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1997-11-18 第141回国会 参議院 予算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月十八日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  十月十五日     辞任         補欠選任      岩井 國臣君     沓掛 哲男君      上野 公成君    大河原太一郎君      田浦  直君     久世 公堯君      野村 五男君     斎藤 文夫君      菅川 健二君     高橋 令則君      本岡 昭次君     久保  亘君  十月十六日     辞任         補欠選任      志苫  裕君     大渕 絹子君      瀬谷 英行君     及川 一夫君      筆坂 秀世君     上田耕一郎君  十一月十日     辞任         補欠選任      伊藤 基隆君     小川 勝也君  十一月十一日     辞任         補欠選任      小川 勝也君     伊藤 基隆君  十一月十七日     辞任         補欠選任      斎藤 文夫君     松村 龍二君      荒木 清寛君     都築  譲君      小林  元君     猪熊 重二君      高橋 令則君     戸田 邦司君      浜四津敏子君     武田 節子君      伊藤 基隆君     千葉 景子君      山田 俊昭君     佐藤 道夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         岩崎 純三君     理 事                 岡部 三郎君                 小山 孝雄君                 永田 良雄君                 成瀬 守重君                 木庭健太郎君                 直嶋 正行君                 竹村 泰子君                 照屋 寛徳君                 山下 芳生君     委 員                 阿部 正俊君                 石井 道子君                 石渡 清元君                 板垣  正君                大河原太一郎君                 金田 勝年君                 久世 公堯君                 沓掛 哲男君                 田沢 智治君                 武見 敬三君                 谷川 秀善君                 南野知惠子君                 平田 耕一君                 真鍋 賢二君                 松村 龍二君                 依田 智治君                 猪熊 重二君                 今泉  昭君                 牛嶋  正君                 加藤 修一君                 田村 秀昭君                 武田 節子君                 都築  譲君                 戸田 邦司君                 益田 洋介君                 山本  保君                 久保  亘君                 千葉 景子君                 角田 義一君                 大渕 絹子君                日下部禧代子君                 上田耕一郎君                 笠井  亮君                 佐藤 道夫君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        法 務 大 臣  下稲葉耕吉君        外 務 大 臣  小渕 恵三君        大 蔵 大 臣  三塚  博君        厚 生 大 臣  小泉純一郎君        農林水産大臣   島村 宜伸君        通商産業大臣   堀内 光雄君        労 働 大 臣  伊吹 文明君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員  上杉 光弘君        会委員長)        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)      鈴木 宗男君        (沖縄開発庁長        官)        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  久間 章生君        国 務 大 臣        (経済企画庁長  尾身 幸次君        官)    政府委員        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第一        部長       秋山  收君        人事院総裁    中島 忠能君        人事院事務総局        給与局長     武政 和夫君        内閣総理大臣官        房審議官     安藤 昌弘君        警察庁警備局長  伊達 興治君        防衛庁長官官房        長        大越 康弘君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛庁運用局長  太田 洋次君        防衛施設庁長官  萩  次郎君        防衛施設庁施設        部長       首藤 新悟君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        科学技術庁原子        力局長      加藤 康宏君        法務省刑事局長  原田 明夫君        外務大臣官房領        事移住部長    内藤 昌平君        外務省総合外交        政策局軍備管   阿部 信泰君        理・科学審議官        外務省総合外交        政策局国際社会  朝海 和夫君        協力部長        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省北米局長  高野 紀元君        外務省条約局長  竹内 行夫君        大蔵大臣官房総        務審議官     溝口善兵衛君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省銀行局保        険部長      福田  誠君        大蔵省国際金融        局長       黒田 東彦君        証券取引等監視        委員会事務局長  堀田 隆夫君        国税庁次長    船橋 晴雄君        厚生大臣官房総        務審議官     田中 泰弘君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        農林水産大臣官        房長       堤  英隆君        農林水産省経済        局長       熊澤 英昭君        農林水産省構造        改善局長     山本  徹君        食糧庁長官    高木 勇樹君        通商産業大臣官        房総務審議官   及川 耕造君        通商産業大臣官        房審議官     杉山 秀二君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        通商産業省環境        立地局長     並木  徹君        中小企業庁長官  林  康夫君        中小企業庁次長  中村 利雄君        自治省行政局選        挙部長      牧之内隆久君        自治省税務局長  湊  和夫君    事務局側        常任委員会専門        院        宮本 武夫君    参考人        日本銀行総裁   松下 康雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○予算執行状況に関する調査  (景気対策外交及び政治倫理に関する件)     —————————————
  2. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  予算執行状況に関する調査のため、本日の委員会日本銀行総裁松下康雄君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 予算執行状況に関する調査を議題とし、景気対策外交及び政治倫理に関する集中審議を行います。  質疑者はお手元の質疑通告表のとおりでございます。  それでは、これより質疑を行います。平田耕一君。
  5. 平田耕一

    平田耕一君 折しも昨日、外交それから経済に関しまして大変気にかかるニュースが飛び込んだわけであります。  外交につきましては後ほど同僚議員であります依田議員からお尋ねされることと思いますが、経済につきまして、御承知拓銀の報道がございました。その中で、私自身は、大蔵大臣が預金は保証するから落ちついてくれと、こういうコメントを発表されました姿を大変頼もしく思っておったわけであります。  と申しますのは、私がいつも地元で皆さんから尋ねられることは、銀行お金を預けて大丈夫だろうか、保険会社保険を掛けておって大丈夫だろうかということでありました。そのたびに私たちの立場で絶対大丈夫ですと言わざるを得なかったわけでありまして、そのとおりのコメントを発表していただいたわけであります。  ただ、その他の銀行あるいは金融機関総じてでありますけれども、特に銀行について、今後かかる事態を防止するためにも、早々と公的資金を導入して銀行を救済すべきだという論調も目立ってきているわけであります。  私がかつて当選したはな、住専という問題があったわけであります。いろいろ議論があったと思いますけれども、私自身は、あのときは基本的に農協にお金を返すという経済原則に基づいた声があったために、いろんな批判があったけれども押し切れたというふうに思っているわけであります。  今回は、どんな形が考えられるかわかりません、例えば銀行の優先株を発行させるという、かなり無理がありますけれども、公的資金で引き受けるだとかあるいは別の機関を設けるだとか、いろんな考えがあるかもしれませんが、なかなかそう安易にはいかない。でも、やっぱり国は、金融商品によって不特定多数が持っている債権についてはむしろ公的資金でもってダイレクトに保証していくという方向はぜひひとつお願い申し上げたい。  ただ安易に銀行を助けるということじゃなくて、そういう国民債権を保証するということにはダイレクトに公的資金を使ってもらいたいというふうに思いますけれども、その辺の、今後の考えも含めて、大変大きなニュースでありますので、まず大蔵大臣の御見解をお尋ね申し上げたいというふうに思います。
  6. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 拓銀の問題は、御指摘のように金融三法に基づきまして万全の策をとらせていただきました。北洋銀行事業承継を受けるという合意の中で、承継できるまでの間従前の営業を展開してまいりますと。その間、預金保険機構の中で預貯金者に対する支払いが行われてまいるし、またそのことは保証される、こういうことになり、通常の取引の中で健全な取引先につきましては融資が引き続き行われてまいります。日銀特融の発動により万全を期したと。  さて、今後の問題と公的資金の問題についての御質問でありますが、御承知のとおり公的資金は今日金融三法の中で万全を期しておるということでございますから、今直ちに御指摘のようなことに取り組むということは、政府として、大蔵大臣として、本件は三法で補てんすると申し上げてきており、その機能が発揮されておる中でありまして、御議論は御議論として承知はいたしておりますが、公的資金ということになりますと国民論議が大前提でありますし、その前にやはり不良債権の解消のためにそれぞれの金融機関全力を尽くして努力いたしております。改善が進んでおると思います。  ただいまの段階は、そういうことで事態に対処し、万全を期するということで取り組まさせていただいております。(「全くわからないな」と呼ぶ者あり)
  7. 平田耕一

    平田耕一君 私はよくわかったわけであります。  しかし、早期是正措置というのも策定したばかりであります。続きますとこれは一体何だったのかなということになりますが、再度申し上げますが、要は、国民に対する信を裏切らないということにつきましては保証していただけると、こういう御答弁であったというふうに思っております。どうぞひとつ、その点につきましては絶大にお願いを申し上げたいというふうに思います。  さて、本題であります、お願いしております質問に入らせていただきます。  まず、経済企画庁から、主要経済指標の最近の動きということで、十一月度の報告をちょうだいしたわけであります。それぞれの判断項目別にされております。個人消費民間設備鉱工業生産企業雇用情勢物価等の、まず一ページ目でありますけれども、ここのところ、しばらく続いて民間設備投資項目だけが回復傾向にあるとか堅調であるということでありまして、他はほとんど弱含みあるいは一進一退等の、そう前向きでない、よくて横ばいみたいな表現があったわけであります。  それにつきまして、民間設備投資が堅調に推移しておるということはそんなに重要なことなのかなということもあわせて、十一月の月例につきまして簡単に概略コメントをお願い申し上げたいというふうに思います。
  8. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 最近の景気動向の御質問でございますが、十一月の月例経済報告では、景気回復基調にあるものの足踏み状態にあると、端的に言いましてそういう一言で表現をしているわけでございます。  内容的に申し上げますと、今、平田委員のおっしゃいました、設備投資は、企業収益の増加とかあるいは設備稼働率がかなり上がってきておりまして、そういう点を反映して増大傾向にある。それから、いい方から申し上げますと、輸出も実は非常にふえてきておりまして、この二つがやや景気を引っ張っているかなという感じでございます。  消費につきましては、区々でございますが、物によって違いますが、そこそこの横ばい的な動きをしている。御存じのとおり、住宅建設が昨年と比べまして消費税影響もございまして非常に落ち込んでいるという状況でございまして、全体としては先ほど申し上げたような状況でございます。消費者方々も、数字的に見ますと割合と賃金所得それから雇用等もふえておりまして、懐ぐあいはそこそこであるというふうに考えておりますが、まだ消費が思ったほど順調に伸びていないという状況にございます。  それから、設備投資も伸びていることは伸びているのでありますけれども、大幅な伸びという表現までいっていないという状況でございまして、企業家あるいは消費者ともに懐はそこそこ豊かであると考えておりますが、これが順調な購買力拡大にまだつながってきていないというのは、やはり経済の将来に対する信頼感というものがやや損なわれているかなということでございまして、きょうのお昼でございますが、政府として経済対策を取りまとめまして、それを推進することによりまして実際の景気回復につながるような結果が出てくることを期待している状況でございます。
  9. 平田耕一

    平田耕一君 御答弁の中で、個人消費財布は、そうよいともおっしゃいませんけれども、まあまあよしということであるが購買につながらない、消費につながらないということであります。  それで、冒頭申し上げましたように、設備投資だけがどうも牽引車になっておるということはこれは否めないわけでありまして、個人消費がそうであるならば設備投資というのはもっと極端にその傾向があらわれるものであるということは長官は御高承だというふうに思っております。  何を申し上げたいかといいますと、設備投資というのは企業経営者が主に判断をするわけでありまして、その数は恐らく、概略でありますけれども、大企業中小企業という数字報告を聞きますと約六百数十万人、全国民のうち六百数十万人の意向でもって設備投資が決まるわけであります。これは大変重要なことだというふうに思います。その六百数十万人の意向でもって経済企画庁が頼りにしておるところの設備投資動向というのが決まっていくと。これは大変重要なことであります。  企業を預かっておればなおさらのこと、個人財布のようにはいきません。見通しが悪ければより慎重に周りのことを考え財布のひもは緩められないという状況が生じるわけでありまして、まさしく景気というものはマインドであるということが端的にあらわれる部分であります。それを牽引車とするというか、一つの大きな要素とした景気横ばいないしは回復傾向にあるという判断は、私はそもそもこれは変えていただくべきじゃないか、もっと早くに変えていただくべきじゃなかったか、ストレートにこういう局面であるということを表明していただくことの方が対策としては打ちやすい、そのように思っております。  民間設備投資が堅調であるということの裏には、大企業設備投資が堅調であって額的にいい傾向にあるのでそうおっしゃってみえる。しかし、実際のところ中小企業大半は悪いと思っているわけであります。設備投資も慎重に考えているわけであります。したがいまして、日本の中でわずか六百数十万の人間考えなければならない、その大半が悪いと思っている、景気というのは基本的には心理学だというふうに思っておりますけれども、その辺で大半が悪いと思っているということについて、どうも私はそういう見方を重視していただく方向にこの報告自体も変えていただかなきやならぬのじゃないかなというふうに思っておりますが、長官の御意見をお伺いしたいというふうに思います。
  10. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 確かに日銀短観等のいわゆる景況感企業家景況感というもので見ますと、ここのところ景況感が下がりぎみであるという実情にございます。  私どもいろんな消費あるいは設備投資の計画の数字とかそういうものを見ておりまして、これがプラスである、それから企業収益も、先ほど申しましたように中小企業がまだ厳しい状況であることはよくわかっておりまして、これのための対策はまたしつかりとやらなきゃいけないと思っておりますが、引っ張っている産業もある。それから、例えば不動産とか建設とか銀行とかいうようなことでバブルの後遺症を引きずっているところがまだ落ちている。それから、全体として見ると、製造業がよくて非製造業がそんなによくない、非常に産業別業種別に、また分野別状況が異なっているというふうに考えております。それから、中小企業状況は大企業と比べましてやはり厳しい状況にある、そういうふうに感じている次第でございます。いずれにいたしましても、景気状況をしっかり把握しながら必要な対策全力で打っていきたい、そして日本経済民間需要中心の形で正常な回復軌道に乗せていきたいと考えている次第でございます。
  11. 平田耕一

    平田耕一君 御認識をいただいていることと思いますけれども、特に大事な民間設備投資という項目で、圧倒的多数の設備投資意思決定をする人間が悪いとかねてより思っておるという事実をどうぞひとつ重くお受けとめをいただきたいというふうに思います。対策につきましてもきょう御発表だというふうに聞いておりますが、おいおい尋ねてまいりたいというふうに思います。  先ほど申し上げましたように、大企業あるいは輸出を主にしておるのが牽引車になって景気が保たれておるということなんで、どうも総じて、数でいけば悪いな、中小企業経営者は特に先行きどうなるんだろうという不透明感に覆われておるわけであります。  そして、時は今、六大改革の中の経済構造改革というところに大きな注目が注がれるところでありますけれども、総理みずから痛みを伴うというふうにおっしゃいました。それは結構かと思いますけれども、でも実際、中小企業痛みを伴って死んでしまうんではないだろうかというふうな心配もしているわけであります。ぜひともひとつ経済構造改革によってあらわれる経済社会の姿というものを明確に出してほしいというふうに思うんです。  まず、お尋ねをしたい点は、先ほど申し上げました、例えば設備投資意思決定をする人間が大企業六万人の経営者経営トップに対して六百数十万人というこの構造ですね、一対一〇〇。経済構造改革によって、この一対一〇〇という大企業中小企業の数の基本的な構造というのは、総理のお考えでは、もう少し大企業がふえるんだよとか、いや中小企業はそういう形で元気にやっていけると思うんだとか、その辺のことも明快にひとつお教えをいただいて、元気をつけてやっていただく方法を具体的に示していただくとか、まず基本、今心配しておる、痛みを伴って死んでしまうのではないか、おれたちはと、これが非常に影響が大きいというふうに思いますので、ぜひとも経済構造改革後の経済社会というのは総理自身はこんなふうに思っている、おれについてこいと、これをひとつお示しいただいて、そんな中で企業のほとんどを占めます中小企業者に対しましてこうすればいいよというお言葉を賜りたいというふうに思いますので、お願いいたします。
  12. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 議員からも御指摘がございましたけれども、経済構造改革が目指しているもの、それは新たな雇用、市場を生み出す新規産業、そして競争力のある技術や技能を持つ企業などにとりまして魅力のある事業環境を一日も早く整備しよう、これが一番の原点であります。そのねらいは、産業空洞化あるいは少子・高齢社会の到来に対する懸念を払拭して、将来におきましても我が国経済活力を維持しようということにあります。そして、その活力源泉というのは、まさに中小企業を初めとした意欲のある事業者、こうした方々がその創意工夫などを自由闊達に行い得る、そうした社会にこそ見出すことが可能なのではないかと思います。  私は、もともといろいろなときに職人国家日本という言葉を使うことがしばしばございました。私は、日本経済活力源泉というものは、中小企業、あるいは零細企業まで言葉を広げさせていただいてもいいのかもしれません、そうしたいわば職人と言われる方々の腕に支えられてきた部分が極めて大きかったと思います。  それは、例えば金型であり試作品づくりであり、その腕ならだれのところにも負けないという、まさに職人としての誇りに裏打ちをされた企業というものの存在が我が国経済を支えてまいりました。そして私は、基本的に将来においてもそれは変わらないと思っておりますし、また変えてはならないことだとも思います。製造業の一番基礎の部分を支える、これはまさに職人の腕だったわけですし、これからも恐らくそうでありましょう。  私は、経済構造改革を進めていく結果として、格差の拡大といった事態もそれはないとは申しません。しかし、逆にそうした社会というものを積極的に受けとめて、その中小企業を初めとした事業者方々、あるいは広く国民方々がチャレンジということをまさに実現できる社会をつくっていかなければならないと思いますし、そうした認識で将来に向けて豊かな国民生活というものを実現していくためにも経済構造改革を強力に進めていかなければならないと思っております。私は、そうした社会において、いわば職人国家日本を今日まで支えてきた、そうした中小、あるいは小以下かもしれません、いわばその職人の腕というもので支えられてきた部分を減少させることはできないし、それが将来も日本を支えていく、私はそう信じております。
  13. 平田耕一

    平田耕一君 ありがとうございます。  これは大事なことでありますけれども、ともすれば規制緩和とかそういう言葉が先行いたしまして、大企業が資本でもってどんどん仕事がやりやすいようにはするけれども、なかなか中小はできないなというイメージが先行しておりますので、ぜひともひとつ今のお話はいろんな機会で私も伝えたいというふうに思います。  職人国家日本ということでありました。できれば、隅々のことでも、本当に細かいことまでみんなで日本人らしく、かつてやってきたように工夫してやっていこうじゃないか、今さらに一層の工夫が要るんだよ、こういう呼びかけであろうかというふうに思います。そして、その企業構造は、基本的に大企業中小企業の比率とかそういうものは変わらない、むしろ小企業歓迎だ、自由闊達にやる社会をつくろうじゃないか、こういうことでありまして、大変納得のいくものであります。  ぜひひとつ、それにつきまして、総じて六大改革、経済構造改革、規制緩和、こういいますと厳しい思いが伝わってまいりますので、実質そういうことであれば、国民にわかりやすい、職人国家日本なんというのは大変わかりやすうございますが、六大改革全部にかぶせるようなキャッチフレーズといいますか、楽しい日本をつくろうとか、その中で経済社会についてはしなやかな経済社会をつくろう、楽しい日本、しなやかな経済社会というふうなサブタイトルをつけて六大改革を、総合タイトル楽しい日本のもとに、それぞれわかりやすい言葉で今国民に訴えていただきますと、随分とこれは気持ちの上で前向きな、景気にも影響が大きいことじゃないかなというふうに思いますので、ぜひともひとつ御検討をいただきたいというふうに思います。  さてそこで、その構造は変わらないということでありまして、経済企画庁長官も先ほど、本日後ほど経済対策を発表するというふうにおっしゃったわけでありますけれども、特に今、ちょっとオーバーな表現をすれば、年末を控えてのたうち回っている中小企業者に対して、その経済対策の中でいかような内容が盛り込まれておるのか、発表に先立っわけでありますけれども、お考えを賜りたいというふうに思います。
  14. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 現在の景気状況中小企業の皆様にとって厳しい状況であるというふうに、先ほど委員のおっしゃいましたとおりに認識をしております。  そして、特に民間の金融機関の貸し出しについて、いわゆる早期是正措置というようなものがだんだん発動されてくるときに、金融機関が自分のバランスシートをよくするために正常な貸出先あるいは長い間おつき合いをしていた貸出先まで貸し渋りをするのではないかというおそれが感じられる状況になってきている、率直に申しましてそういう感じがするわけでございます。  それに対しまして、私ども、この景気状況の中で、いささかなりとも金融の面から中小企業の経営がさらに苦しくなることはないような措置をとってまいりたいというふうに考えておりまして、特に中小企業関係金融機関に対しまして融資枠の拡大、あるいはマル経資金などにつきましても零細企業に対する融資枠の拡大等に力を入れてまいりたい、そういうふうに考えております。  それからもう一つは、融資枠の拡大だけではなしに、実は不動産の価格低下によりまして中小企業の担保力というものが非常に低くなってきているという現状があろうかと思います。そういう意味で、担保力を補完するという意味からも信用保証協会等を活用いたしまして担保補完のための措置を一層強化していく、そういうことも含めまして対策を進め、そして中小企業に対する金融については特に万全を期していくことを今度の対策に盛り込んでいきたいと考えている次第でございます。
  15. 平田耕一

    平田耕一君 十分苦しいことは御認識をいただいているわけでありまして、ありがたいというふうに思います。私自身、実は自分の経歴からして、地元へ金曜日に帰りますと、土日というのは大体一時間ごとにいろんな会社の方が訪ねてみえて、資金繰りの相談やら、こういう話をいただいているわけでありまして、大概苦しい。そして、民間銀行もできれば逃げたいんですね。ここに五千万貸しておる、小さな会社ですから五千万貸しておると。追加資金額まれても嫌なんですね。ですから、政府金融機関を紹介したりほかのところを紹介して逃げようとなさっておられる。  追加融資ということについては、皆、長官がおっしゃられたように、してあげなければいけないなという思いでいい言葉をかけていただけるんです。でも、そういたしますと、あと一千五百万借りられる、二千五百万借りられるという状況を提示をいただきますと、今本当に困っていて、仕事がやる気がある、まじめだ、見通しも何とか持っていけるという人たちも追加資金は要らないんですよ。追加資金をもらえば、今月々二百万返している元利ともの金額が二百五十万になり三百万になっていくわけなんですね。  追加資金は本当は要らないんですね。この事業を維持していくために頑張ってきた、これからやっていこうと思うとさらにお金をたくさん返さなければいけないのか、じゃやめようかとか、おれは一線を引いて息子に渡す、残っている資産は今売りましょう、そして身軽にしてやりましょうと、こういう選択をする中小企業者の何と多いことか。  したがいまして、個々の状況にもよるかと思いますけれども、本当に中小企業者のことを思うんであれば、もちろん臨時の融資も大変大切なことでありますけれども、長官がおっしゃいました、実は不動産担保がもう時価割れしておって銀行も担保を外すに外せない。外せば銀行も役員からしかられるというふうな話もありますし、担保割れが表面化いたしてまいりますので大変困っているというようなことがあります。  できれば私は、何らかの形で月々の返済額を減少させるような方策をぜひお考えをいただきたい。これで、お金で年末を乗り越えるんじゃなくて、気持ちで乗り越えていくことができるわけであります。本当の救済策をやってくれたな。これが本当だということは皆やっている人間はわかるわけです。結局借りたものですから返すわけです。商売人はそんなことは百も知っていますから返すわけですけれども、どうぞひとつ、一年でも半年でもおまえたち元気になるまで据え置いてやろう、この間あるいは新しい融資と足して五年返済を十年返済にして月々返済を半分にしてやろうとか、そういうことを具体的に大至急これは御検討いただきたいというのが一点。  それからもう一つは、根本的に助けてやることの方策にもう一つ、これも御高承なんでありますけれども、実は金利であります。  民間から借りましても、やっぱり小ロットは金利が高うございます。大企業といえば優遇金利ということで、長期プライムレートで今二・数%だろうというふうに思います。でも、中小企業はそういうわけにはまいりません。昔から健全なところで一ポイントでしょう、悪いと一・五ポイントも高い金利で借りて我慢してきているわけであります。そして、もちろん大企業政府系の機関とかあるいは社債の発行だとか、いろんな形で固定レートを持っているわけであります。大変高い金利のものは大企業にもあるでしょう。でも、大企業は現在、さらなる資金調達をして金利を薄めていくとか、あるいは償還を繰り上げるとか、強引に返済をしてしまうとかいって対応力があるわけです。  御承知のように、中小企業設備投資というのは、まあ十年に一回設備投資しようかというぐらいですから、かなり思い切った借り入れをしてやっておるわけです。したがいまして、そう頻繁に長期の借り入れをするわけでもない。たまたまこれだけ低金利が続きますとそのことが目立ってまいりまして、大企業中小企業の格差というものが歴然として目についてまいります。  それで、お調べいただきましたら、今政府系の国民金融公庫、商工中金、それから中小企業金融公庫で四・五%以上の長期金利の残高が中小企業向けに五兆円あるということであります。そして、その資金を借りておる企業は、五兆円で五十万件なんです。一社で一件とは限りませんから五十万以下ではありますけれども、恐らく四十万社以上の企業が四・五%以上の金利。もちろん五%以上のものは五%以下にしなさいよという法律をつくっていただいて、この秋でしたか延長していただいたわけでありますけれども、それは四・九%に張りついておる。四・五%以上の金利のものが五兆円あるというような今の状況を、私も報道というものの大切さといいますか、どういう受けとめ方をするかということにつきましては、随分思いがあるんです。  例えば、これはいろんな方から異論があるかもしれませんけれども、林野庁の三兆円の借り入れの金利が高いから借りかえようとか、国鉄長期債務の中の何ぽかを借りかえようとか、大きな組織、大きなシステムの中の高い金利というのはどんどん借りかえて健全にしょうという声があっても、トータルとして五兆円もある中小企業の高い金利のものについては一顧だにされなかった。個々には出先でやっていただいておるかもわかりませんけれども、国政の場で取り上げられることは、お考えいただいておっても抜本的な対策として打っていただくことができなかった。  こういうことでありまして、これは財投の見直しもされるようでありまして、財投資金が行っているわけですから、資金運用部の金利設定の仕方というものも、もっと過去から私はその事業者に道を開いていただくべきものであったというふうに思います。  要は二点。マル経とか特別融資枠とか、これはとりあえずありがたいんですけれども、さらにできれば根本的に繰り延べを検討してやっていただきたい。金利についても、そういうものについては一度抜本的に考えていただきたい。この二点につきましてお願いを申し上げたいというふうに思います。  経済対策は、じゃとりあえずそれを加えようといってきょう発表するわけにはまいらぬだろうというふうに思いますけれども、近い将来にわたってのお考え、お気持ち等がございましたら、経企庁長官なり、関連がありますれば大蔵大臣にもお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  16. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 五%以上の金利のものにつきましては、十月十七日で期限が切れているものをもう一年延長ということで大蔵省の方にもお願いをして実行していただいたところでございますが、なお四・五%以上の金利のものが五兆円あるという大変な状況であるというふうに認識をしておりまして、やはり中小企業の皆様が、今の現状から見れば高い金利の政府関係金融機関の融資残があるという現状もしっかり踏まえながら対応してまいりたいと考えております。  それから、先ほどの問題は長期にわたる資金繰りの問題でもあろうかと思いますが、資金繰りの点につきましても、実は今の全体の金融状況、バブル崩壊後の金融状況の中で資金繰りがきついということについて、特に中小企業関係の金融機関が配意をしながら対応するようにという中身も今度の対策に一応考え方として出しているところでございます。
  17. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま経企庁長官が言われましたとおり、本日午後の経済関係閣僚会議におきまして、経済対策政府案が発表されることになっております。その中にも中小企業金融についての提案、取り決めが記載をされるということになっております。  ただいま平田委員が言われた中小企業者の、資金需要よりも借りかえ等の観点からの御指摘がありました。一つの考え方、また一生懸命頑張っておる中小企業者からすれば、対比の関係でなぜ我々だけがということであろうかと思います。ただいまやっております借りかえをして利子負担を変えようということは、まだ決定議ではありませんが、国鉄債務の問題、林野特別会計赤字の債務の問題について討議をいたしております。これが一般会計にそのまま参りますと国民負担になりますものですから、国民の負担ではなく、みずからの努力で手法を考え、年末までに取り決めようというので取り組んでおります。  これはこれとして、総理からの強い指示もあり、中小企業金融対策については大蔵大臣、通産大臣、経企庁長官が協議をして取り進めておるところであり、特別な相談窓口を政府関係機関に設置をいたす、こういうことでスタートを切らせていただきますと同時に、融資のあり方、長官が言われましたからダブりますので省略をいたしますが、特に既往債務に対する返済猶予など適切な対応をとることとしよう、こういうことでこのことの具体化にただいま取り組んでおるところでございます。
  18. 平田耕一

    平田耕一君 ありがとうございます。ひとつよろしくお願い申し上げたい。  そして、最後にそのことについてもう一点だけ大蔵大臣にお尋ね申し上げて、お答えいただけるのならありがたいなというふうに思うんです。  中小企業の中でも、やっぱり地方によりましてはほとんど建設工事しかないんだ、建設屋さんしかいないんだというような地方も多いわけでありまして、その構造自体云々とは申しませんが、短期の問題として、これだけ財政についても議論をしておる、いろんな形でやっておる。大変肩身が狭く思いながら、仕事量も激減をして、とりあえず企業の転換をしようにも何をしようにも間がない。それこそ、文字どおりその中で最も苦しんでおるのは地方の建設関連だろうというふうにも思います。  これは、今までいろいろうまい汁を吸ったじゃないかということは別にいたしまして、そのことをしんしゃくいただきましても今の苦しみようは尋常なものではないのでありまして、財政構造改革下ではありますけれども、何とかひとつ前倒しで工事を出すとかいろんな形の工夫ができないものかどうか。大臣、そんなお考えはいかがでございましょうか、御答弁いただければありがたいというふうに思うんですけれども。
  19. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 御案内のとおり、中小企業の中に入る地元建設業界、元請もありますが、ほぼ一次下請、二次下請、こういうことの中で頑張られておる過程であります。職人国家という話の概念の中に入るすぐれた集団もあるわけでございますから、そういう点では今後のあり方について政治、行政の中で万全を期さなければならぬことであります。  しかしながら、御案内のとおり財政構造改革、再建の最大目標がございます。限られた公共工事の中では見通しが見えるわけでございますから、民間需要の喚起を、経済構造改革を前倒しで今やっておりますが、断行し、徐々にそのことによって民需中心の回転が起きております。これのさらにスピード化に取り組んでまいることによりまして、民間において頑張っておる各位に対し激励になる、また励みになる、頑張りに通ずるというようなことを進めなければならぬ。本日午後発表される経済対策の中にもそれらが十二分に盛られるのではないかと思いますし、具体的なことも最終決定をして、前倒しがどうやったらできるかというようなことまで含め検討されるのかなと思っております。
  20. 平田耕一

    平田耕一君 どうぞひとつ、今の状況下で可能な方策をお願い申し上げたいというふうに思います。  さて、そういう形で当面悩んでおるということの、中小企業のことばかり申しますけれども、その中で今から触れたいのは、職人国家という言葉が出ましたが、物をつくるということは大切であります、国家の基本だろうというふうに思います。しからば、最近コンビニの売り上げがスーパーを凌駕したという朗報もあるんですけれども、コンビニほど全国チェーンでもないいわゆるローカルの小売・卸業につきましても、これは経済構造改革の中で、あるいは大きな業者に攻め立てられて中心市街地は寂れていくわ、おれたちではどうしょうもないなと悲嘆に暮れておるのも現状であります。もう息子に継がせようという人はほとんどおらぬわけであります。  この辺につきまして、全体的で結構でございますけれども、小売・卸、いわゆる商業者につきましてはこういう夢があるんだよ、だから頑張れよというようなことがありましたら、長官、そして総理もお考えお持ちでございましたらお聞かせをいただきたいというふうに思うんです。
  21. 林康夫

    政府委員(林康夫君) お答え申し上げます。  御指摘のように、近年我が国の流通が大変厳しい状況に置かれているわけでございまして、バブル経済崩壊後の消費者ニーズの変化、あるいは価格破壊とも称されるほどの価格競争の激化、あるいはディスカウントストア等の新業態の小売業の台頭、あるいは都市構造、交通体系の変化、あるいは大型店の出店増、そして構造的、持続的な変革の中にある、こういう認識をしております。  中小企業庁といたしましても、この流通構造変革の大きな流れは中小小売業にとっては大変厳しい環境変化と認識はしております。ただ、こうした状況においてこそ、意欲を持って地域に根差す消費者ニーズへのきめ細かな対応、あるいは商店街の機能の強化、そして共同化、異業種連携による効率化等への取り組みを通じて流通構造改革の流れをむしろ積極的に活用していくということが可能だと考えておりまして、何より中小小売商業者にこの点が求められているのではないかと思います。  中小企業庁としましては、先行きに不透明感を強く感じている中小小売業者にただいま申し上げたような今後の方向性を示しながら、みずから構造改革に取り組む中小小売商業者を力強く支援してまいりたい、こう考えております。
  22. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 中小企業庁の立場からお答えを申し上げますと、まさに今申し上げましたような具体的な施策を積み上げていくということに尽きると思います。その上で、私なりに今の御質問にお答えをしてみたいと思います。  自分の郷里を振り返りましても、また私は東京でちょうど六本木のかいわいに随分長く住んでおりますけれども、その周辺の環境というものは大変大きく変化をいたしました。そして、議員が御指摘のように、学生のころから住んでおりますだけになじんでおりましたお店も随分変わってきております。  しかし同時に、その中で非常に特色を持たれている、そして大変失礼な言い方ですけれども、その特色におぼれずにその地域の住民が何を求めているかに絶えず気をつけておられる、そうしたお店は実は私が見ておりますと余り変わっておりません。それでも、やはり郷里の町等を振り返りますと、大規模小売店が一定の数進出をいたしました時点から中心商店街の目立った変化が生まれてまいりました。そして、その空き店舗がまた周辺のお店の足を引っ張る、そういう状況は確かに出ております。  そうすると、どうやって特色を持ったそれぞれのお店が横の連携をとりながらその地域にお客さんの足を向けるかという、その工夫の勝負ということになるわけですが、そのときに、今の生活様式の中でやはり駐車場がないというところはなかなか起き上がれません。そうしますと、逆に言えば、私は、それぞれの地域が自分の地域を維持し振興していく、まさにその小売商業の段階における、あるいは小規模の卸の方を含めてその地域を伸ばしていこうとする場合の処方せんというのは、むしろ逆にそれぞれの地域の特色を持ったものをお書きいただく、そしてそれに対してどういう協力の仕組みがあるかを考えることが一番大事ではないだろうかと思います。  これは大変妙な言い方でありますけれども、私の郷里の岡山県総社市と現在の私の選挙区として居住しております倉敷市と、それだけでも私は実は対応策は異なるものが必要であろうと思いますし、また思ってまいりました。同時に、東京で住んでおりまして、その地域における小売商業のあり方を考えますと、またこれは処方せんは違うと思います。  ですから、逆に言いますと、私はそれぞれの地域が御自分で創意工夫を入れられた青写真というもの、つくられるものを、これは都道府県も市町村も国の立場でもそうでありますけれども、いかにその地域に合ったチャートをつくられるものを支援していけるか、そうした弾力を持った仕組みが必要ではなかろうか、そのような感じがいたします。
  23. 平田耕一

    平田耕一君 ありがとうございました。大変大きな御示唆をいただいたというふうに思っております。  そして、大店法の件が十一月十五日に日経一面で報道をされたわけでありまして、いろんな意見がひしめいておるわけでありますけれども、規制をするとかしないとかという論議よりも、先ほど総理がお話しなされたように、やっぱりどこをどういうふうに生き返らせようかという話に基づいたいろんな判断をぜひしていっていただきたい。地域が考えるなら、その地域の考えに合わせて協力できるような体制をつくろうじゃないか、こういうふうに受けとめておりますので、それに向けた具体策あるいは法律整備等をぜひともひとつお願い申し上げておきたいというふうに思います。  中小業者に関しましてはこの程度にいたしまして、景気が思わしくないということで時間をいただいております。それはせっぱ詰まったものであります。ところで、六大改革、経済構造改革というものを進めていきましたときに、全体の構造改革の中で、やっぱり国家としてまだ国際的な市場にたえない部分として一次産業、特に農林水産業があるんだろうというふうに思うんです。そうであればはっきりと、これはこういうタイミングなんだから、多少具体的な施策はまだ先になるけれども、基本的に検討しておきましょう、農業、水産業につきましては、あるいは林業については製品はこうしようと、こういうことを一次産業についてもやっぱり今改革の中で呼びかけていただく必要があるんじゃないかな。人口でいけば四百万人弱就業者がおるんだろうというふうに思います。国民の中では大変重要な仕事だという認識もありますし、その数も多いし、やっている人間は自分が国を背負っているぐらいの気概があるわけです、土地をさわっておるわけですから。それぐらいの気概を持っておる人たちばかりでありますので、そこへもひとつ元気の出るような、これは短期処方はないのかもしれません。米に対してどんとお金を出してやればそれは短期でありましょうけれども、そうそうできるものではありません。多少スパンが長くてもいい、一次産業従事者もこうして一緒に改革の方向に歩きましょうという呼びかけをぜひしていただきたいというふうに思うんです。  その点につきまして、どなたに御答弁いただいたらいいかわかりませんが、ぜひひとつお触れをいただきたいというふうに思います。
  24. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 本来、農水大臣がお答えをするのが一番正しいのかもしれませんが。  確かに、いわゆる六大改革という中のどこか一つに農林水産業そのものを位置づけているという姿にないことは御指摘のとおりですが、これはぜひ御理解をいただきたいと思いますのが、産業としての部分と、例えば国土保全に果たしている役割とかあるいは国民の暮らしの中の潤いの部分を引き受けている部分とか、実は農林水産業それぞれにただ単に産業ととらえるだけではない側面を持っているということをぜひもう一度申し上げたいと思うんです。  これは間違いなしに、食糧の供給という面あるいは緑の確保、農業と林業という点でとらえましてもそうでありますし、水産を内水面漁業あるいは沿岸漁業いずれをとらえましても、環境という視点も当然ながらここには入ってまいります。そして、幅広くこうしたものをとらえなければならない。しかもその中で、社会経済情勢の変化、あるいは国際化の進展の流れの中で農政全般の抜本的な見直しを通じて新しい農政の指針をつくろうと、食料・農業・農村基本問題調査会が今幅広い議論を精力的に進めておるわけであります。  しかし、業としてこれをとらえました部分がないかというなら、そうではございません。例えば、バイオ技術をいかに農林水産業の中に取り入れていくか。これは既に経済構造改革の中における今後成長が期待される十五分野の中にも位置づけられております。あるいは海洋関連という部分で、当然ながら魚礁を整備したり基本的な将来に向けての水産業の振興策も考えられるわけであります。それは実は生活・文化関連分野あるいは住宅関連でいかに自国産木材を住宅建築施設の中に生かしていくか。さまざまな視野の切り口は私は当然のことながらこの中に入っていると思っておりますし、こうした産業分野の中における規制の緩和、あるいは技術開発、人材の育成、言いかえれば、こうした分野を成長産業というとらえ方をし、その中における産業分野の創出、あるいは成長に資する環境整備、こうした分野に対する施策は当然のことながらあるわけであります。  ただ、農林水産業というものが一面的に産業としてだけとらえられるものではない、そうした特色を持っておることも我々は脳裏に入れながら、我が国の食糧を安定的に供給するその役割というものも当然大事にしていくべきものと、そのように思います。
  25. 平田耕一

    平田耕一君 現時点でよく理解をいたしておりますが、ぜひ早い時期に具体論として、六大改革が七大改革になろうとも、根底から取り組んで、一緒に同じベースで、働く者として話の輪に入れるような施策ができればいいなというふうに思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。全般的に六大改革、そして目指すものをお尋ねいたしまして、そして緊急にその方向の中でお願いをしたいというようなことを自分なりに申し上げたつもりでありますけれども、もう一点、その中で財政構造改革というのがあるわけでありまして、これが目下の問題であります。ヨーロッパの統合に際しましても、債務比率がGDPの六割でしたか、という基準でもって統一をする、統一というか一つの目安としておるということでありまして、日本もその数字自体は非常に明確なものであります。  そういった考えでいきますと、これは日本株式会社と言わずとも、日本という事業体をとった場合に、じゃ債務比率はどうするかということにつきましては、分子をいかに少なくしていくかということも大事でありますけれども、もっと大きな要素は、もう御高承ですが、分母を大きくすることだというふうに思います。分母を大きくするためには設備投資をしなきゃ絶対に大きくならないんですね。設備投資をシュリンクさせたら絶対に分母は大きくならない。これはもう火を見るより明らかでありまして、このまま改革改革ということは大事でありますけれども、何のための改革か。楽しい日本をつくろう、働きがいのある自由闊達な経済活動のできる社会をつくろうということにおいて、目指すものはやっぱり元気のいい、経済生産力の高い国家でありますから、じゃ分母を大きくする、すなわち設備投資はどうするの、こういうことであります。  それについては財政構造改革をやりながらも常に考えていかなきやならないし、とりあえずできないとすれば、できないけれども二年たったら、三年たったらこれはやろう。でも、これだけはことしもやらにゃいかぬというようなことをより鮮明にしていかにゃいかぬ。  そして、最大にリストラしょうと思ったら積極投資という手もとらなきゃいかぬわけであります。一つの会社ならずっとシュリンクしていくということもあろうかと思いますけれども、これは国家でありますから、ここ一番、本当にリストラするときというのは夢のある方向へ思い切って設備投資していくという一点集中も大事でありましょう。  そんな考え方も持っておりますので、ぜひともひとつ長期的な投資につきましては総理みずからリーダーシップを発揮されて何か訴えるものをつくっていただきたいなというふうに思っておりまして、そんな大きな流れの中で諸施策をお進めいただきたいというふうに思っております。  財政構造改革と、それから国にとっての長期的な投資と、そしてできれば目玉は何かないですか、夢があるものはないですかということについて総理に御答弁いただければ、総括的でも結構でありますけれども、お願い申し上げたいというふうに思うんです。
  26. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先刻来、経済企画庁長官から御答弁を申し上げておりますように、本日、本委員会の休憩時間を利用しまして経済構造対策の閣僚会議を開きまして、さまざまな施策について政府としての意思を決定いたしたいと思っております。  その意味では将来に向けて我々なりに目を向け、財政状況の厳しさということとは別に、将来への夢をはぐくみたい、そうした思いを込めたものは幾つもその中に含まれております。  その上で、もうこれは申し上げるまでもないことでありますけれども、現在の財政状況、そして現在の財政構造、これを将来にこのまま続けていきました場合、財政赤字を含めた国民負担率が七〇%というような試算も出てきている。そうした中で我々は、これが双子の赤字となり、国民の生活水準の低下につながるような事態は何としても避けたい、そのためには財政構造改革の推進ということについては一刻の猶予も許されないという思いを持っておることも事実でございます。  同時に、今後の経済運営というものが安易に財政に頼るのではなく、むしろ民間需要中心、これはまさに議員が先ほど来御指摘になっておられるとおりの方向でありますけれども、民間需要中心の自律的な安定成長を図っていくことが基本だと思っておりますし、そのためにこそ、実は財政構造改革だけではなく経済構造改革もあわせて進めていかなければならない、他の改革も同様でありますけれども、ということを目指しております。  その中におきまして、そういう状況の中でありましても将来に結びつくような、我々が夢をかけ得るような分野というものは伸ばしていかなければならない、育てていかなければならない、これは御指摘のとおりであります。その中には、既存のルールの変更で民間の意欲をかき立てることのできるものもありましょうし、今は研究段階にあるもので、それが現実の製品に結びつけられるような方向で研究が進められることによって新たな分野を開くものもあるでありましょう。まさにそうしたものに対する国の投資というものは十分考えていくべきものだと思っております。  厳しい状況状況、そしてその中で、まさに大蔵大臣がよく言われるような、めり張りをつけた考え方で取り組んでいきたいと申しますのは、こうした夢を、一方では財政状況を改革をしながら、同時に一方では将来につながる夢を育てていきたい、そのような思いであることをぜひ御理解をいただきたいと思います。
  27. 平田耕一

    平田耕一君 ありがとうございました。  以上、私の質問とさせていただき、同僚の依田議員に譲りますが、最後に一点。  総理が申されました、大蔵大臣がよく言われるめり張り、大蔵大臣、その張り、ひとつできる範囲の中で何らかの工夫をしていただいて、前倒しをしかるべき時期に、きょう発表なさる経済対策が、いろんな批判がありましょう、でもそれは自信を持って進めていただいて、しかし御自身がちょっと足りないなと思われれば、そのときはタイミングよくひとつ前倒しをお願い申し上げたいというふうに強く要請をいたしまして、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  28. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 関連質疑を許します。依田智治君。
  29. 依田智治

    依田智治君 平田委員の関連で、残りの時間で外交問題を自由民主党を代表して質問させていただきます。  その前に、通告してございませんが、けさの各紙一面に、エジプトで邦人の観光客も巻き込まれた大変な惨事が起こっております。中東和平も着々と進展しつつあり、エジプトにおいてはムバラク政権の体制の中で過激派は相当鎮圧できたなと思っていたやさきにこういう大変な事態が起こってきているということは大変に残念なことだと思います。  そこで、事態の現在の状況等は結構でございますが、まず私は、犠牲になられた日本の旅行客初め外国の六十数名にも及ぶ皆様方に対して心から哀悼の意を表したいと思います。  政府としても、まだ重傷者もおるようでございますし、被害者の救助やこれからのいろいろな御家族等の対策等にも万全を期していただくように強く要望していきたいとともに、今旅行の時代で本当に日本人の海外旅行も多くなっていますし、また企業の海外進出も非常にふえている状況ですので、こういう邦人の安全対策という点についてもしっかりとした対策を講じていただくようにお願いするわけでございます。  そこで、二点だけ、お願いと、外務大臣に一言決意をお願いしたいと思うんです。いろいろ総理も国際会議等に出席してテロ根絶等に共同歩調でやろうと言っている状況の中で、まだまだ依然としてこういうテロが国際的に絶えないという状況があるわけでございまして、今後一層の国際的なテロ撲滅に向けての取り組み強化の決意と、それから中東地域というのは我が国にとってもエネルギーで極めて重要な地域でございますので、こういう問題に向けてさらに我が国としても一層の努力をしていただくように、通告してございませんが、外務大臣にまずこの点をお願いしたいと思います。
  30. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 十七日に発生しましたこの事件は、無差別に観光客を銃撃するというまことに残虐きわまりないテロ事件でありまして、大きな衝撃と悲しみ、そして怒りを禁じ得ないところでございます。  そこで、こうしたテロ事件につきましてはサミットにおきましても議題となされましてその対策を講じてきたところでありますが、今般のような事件が再発することはまことに残念のきわみであります。政府といたしましても、さらにこうしたことの起こることのないようにいろいろな手段を講じまして対処いたしていきたいと考えております。
  31. 依田智治

    依田智治君 しっかりとした対策を講じていただくようにまずお願いしておきます。  そこで、きょうは外交問題、いろいろ取り上げてお伺いしたい問題がございますが、私は我が国の平和と独立、安全という視点、それから国民の本当に平穏な生活、安全の確保という視点に立って、当面の外交に関連して、この間三党の訪朝団が行っていろいろ努力して帰ってきたということもございまして、まず日本人拉致疑惑の問題、これを取り上げて、その後時間の範囲内において、海洋国家の我が国の沿岸とか海洋の権益、国民の安全のための体制、そういうものをやはり考える必要があるんじゃないか。強化というか、総合的に考えていかなければいかぬ。  それから、これも我が国の安全にとって極めて重要だと思っていますが、一方、人道的な面から世界からできるだけ根絶したい、こういう願いと我が国の安全保障という両面からの解決すべき緊急の問題であります対人地雷禁止の問題、この三点について質問をしたいと思います。  まず、拉致問題でございます。これについては代表団は大変努力して、今回は事実を指摘したりしていろいろ話した。しかし、共同通信配信のニュース速報によりますと、労働党側の報道文要旨にはこの拉致問題に関してはこういうふうに書いてあります。「日本で言われている行方不明者は純然としたねつ造であるが、日本側の切実な提起を考慮して一般行方不明者と同じ調査を行うことができるよう話した。」と、こういうことを言っておるわけですね。私は非常に残念なことだと。  それで、今度の代表団の関連で、非常に努力されたので私も政治家としての責任において正確な筋からこの問題についてもうちょっと詳しく聞いたところによりますと、拉致事件はありもしない事件だ、あったこともない事件である、またあるべきことでもない、でっち上げた、そんな問題を取り上げることが不愉快だと、こういう発言が実はあったようでございます。これは大変なことだなと。  そこで、まず第一に、こういう国ですから、この事実を正面切って認めさせるということがいいのかどうかという問題はありますが、なかなか難しい。まず被害者を一日も早く日本に帰してやる、これがまた両親、関係者等の極めて強い要望であるというのが、党の日朝問題小委員会等にも私は参加していまして、直接親族等から聞きました。  しかし、まず我々がこれに取り組む場合には少なくとも、外務省の某高官が何か韓国で調べているのは余り信用できないようなニュアンスのことを言っていましたが、とんでもないことなので、きょうは国家公安委員長に来ていただいていますが、我が国では閣議でも報告した白書でことしはぴっちりとこの七件十人の拉致容疑事件について取り上げ、個々の幾つかの事件については事件名を挙げて解説しておるという状況でございますので、国家公安委員長に、この点は決してでっち上げではないということについての確信ある御説明をお願いしたい。よろしくお願いします。
  32. 上杉光弘

    国務大臣(上杉光弘君) お答えいたします。  警察におきましては、韓国当局を含みます関係各機関との情報交換、各種の国内調査等、これまでの捜査結果を総合的に検討いたしました結果、警察白書でも公のものとしてお示しいたしましたとおり、北朝鮮による拉致の疑いのある事件は七件十名、拉致未遂と思われるものは一件二名であると判断いたしております。現時点におきまして、これを変更する意思は全くないものと承知をいたしております。言うまでもなく、警察は法と証拠に基づいてかかる判断を行っているものと承知をいたしております。
  33. 依田智治

    依田智治君 七件十名についで全部取り上げていっても時間がありませんので、代表的な三件についてだけ私から取り上げ、警察当局からひとつ証拠等に基づく証言をお願いしたいと思います。  まず第一は、これは日本警察が関係者を逮捕している石川県の宇出津事件。この概要と、この事件がまさに警察が直接取り扱った真実の事件であるという点を警察庁の方から御説明願いたいと思います。
  34. 伊達興治

    政府委員(伊達興治君) 御指摘の事件は、昭和五十二年九月に石川県警察が検挙した事件であります。本事件では、北朝鮮工作員に取り込まれた在日朝鮮人が在日米軍に関する情報収集や対韓国工作に従事していたところ、四十五歳から五十歳くらいの日本人独身男性を北朝鮮に送り込めと、こういう指示を受けまして、昭和五十二年九月、かねてから知り合いであった東京都在住の日本人男性を石川県の宇出津海岸に連れ出し、北朝鮮工作船で迎えに来た別の北朝鮮工作員に引き渡した、こういうことが判明しております。  警察は、当該在日朝鮮人を検挙し、乱数表、暗号表等のスパイ活動を裏づける資料を押収したほか、同人から拉致の経緯、動機、状況等に関する具体的かつ詳細な供述を得ております。これらに基づきまして所要の裏づけ捜査を行った結果、本事件は北朝鮮による拉致であることはほぼ間違いないものと判断しております。
  35. 依田智治

    依田智治君 この事件は関係者を外登法違反で検挙したということのほかに、本来、国外移送拐取罪というのが成立するところなんですが、諸般の事情からこれは立件に至っていないという状況でございますが、少なくともこの事件が関係者の通報によって、不審な人物がいるということで旅館のおかみさんが届け出て、そして張り込んでいて検挙した、そのときは既に工作船でその男性は連れていかれた、まさに事実でございます。これが第一点。  第二点は、これも皆さん御存じの大韓航空機事件。これは李恩恵という人が拉致された、金賢姫供述によって明らかになった事件でございます。これもまさしく真実であるという点、私は確信しておりますが、警察当局から御説明をお願いしたい。
  36. 伊達興治

    政府委員(伊達興治君) 御指摘の事案は、昭和六十二年十一月に発生した大韓航空機爆破事件の実行犯である金賢姫の教育係、李恩恵に関する事案であります。  金賢姫は、北朝鮮において昭和五十三年から五十四年ころに日本から拉致されてきた李恩恵と称する日本人女性から日本語や日本の風俗習慣に関する教育を受けた、また李恩恵は日本から船で引っ張られてきたと言っていたなどと供述しております。警察庁担当官が韓国において直接金賢姫から得たこうした供述や日本国内での捜査結果等を総合的に判断した結果、李恩恵は埼玉県出身の日本人女性である可能性が極めて高いことが判明しております。警察としましては、本件は北朝鮮による拉致であることはほぼ間違いないものと判断しております。
  37. 依田智治

    依田智治君 これは、警察庁の担当官がわざわざ韓国へ行きまして金賢姫から直接話を聞き、心証を得て、そして国内の裏づけ捜査も徹底して、埼玉の女性に間違いなかろう、こう確信をしておる事件でございます。決してでっち上げではない。もう一点、これは辛光沫事件という、北鮮工作員によって大阪の男性が宮崎の青島海岸から工作船で拉致された、こういう事件でございますが、この点についての調査の経緯、真実性について警察庁の方から御報告願いたい。
  38. 伊達興治

    政府委員(伊達興治君) 御指摘の事件は昭和六十年六月に韓国当局から発表された事件であります。  本事件では、北朝鮮工作員辛光沫らが北朝鮮からの指示を受け、昭和五十五年六月、大阪在住の日本人男性を宮崎県の青島海岸に連れ出し、工作船で北朝鮮に拉致したこと、このことが判明しております。さらにその後、辛光沫は拉致された日本人男性に成りかわって同人名義の日本旅券等を不正に取得し、そして日本に居座りまして、またこの旅券を使って数回にわたって海外渡航し、海外拠点の設置、対韓国工作等の活動を行っていた、こうしたことも判明しております。  警察は、事件発生当時、担当官を韓国に派遣して韓国当局と緊密な情報交換を行ったほか、日本国内におきましても所要の裏づけ捜査等を行った結果、本件は北朝鮮による拉致であることはほぼ間違いないものと判断しておるところでございます。
  39. 依田智治

    依田智治君 今御説明のように、警察当局も係官を韓国へ派遣して、専門家同士によって徹底した情報交換、さらにそれに基づく日本国内の裏づけ捜査、私の聞いたところではこの大阪から拉致された方はコックさんで、焼き飯のつくり方までこの人に成り済ますためにいろいろ教わったというようなことを聞いております。いずれにしましても、このほかマスコミ関係者等が韓国で幇助した共犯の日本人と接触して証言を得ているというようなことも聞いておりまして、これもまさに真実の事件である、こう確信しておるわけでございます。  その他、ことしになって判明した新潟の少女がバドミントンの帰りに行方不明になった事件、これは一昨日また新潟でこの救助を求める千人くらいの規模の大会も開かれたというように報道されておりますし、五十三年ころには福井、新潟、鹿児島で一連のアベック行方不明事件も起きている。こういうことがこの七件十名の中に含まれておるわけでございまして、交渉する場合にやはりこの点は十分腹に踏まえながらしっかりした交渉をしていく必要がある。  政治の方で、この間大変努力して与党の関係者が行ってきたわけですから、それを踏まえて、これから政府同士本当にしっかりとした交渉をして、一日も早く被害者が日本に戻れるように、その点の努力をお願いしたいと思います。  そこで、私はこの問題の第二点として、そういうのを踏まえながらやるとしても、なかなかこういう国ですから難しい。しかし、外国に先例がある。これは国会でも取り上げられたことがありますが、その後これはどんなことになっているのか。  レバノンで女性がやはり昭和五十三年ごろでしたか拉致された、連れていかれた。だまされて連れていかれた。東京へ行くよと、いい秘書を選ぶ、採用する、現地に明るい秘書をというので女性を連れていって、ピョンヤンでいろいろ教育を施されたけれども、結局この五人は、ここのところは明らかになりませんが、いずれにしても何年か後に国に帰っている。いずれにしても国に帰っておるわけでございます。  こういう外国の例があるわけでございまして、この点については、外務省、いろいろ調査等難しい点があるかと思いますが、これまで判明している外務省が承知しているこの件に関する事実関係、これをちょっと御説明願いたい。外務省当局からお願いします。
  40. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) お答え申し上げます。  レバノンで行われました報道によれば、レバノン女性四名ないし五名ということが言われておりますが、ピョンヤンに連れていかれました。レバノン外務省から北朝鮮通商代表部に申し入れを行いまして、すべての女性が最終的にはレバノンに帰国したということが伝えられております。  私どもの方で当時のレバノン政府関係者に照会いたしましたところでは、随分昔のことであるということで事実関係等必ずしも明らかでないところはございますけれども、そのようなことがあったことは事実のようでございます。
  41. 依田智治

    依田智治君 なかなか、どういう手段で帰ることになったということはこういう席で明らかにできるものでもないし、また外交交渉において大変高度な駆け引き等の結果だろうと思うのですが、こういう例もあるわけでございますので、我が国としても、外務省のみならず政府の総力を挙げて、いずれにしても被害者の所在を明らかにし、一日も早く親元、親族等に帰してやる、この努力をやる必要があると考えておりますので、この点しっかりとやっていただくようにお願いしたい。  そこで、北朝鮮労働党は、我が国はおおよそ関係ないけれども、一般行方不明者というのはどの国にもあることだからそういう範囲で調査しましょうと、こういうことで今度の代表団は帰ってこられた。これはまあ大変な成果だという評価をするのと、中身はさっぱりわからぬでどうなんだと。  そこで、私はちょっと心配ありますのは、ひとつ外務省もしっかりと、また警察当局も関連すれば御努力願いたいんですが、この拉致以外にヨーロッパで行方不明になった男女三人ばかりがありますね。これは、ある人はロンドンの留学の帰りにコペンハーゲンからの帰路拉致され、どこかへ行っちゃった。それで、北海道の親元のところへ三人一緒に北朝鮮に住んでいるという手紙が数年前に来たという事実があって、じゃ、いるんじゃないかということで、実は、第一回目朝正常化交渉でしたか、ピョンヤンで平成三年一月、第一回交渉の際に、親元に来た手紙を示して、こういう事実があるが調査をしっかりやってくれよと、こうやった。非常に期待しておったところ、第二回交渉、平成三年三月十一日、事実確認なし、こういうことだったというように聞いておるわけですね。  この点、それだけなのかどうか。その後、もうちょっとしっかりした調査をして、手紙まで来ているという事実があるわけでして、決してでっち上げでもないし、そういう確認をされているわけですので、外務省としてこの件についてもうちょっとしっかりした調査なりをしたのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  42. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 平成三年の日朝国交正常化交渉、第一回本会談そして第二回本会談の際に向こうから回答があったという点につきましては、今、先生おっしゃったとおりでございます。  その後、本年八月に行われました日朝国交正常化交渉再開のための審議官レベルの予備会談におきまして、北朝鮮内の日本人の安否調査につき協力していくということで双方の意見の一致が見られたわけでございます。  これを受けまして、本件につきましても、九月に行われました第一回目朝赤十字連絡協議会の場で、北朝鮮内の日本人の安否調査について我が方より取り上げた経緯がございます。今般の与党三党の訪朝団も、この件について正面から取り上げていただいたと承知をしております。  北朝鮮側は、拉致疑惑につきまして北朝鮮と関係のないことであるとしつつも、一般の行方不明者として調査すると回答した点は先生おっしゃったとおりでございますが、このヨーロッパからの御指摘のケースにつきましても、北朝鮮が調査を真剣に行い問題の解決のために具体的な行動をとるよう、政府としても引き続き北朝鮮側に要求していくという考えでございます。
  43. 依田智治

    依田智治君 この件は直接日本人による犯行ではない、むしろ日本人が被害者の事件ですので、外務省の領事移住部なんかが対応していると思いますが、警察当局も、いろんな一連の報道等もあり、行方不明者ということでございますから、何かこの事件についてその他の拉致事件との関連において調査し把握している事実があったらお教え願いたい。
  44. 伊達興治

    政府委員(伊達興治君) 御指摘の三名の方々でありますが、この方々は外国滞在中に行方不明になった、こういうことでありまして、警察としましても、この方々が何らかの犯罪に巻き込まれた可能性もあるのではないか、こうしたことを含めましてあらゆる事態を想定し、事案の解明のため関係各機関との情報交換と所要の措置を進めているところでございます。
  45. 依田智治

    依田智治君 なかなか事実関係を具体的には掌握しにくい事件でございますが、これは親元に対する手紙も来ておるというような状況を踏まえての事実調査でございますので、本当はもうちょっと私は調査の結果を期待したわけでございますが、現在の状況はそういうことであるということは非常に残念なことだと思っております。  そこで、今回の与党代表団、先ほど最初に労働党の報道文を読みましたが、一般の行方不明者と同じ調査を行うことができるよう話したという非常に軽い受けとめ方をしておりますが、それにしても、ちゃんとメンバーによっていろいろデータを示し、その話をじっくり聞いたと。本来なら席を立って帰るというか決裂するというぐらいになるべきところを、話を聞いた上で、こういう一般行方不明者としてにしろ調査するという回答を得たということは大変な私は成果であると、こう評価し、これをできるだけ実りあるものにするということがこれからの我々のあれでもあり、政府の努力だと思います。  そこで、調査する、じゃお願いしますというだけでは、もうこれはどうにもならぬと思うんです。それで与党代表団にいろいろ聞いてみますと、与党代表団は、持っていった被害者の名簿、それに関連するデータ、その中には行方不明になったときの情報その他新聞報道の抜粋等、ただ単に当局が書類をつくっているだけじゃなくて、公の新聞報道にも出ておる事案だということもお示しして帰ってきたということでございます。  そこで、今後の調査というものはどういう形で行われるのか。全く北朝鮮側にお任せするという形なのか、政府同士でさらにこれを具体化するための話し合いの場とかそういうものを持ちながら具体的な実りある成果を期待するようにやっていくのか。このあたり、外務省はどういう御方針でおるのか。それで、外務省として正式にどういう資料を提供しこれから捜査を進めるつもりか、この点のお話を承りたい。
  46. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 与党訪朝団に対して北朝鮮側が今後調査するということを明言いたしましたことは、従来の立場からの大きな進展だというふうに考えておりますが、具体的にこれから北朝鮮側とこの問題についてどういうふうに調査を進めていくか、これはいろいろな機会で今後向こうと話す場面があると思いますので、具体的対応については双方で相談をして進めていきたい。今現在、こういう格好でやっていくというふうにはなっておりません。
  47. 依田智治

    依田智治君 名前とかだれかだけじゃちょっとわかりませんし、当然写真とかいろいろ関係のものも必要でしょう。それからやはり、ただそういう書類を見るだけでなくて、本当は専門家同士、専門家がこうですよと、これはぜひお願いしたいというくらいの話し合いができる場というものがっくれれば、これは大変な具体的前進だと思うわけでございます。我が国でそういう情報に一番詳しい人等も場合によったら、受け入れると言うなら派遣して、本当にしっかりした話し合いをしていくということが大変重要だと思います。  それから、与党の食糧支援に関連して、自民党の方からは、北朝鮮の拉致事件に関連して国連人権委員会調査委員会を設置してこの点の真相解明に御協力願いたいという要望もしておる。これは外務大臣が国連総会等へ出席する機会にそういうことも申し入れているというようなことでございます。  こういう一連の、今、真実性とか他国の例、他の調査した結果の事例とか、これから取り組むべきいろいろな対応、こう考えた場合に、私はこれは容易ならぬことだなと思います。なかなか、いや、悪うございました、こういう事件がありましたということまではすぐにはいかないと思いますが、少なくとも、現在北朝鮮におる何人かは確認されておるわけです。そういう方々が本当に無事に国に帰れる、こういうあらゆる手だてを政府として講じていただくように、これは最後に総理、この点ずっと聞いておりまして、政府の最高責任者としてこの問題解決に取り組む御決意というか、これをぜひお聞かせ願えればありがたいと思うわけでございます。
  48. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 既に繰り返し御答弁を申し上げておりますように、政府としては従来から我が国国民の生命の安全にかかわる重要な問題という認識のもとに、北朝鮮側との協議の場におきましてこの問題をしっかりと取り上げてまいりました。しかし、その中ではかばかしい進展がありませんでしただけに、今回、与党三党訪朝団の強い申し入れに対して、北朝鮮側が拉致の疑いが持たれている事件について、北朝鮮とは関係がないと言いつつも、一般の行方不明者として調査するという回答をしたことには非常に私ども注目をいたしております。  私どもとしては、北朝鮮側がこのような調査を真剣に行い、問題解決のために具体的な行動をとるように政府におきましても北朝鮮側に引き続き求めてまいりたい、そのような思いでおることを御報告申し上げます。
  49. 依田智治

    依田智治君 ぜひこの点は、我々としても、また政府としても真剣に努力して、一日も早い被害者の帰国、この事件の解決そして国交正常化、こういう方向に向けられるように努力をしていきたいものだ、またお願いしたいと思います。  次に、海洋国家としての日本の海洋なり沿岸の警戒、警備、この問題についてひとつ問題を提起したいと思います。  この拉致事件は、先ほど警察庁の方から話にございましたが、能登半島の宇出津海岸に工作船が来て連れていった、あちこちに来て連れていったというようなことで、実際上それを防げなかった。こういう事件があるわけでございまして、我が国は海洋国家でありながら、じゃそのころより現在はずっと沿岸なり海洋における取り締まりの体制はいいのかというと、必ずしもそう変わっていない、こういう問題があるわけです。したがって、私はもう少し沿岸なり海洋におけるこういう警戒体制というもの、警察権の一体的運用というような問題、これをしっかりと確立することが大変重要じゃないかと。これが第一点です。  それから第二点は領土問題。領土問題に関連して、北方領土、竹島、尖閣諸島の問題がございます。  それで、北方領土については、総理、この間日ロ首脳会談等で東京宣言を踏まえた解決へ向けてのいろいろ協議をしてこられたということでございますが、依然として竹島、これはもう埠頭だけではなく今度は船着き場までつくり、起工式というか完成の竣工式までやっているというような状況もあり、それから尖閣につきましては、中国の海洋調査船が我が国の海洋法に基づく漁業水域、排他的経済水域に来て調査をやったり、やろうとしたりして、海上保安庁が苦労してこれを排除しているというような事実が現実に今いろいろ起こっている。  それで、私はこういう問題を背景にしつつ、海洋国家として死活的に大変重要な漁業問題、中国については、先般日中漁業交渉が大変な努力の末に一応締結されたと、関係者の努力に敬意を表したいと思いますが、しかしこれだって領土問題は棚上げの上での暫定的な解決にすぎないわけでございます。  特に、この日韓の問題は、相変わらず与党三党からは現行漁業協定を破棄通告せよと、こういう緊迫した状況になっている。言うまでもなく、竹島という問題をめぐっての線引きというもので大変な争いになっている、棚上げもできないというような状況になっている。じゃ破棄通告したらどうなるのか。現在はそれぞれ船籍国で取り締まるということになっているわけですが、今度破棄通告した場合は、より排他的漁業水域等を自国でぴしっと取り締まるようにしなきゃいけないとなってくれば、そのための体制というものも私はしっかりと考えていかなければいかぬなということが言えると思うんです。  こういう点を考えますと、結局、本当に国家の独立を守るというのは防衛ですね。それから国民の安全な生活というのを守るのは警察機能。独立国家としての陸海含めた独立と安全というものを守る体制というのが果たして我が国として今確立しているんだろうか。まあ戦後私は必ずしも十分でないと。そういうところがらこういういろんな拉致事件も起こり、いろんなのが起こってきている。漁業だって今もう韓国漁船が来て荒らされ放題になっているというような状態が報告されておる。これでいいんだろうかという感じが、そうかといって、平和国家が武力を行使して、この紛争解決に戦争をするというわけにもいかぬ。そんなことはあり得ない。となれば、平素の体制をしっかりさせて、既成事実をつくられないためのしっかりとした体制をつくるということが私は大変重要だと。  そういう点で、これは個別に質問している時間はありませんので、これはぜひ総理にと思ってこういうふうにお願いしている。要するに、独立国家日本、独立を守るのは自衛隊、しかし警察機能というのは警察、これはやっぱり海陸一体の中での警察という問題がある。  それで、自衛隊の問題、防衛庁長官もおられますが、やはり船といったって海洋は広いし、それから沿岸というのは非常に手薄。そういう点を考えますと、自衛隊の海上警備行動というのは規定が自衛隊法八十二条にあるわけで、潜水艦の航行なんかについての海洋のやつは閣議決定等で自衛隊員の任務として付与された。これは自衛隊しかない。しかし、何か全体として、例えば北朝鮮、ミゼット潜水艦が座礁したというのが出ていましたが、潜ってこられたって全然わからぬ。潜ってくることを最悪の場合は想定するわけで、そういう点もある。  それから沿岸でも、どうも密航者が上がったとか何か不審者がいると。漁民を駆り出しているというときには、自衛隊の監視所があってそこに二百人ぐらいおるというのなら、ちょっと沿岸の警戒に手伝ってくれというような、これは治安出動というふうにとらえると大変な、私は治安出動というよりはむしろ自衛隊の沿岸警戒のための活動というか、そういう次元の問題としてとらえてもいいんじゃないのかなと。  それから、海洋においても海上警備行動として云々、やはりもうちょっと、例えば小型潜水艦等を発見した場合に、警告して云々というような問題や、海峡だけでなくて海洋上を、自衛隊が我が国の領海を守っている場合、漁船とかその他がいるというような場合には通告して、逃げそうだというときには、ある程度の範囲の警察権を一般的に与えておくというようなことも補充的な意味で私は重要ではないのかな、こんな感じがしております。  そういうことで、個々の問題についてこうあるべきということを一々回答していただく必要はありませんが、総理、海洋国家日本、これが本当に独立と国民の安全、生活を保護するという意味では極めて重要だと思いますので、今後、こういう認識に立ちながら我が国の行政機構の改革を初め政府の取り組みを実施していただきたい。この点、もし総理のお考えをお聞かせいただければ、一言で結構ですからお話をお願いしたいと思います。
  50. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) もう議員はよく、沿岸警備活動というものの役割、それは第一義的には警察機関の任務であること、そして同時に、自衛隊がその保有する装備や訓練などを通じて得た技能、経験を生かして、法令の定める範囲内における関係機関との連携、対応というものがあるということは御承知のとおりであります。そして現在、海上保安庁が第一義的にその機能を有し、日夜努力しておる状況もよく御承知の上で御持論を展開されました。  いずれにいたしましても、我が国にとりまして沿岸警備体制をしっかりとしておく、これはみずからの国の主権あるいは国益を守る上で極めて重要なことでありますし、関係機関におきまして相互に緊密な連携を図りながら対応していくことが重要と考え、その沿岸警備の重要性を十分に認識しておりますということをお答えにさせていただきたいと存じます。
  51. 依田智治

    依田智治君 ぜひひとつそういう認識に基づいてそういう体制づくりに万全を期していただきたい、この点を強く要望しておきたいと思います。  最後に、対人地雷の全面禁止問題、この対応について残した時間で質問したいと思います。  この地雷の問題は、まず地雷という兵器をどう認識するかということが基本的にはあるのかなと。核みたいな非人道的なものは絶対的にもうあれで、核拡散禁止条約というようなものもあるわけです。それから生物化学兵器、毒ガス、そういうようなものはもう一切。ただ、地雷というのは、通常兵器とそこの中間的で、使い方によっては非常に無差別、非人道的なものになるということで、その使い方をしっかり管理すればそう非人道的な武器にはならないという面もあるんじゃないかと思っておったんですが、世界的趨勢、ダイアナさんが乗り出したとか、やれNGOがノーベル賞をもらったとか、いろいろそんなこともあって非常に盛り上がっている。  そこで総理、私はこの対人地雷の問題については、自己破壊装置を有さない地雷の使用はもうしない。できるだけそういうものに切りかえていく。我が国も率先して特定通常兵器条約の改正された地雷に関する議定書に調印したり、オタワ・プロセスにも参加していくというところまでは承知しておったんですが、急に十月下旬になって、我が国としても全面的に地雷の使用を禁止する対人地雷全面禁止条約に署名するというか、そういう方向で調整せよという指示をしたというような報道を伺ったわけですが、総理のお考えというか、これをまずお伺いしたいというように思うわけでございます。
  52. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 報道と申しますものの性格から、その報道機関で取材に当たられる方がその問題を把握され、その情報に接しられてから報道をされるという性格がございます。  そして今、十月云々というお話がございましたが、私が防衛庁の諸君に対して、対人地雷という武器を我が国の防衛に絶対に欠くことができないという理由はどういう点なのか、同時に、対人地雷というものをもし使用しないとした場合に我が国の安全に極めて大きな問題を生ずるとすればそれはどういうケースなのか、言いかえれば、我が国が対人地雷を持っていなければ我が国の安全が確保できないという論拠を示してもらいたいということを提起いたしましたのはしばらく前のことであったと存じます。その後、さまざまな説明も受けましたが、必ずしも私が納得するものではございませんでした。  そのうちに、ある日マスコミの皆さんが、どこで取材をされたかわかりませんけれども、取材をされ、報道に出ましたときには、報道機関の皆さんがこうした点を記事になさろうとした直近に指示をしたような記事がございましたことは事実でありますが、私自身、まさに国際的に議論の進みます中において、我が国の安全を確保する上で対人地雷が欠くべからざるものであるのか、代替手段はあり得るのか、そうした問いかけをしたことはもう大分前のことであったと思っております。
  53. 依田智治

    依田智治君 わかりました。  ヨーロッパ、NATO諸国においても全面禁止条約に賛成するという国が相当多いわけですね。そういう動きを示している。よく調べてみますと、やはり陸続きのソ連の脅威はほとんどなくなっているという点からして、しかしアメリカも含む同盟国との関係もあるので、今後この問題は調整しつつ進めていこうということで、総理が今言った、我が国の防衛にとって地雷が決定的に必要かどうかというような議論と似たような議論があって、ヨーロッパの国々はアメリカと調整しつつ、今いろいろな協議を進めようという動きになっているように聞いております。  それから日本の場合にも、私も実は、この長い海岸線を本当に脅威が切迫しているというときに守るとなれば、到底今の自衛隊では守り切れない、となれば地雷というものは大変有効なもので、それを持っていること自体が大変な抑止力だ、こういう認識でおるわけでございます。これは何としても代替措置を、いわゆる国の防衛というのは何でもいいから取っ払うという問題じゃなくて、やはり代替措置というものをしっかりと見きわめて、そして対応していくというのが私は国の防衛の責任を負う者としてとるべき措置だ、こう思うわけであります。  そういう点で、防衛庁長官、この代替措置についてできるだけ早期にこれを開発し対応策を講じていくということが、そういう見通しも全くなく、ただ署名なり批准に持っていくというのは独立国家として非常に問題がある、私はこういう認識を持っておりますが、防衛庁長官の見解をお伺いしたい。
  54. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先ほど言われましたように、我が国は海岸線が長いということがございますけれども、それと同時に非常に起伏に富んでいるわけでございます。したがいまして、それを防御するときに、敵の攻略を時間的におくらせるためには地雷が非常に有効であるということから、従来からこれを持っておったわけでございます。  しかしながら、今言われたような世界的な趨勢の中で、特にヨーロッパの場合はいわゆる対戦車地雷が中心になっておりますから我が国の場合と若干違うわけでございますけれども、この対人地雷については、やはり一般市民を巻き込むというようなことからこれを廃止しようという動きが高まってきております。  しかしながら、今言うように防衛政策上は非常に大事なものでございますから、これにかわる、一般市民を巻き込まない形でどういうような防衛的な武器が可能か、これを今いろいろと研究しているわけでございまして、例えば要員がこれを監視したり、あるいはまたその作動によってこれが爆発するとか、そういうようなことについて可能かどうかやっておりますけれども、世界的にこの代替措置、かわるべきものがまだできておりません。  しかしながら、我が国のいろんな先端技術その他を駆使するならば、それは絶対できないものではないんじゃないかということで今鋭意検討しているところでございまして、アメリカ等においてもいろいろと研究は進められておるようでございますから、そういったところのいろんな知見等もまた利用させていただきながら研究を重ねていきたいと思っております。
  55. 依田智治

    依田智治君 国の防衛というものに責任を負う立場として、やはり間隙が生じることのない、これが抑止力としても重要だと思いますので、この代替措置の研究というものはひとつ真剣に取り組んでもらいたいと思うわけでございます。  あと一つ、NATOの同盟関係と我が国の場合に若干違うのは日米関係だと思うんです。特に日米防衛協力ということでガイドラインの問題等も真剣に検討され、これから当国会においてもフォローアップのためにいろいろ議論も深めていく必要があると思っておるわけでございますが、やはりこの地雷の問題は、朝鮮半島情勢という問題も絡んで、日本は必要ない、じゃ同盟国たるアメリカはどうかということになった場合に、アメリカの態度というのは、ヨーロッパでもNATO諸国とは違う考えを持っておる、今の状況では日本とも違う考えを持っておる。  そこで外務省、アメリカは現状では地雷の対策についてどのような考えを持っておられるのか、この点のアメリカの対応状況をちょっとお知らせ願えれば。
  56. 阿部信泰

    政府委員阿部信泰君) 米国の場合は、世界においていろいろ安全保障上のコミットメントがありますために、特に朝鮮半島の防衛ということを考えてすぐにはこの条約に署名できないということを言っております。ただし同時に、この地雷の非人道的な側面も考えまして、二〇〇三年までにその使用をやめる、朝鮮半島についても二〇〇六年までにこれをやめるという方針を明らかにしております。
  57. 依田智治

    依田智治君 この朝鮮情勢というのが本当に平和的に解決すれば、恐らくアメリカとしても対人地雷という問題はすっきりした形でヨーロッパ等とも歩調を合わせることができるんじゃないか。  我が国の場合も、私がちょっと懸念するのは、総理の方も特に米国等との関係を調整せよというように指示したというように新聞では見ておりますが、例えば今後調整する場合、日本は今代替措置を研究してあれだからいいというものの、朝鮮半島なり我が国周辺で本当に何か我が国の平和と安全にとって極めて重要な事態が起こってきておるというような状況下においては、これはまさに我が国の安全にとって極めて重要な影響が出てくる。アメリカはそういうときも懸念して、地雷はもうしばらく研究・検討期間を置いてくれ、その間には何とか片をつける、こういう作戦でおる。同盟国たる日本は、そのあたりのところはしっかりと見きわめを持ちながら、実際にこれからその地雷の禁止に向かっての署名に赴くのか、未調整、そういう問題について全く一致しないままに署名だけはするというような方向に行くのか。その点を私は非常に、オタワの会議も十二月のもう間もなく行われるということでございますから、そのあたり、政府はどういう具体的な態度でいくのかなと、こういう感じを持っておるのです。  外務大臣、そのあたり、アメリカとの最後の調整というもの、それをただアメリカとだけの問題ではなくて、我が国の安全保障という視点に立った場合に、やっぱり同様な問題意識を持つ必要がある問題でもあるという認識に立った場合に、これから十二月の会合等に向けて我が国としてどのような考えでおられるのか、この点を外務大臣にお伺いしたい。
  58. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 先般のオスロで採択されました対人地雷禁止条約につきましては、総理の御指示を踏まえまして、政府として署名に向けて調整を進めておるところです。  依田委員指摘のように、本件は我が国の安全保障にかかわる重要な問題であると同時に、日米が同盟国としてこの安全保障に責任を持っている立場から、日米間の問題も調整していかなきやならぬということで今日まで対処いたしております。  私自身も、米側の最高責任者ともいろいろお話を進めさせていただいておりますが、今米国としては、先ほど御答弁を事務当局からいたしましたように、署名を現時点ではいたさないと発表済みではございますけれども、しかしいずれ近い将来はそうした方向に進んでいきたいということでありますし、また現在存在しております対人地雷につきましても、これの撤去、除去につきましてもかなり、十億ドルと言われましたか、基金を設けてまでこれを処置したい、こういう意欲を燃やしておるわけでございます。  我々としては、米側とこの問題につきまして双方理解を深める努力が極めて重要だということで、過去二回におきまして協議を進めてまいりましたが、今後とも適切にこの協議を継続していくことといたしております。ただ、米国との間の協議は今申し上げたように今後とも適宜行うことにいたしておりますが、米国はこれまでの協議で、条約に署名するか否かは我が国自身が決める問題である、したがって我が国の署名には異議を差し挟む意図のないことは明らかにされておられます。(「余計なこと」と呼ぶ者あり)
  59. 依田智治

    依田智治君 余計なこととかなんとか言っている人がありますが、安全保障について真剣に考えた場合には決して余計なことじゃない、大変重要なことなんだと。そのあたりをしっかり踏まえながら対応策を講じていく。  あと一分しかありませんが、地雷では、日本は地雷をまき散らして世界に迷惑をかけたわけではありませんし、本当に問題なのは、署名しない国がやたら使っているということ、そして世界に一億以上の地雷が散らばっていることだと思うんですね。だから、日本がこういう署名をすることによって世界にインパクトを与えてできるだけ多くの国が署名するような方向へ持っていく、そういうためにも率先していくという意味はあるかと思いますが、当面、やはり一億もある世界の地雷を何とか率先して取り除く努力というものが大変重要じゃないか。この点を特に強調しておきたい。  総理、最後に一言。
  60. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、議員のお考えは承りました。その上で、先ほども申し上げましたように、我が国の防衛に絶対に欠くことができないものなのかという問いかけをいたしました結果として、私が納得できる答えをもらっておりませんということも先ほど申し上げました。  そしてまた、アメリカとの関係で大変御心配をいただきましたけれども、外務大臣からもお答えをいたしましたように、これを調印するかしないか、これは日本政府自身、署名をするかどうかというのは日本政府自身の選択に係ることであります。当然ながら、日米両国は安全保障においても協議はいたします。しかし現在、我々は人道的な配慮、同時に我が国の安全保障を確保する、双方の観点の考慮をいたしながらも、この条約の署名に向けて現在調整を行っておりますことは御理解をいただきたいと存じます。
  61. 依田智治

    依田智治君 もう時間でございますが、一書だけよろしゅうございますか。  総理、これはただアメリカに追従するということでなくて、我が国独自に判断するというのは結構なことですが、安全保障の視点に立ってという点をぜひともお願いしたい。  以上で終わります。
  62. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 以上で平田耕一君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二分休憩      —————・—————    午後一時開会
  63. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  予算執行状況に関する調査を議題とし、休憩前に引き続き質疑を行います。猪熊重二君。
  64. 猪熊重二

    猪熊重二君 本日は主として政治倫理の問題について私がお伺いしまして、その後、景気問題について関連で都築議員がお尋ねしたいと思います。  現在、橋本内閣は六つの改革を掲げて、戦後五十年にわたりかたく築かれてきた社会の仕組みを根本的に変えようとしておられます。目標とする社会は、国際化、技術化、高齢化、情報化に対応し得る新しい社会、別の言葉で言えば市場原理に立脚し、個人の自主自立を根本とした社会を目指してつくり直そう、こういうことでありまして、私はこの橋本内閣の目指す改革の方向をぜひとも実現していただきたい、こう考えております。しかし、このような改革は、既存の社会の仕組みによって利益を得ている一部の政治家、特権官僚やあるいは特定の産業界、この激しい戦いなくして実現することはできません。しかし、このような戦いを支えるのは国民の支持であります。  そこで総理に、この六つの改革を本当にやろうという場合における国民の支持について御意見をまずお伺いしたいと思います。
  65. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは改革だけではなく政治の取り扱います課題すべて、安全保障もありましょうし外交もありましょうし、すべての分野で国民の御支持というものが極めて政策遂行の上で大切でありますし、また必ずしも支持がいただけないにせよ、御理解がいただけるということは基本的に欠かすことのできない大切な要件だと思います。  そうした意味で、議員が今指摘をされましたように、この改革というものを進めようといたしました場合に、まず国民の理解、その上での支持というものは私は欠くことのできない成功へのかぎであると思っております。
  66. 猪熊重二

    猪熊重二君 私の原稿にもちゃんと国民の理解と支持、こう書いてあったんですが、その理解のことを読むのを忘れました。  しかし、総理自身も言っておられるように、このような改革は国民痛みを与える場合も考えなきゃならぬ、こういうことでございます。そうすると、国民痛みを与えてなお国民の理解と支持を得るためには、国民の政治ないし政治家に対する信頼なくしてあり得ない。しかし、国民の政治ないし政治家に対する不信は今極点に達している。この政治家、政治に対する不信の根本は政治家と金銭にまつわる疑惑にある、このように私は考えます。政治倫理の確立、もう少し言えば、政治家と金銭との清潔な関係の確立について総理はどのように考えておられましょうか、お伺いします。
  67. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、政治というもの、あるいは政治家が政治というものに取り組んでいきます場合に、それなりのコストがかかるということについては国民も御理解をいただけるのではないかと考えております。問題は、そのコストとなりますいわゆる政治資金、これが国民の納得が得られるような形で政治家あるいは政治資金管理団体が受け入れ、そしてそれが公明正大に使用される、その透明性の問題もありましょう。そして、その政治資金というものは、当然ながら善意の国民、団体・企業等から、あるいは労働組合を含めましても結構でありますが、こうした方々からそれぞれの政治家あるいは政党に提供されるものでありまして、おのずから政治家として、そのよって立つ基盤をなす政治資金というものに対しては、受け入れ、払い出し、そのいずれの場面においてもより高い透明性を求める国民の声にこたえる努力をしていくことは当然のものと思います。
  68. 猪熊重二

    猪熊重二君 それで次に、具体的な問題の一つとして泉井献金問題について少々伺いたいと思います。  この臨時国会における最大の政治倫理問題は泉井純一氏の巨額にわたる政治献金の実態解明であると思います。この解明なくして先ほど申し上げた政治ないし政治家に対する信頼というふうなものを築くことはできないと思います。  泉井問題とは、言うまでもなく、御承知のとおり泉井純一氏が石油の業者商売買、いわゆる業転によって多額の不法の利益を取得し、この不法に取得した利益のうち相当程度部分を政治家に政治献金ないしは表に出ない献金として交付したと言われる事件であります。  泉井純一氏は現在所得税法違反あるいは詐欺罪等で公判中でありますが、この泉井氏が行ったとされる政治献金が政治資金規正法上適正に処理されたか否かを含めて実態が明らかになることが必要であります。  法務大臣に伺う。  この泉井純一氏の行ったとされている政治献金ないし、言葉は適切かどうかわかりませんが、やみ献金に関する捜査は現在どうなっているか、伺いたい。  そして、泉井氏自身が本年の九月八日にみずから記者会見を開いて、多数の政治家に多額の政治献金をしたと、こう自分で言っておられるわけです。しかし、泉井氏は、起訴状によれば、三菱石油を欺罔して二十四億円もの金銭を詐欺したということで起訴されているんです。そうすると、二十四億円詐欺して入った金、詐欺の領得金が政治家に行っているんだとしたら、これは政治家は詐欺の事後従犯で詐欺罪の片棒担ぎともなりかねないことになるわけです。  ですから、この泉井氏の詐欺によって得た金の流れの解明は検察としては当然にやらなきゃならないことだし、その過程において明らかになった政治家への献金、やみ献金がどのようなものであるか、この辺の捜査の状況についてお伺いしたい。
  69. 下稲葉耕吉

    国務大臣下稲葉耕吉君) お答えいたします。  泉井純一被告人につきましては、議員指摘のとおりに、東京地方検察庁が所得税法違反、それから詐欺、関西国際空港株式会社法違反の事実で起訴しているわけでございます。  起訴されていない何らかの事項につきまして検察当局が捜査をしているかしていないかということにつきましては、これは捜査活動の内容にかかわる事柄でございますので、法務大臣としては答弁を差し控えさせていただきたい、このように思います。
  70. 猪熊重二

    猪熊重二君 法務大臣、私が今質問したのは、政治家に対する献金ないしやみ献金を含めて、政治家に対する献金問題について捜査をしていますかいませんか、捜査しているとすればその状況はどうですかということをお伺いしたわけです。その辺について、いや、それはもう検察とは全く関係ないことだから私たちは何もやっていないと言うのか、そんなことはない、詐欺でもらってきた二十四億円の中からある部分をもらった政治家がいるんだと、いるかいないかということを調べるのか調べぬのか、その辺をもう一度御答弁願いたい。
  71. 下稲葉耕吉

    国務大臣下稲葉耕吉君) お答えいたします。  現在、事件は公判係属中でございまして、議員の今お尋ねの点は具体的な捜査の内容にかかわることでもございますし、大臣としての答弁は、調べたのか調べないのか、そういうような点も含めて答弁は差し控えさせていただきます。
  72. 猪熊重二

    猪熊重二君 どうしても法務大臣が一言もお答えにならぬと言うのであれば、私は、この問題を法務省としてきちんと捜査した結果を当委員会に文書で報告してもらいたい、そのように思いますので、委員会としてそのように取り計らっていただきたい。  というのは、何度も同じことを申し上げますけれども、盗んだやつが悪いとすれば、盗んだやっから金をもらったのはもっと悪いじゃないですか。そこが大切なんです。それにもかかわらず、泉井さん本人が、私はこの人に幾らやった、この人に幾らやったと言っているんです。だから、政治家の立場から見れば、これは正当な政治資金なのかやみ献金なのかわからぬけれども、もし正当な処理をしていないとすれば、政治資金規正法違反という側面においても検察として捜査するべきことじゃないですか。  そういう意味も含めて、どうしても法務大臣が一言も言わぬとおっしゃるなら、委員会として、その辺のことを明確にして調査して文書で報告せ  いということをお決めいただきたい。
  73. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 速記をとめて。     〔速記中止〕
  74. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 速記を起こして。  ただいまの猪熊君の要求につきましては、後刻その取り扱いを慎重に理事会で協議いたします。
  75. 猪熊重二

    猪熊重二君 ここで、この泉井問題に関連して小渕外務大臣に一言お伺いしておきたいと思います。  小渕外務大臣は、十月三十日の衆議院予算委員会において、新進党田中慶秋議員質問に対し、泉井氏からの献金五百万円があったのかなかったか、あったとすればその時期、献金方法、それからこの五百万円の献金以外に泉井氏からの献金があったのかなかったのか、あったとすればその額、時期、献金の方法等につき早急に調査した上回答する旨答弁されています。  この二つの点についての調査結果は現在どうなっておりましょうか、お伺いします。
  76. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 十月三十日の衆議院予算委員会における田中慶秋議員から御指摘のあった泉井氏からの献金の金額につきましては、調査結果、平成四年より同七年まで四年間で合計五百万円であり、すべて政治資金規正法にのっとり適正に報告、処理いたしております。なお、その他につきましてはございません。報告のおくれましたことをおわび申し上げます。
  77. 猪熊重二

    猪熊重二君 私も、小渕外務大臣の人柄やそういうものから考えて、そんな法外な金を受け取ったなんということはないことを信じているわけですが、今この五百万円以外にはないと、こうおっしゃる。ただ、巷間、週刊誌や新聞でいろんなことを言われております。その辺について、もう少し適切な処置をおとりになった方が小渕外務大臣御自身の立場からしても妥当な処置方法じゃないかと思いますが。余計なことですけれども、その辺はどうお考えなんでしょうか。
  78. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 御親切と申し上げますか、御意見として拝聴いたしておりますが、特に一部報道機関によりましてその他の献金等につきまして報道された事実がございます。  本件につきましては、文芸春秋に対しまして弁護士を通じまして事実調査をいたしたところ、文芸春秋では、事実の異なった原稿は当社と無関係であり、なおかつ産経新聞東京本社に対して文書にて、夕刊フジ記事は事実誤認の報道であるとの厳重な申し入れをいたしたところでありますが、当方といたしましては、産業経済新聞東京本社に対して、法的な手段も念頭に入れ、正式に抗議を申し入れておるところでございまして、種々いろいろ報道等なされましたそうしたような事実ば一切ありませんので、この機会に申し上げさせていただきたいと思います。
  79. 猪熊重二

    猪熊重二君 この泉井問題に関しては、総理も御承知のとおり、現在、衆参両予算委員会において泉井氏の証人喚問を予定していろいろ各派協議しているところでありますが、総理はいつもここで、自民党総裁としての立場は私は別口だと、こうおっしゃるわけです。しかし、この証人喚問問題に関して、その早期実現に関して、総理もしくは自民党総裁としてのお立場において御意見があれば御意見を伺い、証人喚問の早期実現に御助力願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  80. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 繰り返し本院また衆議院においても御答弁を申し上げてまいりましたが、この泉井被告の事件と申しますものは現在裁判中でありまして、立ち入って申し上げる立場にはございません。そして、証人喚問につきましては、これは国会でお決めをいただくべきことだと思います。同時に、泉井被告という方が何カ月かの間捜査当局の取り調べを受けられ、またマスコミにおいてもさまざまな報道がなされております。そして、法務大臣からの答弁にもありましたように、法に違反するようなことについては当局は当然厳正に対応すると考えております。その上で、冒頭の御質問に立ち返りましたときに、やはり国民の政治不信を払拭するために政治家が常に自戒し、みずから襟を正す、その必要性は当然のことでありまして、その意味で明らかにされなければならない、しなければならないことは、その証人喚問云々ということとはかかわりのない話でありましても、適切な場で政治家みずからの判断でやはり明らかにされるべきものだと考えております。いずれにせよ、引き続き政治倫理の確立に向けた最大限の努力を払っていくことは当然のことと存じます。
  81. 猪熊重二

    猪熊重二君 次に、二番目の問題として、農協系政治団体の寄附問題についてお伺いします。  昨年の衆議院総選挙に際して、農協系政治団体が農林関係、衆参議員九十五人に合計五千七百七十万円を寄附したということが報じられております。この問題は、単に政治家に対する特定団体の寄附という問題を超えて、去年の国会における住専処理と関連する献金であるというところで、非常に国民の立場から見ると心外な献金問題だと言わざるを得ません。  この問題を取り上げる前提として住専問題の処理についていろいろ詳しく申し上げようと思ったんですが、時間がなくなったので簡単に申し上げれば、要するに、国民の血税六千八百五十億円を支出するに際して、住専に対する貸付元である母体行は三兆五千億を全額放棄し、一般行は三兆八千億中一兆七千億を放棄する、これは四割五分の放棄なんです。これに対して、農協系金融機関は五兆五千億の債権の放棄はゼロだったんです。農協系金融機関に対するこの五兆五千億の債権を全額保証したことのゆえに、国民の血税を六千八百五十億円出さざるを得ない計算になったと、このことだけを申し上げておきたいんです。  そして、その際の政府の説明は、農協に五兆五千億の債権を少しでも放棄させれば農協は経営が成り立たない、赤字になる、倒産する、だから国民に六千八百五十億円の負担をお願いするんだという趣旨だったんです。  ところが、この法案が去年六月十八日可決成立されたわずか三カ月後の去年の十月三日、全国の農協組織である全国農業協同組合中央会の常務理事の立場にあり、かっこの全国農協中央会の選挙組織である全国農業者農政運動組織協議会という政治団体の幹事長もやっておられる高野博さんという方が代表者になって、この全国農政協の幹部約百人が設立メンバーになって、農業と緑の代表を国会へ送る会という政治団体をつくったんです。この政治団体が、昨年の十月二十日の衆議院選挙に際し、設立十日後にすぎない十月十三日、十四日を中心にして、先ほど申し上げたように九十五名の国会議員に総額五千七百七十万円の献金を行った。  しかも、この献金は、その政治団体が固有の金がないからよそから借金して、借金した金を献金したんです。随分世の中には奇特な人がいるものです。あり余っている金、あり余っているというと失礼ですが、金があるからこれを寄附しようというんじゃない。政治団体をつくって、金は全然ない、ないけれども、ほかから借金して、それを政治家に配った。しかも、これが住専処理から三カ月後の話なんです。それで、新聞報道によれば、住専処理のお礼の意味も含めていた、こう御本人が言っておられるんです。これではあなた、国民としてはどれだけだまされたか、踏んづけられたかわからぬじゃないですか。  農協に負担をかければ農協がひつくり返ってしまう、つぶれてしまう、農民が困る、農業がつぶれる、だから六千八百五十億の国民の血税を出すと言っていた。そのつぶれるかもしれぬ、赤字でひっくり返るかもしれぬといった農協の別働隊であると言わざるを得ないこの政治団体から献金を受けたということで、以下、総理三塚大蔵大臣、小泉厚生大臣に、右の政治団体からの献金について、日時、金額を伺いたい。
  82. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まず第一点に申し上げなければならないことは、住専をめぐる問題、これは我が国不良債権問題の緊急かつ象徴的な課題で、金融システムの安定を維持するとともに我が国経済の安定的な発展のためにこの問題を早期に処理することが不可欠であるという判断から住専処理法を含む処理策が決定された、そして国会に御審議をお願い申し上げたという、私ども国会で繰り返し御説明を申し上げた点を冒頭もう一度申し上げさせていただきます。  その上で、平成八年十月十四日に百万円、同十六日に五十万円を農業と緑の代表を国会へ送る会、略称、農と緑の会という政治団体から政治資金としていただいておりますし、まさに私自身の政治活動のための浄財と認識をいたしております。
  83. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 本件については、平成八年十月に農業と緑の代表を国会へ送る会から政治活動に対する浄財として百五十万円の献金を受けたところであります。経理が適正に処理したと報告を受けております。
  84. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 事務所の調査によりますと、平成八年十月十四日、農業と緑の代表を国会へ送る会より八十万円、同じく平成八年十月十六日、三十万円、合計百十万円、政治資金管理団体が受領したということであります。浄財と思って受領いたしました。
  85. 猪熊重二

    猪熊重二君 今、総理大蔵大臣も厚生大臣も浄財であるとおっしゃる。もうこれ以上私は申し上げませんが、住専処理に直接関係しているものじゃないというふうにお考えにならなければ浄財としてお受け取りいただいているわけにはいかぬということは、それはわかりますよ。  しかし、住専処理の問題と今の銀行破綻に関する問題はまた別の問題として、あのときには五兆五千億の中から六千八百五十億を農協が債権放棄すれば国民の税金は使わないで済んだんです。それにもかかわらず、一銭も出すわけにはいかぬ、つぶれそうだ、赤字だ、農業が破壊されると言う国民に六千八百五十億を負担してもらったんです。そのつぶれそうな人から金をもらって、浄財だと言うだけじゃ世の中はおさまらぬ、私はそう思うんです。  これを国民が聞いたら、それじゃ私たちはだまされて六千八百五十億の負担をさせられたのか、国民一人当たりの金額としたら、忘れちゃったけれども、五千幾らです。何で年寄りから子供まで一人一人の人間が五千何百円の金を負担して単なる民間の金融金貸し会社にすぎない住専に金を出したのかと。しかし、これも日本農業のためだ、日本の農協組織を守るためだからやむを得ぬという、私たちは反対しましたけれども、政府・与党が強行的にこの法案をつくったんです。  その農協関係の団体からもらった金が、たとえ百万円とか百五十万円とか、政治家それぞれの取り扱う金から見ればわずかかもしれませんが、こういうふうな処理は国民としては納得できぬと私は思うんです。これを国民に対して真に理解してもらうためには、ちょっといただく筋じゃなかったと言ってこの金を返すべきが筋だと私は思うんです。  総理大蔵大臣、厚生大臣、この金は返されたらどうですか。お返しになる御意思はありますか、ありませんか。
  86. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 繰り返し申し上げて大変恐縮でありますけれども、私自身、この問題について何回も本院でも答弁をさせていただきました。そして、議員は今違った議論を組み立てられましたが、私どもが内閣として繰り返し国会また国民に御説明をいたしてまいりましたもの、それはまさに我が国不良債権問題の緊急かつ象徴的な存在、問題が住専というものであると。その住専をめぐる問題を処理していくことが金融システムの安定を維持していく、また経済を安定的に発展させていくためにもこの問題を早期に処理することが不可欠、こうした判断から住専処理法を含む処理策を決定してまいった、繰り返しそういう御説明を申し上げてまいりました。
  87. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 段々の経過のお話がありましたが、農業と緑の代表を国会へ送る会という形でつくられた政治団体と後から報告を受けました。そこから献金がありました以上、浄財としてありがたくちょうだいし適正に処理をした、こういうことで経理責任者から報告があったところでございまして、その趣旨を踏まえ、現在お返しするということは考えておりません。
  88. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 農業と緑を守るために浄財を活用してくれと。なぜ返す必要があるのかわかりません。
  89. 猪熊重二

    猪熊重二君 それぞれの政治家の政治に対する倫理観の問題なんです。私は、総理にしろ大蔵大臣にしろ小泉厚生大臣にしろ、そんな現場の、現場というか事務方の一人一人がどういう金をもらったとかどうとかということは多分御存じない、またそれを知ることもほとんど不可能と。しかし、そういうことを知った上では、それはちょっとこのままもらったら国民に相済まぬというふうにお考えかと思って、返金の有無をお伺いしたんです。  要するに、三人いらっしゃるから、三人それぞれがいろいろお考えがあるだろうけれども、一人がこうやったらほかの人がこうやったと。また九十五人の政治家がおられるわけですから。しかし、勇気を持ってやっぱり私は返すべきだと思う。そうでなかったら国民としては踏んづけられてたまったものではないと私は思います。しかし、これはもう私の意見で質問ではございませんから終わりにします。  ただ総理、政治資金規正法は、企業・団体献金を平成十一年末を経過した場合に禁止する措置を講ずるというふうな規定をしておりますが、私は、今の問題も含めて、企業・団体の資金管理団体に対する寄附は直ちに禁止するような法制度をつくるべきだと思いますが、御意見どうでしょうか。
  90. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 企業・団体献金の禁止につきましては、与党三党の中におきましても、九月三十日の政治論理等に関する三党確認におきまして、  政治資金規正法附則九条及び十条についてその趣旨を確認し、平成七年一月施行後の実施状況を十分見極め、入念な検討を加え、今国会中の合意に努力する。  その際、わが国民主政治における政党及び政治家の政治活動のあり方を検討しつつ、国民の浄財である個人寄附の拡大など政治資金について、諸外国の政治資金制度などを参考に、具体的な方途を講ずる。  このように明記をいたしておりまして、これに沿った検討が与党三党において鋭意進められていると承知をいたしております。
  91. 猪熊重二

    猪熊重二君 農協関係の質問はこれで終わります。  次に、鈴木宗男北海道・沖縄開発庁長官の自衛隊施設における夕食会主催と公選法違反疑惑についてお伺いします。  この質問に入る前提として、自治大臣に、公職選挙法が公職の候補者すなわち政治家がする寄附の禁止についてどのように規定しているか、特に公選法は公職の候補者本人が選挙区内にある者に対して無償で飲食物を提供することを禁止していると思いますが、この禁止規定について、寄附の定義、選挙区内にある者の範囲及びこれに対する罰則について御説明願いたい。
  92. 牧之内隆久

    政府委員牧之内隆久君) 政治家本人の寄附につきましては、公選法の百九十九条の二の第一項におきまして、政治団体とか親族に対して行う場合等を除きまして、「当該選挙区内にある者に対し、いかなる名義をもつてするを問わず、寄附をしてはならない。」とされておりまして、これに違反した場合の罰則につきましては、当該選挙に関して寄附をした場合、あるいは通常一般の社交の程度を超えて寄附をした場合は一年以下の禁錮または三十万円以下の罰金、それ以外のものにあっては五十万円以下の罰金に処するとされておるところでございます。  ここに言う寄附につきましては、同法の百七十九条第二項で定義をされておりまして、「この法律において「寄附」とは、金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のものをいう。」とされております。  一般論として申し上げますれば、飲食物の無償提供はこの公選法に言う寄附に当たるものと考えておるところでございます。また、先ほどの寄附禁止の百九十九条の二の「当該選挙区内にある者」についてでございますが、これにつきましては、当該選挙区内の有権者に限らず、選挙区内に住所または居所を有する者等、広く解釈されているところでございます。
  93. 猪熊重二

    猪熊重二君 今自治省の方から説明がありました。これは公職の候補者本人がやった場合のことなんです。しかし、公職の候補者の後援団体がやったことも同じであります。  なぜこんなことを自治省に説明していただいたかというと、鈴木長官が当然に今の公選法の規定も御存じだろうということで、もし御存じないとしたら今の自治省の説明を前提にして長官にお伺いし、御答弁いただきたい。  本年九月十六日午後五時から、自衛隊別海駐屯地内の体育館において、矢臼別演習場に演習に来ていた米海兵隊の歓迎夕食会が開催されました。この歓迎夕食会には、米海兵隊員三十三名、周辺自治体の首長五名、議会関係者、地元商工会関係者各若干名、自衛隊幹部五名、鈴木長官及びその関係者若干名、総員六十名余が参加し、長官が歓迎のあいさつをしたとされています。  そこでお伺いしたいのは、この歓迎夕食会は長官の名で企画、設営、主催し、長官が費用を負担する予定であったと報道されていますが、この点の事実関係はいかがなんでしょうか。
  94. 鈴木宗男

    国務大臣(鈴木宗男君) 正確にお答えしますと、当日、九月十六日は米海兵隊三十四名であります。日本側は私を含め、行政の長、代表五名、議会関係者、これは議長さんでありますが、四名、商工会長さん五名、自衛隊幹部五名、さらに自民党関係者七名の計六十一名であります。  私が企画、運営、主催したかという質問でありますけれども、これは米海兵隊受け入れを決定したときから歓迎会なりあるいは慰労会なり何か交流の場を持とうということで、地元の人たちとの話し合いの中で私が音頭をとりまして実行委員会をつくっていただきました。その事務局に私の事務所の者も参加しているというふうに私は聞いているのであります。
  95. 猪熊重二

    猪熊重二君 一番聞きたいことは、当初長官がこの費用を負担するということで始まったんですかどうですかということなんです。それで大切なことは、歓迎会と歓送会とは区分けして、歓迎会に関しての費用負担のことについて私はお伺いしております。
  96. 鈴木宗男

    国務大臣(鈴木宗男君) 大事なことを答弁漏れしておりました。おわびを申し上げます。  これは最初から私は費用を出すということで企画立案あるいは計画はしておりません。先ほどおっしゃったように、地元関係者、自衛隊協力会を含めて商工会の皆さん方、さらには自民党の関係者の皆さん方と相談をしてやったということでありますので御理解をいただきたい、こう思います。
  97. 猪熊重二

    猪熊重二君 今、委員の皆さん方にも配付しました。この「ご案内」を、長官お持ちですね、持っていますね、この「ご案内」を見れば、地元関係者どうとかこうとかという問題じゃなくて、この手紙、昼食会の御案内の差出人は衆議院議員鈴木宗男となっているんです。要するに、先ほど歓迎するための何とかとおっしゃいましたけれども、そんなのじゃなくて、まずあなたが歓迎会主催者として、費用の負担者として無料での昼食会、これは最初は昼食会だったんです。その後、正午からの昼食会が五時からの夕食会に変わったんです。  この案内状はどういう趣旨なんですか。
  98. 鈴木宗男

    国務大臣(鈴木宗男君) 実はこの案内状も国会で質問を受けるということになって初めて地元からファクスを送ってもらって私もわかったんですけれども、私自身、音頭をとって歓迎会あるいはそのフェアウエルパーティー等をやろうということを言いましたけれども、一々こういう文書を出しなさいとか、こういう書面にしてくださいというところまでは私はタッチしておりませんので、私もこの質問を受ける段になって、衆議院の予算委員会のときでありますけれども、初めてこういつた案内状が出たということを知りました。  同時に、私は衆議院の予算委員会でも御説明しておりますけれども、九月十六日のこの歓迎会は幹部の皆さんのみの少数と。大隊規模で来ておりますから約三百五十名ぐらいの海兵隊が来ているんですけれども、約一割の方ぐらいに集まってもらって、しかも日本側、ホスト役は演習地を抱える三町の関係者の皆さん方、さらに港を使う根室市、花咲港という港を使ったものですからそこと、中標津の空港を使ったものですからその中標津というところに限定をして、その関係者に集まってもらっていろいろ相談してやってきたものなんです。  そこで、予算委員会で私は言ったんですけれども、九月十六日のこの歓迎会と十月一日の送別会はワンセットのものである、その中でそれぞれの人に応分の費用を持ってもらってやっていくというふうに私は事務局から、とりわけ私の事務所の方からもそういうふうに聞いておったんです。私が自腹を切るとか私が費用を持ちますという話はしておりません。
  99. 猪熊重二

    猪熊重二君 そうすると、この書面はあなたの真意ではなくして、あなたの地元の秘書が間違って出したと、こういうことを言っておられることになるわけですか。
  100. 鈴木宗男

    国務大臣(鈴木宗男君) 間違って出したというのではなくて、今、先生御指摘があったように、初めは歓迎昼食会、それが海兵隊の都合、さらには私の方の都合もありまして夕食会に変更した経緯もありまして、しかも歓迎会をどこでやるかというのにも時間がかかりまして、正式な文書をつくる余裕がなかったと私は聞いておりました。そこでファクスでの案内だったように私は報告を受けているんです。  先ほども言いましたように、一々細かい文章まで私は相談も受けていませんし、チェックもしておりませんので、私は、私の事務所がその事務局の一員であるということは知っておりますけれども、私は間違って出したとも思いませんけれども、ただ言えるならば、きちっともう少し主催者あるいは関係者の名前もたくさん書いてやっておけばよかったのかなというその反省はあります。
  101. 猪熊重二

    猪熊重二君 費用のことでさらに伺えば、あなたの現地事務所の事務員は、新聞報道によれば、新聞記者の質問に対し、費用は全額事務所で負担するつもりだった、公選法に触れるとは思わなかった、違法になるというなら後日会費を集めたいと新聞記者に話したと、こういう報道をされているんですが、この点はどうですか。
  102. 鈴木宗男

    国務大臣(鈴木宗男君) たまたま応対した秘書は責任者でない者でありました。責任者でない者が発言しておりまして、同時にその新聞のやりとりも、私はその受けた者から聞きますと正確でないというふうに聞いております。
  103. 猪熊重二

    猪熊重二君 じゃ、もう一つ伺いましょう。  十月十八日の毎日新聞の夕刊をあなたのところにも届けているはずです。  この会場の設営はあなたの事務所で全部やられた。自衛隊の方はめぐりに張る幕と床に敷くマットを貸しただけで、あとは全部鈴木先生のところでおやりになったと。鈴木先生のところでおやりになった会場の中で、この上に掲げてある日章旗と星条旗と、もう一つMという字の中にクマの絵がかかれている旗がかかっているんです。この旗は何の旗なんですか。  それからもう一つ、その下に書いてあるこの英文の文字はどういう趣旨ですか。
  104. 鈴木宗男

    国務大臣(鈴木宗男君) 会場設営は、当初実行委員会で役割を決めて設営を行う予定であったんですけれども、たまたま私が大臣になったものですから、その打ち合わせ等は事務所の者もできなかったもので、事務所の者がとり行いました。同時に、テーブルのセットとかあるいは料理の運びにつきましては、地元商工会婦人部、自衛隊協力会婦人部のお手伝いもいただいたというふうに報告を受けております。  なお、星条旗を真ん中に日章旗がありまして、その横にあるクマの旗は、これは私のシンボルマークの旗なんです。これも私が指示したんじゃなくて、聞くところ北海道はクマという一つのイメージもあるし、私もそのクマのマークを使っているものですから、それをユーモアというか歓迎という意味で、しかも勇猛精強な海兵隊でありますから、敬意を込めたような意味も込めて張ったやに私は伺っております。
  105. 猪熊重二

    猪熊重二君 下の英文は何ですか。
  106. 鈴木宗男

    国務大臣(鈴木宗男君) 英文は、歓迎、米海兵隊、ホストは鈴木宗男というふうに書いてあると思います。ちょっと薄くて読めませんけれども、そうでないかと、こう思います。
  107. 猪熊重二

    猪熊重二君 長官、英文のところには、私は英語は余りできないけれども、主催して主人として歓迎してお迎えしたのはミニスター・ムネオ・スズキ、鈴木宗男国務大臣なんだ。この横看板を見て、会場に来た人は、私みたいに英語が読めない人はしょうがないけれども、英語が読める人が見たら、鈴木国務大臣の主催、費用負担、接待による歓迎会だと読むのが当たり前でしょう。そして、この日章旗と星条旗と同じぐらいにあなたの旗がかかっているんだ。これで、私じゃなくて商工会だとか地方自治体だとか、こういうことは通りませんよ、あなた。どう考えているんだ。
  108. 鈴木宗男

    国務大臣(鈴木宗男君) この会合をセットしたとき、私はまだ大臣でなかったんです。これは先生もお調べになって明確だと思うんです。そこで私が、この看板をつくるのも旗を張るのも私は何も指示もしておりませんし、口を挟んだこともありませんから、これもまた確認してください。  同時に、私が後で聞きましたところ、米海兵隊別海歓迎夕食会、ホスト・バイ・ミニスター・ムネオ・スズキですから、主催は鈴木宗男国務大臣という名称にしたというのは、少しでも海兵隊の皆さん方に敬意を表して、グレードを高めた会にしょうということでその大臣の文言を使ったということなんです。そもそも、私も防衛政務次官等をやって考えておりますのは、やはり軍の関係者、自衛隊もそうでありますけれども、名誉とか誇りというものを非常に考える組織でありますから、これも私が大臣という称号を使えと言ったんじゃなくて、地元の皆さん方がそういう看板をつくったと聞いておりますので、この点も御理解をいただきたい、こう思います。
  109. 猪熊重二

    猪熊重二君 あなたが国務大臣になったのは九月の十一日なんです。そして、この歓迎会は九月十六日なんです。この間あなたは自分が国務大臣になった、ミニスター・ムネオ・スズキと書けと言ったとか言わぬとか、何も言っていないと言うけれども、もうそうだとすれば、だれがあなたの、国務大臣である鈴木宗男の名前を使ってこういうにせ看板を掲げたんですか。あなた、いいかげんなことを言っちゃいけないよ。これは自分で知らぬと言っても、あなたこの会場に行っているんじゃないか。行って自分でここであいさつしているじゃないか。それを、私は知らぬ、だれかがやったなんていいかげんなことが世の中で通りますか、あなた。何を言っている。
  110. 鈴木宗男

    国務大臣(鈴木宗男君) 事実として私は、少なくともこの会合がセットされたのは、大臣になってからセットしたものでもなければ相談したものでもないんです。以前にこれは決まっている話であります。九月十一日の組閣でありますから、先生お調べのとおり、九月八日ごろ具体的な日程が詰まってきた経緯でありますから、この点何も私があえて自分で呼ぶために自分の名前を使えということじゃなくて、私は少なくとも、先ほど言ったように、ステータスを高めるなりグレードを高めるなり、喜んでもらえるという環境づくりのためにこういった看板がつくられたのではないかという認識を持っております。  同時に、さっき旗の話が出ていますけれども、これはどうも地元では、日の丸の旗と後援会のシンボルマークの旗というのをいつも使っておるものですから、私はそんな感覚で、他意はなくてですよ、他意はなくて私は使ったんじゃないのかなという感じを持っております。
  111. 猪熊重二

    猪熊重二君 あなたは先ほどから、ほかの三つの町といろいろ協議してやったとかどうとか言っているけれども、私は別海町に行って町長に会ったんです。助役と収入役に会ったんです。何て言っているか。あんたが言っていることと全く違うじゃない。別海町には当初会費の話なんかは何にもなかった、当然招待と思っていたところ、翌十七日、鈴木議員の地元秘書から電話があり、有料とすることにさせていただきたい、会費一万円をいただきたい、これから受け取りに行くからよろしく頼むと、こういう電話があったので、それでやむを得ず、やむを得ずというとおかしいですけれども、そういう話ならばということで、取りに来たあなたの秘書に一万円を渡したと別海町じゃ述べているんです。
  112. 鈴木宗男

    国務大臣(鈴木宗男君) 先生、正確にさせていただきたいんですけれども、別海の町長さんは先生に会っていないと私は聞いております。対応したのは助役だと聞いております。同時に、この夕食会に出たのは収入役さんであります。私は助役さんからこういう話を聞いております。先生からお話があった、そういう話は詳しくわからない、負担金は出席者個人払いということになっている、中身については商工会の方で対応しているので私にはわかりませんと、助役さんは先生に明確に答えたというふうに私は報告を受けております。
  113. 猪熊重二

    猪熊重二君 あなた、私が言っていることがうそか、助役、収入役が何を言ったか。そうだとしたら私は、この問題に関しては私も二日間北海道へ行ってきている、いろんな人に会ってきた。もう時間もないのでやむを得ぬけれども、もし長官が今のようなことであるとするならば、私は自分の調べてきたことの真偽、長官がおっしゃることの真偽を含めて、何が真実であるかを明らかにするために、会派とも相談をした上で、長官を公選法違反で告発する、そのことを考えにやならぬ。その上で……(発言する者あり)  だれだ。ちょっと委員長、とめてくれ。だれだ、今何か言ったのは。だれだ、そこで何か言ったろう、今、いいかげんなことを何とか。だれだ。だめだよ、冗談じゃないよ、あなた、質問しているのに国務大臣が人の質問に対して中傷するような発言をするとは。だれなんだ。
  114. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 私語は慎んでください。
  115. 猪熊重二

    猪熊重二君 だめだよ、とんでもない、あなた。何を言っているんだよ。防衛庁長官だろう、多分。——だれだ、それじゃ。
  116. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  117. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 速記を起こして。  閣僚席から、だれが発言したかわかりませんが、不規則発言があったわけでございまして、今、質疑者猪熊議員からそのような指摘がありました。  今後とも、不規則発言については、閣僚席はもちろんでございますが、特に傍聴席もその旨御協力方お願い申し上げまして、猪熊重二君の発言を許します。
  118. 猪熊重二

    猪熊重二君 私の任意のいろんな聞き取りは真実であるかどうか、鈴木長官はいろいろ否定されるから、事の真実を明らかにし、もし長官に公選法違反ということがあるとすれば、これは重大な問題なんです。公選法に違反したら、罰金をもらっただけでも公民権停止五年なんです。公民権停止というのは、選挙権、被選挙権の停止なんです。国務大臣どころか国会議員どころか、選挙権も被選挙権もなくなるんです。  私は、だれかいろいろ言っておられるように、長官がそんなに最初から悪意があってやったわけじゃない、公選法を知らないでやっただけなんだと言えばよろしいものを、公選法を知っていたけれども、私がやったんじゃない、だれがやったんだ、私が金を持つわけじゃなかったんだ、ほかの人が持つわけだったんだといろいろおっしゃる。二回目が別海町商工会主催で会費三千円でやったことは、これは私もわかっているんです。それはなぜかというと、一回目に懲りたから二回目はきちんとやろう、こういうことでやったんです。  一回目にやった鈴木長官の行為を私は一〇〇%悪いと言っているわけじゃないんです、本当は。ただ、公選法を知らないでこういうことをやってしまったといえばしまったで謝るべきなんです。それを謝らないで、衆議院の質問においても、一回目と二回目は連動していて、両方とも私がやったんじゃなくて商工会でやったんだとかどうとかいろいろおっしゃる。  だから、もうやむを得ないから私としてはこの質問でこれは終わりますが、法務大臣に所見を聞いておきたい。要するに、もしこれが公選法違反ということで告発等があった場合にはきちんとした捜査をやってもらいたい一それについての所見を伺いたい。
  119. 下稲葉耕吉

    国務大臣下稲葉耕吉君) お答え申し上げます。  一定の状況を想定して犯罪の具体的な成否を問われているわけでございました。  どのような事案について捜査するかは検察当局において判断すべき事柄だと思いますが、一般論として申し上げますならば、刑事事件として取り上げるべきものがあれば検察当局は適正に対処するもの、このように思います。
  120. 猪熊重二

    猪熊重二君 まだ鈴木長官に対しては払い下げ土地に関する不動産取得税の問題等についてもお伺いし、それに関連して防衛庁にも自治省にもいろいろお伺いする予定だったんですけれども、話がうまくかみ合いませんで質問が中途半端で終わってしまいましたが、これで私の持ち時間は終わりましたので、終わりにさせていただきます。  なお、関連質問、よろしくお願いします。
  121. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 関連質疑を許します。都築譲君。
  122. 都築譲

    都築譲君 平成会の都築譲です。猪熊議員の関連で残余の時間を質問いたしたいと思います。特に、景気経済対策ということを重点にお伺いいたしたいと思います。  今の景気の現状等を見ておりますと、どうも先行き不安というものが日本全国あまねく覆っているような状況でございまして、そんな中で、特にその重要なかぎを握っているのがやはり行政改革なのかなというふうな感じがしております。そして、行政改革会議の方も集中審議をやる、こんなお話でございますけれども、先週の金曜日、閣僚懇談会で橋本総理が、新聞では省益封じというふうな見出しで、各閣僚に対して今後各省を代弁しての発言は控えてほしいというようなことを言われたという記事が出ておりましたので、その関連で、一体省益とは何なのかということをお伺いしたい、こういうふうに思います。  また大蔵大臣、実は財政、金融の分離問題とか、大蔵省のいろんな抵抗があるんだということがマスコミ等でも報道されておりますから、そういった観点から、大蔵大臣として、大蔵省が抱える省益というものがあるのか、あるとすれば一体それはどんなものなのか、そんなことをお伺いしたいと思います。  そしてまた、厚生大臣、実は、去年就任されたときに新聞のインタビュー記事を拝見いたしまして、当時は岡光事務次官の汚職の問題で大いに揺れておったときでもありましたし、いろんな問題があったわけでございまして、そんなところで省益よりも国益優先という見出しで出ておったわけです。これを見てもっともだと、こう思ったんですが、ちょっと考えると本当に省益とは一体何なのか、そんなものがあるのかしらということを思ったわけでございまして、厚生大臣の省益についての考え方をお聞かせいただきたい、こんなふうに思います。  それからまた、通産大臣も、今回の行革会議の中で情報関連産業部門を通産省が所管するとか、いろんな形でスーパー官庁になるんだというふうなことで、通産省の職員の皆さんの根回しが功を奏してそういう構想にまとまった、こんなお話も出ておるわけですから、通産省の省益とは大臣としてどういうものなのか、そういったものをちょっとお聞かせいただければということを思います。  各大臣からお伺いして、最後に総理からちょっと御答弁をいただければと思います。
  123. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 省益より国益優先という言葉は抽象的なことのようでありますが、一省庁の代弁者にとどまることなく、国務大臣として広く国民全体の立場から政治を考えろということだと私は理解しております。  郵政大臣当時にその発言をし、厚生大臣就任のときも同じような発言をいたしました。郵政大臣のときには、省の最大の重点項目としてマル優引き上げが当時の省の要求でありましたけれども、私は大臣としてこれは必要ないのではないかと言って物議を醸しました。厚生大臣になってからは、特殊法人と行政改革が最大の政治課題であります。各省庁の大臣としては特殊法人も見直さなきゃいけないのではないかということで、私は年金福祉事業団、これは歴代の事務次官が理事長になっておりますが、これも果たして国民のためになっているのか、廃止を含めて見直しを指示いたしました。さらに、新規公務員の採用、これは猫の手もかりるぐらい仕事がたくさんあるんですけれども、当時の総務庁長官から新規採用を半減しろということでありましたので、率先して半減するように指示いたしました。  現在でも私は、橋本総理の指示であります省益よりも国家的見地に立って行財政改革に取り組むようにという橋本内閣の方針に従って、省益より国益優先でやるべきだと考えております。
  124. 堀内光雄

    国務大臣(堀内光雄君) お答えをいたします。  私は、省益という言葉自体が理解できないぐらいでありまして、公務員というものは国民全体の奉仕者であって国民のために働くのでありまして、一定の者のための利益に奉仕するものであってはならないと思っておりますし、私ども通産省に与えられている機能なり職務なりというものを、しっかりそれに向かって取り組んで、国民のための業績、成果を上げることだというふうに思って、それに向かって取り組んでおります。  特に、行政改革については橋本内閣の最重要課題の一つでありまして、二十一世紀を展望して我が国が真に豊かな経済社会を実現させるために、いわゆる省益などというものは全く考えることなく国民本位の行政の実現を目指して一生懸命やっておりますし、先ほど情報分野のことをお話がございましたが、一切そういうことで動いたことはございません。
  125. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 議院内閣制のもとにおきましては、内閣はまさに一体であります。国務大臣それぞれの権限を、国政に対する責任を与えられておりますけれども、任期間、国民の信頼にこたえて公約を実行していく、こういうことであり、選ばれた国務大臣は、議院内閣制、民主主義の原点に立ってとり行うと。  大蔵大臣を仰せつかりまして、御案内のとおり、租税であり、財政であり、金融であり、通貨であり、グローバルそしてボーダーレス時代の国際金融、国際通貨というものは一体で運営しますが、経済国家としての日本の果たす役割は極めて大きい。政治の原点である税の徴収、公平の原則でいかなければなりません。  そういうことの中で、国益のためにやり抜く、こういうことで、省益はないと、こう思っております。
  126. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、議員から省益という言葉をお尋ねいただいたわけでありますが、私自身はそういう言葉を用いたことはございません。先日私が申しましたのは、各省大臣としての発言はきようで終え、以後は国務大臣として考え、発言してほしいということを申し上げました。  私は、それぞれの省庁が、現在のそれぞれの省庁の置かれるもとになっております設置法にのっとった上で、例えば行政改革を見ました場合に、おのずからその省庁としての立場での議論というものはあると思います。そして、そういうそれぞれの省庁が、現行の設置法の上で許されている、あるいは与えられている機能、こうした立場から議論をするということも、それはある程度私は意見を出すこととして仕方のないことだと思います。  しかし、行政改革会議、昨日から集中審議に入り、本日も本委員会と並行して恐らく集中審議が行われておるでありましょうし、終わり次第私も飛んでまいりますけれども、そこまでぎりぎり皆さんの意見にも耳を傾けてきた。しかし、今度は、それぞれの省庁の置かれている立場から全体を眺めるのではなく、国務大臣という立場、いわば国家国民の全体の将来を考えるという高い立場と広い視野、そうした点から内閣一丸になって取り組んでいかなければならないんだからということを申し上げたつもりであります。
  127. 都築譲

    都築譲君 今各大臣の御答弁を聞いておりまして、小泉厚生大臣は省益というのがないとははっきりとは言われなかったんですが、私はそれが正直なあれだと思うんです。各大臣、省益というものはないと、国家的な見地でそれぞれ各省の立場を代弁しているということですが、各省の立場を代弁して国家利益の名のもとに実は省益というものを図っていることがあるんです。ただ、そんなものは認めちゃいけない話だと思うんです。  各省が抱える省益というのは何か。いろいろそれは想定されます。人的な結合体として、例えば公務員を退職しても七十歳とか七十五歳までちゃんと天下り先を確保してもらって、そこに公的資金が導入されて、公務員の皆さんだけ民間企業の皆さんとは違って、六十歳で退職したらそれこそ完全失業率が七%にもなるような状況で、有効求人倍率がわずか○・○一、こんな厳しい状況の中で、職探しをしなくてもちゃんと役所の組織で、今までの予算のパイプの中でいろんな企業が受け皿を用意してくれる。そういったものだって一つの例として考えられるわけです。ただ、それを今余り表で堂々と議論することはできないかもしれませんけれども、そういったことがあるから各省の抵抗がいろいろあったりする。  だから、今回行革で一府十二省庁に再編ということを言っておられますけれども、じゃこれで本当にどれだけ効率的になって、どれだけ経費が合理化されて、じゃ省益と言われるものがなくなって、各業界ごとひっ提げたままの、本当に単に箱の枠を入れかえるだけの行革に終わってしまうんではないか、こんな指摘もされておるわけですから、もっとそういったところを、本当にあるんだ、ただそれはあってはならないものだという認識をしっかり持っていかなければいつまでたっても行革なんというのは実現をしないというふうに私は思っておりますから、その点を申し上げておきたいと思います。  特にまた、本会議の代表質問のときに橋本総理に、冒頭、政治とは何か、そしてまた政治家に高い倫理観が求められるのはなぜかということをお伺いいたしました。国民の負託を受けて、経済、文化、社会国民が豊かになって、国際的な平和とそしてまた繁栄、そういう重要な使命を担うから高い倫理観が求められると、こういう御答弁でしたけれども、そこにはそういう重要な使命を遂行するその元手となるお金がかかるわけです。  元手となるお金はだれが払っているのかと言ったら、みんな国民が、全国六千万人の勤労者と数百万の事業所、団体等が法人税などさまざまな税金を納めて、そしてまた保険料もたくさん納めて、それで成り立っているわけです。そういうお金を原資にしてそういう重要な仕事をやるから、だからこそ特定の人からわいろをもらって特定の人に利便を図るような、あるいは献金をもらったらその団体にだけ有利な取り計らいをするようなことをやっては政治の信頼を失いますよということを私はぜひお聞きしたがったわけですが、事の一面だけしか出てこなかったんではないかな、こんなことを考えておりまして、その点をぜひ申し上げたいと思います。  そして、景気の現状と経済対策について議論を進めていきたいと思いますが、きょうの株価は昼の時点ではきのうよりちょっと上がっているというふうな状況だったようでございますけれども、ただ景気の先行きについての不安といったものはまだ相当広くあるんではないか、こんなふうに思いました。  そんな中で、この間、月例経済報告がずっと続けていた緩やかながら回復基調というところを取りやめて、まだ回復基調にあるけれども足踏み状態という形で表現を変えたと。  ただ、尾身経済企画庁長官は従来から国民の懐は豊かなんだということをずっと言い続けておりますけれども、どういう根拠で国民の懐が豊かだということを言っておられるのか、それをちょっと教えてください。
  128. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 個人消費に関連してでございますが、消費税の引き上げに対応する反動減というのがございまして消費が落ち込み、その後七−九月にかけてやや回復の兆しを見せているという状況でございます。  私が、国民の懐はそこそこ豊かである、こういうふうにいつも申し上げていると思いますが、この意味は、一つは雇用者数、一年前と比べまして九月の水準で〇・七%の増加になっております。それから、一人当たり雇用者所得、同じく一・一%の増加になっておりまして、雇用者所得は一・八%の増加というのが九月の一年前と比べての数字でございます。それからもう一つは、実質可処分所得という総務庁の家計調査がございますが、これが実質でございまして、前年同期比で七月−九月で一・九%、九月だけで見ましても対前年同期比で一%になっている状況でございます。そういうふうな形で、フローとしては消費者の懐はそこそこ豊かになっている。それから、個人金融資産でございますが、いわゆる千二百兆円の個人金融資産があると言われているわけでございまして、そういう点を総合的に見て、国民の懐はそこそこ豊かになっている、そういうふうに考えている次第でございます。
  129. 都築譲

    都築譲君 そこら辺のところの実感が国民とはかけ離れていると思うんですね。完全失業率も三・四%でずっと来ておりまして、先月は同じ三・四%の水準でも失業者数は二十数万人ふえておるわけです。まだポイントが上がっていないだけです。有効求人倍率は〇・七一倍ということで下がり続けている。  だから、雇用者数がふえているとかそういった話が言われておりますけれども、実際のところはそんな状況ではないと思いますし、そしてまた国民所得の伸びといったものを言われましたけれども、ただこれだって実のところは消費税の増加の問題等があるわけです。  春の予算委員会のときに大蔵省の局長さんが答弁されておりましたけれども、一家四人の六百万円の平均的な世帯でいったら、消費税の引き上げたけで約六万円、減税の廃止で約六万円、そしてまた医療保険、医療費引き上げ、これで約六万円、合計約十八万円実は負担がふえるわけです。ということになると、そんな甘い状況じゃない。  なぜなら、これは後でまた人事院総裁にもお聞きをしたいと思いますけれども、春闘で一体平均的にどれだけの賃上げがあったか。それを考えたら、十二倍してさらにボーナスのはね返り分を含めてもせいぜい十二、三万円というところがいいところだと思うんです。  そんな状況でありますから、逆に言うと、実はここにいわゆる消費者金融、サラ金の最近の動向などが書いてある資料があります。業界のまとめている資料でございますけれども、実は消費者金融の無担保貸し付けの残高が主力六社で一五・八%増加をしている、年間で五千三百三十六億円の純増と。お金がないからみんなそういうサラ金まで行っている。今、サラ金業界というのは無人貸付機ということで、これがまた多重債務とかそういった大変大きな問題を残しておりますけれども、それでも街角でティッシュを配っている。そういったところがらお金を借りて賄っているのが現状じゃないかというふうな感じがするわけです。  ですから、そういった国民の実感から本当にかけ離れた認識でやっているのは一体どういうものなのかなということを考えておりましたら、実は公務員の皆さんだけは、今取り扱いが議論をされておりますけれども、人事院勧告が実施をされる。一部取り扱いがどうなるかまだ疑問の点があるということで、給与関係閣僚会議で議論されているようでございます。  ちょっとここで人事院の総裁に人勧についてお伺いをしたいんです。ことしの人勧、一・○二%の給与改定と言っておりますけれども、これは民間と比較できるんでしょうか。民間の定期昇給プラスベースアップ、こういった形で比較したらどれぐらいの水準になるのか、ちょっと言っていただけますでしょうか。
  130. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) お答えいたします。  私たちは、勧告をいたします前に、四月一日現在で官民のそれぞれの労働者に支払われました賃金額というものをもとにして比較いたしております。と申しますのは、ただいま先生おっしゃいました定昇率というのがございますが、企業によって定昇があるところとないところ、そしてまた定昇率がそれぞれ異なっておりますので、定昇率というものを含んで調査をするよりも、現実に支払われた金額というものをもとにして官民の比較をして人事院勧告を行っているわけでございます。  そういうことで御理解いただきまして申し上げますと、労働省の調査では、民間おおむね三百社でございますけれども、率で二・九%、金額で八千九百円ぐらいでございます。私たちがこの八月に勧告いたしましたのは、ただいま先生がおっしゃいましたように率で一・○二%、金額で三千六百三十二円ということでございます。定昇率を入れて比較という方法をとっておりませんので、そこは先生のおっしゃいました指示に従って御答弁できないのは非常に残念でございますけれども、比較の方法としては私たちが行っている方法が非常に正確だということを御理解願いたいと思います。
  131. 都築譲

    都築譲君 いやいや、そんな答えられないなんということじゃ、これは話にならないんですよ。今まで答えているんです、昔は。そうじゃないんですか。  定昇のあれだったら国家公務員の給料表は全部出るわけですから、その等級号俸掛けて平均的な定期昇給分の額が出てきますから、それに今回の一・○二%、三千六百円ぐらいですか、それを足し合わせればそれで率が出るじゃないですか。額も出るじゃないですか。
  132. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) そういう趣旨で御答弁申し上げますと、労働省の調査で二・九〇%でございます。私たち一・○二%という勧告を申し上げましたが、公務員の定昇率は一・八二%でございますから、プラスいたしまして二・八四ということになろうかと思います。
  133. 都築譲

    都築譲君 金額は幾らですか。金額をお願いできますか。
  134. 武政和夫

    政府委員(武政和夫君) お答え申し上げます。  一・○二%が三千六百三十二円でございます。昇給率の方が、先ほど総裁から申し上げましたが一・八二%、これを金額にしますと六千四百七十六円になります。
  135. 都築譲

    都築譲君 合計すると幾らですか。
  136. 武政和夫

    政府委員(武政和夫君) 合わせますと一万百八円になろうかと思います。  これは、先ほど総裁が申し上げた民間の状況と比べますと、やはり年齢とか職位とか違っておりますので、金額だけでは単純には比較できないというふうに考えております。
  137. 都築譲

    都築譲君 勤続年数とか職位とか、それぞれたくさんありますから、それは私も単純な比較はできないということはわかります。ただ、平均的なところでいって、労働省の主要企業のあれが二・九%で八千九百円という状況と比べるとかなり高いというふうに思いますし、それから実際に日経連が三百二十の主要企業から調査をして二百二十六社が出したものが二・八四%、八千八百四十六円という数字なんですね。だから、それと比べても相当に割高になっているという状況があると思うんです。大手の企業であれば、大体公務員と同様に長期雇用慣行というのが定着しておりまして、その中で賃金がふえていっているという状況は言えるわけですから、そういったものと比較してもかなり割高になっている。  こんな状況のものをもっとはっきりと、公務員の勤務の状況はこうです、そして賃金の引き上げ状況はこうですということをなぜ最初から言わないのか。私、以前からこういった賃金の問題は見ておりましたから、前はたしか定昇込みで、定昇ベアで比較をしておったのに、最近はベースアップ分だけ人勧は出すような形になってきたのは、何か世論を操作しているのではないのかなというふうな印象を持つんですが、それは間違っているんでしょうか。人事院総裁、ちょっとお聞かせください。
  138. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) そういう意図は全くございません。私たちの方は、官民の給与というものをできるだけ客観的にかつ正確に把握して御報告申し上げ、その報告に基づいて勧告するという作業を現在も続けておりますし、これからもそういう方針で臨みたいというふうに思います。
  139. 都築譲

    都築譲君 あと幾つか質問したいと思ったのは、一つは、民間企業における雇用調整等の状況調査も行って今回の人勧を出した、こういうことですけれども、どういう結果でどういうふうに今回の勧告に反映されたのかということをお聞きしたがったのですが、時間がありませんので、これはもし資料がありましたらまた後でお示しいただきたい。  それから、人勧取り扱いの議論が現在給与関係閣僚会議で行われておりますけれども、私自身も二年前までは、例えば指定職とか管理職のそういった部分については果たしていかがなものかという思いを持っておりましたけれども、今はもうそういう状況じゃないというふうに思います。官庁の幹部の皆さん方が本当に一生懸命仕事をやっておられるということであれば、二倍でも三倍でも出して、今のこの国難を救うぐらいの仕事をばりばりやってもらうぐらいの公務員制度といったものをつくり上げたらどうなのかなと。  その意味で、人事院の方は、国家公務員法に定めてありますいわゆる職階制度と申しますか、そういったものをずっと、昭和三十年以来でしょうか、検討すると言いながらそれに手をつけてこなかった、なかなか難しいという話でやってこなかったことが今の公務員制度のこういったゆがみといったものも生み出してきているんじゃないのかなと。そして、こういう大きな変化の時代に今の公務員制度でちゃんと適応していくのかということを私自身は大変疑問に思っているということを指摘して、次の点に移っていきたいと思います。  そういう状況ですから、国民の皆さんの懐は実は公務員の皆さんほど豊かではないというのが本当のところじゃないのかなというふうに思います。そしてもう一つ、今の経済情勢の中で低金利政策がいろいろ言われておりまして、こんなことで本当にいいんだろうか、いつまで銀行不良債権の償却の促進ばかりやっているんだ、こういう議論も聞かれるわけですが、例えば各企業の業績見通しは実際になかなか厳しいものがあります。  そんな中で一つ大きな問題が企業年金でございまして、これは厚生年金の仕組みの中で各企業が厚生年金基金といったものをつくっていろいろやっております。実はこの当初の予定利回り等は昔は五・五%、今回自由化をした、こういうふうな状況がありますけれども、その実質利回り、今は例えば二・二%とか二・五%、こんな状況になっております。この実質の利回りが予定利回りよりも一%下がると、いわゆる株価収益率、ROEというのは平均の企業でいったら四%といったものが〇・五%下がる、実質利回りが二%下がってしまったら一%収益率が下がる、こんな話もあるわけです。それがかなり企業業績に影響を及ぼしているのではないか、こんな議論もあるわけでございまして、この点について厚生大臣はどういうふうに御認識をされておられるか。  特に問題は、いわゆる厚生年金の代行部分のところがあるわけでございまして、そこのところの実は利回りが、五・五%でやれというのがそのままになっておるわけで、それが回らないからもうかった部分のところをそっちへ回しているというのが現状ではないか。そういう不合理な部分をどういうふうにお考えになるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  140. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 厚生年金基金の予定利率については、従来、全基金一律で五・五%としてきましたけれども、ことしの四月より個々の基金の実情に応じて主体的に設定できる仕組みに改めました。  現在の運用利回りの悪化というのは、市場金利の低下等だけでなくて、株式市場の低迷、運用環境が厳しい状況にあるためでありまして、基金の財政運営に関する規制に問題があるというふうには私は受けとめておりません。
  141. 都築譲

    都築譲君 ただ、実際のところ、今のこういう状況が続けばいろいろあるわけで、アメリカの方は、今いわゆる四〇一Kプランといったものでミューチュアルファンドといったものが活況を呈して今の株高も演出している、こんなふうに言われておるわけです。  ただ、これが実際面をどこまで反映しているかという問題になるといろいろな問題があるのかもしれませんけれども、今までのような確定給付型という形で本当に基礎部分もあるいは上積み部分のところもやっていくのがいいのかどうか、むしろ四〇一Kプランのようないわゆる確定拠出型のようなものももう少し考えていく、そういったものも検討されてはいかがかというふうなことを指摘しておきたいと思います。  そして、こんな状況の中でいろいろ経済の成長見通しについて大分厳しい状況があるわけですが、ただ経済企画庁は、経済企画庁長官、前の長官ですけれども、春の予算委員会のときも、一・九%成長は大丈夫なんです、四月−六月は消費税の反動で下がりますけれども必ず七月期以降回復して年間一・九%の成長は達成しますと、こういうふうに言っておりましたけれども、今いろんな業績の不振といったものが言われておるわけでございます。  ちょっと通産大臣から、例えばいろんな産業界、企業動向、そしてまた中小企業の倒産、きょうも朝、新聞に出ておりましたけれども、十一年ぶりに一千六百件の大台に乗ったというふうな数字も出ておるわけでございますから、そんな状況をお教えいただいて、そしてまた経企庁長官からは、この一年間の経済成長率の見通し、どういうふうにお考えになるのか、教えてください。
  142. 堀内光雄

    国務大臣(堀内光雄君) お答えをいたします。  先生御指摘のとおり、本年十月の倒産件数は一千六百四件に達しておりまして、そのうち一千五百九十五件が中小企業の倒産となっておりまして、最近五カ年間の中小企業の平均月間倒産件数が一千百三十三件であることを考えますと、非常に中小企業の倒産件数は高水準にあるというふうに考えられます。また、全体の倒産件数の内訳は、販売不振、赤字累積等を主因とする不況型倒産件数が約六割を占めているというのが実情でございます。  中小企業を取り巻く厳しい状況を踏まえますと、今後とも中小企業の倒産動向については注視をしていく必要があると考えておりますし、こういう厳しい状況の中で、年末に向かっての融資などにつきましては、本日も政府景気対策を打ち出した中におきましても中小企業対策として融資に万全を期するような対策を打ち出したところでございます。
  143. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) ここ数カ月の動向でございますが、御存じのとおり、昨年度の後半、三月にかけまして、四月からの消費税引き上げに対応する駆け込み需要が住宅建設やあるいは消費などの面で相当高いものがございました。したがいまして、その結果として九六年度の成長率は、見通しの二・五%に対しまして二・九%という高い水準になったわけでございます。この点につきましては、私どももそれから一般のいわゆるエコノミストと言われる方々もやや過小に評価していたという状況にあったというのが率直な感じだと思っております。  そして、その反動として、四月以降の反動減というのがこれまた予想以上に大きいものがございまして、住宅建設やら消費やらに響いてきて、四月−六月の成長率が対前期比で二・九%というマイナスを記録したわけでございます。したがいまして、底の方の、分母の方の九六年が高くなりまして、そして四月−六月の数字が非常に落ち込みました。その後、七月−九月以後徐々に回復して、いわゆる消費税の駆け込み需要の反動減という状態から抜け切れつつあるわけでございますが、そういう今のような動向を見ますると、今年度、九七年度におきまして一・九%という数字を達成することはかなり難しいと考えております。  ただ、きょうも経済対策を発表いたしまして、企業やあるいは消費者の皆様の景気の将来に対するコンフィデンス、信頼感というものが回復してくるならば、消費もそれから設備投資も、先ほど申しましたように消費者の懐も企業家の懐もそこそこ豊かになっているわけでございますから、そういう点で徐々に前向きに行動が変わってまいりますと相当しっかりしてくるんじゃないか、そういう経済構造改革をしっかり進めまして、できる限り一・九%に近づけるよう努力をしてまいりたいと考えている次第でございます。
  144. 都築譲

    都築譲君 人事院総裁、結構でございます。  松下日銀総裁にもお越しいただいておりまして、今後の景気動向について日銀としてどういうふうな見通しを持っておられるのか。そしてまた、今私は、低金利の問題、先ほど小泉厚生大臣にもいろいろお伺いをいたしましたけれども、確かに景気回復のための一つの手段として金利を下げるというのはあったんですけれども、ただ、これだけもう二年数カ月にわたって低い状況を続けておきながら渡ってこないというのは、実はまた逆に、先ほど申し上げたような、いろんな企業の収益悪化の要因になったり、あるいは高齢者の皆さん方はいわゆる貯蓄で、あるいは利息収入で生活をしている方たちもいらっしゃるわけですから、そういったものに対する影響といったものも相当あるんではないか。単に不良債権の償却だけとは言いませんけれども、そういった政策をいつまでお続けになるおつもりなのか、それをちょっとお聞かせいただければと思います。
  145. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 最近の我が国経済情勢におきましては、やはり一方で純輸出設備投資が増加傾向を続けておりますので経済活動の下支えとなっておりますけれども、他方で個人消費や住宅投資は総じて低調でございますし、また公共投資も減少傾向ということがございます。こういう状態で、需要、生産の動きが最近になって企業や家計所得あるいは雇用面にも徐々に影響を及ぼし始めているように見受けられるわけでございます。  このような状態でございますので、万一景気の減速がさらに長引くというようなことになりますというと、そのこと自体が経済の自律回復力というものに悪影響を及ぼすおそれがあると思うわけでございます。現状では、まだ経済の自律的な回復の緩やかな改善基調というものは維持されておりますけれども、これにつきましては今後の消費の回復のテンポや在庫調整の進捗度合いといったものをよく注意深く点検をしてまいる必要があると思っております。  ただ、このような中におきまして、物価は消費税率の引き上げの影響を除いた実勢で見ますというとおおむね横ばい圏内の動きでございまして、これは先行きも当面安定して推移すると見込まれております。  こういった情勢でございますので、私どもは、当面の金融政策の運営に当たりましては引き続いて景気回復の基盤をよりしっかりとすることに重点を置きまして情勢の展開を注意深く見守ってまいることが適当であると考えているところでございます。  これに関しまして、二番目に御質問の低金利につきまして、これを引き上げることが景気対策あるいは家計の消費対策に有効であるかどうかという点でございますが、確かに、家計の部門におきましては預貯金や債券というような残高が住宅ローンのような借り入れの残高の約二倍に上っておりますので、ここで全般的に金利が上昇した場合には、この差し引きのネットの利息収入は増加をしていくことになるわけでございます。  ただこの場合に、他方におきまして、この金利の上昇によって設備投資やあるいは住宅投資が抑制されるということになりますというと、それが生産の減退とかあるいは企業収益の下振れということを通じまして、雇用の悪化とかあるいは給与所得の減少というものにつながってまいるおそれがあるわけでございます。我が国の給与所得は家計の所得全体の中で約八割という大きな割合を占めておりますので、こういった給与所得にマイナスの影響が及ぶということになりますというとその影響は大変大きいものがございまして、また心理的に消費にも悪影響が及ぶのではなかろうかと。  こう考えてみますというと、現状におきまして金利が上昇した場合には、全体としての家計所得あるいは個人消費にマイナスの効果を持つことになるように考えられるわけでございます。  もちろん、そうは申しましても、家計の中で利子収入の高い方々にとりましては、現状の低金利はいろいろと苦しい状況を生んでいるということは私どもも十分認識をいたしているのでございますけれども、私ども経済全体としてインフレなき持続的拡大を図っていきたいということで金融政策を運営いたします立場から申しますと、引き続き金融の緩和基調を維持しながら、景気回復の基盤をよりしっかりすることに重点を置いて適切な運営を図ってまいりたいと考えております。
  146. 都築譲

    都築譲君 今大変御丁寧な答弁をいただきました。ただ、本当に〇・五%というのは異常な金利でありますし、また、例えば長期国債の利回りが一・六%前後でうろうろしているなんという状況も非常に異常な状況です。それでもなおかつ資金需要が起こってこないというのは、いかに日本経済全体が傷んでしまったのかということを本当に端的にあらわしているんだろうと思います。何か今までの政策の過ちを継ぎはぎのような形で押し当てていった、そういったものの集積として今日の姿があるのかなというふうな印象を持っておりまして、一日も早く本当に健全な姿に戻していく必要がある、こういうふうに思います。  ただ、先ほど経企庁長官景気対策で一・九%何とかなるようにと、なかなか難しいけれどもという御答弁がありましたけれども、この一・九%を想定してことしの予算も組んでおるわけでございますから、例えば租税の収納実績、こういったものを見ておりますと、実は去年の実績よりもかなり下がってきておるわけでございまして、そういった意味で今年度の租税収入の見通しといったものは一体どういうことになるのか。  それから、さらにまた、昨年と同じように行政に対しては節約が大蔵省の方からかかっていると思います。それが一体どれぐらいの額があるのか。歳入不足ということになれば恐らくまた補正予算議論が出てくるのかな、こういうふうに思いますけれども、大蔵大臣に簡潔に御答弁をいただければと思います。
  147. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) まず、税収の状況について簡単に申し上げます。    〔委員長退席、理事岡部三郎君着席〕  九月末の数字しか今ありませんが、九月末における税収累積は前年に比べて二・七%の伸びになっておりますが、予算上は一一%の伸びを見込んでおりますので、そういう意味ではそれよりかなり低い。ただし、この低さには消費税率の引き上げ分が年度後半に出てくるといったような要因がありますので、説明できる部分がかなりあると思いますので、これのみで状況判断できないと思っております。  なお、現在のところ、九月末までで全体の税収の約三割でございます。これから七割が出てくるというような要素もありますので、今後の状況については経済状況を注視しながら見込んでいく必要があろうかと思います。経済が悪くなれば税収は悪くなるということですが、今のところはそういうところでございます。
  148. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 節約についてお答え申し上げます。  ただいま節約について各省庁と調整しているところでございますが、ちなみに昨年度、八年度の節約額は千二百七十八億でございます。これをさらに上回るよう最大限努力を行っているところでございます。
  149. 都築譲

    都築譲君 大臣、どうするんですか。
  150. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま税収の見通し、節約の目標はおわかりのとおり、補正にどう関連するのか、こういうことであろうと思いますが、財政法二十九条に基づいて厳正に対処していく、こういうことに尽きます。
  151. 都築譲

    都築譲君 本来、どこの国の大蔵大臣でも、局長さんたちが今言われたようなことは恐らく自分の頭の中に入ってやる話でありまして、それぐらいのことが言えない大蔵大臣だと困るなというふうな感想を持ちます。(「それは言い過ぎ、失礼ですよ」と呼ぶ者あり)そうですが。  むしろ、これからの財政運営の方針といったものを明確に示すという立場から、みずから率先して立っていただくぐらいの覚悟を示していただきたいな、こんなことをお願いしておきたいと思います。  いずれにしても、その一・九%の経済成長の達成が見込めないということになると補正予算ということになるんですが、通常、景気あるいは経済といったものは生き物ですから見込みどおりにならないということはあるんですが、今回私どもがあるいは各党がみんな指摘をしておったのは、結局、消費税の引き上げとか減税の廃止とか、そういったデフレ予算を組んで、政策不況なんですよということですから、この責任論は、いずれまた補正をやるということになれば私は議論が出てくるということを指摘しておきたいと思います。  そして、松下日銀総裁もおられますので、ちょっと話を先へ進めまして、実はきのう北海道拓殖銀行が営業譲渡、そしてまた二週間ぐらい前には三洋証券の会社更生法の手続、こんなことが行われたわけでございます。この関係で幾つかちょっとお聞きをしたいことがございます。  まず、三洋証券あるいは拓殖銀行の営業譲渡、来るものが来たという印象を持ちますが、しかし本当に何か不透明な感じがいたしますし、あの住専のときに大変議論になった問題がやっぱりあったわけです。あの住専のときに問題になったのは何かというと、護送船団方式で特定の団体の利益を守るために結局六千八百五十億円という財政資金を使う、こういうことがいかにおかしいかということを指摘したわけでございまして、そういったところが本当に、これからビッグバンに向けて公平、公正、透明なルールでやるんだということで作業をしておきながら、今実際にやっていることはみんなでたらめではないのかな、こんな印象を持ちます。  まず、三洋証券の関係でございますけれども、会社更生法適用と言いながら実際のところは通常どおり業務ができる、だから顧客の皆様方は御安心ください、こういうことを言っておられますけれども、保全管理人を指定して、保全管理人のもとで会社更生をやるというのは、透明な手続で、いろんな債権者、株主さんがおられますけれども、平等に利害調整をやっていこうというのが本来会社更生の手続だと思いますけれども、なぜそういう形で一定の者だけ外したのか、それをちょっとお答えいただけますか、大蔵大臣。いや、だから大蔵大臣答えてくださいよ。
  152. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 今回、三洋証券に対します会社更生法の適用の枠組みの中で、東京地裁によりまして出されました保全処分命令の中で特例が設けられておりまして、顧客資産の返還に係る例外措置が講じられております。したがいまして、御質問にございました三洋証券が通常どおりの業務を行っておるということは全くございませんで、顧客資産の返還の業務だけが特例として認められております。この顧客資産の返還は、顧客の三洋証券に対します債権を寄託証券補償基金が代位する形で行われるものでございます。したがいまして、本来、一般債権者として顧客に帰属すべきロス部分を寄託証券補償基金が証券市場の安定のために肩がわりするという法的構成で行われるものでございます。  したがいまして、他の一般債権者を何ら害することもなく、一般債権者の平等の原則にのっとって処理できるという御判断のもとに東京地裁がこのような保全命令の特例措置を講ぜられたものと考えております。
  153. 都築譲

    都築譲君 そして、もう一つの特例ということで今言われた寄託証券補償基金ですか、これについても、今まではいわゆる営業停止になった場合とかあるいは証券会社が破産をしたような場合にやるというのに、今回会社更生という状況なのになぜそれが発動されるような仕組みをまたつくったのか。そこのところも限度額が二十億円というふうな形にたしかなっていたと思いますけれども、それを今度はまた無制限にやることになるわけですか。そこのところも今までの、また特例といったものを独自の発想でつくっているような気がするのです。そこら辺、大蔵大臣いかがですか。
  154. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 現在の寄託証券補償基金は、証券界によります相互扶助的な仕組みとして財団法人として行われているものでございます。  確かに、御指摘のとおりこの発動要件の中には破産というのはございましたけれども、会社更生法の適用ということは定められておりませんでした。これは証券会社におきまして会社更生法という法的枠組みが地裁によって認められる可能性が薄いのではないか、先ほど申しました保全命令の特例といったような手法がなかなか難しいのではないかという想定に立って破産しかないのであろうということで定められておったのだろうと思います。したがいまして、その点は他意はないと存じます。  それから、もちろんこれは基金におきまして、一社当たり二十億円という補償限度を定めておったことは事実でございますけれども、これも証券界全体の総意として、今般の三洋証券にかかわります事件の証券市場への信頼といったものを考えましたときに、この一社二十億というのをこの件にそのまま適用するよりは、先ほど申しましたように顧客の損失を代位して肩がわりする、それはすべて顧客を保護するということが現下の経済情勢の中で証券市場、証券会社経営に対する信頼を取り戻すために必要であると基金において御判断になってこのような措置をとられたものと存じます。
  155. 都築譲

    都築譲君 今の御答弁を本当は大蔵大臣から聞かせていただきたかったんですが。  基金において判断をしたことだというふうなことを言っておられますけれども、こういった立派な資料ができておるわけでございまして、そういったことを考えると、本当にそうなのかなという印象を持ちますし、じゃほかの証券会社がこういう同じような状況になったらこれまたどうなるのか。そしてまた、じゃ限度額を超えたような、確かに資産が三百五十九億あるというふうな状況でございますからあれでございますけれども、ただ、また同じような事例がどんどん出てきたら一体だれがこの負担額、損失額をカバーしていくことになるのか、そこら辺のところもやっぱりわからぬわけですね。  結局、本当にだれがこういうスキームをつくって進めているのか。今の日本金融行政を動かしているのは大蔵大臣じゃないんですか。大蔵大臣が、このスキームをこういつたことでやれ、あるいは事務局が用意したのをこういつたことでいいだろう、ここのところはどうだ、ここのところはこれで大丈夫か、そういう議論をやってこういつたふうに動いているのか。そこのところを本当に今政治がもっと指導性を発揮してやっていかなければいけないと。いつまでたっても不明朗な、そしてまただれも責任をとらないような住専と同じような発想をまた繰り返しているんじゃないか、そんなふうに思いますが、大蔵大臣、所感はいかがですか。
  156. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 寄託者保護という極めて大事なポイント、いわゆる契約者保護、預金者保護ということであります。  不良債権の解消のために全力を尽くせと、こういうことで、それぞれの金融機関が努力をいたし、改善が進んでおるといつも申し上げております。しかし、個々の経営体になりますと、それぞれの原因でそれぞれに法的手続に基づいて取り組むということになります。    〔理事岡部三郎君退席、委員長着席〕  そのときに大事なことは預金者保護であり、寄託者保護であり、契約者保護であると。それぞれの金融の形態によって違うわけでございますから、問題がありますと、最善を期して万全な体制をとれ、こういうことを指示しながらそれと取り組んで前進をさせる、こういうことであります。
  157. 都築譲

    都築譲君 それじゃ、もう幾つか。寄託者保護ということですが、そうすると、劣後ローンを生保が出資して組んでいたと思いますが、これはだれが音頭をとっていたのか、そういったことも聞きたかったんですが、この劣後ローン。  それからあと、コール市場で八十億円焦げついたというふうな新聞記事もありましたけれども、ここら辺のところは会社更生の手続に従って一般の形で整理をされていく、処理されていくということでよろしいわけですか。
  158. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 劣後ローン、それからコール市場におきましても調達いたしておりましたので、コール市場における債権債務関係がございます。これらはすべて一般の債権として保全処分の枠内で、今後地裁の保全処分の中でその処理が決まっていくものと考えております。
  159. 都築譲

    都築譲君 それで、北海道拓殖銀行の関係にちょっと移りたいと思いますが、今回、大変急な営業譲渡の決定ということで行われたわけです。その不良債権の額が九千億とか一兆円というふうに言われておりましたけれども、今まで実は破綻すると大体二倍、三倍といった額、ひどいところは二十倍というのもたしかあったと思います。そういった不良債権が確定できないような状況で、そして今回営業譲渡というふうな形でこれからまた手続を進めていくと。  ただ、今大蔵省の検査が入っているようですが、これはいつごろ終了するのかちょっとよくわかりませんけれども、不良債権が出てきたら、健全な部分だけ北洋銀行の方に引き継ぐということで、悪い部分のところは預金保険機構が買い取る、引き受ける、こんなふうな話になっておりますけれども、預金保険機構で本当に対応できるのか、膨大な額になるんではないか。今だって去年の木津信用組合の一兆円の金銭贈与でもうあっぷあっぷの状態になっておるわけですから、そんな状況の中で預金保険機構はそんなにお金があるんですか、なければどうするのか、お聞かせください。
  160. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま預金保険機構は一・三兆円の資金を予定いたしておりまして、ただいま御指摘のようなこれに対応する額が、今検査中ですから、最終的に確定はしてくると思いますが、それによって賄えるのではないかというのがおおよその見通してございます。
  161. 都築譲

    都築譲君 もう一度確認ですが、予定をしております一・三兆円というのはどの金額ですか。
  162. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 大臣から御答弁申し上げたものは、この金融三法でお認めいただきました特例の五年間の財源の問題でございます。五年間で二・七兆円の財源を確保するべく特別保険料までちょうだいできるようにしていただきました。木津信組等がありましたので今まで一・四兆円使っております。差し引き一・三兆円がロス埋めの財源としてあるということでございます。  今、先生がおっしゃいました不良債権の買い取りの資金があるかという話はそのロス埋めとはちょっと性格が違いまして、資金繰りとして預保が買い取るお金があるのかないのかということでございます。それについては法律によりまして日本銀行または市中金融機関で資金を調達するという形でございます。  これはあくまで時価で買い取りますから、ロスがそのまま出るわけではありません。時価で買い取りますと簿価との差はロスでございます。これはもちろん拓殖銀行の自己資本からずっと埋めていくわけでございます。それで万一、そこで債務超過ということでロスが出ますと、それは預金保険のロスになるわけでございます。それで、買い取った資産が、もしロスがそれから出るんであればそれは負担になりますが、時価で買い取りますからもしそれが益になりますと、今度はそれが預金保険の益ということになるわけでございます。  したがいまして、その穴埋め財源としての一・三兆円を大臣から申し上げましたし、必要な資金、買い取る資金というものは民間金融機関及び日本銀行から借り入れて対応するという形でございます。
  163. 都築譲

    都築譲君 今の説明もちょっとよくわからないところがあるんですが、時価で買い取るということになると、そうするとその損失のところは一体だれがかぶることになるんですか。
  164. 山口公生

    政府委員(山口公生君) 拓殖銀行はもちろん自己資本勘定でも二千九百七十六億円持っております。したがって、そういった自己資本の勘定からまず埋めていくわけであります。それで埋め切れるか埋め切れないかというのは、検査してみないとわかりません。
  165. 都築譲

    都築譲君 ちょっと時間がなくなってまいりましたが、そんな二千九百七十六億程度で埋め切れるような不良債権の額じゃないというふうに私は想定します。ですから、大蔵省の検査がどういう結果を出すか。そして今、銀行局長答弁大蔵大臣答弁の中にもありましたけれども、日銀の方から今回、朝のニュースでも、つなぎの融資で六千億円出しております。そして、こういったものを必要な資金需要があれば出していくということになりますと、一体本当に資産の裏打ちのあるつなぎの融資という形で日銀の方から回っていくのか、単なる赤字国債の発行と同じように札束をつくってどんどん流しているような状況になるんじゃないのか。  そしてまた、日銀は今預金保険機構の必要なお金をまた融資をするというふうな話で、資金需要が出てきたら幾らでも日銀が出していくということになりますけれども、そんなことで本当に日本金融というものは大丈夫なのか。ますます今のような仕組みをはっきりさせないで、わけのわからない本当に継ぎはぎだらけの後手後手の対応ばかりやっているから、どんどん傷口が広がっていってしまって今日のような状況になってきているのではないか、こんなふうに思うわけでして、金融政策を預かるお立場として松下総裁はどのようにお考えになっているのか、お教えください。
  166. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもの今回の拓銀に対しますところの日銀法第二十五条に基づきますいわゆる日銀特融は、これは基本的に同行の業務が受け皿銀行に移管されますまでの間のつなぎ資金を供給するものでございまして、その金額は、いずれ同行の資産売却が終了いたしまして最終の処理手続が終わります段階で、それまでの回収資金あるいは今お話が出ました預金保険機構からの資金援助によって返済される内容のものでございます。したがいまして、私どもは日銀の資金をもちましてロスの穴埋めに使われるということにはならないと判断をいたしております。
  167. 都築譲

    都築譲君 もう時間がなくなってしまいました。いずれにしても、もっと問題を幾つか指摘したかったわけでございますけれども、今日の金融機関の抱える不良債権の問題がいつまでも引き延ばされてきた。結局あの住専のときに、本当に公平で公正で透明なルールでしっかりとやる、そしてどうしても必要だということであれば財政資金を投入するという決断をやっておけばよかったのに、何かわけのわからない状況で、そしてまた財政資金を投入して、それに対する国民の反発があったから財政資金は投入できない、こういうふうに思っているかもしれませんけれども、確かに金融秩序の維持をしていくという観点ではこれは本当に国家的な課題になるわけでございます。  そういった観点も含めて、大臣もそしてまた総理も、この金融問題といったものをお役所の皆さん方にお任せになって、気がついたら何か三洋証券が会社更生の手続になっていたとか拓殖銀行が営業譲渡になっていたなんていう話になるんではなくて、もっと先頭に立ってそういった問題に取り組んでいただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  168. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 以上で猪熊重二君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  169. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 次に、久保亘君の質疑を行います。久保亘君。
  170. 久保亘

    久保亘君 最初に、通告外でありますが、外務大臣、今度のエジプトにおけるテロ事件について、今外務省が掌握されていることで報告できることがあれば報告してください。
  171. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 本件につきましては、けさほどからエジプトの駐エジプト大使に電話をいたしまして、適宜適切に対処するように伝達をいたしておりまして、早速現地に三人の係官を送りまして対処させておるわけでございます。  現時点におきましては、内務省の発表で、死亡者六十名以上、うち四十四名は外国人、負傷者二十四名、邦人で亡くなられた方が九名、負傷して重体の方が一名、未確認の方が一名、こういうことでございます。
  172. 久保亘

    久保亘君 このテロの犠牲になられた方々に、心から弔意とお見舞いを申し上げたいと思います。  次に、もう一つ先にお聞きしておきたいのは、今、都築さんの方から北海道拓殖銀行について質問がございました。  北海道拓殖銀行の倒産に関しては新聞紙上においてもいろいろと書かれておりますが、ことしの前半まで、大手都銀の二十行が倒れることはないということを言ってこられた。その倒れないはずの銀行がこの段階で倒れることになる、その意味をどういうふうに解しておられますか。また、北海道拓殖銀行の倒産によって、北海道地域における金融経済に及ぼす影響をどのように見ておいででしょうか。
  173. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 都市銀二十行をつぶさないという基本を踏まえながら今日まで来たことは間違いありません。  その基本は何かといいますと、海外に支店を展開し、営業を展開いたしております中で、他の二十行、拓銀を除く二十行は全力投球の中でただいま営業を展開、不良債権の解消に当たっておるわけでございます。拓銀が大変財務内容が悪化をしてきている中で、御案内のとおり海外支店の撤退と、こういうことの決定をみずからもしていただきまして、北海道の銀行として、北海道金融経済に貢献する方針のもとに内容の立て直しを今日までやってまいったところでございます。  そういう中で、マーケットの評価、また預貯金者のこれに対する判断が最悪の状態になってまいりまして、資金ショートが起きるということが明確になったものでございますから、本件について、受け皿銀行をつくり対応しませんと北海道経済金融に深刻な影響を与えるという背景の中で、同銀と北洋銀行の最終の協議の中で、北洋銀行が受け皿となってこれに対応してまいるということに相なりました。  よって、今後の金融は、北洋銀行に承継されるまでの間、半年でしょうかあるいは半年プラスアルファでしょうか、こういう中で拓銀は預金者保護の観点から払い戻しの業務が行われていきますし、かねがね顧客として拓銀との連携にありました顧客の各位について、今、日銀の支援により取り進めて不安のないようにしていこう、承継後は新銀行のもとで、北洋銀行のもとで金融システムの安定及び北海道経済の安定のために営業を万全の体制で取り組まさせていただくと、こういうことになり、北海道経済に与える影響はこれによってモデレートなものになり、従前の不安感を取り除きながら前に進んでいくのではないか、こういう分析をいたしております。
  174. 久保亘

    久保亘君 今あなたがおっしゃいました日銀特融の問題、六千億と聞いておりますが、六千億の特融を行って、この融資額はだれが責任を持って返しますか。
  175. 三塚博

    国務大臣三塚博君) これは、先ほど政府委員からも申しておりますように、拓銀にも資産があるわけでございますから、不動産その他これの清算の中で取り組みながら、北洋銀行が母体となってこれに取り組んでまいる。もちろん、東京圏及び全国展開にあります拓銀の支店、またそれを中心としたものがあるわけでございますから、これの売却等の努力を各金融機関にお願い申し上げまして、それによって得たもので返却が行われていくと、これからの努力の成果を待つということになります。
  176. 久保亘

    久保亘君 一部の報道によりますと、北海道銀行との合併の話が壊れたのは、拓銀側に不良債権を隠している部分があって、それで非常に不信感を持ったんだという報道があります。  しかし、このようなことが報道されるぐらい、先ほどのお話にもありましたが、北海道拓殖銀行不良債権額というのはかなり巨大なものではないか。六千億は、それはもうすぐ帳じりを合わせられるような、そういう状況なら別に倒れなくてもいいんじゃないか。  それで、銀行が一つ二つビックバンの前哨みたいに倒れるというのは、それは望ましいことではないがやむを得ない経過もあったと思いますが、そういう金融機関の倒産によって地域の経済や住民生活に支障を来すということがないように、大蔵省、政府としてもぜひ全力を挙げてもらいたいと思います。  次に、私がお尋ねしたいのは、経企庁長官、十一月の月例経済報告における総括は、「民間需要を中心とする景気回復の基調は失われていないものの、企業景況感に厳しさがみられ、景気はこのところ足踏み状態にある。」。これはよほど国語能力の強い人じゃないとわかりませんですね、何を言おうとされているのか。  それで、景気回復の基調を失わせていない民間需要というのは何ですか。
  177. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) いろんな要因があると思っておりますが、悪い方から申し上げますと住宅建設でございます。これは、消費税等の反動減が非常に大きなものがございます。それから、消費も必ずしもはかばかしく伸びていないという状況でございます。他方、企業活動の反映であります企業収益は対前年比で伸びております。それから設備過剰感を示す指標も低くなっております。つまり、設備能力がバブル崩壊後だんだんと過剰でなくなってきている状況にございまして、そろそろ設備投資をしなければならないかなという状態になってきている。  それから、いい方で言いますと企業収益が上がってきておりまして、企業設備投資を増大させる環境といいますか、そういうものは整ってきております。したがいまして、設備投資の数%の伸びという指標が各地でいろんな指標に出ております。まだ本格的な伸びという状況にはなっていませんが、とにかく上昇機運にはあるわけであります。それから、輸出は順調に伸びておりまして景気の下支えをしております。他方、バブルの後遺症が残っております建設、不動産あるいは金融関係等につきましては非常に厳しい状況が続いている。それから中小企業につきましてもなおいろんな意味で厳しい状況もある。  こういうことでございまして、全体として見て先ほど久保委員がおっしゃいましたような判断をしているところでございます。
  178. 久保亘

    久保亘君 月例経済報告の総括は、これも長官が御就任になります前までとは変わりましたね。特にこれを表現を変える根拠は、景気はトータルで見たらやっぱり重くてよくないと、こういう判断の上に足踏みという言葉が使われておりますか。
  179. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 経済は生き物でございまして、時々刻々変化をいたします。したがいまして、私は就任以来、そのときの経済状況を無心に客観的に公平に見て正しいレポートを国民の皆様にすることが経済企画庁のあり方として一番いいというふうに考えまして、そういう意味で、事務当局の皆様とも徹底的に議論をし、私自身もできるだけの指標を自分で目を通しまして、私なりにこれが現在の時点における正しい判断であるという考え方になるまで詰めました上でこの表現で発表させていただいたという状況でございます。
  180. 久保亘

    久保亘君 橋本首相にぜひお聞きしたいことがある。それは何かといえば、今、経企庁長官が見解を述べられましたが、これまでかなり長い期間にわたって経企庁は、政府経済報告になるわけですが、これに緩やかな回復という言葉を使ってきました。緩やかな回復から回復基調ということに変わった。そして今の足踏み状態まできておるわけです。それから日銀も、日銀総裁がかなり回復基調ということを強調されていた時代がございますが、最近は減速局面という言葉も使われるようであります。  そういうことを見てまいりましたときに、本当のところ日本経済景気と言った方がいいのかもしれませんが、景気はよくなりつつある、あるいはどれだけ待てば必ずよくなる、そういうようなことを言える状況なのか。非常に厳しい、だからこの経済対策を可能な限り実行しなければこの景気の悪い状況というものを克服できないと考えておられるか、そこのところはどうですか。
  181. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、非常に申し上げにくいことを少しつけ加えさせていただかなければなりません。  我々、確かに年初、本年度の経済考えましたときに、消費税及び特別減税の影響というもの、これは四−六に確実に残ることは間違いないが、その後吸収され、次第に消えていくという感じで物を申し上げておりました。そして、その駆け込み需要というものが予想以上に大きかった分、それが後に影響を引きずっているということは私も率直に先日申し上げたところであります。  その上で、非常に議論をしづらい理由、それは、先般来、総会屋絡みでさまざまな企業が捜査の対象となり、それぞれに告訴を受けるといった状況になり、率直に申して、私が大蔵大臣覇時、御承知のように証券不祥事が起こり、そして一般投資家が、特別の者だけに利益が行っていた、自分たちは踏みつけにされたという思いで市場から去ってしまった。それを取り戻すのに私は随分時間がかかったと思いますし、まだ取り戻せ切ってはいなかったと思うんです。  ところが、今回またこのような事件が出てきた。大変世間が騒がしい状況の中でありますから、市場からどれだけ一般の投資家の方が去ってしまわれたのか、あるいはまだ残ってくだすっているのか、これがっかめません。議論がしづらいと申し上げたのは実はこの点であります。そして、これは我々が予測を全くしていない事態でありました。  ですから私は、企画庁長官が申し上げたことを、同じ気持ちでありますけれども、それを繰り返すつもりはありません。そして、この影響は実は読みかねているというのが率直なところであります。むしろ、私は市場の信用という点において、どうすればもう一度、不安というか不信を持ってしまわれた一般の投資家が、公正に扱われるという心の保証を持って市場に戻っていただくことができるのか、これは実はこれから極めて大事な問題になろうと思います。  本日、経済対策閣僚会議におきまして経済対策を発表いたしましたが、この中には、規制緩和を中心とした経済構造改革の大胆な断行、あるいは土地取引の活性化と有効活用、魅力ある事業環境の実現と中小企業対策という四つの柱に重点を置きながら、こうしたものを積極的に進めていくことによって確実な回復の軌道にこれを乗せようということを我々は考えておりますし、そしてそれぞれが思い切ったそれなりの手法を選んでおりますから、私は本来ならば非常に効果があると申し上げたいと思います。  その上で、今申し上げました部分について影響を見きわめ切れておらないというのが私自身の今率直な感じでありまして、むしろその部分に不安が残るようでありますならば、これらの一連の捜査の終結の段階におきまして、市場の信用を回復する、少なくとも公正に扱われるという保証をどう与えるかということを示さなければならない、そのような思いであります。
  182. 久保亘

    久保亘君 先ほど経企庁長官のお話にもございましたが、住宅、個人消費長官言われませんでしたけれども、在庫調整、こういう部門はみんな悪くなっている。そして、金融界の倒産もかなり大きなところまで相次いでいるという状況の中で、景気は非常に悪い。  この悪い状況をどうやるかということで、きょう第二次緊急経済対策政府は発表されました。この第二次計画というのはかなり先の問題もございます。そういうものをおつくりになったわけですから、第二次緊急経済対策で今日の経済動向に対応する手だてはおおむね政府考えるところは出し尽くした、こういうお考えでしょうか。
  183. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) このたびの経済対策でございますが、「二十一世紀を切りひらく緊急経済対策」と、こういうタイトルにしております。  実は、政府経済対策なるものを決めましたのは今回が初めてでございまして、今まで自民党あるいは与党三党でお決めいただいたものがございます。自民党の第二次というのもございます。私どもといたしましては、その自民党の一次、二次も踏まえまして、政府として決定をしたものでございます。  この内容は規制緩和、規制緩和といいますとすぐ目先の経済動向に余り響かないのではないかという誤解もあるかと思いますが、私どもが考えて実行いたしました規制緩和は、例えば東京中心の都市中心部における容積率の緩和でございまして、例えば銀座とか、今まで容積率の制限のためにビルの建て直しができなかった。なぜならば、建て直しをしょうと思うと、ビルを小さくしないと容積制限にひっかかって長い間建て直しができなかった、そういうビルがかなりございます。その容積率の規制を緩和して、そういうビルが今までどおりの大きさ、あるいはやや大きい大きさで建て直せるように規制を緩和いたしました。そういうものが実需に確実に来ると思っております。  それから、住宅の問題にいたしましても、住宅金融公庫の融資をつけますが、同時に土地の規制緩和をやりまして、市街化調整区域とかあるいは農地転用とかいう手法によって、住宅に対する土地の供給を規制緩和によって増大させるという供給サイドの対策もとっております。  したがいまして、そういうことを、まだいろいろありますが、時間がないそうでございますから残念ながら説明できませんが、正確にこの内容をしっかりと御理解いただければ必ず有効なものである。したがいまして、日本経済はこれによって正常な回復軌道に乗るということを必ず御理解いただけ、そして企業家消費者の皆様の将来に対する信頼感も回復するものであると私は確信をしております。
  184. 久保亘

    久保亘君 いや、あなたが民放、NHKなどで、今度は十一月十八日に伝家の宝刀を抜きますということをしばしば言っておられたので、私、字引を引いてみましたら、伝家の宝刀というのはよくよくのことでなければ抜かないと、こう書いてある。それで、私は第二次緊急経済対策、これで今日の景気に対応する対策としては政府は出し尽くしたんですかと聞いたんです。それで、今お話を聞いたら、出し尽くしたという答弁のようにも聞こえた。  しかし、国民の側から見た場合に、一つどうしてもその伝家の宝刀が抜かれていないものがある。所得税の減税は、個人消費が特に悪いと言われている中で対象となっていない。  そこで、私がお聞きしたいのは、財政再建法と呼ばれる財政構造改革の推進に関する特別措置法が恐らく本院においても近く採決されると思います。その結果、もしこれが成立した場合には、この財政再建法は今後の財政運営に当たって重要な制約法となるとお考えになっておりますか。
  185. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 大変微妙なお問いかけでありますけれども、先ほど経済企画庁長官が答弁をしたのと同じ問いがもし私に与えられました場合に、私は、税制に係る具体的な措置というものが平成十年度税制改正作業の中で検討され結論を得られることになる、その部分議論を残しておるテーマでありますということを多分申し上げたと思います。その意味で、税の議論がこれはもう年末にかけて行われる、そしてそれをまたベースにして次年度予算が編成をされる、これはもう議員よく御承知のとおりのことでありまして、私は、もしあえてこれですべてかというお問いかけを再びされるとすれば、その作業は残っておりますということを申し上げたと思います。  その上で、この財革法というものが、今極めて厳しい財政状況の中で財政再建という目標に向けての方向ということについて、これはともに御苦労いただいた時期もあります議員はよく御理解をいただけることであると思いますが、この中に盛り込まれておる考えというものは、まさに負担を先送りしないということとともに、この財政構造改革を含む構造改革というものを進めていくことによって、中長期的な日本経済の活性化に向けての方途であると同時に、民需中心の自律的な成長の達成というものに向けて構造改革を進めていこうとする考え方に裏打ちをされておることも御理解がいただけると存じます。  私は、特例公債を発行しなければならない状況のもとにおける所得減税というのは、今の厳しい財政事情を考えますと、これは財革法案の目的達成の観点からも実施をすることはなかなか容易ではないと考えておりますけれども、理論的に先ほどの御議論にお答えをするとするならば、税というものは今後の作業の中にございますということをお答えさせていただきます。
  186. 久保亘

    久保亘君 少しこの問題で議論をさせていただきたいと思っておりましたが、余り時間が残っておりませんので。  次に、憲法十四条は法のもとの平等を保障しております。この憲法の十四条を引き合いに出すまでもなく、法律は地域やいろいろなその人の置かれている環境によって差別を生んではならないものと考えております。  身体障害者で最近多くなっております人工肛門の方々の自動車税減免基準のことでありますが、全国で十都道府県はこの障害の認定、四級までこの自動車税減免の対象としております。それぞれの自治体の条例によって決まっているのであります。しかし、自治省の通達は大体三級までを対象としているのではないか。そのために、残り三十七府県は四級の人はこの基準に達せず適用されないわけです。こういうことについて、厚生大臣と自治大臣の方からひとつ見解を伺いたいと思います。
  187. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 身体障害者に対する自動車税の減免措置の対象範囲について、内部障害者については歩行や外出の困難性に着目して三級以上とされていると私は承知しております。三級以上。
  188. 上杉光弘

    国務大臣(上杉光弘君) お答えをいたします。  身体に障害があるために歩行が困難である方が取得したあるいは所有する自動車に対しては税制上特に配慮することとし、自動車税等を免除することになっております。  この場合の免除対象者の範囲につきましては、関係省庁との協議の上、厚生省等でございますが、障害のない方との間に税制上の不均衡を生じないように、公共交通機関を利用して外出することすら困難である程度の身体障害者の方に限定して全国的な基準としてお示しをいたしておる、こういうところでございます。  この制限のところを見ますとほとんど三級ということになっておるわけで、ばらつきがあって十県ほどが緩和しているじゃないかと、こういう趣旨でございますが、四級になると、ほとんどが日常生活活動が著しく制限される者というのが四級になっておるわけです。ですから、肛門のこと等について私初めてお伺いをいたしましたけれども、そのような意味で都道府県が地域の実情に応じまして免除対象の範囲を一部拡大していることは承知をいたしておるわけでございます。  今申しました考え方からいたしますと、全国的な基準といたしましては関係省庁とも話した上でのことでございまして、免除対象者の範囲を現在よりさらに拡大することはいかがなものかというふうな考え方を持っておりますが、肛門については差し支えないということであれば、それは検討の余地はあるのではないかというのが率直な私の判断でございまして、四級というのは、社会的に著しく制限されるという方が四級になっておりまして、ほとんど三級までになっておるというのが私の認識でございます。
  189. 久保亘

    久保亘君 実態は、既に十県じゃなくて、おひざ元の東京都もそうしておりますね。十都道府県です。  それで、そういうところは私は非常に立派なことをやっていると思うんですよ。そういう自治体の先進的な取り組みというものは政府は援助すべきものであって、通達などでもってそれは間違っていることだというような指導をすることはおかしいと思うんです。むしろ、残りの府県がそのようなことについても積極的に進められるように政府としては指導すべきものと考えております。  それから次に、厚生大臣、厚生年金保険法の附則九条の二に、例えば中学校を卒業してそのまま仕事についた人が四十五年務めました場合にはちょうど六十歳です。それで、定年退職になった場合、この人は四十五年以上被保険者でありますから、年金は六十歳からもらえるというのが附則ですね。  その場合に、いろいろ私どものところへも話に来られる方があるんですが、中学校を卒業するのは三月、そして四月一日から職場に入って、民間はまだ誕生日定年が、多いかどうか知りませんが、大分あるんですね。そうすると、四十五年目の途中で六十歳の定年が来るわけです。その場合にはこの附則の適応を受けない、四十五年を超えていないから。自分の意思ではどうにもならない。だから、これはやっぱり法律の方に問題があるんじゃないかと私は考えているんですが、仮にここを四十四年以上とすればそういう問題はなくなる。あるいは四十五年目に入ってから退職する場合、四十四年とした方が一番わかりやすいですよね。そういうことについては非常に不合理なことではないかと思っておりますが、これは合理的にやった方がいい。いかがお考えですか。
  190. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) そうですね。御指摘の四十五年加入の特例というのは、中学卒業時から働いた者が六十歳から満額の年金を受給することを念頭に設けられている。ただし、中学卒業時から働いた場合であっても、誕生月と事業所の定年退職日の考え方によっては特例の対象とならないケースが生じることになる。今御指摘の問題については、この特例の施行日が平成十三年四月一日です。この施行日までに今御指摘の対応が可能になるような方法はないか、検討してみたいと思います。
  191. 久保亘

    久保亘君 同様に、高校を卒業して働くことになった人は、四十五年というとき六十三歳です。それで六十三歳から受給できることになるはずです。だから、そういう意味で四十五年を四十四年として取り扱ってもらうと不合理なことが起こらないのではないか。今、厚生大臣が言われましたように、この法律ができたときには、中卒で働きに出る者、高卒で働きに出る者、それが定年まで働いた場合にどうなるかということを考えて、これらの人たちの条件が少しでもよくなるように考えられた末にこの法律の附則は生まれている。ところが、実際にはこの附則が死んでいる部分がある。そこを生かしてもらいたいというのが私のきょうお尋ねした趣旨です。  次に、今度は少し余り聞きたくないことを聞かなきゃいかぬですが、中小企業庁の長官、あなたが全国の中小企業者にお出しになりました「週四十時間労働制への対応策」。ことしの四月一日から週四十時間は決まっておるんです。にもかかわらず「週四十時間労働制への対応策」という文書をお出しになったのは、これはどういう理由でしょうか。
  192. 林康夫

    政府委員(林康夫君) お答え申し上げます。  御指摘の文書でございますが、この文書は、個別の中小企業のケースにつきまして、実は週四十時間労働制の実施が極めて難しいという中小企業が、労使とも対応策が見出せない個別の中小企業のケースでございましたが、労使による話し合いのたたき台といたしまして両者の考え方を整理して取りまとめたものでございます。  実は、この当該ケースは、労使の話し合いによりまして四十時間労働制が実施に移されているわけでございます。こういった対応は、実は零細企業を含む数多くの事業所の中で、大変経営困難の状況のもとで週四十時間労働制に移行することが非常に困難な事業所がありまして、法律に基づいて設定された指導期間の間に一日も早い労働基準法の履行確保を徹底しようという意図に基づいて個別の中小企業者の相談に応じたものでございます。その後、当該企業が会員ということもありまして、実は全国中小企業団体中央会が同文書を各都道府県の中央会に配付した、そういう経緯でございます。  ただ、御指摘のようにこの文書が一般化することは誤解を招くおそれがあるという判断で、全国中小企業団体中央会に当該文書の回収を要請いたしまして、週四十時間労働制の完全実施との当庁の見解を改めて周知徹底するよう要請したところでございます。中央会も直ちにこの文書の回収を行いまして、改めて当庁の見解の会員への示達、そして会員段階での誤解が生じていないことを確認したところでございまして、そもそも同文書によって週四十時間労働制をめぐる労使の混乱も発生していないものと認識しております。
  193. 久保亘

    久保亘君 私も確かに回収が行われたことも知っておりますが、回収しなければならない文書を出すというのが問題なんです。  その文書はどんなものだったかというと、「計画的に週四十時間制に移行する方法がある。」と書いて、その方法を示しておるわけです。それから、「ボーナスの調整によっても自動的な賃上げを回避することは可能である。」、こういうのを何項目か書いて配られたわけです。  それで、これは問題となりました。先月、ちょうど一月ぐらい前に、中央労働基準監督署の署長あてに告発状が発せられております。この告発状は、「労働時間規定違反罪の教唆または幇助の容疑があると思料する」ということです。しかし、役所の側が全面的にこれの誤りを認めて撤回したと言われるんだから、撤回しろという文書は確かに非常におとなしい文書に変わっております。  これは非常に問題のあるところでありまして、労働時間の四十時間というのは、これは、新しい時代の労働のあり方、雇用、そういうものと関係して、そして国会でもいろいろ議論の末に四十時間というのは決まったんです。その実施時期は九年四月一日と決まったのに、そこを通り過ぎた後、うまいことやれば四十時間にせぬでもいいぞというような指導文書が政府の関係から流れるというのは、これは極めて遺憾なことだと思っております。  労働大臣、中央労働基準監督署の署長にあてて告発状が出てもう一カ月ぐらいになると思いますが、この告発はどのように取り扱われておりますか。
  194. 伊吹文明

    国務大臣(伊吹文明君) 今御指摘のございました告発が基準署長あてに出ましたことは、すぐに私のところにも報告がございました。  御承知のように、市場経済では基本的に賃金は労使の交渉で決まってくるわけですが、四十四時間労働時間のものを四十時間に改正いたしますと、単位当たりの労働賃金……
  195. 久保亘

    久保亘君 いや、僕が聞いているのは告発状がどうなっているか。
  196. 伊吹文明

    国務大臣(伊吹文明君) わかります、わかります。  ですから、先生が今おっしゃったその告発そのものが、結局のところこの事案が法律に違反しているからであるということであればすぐに受理できます。しかしながら、先ほど申し上げかけたように、二年間の経過期間を置きながら賃金を減らさないように軟着陸をするという期間をつくっておるわけであって、その間の一般的な指導をしたのか、それともできる企業にしなくてもいいという文書にしておるのかというところが微妙な分かれ目でありますので、その点を今審査しておるというのが正直なところでございます。
  197. 久保亘

    久保亘君 時間が来ましたので、私はこれで終わりますが、千葉景子さんに関連質問を。
  198. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 関連質疑を許します。千葉景子君。
  199. 千葉景子

    千葉景子君 私は、総理を中心に、外交、特に日本の国際貢献のあり方などについて御質問をさせていただきたいと思います。  総理、いかがでしょうか、我が国は今後国際社会の中でどのような国として生きていくのか、そんなことをお考えになったことがありましょうか。どうも今感ずるところは、いま一つ国際的に存在感が少ない、あるいはもう一つ信頼感が乏しい、そんな実感を持たないでもございません。  今、世界の平和と人類の幸福のために役割を果たしていく、そういう自覚と誇りを持って世界の人々から信頼を得る、そんな日本でありたい、あるいはこれからもそういう道を歩みたい、それが私たちの思いではないかというふうに思っています。  今国際社会で直面していることは、紛争や難民の発生、こういうものの背後にある飢餓や貧困あるいは環境破壊、こういう問題にいかにして歯どめをかけていくか、大変重要な世界の課題にもなっているかと思います。そのために、地球環境問題あるいは人権、教育、社会開発、こういう分野は我が国が特に国際社会から、何らかのリーダーシップを発揮する、あるいは国際的な貢献を期待されている、そういう分野ではないかというふうに思います。  総理も常々、国連等を通じた国際貢献の重要性、そしてそういう日本のこれからの国のあり方、こういうものについて認識をされているということをおっしゃっていらっしゃいます。私も当然のことだろうというふうに思います。  ただ、実態を見ますと、なかなかその道を歩んでいるのかどうか、どうも懸念を持つところがたくさんございます。多少何点か気になる点を指摘させていただきながら、これですべてではございませんけれども、こういう実態で本当に国際社会に胸を張っていけるのか、あるいは信頼を得ることができるのか、ちょっとこんな観点で御認識を伺わせていただきたいというふうに思っております。  一つは、国際機関日本の私たちの仲間がどういう活動をしているかということを見ますと、国際機関で働いている職員の数というのは非常に少ないんです。国連の関係機関全体で一万七千九百九十人、一九九五年ですが、その中で日本の職員が四百七十五名、二・六%、こういう統計が出ております。一九八〇年代からずっと二%台という感じです。一九九六年、国連の事務局で二千五百十四人働いてるうちの百八人。これは、国連がそれぞれの国で望ましい職員数ということで出しているのが二百三十八名ですから、約半数ということになります。  いろいろな問題点はあろうかというふうに思いますけれども、もう少しやはり国際社会の中で本当に日本の人たちがそういう能力を生かす場をもっとつくれないものだろうか、こういう気もいたします。  そして、最近特に私も心配しているのはODA予算の削減の問題です。財政が厳しいことは十分承知をしております。一〇%削減というのが方針として打ち出されました。しかし、その中で心配するのは、特に弱い立場にある、あるいは人道にかかわる、こういうような問題に大変削減率が高いのですね。  例えば、任意拠出金の削減率が三〇から四〇%、ユニセフで四一%減、国連難民高等弁務官事務所で三七%減、これは一、二ですけれども、このような形で、顔が見える援助というのも必要ですけれども、やはりこういうところに日本の力、あるいはいろいろな貢献をしていくということは大変必要なのではないか。こうやって一律に削減するということに私は大変何か安易な姿勢を感ずるところでもございます。  あるいは、国際人権条約の批准の状況も非常に我が国は消極的なんじゃないか。これまでも逐次批准をしてきたこと、その経緯は私も十分承知をしています。しかし、まだ拷問禁止条約であるとかあるいは、これは基本的な条約です、国際人権規約B規約の選択議定書もまだ批准をされていな  い。むしろ、こういうところは日本がリーダーシップを発揮すべきところではないか、こう思います。  あるいは、日本は難民の受け入れも非常に少ない。一九九四年で一名、一九九五年で二名。UNHCRの統計ですと今一千三百万以上の人が難民とされている。こういう中でいかにも少ない。  これもいろいろ問題があることは承知をしておりますが、どうもこういう一連のことを見ておりますと、本当に私たちが国際社会の中で信頼を得ていくような、そういう国の基本的な姿勢がなかなか見えないのでございます。  こういう幾つかの問題点は指摘させていただきましたけれども、総理としてはこういう問題点にどんな認識をお持ちでしょうか。そして今後、でき得ればどういう具体的な取り組みをしていこうか、そんな決意をお持ちでしょうか、お答えをいただきたいと思います。
  200. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今病床にあります私の母が日本ユニセフ協会の専務理事をいたしておりましたころ、今のような御質問をもし国会でしてくださる方があったら母がどんなに喜んだだろう、そのような思いで今の御質問を拝聴しておりました。そして私は、本当にその意味で国連などを通じた国際貢献の重要性というものを認識していないつもりではありません。  ただ、幾つかの論点を挙げられましたのでそれなりに私はお答えを申し上げなければならないと思います。  まず、国際機関で働く人材がなぜ少ないのか。数値は議員が今挙げられたとおりでありまして、これはそのとおりでありますが、実は、現実に処遇面、給与面等、あるいは語学力が多少弱いのかもしれません、あるいは労働慣行の違いといったこともありまして、なかなか邦人で国連を初めとする国際機関に勤務しようという方がそもそも少ないという問題点があります。これは国際公務員であるということの魅力がだんだん為替レートの変動等の中で減ってきてしまったということもあると言われております。  ですから、こういうことに対しては外務省が今懇談会を設けて対策についての検討をしておりますが、こうした報告書も踏まえて、どうすれば国際機関で働いていただける方々がふえるのか、そういう努力は政府だけではなく皆がやはり考えていかなければならないことだと思います。また、来年のODA関係について、予算の査定の場合に金額の範囲内での総合的な調整を行うという指示は既に外務、大蔵両大臣にもしておることでありまして、私は、むしろ財政改革の必要性について国際機関の理解も得たいと思います。同時に、必要なものに対して適切に対応していけるということは大事なことだと、そのように思います。  あるいは国際人権規約関係等の批准が遅いということを今言われました。確かに、拷問禁止条約等、まだ批准をしていないものがあります。しかし、例えばこの条約にいたしましても、私は残虐とか非人道的な拷問を世界的に禁圧するというこの条約の趣旨は十分に理解をいたしますし、その限りにおいて問題があるとは思いませんが、例えば、我が国がこの条約を締結し、外国で拷問を行った外国の公務員が日本に逃亡してきた場合に、これは日本がその人間を処罰しなければならないということになるわけであります。その公務員が行った行為が母国で罰せられない、処罰されないものに対して、我が国の刑事訴訟手続の基礎となる証拠の入手は果たして可能かといったことを考えますと、私は問題があると確かに思いますし、何か実際でもこのようなケースでこの条約によって処罰された例はまだないという報告であります。  そうした問題点を内在しているものはやはり私はきちんとした検討をした上でないと、軽挙妄動という言葉はよくないと思います、軽挙妄動という言葉はよくないと思うんですが、軽々しくこれを批准した、結果として今のようなケースで我々が判断をしなければならなくなったときに、果たして訴訟手続に入れるだけの証拠収集ができるかといったことを考えますと、問題点はやはりあるのではないでしょうか。私は、条約局だけではなく、それに関連する各省庁がそうした思いを持ちながら検討していることは知っていただきたいと思います。  それから、難民の受け入れという問題についても、ある意味では日本が海国、海の中にある国ということも、日本に難民の申請を行う方の絶対数が少ない原因の一つではないか。例えば、陸路到着をするということはこの国においては不可能でありますから、海路あるいは空路を使用しなければならない、そういった点からの絶対数が少ないということは私は一つあるだろうと思います。今でもその根拠があると認められる場合には難民認定をしないということではないことは、議員承知のとおりであります。  そして、あえて一言つけ加えさせていただきますならば、今ブルガリアの大統領が見えており、そして今夜も私はお目にかかることになるわけですが、例えば従来の歴史の中における、あるいは宗教的対立の中における複雑な絡み合いを持っていない日本が今バルカン半島に対して行っております支援、これはむしろ歴史の因縁がないだけに非常に喜ばれている、そうした努力も我々はしていきたいと思っていることを申し添えたいと思います。
  201. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 時間ですから簡単に。
  202. 千葉景子

    千葉景子君 はい。時間になりました。  せっかく防衛庁長官もおいでいただきましたけれども、また後日にいたしまして、今問題点も御指摘をいただきましたけれども、今後ともやはり世界に誇れる、信頼を得る活動をぜひ進めていただきたいと思います。  終わります。
  203. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 以上で久保亘君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  204. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 次に、大渕絹子君の質疑を行います。大渕絹子君。
  205. 大渕絹子

    大渕絹子君 私は、まず政治倫理についての御質問をしていきたいというふうに思っております。  十一月十六日に行われました宮城県の参議院補欠選挙でございますけれども、政権党でございます自由民主党が候補者を擁立しないということから、国政の場で大変重大な議論がされております、例えば行財政改革でありますとかガイドラインの見直しでございますとか、景気対策あるいは医療・福祉政策、教育改革、これら大変重要な課題があったにもかかわらず、選挙の争点とすることが大変難しかった、選挙の争点になり得なかったということがあると思っています。そういう状況の中で三一・一%という大変投票率の低下を招いたと私は思っているわけでございます。そして、今までに増して政治不信が増大をさせられているのではないかというふうに思っていますけれども一政権党として責任は重大であったのではないかと思いますが、総理、この点についていかがお考えでございますか。
  206. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ちょうどこの参議院選が始まります前、十月二十九日の段階で幹事長が出しました談話、この中には、今回の補選におきまして、直前に行われた知事選の惨敗、我が党議員の辞職表明、こうしたものもありまして、党本部としては謙虚に県民の御叱責を受けとめて候補者の擁立を見送り、反省の意を表したいと思うということを申し上げました。まさにそうした思いでこの選挙を受けとめておったことはぜひ御理解をいただきたいと思うのであります。  なお、その問題とは一線を画して、議員の御意見ではこれは一緒だと言われますけれども、一線を画しまして、私ども投票環境というものを向上させますために、投票時間の延長あるいは不在者投票事由の緩和などを内容とする公選法改正を提案させていただいているわけでありますけれども、こうしたことを考えなければならないということだけをとらえましても、いかに国民なかんずく若い方々に政治に関心を持っていただくか、これはもう本当に党派、会派を超えて考えていかなければならない問題だという思いは、私は議員と共有をいたしておるつもりでございます。
  207. 大渕絹子

    大渕絹子君 政治の重大な課題について従来の補欠選挙とかあるいは国政選挙の場所では争点として戦われてきた経過というのがあるわけですね。そういう意味では、今回の補欠選挙というのは大変重要な意味を持つ時期の選挙であったというふうに思うわけでございますけれども、その点についてちょっと御答弁願います。
  208. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) ですから、議員は今繰り返し述べられたような視点から私どもに御意見をいただきました。  ただ、自由民主党という党の立場、それは議員のお考えとは違い、直前に行われました知事選挙というものの中で、我が党が推薦をし、県民にお薦めをいたしました候補者が非常に大きな差をもって県民の信任をいただけなかったという結果、そして同時に、初めて採用いたしました衆議院の制度のもとで、新しい選挙制度のもとで小選挙区から一人しか代表が得られないという中で、最高裁判決により議席を失うという方向になった我が党の議員の辞職表明、こうしたものに対する反省ということを我々は重く見てこの選挙に候補者を擁立することを断念いたした、遠慮いたした。我々として、それは事実その思いでございますから、そのとおりのことを申し上げておるわけでございます。
  209. 大渕絹子

    大渕絹子君 今回の低投票率で改めて明確になった政治不信の克服に向かって、我が党は党首会談を呼びかける中で、企業・団体献金の禁止の前倒しの実施やあっせん利得罪の法律の制定、あるいは政治倫理法の制定、公職選挙法の改正、恩赦法の改正や閣僚資格の除外などを与党政治改革協議会に提案し、早期の実現を目指しています。そろそろ政府考え方を明らかにする時期が来ているのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。あるいはまた、三党首会談の早期開催を約束していただけますでしょうか。
  210. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、与党党首会談あるいは政府・与党首脳連絡会議、いろいろな場がございますから、そうしたところで交わされている議論、これは、与党三党非常に率直な議論の、また意見の交換が行われていると承知をしておりますし、それは党首レベルだけではなく、与党政策協議会あるいはその他の場におきましても同様な議論が行われていると存じます。  今幾つかの点を議員からお話しいただきましたわけでありますが、私ども、例えば与党の三党首の会談、お互いの都合のそろうとき、必要があれば開くことを何らお互いに拒んでいるものではございません。  そして今、与党三党の中におきまして、政治倫理等に関する三党確認というものに基づきまして議論が進められておりますこと、政治倫理に関する問題について議論がされておりますことはよく御承知のとおりであります。そして、社民党か一ら、例えば国会議員等のあっせん利得行為等の処罰に関する法律の制定というものが提起をされておりますことも承知いたしておりますし、一つの考え方だと思いますけれども、これに対しては、他方において、正当な政治活動を不当に制約しないような配慮が必要だという御意見もあるわけでありまして、私どもとしては、あくまでも与党政治改革協議会の御議論、この推移を見守りながら適切に対処していきたいと考えております。  また、これは御党ばかりではなく、例えば新党さきがけからも同様の趣旨における御意見が出ておる、それぞれさまざまな意見を出しながら議論を続けている。私は、これが合意に達することができるだけ早いことを願っております。
  211. 大渕絹子

    大渕絹子君 この政治倫理の確立のための話し合いがなされたのは、佐藤孝行氏が総務庁長官に入閣し、そして国民世論から非常に非難を受けて、そして政治倫理を確立する必要があるということで話し合いが始まったということを、どうぞ総理は忘れないでいただいて、早急に政治倫理の確立ができるように総理みずから指導力を発揮すべきときだと私は思っております。ぜひここは強く要望しておきたいと思っております。  先ほど、総理から菊池代議士の不祥事の話もございましたけれども、自由民主党に所属していた国会議員の不祥事が後を絶たないという現状の中ですが、十一月十三日、これは朝日新聞ですけれども、自民党の山崎拓政調会長が党本部で開かれた全国政調会長会議で、小選挙区で自民党の代議士がいない地域は、継続事業は別だが新規事業をとることは難しい。自民党の代議士がいるところは、建設、運輸、農水省に懸命に働きかけて公共事業の予算は確保される。やはり世の中は人情だ。官僚といえども、代議士から揺さぶられると恐怖心もあって予算がつく。代議士がいないところは必ずマイナスになり、これからはっきり差がつくと申し上げたい。参議院選は人ごとではない。地域の発展のためにぜひ代表選手を送っていただきたい。こういうごあいさつをされたということが報道されております。  私は、今回の行財政改革そのものは、今までの予算のつき方そのものを根本的に見直す、公共事業を初めとしてすべての予算のつき方について根本的に見直すために始まった構造改革だと思いますけれども、自由民主党の政調会長たる人がまだこのような発言をしていることに対して本当に残念だというふうに思うわけでございます。  政治腐敗の温床をつくるのがやはり予算の裏づけと企業の癒着というようなことは、もう本当にここは歴然としているわけでございます。こうした古い体質を根本的に変えようとする発想でスタートをしたと思いますけれども、こうした発言がまだ相次ぐことに対して総理はどのようにお考えでございますか。
  212. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) この全国政調会長会議というのは、多分私も冒頭出席をし、党総裁として今進めております改革等についての協力を要請した会議であろうと存じますが、まず第一に、実は私がおります間にそうした発言はございませんでしたので、私自身としてはその事実の確認をいたしてはおりません。しかし、その上で申し上げたいことは、私どもは、国の予算の配分、執行に当たってその政策目的、効果などを踏まえて厳正公正に対処しているつもりでありますし、今までもそうしてまいりました。これからもそうすることは当然だと思っております。ですから、もしこのような発言があったとするならば、私は大変情けない、残念だと思いますし、そのような状況を国の予算執行の上で行うつもりはありません。
  213. 大渕絹子

    大渕絹子君 今まで実際にそうしたことがあったから当然のことのごとくこうした発言が行われているんだろうというふうに思いますので、ぜひここは、今回の行財政改革全体の成功のためにも党内をしっかりとリードしていただきたいというふうに思うところでございます。  それでは次に、日米防衛協力の指針と、それから共同訓練についてお尋ねをしていきたいというふうに思っております。  十一月三日から、全国何カ所でしょうか、随分至るところで日米合同演習というものが行われております。  私が住んでおります新潟県におきましても関山演習場で、自衛隊の市ケ谷の駐屯部隊だというふうに聞いておりますけれども、そことアメリカの海兵隊との共同訓練が実施をされておる、あるいは宮城県の王城寺原でも実弾訓練が行われる、あるいは航空訓練なども基地で行われているということが報道されているわけですけれども、これはこのたびのガイドラインの改正と連動をした共同訓練の強化だというふうに見てもよろしゅうございますか。
  214. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 自衛隊と米軍が共同訓練を行いますことは、それぞれの戦術技量の向上を図る上で有益であります。さらに、日米共同訓練を通じて、平素から自衛隊と米軍の戦術面等における相互理解と意思を疎通して、そしてインターオペラビリティーを向上させておくことは、我が国に対する武力攻撃に際しまして日米共同対処行動を円滑に行うために不可欠であり、またこのような努力は日米安保体制の信頼性と抑止効果の維持向上に資するものでありますから、従来から行ってきたものでございます。  そして、新しいガイドラインに基づきまして、これから先、共同作戦計画あるいは相互協力計画の検討をすることになっておりますけれども、それをさらに実効性あるものにするためには、これからのそういう共同訓練も従来どおりでいいのかどうか、それはまさにこれからいろいろと研究するわけでございまして、現在行われているのは、従来どおりのお互いの信頼性の向上を図るために、あるいはまた対処行動を有効なものにするために従来から行ってきたものをやっているわけでございます。
  215. 大渕絹子

    大渕絹子君 従来からやってきたものと言いますけれども、今回、関山演習場におきましては武装した軍隊が一般国道を通過するというようなことがあったやに聞いておりますけれども、この事実関係について。
  216. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 十一月三日から十一月十五日までの間に、この関山演習場で確かに行われました。そのときに、場所が飛び地がございますためにやむを得ず演習場外の道路を移動したわけでございまして、これは今までと違ったということじゃございません。飛び地があったためにそこを、道路を通過せざるを得なかったということでございます。
  217. 大渕絹子

    大渕絹子君 今までもそのようなことを行ったことはございますか。
  218. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) 過去で申し上げますと、平成七年度の日米共同訓練時におきましても、日米合わせまして約二十両が同一経路を移動したことはございます。
  219. 大渕絹子

    大渕絹子君 武装した軍隊が一般国道を通過するというようなことが許されるのですか、総理
  220. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 私は、残念ながらその関山演習場へ行っておりませんけれども、聞くところによりますとそこに飛び地があって、そこに行くためにやむを得ずそこは通過せざるを得ないということで使っているわけでございますので、その辺についてはむしろ先生の方が現況はよく御存じじゃないかと思うんですが、それはやっぱりどうしてもそこを通らないと、道路を通らないとその場所に行けないということでございますので、その間における移動については御了解願いたいと思うんです。
  221. 大渕絹子

    大渕絹子君 そこの飛び地を使わなくても訓練は十分にできます。もし、その飛び地を使ってやるならば、当初からその飛び地の中で、武装しない間に入って、そして行ったらいいわけで、何も武装してその道路を通行する必要は全くないわけでございます。  日本の国において、一般国道を武装して通行することは許されているんですか、総理
  222. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) 道路で実際に訓練をしているわけではございませんで、たまたまそこの道路を通って目的の演習地域に行くわけでございます。それと、この点につきましては、我が方がこういうことで移動しますということを地元自治体と事前に御連絡申し上げまして、そういう意味での了解をいただいてやっているわけでございます。
  223. 大渕絹子

    大渕絹子君 地元の自治体が許可を出せばできるということでしょうか。
  224. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 道路で訓練しているわけじゃございませんので、そこのところを御理解願いたいと思うんです。こちらで訓練して飛び地まで行くときに、そのままその荷物その他を持って国道を移動する、しかしその場合でもやはり地方自治体に了解をとった上で移動しているわけでございますので、その辺を、どうかその状況について、何も道路上で訓練をやっているというんじゃないわけでございますので、御理解賜りたいと思います。
  225. 大渕絹子

    大渕絹子君 周辺の住民の皆さんに与える不安とか、そういうものは大変大きいというふうに思うわけでございます。  それから、沖縄の基地の縮小ということで、例えば王城寺原の実弾訓練などが今沖縄の基地の縮小ということが建前になって移転がされているわけですけれども、本当に今、世界じゅうが平和の中で、あるいは日本も平和の中にあるのに、実弾訓練などというものが必要なんでしょうか。そのことをぜひ私は問うてみたいというふうに思っているんです。戦争を想定しての訓練なんでしょうけれども、実弾訓練をするということ自体に何の意味があるのでしょう、今の時代に。
  226. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これはちょっと本当に予測しない御質問をちょうだいしたわけでありますけれども、今例えば中東においてどのような緊張事態が生じているか、あるいは現に今国賓として訪日をしておられるブルガリア大統領がバルカンにおける平和と安定のために長い歴史のあやなす糸の中でどのような努力をしておられるか。さまざまな問題は今日も私はあると存じますし、そうした例示を挙げ出しますならば、まだ幾つも申し上げられる場所はあろうと思います。  その上で、私自身は自衛官の経験はございませんから、例えば空砲による、あるいはシミュレーションの装置を使って等々の訓練と実弾射撃訓練というものを正確に対比して御説明をする能力はございませんけれども、私は、やはり自衛隊が国の安全を保持いたしますためにそれぞれ保有する武器の性能を保持し、その技量の慣熟のために行う演習というものはそれだけの価値のあるものと存じますし、その中における実弾訓練というものもそれだけの重みを持つ訓練であると思います。
  227. 大渕絹子

    大渕絹子君 総理は今重大なことを言ったと思うんですね。中東などでも不穏な動きがあると、世界が、例えですけれども。
  228. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) そんなこと言った、不穏な動きと。
  229. 大渕絹子

    大渕絹子君 いえ、不穏な動きというか危険な動きがある、そういうものがあるから自衛隊も日ごろ空砲ではなく実弾でその能力を持っていなければならないということであるならば、ちょっと違うと思うんですね。私は日本の自衛隊は海外に銃などを持っていくことというのはあり得ないというふうに思うわけですね、日本の憲法の中で。  そういう中で、行くとは言わなかったですよ、行くとは言わなかったけれども、そうした動きのある中で訓練は不可欠であるということを御発言なさっていますね。ちょっと私はそこは解せませんけれども。
  230. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は随分言葉に気をつけて御答弁を申し上げたつもりでありましたが、世界がこんなに平和なのにというお話に対し、必ずしも平和とばかり言い切れない状況が存在することを私は前半で申し述べました。その上で、我が国の安全というものを考えますときに、自衛隊の訓練というものにはそれだけの重みがあるということを申し上げたつもりでありますから、前半申し上げました世界の中における不安定な部分というものがもし議員のような受けとめられ方をされるのでありましたなら、私はその部分は全部撤回しても結構であります。  しかし、この国の安全を確保するために自衛隊の役割は存在するわけでありますし、そのためには技量の習熟も、また兵器体系の完全な形での保持も当然のことながら私は必要なことだと存じます。その上で、その慣熟のために必要な訓練というものが、私はどの程度のものがあれば完全なものか存じませんけれども、少なくともやはりそれだけの重みのある訓練であると思うということを申し上げました。  他の地域のことに言及して御議論をいただくのでありますなら、前段の部分は私は取り消させていただきます。我が国の安全についてであります。
  231. 大渕絹子

    大渕絹子君 総理にもう一度確かめさせていただきますけれども、九月二十三日に策定をされました新ガイドラインは、憲法の枠内の見直しであるという明示がなされています。  しかし、それにもかかわらず、今まで踏み込めなかった集団的自衛権の行使につながる中身になっているというふうに思います。こうした政治的な文章であるから、あるいは外交政府の専任案件であるからということは随分とお聞きをしたわけですけれども、憲法の中身に触れるような内容でガイドラインを策定するということは許されるのですか。
  232. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これも何度も私ばかりではなく防衛庁長官からも、あるときは外務大臣からも御答弁を申し上げたと存じますけれども、この新たな指針の協力項目に掲げられております行為につきましては、我が国が行うことを想定している具体的な内容及び態様に関する限り、憲法との関係で問題が生ずるものは含まれておりませんということを繰り返し申し上げてまいりました。  いずれにいたしましても、指針のもとでの取り組みにおきまして憲法を遵守すべきは当然でありますし、指針のもとで日本のすべての行為が日本の憲法上の制約の範囲内で行われますことも新たな指針に明記をいたしておるとおりでございます。
  233. 大渕絹子

    大渕絹子君 「周辺事態への対応」の中で「米軍の活動に対する日本の支援」という項目がございます。  「施設の使用 日米安全保障条約及びその関連取極に基づき、日本は、必要に応じ、新たな施設・区域の提供を適時かつ適切に行うとともに、米軍による自衛隊施設及び民間空港・港湾の一時的使用を確保する。」あるいは「後方地域支援日本は、日米安全保障条約の目的の達成のため活動する米軍に対して、後方地域支援を行う。」、「後方地域支援を行うに当たって、日本は、中央政府及び地方公共団体が有する権限及び能力並びに民間が有する能力を適切に活用する。」と。  こうして、日本が行うということが明快に書かれておるわけでございますけれども、このことは集団的自衛権の行使につながらないのでしょうか。
  234. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先ほどから総理からもたびたび述べられておりますように、我が国は憲法九条できちっと枠がはめられておるわけでございますから、その中でどれだけのことができるかということを今度のガイドラインでも考えて取り決めたわけでございますので、今述べられました内容につきましても、憲法の範囲内でやれることはやる、憲法に反するようなことはしない、したがって集団自衛権になるようなことはしないということでございます。
  235. 大渕絹子

    大渕絹子君 しないといっても、取り決めの中で決められておって、強制というか、求められた場合はそれではどうするんですか。  例えば、「周辺事態が予想される場合」というところがございますけれども、その中で「周辺事態が予想される場合」には、日米両国政府は、その事態について共通の認識に到達するための努力を含めこと、こう書かれていますね。認識が違った場合でも一緒になるまで努力をし合うということでしょう。そうしますと、そこはもう「予想される場合」に含まれていくわけですね、どういう場合でも。  そうなった場合に、この第二項の「周辺事態への対応」のところに、日本がやるといったところに対して、それじゃアメリカ軍から求められたときに拒否できるんですか、このガイドラインの中で。どうですか。
  236. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今度のガイドラインを読んでいただけばわかりますけれども、日本国憲法の枠内で、従来の安全保障条約の枠内、その取り決めの枠内でやるということを前提にしているわけでございますから、しかもそれぞれが主体的に判断しながら、なおかつ情勢については、もちろん認識については調整いたしますけれども一やはり大前提はこれはもうゆるがせにできないわけでございますので、その中でやるということですから、委員が御心配になられるようなことは絶対にあり得ない。そういうことで、私どもはこれは胸を張って憲法違反になるようなことはいたしませんということを言いたいと思います。
  237. 大渕絹子

    大渕絹子君 まくら言葉でそういうふうにうたってあっても、実際の中身はそういうことにはなっておらずに、さらにまた自由民主党の有事法制の研究会ですか、そこではもう既にガイドラインに沿った検討項目、有事法制検討項目ということで、これは七月三日ですね、自由民主党国防部会の中で検討されている法律についても明快に出されているわけです。  そういう有事法制の中身にまで入り込んでいった場合、このガイドラインに沿ってつくられていった場合、ここはもう明らかに憲法の枠を超える中身になるというふうに思うわけですけれども。
  238. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) そういう法律をつくります場合も、衆議院、参議院、やはりこの院において議論されるわけでございます。そしてその中で、憲法違反ならばそれはできないわけでございます。  各党においていろんなことを研究されるのは結構でございます。その中においても、やはり日本国憲法の枠内でやられると思いますけれども、それがそれを逸脱しているような場合において、政府が提案する場合は、法制局において審査をした上で出してきますが、出した上で、しかも憲法違反になるやつだったら院においてそれを拒否しなければならないわけでございますから、我が国はすべて憲法の枠内でしか行動できないということについて、しかもそれを決められるのは、最終的に法律をつくられるのは立法府であるということを、政府じゃないということをぜひ御認識いただきたいと思うんです。
  239. 大渕絹子

    大渕絹子君 あらゆる場所に実績をつくり、先ほどの国道の通過もその一つと思いますけれども、なし崩し的に実績をつくっていく中で憲法を形骸化していこうとする動きに対して、私は大きな懸念を持っています。  今、世界じゅうが平和の方向に進み、軍縮の方向に進んでいきます。そういう状況の中で、なぜ日本とアメリカだけが軍事同盟を強化し、さらに日米共同訓練の強化が行われ、国民の不安をあおるようなことになっているのかということが全く納得できないわけでございます。  これは前回の予算委員会のときにも私は申し上げましたけれども、アメリカのアジアに対する経済進出に大きな原因があるのではないかというふうに思っています。既に三十兆円にも上るアジアに対する投資をアメリカは行っているということでございますけれども、そういうアメリカのアジアに対する投資を守っていくために日本国全土がアメリカの前線基地として使われていく懸念があるのではないかというふうに思っています。  そして、日本が防衛力を強める、あるいは軍事同盟を強めていけばいくほどアジアの日本に対する懸念というのは強まっています。江沢民さんがアメリカを訪問したときにも、共同してファシズムと戦ったというようなことを冒頭述べられておりましたけれども、そうした日本に対するアジアの懸念というのは今回のガイドラインの策定によってさらに強まっていると思うんですね。  そういう中で、アジアの一員として、私はさらに軍縮を進める中で平和的な外交を進めて、日本の持っている特質を十分に生かしながらアジアの人たちと友好関係を築いていくことで経済成長を続けていく国家であってほしいなと強く思っているところでございます。  次に、食糧・農業政策についてお尋ねしていきたいと思います。  新食糧法のもとで生産調整に協力することで需給と価格の安定が図られる建前だったのですけれども、これは二年を経ずして破綻をしたと言わなければならないと思っております。備蓄米は三百七十万トンと増大し、米価は六十キロ当たり五千円も下落しています。米の過剰な在庫というのは、私はあの米不足のときに緊急輸入として輸入された二百四十万トンの外国産米がすべて日本の市場に流れているということが大きく影響しているのではないかというふうに思っております。  農水省は、この過剰に輸入した外国産米の二百万トンを市場に放出することによって今の過剰な備蓄状態を招いているというふうに思うわけですけれども、このみずからの行政判断のミスを農民に全部かぶせて、余っているんだから価格の下落は仕方がないというようなことで今は言っているわけですけれども、大規模でやっている農家ほど多額な減収に見舞われています。こういう状況の中で農家の人たちは、とれ秋ですから本来ならば景気がよくなって元気になっているわけなんですけれども、来年の肥料や種子を買うのにも運転資金にも不足をするというような状況が起こっています。  こういう中で、農水省は運転資金の低利貸し付けとかあるいは税制面での優遇措置などを考えるべきではないかと思いますけれども、いかがでしょう。
  240. 島村宜伸

    国務大臣(島村宜伸君) 外国産米の輸入について御批判がまずありましたけれども、これは私どもが好んで入れるということではなくて、やはりお互いにいわば自由貿易の体制を享受するという立場に立ては、自国だけの事情を主張していくことは国際的に孤立を招くことになりますから、これらにつきましては国際的な要請にこたえてその道を開いているところであります。  また、農林水産省といたしましては、まさに米をめぐる需給が大きく緩和いたしておりまして、自主流通米の価格が下落したり、あるいはまた計画外米の増大を見たり、いろいろ事態が非常に厳しい状況下にありますが、食糧法の目指す米の需給と価格の安定を図るために、生産調整、稲作経営、そしてまた計画流通制度の運営改善等、米政策全般のいわば再構築に向け検討を行ってきたところであり、本日、これまでの検討を踏まえまして原案を取りまとめたところであります。  特に、御指摘の価格下落に対する稲作経営の安定のための対策として、生産者の拠出と政府の助成により基金を造成し、自主流通米の価格下落時に補てん金を交付する仕組みの創設を考えているところでありまして、これにより、減収による影響の大きい大規模農家を含め、稲作経営の安定が図られるものと考えております。
  241. 大渕絹子

    大渕絹子君 農水大臣はミニマムアクセスのお話をされましたけれども、私はそのミニマムアクセスの話ではなくて、緊急輸入をした外米についての質問だったわけでございます。  農家は、種とかあるいは青苗土、あるいは肥料、農薬、機械と、みずからの労働力以外はすべて大企業に占有されているという状況に今なっています。米代金は自動的に大企業のそうした種をつくる会社とかあるいは機械をつくる会社とかに流れていってしまうという仕組みがもうつくられてしまっていて、大変厳しい状況の中にあり、後継者もできないような状況になっております。今ここで農業政策を誤ることは、これからの二十一世紀に対して日本の食糧危機を招くことにつながっていくと思います。大変重要な局面に来ていると思っております。  そこで私は、農林水産省はすべての機関を動員して、日本が今持っている生産力というものをきちっと把握する中で、最大限適地適作を行うことによって、作目別の作付面積と収穫量の目標を定めて計画生産体制をつくったならば、今四二%の食糧自給率を何年には五〇%に、何年には五五%に、そして何年には六〇%にというふうに上げていくことができるのかどうかということをきちんと明快に出して、日本の地図の中にどこが何をつくるのに適しているところかということを明快に出しながら、米以外の作物を作付していくという指導を徹底的にしていただきたいというふうに思うわけでございます。  世界の食糧事情は今大変逼迫しています。また、飢餓人口が八億から十億に上っているという状況の中で、日本だけが今、金があるからといって食糧自給率をひたすら下げている実態は、これはもう許せない状況にあると思っています。  私自身は、世界の食糧安全保障に一体日本はどう貢献をしていくのか、日本農業はどう貢献をしていくのかという、そうした二十一世紀を見据えた農業ビジョンというものを打ち出す時期に来ていると思っています。  このことを総理にお聞きいたしたいと思います。総理のビジョンを聞かせていただきたいと思います。
  242. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 非常に私はこれは難しいなと思いますのは、今ちょうど一昨年のAPEC非公式首脳会合に臨みました前後の議論を、我々がこの食糧について闘わせましたものを思い起こしておったわけであります。  村山総理のもとで開かれました大阪のAPEC非公式首脳会合、これはある意味で私は非常にAPECに対して大きな転機をもたらしたと思います。  なぜなら、それまで二十一世紀における成長要因としてのみクローズアップされておりましたアジア太平洋地域において、発展の阻害要因となるものはないのかという視点から、人口の急激な増加、それに伴う食糧の逼迫、エネルギーの供給難、そしてそれに伴って発生する可能性の極めて高いと思われる環境、こうした問題を初めてAPECの前に提起をし、これは閣僚ベースのときもそうでありましたが、非公式首脳会合においてこれに一つのきちんとした位置づけが与えられました。  私は、これは非常に大きな成果だったと思いますし、自来APECの中で議論をいたします場合に、この四つの制約要因というものを意識しない議論はほとんどなくなってきたと思います。  その中でも、食糧というものがそれぞれの国の自給率という視点とともに安定供給という視点がこの中に加えられ、論ぜられるようになりましたことは、私は非常に大きな位置づけであったと存じております。  今、はしなくも議員は自給率から御意見を述べられたわけでありますが、私は、それとともに自給率を向上させていく、同時に安定させるという点も大きなウエートを持ってこれから考えていかなければならないこと、そのような思いで拝聴いたしておりました。今後、こうした思いを施策の中に位置づけていく必要がある。これは午前中も多少議論をいたしましたけれども、今さまざまな角度から新たな食料・農業・農村、その位置づけというものを農水省の諸君に調査会で検討してもらっております。  そうした中で、午前中は実は産業として位置づけていないということに対するお答えを私は申し上げ、ただ、農業というものが産業という面からだけとらえるべきものではない、緑の保全とか非常に大きなさまざまな意味を持つ、それをただ単に経済の側面からだけ切れるだろうかということでお答えを申し上げました。その上で今の御質問でありますから、我々はそうした思いを持ちながら取り組んでいきます。そのように申したいと思います。
  243. 大渕絹子

    大渕絹子君 農水大臣に、先ほど私が適地適作の目標を定めてということを言いましたが、その件についてお考えをお聞かせください。
  244. 島村宜伸

    国務大臣(島村宜伸君) 適地適作の話に触れる前に、先ほど私がミニマムアクセス米のお話をいたしました。その前に、先生御指摘の例の緊急輸入の問題につきましては、平成五年、作況七四のときになるほど二百六十万トン、二百五十九万トンが正確ですが、輸入をいたしましたけれども、この米については不足分を輸入したということで、とうにはけているわけでありますので、私は恐らくミニマムアクセス米のことかなと、こういうふうに実は勘違いをいたしました。訂正をいたします。  それから、適地適作の問題につきましては、米というのは自然のいわば環境にいろいろ左右されまして、このところは一〇九、一〇二、一〇五、一〇二とずっと一八ポイントばかり四年連続でオーバーをし、そのために自主流通米の価格が下落したりあるいは計画外米が増大したりして、非常に農家が苦しい立場に追いやられた。そこで、将来に向かって、例えば稲作しか向かないという農地もかつてはあったわけでありますが、いろいろ皆さんの御理解のもとに土地改良事業を進めまして、今約百万ヘクタール、いわば大豆とか小麦とか飼料作物等の転作の可能な農地も生み出しているわけでありまして、こういうものへの転作の奨励ということをするために、そのための資金の補てんをするべく、今その案が発表されている段階でございます。
  245. 大渕絹子

    大渕絹子君 けさ、農水省のその案も見せていただいて、積極的に取り組んでいただいていることに感謝を申し上げます。ぜひ頑張っていただきたいというふうに思うところでございます。  景気対策についてお伺いをするように通告した部分について、同僚委員の中からかなり質問が重なったりしておりますので省かせていただいて、一点だけ、景気の足を引っ張っているのが消費税の値上げにあるというような調査結果もあるところがら、消費税について少し。  今こそ生活必需品や食料品について軽減税率あるいは非課税化を図る絶好のチャンスではないか、景気浮揚策のために消費税の税制改革をやってみたらどうかというふうに思うわけでございます。長い間、私どもは食料品の非課税について要求をし、そして歴代の大蔵大臣からも検討をするというお答えをずっといただいてきているわけでございますけれども、この時期、三塚大蔵大臣におかれましては、この食料品の非課税あるいは軽減税率について大蔵省で現段階でどこまで検討をされて、これからの見通しについてどのようにお考えになっているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  246. 三塚博

    国務大臣三塚博君) かねがね大渕委員の持論であり、また時折承らさせていただいてまいりました。  非課税範囲の拡大でございますが、消費一般に広く負担を求めるという消費税の基本的な性格から見ますと、公正・中立・簡素という原則になかなかなじまないという点がございます。食料品のように転々流通し事業者間で取引されるようなものを非課税にいたしますと、課税の累積が生じ、かえって価格が上昇したり、事業者の負担の増大につながるといった問題がございまして、慎重に対応せざるを得ないと考えております。  また、軽減税率でありますが、その範囲を合理的に定めることがなかなか難しいということがございます。新たな事務負担によるコストが価格にはね返りますので、税率五%のもとでは価格低下の効果に疑問があるといった問題もございまして、将来的な検討課題であると考えております。  なお、食料品に対する特例措置の設定でございますが、大幅な税収減をもたらす、また財政構造改革に反することになるなど、制度の大きな変更が当事者の事務負担を初めとする経済活動に困難を来すのではないだろうか、また景気に逆に悪影響を及ぼすおそれはないだろうかなどの問題もこれありまして、当面の景気対策の一環としてこれを議論していくことは適当でないというのが現状の分析であります。将来的な検討課題としてさらに議論を詰めてまいります。
  247. 大渕絹子

    大渕絹子君 大臣、その答弁では大分後退をした答弁になってしまっているというふうに思うんです。  昨年の十月三十一日、三党の合意では、「消費税の改革に大胆に取り組む」、「軽減税率については、これまでの議論の経緯を踏まえつつ、さらに諸外国の実情について調査研究を行ないながら検討を深める」、「消費税の持つ逆進性をも踏まえ、EC型インボイス方式を前提とする軽減税率の問題等についてさらに検討を加える」ということで合意されています。  そして、大蔵大臣、前の大蔵大臣ですけれども、私も質疑の中で、大蔵省としても検討を進めている、導入に向けて研究をさせているという答弁をいただいているんですね。ですから、大蔵省としてどこまで研究をされたかということなんです。  じゃインボイス方式を導入することが前提でなければだめなのかとか、あるいはどういう前提がなければ複数税率にすることができないのか、あるいはヨーロッパ諸国ではもう軽減税率をみんなやっているわけですね。そういうことが日本にできないということは私は説得力がないと思うんですけれども、もう一度お願いします。
  248. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 久保大臣の答弁はきちっと承知をいたしております。三党の研究課題、検討課題として御指摘のようなことにありましたことも承知をいたしております。その上で、外国の事例、インボイス等々の問題の研究の成果、主税局長から答えさせます。
  249. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 昨年十二月十八日に与党三党でこの問題について御議論されておりまして、その結論としましては、「今後、消費税を含む税体系の見直しが行われる場合、消費税の持つ逆進性をも踏まえ、EC型インボイス方式を前提とする軽減税率の問題等についてさらに検討を加えるものとする。」と、こうなっておりまして、私どもも、消費税率が現在五%という税率水準であるという現実、それから前段階税額控除というこの税の持つ特殊性からいって、非課税にするということがかえって負担を重くすることもあり得るといったこと、軽減税率というには基本税率の五%が低いということ、そういうことから、現実には平成九年四月の今回の引き上げについては単一税率でいくという結論を去年の十二月に与党でいただいているわけでございます。  今後の問題については、消費税をどう考えていくかという基本的な問題にかかわってくるかと思っております。
  250. 大渕絹子

    大渕絹子君 今の景気の足を引っ張っているのが消費の停滞だということはだれの認識も一致していると思うんですね。その消費の停滞を少しストップさせて上向きをさせていくきっかけとして、消費税の税率を少しいじってやるということは大変有効な手段だと私は思うんですね。今閉塞感が生まれています、国民の中に。本当に消費に向かわない、そうした状況の中で、食料品、あるいは米とかミルクとか限定をされてもいいと思うんですけれども、そういうものが少しでも消費税の対象から外れたんだということで、消費の芽が出てくるというふうに私は思うわけです。ですから、さらに前向きに突っ込んで検討していただきたいなというふうに思うところでございます。  この議論は、また税制特別委員会か何かできちっとやる機会を得たいというふうに思っております。  また、中小企業の中で今融資を受けられなくて倒産になっているということ、私は地域を回っていて強く要望されているわけです。大変な不景気の中で、自分が持っている担保とかあるいは保証とかというものは全部もう金融機関にとられてしまっていて、それ以上の融資が受けられない。しかし、今五百万円融資をしていただければまたしっかりと事業がやっていけるにもかかわらず、その融資が受けられないという切実な声が聞かれるわけでございます。午前中の審議の中でもその話があったわけですけれども、その持っている担保について少し優遇をして、運転資金を今緊急に貸し付けてやるような制度というのはっくれないものでしょうか。
  251. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 今回、本日取りまとめました景気対策の中でも、景気の現状にかんがみまして、中小企業の資金繰りがかなりきつくなるおそれもあるというふうに認識をしております。そういう中で、どうしても中小企業金融につきましては十分な金融をつける体制をとる必要があるということでございまして、今の担保の問題、また資金繰りの問題も含めまして、総理からの御指示もございまして、中小企業関係金融機関に対しまして、マル経資金の拡大も含めまして融資枠の拡大とか、あるいは信用保証協会の一層の活用充実、そういうものを含めまして対策で決定させていただいたところでございまして、私どもこれからも中小企業金融については万遺漏なきを期してまいりたいと考えておる次第でございます。
  252. 大渕絹子

    大渕絹子君 なるほど、借りられる制度というのはたくさんあるんですね。でも、実際に金融機関に行くとなかなか貸していただけないというのが実態だそうですので、今の御答弁のとおりにぜひ緩めていただきたいというふうに思います。  厚生大臣にお尋ねをいたします。  児童扶養手当の削減が審議をされているというふうに聞いておりますけれども、子供を抱えて離婚をせざるを得なかった、あるいは母子家庭で生活をせざるを得ない状態に置かれている人たちにとってこの児童扶養手当というのは大変重要な意味を持つお金でございます。これが削減をされるというふうな報道がなされておるわけですけれども、それこそ母子家庭の子供たちであっても同じように心豊かに育っていく権利というのは保障してあげなければならないと思いますし、これからの社会構造の変化の中でさらに離婚をせざるを得ない状況になる家庭というのは多くなっていると思います。  社会全体で少子化時代の大切な子供たちを育て上げていく観点からも、児童扶養手当が今削減されるということは私は納得がいかないのですけれども、いかがでしょうか。
  253. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 児童扶養手当制度について先般の児童福祉法改正時に附帯決議がありました。その附帯決議において、「民法における扶養責任との関係等を含め総合的に検討すること。」とされているところでありまして、現在、中央児童福祉審議会において制度全体にどういう問題があるかということを議論していただいています。  主な点を言いますと、制度の基本的な位置づけ、支給対象者の約九割が生別母子家庭となり離婚に対する意識も変わってきているなど、制度をめぐる状況の変化を踏まえてこの制度の役割をどのように位置づけるか。また、民法上の扶養義務との関係、父母が離婚した場合には母が子を養育している例が大半であり、父の多くは扶養義務を履行していないが、この扶養義務の履行と児童扶養手当の支給との関係をどのように考えるか。支給要件と費用負担のあり方、社会的公正、公平の確保という観点から、離別した父親から受け取っている養育費の額にかかわらず手当を支給することとしている現行の支給要件や離別した父親からの費用負担のあり方についてどのように考えるか。そのほか幾つかあります。  いずれの問題についても制度全体にかかわる問題でありますので、中央児童福祉審議会においての検討結果等を踏まえ、必要な制度の見直しを今後行いたいと考えております。
  254. 大渕絹子

    大渕絹子君 本当にこれからは少子化時代ですから子育て支援策を充実するということが再三述べられておるわけでございます。そうした観点からも、死別であろうと生別であろうと、子供たちはそれを自分たちで選択することができない、その子供たちの立場に立った福祉政策がつくられて当たり前だというふうに思っています。社会全体で日本の子供たちは育てていくんだという観点をぜひ忘れないでいただきたいというふうに思います。お願いをしておきます。  最後になりましたけれども、新潟県では今、柏崎刈羽原発にプルサトマル計画というのが導入されようとしておりまして、大変危機感を持っております。これは原発で燃やしたごみの中から抽出するプルトニウムをMOX燃料として混合燃料につくりかえて使おうということでございますけれども、安全性の確保の実績がないということもあり、あるいはまた事故があったときにウランの十倍もの被害が想定をされるというような状況があり、ここはプルサーマル計画は早急にやめていただきたい。そして、そのプルサーマル計画を導入する財源、あるいは原発を立地するような財源については、新たな景気浮揚策に使っていくべきであるというふうに思うわけでございます。大変短い時間で、私がもっと細かく説明をしなければならなかったわけですけれども、総理にぜひ御判断をいただき、プルトニウムと人類は共存ができないという原点に立ってお答えをいただきたいと思います。
  255. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) これは大変申しわけありませんが、議員と私は見解を残念ながら異にいたします。なぜなら、資源に恵まれない日本にとりまして、今後とも原子力発電の着実な推進は重要なことでありますし、その際に、ウラン資源の有効利用の観点から、使用済み燃料を再処理し、回収されましたプルトニウムを有効利用する核燃料サイクルの円滑な展開というのは、私はやはり欠くことのできない計画だと思います。殊に、COP3を前にして、二〇一〇年までのCO2削減、温室効果ガスの削減というテーマを解決していこうといたしました場合に、今後ふえていきますエネルギーを我々はいずれにしても原子力に相当程度をゆだねなければなりません。  そうした中におきまして、我々は今後も非常に努力を進めていかなければならないわけでありますけれども、プルサーマル計画、これは現時点におきまして最も確実なプルトニウムの利用方法でありまして、これを早急に開始する旨を本年の二月に閣議了解をいたしました。これまで科学技術庁長官及び通産大臣から、二〇〇〇年ごろまでにプルサーマルを実施する計画がございます福島、新潟、福井の三県の知事に対して御説明を申し上げ、私からも実は直接協力をお願いしてまいりました。さらに、これらの県におきまして、地元の議会での説明あるいは討論会の開催など、御理解を得る努力を重ねてまいっております。  無論私は、議員指摘されましたように、何よりも安全が優先されなければならないということには全く異論がありません。殊に原子力につきましてはこのところ国民の信を失う事態が続いたこと、私自身も全く忘れているわけではありません。それだけに、安全の上にも安全というものを確認し、国民に御理解を得る努力を重ねながら、この計画が円滑に進められますことを、国としてもそのための対応を行っていきたい。お地元の皆様の御理解を得ながら進めていくことではありますが、将来を考えるとき、私はこれを放てきすることはできないと考えております。
  256. 大渕絹子

    大渕絹子君 終わります。ありがとうございました。
  257. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 以上で大渕絹子君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  258. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 次に、上田耕一郎君の質疑を行います。上田耕一郎君。
  259. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 日米防衛協力のための指針、新ガイドラインについて質問いたします。  六月に中間取りまとめが発表された際、ジャパンタイムズは、日米、アンベール ウォー マニュアル、そういう大見出しで報道しました。戦争マニュアルのベールを脱ぐと言うんですね。私は、今度の新ガイドラインというのは、日本は武力攻撃を何ら受けていないにもかかわらず、自衛隊を国境の外に出して、人員、武器、弾薬、燃料の輸送、兵たん作戦、情報作戦、それを担当するのでやっぱり完全な参戦行為で、憲法の平和原則の完全なじゅうりんだと、そう思います。この新ガイドライン作成に一貫してかかわったアメリカのキャンベル国防総省次官補代理は、タブーを動かし始めた、タブー、大革命だと言って非常にはしゃいでいると、そう言われています。  そこで、きょうは国際法、憲法などの問題について質問します。  中心的問題はやっぱり周辺事態、まず周辺事態日本の自主性、この問題を取り上げたい。周辺地域で何らか事件が起きてアメリカが武力行動をする、その際、私は日本は三つ自主的な判断を迫られることになると思うんですね。  まず第一は、その米軍の武力行使が国際法、国連憲章に合致しているかどうかであります。この新ガイドラインは、基本的な考え方で、日米両国のすべての行為は国際法の基本原則、国連憲章に合致すると、こう書いてあるんです。今の国際法、国連憲章のもとで国連加盟国が武力行使できるのは、安保理事会の決定または五十一条、武力攻撃を受けた場合の個別的、集団的自衛権の行使、この二つのケースしかないんですね。もし、アメリカの武力行使がこれに合致していない場合、日本はそれに何らかの協力をすべきでないと思うんですが、外務大臣、いかがでしょう。
  260. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 新指針のもとでの日米両国の行為が国際法の基本原則並びに国際連合憲章等の国際約束に合致するものであることは新指針において明らかにされております。また、日米安保条約は、その第一条及び第七条に規定されているところにより、国連憲章に合致することを前提といたしております。したがいまして、御指摘のような米軍の行動が国連憲章に反するものとなることはそもそも想定をされないわけであります。  いずれにいたしましても、周辺事態におきましては、我が国が後方地域支援等の対米協力を行うか否か、いかなる協力を行うかにつきましては、我が国の国益の確保の見地から国際法に合致する形で主体的に行うことでございます。
  261. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 アメリカは何でも国連憲章どおりやるということのままでは主体的判断ゼロということになるんですよ。例えばアメリカのベトナム戦争、それから八三年のグレナダ侵略、八九年のパナマ侵略、これは国連総会で国際法並びに各国の主権、領土保全等々を甚だしく侵害するという決議まで出ているんですよ。ところが、日本政府はいつでも賛成賛成なんだから。  だから、今後もアメリカが国連憲章に違反する、そういう行動があり得るんだと。頭からあり得ないなんて言わないで、何かアメリカがやったと。さて、それが国連憲章、国際法に合致しているかどうかを判断しなきゃいかぬでしょう。首相、どうですか、当然判断しなきゃいかぬでしょう。
  262. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) わざわざ念を押されますけれども、物事に、判断をすべきとき、判断をすべきではないと判断するとき、いろんなことはあり得ますけれども、今、議員が念を押されましたような形の判断は、そもそもそういうケースはあり得ないというのが外務大臣が今答えた答えではなかったでしょうか。
  263. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だから、これはもう救いがたい、自主性がないんですよ。アメリカのことしの国防報告は、アメリカの重要な利益が危機に瀕した、比較的小規模の戦闘を単独であるいは他国と協調して行うと書いてあるんです。今までの例としてグレナダ、パナマを挙げているんですよ。グレナダ、パナマは国連総会で圧倒的多数で国際法違反だ、国連憲章違反だと言われているんだから。まだやるというんですよ、これを。  これ以上押し問答をしていても、ちょっと悲しくなりますね、こういう首相やこういう外務大臣、国籍変えた方がいい。  そこで第二の判断。この起きた周辺地域における事態がここにも書いてある。日本の平和と安全に重要な影響を与える場合かどうかということを判断しなければね。外務大臣どうですか、これは。これは防衛庁長官だ、これはどうですか。
  264. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 我が国としては当然それを主体的に判断を行います。
  265. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは、うちの志位書記局長が衆議院でこの問題を聞いたとき、首相も、ある事態が周辺事態なのかどうか、これはそれぞれの政府がそれぞれ主体的に判断する、ちゃんと答えているんです。これはどうも判断するおつもりのようですないかがですか。
  266. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) わざわざ国籍変更まで言われた上で判断を求められることは大変光栄でありますし、判断をいたします。
  267. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ところが、判断できないというケースがあり得るので、これが大問題なんですね。同じく志位書記局長がこの十三日に記者会見をして、訪米調査して入手したアメリカの解禁秘密文書を公表いたしました。ここに英文のものも持っています。これはアンクラシファイド、秘密解除と書いてある。トップシークレットとなっている。この中に、六〇年の安保改定時に岸首相が日米安全保障協議委員会準備会議の覚書の形の秘密了解を交わしたと。これは、朝鮮の国連軍が攻撃されて日本から出撃する場合は事前協議は要らないということを岸首相が密約したというんですね。  今かなり読まれているのに佐藤元首相の日記があります。あの日記の中には、どうも岸さんのときに変なことがいろいろあったようだと何カ所も出てきます。  さて、こういう重大な秘密の覚書が、首相というのは条約締結権者なんだから、この条約締結権者が結んだ外国との約束は後の政府も縛るんですよ。そうすると、朝鮮有事とか台湾有事の場合、事前協議なしに日本の基地から出撃するんですよ。  宮澤元首相は、去年、座談会でこう言っている。有事の際、戦闘機が横田基地から出撃することを認めれば、逆に基地が攻撃を受ける可能性もあります。今後もそれらを踏まえて議論しなくてはと。やっぱり首相ですから、日米安保共同宣言を結んで新しいガイドラインつくるとどうなるかよく知っていますよ。朝鮮、台湾で有事になった。米軍は事前協議なしに勝手に自由に出撃するんです。だから日本は反撃される危険があると言うんです、宮澤元首相は。  こういうとんでもない事態、だから私どもは自動参戦体制だと言っているんですけれども、この密約文書、日米安全保障協議委員会準備会議の覚書、これ今度の解禁文書にはそういうものがあるということを書いて、覚書そのものはないわけだ。外務省の恐らく金庫の中にしまってありますよ。これを捜して、あるいは捜せなかったらアメリカから入手してこの委員会に提出することを私は要求します。
  268. 高野紀元

    政府委員(高野紀元君) お答え申し上げます。  御指摘の岸ミニッツなるものについて報道されていることは承知しております。報道において、このようなミニッツなるものの存在を裏づけるとされる文書は米国政府内部の文書というふうに承知しておりまして、そのような文書についてコメントすることは差し控えたいと考えております。  いずれにせよ、報道にあるような事前協議なしの出撃を認める密約を作成したとか、事前協議の諾否をあらかじめ約束したということは一切ないことはこれまでも国会等で明らかにしているところでございます。
  269. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 まことに悲しいですね。  報道だけじゃないんですよ。米政府の公開文書ですよ。ロジャーズ国務長官、ヘンリー・キッシンジャー、これキッシンジャーのサインですよ。そういうものを、報道じゃない、現物だから、米政府の。それを報道にあるようなことはないなんて、よくもまあそういうことを平気で言いますね。こういう高級官僚はやっぱり行政改革の対象  にしなきやならぬとさえ私は思うんですが、首相、どうですか。
  270. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 何が。
  271. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなたね、あなた首相なんだよ。
  272. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) いや、だから……
  273. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それで、アメリカと日本どの間で岸首相が密約を結んで、朝鮮有事などの場合、事前協議なしで日本から出撃するようになっていると。これは動きますよ。  これに対して、あなたは首相なんだから、責任を感じて、調べて国会に提出するということをする責任と自覚をあなたは感じないんですか。
  274. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まず第一に、日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用が事前協議の対象とされていること、これは岸・ハーター交換公文に明記されておるとおりでありますということから、従来何度も同じような問題で国会で御答弁を申し上げてきたと存じます。  そして、先ほど来大変激越な調子でいろいろな御指摘をいただいたことを私はそれなりに真剣に拝聴いたしておりましたけれども、米国政府部内の文書を我が方が一々コメントすべき立場にはないと思います。そして、それをわざわざ調査する必要も認めません。  我々は、きちんと今までも国会で御答弁をしてきたとおり、自主的な判断をもとに諾否を決するというのが申し上げてきたとおりのことでありますから。
  275. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 全く無責任なんだよ。こういうことじゃ質問続けられないですよ。国民に責任負えないですよ。
  276. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) いや、しかし相当丁寧にお答えをしたつもりです。
  277. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 国の運命にかかわることだから。何をやっているんですか、そういうことで。
  278. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 国の運命にかかわることだから正確に答えている。(発言する者あり)
  279. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  280. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 速記を起こして。
  281. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 当予算委員会にこの覚書を提出するよう要望したいと思います。
  282. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 後刻理事会におきまして協議いたします。
  283. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 第二の判断は、周辺地域における事態日本の平和と安全に重要な影響を与えるかどうか、このガイドラインに書いているようなこと。これは首相も判断すると言われた。  さて、その際、平和と安全に重要な影響を与える事態だというふうになったら、平和的解決のために全力を尽くすのか、それとも新ガイドラインに基づいて米軍と軍事協力を行うかということの判断がまた分岐点になるんですよ。国連憲章並びに日本の憲法に基づいて平和的解決に努力せにゃいかぬのですよ。それを、平和的解決は努力しないで直ちにアメリカの軍事行動にすぐ協力するというのがこの新ガイドラインで、全く言語道断ですよ。  さて、新ガイドライン発動ということになると、先ほど防衛庁長官は憲法に全く違反しないと言われたけれども、陸上自衛隊、航空自衛隊、海上自衛隊のうち、日本の国境の外に出る行動はこの新ガイドラインで何と何と何がありますか。
  284. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今、何と何と何と具体的にと言われましたけれども、およそ陸上自衛隊が出ていくことはまず少ない、考えられません。航空自衛隊の場合は政府専用機でいわゆる在外邦人の救出等に行く、現行法でも百条の八があります。海上自衛隊の場合は、いわゆる輸送の場合に一線を画する公海上の区域に輸送を行うことはあろうかと思います。そういう場合に出ていきますけれども、それらを具体的に全部網羅して言えと言われましても、ちょっと今全部思いつきませんので、必要なら政府委員から洗って御報告させたいと思います。
  285. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私の方が詳しい。陸上自衛隊は一応この中では国境の外に出ることは書いてありません。海上自衛隊は後方地域支援の中で人員、物資、燃料、潤滑油等の輸送、それから周囲の公海における機雷の除去、それから情報、情報で台湾のあのときにP3Cを出したんじゃないですか。こういうので海上自衛隊は出るんですよ。航空自衛隊は何をやるかというと、後方地域支援のところにちゃんと書いてあるんですね。戦闘区域と「一線を画される日本の周囲の公海及びその上空」というんだから、公海の上、上空に出るんですよ。恐らく航空自衛隊はE2Cなどの警戒機、それが行くんでしょう。危なかったら護衛機が出るでしょう。恐らく海上自衛隊も護衛艦がまた出るかもしれない、輸送等について。  それからもう一つ、日本に対する武力攻撃の際、これについては「日米両国政府は、米国から日本への補給品の航空輸送及び海上輸送を含む輸送活動について、緊密に協力する。」とあるから、日本とアメリカの間の輸送について、これは民間も使うけれども、海上自衛隊、航空自衛隊、これも出るんですよ。これはみんな国境の外でしょう。いかがですか。
  286. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今おっしゃったのは公海が入っております。
  287. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この文章を分析すると大体そうなっているんですよ。すると、これらの国境の外に出る行動は今の自衛隊法には規定がありません。先ほどの救難のときは別として、ほとんど規定がない。  そうすると、来春の通常国会で有事法制、自衛隊法の改正、それからACSAの有事版、こういうものを準備しているんだと思います。報道もありますが、この自衛隊法の改正にはこの周辺事態における出動、これも入るんですか。
  288. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 今度のガイドラインを実効性あるものにするために法的整備なんかをどういうふうにしていくか、今まさにその検討をしているわけでございまして、そういう中で今言われたようなことを現行法で読めるのか読めないのか、どういう法律が必要なのか、これから先鋭意詰めていきたいと思っております。
  289. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは大変な事態で、この周辺事態というのはこう書いてある。二回書いてある。「周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合もあり得る」と。波及してくることがあり得るというんですよ。周辺事態日本に対する攻撃に波及するということは、日本全土が戦場になるということですよ。そういうのにつながるのが周辺事態、非常に重大事態。自衛隊は国境の外に、今の自衛隊法にないものに出ていくことを決めるわけですよ。  そこで首相にお伺いしたい。先ほど私は三つの自主的な判断を求められると言った。アメリカの行動が国際法、国連憲章に合致するのかどうか、これを判断するつもりがないし、全部アメリカにべったりです。これは日本もまた国際法違反を平気でやるということですよ、平気で。国際法違反のアメリカにべたべた協力するわけですよ。首相や閣僚が協力するだけじゃない。自衛隊、国民、地方自治体が協力させられるんですから。それは、協力させられた自衛隊は今の自衛隊法にない海外出動の項目が入るんでしょう。  さて、第一にその問題で、第二にこの周辺地域の事態が周辺事態かどうか、日本の安全に影響するかどうかも判断しなきやならぬ。もし、平和的解決をやるべきなのに、間違ってアメリカに協力と、ガイドライン発動という判断を、第三の判断をすると大変なことになるんですよ。  それで首相にお伺いしたい。こういう自衛隊の海外出動、国民をこういうアメリカの武力行動、参戦行為に協力させるような重大な判断政府だけで決めるんですか。国会にかけるということはおやりになりますか。お伺いします。
  290. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 長い議員の御意見を拝聴いたしました。その上で繰り返しもう一度申し上げたいと思います。  ある事態が周辺事態に当たるのかどうか、それは日米両国政府がおのおの主体的に判断する、またすべきものです。そして、先ほど来お述べになりましたような地域間の安全保障の対話とか平和を求める努力というものを行うのは、これまた他方当たり前のことです。そして、日米両国政府間におきましては、安全保障協議委員会などさまざまなレベルで密接な情報交換あるいは政策協議が随時行われているわけでありますし、逆に多国間のアジア地域における枠組みとしてARF等があることもよく議員は御承知で自説を組み立てられていると思います。  その上で、周辺事態考えられるような事態が発生している場合、こうした連絡というものはもちろんながら一層緊密に行われるでありましょうし、こうした事態についての共通の認識に対する、また到達するための努力が払われることになります。その上で、周辺事態におきまして我が国が後方地域支援などの対米協力を行うか否か、いかなる協力を行うかについては、我が国が国益確保の見地から主体的に判断を行うこととなりますし、周辺事態において日米協力を行うに当たりまして政府としてしかるべき手続が必要だと考えておりますけれども、その時々適用のある国内法令に従って協力するのが当然だと思っております。
  291. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ちゃんと今の自衛隊法では内閣総理大臣というのが、自衛隊出動をあなたがおやりになるんですよ。防衛出動でも治安出動でも内閣総理大臣がやるんです。国会の承認が要るんです。緊急事態では、そのとき国会の承認ができなかったら事後に国会の承認が必要になってくるんですよ。  あなたの判断で自衛隊を国外で動かすんだから、これは法律でも当然私は国会承認が必要ということになると思うんだけれども、そういう判断をするときに、あなたは今法律に従ってと言われたが、国会にかけないんですか、国会は何もできないんですか。行政の判断だけで国民の運命にかかわる大変な決定をやって引っ張っていくつもりですか。ファシズムですよ、これは。どうですか。
  292. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 先ほどから話がございますように、そういう場合に現行法で十分かどうか、それを今検討しているわけでございまして、その中で自衛隊法を改正するとなったときに、そういうような状況でどういうふうな規定を盛り込むべきか、それをこれから先検討しようというわけでございますから、現行法でなくて、そのときに定められておる法令に従って行動しますということを先ほど総理が言われたのは、そういう意味も含んでいるわけでございます。これから先の検討を待っていただきたいと思います。
  293. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも防衛庁もこの問題ではいろいろ考えているようですね。新しい周辺事態出動という項目を自衛隊法の改正に入れるか、そうなるとやっぱり国会の承認が要りますしね。  東京新聞の報道だと、小規模の改正で済むかもしれぬというので安心して有事立法も出すなんという報道が出ていますけれども、この問題は詰めても答えがないでしょう。だけれども、今までの範囲では、アメリカの行動が国際法違反かどうかについて判断するつもりはない、国会にすぐかけるということは言えないんです、今は。これはそういう内閣の方針だということを確認して、先に進みます。
  294. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 御確認をいただきましたので、念を入れて私ももう一度申し上げます。  久間長官を補足する形になりますが、時々の国内法令に従って行動すると申し上げております。
  295. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それでは、自衛隊法の改正は、周辺事態出動の場合国会承認が必要だと。私は憲法上の原則で当然だと思いますけれども、その方向に行くのだろう、今の答弁から行くのだろうと、わからぬけれども。先へ進みます。  それで、一つ具体的にお聞きしたいのは、先ほど申し上げた輸送の問題です。  四十の項目がこの日米協力で別表に載っています。この四十の項目で、補給については「物資」のところに「(武器・弾薬を除く。)」と書いてあります。輸送のところには「(武器・弾薬を除く。)」というのがございません。この輸送の二番目に、「公海上の米船舶に対する人員、物資及び燃料・油脂・潤滑油の海上輸送」が書いてあります。自衛艦並びに民間の船舶がこれを輸送するわけですね。  防衛庁長官にお聞きしますが、この「人員」というのはアメリカの軍人も含むのかということ、それから「物資」というのは武器・弾薬も含むのかということ、この二点をお答えください。
  296. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) いずれも排除されておりません。含みます。
  297. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私、この間、この問題で国際法のさる高名な学者の方にお会いしていろいろ御意見を聞いたんです。そのとき、私がこの「輸送」には武器・弾薬が入っていると言ったら、その国際法の学者が驚かれましたよ。「補給」というところに「(武器・弾薬を除く。)」と書いてあるので「輸送」も除くんだなと善意の国際法学者も思うんですね。入っていると。びっくりされました。  武器・弾薬というのは、ロンドン宣言、これは一九〇九年の国際慣習法として非常に高名な宣言ですけれども、武器・弾薬は絶対的禁制品だと。燃料は条件つき禁制品だと。絶対的禁制品を日本の船がアメリカの艦船に輸送したらこれは明白な参戦ですと国際法の学者も明言されました。  私もロンドン宣言、当時の中立条約その他、全部調べました。国際法の本も調べました。参戦です、これは。人員を運んだら、これはロンドン宣言によれば、中立国の船でも敵国の軍隊の輸送に従事すれば敵国の商船として取り扱われる。敵性行為をやったら敵国なんですよ。それから、絶対的禁制品、条件つき禁制品として拿捕される物品を輸送する船舶は、公海または交戦国領海内においてはその航海中いつでも拿捕することができる。だから、武器・弾薬、米軍、燃料、これを運んでいる自衛隊と民間の艦船は相手の国によって敵性行為だということで拿捕される、そういう権利を持つんですよ。  条約局長、いかがですか。
  298. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) ただいま一九〇九年のロンドン宣言について言及されましたけれども、この海戦法規に関するロンドン宣言、恐らく先生が御指摘されたのは中立に関する海戦法規の方だと思いますけれども、これはいわば古典的な伝統的国際法が有効であったときの中立に関するものでございます。  その後、もう釈迦に説法でございますけれども、戦争の違法化というものが進みまして、現在、国連憲章のもとにおきましてはまさしく自衛権の行使及び国連の安全保障理事会の決定に基づく集団的安全保障措置というもの以外の武力の行使が一般的に禁止をされているわけでございます。そうなりますと、伝統的な意味におきます中立国の義務というものは変質を遂げておりまして、ロンドン宣言時代の中立義務というのをそのまま適用することはないということが現在の国際法のもとにおける位置づけでございます。  さて、御指摘我が国の後方地域支援についてでございますけれども、これは何度も政府の方から申し上げておりますとおり、その行為自体は武力の行使には該当しませんし、また米軍の武力の行使と一体化の問題が生ずるということも想定されておらない、地域的にもそういうところで後方地域支援を行うということでございます。  今申しましたように、交戦国とか中立国とか、そういう概念が戦争自体が違法ではないという時代の法律制度でございましたので、現在の国連憲章のもとにおきましてはそのまま適用にならないと。  すなわち周辺事態日本自身の平和と安全というものに重大な影響を与えるような事態が発生しておりまして、それに対応している米軍というもの、これが国連憲章及び日米安全保障条約に従って、国際法に従って行動している米軍であると。それに対しまして我が国が、それ自体武力の行使には該当せず、かつ米軍の武力の行使と一体をなすことのない内容及び態様でもちまして後方地域支援の協力を行うということは全く正当なことでございまして、国際法上合法的なものでございます。
  299. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大体二十年ぐらい前の国際法解釈なんです、あれは。国連ができて国連憲章が生まれたときは戦争違法化ということで、これは国連が集団的行動を決めれば中立はないということで、国際法学会は大体そういうふうに傾いたんですよ。ところがその後、国連憲章は完全に実現しないじゃないですか、一遍も生まれない。五十一条がくっついて軍事同盟がどんどんできる、米ソの核対決も進むということで、大体二十年ぐらい前から国際法の分野でも戦争法、特に中立問題、これが改めて重視されるようになってきたんです。  私は、田畑茂二郎、石本泰雄、高名な国際法学者の「国際法」、九六年十二月の一番新しい版を持ってきました。ここにはこう書いてある。今のような古典的国際法の原理が少し変わったことを書いた上で、「安全保障理事会が強制措置を決定しないとき、」、つまり五十一条の場合ですよね、「加盟国は、軍事的にはもちろん、非軍事的にも中立の地位に立つことができる。」ということです。ベトナム戦争でアメリカに兵力を提供した国は、南ベトナム、韓国、東南アジア条約機構諸国七カ国、朝鮮戦争でアメリカ側に参加して統合軍を結成した国は十六カ国、あとは中立なんですよ。ですから、外務省はいつもああいう答弁をしますが、あれは二十年ぐらい前の国際法解釈ですから。  戦争を始めると、これは憲章五十一条に基づいてアメリカが集団的自衛権を発動するか、あるいはグレナダ、パナマのように憲章五十一条に基づかないで勝手に武力行動をやるか、どっちかなんですよ。そういう際、その戦争に対して日本は中立の立場をとるのか、それとも参戦するか、二つに一つですよ。だから、輸送船で武器・弾薬、人員を送ってごらんなさい、相手の国は拿捕したり、抵抗したら撃沈するということもあるわけです。  それで、私はきのうレクチャーで、第二次大戦で日本の船がどのぐらい沈められたか数字を述べてくれと言ったら、先ほど返事が来て、どうも見つかりませんというので、これはもう時間がないから私が言います。これは朝雲新聞社の「戦史叢書 海上護衛戦」に詳細に出ています。  大体八百四十万総トンで、数の表もあるんですよ。第二次世界大戦、四一年十二月から四五年三月まで、百トン以上の喪失量、総隻数二千五百六十八隻で総トン八百四十三万トンです。陸軍二百十六万トン、海軍二百三十二万トン、船舶運営会、民間の船が約三六%で二百六十万トン。戦闘及び作戦行動中の喪失と推定されるもの五四%、つまり戦闘地域、それから一線を画したとあなた方が言う後方地域に入るんでしょう、物動物資輸送中の喪失と推定されるもの約四〇%。潜水艦によるもの五七%、航空機によるもの三一%なんですよ。これだけ沈められているんですからね。第一次世界大戦もそうですよ。  それで、あなた方が「後方地域支援」なんて日本語で書かれているけれども、アメリカの原文を見てみますとロジスティックサポートですよ。兵たん支援ですよ。兵なんというのは、国防用語辞典によれば「部隊の戦闘力を維持増進して、作戦を支援する機能」と。ロジスティックサポートなんですよ、後方支援というの、英文のガイドラインでは。そういう訳です。  それで、燃料、武器・弾薬、これなしには現代戦は戦えないですよ。その兵たん作戦をするわけだから、兵たん部隊を提供するわけだから、これは拿捕、抵抗すれば撃沈される。もし護衛艦を危ないからとつけていったら、護衛艦は攻撃されたら反撃するでしょう。戦争になるじゃありませんか。どうですか、防衛庁長官
  300. 久間章生

    国務大臣(久間章生君) 委員に御理解いただきたいんですけれども、今度の場合、とにかく日本の平和と安全にとって重要な影響がある場合に、アメリカ軍が出て何かやっている、そのときに我が方としては憲法の範囲内でどこまでできるかということで後方地域支援をしょうとしているわけです。そういうふうに、我が国の平和と安全に重要な影響がある場合に米軍が活動するときに何もしないでいい、そういうわけにはいかないわけで、やれることはやる。しかしながら、日本は憲法で枠があるからその枠内で精いっぱいのことをやりますということでガイドラインをまとめているわけでございます。  何もしないという前提に立って議論したら、それはもう何もしないにこしたことはないかもしれぬですけれども、我が国の平和と安全に重要な影響がある場合に我が国が何もしないでいいかという、まずそこの出発点から考えていただきたいんです。そう思えば、私どもが今度つくりましたガイドラインというのはその線に沿って理解のできることじゃないかと思うんです。
  301. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私が七月八日に決算委員会でこの問題を質問したら、こういう答弁で驚いたですな。  久間国務大臣、「我が国の周辺で事態が起きて、我が国の平和と安全に重要な影響があるときに、米軍が活動していて、日本は巻き込まれたくないから何もしない、そういうことが果たして日米安保条約を結んで日米関係が、」「考えられるだろうか。」。巻き込まれたいというんですよ、だから。巻き込まれたくないから何もしないというのは大変だと、同盟国である以上巻き込まれたいというんです。  私は何もするなと言っているんじゃないんですよ。紛争の平和的解決に努力すべきだと言っているんですよ。  九四年の朝鮮の核疑惑のときに、米軍は日本に千四百項目の軍事協力を申し込んできたんです。羽田内閣はノーだと、何もできないと。それでアメリカは軍事対決をあきらめて、カーター元大統領が訪朝して、平和的解決、十月のあの枠組み取り決めに行ったのですよ。日本はあのとき何もできなかったので、軍事的対決じゃなくて平和的解決になったのですから、平和的解決にもっと努力してごらんなさい。あのとき、もし日本にガイドラインがあって、オーケーと。千四百項目、軍事的対決ですよ。アジアの情勢というのは日本がどうするかで変わるんだから。私は、こういう問題でそういう参戦行為を取り決めた今度の日米新ガイドラインというのは完全な憲法違反だと思う。  大森法制局長官をお呼びしているので、もう時間も余りありませんので、最後に憲法問題をお聞きしたい。  やっぱりアメリカはよく見ていますよ。最初にキャンベル国防次官補代理の話をしたけれども、ワシントン・ポストがこの最終合意に達したことについて一面と国際面を使って報道した。こう書いてある。  新しいガイドラインのもとで日本は大戦後初めて国境の外で軍事行動に関与することになる。公海上での機雷除去などを挙げている。日本政府が防衛以外を禁止すると解釈している戦争放棄の憲法を保持するなら、日本の軍隊は戦闘行為をすることも戦闘地域に入ることもできないはずである。武器・弾薬の供給を除いたとしても——やっぱりワシントン・ポストも輸送には入っていることを知らないのでちょっと間違って書いているけれども——米軍に対する兵たんにかかわるサポートもできないはずだと。なかなかきっちり見ていますよ。自衛戦争以外はできないという日本政府の解釈のもとでは兵たんサポート、これもできないはずだと、そう書いているんですね。  大森長官、先ほどから私の議論を聞いておられたと思いますけれども、つまり米軍に武器・弾薬、燃料その他重要な兵たん行為、そういう兵たん兵力を提供してその作戦に従事する場合、相手国は日本を攻撃する国際法上の権利が生まれるんじゃないかと思うのが第一点です、外務省条約局長は違うことを言いましたけれども。  第二点は、そうなれば私は参戦だと思う。憲法九条で国際紛争を解決する手段としては国権の発動たる戦争は永久に放棄すると日本は決めているんですが、これは憲法九条の違反だと私は思いますけれども、法制局長官の憲法解釈を二点お伺いしたいと思います。
  302. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) 先ほどから御意見を伺っておりまして、私どもの使用する用語と若干のそごがございまして、なかなか質問に対する答弁というのがかみ合わないところがあるなということがまず第一の感想でございます。  まず、このような周辺事態について、この新ガイドラインが予定している米軍の活動に対する後方支援を行うと参戦行為として相手国から攻撃を受けることになるんではないかという御意見でございますけれども、逆にそれに対してお答えいたしますと、そもそもそのような攻撃を受けないような地域において行うと。すなわち、戦闘地域から一線を画された地域において後方支援活動を行うという前提でございますので、そもそも質問とお答えがかみ合わないところがその点でございます。  それから次に、九条との関係でございますが、これはもう一度言葉を尽くして申し上げますと、新指針の周辺事態における米軍の活動に対する後方支援というのは、委員の理解とは異なりまして、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態が生じた場合に、日米安保条約の目的達成のため活動する米軍に対して、我が国として補給、輸送、整備、衛生、警備、通信その他の活動を行い協力しようとするものである。これはガイドラインに書いている文字そのものを紹介したわけでございます。  そして、この協力項目として掲げられている行為につきましては、我が国が行うことを想定している具体的な内容及び態様に関する限り、それ自体武力の行使に該当しないと、これは委員も御賛同いただけると思います。また、米軍による武力の行使との一体化の問題が生ずることも想定されないというものでございますから、武力行使を禁止ている憲法九条との関係で何ら問題は生ずるものではないというのが私どもの基本的な考え方でございます。
  303. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう時間が参りました。非常に重大問題なので今後とも追及していきたいと思いますが、アメリカ側は閣僚の記者会見で、これは有事における準合同軍体制だ、NATO軍に限りなく近いと、そういうことを言っております。これは明らかに日本の憲法じゅうりんの危険な体制でございますので、私は首相に対してこの新ガイドラインの即時破棄を要求して、質問を終わりたいと思います。
  304. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 以上で上田耕一郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  305. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 次に、佐藤道夫君の質疑を行います。佐藤道夫君。
  306. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 大変に緊迫した質疑の後で申しわけないんですけれども、肩の凝らないようなやわらかい質問を一つ二つさせていただきます。  私は、政治倫理外交ということでございますが、多分外交の方までには時間が回らないと、その場合にはあしからず御了承くださいませ。  まず、政治倫理ということでございますが、実は十月四日、元総理の中曽根康弘氏が北海道は小樽で講演をしております。それが新聞に報道されております。多分、中曽根氏は佐藤孝行氏の入閣問題を念頭に置いて講演をされたものであると思います。講演内容は新聞各紙で報道されておりまして、かなりばらつきがありますが、整理してみまするとこういうことらしいんです。政治家に倫理は要らない、結果責任がすべてであろうと。どんな仕事をしたか、それが問題。政治家は聖人君子である必要がない、こういうことであります。私、これを見まして、中曽根さんのような大政治家がこんなことでいいんだろうかと率直にそういう思いがしたわけであります。  実はロッキード事件のころにも、さる閣僚経験者が政治家に倫理を求めるのは八百屋で魚を求めるがごとしと。要するに、ない物ねだりをしてはいかぬという意味でおっしゃったんだろうと思います。  それから、リクルート事件のころに、やはり倫理倫理とうるさい、鈴虫でもあるまいし、倫理倫理で飯が食えるかということをおっしゃった政治家もおりまして、この方々はいずれも自民党のある意味では大物政治家であります。折に触れてこういう発言が出てくることを見ておりますと、多分、自民党で大物と言われる方々の本音がこんなところにあるのかな、こういう気がしてしようがないわけであります。  わかりやすい例を出しますけれども、経団連の会長が、実業家に倫理は要らない、お金をもうけて会社を大きくする、そして株主にたくさん配当をして喜んでもらえばよろしい、それ以外は余計なことだ、こういうことをおっしゃったらどうだろうか。それから、もっとわかりやすい例で申し上げますと、相撲協会の理事長が、相撲取りはけいこで体を鍛えて本場所で力を発揮する、それだけである、あとは余計なことを考えるな、こう言ったらどうであろうか。今、プロ野球選手の脱税が問題になっておりますけれども、あれをつかまえましてコミッショナーが、プロ野球選手は球場で実力を発揮する、それだけである、ああいう個人的な問題にはコミッショナーとしては一切意見はない、何もない、こういうことを言ったらどうだろうか。恐らくただでは済まないだろうと思います。何を考えておるのか、こういうことになろうかと思います。  大体、中曽根さんその他の方々の発言というのは、私は小学校教育を否定しているんじゃないかと思います。小学校で学校の先生が子供たちに何と言うか。まずもって立派な人間におなりなさい、こうおっしゃいます。それから、なるべくいい仕事をして世の中のために働きなさい、こういうことを言うわけであります。これを、仕事が第一です、仕事をやりなさい、立派な人間になるかどうか、それは先生は余り関心はございませんと言ったら、こんな教育は何だということになろうと思います。  中曽根さんほどの方が教育を理解しておられないとは思いませんけれども、何を考えてああいうことをおっしゃったのか、いぶかしいし、また大変悲しい気持ちもしておるわけであります。  そこで、中曽根さんの後継者であられる橋本総理に、この中曽根発言あるいは歴代の自民党の大物政治家さんたちの発言についてコメントをいただければと思います。
  307. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 一点だけ申し上げたいと思いますのは、中曽根さんの後継者という御指名をいただきまして、大変光栄と申し上げるべきなのか、私の直前は村山政権でありますし、今どういう意味で後継者に御指名をいただいたのかなとは思います。  そして同時に、議員が今御指摘になりましたような発言は、しばしば発言でしかられますけれども、私自身がただいま議員が述べられましたような発言をいたしたことはございませんだけに、あるいは私は大物ではないのかなとも思います。  私は、第二次戦時中の学校教育が一年数カ月、その後は敗戦下における占領下の教育、独立回復後の教育でありますから、その意味では議員の言われるどの世代に属するのか大変複雑であります。  しかし、今の議員の御質問が、そうした発言についての感想を求められたのか、それともそういう発言を引用されながら国政に対して政治家がどうあるべきかというお尋ねなのか、もう一つつかみ切れないままに後継者指名を受けましたので、目をぱちくりしておりました。  私は、やっぱり国民の負託と信頼にこたえる、それが政治の原点だと思います。その上で、我々は全力を尽くしてそれぞれの職分に取り組んでいくわけでありますから、国民の信頼にこたえるような姿勢、努力というものが政治家の持つべき姿勢であろうと思いますし、資格の第一義だと思います。だからこそ政治家というものが、みずからの、心に恥じないように襟を正して行動すべきことが求められるのではないでしょうか。私はそう思います。
  308. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 私の質問を大変難しくお考えになったようであります。私はそんなに難しいことを申したつもりは全くございません。中曽根さんが、政治家に倫理というのは余り要らないんだ、それよりも政治をすることが、いい仕事をすることが大事なんだと、こういうふうなことをおっしゃいました。これは一体人を導く政治家として適切な言葉なんだろうかな、こういう疑問があって、それにつきまして、自民党総裁かつ現在政治を率いておられる橋本総理の感覚でございましょうか感想をいただきたかった、こういうことなのであります。この中曽根さんの言葉が適切であるとか適切でない、自分はこう思うとか、それだけでよろしかったわけであります。しかし、この問題はもうこれだけにしておきます。  次に、比例代表当選者の党籍変更の問題について伺いたいと思います。  これは今までも再三取り上げられておりますけれども、大体において、禁止する法案をつくることがいいのか悪いのか、つくった場合にこれは憲法違反になるおそれがないかとか、そういう一種の制度論として議論されてきたように思いますが、私はむしろ政治倫理の問題ではないか、こう考えるわけであります。  具体的に申し上げますと、新進党から昨年秋の総選挙で当選した方が当選直後に新進党を離脱しました。党の運営にかねがね不満があったのだ、それから法律で禁止されていない以上は自分のやったことに問題はないんだ、こういうことを言っておられました。こんなことは一体政治家として許しておくべきことなのだろうか。政治倫理、道義、その前にまた基本的に人間の常識が問われる問題だろうと思います。新進党の枠内で当選しまして、その任期中は新進党のために頑張る、これは当たり前のことでありますが、法律で禁止されていないから、何だ文句があるのかと言わんばかりのことでした。  こういうことにつきまして、また自民党総裁でもあり首相でもある総理の感覚と申しますか、感想を伺っておきたいと思います。
  309. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今回様の御趣旨で党名等を隠して三月二十八日に行われました議員の御質問の議事録をもう一度読み返しておりました。そのときには私は憲法四十三条の第一項においてということから御答弁を申し上げました。  私は、政党というものがその理念あるいは哲学、主義主張、こうしたもの全部含めて政策と申し上げたいと思いますけれども、その政策というものを実現していくためにその支持を広げたいと思うと同時に、政治家もまたみずからの理想を求めて政党を変わることはあり得ると思います、私は今日まで自由民主党に学生時代に入党いたしましてからそのまま参りましたけれども。ですから、私はそういうことはあり得るんだと思います。  その上で我々は、他党から我が党に入りたいとおっしゃいます方につきましては、入りたいとおっしゃる方のそのお申し込みを受けて、本人の御意思を尊重して入党手続をとらせていただいております。
  310. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 実は大変なことを今おっしゃったように思います。  比例代表制というのはそう簡単な党籍自由を認めていいものでありましょうか。選挙区の場合には個人名で立候補しまして、選挙民も個人名で投票する。政党公認であっても、我が国の政党政治というのはそこまで個人を縛るまでにはいっていないと思います。  しかし、比例代表制となれば話は全く別であります。どんな人がリストアップされているか、それは全く政党の自由であります。そして、その任期中は政党のために頑張りますという前提でリストアップされて当選してきた、これだけのことでありまして、決して難しいことでも何でもない、人間の約束事と言ってもいいと思います。  約束したことでその任期中は頑張りましょう、党内運営のことで問題がいろいろあるとすれば、それは党内で議論をして党内の改革を企てていけばいいことでありまして、それがほかの党に移る、こんなことを認めていたのでは、私は関係ありませんでしたけれども、皆さん方が苦心して築き上げました比例代表制度は崩壊するだろうと思います。ひいては民主主義そのものが問われかねない問題ではないかという気もいたします。大変大事な問題だろうという気がいたします。
  311. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 議員が御自身は関係ないということをおっしゃいましたけれども、私どももこの制度に賛成をした方ではございません。しかし、比例代表選挙で選出された国会議員が党籍を離脱された場合、その国会議員の身分をどうするか、これはいろんな議論が今日までもございました。これは憲法第四十三条第一項、これはむしろ法制局長官にお答えいただいた方がいいのかもしれませんけれども、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」、国会議員は法的に何物にも拘束されない独立した地位にあるという原則を示している点、こうした点を踏まえて慎重な検討が必要であるというのが従来から論議のポイントになっておったと思います。  このような制度が憲法に違反するのかしないのか、私はそれを判断する限定的なものを持っておるわけではございません。
  312. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 私が取り上げているのは憲法以前の問題、政治家としての筋道の問題、政治倫理の問題、人間の問題だということで問いかけておるわけであります。憲法上許されるとか許されないとか、そういう議論を私はするつもりはございません。  政党を離脱する、これは実は受け入れる政党があるから離脱するわけでありまして、もしそういう話が自民党の方に参りましたら、あなたは新進党の枠で当選したんですからその任期中は新進党のために頑張りなさい、遺憾ながら受け入れかねますというのが筋道ではないか。だれが考えてもそうだと思います。それを受け入れる、数合わせをする、これからもどんどん引き抜こうというふうなこと、一体政党人として何を考えておるのだろうか、国会全体のことを考えてほしいな、こういうことを思うわけであります。自民党だけでこの国会が成り立っているわけではない。この日本はすべての政党が寄り集まってお互い議論をして築き上げているわけでありますから、自民党がやりたい放題、引き抜きも勝手というようなことは政治倫理の問題としてどうなのか。  憲法問題でしたら、率直な言い方ですけれども、私は総理よりも多少は知識があろうかと思いますから、憲法問題を議論する気は全くございませんので、政治倫理として今のこの問題をどういうふうに考えるか、それを尋ねているわけであります。
  313. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) どう申し上げたらいいんでしょう。先ほど素直に答えろとおっしゃいますので素直にお答えをいたしました。そして、我が党の方から引き抜いている引き抜いているというお話がございました。私は、無理やり引き抜いている、嫌がる方を無理やり首に縄をつけて引っ張っているようなことを自民党がしているとは思いません。
  314. 岩崎純三

    委員長岩崎純三君) 以上で佐藤道夫君の質疑は終了いたしました。(拍手)  これにて景気対策外交及び政治倫理に関する集中審議は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時十四分散会