○
伊藤参考人 堺市環
境保健局長の
伊藤でございます。よろしくお願いいたします。
一昨年のO157集団下痢症に関しましては、国、
大阪府を初め多くの
医療機関や各自治体、各
関係機関等の御支援、御協力を賜りました。厚く御礼申し上げます。
それでは、一昨年の本市におきますO157集団下痢症の経過から御説明申し上げます。
平成八年七月十三日午前十時ごろ、市立堺
病院より、十二日の夜間診療で、下痢、血便を主症状とする小学校の
患者十名を診察したとの通報が本市衛生部にありました。同様の情報が他の
医療機関からも寄せられ、学童の集団食中毒を疑い調査を始めたところ、十三日時点で、市内三十三小学校、二百五十五名の学童の下痢
患者が受診していると判明したため、十三日午後三時、私を本部長として、堺市学童集団下痢症
対策本部を設置いたしました。その後、情報収集、
医療体制確保、原因究明等の活動を開始したところでございます。
十四日には、本市衛生研究所において、有症者検便二十六検体中十三検体から腸管出血性大腸菌O157を検出、今回の学童集団下痢症の原因菌と断定したところでございます。
また、十五日には、市民の不安の解消を図るため、
医療相談ホットラインを二十四時間体制で開設いたしました。
患者数は、その後、日を追って増加してまいりました。市の全組織を挙げて
対策に取り組むべく、十六日、市長を
対策本部長にしたところでございます。
また、十七日には、厚生省、
大阪府、堺市によります原因究明三者連絡調整
会議が発足し、あわせて
医療機関確保等の支援体制もできたところでございます。
十七日ごろから、各
医療機関より、溶血性尿毒症症候群の発症状況の報告が寄せられ、あわせて、血液透析等の高度
医療を要する、そういう要望のため、転院の
要請が相次ぐ一方で、HUS非発症の
患者家族の不安も増大してまいりました。行政、
医療機関ともに
対応に苦慮することとなりました。
二十三日、十歳の女子児童がHUSで死亡、また意識障害の認められる重体
患者がいることも各
医療機関より伝えられたところでございます。
そのため、財団法人
大阪府救急
医療情報センターなどの全面的な協力を得まして、三次救急
医療機関への転送を進めるとともに、夜間、休日の一次診療体制では、平常の
医療体制に加えまして、十
病院で二十四時間の診療体制を確立したところでございます。
市民の不安が増大する中で、啓発活動、広報活動、並びに公共施設の消毒、消毒液の全世帯配布、保健婦、教師による
患者宅への訪問指導活動、飲用水の衛生確保の検査、無料検便等の
対策を進める一方、市内各種団体によりますO157
対策啓発市民
会議が設立され、O157に関する正しい知識普及や正しい
対応方法についての学習会の実施や運動を推進してまいったところでございます。
二十一日より開始いたしました市民への無料検便での菌陽性者に対しましては、二十七日より
予防投薬等の指導を保健所で行い、七月末からは小中学生、幼稚園児の一斉検便を実施し、菌陽性者への投薬、指導を各
医療機関へ依頼しました。
一方、
感染するからといじめられたり、堺市民ということでホテル等の宿泊施設から断られたり、勤務先から退職を言い渡されたり、こういった
人権に関する問題が発生してまいりました。そのため、
人権問題
対策プロジェクトチームを設置し、正しい知識の普及に努めるとともに、
大阪弁護士会の御協力を得まして、電話のホットラインに弁護士による相談を開始したところでございます。
また、八月六日には、腸管出血性大腸菌
感染症が
指定伝染病に指定されました。
このような状況の中、重症
患者にもようやく回復の兆しが見え、
患者数も日を迫って減少してきましたが、八月十六日に、重体であった十二歳の女子児童が死亡いたしました。
市民生活も徐々に落ちつきを取り戻し、重症
患者も九月末にはほとんど退院したことから、今回の腸管出血性大腸菌O157による集団下痢症に関しまして、二次
感染のおそれも去った、そういう
判断をもって十一月一日に安全宣言を行い、同日、原因究明の調査結果を発表したところでございます。
給食の再開につきましては、学校給食
検討委員会において
検討し、十一月十九日より再開しました。
また、十一月に補償
対策室を設置いたしまして、十二月から全庁体制で補償交渉に取り組み、
平成十年四月末現在、補償
対象者九千百十九人のうち九千四十八人と合意が得られたところでございます。
また、
平成九年二月一日に、重体で入院中の七歳女子児童が死亡し、学童集団下痢症による死亡者は三名となりました。
後遺症につきましては、堺市医師会、
関係各
医療機関の協力を得まして、
平成九年二月から、経過観察のための検診を開始しているところでございます。
以上が一昨年のO157集団下痢症の概要であります。
このことによりまして、本市におきましては、マンパワーを集中化し機動力を確保し、組織的、広域的
対応を実施するため、
平成九年四月、衛生部の機構改革を行いました。
また、大規模食中毒及び
感染症等の発生を未然に防止するとともに、発生時の
対応のより一層迅速化、効率化を図ることを目的といたしまして、食中毒及び
感染症等
対策基本指針を策定したところでございます。
また、
平成十年三月二十五日には、堺市議会において健康都市宣言に関する決議が全会一致で可決され、同日、それを受け、市民一人一人が健やかで生き生き暮らせる町を目指して健康都市宣言を行い、健康都市堺の実現を目指しているところでございます。
では、次に、大規模なO157集団下痢症を経験した行政といたしまして、
新法に対する
意見でございますが、まず、
感染症の
拡大防止に向けての取り組みに関してであります。
大規模で
患者が重篤な集団
感染が起きたときこそ、自治体として適切な
対応が必要となりますが、事態が広くて深いほど、その
対策を立てるための基礎である現状把握が極めて困難な状態になります。
新法では、国の責務として、
感染症に関する情報の収集等の推進と、地方公共団体への技術的援助及び財政的援助の明記に加え、
感染症の
病原体等の検査体制の整備が提案されておりますが、大規模であるほど国の支援が必要である、このように
考えております。
また、必要であれば
患者等に質問し、必要な調査についての第十五条につきましては、現状把握と新たな
患者発生を防ぐ責務を持つ我々自治体といたしましては当然のことと
考えております。
次に、健康診断、就業規制の点についてでありますが、合理的な理由を提示し、十分な説明と同意の上で、でき得る限り強権の発動は避けるべきかと
考えております。
また、場合によっては
人権にかかわる
新法は、
細菌学の発展あるいは治療の進歩に応じて、
人権に配慮した、
時代に適応した柔軟な
法律であってほしい、このように希望いたしております。
最後に、治療が適切になされ、元気になることが
患者さんにとって最大の希望であり、
人権への最高の配慮と言ってよいと思います。その意味で、
医療機関や医師の任務は重大と
考えております。さらに、今後国が定める基本指針、それに即して都道府県がつくる
予防計画についても
新法は規定しておりますが、この基本指針と
予防計画に大きな期待を持っているところでございます。
ありがとうございました。(拍手)