○大森礼子君 実はこの後、裁判所の方でセミナーとかどうしておられますかと聞くつもりだったんですが、これはちょっと後におきまして、今
法務省の方から御答弁いただいたので申し上げるんですが、私も
司法通訳をやっておられる方の勉強会にちょっと参加させていただいたりとか結構
お話しする機会をいただくんです。そうすると、やっぱり現場の声というのが非常によくわかるわけですね。通訳の人と話すと、やはり刑事訴訟的な基礎知識についてあるいは倫理の問題とか、それから中立性をいかにして保つか、こういうことについてやっぱりトレーニングの機会がないということを一様に皆さんおっしゃいます。
それから、特におっしゃることは、裁判
関係者、裁判官、検事、弁護士さんもそうなんでしょうが、余りにも通訳について無知ではないかという意見もあるわけです。あたかも通訳といいますと、自分が
日本語をぽっと出せばそれがたちまち機械のごとく正確に疲れもなくすぐ出るかのように簡単に考えておられる方もいらっしゃる。だから、通訳というものがどういう大変な作業なのかということをもう少し裁判担当者の方にも理解してもらいたいという意見もございます。
それから、よくあるのが、特にこれは
法務省関係になるんですけれ
ども、供述調書の性格を余りよく理解しておられない通訳の方もおられるんですね。それは、例えばこれだけたくさん被疑者が言ったのに調書が数枚だったとか、それからそのとおりの言葉でなかったとか、それでこれはどうも捜査の方がおかしいんじゃないか、なぜそのとおりとらないのだというふうな意見もあるわけです。
そこで、たまたま私、検事の経験ありますから、いや、供述調書というのは速記録ではございません、供述者が言ったことをそのまま速記するのではなく、あくまで要約調書ですと。それから立証との関係もありますと。そういうことを
説明すると、ああそうだったんですか、よくわかりますと言って御納得いただけるわけですね。そういう
説明がなかったら、何かちょっと捜査側が変なことをやっているんじゃないかみたいなことを思われる通訳の方もいらっしゃるんだろうというような気がします。ですから、そこら辺のこともきちっと
説明してさしあげることが必要だろうと思います。
それから、よく言うことが、もっと単純な単語で短い文章で言ってもらえないものか、どうして法律
関係者というのはあんなにわざと簡単なことを難しい言葉で言うんでしょうかということも聞くわけです。例えば私も、強制わいせつで小学生の女の子が被害者になったというような場合、このときにはやっぱり子供の言葉で調書をとるわけですから、非常に短く簡単な文章で調書をとることになります。これでももう当然立証は十分なわけなんですね。ですから、通訳の方から見ると、もう少し
関係者の方が工夫してくださると疲れも少なく、より正確な通訳ができる、こういう意見もございます。
それから中には、ある裁判所でのことで、判決文をすぐ訳すわけですけれ
ども、横書きにしてくださっていた方がいた、これは本当にありがたかったと。縦書きのものを横文字で訳すのにこれは本当にうれしかったですと。よく私たちの仕事を理解してくださる裁判官だと思いますと。こういう意見もいろいろあるわけです。
それから、ベテラン通訳の方に起こりがちな問題として、多少なれているので自分の中立的な立場というのを忘れる方がいるという意見もあります。これはやっぱり通訳の方もたくさん勉強しようと思うので、ほかの方が通訳されるのを法廷へ見に行ったりとかこういうことをしておられるわけです。だから、トレーニングといいますと初心者とかこれから
司法通訳を始めようという人を対象として考えておられるようですが、実はそういうちゃんとしたトレーニングを受けなかったベテランの通訳の方こそトレーニングが必要ではないか、こんなさまざまな意見が出てまいります。
それから、長時間は疲れるので一時間ぐらいで休憩を置いてほしいとか、非常に切実な問題があります。
こういうことで、現場の意見を聞くということが非常により正確な
司法通訳制度を確立していくために必要なのだろうというふうに思うんです。
それで、今
法務省の方からは、そういう民間の団体とか民間の方と一緒に勉強する、そういう用意はございますと言われるんですが、裁判所の方はいかがでしょうか。裁判所の方でやっておりますセミナー等、これはこの後聞きますが、民間でそういう勉強会とかしている場合に裁判所の方も講師を派遣するとか、それがちゃんとした勉強会であればの前提ですが、こういう御用意があるかどうか、お尋ねしたいと思います。