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1998-03-12 第142回国会 衆議院 安全保障委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十二日(木曜日)     午前十時開議  出席委員   委員長 塩田  晋君    理事 浅野 勝人君 理事 石破  茂君    理事 中島洋次郎君 理事 浜田 靖一君    理事 石井 紘基君 理事 岡田 克也君    理事 赤松 正雄君 理事 西村 眞悟君       麻生 太郎君    池田 行彦君       臼井日出男君    岡部 英男君       河井 克行君    栗原 裕康君       佐藤 静雄君    阪上 善秀君       実川 幸夫君    下地 幹郎君       園田 修光君    田村 憲久君       中山 利生君    中山 正暉君       仲村 正治君    増田 敏男君       宮下 創平君    渡辺 具能君       伊藤 英成君    神田  厚君       北村 哲男君    前原 誠司君       横路 孝弘君    河上 覃雄君       冨沢 篤紘君    佐藤 茂樹君       二見 伸明君    中路 雅弘君       東中 光雄君    辻元 清美君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小渕 恵三君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君  出席政府委員         防衛政務次官  栗原 裕康君         防衛庁長官官房         長       大越 康弘君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 太田 洋次君         防衛庁人事教育         局長      坂野  興君         防衛庁装備局長 鴇田 勝彦君         防衛施設庁長官 萩  次郎君         防衛施設庁総務         部長      西村 市郎君         防衛施設庁施設         部長      首藤 新悟君         外務大臣官房長 浦部 和好君         外務省総合外交         政策局軍備管理         ・科学審議官  加藤 良三君         外務省総合外交         政策局軍備管理         ・科学審議官  阿部 信泰君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 高野 紀元君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省条約局長 竹内 行夫君  委員外出席者         安全保障委員会         専門員     平川 日月君     ――――――――――――― 委員の異動三月十二日  辞任         補欠選任   田村 憲久君     園田 修光君   増田 敏男君     実川 幸夫君   山崎  拓君     渡辺 具能君 同日  辞任         補欠選任   実川 幸夫君     増田 敏男君   園田 修光君     田村 憲久君   渡辺 具能君     山崎  拓君     ――――――――――――― 二月十二日  有事法制化反対等に関する請願児玉健次君紹  介)(第七四号)同月二十日  有事法制化反対等に関する請願児玉健次君紹  介)(第三九〇号)三月十二日  軍事費大幅削減に関する請願瀬古由起子君  紹介)(第六五五 は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国の安全保障に関する件      ――――◇―――――
  2. 塩田晋

    塩田委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  まず、防衛庁長官から防衛政策に関して説明を求めます。久間防衛庁長官
  3. 久間章生

    久間国務大臣 防衛庁長官久間章生でございます。  本日は、塩田委員長を初め委員各位に謹んでごあいさつ申し上げるとともに、私の所信の一端を申し述べさせていただきたいと思います。  初めに、政府が昨年十二月十九日に安全保障会議及び閣議において決定した「中期防衛力整備計画平成八年度~平成十二年度)の見直しについて」を御報告いたします。  現在、我が国は、「平成八年度以降に係る防衛計画大綱」に従い策定された「中期防衛力整備計画平成八年度~平成十二年度)」のもとで防衛力整備を進めております。同計画では、防衛大綱に定める新たな防衛力水準への円滑な移行に配意しつつ、合理化効率化コンパクト化を推進すること等を計画基本として、適切な防衛力整備に努めることとされております。  今日、防衛大綱策定に当たって考慮された国際情勢の趨勢については基本的に変化はありません。しかし、経済財政事情については一層厳しさを増しております。国及び地方公共団体財政危機的状況にあり、政府は、経済構造改革を推進しつつ、財政収支を健全化し、さまざまな課題に十分対応できる財政構造を実現するために、財政構造改革をできる限り早期に、かつ強力に推進せねばなりません。  かかる状況を踏まえ、政府では、同計画において三年後に行うこととされていた計画見直しを一年早めて行うことといたしました。  見直しに当たり、主要装備については、新たな防衛力水準への円滑な移行に配意し、防衛大綱に定める防衛力水準を全体として適切に維持しつつ、より緩やかな形で整備を進めるとの観点から、防衛力の弾力的な運用を図ることを念頭に、計画に定める事業実施を一部見送ることといたしました。  こうした措置等により、計画に示す防衛関係費総額の限度について九千二百億円を減額し、平成七年度価格でおおむね二十四兆二千三百億円程度を目途とすることとなったところであります。  なお、SACO関連事業については着実に実施し、その所要経費については別途明らかにすることとされております。  私といたしましては、我が国安全保障上の観点についても十分に勘案し、引き続き、国民信頼にこたえ得る真に有効かつ効率的な防衛力整備維持及び運用を図っていく所存であり、国民皆様の御理解を賜りたいと考えております。  以上、中期防見直しについて御報告させていただきました。  さて、現在国会で御審議いただいている平成十年度の防衛関係費につきましても、厳しい財政事情を反映し、SACO関係経費百七億円を除き四兆九千二百九十億円、対前年度マイナスという、 これまでに例のない厳しいものとなっております。  さらに、平成十年度においては、防衛力合理化効率化コンパクト化一環として旅団の創設を行うほか、統合幕僚会議の機能の充実を行うなどの措置をとる方針であり、今国会関連法案を提出しているところであります。  次に、日米安保体制について申し上げます。  冷戦後の今日においても、日米安全保障体制は、日本の安全にとって不可欠なものであるとともに、アジア太平洋地域における平和と安定の維持に重要な役割を果たしております。昨年九月、新しい時代におけるより効果的かつ信頼性のある日米防衛協力関係構築することを目的として、新たな「日米防衛協力のための指針」を日米間で取りまとめました。  一月のコーエン米国防長官の来日の折には、新指針のもとで行われてきた作業進捗状況を確認するとともに、包括的なメカニズム構築を了承し、このメカニズムによる日米共同作業を開始したところであります。また、新指針実効性確保に係る法的措置につきましては、鋭意検討を行っているところであり、可能な限り速やかにその検討作業を取り進め、所要措置を講じることが重要と考えております。  また、沖縄に所在する米軍施設区域の整理、統合、縮小については、SACO最終報告の内容を一歩一歩着実に実施することが、沖縄県民方々の御負担を軽減するための最も確実な道であると考えております。引き続き最終報告の実現に向けて全力を挙げてまいります。  殊に、普天間飛行場移設は喫緊の課題であると認識しております。私は、同飛行場移設については、自然環境、騒音、安全などさまざまなものを考慮し、現在の基地より規模を大幅に縮小し、しかも、撤去可能な海上ヘリポート案を最良の選択肢として昨年地元に提示いたしました。普天間飛行場移設対策本部本部長として、今後とも、地元の御理解と御協力を得られるよう努力いたします。  今日、我が国の平和と安全を確保する上で、より安定した安全保障環境構築に向けて取り組むことがより重要になってきております。我が国周辺諸国を初めとする関係諸国との間での多国間及び二国間の安全保障対話防衛交流を一層推進していかねばなりません。  特に、日中防衛交流につきましては、橋本総理訪中の際に日中間安保対話重要性が確認されたのを踏まえ、先般、遅浩田中国国防部長が来日され、日中防衛首脳会談が開催されました。同会談におきましては、両国間の防衛交流を一層進めていくことに合意したところであり、私自身も、中国側の招請に基づき、早い機会に訪中したいと考えております。  また、日ロ防衛交流につきましても、昨年のクラスノヤルスクで行われた日ロ首脳会談における合意に基づき、今後、さらに進展することが期待されます。  このほかにも、私は、本年一月、オーストラリア、ベトナムを訪れ、率直な意見交換実施してまいりました。これらの安全保障対話防衛交流に、私自身先頭に立って取り組んでまいる所存であります。  一方、自衛隊がゴラン高原の国際連合兵力引き離し監視隊参加して二年が経過いたしました。当初二年を目途に始められたUNDOFへの参加が延長されたのは、参加した自衛隊員のプロフェッショナルとしての活動ぶり国際的に高い評価を受けたからであり、防衛庁長官としてまことに誇らしく感じております。我が国に求められている人的貢献一環として、引き続き国際平和協力業務を積極的に実施し、国際平和のための努力に寄与してまいる所存であります。  自衛隊がいかに精強であろうとも、いかにすぐれた装備を有していようとも、国民理解支持なくしては、我が国防衛という大任を全うすることはできません。国連平和維持活動などへの参加災害派遣活動、あるいは長野冬季オリンピックやパラリンピックヘの協力など、昨今における自衛隊活動を通じて国民自衛隊に対する理解が深まったことは、まことに幸いなことであります。私は、さらに一層の理解支持を得るべく努力し、我が国自衛隊国民との信頼関係を強固なものとしたいと考えております。  塩田委員長を初め委員各位におかれましても、当委員会での御審議を通じて、なお一層の御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、私の所信表明とさせていただきます。
  4. 塩田晋

    塩田委員長 次に、外務大臣から我が国安全保障政策について説明を求めます。小渕外務大臣
  5. 小渕恵三

    小渕国務大臣 安全保障委員会の開催に当たり、我が国安全保障政策について所信を申し述べさせていただきます。  まず初めに、イラク情勢についてであります。  今般、日英共同提案による国連安保理決議全会一致採択されましたが、本件安保理決議は、内容的にも極めてバランスのとれたものであり、問題解決に向けて大きな前進となったと考えます。  我が国は、今回のイラクをめぐる問題に関しては、一貫して外交的解決を図ることが最善と考え努力を重ねてまいりました。今次決議も、かかる外交努力一環として、英国と協力し、すべての理事国と緊密に協議しつつ採択を目指してきたものであります。その努力が結実したことは極めて喜ばしいことと考えます。  ただし、重要なことは、今般の決議採択を受けて、大量破壊兵器の廃棄に関する国連特別委員会、UNSCOMによる無条件、無制限の査察が可及的速やかに実現されることであります。我が国としては、引き続き状況を注視していく考えであります。  現下の国際情勢は、冷戦が終結したとはいえ、複雑多様な地域紛争の発生、大量破壊兵器等拡散といった危険が存続するなど、依然として不透明、不確実な要素をはらんでおります。また、アジアの通貨・金融危機をめぐる情勢については、域内の安定と繁栄という広い観点からも十分注視していく必要があります。  このような中で、日米安保体制は、我が国安全保障にとって不可欠であるのみならず、アジア太平洋地域の平和と安定にとって必要な米国の関与と米軍の存在を確保する上で重要な役割を果たしてきております。このため、その一層円滑で効果的な運用に努めていく必要があり、特に、昨年九月に策定された新たな「日米防衛協力のための指針」の実効性確保するための施策に精力的に取り組んでいくことが重要であります。  また、沖縄における米軍施設区域の問題については、普天間飛行場の返還、海上ヘリポートの建設を含め、沖縄に関する特別行動委員会SACO最終報告の着実な実施が、沖縄県の方々の御負担を軽減するための最も確実な道であるとの考えに変わりはありません。今後とも、この最終報告実施に向け、地元方々の御理解と御協力を得るべく努力してまいります。  アジア太平洋地域の平和と繁栄を促進していくためには、以上述べたように、日米安保体制を堅持しつつ、域内安心感を高めるための安全保障対話及び地域協力を進展させることが重要であります。このような観点から、我が国は,ASEAN地域フォーラム、ARFを初め、二国間及び多国間の政治・安全保障対話や、安全保障における種々の協力を、政府民間双方のレベルにおいて重層的に推進しております。  さらに、地域紛争への取り組み軍備管理・軍縮、不拡散努力を推進していくことも国際社会全体の平和と安定の確保にかかわる重要な問題であります。地域紛争の予防及び解決については、今後とも、外交努力や人道・復興援助のほか、平和維持活動など国連活動に対する人的及び財政的な貢献を通じて積極的に関与してまいります。  一般市民に大きな被害が生じている対人地雷については、人道的な配慮とともに、安全保障確保観点も考慮した結果、昨年十二月、対人地雷 全面禁止条約に署名しました。同時に、地雷除去活動犠牲者支援の面での積極的取り組みとあわせ、対人地雷問題の解決のため、包括的な取り組みを行っていくことを明らかにいたしました。  国際的に相互依存関係が深まる中、我が国は、国際関係全般にわたってこれまでにない大きな責任を有しており、世界の平和と安定の推進のため、積極的な役割を果たしていかなければなりません。このような状況の中で、それぞれの課題に取り組むに当たり、塩田委員長を初めとする本委員会委員皆様の御指導と御鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
  6. 塩田晋

    塩田委員長 以上で両大臣説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 塩田晋

    塩田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浅野勝人君。
  8. 浅野勝人

    浅野委員 冷戦構造が崩壊して、久しく時が経過いたしました。日米間で二十年前に合意した防衛協力指針国際情勢に合わなくなり、見直しの必要に迫られたのは当然のことと存じます。  去年の九月に合意した新しいガイドラインは、日米いずれの政府にも、立法上、予算上、行政上の措置をとることを義務づけてはおりませんが、具体的な政策に適切な形で反映させることを期待しています。  政府は、新しいガイドライン実効性を担保するため、法的側面を含め、政府全体としての必要な措置を講ずることを閣議決定をしておいでであります。以来、五カ月余りがたちました。  両大臣は、ただいまの所信の中で新しいガイドライン重要性を強調して、可能な限り速やかに検討作業を取り進め、所要措置を講じることが重要であると述べて、この国会関連法案を提出することを示唆しておいでですが、まず初めに、新しいガイドライン法制化進捗状況を伺っておきます。
  9. 久間章生

    久間国務大臣 先ほどおっしゃられましたように、昨年九月にガイドラインを取り決めましたので、その実効性確保するためには、やはり法的側面も含めて実効性あるものにしなければならないということで、九月二十九日の閣議決定の趣旨を踏まえまして、古川内閣官房長官を議長とする関係省庁局長等会議、あるいはその下に置きます課長級会議等において所要検討を行ってきたところでございます。  去る三月五日には、その検討状況につきまして総理報告をいたしまして、捜索救難在外邦人等輸送船舶検査等、あるいは後方地域支援等に関しまして、必要な法的措置について、これはやはり法的措置を講じなければならないのじゃないだろうかということで、今後、できるだけ速やかに成案が得られるよう、各省各庁の協力を得て、具体的な案文の作成作業を精力的に進めて、法的措置あり方を含めて細部の事項を詰めることとなっているところでございます。  今後、国会に提出できるよう、できるだけ速やかに作業を取りまとめていきたいと思っておりますが、何分広範なものですから、法律が要るのか要らないのか、そういうことも含めまして今鋭意検討を進めているところでございます。
  10. 浅野勝人

    浅野委員 関連法案国会に提出されましたら改めてじっくり質疑をさせていただきますが、きょうのところは基本的な大枠について確認をさせていただきたいと存じます。  そもそも日米防衛協力は、日本武力攻撃を受けたときの対処行動、つまり有事法制と、その前段階状況とでも言ったらいいでしょうか、日本周辺地域事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合の協力、つまり周辺有事を中心とした対処二つのジャンルに大別されるわけですね。周辺事態は瞬時にして日本有事になり得る懸念がありますから、表裏一体の関係にはありますけれども、法制化という点では、防衛庁長官、どんな手順を考えておいでですか。
  11. 久間章生

    久間国務大臣 いわゆる我が国有事の場合、我が国武力攻撃を受けた場合における現在の法制度が十分であるかどうかにつきましては、昭和五十二年当時から問題になっておりまして、その当時から研究は進められ、その後、五十六年でございましたか、あるいは第二分類については五十九年だと思いますけれども、第一分類、第二分類、第三分類という分類の仕方をしながら、こういう点が問題があるということを取りまとめて公表を行ってきたところでございます。ただ、これはあくまでも研究ということでございまして、まだこれに基づいて法律をつくろうというところまで至っておりませんでした。  これにつきましても、今回、周辺事態における実効性確保を図るための法整備をするときに、それと全く無関係ということじゃございませんで、むしろいろいろなことで関係もあるわけでございますから、研究をやっておったこれらについて、あるいはその成果について公表しておるこの問題について、どうしていくのか、これについてもあわせて検討しなければならない、そういうような認識を持っております。  しかしながら、そのときもそうでございますけれども、まだ法案をつくるという準備態勢まで入っていなかったという経緯もございまして、そこまでのまだ体制ができていないというのも事実でございます。
  12. 浅野勝人

    浅野委員 周辺事態法制化を優先するという意味かなというふうに承りましたが、そうすると、新しいガイドラインの中核となる後方地域協力法とでも言ったらいいでしょうか、それが一つ。それから、ACSAを拡充した周辺ACSA。もう一つは、おっしゃるように、自衛隊法の改正で対応できる分野のもの、大体この三本柱で構成される、そんなふうに理解してよろしいですか。
  13. 久間章生

    久間国務大臣 まだ三本柱で構成されるというようなことまできちっとしたわけではございませんで、先般、三月五日に、先ほど答弁しましたように、総理大臣に対して報告いたしましたときも、捜索救難在外邦人等輸送船舶検査等後方地域支援等に関して法律が必要だというようなことで今議論を行っておりますということを申し上げたわけでございます。  今述べられましたような、そういうような法整備あり方としてくくれるのかくくれないのか、それも踏まえ、現段階でまだ具体的に固まったというわけではございません。
  14. 浅野勝人

    浅野委員 指針見直し前提条件となった原則は、日米安保条約とその関連取り決め基本的枠組みは変更しないということが一つ。それから、憲法の制約の範囲内で、非核三原則の遵守はもとより、集団的自衛権は行使しないというのが二つ目。それから、国連憲章などの国際的な約束ごとに反しないという三点であったはずであります。法制化に当たって、この三原則との整合性はすべて国会のチェックを受けると約束していただけますか。
  15. 久間章生

    久間国務大臣 指針にも書いておりますとおり、それは従来の、今述べられましたようなそういうことについては、全くその前提に立った上で進めるということでございます。
  16. 浅野勝人

    浅野委員 ちょっと具体的な原則について入りたいと思いますけれども、日本の領域の外で後方地域支援対象となるのは、先ほども触れました、日本周辺地域における事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合ですね。そうしますと、日本周辺地域とはどこですか。
  17. 久間章生

    久間国務大臣 これは私の方でお答えさせていただきますけれども、かねてから言っておりますように、地理的な概念ではなくて、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態という、ここに主眼点があるわけでございます。要するに、我が国以外の地域でというような意味でございます。  そうなってくると、我が国以外の地域というと、例えば地球裏側までかという議論にもなってきますが、そういうことではなくて、我が国周辺地域でということを頭に持ってきているわけですけれども、そこで切ってしまうと、さも地理的な概念のように見えるわけでございます。  ところが、そうではなくて、ここで言いたかったのは、結局我が国地域以外の場所で、しかも、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすようなところでそういう事態が発生した場合ということで、そういう事態概念だということに理解をしていただきたい。  ここは説明が私どもも下手なのかもしれませんけれども、非常に理解しにくいというような話がたくさんございまして非常に戸惑っているわけですけれども、要するに、我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすような事態が発生した場合にどうするか、そういうことに着眼して指針をつくったということでございます。
  18. 浅野勝人

    浅野委員 周辺事態地理的概念ではなくて事態の性質に着目をしたものだ、それは理解できますけれども、日本周辺地域といった場合、やはりインド洋やペルシャ湾や、今長官おっしゃったように、地球裏側まで含まれるとは思えません。  そういうふうに一般的な概念周辺地域ということで考えていきますと、何といっても、地理的なイメージ、地理的な概念というのは一般的な意味合いでどうしてもつきまとう。そこで、日米安保条約は変更しない、変質させないということですから、外務大臣極東条項との整合性はどうなりますか。
  19. 小渕恵三

    小渕国務大臣 周辺事態につきましては、今防衛庁長官から御答弁ありましたが、極東は、安保条約上、安保条約目的を達成する上で国際の平和と安全の維持日米が共通の関心を有しておるという地域でございまして、その範囲につきましては、御案内のように、昭和三十五年の統一見解で明らかにいたしておるところでございます。
  20. 浅野勝人

    浅野委員 今のお話で、なお、なるほど、わかりましたと思いにくいのですね。極東、つまりフィリピン以北のどこかの平和と安全が極東以外の地域から脅かされた場合、そこが日本周辺事態対象になるという解釈になりますか。だとすると、日本周辺地域というのは途方もなく広がっていくということになりませんか。
  21. 小渕恵三

    小渕国務大臣 委員案内のように、極東範囲につきましては、今お話しのように、「大体において、フィリピン以北並びに日本及びその周辺地域であって、韓国及び中華民国の支配下にある地域」が含まれているということでございますが、中華民国の支配下にある地域というのは台湾地域と読みかえておるわけでございます。  したがいまして、極東範囲は、こうした三十五年の見解をそのままいたしておりますが、新たな考え方として周辺事態ということでございますので、周辺事態につきましては、いずれの地域が入るとか入らないとかということは申し上げておらないところでございます。
  22. 浅野勝人

    浅野委員 地理的概念ではなくて事態の性質に着目するという表現ですから、その事態日本の平和と安全にどれほどの重要なかかわりを持ってくるかということを対象にするのであって、それがどこで起きるかということを区切るわけにはいかないという意味合いだろうと思います。  しかし、やはり日本周辺地域といった場合には一般的な地理的概念というのはっきまどうもので、そのあたりのもう少し明確な政府としての物の考え方を明らかにされた方が東南及び南西アジアを含む関係諸国理解は得られやすいと私は思います。  ちょっと視点を変えます。日本の領海から百キロ足らずの台湾海峡は、日本周辺に入りますか入りませんか。
  23. 高野紀元

    ○高野政府委員 周辺事態に台湾海峡が含まれるかどうかという御質問でございますけれども、繰り返しで恐縮でございますが、周辺事態とは、日本周辺地域における事態日本の平和と安全に重大な影響を与える場合ということでございます。したがって、地理的な概念ではございませんので、事態の性質に着目した概念、このような事態が生起する地域は地理的に一概に画することはできないということでございます。  なお、台湾をめぐる問題については、御承知のとおり、日中共同声明において表明しておりますとおり、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるという中華人民共和国政府の立場を十分に理解し、尊重するものでございます。我が国としては、台湾をめぐる問題は当事者間で平和裏に解決されることを強く希望していることは従来述べているとおりでございます。
  24. 浅野勝人

    浅野委員 かつて佐藤・ニクソン日米共同声明の中で、韓国条項と並んで台湾条項があって、台湾地域における平和と安全の維持日本の安全にとって極めて重要な要素である、ア・モースト・インポータント・ファクターだと指摘をしております。  今北米局長の答弁にあったように、その後、日中正常化によって中国は一つ、台湾は中国の一部と認識され、続いて、日中条約は子々孫々に至る両国の平和と友好を誓い合いました。  したがって、これで台湾条項は空洞化され、台湾海峡は、地理的には日本周辺に入るけれども、新しい日米防衛協力対象とはならない、万一この地域で紛争が起きた場合には、中国の国内問題として平和裏に解決されることを期待するというのが今の政府の立場と理解してよろしいですか。  やや私が翻訳をし過ぎておるかもしれませんが、周辺地域には入るが周辺事態には入らない、日本周辺地域ではあるけれども周辺事態対象にはならない、このぐらいのことははっきりしておいた方が各国の理解は得られやすいのじゃありませんか。
  25. 久間章生

    久間国務大臣 たびたび当委員会でも言ってきておりますけれども、私どもは、今度のガイドラインをまとめるに当たりまして、やれ韓半島がどうだとか、あるいは台湾海峡がどうだとか、具体的な地域について言及したことはございません。  今言いましたように、発生する事態我が国の平和と安全に重要な事態になるかどうか、それは、態様、規模、そういうものを総合的に判断するわけでございますけれども、事態が発生して初めてそれはわかることであって、特定の地域がそういう事態になるとかならないとか、ある一定の地域を指して外に向かって言ったことは一回もございません。  政府の見解としてこうだというふうなことを先ほど言われましたけれども、そういうようなことは、とにかく地域を指して言ったことはないということを御理解賜りたいと思います。
  26. 浅野勝人

    浅野委員 私が申し上げたのは、政府の見解を、先ほどの御答弁の見解を翻訳すると、さらにわかりやすく言うとそういうことになるのではないかと申し上げたわけであります。さらに、先ほどの答弁をかみ砕いて、より多くの人に理解されやすいように御検討を続けていただきたい、研究していただきたいと存じます。  この問題については、基本概念、物の考え方のベースが同じ土俵じゃないものですから、どうしてもすれ違ってしまいますけれども、地域的なことでもう一つ重要なことは、後方地域支援は戦闘行動が行われている地域とは一線を画される公海及びその上空で行われることもあるのですね。そうすると、どこからが戦闘行動と一線を画される地域になるのか、その都度だれとだれが相談して線引きをすることになるのですか。
  27. 久間章生

    久間国務大臣 これは具体的な問題でございますから、私ども政府として、ここは戦闘地域と一線を画すというのがどういう地域かということを、例えば具体的な線引きによって示す場合もあるでしょうし、あるいはもっと抽象的な表現で示す場合もあるでしょうけれども、何らかの形で、個々人が判断に迷うようなことのないようにしたい、そういうような気持ちで、これは指示しなければならないと思っております。  そういう場合でも、戦闘の状況の変化等によっていろいろ変わってくることがございます。そうした場合には、こういうふうに変わった場合にはこう判断せよ、そのときはだれが判断するか、そういうような基準まで示しておかないといけないのじゃないか。  そういうことで、そういうような判断の仕方といいますか、判断すべき者を初めとして、そういう判断の仕方等についてもやはり何らかの統一された基準等があってしかるべきだということで、それらについてはそういう努力をしなければならないと思っております。
  28. 浅野勝人

    浅野委員 よく理解できました。  その問題は、それぞれのパート、パートでの行動に密接に絡んでくる問題ですから、さらにどういう基準を設けるのか、御検討をいただく必要があると思います。  例えば、捜索救難というのは自衛隊法の八十三条の改正で対応できるというふうに私も思いますし聞いておりますけれども、その八十三条の改正の中で、一線を画する地域というのは、条文で明示するような形になるとすると、どこかでそういう基準を国民にわかるように法律の上で明らかにするという意味ですか。
  29. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 今お尋ねの捜索救難でございますけれども、基本的に、現在、こういった事態につきましては自衛隊法の八十三条で対応しているわけでございますが、果たして戦闘行為に基づくようなものがこのままで対応できるかどうかということにつきましては、今、その法的側面を含めまして検討中でございます。  そういう中で、ガイドラインにおきましても、この捜索救難につきましては、戦闘地域と一線を画する地域で行うとなっておりますので、これをどういうふうに担保するかというのは検討課題でございます。  ただ、それを条文上どう扱うかとか、別な格好で担保するのかとか、これは今後さらに検討をさせていただきたい、こう思います。
  30. 浅野勝人

    浅野委員 明快な説明をありがとうございました。  日米安保条約との絡みで、もう一点、事前協議との関連をただしておきたいと存じます。  第六条の実施に関する交換公文、いわゆる岸・ハーター交換公文は、在日米軍の配置と装備の重要な変更、日本からの戦闘作戦行動の三点を事前協議の対象と決めています。  従来、政府は、事前協議にはイエスもあればノーもあるという立場を貫いて、ノーの可能性を示唆してアメリカ政府を牽制してまいりました。装備の重要な変更とは核の持ち込みを意味しましたから、これは、非核三原則を堅持するという立場から、核の持ち込みを拒否するという意思表示であったと私は今日まで理解をしてまいりました。したがって、これまで三十七年間、アメリカ政府から事前協議は一度もなかったというふうに聞いております。  ところが、今回の周辺事態日本側が直面するのは、日本の基地から米軍が直接戦闘作戦行動に移るケースであります。戦闘行動として直接発進する、直接出動する必要が生じて事前協議を提起された場合、外務大臣はどうお答えになられますか。
  31. 高野紀元

    ○高野政府委員 御質問の、戦闘作戦行動の発進基地として日本施設区域が使用される場合にどのように対応するかということでございますが、これは従来から申し上げておりますとおり、事前協議におきましては、我が国が、国益確保の見地から、その具体的事案に即して自主的にその諾否を判断するという立場でございます。  したがいまして、今申し上げました基本的な立場を踏まえまして、仮に事前協議の申し出があった場合には対応するということになると思います。
  32. 浅野勝人

    浅野委員 一生懸命聞いておりましたけれども、直接戦闘作戦行動は事前協議の対象になるわけですから、それが事前協議の対象となった場合、なぜその必要性が生じたかというようなことを勘案して返事をするという意味ですか。もうちょっと、頭の悪い人間にもわかるように話をしていただけたらありがたいです。
  33. 高野紀元

    ○高野政府委員 戦闘作戦行動でございますが、これは一般的に直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動、典型的なものとして考えられるのは、航空部隊による爆撃、空挺部隊の戦場への投下、地上部隊の上陸作戦等があり得るわけでございます。今のような典型的なものがある場合に、戦闘作戦行動に関する事前協議が行われるということでございます。  それについて仮に米側からの申し入れに対して日本側がどう対応するかということでございますが、先ほど申し上げましたが、その時点における具体的な状況情勢を具体的に検討いたしまして、それが日本の国益に照らしてどういうふうに考えられるかという判断を自主的にいたしまして、その上で諾否、イエスまたはノーを言う、こういうことを申し上げたわけでございます。
  34. 浅野勝人

    浅野委員 従来どおり、イエスもあればノーもあるのだというお答えだと承りました。  基本的にそれで結構だと思いますが、後方地域支援は、日米安保条約目的を達成するために、米軍活動しやすいように施設の使用やさまざまな行動をサポートするのが主な目的のはずですね。その目的達成に最も重要な米軍の直接戦闘行動にノーと言うこともあるのですか。  核の持ち込みとはわけが違いますよ。核の持ち込みはどんなケースがあってもノーであるべきだし、日本政府はそれを今日まで貫いてきたと私は信じております。この場合の直接戦闘作戦行動と核の持ち込みというのは根本的にケースが違うということであると、このケースにもノーと言う場合があり得るのだということになると、何のための日米防衛協力かということになりませんか。
  35. 高野紀元

    ○高野政府委員 まず一つ申し上げたいのは、いわゆる戦闘作戦行動を含めまして、今先生御指摘の事前協議の主題になる三つの点でございますね。  合衆国軍隊の日本への配置における重要な変更。陸上ないし航空部隊であれば一個師団程度、あるいは海軍であれば一機動部隊ということは、従来から御説明しているとおりでございます。それから、合衆国軍隊の装備における重要な変更。これはまさに御指摘の核弾頭ないしそれに関連するミサイル等の持ち込み。三つ目が戦闘作戦行動でございます。  これらはガイドラインに基づく周辺事態ということとは切り離しまして、安保条約自体の枠組みとして存在してきておりまして、日本として安保条約を当然のことながらその目的の達成のために日米協力して運用していくわけでございますが、その中で、この三つの点については、日本として国益上きちっと判断して、日本の基地を使ってもらいたいという仕組みでございます。  その問題と、今御指摘の、今回整備しております周辺事態というときに日本がどう後方地域支援するか、どう協力するか、この問題とは一応別の問題でございまして、その際も、周辺事態が仮に起きた場合には、その周辺事態についての判断はやはり日本が自主的に必要な国内手続を踏まえながら判断する、その上で支援するかどうかということも決めていく問題でございます。ですから、一応別の問題というふうに御理解いただきたい。
  36. 浅野勝人

    浅野委員 きょうはそれでおきますけれども、そもそもこの新しいガイドライン日米防衛協力指針を見直そうという発想の一つには、朝鮮半島有事、朝鮮有事がだれの頭の中にもあったことは否定し得ないことです。そうなると、日本国内の基地から米軍が直接戦闘行動に出動、発進することと周辺事態とは別だという議論はなかなか成り立ちにくいかもしれぬなという点は、一つ指摘をさせていただいておきます。  ここに「沖縄のホンネは「基地存続」」というレポートがあるのですけれども、沖縄の航空自衛隊南西航空混成団の司令をしていた元空将が雑誌に論文を発表して、沖縄の本音をレポートしております。  海上ヘリポートの建設計画について、思いつきと格好のよさだけで飛びついた机上の空論という指摘は、私どもの見解と異にしておりますので、とてもその趣旨を容認することは私個人はできませんけれども、この論文の全体を通じて、随所に傾聴に値する点があると私は思っております。  例えば沖縄米軍基地の地主、およそ三万二千人のうち、契約を拒否している三千人余りのいわゆる一坪反戦地主について、一人当たりの所有面積は平均三十センチ四万にすぎず、大半の人が県外に住む活動家なので、地元では彼らを、一坪地主ではなく、より実情に近いハンカチ地主と呼んでいる。ひそかにその土地を分割して契約拒否地主を倍増して六千人にふやそうとしているのを知って、絵はがき地主と呼びかえているということを指摘した上で、現在、基地の代金、基地の地代は、防衛施設庁の職員がそれぞれの地主のところへ持参している。全国に点在するハンカチ地主のところへも、わずか年五百円から七百円の地代を支払うために、職員は高い旅費をかけて出張しているのであるという指摘がありますが、これは事実でしょうか。
  37. 萩次郎

    ○萩政府委員 お話がございましたように、現在、いわゆる一坪地主と呼ばれる方が約三千名いらっしゃいます。  これは、昭和六十二年裁決分と平成四年裁決分があるわけでございますが、この補償金額、人によっては、先生おっしゃいましたように大変少ない方もいらっしゃいます、何万という方も中にはいらっしゃいます。それで、いわゆる民法の弁済の場所という規定によりまして、これは現在居住しているところに持参しなければならぬということになっておりますものですから、私どもの職員が直接出かけて渡しておるわけでございます。  三千名のうち、およそ半分強は沖縄所在の方ですが、半分弱の方が日本全国に住まわれております。また、その中の三分の二ほどは東京、大阪という大都市圏にいらっしゃいますので、そんなに問題はないわけでございますけれども、わずかな方とはいえ大変僻地にいらっしゃる方もおりますので、その場合には、中には旅費を払ってこのお金を届けに行くというケースがあることも事実でございます。
  38. 浅野勝人

    浅野委員 民法で、法律で決まっている、現金を届けないと法律違反になるということであれば、これは五百円を草の根分けても支払いに行かなければならないと思いますけれども、しかし、今申し上げたような趣旨の方々対象にしている場合は、どうでしょうか、きちんと郵送をして、そして住所不明で返ってきたものは、それは地主側の手続ミスですよ。こんなことに税金のむだ遣いというのは即刻おやめになって、私は、きちんと郵送をして、政府としての所定の手続をお踏みになれば十分ではないかという気がすることだけ指摘をさせていただきます。  もう一点、ちょっと読ませていただきますけれども、   全土が様変わりするほどの激戦地であった沖縄では、地形が大きく変化して原図の復元は不可能である上、登記簿も焼失し、所有権が不確かなまま本人の申告のみに基づいていまの登記簿が作成されたという。 「作成されたという。」と、伝間ですけれども。沖縄の特殊事情を踏まえた上で、  普天間一帯は、丘陵地帯だったのを米軍が造成して平坦な飛行場にしたため、線引きはますます困難で、現在、地主の申告通りに、詳細に線引きをし直して、 現在に至っている。  その全面積を合計すると、なんと普天間基地の面積は那覇市沖合に横たわる慶良間列島まで広がってしまうらしい。 地元の老人は、お年寄りは、  沖縄米軍基地全体を地主の申告通りに精密に線引きをすれば、その土地は台湾まで広がっていることになる。 と、ため息をついたと書かれております。  ぴったり時間が参りましたので御答弁は求めませんけれども、今後の沖縄への心のこもった対応、真に心のこもった対応とは何かという検討はなされるべきだということを指摘して、質問を終わります。ありがとうございました。
  39. 久間章生

    久間国務大臣 答弁は必要ないとおっしゃられましたけれども、今のことにつきましては事実と若干違いますので。  昭和五十二年に、そういう土地の登記簿等がはっきりしていないというようなことから、法律等をつくりまして手当てをしております。今は、例えば普天間飛行場の中ではっきりしていないのはただ一名だけでございます。その一名だけでございまして、その面積も、その人の分が二筆、約四千平方メートルの協力が得られないためにそこのところがはっきりしないということで、明確化措置が完了していない状況にはありますけれども、そんな極端な内容のものとは違いますので。  というのは、なぜ今度のものがそう違ったかといいますと、話を聞いてみましたら、あの方が最初論文を書いたそうです。先ほど委員は論文と言われましたけれども、論文を書いて出したところが、こんなのじゃ原稿にならないとはねられたそうです。その後対談をされたそうです。対談をされたときに、いろいろなところを抜き書きされまして、そして、これで出しますよということで送ってきたのを、ああ、結構ですという形でそういうふうになったというような経緯を聞いておりますので、必ずしも事実関係は、かなり間違った中身が多うございます。
  40. 浅野勝人

    浅野委員 終わると言ってから御答弁いただきまして、ありがとうございました。  内容の一つ一つを精査したわけではありませんけれども、去年私は本人に現地でお目にかかって、大変誠実な人物であったことも確かでありますので、そのことをあわせて指摘して、行政の参考にすべきところばしていただきたい、そのように思います。  終わります。
  41. 塩田晋

    塩田委員長 岡田克也君。
  42. 岡田克也

    ○岡田委員 民友連の岡田克也でございます。  きょうは一般質疑ということでございますが、基本的な問題について順次聞いていきたいと思います。  事前に通告していた順番とは少し変わるかもしれませんが、まず、日米防衛協力指針につきまして、先ほど浅野委員も触れられましたので、そこから入っていきたいと思います。  先ほどの質疑にもございましたが、周辺事態の定義の問題であります。浅野委員の質問に対して外務省の方からもお答えがあったわけですが、あるいは予算委員会で私も一時間ほどこの問題をやらせていただいたわけでございます。予算委員会の場では若干議論が混乱したように思っておりますが。  外務省にお聞きしますが、もし法律周辺事態の定義を書くとすれば、どういう書き方になるでしょうか。先ほどのお答えは、日米間の防衛協力指針の中に書かれている表現をそのまま北米局長はお話しになったと思うのですが、もし日本法律周辺事態について定義をするとすれば、どのような定義の仕方になるというふうにお考えでしょうか。
  43. 高野紀元

    ○高野政府委員 日米ガイドラインにおきます。辺事態の定義は、去年の九月二十三日に最終報告が出ておりまして、そこに記述されているとおりでございます。  それを踏まえまして、現在その実効性確保のためのいろいろな方策について関係省庁で検討しているわけでございますが、その中で、やはり法整備も必要だ、あるいは必要な場合に日米間の取り決めも必要だという考え方でございますが、そこに具体的にどのように記述するかということはまさに現在検討中でございますので、この段階で申し上げることは困難でございます。
  44. 岡田克也

    ○岡田委員 法律ということになれば、より厳密な定義が必要になるというふうに思うわけでございます。  それで、これは予算委員会でも質問させていただきましたが、議論をわかりやすくするために例を引いて申し上げますと、例えば石油ショックというのがありました。中東において産油国が石油消費国に対する石油の販売というのを制限した、これは、ここで言う日本の平和と安全に重要な影響を与える事態ということになるのでしょうか。
  45. 高野紀元

    ○高野政府委員 周辺事態に関しましては、先般来の国会でも御説明申し上げておりますが、軍事的な観点が全くないような状況ということに関しましては、これは周辺事態ということにはならないというふうに考えております。  今の先生の御指摘の具体的な事例がそういう事態でございましたら、私どもは、それはいわゆる周辺事態に該当しないというふうに考えることになると思います。
  46. 岡田克也

    ○岡田委員 今の軍事的な観点というのは、事態の発生地における軍事的なことがないという意味なのか、日本においての軍事的なものがないという意味なのか、どちらなのでしょうか。  例えば、今石油ショックの例を挙げましたが、イラン・イラク戦争、第二次石油ショックがまさしくそうだったのですが、中東で戦争が起きた、これは軍事的なことが起きているわけですね、そのことによって日本への石油の供給が途切れる、こういう場合は周辺事態に当たるのでしょうか。
  47. 高野紀元

    ○高野政府委員 今軍事的な観点と申し上げましたのは、軍事的な観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態であるかということでございます。  したがいまして、我が国の平和と安全から見て軍事的な観点から影響はないということになりますと、これは、ここで言う周辺事態ということには該当しないというふうに考えております。
  48. 岡田克也

    ○岡田委員 ということは、もし法律周辺事態を定義される場合には、単に日本の平和と安全に重要な影響を与える事態だけではなくて、軍事的観点から見て日本の平和と安全に重要な影響を与える事態、少なくともそういうふうに定義されるということになる、こういうことですね。
  49. 高野紀元

    ○高野政府委員 先ほどの繰り返しで恐縮でございますが、具体的にどういうふうに法整備の中でこれを記述するかということはまさにこれからの検討でございますので、ここで申し上げる段階ではないというふうに考えております。
  50. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは、もう一つ例を引いてお聞きしたいと思います。  例えばマラッカ海峡を挟む国で何か問題が起きて、日本のシーレーンが影響を受ける可能性が出てきた場合は、今おっしゃった軍事的観点から日本の平和と安全に重要な影響を与えるというには私は当たらないと思うんですが、いかがでしょうか。
  51. 高野紀元

    ○高野政府委員 周辺事態かどうかという判断をする場合には、先ほど来の点を踏まえまして、総合的にその事態についての性質、規模等を含めまして判断することになると思います。  そういうことでございますので、今御指摘のような事態がそういうことになるかどうかということは、いわば仮定の問題としてここで判断するということは困難だというふうに考えております。
  52. 岡田克也

    ○岡田委員 確かに、日本のタンカーが何かその当該国の影響を受けて軍事的なものに巻き込まれる可能性があるというようなことであれば、あるいはタンカーの国籍にもよるのかもしれませんけれども、軍事的な意味日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすということは言えるかもしれませんが、単に、例えばここは通っちゃいけませんよ、迂回していきなさいというようなことであれば、これは、先ほどおっしゃった、軍事的な観点から見て日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすということには明らかに当たらないというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  53. 高野紀元

    ○高野政府委員 周辺事態というのは、実際に起きる国際情勢と申しますか、安全保障上の情勢でございますので、具体的な仮定を今設定して、総合的にこれが日本にとっての平和と安全に重要な影響を及ぼす事態であるかどうかということを判断申し上げるということはなかなか難しい問題だと思いますので、先ほどの御答弁の繰り返してございますけれども、仮定の問題を前提としての判断ということは難しいというふうに申し上げざるを得ないと思います。
  54. 久間章生

    久間国務大臣 誤解をされるといけませんので。今外務省の方から御答弁がありましたように、周辺事態に入るか入らないかは厳密には言えないわけでございますけれども、今委員が御指摘されましたように、迂回していけば何ら問題ないような状態で起きている場合でも入り得るみたいにとられますといけませんので。  今答弁されたのは基本論でございますけれども、今委員が御指摘になったようなことは入らないであろうというような認識を私どもは持っております。  しかし、周辺事態に入るか入らないかは、その規模、態様を見てみないとわからないという原則論を言っておられるわけでございまして、あの答弁から、あたかも今委員が御指摘になっておられるようなケースでも入る場合があり得るんだというような報道をされますと、非常に違った方に誘導されますので、念のために答弁させていただきます。
  55. 岡田克也

    ○岡田委員 先ほど軍事的な観点が全くないようなものは入らないというふうに半歩定義を踏み込んでいただいたと思うんですが、ちょっと具体的な話になると、またすぐ総合的判断ということでもとへ戻ってしまうわけで、ここが非常に私は不明確なところだと思います。  なぜこんなところにこだわるかといえば、この日米防衛協力ガイドラインが適用されるかどうか、どこまで適用するかということは、周辺事態という概念で区切っているからでありまして、ここがしつかりしないと、どんどん議論が広がりかねないというふうに私は思います。  基本的に一番広い考え方としては、例えば、米軍というのは世界の警察官としての一面もありますから、米軍が世界じゅう活動していく中で、日本というのは、世界のどこであれ米軍が行くところについて、多少日本の国益ということは考えなきゃいけないとは思いますが、それに対して幅広く協力していく、これが一番広い考え方だと思います。それを少し限定するのは、例えば地理的にアジア太平洋地域米軍活動に対して日本が幅広く協力していくこと。  私は、村山総理が、ハワイだったかサンフランシスコだったか忘れましたが、日米首脳会談をやられて、日米安保体制アジア・太平洋の平和と安定のために重要であるということを言われた、これがこういう議論のすべてのスタートだったと思うんです。当時の村山総理はどこまで事態を認識しておられたか別ですけれども、しかし、それがスタートだった。  あのときは、恐らくアメリカの意識は、アジア太平洋地域において米軍活動するときに、日本に幅広くそれに対して支援してもらう、そういうことを念頭に置いて議論が始まっていたんじゃないか、少なくともアメリカの意識はそうだったんじゃないか、そういうふうに私は思うわけでございます。  しかし、いろいろ検討した結果、やはり日本の平和と安全に重要な影響を与えるというところで区切らないと、どこまでもおつき合いするというのはなかなか国内世論的にも難しいし、あるいは自衛隊活動というものをそこまで広げていいのか、いろいろな議論がある中で現在の周辺事態の定義というものが出てきたんだ、そういうふうに私は思っているわけでございます。  それだけに、逆に言いますと、この定義をしっかりしておかないと、もしここで例えば日米間に認識の違いがあれば、例えばアメリカは非常に幅広くとらえていて、場合によっては中東でもあるいはアジア・太平洋全域で米軍が動くときに、日本にそれに対して後方支援を初めいろいろな支援をしてもらうというふうに思っているとすれば、それは日本の今おっしゃった考え方とは少し違いがあるわけで、かえってそのことがいろいろな問題を将来呼び起こすことになるんじゃないか。したがって、この定義はきちんとしておくべきだ、そういうふうに考えますが、大臣、いかがでしょうか。
  56. 小渕恵三

    小渕国務大臣 岡田委員の御主張はそれなりに傾聴いたしますが、今回のガイドラインは、あくまでも日本国憲法に基づいて、安保条約範囲において、特に六条の問題についてきちんと法制化しようという立場で考えておるわけでありまして、我が国としては、日本並びに日本周辺事態我が国の安全に大きな影響を与えるということを排除する意味で、日米安保条約を効果的に、その条約の意味が達せられるようにということでの今回のガイドラインの決定だと理解しております。
  57. 岡田克也

    ○岡田委員 今大臣安保条約ということをおっしゃいましたので、関連して少しお聞きをしたいと思います。  このガイドラインの立て方というのは、私は二階建てになっているんじゃないかと思っているんです。つまり、周辺事態というのはガイドライン全体にかかることだと思うんですが、それ以外に、後方地域支援のところは「日本は、日米安全保障条約の目的の達成のため活動する米軍に対して、後方地域支援を行う。」という書き方がしてありまして、場合によっては、これはもう一つここで絞り込んでいるんじゃないかという気がするわけです。  今大臣もおっしゃった日米安全保障条約の目的の達成というのは、具体的に何を言うのか。安保条約というのは非常に幅広いことが書いてありますが、六条に書いてある「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与する」ということを言っているのか、それとももっと広いことを言っているのか、それはどうなんでしょうか。
  58. 高野紀元

    ○高野政府委員 日米の新ガイドラインで、日米安全保障条約の目的達成のために活動する米軍に対して後方支援を行うとございますが、ここで言う日米安保条約目的というのは、日本及び極東の平和と安全の維持ということでございます。
  59. 岡田克也

    ○岡田委員 そうすると、逆に言いますと、この後方地域支援のところは、日米安全保障条約の目的達成、つまり六条がかかっているということは明確でありますが、そのほかのところについてはそういう表現が私はないように思いますので、もう少し幅広い概念である、つまり、そのほかのところというのは、周辺事態というのは六条に規定するよりも広い概念であるというふうに考えてよろしいですか。
  60. 高野紀元

    ○高野政府委員 今のお話は、周辺事態における日米間の協力でございます。これは、当然のことながら、このガイドラインそのものが日米防衛協力のためのものでございますので、周辺事態に掲げられている日米間の協力というものは、全体として安保条約目的に合致するものということになるわけでございます。  いずれにいたしましても、なぜ後方地域支援の部分について日米安全保障条約の目的達成ということが書いてあるかということでございますが、これは安保条約六条に基づく典型的な米軍活動に対する支援でございますので、そこに特に日米安保条約目的達成ということを明記したわけでございます。  ただ、全体として、周辺事態に関しましては、安保条約目的に合致し、この目的のために行う活動であるということには変わりございません。
  61. 岡田克也

    ○岡田委員 今局長安保条約とおっしゃったのは、安保条約六条という意味でございますね。そういうふうに理解をいたしましたが、何かもし異論があれば-よろしいですね。  そうすると、先ほど周辺事態の定義として、総合判断だというふうにおっしゃったのですが、安保の第六条は逆に広がってしまうということになりませんか。  ここでは、日本の安全に寄与し、極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するということですが、極東以外で起きた事案についても、軍事的なものであって日本の平和と安全に重要な影響を与えるということであれば周辺事態に入るということですから、安保六条は極東だけれども、周辺事態というのはもう少し幅広い概念だと私は認識をしているわけですが、そのことが安保の六条の解釈を広げてしまうことになりませんか。
  62. 高野紀元

    ○高野政府委員 極東という言葉でございますが、従来から、これはそもそもそれ自体地理的概念ではないということを昭和三十五年の統一見解でも申し上げておるわけでございます。  仮に、強いて言えばということで、フィリピン以北及び日本周辺地域ということで定義させていただいておるわけでございますけれども、しかし、その問題は、米軍活動ということからいえば、行動範囲ということからいえば、必ずしも今申し上げた地域に限られないということは、これも統一見解で述べてきているところでございます。  周辺事態との関係でいえば、日本の平和と安全に重要な影響を与えるということでございますから、極東地域における米軍活動ということが極東の平和と安全の維持に寄与するということとの関係においては密接な関連があるということは、これまた従来から申し上げてきているところでございます。
  63. 岡田克也

    ○岡田委員 だんだん私の頭ではフォローができなくなってまいりましたので、議事録をよく読んで、次回またこの点は詰めて質問をしたいと思っております。  ただ、私が非常に懸念しますのは、一つ日米安保体制というものがかなり法制上、条約上の建前と実態が違ってきているという現実がありますね。  別に日本の基地は日本極東の平和と安定のためにだけあるのではなくて、今やアメリカの世界戦略基地として中東まで含む重要な基地であります。横須賀は米海軍にとってはなくてはならない存在でありますし、嘉手納は世界じゅうの米軍基地の中でも有数の重要な機能を持った基地であります。実際の機能もそういうふうになってきている。しかし、安保条約はあくまでも日本極東ということに限定して置かれている。その矛盾が一番出てくるのは事前協議の話であります。  この前のイラク危機の際にも、横須賀から空母が出ていった。日本政府は、それは出ていったのであって直接出撃したのではないということで関係ないというお立場でありますけれども、現実に果たしている機能としては、そういった中東も含めたアメリカの世界戦略基地としての位置づけとして日本の基地があるわけでありますから、そのことが法制とうまくかみ合ってない。  そういう現実を安保条約というのは想定していなかったわけであります。時代はだんだんそういうふうに変わってきたと思いますが、その矛盾をこのガイドラインはそのまま抱え込んでいる。だから、非常にわかりにくくなっている、そういうふうに私は思っております。  もうそろそろ現実を踏まえた議論をしっかりしないと、結局一いろいろ条約をつくったり法律をつくったりするけれども、現実を踏まえておりませんので、つくっても意味がない。そのことが結果的に、日本国が主体的にそれに対してかかわっていく、あるいはシビリアンコントロールを国民国会がしていく、そういうことに対して形骸化してしまう、そういう事態に今なっているのじゃないかというふうに私は思っているわけでございます。  いずれにしましても、ここのところはもう一度改めて議論をさせていただきたいと思います。もし何かございましたら。
  64. 高野紀元

    ○高野政府委員 米国が世界各地でいろいろ行動している中で、これがこのガイドラインとの関係日本に対していかなる関係になるのか、あるいは後方支援等について期待しているのではないかという御指摘でございますので、その点だけちょっと申し上げます。  いずれにしても、このガイドライン対象としていることは、周辺事態、平素の協力日本に対する武力行動があった際の協力ともちろんございますが、今の問題が周辺事態ということに限って申し上げれば、周辺事態が生じたときに、日本がアメリカとの関係でどう協力するかということがガイドライン議論されているところでございます。  したがいまして、周辺事態が起きたときに、かつ周辺事態が起きたということを日本が主体的に判断したときに初めて日米間の協力が生じることになります、ガイドライン周辺事態関係におきましては。そういうことでございますので、米国の世界各地における行動にすべてこのガイドライン協力しなければならないとか、あるいは今の議論がそこにまで対象が及んでいるということはございません。  他方、この周辺事態の問題とは別に、周辺事態以外の場合に対米協力することが全く排除されているのかということはまた別問題でございまして、それは、ガイドラインに言う周辺事態における日米協力とは別の文脈において、また改めて考えられるべき問題だというふうに考えております。
  65. 岡田克也

    ○岡田委員 今の局長の御答弁は私も全く同じ認識であります。だからこそ、周辺事態の定義をしっかりしておかないと、そこにいろいろなことがかかっているのじゃないかということを申し上げたかったわけであります。  今、局長は、周辺事態以外の米軍活動について日本がどう協力するかというのは別の問題だ、協力もあり得るという趣旨の御答弁だったと思うのですが、それに関連してちょっとお聞きしたいと思うのです。  米国が世界の警察官として活動している。現実には国連というものがあるわけですが、国連が動かないということはしょっちゅうあるわけであります。拒否権が発動されれば国連というのは動かないわけですね。そういうときに、米国が単独であるいは友好国と協力をして特定の地域、国に対して武力行使する、こういうことは現実にあり得るわけですし、現実にあったわけですが、日本政府として、米国が国連決議を経ないでそういった武力行使をするということに対して、一般論として聞きますけれども、それは基本的に認めないという立場ですか、それとも、それは場合によっては認めるという立場ですか。
  66. 小渕恵三

    小渕国務大臣 明確な国連決議がなく米国が行う武力行使とは実は何を意味するのか、なかなか定かではありませんが、いずれにいたしましても、具体的事例が生じる前に、米国の行う武力行使につきまして国際法上の判断を下すことは差し控えさせていただきたいと思います。  他方、米国は、国連憲章のもとで違法な武力行使を慎む義務を負っております。我が国としては、同盟国たる米国がこうした義務違反を犯すことはそもそも想定いたしておらないということでございます。
  67. 岡田克也

    ○岡田委員 想定しておられなくても、現実にそういうことは過去にもあったと思うのですね。例えば中米でアメリカが国連決議を経ずに特定の国に武力介入するということはありましたし、一般的にそういうことは起こり得る話だろうと思います。  例えばリビアに対して攻撃をいたしましたね、米軍が、空軍が。あれも国連決議とは全く関係なかったと私は思うのですが、こういうものについて、いかがですか。
  68. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 我が国といたしましては、アメリカによりますあらゆる行動について常に判断を明らかにするという立場にはないわけでございます。それは、いろいろな背景、事情、我が国として承知していない事情もその行動の背後にはある場合もあるからでございます。  ただし、米国が国連憲章上の義務といたしまして、違法な武力行使は慎まなければならないというような一般的な義務を負っているということは確かでございます。  ただいまリビアについてお尋ねがございましたけれども、当時国会でも御答弁申し上げましたけれども、その件につきましては、米国としては自衛権の行使であるという立場をとったということでございます。  ただし、我が国といたしましては、この当事者でもなく、また米側の行動をめぐる具体的な事実関係の詳細を承知しているわけではないので、具体的な行動に対する法的判断を行う立場にない、こういうことであったと記憶いたしております。
  69. 岡田克也

    ○岡田委員 今の条約局長の御答弁はちょっと大臣の答弁とは違うように思いますが、いずれにしても、国連決議がなくても、米国が単独であるいは友好国と武力行使をするということはあり得る話であります。  国連がきちんと機能すれば、将来国連軍というものができれば、全部集団的安全保障の中で解決されるのだと思いますが、そういう事態になっていない。憲章自身集団的自衛権というものを認めているわけですから。それから、そもそも言えば、日米安保条約だって、これは国連が機能する以前の段階の話ですね。  だから、集団的自衛権ということでうまく説明できる場合、できない場合があると思いますけれども、それをひっくるめて、米国が国連決議を経ないで武力行使をするということは当然あり得ることだし、日本としてもそれを認めていく、是認するということはケースによってはある、こういうふうにお答えになるのが正直なお答えだと思いますが、いかがでしょうか。
  70. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先ほど申し上げましたとおり、常に我が国として米国の行動について評価を下すというわけではございませんが、知り得る限りの情報に基づきまして我々としての判断を示すということはあろうかと思います。  ただいま一言申し上げますと、米国が武力を行使いたしますときには必ずしも国連決議がある場合には限られませんで、もちろん自衛権の行使というのは、そういういとまがない段階で武力の行使が行われるわけでございますが、国連憲章上、それは直ちに安保理事会に報告しなければならないということになっておりますので、米国もそういう国連憲章上の義務に従って行動しているというのが一般的な評価であろうかと思います。
  71. 岡田克也

    ○岡田委員 それでは、今回のイラクの問題ですが、今小康状態ということでありますけれども、今回のイラクの問題で国連決議があるのかないのかはっきりしない、解釈が分かれていると思うのですね。  アナン事務総長は、決議が要るとまでは言わなかったかもしれませんが、協議が要るということは最近おっしゃったように報道されておりますし、アメリカは、そういうものは必要ないとクリントン大統領が述べたという報道もございます。  基本的に、今回のイラクについて、今後もし協定違反、査察を何らかの形で受け入れないということがあって、そして米軍なりあるいはイギリスの軍隊が武力行使をするということになった場合に、それは新たな国連決議が要るというのが日本政府のお考えでしょうか。それとも、従来の、アメリカが述べているような国連決議の六八七でありますとか、もっとさかのぼって、六七八が根拠になっているというのが日本政府のお考えでしょうか。
  72. 小渕恵三

    小渕国務大臣 先般、国連の安保理で全会一致で通過いたしました決議案は、イラクが今日までとってきた態度に対しまして明確なメッセージを与える意味で大きな成果があったというふうに理解をいたしております。  そこで、今委員お尋ねの点につきましては、イラクに対してどのようなことが発生するかという前提でのお話ですが、我が政府としては、先般の決議に基づいてイラクとしては改めてUNSCOMの査察を即時全面的に受け入れて、国連の意思、国際社会の意思に十分な答えが出るものというふうに理解をいたしております。  そこで、お尋ねの点につきましては、冒頭申し上げましたように、今回の決議が武力行使を是認するとかしないとかということでない、強力な査察に対するメッセージだ、特にアナン事務総長とイラク側に結ばれたものを強力にバックアップするという意味での決議でございますので、したがって、この武力行使云々については、これは、従来、六七八から始まりました種々の決議案を否定するものでも是認するものでもない、こういうことでございます。
  73. 岡田克也

    ○岡田委員 なかなか明確なお答えがいただけないわけですが、私は、やはり六七八にしても六八七にしても、これは米国の武力行使の根拠たり得ないというふうに思います。これで武力行使が認められるというのは明らかにおかしいわけであります。  例えば六七八というのは、クウェートが現実にイラクに占領されているときにあらゆる手段をとっていいということを決めたわけでありますが、そういう占領という事態がない状況で、一たん戦争が停戦になった上でそこまで戻るというのは相当無理があると思いますし、六八七の方は停戦に当たっての条件を決めているだけでありますから、その条件に違反したからすぐ武力行使できるという根拠というのは、まず議論としては成り立たないのだろう、私はそういうふうに思います。  もう少し実態に即した議論をすれば、国連決議がなければ米軍が動けないかというと、そういうことになると、これまたイラクが何をしてもいいのかということになるわけで、やはり国連とは離れたところで、世界の警察官として米国が武力行使をしていく、それは自衛権の従来の範疇からは外れるわけですね、外れると言わざるを得ないと思うのですが、しかし、そういう米軍活動についても何らかの、いろいろな条件があると思いますが、認めていかざるを得ないというのが今の国際社会の現実じゃないかと思います。  そこを率直に認めていかないと、従来の国連決議あるいは自衛権の行使という枠組みの中で議論しようとするとかなり無理があって、自衛権とか国連決議というものの範囲を不当に拡大して全体がおかしくなってしまっている、これが現実ではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  74. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 委員が御指摘になられました国連決議についての解釈を私から申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、現実に今安保理をめぐる状況がどういうふうになっておりますかということになりますと、十一日にクリントン大統領とアナン事務総長の会談が行われました。その終了後のアナン事務総長のコメントでございますが、これは記者からの質問で、武力行使が行われる場合に安保理からの承認が必要か否かについてクリントン大統領との間に意見の相違があるのじゃないかという問いかけに対しまして、クリントン大統領との間には見解の相違はない、自分は既に何らかの協議が必要であると述べており、これに変更はない。さらに質問がございまして、安保理における投票は必要かという点につきまして、投票が必要であるとは言っていない、イラクとの間に停戦をもたらした合意は武力行使が一時停止されたことを意味するものであり、したがって、必要があれば武力行使の引き金が引かれる可能性があるということである。  もちろん、これはすべて、自分の今回達成した合意が非常に真剣なものである、その外交努力というのをさらにイラクに緊迫感を持ってもらいながら進めていきたいという文脈の中でなされたものでございますが、そういう事実関係はございます。
  75. 岡田克也

    ○岡田委員 実は、米軍が世界の警察官として、国連を離れあるいは自衛権の範囲も外れる中で活動していくということを日本としてどうとらえていくかという問題は、ガイドラインの問題に直結する問題だと思うのですね。  例えば日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような場合に米軍がそういう活動をとった、国連決議もない、米国の自衛権の範囲でも説明できない、そのときに、日本が、それはだめですよということになって日米協力しないのか、あるいはするのか、すぐ判断を迫られる問題でありますから、私は、ここのところについてきちんとした考え方を日本として出すべきではないか、そういうふうに思っております。  それがなければ、結局、ガイドラインに基づいて日本米軍協力していくというときに、たちまちそこで判断停止になるというか立ちどまってしまうことになる。そのことは日米関係について非常に重大な影響を及ぼすことになるのじゃないか、そういうふうに思っていることを敷衍したいと思います。  もう時間も三分しかございませんが、最後に海兵隊の問題についてお聞きしたいと思います。  沖縄の海兵隊の問題について、予算委員会でも議論が少しございました。そして、朝鮮半島が安定した後に、沖縄の海兵隊について、全体の兵力構成の中で議論ができるのじゃないか、こういう議論があったと思いますが、現在、朝鮮半島にある在韓米軍について、その役割というものをどういうふうに見ておられるでしょうか。
  76. 高野紀元

    ○高野政府委員 朝鮮半島におきましては、北朝鮮による兵力の前方展開が継続しておりますし、軍事境界線を挟む兵力対峙の状況が続くなど、依然として緊張した状況にございます。このように、特に朝鮮半島を含め、この地域国際情勢というものは引き続き不安定要素が存在している。  そういう中で、在韓米軍はこの地域の平和と安定の維持のために重要な役割を果たしているということでございまして、日米安全保障共同宣言で確認されているとおり、この地域における米軍の前方展開部隊は、現在のこの地域情勢安全保障環境にかんがみ、これを維持することが適当であるという判断でございます。・
  77. 岡田克也

    ○岡田委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますが、私は、朝鮮半島が安定した後、いつになるかわかりませんが、今朝鮮半島にある米軍の中の陸軍の部分については、役割は終えるのではないかというふうに思っております。  そういう中で、朝鮮半島が安定したときには当然状況も大きく変わるわけですから、極東米軍、つまり今朝鮮半島にある米軍日本にある米軍の全体の再構成の議論というものをしなければいけない。恐らく陸軍は要らなくなる。そうすると、日本にある空軍、海軍、そして海兵隊、これを朝鮮半島との関係でどう位置づけるかという問題に当然なると思います。  私は、今の日韓関係の現状を見たときに、韓国にとっては、あるいは統合後の朝鮮半島にできる国にとっては、日本米軍がいるということは重要なことであると思いますし、同時に日本にとっても、朝鮮半島に米軍がいるということは、残念ながら重要な国益だというふうに言わざるを得ない現実があると思います。  そういう意味で、朝鮮半島安定後に、海兵隊も含めて、朝鮮半島に何らかの形で米軍が存在し続けるように、今から、韓国、日本、米国で安定後の米軍あり方について議論を始めることが非常に重要なことではないか、私はそういうふうに思って、問題意識だけを申し上げて、時間が参りましたので、またの機会に質問させていただきたいと思います。
  78. 塩田晋

    塩田委員長 石井紘基君。
  79. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 石井紘基でございます。  岡田克也議員の質問に関連した部分から質疑をさせていただきたいと思います。  台湾海峡とかマラッカ海峡というのは我が国の経済活動にとって重要であるか否か、お答えをいただきたいと思います。
  80. 久間章生

    久間国務大臣 我が国の経済活動にとっては、とにかく海洋国日本でございますから、その海峡というのは非常に大事だというふうに私自身は認識しております。
  81. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態というのは、先ほども議論がございましたけれども、経済関係というものは含まれるのか含まれないのか、もう一回答弁をお願いします。
  82. 小渕恵三

    小渕国務大臣 周辺事態のことにつきましては、先ほど来御答弁申し上げているところでありますが、そのような事態というものがいかなるものであるかということの判定は、あらかじめこれを想定することはなかなか困難だろうと思います。  ある事態我が国の平和と安全に重要な影響を与えるものであると判断をされるためには、その事態が、軍事的な観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすものであることは必要であると考えられます。  いずれにしても、重ねてでございますが、その事態周辺事態に該当するか否か、またその事態の態様、規模等を総合的に判断して考えることでございます。
  83. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 軍事的な観点から見てということですが、軍事的な観点というのは経済関係と全く関係がないのかどうなのか。  それじゃ、ちょっと質問の仕方を変えますと、平和と安全というのはどういうことですか。平和であるという状態というものは、戦争や紛争がないというだけなのか。そしてまた、安全ということもそうなのか。  これは、私は、長期にわたって例えば石油の輸送路が断たれるというような事態は、当然国内は大変な混乱を来しますし、平和で安全な事態が保持されている状態ではなくなるということがあるというふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  84. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 平和と安全の意味につきましては、厳密な意味での法律上の定義というものがあるわけではございません。その言葉が使われるそれぞれの文脈、コンテクストといいますか、前後関係において意味が決まってくるということだろうと思います。  さらに申し上げれば、例えば国際的な紛争が起こったりしました場合に、平和の破壊に当たるかとか、平和に対する脅威に当たるかというような具体的な事態に関しましては、国連の安保理事会がこれを認定するというような仕組みが国際連合でもできているわけでございます。いずれにしましても、それぞれの文脈において解釈されるべきものであろうと思います。  そこで、ガイドラインにおきます日本の平和と安全に重要な影響を与える場合というコンテクストにおきます平和と安全の意味でございますけれども、これはあくまでも、日米安保条約の枠のもとにおきまして防衛協力日米間で行う、そういうコンテクストにおける周辺事態であり、平和と安全という言葉の意味であろうかと思います。  経済的な大変な問題というのは、それ自体としてはまさしく日本繁栄とか日本の人々の暮らしに関係するわけでございますけれども、安保条約のもとにおきます防衛協力というコンテクストから申し上げますと、やはり軍事的観点から見た問題というのが中心的な概念であろう、こういうことを申し上げている次第でございます。
  85. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 日米安保条約という話が出ましたが、日米安保条約あるいは米軍の抑止力というものは台湾海峡に及んでいるのでしょうか。
  86. 高野紀元

    ○高野政府委員 御質問に直接お答えすることはなかなか難しいと思いますが、いずれにいたしましても、日米安保条約に基づきまして、特に第六条で、極東の平和と安全の維持に寄与するということが、我が国としての米軍に対する基地提供、施設区域の提供の根拠でございますけれども、そこで言います極東範囲というものは、昭和三十五年当時の統一見解に定められているとおりでございます。
  87. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 日米安保条約目的達成のために今回このガイドラインというものが出てきているわけですが、そうすると、極東の平和と安全の維持ということですから、一昨年の中国の演習のように、事前に演習ということで関係国に通知があるというような場合は別として、突然台湾海峡が一定の長期間にわたって封鎖されるというような事態になった場合、これは日米安保条約範囲というものが及んでいくということになりますと、この台湾海峡は我が国の経済的あるいはその他の影響が非常に大きいものであるということだとすれば、台湾海峡について周辺事態ということとの関連はどのようになってくるわけですか。
  88. 高野紀元

    ○高野政府委員 まず、安保条約第六条との関係における極東範囲極東に関する問題に関しましては、先ほど申し上げました昭和三十五年当時の政府統一見解が現在も変更されていないということでございます。  さらに、今回のガイドラインとの関係におきます。辺事態との関係でございますが、これは繰り返しになって恐縮でございますけれども、ある事態周辺事態に当たるかどうかということに関しましては、事態の態様、規模等を総合的に勘案して判断するということでございますので特定の事態について、あらかじめ仮定を設けてこれが当たるか当たらないかということを申し上げることは困難だということでございます。
  89. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 仮定を論じては語れないというのだったら、防衛問題というのは語れないということになるのじゃないですか。  じゃ、このガイドラインの定義はどうするのですか。定義の議論が先ほどありましたけれども、さっきは記述のことについて議論がありましたけれども、定義というものは明確に行うのですか、行わないのですか。
  90. 高野紀元

    ○高野政府委員 仮定の問題についてお答えできにくいと申し上げた趣旨は、政府として国会の場で、ある具体的な問題についてその政策あるいは判断を申し上げることが、場合によって国際情勢そのものに影響する、あるいは相手国との関係もあり得るということで、通常、そういう具体的な問題について仮定を前提として申し上げることは適当でない、あるいは適切でないということもあり得るということで申し上げているわけでございますので、その点はぜひ御理解いただきたいと思うのです。  その上で、定義の問題でございますが、周辺事態としての定義は、先ほど来ございましたガイドラインそのものにございます。今おっしゃいましたその記述というのが、具体的に法整備の過程でどういう記述をするかという御質問でございましたら、これは、現在、それをどうするかということについてまさに検討中でございますので、この段階で申し上げることは難しいということでございます。
  91. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 それじゃ、周辺事態ということは、それは宣言はするのですか。
  92. 高野紀元

    ○高野政府委員 周辺事態であるかどうかという判断でございますが、これは、我が国としてあるいは米国として、それぞれ自主的に国内的な手続を経てしかるべき判断が行われるということになると思います。  どのような形でそれが国内的な手続を経てやるかということは、例えば閣議決定というようなことがあるのかどうかということも含めて、現在まさに検討をしておるところでございますので、今おっしゃいました宣言という趣旨が、私、必ずしも十分理解しているかどうか自信はございませんけれども、日本として自主的な判断はいたしますということと、それに必要な国内的な手続をどういうふうにするかということはまさに検討しているところではございます。
  93. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 じゃ、手続はともかくとして、これが周辺事態ですよということは、何らかの形で宣言されるのですか。先はどのように、どこが周辺だかわからない、どこが何だかわからない、極東についてもわからないということだとすると、周辺事態が起こりましたよというようなことを宣言するのか、それとも成り行きでもっていくのか、どうなんですか。
  94. 高野紀元

    ○高野政府委員 いずれにいたしましても、日米ガイドラインに基づきまして周辺事態の際に行います日米協力は、それぞれが自主的に周辺事態であるという判断をした上で初めて実現することでございます。  その際に、日本として、ある特定の事態周辺事態であるかということは、先ほど申し上げましたような観点から総合的に判断するわけでございますが、それは宣言という言葉が適当かどうかは別として、そういう判断はする、認定はするということは、そのとおりでございます。
  95. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 そうすると、例えば日米共同調整所ですか、そんなようなところに現場から上がってくる、そこでもって協力をやりましようということが始まると、それが周辺事態になるのか、あるいは、さらに閣議まで来て、閣議か何かで周辺事態だということになるのか、その辺は今のところどんなお考えですか。
  96. 高野紀元

    ○高野政府委員 ガイドラインの本文にもございますが、周辺事態が予想されるような状況になった場合でございますけれども、日米両国政府は、その事態について共通の認識に到達するための努力を含め、情報交換や政策協議を行う。同時に、日米両国政府は、事態の拡大を抑制するため、外交上のものを含むあらゆる努力を払う。日米間の調整メカニズム等も利用しつつ、適切に協力していくというようなことが記述されております。  いずれにいたしましても、最終的に、ある事態周辺事態であるかということは日本として判断するわけでございますが、それは政府としてしかるべき手続をとって行うということでございますので、今の御質問が、現場の日米共同調整所が動き出したかどうかということが周辺事態であるかどうかの判断の基準かどうかということであるとすれば、そういうことではなくて、日本政府としてきちっとした判断をするということでございます。
  97. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 先ほどの御答弁の中に、この周辺事態の認定を日米それぞれが、それぞれがという言葉があったと思いますが、それじゃ、日本だけが独自に周辺事態ということもあるのでしょうか。
  98. 高野紀元

    ○高野政府委員 このガイドラインそのものが日米防衛協力のためのガイドライン、つまり、周辺事態に関して言えば、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合にいかに日米間で協力するかということでございますから、日本も米国もある事態周辺事態であるという判断を共有しない限りは、そもそもこの協力は成り立ち得ないというふうに考えております。
  99. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 そうだと思いますが、そうすると、例えば先ほどのお話のように、周辺事態というものを認定した、認定したけれども行動はないということもあるのですか。
  100. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 周辺事態の問題でございますけれども、具体的にどういう制度をとるかという問題にも絡みますけれども、基本的にこの周辺事態という判断を踏まえてどういう行為をするかということが重要な点だろうと思います。  したがいまして、この法制度の中でどういうふうにそれを考えていくか、政府部内でのしかるべき手続をどうするかという今後の検討課題ではございますけれども、それは、周辺事態という判断を踏まえてどういうことを行っていくか、こういう判断を行うということがこの中核的な要素ではないかな、こんなふうに思います。
  101. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 答弁の方がまだ明確に定まっていないわけで、質問をする方もやりにくいので、この問題は、きょうのところはこのぐらいにしておいて。  外務大臣がお見えですので、最近、右を向いても左を向いても真っ暗やみよというような世情の中で、日ロ関係だけは少なくとも何か希望がありそうななさそうな感じがしているわけでありますが、来月の十一日から伊東市の川奈で日ロ首脳会談が行われるということのようですが、この首脳会談を一連の平和条約締結に向けてのさまざまなステップの中でどういうふうに位置づけておられるのか、あるいは何を期待しておられるのか、課題は何なのかというあたりをお聞かせいただきたいと思います。
  102. 小渕恵三

    小渕国務大臣 委員も長い間この問題にお取り組みでございますが、何といっても、国連加盟国の中でただ一カ国平和条約が結ばれておらないという不正常な状況は一日も早く解消しなければならないということで、過去、戦後努力をしてこられたわけでございます。  何回かのチャンスがあったのだろうと思いますけれども、当時の旧ソ連と我が国との間の、彼我の間の力といいますか、特に軍事的な背景というものを考えますと、いろいろの問題があったということでありますが、御案内のように、橋本・エリツィン両首脳の会談を契機にいたしまして、何としても今世紀に起こったことは今世紀中に解決をしたいという両者の意見が一致をしつつあるところでございまして、このために、二〇〇〇年までに東京宣言に基づいてぜひ平和条約を締結をしたいという機運が非常に盛り上がってきておるのではないかと思っております。  これは、冷戦構造がなくなりまして、軍事的な意味で、現在のロシアと日本との関係は、それこそ防衛担当の大臣も交流するというような時代になってきておりますので、そういった問題は解消されつつある。特に経済問題につきましては、ロシア側におかれましても、我が国の経済の実体に認識を新たにいたしてきておりまして、そういった意味で、両者間の考え方は非常に接近をしてきておるということであります。  ただ、五十二年間もこの状況であったことを顧みますると、そう簡単なものではないと理解をしておりますけれども、クラスノヤルスクにおける両首脳の、非公式でありますが会談を通じまして、一気に盛り上がりつつあると思っております。  私自身も先般訪ロいたしまして、それぞれの責任者とお目にかかりましたが、引き続いて四月十一日からエリツィン大統領が再度訪日をされるということでございますので、非常に時間は差し迫っておると思いますが、ぜひこの問題について解決をいたしたいと現在心から念願しておるところでございます。
  103. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 我が国防衛上の問題、課題からいいましても、日米安保条約というものを基軸にする日米関係、それが基本であるわけですが、同時に、先ほどからの議論の中にもありますように、この日米関係を基軸にしながらも、ガイドラインのような具体的な問題に進んでまいりますと、アジアの諸国、近隣の朝鮮半島あるいはロシアというところとの緊張の緩和といいますか、あるいは平和的な関係を同時に築いておくということが大変重要であろうと思いますので、外務大臣の一層の御努力をお願いしたいと思います。  外務省の方は以上でございますので、ちょうど十二時になりましたので、防衛庁長官には恐縮でございますが、どうぞお休みいただいて結構でございます。ありがとうございます。  防衛庁、昨年来、元幹部等の問題がいろいろ噴出しているわけであります。これは今、大蔵省の問題だけではなくて、ある意味ではさまざまな省庁に共通する面があると思うのですね。防衛庁の場合は膨大な天下りがあるとか、あるいは接待、供応が激しいとか、それほどではないかとは思うのでありますけれども、気になる点が幾つかあるわけです。  財団法人防衛生産管理協会というのは、以前、防衛庁の調達実施本部の副本部長をされておった上野憲一さんという方が専務をしておって、理事長は藤井一夫さんという方で、この防衛生産管理協会という財団法人がエム・ティ・エスという会社をつくっている。これは、日米相互防衛援助協定に基づく有償軍事援助でもって、調達実施本部が窓口になって艦船の装備品などの輸送を行う。この業務は、以前、ずっと丸紅にやらせていたわけですが、それを何年か前から、この財団法人が丸紅と共同出資をして株式会社をつくって、その業務をやらせるようにした。売上高は九七年三月で三百二十億円ある、こういう会社ですね。  もう一つ出資してつくっている会社は、ヒユウという会社でありますが、この会社は何をやる会社かといいますと、保険の代理店。自衛隊機が点検修理後に行う試験飛行の際に、機体メーカーが損害保険会社と結ぶ損害保険契約を代理店としてやらせる会社ということであります。  これらの会社にこの財団法人が出資をして、しかも、防衛庁出身の、幹部だった人たちが役員をやっておるということでありますが、エム・ティ・エスという会社とヒユウという会社はそれぞれいつできたものでしょうか。
  104. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 お答えいたします。  ただいま御質問いただきました防衛生産管理協会が出資をいたしてつくりましたヒユウというのは、各種の事業をやっておりますが、主に航空機にかかわる保険についての取次代理店業務を中心にやっておりますが、これは平成六年五月に設置をされております。  また、もう一社、エム・ティ・エスにつきましては、ただいま先生の方からも経緯のお話がございましたが、従来丸紅が実施しておりました米国との間のFMSの輸送役務を専門的に行うことを目的といたしまして、丸紅と当生産管理協会が出資をいたしまして七年七月に設置をしております。
  105. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 元調達実施本部副本部長をやっておられた上野憲一さんという方は、このうちのヒユウという会社の役員をされていたんじゃないかと思いますが、いつ防衛庁をやめられて、いっこの役職についたんでしょうか。
  106. 鴇田勝彦

    ○鴇田政府委員 上野元防衛生産管理協会専務理事防衛庁の退官年月日は、平成七年六月二十六日でございます。ヒユウという株式会社に就職をいたしましたのが、平成八年六月十八日に就職をいたしております。(石井(紘)委員「役職は何ですか」と呼ぶ)ヒユウにおける役職は、取締役になっております。
  107. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 これは防衛庁設置法ですか、この六十二条には、要するに、五年間以上担当していた関連の事業の営利を目的とする会社の役員には離職後二年間はなってはいかぬというような規定がございませんか。その規定がありましたら、ちょっと読んでくれませんか。
  108. 坂野興

    ○坂野(興)政府委員 お答えいたします。  自衛隊法第六十二条等の規定によりますれば、隊員は、長官の承認を受けなければ、離職後二年間は離職前五年以内に従事していた職務と密接な関係のある防衛庁の登録営利企業体の役員または役員に相当する地位についてはならない、そういうことになっております。
  109. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 そうすると、先ほどのお話ですと、上野憲一さんは、防衛庁を退官したのが平成七年六月で、調達実施本部の副本部長をやっておった。それから、ヒユウという株式会社、これは生産管理協会のつくった子会社ですね、ここに就職をして役員になったのが平成八年六月十八日ですから、この間ちょうど一年ですね。  そうすると、これは当然、離職前五年間に携わっていた彼の担当業務と深くかかわりを持つ、こうした保険業務というものに携わっていたということになりませんか。
  110. 坂野興

    ○坂野(興)政府委員 お答えいたします。  防衛関係者の再就職規制の仕組みについて申し上げますと、これは登録営利企業体の役員または役員に相当する地位について規制があるということでございまして、防衛生産管理協会あるいはヒユウ、こういった組織につきましては登録営利企業体ではございませんので、再就職規制の対象にはなっておりません。(石井(紘)委員「営利企業体ではないということですか」と呼ぶ)登録営利企業体の役員または役員に相当する地位について再就職規制がある、そういう仕組みになっております。
  111. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 その登録営利企業体というのは何ですか。
  112. 久間章生

    久間国務大臣 うちの方でもいろいろ調べたのです。先ほど言われた二社のうち、エム・ティ・エスの方は防衛庁と関係のある会社でございますから、これに就職しておればそれにひっかかるわけでございます。  ところが、ヒユウの方は一般の損保会社でございますから、生産管理協会から出資しているという関係はありますけれども、防衛庁と特定の関係のある営利会社でないものですから、それはその条項にひっかかってこないわけなのです。そういうようなことから、元防衛庁の職員については自衛隊法にはひっかからないというような状況になっておるわけです。  この件については、何かそういう違法なことがないかということでうちの方でもいろいろ調査しておりますけれども、法に直接触れるというような状況は今のところ出てきておりません。
  113. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 これは生産管理協会が出資をして、これは一〇〇%ではないのかな、大部分出資してつくった会社であり、この事業は全面的に防衛庁から受けて事業をやっているわけです。それが防衛庁と関係がないということは言えないのではないかと思います。
  114. 久間章生

    久間国務大臣 このヒユウという会社はたくさんの会社が出資しておりまして、防衛生産管理協会は二百五万円ですから四十一株でございます。全体が一千百万円の会社ですから、二百二十株なのです。それで、たくさんの会社がやっている、言うなれば損保の代理店の会社なのです。損保の代理店の会社ですから、これが防衛庁の関係会社というわけにはいかないわけでございます。  もう一つ言われました会社、エム・ティ・エスの方は、これは株式からいったら一千株のうち二百株を生産管理協会が出しておりますけれども、それは、その株式の構成よりもむしろその内容そのものが、防衛庁が丸紅とやっておったのを、丸紅にかわってここがやるということですから、これは関係があるわけですけれども、いわゆる損保の代理会社となりますと、これは一般の普通の何々火災の代理店というような会社と同列に来ますので、これは隊法にはひっかからない、そういう状況にございます。
  115. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 これは、そういうふうに長官がおっしゃるように、一般の会社と同じだということでは全然ありません。さっき言いましたように、防衛庁のそういう訓練をした-保険をとっているのは、みんな防衛庁からとっているわけですから、そういうことは言えないわけです。  時間がありませんから、例えば財団法人防衛生産管理協会の理事長をやっている藤井一夫さん、この人も防衛庁をやめられてからほどなくしてこういう職についているわけですね。これもやはり六十二条にひっかかってくるわけなのです。中身は、当然防衛庁と密接不可分な、一体と言ってもいい。しかも、この財団法人というのは、一般の財団法人とは違ってかなりビジネスライクな団体であるわけでありまして、形の上では営利企業ではないかもしれないけれども、しかし、こういうのも法の趣旨からして非常に問題であるわけですね。  私がなぜこういうことを言うかといいますと、防衛庁が関連の企業をたくさんつくって、本来であれば民間で行われるべき、当然市場経済で行われるべき仕事がたくさんあるわけですが、そういうものを役所がみんなとってしまって、天下りの問題は別としても、それによって水増しの、昨年来事件になっておりますように超過払いというようなものをなれ合いでやっている。これは一つ二つではないわけですよね、新聞に載っているだけでもたくさんいろいろな事件が出ているわけですから。  こういうふうになっていきますと、今経費を削減しようとかあるいは防衛庁の予算を切り詰めようとかいうような中で、非常にむだもたくさん出てきますし、また同時に民間の一般の企業がやれるべき仕事の領域を奪ってしまっているということが、今、防衛庁に限らず、我が国の市場経済全体がどうも病んでしまっている原因の一端を担っているということになるわけでありますので、長官、こういう点を大いに改めていっていただきたいと思います。
  116. 久間章生

    久間国務大臣 公益法人をつくることにつきましてまでチェックは今の法律上できません、公益法人でありますと。ところが、公益法人が出資して会社をつくって、どんどん民間会社をつくっていく、そしてまた、それに天下りするというようなことがあってはならないということで、公益法人が出資していることについては、従来はよかったわけでございますけれども、これはだめだ、これから先はやめようということにしておりましたが、それだけではいかぬということで、平成八年九月に閣議決定されて、さらに平成九年十二月に一部改正されました公益法人の設立許可及び指導監督基準で、公益法人は原則として株式の保有は禁止され、また現に株式を保有している場合は本基準に沿って処分することとなりました。  したがいまして、公益法人が株式で出資することにより営利企業を設立することは基本的にはなくなることと思いますし、これについても、現在公益法人に株式を手放させるように指導をして、これは防衛庁だけではなくて政府全体でございますけれども、そういう方向で今指導が行われているところでございます。
  117. 石井紘基

    ○石井(紘)委員 どうもありがとうございました。
  118. 塩田晋

    塩田委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十九分開議
  119. 塩田晋

    塩田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。赤松正雄君。
  120. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 新党平和の赤松正雄でございます。  きょうは、午前中、お三方とも、両大臣日米ガイドライン周辺事態の問題をめぐって質疑が展開されました。私も聞いておりまして、きょうの質疑だけではなくて、前百四十一国会における日米ガイドラインをめぐる質疑の質問並びに答弁をそれなりにずっと拝見をさせていただいたのですが、要するに、余りよくわからないなということがよくわかりました。  繰り返しになりますので余りこれに多くを割きたくはないのですが、一点だけこの問題に関してお聞きしたいのは、周辺事態という概念を導入するに至ったわけを聞かせていただきたいと思います。
  121. 高野紀元

    ○高野政府委員 お答え申し上げます。  前指針、旧指針でございますが、一九七八年の指針では、「極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合」という表現でございました、前指針の場合。今回の指針においては、施設の使用の確保及び後方地域支援などの前指針に言う便宜供与以外に、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態が生じた際の日本が主体的に行う活動等における日米協力であって、前指針の時点に比較して相対的に重要性を増しているという活動等がございます。例えば、救援活動あるいは避難民への対処、非戦闘員退避活動、経済制裁措置実効性確保するための協力等の事項が盛り込まれたわけでございます。  したがいまして、これら事項を全体としてくくる表題に安保条約上の文言である極東ということを用いることは適当でない。したがいまして、日本周辺地域における事態という用語を用いた次第でございます。
  122. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今の北米局長のお答えですと、要するに日米安保条約で言うところの五条、六条、いわゆる日本有事極東有事、あえて地域でいえば日本並びに極東というこの二つ地域に関する安保条約の規定を変えたわけじゃないわけですから、地域的な概念でいけばそれは従来どおり。  ただ、中身的に言うと、きょうの午前中から議論がありますように、また、今も北米局長の答弁の中に、二十年前と現在とを比較した場合に若干対応として中身が違う事態が起こってきている、事態といいますか場面が生ずるケースがある、こういうふうに今理解をしたのですが、それでよろしいのでしょうか。
  123. 高野紀元

    ○高野政府委員 なぜ極東という言葉を使用せず、周辺という言葉、周辺事態という言葉を使用させていただいたかということは、先ほど申し上げたとおりでございます。  いずれにしても、今回の周辺事態というのは、日本の平和と安全の維持にとって重要な影響を与える事態でございます。これは極東の平和と安全に重要な影響を与えるという関係になることは当然でございます。  いずれにいたしましても、極東という概念については、先ほど来この委員会で申し上げておりますように、昭和三十五年の統一見解に述べられた概念が生きているわけでございますが、今回の周辺事態概念については、これも今度のガイドラインで定義させていただいているとおりでございます。
  124. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今度のガイドライン見直しによって、二十年来の日米の間における防衛協力を円滑に行うために、いわばできることとできないことをはっきりさせようというふうなことであろうと私は理解をいたしておりますけれども、できないことというのは、もちろん憲法第九条が規定していますように、端的に言えば武力行使、そして、できることといえば、先ほど来のお話にある周辺事態における後方支援活動、いろいろな言い方があると思いますが、つづめて言えば、周辺事態の場合における後方支援活動をやろう、こういうことだろうと思います。  この後方支援活動の中身でございますけれども、二つの側面があるというふうに理解をしておりますが、確認をしたいと思います。活動の中身は武力行使と一体化しない活動地域としては戦闘地域と一線を画する地域、この二つの側面が相まって後方支援活動、こんなふうに言えるのだろうと思いますが、それでよろしいですか。
  125. 高野紀元

    ○高野政府委員 新指針で言っております。辺事態における協力項目でございますが、これらの行為は、我が国が行うことを想定している具体的な内容及び態様に関する限り、そもそもそれ自体が武力の行使に該当せず、また、米軍の武力の行使との一体化の問題が生ずることも想定されてないというものでございます。  また、指針のもとでの周辺事態における米軍活動に対する後方地域支援は、戦闘活動が行われている地域と一線を画された地域において実施することが前提とされております。
  126. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 それで、先ほど来申し上げております後方支援活動の中身を形成する地域考え方ですけれども、戦闘地域と一線を画された地域というのは具体的にどういう地域を指すのでしょう。
  127. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 これも何度か御説明をさせていただいてございますが、戦闘行動が行われている地域と一線を画された地域といいますのは、戦闘に巻き込まれることが通常予測されない地域ということでございまして、戦闘行動が行われている地域から一線を画されているか否かという点につきましては、紛争あるいは戦闘の全般的な状況あるいは戦闘行為を行う主体の能力、その展開状況等を総合的に勘案して判断することになろうか、こんなふうに思います。
  128. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今の防衛局長の答弁の中に、通常予測されない地域、そういうことがありましたが、去年の六月十日の当委員会においての質疑のやりとりの中で、通常予測されない事態が万一起こったらどうするのかという質問に対して、当時の防衛局長、今の次官だと思いますが、通常起こり得ないことが起こらない地域を何とか探したい、こういうふうな答弁をなさっているようですが、それでよろしいですか。
  129. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まさに戦闘行動が行われている地域と一線を画された地域といいますのは、今申しましたようなことでございますけれども、その状況が時間の推移により変化するということもあり得るわけでございまして、それに対応いたしまして、あるいはそういう状況でなくなったということであれば、当該活動を中断したり、中止したり、こういったことはあろうかと思います。
  130. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今言った、通常起こり得ないことが起こらない地域を何とか探したいという、この答弁はどうなんですかと聞いているのです。
  131. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まさに今申しましたような地域をいろいろな形で設定をする、いろいろな各種の情報を総合いたしまして、例えばこういう海域ということで示すこともございましょうし、あるいは違った形でこの判断要素を部隊の方に示す、そういうこともあろうかと思います。そういうふうな格好でもって今申しましたような状況確保していく、こういうことだと思います。  それでもなおかつ、時間の推移によって変化が生じてくれば、それに対して適切な対応をとっていく、こういうことになろうかと思います。
  132. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 これは相手があることでございますから、こちらが戦闘地域と一線を画された地域だというふうに思っていても、相手方がそういうふうに思わないで攻撃をしかけてくるということが仮に起こったとすると、当然、それに対してこちらが戦闘行為をして仕返すというふうなことが起こってくるのだろうと思いますが、これは、いわば正当防衛、個別的自衛権の範囲ということで理解すればよろしいわけですね。
  133. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 そもそもこの指針でもって前提としております戦闘地域と一線を画されたところでの後方地域支援につきましては、国際法上等々から見てまさに適正な行為であるわけでございますけれども、それに対して外部からの攻撃があったという仮定でございますけれども、もしそういうことがあって、仮にその武力攻撃が自衛権発動の三要件に該当するということであれば、それはまさに自衛権の行使が可能な状況になるということになろうかと思います。
  134. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今議論をしてきましたガイドラインについては、日米間の防衛協力ということであるわけですけれども、もう一つ大事な問題として、いわゆる集団的安全保障考え方というかテーマがあります。  あの湾岸戦争のときに、いわば日本が湾岸の状態に対してどう対応するか、まさに日本国際貢献というものがあのとき問われたわけであります。  集団的安全保障という概念の中に、一つは、今日本が参画しているゴラン高原におけるピースキーピング・オペレーション、PKO、いわゆる伝統的なスタイルのPKOと、伝統的ではない、いわば予防外交的なもの、それからもう一つは、今現在国連軍的なるものはありませんので、いわゆる多国籍軍的なるもの、大別してこういう三つが集団的安全保障の具体的なありようとして今の世界の中にあると思いますけれども、あの湾岸戦争のときに日本が強く国際貢献を求められた。当時の政府は、その状況の中で国連平和協力法案を出された。これは廃案になったわけですけれども、廃案になるその後の経緯の中で、PKO法が、国際平和協力法案が成立をした、こういうことがあったわけです。  今申し上げたこの国際貢献日本の集団的安全保障という形での国際貢献に対する現状というものについて、日本はこの国際貢献をしっかりしているというふうに認識をされているかどうか、外務大臣にお聞きしたいと思います。
  135. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今回の決議を行って、これを実効あらしめるという努力がまさにそれに当たるものだと思っております。
  136. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今回のイギリスとの共同行為の中における決議、これは外交交渉の中における努力ということで、私も評価するのにやぶさかではございませんけれども、先ほど申し上げましたいわゆるPKOの現状、さっき言った湾岸戦争の経緯の中からPKOに対して日本が取り組むということが発生をしたわけですけれども、あれから五年たっているこのPKOの現状、PKO参画という形で日本国際貢献にかかわったその現状についてどう思っておられるかということを聞かせていただきたいと思います。
  137. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 PKOとの関連で申しますれば、カンボジア、モザンビーク、それに、現在もゴラン高原等における活動への参加ということがございます。
  138. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 大臣、現状についてどういう感想を持っておられるかということを聞かせていただきたいと思います。
  139. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今総政局長が答弁申し上げましたように、我が国として、PKO法に基づきまして、国際的な貢献としてこうした努力を傾注しておりまして、これは、また国際的にも我が国の対応について評価をいただいているものと理解しております。
  140. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 そこで、日米ガイドラインをめぐる議論といろいろなところでの議論が少し錯綜する場合があるのですけれども、例えばイラクのようなケース、今回のイラクをめぐる状況について、今現在は小康状態を保っておりますけれども、仮にアメリカがイラクに対して武力介入をする、武力攻撃をする、そこからかつての湾岸戦争のような形になった場合、これを想定しますと、アメリカの方から日本に積極的な支援を要請してくるということがあのときに考えられた、そのときに日本はどうするのか。あの湾岸戦争のときと同じ事態が起こるのではないかということが懸念をされたわけですけれども、今改めて、これから再燃をするかもしれない、先ほど大臣おっしゃったように、もちろん日本がそうならないように努力をされたということは認めますけれども、仮にイラクの状態が再び危機的状況を迎えてアメリカが武力介入する、それに対して日本に要請があるといった場合の日本の対応というものをどういうふうに考えておられるか。
  141. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今回のイラクをめぐる問題につきましては、九〇年の八月に突如としてイラクがクウェートに侵攻したという事態にかんがみまして、その後の湾岸戦争に発展していったわけでございますが、問題は、その後イラクが、国連の種々の決議に基づきまして、大量破壊兵器その他の保有という問題について、これを査察をして排除していこうということにのっとって今日まで来ておるわけでございます。  今回の決議が必ず、特に国連のアナン事務総長がみずからイラクに入りまして結びました調停につきましては、国連としてもこれを完全にバックアップし、補強していくという立場でありますので、これから実質的にUNSCOMの査察が十分行われるということでありますから、私は、イラクとしては、この国際社会の中で、こうしたすべての国の期待に十分こたえるように、反省の上に立って信頼を得られるように努力していくものだ、このように理解しております。
  142. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 そういうことを聞いているのではなくて、米軍イラクに対して武力介入をする、それに対して、アメリカから日本に対する支援要請があった場合、どういう対応をとるかということを聞いているわけでございます。  それについては、既に先国会の中で総理とさまざまな議員との間のやりとりがあるわけです。  その代表的なものを引用しますと、要するに「一体化しない支援は可能であるという見解が今回のガイドラインの内容を固定しております。ですから、私は、戦闘と一体化しない支援というものはあり得る、そう申し上げております。」という発言があったり、あるいはまた「武力が発動をされ、その武力と一体化する場合を除いて、私は後方の支援はできると今も思っております。これが武力と一体化しない限りにおける範囲内で、その行動は可能だと思っております。」これはいずれも総理の答弁であります。  田中均政府委員の発言の中で、要するに「ガイドラインの中での周辺事態というのは、日本周辺であって日本の安全に重要な影響を与える、そういうことで考えております。したがって、そういう観点から考えれば、中東における事態であるとかインド洋の事態というものがそういう事態に当たるということはなかなか想定しにくいということで、想定をするとかそういう問題ではないということを申し上げておるわけであります。」こう述べられた後で、「ただ、」「例えば湾岸地域で重要な事態が生じたとして、それはそれでその時々の法令に基づいて日米協力あり方というのはケース・バイ・ケースで当然考えていかなければいけない、」こういうふうな発言があります。  先ほど来申し上げておりますように、イラクにおける日本に対する支援要求があった場合、今の答弁にありましたように、後方支援ということに限定して日本はそれに対応する、こういう姿勢に変わりはないかどうか、確認をしたいと思います。
  143. 高野紀元

    ○高野政府委員 幾つかの点で御質問でございますが、一つは、我が国の行う活動米軍との関係において一体化するかどうか、つまり、米軍の武力の行使との一体化の問題でございます。  これは、日本の立場から見て、憲法の枠の中であるかどうかという立場からの議論でございますので、それはそれで、常に、今回のガイドライン作業あるいはガイドラインと離れての活動においても、我が国として当然のことながら憲法の範囲内であらゆる活動を行うということは、これは一貫しなければならないし、するわけでございます。  それとは離れて、今の御指摘の、イラク関係において米軍がいろいろな活動をした場合に、日本との関係においてどういう支援があり得るのかということでございます。  第一点に申し上げたい点は、まず、現時点においてそういう状況ではございませんので、これはあくまで一般論でございますが、その一般論の範囲内で申し上げれば、我が国としては、中東あるいはインド洋において生じる事態ということは、現実の問題として、周辺事態に当たるような事態が起きるとは想定されないということでございます。なおかつ、現在のイラク情勢等は周辺事態に当たるというふうには考えていないということでございます。  それを前提といたしますと、ガイドラインのもとにおける周辺事態における日米間の協力というのは、そもそも今申し上げましたようなコンテクスト、枠の中では想定されないということになると思います。  他方、ガイドラインとは離れまして、周辺事態とは離れまして、それでは、日米間で世界のいろいろな場所における協力というのは全くあり得ないかというと、それはまた別の問題でございまして、ガイドラインにおける協力とは離れて、ケース・バイ・ケースでいろいろな協力はやり得る余地があるだろうということを申し上げてきているところでございます。
  144. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今局長おっしゃった最後のくだりですけれども、要するに、ガイドラインとは別にということは、先ほど来私が言っていますような、集団的安全保障における日本貢献、かかわり方という側面から例えばイラクという問題が起きてくる、こういうふうに私は理解しているのですけれども、同じことを違う角度で言っているのじゃないですか。
  145. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先生のお尋ねが、私もすべて理解できたかどうか自信はございませんけれども、いわゆる集団安全保障ということを国際的に定義されているところから申しますと、これは、平和に対する脅威とか平和の破壊または侵略行為が発生したような場合に、国際社会が一致協力してこのような行為を行った者に対して適切な措置をとる、そういうことによりまして平和を回復しようとするものでありまして、具体的な措置につきましては、国連憲章のいわゆる第七章というところで規定しております経済制裁措置、軍事的措置等でございます。  先生が御指摘されましたいろいろなケースにおける日米間の協力というのは、恐らく私が今申しましたような憲章の七章下におけるいわゆる法律的な意味での集団安全保障措置ということよりも、もっと広いコンテクストで日米間ではいろいろな協力が行われるであろう。それは、日米の同盟関係という一般的な協力関係を基礎にしたものであったり、また国際社会の一員として責任ある立場から貢献策を考えるというような観点からも、種々の協力というものがケース・バイ・ケースで考えられ、また現実にそういう措置がとられるであろう、こういうことだろうと思います。
  146. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 次の問題に移ります。  日ロ関係についてでありますけれども、先ほども同僚委員から質問がございましたが、昨年のクラスノヤルスク会談以降、日ロ関係に明るい展望が開けてきたというふうな指摘があります。先ほども外務大臣からその辺のことについてのお話がございました。  私は、水をかけるつもりはありませんけれども、どうも、沖縄米軍基地の普天間返還と同様に、この問題も、少し、全体の機運とは別に、実際に果たして今言われているようなことが実現するのかどうかということについては、ぬか喜びになるのじゃないかというふうな予感がしてなりません。  いろいろな指摘が各方面からされておりますけれども、例えば袴田茂樹教授が先般の読売新聞の紙上で三つの問題点というものを挙げておりました。それは、日本とロシアの間において、平和条約に対する受けとめ方が違う、その点が一つ。それから二つ目は、日ロ関係を改善しようということに対する日本のいわゆる姿勢というものが、経済危機を日本が意識していて、日本の危急状況からの必然性でこの問題に立ち向かっている、こういうふうな受けとめ方がロシアにある。それから三つ目は、サハリンにおけるところのこの問題に対する反発というものが根強い。この三つを挙げて、前途に少しの疑念を呈しておられますけれども、これについて、それぞれ大臣のお考えを聞かせていただきたいと思います。
  147. 小渕恵三

    小渕国務大臣 赤松委員御指摘のありました袴田教授の御主張といいますか、新聞に載せられた御主張、三点御指摘ありました。  ただ、また袴田教授は、御案内のように大変ロシア問題に精通をされておりますし、若干余談になるかもしれませんが、お妹が現在ロシアの中小企業委員会の議長ということでございまして、私も、時に教授の御意見等を拝聴し、参考にさせていただいておるところでございます。  結論を申し上げますと、この懸念につきましては、この新聞に載りましたのは実は私が訪ロする以前のことでございまして、そういった意味で、私に対する御指摘もあったかなと、みずからこれを拝読しながら感じ入ったわけでございます。  第一点の日ロ間の理解の相違、決してなくなったとは言えません。しかし、私がモスクワに参りまして、それ以降ロシアのマスコミもかなり変化しつつあるのじゃないかという気が率直にいたしております。もちろん、まだ議会筋その他では十分だとは言い切れませんが、今後、あらゆる各界各層の理解を深めていけば、必ず理解の足らざるところは埋められるものだというふうに認識をいたしております。  それから第二点の、経済協力に対する期待と現実の可能性のギャップを指摘されております。昨今、橋本・エリツィン・プランというものにつきまして、かなり一つ一つ着実にこれが履行されつつあります。こういうものの積み上げが行われてまいりますと、こうした点に対するギャップも埋められるのではないかというふうに考えております。  サハリンの問題についてもここで御指摘をされておりますが、もともとロシアという国がウラルから西の方という感じがいたしておりまして、昨今は極東といいますか、シベリアないしサハリン、こういう地域方々も、特に我が国に対する期待感というものも大変大きくなっておると認識をいたしておりますので、この点の両者間のギャップというものも必ず埋めていけるものだ、こういうふうに考えております。
  148. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 ぜひそのような努力を期待したいと思います。  もう一点、ロシアの問題ですけれども、これは防衛庁長官のテーマかと思いますが、日本の海上自衛隊がロシアとの間で共同訓練をするという報道がなされておりますけれども、これは現実にそうなのでしょうか。その目的はどこにあって、何のためにやるのか、この辺のことを。
  149. 久間章生

    久間国務大臣 まだそういうふうに細かいところまで詰めて決まったわけではございませんけれども、この間の日ロ首脳会談において、災害時の救助活動等、人道上必要とされる活動について自衛隊とロシア軍の共同訓練を行う可能性を探求するということが合意されたわけでございますから、その方向でこれから先議論をしていこうと思っております。  といいますのは、これから先、防衛交流安保対話、そういうのが必要でございますけれども、そういう人道上の問題とかいろいろなことをきっかけにしまして、共同で訓練をすることによって、より一層その関係が深まっていくのではないかというような考え方のもとに、そういうことをやっていこうとしているわけでございます。
  150. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 これは、もし仮に訓練が行われるとしますと、その法的根拠というのはどこにあるのか。要するに、ロシアと日本が海上で共同訓練する法的根拠は何かということが一つ。それから、仮にやるとしたら、その予算はどこからどういう名目で出るのでしょうか。
  151. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 法的根拠でございますが、防衛庁設置法の第六条の十二号に、「所掌事務の遂行に必要な教育訓練を行うこと。」ということで行うということになろうかと思います。  また、その予算につきましては、教育訓練のためのいろいろな、例えば油の購入経費だとかこういったものは予算上計上されておるわけでございますから、そういう枠内でもって実施をするということになろうかと思います。
  152. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 ロシアとの共同訓練、これから細かいことは、中身については検討されるのでしょうけれども、先ほどの防衛庁長官のお話を聞いていましても、いわばロシアとの信頼醸成の形成の一環ということなんだろうと思うのですが、私が最近強く思いますのは、ロシアの現実というのはなかなかそうたやすいものではない。  いわば冷戦の時代というのは、言ってみればソ連脅威論ということが言われたわけですが、現実には私なんかは、ソ連脅威というよりも米ソ対決の脅威。  ソ連の脅威を指摘する向きは随分あったのですけれども、その中身というのは、詳細に検討すると、現在、例えば、小説の世界ですけれども、話題になっております「敵対水域」という小説の中で、一九八六年における原子力潜水艦の事故の問題が出ておりますけれども、それをめぐって、言ってみればアメリカの戦略の中にソビエトは全部手の上の、要するにすべて掌中に握られていたというふうな指摘が今なされております。  当時からソ連の実際の戦略的力というか、そういうものは大したことはないのだという指摘は私たちもしておりましたし、実際はソ連の脅威じゃなくて米ソ対決の脅威なんだ、アメリカとソ連との対決の枠組みをつくっていくことによって、かえって脅威というものが増大しているのだということを私たちの先輩なんかも指摘をしてきていたわけでございます。  私が今ここで申し上げたいのは、ロシアとの共同訓練も大事ですけれども、ロシアの現状というのは非常に厳しいものがいろいろな場面である。  例えば一つの実例を挙げますと、核物質や放射性廃棄物の管理のずさんさということが今各方面で指摘をされています。今言った「敵対水域」でもそうなんですけれども、例えば、ごく最近に「プロメテウスの墓場」というタイトルで、これは朝日新聞の西村陽一という記者が書いた本なんですが、そこで、西側の記者としては初めていわゆる原子力潜水艦の解体現場というものに立ち至った状況を詳しく書いておりますけれども、そういうことも含めて、現在のロシアにおけるところの核物質の管理、放射性廃棄物の管理、こういった問題は非常に大きな問題をはらんでいる。  ですから、ここで私がお聞きしたいのは、そういう現状をどういうふうに認識しておられるのか。そして、その認識の上に立って、ロシアと日本との間で、いわば技術協力的な部分でロシアの今の現状というものをサポートする、そういう考えはないのかどうか、お聞きしたいと思います。
  153. 久間章生

    久間国務大臣 日本とロシアの関係はまた外務大臣の方からでもお答えしていただければいいわけでございましょうが、ただ、その中で、ロシアの中でも、日本の中でもそうですけれども、海上自衛隊あるいはまた海軍というのは海を相手に日ごろ生活しております関係上、比較的共通する部分があるわけでございます。そういう意味で、海上における災害とかいろいろなものに遭遇した場合どうするか、そういうようなことから、人道上お互い協力できるようなところから教育訓練をして、醸成関係を醸し出していこう、そういうことでスタートしたらどうだろうかということで、目標をそこに一応セットしまして、これから先細かいことを詰めていったらいいんじゃないかと言っておるわけでございますので、今おっしゃられるような、いきなりそういう非常に国家の機密の機微に触れるようなものに一足飛びにいくようなことには、なかなかこれは難しいのじゃないかというふうな感触も持っております。
  154. 小渕恵三

    小渕国務大臣 核の管理あるいは廃棄の問題につきましては、それこそ超大国でありました米ロの間に協力をされて、種々努力が続けられる、こう考えておりますが、いずれにいたしましても、ロシアの核物質の管理体制を一層厳重にしていただきませんと、核物質の拡散の危険性が増大するおそれがあることは国際社会共通の認識となっております。  この点、案外日本努力というものも知られてない点もあるのではございますけれども、こうした観点で、実は我が国としては、九三年の四月、旧ソ連の核兵器廃棄を支援するため、総額約一億ドルの協力を行うことを発表いたしまして、そのうち約七〇%をロシアに振り向けることといたしております。  具体的には、極東における原子力潜水艦の解体により生じた液体放射性廃棄物の処理施設の建設協力等を行ってまいりたい、このように考えております。
  155. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 最後に、中期防整備計画見直しについて、時間がもうありませんので二点だけお聞きしたいと思います。  今回の中期防衛力整備計画見直しの中で、九千二百億円削減ということでございますが、陸上自衛隊で九〇式戦車六両とか、輸送ヘリコプター三機、装甲車十一両、海上自衛隊で護衛艦一隻、航空自衛隊で普通支援戦闘機二機、中等練習機五機、こういったものが削減をされるということですが、その中で削られていないものが、例えば陸上自衛隊でいえば、多連装ロケットシステムまた地対艦誘導弾があります。この二つがなぜ削減の対象にならないのかということが一つ。  もう一つは、大型輸送艦の導入について、これは二隻目になるんだろうと思うんですが、この大型輸送艦というのはいわば海兵隊輸送的なるものではないのか、私はこういうふうに思っておるんですけれども、今の二点について。
  156. 久間章生

    久間国務大臣 いずれも防衛大綱で決めております中身で必要なものでございますので、これをやはり削れなかったということでございます。  それから、大型輸送艦につきましては、例えば自衛隊の隊員を、陸上自衛隊を北海道から九州へ、あるいは九州から北海道へ運ぶためにはやはり大型の輸送艦が必要だということでございます。
  157. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 終わります。
  158. 塩田晋

  159. 西村眞悟

    西村(眞)委員 自由党の西村です。三十五分質問をさせていただきます。  大臣所信表明を拝読いたしまして、この中で一つだけ気になったことは、北朝鮮に拉致された日本人の救出という問題について、北朝鮮問題に触れられておらないわけですね。  ただ、イラクのことについては触れられておりました。その後で、現下の国際情勢は、御承知のとおり、依然として不透明、不確実、また大量破壊兵器拡散といった危険が存続すると。これは、私は、遠いイラクの問題ではなくて、近くの朝鮮半島北半分の問題であろうと思うのです。  我が国外交は、ペルーの人質事件では邦人救出に非常な心血を注がれた。あれは表に出た事件ですけれども、それと同規模の問題が近くで、北朝鮮による日本人拉致という問題が起こっております。邦人という我が国国民の命に軽重はございません。  したがって、我が国がペルーにおいて何ら努力することがなければ国際評価が地に落ちたと同様に、我が国外交が、我が国国内から北朝鮮に拉致された日本人の救出に関心を示さなければ、我が国はペルーにおけると同様に地に落ちるであろう。ペルーは地に落ちたと言っておりません。外交努力をした、だから地には落ちなかった。しかし、同様に、北朝鮮による日本人拉致の救出問題に重大な関心を表に出さなければ、やはり何ら発信したことにはならない、このように思うのです。  御努力されておることはわかりますが、所信表明されたこの機会に、北朝鮮による日本人拉致の救出問題にいかに取り組まれるか、大臣の御所感をお願いしたいと思います。
  160. 小渕恵三

    小渕国務大臣 もとより日本国民の生命と財産を守るべき責務を負っておる立場でございますので、言われますような北朝鮮による拉致疑惑につきましては重大な関心を寄せてきたところでございます。  私も、就任以来、この問題につきまして一日も早く解決を見るべく努力をいたしてきたつもりではございます。特に拉致疑惑ということでございまして、確たる状況につきましても、これが明確ならざる点もありましたので、このことをまず明らかにしなければならぬ、こう思って、種々のルートを通じまして努力をいたしてまいりました。  昨年十一月の与党の訪朝団の結果を踏まえまして、北朝鮮側に対しましても、日朝赤十字連絡協議会等を通じまして、その早急かつ真剣な調査を要請してきておるところでございます。でありますが、現在の段階におきましては、率直に申し上げて、納得のいくような結果が得られておりません。  したがいまして、我々としては、いろいろなパイプを通じながらこの問題の真実を明らかにすると同時に、何よりも大切なことは、その疑惑の中でその方々の生命が守られていかなければならぬ、こう思っておりますので、いかなる手段を講ずることが結果的に一番よろしいことになるかということも苦慮しながら努力をいたしていくと同時に、あらゆる機会をとらえて相手方にも我が国の立場を明らかにしていきたい、このように思っております。
  161. 西村眞悟

    西村(眞)委員 ぜひよろしくお願いいたします。  北朝鮮は行方不明者の捜索には協力するというようなことを言っておりますけれども、実は、それを聞いて一番危惧しましたのは、結局日本が捜している行方不明者は我が国にはおりませんよ、いろいろリストを上げましたけれども結局おりませんよ、こういうふうに存在そのものがおらないという状況にして言ってくる可能性がある、こういうふうな危惧を私は持ちました。  また、外交の御努力は私もよく心得ておりますけれども、私は議員としての立場で、我が国は拉致日本人救出の武器があるんだ、毎年北朝鮮に渡航する在日の方々は一万人近く、新潟を初め各地に毎月二回、万景峰号は二回以上の頻度で着いております。これらを再入国の許可をしない、里帰りの日本人と同じ人数に絞るとか、そういうふうな手段はやはりあるんだと私は思っております。そういうことを申し上げた上で御努力をお願いいたします。  さて、きょうの新聞をきっかけにしてこれから質問を始めるわけですが、橋本総理が十四日からインドネシアに行かれる、インドネシアに行かれて、本当にハードスケジュールで、十五日の夜には帰国されるということを聞きました。  この記事を拝読したときに、インドネシアと日本との関係において行かれることに何ら私は不満を申しておるわけではないのですが、まず第一に思い起こしたのは、田中角栄総理のときの反日暴動なんですね。  あのときの外務省は、田中総理が行かれることに際して、反日暴動のおそれはない、可能性はないと見たわけですね。しかし、外務省と反して、あのときは根本龍太郎先生を団長に、渡辺美智雄先生、梶山静六先生等々が事前に十一月に調査に行かれた、そのときに、私が聞くところによると、インドネシアは危ないぞという情報があった。大平元外相がカトリックのみずからの独特のネットワークを通じて聞いたところによると、やはり危ないというふうな報告だったと、私は調べて認めておるのですけれども、外務省は大丈夫だと言って、田中角栄総理が現地で包囲されて、ヘリコプターで脱出する。一歩間違えば、戦後日本最大の外交の失策、無策を世界にばらすところだった。  これをなぜ外務省が見抜けなかったのかといえば、こういう構造があるのです。  財閥華僑がインドネシアにおいては経済を独占している。いかなるきっかけの暴動であれ、今回もそうですけれども、暴動が起これば必ず華僑が襲撃されているのです。これはインドネシアに限らず、植民地支配されたアジアの植民地体制に原因がありました。  つまり、大多数のマレー人にプランテーションで農業をする以外の職業を禁じる。経済は華僑を呼んできて握らせる。そして、分割統治する。この構造でありますから、五十年前に独立したインドネシア人が直ちに経済にたけて、そして経済を運営するということはできず、その間隙を縫ってまた華僑が帰ってきた。そして、マスコミも華僑が支配している。経済も支配している。こういう状況の中で、日本企業がこの財閥華僑と安易に結びつき過ぎたという点です。  それからもう一つ、日中国交回復がありましたけれども、インドネシアは一九六三年九・三〇事件で中共に対する敵がい心が非常に旺盛であった。九・三〇事件、十月一日は国慶節ですから、いかなる関連のもとに起こった事件であるかはこれでわかると思うのですけれども、周恩来の指示による世界第三位のインドネシア共産党が暴動を起こした。百万人近くがそれによって死んだ。こういう記憶のあるところに、中共、華僑に対する反発が我が国に転化したわけです。これが田中総理が行かれたときの暴動の背景にあることです。  今回はどうかといいますと、今回は財閥華僑に対する反発が極めて強い。余り報道されておりませんけれども、華僑はかなり襲撃されております。華僑の財閥はシンガポールに毎日帰って、寝ておるという状況です。  そしてまた、スハルト政権というものがどういうものかといえば、スハルト一家が財閥華僑と同じように経済を握っている、特権を握っている。現地の人たちが言うには、フィリピンのマルコス末期に似てきた。そして、すごいインフレです。カップヌードルが三倍もして、ミルクが四千ルピアだったのが三万二千ルピアになった。インスタントラーメンが二百ルピアから八百ルピアになった。やっと育った中産階級が深刻な打撃をこうむっておる。倒産と失業とホームレスと物価高、華僑の両替商と質屋は繁盛している、こういう状態なんですね。  そして、現在のインドネシアの方々にとっていかなる構造でこの危機が起こってきたかといえば、これはシンガポールのリー・クアンユー上級相が言われていることですけれども、日本には悪気がない、それは認めるけれども、バブル崩壊後の日本の経済がなかなか正常に戻らない、そして円安になる、ドル高になった、このドル高がアジアの危機に及んできたんだ、こういうふうにリー・クアンユー上級相も言っておるわけです。  さて、これを申し上げたら、今回の橋本総理のインドネシア訪問において、田中角栄総理のときの状況が案外再現されてきているというのはおわかりいただけると思うのです、私が申すまでもありませんが。つまり、田中総理の訪問のときに、申し上げた財閥華僑への反発、そしてスハルト政権への反発、インフレ、失業、中産階級の壊滅的な打撃、そしてその打撃に対し、日本を原因者とする意識がある。そして、日本の企業は、向こうで経済を握っているのは財閥華僑ですから、財閥華僑と結びつかざるを得ない。  したがって、橋本総理の御訪問でお願いしたい点はただ一点でございまして、経済を再建さすということは、経済を支配する財閥華僑を支援しに来ているんだという印象を決してインドネシアの民衆に与えてはならない。危険だということです。  それからもう一つ、スハルト一家を支援しに来たんだ、経済の支援に来るというのは、財閥華僑とスハルト一家を守るというふうな構造になっておるわけですから、難しいことですけれども、インドネシア民衆にこういうふうなイメージを持たれては非常に困ると思うのです。  したがって、橋本総理は、スハルト大統領のみにお会いされるのではなくて、広くインドネシアの人材にざっとお会いしていただきたい。例えば、メガワティ女史の指南番で元外相のルスラン・アブドロガニー博士、また若手の軍人にもお会いしていただきたい。そして、チョコロ・プラノロ中将は、つい最近まで日本で入院されて、療養されて、今帰っておられますけれども、こういうふうな親日的な方々。また、私とは余り年齢は違わないのですけれども、東京農大出身のギナンジャール経済企画大臣。スハルト一家のみに会って、支援策を約束して、日本へ帰ってくるというイメージよりも、インドネシア民衆を相手に、民衆の支援に来たんだというふうな発信をインドネシアに与えていただきたいな、同じ構図になりかねぬぞ、こういうふうに非常に私は思っております。  外務省の状況判断を疑うわけではありませんけれども、田中角栄総理のときのあの失策は事実でございまして、また同じインドネシアでございます。そしてまた、さかのぼって言うならば、九・三〇事件の後でスハルトが出てくるのかスカルノが居座るのか、この判断も外務省は余り的確ではなかったように思います。  また、もう一つ、飛びますけれども、村山総理が謝罪してマハティール首相にたしなめられましたけれども、あれは華僑のマスコミ論調のみを信じて、物を言う手段を持たない民衆の意識を見ることがなかったことからくる失策だと私は思っております。  したがって、外務大臣にどうしてもお願いするのは、インドネシアにいる、いろいろな抑圧といいますか、政治活動はできないけれども、スハルト後にインドネシアを担うであろう人々に幅広く会っていただいて、インドネシア、二億以上の国民全体を救うために、日本総理大臣がジャカルタに来たんだというふうな印象をぜひ与えていただきたい。大臣、私がるる申し述べましたことについて、大臣にも御意見を伺えましたら幸いでございます。
  162. 小渕恵三

    小渕国務大臣 委員の御指摘も、日本とインドネシア、この二つの人口は、一億一千四百万の我が国と二億を超えるインドネシア、しかも、アジアの大きな国として関係をより一層緊密にし、力を合わせてアジアの発展、世界のためにいたしていかなければならぬというお考えのもとにお話しいただいているものだろうと思っております。  そこで、総理が土曜日にたって日曜日に、大変短い間でございますけれども、長年の友好国として、現下インドネシアは経済的にも極めて困難な状況の中で、いささかなりとも日本としての考え方を申し述べて、インドネシアをしてこの難局を乗り越えていただきたいという趣旨でお訪ねし、貴重な会談ができるものと理解しております。  ただ、委員御指摘のように、時間が非常に短いものですから、各階各層のあらゆる方々に面談をするという機会は、率直に言って難しいことだろうというふうに思っております。  そういった意味で、せっかく日本総理大臣が友人として七選された大統領と本当に腹を割って話してこられるということに、必ずいい結果が生まれるように最善の努力をされるものと期待しております。  それから、御指摘のように、我々は歴史に学ばなければならぬとは思っておりますが、かつて田中総理が公式にインドネシアを訪問したときのことについては我々も記憶をいたしておりますけれども、若干変わっておると認識しておりますのは、あの当時、日本が急速にインドネシアに経済的に進出をしたというようなことに対して、日本に対する反発も非常にあったのじゃないかと思いますが、現下、政府といたしましても、また民間同士の、企業間の深い交わりということも含めまして、あのときの反省に立って、経済界の皆さんも非常に神経を払って、かの国の経済に協力をしておるという立場でございますので、私は、あのときのような、我が国に対するいわれなきといいますか、大変な暴動に至るようなことはないのではないかというふうに信じております。  しかし、御指摘の点は種々ございましたので、参考にできる点はぜひさせていただきたいと思います。
  163. 西村眞悟

    西村(眞)委員 この際ですから申し上げます。  なぜ華僑に対する反発が日本に転化してくるのかといえば、今象徴的なことを一つ申しますと、インドネシア、ジャカルタで華僑の家というのは一目でわかるのです。なぜかといえば、金持ちの家であることではなくて、パラボラアンテナがあって、象のおりのような巨大なおりに守られて邸宅があるからです。  ちなみに、スハルト大統領が毎日大統領官邸に通うあの大通りに面して我が国大使館があるわけですが、我が国大使館も同じように巨大なおりがあるわけですね、暴動の記憶で。  スハルト大統領は、PETA、インドネシア独立義勇軍のもとで、今でも沼津に御存命の土屋陸軍大尉に指導を受けた方ですから、その大使館前を毎日通る、そして日本はどうなっているんだと言うらしいです。なぜか。大使館の菊の御紋章が真っ黒で汚れたまま。こういうことです。私がインドネシアの方から聞いたところによりますと、公式に申し上げてどうかわかりませんが、我が日本はという表現を使う、こういうふうに言っておりました。  大丈夫だとおっしゃられるけれども、日本自身が華僑のような精神構造になって防御をしておれば、例えば、例は悪いですけれども、逃げたら追いかけてくるということです、びくびくしているように見られて。やはり大使館というのは、相手国の民衆に対していかに我が国のイメージを伝えるかという建物でもあるということをこの際御認識いただきたい、このように思います。  次の質問に移りますけれども、地雷全面禁止条約に関してです。  これは、外務省からいただいた資料によりますと、五カ国が批准しておる。あの中にアイルランドとありますけれども、私はあれはアイスランドの間違いじゃないかなとは思っておるのですが。  それはともかく、四十カ国が批准したら効力が発生する条約。四十カ国が批准しなければ、ということは、現在の状態、まだ五カ国しか批准していない現在の状態は法的にいかなることになるのか。効力は全くないことはわかるのですが、全く署名していない国と署名した我が国とは法的には少し違うんだろうか、また、全く同じになるんだろうか。四十カ国がこの条約にずっと署名せずに経過すればどうなるのだろうかと考えておるのですが、この点について法的な観点からのお答えをいただきたいと思います。
  164. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 この対人地雷禁止条約は、さっき先生御指摘のとおり、特定の数の国の批准を発効の要件としておりまして、単なる署名をもちましてはこれに拘束されるということは法的にございません。  署名いたしますとどういう効果が生ずるかと申しますと、署名する以上、基本的には、その意思といたしましては、いずれ批准をするということを想定されておるわけでございますけれども、その段階におきましては、あくまでも条約の内容に対する基本的な賛同と申しますか、そういう意思の表明であるということでございまして、これをもって拘束されるという効果は生じません。  ただ、具体的な義務は生じませんけれども、一般的にはいわば信義誠実の原則と申しましょうか、条約の趣旨とか目的を失わしめるようなことはないということで、そういうことをやってはならぬということでございます。  なお、批准をいたしました国同士の間におきましては、まだ条約そのものは発効いたしておりませんので、条約上の権利義務ということで拘束されるという状況にはまだなっておらない一こういうことでございます。
  165. 西村眞悟

    西村(眞)委員 よくわかりました。  防衛庁長官安全保障委員会では有事を想定した議論が必要だと思うのですよ。有事を想定しなければ議論できないですから。したがって、仮定の問題には答えられませんとか、有事ばかり言っておるのではなくて平時のことを言いなさいとかいう議論は成り立たぬのですね。だから、私が申し上げるのは切れば血が出るような具体的なことで、これから、安全保障委員会はきょうのみに限りませんから、この委員会でこれから一貫して質問させていただきます。  さて、アメリカは地雷がなくなれば死傷率が三五%アップするんだ、こういうふうなシミュレーションを書いている。前の予算委員会でお聞きしたときは、死傷率のシミュレーションは出していない、しかし、何か撃破率、持久率、残存率等は点検しておりますと。  これはお答えを聞くまでもなく、地雷があれば持久率が低下する、すぐ突破される。撃破率というのは、これはどういうことを言っているかわかりません。地雷というのは相手を捜索する効果もあるわけで、あそこで爆発したら、そこに火力を集中する。だから撃破率は落ちるわけでしょう、めくら撃ちになるわけですからね。残存率というのは、部隊がどれだけ残存するかどうかですね。  結局、生身の人間の命を預かる防衛庁長官としては、死傷率をアメリカのように出さねばならぬのではないのですか。
  166. 久間章生

    久間国務大臣 委員があのときに言われた死傷率がよくわからなかったのですけれども、後で、結局うちの方で言っている残存率と同じような意味なのじゃないかなと。  といいますのは、結局、委員が御指摘になりましたのは、アメリカで死傷率について触れた報告があった、それを言われたのでしょうけれども、うちの方は死旬率という言葉を使わずに、防衛局長があのときも答弁しておりましたけれども、個々の部隊があって、相手が攻めてきた、そのときに正面の部隊をとにかく集中してやるために、側面から攻撃される分についてはそこで地雷を使って要するに時間を稼ぐというふうな戦い方、守り方をした場合に、どのくらいの部隊が、地雷を使わなかったならば残存するかというようなことになるわけですから、結局、残れるかということですから、死傷率と同じような意味だと思うのです。  ただ、その具体的な内容については、地雷を使った場合に死傷率がどれぐらいで、あるいは中央突破がどれぐらいの率でできるとか、細かいことについては答弁を控えさせていただくと言いましたけれども、うちの方でも残存率、死傷率それから持久率、何時間もつかとか、どういう形になるかということについてはシミュレーションはやっているというふうに伺っております。
  167. 西村眞悟

    西村(眞)委員 答弁を控えさせていただくとおっしゃっているから聞いてもむだだと思うのですけれども、アメリカは出す。国民の軍隊であり、出ていく人はアメリカ人の子供なんですから。我が国もそうなんです。防衛庁長官我が国を守るための部隊であり、父母が我が国におり、またその子供たちが行くわけですから、それは出していただかねばならぬな。そして、これは出して議論しなければ、センチメンダルなことと言ったら申しわけないですが、人道人道と言いながら、警察官のピストルだけ取り上げて暴力団のピストルは放置するという事態になりかねぬのですよ。そしてまた、前に申しましたように、共同対処できませんから、日米安保の根幹を崩すのです。  外務大臣また防衛庁長官、きょうの所信日米ガイドライン実効性確保するということを言われております。この実効性確保するとはいかなることか、抽象論ではなくて具体的にいかなることかと考えてみましたらば、我が国地雷を全面廃止し、国内で使えなくし、国内で運搬することを禁じ、これでは朝鮮有事においても我が国有事においても共同対処ができません。私ははっきり申し上げます。それは素人でもわかることです。素人でもわかる議論をもって我が国の運命をいかにするかということを考える時期に来ている。  それでもう一つ長官が代替手段だと言われた指向性散弾というのは、あのとき時間がなくて言いませんでしたけれども、こういうふうにびょうぶみたいに立ててある。それで、ぶわっと行くわけです。そして、ワイヤで来たらボタンを押す。アメリカがベトナムで効果的に使ったのは野営をするときだけです。これは、野営をするとき、自分たちがワイヤを持って寝る。ベトコンが近づけば、ばっと行く。しかし、これは地雷と違ってすぐ砲撃で破壊されるのです。沖縄戦の教訓でもわかりますように、部隊と部隊を電信で結んでいた、砲撃があったらすべてそれが切断された、だから、これは無力だ、地雷にかわるものではないのです。結局、これは地雷にかわれない、代替兵器にもならない。  したがって、仮に我が国が批准して、四十カ国も批准して決まってしまったら、我が国は、具体的なシミュレーションをすれば、絶対アメリカと共同作戦はできません。アメリカが、死傷率は三五%上がると明確にアメリカのお母さん方に発表しているわけですから。そうでしょう。地雷なく極東で戦えば死傷率は三五%上がるんだと確定しているのですから、お母さん方に。アメリカの世論が、地雷なく、日本でだけ三五%の死傷率を我慢して戦ってくれと、こんなばかな世論の動向にはなりません。アメリカが我が国と共同対処する唯一の方法は、我が国兵士が因だんごになって地雷のかわりになったときだけです、こういうふうに申し上げざるを得ない。  それで、両大臣ともガイボラインの実効性確保すると言っておられます。私は、防衛議論というものが本当に具体性を持たなければ、我々は何のために税金をつぎ込んで部隊を維持しているかわかりません。  ちょっと申し上げたことがあるのですが、保険はいざというときに必要だ。保険外交員が家庭に来る、毎月一万円掛けてください、いざというときに必要ですよと。勧められた人は、こう聞くのです、いざというときに何ぽ出るのですかと。そのときに保険外交員が、いざというときにどうなるかわかりません、こう答えたら、その保険を買いますか。  しかし、我が園の防衛議論というものはそうなんですよ。いざというときに本当に使えるのか。つまり、私は有事法制のことを聞いておる。ガイドライン実効性確保ということが我が国内政に問いかけるものは、我が国政治が有事法制を速やかに整備するか否かなのです。  今の状態は国民を欺いておる。いざというときに必要だ、米軍基地も必要だ、自衛隊基地も必要だ、戦車も必要だと。だったら、いざというときに使えるのですかと聞いたら、いざというときに使えない。超法規的行動はできますが、それは法治国家ではない。危機に遭遇した錯乱状態の中でやるわけですから。  しかし、法治国家として有事法制を備えてやるのが近代国家であり、また我が国の方針であるとするならば、いつも防衛白書の後ろにちょこちょこっと、これは法案にする考えはありませんとかと書いておるのではなくて、なぜ早急にこの国会の場に提出されないのですか。これが私の防衛庁長官に対する質問でございます。
  168. 久間章生

    久間国務大臣 委員が御指摘になるように、十分でないという点はございます。  しかしながら、防衛出動あるいはまた治安出動等、我が国有事の場合における基本的な部分については一応はあるわけでございます。しかしながら、完全なものでないということで、五十二年当時からいろいろな研究がされまして、第一分類、第二分類あるいはまた第三分類として、こういうような問題がありますということを公表させていただいておりまして、単にこれは研究にとどまらず、できるだけもう一歩先の法案の準備等に進みたいという気持ちもまた私どもも表現しているところでございます。ただ、これは、そういうようなことについての高度な政治的判断も要するものですから、今日まで延び延びになってきている点も確かにございます。  しかし、そういう点については、今述べましたように、基本的な部分は、今でもいざというときに、我が国有事防衛出動が下令されるような状況になった場合には、一応対応できる。ただ、細かい点について少し不備な点があるではないかということで整備したのが、この間の第一分類、第二分類と、各省庁にまたがる第三分類ということでございます。  そういうことでございますので、私どももまた、このガイドライン実効性確保のための周辺事態に対応する法整備をするときに、この辺の問題もやはり関連性があるわけでございますから、いろいろと探求していきたい、そういうふうに思っているところでございます。
  169. 西村眞悟

    西村(眞)委員 いろいろおっしゃるのはわかります。私も時代の子で、この時代の中で大臣とともに生きているわけですから。  しかし、日米ガイドライン意味は、我が国はそういうふうないろいろな配慮があって何とかということをもう言いませんよ、実効性確保しますよというふうな約束なんですね。法的に拘束しないというふうに書いてありますけれども、これは約束なんだ。  時間が来たと言いますので、また次の機会に譲りまして、これで質問を終えさせていただきます。  ありがとうございました。
  170. 塩田晋

    塩田委員長 中路雅弘君。
  171. 中路雅弘

    ○中路委員 外務大臣所信表明で、冒頭にイラク問題について触れておられるので、きょうはこの問題を中心にして幾つか御質問します。  イラク問題の基本は、イラクが査察を拒否しているところに問題がありますし、その解決は、あくまで外交的な努力によって問題を解決する、これが根本的な問題だと思います。  イラク大量破壊兵器の査察をめぐる問題で、先日、アナン事務総長とイラクとの合意が成立して、安保理の決議に基づいて査察が再開され、問題となった大統領関連施設への査察の手続づくりが今進んでいます。  しかし、アメリカ政府は強く主張してきた武力行使に今足かせを少しはめられた状態にありますけれども、イラクはどう出るのか、約束を守るのかを注目している。そして、アメリカは空母二隻体制維持して、三万六千人の戦闘・支援要員と二百機を超える航空作戦機を配備して、今も高度の戦闘即応態勢を続けているわけです。  アメリカがイラクによる査察拒否を口実にして武力行使の構えを見せたその当初から、日本政府は、二月十三日に来日したリチャードソン大使と外務大臣との共同発表を見ますと、イラクによる生物・化学兵器の査察拒否から生じたいわゆるイラク危機に際して、この共同声明では、すべての選択肢をとるということで、軍事力によって査察を受け入れさせようというアメリカの立場に支持を表明しました。  このすべての選択肢というのは、外務大臣が予算委員会でも述べられている。すべての選択肢ということは、武力行使は排除されていないというふうに述べています。  先ほど言いましたように、イラクの査察拒否の対処問題、この解決は外交的に解決されるべきというのが国際的な合意であります。しかし、アメリカは依然として軍事力による解決にもこだわっています。  今外務大臣は、この共同声明での態度表明は正しかったのかどうか、改めてこの点についてまずお伺いします。
  172. 小渕恵三

    小渕国務大臣 リチャードソン国連大使が訪日いたしました際、私は、外交的解決が最善の解決であるとともに、すべての選択肢をとる余地が残されているという米国の見方を我が国は共有していることを明らかにいたしました。すべての選択肢においては武力行使は排除されていませんが、この表現を用いたのは、情勢が極めて深刻であるとの我が国の認識をイラクに明確に伝えるとともに、イラクに対し事態の平和的解決を促すためのものでありました。  このような外交的努力を各国が行ったからこそ、調停を目的としたアナン国連事務総長のイラク訪問が成功し、また、日英の共同提案による今回の安保理決議二五四の全会一致採択に結びついたものと考えております。したがいまして、このような我が国の態度表明は極めて正しかったと考えております。  これからは、ぜひ、イラクにおかれましては、このアナン事務総長との調停をしっかり守って、世界が望んでおる大量破壊兵器の査察を十分受けとめて、これを廃棄されるような行動をとられんことを期待いたしております。
  173. 中路雅弘

    ○中路委員 当初、アメリカは武力行使の構えを示した。そして、湾岸周辺に部隊を集結していった。この時期から、これは武力行使も含めたこうした問題について一方的に支持を与えるという共同声明だったと思います。  アメリカは外交的な解決を言いながら、その外交のあり方はあくまで軍事力を背景にした外交です。だからこそ、アメリカの姿勢がこの問題で国際的にも支持を得られなかったということが今日の事態だと思うのです。アメリカの主張する解決というものは、単なる武力のおどかしてはない、具体的目的を持ったものです。  そこでお聞きしますけれども、アメリカは何を目的として軍事力を行使しようとしたのか、お聞きしたいと思います。
  174. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 アメリカが軍事力を展開しましたその目的というのは、イラクが関連安保理決議を履行しない場合にはいかなる選択肢も排除されないという強いメッセージを送ることが事態の外交的な解決に資するという判断に基づいたものであると理解しております。  そして、米国が兵力を結集して強い決意を示したということが外交的解決を促す重要な要素の一つであったという認識は、国際場裏において広くシェアされているところではないかと考えております。
  175. 中路雅弘

    ○中路委員 アメリカの具体的な目的、これは、もっと明確にクリントン大統領もアメリカ政府当局も述べているわけですね。例えば、アメリカは何を目的として軍事力を行使しようとしているのか。  一月二十七日のクリントン大統領の一般教書の演説で、  私はサダムフセインに言う――お前はこれまで、大量破壊兵器を使用したことがある。我々はサダムフセインが二度と再び使わないようにその能力を根だやしにすることを決意している根絶やしですね、破壊して亡き者にする、これが目的だ。  イラクに対する最後的な通告ともいうべきものが、二月十七日のクリントン大統領のペンタゴンでの演説ですが、少し長くなりますが引用しますと、   軍事力が第一の回答であってはならない。しかし軍事力が唯一の回答になることもある   もしサダムが平和を拒否して我々が武力行使をせざるを得ないとすれば、我々の目的は明らかである。我々は、イラク大量破壊兵器計画による脅威を大幅に減じる。近隣諸国に脅威を及ぼしている(サダムの)能力を大幅に減じる   軍事作戦ですべての大量破壊兵器能力を破壊出来るものではない。しかし(サダムが)現在これらの兵器によって世界に脅威を与え又は近隣諸国を攻撃しようとしている能力を弱体化させることが出来る そして次に、   彼(サダム)が再び脅威を与えるなら、そして再び脅威を及ぼした場合、国際社会は行動する意思を持ち続ける。攻撃の後も我々はイラク活動を我々の権限に基づいて注意深くモニターする。彼が大量破壊兵器を再び作った場合、我々は再び彼を攻撃する用意がある クリントン大統領はこう述べて、継続して武力行使をしていく考えも表明しています。  そもそも、湾岸戦争の停戦合意に基づいて設置されたUNSCOM、国連の特別委員会は、どのような権限を持っているのですか。
  176. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 この点につきましては、決議六八七の中に記載がございます。具体的には八項でございますが、  イラクが、国際的監視の下、無条件に、以下のものの破壊、撤去又は無害化を受け入れることを決定する。 そして、(a)と(b)とございまして、(a)については、  全ての化学、生物兵器並びに全ての化学及び生物剤の在庫、全ての関連補助装置及び構成部分並びに全ての研究、開発、支援及び製造施設。 そして(b)におきましては、  射程距離百五十キロメートルを越える全ての弾道ミサイル及び関連する主要部品並びに修理、生産施設。 そして、「上記第八項の履行のため、以下を決定する。」云々ということで関連条項が続くわけでございますが、UNSCOMの権限というのは、決議六八七に基づいて、この八項、九項、十項等を中心としたものであると理解しております。
  177. 中路雅弘

    ○中路委員 今言われたように、UNSCOMの決定は、設置された特別委員会UNSCOMが査察をして化学兵器を発見すれば、これを廃棄処分にする、これが権限の中心なのですね。  だから、アメリカが言っていることは武力そのものによる破壊でありますから、しかも、先ほど読みましたように、一回でだめならば続いてやるということを言っています。  これは今の査察体制そのものも破壊することになりますし、このような軍事行動の目的は容認されたのかどうなのかということもお聞きしておきます。
  178. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 まず事実関係でございますが、委員が御引用になられました二月十七日のクリントン大統領の演説、確かにその中で御指摘のような部分がございます。それに加えて、ここも委員がお読みになられたところでございますが、クリントン大統領は、武力行使は第一の選択肢ではない、しかし、あるときには武力行使のみが唯一の解決策となるということを述べております。  さらに、クリントン大統領は、その前の部分で、UNSCOMによる査察システムはこれまで非常にうまく機能してきており、我々が純粋な外交的解決を望んでいることは言うまでもないという言明も行っております。  そして、三月十一日、アナン国連事務総長とクリントン大統領との会談がございました。その写真撮影時のコメントにおいて、クリントン大統領は、アナン事務総長がイラクとの間で査察の継続及びUNSCOM査察官へのこれまでの立ち入りが禁止されていた区域を含んだアクセスの付与に関して合意に達したことを喜ばしく思っている、こういうことも述べておられるわけでございます。  したがいまして、まず初めに武力行使ありきという対応をアメリカがとったというふうに我々は認識いたしておりません。これは、小渕外務大臣とリチャードソン特使の会談にもあらわれているところと思います。  そして、これまでの御議論前提にありますのは、やはり今日の事態を招いた責任というのはイラクにあるのである。イラクが六八七を含みます一連の国連決議のもとにおける義務というものを誠実に履行してきていたならば、今日のような事態というものはなかったということでございます。  そして、履行してもらうことが一番よい。それは、物事の性質が、これも委員が御指摘になられましたように、生物兵器、化学兵器を含む大量破壊兵器というものの能力を大幅に削減する、それによってイラクがクウェートに侵攻したというような事態が再び起こることのないように確保する、このことに目的があるのだということになりますと、それは、外交的な解決によって穏便に効果が得られることが一番望ましいわけでございます。  そこのところは、米国もその他の責任ある国際社会の主要国も、何ら異なった意見というものを持っているわけではございません。これは事実関係として申し上げたいと思います。
  179. 中路雅弘

    ○中路委員 アナン氏とクリントン氏の最近の会談のことは後で触れますけれども、私がお聞きしているのはこのUNSCOMの権限で、いわゆる生物・化学兵器の生産能力を破壊するあるいは減じるという権限がUNSCOMに付与されているのかどうか、今クウェートの占領とかそういう事態にもないわけですが、この問題についてお聞きしているわけです。
  180. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 先ほどの繰り返しになって恐縮でございますが、在庫、すべての関連補助装置及び構成部分並びにすべての研究、開発、支援及び製造施設、これらを含めて化学・生物兵器について御指摘の査察を行う権限が与えられていると理解しています。
  181. 中路雅弘

    ○中路委員 私が聞いているのは、今おっしゃったその権限の中に武力行使の権限を与えているのかということを聞いているのですよ。
  182. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 今日の事態というものに関連してまいります決議は、決議六八七だけではございません。決議六六〇、六六一、そして武力行使容認決議と言われる六七八、最近では、昨年十一月十二日に採択されましたイラクによる打ち続く義務違反というものが国際の平和と安全に対する脅威を構成すると認定した決議一一三七、こういった決議すべてが含まれるわけでございます。
  183. 中路雅弘

    ○中路委員 かつてのクウェート占領のときと状況は違うわけですよね。しかし、アメリカ政府は武力行使の権限があるんだということを繰り返し主張しています。しかし、その主張を見ても、具体的な根拠を示したものはほとんどない。  例えばオルブライト国務長官は、二月十二日の下院の国際関係委員会で次のように言っています。  世界じゅうに、イラク国連安保理決議を遵守すべきであり、国連の査察に対して無条件のアクセスを与えるべきだという決意がある  現在の行き詰まりの責任とその結果がどうなるかはひとりイラクが負うべきだという合意がある  イラク政策を変えなければ我々は強力な措置をとるしか選択肢はないという了解がある  「強力な措置」とはということで、国務長官はこう言っています。  一刺し、ちょっとした嫌がらせみたいな空爆ではなく、顕著な攻撃で、サダムがその大量破壊兵器とその投射システムを再建する能力を減じ、及びサダムがイラク近隣諸国と世界に脅威を与える能力を減じる ことだ。大規模な攻撃の権限がアメリカにあるんだということも言っているわけです。  何人も誤解してはならない、我々はこれをやる権限を持っている、これをやる責任を持っている、手段と意思もあると。  外務省は、このアメリカの軍事行動、武力行使の権限はあるとの主張の根拠は何と承知しているのですか。今、安保理の決議の中にこういう権限を付与した条項はありますか。
  184. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 私の方から、アメリカの正式な法的立場ないしは決議の解釈について申し上げるのは差し控えさせていただきたいと存じます。  しかし、アメリカの政策というものも、基本的には外交的な解決が第一であるという点は、これは一貫しておると思うところでございます。  ちなみに、三月十一日のクリントン大統領とアナン事務総長との会談の後で、アナン事務総長は、イラクとの間に停戦をもたらした合意は武力行使が一時停止されたことを意味するものであり、したがって、必要があれば引き金が引かれる可能性があるということである、これが、安保理全体が自分のバグダッド訪問に一致して賛成したと述べた理由である、私自身、公式に次に何かあれば外交に第二のチャンスは与えられるか否か定かでないというふうに述べた。私は、またイラクが遵守しないようなことになれば、安保理の雰囲気は全く違ったものとなり、武力の行使に対するコンセンサスがはるかに容易になるだろうと述べた。  これは、事務総長もここまでぎりぎりの姿勢を示して外交的な解決イラクに求めているということであろうと思います。  先ほども申し上げましたように、このような事態を招いたのはイラクの方でございまして、決してその逆ではございません。イラクのたび重なる違反というものが今日のこの事態を招いているということがまず最初にあるわけでございまして、その点につきましては、安保理の十五カ国を含めて何ら異論はないわけでございます。
  185. 中路雅弘

    ○中路委員 先ほど私が聞いているのは、安保理決議の中に、アメリカは権限を持っていると言っているが、こういうものを付与した条項があるのかどうか、これには直接お答えにならない。  決議以外のものとすれば、アメリカは何を根拠にして武力行使の権限ということを言っているのですか。
  186. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 アメリカの立場について申し上げれば、委員も御案内のとおり、外交努力というものによる解決がもちろん第一の優先順位であるけれども、仮に武力の行使やむなしという事態に至った場合に、新たな決議は必要としないという立場を一貫してとっております。
  187. 中路雅弘

    ○中路委員 今お聞きしましても、アメリカの言っている、国務長官の言っている、権限は持っているという権限はどこにも規定はされていない。明文の規定がなくても日本はこうしたアメリカの態度に追随するのかという問題があります。  アナン氏とクリントンの記者会見後のやりとり、午前中にも報告がありました。もう一度お聞きしますけれども、これは、停戦合意の前提が崩れたとして武力行使を容認されるということですか。また、その際に、安保理で協議があればいいのか、改めて武力行使について決議を上げる必要があるのか、どういうことですか。
  188. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 これは、記者会見と申しますか、写真撮影時の大統領と事務総長の談話、それから会談が終わった後の事務総長の談話というものについて私は申し上げてきたわけでございまして、それ自身が武力行使を容認しているとか容認していないとかいう話ではございません。  もとより、事務総長は外交的な努力による解決というものを最重視していて、ただ、それが現実に実行に移されるためには、国際社会の一致したバックアップが必要である、その一致したバックアップの一翼を当然のことながら米国も担っているということだろうと思います。
  189. 中路雅弘

    ○中路委員 ちょっと戻りますが、外務大臣に、時間が限られていますので。  今度の国連安保理決議の問題です。この決議について、三月十二日、外務大臣が答弁で、今回の決議が六百七十八から始まった種々の決議を否定するものでも是認するものでもないと言っておりますが、これはどういう意味ですか。
  190. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今回、イギリスと共同提案国になりましての決議は、アナン事務総長の調停に対して、これを力強く国連としてバックアップするための決議案でございまして、今次、イラクがとってまいりました国連のUNSCOMの査察等に対する対応について、それに対していかような措置国連としてまた米国としてとるかについては、六百七十八以降種々の決議がそのまま生きておる、こういうことを申し上げたわけでございます。
  191. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 先ほどちょっと申し上げるのを失念いたしましたので、つけ加えさせていただきます。  アナン事務総長とクリントン大統領との会談終了後のコメントの部分で、アナン事務総長は質問に答えまして、クリントン大統領との間には見解の相違はない、自分、すなわち、アナン事務総長は、既に何らかの協議が必要であると述べており、右に変更はない。  ここでまた質問がございまして、安保理における投票、すなわち、これは新しい決議か何かのことを示唆するのかもわかりませんが、安保理における投票は必要かという質問が発せられたのに対して、投票が必要であるとは言っていない。  そこで、私が先ほど申し上げましたように、イラクとの間に停戦をもたらした合意は、武力行使が一時停止されたことを意味するものであり、したがって、必要があれば武力行使の引き金が引かれる可能性があるということであるという部分につながるわけでございます。
  192. 中路雅弘

    ○中路委員 時間ですが、武力行使の問題だけじゃなくて、こういうこともアメリカは言っているのですね。三月四日、湾岸に展開している米軍の費用に関する補正予算の提出に当たっての声明です。  米軍の南西アジアへの配備、展開は米国の権益擁護を確実にするものであり、そしてイラクが(査察を)拒否するならば深刻なペナルティーを与えることをわからせるものである  つまり、米軍が即応態勢を維持する目的は、イラクが安保理の決議に違反するならペナルティーを科す、処罰すると言っているわけですが、こんなペナルティーなどということが現在の国際規範のもとで容認されるのか、こんな権限をだれが与えるのか、こうしたアメリカの発言を日本政府は容認するのですか。
  193. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 幾度も御答弁を申し上げて恐縮でございますけれども、日本政府は一貫して外交的な解決を求めるべく全力を挙げるということを申しております。  そして、今御指摘になりました点についての因果関係は、まず、今日の緊迫した事態をもたらしたのはだれかといえば、それはイラクの方である。したがって、イラクには関連諸決議の遵守をきちんとしてもらう必要がある。それを行ってもらうための舞台仕立てというか道具仕立てを今国際社会が一緒になって行っている、こういう状況でございます。  もちろん、イラクに対して、そのような力の要素、見せつけるということだけではなくて、小渕外務大臣と英国のクック外務大臣との間で動きが始まった今般の決議一一五四におきましては、イラクがこの義務を履行した場合には経済制裁が解除されて、イラク国民負担というものが軽減される方向に物事が動くということも明記してあるわけでございます。
  194. 中路雅弘

    ○中路委員 時間ですので終わりますが、外交的努力ということを強調されていますけれども、今度の問題で、例えばあの湾岸地域の諸国ですら、アメリカに基地を提供するというのはみんな拒否しているわけですね。しかし、我が国は、空母インディペンデンスが既に向こうへ行っていますけれども、こうした基地の使用も容認している。そして、コーエン国防長官は、出動の一百前、一月二十一日に横須賀へ来て、艦上で、中東に行くんだ、中東に派遣して脅威を与えるということを、出動命令を出しています。  今まで外務省は、こうした中東へ行くのには、航海中に出動命令が出たからとか巡回だとかいろいろ言っていましたけれども、今度は明白に中東へ行くという目的を出して日本の基地から出動しているのです。これについても容認している。これが外交的努力を最善にすると言う政府の態度ではないということを厳しく批判して、質問を終わります。
  195. 塩田晋

    塩田委員長 次に、辻元清美君。
  196. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。  私は、いわゆる海上ヘリポート問題について、幾つかの点について質問したいと思います。  つい先日ですけれども、アメリカの連邦議会の会計検査院、GAOは、日米特別行動委員会SACO最終報告に関する初の調査をしまして、三月二日にたしか六十二ページだったと思いますけれども、報告書を発表いたしました。私もこれをアメリカから取り寄せました。この報告書です。イシューズ・インボルブド・イン・リデューシング・ジ・インパクト・オブ・ジ・USミリタリー・プレゼンス・オン・オキナワというこの報告書、これについて幾つか質問したいと思います。  このGAOの報告書は、軍事作戦機能問題担当部局が作成したということで、非常に権威がある報告書と言われておりますし、アメリカの政策決定に影響力があると私は認識しておりますけれども、防衛庁長官はこの報告書自体どのように認識されていますでしょうか。
  197. 久間章生

    久間国務大臣 私どもも、その報告書が出ましてから、どういう根拠に基づいて出ているんだろうかということであれこれ議論いたしましたし、また国防省等いろいろなところを通じて聞いてみましたけれども、その根拠になる数字がわからなかったわけでございます。  正直言いまして、海上ヘリポートは、私どもは沖縄県との関係でいろいろ話が煮詰まっていって、やるということになりますと、具体的にこれから先の建設費がどれぐらいになるのか、また維持管理上どういう問題があるのか、煮詰めていかなければならないわけでございます。  今のような、我が国ですらそういう状況段階で、実は、あのように具体的な数字が出るはずがないのじゃないかという気がしておりまして、全くどういうような根拠に基づいて出されたものか承知をいたしておりません。
  198. 辻元清美

    辻元委員 今、この内容については吟味がされたということは、防衛庁長官の方から承りました。  そうしますと、その中で、内容の数字等を含めても、根拠については不確かだという御答弁でしたけれども、それでは、この報告書についてアメリカ側はどういう点を問題点として指摘しているか、説明していただきたいのです。
  199. 久間章生

    久間国務大臣 アメリカ側といいましても一私どもが一緒になりまして今度のSACO最終報告をまとめました国務省、国防省、そういったところに聞いてみましても、よくわからないという話でございます。  話によりますと、ハンター下院議員の要請に対してGAOがそういう数値を出したという、そこしかわからないわけでございますから、どういう根拠であの数字が出てきたものなのか、何との比較においてそういうふうに言われたのか、維持管理費に二百五十億もかかるとか、そういう数字が一体常識的に考えられるのかどうか、そういう点で全く私どもはよくわからないというのが現況でございます。
  200. 辻元清美

    辻元委員 今数字問題というのが出ておりますので、私の方でこれを読みました限りでここで申し上げますと、今御指摘の数字というのは、海上ヘリポートの場合ですと、年間約二億ドル、日本円にしますと大体二百八十億円かかるというような報告で、これは現在の維持費の七十一倍という数字であると思います。  それからもう一つは、この数字についても、この報告書によりますと、米国は日本政府が新しい海上基地の維持費を支払うよう要請したが、報告書の作成段階ではそのように合意していないという指摘もしているわけなんです。この数字はちょっとおいでおいで、数字の根拠という話ですけれども、この後半の、日本政府が新しい基地の維持費を支払うよう要請したが、この段階では合意していないという、これは事実でしょうか。
  201. 久間章生

    久間国務大臣 先ほど冒頭に言いましたように、まだともかく、日米間でこういう案でやろう、そして詳細な実施計画を、これは昨年までに、平成九年中につくろうということでございましたけれども、しかし、そのためには沖縄理解が必要だ、そういう話でございまして、それ以上に、維持管理費をどうするかとか、維持管理費が幾らぐらいかかって、それを両者でどういうふうに分担するのか、そういう話し合いは全くしていないわけでございます。  だから、アメリカの方で、それをどういうふうにそのGAOがとらえられたのか、向こうのだれに聞いて、これは両方で持つようになったのか。アメリカが持つことになると大変だぞというようなことを言っておられるような話もあるわけですけれども。だから、そんな話すら進んでいないわけでございまして、まずは建設自体が、まだ具体的な詳細計画もできてない状況でございますので、そこまで、合意するかしないかよりも、そういうような議論すら、維持管理費をどうするかという議論にまで進んでいないということでございます。
  202. 辻元清美

    辻元委員 本日の長官所信表明の中に、「海上ヘリポート案を最良の選択肢として昨年地元に提示いたしました。」という御発言がございました。  それで、地元の御理解と御協力を得られるよう努力していきたいということで、確かにこれは選択肢の一つとして御提示されているわけなんですが、私がこういうふうな質問をするのは、この維持管理費についての検討は全くしていないという御答弁でしたが、地元の御理解と御協力はもちろんですけれども、国民に選択肢として示す場合に、万一この選択肢を選択した場合、日本はどれぐらいの負担が予測されるのか。  それから、これは地元の御理解、御協力はもちろんですけれども、金銭的なことになりますと、国民全員が税として負担するわけです。そういう意味におきまして、最良の選択肢としてという中には、このお金の使い方、維持管理費等についても国民に対して示さない限り、これは選択肢として示せないのではないかというふうに私は考えておるのですが、いかがですか。
  203. 久間章生

    久間国務大臣 お金の話からいきますならば、例えば陸上にやるとか埋め立てをやるとか、そういうものの方が直観的に言って安いだろうという感じはいたします。  しかし、それよりも、あの時点には、撤去可能である、そしてもとにいつでも復することができる、環境に優しいといいますか、環境問題が生じないだろうということですが、今日の議論の中では、沖縄県と私ども政府との関係の話をやっておりますと、海に浮かばせること、海を使うことが環境を一番破壊するんだと言わんばかりのいろいろな報道等もなされておりまして、あの当時、私どもは、海に浮かべることによって撤去可能で、環境にも一番これが優しいというようなことで、そういうような観点からは最善の策であるという形で選んだことが、逆に、さも環境を一番壊すんだと言わんばかりに報道等がなされておりますので、ある意味では非常に残念な気がいたします。  今言いましたように、安全性、要するに海からの進入、住宅の上を飛ばないでいい、騒音も非常に少なくて済む、あるいはまた環境を破壊しないために埋め立てによらずに浮かばせる形、そういう形の方が潮流との関係でもいろいろな意味でもいいんじゃないか、最善の方法であるということで選択したわけでございます。税金をいかに使うかという、そっちの角度からもし選べとおっしゃるならば、それはまた違う方法があっただろうと思います。  金額の問題よりも、今言ったように、むしろ環境面とか、あるいはまた撤去可能であるとか、そういうようなことから最良の選択肢としてやったわけでございます。いわゆる埋め立てをやってしまいますと、もとに復することは非常に困難でございます。そういうようなことから、いつでも必要でなくなったならば撤去可能であるというような点を配慮したために、最良の選択肢になったということでございます。
  204. 辻元清美

    辻元委員 総合的に考えられたということですけれども、私が今申し上げましたのは、実際には建設の費用、それから万一それを選択して、維持していく際の費用が余りにも、今長官の方は事実無根である、この数字についての根拠がわからないとおっしゃいましたけれども、物すごく、とてつもない、七十一倍という……。それも、これはGAOが出している報告書なんですね。ですから、私は全く根拠がないとも思えないのですけれども、そういうものをGAOが出すのかしらというふうに疑問を感じるわけなんです。  そうしてくると、これだけの額がかかってくる、もしくはこの数字が全く事実無根だとしても、維持費にかかる分を例えば今後日本にどんどん、私は国民の一人としても、これからつくったはいいけれども、もとよりこれだけたくさんのお金がかかる、おたくに基地を返還したし、これだけ維持費がかかっているからおたくもちょっと負担してくださいよと言ってきかねない報告書なんですよ、これを端々見ていると。  どういうことかといいますと、それ以外にも環境問題に対しても、今防衛庁長官おっしゃいましたけれども、この報告書によると、施設の恒常的な運用はサンゴ礁など周辺の海洋汚染を引き起こす可能性があると問題を指摘しているわけですね。それに対して、例えばこういう環境問題は未知の問題ですから、GAOでは建設計画の中にリスク軽減期間、これはリスク・リダクション・ポーズというのでしょうか、それを設けて、そのときにかかる費用については日本にも負担させる方向性があるようなサジェスチョンまでこの中に出ているわけですね。  ですから、私は、経済的な問題を置いては考えられない大きな要素だということを指摘したいので、今回申し上げているわけです。それを示さない限り、オプションとして示せないと思うのですよ。ですから、今その点についてはアメリカと全く協議していないというのは、ちょっと私には信じられない点なんです、オプションとして国民に知らせるときに。ですから、もう一回、全く協議してないのかどうかという点を御質問したい。  もう一つは、そうしますと、ほかの案もあった、その案でいえば、ほかの方が安上がりだったかもしれないという今御発言をされましたけれども、それじゃ、幾つ案があって、この案については幾ら、この案については幾らと検討したはずなんですが、それを後でお示しもしくは今お示しいただくことはできるんでしょうか。
  205. 久間章生

    久間国務大臣 細かくは政府委員から答弁させたいと思いますけれども、私が就任する前に、私が就任しましたときには、大体この海上ヘリポート案で中間報告が出されておりました。  しかし、それまでの間の報告としては、三カ所ほどの、三つほどの工法についていろいろ検討してきたときに、この海上ヘリポート案というのが日米間で合意して、これが最善の案であろうというような形で話が進んでおりました。  三つほどありました、それまでの検討されました内容については、政府委員から答弁させます。
  206. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 先生御存じだと思いますけれども、この普天間飛行場に関するSACO最終報告の中に、要は三つの具体的代替案、すなわち、ヘリポートの嘉手納飛行場への集約、キャンプ・シュワブにおけるヘリポートの建設並びに海上施設の建設について検討ということが書いてございまして、その中で、海上施設は他の二案に比べて沖縄県民の安全及び生活の質にも配慮するとの観点から最善の選択であると判断されるということで、こういう検討の結果、海上施設を追求することになったということでございます。
  207. 辻元清美

    辻元委員 それは先ほどから繰り返し伺っている御答弁だと思います。  今長官がこれだったら幾らこれだったら幾らと検討した結果、海上の方が高いかもしれないがという御発言をされたので、そういう意味で、それぞれの施策について検討する折には費用を必ず検討するのは当たり前ですし、それを国民の前に示す、それが国民に選択を自由にしていただくという最低限のルールではないかと思い、したのであれば、その額を示していただきたい。それとも、額を示せないのか、額を検討しなかったのか、この三つの中の一つでお答えいただきたいのです。
  208. 久間章生

    久間国務大臣 額は具体的に検討していないと思います。
  209. 辻元清美

    辻元委員 それでしたら、これが最良の方法であるというふうに言えないのではないかというふうに私は思います。
  210. 久間章生

    久間国務大臣 現在の海上ヘリポート案についてすら、この金額は幾らですかというと、今のところわかりません、数千億という単位になるでしようということは答弁できますけれども、それすら具体的な計画をこれから先詰めていかないとわからないわけでございます。だから、そういうようなものでございます。
  211. 辻元清美

    辻元委員 今は建設にかかる費用と維持費と分けて考えた方がいいかとも思うのです。  そうすると、GAOのこの数字が事実無根であるというか、これだけかからないだろうというのは、どういう根拠にのっとっておっしゃっているわけでしょうか。
  212. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 先ほど長官から申しましたように、GAOの報告書でございますけれども、まさに独自の調査に基づいて作成をされて連邦議会に提出されたものだということでございまして、我が国政府として全く関与している話ではございませんので、その内容の一々についてコメントする立場にはない、かように思います。
  213. 萩次郎

    ○萩政府委員 この海上ヘリポート地元の御理解を得てつくられるということになりますと、私どもの役所で具体的にアメリカ側と実施計画を突き合わせて、一つ一つの経費を積み上げるわけでございます。この経費を積み上げて、実際に建設を担当するのは私どもの役所でございますが、先ほどから防衛庁長官が申されておりますように、まだ米側との実施計画というものもできておりませんので、その経費の積み上げというのは一切できていないということでございます。  長官が数千億という目の子の話があるわけですが、実際、私どもがきちっと計画を積み上げて、経費を計算して、そして最終的には予算を通じて国会で御議論いただく、こういう手作業があるわけですが、まだまだその段階には到底至っていない、こういうことでございます。
  214. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、今、この所信の中で、最良の選択肢として地元に提示いたしましたという内容は、経費については一切検討はしていない、そして、今後、万一これが選択肢とされた後、日本がどのようにアメリカと折衝し、経費負担が起こるかもしれない可能性についても一切検討せずに最良の選択肢として示したということですね。
  215. 久間章生

    久間国務大臣 どういう角度から最良か最良でないかの判断だろうと思います。  私どもは、お金の多寡の問題で物事を決めるのではなくて、要らなくなったときには撤去可能であるというような角度から案をつくっていった。そうした場合には、この海上ヘリポート案が最良の選択肢だった、そういうことでございます。したがいまして、お金の問題がどうなるかわからないものですから、構造改革関連法案を出すときにも、このSACOの経費については別枠ですよということをあえて法律の条文の中に入れてもらって、外しているわけでございます。  だから、私どもが最良の案と言うのは、先ほどからくどいようでございますけれども、基地が必要なくなったときには撤去が可能であるという判断に基づいて、沖縄県のいろいろな環境の問題その他を考えたときにこれが最良であるというようなことで選んだわけでございます。  そういうようなことで、金銭面についての選択を、もし一番安い方法を選べとおっしゃるならば、それはまた別の問題でございますけれども、対沖縄との関係では、そういうようなことよりも、撤去可能であり、環境に非常にいいというような判断材料から選んだということでございます。
  216. 辻元清美

    辻元委員 もう一つ、このGAOの報告書を読みますと、こういう勧告をしているわけなのですね。かなり強い調子です。海上施設の設計、技法、建設法を監視する手段の決定や、海上基地の建設以前に施設運用維持に係る費用及び施設運用上の懸念を払拭することというふうな勧告をしているわけですね。これはアメリカの政府に対してしているわけです。  私は、非常に温度差があるのではないかと。アメリカでは経費のことについても、GAOはこういうふうな調査報告を出し、議論をしているわけです。ところが、日本では、はっきり申し上げまして、幾らお金がかかったっていいという御発言なのですよ、今のは。経費については二の次、三の次であるという御発言に私は受け取りました。  私は、長官が自信を持って最良の選択肢としてという御発言をいただきましたので、経費の面も選択肢を選ぶ上での非常に重要な視点だと思いますので、この海上ヘリポートはまだ決まっていません、これは今後国民の前に示していただきたいと思います。
  217. 久間章生

    久間国務大臣 その経費の問題の前に、どういうような形のものが沖縄県民に受け入れてもらえるか、そういう角度からの判断の方を我々は優先させたわけでございます。  だから、それは考え方の違いかもしれません。安い方で選ぼうという形で、それを沖縄にぶつけていく、そういう手もあったでしょう。しかし、私どもは、そうじゃなくて、沖縄の皆さん方に、撤去可能な、環境にとってもこれがいいというような判断から提示をしたということでございます。  ぜひその辺について、私どもがとった立場について、そういう立場じゃなくてもっと安い方から迫るべきだったというふうに言われるなら、それは結構でございますけれども、そういうような議論ではなかったということでございます。  沖縄方々にどういう形でなら取り入れていただくか、金銭面よりも内容面での話だ、そういうようなことでございます。
  218. 辻元清美

    辻元委員 もうこれで質問を終わりますけれども、今後もこれはちょっと検討したいと思います。私も、安い方がいいと申し上げているわけではないのですよね。国民に選択肢として示す際に、やはりそこは国民負担するわけですから、沖縄地元の皆さんと同時に日本じゅうの国民の問題ですので、そこはぜひ選択する際に示していただきたいということを申し上げたかったわけでございます。  以上で質問を終わります。
  219. 塩田晋

    塩田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十四分散会