○河瀬一治君 本日は、
動燃に関します法律の改正のためということで、
地元の
意見を聞いていただけるという大変貴重な機会をいただきました。まずもって、心から厚くお礼を申し上げる次第でございます。本日はよろしくお願い申し上げます。
敦賀市には、
原子力発電所が、
昭和四十五年三月に日本で最初の商業用軽水炉型の
原子力発電所ということで運転が開始されて以来、全部で四基が立地をいたしておるところであります。さらには、火力発電所や、隣接をいたします美浜町にも三基の
原子力発電所が立地をされておりまして、我が国の電力供給に大きく貢献をいたしているところでございます。
さらに、この
敦賀市に立地をいたしております
原子力発電所四基は、それぞれ炉型が異なっておるという、世界的にも例のない大変特異性を持った立地
状況になっていることは御承知のとおりでございます。
敦賀市には、
動燃の「ふげん」と「
もんじゅ」が立地をいたしておるわけでございますけれ
ども、
昭和四十三年ころから
動燃の
皆さん方とのおつき合いが始まったわけでございます。もう三十年にもなるわけであります。
私は、
地元の市長といたしまして、この機会に「ふげん」と「
もんじゅ」について
現状の問題等々を申し上げたいと存じますので、ひとつ御
理解をいただきたいと存ずる次第であります。
まず最初に、「ふげん」関係の方から申し上げます。
特に、立地の経緯と
地元の
協力ということでありますけれ
ども、これは、
昭和四十三年に市議会の全員協議会でその建設計画を説明し、了承され、立地されたものであります。現在の原発に対します逆風の中では考えられないことでありますけれ
ども、当時は
日本原電の一号機が建設中でもございました。工場の増設程度に受けとめられたのではなかろうかと思います。極めて短期間に立地手続が進められました
原子力発電所でございます。
しかしながら、
地元に対します振興策は極めて少なかったわけでございます。例えば、電源三法交付金制度の成立が遅かったということもございますけれ
ども、本来ですと電源立地交付金が五年間交付されるところでありますが、二・五年間しか対象になりませんでした。つまり、
地元が国策に
協力しながら、そして立地も非常にスムーズであったわけでございますけれ
ども、その
地元振興策というのは少ないものであった、そのように思っております。
また、この「ふげん」でございますけれ
ども、私
どもに言わせますと、電撃的な政策変更があったわけでございます。平成六年には、国の
原子力長期利用計画が改定をされまして、新型転換炉開発も当然継続されるものと考えられていたところでございます。ところが、平成七年七月に、電事連の方は、大間原発の新型転換炉建設計画の炉型変更を、突然、電撃的に発表したわけでございます。
国の
原子力長期計画に基づきまして新型転換炉「ふげん」の開発計画が進められているものと
理解し、国策に
協力をしてきました
地元には、何ら事前の説明もありませんでしたし、その将来に突然幕を引くものでありまして、エネルギー事情の変化とはいえ、
地元といたしましては、極めて遺憾に思っているところでございます。
そして、今回さらに「ふげん」は
廃炉の方針ということでございますけれ
ども、国の
原子力政策が猫の目のごとく変わることにつきましては、市民は、大きな不信感、また政策に対します不安を抱いているところでございます。特に、私
どもといたしましては、「ふげん」が
廃炉になることに対しまして、
地元の経済、また
地元の雇用、こういう今大変大切な問題に極めて大きな影響を与えるものと懸念いたしておるところでございます。
以上、「ふげん」につきましての話でございます。
次に、「
もんじゅ」についてでございます。
「
もんじゅ」は、平成六年四月に初臨界を迎え、平成七年八月には発送電を達成したわけでございますけれ
ども、平成七年十二月にナトリウムの漏えい
事故が発生いたしました。大変大きな問題になったわけでございますし、現在は
事故の究明とともに、総点検の作業など、諸般の対策がなされている
状況であるわけでございます。
私
どもといたしましては、これらの総点検が十二分に実施されるよう注意深く見守るとともに、今後とも
事故の再発がないことが市民の願いであります。十分に時間をかけ、慎重に実施をしていただき、最終的には国の責任において確認されるものと認識をいたしておるところでございます。
なお、総点検でございますけれ
ども、
科学技術庁の
もんじゅ安全性総点検チームの検討結果が出され、今後
原子力安全委員会で検討される見込みでありますけれ
ども、市といたしましては、総点検中であり、現段階では
運転再開を
議論する時期ではないと考えているところでございます。
特に「
もんじゅ」については、ナトリウム漏えい
事故によりまして、
安全性についての市民の不安があるわけでございます。
運転再開を
議論する時期ではありませんけれ
ども、原因究明が終わりましたら、安全確保、市民の不安解消のため、できるところから改善していくべきだと考えておるところでございます。そのためには、国におきまして「
もんじゅ」の
安全性を確認するとともに、
地元に対しましてわかりやすく説明をしていくことが重要であると考えておる次第でございます。
次に、
動燃事業団法の一部改正ということでございますけれ
ども、
動燃改革の経過等々あるわけでありますが、昨年八月に
動燃改革検討
委員会の「
動燃改革の
基本的方向」に関する
報告を受けまして、新法人作業部会がまとめられました「新法人の
基本構想」について国から説明を受けたところでありますけれ
ども、市といたしまして、再三にわたりまして「ふげん」廃止によります
地域経済、また
地元雇用への影響の低減など、改革に関連した要請をしてまいりました。
さて、「ふげん」の解体、またその技術開発は他の軽水炉の解体に応用できるものと考えられますので、
廃炉技術開発を新法人の役割として明確に位置づけられまして、
地元として安心して「ふげん」の廃止にかかわりが持てるようお願いいたしたいと思います。解体技術は、今後高経年炉が続発をいたしまして、
廃炉問題が現実の問題となってまいりますので、その先駆的な役割を担うべきであると要請をしてきたところであります。
これら
地元の要請を配慮しました検討結果について、国の方針が示されたわけであります。私といたしましては、目的を失った
原子炉の発電を継続するということは、安全確保の観点から問題もありますので、大変迷いましたけれ
ども、昨年十二月に「ふげん」について国の
廃炉方針を了承したところであります。
今回の法案の主な点は、
動燃の事業を抜本的に見直しいたしまして、新法人を組織し、
地元重視の観点から
敦賀にも本社機能を移転する、また、新型転換炉「ふげん」は五年後に運転を停止し、
廃炉研究に活用するというものであります。
新法人は、安全確保を経営の最優先とするといたしております。
敦賀本部を設置いたしまして、大幅な裁量権と権限を持たせ、
地元での安全確保、危機管理、広報体制の充実を図り、さらに住民
参加のフォーラムの開催など双方向の
情報交流を図るなど、閉鎖的な体質を改善しようとするものであり、一定の評価をいたしているところであります。
さらに法案には、運営審議会を設置いたしまして、業務の透明性と社会性を確保しようとされております。安全確保、適切な
情報公開、効率的な業務運営など、新法人の
責務として規定していることは
理解しているところでありますけれ
ども、何よりも、その実現がなされなければ何にもならないと思います。
改革の成否は、
動燃事業団職員の一人一人の意識改革であると存じます。安全に対します職員の
皆さん方の意識改革を新法人への改組までに徹底していただきたい、このように考えておるところでございます。また、
地元の信頼を回復するためには、新法人が安全確保を徹底させまして、
地元とともに共栄する、このことを強くお願いしたいと存じておる次第であります。
そういうことで、四点についてこれから
要望を申し上げたいと思います。
原子力発電所に対しまして
国民が不安を持つというのは、不自然な行為ではないと思います。ごく自然な思いだと思います。
原子力発電所には放射能があるがゆえに、潜在的な危険性を持っていることは否定できないところであります。
安全性につきまして幾ら技術的に難しい説明をいたしましても、
国民の
皆さん方、余り日常関心もないと思いますし、
理解や関心を得ていこうというのは非常に難しいものだと私は考えます。このような難しい問題に対しましては、それぞれの専門家、また代理人にゆだねて解決していくというのが一つの現実ではなかろうかと思います。
例えば、法律の世界では弁護士さんという方がいらっしゃいます。そういうような形で、
国民にかわって
安全性を厳しく監視し、
国民の視点に立ち
国民を守る、
国民の代理人となるような組織をつくることが必要ではないかなと私は思います。これは非常に大切なことだと思っております。行政改革に合わせまして、安全規制部門の強化を図るべきだと思っております。
例えますと、ブレーキのききの悪い車には乗りたくないものであります。しっかりしたブレーキを持った、そういうような機能を発揮できる、そういう安全規制の部門を強化していくことが大切だと思っておるところでございます。
また、安全審査体制や
情報公開の強化を図ることによりまして、
国民の視点に立った規制ができると思います。
原子力発電所の
安全性に対します
国民の信頼感、
安心感が生まれれば、
原子力行政の円滑化が期待できるものと認識をいたしております。これが第一点、
安全性についてであります。
二つ目に、
原子力防災特別措置法の早期制定についてでございます。
原子力災害は、国の安全管理の失敗から発生するものでありますから、国が特別立法をつくりましてその後始末もすべきものと考えております。現在、
原子力防災の
責務は、なぜか市町村に負わせられているわけでありますけれ
ども、市民に説得力ある説明もできません。確信ある防災対応もできないと思います。
科学技術庁の
原子力防災検討会の検討会
報告書では、立法化の要否について検討がなされたわけでありますけれ
ども、統一した
意見にはならなかったと聞いております。
今後、各関係省庁を含めました
議論の場を早期に設定していただきたいと思います。
三つ目に、
地域振興の問題についてであります。
立地自治体の恒久的な
地域振興が図られまして、
原子力発電所を立地してよかったと言えるような社会環境を実現すべきだと考えております。特に、問題点といたしましては、電源
地域振興という電源三法制度の趣旨に沿いました交付金の
運用強化を図るべきであります。
この電源三法は、全原協、全国
原子力発電所所在市町村協議会が総力を結集して運動いたしました結果、
昭和四十九年に成立をいたしまして、立地
地域の恒久的発展につながるものと考えていたわけでありますけれ
ども、実際には、その期待は外れております。
その原因といたしまして、電源立地促進対策交付金の予算
運用を見ますと、実質的に二割程度しか交付されていない、このような
状況になっております。さらに、財政上の大きな問題点といたしましては、原発立地をいたしますと、固定資産税が入るけれ
ども地方交付税は減額をされます。これは、国のエネルギー政策に
協力すると
地方交付税が少なくなる。改善ができないものか検討してほしい、このように思います。
一般論としまして、
原子力発電所の問題というのは、沖縄問題と酷似していると思います。国策に
協力をしている
地元が、
事故が発生したときに肩身の狭い思い、風評
被害を受けたりするのはおかしいと思います。これは
国民の
理解度が少ないからであります。特に、
昭和五十六年にあった
事故では、
敦賀の
地域を通りますと、窓を閉めなさいとバスのガイドさんが言うのです。
敦賀から嫁にもらったらいかぬ、嫁に行くなというような非常に肩身の狭い思いをしたわけでございます。
特に、この
原子力問題というのは、
地元の犠牲の上に成り立つものではありません。
国民がひとしくその
責務を負うべきであると考えております。そのためには、
地元には安全を第一といたしまして、
原子力発電所と共存共栄をして、立地してよかったと言えるような
地域振興策が必要であります。例えば、電気料金を格別に安くするとか、立地
地域が格段に振興するような対策をお願いしたい。
また、
福井県の若狭
地域を走るJR小浜線というのがございますけれ
ども、十五基の発電所でたくさんの電気をつくっておりますが、悲しいかな、ディーゼル電車が走っております。ディーゼルで油をたいて走っておるのです。そしてまた、国道も二十七号線というのが一本しか走っておりません。私
どもは非常に不満を覚えております。そう思いますと、全く
地域振興がなされていない、このような
現状でございます。
何度も言いますけれ
ども、原発の既存
地域から
原子力発電所が立地してよかったなという声が出ない限り、恐らく、原発の立地というのはこれ以上進まないと言っても過言ではないと私は思っておる次第でございます。
四番目に、「ふげん」に関します固有の
要望事項についてでございます。
ふげん発電所が運転を終了いたしましても
廃炉研究業務を続けるということで、固定資産税、償却資産を継続して課税できることを明確にしていただきたいと思います。また、「ふげん」の低レベル放射性廃棄物の処分方法を早期に
確立されたい、このようにも思う次第であります。
以上、四点
要望させていただきます。
最後になりましたけれ
ども、
敦賀での
地方公聴会ということで、大変貴重な機会をつくっていただきましたことに対し、重ねまして心からお礼を申し上げる次第であります。
また、このような
意見を述べる機会をいただいたわけでありますけれ
ども、
原子力全般、また私の私見を含めた
意見を申し上げさせていただきましたが、立地
地元の抱える問題等につきまして今後
国会においても
取り上げていただきまして、
原子力に対します
国民の
理解を深めていただければ大変幸いでございます。あえてこの機会に申し上げさせていただきましたので、御
理解とまたお許しをいただきたい、このようにも存ずる次第でございます。
御清聴どうもありがとうございました。