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1997-12-09 第141回国会 参議院 労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十二月九日(火曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員異動  十一月六日     辞任         補欠選任      大脇 雅子君     梶原 敬義君  十一月七日     辞任         補欠選任      梶原 敬義君     大脇 雅子君  十一月十三日     辞任         補欠選任      阿部 正俊君     木宮 和彦君  十一月十四日     辞任         補欠選任      木宮 和彦君     阿部 正俊君  十一月二十日     辞任         補欠選任      上杉 光弘君     志村 哲良君  十二月一日     辞任         補欠選任      阿部 正俊君     尾辻 秀久君      吉川 春子君     聴濤  弘君  十二月二日     辞任         補欠選任      尾辻 秀久君     阿部 正俊君      今泉  昭君     広中和歌子君      聴濤  弘君     吉川 春子君  十二月三日     辞任         補欠選任      猪熊 重二君     鈴木 正孝君      広中和歌子君     今泉  昭君  十二月五日     辞任         補欠選任      志村 哲良君     上杉 光弘君  十二月八日     辞任         補欠選任      萱野  茂君     前川 忠夫君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。    委員長          星野 朋市君    理 事                 石渡 清元君                 海老原義彦君                 長谷川 清君                 笹野 貞子君    委 員                 阿部 正俊君                 小山 孝雄君                 佐々木 満君                 佐藤 静雄君                 坪井 一宇君                 真鍋 賢二君                 今泉  昭君                 武田 節子君                 前川 忠夫君                 大脇 雅子君                 吉川 春子君                 鈴木 正孝君    国務大臣        労 働 大 臣  伊吹 文明君    政府委員        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省女性局長  太田 芳枝君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        労働省職業能力        開発局長     山中 秀樹君    事務局側        常任委員会専門        員        山岸 完治君    説明員        大蔵大臣官房金        融検査部管理課        長        東  正和君        大蔵大臣官房審        議官       山本  晃君        大蔵省証券局証        券業務課長    小手川大助君        大蔵省銀行局銀        行課長      内藤 純一君        厚生省保健医療        局地域保健・健  高原 亮治君        康増進栄養課長        中小企業庁計画        部金融課長    寺坂 信昭君    参考人        山一証券株式会        社雇用推進委員        長        陳野眞一郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○労働問題に関する調査  (構造変化の下での労働行政に関する件)  (行政改革における労働省在り方に関する件  )  (神戸雇用サミットに関する件)  (労働法制見直し規制緩和に関する件)  (最近の雇用失業情勢と今後の展望に関する件  )  (山一証券等金融機関の破綻に伴う労働問題に  関する件)  (沖縄振興労働行政在り方に関する件)  (じん肺の予防対策に関する件)     ―――――――――――――
  2. 星野朋市

    委員長星野朋市君) ただいまから労働委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る三日、猪熊重二君が委員辞任され、その補欠として鈴木正孝君が選任されました。  また、昨八日、萱野茂君が委員辞任され、その補欠として前川忠夫君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 星野朋市

    委員長星野朋市君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  労働問題に関する調査のため、本日の委員会参考人として山一証券株式会社雇用推進委員長陳野眞一郎君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 星野朋市

    委員長星野朋市君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 星野朋市

    委員長星野朋市君) 労働問題に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  6. 石渡清元

    石渡清元君 新しい大臣になりまして参議院で初めての委員会審議でございまして、そういう意味で、大臣のまず労働行政に対する基本的な認識、御見解をお伺いしたいと思います。  まず初めに、社会経済情勢が非常に変わってきておりまして、特に東西冷戦が崩れたあのころから、日本だけではなくて世界各国社会構造経済体制等々も大分変わってまいりました。そういう中で日本も、経済国際化グローバル化という表現もございますけれども、あるいは企業に国境がなくなってまいりました。同時に、賃金制度とかあるいは賃金決定方式大分変化が見られるところでございまして、そういう中での雇用流動化、そして高齢化対策中心にこれから労働行政が変わろうとしておるところでございますけれども、その辺の労働行政展望について御見解をお願いいたします。
  7. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 大変広い、大きなお尋ねでございますので的確にお答えができるかどうかはやや心もとないのでございますが、我々政治家として一番大切なことは、やはり過去の歴史に学び、歴史としての現在を認識し、そして歴史になるであろう未来を的確に把握してつくっていくことだろうと思います。  そういう意味では、今、先生がおっしゃいましたように日本は大変な国際化、これはもはやインターナショナルという国と国との関係ではなくて、グローバルというまさに世界一つという中に組み込まれております。同時に、これは我が国が世界に胸を張るべきことだと思いますが、長寿国になりましたし、女性社会に進出できるだけの大きな経済余力と家事の近代化ということが進んでくる、その中で少子化という現象が生じております。  こういう状況の中で、現在の平和で豊かな暮らしを子供や孫の時代にも維持して、同時に我々一人一人の日本人が生きている尊厳というものを自覚しながら生きられる、そういう社会を守っていかねばならないと私は思っております。その根本は、市場経済であれ計画経済であれ、どのような理念社会を動かしているとしましても経済が順調に発展しなければなりません。その基本は、やはり資本と新しい技術とこれを有効に使っていける質の高い労働力、この三つがなければ私はだめだろうと思っております。  したがって、状況に合うように労働法制労働慣行も直していかねばなりません。あらゆる政策効果副作用がございますように、これからとっていかねばならない政策にもいろいろな効果副作用があります。効果を恐れずしかし効果を十分認識しながら、副作用を恐れずしかし副作用を軽視することなく、働く人たち立場尊厳を守りながらこの大波に立ち向かっていくのが我々の大きな仕事だろうと思っておりますので、委員各位の御協力をよろしくお願い申し上げたいと思っております。
  8. 石渡清元

    石渡清元君 申し上げた雇用流動化あるいは高齢化、これはある意味ではやや反する命題ではないか。ということは、今、大臣も御答弁ありました産業構造変化に対応する新しい技術専門知識、高度な技能等々を持った人材が求められているというのは事実でありますけれども、そういう意味では、これは能力が劣れば労働市場からはじき出されるという論理でもあるわけでございます。  労働省平成十年、労働関係予算重点項目の第一項目のテーマに「経済構造改革を担い、いきいきと働ける環境の整備」、こう書いているわけでございますけれども、具体的にはそういったようなこと、ただ労働法制とか環境だけで満たし得るかどうか私はいささか疑問を持つものでございますけれども、御見解をお願い申し上げます。
  9. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 私が労働大臣に選任されましてから労働省諸君にも申し上げていることは、やはり基本的には雇用というのは経済がうまく回り、有効需要が創出されることによって受け皿が決まってまいります。したがって、経済官庁としての自信と自負を持って経済政策に積極的に発言をすることということであります。  そういう前提の中で、今、先生がおっしゃったようなことに対応するためには何よりミスマッチをまずなくすることだと思います。これは日曜日にも連合の鷲尾さんとお話をして、これからお互いに、一番大切なことはもちろん経済政策なんですが、その前提ミスマッチをなくしていくと。  したがって、働く人たちもいろいろな仕事につけるような技能開発あるいは研さんということを積んでいただかねばなりませんし、また、それに対応できるように我々もいろいろな手だてを講じていかねばならないと思っております。  それから、特に高齢者方々にはこれからいや応なく私は働いていただかなければならなくなるんじゃないかと思います。それは、少子化時代が参りますから、高齢者方々を貴重な働き手としてやはり尊敬の念を払いながら社会に受けとめねばならぬ。六十歳定年を、これはやはり将来的には私は六十五歳になろうと思いますけれども、そこへ至るまでには六十歳で退職金をお払いしても、何らかの形で六十五まで働く手だて企業に考えてもらう。あるいはまた、今まで我々が余り認識をしていなかった分野でこれから労働力需要が出てまいります。  具体的には福祉分野、それから社会文化分野、こういうところでは御年配の方の働き口というのは私は非常に期待できるんじゃないかと思っています。ある程度の年齢に達した方が積極的に介護をなさるという仕事も出てくるでしょうし、あるいは図書館で本を探していただくというような、労働力としては軽い仕事だけれども社会のニーズに合った需要がこれからどんどん出てくると思います。そういう御年配方々企業でも積極的に経験を生かし社会でも受け入れられるような体制が考えられるわけでございまして、それに対応できるように労働省としてもいろいろな職業訓練職業あっせん組織を充実しながらお手助けをさせていただきたいと思っております。
  10. 石渡清元

    石渡清元君 質問、次に参ります。  現在、橋本総理が取り組んでおられます財政構造改革労働行政についての御所見をお伺いいたします。
  11. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) これまた非常に広い御質問でございますが、財政構造改革に限って言えば、先ほど申しましたように、あらゆる政策には効果副作用がございます。副作用だけをあげつらっておれば政策は進みませんし、副作用を無視して効果だけで暴走すれば失敗をすることになると思います。  したがって、財政構造改革がなぜ必要であるかということはもう委員が御承知のとおりでございますので私は申し上げませんが、財政構造改革を進めていきますと、従来の財政支出のままであれば、財政を通ずる有効需要というものは当然少なくなると考えざるを得ません。したがって、従来どおりの財政支出をしている限りは、その限りにおいてはデフレ効果経済に生じます。それは、雇用に対して非常に厳しい現象が起こると思います。  したがって、橋本内閣は一方において規制緩和をやることによって新たな雇用受け皿をつくろうとしているわけですが、財政構造改革範囲の中においても、例えば公共事業直轄でやりますと、一兆円の有効需要を創出するためには一兆円の一般会計負担が要ります。地方事業をお願いする場合は、例えば補助率三分の一とすれば三千億の金が要るわけです。地方では七千億のお金が必要になります。しかし、民間資金財投資金を積極的にそこへ導入をしてきて、今政府が考えておりますような民間資金による公共事業を行う、それを促進するために例えば利子補給一般会計から入れるということをやれば、一兆円の有効需要に対して利子が三%とすれば一般会計負担は三百億で済みます。  財政再建をしながら有効需要を出していくということは可能であって、先般御審議をお願いしました法律財政再建法とか財政削減法という名前ではなくて、財政構造改革特例法と言われたのは私はまさにそういうところに意義があると思います。  したがって、財政構造改革を進めながら、できるだけ雇用景気に影響のないような、少ない財政支出で多くの有効需要を創出できるような仕組みに変えていくために我々も閣僚の一人として全力を尽くしたいと思っております。
  12. 石渡清元

    石渡清元君 今、御答弁の中での副作用財政構造改革必要性、これはもう十分承知をしておるわけでありますけれども、その副作用の部分が雇用不安に何かつながっていっているような傾向が感じられて私はしょうがない。  例えば、デプレッション、不況、景気の悪い不景気デプレッションと英語で言いますけれども、これはうつ病も同じデプレッションなんですよ。悪い悪いというように思い込んでどんどん心理的に悪くなっていく傾向がございまして、最近は、精神医療の面でもうつ病とかいう病名をつける自体おかしいんじゃないか、スランプぐらいでいいんじゃないか、そういう医療現場あるいはドクターの話もあるぐらいでございまして、苦しいことばかり、後ろ向きなことばかり、頭を抱えていてはだめでございまして、やっぱりそういう心理的な心の影というのを何とか取り去らなければいけない。これはもう実体経済はそうでありますけれども雇用の面でも同じことが言えるんじゃないか。  そういう面で、私は労働省皆さんにも、新規雇用創造、よく出る言葉でありますけれども、それが産業政策ということでなくて、もっと労働省の省内からも新しい雇用の創出、創造の何かヒントになるようなものをどんどん政策官庁として世の中に出したらいかがかということをいつも申し上げておるわけでありますけれども、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  13. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 基本的にはマクロ経済のかじ取りの責任者がどの役所であるかということになっていくんだろうと思いますが、政府としてとっております対策で若干数字で申し上げますと、現在、医療福祉分野では約三百五十万人の人が雇われておりますが、積極的に今とっております規制緩和税制改正等によって二〇一〇年にはこれが約四百八十万人になるという推計がございます。それから、先ほど申し上げた生活文化分野では、今二百二十万人の人がここで働いておりますが、これが同じく三百五十万人程度に増加する。三番目が情報通信と言われる分野ですが、ここで百三十万人ぐらいの人が現在働いておりますが、二百五十万人ぐらいにふえていく。  ただ、我々の日本歴史を振り返っても、かつては石炭とかあるいはまた紡績とかというのが日本中心産業であったわけですが、経済構造改革によって今これらの産業はほとんど雇用維持力がありませんので、他の産業に変わってきております。その変わるのをできるだけ失業が生じないように変わっていっていただく、これがやっぱり労働省の今の所掌範囲では私はやるべきことだと思いますし、運悪くそこで摩擦的な失業経済的な困難が生じた場合には、先生承知のような雇用保険を使ってのいろいろな、言うならば運転資金的な対策がそこにくっついているということであります。  もちろん私は閣僚の一人として経済政策について閣議ではいろいろ申し上げることは申し上げておりますが、労働省としては失業なき労働移動全力を尽くすということがお答えになるんではないかと思います。
  14. 石渡清元

    石渡清元君 次は、過般、行政改革最終報告が発表されました。この問題に対する大臣評価と今後の労働行政について御見解をお願いします。
  15. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 我々は民主主義の国に住んでいるわけでございますから、一番大切なことは、やはり各政党が公約を行う、その公約に応じて有権者の皆さんが一票を投じられる、その公約がうそにならないように努力をするということだと思います。我が自由民主党は、選挙の際には行政組織の半減ということを実は公約一つに掲げて選挙を戦いました。したがって、この一府十二省庁制というのは民主主義の原点から考えればやらねばならないことであったと私は考えております。  この中で、最終報告にあった方向がいいかどうかについては、おのおののお立場でその効果副作用評価が私は違ってくると思います。  労働省としては、私は諸外国の例を見ても幾つかの方法があったと思うんですが、一つは、産業の一翼を担うという意味で通産省的なものと一緒になる。もう一つは、人間の働くための能力技術というものに着目をして文部省的なものと一緒仕事をする。三番目は、やはり人間が一生働いていく中で賃金と将来の保障、健康、こういう生きがいを持ちながら働くためにはどうするかということを考えると、厚生省的なものと一緒にやっていくということで、今回、労働福祉省(仮称)ということになりました。  私は、雇用省にならなかったのは非常によかったと実は思っておるわけです。労働というのはもっと広い概念で、雇う者、雇われる者の契約の中に出てくるエンプロイメントという言葉よりはレーバーという言葉は私はもっと広い言葉だと思っております。汗を流す楽しみあるいは尊厳、そして働くための技術。したがって、労働という言葉が残って非常によかったなと私は個人的に思っております。  さて、将来的にこれがこれから変動する社会にうまく対応していけるかどうかについては、今後の省庁の具体的な局あるいは課のつくり方、それから役人諸君気概、何よりもその上に立つであろう労働福祉大臣指導力、こういうことに私はよっていると思いますので、できるだけいい組織をつくって、悪い役人のために迷惑をこうむっているまじめな能力のある役人諸君社会的評価を回復してやるということが今一番大切なことだと私は思っております。  ただ、人間のやることでございますから、時代は動いていくわけで、十年あるいは十五年たって新たな組織が必要であるならば、何もこれを変えてはいけないということではないと私は思っております。
  16. 石渡清元

    石渡清元君 大臣お答えのとおりなんですけれども、いまだに省庁名がどうだとかそういうことを耳にしておるわけでございまして、そして役所皆さんの話だけ聞きますと、やはりまだまだ自分たち省庁を守るというか保身、何かそういったようなにおいを感じざるを得ないわけでございます。  そして、なかなか今景気が浮揚しませんので、行政改革を棚上げしてでも景気刺激をやれ、こういう議論もありますけれども、少なくとも、昨年の総選挙では世論も私ども行政改革をやろうという選択をした以上はこれに取り組んでいかなければいけないと思いますが、景気対策にもなる構造対策のようなものができるんでしょうか。
  17. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 私は両立は可能であろうと思います。ただ、従来のような日本人の生き方、従来のような政策、従来のような制度、従来のような法律一つも変えないということなら、それは非常に難しいんではないでしょうか。  先ほど私が申し上げましたように、日本財政というのは、直轄事業公共事業をやるか補助事業公共事業をやるか、その主体はあくまで役人であります。補助金を出して、あとどんな効果があったかというのはほとんど私は評価されていないんじゃないかと思いますが、例えば民間資金公共事業に導入してくれば、やるかやらないかはお金を借りる人が決めねばなりません。そして、お金を借りた限り返すという自己責任が起こってまいります。そこで、私は財政支出構造が変わってくると思います。  規制緩和も、これも効果副作用が確かにあります。効果の大きなところは、規制緩和をやれば伸び伸びと仕事ができて有効需要というのはふえてくると思いますので、構造改革をやれば必ずデフレになるということは私はないと。むしろ、アメリカもイギリスも日本と同じことをかつてやって、そして今ようやく過去に類を見ない歴史の上で初めてという繁栄を調歌しておるということも、我々は一つ情報として考えておかねばならないことだと思っております。
  18. 石渡清元

    石渡清元君 次の議題に入ります。  ちょうど大臣の地元で地球温暖化防止京都会議が開催されておりまして、議長国で、私ども参議院から出ております大木大臣も大変頑張っておるところでございます。地球環境の保全とか人類の将来の繁栄のために、この会議に大きな期待がかけられ、人類歴史を変える十日間じゃないかという表現すら出ているところでございまして、この地球温暖化防止について大臣の御所見、御感想がありましたらお漏らしをいただければ幸いでございます。
  19. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) きょうはもう何か大変大きな問題の御質問ばかりで、私はとてもお答えするのに適任ではないと思いますが、この環境問題というのは、先ほど私が申し上げたように、あらゆる政策には効果副作用があるということが最も端的にあらわれるところでございまして、したがって、政治家の見識とかあるいは政治家気概とかというものが示されることだと思います。  基本的には、地球温暖化防止をするためには、今まで当たり前だと思っていた我々の生活を少し変えなければこれはできないんじゃないでしょうか。自動車は乗り回す、がんがん電気はつける、冷房はかけつ放しにして、少し我慢ができるのに暖房はどんどんつける。それでいて温暖化目標値が低い低いというのでは、私はこれは政策にならないと思いますね。  したがって、どのあたりで折り合いをつけながらやっていくかということで私たち政治家が一番心しなければならないのは、人間の欲望によって生じた悲しみとか失敗を次の世代に残さないことだと思います。それは環境問題と戦争じゃないでしょうか。  だから、そういう意味では国民お一人お一人に、暖房は何度以下にならなければ使わないでください、冷房は何度以上にならない限りは入れないでください、できるだけ不必要なときは車に乗るのはやめましょうというようなことを一つ一つお願いしていかなければならない。しかし、それをお願いするということは我々の生活が少しは窮屈になり、ある意味じゃ産業活動がやや低下してくるということは覚悟しておかねばならない。そういう中で環境を守っていくんだという気概を示すということであれば、私は非常に合理的なお話になってくると思いますので、その辺のやりとりを大木大臣中心に今懸命に私はやっているんだと思います。
  20. 石渡清元

    石渡清元君 次に今度は、伊吹大臣議長をお務めになられました神戸雇用会議についてお伺いいたします。  これはもう雇用問題、各国の事情が全然違う中で意見を議長総括に集約されて、本当に御苦労さまでございました。やはり会議を貫く基本理念がなければこれも成功というふうに言えないわけでございまして、どういったような理念を持ってこの神戸会議に臨まれたのか、お伺いをいたします。
  21. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 今、まさに委員が御指摘になったように、労働状況雇用のあり方というのは各国の伝統と文化のようなもので、各国みんな違います。しかし、幸いなことに、神戸に集まりましたのは、新たにロシアが参加をいたしまして八カ国になりましたが、いわゆるサミット国でございましたので、比較的経済発展段階は似ているかなという感じでしたが、それでもヨーロッパとアメリカ、イギリスのアングロサクソン流のやり方と日本のやり方というのは、見ていて違うなという感じでした。  私は、オープニングスピーチで申し上げたのは三点でございます。一つは、私たちはロシアを含めまして市場経済と自由社会に暮らしているわけであって、したがって、この原理原則に合わないことは幾ら要求をされても、労使ともかえって自分たち立場を結局は悪くしてしまうことだと、この原点だけはまずはっきりとみんなで認め合おうじゃないかということを申し上げました。  その中で、先ほどお話を申し上げましたように、経済が発展をしなければ我々は豊かにはなれない。経済を発展させていくのは、やはり資本と技術プラス立派な労働力の結合である。したがって、経営者と労働者、あるいは経営団体と労働団体というのはイコールパートナーとしてお互いに仲よく対話をし、自分たちだけよかったらいいという態度はやめてもらわねばならないということを第二番目に申し上げました。  第三番目に申し上げたのは、社会や我々の生きていく環境が変わってくるわけでありますから、この環境が変わってくることに合わせて構造改革は進めねばならない。そのときに、その効果副作用をどう判断していくかというところで、まさに政治家の見識が問われると、こんなお話を申し上げたわけです。  先ほど来、先生が御指摘になっておりますように、雇用というのは基本的には経済の運営と密接に関連をいたしております。ただ、この会議で論じられたのは、新しい雇用を創出するために新規産業をどうつくっていくかとか職業訓練をどうしていくかという、そういう側面でございました。先ほど御指摘があった御年配方々をどう労働力として入れていくか、こんなことを実は論じたわけであります。  もう一つ大きなマクロ・エコノミック・マネージメントという全体経済政策調整のようなところは残っておりますが、これは来年二月に英国で労働大臣と大蔵大臣が集まる会議がございまして、ここで論じられることになっております。これと神戸会議の成果を二つ合わせまして、来年、イギリスのバーミンガムで行われるサミットにお話がいって、まさにサミット、世界の意思決定の頂点に立っている人たちがそこで協力して、失業という経済的な損失もあり、同時に人間としての尊厳を損なわれるこの状態からどう抜け出していくかというお話につながっていくんだろうと思っております。
  22. 石渡清元

    石渡清元君 まさに構造改革研究会の代表にふさわしい哲学を持ってのお話かと思います。  その中で、構造変化への円滑な調整の推進と活力ある雇用社会の実現という二つのテーマで議論が進められた、こういうふうに聞いておりますけれども、そのうち若年者の雇用問題、これにつきましては我が国はどのような方向で取り組んでおられるんでしょうか。
  23. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 若年者の雇用問題につきましては、神戸雇用会議におきましてもテーマの一つとして取り上げられまして、サミット参加国の共通の重要課題である、こういう認識がされたところでございます。  神戸会議におきましては若年者の雇用問題について、学校から職場への移行の円滑化が非常に重要である、これは日本は比較的うまくいっているわけですが、ヨーロッパ等では若年失業者がなかなかうまくいかない、こういう問題点もございます。産業界、教育機関と公共職業安定機関との早い段階からの十分な連携が重要である、こういう共通認識各国間において得られたところでございます。  こういう認識等に基づきまして従来からも対策をとっているわけでございますが、私どもとしては、産業界や教育機関とも密接な連携を図りながら、学生等が在学中に就業体験を行うインターンシップにつきまして、この普及、導入、促進のための環境整備に積極的に努めてまいりたいというふうに考えております。
  24. 石渡清元

    石渡清元君 いつもそのような御答弁をいただくんですが、現在の日本の少子傾向が非常に他の国よりもスピードが速い。今、一九九七年ですけれども、二一〇〇年になりますと六千七百万人、日本の人口は約半分近くになってしまう。一・四二あるいは一・四三の合計特殊出生率で単純に計算していきますと、二五〇〇年にはわずか三十万人になってしまうというんです。三〇〇〇年には五百人になってしまうという計算が成り立つ。ということは、冒頭大臣お答えになった新しい技術、その担い手がどんどんなくなってくる。もう既に日本の現在の労働人口自体が高齢化していますので、日本産業、エネルギー、経済を支える力というのはどんどん私は下降していると思うんです。それで、やはり労働行政の中でもかなり少子対策、大きく言えば人口政策にもっと積極的に取り組んでいかなければいけないんじゃないか。  私は、二十一世紀の日本の生き残り策のキーワードというのは、ハイテクノロジーとハイセキュリティー、新技術と治安、安全にあるんじゃないかと。これが大分侵され始めているのが今の現状なんです。したがって、何か大胆な少子対策を、子育て支援とかいろいろ言っていますけれども、新しいものにもう少し踏み出していかないと、それがまた日本経済を支えるもとになるわけで、そういう点で何かございますか。
  25. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 今、先生が御指摘になったようなことがなぜ起こっているかということをまずしっかりと考えてみる必要があると思います。  このことは、ある意味では決して私は悪いことではないと思いますが、女性社会に進出できる余裕が先進諸国では出てくるわけであります。社会に出て、異なる価値観と触れていろいろな人とお話をしながら暮らしていくということは、人間としてその人を大変大きく成長させていくわけでありまして、その特権を従来は男性だけが持っていたというか、男性しか外に働きに出る余裕がないほど小さな経済であったわけですが、大きな経済になったので、実はそういう誇るべき事態が日本に生じた。だから、女性皆さんが子供を産み育てていただく価値観とみずからを人間的に成長させる機会をしっかりと確保していきたいという価値観が両立できるような意識を男性も女性もまずしっかりと持たねばならないし、先生が御指摘になったように、少子化対策としてやっているような今のことはあくまで制度や仕組みでありますので、これをもっと使いやすくしていくということは私たちは大いにやりたいと思います。  同時に、例えば子育てをしてもう一度職場に戻ったときにどういう目でその人を見るのかとか、女性だけが子育てをするのがいいのかどうかとか、あるいはうちへ帰ったときに必ず料理をつくりふろを沸かしているのは女性でなければならないという感覚を改めていくとか、それは我々一人一人の生き方に実はかかっているわけであります。  抜本対策と言われれば、日本人として生きていく知恵、生きていく知恵というのは、道徳教育と言うとしかられますが、そのことと、それから今申し上げた二つを小学校時代からきっちりと教え込むことが最大の対策だと私は思っております。
  26. 石渡清元

    石渡清元君 別に、道徳教育と言うとしかられるんじゃないかとか、あるいは子供を産まない方が得だというような、そういう社会的な雰囲気こそ現在の抱えている問題ではないかなというふうに私は思っておるわけでございます。  そして、当面の問題として高齢対策をどうするかということなんでございますけれども、その点については労働省として今後どのような、アクティブエージングとかいろいろ言葉は言われているんですが、アクティブエージングではなかなか地域社会にはわかりにくい。もう少し具体的にそれが広がるような政策が必要ではないかと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  27. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) ただいまアクティブエージングという言葉がございました。日本語に訳せば活力ある高齢化ということで、耳なれない言葉でございますが、これは実は六月に開かれましたデンバー・サミットの共同宣言の中で初めて言われた言葉でございまして、この背景の認識としましては、サミット関係国、これがテンポの違いはあるにしろ二十一世紀になりますといずれも高齢社会になる。  そういう中で考えた場合に、しかもその高齢者が非常に元気な方が多い、ふえていく。そういう中において、一方で社会保障制度の問題もございますが、希望する方ができるだけさまざまな形で社会参加をする、これは正規の労働からパートタイムあるいは派遣労働というような形もありましょうし、シルバー人材センターのような就業という形、あるいは無償のボランティアという形もありますが、社会を支える側にできるだけ回っていただく、こういう方向についての共通認識があったわけでございます。  それを受けまして、今回の神戸の雇用会議におきまして、この問題点の指摘があったわけでございます。国民的コンセンサスづくりに努めること、あるいは多様な形態による雇用、就業の確保を図ること、あるいは公共職業安定機関がこれについて積極的な役割を果たすこと、こういう点の重要性について各国の意見の一致を見たところでございます。  労働省といたしましては、従来から、我が国が急激に高齢化する、そういう中で我が国経済社会の活力を維持するためには高齢者の方が長年培ってきた知識、経験を生かして社会を支える側に回っていただく、これが非常に重要であるということから、六十歳定年の一般化については来年四月から義務化されるわけですが、これはもう定着し、これを当然の前提として、当面六十五歳までの継続雇用の推進あるいはシルバー人材センター等の就業機会の確保、こんな対策をとっているところでございます。  特に、今後なかなか難しい課題があるわけですが、六十五歳までの継続雇用、六十五歳現役社会をいかに実現していくか、これが非常に重要課題であるというふうに考えております。この点については、まず国民各層の方々でいろんな議論をよくしていただいて、どういう形で実現したらいいか、六十五歳定年制も含めまして、この実現に向けて政策ビジョンをつくる等の対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  28. 石渡清元

    石渡清元君 あとは、最近の山一証券あるいは北海道拓殖銀行等々金融機関の破綻に伴う雇用不安について、簡単で結構です、労働省の把握状況をお示しいただくのと、山一証券の場合は同僚小山議員から陳野参考人を含めて具体的な質問があろうかと思います。  金融機関の場合は資金繰りがショートで払い出し不能とか急に来るわけです。山一証券の場合は、予想されていたと言うと語弊があるかもしれませんけれども、いろんなうわさを私は耳にしておりました。それぞれ雇用推進委員会とかあるいは拓銀の場合は雇用推進センターを行内につくってやっておるんですが、北海道内はまだ拓銀について言えばお客さんも中小企業の預金者あるいは貸出先等々お願いできるけれども、本州の関係は全然だめだと言っているんです。  その辺のところをどう把握しておられるか、またその辺についての万全な体制を最後にお伺いいたします。
  29. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) まず、市場経済の、自由社会世界におきましては一人一人が選択を行い、意思決定を行いますけれども、その結果責任はやはり本人が自己責任としてとっていくというのが当然のルールであります。  したがって、違法行為をしたとか経営判断を間違った企業が結果的に責任をとらねばならないというのがすべての原則でありまして、金融機関や証券会社だからといってその例外ではないと私は思っております。  ただ、金融機関等には預金というものがございますので、本来であれば十分経営ができていくと、しかしながら、不安が不安を呼んで、従来の確率であれば例えば千人にお二人が引き出しに来られるところを、千人に百人が引き出しに来ればどんな健全な銀行だってつぶれてしまうわけです。したがって、そういう不安が不安を呼んで不必要な混乱が起こらないように、金融安定化のシステムというのを今先生方も中心になって御議論いただいているわけですから、私は、これが一日も早く確定することによって無用な混乱が生じないということが第一だと思っております。  しかし、生じてしまったものは仕方がございませんので、山一の場合は、後ほど小山先生から御質問があるようでございますが、これは廃業を前提に今いろいろな作業が進んでいる、つまり会社がなくなるということです。北拓の場合は営業を譲渡しながら生きる道を今探っておられるわけですね。それから三洋証券の場合は会社更生法という法手続によって会社を存続させられるかどうか、つまり雇用を維持できるかどうかという今いろいろな作業に入っているわけです。  したがって、山一は会社がなくなりますので、関連会社を含めると一万五千人、家族を含めれば三倍として約五万人の人の問題でございますので、これだけは全力を挙げて情報を収集して、足らざるところを我々は補っていく。それと同じことについて、例えば三洋証券は新卒者を採らないということを決定したようですから、これは会社更生法の中で、まことに残念なことですが、そういうことを決定した限りは労働省としても今までの職業紹介等の全エネルギーを集中して、社会に出る若い方が自分の責任じゃないのに最初からつまずかれるということだけはないようにしたい、そんなふうに思っております。  北拓のお話も先ほどございました。本州の方についてはなかなか窮屈だということも情報としてとっております。それから山一等についても、後ほどお話があると思いますが、やはり高年齢者の方は求人の希望者が非常に少のうございます。しかし、若いところはもう二倍三倍ぐらい来ておるという現状です。その辺のマッチングを会社がどうしてもできない場合、あるいは関連の企業でやれない場合には最大限のお手伝いをして混乱のないようにさせていただきたいと思っております。
  30. 石渡清元

    石渡清元君 どうもありがとうございました。
  31. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 引き続き、山一証券等金融機関の破綻に伴う雇用問題について質疑をさせていただきます。  まず、委員長、各会派の理事の先生方そしてまた委員皆さんの御理解をいただきまして、参考人に私の質疑時間内で質疑をお許しいただきましたことを感謝申し上げる次第でございます。  きょうは、山一証券の常務であり、そしてまた雇用推進委員会委員長をお務めになっていらっしゃいます陳野さんに参考人として御出席をいただきました。事態発生以来、恐らく不眠不休、一万余の社員そしてまた三万余の家族のこれからの生活、そしてまた人生を一身に背負われての超御多忙の中おいでいただきましたことに感謝を申し上げます。  私は山一証券だけを特別扱いするわけでは決してございませんけれども、今も大臣そしてまた石渡理事からお話がありましたように、一挙に一万余の人が職を失うという事態、これは今まで我々が経験したことのないことでございます。ほかにも拓銀、三洋証券、そして徳陽シティ銀行の破綻もあります。あるいはこれからもゼネコン等の大型倒産があるかもしれない。まさに私は、我々のこれからの日本を考えたときに大量失業時代が来るかもしれないという視点はきっちりと見ておかなくてはいけないだろうと。それにまた、どのようなことが起こってもそれに対処し得る行政でなければいけないし、もちろん政治もそのとおりでございます。  そうした意味において、きょうは象徴的な事件として山一証券の破綻の問題について、こういう事態が起こったときにどうするかということを、再雇用推進の責任者においでをいただいてしっかりと現状をお聞きしたい、こう思った次第でございます。  最初に参考人にお尋ねしますけれども、御社の自主廃業の方針を承知したのはいつでございましたでしょうか。
  32. 陳野眞一郎

    参考人陳野眞一郎君) お答え申し上げる前に一言ごあいさつを申し上げたいと思います。  今、御紹介いただきましたように、私は雇用推進委員長を務めております。当社が破綻、自主廃業を決議した後、お客様初め全国民の皆様に大変な御迷惑をおかけいたしております。改めて深くおわび申し上げます。  また、本日は当委員会におきまして当社の従業員の実情につきまして御報告申し上げる機会をいただきましたことに、委員長初め理事、委員の皆様に厚く御礼申し上げます。そして、今回このような事態に立ち至りまして、全国各層から求人の温かいお申し出をちょうだいいたしております。あわせて厚く御礼申し上げます。  ただいまの、自主廃業の方針と申しますか、これをいつ私が知ったかということでございますが、率直に申し上げまして十一月二十二日土曜日の朝のテレビの報道でございます。
  33. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 これだけの大きな、しかも常務取締役のお立場にある方がテレビで知ったということはちょっと信じがたいわけでありまして、資本金一千二百二十六億円、創業百年、そして国内拠点百十六、海外拠点二十七、グループ関連会社十一社、顧客預かり資産二十四兆円、これは国家予算、一般会計の約三分の一であります。口座数が何と二百四十五万口座、グループ全従業員数が一万七百六名と承知いたしております。  実は、予算委員会の資料要求に基づいてきょう配付をされました資料によりますと、野澤社長名の「「自主廃業」にいたる経過」、その中に「役員間で何度も真剣に協議の結果、証券会社としての責任上予測される混乱を避けるため早急に自主廃業に向けて営業休止を行うことといたしました。」、こういう箇所もございます。  本当にテレビでお知りになったんですか。
  34. 陳野眞一郎

    参考人陳野眞一郎君) お答え申し上げます。  今申し上げたのは事実でございます。二十一日の役員懇談会の夜までには、会社が危機的な状況にあるということは社長より我々も認識するところになったわけでございます。そして、役員の間ではこの危機的状況にかんがみまして会社更生法の適用の申請もやむを得ないと、こういう雰囲気がございました。しかし、その席で自主廃業が決定するあるいはそういう方針を決めるという話は出ておりませんでした。
  35. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 にわかには本当に信じがたいことでありますけれども、きょうはその経過を明らかにするのが目的じゃありません。常務取締役のお立場にある方でもテレビで知ったというわけでありますから、ましてやまじめに一生懸命働いている社員にとっては本当に寝耳に水の、まさに悪夢を見ている思いであったと思います。  そこで、起きてしまったことに対して対処するにはどうするかということで、まず参考人にお尋ねいたしますが、自主廃業に伴って進められつつある清算業務の進捗状況、そのことが決定されてから社員の勤務状況等々お述べいただきます。
  36. 陳野眞一郎

    参考人陳野眞一郎君) 私どもは、市場の秩序の安定、投資家保護が大前提でございます。現在、私どもは全社を挙げて全員が総力でもって清算業務に取り組んでおります。  今回の件はすべて経営の責任でございます。その中で、一般社員はお客様にかかる迷惑を幾ばくかでも回避しようと、また当社百年の歴史の最後のページを汚すまいと、粉骨砕身清算業務に取り組んでいるわけでございます。  現在、当社に日本証券業協会から選任されました公正中立なる顧問委員会が設置されておりますが、この顧問委員会より清算スケジュールを早めるようにと強い御指導をいただいているわけでございますが、今申し上げましたように清算業務に忙殺されております。預かり資産二十四兆円、預かり口座二百四十五万口座、この清算業務は大変な作業を伴っております。このような状況の中で、進捗状況を具体的にどうだと、今申し上げる時点には至っておりません。  しかしながら、大口のお客様を中心に進んでいることは確かでございます。一般のお客様がかなりお待ちになっている、こういう状況から見ますと、今後もうしばしお時間をいただくことになろうかと思います。
  37. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 これはそういう状況の中では、いつごろまでに清算業務を終了するとか、見通しについて述べるというのは大変困難なことだと思いますが、めどとしていつごろ、例えば三カ月後とか半年後とか、その辺のところはございますか。
  38. 陳野眞一郎

    参考人陳野眞一郎君) 私どもの業務は非常に多岐にわたっておりまして、自主廃業を決議した後も非常に繁閑の差が激しく、簡単に言えば暇な部署と忙しい部署が非常に分かれております。  概して申せば、本社部門につきましては清算のスケジュールもほぼ見えつつあるかと思います。しかしながら、営業店におきます清算につきましては、いついつまでという計画はございますが、めどはまだ立っていないのが現状でございます。
  39. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 先ほど参考人から顧問委員会、これは言うなれば大蔵大臣の命令に基づいてつくられた管財人に相当するものだと承知いたしております。そちらの方から清算業務を急ぐようにということをせかされているというお話もありました。  きょうは大蔵省の証券業務課長さんにもおいでをいただいております。この顧問委員会という管財人の役割を担う委員会に、この清算業務の進め方についてどういう行政指導をなさっておられるのでしょうか。
  40. 小手川大助

    説明員小手川大助君) お答えいたします。  ただいまの顧問委員会でございますが、現在委員長につきましては元名古屋高裁の長官をやられておりました沖野先生という方にお願いいたしまして、日本証券業協会ですとか東京証券取引所、それから日本銀行のメンバーで構成されております。  今回の件につきまして、私ども基本的に会社財産の整理、それから一般顧客の財産の保護を適切に行っていく必要があるという観点から、今先生から申されましたような指導という格好でやらせていただいております。ただいま参考人の方からもお話がありましたけれども、現在社員の方に非常に頑張っていただきましておおむね順調には進んでいると思いますが、先ほどこれも参考人の方からも話がございましたけれども、証券業につきましてはいろんな複雑な取引がございます。この複雑な取引をすべて清算していく過程では今後いろんな困難が生じる可能性がございますので、その点も含めまして、先日、清算業務についてさらに頑張っていただきたいという趣旨のことを申し上げたというふうに聞いております。
  41. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 証券業務課長さんは、この清算業務を早く終了した方がいいと、こうお考えですか。
  42. 小手川大助

    説明員小手川大助君) 全体のスケジュールにつきましては、今参考人の方からもお話ございましたように、まだ現時点では見えていないところでございます。  ただ、いわゆる信用取引の問題ですとかそういうような問題について、ある程度清算に向けての動きを表に出しませんとなかなか全体の動きが進捗しないというような関係の取引もございますので、そういうような観点から全体の動きについて、これを順調に進めていただきたいというふうに考えております。
  43. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 それは日銀特融も受けているわけですから、早く清算業務を終了して、そして財産を処分して少しでも返していくということは、その立場からいけば当然のことだろうと私は思うわけです。ただ、今参考人からのお話がありましたように目下清算業務に本当に全社員打って一丸となって没頭している状況、その清算業務を進めることと、しかしその間に、それが早くなれば早くなるほど再就職の作業と相矛盾するわけで、大変ジレンマの中で恐らく社員の皆さんは毎日を送っておられることだろうと思うんです。  参考人、そのあたりの状況はどうですか。
  44. 陳野眞一郎

    参考人陳野眞一郎君) まさに御指摘のとおりでございます。清算業務を急げば急ぐほど再就職の機会を逸する、再就職がなされないまま解雇をされるのではないか、このようなジレンマと申しますか矛盾、社員は非常に苦しみながら毎日業務に当たっている次第でございます。
  45. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 労働省にお尋ねいたしますが、山一証券以外にも三洋、拓銀、徳陽シティ、金融機関が破綻いたしているわけでございますけれども、これらの金融機関の雇用問題についての現状を把握している範囲でお述べください。
  46. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) まず山一証券でございますけれども、ただいまもお話にございましたように私ども実はテレビで承知してびっくりしたわけでございます。たまたま月曜日が休みでございましたから、火曜日に出勤してどうしようか、どう対応したらいいか、初めてのケースでございますので、大臣に御相談しましたら、大臣から、やはりこういうものについては自己責任の原則が基本であるけれども、行政としてもできるだけ情報を的確にする、あるいは関係者の連携体制をとる必要がある、こういう御指示がございまして、実は、その日深夜まで関係方面といろいろお話をして山一証券等雇用問題連絡協議会、こういうものを設置しよう、こういうことで努力をいたしたわけでございます。  たまたま翌日に給与関係の閣議がございまして、大臣からこの旨御発言いただき、この協議会を発足させたということでございます。そのメンバーには証券業協会の方、あるいは本日の陳野参考人にも御参加いただいているわけでございますが、私どもとしてはできるだけ関係方面と連携をとりながら、情報を集めながら支援する、これが非常に重要であろう、こういうふうに考えて対処をいたしているところでございます。  基本的には、山一証券の雇用推進委員会で御努力をいただいて従業員の方の再就職先等の確保に努めておられるわけですが、こうした取り組みの結果、十二月四日現在で約千三百社、一万六千人分の求人を受け付けております。また、四百九十名の方が内定取り消しになっているわけでございますが、この方々につきましても約百五十社、八百人分の求人が受け付けをされているところでございます。  その他、北海道拓殖銀行につきましては、これは本店が北海道でございまして、私どもは当然連携をとりながら、基本的には北海道庁あるいはそこの関係機関、関係団体、そういうところで対応を進めていく。あるいは徳陽シティ銀行につきましては、これは宮城県あるいはそこの関係機関、関係団体、そういうところで連絡体制をつくりながら対処をしていく。こういう形でそれぞれのケースに応じた対策を進めよう、こういう考え方で対処しているところであります。
  47. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 今一万六千人の求人が来ているという安定局長からの御報告でございますけれども、そうすると失業者は一万ちょっとでありますから十分満たされるわけでございますが、先ほど大臣の御答弁の中にもありましたように、中高年、女性等々はそんなにないですよという御報告もありました。  このあたり、参考人、どういう実情でございますか。
  48. 陳野眞一郎

    参考人陳野眞一郎君) お答えいたします。  まずは、この全国からの求人、温かい御支援に対して本当に感謝いたしております。先ほど、千三百社、一万六千名の求人、これをちょうだいいたしておることは事実でございます。しかしながら、決して楽観できる状況ではございません。  まず、求人情報の内容でございますが、三十五歳以下の男子、そして当社でミディと称しております女性の契約社員、この三十五歳以下の男子社員とミディと呼ばれる女性契約社員が大半を占めております。また、この一万六千名という数でございますが、求人を求められております各企業様のこれから採用しようとする数の中に山一証券の従業員も含まれると、こういう数字になっておるわけでございます。  先ほど来御指摘いただきましたように、今私どもが大変頭を痛めている問題は、中高年、女性社員、身障者、そして来春採用予定の新卒内定者でございます。これらにつきましては極めて厳しい状況でございます。今申し上げた社員は、当社の約半数以上を占める社員でございます。これらの社員は、現状はほとんど実効的な求人がない状況でございます。まさに社員一人一人が自助努力を求められると、こういう状況でございます。  もう少し詳しく申し上げますと、中高年の求人状況でございますが、何社からも温かい御支援はいただいております。何回も申し上げますが、決して十分とは申せません。待遇、条件、これらを別にいたしましても、有効的な求人数は二百名程度にとどまっております。私どもで三十六歳以上の社員は約三千四百名おります。この二百名がすべて再就職が果たせられたといたしましても、残る三千二百名、九四%の社員は現在のところ再就職がかなわないと、こういう状況にあるわけでございます。まさにこの点が今私どもを大変悩まし、非常に頭を痛めている問題でございます。先ほど来お話が出ていますように、清算業務を急げば急ぐほどこの中高年の再就職先が決まらずにそのまま解雇されると、非常な不安感を持って毎日を過ごしているわけでございます。  先日、柳本労働政務次官より、解雇されるまでに全従業員が再就職先を決めることが肝心だ、政府としても全力を挙げて取り組むと、このような強い励ましのお言葉をいただいております。私どもとしても、百万の味方を得た、このような心強い気持ちでお聞きした次第でございます。  いずれにいたしましても、関係各位の皆様方の一層の御支援、御配慮を賜りまして、この中高年の雇用に関しては今後とも大いに努力してまいりたいと思います。
  49. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 証券業務課長さん、清算業務の進展に合わせて再就職の作業が進んではいるけれども、今お話を聞いたように大変厳しい状況であります。急げ急げということもわかります。しかし、そうした社員の皆さんの再就職の状況もよくお考えになった上で、ごらんになっていただいた上で督励をしていただきたいなと、こんなふうにも思うわけであります。要望を申し上げておきます。  それから、今の中高年、女性、それから障害者、お聞きすれば三十五歳以上の男子、ということは三十六歳以上、私なんかももし山一さんにおりましたらなかなか声のかからない年代になるわけでありますけれども、こうした方々の再雇用の促進について、労働大臣のこれからの取り組む姿勢、御決意をまず伺います。
  50. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 今、参考人から申されたとおりの状況であるということは労働省としても十分把握いたしておりますし、なかんずく経営のミスによって本来何も御存じじゃなかった方がこういう目に遭うということは、社会的公平感からいっても私は大変お気の毒なことだと思います。  そこで、現在かなり情報収集と作業が進んでおります。山一からも採用してやると御好意でおっしゃってきていただいている方々には非常に心苦しいんですが、採用年齢をもう少し引き上げてもらえないかということをお願いしていただくとかいうこともやっております。同時に、労働省としては、先ほど政府委員が申しましたように各都道府県の公共職業安定機関を通じまして、できるだけ求人をしたいという方と働きたいという山一の方々との間のマッチングといいますか、突き合わせを鋭意やっていくように指示しております。  その状況を見まして、場合によってはもう少し広く経済団体に私がお呼びかけをしなければいけないときがあるかなと考えたり、あるいは個別の企業のことについて政府がどこまでやるのがいいのかなと考えたり、中小企業で数は少ないけれども同じ苦しみに遭っておられる方もいらっしゃるわけでございますから、そこのところで今実は私も政治家として悩んでおるというのが率直な気持ちでございます。
  51. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 本当に大事な問題だとは思いますが、悩んでおられるその大臣のお気持ち、本当によくわかる次第であります。  参考人に続いてお尋ねしますけれども、自主廃業決定後の社員の処遇、これはどんなふうになっておりますか。
  52. 陳野眞一郎

    参考人陳野眞一郎君) 自主廃業後の処遇につきましては、各種手当を含みまして給与、賞与につきましては顧問委員会とよく御相談をさせていただいております。結果、処遇は継続されております。また、賃金退職金、賞与その他の労働債権につきましては、東京労働基準局長からも不払いあるいは遅払い、こういうことのないよう強く御指導をいただいているところでございます。
  53. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 参考人にお尋ねしますが、退職金等の労働債権というものは最も優先されなければならないわけでございますけれども、そういう方針で臨んでおられると思いますが、いかがでしょうか。
  54. 陳野眞一郎

    参考人陳野眞一郎君) 退職金につきましては、優先労働債権として当然保護されるべき労働者の権利ではございますが、今後、先ほど来申し上げておりますように顧客への対応、清算業務を円滑にたらしめるためにも、当社の顧問弁護団、そして顧問委員会の確認を得まして退職金は規定どおり確実に支払われると、このように従業員には説明してまいりました。  ただ、今後ある時期に退職者が急増いたしますと、退職金の事務処理が言ってみればパンクするような状態にもなりかねないことが想定されます。よって、退職金の事務処理には今からその準備態勢を検討しているところでございます。  ここで、退職金について、社員の実情をぜひ報告させていただきたいと思います。  現在、当社では住宅ローンを含みます自社株の取得等、会社から融資を受けております社員は三千二百七十五名おります。金額では、住宅ローンが百四十一億円、その他の社内融資が五十五億円、合わせまして百九十六億円。このうち、住宅ローンの内訳を申し上げますと、住宅ローンを受けている社員は八百九十六名でございます。その金額は今申し上げた百四十一億でございます。  問題は、この退職金で住宅ローンが返済できない者、退職金を充当してもさらに残債が残る者、これが三百九十一件、九十五億五千万になります。この退職金と申しますのは、年金と一時金を加えたものでございます。さらに、住宅ローンを含みます社内融資の借入金を今申し上げました退職金で相殺できない社員が現在のところ六百六十九名おります。今申し上げた数字はすべて山一証券、会社からの融資の数字でございます。住宅金融公庫あるいは民間の金融機関等からの借り入れば含まれておりません。また、社員の多くは社内の従業員持ち株会に加入して資産形成に自社株を積み立ててきております。御存じのような状況で、株価は今紙くず同然になってきております。  現在の制度では、退職もしくは解雇の場合、これらの借入金は一括返済が規定となっております。この住宅ローン等の借入金を規定どおり退職金による一括返済を求められた場合、甚だ申し上げにくいことですが、相当数の自己破産の発生も想定され、大変私どもでは懸念、危惧しているところでございます。  当社の破綻は、市場の持つ自浄作用であり、また市場の原理であろうかと思います。しかしながらその副作用は、もちろん従業員の自己責任とはいいながら、職を失い、家を失い、資産も大きく損ない、まさに三重苦、四重苦という、従業員には余りにも過酷過ぎるビッグバンではなかろうかと私は受けとめておる次第でございます。  いずれにしましても、この住宅ローンにつきましては、現在の返済条件が継続される等何らかの対応がなされることを切に私はお願いしたいと思います。
  55. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 本当に大変な状況になるなと想像にかたくないわけでございます。相当数の人がまさに自己破産の状態に陥るんじゃないかという御指摘、見通しがあったわけでございます。  今、何点か問題点を出されたと思いますが、例えば退職金あるいは雇用保険適用の事務手続がパンクするんじゃないかという指摘もありました。これは、何か簡略な方法というのは研究する必要があるんじゃないかと思いますが、労働省見解を伺います。  そしてまた、時間もなくなってまいりましたので、もう一つは住宅の問題で、雇用促進住宅というのがあるわけでございますから、その活用をぜひ考えてみたらどうか、こう思うわけであります。  以上の点について労働省見解を伺います。
  56. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 雇用保険の手続面についてのお話でございますが、これにつきましては、私どもやはり制度はきちんと運用しなければならないという観点から、公共職業安定機関においてこの認定手続等はできるだけ速やかにやることにはいたしておりますが、手続を簡素化するというようなことは考えておりません。  それから、二点目の住宅問題でございますが、御指摘の雇用促進住宅、これは移転して就職する方々のための住宅でありますから、山一証券の社員の方であって今後離職を余儀なくされ転職するというような方につきまして、この活用をできるだけ図るように努力してまいりたいと思います。
  57. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 あと、離職する方々に対する能力開発の必要もあると思います。そしてまた、既に労働省では雇用調整助成金の支給要件の改善を行って、金融破綻に対しても適用することにしたと新聞報道では聞いておりますが、大変大事なことだと思いますので鋭意お取り組みをいただきたい、こう思うわけであります。  そしてまた、大臣にお尋ねいたしますが、やっぱり職を失うということは、命は失わないけれども、その次に人間として誇りを持って生きる上において本当に恐ろしいことじゃなかろうか、そして最も不幸なことじゃなかろうかと思うわけであります。  行革の論議が進んできたわけでございますけれども、その過程の中で職業紹介をいわゆる独立行政法人化するという考えなども論議されました。行革会議の中間報告にはそれが盛り込まれました。しかし、私はそれは間違いじゃないかということも各方面で主張してきたところであります。こうした大量失業、大失業時代到来かと言われる今日の事態であればあるほど公共職業安定所の機能というものはむしろ強化されるべきであって、とてもそんな余裕はないんじゃないかと思うわけでありますが、大臣の御所見を伺います。
  58. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 公共職業安定所は、委員が一番よく御存じのように、強制徴収をいたしました雇用保険失業に対する給付を行いながら新たな仕事をあっせんさせていただくというやり方をやっておるわけでございますから、独立行政法人、エージェンシーというものがいろいろ新聞等で論じられておりますが、もうひとつ私自身が率直に言ってどういう組織なのかがよくわかりません。  もし国の業務としてふさわしくないから完全に民間的だということであれば、今申し上げたような仕事の性格からいって、昔ローマに徴税請負人という人がいたようでございますが、それ以後強制徴収することを民間にゆだねるなどということを民主国家でやったことはないわけであります。  今御指摘になりましたように、失業というのは大変な苦しいことを国民に強いるわけでございます。その職業のあっせんを、もちろん金銭の対価として闊達にやった方がいいという御意見もございます。一部そういうことがあっても私は構わないと思います。余裕のある人はそこへお行きになったらいいと思いますが、余裕のない国民のためには、やはり社会のセーフティーネットとしてこれは国の業務あるいは公の業務として残していただくというのが当然のことであって、何でもかんでも民に移せばいいということから出る最も典型的な私は副作用分野だと思っております。小山先生も私と同じようなことを御主張いただいて、最終報告ではこれがエージェンシー対象業務にならなかったことは、私は国民のために非常によかったと思っております。
  59. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 証券業務課長さん、質問通告はいたしておりませんでしたが、きょうも午前中衆議院予算委員会では参考人質疑が行われておりまして、参議院では既に先週やったわけでございますけれども、行平山一証券前会長について質疑を行ったわけであります。  きょうの読売新聞を開きましたら、「山一証券の飛ばし 「大蔵、六年前から承知」」という記事も出ております。現在の野澤社長さんは、私たちが悪いのでございます、社員が悪いのではございません、社員を助けてくださいという涙ながらの会見をした。これは全世界に流されたわけでありますが、決してあれは共感を得るものではなかったと思います。本当に、泣いている場合かと、こう言いたいわけであります。  そしてまた、きょうの読売新聞が報ずるようなことが事実であったとしたならばこれは大変重大なことであります。こうした無責任な経営者が法令違反をして行ってきた経緯によって、これだけ多くの人が職を失い、これだけ多くの社会不安を生んでいるということに対して、証券業の担当課長さんとしてどんなふうにお考えかお聞かせをいただいて質問を終わります。
  60. 小手川大助

    説明員小手川大助君) 今回の件につきましては、私どももいろいろとじくじたる面もございますが、私どもとしましては基本的に投資家保護とそれから市場秩序の維持という観点から最善を尽くしていきたいというふうにやってきたわけでございます。  もちろん、もし違法行為があれば、これは私どもというよりもむしろ証券取引等監視委員会の方のお話になってくると思いますが、その際には厳正な処断をしてまいりたいと考えております。
  61. 小山孝雄

    ○小山孝雄君 参考人、どうも御苦労さまでした。  終わります。
  62. 長谷川清

    ○長谷川清君 ただいまの山一など現下の問題につきましては午後からの同僚議員によって質問の予定がございますので、私は特に大臣中心にしながら労働という分野大臣の御認識や考えというものをお聞きしてみたいと思います。  最初に、行革という部分について二、三点お伺いしますが、既にもう石渡先生質問の中でお答えになっております名称のことです。  お答えによりますと、労働福祉ということは雇用福祉よりはいい、労働はもっと広範な意味を持つ、私もそう思います。その点においては全く同感でございまして、雇用という言葉労働にとっては非常に重要な玄関口ですから、まず雇用がなければ労働という状態が生まれないわけであります。雇用にさらに仕事、働くという状況になって初めてそこに働く条件という問題や働く環境という問題や、一たび何か問題が起こった場合には争議という権利や、いろんなものがそこに入っていて労働というふうになるはずでございます。これは二十一省庁を十二省庁にまとめたという前提がありますから、その前提の上に立ってのこういう労働福祉省というのは私は一定の評価ができると見ております。  大臣は厚生次官もされておりますから、厚生省は何か格下げだみたいなことでこれに不満を持っておるようでありますが、よもやこれがひっくり返ることはないと思いますけれども労働福祉という意味を込めた、労働福祉ということが横軸で非常に論議しやすくなるということは私はいいと思いますので、その辺についてぜひひとつこれは守っていただけるように努力していただきたいと思っております。  それから、この行革という問題について、まず大臣基本的にどういうふうに考えておるのかという点をお聞きしたいんですけれども、私は行革の目的いかんによりましてはその作業の手順、手段というものが変わってくると思います。私の考える真の行革というのは、どちらかといえば今国がやっておる仕事、これから民間に移せる部分、それを拡大するために経済面における規制の緩和をして、民間がそれを拡大できるように、受けられるように環境状況を整えていく、そこがまず第一だと思います。  第二に、今ある仕事から民に移りますね、次に残ったところを今度は地方にゆだねた方がいいという仕事を洗い出して、今やっている国の仕事が結果としてこれだけ移管されたよ、それが国のやる仕事ですよという仕事がまず明確になって、そこで最後にそれをどういう省庁組織化すれば一番合理的であるか、こういう手順でいけば私は行き着くところに行き着くのではないかと思う。  ところが、今やっておりますのは二十一を十二に、形から入りました。そうなりますと、労働福祉というようなところのまとめ方は、これは私はいいまとめ方になっていると思います。あるいは環境庁を環境省に格上げしたり、これもうなずけます。あるいは教育と科学、文化、技術、こういったところをセッティングして小中学校からもう科学に親しむようにカリキュラムの中に、これも私はうなずける。しかし、四つぐらいの強大な省庁ができてくるわけですから、そこが新たな圧力団体になって、仕事を切っていくという作業、このものをなかなか退けられない、事実上の抵抗に遭っていくという仕組みになってくるのではないか。  そこら辺のことを含めて、いわゆる行革の目的や大臣の考える基本的なねらいというものをお聞きしておきたいんです。
  63. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) まず初めに、お尋ねにお答えを申し上げます前に、労働福祉省のことについて長谷川先生から御言及をいただきまして、私も全く同じ考えでございます。  もっと申し上げれば、私は名前ということもある程度は大切でしょうが、新しくできた役所が国民のために、自分のポストだとか省庁間の権力争いをせずに伸び伸びとしっかりやってもらうということは基本だと思いまして、この前小泉大臣と二人でお話をしまして、お互いの役所諸君には、名前が一たん決まったらそれにこだわらず、自分のポストにこだわらず、一緒になったときに自分の省の局の大きさ、多さにこだわらずやらせるようにしようということを実は申し上げたわけです。  その後、厚生省が示唆したかどうかわかりませんが、いろいろな動きがあったのは先生が御指摘のとおりであって、もし役人関係団体にそのような働きかけをしているということであれば、これはもう言語道断のことだと私は思っております。福祉という言葉が、厚生省の所管からいえば非常に範囲が狭いからこの福祉という言葉を直してくれということであれば、私は別にそれはそれで構わないと思っておりますし、もっと中身を大切に、国民のために働くんだという気概役人諸君に持ってもらいたいと私は思っております。  二番目の行革に対する基本的な考え方は、もう先生が今非常にきれいに整理をしていただいたので、私は先生のお考えに何らつけ加えることはございません。  結局のところ、橋本さんのやっている六つの行政改革を含めた構造改革というのは、実は六つの未知数を含んでいる六つの方程式を解くということであって、おっしゃったように解は同時に本来は出てくるものだと思います。ただ、我々は実務を担当し、時間の制約に追われ、実体社会の中に生きておりますから、六つの未知数の方程式を解く方法として一つの未知数にkという数値を入れて、それによってあとの解を取り出してくるという方法もあるわけであって、地方分権委員会というものの勧告をある程度受けながら、橋本さんはまず省庁の形を決めて、その形の中で自分たちの局の数、課の数をも制限し、今おっしゃったように何を地方に譲り何を民に譲りという作業を促進させようとしたのではないかと私は思うんです。  ですから、整理の仕方としては長谷川先生からまことにきれいに今御説明いただいたとおりでありますので、その解の導き方に橋本総理は今のような方法をとられたと私は理解いたしております。
  64. 長谷川清

    ○長谷川清君 現実は形から入りましたから、その形に基づいてこれから仕事の整備がされていくと思います。  その場合に、規制緩和という問題について、私は、平岩レポートでも出されておりましたその精神は、経済面においては原則規制緩和、もうこれは一〇〇%近く。新たな規制が必要なら新たに植えればいい、こういう概念。しかし、労働省が今やっておる、またこれからやろうとする仕事というのは、そういう経済面における原則規制緩和という概念がそのまま画一的に労働省の中の作業に入ってくるということであってはならぬと私は思っております。来年の三月ごろにはそれをまとめていこうという作業が出てまいりますから、その中で私はぜひ生かしていただきたいという意見を持っております。  その点について、前段のこととの関連で大臣のお考えを一言聞いておきたい。
  65. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 先ほど来御答弁申し上げておりますように、あらゆる政策には効果副作用というものがございます。したがって、規制緩和を進めていく結果、プラスの面はたくさん出てまいりますが、同時にマイナスの面が出てまいります。今先生の御指摘になったのは、規制緩和を進めることによって働く人たちの勤務条件やその他もろもろのことに副作用が出てくるかどうか、出てきた場合にそれをどうするかというお尋ねだろうと私は思います。  まず、労働分野法律というものや規制というものが全くの社会的な規制であるかどうかというのは、これはちょっと私は議論が分かれるところじゃないかと思うんです。ただ私が、先ほど来御質問があったように労働福祉省の方が経済労働省よりはよかったと思っているのは、まさに今先生の御指摘のところでございます。  したがって、副作用を恐れていては国際社会の中で日本経済戦争に勝って、現在の国民の生活水準を守っていくということはできませんから、それには立ち向かわねばなりませんが、副作用は最小限に抑えるように御趣旨を十分拳々服膺してやらせていただきたいと思っております。
  66. 長谷川清

    ○長谷川清君 時間がたつのは早いので、あともう半分しかございません。裁量労働であるとか時間外労働とか、そういうことをまとめまして、いわゆる労働者の働き過ぎという状況を緩和するための、あるいはなくしていくための視点に立って、裁量労働というこの新しいありようが今回ホワイトカラーのグループの中にも拡大をしようという動きになってきております。  確かに、これらの問題というのはこういう机上でいろいろ考えますといい部分がたくさんあるし、やってみようかという気になることもわかるわけであります。しかし、この机上と現実という問題、かなりギャップがございます。成功する場合と不成功に終わる場合との格差が非常に大きいし、普通日本社会では完全な終身雇用制、年功序列という、ある意味では文化とも言えるようなこれの優秀さを誇ってきておりまして、それがだんだん時代とともに多様な方向に変化しつつあります。これを私は否定するものではございません。  しかし、労働者がいろいろな意味で犠牲になることを保護していかなければなりません。それから、労使はやはり対等だという原則も貫いていかなきやなりません。そういうことの意味において労働省それ自体の存在が、やはり法律において規定すべきものは規定していくというようなことなど、そしてまた経営側に対してもいろいろな面において促していくという部分というものがなければならぬと思います。  来年になりますと、これらを中心として具体的な法案審査がされると思いますけれども、そういう働き過ぎということの問題について、それを保護していくというか防いでいく、こういう視点に立っての見解というものをお伺いしておきたいんです。
  67. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) ただいま御指摘ございました働き過ぎの防止という点につきまして、先生の方から例に挙げられました裁量労働制についてまずお答えを申し上げたいと存じます。  裁量労働制でございますが、経済活動がグローバル化する中で、企業の本社等の事業活動のいわば中核にある労働者の方々が、実際上業務の遂行方法、労働時間の配分等も本人に相当ゆだねられて、日々創造的な能力等の発揮に当たっている局面が非常に増加しておりまして、したがって、そういった創造的な能力を引き出すためにもそういう働き方が望ましい、こういった考え方も一般に出てきておるわけでございます。  また、労働者の側からも、そういった働き方をして主体的な能力を発揮していきたい、こういう方々もふえておりまして、労働基準法上そういった方々の働き過ぎを防止するようなルールをどう設定していくかという観点から裁量労働制のあり方等も論じられてまいってきておるわけでございます。そういった方々について、働き過ぎにならないような、また労働環境、健康等に配慮した措置をどうするかという観点から中央労働基準審議会の方で御議論がなされておったわけでございます。  去る四日に本審議会に出されました部会の報告を見ますと、今までの裁量制とは異なり、事業場内に労使委員会を設けて賃金労働条件全般を調査審議する、こういった中で、法律で可能な限り明確化した上で具体的な対象範囲を労使委員会で限定するとか、深夜・時間外労働は適用除外になりませんので、そういった勤務状況を把握して働き過ぎ防止のために労使委員会でどういうルールを設定するか、そういうことをあらかじめ決めて監督機関に届けることを実施要件とすべきだ、こういった考え方が出されておるわけでございます。  私ども、これからの課題といたしまして、労働大臣あての建議が出されましたならば、働き過ぎ防止ということに相当意を尽くされている報告でもございますので、その辺の趣旨を十分受けて具体的な制度化に取り組んでまいりたいと思っております。  また、そういった新しい働き方に対応するルールの設定に当たりまして、裁量労働制以外の部分についてもいろいろ論議されておりますが、いずれにいたしましても働き過ぎの防止あるいは健康といった労働者保護の観点を我々は十分念頭に置いて制度の具体化には当たってまいりたいと考えておるところでございます。
  68. 長谷川清

    ○長谷川清君 いずれにしましても、この裁量労働のような制度になってまいりますと、どうしても使用者側の方では労働力は何の規制もなく自由に自分でやりたい、使いたいということが働きますし、なおかつ生産性を上げたい、これは本質だと思います。また、仕事をする側の方も、できれば自分がよく思われたいという心理が働いたりします。ですから、弱いところほどいろんなひずみが出てくると思いますから、これは厳格にひとつ労働省は見ていただきたいと思っております。  次に、女性の問題。女性労働が数の上においても拡大の一途をたどっております。また、少子化への対応について、これはもうある意味では国民的な課題にもなってきております。それぞれがリンクしておりますので一括して質問としたいのであります。  我が国における生産活動をしている人口という点から見ますると、これは二十から六十四歳まで、今日、一九九五年の段階で六二・六%であったわけですが、二〇一〇年には五九%に、二〇二〇年には五五%と、かつてない初めての経験に入るという状況になっております。  そういう中で、女性労働が拡大をしてきている。私は、今の女性労働が一方で拡大をしている割には、その環境は整っていないし不整備だと思います。そういう点についての意見、見解。また、少子化対策の問題、家庭の中にあっては育児や介護、そういうものがいろいろと女性にはかぶっております。そういう点で、労働省は二十一世紀に向けてどういう取り組みをしようとしているのかお伺いをしたいと思います。
  69. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) お答えいたします。  今、先生御指摘のとおり、女性労働者はここ本当にふえ続けているわけでございまして、その中におきまして勤続年数が延びているとか職域が拡大するとか、日本経済の中における女性労働者というのはまさに必要不可欠な存在になってきているわけでございます。加えまして、今先生御指摘になりましたように今後高齢化少子化が進んでいきますので、さらに女性に対する期待、女性労働者が生き生き伸び伸びとこの社会の中で活躍できるような状況をつくっていかなければいけないというふうに考えているところでございます。  そういう点から申しますと、男女雇用機会均等法等によりまして女性たちの雇用環境を整備していくというようなことと同時に、職業生活と家庭生活の両立の支援ということにつきましても一層充実していく必要があるというふうに考えておるところでございます。  現在も、育児休業とか介護休業を取得しやすく職場復帰しやすいいろいろな整備をやっております。また、育児や介護をしながら働き続けたいという方々に対しましては、そういうことのできる環境の整備も行っているところでございます。またさらには、育児・介護のために退職した方に対しましては、再就職をするときに再就職がしやすいというような支援も行っておりますが、こういうような両立支援対策につきましては今後さらに一層充実してまいりたいというふうに考えております。
  70. 長谷川清

    ○長谷川清君 確かに、女性の問題はいろいろと多岐にわたって課題が多いと思います。  賃金一つをとりましても、諸外国の男女比較を見ますると、日本は六三・五%、アメリカは七五・五%、フランスは八〇・八%、ドイツは七四・二%、イギリスも七一・二%。日本は非常にこの男女間の賃金格差が大きい。その原因は、やはり実際に雇用側の方から見ますると、女性は割と勤続が短くてすぐにやめる、こういうことがまず現実としてありますから、だから会社としては消極的になって、その人の昇給あるいは昇格、そういったような部分で、あるいはそこに能力開発、研修というようなものをなかなか施さない。したがって、そういうものが賃金にはね返っていって賃金格差が生まれていく、こういう循環が現実の中にあると思います。  こういう問題一つをとりましても、きょうにあしたにふっと変わっちゃうわけじゃございません。女性が本当に社会のあらゆる分野において参画できる、また一たび参画をしましたら多様な仕事を通じて自己啓発ができる道や環境、また能力を備えるための研修、今ほとんどない。それを定着化しながら、こういうものの一つ一つを現実の中で解消していくということの必要性を感じております。  少子化の問題についても、これはまたいろいろと言えば切りがないぐらいの時間をとると思います。  次に、政府が過日、緊急経済対策を講じようとしたときに、ハッピーマンデーというものを、これはもう当然盛られると私どもは見ておりました。それが没になった理由を本当は知りたいのでございます。実際にこれは、祝祭日を月曜日に振りかえるだけでもって三連休、三連休になることによって相当の経済効果というものが、環境であるとか交通であるとかレジャー分野であるとか、それに関連する関係商品であるとか、僕はこれは知恵のあるやり方だと思って期待をしておりました。しかし、これを没にしている。  単に、これは運輸省であるとか経済企画庁が喜ぶのではなくて、労働省においてもこのハッピーマンデーをやることによりまして、労働省が唱えております職場と家庭の両立社会にも役立つはずでございます。  例えば、それを裏づける資料もございます。男性の有職者と女性の有職者、職を持っている男女、それが平日の場合に家庭で家事や介護を行う時間、平日、男性の場合は二十六分です。わずかなものです。それに対して女性は三時間十八分。土曜日は男性が五十八分、女性は三時間五十二分。これが日曜日になりますと、男性では一時間二十六分、女性は二時間二十六分と下がっている、少しバランスがとれる。これはウイークデーの中のぽつんとある祝日だからごろ寝か何かで終わっちゃうんで、三連休にすることによってそれができる。これは実績として効果が出ているということでもございます。  労働省立場からも、これはむしろ機をねらって推進しなきゃいけないものだと存じますけれども大臣、これは閣僚の一人としてどうお考えなのか。
  71. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 閣僚の一人としてというお尋ねでございますが、お許しをいただいて政治家の一人として答えたいと思います。  私は、このハッピーマンデー構想が、今御指摘がございましたように景気対策、緊急経済対策として論じられることには非常に抵抗を持っております。ゆとりのある生活のために、あるいは時間に追われない、哲学者のセネカが言っておりますように、世の中で一番偉い人は、次々と予定を持って動き回る人ではなくて、予定がなくてゆっくりと物を考える人だという言葉があります。三連休になれば、時間に追われて旅行をしたりゴルフをしたりするんじゃなくて、せめてゆっくりと、経済効果はないけれども、もっと重要な思索の時間に費やしてもらうなら結構だと私は思っております。もちろん家族の楽しみ、家族のつながりを家庭で大切にしながら家族の価値観というものをもう一度再確認する日であっても私は構わないと思いますし、働く人たちのゆとりのある日という意味では三連休であった方がいいのかもわからぬと私は思っております。  ただ一方で、先生承知のように、日にちが動かせない休日以外の四つほどの休日について御議論になっているんだと思いますが、それについてもやはり歴史的な日本の沿革、文化みたいなものがくっついておるところはやっぱりあるわけですね。伺うところでは、これをどうするかというところに異論があったようで、ただいまそういうことも含めながら与党間でお話し合いをされているようでございますので、私は労働省という立場からは、時間に追われて遊んで金を使うために三連休にするというのは反対でございます。しかし、ゆっくりとする日をとるというなら本当に結構なことだと思っております。
  72. 長谷川清

    ○長谷川清君 もう持ち時間があと一分ぐらいになりましたので質問はこれで終わります。  雇用サミット、そこにはICFTUも参加をしておったということでございます。その中でも高齢化という問題が、私は、先ほども答弁の中にありましたように定年の延長ということ、当面六十を六十五歳に、まずこれを急ぐということが大事だと思います。既にあるシルバー人材センター、私はこれは計画を立てて十数年になると思いますが、ちょっと育ちがまだ悪いんじゃないか。何も三千三百市町村全部につくる必要はないと思いますが、もっとスピードを高めてその需給関係の必要のある箇所にこれを設置するということ、年々歳々の箇所をまずふやすこと。  それから、今いろんなところにシルバーセンターの人たちは出かけるわけですから、ふすま張りもあれば、庭いじりが得意な人もいれば、あるいは英会話ができる、あるいは筆の立つ人、また公園などの案内人、そうやって集団でやるときに作業服が非常にみじめ過ぎる、もっと明るく。それぞれがOBになって、今までの何十年培ってきたいろんな仕事、得意な技をあれして社会の一員として貢献していくという、これは高齢化の中で非常に陰の力。だから、私はこれにもっと労働省は力を入れてもらいたい、こうお願いをいたしまして質問を終わります。
  73. 星野朋市

    委員長星野朋市君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  74. 星野朋市

    委員長星野朋市君) ただいまから労働委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、労働問題に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  75. 武田節子

    ○武田節子君 平成会の武田でございます。  私は、まず山一証券の自主廃業申請の経緯と大蔵省の責任について伺います。  山一証券の経営破綻を知らされないまま、まじめに働いてきた従業員の声は悲痛な声でございました。報道によれば、山一証券の中堅社員は次のように言っております。  三洋証券は会社更生法の適用を申請したのに、なぜ山一証券は自主廃業なのか。それは第三者の管財人が入ると飛ばしの実態がすべて明るみに出るからです。飛ばしにかかわった得意先や関連企業、監督責任のある当時の大蔵省幹部まで責任追及される。自主廃業は大蔵省と不正を知っていた経営幹部との談合としか思えないと語っていますが、それはけさの読売新聞にも出ているとおりでございます。  このことからしても、従来山一証券の簿外債務のうわさがあったのにそれを見逃してきた大蔵省の責任は大変重いと言わざるを得ません。こうした中堅社員の指摘に対して大蔵省はどう弁明なさるのですか、明らかにお答えいただきたいと思います。
  76. 山本晃

    説明員(山本晃君) お答えいたします。  私ども当局といたしましては、従来から投資家保護及び信用・市場秩序の維持安定を第一義としてきたところでございます。  山一証券の自主廃業に至る経緯についてでございますけれども、山一証券の方からは、本年の七月に総会屋への利益供与が明らかになったこと、また最近の株価の急落、あるいは外国の格付機関によりまして最終的には投資不適格という判断がなされた、こういう格付の低下等によりまして市場における信用が急速に低下をしてきたということ、そしてそうした中で、最近になりまして多額の簿外債務の存在が判明したということから、これ以上の通常業務の継続は困難であるという判断に至り、十一月二十四日に自主廃業へ向けて営業の休止を決定したという報告を受けたものでございまして、自主廃業は同社の自主的な経営判断によるものであるというふうに私どもとしては理解をしているところでございます。
  77. 武田節子

    ○武田節子君 山二証券の自主廃業申請を受けて、大蔵省は山一証券に対し十一月二十五日から特別検査に入っているとのことですけれども、検査の結果がはっきりするのはいつごろの見通しですか。財務面の検査、取引行為の検査、両面からお答えいただきたいと思います。
  78. 東正和

    説明員(東正和君) まず、金融検査の実施状況につきましてお答え申し上げます。  金融検査部といたしましては、山一証券からの自主廃業に向けての営業休止の届け出を受けまして、御指摘のように去る十一月二十五日から資産内容及び財務内容についての厳正な実態把握を行うべく検査に着手したところでございます。この検査の具体的な取りまとめの時期でございますが、何分にも現在まさに速やかな作業の進行にも留意しつつ鋭意作業を進めているところでございまして、具体的に確たることは申し上げられない状況でございます。  ただ、一般論として申し上げますと、金融検査におきましては、山一証券のようなケースについてはまず簿外債務に関しまして、御指摘のような海外での債務を含めまして帳簿に記載されていない多額の債務の厳正かつ精緻な実態把握に努める必要がございます。さらに、膨大な口座数に上ります顧客からの預かり資産につきまして精査する必要もございます。このような実態把握のためには、まさに膨大な資料に基づきまして作業を進め、結果的には検査終了までにある程度の期間を要するのではないかと思われるところでございます。このような実情につきまして御理解を賜りたいと存じます。  ただし、そうは申しましても、このような実情のもとにあるといたしましても、金融検査部といたしましてはできるだけ早期に取りまとめるよう最大限努力してまいる所存でございます。
  79. 武田節子

    ○武田節子君 大変な処理事業ですから多分期間が長くかかるだろうとは思いますけれども、検査が長くなればなるほど金融不安が増大して従業員の間にも不安感が募ってきますので、厳密に検査することは当然でございますけれども、早急にやるべきだと思います。  しばらくの期間とおっしゃいましたけれども、三カ月ぐらいより短いのか長いのか、おおよそのめどをお答えください。
  80. 東正和

    説明員(東正和君) 先ほど申し上げましたように、具体的に三カ月とかあるいはそれ以上とかそれ以下とか、確たることを申し上げるような状況にない点は何とぞ御理解を賜りたいと存じます。  そうは申しましても、まさに御指摘のようにできるだけ早く、精いっぱい努力してまいる所存でございます。よろしく御理解のほどをお願い申し上げます。
  81. 武田節子

    ○武田節子君 それでは、仮に債務が資産を上回る債務超過といった事態となった場合には大蔵省はどのような対応をとられるのでしょうか、お尋ねします。
  82. 山本晃

    説明員(山本晃君) 山一証券のケースにおきましては、山一証券は簿外債務というもの等を認識した後で約一千九億円の資本勘定を有しているという状況でございまして、現状においては私ども債務超過ではないと認識をしております。したがいまして、通常、証券会社が破綻をした場合には、投資家保護の観点から財団法人寄託証券補償基金というものがあるわけでございますが、その発動は現在のところ予定をされていないわけでございます。  ただ、仮に今後の労働債務の増加、と申しますのは、今、山一証券は新規の営業というものを休止しているわけでございます。したがいまして、ほとんど収入が入らないで、そしてただ顧客への返還業務というのは通常どおり行っているわけでございますから、そこで労働債務等が発生をするわけでございます。  また、保有財産の価格変動、これは山一証券の報告があった時点、つまり十一月二十四日時点での時価を基準に保有財産というものを評価しているわけでございますが、今後のこういった価格変動等によりまして仮に債務超過になるような事態になった場合には、その最終処理も含めまして、寄託証券補償基金の法制化あるいは同基金の財政基盤の充実や強化等を図りまして十分の処理体制を整備すべく適切に対処する所存でございます。
  83. 武田節子

    ○武田節子君 山一証券の自主廃業で七千五百名が解雇されることになりますけれども賃金、ボーナス、退職金の支払いがどうなるのか大変気がかりでございます。  というのも、山一証券の行平前会長は、さきの十一月二十七日の参議院予算委員会参考人質疑の中で、債務超過に陥る可能性を完全に否定したわけではなく、賃金等支払いがどうなるのかがはっきりしておりません。まず、給料の支払い、ボーナスの支払い、退職金の支払いについての見通しについて労働省はどのように見ておられますか、お尋ねいたします。  例えば退職金の場合、一人一千万円平均としても七百四十億円、毎月の給料が一カ月で総額三十億円、一年間で三百六十億円、ボーナスが四十億円と言われております一これを概算合計してもざっと千百四十億円になります。果たして、これが自力で支払われるだけの能力があるのかどうか心配でございますけれども、いかがでございますか。
  84. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 山一証券の状況でございますが、先ほど大蔵省の方から答弁がありましたように、現在のところ債務超過ではない、こういうことでございますので、私ども、今後の定期賃金それから退職金等についても支払われていくものというふうに考えております。今後、事態をよく私どもも関心を持って見ながら、大蔵省とも十分連携をとってこれら労働債権には万全を期してまいりたいと思っております。  現在のところ、今までの定期賃金退職金についてはもちろん未払いは生じておらないわけでございますが、私どもも、今後の清算業務の中で労働債権について万全の措置がとられるように、去る十二月五日には東京の労働基準局長から野澤社長に対しまして、そういった労働債権の保全につきまして必要な要請を行いまして、その際、賃金等について今後も規定に従って支払う旨の回答を会社の方からも得ておるところでございます。  それから、先生の方から今後の退職金、給料、ボーナス等について試算数字を挙げてお話がございましたが、私ども、山一証券の社員の方の退職金につきましては、現在一人平均約六百万程度になるのではないかというようなことで、合計約四百五十億円程度になるのではないかというふうに聞いております。また定期賃金については、御指摘ございましたように月額約三十億円ということでございますが、今後退職者の発生によってそれが低減していくということが考えられますし、また今期の冬季分のボーナスについては既に支払われておるわけでございますが、来年の夏季分のボーナスにつきましてはもちろんこれからの労使の話し合いによってその支払い基準等が決められることになろうかと思います。  そういったことで、具体的な額の算定は現在のところまだ困難でございますが、いずれにいたしましても、先ほども申し上げましたように、今後の清算手続等が進められていく中でこの労働債権というものについて万全の措置が期せられますように、会社あるいは大蔵省とも十分連携をとってまいる所存でございます。
  85. 武田節子

    ○武田節子君 山一証券の破綻処理の仕組みの中で顧問委員会が管理することになっておりますが、これの構成メンバー、役割について御説明ください。
  86. 山本晃

    説明員(山本晃君) 山一証券に対しましては証券取引法の第五十四条に基づく処分といたしまして、新規の業務を行わないこと等を内容とする業務の方法の制限及び会社財産の保全を図るための措置を命じたところでございます。  また、この処分の一環といたしまして、顧客資産の円滑な返還等を確保して会社財産の保全を図るために、証券業協会が選任をいたしました公正中立な者から成る顧問委員会委員長は沖野さんという元名古屋高裁の長官の方でございますが、この顧問委員会を社内に設置いたしまして、この顧問委員会と協議の上で業務及び財産管理を行うということを山一証券に命じたわけでございます。  現在の顧問委員会の構成メンバーでございますが、沖野委員長のほかに、日本銀行、東京証券取引所、日本証券業協会の職員各一名の計四名から成り立っておりまして、条規の命令に基づきまして顧客資産の円滑な返還等を確保するため、業務及び財産管理について山一からの協議を受けている、こういうことになっております。
  87. 武田節子

    ○武田節子君 この顧問委員会は顧客資産の返還や債務弁済、資産の売却等の管理をすることにはなっておりますけれども、従業員の労働債権については責任を持って対処するのでしょうか。大蔵省、いかがでしょうか。
  88. 山本晃

    説明員(山本晃君) 山一証券の方からは、従業員の賃金退職金、これは通常どおり支払う方針であるというふうに聞いております。  顧問委員会は、先ほどもお話ししましたように、顧客資産の円滑な返還等を確保して会社財産の保全を図る。つまり、会社財産が毀損されることのないようにというために設置されたものでございまして、業務及び財産管理について山一から協議を受ける、こういう構造になっているわけでございます。従業員の労働債権についても、必要があれば会社からの相談を受けることになると思われるわけでございますが、この点につきましては、当然のことながら会社の方針が尊重されるのではないかというふうに考えております。
  89. 武田節子

    ○武田節子君 顧問委員会においては法的には労働債権に対する責任、権限はないかもしれませんけれども、実質的には顧問委員会が権限を持って管理しているわけですから、労働省は労基法を遵守させる立場からも、この顧問委員会とも接触し、かんでいくべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  90. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 先ほど来労働債権のことについていろいろ御心配をかけているわけでございますが、総論から申せば、山一証券は債権、債務を洗い直して、債務は超過していない、債権がかなり上回っているということを大蔵省から我々は伺っております。  ただ、率直に言って、大蔵省には再三いろいろ失敗をした過去があるわけですから、必ずしも一〇〇%信用しているわけではありませんけれども、債権がかなり上回っているというその債権の中には労働債権が入っておるのは当然のことであります。  ただ、先生承知のように、資産の中には固定系の資産がございます。ところが、負債には流動性のものが非常に多うございますからすぐに引き出しに来る、それにこたえるには固定系の資産を流動化しなければならない。その間をつなぐために実は日銀特融というものを行って資金繰りを円滑につけているわけでございます。  私ども労働省は山一証券に対する行政指導権も、同時に検査権も一切ございません。したがって、その権限を有している大蔵省と緊密に連絡をとりながら山一の話を聞いて、そして、午前中も参考人からお話がございましたように、給与、退職金については受け合います、こういうことでございますから、念を入れて東京労働基準局から指導させているというのが現状でございます。  我々は、大蔵省から間違いのない情報を期待いたしたいと思いますし、その情報に従って動いているということを大蔵省も十分認識をしてもらいたいと思っております。
  91. 武田節子

    ○武田節子君 ぜひ、労働省の方からもしっかり大蔵省への働きかけをよろしくお願いしたいと思います。  次に、再就職問題に対する対応について伺いますけれども、大蔵大臣は十一月二十四日の記者会見で、山一証券従業員の雇用問題について、それはまず経営者が責任を持って対応すべき問題であると、実にそっけないコメントを陳述していることに私は国民の一人として強い憤りを覚えます。なぜなら、こうした結果を招いたことの重大責任は大蔵省にあることは否めない事実でございますし、大蔵省はこの事実をしっかりと受けとめていただきたいと思います。  そこで、大蔵省としても金融機関経営破綻に伴う再就職問題について労働省と積極的に連携をとっていくことがせめてもの責任のとり方ではないかと思いますけれども、何か具体的な対応策を考えておられますか。
  92. 山本晃

    説明員(山本晃君) 大蔵大臣が述べたのは、恐らく一般論として述べた部分についてのみが報道されたのではないかというふうに思うわけでございます。  山一証券の問題につきましては、実は十一月二十六日に伊吹労働大臣の御発議によりまして、山一証券等雇用問題連絡協議会というものが設置されまして、この第一回の会合が先週、十二月四日に開催されたところでございます。大蔵省といたしましても、特に労働省との連絡を密にして事に当たってまいりたいというふうに考えております。
  93. 武田節子

    ○武田節子君 大蔵大臣は一般論のみをおっしゃったと思いますけれども、やっぱりその言葉の中に、そこで働いて失業した従業員の痛みに対するものがそこにあらわれているかどうかということが私は問題だと思って憤りを感じたわけでございます。  金融ビッグバンの本格化に伴ってリストラや倒産による失業者が増大する一方で、金融機関の貸し渋りのために取引企業が資金調達難に陥ってあえなく倒産するケースが多発していることはもはや周知のとおりでございます。  自主廃業を申請した山一証券では、ごく一部の人間の無責任な経営によって七千五百人の従業員、関連企業を加えると一万人を超え、家族を含めると四万人から五万人もが路頭に迷うような重大な事態を招いてしまったわけでございます。このことを私は重く受けとめるべきだと思います。  例えば、恐らく従業員の皆さんは、長引く不況に対して、あるいは株価の大暴落続きに悩み、苦しみ、何とかこの年末を乗り越えて新年こそ新しい気持ちで頑張ろうと決意していたことと思います。そのやさき、しかもこの年の瀬に会社廃業、失業とあっては、人生一瞬にして奈落の底に突き落とされたも同然だろうと思うわけであります。従業員一人一人、またその家族の方々の人生、生活の重みに深く思いをいたすべきと思います。  労働省は十一月二十六日、山一証券等雇用問題連絡協議会を設置したという報道がなされておりますけれども、私はこれだけでは対応は不十分であると思います。労働大臣として、金融ビッグバンに伴う失業者の増大に対処するため、政府大臣の主導のもとに雇用対策本部を設置し、積極的に失業者の再就職先の確保を図っていくことが必要であると考えますけれども雇用対策本部の設置を閣議で提案していくお考えはございますでしょうか。
  94. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 今お尋ねの件は、率直に言ってまことに悩ましい御質問だろうと思います。  というのは、大蔵大臣発言について武田先生から御批判、おしかりがございましたが、私は、市場経済においては経営判断を失敗した経営者あるいは企業というのが自己責任をとるというのはこれは原理原則であると思います。しかし、その中において、みずから責任のない多くの従業員の方々や関連企業方々が大変な迷惑をこうむっているということについては、まず一義的にはやはり経営者が責任を持たねばならないし、その経営にある程度参画していたメーンバンクだとか何かの責任は重大だと私は思っております。まず、その責任だけはしっかりと彼らに確認してもらわねばならない、その上でお気の毒な方々に対してはできるだけのことを労働省としてはさせていただく、こういう順序だと私は思うんです。  そこで、山一の例を取り上げて恐縮ですが、今回山一がここに至ったのは、やはり彼らの違法行為、彼らの経営判断のミスです。しかし、従来のような護送船団方式の証券行政をなれ合いでやっておれば、山一は囲い込まれた中でこういうことがわからないまま動いておったと思います。多分これだけの大問題は私は生じなかったと思いますが、結果的には、日本経済の中に腐った果実を抱え込みながら推移してきた従来型の解決方法だったと私は思うんです。  だから、つらいですが、これは新しい秩序への移行のための一つの結果であって、ビッグバンの結果によってこういうことが起こったということは私は否定しませんが、決して原因がビッグバンにあるのではなくて、原因はあくまで経営者の失敗にあるということだけははっきり確認した上でどうするかということを考え、そこで、日本の金融機関はもうこれからは、総じて言えば、かつて大不況のときにルーズベルト大統領が、我々は恐怖そのものを恐怖するという演説をしておりますが、不安が不安を呼ぶという状況を私は最も心しなければならないと思うんです。  ですから、ビッグバンでもう大変な大失業が起こってこれから大ごとになるから政府はその対策委員会を立ててというと、これは市場に対する影響がどういうことになるんだろうか、その結果がかえって悪いことになるんじゃないかということを実は私は考えたり、あるいは北拓や山一の方々を含めて、かつてのエネルギー革命のときの石炭関係雇用対策本部のようなものをつくった方がいいのかなと考えたり、非常に悩ましい御質問だとお答えしたのは実はそういうところでございます。  ただ、先生がおっしゃったように、何の責任もない、一生をその企業にささげて頑張ってきた人たちに対して、再雇用それから労働債権、あらゆる面について我々は温かい気持ちで行政を進めていくことだけはお約束しておきたいと思います。
  95. 武田節子

    ○武田節子君 経営破綻した三洋証券、山一証券、北海道拓殖銀行等の従業員の再就職問題では、各企業グループのほかに一般企業からも従業員受け入れの動きが具体的にあらわれてきていることは大変喜ばしいことだと思っております。  しかし、山一証券では、丸紅など芙蓉グループの関係の深い企業中心に受け入れのための要請を行っているようですけれども、折悪く景気は低迷期にあり、各企業とも雇用数は小規模にとどまっていると聞いております。  政府としても、現行のとり得る施策をでき得る限り活用して、企業グループ全体を対象に再就職の受け入れ要請の働きかけを行うべきではないかと思います。  また、労働大臣として、今もろもろ御意思を伺ったのでございますけれども、先頭に立って経済団体等の代表に働きかけをなさる用意はおありなのでしょうか、お伺いいたします。
  96. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 今、北拓、三洋、山一、いろいろな企業名をお挙げになりましたが、御承知のように一つ一つ実は法律上の手続が異なっております。  北拓は、企業がいまだ存在をしながら持っている営業権を譲渡するという形で企業の将来を展望しようといたしております。三洋証券は、会社更生法という法律手続によって会社の存続を考え、したがって雇用がある程度存続していくという道を実は今探っている。そして山一は、これはもういろいろ、先ほど私は常務取締役の参考人の方がテレビで知ったということを聞いて偶然としたわけですが、結果的には廃業ということを前提に手続が進められている。つまり、山一についてはもう企業はなくなってしまうわけです。あとは企業が存続するかどうかはまだ決まっていない、したがって雇用も決まっていない。  したがって、山一の問題にまず一義的に取り組まねばならないと私は思っておりますし、先ほど来お話がございましたように、特に正規の女性社員の方と中高年齢の方には求人が非常に少のうございます。このあたりを先生御指摘のメーンバンクを初めとしてどのように対応してもらうのか。もう少し求人の年齢を引き上げてくれるのか。場合によっては、そのうちに私がお願いに出なければならないときがあるのかもわからないなということは考えております。
  97. 武田節子

    ○武田節子君 今回の金融機関の一連の経営破綻を契機に、突如として産業間で大量の失業者が現出することが想定されるわけでございますが、可能な限り失業者を少なくするために産業間、企業間の労働移動が円滑にいくように労働市場を整備する必要があると考えますけれども労働大臣はこの課題にどのように取り組んでいかれるおつもりですか、お考えをお聞かせください。
  98. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 午前中の質疑でも申し上げましたように、雇用というのはやはり経済活動に基本を置いておりますので、これ以上日本景気が悪くならないようにしてもらいたいというのが私の率直な願いであります。  しかしながら、今、実体経済面では私は日本はまだまだ世界で一番強い国じゃないかと思っているんですが、残念ながら、バブルの時期のオーバーレンディングとそれに伴う債権の不良債権化のために金融機関の経営が非常に苦しくなっております。したがって、貸し渋りであるとか金融機関の倒産によって、その金融機関が貸し出しをしておられる先の企業が苦しいとか、こういうことが実は一番心配なわけです。  そこで、公的資金導入云々の問題もありますが、本来であればつぶれない銀行に、不安が不安を呼んで、引き出し引き出しと預金者が押し寄せることによって金融機関がつぶれないように政府が確固たる姿勢を示すこと、これが私はもう一番重大なことだと思っております。  その上で、先生がおっしゃったように、これから摩擦的に失業が出た場合に、企業企業の間を動いていく流動化が増してくるわけでございますから、どのような企業にも対応でき、どのような職種にも対応できるような職業訓練技能開発ということはもちろん大切でございます。それから、都道府県知事に通達を出しまして、職安での求人と求職の間の突き合わせ、マッチングを積極的にやるようにということを実は申し上げてあります。  それから、これは将来の課題でございますが、やはり各党にも御協力をいただきながら、職安機能を最大限に発揮すると同時に、民間にもそのような仕事を一部は規制緩和の中で負担をしていただいて、流動化に万全に対応できるような体制をつくっていくということが大切ではないかと考えております。
  99. 武田節子

    ○武田節子君 では次に、山一証券従業員七千五百人がさらされる再就職の厳しさは想像を絶するものがございます。今、各企業ともリストラの真つただ中というタイミングが極めて悪い時期でもございます。  報道によると、ヘッドハンティングにより外資系の企業に移れるのは社員の一%ぐらいであり、専門分野を持った入社五年から十年の社員では再就職先があるけれども、入社三年程度のノウハウの乏しい社員や四十歳代以上の中高年齢社員や技術を持たない総務畑の社員にとっては極めて厳しいと分析しているようでございます。まず四十五歳ではゼロという報道もございましたし、三十年間も勤務していたある幹部の一人の声ですけれども、年金をもらうまでにまだ三年もあるし、仕事を見つけたいが五十五歳を過ぎたらどこも雇ってくれるところはないしという声、また五十二歳の本社部長は、山一がなくなっても人生終わったわけではないと、半ば開き直ったように見受けますけれども、いずれも悲鳴に似た声に聞こえてなりません。  労働省としては、年齢別、職種別の雇用機会の見通しについてはどのように見ておられますか、お答えください。
  100. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 山一証券に寄せられております従業員等に対する求人数、これは十二月四日現在で約千三百社、一万六千人分に上っているところでございます。ただし、その内訳を見ますと、これはまだ数が多いものですから山一におきましても具体的な内容の把握はできておりませんが、判断いたしますと、やはり御指摘のように一部中高年齢者あるいは女性社員に対する求人が少ない、あるいは地域的に見ますと地方での求人が少ない等の問題があるというふうに聞いております。  対策としましては、これは具体的に、先ほどもお話ございましたが、どういうスケジュールで対処していけばいいかという点についてまだ必ずしもはっきりしておりませんが、そのタイムスケジュールの問題と、それから対象となる方々の具体的な条件、これはやはり具体的に突き合わせて対策を考えていくのは当然のことでございますが、雇用保険失業給付による生活安定ということも含めて検討していく必要があるというふうに考えております。  私どもといたしましても、中高年齢者や専門技術を持たない方についての雇用機会の確保、これは厳しい面があると考えておりまして、今後、山一証券が求人を受け付けるに当たりまして、求人条件の緩和あるいは女性社員向けの求人の確保に努めるように要請いたしますとともに、私どもの出先機関、公共職業安定所におきましても、再就職が難しい層についての重点的な求人開拓あるいは職業相談等に努力してまいりたいと考えております。
  101. 武田節子

    ○武田節子君 ありがとうございます。  報道によりますと、山一証券従業員の七千五百人のうち半数が女性社員とも言われております。また、七千五百人の正社員とは別に、毎年雇用契約を更新している山一ミディと言われる雇用不安定な社員が存在しておりますし、賃金の半分以上は歩合給となっているとのことでございます。この方たちは母子家庭の方や老親を抱えて働いている生活の主体者が大変多いとも聞いております。またこの人たちは、顧客からかなり激しい殺気立った苦情を受け、苦しい立場にあるということも聞いております。労組もないこのような人たちのために例えば特別相談窓口の設置などを検討してはいかがかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  102. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 山一証券に寄せられております従業員に対する求人の内訳としまして、ただいま御指摘の山一ミディと呼ばれる証券貯蓄係の女性社員の方々につきまして、従業員として約千六百人弱の方がおられるんですが、求人約三千人という数字はございます。一定数の求人が確保されておりますが、一般の女性に対する求人、これはやはり少ないというふうに聞いております。  私どもといたしましては、当面、山一証券の女性社員等につきまして、山一証券等雇用問題連絡協議会を通じまして、山一証券自身によるあっせん努力、これを支援していくというのを基本的な考え方といたしておりますが、あわせまして、大都市部に設置されておりますレディス・ハローワーク、これは全国で十二カ所ございますが、あるいは一般の公共職業安定所の窓口において重点的な求人確保あるいは職業相談等を行うことにより適切に最善の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  103. 武田節子

    ○武田節子君 就職内定者への対応についてお伺いしますけれども、山一証券廃業によって同社への就職内定者も宙に浮いております。山一証券の経営破綻は、大きな希望を持って社会への第一歩を踏み出そうとしていた新規学卒者の人生を極楽から地獄へと一変させてしまったことは重大な問題であると思います。ある男子学生は茫然自失だと言っておりますし、また女子学生は、何で今ごろ就職活動をしなければいけないのだろうか、でもいずれにしても年内に決めたいという深刻な訴えをいたしております。  山一証券の来春の採用内定者は四百九十人と聞いておりますけれども、山一証券への就職内定取り消し問題において、解雇予告を定めた労働基準法の第二十条及び休業手当を定めた労基法第二十六条の適用についてはどのように考えておられますか。  また、労働省は新規学卒者の採用に関する指針で、「採用内定取消し又は入職時期繰下げを受けた学生・生徒から補償等の要求には誠意を持って対応するものとする。」と指導しておりますが、山一証券側に補償するよう指導する考えはありますか、ありませんか、労働省見解を伺います。  内定を取り消された学生に対して、山一証券側でも責任を持って就職先のあっせんを行うよう指導していくべきではないでしょうか。特に就職の厳しい女子学生への配慮については労働省としては何か対応策を検討されておるでしょうか、お伺いいたします。
  104. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 最初の採用の内定取り消し等、労働基準法の関係についてお答え申し上げます。  採用の内定につきましては、さまざまな実態がございまして、一律に論じることは困難でございますが、この採用内定通知が労働契約締結についての承諾とみなされる場合には労働契約が成立しているという考え方が判例上も確定をいたしているところでございますが、そのように見られる場合には、この内定取り消しは使用者による労働契約の解約に当たりますので、論理的にはこの解雇予告制度を定めました労働基準法第二十条の規定の適用があるというふうに考えております。  一方、採用内定者は内定期間中については就労義務が課されていないというのが一般的でございますので、使用者の責めに帰すべき事由があった場合の休業手当の支給に関する労働基準法の二十六条の規定の適用はないというふうに考えております。
  105. 武田節子

    ○武田節子君 済みません、時間が来たのですが、最後に大臣に一問だけ質問させていただきたいと思います。  本格的に週四十時間労働制がことしの四月から導入されたところでありますけれども労働者保護の観点を忘れて長時間労働を容認していたのでは過労死などの悲劇がなくなることは難しいばかりか、逆に健康を害したり、家庭生活に悪影響を及ぼすような事態が後を絶たないと思います。特に平成十一年四月から女子保護規定が撤廃されて、男性と同様に女性も過剰な残業が許されることになり、結果的に女性の過労死などもふえることが大変危惧されております。  また、最近の山一証券のような大型倒産が続くと、労働者の立場はますます弱くなって、使用者側からの長時間労働命令を拒否できにくくなる状態になるのではないかと思います。この点も危惧されるわけでございます。  大臣は、過労死の現状、今後の見通しについてどのように認識し、特に時間外労働の上限基準に法的根拠を設定することをどう認識されておりますか、これを伺って私の最後の質問にいたします。
  106. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 働くための過労死ということは本来私はあってはならないことだと思っておりますが、残念ながら労災認定は最近では大体年間八十件ぐらいあるというふうに事務局から伺っております。  そこで、先生のお言葉をかりれば、労使とも働き過ぎということについての意識改革をしていただくように折に触れて労働省としてはお話をし、勧告をしているところであります。今般、中央労働基準審議会から十二月四日でございましたでしょうか、部会報告というものが審議会に行われまして、私は、実は審議会でまだ御審議があるんではないかと思います。十一日に私の方に正式に建議をいただくということになっておりますので、それまでこの内容について私が云々することは委員の方に失礼かと思いますが、新聞で拝見しているところでは、今先生のお言葉で言えば働き過ぎ、つまり超勤時間の上限等について何らかの措置を講ずるということは入っているようであります。  しかし同時に、日本は御承知のように終身雇用制を主としておって、労働者の働き方というものが極めて諸外国のように弾力性に富んでおりませんので、率直に言えば超勤時間というのが経営の上では一つのバッファー効果を持っているという面もあるかと思います。  そこで、建議をいただいたら、今おっしゃっているような副作用が起こらないように考えながら、世の中の趨勢に合うように少し現在の制度全般を見直していかねばならないのかなと個人的には考えております。  いずれにしろ、働き過ぎの結果亡くなられるなどということが生じないような仕組みを十分法改正の中で考えさせていただきたいと思っております。
  107. 武田節子

    ○武田節子君 よろしくお願いいたします。  ありがとうございました。終わります。
  108. 今泉昭

    今泉昭君 平成会の今泉でございます。  残された時間、私は同僚議員の質問にもございました、一つ雇用問題、時間がありましたならば派遣労働の問題につきまして、主に大臣中心として皆さん方にお伺いをしたいというふうに思っております。  資本主義経済というものを軸にして国家運営をしている国家の最大の命題というのは、一つは、国民の生活の安定向上を持続的に行っていくという立場から、いかに経済成長を高めていくかという一つの課題があったと思います。二番目には、やはりそういう中において、実質的な生活の安定を図るためには物価をいかにして抑制をしていくか、物価を安定していかなきゃならないという命題が二番目に私はあったんではないかと思います。三番目の資本主義経済国家における課題というのは、何といっても、いかに雇用を安定していくかということが三番目の柱として、資本主義国家における三つの大きな命題としてこれまで各国責任者は取り組んできたのではないだろうかというふうに私は認識しております。  そこで、振り返ってみますと、これらの課題の中で、物価は特に先進工業国を中、心といたしまして最近は大変安定をしてまいりまして、第一次石油ショック直後のようなスタグフレーションも考えられない、インフレも考えられないというところから、物価についてはそこそこ各国責任者も安心をされているんじゃないかと思います。  経済成長につきましても、それは程度の差こそあれ、先進工業国は一定の安定した経済成長がとれるような状況にもありますし、これまでどちらかといえば比較的悲観的な見方が強かった発展途上国におきましても急速に経済成長を高めておりまして、この経済成長の問題につきましてもある程度明るい見通しが世界全体の一つの趨勢ではないかと思うわけでございます。ただ、その中で一番やっぱり世界的な課題になっているのは、雇用というものをどのように為政者として考えていくかということではないかと思います。恐らく神戸で行われました雇用サミットもそういう一つの命題を抱えて各国方々が集まってきたのじゃないかと思います。  そこで、この雇用問題につきまして大臣がどのように考えていらっしゃるかちょっとお聞きしたいと思うわけでございますが、考えてみますと、昭和四十年代は我が国の失業率なんというのは一%台が常識でございました。ぬきんでて我が国の雇用というのは安定をしていた。これは日本独特の雇用慣行にもあったのかもしれません、家族構成にも原因があったのかもしれませんが、とにかく四十年代というのは一%台の失業率がこれは常識でございました。ところが、第一次石油ショック直後、いつの間にか我が国の失業率というのは二%台に上がってまいりまして、一%台に落ちることなく二%台が固定化をしてしまったわけであります。最近の情勢を見てみますと、それがいつの間にか今度は三%に年々階段を上がるように高くなってきているわけでございまして、今やもう三%台があたかも我が国の常識的な失業率になるような状況さえ実は示しているわけです。  先進各国失業状況を見てみますと、欧州諸国が大変高い失業率で悩んでいらっしゃる。欧州はどちらかといえばアメリカと違いまして社会主義経済の手法を大変多く入れた国家運営をやっているにもかかわらず、それがマイナスに作用したかどうか知りませんけれども、意図とは反して大変高失業率に悩んでいる。逆に、アメリカがこの失業率の問題は大変な好成績を上げて、最近は年々失業率を下げてきて四・六%ぐらいにまで大変下がってきているわけであります。  そういう中において、我が国のこれからの雇用という問題を考えていった場合に、果たして我々はこの失業率というものがさらに少しずつ上がっていくということを覚悟しなければならないのかどうか。今やもう三%が当たり前になっているわけでございまして、四%台というのがまた十年ぐらい続くとか、あるいは五%台がまた十年ぐらい続くとかというようなことであったら、これは大変な問題なわけでございます。  我が国の人口構成、出生率の問題、それから婦人の社会進出等も含めまして、労働大臣としましては、中長期的に見た我が国の雇用の今後の動向というものをどのようにつかんでいらっしゃるのかということを少し見解をお聞きしたいと思うんです。
  109. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) これはもう今泉先生非常に難しい御質問でございます。再三申し上げておりますように、雇用と申しますのは、やはり基本的には経済活動によって有効需要が創出され、その有効需要によって雇用の場が確保されるということを考えれば、これからの技術開発の戦いの中で日本がどの程度優位を占めるのか、国際的な競争社会日本の生産性が維持できるのか等々、いろいろな条件に私はかかっていると思いますので、ちょっとどうなるかということは一概に申し上げかねるのであります。  先ほど先生がおっしゃったことをなぞってお答えすれば、アメリカとイギリスという国は、今日本がやっているようないわゆる構造改革という一つの苦しいあく抜きの期間を経まして、どちらかというと市場経済の論理が割に優先する経済をとっております。このことに対しては、これまた再三申し上げておりますように効果副作用があって、経済活動は非常にうまくいっておりますが、そして失業率もこのところ減ってはきたと言われておりますが、じゃ、働く人の実質賃金がどれだけふえたのかということを考えると、私は万能型でいいのかなという気持ちが実はあります。  それからヨーロッパでは、そのような市場経済のうまくいかないところを、先生のお言葉で言えば社会主義的な要素を、私はリベラル的な政策ではないかと思いますが、入れて補完している。私は、むしろそのために成長は落ちていると思います、そのために失業率が多くなっていると思います。ただ、働く人たちの不利な面を国民すべての税金で、大きな政府型でカバーしてきているという部分がヨーロッパにはあると思います。  日本はやはりできれば真ん中あたりを行くのがいいんじゃないかなという気が実は私はいたしておるわけです。そこで、これからの日本失業率のかぎは、やはり質のいい労働力を確保できるかどうかということにかかっていると私は思います。  アメリカのような、好況期になれば派遣会社を突き合わせて入札をさせて一番安いところを入れる、不況期になれば派遣会社に結構ですと言えばそれで終わりになるというような形が本当に幸せかと考えれば、日本の終身雇用は、不況期にはある意味では企業はコストを負担しながら従業員の方を抱えているわけですが、そのかわり長く働いてくれるという信頼感があるから能力開発企業投資をたくさんできるというメリットもあります。  そして何よりも、戦後の教育がまだまだ浸透しない間に、武士道、商人道のような立派な資質を持っていた日本人の働き方がずっと残ってきたために、コスト面ではそれだけの不利な制度を持っていてもそれを上回る生産性があったと思います。だからこそ輸出競争で勝ってこれだけの国をつくり上げた、私は日本は自信を持っていいと思いますので、問題は、そこのところさえしっかりと押さえていけば、私はアメリカのようなことにすべてしなくてもかなりまだいけるのではないかと思っております。  ただ今度は、豊かな中に経営者の論理だけではなくて、働く人の立場からいってもいろんな雇用形態を選びたいという多様性が出てくるだけの余裕がありますから、その道だけはやっぱり開いておいてあげるべきだと私は思っております。  だから、私は、労働法規の規制緩和というのも単に経営者の論理だけでやってはいけない、国民すべてが温かく暮らしていけるということも考え、同時に雇用を提供される方々のお立場も考えながら多様化の道はとっていくべきだ。したがって、その辺がうまくいけば、今も日本は苦しい苦しいと言いながら、一番うまくいって四・六%で喜んでいる国じゃなくて、一番大変で三・五%で苦しんでいる国ですから、将来のことはわかりませんが、その傾向はぜひ維持していきたいという私は決意を持っております。
  110. 今泉昭

    今泉昭君 ありがとうございました。  なぜこういう質問をしたかと申しますと、実は今後の雇用というものをどのように考えているかによりまして労働行政というのは変わってこなきゃならないと私は思うわけでございます。  物すごく悲観的に考えて、とにかく労働行政というのは、どちらかといえば働く人たち生活を守り、いろんな意味でマイナス点を行政の立場から支えていかなければならないという、規制が大変必要な分野であるというふうに私は思っているわけでございますが、余りにも厳しい雇用というものを頭に描きますと、特に経済界から何でもかんでも規制を外してくれと、こういう要求がたくさん出てくるわけでございます。それを受けて、労働行政が厳しいということを前提にしたやり方をするのか、それとも今大臣が言われましたように、日本はまだ潜在力もあるし労使慣行もあるわけだから、アメリカのような形じゃなくして、やはり日本独特のやり方でやっていこうという考え方に基づいて労働行政をやるのとは大分違ってくるわけでございまして、まずその前提として今お聞きしたわけでございます。  そこで、まず当面の雇用の問題についてお聞きしたいと思うんですが、とにかくいろんな意味で当面している雇用の問題というのは決して楽観できないものがたくさん周囲に渦巻いているわけであります。何といっても最大のものは、四月から行われます金融ビッグバンのいろいろな条件を満たすための金融を中心とした雇用不安というもの、これは避けて通れないだろうと思うわけであります。  例えば、アメリカの金融ビッグバンを見てみましても、九〇年代前後の三、四年間というのは銀行が年間二百社以上倒産し、いろんな意味での救済を受けているわけでございまして、この時期というのはアメリカは七%台の大変な失業率を記録しているという状況にございます。  これを日本の場合に当てはめてみますと、日本は四千七百数十社からある金融機関、これらの中で全部が金融ビッグバンに生き残れるという証左は何もないわけでございます。全部悪いところは倒産をするということではなくして、整理される中では合併もするでしょうし、身売りをする場合もあるでしょうし、いろんな形のやり方がありますから悲観的にとることはないと思いますけれども、今までのような形のものがそのまま存続していくとは考えられないわけであります。  そういうことを考えてみますと、一つは、金融界を中心とする今後の雇用をどのようにとらまえ、この対策をどうしていくかということが必要だろうと思います。それからもう一つは、金融界と大変密接な関係にある建設業界の不安というのも、いろいろ言われてはいませんけれども隠されたもので大変危険なところがあるわけですね。特に、バブル経済期において不良資産というか土地を買いあさった建設業界が大変な不良資産を抱えていることは事実でございます。  資料によりますと、例えば銀行から建設業に対する貸出残高が現在でまだ三十兆を上回るとか、あるいは不動産業については六十二兆円もまだ残っているとか、あるいは、実は仕事はやったけれどもその代金が回収できないというのが建設業界だけで四兆円近くあるとか、それからまた債務保証しているのが三兆円あるとかというような形で、大変な不良資産を銀行以上に抱えている。  そういうところを銀行系列として抱えていくのはとてもじゃないけれどもということで、御存じのように北拓と東海興業との関係のようにさっと切られてしまうというようなことが起これば、これまた、これまでの我が国の雇用吸収力の最先端を行っていた建設業界、ここの雇用というものがもう大変危険な場にさらされるわけでございます。これらに対する雇用対策というのは、労働行政としてもあらかじめ当然考えていただかなきゃならないことじゃないかと思うわけでございまして、特にこの年末から来年にかけて、ぜひこれは労働省に、心して前もっての準備をしていただきたいと思うんです。  今までのデータを拾ってみますと、私も行財政特別委員会で企画庁長官に質問いたしますと、いや、建設業は雇用者がふえているふえているとおっしゃる。確かにふえていますよ。駆け込み受注でもって抱えた仕事を消化するために日雇い労働者をいっぱい雇った、それで建設業の雇用者数が伸びているわけでございます。最近の状況を見てみますと、新規雇用数というのがだんだん下がり初めているわけです。そして、企業倒産を見てみますと、一月当たりの企業倒産の約四割は建設業の倒産というのが目立っているわけでございます。  そういうことを考えてみますと、今は山一証券を中心とする雇用問題だけが脚光を浴びているわけでございますが、私はその問題だけじゃなくして、当面する短期間におけるところの今後の雇用対策というものに相当腰を入れて取り組んでいただかなきゃならないんじゃないかなという危惧を実は持っているわけです。  そこで、山一証券の問題も含めまして、いろいろと労働省が考えていらっしゃることが新聞紙上で伝わってくるわけでございますが、例えば雇用保険の給付期間を山一証券の場合延長することも含めて考えるとか、あるいは雇用調整給付金の指定基準を緩やかにして関連企業に対してもそれが大きく広がっていくようにするとかということを検討されているという報道をちらちら目にするわけでございますが、山一証券だけのことではなくして、全体的な当面の雇用の問題について、そういうことの検討などをされているかどうか、ちょっとお聞きしたいと思うわけです。
  111. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 再三申し上げておりますように、基本的にはやはり雇用というのは経済運営の中で有効需要が創出をされ、その有効需要景気受け皿になるわけでございますから、雇用問題だけを考えれば、これはまた予算委員会の御議論に譲らねばならないんですが、補正予算を組むとかいろいろなことが考えられると思います。しかし、今度はそのことが及ぼす財政再建に対する副作用ということもまた考えられるわけで、まことにあちら立てればこちら立たずという、あらゆる政策には効果副作用があるということを申し上げているのはそういうことでございます。  そこで、労働省としては、私は国務大臣として、経済運営についていろいろな発言をし知恵を絞るということをまたひとつやらねばならない、これは一番大切なことだと思っておりますが、労働省の所掌の分野で言えば、先生が今御指摘になりましたように、まさに関連企業失業が及ばないような措置をとるために、継続雇用のための助成金を出せる指定基準を変えるということは検討し、先般これは指定を変えたわけであります。ただ、山一だからとか金融機関だからといって失業保険の給付の期間を延長するなんということは、これは国民の保険料と税金をお預かりしている限りは公平にやらねばなりませんので、労働省は検討したこともございません。  経済政策の主導大臣ではないので大変歯がゆい面も率直に言えばあるわけでありますけれども、我々が持てる行政権限の範囲内で職業紹介、マッチング、技術開発技能開発、あらゆることをやって対応していきたいと思っております。
  112. 今泉昭

    今泉昭君 きょうは通産の方からもおいでいただいておりますので、この問題について少し関連してお聞きしたいと思うんです。  例えば、山一証券みたいに日本のトップ企業が倒産をしますと、大変脚光を浴びまして就職あっせんから企業再建に至るまでのいろんな関心が方々から集まってくるわけでございますが、大企業との取引関係の中小企業がそれ以上に苦しんでいるということはほとんど報道もされない、ややもすれば見失われがちな傾向があるわけです。  そういう中で、特に年末を控えまして、年末はボーナスも出さにゃいかぬ、それから年間のいろんな決済もしなきゃならないというシーズンで、大変金融機関からの運転資金の出し渋りというものが問題になっているわけでございます。政府がこの間緊急対策を出されましたけれども、その中に中小企業に対するこれらの問題をどのように取り上げられたか、ちょっと教えてください。
  113. 寺坂信昭

    説明員(寺坂信昭君) お答えいたします。  中小企業等へのいわゆる貸し渋りの懸念に関しましては、私ども政府系金融機関それから各都道府県に依頼いたしまして実態調査を実施したところでございます。その結果によりますと、民間金融機関の貸し出し姿勢につきまして、既に貸し渋りの動きを指摘する企業が約二割、それから今後につきましては約五割から六割の企業が貸し渋りを懸念しているわけでございます。  こうした中小企業の厳しい状況を踏まえまして、先般、政府として打ち出しました「二十一世紀を切りひらく緊急経済対策」の中で、中小企業のための金融対策につきましては、政府系金融機関の本店、支店、それから信用保証協会に特別な相談窓口を設置いたしまして、手続の迅速化、それから一定の条件のもとでの返済猶予など既往債務に対する適切な対応を図ること。  また、金融機関との取引に著しい変化が生じ、資金繰りに支障を来すおそれのある中小企業の方に対しまして別枠の融資制度を創設すること。  さらに、国民金融公庫の小企業等経営改善資金、一般にマル経資金と呼んでございますけれども、マル経融資に関しまして平成十年度末までの間、別枠措置を拡充いたしまして、貸付限度額を一千万円とすること。  さらに、中小企業信用保険法の特別保険に関しまして、小売関連業種、建設関連業種といった低迷している業種につきまして対象を拡大し、保険限度額を倍額にすることなどの措置を決定いたしまして、既に実施に移しているところでございます。
  114. 今泉昭

    今泉昭君 与えられた時間がなくなってきましたので、最後にちょっと労働大臣見解をお聞かせ願いたいと思います。通告しておりませんので大変恐縮とは存じますが。  先ほど参考人の山一の方が、実は整理を聞いたのが当時のテレビだったと。全く私どもびっくり仰天しているわけであります。  私は、実はこの参議院に来る前、三十数年間労働界で仕事をしてまいりました。労働組合にもいろんな労働組合があるんですが、会社のちょうど鏡の裏と表のようなものでございまして、健全なる企業には健全な労働組合が必ずあるわけです。  労働組合というのは、企業側の立場から見てみますと面倒くさくて、うるさくて、こんなのはない方がいいと思うのが人情だろうと私は思います。しかし、健全な労働組合というのは、自分たち立場を守るということではなくして、企業と運命共同体ですから、企業の安全というものに対して常に厳しいチェックをする立場にあるわけです。いわゆる一つの監視機構、チェック機構だというふうに見てもいいと思うんです。だから、自由な社会、自由な経済システムの中にこの監視機構、チェック機構がなくなってしまったら、私はもうその社会はだめになると思うわけです。そういう意味で、近代的な社会において健全な労働組合があるということは大変いいことなんであります。  だから、私の常識からするならば、大体、日ごろ経営側と労働組合が常に自分の企業の経営チェックをやりながら、こういうところに問題があるよと、そして企業側が情報公開をしながらお互いに切瑳琢磨していたはずなんでありまして、そういう倒産するような状況があったら、これは労働組合から言いますよ。  そういうことであるにもかかわらず、最近の日本の全体の風潮からしますと、もう我が国はある意味では労働運動というものが一定の段階に来てしまって、成熟期になったからなくても大丈夫だよ、要らないよと、否定するムードが大変出てきているわけです。私は、これは自由という社会を維持するために大変危険な兆候だというふうに思っているんです。むしろ、そういう健全な労働組合を育成して、それを企業の中に定着させていかなきゃならない。労働行政というのは、私はそういうものを育成する役割もあるんじゃないかと思うわけです。  そういう意味で、実は証券業界には労働組合組織というのは従業員組合しかなくて、私も、一般的な労働組合の立場から言うならば完全なる労働組合というふうには見ていない一面もあるわけですが、労働大臣といたしまして、労働組合の役割、私が今申し上げました役割というものについてどのようにお考えでしょうか。ちょっと最後にお聞きしまして、私の質問を終わります。
  115. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) お答えをする前に、私は、経営者というものがどういう立場かということを、各大企業、特に上場企業の経営に当たっておられる方が今よく考えるべきだと思っております。  それは、私の観念から言えば、基本的に会社は株主のものであります。そして、しかしそれが上場した限りは公的な性格を持ってくるわけでありまして、経営者というのは、本来オーナーでありながら経営者であるというケースと、今の上場企業のように、言葉は悪いですが、サラリーマンの卒業生というかなれの果てという感覚で、会社が自分の責任のあるものだと思っておられない人たちが非常に多いと思います。これがコーポレートガバナンスという議論の中で鋭く指摘をされている問題で、まず経営者がこれを株主からお預かりしているという原点に私は立ち返ってもらいたい。そして、経営者と労働組合という人たちが御一緒に運命共同体の船に乗っているんだという感覚、これはやはり経営者の方がパートナーとして組合に接する、これは資本家と労働者という感じでは私はないと思うんです。だから、そこのところを、特にサラリーマン社長、大会社の社長はみんなそうですが、この方々に私はよく認識を持っていただければ、労働組合との関係も今先生がおっしゃったような感じになってくるんだろうと思います。  私どもは、労働組合に肩入れをするつもりもありませんし、経営者サイドに立つつもりもありません。国民サイドに立って公平にやっていきたい。ただ、願わくば、市場経済、自由社会という共通の理念のもとに動いているんですから、先生が再三おっしゃっているように、経営者も組合も、その原理原則だけは守って行動をしてもらいたい、私はそんなふうに思っております。
  116. 今泉昭

    今泉昭君 ありがとうございました。終わります。
  117. 前川忠夫

    前川忠夫君 民主党・新緑風会の前川でございます。  きょうは、前段で、政府自身が進めています行政改革あるいは規制緩和、そういったものと雇用との関係についてお聞きをしたいと思います。後ほどまた時間を少しいただいて、労働法制の問題についても若干質問させていただきたいと思います。  一つ、現状認識という意味でお尋ねしたいと思いますが、きょう経済企画庁の方から月例経済報告の発表がございました。雇用関係の数字についてはもう既に労働省の方から先だって発表がございましたが、御案内のように完全失業率が三・五%という数字、あるいは有効求人倍率もコンマ七という水準であります。  そこで、私、最近のこの雇用状況を見ておりますと、経済企画庁は今月になって回復という言葉をようやく削ると。つまり、景気は後退ぎみあるいは停滞をしているということを事実上認めたということなんだろうと思うんですが、それでは、これまでの約一年あるいは二年の間、いわゆる景気回復期に、じゃ、雇用環境はどれだけ改善されていたのだろうかといいますと、過去のケースをいろいろと見てみますと、景気の回復期というのは雇用のさまざまな数値というのはかなり改善をされていたんですね。  ところが、ここ一、二年の傾向を見てみますと、有効求人倍率もよくなってせいぜいコンマ七台の後半ぐらい、悪いときはコンマ五とか六とか、まあ六すれすれまで落ちたこともありますけれども、そういう実態。それから、先ほど今泉議員からも御指摘がありましたが、完全失業率も三%すれすれまでは何とかなったけれども、三%を切ることはなかったということです。一体これはなぜなんだろうかというふうに実は考えるわけです。  そこで、最近の製造業と非製造業、あるいは最近円安に今為替が振れていますから、輸出産業と非輸出産業という分類ができるのかどうかわかりませんが、そういうものの実態。さらに年齢別の雇用状況はどうなんだろうか、あるいは男女の別はどうなんだろうか。さまざまな数字をもとにして労働省自身は最近の雇用情勢についてどんな見解をお持ちなのか、最初にお聞かせをいただきたいと思います。
  118. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 御指摘の最近の雇用失業情勢でございますが、平成九年十月現在で有効求人倍率が〇・七〇倍と過去三カ月連続して低下しております。また、完全失業率が三・五%と、これは過去最高水準に並ぶ、そういう厳しい状況にあるのは御指摘のとおりでございます。  これにつきまして性・年齢別に見ますと、完全失業率、男性が三・四%、女性は三・五%であり、男女とも特に二十五歳から三十四歳の若年層で高まっております。  産業別の動向、これを新規求人で見ますと、建設業、卸売・小売業、飲食店などで前年同月より減少している一方、製造業やサービス業などでは増加しております。このうち、製造業につきましては円安を反映いたしまして、電機や輸送用機械などの輸出型産業は増加しているものの、木製品や食料品などの非輸出型産業では減少しております。  パートタイマーにつきまして新規求人の動向で見ますと、その状況は前年同月比五・九%増と堅調に増加しております。また、常用雇用の動向で見ますと、一般労働者が前年同月と比べて〇・二%増であるのに対しまして、パートタイマー四・一%増と、パートタイマーの方の伸びが大きくなっている、そんな状況でございます。
  119. 前川忠夫

    前川忠夫君 今お答えをいただきましたように、最近の雇用状況を見ていますと、かつての不況期、製造業が落ち込んだときには、いわゆる非製造業、例えばサービス産業であるとか、あるいは建設業であるとか、例えば景気が悪くなると政府の公共投資がある、建設業が少し活況を呈して、そこで雇用を吸収する。ある意味では、うまい循環といいますか、バランスがとれていたわけです。ところが、今実は私が一番心配をしていますのは、政府自身が進めているさまざまな改革、私は頭から否定をするつもりではなくて、その改革の結果起きるさまざまなリアクションについて、特に雇用の面から見てさまざまな問題がここに存在をする。  実は、これまでも予算委員会やさまざまな会議橋本総理あるいは通産大臣等にも何度もお聞きをしたんですが、例えば行政改革とかあるいは規制緩和というのは常に光と影の部分があるというお話は私も承知をしているんですが、国全体のあるべき姿にかかわる問題を含むだけに、いや、光と影があるんだから我慢しましょうよというだけでは実は済まないんですね。  幾つかのケースについてひとつお尋ねをしたいと思うんですが、例えば行政改革、今行政改革会議の中で一府十二省についての具体的なこれから作業が始まって、恐らく来年あたりにはより具体的なものが出てくるんだろうと思います。  そこで、よく言われるように、これは政府自身が行政改革の目的をどこに置いているかによって変わってくるんですが、全く今の仕事を変えずに、今の人員で、ただ数合わせで省庁を減らしただけでは意味がないわけですね。当然そこには行政改革の本来の目的であるいわゆる国の行政システムのスリム化、場合によっては地方への移管あるいは民間への移管という問題が出てまいります。そうしますと、そこには当然のことですが、今働いている人たちの職場をどうするんだ、あるいは仕事をどうするんだ、雇用をどうするんだという問題が発生してまいります。あるいは既に、例えば特殊法人等では統合の問題や何かさまざま今進んでいます。この部分では直ちに生首が切られるということはないようですけれども、いずれ大きな雇用の問題に発展するのは必至じゃないかというふうに私は思うわけです。  それから、つい先ごろの本院でも可決をされました財政構造改革法案、これの中でも、例えばさまざまな支出面での抑制をしていきましょうと。非常に目立つのが、いわゆる公共事業の抑制ということがうたわれていますと、先ほど来からの委員も指摘をしておられましたように、バブルで完全に疲弊をし切っている建設業界やあるいは不動産業界が、ここでまた国の公共事業が削減をされるということになればばたばた倒れるところが出るんじゃないかという不安がある。当然のことながら雇用の問題がまたここに発生をするということになります。  それから、今大きな問題になっています金融関係の問題もしかりでありまして、政府自身が進めようとしているビッグバン以前の段階から既にこういう事態が起き始めているということを考えてみますと、これからの雇用の問題というのは一体どういうことになるんだろうか、非常に暗い展望しか立てられないのではないんだろうかという思いがしてならないわけです。  この辺の問題について、大臣にまず所見をお聞かせいただきたいと思います。
  120. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 先ほども同じような御質問がございまして、まことに大きな問題で、私がお答えするにはやや荷が重いんでございますが、結局、基本的に今先生がおっしゃったことは政策選択の問題だろうと私は思います。あらゆる政策には、先生のお言葉をかりれば光と影がございます。私はそれを効果副作用と申しております。同時に、国というのは雇用だけでは実は動いていないわけでありまして、財政もあれば経済もあれば社会生活もすべてございます。そのバランスの中で最善の組み合わせをとっていかねばならない。そのときにどこへつらいことが寄っていくかという問題になってくるんじゃないかと思うんです。  そこで、赤字会社を立て直すのと日本状況はよく似ておって、かつて非常にうまくいって、五十期ほど連続黒字決算をやり、その黒字を世界に冠たる社会保障制度や老人医療制度や学校の建てかえや東名、名神高速道路や新幹線やあらゆる面に投資をしてきた日本が、時代の流れの中からいうと今やや時代に合わなくなってきている。そこでこの体制を、もう一度赤字体質を直していこうということを橋本さんは構造改革という言葉で提唱しているんだと思うんです。  この構造改革をやっていくというのは、仕入れ先にも厳しいことを言わねばならない、従業員にも従来のようなことをやっていてはボーナスは払えない、賃上げはできない、そしてお得意さんにもリベートはお払いできないということが起こってくるわけでございますから、それとよく似た部分が私はあると思います。それは否定はいたしません。しかし同時に、売り上げ先を拡大しないと会社はだめでございますから、規制緩和ということをやって新たな雇用先を見つけ出してきていると。  そして同時に、先ほど御指摘になった財政構造改革特例法においても、財政カット法案じゃなくて特例法案と申しておりますのは、午前中の審議でも申し上げたように財政支出構造を変えて、少ない支出であっても従来より大きな有効需要を創出できるような仕組み、つまり官がすべてを決めてしまうんではなくて、民が意思決定を持ちながら、民が自己責任を負っていく、そういう形に変えていくという、今、私は産みの苦しみの時期だと思うんです。  その中で、失業というのは先生が一番御心配になっているように国民にとって最もバイタルな問題であって、生活の糧が入らないというだけではなくて、人間としての存在感とか生きていく値打ちというものが最も打ちひしがれる状態でございますから、摩擦的なことについては労働省は迅速かつ弾力的、最善の対応をしたいと思いますが、長い目で見て、構造的にはやはり今申し上げたような構造改革を達成しなければ、今の先生が御心配になっているようなやや赤字体質になってきたところからはなかなか抜けられないんではないかという気持ちを私は感じております。
  121. 前川忠夫

    前川忠夫君 確かに、今のままでいいというふうにはだれも考えてないわけです。どういう手法でどういう手順を踏んでやっていくかということが一番問題なわけです。  ちょっと話が余談にわたる部分があるんでお許しをいただきたいんですが、これは労働省の方に注文をつけておきたいんです。  私は今でも土曜、日曜に地方へ回る機会が多いわけです。あるいは私どもの会館の方へさまざまな方がお見えになります。ほとんどが中小企業の方です。どこどこで倒産をしていつ給料がもらえるかわからない、あるいはどこどこの工場を閉鎖して通勤のできないとんでもないところへ工場を集約する、結局やめざるを得ない。もう日常茶飯事のようにこういう事態が起きているんですね。  最近の例えば金融機関の、あるいは生保の、あるいは証券の破綻の話がやっぱり出るわけです。実に冷ややかですよ、その人たち発言は。おれたちは毎日そんなことにぶつかっているんだ、何を今さらという声があるんですね。これは理由もあるんです、はっきり申し上げて。かつて、昨年でしたか、住専の問題のときに、銀行の経営の問題から絡んで、特に銀行の従業員の賃金の問題や労働条件の問題がさまざま話題になりました。今でも私どもは銀行の皆さん方の賃金の水準というのはわかりません。一体何時間一日働いているのかさえもなかなかつかみ切れない。そういう秘密主義の銀行が倒れたって当たり前じゃないか、仲間として助けてやろうという気にならないという声が聞こえてくるんです。これは労働省の責任でもあると私は思うんですよ。  労働時間の問題については、労働省労働基準法に基づいて監督をする権限があるわけです。私がお聞きをする限りではせいぜい十時間か十五時間しか時間外労働がついていない。ところが、うちの息子が帰ってくるのは十一時とか十二時とかという話はもう日常茶飯事のように聞くわけです。  どうなっているんだろうかなというふうに、伏魔殿とは言いませんけれども、そういう意味で、これからのことも考えますと、まさに情報公開なんですよ。さまざまな情報公開をしてくれて、私ども自身も、なるほどこれは大変だなと思うようにぜひしていただきたい。そういう情報がもしあるんならばいずれかの機会に教えていただきたい。これは別に質問通告しているわけじゃありませんから、ぜひお願いをしたいというふうに思います。  そこで、私は、最近のこういう改革に伴う問題というのは、ある意味では行政としての、あるいは政府としての責任でやらざるを得ないということですから、当然のことですが、じゃ、受け皿はどうするんだと。あるいはよく労働移動ということを簡単に言いますけれども、物を動かすわけじゃありませんから、人間の職場をかえようというわけですから、さまざまな仕組みが必要だと。今までもさまざまなことを労働省がやっておられるということはもちろん承知の上で、これからの労働移動あるいは受け皿の問題について、新しい事態を踏まえて一体どう考えていこうとしておられるのか。  私は労働組合の経験がありますのであえて申し上げますが、例えば企業がおかしくなった、経営が不振に陥った、赤字になったと。人員整理をしなければならないという場合には、先ほど今泉先生もおっしゃっていましたが、そこに労働組合があれば労働組合としっかり交渉をして、まず受け皿を探すわけです。それが子会社である場合もありますし、あるいは関連企業にお願いをする場合もありますし、あるいは地域にお願いをする場合もあります。まず受け皿をつくって、それから希望退職を募集する、こういうことになるわけです。  ですから、そういう意味では私はスクラップ・アンド・ビルドではなくてビルド・アンド・スクラップだと言っているんですけれども、これから政府自身がやろうとしている問題でこういう考え方、発想というのは果たしてとれるものなのかどうか。  それからもう一つ、同じような意味でお聞きしたいと思っているんですが、こういう改革は先ほど言ったようにやらざるを得ないんだと。とすれば、やることによっての経済効果についてはどう考えていったらいいのか。つまり、例えば雇用の問題というのは、先ほど大臣もおっしゃったように生活権の問題にかかわるわけです。  例えば、ある人が失業をしたとしますと、当然のことですが、国の税収はその人の分だけは間違いなく減ります。失業率が今の三・五でとまっていればいいですけれども、例えばこれが四になり五になりということになった場合、いわゆる雇用所得から入るところの国の税収というのは当然落ち込みます。それから、失業者がふえる事態というのは企業経営にとっても決していい事態ではありませんから、いわゆる法人税も当然落ち込んでくるでしょう。  でもやらなければならないんだというときに、本当の意味でのねらいというのは一体どこにあるんだろうか。つまり、国民にとってプラスというふうに考えていいんだろうか。先はどのように、過渡期だからとにかく目をつぶってくれということで済むんだろうかという思いが実はあるわけです。  非常に難しい提起かもしれませんけれども、これからのあり方についてぜひ大臣のしっかりとした御見解をお聞きしておきたいと思うんです。
  122. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) まずビルド・アンド・スクラップというお話でありますが、それは私は本来のあるべき姿だと思います。  しかし先般、朝日新聞でありましたが、このような記事が出ておりました。  バブルの時代あるいは高度成長の時代に私たちが常識だと思っていた考えはそろそろ改めなければならないんではなかろうか。そして、今不況と言っているけれども、そのフキョウのフの字は従来当てていた不況の不の字ではなくて普通の普の字を書いておりました。  そういう感覚に実は国民一人一人がならねばならないのであって、従来できたことどおりこれからやっていく、従来許されたことがこれからも許されていくということであれば、私も実は中小企業の商売人の息子で一度苦しい目に遭っておるんですが、会社の再建というのはなかなかできません。日本の再建も私はやっぱり同じような部分があると思います。  そして、国家というものは経済効果の損得よりももっと大切なものが実はあるのであって、そこにいる国民ができるだけ長い期間にわたって自分の選択権と自分の責任でもって生き生きと生き続けられる国家を維持できるかどうか。そして、今は楽であっても将来はそうならないというもし選択であれば、私たちはそれをとってはいけないんではないかと私は実は思っているわけです。  世界的な水準からいけば、日本の現状は過去のスピードから見ればまことに残念な状態になっておりますけれども、例えば三・五の失業率で大変だといって騒いでいる国というのはやっぱり幸せなのであって、四・五で大喜びしている国よりは三・五より低い失業率で頑張れる国を目指すということが私は改革の目的だと思っております。
  123. 前川忠夫

    前川忠夫君 先ほどの大臣発言の中に、最近の環境問題に絡んで京都会議の話で、みずからの生活を変えていくということもあわせてやらないといけないというお話をお聞きしました。それから、私自身も、例えば今の日本労働条件、労働時間に関してはまださまざまな課題があるにしても、賃金を含めたマネーという点で考えれば、欧米先進国の中でも一、二位を争う水準、それなのになぜなんだろうという思いが実はあるわけです。何となく追いかけられているような、何か働かなきゃいけないような、これは一体なぜなんだろうと。そういうものから変えていかなければならないということは私はそのとおりだと思うんです。  ただ、恵まれたといいますか、意識の上でもそうならなければならないという人たちがいる反面、まだまだ極めて劣悪なというとちょっとオーバーかもしれませんが、そういう環境の中で働かざるを得ない人たちもいるわけです。先ほど銀行と中小企業皆さんお話をしましたが、これからの時代を考えますと、雇用という点では確かに恵まれたところで働く人もおられるでしょうし、いや応なしに生活のために厳しい職場で働かざるを得ない人もいるわけです。したがって、私はそういう厳しいところで働かざるを得ない人たちにレベルを合わせた労働行政をぜひお願いしたいというふうに思います。  そこで、この後通常国会で大きな話題、議論になるんだろうと思いますが、労働法制の問題について一、二お聞かせいただきたいと思うんです。  私は、労働基準法というのは本来は労働者保護の法律のはずであるというふうに理解をしています。私も審議会のメンバーだったころよく論争したわけですが、最近の基準法改正の議論というのは、どうも経営者側といいますか、使用者側の意見が勝ち過ぎるんじゃないかということを申し上げてきました。もちろん大きな意味では労働時間短縮等を含めて、そう急激ではなく、なおかつそう極端なハレーションも起こさずに、この十年近くの間に四十八時間から四十時間にまで来たということについては私は高く評価をしたいと思うんです。しかしながら、まだまだ欠点といいますか、直してもらいたいところが実はたくさんあるわけです。  その一つは、労働時間にかかわって申し上げれば、例えば時間外労働の問題をどうするんだろう。今のような状態では事実上の野放しに近い、これでいいんだろうかというふうに思います。  それから、例えば時間外労働の割り増し率については、今現在の二五あるいは休日の三〇というのは、アメリカやヨーロッパ諸国と比べていかにも低過ぎるんじゃないか。しかも、賃金は先進国並みといいますけれども、これにはボーナスも当然のことですが入っているわけです。ところが、時間外労働の割り増し率にボーナスを入れるということにはなっていないわけです。そうしますと、欧米と比較をしますと割り増し賃金率というのは実質的にはもっと下がるということになるんですね。こういうところも直してほしいという議論は当然のこととしてあったわけです。しかし、そういう問題についてはほとんど事実上手つかずと。  時間外の上限規制については何らかの本則に盛り込もうという話が進んでいるというふうにお聞きをしています。先ほどの、四日でしたか、審議会の報告をお聞きしておる限りでは特に罰則もないということですから、どれほどの効果が上がるのかなという実は心配があります。  そういう意味で、今度の基準法改正のねらいというものを、あるいは労働法制の改正のねらいというものを一体どこに置いておられるのか。例えば、裁量労働制とか変形労働時間制の問題を見ておりますと、やはりこれは経営側の求めに応じて改正をするというふうにしかとれない部分というのが多いんです。現に連合を初めとしてほとんどの労働団体が、これは改正じゃなくて改悪じゃないかと言っているわけです。  この辺の問題について、労働省としては建議を十一日にお受けになるという話ですけれども、どんな見解でこれから改正されようとしておられるのか。これまでの経験から申し上げれば、恐らく公益委員の案をベースにして法案づくりをされるんだろうというふうに思いますけれども、私どもとしては、これはかなり問題を含んだものになるんじゃないかという思いがあるものですから、本格的な議論はこれからですけれども、まずこの辺のスタンスについて、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  124. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 実は、私にこの建議をいただくのは十一日になると伺っておりますので、ただいまは部会から審議会に御報告がなされて、十一日にちょうだいするまでもう一度審議会の御議論があるのではないかと思いますから、私からそれを先取りしたことを申し上げるのは委員方々に対して失礼でございますので、差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、基本的には労働を提供する方々の中でも、例えば、特に女性方々であれば、子育てを終わってから、子供さんを保育園に連れていってから働きに出たいなという方もおられると思いますし、特別な技能を持っておられる、能力を持っておられる方はどのような働きをしようと、その結果でもって評価をしてほしいという方もおられると思います。だから、労働力の提供の側の方々のお立場もやっぱりよく考えていく。  それから同時に、国際市場で日本が貿易戦争に勝ち抜いてこそ今の福祉や教育や生活の状態を維持できるという面は否定できないわけでございますから、だからそういう面で、経営者の方が不利な点があるとおっしゃれば、その意見もやはり私どもは聞かせてはいただきたいと思っています。しかし、それから出る副作用が大きければ、そのことに私たちは全面的に賛成するものではございません。  先生の御質問ではございますが、例えば四十時間に来たということも労働省の手柄でも何でもなくて、これは日本人がまじめに営々と働いて生産性が上がったから、結局そういうことは可能になったんだと私は思うんです。だから、この状態をきっちり維持していくためには、先ほど来申し上げているような市場経済の原理原則に合わないことはやっぱりできないと思うんです。  例えば、生産性が上がらずに四十四時間を四十時間にするならば、これは当然単位当たりの賃金は変わらなくても一カ月の手取りは単位時間当たり四十時間にならなければ市場経済というのはつぶれてしまいます。そして、超勤をされるということで四時間の超勤を差し上げるというのが原理原則なんです。だから、そこを認めていただいた上での議論であれば私は非常に結構だと思いますが、四十時間になって生産性は上がらないけれども四十四時間の基本賃金は払えということになると、我々の基盤は崩れてしまう。そこのところだけは私はしっかりと踏みしめて、しかし気持ちは働く人たちの方に置きながらやっていきたい、こんな気持ちでおります。
  125. 前川忠夫

    前川忠夫君 時間がありませんのでお答えは結構ですが、今の大臣発言の中で、特に企業の国際競争力という点は、私も民間企業にいましたから嫌というほどそれは承知しているつもりです。  経営者の皆さん方に時々申し上げるんですが、国際的なハーモナイゼーションというのであれば、すべての分野についてその議論を聞いてくださいと、公正な競争条件というのならばすべての分野についてそれぞれの議論を出し合いましょうよと、これは別だよ、これは別だよと言われたのでは私どもはまともな議論はできませんというふうに申し上げているわけで、私たちもそういう経営者側の立場皆さん方の意見は十分承知しながら議論をしているつもりであります。  と同時に、先ほどから申し上げておりますように、恵まれているといいますか、例えば労働力の移動が比較的しやすい人たちがかわれるようにどんどんそういう仕組みをつくってくださいとか、あるいは仕事の上でさまざまな裁量労働制にもなじむような人たちだけのためにこういうものがどんどん拡大をされていった結果、そうではない人にまで悪い影響が出ては困りますという意味で、私は、労働基準行政というのは最低ラインはきちっと抑えてほしいということを申し上げているわけです。  私は、今度の行政改革の中で、先ほどからもちょっと議論がありましたが、労働行政という点では大変心配をしているんですけれども、私は労働省の応援団のつもりでおりますから、基準行政を含めましてしっかりとしたスタンスは持った上で、ぜひこれからの行政を進めていただきたいということを最後に申し上げて終わらせていただきます。
  126. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 民主党・新緑風会の笹野と申します。  まずもって、伊吹労働大臣大臣に御就任になられましたこと、心よりお喜び申し上げます。  なぜこのようなことを言うかというと、同じ京都出身の大臣でございます。おらが町の大臣ということで、心情的にはちょうちん行列でもしたいようなそんな心情でおります。今後とも労働行政のためにひとつ力いっぱい頑張っていただきたいと思います。  さて、大臣は、京都では地場産業の復興に非常に力を出しておられまして、特に京都の和装産業のために、大臣がみずから和服を着て皆さんにPRをしている姿を地元で私はたびたび拝見いたしております。非常によくお似合いですので、この次の委員会のときにはひとつ雇用の安定のために和服姿を拝見いたしたいものだと希望を申し述べさせていただきたいというふうに思います。  そういうおらが町の大臣を激励する意味で、行政改革のことをお聞きいたしたいというふうに思います。  先ほど長谷川委員やら前川委員から、行政改革の現状というのは発想が逆ではないかという御指摘がありましたが、私もそんな思いでいっぱいです。日本は戦前、勤労権というものが憲法に保障されておりませんでした。これが、新しい憲法によって勤労権というものが保障されました。そのことについて戦後、労働省というのができ上がったというふうに聞いておりますが、戦後の労働省が置かれたときの理念あるいは時代的背景をまずお伺いいたしたいと思います。
  127. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 労働省は昭和二十二年の九月一日に発足をしているわけでありますが、その背景といいますか、それは今、委員お述べになったとおりだと思います。  戦後、我が国におきましては大変大きな改革がいろいろと行われたわけでありますが、労働分野におきましても、憲法にいわゆる勤労の権利や義務に関する規定、それから労働基本権に関する規定、こういったものが設置をされたわけでありまして、こうした大きな時代の流れあるいは新憲法の精神、こういったものを踏まえて、勤労者の福祉雇用の確保を目的として労働省は設置されたものだというふうに理解をしております。
  128. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 そういう非常にすばらしい理念と背景によってでき上がった労働省ですが、私は、今度の行革によって、とにかく二省を一省にしてしまえという大変乱暴な議論によって、形から生まれたような気がしてなりません。  そこで、外国のいろいろな例を参考にしたいと思いますが、労働省単独型と、それから、労働省というものに福祉とか社会保障とかそういうものを一緒にした省があるやに聞いております。人口一千万人以上のOECDの国を対象にして、どういう省が幾つあるかをちょっとお知らせいただけませんでしょうか。
  129. 渡邊信

    政府委員(渡邊信君) 今手元にありますのは、OECDの加盟国だけではなくて、ILOに加盟している国について調べた資料がございますが、労働省単独型と申しますのは、現在の日本を含めてアメリカ等二十五カ国ございます。それから、労働行政社会保障とあわせてやっておりますのは、ドイツ、フランス等二十一カ国、こういったふうな現状になっていると思っております。
  130. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 簡単なことから判断いたしましても、労働省単独型が圧倒的に多いということがわかります。これはどのように分析しているでしょうか。
  131. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) まず、お答えする前に、同じ京都の笹野先生から大臣就任のお祝いを言っていただきましたのですが、私の率直な気持ちを申しますと、赤字会社の立て直しの重役陣に選任されたような気持ちで、大変だなというのが実感でございます。したがって、ちょうちん行列などというお話もございましたが、私は、地元で中小企業中心に今の景気の苦しい中で頑張っている人のことを考えれば、祝賀会などということは一切やらない主義でございますので、ひとつ御無用にお願いいたしたいと思います。  第二に、いずれ着物を着てここへやって参りたいと思いますので、その際は、先生も京都でございますので、ぜひ着物でおいでいただきたいと思っております。  それから、労働省の形のことについていろいろ御議論がありますが、一府十二省庁という枠の中でこのことを日本は考えたと思います。三十も四十も省庁があるところもございますし、一府十二省庁というのは、私の感覚では先進国の中では一番少ないんじゃないでしょうか、役所の数としては。  そういう中で、もちろん独立ておれれば一番結構なことじゃないかと私は思うんですが、さて通産省と一緒になるのか、文部省と教育訓練という面で一緒になるのか、人間の一生の賃金、老後の支え、健康という面で厚生省と一緒にやるのか。いろいろ考えると、やはり労働者の立場を守っていくという上からは厚生省と一緒になるというのが、まあ制約のもとではやむを得ざるパートナーかなという気が私はしております。
  132. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 私が大臣にエールを送るつもりで申し上げたのは、分析をしても一番労働省単独型が多いわけです。そして、日本が一番模範としましたニュージーランドを見ましても、たった十四省しかない。それでも労働省単独があって、しかも大臣が二人いるわけです。これだけやっぱり労働省というのが重要視されている。  私どもから出しました行革会議委員の芦田甚之助前会長も、これからは労働雇用労働福祉という政策目的を実行する独立の省が必要であるということをしっかり述べていますし、また、「労働行政は独立すべき」である、そして「雇用労働政策が埋没しないような配慮が必要である」という九月の行革会議の中間報告もあります。  そういう意味で、先ほどからいろんな委員雇用の重大性を訴えております。また、先ほど大臣の御回答を聞いていますと、女性政策に対しても非常に温かいお言葉、私は再度大臣の偉大さをここで確認いたしましたけれども女性のそういう問題につきましてもこれから非常に重大になると思います。  厚生省と形の上では一緒になったといたしましても、世界の趨勢を見て、また日本のこれからのいろんなことを見ましても、労働行政がいかに重大であるかという御認識をしっかり持っていただきまして、今後の労働行政に取り組んでいただきたいということをまずもってお願い申し上げたいというふうに思います。  さて続きまして、時間の配分もありますので、抜かしてはならないことを先にやってしまいます。それは、沖縄のことにつきましてちょっと御質問をさせていただきたいというふうに思います。  先般の沖縄復帰二十五周年記念の式典に出席して、私は再度新たな気持ちを持ちましたけれども、やっぱり沖縄というのは、日本歴史の中の戦中戦後の、本当に一番悲しい、一番つらい思いを一手に引き受けてきた、そういう県でもありますので、私たちは、沖縄についてはできる限り温かい政策的な配慮をすべきだというふうに思っております。  そこで質問したいんですが、沖縄は、先ほどの失業状態から見ましても、本土の二倍から三倍若年層の失業率が高いという現象があります。これについてどのような御認識を持っているか、お聞きしたいと思います。
  133. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 沖縄県におきます雇用失業情勢につきましては、御指摘のように、完全失業率を見ましても全国平均を大きく上回って推移するなど厳しい状況にございます。その内容を見ますと、三十歳未満の若年層の失業者が約半数を占める、そういう特徴がございます。  若年者の失業率が高い原因につきましては、これは特定はなかなか困難でございますが、沖縄県内の産業構造がサービス業あるいは卸・小売業など第三次産業中心とした小規模企業で占められておりまして雇用吸収力が弱いこと、あるいは学卒者の県内就職志向が極めて高く、また、県外からのUターン者も多数に上ること等が挙げられると思います。  若年者の雇用対策といたしましては、沖縄県内の産業の振興と一体となった雇用機会の創出によりまして若年失業者の吸収を図るとともに、県外就職及び職場定着を進めることによりまして雇用失業情勢の改善を図ることが重要であるというふうに考えております。  このため、地域雇用開発助成金あるいは沖縄若年者雇用開発助成金の活用による雇用開発の推進、若年者就職相談員によります就職の相談、援助、就職指導教諭のための職業セミナーの開催等の就職指導、沖縄での合同求人説明会の開催など県外就職の促進、このようなことを図って進めているところでございます。
  134. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 そういうもろもろの政策はこれからますます重大になるということと関連いたしまして、やっぱり人材の育成とか技術の指導とか、そういうことが非常に必要になってくるというふうに思うんです。  そこで、沖縄県の方から沖縄職業能力開発短期大学校の大学への昇格に当たって、機械関係の実践課程の設置の要望が八月に大臣あてに出されておりますけれども、どのような方針でこの要望にこたえるんでしょうか。
  135. 山中秀樹

    政府委員(山中秀樹君) 沖縄県における厳しい雇用情勢を解消していくためには、やはり現在の産業振興政策やあるいは今後新たに実施されることが予定されております各種プロジェクト、それを円滑裏に進めるには、先生のおっしゃるとおり、技能人材の育成が非常に大切だというふうに考えております。  そういうことで、今おっしゃいましたように、先国会でお世話になりました短期大学校の大学校化についての沖縄県からの要望は十分承知いたしておりますので、それに向けて対応してまいりたいというふうに考えております。
  136. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 この問題は非常に沖縄県が首を長くしていることだというふうに思います。どうぞ具体的なプログラムとして早く進めていただきたいというふうに思います。  引き続きまして、やっぱり能力開発とあわせて、いろいろな意味でベンチャー産業というものも必要になってくるというふうに思うんですが、新産業創出という意味でベンチャー企業の育成ということにどのような措置を講じているのか、お答えいただきたいと思います。
  137. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 沖縄県におきますもろもろの対策につきましては、現在、政府といたしましても沖縄政策協議会の場を中心に、沖縄県の経済、地域振興等に取り組んでいるところでございます。  御指摘の問題につきましては、労働省として、雇用の創出を支援するという立場から、これまで地域雇用開発助成金等の活用を図ってきたところでございますが、さらに沖縄県の地域資源等を生かした若年者の雇用開発、これを支援する沖縄若年者雇用開発推進事業を今年度から実施するほか、御指摘のベンチャー企業等につきましても、これに対する人材面の情報提供イベント、ベンチャー出会いの場というような形での提供でございますが、これを開催するなどの対策を講じているところでございます。  今後におきましても、これらの施策の一層の充実活用を図りまして、若年層を中心とした雇用機会の創出に向けて積極的に取り組んでまいりたいというふうに思います。
  138. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 今、三点にわたって先生からお話がございました件については、実は、沖縄関係閣僚協議会がございました際に知事さんからも先生と同じようなお話が私にございました。そして、特に総理からは、先生と全く同じ気持ちであったと思いますが、先般の大戦の際に沖縄県民の方々が受けられた心の痛手、また、その後の日本の平和を維持してきた安全保障の負の側面をほとんど一つの県で受け持ってきたということを考えて、各省において十分の措置をするようにというお話がございまして、内閣としても官房長官を沖縄担当相に指名しているという取り組みをしております。  その中で、今御指摘のございました件については、私からも橋本総理の御意向を事務当局に伝えまして、行政の裁量の範囲でできることについては最大限の配慮をするようにということを指示してございますので、一言つけ加えておきます。
  139. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 日本国民であるならば、文化あるいは法のもと、経済的にもひとしく平等であるべきだというふうに思いますので、その点はどうぞ沖縄県に対して十分の配慮を政策面で打ち立てていただきたいというふうに思います。  これであとは時間のある限り、順次通告した質問に移らせていただきたいというふうに思います。  先ほどから労働基準法あるいは労働法制の問題について本当にいろんな委員からシビアな御質問がありました。それについて大臣は、効果副作用、効率化と副作用という言葉を何度も使われたというふうに思います。しかし、私は、この労働といい労働条件といい労働福祉の問題は、これは副作用はもう言わなくたってわかっている。例えば、女性の規制というのはかって戦前はなかったわけですから、もう効率だけですべての労働条件を決められた。その結果、女工哀史などという言葉が生まれたということで、もう副作用はわかっているわけですから、その歴史的な副作用はやってみなければわからないということではあり得ないというふうに思うんです。  しかし、今労働省がとっている労働法制の改正を見ますと、ちょっと難しい言葉を使うのであるならば、事前の規制ではなくて、事後監視型にするのが何か市場経済労働条件のあり方のような言い方にちょっと聞こえてならないわけで、私は、やっぱり労働条件とか労働基本権という問題は事後監視型であってはいけないので、歴史の女工哀史を繰り返さないための事前の規制をつくらなければいけないというふうに思うんですが、大臣はいかがお考えですか。
  140. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) それはもう申すまでもなく当然のことであります。事後監視型という言葉が適切かどうかわかりませんが、間違ったことをした人を後で見つけ出して罰を与えるとか是正させるというのではなくて、事前からこういうことは困るよということの法律であるというのは労働基準法として当然のことであります。  私が申し上げている効果副作用というのは、実はそういうことではございませんで、やはり労働基準法や派遣職員の関係等をある意味法律的に緩和をしていくということから、女工哀史というところまでの話ではなくて、労働者の方々について、例えばそれを希望される方もおられるかもわからないけれども、終身雇用制になれ親しんでいる人たち、あるいは一日八時間労働五日間ということになれ親しんでいる人たちには、急激に新しいところへかわるということから生ずる無理があるとするならば、あるいは超過勤務の上限が幾ら幾らということに対して生ずる副作用ということがあるとするならば、そのことについては激変緩和措置を講じながらやっていかねばならないですよということを実は申し上げているわけでございます。  私は、再三申し上げておりますように、経営者の論理で規制緩和をやるというつもりはありません。しかし、いろいろな働き方の希望を持っておられる方もおられます。それにはこたえねばなりません。それから同時に、日本として国際社会の中で競争に勝たねば我々の今の経済の状態、福祉の状態、教育の状態が維持できないならば、あるいはそれに勝たねばなりません。  したがって、申し上げているのは、医者というのは手術の効果が大きければ手術に踏み切ります。しかし、副作用が大きければ踏み切りません。副作用が怖いからといって、効果の方がはるかに大きくて病気が治るのに、手術が嫌だという患者に迎合してはならないと思っておりますし、そこの効果副作用はおのおの見る立場によって私は違ってくると思います。  したがって、公益委員方々というものが審議会に入っておられると思いますので、よく意見を伺いながら、決して経営者のサイドに立って判断をするなどということがないことだけは理解していただきたいと思っております。
  141. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 例えとしては、医者の例えば非常に説得力があるかのように聞こえますけれども、しかし、余り大病でもない者をわざわざ手術台に連れてきてあちこち切っちゃって手術をするという悪い医者もおります。ですから、今労働基準法にメスを入れるというのは、私から言わせると、どうも悪い医者が何かあちこち切りまくりたいという、そういう不安感もあることだけは御承知おきいただきたい。  そして、私は、きょうは女性の上限規定、男女共通の時間外の上限規定のことをどうしても、特に前回の審議の中で伊藤局長はこれからやりますと、こういうふうに言い切ったその続きもあることですから。  今、大臣が激変緩和という言葉を使いました。これは三年間のうちに激変緩和をするということが答申の中にあるそうです。私は、激変緩和というのはわかったようなわからないような感じなんです。何を緩和するのか、三年間のうちにどのように激変を緩和していくのか。何だかわからないうちに、三年間のうちにだまし討ちにして上限規定がなくなってしまうのか、非常に私は危険な感じでいっぱいです。  そこで、三年間の激変緩和というのは、つまりどこをどういうふうにしてどういうプロセスで緩和ということになるのか、お答えいただきたいと思います。
  142. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 今御指摘ございました報告、まだ正式の建議になる前でございますが、それに盛られております事項をもとに御説明申し上げますと、時間外労働につきましてこれを厳に抑制し実効を上げていくために、まず、今までの目安制度にかわって時間外労働の上限に関する基準というものを労働基準法に基づいて定めることができるようにする。その上限の基準につきましては、事業主がそれに留意していくべきの責務、または行政においてはそれを指導していく権限、こういった一連の形をつくるということが提言をされております。  そこで定められます時間外労働の上限の基準というものにつきまして、育児あるいは介護等の家庭責任を有する女性の方につきましては、平成十一年の四月から保護規定の解消がされるに当たりまして、この新しい上限の基準あるいは今までであれば目安制度で上限が定められておりましたが、急にそこの域に達するのではなくて、それとは別の水準の、低い水準の時間外労働の新たな上限基準というものを定めて、それを三六協定の中に織り込んでもらう、こういった措置を三年程度というふうに報告では申しております。  一般の時間外労働の上限基準よりも低く定める際の具体的な水準、これから三年程度というのを具体的にどうするのか、この辺については平成十一年の四月までに審議会で十分時間的な余裕を持って議論していきましょう、こういう提言がなされているわけでございます。
  143. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 これは非常に重大な意味合いを持つと私は思うんです。  三年間というのは、三年もたつと怒りを忘れるだろうという意味なのか、それとも百五十時間をずっと三年やっておいて三年後に三六協定を自発的なものに移していくのか、それとも三年のうちに個人でもって自己完結しろという三年なのか。その三年という意味がよくわからないんですけれども局長、三年というのは具体的に言うと、これからじっくり時間をかけて審議するという、審議の三年間なんですか。
  144. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 三年程度というふうに報告の中で書かれておりまして、具体的にはさらに引き続き検討となっておりますが、これは平成十一年四月から起算して三年間という意味合いであるというふうに私ども受けとめております。  この三年間につきましては、やはり保護規定の解消をされた後の働き方として、女性の方が仕事と家庭を両立させながら働いていけるような労働環境というのを雇う方も雇われる方も整備していかなければならないと思いますし、また男性の方も一定の役割分担等について意識をしっかりと改革していかなければいけないだろうと思います。  この三年間がどういう形になるか、もし非常に長い期間というものを想定するとすると、そういった意識の改革が、女性だけについて別の水準があるということがどういう影響を及ぼすのか、かえっていろいろ慎重に考えなくてはいけないと思います。また、労働側からは逆に意見が付記されておりまして、全体の時間外労働の上限に関する基準が例えば百五十とか、そういった水準になるまで激変緩和措置の必要性があるのではないかというような指摘もあるわけでございまして、今後具体的な期間の設定については、そういった角度から審議会において平成十一年の四月まで議論がなされて集約されていくものというふうに考えております。
  145. 笹野貞子

    ○笹野貞子君 結果的によく意味がわかりませんでしたけれども、しかし、私たち女性にとっては大変重要な問題です。戦後五十年たっても、日本の男性の意識はまだそう変わっておりませんし、あるいは企業側の競争原理の意識というのもそう変わっておりません。  先ほど長谷川委員の方から御報告がありましたように、女性は三時間近く家事をやり、男性は、統計によっては七分というところがありますが、まけて二十六分としましょうか、これから女性が同じ土俵の上に立つならば、どちらにしても非常にオーバーワークになってくるわけです。  先ほどから皆さん方が何度も言っておりますように、労働というのは人間そのものでありますから、労働力を切り離して移動したり競争させたり、効率ばかりというわけにはまいらないのが我々の勤労権という権利です。  そういう意味では、私はもっと質問したかったのですけれどもきょうは時間がありませんのでできません。やはり労働行政というのは、人間そのものの生き方というものをしっかり見据えまして、労働法制というのは最低限の基準であって、先ほど大臣は盛んに経済的な豊かさという言葉を使いましたけれども、自立できて豊かさのある人は大変いいと思います。しかし、基準法というのは最低限の、守らなければならない弱い人の立場というのをやっぱり一番その基本線に据えて政策があるべきだというふうに思います。  そういう意味では、どうぞ新しい労働基準法の改正案につきましては、先ほど大臣がお医者さんの例を出しましたけれども、別に病んでもいないところを切ったり手術する必要はないわけですから、その点は十分適正な政策に基づいてこの改正に当たるべきだということを希望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  146. 吉川春子

    吉川春子君 先日、新聞に、「わが人生、破たんで狂う 経営失敗 つけはサラリーマンに」、こういう見出しで記事が載っておりました。山一、北海道拓殖銀行など、大企業の破綻が続いておりますが、この間、リストラや企業倒産等、職を失った人々の就職はどうなるか、きょうも胃が痛くなるような議論が続いているわけですけれども、従来型の職安の業務ではホワイトカラーの再就職のあっせんはなかなか困難があるな、このようにも思います。  私は具体的な問題について伺いますが、まず北海道拓殖銀行についてですけれども、ここは債権譲渡など金融破綻で今後どうなるかということですが、この場合、労働者の賃金、残業手当、退職金など労働債権を全部きちっと確保すべきだ、金融機関の破綻によって投げ出されるそういう人たちについて保護すべきだと思いますけれども、どういう扱いになりますでしょうか。
  147. 内藤純一

    説明員(内藤純一君) お答え申し上げます。  拓銀と徳陽シティ銀行の今後の処理策につきましては、先般、大臣談話でも発表したところでございますが、この処理策は、その機能を受け皿銀行へ承継するとともに、それまでの間、拓銀及び徳陽シティ銀行は通常どおりの営業を続けるというふうなことを発表しているわけでございます。  したがいまして、労働債権の問題につきましても、基本的にはこれまで同様の扱いが営業譲渡までの間行われるということとなっておりまして、関係法令によりましてきちんと保護されるというふうに理解をしております。
  148. 吉川春子

    吉川春子君 営業譲渡までの間というのはどういう意味ですか。かなり限定的におっしゃいましたね。
  149. 内藤純一

    説明員(内藤純一君) 大臣談話におきまして、拓銀と徳陽シティの今後の処理のあり方という問題につきましては、例えば拓銀につきましては受け皿を北海道地区におきまして北洋銀行というものに営業譲渡していくという形になっております。  したがいまして、営業譲渡を行うまでの間におきましては、今申し上げましたように、基本的にこれまで同様の扱いとなるということでございまして、営業譲渡するその後におきましては、今後受け皿銀行としての北洋銀行と双方におきまして話し合いが持たれまして、今後の対応が決められるというふうに考えております。
  150. 吉川春子

    吉川春子君 マイホームのローンなど、会社からの借入金の問題についても同じように理解していいですか。
  151. 内藤純一

    説明員(内藤純一君) 会社からの借入金がどういう取り扱いになるかということにつきましては、個々の会社の、銀行の行員の方々のそれぞれの御判断によろうかと思いますけれども、この拓銀あるいは徳陽シティ銀行と行員との間というものは、当分の間は通常どおりの取り扱いがなされるということでございます。
  152. 吉川春子

    吉川春子君 先ほどの山一の参考人お話でも大変厳しい状況にあるわけですけれども、こういうものも含めてその働いている人たちの利益をきちっと守っていただきたいと思います。  それで、企業の経営責任、それともう一つ政府・大蔵省の監督責任の結果、こういう路頭に迷うような労働者を出さないことが求められています。それで、北拓は五千人、徳陽シティバンクは千人強という労働者がいるんですけれども、関連企業を加えればこの倍ぐらいの数字になると思いますが、経営譲渡の際、従業員の雇用はどのように保護されるんでしょうか。再建スキームに労働者の雇用数が入りますか。
  153. 内藤純一

    説明員(内藤純一君) 今後の雇用についてどのような見通しであるかということにつきましては、拓銀、徳陽シティ銀行両行とも、今後受け皿銀行と話し合う中で決まっていくというふうに考えております。  したがって、例えばこの拓銀の場合でございますけれども、やはり健全な債権をいかに保持していくかという形で現在懸命な努力をいたしておりまして、この受け皿となる北洋銀行もそのような健全な資産を引き継いでいくという観点でございますので、できるだけ資産の劣化を起こさない形で最大限の雇用を確保していきたいというふうに北洋銀行も述べているということでございます。
  154. 吉川春子

    吉川春子君 単純に、スキームの中に入るのか入らないのか答えてください。
  155. 内藤純一

    説明員(内藤純一君) 具体的な人数ということにつきましては、北洋銀行、受け皿銀行といたしましても、正常資産というものがどの程度あるのか、そしてまたその引き継ぎ得る資産というものはどの程度であるのかということを精査し、また当事者間で真剣に検討いたしまして、その結果として引き継ぐべき全体の資産が決まり、そしてまたその雇用が決まるということでございまして、両社とも最大限の雇用を確保していくという観点で現在懸命に検討を始めているということでございます。
  156. 吉川春子

    吉川春子君 大蔵省も全力で努力してほしいと思いますが、労働大臣にお伺いいたします。  この債権譲渡によって、労働者の雇用数というのが実は再建スキームの中に入らないと、このように大蔵省は言っております。例えば、徳陽シティバンクは預金保険機構に不良債権は引き取らせる、残りは仙台銀行などに債権譲渡されるわけです。実際に、この計画が発表された途端に、預金は東北地方の非常に大きな七十七銀行にどんどん流れている。  そういう中で、仙台銀行の頭取は、雇用についても最大限の努力をすると、このように述べているんですが、七十七銀行の勝股頭取は、徳陽シティバンクからの債権譲渡については正常な貸国債権の引き受けで協力する、当行はリストラを進めている最中であり、店舗や人員の引き受けは考えていない、こういうふうに言っています。  おいしいところだけいただきたいということですが、こんなことを黙って見ているのでは雇用の確保はおぼつかないと思います。政府は強力な行政指導を行うべきだと思いますが、いかがでしょうか。大臣にお願いしたいと思います。
  157. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 徳陽シティ銀行につきまして、現状を御説明申し上げます。  対応策といたしまして、これは宮城県中心でございますので、宮城県を中心として対処いたしているところでございます。宮城県は同銀行に対しまして、雇用問題についての適切な対応を要請いたしております。徳陽シティ銀行におきましては、雇用対策本部を十二月一日に設置し、意向調査あるいは従業員に対する求人情報の提供等を実施するということといたしております。  また、宮城県におきましては、同銀行の従業員の雇用問題に関する連絡調整機関といたしまして、徳陽シティ銀行雇用問題連絡調整会議を設置し、財務局等の関係行政機関あるいは経営者団体等と連携しながら対応することといたしているところでございます。
  158. 吉川春子

    吉川春子君 大臣、七十七銀行の頭取のような発言を黙って見過ごすんですか、いかがですか。
  159. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 再三申し上げておりますように、私たちは先生とは少し立場が違うと思いますが、市場経済という自由社会の中に生きております。したがって、経営者には経営者の判断があると思います。その判断が法律だとか何かに対して違反をするとか、あるいはおかしいという場合は私は責任を持ってそれを正さねばならないと思っておりますが、相手の意思に対して政府が介入をしてその意思を変えさせるということは自由社会では許されていないと思います。
  160. 吉川春子

    吉川春子君 都合のいいときは自由社会をおっしゃって、企業を救うためには公的資金を投入すると。政府お金も出すわけですから、やっぱりきちっと雇用を守るという立場で、自由社会を振りかざさないでぜひ対応していただくように私は強く要求いたします。  それで、政府の権限のある問題についてもう一つ伺いますけれども、山一証券の系列の小川証券、ここの労働者の問題なんですけれども、小川証券は今年七月に自主廃業に追い込まれました。再就職先として頼みにしていた山一証券が突如廃業いたしまして、自分のことで手いっぱい、小川証券の面倒を見る余裕はないと、こんなふうに言われているわけですけれども、大阪証券労働組合小川分会が九月二十四日に大阪地労委に救済を申し立てました。  山一と接触する場をようやく確保した直後にその廃業が発表されたわけですけれども、こういう中で、十二月四日に労働省、大蔵省、文部省、東京都の雇用問題担当者で山一証券等雇用問題連絡協議会が開かれたわけなんですけれども、この対策の中に山一だけではなくて、三洋証券とか小川証券の雇用の問題もぜひ含めて対策を立てていただきたいと思います。この点についてはいかがでしょうか。
  161. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 小川証券の問題につきましては、私ども承知いたしております。非常に厳しい状況で、やはり自主廃業ということでございまして、五月二十六日から営業休止になっております。従業員数も、四十名おられた方が現在二十数名というふうに伺っております。  いずれにいたしましても、私どもその地域におきます公共職業安定所におきまして、企業からの情報収集あるいは解雇時に雇用保険の手続等についてどう指導するか、そういう点も含めまして最大限の努力をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  162. 吉川春子

    吉川春子君 局長、この連絡協議会でもこういう問題もあわせて話し合いますか。
  163. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 山一証券等雇用問題連絡協議会におきましては、現時点におきまして状況がそこまでは参っておりません。  いずれにいたしましても、この地域におきます非常に重要課題でございますから、そういう意味で私どもも大阪府あるいは関係機関等と連携をとりながら最大限の努力をしてまいりたいというふうに思います。
  164. 吉川春子

    吉川春子君 本当に失業の問題というのは大変ですので、労働省、大蔵省、全力を挙げてこの問題に取り組んでいただきたいということを指摘いたしまして、次に、じん肺の問題について質問をいたします。  まず、大臣にお伺いいたします。  じん肺というのは、日本でも最も古い職業病と言われておりまして、鉱山、炭鉱、トンネル坑夫が岩石などの粉じんを長い期間吸い込む結果かかる病気です。これは大変恐ろしい病気だというふうに言われていますけれども、どんな症状になるのか、大臣認識しておられますか。
  165. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 今お話のございましたじん肺につきましては、土ぼこり、あるいは金属粒、そういった粉じんの発生する職場で仕事をされる方が長い年月にわたりまして大量に肺に吸い込んだ場合に、その粉じんを核にいたしまして肺が反応して変化を起こす、そういった病気。  この変化といいますのは、線維増殖の変化でございまして、これはもちろん人間の肺には相当余力がございますので、じん肺の所見を持つ場合でも直ちに呼吸等の障害が起こるわけではございませんが、進行してまいりますとやはり肺結核等の合併症を起こす可能性がある。また、進行した場合に療養が必要になるケースが出てくる。  そういったことで、具体的な症状といたしましては、進行いたしますと、せき、たん、ぜんめい、そういったいろんな症状が出てくる病気というふうに承知しております。
  166. 吉川春子

    吉川春子君 どういう症状を起こすのかということについて、私はきのう大臣認識を伺いたいと質問通告を事前にしておきましたけれどもお答えがないようですので私の方から申し上げたいと思います。  これは遺族の方の手記なんですけれども、夫は戦後すぐから二十二年間麻生炭鉱で働く。五十歳でじん肺とわかる。いきなり最も重い管理四の認定を受ける。それから入退院を繰り返しました。五十八年には、肺が破れる気胸を起こし、それからはベッドから起き上がれず、息苦しさがひどくなり、常に酸素を吸って眠れない夜が続き、ノイローゼになる。ある夜、病院で自殺を図る。体調のいい日におふろに入ったが、酸素を吸ったまま洗い場に入り、おふろの後は酸素を吸っても三十分もはあはあと見るからに苦しそうだった。患者の家族同士で、じん肺よりがんの方がよっぽどましだと話したことがある。がんなら手術もできる。治らなくとも痛みを取ることができるが、じん肺は薬で治すことができない。手をこまねいているしかないつらさは、看病をした者でないとわからない。こういう悲惨な病気であるということをまず御認識いただきたいと思います。  それで、じん肺患者の発生状況について基準局長に伺いますけれども、新たに療養を要する重症のじん肺患者数、それからその中でトンネル建設作業に従事した労働者数を報告いただきたいと思います。
  167. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 平成八年の一年間におきますじん肺管理区分の決定状況で御説明申し上げたいと思います。  新たに管理区分四とされた方の数でございますが、事業主の健康診断で把握された方四十二人、それから随時申請で把握された方が四百九十一人となっております。  この方のうち、トンネル建設業に従事して新たに管理四とされた方の数は、先ほどの事業者による健康診断で把握された方のうち五人、随時申請の方では百七人となっております。
  168. 吉川春子

    吉川春子君 ちょっと統計のとり方でいろいろ数字があるんですけれども、いずれにしましても、かなり患者の数は減ってきているとはいえ、いまだに有所見者がなお一万八千人以上いるということは重要問題です。そして、ことし所見がないとされた人も来年は発病するかもしれないし、管理四や合併症など重症に移行するかもしれない。  じん肺は、一九六〇年に法律ができて国が基準を示し、予防措置を企業に命じてきましたが、なぜいまだにこういう発病者が出るのでしょうか。労働安全衛生に配慮しない企業の責任なのか、それとも政府が定めている基準が甘いのか、あるいは医学的に発生が防げないのか、どういうことでしょうか。
  169. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) じん肺の発生でございますが、私どもその発生予防に全力を尽くしているところでございますが、じん肺は、粉じんの暴露量にもよりますが、粉じんに暴露されてから所見があらわれるまでの期間、一般的に十数年を要する、そういったことが言われておるわけでございます。したがいまして、現在発生しているじん肺の新規の有所見者は、現在と比較いたしましてかなり作業環境が好ましくない状況下で粉じん作業に従事しておられた、そういったことがあるのではなかろうかというふうに思っております。  私ども、このじん肺法等を中心にこういったじん肺に罹患された方々、またそれの予防について全力を尽くしているところでございますが、この十七年間で見ますと、新規の有所見者の発生率は約十分の一まで低下しておるわけでございます。やはり今後ともそういった粉じんの多い職場につきましては、作業環境の改善等について全力を尽くしていかなければならないと思っております。
  170. 吉川春子

    吉川春子君 政府対策もあり、数が減ってきたということは私認めますが、しかし、それでもなおかついまだに苦しんで、新しい重症者も出る、これをやはり根絶していただかなくてはならないというふうに思うわけです。  それで、この恐ろしいじん肺を防ぐために、科学的かつ体系的なじん肺防止対策を立てる必要があるわけですが、そのためには粉じん職場での粉じん測定を実施して作業環境を把握することが不可欠です。じん肺審議会も認めていますように、トンネル建設業は他の業種に比べて、今局長の報告もあったわけですけれども、有所見者の比率が高いわけです。しかし、いまだにトンネル工事現場については、粉じん発生場所が移動することなどを理由に粉じん測定が法的に義務づけられていないのです、ほかではもう測定は義務づけられて実施しているわけですけれども。  労働省調査でも、粉じん測定について何の調査もしていない工事現場も多い、こういう結果も出ています。速やかに測定を義務づけていただきたいと思いますが、どうですか。
  171. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 先生御指摘のように、粉じんの作業環境の測定が義務づけられている作業というものも当然あるわけでございますが、トンネル建設工事につきましては、これまで作業現場の状況が日々変化する、あるいは粉じんの発生源が移動するといったようなことから、技術的な問題もございまして義務づけられてまいっておらないわけでございます。  ただ、こういったトンネルの建設工事におきましても、平成八年度から私ども二カ年計画で調査研究をしておりまして、その中で、粉じん濃度の測定のあり方につきまして技術的、科学的な見地からの検討を進めているところでございます。こういった調査結果も参考にしながら、トンネル建設工事におきますじん肺防止対策のために効果的な対策、何ができるか早急に検討をしてまいりたいと思っております。
  172. 吉川春子

    吉川春子君 局長、本当に早急に実施していただきたいというふうに私は思います。  それで、じん肺法二十一条は、「都道府県労働基準局長は、じん肺管理区分が管理三イである労働者が現に常時粉じん作業に従事しているときは、事業者に対して、その者を粉じん作業以外の作業に常時従事さるべきことを勧奨することができる。」と、このようにしています。これを勧奨というふうにとどめておくことは、これ以上粉じんを吸えば恐ろしい病気にかかって発病するのがみすみすわかっていて、そしてその結果を企業の任意の意思にゆだねておくということになるわけです。それで、労働者の健康よりも企業の利益を優先させるということはもうならないわけです、今の問題ですから。  やっぱり法律の中で作業転換というのをどうしても義務づけていかなきゃならないと思うんですが、その点についてはいかがお考えですか。ぜひ義務づけていただきたいと思います。
  173. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 今御指摘がございましたように、もちろんこのじん肺患者の方につきましては、その肺に吸い込まれました粉じんの量や質によりまして進行が十分あり得るわけでございまして、作業の転換というのは重要な意味合いを持つわけでございます。  私どもも、じん肺法に基づきましてこういった管理区分を設定し、管理区分に応じて就業場所の変更、粉じん作業に従事する作業時間の短縮等、事業主の方に適切な措置を講ずるように努めなければならないというような義務規定を設けたり、あるいは管理区分によりましては都道府県の労働基準局長が勧奨さらには指示できるケースも想定しているわけでございます。  じん肺という非常にその後の状況につきましても憂慮される疾病でございますから、私どもも、勧奨のケースであれ指示のケースであれ、事業者に対しては非常に強い態度でこういった職場環境の改善あるいは転換等について指導をしてまいりたいというふうに思っております。
  174. 吉川春子

    吉川春子君 作業転換を義務づけるといっても、働けなくなって生活ができなくなる、そういうことが労働者の側にあるので、もう危険を承知でそこで働き続けるという労働者が多いわけです。  そういうことを防ぐためには、まず労災を受けられる範囲をさらに健康管理区分の二、三の非合併症の労働者にまで広げるという必要があると思うんです。もう専門職でかなりそればかり、渡り鳥という言葉が適切かどうかわかりませんが、ある人たちは現場現場を渡り歩いているわけなんです。しかし、ほかに転換するということは職を失うわけです。  労災の対象にしていただければ、それは安心して転換して違う職場に移れたりいろいろするわけなんですけれども、そういう点について、その対象をぜひ広げていただきたいと思います。どうですか。
  175. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) この作業転換について事業主に勧奨し、あるいは指示した場合の、もちろん賃金等の低下の問題についてはそれぞれ配慮した措置があるわけでございますが、労災保険の方で療養なり休業補償の対象として見れるかという点につきましては、これはじん肺法にもありますように、管理区分四からその療養の対象になるということにされておるわけでございまして、管理区分二、三につきましては、現在のところそういった療養について必要になるという医学的知見がないというのが実情でございます。
  176. 吉川春子

    吉川春子君 いや、現在ないからそれを加えてもらいたいということを強く要求しているわけなんです。  厚生省、お見えですか。じん肺に罹患した者に合併した原発性の肺がんについて、これを業務上として労災補償の対象に、今なっていないわけです、ぜひすべきであると私は思うわけです。  今まで労働省は対象にしない理由を具体的にいろいろ言ってきたんですけれども、ここでWHOの新しいレポート、IARCというがんの研究をする国際機関だと思いますが、このたび、珪酸、珪酸塩、炭じん、アルミ繊維など職業上吸引してがんになった者は、その原因を職業上に求める点で従来のグループ2Aからグループ1へと評価が格上げされた、こういう報告が届いているんですけれども、厚生省、この点についてちょっと説明していただきたいと思います。
  177. 高原亮治

    説明員(高原亮治君) IARCが無水珪酸、二酸化珪素とも申しますが、そのうちの結晶性のもの、結晶状シリカというふうに言われておりますが、特定の条件下において吸入した場合、グループ2であったものがグループ1に区分がえをしたということは事実でございます。  なお、炭じん、アルミにつきましてはグループ3ということで従来より変わっておりません。
  178. 吉川春子

    吉川春子君 労働省、医学的な研究成果でこういうことがはっきりしてきたわけなんです。だから、国際的な基準の変更を参考にして患者の救済のために日本の基準を見直すときに来ていると思いますが、その点はどうですか。
  179. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) ただいま厚生省の方から説明のありましたIARCの、シリカといいますか、けい肺の原因物質のがん原性についての評価がえが行われたということにつきましては、私どもも重要な情報として承知をいたしております。  私ども、そういった動向を踏まえまして、このIARCのこういった評価がえが行われた基礎となる資料、あるいは国内において専門家の方等と相談して、この問題について取り組んでいくためのいろんな医学的所見等の収集に目下努めているところでございます。
  180. 吉川春子

    吉川春子君 私、もう時間がなくなりましたので、最後に大臣質問いたします。  実は、健康管理手帳をぜひ労働者に交付してほしい、そういう問題も含めて質問したいと思うんですけれども、じん肺は、初期には自覚症状がなくても進行すれば不治の病であり、悲劇的な結果になります。まさに本人が自覚し、予防するということも非常に必要です。また、所見があらわれたら一層十分に注意する必要があるわけですけれども、本人に自覚を促すためにも在職中に健康手帳を交付する必要がどうしてもあると思います。  また、最近労働省は、私持ってきておりますが、こういう「離職するじん肺有所見者のためのガイドブック」というガイドブックを発行いたしました。ところが、これは離職する人にしか交付されないんです。  今いる人たち企業が責任を持つとか、何かそんな理由をおっしゃっていましたけれども、しかしこれはなかなかよくできたガイドブックで、こういうものを全部の労働者にお渡しして注意を促す、こういうようなことをやるとか、それから最初に申しましたように健康管理手帳を交付するとか。言ってみれば、今手術したり治す方法はないわけですからもう予防するほか方法がないので、あらゆる方法で労働者自身も予防していかなければならないので、そういう手だてをぜひ労働省にとっていただきたい。  大臣、こういう恐ろしいじん肺という職業病を根絶するためにも全力で今後とも労働省として取り組んでいただきたい、そのことを最後に質問したいと思います。
  181. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 極めて医学的、専門的な御討議が交わされておりましたので私はそれを伺っていたわけであります。今御指摘の健康手帳というのは、離職者の方に対してできるだけその予防、早期発見を目的として無料で健康診断が受けられる証明のために交付しているものだというふうに伺っております。在職者の方は、申すまでもなくじん肺法に基づいて事業者がじん肺の健康診断を実施する義務が当然法律上あるわけでありますから、国が健康診断を無料で実施することができる健康管理手帳を交付するということはちょっと私は考えにくいんではないかと思います。  ガイドブックについては、先生が御指摘のとおり希望があれば在職者についても私は配ればいいんじゃないかと思いますので、それはよく事務当局に話しておきたいと思います。
  182. 大脇雅子

    大脇雅子君 山一証券の問題につきましては、関係従業員それから関連会社を含めて一万人を超えると言われる雇用対策にどのように総合的に対処されるのか。先ほど山一証券の雇用推進委員長から非常に深刻なお話がありましたが、雇用調整金なども含めてどのように対応しておられるのか、大臣にお尋ねしたいと思います。
  183. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 先般来いろいろ御論議がございましたが、我々は山一を特別扱いするつもりは毛頭ございません。ただ、北拓や三洋証券は、廃業という法律行為ではない企業の存続の道を探っておりますので、その状況を見ているということであります。  山一については、先生が御承知のように、関連企業も入れますと一万四千人ぐらいおられると私は思いますし、御家族は三人平均として四万五千人ぐらいの方に大変な影響を及ぼすことでございます。したがって、特に午前来の御審議の中で明らかになったことでありますが、中高年の方々と正規の女性社員の方々の再雇用が今非常に難しい状況になっておりますので、山一からも十分情報をとっておりますが、特に雇用を申し出ていただいている企業に、申しわけありませんが、年齢を引き上げていただくようなことを山一を通じて今お願いをし、そして関連の企業の方を含めて、労働省が持っております職業あっせんの全機能の中でこれらの人たちに対しても十分配慮しながら対応していくようにということを指示いたしておるところでございます。  ただ、この雇用調整助成金に対しての大型倒産事業主に指定するかどうかということにつきましては、山一からの申請という行為も一つ必要でありますし、要件に合うかどうかということも必要でございます。まだいろいろな会社清算業務をしておられるときに、一方的に大型倒産事業主という指定をするということが市場に与える影響や、またいい結果を生むかどうかということも見定めながら対応したいと考えておるところであります。
  184. 大脇雅子

    大脇雅子君 今後、山一証券だけではなくて、さまざまな失業企業の倒産と関連してふえてくるのではないかと。失業率が三・五%に上昇しているわけですが、その原因と分析についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  185. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 御指摘のように、完全失業率につきましては、平成九年十月現在で三・五%と前月より〇・一ポイント上昇いたしております。過去最高水準になっているわけでございます。  これにつきましては、十月は自発的離職による者が前年同月比で四万人増と引き続き増加いたしますとともに、非自発的離職による方が二万人増と増加に転じたことによりまして前月より完全失業者がふえたものというふうに見ております。  完全失業率を性・年齢別に見ますと、男性は三・四%と前月より〇・一ポイント低下いたしましたが、女性は三・五%と〇・二ポイント上昇しておりまして、男女ともに特に二十五歳から三十四歳の若年者での率が高まっております。
  186. 大脇雅子

    大脇雅子君 この雇用創出と失業対策のために、労働省は「失業なき労働移動」ということをキーワードとしていろいろな施策を構築しておられるわけですが、その「失業なき労働移動」ということは現状でどうなっているのか、効果を上げているのか、あるいはまた将来の見通しはどうかということについてお尋ねしたいと思います。
  187. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 経済構造改革が進む中におきまして、これは先ほど来御議論ございますように好むと好まざるとにかかわらず進んでいくと思いますが、そういう場合におきまして、新たな雇用が生み出される一方で、雇用が減少する分野も出てくるというふうに考えられるわけでございます。  そこで、こうした中で摩擦的な失業の発生を防ぐために労働移動を円滑にするなど、適切な雇用対策あるいは職業能力開発対策を推進していくことが今後ますます重要となってくるというふうに考えておるところでございます。  この「失業なき労働移動」、これが現時点で適切に行われているかどうかという点につきましては必ずしも明確ではない面もございます。私ども、業種雇用安定法等によります対策もとっているところでございますが、この対策に乗ってくるケースが必ずしも多くございません。一方で、中小企業労働力確保法に基づきますベンチャー企業あるいは中小企業の新分野展開、これに対する支援もやっているわけでございますが、これにつきましては制度発足以来千四百件ぐらい対象が出てきております。これは規模が小さい面もございまして必ずしも雇用効果が大きいとは言えませんが、今後そういう対策はやはり必要なものであるというふうに考えているところでございます。  雇用吸収力のある分野等につきましては、先ほど来労働大臣お話し申し上げておりますように、長期的には医療福祉分野あるいは生活分野など、十五の新規成長分野において新たな雇用が約七百四十万人程度創出されるのではないかというふうに考えられているところでございます。
  188. 大脇雅子

    大脇雅子君 生活福祉分野などを含めて新しい雇用の創出と労働移動をうまくマッチさせていくよう、でき得る限りきめの細かい労働政策を推進していただきたいと思うものです。  さて、山一証券に関連して大蔵省にお尋ねしたいのですが、信用秩序維持のために日銀特融が出されたわけです。一般会計の税金等のいわゆる公的資金まで投入するかどうかまだ検討中のようでございますけれども、日銀特融を初め公的な資金というものを出す場合に歯どめが必要ではないかというふうに考えるわけですが、そうしたルールというか、基準づくりというものはどのような形で検討されているのでしょうか。
  189. 小手川大助

    説明員小手川大助君) 今回の山一証券の問題に際しましては、この規模の大きさ等にかんがみまして、我が国の金融をめぐる状況を踏まえまして信用秩序全体の維持、安定を図るという観点から、日銀特融というものをお願いいたしまして一般的な顧客資産の返還、それから既に契約した取引の履行などに必要な資金を供給するものであるというふうに理解してございます。  現在、いろいろと公的資金ということについて検討が行われておりますが、まだ現時点において、具体的な案がどのようなものかという点については承知していない段階でございます。今後、各般の御意見等も伺いながら、具体的な案づくりについていろいろと検討させていただくことになるのではないかというふうに考えております。
  190. 大脇雅子

    大脇雅子君 こうした状況の中でボーナスも支払われ、役員の報酬なども通常どおり支払われているということですけれども、いわゆる四大証券と言われる中の比較において、大体この山一証券というものは平均どの程度のボーナスや役員報酬等が支払われているのかということについて、労働省または大蔵省は御調査しておられるのでしょうか。
  191. 小手川大助

    説明員小手川大助君) 今回のような状態に至った場合に、まず役員報酬については恐らく支払われないということになるのではないかというふうに考えております。それから、一般的な賃金等の数字につきましては、これはもちろん業種によっても相当に変化がございます。ただ、全体的に見れば、この四社の間では大体同じような水準にあるのではないかというふうに理解してございます。
  192. 大脇雅子

    大脇雅子君 清算事業がこれから行われるわけですが、その中で労働債権の確保ということについては大丈夫だというふうに思っておられるのでしょうか、その点についての見通しはいかがでしょうか。
  193. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) まず、労働債権という言葉の中にはいろいろな意味が含まれていると思いますが、日々の労働に対して月々払われているいわゆる月給については、今大蔵省の課長が申しましたように今のところ順調に支払われていると。そして、それはまた朝お見えになった山一証券常務取締役の参考人の御意見とも合致いたしております。  となりますと、問題は退職金ということになろうかと思いますが、我々が大蔵省から得ております情報では、山一証券は最終的に清算をした場合には債務超過ではなくて債権が上回っていると伺っておりますので、この債権の中には当然労働債権も入っているわけで、大蔵省が誤りのない情報を提供している限り、我々は大丈夫だと思っております。
  194. 大脇雅子

    大脇雅子君 大蔵省にお尋ねしますが、債務超過がないというふうに山一証券の報告では言われ、新聞紙上にもそうしたことが書かれながら、一方で債務超過もあり得るというようなことも言われておりますが、これの調査というのはどこまで進んでいるのでしょうか。
  195. 小手川大助

    説明員小手川大助君) 今般、日銀のいわゆる特融をお願いするに際しまして、もちろん私ども日銀とともにそれなりの調査をさせていただきまして、現時点において会社が債務超過の状態にはないというふうにそこは認識しているところでございます。  ただ、これは先般の大臣の談話の中にもございましたけれども、万が一の場合ということを考えまして、本件の最終処理なども含めまして、いわゆる寄託証券補償基金について、この全体の制度の規模でございますとか機能について、この拡充をお願いすることもあろうかというふうに考えているところでございます。
  196. 大脇雅子

    大脇雅子君 でき得る限り慎重に対応していただきたいと思います。  さて、中央労働基準審議会は、「今後の労働時間法制及び労働契約等法制の在り方について」の報告というものが出されて、十一日にその建議がなされるというふうに聞いております。基本的に、規制緩和の流れの中でこうした労働法制に対する見直しが行われていると言われますが、労働法制というのは、まさに経済の市場原理の中における弱者に対して公正、平等なシステムをつくっていくという規制であって、経済的な規制とは本質的に異なる規制であるというふうに考えるものですが、規制緩和労働法制のあり方についての大臣基本的な考え方をお伺いしたいと思います。
  197. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) まさに先生がおっしゃったことに尽きていると思いますが、これは市場経済世界でも計画経済世界でも、共産主義国であっても自由主義国であっても、やはり資本と技術とそれを利用していく立派な労働力の結合によって生産活動というのは行われるわけでございますから、労働力経済の一分野であるということは私は否定すべきじゃないと思います。  しかし同時に、その労働力を提供している人というのが、これは単に物と考えていいわけではございませんわけで、働く人が尊厳を持って働けるための基本的な事項を定めているのが私は労働基準法だと思いますので、そのあたりの二つの考えを調和させながら、日本国際化あるいは長寿・少子化社会の中でも現在のこの生活水準を維持していけるような法制にしていくべきだと、私はそう考えております。
  198. 大脇雅子

    大脇雅子君 労働基準法における女子保護規定が、時間外労働、休日労働、深夜労働に関しましてその制限や禁止が撤廃されたことと引きかえに、先回の議会の審議の中で、いわゆる男女共通の規制というものが非常に重要であるということが附帯決議等にも盛り込まれて議論をされたと思います。  私たち社会民主党は十二月四日に、時間外労働、休日労働のあり方についての改正法案の要綱を発表しておりますが、時間外・休日労働につきましては、たとえ三六協定、残業協定がありましても総枠の年間規制というものが必要であって、少なくとも使用者がそれを超えて時間外労働を命ずるということが違法かつ無効であるという最低限の効力をしっかりと打ち出さなければいけないのだというふうに考えているわけです。  目安時間というのが、いわば時間外労働上限の基準と言われていることは評価をするものでありますが、そうした点については、いわゆる三六協定の上限基準に留意する使用者の責務という形で審議会の報告がなされているということで、私どもはその具体的な法文化がどうなるのかということに重大な関心を寄せているものであります。  先ほど、笹野議員から、家族的責任を有する女性労働者の激変緩和措置の三年間がなぜ三年なのかということについてお尋ねになりましたけれども、私どもも、三年の間に家族的責任を持つ男女の労働者についてどういうシステムをつくるのかという、その方向性において大変大きな関心を持っているものであります。この点についてどのようにお考えかお尋ねしたいと思います。
  199. 太田芳枝

    政府委員(太田芳枝君) 家族的責任を有します男女労働者の時間外・休日労働に関しましては、現在、既に育児・介護休業法におきまして、働きながら子を養育することを容易にするための措置の一つといたしまして、所定外労働をさせない制度が事業主の義務または努力義務として規定されているところでございます。  そして、先生御指摘の激変緩和措置につきましては、先ほど来るる御答弁申し上げていますように、十一日に行われる運びとなっております中央労働基準審議会の建議を受けまして対応していくこととしておりますけれども、あわせまして、この所定外労働をさせない制度の重要性につきましては事業主に対しまして改めて周知を強化し、家族的責任を有する労働者の時間外労働の実態につきましては今後十分注視をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  200. 大脇雅子

    大脇雅子君 私は、三年間の期間内にいわゆる深夜労働の免除請求権のような形で、育児・介護休業法の中に家族的責任を有する男女の労働者に対する法的規制を何らかの形で明文化していくべきではないか、あるいは時間外労働の上限基準の中でそうした家族的責任を有する時期における時間外労働の低い基準を設定すべきではないかというふうに考えているものであります。ぜひ踏み込んで御検討をいただきたいと思います。  さらに一つ、今度の基準審議会の報告では、時間外労働や休日労働あるいは深夜労働に関する割り増し賃金のアップについて議論されていないのですが、この割り増し賃金率が国際的にも非常に低いということが言われて久しいわけですが、これについてはどのようにお考えでしょうか。
  201. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 割り増し賃金率でございますが、時間外・休日労働に係る割り増し率と深夜業についての割り増し率とございますが、時間外・休日労働の割り増し率については前回の労働基準法の改正の際に二五%と固定方式であったものを、二五から五〇%の間で政令で決めると、こういうふうに必要な改正がなされたわけでございます。  今回、時間外・休日労働の割り増し率についてどうするかということを審議会でも種々御議論がございました。関係部会から示された報告の中では、この割り増し率については現在四十時間制がかなりの中小企業において急速に定着しつつありますが、まだ完全でないということもございますので、来年度の定着状況、来年の五月、六月等に必要な調査が行われるわけでございますが、それを見てこの引き上げについて検討を開始する、こういうことが盛り込まれております。その際、深夜の割り増し率についてもあわせて検討すると、こういう表現で盛り込まれておるところでございます。  私ども、必要な調査を円滑に行いまして、そういった御議論が展開できる環境をつくってまいりたいと思っております。
  202. 大脇雅子

    大脇雅子君 割り増し賃金率は、時間外労働、休日労働の抑制効果ということについてはかなり効力があると考えますので、ぜひ御検討をお願いしたいというふうに思うわけです。  さらに、有期契約法制について、一定の職種に関しましてあるいは一定の条件、要件を付記しまして三年に延ばすということでありますが、その中で雇用形態別に、いわゆる定型的な契約パターンというようなものを労働条件明示の中で書くというふうに言われていますが、この有期契約法制とそういう労働条件明示の相乗効果の中で、いわゆる雇用形態別の差別を固定化し助長する効果を生むのではないかということが心配をされていますが、この点については雇用形態における不合理な差別を是正していくという方向においてどのようにお考えでしょうか。
  203. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 今回、関係部会からの報告で提案されています契約期間の延長は非常に限られたケースを取り上げておりまして、新しい製品の開発あるいは新しい事業の展開等のために、あるいは海外進出とかいった場合のプロジェクトのための人材が社内にいないために一定期間どうしても他から力を借りざるを得ないというようなケースにつきまして三年ということ、それに限って提案をされておるわけでございます。  そういった意味では非常に高度の知識、経験等を持つ研究者あるいは技術者に限られるわけでございまして、御指摘のように一般的な形で、期間の差による差別というような問題がそう生じるものとは私ども必ずしも受けとめてはおらないところでございます。  ただ、もしそういったことにつながるような御指摘につきましては、私どもこれから制度化を検討するに当たりまして十分念頭に置き、どういった問題が出るか見極めながら具体化をしてまいりたいと思っております。
  204. 大脇雅子

    大脇雅子君 とりわけ裁量労働法制につきましていろいろと議論がありまして、原則として労働組合の人たちは裁量労働の拡大について反対をしているわけであります。  報告書などによりますと、対象業務の範囲の考え方が非常にあいまいであって、拡大をしていく危険性というものがあるのではないか。とりわけ職務評価制が未熟な我が日本において、裁量労働制の導入ということは慎重であるべきだというふうに考えますが、この点はどのようにお考えでしょうか。
  205. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 今回、この裁量労働制のあり方について議論されています対象者は、企業の本社等のいわば事業の中核におりまして、グローバル化する経済活動の中で活動している方々を考えておるわけでございます。  したがいまして、部会の報告におきましても、本社等の事業場で企画とか調査を行っている人たちで、業務の遂行方法あるいは時間配分の決定等に関して使用者から具体的な指示をされない、任されているというようなことを要件にいたしまして、さらにそれをガイドライン的な告示等で、問題の発見、解決、それをどう展開していくかというような一部の業務をみずからの判断と工夫で展開するような人たちを具体的にそしゃくして告示等で具体化していくというふうなことがうたわれておるわけでございます。  そういった点、私ども法律上もガイドライン的な告示におきましても業務の範囲というものをこれからの制度化に当たって明確に規定できるような工夫を十分していかなくてはいけないと思いますし、また、それらをもとにそれぞれの企業の事業場内でどういった人たちを具体的に裁量労働の対象範囲として特定するかは労使委員会というもので決めてもらう、これが制度実施のいわば基本要件だ、こういう位置づけになっておりますので、そういった中で法律または関連の告示等の趣旨を受けて適正に対象者の範囲が決定されていくように、これは私どもの重点的な指導監督対象にもなっていく事項かというふうに思っております。
  206. 大脇雅子

    大脇雅子君 建議が今月の十一日といいますと、法案要綱の諮問のタイムスケジュールを最後にお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。
  207. 伊藤庄平

    政府委員(伊藤庄平君) 建議が十一日に出される予定でございまして、そういった具体的なことについてお話しするのが適切かどうか、ただ、私ども建議を受けましたら制度化に向けまして法案の作成作業等に入りたいと思っております。  とりわけその中で、部会報告に盛られております個々の労働条件等に関する紛争処理に関するシステムをつくれ、こういう提言がございまして、この点につきましては、最近の労働市場等の状況から見ますとできるだけ早く実施したいということで、来年度の年度途中ででも実施に入っていきたいと思っております。  そういった意味では、全体は平成十一年の四月実施ということになりますが、その部分につきましては年度途中実施ということで予算関連法案という扱いになるのではないかと思っております。そういう意味では、一月の大体中旬から下旬にかけまして審議会の方に法案を改めて諮問し、予算関連法案の二月の中旬の国会提出に間に合わせていくというスケジュールが基本的なスケジュールになろうかというイメージを持っております。
  208. 伊吹文明

    国務大臣伊吹文明君) 基準法の改正について、大変広範な範囲から建設的な御討議をしていただいてまことにありがとうございました。  実は、私はまだ建議そのものをちょうだいいたしておりませんで、部会から審議会に提出をされたところで、審議会でもう一度御議論を経た上で私がちょうだいするという運びになろうかと思います。したがって、内容について私が今ここでとやかく言わない方がいいと思って、実は黙って御議論を伺っておりました。  そこで、今基準局長が申し上げましたようなスケジュールでともかく次期通常国会にお願いしなければなりませんが、議院内閣制でございますから、その前に当然与党三党の協議をお願いしなければなりません。今、先生からお話がございましたことも拳々服膺して、その際に改めて御議論いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。
  209. 星野朋市

    委員長星野朋市君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時二十三分散会      ―――――・―――――