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国務大臣(
橋本龍太郎君) 何遍か機会をとらえて同じようなことを申し上げてまいりましたが、こうした問題に私が関心を持ち始めましたのは、高齢化ということが言葉として使われ始めるようになったころからでありますから大分以前になります。そして、人生五十年の時代に設計をされた
行政の仕組みが、人生七十年、八十年という時代になって果たしてたえ得るんだろうか。それが
行政改革というものに当初私が関心を持ち始めたきっかけでありました。
しかし、そのとき私の意識の中には、その影響というものは、当然ながら社会保障であるとか産業の構造であるとか、広く経済社会に影響を及ぼすとは考えておりましたけれども、出生率の低下がこれほど激しくなるという
状況は想定をしておりませんでした。
また、こうした問題を考え始めましたときには東西二大陣営の対立という冷戦構造が消滅してしまうというような意識もなかったことは事実です。
しかし、その東西二大陣営の対立の消滅といった大きな変化の中で、国際的にむしろ経済のグローバル化というものが進み、ボーダーレス化というものが進み、企業がいかにすれば立地に有利な国を選べるかという競争をする時代になりました。そうした中で、今まで我々を支えてきてくれたそのシステムに今後ともに頼り続けたらどういう事態になるだろう、問題意識の発端はそこであります。
そして同時に、こういう危機感の中から私は六つの
改革というものを考えました。それは、
行革会議の
中間報告の言葉をかりますと、かつて
国民の意欲を喚起し、社会に活力をもたらしたシステムが、今や、社会の閉塞感を強め、
国民の創造意欲やチャレンジ精神を阻害する要因となりつつあると、
行革会議が提起をいたしました言葉をそのままに今引用させていただいたわけであります。
この大きな変化の中で我が国が活力を持ち続けていこうとするならば、一人一人の
国民がみずからの将来に対してさまざまな夢をお持ちでありましょう、その夢に対してチャレンジできる、しかも成功するチャンスのある、言いかえれば創造性のある国家というものに変わっていかなければならないと
思います。そして、そのためには、物事をみずから考え、それに挑戦しょうと思える社会をつくるという言い方もできましょう。
しかし、そうした社会をつくっていこうとすれば、一つは、今国が抱えております
仕事を見直すことによって、住民に身近な
仕事ほどより住民に身近な自治体にお願いをする
努力を進めていく、これはまさに地方分権でありますし、国の規制やあるいは関与によって新たな業が育たないというような状態があるならば、また国がこの
仕事を実施しているために民間の能力が阻害されるということであるならば、官から民への移しかえというものも必要でありましょう。
そうした
努力の上に、これが当然ながら中央の省庁のスリム化を促進するわけであり、その機会に今の縦割りの
行政区分というものを全面的に見直してもっと大ぐくりな組織づくりはできないものだろうか、同時に、本当に各省に分散している権限、それが結果としては複数の省庁が一つの問題を
自分のところが主管だといってとり合うといったようなそんな
状況、こういうものを変えるためにいわば
行政機関を横に通じるくしのような形で運営することはできないものだろうか、そうしたさまざまな
思いの中からこのそれぞれのテーマに取り組んでまいりました。
そして、もしこういう言い方を許されますならば、今までややもすると中央が頼られ、中央がすべてをといった時代から、個人の尊厳と幸福というものに重きを置いた、自立的な個人というものを基礎とする自由で公正な社会というものを目指してまいりたい、私にとりましてはそのような
思いの中からそれぞれの
改革を進めております。
六つの
改革と言いましたときに、欲張り過ぎだという声をいただきました。しかし、これは相互に全部絡み合っています。どれか一つ後に置いておいて後から追っかければいい、そういうものではないと私は
思います。
ぜひ御理解を賜りたい、心から私はそう願っております。