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板垣正君
大臣としてはそういうふうにおっしゃるお
立場でありましょう。ただ、現実に
アメリカの
国民は憲法九条なんといったって知りませんよ。まして、
日本は集団的自衛権がないんだ、武力行使と一体のことはできないんだ、戦闘
地域には入らないんだと、こんな理屈は少なくとも
アメリカ国民は知りません。
アメリカの議会でも恐らく知っている人は少ないんじゃないですか。
確かに現時点ではこれでまとめざるを得ない。御苦労だと思います。非常な矛盾をはらんだものをまとめることは大変な御苦労でありますが、同時にこれは破綻をはらんでおる。一朝有事のときには役に立たないと言っていいくらいですね。やはりこういう国会の場においては、憲法論議というものを我々がやらなければならないんです、今度のことは全部憲法の枠の中でやられておりますから。我々もそれでやむを得ないというだけでは相ならないのではないのか。憲法といったって、これは
日本国内に通ずるのであって、外国には通用しませんよ。同時に、憲法解釈という問題があって、例えば海外武力行使、武力による威嚇はいけない、こうなっておるわけですね。海外における武力行使はやらない、威嚇もやらない、こういう
立場における憲法というものは我々は守っていくべきだと思います。
ところが、現実には憲法にはいろんな解釈がひっついてきて、集団的自衛権は認めないんだ、違憲なんだと。こんなことは憲法には書いていない。国連憲章でも
安保条約でも、
日本は集団的自衛権、個別的自衛権を持っています。
日本はこれを持っているんだ、持っているけれ
ども使えないんだと、こんな理屈は世界に通用しない。敗戦国でやむなく背負ってきた、まだまだ戦禍の大きかった時代の遺物ですよ。もう五十何年もたって、さっき申し上げた開かれたところで積極的な平和政策、安保政策を
展開していこう、こういう
段階においては、憲法解釈についても、我々に言わせればもうちょっと憲法に忠実に解釈してもらいたいと思うんです。
海外の同胞が難に陥った場合、これを救うために個別的自衛権を発動することは国際法で認められているんですね。しかし、
我が国ではこれは憲法を逸脱するものだと、国際法で認められている
我が国の個別的自衛権の面でもあえてみずからが抑制している。あるいは、武力行使、威嚇がいけないと言いながら、そういう武力行使と一体になるものはいけない、一体になるものも憲法違反だという法制局
見解、これも行き過ぎではありませんか。一体化論というような形で、武力行使そのものではないそういう周辺事態の問題についても憲法が許さないんだと。そうすると、ますます現実にも国際常識にも合致しないですね。
だから、平穏無事なときは何とかそれでやっておれても、本当に
我が国有事の場合なりあるいは周辺事態に
対応しようとしたときに、さっき申し上げたような大きな破綻、ジレンマがある。
アメリカの要路の人は、折衝した人たちはそれはある程度知っているでしょう。しかし、ああいう
アメリカの議会などというのは
日本の議会以上に強いところですから、
アメリカの議会が黙っていない。これが同盟国の実態かと、こういうこともあり得るんではないでしょうか。
その辺で、現時点では今の憲法というよりは今の憲法解釈でもういくんですと、こうなった中で私が憂慮するような事態になっておるということをあえて申し上げるわけですけれ
ども、やはり
我が国のみに通用する、そうして
国際社会では
理解もされない、そういうもので国策を縛っていくというあり方から、やはりいろんなものを見直していく時代なんですから、もうそろそろ積極的に見直していくべきではないのか。これはあえて御答弁は求めませんが、そういう流れの中でこの国の確固とした平和と安全を守るためには憲法は乗り越えていかなきゃならない。ただし、今申し上げた対外侵略はやらない、武力行使は外ではやらない、威嚇はやらない、この原則でいいじゃないですか。
あとは、集団的自衛権もこの枠の中で、特に
日米同盟関係の中で、一体化がいけない、戦闘
地域に入っちゃいけないと。では、だれが決めるのですか。一挙に戦闘
地域になるし、またこちらが幾ら戦闘
地域じゃありません、武力行使と一体じゃありません、私
どもは憲法の枠の中でやっていますなんというのを我が方が言ってみたって、
相手から見れば敵対行為にほかならない。
日米同盟関係にある限り危険をともにする。そこにおのずから我が方の節度はありますけれ
ども、やはり危険をともにするものがなくして同盟は成り立ちませんよ。その実態が露呈された場合には、
我が国の
立場はあの湾岸戦争のときにまさる非常に苦しい、厳しいところに追いやられる、こういうものをはらんでいるのではないのか。この辺について、やはり私
どもは国会の場におきまして憲法の
委員会も設けてそういう論議もどんどんやっていくべきであるし、
政府もそういう
立場で将来を踏まえていただきたいと思います。
次は、関連した有事法制の問題であります。
この問題、有事法制の重大性は九月二十九日に閣議でも決定されておりますね。こういう点で、官房長官にぜひ御答弁いただきたいのですけれ
ども、これはもちろん
防衛庁がある
意味の
中心でありますが、しかし今度の有事法制は申し上げるまでもなく
防衛庁だけではありませんね。まさに
日本の社会を挙げて、国を挙げていかにして
日本なりの
体制をつくっていくかという面における法制的な問題が極めて重大であります。この点で、官房長官に、この有事法制的な問題については
政府の責任において積極的になるべく早い時期にこれを実現するという御決意を重ねてお伺いいたしたい。