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西澤参考人 お手元に
パンフレットがお配りしてございます。
ダイヤグラムの方がわかりいいかと思いまして、失礼ながら
ポンチ絵入りでございますが、これは、今度
日本に帰られました
高原須美子先生が
エネルギー経済研究所におられましたころにつくられた
パンフレットの中身をコピーさせていただいたものでございまして、
高原先生には御了解をとってございます。
一枚目でございますが、これは
人口カーブでございます。
ごらんのとおり、二十
世紀に入る、つまり一九〇〇年ごろから急速に
世界じゅうの
人口がふえ始めているということがおわかりいただけると思います。
ペストと書いてございますが、一五〇〇年のちょっと前にヨーロッパを
中心にいたしまして
ペストが流行して、たくさん死にましたために
人口が減少していることまで書いてございますが、
ごらんのように、長い
間地球上の
人間の数というのはそんなにふえなかったわけでございますが、二十
世紀に入るや否や大変な
勢いでふえているということがおわかりいただけるだろうと思います。
次の絵を
ごらんいただきたいと思います。
これは、
世界じゅうの
人たちが大体どれぐらい
エネルギーを使うかということを
ダイヤグラムにしたものでございます。御
注意をいただきたいのは、下の軸が伸び縮みしておりますので、今
ごらんいただきましたものとちょっと対応がつかないわけでございますが、一九〇〇年のところを
ごらんいただきますと、先ほどの
カーブを思い出していただければ、非常によく似ている、一九〇〇年ごろから急増しているんだということが両方に共通の性格であるということがおわかりいただけるだろうと思います。
つまり、
人間がたくさん
エネルギーを使うようになったというのが今
ごらんいただいているこの絵でございますが、それと相前後して
人口が急増した。言うなれば、
子供たちが病気その他で死ぬ率が非常に減りまして、
乳幼児が非常に健康なまま成長できることによりまして
世界の
人口がふえたのだということを
ごらんいただけるのではないかと思います。
つまり、
科学技術が、どうこう言いますが、結果としては
子供たちの
死亡率を非常に下げたというようなことで大きな貢献があったということは、この絵を
ごらんいただければすぐわかることでございます。
人口カーブと非常にこの
カーブが似ておりまして、一八〇〇年ぐらいまでは一
人頭の
消費エネルギーは微増でございます。最近言われますように、
産業革命によりまして
蒸気機関が展開され、船の絵がかいてございますが、このころから
蒸気機関が
普及をしたわけでございますが、それにもかかわらず、余り大して
エネルギーはふえませんでした。
ところが、その次にかいてありますランプは、これは
電灯のつもりでございますが、この
電灯が
普及をし始める。ちょうど去年が生誕百五十年でございましたトーマス・
エジソンが、線を張って
電気をお配りするということを
世界で
最初に提案し、これをやったという
功績が私は
エジソンの生涯の
仕事のうちでも一番大きなものと
考えておりますが、その辺から一
人頭の
消費エネルギーがかなりふえ始めているということがおわかりいただけるだろうと思います。
右の上の方に
余り人相のよくない人が自転車に乗っているような絵がかいてございますが、これは初期の
自動車のつもりでございまして、ヘンリー・フォードが
アメリカで
ガソリンエンジン車の量産をやりまして、非常に安く、
馬がわりに
自動車が使われるようになった
功績者でございますが、実はこの
電気の
普及と
自動車の
普及ということが
人間の
消費エネルギーを非常にふやした原因でございます。
したがいまして、
文化革命といたしましては、
蒸気機関の発明よりも、
電気を配線してお配りしたとか
自動車を非常に多くの
方々に使っていただけるようになったということが、
人間の
文化史の上ではより大きな
意味を持っているのだと申し上げてよろしいかと思います。
結論でございますが、
ごらんのように、
電気と
自動車の
普及によりまして
消費エネルギーは一
人頭非常に急増いたします。今日、ちょっと不正確かもしれませんが、
日本人におきましては、
乳幼児のたぐいまでも全部ひっくるめまして、一
人頭の
人間が大体バケツに一杯
石油を
消費しているというふうに申し上げて、大体実感をおつかみいただけるのではないかと思います。大変な
勢いで今
石油を
消費しているということになるわけでございます。
一
ページ目に戻っていただきまして、
化石燃料というのは
石油プラス石炭でございますが、ようやく二十年ほど前から、
東北大学の
山本義一先生が
空気中の
炭酸ガスの測定をいたしまして、
警鐘を鳴らしておられます。非常に急速に
大気中の
炭酸ガスがふえている、何らかの手を打たなければ将来非常に問題になるのではないかということを言っていらっしゃるわけでございますが、残念なことに、
日本の中ではこの
警鐘に対してほとんど
注意をした方がいらっしゃいません。
結局、
日本で
炭酸ガスの急増問題がまともに取り上げられるようになりましたのは、ちょうど七年前になるかと思いますが、
茅陽一先生がローマ・クラブに
出席なさいまして、あちらでそういうことを言われたときに初めて、かなりまともに
考える方が出てきたということになります。
しかも、まだ
温暖化ということが対象でございますが、いささか騒ぎ過ぎかと言われるかもしれませんが、今のお目にかけました図の次の
ページを
ごらんいただきたいと思います。
横になっておりますが、この左側が一命申し上げました、
大気中にどれぐらい
炭酸ガスが放出されるか。言いかえますと、
石油、
石炭を毎年どれぐらい使っているかということを文献を通して調べまして、それが最終的には、二酸化炭素と書いてございますが、
炭酸ガスになるわけでございますから、これがどんな
割合でふえているかということをいろいろな
統計データを使いまして
推定したものでございます。
ごらんのように、これは
対数目盛りと申しますが、私が
縦軸を
対数目盛りに引き直したものでございます、結果的には、ほぼ直線上にふえている。言いかえますと、毎年約一四%
程度の
割合で
石油、
石炭の
消費がふえているということになります。
このように、毎年毎年、
石油、
石炭の
消費がふえてまいります。そのために、
植物が
炭酸ガスをつかまえまして、
同化作用によって炭素をとりまして
自分の体にするわけでございます。残りました
酸素を
空気中に放出するということによりまして、これを
人間を含めました動物が呼吸して使っているということになるわけでございますが、今のところでは
植物の方もまた、要するに、アマゾン川の流域が有名でございますが、
森林が次から次へと伐採されたり、先年
ガルーダ航空機が煙のために視界不良になって墜落したという事件が示しますように、
世界じゅうの
森林が
乱開発をされておりますために、むしろ
炭酸ガスを分解する力は非常に急速に弱まっております。
その結果といたしまして、右側の
カーブを
ごらんいただきたいわけでありますが、
大気中に放出されてまいりました
炭酸ガスがどんな
割合でふえているかということを、歴史的な
データを基礎にいたしまして解析いたしたものでございます。ただいいかげんに
右肩上がりに線を引っ張ったなとお
考えになる方がいらっしゃるかもしれませんが、これは
解析接続法という数学的な
手法を使いまして
推定をしたものでございます。
今から二百年たたない前に
大気中の
炭酸ガスは三%
程度になる
危険性があるということでございます。現在は約〇・〇三%でございますので、二けた上がるのに約二百年という
勘定になります。これは、
医学関係の方はすぐおわかりになることでございますが、
人間が体の中かち
炭酸ガスを放出するときの比率を
計算をいたしますと、大体四%の
炭酸ガスが入った
空気と対応するわけでございますので、四%になりますと、体から出てきます
炭酸ガスは外にレリーズできない。くっついてくる方ととれる方が同じになりますので、呼吸は完全に不可能になるわけでございますが、三%でも生命の危険があるという
カーブになります。そういう
意味で、このまま放置をいたしますと、約二百年の間に
人類が
窒息死する
危険性があるということまで一応
推定が可能でございます。
ただ、
余り誤解をされないようにしなければいけないわけでございまして、いろいろな
手法がございまして、そういう科学的な
手法を使いましてそれを未然に防止しようということで、我々はいろいろと努力をしているわけでございます。
京都フォーラムの寸前にございました
松山フォーラムにおきまして、竹下元総理が
基調講演をなさいまして、このまま放置すれば
人類は
窒息死の
危険性もあるということを言っておられますので、私
どもの申し上げていることと同じようなことを言ってくださいまして、我々もちょっと安心をしたところでございます。
そんなことでございまして、また
最初の
ページに戻らせていただいて、行ったり来たりで申しわけございませんが、
化石燃料に対する
警鐘がようやく鳴り響いてまいりました。今までのように、結果も
考えずに
余り石油、
石炭を使い過ぎないようにしなければいけないということになるわけでございまして、今後、むしろ
石油、
石炭の
消費を抑えていくという方向をとらなければいけないということは、ようやく
考え方としては定着してきたかなと思っております。
これに対しまして
原子力でございますが、
原子力に関しましては、今
新聞紙上をにぎわしておりますように、
放射性を持った
使用済みの
核燃料が非常にたぐさん出る。これはどこへも捨てるわけにはまいりません。どこかに保存をしなければいけないということになるわけでございます。そういうところが
一つの欠点でございますが、
高速増殖炉で
核燃料を燃やしたといたしますと、同じ量の
核燃料かち百倍
エネルギーがとれる
勘定になります。わかりやすく言います。バロメーターを使って申しますと、今
日本が使っております
原子力発電を、今までのやり方でございますと一万トン。それから、現在の
高速増殖炉であれば百分の一になるということになるわけであります。
風力発電というのがございますが、これは、
経済性が十分に満足されておりますのは
アメリカの西海岸の
コースト山脈のてっぺんだけでございまして、ここは地勢上の非常に
特異点でございます。風が非常に高い山の上に絞られます結果、非常に
高速の風が
年じゅうほとんど変わらずに吹くということでございますが、
日本にはこのような恵まれたところはほとんどないというふうに申し上げてよろしいかと思います。
次に
太陽電池でございますが、これはっくるのがいまだかなり高価につきます。
実は、今使っていただいておりますのはPIN型と申しまして、私の発明したものでございますからかわいいのはやまやまではございますが、
値段の点では、今のところ残念ながら広く使っていただんわけにいかないのじゃないか。勘違いをする方がいらっしゃいますが、
政府が
補助金を出して奨励をしておりますので一見安く見えるわけでありますが、もともとの
値段からいいますと、結構高価についているということですね。
それから、これはまだ実証が不十分ではございますが、
太陽電池に使っておりますプラスチックが非常にすぐ傷んでしまいます。
太陽の持っております光量子の
エネルギーが非常に高いために、物の寿命が非常に短くなっております。これは、結晶の場合にも、
太陽光が当たっておりますとつくったものが早く傷むという事実がございますので、そういうところもよく
考えませんと、まだ十分にこれが実用できるということの保証はないわけでございます。
最後に
水力でございますが、ばかに嫌われておりますが、
日本には
只見川方式というのがございまして、これは
一つの
ダムでやらずに
多段式にしております。そのために
貯水量が非常に少なくて済むという特徴がございます。大きな
貯水量を持ちます三
峡ダムのたぐいは、あれは
洪水防止用の
ダムでございます。それから、アスワン・ハイ
ダムは
農業用の
ダムであります。
発電は二の次ということになっておりまして、大量の水をためるということが必要とされますのは、
洪水防止であり、
農業用であり、
発電とは違った
目的のためにあれだけの水をためる。したがって、環境を変えてしまいますのは、
発電用のためではなくて、ほかの
目的に適合した
ダムをつくるということが最大の理由であると申し上げなければいけないと思います。
今、私
どもが非常に一生懸命やっておりますのは、
長距離送電をやろうと。
エジソンがやったときは
直流でやったのでありますが、いろいろとできないところがございまして彼の
会社は失敗したわけでございますが、現在使われております
交流送電は実質は三十キロメートルあたりが限界である。それを無理して数百キロメートルで使っているのだそうでございますが、本来からいえば三十キロメートルであるようでございます。
直流送電はどうなるかと申しますと、一万キロメートル送りまして一五%
電力が減るのですね。一万キロメートルというと、直観的に申し上げますと、
地球の
周りが四万七十キロメートルだそうでございますから、
地球の
周りの約四半分の一、言うなれば、
東京を
中心として一万キロメートルの境界をとりますと
地球の半分になります。ですから、
東京に近い
地球の半分からならば
電力をどこからでも運んでこれまして、そのうち一五%だけは
抵抗損失でなくなってしまうんだ。
常温超電導でもできまするが、これはゼロになるわけでありますが、なかなかそれも大変でございます。一応、今の
技術をもってして一五%減るだけであるということでございます。
そういう
意味では、例えば
太陽電池の
発電とか、遠くにあります
遠隔地の、例えばインダス川、ガンジス川上流など
人っ子一人住んでいないところに急流がたくさんございますから、そういうところに
水力発電所を建設いたしまして、そこから
日本に陸上ないしは
海底ケーブルを使って
電力を運んできたといたしますと、今までの
データからいえば、実際やるときにはまたいろいろな問題も出てくるかもしれませんが、十分これは運んでこられるはずであるということになるわけであります。
これでどれぐらい
エネルギーがとれるかというと、
水力発電に限って申しますと、
世界じゅうのまだ使われていない滝や何かの水の量などを
計算いたしますと、大体、現在全
人類が使っております総
エネルギーが供給可能であるという結果になります。
OPECの総裁に呼ばれて行って、キプロス島で
専門家の前で私が話をしたわけであります。私が
余り経験がないのでということで、多分間に合うだろうという話をしたわけでありますが、
専門家集団が
オランダから十人ほど来ておりまして、彼らも
計算はしたそうでございますが、大体間違いがないということを言ってくれましたので、私は信用していただけないとしましても、
オランダから来た
専門家はそれは大丈夫ということを言っております。そんなことで、まだ私個人としては、
水力発電ないしは
太陽電池発電を長距離搬送するということに
可能性を
考えております。
これは、実はABBと申します
スウェーデンの
会社が、私
どもが出しました
雑誌の中に書きましたことでございますが、
地球の
周りにこのような
直流送電線を回してしまえと。バンドをさせるわけでございます。そこで発生しました
電力をその
直流送電線に流しまして、
世界じゅうでこれをバーターして使うということをやれば、
大変効率の高い
利用ができるのではないかということをある
雑誌に書いたわけでございますが、去年でございますか、
アメリカのワシントンで
学者集団での
討論会がございましたときに、私がこの
仕事の紹介をいたしましたところが、
アメリカ側から
注意をされました。
スウェーデンの
会社がそういう構想を売り込んで歩いているぞ、おまえ
たちは
自分の国で
考えたくせに何をぼやぼやしているんだという
注意があったことをちょっと申し上げさせていただきます。
そんなことで、将来はいろいろございますが、しかし、
水力発電、
太陽電池発電のたぐいは、
ソースが外国でございます。したがいまして、将来の
セキュリティーを
考えますと、何か国外にいろいろな
事故が発生したときに、
日本の
国内は
電力供給に障害が起こると
考えるのが普通でございます。そういう点からいえば、
国内に何か持たなければいけない。
石油を備蓄しましても百日-三百日という
程度でございますが、
高速増殖炉の場合には、先ほど申しましたように、一年間全部これでやったといたしましても、
核燃料は百トンあれば一年間もつ
勘定になります。普通の
原子力でございますと、一万トン要るわけでございますから、百トンならば、これは備蓄可能でございます。
そういう点からいえば、
高速増殖炉というのは、
放射性の
使用済み燃料も余り出ないということもございますし、大いにこれから検討に値するのではないか。備蓄の点あるいは
セキュリティーの問題からいいまして、
日本が将来、私が言っている
水力、
太陽電池というものを使っていただいたといたしましても、
セキュリティーを
考えた二次的な
エネルギーソースとして十分に検討する価値があるだろうというのが私の
考えでございます。
それから、いろいろな、全く情けない、
エンジニアの心構えを疑いたくなるような
事故が連発したわけでございますけれ
ども、そういうことと
高速増殖炉の問題というのは切り離して
考えるべきものでございます。
エンジニアその他の
責任感を追求するという教育は今後ますます重要になることになるわけでございますが、しかし、これは
高速増殖炉自体の持っております
必要性あるいは実現の
可能性ということを否定するものにはならないだろう。特に限られた
人間しかできないようなことではございません。普通の、一般の
エンジニアならば、ちゃんとした
責任感を持てばこれは十分にこなせるものになり得るものだと私は
考えております。
そういう
意味で、ああいう
事故が起こったのは
大変憤慨もし、かつ悲しみもするわけでございますが、何とかこれを見きわめをつけて、将来の
日本の
エネルギー政策に方向づけをする必要があるというのが私の取りまとめた結果でございますし、また、
委員の
方々の御
意見でもあったかと思います。
以上でございます。(拍手)