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1998-03-20 第142回国会 衆議院 科学技術委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月二十日(金曜日)     午後二時開議 出席委員   委員長 大野由利子君    理事 小野 晋也君 理事 河本 三郎君   理事 三ッ林弥太郎君 理事 辻  一彦君    理事 吉田  治君 理事 斉藤 鉄夫君    理事 菅原喜重郎君       江渡 聡徳君    奥山 茂彦君       木村 隆秀君    杉山 憲夫君       田中 和徳君    平沼 赳夫君       村井  仁君    望月 義夫君       近藤 昭一君    佐藤 敬夫君       鳩山由紀夫君    井上 義久君       近江巳記夫君    吉井 英勝君       辻元 清美君    中村喜四郎君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         科学技術庁原子         力局長     加藤 康宏君         科学技術庁原子         力安全局長   池田  要君  委員外出席者         参  考  人         東北大学名誉         教授         (高速増殖炉         懇談会座長)  西澤 潤一君         参  考  人         (動力炉・核燃         料開発事業団理         事)      菊池 三郎君         科学技術委員会         専門員     宮武 太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十日  辞任         補欠選任   大島 理森君     江渡 聡徳君   近江巳記夫君     井上 義久君 同日  辞任         補欠選任   江渡 聡徳君     大島 理森君   井上 義久君     近江巳記夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  原子力開発利用とその安全確保に関する件               ――――◇―――――
  2. 大野由利子

    大野委員長 これより会議を開きます。  原子力開発利用とその安全確保に関する件、特に高速増殖炉懇談会報告書について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として動力炉・核燃料開発事業団理事菊池三郎さんの出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大野由利子

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 大野由利子

    大野委員長 本日は、本件調査のため、参考人として東北大学名誉教授高速増殖炉懇談会座長西澤潤一さんに御出席をいただいております。  この際、西澤参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、大変御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本日は、「もんじゅ」の扱いを含めた将来の高速増殖炉開発のあり方について忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序でございますが、最初に二十分程度意見をお述べいただき、その後、委員からの質問にお答え願いたいと存じます。  それでは、西澤参考人、お願いいたします。
  5. 西澤潤一

    西澤参考人 お手元にパンフレットがお配りしてございます。ダイヤグラムの方がわかりいいかと思いまして、失礼ながらポンチ絵入りでございますが、これは、今度日本に帰られました高原須美子先生エネルギー経済研究所におられましたころにつくられたパンフレットの中身をコピーさせていただいたものでございまして、高原先生には御了解をとってございます。  一枚目でございますが、これは人口カーブでございます。  ごらんのとおり、二十世紀に入る、つまり一九〇〇年ごろから急速に世界じゅう人口がふえ始めているということがおわかりいただけると思います。ペストと書いてございますが、一五〇〇年のちょっと前にヨーロッパを中心にいたしましてペストが流行して、たくさん死にましたために人口が減少していることまで書いてございますが、ごらんのように、長い間地球上の人間の数というのはそんなにふえなかったわけでございますが、二十世紀に入るや否や大変な勢いでふえているということがおわかりいただけるだろうと思います。  次の絵をごらんいただきたいと思います。  これは、世界じゅう人たちが大体どれぐらいエネルギーを使うかということをダイヤグラムにしたものでございます。御注意をいただきたいのは、下の軸が伸び縮みしておりますので、今ごらんいただきましたものとちょっと対応がつかないわけでございますが、一九〇〇年のところをごらんいただきますと、先ほどのカーブを思い出していただければ、非常によく似ている、一九〇〇年ごろから急増しているんだということが両方に共通の性格であるということがおわかりいただけるだろうと思います。  つまり、人間がたくさんエネルギーを使うようになったというのが今ごらんいただいているこの絵でございますが、それと相前後して人口が急増した。言うなれば、子供たちが病気その他で死ぬ率が非常に減りまして、乳幼児が非常に健康なまま成長できることによりまして世界人口がふえたのだということをごらんいただけるのではないかと思います。  つまり、科学技術が、どうこう言いますが、結果としては子供たち死亡率を非常に下げたというようなことで大きな貢献があったということは、この絵をごらんいただければすぐわかることでございます。  人口カーブと非常にこのカーブが似ておりまして、一八〇〇年ぐらいまでは一人頭消費エネルギーは微増でございます。最近言われますように、産業革命によりまして蒸気機関が展開され、船の絵がかいてございますが、このころから蒸気機関普及をしたわけでございますが、それにもかかわらず、余り大してエネルギーはふえませんでした。  ところが、その次にかいてありますランプは、これは電灯のつもりでございますが、この電灯普及をし始める。ちょうど去年が生誕百五十年でございましたトーマス・エジソンが、線を張って電気をお配りするということを世界最初に提案し、これをやったという功績が私はエジソンの生涯の仕事のうちでも一番大きなものと考えておりますが、その辺から一人頭消費エネルギーがかなりふえ始めているということがおわかりいただけるだろうと思います。  右の上の方に余り人相のよくない人が自転車に乗っているような絵がかいてございますが、これは初期の自動車のつもりでございまして、ヘンリー・フォードがアメリカガソリンエンジン車の量産をやりまして、非常に安く、馬がわり自動車が使われるようになった功績者でございますが、実はこの電気普及自動車普及ということが人間消費エネルギーを非常にふやした原因でございます。  したがいまして、文化革命といたしましては、蒸気機関の発明よりも、電気を配線してお配りしたとか自動車を非常に多くの方々に使っていただけるようになったということが、人間文化史の上ではより大きな意味を持っているのだと申し上げてよろしいかと思います。  結論でございますが、ごらんのように、電気自動車普及によりまして消費エネルギーは一人頭非常に急増いたします。今日、ちょっと不正確かもしれませんが、日本人におきましては、乳幼児のたぐいまでも全部ひっくるめまして、一人頭人間が大体バケツに一杯石油消費しているというふうに申し上げて、大体実感をおつかみいただけるのではないかと思います。大変な勢いで今石油消費しているということになるわけでございます。  一ページ目に戻っていただきまして、化石燃料というのは石油プラス石炭でございますが、ようやく二十年ほど前から、東北大学山本義一先生空気中の炭酸ガスの測定をいたしまして、警鐘を鳴らしておられます。非常に急速に大気中の炭酸ガスがふえている、何らかの手を打たなければ将来非常に問題になるのではないかということを言っていらっしゃるわけでございますが、残念なことに、日本の中ではこの警鐘に対してほとんど注意をした方がいらっしゃいません。  結局、日本炭酸ガスの急増問題がまともに取り上げられるようになりましたのは、ちょうど七年前になるかと思いますが、茅陽一先生がローマ・クラブに出席なさいまして、あちらでそういうことを言われたときに初めて、かなりまともに考える方が出てきたということになります。  しかも、まだ温暖化ということが対象でございますが、いささか騒ぎ過ぎかと言われるかもしれませんが、今のお目にかけました図の次のページごらんいただきたいと思います。  横になっておりますが、この左側が一命申し上げました、大気中にどれぐらい炭酸ガスが放出されるか。言いかえますと、石油石炭を毎年どれぐらい使っているかということを文献を通して調べまして、それが最終的には、二酸化炭素と書いてございますが、炭酸ガスになるわけでございますから、これがどんな割合でふえているかということをいろいろな統計データを使いまして推定したものでございます。ごらんのように、これは対数目盛りと申しますが、私が縦軸対数目盛りに引き直したものでございます、結果的には、ほぼ直線上にふえている。言いかえますと、毎年約一四%程度割合石油石炭消費がふえているということになります。  このように、毎年毎年、石油石炭消費がふえてまいります。そのために、植物炭酸ガスをつかまえまして、同化作用によって炭素をとりまして自分の体にするわけでございます。残りました酸素空気中に放出するということによりまして、これを人間を含めました動物が呼吸して使っているということになるわけでございますが、今のところでは植物の方もまた、要するに、アマゾン川の流域が有名でございますが、森林が次から次へと伐採されたり、先年ガルーダ航空機が煙のために視界不良になって墜落したという事件が示しますように、世界じゅう森林乱開発をされておりますために、むしろ炭酸ガスを分解する力は非常に急速に弱まっております。  その結果といたしまして、右側のカーブごらんいただきたいわけでありますが、大気中に放出されてまいりました炭酸ガスがどんな割合でふえているかということを、歴史的なデータを基礎にいたしまして解析いたしたものでございます。ただいいかげんに右肩上がりに線を引っ張ったなとお考えになる方がいらっしゃるかもしれませんが、これは解析接続法という数学的な手法を使いまして推定をしたものでございます。  今から二百年たたない前に大気中の炭酸ガスは三%程度になる危険性があるということでございます。現在は約〇・〇三%でございますので、二けた上がるのに約二百年という勘定になります。これは、医学関係の方はすぐおわかりになることでございますが、人間が体の中かち炭酸ガスを放出するときの比率を計算をいたしますと、大体四%の炭酸ガスが入った空気と対応するわけでございますので、四%になりますと、体から出てきます炭酸ガスは外にレリーズできない。くっついてくる方ととれる方が同じになりますので、呼吸は完全に不可能になるわけでございますが、三%でも生命の危険があるというカーブになります。そういう意味で、このまま放置をいたしますと、約二百年の間に人類窒息死する危険性があるということまで一応推定が可能でございます。  ただ、余り誤解をされないようにしなければいけないわけでございまして、いろいろな手法がございまして、そういう科学的な手法を使いましてそれを未然に防止しようということで、我々はいろいろと努力をしているわけでございます。  京都フォーラムの寸前にございました松山フォーラムにおきまして、竹下元総理が基調講演をなさいまして、このまま放置すれば人類窒息死危険性もあるということを言っておられますので、私どもの申し上げていることと同じようなことを言ってくださいまして、我々もちょっと安心をしたところでございます。  そんなことでございまして、また最初ページに戻らせていただいて、行ったり来たりで申しわけございませんが、化石燃料に対する警鐘がようやく鳴り響いてまいりました。今までのように、結果も考えずに余り石油石炭を使い過ぎないようにしなければいけないということになるわけでございまして、今後、むしろ石油石炭消費を抑えていくという方向をとらなければいけないということは、ようやく考え方としては定着してきたかなと思っております。  これに対しまして原子力でございますが、原子力に関しましては、今新聞紙上をにぎわしておりますように、放射性を持った使用済み核燃料が非常にたぐさん出る。これはどこへも捨てるわけにはまいりません。どこかに保存をしなければいけないということになるわけでございます。そういうところが一つの欠点でございますが、高速増殖炉核燃料を燃やしたといたしますと、同じ量の核燃料かち百倍エネルギーがとれる勘定になります。わかりやすく言います。バロメーターを使って申しますと、今日本が使っております原子力発電を、今までのやり方でございますと一万トン。それから、現在の高速増殖炉であれば百分の一になるということになるわけであります。  風力発電というのがございますが、これは、経済性が十分に満足されておりますのはアメリカの西海岸のコースト山脈のてっぺんだけでございまして、ここは地勢上の非常に特異点でございます。風が非常に高い山の上に絞られます結果、非常に高速の風が年じゅうほとんど変わらずに吹くということでございますが、日本にはこのような恵まれたところはほとんどないというふうに申し上げてよろしいかと思います。  次に太陽電池でございますが、これはっくるのがいまだかなり高価につきます。  実は、今使っていただいておりますのはPIN型と申しまして、私の発明したものでございますからかわいいのはやまやまではございますが、値段の点では、今のところ残念ながら広く使っていただんわけにいかないのじゃないか。勘違いをする方がいらっしゃいますが、政府補助金を出して奨励をしておりますので一見安く見えるわけでありますが、もともとの値段からいいますと、結構高価についているということですね。  それから、これはまだ実証が不十分ではございますが、太陽電池に使っておりますプラスチックが非常にすぐ傷んでしまいます。太陽の持っております光量子のエネルギーが非常に高いために、物の寿命が非常に短くなっております。これは、結晶の場合にも、太陽光が当たっておりますとつくったものが早く傷むという事実がございますので、そういうところもよく考えませんと、まだ十分にこれが実用できるということの保証はないわけでございます。  最後に水力でございますが、ばかに嫌われておりますが、日本には只見川方式というのがございまして、これは一つダムでやらずに多段式にしております。そのために貯水量が非常に少なくて済むという特徴がございます。大きな貯水量を持ちます三峡ダムのたぐいは、あれは洪水防止用ダムでございます。それから、アスワン・ハイダム農業用ダムであります。発電は二の次ということになっておりまして、大量の水をためるということが必要とされますのは、洪水防止であり、農業用であり、発電とは違った目的のためにあれだけの水をためる。したがって、環境を変えてしまいますのは、発電用のためではなくて、ほかの目的に適合したダムをつくるということが最大の理由であると申し上げなければいけないと思います。  今、私どもが非常に一生懸命やっておりますのは、長距離送電をやろうと。エジソンがやったときは直流でやったのでありますが、いろいろとできないところがございまして彼の会社は失敗したわけでございますが、現在使われております交流送電は実質は三十キロメートルあたりが限界である。それを無理して数百キロメートルで使っているのだそうでございますが、本来からいえば三十キロメートルであるようでございます。  直流送電はどうなるかと申しますと、一万キロメートル送りまして一五%電力が減るのですね。一万キロメートルというと、直観的に申し上げますと、地球周りが四万七十キロメートルだそうでございますから、地球周りの約四半分の一、言うなれば、東京中心として一万キロメートルの境界をとりますと地球の半分になります。ですから、東京に近い地球の半分からならば電力をどこからでも運んでこれまして、そのうち一五%だけは抵抗損失でなくなってしまうんだ。常温超電導でもできまするが、これはゼロになるわけでありますが、なかなかそれも大変でございます。一応、今の技術をもってして一五%減るだけであるということでございます。  そういう意味では、例えば太陽電池発電とか、遠くにあります遠隔地の、例えばインダス川、ガンジス川上流など人っ子一人住んでいないところに急流がたくさんございますから、そういうところに水力発電所を建設いたしまして、そこから日本に陸上ないしは海底ケーブルを使って電力を運んできたといたしますと、今までのデータからいえば、実際やるときにはまたいろいろな問題も出てくるかもしれませんが、十分これは運んでこられるはずであるということになるわけであります。  これでどれぐらいエネルギーがとれるかというと、水力発電に限って申しますと、世界じゅうのまだ使われていない滝や何かの水の量などを計算いたしますと、大体、現在全人類が使っております総エネルギーが供給可能であるという結果になります。  OPECの総裁に呼ばれて行って、キプロス島で専門家の前で私が話をしたわけであります。私が余り経験がないのでということで、多分間に合うだろうという話をしたわけでありますが、専門家集団オランダから十人ほど来ておりまして、彼らも計算はしたそうでございますが、大体間違いがないということを言ってくれましたので、私は信用していただけないとしましても、オランダから来た専門家はそれは大丈夫ということを言っております。そんなことで、まだ私個人としては、水力発電ないしは太陽電池発電を長距離搬送するということに可能性考えております。  これは、実はABBと申しますスウェーデン会社が、私どもが出しました雑誌の中に書きましたことでございますが、地球周りにこのような直流送電線を回してしまえと。バンドをさせるわけでございます。そこで発生しました電力をその直流送電線に流しまして、世界じゅうでこれをバーターして使うということをやれば、大変効率の高い利用ができるのではないかということをある雑誌に書いたわけでございますが、去年でございますか、アメリカのワシントンで学者集団での討論会がございましたときに、私がこの仕事の紹介をいたしましたところが、アメリカ側から注意をされました。スウェーデン会社がそういう構想を売り込んで歩いているぞ、おまえたち自分の国で考えたくせに何をぼやぼやしているんだという注意があったことをちょっと申し上げさせていただきます。  そんなことで、将来はいろいろございますが、しかし、水力発電太陽電池発電のたぐいは、ソースが外国でございます。したがいまして、将来のセキュリティー考えますと、何か国外にいろいろな事故が発生したときに、日本国内電力供給に障害が起こると考えるのが普通でございます。そういう点からいえば、国内に何か持たなければいけない。石油を備蓄しましても百日-三百日という程度でございますが、高速増殖炉の場合には、先ほど申しましたように、一年間全部これでやったといたしましても、核燃料は百トンあれば一年間もつ勘定になります。普通の原子力でございますと、一万トン要るわけでございますから、百トンならば、これは備蓄可能でございます。  そういう点からいえば、高速増殖炉というのは、放射性使用済み燃料も余り出ないということもございますし、大いにこれから検討に値するのではないか。備蓄の点あるいはセキュリティーの問題からいいまして、日本が将来、私が言っている水力太陽電池というものを使っていただいたといたしましても、セキュリティー考えた二次的なエネルギーソースとして十分に検討する価値があるだろうというのが私の考えでございます。  それから、いろいろな、全く情けない、エンジニアの心構えを疑いたくなるような事故が連発したわけでございますけれども、そういうことと高速増殖炉の問題というのは切り離して考えるべきものでございます。エンジニアその他の責任感を追求するという教育は今後ますます重要になることになるわけでございますが、しかし、これは高速増殖炉自体の持っております必要性あるいは実現の可能性ということを否定するものにはならないだろう。特に限られた人間しかできないようなことではございません。普通の、一般のエンジニアならば、ちゃんとした責任感を持てばこれは十分にこなせるものになり得るものだと私は考えております。  そういう意味で、ああいう事故が起こったのは大変憤慨もし、かつ悲しみもするわけでございますが、何とかこれを見きわめをつけて、将来の日本エネルギー政策に方向づけをする必要があるというのが私の取りまとめた結果でございますし、また、委員方々の御意見でもあったかと思います。  以上でございます。(拍手)
  6. 大野由利子

    大野委員長 大変有意義な、貴重な御意見をありがとうございました。  以上で西澤参考人意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 大野由利子

    大野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也さん。
  8. 小野晋也

    小野委員 質問に先立ちまして、きょうは、研究開発の鬼と言われております、世界的に著名な西澤先生参考人として御臨席をいただきましたことに御礼を申し上げたいと思います。  先ほど鬼と申しましたけれども、今の陳述をお伺いさせていただきながら、先生の取り組んでおられるテーマというのは人類の未来を切り開く大きなお仕事であるということを痛感いたしまして、単に鬼ではなくて、鬼手仏心の鬼なんだということを改めて痛感をさせていただいた次第でございます。  ところで、今先ほどのお話エネルギー問題でございますけれども、私は、エネルギー問題、そして地球環境問題、このあたりを契機にして我々人類は新しい文明社会へ進んでいくのではなかろうかというような予感を実は持たせていただいている次第でございます。  我々人類の歴史をずっと振り返って見てみましたときに、いつもいろいろな困難を我々は目の前にしてまいりました。その困難に対して、必ずしも科学技術的な意味における技術開発が険路を切り抜けたわけではございませんが、多くの場合に、新しい技術の登場、そしてその技術が切り開く新しい可能性をもって、単に目の前の問題を解決するのみならず、我々人類社会システムを新たなものにつくり変えていくと同時に、人類の持つ基本的な思想そのものすらも、その新しい技術を最高に生かしていくという観点から我々は新しいものをつくり上げてきたということを考えてまいりますと、今や^我々人類がこの環境問題、エネルギー問題を克服することなければ、今先生お話にございましたとおり、人類はすべて窒息死する。寒暖を避けるために我々は今衣服をつけておりますが、二十一世紀のファッションは酸素マスクである、そういうことになりかねないというような状況であることにかんがみまして、恐らくこの問題を契機にして我々は大きく一歩を踏み出していかねばならない、こんな認識を持たせていただいたわけでございます。  ところで、先生の御著書も何冊か私も読ませていただいたことがございましたが、福井謙一先生のことについて触れられた部分に書かれていたと思いますが、工学の「工」という字について、「工」の上の横の一線は天であり、我々人類が理想とすべき世界を指し示し、下の横の一線は、これは現実社会の姿を示し、その間に垂直に立つ一本の棒、これが我々の理想と現実をつなぎ合わせなから人類の生きる社会を亘り開くものを示すんだ、だから、工学亡いうのは未来を切り開く非常に貴重な営みである、こういうふうなお話が出ていたと思うわけであります。  そんな観点で私が考えてみるところに、このしばらくの科学技術庁を取り巻くいろいろな問題、特に動燃の「もんじゅ」の事故の問題を今御指摘ございましたけれども、宇宙開発の側面から見ましても初歩的なところにおけるトラブルというのが極めて多いということからかんがみますと、私は、日本の国におきまして、工学の力というものが非常に衰えを見せているのではないだろうか、こんな気持ちがしてならないのでございます。  現在も、大量生産の現場という観点から見れば、世界で一番の品質の商品をつくり上げる技術を我々日本は持っているわけでございますが、残念ながら、先端技術の部分の研究開発の現場においては想像もつかないようなトラブルが次々と起こってくる。このあたりについて恐らく先生も、今先ほどのお話の中で憂慮しておられましたけれども、いろいろな思いをお持ちになっておられると思うわけでございますが、なぜこういう現実が起こっているのか、その原因、そしてこれからの取り組み、このような点についてお持ちになっておられます考えをお述べいただければ幸いでございます。
  9. 西澤潤一

    西澤参考人 私が平素申し上げていることをいろいろとお調べいただきまして、評価をしていただきまして、大変感謝を申し上げます。  日本は、御存じのとおり資源もございませんし、やはり科学技術の展開をもって世界に貢献をしていくということによってみずから生きていかなければいけない国であるということは、今さら申し上げる必要もないことであると思います。  ただ、戦後悪い癖がつきまして、アメリカが大変親切に日本の面倒を見てくれました。ほかの国には売らないような先端技術日本にだけは売ってくれたわけでございます。また、日本の学者が行けば、我々もそうでございますが、普通の人たちには秘密にして見せないところまで、これをあけてくれるような、見せてくれるようなところがございまして、戦後、日本アメリカに大変いろいろと助けてもらったということになるわけでございますが、この間に非常に悪い癖がつきました。自分でやらずに、アメリカに行って見せてもらう方がいいのだろう、こういうことでございます。  日本人は創造性がないなんということをおっしゃる方がいらっしゃいますが、これは大変な間違いでございまして、明治以来百何十年の間に日本から出ました創造的な研究ないしは工業というもの、特に創造的な基礎研究でございますが、これは恐らく世界の記録ではないかと思うほどたくさん出ているのですね。ですから、日本人が創造性がないなどと言うのは、これは明らかに詭弁でございまして、本来、非常に創造的な力を持っております。ところが、戦後になりましてアメリカの方から親切に教えてもらいまして、それと同時に、かなりはっきりと、大学などは研究などしなくてもいいとおっしゃった方がございまして、大変偉い方でございますが、日本の中に本当は芽生えるべき創造的な仕事を育てようという機運が急速に減退をいたしました。  ちょっと例が悪いのでございますが、例えば大学の先生の月給が相対的に非常に下がってしまったというようなこともあるわけでございまして、だんだん長くなってまいりますと、仕事に対する重要性を考えるという熱情もだんだんこの日本の中から消えてまいりました。お金勘定だけで自分の職業を選ぶような人も出てまいりました。そのために、大学からだんだんに人材が減っていっているわけでございます。こういうことが日本の基礎的な業績をむしろ低下させているというのが現状ではないかと思います。  それからもう一つでございますが、アメリカの教育が一つ非常に特徴として持っておりますのは、正確に言えば、今日本が理想としておりますのは一九五七年以前のアメリカの教育体制であるということを言った方がいらっしゃいます。スプートニクでロシアに負けまして、アメリカは一九五八年以来教育の理念を変えている、個性を伸ばすというふうに変えたんだということをかなり言う方がいらっしゃいますが、私は大体そうではないかと思います。  日本は、すべての人たちの力を上げてやろうと、底上げ教育に中心が行ったわけでございますが、今、アメリカはむしろ、底上げもやっておりますが、それ以外に、能力のある人間をどんどん伸ばすという方向に行っているわけでございます。これは、そのままがいいとは私は決して思っておりませんけれども、いずれにいたしましても、日本は全部を上げるという気持ちが少し強過ぎまして、伸びるべき人たちがなかなか伸びておりません。やはり、ここは多様化ということを入れなければいけないというふうに私は考えているところでございます。  同時に、多分お子様をお持ちの先生方はひとしく苦しめられると思いますが、鳩山先生の弟さんの方が文部大臣をしていらっしゃいましたときに業者テストを禁止されたわけでございます。あの象徴的な事件を今思い出すわけでございますが、現在の試験に合格するためには、物を考えて答案を書くよりも暗記しておいて書けというのが常識になっております。お子様をお持ちの方々は、お宅で、数学は暗記科目だという言葉が出たことが多分おありであろう。数学が暗記科目というのは幾ら何でも、非常に曲がっていることでございまして、そのまま承認できることではないと思います。  そのような、いわゆる試験に対する対策教育が度が過ぎまして、子供たちは今頭脳破壊を受けているのではないか。教育を直せばもとに戻る、つまり学校に入ってから教育をやり直せばもとに戻るという領域を過ぎまして、頭が戻らなくなっているのですね。つまり、日本人が本来持っております創造的な資質が皆壊されてしまっている状態にまで来ているのではないかということで、私は大変危機感を持っております。そういうことが、今お話の出ましたようなことに非常に大きな影響を持っております。  それから、非理法権天という言葉がございますが、いつの間にかお金というものがどこかに入ったのじゃないか。子供たち自分の将来を考えるのに、夢を考えて将来の職業を考えるのではなくて、どういう方向に行ったらお金がたくさんもらえるかというふうなことで物を考える要素が強くなってまいりました。  日本考え方は、もう少しメンタルなものがあって、先ほどの「工」という字の御説明も、私の説明以上に見事にやっていただけたわけでございますが、ああいう気持ちを持ったエンジニアが必要でございます。  自分たち技術を使って世の中の人たちに幸せをキープしてあげるのがエンジニアであるという、人間としての基本的な考え方が低下している。それが、今回の事件のみならず、今日本の工業が非常にレベルが下がっている、特にオリジナルなものが生まれてこない、アメリカへ行って見ればいいんだという極めて安直なやり方が余りにも強過ぎるということでございます。  ちょっと長くなりましたが、以上でございます。
  10. 小野晋也

    小野委員 非常に示唆に富んだお話をちょうだいいたしまして、ありがとうございました。  先ほどの先生お話を承らせていただきながら、確かに、我々は戦後、科学技術開発においては特にアメリカに追随をし、そのアメリカの形式的なものを次々と受け入れてくる。また、幼少時から高校に至るまでの学問においては、受験勉強一辺倒になってしまったがゆえに魂がはぐくまれている部分がなかったというような形で、どうも日本技術開発そのものが、企業の中で十分に鍛えられるような場所においてはそれなりの技術者を輩出できたという気持ちがいたしますが、一般の学術分野では比較的レベルの低い部分での研究に終始していたという印象は、私も同感でございます。  そこで、もう一歩この点の議論を深めさせていただきました場合に、科学技術開発という問題を一本の木に例えて考えました場合に、私は、どうも日本科学技術研究の姿というのは、枝葉の部分は非常に立派だという気持ちがしてならないのです。つまり、要素技術がいかにあるかとか、それから、製造現場における技術はいかにあるべきかというようなことについては相当のレベルのものを蓄積もし、またそれだけの有能な人を我々の国は持っているわけでございますが、残念ながら、枝葉を支えるに足るだけの幹が形成されてこなかったのではないだろうかというような気持ちがしてならないのであります。つまり、いろいろなものを大きく統合するプロジェクトマネジメントというような部分に非常に問題が多いというような気持ちがいたしております。  「もんじゅ」の問題にしても、なぜあの温度計が、製造現場でのミスというのはまだわかるとしても、その後、何人もの方がその温度計を手にし、見ているはずなのに、全部それがフリーパスで通ってしまったというあたりに大変な危機感を覚えまして、日本のプロジェクトを大きくマネージしていくというところに、考え方においても、人間の資質においても、その能力においても、問題点が残っているという気持ちがいたしております。  そこで感じますのは、やはりマネジメントをする人がどうも形式的マネジメントに終始し過ぎているのではないか。現場というものを余り知らず、現実の技術のあり方も知らず、自分自身がその技術で失敗をした経験もしておらない、こういう人たちがマネジメントの中核にいるがゆえに、本来見落としてはならないものを見落としてしまうのではなかろうか、こういう気持ちがしてならないわけでございます。先生の御認識はいかがでございましょうか。
  11. 西澤潤一

    西澤参考人 二つの御質問があったかと思います。  一つは、オリジナリティーが出ないということでございます。これは文系でも理系でも同じことではないかと思っておりますが、自分はこういう生き方をしたいというようなことをなかなか今の子供たちは持ち得ないわけでございます。  今度、私は岩手の方で大学をやらせていただくわけでございますが、宮沢賢治の文章などを見ますと、日本人が心の中に持っていた非常にすばらしい文化があると思うのです。そういうものを若い人たちによく認識してもらう。日本人の心に共通してああいうものがあると思います。別に押しつけるつもりはございませんが、自分の心の中にそういうものがあるのだということをおのおのが確認をしてもらう。そうすれば、お金でもなし、何でもなし、名誉にもこだわらずに、本当に自分がやりたい、やらなければいけないと思っている、天から与えられた使命のようなものに目覚めるわけでございますから、周辺のいろいろな殿誉褒財に惑わざれずに、独自のものを考えるようになるわけであります。先ほど出ました暗記をとめるということも確かでございますけれども、そういう自発的な考え方を日本人の、全部とは申しませんが、かなりの人たちに持ってもらうことが必要であると思います。  そのような道を歩んでいくときに初めてオリジナルのものが生まれてくるわけでございまして、今のままでございますと、教科書を詰め込むだけでございますから、教科書に書いてあるのと違うことが出たときに彼らは全く戸惑いを持つわけですね。私どもみたいな連中でございますと、教科書に書いてあるのと違ったことが出てきますと、しめたと思うわけです。これは大仕事がつかまったぞというわけでございます。端的に、わかりやすいように、余りいい例ではございませんが、申し上げましたが、自分が世の中とは無関係にぜひこういう線を貫きたいということを、文系にせよ理系にせよ、ぜひ持たせるような教育をやることが一つであると思います。  その次は、現場との遊離ということが出ました。これもおっしゃるとおりでございます。その二重の重なりが今日本技術とかその他のものを皆レベルダウンをさせてしまっていると思います。  あの温度計の設計図を見たときに、これはおかしいと思った人が一人いるようでございます。それは下請工場のおやじさんだそうであります。私は、電気の卒業で機械ではございませんが、それにしても、若干聞いた機械工学の知識をもってしても、あの図面を見たときに、何だこれはと思ったわけでございます。  つまり、現実社会というものをつかまえて仕事をしていれば、あの図面を見たときに、これはおかしいと思うのはむしろ常識であったのではないかと思いますが、だんだん抽象的なことだけ教えられまして、計算機で、省略した計算をして決めるというふうな手法が最近強くなってまいりまして、そういうことをやっている方が偉いのだと思うのがふえております。ところが、幾ら有能な機械でも、省略した計算では、これはそのまま使える結果が出ないわけでございますね。簡単に言えば、根元の肉盛りがないわけでございまして、機械屋の常識としては根元に肉盛りをするのはこれは当たり前でございます。そういう、昔でしたら手仕事にある程度なれておりましたので常識としていたようなことが、今の人たちには、難しい機械は一応いじれますが、本当に使い切っていないというべきか、あるいは大事なものを落としているか、どちらかでございます。  そのような二面、大変的確なところを御指摘いただいたと思っております。
  12. 小野晋也

    小野委員 科学技術研究の中において何かしらハウツー物ばかりが今ばっこしておりまして、本来、人間としてみずから内発的な、自発的なものを失っているということで、先生の御指摘、非常に私どもも感銘を受けるものがございました。  今先生は宮沢賢治の話を出されたわけでございますが、私は、最近ちょっと注目すべき人物として二宮尊徳翁を考えております。二宮翁は、幕末近い時期になりますけれども、年月を経て疲弊する農村が随分たくさん出てくる、武士階級の中でも衰退していく家が出てくる、そういうところの再興に取り組んで、随分たくさんのところをきちんと村おこしをした方でございます。  その二宮翁が言われるには、そういう疲弊した村を立ち直らせるためには三つの基本的な考え方を大事にすればいいのだというので、これを仕法としてまとめておるわけでございます。その一つは勤労の精神であり、二つは分度の精神であり、三うは推譲の精神である、こういうことであります。  勤労の精神とは、魂を込めて働く思いを持たねばならない、形式的に働くのではだめだということでございますし、分度というのは、自分がいかなるものを持っていて、それをどう使うことができるかということをしっかりと現実を認識するということでありますし、推譲とは、みずからがそれをすべて利用するのではなくて、収穫物を周りの困っている人たち、そして未来の人たちに譲り渡していくという精神をしっかり持つということである。  私は、考えてみますと、科学技術研究もこの三つの精神を一度取り戻す必要があるのではないかという気持ちがいたしております。勤労の精神については今先生が御指摘いただいたとおりでございますし、分度の精神ということから見ますと、専門的なところに詳しい方はいても、日本の研究者は特にタコつぼに入ってしまって、横断的に広いものを見詰められる人というのは非常に少ないような印象を持っております。多くのものを見詰めながら、活用できるものはこれだけだと自分が限定するのではなくて、より広い範囲の中から使っていく必要があるだろう。  そして、最も大事なのは推譲の精神でございまして、目の前でどういう研究成果を得るかということだけではなくて、将来の人類のために、将来の日本の国のためにあえて今犠牲を払ってもやるべきことはやる、こういう精神を科学技術研究に取り組む人間は改めて持たねばならないのではないか、こんな印象を持っておる次第でございます。  そこで、質問といたしましては、やはり日本科学技術は、先ほど先生の御指摘のとおり、アメリカの先進的な技術が目の前で本当に輝いていたのでございましょう、その後を追いかけながらやってきたわけでございますが、今改めてこの段階にやってまいりました中で、これからの日本科学技術というものは我々自身の思想の中から生み出されてこなければならない。より大きく社会を見詰め、時代を見詰めながら、我々は今何をなすべきやという根幹的な部分をしっかり確立しなければならないと思うわけでございますが、こういう分野への取り組みについてコメントがもしございましたら一言お願い申し上げたいと思います。
  13. 西澤潤一

    西澤参考人 大変的確な御示唆をいただきまして、大学の教官ども先生の十分の一でもそういう見識を持っていてくれたならと正直思うところでございます。大変大事な御指摘であると思います。  それから、日本流の学問のやり方というものをやってまいりますと、それは国民性もございますから、日本人が研究をしている、アメリカ人が研究をしている、そこから出てくるものにはやはりおのおの特徴がございます。したがいまして、ただ一生懸命やっていくだけでも十分に、日本流のやり方、アメリカ流のやり方その他差が出てくるので、日本から世界に貢献できるものが生まれてくると私は確信しております。  特に、少しずれますが、先ほど申しましたように、資源がなくて、しかも今輸入資源をはるか太平洋の向こうから運んでくる、でき上がった商品はまた地球の裏側まで、つまり高度の生活水準を持っておるところへ売り込みに行きませんと月給の高い日本人のつくったものは買ってもらえません。そういう高度の製品を海外にまた運賃をかけて売りに行くという非常に特殊な条件のもとで生活を維持するということだけ申しましても、これは例えば経済学その他の面で見ても十分な新しい研究対象になるわけでございます。  たまたま私、東北大学におりましたときに、国際文化と情報科学という研究科をつくりました。それからもう一つは、東北アジア研究センターなるものを文部省につくっていただきました。東北アジア研究センターというのは、北方文化が日本に入っておりまして、例えばお目にとまっておりますのでは三内丸山その他のところに華が咲いたわけでございますが、従来北方文化の研究が余りやられておりませんでした。そういうことを調査する。ないしは、シベリアとは一衣帯水の間柄でございまして、そういう国々のいろいろな状況を把握する、そういうことがやがて新しい学問を展開するわけでございます。  これは、例えば経済問題と科学技術がいかに結びつくかとか、それは一つのわかりいい例でございますが、多面的に文理の両面から出た情報、つまり情報科学の中には、例えばにおいの科学とか、場合によればお化粧の科学があるわけでございます。どういうふうにすれば人間はきれいなものをきれいと見るかとかというようなことまで実は科学的に研究をする余地がございます。妙なことを言ったなとお思いになるかもしれませんが、あえて常識では考えられていないようなところにもそういう分野が非常にたくさんあって、新しい科学の創成ができるわけでございます。  そういうことからいいましても、私の乏しい頭をもってしましても、幾つかの研究科をつくったりセンターをつくったりすることができたわけでございまして、一番わかりいい例として、文系と理系の間に日本流の物の考え方を盛り込んだ新しいサイエンスのフィールドがあるのだということもその具体的な一例として申し上げておきたい。  先生からも大変大事な御指摘をいただいたと思っております。
  14. 小野晋也

    小野委員 それでは質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  15. 大野由利子

    大野委員長 江渡聡徳さん。
  16. 江渡聡徳

    江渡委員 自由民主党の江渡でございます。  本日は、西澤先生におかれましては、御多用中にもかかわらず当委員会にお越しいただきまして、本当にありがとうございます。また、ただいま西澤先生の本当に高道なお考えというものをお聞かせいただきましてありがとうございました。  さて、我が日本、この日本という国は資源小国でありまして、ですからこそ安定したエネルギーの供給源を確保するということが本当に最も重要な政策課題の一つである、そういうふうに言えると私は思っております。その基本認識のもとにおきまして、原子力開発利用が着実に進められてきたと私は思っております。  この間、東西冷戦の終結等の社会経済状況というものが変化してきたわけでございますけれども、我が国のエネルギー供給構造の脆弱性というか、そういうような本質的な変化というものは私はなかったと思っておるわけです。  原子力は依然として重要な電源として位置づけられておるわけでございます。またさらに、二酸化炭素の排出等による地球温暖化の問題あるいは世界的な取り組みの必要性というものが今現在叫ばれております。  そういう中におきまして、エネルギーを大量に消費している我が国におきまして、広範な政策分野における取り組みというものが必要とされているのではないか、そしてまたその中におきます原子力の果たす役割というのは本当に大きいのではないのかなと私は思っておるわけでございます。  現在、ウラン資源を含めまして、石油等の資源の需給は比較的安定していると言われておりますけれども、これらの資源というのはまさに有限でございます。報告書の中にも書いてありますけれども、ウランの量は約四百五十一万トンしかないと言われて、そして毎年軽水炉等で使われている量が使われていきますと、七十三年分しかない。そういうような状況にありまして、将来にわたって安定的に確保できるという保証は私はないと思っております。  ですからこそ、ウラン資源を最大限に活用するためには、高速増殖炉中心とする核燃料サイクルをきちんと確立していく、このことが我が国日本にとりまして大変大きな意義を持つものではないのかなと私は思っております。  また、現在日本が進めております科学技術立国というものを目指していく上におきまして、長期戦略と申しましょうか、そういう意味合いの中における技術開発戦略という観点からいきまして、今回のこの高速増殖炉という世界最先端の技術というものを開発する意義はまさに大きい、私はそのように考えております。  そこで、西澤先生にお伺いしたいわけでございますけれども、我が国の将来におきますこの高速増殖炉の意義につきまして先生はどのようにお考えになられているか、お教えいただきたいと思います。
  17. 西澤潤一

    西澤参考人 御指摘のとおりであると思っております。  先ほど申しましたように、環境などに一番影響の少ないエネルギーの入手方法というのは、あるいは太陽電池であり、あるいは水力であるかもしれません。幸いにして、私どものところでできました妙な半導体デバイスが直流を交流に変換できまして、九九%という、自分で目をこすってみるほどの効率が出てまいりました。それを利用していただければ、先ほど申しましたような一万キロの輸送も可能であると思います。やってみなければわからないということではございますが、そういうことでございますから、場合によればこちらを主役に守り立てて、後の人たちのためにいろいろな資源を残しておくということも考えなければいけないかもしれません。  しかし、いずれにしましても、先ほども申しましたように、先生お話しになりましたように、現在のウラニウムを使うということも、国内に貯蔵しておりましたものでエネルギーを安定供給するという観点からいえば、少なくとも緊急事態に対する対応の手段として十分に可能性を追求しておく必要があり、価格その他の問題でも解決の糸口が見られれば、直ちにこれを実施するということも必要でございます。  そういう意味で、先ほども申しましたように、プルサーマルその他の従来型の原子炉を使った場合の使用済み核燃料の出方というよりも、逆に言えば、もともとの燃料からとれるエネルギー割合が一対一〇〇でございまして、つまり、高速増殖炉だけでやれば百トンで済むウラニウム備蓄が一年になるわけでありますが、プルサーマルその他でございますとこれが一万トンになってしまう。燃えかすも同じ割合で出てまいります。これはゆゆしき問題でございまして、現在、やはり可能性として一番我々の目を引くのは高速増殖炉ではないかと思っております。  以上でございます。
  18. 江渡聡徳

    江渡委員 ありがとうございます。  高速増殖炉の開発というものは、今先生の方のお話からもありましたとおり、エネルギーの安定確保の観点からは私は本当に重要な課題であると思っております。実際にエネルギー源として実用化するためには、安全性の確保と同時に経済性の確保というものが前提となるべきだと思っております。報告書におきましても、実用規模のプラントの設計研究を通じまして解決すべき課題が明らかにされているというふうに述べられておりますけれども、そのような中におきまして、この高速増殖炉の実用化の見通しについてどのようにお考えになられているか、お教えいただきたいと思います。
  19. 西澤潤一

    西澤参考人 仰せのとおりでございます。  今のところでは、英仏独あたりが高速増殖炉の開発を中止したということが報ぜられております。岡本行夫先生も多分御出席ではなかったかと思いますが、あちらから責任者、おのおの一人ずつ来てもらいまして、その辺の理由を説明をしてもらったわけでございますが、これではやめなければいけないと思わせることは一つもなかったのではないかと思います。出席の全委員が、これではとめなければいけないという御発言はございませんでした。  もちろん、こういう新しいものというのは、やってみなければわからないわけでございます。予想しないところに大きなトラブルが出てくる可能性もございますが、その場合に対応して、これを改良することによって乗り越えられるものであれば乗り越えてみる、どこまでいけるかということを早くやってみる必要があるわけでございます。  今、聞くところによりますと、この分野の進歩がかなり冷たくされているのは、ウラニウムがどんどん減少しているにもかかわらず、不思議なことに値段がむしろ下がっているのだそうでございますね。そのために、予想しておりましたようにウラニウムが高くなれば、有効利用するために高速増殖炉研究開発して百倍のエネルギーをとるということになるわけでございますが、ウラニウムが安いからそんな無理なことをしなくてもよろしいというのがあるという話を聞いております。  それも一つの有力な理由ではないかと思いますが、いずれにいたしましても、世界的には確かに開発意欲が低下しておりますけれども日本のように資源のない国というのは、他の国ほどのんきな顔をしているわけにはいかないと思います。何らかのときに緊急対応ができるだけの評価をしておく。場合によれば、実証ができた段階、実験ができた段階で、これを実際に使ってみるということをしばらく延期するということはあり得るわけでございます。これは、経済性の問題あるいは予想される危険性の問題、もちろん、だめだというものはとめなければいけないわけでありますが、少し注意をしながらやらなければいけないというものもやはり余りやりたくないわけでございますから、そういうことにグレードをつけて、適宜実施ができる計画を持つことを緊急にやらなければいけないと思います。  格好のいいことを言えば、こういう技術世界に先駆けて展開するということは世界人類に対する貢献であるという見方もできるわけでございますが、場合によっては、今ロシアも一生懸命やっているそうでございますが、技術開発をやって外国に売りつけて国の経済に貢献するんだということを言っているようでございますから、そういう観点もあるわけでございます。  いずれにしましても、よその国がやめたから日本もやめてしまえというのでは、もう将来は日本にはなくなってくるだろう。やはり、外国がどうしてやめたかということがよくわかって、それでは自分たちもやめざるを得まいとか、あるいは自分たちがやっていくときに、これはだめだということがわかったときには、もちろんこれはすぐにとめなければいけません。そういうことがわかるまでは、やはり勇敢に、慎重にこの展開をやっていくべきであると私は考えておるわけであります。
  20. 江渡聡徳

    江渡委員 大変ありがたいお話をいただけたなというふうに私は思っているわけでございます。しかし、そういう先生のお考えはあるわけでございますけれども、この高速増殖炉の安全性ということにかんがみまして、あの事故等のこともあったわけでございますけれども、この安全性ということに関しては、国民の関心というのは本当に高いわけでございます。  そしてまた、今回の高速増殖炉懇談会の報告書に、これまで用いられてきた原子炉の安全性の原則というものを高速増殖炉に対しても適用することも可能であるというふうに書かれております。しかしながら、私自身は、この高速増殖炉というものはまだ研究開発の段階の技術であると思っております。ですから、その安全性の確保につきましては特に配慮というものが必要じゃないのかなと考えております。  同様に、このような認識から、この報告書の中におきましても、安全の確保に関する今後の課題というものも述べられておるわけでございますけれども、この研究開発を進めていく際におきましての安全確保をいかに保っていくかということに対しまして、先生はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  21. 西澤潤一

    西澤参考人 仰せのとおりでございます。  日本はいつの間にか悪い癖がつきまして、アメリカが歩いた道の跡を歩くという癖がつきました。計画を何年何月までに実施するというふうなことを決めているわけでございますが、入の歩いた道の跡を歩くから何年何月ということが言えるわけでございます。だれも歩いたことのない道を歩こうと思うときに、何年何月までにそこに行くなどということを約束すること自体が無意味なのだと私は思います。大体何年何月ごろだろうという見通しを考えることはもちろん必要でございますが、はっきり何年何月までにここまでやりますというようなことを言うことは、物の開発に対する、ある意味からいえば侮辱であると思います。  それから、今お話のあったとおりでございまして、ちょっと言葉が悪いかもしれませんが、最後に実用炉をつくったといたします。従来の実験炉、その他のものの例えば十倍の規模の実用炉をつくったといたしましても、これは、一つの大きさのものが十倍になったときに、今までと同しかというと、全くそうではないわけでございます。ですから、一の大きさのものが安全に動いたから、では十の大きさのものも安全だろうと思うのは大変な間違いでございまして、予想しないことが出てくる可能性があるわけです。ですから、実用炉という名前がついたといたしましても、やはり一つ一つに慎重な気持ちで対決していかなければいけない。科学技術に危険はつきものでございます。特に原子力関係のように、もしも事故が起こった場合にその及ぼす被害が非常に大きなものに対しては、我々科学技術者はより慎重に事を運ぶべきであると思います。  しかし、先生ごらんのとおり、日本の国産ロケットも、最初のうちはうまく飛んだわけでございますが、何号機かで失敗をするわけでございます。これはアメリカも同じでありまして、初めのうちは結構うまくいくわけでありますが、後になってきて事故が起こる。小田稔先生がビデオをごらんになって、あれは燃料が漏れていたじゃないかとおっしゃったという有名な話があるわけでございますが、大変つまらないところで、むしろ何回目かに失敗をするという例がかなり多いわけであります。むしろそっちが多いと申し上げたいぐらいでございますけれども、やはり絶えず新しいことが起こり得るのだということと、安定に動き出したからといって安心をして注意を怠るということを非常に慎重に防止していかなければいけないという、エンジニアに対する重大な教訓だと私は受け取らせていただきました。
  22. 江渡聡徳

    江渡委員 ありがとうございます。私もそのように思っているところでございまして、特に、技術者の方々が常日ごろ一先生お話しになられたような観点から取り組んでいれば、また違った方向性になるのではないのかなと思うわけでございますけれども、この高速増殖炉というものは、プルトニウムという、本当に機微な物質というのでしょうか、そのものを利用するわけでございますから、この利用に当たりましては、世界で唯一の被爆国であるこの日本でありますからこそ、平和利用の堅持というものが一番大事でありますし、また、そのことをしっかりと明確に示すということは大事なことだと私は思っております。  ですからこそ、国際的にも、このプルトニウムを利用することに対しましての透明性の確保に向けて日本がリーダーシップを発揮することが一番重要だと思っております。そういう観点におきまして国際的にプルトニウムを平和利用していく、そのための透明性をどのように高めていくか、また、そのために日本がどのように取り組んでいくのがよろしいか、その辺のところの先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  23. 西澤潤一

    西澤参考人 まさにこれも仰せのとおりでございます。  被爆国として非常に悲惨な状態を目の前にした日本人としては、世界に対して、人類に対してマイナスになるような使い方をしていただかないように十分に意見を表明していく必要があると思っております。  そういう意味では、ちょっと余計なことを申しますが、やはりこれから先、世界に対して日本人が、ある意味からいえば、第三国社会と先進社会との間で、そういう両国の間のとりなしをする。先ほどの京都フォーラムで、炭酸ガスの使用についての許容限界をどこまでにするかということについてもかなり激しい議論がありたわけでございます。あのときは、残念ながら日本が明確な指標を示すことはできなかったわけでございますが、やはりこういうときに、将来、世界じゅうが、なるほど日本の指標はいいなということが言えるようなものを提案するような役割を日本がしょっているのではないか。こういう形での日本の貢献というものがこれからかなり大きな割合を占めると思います。  日本人がそういうことが決められるようにするためには、やはりこれは理系のみならず文系に関しましても十分な自分自身の見識というものを養っておく必要があると思っております。
  24. 江渡聡徳

    江渡委員 西澤先生の本当に高邁な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  最後の質問、これは科学技術庁の方にお伺いしたいと思うわけでございますけれども、高レベルの放射性廃棄物の問題についてであります。先週は、一週間このニュースで持ち切りだったと思うわけでございますけれども、先般行われました青森県六ケ所村へのガラス固化体の搬入に際しまして、青森県の木村知事が、青森県の県民が持っております核燃料サイクルの今現在の進め方についての不信あるいは不安、このことを理由にいたしまして、四日間、輸送船の入港を拒否したということがございました。  この事態の打開のために行われました青森県知事と官房長官、科学技術庁長官及び通産大臣の三閣僚との懇談会におきまして、一つの合意事項がなされております。そのことは、高レベル放射性廃棄物の最終処分についての一層の取り組みの強化という合意事項でございました。  私といたしましても、核燃料サイクルの確立を円滑に進めていくためには、高レベル放射性廃棄物の処分について明確な見通しを示していくということが極めて重要であると考えております。  さらに、高レベル放射性廃棄物の処分というものはまさに国民的な課題でありまして、最終処分についても、わずか一カ所、六ケ所村だけで処分するということではなく、できることならば複数地点において処分するべきこと、その方向性の方がよろしいのではないのかなと考えております。特に、日本には九電力あるわけでございますから、できれば、各電力会社ごとで処分地を設けるとか、そういうような形もいかがなものかなと私自身が考えております。  そこで、科学技術庁にお伺いしたいわけでございますけれども、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定に向けて今後どのように取り組んでいくのか、あるいは、今現在の状況はいかがなものなのかという点を最後にお伺いしたいと思います。
  25. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 御指摘の高レベル廃棄物の処分の問題は非常に難しい問題ではございますけれども、この問題につきましては、従来から原子力委員会の中で、技術的な面と社会的、経済的な面、両面から審議を行ってきております。  特に、今御指摘の点は処分事業の観点でございますが、処分事業の実施の体制等につきましては、実施主体とか事業資金をどう確保するとか、処分地選定プロセス等、そういうものの具体策について、現在報告書案が取りまとめられまして、各地で意見を聞く会等を開きまして、その報告書が夏前には出る予定でございます。  その報告書の案におきましては、国は、処分に関する制度、体制を整備し、サイト選定で適切な役割を果たすということになっておりますし、また、処分地の選定に向けまして、そのプロセスとか関係する機関の役割等を法律等で明確化することを提言しているわけでございます。  そして、そのスケジュール的なものといたしましては、具体的には二〇〇〇年を目途に処分事業の実施主体を設立する。それから、その設立されました実施主体が、処分候補地、処分予定地の段階を経まして、それから処分地を選定する、そういうような手続。それから、その各段階で国においては選定結果を確認する。そういたしまして、二〇三〇年代から遅くとも二〇四〇年代半ばには処分を開始するということにしております。もちろん、その処分地の選定に当たりましては国、電気事業者、その実施主体が協力して進めることを提言しております。  いずれにせよ、今後、そういうものにつきまして、先ほど申しました、二〇〇〇年を目途に処分事業の実施主体を設立する等、処分事業の具体化に向けまして政府一体で取り組んでまいりたいと考えている次第でございます。
  26. 江渡聡徳

    江渡委員 ただいま御報告いただいたわけでございますけれども、まさにこの問題は国民的な問題でありますし、課題でございます。ですからこそ、科学技術庁は、政府一体として取り組んでいくということでございますので、今後とも鋭意努力されることを御期待申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  27. 大野由利子

    大野委員長 辻一彦さん。
  28. 辻一彦

    ○辻(一)委員 西澤先生、どうも御苦労さまでございます。  私は、福井県の出身でして、「もんじゅ」「ふげん」というのを抱えておりますし、それから、発電所が全部で十五、原子力関係であります。そういう意味で、約千二百万キロワットの発電容量、大阪府と京都府の電力は全部福井の方から送っているという、関西経済圏の約半分の電力を移出しているという状況にあります。  十五も発電所がありますので、やはりしょっちゅう、何十年かの間に問題が出てきますので、安全問題と、それから万が一に備えた防災体制の確立というものに非常に深い関心を持って今日まで参ったつもりでございます。  そこで、そういう立場から端的に少しお尋ねをしたいと思うのですが、一つは、先ほど先生もお触れになりましたが、原子力は、炭酸ガスを出さないという点においては、今問題の地球環境の上でプラスの面が有力であるということは事実であると思います。しかし、お話のありましたウランで燃やして使い捨てにしても、あるいは、それをまた再処理をしてプルトニウムを取り出しても、姿は変わりますが、より複雑な形の廃棄物という形で姿を変えながら残っていく、このことは変わらないと思うのですね。  そうなりますと、地球環境からいったときに、まず第一に、この化石燃料による炭酸ガス温暖化があります。それから酸性雨がある。それからフロン等のオゾン層の破壊の問題。三つ、地球環境の重大な課題として挙げられておりますが、私は、将来、放射性廃棄物が第四の地球環境の重大な課題になるおそれが十分にある、こういうふうに思っております。  これについての御見解等をひとつお伺いしたいと思います。
  29. 西澤潤一

    西澤参考人 仰せのとおりでございます。  ただ、先ほど御質問の中にもございましたように、ウラニウム資源の方にもそろそろ限界が見えてきているわけでございます。それを燃し切ったときには、そういうソースから出るものは一応とまるわけでございますから、その量がどれだけかということでございますが、ちょっと今詳しい数値を覚えておりませんけれども、それほど高レベルにはならないだろうということがございます。  ただ、普通のプルサーマルで燃やしてしまうのと高速増殖炉を使って燃やしてしまうのとを比較いたしますと、先ほど来申し上げておりますように、同じ燃料からとれるエネルギーは百倍になるわけでございます。どうせっくるなら、とことんまで使って、百倍とってから蓄積場に蓄積しておくということをやる方がいいのだ、つまり、普通の原子炉をやるよりは高速増殖炉をやる方が、同じ量から百倍とれるというところは大きな魅力ではないかということを申し上げたわけでございます。  それから、炭酸ガスにつきまして認識がちょっと甘い点が世の中にあると私は思っております。  それはどういうことかといいますと、木を植えれば炭酸ガスが回収できるというふうに思うわけでございますが、この世の中にはたくさん炭素が押さえ込まれているわけでございます。ところが、何年かたてば、いかに国会議事堂の中にあります机といえども、廃棄場に持っていかれて、煙になったり腐ったりするわけであります。そのときに、これは炭酸ガスに戻るのですね。そうすると、石炭石油から出ました炭素を材木という形で地球上でどこかに温存しておかなければいけないという勘定になります。ところが、石炭石油の中にあります炭素の密度というのは極めて高いのです。今、詳しいデータをいろいろと取り寄せて調べている最中でございまして、きょう間に合わせようと思って、残念ながら間に合いませんでしたが、それに比較いたしますと、材木の中にあります炭素の密度というのはそれほど大きなものではございません。  したがいまして、まだ不正確で、後になってしかられるかもしれませんが、大体千倍の量の材木を保存しないと対応がとれないというふうなことが起こり得るわけでございますから、一立方メートルの石油石炭を掘って使ったときに、千立方メートルの材木をどこかへ持っていってとっておかなければいかぬということになります。  ですから、炭酸ガスを出してしまいますと、後の回収は実は大変大きな問題をしょっているのですね。ですから、私は、温暖化だけではとどまらないだろうというふうに個人的には考えて、しょっちゅうお話をしているわけであります。そういうことで、私は、先生お話よりはちょっと炭酸ガスに対する恐怖感が強いわけでございます。  そういうことも含めてお願いをしているわけでございますが、もちろん、最初から申し上げておりますように、高速増殖炉の方が確かに百倍増してございますけれども、それでもやはり、そうむやみやたらに使うということに対しては十分検討する必要がある。  まだ私も、残念ながら、先生の御指摘のとおり、最終的に全ウラニウムを燃したときにどれぐらいの放射性物質が地球上に残るかということの検討が十分でございません。今までは、実は全く専門じゃなかったこともございまして、不勉強でございました。これは隠し立てをせずに最初から申し上げておるところでございます。とにかく、これからそういう検討は続けさせていただきたいと思いますが、現時点では、まだゆとりがあるというふうに申し上げております。いつの日か、これ以上ウラニウムは燃すなということが出る可能性はあると思っております。
  30. 辻一彦

    ○辻(一)委員 プルトニウムが百倍の効率を持つについては、かなり論議が必要であると思います。増殖を仮にやっても、一・一倍から二倍ですね。それも、一回回転するのに相当な時間がかかるはずです。これを百倍に効率を上げようとしたら、それはちょっと、かなり精査された資料がなければ、その百倍論について私はすぐにはわかりかねるのですが、その論議を今ここでするということは割愛したいと思います。また御指導いただきたいと思います。  そこで、今、プルサーマルで大量のプルトニウムを燃やそうという計画がありますが、もともと日本原子力長期計画は、高速増殖炉の前段としての新型転換炉を開発し、それをだんだん大きくしていく、そこにプルトニウムを使う、さらに高速増殖炉を開発して、そこに本格的に使おう、それが主流であって、プルサーマルはわき役であったのですね。  しかし、最近になってにわかに、御承知のように、新型転換炉は、敦賀の原型炉の「ふげん」は、MOXが燃やしてしまうには高くつくから、これはもう開発を中止したいというのが電力業界の御希望で、ついに政府もそれを認めて開発中止になったわけです。ここでプルトニウムを使う道というのはかなり抑えられていく。  FBRは、私が参議院に出たのが昭和四十六年ですが、そのとき政府の答弁では、三十年たてば高速増殖炉は実用化しますということを明言しておったわけですね。七一年ですから、あれから三十年というのはもう二、三年たつとなりますが、今日の時点で、技術的体系を確立するのが二〇三〇年、三十年先。実用化を考えれば、まあ二十年としたら五十年先に。となると、七、八十年、当初の見通しよりずれ込んでいるのですね。  だから、仮に高速増殖炉が開発されたとしても、当面、五十年、六十年を考えれば、これはもうプルトニウムを使う場がない。これは持っておれないから、再処理をやる以上、これはもう余剰を置くわけにはいかない、だからどこかに使わなければいかぬということで、今、やみくもにプルサーマルに使おうとする傾向がある、私はこう見ています。  アメリカやロシアが、戦後、冷戦時代に核弾頭に詰めたプルトニウムは百トンずっと言われている。前の長計で八十五トンのプルトニウムの消費計画を立てたのですが、余り多いというので七十五トンにした。しかし、その中身は、ほとんどプルサーマル以外に使い道がなくなっているのですね。七十五トンというのは、米ソの百トンに匹敵する大量のプルトニウムなんですね。  もちろん、これを日本が使うという場合には、IAEA、国際管理機関の厳しい監視下に置かれて、平和、商業利用であるということは間違いない。日本が軍事的に転用するというような考えは全然ないのですね。しかし、イラクにおいて、数百グラムのプルトニウムがどこへ行ったかと探す。北朝鮮では、数キロのプルトニウムがどうなったかといって、これだけの国際的な問題になっている。  こういうように、やはり、核拡散の防止であるとか、あるいは日本の国是とする非核三原則等を考えたときに、やはり核拡散やその方向に対しては、これを被爆の民族として説得できる道義的な背景、歴史を我が国は持っておると思うのです。そういう道義的説得力を失うことにならないかということを一つ私は問題を感ずるのですが、そこらについてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  31. 西澤潤一

    西澤参考人 大変みっともない話でございますが、危険を冒さずになかなか人間の生活が維持できないという時代に入ってきていると思います。  かつて、マルサスが「人口論」で、科学技術が進歩した結果人口が急増して、とてもこの地球はそれだけの人口増加に対応できまいということを言ったのに対しまして、エンゲルスが、それは科学技術者が頑張って何とかできるようにしてくれるのではないかという、大変雄大な希望を述べてくれたわけでございますが、私たち科学技術者の努力が足りませんで、問題を見てから慌てて飛び出すというような状態になっていることは、大変申しわけない、かつ恥ずかしいことであると私は考えております。  特に、どういうわけかわかりませんが、私の友人なんかもいるわけでございますが、原子核融合反応に至りましては、かつて私ども、あと三十年たてばエネルギーは全部核融合反応によって賄われるから研究費が要るのだ、おまえたちも研究費が要るのはわかるがしばらく我慢しておれと言われて、指をくわえていた時代もございます。何とかして少ない研究費でやろうと思って、今日まで努力をしてまいりました。それに引きかえ、そういう分野の方々はかなり思いきったお金の使い方をしていらっしゃったわけでございます。  今日、私が、文部省の方でエネルギー関係をまた担当させられました。どうして私がやらされるのかわからなかったわけでございますが、ほかにいないからだとかなんとか言われてやらされたわけでございますが、三十年たったら使えているはずなのにどうしたのだろうと思って、三十年たっておりましたから慌てて聞きに行ったら、何をばかなことを言っているんだ、あと五十年はかかると言われて、私も思わず腹を立てまして、何だ、そんなけしからぬことをやっていたのかと。それは、見通しを誤るということは当然あり得ることでございますが、せめて全国民の前でおわびをしろ、坊主ぐらいになれと言ったのであります。その男とは会うたびにけんかするものですから、偉い先生がはらはらしていらっしゃるわけでございますけれども、これはやはり科学者としての社会に対する責任感の欠如であると私は思っております。  今回もまた、残念ながらそういうふうに延びてしまっているわけでございますが、これから先、なるべくそういう延引なしに展開をして、早く見通しを立てるということをまず第一にやらなければいけないというのが私が今考えているところでございます。  確かに、やってみなければわからないわけでございますが、やってみたら案外うまくいって早く進んでしまうということもあるはずでございまして、そんなに大幅なおくればかりつくっているということは、やはり実際当たっている人間責任感の欠如であると私は個人的には思っております。また同級生にかみつかれるかもしれませんが、私はそう思っております。
  32. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私の質問中心であった後の方にはお答えがいただけないのですが、それについて言いかがでしょうか。
  33. 西澤潤一

    西澤参考人 ちょっと申しわけありません。こんがらがってしまいまして、後の方と申しますと……。(辻(一)委員日本が国是とする核拡散防止とそれに対する道義的責任の問題」と呼ぶ)わかりました。大変失礼いたしました。さきの方で申し上げたつもりですが、言葉が不明確だったわけでございます。  科学技術のみならず、いろいろな対策を講ずれば完全に安全ということは、これはないわけでございます。つまり、それが非常にはっきり出てきておりますのが核物質でございまして、今の段階では、場合によれば、これを人間生活、社会生活に役に立てるということをやらざるを得ないかもしれません。しかし、それがたまたま極めて凶悪な兵器として使える可能性もあるということがあったために、この両者の間が極めて近づいてきている。しかし、それ以外のもので全くないかといえば、ダイナマイトは土木工事に不可欠でございますが、同時にまた、これもまた兵器に使われたこともあるわけでございまして、ただ、距離が離れていた、強力な殺傷力を持っていなかったということのために、余り危険を感じないで済んだわけでございますが、やはりゼロではない。今回、それが非常にやむを得ず近づいてきたのだということでございまして、やはりこれは全国民が一致して、そのような事態が起こったら身を張ってとめるという重大な覚悟が必要であると私は思っております。  科学技術的にそれを防止するということは、本来なかなか難しい点がございます。御心配のとおりだろうと思いますが、これこそやはり文系の専門の方々に強力な防衛措置を講じていただくことが必要であると思っております。
  34. 辻一彦

    ○辻(一)委員 国会論議であれば、もっとこの問題について質問して、いろいろと論議を深めたい思いもしますが、限られた時間でありますから、あとは割愛したいと思います。  そこで、私は、昭和六十四年かあるいは平成二、三年でしたか、ウィーンへ行きまして、IAEAで、この間もちょっとお話ししましたが、ローゼンという原子力安全部長、アメリカ出身ですが、彼と随分と論議をしたことがあるのです。世界に、使用済み燃料について、再処理路線を歩む国とそうでない国があるがどう思うかという私の質問に対して、いろいろ話をしておりました。  一つは、アメリカは、ワンススルー、もう使い捨て方式をとろうとしておる。しかし、まだどう最終処理をするか、あれだけの広大な砂漠を持ちながら最終の場所が決めかねるということで、水につけて、三十年か五十年は様子を見ようとしている。  もう一つ、将来本当に人類がナトリウムとプルトニウムという非常に難しい組み合わせを制御できる。私はなかなか難しいと思うのですよね。しかし、もっと違ったいろいろな方法でプルトニウムを制御できる道が、科学の何十年かの中にはあるかもわからない。そういう点から、将来燃料となるならば、水につけて五十年ぐらい様子を見てもいいじゃないかという考え方もアメリカの一部の中にあるように思うということを言っておりました。十年ほど前ですが。  そういう点からいうと、再処理をやればプルトニウムが出てくるのは当然ですが、それを国際的に言えば、使ってしまう、余剰を残してはならないのだという約束があります。しかし、資源の問題を言われるならば、資源小国の日本が将来可能性を持つかもわからないそういうプルトニウムを早々と全部燃やしてなくしてしまうということは、資源という点からいってどういうものか。  むしろ、一定、全部ということでなくても、全量再処理の方針をやはり修正をして、水の中に置く。今は乾式保管というのが可能なのですから、これは随分ドイツあたりで研究されていますから、乾式の保管も併用して、五十年とかもう少し、それぐらいの間様子を見ていくということ。ただ単に様子を見るというのではなしに、科学の将来も考えながら様子を見ていく、そういうような選択肢があってしかるべきではないかと私は思いますが、これについてはどうお考えでしょうか。
  35. 西澤潤一

    西澤参考人 だんだん専門知識を要することになってまいりまして、私のような素人にはちょっと手に余る点もございますが、基本的なところでお答えをしたいと思います。  亡くなりました西堀先生は、何でナトリウムでやるのだ、珪酸塩で何でやらぬかということをしょっちゅう言っておられましたし、物の本にも書いておられます。このごろ学術振興会の方で新しく原子力部会ができまして、どういうわけかこれもまた私が座長をやらされる羽目になりまして、どうも原子力に魅入られたようでございますが、そこでも、ナトリウム方式以外の方式の検討をやろうという話が出てきております。  これはやはりいろいろなものがございます。塩と申しましても、珪酸塩のみならず、それ以外の塩もございます。そういうようなもので、先ほど、プルトニウムとナトリウムというのは悪い組み合わせだというお話がございましたが、それ以外の組み合わせも、有利になる可能性があるものが出てくれば、それも大学レベルからチェックをしようではないかという雰囲気がございます。もう現にやっております。  ですから、絶えず、よりいいらしいというものが出てきたときには、これを取り上げて、基礎的な研究からだんだんに展開をしていく。順調にいけば、今の方式をすっかり変えたようなものをつくり上げるということも考えるべきであると思っております。  それから、備蓄の話でございます。  一番最初の話を思い出していただきたいのでありますが、かつて、使用済み核燃料はセメント詰めにして南の国の近くに沈めてしまえと言って、国際的に日本が非常に評価を下げた時代がございます。南方の島々の国の人たちから日本は蛇蝎のごとく嫌われたということを、私は今忘れることができないわけでございます。  そういうような、検討不十分であったということも十分に我々は反省をいたしまして、先生のおっしゃるような方式もいろいろな方式の一つとして、来月の学術振興会の方では、改めて私がそれを議題にさせていただきまして、私は専門ではございませんので、専門家意見を聞いてみたいと思っております。  いずれにしましても、よりよい方法があれば、なるべく積極的にこれを受けて、ちゃんとまじめに研究をして、可能性を見きわめていくべきであるというのが私の基本的な姿勢でございます。
  36. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私も、先生の専門外のことを詳しくお尋ねする気持ちはないので、基本的なお考えを例えれば結構だと思うのです。  そこで、この間、原子力委員会とそれから内閣が、使用済み燃料の中間貯蔵の必要性を確認をして、これに取り組むという方針を出しておるのですね。  この問題が具体的に出てきたのは、いわゆる原子力発電所を立地している市町村では、敷地の中にどんどん使用済み燃料がたまってもう大変な量になってくる。そんなものをこのままだと半永久的に抱え込むのではないかという懸念が、心配が非常に住民や自治体に強くなってきている。これはなかなか抑え切れない当然の不安であります。だから、青森の再処理工場にすぐ全部持っていくというわけにはいかないという中で、中間貯蔵の具体化ということが、原子力委員会、閣議でもって決定、了承されておるのです。  私は、さきの、いわゆる資源としての将来をもう少し見る必要があるだろうということと、今現場から起きてきた中間貯蔵せざるを得ない、こういうものを組み合わせた何らかの選択肢を考えていいのではないかと思いますが、この問題は、もう時間がありませんから、先ほど基本的なことはお伺いし、なおそういう問題を具体的に検討したいということでありますので、それ以上はもう申し上げないことにしたいと思います。  そこで、もう一つ「もんじゅ」の問題に触れたいのです。  FBR懇談会、先生が座長をやっていらっしゃる懇談会は、簡単に言うと、結論が出るのはわかっているような人たちを集めたおそれがないかということです。というのは、大体ああいうところで論議をすれば、賛成者、支持者が多ければおのずと、民主的なルールで論議をしていけばそういう方向に落ち着く。国民論議をもっと本格的にやらなければこういうものの結論は出すべきではないと私は思いますが、.そういう角度からすると、やはり賛成、支持の方あるいはこれを批判する方、そういう者が同じようにおって、そういうことを十分論議し、公開されておりましたが全部議事録にして、国民論議ができるように広範にそういう議事録が配布されて論議ができる、こういうことにしなくてはいけないのではないか。  そういう点で、FBR懇談会の座長さんには恐縮でありますが、非常に人選が当初から結論の出るような人の集まりを持っているのではないかと思いますが、座長としてどうお考えだったか、ちょっとお伺いしたいと思います。
  37. 西澤潤一

    西澤参考人 大変ありがたいお話でございました。  実は、私が座長を引き受けさせられましたときの殺し文句が、今先生のおっしゃったとおりでございます。今までの利害関係、基礎的ないろいろな知識の偏りなどのある人間に座長をやらせるわけにはいかぬ、したがっておまえのような素人にやらせるのだというのが殺し文句でございました。  それから、吉岡さんとおっしゃる方をわざわざ選んで入れてございまして、これはいわゆる代表的な反対意見の方でございまして、かなり吉岡さんの意見陳述に懇談会の中の時間をとられております。決して押し込めたり吉岡委員の発言を差しとめたりということはなかった。余りにもほかの方々の発言ができないときはこれは別でございますが、むしろそういう場合でも、絶対的な時間の長さは相当吉岡さんの方に差し上げております。最後もちゃんと本人が了解した上で結論を出しております。  それから、その間の意見を取りまとめたものを数百部、日本じゅうにいろいろと配布をいたしまして、それに対するコメントをもらってございます。そのうちの十四項目の御意見をしんしゃくいたしまして、中身は変わりません、中身を変えるほどのものは実はなかったと私も判断しておりますが、ただ、文章上誤解を招くようなところがあったり記述が不十分であったところは、その十四項目の意見を入れて書き直しております。そういう程度の配慮はいたしております。  一番多かったのは中立派ではないのでしょうか、私もそのりちの一人ではないかと自任しておりますが。やるべきであるとかやらざるべきであるということが不明確なまま出ていらっしゃいまして、私は初めから宣言をしておりました、秘密を一切なくして全部あけっ広げて議論をいたしましょう、そういうことでやったわけでございます。  したがいまして、危ないものは危ないということもちゃんとはっきりさせながら議論を進めまして、入っていらっしゃいました委員方々も、ここに来て初めてわかったということを言ってくださって、私は大変うれしかったわけでございます。その結果、その方が、私がちょっと連絡の不備から出られなかったときに座長代理をしてくださいまして、いろいろな方々の御意見に答えてくださるということすらあったわけでございます。一人の方について申し上げましたが、大勢としてはよくわかったとおっしゃる委員方々が少なくとも半分をかなり上回っていたのではないか、あるいは全部ではなかったかと思っておりますが、そのような意味で、かなり科学的に議論を進めさせていただいたつもりでございます。  以上であります。
  38. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう三分ほどでありますから、最後に一つお尋ねしたいのです。  私は、総点検が「もんじゅ」についても行われて、いろいろ資料が上がっておりますが、なお私の見るところでは、本格的な科技庁の責任に及ぶまでの追及はされていない、調査はされていない、こう思います。この中身はこれからの国会の論議の中で論議すべきだと思いますが、「もんじゅ」は二、三年凍結をして、そして総点検を本格的に徹底してやって、安全審査も、不備があればそれは安全委員会の責任で安全審査をやって、そして本格的な国民論議をもっともっと広範に起こす。そういう上で、三年後ぐらいに、この「もんじゅ」をどうするか、開発方針をどうするか、運転再開の可否、こういうことは国会に諮って結論を出すべきであると思っておるのです。  これはちょっと先生にお尋ねするのは無理かもわかりませんが、座長さんとしてこういうような考え方についてどういう御感想をお持ちであるかということを伺って、終わりたいと思います。
  39. 西澤潤一

    西澤参考人 仰せのとおりでございます。  むしろ凍結するというのは私は反対でございまして、要するに、今徹底的に調べる、その結果二、三年かかっても当然であろう、こういうふうに考えているわけでございます。あるいは五年かかるかもしれません。あるいは一年で済むかもしれません。この辺のところは専門家に任せてやってもらおう。  ただ、それから先、これはやってみたときに、またいろいろなトラブルが出るかもしれません。しかし、それは、当然予想さるべきトラブルであったときには、やはりそういうことに手落ちをした人たちに処罰をしなければいけないと思いますが、予想もしなかったような新しいものが中で出てきたときには、これは追及はできないと私は思っております。  いずれにしましても、今、「もんじゅ」は、実は私の担当ではないこともございますけれども、やはり動燃、ないしはそれにかわるべきもの、ないしは検査グループを別につくるとか、いろいろな手法はあると思います。既に科技庁の方でもかなりやっていると思いますが、そういう方々の専門的な知識とか能力に任せまして、まだここは調べていないから運転は早いよというようなときに運転をすることは絶対にさせてはいけない。自分たちとしてはベストを尽くしてこれで自信がありますと言えるところまでは、幾ら時間がかかろうとも、やった上でなければ運転再開をすべきではないと思います。  予定を遵守してという言葉を入れろということをあるところから言われたわけでございますが、それは拒否をいたしました。何月何日までにこれをやるのだなんということが決められるはずがないのだ。もちろん目標値としては結構でございますが、しかし、調べられるべきものは皆調べて運転再開をなるべく早くやるべきであるというのが私の現在の基本理念でございます。
  40. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間があればもっとお尋ねしたいのですが、終わりましたので、あとはまた国会の中で勉強しまして、また先生にお尋ねする機会もあろうと思います。どうもありがとうございました。
  41. 大野由利子

    大野委員長 吉田治さん。
  42. 吉田治

    ○吉田(治)委員 先生、大変お忙しいところ、どうも御苦労さまでございます。国民的関心事でございます我が国のプルトニウム利用の有効性について、本当に御苦労いただきましてありがとうございます。  昨年十一月二十八日、先生が座長の高速増殖炉懇談会において「高速増殖炉研究開発の在り方」という形で、将来の原子力政策、ひいては非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢として高速増殖炉が位置づけられた、私はこういうふうに認識をさせていただいております。  また、質問ですけれども、まさに先生から初めの意見陳述のところでいただいたことの繰り返しになるかもしれませんけれども、それを前提として後の「もんじゅ」の研究開発について質問したいと思いますので、よろしくお答えのほどをお願い申し上げたいと思います。  先生も触れられましたように、本当に、国民の大多数が将来的にも現在の生活水準を維持向上させたいと思っている中で、地球環境問題を背景として、需要面では大胆な省エネルギー策が必要とされ、供給面では資源の少ない我が国は特に各種資源の有効利用を図らなければならない。エネルギー資源の安全かつ安定的確保は、将来の国民生活を支える重要な政策であり、国家として数十年単位の長期的視野で取り組む必要がある。  長期的視点において、まず一点目は、プルトニウム利用とその有効性についての基本的なお考え。そして、将来的なエネルギー供給、先生も触れられました主に電力供給において高速増殖炉に匹敵し得る有力な選択肢、数点述べられましたけれども、現在の時点で具体的にどのようなものを先生は御想定され、また選択肢を評価する際の観点というものを、繰り返しになるかもしれませんけれどもどういうものがあるのか。この二点、お答えをお願い申し上げたいと思います。
  43. 西澤潤一

    西澤参考人 今先生からも御指摘がございましたように、私としましては、どうも性格が出るといいますか、それこそ東洋の理念かもしれませんが、なるべく物をむだ遣いをせずに人間が生活をしていくべきであるという理念を持っておるせいか、私のつくったものはみな省エネ型でございまして、発光ダイオードにいたしましても、先ほど来申し上げておりますように、直流を変換するものにせよ、逆に交流を直流に変換するものにせよ、いずれも九九%という、今のところでは世界記録を持つようなものができているわけでございます。  こういうものを活用することを考えたときに、長距離電力輸送ということが可能ではないかというふうに考えておりまして、日本の企業にもぜひそういうものを実用化してもらいたい、ないしは電力会社にもそういうものを使ってより効率の高いエネルギー利用をやってもらいたいということを懇願してきたところでございますが、日本の中では甚だ評価が悪かったわけでございます。  ことしの一月に、橋本総理が所感の中で私たち仕事のことを取り上げていただいて、予想もしなかった大変な喜びを得ることができたわけでございます。その後、アメリカ側の評価がかなり変わってまいりまして、アメリカ側は、最近私どものやりましたものをアメリカの中で産業化することを非常に一生懸命やっているわけでありますっそういうのを見ると日本の企業は始めるんですね。驚いたことには、そういう方々が集まって政府に研究費の配賦を要請なさっていらっしゃいます。さすがにかわいそうだと思った方がいらっしゃったと見えまして、私たちに情報を提供してくれましたので、発明者であるところの私どもが後から駆けつけて、別枠の予算を来年度はだめだが再来年度なら何とかなりそうだというようなことまではしていただいたわけでございます。私としては、現状の展開を非常に残念だといいますか、甚だ不満を持っているところでございます。  私の基本理念は、そういうものを活用していけば、先ほど来申し上げておりますように、水力資源、太陽電池資源というようなものをもう少し有効活用ができるのではないか。太陽エネルギーは、確かに地球を温めておりますけれども、いずれにしましても、その過程で電気として人間が使って最後は熱になるわけでございますから、そういうようなものに転用する。ないしは、流れている水を利用するということであれば、それはその場限りで、すぐまた次世代の人たちには同じエネルギーがちゃんと出てくるわけでございます。我々が今使っちゃったから後の人たちに迷惑をかけるということのない資源でございます。そういうようなものになるべく重点を移す。  ウラニウムにせよ、プルトニウムにせよ、これはいろいろ御批判もあろうかと思いますが、少なくとも人間生活に有効に使えるという面は否定ができないだろうと思うのです。そういうものを我々の時代に消耗してしまう。石油を使い、石炭を使う。それがまた炭酸ガスとして地球を覆うことになるわけでございます。そのように後に残すようなエネルギーを活用するということに対しては、我々は非常に慎重でなければいけない。なるべく現世代に太陽が送り届けてくれているエネルギーを活用することによって、我々の生活を守り立てていくべきではないかというのが私の基本理念でございます。そういう意味で、何とか政府にもお願いいたしまして、エネルギー輸送その他の技術開発をやってもらうということを中心に、現在私は動いているつもりでございます。  炭酸ガスがこれほどふえているんだということに対しても私の認識不足でございますし、我々の同じ大学の先輩教授がそういうことを言っていたにもかかわらず、十数年間気がつかなかったというのは甚だ不明の至りでございまして、今後ともそういうことにはぜひ注意を向けていきたいと思います。  いずれにしても、おくればせながらこういう問題に対しても、子孫に迷惑をかけないということを原則にして生活をする。もちろん、その一面では、省エネ生活をして、生存はできるが享楽はできないという程度のことは今の世代の方々に押しつけざるを得ないかとも思いますが、エンジニアの心構えとしては、実は、やりたいことは皆させてあげたいわけでございます。しかし、子孫に迷惑をかけないで現世代で解決できることなら、余り私自身が歓迎できないような享楽であっても、やりたい人にはやらせてあげたいというぐらいの欲望は持っておるわけであります。  以上でございます。
  44. 吉田治

    ○吉田(治)委員 まさに西澤先生のそういうお考えの中にプルトニウムの利用及び有効性というふうなものがあるのだと思います。  高速増殖炉「もんじゅ」の研究開発について、これは非常に有力な選択肢として、実用化の可能性技術的、社会的に追求するため、その研究開発を進めることが妥当と結論づけられております。「もんじゅ」で研究開発が実施されることを望むとも報告をされております。その中で三点質問をさせていただきたいと思います。  大くくりでいきますと、この三点と、あともう二点ございますので、先生、言いたいことはたくさんあるでしょうけれども、少し簡潔にお願い申し上げたいと思います。  まず、「もんじゅ」に関しまして、原子力利用長期計画に記載されていた、二〇三〇年ごろに高速増殖炉実用化めどという時期的な目標をなくすものという見方が一つございます。その辺はどういうふうにお考えなのか。高速増殖炉の実用化を目指して研究開発に携わっている当事者の方々の立場を考えると、もしこういう目指すべき時間的な指標というふうなもの、これはあくまでも指標で、そうしなければならないというものでないと思うのですけれども、そういうものすらなくなってしまえば、意欲、士気の観点から問題が出てくるのではないかなと、まず一点目、感じます。  二点目。二十一世紀におきましても技術立国として我が国の国際社会への果たすべき役割を考えた場合、高速増殖炉の実用化の可能性についてはどのくらいの時期に見通しをつけるべきと考えておられるのか。また、これはエネルギーセキュリティーというのみならず、外交、防衛を含めた安全保障という観点があるかもしれませんが、国際協力の拡大というものについてどうお考えなのか。  そして、これらと関連いたしまして、原型炉「もんじゅ」での研究開発の時間的な進め方というふうなものについて、今先生はどういうふうにお考えなのか。あともう二点ありますので、よろしくお願いいたします。
  45. 西澤潤一

    西澤参考人 今お話のございました二〇三〇年の開発目標をなくすというのは、私の考え方は反対でございまして、二〇三〇年までかけなければいけない理由はないのだ、なるべく早くめどを立てようということでございます。もちろんこれは、そういうことを言うのは理想論でございますが、いろいろ問題が現実的にございますから、科技庁の方でいろいろと検討されまして、そういう現実にある問題を調査し、解決して、安全性を確認しながら歩いていけば恐らく二〇三〇年ぐらいにはなるだろうということを評定されたものでありますが、基本理念としては、できるだけ早くということでございます。  したがいまして、目標がなくなって意欲が低下するというふうなことを現実に言っている当事者がいるといたしましたら、私は、その人を呼んできてどなりつけるつもりでございます。なるべく早くやれと言っているのであって、二〇三〇年が消えたというのは、それを遅くやれとかゆっくりやれと芦っているのではないんだ、毎日毎日できるだけの努力を積み重ねていくということをあなた方に要請しているのだということを私はじかに言いたいと思っております。  そういう意味で、実用化のめどというのは技術的な専門家が集まっておおよその見通しを立てたものでございまして、物が買えないからどうということはもちろんあり得るわけでございますが、例えば、予定より早く進んだから、もうちょっとそれを維持するために予定を前倒しにして追加予算を出していただきたいというふうなことをお願いしても当然ではないかと思います。  また、えらい欠点が出てきたときには、これはやむを得ずおくらせるということをやはり社会に、先生方にはもちろんでございますが、ちゃんと公表いたしまして、十分御納得のいただけるような公表をしながら見通し変更をしていくということをやらなければいけないというふうに考えているところでございます。いずれにしましても、一応のめどは二〇三〇年ぐらいだろうと思っております。  さて、国際協力でございますが、幸か不幸か、海外が皆とめてしまった。ただ、最近聞いた話では、ロシアがこの分野で技術開発を単独に進めて、将来海外に売ることによって経済的なプラスにしようということを考えている。ちょうどおととい、ロシア・アカデミーのシベリア支部長がやってまいりまして、その話を確認をいたしましたところが、やはりそう考えているようでございます。  日本は、あえて厳しく言えば、技術開発の結果を海外に売りつけて資源小国の、資源小国というよりも無資源国と言った方がいいかもしれませんが、そういう国の一つのこれからの生きていく糧にするということを始めても当然ではあろうと思います。もちろん、それほど厳しくなければ、海外諸国に提供することによって彼らに今までのお返しをするとか、いろいろな形で国際貢献をするということを考えてもいいのではないかと思っております。よそもやっているとこれはなかなかできないわけでございますが、長い間まねをさせていただき、また、それをベースにして改良することによって国を続けてきたわけでございますから、そういうことで逆にお返しをしてもいいと思っております。
  46. 吉田治

    ○吉田(治)委員 まさに先生ならではのお言葉だと思います。私どもの国でいいものができれば、お返しという言葉、まさにそれをこれからしていくときではないかな、そういう技術一つでも可能性としてあるのかなという感じを受けさせていただいております。  もう時間も短うございますので、あとの二点はまとめて御質問させていただくということで、お願い申し上げたいと思います。  こういうふうな形で研究開発という形にしますと、先生はもうすぐれたプロでございますので、解決すべき技術的課題を着実に粘り強く解決していくことであり、そのためには意欲ある優秀な人材の結集が必要と考えられます。新殺人材の育成も含め、高速増殖炉研究開発における人材結集についてどのように考え、どのような方策が適切と考えているのか、まずこれをお願いしたいと思います。何か、きのうかきょうに、NHKでそういう番組があるやにも聞いております。  また、次の点といたしましては、それと同時に、今後とも研究開発を進めるためには、高速増殖炉を含む原子力に対して、まさに先生これから原子力のいろいろな審議会等の中核になられるというお話も今ございましたが、国民が抱いている漠然とした不安感、また潜在的とも言える感情、いわゆる自分の裏庭にごみは来てほしくないという、アルファベットでいうとNIMBYというふうなものを国レベルでどうとらえ、どう克服していくのかという議論が次のステップとして、先ほどからの国民的議論という中の一つとしても大きく必要になってくるのではないかと思います。  また、高速増殖炉研究開発の意義や進め方について、先生は、先ほどからいろいろされてきたというふうにお聞きしておりますか、国民との対話、また理解を得ることが重要一これもまた報告書に書かれておりますが、具体的にどのような形で国民の合意形成を図っていくのがいいのか。先生のお考えなり、また今までの経験なり議論の過程なりで出てきたことをお教えいただければ幸いでございます。
  47. 西澤潤一

    西澤参考人 大事な問題の御指摘でございます。  懇談会で、私が名指しで申しました大学の教授が三人ほどおられました。そういう方々が、国民にこの原子力問題をよく基本的に理解をしていただいて、危険性がどういうところにあり、またどういうことをやってはいけないとか、どういうことなら何とかやれるんだとかいうようなことを、ちゃんとわかるような通俗解説を何でもっと積極的にやってくださらなかったのか、これは大学教授として甚だけしからぬという話をしてございます一命後は、そういう先生方に、ぜひ国民大衆がよく理解してくださるような本を書いていただきたい。町へ行ってみますと、非常に過激な反対派の本が多いのですね。正当な理解を助けるような本がもうちょっとなければいけないのです。  それから、恥ずかしいことを申しますが、大学が原子力工学科をみんな改名しちゃったのですね、中身の方を変えているところもございますけれども。これでは技術者が続きません。これも大変そっちの担当の方々が焦っていらっしゃることだろうと思うのですが、けしからぬ、けしからぬといって、ひょいと気がついたら、私の大学の方もいつの間にか変えちゃっているのですね。どうも私には言わずにやったようでございまして、甚だ憤慨しているところでございます。  それは、そういう名前では受験生が来ないという、何かショートカット的な発想でやってしまうわけでありまして、ここら辺も、やはり一般の国民の方々、また将来、二十一世紀を担う若い学徒に正当な理解をさせるということがなくては、将来の社会が極めて真っ暗であるというふうに申し上げなけれはいけないと思っております、大いに反省をしておりますし、現に、後続教官にはそれは厳重に、しょっちゅう申しているところでございます。
  48. 吉田治

    ○吉田(治)委員 もう時間もなくなってまいりましたけれども、本を書かれる、本でということもおありでしょうけれども、ほかに、やはり直接はいろいろ訴えかけるということも必要だと思うのですけれども、その辺の部分。  もう一つ、学部の、原子力工学科という名前をまた変えるだけでいいということではないと思うのですけれども、その辺の人材育成というのですか、特に日本原子力のみならず科学技術系の人材育成というのが非常に弱いとお聞きしておりますが、その辺の何かアイデアがございましたらお願いいたしたいと思います。
  49. 西澤潤一

    西澤参考人 仰せのとおりです。  先ほど来ちょっと申し上げたことでございますが、やはり若い人たちに現実社会との結びつけをちゃんとつかませる。  実は、プラクティカルに現実社会との間をつなぎながら新しい学問をつくるという学風は、グラスゴー大学のケルビン卿が非常に中心になってやったところでございまして、その本流が、東京大学の物理学教室の田中館愛橘教授の着眼によりまして日本に非常に大きな流れになってきているわけです。片や、地球の反対側からこれがアメリカに行きまして、アイルランド、スコットランドの学風というのがアメリカの学問の展開に非常に大きな流れになっているわけであります。  日本には幸いにしてそういういい学問の展開があったわけでございますが、残念なことに、いつの間にか、ゲッティンゲン流といいますか、非常に高度の理論解析ばかりに中心が行くような学問展開がございまして、先年も、私どもと議論していたときに、品のない学問だと私言われたわけでございますが、何で人間生活に役に立つことを目指している学問が品がないと言うのか。また、そういう問題を取り上げて、真摯に学問展開をするときに、これこそ新しい学問か生まれてくるわけでございます。  先ほど申し上げたような、文系、理系の間をつなぐような視野の広い学問というものがこれからはますます必要でございます。そういうものを自分ではやってきたつもりでございますが、世の中ではまだそういうものに対する十分な認識がない。  それから、物をいじるということ、生物や何かの確認をするということが必要でございますが、これはまさに教育問題でございます。  残念なのは、なるべく手で物をつくることをやらせようと思うのですが、ナイフ一つ使ったことがない子供が多いのですね。  我々の時代には、いわゆる肥後守というものがございまして、みんな筆箱に一本ずつ持っておりました。極めて巧みに鉛筆を削ったり、竹トンボを飛ばしたりしているわけでありますが、大体学校の成績の悪いのがそういうのが得意であったようでございますけれども、そういうプライドを持っていたのです。ところが、今は下手に学校側からナイフを使って何かさせようなんというようなことを言いますと、簡単に言えば切ったり突いたりするわけでございますが、そういうときに父兄が必ず御批判にあらわれるのですね。こういうような問題もございまして、なかなか実施に至らないというのが実情でございます。  手を使い、体を使って自然と触れ合う、物を自分でつくってみるという風潮を何とか再開したいというのが私の今努力しているところでございます。
  50. 吉田治

    ○吉田(治)委員 先生、いろいろ御教示、どうもありがとうございました。  また、原子力の問題は大事なことで、先生は御中心になられるとお聞きしておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  ありがとうございます。
  51. 大野由利子

  52. 井上義久

    井上(義)委員 平和・改革の井上義久でございます。  きょうは、西澤先生におかれましては、大変御多忙な中、当委員会にお越しをいただきまして、また貴重な意見を賜りまして、心から感謝申し上げる次第でございます。  学生時代に先生の講義を受ける機会がたまたま学科が違いまして、なかったものですから、もし受けていれば今ごろは研究者かな、こんな思いもしているわけでございます。ただ、日本は資源小国である、やはり技術日本の国は立ち行くしかない、そういう思いで工学部を選択いたしまして東北大学に入学した一人でございまして、今、立場は違いますけれども科学技術創造立国日本をつくるために一生懸命頑張りたい、こう思っておりますので、ぜひとも御指導いただければ、このように思う次第でございます。  それで、もう大分時間が経過いたしまして、私の聞きたいことをほとんど、かなり幅広く先生にお答えしていただいているのですけれども高速増殖炉の問題だけではなくて、幅広く御意見をお伺いしたいと思います。  それで、高速増殖炉の問題について、これも先ほどから何回か出てますけれども先生の報告書のポイントを拝見いたしますと、一つは、将来の原子力、ひいては非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢として、高速増殖炉の実用化の可能性を追求するため、その研究開発を進めることは妥当であるというのが基本的な考え方です。  もう一点、いわゆる実証炉以降の開発ということについて、「もんじゅ」の成果を十分に評価した上で実証炉の具体的計画について決定、実用化に当たっては、実用化時期を含めた開発計画について、安全性と経済性を追求しつつ、将来のエネルギー状況を見ながら柔軟に対応する、こういう結論になっておるわけでございます。  これも先ほどから出ていますけれども、一九九四年の長計では、高速増殖炉原子力の主流である、こういう位置づけをして、二〇〇〇年代初頭に実証炉の一号炉に着手して三〇年代に実用化を図る、こういう路線がもう出ているわけですけれども、今回、そういう実証炉についての時期を明示しなかったということで、これは高速増殖炉政策の転換ではないかということが指摘されているわけでございます。先生お話を聞きますと、いや実はそうじゃないんだ、もっと早くやれということなんだ、こういう極めてマスコミ報道とは違うお答えで、私も正直言って驚いたのです。  ただ、現実的には、この実証炉については電力業界がこれをやるということになっておるわけでございますけれども、やはり電力業界の今の現状、いろいろなところでいろいろな方の発言がありますけれども、二〇〇〇年代初頭に実証炉に着手するということはとても無理だと。特に経済性について、電力業界は企業ですから当然利益が上がらなければいけないわけでございまして、極めて強い経済性に対する懸念がある。  先生は、関係者で見通しがつきませんなんて言っているのがいたら出かけていって怒ってやる、こうおつしゃつて、大変力強い思いをしたわけでございますが、ただ現実は、この報告書を見ると、転換までいかなくても、開発というところよりも研究というところに力点を置いて少し足踏みしょうじゃないかというふうにどうしても読めてしまうわけでございますが、いかがでしょう。
  53. 西澤潤一

    西澤参考人 仰せのとおりでございます。  確かに、企業レベルになればこれはもう経済性が入らなきゃいけない。先ほど御質問もございましたように、例えばプルトニウムを洗い出すときに、再処理をするときにいろいろな経費がかかるわけでございます。百回やったらどうなるという図表を出してきた事務局に対して、私は、百回もやったり無限回やったりするというような再処理を具体化するということはほとんど無理だろうから、もうちょっと実際可能なところの回数で試算をしてみてほしいということを言いまして、そのときの懇談会席上での配付資料は三回というのが出ております。ですから、そういう夢物語は消しまして、具体的にやれそうなところでの推定、推算をいろいろと出して懇談会で説明をしたわけでございます。  そういう意味では、経済性もある意味ではちゃんと考えなきゃいかぬということで、ある程度の実践をしているわけです。ただ、幾らかかるかとかなんとかということに対してはまだ成案がございませんので、それぐらいにとどめております。  ただ、研究開発をやるときと企業で実用化するというときは話がまるきり違うわけでございます。先ほど、研究レベルに戻ったなというお話があったのでありますが、つまり目安としてはいつまでということは言いますが、何月何日までに完成するということを明言することは、未開の分野に足を踏み込むときには本来無理なわけでございまして、それを強行しようとするようなことをやればかえってまた事故につながるわけでございますから、早くやれ、しかし手抜きはするなというのが先ほど来お話の出ておった私の態度でございます。  新聞報道などでちょっと一部誤解を招いたようなところがありますが、あれは、そのときに委員の方で、新聞社の方も出ていらっしゃったわけですが、今そこにいる人たちにちゃんと言ってくださいという話がありまして、委員会の結論とは違った記事が出たということは、懇談会に御出席方々が大体皆さんそうお考えになったということはその場ではっきり明白になっております。  そんなことでございますので、なるべく早く、しかし手抜きをしないで、この実用化の可能性を今度の「もんじゅ」で一応結論を出す。なるべく早くやるわけです。  ただ、その後は、先ほど来お話のありましたように、企業レベルで採算も考えてやる。したがいまして、審査過程でも、夢物語で推定をするということは避けようということで、三回で再処理を回していったらどれぐらいの効率になるかというようなことも計算しながらやっているわけでございます。  以上でございます。
  54. 井上義久

    井上(義)委員 先生は、高速増殖炉についてはエネルギーセキュリティーという面からかなり高く評価されて、推進していくべきだ、こういうことをお伺いしたわけでございますけれども、原型炉から実証炉に入る段階で、経済的な見通しがまだ明確じゃないと、どうしてもやはり企業はちゅうちょすると思うのですね。その場合には、先生のお考えだと、例えば国の力ででもここはもう実証炉まで踏み込むべきだというぐらいの積極的なお考えなんでしょうか。その辺はいかがでしょうか。
  55. 西澤潤一

    西澤参考人 それは、やり方としては、特に外国でやったものを見てやるという方式は全部捨てなければいけませんので、必然的にそういうふうになってくるだろうというふうに私は考えております。  従来のやり方が外国の後追いをしたというのはむしろ邪道でございまして、何か邪道が常識になっちゃっているということも甚だ嘆かわしいことでございますので、この際やはり初心に戻って、要するに新しいことにチャレンジをしながら、ちゃんと世の中で商業炉になるところまでできるだけの努力を重ねていくという基本姿勢を貫きたいということでございます。
  56. 井上義久

    井上(義)委員 そのためには、「もんじゅ」の再開ということがまず最初のステップなんだろうと思います。先ほど先生お話で、ともかく安全性が確認されるまではもう三年でも五年でもかけろ、あるいは逆に、確認されれば一年でもいいぞ、こういうお話でございましたけれども、極めて国民的な、ある意味じゃアレルギーにも似たものがあるわけでございまして、この国民的なコンセンサスを得るというのはかなり難しいのじゃないかという思いがしているわけでございます。  先生のお考えですと、どういうシステムでスタートしていいよ、あるいは大体どういう時期でというふうにお考えでしょうか。
  57. 西澤潤一

    西澤参考人 従来この分野でいろいろな研究をしてきた私たちの先輩、同輩がたくさんいるわけでございまして、そのうちから最もすぐれた見識を持っている人たちをより集めて、場合によれば新しくそういうジャッジをするグループをつくろうということぐらいのことを考えてはどうかなと思っております。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、不幸にして私はこの分野で経験が乏しいものでございますから、そういう抽象的なことでしかお話しできないのは大変申しわけございません。
  58. 井上義久

    井上(義)委員 余り時間がなくなってきましたので、高速増殖炉の問題はこの程度にいたしまして、先生御案内のように、平成八年に科学技術基本計画ができまして、五年間で十七兆円の投資をする、GNP比一%まで引き上げる、こういう決定がなされて、科学技術にとっては極めて追い風に今なっているわけでございます。  ただ、一方では、国は五百兆円近い長期債務を抱えて、財政構造改革というのが急務になっているということを考えますと、特にメガサイエンスといいますか、一つのプロジェクトで何百億、何千億というようなメガサイエンスがメジロ押しなわけでございまして、やはり日本の国としてどの分野にどれだけの予算をどのぐらいの期間かけるのか、そういう戦略的判断というのが極めて重要なんじゃないか、こう思うわけでございます。  先生、先ほどからお話があったように、日本の場合は大体後追いで、例えば、どうも情報分野がアメリカにおくれている、だからこの分野についてともかくお金をかけなければいけない。アメリカの二分の一だとかヨーロッパの何分の一だとかということで、あらゆるところにお金がつけられるというようなことをいつまでもやっていてはいけないのじゃないか。この科学技術戦略というものを、逆に言うとだれがどういうシステムで今度はつくっていくのかということが非常に大事だと思いますけれども、その点についての先生のお考えはいかがでしょうか。
  59. 西澤潤一

    西澤参考人 大変重大な問題を御指摘になったと思います。  科学技術基本法のときに、ある代議士の先生がおっしゃいました。この提案人からおりると。なぜかといえば、この科学技術基本法には穴がある、その穴は何かというと評価制度が抜けているんだということをおっしゃいました。私はごもっともだと思いました。ところが、またぐずぐずしていると、下手すると前と同じことになりはしないかという心配がございましたので、今回はその点は目をつぶってはどうでしょうかということを私は申し上げました。ごらんのとおり通していただきましたし、予想もしなかったような、十七兆というような大変なお金をちょうだいしたわけでございます。  私が今非常に憤慨しておりますのは、評価ということがほとんどその後実質的に進歩しておりません。場合によりますと、あるところでは大変お金をふんだんに使っていらっしゃいます。  井上先生も御存じのとおりで、東北大学などは手づくりで機械をつくってやるということが一つの誇りでございます。手づくりでつくることを習って卒業した学生は、将来世の中に出たときに、今あるものに満足せずにその中身を調べ、よりいいものをつくろうとするわけでございます。また一機械があるようなところで仕事をやったのでは、だれかやっている人がいるから機械を売っているわけでございますから、二番せんじ、下手すれば三番せんじになっているわけです。機械がないところでこそ、チャレンジすれば世界のトップになれるわけであります。  お金のないということをうまく利用しまして、逆に世界のトップを走ることを私たちはしつけられたのだと思っているわけでございますが、どうも残念なことに、そういう学風がなかなか立ち行かなくなってきております。学生が、パネル盤の立派な機械があると、そこに皆あこがれて集中するのですね。どんな優秀な機械でも、手づくりの機械でございますと、そんな汚いものを使わせるのかと言って嫌がってつかないですね。そういう全くみっともない状態になっているようなことも出てきております。  やはり今回必要なことは、お金は確かに必要でございますが、本当にいい仕事をした人のところにお金を集中的に出す、しかも、それはよくなったらもっとどんどんついでやって、限りなく伸ばしてやって、国際レベルに突出した仕事を出していく。世界にどこにもない、日本にしかないものを、大変なレベルまで高めたものを次から次へと日本世界に向かって出していく義務を今科学技術庁はしょっているのだと思います。  残念なことに、そういう方向には行っておりませんので、私もそろそろ引っ込まなければいけない立場にございますが、その身分も忘れまして今狂奔しておりますのは、何とかして正当な評価をする、ないしは正当な評価者を選ぶシステムづくりをしようと。気分でやってはいけないわけでございます。気分でやったのでは今と同じになります。やはり本当に見る目のある人がいたら、その人にどんどんやらせていくというような体制をとらなければいけない。簡単に言えば、評価者についても過去の実績を問うて、評価の目のある方にどんどん力をつけていろいろな範囲のことをやっていただくようにしなければいけないというのが、今私が一生懸命やっているところでございます。
  60. 井上義久

    井上(義)委員 先生に今おっしゃっていただいたところは、私は極めて重要な問題だと思いますし、国会の方としても、それだけの予算を審議をして通すわけでございますから、やはり国民に対するアカウンタビリティーというのは絶対に必要なわけでございます。そういう意味からいいますと、今度はお金をお使いになる科学者の方でやはり国会に対するアカウンタビリティーをしていただかないと、それは可能にならないわけでございまして、国会としても力を合わせてそういう評価のシステムというものをぜひ構築していきたい、このように思っておりますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。  特に日本の場合は、評価をしないで仲よく一緒にやっていきましょう、世の中全体的にそういうところでございますから、評価をするということは極めて難しい問題だと思いますけれども、そこを越えないと、これだけの巨額な予算を使う科学技術分野において国民的な合意を得ることはやはり難しいのではないかと思いますので、ぜひよろしくお願いしたい、こう思います。  それから、最後になりますけれども、大学の技術移転という問題についてちょっとお伺いしたいと思います。ある意味で我が国の研究資源の大半が大学の中に蓄積されているわけでございまして、やはりその成果というものが産業界に十分生かされていない。これは、我々の学生時代の極めて不幸な時期があったものですから、その後遺症というものもあるとは思うのです。一方、アメリカなんかでは、一九八〇年代以降、大学の技術移転というのが極めて産業界の活性化に有効な作用をして、ある意味で今日の産業界活性化の一つの大きな要因になっていると思うのですね。そういう意味では、我が国は極めてそういうところがおくれている。  ただ、東北大学は伝統的に、ほかの大学に比べてそういう技術移転ということについて問題意識を持ってやってこられたと思いますけれども、今回ようやくそういう技術移転のための法案も用意されておるようでございますし、東北大学においてもTLO設立の動きもあるようでございます。先生の目から見て、大学に本当に産業化できるような技術が相当蓄積されているのか、また、その移転の可能性というのはどの程度あるのか、また、どういうシステムでやれば一番それが有効なのかということについて、御意見を例えればと思います。
  61. 西澤潤一

    西澤参考人 大変重大な御指摘をいただいたところでございます。  戦後、とにかくどこの大学に入っても同じ教育が受けられるというのが新制教育出発のときの原点にあったわけでございます。これが各大学の持っておりました特徴をすりつぶしてしまった点が多分にございます。これは非常に残念なことではないか。そういう意味では、先生と共同の母校である我が東北大学につきましても、だんだん特徴がなくなってきているのですね。これは非常に残念なことでございます。  さっき申しましたように、よそでやっていないことをやはりやりたがらないですね。要するに、これは日本全体がそうでございますが、集団研究が非常にはやるのです。むしろ、非常な独創というのは、集団すらできない、反対者ばかりだというところで出てくることも十分にあるわけでございますから、個人の仕事を育成するということがやはり必要でございますし、目ききの方も、埋もれている中から金の卵を拾い出してきて、それを特別に育てるというようなことをやはりみんなでやってみなければいけない。  ところが、こういうやり方というのは、反民主化ということでございまして、非常に嫌われているわけでありまして、みんなで仲よくやりましようという点が少し強過ぎる。そういう意味で、やはりこれから研究費その他の組み方についても十分に反省する必要があると思うのです。  私は、従来、十何年来文部省の中でも主張し続けまして、ある先生が、おまえの言っていることはおかしいとおっしゃっていたのですが、たまたま外国人に聞いたら、研究というのは本来個人がベースのものだと言われて、正直な先生でございますから、おまえの言ったのと同じことを言われたよと言われて、ちょっと方向が変わってきた。その時点では変わったわけでございますが、依然として、外国でもやっているからおれたちも参加しようという形の研究が多くなってしまったのですね。  私が主張しておりますのは、せめて二〇%ぐらいは外国でやっていない研究を奨励するようなやり方になっていってほしいものだということを言っておりますし、最近、まあそろそろ幾ら憎まれても構わぬと思っておりますから、盛んにそれを主張しておりまして、何とか先生の御指摘くださった道も開いていきたいと思っております。ぜひいろいろと御支援を賜りたいと思っております。
  62. 井上義久

    井上(義)委員 ありがとうございました。
  63. 大野由利子

  64. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 自由党の菅原喜重郎でございます。  質問をさせていただきます前に、私の地元の岩手県ではこれまでも科学技術の振興に積極的に取り組んできているところでございますが、この岩手の地にこの四月開設されます岩手県立大学の学長に先生をお迎えしたということは、大変な光栄でございます。つきましては、岩手県並びに東北の地が今後一層科学技術の振興に貢献度を増すことのできるように、また先生のそういう御指導を大いに御期待しているところでございますので、日本のため、郷土のためにも、今後ともよろしく御指導をまずお願い申し上げる次第でございます。  つきましては、高速増殖炉中心原子力について、専門でない私が先生にお伺いさせていただきますので、全く質問は単純な質問になるとは思いますが、よろしくお答えをいただければ幸いでございます。  まず、平成七年十二月八日に発生した動燃事業団の福井県「もんじゅ」におけるナトリウム漏れ事故は、結果としては全く残念ではございますが、しかし、それまでの原子力の安全性に対する漠然とした不安が顕在化したわけでもございます。  しかし、我が国のエネルギー消費、特に電力の需要は継続的に増加を続けておりますので、先生の御発表にもあったように、今後世界的にもエネルギー問題は深刻化することが予想されます。  今、こういうことはみんな理解はしているつもりですが、原子力に反対する理由といたしまして、省エネルギーをすれば、また、他の安全な自然力エネルギーの開発をすれば、危険な放射性廃棄物を出す原子力利用は抑制できるし、あるいは利用しなくてもよいのではないか、こういう考えが漫然として一般庶民の間には持たれているわけでございますので、この点について先生のお考えをお伺いしたいなと思います。
  65. 西澤潤一

    西澤参考人 先ほども申し上げたとおりでございまして、私としては、水力太陽エネルギーの活用など、まだ検討すべきものがあると思っておりますし、それを利用しようと思えば長距離送電というものを物にしなければいけないというふうに考えているところでございます。これはまだ政府の方でなかなか取り込んでくださっておられませんので、何とかその方面の研究も促進していただけるように、いろいろと機会をとらえてお願いをしているわけであります。  しかし、それだけで足りるかということになりますと、先ほど申しましたように、太陽電池にせよあるいは水力にせよ、国内でとれる分だけではもちろん足りないと思います。水力ですと、ラオスにはまだまだ未利用水力資源がたくさんあるというふうに伺っておりますし、インダス川やガンジス川の上流なども十分に活用する水力がある。そういうものを引っ張ってくるということになりますと、先ほども申しましたように、何か国外にトラブルがあったときに、これが国民に対するエネルギーの安定供給ということを壊してしまう可能性があるわけでございますから、全部国外に依存するということもできないと思います。  そういう意味では、セキュリティーの場合に、少なくとも国内で自給できるようなエネルギー資源としての一つの大きな可能性原子力であり、また、特に燃焼効率という点から考えますと高速増殖炉ではないかというのが今私がとっている立場でございます。  いずれにしましても、これから先いろいろと調べていって、どうしても原子力をやらなければいけないからやるんだぞというふうにしたのでは間に合わないわけでございますから、いわゆる実証炉としてはどの辺まで実用化の可能性があるかということを急速に結論を出して、国の方針を早く立てる必要があると思います。  世の中に、先んずれば人を制すという言葉がございます。非常に悪い言い方をいたしまして何か誤解を招くおそれもあるかと思いますが、今ウラニウムの値が余り上がっていないですね。予想よりもはるかに安いということでございますから、非常に悪いことを言えば、今のうちにウラニウムを相当買っておくというふうなことをやれば、これは経済上からいえば日本にとっても非常に有利になるわけでございます。もちろんそれがいいということになればですね。高速増殖炉が非常に有効であるということになれば、買っておくこともマイナスではないというふうなことまで、スコープとしては見ていなければいけないわけでございます。  余り例がよくないと申し上げましたが、あるいは、ふまじめだとしかられるかもしれませんけれども、いずれにしても、長期見通しを立てるということをなるべく早くやることが、日本のように厳しい国にとっては必要であると私は考えているわけであります。  以上であります。
  66. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、高速増殖炉とかプルトニウムとか、なかなか庶民にはなじみの薄い言葉の概念が多いわけでございまして、高速増殖炉に対する国民的論議をする上でこれも一つの障害になっているのではないか、こう思います。学校でも原子力の社会的側面は考えているようですが、その科学的な、またこういうことを問題とできる知識はなかなか十分に教えていないようでございます。特に高速増殖炉、プルトニウムということについてはなおさらのことでございますので、こうした原子力に対する政策のよしあしの判断がつきにくいとも考えられます。そういう言葉に対する不安感ばかりが一方では生じ、マスコミを通しても増殖されて生まれやすくなっている土壌もあるのではないかと考えます。  それで、再度私もお伺いしますが、高速増殖炉の魅力とはどんなものか。さらに、そこからどうしても出てくる放射性廃棄物はもう貯蔵の一方でございますので、この廃棄物に対する対策も、将来本当に安全に処理できていけるものかどうか。単純な質問ですが、一緒にお伺いしたいと思います。
  67. 西澤潤一

    西澤参考人 先ほどもちょっと申し上げたわけでございますが、やはり学問をわかりやすく世の中の方々に説明をするという考え方が日本はちょっとおくれているのだと思います。何か難しいことをやっていると本人が偉いと思われるみたいなところがございます。私は、わかりやすい話をする人が偉いので、わかりにくい難しそうな話をする人はちっとも偉くないのだと盛んに言うわけでございますが、その点をやはり日本の科学者が十分に反省をする余地があると思っております。  端的に言えば、この間の懇談会でも出ておられました東工大の先生は非常に率直にいい話をしてくださいまして、私をひっくるめて委員方々に基本的な理解を非常によく与えてくださったと思います。そんなような先生もいらっしゃいますけれども、ぜひそういう先生方に文庫とか新書とか、あるいはその他もろもろの出版物を書いていただいて、国民にわかりやすく、原子炉の危険性と安全性というふうな問題も問うていただきたいと思うのです。  大変な過激派と見られている方の本も私は調べておるわけでありますが、むしろ過激派の本をたくさん読んでいるわけでありますけれども、そういう方でもちゃんと書いていらっしゃるケースもあります。このごろ夜光時計は危険だというのでなくなってまいりましたが、ここに微弱な放射性物質を入れておきますと、その放射線で蛍光体が光りまして夜でも見えるというので一時たくさん使われていたことがございました。それも最近は警戒されているわけでありますが、つまり、許容の中に入っているような放射能漏れ事故のときにも大変騒がれたということを、強烈な反対派と言一われる方でも本にちゃんと書いていらっしゃるケースもあるわけです。  ですから、ましてや、危険性がないのだとか少ないのだとかとおっしゃる先生方は、率先してそういうものの基本的な性質をよく説明されて、国民がやはりこういうことに対して十分な見識を持つだけのベースを与えるということが必要でございます。  これは残念ながら私の専門ではないので、これから半導体の方でわかりやすい本を書こうかなと思っていますが、原子力関係の先生方にも、これは当時の事務局の人たちも聞いているわけでございまして、二回ならずぜひそういうことをやっていただきたいということをお願いしております。それが国民的な合意を得るために大変大きな障害になっていたということは間違いのないところであるというふうに確信を私はしているところでございます。
  68. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 教育水準の高い日本にとって、基礎的な教育の場で、高速増殖炉を初め原子力についての理解がなかなか深まっていない、正確に促進されていない、そういうことを感じるわけですが、教育の観点から原子力をどのようにとらえさせるべきか、今現在の教育の中でこういう観点から落ちているような点、または今後重点化させなければならない点がありましたなら、先生のお考えをお伺いしたいと思います。
  69. 西澤潤一

    西澤参考人 仰せのとおりでございまして、やはり小さいうちからそういうことをちゃんと教え込んでいく。それから、危険だからやりたくないということになりますと、何もなくなってしまうのですね。つまり、エネルギーというものが人間生活にとっていかに不可欠かわからせる。  日本なんかまだよろしいわけでございますが、かつてシベリアのノボシビルスクで、強烈な寒さのために道路が閉鎖されましたし、そのために石油の供給がとまってしまった事件がございました。そのときに何をしたかというと、トラック運転手の決死隊を募ったわけです。猛烈な雪の中をそのトラック輸送隊が走りまして、石油を持ってきて急場をしのぐことかできたわけでありますが、半数の運転手が途中で凍死いたしました。シベリアの生活を考えてみますと、暖房というのが生命線でございます。日本でしたら、あらゆる燃料が欠如しても、万年床でも敷いて潜り込んでいれば大抵の寒さは多分回避できると思いますが、事シベリアあたりに行ってみればよくわかることでございまして、そんなことではとても間に合わないですね。だから、エネルギーというものが人間の生活にとっていかに不可欠かということをちゃんとわからせる必要もあるわけであります。  そういうことからいえば、危険だからやりたくないのはもちろんでございますが、やらないわけにはいかないんだということも同時に認識させる必要があると思います。  もっと大事なことは、そういうことに携わる人たちが、非常に強い責任感を持ってそういう危険なものにふたをする。科学技術というのは、危険なものにふたをして、その上を多くの人たちに渡らせる仕事だというふうに私は表現をしておりますけれども、やはり、どんなことがあっても割れないようなしっかりしたふたをかぶせるということを科学技術者が責任を持ってやるということを、ちゃんと自覚させる必要があるのではないでしょうか。  以上でございます。
  70. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いろいろ先生に、教育面でも、私たち政治家に鋭く反省を促されるような言葉を聞かされております。  高速増殖炉について、現在、我が国の茨城県大洗町の実験炉「常陽」は、発電は行わないものの、燃料や材料の開発のため、中性子を当ててその性質の変化を研究するための実験に使われております。ここ二十年余り順調に動いていると聞いておりますが、次の段階の福井県の原型炉「もんじゅ」は、平成七年の事故のままとまっております。地元の理解を早期に得て再度動かして、発電炉としての技術的成果を得るべきものとは考えておりますが、反面、フランスなどでも、先ほど質問された方かありますか、高速増殖炉の研究は一時停止するとも聞いているわけでございます。  端的に、現在とまっている「もんじゅ」を今後どのように進めていくべきか。また、本当に日本の現在の技術で、タイムスケジュールもあるようですが、成功を果たし得ることができるのか。オフレコといってもこういうところはオフレコになりませんが、先生の思いのままに、こういう全く簡単な質問なんですが、お考えをお聞かせいただきたい、こう思います。
  71. 西澤潤一

    西澤参考人 大変簡単ではありますが、重大な問題の御質問と受けとめております。  先ほども申しましたように、過去において二十年間トラブルなしに動くという例もあるわけでございまして、こういうことも大いに国民に知らしめる必要があると思います。  「もんじゅ」の場合には、もちろん中身が違いますし、これからは特に、まず真っ先に自分たちが道を見つけながら、道をつけながら歩いていくということをやらなければいけないわけでございますから、従来にも増して危険に対しては十分な配慮が必要でございます。そういうことを技術者が十分に自覚し、今停止しているわけでありますけれども、先ほど来申し上げておりますようになるべく早く点検を完了し、もちろんそれは手抜きではいけないのだということを申し上げておりますが、手を抜かずになるべく早く試験を完了する。当事者の研究者は、今までの罪滅ぼしのつもりもあって大いに働いて、なるべく早く運転に入ってもらいたいというふうに私は要望したわけでございます。  その後につきましても、当然手抜きをしてはいけないわけでございますが、できるだけ早く事を調べながら、進めるところまで物事を進めていく。もちろん、願わくは最後のところまで行って、十分なデータがとれ、将来に対する希望が開けるようなものであることはもちろん望ましいわけでございますが、いっそれが夢と壊れてしまうこともあり得るのだということを考えなきゃいけないと思います。  したがいまして、これは目標値はあるわけでありますけれども、何月何日までにこれを終わるのだということを決めることは絶対にいけないと思います。なるべく早く終わる、しかし手抜きはしないというのがむしろ大原則であるというふうに先ほど来申し上げているとおりでございます。特に、これから世界じゅうにまねをすべき相手がいなくなるわけでありますから、従事者につきましても、ぜひ十分な覚悟の上で大いに意識に燃えてやっていただきたいというふうに私は考えているところであります。
  72. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それでは、高速増殖炉研究開発について、先生は、これの成功は日本技術で大丈夫なし得るというお考えだというふうに受け取ってもよろしゅうございますね。
  73. 西澤潤一

    西澤参考人 希望としてはそう思っているということでございまして、いっそれがひっくり返ることもやむを得ないだろうということでございます。  もちろん、その間にも、へまでいろいろな事故を起こすようなことについては、関係者一同十分襟を正して、注意を十二分に払いながらやってもらいたいということでございます。  今先生がおっしゃったのは、私の希望事項でございます。
  74. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 二十世紀も残りわずか、もうすぐ二十一世紀を迎える現在、我が国の科学技術の多くは世界の最先端に位置づけられるものとなっていると思います。先生に、今後の我が国の原子力を含めた科学技術に対する姿勢というか政策に関するお考えをお伺いして、一応質問は終わりたいと思います。
  75. 西澤潤一

    西澤参考人 従来の日本科学技術は、戦後、先ほども申しましたように、どちらかというと物まね、改良が中心であるということで、特に海外での評判は非常に悪いわけでございます。  ようやくの思いで新しい技術開発をやって、工場を建て、製品の製造を始める、出た途端に、三カ月もたつと日本からもっとよくてもっと安い商品がどっと流れ込んでくるんだ、せっかくつくった工場を閉鎖、集めて訓練をした従業員は解雇せざるを得なくなってしまうということであります。これは向こうの人からじかに言われた言葉でございまして、日本の工業、学術に携わる人間としては、このような海外の批判を十分に謙虚に受けとめまして反省をする必要があると思っております。先ほど来お話が出ておりますように、産業であれば、外国にないものをつくるんだというところにむしろ誇りを持ってやるような研究体制を確立する必要があると思います。  そのために最も必要なことは、炯眼の評価者を選ぶ。事前評価も必要でございますし、そのためには事後評価も必要でございます。中正かつ先見性のある評価者を選んで、こういう人たちに研究費の有効な配分をやらせるということが必要でございます。  また、企業の方でも、日本の中で生まれたものを率先して評価して、これを工業化するということに努めていただかなければいけないわけであります。  どうも、どちらかというと、産学ともども、海外でどういう評価をしているかということが中心でございますし、海外でやっていることをやればいいのだという、戦後特に大きくなりました日本の悪習を早く断ち切る必要があるのではないかというのが、私が今考えているところでございます。
  76. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 貴重な御意見をどうもありがとうございました。  今後とも先生には、我が国並びに世界科学技術を引っ張っていっていただきたいことをお願いいたしまして、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  77. 大野由利子

    大野委員長 吉井英勝さん。
  78. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  西澤先生には、きょうは大変お忙しいところ、ありがとうございます。  私も、ちょうど三十年ほど前になりますが、電通研の先生のお隣の研究室の方へ、スパッター方式という、金属薄膜をつくったりシリコンなんかの絶縁体をどう薄膜をつくるかということで、ちょうど先生のお近くの研究室で、高周波をかけてやっていらっしゃったところの門をたたきまして、いろいろお教えいただいたりしたことがあるものですから、きょうは懐かしく先生お話を聞かせていただきました。  それで早速ですが、先ほど、動燃の事故などについて、エンジニア技術を疑うような事故であったというお話とか、それから教育の重要性などをお聞きしたわけです。私は、教育とか訓練は一つ非常に大事なことだと思います。  それから、同時に、昨年十二月一日の報告書の中でも、「事故は起こらないという態度で臨むのではなく、事故はいつでも思わぬところから起こりうるもの」、「仮に起きたとしても人体環境への影響を与えないようにする」、この考えが必要だということを述べておられて、私は、この点では、謙虚とか、その研究者の姿勢だけじゃなしに、人間というのはミスを犯すものなんだ、だから、そういう場合も、環境にも、地域の人々にも、研究者自身の安全ということを考えても、安全技術。これは材料の面でもあれば、システム工学やその他周辺技術の分野での安全技術の確立ということ。  この二つのこと。特に、私は、原子力の分野では安全技術の確立というのは特に大事な、今も非常に大事な課題だと思っているのですが、この点についての先生のお考えを伺いたいと思います。
  79. 西澤潤一

    西澤参考人 仰せのとおりでございます。  絶対的な安全はあり得ないという言葉を私は使うわけでございます。どんなに安全だと思われているものでも、それこそ町の言葉で言えば、畳のへりにけっつまずいて死ぬ人もいるんだという言葉がございますが、それは、まさに絶対的な安全はあり得ないということを表現しているにほかならないと思うわけでありますが、原子力の場合には、万が一勘違いをしますと、この周辺に及ぼす影響は、もちろん生命にもかかわる重大なものになり得るわけでございますから、特に慎重にやらなければいけないわけです。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、危険があるからやらないで済む時代ではだんだんなくなってきている。危険なものをなるべく事故が起こらないようにするというわけでございますが、ちょっとこれは差しさわりがある言葉かもしれませんが、バルブがだんだん渋くなってあかなくなったやつを、ハンマーでたたいてあけて、とうとうそのバルブを壊しちゃったという事件があったわけでございます。こういう人たちにハンマーでたたいても壊れないバルブをつくって渡すかということになりますと、これは限界を超えるわけでございます。  私たちの大学では、御存じだと思いますが、いつごろいらっしゃったかわかりませんが、私は、助教授は研究室にいろ、部屋なんかやらぬよと言われた時代でございます。これは先輩教官の一つの精神的な問題もあるかと思いますが、しかし、私たちの見たところで非常にいいのは、実験をしているそばに助教授がおりますれば、これはまさに、学生が何かへまをしていればすぐにこれを注意し得るわけでございます。  そういうふうなことでも大変意味があったと思っておりますが、最近、これは私自身の反省も込めてでございますが、別に皮肉で言っているわけじゃございませんが、政府の用事その他で、どうしたって実験室を離れるチャンスがふえてくるわけであります。確かに、世の中に科学技術を使っていただくようにする、また認めていただいて研究費をいただいてくるというような操作のためには絶対必要でございますけれども、やはり研究室にいる時間がひとりでに厳しくなってまいりますね。こういう矛盾をいかに解決していくかということが今の悩みの種でございます。正確に言えば、これは分業でやる以外ないのでございますけれども、肝心かなめの助教授がなかなかそこまでやってくれないということになりますと、これはやはり我々の責任で何とかしなきゃいけなくなりまして、今のところでは私自身非常に戸惑っているところがございます。  それから、例えば、どこそこの企業でこういう事件があった、ないしはどこそこの大学の研究室でこういう事故があったというときに、私は、研究室に来た学生や職員をつかまえまして、きのうどこそこの大学でこういう事件があったぞ、うちの研究室でもこういうところとこういうところがあるから特に注意をするように、部屋に帰ったらすぐにみんなに言っておけよと言うわけです。  二人目がやがて用事があって入ってまいります。そのときに、用事が済んだ後で、さっき某が来たときにこういう注意をしたんだ、みんなに言っておけよと言ったけれども君は聞いたかい、いや聞いていませんと言うのですね。とのまま続けて、十人ぐらい聞いていませんというのが続くわけであります。これがどうして若い人たちにわからないのかということで、これも今の一つの悩みの種でございます。  個室をもらってコンピューター相手に仕事をする癖が子供のときからついておりますので、生身の人間で、みんなで、こういう事件があった、わあわあがやがやというふうな調子が研究室から消えているのですね。そういうような悩みもいろいろ抱えておりますが、とにかく、おっしゃったことは大変大事なことでございます。何らかの方法でそれを実現していきたいと考えております。
  80. 吉井英勝

    ○吉井委員 それでまた、この報告書で、動燃の対応が不適切であったため、多大の不安感、不信感を招いたとか、そういうところがあるのですが、動燃のその問題は確かにあります。  しかし、動燃の事故隠したとか秘密主義だとか、そういう問題だけじゃなしに、日本原子力政策の中で、先生がよく使われる言葉で言いますと、危険にふたをする技術という言葉を先生はたしかあちこちで使っていらっしゃると思うのですが、これまで安全技術の確立とか、周辺技術を含めてその研究開発が非常におくれている。そのおくれた中で巨大化していったり、急速に商業化に突っ走っていく、そこに国民の不信とか不安が非常にあるわけであります。先ほどおっしゃったような、バルブをたたいてというようなことは論外としても、しかし、やはり安全技術をまず確立をして、人類のその時代その時代の到達した安全技術の枠の中で原子力についても研究開発を進めていくし、周辺技術が進めばまた水準が上がっていくわけで、そこを一挙に飛び越えて進めていくというそのやり方に今国民が不信を持っているわけですから、やはり動燃の体質云々にとどまらないで、そこを一つ考えなきゃいけないんじゃないかというのが一点です。  もう一点は、そういう中で、これはいろいろな開発分野でそうなんですが、それを実用化するとか商品化するというときに、その商品化したものは最終的には廃棄物になっていくわけですから、非常に長期のスパンで見たアセスメントですね。特に放射性廃棄物の処分の問題になりますと、数百年とか数千年、数万年単位のものになってくるわけですから、我々の将来の子孫にそれをゆだねていいのかという問題がありますから、やはりそこまで含めて、これからの時代の研究開発というのはアセスメントというものについてもきちっと確立をしていかないと、その水準をはみ出して、それいけどんどんでやるというやり方はやはりまずい、だめなんじゃないかと思うのですが、簡潔にその二点についてお願いします。
  81. 西澤潤一

    西澤参考人 おっしゃるとおりでございます。  安全装置をちゃんとつけるということも必要でございますが、さっき申しましたように、ある程度の限界がございまして、最後はどうしても担当者の努力にまたざるを得ない。特に研究開発用でございますと、それほど長いこと使うわけにはまいりませんし、とにかく試験の場合にはかなり経済性を重視することになるわけでございます。大学なんかは、子細に検討していただきますと、安全基準を破っていることかたくさんあるわけてすが、全部守ってやれと言うと、研究費が足りぬで動けなくなるというようなのが実情でございますから、とかく試験関係というのは、ある意味で言えば、そこに担当している人間に依存しているケースが多いと思います。  そういうことではございますけれども、もう一つ先生がおっしゃったことにつけ加えていただきたいと思うことでございますが、事故が起こったときに対応が悪かったというのは、隠そうとするのですね。大体、謝るというときには、失敗したことをちゃんと分析して、こういうことをやりました、こことここが悪かったのだということを言ってこなければ謝ったことにならぬということを私はしょっちゅう言うわけでございます。そういう事故のときにも、発表することはもちろん早くやらなければいけませんが、どことどこがどう悪かったんだということをやはり率直に発表することが本当のおわびになるわけです。それを、詳しいことを説明もせずに隠してしまう、あわよくばばれないで済ませようなどということもあり得るわけでございますから、そういう態度をやはりこの分野からはかなぐり捨てなければいけない。それぐらい事故が起こったときの被害は大きいと私は考えております。  それから、放射性の問題でございますけれども、放射線というのは、強烈でも短いものも、つまり、早くなくなっちゃうものもございますし、弱いけれどもいつまでも出ているというものもあるわけでございますから、そのパラメーターとして、今の放射能がどうのこうの、放射量がどうだこうだということを議論するだけでは足りないので、将来に向かって、そういう放射性が一体どれぐらい持続するんだということを考える。少なくとも積では表現できる部分もございますから、そういうようなことをやはりやるべきだということをしょっちゅう事務局にも言っているわけであります。ただ単なるそのときの放射能だけで考えるのはやはりまずいのだろうと思います。  今おっしゃるとおりで、子々孫々にそういうものを残していくということは、我々としては大変恥ずべきことではないかというふうに思っております。
  82. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、先生がおっしゃったように、やはりこのアセスメントは非常に大事なことであって、今の問題は今の世代で責任を負う、それから、安全技術についても、今の技術水準の枠の中で研究開発を、先生の言葉で言えば慎重に着実にやっていく、そこが原子力で一番大事なところで、そこをかなりはみ出すものだから国民の不信というものが生まれているというふうに思うわけです。  あわせて、私はやはり技術の蓄積とか継承性というのが非常に大事だと思うのですが、この点では、「常陽」を見に行ったときに、「常陽」をやっておった技術者の方たちが、今度の「もんじゅ」については東京本社を中心にして違うものをつくっちゃっていると。さらに、今度実用へ向かっていくときには、実証炉についてはまた違うものを考えてみたりとか。その中で、温度計にしても、「常陽」で蓄積したものと違うものを使ってやはり事故をやっているのですが、それは再処理の問題にしても、原研でずっとやってきたものと一挙に違うものヘスケールアップして、海外からの技術導入と。  日本で本当にやっていこうと思ったときに、蓄積とか継承性。それは原子力というのはいろいろなお考えの方がいらっしゃるでしょうが、当面の数年、数十年の話だけではなくて、将来の地球人類社会を考えたとき、やはり数千年、数万年、場合によっては数億年の将来を見通したエネルギーをどうするのかという中で考えていかなければいけない課題ですから、そのときに、短期的視野でとにかく実用化ということへ走るだけではなしに、やはり、そういう蓄積、そして継承性を大事にするということが必要ではないかという点についてのお考えを一点。  時間がありませんのでもう一点だけ。  これまで問題になった一つに、これらは動燃の体質の問題というところがありましたけれども、動燃事業団体制と言われてきた問題。これは、下請依存の開発体制の問題とか、その下請企業の方が、請け負った研究費でやった成果でありながら、自分のところの知的財産権保護を理由にして公開しないという問題とか、それはやはり大きなマイナスになったと思うのですが、その二点についてのお考えを最後に伺いたいと思うのです。
  83. 西澤潤一

    西澤参考人 技術の継承性というのは、今先生のおっしゃったとおり、非常に重要な問題でございます。  実は原子力だけではなくて、今、日本の将来に対して大変大きな問題がございます。最新の電子機器のメーカーが、試作品をつくるときの板金加工の職人がいない、メッキ工がいないのだということを慨嘆した記事が最近出たわけでございますが、将来そういうことをやろうというときに、中国に送ってやって、向こうで試作品をつくって持って帰ってこなければいけないというようなことも起こり得るわけでございます。そういうような、やはり国全体としての見通しを持った社会構成をやっていくことが必要でございます。板金の特殊技術者が相当の月給がもらえるようであれば、後継者も出てくるわけでございますし、トップレベルの板金の技術とか、あるいはトップレベルのメッキの技術なんというものは、これは工業の基礎でございます。そういうものもひっくるめまして国内に温存するということで、技術の継承性ということが今非常に大事な問題になってきているわけです。  さすがの梅原猛先生も、最近は、技術の伝承ということをやっと言ってくださるようになりまして、御意見が昔と非常に変わって、私は大変うれしく思っているわけでございます。ようやくそういう問題を取り上げなければいかぬということまでは来ておりますので、何とかこれを展開して、先生のおっしゃるようなこともちゃんと日本の重要な知的資源として、資産として温存できるような体制を組まなければいけないと思っております。  それから、今の問題にも関係があるわけでございますが、やはり動燃の構成その他が問題になった一つの基礎というのは、要するに、人材の適正配置といいますか、量的な見通しの問題でございます。つまり、足りなくなったから、ではこちらへ最有力部隊を持っていって、こちらは穴があいだがらかき集めてこようとか、いろいろな組み方を現実にやらざるを得ない羽目にあるようであります。これは、詳しいことは私は知りませんので、あるいは誤解を招くようなことがあるかもしれませんが、いずれにしましても、こういう問題は、今の原子力高速増殖炉の問題もひっくるめまして、大きな見通しを持つことが必要でございます。  何かこのごろ、官僚の方々が五十歳になると出ていってしまって高給をはむという一つの社会ルートができてしまったようでございますけれども、本当に大事な基本計画をやった人が五十歳そこそこで世の中へ出ていってしまって、今までの仕事の継続性が失われるということも、これはかなりゆゆしき問題ではないかというふうに思います。  アメリカは定年制を廃止したようでございますが、まだ日本はそれだけの切実感を持っていないのですね。それは実力主義だということでございまして、定年制を廃止するというと、年をとってもいられるよというような中途半端なものではないわけでございますから、本当に実力のある人間をちゃんとその衝に当てていくということをやらなければいけない。専門家がちゃんと育っていくということがやはり官僚の世界でもなければいけないのではないでしょうか。長期ビジョンを持って適正な配置を自分の管轄内に組んでいくという力をこれからもう少しつけていきませんと、今まで研究所長をやってきたのが営業部長になるなんてことは日本の社会では案外平気でございますけれども、それだけもう世の中は甘くなくなってきているのだと私は解釈しております。以上でございます。
  84. 吉井英勝

    ○吉井委員 どうもありがとうございました。終わります。
  85. 大野由利子

    大野委員長 辻元清美さん。
  86. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美と申します。本日は、西澤先生、本当にありがとうございます。私は十五分ですが、質問させていただきます。  まず、高速増殖炉懇談会の報告書につきまして、この解釈と意味ということを伺いたいと思うのです。  といいますのは、これはさまざまな委員の方の御意見を座長として取りまとめいただきまして、その間には随分御苦労があったかと思います。特に、先ほど吉岡さんというお名前が出ておりましたけれども、吉岡さんのお話も随分取り入れながら皆さんの合意を形成していかれたということを先ほど承りました。私の手元に、その九州大学の吉岡さんがこの報告書についてお書きになった一文があるのです。これをちょっと読ませていただきます。  といいますのは、報告書をまとめたということは、それぞれの委員の方がばらばらに解釈して意味を言っていただいたら困りますので、ちょっと読ませていただいて、御意見を伺いたいのです。この報告書についてということで、  要点は、次の四点にまとめることができる。  ①高速増殖炉を将来のエネルギー源の選択肢の有力候補として位置づける。  ②実用化を目標とする高速増殖炉研究開発を継続する。  ③もんじゅの原型炉としての運転を再開する。  ④実証炉以降の実用化プログラムについては、具体的な計画をペンディングとし、もんじゅの運転実績などを見てから改めて判断する。実用化目標時期を白紙とする。 この点をとらえられまして、「筆者の考えでは、」これは吉岡さんということですが、これは従来の日本高速増殖炉政策の転換を意味している。まず第一に、高速増殖炉はひとつの選択肢へと格下げされた。一九九四年に出された最新の原子力開発利用長期計画においては、高速増殖炉は「将来の原子力発電の主流にしていくべきもの」と位置づけられているが、それと今回との落差は顕著である。もちろん選択肢という表現には、中止もありうるという含蓄が含まれている。  第二に重要なのは、実証炉以降の計画がペンディングとされたことである。現在の長期としてトップエントリーループ型を採用し、二〇〇〇年代初頭に着工することが明記されていたのだが、これらはすべて白紙還元された。   こうした政策転換は、一九九〇年代以降の日本原子力政策をめぐる状況変化を、素直に反映したものと考えることができる。高速増殖炉に関して言えば、もんじゅ事故が起こる前夜においてすでに、実証炉建設は電気事業改革等を背景とした電力業界の難色によりきわめて困難となっており、もんじゅ事故によって困難はさらに倍加していた。今回の政策転換は、実証炉建設計画を実質的に無期延期するという、関係者の間での暗黙の合意事項を、政策としてオーソライズするための基礎固めをしたものと解釈できる。 と、専門委員の一人の吉岡さんという方が解釈をなさっているわけなんです。本当に御苦労をいただきまして、総意をまとめていただいたこの報告書の解釈と意味ということで、今私が御紹介しました御意見についていかがお考えでしょうか。
  87. 西澤潤一

    西澤参考人 そういう意味を含んでいるとは思います。つまり、どういうことかというと、基本的に言いますと、何年何月までにこういうことをやるのだということを決めるのは大体僭越であると思います。ですから、それはやめましようと。  先ほど来申し上げておりますように、手抜きをせずに、しかし、なるべく早く結論を出すということをターゲットにしてやっていく。その結果、やるべきであるということが出てくれば、それを早くやったらいいでしょうし、またそれは、経済問題もあると先ほど御議論ありましたが、そういう要素を含めて、その時点で検討すればいいのですけれども、もしも中止をしなければいけないような深刻な事態が出てこなければ、これはやれますよということだけはなるべく早く結論づけて、国ないしは国民が将来のビジョンを組むときに、いざとなったらこれをやるのだぞということを早く頭の中に置いていただけるように、結論はなるべく早くお出しするということを言っているわけですね。ですから、あえて次を打ち消してやろうとかなんとかということを意図してやったのではなくて、当然の結論を出したと私は考えているところでございます。
  88. 辻元清美

    辻元委員 さて次に、科学技術というのはやはり人間との共生が大事だと思います。人間だけではなくて、生物、言ってみれば地球をガイア、生命体と私は考えておるのですけれども、この地球との共生ということが問われると思うのです。そういう中で、幾らすばらしい技術でも地球と共生できなければ、なかなかそれは実用化というか使いこなすことはできない。それから、先ほどのお話から、安全性の問題で、やはり人間が使いこなせるものでない限り一幾らすばらしい最先端の技術であっても、それは机上の空論になってしまうと考えます。  そういう中で、私は今回の動燃の事故というのは、昨年ありましたアスファルト固化施設爆発事故、そしてこの「もんじゅ」の事故というのはショックでした。それは、やはりあの温度計の事故を、先ほど小さな事故というか、そういう表現をされたかと思うのですけれども、そういうことが非常に重要視されるべきであって、昨年の動燃のアスファルト固化施設も、目視の確認の仕方とか水の噴射の仕方とか、小さなことが大きな事故につながったわけなのですね。  そういう意味で、今回の「もんじゅ」の事故科学技術、その意味は分けて考えるべきだと先ほど御発言なさったように受け取ったのですが、やはり分けられないのではないか。そんなこともできぬでこれは使えませんよというふうに、やはりそこを一緒にどう考えていくかというところで知恵を絞らないといけないのではないか。そうでないと、やはり一般の市民の方それから地元の方の御理解は全く説得性を欠くのではないかと私は考えるのですが、いかがでしょうか。
  89. 西澤潤一

    西澤参考人 確かに御指摘のとおりでございます。  ただ、アスファルトは三万本目で割れたのですよ。だから、三万本は事故を起こさずに来ているのですよ。何で三万本目でやったかといったら、つまり簡単にいえば、浅知恵で変なことをやったのですね。そこが問題なのでございます。つまり、人間がちゃんとレベルをキープしていれば事故が起こらないはずのものを、生兵法で余計なことをして事故を起こすとか、やはりこれもある意味で言えば退歩ですね。  残念なことに、実はそういうような最高級の技術者と言われる人の中に退歩があらわれているのです。私はちょっと皮肉めいた発言をしたわけでございまして、当事者の出身学校を発表しろ、本人からは卒業証書を取り上げたらどうだという話をしたのでございます。これは余り紳士的ではない発言でございますけれども、そういうことに類するのですね。いろいろ御意見もあろうかと思いますが、うちの大学の卒業生にはこういうことはないのではないかなという気持ちが内心ございまして、やはりそれはその程度事故なのですね。ですから、もちろんあの大学の卒業生ならというのは、ちょっとそれは勝手な発言だと思っておられて結構でございますが、そんな気もないではない。  そういう意味では、各大学が教育課程で十分に注意をすれば、ああいったぐいの事故というものは未然に防止ができるはずのものであります。また、あの程度の失敗をするような人たちが大手を振って、博士か学士か知りませんけれども、世の中に出ていって、かなりの裁量権を持たされているということ自体が大問題でございます。  そういう意味で申し上げているのでありましてちすっと前でしたら、あんなことはまずなかったはずなのだと思うのですね。先ほども申しましたように、昔はちゃんとやっていたのが、大体一番最初が難しいはずなのですが、一番最初はちゃんと動いているのに、幾つか目のときに失敗をするということがここのところ続いているのは御存じだろうと思うのですね。やはりこれは初歩教育に関する問題なのです。  つまり、人間というのは自分たちの社会に対して責任を背負わなければいけないという極めて簡単、明快なことが自分の体の中で生きていないのですね。何だかわけのわからない、難しいことだけを知っているということが人間の価値を決めているみたいな点が非常に最近強くなってきておりまして、その点に対しては、教育者もひっくるめて、十分に配慮をすべきことではないか。また、それでおさまる問題ではないかと思うのです。  先生のおっしゃったように、一体でございます。幾らこういうものをつくって、できるはずだよと言っても、実動グループがへまをしていたのではこれはとんでもない話で、つくった方の判断誤りでございますから、そこではやらなければいけないのですが、今そこまではいっていないと思います。  だから、それはたまたまその人がそこに当たったということで起こった事故であろうと思いますから、早く昔に戻すということをやらなければいけない。また、そういうときに十分な配慮が働かせるような人間が最高学府の卒業生として世の中へ出ていかなければ、これは世界中の技術レベルは進歩しているのですから、日本の最高学府の卒業生が今までと同じだなんということで自慢していてもしようがないのですね。  ということで、高度の機械を使いますと、これはオートマチックが多いですから、時間は暇になるのですね。その時間を使って最高学府の卒業生あたりは自学自習をして世の中の進歩に十分に対応できるようにしてほしいということを、私は少なくとも私の接触していた学生諸君には絶えず言ってきたことでございます。多分、私が生きている間に、私の接触した学生が先生にしかられるような大失敗をするようなことはまずないのではないかという夢を今持っているところでございます。
  90. 辻元清美

    辻元委員 三万分の一回の事故というふうにおっしゃいましたけれども、私はまた起こるのと違うかなと思って、すごく心配があるわけなのですね。というのは、私が地元の住民でしたら、今の御意見を伺っても、そんな三万分の一回の事故がうちのところで、いつ起こるかわからなくて、それは困るわということで、なかなか理解が得にくいのではないかと考えていることと、もう一つは、一たび事故が起こった場合に放射能が発散される、そういう可能性がある技術もしくは事故については、これはちょっとほかの事故と比べまして質が違うように考えます。  ですから、私は今回の一連の動燃の事故というのはほかの技術事故とは違うようにとらえております。それはまたお時間があるときに、しっかりまた御意見を拝聴したいのです。  もう一点伺いたいことがあります。  それは、危険を冒してもエネルギーが必要な状態というふうに先ほどおっしゃいました。確かに先ほどのシベリアの例のようにエネルギーが必要であって、全くエネルギーなしの社会というのがいいとは私は思っておりません。ただ、事日本に関しましての御意見を伺いたいのです。  日本はやはりエネルギーを使い過ぎであると私は考えております。ですから、この科学技術委員会で私たちは政策を立てていくわけですが、さまざまな技術者の方や専門家の方にお話を伺って、政策を立てる折に、いかに日本エネルギーを抑制していくかという視点での政策が一番大事ではないかというふうに考えています。  地球温暖化の問題も、実際に大きな会議が去年ございましたけれども、やはり日本が率先してエネルギーを抑制していく技術を開発していく。そして、私たちがそういう政策を立てるための財政的な予算の配分を考えていくということは重要と考えております。そういうことに対する御意見が一点。  それから、きょうの御報告の中にも、太陽電池発電など、随分いろいろな御発明や御研究をなさっているということで、率直な御意見として、予算として少ないのかどうか。原子力の開発研究にかける予算に比べまして、自然エネルギー開発の予算が非常に割合として少ないなというふうに私は考えておりまして、特にこの科学技術委員会の中では、私はやってみたいなと思うことは、こういう自然エネルギーを開発する、動燃のような大きな組織をつぐり、アジアの留学生や研究者の方もお招きして、日本がイニシアチブをとっていく。それはやはり国際的な協力であったり、信頼を得るためにも重要ではないかというふうに考えていまして、そういうことを進めたいと思っているのですが、先ほどの予算について率直にどのようにお考えであるか。  この二点をお伺いしたいのです。
  91. 西澤潤一

    西澤参考人 大変ありがたい御意見だと思います。  私のやってきた仕事は実は光通信とエネルギー問題でございます。さっきも申しましたように、生まれつきけちん坊でございますから、私のやってまいりました電力コントロールの仕事というのはほとんどハイクオリティー、効率の非常に高い仕事でございます。私のつくった半導体デバイスはいろいろございますが、今世界じゅうに九九%台で動くものが三つしかないのだと思います。  一つは大型変圧器でございます。これはマイケル・ファラデーがつくったとか、アメリカ人はシュタインメッツがつくったと言いますが、多分ファラデーの方がちょっと早かったのではないかと思うのですが、これは人類の持っていたたった一つの九九%台で動く機械でございます。  二番目は、私が二十三歳のときに考え出しましたPINダイオードというやつで、これは大型のものがやはり九九%台で動きます。ただ、交流を直流に直すことができるのですね。  ところが、今やっておりますのは、逆に直流を交流に直すことができる。これが九九%台で動きます。ですから、ひとりでにエネルギーをコントロールするということをずっとやってきたことになるわけでございまして、今先生が予算をふやした方がいいのではないかとおっしゃってくださるのは、実は涙が出るほどありがたいわけでございます。  数日前に発表になりましたが、内閣の今度の政策として、通信情報関係を少し減らして電力関係を増強するんだということを聞いております。情報通信関係が減るというのは、多分私に文句を言いに来る人がたくさんいるだろうと思うのでございますが、二十一世紀最大の産業でございます。先行投資が必要だと思いますし、即効性があるわけですが、少し休むといいますか、時間を置いてまた出すというふうなことをしていただくのが妥当だと思います。  エネルギー関係は非常にやはり重要でございまして、過去、国際的にもこういう分野でいろいろな問題があります。今私が申し上げたようなデバイスを使いますと、電力線を使ってエネルギーを輸送するときに効率がはるかに大きくなるようなところができるのですね。  それからもう一つは、案外今騒がれておりませんが、通信をやるとき、電力と相干を起こしまして、通信設備に電力線の出す雑音が入ってくるのですね。これを避けるために、通信するときの電力を上げなければいけないのです。ですから、逆に言えば、そういうことをしないで済むようにするためには、電力線から雑音を出さないようにするわけですね。というようなことも実は我々のところでやっておりまして、そういう意味では世界のトップレベルと自分で言っていいと思っているぐらいの仕事はしてきたつもりでございますので、先生お話というのは、大変、我が意を得たりという気がいたします。  ただ、先ほど申しましたように、このように非常に世の中が苦しいときに、もっと予算をよこせよこせと言うことは、実は私の余りとらないところでございまして、もう少し配分をよくしたらいいじゃないかと。本当にいい仕事をする人のところにはどんどんついでやって、外国のまねなんかしている人たちのところには少し遠慮してもらうというような、相当手厳しい配分を今やらなければいけない時期に来ているのではないかと思っております。  仲間から後で大変恨まれると思いますが、ここでございますから、大事なところでございますので、包み隠さず申し上げているわけであります。
  92. 辻元清美

    辻元委員 それでは、終わりたいと思います。  締めくくりに、科学新聞で西澤先生が御発言されていることがあるのですけれども、「研究者がもっと社会に対して責任を持たなければいけないのです。やってみて予定通りいかないということはあり得ますけれど、その間に相当いろいろな努力をしているのでしょうが、それでもやはりダメなら「ダメであった」ということを言うべきです。自分の言動に対して責任を持たない人が多いようです。」というような御懸念も示していらっしゃいますが、きょうは本当に責任のある御発言をいただきまして、どうもありがとうございました。
  93. 大野由利子

    大野委員長 西澤参考人には、日本エネルギー政策について、また原子力行政について、大変有益な示唆に富む御意見を大変ありがとうございました。委員会を代表いたしまして、心より御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。午後五時十四分散会