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1997-12-04 第141回国会 参議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十二月四日(木曜日)    午後一時開会     —————————————    委員の異動  十二月二日     辞任         補欠選任      長尾 立子君     狩野  安君  十二月三日     辞任         補欠選任      狩野  安君     長尾 立子君  十二月四日     辞任         補欠選任      菅野  壽君     上山 和人君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         風間  昶君     理 事                 釜本 邦茂君                 清水嘉与子君                 大森 礼子君                 橋本  敦君     委 員                 遠藤  要君                 岡部 三郎君                 長尾 立子君                 林田悠紀夫君                 松浦  功君                 魚住裕一郎君                 円 より子君                 菅野 久光君                 千葉 景子君                 菅野  壽君                 照屋 寛徳君    国務大臣        法 務 大 臣  下稲葉耕吉君    政府委員        法務省民事局長  森脇  勝君        法務省刑事局長  原田 明夫君        法務省矯正局長  東條伸一郎君        法務省人権擁護        局長       横山 匡輝君        法務省入国管理        局長       伊集院明夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   涌井 紀夫君        最高裁判所事務        総局民事局長        兼最高裁判所事        務総局行政局長  石垣 君雄君        最高裁判所事務        総局刑事局長   白木  勇君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君    説明員        大蔵省証券取引        等監視委員会事        務局特別調査課        長        大前  茂君        労働省労働基準        局賃金時間部賃        金課長      鳥生  隆君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○法務及び司法行政等に関する調査  (出入国管理行政の在り方に関する件)  (登記所の統廃合問題に関する件)  (司法通訳に関する件)  (倒産法制労働債権に関する件)  (定期借家権導入に関する件)  (山一誰券問題に関する件)     —————————————
  2. 風間昶

    委員長風間昶君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  法務及び司法行政等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 釜本邦茂

    釜本邦茂君 自民党の釜本でございます。  本当に連日皆様方には御苦労さまでございます。いよいよ今国会もあと数日となりました。大変お疲れかと、かように思います。本日は一般調査ということでありますので、何点か質問させていただきたい、かように思います。  近ごろ、国際間の人的交流活発化に伴って、我が国を訪れる外国人は年々増加傾向にあると思いますが、またその一方では、我が国不法就労しようとする外国人増加しているのではないでしょうか。これら不法就労外国人の存在は、一般市民の生活にもさまざまな影響を及ぼし始め、また、犯罪を引き起こすなど治安の悪化も懸念されるところであります。このような状況にあって、人の出入国在留を管理する出入国管理行政の果たす役割はさらに重要性を増しているものと思われます。  ところで、先月、当委員会の茨城県牛久市の東日本入国管理センター視察に参加させていただきました。同センターは、出入国管理及び難民認定法の規定により、我が国から退去を強制される外国人を送還するまでの間、一時収容することを目的として設置されている入国管理行政施設ですが、その施設の面積の広さ、また現代的というか近代的というか、その建物に大変驚かされました。一方、そこで勤務する職員の皆さんの昼夜を問わず御苦労されている姿を拝見いたしました。こうした視察の結果を踏まえて、私、出入国管理行政を中心に質問をさせていただきます。  まず、出入国管理行政にとりまして、国際化ということは切っても切り離せない必要不可欠なものと考えますが、この国際化の身近な問題として外国人新規入国者数外国人登録者数推移を挙げることができます。  そこで、まず初めに、これら外国人新規入国者数及び外国人登録者数の過去五年間の推移についてお聞かせ願いたいと思います。
  4. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) まず、過去五年間の外国人新規入国者数でございますが、平成四年三百二十五万一千七百五十三人、平成五年三百四万七百十九人、平成六年三百九万一千五百八十一人、平成七年二百九十三万四千四百二十八人、平成八年三百四十一万二十六人となっております。  次に、過去五年間の各年十二月末現在の外国人登録者数でございますが、平成四年百二十八万一千六百四十四人、平成五年百三十二万七百四十八人、平成六年百三十五万四千十一人、平成七年百三十六万二千三百七十一人、平成八年百四十一万五千百三十六人となっております。
  5. 釜本邦茂

    釜本邦茂君 まさに三百万人以上の人たち日本を訪れるということですが、これに伴って訪れる人たち国籍も多様化していると思います。また、訪れる目的も、観光客が多いとは思いますが、例えば留学する人、また働きたい人たち日本人と結婚して日本に住むという、さまざまな目的の人がふえているのは承知していますが、最近の外国人新規入国者国籍別また在留資格別の数及びその特徴についてお聞かせ願いたいと思います。
  6. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) まず、平成八年中の国籍出身地別上位五カ国の新規入国者数を見ますと、第一位が韓国で八十九万七千四百六十七人、第二が中国台湾)となっております。これは台湾の方ですが、六十九万五千二百三十八人、三番目が米国で五十二万八千八百四十一人、四番目がイギリス香港)、これは香港イギリス籍を持った方ですが、十三万五千九十六人、第五が中国、本土でございますが、十三万四千百四十人となっております。  次に、平成八年中の新規入国者数在留資格別に見ますと、短期滞在が三百十八万四千六百四十二人、興行が五万三千九百五十二人、研修が四万五千五百三十六人、日本人配偶者等二万五千八百六十九人、家族滞在一万五千百九十九人、定住者一万二千七百七十三人等となっております。  これらについて特徴を申し上げますと、平成八年中の新規入国者数三百四十一万二十六人は前年の二百九十三万四千四百二十八人に比べまして、四十七万五千五百九十八人、比率にして一六・二%増加しております。  国籍別では、韓国が最も多くて全体の二六・三%を占めております。また、地域別ではアジア地域からの新規入国者が二百六万二千七百八十三人と全体の六〇・五%を占めておりまして、以下北米地域一八・一%、ヨーロッパ地域一六・四%、南米地域二・三%等となっております。  さらに、在留資格別では短期滞在者新規入国者の九三・四%を占めております。その他の在留資格増加率の高いものを見ますと、日本人配偶者等定住者研修家族滞在等となっております。
  7. 釜本邦茂

    釜本邦茂君 今、法務省の方の説明ですと、我が国に入国する外国人の数が国際化進展を反映して増加傾向にあると。平成八年には三百四十万人の人が入国したということでございますが、これらのすべての入国した人たちが法令を遵守して滞在しているとは思えないわけです。最近の新聞によりますと、密航事件がたびたび報道されており、また不法就労問題も深刻化しているというように思います。  そこで、不法残留者数の最近五カ年の推移についてと、またこれら不法残留者数国籍別在留資格別の数及びその特徴についてお聞かせ願いたいと思います。
  8. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) まず、過去五年間の不法残留者数の動きでございますが、平成四年から平成八年までは各年五月一日現在の数字でございますが、平成四年二十七万八千八百九十二人、平成五年二十九万八千六百四十六人、平成六年二十九万三千八百人、平成七年二十八万六千七百四人、平成八年二十八万四千五百人、それから平成九年、これは七月一日現在の数字でございますが、二十八万一千百五十七人となっております。  次に、平成九年七月一日現在の不法残留者数国籍別内訳でございますが、韓国五万二千八百五十四人、フィリピン四万二千六百二十七人、中国三万八千九百五十七人、タイ三万八千百九十一人、ペルー一万二千七十三人、その他九万六千四百五十五人となっております。  その在留資格別内訳でございますが、短期滞在が二十万五千七百四十三人、就学一万七千八十人、興行一万三千六百八十三人、留学七千八百八十六人、研修二千八百九十七人、その他三万三千八百六十八人となっております。  これらについて特徴を申し上げますと、不法残留者数近隣諸国との間の経済格差等背景としまして、平成五年五月一日現在には約二十九万九千人に達しましたが、その後は厳格な入国審査及び積極的摘発に加え、経済事情変化等もありまして、増加に一応の歯どめがかかり、本年七月一日現在の不法残留者数は、平成五年五月一日現在に比べて一万七千四百八十九人、率にして五・九%減少しております。また、国籍別に見ますと、韓国は全体の一八・八%と最も多く、次いでフィリピン中国タイ等アジア圏国々が多数を占めております。  次に、在留資格別に見ますと、短期滞在不法残留者数全体の七三・二%と圧倒的多数を占めております。
  9. 釜本邦茂

    釜本邦茂君 今、不法残留者数上位を占める国々の名が幾つか挙げられましたが、視察いたしました入国管理センターにおきまして、国籍を有していても本人の帰国の意図がない場合、強制送還しようとしても引き受けない国があるとか、また、働いた賃金をもらっていない裁判というようなことをお聞きしたわけですが、そういう中で、長期間収容するということになると、外国人が大変なのか、反対に三食昼寝つきというようなこともあって居心地がいいと思っている人もいるかもしれません。しかし、同センター職員仕事量、それからまた世話をするというこの負担がますます増加していくのではないか、また、費用も増大していくというように危惧もしております。  そこで、こうした国々に対して政府としてどのような対応をとっているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  10. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) 今、委員指摘のとおり、一部の外国人については帰国させるのがいろんな事情でなかなか難しいということがございます。  私どもとしましては、特に帰国用の有効な旅券を所持していないという例が結構ございますので、そういう理由で早期に送還できない者につきましては、その者の国籍国在日公館に対して旅券を早急に発給してくれというような申し入れを強く行っておりますし、それから自分の国の人をなかなか受け取らない国に対しましては、外務省を介しまして被退去強制者早期引き取りを強く要請するなどいたしまして、早期送還に努力しているところでございます。
  11. 釜本邦茂

    釜本邦茂君 次に、不法就労者問題を取り上げたいと思います。  入管法第七十三条の二第四項に規定する不法就労活動と認められた不法就労事件は、最近の入管法違反事件のうちの約九割を占めていると聞き及んでおりますが、この不法就労者就労状況及び不法就労事件特徴についてお聞かせ願いたいと思います。
  12. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) 私ども平成八年中に退去強制手続をとった外国人の数は五万四千二百七十一名でございますが、そのうちで不法就労活動に従事していたと認められた者は四万七千七百八十五名ということで、委員指摘のとおり全体の約九割近くを占めております。  不法就労外国人国籍別内訳でございますが、多い方から申し上げて、韓国中国タイフィリピン、マレーシア、イランの順となっておりまして、就労内容別で見ますと、男性の場合は建設作業員、工員といった者が多くて、一方女性の場合は、ホステス、ウエートレス等として稼働していた者がその大部分を占めております。  最近の不法就労事件特徴といたしましては、就労期間が長期化する傾向がうかがえます。それからさらに、悪質なブローカー等が介在して、摘発を免れるために日本人との結婚を偽装する者とか、日系人を偽装する、そういう格好で就労するケースなどが今まで以上に見られるということで、その手口が悪質・巧妙化しているということでございます。
  13. 釜本邦茂

    釜本邦茂君 不法就労等入管法違反は、特定地域だけではなく、関東周辺というようなことだけじゃなく全国的に一地方都市まで広がっている傾向と聞いておりますが、この不法就労者地方分散化に対する法務局の摘発体制についてお聞かせ願いたいと思います。
  14. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) 従来、不法就労者東京大阪名古屋といった大都市圏に集中しておりますけれども 委員指摘のとおり、最近では地方都市での不法就労活動が非常に目立ってきているということで、地方拡散化傾向が見られるところでございます。  私どもといたしましては、こうした状況に対処するために、警察等関係機関との密接な連携を図りつつ、東京大阪及び名古屋入国管理局に設置されております不法就労対策特別調査チーム、それから、本年度から東京局に設置いたしました悪質事案特別対策チーム、こういうものを軸といたしまして常時広域で摘発を実施しておりますほか、すべての地方入国管理局におきまして、集中摘発努力期間、こういうものを設けまして集中的に摘発するなど、摘発の一層の強化を図っておるところでございます。
  15. 釜本邦茂

    釜本邦茂君 そういう摘発期間を設けてということでございますけれども、これは常時本当にやらなきゃいけないことじゃないかというぐあいに私自身思うわけです。ただいま不法就労者摘発体制について法務当局から説明があったわけでございますが、この不法就労者背景として、今お話しありましたようにブローカー、それからまた暴力団というものがいるというように思います。こういった問題を解決するために、不法就労助長罪罰則強化、それから雇用主ブローカー対策強化すべきではないかというように思いますが、法務省の見解をお聞かせ願いたいと思います。
  16. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) 不法就労助長罪、これは平成元年入管法の改正によりまして新設されたものでございますが、施行後約七年半を経過しております。警察庁の統計によりますと、この不法就労助長罪送致件数でございますが、平成四年以降平成八年までの間に年間約三百件ないし約七百件の間で推移してきておりまして、この罪の新設は不法就労助長事犯の抑止に効果を上げているものと私どもとしては考えております。  今後、この不法就労助長罪運用状況、それから不法就労者数推移などを見ながら、罰則強化必要性についても検討していくこととしたいと考えております。
  17. 釜本邦茂

    釜本邦茂君 この不法就労問題の解決のためには、摘発体制のこれからの強化、また今もお話がありましたように罰則強化等、さまざまな対策がとられているというように思います。しかし、やはり不法就労の土壌をつくらないということが肝要かと思います。  そこで、こうした不法就労を防止するための啓発活動が必要と考えますが、この不法就労防止のための広報活動はどのようにして行われているのか、お聞きしたいと思います。
  18. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) 委員指摘のとおり、不法就労防止のためには国民の理解と協力を得ることが不可欠でございますので、私どもとしましては、まず第一に不法就労防止等を呼びかける。パンフレットの作成というのを行っております。第二に広報ビデオ作成、第三にインターネット、法務省ホームページの利用、第四に東京大阪名古屋、各地方入国管理局における巡回指導、それから第五に政府広報の活用などの方法で不法就労防止のための広報を推進しております。  また、不法就労問題や対策に関する資料報道機関への提供、それから取材申し込みに対する積極的な対応等を行っております。  さらに、毎年六月には不法就労外国人対策キャンペーン月間というのを設けておりまして、地方入管局はもとより関係省庁や地方自治体の御協力も得まして、企業、事業者団体等関係者に対する啓発活動を行っております。例えば、一日入管局長というようないろんな行事を設けてこういうキャンペーン月間を行っているということでございます。  さらに、不法就労者が多い国の在日公館に対しては、不法就労防止への協力依頼等も行ってきております。  今後とも、不法就労防止のため、あらゆる機会をとらえまして積極的な広報活動に努めていきたいと考えております。
  19. 釜本邦茂

    釜本邦茂君 これまで出入国管理行政についていろいろお聞かせいただきました。我が国出入国管理行政は、国際化進展によりその業務量が増大し、質的にも複雑困難化してきているのが現状ではないかというように思います。  さらに、まだ少し先ではありますが、二〇〇二年に日韓共同ワールドカップが開催されるということで、これからもスポーツ・文化交流を通じ大勢の人たち出入国しますが、こうした現状がそれを支える職員一人一人の大きな負担になるというように思います。  そこで、こうした状況について、人的体制整備充実という点について、また出入国管理行政を取り巻く現在の国内外の情勢を踏まえ今後の出入国管理行政のあり方について、最後に大臣の所見を賜り、私の質問を終わらせていただきます。
  20. 下稲葉耕吉

    国務大臣下稲葉耕吉君) るる出入国管理行政につきまして御質問賜り、政府委員から答弁いたしたわけでございますが、委員指摘のとおりに最近の国際交流というのは年々増加いたしておるわけでございまして、先ほどお話がございましたが、昨年度は三百四十一万人、大ざっぱに言いますと毎日一万人ずつ外国人が入国している。日本人外国に行きますのは千六百万を超しておりますので毎日四万五千人をオーバーしている。それほど国際交流というのは激しくなっているわけでございます。  法務省といたしましては、基本的には、そういうふうな国際交流というのはもう当然のことでございますので、正規外国人の方が日本においでになるということは歓迎すべきことだと思います。  御指摘のように、ワールドカップの問題もございますし冬季オリンピックの問題もございますし、国際交流というのはどんどんふえていくと思います。だから、そういうふうな方々がスムーズに、そして気持ちよく入国されることができるような体制をつくるというのは入管行政の基本だろうと私は思います。  他面、今お話がございましたように、二十八万人のいわゆるオーバーステイの方々がおられるというのが現実でございます。二十八万人というと、これはもう大変な大きな都市一つに相当するわけでございます。若干名ずつ減少いたしておりますけれども、私自身はこういうふうなものはもう限りなくゼロに近づけなければいけない。正規にどんどん交流を増大していく反面、その辺のところは今委員指摘のように厳しく対処していかなければならない。  入管当局にも私の考え方を申しているわけでございますが、これはやはり関係機関とも協力いたしまして、具体的には警察等々とも協力いたしまして、二十八万人というその大きな数字がここ数年変わっておりませんので、これを何とかひとつ減らすような方向でやらなければならない、こういうふうに思います。  そういうようなためには、体制充実の問題なり、あるいは機能の合理化の問題なり、コンピューターの導入といってももっとやらなくちゃなりませんし、現在のようなやり方でいいかどうか、この辺の問題も考えなくちゃなりません。  行財政改革人員削減、きょうの臨時閣議でもその辺のところを議論したばかりでございますけれども、そういうふうな厳しい中ででも私どもは工夫を凝らして、あるいは場合によっては省内の中から何かそういうふうなもので配慮できないかどうかというふうなことも含めて検討いたしまして、そうして情勢変化に、国際化進展対応できるような入管行政に努めてまいりたい、このように思います。
  21. 釜本邦茂

    釜本邦茂君 ありがとうございました。
  22. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 平成会魚住裕一郎でございます。  約三週間前ですか、先月の十三日に質問に立たせていただきました。来年の予算に関連して、登記簿謄本あるいは抄本、さらには閲覧の手数料、二五%という大幅アップを予定しているということに関連していろいろ質問をさせていただきました。  その中で、たくさんの有料ではない謄本抄本についての質問もさせていただいたんですが、そのとき実際に無料通数は一体どのぐらいなのかということをお問い合わせいたしました。事前に通告をしておりましたけれども総数の約一割ですという御答弁だけでございました。  国民に大きな負担をかけるものについて、無料通数についての数字が出ないというのはおかしいなと思っておるところでございます。三週間たったわけでございますが、この無料通数について再度お尋ねをいたしたいと思います。
  23. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) 無料登記簿謄抄本通数でございますが、これは統計上の数値はございませんが、委員の御指摘を受けまして、平成八年の無料登記簿謄抄本通数並びに枚数調査いたしました。その結果、平成八年分につきましては、無料の謄・抄本通数は千百一万二千六百二十八通でございます。これを枚数にいたしますと三千八十七万七千九百六十枚、こういうことになります。
  24. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 この謄・抄本の数の問題につきまして引き続きいろいろ調査をしておりますが、数値としては、「民事・訟務・人権統計年報I」というのがございますが、ここでは、「謄・抄本交付等請求事件推移」という形で各年次における総数、これは件数で表示されております。  また、法務省が努力されてホームページをつくっておられて、その中でも、今度は総件数だけではなくして謄本の数、抄本の数、閲覧の数等を具体的に数値を掲げてやっておられます。  例えば、平成八年における謄本交付請求事件数は二億七千七百六十六万五千九百四十三件、抄本については一千八百三十三万三千八百六件という数値が出ております。この謄・抄本、合計いたしますと二億九千五百九十九万九千七百四十九件という数値になります。この請求事件というのは、登記簿謄本または抄本交付、さらには、もちろん印鑑証明とか、そういう請求事件事件数を述べているというふうに説明書きがございます。  ところで、来年の予算概算要求重点事項の中で、関連の資料なんでしょうか、来年度からの三カ年における事件推計というのがございます。謄本抄本の中の有料通数につきまして、この三年間、合計で二億四千七百四十三万四千五百八十五通という数値が出ております。  実は、無料の率はどのぐらいか、前回質問させていただいたときは約一〇%ぐらいであるという表現でございました。しかし、予算概算要求数値を見ると三年間で二億四千万、そうすると一年間の推計では約八千二百万通を予定されているということになります。現実謄本抄本事件数は二億九千万という数字が出ている。そして平成十年、十一年、十二年、この予測では一年間に約八千万通という数が出ております。そうすると、計算して細かい一の位まで考えてみますと、大体有料であるという通数は二七・八六%になるんですね。そうすると、逆算しますと約七二%が無料の謄・抄本になる、こういう計算になるわけでございます。  民間からの三割の負担で七割の無料が運営されているというふうな形になるんですが、先般は無料の率は一〇%であるという答弁がございました。私の計算が間違っているならそれで結構なんですが、どこにその間違いがあるのか、お教えいただきたいと思います。
  25. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) まず、司法統計あるいはホームページに示してある数値、これは謄・抄本とも件数であるという形にしか読みようがないものになっております。  登記簿というのは、登記している事項の量によって複数枚の登記用紙から構成されているというのが普通でございまして、登記簿謄抄本一通は複数の枚数から成っているのが通常でございます。そこで、民事統計上、ただいま申しました謄・抄本件数として表示しておりますが、ここで言う件数というのは枚数をあらわしているということでございます。  このような統計処理がなされている理由といたしましては、謄・抄本作成業務を委託するという場合に、業務量を測定するという場合でありますとか、謄・抄本作成するに要する用紙の量といったものを把握するのに便宜があるというような点からこうした処理がなされてきたものと思っております。また、古くは謄・抄本枚数によって手数料が算出されていた。その時代の名残といいますか、そのまま枚数統計上掲げてきたという経緯にあるようでございます。それで前回、過去五年分について無料枚数の割合は全体の約一割であるというお答えを申し上げました。  今回、平成八年分について実数を調査いたしましてその無料通数の割合を出しましたところ一二・二%ということでございました。したがいまして、平成八年については一二・二%というのが正確な数値でございます。
  26. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 要するに、今の御答弁は事件数件数と言いながらも実際は紙の一枚、二枚だということでございます。しかも、それは手書きの時代の名残であるというお話でございます。今はゼロックスといいますか、光学式のコピー機械がございますが、昔は青焼きだったと思うんですね。そうすると何年になるんでしょうか、戦前から青焼きはありますから、もう五十年以上にわたって、実は枚数なんだけれども件数とずっと言ってきたということなんでしょうか。そういう理解でいいでしょうか。
  27. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) お答えいたします。  先ほど申しました枚数によって算出することから通数によって料金を算定するというようになりましたのは、昭和五十二年からでございます。
  28. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 いずれにしても、二十年以上取り扱いが変わってきたということになりますね。  この「民事・訟務・人権統計年報I」、これはもちろん省内的な法務行政に役立たせるということもあろうかと思いますが、これは公刊されており、国民に対する行政情報の開示ということがあろうかと思いますし、ましていわんやインターネット上にホームページを設けているということからしてみれば、まさに日本国民のみならず全世界に発信して、日本法務行政はこうやって頑張っていますよということを示すわけであります。  請求事件数というと、普通一筆の土地あるいは一個の建物について一つの謄・抄本をとれば、これを一通とかあるいは一事件数と言うのが私は普通の日本語の使い方ではないかなというふうに思っておるわけでございますが、これは多くの方に誤解が生じるかと思います。その点、法務省としてはどのようにお考えでしょうか。
  29. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) 今、先生から御指摘いただきましたとおり、確かに件数としか読めないような表示は国民の皆さんに誤解を与えるおそれがあるという認識を現時点で持っております。  司法統計年報は当然に国民方々もごらんになる、それによって行政の実態を知り得る資料になるという点も委員指摘のとおりでございます。したがいまして、今般、手数料を改定することになりました際には、ただいまの委員の御指摘を踏まえまして、国民にわかりやすい資料作成して正しい理解をしていただくという努力をいたしたいと思います。
  30. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今の御答弁、全然納得できないんです。  料金改定、手数料値上げがOK出たらそういうわかりやすいサービスに変えますよという表現になっておりますが、料金を二五%大幅アップするかどうかというのはこれから審議することであって、これが本当にいいのかどうか、これからの問題でございます。それにもかかわらず、きっちりわかりやすい説明をする、この民事・訟務・人権統計年報もまた別個にきちっとわかりやすく誤解が生じないようにするのが本来の行政サービスというふうに考えますが、いかがですか。
  31. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) ただいまの答弁、適切でなかったと思います。差し当たりインターネットについては早急に誤解を生じないような形に改めたいというふうに考えます。  また、司法統計年報につきましても、このままの形では委員指摘のとおりの誤解を生じかねないということも踏まえまして、ただ統計年報ですと継続性等の問題もありますので、そこらあたりを十分検討して、改善の道を探りたいというふうに考えております。
  32. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 これから国民負担を求めるかもしれないという状況の中でございますので、この辺しっかり誤解がないようにしていただきたいと思います。  次に、前回、民事局長の方から、法務局の統廃合についての趣旨だけで終わってしまったんですが、お話を若干承りました。その中ではほとんど行政改革という言葉がなかったのであります。歴史等を通じての御答弁であったわけでございますが、これはいろいろ調べてみましたら、平成八年十二月二十五日の閣議決定、行政改革プログラムにおいてこの法務局・地方法務局の出張所の整理統合について言及されております。  行政改革というのは行政のスリム化さらには行政サービスの向上ということがねらい目かというふうに私は思っております。まずスリム化という点からいたしまして、権限を少なくするとかいろいろあると思いますし、また物的、人的組織の削減というふうになっていくんだろうというふうに思いますが、特に人的な部分、要するに定員削減等について具体的な計画というか、それはどのようになっているんでしょうか。
  33. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) 法務局の統廃合につきましては、委員今御指摘のとおり、行政改革プログラムの閣議決定に基づきまして行われておるところでございますし、それ以前の統廃合につきましても政府の行政改革の一環として推進してきたというところでございます。  ところで、スリム化のうち人的な部分、すなわち人員削減についてはどうかという御質問であろうかと思われますが、実は登記の申請件数というのはここ三十年ほどの間で非常な伸びを示しております。申請件数にして四倍でございますが、人員としては三割程度の増ということで抑えられてきております。この間の努力は、統廃合でありますとかあるいはコンピューター化の推進ということによって賄ってきたところでございます。また、乙号事務と私ども言っておりますが、謄・抄本の発行というものを外部に委託するというような形で賄われてきたところでございます。  こういった窮状をしのぐといいますか、そういう形で事務が進められてまいりましたために、申請事件の処理というのはどうにか追いついていけているという状況でございます。ただ、それ以外の部分、すなわち登記所にございます地図の整備等の問題につきましては、この作業が若干立ちおくれてきているという状況にございます。  今後、統廃合を一層進め、あるいはコンピューター化の促進を図るということによって生じます人員につきましては、こうした従来若干置き去りにされてきた部分の業務、あるいは今後行政情報の高度化に伴いまして国民サービスにより高度なものを提供していくといったような分野に振り向けていくべきではないかというふうに考えておるところでございます。
  34. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今の御答弁の中で、人員も三割増で抑えてきたというような言い回しがございました。それはまた事件数が大幅にふえたからであるということでもあります。人がふえれば入れ物がやっぱり大きくなる、あるいは多数カ所に配置するというのが一般的な考え方だろうというふうに思いますが、統廃合と言うと逆に入れ物を減らしていくよということでございまして、ちょっと方向が逆じゃないかなと思いますが、いかがですか。
  35. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) 統廃合というのは、究極的には法務局の組織の分散化を解消することによりまして総合的なサービス体制強化を図るというものであろうというふうに理解しておるところでございます。  法務局の実情を申し上げますと、現在九百六十庁ぐらいに集約してまいりましたが、それでもなお六人以下の職員で賄われている小規模庁がおおむね半数を占めるといったような状況でございます。そういったところを統廃合いたしまして、そこの職員をより繁忙なところ、あるいは地図整備のおくれているところ、そういったところに配置するということによって現在おくれている事務が達成できるのではないか、あるいは新しい高度情報社会に見合ったサービスの提供に振り向けられるのではないか、こういうふうに考えておるところでございまして、集約化することがスリム化にならないということは当たらないのではないかと考えております。
  36. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 今御答弁の中で、分散化を廃し集中化して対応したいというお話でございますが、分散化を廃された地域というのはそれだけ行政サービスが遠くに行ってしまうということでございます。地元の司法書士あるいは土地家屋調査士さらに地元企業あるいは町の発展を考えておられる方々、大変な思いでおると思います。  何か民行審の中でその適正配置について基準をつくっておられるようであります。その一つの基準が、事件数一万五千件未満あるいは所要時間おおむね三十分程度、これを一つのサービス圏、サービスゾーンとしてまとめていこうというような基準をつくっておられるようでございますが、実はそうじゃないというか、この基準にも合わないところが出てきているようであります。いろいろなところから法務委員会でしっかりこの点についてどうなっているんだというふうに聞いてもらいたいというのが日本各所から来ているところでございますけれども、この基準に合わないにもかかわらずさらに統廃合をしていこう、こういうことはどういうことなんでしょうか。
  37. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) 委員指摘のとおり、平成七年七月に民事行政審議会から答申された今後十年程度の間に実施すべき登記所の整理統合の基準というものがございます。その中には、ただいま御指摘いただきましたとおり、登記所の適正配置の基準といたしまして、原則として一つの広域市町村圏に一つの登記所、ただし当面は以下のいずれかに該当する登記所を統合するということで、事件数一万五千件未満、所要時間おおむね三十分程度という基準が立てられておるところでございまして、現在この基準に沿って統廃合を進めておるというのが実情でございます。
  38. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 私の地元で、地元の話で大変恐縮なんですが、調布出張所というのがございます。年間五万二千六百件あります。それを今度府中の方にくっつけちゃう、そういうような御提案があるやに聞いております。件数からいえばもう基準をはるかに上回る大変繁忙な出張所であります。時間については、電車、バス三十分、自動車二十一分というような調査のようでございます。あるいは法務省の方がお調べになったかどうか私わかりませんけれども、調布、狛江、この近辺は選挙で飛び回っていても予定の時間に着かないぐらい大変交通が渋滞するところでございまして、これが本当に二十一分で受け入れ庁まで行けるのかなというふうに思っているところでございます。さらに世田谷の一部も管轄をしておりますけれども、これを世田谷出張所の方に管轄圏を移動して行うというようなことも練られているようであります。  選挙をやってくる人間として見れば、ゲリマンダリングというのは非常に嫌なことでございまして、同じ手法を法務省がまさにやって、それでもさらに統合していこうかというような動きもあるように聞いております用地元からも大変強い批判、さらには商工会議所等を含めて一体どないになっているんだというような声がたくさん上がってきておりますが、これはどのようにお考えでしょうか。
  39. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) 今、委員指摘になりました事例につきましても、先ほど申し上げました基準に該当するということを調査の上確認いたしまして着手したという状況にございます。  ただ、これは非常に統合される庁の付近住民の方に対しましては不便をおかけする面が避けられないわけでございまして、その不便を緩和する方策といたしまして、例えば郵便局に登記簿謄本の請求用紙を備えおくというような手だてをしたり、巡回による地域住民への登記相談を定期的に開催するといったようなことも実施してきておるところでございまして、こうした措置によって、登記所に来庁しないでも登記に関する地域住民の主要なニーズにこたえることができるような方策を講じながら、地元の皆さんにも理解を得るように努めてきているところでございます。  また、地方の例でございますと、地域の司法書士、土地家屋調査士といった登記の代理をする専門の方々が、統合された後もその地域社会に定着して引き続いて住民に対する法務サービスを提供していくことによりまして地域住民の利便が低下しないようにする配慮も重要であろうというふうに認識しておるところでございまして、そのためには、統合後の法務局の駐車場を確保するといった手だてをいたしまして、司法書士等が地元に定着することを支援する方策というものも講ずるように努めておるところでございます。
  40. 魚住裕一郎

    魚住裕一郎君 御答弁中に時間が来てしまったわけでございますけれども、地元の意見をぜひぜひよく聞いて納得の上でやっていただきたいなというふうに思っております。  裁判所の方が見えておりますが、大変恐縮ですがちょっと時間になってしまいましたので、また次回お願いしたいと思います。  終わります。
  41. 大森礼子

    ○大森礼子君 平成会の大森礼子です。  きょうは、釜本委員が入国管理の問題についてお尋ねになったんですけれども、私は、日本に入国した外国人が犯罪を行った場合にどういう問題になるかという点について質問させていただきたいと思います。  ことしの三月二十七日の参議院法務委員会で、私は外国人事件司法通訳の問題について質問させていただきました。そのときは、時間の関係もありまして概括的な質問しかできませんでしたので、きょうはそのときの御答弁も踏まえて少し詳しく質問させていただきたいと思います。  まず、捜査段階での通訳人確保等につきましてお尋ねしたところ、法務省の方の答弁では、通訳人名簿を常に全国版で作成し、これを各検察庁に配付、それから名簿の内容をデータベース化等しております、あるいは法律用語の対訳集をつくり配付しております、それから通訳人セミナーを全国規模で本省により主催しております等の御答弁を受けました。この内容について少し詳しくお聞きしたいと思います。  まず法務省にお尋ねいたしますけれども、通訳人名簿を作成しているということですが、この場合通訳人名簿記載の条件といいますか、基準といいますか、これはどのようになっておりますでしょうか。それから通訳といっても、裁判所の方の法廷通訳のみならず捜査段階の通訳も問題になって、両者合わせて司法通訳と一応言わせていただきますけれども、裁判所の方で掌握している通訳人とそれから検察庁の方で掌握している通訳人と名簿上重なることもあるのかなという気もするんですけれども、そのあたりのことを御答弁いただきたいと思います。
  42. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 法務省が、捜査段階で取り調べ等の関係で通訳が必要な場合、それをそれぞれの検察官が選んでまいる場合に、その参考にするために通訳人に関するいろいろな情報を集めているということの一環として通訳人名簿のお話を申し上げました。  もともと平成四年に通訳人名簿を新たにつくりましてそれを配付させていただいたのですが、その後やはりかなりアップ・ツー・デートなものにしていく必要があるというようなことから、そのような冊子にして配るというよりは、できるだけ新しい情報を集めて、それをデータベース化して、いわばオンラインで各地検の担当検察官が通訳人名簿を参照して必要なときに通訳人を選んでいける資料にする必要があるということで、ただいまお話しになりましたデータベースの問題が出てきたわけでございます。  そして、実際いろいろなことを試行いたしました結果、平成六年になりまして各検察庁と最高検を結んでデータを集約する、そしてそれをさらに私ども刑事局の担当部署に送っていただきまして、それはいわば即日というわけにまいりませんけれども、できるだけ頻繁にと申しますか、実際には一月に一回ぐらいのペースで実際の通訳人の状況をデータにして送っていただいて、それをデータベースにしていく。そして、それを全国の検察庁が参照できるようにしていくというやり方をとらせていただいているわけです。  そこでは、実際に各検察庁におきまして通訳を依頼してまいります。これまで依頼されていてその実績のある方のほか、実際に例えば新たに必要だということで人数を広げていく可能性もございます。そして、確保された通訳人の氏名、言語その他の状況につきましてデータ化して、それを送っていただくと。そこでは語学の能力あるいは刑事手続に対する知識等、かつ実際に仕事をしていただきまして公正中立な者であるという観点から、検察庁として今後も使わせていただきたいというような相手ということを中心にデータ化して送ってもらうということでございます。  そういう意味で、言語のことでございますので、どの程度のものだということ、これは例えば英語とか主要語では一般的にTOEFLとか語学に関するある程度の標準化した考え方がございますけれども、そうでない言語が実際には大変多くて、しかも必要性がそういうところにあるということから、実際にやはり使って仕事をしていただいて、そこで各検察官が得た情報というものを集めていただくということでデータ化しているというのが実情でございます。  結局、そこでは経歴、経験、また御本人の意向もございます。それから、それに伴う実績等を勘案して選任している。それをいわばできるだけオンラインで各地が利用できる、参考にしていくということを目指してデータベース化させていただいているところでございます。  それが最初に構築されたのが平成六年六月の段階でございまして、その段階では約千九百人余りの方々が各言語で確保されていましたが、最近の一番新しいデータでは三千七百六名ということで、かなり多くなってまいっております。現在、そういうことで通訳人の各言語ごとの、また全国的にどういう散らばりであるかというようなこと、あるいはそのデータベースによると、同じ方に地検を異にして実際やっていただいたということも即座にわかってくるようなデータベースになっているわけでございます。  そういうことでございますので、お尋ねの高裁で別途つくっておられます候補者名簿との突き合わせということまで全般的にはやらせていただいておりません。ですから、必ずしも重なっている度合いがどの程度かわかりませんけれども、恐らく少数の言葉というようなことになってまいりますと、ある程度重なっている場合もあるいはあるのではないかと思いますが、正確に全部照らし合わせたものではございませんので、確たることはデータとしてお示しすることはできませんので、御了承いただきたいと思います。
  43. 大森礼子

    ○大森礼子君 高裁名簿と重なるかという質問をなぜしたかといいますと、もし重なる方が多いのであれば、例えばそういう方のトレーニングとかを今後考えていく場合、法務省と最高裁と格別にやらなくても、一緒に共同してやれる可能性もあるのかなと思ったので質問させていただきました。  それで、今の御答弁に対して、例えば少数言語について、例えばオンラインでデータ化、要するにデータベースに記載される方というのは、ある程度仕事をしていただいて、その上でこの方なら大丈夫だと、これは検事の判断になるかもしれませんが、これをクリアした方を載せているということなのでしょうか。
  44. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 基本的にはそういうふうにお考えいただいていいと思います。ただ、できるだけ範囲を広げていくということで、一回おやりいただいた場合でも、特に地方によって、少ない言語についてはやはりデータとして蓄積していく必要がございますので、いわば検察官がどう考えたかというところまでの記載はございませんけれども、ある程度候補者として選んでいく幅広い材料を得るという観点で、できるだけ広げていこうということで現在やらせていただいているのが実情でございます。
  45. 大森礼子

    ○大森礼子君 それから、全国規模での本省主催の通訳人セミナーを実施しておられるということなのですが、例えばこの三年間ということでいいと思うんですが、何回くらい、どこでどういう形で開催したのか、その参加通訳人の数はどのくらいであるか、本省のどういう部署が担当するのか等についてお尋ねいたします。
  46. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。  この通訳人セミナーということで申し上げさせていただきましたのは法務省が主催するもので、実際は私ども刑事局の担当部局が法務総合研究所に依頼をいたしまして、そして開催していただくと。しかし、そのセミナーの中身、特に刑事手続の詳細、その概要、実際にどういう言葉が使われているかというようなことに関しましてはかなり専門的な中身になりますので、その講師等については法務省刑事局のみならず、現場のそういう担当者にも来ていただいて講義してもらうというようなことをやっているわけで、いわば法務省のいろんな部門での知識を集めて、そして実際の需要に供しているということでございます。  実は、このことを始めたのは平成七年度からでございまして、通訳に当たる方からのいろんな声が各地からございまして、やはりそういうものを本省において集めて研修したらどうかという声が上がってまいりまして、いわば試行錯誤的に一度やらせていただきました。その後、やはりどうしてもこういうことは必要だということが現場サイド、検察庁サイドからも、また通訳に実際来られた方の声からも上がってまいりまして、その後引き続いて行わせていただいていると。実際は平成七年度に一回、平成八年度に二回、平成九年度はただいまのところ一回ということでございますが、これまで合計四回やらせていただきまして、その参加者数は合計百四十五名となっております。  これは、全国的に各高検にお願いいたしまして、それぞれのところで掌握している通訳人の方々の中で、そういうセミナーに出てみたいという方の希望を聞いて、またその参加者の中には、これは私も実際その方々といつもお会いするんですけれども、それぞれのところで学校を開いている方とか、いわば各地の指導者的な方にできるだけ出ていただくということでやらせていただいているのが実情です。その方々には、すべての方についてそういうセミナーをやることはできませんので、東京の本省に集まっていただいてやらせていただいた内容をできるだけ各地で還元していただいて、共通の知識としていろんな形で広めていただきたいという配慮のもとにそのような取り扱いをさせていただいているのが実情でございます。
  47. 大森礼子

    ○大森礼子君 法務総合研究所といいますと、要するにまた東京に集まっていただいて、あそこの建物を使ってするということだと思うのですが、そういうことでしょうか。  それから、この場合、合計で百四十五名ということなんですね。それから、学校を開いておられる方、確かに自主的にそういう勉強会をしておられる方も私存じ上げております。ただ、そういう方にしたとしても、横の組織とかそういうものがありませんのでなかなか広がらないという問題があるんではないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
  48. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 確かに、委員指摘のような点がございます。そういう点をどうしていったらいいのかというのはまさにこれからの問題だと思います。私ども、実際に集まってセミナーに出てこられた方、先般は七月に四十一名の方が集まっていただいたんですが、その方々と座談会のようなことをしながら、実際にどういうことがこれから必要だということでございますとか、検察庁として何ができるだろうかというようなことも含めて御希望を聞いているわけでございます。  その中で実際問題として、そういう各地の指導者と言ったらおかしいんでしょうけれども、ある程度実績があり、なおかつその場で中心になってやっておられる方でございますから、その方々にとってみれば、それを自分たちの仲間の中で広めていきたいということが一つと、もう一つは、もう少し例えば気楽に実務家に相談したりあるいは問題点を感じた場合に相談できるような仕組みはないだろうかということがございました。  そういう点につきましても、私どもできるだけ各地に御連絡いたしまして、そういう要望があったら、執務に差し支えない範囲でございますけれども、できるだけ御協力して、これは通訳人の質を高めていくことに資するわけでございますから、お互いにそういう点は努力させていただきましょうと。それから、各地でそれぞれ聞くんではなくて、全国的規模でいろいろ御要望等あればということで、実際、担当官と顔見知りになってまいりますので、直接意見を聞かせてくださいということでお願いしております。
  49. 大森礼子

    ○大森礼子君 広く全国から少数の方を集めて教えるというセミナーを開くところもあるんでしょうけれども、やはり各地で通訳人の方が集まって、通訳技術の向上のためとか、いろんな法律的な基礎知識を習得のために自主的に勉強会を開いておられるんですね。そういうところから要望があった場合に、例えば各地方検察庁の外事係とかそういう方が出向いていって説明するということもある意味で非常に効果的な方法かなという気もするんですね、中央集権的な考えではなくて。  そうした場合に、例えばそういう通訳人が、ほとんどこれは任意の団体でされている自主的な勉強会なわけですが、そういう方が検察庁の方に、こういう勉強会をするので教えていただけないでしょうか、あるいはセミナーに参加していただけないでしょうかという要望があった場合に、法務省としてはそれは進んで御協力するところがあればしますと、こういう姿勢なのでしょうか。
  50. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) 結論的に申し上げますと、民間団体の研修、セミナーへの参加要請につきましても、常に御要望どおり人を出せるかどうかとなりますといろいろ問題もあろうかと思いますが、その都度具体的な趣旨、中身、目的等を踏まえましてできるだけ御協力させていただくのが適当であるというふうに私ども考えておりまして、実際これまで各地の実情を見ますと、主体的に検察庁がいわば参加する形でそのような研究会なりあるいは意見交換会をやらせていただいているという実情のようでございます。今後、そういう点でももう少しフランクに、あらかじめよく意見を聞かせていただきながら幅広くやっていくことが適当で、御指摘のとおり中央で集めればそれで済むということではないと思います。  ただ、中央で集めさせていただいてやらせていただくのは、やはりその過程でいろいろ問題点がわかってまいります。それから、やはり各地の通訳をなさっている実務家の方々のいわば横のつながりというのが御指摘のように実は余りないわけです。同じ言語の方々同士、どういう問題を抱えながらやっているかということが、そういう機会にまた経験を交流できるという点でも参加された方は大変よかったと言っていただいている実情でございます。
  51. 大森礼子

    ○大森礼子君 実はこの後、裁判所の方でセミナーとかどうしておられますかと聞くつもりだったんですが、これはちょっと後におきまして、今法務省の方から御答弁いただいたので申し上げるんですが、私も司法通訳をやっておられる方の勉強会にちょっと参加させていただいたりとか結構お話しする機会をいただくんです。そうすると、やっぱり現場の声というのが非常によくわかるわけですね。通訳の人と話すと、やはり刑事訴訟的な基礎知識についてあるいは倫理の問題とか、それから中立性をいかにして保つか、こういうことについてやっぱりトレーニングの機会がないということを一様に皆さんおっしゃいます。  それから、特におっしゃることは、裁判関係者、裁判官、検事、弁護士さんもそうなんでしょうが、余りにも通訳について無知ではないかという意見もあるわけです。あたかも通訳といいますと、自分が日本語をぽっと出せばそれがたちまち機械のごとく正確に疲れもなくすぐ出るかのように簡単に考えておられる方もいらっしゃる。だから、通訳というものがどういう大変な作業なのかということをもう少し裁判担当者の方にも理解してもらいたいという意見もございます。  それから、よくあるのが、特にこれは法務省関係になるんですけれども、供述調書の性格を余りよく理解しておられない通訳の方もおられるんですね。それは、例えばこれだけたくさん被疑者が言ったのに調書が数枚だったとか、それからそのとおりの言葉でなかったとか、それでこれはどうも捜査の方がおかしいんじゃないか、なぜそのとおりとらないのだというふうな意見もあるわけです。  そこで、たまたま私、検事の経験ありますから、いや、供述調書というのは速記録ではございません、供述者が言ったことをそのまま速記するのではなく、あくまで要約調書ですと。それから立証との関係もありますと。そういうことを説明すると、ああそうだったんですか、よくわかりますと言って御納得いただけるわけですね。そういう説明がなかったら、何かちょっと捜査側が変なことをやっているんじゃないかみたいなことを思われる通訳の方もいらっしゃるんだろうというような気がします。ですから、そこら辺のこともきちっと説明してさしあげることが必要だろうと思います。  それから、よく言うことが、もっと単純な単語で短い文章で言ってもらえないものか、どうして法律関係者というのはあんなにわざと簡単なことを難しい言葉で言うんでしょうかということも聞くわけです。例えば私も、強制わいせつで小学生の女の子が被害者になったというような場合、このときにはやっぱり子供の言葉で調書をとるわけですから、非常に短く簡単な文章で調書をとることになります。これでももう当然立証は十分なわけなんですね。ですから、通訳の方から見ると、もう少し関係者の方が工夫してくださると疲れも少なく、より正確な通訳ができる、こういう意見もございます。  それから中には、ある裁判所でのことで、判決文をすぐ訳すわけですけれども、横書きにしてくださっていた方がいた、これは本当にありがたかったと。縦書きのものを横文字で訳すのにこれは本当にうれしかったですと。よく私たちの仕事を理解してくださる裁判官だと思いますと。こういう意見もいろいろあるわけです。  それから、ベテラン通訳の方に起こりがちな問題として、多少なれているので自分の中立的な立場というのを忘れる方がいるという意見もあります。これはやっぱり通訳の方もたくさん勉強しようと思うので、ほかの方が通訳されるのを法廷へ見に行ったりとかこういうことをしておられるわけです。だから、トレーニングといいますと初心者とかこれから司法通訳を始めようという人を対象として考えておられるようですが、実はそういうちゃんとしたトレーニングを受けなかったベテランの通訳の方こそトレーニングが必要ではないか、こんなさまざまな意見が出てまいります。  それから、長時間は疲れるので一時間ぐらいで休憩を置いてほしいとか、非常に切実な問題があります。  こういうことで、現場の意見を聞くということが非常により正確な司法通訳制度を確立していくために必要なのだろうというふうに思うんです。  それで、今法務省の方からは、そういう民間の団体とか民間の方と一緒に勉強する、そういう用意はございますと言われるんですが、裁判所の方はいかがでしょうか。裁判所の方でやっておりますセミナー等、これはこの後聞きますが、民間でそういう勉強会とかしている場合に裁判所の方も講師を派遣するとか、それがちゃんとした勉強会であればの前提ですが、こういう御用意があるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  52. 白木勇

    最高裁判所長官代理者(白木勇君) 裁判所といたしましては、法廷通訳人の経験者などが設立いたしました団体などが存在していることは十分承知しておりまして、そういった方々が日ごろから法廷通訳人として裁判所に協力してくださっていることには大変感謝をしたしているところでございます。また、通訳人の質の向上のために活動していただいていることにつきましても大変結構なことと存じているわけでございます。これまでそういった団体の要望に応じて最高裁判所の担当者が面会したことも事実あるわけでございます。  今後、裁判所といたしましても、これはもちろん事柄の性質にもよるわけでございますけれども、通訳人の能力の向上のためにということでございますれば要望の趣旨に応じて協力できるところはこたえてまいりたい、かように存じております。
  53. 大森礼子

    ○大森礼子君 ありがとうございました。  こういう民間で勉強会をしておる方に聞きますと、弁護士さんとかはいろいろお話しできるんですが、一番肝心な捜査側それから裁判所側の方からなかなかお話を伺えないんですということも言われるわけです。ですから今後、司法通訳の方は質的向上も目指しておられますので、そういうような勉強会とかセミナーとかありましたらぜひ積極的に参加していただきたいというふうに思います。  最高裁判所の方にお尋ねいたします。裁判所の方では、まず三月のときの御答弁でいろいろ教えていただいたんですけれども、法廷通訳人セミナーというのがございますね。これは初心者対象ということだと思います。これについて、例えばことしで結構です、何回どこで開催されたか、どれくらいの参加人数があったか、それからその内容、カリキュラムといいますか、これらについて教えてください。
  54. 白木勇

    最高裁判所長官代理者(白木勇君) 法廷通訳人セミナーは裁判所でも平成七年度から行っているところでございます。  ただ、先ほどの法務省刑事局長の御答弁と違いまして、これは中央でやるわけではございませんで、各高等裁判所所在地の地方裁判所におきましてそれぞれ年数同ずつ法廷通訳人の候補者を対象として行っているところでございます。この参加者数は、各高裁あるいは言語等の実情にもよりますけれども、おおむね一回十名ぐらいとなっております。講師としては、毎回、法廷通訳経験の豊かな通訳人の方あるいは外国語の専門家の方、それからもちろん裁判官、書記官が数人参加いたしております。  カリキュラム等具体的にとの仰せでございますので、少し詳しくなりますが申し上げさせていただきますと、例えば、まず裁判所書記官などによりましてオリエンテーションを行います。これは、その後で法廷を傍聴していただくわけでございますが、当日傍聴する予定の事件の罪名とか進行予定の概略などを御説明して、傍聴する際の理解の助けにするということで行っております。そして、具体的な通訳事件、通訳を要する事件の傍聴をしていただきます。これはずっと冒頭から終わりまでいく事件をできるだけ選ぶようにいたしておりまして、かつ通訳も法廷通訳のいわば上級者と申しますか、大変立派に通訳してくださる方の法廷を選ぶようにいたしております。  実際にそうして通訳事件の傍聴をしていただきました後で、その事件を担当した裁判官、裁判所書記官、法廷通訳人の方と、その法廷通訳セミナーの受講者の方との座談会を行いまして、そして傍聴した裁判の手続であるとか通訳に関する質疑応答等を行っております。それから、裁判官による刑事裁判手続あるいは法廷通訳人の立場であるとか心得、先ほど委員仰せになりましたようなことにつきまして講義をいたしておるようでございます。今の中身は、法廷通訳人の刑事裁判における立場であるとかあるいは守秘義務、中立性、直訳とか意訳とかいったような問題についての問題点などについて御説明するわけでございます。  それからその後で、法廷通訳の上級者に、これは外部講師という形でございますが、法廷通訳についての講義をしていただきます。法廷通訳に当たっての工夫であるとか注意などについて、具体的な事例をもとに経験を踏まえた話をしていただいております。  それからその後で、セミナーの受講者による模擬の通訳の実習といったものも行っております。これは大変好評だというふうに聞いております。  それから最後に、裁判官、裁判所書記官、それから講師の方、セミナー受講者によるフリートーキングを行う。大体そういったような流れでやっているようでございます。これを二日間の日程でやっております。  ちなみに、今年度の最近の実施例を申し上げますと、九月には東京におきまして中国語、韓国・朝鮮語を対象として二十一名が参加して実施されました。十月には大阪におきましてシンハリ語、これはスリランカの言葉のようでございますが、シンハリ語あるいはペルシャ語を対象として十名が参加いたしました。それから広島におきまして韓国語、フィリピン語を対象として十三名が参加してそれぞれ開催されております。  以上でございます。
  55. 大森礼子

    ○大森礼子君 初心者対象です。  それで、きょう時間があれば一応ベテランの方を対象にしたトレーニングについてもお尋ねしょうと思っていたんです。法廷通訳研究会、これは各地裁で毎年開催ということですので、これについては次回お尋ねしたいと思います。  きょうはお調べいただいている数字がありますので、これはぜひとも聞かなくてはいけません。通訳謝金のことなんですけれども法務省については前回、平成五年度では通訳謝金の額が八千二百十七万、平成九年には予算額で四億三千二百四十万円で、わずかの間で五倍になりました、こういう御答弁をいただいておりますが、裁判所の方は平成五年と平成九年でどのようにアップしているか、これについて数字だけで結構ですから教えてください。
  56. 白木勇

    最高裁判所長官代理者(白木勇君) 平成九年度の通訳謝金の予算額は約五億八千百万円でございまして、平成五年度は約一億六千七百万円でございますので、平成九年度の予算額は平成五年度のそれに比べますと約三・五倍に増加しているという状況でございます。
  57. 大森礼子

    ○大森礼子君 きょうの質問通告の方では、例えば捜査段階での通訳の正確性が争われた場合にどういう問題が生ずるかとか、こういうことについて、通訳の正確性を担保する方法についてお尋ねしょうと思ったのですが、時間が足りませんので、これは必ず次回にまた質問させていただきます。  最後に法務大臣にお尋ねするんですけれども日本には司法通訳は制度として確立しておりません。アメリカの方ではちゃんと法制度化しており、通訳の資格認定制度というものも確立しているわけなんですけれども日本ではまだそこに至っていないということなんです。ただ、本当に通訳というものが正確に行われるかどうか、そして通訳がその中立性を保って裁判がなされているかどうかとか、これはやはりその外国人、被疑者とか被告人の人権に大きく影響するところであろうと思います。  そこで、この司法通訳をめぐる問題につきましてぜひこれから積極的に検討していただきたい。それから、アメリカ等の法制度等もぜひ研究して日本に適用できないかとか、こういうことを研究していただきたいというふうに思うわけなんですけれども、最後にこの司法通訳の問題について法務大臣のお考えといいますか、御意見をお聞きして、質問を終わりたいと思います。
  58. 下稲葉耕吉

    国務大臣下稲葉耕吉君) 先ほど来、司法通訳の問題につきましてお話がございました。国際化がどんどん進めば進むほど司法通訳重要性が増してくることは当然のことでございます。  法務省といたしまして現在まで取り組んでいる状況につきましては刑事局長から答弁いたしましたが、正直申し上げまして、まだ近年緒についたというふうな段階ではなかろうかと思います。  そこで、司法通訳司法通訳と申し上げまずけれども、実は言語がたくさんあるわけでございます。英語あるいは中国語、韓国語、スペイン語、フランス語のみならず、さらに少数言語、いろいろございます。それぞれの言語に適応した方々が確保できるかどうか、まずこの問題が一つございます。それから、地域的にやはり集中している面もあるんではないかと思いますし、その辺のところをどういうふうにカバーするかという問題もございます。  それから、ただ言葉ができるといっても、司法通訳というのは大変人間の権利なり裁判に影響するだけに正確でなければなりません。そういうふうな意味で、その言語に精通しているのみならず、日本の司法制度、あるいは先ほどお話がございましたようなテクニカルタームといいますか専門語、そういうふうなものを理解して通訳できる人でなければならない。そういうふうな多くの問題を抱えている、こういうふうに私は認識いたしております。  しかし、極めて重要な問題でございます。したがいまして、委員指摘のような資格制度を設けるところまで今直ちに行けるかどうかというふうなことについては、もう少し検討をさせてみなければならないんじゃないか、こういうふうに思います。刑事局長説明いたしましたように、こういうふうな問題は極めて重要な問題でございますので、真剣に取り組んでまいりたい、このように思います。
  59. 千葉景子

    ○千葉景子君 きょうは、このところやはり一番課題になっております拓銀あるいは山一の倒産問題などがございます。金融不安を解消するという面で、いろいろな今議論がされているところでございますけれども、倒産をした際の法的な整理、そういう問題についてきょうは多少お尋ねをしたいというふうに思っております。  まず、このところ大型倒産というものが続いておりますけれども、労働省にきょうは来ていただいておりますが、ここ数年来の企業の倒産と、そしてそれにかかわりを持つ従業員の数、統計がございましたら出していただきたいと思いますし、なければ多少の例を出して説明をいただけますでしょうか。
  60. 鳥生隆

    説明員鳥生隆君) 民間の調査機関の調査結果によりまして、この三年間の全国の企業の倒産件数を見ますと、平成六年が一万三千九百六十三件、それから平成七年が一万五千八十六件、それから平成八年が一万四千五百四十四件でございます。平成九年におきましては、十月末現在で一万三千三百四十七件となっております。このうち過去三年間の負債額が一千五百億円以上の大型倒産件数というのを見ますと、平成六年が一件、平成七年が九件、平成八年が七件、平成九年の十月十五日現在ですけれども、九件でございます。  雇用調整助成金にかかわります大型倒産等事業主の指定につきましては、現在指定されている事業主が六社ということでございまして、六社の下請企業数の合計は、十一月一日現在で判明しているもので六百二十二社、労働者数の合計というのが二万二千三百八十九人となっております。
  61. 千葉景子

    ○千葉景子君 このところ数年の数をお聞きいたしますと、大変大きな数の倒産が発生をしておりますし、そして、雇用調整助成金というその範疇ではございますけれども、相当数の関係する従業員があるということが言えるのではないかというふうに思うんです。  こういう場合にどういう形でその後の財産の整理をしていくかということなんですけれども、これは最高裁の方で私も資料をいただきました。それを見ますと、倒産件数は一万を優に超えるわけですけれども、例えば平成八年、破産手続、破産の申し立てをしているというのが三千四百八十九件、法人の数ですね。それから、会社更生のような形になると十八。そのほか、和議、会社整理、特別清算などがございますけれども、倒産件数と、それから法的手続をとったという数とを比べますと、ほとんどが法的な手続によらず、任意的な何らかの整理をしているのではないかということがうかがわれるわけです。  そういう中で、それぞれの整理というのに一体どういう問題点があるかということを考えていきたいというふうに思うんですけれども法務省の方にお尋ねをいたしますが、任意的に整理をするというものは別として、普通考えられますのは、いわゆるこれで企業活動を終わりにして財産を整理する、清算をしてしまうということでは破産というのが大きな柱だろうというふうに思います。それに対して、これからもう一回再建をして企業活動を継続していこうということでは会社更生というのが大きな手段ではないかというふうに思うんですが、この法的な組み立てというんでしょうか内容、例えば破産と会社更生でどういう法的な組み立てになっているのか、ちょっと概略を御説明いただけませんでしょうか。
  62. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) 現行の倒産処理の法制度といたしましては、委員が今御指摘くださいました破産法上の破産手続、それから和議法上の和議手続、それから会社更生法上の会社更生手続、それから商法に規定がございます会社整理手続、特別清算手続、この五つがあるというふうに言われております。  そのうち、破産手続と特別清算手続、これは債務者が有している資産を換価いたしまして、これを債権者に公平に分配するという手続でございまして、一般に清算型の倒産処理手続というふうに言われております。  残ります和議手続、会社更生手続、それから会社整理手続、これは清算型の手続とは異なりまして、必ずしも債務者のすべての資産を換価するということは要求されておりませんで、債務者が経済活動を継続しながら、将来得られる収益、それを弁済原資として債務の弁済計画を立てる、その反面として債権者の権利の制限あるいは変更が行われるという手続でございまして、これらは一般に再建型の倒産処理手続というふうに言われているわけでございます。  さらに、その適用される対象ということで見ていきますと、破産手続と和議手続、これは自然人にも法人にも一般的に適用される制度であるということでございますが、会社更生手続、会社整理手続、特別清算手続、これらは株式会社に対して原則として適用されるものだという点で違いがございます。
  63. 千葉景子

    ○千葉景子君 今、法的な手続について御説明をいただきました。必ずしも対応するわけにはいきませんけれども、先ほどの企業倒産の数、そして法的な手続をとられた数を比較してみますと、倒産のうち多分七、八割はこういう法律に基づいた手続ではなくて、任意的な整理をされるということになっているのではないかというふうに推測をされます。  そこで、この任意整理をする場合は何か特別に法的な規制のようなものはあるでしょうか。それから、その際に例えばそれまでその会社で働いていた従業員の皆さんの労働債権などはどういう形で確保されているんでしょうか。労働省の方からお聞かせいただきたいと思います。
  64. 鳥生隆

    説明員鳥生隆君) 現状では、先ほどのお話にもありましたように、抵当権によって確保されている債権あるいは租税公課というのが労働債権に優先されるということとされておりますけれども、民法、商法等の規定によりまして、賃金債権には事業主の総財産の上に先取特権が与えられているということで、一般の債権者よりは優先されているというところでございます。  労働債権の弁済順位のあり方と申しますのは、租税の公益的な性格あるいは取引の安全、債権者間の公平といったことをどのように考えるかという広範な現行法制の根幹に触れる問題でありますけれども賃金は労働者にとって唯一の生活の原資であるということで、賃金債権の確保を図るということが重要であると考えております。  労働債権の確保の状況につきましては、個々の事案で異なるというところですけれども、いずれにしても労働者の労働債権が確保されるように適切に指導を行っていきたいというふうに考えております。
  65. 千葉景子

    ○千葉景子君 任意整理の場合は、民法、商法上で一定の順位がございますけれども、例えば非常に残余財産が少ないというような場合に、なかなか労働債権を全額確保するということが難しいということも私もよくお聞きしているところでもございます。  ところで、先ほど御説明をいただきました清算型の破産とか再建型の会社更生、これは典型的な形なんですけれども、よく見てみますとその性格が相当違うように思われます。歴史的なものあるいは制定された時期、それから片方は自然人にも適用がある、片方は株式会社にということもあろうかというふうに思うんですけれども、この労働債権の問題で見ますと、例えば優先順位、それが非常に異なっているわけです。会社更生の方はかなり優位の位置にありますけれども、破産ですと国税などより下になって、非常に回収が難しい、そういう問題もあります。  それから、労働協約が結ばれていても、破産法のもとでは破産管財人がそれを解約することができる。せっかく賃金確保という労働協約などが確立いたしておりましても、その解約が可能であるというようなこともございます。  破産と会社更生というのは、そこで働いていた者、従業員という意味ではほとんど同じなんですけれども、その順位づけなどに大きな差があるというのは、これは法の趣旨から来るんでしょうか。その辺の理由があればちょっと御説明をいただきたいと思います。
  66. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) 確かに、委員今御指摘くださいましたとおり、労働債権について破産法それから会社更生法を比較してみますと、会社更生法の方が労働債権の保護に厚いということが一般的には言えるだろうと思います。  その理由でございますが、これは先ほども少し御説明いたしましたとおり、会社更生法の場合にはこれから企業を動かしていくわけです。すなわち、労働者とともに経営を続けていくという前提に立っておりまして、ここで労働債権の保護がないということになりますと、当該労働者あるいは前従業員の協力が得にくくなるといった面があろうと思います。  一方、破産の方でございますが、これはどちらかというと企業を解体いたしまして換価するという手続になっておりますので、そういった点の違いが破産法、会社更生法のそれぞれの労働債権の保護のあり方に影響を及ぼしているのであろうというふうに考えております。
  67. 千葉景子

    ○千葉景子君 確かにその法の趣旨の違いというのはあると思われますが、先ほどの最高裁からいただいた倒産事件の受理件数を見ましても、会社更生というのはやはり大企業を中心にした制度でもあります。例えば平成八年ですと十八件、平成九年の九月までの数値で二十三件。全体の倒産をした中ではこういう例はそう多くないわけですね、これから将来の可能性も残されているというケースですから。  それに対して、任意整理はもう別といたしましても、破産の方が圧倒的に手続として多いわけです。その働いている者は、これまで労働力を提供した部分ですから、会社更生であろうが破産であろうが、働いたものに対してやはりきちっとその対価をもらうということは十分に保障されなければいけないわけですけれども、この破産手続によりますと、今お話があったように必ずしも会社更生などに比べるとその優先順位というのは高くない。しかし、それを適用される働く者たちの数というのは逆に非常に多いということになろうかと思います。優先順位が低いから絶対賃金が確保できないという意味ではないんですけれども、それだけ不安定な形になるということが言えるんじゃないかというふうに思うんです。  この労働債権の確保などについて、倒産の場合に国際的にはどんな法制になっているでしょうか。労働省の方でおわかりの部分がございましたらお知らせいただきたいと思いますし、これにかかわるILO百七十三号条約がございますね、労働者債権条約、これも関連して御説明をいただければというふうに思います。  ちょっと、これは事前にあれしていなかったので、もしなければ後ほどまたお聞かせいただきたいと思います。
  68. 鳥生隆

    説明員鳥生隆君) 国際的な制度というか法律の定めはどうなっているかというお尋ねです。諸外国におきましても我が国と同様に、一般に一定の範囲の労働債権についての優先的弁済が認められております。詳細については承知しておりませんが、これまでに承知している範囲で申し上げますと、例えばアメリカやドイツにおきましては、倒産関係法によりまして一定の範囲の賃金については優先権が与えられているというところですけれども、抵当権等の担保物権には劣り、租税公課には優先する。それからイギリスにおきましては倒産関係法によりまして一定の範囲の賃金については租税公課と同順位とされている。  それからフランスにつきましては、原則といたしまして一定の範囲の賃金については優先権が与えられておりますけれども、租税公課には劣る。ただし、裁判上の更生または清算手続におきましては、一定の範囲の賃金につきましては租税公課も含む他のすべての優先権に先立つ支払いを受けられるといったことが定められていると承知しております。  それから、ILO百七十三号条約につきましては、使用者が倒産等の状況に陥りまして労働者の賃金を支払うことが不可能になった場合に、その賃金の支払いを確保するということを目的としておりまして、債権の保護の方法として、労働者債権に対して一般債権に優先する特権を付与する方法と、未払い賃金の支払いを保証機関が保証する方法といった内容を定めているというところでございます。  これまで一定の問題点があるということで、今のところ批准については慎重に検討しているという状況でございます。
  69. 千葉景子

    ○千葉景子君 今、諸外国の法制なども若干お聞きいたしますと、担保物権には優先をするというのはなかなか難しいところがあろうかというふうに思いますけれども、少なくとも租税公課などと同じぐらいのレベルで優先順位がある、あるいは租税公課と大体並ぶくらいに保証がされているということが言えるように思われます、今の範囲でですと。  日本の破産法の場合ですと、先に国税などで優先的に取られまして、その後一般債権とほぼ同じように賃金債権が位置づけられている。何となく先に税金は取っていって、働いてせっかくそれまで汗を流したけれども、それは後回しよという素朴な感もしないではないわけです。  今、非常に雇用関係が不安定になり、あるいは大型の企業倒産なども増加をしている。破産法のこれまでの制定時の意味あるいは趣旨、そういうものから考えると無理からぬところはあろうかというふうに思うんですけれども、やはり今後、労働債権、こういうものをさらにきちっと確保できるような見直し、あるいは倒産における法制上の検討、こういうものも私は必要ではないかというふうに思うんです。  その点について、労働省それから法務省、それぞれお考えがございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  70. 鳥生隆

    説明員鳥生隆君) 仰せのとおり、賃金というのは労働者とその家族にとりまして多くの場合唯一の生活の原資ということで、労働債権の確保というのは極めて重要なことというふうに考えております。  ただ、先ほども申し上げましたように、労働債権の弁済順位のあり方と申しますのは、租税の公益的性格あるいは取引の安全、債権者間の公平といったものをどのように考えるかという広範な現行法制の根幹に触れるという問題でありますので、平成八年十月から法制審議会で検討が開始されました倒産法制についての見直しの審議の推移を見ながら、関係省庁と十分に連携をとりながら対応していきたいというふうに考えております。
  71. 下稲葉耕吉

    国務大臣下稲葉耕吉君) 破産法を中心とした御質問でございましたが、先ほど民事局長から説明がございましたように、倒産法制という立場から見ますと、委員指摘のとおりに、破産法、和議法、それから会社更生法、それから特別清算法等と五つあるわけです。その中で、これも説明がございましたが、清算型の手続と再建型の手続と、二つに分かれております。  そういうような中で、今お話しの労働債権の問題に限ってお話しいたしますと、労働債権というのは、給与だとか退職金を主としてお考えいただいていることだと思いますし、私もそのように思いますが、そういうふうな倒産の際の債権の優先順位の問題になってきているわけでございます。  債権の優先順位につきましては、法令によって言葉が違いますけれども、例えば財団債権、あるいは共益債権、これは一番優先する債権、その次に優先債権、それから一般債権、劣後債権、こういうふうな形になっておるわけでございます。そういうふうな中で、今おっしゃいますような賃金だとか退職金とかいう労働債権というものをどういうふうなところに位置づけるかというふうなことだろうと思うんです。  今申し上げました破産法だとかあるいは和議法というのは、調べてみますと大正十一年に法律が制定されておるわけでございまして、一番新しいやつでも会社更生法が昭和二十八年でございますね。ですから、法律そのものができたときの情勢によってできているものですから、倒産法全体としての考え方なりなんなりというのが共通かどうかということについては大変疑問があるんじゃないだろうか。  そういうふうな観点から、今労働省からお話がございましたように、昨年の十月ですか、倒産法全体について一応ひとつ検討してほしいというふうなことを法務大臣が諮問いたしているわけでございます。実はつい最近、一応の中間的な考え方がそういうふうな議論を受けて法務省民事局でまとまりました。先生今御指摘のいわゆる労働債権等々の問題もいかにあるべきかということで議論しなくちゃならないと思います。  そういうふうなことで、一応中間的な取りまとめができましたので、今月中にそれを公表いたしましてさらに多くの方々から御意見を承って、答申がまとまれば法律改正ということでまた当委員会でお願いするような形になるだろうと思います。  そういうふうなことでございますので、労働債権の問題も、今御指摘のような点を踏まえて、そういうふうな広く有識者の御意見を承って、そして今申し上げました審議会で集約して答申を得て、来年のいつごろになりましょうか、夏ごろになりましょうか、そういうふうなころまでに意見をまとめて何とか法制化できるものならいたしたい、こういうふうに考えております。
  72. 千葉景子

    ○千葉景子君 今お話がございましたように、破産法ができたのがもう大正年間でもございます。そういう意味では、やはり時代の要請をきちっと適切に反映できるような、そういう中身になりますように、今後御議論をまたさせていただきたいというふうに思っているところでございます。  時間が限られておりますが、労働省に来ていただきました。この法制上の問題もございますけれども、例えば今、大変雇用不安というのが大きくなっております。そういう際に、労働債権などを保全して生活を保障するというためには、例えば基金のような制度、保険といいますか、そういうものを検討して、きちっと支払いが確保できるような体制をとるとか、あるいは賃確法のさらなる充実とか、一番難しいのは、やはり中小企業の場合などはなかなか財政的にも厳しいというようなことも多いかと思うんです。そういう中小企業対策どもこれから重要になってくるのではないかと思いますが、それらの点などについてコメントがございましたらお願いをしたいと思います。
  73. 鳥生隆

    説明員鳥生隆君) 現在、企業倒産によりまして賃金未払いのままに退職した労働者に対しまして、賃金の支払の確保等に関する法律によって労災保険の労働福祉事業として実施しているというところでございます。  この制度自体、労働者の生活の安定と差し迫った生活を救済するという必要性にかんがみまして特別な措置を講ずるということで、立てかえ払い額についての上限額を定めて実施しているというところでございますけれども平成五年度からは限度額も引き上げを行っておりますし、今後とも制度の趣旨に即しながら適時適切に引き上げを行うといったことによって、労働者の救済に努めてまいりたいというふうに考えております。
  74. 千葉景子

    ○千葉景子君 時間ですので、これで終わります。     —————————————
  75. 風間昶

    委員長風間昶君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、菅野壽君が委員辞任され、その補欠として上山和人君が選任されました。     —————————————
  76. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、質問に入ります前に、下稲葉法務大臣に心から御礼を申し上げたいと思います。  と申し上げますのは、この委員会でも取り上げさせていただきましたが、琉球の琉という文字が人名用漢字表に入っていなかったために琉という命名をした出生届が受理されなかった、こういう事態が発生をしておりました。多くの県民が一日も早く人名用漢字として追加をしてもらいたいという要望をしておりましたが、昨日、三日付で戸籍法施行規則、法務省令が改正をされまして、人名用漢字表に琉の文字が追加をされまして、早速、那覇市内に住む琉という文字で命名をした夫婦の出生届も受理されたようでございます。  改めて、多くの県民にかわりまして、この法務省令改正のために御尽力を賜りました大臣に心から感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。  さて、去る十二月二日の委員会で幾つか質問通告をしておりましたが、私が他の委員会質問時間とちょうど重なってしまいまして、せっかく答弁の準備をいただきましたが、質問できない事項がございましたので、この際お聞きをさせていただきたいと思います。  自己破産事件が激増しているのではないかということについては、多くの法律実務者の間、あるいはマスコミ等でも報道をされておるのでございます。しかも、昨今の経済社会情勢の変動によって、従来の浪費型のカード破産あるいは個人破産から、リストラ失業型の個人破産事件が激増しているとも言われております。  私も、かねてより社会問題になっておりましたカード破産の問題については、一人の在野法曹としても、どういう対策が本当にあるんだろうかということで心を痛めておりました。なかなかカードというのは便利ではありますけれども、ある面また、奴隷の鑑札のようなものであるということをやはり若い諸君には特に知っていただく必要がある。  ところが、カード破産が社会問題になっておった中で、さらにリストラ失業型の個人破産事件がふえた。個人破産の予備軍百五十万人というふうに指摘をする識者もおるわけでありますが、過去三年ぐらいの自己破産事件の受理件数はどのようになっておるのか、お伺いをいたします。
  77. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 委員のお尋ねがカード等に絡む自己破産ということでございますので、自己破産のうちの自然人の破産事件ということで数字を申し上げたいと思いますが、平成六年が新受件数が四万三百八十四件、平成七年が四万三千四百十四件、平成八年が五万六千四百九十四件となっております。
  78. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 今御答弁いただいた数字からしてもふえているなということが実感できるわけであります。恐らく自己破産の申し立てをして破産宣告の決定がなされる者、あるいはまたそのうち免責までいくのは九割ぐらいでしょうか、そういうふうなことも実務者の間で言われるわけでありますが、ともあれ増大をする個人破産事件に伴う裁判官あるいは事務官、書記官等、裁判所職員の配置のあり方というのは当然最高裁でも検討されておるんだろうと思いますが、裁判官並びに裁判所職員の配置、対応策についてお聞かせ願いたいと思います。
  79. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 先ほど民事局長の方から説明いたしましたように、破産事件がこのところどんどんふえておりまして、大体平成三年ごろからふえてまいりまして、昨年、平成八年までの五年間程度で二倍あるいは二倍以上の件数になっております。  こういった事件数の動向を踏まえまして私どもの方で、この破産事件を処理する要員として中心になりますのは裁判官よりもむしろ書記官、事務官でございますので、書記官、事務官の増員をずっと図ってまいりました。平成五年度以降の総数で申し上げますと、書記官を四十三名、事務官を六名、合計四十九名の増員をお認めいただいております。  こういう形で増員してまいりました書記官、事務官を、とりわけ破産事件の急増傾向を示しております大都市部を中心に増配置いたしまして、例えば東京地裁とか大阪地裁というところは破産事件を専門に扱います部がございますのですが、そういうところの書記官、事務官、裁判官全員含めました陣容を比較いたしますと、この数年間でその部の職員数が大体二倍あるいは二倍以上超えるようなところにまで行っております。  今後とも、事件数の動向を十分見ながら、こういった人的体制の面での整備をやっていく必要があるだろうというふうに考えております。
  80. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 この破産事件もそうでございますが、執行事件ども裁判所の中では実務を担当される事務官や書記官の仕事量というのは私は膨大になるだろうというように思います。  東京地裁や大阪地裁のような大都市の裁判所で、しかも破産事件を専門的に扱う部が設置をされている、そういう裁判所以外の地方の裁判所でも、恐らく私は事件がふえて対応する職員の配置に心配りをしなければならない状況があるんではないかと推察いたしますので、引き続いて最高裁におかれましては、そのような適切なる職員配置をお願いしたいと思います。  ところで、東京地裁で、激増する自己破産事件対応して、「インフォメーション20」というファクスサービスのシステムがあるということをマスコミ報道で初めて私は知りました。しかも、かなり利用者には好評のようでございますが、この「インフォメーション20」の仕組みと、裁判所が確知をしておられます利用者の反応等についてお教えいただければありがたいなと思います。
  81. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) ただいま委員から御指摘のありました「インフォメーション20」でございますが、これはパソコンにファクシミリ機能を持たせまして、破産手続の概要や破産申し立ての方法など、電話照会の多い情報をあらかじめ登録をしておきまして、破産の申立人や債権者、破産管財人などがファクシミリを利用して二十四時間いつでも必要な情報を取り出すことができるようにしたものでございます。  利用者の方では、まずファクスについております電話から「インフォメーション20」の電話番号に電話をかけますと音声ガイドが流れますので、その指示に従って番号を押したり操作をすればその情報を取り出すことができるというものでございます。東京地裁の破産部、これは民事第二十部と言いますが、「インフォメーション20」というのはまさにそこから来ております。二十部ではことしの七月十一日からこのようなファクスサービスを開始しておりますが、現在まで利用件数一万二千件を超えているようでございます。  情報は、いろいろな情報が入っておりまして、例えば管財人向けとかあるいは債権者向けとか入っておりますが、最も多く利用されている情報は、破産手続の概要を説明した文書とかあるいは個人破産の申し立て方法を記載した書面など、個人で破産の申し立てをされる方のための情報のようでございます。こういう利用状況から見ますと、破産手続に関するファクスを利用したサービス提供の効果というものがある程度発揮されているのではなかろうかというふうに推察しております。
  82. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それでは次に、定期借家権の新設を骨子とする借地借家法の改正問題について何点か質問をさせていただきたいと思います。  この定期借家権の新設の問題については、当委員会でも何名かの委員がお触れになりましたが、細かい議論はまだ十分なされてはおりません。  大正十年でしたでしょうか、我が国の借地法、借家法がつくられまして、その後戦後の住宅事情などを背景として正当事由制度の導入ども図られてまいりました。ところが、この期に及んで、経済対策という視点から定期借家権の制度を導入したらどうだというふうな意見が出てまいっております。自民党を中心に議員立法の動きもあるやに聞いておりますけれども法務省では定期借家権の新設を含む借地借家法の改正について今日までどのような検討をやってこられたのか、まずその経過をお伺いいたしたいと思います。
  83. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) 借地借家制度につきましては、全般的な見直しをいたしまして平成三年に新たに借地借家法が制定されたところでございまして、これが平成四年八月に施行されたところでございます。この中で、借家制度につきましては、賃貸人が契約を終了させるには原則として正当事由を必要とするという制度が維持されたわけでございます。  この制度がもともと導入されましたのは昭和十六年ではなかったかというふうに記憶いたしております。このような正当事由制度を基本とする現行の借家制度のあり方に対しましては、近時、特にこの制度が大規模な借家の供給を阻害しているのではないか、大規模な借家の供給を促進するという観点から、借家契約をより自由にして、正当事由を要せずに契約期間の満了によって契約が終了するものとする借家契約、これを定期借家契約といっておるようでございますが、こういった制度を導入すべきであるというような提言がなされるようになったところでございまして、このような提言を受けて、規制緩和推進計画においては、良好な借地借家の供給促進を図るためいわゆる定期借家権を含め検討する、こういうことにされたわけでございます。また、最近におきましては、本年十一月十八日付の政府の緊急経済対策におきまして、良質な賃貸住宅の供給を促進する観点から定期借家権導入を促進するということにされたところでございます。  私どものこれについての取り組みでございますが、法務省民事局におきましては研究会を設けまして、法制審議会での調査、審議に資するために、幅広い観点から良質な住宅の供給を促進するための方策等について、定期借家権の問題を中心としまして検討を行ってきたところでございます。そして、本年六月に中間的な取りまとめを公表いたしまして、関係各界に意見照会を行いました。現在、その意見照会の結果の集約中というところでございます。
  84. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、借地借家法における正当事由制度を撤廃して定期賃借権を導入する、このことについて経済対策という視点だけから論ずるのはおかしいというふうに個人的には思っております。  また、いろいろ誤解がありまして、正当事由制度があるからもう家主の権利は全くないんだ、家主は何も物も言えないんだというふうにおっしゃる人もおるんですが、そうではないわけで、建てかえる場合にだってその建物の朽廃状況だとか利用状況、使用状況等でもって、それは正当事由があれば更新を拒絶して建てかえは可能なわけでありますから、我が国の住宅事情、住宅政策等に照らしても、社会的な弱者である借家人が泣きを見るような制度改正、法改正であってはならないな、こういう考えでございます。  ところで、今御答弁いただきましたその中間報告に対する意見照会を行っているようでございますが、現在どれぐらいの個人、個人はないんでしょうね、団体から意見が寄せられておるんでしょうか。
  85. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) 照会いたしたところ、あるいは照会せずともいろんな雑誌等に掲載されておりますのでそういうところから意見を寄せたもの等を含めまして、合計百十二団体から意見が寄せられたということでございまして、個人からも若干の数があった、そういうところでございます。
  86. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 ぜひ法務省におかれてもさまざまな観点から、いずれまた法制審でも議論されるんでしょうけれども、経済企画庁あたりが経済効果として年間八千億円だというふうな数字も言っております。しかしながら、その数字のよって立つ根拠が必ずしも明白でないところもあるわけでございますし、くどいようですけれども、この借地借家法における正当事由の問題というのは、私は、緊急経済対策のような観点から主に論じられるのはいかがなものか、こういうふうに考えております。  ところで、裁判所にお伺いをいたしますが、正当事由を請求原因とする建物明け渡し請求事件件数など、もし統計上の数字がございましたら、ここ二、三年でも結構でございますので、お教えいただければありがたいなと思います。
  87. 石垣君雄

    最高裁判所長官代理者(石垣君雄君) 実は建物明け渡し請求事件という形での統計はございます。ただ、正当事由がそのうちのどの程度の事件で主張されているかということになりますと、中身にわたるものですから統計でとっておりません。なかなか大まかな傾向についても承知をできる状態ではないというのが実態でございます。  ちなみに、建物明け渡し訴訟ということで申し上げますと、もちろんその中には正当事由が主張される事件あるいは家賃等の滞納があった事件とかいろんなものが入っているわけですが、これを地裁、簡裁をひっくるめまして申し上げますと、平成六年が一万八千五百十五件、平成七年が一万八千七百九十六件、平成八年が一万八千八百二十六件と、一万八千件台であるというところでございます。
  88. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私、借家契約における賃料増額を求める調停事件の動向についても関心を持っておりまして質問通告をしておりましたが、事務方からその統計がない、こういうことでございましたので、これは了解をしたいと思います。  次に、法務省にお伺いをいたしますが、少年事件における報道と人権のあり方であります。  特に、週刊誌あるいは写真週刊誌と言われる雑誌等における当該少年の写真の掲載問題でございますが、せんだっての神戸市須磨区における小学生殺人事件におきまして、写真週刊誌でありますフォーカスや週刊新潮が被疑少年の顔写真を掲げた記事を掲載する、こういうことがありました。  そこでお伺いいたしますが、少年法第六十一条で、少年の更生や保護の観点から当該少年の本人であることを推知することができるような写真等の掲載を禁止しているのでありますが、この少年法第六十一条というのは捜査段階の少年にも当然に適用される、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  89. 横山匡輝

    政府委員(横山匡輝君) 委員指摘のとおり私どもも理解しております。
  90. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それで、神戸市須磨区における小学生殺人事件でのフォーカスや週刊新潮等による被疑少年の顔写真の掲載問題について、法務省の人権局が警告を発したという報道もございましたが、この警告の骨子というんでしょうか、それと警告を受けた側がどのような対応、反応を示したのか、それについてお答えいただきたいと思います。
  91. 横山匡輝

    政府委員(横山匡輝君) 本件の顔写真の掲載は、少年法六十一条に違反する著しい人権侵害と認められたため、本年七月四日に写真週刊誌等の発行元であります新潮社に対し東京法務局長から勧告を行ったところであります。  勧告の趣旨は、本件顔写真の掲載について深く自戒し、今後再び人権侵害を起こすことのないよう早急に再発防止策を策定し公表するとともに、写真週刊誌等を速やかに回収するなど実効性のある被害の拡大防止及び回復の措置を講ずるよう啓発を行ったものであります。  新潮社は、この勧告を受けまして、勧告については真摯に受けとめ、今後検討させていただきたいとのコメントをしていますほか、その後に同社から発行された同じ週刊誌において、編集長取材メモという形で勧告が再発防止策の策定を求めた点については率直に耳を傾け、その検討をするとしております。  なお、同社に対する勧告は自発的、自主的に人権侵犯の事態を改善していただくことを期待して行ったものでありまして、今後同社が今回の勧告の趣旨を踏まえ、その業務において人権尊重の精神を生かしていくことを望むものであります。
  92. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 フォーカスでしたでしょうか週刊新潮でしたでしょうか、以前にも同じような警告を受けておったということも聞き及んでおるわけでありますが、今御答弁いただきましたように、少年事件をめぐって週刊誌や写真週刊誌等による人権侵犯がないように今後も十分監視をし、同時に適切な対処方を法務省にはお願いを申し上げておきたいと思います。  最後に、登記・供託事務の独立行政法人化についてでございますが、時間がありませんので結論だけお聞かせいただきたいと思います。  昨日、行政改革会議における省庁再編問題が、一部の課題を残してほぼ最終的な決着を見たやに思うわけでありますが、私は登記・供託事務というのは法務省の仕事の中でも国民の権利にかかわる大変重要な仕事である、こういうふうに思っておりまして、登記・供託事務をエージェンシー化するのはいかがなものか、いや、むしろそれは困るという積極的な意見を持っておるわけでありますが、昨日の最終答申で、登記・供託事務の取り扱いについてはどのようになったのか。また、独立行政法人化されないという担保というか保証というか、これは大丈夫なんでしょうか。法務省にお聞きいたしたいと思います。
  93. 森脇勝

    政府委員森脇勝君) 行政改革会議の審議の過程では、独立行政法人の検討対象業務としまして登記・供託が掲げられておりました。  私どもは、委員が今御指摘なさいましたとおり、この登記の業務というのは、国家の基本となる国土あるいは法人の管理という国家運営の基本をなす制度でありまして、国民経済の基盤となっているというものでございますので、その事務の性質上、国みずからによって厳正、公平、中立に行われる必要があるという点。さらには、登記・供託の業務といいますのは、法務局の中におきまして、訟務、人権、戸籍、国籍といった業務と相まって法務局における総合的な民事法務行政の一環として運営されておる、その中の登記・供託業務が独立機関化するということになりますと、残りの業務についての処理体制が弱体化する等の総体としての非効率化を招くのではないかということを指摘してきたところでございます。  昨日の行政改革会議の最終報告におきましては、いわゆるエージェンシー化の検討対象として残るのではないかということが危惧されておったわけでございますが、これにも掲げられなかったということでございます。  ただ、法務省といたしましては、これまでも法務局の出張所の整理統合や登記事務のコンピューター化ということを推し進めることによって合理化に努めてきたところでございまして、今後ともこの施策を推進いたしまして、自主的に改革に取り組むことによって社会の動きに見合ったサービスの提供ができる体制づくりに努力してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  94. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 終わります。
  95. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は、前回も山一証券問題を取り上げたのですが、今日極めて重大な問題でございまして、引き続ききょうもその問題を取り上げたいと思っております。  きょうは、刑事局長やあるいはまた大前証券取引等監視委員会事務局特別調査課長にお越しをいただいておりますので、よろしくお願いしたいと思います。  参議院の予算委員会での集中審議でも、山一証券の莫大な簿外債務、あるいはこれまでの経営責任等についていろいろ議論がなされました。大蔵大臣も証券取引等監視委員会に対して厳正な調査をするようにと厳しくその場でも指摘をされていたことは、テレビでも国民に広く知らされているところであります。  この山一証券の問題について、証券取引法に係る違法な事実があるかどうか、厳正な捜査あるいは調査が証券取引等監視委員会によって既に進められていることは多くの報道でも間違いないと思っておりますが、それは間違いございませんね。
  96. 大前茂

    説明員(大前茂君) 山一証券が営業の休止届けを出しまして、その後、今月の二十五日からでございますけれども、私どもの検査担当が大蔵省の金融検査部と合同で特別検査に入っております。
  97. 橋本敦

    ○橋本敦君 今おっしゃったその調査は、立入調査を含めて調査が実施されている、こういうことですか。
  98. 大前茂

    説明員(大前茂君) 臨席をして調査をしております。
  99. 橋本敦

    ○橋本敦君 私は前回、いわゆる簿外債務、その中での飛ばし、これが違法な問題ではないかということを指摘しました。さらにそれに続きまして、山一証券の植谷久三元会長やあるいは行平次雄前会長に係る株の売買に関して、これがインサイダー取引ということで違法性があるのではないかという問題も指摘をしました。  飛ばしの問題や、新聞で報道もされ私も指摘をしたこういったインサイダー取引の事実のみについても、今御指摘の厳しいこれからの調査の中には当然視野に入れて行われていると解してよろしいですか。
  100. 大前茂

    説明員(大前茂君) 私ども監視委員会の検査は、証券取引法上の公正な取引がなされているかどうかという観点から問題がないかどうか検査を行うものでございます。  当然、先生の今御指摘のような問題につきましても視野に入れておりまして、仮にそういう問題につきまして違法行為がございましたならば厳正に対処するということで臨んでおります。
  101. 橋本敦

    ○橋本敦君 つい最近の新聞報道でありますが、山一証券の社長、会長を務めた横田良男前相談役、この方は八八年から九二年まで会長を務められました。いわゆる飛ばしを含む簿外債務が拡大していったのが九一年ごろと、こう言われておるんですが、その横田氏の後を受けて後任社長になったのが行平前会長であります。  この横田良男相談役について、昨年の二月に同社株約六万九千株を売却していたことが社内調査でわかったと、こういう状況が報道されておりますが、こういった役員の株売買ということが、私は本当にモラルの問題だけではなくて、山一証券の今日の経営責任を追及する上で極めて重大だと思うわけであります。  こういう指摘をしておるときに、私は共産党議員団の金権腐敗政治追及委員会の責任者をしておるのでありますが、私のところに重要な情報がもたらされました。  その情報はファクスで入ってきたのでありますが、さきの十一月二十七日に参議院で行われました参考人質疑で山一証券の行平前会長は、株は一株たりとも売っておりません、こういう供述をいたしました。そのことは証券取引等監視委員会もお聞きになって、前回この場でもそう聞いておりますとおっしゃいました。ところが、私のところに寄せられた内部情報によりますと、一株たりとも売っていないということを聞いたけれども、重要な情報として、実は反対売買、つまり持っている株を売って、そしてそれをさらに買い戻して引き取ったという重大な問題がある、こういう指摘であります。この問題を指摘されているのは、これは行平前会長、植谷元会長とも指摘をされているんですが、植谷会長は強制捜査が入る七月三十日の前日に売却したとの山一証券幹部からの重要な証言を得ているということが書かれております。  そして七月三十日、そのころの株価が一体どれくらいであったかということで私は東証の株価の動きを調査いたしましたら、七月三十日には、これは最高値が山一、三百四十四円、それで終わり値が二百五十八円、こうなっておりまして、大体結局二百五十八円ぐらいだった、こういうことであります。その七月三十日、捜査直前は今言った値段だったんですけれども、御存じのようにその後この山一の問題に関して捜査が入りました。そして、その捜査が入ったことが御存じのとおりにこれはまさに大変な株価の低落をもたらすわけでありますけれども、それ以後どんどん下がってまいりまして、十一月二十日段階になりますと額面株を割りそうな五十八円まで下がった、こういうことですね。そういうわけですから、そのころにこれを売ったら大変な差額が入るわけです。  そしてこの内部情報では、こういうことが仮に行われたとして、十一月二十七日に最安値は一円にまでなったというわけですから、そういう一円で買い戻した場合には、五十万株を三百五十円ぐらいで売ったとすると一億四千九百五十万円の利益が上がる、こういうことになっている。これを業界では反対売買と称しておるんですが、それで、今なお株は持っているよ、売っていないよと、こういうことを言っているということは許されるだろうかということが書いてあるんですね。私は、これは事実かどうか調べてもらいたいということで言っているんですけれども、こういうことは果たして許されるだろうかという問題ですね。  いわゆるインサイダー取引というのはどういう犯罪であるかということをここではっきりしておきたいんですけれども、証券取引法百六十六条、会社関係者にある内部者取引の禁止、これはどういうことを禁止する法律ですか。
  102. 大前茂

    説明員(大前茂君) インサイダー取引といいますのは、会社の重要な情報、重要事実でございますが、これに容易に接近し得る者が、会社関係者等と言っておりますが、そのような情報を知って、それがいまだ公表されていない段階でその会社の株券等の売買を行うこととされております。  このような取引が行われますと、公表されなければその情報を知り得ない一般の投資家にとっては非常に不公平な結果になり、これが放置されますと証券市場に対する投資者の信頼が損なわれ、証券市場の健全な発展も望めなくなりますために、証券取引法第百六十六条等で禁止されて、その違反に対しましては刑事罰が科されているところでございます。
  103. 橋本敦

    ○橋本敦君 今御指摘の会社内部者ということになりますと、当然発行会社の役員、使用人等が入ることは、これは言うまでもありません。それに対する罰則としては六月以下の懲役あるいはまた五十万円の以下の罰金と、こうなっている。これも間違いありませんね。
  104. 大前茂

    説明員(大前茂君) 罰金は先生の御指摘のとおりでありましたけれども、今般の罰則強化法によりましてたしか懲役三年、それから罰金が三百万円ですか、に引き上げられていると思います。
  105. 橋本敦

    ○橋本敦君 前に私が指摘した報道によりますと、行平氏は株を約十一万株持っていました。行平氏はその株の売却を順次行ったということでありますけれども、報道によりますと、ことしの三月末時点で十一万株持っていたのを順次売って二万株まで、つまり九万株売ったと報道されています。  それで、ことしの三月末、つまり本年の四月以降の株価の動きを改めて私は東証から資料を取り寄せてみました。そういたしますと、九七年四月、終わり値が三百三十二円でありますが、毎月どんどん下がってまいりまして、九七年の十一月、ことしの十一月には百二円に入り、そして先ほど言ったようにその後まさに株価を割るところまで落ち込んでいくわけですね。こういうようになっていく状況の中で、いわゆる莫大な簿外債務やあるいは会社の経営不振ということが広く公開されれば当然株価は下がるわけでありますけれども、この時点ではまだ莫大な簿外債務があるということは公表されていない。しかし、行平氏は当然これは知り得る立場にあったし、知っていたということも言うまでもない。そしてまた、総会屋に対する利益供与問題でも彼は知り得る立場にあったというわけであります。  だから、彼が約九万株順次売却したというのでありますが、これが今指摘をしたように九七年の四月ごろから順次売却されたといたしますと、四月の終わり値が三百三十二円、それから五月が三百三十円、そして六月が三百四十一円、七月には二百六十円、いわゆる捜査が入りますとうんと下がって、どんどん下がって十一月には百二円と、こうなっていきます。だから、この問題で順次売却したということですけれども、仮にこの九万株を三百円で売って、そして一番最安値の、割り込んでいく五十八円前の、仮に百円で買い戻したとしても、その二百円の差額で九万株を買い戻したとして一千八百万円の利益があるわけですね。  こういうことは会社の経営者として一体許されるのだろうか。金融不安の中でいわゆるモラルハザードが言われる、そして首相も大蔵大臣も金融秩序の維持と信用とモラルハザードを避けなきゃならぬと厳格におっしゃっている中で、会社のトップがみずから得た情報でこういう株操作をして利益を得るということが許されるだろうか。  七千五百人を初め一万人近い従業員はまさにこのころは何も知らずに一生懸命働いていたんでしょう。そして今、自主廃業ということで、やがて路頭に迷うという不安の中で、政府対応に力を入れなきゃならぬ、こうなっているわけでしょう。こういう中で、仮にこういうことが行われていたとするならば、私はこれはまさに法に照らして厳正に捜査をして厳しくこれは追及する必要がある重要な問題だと思うんですね。  御存じのように、アメリカではあのいわゆる金融問題の破綻の中で多くの経営者が刑務所に収容されるということがあったという厳しさが何回も今国会でも指摘をされてまいりました。私は、こうした問題については、これは簡単に見逃すことができない。そして重要なことは、私に寄せられたこの情報で、行平前会長はこのようにして株が落ち込むのを恐れて、いいときに売って、最後には自分が責任をとるということになると大変だから安値で買い戻して、そういったことについては株の管理は一切人に任せていたから、秘書がやったことだと、こういうことを言う。そういう筋書きの準備もしていたという情報まで入っているんです。  私は、これが事実かどうか、事実だとは言いませんよ、こういう情報が来たということは、私は徹底的に今調べてもらわなきゃならぬ重要な問題だということで指摘をするわけです。  証券取引等監視委員会は、今私が指摘したようなこういった問題も厳しく調査をして、そしてこれからの捜査の中で、きょう私が指摘したことも重要な参考資料として厳正に調査を遂げてほしいと思いますが、いかがですか。
  106. 大前茂

    説明員(大前茂君) 私どもといたしまして、現時点において今御指摘のような個別の具体的な事案の内容についてのコメントは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにいたしましても委員会としましては、インサイダー取引に違反することになりますようなそういう証券取引法違反の事実が確認された場合には、厳正に対処していく所存でございます。
  107. 橋本敦

    ○橋本敦君 証券取引等監視委員会としては、厳正な調査で違法行為があると判断する事実及び証拠がはっきりするならば、当然私は告発する義務があると思いますが、いかがですか。
  108. 大前茂

    説明員(大前茂君) 御指摘のとおり、私どもこれまで委員会が創設されましてから今日まで十五件告発をしてきておりますが、私どもがいろいろ監視活動を行う中で違法行為を発見し、そして嫌疑が十分あるというものにつきましては検察当局へ告発をしているところでございます。
  109. 橋本敦

    ○橋本敦君 今回の山一関係の調査についても、もちろんそういう立場でこれからも調査をやられることは当然ですね。
  110. 大前茂

    説明員(大前茂君) あくまでも個別事案についてのコメントということではございませんけれども、一般的に申し上げまして、違法行為がありましてその嫌疑が濃厚であるということになりましたらば告発も十分念頭に置いて対処していく所存でございます。
  111. 橋本敦

    ○橋本敦君 私が指摘した問題は、私に寄せられた情報をもとにして、こういう問題があってはならぬということで私は質問をして調査をお願いしたわけであります。  この問題は私が指摘したように、本当に会社の経営者としてモラルに欠けることが甚だしいということだけじゃありませんで、本当にまじめに働いてきた従業員が何の内部情報も知らないうちにトップが知っている、そのトップが内部情報をつかんでまさにみずからの利益を獲得する、そして最後は責任回避するためにいわゆる相対売買で、反対売買で買い戻して格好をつける、これが本当なら私はもう許せぬと思うんですね。  万が一将来、この問題が適正に調査をされて証券監視委員会の方から告発という事態になったならば、これは私は責任を持って法務省としても厳正な調査を遂げていただかなくちゃならぬ重要な問題だと思いますが、将来、仮定のことにはなりますが、理論的な問題として、告発があれば当然厳正な調査をしていただく、これは間違いないことだと思いますが、大臣、御所見いかがでしょうか。
  112. 下稲葉耕吉

    国務大臣下稲葉耕吉君) 具体的な問題でございますので差し控えさせていただきますが、国内的にも国際的にも大変関心を持たれている事件だと思います。  現在、証券取引等監視委員会、大蔵省の検査部が実態解明に当たっているわけでございますが、刑事事件に触れるようなことがあれば、これは適正に検察が処置するものだと思います。
  113. 橋本敦

    ○橋本敦君 時間が参りましたので、きょうは矯正局長にわざわざおいでを願っておったんですが、大変申しわけございませんでした、次回にさせていただいて、質問を終わります。
  114. 風間昶

    委員長風間昶君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時五十四分散会