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1997-12-04 第141回国会 参議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十二月四日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  十二月三日     辞任         補欠選任      上山 和人君     谷本  巍君  十二月四日     辞任         補欠選任      清水 達雄君     吉川 芳男君      松浦 孝治君     鈴木 政二君      谷本  巍君     菅野  壽君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石川  弘君     理 事                 河本 英典君                 楢崎 泰昌君                 牛嶋  正君                 峰崎 直樹君                 志苫  裕君     委 員                大河原太一郎君                 片山虎之助君                 金田 勝年君                 清水 達雄君                 鈴木 政二君                 西田 吉宏君                 野村 五男君                 松浦 孝治君                 吉川 芳男君                 海野 義孝君                 白浜 一良君                 直嶋 正行君                 広中和歌子君                 岡崎トミ子君                 久保  亘君                 菅野  壽君                 谷本  巍君                 笠井  亮君                 山口 哲夫君    国務大臣        大 蔵 大 臣  三塚  博君    政府委員        大蔵政務次官   塩崎 恭久君        大蔵大臣官房総        務審議官     溝口善兵衛君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省銀行局保        険部長      福田  誠君        国税庁課税部長  乾  文男君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    説明員        法務大臣官房審        議官       吉戒 修一君    参考人        日本銀行総裁   松下 康雄君        日本銀行総裁  福井 俊彦君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○持株会社設立等禁止解除に伴う金融関係  法律整備等に関する法律案内閣提出衆議  院送付) ○銀行持株会社創設のための銀行等に係る合併  手続特例等に関する法律案内閣提出衆議  院送付)     ―――――――――――――
  2. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、上山和人君が委員辞任され、その補欠として谷本巍君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 石川弘

    委員長石川弘君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 石川弘

    委員長石川弘君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事志苫裕君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 石川弘

    委員長石川弘君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  持株会社設立等禁止解除に伴う金融関係法律整備等に関する法律案及び銀行持株会社創設のための銀行等に係る合併手続特例等に関する法律案の審査のため、本日の委員会参考人として日本銀行総裁松下康雄君及び日本銀行総裁福井俊彦君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 石川弘

    委員長石川弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  7. 石川弘

    委員長石川弘君) 持株会社設立等禁止解除に伴う金融関係法律整備等に関する法律案及び銀行持株会社創設のための銀行等に係る合併手続特例等に関する法律案を一括して議題といたします。  両案に対する趣旨説明は既に聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 河本英典

    河本英典君 自由民主党の河本英典でございます。  臨時国会大変日程が詰まってまいりまして、特に大蔵委員会法案がたくさん残っておりまして、スケジュールが大変お忙しい中、大蔵大臣におかれましては衆議院、参議院両方時間をとっていただきまして本当にありがとうございます。  本日は金融持ち株会社関係二法についての審議でございますけれども、本日の議題の前に今大変大きな深刻な事態となっております金融機関破綻問題に関しての質問を少しさせていただきたいと思います。  北海道拓殖銀行、三洋証券山一証券等都市銀行大手証券会社破綻問題が相次ぎまして、金融機関を取り巻く環境が非常に緊張を高めておるところでございます。一歩対応を間違えれば日本金融システムが崩壊してしまうというような大変危機的な状況であるというふうに思うわけでございますけれども、現在の金融市場の安定ということは国民の総意としてぜひとも早急に解決しなければならない問題であるというふうに考えております。  我が国経済基盤というべき金融システムを万全なものにすることが現在表面化しておりますアジアの金融問題、金融不安の解決にとりましても大変重要なことであるというふうに思うわけでございますけれども、まず我が国金融システム安定化のための対策として大臣はどのように取り組んでいかれるつもりなのか、決意のほどをお聞かせ願いたいと思う次第でございます。よろしくお願いします。
  9. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 委員指摘のような状況、共通の認識を持たせていただいております。  まず、金融システム安定性の確保とは、個別金融機関破綻が他の金融機関に伝播をし金融システム全体が揺らぐことがないようにすることにより内外のマーケットの信認を維持することであると考えております。そのためには、預金保険制度といったセーフティーネットを通じまして預金の全額が保護されることによりまして、預金者自己預金は安全だという安心感をしっかり持ってもらうことが最も重要であると考えておる次第であります。また、経営困難に陥っておる金融機関資金繰りの悪化が他の金融機関に影響することのないよう日本銀行により十分な流動性、すなわち資金でありますが、市場に供給されますことが肝要であると存じます。  さらに、金融システムの安定のために、現在の金融情勢のもとでは、今国会で御審議をいただいておる預金保険法改正案による措置を一刻も早く破綻処理手法として追加することが重要であります。本法案を今国会におきまして早急に成立させていただくことがぜひとも必要であると考える次第であります。  金融システムの安定の強化を図りますためには、公的支援を伴ういろいろな考えが出されておりますけれども公的支援によりセーフティーネットを完備し、預金者保護することが重要であると考える次第であります。  したがいまして、いかなる事態でも対処できるよう、預金者保護のため公的支援により利用可能な資金を拡充していくことを今後検討すべきではないかと考えておる次第であります。金融システムの安定については預金者保護目的として公的支援を含め検討していくこととし、具体案を得るべく全力を挙げて取り組んでおるということであります。
  10. 河本英典

    河本英典君 今、お話を聞いておりますとおり、金融機関救済というふうに一見とられがちでございますけれども、一番大切なことはやはり預金者なり契約者保護ということになるわけでございます。  金融システム安定化のための方策として少し具体的な検討ということで考えておられるようなことをおっしゃったのでございますけれども、どんなことを検討していただいておるのか、お聞かせ願えますでしょうか。
  11. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 委員指摘のとおり、預金者保護、これが最大の目的でございます。預金者保護が図られますということは金融システム安定性が確保されておるということでございます。そういうことで、この安定性を確保するために本法案も提出させていただきましたところでございます。  私とすれば、事務方に対して、システム安定イコール預金者保護にストレートにつながる問題でありますものですから、ありとあらゆる選択肢を点検、検討をし、具体策に取り組んでほしい、こう申し上げてまいりました。国会において本件についても御議論が盛んに行われておるところであります。各党においてもまたしかり、特に与党という責任の中で三党におきましても本件についてそれぞれ検討、それぞれ中間の発表等々が景気対策ということの中で出されたりしておるところであります。重大な関心を持ってその動向を見詰めながらおるところであります。しかし、政府としても、このことについて真剣に取り組んでいかなければならぬということで、動向をしっかりと見詰めながら取り組んでおる、こういう状態であります。
  12. 河本英典

    河本英典君 寄託証券補償基金法制化を図るというふうなことを聞いておるのでございますけれども法制化につきまして具体的な内容がありましたらお聞かせ願えますでしょうか。
  13. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 先ほど来、金融システム安定化のための方策というお尋ねでございまして、大臣より主といたしまして銀行を中心といたしました安定化策についてのお考え方を御答弁差し上げたところでございますが、証券会社の場合には銀行とまた一味違う対応金融システム安定化のために必要であろうと考えております。  三洋、そして山一という相次ぐ破綻の中から私どもは現在いろんな教訓を酌み取り、改善すべき点を総力を挙げて点検しなければならないと考えておりまして、その中で例えば一つとしましては、証券会社健全性を確保するために私どもが現在行っております自己資本規制比率といったものを、これからの自由化時代証券会社経営においてリスクを的確に把握して対応するためにこれをもっとレベルの高いものにしていくにはどうしたらよいかという課題一つございます。あわせまして、話題となっております証券会社破綻した場合の顧客資産の保全のための分別管理を徹底するためにいかなる方策が可能かということも研究課題でございます。あわせまして、ただいま河本先生からお尋ねのございました寄託証券補償基金による顧客に対する損失の補償という業務を充実させていくということが三つ目の大きな課題かと考えております。  この点につきましてのお尋ねでございますけれども、私ども現在の方向といたしましては、財団法人によります業界の任意の組織として、言ってみれば税法上は寄附金扱いになるような拠出金による制度として現在この寄託証券補償基金制度がございますけれども、わかりやすく申し上げれば、これを銀行におきます預金保険制度のように法律上の制度として義務づけ、その基金への拠出証券会社に法的な義務として義務づける、その裏返しとしましては、これは主税局長と御相談しなければいけませんけれども、その拠出金税法上も預金保険保険料と同じように損金扱いができるようにするということがございます。  そしてその上で、例えば現在の制度では破綻が起こりました場合に一社当たり二十億円の補償という形になっておりますけれども、一社当たり二十億円の補償が行われるということは、投資家の方から見れば自分が一千万円の預け金証券会社にしておるときにその一千万円のうちの幾らが返ってくるんだというのは全くわからない仕組みになりますので、むしろこれを顧客一人当たり幾らまでは満額補償いたしますと。諸外国ではそれを超えた場合には何割とかという制度にしておりまして、顧客の方があらかじめこの取引証券会社とした場合にはどのくらい万が一のときには自分補償されるんだということがわかるような仕組みにした方がいいのではないかという考え方がございまして、まずそういった内容をこの六月十三日のビッグバン全体の答申の中で証券取引審議会からちょうだいいたしておりまして、その具体的な案を私どもの中でも、あるいは証券業協会との間でも現在検討中でございます。  ただいまのような方向具体化でさましたら、明年の通常国会におきまして、また本委員会でも御審議を賜るような運びにできればと考えております。
  14. 河本英典

    河本英典君 銀行のそうした制度証券会社制度というのはおのずとその商売の内容が違いますので変わってくるということはわかるわけですけれども、考えてみますと、本当に銀行というのはおもしろいなというように私はいつも思っておるんです。伝票の印影が違えばたとえ百円でも出してくれないわけです。証券会社の商いというのは電話一本で何万株買うとか何十万株買うということが契約されて、それを言ったか言っていないかでもめることもあるわけですけれども、一方では伝統的に非常にきっちり伝票を書いてやられている業務であるし、証券会社はそういった意味電話一本でがさっとやるような大ざっぱな業界でございますからその分だけひどいことになるとこんなものかなというような、驚くような数字が出てくるわけでございます。  そんな意味で、それを補償するという制度は、実際法制化によって幾ら補償してもらえるのかもしれませんけれども、なかなかし切れないなというような感じがするわけでございます。契約者といいますか、投資家保護のためにぜひともそれなりのことを考えていただきたい。特に一番大切なのは、日本法人顧客より個人顧客が非常に少ないということで、本来の株式市場意義が余り生かされていないのじゃないかなというような気がいたします。そんな意味で、個人投資家参入しやすいような条件をつくるということが実はある意味ではビッグバン一つのねらいでもあるわけでございます。  とにかく、今まで山一さんも法人山一ということで大ざっぱにやられておったんじゃないかなという気が本当にいたすわけでございます。私も証券会社と少しはっき合ったことがありますけれども、大ざっぱなところだなというような感じを持っております。そんな印象でございます。  そんなことで、大変に荒れておるといいますか、不安定になっております金融機関破綻問題でございますので、ぜひともこれからタイムリーにいろいろやっていっていただきたいというふうに思うわけでございます。  大蔵省もそんな意味で今回の事件を機会に考え方が随分変わられたんじゃないかなというような気がいたします。今まであり得ないことが起こっておるわけでございますので、本当にそれだけ国際化が進んだのか、ビッグバンが進んでいる状況ということだろうと思います。  本日の議題であります持ち株会社に関する法案について質問をさせていただきたいと思います。我が国金融機関を取り巻く環境は、金融技術の革新や自由化国際化の進展によりまして著しく変わってきております。この環境変化の中で、我が国金融システム改革、いわゆる日本版ビッグバンが進められているところであるのはもう我々承知のところでございます。フリー、フェア、グローバルを三大原則とする我が国金融システム改革で、我が国金融機関はこれまでのいわゆる護送船団方式のもとで保護されてきた時代から今後は国内、国外を問わずに本当に生き残りをかけた激しい大競争時代を迎えようとしているわけでございます。このような状況の中で、金融機関持ち株会社という新しい経営形態活用して業務を展開しようとすることは大変画期的なことであると思います。その効用を最大限に活用できる環境を整備することが一番大切ではなかろうかというふうに思うわけでございます。  そこで、今回行われます金融持ち株会社解禁がこれからますます厳しい時代を生き抜いていかなければならない我が国金融機関や今後金融サービス提供を受ける利用者にとって一体どういったメリットがあるのか、それがまた我が国ビッグバンにおいてどのような役割を果たすことになるのかを知りたいわけでございまして、その辺をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
  15. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先生指摘のように、今回の金融システム改革の中でこの金融持ち株会社解禁は大変重要な役割を果たすものと考えております。  具体的に銀行を例にとって申し上げますと、持ち株会社活用によりまして分社化をしまして、より専門化、高度化した金融サービス提供、そういう専門家集団を育てるということが考えられますし、また金融業務を営むいわゆる兄弟会社間における相乗効果の発揮ということも期待できると思います。それから、この制度によりまして新規分野への参入、あるいは他業態からの銀行分野への参入円滑化等が期待されると思います。利用者のニーズに応じた多様な金融サービス提供による利用者利便の向上に大変資すると同時に、金融分野における競争の促進、効率化が期待できると思います。  加えて、諸外国ではこの制度を既にとっておりますが、我が国持ち株会社制度を導入した場合に大変興味のある変化があらわれる可能性はあると思います。それは日本的な経営風土あるいは経営慣行というものがこうした経営形態変化によって変わっていく可能性もあるのではないかと私どもは考えております。それは個々の企業がみずから選んでいくことではございますけれども、そうした意味でも大変意義があるというふうに思っております。そういうところにこの効用を期待しておるところでございます。
  16. 河本英典

    河本英典君 よその国ではもう既にやられていることでありますので、そういった意味では形態としては理解できるわけですけれども、どういうメリットがあるのかなということをお聞きしたわけでございます。  金融持ち株会社という制度がつくられるということなんですが、この制度をうまくこれから生かしていくことが大切だというふうに思うわけでございます。特に、今言われております金融システムの安定という観点から見れば、今回の金融機関破綻処理のために金融持ち株会社という制度をうまく生かすようなことはできないものかなというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  17. 山口公生

    政府委員山口公生君) 御指摘のとおり、この持ち株会社制度創設されますと、破綻処理においても力が発揮されるのではないかと期待しております。  それは、破綻処理形態として最近は受け皿銀行を使って営業譲渡ということを進めておりますけれどもケースによっては救済合併というのもあり得るわけでございます。ただ、救済合併のときは同じ会社にしてしまうわけですからなかなか抵抗感があるわけでございます。企業風土が違うとか、いろいろな待遇が違っているとかということがあります。そうした場合に、持ち株会社制度がありますと別会社のままそれを子会社にして破綻処理をすると。現行の預金保険法におきましても破綻金融機関株式取得に際しては資金援助が行えるように措置されておりますけれども、この法律案では銀行持ち株会社解禁に合わせまして銀行持ち株会社による破綻銀行株式取得についても同様に資金援助の対象にしていただくように盛り込んでございます。  したがいまして、この法案をお認めいただけますればそういう破綻処理の際の一手法としてこれが活用されるということになって大変手段がふえる面があるというふうに考えております。
  18. 河本英典

    河本英典君 現在の状況を予想してこういうものをつくろうということになったわけじゃないと思うんですけれどもお話を聞いておりますと非常にタイムリーなような気もいたします。銀行がそういうことをするかどうかということにもなるわけですけれども、それだけ銀行会社というものが人間的要素なくして大変機関的な、制度的なものになりつつあるということは、それが国際化ということが言えるのかもしれませんけれども、せっかくそうしたグローバルスタンダードに合わせた制度をつくっていくわけですから、そういうふうに生かされることを期待したいと思うわけでございます。  そこで、金融持ち株会社制度活用が可能になると申しましても、真に活用しやすいものでなければせっかくの持ち株会社形態をとる意味がないことになります。今回の法案では、銀行持ち株会社及びその子会社一般事業法人株式を合算して一五%を超えて取得してはならないという、いわゆる合算一五%ルールというんですか、が設けられていますが、これは銀行がさまざまな事業に乗り出していくことによって銀行経営健全性が損なわれることを防止するとともに、銀行産業支配の防止になるという歯どめでありまして、重要な規制だというふうに思います。  ところで、合算して一五%に規制するという数字根拠といいますか、何に基づいて一五%という数字が出てきたんでしょうか、お聞きします。
  19. 山口公生

    政府委員山口公生君) 銀行そのものあるいは証券会社そのものは単体で五%までしか事業会社株式を持つことができません。保険会社は一〇%まででございます。これは独禁法上そういうふうになっておりまして、現実にそういう運営をしております。  そうしますと、持ち株会社制度ができまして、子供機関として銀行証券保険あるいはリース会社等が並んだときにどこまで一般事業会社株式を持てるかという問題になるわけでございます。その規制が強過ぎますとそういう子供の、つまり兄弟で並ぼうということが制限されるわけでございますし、逆にそれを広く認めますと本来五%までしか持ってはいけないという趣旨が崩れ、今おっしゃいました例えば銀行事業会社経営にまで参加してしまうということになるわけでございます。その調整をどこにするかというので何らかの数字を決めなければいけないということになるわけでございます。  実態ケースを全部調べてみました。いろいろな企業グループがございます。そうすると、一五%を若干超えているものもかなりございますけれども、それぐらいのところで線を引けば弊害もなし、かといって持ち株会社をつくることを阻害もしないというラインだということで、いろいろ御協議願い、いろんな御意見をお伺いした上で一五%というふうにさせていただいたわけでございます。
  20. 河本英典

    河本英典君 実態に大体基づいて、参考にされて一五%ということで決まっておるということでございます。けれども、もし知っておられたらちょっとお聞きしたいんですけれども、昔の財閥解体というのが日本終戦処理であったわけですけれども、昔はどの程度まで高い水準があったんでしょうか。御存じだったらちょっと教えていただけませんか。  それから、韓国で何かいろいろ集中して今がたが来ているようなことを申しておりましたけれども韓国もこれは数字では高いんでしょうね、実際。何か御存じじゃないですか。
  21. 山口公生

    政府委員山口公生君) 韓国についてはちょっと調べておりませんで、まことに申しわけございません。
  22. 河本英典

    河本英典君 済みません、申しわけないです、要らぬことを聞きまして。  やっぱり進駐軍が財閥解体をしたというのはそれなり根拠があって、非常に産業支配したということでそういうことになったんだと思うわけですけれども、現在もう既に実質的に一五%という水準に近い状態で間接的、直接的を通じて持っているということであれば、一五%の数字というのはある程度妥当だというふうに考えるわけです。  逆に、考えるんですけれども株式保有制限を設けることが銀行持ち株会社制度の阻害要因になるということはないでしょうか。
  23. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今御説明いたしましたように、実態を見ながら、銀行持ち株会社ができたときの状況を想定しながら一五%と決めさせていただきましたけれども、確かに先生がおっしゃいますように、グループの企業としてたくさんのものが並びますと一五%を超える場合も出てまいると思います。そのときにはやはり何らかの経過的な措置を設けておかないと現実問題としてそれは排除されてしまうということになりますので、当該銀行持ち株会社が一五%を超える場合はその部分の株式を五年以内に処分するというような条件で認可をするというような経過措置をつくってございます。  そういうことで、できるだけそれが阻害にならないように、しかし脱法的な組織ができないようにというような措置を講じさせていただいております。
  24. 河本英典

    河本英典君 この一五%ルールというのは銀行子会社とする持ち株会社に対してだけかけられまして、保険会社証券会社子会社とする持ち株会社に対してはこのような規制は課せられていないということなんですけれども、その理由はどういったところにあるんでしょうか。
  25. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私の答弁でもし不足であればまた関係局長から答弁いたしますが、銀行につきましては決済システムを担っておるわけでございます。したがって、その経営の悪化が金融システムに影響を与えるおそれがあるということにかんがみまして、保険会社などに比べて相対的に厳格な規制が課されているところでございます。今の銀行法の体系もそういうふうになっております。  こうした観点から、銀行持ち株会社につきましても傘下の銀行との一体性を重視しまして、銀行に今課されております規制に準じた厳格な規制を課すこととしまして、子会社の範囲に制限を設けるとともに、銀行持ち株会社子会社とすることのできないいわゆる一般事業会社株式の保有について一五%というルールを設けさせていただきました。しかし、本来であればなるべく自由にするというのが本来の趣旨でございますので、銀行の場合はそういった他のリスクからの遮断、健全性の維持、それから他業を禁止しているという趣旨等、かなり強い規制をかけております。それの一貫性からこういう制限を設けております。  一方、保険持ち株会社につきましては保険契約者保護の観点から、保険会社は現に規制をかけておりますが、これに準じた規制を課していく必要がございますけれども保険会社は決済システムそのものは担っておりません。それから、信用秩序に与える影響がないとは言いませんが、限定的な側面もございます。そういうことを踏まえまして、保険持ち株会社子会社業務範囲、つまりどういうものを並べられるかということについては基本的には制限は設けないとしたために合算一五%ルールのような株式保有制限は課さないということにしております。  証券会社につきましては、これは証券取引の仲介者としての取引行為の適正確保の観点からの規制を行うというのが主眼でございます。この点につきましては基本的には証券会社、これは子供になるわけですけれども、その証券会社本体への規制対応可能であると考えられますので、その親であります証券持ち株会社につきまして、証券会社に対する監督の実効性を担保する観点から報告徴求・検査を措置するにとどめておりまして、一五%ルールの規制は行わないとしております。ただ、どうしても必要な規制は残しますが、できるだけ自由という基本的な考え方を一方で貫いておる次第でございます。
  26. 河本英典

    河本英典君 わかりました。一五%ルールはこの辺にいたしまして、次に違うことをお伺いします。  法案では、行政当局は銀行持ち株会社に対して「監督上必要な措置を命ずることができる。」というふうにされておりますが、「子会社である銀行業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、」、このような命令が恣意的に行われることがあった場合、銀行持ち株会社経営上の自由度が確保されないということになりますが、銀行持ち株会社に対する監督上の命令は具体的にはどのような場合に発動されるのかをお聞きしたいと思います。
  27. 山口公生

    政府委員山口公生君) 具体的な命令の発動につきまして例えばで申し上げますと、銀行持ち株会社グループ全体の財務状況が悪化しましていわゆる連結自己資本比率が適正な水準を下回っているような場合には、銀行持ち株会社グループの自己資本の充実の状況に係る区分に応じまして、その銀行持ち株会社に対してグループ全体の自己資本を充実させる方策を盛り込んだ改善計画を提出させる等の措置を命ずるというふうにしております。これは銀行についての早期是正措置で、一つの区分に応じまして透明性のある業務改善命令等を打つということと同じような考え方でございまして、これをグループとしてとらえ、それを改善させていくということでございます。  ただ、連結自己資本比率の水準が向上しないで子供であります銀行経営健全性が損なわれるおそれが続くようなときは、これは銀行そのものに対しましてもその業務の健全かつ適切な運営を確保するために必要な措置はもちろんとらなければならないというふうに思っております。  いずれにせよ、銀行健全性のための措置が一方であると同時に、今度は持ち株形態になってもグループとしてやはり最小限のチェックはしていく必要があると、こういうことでございます。もちろん、これは来年の年央からは金融監督庁の方でやる仕事になるわけでございます。
  28. 河本英典

    河本英典君 同時に、立入検査を行うということになっておりますけれども、これはどのような観点から行われるのかということをお聞きしたいと思います。
  29. 山口公生

    政府委員山口公生君) これは銀行持ち株会社などがその子会社、例えば銀行あるいは証券などですけれども、そうした子会社経営管理機能を有するわけでございます。  持ち株会社は何を主たる業務とするかといいますと、子供銀行とか証券経営管理の基本をやるわけでございます。具体的な経営はそれぞれの子供である銀行等がやりますけれども、その基本的な経営管理機能を有するわけでございます。したがいまして、銀行等の健全かつ適切な運営を確保する観点からその必要があると認めるときは銀行持ち株会社等に対して立入検査を行う必要が出てくるわけでございます。  ただ、その形態でございますが、例えば子銀行等に対する経営管理の状況あるいは銀行持ち株会社に係る規制の遵守状況を把握するために銀行持ち株会社のみに対して検査をする場合もあります。あるいは銀行に対する立入検査に際しまして、同時にその親であります持ち株会社経営管理の状況をどうしているんだということで立ち入る場合もございます。あるいは銀行だけの立入検査でもうとどまる、それで全部わかるという場合もあるわけでございます。  したがいまして、その立入検査がさまざまな形で行われるということになるわけでございますが、この趣旨はその銀行経営管理の基本を金融持ち株会社というものがやるということの性格からきておるわけでございます。ただ、これをもっていたずらにその規制を強めるということはしないようにしなきゃいけないということでございます。
  30. 河本英典

    河本英典君 そうすると、今までやってこられた銀行局は銀行局としての検査なり立入検査とかそういったことと、それから証券局がされていたということは、今までの仕事の仕方と違って、これから金融監督庁という形でやられるわけですけれども、当然違ってくるから、今おっしゃったことはそうなるであろうというお話として理解したらいいわけですね。
  31. 山口公生

    政府委員山口公生君) 来年年央からは金融監督庁の方にその機能が移るわけでございます。これからは恐らく個々の単体の業務の検査あるいは監督ということに加えまして、これは世界的な動きでございますが、コングロマリットとしてのとらまえ方ということがどうしても必要になってくると。  だから、私どもの方は、金融監督庁が今度できますと金融監督庁の方でそういったところの検査や監督のノウハウも十分に身につけませんと、ただただ銀行だけ見ていればいい、証券会社だけ見ていれば済む、保険会社だけですべてが終わるという時代ではなくなってきておるわけでございますので、そういった点でも、私ども時代に即応した体制と知識、技能というものを身につける必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  32. 河本英典

    河本英典君 次に、違う質問をさせていただきます。  法案では、銀行子会社とする持ち株会社保険会社子会社とする持ち株会社については設立に関する認可であるとか連結ベースの規制などさまざまな規制が課せられているのに対しまして、証券会社につきましては証券会社本体への規制を基本としているようでありますが、なぜ証券会社については銀行保険会社のように持ち株会社への規制などを行わないのか、理由をお聞かせ願いたいと思います。
  33. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 基本的な枠組みにつきましては先ほどの一五%ルールをなぜ証券会社に適用しないかというところで山日銀行局長が簡単に御説明した点に尽きるかと存じますけれども証券会社の監督ということを考えました場合に主として二つの分野がございます。  一つは、やはり中心になりますのは不公正、不適切な取引が行われないようにするというものが証券取引法の主眼でございますけれども、この取引というのはまさに親会社ではなくて子会社そのもので行われている。例えば、相場操縦をやっていないか、あるいは損失補てんをやっていないかということは子会社自身に対する監督として行えば十分であるし、特に親会社が巻き込まれることもないと考えます。  それから、顧客に対するいわば健全性の維持という要素の点は、銀行に似た側面はございますけれども、これは先ほどの御質問に御答弁申し上げましたように、資産の分別管理でありますとか寄託証券補償基金の充実といった形で対応すべき出来事であろうかと。  銀行の場合には、例えば不動産会社まで銀行のいわば親会社が保有していいのかどうかという銀行と産業とのかかわり、あるいは銀行に対する健全性の確保という要素がございますけれども証券の場合にはそのような要素はないと考えられますので、基本的には単体に対する、単体と申しますか、証券業をやっている子会社に対する監督を主とし、仮に必要があれば親会社に対して報告等の徴収を求めることができるという形で考えております。  なお、ただいまコングロマリットという観点で山口局長が御説明したことを敷衍いたしますと、例えば日本では四大証券は既に銀行子会社自分子会社として持っております。これは将来、兄弟会社として持ち株会社という形になることがございましょう。今度は逆に、銀行の方でも証券子会社を持っておりますからそれが子会社ということになる。  そうすると、具体的な名前を挙げてはぐあいが悪いのかもしれませんけれども、例えば東京三菱ホールディングカンパニーというものがその下に銀行証券を持っておるという状態と野村ホールディングカンパニーというのが証券銀行を持っておるという状態、そのホールディングカンパニーは一体銀行なのか証券なのか、両方とも子会社にいるということではもう同じになります。  したがいまして、例えばもとが証券経営だったとしても、野村ホールディングの下に野村証券と野村銀行というものが子会社としてなる場合にはこの親会社銀行子会社に持っておるわけでございますから銀行持ち株会社の位置づけとなりまして、山口局長が先ほど来御説明している規制の対象に入る。コングロマリットという意味は、既に銀行証券というのはそのステージに入ってきておるということでございます。
  34. 河本英典

    河本英典君 銀行持ち株会社子会社については金融関連の業務に制限されているのに対して、保険持ち株会社子会社については一般事業を含めて業務範囲に制限が設けられていませんが、これはどういった理由によるものなんでしょうか。
  35. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先ほど大変短く御説明して不十分でございましたけれども保険の場合に並べられる子会社の範囲を特段銀行持ち株会社のように制限しませんでしたのは、決算システムを担っていない、あるいは信用秩序に与える影響が限定的だということを勘案しまして、それからもう一つ、諸外国のことを考え合わせてみますと、保険についてはアメリカも特段その規制を設けておりません。  したがって、原則としてそういった規制をなるべくなくそうということでありますので、銀行については非常に厳しい制限をかけましたけれども保険についてはそこまでやる必要はないだろうということで判断したわけでございます。
  36. 河本英典

    河本英典君 保険会社のことでもう一つお聞きしたいんですけれども、生命保険会社は多くは相互会社という独特の組織形態をとっているようですけれども、今回の保険持ち株会社活用できないということです。今後、保険会社健全性を維持して利用者ニーズの多様化に対応していくためにも、相互会社形態をとる保険会社についても持ち株会社活用していく道を開く必要があるというふうに考えますけれども、そういった導入のスケジュールというのは考えておられるんですか。
  37. 福田誠

    政府委員(福田誠君) お答えいたします。  生命保険会社についてのお尋ねでございますが、御指摘保険会社がその子会社として持ち株会社を保有する、いわゆる川下持ち株会社につきましては本年六月の保険審議会の報告において「組織形態の選択肢の多様化の観点から、保険会社持株会社子会社として保有することを認めることが適当である。」とされております。  この報告等を踏まえまして、川下持ち株会社につきましては保険会社子会社に係る制度の見直しの中で導入を図る方向で現在検討を進めております。成案が得られ次第、法案として提出させていただきたいと考えております。
  38. 河本英典

    河本英典君 よろしくお願いいたします。  次は、ディスクロージャー、金融機関の情報開示について少しお聞きいたします。  最近、金融機関の情報開示がよく話題になっていますが、持ち株会社につきましても、いろいろな会社子会社になって企業集団を形成するということになりますと、銀行のディスクロージャーにとどまらずグループ全体の情報公開、ディスクロージャーというものが預金者保険契約者投資家にとって大変重要になってくるというふうに考えられます。  現在、有価証券報告書の中で子会社を含めた情報の開示が行われているのでありますけれども持ち株会社につきましては証券取引法において一般の親子会社以上に連結ベースでのディスクロージャーの充実が必要となると思います。この点につきましてどのような方策を考えておられるのかをお聞きしたいと思います。
  39. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 御指摘のとおり、今後の金融システム上、ディスクロージャーということが大変に重要でございます。  したがいまして、金融システム改革、いわゆるビッグバンを推進するに当たりまして橋本総理は、大蔵大臣とともに法務大臣もお呼びになって企業会計も含めた金融システム改革を進めるという御指示でございましたし、私どももこのディスクロージャーの問題につきましてビッグバン関連五審議会、外為審、金融制度調査会、保険審議会、証取審のほかに企業会計審議会を関係審議会と言っておりまして、そこにおきましてただいま御指摘の連結ベースでの情報公開というテーマに取り組んでいただいております。  この点につきましては、六月にもう既に中間的な報告が出ておりますけれども、御指摘いただきましたように、連結ベースの財務諸表の公示を中心としていくという方向性が出されておりますし、持ち株会社というものは、そういう連結ということを考えた場合にはイの一番でこれが適用されるべき分野であると考えております。ただし、持ち株会社の場合には連結をすればすべてが足りるということより、今度は逆に連結だけではなくてその傘下にある子会社の情報も一つ一つある程度投資家の方に提供するという側面もございますので、その両面を合わせた必要な情報開示の体制を整えたいと考えております。
  40. 河本英典

    河本英典君 今回の法案ではその辺のディスクロージャーについての特別な措置というのは講じられているのか、お聞かせ願いたいんです。
  41. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) これは企業会計の仕組みの中で連結の範囲というのはおのずと決まってまいりますので、この法案をお認めいただきまして金融機関をめぐる持ち株会社というのが認められますればほぼ自動的に連結決算の対象になっていくというふうに御理解いただけたらと存じます。
  42. 河本英典

    河本英典君 それでは、税制上の措置についてお聞きしたいんですけれども銀行持ち株会社の設立に特例を設けたとしても、譲渡益課税や登録免許税などについて税制上の措置を講じなければ実際上設立が困難ではないかというふうに考えられますけれども、今後このような対応が行われることになるのでしょうか。
  43. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 今回の法律によりまして銀行持ち株会社の設立が可能となるわけですが、その場合に現在の税法のままでありますとなかなか設立ができないではないかという御質問でございます。  具体的には幾つかの点が指摘されているわけでございますが、この点につきましては政府の税制調査会でも早くから議論を始めておりまして、昨日、金融課税小委員会が中間報告を出しましたが、その中間報告の中では、この種の仕組み制度が金融の世界ででき上がることについて期待をすると評価した上で、この法案で提案されていますいわゆる三角合併方式による銀行持ち株会社の設立に伴って銀行の株主が銀行持ち株会社に対して行う現物出資に係る譲渡益に対する課税の問題等々につきまして、「適切な対応が図られることが望ましい。」ということを指摘しております。  今後、政府の税制調査会の総会ベースで議論をいたしますが、この種の問題について今の小委員会指摘に沿って私ども議論をしていきたいと思いますが、分野がかなり幅広くなります。かつ、事業持ち株会社等についてはこれまでも存在しているわけですので、そことの関係も考えなければいけません。支障にならないように十分考えますが、現行制度で動かしていることとの調整、それから今後の一般的な持ち株会社への対応ということも十分考えて課税の公平も期してまいりたいと思っております。
  44. 河本英典

    河本英典君 連結納税制度についてお伺いしますけれども持ち株会社解禁された場合において、実際にその活用を図っていくに当たって連結納税制度の導入の必要性が指摘されているわけですが、連結納税制度については現在どのような検討が行われているのか、お聞きしたいと思います。
  45. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 連結納税制度につきましては、法人課税のあり方ということで一昨年来からかなり深い議論を政府の税制調査会でやってもらっております。法人課税小委員会でもこれについての考え方を示してもらっておるわけですが、御存じのように、今回いわゆる純粋持ち株会社というものが解禁されたわけですが、事業持ち株会社というものは既に動いているわけでございます。この事業持ち株会社が動いている中で連結納税制度というのは現在とっておりません。  税制の面から申し上げますと、連結納税制度というのは、先ほど来御議論のありました連結決算とちょっと違う世界であるというふうに理解しておりまして、課税する際に個々の法人を課税主体として考えるのか、企業グループ企業集団全体を課税主体として考えるのかという法人税の考え方のいわば基本のところに関係してくるところがございます。  私どもも頭から連結納税制度はいけないというような考え方は持っておりません。ただし、現在の商法なり、いろいろな法制なり、それから企業経営実態が集団的になされているのかどうか、ある面では集団的にやるんだけれどもある面では個々の企業であるといういいとこ取りで考えているのであれば、税制面では税金が安くなるように連結納税制度と言われるのでは私どもはそのまま乗るわけにはいかない。そういう意味では、企業経営実態が集団的な経営になってくるのか、企業集団として経営していくのかどうか、あるいは雇用の問題等々についても総合的な視点で見ていかないといけないと思っております。  繰り返し申し上げますが、問題意識は持っておりまして、今後慎重な検討が必要とされる研究課題であるという受けとめ方でございます。
  46. 河本英典

    河本英典君 日本の納税者は所得納税になれ過ぎていまして、これだけ企業活動がこういう持ち株会社を通じてとか国際的になりますと、一体どれが利益なのか実際やっている者もわからなくなるぐらいややこしくなってきておるわけですが、それを確定して税金をかけるということ自体が難しくなってくるというふうに思うわけです。  その辺、これから抜本的な問題として、また直間比率の問題になるかもしれませんけれども、そういった税制ということも国際的に考えましても変えていかなきゃならないというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  47. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 大変大きな視点からの御指摘でございまして、先ほどの質問の継続という意味ではなしに御答弁申し上げさせていただきますと、おっしゃるように、所得というものを把握する、あるいは意識することがこのように経済活動が複雑化し、国際化し、また電算機等、機械が発展した中で非常に難しくなってきているというのが実態でございます。したがいまして、脱税するとかしないという意識があるなしにかかわらず、所得がどの時期に発生したかというのがとらえにくくなっているというのは御指摘のとおりでございます。したがって、それをとらえるために努力するのか、それともとらえようとしても無理ではないかと考えてしまうのかで今後の税体系の考え方も変わってくるのかと思います。  極端に言えば、例えば支出税というようなことを学者の皆さんはおっしゃいますが、そういう考え方はむしろ所得課税から消費といいますか、支出のサイドに着目して課税した方が公平ではないかという発想もあるわけです。ただ、私どもも含め現在の各政府の税制当局は、所得課税を中心としつつ悩ましい問題が起きているなという意識でおりまして、OECDその他でこの点については議論させていただいているというのが実情でございます。
  48. 河本英典

    河本英典君 確定するのが困難か困難でないかとは別に、やはり経費というか手間暇がかかりますから、それも勘案して税を取るということを考えないといけないというふうに思いますので、将来の大きな課題として考えていただきたいなというように思うわけでございます。  ほかに来ていただいたところもあるんですけれども、時間ですのでこの辺で終わります。ありがとうございました。
  49. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 平成会の直嶋でございます。  銀行持ち株会社について幾つか御質問させていただきたいと思いますが、最初に、今ちょうど税制の論議が出ておりましたので、税制の問題から御質問をさせていただきたいと思います。  大蔵大臣に最初にお伺いしたいんですけれども、今、我々この金融持ち株会社制度の導入について議論をしているわけですけれども、先ほどもお話がございましたように、これからの金融ビッグバンを控えて金融機関経営の選択肢を広げる、あるいは多様化というニーズにこたえていくという意味でこの持ち株会社制度金融機関にも導入しよう、こういうことであるわけですね。  そうした視点から実際にこの制度日本の社会に導入し定着させていくということを考えますと、この法律をつくって成立させるだけではそうなっていかないわけですね。やはり、そこにこの法律にかかわる制度を必然的に持ち株会社が進展するように変えていかなければいけない、そうでないと実効は上がらないと思うわけであります。  特に、持ち株会社制度の導入ということを考えました場合に重要になるのがこの税制の問題だというふうに私は思うわけであります。今、薄井局長の方から今回のいわゆる三角合併方式について小委員会報告を受けて前向きに議論をしているという御報告があったわけですけれども、ざっと見ましただけでも、今の税制そのままでいきますと、これは大変な負担になってくるわけですね。一説によりますと、例えば都銀クラスで今回の三角合併方式でこれを適用した場合に、税の負担だけでもざっと三千億円ぐらいになる、こういう試算も聞いております。  したがいまして、私はぜひ大蔵大臣にお願いしたいのは、今申し上げたような視点に立って積極的に陣頭指揮をしていただきたい、こう思うわけでありますけれども大臣、いかがでございましょうか。
  50. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 今回、この解禁をする意義は、ただいま来申し上げておるとおりでありますが、特に金融分野における持ち株会社活用利用者の利便というのがございます。その向上であります。経営効率化金融システム安定化に資するものでございます。今回の金融システムの改善の中で極めて重要な意義ということであります。  こういう中で、ただいま税制面の問題提起でございますが、銀行持ち株会社創設に伴います譲渡益課税等の税制上の措置につきましては、今回提案されております三角合併方式という設立形態を考慮しつつ、銀行以外の法人持ち株会社創設する場合などとの課税の公平の観点を踏まえながら、御指摘のように検討していかなければならない点であると認識をいたしております。
  51. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今の大臣のお答えとの関係一つ確認をしなければいけないのは、銀行以外の持ち株会社との公平性の問題というお話があったんですけれども、例えば銀行以外の例で申し上げますと、NTTのいわゆる持ち株会社化に伴う特例措置というのがございますね。こういったものと比較をしましても、やはり今お話が出たような譲渡益課税でありますとか、あるいは、さっき詳しくは出なかったんですけれども、登録免許税でありますとか、あるいは株主に係る有価証券取引税ですとか、こういったものも当然この税負担の対象になってくると思うんですけれども、こういった具体的なことも含めて主税局長の方からちょっと御見解をお伺いしたいと思うんです。
  52. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 先ほど申し上げましたのは金融持ち株会社がいわゆる三角合併方式をとる場合の税制上の問題点について御答弁申し上げたわけですが、今の御質問は一般の事業会社持ち株会社を持つ場合についての御指摘でございます。  三角合併方式の場合はいわゆる株式による出資のところが一番ポイントになるところでございまして、これは普通ですとそのまま課税になるわけです。これを課税したのではとても金融持ち株会社はできないという御趣旨の御質問の流れだったと思いますので、この点についてはこの制度創設される趣旨を尊重した方向で税制上対応していくということを検討していると申し上げたわけですが、もう一方の一般の持ち株会社ケースというのはいわゆる抜け殻方式という形で持ち株会社をつくるケースが中心になろうかと思います。この場合にはいわゆる現物出資、この中に例えば土地等が含まれていますと圧縮記帳の特例が、土地が含まれていなければこれは問題なく課税の繰り延べ、圧縮記帳が一〇〇%されるわけですけれども、土地等が含まれていると八〇%までしかできない仕組みに今なっております。これをそのまま置いておくと二〇%とはいえ負担が重くなるではないかというのが問題提起かと思います。この点につきましても検討はしていかなければならないと私ども思っております。  なお、三角合併方式の場合に有価証券取引税の問題が出てくると思います。この点についてどうしていくのか。先ほど来申し上げましたように、縦横斜めいろんなケースが出てくると思いますので、課税の公平を損なわないよう、かつこの制度がうまく動き出せるように答えを出していきたいと思っております。登録免許税についても同様の趣旨でございます。  なお、NTTについてお触れになったわけですが、NTTにつきましては私ども国の施策としていわば強制的に特殊会社であるNTTを再編成するということへの対応としてとらせていただいた措置であったということでございます。それとは別に、御質問にありましたように、今後の問題に対して適切に対応していきたいと思っております。
  53. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今、大臣の御答弁の中でもいわゆる三角合併方式と抜け殻方式でやる場合の公平性の問題というのが出ましたね。これはちょっと違うものを比較して、じゃどうやって公平にするのかというのは非常に、公平という言葉では説明しても、実際にそれをどう保つかというのは大変難しい話だと思うんですよ。  例えば、アメリカのケースを見ますと、結局いずれの方式をとっても基本的には課税されていないわけですね。ですから、基本的な視点として考えますと、冒頭私が大臣に申し上げましたように、やはり基本的にこの持ち株会社制度という新しい制度日本の中にこれから導入し定着していこう、これは将来の日本の経済社会を考えた場合に非常に有用であると、こういう判断に基づいてこの制度をつくっていくわけでありますから、やはり目先の公平性だけの問題ではなくて、そうした視点から判断をしていく、そしてできるだけ定着しやすいように図っていくというのは、これは大蔵省としての政策でありますから重要じゃないかなというふうに思うわけであります。  それで、今、NTTは国策としてやるわけだからというお話ございましたが、考えてみますと、こういう法律をつくって一種の経済社会のインフラとして我々はこれを整備していくわけでありますから、今、目の前にNTTの問題がありましたけれども、ある意味でいうと基本的には同じ方向に向かっているわけですから、主税局としての立場はわかるんですけれども、ぜひそういう視点で御判断をしていただきたいというふうにお願い申し上げたいと思うんです。  といいますのは、以前私、ストックオプション制度を導入しましたときに本会議でちょっと申し上げたことがあるんです。せっかく制度をつくっても税制がネックになってうまくその制度が機能していかないというようなことがあると、それはそれで問題だろうと。ですから、行政当局としてはきちっと整合性をとった上でこういう政策を打ち出されるべきだと、こう思うわけであります。  そういう視点に立ってぜひ努力をお願いしたいということと、これからいろいろ制度改革をしていく上で新しい制度をつくるということと従来の税制との兼ね合いというのが私は必ず出てくると思うんですが、そういう場合に税制が、言い方は悪いんですけれども、足かせにならないような発想をぜひお願いしたいと思うんです。  これは大蔵大臣、いかがでございますか、御見解をお伺いしたいと思うんです。
  54. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 御指摘のように、世の中が変わっていく中で税は税として一切変わらないということをすればその社会経済はおかしくなるということは私ども十分承知しておりまして、税は確かにかたいと言われておりますが、実情に対してはかなり柔軟に対応してきているつもりでございます。最初からやわらかいと税金というのはいただけないわけでして、常に筋は申し上げますが、必要なことは対応していきたいと思っております。  そういう意味で、先ほどの持ち株会社、これは方向として私ども適切な方向だと思いますのでこれが実現するように最大限努力しますが、一方で外国にない税制もこちらは持っているわけです。例えば、登録免許税というのは別の意味で、今度の持ち株式会社とは別に登録免許税を払わざるを得ない方々もいらっしゃるわけですから、何が何でも、何かできたら税金をかけないということは、これはまたおかしいと思います。したがって、支障のないように、バランスがとれるように考えた上で政策遂行に役立つようにしていきたいと思っております。  また、ストックオプションについてちょっとお触れになりましたが、これも我々、ストックオプションができる環境が整ったわけですから、税制がこれをストップしてはいけないと思っております。ただ、アメリカにおいてもストックオプションが一から十まで絶対いいものだというわけではなくて、アメリカでも税制上優遇措置を講じているのは社会に害を与えない限りの適格なストックオプションだけなんですね。適格ストックオプションでないものはそれは普通の課税にしておるわけで、そこはやっぱり税の面からアプローチして、今はやりだから何でも税金をかけないんだということは私は行き過ぎだと思っております。出過ぎないように、また引っ込み過ぎないように注意してやっていきたいと思っております。
  55. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま米国の例などをお引きいただきまして、足かせにならぬようにと、こういう御指摘であります。世界の流れの中でグローバル化、国際化が進んでおるわけでございます。そういう中で、税の基本原則である公平であること、それともう一つはこの種の場合は整合性を基本に今後の対応を真剣に検討させていただきます。
  56. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 主税局長にもう一点だけちょっと確認をしておきたいと思うんですけれども、さっきも出ましたが、連結納税制度なんです。先ほどの御答弁をお伺いしますと、なかなかどうも難しそうだなという感じなんですが、例えば、さっきちょっとお話し申し上げましたNTTの分割において、これは時限措置でありますけれども、東の会社の利益で西の会社の損失を補てんするという、一種のこれは全体として見ると時限的ないわゆる連結納税という側面を持っていると思うんですが、現実にこういうケースが生じたということも含めて考えますと一概に否定的な発想ばかりで取り組むのもどうかなと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  57. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) NTTという具体的な一つ企業の問題、かつそれを国の政策としてどういう形に再編した方が国にとってプラスかということで、NTTに対していわば強制的に対応したことに伴う税制上の措置と一般的なものとはやはり差があるのではないかと思っております。連結納税制度そのものについて、先ほど申し上げましたように、研究課題であるという認識はしておりますが、我が国の諸制度あるいは企業経営実態、こういったものをまだ分析していく必要があろうかと思います。  ややわかりやす過ぎる言い方になるかもしれませんが、連結納税制度が税金を安くするにはいいなということでアプローチするんだとすれば、これは私は本末転倒だと思っております。企業経営の仕方としては企業集団として経営をしていくことが適切である、そのためには忍ぶべきところも忍んで全体としてバランスのとれた対応をしていくという中で連結納税制度というのが私はあるように思います。  やや否定的に聞こえたかもしれませんが、十分にこれは研究課題として受けとめていきたいと思っております。
  58. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 税の話というのは議論しだすと尽きません。またいろいろと機会があると思いますので改めて議論させていただきたいと思います。  ここで本題に戻りますが、今、金融持ち株会社の議論をしているわけなんですが、一方で金融システムについてさまざまな一種の社会不安的な側面も含めて今現実に問題になっているわけです。今この問題を私ここで具体的に議論するつもりはないんですけれども、一連のこうした金融機関破綻であるとかあるいはその間のやや騒然とした社会の状況を見ていまして、私は根本的に欠けていることが二つあったのではないかなというふうに思うんです。  一つは、金融機関破綻をした場合のルールがはっきりしていない、処理のルールがきちっと整っていないといいますか、よく言われます一種のセーフティーネットがシステムとして日本の社会の中にまだ存在していない、このことがいろんな不安を与えているのではないかと思います。  もう一つは、何か銀行局長は嫌いだというふうにおっしゃいましたが、いわゆる護送船団方式と言われてきたやり方からそれぞれの自己責任でやる、基本的にこういう方向に流れているわけなんですが、その変化の中で考えてみますと預金者なりあるいはいわゆる利害関係者が判断する上での情報公開制度がまだまだ不備であると。したがって、よくわからないものですから余分な不安を駆り立ててしまう。一方で行政も、いわゆる経済のグローバル化の中でいいますと、この間の山一を初めとする破綻に見られるように、やはりマーケットの動きというものにどうしても振り回されてしまう、こういう状況にあるのではないか、こう思うわけであります。  そうした観点から、きょうは特にディスクロージャーの問題を中心にお伺いをしたい、このように思っておりますが、最初にさっきちょっと議論に出ました連結決算制度についてお伺いしたいと思うんです。  特に、金融持ち株会社制度を導入しますと、さっきもお話がございましたように、グループ全体としての運営ということになるわけであります。また、従来の業態別子会社ということになると親子関係ということなんですが、持ち株会社制度を導入しますと親子関係から兄弟関係変化していく、こういうことになるわけです。親子が兄弟に変わると兄弟の方がある程度リスクが遮断をされているので抵抗力があるんだ、こういう話もよくされるんですけれども、例えばこの間のベアリングズ社の例のように子会社破綻がもう親会社を経由してグループ全体に波及してしまうというようなケースもあるわけですね。  それで、先ほどお話がございましたが、企業会計審議会から連結財務諸表制度について見直しの報告が出されていると。私が聞いている話だと一部平成十年度から実施をしていく、あるいは十一年度から本格導入だというようなお話も聞いているんですけれども、特にこの持ち株会社制度との関係でどういうところに見直しのポイントが置かれているのかを簡単にちょっとまずお伺いしたいと思うんです。
  59. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 企業会計審議会は六月に連結に関する意見書を取りまとめて公表しておりまして、御指摘のとおり、新しい財務諸表制度を平成十年四月以降開始する事業年度から段階的に実施できるように準備をいたしております。  改正の主たる項目は、企業情報を単体を主としたディスクロージャーから連結を中心とするディスクロージャーに改める、それから連結の対象とする子会社の範囲につきまして形式的な持ち株基準によっておりましたものを実質的な支配という概念を入れていく、それから、事細かな内容になりますけれども、連結の決算におきます財務諸表のいろいろなつくり方につきまして一言で言えばグローバルスタンダードに、国際的な水準に合わせた内容にするといった内容でございます。  これらはある意味では持ち株会社が導入されるかされないかということとは基本の筋としては別途の問題で、持ち株会社が仮に今の時点で日本において解禁されなかったとしても企業会計審議会として取り組むべき課題であったであろうということにおいては一応別な問題と申し上げます。  ただし、先ほど河本先生にも御答弁申し上げたところでありますけれども、連結に転換したとき持ち株会社みたいなものが入っていきますと、連結で例えば相殺されるような項目を全部合体してしまってディスクロージャーしただけでは足りなくて、むしろ逆に単体についての情報も大事になってくる、あるいは連結の内部での取引がどうなっておるかという情報を開示することも大事になってくるという意味では、持ち株会社というものが日本で広く活用された場合にディスクロージャー上どんな問題があるだろうかということを考えつつ、今、連結の整備の準備をしておるという段階でございます。
  60. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今のお答えを受けてちょっと具体的にお伺いしたいことがあるんですが、持ち株会社制度を導入した場合にグループとしての、例えば不良債権等についていえば全体の数字も正確に把握される必要があると思うんですね。例えば不良債権の財務諸表制度上の記載ということについてちょっとお伺いしたいんですけれども、今どんな感じに、どんなふうになっているんですか。それから、今お話しされたこれからの方向ということで考えた場合に、それは変更されるのかどうかということをちょっとお伺いしたいんです。
  61. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) ただいまお尋ね金融機関の不良債権の状況のディスクロージャーというのは二つの側面がございます。  一般的な企業会計の原則として、銀行の貸出金というものを有価証券報告書の財務書類上どういうふうに表示し、そこに取り立てが不能になるおそれがあるとした場合のそのおそれのある金額につきまして引当勘定を計上するなり、あるいは債権そのものから除去するなり、そういったトータルとしてのロスの見込みを企業会計上表記する、これは商法からよってまいります全体的な企業会計のあり方の問題でございます。  それ以上に、これは山日銀行局長に後の御答弁はお任せしたいと思いますけれども銀行の場合にはそういった企業会計上の問題だけでなく、一体的金利減免をしておるような債権というのはどれだけあるのでありましょうかとかいう一般の企業を上回るレベルでのディスクロージャーが求められ、主としてそれが今日話題になっている。それらは恐らくは銀行法二十一条によります銀行独自の一般企業を上回るレベルでの企業情報の開示として扱われておりまして、それらの扱いにつきましては、今回の持ち株会社といった問題と離れて、銀行業をやっておるその銀行の不良資産の状況銀行法二十一条に基づいてディスクロージャーをされるという仕組みそのものは何ら影響を受けずに今後も行われるべきものと考えております。
  62. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 銀行局長にちょっとお伺いしたいんですけれども、ですから、今、証券局長がお答えになったいわゆる銀行法二十一条に基づく不良債権の公表ですね、これは要するに持ち株会社グループとしての不良債権の公表ということはお考えになっておるのかどうか。  それから、あわせましてお伺いしたいんですが、おとといの大蔵委員会のやりとりの中でもいろいろ議論があったんですが、例えば特にグループということで考えた場合に、子会社に対する親会社からの債務保証、子会社の借金に対する債務保証ですね、あるいは貸付金だとかこういうものがグループとして考えた場合に非常に重要になってくると思うんですよ。ですから、これからのディスクロージャーの問題としてやはりこういうところをきちっと公表していかなければ私はいけないんじゃないかと思うんですけれども、こういった点についていかがでございますか。
  63. 山口公生

    政府委員山口公生君) 二点御質問がございました。最初の方は私がお答え申し上げます。それは銀行法の二十一条にかかわる問題でございます。後の方は一般的な形の財務諸表の問題だと思います。  前者につきまして申し上げますと、現在、単体での銀行は公表不良債権をそれぞれ公表いたしております。それがグループになったときのそうした不良債権の情報をどうするかということでございますが、やはり預金者等の利用者のためにはそうしたものが十分に開示されるという方向で考えていきたいというふうに考えております。
  64. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) グループの中におきます貸付金あるいは債務保証といったものにつきましては、連結財務諸表をつくりまして連結だけで発表いたしますとこれはグループ内の取引ということで相殺項目になってしまうので開示されません。したがいまして、先ほど来、河本先生の御質問に対しましても、直嶋先生の御質問に対しましても、むしろ連結ベースの情報とともに単体の情報が大切になってくると申し上げましたのは、その連結で消えてしまいます貸付金とか債務保証というものが親会社から子会社に対する貸付金であればそれはそのまま財務諸表に貸付金の金額が記載されますし、債務保証でございますとそれは注記という形になりますけれども、その関係というものはつまり連結ベースの中での個別の取引が単体の情報として開示されるように整えておく必要がある、そういう方向検討をしておるということを先ほどから申し上げておるわけでございます。
  65. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 証券局長にもう一点ちょっとお伺いしたいんですけれども、今度の法律を見ますと、銀行保険持ち株会社の場合には連結財務諸表を大蔵大臣に提出することになっているんですけれども証券持ち株会社の場合にはこういう条項は入っていないように思うんですけれども、これはどうなんでしょうか。
  66. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 銀行保険は親会社持ち株会社に対する監督をある範囲で及ぼす必要があるという状況のもとに、その監督の問題として連結ベースでの情報等々が監督当局に出されることになろうかと思いますけれども、先ほど来御答弁申し上げましたように、証券会社につきましては監督上の必要性ということであれば証券会社に対する監督でほぼ足りるということで親会社に対する新たな監督規定は設けませんということを申し上げております。  いずれにいたしましても、連結情報というものは開示会社である限り証券会社であろうと一般事業法人であろうと有価証券報告書を提出いただくのが私どもの仕事でありますから、上場企業の連結情報は、銀行保険会社も含めてでございますけれども、すべて私どもの方に提出されるということであります。
  67. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 引き続きましてディスクロージャー、特に不良債権の問題について今までのやりとりも踏まえてお伺いしたいんです。  銀行といいますか、いわゆる金融機関の不良債権が一つの共通基準に基づいて公表されているわけなんですけれども、この公表が今はいわゆる銀行関係を中心にしているわけです。具体的に言いますと、例えば保険会社とか証券会社の部分というのは公表されていないと思うんですけれども、この点についても今後考えていく必要があるんじゃないかと思うんですが、いかがでございますか。
  68. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 証券会社に関しまして御答弁申し上げますと、証券会社は貸し出しが業務ではございません。銀行は貸し付けが業務でございますけれども証券会社は基本的には有価証券の仲介業務でございます。したがいまして、銀行の資産の中心になります貸付債権につきましての不良資産の状況といったものを開示するというのは業態として証券会社には当てはまらない側面がございます。  ただし、御指摘趣旨は恐らく、証券会社が貸付業であるということでなく、証券会社についても、先ほど私が御答弁申しましたように、一般企業並みのディスクロージャーのレベルにとどめず、銀行法二十一条のような他の事業法人を上回るレベルのディスクロージャーというものが何らかの形で必要ではないかという御趣旨にとらせていただきますと、その必要はあるのではなかろうかと私ども感じておりますし、六月の証取審の報告におきましても、銀行法二十一条のような規定を証券会社の中に取り入れて証券会社としてふさわしい情報の開示というものを検討してはどうかという状況になっております。  まだ検討の途中でございますのでどんな内容だということを申し上げる段階でございませんが、あえて例示して申し上げますと、貸付業務はやっておりませんけれども、貸付有価証券という業務証券会社にありますが、そういったものについてそれが不良資産化する可能性があるのであればそれをディスクロージャーすることがあるであろうか、この点はこれからの研究でございますから今それを決めたということでなくお受け取りいただきたいと思いますけれども、例えばそんな項目についてこれから研究しました上で一般事業法人を上回るレベル、銀行ほどはいかなくても証券会社にふさわしい、証券会社独自のディスクロージャーというものを考える必要があるのではなかろうかという問題意識を持っております。
  69. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 保険につきましては、不良債権の開示は行われております。具体的に申しますと、不良債権に関しましては破綻先債権、延滞債権、金利減免等債権、さらに経営支援先に関する債権の額につきまして、それぞれ保険業界の開示基準、具体的には生命保険協会、損害保険協会が定めております開示基準に沿って各社が自主的に開示しておりまして、その開示の内容は都銀等の大手金融機関と同レベルにあると考えております。
  70. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 保険に関してもう一つ。  今、不良債権については公表されているというお話があったんですが、特に保険会社の性格からいいますと、土地や建物とかあるいは保有有価証券とか、いわゆる資産評価の問題というのが大きいと思うんですね。例えば住専のときのケースを見ても、あれは担保物件なんですが、要するに土地の値下がりで結局それが第Ⅳ分類のほとんどを占めていたということを考えますと、その資産評価の部分でのやり方というのは保険会社の場合は特にあるような気がするんですけれども、この点についてはいかがでございますか。
  71. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 先ほど不良債権についての開示について申し上げましたが、例えば有価証券につきましても金融機関と同様の例えば低価法で評価しておりますので、上場有価証券については金融機関と同様のディスクロージャーを行っております。  ただ、そういう相場のない有価証券あるいは土地建物のようなものまで含めて例えば時価評価してディスクロージャーを行うべきであるというような御指摘でございますとなかなかそこまで、今オフバランスについて開示するだけの一般的な企業会計原則もございませんし、その辺につきましては現在まだ行われておらない。ただ、上場有価証券については一般金融機関並みのディスクロージャーが行われているということでございます。
  72. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 続きまして不良債権のディスクロージャーの問題を銀行局長にお伺いしたいんですけれども、今、都市銀行から信組、信金まで順次この不良債権のディスクロージャーを進めておられて、いわゆる共通基準でのディスクロージャーということなんですが、来年三月にようやくすべて開示になる、こういうことだと思うんですけれども、結局これまでの金融機関破綻状況を見ますと、平成八年三月期から始めて二年間かけて順次開示をしていくということなんですが、このやっている間に幾つか破綻が出てきてしまっているということなんですよね。  それで、私が不思議なのは、なぜ二年もかけて開示をしなきゃいけなかったのか。どうもディスクロージャーのテンポが現実の金融機関破綻のテンポに全然追いついていない。だから、ここら辺も今いろいろ社会的に不安心理をあおっている一つの原因になっていると思うんですけれども、なぜ二年もかかるんですか。これはどういうやり方で進めてこられているのか、ちょっとお伺いしたいんです。
  73. 山口公生

    政府委員山口公生君) 現時点でディスクロージャーの充実が必要だということは私も含めまして国民的な意見だろうと思うのでございます。  そのディスクロージャーを少しさかのぼってみますと、比較的最近急速に整備が図られてきたということでございます。そのときに、最初はまず破綻先債権から、それから次に延滞債権も含めて、さらに金利減免等債権も含めてと徐々にやってきておりました。各機関別に見ましても、大きい部長銀、地銀、第二地銀、それから信金、信組、労金、こういうふうに業態が分かれている、それも少しずつずれた形での制度整備になっております。その御指摘だと思います。  しばしば御報告申し上げておりますように、来年の三月期にはこの破綻先債権と延滞債権と金利減免等債権がみんな出そろうということでございます。現実に今どうかということで申し上げますと、ことしの三月期で見ますと、第二地銀まではもう全行開示なんですけれども、信用金庫が四百十ありましてそのうち全部やっているのが百六十、信用組合が三百六十三で全部やっておるのが七十四、労金が四十七のうち四十六という状況でございます。したがって、この部分は来年の三月期には全部そろうということでございます。  じゃ、なぜそういうおくれが生じたかといいますと、当時の考え方といろんな金融制度調査会等の報告書等をめくってみますと、一つは地域の金融機関の場合には営業地域が限定されておってその開示が何か不測の混乱を起こさないかという懸念が、今となってみるとちょっとそういう感覚があったのかなと思うわけですけれども、そういう議論がなされておったことも事実であります。  それから、先ほど申し上げた信用金庫とか信用組合になりますと、協同組織でございます。性格が協同組織の組合員とか会員の相互扶助の非営利法人なのでございます。したがって、そこの点についてのディスクロージャーを早急に求める必要があるのかどうかというような議論もあったように思っております。  ただ、今振り返ってみますと、非営利のそういった法人であれ預金者であることには変わりないのではないかという感じが今となってみるとするわけでございますけれども先生お尋ねの何でばらばらにといいましょうか、時間がかかったのかということにお答えするとすれば、急速にディスクロージャーの機運が盛り上がる中でそういった考え方が根底にあったからではないかというふうに思っておるわけでございます。  じゃ、今そういう考え方があるかといいますと、そういう考え方はもう卒業をしかけているのではないかと。事務的な作業、事務的な負担ということも一部あったかもしれません。そういうふうに認識いたしております。
  74. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今、言外におっしゃったと思うんです。やはりバブル崩壊以降の大きな速い流れにどうも不良債権の公表そのものがついてきていなかったのじゃないか。いろんな配慮があったのかもしれません。  それで、この破綻先、それから延滞、金利減免という基準なんですけれども、これは大蔵省の方でお決めになった基準なんですか。それとも、業界で何か一応話し合ってこの辺の基準が妥当だということで出てきたものなんですか。これが一つです。  それからもう一つは、参議院の調査室でまとめた資料がありますが、この中に、今、局長がお答えになった平成九年三月期の各業態別の不良債権の一覧表が出ています。トータル二十七兆九千億という、これですね。この部分の例えば信用金庫、信用組合というのは、これは全体の数字ではなくて、今お答えになった一部の数字になっているわけですか。  この二つをちょっと確認したいんですが。
  75. 山口公生

    政府委員山口公生君) 二つお尋ねがございました。  最初のお尋ね大蔵省が基準をつくったのかということでございますが、これは金融制度調査会の答申の考え方を受けまして全銀協が統一の開示基準をつくっております。破綻先債権は更生手続、破産、和議等の申し立てがあった債権者に対する貸出金、それから延滞債権は、端的に申し上げますと利子の支払いが六カ月以上延滞している債権……
  76. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 内容はわかっていますから。
  77. 山口公生

    政府委員山口公生君) そういうことで、統一基準は全銀協でつくっております。  それから二つ目は、統計としてはすべてのものを含んでいるということでございまして、私どもが統計としてトレースしておりますので一部欠けるということはないというふうに思っております。
  78. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ですから、今の統計の方の話からいいますと、これは多分大蔵省でいろいろヒアリング等も含めてなさって全体の数字になっていると思うんですよ。ですから、具体的に言うと、それぞれの信用組合なり信用金庫にはこれに見合う数字があるということですね。  ですから、さっき二年かかったという説明の中で、当初の話と今はちょっとそういうことを言っている時代じゃないけれどもという話をされましたけれども、やはりこれは本当はもう少し前倒しにやればできたのじゃないかということを私は申し上げたいわけです。  それからもう一つの問題でいうと、全銀協が一応金制調の答申を受けておつくりになったということなんですが、例えば金制調のディスクロージャー作業部会の中間報告、平成四年に出たものを見ますと、都銀の大手でも延滞債権までしか公表しないという報告書が出ているんです。地域銀行にいくと破綻先の公表だけでいいと。それから協同組織のところは公表をしなくていい、こういう答申が出ていたんですね。これがいろんな変化の中で今のようにディスクロージャーするようになってきたわけです。  どういうことを申し上げたいかといいますと、どうも金制調の議論というのは、私の印象で言いますと、今議論している特にディスクロージャーの問題に関して言いますと、取り組み姿勢がちょっと消極的なんじゃないか、そういう感じがします。特に業界実態とかあるいは業界の意見に余りにも多くの配慮をし過ぎているんじゃないかというふうに思うんです。例えば、さっき御説明された三つのそれぞれの債権のディスクロージャーの基準にしても、後ほどまた議論をしたいと思うんですが、いろいろと言われていますよね、アメリカと比べて非常に緩いとか、こういうふうに指摘されているわけですね。  ですから、こういうことを見ると、もっとマーケットとかあるいは預金者のニーズというものも踏まえた議論をしていかないと、どうも実態は後追い後追いで来ているんじゃないか、私は率直に言ってこう思うんで。これは私は大蔵省としてやはり一つの反省点になるんじゃないかと思うんですが、銀行局長、どうでしょうか。
  79. 山口公生

    政府委員山口公生君) 一昨日でございましたか、牛嶋先生とも大分御議論をさせていただいた中で、どんどん時代は変わり、行政もそれにつれて変えてきているつもりでございますけれども、最近特に急速な変化だと思います。  例えば、破綻一つとってみましても、非常に、こう言っては語弊がありますが、小さい金融機関破綻という記事が出ただけでやはりこれは大変なショックという時代があったわけでございます。それがずっと昔ではなくて、ごく最近の状況でございました。最近は大きな破綻が出て大変御心配をおかけしていますけれども時代の認識としては大分変わってきているというふうに思います。破綻しても預金者はきちっと守られるということがおわかりいただけるようになってきております。  そのときに、ディスクロージャーというものの問題、確かにその業界の事情というものはあったかもしれませんが、それのみならず、全般的に何か悪いものをさらしたときに預金者の方々はどう反応するだろうかということもかなり今となってみれば過敏に考えておったということもあるかもしれません。そういった意味では、時代の先見性に欠けるというおしかりがあればそれは私ども受けざるを得ませんけれども、ただ、かなりディスクロージャーについては今の時点でもその重要性を十分に認識してきておりますし、その点については時代の流れとともに改善が図られつつあるというふうに御理解いただければ幸いでございます。
  80. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ですから、我々今この金融持ち株会社の議論をしているわけですよ。やはり、時代変化の中で新しい制度を取り入れていこうと、これは一つの前向きなアクションなんですよ。しかし、依然として積み残してきている課題一つとしてこういう問題があるわけですね。  だから、さっき税制でちょっとお話し申し上げましたけれども、私は本質はこれも一緒だと思うんですよね。やはり、二〇〇一年にはビッグバンが待っているわけですから、それに向かって新しいものを取り入れていくということになればそれに見合う制度の整備をやはり進めていただきたいと思うんですよね。そうでないとどうもちぐはぐになっていくといいますか、ある部分だけおくれていくと目標そのものがうまくいかない、こういうことになってくることを心配しているわけなんです。  もう一つ不良債権の問題で申し上げますと、これも何回も議論があったんですが、これまでの金融機関破綻を見ますと、破綻前に公表されていた不良債権の金額と実際破綻をしてふたをあけてみると随分違う、こういうことがよく指摘されていますね。現実に私も一通り調べてみましたけれども、本当に一けた以上違うというのがごく普通のケースになっているわけですね。  この落差をどうやって埋めていくかという、実際のディスクロージャーの内容も含めてどうやって埋めていくかという努力をしなければいけないと思うんですけれども銀行局長、どうでしょうか。
  81. 山口公生

    政府委員山口公生君) 破綻前の公表不良債権と破綻した後に調べてみて、その落差が大きかつたという御指摘はしばしば受けております。  ただ、ちょっと気をつけた議論を私どもさせていただきたいのは、当時の公表というのは一体どの部分だったのかと。例えば、破綻だけの公表がなされている時代でありますと、それは非常に小さかったわけでございますね。それで、破綻後に調べてみたということになりますと、回収不能か可能かということでやりますのですべてが入ってくるわけでございます。そこに非常に大きな、倍率でよく申されるんですが、そういう現象がありまして、それはちょっと数字の比較としては留意しなきゃいけない部分だと思います。  しかし、先生おっしゃいますように、公表不良債権と実際破綻した後の回収不能部分、あるいは回収可能だけれども一応は不良債権というふうに分類しなきゃいけないというようなものとは少し数字的に違いがあるということも事実でございます。公表不良債権というのは一つの基準でもって、先ほど六カ月とか公定歩合以下の貸し付けとかいう基準を設けましたので、その基準を設けて出してきた公表不良債権、これがうそをつかれればそれは違いますけれども、うそはついていないという前提で申し上げますと、それはそういう基準に当てはまったものをずっと出しているわけですね。公表不良債権というのは各機関共通でやらなきゃいけない。アメリカもそういうことでやっております。しかも、ディスクローズしても比較可能性がなければいけないわけでございます。そういう観点から基準を設けて出しているものと、現実に破綻した後、もうゴーイングコンサーンとしての存在ではありませんから取引先ももう融資がとまってしまって倒れてしまうということがしばしばある。そうすると、生産価値として見た場合に、本来不良債権としてあるものも将来は取れると思っていたものが取れなくなるという事態もありましょう。そこで改めてその回収が本当に可能か可能でないかということを、そういう側面から見たときに額が違ってくるという事態でございます。  この点につきましては、公表不良債権の方の基準をもう少し広げるといいましょうか、厳しくするといいましょうか、そういう考え方一つあろうと思いますけれども、例えば六カ月とか金利につきましては公定歩合以下とかいう基準がかなりいろいろな議論を踏まえた上で一つの理屈として打ち出されてきておりますので、これが甘いと私は決めつけるわけにはいかないと思うんです。ただ、現実にある程度の回収不能というものとの比較から言うと、ちょっとそれだけで十分なのかなという議論が出てくることも私はよく理解しますし、その辺は十分に検討をしていかなきゃいけない面だろうというふうに思っている次第でございます。
  82. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 今の銀行局長のお答えで二つお伺いしたいと思うんです。一つは、今のディスクロージャーというのはどこにポイント、どこに焦点を置いているかといいますと、いずれ将来、二〇〇一年でしたか、ペイオフをやるわけですね、自己責任でやっていただきますよと、ペイオフをやるわけですよ、ですから預金者自己責任を負えるような本当にディスクロージャーになっているかどうかというのが一番の判断ポイントだと思うんですよ。だから、今、局長の御答弁の中で、いろんな議論があって基準として決めたことだから一概にというようなお話がありましたけれども、私が一番基準にしなきゃいけないことは、三年か四年後には自己責任ですよということで預金者に問わなければいけない。ですから、その間に預金者がきちっと判断できる内容をディスクローズしなきゃいけないんですよ。だけど、今のこれを見ると、とてもそんなんじゃないじゃないですか。この制度、もうあと三年ぐらいたてばそうなっていくわけですからとんでもないここにはギャップがあるんじゃないかと思いますよ。  大臣、どうですか。私は、そういう判断でディスクロージャーというのはどんどんレベルを上げていかないととてもじゃないですけれどもビッグバンだとか自己責任だとかおっしゃっていますけれども、そんなもの国民に問えないと思いますよ。これ、三年間で相当な努力をしないとだめですよ。大臣、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  83. 山口公生

    政府委員山口公生君) ディスクロージャーをどんどん進めていくべきである、そうでないとペイオフの時代に入れないということは私もそう思います。したがいまして、ディスクロージャーについては前向きにやっていく必要がありますが、一方で各金融機関は早期是正措置、自己査定を今やっています。これは回収度合いを自己査定しまして、それで公認会計士の監査も受けて償却すべきものは償却をするということで自己資本比率をはじくわけです。この自己資本比率はディスクローズされてまいりますから、預金者の方々はそれで判断をするということになるわけでございます。  それと別にアメリカでもとっておりますような統一基準に基づく相互に比較が可能な不良債権の額のディスクローズ、例えば延滞がどれくらい、金利減免がどれくらい、アメリカの場合はちょっと違う表現をしておりますけれども、そういう形のディスクローズというのも別途さらに充実していくのが課題ではないかというふうに思っております。
  84. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 大臣にお伺いする前にもう一つ、ちょっと横道にそれるんですけれども証券局長にちょっと確認しておきたいことがあるんです。  今の銀行局長の、銀行の不良債権と破綻をした場合のギャップの話が出ていましたが、山一ケースですね、これは大蔵省山一のいわゆる報告財務諸表から債務超過に陥っていないという御判断をされてこの間の処理を発表されましたね。日銀総裁がいらっしゃっていますけれども、それに基づいて日銀が特別融資をやっているというのが現状ですよね。そうすると、証券会社銀行は違うとはいえ、要するに通常でゴーイングコンサーンでやっているときの資産の状況破綻をしてもうゴーイングコンサーンじゃなくなった、これで清算だというときのギャップが当然出てくると。  もう数字を申し上げるまでもなく、山一の中間報告の修正を含めますと、今、帳簿上残っているのは大体一千億ぐらいの自己資本ですよね。ですから、今までのケースから見てこれはもう多分債務超過になっている可能性の方が高いんじゃないかと思うんですけれども、どうなんですかね。
  85. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 山一お尋ねの前に先ほど銀行局長が不良債権でお答えしている部分につきまして私の立場で補足をさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。  すなわち、お尋ね銀行あるいはゼネコンが破綻を来したときに不良資産が急増したではないかと言われるのは、銀行法二十一条に基づく金利減免債権の額がふえたという話ではなくて、企業会計として貸付金に毀損のおそれがあるならば引当金を計上しなさいという一般ルール、その一般的なルールに従って処理する有価証券報告書、つまり銀行法二十一条で加重されているわけではない、証取法に基づく開示書類の引き当ての額が一挙に急増したということでございますからフィールドとしてはもう私の領域かと存じます。  その点につきまして前回のこの委員会でも若干述べさせていただきましたけれども、その問題はどこでよって来るかということになりますと、例えば貸付金、債務保証につきまして、ノンバンクあるいはゼネコンでいえば子会社がゴーイングコンサーンとしてやっている場合には一応それなりの債権として引き当てをせずに対応し、ある日そのノンバンクや子会社会社更生法の適用を申請したということになりますとその基準に従って、その客観的事実に従って引き当てを計上するという、これが税務会計上の考え方であると申し上げました。  そういった企業会計の慣行にのっとって処理してきたがために途中段階で徐々に悪くなっていると、その徐々に悪くなっているのに見合った引き当てというのが十分に段階的に積まれてきていなかったのではないかという問題意識を先日申し上げたわけでございます。  その点につきましては、今、公認会計士協会におきまして、形式的にはまだ会社更生法に至っていないが実質的にノンバンクや子会社内容が悪いのであればそれにふさわしい会計処理をできるようにする、そういった会計処理のあり方はどうしたらいいかということを御検討いただいていると。その御検討いただいている手法としては、私どもの検査部が貸出金の査定をする手法などを念頭に置きながら、銀行局長が申しました自己査定という考え方でそれを銀行に取り込んでいって、突然会社更生法が飛んできたから急に十倍になったという事態を防ぐような会計処理ができないかと。債務保証についても同じでございますけれども、徐々に債務保証が求められる可能性が高まってくるに従って順次その引き当てを計上しておくという有価証券報告書上の会計処理を研究していただく必要があるという認識のもとに貸出金ということを今申し上げておるわけでございます。したがいまして、それにつきましてはその方向でこれから投資家の方々に今まで疑念を感じておられたものの改善の方にできるだけ向けてまいりたいと思っております。  山一証券につきましてのお尋ねでございますけれども銀行を例にとって現在の財務諸表からさらに資産内容が悪化するのではないかというお尋ねでございますけれども、これは先ほど銀行証券の違いで御説明しましたように、証券会社は貸出金というものを持っておりませんので、その貸出金がだんだんと不良資産化していくという意味銀行の例で想定なさるような形とは証券会社の場合にはかなり違ってございます。証券会社の場合には、保有しておる資産はほとんどが有価証券、国債とか株式とかいう形で持っておりますので、それらにつきましては十一月二十五日時点の臨時報告書が提出される場合に、あの時点での時価に評価がえをいたしておりますから、言ってみれば貸出金はどうやって時価を見るかというのが問題なわけでありますけれども、有価証券の場合には時価というのが客観的にございますので、それに従った有価証券報告書が出されておるという意味では一応現時点での実際の実力というものが有価証券報告書の訂正の中で出てきておるということが申し上げられると思います。
  86. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 ということは、債務超過にはならないと、こういう理解でいいわけですね。
  87. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 債務超過にならないと断言できません。その事情は幾つかございますけれども、現時点におきましてもこの会社は一切の収入がなくしかしすべての労働者を解雇し終わったわけではございません。賃金を払いながら、今清算の過程に入っておりますから、これからはコストだけがかかる会社としてしばらく存続いたします。  それから、有価証券の評価などは十一月二十五日の時点の時価で評価したと申し上げましたけれども、これはその時点の評価ということでございまして、最終的にこれは清算の過程で全部処分して現金化しなければいけませんので、その処分のときに値上がりしますものやら、さらに下がりますものやら、不確定要素はございます。したがいまして、債務超過になる可能性を想定しながら答弁しておるのかといったらそうではございませんけれども、そういった今後の経済事象によって変動ずる要素があるということは率直に申し上げておくべきだと思いますのでそのように御答弁申し上げます。
  88. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 だから、ちょっとこれまでの感じと違うんですね。だから、正確に言うと十一月二十五日の時点では債務超過じゃなかった。今の答弁は、しかしこれから自主廃業に至る過程の中でいろんなことがあり得るから債務超過にならないとは断言できないと、こういうことでよろしいんですか。
  89. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 十一月二十四日の大蔵 大臣の談話は正確に発表していただいておりますけれども、「現在、山一証券は債務超過の状況にはないと認識している」というのが一点でございます。したがいまして、その延長線上で顧客資産保護は万全でございますということは申し上げましたけれども、債務超過でないということを前提に、「本件について寄託証券補償基金の発動は現在予定されていないが、本件の最終処理も含め、証券会社破綻処理のあり方に関しては、寄託証券補償基金制度法制化、同基金の財務基盤の充実、機能の強化等を図り、十分の処理体制を整備すべく適切に対処いたしたい。」という談話になっているわけでございます。
  90. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 日銀総裁、ということなんですけれども、もうたびたび日銀特融については議論されていますが、結局は今お話のあった寄託証券補償基金法制化一つの歯どめとして今回の特融をお考えになったという理解になるんですけれども、この点はどうでしょうか。
  91. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私ども日銀が特融を実施いたしますときには、この中の原則の一つとしまして、これが中央銀行としての財務の健全性を損なわないように考えていくということがございます。この点がございますので特融を行いますときに当然この回収の可能性ということは検証をいたすわけでございますけれども山一証券の場合は、ただいまの御指摘がございますように、現状におきましては債務超過の状況ではないと。ないと申しますことは将来資産の処分によって借入金の返済財源が出てくるということでございますが、たた私どもも、それだけではございませんので、仮に万が一、今後の清算の過程の中で山一が債務超過の状態に落ち込むとした場合にこの返済についてはどうかということを当然検討いたすわけでございます。  私どもはその際、ただいまお話がありましたように、政府におきまして本件の最終処理も含めて財源の確保のためのいろいろな方策検討している、そういった選択肢の中の一つに例えば寄託証歩補償基金の財務基盤の充実や機能の強化等を図るということも含めて検討されているということでございます。  私どもは、そういった政府検討努力というものが一方でございますので、そうした中で特融の返済財源も確保されるということを強く期待いたしましてこの特融の実施を行ったわけでございます。
  92. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 もう一つお伺いしておきたいんですけれども、今回のようなまだできていない制度といいますか、基本的には寄附でやっているものを法制化しよう、あるいは充実するということですね、そういうものを前提にしてこういう日銀の融資というのを今までおやりになったことはございますか。
  93. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 今、これに匹敵するほかの事例ということでございますとにわかに思いつかないのでございますけれども、一般の銀行の場合を考えてみましても、銀行自体におきまして通常の自分銀行の資産の中から返済することが可能というものだけを対象にしているわけではないのでございます。  銀行の場合におきましては、例えば預金保険機構からの資金支援を受けますとか、あるいは銀行の営業資産を他の受け皿銀行に譲渡いたしまして、その譲渡の収入等を引き当てにして回収いたしますとか、そういう点では今後の実行いかんによるといういろいろの条件も勘案いたしまして、総合的にまずここまでの見通しが立っていれば通常回収には懸念がないという判断をしてまいったということは他にもいろいろと事例がございます。
  94. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 やはり、中央銀行健全性の問題ですから。今、けさの議論にもちょっとありましたが、公的資金とか公的支援とか含めていろいろ議論されていますね。私はぜひその中で議論していただきたい。我々もこれから議論しなきゃいかぬと思っていることは、こういう金融機関破綻処理あるいはこういうシステムの問題を考えるときに、やはり日銀の役割の限界といいますか、日銀の役割というのはどういう、特融だけじゃないかもしれませんが、そういうものを含めて改めて再整理をして、それで全体的な仕組みの中にそういうものをビルトインしていかないと、私はもうそういう状況まで来ていると思うんですよね。  大蔵大臣にもぜひそういう視点での御検討もお願いしたいと思うんですが、日銀総裁、この点についてどうでしょうか。
  95. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもは改正日銀法の施行を来年の四月に控えております。この法律が全面的に改正になる、日銀のあり方もこれに伴って変えていく、この時代にふさわしい、充実した中央銀行として新しくどういう日銀の機能をつくっていくかということを現状におきましては行内におきましても、また一般の方々からの御意見もいろいろと伺いながら準備を進めているところでございます。  その中で、破綻処理に関連いたしましての日銀の持っておりますいろいろの機能、例えば破綻処理の防止に必要な考査その他の機能もございますし、一たん破綻が起こりました際のこれに対しますいろいろの支援なりその他の措置もあると思いますけれども、これらの点につきましても内部的にもこれから見直しを行ってまいりたいと思っております。  でございますから、政府が他の観点から、すなわち破綻処理全体をどのようにして今後安定的に、また効果的に進めていくべきかという観点からの御検討をされ、その中で日銀の役割についてもそういう目でいろいろ考えられるということでございましたらば、それは私どもから見ますというと時宜を得たことであるというふうに考えます。
  96. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 大蔵大臣、いかがですか。
  97. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 今、総裁が言われましたとおり、四月一日から日本銀行法の改正がスタートを切るわけであります。開かれた独立性ということで、総裁が言われましたとおりであろうかと思います。
  98. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 もう時間がございませんので最後に一点、持ち株会社制度との関係で確認をしておきたいんです。  日銀総裁、今、日銀考査をやっていますね。いつもおっしゃられますように、これは当然事業をしている取引相手としての契約に基づいて日銀考査というのはやられているわけですが、持ち株会社制度になりますと、持ち株会社自体とは契約しているわけじゃありませんから、例えば大蔵検査の場合は持ち株会社を含めて検査の対象になるということですから今までの検査と考査の関係が少し変わってくる。  いろいろ聞いてみますと、もちろんこれは偶然かどうかは別にしまして、やはり大蔵検査と日銀考査というのは、ちょうど時期的にも参議院の改選みたいなもので、裏表じゃないですが、そういう感じでうまく機能していたように思うんですけれども、例えばそういうものも含めて今度は少し変わってくるんじゃないかと思うんです。この点について、これからのありようについてちょっと確認をさせていただきたいと思います。
  99. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 一般的に申しますと、新日銀法におきまして考査は日銀が金融機関等に対するいろいろの一時貸し付け等の取引を行うこと、また信用秩序の維持を行うこと、これらの業務等に関してその業務を適切に行ってまいりますために取引金融機関等との間で契約によって行う立入検査であるということでございますので、私どもとしましてはこういった新しい法律の枠組みの中で従来にも増して適切な考査を行ってまいりたいと思いますし、また、政府の行います検査との関係で申しますというと、その両方が相補い合って効果を相乗的に高めていくようなやり方というものを考えるべきではないか、もちろんその際に相手先の負担が余り重過ぎるということはぐあいが悪いことでございますからその点は配慮するというのが基本の考えでございます。  ただいまの御指摘ございました持ち株会社につきましては、これは銀行子会社経営支配を目的とした会社でございますから、この持ち株会社とかあるいはほかの子会社経営状況銀行子会社自体に影響を及ぼすという可能性はあると考えます。  私どもは、今後新日銀法に基づいて日銀の業務を適切に行ってまいりますためには持ち株会社グループの経営状況あるいは持ち株会社による子会社経営管理方針というものを把握しておくことが必要ではないか、もし必要であれば新しい法律の枠組みの中でどのような手続や方法でこれを行ってまいることが適当かというような点につきまして今後よく検討してまいりたいと思っております。
  100. 直嶋正行

    ○直嶋正行君 終わります。
  101. 石川弘

    委員長石川弘君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十分休憩      ―――――・―――――    午後一時四十四分開会
  102. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  持株会社設立等禁止解除に伴う金融関係法律整備等に関する法律案及び銀行持株会社創設のための銀行等に係る合併手続特例等に関する法律案を一括して議題とし、休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  103. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 大臣、本当に御苦労さまでございます。恐らく息せき切っていらっしゃいますでしょうから、最初は法務省をお呼びしておりますので商法関連の方を先にやらせていただきたいと思いますので、ゆっくり息を整えていただきたいと思います。  実は、この持ち株会社に伴って、とりあえず銀行だけいわゆる抜け殻方式にかわって三角合併方式という簡便な方法が認められることになるわけですね。そうなると、同じ金融の中でも証券会社があり保険会社があり、また広く一般事業会社というのは従来の商法の規定どおり今のところ抜け殻方式によらざるを得ない。そうすると、実際の設立に当たっては非常に煩雑な手続を伴うということが指摘をされているわけであります。  その意味で法務省にお伺いしたいわけでありますが、本来は独禁法の施行に合わせて銀行に限らず簡便な方法で持ち株会社が設立できるように商法の改正を行うべきだ、こういう声が強いんですが、その点について法務省の見解をお伺いします。
  104. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) お答えを申し上げます。  まず最初に、商法の観点から持ち株会社の設立の方法につきまして御説明申し上げたいと思います。  まず、現行法のもとにおきましては一応三つの手続があるというふうに言われております。まず一つが親会社の営業を現物出資いたしまして子会社を設立するという方法、それから子会社を設立してこれに親会社の営業を譲渡するという方法、それから三番目には子会社が親会社の営業の現物出資を受けて新株を発行するという方法、これらの手続によりまして実際上は持ち株会社は設立ができますけれども、ただ銀行の場合は、現行の方式によりますと、御承知のとおり、銀行は非常に多数の債権債務関係がございます。したがいまして、その例外的な措置といたしまして当委員会で今御審議銀行持ち株会社の特例法案というものが提案されているというふうに聞いております。  そこで、先生お尋ねの一般の事業会社につきまして持ち株会社の設立をどうするかということでございますが、これは私どもといたしましても極めて重要な問題であるというふうに考えております。  ただ、御理解をいただきたいわけでございますけれども、商法は株式会社すべてを対象といたしております。株式会社の数が現在約百二十万社ございまして、こういうふうに多数の会社につきまして持ち株会社というものを導入いたしますと相当大きな影響があるのではないかと。それから、持ち株会社の設立に伴いまして、株主の権利であるとか地位であるとか、あるいは会社組織のあり方、さらには会社債権者の保護のあり方、そういうものにつきましても大きな影響が出てくるのではないかというふうに考えております。  したがいまして、商法上、一般事業会社のために持ち株会社を設立するということのための新しい方法をつくるということになりますと、持ち株会社解禁ということだけを念頭に置くのではなくして、すべての株式会社がどのように具体的な持ち株会社についてのニーズを感じているのか、あるいは特定の先生指摘のような金融関係会社のみにそういうニーズがあるのかどうか、そういう点、それからまた株主あるいは債権者等の会社をめぐる利害関係者の利益をどういうふうに調整していくかというふうな問題がございますので幅広い角度から検討してまいりたいと思っております。  いずれにしても、非常に極めて重要な課題でございますので今後具体的な検討をしていきたいというふうに考えております。
  105. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 私も国会へ来て五年目でだんだんわかってきたんですけれども、商法、民法、刑法、これらの基本法の審議というのが何かえらく時間がかかっているような気がするんですよね。  そういう意味で、時代変化が非常に速いときにゆっくりとほかの法律との関係もあると、もちろんそうなんでしょうけれども、少しテンポを速めて、これらの国際的に動いている大きな課題でございますので、私はできれば二、三年後ぐらいに商法改正を行って持ち株会社を設立といったようなことを考えるべきじゃないかというふうに思うんです。これは国際競争力という観点からすると、私はやはり多くの会社ができるだけ設立しやすい制度にする必要があるんじゃないかというふうに考えるわけです。  銀行法の今回の改正案で規制されていますいわゆる三角合併方式というのは、合併の際の株主総会の決議要件が発行済み株式総数の三分の二以上の多数、こういうふうにされているわけですね。このような高い決議要件だと。銀行の場合には安定株主というのが非常に多いと言われているんですね。これはどのぐらいが安定株主か、何が安定株主かというのはもちろんいろいろあるのでありましょうが、こういう高い決議要件でやるということはほかの大多数の会社が非常に持ち株会社をつくりにくいんじゃないかと。その意味で、今これから検討されるとおっしゃっていましたけれども、商法改正に当たっては多くの会社が利用できるように銀行法改正案というものを先例としないで決議要件の緩和が必要だというふうに考えるんですが、この点はどうでございましょうか。
  106. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) お答え申し上げます。  まず最初に、委員の方から民法、商法等の基本法の改正について速やかに審議を進めるべきではないかというふうな御指摘がございましたが、実は商法の方はかなり頻繁に改正しておりまして、ことしも通常国会で一回、合併の特例法といいましょうか、特則をつくりました。それから、この臨時国会におきまして総会屋対策の商法改正ということで鋭意やっております。  そこで、今御指摘の点でございますけれども、独禁法、それから今回の銀行持ち株会社の特例法案、これらの法律の改正の趣旨にかんがみますと、委員指摘のとおり、今後とも一般の事業持ち株会社につきましては持ち株会社の株主となる者の権利にも十分に配慮しながらできるだけ利用しやすい制度となるよう検討していきたいというふうに考えております。  具体的には決議要件の点でございますが、これは実際は一般事業持ち株会社の場合にどういうふうな設立の方法を認めるか等々から決まってくる問題ではないかなというふうに考えますので、その際には御指摘の点を踏まえて検討していきたいというふうに思います。
  107. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そこで、今後の商法の改正で、いわゆる抜け殻方式、それから今回の銀行の三角合併方式、こういったものよりも設立の手続が非常に簡便だと言われている株式交換方式、こういったものの導入を検討する必要があるというふうに思うんですけれども、そのような議論は今されているんでしょうか。
  108. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) 委員指摘のとおり、持ち株会社の設立の方法でございますが、一応三つあるというふうに言われております。一つは抜け殻方式、それから三角合併方式、これは現在の銀行持ち株会社の特例法案が採用している方法でございます。次に、今御指摘株式交換方式といいましょうか、そういうふうな方法がございます。  若干これを御説明させていただきますと、株式交換方式といいますのは、既存の会社持ち株会社を設立し、持ち株会社の新株と既存の会社の株主の所有する全株式とを交換するという制度でございますけれども、この方法につきましてはいささかちょっと問題点がございます。ちょっと申し上げますと、強制的に既存の会社の株主の所有する株式持ち株会社の新株とを交換させるということから、株主の権利についての一定の配慮が必要ではないかという点が一つ。それから、この方式は外国ではアメリカの一部の州で採用されている方法でございまして、実際上、私ども簡単に調べたところでは余り利用されておらないというふうな指摘もございますので、このような問題点を踏まえまして、委員指摘のとおり、株式交換制度というのは一つございますので、そういう手法も含めて幅広い観点から検討していきたいというふうに考えております。
  109. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 確かに強制的にわたると個々の株主、特に少数株主なんか私は反対だという人が出ると思うんですね。そういう人たちに対しては株式買い取り請求権を与えるというようなことで解決できるんじゃないかというふうに私は思うんです。  そういう意味で、商法改正の際の決議要件というのは、現行商法の抜け殻方式の決議要件である発行済み株式の総数の過半数を所有する株主が出席をして、その三分の二以上の多数ということでいいと思うんですが、この点はどのようにお考えになっていますか。
  110. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) 具体的な決議要件の定め方でございますが、委員指摘の点を十分頭に入れて検討してまいりたいというふうに思います。
  111. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。  法務省の審議官の方にこういう形で答えてもらえるのかどうなのかわからないんですが、持ち株会社ができるということはアメリカなどでやっているMアンドA、それが非常にやりやすくなってくるわけですね。そうしますと、従来安定株主をつくって日本ではなかなかMアンドAといったようなことが広がらないといいますか非常に数が少なかったと思うのでありますが、アメリカの戦略などをずっと見てみますと、たしか二年前でしょうか、アメリカの議会の報告書などを読んでみますと、要するに日本の資本市場というものに対してMアンドAがちゃんとやれるようなものに変えなきゃだめなんだと。だから私は、金融ビッグバンというものが目指している問題というのは最終的にはそこまで、アメリカと同じようにドライに会社ごと丸ごと売ったり買ったり、そのことによってもうけていくという、こういうことが実は、今、我々は金融ビッグバンを議論しているけれども、その延長線上に出てきているとすると、いわゆるコーポレートガバナンスというか、企業というのは一体だれのものなんだ、どのように統治していったらいいのだろうかと。  この点について法務省では、この間、株式代表訴訟だとかさまざまな、あるいは社外監査役の強化とかいろいろ工夫はされてきているんだろうと思うんですが、こういう事態を前にしてくると、ちょっと待ってくれと、日本の労使関係が非常に安定しているとか、ある意味では雇用の問題とか、そういうものを考えたときに、このコーポレートガバナンスのところにまでかなり大胆に大転換をするような、そういうことに対して今法務省で会社法を中心にして考えられている検討状況というのがあるのかどうなのか、この点を少しお聞きしてみたいと思うわけであります。  と同時に、これは政治家としての三塚大蔵大臣、もしくは政務次官、せっかくお座りになっておりますので、これらの点について、これはこれからの金融ビッグバンが最終的に日本の社会や構造をどう変えていくのかという点で大変大きい問題がありますので、お二人の政治家おられますので何か御意見あればということで、先に法務省の方ではこれはどのように検討されているのかということと、あと政治家の皆さんでもし御意見があればお聞きしておきたいと思います。
  112. 吉戒修一

    説明員吉戒修一君) 御指摘のコーポレートガバナンスでございますが、これは非常に広い意味がございまして、狭い意味では会社はだれのものかというような一つの問題意識がございます。それから二番目には、企業を健全に運営するためには会社のシステムはどういうふうにあるべきかというふうな意味。それから三番目には、企業が効率よく運営されるためには株主あるいは経営陣等の利害関係者との間でどのように権限とか責任を分担し、あるいは企業が生み出す付加価値を配分していけばよいかというふうな意味で使われております。  御指摘のコーポレートガバナンスの観点でございますが、実は総会屋対策の罰則強化法の御審議の中でもいろいろ御指摘がございまして、私どもといたしましても常に会社の運営が健全にあるべきだと、その観点からどういうふうな制度をつくっていくかということを常に考えております。  当面は、監査制度等の御指摘がございましたので、こういう問題につきましては今後検討していきたいというふうに思っております。
  113. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 世界の潮流、時代の潮流なんだと思うんですが、そういう中で展望をいたしますと、委員指摘のようなことも流れとして出てくるのではないだろうかと。関心を持って今後も見詰めてまいります。
  114. 塩崎恭久

    政府委員(塩崎恭久君) 峰崎委員のコーポレートガバナンスのお話でございますけれども、第一勧銀あるいは野村の問題以来、例えば私ども自由民主党の中でも商法に関する小委員会というのをつくりまして、このコーポレートガバナンスいかにあるべきかということで既にもう試案を出して、そして例えば経団連であるとか連合であるとか、それから公認会計士協会あるいは監査役協会、それから法制審の方にも提出をして、今ちょうど意見を聴取しているところでございます。  今六つの改革ということでいろいろとやっておりますけれども、三権分立というものが日本制度としてあっても本当に機能してきたのかということとともに、民間部門においても例えば株主総会、それから取締役会、そして執行部がいて、さらに監査役という制度がありながら今までのような一連の総会屋事件を含めたいろいろな問題が起きてくるということは、恐らくそれぞれの役割責任分担も余り明確ではなく、チェック・アンド・バランスの機能がよく働いていないということではないかと思いますので、私どもとしても政治家として、公的部門のみならず民間の会社を含めたコーポレートガバナンスについてはこれから我々政治家として取り組んでいかなきゃいけないということで鋭意進めているところでございます。
  115. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ありがとうございました。我々もぜひコーポレートガバナンスのあり方についてさらに勉強していきたいと思います。  そこで、金融持ち株会社制度というものがこうして今法制化されようとしているわけですが、この間の歴史をずっとたどってみると、金融制度調査会というところで、一九八四年のいわゆる円・ドル委員会以降、金融自由化に向けて最初は子会社参入方式、いわゆる業態別子会社参入方式ということで進んできたわけでありますが、そのときの議論を聞いてみると、業態別の子会社参入方式を設けたのは金融持ち株会社というものが設けられないからだろうということを前提に、先ほど午前中のどなたかの質問にありましたように、金融制度調査会というのはどうも何か及び腰のものが多いというふうに言われていますが、この点もそうなんだろうと思うんです。もっとも、純粋持ち株会社禁止していた独禁法の問題がありましたからなかなかそこには踏み込めなかったんだろうと思うんです。  しかし、いずれにせよそういう流れになってくると、子会社参入方式で設立をしてきたこと、あるいはそういう動きというのと今度持ち株会社を設けますよと、いいですよとなったときに、従来の方式は中止をするということじゃなくて、それも併存しながら好きなように選んでくださいと、こういうふうになっていくんでしょうか。この点、いかがでございましょうか。
  116. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、委員の御指摘のとおり、制度改革の中で業態別子会社方式を採用しておりました。当時、この持ち株制度も議論はされておりましたが、独禁法で持ち株会社自体が禁止されておりましたので実現には至らなかったということでございます。このたび、金融持ち株会社解禁をこの国会でお認めいただきますと、両者が併存して存在し得るということになるわけでございます。  これは一長一短あるんじゃないかと思います。子会社は比較的簡単につくれます。一方、持ち株会社の方は、つくるのは大変ですけれども、今度は経営管理あるいはリスク管理等、また遮断の問題等が容易になるというふうなメリットもございます。それぞれ長所を生かしながら、企業銀行証券保険等が選択するということだろうと思います。例えばすべての銀行持ち株会社をつくるというのであればどちらかという選択肢もあるかもしれません。これは併存して構わないことだと思いますし、現にアメリカでも両方が併存しております。  したがって、併存しているということを前提に各金融機関はよりよい経営形態を選んでもらいたいというふうに思っております。
  117. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ということは、各金融機関が持ち株方式をとるか子会社方式をとるか、どちらでもよろしゅうございますと、こういうことでこのまま行くということですね。わかりました。  次に、株式会社ではないいわゆる相互会社、これが生保あるいは損保というところにあるわけでありますけれども、この扱いについては、その会社の下に持ち株会社を設けて、その下にホールディングカンパニーを設けて、その下にまたさまざまな金融機関を並列させるというやり方をとるやに聞いておるのでありますが、これはそのとおりなんでしょうか。その場合の相互会社に対するコーポレートガバナンスといいますか、これはまたどういうふうに監視していくんだろうかという、このあたりはどのように考えておられるでしょうか。
  118. 福田誠

    政府委員(福田誠君) 御指摘のとおりでございまして、相互会社自身がみずから持ち株会社になることにつきましては、相互会社は株主がおりませんで契約者が社員だという構成でございますので、そのような相互会社の基本的な性質にかんがみると問題があるものと考えられます。  他方、相互会社自分持ち株会社になるのでなく、子会社として自分の下に持ち株会社を保有する、いわゆる川下持ち株会社形態につきましては、本年の六月の保険審議会の報告におきましても、組織形態の選択肢の多様化の観点から認めることが適当であるとされております。  そういう報告等を踏まえまして、川下持ち株会社につきましては現在保険会社子会社に係る制度の見直しをしております。ビッグバンに備えまして保険会社子会社業務範囲についても拡大の方向で見直しておりまして、その子会社に係る制度の見直しの中で川下持ち株会社の導入を図る方向検討しております。法案ができました暁には提出をさせていただきたいと存じます。  そして、そのような場合の親、親といいますか、親たる相互会社のコーポレートガバナンスにつきましては、先ほど来問題になっておりますように、やはり契約者保護という観点からトータルに監督できるように規定を盛り込みたいというふうに考えております。
  119. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 今度は税の方に移りたいと思います。  午前中の直嶋委員質問で連結納税制度の問題があったわけですが、ずっと一部始終聞いておりました。この問題が出て、なおかつ研究課題だというふうに先ほど薄井局長の方からおっしゃられたんですが、いつごろをめどにこの連結納税制度についての結論をお出しになる予定なんでしょうか。
  120. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) もともと持ち株会社との関係とは別に連結納税制度についての問題意識がございまして、一昨年来、法人課税の小委員会で議論をしてきております。その過程といいますか、並行していわゆる純粋持ち株会社の話が現実的になり、また今日金融持ち株会社の問題がこのように議論されている状況にあります。  したがいまして、この問題については持ち株会社の問題との直接な関係とは別に議論を続けてきておりますので、めどということを日時で示すわけにはいきませんけれども日本企業経営実態等について分析をさせていただいておりますので、その内容等との関係でこれからも進めていくということになろうかと思います。問題点は大体出てきているように思っております。
  121. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 連結納税制度の問題について、この制度が入らないともういわゆる純粋持ち株会社を設けるメリットというのはほとんどないんじゃないかと、こういうふうによく企業人の方々から言われるんですね。そうすると、これは税の世界で公平性とか中立性とか、そういう観点でずっと熱心に取り組まれていることはよく存じているわけでありますが、そのことといわゆる企業競争といいますか、国際的な企業競争というものとのはざまの中で我々は一体どういうふうにとらえたらいいんだろうかと。  つまり、日本経済がこういうグローバライゼーションの中で本当に国際競争力のある企業をつくっていかなきゃいけない、これは雇用のことや将来の福祉のことを考えたって当然のことであろうと。そのことといわゆる税の世界における公平性という問題を考えたときに、どうも大蔵省に対する批判として、歳入ということを余りにも中心的に考えていわゆる企業の経済発展というものを阻害をしている面が出てきているんじゃないかと、こういう指摘をよく受けるんです。この点、局長はどのようにお考えになっているのか、主税局の立場があるでしょうからぜひ。
  122. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 御指摘のように、税制は何のためにあるかということと、それからそれを御負担いだだいている企業あるいは個人、いろいろな分野にいらっしゃるということからすると、公平、中立、簡素ということを基本に考えざるを得ないし、また税収が必要なだけ確保できるということが税の基本であるという足元を固めた上で議論せざるを得ない立場にはあります。  ただ、先ほど来私申し上げているように、経済なり社会は変わっていくわけですから、それに対して税の存在がさおを差していくということにはなってはいけないと思っております。したがって、委員指摘のように、いかにバランスをとりつついくかということかと思います。  一方で、税金が安ければ安いほどいいということから税金の安い例をたくさん持ってきて、これと同じでないとグローバルスタンダードではないということには用心深く対応していかないといけないと思っております。
  123. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 年度税制改正、さまざまな議論が今出てきております。私も二年前までは年度税制改正などにも従事しておりましたので大変その先行きを心配していることがございます。現段階における大蔵省としての見解を何点かお聞きしてみたいと思うんですが、最初に金融税制の問題についてお聞きしたいと思うんです。  きょうあたりも有取税の問題が大変議論になっております。我が党も有取税について、これは現段階においてこの廃止ということについてやぶさかでないと。ただし、それは有取税そのものができた歴史的な経過があると私は思うんですね。それはいわゆるシャウプ以来続いていた総合課税の原則のところから逸脱をし始めてきて、そして株式譲渡益課税と言われているものとの対比で絶えずこの有取税が問題になってきたのではないかと。  そういう観点からすれば、私はこの有取税の問題というのはある意味では株式のキャピタルゲイン課税というものを公正にかけられるということとセットで議論されないと、やはりこれは将来的に株式に投資をするのか、あるいは銀行等の預貯金にやるのか、あるいは土地に投資するのかといういわゆる資産選択のポートフォリオにまで影響してくるのではないかという気がするんですが、このあたりは大蔵省として今どのように考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
  124. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 証券関係税制についての御質問でございます。  戦後のこの分野での税制改正の沿革というものがございまして、それを無視して議論は進められないわけですが、私ども政府税制調査会あるいは金融課税小委員会で議論を重ねてもらってきておりまして、昨日その小委員会の中間報告が出ておるわけですが、それぞれに考え方があるというのが正直なところでございます。必ずしも株式譲渡益課税の代替として有価証券取引税があるということで一致しているわけではなくて、両税は別の税であるというのが昨日までの議論のむしろ主流にあるように思います。  ただし、現実に株式をめぐる課税という意味では関係があるわけですから、両者の関係を無視して一方だけを議論するわけにいかない、こういう関係にあるのではないかと思っております。
  125. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 その関連で、今、法人税の減税問題も随分議論になっているんですが、結局、課税ベースをどんどん狭めて、その分法人税の税率を高めてきた、そういう歴史だったと思うんですね。ですから、法人税の税率を下げていくというときにはやはりその課税ベースは当然広げていくということが重要なんだと思うんです。  その際に私どもが議論しなきゃいけないポイントは、税だけではなくて、社会保険料とかあるいは福利厚生費とか、そういう企業の負担というものがトータルとしてどのぐらいなのか、この点の国際比較というものをきちんとやるべきではないかというふうに考えているんです。どうも議論は表面的ないわゆる実効税率の四九・九八%が高い、こういうところに集中しているような気がするんですが、このあたりはどのようにお考えになっているんでしょうか。
  126. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 確かに本来的にはいろいろな形での負担というのがあって、特に社会保険料の世界と税の世界というのは、国の制度として両方があるわけですから、この両者を考えるという視点は大変重要な視点だと思っております。そのほかにも日本企業経営の特殊性とかいろいろなものが関連しているように思います。  そういう意味で、今、税について国際化が求められているように、先ほどの御議論のように、コーポレートガバナンスといいますか、そういったあたりでも日本的なものがだんだんなくなっていくという中で我々は税を議論していかなければいけないと思っておりまして、委員指摘のように、本来は計量的にすべてが計算できて対比できるなら一番いいと思いますが、定性的にはそういう意識でおります。  一方、そういう意識の上で税に関して言えば、税率を下げ、課税ベースは国際的な形に合わせていく、これが方向としては間違っていないと思っております。ただ、計量的にほかの負担との関係を比較するというのがなかなか難しい面があるということは御理解いただきたいと思います。
  127. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 こういう疑問をよく私も持つんです。その実効税率の四九・九八というのは非常に高いだろうと。確かに高いんですが、先進国のイギリス、ドイツ、アメリカ、フランスと比べてみて、高いところというのは日本とドイツなんですよね。そうすると、日本とドイツというのは意外と経済的に、今、製造業ということに絞って言えばそうなんでしょうけれども金融関係はまた別なんだろうと思うんですが、どうもドイツとか日本の方がむしろ経済的には、実効税率は高いけれどもある意味では実体経済といいますか、経済的には非常に強いではないかということがかつてよく言われていたわけですね。  その意味で私は、国際競争力といったような観点から議論するときには、どうもそういう表面的な実効税率の問題だけでは御し切れない問題が私はあるのじゃないかなというふうに思っているわけでありまして、その点はこれから議論されるでありましょうし、また来年の租税特別措置法等が出てくるでありましょうから、その点でまた議論するということにして課題として残しておきたいと思います。  税制の最後に土地税制でありますが、伝えられるところ、地価税というものを凍結するというような話になっているわけでありますが、私どもは、この地価税が入ってきたときの経過というのは、これはバブル退治という側面よりもむしろいかに土地の有効利用を図っていくか、その観点で設定してきたというふうに思うわけであります。  とりわけ固定資産税が、一・四%の標準税率で取るところが、それにさまざまな調整措置を加えて、全国的に見るとほとんどばらばらな税制になっていると。現実に私、たしか二年前に大蔵省主税局から資料をいただいたときも、あるいは自治省からいただいたときも、銀座あたりの土地になりますと、地価税と対比してみると、おおよそ実効税率の一・四%の四分の一ぐらいにしかなっておらないというふうに思うんですね、固定資産税が。  そうすると、ある意味では、さまざまな利益などが集積している大都市一極集中といいますか、そういうものの中から上がってくるその地価の高騰というものをどうにも吸収できないという、そのことに伴う社会的な不公正というものが非常に大きいのではないかというふうに思っているわけでありまして、その点で地価税の果たした役割というのは私は大変大きいというふうに思っております。  その点で私は、問題は譲渡益の課税の問題も絡むんですが、また再び土地本位制という状態のもとに戻ってしまうのではないかという危惧の念を持たざるを得ないぐらい最近、議論を新聞紙上でしか見ておりませんが、そのように感じておるわけであります。私は、やはりそういう土地本位制的な、土地は有利な資産であるという、そういう考え方が定着をしてしまうとまた再び来た道を繰り返してしまうのではないかなと。  私は、今、土地保有税をむしろ重くする方がいわゆる土地の流動化という観点からしたらいいのではないか、土地保有税を軽くすれば引き続きまだ持ち続けるのではないかなと。利子が低い上に税はほとんどかからないと。こういう観点になってくれば、この〇・一五%まで下がっている地価税ではありますが、私はこれはやはり堅持すべきなのではないかなというふうに考えているんですが、この点、大蔵省当局はどのように考えておられるでしょうか。
  128. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 平成二年秋に土地税制の抜本的な議論がなされまして、平成三年の税制改正で地価税の導入を初め各種の土地税制の改革が行われたわけでございます。その背景は、今、委員指摘のように、税の面だけに絞ってみても税制が甘過ぎるというか低過ぎるがゆえに土地を持っていることが有利であると、このことがすべての原因ではないけれども地価を高くする原因になっているということが当時指摘されたわけでございます。この反省から平成三年度の税制改革を行ったわけですが、その後の地価の動向御存じのように一方的に下がってきております。また、あのとき地価税を導入したということもきっかけになりまして、固定資産税については従来の姿からかなり負担が重くなると、相対的にという意味ですけれども、改善されてきているわけでございます。御存じのように、地価税法の附則には、たしか少なくとも五年以内に両者の関係、固定資産税と地価税の負担を見て地価税について見直しをすべきであるというものも書かれておりまして、平成八年はこれに基づいて税率を半分にしたわけでございます。  その後の状況を見きわめたときに、土地の有効利用ということが今強調されております。政府におきましてはこの点を重点を置いて今議論しているわけでございまして、この点ともう一つは現下の経済状況等についてどう考えるかという二つの問題提起がされているわけです。これをどう受けとめて平成十年度の税制改正に持っていくかということでございまして、客観的に申し上げると、保有、譲渡についていずれも軽減するべきではないかという声が強くなっているということは率直に言って感じている次第でございます。  今後、この問題について政府税調あるいは与党において議論がなされますので、この答えを見きわめて対応していきたいと思っております。
  129. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 いろいろ経過は恐らく大分動いてきているのだろうと思うんですが、私は税のこの二、三年の動きをずっと見ていまして、直接税である所得税が減税をされてきている、そして間接税である消費税が上がってきていると。そうすると、この消費税というのはよく言われるように逆進性が高いわけですね。そういうウエートが高いと当然それは所得の高い人が徐々に有利ないわゆる仕組みになりつつあるというふうに思っていいと思うんですね。  そうした場合に、先進国でよく見られている富裕税というものがございますね。そういったことを考えたときに、この日本においてその富裕税がどういう形態をとったらいいのかということはこれから考えなきゃいけないんですが、相続税の問題についてももちろんそれをどうするかということと絡みはあるんですが、そういうふうに考えたときにこの土地というものがある意味では諸外国における富裕税と同じように考えて、つまり個人の土地でございますが、かなり高価な土地、非常に広大な土地という条件がもちろんつくわけでありますけれども、そういうものをやはり私は考えるべきではないかなというふうに個人的には思っております。これは今後また議論をしていきたい課題だと思いますが、今の税制がずっと展開をしている、またこれから国際化の中で展開しなきゃいけないときに、必ずこの問題はいわゆる格差の拡大ということに絡んで大変重要な問題になってきているというふうに認識しておりますので、この点はまたいっか議論をしてみたいというふうに思います。  時間がありませんので先に進展をさせていただきます。  実は十二月一日の衆議院予算委員会で我が党の菅直人議員の代表質問がございました。それに対して橋本総理大臣の答弁、実はまだ速記録を持っておりませんので新聞の議事録でしか私も申し上げられないんですが、読み上げてみますと、我が党の菅代表はこういうふうに述べているわけです。「破たんした金融機関の債権には、比較的良い債権もある。北海道拓殖銀行の破たん処理では、不良債権の部分を切り離し、拓銀の行員の何割かで新しい銀行を作る方法もあるのでは。」、こういう質問を菅代表はしたわけでありますが、それに対して総理大臣は、「従業員の雇用を考えれば、それに着目したスキームがあってもいい。非常に大事な視点であり、十分検討したい。」、こういうふうに総理大臣は答えられています。  これは要するに一回破綻をして、そして新銀行、優良な債権だけで新銀行をつくってそこに従業員を入れて、もちろん支店網とかそういうものは生きているわけでありますから、そういうスキームがあっていいんじゃないかということを提案したわけであります。この点、こういうふうに総理大臣から十分検討してみる価値がある、検討したいと。  この点どのように今検討されているのかお聞きしたいと思います。
  130. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今の御指摘の点につきましては、確かに一つ考え方ではあると思います。雇用問題を考えたときに、そういうことが可能であればそれは一つの選択肢だと思うのでございますが、たとえ優良な資産だけを集めましても資本がなくては銀行になりません。私どもは国内基準で最低四%は資本勘定を持っていただきたいと。そうでなければ、早期是正措置をかけるというようなことからいっても、余り健全な姿ではないというふうに思うわけでございます。  例えば、二兆五千億の資産だけでも単純に言いますと一千億になりますか、それくらいの資本が仮に集められれば、それはそのアイデアも生かされると思うのでございますけれども、果たしてそういうことが可能なのかどうかということでございます。それは可能性として全くない、それはいけない考えだと言うつもりは毛頭ございませんけれども、現実問題、私どもがこの拓銀の破綻処理をさせていただいたときには、ちょっとそういった規模の資本金を果たしてだれが出せるのだろうかということに逢着したわけでございます。  したがいまして、北洋銀行の方で受け皿銀行になっていただいて優良資産を引き継いでいただくと。もちろん、北洋銀行にとってみますと、資産だけを受け継ぎますから自己資本比率は下がるわけでございます。ただ、北洋銀行は、余り個別銀行のことを申し上げるわけにいきませんが、非常に成績がいいといいましょうか、自己資本比率が高いという状態にありましたので受け皿銀行になっていただくことができた、こういう状況でございますので、御指摘の点についてはそれは可能性が絶対いけないとかないとかいうことを申し上げているわけではありませんが、現時点ではなかなか難しいんじゃないかなという感じを持っております。
  131. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そうすると、自己資本比率で四%、要するに預金の、資産の二十五分の一の資本金を集めなさい、そうすればこれは十分可能性ありますよと、こういうふうに理解してよろしいですか。
  132. 山口公生

    政府委員山口公生君) 基本的にはそういうことだろうと思います。
  133. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 どうしてこういうことを言うかというと、今、北洋銀行は非常に自己資本比率の高い銀行だと、こうおっしゃつて評価は高いわけでありますが、私は、いずれにせよこういうふうに受け皿銀行をつくったときに、受け皿銀行自体が一体どういう銀行なのかということについてやっぱりある程度の懸念が残るわけですね。  これはいい銀行だと思いますよ。一般論としては、受け皿銀行が即これはいい、優良な銀行だというふうには限らない場合もあるわけです。そうした場合には当然のことながら、やはりそのいい資産を持っていったとしても、また不良なものがまじって体力が非常に弱ってしまうということはあるわけでありますから、むしろ優良な資産だけで新しい銀行をつくってそこに合併なり、あと金融持ち株もあるんでしょうが、そういう形態で進めていく方がかえって何となくわかりやすい、あるいは非常にきれいな銀行に、強力な力強い銀行になっていくのかなというそんな思いを持っております。私が今こういう質問をしているのは、私がこれを見つけたのじゃなくて、現実に北海道のある関係者が、こういうことを総理が答えているけれども、こういう形で新北海道拓殖銀行とでもいうんでしょうか、そういうものが設立てきるとすればその条件は何なのかということをかなり相当真剣に考えておられる人たちもいるんです。  現実にきのうも新聞に載っておりましたし、私も前にもちょっとお話ししたように、一九二〇年代の金融恐慌のときには岩手県だとかあるいは宮崎県とかは県債を出して優先株を買ったりしてやっているわけですね。その意味で、そういう形でそれは北海道道民ぐるみで運動としてやっていこうというふうになっていかないとも限らないと思いますので、ただいまの銀行局長のお話はひとつぜひ貴重な提案というか考え方として理解をしていきたいと思いますが、何かありますか。
  134. 山口公生

    政府委員山口公生君) 若干補足をさせていただきたいと思います。  私が二兆五千、仮にと言いましたけれども、今、拓銀は七兆の資産がございますので、私は仮にと申し上げたので、具体的に幾ら数字ということを前提に私がフィージビリティースタディーをやったということではございませんので、まずそれは御了解いただきたいと思います。  それから、資本金と申し上げましたけれども、正確に言うと資本勘定でございます。  それからもう一点、資産は何兆円の資産と申し上げましたが、正確に言いますとリスクアセットでの資産でございますので、正確を期すためにつけ加えさせていただきました。
  135. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 何も今言った二兆五千億とか単純なことを聞いたわけではありません。  いずれにせよ、そういう条件をクリアすれば可能であるということであれば、と申しますのは、やはり新しい銀行に移っていくという、金融持ち株会社がいいなというふうによく言われているのは、合併した銀行というのはうまくいっていないと言われているんですよ。そうすると、北洋銀行と拓銀が一緒になること自体も、これは旧都市銀行と率直に言って旧無尽を合併した第二地銀ですよね。これはなかなか行風が違うんじゃないかなということで我々も心配しているんです。  銀行合併問題で一番難しいのはそこじゃないかなというふうに言われているわけで、せっかく北海道で新しくつくり上げよう、いい銀行にしようというときに、より強力な、しかもより職員がやる気のある銀行をつくる方が私は重要だと思っていますので、それらの提案もぜひ受けていただきたいというふうに思います。  さて、もう一つ。  きのうも衆議院の大蔵委員会で議論があったようであります。二〇〇一年までペイオフをしないという約束で、我々はこれは当然銀行の預貯金だというふうに思っておったわけであります。ところが、十二月一日、我が党の小沢鋭仁衆議院議員の質問に対して三塚大蔵大臣は、預金等の全額を保護する、こうおっしゃって、その預金等というものの中には、いろいろおっしゃっていまして、その金融商品の中には貸付信託など金融商品が含まれるという趣旨でありますと。  きょうも実は新聞などにもいろいろ出てきているんですが、一体これはどこまで保護されるんですか。この間私は劣後債は紙くずになっちゃたと言ったんですが、あるいはかつての自民党のある役員の方のワリシン、日債銀のいわゆるワリシンだとか、そういう利付金融債あるいは割引債、こういったものも保証の対象になるということになるんですか。これはとてつもなく広がってくるなという感じがすると同時に、それらが一体どのぐらいこれから保証しなきゃいけない範囲に入ってくるのか、保証するスキームは何なのか、その財源手当てはどうするのか、これはもう大問題だなというふうに思って実は今質問をしてみたいわけでありますが、いかがでございましょうか。
  136. 山口公生

    政府委員山口公生君) 大臣の御発言の趣旨は、預金を初めとした金融商品についてその安全性の確保に万全を期すという趣旨での御発言でございますが、私の方から若干その辺の事実関係等を御説明させていただきたいと思います。  預金保険法をごらんいただきますとわかりますが、いわゆる本則と言いましょうか、本来制度として予定されているもの、つまり対象は預金、定期積金、掛金、元本補てん契約のある金銭信託、こういうふうになっております。それ以外のものは保険金支払いの対象にはなっておりません。ただ、現実に外貨預金とかCD、譲渡性預金とか公金預金等は実際の破綻処理のときにはカバーされております。  どういう仕組みかといいますと、これは本来の制度は本則としてありますが、附則でこの五年間は資金援助にロスの穴埋めの際にペイオフコストを超えて出せるという規定があります。したがって、穴があいているものは、それが預金によるものかどうか、それも公金預金によるものかどうかとかいうことを考慮することなく全額穴埋めができるようになっております。  したがって、資金援助のときにロスを埋めます。その埋めるときには、それが預金に関するものだ、これは定期積金に関するものだという区分けはしないで、外貨預金のものでも公金預金のものでも、そういったものでも入るということであります。したがって、この附則で認められております資金援助の対象が預金等をすべて、つまり預金取扱金融機関の扱っている商品等はすべてカバーできる仕組みになっております。現にカバーをしてきております。例えば、公金預金があったとしても、それは本来の対象じゃないから外すということをしておりません。少なくとも、ペイオフコストを超えてそういう資金援助ができるとなっておりますから、結果としてはそれは埋められております。現にそういうふうな運用をしてきております。  したがって、今申されたいろんな金融商品についても、預金取扱金融機関がやっているものについてはカバーができるし、またそうやってきたということでございまして、それを御理解いただければ大臣が申し上げている趣旨がおわかりいただけると思うわけでございます。
  137. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 というと、要するに破綻した金融機関で、その中にはもちろん定期預金とか普通の庶民の預金が入っているけれども、それ以外の金融商品もごそっと全部まとめてもう面倒見ますと、そういうことですね。
  138. 山口公生

    政府委員山口公生君) 結果としてそういうことになります。それがありますので日銀法二十五条がロスがなしに出せるわけでございます。したがって、今、北拓でも徳陽シティでもやっているように、窓口をあけて営業ができておりますし、日銀法の二十五条が毀損されることなく返ってくるわけでございます。そういう仕組みでありますのでシステミックリスクが起きません。これが一部は負担しないということになりますと、そこに穴があきますからシステミックリスクが起きるわけですが、そういう五年間の特例期間の間の措置でございます。したがって、システミックリスクを起こさないでできる仕組みが金融三法の中に認められているということでございます。
  139. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そうすると、二〇〇一年までの間に、少々高い、これはちょっと危ないなと思うような商品だって何だって、この機会にお金持っている人は二〇〇一年まではとにかく何だって金融機関の商品はできますよということになると典型的なモラルハザードを起こすのは目に見えているんじゃないでしょうか。ここら辺はどうやって防ぐんですか。
  140. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私が申し上げておりますのは、先生おわかりのように、破綻した場合のケースを言っております。もちろん、各金融機関が健全に経営していくことが基本でありまして、破綻しなければすべてそれはカバーされるわけでございます。そういう経営をもしやったら破綻に近づくわけでございますね、金融機関が。それは責任追及もありますし、損害賠償の責任もあります。そういう意味ではありません。モラルハザードはそういう意味ではチェックされます。  私が申し上げているのは、最終的に保護されるのか、その可能性があるのかないのか、また保護されているかどうかということを申し上げているので、基本的には金融機関が健全に、破綻しないで存在していくということが一番の基本であります。
  141. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 どうしてもそこのところはよくわからないです。  つまり、この会社は危ないぞ、この何とかは危ないぞと思うところはうわさが出ますよね。そうすると、そういうところで例えば金融機関からちょっと利子を高くするからどうしても貸してよと、こういうことだって起きないとも限らないですね、ハイリスク・ハイリターン商品。往々にして起きますよ、そういうことは。そうなったときに、ああ、いいよ、いいよと。二〇〇一年まではどんなことがあっても守ってくれるんだから百億なら百億貸しましょうと、そのかわり利息は高いよと言ってその利息は全部守られるとなると、これは示しがつかないですよ。そう思いませんか。
  142. 山口公生

    政府委員山口公生君) そのモラルハザードが全くないとは申しません。しかし、その金融機関にとりまして、そういう行為をやった場合は後でそこの追及が行きます。そういうことをやらせないような仕組みを持っておりますから損害賠償請求なり責任追及、あるいは違法なことをやればそれは刑事責任が追及されるわけでございます。だから、金融機関の側からそういう違法な行為をしないということを担保することも大変大切なことだと思っておりますし、現にそういうふうな姿勢でやってまいるわけでございます。
  143. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 それは借りるというか、もう危機に陥っている金融機関はそれは少々、背に腹はかえられないと。問題はお金を貸す側、要するにお金を持っている側が、今は金利が一%、二%だから金利を八%もつけてくれる借り手がいればそちらの方がいいわと喜んでお金を貸すのではないですか。まあ八%というのはないと思いますが、そういうところまで、じゃ貸す側も罰せられるんですか、これ。貸し金法ですか、そういうのになるんですか、今度の法案。全体の中でありますか、そういうのは。
  144. 山口公生

    政府委員山口公生君) 法令に違反しない限りは、それはコマーシャルベースであれば債権者の方は罰せられません。
  145. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そうでしょう。そうすると、罰せられなかったら、完全にこれはモラルハザードというふうになりませんか。
  146. 山口公生

    政府委員山口公生君) モラルハザード論はいろいろな局面でいろいろ問題になることはあると思いますが、そういうものを極力排除しながら、しかしより大切なことはこのシステミックリスクを起こさないということであります。  結局、先生のおっしゃるそういう現象が起きるじゃないかということを心配される向きもそれはあると思います。それはそれで責任を追及するなり刑事責任を追及するなりしてやるという方法でモラルハザードを防ぎつつ、それでシステミックリスクを起こさない、つまりある部分は対象にしないというふうになりますと、例えば日銀がお金を貸したとき、そこは穴があくわけですね。そうすると、そういう問題になって、その一部分が出ないことによってシステムが壊れてしまうというおそれがあるわけです。その五年間の今回の措置はそういうことになっておりますので、結果としていろいろな商品が救われる結果になるということを申し上げているわけです。  ただ、何度も繰り返して恐縮ですが、それは破綻した場合の話でございまして、あくまで健全にやるということを指導していくということが一番の基本であります。各金融機関は今、自己査定をし、健全経営に努めております。だから、国民の皆さんもいたずらに風評に惑わされて御心配なさらないようにお願いしたいと、こういう意味でございます。
  147. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 時間が来ました。もう終わりますが、国際社会から見たらこれは非常識だというふうに言われませんかね。答えはもう時間がありませんからいいですが、この点はまだ私自身どうしても納得できないものでございますので、ぜひとも引き続きまたこの点はまた別途やりたいと思います。  どうもありがとうございました。終わります。
  148. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣大蔵省関係法律にはとにかくわかりにくいものが多いですね。実は毎年出てくる例の繰り入れ法案、あれがその典型だといって私は毎年のように悪口を言っていたのですが、この法案もその例に漏れませんね。何遍読んでもようわかりにくい。これは頭が悪くなったのかと思って隣の頭のいい人に聞いたら、いや、おれもようわからぬと言うから、私ばかりでもないようです。似たようなことを表現しておる独禁法と読み比べてみると、そっちの方が日本人にはよくわかる文章になっていますね。国民の権利義務にストレートにかかわっているものが多いのが大蔵省法案なので、一読してわかるような法案を心がけてもらいたいというのが私のまずは希望です。  多くの国民が理解しにくい言葉や理屈を霞が関の都合に合わせているのは、これは官僚の不遜だと私は常々主張していますが、法律にはそれなりの文言や用法があるということは承知しておるつもりですが、普通の言葉に書き直してみたらどんなものだろうという感じがします。早い話がアメリカの法律には何か話し言葉や手紙みたいな法律がよくあるじゃないですか。そういうものが日本にあったっておかしくはない、こう思います。  大蔵大臣の所見をまずお伺いさせてもらいましょうか。
  149. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 多くの国民の皆様もそんな感想を持っております。委員の御提言を体しながら、勉強をしてまいります。
  150. 志苫裕

    志苫裕君 それは要望しておきます。  法案に入りましょう。  この法律は、金融持ち株会社の設立を進めて、世界的な大競争時代に立ち向かっていくような金融機関の基盤強化を図ろうというところに意義があって、その競争政策によるものだと私は理解しますが、そのように理解すればよろしいですか。
  151. 山口公生

    政府委員山口公生君) 我が国の産業の国際競争力を強めるというのも大変重要なポイントだと思います。    〔委員長退席、理事楢崎泰昌君着席〕
  152. 志苫裕

    志苫裕君 言うまでもないんですが、競争には勝つ者と負ける者がいるわけです。負けた者は祇園精舎の鐘の音で盛者必滅、淘汰もやむなしと、こういうスタンスなんですか。これはどうですか。
  153. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私どもとしては、みんなが勝者になってほしいということを願っておりますけれども、ただその勝者のあり方もそれぞれが特色を生かして特徴を出していけば、それはかなりの数の金融機関が国民に喜ばれる存在になれるのでないかと思っております。
  154. 志苫裕

    志苫裕君 とにかく競争政策を進めるにはそれをフォローする政策がもう一方で用意されていなければならないことは言うまでもない。だからといって、競争させて負けたら国が面倒を見る、財政でカバーするというのじゃ、これは財政負担をさせられる国民がたまったものじゃないですね。  金融事情が厳しい今日、競争政策だけを進めて、金融機関破綻が相次いでクライシスを増幅するようなことにはならぬのですか。
  155. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先生が御心配になるような事態をぜひとも避けたいということで、各金融機関にまずは自助努力をしっかりやってもらいたいということで対応しておるところでございます。
  156. 志苫裕

    志苫裕君 それでも山一だ、三洋だと倒れるのがあるわけですからね。  我が国ではこれまで長い間持ち株会社が禁じられておりました。戦後の経済改革、とりわけ経済の民主化に由来するものと受けとめられてきましたが、百四十国会の法改正で制限づきながらもこれが解禁されたことを踏まえて金融システム改革の観点から銀行持ち株会社の設立を進めようとするんだけれども、この持ち株会社解禁でガリバーと小人が一緒に住むような経済社会になって公正な競争が阻害されるということは起きませんか。    〔理事楢崎泰昌君退席、委員長着席〕
  157. 山口公生

    政府委員山口公生君) 持ち株会社をつくる銀行等は、私の予想では比較的規模の大きいところだろうと思います。しかし、それが持ち株会社になったからといって急に力が強くなるものではありません。逆に持ち株会社をつくって発展をしないということもあるかもしれません。それは経営形態の問題でございますので直接ガリバーの出現ということにはならないと思います。特に、銀行持ち株会社につきましては事業会社を保有することを禁じておりますので、その点については昔のような財閥の復活というような懸念はないようにしてございます。
  158. 志苫裕

    志苫裕君 他業制限と持ち株の比率の制限で気を使っているという条文はよくわかりますが、ただ、言うまでもないことですが、金融機関の経済支配力は大きい。かつてこの国には金融機関を頂点とするいわゆる財閥が企業グループをコントロールして、日本の経済のみどころか政治をも支配した時代があった。そういう力があるという意味では金融持ち株会社は一般の企業持ち株会社とは意味が違う。  この点については十分注意を払っているんですね。
  159. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今申し上げましたように、一般事業会社を持ってはいけないという原則を貫いておりますと同時に、銀行兄弟になる会社の間で何か特別な条件で、有利な条件であるいは不利な条件で取引をするとかいうことを禁止いたしております。
  160. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣、歴史の反省もちゃんと踏まえた今後の対応をしていかれるんですね。
  161. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 全く御説のとおりであります。
  162. 志苫裕

    志苫裕君 わかりました。  持ち株会社解禁とはいいましても一定の条件つき、独禁法の改正の条件つきのようでありまして、集中排除、公正な取引趣旨とした当初の理念は、例えば事業支配力が過度に集中することになるような持ち株会社はいかぬという規定も残っておるわけでありまして、十分な注意を喚起しておきます。  例はちょっと適切でないかもしらぬけれども持ち株会社という親のもとに何人かの子供、すなわち子会社が生まれますね。子供たちは兄弟会社のような関係になる。そこで伺いますが、子供の一人が不始末をしてかした場合、不始末というのは商業道徳に反したり法律にひっかかったり、あるいは経営を悪くしたりという意味でありますが、そういう場合には子会社経営管理を主たる業務とする親及び兄弟にも責任が及ぶことになりますか。昔でいうと眷族にまで及びますか。これはどうなりますか。
  163. 山口公生

    政府委員山口公生君) この持ち株制度兄弟に並んだ場合は、比較的リスクの遮断という意味では親子関係よりはすぐれているというふうに言われております。だから、一つ兄弟で起きた、先生は不始末とおっしゃいましたが、それで大きな損を出したということが直接的には響かないようにしてございますけれども、仮にそれが親の指示でそういうふうになった場合はちょっと話は別でございます。その場合はその持ち株会社自身も責任を問われるわけでございますけれども、そうでない限りはリスクの遮断は親子関係よりは兄弟の方がよりやりやすいというふうに一般に言われておりますし、そういう特徴はぜひ生かしてもらいたいと思っております。
  164. 志苫裕

    志苫裕君 今お話がありましたが、兄弟といえどもそれぞれに独立した企業ですからリスクを遮断する仕掛けがあって当然だろうと私は思います。さりとて、先ほども連結決算の議論がありましたが、損ばかりする子供がおって、それが全体の収益に響いてちっとも税金もかからぬ、これもまた困るわけでありまして、そういう損する子供をつくって租税忌避が起こらないような注意も必要です。これは要望しておきます。  そこで、連結納税制度との関連でまいりまして、自治省は呼んでいないんですが、地方税の法人住民税はどうなりますか。わかりやすく言いますと、親会社は東京にあるが、その親会社のもとの一つ企業は新潟にあってそれはよう収入を稼いでおると、だけれども連結決算をしますと、これはそこじゃないですから親会社の方でやるか全体がマイナスになるかわかりませんが、そうなってくると新潟にある法人法人住民税等はどうなってくるのだろうか、その辺の関係はわかりますか。
  165. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 国税の世界の話ではないんですが、連結納税制度を議論するときに必ず問題になってくるのは課税主体がどこにあるかということで、同じ国の税金である法人税であればどこに子会社なり親会社があっても国という課税主体が一体ですから構わないんですけれども、例えば外国の課税との関係でどうするか、子供外国にあったときどうするかというときはこれは遮断せざるを得なくなる。それと同じように、同じ国内であっても課税主体が各県であったり市町村であるとこれは連結できないのではないかと思います。  その辺どういう工夫があるのか、私は承知しておりません。
  166. 志苫裕

    志苫裕君 銀行持ち株会社の設立によって例えば労働金庫だとか信用金庫だとかいわゆる系列の外側にいる金融機関にはどんな影響が出るものでしょうか。どういうことが想定できますか。
  167. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私の推測では、持ち株会社形態をとるのは主にマネーセンターバンクと言われるような大きな銀行がその専門分野をいろいろ分社化して伸ばすということで始まる、あるいは証券分野等とのシナジー効果を出そうということでやると思います。  今御指摘の労金とかあるいは信組、信金等の共同組織の場合は主に地域、地域もかなり限られた地域での活動をしております。したがって、その人たちのニーズは、なかなか一概には言えませんけれども持ち株会社という形態が出現したからといってなくなるものではないというふうに思うわけであります。親しまれる地元の金融機関とかあるいは我々の金融機関という意味での存在は私は消えていかないのだろうというふうに思っております。
  168. 志苫裕

    志苫裕君 局長、地域と言うけれども、地域や国境を越えて水みたいに動いて回るのが金ですから、あなたの今の御答弁は少し楽観的に過ぎないかなという気もいたしますので十分に目を配りますようにお願いをしておきましょう。  持ち株会社の設立によりまして独占ないしは寡占的な企業集団が出現をすることになると独占利潤を手にすることが想定されます。独占利潤を手にできるということは裏を返して言えば利用者や消費者のサービスが低下をするということでありまして、そういうことになったんじゃこれは元も子もない。ゴム風船みたいなもので一方を押せば一方が膨らむだけの話というんじゃ社会の公平が保てない、こういう問題になるのですが、その辺についての何か目配りはあるんですか。
  169. 山口公生

    政府委員山口公生君) 金融持ち株会社が出現した場合に、やはり多様な金融商品とかサービスの提供というのが活発になるのではないかというふうに思います。これからは資金の余剰の時代資金の運用の時代ということでございますので、いろいろな商品を組み合わせたものが出現するということは国民全体にとっても大変望ましいというふうに思うわけでございます。  それが独占的な利潤をひとり占めするというようなことになりますと、それは社会的にマイナスの効果になることは先生のおっしゃるとおりございますが、大変競争が激しい世界でもございます。アメリカの金融機関も先へ先へと進もうとしております。日本金融機関もそれに追いつこう、あるいは追い越そうとして努力をしております。それはとりもなおさず我が国国民が今一番悩んでいる運用をどうしてより効率的、より有効にやろうかということとマッチすると思います。  そういうことを前提にしますと、こういった形での競争が進展するということは国民全体にとってみるとプラスではないだろうかというふうに思うわけでございます。
  170. 志苫裕

    志苫裕君 直接法案に関連はないが、この際大臣にひとつ所見を伺っておきたいことがあるんです。  金融機関破綻に関連をいたしまして、今、財政資金の投入の可否が大きな論議になっていますが、大臣もしばしばの談話やあるいは国会での答弁で、預金者金融機関は安全だという安心感を持ってほしいし、いたずらに付和雷同しないでもらいたい、必ず預金保護はしますからと強調されるんですが、私も先般の委員会では最終的には預金者を守るため、あるいは金融システムを守るために財政投融資資金の投入をせざるを得ないこともあり得るかもわからぬということは述べました。  お伺いしたいというのは、預金者投資家は違うということをこの機会にちょっと申し上げておきたいわけであります。預金者投資家は似たようで違うものだと、また国民の普通の感覚でも預金者投資家は区別されているということを申し上げます。預金者保護投資家保護は違う。ここで保護の対象とされる預金者とは全く善意の人たちのことで、汗水垂らして働いてようやく手にしたとらの子を手元に置くのも不用心だし、幸い町内に銀行でもあるから預かってもらおうか、それが日本経済に寄与できて金利でもつけばそれにこしたことはないというのが私が言う普通の感覚で善意の預金者のことなんです。投資家となるとこれは違う。投資家には機関投資家も含まれる。普通の預金者とは違いまして利益を目的に投資する者でして、いわば欲の皮の突っ張った者のことなんですね。  言うまでもないことですが、投資にはリスクがつきもの、それが資本主義というか市場経済の原則で鉄則なんです。それを承知で利益をもくろむ者と善意の預金者とは同列に論ずることはできない。得をすれば損もある。その損失を補てんするというのは、損失補てんというのは犯罪行為でさえあります。それがこの経済社会のおきてです。預金者と同列に投資家保護を口にすることはもう少し慎重な発言があってもいいという気がいたしますが、国民の感覚は案外その辺にもあるということを申し上げて、大臣の所見もこの機会にちょっと伺っておきたい。
  171. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 大臣のお答えの前に若干補足させていただきますが、投資家預金者の立場と申しますのはあるいは志苫先生が御指摘のとおりであろうと存じます。  ただ、私どもが最近、証券会社破綻に際しまして、投資家保護のために顧客資産の万全を期しておりますというのは、例えばどういう方が救われるかと申しますと、ただいま志苫先生預金の例を仰せになりましたけれども、少し小金もたまったしお国のために国債でも買おうかということで証券会社に持っていかれて、国債が来月発行だからまだ本人の手に渡らないときに証券会社破綻したというときにこの投資家保護という問題が出てくるわけでございます。もう国債が本人のものになっておれば問題はございません。したがって、そういうのにひっかかった方々に対しまして万全の顧客資産保護をするということでるるいろんなことを申し上げております。  機関投資家についてお触れになりました。これは御指摘のとおりであろうと思います。したがいまして、私どもがこれから整備したいと申しております寄託証券補償基金のもとにおきましても、あるいはアメリカやイギリスの同じ寄託証券補償基金におきましても機関投資家というものはその補償の対象とはいたしませんという仕組みになっておりますし、私はそれがしかるべき考え方だと思っております。
  172. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 預貯金等と申し上げましたのはまさにそういうことであります。しかし、株に対する機関投資家の区別は、こういうことでありますが、そのことも頭に入れながら申し上げておるわけでございまして、要すればお客の財産を預かっておりますもの等について、ただいま証券局長が国債等の例を引かれましたが、それは保護されますと、こういうことを申し上げたところであります。
  173. 志苫裕

    志苫裕君 次に、私は先般来、財政改革に関連をして歳入の確保にもっと気を使うように万全を期するように注意を喚起し、提言もしてきました。  その一つとして、二十七日の委員会では政府が保有する金融資産からの収益を一般会計の歳入に取り込めという主張をいたしました。私の推計では三百兆円近い金融資産があるはずで、とすればおよそ収益の見当もつきます。そのときの答弁では、事業会計等の繰入金あるいは特殊法人等の国庫納付をそれなりに取り込んでおりますという答弁でしたが、それは全部合わせてみたって一兆九千億もないのでして、四つの事業会計と四つの特殊法人でしかない。先ほど言いましたように、全部合わせれば三百兆近い金融資産があるとして、そこからの収益は、仮に今金利が低いといっても一%や二%で回っているんでしょう、そうしたら主税局長、あなたはすぐ幾ら入ってくると計算できるでしょう。検討するという答えでありましたから、きょうはそれぐらいにします。   次に主張したいのは貯蓄課税の是正です。個人の貯蓄残高は平成五年三月末において六百七十四兆円と言われております。平成六年度の推定平均利回りを二・八二%といたしますと二兆円の利子課税が推計できます。これに相当の税率で課税するともっとふえる。ただ、金利が極端に低いときですから、そこへせっかくの利子にまた課税するというのも随分酷な話だという議論も出るでしょうが、大口預金者、小口預金者という概念を持ち込んで税を設計することは可能だ。主税局長、どうでしょうか。
  174. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) いわゆる包括所得税といいますか、理論的な所得課税を追求していく場合には、委員指摘のように、利子につきましてもほかの所得と合算して所得の全体として高い人には高い税率を適用する、これが基本的なあるべき姿だと思います。  それに対して現実に納税者番号がないという事情とか、あるいは、先ほどちょっとお話ありましたが、本当に一般の方でもお金がちょっと余ったときにそれを郵便局に預けるといったようなことで、単に大きな資産があって貯金しているということでない形の預金というのが極めて多いわけで、いわゆる口座数というのは非常に多いわけです。そういう多様性、あるいはたくさんの口座があったり、あるいはいろんな人が持っているということを考えると、かえって単純に課税した方がお互いに便利であるという面もありまして、現在の税制では国税におきましては一五%、地方税では五%の源泉分離で終わりにしているわけでございます。これも一つ考え方だと思います。  そういう意味で、絶対にどちらかということではないんですが、現在の日本の執行体制及び国民の受けとめ方からしますと、現行のやり方が定着しているというように私は受けとめております。
  175. 志苫裕

    志苫裕君 局長、包括所得税の建前を貫こうとすればどうしても総合課税まで行かないといかぬ。それにはこの間も長々と議論をした納番の問題を一つクリアしなきゃならぬ。しかし、貯蓄課税の改革には、いきなりそこへ行かなくても今あなたが後段にお答えになった分離課税の税率の再検討だってあり得るわけです。二割といえば、所得税の限界税率が五割の人が二割でいいといったらどれぐらいの利益になりますか。逆に税金もかかっていない人が二割取られたら、これは苛斂誅求じゃないですか。これほど同じ利子課税にも不公平があるわけですから、これはその両面から検討してしかるべしということを私はここで言っておきます。  ところで、前回十一月二十七日のこの委員会で私の隣におりました同僚の笠井委員主税局長の間で租税理念についての問答が若干繰り返されましたが、人の質問に私がくちばしを挟むのはまことに申しわけない話ですが、実はそれを伺っておって、税の公平にこだわってきた私にとっては聞き逃せない局長の答弁があったのでこの機会に主税局長の見解をただしておきたいと思うんです。  私が聞き逃せないと言いましたのは、世界の学問の世界とかそういうものでは所得よりも消費に、累進よりもフラット化の方に、そっちの方に向いている趨勢だというくだりでして、あたかも日本もそのような税制を設計したいかのような印象を私は受けましたので、これは黙っておれないと、いっか物を言わなきゃならぬと思ってきょうまで待っていたわけです。局長のような税制に関して日本で一番偉い人がそういうことを言っちゃだめですよ。そういう認識じゃ困る。  以下、若干申し上げます。  理念が税制を生んだと言われるのが日本の税制ですけれども、その基本理念は公平に置かれておりますが、それは最低生活費非課税原則に見られるような日本国憲法の要請でもあります。公平とは言うまでもなく形式的な公平じゃなくてあくまでも実質的な公平、すなわち能力に応じた公平という意味で総合課税と累進制に表現されておりますね。  先ほど言いました理念が税制を生んだというのは、日本の包括所得税の立場というのは個人の経済シェア力、すなわち担税力に課税しようとするものでして、それを直接表現するのは所得だというので所得が基幹税目にされて今日まで来ております。総合課税と累進税率で縦横の公平を図ってきた、そして形成されたのが今日の日本のいわゆる公平化社会、平準化社会と言われる日本の活力の源泉を生んだわけであります。これは国会でもしばしば繰り返されて確認されてきたことですね。  ところが、昭和六十二年、三年の消費税導入の論議のころから少しこの基本理念が怪しくなってきた。日本はイギリスのような貴族と平民がいるような社会じゃなくて、上下が割合縮まっておるんだと。所得もあるいはその社会的な待遇も割合に平準化をしておる、そういう社会には累進税はなじまないんだと。むしろ、働くインセンティブを失ってしまうから、平らな税金がいいというので消費税導入の根拠にされて竹下税制が無理やりに実現をしたわけですね。私はこのときは六時間も実はやりとりをさせてもらった、そのときの答弁はあなた方が書いたらしいけれども。  とにかく、やっぱり包括所得税の立場は今後も貫徹をしてもらわぬと困る。特に今、財政改革で歳出の面から所得配分の公平が担保できなくなってくるとすれば収入の方で分配の公平を図らなきゃならぬ時期に到達しておりますから、ますますあなたの言うように消費でフラット化というのは世の中に合わない。この点はいかがですか、そろそろ税制改革の時期も来ますが。
  176. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 税制はその時々の国民が受けとめる姿でなければ実現しないわけでございまして、そういう意味では学者の議論、あるいはその方面に長く勤めているがゆえの私の意見、これがその世の中を決めるわけではないということは十分承知しております。  そういう意味で、今日の日本、あるいはこれからの日本がどういう公平を求め、どういう税制を求めていくかということを私は率直に見せていただき、あるいは聞かせていただいてこれからの税制を探っていかなければならないと思っております。  私個人として申し上げた点が先日の答弁になったのかもしれませんが、世界の流れというのはちょっと強過ぎるのかもしれませんが、世の中の学者あるいは学界の動向としては先日申し上げたことは間違いがないと思っております。また、最高税率だけを比較してみますと日本は高過ぎるというのが今や通説になっております。これは下げていくことが日本全体の活力につながるという考え方は十分あると思っております。  それから、包括所得税というのは非常に完結した理論的にはすばらしい考え方ですけれども、現実に例えばキャピタルゲインの問題ですけれども、毎年毎年物を売って実現しないと、売った場合でないと課税できない。評価が上がっただけで課税するというのは現実にできないとか、あるいは帰属家賃というようなたぐいの、実際は経済的な利得はあるんですけれども現実にお金としてもらっていない以上課税できないという意味で包括所得税を完全に実現することはこれはできないわけでございます。  そうなりますと、妥協の産物としての今の所得税があるわけですから、そういう意味でも現実的には今の税制というのはそれなりに、それなりというか、十分定着していると思います。  いろいろ申し上げましたが、私自身、現在の日本の税制についての考え方を申し上げれば、所得課税を中心にしつつ、それだけでは不十分な面を資産あるいは消費、その面で補っていくという形で公平、中立、簡素というものをできるだけ実現していくということを目指したいと思っております。     ―――――――――――――
  177. 石川弘

    委員長石川弘君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、谷本巍君、清水達雄及び松浦孝治君が委員辞任され、その補欠として菅野壽君、吉川芳男君及び鈴木政二君が選任されました。     ―――――――――――――
  178. 志苫裕

    志苫裕君 まあこれで縁が切れるわけじゃありませんから、これから息長く、ゆっくり議論させてもらいます。  ただ、公平にも機会の公平か結果の公平かという議論がありまして、機会の公平さえつくってあげればいいんだという議論もないわけじゃありませんが、しかし私は、機会が公平でもややもすれば足のおくれる人が必ずこの世の中にはいる、そういう人たちも最後まで一緒に連れていってやるような社会をつくりたい、それが我々や日本が目指した国であったはずだということを主張したいですね。それを資産性所得の把握が難しいとか経済撹乱の要因になるとかさまざまな理屈をこねて、率直に言って不公平な課税システムがいまだに続いておる。このまま放置することはもうできない。  先ほども言いましたように、もう歳出の面で納税者にこれだけの我慢を強いているときですから、せめて税制の公平ぐらいは確保しないとこれはもう反乱が起きちゃいますよ、あなた。それは税に対する信頼を高めるためにも、消費へのシフトだとか税率のフラット化というのは、これはあべこべの認識になるということだけは申し上げておきましょう。  特に、大蔵大臣に申し上げたいんですが、我々が税制を論議しますのは、差し当たり景気がどうなるとか、あるいはだれが損で得だとかというけちな議論をしているんじゃないんです。その税制を通しながらどんな将来を見るか、どんな将来を展望するのかというのが税制の論議だと思いますね。そういう意味で、公平にはもう細心の気配りをしてもらいたいと、これは最高責任者にも特に要望をいたしておきます。  ゆがんだ税制は必ずゆがんだ社会をつくるというのは、これは鉄則だと思います。このことは主張しておきたいですね。そのために我々は公平にこだわってきましたし、主税局長も、そして大臣もこの点はよく心得ていただきたいということを最後に主張いたしまして、ちょうど時間が来ましたので質問を終わります。  ありがとうございました。
  179. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮でございます。  今の税の問題は私もぜひやりたいんですけれども、限られた時間なのできょうは法案に限って質問をいたします。  最初に、本法案ビッグバンの主な柱として金融持ち株会社の設立を認めようとしておりますけれども、なぜ今金融持ち株会社なのかというその目的とのかかわりで幾つか伺いたいと思うんです。  橋本総理は衆議院の本会議での答弁で金融持ち株会社目的として金融分野での競争促進や経営効率化ということを挙げられまして、そういう中で金融サービスの開発、提供が促進されて利便の向上に資すると。先ほど局長もそういう趣旨で言われたと思うんです。  それで、これらに即して伺いたいんですけれども、まず金融分野競争の促進という点でどうかという問題なんです。  先ほども若干議論がありましたけれども、この金融持ち株会社解禁されると持ち株会社のもとに大銀行証券会社保険会社、ノンバンクなど多くの金融関連会社がまとめられていわば一大金融集団が形成されるということになるんじゃないかと思うんですよ。現に、三井系だとか芙蓉グループだとかいう動きを見ますと、企業集団内の金融機関一つ持ち株会社のもとにまとめられる動きが出ていると思うんです。  ことし二月だったんですけれども、三井生命の社長が三井系の金融四社による金融持ち株会社設立構想というのを打ち上げられたことが大きく出ました。その理由に、むだな競争というのをなくすことが趣旨なんだということが挙げられていたわけですけれども、そういうことはいわば今回の目的と言われている競争の促進という政策目的には反するということだと思うんですけれども、どうでしょうか。
  180. 山口公生

    政府委員山口公生君) 競争の前提として、その経営が効率的であるということは言えるかと思います。したがって、むだを省くということが競争をなくすという意味ではないと思います。つまり、そういった経営資源を有効に活用して競争をより高め、国民のニーズにこたえるということではないだろうかというふうに思うわけでございます。  確かに、この持ち株会社制度をつくりますといろいろな形での企業グループというのができるわけでございます。私どもが視野に入れておかないといけないのは、それは国内の問題としてのとらえ方も大切でございますけれども、海外で活躍しているマネーセンターバンクをごらんいただきたいと思います。これは大変な力をつけてきております。  これはお客様が例えばこういうニーズがあるということを言えばそれはたちどころに金融商品の組み合わせができてしまうというパワフルな供給力といいましょうか、そのノウハウがあるわけでございます。そういう時代に既に入っていると。つまり、銀行に来たら銀行の品物だけ、こっちの既製品に合わなければおこたえできませんという時代では国際的にはもう私は通用しないと思います。  それは各業態間のファイアウォールとか、そういうことはきちっと守っています。彼らも守るべきは守っています。守ることはしながらも客のニーズというものをきっちりとらえ、それに一〇〇%こたえる手だてというものをつくってきております。それは金融持ち株会社がなければできないと申し上げているわけではありません。しかし、そういう形での対応を欧米の先進的な銀行証券会社等はやってきているということを考えたときに、我が国金融機関が国際競争裏でも勝ち上がっていくためにはやはりそういったことに研さんを積んでいく、その経営手法一つであろうというふうに思っております。
  181. 笠井亮

    ○笠井亮君 効率性の問題は後で少しゃりたいと思ったんですけれども、元来、競争を制限することになるから独禁法で持ち株会社禁止してきたわけでありまして、解禁して競争の促進になるということにはならないというふうに思うんですね。  それで、国際的な競争力ということを言われました。先ほどもそういうことを言われたんですが、結局、そうしますといわばビッグバンが促進されて、弱肉強食の激しい競争の結果、経営危機に陥った金融機関を傘下におさめる形で金融再編が進められると。あらゆる金融業務を手がける一握りの巨大な金融機関、いわば金融コングロマリットだけが生き残るということでなければ国際的にもやっていけないんだということで、競争の促進ということを言いながら自由で公正な競争というのを日本で保障していくということではなくて、国際競争力もということも先ほどは言われたんですが、国際競争力にたえ得るような巨大ないわば金融機関をつくるだけになってしまうんじゃないかというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
  182. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先ほども申し上げましたように、銀行持ち株会社の例をとりますと、まずこれをつくろうとするのはマネーセンターバンクではないかということを申し上げました。そういうところは国際競争裏でのいろいろな競争を通じてノウハウを蓄積し、国民の皆様にもその技術力等をこれから披瀝できるようになっていくと思います。それがだんだんほかの金融機関、国内の金融機関においてもそういったノウハウの蓄積あるいは経営手法の習得というような形で私はかなり大きな意味の効果はあるというふうに思っております。  ただ、先ほども信用金庫、信用組合の話がありまして地域という話をしました。もちろん、地域の壁はだんだん薄れておりますが、それはそれでまたニーズというのは厳然として私は残ると。  マネーセンターバンクが日本国じゅうのすべての金融を支配するというふうには予想いたしません。しかし、そういった我が国の金融の産業として見たものがどうしても、今、例えばニューヨーク、ロンドンと比べたときに、そのGNPに占める比率を見ましても銀行証券保険等のウエートがかなり低うございます。  本来、千二百兆の財産、個人金融資産があるわけですから、もっともっと存在感のある産業になり、またそれがアジア等の国々にも役に立てるような産業にぜひなってもらいたいというふうに思うわけであります。
  183. 笠井亮

    ○笠井亮君 いろいろ言われましたけれども、中小も否定しない、しかし結局は生き残っていくためには巨大な集団をつくっていかなきゃいけないという方向にいろいろあったけれどもなるんじゃないかというふうに思うんですね。  それはそういうことで今いろいろ説明を伺いましたが、じゃ効率化という問題なんですけれども効率化という点ではどうかということなんです。  アメリカでは例のグラス・スティーガル法、この廃止が問題になっておりますけれども、それは大企業銀行離れで銀行のサービスに対する需要が少なくなってきたことや、あるいは銀行業と証券業が同一化して分離が実質的に困難になっているということで、そういうことが主な理由でいわば効率化というよりも専ら大銀行経営上の理由からきているということだと思うんですけれども、その政府の言われる効率化というのはどういうことなんでしょうか。
  184. 山口公生

    政府委員山口公生君) 持ち株会社制度をつくって金融業務を営む会社兄弟になるわけでございます。そうすると、それぞれが経営資源を持っており、またノウハウを持っておるわけでございます。それが相互にうまく相乗作用あるいは相乗効果を持って金融サービスの開発に当たるとコストも節約できますし、それから複数の業種にまたがるいろいろなサービス等もできるようになるということで金融全体の効率、またニーズに正確に対応できる供給力の強化につながるのではないかというふうに思うわけでございます。
  185. 笠井亮

    ○笠井亮君 いわゆるシナジー効果という問題を今言われたと思うんですけれども、私は効率化ということで銀行証券もということで何もかもやっているとかえって負担になって、それで逆に効率性を失って一番強い分野にいわば特化していかなければもうからない、いわばもうからない世界ということになりますか、もうからないということになるんじゃないかと思うんですよ。  海外のことも若干調べてみたんですけれども、イギリスでもバークレイズとかナショナル・ウェストミンスター、ここも一時は証券に乗り出しましたけれども、今はたしか撤退の方向にあると思うんです。それから、アメリカでもモルガンとかバンカーズ・トラストは証券業務に力を入れていますけれども、それは従来の商業銀行業務を捨てて投資銀行ということで比重を移してきているということがあると思うんですけれども、他方、シティコープだとかチェース・マンハッタンはいわば全部やろうとして失敗しているということがあるんじゃないかと思うんです。  結局、事実上のユニバーサルバンク化というんでしょうか、そういう方向というのは世界を見てもうまくいっていないんじゃないかと思うんですけれども、どうですか。
  186. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、具体名をいろいろお聞かせいただいたわけですが、若干個別銀行にとってみると不満があるような表現をなさったと思いますけれども、私の理解ではユニバーサルバンク、ヨーロッパはこういう形をとっておりますが、おっしゃるようにいろいろな特色を出してきております。今お挙げになったアメリカの金融機関もみんなそれぞれ特色を持っております。持ち株会社制度をとっているからといって何でもかんでもやっているということではありません。自分の一番得意とするところ、一番もうかるところ、これをどんどん伸ばしております。  そのときに、やはりユニバーサルの形をとっている方がやりやすいのか、こういう分社化したような形の方がやりやすいのかとしたときにどちらが有利かというと、それはもう企業の選択であります。企業の選択でありますが、これまでそういう持ち株制度がありませんでしたので今の我が国銀行はある意味ではすべての業務部門を持っておるわけです。それはお客さんが来たとき担当はないんですかと言われることを恐れるのかもしれません。あらゆることを最低限はやろうという考え方で来たと思います。それがもし持ち株会社自分のところの傘下に得意なところ、あるいは今まで全然ノウハウがないところはこれまで余り関係なかったところも自分のグループに入っていただいて、あるいは提携関係をしてという専門専門での分社的な活動をする方が有効という場合もあると思います。それはそれでぜひ生かしてもらいたいというふうに思っておるわけです。
  187. 笠井亮

    ○笠井亮君 有効である場合もあるかもしれないと。選択肢の一つとして提供したんだということに尽きるのかなと思うんですけれども、結局うまくいくのかなというのは非常に私も思うわけであります。  次に、今回の法改正は、銀行業務証券業務を分離してきた従来の我が国の金融制度の基本を変更して、制限なしに二つの業務の兼業を認めることになるんじゃないかと思うんですけれども、これについてはいかがですか。
  188. 山口公生

    政府委員山口公生君) 既に平成四年の金融制度改革法によりまして銀行証券会社等を子会社とすることができることとなっているし、証券会社銀行等子会社にできるという業態別子会社を認めたわけでございますが、銀行に組織形態の新たな選択肢を提供するという今回の銀行持ち株会社解禁がこれまでの銀行業と証券業との関係を変えるものではないというふうに私は理解しております。
  189. 笠井亮

    ○笠井亮君 形式的にはそういう説明も成り立つかもしれないんですけれども、従来、今言われた業態別子会社という問題は、原則としては銀行ないし証券が親会社となって、そして新設の、原則としてはですよ、証券銀行子会社にする場合に限られていたというふうに思うんです。今回の金融持ち株会社子会社の場合は、銀行証券と並んで新しい証券銀行をつくるだけじゃなくて、既存の証券銀行も傘下に入れることが可能になるということだと思うんですよ。  そうしますと、その際、例えば既存の証券会社がやってきた業務が今までと基本的に変わらないということで制限される、そういうことになればこの持ち株会社をあえてつくるうまみが出てくるのか。今まで証券会社としてはやれることをやっていたのに、今度既存のものもそこの中に入ってきて今までやってきたことがやれなくなって、じゃ一体どこに持ち株会社をつくってそのもとでやるうまみが出てくるのかということになると思うんですけれども、なおかつあえてそういうことをやる意味というのはどこにあるんですか。
  190. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先生の御指摘は、恐らく経過的な業務範囲の問題とのかかわりでのお尋ねではないかと、つまり業態別子会社の場合は経過的に業務範囲を制限しておる、既存の証券会社はフルラインでやっているということの違いをおっしゃっていると思いますけれども、基本的には持ち株会社制度ができたからといって銀行証券との関係、その子会社業務範囲の問題、解禁の問題、規制緩和の問題をここでその持ち株会社のために変えるわけではございません。経過的な措置が今度のシステム改革の中で一つのスケジュールとして規制緩和の中の項目に入っております。それをこの持ち株会社でもって特段変更するというものではございません。
  191. 笠井亮

    ○笠井亮君 その業務範囲については今後変更していくということになるわけですか。
  192. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 日本規制は証取法に基づいて行っておりますので私から御答弁させていただきたいと思います。  業態別子会社の方式におきます子会社業務範囲につきましては、この十月からも業務範囲の拡大を行いましたけれども、最終的には九九年度下期中に一般の現物、株式の取り扱いも含めてすべての証券業務に開放するというスケジュールを今ビッグバン上組ませていただいております。したがいまして、銀行局長が御説明しましたように、その考え方持ち株会社兄弟になる場合にも同じように維持されるということでございます。
  193. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうすると、大きく変更はないという銀・証分離の問題、これは実際はもう垣根がなくなっていくということで、業務範囲の問題ではそういうふうにしていくわけですからそういうことになるというふうに思うんですよ、そこのところは。そのことは大きな問題だと思います。  それから、もう一つ伺っておきたいんですが、本法案では金融持ち株会社グループに対する規制が極めて不十分じゃないかと思うんです。  例えば、銀行法の中で重要な規定である大口融資規制の問題でありますが、一昨日も拓銀問題で私は質問をいたしましたけれども、現行法では、本体で同一人に対する融資というのが広義自己資本の二〇%までになっていると。さらに、子会社がある場合には子銀行自己資本から親銀行の持ち分に相当する分を控除した残額の二〇%の合計額を超えない額、たしかそうなっていると思うんです。  そこで、金融持ち株会社の場合はどうなるかという問題なんですね。これができるとその傘下に銀行、信託銀行、ノンバンクなどを持つことができると思うんですけれども、それぞれが同一人に対して二〇%まで貸し出すことができるとしますと、この大口融資規制というのはこの持ち株会社のもとで完全にしり抜けになってしまうんじゃないかと思うんです。本法案にはこの問題で規制がないと思うんですけれども、今後子会社の範囲を広げていくという問題もあると思うので金融持ち株会社グループ全体への規制をきちっと何らかの形ですべきじゃないかと思うんですけれども、どうでしょうか。
  194. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先生のおっしゃいますように、個別の銀行の大口信用規制というのは、この間も二割、三割、四割という説明をいたしました。これは厳然として残っております。  今の御指摘は、グループ化したときにそのグループとして貸す範囲をどうするのかということでございます。  それは持ち株会社制度でなくても、その子会社をグループとして見た場合はこの子会社も合わせて考えるという議論にもなるわけでございます。要するに、グループとしてどこまで見るのか。単体として、今、二割、三割、四割と申し上げた。それをグループとしてどこまでとらえるか、あるいはとらえたときにどれぐらいの規制をかけるべきかというお話だと思います。  これは私どもとしては問題意識は持っております。今後、こういうことは検討してまいりたいというふうに思っております。
  195. 笠井亮

    ○笠井亮君 これはやっぱり非常に大きな問題だと思うんですよ、とりわけ、現実にいろんな問題が起こっている中での持ち株会社を今度つくっていこうという方向ですから。これは本来、検討ということじゃ遅くて、いろんな事態が問題になっているだけに、法律案を出すのだったらば、その段階で当然盛り込むべきだったという問題だと思うんですけれども、これはそれはそれとしてきちっと検討すべきだと私も思いますし、検討するとおっしゃっていました。  最後に、大蔵大臣に伺いたいと思うんですけれども、相次ぐ金融機関の乱脈経営破綻はこれまでの金融自由化規制緩和の中で引き起こされたものだったというふうに思うわけでありますが、政府が言ういわゆる日本版ビッグバン金融システム改革ですね、これがその方向を一気に大きく進めようとしているものだというように私は思うんです。  それで、アメリカのゴールドマン・サックス証券というところが出している「ジャパンリサーチ」というなかなかおもしろいのがあって私も興味深く読んだんですけれども、ここに日本版ビッグバンについて詳細にこの分析を特集してやっているんですね。そこでこう書いてあります。「ビッグバンの導入によって、金融持ち株会社銀行にとって選択肢の一つとなるであろう。連結税制が変わることは別にして、金融持ち株会社解禁だけでは大きなメリットはないと思われる。金融持ち株会社方式には何ら取り柄はなく、興味をそそられるものは何もない。」、こう書いてあるのでここまで言うかというふうに私は思ったんですけれども、さらに「都銀のなかで唯一勝者たりえるのは、ビッグバンに参加しない銀行である。」というふうに分析をしているので、なるほどこういう意見もあるのかなと思ったわけであります。  それからまた、既に兜町では四大証券の一角が崩れたという中で新四大証券という言葉がささやかれているというか、かなり公然といろんな関係者で言われているというんですけれども日本の一社以外は、これ具体的に言うとまたいろいろあるんでしょうけれども日本の一社以外は、あと三社はすべて外国証券になる、それが新四大証券だと。ビッグバンの出口は日本の業者がいなくなるというところまで兜町で議論があるということを聞いているんです。  政府の言うビッグバン前夜にして既にこんな状況になっている、それから海外の証券会社指摘もあるという中でこのままでいいのかという気が私はするんですけれども、こういう指摘自体、ビッグバンを目指されている中でどういう感想をお持ちになるか、伺いたいと思うんです。
  196. 長野厖士

    政府委員長野厖士君) 先ほど来の御質問の流れに沿っておると存じます。競争金融持ち株会社という関連でございます。  現時点で日本の金融、証券というものが世界の中でどういう立場に置かれておるかということが私は出発点であろうと思います。その場合に、日本金融機関証券会社持ち株会社等々の多角的な業務展開が許されない中で、世界じゅうの金融機関が、米国勢にしろヨーロッパ勢にしろ、銀行証券その他の業務を自由に駆使し、日本に進出する場合もその得意な分野で最も望ましい形で銀行証券相乗りの形で進出できるという形で、今、日本銀行証券は世界に立ち向かっておるという状況、そのハンディキャップを一刻も早く取り除いて国際競争で戦うのであれば、国際競争上許されておるだけの道具と自由度というものを日本銀行証券に与えていくというのがこれからの課題であろうと思います。  したがいまして、ビッグバン前夜において外国勢に押されておるというのは、まさにそれがビッグバンを必要としておる理由であろうと私は考えておりますし、そういった道具立てをこれから整えていく必要があると考えています。
  197. 笠井亮

    ○笠井亮君 終わります。
  198. 山口哲夫

    山口哲夫君 最初に、金融持ち株会社に対する監督の問題についてお尋ねをいたします。  まず、銀行、それから証券会社保険会社金融機関だけではなくて、これらを子会社に持つ持ち株会社大蔵大臣が、これからは金融監督庁長官になるんでしょうけれども、監督するその根拠というのは一体どこにあるのか、まずお聞きいたします。
  199. 山口公生

    政府委員山口公生君) お答え申し上げます。  銀行等子会社とする持ち株会社は、子会社であります銀行とか保険会社等の経営管理を行う会社でございます。その経営管理のあり方は子会社である銀行等経営にさまざまな影響を与えるわけでございます。したがって、銀行等のみを監督していたのでは預金者保護等の監督の目的の達成を期すことができないために、銀行等を監督する、今は大蔵大臣ですが、そのうち総理大臣に委任を受けました金融監督庁長官が銀行持ち株会社等も監督することとしたわけでございます。
  200. 山口哲夫

    山口哲夫君 よくわかりました。  そのことをちょっと頭に置きながら日銀の方に考査の問題についてお尋ねをいたします。  仮に将来、銀行持ち株会社の傘下の銀行破綻が信用秩序の維持に重大な懸念を生ずるおそれのある場合、日銀はこの銀行持ち株会社の傘下の銀行に対して特別融資を実施する可能性はあるんでしょうか。
  201. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) お答え申し上げます。委員御承知のとおり、日本銀行では信用秩序維持に資するための資金供与、これを行うに当たりましてはいわゆる四原則の考え方に沿いまして実行してきております。システミックリスク顕現化のおそれがあること、それから日本銀行による資金供給が不可欠であること、モラルハザード防止の措置が図られていること、そして日銀の財務の健全性にも配慮する、この四つの条件が満たされる場合に限って行ってきておりますが、お尋ね銀行持ち株会社傘下の銀行におきまして問題が生じた場合にはやはり同様の原則を適用しながら考えていくということでございます。
  202. 山口哲夫

    山口哲夫君 ということになりますと、日銀は銀行持ち株会社の傘下の銀行だけではなくして、親会社銀行持ち株会社本体の経営内容については常に重大な関心を持たなければならないと思うわけですね。それで、銀行の親会社銀行持ち株会社本体に対しても考査の約定を締結する必要があると私は思います。  先ほど直嶋議員からこの問題について質問があったと思いますが、そのときに松下総裁が、いわゆるグループの経営管理方針というものを常にやはり知っておく必要があるんだ、そういうことで検討をしたい、こういうふうな答弁をされたと思っております。  日銀としては、今お答えがありましたように、要するに傘下グループのそういった方針というものを把握しておく必要があるから考査の約定というものを銀行持ち株会社とも結んだ方がいい、そういうふうに考えたと思うんですけれども、そのように理解してよろしゅうございますか。
  203. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) お答え申し上げます。  ただいま委員指摘のとおり、持ち株会社銀行子会社経営を支配することを目的として設立される会社でございますので、銀行持ち株会社や他の子会社経営状況銀行子会社に影響を及ぼす可能性があると考えられます。したがいまして、その影響を十分考慮しながらその銀行子会社経営健全性ということをきちんと把握していく必要性がある、私どもが信用秩序の維持のための一時貸し付け等を行います場合にもその考え方が貫かれていかなければならないということでございます。  新しい日銀法が来年の四月一日から施行されますけれども、その日銀法におきましては考査は日本銀行が当座預金取引金融機関等との間で契約によって立入調査等を行うというふうな定め方になっております。したがいまして、銀行持ち株会社、つまり親会社である銀行持ち株会社というのは法律上の直接の考査の対象ということには必ずしも規定されておりませんので、銀行持ち株会社状況について私どもが十分な情報を得るためにはその新しい法律の枠組みの中でどういうやり方がいいか手続や方法に関して新しい工夫をよく凝らしていく必要があると、午前中の総裁のお答えは私はよく知りませんが、恐らくそういう趣旨でお答えになったのではないかというふうに理解しております。
  204. 山口哲夫

    山口哲夫君 日銀が持ち株会社経営についてもし考査ができないということになりますと、先ほどお話があったような特別融資についても非常に判断をしかねることが出てくるのではないだろうか、そういうふうに考えます。  先ほど副総裁の方からは四原則にかなえば当然持ち株会社についても特別融資の対象にしていきたいというようなお答えがありましたので、そういうことから申しますと、当然やはり持ち株会社実態についても考査をしていく必要が私はあると思うわけですね。ところが、銀行界の方からはどうもそれを好まない、銀行子会社である銀行も考査をし、またその親会社である銀行持ち株会社についても考査をする、そういう考査の重複については余り好ましくはない、ですから重複した考査については想定している範囲外の問題だというふうに言っているやに聞いているわけですけれども、そういうことで果たしていいんでしょうかね。銀行界の考え方についてどうでしょうか。
  205. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) 国会でもしばしば御議論を賜っておりますとおり、新しい日銀法のもとにおきます日銀の考査のあり方に関しましては新しい工夫を十分凝らしていくようにという御意見もちょうだいしております。私どももその方向で今大いに検討を進めているところでございますが、例えばオフバランスの取引等についての考査の手法を開発する、あるいは今おっしゃいました銀行持ち株会社を含めた組織形態そのものが変わる、持ち株会社という親会社もございますでしょうし、また下に銀行そのもの子会社というものを持つかもしれませんし、そうした全体のグループの実態把握というものをどういうふうに凝らしていくかということになりますと、いわゆる狭い意味での考査という範囲を超えて、一般的に日本銀行がどれほど十分な情報を把握し得るかというふうにやや視野を広げて工夫を凝らしていく、そこでどの程度カバーできるかということが私ども課題だというふうに認識いたしております。
  206. 山口哲夫

    山口哲夫君 いろいろと工夫を凝らすのは結構だと思うんですけれども、しかし特別融資の対象にしていくということを考えている以上は銀行側のそういったわがままというものは私は許されないと思うんですね。それは銀行側にしてみますと、親会社子会社も両方とも全部考査の対象になる、これじゃもうたまったものじゃないと。親会社子会社の間に憶測すれば利益を隠したり損失を隠したりいろいろあるんじゃないかと思うんですね。そういうような実態というものがもしあるとすれば、これは日銀の方としても明らかにしていかなければ、特別融資の問題にもつながってくると思いますので、そういうわがままを許すことがないように私はきちっとした方針で臨んでいただきたいなというふうに思いますけれども、その辺の御決意のほどをお聞きしたいと思います。
  207. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) ただいま委員指摘のようなお考えをよく踏まえて私どももしっかりした検討をしていきたいというふうに思います。  恐らく一部の銀行委員感じになっておられるような感じを持っているといたしますと、私どもの考査活動についての彼らの負担という面に非常に光を当てて物を考えておられる可能性があるのかなと思いますが、恐らく将来マーケットの中において銀行がよりすぐれた経営パフォーマンスを上げていくということになりますと、考査の負担という面だけではなくて、考査で指摘申し上げることをいかに経営に生かしていくかということのメリットの面、その両方を考えていきながら中央銀行に情報を提供することの価値というものをやはり新しく見出していってほしい、そういったところにしっかり働きかけていきたいというふうに思っております。
  208. 山口哲夫

    山口哲夫君 ぜひそういった強力な態度で進んでいただきたいと思います。  次に、持ち株会社と課税の問題について質問をいたします。  平成七年二月二十二日に通産省が企業法制研究会報告書というのを出しました。それによりますと、持ち株会社が同族会社の資産の保有、相続税対策のために使われるおそれがあると懸念をしているようであります。大蔵省も独禁法改正の際に租税回避の問題が非常に大きくなる、こういう心配もしていたようであります。  そこで、大蔵省の方にお聞きしたいんですけれども、現在でも海外法人である子会社活用した租税回避事件が裁判になっているというふうにも聞いておりますけれども、具体的にどのような事例が過去に問題になっているのか、また今後どのような事件が起こり得るのか、その辺についてお聞かせください。
  209. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 国税庁といたしまして特に海外法人であります持ち株会社を利用いたしました租税回避の具体的な件数及び金額については把握をしておりません。そこで、資本金一億円以上のいわゆる大法人の海外取引に係る大口の不正の脱漏所得、五千万円以上でございますけれども、その脱漏所得の状況を見ますと、平成八事務年度では件数で九十件、金額で百十二億円というふうになっております。  先生お尋ねに的確なあれかどうかわかりませんけれども、海外子会社を利用いたしました租税回避の内容といたしましては、本邦法人が海外子会社に対する架空の販売手数料等の経費を計上していたものや、本邦法人が海外子会社からの仕入れを水増ししていたものなどが把握されているところでございます。
  210. 山口哲夫

    山口哲夫君 裁判ざたになっている件数というのはどのぐらいあるんですか。大ざっぱでいいです。
  211. 乾文男

    政府委員(乾文男君) 今、海外案件で訴訟になっているという数字を持ち合わせておりませんので、後ほどまた先生に御説明させていただきたいと思います。
  212. 山口哲夫

    山口哲夫君 こういう事件が結構あるようですね。金融持ち株会社をつくることによってまたそこに脱税問題、租税回避の問題があらわれる、こういうことになるとこれはやっぱりゆゆしき問題だと私は思うわけで、当然これに対する対策というものが私は必要になってくるだろうと思うんです。  そこで、六月の参議院の商工委員会で、持ち株会社を利用した租税回避の対策研究課題にしていると、そういう答弁がなされておりますけれども、その後の検討状況についてお聞かせをいただきたいと思います。
  213. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 純粋持ち株会社というものが解禁になった、これによってどういう新しい問題が出てきたかという視点からの御質問であるとすれば、実は私ども、今御議論ありましたように、いわゆる事業持ち株会社というのは既に存在しているわけでございまして、これに伴って、種々の事柄が言われておりますが、純粋持ち株会社固有の問題が今後生じるという認識は持っておりません。したがいまして、親会社子会社の間での課税関係、これが的確にいくように今後とも努力するわけですが、金融持ち株会社ができるがゆえに何か新しい対応が必要という意識は持っておりません。  むしろ、私ども強い関心を持っておりますのは、持ち株会社が一般的になってきて、しかも事業経営形態もそういう集団、グループで企業経営していくということが一般的になったときに、先ほど来の御議論の連結納税制度というものが議論になってくると思います。この連結納税制度が仮に導入されますと、今考えられないようないろいろな租税回避の手法が広がるということは間違いないと思っております。それは脱税と言えるかどうかは別として、租税回避がしやすい環境になってくるということで、この点については大きな関心を持っているということは申し上げられると思います。
  214. 山口哲夫

    山口哲夫君 いろいろ問題が起きる可能性は今お答えのとおりなんでしょうけれども、それでは具体的にそういうものが起きてきた場合にどうやってそれを阻止することができるのか、そういったことについて、例えば法改正が必要になるのか、何か具体的な検討というのは進んでいるんでしょうか。
  215. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 今御答弁申し上げましたように、仮に将来の問題として連結納税制度というものを法人税制の中に組み入れていくというときには、本格的な連結納税制度であるのか、幅が非常にあります。国によって連結納税制度と言いながら手法はいろいろありますのでそれにもよりますけれども、仮にアメリカのように非常にパーフェクトな形の連結納税制度ということを考えるのであるとすれば、租税回避を防止するためにやはりいろいろ考えていかないといけない、制度的にも対応していかなければいけない問題は出てくると思います。例えば、国際間では移転価格税制という問題がもう今や税制に取り入れられておりますけれども、国内においてもそういうものを議論していかなければならないとか、例えばそういうことが考えられます。
  216. 山口哲夫

    山口哲夫君 いずれにいたしましても、そういう租税回避だけは何としても許してはいけないと思いますので、そういう点についての強硬な対策というものをぜひひとつ検討していただきたい、できるだけ急いでやっていただきたいということを要請しておきます。  最後に、銀行持ち株会社預金保険機構の問題について質問しておきたいと思います。  これはこの次にまた議論をする機会があると思うんですけれども破綻した銀行持ち株会社株式取得して救済する銀行持ち株会社、そういった銀行持ち株会社に対しても預金保険機構から援助が行われる可能性というものはあるんでしょうか。
  217. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先生お尋ね持ち株会社株式取得する場合という御趣旨だと解釈しますと、それはできません。なぜならば、持ち株会社自身は預金取扱金融機関ではございません。その傘下には証券会社とかいろいろ持っておりますので、それ自体を買収するときに預金保険機構が発動することはないというふうに思います。  しかし、その傘下にある預金取扱金融機関、つまり銀行救済するときは、それは預金者保護のためですから、それはございます。
  218. 山口哲夫

    山口哲夫君 なぜ聞くかといえば、アメリカの方では傘下の銀行子会社とともに銀行持ち株会社破綻する、その場合にアメリカの預金保険公社、FDICが資金援助をした事例があるというふうにも聞いているわけですね。ですから、そういうアメリカの例に沿って日本でも今申し上げたような破綻についてこれは救済をしていくということも起こり得るのかなという心配があったものですからお尋ねをしたわけですけれども、いかがでしょうか。
  219. 山口公生

    政府委員山口公生君) その点につきましては先生から教えていただきましたのでちょっと調べてはみたいと思いますが、筋論として言いますと、持ち株会社自身を救済する場合に預金保険が出るということはないと思います。そこの子会社である銀行破綻したときの処理として預金保険機構が出る、これはあると思います。だから、その類型からいいますと、銀行株式持ち株会社が持っておりますね、その部分だけを移すときに資金援助が出るというのはあるかもしれません。  いずれにせよ、今教えていただきましたので、はっきりわかるかどうかわかりませんが、ちょっと調べてみたいと思っております。
  220. 山口哲夫

    山口哲夫君 終わります。
  221. 石川弘

    委員長石川弘君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより両案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  222. 笠井亮

    ○笠井亮君 私は、日本共産党を代表して、金融持ち株会社解禁に伴う二法律案に対して反対の討論を行います。  第一に、金融持ち株会社解禁は、我が国金融制度の基本である銀行業と証券業を分離している垣根を撤廃し、銀行証券業務を初めリスク業務に本格的に参入する事実上のユニバーサルバンク制度を実現しようとするものであります。  政府金融持ち株会社解禁の理由として銀行経営効率化を挙げているように、金融持ち株会社グループは一体のものとして親会社経営戦略のもとに置かれます。これにより銀行業務証券業務が事実上一体化し、その結果利益相反、インサイダー取引などの不正取引が助長されるおそれがあります。また、銀行業務がますます投機的になり、経営健全性の維持はおろか預金者保護も弱められ、ひいては公共性、社会的使命を損なうことになります。  第二に、金融持ち株会社は、傘下に多くの金融機関を抱える巨大金融機関の出現を促進するとともに、会社株式を一五%まで所有できることなどにより経済力の集中を強めることになります。その結果、自由で公正な競争は抑えられ、中小の地域金融機関は金融再編の中で整理淘汰されることが懸念されます。  第三に、グループ経営により営利追求が最優先される結果、乱脈経営や不公正な取引が助長されることが予想されるが、監督体制が十分にとられておりません。また、グループ全体の経営内容の開示も不徹底なままであります。さらに、子会社で働く金融労働者の雇用と労働条件は一層不安定なものとなるのであります。  以上が二法律案に対する反対の理由であります。
  223. 石川弘

    委員長石川弘君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより順次両案の採決に入ります。  まず、持株会社設立等禁止解除に伴う金融関係法律整備等に関する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  224. 石川弘

    委員長石川弘君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、銀行持株会社創設のための銀行等に係る合併手続特例等に関する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  225. 石川弘

    委員長石川弘君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、牛嶋君から発言を求められておりますので、これを許します。牛嶋正君。
  226. 牛嶋正

    牛嶋正君 私は、ただいま可決されました持株会社設立等禁止解除に伴う金融関係法律整備等に関する法律案及び銀行持株会社創設のための銀行等に係る合併手続特例等に関する法律案に対し、自由民主党、平成会、民主党・新緑風会及び社会民主党・護憲連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     持株会社設立等禁止解除に伴う金     融関係法律整備等に関する法律案及び     銀行持株会社創設のための銀行等に係     る合併手続特例等に関する法律案に対     する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべき  である。  一 金融持株会社解禁により、銀行等が産業   支配を行うことのないよう、公正な競争促進   の観点からその実態について十分な監視を行   うとともに、預金者保護等の観点から銀行持   株会社グループによる株式保有制限や他業制   限等の規制が遵守されるよう努めること。  一 銀行持株会社グループ等の連結ベースでの   ディスクロージャーを充実させるとともに、   預金者等の利用者にわかりやすく経営情報の   開示を進めること。  一 銀行持株会社形態活用して、多様な金   融又は金融関連業務に進出することにかんが   み、銀行持株会社グループが行う金融商品の   販売に当たっては、商品内容の説明義務を課   し、銀行の影響力を行使した販売の防止等に   より預金者等の利用者が不利益を被ることの   ないよう配慮すること。  一 銀行持株会社以外の他の金融持株会社につ   いても、持株会社の設立手続を円滑にするた   めの方策について検討すること。  一 金融持株会社制度活用を促進するため、   金融持株会社の設立の際及び設立後における   課税のあり方について検討を進めること。ま   た、持株会社形態を利用した租税回避の防止   等にも留意すること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ御賛同いただきますようお願いいたします。
  227. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいま牛嶋君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  228. 石川弘

    委員長石川弘君) 多数と認めます。よって、牛嶋君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、三塚大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。三塚大蔵大臣
  229. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
  230. 石川弘

    委員長石川弘君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  231. 石川弘

    委員長石川弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十分散会