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1997-12-02 第141回国会 参議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十二月二日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  十一月二十七日     辞任         補欠選任      松村 龍二君     上杉 光弘君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         風間  昶君     理 事                 釜本 邦茂君                 清水嘉与子君                 大森 礼子君                 橋本  敦君     委 員                 遠藤  要君                 岡部 三郎君                 長尾 立子君                 服部三男雄君                 林田悠紀夫君                 松浦  功君                 魚住裕一郎君                 円 より子君                 菅野 久光君                 千葉 景子君                 菅野  壽君                 照屋 寛徳君    国務大臣        法 務 大 臣  下稲葉耕吉君    政府委員        法務大臣官房長  頃安 健司君        法務大臣官房司        法法制調査部長  山崎  潮君        法務省民事局長  森脇  勝君        法務省刑事局長  原田 明夫君        法務省入国管理        局長       伊集院明夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   涌井 紀夫君        最高裁判所事務        総局人事局長   堀籠 幸男君        最高裁判所事務        総局経理局長   竹崎 博允君        最高裁判所事務        総局家庭局長   安倍 嘉人君    事務局側        常任委員会専門        員        吉岡 恒男君    説明員        人事院事務総局        給与局給与第一        課長       出合  均君        人事院事務総局        給与局給与第三        課長       川村 卓雄君     —————————————   本日の会議に付した案件、 ○裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付) ○検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 風間昶

    委員長風間昶君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十一月二十七日、松村龍二君が委員を辞任され、その補欠として上杉光弘君が選任されました。     —————————————
  3. 風間昶

    委員長風間昶君) 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。下稲葉法務大臣
  4. 下稲葉耕吉

    国務大臣下稲葉耕吉君) 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して御説明いたします。  政府においては、人事院勧告趣旨等にかんがみ、一般政府職員給与改定する必要を認め、今国会一般職職員給与に関する法律等及び特別職職員給与に関する法律をそれぞれ改正する法律案提出いたしました。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般政府職員の例に準じて、その給与改定する措置を講ずるため、この両法律案提出した次第でありまして、改正内容は次のとおりであります。  第一に、最高裁判所長官最高裁判所判事及び高等裁判所長官報酬並びに検事総長次長検事及び検事長俸給は、従来、特別職職員給与に関する法律適用を受ける内閣総理大臣その他の特別職職員俸給に準じて定められておりますところ、今回、内閣総理大臣その他の特別職職員について、その俸給を増額することとしておりますので、おおむねこれに準じて、これらの報酬または俸給を増額することといたしております。  第二に、判事判事補及び簡易裁判所判事報酬並びに検事及び副検事俸給につきましては、おおむねその額においてこれに対応する一般職職員給与に関する法律適用を受ける職員俸給の増額に準じて、いずれもこれを増額することといたしております。  これらの給与改定は、判事補及び五号から十七号までの報酬を受ける簡易裁判所判事並びに九号から二十号までの俸給を受ける検事及び二号から十六号までの俸給を受ける副検事にあっては平成九年四月一日にさかのぼって行い、その他の裁判官及び検察官にあっては平成十年四月一日から行うことといたしております。  また、検察庁法第二十四条の規定により欠位を待つことを命ぜられた検察官に支給する手当期末特別手当を加えることとし、この改正規定平成十年一月一日から施行することといたしております。  以上が、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律  の一部を改正する法律案趣旨でございます。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
  5. 風間昶

    委員長風間昶君) 以上で両案の趣旨説明の聴取は終わりました。  これより両案に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 長尾立子

    長尾立子君 自由民主党の長尾立子でございます。  ただいま議題になりました裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案質疑に入ります前に、この十月に合意に至りました法曹三者の合意問題につきまして、法務大臣に御質問をさせていただきたいと思っております。  我が国の司法を考えてみますと、制度の上でも、また司法に関与されておられる人材の面でも諸外国に比して遜色のないものであるというふうに思っております。日本社会経済構造の中で司法制度の果たしている役割は大変に大きいものがあると思っておりますし、また国民一般司法に寄せます信頼というものも大変高いというふうに思っているわけでございます。  しかし、一方におきまして、国民にとって司法が身近な存在であるかということを考えてみますと、これは、裁判については大変に時間がかかる、コストがかかる、また身近に相談できる弁護士事務所等市民レベルという意味ではなかなかに得がたい、こういうような状況にあるように思うわけでございます。  この中で、やはり法曹人口を諸外国並みに、アメリカのような人数にいくのは大変に難しいと思いますけれども、せめてヨーロッパの諸国のようなレベルにまでという声は大変大きいように思っております。  今国会は、二十一世紀へ向けましてさまざまな分野での構造改革を進めるということを課題といたしました国会であるというふうに承知をいたしておるわけでございますが、このような社会の中では司法の果たしていく役割、いわば法による解決ということの意義がますます大きくなってくるのではないか、このように思っているわけでございます。このような時期に法曹三者の合意が得られた、司法試験制度及び法曹養成制度についての合意が得られたということは大変大きなことであると思っております。  この合意を踏まえましてどのように取り組んでいかれるのか、法務大臣のお話を伺いたい、このように存じます。
  7. 下稲葉耕吉

    国務大臣下稲葉耕吉君) 委員指摘のとおりに、最近、大変国際化が進んでまいっておるわけでございます。それから、社会構造も大変複雑、多様化いたしてまいっております。そういうふうな中で、社会の法的なニーズに的確にこたえていく必要があることは申すまでもありません。加えて、規制緩和が進みまして原則自由というふうな方向社会がだんだん変わってまいりますと、国民の権利、利益に関する紛争というふうなものがこれもまたふえてまいりましょうし、そういうようなものに対して迅速に、適正に対処しなければならない法曹の責務というものはいよいよ重要になってくる、このように思います。  その辺の認識につきましてはまさしく議員の御指摘のとおりでございまして、今回、法曹三者の合意というものは、私ども、二十一世紀における司法重要性を踏まえまして、新しい改革に向けた第一歩として極めて意義深いものがあると思うのでございます。  具体的に、法務省といたしましては、その合意を踏まえまして、次期通常国会には司法修習制度改革等を含みます裁判所法あるいは司法試験法改正法案提出する予定で今準備を進めているところでございますし、司法のあり方というふうなものに踏み込みましていろいろ検討を加え、今言われますような迅速に、そして的確に国民ニーズ対応できるような司法機能というふうなものを充実してまいらなければならない。  私といたしましても、今申し上げましたような方向で全力を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  8. 長尾立子

    長尾立子君 まことにありがとうございました。よろしくお願いいたしたいと思います。  それでは、今回、裁判官報酬及び検察官俸給等に関する法律改正案が提案されているわけでございますが、同時に、給与法改正自体内閣委員会で御審議が行われていると承知をいたしております。こういった給与法とは別に、裁判官報酬検察官俸給等について特別な法律をもってこういう規定をしているそもそもの趣旨につきましてお伺いをいたしたいと思います。
  9. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) 裁判官につきましては、独立して職権を行使するという地位にありますため、特にその報酬につきまして保障するという趣旨から、憲法上、委員承知のように、定期に相当額報酬を受け、この報酬は在任中減額することができないというふうに定められているわけでございます。  このような裁判官地位特殊性にかんがみまして、裁判官の受ける報酬につきましては、一般政府職員とは別に、特別な法律で定められているというふうに承知しております。
  10. 山崎潮

    政府委員山崎潮君) 検察官につきましては、国家公務員法上は一般国家公務員とされておりますけれども、その職務責任特殊性に基づきまして多くの特例が認められております。  検察官は、司法権の発動を促し、その適正、円滑な運営を図る上で極めて重大な職責を有しているわけでございますが、そういう観点から、準司法官的性格を有するものであるということになります。それから、原則として裁判官と同一の試験及び養成方法を経る、こういうような観点もございます。  そういうような観点から、試験、任免、身分保障等についても特例が定められておりますし、検察官の受ける俸給につきましては、特に検察庁法二十一条におきまして「別に法律でこれを定める。」というふうに明記をしておるところでございます。このような検察官職務責任については著しい特殊性が認められますことから、その給与に関する制度は、一般政府職員とは別に、裁判官給与に準じて定められるべきものでございます。  このような見地から、検察官俸給等に関する法律が制定されていると承知しているところでございます。
  11. 長尾立子

    長尾立子君 裁判官検事についてはその職務特殊性から別に法律をもって給与等を定める必要があるという御説明をいただいたわけでございますが、先ほどの提案理由伺いますと、今回の改正一般職給与改定にほぼ準じたものではないかというふうに思うわけでございます。  それで、人事院にお伺いをいたしたいわけでございますが、一般職の今回の給与の引き上げ、この率はどういう算出根拠によって算出をされたのか。また、実施時期について指定職ラインで線を引いて、一年おくらせるという取り扱いをされているわけでございますが、ここは人事院の方ではお答えはしにくいかと思いますけれども、こういう差がついていること、それから、今回期末特別手当というものが新設をされているわけでございますが、この設けた趣旨につきまして御説明をいただきたいと思います。
  12. 出合均

    説明員出合均君) 公務員給与につきましての今回の人事院勧告でございますが、これは公務員労働基本権制約代償機能として国家公務員法に定められております情勢適応原則、これに基づき官民給与の均衡を図るという趣旨から提出したものでございます。  具体的には、公務にありましては、一般職の非現業の国家公務員、これが五十万人ございますが、このうちの行政職職員二十五万人、これと企業規模百人以上、事業所規模五十人以上の民間事業所の全国三万七千事業所公務行政職と同種の職務についている民間従業員約四十三万人につきまして、四月時点における給与の実支給額調査いたします。その調査に基づきまして、ラスパイレス方式によって、その責任の度合いであるとか学歴、年齢、こういうものが同じ者を対応させましてこの勧告較差というものを出しておるところでございます。  本年につきまして申し上げれば、四月時点公務行政職平均給与月額は三十五万六千四百二十四円であるのに対しまして、民間給与が一人当たり平均三千六百三十二円、一・〇二%上回っていることが判明いたしました。この一・〇二%につきまして、ことし人事院勧告として提出をさせていただいたということでございます。  それからもう一点、完全実施との関係でございますが、我々は、先ほど申し上げましたように、四月時点における官と民の給与較差算出して、その較差を四月にさかのぼって実現をしていただきたいということで申し上げているところでございます。このことは、指定職俸給表、その他の俸給表、それぞれ同じでございます。したがいまして、人事院としましては、この勧告勧告どおり実現していただきたいとお願いするというのが我々の立場でございます。
  13. 川村卓雄

    説明員川村卓雄君) 期末特別手当内容についてでございますけれども、指定職職員につきましては、その高い職責に基づきまして従来から勤勉手当は支給されておりませんで、定率の期末手当のみが支給されてきたところでございます。  しかしながら、近年、指定職職員に係ります不祥事が相次いだこともございまして、懲戒処分を受けるなど勤務成績が良好でない指定職職員についてまで減額があり得ないとしますと、公務に対します国民信頼の確保の上で適当でないというふうに考えられるところでございます。  このため、指定職職員につきまして、通常の場合は従来どおり一般職員期末手当と同様の支給月数分を支給いたしますけれども、懲戒処分を受けるなど勤務成績が良好でない、そういう場合には各庁の長が職員勤務成績に応じまして減額できるような手当といたしまして新たに期末特別手当を創設いたしまして、これまでの期末手当にかえまして支給しよう、そういうふうにしたわけでございます。
  14. 長尾立子

    長尾立子君 ありがとうございました。  このような一般職職員についての改正をほぼ準用していくということについての疑問でございますけれども、裁判官報酬等に関する法律の第十条でございますが、これは「一般官吏の例に準じて、」というふうな書き方になっております。先ほども別の法律を設けたということの趣旨について質問をさせていただいたわけでございますが、今回の改定は、全体といたしましてはぼこの一般官吏例そのものではないかという気がいたすわけでございます。  法律で特別に規定をするということ、また裁判官という特殊な職務というものに応じて、必ずしも同じでなくてもいいのではないかという気もいたすわけでございます。  この中で、例えば指定職職員につきまして、今回、政府は一年間アップをとめるというような措置をとっているわけでございますが、指定職といいますと、これは一般公務員の中では大変限られた数の人間でございます。  この法律では判事補のところでラインを引いておられるようでございますが、伺うところによりますと、判事判事補の比率では判事の方が判事補よりも倍ぐらいの人数がおられるということでございます。  人数的に見ますと、非常にこの点は大きな差がございますし、こういう比較はある意味では問題かもしれませんけれども、同じように大学を卒業いたしまして裁判官になられる方を考えてみますと、研修期間それから判事補としての十年ということを考えますと十数年のキャリアということであろうと思いますが、指定職人間ははるかにそれよりもキャリアがあるという形のものではないかと思っております。それを同じように考えていく、また指定職管理者としての責任を負う立場ということも考慮されているように思うわけでございますが、それを同じにされたということはいかがかということが第一点の質問でございます。  第二点は、期末特別手当に関することでございますが、これは今御説明にありましたように、公務員たる者がその職務に関し不正な行為を働いたということにつきまして罰則的に減額を考えるという趣旨から設けられたものであると思います。  他の一般公務員に比しまして、今回御議論になっております裁判官及び検察官というのはさらに厳しい職業倫理が問われるべき分野であると思っているわけでございますが、こういった非行に対する対応が全く同じというふうに考えてよろしいのかどうかということが一つ。また、裁判官につきましては、憲法裁判官独立ということは保障されておりますし、この方々につきましての特別手当減額ということについては、手続上こういった趣旨に沿った形のものがされてしかるべきものというふうに考えるわけでございます。  以上、二点につきまして御質問をさせていただきます。
  15. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) 裁判官報酬につきましては、裁判官報酬等に関する法律第十条の規定によりまして、一般職及び特別職国家公務員給与改善が行われた場合には、対応額俸給を受ける一般行政官俸給改定率と同率で報酬改定する、いわゆる対応金額スライド方式によって改定が行われているところでございます。  現在の裁判官給与制では、その仕組みにおいてその職務責任特殊性相当程度反映し、またその給与水準において一般行政官に対してある程度の較差を保つよう、このような対応金額スライド方式を採用しているというふうに理解しております。これは、一般職国家公務員給与に関する人事院勧告重要性を尊重しつつ、裁判官職務特殊性給与体系に反映させようとするものであって、相当合理性があるのではないかというふうに考えているところでございます。  次に、期末特別手当の点についてお答えいたします。  今回、指定職に対して新設されました期末特別手当につきましては、裁判官報酬法九条の規定により、指定職相当する裁判官に準用されることになりますが、これを受けまして、最高裁判所規則期末特別手当に関する定めを置くことになるわけでございます。  期末特別手当を準用するという形で導入するにつきましては、裁判官職務特殊性に配慮したものである必要があり、委員指摘のように、とりわけ裁判官独立を害するような事態を招くものとなってはならないというふうに考えているところでございます。一般職給与法改正によりますと、期末特別手当減額される場合として懲戒処分を受けたとき、それから勤務成績が良好でないときと二つ規定しているようでございます。  裁判官勤務成績につきましては、そもそも裁判官職務は基本的に独立性が高いわけでございまして、その担当する事務も種々さまざまでございまして、それ自体勤務評定になじみにくいものであります上、三月期、六月期、十二月期という短い期間成績を論じることは事柄の性質上困難でありまして、また相当でもないというふうに考えております。したがいまして、成績により期末手当減額するということは考えていないところでございます。  しかし、一般職懲戒処分に該当するものといたしましては、裁判官につきましては裁判官分限法による懲戒裁判がございまして、これは第一審が高等裁判所による五人の合議体により行われ、これに不服がある場合には最高裁判所の大法廷で審議されるという極めて厳格な手続で行われるものでございまして、このような懲戒裁判を受けた場合には減額を行うことは決して裁判官独立を害するものではないというふうに思われるわけでございます。  そこで、最高裁判所といたしましては、このように裁判官分限法による懲戒裁判を受けた場合に限定して減額を行う方向期末手当の導入を図りたいというふうに考えているところでございます。  それから、一般職公務員より厳しい対応を求めてしかるべきだという点についての御質問でございます。  裁判官につきましては、その独立性を確保するために厳格な身分保障がされている一方で、裁判官としてふさわしくない非行等があった場合にはその職責重要性にかんがみ弾劾裁判によって罷免され、あるいは分限裁判によって懲戒処分を受けるといった制度が設けられておりまして、委員指摘のような厳しい対応が求められますような場合は、これらの制度によって厳正に処理されているというふうに考えているところでございます。
  16. 頃安健司

    政府委員(頃安健司君) 検察官給与改定に関する部分についてお答えいたします。  指定職相当給与を受ける検察官給与改定時期につきましては、委員指摘のような面もあろうかと存じますが、検察官一定範囲の者につきまして、その地位職責重大性にかんがみ、指定職相当給与を受けているという事柄関係上、一般職の中の指定職相当職員給与改定の時期がおくらせられるという場合、それに時期を一にするもまたやむを得ざるところかと考えております。  それから、期末特別手当の点でございます。  検察官懲戒処分につきましては、その職責重大性対応した厳格な運用を行っているところでございますが、期末特別手当における減額措置につきましてもその職責にかんがみ厳正に行っていきたいと考えております。
  17. 長尾立子

    長尾立子君 ありがとうございました。  法務委員会は十一月六日に牛久にございます入国者収容所東日本入国管理センター及び茨城農芸学院二つ法務関係施設委員長の引率のもとに参りまして勉強させていただいたわけでございます。  こういう施設を訪問いたしまして、または成田等の空港を利用いたしますときに思うわけでございますが、日本のこういった分野を構成しておられる方々、非常にいろいろ多岐な職種の方がおられて、その方々がその職務に本当にまじめに精励をしておられる。そのことが日本法秩序の維持ということにとっては極めて大きな役割を果たしているように思います。裁判所におきましても、裁判官を支えていただいておる書記官、それから事務官、こういった方々役割は大変に大きいものがあると思うわけでございます。  殊に、この間、施設を見せていただいて思うわけでございますが、今の国際化の波の中で入管関係職員の皆さんは大変な御苦労にさらされているように思います。定員事情が厳しい中でございますので、増員ということも大変苦しい、このように承知をいたしているわけでございます。  このような司法関係職員の方の給与の扱いということでございますが、裁判官検察官は、その特別な事情に応じてこのように特別な法律をもってその立場が保障されている。これらの方々については多分一般公務員としての給与表適用ということであると思いますが、給与表上どのような観点から処遇がされているのかということを人事院にお伺いいたしたいことと、こういった方々について今後どのような処遇を考えていきたいと思っておられるのか、法務省の御見解を伺いたいと思います。
  18. 出合均

    説明員出合均君) お答え申し上げます。  矯正施設関係職員のうちの警務官及び入国警備官が適用されます俸給表は公安職俸給表の(一)でございます。それから、検察事務官適用されます俸給表は公安職俸給表(二)ということになっております。これらの俸給表につきましては、それぞれの職務特殊性を評価いたしまして、基本となる俸給表でございます行政職(一)に比しまして高い水準を設定しておるところでございます。これにより、基本的にはこれらの職種について職務に応じた給与という整合性が図られるものというふうに考えております。  これらの俸給表改定につきましても、今申し上げましたようなそれぞれの有利性を維持するよう、行政職俸給表(一)における改定との均衡を基本としながら、常にそれぞれの職種の事情を勘案し、適正な処遇の確保に努めてまいっておるところでございます。
  19. 伊集院明夫

    政府委員伊集院明夫君) 入管職員関係についてお答えします。  入管職員は、外国人を対象として極めて高い専門的能力を要求されるということと、かつ国際化の進展と不法就労問題の深刻化を背景としまして業務量の増大と複雑、困難化に直面しているわけでございまして、委員指摘のとおり極めて厳しい状況のもとで職務に従事しております。  当局といたしましては、このような入管職員の勤務の特殊性と現状を踏まえまして、その処遇の改善に最大限の努力を傾注してまいりたいと考えております。
  20. 長尾立子

    長尾立子君 大臣も今お聞きいただいたことと思います。  やはり法務行政全般といたしましては、中心になる方々もそれはもちろん大変大切なことでございますが、さまざまな形で支えていただいている多くの特別な任務につかれている職員の方の処遇ということも大変重要であると思いますが、大臣のお気持ちを聞かせていただければと思います。
  21. 下稲葉耕吉

    国務大臣下稲葉耕吉君) いろいろ御指摘いただきましたとおりに、極めて職員の勤務実態というのは厳しいものがあるわけでございます。法務省といたしましては、それぞれの中でできるだけ合理的に配置転換なりなんなり考えているわけでございます。  例えば、刑事事件で難しい事件がございますときには全国から検察官の応援を求めてやるとか、あるいは民事局の関係ではコンピューター化を進めまして、出先二千ぐらいございました法務局の出張所を現在千以下にしてコンピューター化を進めると同時に委託を進めているとか、あるいは矯正施設におきましてもその機能を集約化するとか、あるいは入国管理行政におきましても、御承知のとおりにコンピューター化を進めるとか統廃合を進めるとか、それぞれの分野で今必死になってやっておるわけでございます。  御承知のとおりに、最近また犯罪は増加傾向にございます。それから登記事務もふえております。それから矯正施設における収容者の数もふえておりますし、暴力団の関係者がふえるとか、あるいは覚せい剤関係のものがふえるとか、そういうふうな困難な情勢にあるわけでございます。  私といたしましても、その辺の実態を踏まえまして、職員の勤務状態は非常に厳しいわけでございますので、適正な配置がえの問題等々も頭に入れながら、待遇の改善、そして増員も含めた処遇の改善というふうなことにつきまして努力してまいりたい、このように思います。
  22. 長尾立子

    長尾立子君 ありがとうございました。
  23. 円より子

    ○円より子君 平成会の円より子です。  本日の法律案は、一般政府職員給与改定に伴い、裁判官報酬月額及び検察官俸給月額の改定等を行うものでございまして、私は、法曹界に働く人々が報酬に合わせて働くというよりは、報酬に見合わなくてもとにかく社会のために人々のために一生懸命努力して働いていらっしゃると見ておりますし、また期待もしております。ただ、それぞれ人は生活をしていかなければいけませんから、やはり家族も養わなきゃいけません。きちんとした報酬があって当たり前と思いまして、当然この改定について賛成するものであります。  今よく言われておりますのが、裁判官の仕事が大変忙し過ぎる、一人ではとても負い切れないほどの件数を抱えている、特に大都市近郊ではそうだというようなことを聞いております。  そこで、きょうは家裁についてちょっとお伺いしたいと思っております。  地裁、高裁、最高裁等に比べますと、家裁というのは割合一般の人々にとってもなじみのある裁判所ではないかと思うんです。私たちごく普通の国民から考えますと、一生の間に余り裁判所のお世話にはなりたくないと思っている方が圧倒的に多いと思うんです。私などもたまたま前回、議員になりましてから最高裁のお世話になったことがありますけれども、それまではいろいろ離婚を考えていらっしゃる方やそういった方の相談を受けたりしましたけれども、私自身家裁の調停も審判もまた裁判等も一度も経験したことのない人間でございました。それで多くの方に、家裁の調停というのはとても安い料金で親切に教えてくれて、また被告や原告に分かれて裁判をするところではなくて第三者を介しての話し合いの席だから利用なさるといいということを随分勧めてはまいりましたけれども、それでも実際は夫婦間で話し合いができれば一番いいのではないかということを常に理想としてまいったものですから、裁判所裁判等はできれば私自身も避けたいなんという方の人間だったんです。  その中で、とにかく家裁の調停というのは世界でも珍しい、私は民主的でまた社会性もあり教育的な面もありという形でいい制度だと思っております。中でも、家事調停委員によって支えられているその家事調停といいますのは家庭紛争というものの解決には欠くことができない解決方式かなと思っているんです。  この調停もあわせてお伺いしたいんですが、裁判官が民事事件を抱えて忙し過ぎるということなんですけれども、家裁の裁判官というのはどうなんでしょうか。どんどん受件数がふえているのか、それに伴ってきちんと裁判官の数がふえているのか。大都市圏、特に東京近辺、東京家裁でも結構です。東京家裁に限っていうならば、一人の裁判官が一月に抱えている件数というのか、一年でも構いません、どのくらいの件数を抱えていらっしゃるのか、そのあたりがわかればちょっと教えていただけますでしょうか。
  24. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 東京家裁を中心にしたお尋ねでございますので、東京家裁の事件の状況について御説明させていただきたいと思います。  平成八年におけます家事調停事件全体でございますが、申し立ての件数は八千百六件でございます。この事件数は、過去五年間、つまり平成四年から比べますと九・三%の増加となっておるのが現状でございます。また、その中に占めます夫婦関係調整事件、離婚等があるわけでございますけれども、その夫婦関係調整事件の事件数は三千七百七十二件でございまして、これも同様に過去五年間で見ますと一二・八%の増加となっているところでございます。  また、全国的な傾向もほぼ同じようなことで、従来、長い期間を経ておりますが、右肩上がりの数字が続いております。全国的にも最近も増加傾向にあることは御指摘のとおりでございます。  なお、このような事件を担当する東京家裁の裁判官の手元の状況はどうかという御質問でございますけれども、東京家裁の裁判官の審判事件の手元にある事件数は約百五十件ぐらいでございます。また、調停事件は二百五十件ぐらいでございまして、審判事件のうちには、子の氏変更ですとかあるいは相続放棄とか極めて簡単なものも相当入っておりまして、難しいものはそう多くはないというのが現状でございます。  また、調停事件二百五十件について負担がどうかという点でございますけれども、現在の東京家裁の裁判官の体制から見ますと、それはそれ相応に処理できているというふうに私ども認識しているところでございます。
  25. 円より子

    ○円より子君 それはそれ相応にとおっしゃったのは、この百五十件と二百五十件というのは全体でですね、東京家裁の。
  26. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 家事事件担当裁判官一人当たりの手持ちの件数でございます。
  27. 円より子

    ○円より子君 一人で審判が百五十件、調停が二百五十件。  それで、調停なんですが、普通は男女ペアで一人ずつの調停委員がつき、そして書記官がつき、裁判官がついて一回ごとの調停が行われると聞いておりますが、そうでしょうか。
  28. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) さようでございます。
  29. 円より子

    ○円より子君 先ほども申しましたように、私自身が調停を受けたことがないので、いろんな方からのお話ですが、ほとんどの場合、調停の最後にしか裁判官が出てこられないというふうに聞いておりますが、それはいかがでしょうか。
  30. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 裁判官の調停への立ち会いのやり方は、いろいろ個々の事件によって違いはございますけれども、私ども認識しているところでは、裁判官は事件の節目節目にはじっくり時間をとって立ち会っているというのが現状でございます。  例えて申しますと、調停の始まる段階、その調停の方針を策定する段階、例えば、円満和合を目指していたけれども、やはり離婚に至らざるを得ない、こういう状況に立ち至った場合等の節目に立ち会う、さらに今、委員指摘のような締めくくりの段階に立ち会う、こういった節目節目には時間を十分とって立ち会うことを心がけているのが現状でございます。  また、これ以外にも、調停の期日を行っている間、裁判官はその各調停室に寄りまして、その進行状況等を確認したり、また調停室から連絡があった場合には他の調停室に赴きまして、その状況等について確認をして調停委員との評議を重ねて進行についての助言をしてくる、こういった形で関与しているのが現状でございます。
  31. 円より子

    ○円より子君 最初の段階、また重要な局面で、そして最終的にと、節目節目に立ち会うことを心がけるということですが、本当に多くの方から聞く話では、最初に調停委員が二人いるというような状況だけで、裁判官が最後にいらっしゃるというようなケースしかほとんど聞いていないんです。  それで、多分立ち会わないけれども、ケースはきちんとごらんになって、これは調停委員だけでいいだろうと判断なさる、そういうケースが多い  ということなんでしょうか。
  32. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) その立ち会いをどのような時期にするかは、まさに個別のケースケースによるわけでございますけれども、ケースが難しければ立ち会う頻度も多くなってくるということになるわけでございます。  ただ、立ち会わない場合におきましても、今、委員指摘のように、裁判官が全くその事件について関与しないわけではないわけでございまして、通常は調停委員とその期日の初めに評議をいたしまして、事件の進行について打ち合わせをいたしております。また、その事件の終わった段階で、立ち会わない事件については調停委員から経過の説明を受けまして、次回の方針についての検討をする、こういう形をとっておりますものですから、実際には、調停の進行については、各事件について裁判官は十分な理解をしているものと理解しているところでございます。
  33. 円より子

    ○円より子君 調停自体は、大体平均何回ぐらいで終わっておりますでしょうか。成立ないしは不調も含めてですが。
  34. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 平成八年の数字で申し上げますと、夫婦関係調整事件、離婚等でございますけれども、これについての調停の平均実施回数は三・一回でございます。期間で見ますと、大体四・一カ月というのが現状でございます。  なお、家事調停全体を見た場合の平均の審理期間は五・三カ月ということでございまして、これは遺産分割等が入っているので長くなっているものと理解しております。
  35. 円より子

    ○円より子君 裁判などは遅くて遠くて高いというふうな批判があるわけですから、調停もなるべく早い方がいいというふうに思われるかもしれませんけれども、夫婦間で話し合いがつかずに余りうまくスムーズにできない、もめているようなケースが何とか調停でうまくやってほしいと思って多分持ち込まれる、そういったことが多いと思いますので、それがたった三回、三二回という平均ですから、三回でできるのかなというようなことがあります。  最初の段階では両方から事情を聞くだけでしょうし、そしてうまくまとまるのかどうかというのがちょっとありまして、調停というのはどちらかというとカウンセリング的な機能があり、両者の気持ちの整理をして、そしてまとめていくということで、早く済ませればいいというものとはちょっと違うと思うんです、もちろんそんなことは御存じだと思いますけれども。  ところが、地方からの多くの相談を受けておりますと、たった一回で不調になった、取り下げなさいと言われたとか、信じられないようなケースがあります。それは多分受ける側の方も調停に対する知識が余りにも少ないということもあるかと思うんですが、すべての人から言われるのは、家裁もやはり裁判所だというところで、命令されたらもうそれに従わなきゃいけないと思っている方というのは結構多いんです。自分自身が、いやもう一度ぜひやってくださいとか、そういうふうに主張すべきなんですが、なかなかそういうことができないとおっしゃる。  それは、やはり家裁も大変何か威圧感があって、なかなか自分自身の意見を言いにくい、そういった雰囲気があるというふうなことを皆さんおっしゃるんですが、調停を受ける側の、わざわざ申し立てをして使う側の人たちの権利意識とか、そういったものにも問題はあるかと思いますけれども、ほかでも、なるべく早く終わらせて、もうとにかく隣へ行きなさい、隣へ行きなさいとおっしゃる。隣とは何ですかと聞くと、それは地裁だと。家裁でもうやってられないという、そういう意見も随分聞くんですが、なぜそんなに急がれるのか。それから、先ほどのお話で、裁判官が立ち会わないケースが随分多くて、私はそれは裁判官が忙し過ぎるからではないかという気がするんですが、そのあたりはいかがですか。
  36. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 家庭裁判所が調停の解決を急ぎ過ぎるという御指摘でございますけれども、事件に応じて必要な程度の関与はしているというふうに理解しているわけでございます。そういった意味においては、家庭裁判所が単に早期に解決をすればいいという、そういった思いで処理していることでないことは御理解いただきたいと考えているわけでございます。  ただ、事件によりましては、確かに委員指摘のように、一回だけで終わる事件がないわけではございません。わずかではございますが、そういった事件もございます。  私ども、家庭裁判所としては、家庭裁判所に事件が係属したからには、できる限り当事者の自主的な解決を図れるようお手伝いをさせていただくということで関与してきているわけでございますけれども、当事者の中にはその一方の当事者が全く話し合う余地を持っていないということで話し合いの土俵にすらのらないというケースもあるわけでございます。できるだけ話し合いの場に出るように説得はするわけでございますけれども、そういったケースなどにおいては一回で打ち切らざるを得ないこともあるのが現状でございます。
  37. 円より子

    ○円より子君 調停というのはそのときにうまくいかなくてもまた何度でも受けられるという制度なんですけれども、また半年ぐらいしてから調停にいらっしゃいというような話よりは、すぐに裁判に持ち込みなさいと言われるケースが大変最近増加しておりまして、そのあたりももう少し親切に調停委員の方が言っていただけたらいいなと思うんです。  先ほどからちょっと裁判官の立ち会いに私がこだわっておりますのは、裁判官が立ち会ってすごくうまくいったとか、裁判官に対する印象のいいものが随分寄せられております。ちょっと読ませていただきたいんですが、私は、こういった「ハンド・イン・ハンド」という、これは手に手をとってという意味の英語なんですけれども、こういった題名の機関誌を二十年間ずっと発行しております。  これは離婚した女性や別居中の方や、また夫と同居中でも夫から離婚を言われて困っているという方たちが毎月とっていらっしゃるんです。会報誌の購読料すらずっと払えないなんて方も、学歴が高くて結婚前はかなりの年収を取る仕事をしていた方でも、やはり専業主婦になってしまうと、そして別居して夫から生活費が来ないと会報誌の購読料すら払えないなんて方が多いんですが、この会報をとっていらっしゃる方が今全国に千五百人いらっしゃるんです。  そこで相談窓口のアンケート調査をしたことがあるんですね。この相談窓口の中には、行政相談もありますし、それから家裁の相談窓口もありますし、家裁の調停のこともありますし、弁護士さんのこともあります。そのアンケート調査がたくさん来たんですけれども、その中の一つに、わざわざアンケート用紙には書けないからといって便せんにお書きになっている。これは、とてもその相談窓口と裁判官がよくて、その方は調停で家裁を利用したことが本当に自分の人生に役に立ってよかったということを書いていらっしゃるんですね。そして、とてもよい人材に恵まれたと。そのよい人材というのが家事相談員と女性判事調査官だったというふうに書いていらっしゃる。  ちょっと読ませていただきますと、裁判所というイメージはとても恐ろしくて最初は戸惑いましたが、相談員の方は三十歳代か四十歳代前半の女性で第一印象がとてもよかったです。わずか十分程度でしたが、話が通じるという思いを抱きました。てきぱきと手続を教えてくださって、その人のおかげで調停へ持ち込みましたと。話が通じるという、そういった思いを抱けるというのは、短い時間でもとても大事なことだと思うんですね。長い時間幾らとっても、この人はわかってくれない、事務的だとか、冷たいという印象を持ってしまったらどうにもならないと思うんです。  それから、今度は家裁の調停委員との面接がずっとあったんです。面接というか調停があったんですが、明治生まれと思われるおじいさんとおばあさん。このままの話を読んでいます。私の記憶ではということで、世代の差を感じさせられるような態度や発言ばかりが目立って失望しました。常に、我慢すればやっていけないことはないでしょう、我慢我慢と、そればかりを言われたと。それから、あなたがわがままだからだとか、女は男に従っていればうまくいくんだとか、とにかく延々と調停の間じゅうこういった話だったと。常に、自分の話をしようと思うと、はい、もう時間切れです、終わりですというふうに言われて、自分の気持ちをもう少しわかってもらおうと思って次の調停までにせっせと書面で書いてそれも出したけれどもだめで、調停をしたことでストレスが募って大変だったというんですね。夫との離婚ということに直面しているときというのはもうそれでなくてもストレスがたまって体調が悪くなるときに、調停をやって逆にそうなるというのは大変気の毒だと思うんです。  ところが、この人の場合も、女性の判事さんが最後の日に登場して、この判事さんの印象は鮮烈でしたと。夫婦関係の調整事件という一つの流れの中で出会えて忘れられない方となりましたと書いていらっしゃるんです。私たちの夫婦の問題を的確に分析されて、次のステップとして調査官とのカウンセリングも提案してくださいました。調停で足踏みばかりしていましたので、夫婦間の話も進展しないままいらいらしていましたが、調査官がじっくりと耳を傾けてくださいましたと。あと省略いたしますが、彼女はその裁判官に出会ったこと、また調査官に出会ったこと、最初の窓口の女性、大変いい方に出会えたと思います。でも残念ながら、調停は彼女にとってストレスがたまる、逆効果しかなかったということですね。  これはたまたま一つのアンケートを御紹介しましたけれども、残念ながらこういうケースが結構ありまして、裁判官によってもう本当によかったというケースが多いんです。だから、なぜ裁判官がちゃんと立ち会われないのかなと思います。原則といいますか、どの本を読んでも、調停というのは調停委員二名そして書記官と裁判官が立ち会うとなっているんですが、やはりお忙し過ぎるんじゃないかなと思うんで、もう一度その点についていかがですか。
  38. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 調停の運営のありようは、いろいろ事件によって違いがあろうかと思いますけれども、まさに民間からなっていただいた調停委員さんに話を聞いていただく方がむしろ当事者が話をしやすい場面もございますし、また法律的な、法律家の目から見てその事件の処理の方針について指導助言的なことをするという場面であれば、裁判官が適切な役割を果たすこともあるだろうと思います。  そういった意味合いにおきまして、その役割裁判官と調停委員とがその事案の進行を見ながらよく見きわめて果たしていただくというのが調停の機能を十分に発揮することにつながるのではなかろうかと考えているところでございます。
  39. 円より子

    ○円より子君 調停委員さんにもすばらしい方がたくさんいらっしゃるのは私もよく存じております。  しかし、こういったこともやはり聞いておいていただかないといけないと思いますのは、例えば調停を利用して、「すっきりした」というのに、いいえと答えた方が六三%。「ここへ来ればいいという安心感が得られた」、いいえが六一%。「自分の気持ちをわかってくれたという思いがした」、いいえが五三%。全部いいえの方が多いんですね。普通、相談とか調停を受けて大事なのは、問題というのはなかなか解決しませんね、カウンセリングもそうですけれども、その当事者のやはり解決能力、どなたでも解決能力というのを持っていらっしゃる、それを引き出してあげることが大事で、その引き出すためには元気にしてあげなきゃいけないわけですが、「元気が出た」、いいえ五七%。それから、「がっかりした」、はいが多いんです、五〇%。それから、これが最も多かったんですが、「自分だけでなく女性の不利な立場に気づかされた」というのが六五%もあるという、こういう残念な結果が調停委員について出ました。これは弁護士さんも余りよくなかったから調停委員ばかり責めるわけではないんですけれども。行政の窓口が一番よかったんです。  そういう中で、家裁の調停委員は、家庭局長が今おっしゃったように、裁判所の中の職員ではなく民間の人にやってもらうということが一つの大きなメリットになっていることは事実だと思いますけれども、どういった方を選んでいらっしゃるのか、その調停委員の資格とか選任基準みたいなものを教えていただけますか。
  40. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 調停委員の任命につきましては、民事調停委員及び家事調停委員規則という規則がございまして、この第一条にその資格等についての定めがあるわけでございます。それによりますと、弁護士資格を有する方、あるいは家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する方、社会生活の上で豊富な知識経験を有する方、こういった方で、人格識見の高い方で、年齢としては四十歳以上七十歳未満の方と、こういう要件が定められているところでございます。  現実の調停委員方々にお願いする方についても、今のような基準をもとにして、私どもとしては、できるだけ紛争解決に親身に取り組んでいただける方、そして適切なアドバイスをいただける方、こういった方を選任するよう努力しているところでございます。  現実に調停委員の数で見ますと、弁護士資格を有する方が一一%弱でございます。さらに医者あるいは大学教授、公認会計士、不動産鑑定士等の家庭の紛争あるいは不動産関係の紛争に専門的な知識を有する方、これが一二%でございまして、それ以外の方が七七%になっているというのが現状でございます。
  41. 円より子

    ○円より子君 今の相談のアンケート等、またほかのところでもそうですが、調停委員にはもっと若い人で、しっかり法律の勉強もしている熱心な人をそろえてほしいとか、それから今おっしゃったように「社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で、人格識見の高い」人というような大変立派なことが書いてあるんですけれども、逆に調停委員の方たちは皆さんよい育ちの方々ばかりで、苦労をわかってもらえないというような意見がたくさんあるんです。離婚の経験をした人とか、一人親とか、中学しか出てないとか、そういった人たちも入れてバランスをよくしてほしい、偏りをなくしてほしいという意見もたくさんございました。この離婚経験者を入れてほしいというのは、別に離婚経験者がいいとか、そういうことではなくて、たまたまこれは象徴的に言っているんです。  例えば、埼玉県の四十代の方が十一回の離婚調停をした。この方は平均からいえば随分長かったと思いますから、一生懸命調停の方たちは両方の意見を聞いて何とかまとめようと努力してくださったんだろうと思います。一方の当事者からだけの意見を全部本当だと思ってあれするわけじゃないんですが、その間ずっと、とにかく戻りなさいと延々と言われ続けて、離婚をしたいと言ったら、女のわがままだと言われた。その後で六十代の女性の調停委員の方が、私自身はと自分のお話をなさいまして、夫の浮気にもしゅうとめとのいさかいにも夫の冷たさにもずっと私は我慢してきた、こんなに我慢して私はやってきたんですよ、なぜあなたはこの程度のことで我慢できないのと、延々と御自分の愚痴をおっしゃられたというんです。  離婚がいいとか悪いとかいうのはちょっと置きまして、だれも離婚したくてする人はいないと思うんですけれども、でも離婚せざるを得ない、やむを得ない中で勇気を持って選択した人に対して、できなかった人がする人に何か怒りを持って調停しているんじゃないかと思われるようなケースもあります。我慢し続けて結婚を維持した人ばかりが離婚調停するのはまずいんじゃないかなという気もしまして、ぜひともその辺の選び方を考えていただきたいなという気もするわけです。  それで、もう一つお願いしたいのは、後でこのアンケートをお見せしてもいいぐらいですけれども、調停に対するたくさんの要望や苦情があるのは、やはりそれだけ家裁に対する期待が高いからだと思うんです。こういった苦情や要望をしっかり受けとめて、何十年と続いてきた調停制度を今の世の中の流れに合わせて変えていく必要もあるんじゃないかという気もするんですが、こういった調停に対して、また家裁の相談窓口に対してどんな要望があるか、どんな苦情があるかというようなことは調査なさっているんでしょうか。
  42. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) そのような当事者の方々からの苦情とか、あるいは場合によってはありがたかったというお気持ちの表明とか、こういった事柄を事件の解決の段階等で耳にすることはございますけれども、これを体系立てて調査したことはございません。
  43. 円より子

    ○円より子君 どうしておやりにならないんでしょうか。
  44. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 確かに、そういった方々の声をアンケートで聞くという方法も一つの方法というふうに伺ったわけでございますけれども、私どもがこれまでそういったことをしていなかったその背景は、当事者の方々はまさに自分たちの悩みを抱えて裁判所に来ている、その裁判所において紛争の解決をすることで一安堵されている状況にあるわけでございまして、裁判所手続が終わった段階で、改めてその方々に対してどうでしたかということをお尋ねすることが、心理的な御負担をおかけすることになるんじゃないだろうか、こんなことを考えて控えていた次第でございます。
  45. 円より子

    ○円より子君 それは、アンケートしたくなければしないで済むわけですから、強制的にするものでなければいいんじゃないかと思うんです。調停が終わったときに、わざわざ家に郵送で出してというと、プライバシーの件もありますし、また家裁から何か来たというだけでどきっとなさる方もいらっしゃるかもしれませんけれども、終わったときに例えば小さな紙でそれほど負担にならないような項目で、調停を利用してどうでしたかということは、不調になった人も取り下げた人も成立した人にもその場で渡して、もしよかったら匿名でお書きいただけませんかとおやりになれば随分調停に役に立つと思うんですが、どうしてそういう工夫をなさらないんでしょうか。
  46. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 私ども家庭裁判所は、極めてプライバシーの保護にいろいろ配慮しているところであるものですから、当事者に対してそういったアンケートをお配りいたしまして、その結果当事者がこの利用についてどういう利用をされるんだろうかという懸念を抱くこともいかがなものであろうかということもあったことから、従来そのようなことはしていなかったということでございます。
  47. 円より子

    ○円より子君 それでは、匿名にして、こういうことで調停をよくするために利用させていただきますので、書いて帰りに受付の箱なりにそのままお入れくださいとか、いろいろプライバシーに配慮して、なおかつ調停の利用をより有効にし、また人々が調停を使いやすく、本当に調停を利用してよかったと思えるような形にしていくことは可能だと思いますので、ぜひそれをやっていただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  48. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) ただいまの委員の御指摘については、私ども今申し上げたことなども含めまして慎重に検討させていただきたいと考えております。
  49. 円より子

    ○円より子君 私どものような小さな研究所がしているアンケート調査でかなり苦情があったという、その苦情ばかり聞かされているのもお嫌だと思いますので、そんなに予算もかかるものじゃありませんし、項目づくりに私も協力いたしますので、ぜひともやっていただきたいと思います。  それから、もう一つ、先ほど話したと思いますが、離婚しなかった人もした人もそうですが、こういった夫婦の問題等に直面したときに、裁判所を使うにしても何にしても、女性一般の不利な立場に気づかされたという人が本当に多いんですけれども、裁判官もまたは調停委員もジェンダーの視点での研修というのはされているのかどうか教えてください。
  50. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) ちょっと恐れ入りますが、御質問趣旨をいま一度御説明いただけますでしょうか。ジェンダーとしての研修という御指摘……
  51. 円より子

    ○円より子君 ジェンダーの視点からの研修です。
  52. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) ジェンダーの視点ということについて、申しわけございませんが、ちょっと私理解をしていないものでございますので……。
  53. 円より子

    ○円より子君 先ほど明治生まれの方とかなんとかという、別に私は年代によってじゃないと思うんですけれども、たまたま年代の高い方がいらっしゃって、若い人でもそういう視点のない方もいらっしゃるかもしれません。  ジェンダーの視点といいますのは、今女性と男性というのは、例えば女性は妊娠ができますし子供を産むことができる、またそういった男性との体の違いというのは当然ありますし、男と女が全く一緒だということはあり得ないと思います。生まれてからの社会的な性差、それから文化的な性差というものがありまして、男の子は青にしなさい、女の子は赤の服を着なさいとか、女の子はもっと足をきちんとそろえて座らなきゃいけませんよとか、それから女の子はそんな口やかましく何でもかんでもこれはどうしてどうしてと聞くものじゃありませんとか、小さいころから女の子らしさ男の子らしさという形で一人の人の個性とは違う差別をしていくということがあります。  調停でも、先ほど言いましたように、女は黙って男の後を従っていれば、あなたそんないさかいにはならないのよ、浮気されたってそのぐらい我慢しなさいとか、この程度のサラ金や暴力なんて女が黙っていればうまくいくのよ、子供がいるんだからとか、そういうのは性差からの文化的、社会的差別だと思うんですね。そういったことをしてはならないという、そういった視点の研修をしているかどうかということをお聞きしたんです。
  54. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 裁判官の研修一般について私が申し上げる立場ではございませんけれども、家庭裁判所裁判官につきまして、現在裁判所部内で行われている研修のみならず、外部に出向して各種の経験を積むとか、あるいは裁判所の中における研修においても、法律分野だけじゃなくして各種の社会的な事象についての研修を行うといったことで研修の機会を持っているところでございます。  また、調停委員につきましても、調停の研修の機会を通じまして各種の専門分野あるいは社会的な知識のある方々からお話を伺って、調停委員の認識を深めるための研修を行っている次第でございます。
  55. 円より子

    ○円より子君 よくわからなかったんですが、じゃ裁判官のことは少し離れて調停委員について。調停委員を先ほど選ばれましたね、社会生活の上で豊富な知識経験を有して、人格、識見の高い方。  私どもでも電話相談をこの二十年近くやっているんです。今二十五人の相談員の方がボランティアでしてくださっていますが、二十五人の相談員の方は二年間研修をしてやっと相談員になってもらう、ボランティアで報酬が全くない方でもですね。この調停委員はたしか一万六千幾らでしたか、報酬として日当がつく。ちゃんとお金をもらって仕事をなさる方ですが、ただ知識経験を有していたからといって、離婚調停というのはなかなかできないと思います。  調停委員になって実際の調停をするまでどのくらいの期間、何時間ぐらい研修をなさるんですか。
  56. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 調停委員になっていただいた当初には一週間ほどの集中的な研修を行いまして、その中で調停の基本的な考え方等について御説明をするなり、理解を深めていただいております。また、調停委員になっていただいた後におきましても研究会等を家庭裁判所が行ったり、あるいは調停協会が自主的に研修会を持ったりして、そういった機会が相当ございまして、調停委員方々の研修の機会は相当あると理解をいただいていいと思っております。
  57. 円より子

    ○円より子君 そろそろ時間がなくなってきました。  平均年齢が六十一でしたか、調停委員の方たちの方が少し高くて、私は先ほども言いましたように、年齢が若い方でもジェンダーの視点のない方もいらっしゃいますし、明治生まれの方でも大変そういったことに認識のある、一切そういった性差の差別をしない方々もいらっしゃいますけれども、残念ながら、先ほどのアンケート調査等から見ますと、年代の高い方々と調停で話が合わなくてストレスがたまるというようなことがあります。  調停委員の変更というのはすぐにできるものなのかどうかということと、平均年齢をもう少し下げるような調停委員の選び方と、そして先ほど言いましたような、もう少し研修期間を延ばして、違うカリキュラムでおやりになった方がいいのではないかというような要望を申し上げて、それについての御意見を聞かせていただいて、終わりにしたいと思います。
  58. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 調停委員の研修等、御指摘の点について私どもとしては今の運用がこれで十分だと考えているわけではございませんので、さらに研修の機会、また中身の充実等を含めまして、これから運営万般につきましてさらにその改善を図っていきたいと考えている次第でございます。
  59. 円より子

    ○円より子君 年齢についてはどうですか。
  60. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 年齢につきましては、平均的に六十一歳ということでございますけれども、各層に調停委員になっていただく方の御照会をお願いするわけでございますけれども、御自身の日常的な活動があるということからすると、なかなかなっていただくということが難しい場面もございます。  私どもといたしましては、さらに関係各方面にお願いいたしまして、そういったいい方々の御推薦をお願いしていきたいと考えている次第でございます。
  61. 円より子

    ○円より子君 ちょっと一言だけ済みません。  四十歳以上七十歳未満ということが決まっておりますから、皆さんお忙しい仕事の中で平日の調停に出てくるというのは大変だと思います、そういう人を見つけるのは。でも、この年齢幅を広げるということは考えられませんか、下限を低くするとか。なぜ四十歳なのか。
  62. 安倍嘉人

    最高裁判所長官代理者(安倍嘉人君) 年齢については、例えば法律の専門家では、弁護士さんについてはケースによっては四十未満の方でもおなりいただいているケースはございます。  ただ、一面、これはどの年齢層の紛争がかかっているかということにもよるわけでございますけれども、家庭の紛争について適切なアドバイスをするためには、それ相応の社会的な経験が必要だということも一方で言えることだろうと思います。  ただ、今御指摘の点も含めて、なるべく若年層の調停委員さんになっていただけるような運営の改善を図っていきたいと考えている次第でございます。
  63. 千葉景子

    ○千葉景子君 きょうは裁判官報酬、そして検察官俸給等に関しての法案の改正でございますので、それを中心に何点か質問させていただきたいと思います。  先ほどからお話がございますように、裁判官の仕事の実態ということを考えますと、大変忙しい、こういう状況がいろいろ指摘をされているところでございます。抱えている案件、件数三百件ぐらいに上るのではないか、こういうこともございます。これは私も拝見をいたしましたが、日弁連が裁判官OBの皆さん方から聞き取り調査をした。これは新聞にも報道され、今回調査室の方でもそれを資料につけていただいております。これがすべてとは言いませんけれども、例えばある地裁では、裁判官の帰宅に合わせてマイクロバスが裁判資料を官舎に運んでいる、そして帰宅後の仕事がシステム化している、こういうことまでも実態として挙げられたりしております。  いずれにいたしましても、大変責任のある仕事を休み返上で頑張っておられるという姿も拝見をするわけで、大変だなというのが実感でございます。  これは、常々問題になります裁判官人数、体制を充実していくということもこれから大変重要なことであろうというふうに思いますし、今回のこの報酬俸給の問題を考えるときも、やはりそれだけの仕事に適切に見合った報酬俸給が出るということも改めて考えていかなければいけないということを痛感したところでございます。  こういう忙しさばかりじゃなくて、先ほど長尾委員からも御指摘がありましたが、今回、私、改めて考えてみたんですけれども、実は今回の法案で施行期日に差異が設けられております。指定職以上に準用される者とそれ以外の皆さんとで一年間の施行の差がつけられたわけでございますけれども、それを見たときに改めて愕然としたわけでございます。  ちょっとそれについて確認をさせていただきたいんですけれども、国家公務員全体としてはこの施行が一年おくれる部分というのは何か〇・三%ほどだというふうに聞きました。裁判官検察官の場合にはどのくらいになるのでしょうか。裁判官の場合ですと七割以上、検察官で五割以上ぐらいというふうにお聞きはしているんですけれども、その点確認をしたいんですが、いかがでしょうか。
  64. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) 裁判官のうち指定職相当以上になっておりますのは判事、それから簡易裁判所判事の四号以上でございまして約二千百名で、委員指摘のように七割ということでございます。
  65. 頃安健司

    政府委員(頃安健司君) 検察官につきましては約五三%でございます。
  66. 千葉景子

    ○千葉景子君 これを見ましても裁判官で七割、検察官で五三%、いかにも多いなと。今回の指定職以上についての趣旨から考えてここまで適用されるというのは、そもそもこの報酬のあり方とか俸給のあり方ということにもう一回見直してみる部分があるんじゃないかなということを、この数字から私もちょっと改めて感じたところでございます。  そこで、何点かお聞きをさせていただきたいというふうに思うんですけれども、裁判官報酬というのも基本的に昇進制といいますか、そういう仕組みがとられています。先ほども話がございましたこの趣旨から考えると、裁判官独立とかそれから行政職員と裁判官の仕事の特殊性という違い、こういうことを考えると、この昇進制というのがどういうことでとられているんだろうかということを改めて感じます。  それから、これは比較をするのはいささかいかがと思いますけれども、裁判所も三権の一翼でございます。国会というのも立法機関として三権の一翼を担っているわけですけれども、国会議員につきましては、その性質というんでしょうか、そういうことも含めてでしょう、独立した歳費の制度といいますか、そういう仕組みをとっております。そういう意味では、裁判官報酬というのもやはりそういう特殊性とかあるいは地位独立性とかを含めて、基本的に裁判官としての報酬のあり方みたいなものを考えるべきではないかなという気もするんですけれども、その中でこういう昇進制のようなものがとられているというのはどういう理由でしょうか。
  67. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) 委員指摘のように、裁判官職務責任には差がないからすべて裁判官は同一の報酬にしてはどうかという議論があることは私どもも承知しているところでございます。  しかし、職務責任給与を決定する重要な要素ではあるにいたしましても、その担い手であります裁判官というものは個々でありまして、裁判官全体の人的構成でありますとか、年齢構成、経験の長短による熟練度の大小、能力の多寡等の要素もまた無視できないのではないかというふうに考えております。  しかも、裁判官給与制度のあり方はその任用制度とも密接な関連を有するものでございまして、弁護士として相当の経験と実績のある方から裁判官を任用するといういわゆる法曹一元制度をとっている英米とは異なりまして、まず判事補として任用し、十年経過後改めて判事に任用するといういわゆるキャリアシステムが事実上の原則になっているのが我が国の裁判官の任用制度でございます。  そういたしますと、裁判官給与体系につきましても、同様にキャリアシステムを採用している他の国家公務員給与と全く切り離して考えることはできないのではないかというふうに思われます。したがいまして、現在の報酬の号俸制度は、裁判官の経験、職責を考慮した上でできたものであるということで合理的な制度ではないだろうかというふうに考えているところでございます。
  68. 千葉景子

    ○千葉景子君 今の御説明、御説明としてはよくわかるんですけれども、もし裁判官キャリアシステムをとっておって、ある意味では順次昇進をしていくというシステムを考えられるかもしれません。  ただ、それはもしそうだとして、それでは一般政府職員給与改定にぴったり準じて改定をするということも、必ずしも必要ではないんじゃないか。裁判所独自としてそういうキャリアシステムに基づいた給与体系を持つということは、これは一つのやり方だろうと思いますけれども、さらにそれを一般政府職員給与改定に準じて増減をするということについての合理性というのはどういうところにあるんでしょうか。
  69. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) 裁判官報酬改定につきましては、従来からいわゆる対応金額スライド方式というものを採用しておりまして、これは裁判官報酬裁判官報酬における各号俸等と対応する特別職及び一般職の各俸給表の号俸の改定と同一割合をもって改定するというシステムでございます。  裁判官国家公務員の一員でございますので、その給与改定は生計費及び一般賃金事情にかんがみ行われるべきものであるというふうに考えております。この対応金額スライド方式による給与改定といいますものは、生計費及び一般賃金の変動に応じて行われる特別職及び一般職給与改定と同一割合で行われることになりますので、裁判官給与改定のあり方としても合理性があるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  70. 千葉景子

    ○千葉景子君 私もこういう話をさせていただきながら、じゃどういうことをすればいいのかと言われますと、そう知恵が出るわけではないわけでございます。  これまでも法的にこういう形で一般公務員に準じて制度を運用されているということはわからないわけではないんです。先ほど申し上げましたように、やはりその職務特殊性とか、そしてキャリアシステムというお話でございましたけれども、仕事を考えますと、例えば判事判事補というものについては多少職務について権限に違いがございます。判事としての職務というのは十年、二十年と研さんを積んでいくということについては、キャリアを積んでいくということになるんですが、その職務としては対等にそしてそれぞれ独立に行っている、こういうこともあるわけで、そういう意味ではこの基本はなかなか崩せないところがあるかもしれませんけれども、やはり裁判官報酬という意味地位をきちっと的確にあらわすような何か工夫とかあるいは位置づけというものが今後できないものだろうかな、そんなことを感じたりするところでございます。  ところで、先ほど話をさせていただいたように、片や裁判官で七割の方がそこに該当する、それから検察官で五三%がそれに適合するというこの実態を考えたときに、今回この施行期日をここまで広げて適用するというのは、おくらせるというのは非常に影響も大きいというふうに思うんですけれども、その点についてはどうお考えでしょうか。法的に準じてやればこうなるということはわかるんですけれども、いかがでしょうか。
  71. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) 御指摘のように、指定職以上に相当する判事以上の者につきましては平成十年四月一日から施行という法案の内容になっているわけでございますが、国家財政が極めて厳しいという状況の中で、裁判官国家公務員の一員であることや、裁判官報酬はこれまでも一般キャリア組の政府職員に比べまして一定の優位性を持って法定され、さらにこの優位性を前提として、一般政府職員についてのベースアップが行われます場合には対応の号俸を受ける一般行政官俸給改定率と同率で改定するいわゆる対応金額スライド方式によって報酬改定が行われるという裁判官報酬法十条を初めとした報酬体系というものからいたしますと、今回の当面凍結という措置もやむを得ないのではないかというふうに考えているところでございます。
  72. 千葉景子

    ○千葉景子君 制度上も違った扱いをするというのはなかなか難しいことはわかります。ただ、大変謙虚で遠慮深くいらっしゃるんだなという、そんな感じもいたしますけれども、これだけの皆さんが今回財政が厳しいということも含めて一年間施行をおくらせて我慢をいただくということになりますが、大変厳しい中でのこれからの職務ということで、また私たちも何とかそれをできるだけ違った意味でバックアップできるようにしていかなければいけないというふうに思っております。  先ほどキャリアシステムということで報酬の運用がされているというんですけれども、弁護士から裁判官に任官をするという制度がございます。そういう場合にどういう待遇といいましょうか、処遇はどういうところに位置づけられることになっているんでしょうか、制度上。ちょりとその辺について御説明いただけませんでしょうか。
  73. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) 弁護士から裁判官に任官する人につきましては、法曹としての経験年数を考慮いたしまして同期の裁判官に準じて報酬額を決定するという運用を行っているところでございます。
  74. 千葉景子

    ○千葉景子君 わかりました。そういう意味で、その部分でも一定のキャリアを評価して位置づけるということになっているのかなというふうに受けとめておきたいと思います。  ほかにもちょっとお聞きをしたいんですけれども、時間がございませんので、大臣、法律もあり制度上なかなか難しいことは重々承知でございますが、本当に裁判官は厳しい中で、忙しい中でそれぞれが責任ある仕事をしている。そういうものに見合った報酬のあり方みたいなものについては、大臣はどうですか、御感想というか御所見がございましたらお聞きをしておきたいと思います。
  75. 下稲葉耕吉

    国務大臣下稲葉耕吉君) 今、千葉委員からるる裁判官俸給についての御質問があったわけでございますが、検察官給与というのは裁判官に準じてやっているというわけでございます。  私は長いこと一般職公務員をやっておりまして、そういうふうな関係からいろいろ実は私なりに比べてみたんですが、これは当然のことでございますけれども、検察官それから裁判官給与一般職公務員方々よりも処遇上、上の方へ持ってきておられます。これは当然ですね。今度はたまたま指定職関係が一年凍結される。お話しのように一般職公務員の中で指定職になっている方は極めて少ないです。せめてなりたや指定職なんという、一般職の人たちがこう言っていたわけです。ところが、裁判官検察官については御承知のような格好で裁判官は七割以上、検察官も五割以上指定職になっているというふうな形で全体として私は今日まで来ているんじゃないかと思うんです。  したがいまして、今最高裁の方から非常に国の財政も厳しいからというふうな御答弁がございまして、国家公務員全体の中から見ればそういうふうなことだろうと思いますけれども、さて、じゃこれでずっといいのかどうかというふうな問題を真摯に考えなくちゃならない。  御承知のとおりに、先生方の御努力によって、初任給の人たちが検察官になったり判事補になった場合に弁護士さんとのアンバランスを避けようじゃないかというふうなことで、初任給の給与に対する手当をお決めいただいて、今、月額八万円ぐらいですか、というふうなアップを初任給に認めておられる。そういうふうな調整の方法を現在も講じてもらっているものですから、総合的に、私の立場といたしましては常にその辺のところも踏まえながら、しかも全体の国家公務員の枠の中でということは外せませんけれども、考えていくべきだなと、このように思います。
  76. 千葉景子

    ○千葉景子君 終わります。
  77. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 社会民主党の照屋寛徳でございます。私からも何点か質問をさせていただきたいと思います。  なお、きょうは沖縄及び北方問題に関する特別委員会の審査とかち合っておりまして、必ずしも通告どおりの質問順位にはなりません。また、他の委員方々と重複するのもなるべく避けたいというふうに思っております。  最初に、とこ数年間で結構でございますが、司法修習生からの判事補検察官への採用状況、任官状況についてお教えをいただきたいと思います。
  78. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) このところ、裁判官にふさわしい方をできるだけ多数採用するという方針で当たっているところでございまして、判事補の採用につきましては、平成七年度が九十九名、平成八年度が九十九名、平成九年度が百二名というぐあいになっております。
  79. 頃安健司

    政府委員(頃安健司君) お答えいたします。  過去三年間の検事任官者数は、平成七年度が八十六名、平成八年度が七十一名、平成九年度が七十名でございます。
  80. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 先ほど千葉委員から、弁護士から裁判官へ任官した場合の給与の格付等について質問があって、わかりやすい御答弁をいただきましたが、私は法曹一元化という観点から、弁護士から裁判官への任官をする数、そんなにたくさんはいないんでしょうけれども、ここ四、五年ぐらいの範囲でも結構でございますからお教えいただきたいと思います。
  81. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) いわゆる弁護士任官制度による任官数を申し上げますと、平成五年度が七人、平成六年度が七人、平成七年度が二人、平成八年度が五人、平成九年度は本日現在で五人ということで、平成五年から現在までを合わせますと二十六名となっております。  このほかに、いわゆる弁護士会を通じないで弁護士から任官する人も何人かはいるということでございます。
  82. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 弁護士会を通じないで任官する、そのルートが幾つかあるわけでしょうか。初めて聞いたので。
  83. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) 弁護士会を通じないで、司法研修所の教官の紹介であるとか、直接最高裁の人事局に採用を申し込んでくるという方も若干いるという実情でございます。
  84. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 それから、最近女性裁判官がふえているやに実務の現場で私自身感ずるわけでありますが、過去五年ぐらいで女性裁判官の任官状況はどうなっているか、お教えください。
  85. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) 司法修習生から判事補に任官した女性裁判官の数は、平成五年度が二十人、平成六年度が十八人、平成七年度が三十四人、平成八年度が二十六人、平成九年度が二十六人でございまして、この五年間では百二十四名に達しております。
  86. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 私は、個人的には、女性裁判官がふえるということは、日本司法の将来にとってとてもいい傾向ではないかなというふうに思っておりますし、歓迎をしたいというふうに思います。  ところで、忙し過ぎる裁判官という指摘がよくございます。私は、裁判官も、検察官もそうでございますが、余り忙し過ぎると困るなという思いを常々持っているわけでございます。全国の裁判所というわけにはいきませんが、大都市の裁判所での一人当たりの事件処理件数というのはどのような数になっているのか、お教えください。
  87. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) これは、実は年度によってかなり違いがございまして、例えば民事事件が非常に多くなってまいりました平成三年、四年あたり、東京地裁で単独で民事の事件を処理しております裁判官ですと、人によりましては一人当たり三百件程度の事件を抱えておるというようなところもございました。  ただその後、実はこのところずっと毎年のように裁判官の増員をお認めいただいておりまして、私どもの方でこういう忙しいところに重点的に人の配置をやっておりますので、現在ですと、例えば東京地裁の民事部の単独がかりの裁判官でも、平均しますと手持ち事件は二百五十件くらいにまで下がってきておるという現状だろうと思います。  処理件数という御指摘がございましたが、大体東京地裁の単独の裁判官ですと年間で三百七十件から四百件程度を処理しておる。月にいたしますと、三十件以上の事件を処理しているというのが平均的な姿かと思います。
  88. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 忙し過ぎるかなと思っておりましたが、何かそうでもないような感じもしないでもないですね。とにかく裁判官検察官が忙し過ぎないように、適正な人員の確保と配置を要望しておきたいと思います。  それと関連いたしまして、先ほどから宅調の話も出ておりますが、いわゆる宅調の実態、これを簡潔にお教え願いたいと思います。
  89. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) 裁判官が自宅において判決起案等を行ういわゆる宅調につきましては、従前は、庁舎設備が十分でなかった時代に執務室を交代で使用する、右の机と左の机を一日おきに使うというようなこともございまして、余儀なくされていたことから行われてきたものでございますが、最近では庁舎設備も整いまして、ほとんど宅調というものは見られなくなっているというのが実情でございます。  ただ、複雑な大型事件の記録を調査、検討して判決を起案するというような場合などには、自宅で長時間かっ集中的に執務する方が効率的であるという裁判官もおりまして、現在でも、非開廷日にいつでも登庁できる勤務体制をとりながら、自宅で判決起案等に専念する例もないわけではありません。  しかし、最近では、非開廷日にも裁判所で仕事をする裁判官というものが非常に多くなっている、大部分であるというふうに承知しているところでございます。
  90. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 昨日の毎日新聞の夕刊でも、個人破産事件がふえているという報道がございました。しかも、傾向として浪費型の個人破産からリストラ・失業型の個人破産がふえていると。個人破産の予備軍が百五十万人という報道もございました。東京地裁では、そういう個人破産事件の激増に伴うファクスサービスなどもやっているという報道に接して、私も、裁判所もなかなかやるなという心強い思いをいたしたところでございます。  恐らく、民事執行事件とかあるいは破産事件というのはこれからもふえてまいると思います。とにもかくにも、それに対応するような裁判官、そして同時に民事執行事件、破産事件、大部分の実務を書記官や事務官が担当するのが多いと思いますので、職員の適正配置についても御高配を賜りたいと思います。  最後に、私ども社民党は全面的に両法案に賛成でございまして、裁判官の研修制度裁判所の内部における研修制度と、それから何か民間の企業あるいはどこか地方自治体に派遣してやる外部的な研修というんでしょうか、両方あるやに聞いておりますが、その研修制度についてお伺いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  91. 堀籠幸男

    最高裁判所長官代理者堀籠幸男君) まず、部内研修について申し上げますと、判事補は、その十年間はいわば将来判事となるための研さん期とも言い得るものでございますので、その実務能力の向上のために、任官後の一年、三年、五年、十年という節目節目に、司法研修所におきまして実務と理論の両面における能力の向上及び裁判官としての一般教養等の取得を目的とする一貫した合同の実務研修の機会を設けております。  また、判事につきましても適宜研究会を開催して、法律問題だけではなく、医療、高齢社会といった社会一般の問題についても勉強する機会を設けております。  次に、外部研修について申し上げますと、裁判官裁判官以外の職務を体験することは、その視野を広げ見識を高める上で極めて有益であると考えられるところでございまして、裁判官の資質の一層の向上を図るために、一般の行政庁については年間数名、期間二年間、それから外務省在外公館については年間二、三名、期間が三年ないし四年でそれぞれ派遣しております。また、民間企業へも研修目的で派遣しておりまして、期間一年のものが年間数人、それから期間二週間のものが年間十数人おり、このほか報道機関で三週間の研修を受けるものも年間六人おります。  これらの外部での研修の具体的成果は長期的観点から評価すべきものでございますが、研修員はいずれも得がたい体験ができたと、その研修を積極的に評価する感想を述べており、所期の効果が上がっているのではないかと考えているところでございます。
  92. 照屋寛徳

    ○照屋寛徳君 終わります。
  93. 橋本敦

    ○橋本敦君 私の方からお伺いさせていただきますが、一般的に言いまして、我が国の法曹人口が諸外国の先進国に比べて非常に少ない、こう言われておりまして、国民ニーズにこたえるために法曹人口の増大は不可欠だという、こういった議論がなされてまいりました。  そういう中で、先ほど、十月二十八日ですが、司法試験制度法曹養成制度に関する合意が最高裁、法務省、日弁連、この間でできまして、当面、司法試験合格者の年間千人程度への増加ということが目標として掲げられまして、平成十年度は八百人程度、十一年度から年間一千人程度増加させる、こういう合意がなされたようでございます。  この点は間違いございませんか。最高裁並びに、法務省どちらでも結構です。
  94. 山崎潮

    政府委員山崎潮君) ただいまの点で間違いございません。ただ、修習期間は一年六月になるという点がつけ加わります。
  95. 橋本敦

    ○橋本敦君 その修習期間問題についていろいろ議論があったんですが、きょうはその点はさておいて議論を進めてまいります。  そこで、法曹養成制度で今言ったような合意がなされたわけでありますけれども、弁護士の数がずっとふえるというそのことだけで問題が解決されないという問題をきょうは指摘したいと思うのであります。  先ほども千葉委員を初め皆さんの中でも同じお考えと思いますが、日本裁判官が極めて多忙であるという問題をどう解決するかということも我が国司法のインフラ整備で重大な課題になっております。  例えば世論でも、ことしの十一月六日の毎日新聞の「「小さな司法」からの転換を」という、そういう世論の中でも、「大都市地裁の民事裁判官の多くは手持ち事件を常時三百件前後も抱えている。なかには四百件を超える人もいると聞いた。  これだけの件数を抱えると月に三十件前後を処理しなければならない。多忙ぶりは想像を超える。」、こういった状況を述べた上で、こういったことが裁判に影響が出ないはずはないということを憂いて、裁判への信頼が揺らぐのも、こうしたことから出てくるのも当然だから、司法機能不全という批判が声高に語られて久しいので、改革は行政だけではなくて司法改革も急務であるという点で裁判官の激務の解消を訴えている世論も出ています。  あるいはまた、朝日新聞のことしの八月十三日、「市民のための法曹養成を」という記事が出まして、「これからの司法の担い手を、どのように養成するのがよいか。そんなテーマでの最高裁、法務省日本弁護士連合会の法曹三者の協議が、大詰めを迎えている。 どんな法曹を育てるかは、国民にも大事な課題だ。関心を持って見守りたい。」として、「司法制度の利用者である国民にとって何が一番よいか、という視点である。そこを離れた議論は、市民主権へ向かう大きな時代の流れに、やがて取り残されるだろう。」、こういうふうに述べた上で、「普通の人々の多くが、民事訴訟など司法に持つ印象は「遅い、遠い、高い」であろう。訴訟を経験した人からは「判決が市民意識とずれている」という不満も聞く。」、そういうわけで、「司法を市民から遠ざけている「時間のかかる訴訟」を解消するため、法曹人口は将来さらに増やしていく必要があるだろう。その場合、弁護士だけでなく、裁判官も増員していくべきことは当然だ。」と、こういう世論がございます。  私は現状から見て、裁判官の増員というのは我が国の司法制度の健全な国民司法確立のためにこれからもますます必要ではないかと思いますが、最高裁のお考えはいかがでしょうか。
  96. 涌井紀夫

    最高裁判所長官代理者(涌井紀夫君) 委員の方から司法試験の合格者をふやすことになったという御指摘がございました。  実はこれまで裁判官の増員をやります場合の一つの問題として、司法修習の課程を終えました修習生の就職の希望といいますか、それがどうしても弁護士の方に人気がございまして、なかなか裁判官になってもらうのにふさわしいという方に数多く裁判官の任官を希望してもらえないという、そういうネックがあったわけでございますが、司法試験合格者の数が一千名にふえるということになりますと、このいわゆる急減の問題が相当程度改善されるんじゃないかというふうに我々の方は期待しておるところでございます。  事件数の方からいいますと、委員指摘ございましたように、特に平成三年ごろから民事系統の事件がどんどんふえてきております。私どもの方はそういう事件の動向を見まして、このところ毎年裁判官の増員をお願いしてきておるところでございまして、最近五年間の総数でいいますと六十四名という増員を実現してきておるわけでございます。  今後の事件動向は、なかなか正確に読めないところがございますけれども、恐らく今後の社会状況というのを考えてみますと、数の上でもまた事件の内容の面でも裁判所に持ち込まれます事件の負担というのはますます大きくなってくるんじゃないか。そういう状況を考えますと、やはり今後も事件数の動向等を見ながら必要な数の裁判官を確保していく必要があるんじゃないか、そういうふうに考えているところでございます。
  97. 橋本敦

    ○橋本敦君 検察庁の方においても、最近四大証券事件等多くの重大な事件について鋭意大変な努力をされております。昨年度は検察官の増員もあったわけですが、今後とも司法秩序の維持という観点からいえば、検察官としてもまだ増員が必要であるというようにお考えではないかと思いますが、いかがですか。
  98. 原田明夫

    政府委員(原田明夫君) お答え申し上げます。  検察が御指摘のような状況の中で近時の犯罪情勢の変化に適切かつ迅速に対応していく、また事件の捜査処理を適正に行うだけではなくて、また裁判所における公判を迅速に終結させまして適正な科刑を実現することを可能とするために、検察官の、特に検事の増員が必要だということでいろいろお願いしてまいりました。特に、最近二年間で合計六十九人の検事増員が実現されたわけでございます。これは二十数年来のことでございまして、しかもこれは純増ということで、検事の数はいわゆる公務員全体の計画削減の中に含まれておりませんので、これがネットでふえたということで、私どもとしては大変なことであったと。その背景として、修習生からの救援と申しますか、その枠を広げていただいたということも大きな面でございますが、平成十年度の予算概算要求におきましても三十七名の検事増員をお願いしているところでございます。  厳しい財政事情、また行政改革の大きな流れの中でございますけれども、今後とも犯罪の動向や検察庁の業務量の推移等を踏まえながら必要な検事定員の確保に努めるなど、適切に対処させていただきたいと考えております。
  99. 橋本敦

    ○橋本敦君 いずれのお話を伺いましても、今後ともまだ増員が必要だという、そういう御趣旨は御答弁からいただけたわけでございます。  このことは、今お話しいただいた御答弁だけでなくて、行政改革委員規制緩和委員会、ここでもそういう議論がなされておりまして、平成七年十二月七日の「平成七年度規制緩和推進計画の見直しについて」という文書の中にも、「我が国の司法機能を一層充実」ということの中に明確に「法曹人口の増員は、もとより裁判官検事、弁護士全体の増員を意味するものであることは当然であり、」「適切な配慮が図られるべきと考えられる。」というふうに指摘されているとおりですね。  そこで私は、この問題に関連をして、今御指摘のようなことが今後本当に具体的にそのように進んでいくかどうかについて重大な危惧を持っているのであります。  といいますのは、言うまでもありませんけれども、今回財政構造改革の推進に関する特別措置法が制定されまして、この第三条で国は「財政構造改革を推進する責務を有する。」ということが明確に規定をされ、第六条で国は財政構造改革の当面の目標を達成するために経費の抑制をやるとともに、「特別会計を含むすべての歳出分野を対象とした改革を推進することを当面の方針とする。」ということが定められておりますし、その六条の第二項にまいりますと、「政府は、平成十年度の当初予算を作成するに当たり、一般歳出の額が平成九年度の当初予算における一般歳出の額を下回るようにするものとする。」と定められている。  衆参でも議論になったんですが、ここで言う国の中に予算の独立権を本来持っている裁判所も入るのか入らないのか、これが議論になりました、国会もそうですが。これは法制局長官の答弁によっても最高裁も入るということが言われているわけですね。  そういたしますと、この財政構造改革法の大きな枠組みによって、今最高裁あるいは検察から御指摘になった、今後とも財政難ではあるけれども国民のための司法の基盤整備のために増員をやっていく必要がある、こういうことはこの法律との関係でいけば障害になってくるのではないか、そういう心配を私はしておるんですが、最高裁及び検察庁はこの点どうお考えですか。
  100. 竹崎博允

    最高裁判所長官代理者(竹崎博允君) 御指摘のとおり、財政構造改革法六条一項では、国は、「財政構造改革の当面の目標の達成に資するよう、財政運営に当たり、一般歳出の額を抑制するとともに、」「すべての歳出分野を対象とした改革を推進することを当面の方針とする。」として、また第二項では、「政府は、平成十年度の当初予算を作成するに当たり、一般歳出の額が平成九年度の当初予算における一般歳出の額を下回るようにするものとする。」と定めておるわけでありまして、このような財政構造改革法の趣旨及び規定の仕方からして、ここに言う国とは裁判所を含むものというように解されるわけでございます。  ただ、このような歳出抑制の一般的な義務を負っていること、さらには六条二項で予算の総合的調整に当たる政府においてこのような制約を受けていることから、結果的に裁判所予算が影響を受けるということは、これはあり得ることであろうと思いますけれども、その場合におきましても、裁判所が必要であるというふうに判断いたしました場合には、財政法上で定められておりますいわゆる二重予算権の行使というのは妨げられないというように解釈されているところでございまして、そういう意味では、裁判所として今後必要な予算を獲得する上で特段の支障にはならないというように考えておるところでございます。
  101. 橋本敦

    ○橋本敦君 今非常に大事なお話があったんですが、それは、裁判所法の八十三条で「裁判所の経費は、独立して、国の予算にこれを計上しなければならない。」という規定がありまして、財政法もこれを受けておりますね。  だから、そういう意味で、司法独立ということの関係から、戦前と違って裁判所の予算の独立性ということを尊重しておるわけですが、そういう意味からいって、この財革法の規定には縛られないで必要な増員はやっていける、必要とあらば、これは過去私が調べたら三回ほどしかありませんけれども、この二重予算方式によって内閣に対して意見を具申して適正な予算を確保するといったことまでやると、こういった決意を含めて今心配ないとおっしゃったんでしょうか。
  102. 竹崎博允

    最高裁判所長官代理者(竹崎博允君) この財政構造改革法の中には人件費についても具体的に抑制の方針が定められておるわけでございますが、私ども本年度の予算要求におきましても七十六名の増員の要求をいたしておりまして、これは現在の裁判所の情勢から考えまして必要であるという判断のもとに行ったことでございます。  そういう意味では、先ほど総務局長からも御説明申し上げましたとおり、裁判所の今後の事件処理に必要なものは何であるかということを明確に見きわめまして必要な予算措置を講じてまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  103. 橋本敦

    ○橋本敦君 今年度はそうだとおっしゃるけれども、実際予算査定がどうなるかはこれからの話ですね。最高裁があるいは検察庁が検察官及び裁判官に人員要求がうんと必要だということで、今年度の計算はいいですよ、来年以降、今年度予算は超えないように抑制されるわけです。だから、今年以上の要求が出せないということが具体的にひっかかってくるじゃありませんか。  そういう意味で、裁判所なりがおっしゃる予算の独立性ということについてこの財革法は重大な影響を持ってくるじゃありませんかという私の質問ですよ。その点どうなんですか。当たり前のことでしょう。
  104. 竹崎博允

    最高裁判所長官代理者(竹崎博允君) その六条一項におきましては、一般歳出の抑制に努めるということが国の責務と定められているわけでありまして、この点は先ほど申し上げましたように裁判所も受けることであろうと考えておりますが、そのことは直ちに予算要求を行う際に前年度を下回らなければならないという趣旨まで含んでいるものとは必ずしも考えておりませんで……
  105. 橋本敦

    ○橋本敦君 前年度を超えちゃいかぬと言っているんですから。
  106. 竹崎博允

    最高裁判所長官代理者(竹崎博允君) この点につきましては、必要があれば私どもとしては個々の省庁の要求といいますか、裁判所の要求としましては前年度要求を超えてはならないという制約というふうには必ずしも理解していないわけでございます。
  107. 橋本敦

    ○橋本敦君 財革法の審議で議論してきたことと違うよ、抑制という問題は。  もう時間がありませんからこれで質問を終わりますけれども、私が心配するのは、本当に国民司法の基盤整備のために裁判官検察官の増員を必要に応じてやっていただく上で、裁判所が持っている予算の独立、この問題について本当にこれからやっていく決意でやっていかないとできませんよ。そういう意味で、私は、この財政再建法というのは裁判所の予算の独立を侵害する危険性があるという問題があることを指摘して、時間が来ましたので質問を終わります。
  108. 風間昶

    委員長風間昶君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより両案について討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに両案の採決に入ります。  まず、裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  109. 風間昶

    委員長風間昶君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  110. 風間昶

    委員長風間昶君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 風間昶

    委員長風間昶君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時七分散会      —————・—————