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参考人(
水原敏博君) 私どもが今回の案件を把握いたしましたのは十一月十七日でございます。
委員会で私が承知いたしましたのは十一月十八日でございました。そのときは二千億を超える
簿外負債があるということでございました。
その内訳はどういうことかと確かめましたけれども、担当者の入れかえ等々でなかなか今のところはっきりしておらないんだということでございました。
しかし、
簿外債務となりますと、そこには何らかの法令違背の可能性があってもおかしくないなというのが私の検察官生活三十七年の経験に基づく勘でございました。そこで直ちに、それまで既に全部検査官室は検査に出払っておりましたけれども、喫緊の課題だと考えまして、特別検査の体制を準備するようにということを
指示いたしました。
二十四日になりまして、
簿外債務のうちに飛ばしがあるということを
山一から
報告を受けましたので、直ちに連休明けの二十五日、
委員会で特別検査を議決して、検査に入らせました。そこで、その入らせたときに私が特に注文をつけたことは、本件飛ばしの
発生原因は何か、それからその後どういう
経緯をたどって今日に至っておるのか、その間に法令違背の問題があるかどうか、それを徹底的に真剣に調べてもらいたい、それからでき得ることならば、なぜ今までこの案件が発見できなかったのか、その原因等をも十分念頭に置いて徹底した検査を実施するように
指示いたしました。
ところで、ありがたいお尋ねでございましたが、権限が足りないのか、あるいは陣容が足りないのかという御
質問をいただきました。
まず、権限の関係で申しますと、SECと比較して決して遜色のある権限ではないと私は考えております。ただ検査は、
委員も御案内のとおり、あくまで犯罪
調査でございませんので、犯罪の存在を前提とした検査ということはできないわけでございます。
したがって、そこに不公正取引があるかどうか、そして調べた結果、犯罪の嫌疑があれば直ちに特別
調査課に通報するということになっておりますけれども、やっぱり任意
調査の検査の限界というものがございます。これは
証券会社等関係者の積極的な協力を得られなければならないんですけれども、現在のところは協力を得る
一つの方法としては検査回避の罰則があるだけでございます。あとは、犯罪者でないとなりますと、誠心誠意私どもの方で、職責の重大性を自覚しながら情熱を燃やして真相を明らかにするほかに方法がございません。これはどの社会においても同じだと思います。
ところで、陣容の点でございますけれども、
平成四年の七月二十日に発足いたしました当時、
委員会は八十四名で発足いたしております。ほかに、財務局関係で百十八名おりました。当日、マスコミの
方々からいろいろな
質問を受けましたが、そのうちで一番大きな
質問は、今、
委員の
仰せの陣容の問題でございます。SECとの比較において、SECは三千人いるじゃないか、
委員会は財務局を合わせて二百名足らずじゃないか、それでできるのかということでございました。
私が申し上げましたことは、私は
証券業界のことは何も知りません。しかしながら、数の点で比較いたしますと、SECの対象としております登録
証券会社は八千社くらいでございます。その当時は一万社ぐらいありましたでしょうか。私どもの所掌いたします免許業者、この数は二百四、五十社だったと思います。それで、単純に一人当たりの負担量を計算いたしますと、そんなに不足しているとは思いませんねと。しかし、
委員会が発足してこれからどういう仕事があるかは発足した後実績を見なければわかりません。今の時点で考えますと、非常に厳しい財政事情のもとでこのような陣容をお認めいただいたことに対しては私としては感謝いたしておりますけれども、今後の仕事の内容を見ながら、必要に応じて補強をしていかなければならない事態が生じるのではないかというふうに記者のお尋ねに答えております。
ところで、まず職員の資質、能力向上から始めました。それから、先ほども申しましたように、マインドの切りかえというのは意欲に結びつきます。そういうことで、一生懸命に体制づくりをやってまいりました。やってみますと、
証券検査に対する深度が深くなればなるほど陣容が足りません。
それから、特別
調査の案件でございますけれども、取引審査部門で審査の
技術といいましょうか、これがどんどん啓発されましてノウハウを蓄積いたしました。そこで端緒になる案件を相当発掘してもらっております。しかしながら、それに対応する特別
調査課の職員の数が圧倒的に少ないということがわかりました。
その後、
平成六年で二名、七年で二名、八年で一名、九年で二名という増員をお認めいただきましたけれども、七名の増員でございます。これでは到底与えられた職責を全うすることができない、私はそう思いましたので、事務局を通じて
平成十年度の概算要求のときに、
委員会として十五名、それから財務局の特調関係として十五名の増員をお願いいたしたところでございます。
非常に厳しい事情はよくわかっておりますけれども、そのような実情で、市場の監視、番人役としての役目を十分果たせるように、今回のような見逃しのない体制を整えるために、何とぞ当
委員会の
委員の
先生方にも何分の御協力をいただきたいと思っています。