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角脇参考人 経団連の
角脇と申します。
本日、この衆議院の環境
委員会におきまして
参考人として
意見を申し述べる機会を与えていただきまして、大変光栄に存ずる次第でございます。
私からは、現在御審議中である
地球温暖化対策推進法案の内容を踏まえつつ、
産業界としての
温暖化対策について御説明申し上げたいと思っております。
今回の地球
温暖化推進法案でございますが、私自身、
法案全文に必ずしも十分目を通したわけでもございませんので、各条にわたる詳細なコメントはできないわけでございますが、
地球温暖化対策の
推進に向けて、国、地方自治体、それから
事業者、
国民、それぞれが果たすべき
役割を明示した、いわば基本法的なものと受けとめておりまして、これを評価いたしております。
この
法案が
国会での御審議を経て成立いたしますと、私
ども事業者については、一つは、みずからの製造工程における
排出抑制措置、あるいは消費者や他の
事業者の
排出抑制に寄与する措置を講ずるよう努めるということ、二番目として、そうした
排出抑制措置を進めていくために、自主的な
計画を作成し、その公表に努めるということ、三番目に、そういう
対策の実施状況の公表に努めること等の、主としてこの三点がいわば
事業者に課せられた
責務になるというふうに伺っております。
それで、まずその第一点目の、
排出抑制措置を講ずるよう努めるという点でございますが、このことは、地球
温暖化という非常に困難な問題の解決に向けて
産業界として重要な
役割を担っていかねばならない、特に
温室効果ガスの大宗を占める
二酸化炭素の
排出の相当割合が
産業界にあるということ、また、問題解決のための技術とか人材を持っておりますのは
産業界自身でありますこと等を考えますと、私
ども産業界として当然やっていかなければならないことだと
認識いたしております。経団連といたしましても、そうした観点から、これまでも、地球
温暖化問題を初めとする二十一世紀に向けた
地球環境対策に積極的に取り組んできていることをまず申し上げたいと思っております。
具体的には、経団連では、一九九二年の
リオの
地球サミットがございましたが、それに先立って、その前年の一九九一年に経団連
地球環境憲章というものを発表いたしました。この中で、環境問題への
取り組みということは企業の存在と
活動にとって必須の条件であるとの
認識を表明いたしますとともに、各企業においても、例えば環境担当役員を設置するとかあるいは環境監査の実施を徹底するとか、企業が守るべき十一項目の行動指針をその中で打ち出したわけでございます。これが、いわゆる公害問題を過去において克服してきた
日本の
産業界が次のステップとして
地球環境問題に積極的に
取り組み始める引き金となったものと自負いたしております。
さらに経団連では、この憲章を発表して五年経過した時点で、一九九六年の七月でございますが、二十一世紀の環境保全に向けた
日本の
経済界の自主的な行動宣言ということで、経団連環境アピールというのを発表いたしました。このアピールは三つのキーワードがございまして、一つは、個人や組織のありようとしての環境倫理の再確認、エコエフィシェンシーの実現、それから自主的な
取り組み強化ということを掲げて、
地球温暖化対策を初め、具体的な分野について
対策を示したわけでございます。
特に、
地球温暖化対策につきましては、このアピールの中で、エネルギー利用効率の向上に係る具体的な
目標と、その実現に向けた具体的な方策を織り込んだ業界ごとの自主的な
行動計画を作成して、その進捗状況を定期的にレビューするという
方針をここで初めて打ち出したわけでございます。
経団連は、このアピールを具体的な行動に結びつけるということのために、傘下の業界
団体に、アピールに沿って自主的な
行動計画を策定するよう呼びかけまして、昨年の六月に、それらを取りまとめた経団連環境自主
行動計画を発表いたしたものでございます。きょう、資料としてお手元にお配りしているものがそれでございます。現在、この
計画には、三十七の業種、業界
団体数としては百三十八の
団体に参加いただいております。御参加いただいた業種は、いわゆる製造業とかエネルギー多消費
産業はもちろんでありますが、非製造業であります流通とか運輸、建設、貿易、さらには損保、そういった非製造業も含めて、参加した業種は極めて幅広いものとなっております。
この自主
行動計画は、その中で掲げた
省エネの
目標、これは
産業界にとって極めて厳しい、
現時点ではぎりぎりのものではございますが、
産業界としては、この自主
行動計画に従いまして、製造工程での
省エネ対策はもちろんでございますが、廃熱等の未利用エネルギーの利用、あるいは廃棄物のリサイクル等々、業種を超えた
取り組みを
推進してまいる所存であります。また、民生、
運輸部門への
対策といたしましても、企業、
事業者も、ビルや店舗での
省エネ、あるいは貨物輸送、配送の効率化を図るとか、あるいは低燃費の自動車とか省力型の家電製品、断熱タイプのビル、住宅、そういう
CO2の
排出の少ない製品、サービスの開発を通じて、民生、
運輸部門での
排出抑制に
協力していきたいと考えております。
言うなれば、この自主
行動計画を着実に実施していくということが、
地球温暖化防止に向けて
産業界がその
責務を果たしていくゆえんであろうと考えております。
それからまた、今回提案されております
法律では、冒頭申し上げましたように、
温暖化対策について自主的な
計画を作成、公表するということ、並びにその実施状況の公表に努めるということが
事業者の
責務として規定されているわけでございますが、この点につきましては、私
ども産業界としては、基本的には、ただいま御説明申し上げました経団連環境自主
行動計画の進捗状況をその都度公表し、
計画の更新を行うということで
対応してまいりたいと考えております。
具体的には、経団連では、昨年六月、自主
行動計画を発表いたしました際に、二〇一〇年における
産業部門、これは、いわゆる製造業部門にエネルギー転換部門を加えたものでございますが、
産業部門から発生する
二酸化炭素排出量を一九九〇年レベル以下に抑えるよう
努力するという
目標を、一応自主
行動計画とともに発表いたしております。あわせて、その
行動計画の進捗状況を毎年
フォローアップして、その結果を公表していくということをお約束したわけでございます。
昨年、一九九七年六月から、
計画を発表して約一年経過いたしまして、経団連としては、ことしの十月にも第一回目の
フォローアップを実施したいということで、今準備を進めております。
自主
行動計画をお出しいただいた業界に対しては、九七年度
段階での各業界の自主
行動計画の実施状況を改めてレビューしていただくように
お願いし、あるいは自主
行動計画の更新、追加、自主
行動計画は昨年六月に出したものでございますが、御
承知のように、その後十二月に
京都のCO33が行われて、
CO2だけでなくて六つの
温室効果ガスが対象になったとか、
日本の
目標自体六%というようなかなり厳しい
目標がございます。そういうことも踏まえて、各業界で昨年発表した自主
行動計画の更新とか追加があれば、それもあわせてお出しいただく。
それから、自主
行動計画を
推進していく結果として、どの程度の
効果が得られるかをお示しするという
目的から、
産業部門にエネルギー転換部門を加えた
産業界全体の
数字として、二〇一〇年にどの程度の
二酸化炭素の
排出になるか、一応、
目標としてそういう
数字もお示ししたいというふうに考えております。
こうしたものを取りまとめて、ことしの十月に広く公表いたす所存でございます。
この自主
行動計画の
フォローアップは、ことしだけでなく、今後毎年行っていくつもりでございまして、そうすることによって、アカウンタビリティーというか、
産業界の
取り組みに対する
社会の理解を得ていきたいというふうに考えております。
なお、
政府におかれましても、橋本総理を
本部長とする
地球温暖化対策推進本部が一月にスタートして、既に、当面の
温暖化対策を
決定されておりますが、その中でも、経団連の昨年発表した自主
行動計画が一つの大きな柱として取り上げられておりまして、環境自主
行動計画を公的にも
フォローアップするということが盛り込まれております。これを受けて、現在
通産省は、
産業構造審議会など四審議会の場で
フォローアップを進められておるわけでございます。
産業界みずからも、自主
行動計画の進捗状況について積極的に説明し、
透明性の高いものにしていく所存でございますが、こうして、
行政あるいは第三者の目が入るということで、自主
行動計画への信頼が高まるものと私
どもは考えております。
ただいまの御説明は、
CO2の
削減についてでございますが、
温室効果ガスの
排出割合で三%程度を占める代替フロン等につきましても、
対策を進めてまいる所存であります。これにつきましては、代替フロン等を製造する業界、あるいはこれを使用する機械や製品を製造したり使用している業界
団体ごとに
排出抑制
計画を策定して、これを着実に実行に移してまいりたいと思っております。
なお、この
計画につきましては、公的
フォローアップの一環として、四月の末に
通産省の化学品審議会の地球
温暖化部会に提出したところでございます。現在
通産省において、
我が国全体としての抑制
効果の試算を行っておられるところと聞いております。
以上、今回の
法案に関連して、私からは、主として
事業者、
産業界に係る部分を中心に申し上げましたけれ
ども、国、自治体、
産業界、
国民、
社会を構成する各構成員が、
地球温暖化防止に向けてみずからの
責務を着実に果たしていくというのが今回の
法案全体の趣旨でございますが、それについては、私
どもとして全く異論のないところでございます。
産業界としては、
温暖化を防止し、循環型、
省エネ型の
社会を実現していくために、
経済的、技術的にとり得る実行可能な、ぎりぎりの
対策としてまとめた自主
行動計画を着実に実施していくことは当然でございますが、あわせて、中長期的な視野に立って
対策技術の開発を進めていかなければならないと思います。
同時に、地球の
温暖化は、エネルギー利用に伴う
二酸化炭素排出がその原因の大部分でございますので、
産業界はもちろんでございますけれ
ども、消費
活動の
主体としての
政府、自治体、あるいは日常
生活を営む一般
国民、さらには、例えば学校とか病院、商店、そういう地域
事業者など、多くの
主体がその
責任を担っておるわけでございます。
その
意味で、原子力発電の
推進とか物流の効率化や交通
対策、建物の
省エネ化、さらには環境
産業の育成あるいは環境教育の充実など、幾つかの
主体にまたがっている問題や
社会的なインフラ整備の
課題にも積極的に
対策を打つ必要がございます。こうした面につきましては、今回この
法案が成立いたしましたら、ぜひ具体的な
施策を展開していただくよう
お願いしたいと思っております。
以上で私の陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)