当程度織り込んでいたわけでございまして、四月-六月は低いな、しかし、その後は順調な回復軌道に乗るというふうに見通しを立てておりました。  その回復軌道の乗り方というのは、主として民間経済の活力を生かしていく、民間企業の活力を生かしていくということで考えていたわけでございますが、九月以降秋口、早いものはタイの七、八月ごろでございますが、秋口からアジア経済タイ韓国、インドネシア等を中心とするアジア経済金融経済状況が非常に困難になってまいりました。  それから、十一月ごろ、これは一つは今お話しのバブルの後遺症、不良債権処理が完全に終わっていなかった、解決がついていなかったということもあると思うのでありますけれども金融機関の幾つかの連鎖的な破綻があった。そのことによって、十月以降、企業及び消費者経済の先行きに対する信頼感というものが非常に低くなってまいりました。  したがって、消費者の懐はそこそこ豊かであると現在でも私は思っておりますが、しかし、ひょっとすると御主人が、立派な会社に勤めているけれども、山一や北拓というような会社までつぶれるようなことなのだから、ひょっとすると自分の御主人の会社も危ないのじゃないか、そういうような感じがございまして、消費者が財布のひもをぎゅっと締めてきた段階が十月から十一月、十二月、一月にかけてあったと思うわけでございます。  したがいまして、そういう消費者企業経済の将来に対する信頼感回復するということが最優先の課題であるというふうに私は考えております。その一つ金融システムの安定化でございまして、それは既に実行に移されておりまして、株価等にも反映され、そして、いわゆる金融システムが崩壊するというような不安感、パニック的な不安感は、既にここ三カ月ぐらいの間にほとんどなくなってきたというふうに考えております。  しかしながら、実体経済の面ではまだまだその影響が残っておりまして、非常に厳しい、停滞という表現であらわすような状況になっているわけでございます。  私どもはそれに対しまして、先ほど来もお話にございますが、既に行いました政策としては、金融システムの問題のほかに所得税の特別減税、それから補正予算、ゼロ国債も入れて事業規模で二兆五千億円に上ります補正予算、そういうものが既に実行に移されておりまして、二月、三月にその対策が現に経済に効果を及ぼしているというふうに考えております。  それから、お願いをしております十年度の予算及び法人税の減税、あるいは土地関係税制の減税を含めました関係法案、これをぜひとも三月いっぱいに通していただいて、四月からお金が使えるように、それからまた、有価証券取引税の減税も四月から実施できるようにぜひお願いをしたいというふうに考えている次第でございます。  それからもう一つは、十一月にまとめました緊急経済対策の中で、例えば電気通信とか労働者派遣事業とかあるいは土地の有効利用とか、そういうことに対する規制緩和をかなりやりました。やったのでありますけれども、その関係の法律はつい最近国会に出されて、法律が国会を通るのは四月とか五月とかいう段階になるというふうに考えております。  そういう各種の政策が全部一体的になされていきますと、お互いに相乗効果を持って景気は徐々に回復軌道に乗り始めるというふうに考えているわけでございます。  しかしながら、同時に、総理もいつも申し上げておりますように、経済は生き物でございますから、私ども経済金融状況に応じまして臨機応変、適時適切な対策をとるべく、今努力をしているところでございます。  現実に、経済企画庁といたしましては、総理の御指示もございまして、自民党の第四次緊急国民経済対策を受け、また、昨年の規制緩和を中心とした緊急経済対策のフォローアップというようなことの経済活性化のための具体的な政策の詰めを行っているところでございます。  そして、そういうことに加えまして、各種の施策を行うことによって、適時適切な施策も含めまして、十年度における一・九%の成長率はぜひ達成をしたい、また達成できるというふうに考えている次第でございます。
  34. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 私も、これは前向きな議論をしていかなければいけないというふうに思っておりますので、何か揚げ足をとるつもりは一切ございません。特に、長官が今前段でお話をされたことは、私も全く同意見であります。  ただ、金融の問題と経済の問題をやはり切り離すことはできないだろう。特に、一昨日も山崎自民党政調会長から十兆円規模の補正予算という話が、予算を審議している今日、出ているわけでありますから、やはり政策を大きく転換しなければいけないという問題意識が与党の中でも相当あるのだろうなということを私たち認識をしなければいけないというふうに思っておりますし、そして、私たち自身も今までの政策を見ていて、例えば金融不安について、三十兆円を入れたのだ、これによって金融システムに対する不安を解消して、事態はよりよくなっていくのだというふうにおっしゃっておられますが、三十兆円のお金を入れるという話をされたのは昨年の末であります。しかし、これを表明しても株価は戻らなかったのです。これはもう長官承知のとおり、一万四千円台まで急落をしてきた。そして、株価が戻ってきたのは、一月十二日以降、政府がマクロ経済政策景気を立て直していく方向に変えていくのだ、そのシグナルが出たことによって株価が上がってきたのではないかというふうに私は思います。  したがって、今日までの非常に神経質な相場を見ていても、この方向性があいまいになっていると株価は落ちていくのですね。だからこそ今、先ほど減税というお話もございましたが、やはり大型な減税をして、通産大臣からも所信の中で、法人税の大胆な改革に取り組んでいかなければいけないというお話がありました。私は、さらに所得税の減税も必要だと思います。そういう大型の減税をして、民間の力を信じて、その潜在力を引き出していくような、そういう積極的な政策に勇気を持って転換をしていくことが必要ではないかというふうに思っております。  時間が非常に差し迫ってきたものですから、この議論を続けたいわけでありますけれども、これで次の質問に移らさしていただきたいと思います。  次は、通産大臣の今回の所信の中の第二の課題として、経済構造の改革を強力に推し進めていくのだ、そのためにまずベンチャーの育成というものに積極的に取り組んでいくのだ、こういうお話があったわけであります。  私も商工委員会に所属をさしていただいて、この問題については、尾身長官も御存じのとおり、いろいろな提案をさしていただき、また、これは与野党の枠を超えて、幾つもの課題について、これを解決する形で商工委員会で大きな成果を私は出してきたのではないかというふうに思います。  特に、昨年の通常国会の中でも、私は、これからのベンチャー企業を育成していくに当たって、さらに六つの課題があるということをお話をさしていただきました。  一つは、先ほどの尾身長官の話にも関係していくかもしれませんが、店頭市場の改革というものをもっとやっていかなければいけないということであります。  二つ目は、これは実現をしましたけれども、ストックオプション制度の一般化、この問題であります。  三つ目は、ベンチャー企業の創出のための税体系というものを新たに確立していく必要があるだろう。そこで、私自身は、アメリカの百九十万社が利用している、通常の会社であっても法人税を課すのではなくて出資者に対して所得税を課す、Sコーポレーションというものを持ち出して、こういう税体系に取り組む必要があるのじゃないかというお話をさせていただきました。  さらには、投資家とベンチャー起業家とのマッチングシステムの構築というものをしっかりやっていかなければいけない。そして、産学官の連携を深めていかなければいけない。具体的には、テクノロジー・ライセンス・オフィスといった制度というものを導入していく。これは今回の法律にも入っておりますけれども、そういうものを実現していくべきだというお話もさせていただきました。  そして六番目に、休眠特許の有効活用というものをやっていく。  それぐらいの政策をパッケージにして早急に実現をしていかなければ、本当の意味での経済構造の改革というのは私はできないのではないかというふうに思います。  アメリカは一九八〇年代に、これはベンチャー企業が頑張って、何と一千九百万人の雇用を創出したのです。大企業が三百五十万人の人員をリストラしましたけれども、ベンチャーが頑張って一千九百万人の雇用を創出した。新規の雇用創出の何と八割はベンチャーが生み出したわけでありますね。私は、これがやはり経済構造の改革の一つのイメージではないかというふうに思うわけであります。  そこで、まず大臣にお伺いをしたいのは、店頭市場の改革に絡む問題であります。昨日、内閣が証券取引法の改正について閣議決定をしたわけでありますが、この改正については、店頭市場を活性化していくに当たって阻害することになるんじゃないかな、そういう不安を私も感じざるを得ないようなものが含まれているような気がいたします。これについては通産省の現場でもいろいろ問題意識を持っておられたのじゃないかと思うのですが、一連のいろいろな経緯もあったと思います。その点も踏まえて、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  35. 堀内光雄

    堀内国務大臣 御指摘のように、ベンチャー企業に対して円滑に資金を供給させるためには、店頭市場の活性化が大変重要なことでございます。  それに関連して、今回の証券取引法の改正で、日本証券業協会が運営をしてきた店頭市場が、取引所市場と同様、法律上の位置づけになってくるわけでありまして、それが、先生のおっしゃるこれからの店頭市場の活性化に影響を及ぼすのではないかという御意見につながっていると思っております。  その結果、ただいま申し上げたように、店頭市場が取引所市場と同様の法律上の位置づけになるということに関連いたしまして、店頭市場の開設者は証券業協会に限定をされますが、仮に新たな主体が店頭市場を開設しようとする場合には、大蔵省はその設立認可のための適切な対応を行わなければならないということになっております。したがいまして、通産省といたしましては、ベンチャー企業等の店頭市場での資金調達者の立場に立って、新市場の開設を含めて、引き続き店頭市場の活性化が行われるように努めてまいりたいと思っております。  と申しますのは、店頭市場自体は、それぞれ申請をした場合には、大蔵省が設立認可のための適切な措置を行うことになっておりますから、新しい店頭市場というものも開設できることになっておりますし、そういう、それぞれの活性化をできる、今までのように極端に縛られたような店頭市場ではない、新しい市場の開設というものにつながっていくというふうに考えて、その点は御懸念ないようにできるようにと考えております。
  36. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 もうその点はぜひお願いしたいわけでありますが、きょうは大蔵省の担当の方もお見えだと思いますので、その点の確認をさせていただきたいと思います。  昨年の通常国会でも、現在の通産省の事務次官からも、この新しい店頭市場の創設というものを積極的にやっていくのだ、こういう御発言もあったわけでありますが、そういう新しい主体というものをしっかり認めていくのだということなのかどうか、担当の方からぜひお話をお伺いしたいと思います。
  37. 柏木茂雄

    ○柏木説明員 ただいま店頭登録市場について御質問いただきまして、私どもとしても、かねてから店頭登録市場が、ベンチャー企業を含めまして成長産業に対する資金供給の場として非常に重要なものであるというふうに認識しております。  先生承知のとおり、これまでもいろいろな各般の政策を講じてきておりまして、昨年以降に限りましても、例えば七月に借り株制度を店頭登録市場に導入するとか、あるいは信用取引制度導入するとか、いろいろな各般の政策を講じてきております。  また、先ほど先生も御指摘になりましたとおり、昨日、証取法の改正を含めます金融システム改革法を閣議決定さしていただきました。その中におきまして、従来、店頭登録市場というのは取引所市場の補完的位置づけという形になっておりましたけれども、それを抜本的に見直しまして法律上位置づけまして、信頼されるべき市場としていこうというようなことを含めました金融システム改革法を閣議決定さしていただきまして、早急に国会で御審議いただくことになっております。  そういうことを含めまして、私どもとしても、今後とも店頭登録市場を活性化していくということで続けてまいりたいと思っておりますけれども、やはり基本的には、市場として信頼されるべき、投資家にとって信頼されるべきものであるということは、一つ重要な点ではないかと思っております。
  38. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 これは柏木さんにもぜひ御理解を賜りたいと思うのですが、私は、店頭市場の現在の低迷というのはやはり構造的な問題だろうというふうに思います。  昨年も、課長から今お話がありましたように、信用取引やあるいは借り株制度導入をしていけば流通面の改善はできる、店頭市場は活性化していく、こういうお話があったわけであります。しかし、昨年一年間振り返ってください。店頭市場の下げ幅は、約六〇%近く急落しているのです。全然改善されないのです。市場としての機能を発揮してないわけです。これはやはり構造的な問題を含んでいるというふうに思わざるを得ない。  したがって、アメリカのNASDAQのようにマーケットメークの機能を強化していく、あるいはその他のいろいろな規制というものを取り外して、本当に投資家にとって使い勝手のいい、そしてベンチャー企業にとっても、こういう市場に登録をして直接資金を調達をして、そして企業を大きくしていこう、そう思えるような夢のある市場につくり変えていく必要が私はあるのではないかと思います。今のJASDAQとNASDAQを比べてみても、例えば登録の企業数は、日本の店頭市場は七分の一、売買代金は何と百分の一なんです。もうアメリカと全く比較ができない。こういう低迷した状況です。  これはもう根本的に店頭市場のあり方というものを変えていかなければ期待にこたえられるような市場にはなっていかないのじゃないかなというふうに思っておりますので、ぜひ通産大臣、これはここまで来るまでも大変なことでありました。しかし、もっとこれはやっていかないと本当に期待にこたえられるような市場になっていきませんので、ぜひとも大臣のリーダーシップを政治家として発揮をしていただきたい、そのことをお願いをしたいと思います。  そして次に、産学官の連携の問題、この問題についても今国会法案が出ております。私も問題提起をさしていただいて、早速にこの法案が出てきたことは大変うれしく思っているわけでありますが、ここでもまた肝心なポイントがどうも今回の法律の中には欠落をしてしまっているというふうに思っております。  それは、今回の法律では、国立大学の先生がベンチャー企業の経営者になりたいと思っても経営には参加できない、あるいは、みずからベンチャー企業を起こしていきたいと思っても国家公務員法との関係でそれができないわけであります。  私は、通産省の現場は、国家公務員法の特例措置というものを盛り込んでこれもできるようにしようと努力をされたのじゃないかと思いますが、現実には、恐らく人事院の壁にぶち当たって日の目を見ることができなかったのではないかと思います。しかし、これをやらなければ、本当の意味で産学官連携をして大学の研究成果というものを産業界に移転をして、そして新しい業を起こしていく、新しいビジネスを起こしていく、技術というものを産業にきっちり植えつけていく、そういう流れはできないと思います。ここはやはり大臣として本当に政治決断が求められている案件じゃないかなというふうに思いますので、大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  39. 堀内光雄

    堀内国務大臣 先生おっしゃるとおり、大学などの研究成果を活用いたしまして新規産業を創出をする、技術の面で支援をする観点から、大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律案を今国会に出させていただいておるわけであります。  技術移転を円滑化するためには、国立大学の先生企業の役員を兼務することについては、国民全体の奉仕者たる国家公務員の性格、昨今の公務員倫理をめぐる議論などにも留意をいたしまして、兼業の認められる範囲、要件等につきまして十分吟味する必要があるわけでありますが、通産省といたしましては、産学連携の強化を通じて新規産業の創出を強力に推進する立場から、国家公務員法の特例規定を盛り込む必要性を含めて関係省庁と今検討を進めているところでございまして、あきらめているわけではございません。
  40. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 あきらめているわけではないと力強いお言葉がありましたから、ぜひ実現をしていただきたいと思いますし、私たちも立法府としてこれは実現しなければ、商工委員会委員先生方も恐らく問題意識を共有していただいていると思いますから、これはもう修正案を出してもぜひ実現をしていきたい、私はそういう気持ちでおるわけであります。  次に、先ほどもお話をさせていただいたベンチャー企業創出のための税体系の問題。これは、昨年エンゼル税制というものを導入をしました。まだどれぐらい利用されているのかという数字はこれから出てくるのだろうというふうに思いますが、やはり税の問題というのは非常に大きいのではないかというふうに思います。  エンゼル税制の議論のときにも私はお話をさせていただきましたが、アメリカの場合には、エンゼルというものが何と百万人近くいるのですね。そして、年収一千万から二千万の人たちが、大体二百万から五百万ぐらいの金額を身近なベンチャー企業に投資していくわけであります。その総額は大体一年間で二兆円、投資残高として二十兆円、民間のお金が出てくるわけです。  しかし、日本の場合にはまだまだこれが実現をしておりません。私は、エンゼル税制だけではやはりだめだろう、もう一歩踏み込んでいかなければいけない、これは日本の税制の体系を大きく変えていくことにもつながる、非常に大きな議論をしていかなければいけないということはよくよくわかっているわけでありますが、ただ、今の現状を考えると、この分野にも踏み込んでいく必要があるのではないかと思います。  昨年の通常国会においても、先ほど申し上げましたようなSコーポレーションというものを例にとりながら考えてほしいという御提案をさせていただいたわけでありますが、今通産省の中でどういう議論がされているのか、また、恐らく大蔵省の方々ともいろいろな議論が始まっているのではないかというふうに思いますが、その状況についてお話を伺うことができればと思います。
  41. 堀内光雄

    堀内国務大臣 御指摘のとおり、通産省といたしましても、ベンチャー企業へのリスクマネーの供給を円滑化する上で税制措置の果たす役割が極めて大きいということの認識は持っているところでございます。具体的には、当省としては、これまでもストックオプションの制度導入円滑化する税制等、各種の税制措置に努めてきたところでございます。  また、今国会提出をいたしまして御審議をお願いする中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律というものに関しては、組合段階では課税されない扱いとしているところでございます。  御提案の米国のSコーポレーション方式については、これを我が国導入する場合に、我が国の租税体系上どのような性格をつけて行うべきかというような問題、あるいはSコーポレーションの認定の際にどのような要件を設けるべきか、米国の場合においては、株主は三十五名以下とかいろいろの制度がございますが、そういう要件を設けるべきかどうか、どういう要件を設けるかというようなさまざまな議論が必要であるということで研究をいたしているところでございます。通産省といたしましては、今後ともベンチャー企業の創出、成長を促進していく考えでございまして、Sコーポレーション方式を含めて、税制のあり方について幅広く研究を進めてまいりたいと思っております。
  42. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 私はどの世代も夢の見れるようなそういう日本というものをつくっていかなければいけないというふうに思っておりますので、堀内通産大臣そして尾身長官にさらに頑張っていただくことを心よりお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  43. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次に、大畠章宏君。
  44. 大畠章宏

    ○大畠委員 同僚議員の伊藤議員の大変格調の高い御質問の後に、私自身も、通商産業政策等々の技術論あるいは精神論を織りまぜて大臣に御質問をさせていただきたいと思います。  今回の通産大臣所信表明演説を拝聴させていただきましたけれども、第一番目に景気回復というものを取り上げられました。そして、さまざまな御指摘の中で、新規産業の創出のための環境整備というもの、あるいは中心市街地の活性化の問題、さらには地球温暖化防止対策などの循環型の経済社会の構築、そして国際経済環境の整備、行政のスリム化など、多岐にわたる現在の日本の基本的な課題についてのお考えを表明していただいたわけであります。私は、このような大臣の所信表明を受けまして何点か御質問させていただきますが、まず最初経済問題があるわけでありますが、その経済の基盤をなす問題について御質問させていただきます。  それは、昨今、いわゆるバブル経済から始まっておるのですけれども、どうも日本の国というのは何を基盤にして成り立っているのかということを忘れてしまったのじゃないか。いわゆる物づくりというものを軽んずる社会的な傾向があることを大変私は憂えるわけであります。  労働組合というと、今ちょうど春闘のさなかでありますが、賃金の問題あるいはまた諸制度の処遇の問題というものを取り上げているところでありますが、実はゼンキン連合という労働組合団体がありますが、そこで「モノづくりの再発見」という小冊子をつくられました。大臣もごらんになったかもしれませんし、もしもごらんになっていなければ両大臣にお届けしたいと思いますが、その中で何を憂えているかといいますと、これまで日本は、欧米に追いつけ追い越せという合い言葉で、製造業に求心力が集中しながらずっとやってきた。しかし、その時代はもう終えたのじゃないか。いわゆるプラザ合意を境に、階段の踊り場に立たされたのじゃないかということ。そして、日本の産業を支えてきた機械工業が歯槽膿漏的な崩壊現象を引き起こし、技能、技術の集積に影を落とし、技術の空洞化と言われている原因になってきている。  そして今、現場では、汗を流し物づくりに打ち込む人に対する評価は低く、若者たちにその魅力を感じさせることのできない環境にあると言える。さらに、三K色の強い基盤技術の部門においては、きつい、汚い、危険とみずからをやゆし、墓穴を掘った結果ともいえ、技能、技術の育成、集積、伝承の面から見れば危機状況にあると考える。いわゆる製造業における人づくりの空洞化が考えられ、早急な対策が迫られている。  言ってみれば、このままでは、技術立国を言っていた日本がもう危ないのじゃないか。したがって、この物づくりというものが日本の基盤であるということをもうちょっと社会的にも認識するような社会転換をしてもらいたいという切実な意見が出されています。  そこで、物づくり基本法というものを制定すべきじゃないかという考えでありますが、物づくり基本法の基盤というものは、どちらかというと精神的なものではないかという御批判もありますけれども、学校での教育あるいは社会的な物づくりというものの考え方、そういうことを技能、技術の面からも含めて社会的に整備していく。改めて日本という国が、やはり資源も余りない、その中で勤勉さ等々で今日までの日本を築いてきたのですが、今、金融問題がいろいろ取りざたされております。金融も大切でありましょうけれども日本にとって、やはり日本を栄えさせていくためには物づくりというのが基本なんだという、そういうことの流れをつくっていく必要があるのじゃないか、そういうことをこの小冊子ではうたっているわけであります。  通産大臣におかれまして、この物づくり基盤の整備について、人材育成も含め、また日本の、もうかればいいというような社会的な風潮が強いわけでありますが、それをどう切りかえていくのか。そして、非常に経済危機が言われているのですけれども日本経済の基盤をなすのはやはり物をつくることなのだ、そういう社会に転換していかないと、単に三十兆円を金融危機だからといって投資をするだけで、私は日本の再興というのは図れないのじゃないかと思うのですが、そこら辺に対する大臣のお考えをいただきたいと思います。
  45. 堀内光雄

    堀内国務大臣 委員の御指摘のとおり、日本経済の活性化あるいは将来の経済の展望というものを考えたときには、何としても物づくりというものが基盤にならなければならないと思います。物づくりが基盤になって発展して、初めて三次産業その他も広がってくるというふうに思っておりますので、先生と全く同意見でございます。  特に、近年の海外への工場の移転などによりまして空洞化が行われてきている状態というものは、これを改善していかなければならないのは基本であります。  先般、ドイツの経団連の会長の人とお話を申し上げましたが、ドイツにおいては、近年において基盤整備を行った結果、逐次、空洞化して出ていった企業が国内に戻りつつあるという話も出てきております。そういう意味での政策をしっかりと取り組んでいくことが、これからの日本経済の基盤の発展のために重要だというふうに思っております。  そういう意味で、通産省といたしましては、物づくりを支える基盤的技術の保持あるいは育成や人材の確保、育成に向けた総合的な対策が必要不可欠であるという認識のもとに、当面、各省との政策連携のもとで施策の実施に万全を尽くしてまいる覚悟でございますが、その具体的な取り組みについては、事務方の方から御説明を申し上げます。
  46. 並木徹

    ○並木政府委員 お答え申し上げます。  メガコンペティションという大変厳しい状況の中での物づくりの重要性ということにつきましては、委員御指摘のとおりでございまして、政府各省一体となった総合的な施策を、また地域の資源と申しますか、地域のイニシアチブというものを十分活用しながらこれを進めていくということが基本でございますけれども、具体的には、昨年六月でございますけれども、特定産業集積の活性化に関する臨時措置法を通していただいたわけでございますが、これに基づきまして、全国におきまして既に十六地域の基盤的技術産業集積の活性化計画を承認したところでございます。  これらの地域におきましては、この法律に基づきます技術開発でございますとかあるいは人材育成などの支援に加えまして、労働省の雇用政策、地域雇用開発等促進法に基づく雇用政策との連携でございますとか、あるいは道路整備事業の重点的投入といったような総合的な政策によりまして、このような物づくりの基盤強化に関する総合的な施策の支援が講ぜられつつあるところでございます。  それから、昨年の五月に閣議決定されました経済構造の変革と創造のための行動計画を踏まえまして、御指摘の高齢化でございますとかあるいは若者の製造業離れに対処いたしまして、物づくりを支えます優秀な技術者、技能者の確保、育成を図るために、来十年度から抜本的に予算措置等を講じまして、全国から人材を受け入れて行う広域的な技術研修でございますとか、あるいは地域地域におきましてものづくり協議会というものをつくっていただきまして、これによります地域インターンシップの推進等によります産学の連携等々の推進を含めまして、抜本的かつ総合的な施策を推進することとしておるわけでございます。  通産省といたしましては、このような総合的な施策の連携の中で、御指摘の物づくりのための基盤的な技術あるいは人材の確保、育成に向けまして、その施策の実施に万全を尽くしてまいりたいと考えておるところでございます。
  47. 大畠章宏

    ○大畠委員 今、大臣並びに事務方からお話をいただきましたけれども、私は昨今の社会現象を見ましても、大臣にとっても理解のできないような事件が多発し始めています。これは学校内での本当に不幸な出来事ですが、大量生産、大量消費という使い捨ての時代の社会的な風潮が、物を粗末にする。つくるというのは、これは大変なんですよね。しかし、それが経済の流通あるいは新しい経済の流れの中で、本当に二束三文で物が売られる、だから、修理するよりはもう新しいのを買った方がいいですよ、そういう時代になってしまった。  その中で、だんだん物を大切にするという心が失われれば、基本的には物をつくるということも何となく軽んぜられ、結局はいかに流通させて金をもうけるかという、ハウツー・ゲット・ザ・マネー的な、そういう社会の流れが今日本の中にできつつあると思うのですが、私は、これは単に物づくりだけじゃなくて、日本の、日本人の精神的な基盤というものが何となくもう崩れてきてしまっているのじゃないかと思うのです。  したがって、今御答弁賜りましたけれども、この物づくりについては私はもっと危機感を持っていただきたい。こういうことで今やっていますから大丈夫ですよというわけにはいかないと思うのです。  今、小学生、中学生、高校あるいは大学の学生さんにいろいろ聞いても、物づくり産業というより、これまでバブル時代がありましたから、金融業界に入る方が多かったのですが、もっと通産省中心となってというのはおかしいのかもしれないけれども、労働省とか文部省とかもひっくるめて、もっと物をつくることを大切にする、そういう流れをつくっていかないと、私は、この日本の、戦後五十年かかってここまで来た日本でありますが、割ともろく崩れてしまうのじゃないかというような危機感も持っております。さらに、この物づくり問題については、一般質問等がございましたら、後ほどさせていただきますが、もっと厳しく大臣にも、また事務方にもとらえていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  その次に、二番目には、私自身も重電産業で働いた経験がありますが、その当時、収支が非常に厳しい状況もありました。しかし、日本のエネルギーは経済のベースだ、したがって日本のエネルギーというものを、もうかるもうからないで、もうからないからやめるというわけにいかない、何とか日本経済、国を支えるために全力で頑張ろうというような形で現場で仕事をしてきたところでありますが、昨今、この日本経済を支えてきた重電産業、電機産業界が今非常に危機状況にあることは御存じのとおりであります。  私自身も原子力発電所の建設に携わった人間でありますが、平成十二年まで原子力発電所が建設されないということが、いかにその現場の設計者、技術者にとって厳しい状況かということは前にも申し上げたことがありますが、いわゆる通産省的には痛くもかゆくもないかもしれないけれども、現場はそういうふうな製品の発注がなければ仕事がなくなるわけですね。仕事がなくなれば、当然別な仕事に入らなきゃならないわけですよ。そうすると、いざ立ち上がるときに大変またロードがかかるわけで、これは、これから日本のエネルギー政策上大変問題が起こるのじゃないかということをお話をしていたのです。  この私自身の体験から申しましても、あるいはまた昨今のお話をいろいろ伺いましても、この重電産業というものを、まあこれは民間の企業ですから自然の流れだといえばそれまでかもしれませんけれども日本経済をここまで引っ張ってきた重電産業が抱えている問題というものをどう通産省としてとらえているのか。  片や、日本経済を支えてきたかどうかわかりませんが、金融業界に対しては三十兆円という公的資金導入してまで支援をしようとしている。先ほども貸し渋りの問題がありましたが、貸し渋りじゃなくて、あれは資金回収を始めていますよ。そういうところに対して改めて三十兆円の公的資金を投入して救済しようとしていますが、それよりも日本の国を支えてきた物づくり、それも製造業界、それも電機産業界が危機状況にあるわけでありますが、そういう問題に対して通産省はどういう形の考えを持っているのか。先ほど言いましたように、これは民間の自由競争の一環であるということで片づけられてしまえばそれまでかもしれませんが、大変大きな日本の基幹産業の一環でありますから、通産省として今日のこの状況をどうとらえておるのか、お考えをいただきたいと思います。
  48. 堀内光雄

    堀内国務大臣 先生懸念のとおり、重電産業は、景気の低迷あるいは国際競争の激化、あるいは電力等需要業界のコストの削減の要請等の影響を受けまして、昨今厳しい状況にあることは確かでございます。平成九年の生産額も四兆三千七百億円と、ピークであった平成三年に比べて七・六%減少をいたしているわけです。  しかしながら、御指摘のとおり、今後とも重電産業は、原子力発電を初めとする電力設備を提供していただくという意味で、我が国の社会インフラを支える一番重要な基盤産業であるというふうに考えております。  通商産業省といたしましては、原子力発電プラントの安全性、信頼性のさらなる向上のための研究開発等を通じまして、重電産業の技術力の向上が図られることを期待するとともに、高コスト構造の是正等を目指した経済構造改革を進めることによりまして、我が国重電産業の競争力を高めて、その健全な発展を支援をしてまいりたいというふうに考えております。
  49. 大畠章宏

    ○大畠委員 今の大臣の答弁で今の危機状況回復するとは私はちょっと思えないわけでありまして、先ほど申し上げました物づくりの問題についても、大臣を初め事務方も一生懸命頑張っていることはわかるわけでありますが、それ以上に今厳しい実態にある。  私は前にも申し上げたことがあるのですが、通産省も関連のセクションの意見を聞いているのかもしれないけれども、実際に現場の話も、大蔵省金融業界の話をがんがん聞いているわけですから、それに対抗するわけじゃありませんが、本当に日本を支えてきたのはだれなんだ。そういうことから考えると、まあ上昇機運のときには通産省調整役でよかったかもしれないけれども、今ここまでの段階に入ったら、本当に日本の製造業界は、後ほど申し上げますが、中小企業も大変な状況ですけれども、大手も大変なんですよ。それでまさにアメリカ、ヨーロッパとタイにやっているわけです。  そこら辺、実態をよく聞いて、要するに、こういう法律をつくれば大丈夫だというのじゃなくて、もっと精神的にもあるいは実際的な支援についても踏み込んだ支援策を講じないと、だんだん日本という国は物をつくれなくなるのかな、安ければいいという時代に入ってしまうのじゃないかなという危機感を私は持っております。  ちょっとお伺いしたいのですが、これまでの戦前、戦中、戦後を通して、さまざまな形で日本の産業構造が築かれてきたのですが、正直申し上げまして、需要と供給という面から見れば、日本国内の製造業の受注の能力をはるかに超えていることは事実でありますが、そういうことを考えましても、新たな世界のマーケットを見ながら産業構造の転換を図らなきゃならないという時代に来ていると思うのです。先ほど伊藤委員からもお話がありましたように、ベンチャーの問題もそうでありますし、そういう産業構造の転換というものを真剣にこれから考えていかなければならない。  要するに、円高のときは原価低減しながら何とか頑張ればいいという話があったのですけれども、今日はそういう小手先ではもう乗り越えられない段階に入っておると思いますので、これからの製造業の構造転換、特に新エネルギー分野というのは、地球環境の問題もありますし、新しい分野としては当然考えられているわけであります。これはドイツも今非常に熱心に動いています。  ここら辺を、通産省としてこの産業構造の転換をどういうふうな形で総合的に考えておられるのか、お伺いしたいと思います。
  50. 広瀬勝貞

    ○広瀬政府委員 ただいま大臣がお答え申し上げましたとおり、日本の重電産業というのは、日本経済基盤、社会基盤をつくってきた大変重要な産業でございます。また、重電産業自身も、そういうニーズの変化に応じまして、いろいろ体質の変化をしてきたのだというふうに考えております。そういう中で、今先生から御指摘のありましたように、新エネルギーの開発分野への重電産業の役割というのも大変重要な問題だというふうに考えます。  昨年五月でございますけれども、閣議決定されました経済構造改革のための行動計画におきましても、有望な新規産業十五分野の中に新エネルギーあるいは省エネルギー関連分野というのは入っております。重電産業もこの中で風力発電とかあるいは燃料電池等の分野では非常に大きな実績を持っておりますし、技術力も持っておりますから、そういう分野に対して積極的な取り組みをしていっております。  私ども通産省といたしましても、この行動計画に基づくパッケージに示されました新エネルギーに関する研究開発とか、あるいは導入促進事業に対しまして積極的な対策を講じまして、こういう重電産業の構造的な変化の努力に対して支援をしていきたいというふうに考えております。
  51. 大畠章宏

    ○大畠委員 続いて御質問させていただきますが、今御答弁を賜りましたけれども、私はそこら辺が新しく活路を見出す道なのかな、地球環境問題あるいは日本の社会的な構造を考えても、そういうところが活路なのかなという感じがしますので、そこら辺、もうちょっと現場の技術者が自信を持ってといいますか、誇りを持ってそういう転換ができるようにしていただきたいということをひとつお願いしたいと思います。  それからもう一つは、考えてみますと、自動車もそうですし、重電もそうですけれども日本という小さな島国に余りにも多くの製造メーカーがひしめいているという実態があると私は思うのです。そろそろ世界的なマーケットの状況を見ながら、アメリカでも、原子力メーカーはGEとウエスチングハウスがありましたけれども、GEはほとんど物をつくらないという形になりましたね。  そうなってきますと、私は、日本においても力を結集して世界のマーケット、市場で勝ち抜くような形の体制をつくることがそろそろ必要なのかなということを実感しているところであります。  あるいはまたもう一つは、ドイツのコール首相もそうでありますし、アメリカのクリントンさんもそうかもしれませんけれども、そういう政界のトップ、政治のトップの人が動くときには、国際的なマーケットにおける交渉事まで含めてやっている時代なんですね。私は日本の橋本総理について言及するつもりはありませんけれども、国際マーケットの中で必死になって原価低減をしながらやっているのですが、なかなかそういう国際的な、政治的な力にかなわないということもあるのです。この商工委員会で取り上げることがいいのかどうか迷うところもありますが、私はそろそろ日本においても、前は、日本日本株式会社と言って非難されましたが、今アメリカでもヨーロッパでも、そういう巨大なマーケットというかプラントを受注するために必死なんですね。  そういう意味では、国内の問題もさまざまありますが、そういう時に及んでは、やはり国際の市場での、言ってみれば自由競争の中でのあれでありますから、私は、通産大臣におかれましてもぜひそういう行動といいますか、努力をしていただくことが大変重要じゃないかと思うのですが、そこら辺も含めてちょっと御意見をいただきたいと思います。
  52. 堀内光雄

    堀内国務大臣 御指摘のとおり、近ごろ日本に来日をされます外国の首脳の方々は、大統領あるいは首相その他、大体大企業の経営者の方々を十人ぐらいずつ引き連れてまいりまして、その人たちに我々を紹介をしたり、あるいは意見を聞いてもらったりというようなことをなさっていらっしゃいます。  私は、そういう意味で、先生の今のお話のように、これからの日本の通商政策の取り組みというか、そういう際におきましては、日本でもそういう企業活動を、国際的な意味での活動のできる方々を積極的に誘導するというか支援するというか、そういう形の取り組みが必要になってくるというふうに思っております。海外での円滑な事業活動の展開というものが我が国のすぐれた雇用や技術の維持向上のためにも重要であるというふうに思いますので、発展途上国の経済成長だとかあるいは国民生活の発展に貢献すること等にかんがみまして、各国における働きかけについても、先生御指摘のような面を取り組んでまいりたいというふうに思っております。  あと、具体的なことは、また事務方が御説明を申し上げます。
  53. 大畠章宏

    ○大畠委員 ちょっと時間が迫ってきておりますので、今の大臣の御答弁で結構だと思います。  それと同時に、これまで通産省は、尾身大臣もおられますが、尾身大臣も通産省出身でございますが、通産省としてもこれまで一生懸命、いわゆるグローバルスタンダード化を進めてこられたわけでありますけれども、まだまだ残っているものがあるのですね。だから私は、今大臣からお話をいただきましたけれども日本でつくる基準もアメリカの基準もヨーロッパの基準も、ほぼ同じ基準で物をつくる、そしてまさに世界的な市場の中で、それぞれがいい製品をその需要があるところに供給していくという体制になると思うのですが、さらに私は、通産省としてこの際もう一度日本国内の基準を総見直しして、いつでも日本のつくる基準が世界の基準になっているという、そういう意味で努力をしていくべきだと思いますが、この点についてちょっと現状についてお話しいただきたいと思います。
  54. 広瀬勝貞

    ○広瀬政府委員 御指摘のとおり、標準化というのは非常に大事なテーマでございます。特に日本がイニシアチブをとって標準化を進めていく、国際的な標準化をつくっていくということが、メガコンペティションの時代に競争力をつけていくための非常に重要なポイントであろうと思っております。  重点分野における国際標準化につきましても、蒸気タービンあるいは電力用変圧器等さまざまな分野で進めておりますけれども、今後とも、私ども通産省としましては、産業界の意見を調整しながら、国産標準化の世界で積極的なイニシアチブをとってまいりたいというふうに考えております。
  55. 大畠章宏

    ○大畠委員 とにかく、今本当にメガコンペティションの時代でございますので、まさに通産省が考えている以上に世の中は進み始めているような感じが私はするのですね。これまでは、私は日本通産省というのはやはり一番進んでいるなという感じがしたのですが、昨今の経済、ここ数年の動きでありますが、それ以上にアジアは進み、ヨーロッパもEUを組んでかなりの力を結集し始めている。アメリカアメリカで、かなり経済状況がいいためにがんがん来ている。  こういう状況ですから、国内的な、省内の問題もいろいろ足を引っ張る事態があったりなんかしたかもしれませんけれども、そういうふうなものをきちっと整理しながら、この国際的なメガコンペティションの時代の中で、日本の物づくり、日本の産業というのはどうあるべきかというのを真剣に考えてやっていただかないと、本当に今をピークとして、日本の製造の能力といいますか力がどんどん衰えていく、そんな時代に入ってしまうのじゃないかという危機感を持っておりますので、ぜひ、そこら辺を含めてなお一層の御奮闘をお願いしたいと思います。  次の質問に移りますが、中小企業への貸し渋りの問題については既に伊藤委員あるいはまた松本龍委員から御質問がありましたので、これについては割愛をさせていただきたいと思いますが、ただ、かなり中小企業危機感を持っているということで、日本商工会議所が二十日に東京丸の内の東京商工会議所ビルで危機突破決起集会を開いたという話とか、あるいはこんな話もあるのですね。  「晴れた日に傘を貸して、雨の日に貸さないようなものだ」、これは、ある中小企業の経営者が、無理やり借りてくれと言うのでそのころ借りて事業を展開した。まあまあよかったのだけれども、今ダウンしちゃって、今度は返せという話ですよね。だから、借りる必要もなかったのに無理やり貸されたというのは、晴れた日に傘を貸してくれた、今度は雨が降ってきたから貸してくれと言ったら貸してくれない。  結局、ここのところは、返してくれと言うので、ちゃんと利子も払っていたのだけれども、急に来て、返してくれないのだったら土地とか家屋の売却を考えてくれませんかという話をされた。借り入れは二億五千万と二千七百万の二本立て。二億五千万は、十年前のバブルの絶頂期に銀行に勧められた新規店舗開店のための資金だった。でも、この新規のものはもうつぶれちゃったのですね。そして今返せ返せと言われている。銀行取引は命綱だからと思って一生懸命利子を払ってきた、しかし、何となくその種の方から取り立てを受けているような感じがするというようなものが、幾つかもう紹介されています。  私は、まさに、今貸し渋りじゃなくて金融の回収を開始している、銀行生き残りのために。中小企業もそうですし、大手もそうかもしれないけれども、そういうところが必死になって今乗り越え策をやっているときに、自分のところの金融が危なくなったからといって、一生懸命、黒字倒産まで引き起こしながら回収をしているところに政府が三十兆円もお金を拠出することが、本当に政府の判断としていいのかどうか、日本政府としてそんなことがあっていいのかどうか、私はこれは非常に疑問なんですよ。  それで、先ほどからの話になりますが、製造業界は本当に必死になっている。そして金融の不安の波をもろにかぶっているのが中小企業でありまして、私はそういう意味から、きょう中小企業庁長官もおいででございますけれども中小企業庁長官としてこの現状に対してどうするのか。まさにこれは金融不安の余波を受けて中小企業倒産しているようなものですよ。だから、こういう金融業界の横暴を黙って見ているのかどうか。中小企業庁なんか、逆に言えば、これを許すというのであれば何のための中小企業庁かということになりますよ。したがって、中小企業庁長官としてこの問題に対する御見解を伺いたいと思います。
  56. 林康夫

    ○林(康)政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、現在中小企業者が大変貸し渋りで苦しんでいるというのは仰せのとおりでございまして、先ほど以来大臣の方から御答弁申し上げましたとおり、私どもといたしましても、銀行の方から拒否された中小企業者に対して万全の措置政府系金融機関に対して講じている、と同時に、金融システム全体の安定化を図るという観点から、政府全体として、貸し渋り対策に有効になるという前提のもとに、公的資金投入を含めた金融システム安定化対策を先般以来講じていただいているわけでございます。  実はこのような政策的な支援を受けている金融機関においては、私どもとして、企業資金調達について十分な対応が行われることを期待しているわけでございます。実は大臣以下政務次官、そして私を含めて、民間金融機関においても企業への必要な資金調達に十分な配慮が行われるよう関係方面に従来から働きかけを行ってきておるわけでございまして、政府としてもまた本日、総理も含めて民間金融機関に対して貸し渋り問題の適切な対応を要請する予定と伺っております。  いずれにしろ、政府が、私どもが相当徹底した手を打っているというのは御理解いただいていると思います。ただ、こういった徹底した政府機関を通ずる金融について、中小企業者一人一人に、あるいは政府系金融機関の窓口に対しても徹底した指導をしていく必要がある、また、中小企業者が私どもの打っている手を十分に了知して、そして金融の問題が少しでも緩和できるように私どもとしても引き続き万全の対応をしていきたいと思っております。  これは大臣、政務次官の厳しい、あるいは強い御指導もありまして、既にもう五回も中小企業対策本部を開きまして、私どもの幹部も地方に派遣し、そして個別の金融機関政府系金融機関の代表を集めて、その末端の金融に万全の対応ができるように現在指導しているところでございます。
  57. 大畠章宏

    ○大畠委員 先ほどの事例ではありませんが、まさに長官長官の配下の人が――言ってみれば詐欺に遭ったようなものですよ。とにかく借りたくもないのに金を借りてくれ、借りてくれと言って毎日来て、結局借りて新店舗をつくった、そしてバブルが終わって、つぶれたかもしれないけれども、それで一生懸命利子だけは払っていた、ところがもう返せと言う、これは金融業界の横暴ですよ。だから、今御指摘のように、長官のもとにそういう被害者が出ているわけですから、本当に大蔵省と渡り合ってもいいから、ぜひ中小企業の、いわゆる金融不安の余波を受けて、黒字倒産とかなんかも言われておりますが、そういうところについて救済措置を、広報もちょっと今長官がおっしゃったように足らないのです。どんな救済手段があるのかというのはわからないところがあるので、広報もやらなきゃならないでしょう。とにかく何でも相談してくれという相談窓口も必要でしょう。本当に追い詰められて自殺を考えている中小企業の経営者も今随分出始めていますよ。だからぜひもっと真剣にやっていただきたい。  それからもう一つ中小企業の生きる道として、私はこれまで大手企業の下請的な存在として多かったような感じがしますけれども、これからは中小企業のそれぞれの特性を生かして、ネットワーク型といいますか、そういう中小企業群というものをつくって大手企業に対抗する。要するに、何か仕事はありませんかじゃなくて、自分たちで自分たちの能力を連携して、大手企業に匹敵するような柔軟構造の企業群というものをつくって生きるのが一つの道じゃないかと思いますが、この件については遠藤政務次官に政務次官としての、大臣も一生懸命頑張っておりますが、政務次官も頑張っておられますので、政務次官としてこの問題をどういうふうに考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  58. 遠藤武彦

    遠藤(武)政府委員 大臣御臨席でございますが、大臣から特命で中小企業を担当せいと命ぜられておりますので、大臣の御指導をいただきながら御答弁申し上げたいと思います。  確かに、これまで大畠委員論じられてきたとおり、とりわけ中小企業、特に下請企業の様態というのは、御指摘のとおり、やや変わってきているというか、むしろ懸念材料が見受けられる、こう考えております。というのも、まず、親企業が必ずしも優先発注するような状態にない。むしろ技術力、新しく開発された商品であれば、従来の取引関係を破棄して新しい取引先と取引をするとか、また、下請企業におきましても、みずから進んで新商品を開拓し、技術向上を図って別の新規需要先を開拓するというような形で、ある意味ではかなりドラスチックな変化をしておるのじゃなかろうか、こう思います。そんなわけで、選別化、差異化というようなものが進んでおるのかな、御指摘のとおりだと思っております。  そこで、通産省といたしましては、人材、資金あるいは技術、それから商機といいますか取引チャンスといいますか、そうしたものを支援していかなきゃならない、こんなふうに考えておりまして、実は新規産業連携支援事業であるとかさまざまなコーディネート事業、アドバイザー事業などを新しく盛り込んで、来年度の予算に新しい事業として考えております。  そのほか、御存じのとおり中小企業関係にはたくさんの支援法律がございまして、枚挙にいとまがないほどでございますが、具体的に申し上げれば、経済構造改革の特別調整措置、そうしたものの一環として、先ほど委員、御心配というが御指摘の物づくり、こうしたものを一つ中心に据えていろいろな支援対策を強めてまいりたい。  一つ新規事業といたしまして、新規成長産業連携支援事業として約五億七千万ほど、それから地域活性化アドバイザー等支援事業、これには三億九千万ほどの新規事業、従来の支援事業ももちろん枠を拡大してやっておるところでございます。  既にこうしたアドバイザー事業に対しましては手を挙げておる地方団体もございますので、一刻も早い来年度予算案の御可決をお願いしたい、こういうふうに考えておりますし、今後とも委員からいろいろ厳しい御指摘をいただきながらも御指導を賜りたいと存じますので、よろしくお願い申し上げる次第でございます。
  59. 大畠章宏

    ○大畠委員 ありがとうございました。  これで質問を終わりますが、実は尾身経企庁長官にも質問したいと思いますが、また別のときに質問させていただきます。ぜひ景気がよくなるように尾身長官頑張っていただきますよう期待しまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  60. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時九分休憩      ――――◇―――――     午後一時三分開議
  61. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件の調査のため、本日、参考人として日本銀行企画局長川瀬隆弘君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  63. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 質疑を続行いたします。太田昭宏君。
  64. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 新党平和の太田昭宏でございます。  貸し渋りの問題について質問をしたいと思いますが、今から考えますと、私は、昨年の十一月この動きが、現在の貸し渋りやあるいは銀行を取り巻く状況、もうすべて昨年の十一月に、ある意味では根源といいますか、問題点が集中したのだというふうに思います。そして今、今までさまざまな論議がされてきましたが、この三十兆円が投入されて、そして現実には貸し渋り問題が新たな局面に突入した、私はこういう認識を持っております。  昨年の十一月、「複合不況」を書かれた京大の名誉教授の宮崎義一先生は、貸し渋りには二つある、こう指摘をされております。一つは、昨年の十一月に発生しました三洋、山一、拓銀、徳陽シティの破綻、これはインターバンク市場での破綻である、インターバンク市場での貸し渋りである。これはある意味では生命維持装置を、日銀とは言いませんけれども、全体で、市場ということで外していったという、ある意味では特異な形の、また本質的には非常に危険なインターバンク市場の貸し渋りがある、こういう指摘を宮崎先生はされた。  そして現在、もう一つは、論議をされている銀行企業間のいわゆる貸し渋り。これはBIS八%による早期是正措置への備えということで、昨年の特に十一月ぐらいから急速度にこれが問題化してきている。そして東食の破綻、三十兆の導入、こういう形になって、今日の三月決算期を迎えているという状況にあろうと思います。  私は、さらに言いますと、この十一月といいますと、貸し渋りだけでなくて、いろいろな要素があったと思います。景気低迷の明白化といいますか、また、六月のたしか三日に閣議決定された財革法の一番もとになった閣議決定、そのころは間違いなくそんなに悪いと思っていなかったということを政府部内からも私は聞いています。そして、悪いという認識がありながら、これはなかなか経企庁長官もオーケーとは言わないのでしょうが、あえて財革法を強引に押し通そうとしたという、私は、そこの問題が一つ、十一月、十月の後半からあったと思います。  そしてアジア通貨危機。ちょうど私が財革委員会で質問した十月二十八日、この日、尾身長官に真っ先に私は聞いたわけなんですが、そのアジア通貨危機があり、財革法というものがあり、景気低迷の明白化という事態があり、そこにインターバンク市場というものの破綻があり、そして早期是正措置ということがあって、これがまさに混然一体となって不況感をスパイラル状に上昇させる。そしてパニック到来だ、大不況だ、不安心理が大変火のようになり、貸し渋りが一気にそこで起きてくる、公的資金導入やむなしという声が背景に当然出てくる。こうしたことが私は昨年の十一月という時点であったろうということで、今考えますと、非常に大事な要素をはらんだ十一月だったなという認識をするわけです。  その中で、いわゆる貸し渋り対策としての銀行への資本投入、注入というこの目的と、金融システムの安定という漠然とした目的と、景気対策というこれまた漠然とした目的が併存している。要するに、目的が極めて漠然としているから、いずれの結果もめり張りがつかないような状況の中で今日を迎えているような気がしてならないわけです。  そこでまず、そういう意味では景気認識の誤り、この責任は私は極めて大きいと思います。尾身長官、今申し上げましたが、私は昨年の十月の末に、財革法の質疑で二回にわたって質問をいたしました。ちょうど香港株暴落の日が二回目の私の質問の日で、私は、香港のファンダメンタルズは決して悪くはない、アメリカも、これについては大変かもしれないけれどもしのいでいける、日本が一番大変な事態になりますよ、ファンダメンタルズが悪いからこそ財革法というものをやろうとするんでしようということを言いましたら、長官は、決して日本のファンダメンタルズは悪くはない、「緩やかな回復基調にあるけれども足踏み状態にある」、悲観すべき状況にはない、「景気を、財政構造改革を進めながら民間需要を中心に順調な回復軌道に乗せる」、こういう答弁をされました。  しかし、もうそのときは、私は明確に悪いという状況であったと思います。アジアも、タイを初めとして大変な状況にあり、そしてその後、設備投資が急落をする。これはまた商工委員会の中で大臣にさまざま質問をさせていただきたいと思っておりますが、まず長官、この景気認識の誤り、財革法が今日の事態を招いた、私はこの責任は極めて大きい、こう思いますが、いかがですか。
  65. 尾身幸次

    尾身国務大臣 太田委員のこの御質問があるということで、ファンダメンタルズという言葉意味を一度考え直してみました。  二つ意味があるように思います。一つは、いわゆる最終需要、生産、雇用、物価などであります。それからもう一つは、やや構造的な意味でございまして、例えば対外資産とか技術力とかあるいは個人金融資産とか、そういうやや構造的な日本の力というような意味であると思います。私が十月に申し上げましたのは前の方の意味でございまして、いわば実体経済ともいえる状況についてのお話の中で、ファンダメンタルズは悪くないというふうに申し上げました。  それで、その状況のもとにおきましては、実はアジア影響もそれほど出ておりませんでしたし、それから金融機関の相次ぐ破綻、いわゆるパニック状態になってきましたのは十一月に入ってからでございまして、そういう意味でいいますと、十月二十八日というのは、ちょうどそのいわば境目ぐらいかなというふうに、今思いますと理解をしております。  十一月に入りましてから、三洋証券、山一証券、北拓等々、相次ぐ破綻が起こりまして、そのために非常に心理的に悪い状況になりました。私は、そのときの十二月の初めとそれから現在の二月の末ごろの雑誌の表紙を全部調べました。  ここにあるのでありますが、週刊東洋経済は、十二月十三日号は「金融倒産地獄」、そういうタイトルになっています。それから二月の末には「金融外資の大攻勢」ということで、外資が国内に大攻勢をかけてきたというふうになっております。  エコノミストで見ますと、「金融恐慌本当に来た」というのが十二月二日でありまして、二月二十四日は「生保驚愕」、東邦生命がGEの傘下に入ったということで、向こうから進出してきているというふうになっております。ダイヤモンドで見ますと、「株価ドロ沼破綻の連鎖」というのが十二月十三日でありまして、二月二十一日は「動きだした株価」ということになっております。  つまり、十二月の初めの状況は、週刊誌やこういう経済週刊誌等も含めまして、そういうところが金融恐慌というような言葉を使うほど、いわば心理面においてはパニック状態になり、株価も下がっているという状況にございました。  午前中のお話にもございましたが、一月の中旬ごろから、片方での預金者保護と金融システムの保護、安定性の確保という点を目的とした金融システム安定化法案国会に出され、それによって、この種の非常にパニック的な心理状態を脱却したというふうに考えております。  したがいまして、その後、一月の中旬から現在ただいままで、株価は二千円以上の上昇でございまして、やや金融パニック的な状況は山を越えたというふうに理解をしております。そして、その効果は、実は経済誌等によりますと、将来に対する期待感だという見方もあるわけでございますけれども、私自身はむしろ、金融システム安定化法案によって、金融のパニックはないな、その点だけは安心だなという一番ベースの基本的な認識を確立したように、あるいは信頼感回復したように考えている、感じている次第でございます。  しかしその後、逆に言いますと、今の心理的状況が消費や投資あるいはその他の実体経済の面、十月に申し上げましたファンダメンタルズの面に非常にマイナスの影響を及ぼして、その結果として、十二月、一月、二月と、実は実体経済の面で、私ども表現で言いますと停滞というような表現になるような状況になってきたということでございます。
  66. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 そこで、今、実は非常にデリケートな話をされたと私は思う。まず、私が申し上げたインターバンク市場の三洋のデフォルト、そして山一、拓銀、徳陽シティの破綻、こうした事態が一体現在はどうなっているか。この面は、ある意味では隠れたり、ある意味では大丈夫だというメッセージだと思いますが、なぜインターバンク市場においてデフォルトが起きたのかということについて、日銀、来ていると思いますが、お答えいただけますか。十一月、これは非常に大事な点ですよ。
  67. 川瀬隆弘

    ○川瀬参考人 お答えいたします。  昨年十一月にインターバンク市場において三洋証券のデフォルトが発生したわけでございますけれども、宮崎先生の御指摘の、ダイヤモンドの記事でしょうか、あれを読みますと、日銀が市場への流動性供給を絞ったのではないかというふうなことが書いてございますけれども、私ども理解では、三洋証券では、関連ノンバンクが多額の不良債権を抱えていた、そのもとで関係金融機関の支援を受けて経営改善計画を実施してきていたわけでございます。しかし、関連ノンバンクの方は、不動産市況の低迷もあって、資産内容のさらなる悪化を食いとめることができなかった。また、それを支える証券会社本体も、証券市場の低迷が続く中で六期連続の大幅赤字を余儀なくされて、これ以上の経営改善計画の遂行は困難と判断するに至ったものというふうに聞いております。  この結果、三洋証券では関連ノンバンクについて法的措置をとることになった。それに伴って、証券本体もその関連ノンバンク向けの債権が不良化をしまして、通常の事務の継続が困難になったということでございます。  このために三洋証券は昨年の十一月三日に会社更生法の適用を申請して、裁判所の保全命令が出る。保全処分において、すべての債務、その中にインターバンク取引も含まれるわけでございますけれども、その法的な保全処分によって債務不履行が生じたものでございまして、私どもが市場への流動性供給を絞ったという事実もございませんし、また、三洋証券のインターバンク市場におけるデフォルトが、市場への流動性供給を絞ったことが影響したということもないというふうに考えております。
  68. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 確認しますが、そこに意思が働いたか働かないかということについて、イエス・ノーだけで結構です、お答えください。
  69. 川瀬隆弘

    ○川瀬参考人 これは証券行政に関することでございますので私どもお答えするべきことかどうかわかりませんけれども、私どもの意思が働いたということはございません。
  70. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 一般的には十二月ぐらいから落ちつきを見せた。これは貸し渋りとかいうことの、宮崎先生の前段階の話としてはなかなか話題にならない。ですから、ある意味では、インターバンク市場がほぼ落ちつきを見せて安定化している。しかし、現実はかなり、今度の安定化法の中で、逆に言いますと、十三兆とかいうよりも十七兆円の方が効いてきているかもしれない。十七兆ということで保護されるということになりますと、インターバンク市場の方は逆に、これはまさに市場原理そのものが働いてきて、意外とここは不安定な状況に今あるのではないか、私はそういう気がしてならないわけなんです。  このインターバンク市場が今市場原理の中でなかなか際どい状況ではないかと私は思うわけなんですが、いかがですか。
  71. 川瀬隆弘

    ○川瀬参考人 お答えいたします。  今先生から御指摘がございましたように、昨年十一月に金融機関経営破綻が相次ぎまして、短期金融市場では資金取引に対する警戒感が強まった。金利全般に対して強い上昇圧力がかかりました。こうした事態に対しまして、私どもでは、三月の期末を越えるような長目の調節手段なども用いながら、金融市場に対して潤沢な資金供給を行って、安定的な市場金利の形成に努めてきたわけでございます。  そうしたもとで、それではインターバンク市場の金利がどうなっているかということを見てみますと、翌日物の無担保コールレートというのは、昨年十一月には一時公定歩合の〇・五%をかなり上回る水準まで上昇いたしましたけれども、十二月以降はほぼ一貫して公定歩合をやや下回る水準で、総じて安定的に推移をしております。  一方、やや長目の金利、例えば代表的な三カ月物の金利の方は、昨年秋までは、十月までは〇・五%台の水準であったわけでございますけれども、それが一%を超える水準にまで上昇しまして、その後もごく最近に至るまでは高どまりが続いてきております。しかし、その三カ月物の金利も、私どもの思い切った金融調節などを受けまして、このところ明確に低下し始めておりまして、最近では〇・八%台まで軟化をしております。  このように、私ども金融調節の効果というのが、金融システム安定化策具体化ということも相まちまして短期金融市場全般に浸透してきておりまして、インターバンクの資金取引もひところに比べれば明らかに落ちつきを取り戻してきております。ただ、資金取引に対する市場参加者の警戒感が完全に払拭されたわけではございませんで、ただいま申し述べました三カ月物が〇・八%台というのも、昨年の十一月は〇・五%台だったわけでございますから、それに比べればなお高い水準にあるという意味で、ひところに比べれば落ちついているけれども、まだ昨年の十月ぐらいの状況に完全に戻ったということではない。  そういう状況でございまして、私どもとしましては、そうした状況も踏まえて、引き続き適切な金融調節を行うことによって市場金利の安定に努めてまいりたいというふうに考えております。
  72. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 そうしますと、インターバンク市場はそういう状況だ。もう一つのBIS八%、これについては、この三十兆投入ということが、二十一行で公的資金二兆一千億円の受け入れ、貸し出しということで、十二・五倍、約二十兆円。貸し渋りがなくなるかというと、とてもじゃないけれどもそういう状況にはない、特に、地銀の方ではたった三行である。非常に現場に近い中小企業ということからいきますと、この公的資金導入ということが、貸し渋り対策ということについては直接現場の方に行っていないということは事実としてあろうと思います。  私はその辺について、貸し渋りの、特に中小企業への貸し渋りの解消が具体的に現場に、隔靴掻痒の感ではなく届いているという認識をされているのかどうかということをお聞きしたいと思います。心理だけの問題ではありません。
  73. 堀内光雄

    堀内国務大臣 先生御指摘のとおり、十一月末から本当の貸し渋り問題というのが出てまいりました。通産省といたしましては、中小企業庁を中心に十一月末からこの対応に取り組みまして、少なくとも銀行の、今度は民間金融機関の問題から流れてくる一般の中小企業の貸し渋りによる経営の破綻だけは絶対に避けなければならないということで取り組みを開始して、昨年の年末までに十二兆円の資金を用意し、また、今度の十年度予算まで織り込みますと、二十五兆円の資金を用意をして万全を期しているというのが実情でございまして、今のお話の、民間金融機関からの貸し渋りについての対応がこれで解決するかどうかというような問題につきまして申し上げるならば、今度は、少なくとも貸し渋りを行わせないだけの政府としての指導をしていかなければならないというふうに思っております。  大蔵省中心に、今までの貸し渋り対策というものが、公的資金の注入をしていない時代の貸し渋りと公的資金を投入した後の貸し渋りというのは大変な違いがありますから、民間金融機関に対して、貸し渋りをさせない強力な指導を行っていくように通産省からも特に要請をいたしておりまして、本日は総理が直接金融機関のトップを呼んで、その貸し渋りに対して、絶対起きないようにという要請を大蔵大臣ともども行いますし、また、それと関連をいたしまして、きょうも夕刻から政府系金融機関のトップを招きまして、総理から改めて今までの中小企業対策としての政府系金融機関の取り組みをさらに充実させて、万全を期すようにという対策を行うことになっております。
  74. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 私も、本当にそこが一番大事だと思うのですね。体制はつくりました、午前中の質問で伊藤先生の発言もありましたが、これだけの枠はとりましたと。しかし、現実にはそれが現場に行ってない。銀行のどこを回ったって貸してくれないというような現状があるわけですから、まさにきょうからの、この三十兆導入したという時点の具体的な政府の指導というものが、大蔵もあるいは通産もそれぞれが非常に大事な点だと私は思います。  もう一つ、現時点で一番大事なのは、宮崎先生は二つの貸し渋りと言っているのですが、私は、三つの貸し渋りだろうというふうに実は思っているわけです。それはまさにインターバンク市場の問題、それからBIS八%の問題、これには効果がある、なしの論議はありますけれども、手は打とうとした。しかし、今銀行の方では、私も幾つか取材をしてみますと、三月は注目をされているから静かにしていて、四月からは貸した金を引き揚げますよ、貸さないのだという声が現場の銀行から来たり、あるいはまた、四月からしっかりと回収しなさいよというような通達を出しているという銀行もありますよ。  それは一体何かというと、これは、今までは八%、八%と言っているけれども銀行の方の頭の中にあることは、例えば一一%、一二%という、これから金融ビッグバンを控えて世界と競争しなくてはいけない。今までは銀行大蔵省の方を見ていた。しかし、大蔵省の方のそういうものを見ているのじゃなくて、世界を相手に戦わなくちゃいけない。そうしたら、八%ということではなくて、一一とか一二ということをちゃんとやらなければ格付機関ということで問題になってくる、さあどうするのだと。  そこで、四月からの銀行の姿勢というのは、まさに徹底的に取るものは取っていかなくてはいけない、世界のいわゆる一一%、一二%。そうしますと、ティア1の方をしっかりともっと上げていかなくちゃいけない、こういう動きが当然始まってくる。分母も下げなくちゃいけない、引き上げなくちゃいけない、こういう動きが始まってくる。  私は、現時点から注意すべきは、まさに銀行の方は自分の戦略として、この金融ビッグバン後の四月、五月、六月とそういう体制に入ってきているということからいきますと、銀行の思惑と中小企業の方では何とかしてくれというものがぶつかり合う、本格的な貸し渋りというのか、どういう言葉が適当かわかりませんけれども、いよいよそういう段階に入ってきたというところに危機意識を持っていただかなくちゃならない。これについていかがですか。
  75. 堀内光雄

    堀内国務大臣 ただいまのお話、非常に深刻な問題だと思っております。  ただ、現在の問題といたしましてはやはり三月三十一日というのを一つの大きな山と私は考えております。  と申しますのも、各銀行その他において三月三十一日だけは何しろ資金を留保して、四月一日からは貸してもよろしいというような表現をしているところも大分あるわけであります。その四月一日以降になったらそれが戻るかというと、それはわかりません。そういう意味で、少なくとも三月三十一日までの状態、三月三十一日を越える状態というところを、今我々としては全力を挙げてその危険な状態を乗り切らなければならないというふうに思っております。  同時に、今、一つの問題になるのは、今のBIS規制の問題にいたしましても、株式の含み益という問題が随分大きな対象になっているわけでありまして、今の公的資金の投入によってBIS規制内容がよくなるのはもちろんでありますが、この九年度の補正の予算を通していただいた、その結果においては二兆円の個人所得税の実施が既に行われた、あるいはゼロ国債一兆五千億の工事が進み出す、あるいは一兆円の災害復旧の公共事業が出てきた、そういうものが一つ今流れ出しております。  同時に、今度はこの十年度の本予算並びにこれに関連する法律案によりまして、一つ一つ申し上げませんが、法人課税の面では法人税率の低下あるいは引き下げ、あるいは法人事業税の一%の引き下げ、中小企業ももちろんでありますが、あるいは電気料金の値下げその他を合わせますと約三兆数千億円の効果が出てくるわけでございまして、そういうものが四月の効果にあらわれてくる。景気を刺激する面があらわれてまいりますと、株式の価格においても維持をし、あるいは持ち上げる効果も出てくるのではないか。そういうものの相乗的効果によって銀行の貸し渋りというものは、ただ公的資金の投入だけではなくて、そういう総合的な成果によって貸し渋りを解消できるようにする。  ただ、通産省といたしましては、少なくとも中小企業に対する金融だけはそういうものと関係なしに受け持って、万全を期していけるようにしなければならないというふうに考えているところでございます。
  76. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 三月三十一日をクリアして銀行がわきをあける、私は全く逆だと思うのです。全く逆。  それは、先ほど申し上げたように、金融ビッグバン対応の貸し渋り現象というのが四月から起きてくる。それは、体質改善というものを本質的にして勝負しようとしている。スリムにしようとする、筋肉質にしよう。こういう動きはある意味では当たり前の動きでありますから、そういうことにどう対応するかということで大事だし、私は、例えば四月、株価というのが今はPLOということでリフティングしているというのですが、中小企業の側からいきますと、四月、五月、六月というのは、まさに銀行中小企業の生殺与奪を握っていて、リフティングしている状態だ、いつ離されるかということを非常に心配しています。ゼネコン危機といいますが、例えばゼネコンでも六月の株主総会までとか、何とかこれは持ちこたえていけても、いつ離されるかわからない、こういうような状況が現実であろうというふうに思っております。  もうきょうは時間がなくなってしまいましたけれども、とにかく、これからいよいよ勝負だぞということをよく認識をされて、一・五兆のゼロ国債、そして公共事業も前倒しする、これはまだ予算が通っていませんからなかなか言いにくいかもしれませんが、そういう中で、七月、八月、九月、このあたりが逆に非常に危ない、そういう景気見通しとか危機感というものを政府は持っていただかなくてはならない。  最後に、尾身長官、その辺についての御認識をお願いします。
  77. 尾身幸次

    尾身国務大臣 太田委員のおっしゃることは私自身よく理解できるところでございまして、油断なく見守りながら、適切な対応をしてまいりたいと考えております。
  78. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 景気自体ということが底流には一番大事でありますから、その辺も含めてよく対応していただきたいというふうに思っております。よろしくお願いします。  以上です。
  79. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次に、中野清君。
  80. 中野清

    ○中野(清)委員 平和・改革の中野清であります。今、我が会派の太田議員から貸し渋り対策について御質問がございましたけれども、引き続きまして、まずこれをお伺いをしたいと思っております。  政府が今、三十兆円を超える資金を準備し、そしてまた、早期是正措置の弾力的運用や自己資本比率の対策等を積極的にやっているということについては十分理解をしておりますけれども、今までの議論というものを考えていきますと、供給者といいましょうか、銀行の立場、そういう意味での議論ばかりがあったと私は考えております。  今、太田議員がおっしゃるとおり、三月の問題、四月の問題もありますし、その中で銀行が、自分たちの生存をかけて選別融資をやっている。そのことについては認めざるを得ないと思っておりますが、その中で私は、借り手、需要者の立場でもってどういう対策があったか。これは、残念なことになかなかない。それは政府が怠けているというよりも、なかなか見つからないのだと思いますが、その中で私は、きょうはこの問題について、特に公取の立場でもってぜひお伺いをしたいと思うわけでございますので、委員長、よろしくお願いしたいと思います。  まず第一に、今日の貸し渋りの現状について公取はどのようにつかんでいらっしゃるか。そして銀行の姿勢、貸し渋りの現実といいますか、苦情といいましょうか、そういうものについて、今こそ公取が、いわゆる強者弱者の立場というものが歴然としてあるわけですから、優越的な地位の乱用というのが当然もうガイドラインにあるわけであります。そうすると、そういう意味に該当するかどうか、そういう点を調査すべきではなかっただろうかという点がまず一点であります。  それからもう一点は、実は平成三年まで公取は、歩積み両建て、いろいろな意味での調査をしております。私もその資料を見ておりますと、非常に参考になります。現在、金利が自由化になっているからといいますけれども、この歩積み両建ての問題というのはいまだに現実に残っている。そうしますと、それを平成三年でやめてしまった理由。  まずこの二つについてお伺いしたいと思います。簡単で結構ですから。
  81. 根來泰周

    根來政府委員 第二点でございますが、拘束預金の問題は、平成三年まで調査をしておりましたけれども、現在はやっておりません。と申しますのは、経済の実態から見まして、拘束預金というのは若干その焦点がずれてきた、拘束率が非常に低くなったということでやめているわけでございます。  最初の貸し渋りの問題でございますが、残念ながら、貸し渋りを正面から取り上げまして、一般論で申しまして、これは独禁法違反というわけにはまいりませんが、私ども、下請の問題を所管しておりますので、下請業者から、要するに親事業者からの支払いが滞っておる、それは多分貸し渋りが原因でなかろうかというような苦情が一、二件来ております。そういう関係で貸し渋りというのも大いに関係があるので、これは何とか是正していただきたい、こういうふうに思っております。  そういうことで、私どもとしては、ことしの二月から中小企業者団体を中心にいろいろ調査をしまして、貸し渋りの実態を含めまして、いろいろ金融上の独占禁止法違反問題について頭を突っ込んでやっているところでございますので、近くその結果も出てくるのじゃないかと思っております。
  82. 中野清

    ○中野(清)委員 今の御答弁でございますけれども、私はぜひ、きょうは企画庁長官も当然いらっしゃいますけれども、これは調査を続けてもらいたいということを特に公取の委員長にお願いしながら、政府としても考えてもらいたいと思います。  なぜかといいますと、今も、一、二件来ているとおっしゃいましたけれども、公取に対してそういう意味での苦情とか実情というのが入ってこない。それは私は前にも申し上げました。結局、公取のネットワークが非常に貧弱なんです。この点については、商工会議所とか商工会に、今はそういうところには法的な法律相談所とか税制相談所があります。委員長、どうかその情報が入るような施策をあなた方に考えてもらいたい。私はきょうは大店法のことをやりたいと思いますので、そのことだけをお伺いしたい。それからまた、やる気があるかどうかだけはもう一回答弁してください。簡単で結構ですから。
  83. 根來泰周

    根來政府委員 昨年、委員からそういう御指摘がございましたので、私どもも貴重な御示唆と受け取りまして、それ以後、日本商工会議所を初め各地の商工会と何度も協議会を持ちまして、私どもの意見も伝え、また、商工会、商工会議所からの意見もちょうだいするように努力しております。具体的には、また細かいことでございますので、お返事は申し上げませんが、やっていることは事実でございます。
  84. 中野清

    ○中野(清)委員 この貸し渋りにつきまして、ぜひこれから政府におかれましても、借り手の立場というものをどうやって守るか、そういう立場で政策を考えてもらいたい。そうしませんと、幾ら大臣が三十兆もお金を出してもこれはだめだということを、ぜひこの際、御認識願いたい。  私は、例えば銀行銀行協会で自分の苦情なんかを受けたって、これは全然だめだ。そういう意味におきまして、これから予算委員会等でももう一回この問題を取り上げたいと思いますので、どうかそういう意味でぜひ検討していただきたい、そのことを要望しながら、次の質問に入りたいと思います。  御承知のとおり、今大店法後の方向づけということでもって、今国会に、大規模小売店立地法、そしてまた都市計画法の一部改正、そしてまたいわゆる中心市街地活性化、このことについて出ておりますし、これがいわゆる合同部会の答申をもとにしてやってきたということは私もよく存じ上げております。  きょうは時間がございませんから、まず、この新制度導入したことによって、そしてまた流通規制緩和で、実は二〇〇一年までにいわゆる国内総生産、GDPを一%押し上げるという試算がある。そういうことを通産省が出しているということを私も聞いておりますけれども、これは本当なのかどうか、積算の根拠はあるのかどうかということをまずお伺いをしたいと思います。
  85. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 お答えを申し上げます。  ただいま御指摘の点は、先般、読売新聞であったかと思いますが、それにも掲載されておりました。この試算は昨年の五月に通産省の研究会が行ったものでございまして、この試算によりますと、流通分野の規制緩和によりまして、九五年から二〇〇一年までの間に実質GDPが一%押し上げられるという結果が示されておるわけでございますが、この試算は、流通業と申しましても、小売業も卸売業も含む流通業すべての、過去におきます規制緩和による生産性の向上が今後とも継続するとすればどういうものになるであろうかということを仮定したものでございまして、いずれにせよ、過去におきます規制によるものでございまして、具体的な規制緩和措置というようなものを前提としたものではないということでございます。
  86. 中野清

    ○中野(清)委員 今の御答弁で安心しましたが、ぜひこれからこの問題についても私どもは慎重に考えてまいりたい。特に町づくり、町がなくなっちゃった、どうするのだという基本がございますから、あえて申したいと思います。  次は、実は三月二日にクリントン・アメリカ大統領が、今後一年間の通商政策等の基本方針を示す年次レポート、これをアメリカの議会に提出したということが報じられております。  その中で、日本規制緩和を進めて市場開放に取り組み、内需主導の経済成長を達成するように強く求めたと伝えておりますけれども、特に、大規模小売店舗法、いわゆる大店法廃止後の新法が新たな出店規制につながらないように監視すると指摘しているわけであります。すなわち、大店法が衣がえしてできた新法について、大規模店の規制の継続に使われる可能性が高いという懸念を示したと言われております。  大臣も御承知と思いますけれども我が国に今までもう再三執拗に大店法の廃止を初めとして規制緩和を要求しているアメリカでは、大型店に対してかなり厳しく土地利用規制とか環境規制が行われているということは、これは事実なんですね。  そういう中でアメリカがこのようなことを言ってきたことについて、今、新法を国会に出して、まだ成立しないうちにアメリカからこのような懸念を寄せられていることについて、担当大臣としてどうお考えか、まずお伺いしたいと思います。
  87. 堀内光雄

    堀内国務大臣 大規模小売店立地法の問題でございますが、米国政府が、新たな制度のもとで、地方自治体が環境等を名目としながら経済的な観点から大型店の出店を規制するのではないかという懸念を出していることは事実でございますし、承知をいたしております。また、米国の関係者がおいでになるたびにそういうような発言をされていることも事実であります。  しかしながら、新しい制度というのは、時代の変化に対応いたしまして、今までの経済的な規制というような意味での大店法から政策の転換を行って、交通だとかあるいは環境問題、こういうようなものへの対応並びに計画的な一つの地域づくりというような、そういう整合性の確保を図る点からの取り組みをいたしたものでありまして、これは欧米諸国の中でも、フランス、イギリス、各地の例をこの委員会でも御紹介をいただいたことがございますが、そういうものを取り入れた中で各地でとられている問題でございまして、そういう一つの処方せんのようなものを日本でも取り上げたということでございます。  米国政府に対しましては、新たな制度の趣旨をよく御説明をして、正しい理解を得られるように、ただいま申し上げたような線で進めておりますので、その点は理解をされるものと考えております。
  88. 中野清

    ○中野(清)委員 そうしますと、今の姿勢でもって間違いないというふうに私ども理解しておるということで、まず確認をしたいと思います。  今お話しのとおり、今度のいろいろな方向づけについては私ども評価しております。それは、いわゆる大型店の規制というものは、今おっしゃった経済規制の中小小売店保護から、住環境保護の土地利用の適正化、そしてまた、環境、都市計画というような社会的規制へということだと思いますし、また、地方分権という立場でやっていきたい、これはよく理解しておるのですよ。  その中で、いわゆる出店可能地域と禁止地域の問題、これを都市計画でやるのだ、それ以外の問題についてはいわゆる立地法でやるということについて、ちょっとお伺いをさせてもらいたいと思うのです。  といいますのは、この立地の適正化という問題について、今大臣は、アメリカが納得してくれると思っているということをおっしゃいますけれども、私は、今のままじゃ納得しないと見ているのです。なぜかといいますと、この我が国の姿勢というものが非常に不十分だというふうに私は思っております。  ですから、まず第一にお伺いしたいことは、例えば、立地法というものが今度できましたね。その立地法の中で、交通渋滞とか駐車場、ごみ問題、騒音等の生活環境に与える影響というのを取り上げておりますけれども、これは私は当然だと思っております。しかし、社会的規制というと、こうじゃないのだということも事実なんです。  例えば、今のような問題を本当に解決しよう、それを町づくりの観点でやろうとすれば、例えば立地の場所の適否だとか売り場面積の適否だとか、それからまた、閉店時間がいいとか悪いとか、営業時間がどうだとかというのは、これは環境の問題をやっていけば、それをどういうふうにしようとなったときは必然的にやらざるを得ないのです。  それを、どうも今の立地法の中では、例えば十三条の中にありますけれども、周辺の需給状況を考慮しないというような文章が入っていますね。そうすると、その点についてどのようにお考えになっているか、お伺いをしたいと思います。
  89. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 お答え申し上げます。  今御指摘のございました先の点でございますが、御案内のとおりでございますが、この御提案申し上げております大規模小売店舗立地法は、生活環境の保持のために大型店の出店者が施設の配置あるいは運営方法について適正な措置、配慮を下すことを求めるという法律でございますが、どのような場所に出店計画が出てくるかということにもよりますので、ケース・バイ・ケースではございますけれども、このような議論を通じまして、例えば、店舗の周辺の交通問題あるいは渋滞の問題というようなことに対応するために駐車施設の拡充を求めるというようなことがあり、その結果として店舗面積にある種の影響を与えるというようなことはございましょうし、騒音問題に対応するために深夜あるいは早朝の営業というものの抑制を求めざるを得ないというようなことで、開店する時間でございますとか閉店する時間というようなものにどうしても議論が及ばざるを得ないということは、十分にあり得るのではないかというふうに思っておるわけでございます。  もう一つ、御提案申し上げております大店立地法十三条の地域的な需給を勘案することなくということでございますが、これは、ただいまも御説明申し上げましたように、大店立地法は生活環境の保持のための法律でございまして、地域における需給状況を勘案するものではないという法律の目的がございます。そうした目的、また、逆に申し上げれば、先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、そうした方向に政策転換を図ろうということで御提案を申し上げているところでございます。  したがいまして、WTOでございますとか、あるいは、この見直しに際しまして行政改革委員会その他もろもろの、国内においても厳しい御批判をいただいてきたこの大店法でございまして、そうした政策転換というものが地方自治体の施策においても徹底されることが必要であるということで、この趣旨の条文を置かせていただくことで御提案をいたしておるわけでございます。
  90. 中野清

    ○中野(清)委員 今の御答弁を伺いまして、大臣、ちょっとよく御理解願いたいと思うのですけれどもアメリカがいろいろなことを言ってきました。それに対して我が国の姿勢というのを、私はこれから外務大臣がいるところでWTOの問題とかをしたいと思ったので、きょうは言いませんけれども、やはりもっと毅然とすべきだということがあると思うのですよ。だから、この立地法についても、今、環境的な問題だけだ、だけだとおっしゃっていますけれども、必然的に入れざるを得ないということがあります。  もうちょっとそれをやってみますと、例えば、立地法の四条では店舗の配置という概念が書かれておるわけですよ。配置が店舗の入り口や搬入口とか駐車場の位置とかというレイアウトを指すのだったら、当然、その立地の場所そのものについて、これがいいかどうか、例えば駐車場がこんなに多くていいか悪いかということを、まずいといった場合には半分にしろとかとなれば、当然売り場も半分とか三分の一減らすということになるわけであります。  そういう話が全然なくて、これは全部都市計画法だとおっしゃっておりますけれども、私はやはり立地法の中で――都市計画法で場所についての大まかなコンセンサスをとるのは、それは結構だと思うのです。しかし、具体的な話とした場合に、今おっしゃったけれども、周辺地区の社会環境だけで、経済環境を考慮しないのだという論旨だけでもって通るのだろうかという話を、本当に疑問に思っているのですよ。結果的には全部やらなければならない。  しかも、大臣、今までの大店法というのは、決して全部が悪いわけじゃないわけです。日本の都市計画の問題があって、その問題を都市計画の方で立地規制ができなかった、だから全部大店法がかぶってしまったのですよ。大店法だけが悪者にされたのでは、これはおかしいのです。ですから、そういう点の御見解を大臣に伺いたいと思いますけれども、どうですか。
  91. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 今回の政策転換に当たりましては、先生も既にお触れでございますけれども、一方におきまして、大規模小売店舗立地法を制定させていただくと同時に、都市計画法の改正を含めましていわゆるゾーニングと言われておる手法の活用というものが提案されておるわけでございまして、地域社会との調和のとれた大型店の出店を確保するということでございます。したがいまして、立地場所の適否の問題と申しますのは、まさに都市計画法を初めといたします土地利用規制政策体系によって対応するのが適当であろうというふうに考えておるわけでございます。  なおその上で、立地の適否の基本的な判断が下されることを前提として、立地の可能な地域におきましても、なお周辺の住民とのもろもろの紛争があるわけでございまして、この問題を解決するために、生活環境の保持ということを主眼として、大店立地法の制定につきまして御提案をいたしておるということでございます。
  92. 中野清

    ○中野(清)委員 ちょっとこれだけは、直接関係ないと思いますけれども、もう一回申し上げたいと思います。  今大型店は、経済的行為といたしまして、中心市街地の活性化の話もいたしますけれども中心地に出すのじゃなくて郊外に出したいというのが当然な要求だと思います。その方がコストが安くなるということだと思うのです。ところが、今度のこの新法の中では三・七%の市街地しか入っていない。  そうすると、市街化調整区域や農地はどうするのだ。今そういうところに建物が建っております。それは決して調整区域や農地に簡単に建つわけじゃありません。それはしかるべき措置をして、きちんと市街化区域にしているから建っているということでございまして、その点について、この法律の問題について対象が今のままでいいのだろうか、それについては大臣、どうお考えですか。
  93. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 ただいま御答弁も申し上げましたところでございますが、まさに産業構造審議会と中政審の御議論の中で、これまでいわゆる中小店と大型店との対応関係議論をしてきたものに加えまして、それを超えて、むしろこれからは都市の構造と申しますか、都市機能全体というものを一体どういうふうに考えていくかという考え方が重要であるということが大きな思想的な転換として強く御指摘を受けたところでございます。  そのような意味合いにおきましては、都市の構造をどう考えるか、都市のありようというものをどう考えるか、その中で商業施設の配置というものをどういうふうに考えればいいのかということこそ対応すべき基本の問題であるということの御指摘を受け、今回、ただいま御説明申し上げましたようなゾーニング手法の活用と大店立地法の制定ということを御提案をいたしておるということでございます。
  94. 中野清

    ○中野(清)委員 これはもうこれから何回か議論させていただきますけれども、そういう意味で、非常に目的はいいし、ねらいはいいのですけれども、まだまだこれでできるかという問題については、率直な話、危惧をいたしておりますので、それを申したいと思います。  最後に、この間、我が商工委員会の前委員長が予算委員会でも御質問になりましたけれども、いわゆる中心市街地の活性化について二点ばかりお伺いさせていただいて、終わりにしたいと思います。  私は、今までの三回の大店法の改正の中において、政府が商店街について一生懸命やらなかったとは決して言いません。一生懸命やったと思うのです。しかし、なかなか効果が上がらなかった。今回初めて、商業とか商店街という枠から、いわゆる中心市街地ということで建設省も含めた十一省庁がやっている、私はこれは評価しております。  しかし、今申し上げた郊外に大型店ができたときに、その大型店をこのままにしておいて、しかも外資や、日本の国は、きょうは私は言いませんでしたけれども、例えばダイエーなんかが五十店も閉めながら店をふやすとか、ジャスコも西友も、そしてまたイトーヨーカ堂もみんなふやそうとしている。そういう中で、果たして問題はどうだろうかということがあるのです。  私は、この中心市街地活性化法の二条の二項の中で、わかりやすく言えば商業活動や土地利用が今の状況からできない、そしてまた、今の活力を維持できないということに対して措置をしようというこの趣旨は賛成であります。  そうしますと、まず第一点に、そういう市町村がどのくらいあるのか、それをお伺いしたい。それからもう一点は、その中で、中心市街地の活性化に対して希望している市町村は今どのくらいあるか。そして、それに対して今年度、この予算が通った後でどのくらいの市町村に対してそれを措置ができるか、この三点をお伺いしたいと思います。  時間がございませんが、それとあわせて、大型店の問題と中心市街地の活性化という問題は両立しない、やはりそこにあるのは、計画的な商業土地利用の適正化と秩序あるところの商業開発の重要性だと私は思っておるのですよ。  つまりそれは、大型店というものを、今までみたいにアメリカが言うとおり何でもいいんだ、それで、トイザらスじゃありませんけれども、たった五年間で日本の一割もシェアを占めるようなことをさせて本当にいいのだろうかということを私は考えるのですよ。どうですか。そういう点について御答弁願いたいと思います。
  95. 堀内光雄

    堀内国務大臣 今の中心市街地との関連のことをまず私の方からお答えさせていただきます。  中心市街地の活性化については、基本的には、まず市町村のイニシアチブのもとで進めるということが取り組みの一番最初になっておりまして、また同時に、関係十一省庁が連携して総合的な支援策をつくっていく、この二つの柱において取り組みが行われていくということになっております。  また、商業施設の立地につきましては、いわゆるゾーニングの手法によって計画的な地域づくりをしながら、それとの整合性を図っていくのだということが基本になっておりますから、これは欧米諸国でも取り上げられている方法であるわけなんてす。  その間に先生の非常に心配の面があるということになるのでありますが、中心市街地の活性化と適正な商業施設の立地という課題のこの二つの対応につきましては、地方自治体が地域の実情に応じて中心市街地のための支援策、いわゆるゾーニングの手法による規制ですね、同じような意味での規制がそこで働いてまいりまして、それを適切に活用しながら、総合的に先生の御心配になるような問題が起きないように考えて取り組みをしてまいりたいというふうに思っております。  あとの件数その他については事務方から御説明申し上げます。
  96. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 全国の市町村から多数のもろもろのお問い合わせを私どもの方にいただいておりまして、もちろん、お問い合わせの中身が非常に具体的なものであったり施策の中身の照会であったりともろもろでございますから、プロジェクトというような意味合いにおいての具体的な数字を把握することは現時点においては困難でございますけれども、いずれにせよ、多数の市町村において、全国でこの中心市街地の活性化のための事業について御検討がされているというふうには存じております。  今大臣からも御答弁申し上げましたように、この活性化法で御提案をいたします。その考え方といたしまして、いずれにいたしましても首長のイニシアチブでやるということでございまして、各市町村がどのような施策メニューを選ばれるかということにもよりますので、数は現時点で正確に申し上げることはできませんけれども、かなりの市町村で広く御検討が進んでいるというふうに理解をいたしております。
  97. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 質疑時間が過ぎておりますが……。
  98. 中野清

    ○中野(清)委員 いろいろと御答弁願いましたけれども、商店街も今希望をなくしています。ですから、どうか現場の声をよく聞いていただきたい。これはいわゆる貸し渋り対策もそうですし、両方そうでございますので、大臣初め皆さんにそのことをお願いして、終わります。  ありがとうございました。
  99. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次に、達増拓也君。     〔委員長退席、石原委員長代理着席〕
  100. 達増拓也

    達増委員 自由党の達増拓也でございます。私は、昨日行われました尾身経済企画庁長官所信表明に即しまして質問をさせていただきたいと思います。  第一に、景気認識でございます。  政府経済政策経済企画庁の景気判断、景気認識に基づいて行われるわけでありまして、この景気認識が間違っていれば政府経済政策全体が間違ってしまう、そういう意味で非常に重要なポイントであると思います。  昨日の所信表明の中、尾身長官は「景気はこのところ停滞しております。」停滞という言葉を使われておりました。果たして停滞なのかどうか。私は、もうこれは後退という状況に陥っているのではないかというふうに考えます。また、それも「このところ」ということではなく、もう昨年の大分早い段階から後退に移っていたのではないかというふうに考えるわけであります。  三月一日付の毎日新聞に取り上げられていた話でありますけれども、昨年十二月十一日の経企庁景気基準日付検討委員会、ここで景気について専門家による議論がなされ、毎日新聞が取材したところによると、会議の中で、景気は昨年「五月に山を付けた可能性が極めて高い。」それ以降景気は後退局面にあるという発言があった、そういう意見が相次いだと新聞は言っております。七人の委員のうち六人に取材したところ、「四人が「景気は昨年五月に山をつけた」との判断を示した。」  経済企画庁事務当局が記者会見を行った際には「景気の山、谷の議論は一切なかった」と説明があったそうですけれども、その会見内容を知ったある委員は、なぜうそをついてまで我々の見解を隠すのかと同庁への不信感を募らせている。専門家も、しかも経済企画庁の依頼を受けて景気について審議するそういう専門家も、昨年の五月から景気は後退に入っているのではないかという意見を持つ今の状況、もちろん、その他新聞、テレビ、報道等でも、さまざまなエコノミストが今の景気はもう後退局面にあると発言しているわけですけれども、この点について御意見を伺いたいと思います。
  101. 尾身幸次

    尾身国務大臣 私自身、九月十一日に経済企画庁長官に就任以来、私ども月例経済報告中心とする経済状況に関するレポートにおきましては、できるだけ客観的に経済現状国民の皆様にお知らせすることが経済企画庁の責務であると考え、そのように心がけてきたところでございます。  昨年四月以来の景気動向を見ますと、消費税の引き上げに伴います駆け込み需要反動減で、四月-六月には個人消費が落ち込みましたが、その後は夏にかけて徐々に回復に向かっていたというのが実感でございます。家計調査で見る消費性向等も四、五月には七〇%程度でございましたが、六月から九月ごろまでは七二から七三%程度回復をしておりました。しかし、その後、アジア状況あるいは金融機関の相次ぐ破綻等によりまして消費者心理が冷え込んだために、九月から十月、十一月、十二月、一月と下がってきている、そういう状況でございます。  そういう状況から見まして、私自身、現在景気は足踏みと言っておりますけれども、実感として五月が底であるという実感を持っていないわけでありまして、むしろ景気は秋以降後退してきた、足踏み状態になってきて、あるいはその後停滞をしてきたというのが私自身の実感でございます。  先ほどの学識経験者の景気基準日付検討委員会というのは、調査局長に対する、何といいますか、研究会であるというふうに承知をしておりますが、なお、毎日新聞の記事等に対する詳細は、必要があれば調査局長からお答えをさせます。
  102. 新保生二

    ○新保政府委員 お答えします。  毎日新聞の記事につきましては若干不正確なところがありますので、私の方からその正確なところを述べさせていただきます。  この研究会は、制度的なものではなく、法律に基づくようなものではなくて、私、調査局長の私的な研究会ということで、七人の先生から意見を聞きながら、景気動向指数をどう見るか、それから景気判断をどう考えるかということをフリーディスカッションするたぐいの研究会であります。年央と年末と、年二回開いておりまして、御指摘のものは十二月に年末の会合として開いたものでございます。  その時点での状況を申し上げますと、まだ景気の山、谷を判断するような状況にはないということで、フリーディスカッションをやったというのが実態であります。その十二月十一日の時点で、景気動向指数の一致指数、これが一番重要な指数で、これは五〇を下回って、数カ月下回り続けると山がつくということを検討しなければいけない状況が始まるのですが、十二月十一日の時点で手元にありました数字は九月までの数字で、九月は御承知のように六〇ですから、五〇を上回っていたわけですね。  したがって、まだその山を判断するような状況ではないというのが一般的なことであって、十二月の段階では山を決めるとか決めないとかいう議論は一切なかったわけです。景気についてどう見るかという個人的見解を述べられたということはありましたけれども、山をつけるべきか、つけざるべきかという議論はやっていないわけであります。そのことを申し上げたのが新聞には正確に伝わらなかったということである、こう思います。
  103. 達増拓也

    達増委員 景気がおかしくなってきたのがいつからかというタイミングの問題は、そのおかしくなってきた原因の問題と相まって重要な問題なので、もう少しその議論を続けさせていただきたいと思います。  昨年の通常国会、第百四十回国会での当時の麻生経済企画庁長官所信表明演説を振り返りますと、平成九年度、昨年度経済状況をこういうふうに予想をしております。平成九年度における日本経済につきましては、消費税率引き上げの影響等により、年度前半は景気の足取りは緩やかとなります。しかし、経済構造改革の推進等によりまして、次第に民間需要を中心とした自律的回復が実現されてまいりますとともに、持続的成長への道が開かれていくものと見込まれますということで、その消費税引き上げ等九兆円に上る国民負担増のデフレ効果があるにもかかわらず、経済構造改革をきちんと進めていけば大丈夫、持続的成長への道が開かれていくというのが、去年の通常国会のときの政府見通しだったわけであります。ところが、今のような状況になっている。  そこで政府は、これは橋本総理も今国会で盛んに繰り返しておりますし、きのうの尾身長官所信表明にもあったのですが、要は金融破綻、突然の金融破綻アジア経済危機、この二つのせいで急にこんなふうになってしまった。だから、まず金融システムの安定性確保を第一として、それに何十兆円も出していいというふうにする。  それで、もう一つ、そういう思わぬ景気停滞ということなので、これについては二兆円減税で、その他そういう緊急対策対応しましょう、あとは経済構造改革で成長軌道に乗せていきましょう、こういう説明をして、今年度経済見通しがどうなるかといいますと、これもきのうの所信表明から引用させていただきますけれども、平成十年度経済の見直しということで、「二兆円規模の特別減税を行うことにより、」云々、そして「予算及び関連法案を早期に成立させていただくことにより、」「次第に順調な回復軌道に復帰してくる」というふうな、政府のシナリオはそういうふうになっているわけであります。  ただ、その後に一つ非常に気持ちの悪い文が挿入されているわけであります。それは「もとより政府としては、今後とも、内外の経済金融の実情に応じて、経済活性化に向けて、」もうこれは総理も盛んにしゃべっているせりふなんですけれども、「適時適切な経済運営に努めていくことは言うまでもありません。」その言うまでもないことを取ってつけたようにこの平成十年度経済見通しの一番最後のところにつけている。  これはまるで、実は今まで言ってきたシナリオがうそで、平成十年度予算、そして関連法案等の措置、これだけではやはり平成十年度、やってはいけない、それに追加的に大きな経済政策、例えば大型景気対策のようなことをやらないとだめなんですよ、今、国会提出している予算は実は不完全なものなんですよというのを言っているように読めるわけなんですね。その点について御意見を伺いたいと思います。
  104. 尾身幸次

    尾身国務大臣 最後に変なことが書いてあるというような趣旨のお話がございましたが、私どもそういうつもりは全くございません。経済現状、昨年の十二月に金融システム不安、アジア経済混乱等を背景として、非常に心配状況でございました。  これに対しまして、預金者等の保護を図り、そしてまた金融システムの安定性を確保するという意味で、金融システム改革法案によりまして所要の措置を講じたところでございます。それによりまして金融システムに対する不安感というものは相当なくなってきて、それが株価等にもあらわれてきているというふうに考えております。  そしてまた、それと同時に補正予算とか二兆円の特別減税とかあるいは十年度予算とか諸般の政策を行いながら、内需拡大、それも民間需要中心の拡大を図っていく、そして徐々に本格的な回復軌道に乗せていくというふうに考えているわけでございます。  その中で、私ども先日から、総理の御指示もございまして、自民党の第四次緊急国民経済対策を受け、また昨年十一月の緊急経済対策のフォローアップ等、さらに追加的な規制緩和も含めまして、経済活性化のための具体策につきまして現在検討を進めているところでございます。  そういう中におきまして、十年度経済、一・九%の成長見通しているところでございますが、もとより経済は生き物でございますから、経済の実態に応じて適時適切な措置をとることが私どもの責務であるということも事実でございます。そういう意味におきまして、私どもいろいろな意味の検討をしているということを申し上げている次第でございまして、むしろそれをやらなければ私どもとして経済運営の責任を果たせないというふうにも考えているところでございます。
  105. 達増拓也

    達増委員 では、同じ問題を確認させていただきますと、経済活性化のため、経済構造改革のように中長期的プログラムとしてやっていることについては、また今年度、十年度いろいろな新しい政策が出てくるのだと思いますけれども、それ以外については、経済状況で何か新しい事態が生じたりしない限りは、この経済現状については、今、国会提出している十年度予算とその関連の法案措置等で大丈夫なんだ、そういう認識とここは確認してよろしいでしょうか。
  106. 尾身幸次

    尾身国務大臣 もちろん、私ども経済状況に応じまして適時適切な検討をしているわけでございますが、しかし、当面何よりも大事な経済対策景気対策は、十年度予算及び法人税の減税等も含めました、税制改正も含めました関連法案を所期の予定どおり三月いっぱいに通していただき、四月一日から資金の流れが切れ目なく使えるようにぜひお願いをしたいということでございます。
  107. 達増拓也

    達増委員 今の経済状況にかんがみて、この予算と関連の措置でもう大丈夫なんだ、それ以上のことはやらなくてもちゃんと軌道に復帰していくのだというふうにすぱんと言い切れないような今の経済状況というのは、やはり昨年の九兆円の国民負担増というデフレ効果が今の景気の、これは人によって停滞と言ったり後退と言ったりするわけですが、そういう状況につながっているということを認めないと、その先どういう政策をとっていけばいいかという話にきちっと進んでいけないと思うのですね。  これに関連しまして、やはりこれは所信表明の中で言われていることなんですけれども経済構造改革と財政構造改革が車の両輪であると。この経済構造改革、民需中心のそういう経済日本経済を構造改革しながら、民需中心成長が軌道に乗っていくような構造改革をする。これは本当に二十一世紀に向けて必要なことだと思うのです。  ただ、それが今の政府の財政構造改革、これは基本的に国民負担増で財政の赤字を穴埋めしていく、その皮切りが去年の九兆円の負担増だったわけですけれども、このようにして民間部門や個人消費者からお金を奪って、それを政府の方にお金を取っていくような、そういう形の財政構造改革をしながら民需中心経済構造改革というのをやっていけるのかどうか。これは本当に全然違う方向に向かって戦いを広げているような格好で、車の両輪というよりも相矛盾してしまうのではないか。その二つの改革の矛盾というのが今の経済状況となって出てきていると思うのですけれども、この点についていかがでしょうか。
  108. 尾身幸次

    尾身国務大臣 昨年、九年度の予算は、当初予算ベースでGDP対比で五・四%の赤字であります。そして、この五・四%という数字は世界一の大きな赤字幅でございまして、今、御存じのとおりヨーロッパで通貨統合をしておりますが、すべての加入要件は三%以内である、GDP対比三%以内であるという加入条件になっております。それと同時に、政府及び地方公共団体の財政赤字の残高もGDP対比六〇%以内というのが加入者の資格要件になっているわけでございます。  そういう点から考えて、今五・四%の赤字、年率五・四%であり、残高もGDP対比で国、地方合わせて一〇〇%を超える残高になっているわけでございまして、そういう状況のもとにおいて、我が国がこれから、私どもの次の世代、また次の次の世代のことを考えたときに、財政再建をしていかなければならない、そういう国民的コンセンサスはあるというふうに考えている次第でございます。  したがいまして、財政構造改革を進め、同時に経済の活性化を民間活動を中心としてやっていく、そしてその両者を両立させていくということは、国民的に大変大事な課題であるというふうに考えております。  もとより、この財政構造改革及び景気対策は、総理もいつも申し上げておりますように、二者択一の問題ではありませんで、財政構造改革は二〇〇三年までの中期の目標であり景気対策は当面の課題であるという、タイムスパンの違う問題でございますが、私どもとしては、経済を立ち上げることも大事であり、そしてまた財政構造改革を進めていくことも大事であるというふうに考えている次第でございます。
  109. 達増拓也

    達増委員 今、尾身長官、ヨーロッパのお話をされましたけれども日本の財政赤字の場合、その分、例えば外国が日本の国債を持っているかというと、そうではなく、ほとんどが日本の中の資産として国債等の格好で持たれている。ですから、日本経済全体としてその点を単純にヨーロッパ諸国とは比較できないのではないかと思うのです。  また、外国の話をしますと、アメリカやイギリスが経済構造改革を大胆に進めたレーガン政権やサッチャー政権のとき、それは大規模な減税とセットでそういう経済構造改革が行われたわけですね。ですから、そういう大規模減税なしに経済構造改革をやるという試みは、いわば世界に例がない、全く新しいことを日本がやろうとしている。それがうまくいくのであれば、これは非常にいい話なんですけれども、今の経済状況を見ていると、もう一回作戦、戦略の根本を練り直さなければならないのじゃないかというところなのだと思います。  今国会、このテーマについてはずっと今後議論されていかなければならないと思いまして、きょうはまず問題提起という形で、あとはバトンを同僚議員、西川委員にお渡ししたいと思います。  ありがとうございました。
  110. 石原伸晃

    ○石原委員長代理 次に、西川太一郎君。
  111. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 私は、主として通産大臣通産省にお伺いしますので、尾身大臣、もしよろしければ御用をしていただいて結構でございます。  まず、通産大臣にお尋ねをさせていただきますが、もう既に多くの方々から、本日もございましたし、ここ数カ月、いろいろな機会に、私も含めて大勢の方が大臣にお尋ねをしている貸し渋りについて、私からもお伺いをさせていただきたいと存じます。先に発言をされた皆さんとダブるところがございましたら、お許しをいただきたいと思っております。  まず初めにお尋ねをさせていただきたいと思いますのは、本会議でも、橋本総理もまた堀内通産大臣もしばしば、貸し渋り対策として二十五兆円の資金を用意してある、こういうふうにおっしゃいます。私どもも、そうかそうか、随分なお金を用意されているから、こんなふうに思うわけですが、私は、二十五兆円の仕組みが国民にこんなふうに作用するのだということを知らしめる努力がどうも、私どもも自省をいたしますが、特に政府はその辺のことについてもっとわかりやすく説明をするべきではないか。そこのところからまずお伺いしたいと思うのでございますが、この二十五兆円というのはどんな仕組みになっているのでしょうか。
  112. 堀内光雄

    堀内国務大臣 お答え申し上げます。  先生おっしゃるとおり、二十五兆円の資金を用意して万全の策に取り組んでいるということを申し上げているわけでありますが、具体的に申し上げますと、平成九年度分につきまして、先ほども申し上げましたが、十一月の末に山一の自主廃業、あるいは北拓の問題が出てまいりまして、それから早速対応に取り組んだ、迅速に取り組んだというのが実情でございまして、十一月末以降、そこにおいて、中小企業向けに融資枠として政府系金融機関に十兆円まず用意いたしました。そして、中堅企業以上の企業向けに一兆円を用意いたしました。そして、信用保証分として一兆円の資金を、保証の枠を用意いたしまして、合計十二兆円を十二月の末、年末までに対応ができる体制をまずつくったわけであります。  同時に、その後、平成十年度の予算の作成の中におきまして、十年度当初予算の中に九年度と同額の融資枠と信用保証分を入れまして、信用保証分は二兆円になっておりますが、合わせて十三兆円の資金の用意ということになりまして、合わせて二十五兆円というのが実態の数字でございます。  なお、九年度分の資金的な裏づけといたしましては、関係する政府系の金融機関の当初の計画枠の残枠に加えて、財投の補正や弾力条項を活用することにいたして取り組んだわけでありまして、既存の枠以外に追加をしたものでございます。  そういう意味で、必要な融資資金は十分に確保したというふうに考えておりまして、来年度分についても、当初予算に織り込みました十三兆円以外も、状況いかんによっては適切な対応をしていくようにしたいというふうに考えているところでございます。  ただ、もっとPRをしっかりというお話でございますが、できるだけいろいろな面で努力をしたり、商工会議所あるいは商工会を通じたり、政府系金融機関を通じたりしながら行うのですが、宣伝費がないものでありますから、直接中小企業庁あるいは通産省としての宣伝が行えないということもありまして、政府の予算をいただいたりしながら、ささやかながら一生懸命宣伝というかPRをしているというのが実情でございまして、周知徹底していない面もあるやに存じますが、最大限の努力をしているということは御理解を賜りたいと思います。
  113. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 貸し渋りには二種類ありまして、先ほどの太田さんの議論とはちょっと違う話でありますが、いわゆる民間金融機関企業の問題、政府系金融機関企業の問題。今政府系金融機関は、民間金融機関の貸し渋りに効果あらしめる対策として二十五兆円を用意された。信用保証協会は、実績として毎年十五兆円ぐらいの保証をやっているわけでありますから、年度を越えるにしても、それに十兆上積みする。数字の上では非常に潤沢にやっておられるようにとれるわけでございます。  これは極めて今日的な課題でございまして、大臣も心を痛めておられると思いますが、ここ数日、仲のいい経営者が三人、同じホテルで亡くなられたり、いろいろなのがありますね。そういう自殺を誘発するような貸し渋りというのは、後ほどまた伺いますが、先ほども大畠委員から、天気のいいときに傘を貸して云々という発言がありましたけれども、みちのく銀行という青森にある銀行は新聞に広告を出して、この前もこの席で申し上げましたけれども、「当行は貸し渋りはいたしません。銀行側の事由によって貸し渋りはいたしません。」それは、返せない人に貸すほどいいかげんな経営はしないわけでありますが、「雨が降ったら傘を貸します。」という広告を新聞に出したのですね。そういうふうにやっている銀行もちゃんとあるわけです。  そこで、後ほどその民間のことはお尋ねするとして、まず、恐縮でありますが、本日の産経新聞に「貸し渋り」という連続記事で、大臣のお手元にも写しを差し上げてございますが、「中小企業の悲鳴〝駆け込み寺〟政府系も却下」ということで、「会ってもくれない」という大きな見出しで出ております。仮の名前で、この方は大学や図書館に貴重な参考資料を売るという御商売を近年始めた。時間がありませんからひとつお読みいただいたこととして、こういうような頼りにしている政府系金融機関がシャットアウトする、そうするともうどこも行くところがない。  こういうことについては、政府の中では唯一、中小企業から悲鳴を受け付ける一一〇番を通産局や中小企業庁にお持ちの通産省としては、これは大臣とするとまことに心外な新聞記事ではないかと思うのです。これが真実のことであろうとすれば、ぜひひとつここらの是正をしていただきたい、こう思います。これは通告をしていないお尋ねで恐縮でございますが、御決意をお伺いさせていただきたいと思います。     〔石原委員長代理退席、委員長着席〕
  114. 堀内光雄

    堀内国務大臣 本当にごもっとものお話でございまして、私どもも、こういうことのないように絶対的な体制をつくり上げるように、通産局あるいは中小企業庁、政府系金融機関を通じて徹底をいたしているつもりであったわけでありますが、こういう事態があるということはまことに遺憾であり、残念だと思っております。  少なくとも、この中で出てまいりますように、申し込みを受けた場合に、親身になって御相談を申し上げて、そして、窓口においてこれはとても難しいというものがもしあったならば必ず支店長まで上げるように、それで、支店長がそれを見て、この程度なら何とかすべきじゃないかと思ったら、多少は無理しても支店長のところにおいて実行すべきであるというような指導も行っているくらいであります。  それから、制度の上から、こういうものはだめだとか、ああいうものはだめだとかいうようなものが今までもいろいろございますけれども、そういうものについてもこの貸し渋り対策として行う。この間までの年末、今度の年度末あるいは十年度の中においては、何かを持ってこられたときには、こういうぐあいに書いてお出しなさいよというくらいの親切があってもいいのじゃないかというような、出しやすい方法の指導をするとか、そういうことまで我々はやっていると思っていたのでありますが、こういう事態が起きておりますので、私どもも、しっかりもう一回さらにそれを徹底するようなことを行ってまいりたいと思っております。
  115. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 このごろは、信用収縮、取り立ててくる人が銀行の中で出世するのだそうですよ。銀行というのは、貸して利ざやでもうける、または、産業を育てるために時には危険も冒す。それが、頭取が六兆円回収せよ、二兆円回収せよ、田舎の銀行に行くと、三千億ぐらい収縮させろと。これは、例の自己資本比率のBIS規制の問題なんかがあることはもう言うまでもありません。  それに十三兆もの金を注入して、横並びで云々という話がありますよね。きょうも予算委員会の午前中の公述人のお話の中に、千二百兆の個人預貯金があるのだ、こういうふうに言われているけれども、九一年から五、六年かけて不動産や株が合わせて一千十六兆もその価値を減じた、だから千二百兆あったってそれはもう実際ほとんど帳消しだ、それほど日本経済はひどいのだというお話がありました。そういう中で、今、七年も続く不況の中でもう悲鳴を上げているわけですよ。  そこで、ぜひひとつ大臣にお願いしたいのは、この二十五兆円は床の間に飾って眺めているものじゃないので、これを使ってもらうようにひとつ、ましてや政府系金融機関で、わらにもすがる思いで来た人に、窓口かミドルか知らないけれども、会いもしないというような、そして、その申請の理由は五センチ四万のところに書かなければいけない、そんなところに細かいことを書けないから別紙を添えて出したら、そんなものは別紙を出したら読まない、こういう形式論ではこれはいけないというふうに思います。  そこで次に、民間金融機関に対して、通産省はまさに事業者通商産業側の利益代表のお役所でございますから、そこのところは大蔵省を通じてでも、または大臣が直接民間の金融機関に、貸し渋りをするな、手形の割引を先に延ばすな、引き上げをやめろと。だって、一生懸命従前の条件なら貸してもらえるほどまじめにやっていて、業績もそこそこのところですら取られちゃうのですからね。この間、今度委員になられた新日鉄の今井社長にお会いしたら、新日鉄も貸し渋りの対象になっているというのですから、いわんや町の中小零細企業がいかに苦しんでいるか。  くどくなりますけれども、そこはぜひわかっていただいて、そういう側に立って、民間金融機関に、これだけ手厚い金融二法をすれば大丈夫だという約束でスタートしたはずなのに何で貸し渋るのかということを通産大臣は厳しく言っていただきたい、こう思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  116. 堀内光雄

    堀内国務大臣 ただいまのお話のように、本当の超大企業に今は貸し渋りが参りまして、超大企業も返済を迫られて返済をしているというのが実情であります。ただ、その超大企業におきましては、社債を発行したり、あるいはCPを出したりというようなことで、直接金融によってそれを切り抜けていけるところが多いものですから深刻な状態にはなっておりませんが、大企業の中においても、相当厳しい、苦しい状態の中に追い込まれているところもいっぱいあるわけであります。そういうところを見ますと、この今度の金融対策というものは、まことにもって重要な段階に来ているというふうに思います。  先生おっしゃるとおり、今度の金融安定化策による公的資金の注入というか提供というか、これを行ったということは、少なくとも金融システムを安定化させ、同時に貸し渋りをなくすということが目的で行われているわけでありますから、今までの状態の貸し渋りと、本日以降と申しますか、公的資金の投入以降の銀行の貸し渋りとは、大変社会的に違った意味を持ってくると思っております。  そういう意味合いから、この投入以後の貸し渋りを絶対しないようにしっかり強い指導をしてもらわなければ困りますという申し入れを私から大蔵大臣にもあるいは総理大臣にもいたしましたし、また、総理もその覚悟できょうは各銀行のトップを呼び、また政府系金融機関のトップも呼び、総理から直接貸し渋りの解消についての要請をするということになっているわけでありまして、重大な決意を持ってこれに取り組んでいるところでございます。
  117. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 今発売をされております。ある経済雑誌の中に、日本の大学で教えておられる外国人の経済学者が、貸し渋りは終わった、こういう論文、エッセーを載せております。これを読みますと、なるほど、客観的データに基づいて、我が国金融機関が貸し渋りを行わなければならない事由はなくなったというふうに読まざるを得ない論証であります。  さすれば、なぜ貸し渋りを行うのか。ほかの理由があるのではないのか。つまり、せっかく十三兆円のお金を用意しても、キャピタルインジェクションをやっても、それを違うことに使う。違うところに、例えば劣後債とか優先株とか、帳簿上の処理の仕方は全く正反対に載るわけであります、私も若干そういう勉強をいたしましたから。そうなると、こういう技術的な問題にも立ち入って有効なお金の使い方というものを行政は指導されるべきではないかということを申し上げて、次の質問に移りたいと存じます。  残りの時間はわずかでございますが、私は、現下の日本経済を、先ほど来いろいろお話がありました、こう薬を張って一時抑えてみたりしてもいけないのだろうというふうに思います。今こんな苦労をしているのは必ず日本経済が先行き土台から生まれ変わるという方向に向かう努力でなければ、国民も痛みを分かち合うという気持ちにはなれないわけであります。このままずるずる右肩下がりになっていく、それに歯どめを加えるだけの経済政策では私は意味がないだろうと思う。やはりどこかで反転攻勢して、日本経済を基本的に健康なものにしていくということが、これはもう立場の違いも何もなく、日本人であるならば、また、かつて世界経済大国と言われた国の政治家であるならば、いやしくも我が国世界恐慌の原因にしてはならないということは、こんなことはもう与党の皆さんだけの思いではないというふうに私どもは思っております。  そこで、お尋ねをしたいのは、こういうときはとかく目先のことに目が行ってしまいがちでありますが、しかし通産省としては、新規産業を、それもちょっとしたはやりの問題じゃなくて、じっくり腰を据えて、しかし果断に、早く、これは非常に矛盾するのですが、聞いていて自分でも無理なことを聞いていると思うのですけれども国民としては早くやってもらいたいと。  通産省が新規産業の育成で計画をしておられるものが実現すれば、五百兆円のGDPが上積みされる、そして千八百万人の雇用が確保、創出される、こういうことをかつてこの席で伺ったことがあります。そこで、これの進捗状況は今どんなふうになっておりましょうか、そこらのところについて伺うわけであります。  まず、私が伺いたいのは、この産業を育てるためには、やはり条件をつくっていく、環境をつくっていく必要があると思うのですね。それは徹底した規制緩和だと私は思います。違う御意見の方もいるかもしれません。そして、規制緩和をすることによって発芽、萌芽をしたものを、水をやり、日を当てて育てていく。そういう中で、冷たい風にさらされないようにガードしてやる意味では、税制による措置も必要ではないか、この二点について伺いたいと思うのです。  まず、規制緩和のスピードをもっと加速しないと経済はどんどんだめになっちゃう。新しいものが間に合うように生まれてこなければ意味がないわけで、そこのスピードをもっと上げなきゃいけないのじゃないかという気がいたすのでございます。方向としては、政府のおやりになっていることは、この点について、この新規産業を起こすことについては私は間違っていないと思います。しかし、もっと早くやらなくちゃ間に合わないのじゃないかという気がしますが、この点をまずお尋ねしたいと思います。
  118. 堀内光雄

    堀内国務大臣 おっしゃるとおり、これから先の日本経済構造を改革するということは一番重要なことでありまして、それに向かって通産省の案として出しましたもの、約五百五十兆円の、現状は二百兆円を五百五十兆円程度までということですから、三百五十兆円の市場規模をふやしていく、あるいは、一千八百万人までですから、七百四十万人の雇用を増加するというものが計画として取りざたされております。  そして同時に、新規産業という中におきましては、ベンチャービジネスのような新しい技術を持ち、新しい意欲を持つ産業を伸ばしていくということが重要でありますから、今こういうものについての取り組みを行って、今度の国会におきましても、資金的な面におきましては組合事業の有限責任の法律というようなものをつくりまして、今までの資金の活用というものが、組合が無限責任であるために活用が行われていないというようなものをさらに積極的に増加ができるように取り組んでまいろうということになっております。  今のその数字を申し上げれば、投資事業組合の問題については、現在、百五十六組合、二千六百五十億円を、投資先をさらに倍以上にふやせるような大きな資金の供給が行われるような、そういうものも取り組みをいたしておりますし、あるいは、昨年から行ってまいりました、投資信託を新しい新規登録の企業にまでも資金を投入できるような法律の改正も行っておりますし、資金の面あるいは産学の取り組みの中で、学者が選び出した、つくり出した特許などを有効に活用して大きく産業を伸ばしていけるようなものをするとか、そういうようないろいろな面を含めて今取り組みを行っておりまして、そして、これからの経済構造を改革をしていく。  それで、おっしゃるとおり、経済構造を改革して企業活動をふやして活発にしてまいりませんと、増収が出てまいりません。増収が出てまいりませんと、財政構造改革法案というものも絵にかいたもちになってしまいますので、両輪の立場の中で、両々相まって成果が上げられるようにこれから取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  119. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 十五の分野で規制を撤廃もしくは緩和をしていく、このスピードアップをしなければ間に合わないのですよ、こういうふうに申し上げたわけでございますが、それに対して、そうだ、こういうお気持ちを伺いまして、ぜひひとつ頑張っていただきたい、こう思うわけであります。  最後のお尋ねになると思いますが、そういう中で、自助努力をしたり、民間の小さな金融機関でも一生懸命ベンチャーや新規産業に対して融資もしていこう、こういうわけでありますが、そういうものは、何度も申し上げますけれども、ほんのちょっとしたささやかな支援ですね。しかし、国がこれからこの十五の分野でなさろうとしていることは、非常に大きなものであります。  そこで、規制緩和のことについてお尋ねしましたが、次にお尋ねしたい最後の質問は、税制問題であります。  今、租特を洗い直したり、いろいろと大変な環境であることはよくわかっております。財政も非常に大変なときであることはよくわかっています。しかし、自助努力をする企業とか、まじめに日本の将来の、まあ俗な言葉で失礼ですが、飯の種になる、こういう産業は、これは補助金を出したりいろいろすることも必要だ、融資も枠を広げてやることも必要だと思いますが、減税の対象にする、税制で優遇する、こういうようなことをぜひやっていただきたい、こう思うわけでございますが、通産大臣の御見解を承りたいと思います。
  120. 堀内光雄

    堀内国務大臣 現在考えております活力を持たせる新規産業の創出を円滑化させるための環境整備というものにつきましては、まず、全体的に考えまして、我が国の法人課税の水準を思い切って引き下げるということから始めなければいけないと思っておりまして、極力早期に国際水準に近づけてまいりたいと思っております。  平成十年度の税制改革におきましては、この第一弾として、法人税と法人事業税の税率を、法人税においては三%、法人事業税においては一%、それぞれ軽減税率を含めて引き下げまして、実効税率で約三・六%、現在約一〇%諸外国と比べて実効税率において高いわけでありますが、三・六%、約四%のところまで引き下げた。あと残りは六%でありますから、これを来年は、特に地方法人課税の改革等を含めて、外国並みの経済環境にしてまいらなければならないと思っております。  二番目には、企業の柔軟な組織形態の変更を通じて新規事業への円滑な進出を図ることが必要でありまして、連結納税制度の早期導入というようなものにも取り組んでまいりたいと考えております。  第三番目には、ベンチャー企業の育成、先ほども申し上げましたが、税制措置としてはエンゼル税制の創設によるベンチャー企業への投資促進の措置を講じたところでございますけれども、平成十年度の税制改正におきましては、役職員の士気高揚の観点から、既存のストックオプション制度を税法上で拡充をしていきたいということを考えております。今後とも施策の拡充を進めてまいりたいと思っております。  また、所得税につきましても、諸外国に比べて高い最高税率などを見直していくことも必要であるというふうに考えておりまして、所得税制そのものの見直しも行いながら、個人企業を初めとした企業活動の活性化を図ってまいりたいというふうに思っております。
  121. 西川太一郎

    ○西川(太)委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  122. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次に、吉井英勝君。
  123. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、きょうは景気対策の問題について大臣に質問したいと思います。  二月二十三日に経済企画庁は昨年十二月の景気動向指数というのを発表しましたが、景気の後退はさらに深刻、そういう状況にあることが明らかになりました。また、せんだって、ちょうど二月二十八日でしたが、NHKの不況問題についての三時間番組というのをたまたま見ておりましたが、経済界の人たちが一様に、九兆円負担増が消費を冷え込ませたということを語っておりました。実際、九七年度国内総生産は、政府見通しと違って、GDPの六割を占める民間最終消費支出、個人消費が二・八%からマイナス〇・四%へ落ち込み、全体として一・九%の見込みが〇・一%へと落ち込む見込みです。  通産大臣は昨日の所信表明で内需中心成長を進めると述べられたわけですが、我が国不況打開のためには、本当に個人消費設備投資中心とする内需拡大が必要だというふうに思うわけです。  まず最初に、内需拡大について、通産大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  124. 堀内光雄

    堀内国務大臣 基本的なことを申し上げますと、我が国経済の最近の動向というものを眺めますと、景気停滞をいたしておりますし、厳しさを増しているというふうに認識をいたしております。こういう中、G7を初めとする海外から我が国の内需拡大の必要性について指摘を受けていることは事実であります。  そういう意味で、政府として緊急経済対策として二兆円の特別減税を行いました。また、平成九年度の補正予算において、ただいまの二兆円の問題、それから一兆円の公共事業あるいは一兆五千億円のゼロ国債の発行というようなものを含めて九年度補正予算が実施に移されてきているところでございまして、経済対策をこういうものによってまず滑り出しを行っているというふうに言えると思います。これらに加えまして、金融システム安定化対策を迅速かつ的確に行う、現在これも進行中でございます。  さらに、現在御審議を賜っておりますところの平成十年度の予算に加えまして、平成十年度の税制改正では、先ほども申し上げましたけれども、三%下げまして、米国を下回る三四・五%の法人税率に下げましたし、あるいは法人事業税も一%引き下げた。有価証券取引税を半額にする。それから地価税の凍結を盛り込んだ。こういうものの減税効果だけで約二兆数千億円になってまいります。これが実施に移されることによって景気にプラスの影響が出てくると考えております。  さらに、電気料金の値下げは七千百億円、あるいは電話料金は二千百億円ということになりますと、九千億円を超える電気料金あるいは電話料金の値下げが実施に移されております。  こういうような施策によって消費者あるいは企業を取り巻く環境が改善をされてきて、そして、少なくともこういう企業環境というものが整備をされたことによって、景気の将来を見通し企業家のマインドが前向きに転じてくるはずでありまして、企業活動を活性化することにつながってくると思っておりまして、四月以降において諸施策の成果が国内景気全体に反映されてくることと期待をいたしております。  そのためにも、平成十年度の予算並びに関連法案を一日も早く成立をさせていただきたいというふうに期待をいたしておるところでございます。
  125. 吉井英勝

    ○吉井委員 中身はともかくとして、内需の拡大を進めるのだ、そういう立場に立っていらっしゃることは今のお話ですから、その立場であることはきのうの所信表明のとおりということで、まずその点はわかるのですが、きょうは、今日の不況の打開のためになぜ個人消費と民間設備投資中心とする内需拡大が必要なのか、私は構造上の問題から見ていきたいというふうに思います。  第一は、大企業の海外進出促進の問題です。  九五年の海外生産比率というのは、製造業全体では一〇・〇%、海外進出企業全体で見れば二五・五%へと急増してきておりますが、中でも自動車、電機の海外生産比率は製造業全体の一〇%をはるかに上回る急激な伸びを短期間に示しております。  自動車で見れば、九一年の二一・八%が九六年には三七・一%へと、カラーテレビでは九一年の六二・六%が九六年には八七・一%へと、ビデオテープレコーダーも九一年の二四・八%が九六年の六七・七%へなど、本当に極めて短期間に急激に生産を海外へ移転していったというのが日本の特徴の一つだというふうに思うわけです。  この間、自動車を中心とする輸送用機械、それから電機、この分野で国内の設備投資と海外での設備投資は、九一年度と九六年度設備投資額はどのようになっていったのか、この点を通産省の方から最初に聞いておきたいと思います。
  126. 広瀬勝貞

    ○広瀬政府委員 お答えいたします。  初めに、輸送用機械でございますけれども、海外設備投資額は、九一年度二千七百十億円、九十六年度四千三百六十億円となっております。国内設備投資でございますけれども、九一年度三兆四千百六十億円、九六年度一兆九千九百億円となっております。  次に、電気機械でございますけれども、海外設備投資額は、九一年度三千百五十億円、九六年度七千三百四十億円でございます。国内設備投資額でございますが、九一年度四兆六千百四十億円、九六年度三兆五千六百四十億円でございます。
  127. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、これはあらかじめ事前にいただいておりまして、大蔵省の対外直接投資届出実績と法人企業統計季報によりまして、九一年度の三兆四千百六十億が九六年度には一兆九千九百億円と、国内の設備投資が大体半減近いですね。海外の設備投資が、輸送用機械ですが、二千七百十億円が四千三百六十億円と一・六倍。電機の方は、国内の四兆六千百四十億円が三兆五千六百四十億円、ですから四分の三に減っているのです。海外では三千百五十億円が七千三百四十億円へと二・三三倍。  つまり、九一年度から九六年度へ海外生産比率がぐっと伸びたというのは何を示しているかというと、国内での設備投資が、自動車でいえば半分近く減ったり、あるいは電機であれば四分の三ぐらいに減ったり、一方、海外での設備投資が二倍前後に伸びていっている。この海外移転の異常さが国内経済に異常なゆがみを生み出したということがあらわれていると思います。  具体の例をトヨタ自動車に見ますと、昨年、トヨタが発表した海外子会社の今期設備投資は、一四%増しの二千九百億円。これは国内の設備投資三千億円とほぼ同額なんですね。国内設備投資が、最大だった九一年の六月期の六千六十九億円の半分。国内の設備投資を半分にして、海外での設備投資をその分ちょうどふやしているのですね。  この設備投資というのは、政府が言ってきた景気回復を進める二代主役の一つだということでしょう。こういうことでは、これが落ち込んで進まないということになって、不況からの脱出が容易でないというのは、通産大臣、これは当たり前のことではないでしょうか、どうですか。
  128. 堀内光雄

    堀内国務大臣 今までの大きな流れとしてそういう数字が出てきていることは確かでございます。  海外における生産活動というものが対外貿易の面でもプラスになっている面もございますし、いろいろの面で、今の国内需要につきまして、一概に設備投資の面だけを取り上げて評価できるものではないと思いますが、この一、二年の数字を考えてまいりますと、昨年の秋以降の金融システムの不安などが企業の景況感に不安感を与えて、設備投資を比較的かたいものにしてしまったということがあると存じます。製造業の機械受注が昨年十一月、十二月と二カ月連続で減少するなど、このところ設備投資全体の伸びが鈍化している、これまた事実でございます。これに加えて、さらに民間金融機関による貸し渋りが設備投資にも影響を及ぼしてきているということも考えられます。  こういうものに対処するために、政府としては、しっかりと、少なくとも政府系金融機関において貸し渋りのないような体制をつくりながら、企業マインドをふやしていけるように取り組みをしているところでございます。  また、平成十年度の税制改正におきましても、法人課税の実効税率を下げる、あるいは税負担の軽減は、企業の内部留保の増加や将来における期待収益の上昇を通じて企業設備投資の増加に寄与をしていくことになるだろうというふうにも思っております。  同時に、これからの国内において、海外に移転をした企業などに対して、国内の企業活動の環境をよくするということによって、外国からの日本への投資、あるいは一たん外に出た企業がまた日本に帰ってくるというような問題も含めまして、魅力のある事業環境の創出を目指して、経済構造改革の重要な一つの柱である規制緩和の推進を行っていきたい。また、参入規制の撤廃や競争の促進等を通じて設備投資の拡大も図っていきたいというふうに考えておりまして、そういう今までの傾向の中で、日本の国内需要をふやし、設備投資をふやしていこうという努力を重ねていくことにしております。
  129. 吉井英勝

    ○吉井委員 今、いろいろおっしゃった中でお認めになったように、やはり企業は海外へどんと進出していく、海外生産率が高まるというだけではなくて、海外での設備投資がどんと進んで、国内での設備投資が減少したということは事実なんです。  それ自身は、九七年版の通商白書でも、九四年度以降、国内設備投資の九一年度水準への回復が見られない、しかし一方、海外への設備投資は大きく伸びているということで、通産省自身が、何も昨年秋以降の話ではなくて、この間の傾向としてこれは問題なんだということを認めていらっしゃるわけですから、やはりこれについては、こういうふうなやり方をこのまま進めておっては大変だという、そのとらまえ方というのはしっかり持っていただきたいと思います。  さて、一方、製造業海外進出法人の従業員の方を見ますと、九〇年から九五年の五年間に五十七万八千人増加して、国内の従業員は同じ五年間に五十五万九千人減少しました。これに下請、孫請、ひ孫請などを加えていくと、雇用喪失はさらに大きなものになります。  海外進出によるリストラと下請企業倒産による失業などで雇用問題というのは深刻になってきているわけですが、九〇年代に入ってから完全失業率は過去最高をずっと記録し続けてきました。二月二十七日の総務庁発表では、男性の完全失業率は三・七%と過去最高を記録したわけですが、総計二百三十八万人の完全失業者です。  そこで、経済企画庁長官にお聞きしておきたいのですが、政府は、九三年十月を底として景気回復基調にあるとして、九四年九月には景気回復宣言を出されました。これまで、経済企画庁が景気回復局面としていた中で完全失業率がふえ続けたということがあるのかどうか、この点だけ長官から伺っておきたいと思います。
  130. 尾身幸次

    尾身国務大臣 突然の御質問でございまして、質問のデータを用意しておりませんが、現在三・五%という日本にとっては大変厳しい失業率になっている。したがいまして、景気が低迷しており、厳しい状況にあると認識をしております。  なお、この三・五%の失業率は、ほかの、同じ基準で比べました失業率と比べますと、ヨーロッパ諸国、多くの国が一〇%程度になっておりますし、アメリカ景気がいいという中で四・七%になっておりまして、世界的な水準から見れば低い水準にはなっているわけでございます。
  131. 吉井英勝

    ○吉井委員 それは完全失業率の物差しが違いますから、一概には比較はできないのです。その議論はおいておきますが、景気回復政府は宣言して、それでいて完全失業率はずっと上がっていった。これは非常に異常な事態です。  大企業は海外進出して海外生産を拡大し、海外で雇用を拡大する。国内では、設備投資を縮小し、下請単価のアジア並みへの切り下げを求めたり、下請中小企業の切り捨てやリストラをやってきました。こうして、日本経済不況であっても大企業の利益の方は三年連続して好調であったわけですが、国民不況の中にあっても、景気回復基調だということにしてきたわけです。昨年九月二十三日の日経で紹介されましたが、実際、九七年度の経常利益で、上場企業二十三社が経常利益一千億円以上だった。中でも、トヨタは経常利益八割増しの六千億円。製造業はバブル期を超える絶好調だった。  だから政府の方は、これら海外進出している大企業の利益状況をもとにして九四年九月に景気回復宣言をして、九六年秋に第二次橋本内閣が発足すると、景気は自律回復の軌道に乗りつつあると言ってきたわけですが、大企業が好調である裏側で、中小企業や労働者の方は産業、雇用の空洞化に苦しんでいるというこの構造的矛盾の拡大を、そこのところをよく見ないで甘い分析をしてきた。それが、こういう中で九兆円の負担増を国民に押しつけて景気の悪化を加速させてしまうというこの誤った判断のもとになったのではありませんか。
  132. 尾身幸次

    尾身国務大臣 先ほど来のお話の中で、私がまさに同感だなと思う部分がございまして、経済活動のグローバル化に対応いたしまして、製造業を中心としていろいろな企業が海外展開をしているわけでございます。つまり、別の言い方をいたしますと、企業が国を選ぶ時代になったというふうに感じているわけでございまして、この日本という国がいろいろな企業から選ばれて、そこで生産活動を活発化し事業活動を活発化するような、企業活動にとって魅力ある国にしていかなければならないというのが、私ども経済政策の大きな課題であると考えている次第でございます。  そのためにも、現在提案をしておりますが、法人課税の減税の問題とかあるいは有価証券取引税の減税などによりまして、企業活動が我が国において活発化するような体制を整え、企業日本という国を今まで以上に生産拠点として、企業活動の拠点として選ぶような魅力ある国にしていくことが、結局のところ、雇用を増大し、国民生活を向上させるゆえんになるというふうに考えている次第でございます。
  133. 吉井英勝

    ○吉井委員 企業が国を選ぶ、それは多国籍企業の話であって、国民はこの国に住み続けるわけですよ。政治の責任というのは、この国に住み続ける国民の雇用や暮らしや仕事をどうするか、私は、政治というのはそこを一番考えなければならぬと思うのです。  法人税減税のお話で、魅力ある環境というお話もされました。きょうは全然突っ込んでそこを議論するつもりはなかったのですが、ただ、法人税減税ということでいうならば、八六年度の四三・三%のときに、製造業の海外生産比率は三・二%ですよ。その途中をすっ飛ばしても、八九年度の四〇・〇%の法人税率で海外生産比率は五・七%なんですが、九〇年度以降、法人税減税をやって三七・五%に下げても、今日では、製造業でいえば六・四から一〇%の海外生産比率、進出へと。  つまり、法人税減税をやれば空洞化が食いとめられるというのは全然違う話になりますから、私は、きょうはその議論をここでやろうということじゃありませんが、今おっしゃったから、そのことだけは一言申し上げておきたいと思います。  それで、急激な生産拠点の海外移転が、今日、国内生産を縮小して設備投資を減退させ、景気回復をおくらせているということは事実であると思いますが、円高不況が深刻になっていた九四年十月二十一日の商工委員会で、当時通産大臣をやっておられた橋本総理に、産業空洞化を食いとめるために大企業の海外移転を規制するべきだと私は質問したのです。これに対して、当時、通産大臣として、それぞれの企業が海外に企業戦略として出ていくことを法的に規制する、そのような手法はとるべきでないと答弁して、放置してこられたわけですよ。政府が放置してきたことが、景気回復の二大主役の一つである設備投資が現実に進まない事態を今日生み出している。  この多国籍企業の余りにも勝手なやり方に対して何もできないのだということでこれまでもやってきてこういう事態を生み出したのですが、このやり方を続けておったのでは、設備投資が国内で進まない事態を生み出してきた、こういう問題をこれからも続けていくことになると思いますが、これは通産大臣、どうですか。
  134. 堀内光雄

    堀内国務大臣 それは、基本的に考えると、産業活動を行いやすい国内環境をつくっていく、経済環境をつくっていくということがやはり一番基本なのであります。そして、それができることによって、現在、ドイツなどにおいても、海外に随分出ていった産業がまた国内に戻ってくるというようなuターン現象をつくり出していることにもつながるわけなのでありまして、日本の場合、現在、外国と比べて非常に企業活動の環境の悪い状態に置かれているということのために、設備投資についても海外に移転をしているものが多くなってきたということが言えると思います。しかし、今の法人税の問題、あるいは優遇税制を含めてしっかりとした産業基盤の行える体制をつくることによって、海外からも今日本に向けての投資を考えているところがふえてきているわけでございますから、これから先の政策的な問題がやはり重要になってくると私は考えております。  国内製造業の雇用者数は減少はいたしておりますが、実際問題として、産業構造の変化に伴うものでありまして、非製造業部門への雇用のシフトによるものも含まれております。我が国企業の海外進出に伴う雇用の減少、いわゆる産業の空洞化のためばかりで製造業が減少しているということではございませんで、シフトの変更にもよるものがあるということも御理解をいただきたいと思っております。  そして、国内において良質な雇用機会を確保していくことは極めて政策的な重要な課題でありまして、当省としても、こういう観点から、先ほどから何度も申し上げております新規産業の創出を大きな柱とする経済構造改革に積極的に取り組んでいるところであります。  そういう意味合いから、これからの国内における経済環境というものをさらに充実をしてまいりますことによって、生産部門における付加価値の高い産業が日本にまた生まれてくるということにもつながってまいりますので、そういう点に向かっての努力もいたしております。  また、同時に、緊急経済対策に基づいて、新規産業の創出につながるような労働者派遣事業、あるいは規制緩和や民間の企業の介護ビジネスへの参入の検討、こういうものも取り組んでおりますし、新規産業創出を資金供給面あるいは技術面それぞれから支援する観点から、投資事業組合制度の整備だとか、大学等からの技術移転の促進、こういうような法案もこれから審議をいただいてまとめていただこうと思っているわけでございます。  こうした施策の効果もあって、製造業の雇用は減少しているものの、サービス業における雇用機会の増加等によって、我が国の雇用者数は全体としては今増加の傾向にあるということも事実でございます。さらに、製造面での増加を加えられるような企業環境をつくり上げていって、成果を上げていきたいと思っている次第です。
  135. 吉井英勝

    ○吉井委員 大企業がどんどん海外へ移転していく、そういうやり方に対して、歯どめなく進めてきたわけですよ。それは事実であるわけです。これは通産省自身が、九二年版通商白書でも、これまでと違って、企業の利益がその国民の利益と一致する度合いが減少しつつある、かつては一国の企業活動の活発化がその国の雇用を増大させ、国民生活に貢献するものであったが、今違ってきているのだと。私は、大企業のそういう海外移転などについて、これは仕方がないのだということで供手傍観で来たということはやはり問題があったということを指摘しておきたいと思います。  実際に、それについては、何も賃金が安いからだけでどんどん東南アジアへ行けるわけじゃなくて、ODA資金等を使ってインフラ整備をどんどんやって、進出できるようにしてやったりとかしてきているわけですから、国内へのはね返りの問題については社会的責任を求めるということ、ヨーロッパだってこれはEU指令などを発して取り組んでいるのですから、そういうことをやってくるべきだったのだということだけ指摘して、二つ目の問題として、今の輸出依存型の経済について取り上げたいと思います。  我が国の巨額の貿易黒字とそれを生み出している輸出依存型経済体質というのは、従来から国際的に大問題になってきております。  そこで、九五年度と九六年度及び九七年度上半期のそれぞれ、大企業輸出額の上位十社と三十社の輸出額と日本輸出総額に占める割合はどうなっているかということについて、有価証券報告書と貿易統計などから調べました。  実はこれまで、こういうのは毎年、事前にデータをいただいたり突き合わせたりしておりますから、食い違いがあってはいけませんから確認しようとしたのですが、通産省では、九五年度までは何とか整理できたのだが、それ以降はちょっと自分たちの作業が間に合ってないからということで突き合わせができておりませんので、私の方から申し上げておきます。  輸出上位十社について見れば、九五年度と九六年度と九七年度の上半期、これが三〇・三%、三一・三%、三二・四%と、総輸出額に占める割合がふえていっています。上位三十社で見ても、同じく四八・七%、四九・二%、四九・九%というふうにふえていっております。輸出の大宗を占めるのは自動車、電機を中心とする本当に一握りの限られた巨大なビッグビジネスですが、それが貿易黒字をつくって国際的に問題になっている、これが今の現状と思いますが、大臣はこの事実をどういうふうにお考えになりますか。
  136. 今野秀洋

    ○今野政府委員 ただいま先生の御指摘のございました企業ごとの輸出額でございますが、確かに統計はないのでございまして、有価証券報告書に記載されております輸出関連企業輸出額、これを引き出してきて集計するしかないわけでございます。  それで、民間機関がやったものがございまして、これは九五年度についてでございまして、これを私どもでちょっとチェックをいたしました数字は、先生がおっしゃいますとおり、九五年につきましては、三〇・三%、四八・七%という数字でございます。九六、九七年につきましては、この民間機関の調査もなくなっちゃったものですので、私どもの手元にはないのでございますけれども、いずれにいたしましても、これらの品目、企業を見ますと、自動車の関連、電子等の関連が出ているのも事実でございます。  これをどう考えるかということでございますけれども輸出上位企業が大企業であることは、大きな規模のメーカーであることは事実でございますけれども、これにいわば納めている部品というものを考えますと、これはまあ中小企業がつくっているものもまたあるわけでございます。したがいまして、その大企業だけが輸出をしている、あるいは大企業に偏って輸出がなされているかどうかというのは、どうもこれだけの統計ではなかなかよくわからないというのが実態でございます。
  137. 吉井英勝

    ○吉井委員 局長さんはよくわからないということなんですが、輸出上位十社にしても、これは九五年から九六年そして九七年上半期へ、輸出の比率が額の上でも率の上でもぐんと伸びているのです。上位三十社で見ても、輸出が急拡大しているというのはよくわかるのです。  それで、内需がだめならその分を輸出ドライブをかけて企業利益を上げていくという方向を追求したことが、この数字に読み取ることができるのです。その結果、貿易黒字は、ピークだった一九九二年の十三兆四千八百四十八億円が、九六年には六兆三千五百九十四億円に一度落ち込んだのですが、九七年には五年ぶりに増加に転じて、この九七年の貿易黒字額は九兆九千八百十八億円とぐんと伸びているのですね。  それで、通産大臣、対米貿易黒字を初めとするこの貿易黒字をこれまでのように生み出すやり方が、今国際的に許されるのかどうか、これを大臣に聞いておきたいと思います。
  138. 今野秀洋

    ○今野政府委員 日本全体の貿易バランス、それからアメリカ向けの貿易バランス、ともに最近は上昇傾向にございます。こういった中で、政府経済政策の基本的な方向としては、内需をできるだけ拡大をして、輸入もふえ、輸出の伸びがモデレートになり、そういう格好で今の世界経済の中で大きなフリクションを起こさないような姿に持っていこうということで、現在の経済計画がつくられているというふうに理解いたしております。
  139. 吉井英勝

    ○吉井委員 これは、やはり大臣に伺っておきたいと思います。と申しますのは、この間、大臣は三日の記者会見で聞かれたこと、そのお答えになったことなどが、インターネットでホームページに出ていますから。  それで、アメリカのデイリー商務長官が、また改めて対米貿易黒字がふえ続ければ問題だということについて、こう言っておるじゃないかということを記者の方から聞かれて、確かに貿易黒字はふえまして、対米黒字の体制というものをどういうぐあいに国内で消化するか、これから取り組みを少ししていかないかぬ、ほっておいてよいというものじゃない気がするというふうに記者会見ではおっしゃっておられるのです。  私は、こういう中で対米貿易黒字を初めとする貿易黒字をこれまでのように生み出すやり方が国際的に許されるのかどうか、やはりここのところはひとつ大臣からきちっとお答えいただきたいと思います。
  140. 堀内光雄

    堀内国務大臣 今の対米黒字の問題でございますが、先ほどから問題を提起されております自動車について申し上げますと、少なくとも九月ぐらいまでは増加をいたしましたが、十月、十一月、十二月と減少をいたしております。これは、海外に事業を展開していった成果があらわれてきているというふうにも思えるわけであります。その他の面で、一般的な輸出というものがこういう経済状態の中で輸出にドライブがかかってきたという面があるということは確かでありまして、そういう個々の業界の増加というものをどういうぐあいにしたら対米の輸出がおさまってくるのか、政府が指導をしてやるべきものではありませんので、そういう問題についてどういう取り扱いをし、どういう取り組みをするかということについて今考慮をしているところだというところでございます。
  141. 吉井英勝

    ○吉井委員 要するに、苦悩の中にあるということですね。  それで、その昨年の秋以降のこと、お話がありましたけれども、私がきょうまず海外進出の問題で御紹介しましたように、この間一貫して海外へどんどん出ていっていること、それから、貿易黒字の問題も、一時的に減ったけれども、また国内の需要が冷え込んでいるものですから、内需がだめだからということで輸出ドライブをかけて、また全体として伸びていることは事実なんですね、数字として出ているのだから。そういう中で、輸出上位の大企業各社がこれ以上輸出をふやして貿易黒字をふやすということはもはや許されるものじゃないというところへ来ていると思うのです。  これから輸出依存は非常に困難だ、だから各社も、大臣も恐らく頭にあっておっしゃったのでしょうが、国内販売への転換を迫られているのですよね。しかし国内は、九兆円負担増などで消費購買力は落ち込んでいるのですよ。だから内需が伸びるという見通しも非常に暗いのです。そうなれば、内需中心型へと冒頭、昨日も所信でもおっしゃったわけですが、内需中心型へ切りかえようとするには、結局消費税率を三%に戻すこととか、それから所得税減税を恒久減税にすることとか、要するに国民の懐を直接温めるという、これをやらないと内需主導型に切りかえるということはできないのじゃないですか。私は今そのことを政治は決断をするべきところへ来ていると思うのですよ。大臣、どうですか。
  142. 堀内光雄

    堀内国務大臣 そういう意味で、先ほどから申し上げておりますように、九年度補正予算において二兆円の減税あるいは公共事業の一兆円、ゼロ国債の一兆五千億、また、十年度の予算におきましては、関連法案としては法人税の三%減税あるいは法人事業税の一%減税、地価税の凍結、そういうものを含めて、法人税関係だけでもって約二兆数千億円の減税効果が出てくるということもあります。  あるいはそれに関連して、内需が拡大できるように、企業の負担が軽減できるように電気料金、電話料金を初めとするいろいろの諸施策を行っておりまして、四月以降、それこそ尾身長官の言によれば、桜の咲くころから効果があらわれてくるというのが私どもの期待をいたして取り組んでいるところでございまして、少なくともその時点の様子を見た上でなければ、デイリー長官との話をしたときにも、その時点の様子を見た上で考えたいと思うが、少なくとも現状ではその取り組みで成果が上がると思うということを私は確信をいたしておりますということを申し上げて、デイリー長官理解をしたということであります。
  143. 吉井英勝

    ○吉井委員 非常に不況が深刻な中で九兆円負担やったのですよ。二兆円の特別減税をやっても、まだ七兆円残るのですよ。消費が本当に冷え込んでいるのです。貿易も大変。内需拡大を進めなければいけない。しかし、その内需が冷え込んでいるのです。  今大臣おっしゃったように、法人税減税と地価税の凍結などで、例えば、一例を挙げれば、トヨタは九十億円ぐらいの減税になりますけれども、庶民にはそんなに減税の効果はないのですよ。大企業に幾ら減税をやったって、法人税率を下げても企業は海外へどんどん出ていったのですよ。これは歯どめにならないのですよ。  やはり本当に内需を拡大しようと思ったら、GDPの六割はまさに個人消費中心としたものなんですから、そこへ直接の減税が及ぶ。消費税というのは、特に使わないと減税にならないのですから、やはりそのことに本当に力を入れて、内需主導といえば、私は、消費税の税率をもとへ戻すということ、それから恒久減税、そこへ本当に踏み切るということをやらないと、大臣が幾ら内需主導だといったってそれはうまくいかないというふうに思います。  大臣のお考えはさっきの答弁の繰り返しになりますから、そういう点で、急激で異常な海外移転が国内の雇用の喪失を生み出し、これが労働者世帯の所得の落ち込み、またそれが消費購買力の抑制になったわけです。そして逆輸入と国内生産の後退を急激に引き起こして、中小企業のこの間の廃業とか倒産とか経営圧迫につながりました。設備投資の低迷にもなりました。  国内消費需要が落ち込んだ中で、今度は外需によって辛うじて経済成長率をプラスに維持してきたということになるのですが、これが貿易黒字を再び拡大し、摩擦を再燃させる。だから今、内需拡大主導の景気回復が求められているわけなんです。そのときに一体どうするのか、ここへ日本は今来ているのでしょう。国内販売をふやすと下方修正を企業もやろうとしているのですが、しかし、消費の落ち込みでそのめどが立たないというところへ来ているわけですよ。  今、政府が本当に即効性のある緊急対策をやろうと思ったら、消費税率をもとの三%へ戻すとか、特別減税を恒久減税にするとか、直接国民の懐を暖かくする、消費を温めるということ以外にない、私はこのことを重ねて申し上げたいと思います。その立場に大臣は立つべきだと私は思うのですが、この点だけ伺って、時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。
  144. 堀内光雄

    堀内国務大臣 私は、委員のお考えとはちょっと違っております。  今の消費税の減税とか特別減税の問題だとか、そういうことを今現在考えられる立場ではないと思っておりますし、必ず企業活動を通じて経済構造改革の推進を進め、そしてその成果によって景気の活性化が行われてくるという手順を踏んでまいりませんと、本当の地道な安定した経済成長景気回復は行えないというふうに考えております。
  145. 吉井英勝

    ○吉井委員 時間が参りましたので、終わります。
  146. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 以上で質疑を終わります。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十三分散会