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1998-05-06 第142回国会 衆議院 科学技術委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月六日(水曜日)     午後零時四十二分開議 出席委員   委員長 大野由利子君    理事 小野 晋也君 理事 河本 三郎君   理事 三ッ林弥太郎君 理事 山口 俊一君    理事 辻  一彦君 理事 吉田  治君    理事 斉藤 鉄夫君 理事 菅原喜重郎君       大島 理森君    奥山 茂彦君       木村 隆秀君    田中 和徳君       能勢 和子君    平沼 赳夫君       松本  純君    村井  仁君       望月 義夫君    近藤 昭一君       佐藤 敬夫君    鳩山由紀夫君       近江巳記夫君    米津 等史君       吉井 英勝君    辻元 清美君       中村喜四郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷垣 禎一君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         科学技術庁科学         技術政策局長事         務代理     間宮  馨君         科学技術庁科学         技術振興局長  宮林 正恭君         科学技術庁研究         開発局長    青江  茂君         文部省学術国際         局長      雨宮  忠君  委員外出席者         科学技術委員会         専門員     宮武 太郎君 委員の異動 五月六日  辞任         補欠選任   杉山 憲夫君     能勢 和子君   田中 和徳君     松本  純君   中西 啓介君     米津 等史君 同日  辞任         補欠選任   能勢 和子君     杉山 憲夫君   松本  純君     田中 和徳君   米津 等史君     中西 啓介君     ————————————— 本日の会議に付した案件  研究交流促進法の一部を改正する法律案内閣  提出第九一号)                ————◇—————
  2. 大野由利子

    大野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出研究交流促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。望月義夫さん。
  3. 望月義夫

    望月委員 自民党の望月義夫でございます。  谷垣大臣には、欧米出張、お疲れさまでございました。マサチューセッツ工科大学シリコンバレーでの意見交換が、日本アメリカ科学技術協力協定改定促進、ひいては我が国研究開発のさらなる発展につながると思います。大変御苦労さまでございました。  さて、四月二十二日の本委員会において、谷垣大臣から、研究交流促進法の一部を改正する法律案提案理由説明をお伺いいたしました。資源なき日本が世界で通用していくために科学技術振興が重要な政策課題であることは、だれもが認めるところだろうと思います。そういった観点から、当法案重要性を認識すると同時に、先般の大臣趣旨説明に賛同するわけでありますが、創造性豊かな科学技術立国日本を期待する意味で、二、三の質問をさせていただきたいと思います。  まず、本法は、昭和六十年に行革審の答申を受けて六十一年に成立しておりますが、国と国以外の者との共同研究実績は、本法の成立以前と比べてどのように変わったのか、例えば新産業創出みたいなものがあったかどうか、お伺いしたいと思います。
  4. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  国立試験研究機関と国以外の者との共同研究につきましては、平成八年度に約千件の実績がございます。このうち、主要五省庁における共同研究件数を見ますと、研究交流促進法が制定されます以前の昭和六十年度におきましては約四百件でございました。それが、八年度には約九百件というふうに増加をしているという事実がございます。また、国立大学等におきましては、昭和六十年度の約二百件が平成八年度には約二千件と、大幅に増加をしているというふうに承知をしております。  共同研究成果といたしましての特許につきましては、国立試験研究機関につきましては、平成四年度から八年度までに出願した特許件数全体の約三割を占めているという事実がございます。内容的にも、新産業創出に資するようなすぐれた研究成果が出てきているところでございます。例えば、大型骨欠損を回復させる有機無機複合体を開発したり、酸化物系超電導体コイル化技術を開発したり、こういうふうなことなどがございます。
  5. 望月義夫

    望月委員 ただいまの答弁を聞きまして、私が想像していた以上に成果があったのかなということを感じさせていただきました。  そこで、今改正案でございますけれども 国以外の者すなわち産業界が、学、官の研究機関との連携によりおのおのの特色を生かす、そういうことによって我が国全体の科学技術のレベルを押し上げていくためのものであると思います。これは容易に想像できるところでありますけれども、それでは、今改正案で結局のところ何が新しくなるのか、あるいはどのような効果を期待しているのか、その辺について御説明いただきたいと思います。
  6. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  本法律案におきましては、国と国以外の者との共同研究等研究交流を一層促進する新たな措置といたしまして、国立大学あるいは国立試験研究機関等の敷地内に国以外の者が共同研究施設整備する際に、土地廉価で使用できるように財政法上の新たな特例措置を定めることをその内容といたしております。  ごの制度の創設によりまして創造的な科学技術活動を積極的に推進するためには、産学官がそれぞれ特色を生かしまして、共同研究を迅速に、密接な連携のもとにやっていく必要があるわけでございますが、これらにつきましては、できるだけ近接した場所共同研究が行われるということが、非常に有効な形で進められる一つの大きな要素ではないかというふうに考えているところでございます。そういう意味で、このような制度を通じまして、近接した場所共同研究が行われるようになるということを期待しているわけでございます。  このような近接した場所でやるということは、結果といたしまして、共同研究をやりますときの位置的あるいは時間的な制約といったようなものを取り払う効果がございまして、また、このようなことを通じて、国立大学なり国立試験研究機関 における経済的ニーズに対応した研究開発活動活性化にも大きな期待ができるのではないか、こういうふうに考えているところでございます。
  7. 望月義夫

    望月委員 ただいまの御説明の中でありましたように、産学官共同研究による科学技術振興について、これはもう本当に、確かに理解することができます。  ただ、我々の反省として、先ごろの官と財の接待汚職、癒着の構造マスコミ等で大きく取り上げられてきたところであります。これは、我々政治家もみずから戒めていかなくてはならないことでありますが、例えば、官と学の産に対する行き過ぎた配慮、これによってあの忌まわしい、忘れることのできない薬害エイズが起こりました。我々は、決してこれを忘れてはならない、大切な教訓にしなくてはいけないと思います。すなわち、産学官連携によって汚職が、そういったものが一たん発覚してしまいますと、日本科学技術は、そこから本当に体力が低下してしまう、国際的な研究競争で取り返しのつかないおくれが生じてしまうと思います。  本法が成立した昭和六十一年の附帯決議にも、民間企業との研究交流を進めるに当たっては公正を確保すること、それから、技術の高い中小零細企業にも十分に配慮すること、そういうこととなっております。そこで、共同研究相手方選定方法はどんなふうになっているのか、また、選定に当たっての公平性透明性確保されているかどうか。ここは本法案の大切なところでありますので、ひとつ慎重にお答えいただきたいと思います。
  8. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  先生の御指摘のようなことにつきましては、私ども大変留意をしたいというふうに考えているポイントだ、こういうふうに思っております。  それで、具体的には、国立大学などにおきましては、共同研究決定当該国立大学の学長などの長が行っているわけでございますが、その決定を適切に行うためには、学内組織が申請の都度審査をされる、そして公平性透明性確保を図るというふうなことをおやりになっております。  それから、国立試験研究機関における共同研究につきましては、共同研究の当事者の判断だけではなく、その決定は、業務を遂行するために必要かつ適切であるということを認めるというための手続を所内的にちゃんとやる、それで研究所長最終判断をするというふうにやっております。このような形をとりますことでもって、公平性それから透明性確保しようということでございます。  また、「国の研究開発全般に共通する評価実施方法の在り方についての大綱的指針」、これは平成九年の八月七日に内閣総理大臣決定が行われたものでございますが、これが策定されておりまして、国費によって実施される研究開発については、第三者による外部評価実施、あるいは評価結果の積極的な公開などを行いまして、一層適切な研究開発活動の遂行を確保するというふうなことになっております。  特に、共同研究の場合におきましては、上記の指針において、国費負担度合いども勘案いたしまして、適切な方法でふさわしい評価を行うものとされておりまして、さらに、国立試験研究機関におきましては外部との交流など運営全般の適切さについても機関評価をするというふうなことも求められているところでございます。  共同研究をやろうといたします際には、以上の手続とか研究評価実施に遺漏なきを期するようにするということに加えまして、国以外の者が施設国立大学国立試験研究機関等の構内に建設する場合については、特にそのテーマあるいは相手方選定に当たっては国民の疑惑を招くことのないように十分留意をし、慎重にやるべきものだというように考えております。このようにいたしまして、公平性透明性が保たれますよう関係機関に十分私どもとして徹底していきたい、こういうふうに考えているところでございます。以上でございます。
  9. 望月義夫

    望月委員 大変国民に信頼される科学技術行政をやっていただきたいということで、あえて今の提言をさせていただいたわけでございます。  そこで、谷垣大臣にお伺いしたいのですけれども大臣提案理由説明によれば、我が国経済社会閉塞感の打開、打破、それから経済構造改革に資するものということでありますけれども、私はそれだけではない、このように実は思うわけでありまして、ちょうど今、昨年の行政改革会議で決まった省庁再編基本法案行革特で審議されているところでありますけれども、この枠組みでは、科学技術庁文部省が統合され、教育科学技術省が誕生することになっております。そして、行革会議最終報告には、科学技術行政大学行政の統合により国として科学技術に総合的に、戦略的に取り組むことが明示されております。  言うなれば、大学研究者が十五万人おりますけれども、この科学技術庁の進めてきたプロジェクト型の研究とうまくこれがかみ合えば、新産業創出など、今までは単に、学校学校研究している、科学技術の方は科学技術の方で進めているというのが一体になって、相当大きな効果が期待できるものである、私はこのように思っております。そしてまさしくこれが時宜を得ている、このように思えるのであります。  それはまた、そういった基礎研究のポテンシャルが高まる折に、産業界が国の研究機関のそばに施設整備するということは極めて有意義なことであり、産学官連携という今改正案技術立国として二十一世紀日本が生き残るための礎になるものである、私はそんな気がしてなりません。最後になりましたけれども、二十一世紀に向けて、科学技術立国への取り組みについて、谷垣大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  10. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今望月委員がおっしゃいましたように、科学技術創造立国を目指すという背景には、当委員会を初め、今までお取り組みいただきました科学技術基本法、それから科学技術基本計画、そういうものを踏まえて科学技術創造立国ということになっているわけでありますが、もっと大きく言いますと、日本のこれからの国家像というものをどう描くか、これはそれぞれのお立場によっていろいろな国家像の描き方があると私は思うのです。  しかし、恐らく、どのような国家像を描いたとしても、その中で、科学技術振興というものを欠いた国家像の描き方というものはちょっとできないのではなかろうか。これだけ狭い国に人口が一億二千万人もおって、そして資源も十分ないという国では、やはり科学技術に力を入れていく。これは多分どのような政治的立場をとろうと共通できる、一緒になって取り組めるところではないかというふうに私は思っております。  先ほどお触れをいただいた、アメリカへ連休の間行かせていただいたわけでありますけれども、その中でも、MITやハーバード研究者方々あるいはシリコンバレーのいろいろな、起業者と申しますかベンチャーの方々意見交換をしまして、私はますますその意を深くしたわけであります。  こういうふうに創造的な研究開発活動というものを日本の中でつくっていく場合に何をしたらいいか。これは多様な面から考えていかなければならないと思うのですが、私は、今回アメリカでも強調して、いろいろ議論をさせていただいたわけなのですが、日本人というのは割合均一的な国民でございますから、その均一の中で、同じような考えの人だけが集まって議論をしていてもなかなか活性化ができないのじゃないかという気がいたします。  ちょっと大風呂敷を広げるようでありますけれども日本に行って研究開発に参加したらおもしろい、非常に情報も集まっていて、人も活気があるし、そう言っていただいて、諸外国の有能な研究者がどんどん日本に行って仕事をしたい、こう思っていただくような環境をつくることが大事じゃないかというふうに私は今回強く、前からもそう思っておりましたけれども、今回も強くそう思 つた次第であります。  そのように刺激のある環境をつくっていくためには、まだまだやらなければならないことがたくさんありますけれども、要するに、日本の中でもっと考えていかなければならないのは、異業種間の交流、異なったセクターの間の交流産業界産業界で、官界官界で、経済界経済界でタコつぼの中に閉じこもっているようではなかなかそういう刺激が生まれないだろうと私は思います。今回お出しをしている、今御審議をいただいている法律案は、その意味では、ささやかな一歩かもしれませんけれども国立試験研究機関の場に、異業種というか異なったセクター交流して研究開発ができるような仕組みをつくっていこうと、ささやかでございますが、その第一歩のつもりでございます。  行政改革についてもお触れになりまして、文部省一緒になっていくことがどういう効果を生むかということでございますけれども、まさに望月委員指摘をされましたように、今までの文部省のやっておられた学術振興学術行政というものと、私どもが担当してまいりました科学技術行政というものを一体化する。  それからもう一つは、文部省のやっておられた教育行政というもの、その中で科学技術振興という意味合いも、最後は人でございますから、文部省一緒になることで、これからの人材を育てていく、若い方々科学技術に関心を持っていただくということももっと力を入れられるのではないか。  これもこの委員会で何度も御答弁を申し上げておりますけれども、こう言っては文部省に失礼でございますが、科学技術庁も、よいところもあれば悪いところも、それぞれ人間の組織でありますから、ございます。文部省科学技術庁という育ちの違った役所が一緒になることによって、今までよりも視野を広げて、刺激が起きていくような環境をつくれたらと思っております。  まだいろいろな側面から議論をしていかなければなりませんけれども、今後とも、違ったものが触れ合って活気が出てくる、そういうようなことを目指しまして頑張っていきたい、こんなふうに思っております。
  11. 望月義夫

    望月委員 大臣の御意見はよくわかりました。科学技術なくして我が国の将来はない。大臣もぜひひとつ科学技術行政に勇気を持って当たっていただきたいと思います。我々も大いに協力させていただきたいと思います。ありがとうございました。これで質問を終わります。
  12. 大野由利子

  13. 吉田治

    吉田(治)委員 民主党の吉田治です。  大臣外遊御苦労さまでした。行かれたなんて全然知りませんでして、きょう報告を受けて初めて、へえ、すごいところへ行かれたんだな、私たちも連れていってもらいたかったなというふうに思ったわけです。できることなら事前に一言声をかけていただいたら、お供をするなり、もしくはこういうことを聞いておいてほしいということをお伝えしたいなと。  はっきり申し上げまして、これは私費で行かれたのですか、公費で行かれたのですか。
  14. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今回のアメリカへの出張は、幾つ目的がございましたけれども、第一は、アメリカレーン大統領科学技術担当補佐官が新しく御就任になりましたので、六月に日米科学技術協定改定期も迎えておりますので、新任の補佐官と基本的に科学技術協定の更新に向けての、腹合わせと言うといけませんが、基本的な認識をすり合わせておこうというのが第一の目的でございました。  それと同時に、今大変アメリカは景気が好調でございますけれども、その中で非常に科学技術研究も元気がよいということで、何とかその活発なところを日本も学べるところは学びたい、こんな気持ちで参りまして、公務出張でございますので、私費出張ではございませんでした。
  15. 吉田治

    吉田(治)委員 税金で行かれたということになるわけですけれども、先ほど大臣の御答弁の中で、アメリカへ行かれて、日本研究開発においても本当に世界じゅうから参加をしたい、そういうふうな研究開発にしたいというお言葉もございました。また、異業種交流というお言葉もいただきました。  今回のこの研究交流促進法考えていった場合に、大臣がまさに言われてきたことを今こういう法案にしてきた。平成四年の改正における附帯決議においてもまさにその部分、そして昭和六十一年の附帯決議においても、そういう異業種交流であるとか日本にたくさん研究開発のために来てもらいたいというふうなことが随分うたわれておるのですけれども、それをわざわざ、皮肉っぼく言えば税金を払って聞いてきたのか、果たしてそんなのだったのかというふうな問いかけはいたしません。  しかしながら、過去、平成九年五月十六日また同十二月二十四日の閣議決定等においても、産学官連携というふうなものをとりわけしなければならないというふうな閣議決定がなされている。その延長線上での今度の促進法改正だとお聞きしております。  また、特に大臣はビューレット・パッカードの会長とシリコンバレーで、ここにある文書で言うと、「新産業創出など研究開発成果社会への還元の推進に関し、意見交換を行いました。」というふうに言われておりますが、これは事務方でも結構でございます、具体的に、今の産学官連携の現状、そして課題というふうなもの、これについて今どういうふうにお考えなのか、お答えをちょうだいしたいと思います。
  16. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。現在は大きな経済の転換期にございます。それで、強靱な経済基盤の中長期的な確立のためには新産業創出とかあるいは活力ある産業発展ということが必要でございますし、そのためには、研究人材交流確保共同研究推進などによりまして、それらが円滑に行えるような適切な環  境整備条件整備が必要でございます。これらにつきましては、各方面からこれで十分なのかというふうな御議論があることも事実だと思います。しかしながら、これらにつきましては、国全体としましては、六十一年に制定されました研究交流促進法を活用するとか、あるいは、従前からの産学官研究交流促進するための種々措置などを通じまして、研究開発成果移転活用研究開発基盤整備など、関連する施策充実を図ってきているところでございます。  例えば共同研究件数につきましては、年々増加してきておりまして、国立試験研究機関につきましては、平成四年から八年ということになりますと約四〇%以上増加しておりますし、大学につきましても約八〇%以上増加をしている、こういう状況でございます。  こういうふうな産学官連携につきましては一朝一夕にいかない部分があることも事実でございますけれども、私どもといたしましては、一層の進展をするように努めていきたい、その一環といたしまして今回の法改正お願いしているところでございます。よろしくお願い申し上げます。
  17. 吉田治

    吉田(治)委員 そういう趣旨の中で、この法案変更条項からすると、単に場所の値段を、貸し料を半分にするだけだ。それで果たして十分と言えるのですか。
  18. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  今回お願いをいたしましたのは、確かに土地使用料について廉価使用ができるというふうなことをお願いしているわけでございますが、こういうふうな産学官連携につきましては、御指摘ございました平成九年の五月あるいは十二月の閣議決定の中で種々施策指摘しているところでございまして、それらにつきましてはそれぞれ着実な推進を見ているというふうに考えております。  それで、法的措置としてとりあえずまずお願いをしたのが今回の研究交流法改正でございますし、それからまた一方で、政府といたしましては大学研究成果移転を図る法律お願いをして いるというふうに承知をしております。  具体的な措置につきましては、それぞれ法的措置なしに実施できるようなものなどもございまして、それらにつきましてはそれぞれ各省庁間で調整をしながら進めさせていただいております。
  19. 吉田治

    吉田(治)委員 今の答弁の中で、閣議決定を受けて着実な推進と。どういう着実な推進なのか、具体的に。  それから、まずこの法案大学研究成果移転についての法案を審議すると。まずという言葉を言ったということは、これからこの閣議決定に基づいてさまざまな法改正をする予定があるのかどうか、この二点をお願いします。
  20. 宮林正恭

    宮林政府委員 御説明させていただきます。  まず御説明させていただこうと思いますのは、ここのところに、産官学連携につきましての平成九年の五月あるいは十二月のいろいろな決定事項に対します措置といたしまして幾つかリストを持っております。  それによりますと、まず、例えばフェローシップ事業充実なりポストドクター一万人支援計画の実現を図るということにつきましては、ポストドクター平成十年度予算で八百八十人の措置をする、それから、平成十年度の補正予算におきましては九百八十人ぐらいの追加をしたいというふうな計画を持っておりますし、STAフェローシップでは五百五十人ぐらいの増加、あるいは文部省の方でも七百三十五人ぐらいの増加を図られるというふうなこともやっております。  それから、例えば兼業許可ということにつきましても、六省庁平成九年の七月に兼業許可促進するような通知をする、内部通達を出すというふうなことをやっているということもございます。  あるいは、振興調整費によります共同研究の中での、特に受託研究といったようなものを増額をするということもやっております。  それから、それぞれの大学企業との共同研究に係る税制措置といたしまして、大学等企業等との共同研究における企業側分担部分に係る試験研究費のうち一定の要件を満たすものについては税額控除の対象とする、こういうふうなことなども進めているところでございます。  あるいは、特許化を支援する、いわゆる研究成果を民間に移転していくということにつきましては、私どもの事業といたしまして、科学技術振興事業団が平成十年から特許化支援事業というふうなものを開始する、こういうふうなことなどもございます。  したがいまして、こういう形で着実に推進をさせていただいているというふうに申し上げた次第でございます。  それから、まずというふうに申し上げたところでございますが、私どもといたしましては、必要があれば、どんどんやはり法律というのは改正されていくべきものだと。だけれども、逆に、やはり法律改正いたしますには、当然、それぞれの必要な準備をしていかなきゃいけないわけでございますので、私どもといたしましては、今回はこういうお願いをしておりますけれども、必要があればまた改正をさせていただくという趣旨で申し上げたつもりでございます。
  21. 吉田治

    吉田(治)委員 熱心に御答弁いただいているのですけれども答弁いただけばいただくほど質疑時間が短くなっていきますので、御配慮のほどよろしくお願いしたいと思います。まあ、そういう作戦なのかなとも思いますけれども。  今、るる御説明なさいましたけれども、その中で私、ちょっと一つお聞きしたいなと思うのは、気になっているのは、大臣が先ほど、日本研究開発の魅力があれば世界じゅうからということなんですけれども、私どもがいただいている資料の中では、外国人の研究公務員への任用、本法の第四条関係でいうと、八省庁において二十一カ国、八十五人の任用実績と。このとらえ方というのはいろいろあると思うのですけれども、八十五人を多いととらえるのか。先ほどの質問の中で、大学関係を含めて十五万人も研究者がいるという中で、果たしてそれだけなのと。  科学技術というのは、国産化というか、日本人の日本人の手による日本人のための技術開発というよりも、やはり世界じゅうの人と交流してという部分も必要じゃないかと思うのです。この促進法の今後の運用等において、今までされてきていましたけれども、世界じゅうというか、海外のそういう研究者との交流というのはどういう方向に持っていこうと今考えているのですか。
  22. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 先ほどの数字が多いと思っているのか、満足と思っているのかということでありますけれども、私は、これは満足すべき数字では到底ない、こう思っております。  かつては日米間でも、いろいろな貿易インバランスの議論と同時に研究活動のインバランスのような議論も盛んでございました。我々は、日本としては、何も我々のところに敷居を立てて外国の研究者に入ってきていただきたくないなんというけちなことは毛頭考えているわけではないのですけれども、では、現実に外国の研究者が、あそこはおもしろいから、日本へ行ったらおもしろいからと言って続々と来てくださるかというと、なかなかそうはなっていない。ですから、先ほど申し上げたように、おもしろいと言っていただけるにはどうしたらいいかということをテーマとして考えてきたわけでありますけれども、今回は、まだ第一歩でございますが、いろいろなやはり刺激策を考えていかなければいけないと思っております。
  23. 吉田治

    吉田(治)委員 そういうところと同時に、外国人研究者と同時に、大臣も今度行かれて、シリコンバレーというのは、まさにベンチャー企業というのですか、いいアイデアを持った人がどんどん集まってああいう大きな産業になっていったというのは、もう私が言うまでもないことだと思うのですけれども、特に、研究交流部分における中小零細、とりわけベンチャー企業に対する施策というんですか、こういうものが非常に大事だと思うのですね。  私が科学技術庁からいただいた資料、「科学技術庁試験研究機関が行った共同研究の推移」というものを見ましても、平成四年度から百件以上あるのですけれども、「うち、中堅・中小企業との共同研究」となるともう、二件、三件、四件、五件という形で、一%にも満たないというふうな中において、やはりその辺を、ベンチャーは民間だから民間同士でやりなさいよというのじゃなく、やはり中堅・中小、そして零細、ベンチャーというものを含めて、この法律によって、特にそれぞれの附帯決議においてもその部分は強調されてきたと思うのですけれども、具体的に法ができて十年以上たち、何かその部分というのが取り残され、また、今回、使用料廉価、半分の値段と。  この結果としては、今までの経緯からこれから先を説明すると、やはり大手の企業がより安い値段で土地を借りて、自分たちの、また天下国家かもしれませんけれども、自分たちのためにできる法律と。どうも、次の私たち日本考えなければならない、新産業大臣言われましたけれども、中小である、零細である、中堅である、ベンチャーということについてはしんしゃくがされないのかな。その辺というのは、今後、この法改正による使用料の半額のみならず、さまざまな運営、研究交流促進という部分においてどういうふうに具体的にされるのか、どういうふうに取りまとめられているのか教えていただきたい。
  24. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  まず、科学技術庁の中小企業との共同研究が非常に少ないではないかという問題点の御指摘でございますが、確かに、当庁につきましては、研究機関の性格がどちらかといいますと航空宇宙でございますとか防災でございますとか放射線医学のような、そういう特殊な分野で、それも大規模な事業をやらなければいけない、こういうふうな性格のものが多いということが関連しているのではないかと思います。  しかしながら、国全体として申し上げますと、中小零細、ベンチャー企業の参画している研究と いいますのは、平成四年度から八年度までのものを総計いたしますと、民間企業国立試験研究機関共同研究のうちで約一三%を占めております。それからまた、国立大学などと民間企業との共同研究につきましても、資本金が一億円未満の中小企業との共同研究が約二割ぐらいになっている、こういうふうなことでございます。  大臣が御訪問になりましたシリコンバレー地区におきましても、大学なりそういうところが事業化をしていくということにつきましては、いわゆるベンチャー的、いわゆる中小企業と言っていいかと思いますが、そういう事業の育成が大事だ、こういうふうなことは私どもも聞いてきたところでございます。  しかしながら、ベンチャー企業等の育成につきましては、既に中小企業事業団における各種の、例えば中小企業創造基盤技術研究制度とか、それから創造技術研究開発費補助金という制度どもありますし、私どもも、科学技術振興事業団を通じまして、独創的研究成果育成事業と言っております、いわゆる新技術を生み出すような可能性のあるコンセプト、アイデアといったようなものをモデル化する、こういうふうな事業なども推進をしているところでございます。  今回の法改正につきましては、特に中小企業にウエートをかけた形になっておりませんが、これは全体としてそういう可能性、今後中小企業にも恩恵が行くものだ、こういうふうに考えております。
  25. 吉田治

    吉田(治)委員 局長、ここは政府広報の場じゃないんだから、法案委員会審議の場なんですから、科学技術庁のPRをしてもらっても困るのです。  PRでいうならば、平成四年のこの法案改正の審議のときに、当時の長田政府委員、あなたと同じ立場局長は、この中小企業のことに関しては、ベンチャーだとかいろいろなものが使うのじゃないかと答弁に書いてあるわけね。そして、PRに努めると書いておられるわけです。ここでPRするのじゃなくて、じゃ、この五年間どうPRしたのかちょっと答えてよ。
  26. 宮林正恭

    宮林政府委員 答弁させていただきます。  PRということにつきましては、私どもも、日ごろからマスコミ関係者に対しましてそういうことについてお話を申し上げておりますし、それから実際にいろいろなシンポジウムとか、そういうふうな形で各方面に御理解をいただくように進めてきているところでございます。
  27. 吉田治

    吉田(治)委員 ここの答弁にはこう書いてあるのですね。「いろいろなパンフレットをつくったりしまして関係方面に周知をして」。じゃ、パンフレットはつくっていないということですね。
  28. 宮林正恭

    宮林政府委員 パンフレットもいろいろと用意をして、それは方々に配付をさせていただいております。
  29. 吉田治

    吉田(治)委員 本当に、私はきょうの答弁を聞いておりまして残念で仕方がないです。日本科学技術の粋を集められ、科学技術をやろうというお方の答弁とは決して思えない。  時間がないので最後質問に入りますけれども、まさに、各附帯決議等々をどういうふうに行政は考えられているのかなという感じがするのですね、今の答弁なんかを聞いていると。  例えば、平成四年の附帯決議においては、知的所有権のあり方について世界的趨勢にも配慮してというふうな一文が入っております。私は、この特許権というふうなもの、知的財産権というものをしっかりと確保し、それをある意味で、税金によってできた成果については民間にうまく移転する、そうでないものに対しては国家の財産として保護していくということが非常に重要なんですけれども、現状において、知的財産権等の保護とか、研究開発成果の公開及び民間への委託、そしてそれにどう中堅・中小またベンチャー企業がアクセスできるのか、その辺はどういうふうになっているのでしょうか。
  30. 宮林正恭

    宮林政府委員 まず、私どものやっておりますいろいろな研究開発成果につきましては、データベースの形でこれが提供できる形にしております。  それで、特に国が行っております国研の、試験研究機関の活動ぶりにつきましては、厚い研究項目などを書きとめましたリストをつくりまして広く公開をしておりますほか、それぞれの研究成果につきましてもできる限り広くマスコミに発表するなど、できる限り皆様方に周知徹底するように努めているところでございますが、恐らくはこのままでは不十分だという御指摘かと思いますけれども、それにつきましては引き続き努力をさせていただきたい、こういうふうに思います。
  31. 吉田治

    吉田(治)委員 先ほどから二回マスコミという言葉が出ているのですよね。大臣国費を使われてあれだけ回って、日本にいてマスコミには一回も出てきていない。マスコミ対応というのが何かおかしいのじゃないですか、マスコミ、マスコミ、と言いながら。  もう一つ言うならば、私は、知的財産について、保護についてはどういうふうにしているのかというふうなことを聞かせてくださいと。それで、成果はできる限りというのは、あいまいもことしたできる限りじゃなくて、先ほどであるならばデータベースという言葉を言われましたけれども、その辺は具体的にどう公開されているのか。
  32. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 どう公開しているかは政府委員から御答弁をさせますが、先ほど委員から、大臣国費アメリカに行っているというお話がございました。  私は、閣僚でいる間に私費でもって外国に調査活動に行こうとは毛頭考えておりません。閣僚でありますときは、閣僚として公式に訪問をして意見を交換することが意味があると考えておりますので、そのことだけは申し上げておきたいと思います。
  33. 宮林正恭

    宮林政府委員 知的所有権の保護の問題について私が答弁漏れをしたようでございまして、大変申しわけございません。  特許権などの知的財産権の適切な保護というのは、研究活動等につきましてのインセンティブである。それで、共同研究において発生しました特許権につきましても、関与した者の貢献の度合いに応じて適切な保護を図るというふうなことから、それぞれ特許権を保護する制度を設けております。それで、共同研究規程などにおきましても、共同開発をした特許権につきましては、それぞれ保護をし、かつまた、時と場合によっては、共同研究者の相手方といいますか、そういう方に優先実施権を与える、こういうふうなことをやっているわけでございます。  かつまた、国の試験研究機関全体の知的財産権の保護につきましては、先ほどもちょっと御説明申し上げましたような、いわゆる弁理士とかそういうふうな方々をJSTが雇用をいたしまして、その方々大学なりあるいは国立試験研究機関のそういう知的財産というものの保護についていろいろとアドバイスをする、あるいはお手伝いをする、こういうふうな制度ども発足させていただいたところでございます。
  34. 吉田治

    吉田(治)委員 もう時間で終わりますけれども、私、大臣に申し上げたいのは、国費国費でと言ったのは、何も嫌みで言ったわけじゃなくて、行かれるのであれば、週末にでもかけて台北のハイテクインダストリーのところを見に行くとか、ばんばんやられたらいいと思うのです。日本の官僚というのは、何か行くとなると国費でとぼろくそに言われる。私は、もっともっと行かれて、今度はその成果をこの委員会なり科学技術行政の中でもっと出してもらいたい、そういうつもりで申し上げているわけでありまして、だから、私費で行けとか自分で勉強しに行けとか、そんなことは決して申し上げておりません。  ただ、私はその思いだけは大臣にお酌み取りいただきたいということと、今回の研究交流促進法が出るのであれば、この連休ではなくてもう一つ前のときに行っておいてもらって、研究交流促進法改正についてもっと有意義、これでも随分有意義だと思うのですけれども、よりよいものが出 るようにしておいてもらった方が、税金という国費を使われるについては非常によかったのではないかなということを最後に申し添えて、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。
  35. 大野由利子

    大野委員長 近藤昭一さん。
  36. 近藤昭一

    ○近藤委員 民主党の近藤昭一でございます。  研究交流促進法改正について質問させていただきますが、今同僚の議員からの質問にもありました、また先ほど谷垣大臣のお答えの中にもあったと思うのですけれども研究交流促進していく、それは、国内の産学官というのですか、そういった交流もさることながら、やはり海外との交流が非常に重要な意味を持つと思います。そういった意味でも、今回大臣アメリカにいらっしゃったと思うのです。  ところで、この法律の中にもありますが、外国人の研究公務員への任用の話で、先ほど八十五人と。多いのか少ないのか、私は少ないと思うのです。  ところで、この八十五人の方が一体どういった国から来ているのか、いわゆる国籍ですね、それをちょっと教えていただきたいのです。
  37. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  御指摘の任用でございますが、国籍別に見ますと、八十五人の内訳は、中国が二十八人、アメリカが九人、それからイギリスが七人、韓国及びインドが各六人などとなっております。  全体といたしますと、約半数がアジア地域からお見えいただいた方がこの制度によって任用されている、また、全体の三分の一は中国だ、こういうようなことでございますが、少数の方を入れますと二十四カ国、こういうふうな国から任用をされております。  なお、これはこの制度によるものでございまして、いろいろな招聘制度とかそういうものも充実されつつありますので、今後どんどんとふえていくことを私どもとしては期待をしているというところでございます。
  38. 近藤昭一

    ○近藤委員 今お答えの中にもありましたが、大体半数がアジアで、半数がヨーロッパ、アメリカというところからおいでになっているということ。そしてまた、今お答えの中にありました招聘制度もあって、だからこの八十五人だけではないんだよという意味でお答えになったと思うのです。そうしますと、この招聘制度というのは、どんな制度で、どういうふうに活用されているのでしょうか。ちょっと教えていただけますでしょうか。
  39. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。今私が申し上げました招聘制度は、昨年の七月に法律改正でもって、若手研究者型あるいは指導者型という二つのカテゴリーで、招聘で来ていただくという制度が新たにできた、こういうふうなものでございます。  したがいまして、これは国内的な方については既に幾つ実績が出ておりますけれども、海外からお見えいただいた方については今データを持ち合わせておりません。
  40. 近藤昭一

    ○近藤委員 その招聘制度改正されたというかできたというのは昨年ですか。それで、国内には実績があるけれども、海外からはまだこれからかなと思うのです。  そうしますと、先ほど吉田委員質問の中にもありましたけれども、せっかく制度をつくるわけですから、こういったPRが大事だと思うのです。外国人の研究公務員の任用、そうすると外国とのやりとりになるわけですが、これは海外に対してはどういうような、PRという言い方がいいのかどうかわかりませんが、告知ですね。日本の方で、来てほしい、来てほしい、こういうシステムをつくりましたよと言っても、外国の方が知らないとなるとこれは絵にかいたもちになってしまうわけですが、この辺はどういうふうにやっていらっしゃるのでしょうか。
  41. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。いろいろなそういう制度改正につきましては、我が国と各国の、国によって違いますけれども、いろいろな科学技術協力協定がございまして、その科学技術協力協定のもとにおいて、政府間の協議の場というのが一年に一遍あるいはもう少し長い時間に一遍という形で、いろいろな形で協議が行われます。そういう場では十分申し上げる、徹底する、こういうふうにさせていただいておりますほか、我が国へお見えいただいている海外の高官の皆様方にお知らせをして徹底するとか、あるいは日本から派遣をされている科学技術関係のアタッシェの皆さんを通じてやるとかというふうなことをやっておりますほか、それぞれの研究所におきましては、やはり自分たちとしてこういう人が欲しいという希望がございますので、そういうものについてはそれぞれの研究所がしかるべく対応している、こういうふうに理解をしております。
  42. 近藤昭一

    ○近藤委員 そういった政府間同士の交渉、交流の場で、こちらから持ち出されるということだと思うのですけれども、そうしますと、八十五人という人数、先ほど私は少ないのではないかと申し上げたわけですが、これは、例えば、おたくの国からは何人ぐらい来てくださいよとか、そういう具体的な枠はあるのですか。それとも、とにかくこういう話をして、日本でこういう制度があるからぜひ一緒研究しましようという話だけなのか、その辺をお聞かせいただきたいのです。
  43. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  特に枠を設けてやるというふうな性質のものではないと私ども思っております。特にこういう海外からお見えいただく研究公務員というのは、我が国が受け入れた際に非常に有益であるというふうなことを一つのやはり考え方に持っておりますので、かつまた、それぞれの研究機関がそういう方を受け入れてうまく活性化されていく、そしておいでになった方もハッピーになる、こういうふうなことが非常に大事な要素ではないか、こういうふうに思っているところでございます。  したがいまして、各国それぞれ事情も違いますし、それぞれお見えになる方も、異なる文化なり、あるいは背景をお持ちでございます。それから、それぞれの環境条件に対する物の見方、特に先進国の皆様方につきましては、日本の特に住環境とかあるいは語学的なハンディキャップとかということについては非常に御意見があるようでございますし、そのあたりは、私どももなかなか難しい問題を抱えているということでございます。
  44. 近藤昭一

    ○近藤委員 枠はないけれどもそういうような話をしていらっしゃるということですけれども、そうしますと、今局長の御答弁の中にもありました、せっかく来ていただくのだから日本にとっても有益であって、日本科学技術活性化されるということだと思うのです。  ところで、先ほど聞かせていただいたような各国から日本へ来て、日本のどういった機関でそういう研究をされているのか。その簡単な内訳で結構なんですが、教えていただきたいのです。
  45. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えをさせていただきます。  私の手元にあります資料によりますと、科学技術庁におきましては十七人。これは、航空宇宙技術研究所あるいは金属材料技術研究所、無機材研などでございます。環境庁の国立環境研究所が一人、厚生省関係が二人、農水省関係が五人、それから通商産業省の各研究所が四十一人でございます。あと、大きいものとしては、郵政省の通信総合研究所が十七人というふうなことでございます。
  46. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございました。  今お聞きしたようなところでいいますと、通商産業省の関係が大変に多いのかなと思うのですが、枠があるわけではなくて、各国政府との交渉の中で来てくださいよという話をする。ところが、お互いに有益に研究するためには、やはりそこに一つの方針がないとうまくいかないのではないかと思うわけであります。  そうしますと、今の数を聞いていますと通商産業省が多いわけですから、多分その中でもいろいろな研究をされていると思うのですけれども日本としてはどういった方針で、単に交流を進める だけではなかなか具体性がなくて前に進まないと思うのですが、日本としてはこういう技術を特に研究していきたい、だから外国へ行ったときにもやはり具体的に、こういう研究を特に進めたいから来てもらえないかとか、一緒にやらないか、そういうことが必要だと思うのですが、その辺についてはどういうふうにお考えでしょうか。
  47. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 ちょっと体系的なお答えになるかどうかわからないのですが、国の国立試験研究機関がどういう課題を持って研究していくか。これは要するに、国がある意味で戦略的な意思決定を行っていく体制、これが必要だと思うのですね。今度、総合科学技術会議を設ける、省庁再編の中でそうしていくということも、そこらの機能をもっと強化していこうということであろうと思います。  そして、もう一つは、実は今のお答えとちょっとずれてしまうのですが、国立試験研究機関というのはいろいろなものがございますけれども、どう機能的に再統合できるのかできないのか、これは、実はこれから科学技術体制をきちっとできるかどうかの大問題だと思います。  その上で、ここから先はまだ十分に議論が進んでおりません、ある意味では私の思いつき的なこともございまして、この委員会で御答弁申し上げるのがいいのかどうか、ちょっと迷いながら申し上げるわけでありますが、それぞれの試験研究機関の責任者、所長ということになると思いますが、そういう方々が、自分のところで与えられたミッションの中で研究計画を立てて、それにふさわしい人材をどうやって引っ張ってくるか。それは国内からもあり、あるいは海外からということもあろうかと思いますが、そういう所長さんと申しますか、研究責任者の裁量というものを大きくしていくということをもう少し考えたらどうか、こんなことを私は思っているわけであります。  もちろん、いろいろな制度考えておりますけれども、それは国の公務員制度という中での限界もあると思います。公務員制度の中で、何でもかんでも裁量をふやせばよいということもできないと思いますが、今申し上げたようなことを具体的に工夫できないかということを今頭の中で考えているわけであります。
  48. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。ただ、大臣、今お答えいただいたようなことで、国の戦略としてこれからは、今までもやっておみえになったと思うのですが、さらにより具体的に会議を持って、そしてまた、その中でも、余り押さえつけてというか、これじゃないとだめだよということでなくて、各研究機関の責任者の方の裁量も大分大きくしていくということなのかなと思う反面、これはちょっと外国と特に絞ってしまうわけですが、外国から来てもらう段においては、こういうことを日本は特にやりたいのだということがはっきりしていないと、なかなか来にくいのじゃないかなと思うわけです。  それともう一つ。先ほど言葉の話が局長の方からたしかあったと思いますが、日本はそういう意味では言葉ではなかなか交流をしにくい。ところが、言葉だけではなくて、やはり人間というのは考え方がそれぞれの国柄によっても違うのじゃないかなと思うのです。もちろん、そういう国柄の考え方を超えて一緒にやっていこう、これもまた普遍的な意味で大切だと思うのです。  ただ、そういう中で、大臣、先般アメリカに行ってこられて、アメリカの責任者の方と話をしてきた。話をしてみて、一つアメリカは今景気がいい、経済の調子がいいわけです。そうすると、アメリカ日本をどうとらえているのかな。まあ日本一緒にやらなくても、アメリカアメリカでやっていっちゃった方が早いよとか、そう思っているかもしれませんし、あるいはそうでない、やはり日本もこれから一緒にやっていこうと思っているかもしれない。あるいは、中国から研究公務員の方が大分来ているという話が先ほどありましたが、そうすると、中国というのは日本一緒にやっていこうという姿勢が非常に強いことのあらわれかもしれませんが、そういったことをどのように分析、またお考えになっているのかということをちょっとお聞かせいただきたいのです。
  49. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 これも体系的になるかどうかわからないのですが、この間、アメリカへ参りましたときに、MITのヴェスト学長と意見交換をいたしましたときに、どうやったらもっと日本研究機関に来てもらえるだろうか、あるいは日本アメリカ研究機関の差はどうだろうかということを議論させていただいたわけであります。  そのときにヴェスト学長の御答弁は、これはある意味では非常に私の立場をおもんばかって言ってくださっているわけでありますが、アメリカ研究者としてももっと日本語の習得に力を入れなければならないと、ある意味では大変我々に配慮した、それでMITでも新しい日本語の研究プログラムというのをつくってやっている、こういうありがたいことでありました。しかし、さはさりながら、今の最先端の研究を支える言語が日本語であろうかとみずからに問いかけてみますと、やはり内心じくじたるものを覚えざるを得ない。国際的なスタンダードは、残念ながらやはり英語でやるようになっているのじゃないかなと思うわけであります。  既に理研等におきまして、脳研究なんかはかなり成果を上げておりますことで、海外の研究者、主任研究員クラスに随分来ていただいておりますけれども、この理研でのいろいろな研究プロジェクトを組んでいくときの会議は英語で行われているというふうに聞いております。  そのことが全部いいのかどうかというのは私もちょっと判断に迷うところでありますけれども、そういう状況がやはり進んできている。だから、ある程度そういうことは考えていかなければいかぬのかな、今の近藤先生の御質問に正面から答えているのかどうかちょっとわかりませんが、そんなことを今考えているところでございます。
  50. 近藤昭一

    ○近藤委員 そういった日本語の習得も必要かなというお言葉には、ありがたいという反面、そんなことを本当に考えているのかなと思ってしまうわけです。ただ、私は、そういう意味ではまさしく、このことについては日本研究しなくてはいけないのではないか、そういうふうに思ってもらうことが必要ではないかと思うのです。  ですから、今度は文部省科学技術庁一つになるわけですね。そうしますと、科学技術庁はこれから日本科学技術立国としていく、そのためには、文部省のいわゆる教育の現場、小さいころからどういうふうな人材を育てていくか、そういった一つの国家戦略だというふうに私は考えるのです。  そうなった場合に、日本は確かに資源がない。資源がない分、人材を育成してきた。そして、優秀な人材を輩出してきたと私は思うわけであります。ところが、いかんせん人口が少ない、あるいは今申し上げたような言葉の障害とかがあると思うのですね。そうしますと、私は、先ほど大臣がお答えになったこととはちょっと反するかもしれませんが、余り押しつけてもいけないけれども、ある程度、日本はこの分野については特に集中的にやっていくんだよ、そういった目標が必要ではないかなというふうに思うのですね。日本が戦後、割と漠然と、もちろんその中には幾つかの目標があったと思うのですが、広くやってきたところがあるのではないかな。  ですから、日本のいわゆる縦社会が悪い悪いと言われますけれども、必ずしもそうでない部分もあって、やはりこういう小さい国ですから、かなりの部分について絞って、それが日本の戦略なんだよ、この部分については一生懸命やっていく、そしてまた、これはどこの国と、例えば中国あるいはアジアのどこの国、そういうふうな絞り込みが必要ではないかなというふうに私は思うのですが、その辺、大臣はいかがお考えか、お聞かせいただきたいと思います。
  51. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 先ほど、各研究機関の人の採用なり外国からの研究者の招聘に当たっては、各研究機関の長の裁量権をもう少しふやすべきではないかということを申し上げましたけれども、今委 員のおっしゃった、どういう分野に力を入れてやるべきかということは、必ずしも全部そこに任せればいいというふうに私は思っているわけではありません。  科学技術基本計画の中にも、人口とかあるいは食料、資源、エネルギー、地球環境あるいは感染症、地球規模の諸問題の解決に資する国際協力に取り組むというふうに書かれておりまして、私はそれで方向は間違っていないと思います。今後とも、むしろそういう問題をもっと大きな視点から議論できるような場を、総合科学技術会議という形で今まで以上にそこを議論しながら、国民的な合意をつくりながら重点をやっていくということは、もう委員の御指摘のとおり必要だろうと思います。  そして、その協力をしていく場合に、先ほど所長の裁量権ということも申しましたけれども、もちろん、それぞれの分野分野によっては二国間の科学技術協力等の中で特に重点を置いて行わなければならないところもこれは出てくると思います。そこらあたりの判断をきちっと的確にしていく体制をこれからつくっていくということは必要ではないかと思っております。
  52. 近藤昭一

    ○近藤委員 質問時間も参りましたので、最後一つ要望だけお話ししたいのですが、今申し上げたような戦略を持ってやっていただきたい。そういう意味で今回の交流促進法改正もその中の流れであると思うのですが、ただ、まだまだ不十分なところが今申し上げた海外の交流の面でもあるのかな、そしてまた、日本考え方をもうちょっとはっきりさせるべきだというふうに思いますので、その辺、ぜひ今後とも御努力をいただきたいと思います。  ありがとうございました。
  53. 大野由利子

    大野委員長 斉藤鉄夫さん。
  54. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 平和・改革の斉藤鉄夫でございます。  法案の中身に入ります前に、大臣に御礼を申し上げたいのと、それから御感想をお伺いしたいのでございます。  四月二十五日、札幌で、人類の未来と宇宙を考える国際会議というものを行いました。宇宙に関する国際会議というのは、これはもうたくさんございまして、例えば学者の皆さんの国際会議産業界の国際会議、それから行政機関の方の国際会議、たくさんあるかと思うのですが、この四月二十五日の札幌会議特色は、議会人による宇宙を考える国際会議ということでございました。日本から七人の国会議員、代表が鳩山由紀夫先生と自民党の船田先生でございますが、超党派で七人の国会議員、あと、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、中国から集まっていただいて、非常にレンジが長いのですが、二〇〇一年から始まる新しい千年、人類がどう宇宙とかかわっていくべきかという議論をさせていただきました。  その議論に実は大臣にテレビ電話で参加をいただきまして、大変ありがとうございました。外国から来られている方も、日本人の議員の顔を見て、本当にこの国際会議はどれだけの意味があるのかななんて思っていたかもしれませんが、大臣がテレビ電話で参加していただいて、ひょっとしたら意味のある、重みのある会議じゃないかなと思っていただいたのじゃないかと思うのです。  あともう一つ特色は、宇宙の専門家といいましょうか、科学技術の専門家だけの議員ではなくて、例えば日本の七人の国会議員も、そのうち三人は文科系出身の方で、哲学とか人生とか、そういう意味で宇宙に興味を持っていらっしゃる、そういう方にも参加していただいた、ここがもう一つ特色かと思います。  「札幌からのメッセージ」というメッセージをそれで採択をさせてもらいました。基本的には、これからの宇宙開発は平和利用を目指して各国が国際協力を推し進めていかなくてはいけない、そのために議会人たる我々が積極的にその議論をしていかなければならないという「札幌からのメッセージ」をつくったわけでございますが、その会議にテレビ討論という形で参加をいただいた大臣からの御感想をいただければと思います。
  55. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 この間、ここにおられる鳩山先生、それから我が党の小野先生、そして斉藤先生、この科学技術委員会のメンバーも何名か御参加になっての会議に私も参加をさせていただきまして、発言の機会をいただいたことを大変ありがたく思っております。  私、あの会議で感じましたのは、私も今まで何回か試みたことがあるのでございますが、国会議員が中心になって国際会議を持つということは、これはなかなか容易じゃございません。経済界方々がある程度資金のあるところでやっていただくというようなことならば、比較的できるのかもしれませんが、我々が人を集め、また資金も用意をしてということになるとなかなか困難な中で、よくあれだけの会をお持ちになったなと、心から敬意を表したいと思っております。そして、こういう分野で、今斉藤委員が言われましたように、専門家というだけではなくて、政治家が幅広い視点から参加をするということも大変意義がある会ではなかったかと思っております。  今後とも、これは大変だと思いますが、一度始められたことを継続されて、それぞれ各国の間で理解を深められるような活動に育てていただけたら本当にいいことだ、こんなふうに感想を持った次第でございます。どうもありがとうございました。
  56. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 どうもありがとうございました。大臣も、行政の責任者の立場を離れられて議会人の立場にお戻りになったときは、ぜひ御参加をいただきたいと思います。それでは、法案の中身に入らせていただきます。  まず最初に大臣にお伺いいたします。いわゆる産官学共同研究に対する基本的なお考えでございます。  大臣も私も同じ世代でございますが、我々が大学にいたころは、産学、この場合の学というのは主に大学でございましたが、産学もしくは産官学共同研究というのは悪だ、こういう論調が強かったわけでございます。大学ないしは国立研究機関は、学問の独立、学問の自治の立場から産と協力をしてはいけないんだ、こういう風潮が非常に強うございました。私も、大学時代はそのような考えを持っておりました。  しかし、私自身、民間の研究機関に入って研究者として生きていく中で、そういう考え方は必ずしも正しくないというふうに考えるに至りました。また、昨今は逆に、産官学をやらなければいけないんだという風潮になっておりますが、大臣の学生時代、どういうお考えをお持ちだったかということも含めて、産官学共同研究に対する基本的なお考えを聞かせていただければと思います。
  57. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 私の学生時代は、まさに今斉藤委員がおっしゃったように、産学協同はけしからぬことである、資本の論理に学術研究が屈することであるというような議論が盛んでございました。私も当時、そういう考え方があるのかなと思いながら、一方、私は法学部でございましたから、法学の場合には余り産学というようなことは申しませんが、工学のような場合に、本当にそんなことで工学というものが進むのだろうかという疑問も感じたわけでありますけれども、余り深くそのことを考えてきたわけではございません。  科学技術庁に参りまして、昔のそういう記憶が頭にあるものですから、産官学というようなことを言っていて、本当にみんながそういう機運になっているのだろうか、やはりそういうのは資本の論理に屈するのでおかしいのじゃないかという議論が現在でもあるのかなと思って科学技術庁に来たわけでありますけれども、今ではそういう議論は随分弱くなっていて、やはり産官学がそれぞれの長所を発揮して連携をするのがよいではないか、こういう議論になっているというふうに理解をしております。  もちろん、そういうことをやっていく場合に、先ほどからの御質問の中にも出ておりますけれども透明性とかいろいろなことを考えなければな らないのは事実であろうと思いますし、国の機関としてのおのずからなる制約というのも、それはあるのかもしれません。ここらがやはり、まだ私ども十分詰められてはおりませんけれども、今回のこの立法を用意するに際しましても、国の役割というのはどこなのか、それから、公務員制度というのは何なのか、まだまだ実は十分に整理できていないところが多いわけでございます。そのために、土地の値段、半分だなんてけちなことでいいのかという御質問も受けるわけでありますけれども、ややまだ問題点が十分整理し切れていないのが現段階であろうと私は思っております。  ただ、いろいろなことを考えながら、既に、六十一年に研究交流促進法ができ、科学技術基本法科学技術基本計画に基づいて従前から産官学のあれが進められているわけでありますけれども、今後とも、もう少しいろいろな制度面のことも検討しながら、先へ進めていく必要があると思っております。
  58. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 大臣の中でもその考え方の変化があったということでございますが、最近は逆に、産官学の共同研究が少ないから、もしくは三者の間のパイプが細いから、日本研究レベルが諸外国の研究レベルに比べて相対的に落ちてきているんだという風潮になってきております。  私も、確かにそのとおりかなと。アメリカ大学国立研究機関は資金の面でも人材の面でも大変な交流がございますし、この間テレビを見ておりましたら、北京大学産業界と本当に太い交流を持って、大学研究成果が即中国の産業競争力の向上に結びつくように制度的にも整備されているというふうなテレビをやっておりまして、日本はもう一度産官学について見直し、考え直さなければいけないなというふうに思った次第でございます。  日本の産官学共同が諸外国に比べてパイプが細い、行われていない、こう言われている原因は何だと科学技術庁はお考えになっているか、お伺いします。
  59. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。我が国大学とか国立試験研究機関が先生御指摘のような形で、日本産業界との連係プレーがまだ不足しているのではないか、こういうふうなお話というのは、最近いろいろな形で私どもも御指摘をいただいているところでございます。  そういうことについては、引き続きいろいろな検討をしながら、これを促進するような施策を講じていかなければいけないだろう、こういうふうに考えているところでございますけれども、この原因として考えられていますことは、研究者の多くの方がまだ成果の権利化をするという関心が低い、あるいは出願という経験も非常に少ない、こういうふうなこと、あるいはそれらを支援していくような体制も不十分だったのではなかろうか、こういうふうなことが一つございます。  それから、研究成果に関する情報を企業に提供するということにつきましても、いろいろ努力はしているわけでございますが、まだまだ不足しているのではなかろうか。  それから、基礎研究シフトというふうな形でやってきているわけでございますが、その際に、結果といたしまして、研究成果と実用化をつないでいくというパスが長くなりまして、そのあたりのところについての対応が今考えてみると少し問題があるのかなと。  それから、外部との連携、特に産というふうに考えますときに、国の研究機関組織体制なり枠組みといったようなものが、性格上、柔軟性が十分ではないというふうなことも言えるのではないか。  こういうふうなことで、私どもいろいろな努力をしております一つの例といたしましては、例えば先ほど申し上げました特許の出願をサポートするというふうなこと。特許化支援事業と言っております。あるいは、研究テーマとか研究機関研究成果などについての有機的データベースをつくるとか、あるいは、独創的研究成果育成事業ということで、実際に技術コンセプトからモデルといったようなものをつくってみるとか、そういうような仕事、あるいは委託開発なり開発あっせん、こういうふうな仕事をやってきているわけでございます。  今後ともこのような施策を通じまして先生の御指摘のような問題点は解決をしていきたい、こういうふうに思っております。
  60. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 今局長がおっしゃったようなことも、日本の産官学共同研究といいましょうか、交流が少ない原因かと思いますが、私は根本的には人事の問題ではないかなという気がしております。  研究というのはもちろん人間が行うものでございますし、その人間の熱意や情熱がある意味では研究成果を生み出すわけです。ところが日本の場合は、特に大学国立研究所の場合、先ほどの産学共同研究は悪だというふうなイメージもあったこともこれあって、非常に雰囲気的にもまた人事制度の上でも安住できる、そういう環境にあったのではないか。  例えばアメリカですと、大学でもかなり厳しい競争環境の中にあって研究成果が問われる。それから、アメリカ国立研究所、例えば、ちょっと記憶違いかもしれませんが、ロスアラモス・ナショナルラボラトリー、ナショナルラボラトリーですからこれは国立研究所ですが、このロスアラモスの経営はUCLA、ある意味では民間が請け負って国立研究機関の運営をする。オークリッジ・ナショナルラボラトリーは、もう最近変わっているかもしれませんが、私が勉強したころはEGアンドGという民間企業がその国立研究機関の運営を請け負って、その中で競争的な環境をつくり出していく。  そういう中で、本当に超一流の研究をしていくために、研究という同じ土俵の中で民間ともフランクに交流をしていくという状況に比べると、日本は、非常にわかりやすい言葉で言えばぬるま湯的な、競争環境にないところにこれまで置かれてきた。そこに日本研究交流促進されない一つの原因があるのではないかなと、私はそれをテーマに調査したわけでも研究したわけでも何でもないので、感じているのですけれども、その点についてどのようにお考えでしょうか。
  61. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 斉藤委員がおうしゃったように、競争性が低いということ、これは科学技術基本計画の中でも「研究開発推進する上で、柔軟性や競争性が低く、組織の壁を越えた連携交流等が十分に行えないなど制約として顕在化している面がある」、こういうふうに書かれているわけでありますが、そこのところを乗り越えていく仕組みをどうしたらいいかということは一番の課題ではないかと私は思っております。  今までの御議論の中でも、外部の有識者から意見を聞いて研究機関評価をきちっとするという意味で、「国の研究開発全般に共通する評価実施方法の在り方についての大綱的指針」というようなものをつくったり、あるいは、ポスドク一万人体制とか任期つき任用制とかで研究者の流動化も図ってくるとか、あるいは戦略的な基礎研究推進制度をつくってきたというようなことをやっているわけであります。  もう一つは、これは先ほどの繰り返しになりますが、国立研究機関として、言うなれば最後は憲法制度というものがあり、全体の奉仕者としての公務員制度というものがあって、そこをどう仕組んでいくかということが、やはりこれからの大きな課題になるのではないかと私は思います。先ほどの繰り返しですが、そこらにおいて、法制的や制度的に何が問題があってどこまで詰め切れるのかというところも、まだ議論はぎりぎりのところまで詰め切れていないというのが実際のところだと思います。  その観点から申しますと、もう一つ、今、行革議論の中におきまして、国立試験研究機関をどう再編成していくかという課題があるわけでありますけれども、それと同時に独立行政法人の議論がございます。  私は今行政の立場にいて、こういうことを言う のはいけませんが、この独立行政法人というものがいかなる内容を持つかということについても、まだ十分に論点の整理、問題点が明確に浮かび上がってきている段階ではないだろうと思います。  しかし、こういう独立行政法人というものも、賛成反対いろいろあり、国の試験研究にもいろいろありますから、すべてが一律にいくというふうには私も思わないわけでありますけれども、独立試験研究法人という議論の背後の中に、今斉藤委員がおっしゃったような、国の制度というとどうしてもある意味での限界があって、それをもうちょっと柔軟にし、競争的にしていくにはどうしたらいいかという問題意識があることは否定できないし、それを我々は大事にはぐくんでいかなければいかぬ、こう思っております。  まだちょっと議論が生煮えのことを申し上げるわけでありますけれども、そういう問題意識を持って進んでいかなければいけないのではないか、こう思っております。
  62. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 確かに、この議論は今後も本当に続けていかなければいけないと思います。  ある雑誌によりますと、国立研究所、例えば、工技院傘下の中国研究所の研究員の平均在職年数は三十年。それに対して、今非常に活性化が進んでおります理化学研究所の平均在職年数は十五年。そういう意味では、国立研究機関でない理化学研究所の方が人事的にも交流が進んでいる。  一研究員の立場に立ちますと、同じ研究所に二十数歳から六十まで居続けるというのは、一人の研究員の人生を考えても余り幸せなことではないのではないだろうかと思います。理科系、技術系の研究者の場合、能力のピークは大体三十代後半で、四十になると研究能力は落ちてくるというようなことも言われておりますので、とにかく若いときは一生懸命研究して、四十ぐらいになったら、もちろん研究者として優秀な人はそのまま研究者として残ればいいわけですが、当然それはそうなのですけれども、中には、自分が研究してきたものを社会にどれだけ役立てるか、ベンチャー企業を起こしてみたいとか、民間企業へ移って自分が研究してきたものを実用化させたいとか、こう考えている研究者もたくさんおりますし、また、研究者の幸福ということを考えてもそれがいいのではないか。  そういう意味で、現在の公務員制度国立研究機関研究員の制度というのはそういうことができないような仕組みになっておりまして、本当の意味研究交流促進は、そういう形での、技術研究成果というのは属人的なものであるということを考えた上での人事制度にしていくということ。これからの科学技術立国で、お金の面については科学技術基本法、また基本計画で十七兆円とかいろいろつくようになりました。今度はそれを実質たらしめるために、研究員が本当に自分の人生をフルに、その年齢年齢の能力に応じて発揮できる、そういう制度に変えていくことが次の課題ではないかと思いますが、大臣、いかがでございましょうか。
  63. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 斉藤先生は研究者として大変業績をお持ちでいらっしゃいますので、アメリカ研究機関のあり方、あるいは日本のそういう学術研究の雰囲気をよく御存じでございますから、知っておられる方に知らない者が答弁するというのは、どうも国会のおかしなところだなと思うのでございますが、私もこの間アメリカへ行きまして、日本アメリカはどう違うかということを聞いてまいりました。  先生がおっしゃったように、やはり研究者は三十代が勝負だ、三十代の間にどれだけのことができるのか。実質上、三十代の優秀な方々研究のプロジェクトチームのリーダーとして、もっと若い人たちを使いながらばりばり研究を進めている。そういう中で本当に力のある人が、テニュアというのでしょうか、また残って正教授になっていくというような仕組み。それで、私もアメリカは競争一辺倒だと思っていたら、テニュアになるとある程度安定した地位というものが維持できるというふうにも聞いたのであります。  アメリカ制度がすべてよいわけでもないし、アメリカの人たちが考えてきたことがすべて日本に合うというわけでもないと思いますけれども、今日本研究者を見てみると、どうも三十代の人たちが、言うなれば、雑用というと言葉は悪うございますけれども、必ずしも自分の研究の責任者として若い方々ど一体になりながら取り組んでいくというような形になっていないのではないか。  そこで、もっと実質的に研究をしてもらって、競争的な環境の中で十分、三十代ぐらいのときに激しい競争をしていただく必要がやはりあるのかな、こんなふうに私も思っているわけでございます。
  64. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 例えば理化学研究所の人はその三十代の研究成果をもってベンチャー企業をつくることができるわけでございますが、国立研究機関の人はそういうことができない。だから、国立研究所の人もすばらしい成果をもってベンチャー企業をつくることができるような人事制度に変える。今すぐは無理でしょうが、そういう方向で科技庁としても努力をしていくべきだというふうに考えるのですが、大臣、いかがでございましょうか。
  65. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 アメリカの場合は、スタンフォード大学とかあるいはMITとか、そういう大学がベンチャーを起こす一つの核みたいになって、今非常に実績を上げているのだろうと思います。日本の場合、ある意味では一番そういう方向が進んでいるのは、先生が指摘された理化学研究所だろうというふうに思います。私は、やはりそういう研究機関がその周りにベンチャーをつくっていくというような気風がもっと出てこなければいけない、仕組みもつくらなければいけない、こう思います。  ただ、もう一つ、実はまたこれは、アメリカへ行ってすぐアメリカかぶれしたわけではないのですが、アメリカへ行ってこれからどこまでできるのかなと思ったことは、そういうことがどうしたらできるのかという問いかけに異口同音に返ってくる答えは、リスクをとる精神だということをおっしゃるわけであります。  要するに、大きな組織や大きなところから飛び出していって、そして失敗を恐れずに自分の身につけたもので新しい業を創造していこうという気風は、これはビューレット・パッカードの会長のおっしゃることですけれどもアメリカといえどもどこにもあるというわけではない、シリコンバレーとボストンの近辺、あるいはテキサスの一部にあるぐらいかもしれない、世界の中では、あとはそうだな、台湾ぐらいにあるのではないか、こういう御意見で、残念ながら日本にあるという御指摘はありませんでした。  これは、確かに、ああいう激しい競争社会をつくって生きてきたアメリカの生き方と日本の生き方とが同じにできるかどうかということは私もまだよくわからないのでありますけれども、失敗したときに、それでもってもう人生再起ができないようにみんなからめちゃくちゃに打ちのめされてしまうというようなことでは、多分そのリスクをとる精神は生まれないのだろうと思います。  それから、報酬制度のあり方とか、広く言えば税制や何か、みんな絡んでくると思うのですが、日本ももう少しそういうリスクをとる精神を起こすにはどうしたらいいか。こうなるともう科学技術政策というより一種の文明論なのかもしれませんけれども、そういうようなことも感じているところでございます。
  66. 宮林正恭

    宮林政府委員 一言だけ、先生の御指摘の人事制度の話でございます。  これにつきましては、実は、この法律を検討しますときに人事院ともいろいろ議論をさせていただいたのでございますが、一番の問題は、国家公務員の役員への就任につきましては、憲法問題などもございまして、ある程度の解除をする方法はあるという考え方ではありますけれども、要は、条件がかなりついた形で就任を解除することにしますと、ベンチャーというものの基本的性格から見ると相反する方向になってしまう。こういう問 題がございまして、このあたりは今回残念ながら取りやめをさせていただいたという経緯がございます。
  67. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 この問題については引き続き議論をしてまいりたいと思います。  競争的雰囲気と言いましたが、国立研究所のもう一つの役目は、余り社会に役に立つかどうかわからないけれども物を知るために行う基礎研究でございまして、その基礎研究、本当の意味での基礎研究との調和をどうとるかということについても大臣とちょっと議論をしたがったのですが、時間がなくなりましたので、きょうぜひ質問をしたいという点がもう一点あるものですから、この基礎研究と競争的研究の調和の問題については、また後日、一般質疑のときに大臣議論させていただきたいと思います。  ゴールデンウイークに入りまして、五月一日、実は、ここにいらっしゃる科学技術委員会委員長大野由利子先生と、北の丸公園にあります科学技術館に行ってまいりました。  たくさん小中学生が来ておりましてにぎわっておったのですけれども、まず科学技術館を見て私が感じましたのは、アメリカのスミソニアン博物館のサイエンスミュージアムのカウンターパートが日本科学技術館、もしくは上野の科学博物館がございますけれども、スミソニアン・サイエンスミュージアムのカウンターパートにしては、私自身、行って見学させてもらって、子供心に返って大変楽しんだのではありますが、勉強になったのではありますが、非常に見劣りがするということを感じました。その一つの原因に、せっかく見学させてもらってこんなことを言ったら申しわけないのですが、産業PRが強過ぎるのじゃないかな、こういうふうに感じた次第でございます。  きのうはこどもの日、子供の科学離れということが言われておりますが、大臣、その科学技術館に行かれたことがあるかということと、それからその科学技術館に、科学技術立国を目指す日本として、もう少し科学技術庁としても力を入れて、スミソニアン・サイエンスミュージアムにまさるとも劣らないものにすべきではないか、もう少し目を配られるべきではないかと思ったのですが、いかがでございましょうか。
  68. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 大野委員長と斉藤先生が連休中に北の丸に行っていただいたということを伺って、大変ありがたく思っております。  私も、科学技術館に、就任しましてから参りました。実は私の子供が、今下の子供が中学生でございますが、前から大変なこの北の丸の科学技術館のファンでございまして、何かあそこのメンバーに入って楽しんでいるので、前から一度は行きたいと思っておったのですが、この間、科学技術庁長官になってから行くことができました。  それで、実はこの間、サンフランシスコでもこれと似たような施設がありまして、行ってまいりまして感じたことは、スミソニアンは今回見なかったのですが、スミソニアンと比べ、あるいはサンフランシスコにある同種の施設と比べまして感じますのは、確かに、スミソニアンのような体系的にいろいろなものをおさめているようなものに比べると、ちょっと日本のは性格が違って見劣りがするなというふうに思います。それで、日本科学技術とか産業技術というものが体系的にあそこに行けばわかるというようなものにはまだ残念ながらなっていないというのが事実だろうと思います。  それから、サンフランシスコに同種のものがございますのは、これは、むしろ子供の科学教育といいますか、割合素朴ないろいろな仕組みを使いまして、子供に理科とか科学に関心を持ってもらうような施設で、どちらかというと、それに比べますと日本のあの北の丸の方が、ハイテクといいますか、いろいろな企業なんかの支援も受けて、そういう意味では進んでいると思いました。  ただ、見方によっては、斉藤先生のように、産業の宣伝臭があるという感じもあるかもしれません。ですから、必ずしもハイテクみたいなものだけを集めればいいのではなくて、子供の科学心を刺激するようなものは、工夫次第によってもっとできるのじゃないかなという感じがいたします。  それで、それと同時に、これはなかなか日本では難しいのかもしれませんが、アメリカで感じましたことは、ちょっと答弁が長くなって恐縮でございますが、高校生がそれぞれの説明員になりまして、来る子供たちにいろいろなことを教えているのですね。ボランティア活動としてやっている。そういうことが非常にその高校生にも刺激になるだろう。小学生ぐらいにどうやったらこういう原理をわかりやすく教えられるかということは、その指導する高校生にとっても非常に刺激になっているのだろう、こう思いました。  もしこういうようなボランティア活動が日本でも行われるならばいいなと思ったのですが、なかなか日本では受験環境とか厳しくて、ある程度子供に科学技術説明しようという関心を持っているような子は、どうしても大学教育に頭をとられてしまうというようなことがあるのかな。そこらあたり、社会の仕組みもございますけれども、その利用の仕方、運営の仕方、工夫をいろいろしてみる必要があるのかなと思った次第でございます。
  69. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 科技庁としても、もう少し目を配って充実させていただきたいと思うのですが、もう一つ、入館料が、子供が二百五十円、中高生が四百円ということでございます。大人が六百円、これはいいと思うのですが、上野の国立科学博物館は児童生徒七十円でございます。スミソニアンはもちろんただということでございまして、大臣のお子さんは何度も行かれているそうですが、そういう意味では、子供が何度も行きたくなる一つの要素に、やはり料金が安い、もしくは無料だということがあるわけでございます。何か聞きますと、あの科学技術館の中の原子力のコーナーには、科技庁が七億円もかけてPR施設をどんと、PRと言ったら申しわけないかもしれませんが、施設をつくったということでございますが、中高生、子供の入館料は年間七千万円弱ということでございますので、科学技術離れ対策の一つとして、例えばこの科学技術館については、アメリカのスミソニアンと同じようにただにするとか、もしくは文部省管轄の上野の科学博物館と同レベルの七十円ぐらいにするとか、そういうことはいかがでございましょうか。
  70. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。御指摘のとおり、科学技術館は、大人でございますと六百円でございますか、子供でも二百五十円、こういうふうな料金を取っているわけでございます。先生御指摘のような問題があるかと思いますけれども、一方で、この科学技術館につきましては、財団法人日本科学技術振興財団が運営しているという事柄であるとか、あるいは、私、大臣にお供して行かせていただいたところでございますが、サンフランシスコのエクスプロラトリアムの場合は、大人の場合九ドル、こういうふうな料金を取っているとかということもございます。  科学技術館全体につきまして、日本にもたくさんありますので、それを無料にするというふうなことを国の政策として打ち出すということにしますと、これはかなり検討しなければいけない、こういう状況にあるかと思っております。十分じゃないかもしれませんけれども、こういうお答えでお許しをいただきたい、こう思います。
  71. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 この問題についても、また引き続き議論させていただきたいと思います。  時間が参りましたので、終わります。
  72. 大野由利子

  73. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 研究交流促進法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。  さて、研究交流促進法は、研究活動に関し、研究者研究機関間の交流促進する法律と理解していますが、法案に関する具体的な質問に入る前に、私自身の最近の経験から、研究交流に関連して気のついたことを幾つか話をさせていただきたいと思います。  先般、米国の国立研究機関である商務省の国立標準・技術研究所、NISTを訪ねる機会があり ました。そこに行って驚いたことは、海外の研究者でも容易に研究活動に参加できる国際的な開放性とグラント制度による研究活性化、それと国立研究機関と民間との活発な交流ぶりでした。  まず瞠目させられたのは、全く広大な整備された敷地に、研究者がどんなスポーツも選択、利用できるように、施設が健康管理の面に対しても充実されていることでありました。このことは、狭小な我が国にとっては無理だなというふうに思われたのではございますが、さらに、この研究所が人種のるつぼであるということでした。盛んな国際交流が行われており、各国の研究者が集い、活気のある論議が行われ、よい研究成果を出していました。外国人でも研究活動に参加でき、部屋を与えられ、研究員として米国で働くことができる制度が用意されています。その活発な国際交流ぶりには恐れすら覚えるほどでした。  国際的な交流のもとで研究が進められるのは、物の考え方、着想の視点等さまざまな点で異質な才能同士が切瑳琢磨することとなり、新しい研究開発を進める環境としてはよいことだと思います。日本国立試験研究機関においても、外国人研究者との交流を積極的に行っていくべきだと考えます。  そこでお尋ねします。我が国国立研究機関における外国人研究者の受け入れについて、科学技術庁ではどのように取り組んでいるのでしょうか。
  74. 宮林正恭

    宮林政府委員 外国人の研究者の受け入れの重要性は、既に御指摘のとおりでございまして、これにつきましては、外国人研究者に対する十分な処遇、あるいは十分な研究環境のもとでの研究の機会の提供、あるいは生活環境整備、こういったものが非常に重要だ、こういうふうに思っております。  このような考え方のもとで、私どもといたしましては、一つは、国立試験研究機関に対しますいわゆるSTAフェローシップと言われる制度をもちまして、研究者の皆さん方に国立研究所に来ていただく、こういうふうなことをやっております。これは、平成十年度で五百五十名程度を予定しております。  それから、筑波の研究学園都市における外国人研究宿泊施設を運営させていただいています。それから、日本語研修といったような、外国人が日本に定着しやすいようにするということをやらせていただいておりまして、パンフレットなんかも提供する。こういうふうなことをやっておりますほかに、国際共同研究事業というふうなもので、いろいろな形で外国人の方に来ていただくようなことをやらせていただいております。
  75. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 大臣は、せんだって米国に出張されたところであります。そして、シリコンバレー等も回られたようですが、実際に米国の状況を見られ、それらを踏まえて考えられるところもあったと思います。  そこで、今私が質問申し上げましたようなことも踏まえまして大臣にお尋ねしますが、国立研究機関における国際研究交流促進をどのように進めていくおつもりでしょうか。
  76. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 最初に、菅原先生がアメリカ研究施設をお訪ねになってお感じになったことをお述べになりましたが、私も全く同じような感想を持ったわけでございます。  それで、菅原先生のお話の中に、とにかく外国からも研究者をどんどん受け入れて、人種のるつぼのようになっている、こういう御指摘がございました。私も、今後日本科学技術振興していく場合に、日本人は、比較的均質な国でできておりますから、均質な者同士が寄り集まってやっていても刺激が少なくなってくるのではないか。やはり、違った育ち方の中で違った考え方を持っている者がその中にぶつかり合って、新しいものを生み出していくというようなことは必要ではないか。ですから、日本研究機関も、日本人だけでやるというような考え方でいたら、とても成果を生み出せないのではないかという気持ちを強く持った次第でございます。  そうなりますと、では、どうやったら日本研究機関の中に海外の優秀な研究者に来ていただけるかということでございますけれども、私も今回アメリカで、かなりそういう方々との議論に時間を使ったわけでありますが、総じて申しますと、研究者は、そこへ行ったら有意義なおもしろい研究ができて成果が上がりそうだということになれば、どこでも飛んでいくというようなメンタリティーをお持ちなんじゃないかと思うのです。ですから、日本に行ったら、すぐれた研究環境があって、情報が集まり、活力のある人たちがいて、その熱気の中に巻き込まれたらいい研究ができる、つまり、それだけ日本研究環境に生産性といいますか実力があれば、ある意味ではおのずから集まってくるということになると、どちらが卵か鶏かということになるわけであります。  しかし、さはさりながら、来ていただくためには、行ってよかったという環境もつくらなければならないだろうと思うのです。そのためにはかなりいろいろなことを考えていかなければならないのじゃないかな。一つは、研究者研究に対する余分な制約も取り除いて、活発に研究ができるという研究環境も必要であろうと思います。  ここらあたりはどこまでできるか、正直申し上げると、難しいなと思うのですが、先ほど菅原先生御指摘になりましたように、非常に広大な、自然に恵まれた環境の中で、研究施設もあり、研究者の住宅等も非常に住環境のよいところで行っている。では、それと同じものを日本の中で提供できるかというと、どこまでできるかなと、正直言って暗い気持ちにもなるわけでありますけれども、そこらあたりもできるだけ工夫をしていく必要があるのかなと思ったりしているわけでございます。
  77. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 全く、国外を見ますと、大臣も共通した認識を持たれたようでございまして、やはり、我が国研究機関の国際的な研究交流促進には今後一層の努力をしなければならないと思いますので、この点についてもよろしくお願いしたい、こう思っております。  二点目は、向こうではグラント制度によって研究活性化していると思われたので、質問をいたします。殊に米国ではグラント制度が広く行われており、研究を公募して審査し、すぐれた研究テーマに対して資金が提供されます。また、三年もしくは五年ほどの一定の期間で研究活動の評価が行われております。グラント制度によって、研究者はいろいろなところから研究費を手に入れることができます。この仕組みは、研究者研究意欲を盛り上げ、研究環境活性化に大きく貢献していると思われます。  これと対比して、我が国では一たん研究予算確保すると、ずるずるそれが継続されていく傾向にありますのでお尋ねしますが、日本においても、科学技術基本計画の中で競争的資金が位置づけられております。その拡充を図るとともに、評価についても公正かつ厳格に行うべきではないでしょうか。また、このことは、これからの日本科学技術振興政策を進める上で大切なことだと思いますので、忌憚のない所見もお願いしたい、こう思います。
  78. 宮林正恭

    宮林政府委員 先生御指摘の、いわゆるグラントというシステムにつきましては、私どもがやっておりますものといたしましては、戦略的基礎研究推進制度というのがございます。  その中には、枠組みとしまして二つの枠組みがございまして、いわゆるチームプレーでやる本体の方と、それから個人個人にむしろグラントを差し上げるようなさきがけ研究、こういうふうな制度などがあるわけでございます。それ以外にも、科学技術振興調整費を活用しました各種の基礎研究推進制度ども推進をさせていただいているところでございます。  これらにつきましては、科学技術基本計画におきましても、競争的資金というふうな表現でもって導入が強調されているところでございまして、私どもも、これにつきましては、予算的にも毎年 かなりの額の拡充をさせていただいております。  また、これらの評価につきましては、平成九年の八月に内閣総理大臣決定されております、「国の研究開発全般に共通する評価実施方法の在り方についての大綱的指針」、こういうものに基づきまして、事前評価と申し上げていいかと思いますが、具体的なグラントの選定をする、そういう評価をするチームを設けましてやるとか、あるいはまた、その後も、短期あるいは少額のものを除きまして、研究開発の中間的な段階で評価をやる、あるいは事後評価もするというふうな取り組みをいたしております。  今後とも、御指摘のような研究評価ということにつきましては適正に行われるように進めてまいりたい、こういうふうに思っているところでございます。
  79. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 評価についての公正、厳格な対応がないと、やはり学閥的な面で予算がとられると、そのままそういう閥の中に流れていくという傾向も出てきますので、本当によろしくお願いしたいな、こう思っております。  次に、私が感じた三点目は、国立研究機関と民間との密接な連携です。  米国では、国立研究機関と民間とが共同研究技術移転を通じて密接に連携しており、相互の協力によって研究成果の実用化が図られています。研究開発成果のうち、有望なものについては着実に特許化され、技術移転の専門部局を通じて民間に技術提供されたり、また、基礎的な研究成果でも、将来性があると考えられるものについては企業化開発に投資がなされるなど、実用化に向けた活動や投資が活発に行われております。  我が国国立研究機関においても常によい研究開発成果は出ているものと思いますので、そのようなときには、効率的に民間との連携を深め、研究開発成果の実用化に向けて努力すべきだと考えます。  そこでお尋ねしますが、国立研究機関研究開発成果の利用促進への取り組み状況はどのようになっておりますか。
  80. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  研究開発成果の活用ということは、基本計画におきましても、研究開発活性化なり新産業創出といったような観点から重要というふうに指摘をされているところでございまして、これにつきましては、研究成果に関する情報の提供、あるいは研究成果についての企業化に向けた各種の施策、これは後で御説明申し上げますが、それからあとは、産学官共同研究推進あるいは共同研究のための職員の休職派遣といったようなこと、あるいは特許権の優先実施権の付与などの施策をやってきております。  具体的には、例えばまず、いろいろな情報を提供するというために、国の成果をデータベースとして整備をいたしております。二つ目といたしましては、新技術のコンセプトを具体化していく、そしてモデル化していく、こういうふうなことをやります独創的研究成果育成事業といったことをやっておりますし、かつまた、それぞれ出てきました研究成果を、より開発といいますか企業化に向けて努力をしていただくという役割といたしまして、それらの開発委託あるいは開発あっせんというふうな事業なども進めてきておるところでございます。さらには、特許化支援ということで、研究成果は出たけれども権利化されていないものについてできるだけ権利化していくというふうな努力も進めてまいっております。  今後とも、これらの施策を通じまして、御指摘のような方向に努力をさせていただきたい、こういうふうに思っております。
  81. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今回の研究交流促進法改正は、先日伺った提案理由説明によると、国立研究機関国立大学の敷地内に国以外の者が共同研究施設整備する際に、土地廉価使用を認めることにより、共同研究促進による産学官の密接な連携の強化を図るという趣旨とのことでした。産学官連携促進という場合に、共同研究は確かに重要なかぎを握っていると思われます。  そこで、国と国以外の者の共同研究の状況はどのようになっておりますか。
  82. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  国と国以外の者との共同研究実績のうち、国立試験研究機関に係るものにつきましては、平成八年度におきまして約千件の実績がございます。そのうち、共同研究件数で見ると、昭和六十年度、研究交流法が制定されます以前でございますが、四百件でございまして、これは主要五省庁だけで計算しておりますが、これにつきましては九百件というふうな増加を見ているということがございます。  国立大学におきましても、これは昭和六十年度から平成八年度にかけまして、約二百件から二千件と増加をしているというふうなことになっております。  それから、具体的な成果でございます特許でございますが、これにつきましては、国立試験研究機関平成四年度から八年度までに出願した特許の全体のうちの三割以上が共同研究に係るものでございまして、新産業創出などに今後役立っていくというふうに考えております。
  83. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 国と民間がそれぞれの持ち味を生かしつつ、共同研究の形で互いに協力しながら研究開発を進めることは、創造的な研究開発にとっても重要であると考えます。その共同研究を接近した距離で効果的に進めるための支援措置として、今回の法案の意義も理解できるところです。  ところで、共同研究を初めとした産学官の提携を図る上で、都道府県など地域の役割は大変重要であると思います。地域には、それぞれの自然風土にはぐくまれた地域独自の伝統技術が蓄積され、こうした技術基盤を背景に独創的な産業発展しております。また、地域に根差す人ど人とのつながりも大変重要です。  一方、地域では、新産業創出のための新技術の活用が待望されており、大学企業、公設試験場等が提携しながら地域の研究能力を十分発揮していくことが重要と考えています。地域の独自性のある技術の芽をうまく成果に結ひつけていけは、独自の研究領域において世界的水準の研究開発発展させることも十分可能です。  このように、地域社会において産学官の提携を図ることは、科学技術振興する上で非常に有効な手段であると考えます。今回の措置も、かかる地域科学技術推進の動きと連携しつつ進むことが望ましいと考えますので、地域における科学技術振興の取り組みの現状がどうなっていますか。
  84. 宮林正恭

    宮林政府委員 地域における科学技術振興の取り組みに関しましては、一つは、「地域における科学技術活動活性化に関する基本指針」というものを国が策定しております。それから二つ目といたしまして、科学技術基本計画におきまして地域科学技術振興施策を明確に位置づけまして、地域科学技術振興が非常に重要であるということと、かつまたその推進の方針を明示しているところでございます。  このような方針を踏まえまして、当庁では、新産業創出に資する地域科学技術振興を図るために、地域の研究ポテンシャルを活用した産学官の大型共同研究制度と言っていいかと思いますが、地域結集型共同研究事業と称するものをやっております。  また、先導・基盤的研究開発施設整備事業ということで、地域の研究開発水準の高度化を図るための施設整備をお手伝いをするというふうな制度もございます。また、地域研究開発促進拠点支援事業というふうな形で、地域にコーディネーター、いわゆる地域の活性化を図って、そこで科学技術の底上げをする役割を果たしていただく方でございますが、こういう方を派遣をして地域全体の科学技術に関する活性化を図る、こういうふうなこともいたしているところでございます。  それから、振興調整費の中で生活・社会基盤研究といったような形で地域の活性化を図るというふうなことを、特に生活に密着している分野について対象としてやっておりまして、これらにつ きましては平成十年度予算でも重点的に配分をさせていただいている、こういう状況でございます。
  85. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今説明のあった生活・社会基盤研究で、私の地元の岩手県においては、南部鉄瓶に由来する鋳物鉄工の技術の蓄積を活用した高機能な鋳鉄に関する研究が行われました。高強度で柔らかく、加工容易な鋳鉄、従来の二割高い強度ながら機械加工が二倍ほど容易な柔らかいものを実現しました。また、先導・基盤的研究開発施設整備事業によって超電導研究施設整備が支援されたり、また、地域研究開発促進拠点支援事業によって地域における研究コーディネート活動の促進が行われていたりしております。岩手県だけではなく、全国の自治体は地域における科学技術振興に関して非常に熱心に取り組んでおります。  かかる意欲を着実に結果に結びつけ、よりよい成果が出るよう国としても今後とも努力していただきたいと考えますので、大臣に地域科学技術振興に関する今後の進め方について見解をお伺いいたします。
  86. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 科学技術基本法で、科学技術振興に関して地方の責任ということが明定されたわけであります。  それを受けまして、いろいろな地域で、科学技術をどう進めていくかという計画をお立てになったり、いろいろなプロジェクトを今活発にお考えになっているわけでありますが、これは、国全体の科学技術を底上げしていくという意味合いにおいても大変意味がありますが、それと同時に、先ほどからお話に出ているような地場産業振興とか、あるいは、地域、地域のそれぞれのニーズに基づく生活の質を向上させていく。これは、国の研究ではなかなかできない、やはり地域、地域で取り組んでいただくべき課題であろうと思っております。  それで、科学技術庁としては、それぞれの自治体と連携しながら、先ほど政府委員の方からも申し上げましたが、地域結集型共同研究事業などを利用しながら積極的に取り組んでいかなければならないと思っておりますが、菅原先生御指摘になりましたように、先生の御地元の岩手県でも非常に熱心にお取り組みでございます。今の地域結集型というものを活用しますと同時に、岩手県の場合でもそうでありますが、岩手県の大学やあるいは民間企業、いわゆる産官学というものが連携しながらやっておられるような研究開発が非常に多いわけでありまして、そういう意味での産官学が連携しやすいような体制というものを今後とも工夫していく必要がこの分野では特にあるのではないか、こう思っております。
  87. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 今後とも産官学の連携に向け努力をしていただきたいことを要望し、質問を終わらさせていただきます。ありがとうございました。
  88. 大野由利子

    大野委員長 吉井英勝さん。
  89. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、きょう、この研究交流促進法についていろいろ御質問いたしたいと思いますが、大学大学であれ、大学国立研究所との関係であれ、あるいはまた大学や国研と民間の研究者との間であれ、さまざまな形で基礎的に研究が行われて、その成果が新しい形で応用につながっていったりとか、そういう研究交流ということ自体は、これは非常に人類の進歩にとっても大事な問題だというふうに考えております。  そのときに、同時に、大学のあるべき姿といいますか、これについて我々は、また一面で非常に深く考えた対応というものが必要じゃないかというふうに思っているわけです。  私、こういう研究交流の問題が出ているときですから少し大学について振り返ってみたんですが、一九三三年にいわゆる滝川事件というのがありました。これは、私は京都生まれですが、私が生まれるよりも早くにあった事件です。そういう中で、「大学の使命は固より真理の探求に在り真理の探求は一に教授の自由の研究に待つ。大学教授の研究の自由が思索の自由及び教授の自由を包含すること、論なし。」というふうに、あの戦前の時代にあっても、大学における自治、学問・研究の自由というのは、本当に先人の人たちがさまざまな思いで、いろいろな権力の側からの圧迫とかいうものに対してさまざまな努力を尽くしてこれが実現されてきた。私は、日本における大学の学問・研究のありようについて、やはり歴史的なそういうものをしっかりとらえて臨むということが今非常に大事になっているときじゃないかと思うわけです。  そういう点でいいますと、戦後も、これは私たち理科系人間にとってはいつも注目しておった分野なんですが、一九四六年に名古屋大学の物理学教室で名大物理学教室憲章というのがつくられました。これは、日本の理論物理学者たちが、非常に自由闊達な議論研究や創造活動の中で、戦前の大学とは違って、やはり新しい大学のあるべき姿というものを求める中で生み出されてきたものであって、その中では「物理学教室に関する下記の如き基本的重要事項は教室会議において議決しなくてはならない。」つまり、その学問分野を構成するすべての教室関係者がよく論議を尽くして、議論をたたき合ってでも、そういう中でみんなで一致して新しい方向を生み出していこうと。  そういう中には、研究費の割り当て、つまり予算の問題とか、人事の問題とか、工場、事務室、図書館の管理。つまり研究室だけじゃなしに、物理学教室に属するあらゆる施設についてその管理をどうするか、そういうことを含めて、本来、学問研究の自由とか大学の自治というものは、そういう物質的に支えるものをきちっとやってこそ保障されるものだ。これが戦前から戦後にかけてのかなり歴史的な経過としてあって、私たちは、あれは名古屋大学の話だというふうに決めつけて見るのじゃなしに、やはりそれぞれの大学によってその受けとめ方とか取り入れ方はさまざまとしても、その精神というものは広がっていったように思うのです。  ですから、研究交流というものを考えるときに、特に大学の中でそれを考えていくときには、そういう歴史的なこれまでの蓄積されたものをきちっと踏まえた上で、研究交流をどう進めるべきかということを考えるということが非常に大事な時代じゃないかな。近視眼的に見れば、そういうのはほってしまって、どこか特定の分野だけぎやっと集中すれば、短期的、近視眼的に見たときの成果は起こることもあり得るものだと思うのです。しかし、ずっと長期に見たときには、やはりそういうスタンスで考えていくということが非常に大事じゃないかなと私は思うのですが、この点については、科学技術庁とそれから文部省と両方から基本的なところを伺っておきたいと思います。
  90. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 学問の自由、またそれに関連した大学の自治の関連につきまして、歴史上いろいろな出来事があったわけでございまして、委員指摘のとおりでございます。  研究交流ということに関しまして、今御指摘の点を関連づけて考えましたときに、研究交流あるいは具体に共同研究ということを考えました場合に、共同研究が何ゆえに必要かという原点に立ち返る必要があるのではなかろうかと思うわけでございます。  要するに、大学独自の力だけでもちろんできる分野もありますし、また産業界独自の力でできる分野もあろうかと思うわけでございますが、両方力を合わせて共同して研究をするということによって、期待される成果というものがまた独自の意味を持ってくる、こういうことが意味を生じてくるわけでございます。それは大学にとっても重要なことでありますし、また産業界にとっても重要なことでなければならない、こういうように考えるわけでございまして、そのような意味合いにおきまして、双方にとりまして、大学にとりましても、それから産業界にとりましても、その共同研究というものが実り多いもの、そういうものであるべきである、このように考えるところでございます。
  91. 宮林正恭

    宮林政府委員 基本的には、雨宮局長が御説明 になったスタンスと同じような考え方を私ども持っております。  大学における研究開発につきましても、国費をもって行われる研究開発でございますから、やはりその成果国民に還元されていくということは期待をしなければいけない。しかしながら、雨宮局長が申し上げましたように、大学にとっても利益のある形ということは当然非常に大事なことだと思いますし、それぞれ各大学人の方でいろいろとお考えいただけるもの、こういうふうに思っております。
  92. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、企業研究大学なり国研における研究というのは、ひとつ目的が違うわけなんですね。片方は営利を目的とする。これはある意味では当然のことでして、営利につながらないことをやっておると、場合によっては背任だ何だという話にだってなりかねない場合もあるわけですから、やはり企業目的に沿って、企業の営利を追求するというそこに沿っての研究にかなり力を入れる。ただし、企業は規模が大きくなれば、短期的に見ておっただけでは余り成果をおさめないから、もう少し広い領域でということで、基礎的なものも視野に入れてということもあるでしょうが、大学の方はそれとはまた違う、国研もそうですが、違う研究分野を受け持っているわけでありますから、そのときにお互いの性格の違いというものをきちっと見据えてかかっていかなければいけない。  そういうときに、今問題になります、大学の敷地、キャンパスの中で民間企業研究施設をつくる、これはそのときにいろいろな形があり得ると思うのですよ。例えば大学の敷地の中に民間が施設をつくって寄附をする、管理運営は一切大学に所属する、こういう形もあると思うのですね。その場合ですと、いわばせっかく寄附されたのだから片隅でどうぞと言ったら言い方は失礼かもしれないけれども、そういう部分も含めて、共同して研究しましようということもある。つまりそれは、あくまでも大学の敷地の中、キャンパスの中、その施設あらゆるところについて大学の管理運営の権限が及ぶということなんですね。  それに対して、大学のキャンパスの中に民間企業施設をつくったときに、その施設については大学の管理運営が基本的に及ばない、それはあくまでも、土地はお貸ししたのだが、建った施設民間企業の管理運営の権限に属するということになりますと、これは、大学の中にいわば企業秘密も含めて別な領域、別な空間を認めるということになるわけなんですね。  ですから、大学のキャンパスの中で民間の施設をつくったときの共同の仕方というのは、よほどそこのところをきちっと仕分けをして考えないと、大学の自治は、冒頭申し上げましたように、非常に歴史的にいろいろな経過を得て進んできたものなんです。管理運営というのは、大学全体について、大学の自治、学問研究の自由と結びついたものとしてあるわけで、そのときに、管理運営が及ばない領域、空間というものをつくってしまうというのはやはり問題があると思うのですが、この点についてのお考えを伺いたいと思います。
  93. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 二つのステージがあるのではないかと思うわけでございまして、一つは、そのような共同研究施設というものを敷地の中に建てることを認めるか認めないかという判断の場、これが一つあろうかと思うわけでございます。その場合には、先ほど私がお答え申し上げましたように、当該大学にとりましてその共同研究自体が有益なものなのかどうか、あるいは、そこの敷地の中に共同研究施設を設けることが有益と申しますか、適当なことなのかどうかというようなことについて大学が自主的に判断する、こういう場面が一つあろうかと思うわけでございます。  もう一つのステージといたしましては、それならば、そのような判断の結果、ある国立大学の中にそのような民間の施設が設けられて、その後の運営がどうなるかということであります。  これは、形式的に申しますと、委員かねて御承知のように、施設の所有権自体は施設を設ける産業界の方にあるわけでございまして、土地自体を産業界が借地するという形態になるわけでございます。所有権があるということでございますので、当該施設のいわゆるメンテナンスにつきましては、当然その産業界が負担する、こういうことになるわけでございます。  運営と申しますのは、例えばどういう研究活動をテーマとしてやっていくかというようなことが一つの例でありますけれども、そういうことを含みました運営全体に関しまして、当然これは共同研究ということでございますので、そこで研究を進めます民間の方々だけの意思がその施設の運営をすべて一〇〇%支配するということはあり得ないことだと思うわけでございまして、その辺は大学が自主的にお決めいただくことであろうかと思いますけれども、当然何らかの形で大学側の意向が反映されるような仕組みというものがしつらえられる必要もありますし、またそれが自然な形ではなかろうかというように思うわけでございます。
  94. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、共同研究、さまざまな形があると思うのですが、例えば、大学の隣接地、そこに民間の方が土地を求められて民間の施設をつくられる、これは明らかに民間の施設であるわけです。そこで共同研究をするとして、共同研究の中身については、今おっしゃったような議論を十分していかれる、これはこれで一つの道だと思うのですね。  これは、大学自身が持っている公共性という点からして、基本的には特定の企業利益とかそういうことには結びつかない、その企業研究も含めて、広く人類社会に貢献する、人類の進歩に貢献するような、そういう研究を共同してやっていく、大学施設の中での研究となれば普通はそういうふうにあるべきものというふうに思うわけです。  そのときに、大学の中というのは、私も企業人でありながら大学の中で研究させてもらったこともありますから余り偉そうなことを言えた柄では個人的にはないのですけれども、しかし、少なくとも大学の中は、これはどの研究室であれ、通常大学人であれば、お互いにいろいろ交流し合ったり、そこで議論したりすることが当然のことながら、一応各教室の管理運営権者はだれということは決まっているにしても、そこに大学の非常に自由濶達な交流議論の場があって、それは私は、ある意味では学問研究発展というものに貢献してきた者の非常に大事な要素をなしているというふうに思うのですよ。  ところが、企業施設となりますと、その施設だけは他の大学の中とは違って、学生であれ研究者であれ、これは企業の管理運営下に置かれるわけですから、そうほかの教室に簡単に行くようなわけにはいかなくなってくる場合があり得るし、ましてその研究の中に企業のノウハウとか企業機密というものが入ってきたときには、それは全く違う領域がつくられるわけですよ。そのときに、大学の管理運営権というのは、確かに施設を建てたということで所有権は民間にあるにしても、全面的に大学は全部管理運営権を持つのです、ですから、企業の方が、いや、ここ、うちの研究室に入ってもらっちゃいけないとかいうのじゃなくてへ大学側の判断によって管理運営がなされるのだ、こういうところは貫かれるのかどうか、これを伺いたいと思います。
  95. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 共同研究の場というのは、いろいろな文字どおり場が考えられるわけでございまして、一般企業がその共同研究の場だということもあり得ますし、また大学研究室が共同研究の場であるということもあり得るわけでございますし、今回法案でお示ししている中にございますように、民間等が借地して、そこに民間の資本、資財によって建てられる施設の中で行われるという場合もあろうかと思うわけでございます。いずれにいたしましても、共通なのは共同研究ということでございますので、先ほどの繰り返しになるわけでございますが、その運営一般につきまして、やはり大学産業それぞれの立場から相応の責任 分担があってしかるべきであろう、こう思うわけでございます。  ただ、先生今御指摘の、敷地の中にということで特段のことがあるはずであるというようなおっしゃられ方をいたしますと、それは例えば、広い意味で、大学の敷地全体の管理ということにおいて大学の責任が出てくるわけでございますし、また例えば、そういうことは多分ないことを期待するわけでございますけれども、民間のおつくりになった共同研究センターのそのメンテナンスの仕方によって、当該敷地内にある周りの大学の通常の教育研究活動に支障があるというようなことが生じた場合には、当然当該大学として物を申すことができなければうそであるわけでございまして、そういう意味合いにおきまして、大学としてその運営に責任を持つ、こういうことは、多分敷地内と敷地外との違いというものがおのずと出てくるのではなかろうかというように考えるわけでございます。
  96. 吉井英勝

    ○吉井委員 大学の中でRIを使うとかなんとかなってきたときに、今おっしゃったように敷地外も含めて、大学の方がちゃんと心配しなければいけない領域もあるわけです。  問題は、大学の中に民間企業研究施設がつくられて、共同研究共同研究としても、そのときに、民間企業の場合には、これは私自身の小さな経験からいいましても、企業には企業のやはり機密に属するもの、それは企業利益を追求するわけですからね、それはあるわけなんですよ。だから、民間が建てた場合ですと、民間が管理運営をしないと不都合な場合も出てくるのです。だけれども、そのときに、大学の中の施設についてはすべて大学が管理運営権限を持つのです、ですから、企業に、ここは入っちゃいかぬとかここは企業機密だとか、そういう領域はつくらせませんよ、共同研究の本来の精神に基づいて大学において管理運営を貫くんです、そういうことをきっちりおっしゃっていただけるならば、それはそれとして理解したいと思ってお聞きしているのです。どうですか。
  97. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 民間の方々があえて大学の中の敷地を活用してみずからの所有に係る施設を設けようということの趣旨は、共同研究のうちの民間が分担する部分、これにつきましては、やはり自分らの所有に係る施設のもとでできるだけの研究活動をいたしたいというねらいが込められてそのような施設が建てられている、こういうように考えるわけでございます。ただ、共同研究ということでありますから、共同研究全般につきましての運営につきまして大学がおよそかかわらないというのはおかしいということは先ほども申し上げたとおりであります。どうかかわるかということにつきましては、やはり大学とそれから当該施設を設けようとする者、それらが含まれた何らかの機関で十分検討されてしかるべき、そういう事柄ではないかというように考えております。
  98. 吉井英勝

    ○吉井委員 私、なぜここが大事かというふうにいいますと、これは大学の中でのこともそうだし、それから国研の中での研究だってそうなんですよ。我々は一番近い経験としては動燃事業団における経験を持っているんですよ。  あの動燃での仕事の多くは、民間のメーカーの研究員の方がたくさん入ってきていて一緒にやったり、逆に、国の予算でもって、動燃からの下請仕事といいますか、丸投げ仕事といいますか、それで、実質的には動燃の中にも入って、共同研究もやってきているわけです。しかし、それで出てきた成果物がどうなったかということを見たときに、非常に多くのものが、これは企業の財産権保護だということで、これはこの前もこの場で議論をしまして、そのとき動燃の理事長の方から、これまで「もんじゅ」の設置許可申請図書三万三千ページほどのうちの一万ページは全くの白地だったのですね、しかし、それはわずかの部分を除いて全面公開しますということをようやくこの間お約束はされましたけれども。  つまり、大学や国研の中に、企業の財産権保護に属するということでもって、非公開になる部分がつくられてしまう、大学の管理運営が及ばないものがつくられてしまう。私は、大学本来のあり方として、やはりそれはおかしいと思うのですよ。  どうしても企業の方がそういう形ででもやりたいというお考えであれば、大学の隣接地でみずから研究所を建ててされる。そういうところもよくありますね。それは民間としては一つの行き方かもしれないけれども、少なくとも、大学の中で共同研究をやっていこうというのならば、それは、もっと率直に言えば、例えば吉井株式会社が寄附をして、名前だけつけさせてもらって、大学の中で吉井研究所というのをやらせてもらうが、大学は管理運営の権限を全部持ってやっていく、そのもとで共同研究をやっていくというのならば、問題は非常にはっきりしているわけですよ。過去における大学の歴史的な経過から照らしても、ある意味では、そこは非常にはっきりするのです。  しかし、その大学のキャンパスの中に違う空間、いわば治外法権的な領域を設けるというのは、いかに研究については共同して運営しますとかいろいろ言っても、私は、それは違うのじゃないかというふうに思います。どうですか。
  99. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 共同研究を行った場合の発明などが生じて、それに関連して特許などのいわゆる知的所有権というものが生じた場合に、それをどう扱うかということが当然問題になってくるわけでございます。  私ども国立大学におきます共同研究の場合につきましては、当然、その大学共同研究相手方との間で共同研究の契約書というものを定めることになっておるわけでございまして、私どもの方として、そのモデルとなるべきものをそれぞれの大学にお示ししているわけでございます。  その発明等の扱いでございますけれども共同研究の場合であっても、すべての場合が共有になるということではございませんで、場合によっては、当該一方に属する場合もありましょうし、また他方に属するという場合もありましょう。また、共有という場合も出てくる。その場合には、その貢献度に応じてその特許権の権利を分有する。こういう仕掛けになっておるわけでございます。  私どもといたしましては、基本的には、共同研究あるいはこれにまつわる特許等の扱いにつきまして、この扱いが適切ではなかろうかというように考えておるところでございます。
  100. 吉井英勝

    ○吉井委員 いかに契約といいましても、これは、はっきりしているものもあれば、なかなか契約にのってこない、ノウハウとか企業機密に属してくるものもあるわけです。ですから、私は、大学の中にいわば治外法権ともいうべき領域、空間をつくるということはやはり正しくないというふうに思うのです。  そこで、冒頭言いましたように、大学国立試験研究機関成果社会に生かされていく一つのルートとして、民間企業との連携とか共同研究というのは意味があると思っているのです。しかし、営利を目的とする民間企業での研究大学や国研での研究とは、おのずから性格が違うわけです、異なるのです。  大学や国研での研究というのは、国民全体の利益に奉仕するという高い公共性が求められるものでありますし、特に大学の場合は、真理の探求を通じて人類社会の進歩に貢献するという独特の使命を持っているわけです。これは国立だけじゃなくて、私立の場合もそういう大学の性格を持っているから、私学助成という形で、大学の公共性というものに着目してさまざまな支援策もやられているわけですよ。  ですから、民間企業との共同研究を行う場合でも、こうした性格はやはり尊重されなければならないし、損なわれることがあってはならぬというふうに思うわけです。私は、これらは共同研究研究交流に当たっての前提というべきものだというふうに思うのです。ン大臣、いろいろ議論を聞いてもらっていて、ほ とんどのところは大臣考えは一致していると思っているのだけれども大学の敷地の中に違う空間、領域を設ける場合に、大学の自治が本当にきちっと貫かれるということをやっていかないと、共同研究のあり方として、長い目で見たときに禍根を残すことも生まれるというふうに私は思うのですが、これは大臣にお聞きしておきたいと思います。
  101. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 ほとんど同じ認識だと吉井先生はおっしゃいましたが、私は、吉井先生のおっしゃる、大学なり国立試験研究機関の中にこのような、この法改正で設ける施設をつくることが治外法権だとおっしゃるのがどうもよく理解できないわけであります。これは何も治外法権ではなくて、やはり国の大学なり研究機関との間に契約関係が結ばれるわけでありますし、当然、それは法的な規律のもとに従うわけであります。  それから、どうしてこういうものを結ぶかというときに、これは当然、大学なり国の試験研究機関にとっても、そのそれぞれの施設目的を達成するために意味があると思うからこそ契約を結ぶわけでありまして、それを全部、治外法権であるとか、大学の自治を損なうものと解する必要は毛頭ないのではないかなというふうに、私は今の御議論を聞きながら感じております。
  102. 吉井英勝

    ○吉井委員 その部分に関しては見解を異にしますが、終わります。
  103. 大野由利子

    大野委員長 辻元清美さん。
  104. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。  今回の研究交流促進法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。  科学技術庁より四月にいただきました、この法律案についてというペーパーがこちらにございます。まず、この趣旨部分について幾つ質問したいと思います。  このようになっております。   近年の我が国経済社会閉塞感を打破し、経  済構造改革に資するものとして、創造的な科学  技術活動による幅広い分野の新産業創出等への期待が高まっている。このため、  産学官それぞれの研究セクターがそれぞれの特  色を生かしつつ、密接な連携の下で効果的かつ  迅速に研究開発を進めていくための産学官連携  による研究開発環境整備に向けた施策が必要  になっている。このように趣旨を御説明いただいております。  この趣旨について、二点、まず質問したいと思  うのです。  この中の「幅広い分野の新産業創出等への期待」ということで、「新産業創出」という言葉があるわけですが、政府としては、どのようなものを今想定して、こういう施策を講じなければいけないと考えているのか、まず、一、二、具体例を挙げていただけますでしょうか。
  105. 宮林正恭

    宮林政府委員 御説明させていただきます。「経済構造の変革と創造のための行動計画」というものが昨年の十二月二十四日に閣議決定されておりますが、その中で、新産業創出境整備プログラムの推進という項目を掲げておりまして、具体的には、医療・福祉関連分野あるいは生活文化関連分野などというふうなことで、全部で十五項目を掲げております。
  106. 辻元清美

    辻元委員 それで、私、趣旨を最初紹介させていただいたのですが、それではもう一つお聞きしたいのですけれども、この後半に、産学官それぞれの研究セクターがそれぞれの特徴を生かしつつ、というふうなくだりがあります。  まず基本認識として、産学官研究セクター今三つありますけれども、産はどういう特徴、学はどういう特徴、官はどういう特徴というふうな基本認識のもとでミックスしていこうとお考えなんでしょうか。三つについてそれぞれお答えください。
  107. 宮林正恭

    宮林政府委員 御説明させていただきます。  まず学の方でございますが、先生方よく御存じのとおり、学は非常に基礎的な研究をされており、かつまた知的ストックも非常に豊かでございます。かつまた、それぞれの基礎研究のやり方、進め方といったようなものについてもノウハウをたくさんお持ちなわけでございます。  一方で、官の側でございますが、国立試験研究機関といったところにつきましては、学と重なったような研究機関、これは、国立試験研究機関につきましては非常にいろいろな種類の研究機関がありますのでなかなか申し上げにくいのですが、学と重なったようなそういう機能を果たしている研究室もございます。それから、かなり実用化されたような、特に国民生活に非常に密着したような研究をしているような成果もございます。あるいは、標準でございますとか、なかなか学でやるにはちょっと難しい、あるいは民間でやるのはもっと難しい、こういうふうな分野を着実にやっているような研究成果もございます。こういうふうなことの中でもやはり研究成果というものは出てきておるわけですし、それから、そのノウハウもございます。  一方、産の側からいいますと、やはりアイデアといったようなものを学なり官からいただきたいという希望はございます。かつまた、産業界の方は、やはりそういうふうな知的ストックというものを実際に何らかの形で産業という形で生かしていく、そのための研究開発をする、そういう能力にはたけている、こういうふうに私ども思っております。  したがいまして、それぞれノウハウを持っている、あるいはそれに伴う知的ストックを持っている、こういうふうなことであるかということで、私どもこういう表現をさせていただきました。
  108. 辻元清美

    辻元委員 そういう基本認識でということなんですが、それでは、これからさらに研究交流を進めていくに当たってなんですけれども、私たちは今ずっと審議しておりますが、政策を立てるに当たってはプラスの面とマイナスの面両方についてやはり検証しなければいけないというふうに考えるのです。  そこで、こういう研究交流の例についても幾つかこの審議の中でも出てまいりましたけれども、それでは、今までにこういう研究交流をやっていく中でトラブル等は果たしてなかったのかどうか。産学官とやってきまして具体的にあったならば、どういう事例があったか御紹介いただきたいと思います。
  109. 宮林正恭

    宮林政府委員 細かいトラブルは恐らく、やはりそれぞれ考え方が違うセクターでございますから、その中で考え方を整理をする際にいろいろな議論がある、こういうことは十分あり得るかと思いますが、共同研究をやった、始めた、その後につきましては、意見の相違である種の議論がいろいろされるということはしょっちゅうあることだと思いますし、それから、研究の進め方なんかにつきましてもあると思いますけれども、私どものところに今上がってきているというような、具体的なトラブルは承知しておりません。
  110. 辻元清美

    辻元委員 それでは、前半の御質問者の中にもあったのですけれども、やはり産学官というのがうまく機能していけばいいわけなんですけれども、癒着という問題は避けて通らなければいけないというのは、それぞれの、私たち全員の認識であるのではないかと思います。  前半の御質問者、自由民主党の方だったと思いますけれども薬害エイズ問題の教訓ということを発言されました。私も、薬害エイズの問題というのは、癒着という形で出た一つの非常に大きな事件であるし、事例ではないかと考えるのです。このようなことが二度と起こっては、やはり国民の皆さんが納得するわけもないし、しかし、産学官がうまく機能するということと同時に、それを避けるために私たちはあの事件を教訓にしなければいけないというふうに考えますが、ここでちょっと長官の御意見を伺いたいのですけれども、あのような事件を長官はどのようにごらんになり、何が一体問題だったんだろうと、ああいう事態を避けるためにはどのようなことを心しなければいけないとお考えでしょうか。
  111. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 私もあのエイズ薬害事件のこと を全部つぶさに承知しているわけではなくて、多分に印象的な評価になるかもしれませんが、やはり、役所の側が一つ産業を余りにも保護しようとした、過去の自分のやってきたことに対するこだわりといいますか、そういうところもあったんだろうと私は思うわけであります。  要するに、そういうものを起こらないようにするにはどうしたらいいかというのは、私は二つあるのじゃないかと思っております。  一つは、透明性確保していくということだろうと思います心情報公開といいますか、生まれた成果をできるだけオープンにして、世の中にわかっていただくという努力を欠かしてはいけないと思います。  それと同時に、保護する側と保護される側という感じになりますと、そこに癒着なり甘えなり依存が生ずるわけでありまして、やはり、すぐれた研究成果を生むところ、すぐれた技術を持っているところ、その技術を民間に移転するのにすぐれた能力を発揮し得るところ、そういうところがお互いに切磋琢磨するというか、競争的な雰囲気というものがやはりそこに必要なのじゃないかなと、こんなふうに思っております。
  112. 辻元清美

    辻元委員 今、長官の御答弁の中に情報公開という言葉がありました。やはり先ほどの科学技術庁がお示しいただきました法律についての説明の中に、今回の場合は、「共同研究促進されるよう、当該施設の使用の土地の対価を時価よりも低く定めることを可能とするべく、財政法特例措置を設ける。」言ってみれば、国民の側から見れば優遇措置というふうに見えるかと思うのです。その際には、やはりだれが見ても納得して、ああ、そういう研究をこういう条件で行うのならば納得できる、もしくは、そういう成果が私たちの暮らしにこのように結びつくならば納得できるという、そこのところが大事ではないかと思われるのです。  そこで、先ほどの長官の御発言の中の情報公開について何点か御質問したいのですが、先ほどから御答弁の中に、大学と産ですね、産業界企業になるでしょうか、それが契約書を結ぶというふうに御答弁の中にありましたが、このような契約書等については、どういう企業とどういう大学がどういう研究のためにどういう条件で提携をしているかということは情報公開されるのでしょうか。
  113. 宮林正恭

    宮林政府委員 共同研究契約につきましては、特に私ども秘密にするという性格のものだとは思っておりません。したがいまして、共同研究契約をお結びになりますのはそれぞれの大学なり国立試験研究機関でございますので、それぞれの研究機関等の判断、あるいは研究機関民間企業とのお約束事ですから、そこはそれらの皆さんの間で議論をされて、どういうふうに取り扱われるかということだと思いますが、私どもは、特に非公開にすべきであるというふうに考えているものではございません。
  114. 辻元清美

    辻元委員 今の御答弁ですと、それぞれの研究機関大学とで取り決めて、公開するか公開しないかということを決めるということなんでしょうか。私はやはりそこはオープンにすべきだと思うのですけれども、先ほど長官も情報公開とおっしゃっていましたが、いかがですか。
  115. 宮林正恭

    宮林政府委員 私どもがそれぞれの方に、こうすべし、こういう言い方で申し上げるのが適切ではないというふうに思いましたので先はどのような表現をいたしましたけれども、私は、それぞれが公開されるであろう、こういうふうに思っていることは事実でございます。
  116. 辻元清美

    辻元委員 私の前から行われている審議の中でこういう言葉もありました。テーマなどについて国民の疑惑がないように慎重に選ばなければいけないという御発言もありました。ということは、どういうテーマをどういう形で研究されているのかということが、国民が知らない限り疑惑があるのかないのかわからないわけで、そこは私はやはりオープンにすべきだと思うのです。  その中で、先ほど御答弁の中に、第三者による外部評価も入れると。今度は研究成果の方ですけれども、そこの部分の、第三者による外部評価というのはどういうシステムを今お考えなんでしょうか。
  117. 宮林正恭

    宮林政府委員 共同研究でございましても、これは科学技術会議の言っておりますいわゆる基本指針に基づいて当然評価をされるべきものだと思っております。したがいまして、基本指針に定められました指針に基づいてそれぞれが、具体的な評価のシステムというのは各研究所なり大学でおつくりになるもの、こういうふうに私ども思っております。
  118. 辻元清美

    辻元委員 しかし、先ほど、今御答弁いただきましたあなたが、第三者による外部評価を入れるんだとおっしゃったんですよ。それで私は、それはいいなと思いました。ですから、今の御答弁とちょっと違うと思うのですけれども、いかがですか。
  119. 宮林正恭

    宮林政府委員 お答えさせていただきます。  どうも答弁が舌足らずだったようでございまして、外部評価を入れるという考え方は、科学技術会議の定めた評価に関する指針で定められている事項でございます。したがいまして、それは外部評価が行われるということだと思っております。
  120. 辻元清美

    辻元委員 時間がなくなってしまったんですけれども、先ほど薬害エイズ問題も言いましたけれども、時代は違いますけれども、この科学技術研究というのが、例えば戦争中、産学官でどんな研究が行われているかわからないために誤った方向での研究が行われていたことが外部チェックできなかった。そういうふうな悲しい経験も実際に私たちは持っている中で、一つ一つやはり国民の目に見える共同研究にしていかないと、幾らプラスの面だけを主張してみたところで理解が得られない。特に最近は、産学官とかというと、プラスよりも何か癒着とかそっちの方向にどうも話が行きがちな事件が起こっております。  ですから、時代が違うと申し上げましたが、そういう戦争中などの経験も踏まえて、長官、この情報公開はやはり徹底していく方向でしていただきたいと私は思いますけれども最後に御答弁をいただきたいと思います。
  121. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 新しい制度をつくるときには、新しい制度がねらっているいわばよい点と、その制度から起こってくることが想定されるといいますか、ある程度恐れられるマイナス面、人間のやることですから、いずれも私はあろうかと思います。  今回の制度のねらいは、国の研究機関大学であろうと国であろうと、そこで研究開発したものは、やはり最終的に国民にその利益といいますか成果というものを享受してもらわなきゃならない。今世の中のテンポも速くなっておりますから、研究開発成果国民に還元していくためには、官の力あるいは国の力だけではなかなか早期に展開していくことができない、やはり民間の力もかりて、国が行った研究開発成果国民に早く還元していくようにしよう、そのためにはこういう制度が必要だろうということであります。  その反面、問題点は、国は国としての法律上の規制があり、あるいは国会の御監視ということもあるわけですが、民間の場合にはそういうものがあるのかというところから、先はどのようないろいろな御議論がこの委員会でも展開されたところでございます。  ただ、国が相手方と契約を結ぶということになっておりますけれども国立大学あるいは国立試験研究機関、それぞれ成果は公表するということになっておりまして、これは後退をさせるというようなことはできる話だとは私は思っておりません。今後とも、国の研究機関がやっている研究成果、そういうものは公開して国民に還元する。国民に還元していく前提の一つが私は公開であろうと思います。ですから、そういうことは今後とも力を入れてやっていかなきゃならない、こう思っております。
  122. 辻元清美

    辻元委員 時間が来ましたから、終わります。
  123. 大野由利子

    大野委員長 これにて本案に対する質疑は終局 いたしました。     —————————————
  124. 大野由利子

    大野委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝さん。
  125. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、日本共産党を代表して、研究交流促進法の一部を改正する法律案に対する反対討論を行います。  反対理由の第一は、本案が、大学の自治、大学国立試験研究機関における研究の自主性を侵害する危険性があるからです。  本案は、国有地の使用料を安くすることにより、大学や国研の敷地内に民間が所有し管理する研究施設の建設を促進するものです。これは、大学、国研の管理権限の及ばない施設、領域を大学、国研の内部に持ち込むことを推進し、大学の自治を含め、大学、国研における学問研究の自由と自主性を侵害する危険性があります。  反対理由の第二は、本案が、大学や国研における研究の公共性をゆがめる危険性があるからです。  今、研究者の自主的な研究の物質的保障である経常研究費は厳しく抑制されています。その一方で、本案のように、企業側を支援する形での産学協同ばかりが推進されれば、真理の探求、環境や福祉など広範な公共性を持った研究が求められる大学、国研の活動を、民間企業の営利に直結する研究に偏らせる危険性があり、長期的に見れば日本科学技術の健全な発展に支障を来すものとなります。  一般的に言って、国や民間を含めた研究者交流研究発展にとって有意義であり、大学や国研と民間企業との研究交流も、大学、国研の研究成果が広く社会に生かされる一つのルートとして意味のあることです。しかし、こうした研究交流は、各研究者、各機関がそれぞれ独自の自主的な研究活動を発展させてこそ生きてくるものです。今求められているのは、本案のような産学協同推進一辺倒の施策ではなく、人や資金を含め、大学、国研の研究基盤を抜本的に拡充することであります。  以上、本法案に反対する理由を述べ、討論を終わります。
  126. 大野由利子

    大野委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  127. 大野由利子

    大野委員長 これより採決に入ります。  研究交流促進法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の皆さんの起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  128. 大野由利子

    大野委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 大野由利子

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ————————————— 〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  130. 大野由利子

    大野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十九分散会