○東中
委員 観念的に後から考えれば緊急避難に該当しておったか、あるいは
正当防衛に該当しておったかしていなかったか、そういう問題ではないのですよ。
では、別の聞き方をしましょう。
自衛隊法の八十九条は
治安出動した
自衛官の
武器使用が書かれていますね。その
武器使用は「当該
部隊指揮官の
命令によらなければならない。」となっています。ただし、
刑法三十六条または三十七条に該当する場合を除いて
指揮官の
命令でやる。だから、その三十六条なり三十七条に該当するような場合に
指揮官が
命令するなどということはそもそもできないのだというのは、これはもう常識ですよ。
刑法三十六条なり三十七条などというのは、侵害を受ける者が
自己防衛のためにやる。あるいは緊急避難の場合は——要するに急迫した侵害を排除するという要件が非常にはっきりしているわけですからね。ほかの
指揮官とかなんとか、第三者がそんなことできるわけではないのです。だから八十九条は、三十六条、三十七条に該当する場合を除いて当該
指揮官の
命令によらなければならないとしているのです。
今度の場合も、だから、その場合を除くということを書いていないけれども、結局はそういう
趣旨になるわけですよ。
生命身体に対する侵害または危難が切迫している場合は
命令によらなくてもいいんだと書いてあるというのは、結局、切迫しておらぬ緊急避難とか
正当防衛というのはないのですから、その場合は
命令によらなくてもいいということ。今度の二十四条にもそう書いてあるのですよ。だから、八十九条とその点では違わないのです。
そうすると、八十九条の場合は、
正当防衛、緊急避難だけではなくて、
武器使用するについてはもっとほかの
目的のために
武器使用できるのですね。例えば、人に対する危害ではなくて施設に対する侵害を受け、あるいは、受けていないけれども受けようとする明白な危険がある場合は
武器を
使用してその危険を排除することができるというふうになっていますね。
武器使用してですよ。そういうことをやるときは、
正当防衛、緊急避難ではないけれども
指揮官の
命令によってやらなければいけないよというのが八十九条なのです。
ところが、本法の二十四条というのは、そういう
身体の
防護以外に何もやったらいかぬことになっているのですよ。だって、
武器を
使用するのは
生命身体を
防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合だけに限っているのですから。だから、
身体に対する攻撃以外に施設に対する攻撃、侵害があるからといって、
PKOの陣地に対して何か攻撃が来たからといって、あるいはやろうとしているからといって、撃てないのですよ。そういうふうにこの
PKOはしたのです。
なぜしたのかといったら、あくまでも
個人の
個人による
正当防衛、緊急避難のときに
武器を
使用して相手に危害を加えるということはあっても、それ以外は一切
日本の自衛隊は
PKOで出ていっても
武器の
使用はしないのです、
憲法上できないのですといって、こういう
法律をつくったのですよ。
それを今度は
指揮官の
命令などというような格好で入れるから、八十九条と比較してみると明らかな矛盾が出てくるのですよ。八十九条なら、
指揮官の
命令によってああいうとんでもない
治安出動で
武器の
使用ができるようになっているのですね。施設やら、あるいは危険があるというだけでできるようになっている。今度は
PKOはできないのですね。
なぜそういうふうになったのかというのは——あのときの論議に私初めからしまいまで全部
参加しましたから、海部さんのときから宮澤さんのときまで。
我が国の
憲法上そうせざるを得ないのだ、
個人の
判断でやるので、しかも
正当防衛、緊急避難のときだけなので、だから
憲法違反にならないのです、
武力の
行使ではない、
個人的な
武器の
使用なのです、こう言っていたのです。それを今度は変えることになるのだから、これは
憲法上の問題があるのです。どうですか。