○赤松(正)
委員 新党平和の赤松正雄でございます。
政府、防衛庁は、
周辺事態、
日本周辺有事に備えた
法案を準備される一方で、
防衛庁長官が十四日の
閣議決定後の記者会見で、有事法制について、立法を前提に作業に着手する意向を表明されました。
このような、私などから見まして、いわば堰を切ったような対応ぶり、非常に違和感を強く感じます。
危機管理、いざという場合に備えてあらゆる対応を考えておきたいということはわかりますけれ
ども、何かしら危うさを感じるということをまず冒頭に申し上げておきたいと思います。
九五年の防衛計画の大綱、新しい大綱の策定、それから翌年、九六年の
日米安保共同宣言、そして昨年秋の
日米防衛
協力の指針、
ガイドラインの
見直しに至るこの二年半余りの動きというのは、非常に極端な言い方かもしれませんが、
冷戦後というよりも、新たなるいわば
戦争前を思わせるような、そういうふうな異常な慌ただしさを感じるわけです。
最近、私が興味を持って読んだ本に、司馬遼太郎さんの「「
昭和」という国家」、かつてNHKで司馬遼太郎さんが一人語りで十二回ぐらいに分けて行われた「「
昭和」への道」というテレビ放送を出版化したものでありまして、「「
昭和」という国家」は「「明治」という国家」よりは先に書かれたというか収録されたものなのですけれ
ども。
その中に、司馬さんは、要するに日清、日露という二つの
戦争は、いわば祖国防衛
戦争的側面があった。それを経て、その時点までは祖国防衛
戦争であったけれ
ども、日露
戦争の後、
日本は際立って帝国主義的側面を強めていって、そして
昭和のあの大戦へと入っていった。いわば
昭和の初めから
昭和二十年までの二十年間は魔法の森に迷い込んだようなものであった。こういうふうな表現をされておりまして、江戸から明治に続いての
日本のよさというものが一挙にそこで崩れてしまった、非常に異常な二十年であった。こういうふうな表現をされております。
同時に、司馬遼太郎さんは、
日本の近代というのはロシアを際立って恐れた近代であった、こういうふうな表現もあります。
近くエリツィン・ロシア大統領が
日本を訪れるわけですけれ
ども、ロシアからソ連という国を経て、そしてまたロシアに戻った、そういうふうなことを考え、私思いますに、この明治以降の約百三十年、前半は司馬さんの言葉をかりるとロシアという国に苦しめられた
日本、恐れた
日本。後半の五十年余りの年代というのは、今度はアメリカを恐れ、アメリカに悩まされたというか、今も、これからずっとそういう時期が続くのではないかというふうに思わせるような
状況が我々の前にあるなということを強く感じる次第でございます。
そういった観点から、
日本の国家のありようというものについて、いや増して心して
防衛庁長官は取り組んでいただきたいと思うわけですけれ
ども、きょうはその中で、近く
国会にかかる
法案、PKO
法案はどこで審議されるかまだ決まっていないようですけれ
ども、あわせて
日米防衛
協力の指針、いわゆる
ガイドラインにかかわる
法案、この辺のかかわり合いといいますか、オーバーラップするような
部分があるように思いますので、その辺を、本格的な審議はこれからのことにまっとしまして、とりあえずその糸口の
部分でちょっと私が気になるところをお尋ねしたい、そんなふうに思います。
まず第一点目でございますけれ
ども、今回のこの
日米防衛
協力の指針の
見直しという中身については、
地理的概念にしても
行動形態にしましても、あるいは軍事
協力分野にしましても、かなり多くの
部分で、
安保条約の条文やあるいは従来の
政府見解からかなり逸脱したというか踏み込んだ設定がなされている、そんなふうに思います。
そういう中で
一つ取り上げたいと思いますのは、
日米協力の中で、国際の平和と安定の維持を目的とする経済制裁の
実効性を確保するための活動、いわゆる臨検ということがこれに含まれるというか入ってくるのだろうと思いますけれ
ども、それについてであります。
日本有事とは別に、
日本周辺地域における
事態、そういう言葉についてはきょうの午前中、あるいは今までの
議論の中にも出てきておりますけれ
ども、いわゆる
日米協力の場が設けられるわけですけれ
ども、そこで他国船舶の臨検が実施できるとされているわけであります。
それで、昨年十二月三日の参議院の本
会議で、現在私
どもと一緒の会派を組んでおります改革クラブの
山崎力議員がこのことについて
質問をしておりますけれ
ども、そこではこう言っています。
臨検は「交戦権の
一つとして国際法上認められている行為の典型例であり、
政府がいかに弁明しようとも、
我が国においては違憲の疑いの最も強い
協力行為と言えます。」こういう指摘を本
会議でしているわけですけれ
ども、その指摘に対して橋本
総理はこう答えておられます。「
我が国が行うことを想定している船舶の検査は、国連安保理決議に基づく集団
安全保障措置でありまして、交戦国の国際法上の
権利の行使ではございません。」こういうふうに答えられております。
そこでお尋ねしたいのですけれ
ども、ここで言う国連安保理決議に基づく集団
安全保障措置なるものは、いわゆる国連軍を指しているのでしょうか、それとも多国籍軍を指しているのでしょうか。この
総理が答えられた国連安保理決議に基づく集団
安全保障措置ということについて、
お答えを願いたいと思います。