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1998-03-11 第142回国会 衆議院 科学技術委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十一日(水曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 大野由利子君    理事 小野 晋也君 理事 河本 三郎君   理事 三ッ林弥太郎君 理事 山口 俊一君    理事 辻  一彦君 理事 吉田  治君    理事 斉藤 鉄夫君 理事 菅原喜重郎君       今井  宏君    大島 理森君       奥山 茂彦君    木村 隆秀君       田中 和徳君    平沼 赳夫君       村井  仁君    望月 義夫君       近藤 昭一君    佐藤 敬夫君       鳩山由紀夫君    近江巳記夫君       西川 知雄君    吉井 英勝君       辻元 清美君    中村喜四郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷垣 禎一君  出席政府委員         科学技術政務次         官       加藤 紀文君         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         科学技術庁長官         官房審議官   今村  努君         科学技術庁科学         技術政策局長  近藤 隆彦君         科学技術庁科学         技術振興局長  宮林 正恭君         科学技術庁研究         開発局長    青江  茂君         科学技術庁原子         力局長     加藤 康宏君         科学技術庁原子         力安全局長   池田  要君  委員外出席者         工業技術院総務         部研究業務課長 兼谷 明男君         工業技術院総務         部エネルギー技         術研究開発課長 杉原  誠君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電課長  浜谷 正忠君         資源エネルギー         庁公益事業部原         子力発電安全管         理課長     平岡 英治君         気象庁観測部管         理課長     中村 匡善君         参  考  人         (動力炉・核燃         料開発事業団理         事)      中野 啓昌君         科学技術委員会         専門員     宮武 太郎君     ――――――――――――― 委員の異動 二月五日  辞任         補欠選任   鯨岡 兵輔君     大島 理森君 三月十一日  辞任         補欠選任   杉山 憲夫君     今井  宏君   近江巳記夫君     西川 知雄君 同日  辞任         補欠選任   今井  宏君     杉山 憲夫君   西川 知雄君     近江巳記夫君 二月十二日  原子力発電等に関する請願保利耕輔君紹介)  (第八一号) 三月二日  原子力政策核燃料サイクル計画の全面的見直  しに関する請願秋葉忠利君紹介)(第五二〇  号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興基本施策に関する件                ――――◇―――――
  2. 大野由利子

    大野委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興基本施策に関する件について調査を進めます。  谷垣国務大臣から科学技術行政に関する所信を聴取いたします。谷垣国務大臣
  3. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 第百四十二回国会に当たり、私の所信を申し上げます。  私は、豊かで潤いのある経済社会発展を築き、国民全体が誇りと自信を持って二十一世紀を迎えることができるよう努力していくことが、今日、私たちに課せられた使命であると考えます。とりわけ、産業空洞化が懸念されるとともに、世界でも類を見ない急速な高齢化が見込まれる我が国の状況を考えるときに、この感を深くいたします。尽きることのない知的資産形成する科学技術は、経済構造改革実現し、活力にあふれた経済社会を築いていく原動力であり、私たちに課せられた使命を果たすために不可欠のものであります。  また、昨年には地球温暖化防止京都会議が開催され、人類が直面している地球規模の諸課題につきまして一層認識が深められました。科学技術は、これらの解決にも資するものであり、人類未来への展望を開くものであります。さらに、土井宇宙飛行士による日本人初船外活動の例のように、科学技術は、次代を担う若者たちが夢と希望と高い志を持つことをも可能とするものであります。  このため、科学技術振興を限りない未来への夢を開く先行投資と位置づけ、その積極的展開を図っていくことが必要であります。我が国としては、科学技術創造立国実現を目指して、科学技術基本法及び科学技術基本計画を着実に実行し、政府研究開発投資拡充を図るとともに、柔軟かつ競争的で開かれた研究環境実現を目指した施策を進めてまいります。また、国際的な科学技術活動を強力に展開してまいります。  このような未来への夢を開く科学技術を戦略的に推進していくため、内閣の最重要課題である行政改革においては、創造的な科学技術行政体制整備を図ることが重要であり、その実現に向け努力してまいります。  また、現下の厳しい財政事情の中でも、科学技術振興費は例外的に増額が認められておりますが、研究開発活動効率化活性化を図っていくことが必要です。このため、研究資金等研究開発資源の適切な配分、研究開発の厳正な評価省庁の枠を越えた積極的な連携などを推し進めてまいります。  なお、動力炉・核燃料開発事業団に関しましては、経営、組織、事業などを抜本的に見直し、安全確保機能強化するとともに、経営体制の刷新、職員の意識改革社会に開かれた体制づくり実現し、真に国民の負託にこたえることのできる新法人に改組してまいります。このため、本国会に提出しました同事業団改革のための法案の早期成立をお願いいたします。科学技術庁においても、現場を重視した実践的な安全規制を行うなど、安全確保充実強化に取り組むとともに、法人に対する評価監査体制強化を図るなど、国民信頼早期回復に向けた努力を行ってまいります。  また、去る二月二十一日に発生したHⅡロケット五号機の打ち上げ失敗に関しましては、まことに遺憾に思っております。今後は、徹底的な原因究明とその対策並びにそれらの結果を今後の宇宙開発に的確に反映させるべく力を尽くしてまいります。また、軌道投入失敗した通信放送技術衛星「かけはし」を用いた実検等可能性をできるだけ追求してまいります。  以上のような認識もと平成十年度には、以下に申し述べますような柱を中心として、科学技術振興施策を総合的に展開してまいります。  第一に、経済フロンティア拡大地球規模の諸問題の解決などの社会的、経済的ニーズ対応した未踏科学技術分野への挑戦であります。  我が国においては、みずから率先して未踏科学技術分野挑戦し、知的資産としての革新的な科学技術成果を創出し、我が国発展のみならず人類に対し貢献することが強く求められています。  このため、ライフサイエンス分野において、ゲノム、遺伝子、たんぱく質の研究に取り組むゲノムフロンティア開拓研究、それから、二十一世紀に残された大きなフロンティアである脳科学研究などを、関係省庁との密接な連携もとに強力に推進してまいります。あわせて、ヒトのクローン個体作製問題等ライフサイエンスにかかわる生命倫理の問題につきましても鋭意取り組んでまいります。  また、情報科学技術は、高度情報通信社会実現に向けて、豊かな国民生活実現と新たな時代を開く原動力として期待されている分野です。この分野においては、産学官連携もと、大容量情報の超高速伝送・処理の実現に向けた研究開発地球規模の複雑な諸現象計算機で忠実に再現する地球シミュレーター開発等推進してまいります。  さらに、地球温暖化などの地球変動現象の解明、予測に資する研究開発地球監視通信放送等に利用する成層圏プラットホーム研究開発などの地球科学技術についても強力に推進してまいります。  以上に加え、限りない可能性を秘めた宇宙海洋等フロンティア空間対象とする科学技術分野に極的に挑戦してまいります。  中でも、宇宙開発については、新規及び既存プロジェクトを厳しく見直し、コスト削減など開発の一層の効率化を図りつつ、総合的な推進を図ってまいります。とりわけ、輸送需要に柔軟に対応するとともに大幅な輸送コストの低減を目指したHⅡAロケットなどの宇宙輸送システム開発、本年から組み立て開始が予定されている国際宇宙ステーション計画推進地球観測などの分野人工衛星開発に力を入れてまいります。  さらに、今後、打ち上げ需要の大幅な増加が見込まれることから、万一第三者損害が発生した場合に備え、宇宙開発事業団人工衛星等の打ち上げに係る第三者損害賠償に関して法的な整備を進めてまいります。  また、海洋科学技術につきましては、ナホトカ号流出油災害事故における沈没部調査学童疎開船対馬丸沈没地点特定に大きな貢献をした深海調査能力に加え、昨年竣工した海洋地球研究船「みらい」や深海調査研究船かいれい」等を活用して、総合的に海洋観測研究開発深海調査研究開発などを推進してまいります。  このほか、あらゆる科学技術基盤技術として重要な物質材料系科学技術研究開発核融合等先導的原子力研究開発などの先端的科学技術推進してまいります。  第二に、研究者の持つ創造性を重視した独創的な基礎研究推進と、開かれた研究社会を目指した柔軟な研究開発システム構築及び研究開発基盤整備等であります。  科学技術創造立国を目指し、新しい産業を創出するために必要不可欠である知的資産形成を図るためには、創造的・基礎的研究強化し、人類共通のストックの拡大に積極的に貢献することが重要であります。このため、基礎研究については、競争的資金拡充中心として、その強力な推進を図ってまいります。  とりわけ、国が設定した戦略目標もと省庁の壁を越え、あらゆる分野研究者に開かれた研究制度である戦略的基礎研究推進事業拡充するとともに、科学技術振興調整費拡充し、開放的融合研究推進制度創設等推進してまいります。  一方、産学官連携により研究開発を効果的かつ迅速に進めるための環境整備として、産学官共同研究の一層の促進を図るための法的な整備を進めてまいります。また、国の研究成果を積極的に国民生活経済に還元するための施策展開を図ってまいります。さらに、研究者がその能力を涵養し、創造性を発揮できるような環境整備していくため、任期つき研究員活用研究支援者確保ポストドクター等一万人支援計画などを着実に推進してまいります。  加えて、研究開発基盤整備観点から、研究情報ネットワーク整備等研究開発に関する情報化促進、昨年十月に運用を開始した大型放射光施設整備及び共用の促進などを図ってまいります。  また、地域における新産業創出等に資する基礎的・先導的研究開発推進することなどにより、地域科学技術振興策強化してまいります。さらに、このように重要な科学技術に関する国民理解増進を図ってまいります。  第三に、安全で豊かな生活実現するために必要な国民生活に密着した科学技術推進であります。  特に、地震国の我が国にとって、地震防災対策は極めて重要な課題であります。このため、地震調査研究推進本部方針もと基盤的地震調査観測施設整備活断層調査など、地震に関する調査観測充実強化や、国民一般に対する正確かつわかりやすい広報の実施などを総合的に推進してまいります。また、実大三次元震動破壊実験施設整備に着手する等、地震に強い社会実現に努めてまいります。  このほか、高齢化社会への対応生活社会環境の改善といった生活者地域社会ニーズに密接に関連した研究開発を進めてまいります。  第四に、安全確保国民理解大前提とした原子力研究開発推進であります。  エネルギー資源の約八割を海外からの輸入に依存し、今後ともエネルギー需要の着実な伸びが予想される中、供給安定性にすぐれ、発電過程において二酸化炭素を排出しない原子力重要性は、地球温暖化防止京都会議での合意も踏まえると、ますます高まるものと考えられます。  原子力推進するに当たっては、安全の確保国民理解が不可欠であります。一連の動燃事故の発生及びその後の不適切な対応を教訓として、現場を重視した安全監視及び緊急時対応強化安全審査一検査の充実施設老朽化安全性向上対策など、原子力安全対策のより一層の充実強化を図ります。また、これにあわせて、国民各界各層との一層の対話の促進情報公開等を積極的に推進してまいります。このような努力もと高速増殖炉や高レベル放射性廃棄物処分を初めとする核燃料サイクル研究開発の着実な展開を図ってまいります。以上一私の所信を申し上げてまいりました。  橋本総理は、この十年来の経済面の困難を克服し、また、制度疲労を起こしている我が国システム全体を改革することを目標に掲げられました。私は、科学技術振興こそ、経済構造改革を推し進め、我が国システムを変革するための原動力になるものであると信じております。  私は、科学技術に課せられた重大な使命を全うすべく、科学技術行政責任者として全力を尽くしてまいります。  委員長を初め、委員各位の御支援、御協力を心よりお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手
  4. 大野由利子

    大野委員長 次に、平成十年度科学技術庁関係予算について説明を聴取いたします。加藤科学技術政務次官
  5. 加藤紀文

    加藤(紀)政府委員 平成十年度科学技術庁関係予算の概要を説明申し上げます。  平成十年度一般会計予算において、科学技術庁歳出予算額五千八百五十一億二千二百万円を計上いたしており、これを前年度当初歳出予算額と比較いたしますと、百三十七億一千百万円、二・四%の増加となっております。  また、電源開発促進対策特別会計において、科学技術庁分として、歳出予算額千五百十三億一千万円を計上するほか、産業投資特別会計から三十七億円の出資を予定いたしております。  以上の各会計を合わせた科学技術庁歳出予算額は、七千四百一億三千二百万円となり、これを前年度の当初歳出予算額と比較いたしますと、五十六億四千六百万円、〇・八%の増加となっております。  また、国庫債務負担行為限度額として、一般会計千二百四十四億九千四百万円、電源開発促進対策特別会計百三十四億八千九百万円を計上いたしております。  さらに、一般会計予算予算総則において、原子力損害賠償補償契約に関する法律第八条の規定による国の契約限度額を七千八百三十億円とするとともに、動力炉・核燃料開発事業団法規定により、政府が保証する借り入れ等債務限度額を百九十三億円といたしております。  次に、予算額のうち主要な項目につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、社会的、経済的ニーズ対応した未踏科学技術分野への挑戦であります。  経済フロンティア拡大地球規模の諸問題の解決に資する研究開発関係省庁連携して推進するための経費といたしまして、ゲノムフロンティア開拓研究に六十九億九千百万円、脳科学研究に百三十九億六千三百万円、情報科学技術推進に百四十一億九千五百万円、地球科学技術推進に六百三十一億二千六百万円を計上いたしました。  また、先端的科学技術分野研究開発推進といたしまして、HⅡAロケット開発、無人の宇宙往還技術試験機HOPE-X開発月探査周回衛星開発研究地球観測通信放送等分野人工衛星開発宇宙ステーション計画への参加等を初めとする宇宙開発利用の効率的な推進に千八百二十四億九千五百万円、深海調査研究開発を初めとする海洋科学技術推進に二百四十五億四百万円を計上するとともに、先導的原子力研究開発物質材料系科学技術航空技術及びライフサイエンス研究開発推進することとしております。  第二に、独創的な基礎研究推進と新たな研究開発システム研究開発基盤構築整備であります。  競争的資金拡充等による基礎研究推進といたしまして、産学官連携により重要な基礎研究等推進するための科学技術振興調整費に二百七十億円を計上するとともに、戦略的基礎研究推進事業創造科学技術推進制度等基礎研究制度推進することとし、六百七十六億六千四百万円を計上いたしました。  次に、開かれた研究社会を目指した柔軟な研究開発システム構築といたしまして、開放的融合研究推進制度を新たに創設するほか、任期つき研究員活用促進重点研究支援協力員制度拡充等による研究支援者確保ポストドクター等一万人支援計画推進を図るため、二百七十五億一千五百万円を計上いたしました。  また、地域における科学技術振興といたしましては、地域における中核的研究機関群形成に資する地域結集型共同研究事業地域研究開発促進拠点支援事業等推進するために百四十六億九千二百万円を計上いたしました。  さらに、研究開発基盤整備拡充を図るため、研究開発に関する情報化促進知的基盤整備大型放射光施設Spring8の整備、国の研究施設等老朽化対策高度化等推進することとして、四百四十一億二千七百万円を計上いたしました。  このほか、研究開発成果活用促進科学技術に関する国民理解増進に努めるとともに、研究開発機関における厳正な評価を実施することとしております。  第三に、安全で豊かな生活実現するために必要な国民生活に密着した科学技術推進であります。  地震調査研究推進本部方針もと、全国的な地震調査観測網整備推進するほか、実大三次元震動破壊実験施設整備防災科学技術研究開発を進める等、防災安全対策充実を図るため、百五十五億九千二百万円を計上するとともに、生活基盤研究等生活者ニーズ対応した研究開発核融合研究開発等未来エネルギー研究開発推進を図ることとしております。  第四に、安全確保国民理解大前提とした原子力エネルギー安定確保であります。  動力炉・核燃料開発事業団に関しましては、経営事業等を抜本的に見直し、安全確保機能強化し、社会に開かれた体制を持つ新法人に改組することとし、同事業団に対する経費といたしまして千四百五十八億一千五百万円を計上いたしました。  次に、原子力安全規制行政原子力安全に関する研究環境放射能調査充実原子力施設老朽化安全性向上対策抜本的強化等原子力安全対策充実強化を図るため、六百四十八億六千七百万円を計上いたしました。  また、原子力に対する国民理解増進情報公開を図る観点から、国民各層対象としたきめ細やかな情報提供を進めるほか、原子力発電施設立地地域住民等理解信頼増進に資する施策展開するため、三百八十二億七千三百万円を計上いたしました。  さらに、核燃料サイクル及びバックエンド対策に関する研究開発の着実な展開を図るため、千百九十七億五千三百万円を計上いたしました。これにより高レベル放射性廃棄物処分に関する研究開発等推進するほか、高速増殖原型炉もんじゅ」の維持管理等を行うこととしております。  第五に、国際的な科学技術活動の強力な展開であります。  まず、宇宙ステーション計画国際熱核融合実験炉(ITER)計画、ヒューマン・フロンティアサイエンスプログラム等国際協力プロジェクト等推進するため、千二百五十九億六千万円を計上いたしました。  また、海外研究機関及び研究者との研究協力外国人研究者受け入れ等による国際研究交流を総合的に推進することといたしております。  以上、簡単でございますが、平成十年度科学技術庁関係予算につきまして、その大略を御説明申し上げました。何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。  なお、具体の内容につきましては、お手元に資料を配付しておりますので、説明を省略させていただきたいと存じます。  ありがとうございました。(拍手
  6. 大野由利子

    大野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として動力炉・核燃料開発事業団理事中野啓昌さんの出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 大野由利子

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  8. 大野由利子

    大野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也さん。
  9. 小野晋也

    小野委員 今、時まさに春三月という季節であります。野山に春の日差しがあふれるようになるころに、私たち日本人は古い時代から一つのイメージを持ってきたような気持ちがしております。冬の厳しさの中から三寒四温と言われるような変動の激しいときを経て、そして、時至れば暖かな、さわやかな春の訪れであります。  私は、このような姿を見ております中に、目の前にはいろいろな変化があったとしても,寒い日があり、また暖かい日が交互にやってくるということがあったとしても、時は着実に春に向かっているというようなイメージを持つということが極めて大事なことだと思えてならないのであります。  振り返って、このしばらくの科学技術行政をめぐりましても、「もんじゅ」の事故以降で考えましても、本当に三寒四温というような状態が続いてまいりました。「もんじゅ」の事故の厳しさ、その後の科学技術基本法基本計画の制定に伴う科学技術期待論の高まり、その後には、東海村のアスファルト固化施設爆発事故をめぐるさまざまな問題の指摘、その後、土井隆雄宇宙飛行士宇宙遊泳成功をめぐって、また希望あふれるとき。そして今どうかと申しますと、HⅡ五号機の失敗、そして高レベル廃棄物の搬入問題をめぐってのトラブル。こう振り返りますと、本当に科学技術行政というものもいろいろな波の中に置かれながら進んできているという印象を禁じ得ないわけでございます。  しかし、今申しましたとおり、目先にいろいろな問題があるとしても、今長官所信表明の中にもございましたとおり、この科学技術という問題が、未来日本を切り開く上に極めて大事なものであり、そして、次代を担う青年にとってみれば夢と希望と高い志を与えていく一そのような性質を持つものであるということを私たちは決して見失ってはならないということを感ずるわけでございます。  しかしながら、それだからといって、目先の問題を軽視していいということではございません。私は、このようにさまざまな問題が山積する中であればこそ、科学技術行政をめぐる基本姿勢というようなものについて改めて思いをめぐらさねばならないという見解でございます。  ここで、年初以来、日本も政治の中に多様な問題を抱えて極めて厳しい年明けであったわけでありますが,各地の会合で御紹介申し上げて評判のよかったお話を紹介したいと思うのです。  それは何かというと、三匹のカエルという話でございまして、これは北欧に伝わる寓話でございます。北欧地域でございますからミルクの産地でありますけれども、牛乳を搾ったものを運ぶための運搬容器にポットというものがありますが、その中に三匹のカエルが落ちたというのでございます。そのミルクの面からカエルが上を見上げると出口というのははるか上にあって、何度か跳び上がって外に出ようと挑戦してみるわけだけれども、とても手が届かない。そういうところで三匹のカエルのドラマが始まってくるわけであります。  一匹目のカエルはどんなカエルであったかというと、これは極めて悲観的に物事を考えるカエルでありました。何度か挑戦はしてみるものの、その挑戦が果たされないと知るや、そのカエルは悲観的に考えてしまって、もうおれはどんなにやったってだめなんだ、もうこれは夢も希望もないと言いながら、そのままぶくぶくとミルクの中に沈んで死んでしまったわけであります。  二匹目のカエルはいかなるカエルであるかと申しますと、これは非常に楽観的に物を考えるカエルでございまして、今までもいろいろなことがあったけれども、まあ何とかなるだろうさ、こういうふうに考えながら、そのカエルは何もしないままにミルクの中にまたぶくぶくと沈んで、これも死んでしまったというのであります。  となると、残されましたもう一匹のカエルの話になるわけでありますが、このカエルは、現実をしっかりと見据えながら、なすべきことにベストを尽くしていこうという姿勢を持つカエルであったというのでございます。ほかの二匹が何もなすことなくミルクの中に沈んで命を絶っていった姿を見ながら、三匹目のカエルは、少なくとも自分はあの二匹のようにならないためには一生懸命浮いていなければいけないんだ、手足を動かしながら泳ぎ続けなければならないんだ、こういうことを考えまして、一生懸命手足を動かし続けたわけであります。そうすると、一昼夜たったころに、このカエルは足元にかたいものを感じたわけであります。なぜかと申しますと、一昼夜一生懸命ミルクをかき回したおかげでミルクがバターになった、そのかたい足場を得たカエルは、そこからびょんとはね上がって外へめでたく飛び出すことができて命が助かった、こういうお話でございます。  随分時間をとって話してしまったわけでありますが、私は、やはり現状を見るに当たって楽観論は通用しないということをまず銘記いただきたいと思います。国民感情にしろ、またこの政界の中における皆さんの御意見にしろ、科学技術行政に関して、決して楽観を許されるような環境にはないということを御銘記いただきたいと思うのです。しかしながら、その一方で、それだからもうだめなんだというように悲観論に過ぎるような御意見も行き過ぎであるということもお考えをいただいて、今なすべきことに対して誠心誠意全力を尽くす取り組みを皆さん方に御要請を申し上げたい。  今まで科学技術行政の中に、ある意味で関心を向け切れていなかった部分もあったはずであります。これから新しい時代潮流の中にあって、求められるべき大事な課題もあるはずであります。そのようなものが皆さんの真剣な取り組みの中から見出され、それこそが新しい時代を開くエネルギーになってくると確信する次第でありまして、先ほど基本姿勢ということを申し上げましたが、今ほど、新しい時代に向けて科学技術行政ないしその組織が持つべき姿勢というものが問われるときはない、こういう認識を私は持つ次第でございます。  そんな中で、その科学技術行政責任者でございます谷垣長官におかれましては、いろいろと御経験をなされ、御思考を重ねられる中で、こういうことではないかというような思いをお持ちになっておられると存ずるわけでございますが、ぜひその基本姿勢について重点三項目程度をお示しいただいて、これからの科学技術行政において求められる大事なポイントについて、私どもに御示唆をいただきたいと思う次第でございます。
  10. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 三匹目のカエルに我々がなれるように、どうしたらいいか。御質問の通告をいただいて、重点三項目を挙げろということで、これはいろいろな切り口があると思います。  それで、御質問の通告をいただきましてから、ちょっとこれは、長期的な考え方や現状今すぐ取り組まなきゃならない問題と、ややばらばらに、整理ができていない面もございますけれども、私は、まず第一に太事なことは、国民の十分な理解と支持がなければ科学技術体制は進まない、これが一番大事なことではないかと思っています。  先ほどの所信でも申しましたし、小野先生、今御引用いただいたわけでありますけれども、今のやや閉塞感のある経済社会、この実情を見ますと、これを打破して将来を開いていくという、いろいろな日本の構造改革という意味でも、長期的には科学技術が一番必要だということもほぼ異論のないところだと思います。それから、地球規模でいろいろな問題が出てきている、それを解決するためにも科学技術である。  それからさらに、私、このことを一番強調したいわけでありますけれども、我々のこの社会は何か周りがもうお先真っ暗で閉ざされたものであると青少年が思ったら、青少年は健やかに伸びていかない。やはり政治や行政の中で、青少年に、将来まだまだ我々はやるべきことがあるのだ、こんなおもしろいことがあるのだ、フロンティアがあるのだということを何か示すことを政治の仕組みの中につくっていかなきゃならない。それはやはり、科学技術だけでできるとは私は思いませんけれども、科学技術が相当大きな役割を果たせるのじゃないかというふうに私は思っているわけであります。  そういうことを我々が信念を持って国民の皆様にも語り、国民の皆様にも理解できていただくようないろいろな環境をつくっていく、そして国民理解と支持を取りつけていくということが、これは極めて大きな課題でありますけれども、まず一番大事なことじゃないかなと私は思っているわけです。  それから二番目は、やや我々の取り組んでいることにすぐ即してしまうかもしれませんが、科学技術基本法を議員立法でつくっていただいて、そのもと科学技術基本計画をつくり、科学技術創造立国という柱を立てていただいた。政治も昨今、政治改革や何かいろいろな議論がございますけれども、やはりこういう重要な法律を議員立法でつくっていただいたということは日本科学技術政策の展開の中で特筆すべきことであったのではないかと私は思っております。  だから、この重みを十分に我々は感じて、この基本法のもとでの科学技術基本計画科学技術創造立国、これを着実に進めていく必要があるのではないかと思っております。そのもとで、政府研究開発投資拡充も図らなければなりませんし、柔軟で競争的な、あるいは開かれた研究環境をつくっていくということだろうと思います。  もちろん、今の財政状況は厳しいわけでありますけれども、それだけに、効率的な配分であるとか、厳正な評価であるとか、省庁の壁を飛び越えた、ここらはいろいろ言われておりますから多くは申しませんけれども、そういうことを工夫して、この科学技術基本計画を着実に達成していくということがやはり二番目であろうと思います。  それから、やや今我々が抱えている問題ということになると思いますが、科学技術に対する不信感、不安感が出てくる大きな要素として、動燃の事故、先ほど御指摘のあった「もんじゅ」や東海事業所の問題があったことは、これはもう申すまでもないことであります。このことがやはり、特に事故とその後の処理のまずさといったようなことが、原子力政策だけではなくて、科学技術政策に対しても大きな影を投げかけたということではないかと思います。  ですから、私は、今回の通常国会にもお願いをしておりますけれども、この動燃を抜本的に立て直して、もう一回原子力政策に対する国民信頼を取り戻していく、その中で開かれた、オープンな環境をつくっていく、こういうことを通じて、今影が投げられているところをやはり克服していかなければならないのじゃないかと思います。  長期間の課題、今の課題、いろいろ取りまぜて申しましたけれども、私は今の三つぐらいを頭に置いて臨んでいきたいと思っております。
  11. 小野晋也

    小野委員 谷垣長官から明快な御示唆をちょうだいいたしましたわけですけれども、科学技術行政というのは、どちらかというと今枝葉に寄ってしまう傾向が強まってきていると思います。より根源的な部分をきちんと確立をしながら、ある意味で全体を統合していくという発想を持ちながら進めていかねばならないところがあると思いますから、ぜひそういう姿勢を庁内ないし関連諸団体に徹底をいただきまして、谷垣長官時代に一つの新しい路線が切り開かれたと評価されるようなお仕事を御期待申し上げたいと思う次第でございます。第二番目の質問に移らせていただきたいと存じますが、科学技術行政といえどもすべて最後は人に帰結してくるというのが、このしばらくの科学技術上の諸問題を見ながらの私の感想でございます。さまざまな事故における問題はもちろんのこと、その後の対処の仕方、また国民世論に対する対応の仕方等々いろいろな部分で、最終的には、人がどういう人であり、そしてどういう考え方を持って対処してきたかということが極めて大事な問題として問われてきていると感ずるわけでございますが、総論的に申し上げましたときに、科学技術行政の中において、人の要素というものが割合軽く扱われてきた部分を否定できないのではなかろうかというような気持ちがいたしております。  大臣が就任されて初回の委員会で、私の方から、技術者育成グループの問題をお話しさせてもらって、技術者が一つのソサエティーを形成しながらお互い錬磨し合っていくような活動というのが大事だということを申し上げる中で、使命感を持つ技術者たらん、広く深い探求心を持って研究する技術者たらん、経営社会を知る技術者たらん、人間を知る技術者たらん、他人に表現のできる技術者たらん、こういうふうな目標を掲げる活動というのが大事だということに対して、大臣から御同意をいただくような御答弁をちょうだいいたしました。  そういうところを少しまた考えてみましたときに、これは決して技術だけの問題でなくて、どういう分野においても大事な課題であるという気持ちがするわけでございます。  例えば、バイオリニストの辻久子さんの文章でございますけれども、これは日経新聞に昔出た文章でありますが、こんなことを語っております。「私は、教え子たちに「音楽家である前に、魅力ある人間、より高い理想、希望を求める人間になるように」と言っている。音楽は生きもの、演奏する人間の内面、品性を映し出す。技術は大切だが、それだけでは音楽を完成させることは出来ない。」こういうふうな言葉でございます。  技術方面で申し上げますならば、少し前にお亡くなりになられました本田宗一郎さんの言葉の中に、技術というものは極めて合理性というのが大事だけれども、合理性だけでは本当にすばらしい技術は生まれないんだと。それで、こんなことを言っております。「何事も一つの情というものを入れて見なきゃいけないんですよ。我々の仕事でも、技術というものは徹頭徹尾、これは理論ですわね。しかし、その中に物の哀れさとか大事さとかいうものを持って取り組まないと、長持ちする良い技術が生まれてきませんよ。」こういう言葉でございます。  これらの言葉をお聞きいただきましてお感じいただけると思いますが、これまでいろいろな問題が起こりますと、当委員会の議論においても、マニュアルというのがどういうものであって、そこに不備があったのじゃないかとか、管理体制がどうだったのかというような形で、外形的な部分の問題指摘において問題解決を図ろうとする傾向が極めて強かったという気持ちがいたしております。  しかし、これはあくまでも形を与えるものであって、本来の仕事の、内部のといいますか、本当の魂の部分と申しますか、仕事を決めていくものはまさに人間そのものなんだという視点もこれから必要だと感ずる次第でございまして、その観点に立ちますと、人間性を高めながらよき仕事をする科学技術のあり方という視点が求められてくると思うのであります。  例えば、文化の問題ですとか歴史の問題、また人物的素養というような問題、こういうようなものが必要だということを考えますと、さまざまな研修事業等におきましても、単に作業手順をめぐる研修ですとか管理法をめぐる研修ですとか、これにとどまらず、もっと人間的幅を与えるような研修というようなものが各場所で求められるのではなかろうか、これが率直な私の見解でございますが、大臣の所見はいかがでございましょう。
  12. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 小野委員の当委員会での御質疑を承っておりましても、前回の御質疑の中でも、朱子学的な思惟方法あるいは陽明学的な思惟方法と、大変深い御研さんに裏づけられた御質疑があったと記憶しておりますけれども、人類の長い知的遺産、いろいろな学問的な蓄積の中、狭い分野に限らず、できるだけ視野を広げて科学技術の基盤を広げていこうという意欲が小野委員の中におありだと、まず敬意を表したいと思っております。  それで、今の科学技術を考えますと、巨大技術と言われるものはみんなそうですし、地球環境の問題あるいは生命倫理の問題にしましても、私、科学技術会議の部会の議論に出席させていただきますと、本当に偏ったといいますか、一部の専門化された知識だけでは乗り切れない問題がたくさん出てきている。ということになりますと、いかにして研究者が幅広い視野を持って物を見られるかということが最後には一国の科学技術の水準を決める決め手になってくるようなことだろうと私自身も思っているわけであります。  動燃改革におきましても、形はできてきた、だんだん法案はできてきた。問題は仏をつくって魂をどう入れるかだと私は申し上げているのですが、実は、魂を入れるということは、言うはやすくして行うのが一番難しいのがここであろうというふうに思います。  今、動燃の場合とはまたちょっと違いますけれども、やはり研究者、技術者がいろいろな分野の人と幅広く交流できるような場というものを私たちも考えていかなければならないのではないかな、こんなふうに思っております。
  13. 小野晋也

    小野委員 時間になりましたから、最後、まとめだけさせていただきたいと思いますけれども、今長官の答弁の中にございましたとおり、今、科学技術をめぐりましては、幅の広さというものが極めて求められてくると同時に、時代性の移り変わりの中で、日本の国の科学技術開発のあり方も極めて質的に変化せざるを得ないような状況が生まれてきているところがあると思います。  追随型から、みずからがリードする科学技術開発ということがうたわれるわけですが、これはどういうことになるかというと、もう既にモデルがないところに自分たちの道を開く、しかも厳しい道を切り開くということになりますと、まさに全人的営みになってくるわけであります。どこかのモデルをまねをするということではなくて、自分自身の中から生まれてくるもの、文化もある、自分自身の人間的教養もある、いろいろなものを吐き出しながら、そこに新しい価値を創造する営みというのが科学技術研究開発だということになるわけでございますから、ぜひこれからの科学技術のあり方を長期的に展望する検討の場を設けていただいて、そこには、長官言われるような、思想的なものも含める、広いものを包含した方向づけのできるような対応科学技術行政の中に御期待を申し上げたいと思う次第でございます。  どうもありがとうございました。
  14. 大野由利子

    大野委員長 田中和徳さん。
  15. 田中和徳

    ○田中(和)委員 自由民主党の田中和徳でございます。  限られた時間でございますが、数点質問をさせていただきたいと思います。小野晋也代議士は科学者としても大変著名でありますけれども、きょうは思想家としてすばらしいお話を承りました。私の質問の内容と大分段違いじゃないかな一こんな気持ちもございますけれども、やらせていた溶きたいと思っております。  ただいま大臣の所信表明をいた溶いたわけでありますが、一言でまとめれば、資源に恵まれない我が国が二十一世紀の厳しい経済社会情勢を克服をするためには、唯一の資源とも言える知的資源を活用し、科学技術創造立国を不退転の決意を持って推進をしていく必要がある、こういうことであろうと思っております。私も全く同感であります。そのことを議論の前提とした上で、数点お尋ねをさせていただきたいと思います。  まず最初は、大臣もお触れになったように、HⅡロケット五号機の打ち上げ失敗についてであります。  先月二十一日、打ち上げは国民大変な期待の事業であったわけでありますけれども、エンジントラブルによりまして、通信放送技術衛星「かけはし」の軌道投入失敗をいたしました。失敗は成功のもと、今回の失敗を糧として今後ともロケット開発に積極的に取り組んでいく必要があるとする主張がありますが、しかしながら、一般の国民感情からすれば、この厳しい経済状況下、マスコミ報道で六百八十五億円のむだ遣いと聞けば、失敗は成功のもとなどという一言では片づけられない、いわば納得できない、こういう状況もあります。  しかも、このところ幾つかの失敗が続いたわけであります一お年寄りの命よりもロケットが大事なのかとか、ロケットに使う予算があったら神戸の被災者の面倒を先に見たら、こういう厳しい声も当然聞こえてまいりますし、我が自由民主党内でも、特別扱いしている科学技術予算を見直せ、こういう厳しい声も実は出ております。そこで、今回の失敗の原因が単なる技術的な問題なのか、それとも事業団開発体制に何か構造的な問題があるのか。特に官民協力してやっている事業だけに、特に現場では民間の皆さんの大変大きなお力をいただかなければならないシステムになっているわけでございまして、そういうことからすれば、同様の過ちを繰り返さないためにも、この際徹底的に原因究明をしなければならないのであります。特に、我が国ロケット開発及び利用は平和の目的に限るという国会の決議もございますし、そういう意味では、軍事目的と共同開発できる他の国と比べて大きなハンディキャップがあります。したがって、国益をかけた視点から、国が挙げて十分な配慮をしていかなければとても他の先進国に太刀打ちができない、私はこのように思うのであります。あらゆる困難を乗り越え、国家百年の大計として宇宙開発を重要な国家戦略の一つとして位置づけ、取り組んでいくわけでありまして、極めて厳しい状況下ではありますが、今後のロケット開発にどのような姿勢で取り組んでいかれるか、大臣の決意をまずお聞かせをいただきたいと思いますし、今回の打ち上げ失敗について原因究明はどこまで進んだのか、またそれに対してどのように具体的に対処していかれるのかもあわせてお伺いをいたします。
  16. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今回のHⅡロケット五号機の失敗はまことに遺憾なことで、私たちも衝撃を受けているわけであります。それで、こういう失敗になりまして、まずなすべきことは、この失敗の原因がどこにあったのかということを徹底的に究明することであろうと思いまして、今鋭意原因究明作業を進めているところであります。  三月五日に宇宙開発委員会の技術評価部会を開催しまして、その席で、宇宙開発事業団から、今まで分析した結果、当該事故のこれは一次推論ということになると思いますが、その報告がなされました。それを申し上げますと、ロケットの状況を示すデータの解析結果から、第二段エンジンの燃焼室から燃焼ガスが噴出してエンジン制御回路電源を焼損した結果、エンジンが停止したとの可能性が高い、こういう報告がなされたわけであります。この技術評価部会では、膨大なデータをまだ全部解析し切っているわけではないと思いますので、引き続き宇宙開発事業団からの原因調査についての報告を受けながら、事故原因、対策について審議検討を進めていくことになっておりまして、現時点で事故原因を、一次推論はああでございますが、完全に特定し切ったところまではいっておりません。  したがいまして、慎重に申し上げるならば、今回の事故原因が技術的なものなのか、あるいは開発体制等これ以外のものによるものなのかについては、即断をして申し上げるのは必ずしも適当な時期であるというふうには思っておりません。  ただ、この間、六日の宇宙開発委員会の臨時会においても、また私自身、問題提起させていただいたのは、平成六年の「きく六号」事故以降、NASDA、宇宙開発事業団の衛星、ロケットについてはトラブルが続いていることも、これは否定できない事実であります。でありますから、各トラブルに係る直接の原因のほかに何か共通する問題が内在しているのではないかということもよく考えておかなければならない。宇宙開発委員会の中におきましても、それが何なのかということがまだ十分にわかっているわけではありません。しかし、このような問題意識を持って取り組む必要があるではないかという問題提起をいたしまして、具体的な今回の事故原因の究明を徹底的に行って、その結果も見ながらということになりますけれども、並行して、そういう構造的と申しますか、体質的な問題があるのかないのかということもきちっと議論を進めていかなければならないというふうに思っております。  それで今、原因に関しては今申し上げたとおりでありますけれども、田中委員から、宇宙開発に取り組む決意を述べよということでございました。これは、昨年、土井宇宙飛行士が、明るい方のニュースとしてはああいう形で立派に活動してくれまして、このことが日本人にいろいろな希望を与えたことも事実でございます。宇宙開発の意義ということはいろいろな局面にわたるわけでありますから、今細かに申し上げるのも差し控えるわけでございますけれども、新しい産業を興したり、生活の利便をふやしたり、あるいは青少年に希望を与えたり、いろいろな意味において、宇宙開発国民の御理解を得ながら進めていかなければならないものだろうと私は思っております。  今回の事故については早急に原因解明をしながら、しかし、それでも二十一世紀に向かってこの重要性は少しも損ずるものではないという信念に立って、御理解を得ながら進めていきたい、このように考えております。
  17. 田中和徳

    ○田中(和)委員 本当に真剣に、この問題を深刻に受けとめて取り組んでいらっしゃる大臣の姿がうかがえたわけでありまして、ぜひひとつ国民の皆さんにも、早く問題を究明し、明らかにしていただいて、御理解がいただけるような事業の取り組みを願いたいと思っております。  次の質問は、原子力開発について、特に、ガラス固化体輸送船パシフィック・スワン号の接岸拒否問題について伺います。  エネルギー資源を持たない我が国にとって、核燃料サイクル事業の円滑な推進は、国民生活を維持する上で非常に重要な課題であります。  昨日、フランスからの返還ガラス固化体が搬入される予定になっておりましたが、地元の青森県の木村知事さんは、過去二回の入港容認を翻し、唐突とも言える態度で輸送船の接岸をいまだに拒否しておられます。直接総理と会談をして県民の持つ不安、不信を伝えたいとしておられますし、直接会談の実現を受け入れの条件として主張をしておられるようでございます。  動燃の一連の事故もありましたので、御心配をかける青森県民の皆様へ誠心誠意の態度で接し、不安を払拭することは当然でありますけれども、こうした事態が続けば、国内外の信用を失い、我が国核燃料サイクル推進国民生活に深刻な影響を及ぼすものでございます。今回の不可解な青森県知事の態度というものは、いろいろとマスコミにも報道をされておるわけでございますけれども、特に、所管大臣ではなくてなぜ総理なのか、私自身も実は理解に苦しむところでございます。  今までの青森県との交渉の経過や約束事がどうなっていたのか、今後どのように対応してこの問題を解決されようとされるのか、大臣のお考えをお聞かせをいただきたいと思います。
  18. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今、田中委員御指摘のように、今回のガラス固化体の搬入は三回目に当たるわけでありますけれども、前二回に関しては、安全協定も締結をされていることであり、既に安全に搬入したという実績を持つわけであります。  昨日、入港を予定していたわけでありますけれども、三月七日、先週の土曜日であったと思いますが、青森県知事から、総理にお目にかかれない場合は重大な決意があるという御発言があったところでございます。私は、原子力行政を担当する立場として、混乱の発生は好ましいものではないと当然考えまして、総理の御指示にも基づき、あるいは通産大臣とも協議をしながら、一昨日、二度にわたって知事と話し合いを持つなど、輸送が安全かつ円滑に進むように、最大限私も真剣に誠実にお話をしたつもりであります。  その際、知事のお話の中で、青森県に立地されている核燃料サイクルは、単に青森県だけの問題ではないではないか、日本全国にわたる問題なのではなかろうかと。これは私はもっともな御指摘である、青森県民だけが心配することではなくて、やはり国民全体として取り組んでいかなければならない問題である、青森県知事の御指摘は当然の御指摘であろうと思います。また、県民に原子力に対する不安、不信があり、政府一体として取り組んでほしいという御要望もありました。これも私はもっともなことだと思います。  ですから、この二つを私としては重く受けとめて、総理にも知事のこの思いはお伝えし、閣僚懇でもその旨を発言したところであるわけでありますが、そういうことを私としては真剣に受けとめて、できる限り真摯に対応したつもりでございます。それにもかかわらず、このような事態に至っておりますのは大変残念なことでございまして、引き続き、ガラス固化体の速やかな搬入のために最大限努力をしていきたいと、今いろいろな努力をしているところでございます。
  19. 田中和徳

    ○田中(和)委員 大変重要な課題でありますが、速やかにひとつ解決できるように御努力を願いたいと存じます。  時間の関係で少しはしょってまいりますので、恐縮でございますが、ひとつ御理解をいただいて御答弁を願いたいと思います。  実は、科学技術に子供たちが親しむための施策については、大臣も科学技術庁を挙げて取り組んでおられるわけでありますし、非常に重要な課題であろうと思っております。そういうことで、一番大きなテーマとして取り上げていかなければならないのはロボリンピックではなかろうかと私は思っておるのでございます。現在、大人も子供も科学技術を楽しむ、こういうところからそういうものが始まっていくべきだ、このように思っております。  私の地元の川崎でも、川崎市や産業振興財団が川崎ロボット競技大会というのを毎年やっておりまして、大変人気がございます。マスコミにも大きく取り上げていただけます。科学技術庁が二〇〇一年の開催に向けて検討中の国際的なロボット競技大会、ロボリンビックについて私は物すごく期待をしておるのでございます。  ただ、ロボリンピックを成功させるには財政上の問題だとかさまざまな困難がまだまだ予想されている、このようにも承っておるわけでございまして、検討状況などを、ロボリンビック懇談会顧問というお立場で御努力をいただいております加藤政務次官がきょうお見えでございますから、御答弁をお願いしたいと思っているのです。  そして、本当はこの後に質問をしようと思ったのですけれども、時計を見ますともう時間がございませんので、あわせて先に質問をさせていただきたいと思っているのです。  手塚治虫ワールドという話は御存じかと存じております。既に国内の中で二カ所ぐらいに絞り込んでおりまして、実は私の川崎市が最終の候補地の一つになっておるのでございます。今、市民、知事さんも市長さんも挙げて誘致をしよう、こんな取り組みが始まっております。署名運動もやっているのです。  ただ、これは考えたら、第三セクターになったとしても民間の仕事なんですね。でも、今の視点から考えると、科学技術庁なり国側で何か支援をすることができないのかな、こんな思いがございます。  もう一つは、ロボリンビックと手塚治虫さんのこのすばらしいテーマパークが合体できるような、何か、その候補地が決まったら第一回目のロボリンピックはその場所でやる、こんなことができないものなのかな、このように思っているのです。  実は、鉄腕アトムの誕生日は二〇〇三年なんだそうでございます。私も実は子供のときさんざん読んだ漫画でございましたけれども、そこまでは詳しくなかったのでございますが、その年もだんだんと近づいてまいりますので、ぜひひとつ、重ねて幾つかお尋ねをしましたけれども、加藤政務次官、お答えをお願いをしたいと思います。
  20. 加藤紀文

    加藤(紀)政府委員 今先生御指摘の、青少年を初めとする一般の方々が科学技術を楽しみながら体険または理解していく上で、ロボット競技会というのは大変効果のあるものだと私も思っております。  また、この衆議院の科学技術委員会でも国際的なロボット競技会の開催が提案されており、我が科学技術庁においても有識者から成る懇談会を開催して、効果的なイベントのイメージづくりというのを本年一月に公表したところであります。  具体的には、二〇〇一年に国際フォーラム、ロボット競技会、各種イベントから成る総合的イベントを開催する構想が提案されました。現在、科学技術振興事業団において、この提案に基づいて、どのようにすれば実現できるか、その具体的内容、開催までのスケジュール、実施主体、財政基盤等について検討を進めているところであります。  また、懇談会報告をもとに、国民一般から広くアイデアを募るためにインターネットを通じた意見募集も行っているところであります。  また、先生お尋ねの手塚ワールドでありますが、やはり科学技術創造立国実現していくためには、青少年を初めとする国民の関心を喚起したり、理解増進しつつ、科学技術振興に関する国民的な合意形成が必要ではなかろうかと思うわけであります、そのためには、政府のみならず、産業界、学界等も含めた幅広い活動を展開していくことが必要なのではなかろうか。そのような観点から、民間団体を中心とした、人間と科学の共生を基本的なコンセプトに含んだ手塚治虫ワールドの構想が進められていることは大変喜ばしいことだと思います。  ただ、先ほど申し上げましたように、ロボリンピックの開催につきまして今具体的な内容が検討されている最中でございますので、このロボリンビックと手塚ワールドの関係といってもまたなかなか、そこら辺がどうなっていくかというのはこれからの話でありますが、御指摘の点も踏まえながら幅広い検討を進めてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  21. 田中和徳

    ○田中(和)委員 御答弁ありがとうございました。  終わります。
  22. 大野由利子

    大野委員長 辻一彦さん。
  23. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きょうは大臣の所信に対する質問でありますから、しばらくの間一幾つかの問題をお伺いしたいと思うのです。  まず第一に、去年は、私のところの「もんじゅ」それから「ふげん」、それから東海の再処理工場あるいはその廃棄物のずさん管理、それから人形峠の残鉱の管理問題等々、五つほどの非常に大きな問題が出まして、私もその五カ所には実は全部調査に参って、いろいろな問題を感じておりますので、これから法案審議等もありますから、逐次いろいろとお尋ねをいたしたい、こう思っております。  そういう暗い中で、実は、宇宙開発分野ではロケットはかなり大きな成果を上げて、アメリカの方から二十機もロケットの発注があるというようなことで、明るいニュースもあるなといって喜んでおったのですが、しかしこれは御承知のような結果になって、大変残念なことだと思います。この問題は、私どもの同僚の近藤委員宇宙問題に絞って質問しますから、しっかりやってもらいたいということだけ申し上げて、これは割愛したいと思います。  そこで、原子力中心に私はお尋ねしたいのですが、今、青森県の知事さんの動き等が、長官からも質問に対してお答えがありました。  原子力ではちょうど五つの県が特に大きな問題を持っている。それは、一番、一定の地域に原発が集中している福井県、これは「ふげん」や「もんじゅ」も抱えております。あるいは福島、新潟というように、大体一千万キロワット単位の原発の集中する大きなエネルギーの供給地でありますが、この三県と、それから研究施設が集中している東海を中心とする茨城、また再処理工場を中心とする青森。私もフランスのラアーグとか、前の、第一の再処理工場は地中海にありましたが、随分前に見てきましたが、フランスの年八百トン処理の最新の工場のそれを今青森に持ってきているわけですが、そういうものを抱えているという点で、この五つの県は非常にそれぞれの特徴といいますか、原子力では大きな位置を占めておると思うのですね。そこで、平成七年の十二月に、御承知のように「もんじゅ」の事故が福井県で起こりましたね。そして、明くる年の一月のたしか下旬であったと思いますが、福井、福島、新潟の三県知事は、そろって総理に、三県知事り提言というものをやっております。  その中身はもう長官御承知のとおりですが、やはりもちろん「もんじゅ」の全面的な原因の究明ですね。それからもう一つは、国民論議をいろいろ原子力で起こすために原子力円卓会議の開催であるとか、あるいはプルサーマル等も全く知られていない、そういうものを論議を起こして、国民の合意を得なければだめだという非常に重大な提言を三県知事は総理にあてて申しているのですね。それが、去年、おととし、この二年間ほどの日本原子力行政の大きな展開の出発点にある意味ではなったと思うのです。  そういう意味で、私は、青森が持つ特殊な現在の重要な役割、こういう点からいえば、原子力行政の責任者である担当長官谷垣長官に会って話をするのは当然でありますが、同時に、三県知事のあのような、過去に総理が会っているという事実からかんがみて、総理は青森県知事に会って忌憚のない意見を一遍聞く、そういう態度をとるべきじゃないかと思いますが、これについての長官のお考えを伺いたい。
  24. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 この間の、青森県知事と私のあるいは通産大臣のお話、これは、概要は先ほど田中委員の御質問にお答えしたとおりでありますが、今、辻先生が御質問のように、三県知事が出された提言というのが、確かにその後の大きな展開になったというふうに私も思っております。  ただ、昨年三月に三県知事が総理とお会いになったのは、その前に総理御自身も入られて閣議了解が行われまして、それを受けて、科学技術庁長官それから通産大臣が入って会談を行った後に行われたものであります。それから、閣議了解につきましては、それより一年前に総理に対して三県知事の要望がございまして、これを踏まえて原子力委員会などでの検討が行われて、ですから、その三県知事と総理の会談は、論点が十分に整理されて、手順を踏んで行われたというふうに私は思っているわけです。  それで、今回の総理への会談の申し入れば、それぞれの行政部局、つまり私のところや通産との調整という、まあ安全協定のあれにつきましては、いわゆる四項目といいまして準備は進めてきたわけですけれども、総理にお会いになりたいという趣旨については十分な調整もなくて突然のものであるという感は、正直言って我々もそう受けとめざるを得ないところがございます。したがいまして、正常な行政のスタイルとしてはやや異例なものと申し上げざるを得ないのではないか。このため、私は、総理の指示もございまして、原子力行政それからエネルギー行政を担当しております私と通産大臣が対応するということで、一昨日、あのような会談を持たせていただいたわけでございます。  私としては、そのような状況の中で誠意を持って対応させていただいたつもりでありますけれども、昨日の朝、青森県知事から御連絡を、電話をいただいたわけでありますけれども、接岸を認める状況ではないというのは大変残念に思っております。私どもも、いろいろなことを検討しながら、早期の解決、速やかに入港できるように懸命に努力をしたいと思っております。
  25. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間的に、それは科技庁長官や通産大臣と会い、そして段階を詰めていくということは大事なことだと思いますよ。だけれども、そういうことはそれとして、青森の持つ重要な日本原子力の中における位置から考えて、やはり率直に知事の意見を、長官はもちろん聞かれたでしょうし、それと同時に総理も聞く道を開くということが大事じゃないか。こういう点で一層の努力をぜひしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  26. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 その点につきましては、私どもも決して固定的に考えているわけではございません。今委員がおっしゃったように、積み重ねも我々もしなければなりません。  それから特に、先ほども私、この委員会の席上でも申し上げましたけれども、青森県だけの問題ではないという知事の問題指摘は重く受けとめさせていただいたと申し上げましたのは、辻先生御指摘のように、五県と辻先生お挙げになりました。やはりこの原子力分野では非常にウエートの重いところというのがありまして、消費県とそういうところとの間に意識のギャップがあるとか、こういうことは先生が御指摘になりました円卓会議でも今まで議論してぎたところであります。どうやったらそういうのを乗り越えられるかということは、我々常に考えていかなければならないことでございまして、いつまでも今のような接岸できないという状況が続いていいと私は思っているわけではありませんので、辻先生の御指摘も頭の中に入れて、誠実に対応させていただきたい、このように思っております。
  27. 辻一彦

    ○辻(一)委員 余り時間を置くことはいけないと思いますから、ぜひ努力をお願いしたいと思います。  そこで、本論に入りますが、いろいろ今原子力の問題を見ると、核燃サイクルという方向をとる、いわゆる再処理路線を我が国は歩んでいますが、その方向をずっとやっていくのか、あるいは、外国の一部の国々が、一部といいますか、半分は違った路線をとっておりますが、一部の修正等による選択肢を選ぶか、非常に大事なときであろうと思います。  ごく簡単に言って、世界には、アメリカを中心とするワンススルー、一回燃料を使って後は使い捨てにするという考え方、それから、日本やフランス、イギリスのように、再処理路線を歩んで、さらにそれを生かそうという道がありますが、我が国が再処理路線を歩む理由について、そんなに詳しくは要らぬですが、ポイントをちょっと聞かせていただきたい。
  28. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように二つの流れがございますが、我が国が再処理をするということを選択する理由といたしましては、一つは、将来にわたりましてエネルギーの安定供給を確保する。使用済み燃料から出されるプルトニウム、それから使い残しのウランがございますから、そういうものを再利用して燃やしていく、そういうことが一点でございます。  それからもう一点は、プルトニウムとかそういうものをそのまま環境中に処分いたしますと、環境に対して負荷がふえますので、そういう負荷をなるべく減らしたい、そういう環境面の配慮、そういう観点から、使用済み燃料を再処理いたしまして、プルトニウムを再び有効利用する、そういうことを考えている次第でございます。
  29. 辻一彦

    ○辻(一)委員 確かに、日本原子力発電所に取り組む初期、一九六〇年代、いわゆる原子力の長期計画がつくられた時分は、ウランは資源がいずれ枯渇する心配がある、だから、ウランを有効に使うために、再処理によってウランに含まれるプルトニウムを分離をしてこれを生かしていこう、こういう考え方から出発したということは私もわかるのです。  一つは、ウラン資源が非常に限られている、それでもう枯渇するだろうという前提がかなりあったのですが、最近のウラン鉱の世界における採鉱年数、毎年掘って、それが何年ぐらいもっかというのを見ると、これは石油が言われた、今石油は四十数年、ウランは七十数年と言われるのですが、石油も、ないないと言いながら、やはり新しい鉱区を開発していくと確保できる。こういう点で、ウランも、国際的な需給を見るとかなり緩んでおって、それが非常に足りなくて非常に急いでプルトニウム等を使っていかなきゃならぬというような状況には必ずしもないと思うのですが、そこらは長官はどのようにお考えか、伺いたいと思います。
  30. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 先生御指摘のように、OECD、IAEAのデータによりますと、世界のウラン埋蔵量についてでございますが、現在の年間の需要量で割りますと、いわゆる可採年数というのは七十三年と言われております。資源で今まで確認されたものは約四百五十一万トンでございます。これも先生御指摘のように、あるいはもう少し探鉱活動等によりましてふえる、そういう可能性はございますが、その可採年数七十三年を短いと見るか長いと見るか、その辺はいろいろな考え方があるかと思いますが、我々としては決して長いというふうに今は考えておりません。  したがいまして、やはりウラン資源は有効に活用する、そういう方針で進んでいきたいと考えている次第でございます。
  31. 辻一彦

    ○辻(一)委員 石油はその計算でいくと何年なのですか。
  32. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 たしか先生御指摘の四十数年だと思いますが、ちょっと今資料を持っておりません。
  33. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今のとおり、石油も、今にもなくなりそうだという話が随分あって、しかしそれでも新しいものの発見で四十三年。でも、ウラン鉱は、それの約倍近い七十三年というのですから、そういう意味で言うと、非常に緊急差し迫ったものではないという感じがする。したがって、世界のウランの、原発に使う燃料用ウランは、まあ三%ほどでしょうが、濃縮ウランはかなりだぶついているというかゆとりがあり、需給は担保されているというのが一つあると思うのですね。それほど差し迫った問題ではない。  それからもう一つは、米ソそれから今のロシアの核弾頭の解体によって相当な濃縮ウランが出てくる。これをアメリカの方は買って、そして薄めて世界に売ろうというのですが、この核弾頭解体に伴う濃縮ウランの状況はどういうものか。簡単でいいですから。
  34. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 核兵器解体に伴います高濃縮ウランにつきましては、米国で百五十トン、ロシアで五百トンが今後二十年間ぐらいの間に市場に供給されると見込まれております。これは、天然ウラン量に換算いたしますとそれぞれ四万五千トンとか十五万トンになりますが、現在の天然ウランの年間消費量が約六万トンでございますので、そういうものと比較いたしますと約三年分でございます。三年分のものが今後二十年間ぐらいの間に出てくる、そういうことでございまして、ウラン市場におきましては、短期的なものにつきましては弱含みの影響を与えるかもしれませんが、長期的には余り影響を及ぼすものではないと考えている次第でございます。
  35. 辻一彦

    ○辻(一)委員 日本が資源が少ない国だということはわかるので、いろいろな知恵を絞って有効なエネルギーを確保しなくてはならぬということは当然だと思うのですが、FBR、高速増殖炉開発に、核燃サイクルのかなめは一つは高速増殖炉ですが、それは出発点においてウランの枯渇ということが非常に懸念されて、かなり日本も急ピッチで取り組んできたと思うのですが、しかし現実には、ウランの需給関係は緩んでいるというか、かなりゆとりがある時期であると思うのです。  こういう中で、私は、必ずしもFBRの開発をそれだけ急ぐことはない、相当な時間を置いて、これは基礎的な問題を、処理しなければならぬ問題をきちっとやることが大事と思うのですが、その点、長官、いかがですか。
  36. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 高速増殖炉開発につきましては、今の、平成六年に策定された原子力長期計画におきましては、やはり高速増殖炉が核燃サイクルの中核であるというふうに位置づけて、二〇〇〇年代初頭に実証炉の建設に着工する、それから、二〇三〇年ごろまでに実用化を目指すというようなはっきりしたスケジュールを定めて開発を進めることにしていたことは、委員御承知のとおりでございます。  他方、去年一月に原子力委員会に設置されましたF懇、高速増殖炉懇談会の方は、去年十二月に報告書が取りまとめられたわけでありますが、その間にいろいろな各界各層の意見を伺いながら取りまとめられたわけでありますが、ここでは、今後の高速増殖炉研究開発の進め方につきまして、非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢である高速増殖炉の実用化の可能性を追求するために研究開発を進めるのだ、それから、実用化に当たっては、実用化時期を含めた開発計画について、安全性と経済性を追求しつつ、将来のエネルギー状況を見ながら柔軟に対応すること、こういうふうになっております。そして、「もんじゅ」はこの研究開発の場の一つとして位置づけられること、こういうようになっておりまして、柔軟な計画もとで段階を踏んで着実に進めていこうという方針をこのF懇で明確にしていただいたところであります。  したがいまして、委員御指摘のように、今まで随分急いでやりてきたではないかという御指摘でありましたけれども、最初にスケジュールありきというようなことではなく、今の報告書を踏まえまして、高速増殖炉研究開発の意義や進め方につきまして、広く国民との対話を得ながら一層の理解が得られるように努力をして、これもキーワードになりますけれども、安全確保大前提高速増殖炉の技術的な可能性というものを追求していく必要がある。だから将来の実用化に向けた研究開発成果の蓄積をやっていくことが肝要だ、このように考えております。
  37. 辻一彦

    ○辻(一)委員 長官認識として、ウラン資源は必ずしも枯渇というような問題でなしに、今日の状況を、かなりな期間を見れば、需給関係はゆとりがある、こういう認識をされていますか。その点だけちょっと簡潔に伺いたい。
  38. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 核兵器の解体に伴って出てくるものとか、いろいろな議論があるわけですけれども、今のウランの消費量から見ますと、それはそう何年もの話でもないと思います。したがって、辻委員のように、若干緩んできているという御指摘もあるわけでありますけれども、私は、枯渇とは申しませんが、長期的に見れば、やはりこういう高速増殖炉開発というものを着実に準備しておく必要がある、こういうふうに思っております。
  39. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ウラン資源の需給関係はかなり緩んでいるということについては御認識があると思います。  そこで、プルサーマルの問題が今非常に大きな問題になっておりますが、ATR、新型転換炉、敦賀の「ふげん」ですね。これは大体、プルトニウムを新型転換炉で燃やそうというので開発にかかって、次に、実証炉に取り組む時期を前にして、電力業界の方は、高くついてどうもならぬからやめたいというので、政府の方も、電力業界がやらぬものをやるわけにはいかないということで、やめる、廃炉にする、こう結論的にはなったと思うのですが、ATR開発を中止した理由について簡潔にちょっとお伺いしたい。
  40. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 ATRにつきましては二つの側面があると思います。  一つは、ATR自身の役割の問題でございます。  もともと、当時、昭和四十年ごろ、ATRを始めたころにつきましては、濃縮ウランの入手がなかなか難しいのじゃないかと。当時、アメリカと一部フランスで供給が独占状態でございまして、供給源を多様化するというのがエネルギー政策の基本でございますので、なるべく濃縮ウランに頼らなくて済むようなものをつくりたいというのがございました。  それと、ウランも有効に活用できるというのがメリットでございましたが、その後、先ほどございましたように、天然ウランの需給も非常に緩和の基調にございますし、ウラン濃縮につきましても国内でもう既に事業化をしている、そういうような状況の変化がございまして、ATRの役割自身が、開発当初に比べて多少変化をしてきたと思っております。  それともう一点は、もう先生御指摘のように、実証炉の建設費が当初予想されたよりも非常に高くなりまして、実用化の見通しというのがなかなか難しくなったわけでございます。  それと同時に、電力会社の方でATR実証炉の代替計画として提案されました全炉心、プルトニウムを燃やす軽水炉でございますが、そういうものは、我々が申しております核燃料リサイクルという我が国の政策の基本にも合うということでございますので、ATRの実証炉を断念してそちらの炉をつくっていただくということになった次第でございます。
  41. 辻一彦

    ○辻(一)委員 実証炉を青森の北の方につくろうという計画が具体化しようとするところでやめたということは、要するに採算が合わないというのが電力業界の一番の原因であろうと思うのです。だから、政府の方も、原子力委員会も、それはやむを得ない、こうしたと私は思いますね。  そこで、このATR、新型転換炉に、これから実証炉を拡大していくという中で相当なプルトニウムを消費する計画があったのですが、その道が残念ながら閉ざされたということ、これは事実だと思うのですね。  それから、今長官は、FBR、高速増殖炉開発は二〇三〇年、こう言われた。それは、この前の長計では確かにそういう打ち出し方をしていますね。だけれども、一九六〇年代には、一九七〇年代の後半になればこの高速増殖炉は実用化する、政府の方はこう言っておったのですね。私が参議院に出てきたのは一九七一年、昭和四十六年ですが、そのときに国会で論議したときには、三十年たてば実用化をする、こう言明しておったのですね。  一九七一年から三十年というと、あと二年、再来年ですよね。それはきちっとそれを発表、国会でも述べておったのですね。それから三十年、あと二年で、とてもこんな実用化なんというのは考えられない。そして、前の長計において、二〇三〇年に技術的体系を確立するというのですま。実用化はどうなんだというと、いろいろな話を聞くと、それはまた時間がかかる。そうすると、そういうスケジュールを組んでいったとしても、二〇五〇年ぐらいが実用化ではないかという話を聞くのですね。  そうすると、その一九六〇年、私が七一年に参議院で、国会で質問してからでももう既に六十数年、実用化の道は先に先に行っておるわけですよ。もし実用化が二〇五〇年、二十年加えたら、これは八十年という時期ですね。いかに、FBRの開発がなかなか容易でないということをこの年月は物語っておると思うのです。  原子力長期計画は、利用開発計画は、プルトニウムをどうするかということについて再処理路線の上に組み立てられておる。だから、ATRで相当量をだんだん使い、実証炉を大きくしていく、そういう中でプルトニウムを消費をする。それから、このFBRも、だんだんこの実証炉を追って拡大をして実用炉にいく中でプルトニウムの消費を図ろうというのが骨組みだったのですね。ところが、この二つともまだ見込みがない。現実にプルトニウムを消費のしようがないという状況になっている。  そうなりますと、世界的に、余ったプルトニウムは残さないというか、余剰を持たないということを約束しておるとすれば、使う場は、このプルサーマル、軽水炉の中にとにかく持ち込んでやるしかない、こういうことに実態としてはなっている。数字だけは、確かに前の長計のその前は八十五トン消費すると言ったのですね。今度は、この前は七十五トンというように。だけれども、それはATRやFBRのだんだん見込みのなくなった分をプルサーマルの方へどんどんこうやってふやしていくのですね。今の状況からすると、恐らく七十五トンというような量は、もしそれを消費しようとすれば、ほとんどプルサーマルに使う計画に、状況を見るとなりつつあるというふうに思いますが、そういう実態として認識していいかどうかをお尋ねしたい。
  42. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 原子力を始めた当初から、要するに天然ウランの入手がどれだけ容易にできるか、あるいは軽水炉は濃縮ウランが必要でございますので、濃縮ウランを本当に入手できるか、そこが非常にはっきりしなくて、基本的にはウランを有効利用に使う、濃縮ウランになるべく依存しないような体系というのをまず技術的に目指したわけでございます。  そういうことで、先ほどの軽水炉、新型転換炉、高速増殖炉、しかも高速増殖炉の導入時期をなるべく早く考えるという計画であったわけでございますが、現実には、天然ウランにつきましても需給が緩んでいる。それから濃縮ウランについても、我が国でも技術開発がうまくいきまして自前の工場を持っている。そういうことで、状況が少し変わっているかと思います。  それから、高速増殖炉の実用化と申しますのは、やはりウランの入手が容易かどうか、ウランの入手が容易でありますれば、基本的には、軽水炉といいますか、経済性の高いものがいいわけでございますが、ウランの入手が容易でなくなれば当然燃料費が高くなって高速増殖炉も十分必要になってくる、そういうことの兼ね合いで実用化努力というのも関係しているのじゃないかと思っております。  そういうことで、高速増殖炉の実用化というのは、そういう現状の軽水炉でいろいろやっていけるという状況を考えますと、先はどのように着実に技術を積み重ねていく、柔軟な計画もとに進めていくということでよろしいのではないかと考えている次第でございます。
  43. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私から言わせてみれば、数字を、原子力長計で七十五トン、八十五トンと、そういうものが出てくるからこれを使わなければいかぬ。それは外国から返ってくるものもありますがね。だけれども、ATR、FBRで、新型転換炉、高速増殖炉でだんだん使う道がなくなってくるから、あとはもうプルサーマルにという、こういう方向に今動いておると思うのですね。電力業界は、ついこの間までは。プルサーマルをやると高くつくからこれはやめたい、嫌だ、こう言っておったのです。ところが、今はやみくもに一生懸命になってやっていらっしゃるけれども、これはいろいろな状況の変化があると思うのですが、なぜ電力業界は、かつては高くつく、割高であるから、コストが高いからやれないと言っておったものが、使えないと言っていたものが、今はこれだけ何でもプルサーマルというような状況になっておるのか、簡潔で結構ですから、ちょっと聞かせてください。
  44. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 電気事業者のお考えというのは、直接聴取しておりませんが、私が想像いたしますには、プルサーマルの経済性、これは、現実に電力会社は現在ではフランスとかイギリスにプルトニウムを所有しているわけですから、それを使うという前提にしますと、普通のウラン燃料でつくるのとコスト的に余り変わらない。そういうことでございますので、発電コストに占める影響というものは非常に微々たるものである。これはワンススルーに比べましてでございます。普通のウラン燃料に比べましてほとんど同じでございます。  それからもう一点は、現実にフランス、イギリスに自分たちの所有するプルトニウムがある、したがってそれは使っていく、そういうことではないかと考えている次第でございます。
  45. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今、日本の長期計画で使おうとするプルトニウムの量は、さっきも申し上げたとおりに、結局使うとすればここへ持っていこうということに考えているのではないかと思われるのですね。ところが、この量を見ると、アメリカとソ連、今日のロシアが、冷戦四十年の間に核弾頭に詰め込んだプルトニウムは、それぞれ百トンずっと言われておるのですね。細かい数字はあれですが、大枠で。  今、我が国がそのプルサーマルに使おうというのは、これはATRもFBRも、当面、何十年か、そんな実用化の道もないとすれば、これはそのプルサーマルに使う以外にこの計画だとなくなるのではないか。そうすると、七十五トンという膨大なプルトニウムを、いかに商業用といえども、米ソの核弾頭に匹敵するだけの量のプルトニウムを日本が使うということは、そういう路線をとるということは非常に問題があるのではないか。  ということは、我が国は、原爆の民族的な体験の中から、国是として非核三原則やあるいは核不拡散というものを持っておる、方針を持っておると思うのですね。これは日本だけではない、世界にもやはりそういうことを説得して、そういう方向に進んでもらわなければいかぬ。そういうときに、今言いましたように、いかに商業用とはいえども、米ソに匹敵するようなプルトニウムを使おうとする方向にずっと固執していったならば、私は、日本の持つこの国是を各国に説得していく場合に極めて道義的な説得力を失うことになるのではないかと思うのですが、これについて長官の御意見を伺いたいと思います。
  46. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 これは辻先生には釈迦に説法でございますけれども、我が国原子力基本法のもとで、厳に平和目的に限って原子力開発利用を推進している、これはもう言うまでもないことであります。  国際的には、核不拡散と原子力平和利用の両立を図る国際的枠組み、この一番の中心は核不拡散条約、NPTであろうと思いますが、その条約上の義務を尊重して、国内にあるすべての核物質について国際原子力機関の厳格な保障措置の適用を受けながらやっている。ですから、我が国原子力平和利用に今委員が御指摘のような核不拡散上の問題があるというふうには私は考えていないわけでございます。  それから、余剰プルトニウムを持たないということを原則として、それでプルトニウム利用計画の透明性を確保しなければならないわけでありますが、プルトニウムの管理状況の公表であるとか、その管理に関する国際枠組みの構築への貢献といったところにも積極的に取り組んでいるわけであります。  今後とも、国内外の理解を得ながら、プルトニウム利用が円滑に進められるように、平和利用ということをきちっと踏まえてやってまいりたい、こう考えております。
  47. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、長官の言われるとおりに、私も、IAEA、国際原子力機関の厳しい管理下にプルトニウムは日本においては置いておりますから、我が国が核を拡散して核兵器を持つ、そういう方向、そういうことはあり得ないし、これはないと思いますね。  だけれども、世界のそれぞれの国々、例えばイラクは数百グラムのプルトニウムがどこへ行ったかということでこれだけの問題になる、北朝鮮では数キログラムのプルトニウムがどこにあるかということでこれだけの問題になる。だから、今もそんな方向の、いろいろやっている国がほかにもあるかもわからない。そういう中で我が国が今この核不拡散ということを説得している背景は、やはり被爆民族としてのこれが一番大きな力になると思うのです。  片方ではそういう努力をしながら、片方では七十五トン、もっとなるかわからない、そういう膨大な、管理をされているのはそれは当然ですが、商業用といえども、そういう大量のプルトニウム消費社会に入っていくということが道義的な面において説得力を極めて弱くしていると思う、これは我が国としてとる方法であるかどうか非常に問題がある、この点を私は言っているのですが、これについてはいかがですか。
  48. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 辻委員の、過去の被爆体験も踏まえながら平和的に利用していく道を我が国推進していく、この点については私は辻先生と全く考え方を同じくするものでございます。  ただ、今の、プルトニウムを平和利用することについて、これだけ利用するのは国際的な道義性で説得力を欠くのではないかという点については、やや認識を異にしておりまして、やはり我が国の資源の状況等を考えますと、平和的に、安全に、国際的な透明性も持ちながら進めていく、この基本で私は進んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  49. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今長官が、資源という点からというお話で、ちょっとそれについて私も意見があるのでお尋ねしたいのです。  アメリカは当面水中プールの中に使用済み燃料を保管している。それは、一つは、ワンススルーで使い捨てにするのだという考えがありますね。しかし、あの広大な砂漠を持つアメリカにおいてもなお、使い捨てにするところの使用済み燃料を捨てる場所がどうしても決められない。だから、いつまでにそういう方針を決めるということは、法律で、上下院で決めても具体的にはまだ決めないという面がありますね。  一面ではそういう形で水中保管をしているのだと思うのだけれども、もう一つは、私は、昭和六十年ごろだったか、ちょっとはっきり年月を覚えておりませんが、IAEA、ウィーンへ行ってローゼンという原子力安全部長と随分論議をしたことがあるのですね。アメリカ人ですが、IAEA、国際原子力機関の安全問題では責任者なのです。日本にもその二年か一年後に、高浜の原発にOSARTとして、これは査察ではないのですが、呼ばれたらそこへ行って必要な専門的な助言をする、そういうOSARTで来て、高浜でも私も記者会見の前に会って随分論議をしたことがあるのです。  ウィーンで彼が言っておったことは、使用済み燃料には二つの路線があるが、それについての考えをいろいろ意見交換をしたときにこう言っておったのですね。水の中に保管するもう一つの意味は、将来人類がプルトニウムとナトリウムを制御できるときが来るのか。ナトリウムの特性からして、私はこれは非常に無理だと思うのです。空気に触れても水に触れても爆発するようなものを大量に冷却水で還流させている。これの制御は非常に無理だと思いますが、そういう可能性が将来あるかもしれない、これはローゼンですね。  それから同時に、プルトニウムを軍事転用できないような取り出し方が科学の分野で将来あるかもわからない。また、動燃でもやっておりますが、高レベルの放射性廃棄物を持つ物質をぶつけると放射能を持たない金属に変わるということで、実験段階では一部やっているわけですね。だから、科学の将来は、このプルトニウムの毒性をなくすこととか、軍事転用ができない道とか、いろいろな道があるかもわからない。だから、ある意味では、米ソは水の中につけて、五十年ぐらい水中に保管をして、どうなってくるのか様子を見よう、こういうような見方もできると言っておったわけですね。  そこで、このプルトニウムとナトリウムの両方を制御するというのはなかなか難しいと私は思いますが、資源ということを考えられるなら、資源のない我が国が、何か早く分離をして、またそれをやみくもに使ってしまうというようなことをしなくても、水の中につけて五十年ぐらい状況を見るということも、資源の少ない国として一つの選択肢になり得るのではないか。それが可能性があるかどうかわからないのですが、三十ないし五十年、水につけて様子を見る。だから、原発で燃料を燃やしたら、後は全部再処理をしなくてはならないという日本の路線にもう少し修正した対応の道があってもいいのではないか。  特に、原子力委員会政府の方は、使用済み燃料の中間貯蔵、中間保管の閣議了承や原子力委員会の承認をやっておるわけですよ。これは角度が違いますね。角度が違う。これは、もう持っていくところがない使用済み燃料を、立地のところは敷地に抱えて本当に困って心配を持っているのですから、それをどこかに中間保管をすべきではないか。日本の場合は、再処理をするとするなら、その間の中間保管をやるべきだというところから、原子力委員会政府は閣議をもって了承して中間報告というのを出しておるわけですね。  そういうことを考えると、私は、全部再処理するということがいいのかどうか、いろいろな選択の余地があると思うのですよ。さっき言ったように、別の角度から今中間貯蔵設備というのが出てきているでしょう。角度は違いますが、必要と現実に対応せざるを得ないと中間貯蔵設備が出てくるならば、これは一つの選択として考えるべきではないかと思いますが、いかがですか。
  50. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 私は、今委員が御指摘になったプルトニウムやナトリウムの制御の可能性ということについて、今ここではりきり申し上げられるだけの知識も自信もないわけでございますけれども、確かに、今委員が御指摘になったようないろいろな現実的な必要性などを踏まえて、我が国も中間貯蔵の道を、閣議了解あるいは使用済燃料貯蔵対策検討会というようなものもつくりまして、新たな貯蔵方法についていろいろ検討しているところでございますし、中間貯蔵というのもあるわけでありますけれども、委員御指摘の点とは若干観点が違うことも事実でございます。  今のところは、私どもとしましては、使用済み燃料は再処理することが基本であるという立場でいろいろな問題を進めておりまして、今委員に対して、この基本を変えるというふうに申し上げる用意は我々にはないわけでございますけれども、委員の御指摘というのも、我々としては十分に頭の中に置いておきたいと思っております。
  51. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この問題は、別に私はこういう方向は反対だとかというような立場ではなしに、いろいろ考えてみると、これから相当現実的な対応をする必要があるだろう、そのことを十分検討すべきだと思うのですが、その点についていかがですか。
  52. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 ですから、繰り返しになりますが、まだ今のところ、まだというとちょっと語弊がありますが、我が国の選択としては、基本は再処理するという基本でやっていることは、私もそれでよいのだと思っております。  ただ、いろいろな可能性というものをやはり我々も頭の中に置いて、常にそれを検討しながら、今の路線が正しいかどうか比較検討していく精神は失ってはいけない、このように思っております。
  53. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きょうは、これをそれほど専門的に論議をする場ではないと思いますから、この程度にしたいと思います。  そこで、長官原子力開発利用長期計画、長計ですね、これは数字は一応合わせているけれども、中身はもう随分変わってきているのですよ、事実として。こういう中で、やはり長計の現実に合わせた見直しをやるべきであると思いますけれども、いかがですか。
  54. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 確かに、先ほども申しましたように、平成六年度でしたか、長期計画の決めていることと、高速増殖炉開発に関しましても、今度の高速増殖炉懇談会の報告というのは若干トーンが変わってきているということは事実でございます。ただ、今そういう一つ一つの問題を整理しているところでございまして、現時点で、長期開発計画を見直そうというようなことが今直ちに視野に入っているわけではございません。
  55. 辻一彦

    ○辻(一)委員 長計を見直すべきであると思いますから、ひとつ検討をされることを強く要求しておきたいと思います。  もう一つは、私は、地球環境原子力の廃棄物の問題、これについてちょっと伺いたいと思います。  先ほど長官所信や、あるいはまた答弁の中にも出ておりましたが、京都の会議では、炭酸ガス、二酸化炭素の地球温暖化問題が論議になった。その中に、政府の方で、炭酸ガスを、温暖化を防ぐのは原発をもう何十基かつくる以外にないというような非常に短絡した意見が出ておったように思います。地球環境の点からいうと、非常に一短絡した考えがあるのですね。  私は、地球環境は、第一が炭酸ガス、温暖化問題、それから第二は酸性雨、それから第三はオゾンの破壊、第四に、この原子力の放射性廃棄物が地球環境上大きな問題になる可能性があると思うのですよ。  それで、私は中国との関係が深いので台湾は行かない方針にしておったのですが、やはり韓国と台湾の原発をどう動かしているか見てこないといかぬというので、夏に台湾へ行ってきました。台湾も、廃棄物のこれについては全然方針が立てられない。私は世界じゅうがそうだと思うのですね。  それで、やはり地球環境の第四の課題として、原子力問題、この廃棄物は考えなくてはいかぬのではないか、この点についてどう考えるかを伺って、終わりたいと思います。
  56. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 放射性廃棄物の処分の問題は、原子力開発利用していくときに避けて通れない問題でございます。  低レベルの問題については、現に埋設処分を安全かつ円滑に行っていると思っておりますし、他方、高レベル放射性廃棄物においては、今、原子力委員会もとでの処分懇談会でいろいろ議論をし、取りまとめているわけでございます。その懇談会の報告の中にも、高レベル放射性廃棄物処分問題については対応がおくれることがあってはならないという認識を示しております。  したがいまして、この点に今後力を入れて、きちっとした取り組みをしていかなければならないと思っております。
  57. 辻一彦

    ○辻(一)委員 終わります。
  58. 大野由利子

    大野委員長 近藤昭一さん。
  59. 近藤昭一

    近藤委員 民友連の近藤昭一でございます。  きょうは、大臣の所信表明をいただきまして感じたこと、そしてまた準備してまいりました質問をさせていただきたいと思います。  大臣の所信表明の中にもありました、科学技術振興というものがいかに我が国にとって大切であるか、それは、経済構造改革の面で、また、日本システムそのものの変革にとって大変大きな原動力になるのだというお話、私も全くそのとおりだと思います。そんな中で、科学技術振興させていくためには、小野委員の質問に対する大臣の御返答の中にもあったかと思いますけれども、やはり国民理解が必要だ、そしてまた国民の、特に若い人たち科学技術振興に対する夢を感じてもらうことが必要だ、そんなお言葉があったかと思うのであります。  そんな中で、先般、先ほど田中委員も御質問になられましたけれども、宇宙開発事業団ロケットHⅡの失敗がありました。そのことについてお伺いをしたいと思います。  先ほど、原因についてはまだ究明中ではっきりしないということがありましたけれども、こういった事故、世界でもロケットの打ち上げというのはたくさん行われているようでありますけれども、一体どれぐらいの成功率というか失敗率が大体なのでしょうか。
  60. 青江茂

    ○青江政府委員 お答え申し上げます。  世界のロケットの打ち上げの一般的な状況、アトラスでございますとか、アリアンでございますとか、デルタ等々の実績を見ますと、成功率といいますのは、一般的に申しますと大体九〇%から九五%、こういった数値であろうかというふうに認識をいたしてございます。  今般の我が方の失敗をいたしましたHⅡロケットの五号機の場合、信頼性をあらわします信頼度、これは各部品の信頼度というものを掛け合わせて出します数値でございますけれども、それにつきましては〇・九七ということを見込んでございました。  そういう状況にございます。
  61. 近藤昭一

    近藤委員 世界的には大体九〇から九五%、そして今回も、ある程度と言うと失礼かもしれませんが、一〇〇%ではなくて、失敗が何らかの原因で起こるという可能性があったかと思いますが、そういった中で、しかしながら大変に大きな、巨額の税金を投入している。これは失礼ですけれども、何かロケットの打ち上げには保険みたいなものはあるのでしょうか。
  62. 青江茂

    ○青江政府委員 ロケットの打ち上げにつきましての保険につきましては、一点はまず第三者損害、すなわちロケット打ち上げによりまして第三者というものに与える損害に対しましての保険につきましては、これはございまして、今回の打ち上げにつきましても掛けてございます。二百億円の保険ということでもって掛けてございます。  それから、打ち上げそのもの、衛星というものの機能を全うできるかどうかということにつきましての保険につきましては、これは研究開発段階、技術開発を目的とする衛星ということでもございまして、なかなか保険にはなじまないという側面がございまして、非常に部分的に、具体的な数値としましては十億円、特に何か起きましたときの緊急対応といったふうな要件に該当するものについてのみ保険というものが掛けられてございます。  以上でございます。
  63. 近藤昭一

    近藤委員 保険は掛けてはあるけれども、そぐわないところもあって、一部である。そうすると、今回かかった費用のすべてがもちろん保険で戻ってくるわけではないし、また、こういった失敗が起こると、保険料、いわゆる保険料率、こういうものは上がってくるのでありましょうか。
  64. 青江茂

    ○青江政府委員 今申し上げました第三者損害というものについての保険料率と申しますのは、具体的な数値から申しますと、二百億円の保険に対しまして二千万円の保険料でございます。これが今後我が方のHⅡロケットの打ち上げに対しましてどのような形で推移をしていくかということにつきましては、若干まだ不確定。いろいろな要素で保険料率というのは決まりますもので、直ちにということではなかろうというふうに思うわけでございますけれども、その辺の推移はもう少し見きわめないとわからない、こういう状況にございます。
  65. 近藤昭一

    近藤委員 わかりました。これからの推移、まだはっきりしないところがあるということでありますけれども、ただ、結果的に莫大な費用を投入して、その本当に莫大な費用がむだになったと言うと行き過ぎかもしれません、これからの糧にする部分もあるでしょうから、また一〇〇%成功するわけではないでしょうから。  ただ、やはりこれは技術的な面とともに、先ほど申し上げました科学技術日本もたしかこれは二十機の受注を既に受けている。これはロケットの世界では非常に異例のことと聞いておりますけれども、それほどまでに世界も期待をしてきた。日本国民も、特に若い人が期待してきたと思うのです。それに対して、こういった事故が起きた。まだ原因ははっきりしないけれども、いろいろなところでどうも問題があるのではないかなと、仄聞しているところがございます。それは、宇宙開発事業団とメーカーですか、それぞれのロケットを製作しているメーカー、これとの意思疎通とかあるいは監督というか、とにかく関係が不十分だったのではないか、そんなような声を聞いたりしておるのですが、メーカーと開発事業団との関係等々はどういうふうになっておりますでしょうか。
  66. 青江茂

    ○青江政府委員 宇宙開発事業団ロケット開発し製作する場合におきまして、もちろん宇宙開発事業団は製作部門を持つわけじゃございませんので、そこのところはメーカーに委託をするという形でもって物をつくるわけでございますが、その過程におきまして、宇宙開発事業団とメーカーとの関係というのがどういう関係になっているかというふうな問題になってくるわけでございますけれども、今回のこのトラブルというものを、もう少しきちんと原因究明というものをやっていく、どこに原因というものがあったのかを見きわめさせていただくということがまずは先決であろうかなというふうに思っておるわけでございます。  先ほど大臣から御答弁申し上げましたその中にもございましたとおり、確かに今回のものだけではなくて、以前に幾つかのトラブルというものがあるわけでございまして、言ってみれば共通的に内在する問題、隠れている問題というものがあるのかもしれない。その中に御指摘のございましたようなメーカーとの関係というものが構造的な問題としてあるのかもしれない。その辺にも十分今後、原因究明というものを見きわめつつ、きちんとメスを入れて、その問題というものがもしございますれば、そこを摘出して対応していくというふうに臨みたい、かように考えているわけでございます。
  67. 近藤昭一

    近藤委員 お答えから感じられるのは、とにかくまだはっきりしないから努力をするというような、少々あいまいな御返答かなと私は思うわけでありますが、ただ、宇宙開発事業団現場のメーカー、これはどういうような関係になっているのですか。例えば、宇宙開発事業団が設計等々をして、その設計を受けてメーカーの方では製造する、そういうような関係なんでしょうか。
  68. 青江茂

    ○青江政府委員 設計につきましての基本的な責任といいますものは宇宙開発事業団が負ってございます。その設計に沿いまして製作の発注をいたすというわけでございますけれども、その段階におきまして、当然のことながらその指示というものをいたす。例えば、材料はこういうものを使うとか、寸法はこういう形で、こういうことは全部きちんと渡すわけでございます。そして、メーカーにおきましてその製造がなされる。そして、その検査という段階におきまして、幾つかの過程がございますけれども、それぞれ全部立ち会いまして審査をいたす。そして、最終的に、その審査結果というものを踏まえまして領取をいたす、受け取るというふうな形になってございます。
  69. 近藤昭一

    近藤委員 そうしますと、開発事業団の方で設計等々をして、それぞれ部品をつくるとき、あるいは全体を組み立てるとき、できてから、いろいろ検査に立ち会うということでございますね。  そうすると、ふだんというか、恒常的には、日常的には、何か人事交流というか技術研修といいましょうか、そんなものはお互いにやっていらっしゃるでしょうか。
  70. 青江茂

    ○青江政府委員 一つは、製作の過程におきまして、先ほど申し上げましたようなことでございますので、かなり濃密なメーカーとの間のやりとりというものはあるわけでございますが、今先生おっしゃいました一種研修と申しましょうか、宇宙開発事業団の技術者というものの質の向上という点からいたしまして、これは実は三年前でございましょうか、「きく六号」、ETSWのトラブルのときに、いろいろな角度からの調査が行われました。  そのときのレポートの中の指摘の重要項目のうちの一つに、宇宙開発事業団自身の技術力の強化ということが挙げられてございまして、そういうものの一環といたしまして、宇宙開発事業団技術陣の質の向上、量的な確保も当然あるわけでございますが、質の向上ということが挙げられ、その一環としまして、生産現場、いわゆる現場というものをきちんと踏むということが大変重要じゃないかということでもちまして、宇宙開発事業団部内におきましての非常に生産に近いところとの間の技術交流というものも当然のことながら、今おっしゃったメーカーとの間の技術交流というものも新たな仕組みとして設けまして、そういうものでもちまして、人的な質の向上というものにつきまして努力をいたしている途上にあるという状況でございます。
  71. 近藤昭一

    近藤委員 なるほど、それは非常に大切なことだと思うのですよね。現場を知るということだと思いますし、それは技術を知るということでありましょうし、また、これは非常に抽象的な言い方かもしれませんが、ふだんからのやはり人的交流、お互いの理解というものが大切じゃないかなと思います。先ほども、委員会に、部屋におりましたら、そこのブラインドがざあっとあいていってしまいましたけれども、何か機械というものはやはり心がないというか、それを使う人というのが非常に大事だな、そんなふうに思います。  そういった意味で、ぜひ現場研修。聞くところによりますと、その現場研修もなかなか人数が少ない、また日常的な業務が大変に忙しいので、ゆっくり余裕を持った研修ができないというようなことも聞いておりますので、ぜひともその点を充実させていただきたいと思います。  さて、もう時間も迫ってまいりましたので、大臣にちょっとお伺いしたいのでありますけれども、今回HⅡのロケット失敗しました。そして、日本が受注しているロケット、衛星の打ち上げというのはHⅡAであります。このHⅡではありません。  そうしますと、今後、HⅡAの開発にどんな影響が出るのか、HⅡAを含めて宇宙開発事業全体にどんな影響が出るのか。あるいは、大臣がふだんからおっしゃっております、科学技術振興、これが日本のこれからのあり方にとって大切だと言われる、日本のこれからにとってどんな影響があるのか、そんなことをお聞きしたいと思います。
  72. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今回の事故が、今後の衛星打ち上げビジネスといいますか、それと宇宙開発事業全体に及ぼす影響はどうかということでありますけれども、先ほども御答弁もし、局長も申し上げたと思うのですが、現在究明作業を進めているところでありまして、三月五日の評価部会で宇宙開発事業団から、一次推論として、ロケットの状況を示すデータの解析結果から、第二段エンジンの燃焼室から燃焼ガスが出てエンジン制御回路電源を焼損した結果である、その結果エンジンがとまった可能性が強いという報告を受けているわけです。  引き続きこの事故原因についてさらに詳細な分析を進めていかなければならないわけでありますが、現時点でまだ事故原因を特定できておりませんが、宇宙開発事業団としては、ロケットの第二段に使われているLE5それからLE5Aエンジンについては、これまでの十四回の打ち上げにおいては正常に機能してきたものであって、設計の大幅変更が必要となるような性格のものではないのではないか、現段階で一応そういうふうに分析しております。  それから、第二に、次回の打ち上げまで一年半の時間的余裕があるわけでありますから、原因究明を徹底的に行ってきちんと対策を講じることはスケジュール的にも十分可能なのではないかというふうに考えていると報告を受けているところであります。  現段階では、今後の商業衛星ビジネス及び宇宙開発事業全体に及ぼす具体的な影響についてはにわかに断定できる状況ではないのでございますけれども、いずれにせよ、宇宙開発委員会での審議結果などを踏まえて、今度の失敗を教訓として、今後とも宇宙開発推進国民の御理解を得ながら進めてまいりたい、こう思っております。
  73. 近藤昭一

    近藤委員 ありがとうございました。  ぜひとも徹底究明をして、それをしっかりと公開していただいて、夢のある科学技術振興をしていただきたいと思います。  三匹のカエルではございませんが、ばたばた体を動かしていたらヨーグルトになってしまってそこから跳べない、あるいはバターの中に閉じ込められないように、ぜひお願いをしたいと思います。ありがとうございました。
  74. 大野由利子

    大野委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。午前十一時四十二分休憩LV1午後一時二分開議
  75. 大野由利子

    大野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西川知雄さん。
  76. 西川知雄

    西川(知)委員 平和・改革西川知雄でございます。  きょうは論点を一つに絞ってお尋ねをいたしたいと思います。マスコミ等々でもいろいろと報道されており、国民的な関心が非常に強いという返還高レベル放射性廃棄物、ガラス固化体の搬入、この問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず、長官も御存じのように、現在では電力の約三四%を原子力に頼っております。また、けさされたという長官所信表明、ここでも、最後のところにこの問題の国家的な重要性ということが書かれており、そしてそれを表明されたというふうに私は理解をしております。  ところで、青森県の木村知事が、先月の下旬より総理に対して、原子力政策等々の国の方針についてぜひ直接面談をして話をしたいということを申し入れておられたにもかかわらず、そういうようなことは漠然としているので、議論を担当大臣のところで、通産大臣と科学技術庁長官でございますが、まずそこで詰めてからにしてください、そういうことで、青森県の知事は、公務多忙なところをわざわざ東京まで来られて、面談もできずに、八時間か九時間かけてまた青森県の方に帰ってみえた、こういうことが現実であるというふうに私は理解をしております。  今申し上げましたように、原子力重要性、そしてきょうの所信表明、こういうことで、この原子力問題というのは私は国策ではないかと思う。非常に重要なことである、こういうふうに思います。  この間まで予算委員会の総括質問というところで、私も出席して、長官出席されておりました。そのときに、沖縄の問題はこれはたくさん取り上げられて、そして総理も大田知事と会われておる、こういうことでございますが、今回、こういうふうに誠意を見せて木村知事がわざわざ東京まで来られたというのに、総理はこれに対して、これは所轄大臣の問題であるというふうにおっしゃって会わなかった。  それなれば、沖縄の問題であれば、まず沖縄開発庁の長官に会って、そして話されて、こういうことが筋だと思うのですが、沖縄の場合だけまず総理が、非常にイニシアチブを持って、気を使って会っていらっしゃる。これは、沖縄とこの原子力の今の問題とどういうふうに重要性は違うのですか。そして、どういう理由でその重要性を判断されるのか、またその根拠はどこか法律であれば、それを言ってください。
  77. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 この青森県の問題は若干経緯がございますので、経緯にさかのぼって御説明を申し上げたいと思っておりますが、今西川委員は、二月の下旬から知事の方から総理に会談のお申し入れがあったと。私も、ちょっと時系列、手元にメモがありませんので、できるだけ記憶をたどって正確に申し上げたいと思っておりますが、実は、今まで青森県と科学技術庁、そして通産省との間にいろいろな交渉がございました。  その交渉は、青森県の六ケ所の再処理施設への試験燃料の搬入にかかわる安全協定につきまして、昨年来ずっと議論がございまして、たしか昨年の九月であったと思いますが、青森県の御要請もあって、当時の科学技術庁長官、近岡さんとそれから通産大臣、それに官房長官がオブザーバーで入られまして、青森県との協議会を持たれました。それで、これも青森県の御要請に基づいてやったわけでありますが、その後、さらに青森からいろいろな御要請がありまして、四項目の御要求がございました。それで、我々といたしましては、今の使用済み燃料の搬入にかかわる安全協定の問題はずっと協議をさせていただいて、三月五日にも幹事会を開いたところでございます。  したがいまして、そういうお話はずっとやっておったわけです。ところが、三月十日、昨日、ガラス固化体の搬入の予定日があったことは御承知のとおりでありますが、つまり、二月の何日でしたか、ちょっと記憶がありませんが、総理にお申し入れの段階では、私どもも、どういうことで総理にお申し入れになったのか、よくつかんでいなかったわけでありますが、三月七日になりまして、ガラス固化体の搬入の問題、これは大詰めの時期でございます。それで、総理に会見できなければ非常な決意がある―――――非常な決意とおっしゃったか、そういう、重大な決意があるという趣旨の記者会見があった。それ以来、私も、やはり混乱が起こってはいけないというので、先ほど申し上げたように、総理の御指示もあって青森県知事ともお会いしたという経緯でございます。  ただ、私が申し上げたいのは、この二つの問題はいささか別の問題であって、私どもと話し合いのないままに総理にボールが行ったということは、これは御理解をいただきたいと思います。  それで、青森と沖縄との問題の違いは何かということでありますけれども、これもやはりいろいろな段階を踏んでの御議論であるというふうに私は理解をいたしております。
  78. 西川知雄

    西川(知)委員 それじゃ、段階を踏めば総理と青森県知事との会見が成立する、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  79. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 私も、その点は、青森県知事とお目にかかった際も、あるいは記者会見などで、あるいはこの委員会でお答えする場合も、慎重に申し上げているつもりでありますけれども、青森県知事から私におっしゃっていることは、総理との会見を実現するように進言するよう努力してほしいということでありますけれども、私のお答えの仕方は、現在の段階はまだそういうことを御進言できる段階ではないという趣旨の表現で私はお答えしております。
  80. 西川知雄

    西川(知)委員 じゃ、一つお尋ねしますが、原子力政策に関して、例えば「もんじゅ」の事故があったというときに、その後、いろいろな関係する県の知事、その知事に総理大臣が会われたというような過去の例はございますでしょうか。
  81. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 網羅的には存じておりませんが、最近私が記憶しております件で申しますと、昨年の二月に核燃料サイクルにつきまして閣議了解しました後、福井、福島、新潟三県の知事に総理が協力を要請したということがございますが、これは、それよりかなり以前に三県の知事から総理に要請がございまして、その要請にこたえまして、それぞれ原子力委員会でもいろいろ検討いたしましたし、通産省でも総合エネルギー調査会が開かれていろいろな準備をされて、そういう結論を踏まえまして閣議了解された。その閣議了解された内容の中のプルサーマルにつきまして三県の知事に要請された、そういう経緯はございました。
  82. 西川知雄

    西川(知)委員 今のお話を聞きますと、福井、福島、新潟県の三知事に対しては前々からお申し出があった、それゆえ、いろいろな経過があったので、その後会うことはやぶさかではなかった、そういうように聞こえるわけです。  青森県の場合も、もう一度確認をいたしますが、科技庁の長官とか通産大臣といろいろと会見をされて、お話を真摯にされたと思います。これは時間の問題ではなくて、内容の、そして中身の問題だと思います。そうすると、今長官は、まだ十分にこの問題について青森県は国と話していない、こういうふうにお考えなんでしょうか。
  83. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 先ほど申し上げました四項目の問題につきましては、現に幹事会も開いておりまして、いろいろ実務的な詰めも行われている状況でございます。この進捗状況に関しては、私の評価と、まあ青森県知事がどう評価しておられるか、私が申し上げる立場ではございませんけれども、この間の会談の際にも、この進め方の評価については青森県知事からも御発言があったところでございます。  その点は、私と認識が一致しております点は、この四項目についてはこれからも協議を続けていこう、ただ、いろいろな多岐にわたる問題を含んでいるので、にわかにこの問題がすべて解決するところまでいくにはちょっと時間が要るだろうと。こういう認識は、私は、青森県知事と私の間で一致していると思っております。
  84. 西川知雄

    西川(知)委員 今、予算委員会の総括質疑も終わりまして、また集中審議もきのう終わりました。総理は時間があるはずでございます。そして、科技庁の長官が、今おっしゃったように、いろいろと青森県の知事とも論点を煮詰め合って、問題点がどこにあるかということも明確になってきたはずでございます。  先ほどの沖縄の件につきましては、これは経緯があるからだと言いますが、青森県の件も、これはずっと昔からの経緯がございます。したがいまして、総理も時間があいたわけで、そして論点も煮詰められたわけですから、ぜひ総理は青森県の知事とお会いになって、そんなに時間はかからないとおっしゃっているわけですから、ここはちゃんと、この原子力政策というものが先ほど申しましたように国策として重要なものなのだ、みんなで考えていかなければならないのだ、国民全体の問題なんだと。そのためには、総理がみずから表に出て、そしてちゃんと議論をし、地元の意見を聞くということが私は最も重要ではないかと思います。  六十年の基本協定書にも、地域振興に寄与することを前提としてその立地協力を受諾したのですけれども、青森県と六カ所村の意向を最大限に尊重するものというふうに書いているわけですから、その協定はそのとおりに守るというのが当たり前のことではないかというふうに私は思います。  そこで、この問題について若干お尋ねをしたいのでございますが、今、現状の問題としては、これがまだ接岸の許可がおりていないということでございます。そうすると、片っ方では青森県の知事は総理に会いたい、ところが総理は会わない、デッドロックの状態になっております。一体どういうふうに問題を解決されようとしているのか。  例えば、接岸の許可を出さないということは行政庁としての不作為処分であると、それについての違法確認の訴えを出されるつもりなのか、それともまた損害賠償の請求をされるつもりなのか。一体どうやって問題を解決されるおつもりなのか。  また、どういう条件が整えば総理は青森県の知事と出会われるのか、その点について御説明を願います。
  85. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 まず、西川委員と私の間で若干認識が達っておりますことは、確かに四項目については、どういう問題点があり、これからどういうことをやりていこうかということはだんだんに整理ができてきております。それで、あとは実務的な積み重ねが安全確保のためにも必要な段階であるというふうに思っております。  ただ、このガラス固化体の入港問題に関しては、今まで確かに、過去、田中科学技術庁長官の第一回目の入港のときに、科学技術庁と青森県側の間にお話し合いがありまして、科学技術庁長官名での、今後の高レベル廃棄物の最終処分地についての覚書が取り交わされたというような経緯がございます。しかし、その後は、安全協定も結ばれまして、要するに過去二回、安全に搬入されたという実績があったわけでございます。  したがいまして、今回知事が問題にされていることは、今まで科学技術庁と、あるいは通産省も入って、青森県と議論、協議してきた問題点というのとは若干別の問題が含まれておりまして、そこのところは十分に論点が煮詰まっているというふうには私は考えていないのであります。  ではそれをどういうふうに解決していくかという問題については,今、法律家である西川先生に、私は法律的な解決をどうということを申し上げるつもりはございませんけれども、まだこれは、知事がおっしゃっているのは、処分保留であるというふうにおっしゃっております。ですから、私ちょっと行政事件訴訟法の条文を今すぐ思い出すわけではないわけでありますが、直ちに今おっしゃったような行政事件訴訟法のルートに乗るものにはなっていないのではないかなと私は思っております。  それから、損害賠償はどうかというようなお尋ねが今ございましたけれども、今、こういう問題を円満に解決する道を何とか探りたいと私は思っておりまして、今すぐ委員のおっしゃった法的な解決というようなことを考える段階ではない、こういうふうに思っております。
  86. 西川知雄

    西川(知)委員 少しお答えがなかった部分があるのです。  その部分は、具体的にどういう条件が整えば、例えば総理が青森県知事と面談をされるのか。それとも全くされないのか、どんな条件が整っても全くされるつもりはないのか。  そういう点と、そして今、停泊を沖合でやっておりますが、行くところがなければ、一つの報道等によりますと別のところに行く、例えば、一番近いところは女川なのでそこに行くかもしれない、そういうようなこともうわさされておりますが、これは、いつまでに解決しなければどういうふうな手段をとるということは、もう既にやはり考えておられると思いますが、その二点についてお尋ねをしたいと思います。
  87. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今のお尋ねに対しては、私どもも決して安閑と手をこまねいているわけではございませんで、これはいろいろなところで申し上げておりますが、解決の兆しなり解決の端緒というものがあれば、それをいつでもつかむことにやぶさかではございません。  したがいまして、知事の御発言も私どもも注意を持って伺っておりますが、現状の知事の御発言を拝聴いたしますと、あるいは青森県議会などの御発言も私も注意深く聞かせていただいておりますが、総理に会うということが今の知事の唯一の御主張になっているように思います。唯一と言うとちょっと語弊があるかもしれませんが、それだけが唯一の条件になっている中で、具体的な端緒をつかむのがなかなか難しいなということが私の今の感じでございます。  それで、どういうことがあれば総理と会見ができるのかというお尋ねでございますけれども、私は、これは先ほどから注意深く申し上げているのは、全く総理と会うのがノーであるというふうに申し上げているつもりはありません。つもりはありませんが、まだ、今のそういう状況の中では、こういう条件なら会えるというようなことも申し上げられる段階ではないのです。  それからもう一つの、ほかの策をどうとるかということについては、私自身そんなことを検討しているわけではありません。ただ、それについて事務方から若干補足をいたさせたいと思います。
  88. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 ほかの港でというお話がございましたけれども、今、事業者はそういうことは考えていないと思いますが、ちょっと技術的なお話だけさせていただきますと、積んでいるもの、ガラス固化体を陸送する場合は、百トンほどの非常に重いキャスクに入っておりますから、クレーンが必要であるのと、それから、それをそこの貯蔵庫まで運ぶということは、道路、橘とか、いろいろなものがそれに耐えなければいけません。したがいまして、遠くから運ぶということはまずできないと思っております。
  89. 西川知雄

    西川(知)委員 時間が来ましたので質問を終わりますが、今長官がおっしゃったことは、長官と青森県の知事がお話しになった、そして論点ほどこが食い違っているのかというところについては、今の長官の御答弁では、その点は明確になってきているのじゃないかというふうに私は思います。  そして、この問題は、以前からずっと話されてきたことでもございますし、また、原子力政策という国策でございます。そして、沖縄県とどうして差別して扱われなければならないのか、また、ほかの県とどうして区別して扱われなければいけないか、これは私は正直な話わかりません。内閣の中でも閣僚の中でも非常に良識派、そして合理的な考えをされる長官でございますから、ぜひその辺は、青森県の知事が総理とぜひ会いたいと言っているわけですから、それを拒む必要は全然ないわけですから、そういうことの実現に向けて御努力をしていただきたい、そういうふうに思います。  私の質疑を終わります。
  90. 大野由利子

    大野委員長 斉藤鉄夫さん。
  91. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 平和・改革の斉屡鉄夫でございます。  同僚議員の西川委員より高レベル放射性廃棄物返還固化体の青森接岸の件について質問がありましたけれども、最初、それに関連して質問させていただきたいと思います。  木村知事がぜひ総理に会いたいとおっしゃっている一つの理由に、この返還固化体がこれから六ケ所村にどんどんたまっていくわけですけれども、まだその最終処分をどうするのかという方針が決まっておりません。今すぐ決めろといってもそれは無理ですから、しかし、国としてこの返還固化体最終処分問題については全力を挙げて取り組んでいくのだ、こういう国の誠意を見たい、ただその一点なのではないかと思います。  そういう意味で、私は、この返還ガラス固化体、高レベル放射性廃棄物の最終処分の問題に科学技術庁は全力を挙げてお取り組みをいただきたい、このように思う次第でございます。  先日、加藤原子力局長から北海道の堀知事へ、この返還固化体最終処分場に関連して申し入れをされました。  高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵については幌延の計画をあきらめる、そしてこの幌延は研究施設に純化をして、かつ放射性廃棄物を一切使わないで研究をする、こういう、いわばこれまでの科学技術庁方針を転換したのでぜひ検討してほしいということを申し入れされたわけですけれども、この転換の理由をまずお伺いいたします。
  92. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今、斉藤委員御指摘のように、高レベル廃棄物の処理を確立していくことが、原子力政策の中で一番難しい問題でもあると思っておりますが、完成させる上において一番大事な今の課題であるというふうに思っております。  それで、その一環としての幌延貯蔵工学センターの計画でありますが、これにつきましては昭和五十九年の発表になっているわけでありますが、それから既に十三年たっております。その間に、動燃等の一連の問題が起きて、やはり抜本的に改組して動燃を立て直していく、そういうような問題が生じてきた。それからもう一つ、高レベル放射性廃棄物の処分が具体的にある程度進捗してきている面がある。それは、六ケ所等の問題を含めてそういう面があって、本計画をめぐる情勢が変化してきた。そうすると、今まで幌延の計画がいわばデッドロックに乗り上げたようなことになっていたわけでありますけれども、このままで手をこまねいているわけにはいかないという理由が根本にございます。  そこで、こういう諸情勢にかんがみまして、二月の二十六日に、先ほどおっしゃいましたように、加藤原子力局長から北海道知事に対して、貯蔵工学センター計画を取りやめて、新たな提案として、北海道幌延町における深地層試験を早急に推進すること、それから、高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵については、廃棄物政策上その必要性に変わりはないことから、さらに理解を得るための努力を進めつつ、全国的な見地という考え方を十分に踏まえて取り組む、この二点が骨子でございますが、そういう申し入れをしたところでございます。  この申し入れに際して、堀知事からは、国や動燃に対するこれまでの申し入れに対して国の基本的考え方が示されたものと思う、今後申し入れの具体的な内容について検討をしたいので詳細な資料等について提供をお願いするという発言がございました。  私としては、こういう長い経緯もあるし、また諸情勢の変化もあるし、そういうことを正面から受けとめて、地元あるいは北海道の方々とのコミュニケーションをこれからも十分に図って、今回の申し入れが理解信頼を得られるように進めてまいりたい、こう思っております。
  93. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 申し入れの趣旨は、ポイントは二つあって、中間貯蔵施設については今後全国的に立地を考える、検討する、それから、研究施設は、実際の返還固化体を使わないで、放射性物質を使わないで純粋なコールドな研究機関とする、この二つだと思うのです。  まず、最初の点、中間貯蔵、今後立地を考えるということなのですが、過去の経緯を知らない素人から見ますと、今現に返還固化体、青森の沖に停泊しているわけですけれども、これは六ケ所村の中間貯蔵施設に入れようとしているわけですね。立派な中間貯蔵施設が現実にあるわけでございまして、なぜそれを使わないのか。いや、あれは電力用だ、科技庁関係の動燃用は別につくらなければいけないんだという理由は、そういう説明はわかるのですけれども、しかし、もとはといえば同じ電力の原子力発電所から出た返還廃棄物なわけですから、この場合、なぜ中間貯蔵施設が六ケ所村ではいけないのかということについてはいかがでございましょうか。
  94. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 御指摘のようなお考えもあるかもしれませんが、逆に青森の県民の方から考えますと、なぜ全部うちでなければいけないのかという考えもあるとは思います。  したがいまして、この幌延町の話につきましては十三年前からの話でございまして、そういう前提で青森県もいらっしゃるのだと思いますので、我々としては、そこにつきましては今までの考え方で進めたいと考えております。
  95. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 その点についてはわかりました。  二番目のポイント、コールドな試験をやる、放射性物質を使わない試験をやるということで、それはいいのですけれども、深地層処分の研究の目的そのものは、長い間に、周りのバリアがなくなって、千年、一万年、十万年という間にキャスクがなくなって、ガラス固化体が直接地下水に触れる、その中に非常にごく微量な放射性物質が徐々に溶け出していく、それが地下水に流れていく、しかしその周りの岩石であるとか土壌に吸着をする、それが化学吸着てゆっくり移行していく。非常にごくごく微量の化学特性の研究が主だと思うわけですけれども、非常にごくごく微量なものでも検出できる放射性物質を使わない研究をやって意味があるのかと思うのですが、いかがでございましょうか。
  96. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 幌延におきます深地層試験場は、前に言っておりました貯蔵工学センター計画におきましても、そこでホットのものの研究をする予定はございませんでした。深地層の方には放射性物質を持ち込まないという前提の計画になっておりました。  したがいまして、当時から、そちらもコールドの地層に関する研究をいたしまして、今先生の御指摘のような研究は、やはりそういう実験室と申しますか、今現在、東海村に建設中でございますが、いろいろな研究、地層を模擬したところでそういう微量な核物質の移動が研究できるような施設を今建設を始めたところでございまして、そちらの方でそちらの研究をし、地層の研究とあわせまして全体の研究を完成するようにしたいと考えております。
  97. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 先ほども申し上げましたが、今回の青森の問題も、国の高レベル返還固化体の最終処分、この方針がはっきりしないということに最大のポイントがあるわけでございまして、それに向けての努力を引き続きお願いしたいと思います。  それから、この廃棄物に関連しまして、今度はそんなに高レベルでない方の廃棄物ですけれども、高レベルでない廃棄物が出てくる廃炉の問題についてお伺いいたします。  大臣の所信、聞かせていただきました、読ませていただきましたけれども、高レベル放射性廃棄物については全力で取り組んでいくというくだりがあるのですけれども、この廃炉の問題に触れられておりませんでした。私は、これは非常に大きな、今後の科技庁が取り組まなければならない研究課題だと思います。  ことしの三月、ですから今ですけれども、この三月末に日本初の商業用発電炉である東海一号、日本原電の東海一号がシャットダウンをいたします。シャットダウンをするということですから、いずれは、立地難の日本でございますので、できれば廃炉解体、更地にして、またそこに新たな施設をつくるということが望ましいと思っているのですけれども、この非常に大型の商業用原子力発電所の廃炉について絵一ももろん日本には経験もありませんし、研究データもございません。わずふにあるのが日本原子力研究所りJPDR、日本最初のデモンストレーション・パワー・リアクターですけれども、このJPDRの経験があるにすぎないということでございますが、この商業用人型原子力発電所の廃炉の問題を、これは通産省、資源エネルギー庁かもしれませんが、今後研究をどのように考えておるのかお伺いします。
  98. 浜谷正忠

    ○浜谷説明員 お答えいたします。  いわゆる廃炉に係る研究開発がどうなっておるかという御質問かと思いますけれども、廃炉に関するものにつきましては、基本的には、既存の技術、またはその改良によって十分対応が可能であるというふうに考えておりますけれども、さらに一層の安全かつ作業効率の向上を図る観点から、通産省におきましては、現在、廃炉に関する技術開発を進めておるところでございます。  具体的には二つほどございます。一つは、作業時の被曝量及び作業から生じます二次廃棄物を低減するための、いわゆる放射能を除く技術、除染技術でございます一二つ目は、建屋に残存します残存放射能を効率的に測定する技術の確証試験等を行っているところでございます。
  99. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 これまでの廃炉、小型施設の廃炉については、原研ないしは動燃、科技庁傘下の研究所が研究をしてまいりました。先ほどは通産省の原子力課長さんが、通産省での今後の研究課題とおっしゃっておりました。  科技庁としては、これまで蓄えられてきたデータを、廃炉の研究、経験、蓄積をどのような形で今後、通産傘下でされようとしている大型商業用原子力発電所の廃炉につなげていこうとされているのか、その体制はどうなっているのか、お伺いします。
  100. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 先ほどのJPDRの廃炉もかなり以前からやっておりまして、平成八年に完全に終了しております。その間は既に民間の方々の御協力も得ねがらやりておりますし、電力会社にすべてオープンにしておりますので、そういうものを既に吸収しながらやっていただいているものと考えております。
  101. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 よく原子力とほかの発電方法火力、水力との比較のときに言われることですけれども、一見原子力発電は発電コストが低いという数字が出るけれども、あれは廃炉の費用を見ていないからだと。廃炉を考えれば、またその後の廃棄物処理のコストを考えれば結局原子力の方が高くつくんだというふうな議論がありますが、例えば東海一号、この三月に終わります。廃炉のプロセスに入るわけで、当然コストがかかってきます。そのコストは今後、日本原電が発電する電力のコストに上乗せされてくるのでしょうか。それはどのぐらいなんでしょうか。
  102. 浜谷正忠

    ○浜谷説明員 廃炉措置に係る手当てといたしましては、廃炉解体引当金制度というものがございまして、準備金として積み立てる予定になっております。ということで、これまで日本原電については積み立ててきておりまして、それでもって手当てをする予定でおります。ということでございますので、十分対応していけるものかと思っております。  以上でございます。
  103. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 そうしますと、これからの廃炉にどれだけのお金がかかるかというのを大体見積もってされていると思うのですが、今後の研究の次第によっては、それよりも安くなるかもしれないし高くなるかもしれないということでございますね。わかりました。  話の筋の、廃棄物の方に話を持っていきたいと思いますが、JPDRの研究報告書、ざっと目を通させていただきました。私が今後一番大きな研究課題だなと思いましたのは、その報告書の要旨ですけれども、ちょっと読み上げますと、原子力発電施設の廃止措置に伴い発生する解体廃棄物の総量は、推計で百十万キロワット級の軽水炉の場合約五十から五十五万トンになる。物すごい量です。放射性廃棄物として処分しなければいけない低レベル放射性廃案は、その中の一万トン前後にすぎない。残りは、通常のビル等の解体物と同様のコンクリートがらや鋼材等の、放射性廃棄物として扱う必要のない廃棄物であるということで、パーセントにすると二、三%だけが放射性廃棄物として、それも低レベルですけれども、扱わなければいけないもので、あとは実質的に普通のビル現場の解体がらと同様に扱っても構わないもの、こういう研究結果が出ております。  でも、現実に日本の今の法規でいきますと全部、例えばここで言う百十万キロワット級ですと五十万トン全部をいわゆる放射性廃棄物として管理下に置いておかなければならない。これは莫大な廃炉コストとしてはね返ってくると思いますし、多分、先ほど課長がおっしゃった廃炉積立金として積み立てた金額どころでは到底おさまらなくなると思うわけでございます。そのクリアランスレベル、すそ切り値とも言われておりますけれども、ここから上は人間の管理下に置いておかなければいけないもの、ここから下は一般の廃棄物として扱っていいもの、そのクリアランスレベルを決めることが廃炉にとっての最大の問題だというふうに報告書にあるわけでございますが、これは科学技術庁がやるべきことだと思うのですが、その点についての科技庁の考え方と現在の努力をお聞かせください。
  104. 池田要

    ○池田政府委員 ただいま先生から御指摘のとおりに、原子力発電所等で廃炉措置をしましたときに、原子炉のごく近傍でございますとか一部を除けば、比較的放射能レベルは低いものと。そういった意味では、五十万トンのうちの一万トン程度という数字の御紹介も今ございましたけれども、どこに線を引くかといったことは非常に大事なことと考えております。  今先生からクリアランスレベルというふうに御紹介いただきましたけれども、これはそういう放射能レベルを指すものでございまして、それを下回るものにつきましては放射性物質としての特殊性を考えなくてもいいというものでございまして、そういうレベルが設定できますれば、原子力利用に伴って発生します廃棄物の安全でかつ合理的な処理処分、それから再利用もできる、こういった意味で非常に大事なものと考えております。  こういう考え方から→直近に、ある程度原子力発電所の廃炉ということも計画に上ってまいりました。こういった情勢を考えまして、原子力安全委員会におきましては、クリアランスレベルを具体的に設定しようということで、昨年の五月から調査審議を始めております。  現在、放射性廃棄物安全基準専門部会におきまして、原子力施設から発生します廃棄物を当面の対象といたしまして、国際的な動向をも踏まえつつ、技術的な検討を鋭意進めていただいているところでございます。
  105. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 いよいよこの三月、初めての商業炉がシャットダウンするという、非常に一つのエポックメーキング的な出来事があるわけでございまして、この廃炉について鋭意検討を重ねていただきたい、御努力をいただきたい、このように思います。  それから、きょうは久しぶりの一般質疑でございますので、いろいろなことを聞かせていただきたいと思います。  話題ががらっと変わりますが、科学技術庁が持っております国家資格制度であります技術士について、ちょっとお伺いさせていただきます。  大臣、それから政務次官、技術士という制度を、もう今はそういうお立場ですから当然御存じでしょうが、大臣や政務次官になられる前に、この技術士という存在を御存じだったでしょうか。
  106. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 まことに恥ずかしい答弁でございますけれども、科学技術庁に参るまでは技術士という資格があるということは存じませんでした。まことに面目ないことと思っております。
  107. 加藤紀文

    加藤(紀)政府委員 も政務次官を拝命するまでこの制度の存在を知りませんでした。不勉強でありました。申しわけありません。
  108. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 技術士というのは、事ほどさように、ほとんど認知をされていないということでございます。私も一応技術士なのですが、名刺に技術士と書いているのですが、これを見て、蛍光灯でも取りかえる資格なのとか、蛍光灯を取りかえるのに何で国家資格が要るのというぐらいにしか、ほとんどの人に扱われておりません。  技術士は、昭和三十二年に、科学技術庁の所管する国家資格として、大臣は弁護士ですけれども、あの弁護士と同じ「士」の資格でございまして、技術系では工学博士とか理学博士があるのですけれども、それよりもレベルは高いと私は思います。博士号は、基本的に実力がなくても大学の先生とうまくやっていればもらえるというようなところがあるのですが、技術士だけは全く客観的にいろいろな角度から試験をされて、客観性からいいましても、かなり高い。しかしほとんど認められていない。  今、理科離れとか、科学技術離れとか言われておりますし、またその原因の一つに、技術者や科学技術者の社会的なステータスが低いということもあるということが言われておりますが、それを根底的に、技術者の社会的なステータスを上げるためにこの技術士制度というのは存在するのだ、私はこのように思っております。  それから、できたときのもう一つの目的に、いわゆる世界に通用する資格、例えばアメリカにはPE、プロフェッショナルエンジニア、それからイギリスにはチャータードエンジニア、CEという国家資格があって、それを持っていれば世界で通用するわけです。  日本の技術士は、試験の内容とか問題を見ましても、PEやCEよりもはるかにレベルは高いけれども、世界には一切通用しない。技術士の正式な英訳も決められていない程度の、レジスタードエンジニア、登録されたエンジニアというのを私は使っておりますけれども、世界に行ってもほとんど通用しない。ここら辺が、技術士制度がこの日本社会に根づかない一つの原因ではないかと思います。  そこで、私がこの問題を実は二年前の科学技術委員会で取り上げて御質問をしたときに、当時の工藤局長と田中大臣から、まず、技術士制度の普及に科学技術庁としてこれから努力をしていくという答弁をいただきました。  それから、技術士制度が広まらないもう一つの理由として、日本の場合は、英訳にするとレジスタードエンジニアと訳されるということからも想像できるのですけれども、コンサルタントを開くことのできる業務独占のエンジニアというイメージがあるのですけれども、本来の意味はそうではなくて、ある一定以上の能力を持った有能な技術者、いわゆる名称独占の資格なんだと。だから、名称独占資格であるアメリカのPEやイギリスのCEと同じような性格の資格なんだということの趣旨の徹底と普及に努めてまいりますという答弁を二年前にいただいたのですが、そのことについて、科学技術庁のその後の御努力をお聞かせください。
  109. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えさせていただきます。  先生から当庁が御指摘をいただいて以来、私どもも、各省の連絡会を開くとかいうふうなことをしながら、特に各省庁がそれぞれお使いいただく、つまるところ、宣伝をするというだけではなかなかいけませんで、こういうステータスの方をちゃんとお使いいただくということから結局はだんだんと浸透していく、こういうふうな形が一番よかろうということで、各省庁と連絡会などを開くなどして、できるだけお使いいただくようなお願いはしてございます。  それから、国際的な関係につきましても、私どもできる限り国際的な問題に対応するように、庁内でも体制を整えて進めてきているところでございます。
  110. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 PEやCEとの相互乗り入れ、例えば日本で技術士を取ったら、アメリカではPEと名乗ることができる、イギリスへ行ったらCEと名乗ることができる、そういうふうな相互乗り入れをぜひ御検討をいただきたいと思いますし、二年前も検討する、こういうふうにおっしゃっていただきましたので、引き続き御努力をいただきたいと思います。  大臣、いかがでございましょうか。
  111. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 先ほど、技術士の資格について就任するまで知らなかったと恥ずかしいことを申し上げたのですが、その後、日本科学技術産業技術をこの分野で本当に支えておられるなというような方にお会いしますと、実は私、技術士なんですというような名刺をいただいて、斉藤先生がおっしゃったのと同じように、この名称をもう少し普及させるように努力をしてほしいというようなことを伺う機会が多かったわけです。  なるほど、この技術士という制度が、今一科学技術創造立国と言っておりますけれども、人の面で、やはりこの技術士という分野ぐらいそれを蓄積した集団はないんだなと認識を新たにしているところでございます。  それで、今、国際的な取り組みという点でありますけれども、国際的にも、相互承認の枠組みを設けて技術者の流動性を確保していこうという動きが出てきておりまして、特にAPECの場において、技術者資格の相互承認について検討が今進められておりまして、我が国としてもこの検討に積極的に参加をしております。  その結果、これまでに、相互承認の対象としてAPECエンジニアというのを設けることについて参加者間において合意が得られて、今後具体的な枠組み等についての検討が行われる見込みでありますけれども、このように技術士の活躍の場が国際的に広がるような取り組み、APECの場等での検討に我が国としても積極的に参加していくようにしたい、このように思っております。
  112. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 技術士が弁護士と同じようなステータスを得るように、よろしくお願いいたします。  それから、また話ががらっと変わりまして、宇宙発電について、科技庁と資源エネルギー庁さんにちょっとお伺いしたいと思います。  昨年末、新進党が解党いたしまして、我々は新党平和という党をつくったわけでございますが、その新党平和の基本政策の一つに、将来のクリーンエネルギー源として宇宙太陽発電というものを目指すという文言を入れさせていただきました。  これは原子力を否定するということではなくて、原子力も一つの柱、しかし新エネルギーも、新エネルギー開発に努めるといろいろな文章には書いてあるのですけれども、新エネルギーとして将来のエネルギーの柱になるようなものは具体的にない。そういう中で私どもは、この宇宙太陽発電というのはその将来の新クリーンエネルギーの一つの柱になり得るのではないだろうか、これからの宇宙開発の一つの柱にしていくべきではないのだろうかという観点から、新党平和の基本政策の、エネルギー、環境政策の一つに入れたわけでございます。  時間がありませんので、これまでの研究、世界でどういうふうに取り上げられてきたかというのは申し上げる時間がなくなってまいりましたが、最近、NASAもフレッシュルックスタディーという、この宇宙太陽発電衛星のスタディーを実施し、アメリカもちょっと昔やって一時中断していたのですが、また本格的にNASAの方でこの研究をやっていこうということになっております。  大臣、宇宙太陽発電といっても、ぱっとイメージがわかないかと思いますが、軌道上に巨大なパネル、これはアメリカのリファレンススタディーの例ですけれども、一辺が五キロメートル、一辺が十キロメートルというふうな巨大な構造物を宇宙につくり、そこに太陽パネルを張る。宇宙ですから曇りもないし雨も降りません。それから日照時間も、軌道によって違いますけれども、高いところへ行けば行くほど、二十数時間という日照時間も得られる。その電力をマイクロウェーブで地球に送ってそれを電力にするというものでございます。  この太陽発電衛星は、環境問題等も考えまして、私は日本がこれから研究開発に力を入れていくべきではないかと思いますが、資源エネルギー庁さんの方でも調査をされたと聞いております。その結果をお知らせ願えますでしょうか。
  113. 杉原誠

    ○杉原説明員 通産省の方におきましても、平成三年から五年の間に、宇宙太陽光発電衛星、SPS、ソーラー・パワー・サテライトシステムというもののフィージビリティースタディーを行っております。しかしながら、その結果としては、建設費に膨大な費用がかかり、経済的に現在のところは見合わないということでございまして、その後、当省といたしましては、宇宙太陽光発電衛星の具体的な推進ということについては見合わせておるところでございます。  しかしながら、将来の化石資源の枯渇等の問題にかんがみますと、超長期的にはこの問題も検討され得るものというふうに考えております。
  114. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 研究によりますと、こういう施設をつくるのに三兆円かかる。原子力発電所と同じような電力を生むSPSをつくろうと思えば三兆円かかる。一原子力発電所の十倍かかるわけです。ただし、この建設費のほとんどはロケットによる運搬費なんですね。ここは無重力ですから、構造に余り力を入れなくていいわけです。ですから、HⅡAロケットなどのロケット研究開発が進んで、宇宙に大型構造物をりくるという時代になって輸送コストが下がれば、原子力発電所と同じ電力コストにしようと思えば今は十分の一に低減しなければいけないわけですけれども、それは十分技術開発で可能だ、私はこのように思っております。  もう時間が来てしまいました。大臣、短い議論でしたけれども、この議論をお聞きになって御感想をいただければと思います。
  115. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 専門で御関心を持っている先生にお答えする材料はございませんけれども、私も科学技術庁でいろいろ、これはどうなんだと聞きますと、今工業技術院の方からお答えがあったように、コスト面の問題とかあるいは地球に電波で送る場合の生体への影響等幾つか問題があるという回答でございました。  ただ、工業技術院の方からも御回答がありましたけれども、将来を考えるとこのオプションを捨ててしまうのはよくないと私は思います。現に、当庁の関係でも、宇宙開発事業団やあるいは航空宇宙技術研究所等で関連の研究なりが行われているようでありますが、私は、やはりそういう長期的な視野に立って進めていく必要があるのかなという感じを受けております。
  116. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 よろしくお願いいたします。  質問を終わります。
  117. 大野由利子

    大野委員長 吉田治さん。
  118. 吉田治

    ○吉田(治)委員 科学技術委員会という、普通、私のように文系の学部を出た人間、まあこれは大臣も法学部ですので、先ほどの答弁を聞くと、なってから初めて聞くことが多いと。私も、やり始めて初めて聞くことが多くて、でも、おかげでようやく新聞等でこういう科学技術に関することを読ませていただいても何とか理解できるようになりました。  大臣も午前中からの答弁で随分お疲れでしょうし、委員長も何かお元気がなさそうでございますので、早く終われればいいのですけれども、質問というのは時間をちゃんといただいておりますので、精いっぱいさせていただきたいと思います。  夏以降、行革という形で省庁再編と。このごろの国会の議論の中でされてはいるんですけれども、余りマスコミ的にも取り上げられなくなったなという中で、原子力行政、原子力体制というふうなものが省庁再編に伴ってさまざま変化されていくだろうと言われております。  先日の予算委員会の総括でも総務庁長官は、さっさと今国会で行革については始末をしてくれということですから、聞きようによっては、だめなものはやめてしまえというふうなことを総務庁長官も言われたのかなと、これは余計な話ですけれども、思うのですけれども、今後の省庁再編に伴って原子力行政というふうなものがどういうふうな形になっていくのか。大臣のお考えと、また取り組む姿勢というふうなものをお聞かせいただきたいと思います。
  119. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 再編後の具体的な行政体制につきましては、今度の中央省庁改革基本法案が成立した後に中央省庁改革推進本部が設置されて、そこで明らかになるものと考えておりまして、原子力行政についての具体的な事柄は今まだ余り臓つきりしてきていない、こういうことだろうと思います。  その上で申し上げる度すれば、行政改革会議の報告書では、原子力委員会とそれから原子力安全委員会が各省より一段高い内閣府のもとに置かれて、現行の機能を継続すること、こういうふうにされております。そのもとで、科学技術行政とそれからエネルギー行政を担当する行政部局が協力しながら原子力を着実に推進していく体制ができる、こういうふうに認識をしております。  現在、私の決意ということをお尋ねになりましたけれども、科学技術庁は文部省と一緒になって教育科学技術省ということになるという位置づけを与えられておりますが、町村文部大臣とはいろいろ御相談申し上げまして、両省、私のところでも私が本部長になりまして対策本部をつくり、既に文部省との間の協議はいろいろな形で進めておりまして一前向きに取り組んでいるつもりでございます。
  120. 吉田治

    ○吉田(治)委員 事前に質問をお願いしていた部分とちょっと前後するかもしれませんけれども、省庁再編ということですので、一連の流れとしてお聞かせいただきたいのです。  こういう省庁再編をしていきますと、よく言われますように、原子力発電という部分と原子燃料サイクル事業というもののまず推進体制というふうなもの、これをどういうふうに推進していくのか。今、大臣も答弁で申されましたように一経済産業省、また環境安全省、そして教育科学技術省というふうな形にばらばらにまた分かれていくの二か、それとも、今のお考えの中においては、原子力発電と燃料サイクル事業については、推進体制については一元化していくという方向で議論がなされているのか、その辺はいかがなんでしょうか。
  121. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 今御指摘の原子力発電と核燃料サイクルの関係でございますが、原子力全体につきましては、行革会議の報告書に、原子力の学術研究及び科学技術については教育科学技術省、エネルギー利用関係の技術開発経済産業省となっております。先ほど大臣申しましたように、具体的には、基本法案が成立した後、推進本部で明らかにされていくと思いますが、原子力発電の中でも軽水炉これはもう非常に技術も確立しておりますし一電力会社がやりておりますが、核燃料サイクルにつきましては、一部民間で、六ケ所村で建設等はしておりますが、技術的には研究開発段階からの支援がないとなかなかいかない。そういうような分野もございますし、また、原子力発電でも、研究開発段階の、例えば高速増殖炉、そういうようなものにつきましては、行政の対応としては軽水炉関係とは違ったものがございます。そういうことで、そういうこともいろいろな観点から今後検討されていくと思います。  いずれにいたしましても、原子力行政が着実に進められる、そういうような体制にしていかなければいけないとは思っております。〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕
  122. 吉田治

    ○吉田(治)委員 その場合、推進体制は、今言われたように発電だとか軽水炉だとかいろいろあると思うのですけれども、今度は規制の部分ですね。  原子力というふうなものを国家的事業、先ほど大臣も、基本法の中においては、原子力委員会及び原子力安全委員会は内閣府に入ると、非常に原子力というものに対して重要というか大きなポジションを与えていくというふうな中においては、やはり推進体制の一元化と、今も分かれるようなことを言っておられましたけれども、やはり規制というふうなものもどこかで一元化していくことは必要ではないかなというふうに考えられるのです。この辺については、先ほど言われたように、基本法が通ってからだ、もっと言いますと通るか通らぬかわからぬ法律を前提に話をするな、議論はできないということかもしれませんけれども、その辺はどれぐらい議論が進まれ、また、他省庁とはどういうふうに今現実に話し合いが持たれているのか。その二点について御答弁をいただきたいと思います。
  123. 池田要

    ○池田政府委員 先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、再編後の省庁間の業務の分担でございますけれども、こういった点については、現時点で個別具体的に私ども申し上げる段階でないと思っております。  しかしながら、今、たっての御質問でございますから、行革会議において私どもどういった議論があったかといったことをつぶさにフォローしていたわけでございますけれども、現在、行政庁が行います安全規制につきましては、商業用の発電炉は通産省が規制を行っておりますし、それ以外の、核燃料サイクル事業でございますとかRIの規制、あるいは研究開発施設につきましては科学技術庁安全規制を行っております。こういった一次規制の科学技術庁と通産省の業務分担、こういった業務分担のあり方については、行革会議で、私どもフォローしております限りでは、特段の議論はなされていなかったというふうに承知しております。  当庁としましては、先ほど大臣からも御所見ございましたように、現在の両省庁の事務分担といったものが基本的には教育科学技術省と経済産業省におのおの引き継がれるものと理解しております。  いずれにしましても、私どもとしましては、引き続き厳格な安全規制が実施できる体制が維持されることが重要であると考えているところでございます。
  124. 吉田治

    ○吉田(治)委員 それで言いますと、原子力というものに関しては、行革という網というか、行革というものを通り抜けたとしても、通産省の名前が変わって経済産業省、科学技術庁の名前が変わって教育科学技術省ということでいったら、これは非常に難しいことを言わなければならないと思うのです。チェック機能というものは、今までのようにダブルチェックというものをそのまま受け継いで、権限も規制もチェックの仕方も同じようにしていく。  これは歴史的にたどっていくと、多分、原子力は、一九六〇年代から日本開発が始まっていったときに、やはり研究開発と実用化という中において、それぞれの権限争いと言ったら語弊があるかもしれませんが、その中で分けられて、通産、科技庁という形に分かれたのでしょうけれども、これを通してもまた同じように、今大して意見がなかったというふうなことを言われましたけれども、じゃ、このまま省庁としてもダブルチェック機能というものを続けていくのか。  私、何でそういうことを申し上げるかというと、チェックは一つよりも二つの方がいいのはいいのですけれども、今度はダブルスタンダード、また二つの基準ですよね。それからまた、規制だとかなんだとか、責任の存在感のあいまいさというふうな部分。  後ほど質問させていただきますけれども、青森の知事さんがわあっと言っている。一般国民からすると、ああ、知事格好ええと思うのか、このおっさん何ほざいているんやろうと思うのか、それはわかりません。しかしながら、事こういうことに関しては、何かそういうふうな部分が拡散していっている、分散していっている。それで、最後は責任とらずに、だれか最後、おまえ責任とれと言って、とり切れずに首くくったりしてしまうという悲しい事件も起こってしまうということにならないように、これはしっかりしたチェックというものを、先ほどから私も申し上げておりますように、発電と燃料サイクル事業推進の一元化と同じように、この規制だとかいうふうなものの一元化をしていく必要が強くあるのではないかなということを申し上げたいのですけれども、これについて、何らかの御答弁というかお考えがございますでしょうか。
  125. 池田要

    ○池田政府委員 ただいまの基本的な行革の方向としましても、今先生から御質問がありましたようなダブルチェック、これにつきましては、現在、一次行政庁としまして通産省あるいは科学技術庁が規制を行っておるわけでございますけれども、安全委員会が行っておりますような、これは二次チェックと言っておりますけれども、専門家を動員して、または別の立場から、行政庁の行いましたものを改めてチェックする、こういったシステムについては、これは基本的に維持するといった方向が打ち出されております。  それに、この安全委員会は、これまでは総理府に置かれておりますけれども、内閣府に置かれるといったことになりますから、これまでと、私ども科学技術庁自身も総理府の外局でございますけれども、こういったことで事務局をしているといった体制からはかなり違った姿になってまいります。  そういった意味では、現在までの仕組み、基本的に一次行政庁と安全委員会が行いますようなダブルチェック、こういったあり方というのは、これは適当であるといった御判断があると思いますけれども、私どもは、さらに、安全委員会が内閣府に移ってダブルチェックをするといった場合に、これがしかるべく機能するように、安全性につきましても、今先生が御指摘のようなしっかりとしたチェックがなされるように、これが私どものこの再編に当たって留意すべきことだろうと思っているところでございます。
  126. 吉田治

    ○吉田(治)委員 では、基本的にはダブルチェック、今後の省庁再編後の安全性のチェックということについては、省庁があって、二次的なものは内閣府に所属する原子力安全委員会というものがしていく、そういうふうにとらえたらいいのですね。確認です。
  127. 池田要

    ○池田政府委員 御指摘のとおりでございます。
  128. 吉田治

    ○吉田(治)委員 時間の都合上、これ以上この件について議論をするのもいかがかと思うのですけれども、今国会、この委員会動力炉・核燃料開発事業団法の改正案が出てまいります。新しい名前は核燃料サイクル開発機構というふうな形になるやに聞いております。  この場合に、この議論の過程で、聞いたのか読んだのか、私もうろ覚えでこんなことを質問するのはいかがかと思うのですけれども、その開発機構の前に実は研究という文字を入れたかった、研究開発機構という名前に実はしたがったのだが、その研究という文字は外したというふうな話を聞いているのですけれども、その辺、事実関係としてそういうことがあったのか。もしも外したということであるならば、なぜ外したのか。その辺をちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  129. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 動燃事業団改革につきましては、科学技術庁に動燃改革検討委員会、吉川前東大総長を委員長とする委員会を設けまして、そういうところで改革を検討していただきました。  今は、特に業務的な観点からのことに限定させていただきますが、今の動燃事業団は、多分に民間がかなりできるようなところもやっている。そういうところを外しまして、業務を集約化する。研究開発に集約して、しかもまた、基礎的な研究は原研でやればいいということで、研究開発に集約した新しい法人に脱皮しよう、そういう話でございましたので、我々は素直に研究開発法人というふうに考えておりました。  法律的に見ますと、今の動燃事業団開発事業団でございますが、開発と申しましても、開発とそれに必要な研究というのをすることになっておりまして、当然、その開発の前の必要な研究はするわけでございます。今回の核燃料サイクル開発機構につきましても、そこの範囲は変わっておりません。したがいまして、法律的には変わっておりませんが、当初、研究開発法人に変わるのだ、そういうようなことでありましたので、当初、名称を研究開発ということで始めたわけでございます。
  130. 吉田治

    ○吉田(治)委員 「ふげん」の話ですよね。  「ふげん」の中でよく言われているのは、新型転換炉という形で、世界に例を見ないすばらしい、誇るべき技術だと。しかしながら入いかんせんコストというものに関しては負けてしまう。ウェスティングハウスとかGEとかのそういうもの、それからフランスのああいうシリーズ的な原発には負けてしまう。  やはり一般的なイメージとして、科学技術というのは、俗に言う基礎研究的な研究。だから、物になるかどうかはわからぬけれども、金だけはかけようと。金をかけるのは、捨て金という言い方はよくないかもしれませんけれども一成るか成らぬかはもう構わないけれども、かけようというふうな部分。それが、局長を前にして、大臣を前にしてこれは非常に失礼なのですけれども、この議論はまた法律改正のときにしなければならないことだと思うのですけれども、今回の法律改正自身を一つ例にとっても、科学技術庁におけるコスト意識というのですか、これがちょっと、俗に言う民間に比べて役所、官というものは弱い。  ここ十年ぐらい、科学技術をしなければ、科学技術をしなければ、日本の.ハテント数は幾らで、日本は世界に負けてしまうと。もう追いつけ追い越せじゃない、自分のところで開発するのだという中で、そういう開発はしたけれども、今度はコスト意識というのが足らなくなったら、「ふげん」というふうなものを例にとってもあるように、動燃が云々というよりも、そこの部分の認識というのが問われてくるのじゃないかなと思うのです。  この辺のコスト意識というふうなものについて、民間だったら、大臣は弁護士をやられたからよくおわかりだと思うのですけれども、具体的に何か起案をするときには、これだけお金をかけたら利益はこれだけ上がるとか、売り上げはこれだけだとかそういうようなことでやっていきますよね。科学技術というのは、そういうことを考えない損得なしの部分と、やはり損得ありの部分というのが必要だと思うのですけれども、この辺について、この「ふげん」の悪い意味での二の舞にならないように、これを例として今後どういうふうに考えられていくのか、お聞かせをいただきたいなと思うのです。〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  131. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 「ふげん」につきましては、午前中、辻先生から、その中止になったいきさつとかいろいろな話を求められました。  まず、その「ふげん」につきましては、計画としては中止になりましたけれども、捨て金を捨てるということではなくて、あれも水で熱を取る体系で、軽水炉と似たところがございまして、しかも昭和四十年代に開発をしたわけでございまして、当時はまだ軽水炉も全部自前の技術でできなかった。先ほども申されましたGEとかウェスティングハウスから技術導入しながらつくっていったわけでございますが、そのATRの「ふげん」、原型炉を全く国内の技術だけで完成させた経験というのは軽水炉に非常に生きている。これは定量的にはちょっと言えませんが、その当時できなかった再循環ポンプができるようになったとか、炉心の核設計が全部自分でできるようになったとか、そういういろいろな現在の軽水炉の体系にいい影響を与えているということはちょっと御理解いただきたいと思います。  それからなお、コスト意識につきましては、当然我々、先ほどの検討委員会でも御指摘いただいております。コスト意識が不足していた、したがいまして円滑な技術移転が民間にできなかった、民間のニーズを的確に把握しなかったということで、そのコスト意識の定着と申しますか、そういうような動燃の改革も重要な課題として言われているわけでございます。  したがいまして、我々としましては、一つはコストの意識という問題がございますけれども、研究開発の早い段階から民間の参加する仕組みをつくる^それから、当然、民間と共同研究をするとか人材の交流を図るということによりまして民間のニーズをよく把握してコスト意識の徹底とか醸成を図りたいと考えておりますし、これからは、外部評価委員会を設置いたしまして、そういう研究開発のあり方につきましても外部の方々の御意見をいただくというシステムに変わるわけでございますので、そういうところでもコスト面からの評価をしていただく一そういうことでコスト意識の徹底を図っていきたい。新しい法人になりまして、やはりそういう競争力のある技術、それの開発を目指して努力してまいりたいと考える次第でございます。
  132. 吉田治

    ○吉田(治)委員 この「ふげん」に関しては、原子力関係の方にお話を聞くと、大臣よく御承知だと思うのですけれども、もう十年ほど前から、これは合わぬのじゃないか、合わぬというのは、コストに見合ったものを実用化するのは厳しいんじゃないかという声は内々にあったと。もう五年ぐらい前になってきたら、口にここまで出かけている、のどまで出かけているけれども、やはり言いづらかったというふうなお声も聞きます。  今局長言われたように、民間との交流、そして外部評価ということを言われましたけれども、まさにそういう声を出せる、そしてそれを聞ける、だめなら積極的に果断に撤退する。これは、やはり大臣の、大臣がこの先何年大臣やられるかわかりませんけれども、そのときにはいられないかもしれませんけれども、やはり大臣自身の持たれるそういう決断力というのは、私はこれから事務方じゃやはり無理だと思うのですね、必要になるんじゃないかなと思いますが、ここでの質問は終わらせていただきます。  続きまして、もう午前中からずっと何度も質問されて、大臣も、また同じ答えを言わなあかんのかと心の中で思うかもしれませんけれども、高レベル廃棄物返還ガラス固化体の輸送船の接岸を青森県知事が拒否している。これは二度目なんですよね。二年前か何かにもありましたよね。木村さん一生懸命出てこられて、何となしにこれはわからないですよね。こんな言い方よくないかもしれないが、大阪弁でいいもんと悪いもんがありまして、どっちが善でどっちが悪かと。これは別の例で言うと、沖縄的というと何となしに心情的にわかるんですけれども、このことについては非常に難しい。  まず私は、科学技術庁としてどのように考えているのかということと、そして、多分知事さんが言っていられるのは、この二年間で四項目、レスキュー隊をつくれとかいろいろなことを言ってこられたと思うのですけれども一この四項目に対して本当に真摯に対応したのかな、二年間一体全体青森県に対して何をしてきたのかなというふうな素朴な疑問がわくのですけれども、この二点について、どうなんですか。
  133. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 現在の状況を科技庁としてどのように考えているかという点からでございますが、午前中、大臣から御説明ございましたように、今般の輸送に関しましては、入港の直前になりまして、先週の土曜日でございますが、総理大臣との会見が実現しなければガラス固化体の搬入に関して重大な決断をしなければならないという旨県知事が表明されました。大臣も、原子力行政を預かる身といたしまして混乱の発生は好ましくないという考えに立ちまして、総理の御指示に基づきまして、通産大臣とも御一緒にお話しされまして、二度にわたる知事との話し合いなどを持つなど、円滑に行われるよう最大限の努力をされてまいりました。  その際、県民の原子力に対する不安とか不信、それから政府一体としての取り組み、そういう知事の思いも受けとめた会談になっております。それにもかかわらずこのような事態になってしまったわけでございます。  科技庁といたしましても、引き続き、円満にガラス固化体が搬入されるよう最大限の努力をしてまいりたいと考える次第でございます。  それから、先ほどの四項目でございますが、四項目の中の、高レベル廃棄物の処分場の見通し、これは、木村知事がもう大分かなつ前からおっしゃっておりました。それからレスキュー隊の話は、動燃事業団事故が起きた後、ですから昨年になってから、何かそういうものが要るじゃないかという話がございました。それから、プルサーマルの話も昨年ぐらいからの話でございまして、それぞれちょっと物によって違うわけでございますが、高レベル廃棄物の処分場の問題、これはもう我々もう何年も前からやっておりまして、二年ほど前、木村知事が御提示されたときにも、我々はこう考えています、こういうスケジュールでやっています、そういうことは何度も御説明させていただいております。  なかなか難しい問題でございますので、我々としては手順を尽くして着実に進んでいかざるを得ないわけでございますので、そういうことで進めておりますし、レスキュー隊の問題につきましても、木村知事からのそういうものもございまして、原子力安全委員会においても検討をこのたび開始されております。  そういうことで、我々といたしましても着実にそれぞれ誠意を持って対応をしている、そういうのが現状でございます。
  134. 吉田治

    ○吉田(治)委員 大臣に事前に通告していなかったんですけれども、大臣、沖縄とこれとは全然問題の性質が違うと思うのですけれども、沖縄の場合だったら、県知事さんが会いたいと言うと、多分総理は会うと思うのですね。  この件というのは、高レベル廃棄物という範疇なんですけれども、ある意味で日本のエネルギーの安全保障というふうな中で非常に重要な位置―――――よく言われているように、もう何度も聞かれているから聞き飽きたかもしれませんけれども、日本原子力行政というのは、まさにすばらしい高級マンションはつくったが、実はその中にはトイレがなかったというふうによく比喩されるんですけれども、やはりそういうふうな中において、私は総理に会わせろというのがいいのかどうかわからない。  その辺の大臣としてのお考え、先ほどから、多分午前中も述べられたと思うのですけれども、文章的な答えじゃなくて、どうしたものかな、本当は実は弱っているんだよと、記録に残るので言われへんかもしれませんけれども、その辺をちょっとお答えいただければなと思います。
  135. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 吉田委員のお気持ちにかなう答えかどうかわかりませんが、私も、こういう事態になっていることを非常に憂慮しておりまして、何とか打開の道を探りたいという気持ちは責任者として強く持っている次第であります。  ただ、午前中も申し上げたことでありますけれども、それぞれこういうときはお互いにどういうところで解決できるかということに注意を払わなければなりませんし、私もできるだけ注意深く発言をしてきたつもりでありますし、木村知事さんにおかれても恐らくそうだろうと思います。  その上で私が申し上げたいことは、いろいろな問題がかなり錯綜しておりますので、できるだけやはり問題は整理して進まないと、あれもこれも一緒ということではなかなか進まないのではないかなという思いを深くしております。  それで、今四項目のことについてもお触れになりましたけれども、要するに、試験燃料の搬入に関しての安全協定を締結するについて、協議会も設け、それから四項目ということを幹事会で、科学技術庁と通産と青森の間で詰めてきた。これは、こういう路線でこれから詰めていけるわけです。  ただ、もちろん、その中身に関してはいろいろ我々と青森の間にまだ埋められない溝というか、青森県が御要望になるほどすぐ答えが出せないことがあるのも事実でございます。特に高レベル廃棄物の最終処分をどうするかというようなことになりますと、これは、私もここで勇ましいことが言えれば一番うれしいのでありますけれども、原子力核燃料サイクルの中で一番難しい問題がここにあるわけでありまして、これがうまくいったときには日本原子力政策は言うなれば完成したと言ってもいいのじゃないかと思います。ここはやはり手順が要るところでありまして、一つ一つ詰めていかなきゃならない。このことは木村知事も、いろいろなことでおくれているからどうかという御心配を持ちながらも、私は理解をしていただいているのではないかと思っております。  それから、もう一つのガラス固化体の搬入の問題に関して、今回どうもこの二つが一緒になったところに、ギリシャ神話にもございましたけれども、何か結び目がなかなか解けない、ばっと刀で切ってしまったら解けたというので、そういう何とかの剣というのを取り出せばいいのかもしれませんが、なかなかよい剣がございません。  ガラス固化体の問題の方は、これは私も午前中申し上げたところでありますけれども、既に二回搬入をし、安全協定も結び、安全に搬入した実績があるわけでありますから、これはこれで私は解決をしていただきたいと思うのです。  その上で、我々がしなければならないことは、午前中の辻先生の御質問にもお答えしたわけでありますが一たびたびこの委員会でも沖縄が引き合いに出されておりますけれども一青森の知事の思いも、あるいは青森県民の思いも同じところにあると思います。要するに、いろいろな廃棄物の処理を青森がこれだけ苦労しながらやっているのに、そのことをほかの地域の人たちあるいは東京の政治家が理解をしているのだろうかという気持ちがおありだろうと思います。辻先生の御質問の中にも、福井初め特別な重みを持っている県があると。そこのところが、私はやはり重く受けとめなければならないことだと思っております。それで、ここがある意味では一番肝心な点かなという思いも持っております。  ただ、こういうふうに、できるだけ問題を整理して分けていかないと、みんな一緒くたにするとなかなか難しいのではないかなという思いを私は強くしています。
  136. 吉田治

    ○吉田(治)委員 普通考えるとこういうやり方というのはいかがかという部分と、同時に反対を言うと、そういうことをしなければこの問題というものを意識されない。確かにいろいろな報告書の中で、この問題のみならず、俗に言う原子力発電、原子力というものによる廃棄物の処理については国民の意識を高めなければならないというふうに報告書にもこのごろ書かれるようになったように、反対を言うと、こういう知事さんの行動がなければまだ注目もされないというのは、ある意味で残念なことではないかなと思うのです。  使用済み燃料というふうなものが、今度は廃棄物とは別に次の段階として出てくるのですけれども、中間貯蔵についての検討会の報告等も出ているやに聞いております。また、この中間の検討会によりますと、原子炉等規制法の改正も必要になってくるのではないかというふうに言われております。  まず、原子力発電というものを所轄しているエネ庁さんにきょうは来ていただいていると思うのです。廃棄物については、よく言われていますように、原子力発電所はエネ庁、そこから入ってそこから出るものについては科学技術庁、中に残っているものはエネ庁。先ほどから、一番最初の議論で申し上げたのですけれども、いろいろその辺が問題をややこしくしているのですが、エネ庁としては、俗に言う廃棄物全般について、それぞれ場合分けしなければいけないのでしょうけれども、また科学技術庁との協力体制もあるのでしょうけれども、今後どういうふうな形にされていくのか、ちょっと簡潔にお答えいただければと思います。
  137. 平岡英治

    ○平岡説明員 資源エネルギー庁でございます。  原子力発電所内におきましては、使用済み燃料につきましては、原子力発電所内の貯蔵プールにおきまして厳重に管理をしておりまして、再処理等で運び出されるまでの間、厳重に保管をするということにしてございます。  また、原子力発電の運営に当たりまして放射性廃棄物が発生いたしますが、これは、原子力発電所ではすべて低レベルの放射性廃棄物が発生してございます。これにつきましては、厳重な管理ということで、固体廃棄物につきましてはできるだけ量を減らして、減容化と申しておりますが、固体廃棄物貯蔵施設にて厳重に管理をするという体制をとっておりまして、処分で運び出すまでの間保管をしておるという状況でございます。
  138. 吉田治

    ○吉田(治)委員 今お話もありましたように、先ほどから申しますように、廃棄物というのは大変なことだと思うのです。認識もされていると思うのですが、中間貯蔵、原子炉等規制法の改正の必要性というのが言われているのですけれども、その辺、今科技庁としてはどういうふうな進みぐあいになっているのでしょうか。
  139. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 原子力発電所から出ます使用済み燃料の中間貯蔵ということでございますが、現在、使用済み燃料は年間九百トンぐらい毎年出るわけでございます。六ケ所村の再処理工場が稼働いたしましても八百トンでございますので、今の発電所のプールの余裕はございますが、長期的にはそういうことを考えなければいけないわけでございます。  したがいまして、昨年二月の閣議了解に基づきまして、科技庁、通産省、電気事業者との間で使用済燃料貯蔵対策検討会というのを昨年三月に設置いたしました。先ほど先生、報告書ができたとおっしゃっていますが、これはまだ終わっておりませんで、できましたら三月中には報告書をまとめたいと考えております。  これまで六回の検討を行いまして、使用済み燃料貯蔵の現状とか将来の見通し、海外ではどうしているか、その安全性はどうか、新しい技術を使えないのか、法律はどうするのか、そういうことにつきまして検討を行っているところでございます。  間もなく報告書ができると思いますので、よろしくお願いいたします。
  140. 吉田治

    ○吉田(治)委員 その中で、報告書の案なるものの中興貯蔵事業者という形で、今まで電気事業者が預かっていたのを貯蔵事業者が預かると。先ほどの原子炉等規制法の改正というものも、こういうところが含まれてくると思うのですけれども、これについては具体的な検討というのは何かなされているのですか。
  141. 池田要

    ○池田政府委員 私どもも、規制当局としましてはこの検討会の検討を見守っている段階でございまして、先生御案内のとおりに、使用済み燃料は、原子力発電所の中ではその施設の一部で貯蔵管理をされておりますし、再処理工場に参りますと、ほぼ同じような貯蔵施設があって、それは再処理を行われるまでの間、管理をされるわけでございます。  そういうことが今回、発電所あるいは再処理工場とは違った様態で事業主があって、中間的に別途の例えば貯蔵をするといった事業形態が考えられるのではないかと。いろいろ検討の結果としてそういったイメージが出てくるものと思っておりますけれども、そうした場合に、事業者が、これは商業行為としてやるわけでございますから、自分のイメージを持って、例えばこういうことをやりたいといったことがはっきり出てまいりますと、これにふさわしい規制のあり方といったことにつきましての規制法、原子炉等規制法におきましていずれにしましてもしかるべく規制のあり方といったものについては答えを出さなければいけないということを考えております。  現在まだ検討会でそういうイメージづくりが進められているところでございますし、あわせて、これについての事業主体においても実際にどうするかといった検討が進められていることと思っておりますし、そういった段階がいずれは来るのではないかと思っております。  以上でございます。
  142. 吉田治

    ○吉田(治)委員 そういう中で、二月二十六日に科学技術庁が北海道に対して、貯蔵工学センターの幌延の取りやめということを申し入れをなさっていきましたけれども、これに関する課題というのは非常に多いと思うのです。昭和五十九年のときの知事がよかったか悪かったか、これは私はわかりません。しかしながら、そういうふうな地元対応対策というものは、先ほどから青森とかこういう話をしますと、私みたいに大阪の人間、都会に住む人間は、自分たちは使うだけ使ってそういうものはこっちに持ってくるのかという議論をされても困るのですけれども、しかし、実際現実として今後対応していくという中で、この計画撤回というのは非常に大きな影響があると思うのです。まずこのことについてが一点。  そしてその後大臣に。  先ほどもお言葉はあったかもしれませんけれども、放射性廃棄物を今後具体的にどうしていくのかという指針、方針、また、具体的なビジョンと言ったら語弊があるのですね、具体的な計画というのを出せば、迷惑施設だから要らない、撤回、十年、二十年一どんどん予定されているものがおくれていく。どこかで、政治決断という言い方があるかもしれませんけれども、だれか大臣がその辺のことを、そのときには悪名かもしれないが一後世にとっては、ようあのときやってくれた、ええ大臣やったというふうに言われることも、私は大臣を務められている間に必要ではないかと思うのですけれども、その辺を含めて、まず幌延の件と、その後大臣から、原子力廃棄物、放射性廃棄物についての対応についての御決意をお聞かせいただきたいと思います。
  143. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 まず、幌延の件につきまして、二月二十六日でございますが、私、北海道の堀知事に申し入れをさせていただきました。  その内容といたしましては、従来、貯蔵工学センターということで、深地層の試験場と東海再処理工場から出る固化体の貯蔵、その二つをセットにした計画を以前は持っておりましたが、それを取りやめまして、新たな提案として、深地層試験、それを早急に推進したい。それからもう一点匡高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵については、その必要性に変わりがないことから、さらに理解を得るための努力を進めつつ、全国的な見地という考え方を十分踏まえて取り組む。こういう申し入れに対しまして、堀知事からは、国の基本的な考え方が示されたものと思うが、今後申し入れの具体的内容について検討したいというような発言がございました。  これは、いずれにせよ、高レベル廃棄物対策を進めるためには深地層の試験場で研究をするというのが非常に重要でございますので、それと同時に、動燃事業団の一連の不祥事で、今新しく生まれ変わるわけでございますので、そういうような情勢を踏まえて、従来の提案を取りやめて、こういう格好にさせていただいたわけでございます。
  144. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 御指摘のように、高レベル放射性廃棄物をどうするかというのが我が国原子力政策の残された最大の課題でありまして、ある意味では我が国原子力政策の、今こういう表現をしていいのかどうかわかりませんが、あえて言えばアキレス睦みたいなところになっているのじゃないかと私は思っています。  それで、これについても御高承のことでございますが、原子力委員会で、処分の技術的な側面とそれから社会的、経済的側面、両方について審議を公開もとで行ってまいりました。  技術的側面については、専門部会で去年四月に報告書がまとめられましたし、また社会的、経済的側面については、昨年七月に処分懇談会で報告書案をまとめまして、その中で、実施主体とか事業資金、処分地選定プロセスなどについての具体策をまとめたわけですが、その後これを公表しまして、半年の間、国民の意見も伺いながら、全国五カ所で意見交換を行ってきたところでございますので、これらを踏まえて、できるだけ早く報告書を取りまとめたい。そして、この報告書に示された方針に基づいて、これから処分に係る研究開発を加速しなければならないと思います。  その際に一番大事なのは、先ほど、決断をせよ、こういうことでありましたけれども、やはり、広い国民各般の御理解がなければこれはなかなか進まないことだろうと思います。ですから、二〇〇〇年をめどに処分事業の実施主体を設立するということにしておりますが、国民理解を得ながら、政府一体となって着実に進んでいきたいと思っております。  先ほどの幌延の件に関しましても、いろいろな見方があろうかと思います。退いたことがよいことだという見方もあれば、何だ、腰砕けかというおしかりも他方から受けております。しかし、私は、こういう我が国原子力政策の中で、何としても高レベル廃棄物の処理方策というのを確立するという立場からしますと、一歩後退しながら、もう一回理解を取りつける努力をしながら先へ進む道を進んでいく、そういう意味では、ここから解決の糸口を見つけたいと思って、先月あのような提案をさせていただいたところでございます。
  145. 吉田治

    ○吉田(治)委員 別にエールを送るということじゃないのですけれども、やはり、これは与野党一致して、大臣にも頑張っていただいて、決断したら大臣がちゃんと説明をして、アカウンタビリティーとこのごろ言うらしいんですけれども、そういうふうなこともして、みんなでやっていくということは必要だと思うのです。  あと、時間の都合もありますので、一つにまとめて質問させていただいて、それぞれ担当の方からお聞かせいただければと思います。  今後のこと。今のは現実の対応なんですけれども、例の高速増殖炉の「もんじゅ」の問題、痛ましい事故でございまして、その中で犠牲になられた方々、みずから命を絶たれた方に対しては、私も本当に残念だなと思うのですけれども、今後の「もんじゅ」の進め方。個人的な意見としては、やはりいいものであるならば、欠点、短所はちゃんとしまって次の一歩を踏み出して、できるだけ一日も早い再開を、それはもちろん安全性だ、なんだということは十二分に必要ですけれども、それができた段階で果敢にゴーしていただくということは必要ではないかなと私は思います。  今後の進め方、例えば具体的に何年ぐらい先には動かせるのか、それは準備段階からあると思うのですけれども、それが一点。  それから、昨年の京都のCOP3を受けての、地球温暖化に対して、やはり科学技術とついているんですからその部分からの取り組み。特にこれは、今後原子力発電の開発というのが難しい中で、実は、原子力発電をしなければ日本の二酸化炭素の排出量をクリアできないという相矛盾したものもあるんですけれども、その中で、一部では、原子力をやめて全部新エネ、俗に言う太陽光発電とか風力にしろと言うんですが、これは絶対追っつくわけないんですね、幾ら頑張っても。そんなことを言うやつの気が知れぬと心の中では思うのですけれども。口に出して言ってしまいましたが。  しかし、それも、言っているだけじゃやはりだめだと思うのです。実際どういうふうに科学技術、特にそれを所管する省が取り組んでいくのか。それによってはひょっとしたら、例えばの話ですよ、話が長くなりますけれども、五十年前に自動車というのは金持ちしか乗れなかったのが、今、高校を出た子、大学を出た子がすぐ乗れるようになったというように、エネルギーも変わっていくことができると思うのですけれども、それの取り組み。  ロケットの件は、聞きたかったのですけれども、先ほど近藤議員が聞いたのでやめておきます。  そしてもう一つは、これはアメリカでは随分先に進んでいる、やはり未知のものは、最後、ライフサイエンス、生命体だとよく言われています。科学技術庁のお話を私いろいろ聞かせていただいて、こういうことまでやっているのかと。例えばゲノム関連研究であるとか疾病克服、環境保全というふうな形で、こういうふうな部分が今科学技術庁も取り組まれている。これは、科学技術庁イコール原子力というふうな形になって、失敗したら宇宙という形になるんですけれども、こういう生命、ライフサイエンスという部分、この辺も取り組んでいることをもっとアピールし、また協力できるものは私たち協力していかなければならないと私は思うのです。  以上三点、あわせてお答えをいただければと思います。
  146. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 最初に、「もんじゅ」の件につきまして御説明申し上げます。  「もんじゅ」の事故で、地元住民の方々あるいは国民の皆様方に大変御迷惑をかけているわけでございますが、それ以降、安全性の総点検とか安全面の問題、それからやはり必要性という観点から、高速増殖炉懇談会、そういうものを開きながらいろいろと検討して、それぞれ前進しているところではございます。  しかしながら、現時点におきまして、まだ「もんじゅ」の運転再開ということは議論する段階にはなかなかないんだろうと考えておりまして、今はナトリウム漏えい対策として、国の安全審査を通じまして安全性を確認していく、それがまず必要だろうと思っておりますし、運転マニュアルとか品質保証、そんなものにつきましても、安全委員会におきます専門家組織でやっていただける、そういうことになっていると思います。  そのような活動を通じまして、「もんじゅ」の安全性が再確認された段階でまた地元の了解を得る、そういうような努力をしてまいりたいと考えている次第でございます。
  147. 青江茂

    ○青江政府委員 まず一点、地球温暖化対応ということにつきましては一まさに先生御指摘のとおり、科学技術というところが大変重要な役割を果たすという認識で諸般の研究というものを進めておるというところでございますが、とりあえず一つは、まずは原子力推進、二酸化炭素を出さない原子力推進というところがあるわけでございます。それと同時に、私どもが特に力を入れてございますのは、地球温暖化というものを、かなり長いレンジで見てそこのところをきちんと予測をしていく、そしてそれをきちんとシミュレートできるようなシミュレーターというものを開発していく、こういったところを非常に力を入れた形で持っていく、こういったところが地球温暖化問題の一番ベースになり得るのではないかということで、力を入れておるというところでございます。  それからもう一つ、ゲノム中心といたしましたライフサイエンス関係につきましての御指摘がございましたが、情報科学技術ライフサイエンスというのが非常に重要な課題であろう、分野であろうという認識に立ってございまして、特にライフサイエンスの中でも脳科学というものとゲノム研究というものが、これから先最も力を入れていくべき分野であろうという認識に立ってございまして、その関係の研究というものを強力に推進している。諸般の体制も整えている。と同時に、各省庁連携というのは、この分野におきましては大変重要ということでもちまして、科学技術会議のトータルの枠組みの中で、各省連携というものを強固にしながら、推進を図っているというところにございます。
  148. 吉田治

    ○吉田(治)委員 時間なので、もうやめなければいかぬのですけれども、原子力局長、「もんじゅ」に毎年金をごつつうつぎ込んでいるわけじゃないですか。それについて、何年先ぐらいというめどもなしに、このままつぎ込み続けるのですか。地元の方々への安全性に対するアカウンタビリティーだとか補償というのは大事ですけれども、ある程度のめどをつけなければ、それなら予算が入っている部分がずっと続くのかという話になります。  それから、今御説明いただいた件ですけれども、新エネルギーの導入促進についてはやはりもっと頑張ってほしいということ。原子力局長、最後に一言お願いします。
  149. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 今何年と言うことはなかなか難しいわけでございますが、これから安全審査ができましたら、それに従いまして改造するとか、そういうことをぜひ最大限努力をしてまいりたいと考えております。
  150. 吉田治

    ○吉田(治)委員 終わります。  ありがとうございました。
  151. 大野由利子

  152. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 自由党の菅原喜重郎でございます。  谷垣長官所信表明に対する質疑でございますが、所信を聞きまして、二十一世紀に向かう我が国科学技術の健全な発展振興策を総合的に展開しなければならぬという点につきましては、ともに使命感的なものを感じて、日本のために大局を誤らない政策を進めていかなければならぬなという点では全面的に賛同しているものでございます。  それでは、個々の質問に入らせていただきます。後になってきますと随分質問もダブって通告になっておるわけですが、一応通告しておりましたので、HⅡロケット五号機打ち上げ失敗について質問したいと思っております。  過般二十一日午後四時五十五分、種子島の宇宙センターで打ち上げられたとき、私も長官と一緒に参列させられておりまして、あの瞬間は、成功したというので、ともに手をとり合って喜んだ、そういう感激の一場面を思い出しておりますが、一時間ぐらいしましたら、どうも軌道が変だということで、がっかりしていたわけでございます。  私は、その際、こういう失敗に陥ったら事後策が一番大切だから、ディスクロージャー、情報だけはきちんと公開し、謝るところは謝る、そういう姿勢をもって対処していった方がいいのだろうなんということを話したりなんかしておったのですが、一応この事故に至る経緯につきましては、過般の三日開催の技術評価部会で、事業団が一次推論を報告しております。  第二エンジン第二回燃焼開始約四十八秒後にエンジン制御回路電源ケーブルの損傷により電源が切れたというようなことなのですが、これの原因は、第二回燃焼開始約四十一秒後、燃焼室またはノズルスカートの冷却用細管部分、あるいはそのろうづけ部分から燃焼ガスが噴出したのが原因じゃないかということです。これが、一応今最新の原因の推論ということになっているわけでございます。  それから、天体これと同じようなことが六日の新聞で報告されておりますが、やはり五日の事業団の報告を受けて、即座にマスコミの方にも報告されたのだなというふうに思っておりますが、こういうことに間違いございませんか、今の段階では、原因は。
  153. 青江茂

    ○青江政府委員 五日の段階におきまして、宇宙開発事業団から、その事故のシークエンス、それから原因についての一次的な推定、こういったことにつきまして、先生今御指摘なされたとおりでございます。  と同時に、プレスヘのブリーフィングでございますけれども、先生先ほどディスクロージャーということを御指摘ございましたけれども、原因解明、そういった途上におきましては、私どもも、いわゆる透明度の高い状態でもちまして原因究明を図っていくという心づもりでございまして、その段階におきましてプレスに対しましては十分なブリーフィングをさせていただいた、そういう状況にございます。
  154. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それはそれでいいわけなのですが、この委員会委員にも、即座とは言わないでも、一応私たちにも後でこういう報告がなされておりますのでいいのですが、よかったら、私たちにも同時ぐらいに来るように教えてくれればいいなというようなことを、これは要呈しておきます。  それで結局、この事故の推論で私が心配するのは、二年後に打ち上げを予定されておりますHⅡAの事業そのものに対してなのですが、今後この原因を究明されるならば、製造工程、検査工程等の記録を中心に詳細に対応を進めて、このHⅡAに対する対応も進めていくというふうに私たち理解しているのですが、こういう事故の今後の開発への影響についてはどのようにとらえているかお聞きさせていただきます。
  155. 青江茂

    ○青江政府委員 お答え申し上げます。  まず、今のHⅡというロケットにつきましてでございますけれども、これは次回の打ち上げが一年半後でございます。原因究明というものを図りまして、次回の打ち上げにきちんと間に合わせるべく努力をいたさねばならないというふうに思ってございます。これが第一でございます。  それから第二の方の、今先生御指摘のございましたHⅡAというものに対しての問題でございますけれども、HⅡAの初号機の打ち上げが二年後でございます。これも当然のことながら、今回の原因、それをきちんとフィードバックさせるという形をもちまして、HⅡAの開発のスケジュールというものをキープしつつ、より信頼性の高い状態に持っていくという努力を図っていかなければならないもの、かように思ってございます。
  156. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 私は、こういう事故を契機としまして、改めるときは思い切り構造そのものも改めて、新しい予算を食っても、いわゆる新しい対応をなした方がいいのじゃないかと。  それから、今爆薬も何秒刻みかで爆発させていくような技術も開発されているので、何かそういう、いわゆるごくわずかな時差をつけて簡単にできるようなエンジンの開発なんかもできるのかななんて、素人考えでこんなことを話し合ったりもしていたんですが、いずれにしても、原因がある程度解明されてさましたら、構造的な今までのエンジンの中身を変えなきゃならぬというような事態も起きそうなのかどうなのか。まだこれは推論の段階だから何とも言えないかと思いますが、こういうことに対する見通しはどうなんですか。
  157. 青江茂

    ○青江政府委員 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、今、原因究明途上にあるということでもちまして、そのあたりをきちんと勘案しなければならないということはそのとおりだというふうに思ってございますけれども、ロケットの今回ふぐあいを起こしましたエンジン、E5Aというエンジンでございますけれども、それの前身でございますLE5というものから数えますと十四回のそれに先立つ正常な機能というものが発揮され、打ち上げが成功しておるというふうなことを勘案いたしますと、設計の大幅な変更が必要となるような性格のものではないのではないかといったふうな見通しというものも示されてございます。  そういうことでもちまして、一年半という期間というものを活用いたしましてリカバーというものが可能ではないかというふうな見方というのが宇宙開発事業団の方からは示されておるというふうに聞いてございます。
  158. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 いずれにしても、六百八十億か幾らかをかけたロケットでございます。失敗したとしてもまだ「かけはし」は軌道を回っているわけでございますので一この「かけはし」の現状と今後の計画、それから、今後の宇宙開発へ取り組む大臣の姿勢等をお伺いしたいと思います。
  159. 青江茂

    ○青江政府委員 私の方から、「かけはし」の現状、これをどういうふうに持っていくか、この点だけにつきまして先に御説明をさせていただきたいと思います。  「かけはし」につきましては、投入軌道、これにつきましては大幅に狂ったわけでございますけれども、機能自体としましては、太陽電池パネルも開きまして一応正常ということでございます。  しかしながら、今回ってございます軌道でございますと、この衛星に託しましたミッションというのがほとんど達成できないというふうな状況でございますし、それから運用上も非常に難しい、また、ほっておきますとこの年末には大気圏突入というのも懸念される、こういう状況でございますので、そこの軌道を引き上げまして何らかの形の実験というのができないかということでもちまして、宇宙開発事業団、それから郵政省の研究所等が検討いたしました結果、その軌道を遠地点で一万七千七百キロ、近地点でもちまして五百キロ、この軌道に上げるという案というものを策定をいたしまして、過日、宇宙開発委員会に提案をしてまいりました。  そこでもちまして、宇宙開発委員会は、専門家に特別に加わっていただきまして十分な検討をいたしまして、了といたした次第でございまして、それを踏まえまして宇宙開発事業団が、その軌道変更というものを行うべく今準備を進めている。明日の十二時を回った零時過ぎ、その段階から第一回目の軌道変更のオペレーションというものに着手をいたしたいというところで今準備を進めておる、こういう段階にございます。
  160. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 まず、菅原先生にはこの間打ち上げの日にわざわざ種子島まで行っていただきまして、私、打ち上がった後、先生と手を取り合って喜んだわけでありますけれども、こういう結果になりましてまことに申しわけないことだと思っております。  私も、この宇宙開発につきましては、衛星はその都度新しい目的で新しいものをつくるから、予想せざるふぐあいが出てくるということ、これはあることかなと思っておりましたのですが、ロケットのあの部分、今までこれ十四回成功してきておりますので、ここで失敗をするというふうには実は予想していなかったところでございまして、私も、科学技術庁もあるいは宇宙開発事業団もショックを受けているわけでございます。  私、申しているのでありますが、国民の血税をいただいてこういう宇宙開発をしているわけでありますから、やはり準備において、あるいは心構えにおいて一〇〇%を目指すという気持ちでやらなきゃならないのは私は当然だと思っております。  ただ、今回の結果を見ますと、これはやはり、地上とは比べものにならないあの厳しい条件の中で何度も何度も試した技術と大量生産の技術とは違うわけでありますから、なかなか難しい問題も率直に言ってあるなという思いも深くいたしました。  したがいまして、今考え得べきことは、あの失敗に学んでこれを次にきちっと生かしていくということがまず第一になすべきことであろうというので、これはまあ徹底的にやらなきゃいかぬと思いますし、それとあわせて、個別の原因だけなのかどうか、もう少し構造的な問題があるのかもあわせて探っていかなきゃならない、こう思っているところでございます。  しかし、さはさりながら、これでやはりめげてはいかぬというふうに思いまして、これは午前中も申し上げたところでございますけれども、やはり、目に見えて宇宙開発が何の利益に役立つかと言われるとなかなか答えにくいところもございますが、長い視点で見て、新しい技術を開発し、新しい産業を生み、あるいは我々の生活を豊かにし、あるいは青少年に夢を与える、いろいろな意味で我々はこれを推し進めていかなければならないのではないかと思っております。  反省は十分に反省して、失敗に学ぶという気持ちを持ちながら前へ進んでまいりたい、このように思っております。
  161. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 どうもありがとうございました。  構造的な問題の検討に入るようなときは、金がかかったとしても大胆に検討していくように要望しておきます。  それから、これも前質疑者が何度も聞いているわけなんですが、今、高レベル放射性廃棄物の返還輸送に関しまして、木村青森県知事が輸送船の接岸を拒否しております。周辺から、反対した理由の一つ、そういうのを聞いたんですが、やはりあの「もんじゅ」の事故で、それがどうも一般県民にその後どうなったのかはっきりした情報が伝わっていないところから来るいら立ちと、さらに、低レベルの廃棄物のドラム缶が腐食したというのが、何だ、それでは我々の貯蔵しているところもああいう事故が起きやすいような状態じゃないかというのが住民の間で随分不安を醸していた。そういうことがあって、今回はまたはっきり政府対応を聞かないといかぬ、こういうようなことを周辺から聞きました。やはりこれは大変なことだなと思っております。  そこで、このことに対する対応と、知事は四項目の要望を出しております。ですから、こういうことにどのように国がこたえていくのか。  さらに、この問題が起きる背景には、青森県に高レベル放射性廃棄物の最終処分場にしないという約束があったわけですから、結局、この最終処分場が今どこにどうなるのか。これは先ほどから答弁もされているとおりなのですが、この高レベル放射性廃棄物の最終処分場に対する現在の取り組み、それがどのようになっているのか。それから、私の、このことに関して聞く大きなポイントは、高レベル放射性廃棄物を将来はやはり地下に貯蔵せざるを得ない方向に行くのかどうか、そこら辺まで聞きたいと思うのです。
  162. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今、菅原委員から、今回の木村青森県知事の御判断といいますか、その背後に、一つは、動燃の「もんじゅ」あるいは東海村におけるあのドラム缶の処理に対する県民の不安感なり不信感があったという御指摘がございました。  一連の動燃の事故につきましては、まことに私もざんきにたえないところでございまして、特に、つくづく思いますのは、これもたびたび申し上げていることでございますけれども、事故そのものもさることながら、その後の社会的な対応と申しますか、そういうもののいかにも不適切というようなことが、国民あるいはこの場合は青森県民のお気持ちも余計不安にさせたのではないかという思いが私もするわけであります。  これに対してどうこたえるかということになりますと、私どもとしては、あれ以来いろいろなことを踏まえまして、今国会に動燃改革法案というものをお出ししているわけでありまして、これによりまして抜本的な動燃改革というものをなし遂げて、そしてもう一回国民信頼を取り戻す、おこたえをすることになるわけでございます。  ただ、私、これに関してもたびたび申し上げていることでありますけれども、こういう法案としての形はいろいろな方の御努力によってでき上がってきているわけでありますが、仏つくって魂入れずにならないようにする、ここのところが実は一番難しい問題でございまして、今動燃も改組一に向けて取り組んでいただいていると思いますが、これが一番大事なことだろうと思っております。  それから、高レベル放射性廃棄物をこれからどうやって処理をしていくか、物事を進めていくかということでございますけれども、これに関しましては、先ほども御答弁を申し上げたわけでありますが、一番ここが残された難しいところでございます。繰り返しになりますが、ここができれば日本原子力政策は、ほぼ完成したと言っていいかどうかわかりませんが、一応できたということなのじゃないかと思っております。  先ほども御答弁を申し上げたところでありますけれども、原子力委員会におきまして二つの側面から、すなわち技術的な側面と社会的、経済的側面について議論をしていただきまして、社会的、経済的な側面につきましては、今案を、国民の意見も求めながら、五カ所で意見を聞きながら取りまとめを急いでいる。こういうことで、今後、二〇〇〇年をめどに処分事業の実施主体を設立する等のスケジュールでもって着実に進めていきたいと思っているわけであります。  さらに、最後に、高レベル廃棄物は結局どう処分をしていくのかという御質問がございました。これは菅原委員も御承知のとおりで、大まかに言って二つの考え方があるのだろうと思います。それは、一つは、私どもが考えておりますように、深地層と申しますか、そういうところで保管をするのが一番いいのだという考え方ですし、もう一つの考え方は、そんな深くに埋めてしまうよりも、やはり人間の目の届くところで管理した方がいいのじゃないかという考え方も一方あるわけでございます。この二つの考え方はそれぞれ利害得失がございまして、これもいろいろ御議論もいただく必要があるのかと思っております。  ただ、今科学技術庁がとっております方針は、やはり深いところに埋めた方がよいのではないか。というのは、これがだんだんレベルを落としていくには相当長い期間かかるわけでありますから、人間の目の届くところでそれだけ長い期間安定的にフォローができるような体制というものが、人間の歴史や政治制度の中で本当にできるのだろうか。現在日本はこのようにある程度治安はいい国家になっておりますけれども、長い観点でずっとそういうふうにいけるのかどうかは、私どもも歴史をそこまで見通すわけにいかないとなると、深地層処分というようなことがよいのではないか、こういう判断のもとに今対応を進めているというところでございます。
  163. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 実は、この深地層処分の研究となりますと、私たちの選挙区も対象にさせてもらってもいいところはたくさんございます。何か岐阜の方でも、その地層が、そういう適応地がありそうなので研究もされているようでございます。科学技術庁で出しているこの「放射性廃棄物の処理処分と原子力施設の廃止措置」という中に、立派に釜石における地層処分の研究開発で原位置試験の地震観測がなされております。  私は、余り放射能物質に対して神経質になること、これは十分必要なのですが、しかし、本当に研究開発の上に立ってのいわゆる不安感、どうしても対応できないというところからくる不安感ならともかく、それが解決されるかもしれないというまだ研究段階での不安感、これは分けて進めないといかぬし、また、分けて考えるように国民にもPRしないといかぬじゃないかな一こう思っているのですよ。  今、もしもこの深地層処分の方向でいくとするならば、日本全国に五百メートル、千メートルの坑道なんかはたくさんあるのですから、その地層をよく調べて、大丈夫だとなれば、むしろ堂々とみんなに情報公開し、また賛同も得て処分場を建設していった方がいいのじゃないかな、こう考えるわけです。  ですから、もしも政府の方で深地層処分の研究もしているというなら、堂々とひとつ地域の、私たちの適応地に対してはそういう調査を実施していただきたい、こういうことをまず要望して、高レベル放射性廃棄物の質問は終わりたいと思います。  次に、低レベル放射性廃棄物の処分について。今、各原子力発電所でこれは大きな課題となって、随分これを抱えております。六ケ所村の低レベル放射性廃棄物の埋設施設にもこういうのがありながらも、ほかの原子力発電での低レベルを運び出すこともできない、そういうふうになっているわけですが、こういう現状がどうなっているのか。  さらに、低レベル放射性廃棄物については、これは溶融炉や何かの開発で、十分に、七、八割ぐらいまでは対応できる技術開発が今なされているんじゃないかというふうに思っているわけなんですが、こういう分野での、いわゆる溶融炉によるところの廃棄関係の現状、また技術はどうなっているのか、まとめてお聞かせいただきたいと思います。
  164. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 原子力発電所から出ます低レベル廃棄物の処分についてでございますが、先生御指摘のように、原子力発電所から出ます低レベル廃棄物につきましては、日本原燃の低レベル放射性廃棄物埋設センターで埋設されているものはございますが、例えば、原子力発電所の運転によって生じます使用済みの制御棒だとか、あるいは、まだこれから、今後の話でございますが、原子炉の解体によって生じます比較的放射能レベルの高い放射性廃棄物、そういうものはサイト内に当分貯蔵するとなっておりますが、そういうものにつきましては、まだ処分の基準的なものの整備の必要がございますので、そういうものを、原子力委員会バックエンド対策専門部会で今検討を進めているところでございます。  それから、溶融炉という話がございましたが、これも、放射性廃棄物の量を減らす上で非常に有効な処理方法でございまして、溶融処理いたしますと放射性の核種がなかなか漏れ出にくい、そういうメリットもあるやに聞いております。そういうことで、量が減るということもございまして、最終処分を技術的にも経済的にも容易にできるものと考えております。  ちなみに、例えば日本原子力発電株式会社の敦賀発電所におきましては、雑固体と申しますが、いろいろな固体の廃棄物とか、それから復水脱塩装置というところで使っていました樹脂を溶融して減容処理する、そういうような装置の申請がことし二月に提出されているというふうに聞いておりまして、そういうものがこれから普及していくのかと考えております。
  165. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 溶融炉の問題で、実は、ごみ処理の問題で、今から二十年前に流動床炉というのが開発されたのですが、当時私は町長のとき全国の二番目か三番目ぐらいで、我々の六カ町村のごみの処理、一部事務組合で導入したんです。ストーカー方式だのロストル方式と比べて、ごみの灰そのものが全然きれいで、六、七%。片っ方は一二、三%ですから。しかし、それを二十年も厚生省はなかなか普及しないで、やっと最近普及しているのですね。そして、このいわゆるストーカー方式なんかで出てくる灰を、溶融炉をまた今度つくって処分しようというようなことになっているんですが、そういうところに国家が金をかけるよりも、この溶融炉は、むしろこういう、今問題になっている低レベル放射性物質なんかの方に金をかけて処分の研究開発をさせるべきではないか、こういうようなことを感じているものだし、ある程度溶融炉での処分も可能だということを聞いていたものですからきょうは質問をさせていただいたわけです。ひとつ大臣も溶融炉によるところの処分に対しては関心を持って研究推進させていただきたいな、こう申して、一応この件についてはこれで終わりたいと思います。  それから、動燃の改革に当たっては、国民の不安、不信を払拭するとともに、原子力開発を着実に推進していくということが重要な点ですので、これらの双方がともに解決できるような形で今回の法改正には盛り込まれていると思うんですが、やはり先ほどの動燃の問題が今回の青森のああいう問題を引き起こす引き金の一つにもなっているということを考慮されて、ぜひ大きく改革しなければならぬところは改革していっていただきたい。これは要望だけに終わらせていただきます。  次に、このことも私たちの三陸海岸と関係しているので質問させていただくわけですが、今科学技術庁においては深海の調査研究が非常に進められております。そこで、この現状がどうなっているのか。さらに、科学技術庁が建造を検討中の深海掘削船の問題、これのいわゆる中身も。と同時に、母港の検討をどうなさっているのか。  母港となりますと、私たち三陸海岸は日本海溝のすぐわきですから、非常に適地じゃないかなというふうに考えております。そういう点では、釜石に平田という地域も、大変有望なところがありますし、先ほど言いました深地層高レベルの廃棄処分場の研究や何かと一緒になって、もしもこういう母港も検討していただけるなら、二十一世紀に向けた、原子力の廃棄物問題とも関連して大きな夢が開けそうでもあるように感じますので、この点を質問させていただきました。  お答えいただきたいと思います。
  166. 青江茂

    ○青江政府委員 お答えさせていただきます。  まず、第一の深海調査研究の現状ということにつきましてでございますが、科学技術庁におきましては、海洋の実態解明、いわゆる海を知るということを目指しました研究、そして、その調査をいたしますための基盤となる技術の開発、この二つのものを軸に深海調査研究というものを行っておるという状況にあるわけでございます。  具体的に申し上げますと、海洋科学技術センターにおきまして、「しんかい六五〇〇」でございますとか、無人探査機でございます「かいこう」、それから深海調査研究船かいれい」、こういったツールを持ってございます。それを活用しての深海の調査研究、それから、深海の特殊な微生物、こういったものの特殊機能解明のための研究、それから、海底下の深部構造、地下の中の構造、それに関する研究、こういったものを具体的には実施しておるということでございまして、引き続き、こういった点を中心にいたしまして、深海関係の調査研究の一層の強化を図ってまいりたいというふうに思ってございます。  もう一つ、先般来、昨年のロシアのナホトカ号の沈没、その地点というものを見つけ、その油流出状況というものを観察、映像を撮ってくるとか、学童疎開船の対馬丸というものの位置を確認し、その映像というものを撮ってくる、これ自体は研究開発ではないわけでございますけれども、そういった社会的要請というものにも十分対応していくということもまた一つ重要なことではないかということでもちまして、私どもの力というものも発揮していきたい、こういうふうに思ってございます。  それからもう一つ、深海掘削船の母港の件につきまして御質問がございました。  御案内のとおり、深海掘削船システムにつきまして今全体的な検討というものを進めておるという状況にあるわけでございますが、本年度の段階でもちまして全体システム研究というものを一応終了するということで、今途上にあるということでございますが、来年度からは、深海掘削システム試験機の製作、これは一つのエレメント、最も重要なものでございますけれども、ワンエレメントの試験機の製作に着手するという予定になってございます。  したがいまして、こういうふうな段階でございますので、母港の問題につきましてはまだまだもう少し先ということであるわけでございますが、将来的な問題といたしまして、これは国際的な協力の用に供していくということでございますので、国際協力のあり方でございますとか運航の形態、そういったものを含めまして、母港の問題につきましても検討をしていきたい、このように思ってございます。
  167. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 この母港の問題はどこでもいいというわけにいかぬわけなので、やはり日本、こういう六千メートルの深海までも掘削が将来可能な計画でありますならば、ぜひ三陸沿岸をひとつ配慮の中に入れていっていただきたいなということを要望しておきます。  それでは、科学技術庁地球温暖化への取り組みですが、これも前質疑者が聞いているわけなんですが、私たちの一部事務組合で、三町村、平泉町、前沢町、東山町で今度風力発電の設置をしたわけですね。これは能力が一時間四百九十キロワット。平均六・七メートル以上の風速があればその能力が出るというのですが、最高に出たのが、一日に四千キロワット出ております。これは北西の風の強いときですから、冬から春にかけての風で、しかし、東風や南風が吹いできますとどうしても弱って、四百キロワットまで落ちるというような状況です。  ですから、最高に北西風が強いときは、これは大変な能力、クリーンエネルギーですね。こういうこともありましたので、実は、科学技術庁の新エネルギーへの取り組みと同時に、こういうクリーンエネルギーの開発にも大いに予算もつけ、指導もしていただきたい、そういうような観点でお伺いしようとしたのですが、これも要望に終わらせていただきます。  それから、所信表明の中で、クローシ研究が問題、問題というよりも取り組む課題とされております。ゲノムフロンティア開発研究、遺伝子問題、こうなりますと、実は人のクローン個体の作製については生命倫理の問題があると思いますので、この倫理の問題に関連して、政府はどのように考え、どのように対応していこうとするのか、その点だけをお聞きいたしたいと思います。
  168. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 クローンの問題について、生命倫理への取り組みはどうかというお尋ねでありますけれども、ライフサイエンス分野研究もこういうふうに進んでまいりますと、人間や社会との接点で生じる生命倫理をどうするかという問題がもう避けて通れなくなってまいりました。  特にクローン技術については、最近の技術的発展から、今先生がおっしゃったように、人の個体作製ということまで可能性というか視野の中に入ってきた。こういうことになりますと、当然種々の観点からきちっと議論をしておかなければいかぬということだろうと思います。  クローン技術を用いて人の個体を作製していくということになりますと、人間の尊厳にかかわるいろいろな倫理的問題が多分あるだろうと思いますし、また、生まれてくる個体についての安全性とか科学的な面から、まだこれは知見が全然蓄積されていないということもございます。倫理面とそういう安全面、両方問題があるのだろうと思います。  そこで、昨年内閣総理大臣が決定されたライフサイエンスに関する研究開発基本計画、この中で、人の個体作製というのは行うべきものではないというのが現在の政府認識でございます。  そこで、政府としては、この基本計画の考え方を踏まえまして、さらに人のクローン個体作製に関する規制のあり方を検討しよう、こういうことで、科学技術会議生命倫理委員会がございますけれども、その中にクローン小委員会というものを新たにつくりまして、今検討をしていただいているところであります。私どもとしては、生命倫理委員会あるいはクローン小委員会の検討結果を踏まえまして、きちっと対応していきたい、こう思っております。
  169. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 それでは最後に、大臣の所信表明演説に「政府研究開発投資拡充を図る」ということがありますが、これまでの施策と比べ、どの部門をどうするのか、具体的にお聞きいたしたいのと、さらにまた、「創造的な科学技術行政体制整備を図ることが重要」ともうたっておりますが、この具体的な整備の重点をどこに置こうとしているのかをお聞きいたしまして、質問を終わりたいと思います。
  170. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 政府研究開発投資のどの分野に力を入れていくかという点につきましては、これは基本的には、私ども、科学技術基本計画で定められた方向に従って進めていくということになろうと思います。  社会的、経済的ニーズ対応した研究開発をまずしよう、こういうことで、一つは、新産業の創出とか情報通信の飛躍的進歩などの諸課題対応した研究開発、それから、これも何度も申し上げておりますが、地球規模の諸問題の解決に資するような研究開発、それから一生活者ニーズ対応した諸問題の解決に資する研究開発というようなところに力を当てて、同時に基礎研究推進していこう、こういうことであります。  具体的なことをもう少し申し上げますと、これも当然関係省庁と緊密な連携をとらなければなりませんが、一つは、先ほど来先生も指摘しておられますゲノム関連研究とか脳科学研究といったライフサイニンスでございます。それからもう一つは、情報の伝送とか処理の高性能化を目指した情報科学技術ということになろうかと思います。それから、地球変動の予測といいますか、そういうものに関する研究開発。さらに、健康の増進とか疾病の予防、克服、地震などの自然災害の被害軽減、防止、こういう生活に関連する諸課題解決、こういったところの強化に重点を当てて取り組んでまいりたいと思っております。  いずれにせよ、財政が厳しいときでありますから、評価をきちっとして、重点的な投資をしなければならないと思っております。  それから、創造的な科学技術行政体制ということでありますけれども、これはもう長くは申し上げませんが、総理も、行政改革会議の結論が出ましたときに深夜に記者会見をされまして、今回の省庁再編では特に科学技術振興するようなことを考えた、こういうふうに言及していただいております。その一つの柱として、総合科学技術会議というものを内閣府の中に設けていただく。これはやはり、できるだけ形骸化しないで、実質的な、今後の我が国科学技術の戦略的なあり方を議論できるような場所につくっていくということが大事だろうと思っております。  それから、科学技術庁そのものは、先ほどからの御議論のように、文部省と一緒になって教育科学技術省、こういうことになるわけでありますが、これも、それぞれの役所、いいところ、悪いところがあるのだろうと思います。文部系はなかなか古いお家柄でございますから、両家が結婚して余り悪い家風にならないようにそれぞれのいいところが引き出せるように工夫をしていく必要があろうかと思っております。
  171. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 大臣の健闘を祈って質問を終わります。  ありがとうございました。
  172. 大野由利子

    大野委員長 辻元清美さん。
  173. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。  きょうは所信を伺いまして、科学技術についてはやはり光と影の部分があると言われますし、私は、やはりその影の部分をどれだけ克服するかということが前進につながると考えます。また、最後に、結びの部分で、制度疲労を起こしている我が国システムをどう変えていくかという観点から、我が国システムを変革する原動力になっていきたいというようなお言葉もございました。  その中で、私は、やはり科学技術庁自身の制度疲労はどこなのかということを謙虚に見詰めるということが前に進んでいく上では大事だと思いまして、本日は、その事例といたしまして人形峠ウラン残土問題を取り上げて、この教訓をどう生かすかということを議論したいと思います。  経過はもう御承知のとおり、一九五五年に岡山、鳥取の県境の人形峠でウラン鉱脈が発見されて以来、五七年には動燃の前の原燃ができまして、出張所ができました。そして、五八年からウランの探鉱作業が開始され、人形峠では五九年からウランを探鉱してきた。約十年間ここでウランをとり出しまして、主には茨城県東海村での製錬試験に使われた。まさしく国策としてウランの探鉱を行ってきた、これは事実であるかと思います。  そういう中で、一九八八年まで、この後どうなっていたかということがはっきりせず、八八年に二つのことが発覚してからこの問題が取り上げられるようになったと思います。  一つは、共同通信社が入手した原燃の年報により、ウラン採掘当時の坑道内のラドン濃度が許容基準の一万倍を超えていたという事実、そして二つ目が、ウラン残土が放置されていた。これが報道されまして、これからこの人形峠のウラン残土問題は各所で論じられ、現在に至っていると私は一認識しております。  その中で、一九九〇年には「ウラン残土の撤去に関する協定書」「ウラン残土の撤去に関する確認書」等を地元の皆さんが動燃と結んでおりますけれども、それから十年たっても、今も放置されたままという状態になっています。  社民党でも、ちょうど十年前なのですけれども、一九八八年の九月一日に、土井たか子、今党首ですけれども、当時は委員長でした、その時代に、当時の科学技術庁長官、伊藤宗一郎長官の方に、ウランの残土を撤去するように、住民の健康調査と農作物の検査の実施、責任を持って対処するようにという申し入れをいたしました。これは十年前です。そして先日、十年たったことしの一月二十六日に、これは私も同席いたしましたが、土井たか子党首名で同じ申し入れをまたしたわけです。それで、昨年の十二月二十六日、社民党では現地調査団を出して、十年たっても放置されているこの問題、これが解決しない限り、動燃の改革どころか、そういう影の部分を残したままで科学技術のすばらしい面だけは論じられないのではないかというふうに私は考えております。  そういう中で、こういう経過を踏まえまして、きょうの大臣の所信で、動燃に関しましては、「経営、組織、事業などを抜本的に見直し、安全確保機能強化するとともに、経営体制の刷新、職員の意識改革社会に開かれた体制づくり実現し、真に国民の負託にこたえることのできる新法人に改組していきたい」、そして「科学技術庁においても、現場を重視した実践的な安全規制を」、この「現場を重視した」というところに力を入れたいと思うのですが、「行うなど、安全確保充実強化に取り組むとともに、法人に対する評価監査体制強化を図るなど、国民信頼早期回復に向けた努力を行っていきたい」という所信を承りました。そういうことを背景にして、今から何点か質問をしたいと思います。  まず、残土を放置してある場所の方面地区というところがございますけれども、この借地権の期限はいつまでだったのでしょうか。これは動燃の方に答えていただきたいと思います。
  174. 中野啓昌

    中野参考人 先生お尋ねの方面の場所で、民有地、たしか八名だったかと思います、八名の方からお借りしておりました土地の期限は、一昨年の十二月二十六日までということでございます。  なお、同じ方面の場所の中でも、民間の方でない、町の方でお借りしている部分もございますので、そこは引き続きお願いをしているところでございます。
  175. 辻元清美

    辻元委員 今、一昨年という言葉がございましたけれども、その部分については借地権が切れている。  次に、科技庁の方にお伺いしたいのですが、このような状況ですが、民法の五百九十七条には借用物の返還不履行についての規定であったり、民法二百六条には所有権、憲法の第二十九条には財産権というのが保障されておりますけれども、この方面地区の借地権が切れているという状況は、これをほごにしているのではないか、違法ではないかと私は考えますが、科技庁の方はどのようにお考えでしょうか。
  176. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 当該場所は、鉱山保安法に基づきまして、国の規制は鉱山保安法に基づいて行われているわけでございますが、鉱山保安法上の処置はとっておりますので、そちらの方は問題ないかと思っております。
  177. 辻元清美

    辻元委員 そちらの方といいますか、ということは、違法でないというふうにお考えかどうかのみもう一度御答弁をお願いいたします。
  178. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 借地権が切れているということでは望ましいことではございませんが、住民の安全を確保するとか、そういう観点においては処置されているということでございます。
  179. 辻元清美

    辻元委員 ちょっと御答弁の意味がわからないのですけれども、借地権が切れているということは、これは違法であるというふうに私は理解いたしますし、それ以外に、その安全を確保しているとかということは別の次元ではないかというふうに思います。  実際に、この問題については、ここに私は「ウラン残土の撤去に関する協定について」ということで、一九九〇年八月三十一日の協定、それから「ウラン残土の撤去に関する覚書」というのを現地から取り寄せました。これはどういうことかといいますと、早急にこの堆積残土を全量撤去するということ、もしくはこの堆積場の管理責任のすべては乙、この場合の乙は動燃にあるということを認め、かつ実態調査及び健康相談等を実施すると。また、もっと詳しいことも書いてあります。ウランの残土撤去は米やナシなどの収穫期までに着手し、当該協定書を遵守の上というふうに、非常に詳しい覚書もしくは協定を結んでいらっしゃいます。  これは、動燃の早川所長さんと、それから東郷町方面地区自治会区長の伊藤さんであったり、立会人として町長も立ち会ったという、こういうサインつきのものです。これがちょうど八年前になりますか、九〇年に結ばれているわけです。  これについて、科技庁は御存じだったか、またどのように御認識されているか、ちょっと伺いたいと思います。
  180. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 科技庁としては、当然動燃事業団から聞いております。ただし、私自身は、今ちょっと手元に持っておりません。
  181. 辻元清美

    辻元委員 このように、科技庁も認識されている協定もしくは覚書を九〇年に結んでいる。にもかかわらず、その後まだ今日に至ってもその残土は取り除かれていないという状況になっているわけですね。  こういう採掘の経過と、残土処理については直接動燃が覚書を結んでおりますけれども、これは国の責任において処理すべき問題であるというふうに私は考えるのですけれども、科学技術庁はいかがでしょうか。
  182. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 先ほどの、本件の十年越しの問題でございますが、地元に御心配かけているところでございまして、非常に申しわけない事態だと思っております。  このような事態になっているそもそもの原因、もとは、動燃事業団が残土を人形峠に運び込もうとしたわけでございますが、予定していた岡山県側の御理解を事前に得ぬまま約束をしてしまった、そこが発端でございまして、そういう意味で、動燃を監督する立場の科技庁としてもまことに遺憾だと感じている次第でございます。  先ほど申しましたように、現状におきましては、ウラン残土の保安管理につきましては安全確保に万全を期しているところでございますけれども、御指摘のように、こういう問題は早期に解決しなければいけないと思っておりますし、我々も努力したいと考えている次第でございます。
  183. 辻元清美

    辻元委員 これは、当時、国策として進められた原子力政策のまず発端になる、人形峠のウラン採掘というのはそこから始まっているということは皆さん御承知のとおりだと思います。その問題が今解決されていない。  それで、ここでウランを掘っていくと、鉱滓と残土について、これは出てくるのは当たり前ですね、どんどん掘っていくわけですから。実際、私は先日、科学技術庁と動燃に資料請求をいたしまして、その中に、鉱滓は二万二千八百立方メートルが人形峠事業所内の鉱滓ダムに投棄されているということの報告を受け、かつ、露天掘りで、二十四万立方メートルのうち二十一万立方メートルが野ざらしになっているという資料もいただきました。そして、方面地区では一万六千立方メートルが違法放置、要するに借地権が切れたところに放置されているということになります。  そうすると、開発当初から、こういう残土や鉱滓が生じるということは、これは技術者であればわかっているはずだと思います。科学技術の最先端を行っている原子力であるというふうに当時言われていたと思いますが、こういうことは認識なさっていたはずなんですけれども、この残土や鉱滓が生じることがわかっていたのに、それらを一体どうするつもりだったのかということについての御認識はいかがでしょうか。
  184. 中野啓昌

    中野参考人 先生今御指摘のように、私ども、その場所で探鉱活動を始めましたのが昭和三十一、二年ごろからでございます。当時の規則にのっとりまして、保安面も含めて、探鉱活動を実施したわけでございます。  いわゆる残土と今先生おっしゃいましたけれども、ウランの濃度が万分の一以下の極めて低いものに関しては製錬の試験に適しませんので、これをいわゆる、私どもは捨て石と呼んでおりますが、捨て石として外側に堆積させておく、ただし、その堆積した分については、定期的に、鉱山保安法に従って管理を続けていく、法律の中できちっとそれを管理していくということを続けてきたつもりでございます。  その後、法律の改正等ございまして、周りにさくをするとか、そういった変遷はございましたけれども、その場所において適正な管理を行えばいいというふうに理解をしておりますし、現在の法律の体系でもそうかと存じます。
  185. 辻元清美

    辻元委員 今、適正な管理をしていけばいいというふうに御答弁いただいたんですが、そうすると、そのままずっと放置しておくということでしょうか。
  186. 中野啓昌

    中野参考人 少なくとも最初にこの活動を始めた時点では、そのままの形で置いておくという発想であったかと思います。その後、先生今最初に御指摘になりました、一九八八年でございますか、二つの問題でこの問題が浮かび上がって、クローズアップしてきて、いろいろその場所場所の住民の皆様方とお話し合いをさせていただきながら、例えば、ある場所では現在の残土の上に覆土をするとか、あるいはその残土をピットの中に入れるとか、そういった処置をいたしてございます。その中の一つとして、方面地区の場合は、撤去してくれないかというお話がございまして、当時、私どもの考え方では、人形峠事業所の中に持ち込むことが可能であればそれはできる、従前も多少そういうことをやっておりましたから、可能であるという考え方でおりました。すなわち、一九八八年以降は、ただ捨てておくだけではなくて、一部措置もいたしております。
  187. 辻元清美

    辻元委員 今、御回答では、実際に当初はそこに放置しておくということしか方法がなかったというお答えではないかと思うのですね。現在、もうこれは、放置されたときから見たら十年どころじゃないわけです。  実際にこれは、別の、方面だけではなくてほかにもあるかと思いますけれども、動燃の測定で放射線量の測定もされていますね。その資料を拝見しますと、中国四国鉱山保安監督部の指示によるやり方でこれは測定されたものですけれども、同じような放置の岡山県の中津河、こちらの方では、動燃の測定でさえ一般公衆の被曝限度の五十九倍の放射線が測定されている。また、この放射性廃棄物の規制免除目標値のそれぞれの五千九百倍の放射線量だとも言われているわけです。もしくは、ウランを掘り出した穴の入り口ですね、それから残土が住民の暮らするの真上にある、風が吹けばラドンガスが吹きおりてくるところに集落があるということも御承知だと思います。また、雨が降ればウランを溶かして谷に流れてくる。この住民の皆さんは本当にこれ、不安だと思います。  そういうような状況で、当初から放置しておくしか手がなかったというような、中野理事のお答えのように受け取りますけれども、今住民の方々の不安がまた高まってきているという中で、これは至急私は対策していかないと、このままほっておいて、動燃の改革とか科学技術未来と言っても暗いのでないかと思いますが、いかがですか。
  188. 中野啓昌

    中野参考人 先生の御指摘のございました数値、いろいろございますが、それにはいろいろな前提条件があろうかと存じます。  今、先ほど申し上げましたように、一九八八年以降につきましては、捨ててございます場所によりまして、その地域の住民の方と話し合った上で、覆土をするものは覆土をするという措置をとってございます。ただ、今回先生御指摘の方面の場所につきましては、撤去をするということでこの問題を解決しようとしたわけでございますが、撤去先が定まらないということで、今日まで来ておるわけでございます。  したがいまして、当初はそういうことで適切な処置法がなかったわけでございますけれども、その後、私どもとしては一応の措置をしてきているというふうに思っております。
  189. 辻元清美

    辻元委員 今、適切な措置をしてきていると、借地権が切れたところに置いてあるわけなんですけれども。私は、この住民の方の声も直接聞いております。撤去してほしいという、それが要望なんですね。  それから、もう一つ申し上げたいのは、この「ウラン残土の撤去に関する覚書」の中に、「健康相談等とは、元鉱山労働者については乙」要するに動燃が実施するということが明記されております。先日、資料を私いただいた中で見ていきますと、この鉱山労働者等についてはフィルムバッジの着用、これの報告を受けました。着用していた労働者は初期には一〇%程度と。もうちょっとと今おっしゃっていますけれども、書いてありましたよ、そういうふうに。それで、後日、改善された時点でも八〇%というのが、お出しいただいた資料にも書いてあります。こういう状況で鉱山労働者が働かされていた。そして、この覚書にはその健康調査をするということになっておりますけれども、これがしつかりなされたのか。そして、なされた資料の結果を私どもに提出してくださいとお願いしておりますが、今日に至っても提出されておりませんけれども、それはどういうことでしょうか。
  190. 中野啓昌

    中野参考人 先ほどちょっとお答え申し上げるのを一つ抜かしたものもございますので、加えて御説明させていただきます。  ラドンが上から流れてくるというおそれを住民が感じておるがという先生の御指摘でございますが、これは方面地区の方にも既に開示してございますけれども、私ども、六弗化硫黄というガスを使って、実際ラドンに模擬した形でどれくらい流れてくるものかという調査をいたしました。その調査結果もたしか先生のところにもお届けしてあろうかと思いますが、ほとんど流れ出ないということがわかってございます。そういった一つ’つの積み重ねの中で安全性については御説明してきたところでございます。  さて、健康に関してでございますが、フィルムバッジをつけていた者は極めて少なかったという御指摘でございますけれども、当時、昭和三十年代の規則では、特にフィルムハッジの着用は義務づけられておりませんでした。しかし、私ども、自主的に、大体四人一組ぐらいで作業をいたしておりましたので、その中の一人には必ずつけさせるようにして被曝線量の管理をしてきたわけでございます。  その後法律が改正になりまして、昭和三十八年以降はきちっとした管理をしてございます。
  191. 辻元清美

    辻元委員 そうすると、実際にフィルムバッジをつけていらっしゃらなかった方が働いていらっしゃったということは事実であった、当時の規則ではそうではなかったということですから。そうしましたら、今は、これは必ずつけるようにというのは労働者の健康管理の最低限の条件になっておりますので、その方々の健康調査をしっかりするというのが当たり前の認識だと思います。それはいかがなんでしょうか。
  192. 中野啓昌

    中野参考人 平成元年にトレース調査を行いまして、被曝線量につきましては、全部で三百二十名、平成元年以降さらに十六名の方が判明いたしましたので、三百三十六名の方の被曝線量を調査してございます。このうち、所在がわからなかった方もいらっしゃいます、もう既に非常に古い話でございますので、約百名いらっしゃいます。所在が判明した方が二百三十六名でございまして、また、亡くなった方もいらりしゃいました。そのうち、動燃事業団に勤めておる人間は定期的に健康管理をやっておりますのでその二百三十名から除きまして、残った百十六名、先生御指摘の、ちゃんと管理ができているかという対象者でございますが、この方々に連絡をとりました。九十四名に最終的には連絡がとれまして、もし健康に障害があり心配であるようならば、動燃事業団としてきちんと専門の先生に診ていただいて診断をするからということで声をかけましたところ、八名の方が来られまして、岡山大学の医学部の放射線の専門の先生に全体を診ていただきました結果・放射線による障害というのは見られないという結果をいただいております。
  193. 辻元清美

    辻元委員 今一連のこの人形峠の話をしましたけれども、これは、私は、動燃が新法人に改組されるに当たり、未解決の問題、積み残しの問題であるという認識です。先日、今村官房審議官と、それから中野理事と大分長いこと議論させていただきました折も、やはりこの問題を解決せずして動燃の改革といっても責任をとったことにはならないというような御発言もございましたけれども、未解決の問題であるという認識は今もそのときも変わらないかどうかのみ、ちょっとお聞きしたいと思います。
  194. 中野啓昌

    中野参考人 動燃といたしましては、できるだけ新しい法人になる前に、いわゆる負の遺産とでも申しましょうか、そういったものについてはすべて解決をし、新しい体制に持っていきたいというふうに考えております。そういう意味では、先生御指摘のように、決して解決した問題だというふうには現在認識いたしておりません。
  195. 辻元清美

    辻元委員 そうしましたら、科学技術庁の方にもお聞きしたいと思うのですが、今度新法人ということで、これから私たち議論していくわけなんですが、今のこの人形峠のウラン残土問題はこの新法人が引き継ぐ問題であるということを確認させていただいていいでしょうか。
  196. 加藤康宏

    加藤(康)政府委員 我々も、国会で法律を認めていただきますと、十月一日を予定しておりますが、新しい法人に変わるわけでございますが、それを待たずにこういう問題を解決したい、努力したいと思いますが、それまでに解決できない場合でも、今度の改正法におきまして、動燃事業団が負っておりました義務や責任、これはすべて新法人へ引き継ぐような、そういう規定になっておりますので、そういう場合は新法人が引き続き努力をするということでございます。
  197. 辻元清美

    辻元委員 私は、先ほども申しましたように、先日の今村審議官の発言でこういう言葉が耳に残っているんですね。この問題は原子力行政の破綻ですとはっきりおっしゃったんですね。中野理事もお聞きになっていたと思います。私は、そこの部分を何回も、あなたはそれを発言しましたねというのを何回も確認して、はいそうですというふうにお答えされました。それが報道にも載っております。当時の山陰中央新聞、マスコミも来ておりましたので。というように、私は、非常に大きな問題である、これは一つの事例ではないというふうに考えるのです。  そこで、大臣にお伺いしたいのですけれども、この動燃の問題だけではなくて、先ほど所信の中で大臣は、現場を重視してということですが、この現場という意味は、それぞれの技術の研究者現場だけではなくて、住民との接点であったり、さまざまな政策を実行していく際の住民とのコンセンサスのとり方、すべて含まれた現場だと私は理解しております。こういう中で、この人形峠にぜひ長官が行かれたらいいと私は提案したいことが一つと、ぜひこれは、今後この新法人に移行するに当たって、この法律の審議過程でも私は追及していきたいと思いますが、この問題を解決してから新法人に移行してほしいというぐらいの大きな問題であると思います。本当にこれはすぐに調査に着手していただく、そして解決に向けて大臣自身がリーダーシップをとっていただくということを約束していただけないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  198. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 この人形峠のウラン残土の問題については、私も逐次報告を受けているところでありますけれども、先ほど辻元委員がおっしゃったように、私は就任以来、現場を重視するということを申して、この動燃改革の中でもそこをひとつ重視するようにという指示をずっと出してきたわけであります。その現場の意味は、まさに今辻元さんが御指摘のように、こういう一つ一つのところもやはりきちわと視野におさめていくということでなければならないと思います。  他方、私は、動燃が新法人に改組するわけでありますけれども、今まで科学技術庁と動燃の関係というものを私なりに振り返ってみますと、少しはしの上げおろしみたいなところまで口を出し過ぎた面もあるのではないかというふうに思っております。ですから、権限と責任というものを明確にして、新法人が責任を持つべきところは責任を持たなければいけない、しかし、その場合でも、科学技術庁が監督官庁であるということになれば、やはりそこは緊張関係を持って、一つ一つの現場も視野に入れながら、余り事前に何でもかんでも、はしの上げ下げまで言うのはいけませんけれども、やはりそれだけ見られるような体制をつくっていくことが必要であると思います。  それで、辻元先生の御指摘は、私に人形峠へ行けということでございますけれども、私もちょっと今いろいろな問題を抱えておりまして、機会を見つけて私も、この人形峠をどうするかということも、実は、今のウラン残土の問題もございますけれども、人形峠の今やっている事業自体は新しい機関に引き継ぐということでございますが、人形峠を今後どうしていくかということは大事な問題でございます。ですから、私も機会があればここを見させていただきたい、こう思っております。
  199. 辻元清美

    辻元委員 これは私は引き続き、まだまだ時間がございますので、次の改組の法案が出ますから審議していきたいと思いますけれども、これは、この人形峠の問題が解決しない限り審議したくないぐらいの気持ちでいることは強く、与党内野党と言われていますけれども、提出を拒否しようかというふうなことも議論に上っているぐらいです。  もう時間がないので終わりますが、やはり光と影という部分で、人形峠の問題は非常に重要な問題だと思います。  こんなことも解決できなくて原子力政策科学技術を語れないというふうに皆さんに認識していただきたいとともに、谷垣長官は、私が水先案内しますので、ぜひ一緒に行きたい。半日あれば行けますので、日程調整を後でさせていただくということを申し添えて、質問を終わりたいと思います。
  200. 大野由利子

    大野委員長 吉井英勝さん。
  201. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井でございます。  科学技術を本当に基礎的なところからどんなふうに発展させていくか、こういうふうな問題につきまして、きょうは大臣と御一緒に議論もし、考えていきたい、そんなふうに思います。  そこで、一九九六年七月二日の閣議決定で科学技術基本計画というのが決められたわけですが、その中で「政府研究開発投資の早期倍増」ということをうたっておりまして、「二十一世紀初頭に対GDP比率で欧米主要国並みに引き上げる」、それで、一九九六年度より二〇〇〇年度までの科学技術関係経費の総額の規模を約十七兆円とする、五カ年間で十七兆円で、早く倍増しよう、こういう決定がされました。  この達成のためには科学技術関係経費の毎年一割以上の伸びが必要になるわけですが、財政構造改革法の縛りによってこの目標の達成は極めて厳しいと思うのですが、まずこの点について大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  202. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 私たちは、今先生が御指摘になった科学技術基本法、先ほども申しましたが、議員立法でとにかくこういう法案をつくっていただいたことの意味は私は非常に大きいと思っておりまして、その中で、今御指摘のように、科学技術基本計画をつくり、科学技術創造立国だ。それで、今御指摘のように、十七兆ということを一つの目標に進んできたわけでございます。  ただ、率直に申しまして、今御指摘がありましたように、この財政再建下におきまして、この十七兆が本当にもう達成が視野の中に十分入っているかというと、いささか苦しくなってきたなという思いは正直言ってございます。  ただ、御承知のように、科学技術振興費に関しましては、こういう枠の中でも、五%というシーリングで、五%に非常に近い中で決着を見て、今御審議をいただいているという状況でありまして、苦しい中でもここにひとつ重点を置いていこうという姿勢は出ているのではないかと思っております。  したがって、できる限り、これも先ほどから申していることでありますけれども、効率的な予算の使い方、一つ一つの研究開発に対する厳正な評価を前提として、有効な使い方をしていかなければならないと思っておりますし、また、正直言って十七兆は難しくなってきたなと申しましたけれども、決してこれはあきらめているわけではありませんで、粘り強くいろいろな機会にアタックしていこうという気持ちは捨てておりません。
  203. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、けさの大臣の所信表明を伺っておりましても、基礎研究推進ということを述べていらっしゃる。大体近ごろ科学技術というと、何かロケットではんと華々しく宇宙へ行くとか、メガサイエンスといいますか、ビッグな方ですね、それが非常に華々しく映って、しかし、それは非常に巨額を要するわけですね。それはそれで、もちろん人類科学技術発展にとって大事な分野なのですが、ただ同時に、現実に、基礎的な、すそ野広く、すそ野の研究が進んでこそ、その中から新しいものが次々とまた発展していくわけです。  そういうことを考えたときに、現実に、来年度予算案で見たときに、政府科学技術関係費が〇・九%の増、科学技術庁予算も〇・八%増ということにとどまっているわけですが、その中で基礎研究費が五年間で二倍化できるのだろうか。全体の額はもちろん大きいものですが、実際の経常研究とかそういうところになればうんと小さい分になるのですが、それがこの五年間で本当に二倍になるのだろうか。やはり、せっかくこの基礎研究推進ということを大臣おっしゃったのだけれども、それは本当にいくのだろうかということを実のところ一番心配していまして、ここのところをもう少し伺っておきたいと思います。
  204. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 先生御指摘の基礎研究費が二倍になるかどうかというところでございますが、これにつきましては、大学の研究開発費も全部含めてどう考えていくか、こういう問題かと思います。したがいまして、今私ども、基本計画の中では、基礎研究費を二倍にするとか、そういうふうな感じで考えていくのはなかなか難しい問題である、こういうふうに認識をしております。  全体の研究開発費の中でどういうポートフォリオを組んでいくか、こういうふうな問題を含んでいるということかと思いますが、これは、私ども引き続き基礎研究推進のためには最善の努力をしていくということにしていきたいと思っております。
  205. 吉井英勝

    ○吉井委員 科学技術庁の予算全体をぐんと大きくしていくのは、これはなかなか大変なわけです、大臣おっしゃったように。しかし、少なくともこの基礎的な研究については、当初五年間で二倍化、これは、実は九〇年代に入ってから、私も予算委員会の総括質問で、宮澤総理の時代でしたけれども、議論したこともありますが、やはりそれを本当に今やっていかなければならないときだと思うのですよ。  そういうときに、どうも今のお話を伺っておっても見通しが大変ということで、そこで、少しきょうは視点を変えて見ていきたいと思うのですが、まず科学技術庁の金属材料技術研究所の高温超電導酸化物の発見ですね。  これは、私は、一九八六年のベドノルツとミュラーのこの発見以来、より高い超電導遷移温度の新物質の探求がずっと重ねられてきた中で、科学技術庁研究所は非常にすぐれた成果をおさめられたなと高く評価しているのです。絶対九十四度じゃなくて、金材研では百五度と、さらに高い温度で行える物質を発見されました。  この高温超電導酸化物の発見に至る研究は、私が伺っているところでは、最初からプロジェクト研究としてどかんと予算をつけて必ずしも進められたものではないというふうに伺っているのですが、その辺のところの取り組みをちょっと伺いたいと思います。
  206. 青江茂

    ○青江政府委員 その辺の状況につきまして、かいつまんで御説明を申し上げます。  御案内のとおり、六十一年度にいわゆるIBMのあれがございました後でございますけれども、その直後に、科学技術会議におきまして、超電導に関する懇談会報告書というものがまとめられまして、オールジャパンでもちまして、この分野研究というのはどう進めて、どういう方向に力を入れたらいいのか、こういうものが出まして、それを受けまして、科学技術庁におきましては、超伝導材料研究マルチコアプロジェクト、これはプロジェクトというふうに名前がついておるのでございますけれども、決して余りプロジェクト的ではない、プログラムというふうに名前を冠した方がよかったのかなというふうに思うわけでございますが、確かに御案内のとおり、かなりべ-シックなところ、それも、これは金属材料技術研究所だけじゃございませんで、無機材質研究所等々、当庁所管の法人研究機関も含めましてでございますが、この関係の力を結集する、コアをそれぞれ置きつつ力を結集するという形で、ベーシックなところからずっと積み上げていくということでもちまして、このプログラムというものを始めたわけでございます。  その過程におきまして、先生今御指摘の百Kを超えます温度のビスマス糸酸化物超電導材料というものを発見いたじた、どういう成果というものを生み出したわけでございます。
  207. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、マルチコアプロジェクトとして始まったのが八八年の春以降なんですね。この発見そのものは八七年の暮れなんですね。八七年末から八八年初めにかけて。ですから、プロジェクトとして、あるいはプランというふうにおっしゃるのですか、始まる前にこの発見がされているのですよ。  そこで大臣、私は、この発見された皆さんの御苦労を本当に大変だったなと思って高く見ているりですが、プロジェクト研究となってからは、今日ですと科学技術振興調整費などがどかんとつくわけですよ。しかし、そこに至るまでは、今も御答弁にあったように、経常研究費の枠の中で、研究者個人の発想に基づくアンダーグラウンドな研究として長期にわたって取り組んでこられた。だから、やはり粘り強い長期にわたる経常研究基礎研究というもの、何か今華々しくいく方に目が向いてしまって、そこがもっと評価されて、そこにもつと力が尽くされていくということが大事じゃないかなと思うのですが、この点、大臣、どうでしょうか。
  208. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今、つくばの金材研の活動について吉井委員から大変高い評価を与えていただいて、私も大変うれしく思っております。  それで、今御指摘のように、科学技術は決して華々しい分野だけではないのだろうと思います。大きな、メガサイエンスや、戦略的と言っておりますような研究ももちろん必要でありましょうけれども、こういう地道な、基礎から積み上げていくような作業というものがあるわけでございますから、基礎研究を進めていくという、これは、科学技術創造立国、あるいは科学技術基本計画におきましても基礎研究の積極的な振興というのを基本的な方向として掲げているわけでありまして、私は、やはりそこをこれからも重視していかなければならないと思います。  具体的な制度となりますと、当庁におきましては、科学技術振興事業団による、大学や国立試験研究機関あるいは民間企業等を対象にした、公募方式の戦略基礎研究推進事業とか創造科学技術推進事業、あるいは科学技術振興調整費活用した各種基礎研究推進制度、それから、理研などではフロンティア研究制度、こういったものがなかなかいい成果を上げているのではないかと思っております。こういうものと、また、国立試験研究機関研究者が経常的に使用できる研究費等の充実ということに努めてまいりましたし、これからもそういうことを考えなければならないのではないかと思っております。  それで、先ほど御指摘のありましたように、やはりこれから国立試験研究機関をどう持っていくかというようなことが、科学技術体制をしっかりやっていくための大きな課題だと思いますけれども、その中で、やはり予算の使い方等についても、さらにいい使い方をするためにはどうしたらいいのかというあたりが、行革における科学技術体制としては極めて大きなテーマである、こういうふうに思っております。
  209. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、あわせて国立の施設で、これも伺って大変感心したので、きょう来ていただいて、少し伺っておきたいと思うのですが、一九五七年から実は気象研究所の方でオゾンに注目して、非常に地道な観測とデータ分析をやってこられたのですね。それが一九八四年に世界で初めてオゾンホールの発見ということに至って、今日、地球環境問題として国際的に注目されて、非常に大きな役割を果たしているわけです。  どういう取り組みがなされてきてこの発見に至ったのか、また、その後の外国学者の発表とかNASAの確認とか、この辺のところも簡単にちょっと伺っておきたいと思います。
  210. 中村匡善

    中村説明員 お答えいたします。  気象庁でオゾン観測を始めましたのは、昭和三十二年と三年にまたがって国際的に計画されました国際地球観測年、これは地球科学に関します全世界的な、総合的な大きな観測プログラムでございますけれども、これに参加すべく、昭和三十二年に、現在のつくばに、当時高層気象台というのがございましたけれども、そこで始めました。それから、翌三十三年に札幌あるいは鹿児島というふうなところで開始いたしまして、その後那覇、最近では南鳥島というふうなところでオゾンの観測を開始し、以来、定常的に続けてまいっております。  一方一昭和三十六年ですけれども、南極の昭和基地におきましても定常的なオゾンの観測というふうなことを開始しておりまして、かれこれもう三十数年たつわけですけれども、この中で、昭和五十七年ですけれども、先生今おっしゃったように、当時越冬隊に参加しておりました私どもの隊員が南極上空のオゾンが異常に少ないというふうなことを観測し、それが、その後オゾンホールとして世界的に注目されるきっかけをつくった、そういう状況でございます。  現在は、そのように国内あるいは南極で観測すると同時に、アメリカの衛星によるオゾンの観測データ、そういったものを使いまして解析し、それらを毎年報告物というふうなことで出版し、関連のところに送ってございます。
  211. 吉井英勝

    ○吉井委員 だから出発点というのは気象庁の本来業務で、本当にこつこつと地道なデータの蓄積、集積をされて、その中には、私もいろいろ伺っておって感心したのですけれども、ドブソン分光器の改良とか精度を高くデータをとる技術的努力とか、何十年にわたりますと、やはり後継者、技術屋さんを養成していく、人がやはり大事なんですから、人なしではこういうことはできませんから、養成をしていくこととかを二十年以上も続けてきた。そういう取り組みが成果をおさめたものだということで、非常に立派なことをされたなというふうに私は思っているのです。  今では科学技術振興調整費などもついて、そこから始まって、オゾン層の発見以来、フロンの問題とか地球環境をどうするかとか、さまざまなプロジェクト研究が幾つも始まっているわけですけれども、ごく簡潔で結構ですが、この分野でのプロジェクト研究が大体幾つぐらいで、どんなものがあるか、お聞かせ願えればお願いしたいと思います。
  212. 青江茂

    ○青江政府委員 これは、私ども今進めてございます地球フロンティア研究というのがございまして、地球変動というものをマクロで見まして、そこのところの大気循環でございますとか熱循環等々を、そのメカニズムというものをマクロでつかまえ、将来的にシミュレーションして予測ができないか、こういう研究を、これも私プ民グラムだというふうに思ってございますけれども、むれはかなりべーシックなところから始めておるわけでございます。その中の一環としまして、今先生御指摘のオゾンというものも一つのエレメントとしてとらまえまして、研究といいましょうか、観測というふうなところを今継続しておるという状況にございます。
  213. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、大臣、日本は本当にそういう地道な本来業務の中からも非常に国際的にすぐれた業績を上げているということで、そういう成果が得られてから実はプロジェクト研究費がどかんとついているのですよ。プロジェクト研究費がどかんとついた中での成果じゃないのですよ。もちろんプロジェクト研究費がついて成果を上げているものもありますから、逆のことを言っているわけじゃありませんが、いかに基礎的な取り組みが大事かというのが、自然科学の分野の持つある意味では特徴的な点を示していると思うのです。  次に、通産省の大阪工業技術研究所の方でPAN糸炭素繊維の開発に成功したことについてもちょっとこの機会に伺っておきたいのですが、これも実はプロジェクト研究じゃなくて、経常研究を八年間積み上げてきて成果を上げられたというふうに伺っておりますが、どういう研究か伺っておきたいと思います。
  214. 兼谷明男

    ○兼谷説明員 お答え申し上げます。  今ほどお話がございました大阪工業技術研究所におきますPAN系の炭素繊維でございますけれども、これは、いわゆる繊維にも使われますような炭素化合物のポリアクリロニトリルというのがございますが、それを高温に酸化させることによって非常に高強度、軽量な材料をつくろうということで、当時は炭素材料研究室というのがございまして、そこで、御指摘のように三十五年から経常研究ということで進めてまいりまして、四十二年からは多少規模を拡大しまして、特別研究ということで、これは所内でございますけれども、研究拡大をしてやってまいっております。  その結果得られました炭素繊維につきましては、御案内のように非常に丈夫で軽いということでございまして、ゴルフクラブであるとか、あるいは釣りざお、また一方では航空機の翼の部分とか、そういったところでも利用されているということでございまして、国内外四十件近くの特許を取りまして、約二億円に近い特許料収入を得るなど、それなりの成果を上げさせていただいております。
  215. 吉井英勝

    ○吉井委員 私も伺っていてこれも感心したのですが、一九六〇年度から六七年度までの八年間で、経常研究費が総額二千万円で成果を上げられて、科学技術庁長官賞も得ておられるのですよね。これもうまくいってから、宇宙分野からいろいろな分野でそれぞれプロジェクト研究を組んで、振興調整費その他もついて進んでいっているのですよ。  ただ、これについて少し見ておきたいのは、国内特許がたしか二十六件で、海外特許は七件と、意外と少ないのです。何でこんなに少ないか聞いてみたのですよ。そうしたら、海外特許出願費が、予算が少なくて出せなかった。研究者の兼業を認めるとか特許の事業化だとかニュービジネスだとか、今科学技術行政分野で言われているのですが、研究者の経常研究費が少なくて、その中でも頑張って成果を上げても、特許申請の予算が少なくて、つまり研究者の活動をサポートする方が非常に弱いということを、私はこのPAN系炭素繊維の問題を見ておって感じたのですよ。やはりこういうところは根本的に考え直さなければな一らぬじゃないですか。これは一言で結構ですから、ひとつ伺っておきたい。
  216. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えいたします。  先生の御指摘の点につきましては、私どもも強く認識しているところでございまして、十分とは言えないところはあると思いますけれども、科学技術振興事業団におきまして、そういうふうな特許などの支援をしていく。まず特許化ができるかどうかというところについて、研究者の方は必ずしも特許制度についての知識が十分じゃないというふうなこともありまして、それを支援をしていく。必要があれば、各研究所と御相談をして、その特許を振興事業団がかわって申請するということもできる、こういう制度なども設けて、現在鋭意そういう方向で努力をしているところでございます。
  217. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで次に、ちょっと分野の変わったところで、農業工学研究所をせんだってつくばへ行ったときに見てまいりましたけれども、農業地域の持つ水涵養機能、洪水防止・軽減機能などの公益的機能を維持増進する技術の開発についてということで、一九八二年度から八七年度まで六年かけて研究してこられたのですが、非常に注目すべき成果を上げておられることを知って、これも本当に感心しました。  ここでは、棚田域で耕作を行うと百年確率の豪雨による洪水まで耐えられるものが、耕作をやめてしまうと四十年確率に変わってしまうのだ。そのことは、国土保全とか防災投資、河川の防災投資なんかから全部違ってくるのですね。人命を守ること、環境を守ることなど、二十一世紀日本の国土をどうするかという極めて重要な研究がやられていたのだなということを改めて知ったのです。  恥ずかしながら、実は私自身が最近まで知らなかったのです。長官は、こういう研究を行われているということを、確かに農水省になりますと分野は違いますけれども、日本科学技術研究の中でこういうことがやられているということを御存じでしたか。
  218. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 今御指摘の研究があったということは私存じませんでした。ただ、私も農水省の方から、極めて水田というようなものが保水機能に役立っているというのを、いろいろなデータを見せていただいて御説明を受けたことがございますので、あるいは今の研究とその御説明は関連があるのかなと思って聞いておりました。
  219. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、科学技術庁とか幾つかの国立研究機関も見せていただいたり、いろいろレクチャーいただいたりもしてまいりまして、科学技術の問題とか基礎研究の問題というのは、短期的な目先の効率だけ追い求めるというやり方ではやはり保障されない研究分野だというふうに思うのです。  日本が本当の意味で科学技術立国を目指そうとするならば、こういう基礎研究とか、国民にとって長期的に値打ちの出てくる研究、国立研究所の研究者の皆さんの取り組みを評価することもそうですし、コスト追求の民間や法人ではできない、国研ならでは、そういうものにもつと光を当てて、そして経常研究費をもっと充実することなどを含めて、こういうところにこそもっと、科学技術庁は、研究所は科学技術庁の所管だけかもしれないけれども、各省庁随分国研を持っていますから、そういう国研の研究をもっとサポートしていく、そういうことを大臣、やはり今考えていかなければいけないときじゃないかと思うのですが、この点どうでしょうか。
  220. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 科学技術創造立国、こう申しますと、国の試験研究機関だけではなくて、もちろん民間そのほかの研究機関の活躍、活動というものは大事でございますけれども、私たちとしては、直接まず手の及ぶところは国立試験研究機関でありまして、国策として科学技術振興あるいは基礎技術の振興基礎研究振興を図っていくときに、やはりここに着目していくのは当然のことだろうと思います。今いろいろな議論がなされておりますが、この国立試験研究機関活性化していくということが私は問題を進めていく場合の一番のポイントだ、この点では吉井委員と全く認識を共通にしております。  それで、そのためには科学技術振興調整費活用によって、先ほども申しましたが、各種基礎研究の実施をしていくとか、あるいは産学官の交流あるいは外国との研究交流というのも、そういう研究交流促進法をもっと活用していく必要が、整備をしていく必要があるだろうと思います。  それから、研究公務員等の処遇改善に関する要望を人事院へ出しておりますが、そういうことも極めて大事な点だろうと思いますし、それから、先ほど御指摘になりましたけれども、研究支援体制強化ということがやはり一つの柱として大事なのじゃないか。  こういうことによりまして研究交流を促進するとともに、競争的な研究環境というのも私は必要なのじゃないかと思います。先ほど御指摘になりましたように、国立試験研究機関でやっていることも非常に多様でございまして、地道な基礎的な、長いこつこつとした研究によって花が咲くということもございますし、あるいは競争的な環境が必要だというところもございましょうし、多様な環境をそれぞれの研究対象に応じて考えていくということが大事なのではないかな、こう思っております。
  221. 吉井英勝

    ○吉井委員 これまでも、大学なり国研なりを中心に、ある分野で全国から専門の学者とか研究者が集まってプロジェクトを組んでやってきたりとかしてきたわけですし、私は、それはそれの一つの道筋だというふうに思っているのです。  それで、先ほど、所内での金の使い方のお話もありましたけれども、そこでぜひ見てほしいと思うのは今の研究予算ですね。  それで、これは少し伺っておきたいのですが、競争的資金については大幅な拡充ということを言っているわけですが、競争的資金というのは戦略的基礎研究推進制度に基づくもので、これは、九六年度の百五十億円これを一としますと、九八年度は二百七十四億円余りですから、一・八倍ぐらいにふえているのです。それから重点的資金、これは拡充するという方針と伺っておりますが、こちらの方は、これはもう少し前から、次の基盤的資金と比較するために見ておきますと、九一年の百五億円、これを一とすると、九八年には二・五七一ですから、二・六倍ぐらいです。これに比べて、基盤的資金については充実という表現なんですが、この基盤的資金である例えば実験系Ⅰの人当研究費、要するに経常的に使われる研究費で、実際は、さまざまな経費等を差っ引きますと六十万円とか七十万円ぐらいしか残ってこなかったりするのですが、その基盤的資金というのは、九一年度が一人当たり百四十六万円、これを一としますと、九八年度は百六十七万一千円で一・一四五倍なんです。  それで、これは私、後ほど大臣に差し上げたいと思うのですが、グラフにしたのですけれども、これはちょっと小さくて見にくいですが、経常的研究はずっと八〇年代は、八一年から八九年まで全然ふえていないんです。この間、八〇年代は約二割の消費者物価の上昇もありましたから、だから実質ダウンですね。その減ったものが九〇年代に入って余りふえていないのです。確かに、プロジェクト研究の方はぐんと伸びていっているのです。私は、プロジェクト研究が伸びたことをけちつ.けているのじゃないのです。しかし、先ほど来、金属材料研とかいろいろ聞いていただいたのは、本当に、経常的な研究の中で学者、研究者の皆さんが独創性を発揮して頑張ってこられたものから新たな発明や発見が生まれて、その後、プロジェクト研究費がどかんとついて進んでいるわけですが、しかし、そこに至るまでは大変な御苦労なんですよ。そして、特にこの八〇年代に、サポーティングスタッフですね、技官と言われる方たちの数が随分減っていきました。そうすると、研究者が直接機械のメンテナンスも、かなりそのことに時間をとったりとか、随分そういう手間暇がかかったり、プロジェクト研究を申請する文書を書くために随分むだなエネルギーを使わなきゃいけない。だって、ほかにやってもらう人がいなくなっちゃったんだから。そういうふうな事態が今研究現場で進んでいるのですよ。  ですから、私は、経常研究にやはりせめて二倍と。科学技術庁予算全体はともかくとしても、八〇年代からほとんどふえていない、しかしその中で次々と世界的にもすぐれた発明や発見がされているのですから、ここのところにどう力を入れていくのか、これは本当に今政治の舞台で決断をしなければならぬときだというふうに思うのです。この点については、ひとつぜひ大臣のお考えも伺っておきたいと思います。
  222. 宮林正恭

    ○宮林政府委員 お答えさせていただきます。先生御指摘のような、いわゆる経常研究費がふえていないではないか、こういう御指摘だと思うのですけれども、一方で、大きな流れといいますか、これはやはり競争的な資金を導入して、これまで比較的画一的なあるいは機械的な平等主義というか、そういうものから、たとえ基礎的な部門であっても、ある程度評価を受け、それでもって、いい研究には大きなお金がつく、こういうふうな形に変えていこうというのが一つの大きな流れとしてございます。  それで、先生御指摘のような、大変いい成果を上げておられる方がたくさんおいでになることは存じておりますし、ぜひそういう方々にも恩恵が行くような形にしたいという気持ちはあるわけでございますが、現在私どもが考えております一つの研究のステップアップの考え方といたしましては、経常研究費あるいは重点基礎研究、これは国立試験研究機関の所長さんがかなりの裁量権を持って、非常に小さな規模で一応まとまったものとして、お金をそれぞれの研究計画にお使いいただく。これをプロジェクト研究と言うか、一般的な経常的な研究と言うかというところは、これは恐らくいろいろな定義の問題があると思いますが、ある意味ではこれも経常的な費用としておやりいただく。  それから、よりステップアップをしていきますと、例えばさきがけ研究、戦略基礎研究の中に入っておりますけれども、そういうことで、個人の研究者の方にある程度大きなお金を差し上げて、それで研究をよりステップアップをしていただく。あるいは、それがチームプレーでやらなきゃいけない、こういうふうになってくれば戦略基礎研究のそういうものでやっていくとか、そういうふうな、だんだんと大きくステップアップしていくような構図を頭に置きながら、かつ、それぞれの研究について競争条件を設定する、こういうことで考えてきておりまして、全体としては、やはり研究者の皆様方への資金提供がよりふえる形というものをつくってきているということでございます。
  223. 吉井英勝

    ○吉井委員 さっきの、競争的資金について大幅な拡充とか、重点的資金について拡充とか、基礎的資金充実。その基礎的資金が経常的研究費のことなのですが、前段の方に別にけちをつけたことを言っているんじゃないのです。だけれども、経常研究費が悪平等だ何だという議論じゃないのですよ、本当に少な過ぎるんですよ。  大体、局長の、一九八一年のあなたの給料と今の給料をお考えになっただけでも、八一年からほとんど、まあ若干ふえてはおりますけれども、ほとんどふえていないんですよ、こちらの方は。それでいいのか。  研究者の皆さん、私は、本当に多くの方たち、すぐれた方たちがいらっしゃるのを存じ上げてもおりますが、成果を上げたらプロジェクト研究で金がつくけれども、そこに至るまでは研究費は本当にひどいものですよ。年間、以前百四十四万だったのが若干ふえてはおりますけれども、それをせめて、当初私たちが法律をつくったときのように五年間で二倍に。二倍にしたって一人当たり三百万円だけれども、経費等、その他水光熱費なんか差っ引いてしまったら、本当に二百万そこそこしか残らないでしょう。そういうふうな本当に惨たんたる事態にあるということをやはりしっかりとらえた上で物を言ってもらわぬといかぬと思うのです。  それで、私、科学技術庁がせっかく出していらっしゃる白書を読ませていただきました。  この白書の中に、財団法人政策科学研究所が国研の中核的研究者対象に行った調査の結果を発表していらっしゃる。この中で、最大の成果を上げたと研究者が考えている研究のフェーズとしては、基礎研究が最も多くて、全体の約六割に上っていた。それからまた、最大の成果を上げた際の研究資金の性格としては、研究者にとっては比較的自由に使える均等配分による研究所の経常的研究費を挙げた回答者が約半数と、経常研究費など広く基礎的な研究をはぐくむ比較的少額の資金によってもすぐれた成果が生み出されることを示唆していると、科学技術庁が書いているんですよ、白書で。  だから大臣、この横線なんですよ。これは九一年を一〇〇としたときに横線なんですが、絶対額で見るとこの棒グラフなのですが、この棒グラフもほとんどふえていないのです。こういうふうなことで、確かに、個々に研究者の皆さん頑張っているけれども、これでいいのだろうか。  これは、せっかく大臣が基礎研究推進をということを所信で述べられたからには、私は、谷垣大臣の時代にぜひとも国研の経常研究費の問題については抜本的な検討、見直しをやっていただいて、五年間で二倍というかつての数値を挙げてのことまではちょっとおっしゃるのは難しいかもしれないけれども、しかし、やはりここは政治的に決断して前進を図るべきときだと思うのです。  時間が来たようですから、最後に、この点について、大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  224. 谷垣禎一

    谷垣国務大臣 根本として、やはり十七兆を目指して頑張るということが、これは苦しい中でありますけれども、あきらめずに頑張るということが大事だと思います。  その中でどういうふうにそれを配分していくかということでありますけれども、今おっしゃった経常的な研究費も、これは決して等閑に付してよいとは私は思っておりません。ただ、重点的な配分というのもあわせて行わないといけないということで現在の流れになっているんだろうと思います。  したがいまして、問題は、もちろん経常的な研究費もできるだけ今後ふやすように努力をすることは必要でありましょうが、研究に対してどういう評価をしてきちっと予算がつけられていくかという適切な体制をつくることにあるような感じが今御議論を伺ってしたわけであります。
  225. 吉井英勝

    ○吉井委員 もう時間が参りましたから終わりたいと思いますが、大臣、私が言っているように、いろいろなプロジェクト研究とか、そういう予算を組むことに別にけちつけているわけじゃないんですよ。しかし、今、本当に惨たんたる事態と言って言い過ぎじゃないほど経常研究費はずっと据え置かれているんですよ。どんなに物価の上昇があってもほとんどふえていないんですよ。そういう中でも研究者の皆さんはさまざまな成果を上げていらっしゃるんだから、成果上げたらプロジェクト研究つけましょうじゃなくて、やはりそういうところへもっと光を当てる取り組みというものが今私は政治の舞台で求められていると思います。そのことを重ねて大臣に申し上げて、時間が参りましたので、質問を終わりたいと思います。     ―――――――――――――
  226. 大野由利子

    大野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  原子力開発利用とその安全確保に関する件、特に高速増殖炉懇談会報告書について調査のため、来る三月二十日、参考人として東北大学名誉教授・高速増殖炉懇談会座長西澤潤一さんの出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 大野由利子

    大野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。 午後四時五十三分散会