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小野委員 今、時まさに春三月という季節であります。野山に春の日差しがあふれるようになるころに、私
たち日本人は古い
時代から一つの
イメージを持ってきたような気持ちがしております。冬の厳しさの中から
三寒四温と言われるような
変動の激しいときを経て、そして、時至れば暖かな、さわやかな春の訪れであります。
私は、このような姿を見ております中に、目の前にはいろいろな変化があったとしても,寒い日があり、また暖かい日が交互にやってくるということがあったとしても、時は着実に春に向かっているというような
イメージを持つということが極めて大事なことだと思えてならないのであります。
振り返って、このしばらくの
科学技術行政をめぐりましても、「
もんじゅ」の
事故以降で考えましても、本当に
三寒四温というような状態が続いてまいりました。「
もんじゅ」の
事故の厳しさ、その後の
科学技術基本法、
基本計画の制定に伴う
科学技術期待論の高まり、その後には、東海村の
アスファルト固化施設の
爆発事故をめぐるさまざまな問題の指摘、その後、
土井隆雄宇宙飛行士の
宇宙遊泳成功をめぐって、また
希望あふれるとき。そして今どうかと申しますと、HⅡ五号機の
失敗、そして高
レベル廃棄物の搬入問題をめぐってのトラブル。こう振り返りますと、本当に
科学技術行政というものもいろいろな波の中に置かれながら進んできているという印象を禁じ得ないわけでございます。
しかし、今申しましたとおり、
目先にいろいろな問題があるとしても、今
長官の
所信表明の中にもございましたとおり、この
科学技術という問題が、
未来の
日本を切り開く上に極めて大事なものであり、そして、
次代を担う青年にとってみれば夢と
希望と高い志を与えていく一そのような性質を持つものであるということを私
たちは決して見失ってはならないということを感ずるわけでございます。
しかしながら、それだからといって、
目先の問題を軽視していいということではございません。私は、このようにさまざまな問題が山積する中であればこそ、
科学技術行政をめぐる
基本姿勢というようなものについて改めて思いをめぐらさねばならないという見解でございます。
ここで、年初以来、
日本も政治の中に多様な問題を抱えて極めて厳しい年明けであったわけでありますが,各地の会合で御紹介申し上げて評判のよかったお話を紹介したいと思うのです。
それは何かというと、三匹の
カエルという話でございまして、これは
北欧に伝わる寓話でございます。
北欧地域でございますから
ミルクの産地でありますけれども、牛乳を搾ったものを運ぶための
運搬容器にポットというものがありますが、その中に三匹の
カエルが落ちたというのでございます。その
ミルクの面から
カエルが上を見上げると出口というのははるか上にあって、何度か跳び上がって外に出ようと
挑戦してみるわけだけれども、とても手が届かない。そういうところで三匹の
カエルのドラマが始まってくるわけであります。
一匹目の
カエルはどんな
カエルであったかというと、これは極めて悲観的に物事を考える
カエルでありました。何度か
挑戦はしてみるものの、その
挑戦が果たされないと知るや、その
カエルは悲観的に考えてしまって、もうおれはどんなにやったってだめなんだ、もうこれは夢も
希望もないと言いながら、そのままぶくぶくと
ミルクの中に沈んで死んでしまったわけであります。
二匹目の
カエルはいかなる
カエルであるかと申しますと、これは非常に楽観的に物を考える
カエルでございまして、今までもいろいろなことがあったけれども、まあ何とかなるだろうさ、こういうふうに考えながら、その
カエルは何もしないままに
ミルクの中にまたぶくぶくと沈んで、これも死んでしまったというのであります。
となると、残されましたもう一匹の
カエルの話になるわけでありますが、この
カエルは、現実をしっかりと見据えながら、なすべきことにベストを尽くしていこうという姿勢を持つ
カエルであったというのでございます。ほかの二匹が何もなすことなく
ミルクの中に沈んで命を絶っていった姿を見ながら、三匹目の
カエルは、少なくとも自分はあの二匹のようにならないためには一生懸命浮いていなければいけないんだ、手足を動かしながら泳ぎ続けなければならないんだ、こういうことを考えまして、一生懸命手足を動かし続けたわけであります。そうすると、一昼夜たったころに、この
カエルは足元にかたいものを感じたわけであります。なぜかと申しますと、一昼夜一生懸命
ミルクをかき回したおかげで
ミルクがバターになった、そのかたい足場を得た
カエルは、そこからびょんとはね上がって外へめでたく飛び出すことができて命が助かった、こういうお話でございます。
随分時間をとって話してしまったわけでありますが、私は、やはり現状を見るに当たって楽観論は通用しないということをまず銘記いただきたいと思います。
国民感情にしろ、またこの政界の中における皆さんの御意見にしろ、
科学技術行政に関して、決して楽観を許されるような
環境にはないということを御銘記いただきたいと思うのです。しかしながら、その一方で、それだからもうだめなんだというように悲観論に過ぎるような御意見も行き過ぎであるということもお考えをいただいて、今なすべきことに対して誠心誠意全力を尽くす取り組みを皆さん方に御要請を申し上げたい。
今まで
科学技術行政の中に、ある意味で関心を向け切れていなかった部分もあったはずであります。これから新しい
時代潮流の中にあって、求められるべき大事な
課題もあるはずであります。そのようなものが皆さんの真剣な取り組みの中から見出され、それこそが新しい
時代を開くエネルギーになってくると確信する次第でありまして、先ほど
基本姿勢ということを申し上げましたが、今ほど、新しい
時代に向けて
科学技術行政ないしその組織が持つべき姿勢というものが問われるときはない、こういう
認識を私は持つ次第でございます。
そんな中で、その
科学技術行政の
責任者でございます
谷垣長官におかれましては、いろいろと御経験をなされ、御思考を重ねられる中で、こういうことではないかというような思いをお持ちになっておられると存ずるわけでございますが、ぜひその
基本姿勢について重点三項目程度をお示しいただいて、これからの
科学技術行政において求められる大事なポイントについて、私どもに御示唆をいただきたいと思う次第でございます。