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1997-12-02 第141回国会 参議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十二月二日(火曜日)    午前十一時十一分開会     —————————————    委員異動  十二月一日     辞任         補欠選任      山本 一太君     野村 五男君  十二月二日     辞任         補欠選任      橋本 聖子君     松浦 孝治君      広中和歌子君     今泉  昭君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石川  弘君     理 事                 河本 英典君                 楢崎 泰昌君                 牛嶋  正君                 峰崎 直樹君                 上山 和人君     委 員                大河原太一郎君                 片山虎之助君                 金田 勝年君                 清水 達雄君                 西田 吉宏君                 野村 五男君                 松浦 孝治君                 今泉  昭君                 海野 義孝君                 白浜 一良君                 直嶋 正行君                 広中和歌子君                 岡崎トミ子君                 久保  亘君                 志苫  裕君                 笠井  亮君                 山口 哲夫君    国務大臣        大 蔵 大 臣  三塚  博君    政府委員        大蔵政務次官   塩崎 恭久君        大蔵大臣官房長  武藤 敏郎君        大蔵大臣官房金        融検査部長    原口 恒和君        大蔵大臣官房総        務審議官     溝口善兵衛君        大蔵省主計局次        長        細川 興一君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省国際金融        局長       黒田 東彦君        証券取引等監視        委員会事務局長  堀田 隆夫君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    説明員        労働省職業安定        局雇用政策課長  太田 俊明君        建設省建設経済        局建設業課長   中山 啓一君    参考人        株式会社住宅金        融債権管理機構        代表取締役社長  中坊 公平君        日本銀行総裁   松下 康雄君        日本銀行総裁  福井 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○罰則整備のための金融関係法律の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、山本一太君が委員辞任され、その補欠として野村五男君が選任されました。  また、本日、橋本聖子君が委員辞任され、その補欠として松浦孝治君が選任されました。     —————————————
  3. 石川弘

    委員長石川弘君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  罰則整備のための金融関係法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会参考人として株式会社住宅金融債権管理機構代表取締役社長中坊公平君、日本銀行総裁松下康雄君及び日本銀行総裁福井俊彦君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 石川弘

    委員長石川弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 石川弘

    委員長石川弘君) 罰則整備のための金融関係法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 最近、特に金融不祥事等に関連し、また株価の動向とも関連して金融関係議論が活発に行われている最中でございます。この際に、そういう問題の一端として金融不祥事再発防止のために本法案が提出され、金融システムの改革の推進に当たって検査監督実効性の確保及び金融証券市場公正性透明性の信頼を高めることが緊要の課題であるということは言うまでもないことであります。  そういう意味でこの法律案が提出されてきていると思いますが、本法案の一番の基本は、経済犯則を犯した場合の罰則として懲役刑、あるいは罰金刑引き上げるということが基本になっているように思われます。しかし、このような罰則水準引き上げるということはこの程度で妥当であるかどうかということが疑問になってくるわけでございますが、政府当局の本罰則刑事罰引き上げ水準についてどのようにお考えなのか、まず御説明を聞きたいと思います。
  7. 山口公生

    政府委員山口公生君) お答え申し上げます。  今回の金融関係罰則強化におきましては、例えば銀行検査回避虚偽報告等罰則の例をとって御説明いたしますと、現行は五十万円以下の罰金でございますが、それを一年以下の懲役または三百万円以下の罰金引き上げるとともに、法人に対しましては二億円以下の罰金に大幅に引き上げるものでございます。  この罰則強化及び法人重科につきましては、十分な抑止効果を上げる観点から設定したものでございますけれども、諸外国と比べまして申し上げますと、アメリカにおきましては三十年以下の禁錮または百万ドル、約一億二千万円以下の罰金、英国では二年以下の禁錮または罰金、ドイツにおきましては十万マルク、約六百五十万円以下の過料、フランスにおきましては一年以下の禁錮または十万フラン、これは約二百万円でございますが、以下の罰金というふうになっております。したがいまして、国によってかなりで区々でございますが、総じて言うと妥当な線かなと思うわけでございます。  ただ、よく議論されますのは、アメリカ民事制裁金という莫大な額の制裁金があるではないかという御指摘がしばしばなされます。これにつきましては、アメリカ連邦銀行法上の民事制裁金につきましては、銀行法令違反等を行った場合に監督当局当該銀行資産規模違反重大性等を勘案して制裁金を決定しまして、行政命令として科すわけでございます。銀行側がこれに不服があれば聴聞手続とかあるいは通常裁判手続を求めることができるわけでございます。  我が国におきましては、このような刑罰一つである罰金と同様の性格を持つ財産的制裁行政機関が科し得るということにつきましては、重大な不利益処分たる刑罰は厳格な裁判手続によって初めて科すことができるとする憲法の趣旨との絡みでもございますので、この点については慎重な検討が必要だという感じがいたしております。
  8. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今、例に挙げられた銀行検査回避あるいは虚偽報告につきましては、従来五十万円の罰金刑しかなかったということで第一勧銀の事件のときに大きな波紋を及ぼした事件だったと思います。五十万円の罰金だったら科せられたって大したことないなというような論調も行われました。それが今回、罰金は三百万円、法人については二億円になっているようですけれども、それと懲役一年以下という懲役刑まで付せられたということで大きな抑止効果があるのではないかというぐあいに思います。  しかしながら、ほかの不正取引に対する罰金等は、例えば相場操縦であるとか損失補てんであるとか、これは証券の方ですけれども、そういうのは従来から懲役刑があったわけですからこれを多少上げたところでそんなに抑止効果があるのかなというような感じもいたします。この点については、虚偽報告のところは確かに大きな成果が私は多分あるだろうというぐあいに思いますが、あとのところはこれで大丈夫なんですか。  というのは、今アメリカ事例についても申されましたけれども、現在、これはお答えいただかなくて結構ですけれども公的資金導入という議論が行われています。それに対して、第一は経営者責任ということ、それから第二はディスクロージャーの徹底ということ、ディスクロージャーについては後から言及をいたしますけれども責任問題ということが盛んに言われています。さらに、アメリカでは千八百人の方が経済事犯として刑事告発されて刑に服したという例があるではないか、日本は甘いぞという議論がございます。  そういう観点から見て、この程度引き上げで十分なのかどうか、再度御答弁を願いたいと思います。
  9. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今御紹介いただきましたアメリカにおきまして、Sアンドしが破綻したことを受けましてRTCが設立され、そこに財政資金が投入されたときに、詐欺横領粉飾決算等犯罪行為を働いた経営者に対しましては千八百五十九人が有罪判決を受けたという報告書が出ております。そういう厳しい対応をしておるわけでございます。  大蔵省としましても、これまで個別金融機関の処理に当たりましては、破綻金融機関を存続させない、あるいは民事刑事責任追及をきっちりやるなどの方針で対応してきておりますけれども公的支援の問題も種々御議論を賜っております。ますますそういった御指摘経営責任明確化という問題が強調されるわけでございます。  ただ、この問題は公的支援の云々にかかわらず、本来そういった罰されるべきものは罰されるというのを厳しくやっていくという姿勢は変わりなくやるべき事項だと思って肝に銘じておるところでございます。
  10. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 公的資金のことは今余り議論しようと思っていなくてしゃべっているんですけれども公的支援有無にかかわらず責任は明らかにすべきであると、こういうお話がありました。私ども自民党の中で現在金融問題安定化の小委員会をこしらえて公的資金導入の可否、その方法等議論いたしておりますが、その中で責任というものの強調がされております。新聞論調等を見ても、責任問題を明らかにしなきやとてもじゃないけれども公的資金の話まで入れないよと、こういうお話でございました。  この責任という問題は実は政府、端的に言えば大蔵省責任問題で議論されているわけですが、当然経営者責任ということが議論されていくわけですね。そのときにこの程度罰則で十分と考えるのかどうか、その点もまた議論になると思います。ある意味では先取りかもしれません。公的資金導入についての議論先取りかもしれません。しかし、この程度でいいのかどうかということが議論されると言われます。  そこで、今、銀行局長が千八百人の刑事判決が出たというお話でございますが、政府説明でも詐欺とかなんとかいう言葉が出てきましたよね。いわゆる経営破綻というのは実は現在のような資産デフレになっていると非常に避けられない状態のものがあるわけですね。通常犯罪行為に及ばなくても経営破綻をするという会社が当然出てくるわけでございます。あるいはそれに特別背任とか何かが加わるという問題があります。  この間テレビリチャード・クー氏が言及された中には、いや、実は経営破綻というのはなかなか責任が問えないんだけれども、実は千八百人というのは、その多くは会社の乗っ取りをやって詐欺その他を働いたのが相当いるんだよと、そういうのが多いんだよと、いわゆる経営破綻責任だけを問うたわけではないんだよと。それはむしろ少ないと言うと言い過ぎかもしれませんけれども、そんなに数多くなかったんだよというような発言テレビでされておりまして、私は確認しておりませんけれども大蔵省としてはそういう発言についてどう思うか。リチャード・クー発言についてどう思うかというのは、公的な発言をしたわけじゃありませんからお伺いするのは若干問題があるかと思いますけれどもアメリカ経済事犯性格というのは、例えば乗っ取りをやって、SアンドLについては乗っ取りが随分あったそうで、それは私どもも聞いておりますが、乗っ取りをやって政府の保護を利用して極めて悪質なお金集めをやって破産したという事例があるようにも聞いておりますが、それについて政府側はどのようにお考えでございましょうか。
  11. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私、正確に状況を把握しているか自信はないわけでございますが、私の方の持っておりますレポートでは、主に罪状として挙げておりますのは当局への虚偽報告資産隠匿横領詐欺等でございます。もちろん、RTC金融機関経営者等に対して民事上の責任追及したというふうに聞いております。したがって、刑事の問題と民事損害賠償的な問題とはやはり切り離してあるのではないかと思います。  一つ事例をちょっとこの機会に御紹介させていただきますと、リンカーン貯蓄貸付組合というのが事件を起こしております。この組合不動産親会社の元会長で同組合実質的オーナーだった男が、粉飾決算詐欺行為不動産取引を通じて親会社当該貯蓄貸付組合利益を水増ししまして、私的な目的のために同組合資金を流用しまして、それでリンカーン貯蓄貸付組合を破綻させております。これにつきましては、最終的には連邦地裁禁錮十二・七年、損害賠償金千二百二十四万ドル、上告中ということでございますが、そういった形での刑事及び損害賠償としての民事というのが責任追及されているわけでございます。  そういった不正行為がある場合につきましてこういった厳しい追及がなされているというのが実情ではないかと思います。
  12. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 今御説明のあったように、いわゆる刑事罰的なもの、要するに詐欺等を含んで行われるというのは当然それなりに摘発をし、そしてやっていかなきゃいかぬというぐあいに思いますが、今、公的資金ということを議論しているときに責任責任責任責任というのを言っていると。その責任というのは一体何を言っているのかということを、今言われましたように、アメリカ事例というものが皆さんの頭の中にあるわけですから、そのRTC告発状況あるいは裁判事例等をよく考え責任とは何ぞやと、責任はもちろん追及をせねばいかぬと、しかし一般的に景気が悪くなってきたから疲弊してきたんだというのまで経営者責任であるというぐあいに議論するのかどうか、そういうことをきちっと整理をしておいてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  13. 山口公生

    政府委員山口公生君) その点につきましては、責任という言葉がいろんな局面でいろいろな意味を持って使われております。ただ、私ども議論をしなければいけないのは、今、委員の御指摘になったそれはきちっとした法的な意味での責任というようなことが基本にならなければならないだろうと思っております。
  14. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 余り大蔵省がそう言うと、大蔵省責任逃れやっているんだとまた言われちゃいますから、気をつけて議論をせにゃいかぬのだろうと思います。やはり、責任問題というのをただ一言で責任問題、はいそうですかと言って、今一般的に言われているのは、会社あるいは金融機関がどんどん疲弊をしていっている、それに対して経営者は一体その責任をどうするんだというような問題だと思います。しかし、個々について言ってみれば、私はやっぱり経営判断ミスというのは当然あったのかなというような感じもしますけれども、そういう意味責任論というのを十分議論をしておいていただきたいと、かように希望をいたします。  さらに、先ほど政府の御答弁の中で粉飾決算という言葉が出てきました。実は、ごく最近の山一事件の二千六百億に及ぶ簿外債務、明らかに粉飾決算なんだろうと思いますが、参考人意見聴取の中では粉飾決算ということはなかなか向こうから出てこなくて私も質問者として大変苦労したんですけれども、いずれにしても粉飾決算であったというぐあいに思います。  それは、平成四年以来、例えばペーパーカンパニーに全部閉じ込めちゃって、飛ばしとかそういうことはやっていないんだというような説明もございましたけれども監視委員会としてはどういうぐあいにこれを認識し、対処しようとしているのかちょっと御説明願いたいと思いますが、いかがでしょうか。
  15. 堀田隆夫

    政府委員堀田隆夫君) お答え申し上げます。  証券取引等監視委員会といたしましては、山一証券に対しまして過去二回検査に入っております。官房金融検査部合同で入っておりまして、金融検査部の方は財務面検査をする、私ども会社経営なり営業の中で法令などの市場ルール違反する行為がなかったのかどうか検査をするという仕事の分担でやっているところでございます。  私どもといたしましては、過去二回の検査におきまして、いわゆる簿外債務発生原因一つと言われておりますが、飛ばしの有無につきまして、その点を念頭に置きつつ事実解明に努めたところでございますけれども、そのような取引を把握するには至らなかったということでございます。  いわゆる飛ばしというものは、顧客の保有する評価損を抱えた有価証券決算期の異なるほかの顧客証券会社の外で顧客間の直取引という形で転売を重ねていく、それを証券会社が仲介をするということでございまして、一般的に証券会社の帳簿には痕跡の残らない取引であるということがございます。  また、私どもの実施しております検査は、官房検査部検査も同じでございますけれども行政検査でございまして、相手方協力をもとに事実解明を行うということを基本としておりますので、相手方の十分な協力が得られない場合にはなかなか発見、解明には困難な面があるということを御理解いただきたいと思います。  ただ、困難だということでとどまっていていいものとは決して思っておりません。私ども山一証券に対しましては、十一月二十五日からまたこれも検査部合同特別検査に入っております。  その中で、簿外ではございましても証券会社役職員が関与している以上は何らかの痕跡が残っている可能性は十分にあるわけでございまして、その点の現物の検査を徹底する、あるいは顧客から事情を聞くというようなことを通じましていわゆる飛ばし行為の実態をこの際徹底的に解明いたしまして、法令違反等があれば厳正に対処してまいりたいと思っているところでございます。  また、今回の検査の中で得られました経験といいますか、ノウハウを生かして今後のこの点についての検査能力の向上に努めてまいりたいと思っているところでございます。
  16. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 先般、予算委員会参考人意見聴取の中で行平氏の言を聞いてみると、二千六百億円の簿外がございました、そのうち千六百億円は国内分でございます、差額分山一オーストラリア欠損として累積したものでありますという御説明であったように思います。そのうち国内の千六百億円については、平成四年一月一日以降は証取法の改正がございましていわゆる飛ばしはやらなかったんだ、そして五つペーパーカンパニーにそれ以前の飛ばしの結果として生じた欠損を閉じ込めたんだ、閉じ込めるに際して金融が必要なのでスイス系信託銀行から二千億を特金で調達をして、その二千億で五つペーパーカンパニーに閉じ込めたんだ、したがって平成四年以降は飛ばしはやっていないというような御発言があったように思います。  それについてはどのようにお感じでございますか。
  17. 堀田隆夫

    政府委員堀田隆夫君) 前会長が国会の参考人質疑の中でそういう御発言をされたということは十分承知をしております。  その点の事実関係につきましては、私ども、先ほど申し上げましたように、現在特別検査に入っているところでございまして、その中で確認をしていきたいと思っております。  ただ、平成四年一月に証券取引法改正がございましたが、その問題が一つキーポイントとして出ておりますけれども、この法改正はいわゆる損失補てん刑事罰をもって禁止するというところを中心とした改正でございまして、損失補てんの問題については改正前と改正後で取り扱いが異なるということになるわけでございます。  いわゆる飛ばしという問題につきましては、一義的に私どもまず該当する可能性があるかどうかということで検討しなければいけないなと思っておりますのは、特別の利益を提供して顧客を勧誘する行為、これは省令になりますけれども、いずれにしましても法令上の禁止行為でございまして、これは刑事罰則はついておりませんで行政処分対象になっていくということでございますけれども、過去、飛ばしにつきまして、委員会発足後、二つの会社についてその特別の利益提供行為に当たるという認定をいたしまして大蔵大臣に勧告をした経緯がございます。  そういった必ずしも法改正にかかわらない問題もそこにはあるということで、いずれにしましてもこの際事実を徹底的に解明していきたいと思っておるところでございます。
  18. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 行平さんの御証言によれば、平成四年以後は飛ばしはやっていないというお話でありました。また、新聞等で飛ばしがあったよあったよと盛んに書いているのは平成三年当時の話で四年以降は余り書いていないように思うんです。しかしながら、その点は十分御調査をやっていっていただきたいというぐあいに思っています。  そこで、今御発言の中で、飛ばし行為については省令禁止をしている、行政処分対象になるが罰則対象にはならないんだということを仰せになりました。  これは証券局長にお伺いしますが、そのとおりでよろしいんですか。そしてまた、それはなぜ今回の改正に入ってこないんですか。
  19. 堀田隆夫

    政府委員堀田隆夫君) ちょっと言葉が不足しておりまして申しわけございませんでした。  いわゆる飛ばし行為がまず特別の利益提供行為に該当するかどうかというポイントがあるわけでございますけれども、さらに証券会社顧客間の直取引を仲介する際の勧誘の態様といたしまして、損失が発生した場合にはそれを補てんする、それを約束して一定の利益提供約束するというようなことがございますれば、それはいわゆる利回り保証になるということでございまして、その場合には犯則事件といいますか、刑事罰のついた法令違反ということにもなってくるわけでございまして、そういう方面への展開も考えながら検査を進めるということでございます。
  20. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 やっぱり注意して物事を発言していただかなきゃいけないので、飛ばしは罰則がないんだよというのでは困るんです。飛ばしは利益供与が当然くっついていて飛ばしがあるので、利益供与がなくて飛ばしなんかやるわけはないんですから。その際には、こういうことを立証する。それは恐らく口頭の約束であるとか、いろいろ表に出にくいので皆さん方としてはなかなか把握しにくい場面だと思いますけれども、やっぱり飛ばしというのは罰則がついておるんですよ。それを厳重に取り締まっていくんだということでなければならぬと思います。実戦部隊としては証拠がなかなか見つからない、要するに利益を提供するという約束が調わない、証拠が集まらないというようなことで難しい場面だと思いますけれども、飛ばしがあれば必ず利益供与があるわけですから、なければ飛ばしはないんですよ。その点は気をつけてやっていただきたいというぐあいに思います。  さらに山一のことについて申し上げますけれども山一オーストラリア為替差損あるいはディスクロージャー損失というものをどうもつけていたようです、私は余りよくわからないけれどもそのようですと行平さんはお答えになりましたが、そういう事実はわかっているんですか、わかっていないんですか。
  21. 堀田隆夫

    政府委員堀田隆夫君) その点もただいまの特別検査の中でこれから解明していきたいと思っておるところでございます。
  22. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 そこで、山一損失はもちろん簿外であったわけですから当然ディスクローズされていないわけですね。簿外というのはディスクローズしないから簿外なんでしょうが、当然簿外も含めてディスクローズすべき義務があり、有価証券報告書不実記載ということに当然なると思います。  今、一般的に、先ほど申し上げたように、金融機関の問題としては責任を明確にすること、それからディスクロージャーを十分やることというような条件がついていると思いますが、ディスクロージャーを充実するといっても、どういうぐあいに現在ディスクローズがなされていて、何をあとディスクローズすれば金融業界としては最も適当なんでしょうか。
  23. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 最近、もろもろの事案がディスクロージャーの重要性とそれに対する私どもの取り組みの課題を設定しておるように存じます。  先ほど来御指摘簿外債務の問題、これは本来的にきちんと会計処理すべきものを簿外で隠したということでありますから、既存の枠組みにおきますディスクロージャー義務に対して大変疑義のある取引が行われておると。これはそのようなものとして、粉飾決算と申しますか、有価証券不実記載と申しますか、その面からの問題点というのは監視委員会においてお調べいただけるものと考えております。  その上で、最近幾つかの上場企業で、これは金融も含みますけれども、建設業その他におきまして上場企業の破綻という問題が起きました。そのとき必ず起こりましたものは、破綻前の決算期におきますディスクロージャーと破綻直後に整理して発表されたものとの乖離が余りにも大きいのではないかという問題、会社粉飾決算をしておったのか、あるいは公認会計士がそれに加担しておったのかという問題提起でございました。  もちろん、その過程で先ほどの山一証券の問題と同様に意図的に一般の会計基準と異なる扱いを会社がやり、公認会計士がそれを幇助してやったということになりますと、法に照らして厳正に対処すべき事柄と思っておりますし、そういったものとして取り組ませていただきます。  しかし、もう一つその上で私が今問題意識を深く持っておりますのは、そういった突然の大きな計数の変化が、貸付金の毀損、関連会社あるいは子会社に対する貸付金がある日大きく引き当てを計上せざるを得なくなる。あるいは債務保証を行っておりまして、その債務保証がある段階で子会社の破綻等によって突然実行しなければならなくなる。したがって、子会社あるいは関連会社の破綻ということが起こった途端に会計処理のルールとして今までは引き当てを計上しなかったが一斉に計上しなければならなくなる。その取り扱いは実は金融機関あるいは建設、ゼネコン等で共通に行われておりまして、それで急に資産、負債のバランスが崩れます。崩れた結果、経営のよくなかった企業が破綻、銀行やゼネコンで破綻ということになりますけれども、それをのみ込んで健全に経営していっている銀行やゼネコンもある。  したがいまして、ここにある問題は破綻に至った会社だけが特異な決算操作をやっておったということでなく、貸付金の会計処理あるいは債務保証の会計処理という一般的なルールの中にもう少し見直すべき点がないのかという点でございます。  したがいまして、現在、貸付金に関しましてはかねて既に問題がございましたので、銀行の早期是正措置の導入とあわせて自己査定という手法を銀行に持ってもらい、貸付金の査定、つまり引当金の計上を適正に行うという方向の準備が進められておりまして、そこの手法が確立されればこれは私は他の業態にもそれを広げていくことができるだろうと考えております。  債務保証の問題につきましては、現在、公認会計士協会にお願いいたしまして、これは主としてゼネコンで起きますのでゼネコンを例にしつつ、どの時点で債務保証について引き当てなりしかるべき会計処理をすべきかということを研究していただきたい、こう思っておりますが、その研究がまとまりますれば、例えばこの間の三洋証券も債務保証が大きなきっかけだったわけでございますから、こういった会計実務、会計ルールというものの整備をもう少し図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  24. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 御説明だけを聞いていますと、いや問題意識も十分持っている、一生懸命やっているという話ですけれども、実は金融危機に際してそういうことをぴしっぴしっと片づけていけよということを政府側から言明をされないと皆さん困っておられるわけですよね。突如として破産した、突如として子会社あるいは債務保証が爆発したと、いやそれはしようがないんですよというわけにはいかないんですね。それではディスクローズして、いや私の会社は大丈夫なんですよ、こういうような状態ですよと言っているのが全部ディスクローズの役に立っていなかったということになるように思うんですね。  今、ディスクローズというのは実は銀行を含めて言いますと二つございまして、全銀協が自主規制によってディスクローズのいろんな項目を決め実行しておられる、今は全国銀行はそれを実行されているけれども実は信用組合や信用金庫の方は十分にはまだ行っていないよというような問題が一つと、それからもう一つ有価証券報告書証券取引法で項目が定められていまして、有取法上の有価証券報告書でディスクローズがされているという問題と二つあるように思うんです。ディスクローズといっても二つあるように思うんです。  例えば、ごく最近の北海道拓殖銀行を例にとりましても、個別の銀行の話をするのは余り好まないんですけれども、不良債権というのが発表されています。破綻先債権が千三百九億円、延滞債権が三千六百五十八億円、金利減免等債権が四千三百六十一億円、計九千三百二十九億円ありますよと。これは有価証券報告書で報告されているわけですよ。  しかし、問題は、今、政府側がちょっと言われましたように、債務保証であるとかあるいは子会社に対する貸付債権等が破綻すると瞬く間に倍になってしまうというような感じがするわけです。  今、私は拓銀の不良債権を申し上げましたけれども有価証券報告書ではこれだけなんですね、ざっと発表されていることは。中身は全然わからないわけですよ。  それについてはこういうような有価証券報告書の記載で十分であるというぐあいに政府側としては考えておられるんですか、どうですか。
  25. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 貸付金に対します評価のあり方、そしてそれの開示のあり方につきまして一般論として先ほどお答え申し上げました。  銀行につきましては、私どもの証取法に基づきます一般企業と同列のディスクロージャー以上の義務が銀行法上課せられ、それに対応していただいておると存じますので、その範囲につきましては銀行局長の方から御答弁させていただきたいと存じます。
  26. 山口公生

    政府委員山口公生君) 不良債権のディスクロージャー問題というのは真剣に取り組むべき議題だと思っております。  現在、どういうことでやっておるかといいますと、各金融機関が統一的な基準でもって数字を洗い出しているわけでございます。それで、先ほど先生おっしゃいましたように、ようやく来年の三月期で信用金庫、信用組合まで全部同じ基準で公表するというふうになりました。その公表の基準は破綻先債権、延滞先債権、金利減免等債権となっております。  破綻先といいますのは、これは言葉どおりでございまして、相手方が破産したとか、会社更生法の適用があったというようなものでございます。二番目の延滞債権といいますのは、これは税法との関係がございまして、六カ月の延滞というものを基準にしておりまして、それ以上の延滞になった場合これに掲げるというふうになっております。それから、金利減免等債権は約定改定時の公定歩合以下の水準にまで金利を引き下げた場合というふうな一つの基準でやっております。したがって、その基準で出てきたものは、もし隠していれば別ですけれども、きっちりそれをやっている限りにおいてはどの銀行も信用金庫も信用組合も同じ基準で同じベースで数字を出します。それが十分かどうかという議論は先生の御指摘のとおりあると思います。  ちなみに、アメリカの場合は少し考えが違いますけれども、やはり一つの基準をつくっております。端的に申し上げると、六カ月と申し上げたところが正確に言うとちょっと違いますが三カ月、こういうふうになっております。それから、金利減免のところは公定歩合云々というのをリストラクチャードということでちょっとでも何か条件を変えたらという基準が少し違います。そういう基準が違うんです。ところが、ヨーロッパ等はほとんどそういう基準がない。自主的にやりなさい、こうなっております。  したがって、国によって対応が違いますけれども、我が国においては一つの基準でもってそれを出しなさい、それでディスクローズしなさい、こうなっておるわけです。それで、私がしばしば二十七兆九千億とか申し上げているのはそれをトータルしたものです。それが時系列的にずっと見ているとだんだん減ってきておりますよ、引き当て済みのもの、あるいは担保でカバーされたものを考えると要処理というのも少しずつ減ってまいっておりますよ、だから全体としてはよくなっていると時系列的には言えますよということを申し上げているわけです。  それと、個々の金融機関が不良債権という問題をどう抱えているかということ、またそれが破綻したときには実際その基準に当てはまらないものがとれない、つまり回収できないということで出てくるのではないかという問題は確かにあるわけでございます。ただ、基準を設けて開示しませんと、ある銀行は物すごく厳しい基準で出してくる、ある銀行は非常に甘い楽観的な考え方で出してくる、これはある意味では預金者にとって誤った情報になるということであります。非常に難しい面でありますけれども、できるだけその辺をきっちりディスクローズしていくという方向で考えていくべき時期に来たであろうと。  一つの基準でやっておりますのがようやく全金融機関が来年の三月期でそろうという状況で、随分出おくれたなというおしかりがあるかもしれませんが、本来金融機関はディスクローズすると預金がどんどん取りつけに遭うんじゃないかという恐怖感があったんだと思うんです。しかし、現在の世の中は市場から評価されなければかえってだめだということですから、これからはディスクローズをたくさんしている銀行ほど信頼される、その内容が何か問題があるとしても、全部それが公表されるという方がむしろ信頼を仰ぐという時代にだんだん入ってくると思います。  したがって、この不良債権問題のディスクローズ一つをとりましても、時代は変わっておるし、金融機関のマインドも変わってきております。そうした中で当局としてどういうふうな形でディスクローズを推進していくかという問題は緊急の課題になっているというふうに承知しております。
  27. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 ヨーロッパでは別段余り大した基準はないよと。ヨーロッパはヨーロッパでいいんですよ。日本は今や、先ほどちょっと申し上げたように、公的資金を入れるという議論をされているときにさてディスクローズをどうするかという問題が議論されているので、ヨーロッパでどうだろうがアメリカでどうだろうが国民の信頼を得なきゃいかぬ。我が国の企業はどうも隠しに隠しまくっているような感じがしていて、それを一体どういうぐあいに考えるかというのが現在の問題だろうと思うんです。  そして、会社の損益あるいは損失について、不良債権をどれだけ今持っているんだと。確かにバブルの影響で日本に特殊の現象かもしれません。しかし、不良債権がどれだけあるんだと、危険性かどれだけあるんだということを表現しなきゃならない。その不良債権が税務の基準に引っ張られて、緩くなっているというのかきつくなっているというのか表現の仕方が両方の角度から見えますけれども、要するに不良債権の定義がきつくなっているわけですね。そして、ほかにもあるかもしれないねというような状態で今ディスクローズがされているのではないかというような感じがするんです。  しかし、ここのところは十分か十分でないかというのは、制度としての議論を今やっているわけですから、おっしゃるように、政府の方は一つの基準で見てそれが大勢として多くなっているかどうかを申し上げているので個々の会社についてさてそれが適当かどうかを議論してはおりません、こういう話ですからそれはそれで置いておくとして、制度の問題としては実は、先ほど政府側からお話になりましたように、デリバティブの損益が一体どういうぐあいに評価をされているんだろうかと。という意味は、山一でも同じなんですけれども山一の場合は、行平さんは仕組み債でございますのでその損益について私はわかりませんというようなことを平気で言っているわけですよ。確かにわからないらしいですね、仕組み債というのは。幾つもの商品がコンバインされていて評価がなかなか難しい、こういうことのようでございます。  ということは、デリバティブは非常に難しいということ、それから債務保証はこれは相手の会社を調べないと債務保証をしているがいつ爆発するかわからないということでございますので、ここら辺が不良債権の問題と含めてどのようにディスクローズされて国民の目に明らかにされていくのか、その点について御質問したいと思います。
  28. 山口公生

    政府委員山口公生君) 銀行について申し述べたいと思います。  デリバティブ取引は大変活発になってきております。このデリバティブにつきましては、非常にリスク管理が難しい、いろいろなリスクが大きいということで国際的にもこれを規制すべきではないかという議論もありました。しかし、今の世界の大勢はそうではありません。むしろ規制をしていくよりはちゃんとディスクローズをして市場がチェックをするような仕組みの方がいいのではないかという方向に来ております。したがいまして、今、先生の御指摘のとおり、市場からチェックを受けられる形でディスクローズしていく必要があるわけでございます。  それで、最近のデリバティブの伸展に伴いまして、金融制度調査会でもこのデリバティブ取引にかかわるリスクに関する情報の開示の充実は必要であるというふうに指摘されております。  したがいまして、全銀協の統一開示基準におきましてもデリバティブ取引情報、オフバランス取引情報、リスク管理情報が開示項目として決められております。したがって、ここできっちりとその状況をディスクローズするというふうになっております。  それから、お尋ねの債務保証につきましても、潜在的な偶発債務でございますから非常に大切な情報なわけでございます。これは金融機関の場合は業として行う与信業務の一部でもございます。したがいまして、金額も多いことからも銀行法施行規則で貸借対照表に計上され、公表しているという状況にございます。  今おっしゃったデリバティブとか債務保証というところはこれから大変大事なディスクローズ項目であろうというふうに思います。
  29. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 まず、債務保証については危ないなということはよくわかるんだけれども、危ない取引先だから債務保証しているわけですよね。常に大きなあれがある。これはいわゆる不良債権であるとか延滞債権であるとか、そういう区分はないわけですよ。全体が怪しいか怪しくないかということは、一つの幾ら幾らということで出ていて、債務保証の中で危ないものはこれよというのは表示されていないんじゃないんですか。  それから、さらにいえば、ディスクロージャーをデリバティブについてもやっている、またやらにやならぬということであるが、特に金融機関の決算は時価主義によるということで時価主義によって時価の表示をしなさいという規定がございます。例えば金融先物なんかですと時価がはっきりわかるわけですね。しかし、先ほど山一の場合で申し上げましたけれども、仕組み債ということでやられるとこれは時価がわからないわけですね。  そういうような市場時価というものがないデリバティブというのが現在横行しておるような感じがいたしますが、それについてどういうぐあいに対処しようと考えておられますか。
  30. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 一般的に、銀行に限らずでお答え申し上げますけれども、デリバティブにつきましては、すべてのデリバティブ取引につきまして平成九年の三月期から取引内容等の記述を有価証券報告書上求めますとともに、契約額及び時価を財務諸表に注記事項として開示するということにいたしております。注記事項として開示するという意味は、公認会計士の監査対象になるということでございます。これは上場デリバティブについて行っておりますけれども、非上場のデリバティブ取引につきましても十年三月期から時価を開示いたしたいと考えております。  デリバティブは非常に複雑な取引でもございますし、またリスクというものをどういうふうに、時価はわかったけれどもリスクはどうなんだという御質問が次に当然あろうと思いますけれども、そのあたりがわかり得るように、取引内容等の記述を求めるというのはどういう性格とリスクを持った取引であるのかということがわかるような仕組みが考えられないかというようなことでございまして、諸外国の例なども参考にしながらさせていただいております。  債務保証につきましては、まず債務保証は、銀行局長が申し上げましたように、有価証券報告書上そういったものがあるということは注記することになっておりますけれども、これにはまたはっきりとした債務保証にとどまりませず、債務保証の予約とかいうような形態がございます。それらも含めてどこまで開示を求めていくかということを公認会計士協会に考えていただいているわけでございます。  それから、その債務保証が子会社状況によっていつ債務保証の履行が迫られるだろうかということにつきまして、その引き当ての計上時点ということを考えていかなければなりません。これは貸付金と非常に似た側面を持っておりますけれども、個人的な感触を言わせていただきますと、従来の考え方がやや税務の基準に引っ張られたという印象を持っております。  税務上はやはり公平が第一でございますから、会社が更生法の適用を申請したとか破産を申請したとかいう客観的な事実があった場合に初めてそれを損金として認識する、どうも危なそうでございますから損金に計上させてくださいというものは決算操作の可能性がございますから税務上は客観的な基準で会社更生法というやり方でございますけれども、それを企業会計上もそのまま踏襲いたしましたためにノンバンクなどがある日会社更生法の適用になった瞬間にどっとロスが膨らんできたという嫌いがございますから、それを税務の目とは別に企業会計上だんだんと悪くなっていく状況に見合った引き当てをどう計上していくかということが、貸付金につきましても債務保証につきましても、これは公認会計士のすぐれた高度の知識の中で解決策を見出してもらいたい、こう考えておるわけでございます。
  31. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 御説明ありましたように、いろいろな問題点はございまして、微妙な点、すなわち債務保証の危険性だとかデリバティブのリスクだとか、そういうものについてまでディスクローズは及んでいない。それを及ぼすのがいいかどうかというのは一つの判断であると思います。しかし、世間は情報開示、ディスクロージャーをしっかりやらなきやとても公的資金なんて出せないよという議論が行われているわけでございまして、そういうものについてこれからどういうぐあいに対処していくおつもりであるのかがこれからの選択の問題であるというぐあいに思います。十分その議論を詰めていっていただいて、ここまではできる、ここまではできない、それでこれ以上はできないんだけれどもやっぱり市場で判断をしてもらうよりしようがないねというのかどうなのかというのが今迫られている、政府としての決定が迫られているという感じがいたします。  時間がそろそろなくなってきましたので、最後に大蔵大臣、今までの議論をお聞き届けいただきましたから、特に金融機関責任問題、情報開示等についての御所見を最後にお伺いしたいと思います。
  32. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) ただいま楢崎委員の御指摘、今日の預金者保護の万全、金融システムの安定維持、これに対する諸施策の断行に当たりましては当然のことであります。今日までもこのことはそれぞれの機関に周知徹底をしてまいってきたつもりでございますが、これからもその趣旨を踏まえ、対応してまいりたいと存じます。
  33. 楢崎泰昌

    楢崎泰昌君 質問を終わります。
  34. 石川弘

    委員長石川弘君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時十分開会
  35. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、罰則整備のための金融関係法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  36. 海野義孝

    ○海野義孝君 平成会の海野義孝でございます。  本日は、住宅金融債権管理機構の中坊社長には御多忙のところをわざわざおいでをいただきまして、最初にいろいろと御質問させていただきます。よろしくお願いします。  ただいま金融証券等の不祥事問題が頻発しておりまして、そうした中で金融システムの安定の問題、あるいはまた預金者保護の問題等々いろいろな問題を抱えて終盤国会におきまして日夜大変な審議が続いているわけでございますけれども、顧みますれば、昨年の六月に成立いたしました住専関係法案以降、やはりそのときが遠因となっていろいろな問題が今日に至っているというように私は思うわけでございます。  そこで、きょうは中坊社長においでいただきました。昨年の七月に住管機構が発足いたしまして、十二月から本格的ないわゆる債権の回収にお入りになってちょうど丸一年経過したわけでございますので、この機会に一度関係委員会で中坊社長のお話を聞くということは今後のためにも大変意義のあることであると、私はこのように思いまして、きょうは限られた時間でございますけれども、お招きしましてお聞きするわけでございます。  早速本論に入りますけれども、住宅金融債権管理機構が発足しましてから本格的な債権回収はちょうど一年でございますけれども、これまでの経過についてお聞かせいただきたい。  まず第一点としましては、総勢どのくらいのスタッフで、そして譲り受け債権額は幾らで今日までどのぐらい回収に成功されたというか、回収なさったかという点について簡潔にお答えいただきたいと思います。
  37. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) それではお答えさせていただきたいと思いますが、当社といたしましては最初からの人数が千百名ぐらいで発足をいたしておりまして、その後ふえましたものとしてはやはり弁護士の関係が多うございました。それで、きょう現在、顧問弁護士等をまぜますと約六十名の弁護士が現在関与しているというところが新しい移り変わりではなかろうかと思っております。  それから二つ目におっしゃいました幾らで譲り受けたかということでございますけれども、いわゆる貸付債権が一番この場合の問題でございまして、貸付債権というのは総額四兆六千億円という譲り受け価格になっております。ちなみに、そのうち二兆六千億がいわゆる不良債権でございまして、残りの二兆は一応正常債権、このように区別を受けまして譲り受けたものであります。  以上のことで譲り受けまして、昨年の十月一日という日がいわゆる譲り受け契約の効力を発生した日でございまして、ことしの九月末でちょうど決算上も一応一年間を経たことになるわけです。そういう意味では、昨年の十月一日からことしの九月末日までに回収したお金は六千百八十六億円に達しておりまして、これは大蔵省の方に提出しておりますいわゆる事業計画というものを考えますと、約二百八十八億円計画よりも多く回収できたということになっております。  ちなみに、この事業計画というのを大蔵省に出しましたのは、多少私自身の判断もございますけれども、住専法では御承知のように十五年間で回収するということになっていますが、しかし私は、十年一昔と言うわけですから、それは長過ぎはせぬかと思って約半分で回収するということを前提に置いてこのような計画を大蔵省に提出し、おかげさまにて現在のところはその計画をさらに上回っておると言えると思っております。  そういうことでございます。
  38. 海野義孝

    ○海野義孝君 私は、我が国のいわゆる金融行政、金融行政だけではありませんけれども、依然として漸進主義的で、現在のいわゆるグローバルスタンダード的な面から見ますと、日本は大国と言われながらそういった行政の取り組み方というのは十年一日のごとく時代の変化に対応したアクセントをつけるということが余りなかったということが今日の問題を起こしている一つの理由だと思います。  そういった中で、今、社長のお答えによりますと、住専法では十五年かけるのを半分で回収をしてしまおうということは国民にとってみれば、あのときたしか残った債権の中で二次ロスが出るおそれもあると言われた中で、期間をかければかけるほど住管機構の経費もかかるでしょうし、それはまた国民の負担になるわけでありますし、また二次ロス等が出るわけでありますから、こういった期間の半分で回収してしまうというような考え方は現在の我が国においては極めて出色の考え方だと思うんです。社長がかつて日弁連の会長もされた、今回の住専法案についてはいろいろなことが言われたけれども結局はああいうスキームでやった、これについてはお互いにいろいろと反省する部分もないではない、そういった中で社長が設立した際に半ば公約めいたことをおっしゃったように私は伺いましたけれども、これは大変今の我々司法あるいは立法、行政に携わる者として傾聴に値することだと思うんです。  改めて、社長はどういう決意で今回のこの住専機構という厄介なものをお引き受けになったか、一言簡単にお聞きしたいと思います。
  39. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 私は、御承知のように弁護士であります。それで、今回の住専処理というのは、基本的に言えば住専七社が倒産したということになると思います。そうであれば、当然に司法の場で解決されるべきことではなかったかと。  ところが、現在の司法というものがやはり二割司法であって、結局これだけ大きな規模になれば現実的にそれの解決処理能力がないというところが問題になって今回のようないきさつになったのではないかと。そういたしますれば、当然のように弁護士として、司法の一翼を担っている者としてその責任は果たさなければならない、せめて回収の現場でも司法の理念を生かしつつ回収をしていく、こういう姿勢の人が一人は要るだろう、このように考えまして社長の職を引き受けたわけであります。
  40. 海野義孝

    ○海野義孝君 社長は今敷衍されませんでしたけれども、私がいろいろ拝見した専門誌の中では、国民のためにこれ以上の負担はかけられないということをたしか引き受けたときにおっしゃったということを私は大変感激して読んだ記憶がありますけれども、その点は事実でしょうか。
  41. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 私は就任に際しまして、今お話しいただきましたように、国民にこれ以上二次負担はかけないということをまさに公約といたしました。それはやはり、正直言って私はいわば現場の指揮官であります。回収というのはまさに債務者等の間の闘争、闘いであります。闘いに臨む現場の指揮官としてまず必要なことは一体何なのか。私は、みずからが退路を断つことである、このように考えました。前しか進みようがないというふうに我が身を追い込まなければほんまのことは、真剣なことはできないんじゃないか、私はこのように考えました。本当を言えば、正確に言えばなるべく国民に二次負担をかけないよう努力しますという言葉が一番正しいとは思いましたけれども、その中の言葉からあえてなるべくとか努力という字を削って対応する、私はこのようにしたわけであります。
  42. 海野義孝

    ○海野義孝君 大変傾聴に値するお言葉であると思います。  次に、これは直接ではないと思いますけれども、住管機構から検察に対して告発等をなさっていると思いますけれども、これまでの告発件数あるいは検察の起訴件数及び主な内容についてお差し支えない範囲でお答えいただきたいと思います。
  43. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 私は、先ほど言いましたような国民に二次負担をかけないというのが唯一の目的であり、それを国民から委託を受けてやっているという基本的な立場に立ったといたしましても、目的を達成するならどんな方法でもよいとは言えない、やはりその手続が大切だ、手法が大切だというふうに考えました。  それで、私はその手続の問題点を二つに分けました。一つは、公正な手続でやる、道理の手続に基づいてやる、そして二つ目には透明な手続でやる、このような二つの柱を立てたわけであります。  その公正という概念の中には、幾つかあると思いますけれども、その中の一つとして私は今求められておるのはやみの世界とどう絶縁するかという問題が非常に重要ではなかろうかと。私は、今、金融機関全体として不良債権がどの程度あるのか、二十兆とも言われておりますけれども仮に二十兆だとしても実は暴力団というものが、今は総総会屋で問題になっておりますが、この債権回収のときにもまた暴力団が登場してくるわけであります。その暴力団というのはこのような場合はいわゆる損切り屋、通称損切り屋と言われておるんですけれども、要するに担保物件を何らかの方法で毀損しまして、そしてそれはその人を排除しないと売れない、そのようにしておいてお金をせしめる。そうすると、我々が不良債権の回収ということは、へまをすると結果的には、仮に一割としたとしても、二十兆円の一割は二兆円の金が実は暴力団自身を潤すことになる、これはいかがなものかと。そういうことから私は手続の中の柱の一つとしてやみの世界と絶縁ということを標傍し、それを実践する中でほかの金融機関も見習っていただきたい、このように考えたわけであります。  そういうことから、十二月から本格的回収に入りまして、ことしになりましての一月十四日に広島県警において脅迫事件を告発したのを初めといたしまして、この十一月二十七日に神奈川県警のところで競売妨害事件の告発に至るまで計二十五件を告発いたしております。そのうち二十件については検挙されて目下取り調べ中でありまして、現在そのうちのまた十七件が起訴済みであって、中には有罪の判決もあるわけであります。  それでは、どのような罪が問題になっているかといいますと、大きく分けまして二つありまして、一つは回収そのものを妨害する刑事犯であります。いわゆる脅迫であるとか強要罪、あるいはだまし、詐欺等考えられますし、そのような罪名のものが約六件ございます。そして二つ目には、先ほど私が例示しましたように、まさに財産隠しに伴う刑事犯というのがあるわけであります。いろんなきずをつくるというわけですね、故意に。それでいきますと、強制執行の妨害、普通財産隠匿罪と言われておりますが、そのような罪、あるいは入札妨害罪、公正証書原本不実記載、あるいは有印私文書偽造、同行使といったような罪名のものがありまして、こちらの方が十九件あるわけであります。  ちなみに、それ以外に、刑事問題ではありませんが、暴力団などの不法占拠を排除する民事保全処分が同じくことしの三月から現在まで十六件行われておる、こういう様子でございます。
  44. 海野義孝

    ○海野義孝君 大変詳しくありがとうございました。今後のいろいろな問題に参考になるようなお話だと思います。  それで、先ほど冒頭におっしゃいましたけれども、今後の譲り受け資産の回収の目標といいますか、住宅ローン関係というのは、これはもう間違いなく十年、二十年たてばサラリーマン等の住宅ローンの分は優良顧客でしょうから大方回収されていくわけでしょうけれども、いわゆる事業関係といいますか、そういったものが現在何件おありになって、これがどのぐらいもう既に回収されているか、それから全体的に見て回収の予定はいつごろになるかということ、それからもう一つは、最近引き続きまだ地価が下がっているというような傾向にありますけれども、そういう面で譲り受け資産の不動産の劣化状況等が今後の回収額あるいは回収時に妨害というか障害にならないか、いろいろ申し上げましたけれども、まとめてひとつ簡潔にお願いいたします。
  45. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 先ほど申し上げましたこの一年間に回収した総額六千百八十六億のうち、いわゆる事業者ローンというのが約四千八百七十四億ということになっておりまして、約三分の二くらいが事業者ローンになっております。これの大多数がいわば不良債権であったということであります。  それから、この債権回収に当たりましては、まさに今御指摘いただきましたように、地価の値下がりということは大変な影響があります。すなわち、当社の譲り受け価格というのは平成七年一月一日現在の路線価格を基礎に算出されておるのですが、現実にはその路線価格の平均価格にしても全国で二〇%下落いたしておりますし、個別の案件の中ではそれ以上にまた下落しているのもあるわけでありまして、そういう意味ではこのことは当社の債権回収を図る意味において大変な障害になっております。  しかし、最近大蔵省の方も御理解、御了解いただいた方法といたしまして、この住専法のままでは逆に損失処理されたものから回収してきたらそれは国庫納付ということになっております。そうすれば、私の方の建前からいたしますと、そういう路線価格、いわゆる地価が値下がりしたことはこれはやむを得ないことであって、そこで二次ロスが出たからといってそれが国民の税金の負担にならない方法もあるんじゃなかろうかと。すなわち、先ほど申し上げましたいわゆる損失処理されたものを取ってきたらそれを国庫納付しないで、その分と本来二次ロスから国民の新しい負担になる部分とを充当すればいいのではなかろうかという問題提起をずっと一貫してしておりまして、去る九月からそれは次の通常国会にはそのように法律を変えてあげようというふうに御支持いただきまして、先ほど言いました地価の値下がりについては、新しい回収方法をもう既にことしの十月一日から開始をしておる、そのようなことによってその被害を防ごうと、このように考えております。
  46. 海野義孝

    ○海野義孝君 大変貴重なお話を披歴していただきまして、感謝しております。  最後にもう一つ御質問いたします。  社長のお立場上、大変お答えにくいかと思いますけれども、現下の金融不安定な状況及び金融システムの安定化に対するスキームの面での大混乱、いまだ大枠のフレームさえ決まらないという状況に今あるわけですけれども、こういった問題につきまして、事の原因は間違いなく私は住専から始まっていると思うんですが、そういうことで、今、回収の現場で指揮をとっておられるお立場からして現在のこういった金融システム安定化に対してのスキームの問題について、社長の御所見なり、社長としての何か御姿勢でもいいんですけれども、あったら一言お聞かせいただきたいと思います。
  47. 中坊公平

    参考人(中坊公平君) 私の一存の個人的な意見になるとは思いますが、私自身は今でもこのような私企業の倒産等の失敗のために国民の税金をもって償うということは基本的に言えばまさに罪なくして人を罰することになるのではないか、このように考えておりまして、それ自体は決していいことではない、絶対に避けなければならないことではないか、このように考えております。  しかし、最近のように銀行の倒産になってまいりますと、旧住専の後始末という意味からはかなり離れているようにも思っています。何が一番違うかといいますと、銀行には預金者というものがあります。旧住専七社の当時はノンバンクでありまして、債権者はみんな金融機関であります。金融機関を助けるというか、そういうこともあってこのような住専処理がなされていたという点も否めないと思いますし、そういうことになれば、預金者という立場に立てば、これはすべての国民が大なり小なり預金をしておるわけですから、そういう意味における今度は預金者保護という立場からの公的資金導入される余地はあるのではなかろうか、例外的にそういうものもあり得るのではないか、このように考えるわけであります。  しかし、それだけにやはり非常に厳格にその公的資金導入ということが規制されなければならない。すなわち、どういう限度でどういう方法で、またどういうルールをつくって、またそのルールがどのように実施されるかということについてはかなり慎重にかつ具体的に詳細な点に至るまでお決めいただくことが必要ではなかろうかと考えております。  最後に、私自身といたしましては、当社は、先ほど言いましたように、そういう意味における公的資金導入すべき立場にはありませんでした。したがいまして、当社は今後もやはり国民に二次負担をこれ以上かけないんだということを唯一の目的として会社運営を図っていきたい、かように考えております。
  48. 海野義孝

    ○海野義孝君 どうもありがとうございました。もっとお聞きしたいんですが、時間が限られておりますのでこれで御退席いただいて結構です。お忙しいところ、ありがとうございました。  次に、本論の罰則問題について入りたいと思いますが、この点については後ほど同僚議員から詳細についてまた御質問がおありになるかに聞いておりますので私はその点には触れず、今般のいわゆる金融不祥事等の事案に対する罰則強化という問題に関係することをいろいろとお聞きしたいと思います。  最初に、私は今回のこういう罰則強化という法案をつくっていくということについては異論はないわけでありますけれども、それと同時にもっと当面徹底してやるべきことがあるのではないかということだと思います。  具体的にお聞きします。関係各局、一言ずつで結構です。  十一月に相次いで大きな事件が起こりましたけれども、これだけにとどまらず、ここ一年来、いろんな不祥事は十指に余るものが起こっているわけでありますけれども、そういった問題に対しての取り組みは当然のことながら、最近、金融機関証券、保険、こういったものに対する検査を具体的に強化されているか。具体的には、何件今検査して、何人投入しているかということについてお聞きしたいと思いますが、金融証券、保険の順で一言ずつお願いします。
  49. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 平成八年七月から平成九年六月までの平成検査事務年度におきます金融機関証券会社に対する検査着手の実績は、銀行等三百十五機関、証券会社等百七十二社となっております。
  50. 海野義孝

    ○海野義孝君 今それだけやっているんですか、検査を。
  51. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 検査に着手した件数は、本省、財務局合わせて今申し上げた件数でございます。
  52. 海野義孝

    ○海野義孝君 ちょっと解せない面があります。そんなにスタッフがいるのか。たしか金融監督庁になっても全体で四百四、五十名だというふうに聞いていますけれども、総出でかかってこれだけ、四百七、八十社というものを検査できるというのはちょっと私の質問を取り違えていらっしゃるんじゃないかと思うんです。  現在ただいま何社に入って検査をやっているかということをお聞きしたいわけです。
  53. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 失礼いたしました。  現在は十二社に入っております。
  54. 海野義孝

    ○海野義孝君 その内容について、銀行証券、保険の。
  55. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 個別の検査の実態でございますが、個別についてはちょっとお答えを御容赦いただきたいと思います。
  56. 海野義孝

    ○海野義孝君 私は業態別にと申し上げたけれども、何かお答えいただけないということで、今のお答えではちょっと状況がつぶさに把握できません。これはまた改めて機会を見てお聞きしょうと思います。  いずれにしても、私は問題が起こったらおたおたしてしまってほかの検査を徹底的にやっていくという面がややおろそかになるのではないかということを危惧します。これはやはり徹底的にやっていかないと、片方で罰則強化といっても、罰則強化法案というのは既に今まで日の目を見た問題について罰則強化しようといっているわけでして、この罰則強化の目的は事前に予防していくという面があるわけですから、そうしますと、これから先の問題をどんどん検査をしていかなかったら、せっかく罰則強化法案をつくってもこれは余り効果的じゃないというか、そういうように思います。これは私の意見であります。  それから次に、その点に関して昨日、衆参で集中審議がありましたけれども、その際にも大蔵大臣からお話一つありました。体制の強化責任感、調査機能をずば抜けたものにしなくてはならない、このようにおっしゃったかどうかわかりませんけれども、そういう趣意のことをおっしゃったと思います。  具体的にもう例えば政省令、こういったもので発令されるとか、そういう準備に入られているのか、それとも、きのうおっしゃったけれども、まだそれどころじゃないという状況ですか、一言お願いします。
  57. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) お答えします。  検査機能の充実強化ということ、特にその罰則関係といいますか、法令の遵守体制、そういうことに対しましては最近のいろんなもろもろの金融機関をめぐる状況等も踏まえまして大臣から御指示をいただいております。  具体的に言いますと、最近、検査官に対する法令遵守体制等の実態を把握する上での留意点を具体的に指示をして、また問題点を見出した場合、告発を含め厳正な対応等を図ることを徹底しておりますし、また金融機関等の選定に当たっては機械的な検査ということではなくて抜き打ち的な検査としての実効性を確保していく、あるいは研修の強化というようなことを図っております。  また、機構面におきましては、現在、総理府の金融監督庁設立準備室の方で新しい金融監督庁に移った場合の機構・定員についての要求がなされております。これは予算編成過程を経て決まるものでございますが、この点についても引き続き関係各方面の御理解が得られるよう今努力をしているということでございます。
  58. 海野義孝

    ○海野義孝君 福井日銀副総裁においでいただきましたので、一つだけでございますけれども、お聞きしたいと思います。  これは昨日の多分衆議院での集中審議の際に総裁から御答弁があったと思います。今の検査問題に絡んででありますけれども、今後日銀考査の手法を改善し、リスクの発見が十分にできることなどを眼目に日銀考査を強化していかなくてはならないと述べられ、検査、考査の体制強化約束されたと、大変重い御発言をされたわけです。先般の金融監督法案等の際も大蔵省金融検査監督と日銀の考査の問題等についていろいろと質問させていただきましたし、そういったことが大きな一つの論点になりました。先般の山一証券問題において日銀がたしか六月に考査に入られたということでありますけれども、そのとき山一事件についてはこれを発見できなかったというお話でございました。  私は、日銀、大蔵省金融行政・政策等に携わる部局におきましては、やはり信用秩序の維持というような面で日銀は大変な責任があるわけですから、そういう意味からすると日銀考査は、従来ですと日銀考査というのは大蔵省検査に比べてかなり緩やかなように我々感じたわけですけれども、実際にはお互いにもしあの段階で日銀考査によってこの問題が、いわゆる簿外債務の問題等々が発見できていたならば今日に至らなかったかもわからないというように私は思うんです。いわゆる山一自主廃業みたいなことには至らなかったかもわからぬと、一概にそう言うのは短絡的かもわかりませんけれども。  そういう意味でも、昨日総裁が改めていわゆる日銀考査の機能強化ということについて御発言されたということは大変重く受けとめておりますけれども、これに基づきまして具体的に日銀当局におかれましては総裁から何らかの指示がもう既に発せられてその準備というか、そういったことに取りかかる段階に入ったかどうか、あるいは今どういうようにお考えになっているか、副総裁からひとつ忌憚のないところをお聞かせいただきたい。
  59. 福井俊彦

    参考人福井俊彦君) お答えを申し上げます。  ただいま委員から大変重要な問題の御指摘をちょうだいいたしました。  考査のあり方に関しましては、総裁からじきじきの御指示がもちろんございましたし、むしろそれ以前から、先般日銀法の改正作業を御審議いただきましたときから考査の新しい手法の開発等について御指摘がございます。私どももこの問題をしっかり受けとめて、今改善の方面を目指して既に努力の過程に入っているということでございます。  私どもの考査の特徴点を二つだけ申し上げますと、一つは、政府のなさいます検査と違いまして、これは契約に基づいて、つまり相手先金融機関との間の契約に基づいて考査に入っているということで相互の信頼関係をベースにして考査を行っているという点が一つの特徴でございます。  もう一つは、法令違反あるいは違法性のある取引のチェック、そういう点。もちろん、これは最終的に信用秩序の維持に絡む点でございますので私どもも重要な関心事項でございますけれども政府と私どもとの比較をあえて申し上げれば、多少もちはもち屋、私どもの方は法令違反を具体的に個々の取引を追っかけるということよりは、むしろ当該金融機関の財務全般の健全性あるいは経営全般の健全性という形からのアプローチの方がより得意であるというふうな特徴が若干ございます。  しかしながら、最終的にはやはり信用秩序の維持にしっかり資するということは共通の目標でございますし、私どもも、ただいま委員指摘のとおり、事後的に罰則を科してすべて全うできるというものではなくて、むしろ事前のチェックが非常に大切であるし、事前のチェックを通じて当該金融機関自身の、特に経営者にリスク感覚をしっかり持っていただくということが一番大事だということで、そこを視点に据えながら考査の今後のあり方についても手法の改善に努めているということでございます。  私どもが今具体的に体制を新たに整備しつつあります一つの点は、個々の取引の云々ということを追っかけることももちろん大切でありますけれども、今のようにデリバティブズを含め簿外取引まで非常に取引範囲が広がっている、あるいはどんどん技術革新を進めながら業務展開をしている、そういう相手を対象に考査をしていくということからいきますと、私どもが体制を整えつつあります一つの点は当該金融機関の内部管理体制を含むリスク管理体制全般がどうなっているかということをチェックするということであります。  それは例えばある金融機関のフロントデスク、つまり営業の一線とバックオフィスとの相互のチェック関係がどうなっているか、それぞれの責任者はどういう形でチェックしているか、あるいはその内部検査がどういう手法でこれを牽制しているか、最終的には経営者の意識はどうか、そういう仕組みのチェックでございます。  もう一つは、今申し上げましたとおり、デリバディブズを含め金融の技術革新が進んでおります。これをやはり追っかけながら考査をしなければいけませんので、私どもの方も考査の内部に金融先端技術に関する専門家チームというものを養成しておりまして、現に一部は稼働しておりますが、さらにこれを充実させる、そして金融機関がデリバティブズを含めリスク量の把握ということを進める中で、私どももそれが適切かどうかきちっとこれをチェックできる体制をつくり上げつつあると、こういうことでございます。
  60. 海野義孝

    ○海野義孝君 最後の部分でデリバティブズの問題についてもお触れになりました。これは午前中も楢崎先生が御質問になったので私の質問をやられたなと思ったんですけれども、私は今後の検査の盲点というか一番問題点はデリバティブズだと思うんです。これはもう世界的にも、いわゆるベアリングズ社が倒産したというのはデリバティブズの失敗でありましたし、今後はこういったことは簡単に出てくる可能性がありますので、ここ一点にやはり今後の大蔵あるいは日銀さんの検査体制は強化すると。  御承知のように、アメリカの場合はいわゆるSECの中にそういうプロフェッショナルの集団が現実に検査スタッフとしているわけなんです。私もそういう仕事をしましたけれども、これは絶対に発見できるわけです。ということは、要は一部始終を経営トップが毎日見ていればいいんですよ。それをデリバティブなんかわからないからといってすっ飛ばしているから問題が起きてきたときにはもう手おくれでどうにもならない、下手すれば会社が吹っ飛ぶぞと、こういう時代に入っていますからグローバルスタンダードを日本でも即刻取り入れて検査機構についてもやっていただきたい、このように思うんです。  それから、もう牛嶋先生にお渡ししなくちゃならぬ時間になったんですが、甘えてあと二つだけどうしても申し上げないと私の気が済まないことがあります。  一つは、どうしても不可解な問題は、私が証券出身だから山一のことを攻撃しないということじゃないんですが、北拓の問題です。  これは大変私にとってわかりづらい問題でありまして、北海道拓殖銀行と北海道銀が合併するという話は四月に持ち上がったわけです。私はこれはお互いの会社から出てきた話で大蔵省は関知しないということじゃないと思いますよ。ところが、これが数カ月したころからもやもやし始めました。私ども大蔵委員会で北海道を視察に行ったときにも、地元の金融界の御説明ということで道銀の頭取でしたか副頭取は見えたけれども、拓銀からは見えなかったんです。私は、ははあ、これは大変だなと思ったら、その日、まさにその日に何かこの話が御破算になったというような話が出たんです。  私は、最後に大蔵大臣にお聞きしたいのは、あるいは山日銀行局長にお聞きしたいのは、不良債権の問題は一定のルールでやっているからそれ以上、倒産したときには三倍、十倍になるけれども、それはわからないというようなお話をされていたのでは、これから例えばいわゆる預金保険機構の抜本的な強化であるとか公的支援ないしは公的資金の投入であるとかということのためには、これでは国民というよりも権威ある参議院、国会が納得しないと私は思うんです。これは党派の問題じゃないんです。グローバルでもう金融問題は考えないと、多数で自民党が押し切ったとかそんな時代じゃないんです、私に言わせれば。  そこで、この点で一番のポイントになったのは例の中堅の建設業である東海興業なんです。ゼネコンなんですよ。これが倒産した。これは要するに縁を切ったと、拓銀が、メインが。そうしたら物すごい不良債権が出てきた。北海道銀行がこれは話が違うじゃないかと、そこから始まったんですよ。  ですから、不良債権の問題ということは、現にこれから預金保険法の改正やなんかの中でだめ会社同士が一緒になるなんて言っているときに、はいわかったなんということを認めるような大蔵省じゃないとは思うけれども、何でもかんでも預金保険法を急いでくれなんということがちらちら聞こえるけれども、私はこんなことをやったら日本の恥さらしたと。日本はここまで追い詰めても一向に改まらないと海外から言われると思うんです。現に海外の雑誌なんかをごらんになったら、もう笑い物になっているんですから。  私は、よくよくもうこの辺で心を入れ直さないとこれは大変なことになると。どんなことを言ったって、為替、株式、債券、ジャパン・プレミアム、こういうようなまさに市場原理に基づく完全競争によってちょうちょうはっしと行われているこの資金は二千兆円とも言われているんですよ、全世界で一日に動いている金が。そういう中での問題ですからよくよくこの問題は、今回成立しなかったのはそこにやや不透明な部分があったんじゃないかと。  もっと言うと、私は後で申し上げようと思ってここに資料ありますけれども時間がないから言いませんが、大蔵省から金融機関証券界、保険、天下りとは言いませんけれども、そこに再就職を求めた人たちのリスト、そういう中で現実に最近の金融の合併問題とかそういったことにノーと言っておる中に大蔵出身の人がいるということなんです。一方ではやってくれと言っている、一方では大蔵からだめだなんて言っている。調べればすぐわかることです。こういう時代になっているということを本当に真剣に考えてやっていただかないと、取り返しがつかない。  預金保険法の改正の問題もいろいろ声が聞こえできますけれども、こんな欠陥的な預金保険法の改正なんかをやったら、早晩またその上に糊塗するような法案をつくらなくちゃならぬというようなことは物笑いです。  以上で私の質問を終わりますけれども銀行局長、最後に大蔵大臣、私の申し上げたことが間違っているか、あるいは大蔵大臣がお考えになっていることが時間的に間に合うか、その点ひとつ所見をいただいて、私の質問を終わります。
  61. 山口公生

    政府委員山口公生君) 拓銀の破綻については大変残念なことでございますけれども、今、先生の申されたことについてしばしば私もこの場で御説明しておりますが、公表不良債権というのは一定の基準で出している。きょう午前中でも御紹介ありましたが、九千億ぐらいの数字になっていると思います。  それで、公表というのは一つの基準でやっているということでございまして、実質問題になったのは、回収ができるかできないか。不良債権の中でも半分ぐらいはとれるものはあるし九割とれるものもある、ほとんどとれないものもあるという今度は回収の可能性の、要するに財務の健全性の見方があるわけです。  そこで、道銀と拓銀とで相当見方が違ったと。東海興業を例に挙げられました。これはその基準に当てはめたら乗ってこなかったけれども、実際回収は不可能であったと。回収は、ゼロではありませんけれども、毀損されるというような事態に陥ったわけです。  したがいまして、各銀行ともに公表不良債権についてきっちり公表すると同時に、なおかつ今、早期是正措置の前提となります自己査定、債権、自分の貸付金についても全部自己査定をして回収がどれくらい可能かということを絶えず自分でチェックして、今期に償却をしなければいけないという問題については引き当て償却をする、これは公認会計士にチェックしてもらうという姿であります。したがいまして、その結果は全部自己資本比率ということで明らかにされていくわけです。  今後、各金融機関ともに公表不良債権だけ出しておけばすべてが済んだという条件にはなりません。私どもの行政も十分とは私は申し上げません。しかし、一歩一歩そうやって進んでおりまして、実態に近づく、またそれで自己規制を働かせた銀行経営に進むようにしていきたいというふうに思っております。どうぞ御叱正を今後ともいただきたいと思います。
  62. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 海野委員の御指摘、間違っているなどという気持ちは全くありません。今後のあり方についてのそれぞれの御指摘でございますから、それはそれとして今後に十二分に生かしてまいります。
  63. 牛嶋正

    牛嶋正君 平成会の牛嶋正でございます。  今、同僚の海野委員から御質問がありましたが、私は、残りました四十分を利用いたしまして、少し観点を変えて御質問をさせていただきたいと思います。  参議院の大蔵委員会調査室から参考資料をいただいておりますが、この中から私は四つデータを選ばせていただきました。それは四ページの罰則強化の主な内容等をまとめた「別紙1」でございます。それから、十八ページの「各国の金融機関にかかる罰則等」、十九ページの「各国における主な不公正取引にかかる罰則等」、そして六十二ページの「金融機関に対する検査監督体制の国際比較」の四つのデータであります。  このデータを調べておりますと、我が国の今の金融機関に係る罰則に関しまして次の三つの特徴点が指摘できるのではないかと思います。その一つは、我が国の金融機関に係る罰則は諸外国、とりわけアメリカに比べてかなり軽いということでございます。二番目は、我が国の金融機関に係る罰則の中で調べてみますと、検査忌避、虚偽報告等に係る罰則、それからディスクロージャー違反に係る罰則等の情報開示に関係する罰則が相対的に軽いということです。三番目は、我が国の金融機関に対する検査監督体制は、これも諸外国と比較いたしますと、特にアメリカに比べて弱い体制であるというふうなことであります。  この三つの特徴点はだれもが指摘できる何でもない特徴点なんですけれども、この特徴点が戦後の我が国の経済発展の過程で、またこれまでの我が国での金融行政と関連して形成されてきたというものでありますと、現在我が国経済が直面している金融危機と少なからず関連しているものと考えなければなりません。そういう観点からこの特徴点を中心に若干質問させていただきたいと思います。  午前中の楢崎委員お話にもありましたように、罰則強化一つのねらいは金融市場で行われる不正行為違反行為を未然に防ぐという抑止力の強化であるというふうに考えなければなりません。そういうふうに考えるといたしますと、これまで我が国で、今先ほど指摘いたしましたように、その刑量が軽いということは我が国の金融市場が安定していて個々の金融機関も健全な経営を行ってきたというふうにも解釈できるわけでございます。  戦後、我が国経済の順調な発展を支えてきた多くの要因の一つに私は安定した金融市場ないしは金融システムがあったというふうに考えます。そうだとしますと、護送船団方式という陰口は言われておりますけれども、戦後の金融行政については一定の評価が与えられていいのではないかと私は思っております。  この点について、護送船団方式という言葉大蔵省はどういうふうに解釈されているのか、それも含めまして今の私のコメントに対してお考えがございましたら、まずお聞かせください。
  64. 山口公生

    政府委員山口公生君) 護送船団方式という言葉について私どもが公式にコメントしたことはございませんので私の個人的な感じも踏まえてというふうにお断りした上で申し上げたいと思うのでございますが、我が国の金融行政も究極の目的は今と余り変わらなかったんじゃないかと思うわけでございます。それは預金者の保護、それから金融システムを守るということだったと思います。願わくば健全な取引先の取引関係も守ってあげたいという気持ちは変わらなかったと私は思うわけでございます。  ただ、手法がどういう手法かということでございます。当時は各金融機関が比較的固定金利のもとで収益を上げられる状況にあった。よほどのことをしない限りつぶれないで済んだ。そうしますと、金融機関をつぶさないことがそういった目的に一番ある意味では手っ取り早い仕組みではなかったのだろうかと。つまり、金融機関が余りにもむちゃなことをしないでつぶれない限りにおいては預金者は守られますし、システムも守られる、取引先も守られる、こういう究極の目標がある程度完遂できたのではないかと思うわけです。金融機関も金利ほかいろいろな規制でもって、ルールがありましたのでそこをある程度は守ってきたということで、護送船団という言葉については私はかなり抵抗感を持つのでございますけれども、戦後の金融行政の中で混乱がなく来たという事実はお認めいただくとすればそういうところにあったのではないかというふうに思うわけでございます。
  65. 牛嶋正

    牛嶋正君 それでは、第二の指摘点に移らせていただきます。  第二の指摘点は、先ほど申しましたように、情報開示に関連する罰則が相対的に軽いということですけれども、これはかなり重い意味を持っているような気がいたします。  先ほど申しましたように、この罰則というものが抑止力であるというふうに考えますと、情報開示に関連しての罰則が相対的に軽いということは、我が国においても金融機関経営者が進んで情報開示を行ってきた、そういうことでこの種の不正な行為についても刑量が軽くされてきたというふうにも考えられますけれども、これはちょっと無理な説明になってしまうのではないかと思います。私はむしろ経営者の自己責任原則が欠如していた、あるいは情報開示の重要性の認識不足によるものではないか、こんなふうに思っております。  したがって、今私が指摘しました二の指摘点というのは、ひとり金融機関経営者のみではなくて我が国の経営者全体がそうだったと思うんですけれども、自己責任が情報開示に基づくものであるという認識が私はなかったのではないかというふうに思っておりまして、その結果がこういうふうな二番目の指摘点のようなものを生み出してきているのではないかと思っておりますが、この点について大蔵省はどのようにお考えでしょうか。
  66. 山口公生

    政府委員山口公生君) 確かに今振り返ってみますと、当時の金融機関経営者の自己責任の意識がどうだったかということでございますが、これはそれぞれ立派な経営者もいらっしゃいました。私はすべてを悪いと申し上げるわけではありませんが、しかし、規制の金利の体系の中でつぶれないという形で進んできたときに、どうしてもやはり横並びの意識といいましょうか、国民の皆様全体に対する情報開示というよりは仲間できっちりお互いに突出したことをやらないというような行為に結びつく傾向はあったかもしれないと思います。そういう意味では自己責任の原則の意識の欠如、私どもにもそれは責めがあるかもしれません、そういったところは否定できないと思います。  また、情報開示ということはとりもなおさず違いを明らかにするということでございますので、違いを進んで明らかにするというのはよほど自分が優越的な地位にでもあれば積極的にやろうという気持ちになるんでしょうけれども、そうでない場合においては、ともすれば大丈夫なんだから一々公表しなくてもいいのではないかというような気持ちがあったのではないかということは今の時点で推測されます。ただ、一概に昔のことを批判しているつもりはございません。
  67. 牛嶋正

    牛嶋正君 きょう私がこういう質問をいたしますのは、何も昔の金融行政を批判しようとか、あるいはこうであったらよかったということじゃないんです。それは今の金融情勢の結果は全部過去のこういった金融市場の推移、あるいはそこで行われてきた金融行政の一つの結果ですからね。したがって、今抱えている問題点を整理するためにはやっぱりどうしてもこれまでの金融行政の推移、あるいはどういうふうな観点で進められてきたのかということを振り返る必要がありますので今質問させていただいているわけであります。ですから、この質問で終わってしまうわけではありませんで、この後にはこれからどうしようという話が出てくるわけでございます。  三の指摘点でございますけれども、これは先ほど申しましたように検査監督体制が弱いのではないかということですが、これは戦後我が国で進められてきた金融行政のポイントが検査監督というチェック機能よりは規制・誘導といった指導行政の方に置かれてきたためではないかというふうに私は思っております。言いかえますと、さっき取り上げました護送船団方式こそが諸外国に比べて我が国の検査監督体制がやや弱いという結果をつくり出しているように思うわけですけれども、これについては大蔵省はどういうふうにお考えでしょうか。
  68. 山口公生

    政府委員山口公生君) 検査監督体制の強弱という点からいいますと、人によっては大蔵省が強過ぎたと言う方もいらっしゃるかもしれません。私の理解としては、くくって言いますと、事前的な監督よりは事後的な検査監督というふうに変わっていかざるを得ないであろう、それが自己責任というものを前提とした、あるいはマーケットというものを前提とした行政への転換であろうと、そういう感覚を持っております。
  69. 牛嶋正

    牛嶋正君 それで、先ほども御紹介いたしましたように、アメリカは今非常に罰則強化されておりますけれども、これも一九八〇年代から九〇年代の初めにかけての住宅貯蓄銀行の倒産が相次いだときに強化されていったわけです。アメリカの場合は同時に検査監督体制も強化していったというふうに私は見ております。このように、金融機関不正行為違反行為を未然に防ぐためには、罰則強化も必要ですけれども、それだけではやはり実効は上がらないわけでありまして、検査監督体制の強化をあわせて行っていかなければならないと思います。  そういうふうに考えますと、今回の法案改正によりまして罰則強化されていくわけですけれども、私はさらに検査体制についても強化を怠ってはならないと思っておりますけれども、この点についてどのように対応しようとされているのか、お聞かせください。
  70. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 先生御指摘のように、金融機関のいろいろな法令違反、そういうものを抑止していく場合におきまして、罰則強化すること、それから情報開示、そういうことに対しての検査を厳正にやっていく、これはいわば車の両輪というような関係になるのではないかと思っております。  検査体制の充実ということに関しまして、まず機構・定員面でございますが、先生御指摘のように、アメリカ等に比べるとかなり少ない要員でやっておるということは事実でございますが、最近におきましてはいろいろ関係方面の御理解も得ながら定員の増強にも努めてきております。引き続きその面でも努力をしてまいりたいと思っております。  また、限られた要員の中でできるだけ検査、特に法令遵守等のチェックに関する検査の充実強化を図っていく必要があるというふうに認識をしております。平成検査事務年度におきましても、検査事務実施上の基本方針として、従来の資産査定とかそういう財務の健全性の項目に加えて、法令遵守体制のチェックといったようなところに重点を置いております。  先ほど申し上げましたように、検査官に対して具体的なチェックポイントを指示するとか、あるいは対象金融機関の選定等に当たって抜き打ち的な検査の実施に努める、そういうことによって実効性を確保していく、あるいは新任検査官に対する研修を充実していくというような措置を講じております。  さらに、来年四月の早期是正措置の導入ということで現在検査のあり方そのものも見直しております。こういう中で今御指摘のあった点に十分配意をしていきたいと思っております。
  71. 牛嶋正

    牛嶋正君 今まで説明してまいりましたことで大体御理解いただけたと思いますけれども、最初に私が指摘いたしました金融機関に係る罰則についての三つの特徴点というのは、大体我が国経済が順調に発展を遂げていた一九六〇年代から八〇年代にかけての期間に形成されたというふうに考えていいのではないかと思っております。この期間は同時に金融市場が比較的安定した形で推移した期間でもございます。  この期間、我が国の金融機関は非常にと言っていいぐらい安定的に推移したわけですけれども、それはなぜであったのかということです。  一つは、やはり規制・誘導にポイントを置いた金融行政の成果、これもあると思いますけれども、何よりも金融市場全体が資金不定の状態にあった、いわば貸し手市場であったわけですね。したがって、先ほどもちょっと局長がおっしゃいましたけれども、どの金融機関もまあまあ金融の仲介としての役割をそれぞれの場で果たし得たのではないかというふうに思っております。それだけに、商業銀行、地方銀行、そして信用金庫、信用組合、農協といった地域銀行、そういったものがそれぞれ暗黙裏に決められた領域を持っておりまして、その中で金融の仲介の役割を果たし得たわけですね。  先ほどの護送船団の船団という言葉を使いますと、いわば船団を構成する一そう一そうの船が大蔵省が示す方向に向かってほぼ同じような速度で航行した、したがって船団の隊形を崩さずに進むことができたというふうに私はちょっと比喩的に申し上げたんですけれども、そんなふうに解釈しておりますけれども、この見解についてはいかがでございましょうか。
  72. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、先生の御指摘なさいましたいわゆる貸し手市場という環境がそういったものを認めておったということは、私もそのとおりではないかと思うわけでございます。  逆に裏返して言いますと、今の時代は運用の時代といいましょうか余剰の時代、余剰の時代ですから今度はお金を運用する方がいろいろなニーズを持ち出してくる。キャッシュフローからいって私はいつも預金だと思っていたけれども証券とデリバティブも少しやってみようかとか、いろいろ複雑なニーズが出てくるわけでございます。  今、先生のおっしゃった時代は借り手はぜひ貸してくださいと言うだけですから複雑なニーズが金融機関に出たとは余り考えられませんけれども、したがって時代背景というのも、先生のおっしゃるとおり、いろいろあったのではないかという感じは私も全く同感でございます。
  73. 牛嶋正

    牛嶋正君 ただ、この期間一つだけ考えておかなければならない問題があるのではないかと思います。  それは、表面的には金融市場は安定的でありました。しかし、大蔵省が護送船団方式の名のもとに誘導にポイントを置いた金融行政を進められてまいりました。そのために、金融機関経営者が自分の判断で物事を決定し、その結果については自分で責任をとるという自己責任原則が余り働かなくなったのではないか、そしていつしか自分たちに課せられた社会的責任への自覚までも薄れていったのではないかと私は思うわけであります。  そうだといたしますと、この期間の金融行政に対する評価は少し私は割引をしなければならない、こういうふうに思っておりますが、先ほどちょっと褒め過ぎたかと思っておりますけれども大蔵省はこの点についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  74. 山口公生

    政府委員山口公生君) 社会的責任への自覚の問題は私が申し上げるにはもっと奥の深い問題だと思いますので軽々に申し上げるわけにはいきませんけれども、社会的責任の自覚はそれぞれお持ちであったと私は思うわけでございますけれども、ただ一方で規模を大きくすることが逆に競争のメルクマールというような時代でもあったわけでございます。そうしたときに、ともすれば自分の大きさを気にするという方に目が向いていたとすれば、社会的な責任とかあるいは自己責任ということについて、当時どういうお考えだったのかなという感じが否定はできないわけでございます。
  75. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、これまでの金融市場の推移を振り返っているわけでございますけれども、この点で非常に重要な期間というのは一九八〇年代後半から九〇年代の初めにかけて、いわゆるバブル崩壊以前の期間であったのではないか、こういうふうに私は思っております。私は、今の金融危機を分析するに当たりまして、バブル以前の約十年ぐらいの金融市場あるいは金融行政の展開をやっぱりもう一度分析する必要があるのかなというふうに思っております。  この時期はなぜ重要かと申しますと、先ほど申しました市場構造が、金融構造がこれまでの資金不足の状態から少しずつ金余りの状態へ移行していくわけでございます。いわば貸し手市場から借り手市場へと移っていくわけです。言いかえますと、先ほどの比喩を使って言いますと、金融システムを構成している船団、この船団にとってこれまでは追い風であったわけですけれども、これが向かい風に変わったということですね。しかも、このような市場の状況のもとで金融の自由化が進められていったわけでございます。言いかえますと、経営に対する自己責任原則が十分に確立しないままに自由化だけが進んでいったためにこれまでの秩序立った体系は簡単に崩れてしまったのではないかと私は思います。もう一度比喩的に申しますと、まだ十分に航海技術を身につけていない船長が逆風をついてエンジンを全開させた、そうなりますと個々の船は速度は異なりますし、方向も違ってまいりますので船団の隊形が崩れるのは当然であります。  私は、この混乱こそバブルであったのではないかというふうに思っております。少なくともこの混乱がバブルを引き起こしたというふうに解釈しておりますけれども、これについてのコメントをいただきたいと思います。
  76. 山口公生

    政府委員山口公生君) 先生のお考えは相当深い御賢察の上での御意見でございますので、私も基本的にはそういうことがあるのではないかという感じがするわけでございますけれども金融の自由化は八〇年代の半ばぐらいから金利の自由化、業務の自由化という両面で相当なスピードで、また着実に進められてまいりました。  金融機関もいよいよ自由化時代あるいは国際化時代ということを意識して、どうあるべきかということで随分御研究もされ、対応をされてきたと思うわけでございます。  その後、八〇年代の後半にかけましていわゆるバブル現象が起きたわけでございますけれども、これがすべて金融機関責任だと決めつけるのは私は酷ではないかと思います。それは、やはり日本、私も含めまして日本国じゅうが何か新しい経済のステージに入ったというような自信を非常に持ち、また土地は下がったことがないということから土地神話が非常に強くなり、そういったことに私どもも気持ちが行きました。金融機関もその例外ではなかったと思います。  本来、そのときにリスク管理とかいう基本的なところが、確かに先生のおっしゃるように、自由化の中で自己責任考え方とともに金融の管理技術として定着していればもう少し何とかなったのではないかという議論はできます。しかし、私もそう過去のことをとやかく言う資格も余りありませんけれども、ただ大事なことはこういうことを起こさないということ、つまり学ぶということだろうと思います。  したがって、今、金融機関も自由化の時代、国様化の時代、新しい金融システムに変わろうとししおります。一番大事なリスクをどう管理するか、しかも、それも感覚ではなくて計量的にどうつかんでいくかという科学的なリスク管理の手法を学げ、それでそういった行き過ぎを防ぐというようなことを今学んでおります。そういった経験を貴重な経験として、反省としてこれから対処していかなければならないと思っております。
  77. 牛嶋正

    牛嶋正君 今のような説明を私聞きたかったわけです。  要するところ、非常に重要なバブル以前の十年間、ここで金融行政がどう展開されたかと。今おっしゃったように、これまでの規制・誘導にポイントを置いた行政から検査監督というチェック機能に重点を置いた行政があのとき展開されていたらというふうに私はいつも思うわけであります。そうしますと、ひょっとしたら今のような危機的な状況は生まれてこなかったのではないかというふうにも思います。だからといって私は金融行政のまずさをここで非難するわけではございません。  一つだけポイントを申し上げますと、あのとき財政運営の最大の課題は増税なき財政再建だったわけですね。ですから、その影響が私は金融行政にも何らかの形であったのではないかと、こういうふうに思います。端的に申しますと、もっと早く総量規制をやっておればこんなに不良債権を大きくしなくてもよかったのではないかということも言えるでしょう。それがおくれてしまったというのは、やはり何らかの形で増税なき財政再建が大きな影響を与えていたのではないか、こういうふうに思うわけであります。ここから私は財政と金融の分離を言うわけではございませんで、これはそのときのことを振り返りながら申し上げたわけでございます。  これにつきましては大体今お答えをいただきましたので、先に進ませていただきたいと思います。バブル後の我が国の金融市場の危機的状態、これは先ほど比喩的に申しました船団の隊形がバブルで乱れてしまったというだけではなくて、逆風をついて前進することができないままに難破する船が出てきたということだろうと思います。問題ほ、この状態から我が国の金融市場をどう立て直し、安定した金融システムをどう再建していくかということだろうと思います。  私は二つ方法があるのではないかと思います。  一つは、とりあえず船団の中から一そうでも落後者を出さずにいく。そうすれば、それが他の船にも波及して連鎖反応を起こさずに金融システムをある程度安定化に向かわせることができるだろうと。しかし、落後者が出てしまうとそれが他の船にも影響して連鎖反応が起こりますと金融システムはがたがたになってしまうと。したがって、破綻に追い込まれる前に何とか救済していこうという方法であります。私はこれはこれまでの大蔵省がとられてきた方法ではなかったかというふうに思います。そして、この方法は拓殖銀行とか山一証券の大型破綻で全く有効でなかったということが私は今証明されたんじゃないかと思っております。行き詰まってしまったと言っていいと思いますね。  そうしますと、もう一つの方法を考えなければなりません。これは金融システムの安定化を進める場合に、これまでのような護送船団方式の考え方を捨てて、むしろ自分で航海できる者は残すけれどもそうでない者はもう切り捨てる、残った者だけでもう一度隊形を立て直してともかく前進をしていく、前へ進んでいく、こういう方法であります。ただ、その場合でも難破した船の乗客の命だけは救済しなければなりません。これが預金者保護であると、こういうふうに思います。もちろん、救済の方法といたしましてはいろいろな方法が想定されると思います。  いずれにいたしましても、こういった方法で金融市場の安定化を図っていくということになりますと、この際やっぱり思い切ってこれまでの護送船団方式から完全に抜き出なければ、脱し切らなければこの方法でもうまくいかないのではないか、私はこういうふうに思いますが、この点についてコメントをいただければと思います。
  78. 山口公生

    政府委員山口公生君) 全く先生のおっしゃるとおりでございますが、私の率直な感じもちょっと聞いていただきたいと思うのでございます。  私どもは護送船団方式を守ろうと思っているわけではございません。もうそれは卒業したつもりでございます。ただ、個別の金融機関で例えばちょっと手をかしてやればまた立ち直れるところを何もしない方がいいのかどうかという問題はやはり残っているとは思います。しかし、もう再建できないところ、あるいは破綻しているところを無理やり一そうなりともおくれさせてはいけないということで救ってしまうという行政も既にとっておりません。したがって、拓銀、山一が護送船団の行政の破綻だとおっしゃいましたけれども、いろいろ御批判は受けますけれども、私どもがやろうとしていたことができなくなったということではなくて、それは新しい行政の展開として、しかし預金者は守る、投資者の財産は守るということでシステムは揺るがさないようにしているということを今懸命に努力しているわけでございます。  大型の破綻が不幸なことにいろいろ続きました。できるだけそういうことがないのを私ども望んでおりますけれども、万一そういうことが起きたとしても我が国の経済がそれによって大きく揺るがないようにしなければいけない、国際的な信認を失わないようにしなきゃいけないということを今最大の眼目にいたしておるわけでございます。  ただ、すべてを整理してしまえという乱暴な議論にはとてもくみしませんけれども一つのルールが今の段階で少しずつ確立されているのかなというふうに思っておりますので、どうぞ御理解をいただければと思います。
  79. 牛嶋正

    牛嶋正君 時間が来てしまいました。最後に大蔵大臣にお聞きしたかったんですが、また次の機会がございますのでそのときにやらせていただきたいと思います。  要するところ、いずれにしましてもこれから新しいルールづくりをしなければならないと思っております。  きょう、過去を振り返りまして、ルールづくりに当たっての幾つかのポイントが指摘できたと思っておりますが、それに基づきまして次は質問させていただきたいと思っております。  どうもありがとうございました。
  80. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 民主党・新緑風会の峰崎でございます。前回は拓銀の問題について質問いたしましたけれども、今回は山一証券のところからまず入らせていただきたいと思います。  昨日、衆参で予算委員会の集中審議がございました。その内容を十分つかまないままに昨日質問内容を確定していたために、午前中あるいは先ほどまでの質疑ども踏まえて少し質問内容が変わるかもしれませんが、その点は御容赦願いたいというふうに思います。  山一証券の飛ばし問題でございますが、昨日、予算委員会で三塚大蔵大臣は、山一証券簿外債務を発見できなかったことは、大蔵省検査の限度を超えると。これは正式に議事録を持っているわけではありませんので、正確にはどのように発言されたかわかりません。検査の限度を超えるということはもうどうしようもないんだということで先ほど来金融検査部長の方からもいろいろとお話を聞いているわけでありますが、これでは実は困るのであります。  こういうものが二度と起きないように、そのために今回の罰則の規定などももちろんあるんだろうと思いますが、検査機能という面で、大蔵大臣は、検査機能自体ではもう限界だと、こういう理解なんでしょうか。それとも、もっとこの点は機能として強化をすれば大丈夫だ、あるいはこういう形ですればいいというような具体的な考え方を持っていらっしゃるんでしょうか。その点、まずお聞きしたいと思います。
  81. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 昨日申し上げた趣旨は、検査部が抜き打ち的にやるわけでございます。提出される書類をベースに検査を行います。簿外債務は提出されておりませんということを申し上げたわけであります。よって、今後の検査は、先ほど来担当部長に指示したと申し上げて答弁しておりましたとおり、検査の効率化、実効化ということに万全を期して、検査のポイントも今度の事件を教訓として追加いたしながら万全を期せと、こう申し上げておるところであります。
  82. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 この罰則強化の中身について先にちょっと集中的にやっておきたいと思うんです。  諸外国との対比、先ほど牛嶋委員指摘された資料を私も見ておるわけでありますが、アメリカなどの場合は、ここに記載されていませんが、こういう金融犯罪を起こしたらマーケットから永久に追放する、あるいは金融犯罪というのはしょせん割に合わぬものだと、これぐらいある意味では徹底した仕組みができ上がっているやに聞いているわけであります。  この点は、今回ある意味では十分に入っていないと思うのでありますが、そういった点についてもっと補強をしていく、あるいは強化をしていく、そういう考え方というものはどのように考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
  83. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 金融機関の中でも主として証券会社を念頭に置かれた御質問かと存じますから私からお答えさせていただきたいと存じます。  我が国におきましても、証券会社法令違反事案に対しましては行政処分の規定がございます。最も重くは免許の剥奪でございますし、御承知のとおり、六カ月以下の営業停止という措置がございます。  どちらかといいますと、アメリカと日本とでその部分をとりますと、アメリカにおきましては、先ほど来御議論のあります行政罰的なもので、お金で取ろうという考え方が強い。日本の場合には、行政処分という形で業務を制約しようという考えの方が従来の法体系としては強いのかなという印象はございます。  なお、アメリカのSECなどがしばしば証券界から追放したというような発表をいたします。これに相当するものは私どもの世界では外務員登録の抹消という制度がございます。これにつきまして、我々はそれなりの対応をいたしております。しかしながら、そういった問題を起こした方の外務員登録の抹消というのはもう余り意味がないのではないかと日本では受け取られがちでございますから、野村証券の例えば前社長に対して外務員登録の抹消をいたしましたら、これはお笑いぐさであるという新聞報道がなされたことはございますけれども、そういった仕組みはシステムとしては日本は持っておるということを申し上げたいと存じます。
  84. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 犯罪の防止という意味では、こういう見方をしていいのかどうなのか、この点、大臣でもあるいは当局でも構わないんですが、どうも日本の金融機関に対する考え方というのはやっぱり性善説だったんだねと。基本的にはそんなに悪いことしないよと。しかし、これだけ各種犯罪あるいはいろんなものが起きてくると、これはもう性悪説に立って徹底的にやはり厳しくやっていかなきゃいかぬと、こういうふうに転換をし、また法体系全体も、先ほど私申し上げましたように、こういう犯罪をしたらとても割に合わぬなと、こういうところになるまでやはり変えていくべきじゃないか、私はそういう考え方を持っているんですが、この点はどのようにお考えになっているんでしょうか。
  85. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 大変深甚な御質問でございますから一局長が御答弁申し上げるテーマかどうかわかりませんが、先ほど銀行局長牛嶋先生とのやりとりの中にもあらわれてきておりましたけれども金融機関が万全の経営をやるということを期待し信じながら行政をするという枠組みからだんだんとやはり行為に対する責任という考え方になってまいりました。  これらにつきまして、私は外国でもアメリカとイギリスとでかなり考え方が違うように思っております。アメリカは性悪説に立ちまして検査というものを徹底的にやる、銀行の場合でありますと常駐検査官という形で徹底的に調べるというやり方をとっておりますし、イギリスの場合には今の言葉ではどちらかというと性善説に立脚するのでありましょうか、検査ということはやらないと。検査部隊というのはイギリスは持っておりません。経営者に対するいわば会話での指導によって経営体制を整えさせていくという感じでございます。  しかし、例えば簿外を見つけたかという点に関しましては、アメリカのニューヨーク連銀も十年間に八回、大和銀行のケースでございますけれども、ニューヨーク連銀自身が検査責任を持っておったわけですけれども発見できずに、井口から我が方への通報を知って初めて承知したということでありますし、イギリス側におきましても、これもまた日本勢でございますけれども、住商事件あるいはベアリングズ事件といった、けさほど来御指摘のある簿外というものにつきまして、やはりそういった行政の過程では把握できなかったという悩みは持っております。  それに対してどういう形でこれから検査体制を再構築していくかということはそれぞれの国が、今私どもは相互に連絡をとりながら検討いたしておりますけれども、そんな課題を抱えている状況でございます。
  86. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 もう一つは、私は金融問題をずっとやっておりましてつくづく感ずるのは、この種の問題というのはおくれればおくれるほど非常に傷口が大きくなっていくような気がするんですね。しかも社会的な問題も大きいと。  実は、十二月九日付のエコノミストに、山一証券の社員だということで、きのう来たものですからそれを読んでいたら、大蔵大臣が十一月二十四日に記者会見された、巨額の簿外債務の存在をいつ知ったか、大臣は十一月十七日だとおっしゃった、これが本当かどうか——山一の問題に関して言えば、かなり前から雑誌やいろんなもので見ていましたから私たちも簿外債務というのは本当にどうかななんて疑心暗鬼といいますか、九一年に同じようなことをやっていましたからどうなのかなと思っておったわけでありますが、山一証券の社員の人が、これは匿名でございますから何も書いてありませんが、要するにわかったその時点でなぜ山一証券株が売買停止にならなかったかと、こういう指摘をされているんです。  さらに、山一証券は廃業になるわけですが、大蔵大臣や、特に証券局長を名指しで、山一証券が廃業になるのなら証券局長大蔵省責任者も、いずれもやはりきちんとそこで廃業するぐらいの責任をとらなきゃいけないんじゃないかと、こういう非常に厳しい指摘を、実は内部の人ですから相当感情も高ぶっているだろうと思いますが、こういう御指摘。  きっと今、金融機関関係で倒産をしている企業の中には、この問題がわかっていたならなぜもっとそれを早く処置してくれなかったのかと。そこのところは私は非常に重要な問題じゃないかと思うんですが、この点はどのようにお考えになっているのか、お聞きしたいと思います。
  87. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 事実関係を申し上げます。  そういう手紙は手紙としてお聞きをさせていただきました。  山一証券から十一月十七日、簿外債務の存在について口頭で報告を受けたと局長より直ちに連絡があったところであります。  同社に対しては、簿外債務の額の精査を指示いたしますとともに、早急に適切、必要な情報開示を行うよう求めたところであります。
  88. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) ただいま大臣から御答弁がありましたように、簿外債務を自社の債務として認識したということであれば、その証券会社自身において投資家、一般取引関係者にディスクロージャーをする義務がございます。  しかし、それはきちんと正確な計数を把握した上でなされるべきことでございまして、これは本来当局から、当事者の有価証券報告書の計数が確定しない状況で、ただ大きなロスが出たらしいということを漫然と市場に発表すべき筋合いのものではないと考えておりますし、前回もこの委員会で申し上げましたけれども、私の念頭にありまして、グローバルスタンダードということになりますけれども、ニューヨーク連銀が大和銀行の井口にかかわる簿外ロスを把握して、それから大和銀行自身をしてディスクロージャーさせるまでの間、八日間という日にちがあったという意味では、私どもの対応が決して遅かったと考えていないということを先日申し上げさせていただきましたけれども、繰り返させていただきます。
  89. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 その一週間という日にちが長かったのか短かったのか、この点いろいろ判断があるところだと思うんです。  ちょっと今度は観点を変えて、日銀総裁、きょう大変お忙しいところおいでになっていただいているんですが、前回は副総裁に来ていただきまして、日銀特融の四条件といいますか、特融というのは必ずこれは返却してもらわなきゃいけないんだということを条件にされていたわけでありますが、この山一のいわゆる簿外債務ほか、これは果たして特融の四条件をカバーしているのかどうか。とりわけ寄託証券補償基金と言われているもの、やがてはこれでカバーしてくださるだろうという、恐らくそこら辺の約束事があったのかどうなのか。  日銀として特融に踏み切ったときに、これは大丈夫だと国民に向かって、当然これは最終的には日銀特融は返してもらわなければ大変国民に負担がかかってくるわけでありますが、そのあたりはどのように考え、判断をされたのか。大蔵省との話し合いなど、わかる範囲でよろしいんですが、明らかにできますでしょうか。
  90. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもの行います特融につきましては、ただいま御指摘のように、特融を認めます四つの条件を私どもつくっておりますけれども、その中に中央銀行の財務の健全性を損なわないという項目を入れております。このことは、特融が返済をされるということを確保していきながら特融の実行をするということでございますが、山一証券に関して特融を認めました際の判断の中でこの点につきまして申し上げますと、山一証券は現状におきまして会社自体の報告によりまして基本的に資産超過の状態でございますので、今後同社が廃業、解散に向けて資産処分を進めてまいります中で、その資産の処分によりまして返済財源が確保されるというのが私どもの判断いたしました特融の回収の筋でございます。  ただ、長期間を要する廃業、解散の手続でございますから、仮に万が一、そういう手続を行いました結果、山一自体が債務超過の状態に陥っているというような場合には、これは資産を処分をいたしましても返済財源の確保ができないということに相なりますが、この点におきましては、私どもが特融を含めまして山一証券の対応につきまして政府といろいろ協議をしておりました中で、政府において本件の最終処理も含めまして財源確保のためにいろいろの方策を検討しているということを承知しているところでございます。そういった選択肢の一つとして例えば寄託証券補償基金の財務基盤の充実や、また機能の強化等を図るということも検討をいたしておるというように理解をいたしております。  私どもは、そういう具体的な内容も含めまして、さらに幅広くこの特融の回収が確保されるように政府においても真剣に検討をしているという情勢の中でございますので、そういった中で特融の返済財源も確保されるということを強く期待をいたしまして特融に踏み切ったわけでございます。
  91. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 大蔵省にお聞きするんですが、今、日銀総裁がおっしゃったように、強く期待すると、こうおっしゃっているんですが、その点については今さまざまな方法があると、寄託証券補償基金もその一つだろうけれども、どのようなことを日銀と大蔵省との間でこの点については確約をなさったんでしょうか。
  92. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 何よりも大切なことは、現在債務超過でない山一証券の財産の散逸を防ぐことでございます。価値のある土地建物を低価格で譲渡してしまって会社の財産が減少するということを防ぐ必要がございますので、この点につきましては、会社の中に顧問団みたいなものを置きまして、会社の財産の逸失になりそうな取引につきましてはチェックをする。これは本来法的整理でございましたら破産管財人とか保全管理人がやるべき仕事でございますけれども、任意清算でございます。任意清算でございますが日銀の融資がついておるということで資産の散逸を防止するという仕組みを入れさせていただいております。  しかし、ただいま総裁がお答えになりましたように、これから期間のかかる中で会社の資産、負債のバランスがどうなっていくかという点につきましては不確定要素は当然残っておりますので、大蔵大臣の談話として十一月二十四日に、寄託証券補償基金の発動は現在予定されていないが、本件の最終処理も含め証券会社の破綻処理のあり方に関しては、寄託証券補償基金制度の法制化、同基金の財務基盤の充実、機能の強化等を図り、十分の処理体制を整備すべく、適切に対処いたしたいという談話を発表いただき、この談話を前提として先ほどの総裁のような御判断をちょうだいしたということでございます。
  93. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 証券局長、特融をやった破綻した金融機関ですね、山一証券もそうでしょう、拓銀もそうでしょう。今ちょっとお話しになったのは、顧問団を組織したとおっしゃいましたか。つまり、会社のいわゆる財産が散逸しないようにという、そういう顧問団とおっしゃいましたか、ちょっと正確に聞こえなかったんですが。  ちょっとついでに質問させていただきたいんですが、拓銀のときも山一のときもそうなんですが、こうやって特融もやりますよという大変な融資をしたときには不良債権、それから健全債権、きちんと財産が担保され、しかもそれで優良になり得る債権までがばっさり切られて大変な被害に遭わないように、そこのところの管理する仕組みというのがどうもやはり一歩足りないんじゃないかと。  つまり、拓銀なら拓銀の新しい役員の人たちが中心になって進めているとか、あるいは山一の場合、今ちょっとおっしゃった顧問団とかいったような、そういった点を法的にきちんと、例えばアメリカで言うRTCですか、日本版整理信託公社のようなものにして、そしてそこがちゃんとその中に入り込んでいって、その破綻した金融機関の不良債権、優良債権の仕分けそのほかを管財人機能を持ったものがきちっとやるべきじゃないかというような考え方を持っているんですが、そこのところはどのように考えておられますか。
  94. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 会社資産の散逸を防止するという目的を唯一といたしましたら、本件は破産法で処理すべき案件だと考えます。しかし、破産法を適用しますと保全処分が全部にかかりますので内外の取引者、顧客に対する支払いは全部とまりますから、あの時点でそれを行った場合には、昨日、予算委員会の集中審議のときに斎藤文夫先生が悪夢とおっしゃいましたけれども、それが現実化したであろうと思います。  したがいまして、内外の取引関係者には取引の結了を進めていただいて結構である、そして顧客顧客資産の引き出しをしていただいて結構であるという枠組みの中で本件の処理をいたすことにいたしました。そういたしますと、会社が持っております例えば不動産でありますとか有価証券でありますとかいうものを今度は会社資産の処分としてどこか第三者に転売されるときに、それが公正な価格であるのかどうかということをチェックしておかないと今心配されております債務超過に向かって動く可能性があるということで、営業休止の報告を受けましたのに対しまして私どもは証取法五十四条二項に基づきまして命令を発しまして業務の方法に関する制限の命令を発しました。  その命令の中で、正確な名前は顧問委員会でございますけれども、顧問委員会を社内に設置して、委員会と協議の上業務を行うことという指示にいたしまして、事細かに、これは新聞発表もいたしておりますけれども、例えば土地の売却をするような場合にはこの顧問委員会の了承のもとに、それは一件一件の了承になりますのか包括的な了承になりますかはやりようがございますけれども、そういった形でそういった資産の散逸を防止する措置を証取法に基づく命令としてとらせていただいたと、こういうことでございます。
  95. 山口公生

    政府委員山口公生君) 拓銀の処理に関して御報告を申し上げます。  拓銀の破綻に際しましては、日本銀行からの特別融資を受けられることになりましたので、窓口はあけたまま営業ができるようになっております。それはなぜかといいますと、北洋銀行が受け皿銀行になっていただいたからでございます。したがいまして、今、預金者が預金もできますし、引きおろしもできます。貸付先に貸し出しもできます。すべて今までどおりできます。  しかし、一点だけ守っていただきたいことがあるということで業務改善命令を出しております。それは、これ以上資産の劣化をさせないでくださいと。つまり、最終的には預金保険機構が面倒を見ますから、いたずらにどんどんその不良債権を劣化させていきますとますますこの費用が膨らみますからこれはやらないでくださいという命令は出してあります。  したがって、部内では業務監査委員会という会をつくり、弁護士、公認会計士といった第三者を加えたメンバーで融資すべき案件について、健全な先には融資していいですよ、取りっぱぐれになりそうなところはだめですよというようなことを審査しておりますが、正常な取引先である限りにおいては資産は劣化しない形で継続させることができております。これはひとえに北洋銀行が受け皿になってくれたからでありますし、日本銀行が二十五条を発動してくれたからであります。  そういう状況になっております。
  96. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 そこなんですよね。この間もちょっと質問しましたけれども、いい資産と悪い資産、その間のグレーゾーンのところが一番問題になってきて 今 地元でも恐らく苦労しているんだろうと思うんです。時間もありませんのでこれ以上この点については触れません。  日銀総裁にちょっとまた、  今、金利が〇・五%になっております。史上最低がずっと、あれは二年前の九月八日でしたか、ですから何と二年以上にわたってこの〇・五%という水準が続いているわけです。非常に金利を安くしているということは、もちろんよく言われるように、銀行の不良債権を処理するのに業務純益を高めるんだというような言われ方をしております。私もそういう面があるだろうと思うんですが、今、地元の中小企業あたりへ行くと、きょうもある新聞に載っておりましたけれども、北海道とか東北とかそういう地域においては貸し渋り、あるいはもう貸さない、もう返してくれというような、そんなようなことが大変起きてきているわけですね。  そういうのを見て、これは決して日銀だけにこの責任を言っているわけじゃないんですが、日銀が〇・五%に低くして、なおかつ、要するにコール市場でいえば翌日物のようなものはもう公定歩合よりも低いところで抑えて、どうぞお借りください、どんどん買ってくださいとおっしゃっているんですが、実際には末端へ行くとほとんどこれが借りられていない、あるいは貸してくれないというところに行っているんですね。  この点、どのようにお考えになって、つまり日銀の今の金利政策に対する考え方といいますか、その考え方と現実との乖離についてどのように考えているのか、お聞かせ願いたいと思います。
  97. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私ども、公定歩合を〇・五%に引き下げをいたしましたのは二年余り前のことでございますけれども、そのときのねらいは、当時経済の景況が悪うございまして物価が下向きの状況でございまして、物価がこの後過度に下落をしてまいりますと非常に経済に悪影響を及ぼしますので、そういったことを防止したい、そして企業や家計の自信を回復させて経済を自律的な回復軌道に戻していきたいということでございました。  こういった金融緩和によりまして、設備投資とかあるいは住宅購入を行う際の資金調達のコストも安くなりました。また、企業の収益を下支えするというようないろいろの経路を経まして経済活動の回復に貢献してまいったところはございますけれども、我が国の経済の現状を見ますというと、依然、企業の不良債権から生じますいわゆるバランスシート調整をなお行わなければならないという問題や、またこのところ続いております産業構造を再編していかなければならないというその構造的な圧力といったようなおもしがかかっておりまして、今日もなお自律的な回復軌道への移行を行うところまでは確認ができていない状況でございます。  また、景気の現状を見ましても、このところ企業の状況は減速の傾向を強めておりまして、企業の景況感もなお慎重なものとなっております。  こういう状況でございますので、やはり私どもとしましては経済全体の足取りをもっと確かなものにしていくことが大事であると考えまして、当面の金融政策の運営に当たりましては、これまでと同様に引き続き金融の緩和基調を維持しながら情勢の展開を注意深く見守ってまいりたいと思っているところでございますけれども、この間におきましてただいまのお尋ねにございました金融機関の貸し出しの伸びがこのところずっと低調であるということもこれは事実でございます。  金融機関の現状についてでございますけれども、確かに金融機関内部ではこのところ、経営の健全性あるいは効率性を高めるという観点から、また従来のバブルの反省から、貸し出しに関しますリスク管理の強化あるいは収益性の重視というところを打ち出す先がふえております。金融機関がこういう努力をいたしておりますことは、我が国の金融システム全体を強化していくためには避けて通れない過程でございますけれども、これを企業の側から見ますというと、どうも金融機関の貸し出し態度が変わったのではないか、あるいは急に厳しくなったといった受けとめ方をする先も出てくるという場合があるのではないかと思います。  実際には、これまでのところ金融機関の貸し出しの伸び悩みの基本的な原因は企業側の資金需要が全体として盛り上がりを欠いているということが原因であるという面が大きいと思いますけれども、私どもとしては、金融機関側の姿勢が行き過ぎまして、健全な経営を行っている企業でも借り入れが難しくなるとか、あるいは貸し出しが非常に絞られまして、このため金利が全般的に上昇するといったようなことがないかどうか、ここはそういう観点から融資状況について今後とも丹念に見てまいる考えでございます。
  98. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 今おっしゃられた中で資金需要というものが余りないんだというような雰囲気をちょっとおっしゃったんですが、私はそうではないんじゃないかなというふうに思っているんです。先ほど牛嶋先生もちょっとおっしゃっていたんですが、金が足りない時代から金が余るようになってきた。ただし、金が余って独自に資金調達できるのは大企業だ、社債だとかコマーシャルペーパーとかそういうことを通じてできると。中小企業はとてもそういう力を持っていないからどうしても間接金融に頼らざるを得ないと。その中小企業への貸し出しが、いわゆるBIS規制だとか来年の早期是正措置を踏まえて、非常に金利が安いにもかかわらず、相手の担保を見てなかなか容易に貸してくれないというところに来ているのではないんだろうかと思うんです。  ですから、ここのところを私は大変重要なポイントだと思って前の十一月十日に、いわゆる財政構造改革のときにあえて申し上げたんですが、不健全なものを直せと言っているんじゃないんです。健全な金融機関でも非常に今貸し渋りというものが起き始めてきているのではないか。とすれば、これは恐らく自己資本比率がかなり劣化してきているんじゃないか、この間。これは破綻した金融機関じゃないですよ。いい金融機関でありながら、徐々に徐々に株の益出しもしなきゃいけない、あるいは預金保険機構に七倍の〇・〇八四%も出さなきゃいけない。あるいは生命保険会社になると、劣後ローンを買ったけれどもこれが紙くずになつちゃった、こういうことになってきて徐々に徐々に自己資本が下がってくる。その十二・五倍までしか貸せない、株価の下落も加わっていると。そういう中でこれから年末を迎えようとするとき、このいわゆる健全な金融機関で非常に資産が劣化をしてきているところを直さない限り、この貸し渋りといったようなものは直らないんじゃないですかということを実は私は言いたいんです。今、日銀としては最低限の〇・五%をさらに下げろとなかなか言えないんですよね。  こういう金融機関の現状、貸し渋りになっている現状の背景にそういうものがあるとすれば、それに対する対応というのは私はやはり今とられるべきではないかなというふうに思うんです。その点、大蔵省としてはどのように考えておられますか。
  99. 山口公生

    政府委員山口公生君) 貸し渋りの問題は、今総裁が申されたようないろんな側面があると思います。一律にこうだと決めつけるわけにいきませんけれども資金需要がもともと低迷な中でも起こり得る話であるということは私ども認めざるを得ないと思います。それは、BIS基準あるいは国内の基準を達成するという一つの要請がある中で、一方で例えば格付機関は不良債権の処理をどの程度やったかということを大変最近は評価するようになりました。表面的な自己資本比率よりは不良債権の償却あるいは引き当てをどれくらいやったかということを問題にするとなりますと、自分の蓄えあるいは含み益、そういったものを使って引き当てをする、あるいは償却をするということを思い切ってやる。よく新聞に出ております、どこどこ銀行がどれぐらいやったと。これは本当は時間をかけてやろうと思っていた銀行もあるかもしれません。しかし、それがやはり格付というようなマーケットの評価を気にしますと、どうしてもできるだけそういったことをやろうとする。しかも、株価があいにく低落しました。そうすると、余計にそこは安全を見なきゃいけないということで自己資本比率を償却しながらなおかつ八%や四%を維持するということを考え出すわけです。  そうした場合に、資産の中でリスクウェートの高いもの、国債なんかリスクウェートはゼロですからこれは幾らふやしてもいいんですが、リスクウェートの高い例えば貸し出し等について慎重になるというのは一つの流れとしてはあり得るかなと思います。ただ、それが極端になっていく場合は、それは大変な問題でありますし、銀行ビヘービアそのものの問題になると思いますけれども、資産の減らし方も例えばローン・パティシペーションとかいう形でのリスクのシェアの方法もあります。いろんなやり方があると思います。しかし、そういった現象が仮に起きているとすれば、それはやはり何らかの対応が必要であろうということで、せんだっての経済対策の中でも、こういうときこそ政府系の金融機関、中小公庫、国民公庫、商中あるいは保証協会等ができるだけのバックアップをしましょうということで枠を相当広げた思い切った備えをしております。  もちろん、金融機関がとてもこれはリスクが大きくて貸せないというところを政府系が貸しなさいとは言えません。これは政府系だって不良債権をわかった上で抱え込むわけにいきません。しかし、健全なところがそういう事情でどうしても困るということであれば、それは政府系がきちんと対応するというふうに今いたしておるわけでございます。それで対応していくことを期待しているわけでございます。
  100. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 アメリカ金融破綻をずっと追っかけて、SアンドLの破綻以降でずっと見ていると、どうも日本の場合とよく似ているなと思うんですが、ぐずぐず出して失敗をする、先送りで失敗をして、ある意味RTCをつくってやり始めるんです。あと、アメリカの場合は、不良債権の流動化という第二段階に入ったときに、直接金融というんですか、ジャンクボンドとかそういうのが随分あったんですが、日本ではそれが存在していない。そうすると、日本ではその不良債権の流動化問題、さっきの中坊さんも随分苦慮されているんですが、流動化を進めるというのがなかなかうまく進んでいない。  ここを進めるのももちろん重要なポイントなんだと思うんですが、もう一つは、私の方でお話ししたのは、実はそういう劣化した資本のところをある程度優先株という、そういうものを公的な形で支援をしていくという仕組みを、きょうの新聞に載っておりましたけれども、自民党がそんなことを何か考えて三点まとめられているようですね。預金保険機構の財源強化とか自己資本比率の増強策の検討、不良債権回収のための体制整備。これはまだ決まったものかどうかわからないんですが、私はその中身は臨時国会が終わってから大蔵省と自民党あるいは与党の間で決められるんじゃなくて、この公開の国会の中でこれは議論されてしかるべきではないかなと。きのうの予算委員会の質問でも、公的支援という言葉公的資金という言葉と違うんだということで随分総理も苦労されてお話しされていましたけれども、このいわゆるRTC型と、それから優先株を出していったRFC型というふうに申し上げていいんでしょうか、要するにそういうものを今入れるべき時期なのかどうなのかということについてやはり十分国会の中で議論をして決めていただくように私はするべきじゃないかと思いますが、ここは大蔵大臣政府の、また自民党の中の実力者としてぜひその点を明確に出していただければと思うんです。
  101. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) そのことは衆参大蔵委員会初め予算委員会、特別委員会等においてその都度御質疑を受ける前に申し上げてきたつもりであります。国民の論議の高まりの中で、国会論議の高まりの中で、また政府・与党という議会制民主主義の枠組みの中でありますから、そこで協議を続けていただく。しかし、それを待つばかりではなく、私から、一連の今日の取りつけ、いわゆる破産、それからその他の金融機関の事態が起きたことにかんがみ、大蔵事務当局としてもあらゆる選択肢を点検し、検討し、何ができるか、またやらなけりゃならないかということで至急検討に入れと、先週の頭でございましたがそのことを指示いたしておるところであります。  党本部を中心に宮澤元首相を本部長として論議が行われておること、またその他の専門セクションにおいて研究が行われておること、そのことが新聞報道で出ておるわけであります。与党は内閣を支える責任からそれを行うことは当然のことだと思います。また、連帯を組んでおります社民にしろ、さきがけにしろ、これにまたアプローチをし、協議が行われていきますことも政党政治の原点から当然のことで、責任を果たしておることだなと。また、院内政党としての各党におかれましてもこの議論が行われることを私どもは重大な関心で見詰めておるわけでありまして、ここ数日来、各党の代表質疑の中で本件についての議論、賛成、反対を明示しながら、余り賛成が野党の方にはございませんけれども、私は反対の立場という前提で言われることなどを重大な関心を持ってしっかりと受けとめながら、何がやれるのか、国民世論の最終の動向を見きわめて決定をしていかなければならぬ時期に来ていることだけは間違いございません。
  102. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 公的資金導入のありようの問題について余り明確なお話がなかったので非常に残念なんですが、ぜひこの点だけは私要望しておきたいと思うんです。ディスクローズの問題はまた後で申し上げますが、公的資金を破綻処理に導入する場合には、その破綻処理方法が一番コストが安い、このことを納税者である国民にやっぱりわかってもらう必要があると思うんですね。そこは大蔵省、非常にすぐれた人材がたくさんおられるわけでありますから、こういういろんな方法がある中でこれが一番破綻処理が安いぞ、コスト的にタックスペイヤーから見たら一番この点が安くつくんだと、この点をぜひ最大の原則に踏まえながら検討をお願いしておきたいなというふうに思うわけです。  それで、今度はディスクローズの話にちょっと移っていきたいんです。  大蔵大臣、昨日、ディスクローズの問題で発言をなさっておられますね。年末に各金融機関の不良債権額を公表するように指示する、こういうお話なんです。これは新聞の記事ですから確認をしたいと思うんですが、問題は、不良債権額というのは、従来基準の例の破綻先あるいは金利減免というような、従来の方法による不良の開示なのか。私は、これでは余り意味がないんだと。前回、私はアメリカのSECの基準はもっと厳しいねと、これならこれの基準でおまえさん方一回開示してみろと、こういう形で考えて、昨日指示をおろすとおっしゃっていましたけれども、そういう考え方なのかどうなのかということなんですが、その点はいかがなんでしょうか。
  103. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) これは従前、三月と九月、我が国は半年ごとに発表いたしております。合衆国は三カ月ごと。このルールに従って集計をして出す、こういうことでございます。
  104. 山口公生

    政府委員山口公生君) 今、アメリカは三カ月というふうに大臣が申されましたけれども、基準が六カ月、三カ月の問題だということでございますので、ちょっとつけ加えさせていただきます。  大臣が申されたのは、今九月時点での集計中でございまして、それは年末までに急ぎ出す、こういう御趣旨を申されたわけでございます。それはなぜかといいますと、公表不良債権、確かに先生はそれで不十分だというお感じをお持ちだと思いますけれども、ずっとその基準でやってきております。それで、その傾向を見ております。その傾向を見るということはある意味では大変大事なことであります。それが十分か十分でないかという議論は私も十分に承知しております。しかし、一つの基準を設け、それで全銀協で統一基準をやって、それでずっと経年で見ている、しかも引き当て額もずっと見ています。そうすると、観念的に言うと要処理という、担保の評価もありますけれども、そういった概念で趨勢を見ているわけでございます。その趨勢を見るということはある意味では非常に大事で、ふえるかもしれません、減るかもしれません。それは十二月に急いで集計をしなさいというふうに言われておりますので、今鋭意やっておるということでございます。  その話と今の基準が十分かどうかという話はまた別でございます。大臣はそれについてもある程度の前向きの姿勢でディスクロージャーをやらなきゃいけないという趣旨を申されているわけでございます。
  105. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 ある程度前向きのというのは、要するにSEC基準より厳しい開示基準ですよということなんですね。そこが一番聞きたいんですよ。
  106. 山口公生

    政府委員山口公生君) 実は、従来の基準も結構これはいろんな議論を踏まえてつくったものでございますが、この基準ですら来年の三月期で信金、信組まで全部そろうわけです。それで、ではその時点でまた新しい基準で、例えば先生は今アメリカのSEC基準でと申されましたが、これは世界一厳しいのですけれども、それでやれるかどうかというのはまたそれは議論しなきゃいけない問題ではありますけれどもディスクロージャーの問題が非常に大切だという意識は大臣強くお持ちでございますし、我々には検討の指示がおりているというふうに心得ております。
  107. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 今なぜ私がこういうふうに言うかというと、倒産、破綻をしてみると、どうも今まで言っておったやつの何倍だ、あるいは時には二十五倍だったこともございましたね、そういうものを見てこれは本当の意味でディスクローズされていないのじゃないかということを、私が言うんじゃないんです、これは国民も見ているだろうし、恐らく世界各国の金融当局者等が日本のディスクロージャーディスクロージャーになっていないのじゃないかというふうに見ているのじゃないかと思うんです。これは私もアメリカの議会の報告書を読んだことがございますから、そこに早くメスを入れてきちっと一番厳しい基準を、世界の最も債権国として、経済的には大きな国として私はそれは義務だろうと思うんです。そこのところはぜひお願いしておきたいと思うんです。  そこで、建設省にちょっと聞きたいんです。  今、金融機関の問題を話していますが、その根っこのところはやっぱり土地、不動産、そういったところなんですね。建設業、ゼネコンの問題がよく議論になるんですが、今ゼネコンと言われているものが不良債権を一体どれだけ持っているのか、そしてこの間、東海興業あるいは大都工業だとかいろいろ倒産をしたけれども、倒産をしてみると不良債権が言っておった金額よりもまた大きくオーバーしているんです。そういう点は建設省はちゃんとつかんでいるんでしょうか、お聞きします。
  108. 中山啓一

    説明員(中山啓一君) 建設省としてゼネコン業界が抱える不良債権をどのように把握しているかということでございますが、建設省の外郭団体であります財団法人建設経済研究所が本年七月に有価証券報告書をもとに取りまとめた調査報告書がございます。  これによれば、一部上場建設会社大手五十六社でございますが、これの平成八年度の財務状況といたしまして、一年以上支払いが滞っている工事代金、完成工事未収金でございますけれども、これが約一兆四百億円でございます。それから、関係会社への出融資、これはすべて不良化しているわけではございませんが、約一兆六千八百億円。それから、債務の有利子負債、保証債務でございますけれども、これもすべてが不良化しているわけではございませんが、有利子負債が約九兆五百億円、それから保証債務が約二兆九千二百億円というふうな結果が出ております。  それから、例えば倒産した東海興業の不良債権の額などにつきまして、倒産前に公表されていた数字と実際の数字で違っていたというふうなことについてでございますけれども、建設省は建設業法という法律に基づきましていろいろ建設業者の監督をしておりますけれども、建設業法では毎年決算が終わった後四カ月以内に貸借対照表などの財務諸表を許可行政庁、建設省などへ提出していただくこととなっております。例えば東海興業は、平成八年十月期における決算でございますが、これに関する財務諸表は平成九年二月二十二日に建設省に出して受理いたしております。  ところが、七月四日でございますか、更生法の申請をいたしたわけでございますが、その際にはいわゆる修正貸借対照表と言われるものを会社の方が裁判所に出しているわけでございますけれども、これは建設業法上は我々に届け出が義務づけられているものではございません。しかしながら、会社が公表した資料や報道により建設省としてはその内容を知ったと、把握したということでございます。
  109. 峰崎直樹

    峰崎直樹君 要するに、大蔵省の言っていることもなかなかあれで、建設省も建設業界のまたどうも実態を十分つかんでいるようじゃないと。だれが一体責任を持ってその不良債権の実態をつかむのかという、ここがどうもある意味では非常に欠けているんじゃないかというふうに思います。  もう時間がありません。最後に労働省と大蔵省にお聞きします。  いわゆる破綻した場合に、当然のことながら雇用問題がある。新聞紙上では受け入れてもいいとか、いろんな形が出てきていますが、大蔵省及び労働省としてはこれをどういうふうにとらえ、そして大蔵省としてはこの雇用問題、例えば来年就職が決まっていたところがあるはずですよね、拓銀にせよ山一証券にしても、こういったところに対する対応はどういうふうになさっておられるのか、あるいは今後どうしようとされているのか、そのことを聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  110. 太田俊明

    説明員(太田俊明君) お答え申し上げます。  金融機関等に経営問題が生じた場合には、それぞれの企業が従業員の雇用問題につきまして最大限の努力をすることが必要であると考えておりますけれども政府としても雇用問題の発生を最小限にとどめるために適切に対応してまいりたいと考えております。  このため、ヒアリングなどを通じまして当該金融機関状況を十分把握するとともに、関係省庁とも連携しながら、離職を余儀なくされる場合にあってはできる限り失業を経ることなく円滑に再就職できるように支援を行ってまいります。また、雇用調整助成金に係る大型倒産等の事業主の指定基準を早急に見直すなど、関連企業における失業の予防のための措置を講ずること等によりまして適切な雇用対策を推進してまいります。  特に、山一証券につきましては、労働省に山一証券等の雇用問題連絡協議会を設置いたしまして、第一回の会合を十二月四日に開催することとしておりまして、大蔵省、東京都、その他関係者と十分な連携を図りながら必要な雇用対策を実施することとしております。  さらに、山一証券採用内定者が四百九十人おりますけれども、文部省、大学等との連携を図りながら早急に求人情報の提供、就職面接会の開催等の措置を講じてまいりたいと考えております。
  111. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) ただいま労働省代表から報告があり、その対応についての取り組みの答弁がございました。大蔵省といたしましても、労働省を中心に関係当局との連携を密にしながら対処してまいります。
  112. 上山和人

    ○上山和人君 社会民主党・護憲連合の上山和人でございます。私は、山一証券の問題をめぐる対応に絞りまして、こういう性格の問題に関する対応のあり方についてお尋ねをいたしたいと思います。持ち時間わずか二十五分でありますから端的に質問を申し上げますけれども、お答えになる方も明確に簡潔にお答えいただければと思います。    〔委員長退席、理事楢崎泰昌君着席〕  まず、今回の山一証券の問題に対する対応を見ておりまして感じておりますのは、一口に言ってこれまでの教訓が全く生かされていないのではないかと。特にあの苦い経験をした住専処理問題の教訓が生かされていない。とりわけ住専処理の問題で後手後手に回って、そして税金の投入をせざるを得なくなって国民の大きな反発を招いた。同じように今回も山一証券が自主廃業、実質倒産に追い込まれるまでこれを未然に防ぐ対応ができなかったのではないかと。  そして今、公的資金導入が取りざたされて、大きな国民の不安、そして反発を再び招こうとしていると思うんですけれども、先ほど峰崎委員の御質問に対して大臣は、山一証券簿外債務の存在については十一月十七日に初めて知ったとお答えになりました。これは山一証券から口頭で報告を受けた、そして指示したともおっしゃいましたけれども、口頭で報告を受けて、初めて十一月十七日に知ったとお答えになりました。  それはそのとおりでございますね。
  113. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) そのとおりであります。
  114. 上山和人

    ○上山和人君 私たちは、こういう問題に対する対応のあり方について、できるだけ先手先手で対応して、そして国民負担を招くことなどの起こらないような、そして破綻に追い込まれることのないような予防措置が何よりも大事だと。先手先手の対応が必要だということは、住専問題に限らず、これまでの教訓で明らかになっていることだと思うんです。  大臣に率直にお尋ねいたしますが、十一月十七日以前は何も山一についてはそういう兆しもその前ぶれもお気づきにならなかったんですか。
  115. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) ですから、十七日にこういう事態、簿外債務の存在が明らかになり、対応が急がれる、こういうことの報告であります。
  116. 上山和人

    ○上山和人君 どうも大蔵大臣の御答弁としては納得できませんね。  これは週刊東洋経済という金融専門の週刊誌です。これはもう大蔵省関係者の皆さん御存じのはずです。この十二月六日号、これは発行は十二月六日ですが、もう既に店頭に出ております。これを見ますと、「大蔵省は「簿外債務の存在については報告を聞いてつい最近知った」」と。これは、「つい最近知った」というのは十一月十七日だということはきょう今お聞きをしたわけでありますけれども、しかし「いわゆる「飛ばし」の噂は五年も前からあり、一般紙でも弊誌でも報じられた。」と報道しているわけですよ。五年も前からうわさがあった、そして一般紙でも週刊東洋経済でも既に報じられたとこの週刊誌は書いている。  私は、時間がなかったんですけれども、今までどういうふうに一般紙が取り上げたのか、そしてこの東洋経済という専門誌がいっこの問題を報じたかというのを急いで調べてみたんですけれども、この週刊東洋経済は四月二十六日に特集を出しています。こういうコピーしたのをごらんになればおわかりのように、四月二十六日に「山一証券を襲う重大疑惑の真相」という特集をしています。この中身はもう一々読み上げて御紹介するまでもないと思うんです。これをお読みになるだけでどういう問題が山一に今発生しているかということはおおよそ想像、察知できたはずではないかと私たちは思いますよ、中身は一々読み上げませんけれども。    〔理事楢崎泰昌君退席、委員長着席〕 そして、六月二十八日には、十一月十七日よりも随分前ですけれども、今度はこの週刊東洋経済は「「飛ばし」はこうやって行われた」という元経理部長による独占手記を載せていますよ。こういう誌面になっていますよ。六月二十八日、さらにフォローしてこういう独占記事を載せていますよ。  そして、産経新聞はことしの四月二十一日、随分早い時期ですよ、四月二十一日に「山一証券損失穴埋め 阪和興業に株取得で 時価上回り百数十億円分」、こういうふうに報道しております。こういう大きな見出しですよ。これまで一般紙なり週刊誌が報道している問題について十一月十七日まで知らなかったとお答えになりますけれども、信じられませんよ。  これは、証券局長なり銀行局長もおいでですから、皆さん何もお気づきにならなかったんですか、お答えいただきたい。
  117. 堀田隆夫

    政府委員堀田隆夫君) 監視委員会の方から御説明をさせていただきます。  ただいま先生からお話がございましたような報道が四月、六月とございましたことは事実でございます。  私ども、ちょうどこの四月以降、山一証券に対しましていわゆる総会屋事件損失補てんの調査、それから大口法人顧客に対する損失補てんの犯則調査に入っておりました。その傍らで、特に六月の時点で具体的な報道が行われましたことから、会社に対しまして早急に社内調査を実施して当局に報告するようにという指示を出したところでございます。  その後、何回か催促いたしましたけれども明確な事実関係についての説明がなかったわけでございますけれども、十一月十七日に至りまして山一証券の社長から多額の簿外債務があったという報告を受けたという経緯でございます。
  118. 上山和人

    ○上山和人君 今、証券取引等監視委員会の事務局長さん、報道は知っていたとお答えになりました。  日銀の方は、総裁、どうだったんですか。
  119. 松下康雄

    参考人松下康雄君) この山一証券の問題となっております多額の含み損及び簿外債務の件につきましては、私どもも当時一部に報道されておりました飛ばし取引につきまして関心を持っていたところでございます。  私どもは、山一証券に対しまして本年夏に考査を行ったのでございますけれども、その際に当然先方に対してこの点についての説明を求めましたが、この時点では同社からはただいまちょうど証券取引等監視委員会の指示を受けて社内調査中であるという説明しか得られなかったわけでございます。  このために、私どもとしましては、それではその調査を継続の上実態が判明され次第遅滞なく報告するようにと求めたところでございますが、これに対して山一証券から、十一月十七日に現経営陣が社内調査をしました結果含み損と簿外債務を認識したという報告があったのでございます。
  120. 上山和人

    ○上山和人君 大蔵省証券局長銀行局長はどうなんですか。四月二十一日の産経新聞、四月二十六日の週刊東洋経済、六月二十八日の週刊東洋経済、先ほどお示ししましたような記事については全然お気づきになりませんでしたか。
  121. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) その報道は私自身目にいたしております。それから、それに対しまして会社側が事実無根である、あるいは訴訟を起こすといったような反論をしたという報道も承知いたしております。  ただ、私の立場で申し上げさせていただきますことは、前回の証券不祥事の折に、監督検査というものが一体になっておることが証券界のもろもろの問題の解決のために適切でないということから、証券会社に関します検査機能は証券局から外すということで私どもに従来ございました検査課というものが廃止になりまして、証券取引等監視委員会という独立の組織とし、その独立の組織に対しましては証券局が影響力を及ぼさないように、独立性を尊重するようにということでございましたので、今となりましては、あるいはお聞き取りいただきますとそれで監督当局かと大変おしかりを受けるかもしれませんけれども監督検査は厳然と分離して、監視委員会においてかかる事案についてはチェックするという体制ができましたので、それに従っておりました。
  122. 上山和人

    ○上山和人君 銀行局長はどうなんですか、御存じだったんですか。
  123. 山口公生

    政府委員山口公生君) 所管のことをとやかく私は申すつもりではございませんけれども、一応銀行局としてはそういう情報を耳にする機会はなかったわけでございます。
  124. 上山和人

    ○上山和人君 耳にするんじゃなくて、目で見ればわかるんです。これはこんな大きな活字で報道されているわけですよ。  私は、三者とも御存じだったということ、しかも、証券取引等監視委員会の方はそれなりの対応はした、日銀の方もそれなりの対応をしたけれどもわからなかったと、詰めて言えばそういうふうにおっしゃったんだと思うんですけれども、そういう証券取引等監視委員会と日銀の動きがありながら、大蔵大臣は十一月十七日まで知らなかったとやっぱりおっしゃるんですか。証券局長も知っていたと言われるんです。ただ、分離をすることが原則だから何も言わなかったという趣旨お話をされますけれども、それも問題だとは思いますが、大蔵大臣、本当に何にも御存じなかったんですか。そして、就任されたとき報告はお受けにならなかったんですか。証券局長は知っていたというわけだから。
  125. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 何にもないからないと申し上げているわけです。
  126. 上山和人

    ○上山和人君 証券局長はその記事は知っていたとおっしゃいましたよね。重大問題だという認識はなかったんですか。大蔵大臣が就任をされたときにその報告はされなかったんですか、どうなんですか。
  127. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 先ほどの御答弁の繰り返しになりますけれども、こういった事案につきまして独立して職権を行使する監視委員会において所掌するということになっておりますので、監視委員会の所掌事務を侵害するようなことは一切行っておりません。
  128. 上山和人

    ○上山和人君 果たしてそういうものなんですかね、大蔵省責任というのは。  これは証券取引等監視委員会というのは法律によって委任されていますよね。だから大蔵省と全く無関係なんですか。全く連絡もとらない、サジェスチョンもしない、アドバイスもしない、お互いに連絡もとってはいけないというほどの関係なんですか、独立しているから。証券局長、そういう問題ですか。言い逃れにすぎないと私は思うからもっとはっきり聞きたいんです。そういう意識だからこんなふうに後手後手になるんじゃないですか。関係者みんなで総合的に力を合わせて、そして足らざるは補い合いつつ対応しないからこういう結果になるんじゃないですか。  証券局長はあたかも何というか不可侵条約が結ばれているかのような話をされるけれども、そんな問題ですか、この問題は。
  129. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 全く切れているわけではございません。監視委員会検査を行い事実関係を把握し、それを大蔵大臣に勧告するという仕組みになっておりまして、その勧告があった場合には私ども行政部門が発動し監督上の措置を講ずるという仕組みになっております。
  130. 上山和人

    ○上山和人君 そういうことをお聞きしているんじゃなくて、この報道は知っていたとおっしゃるから、重大な問題だという御認識はそのときありませんでしたかと、なぜ就任されたときに大蔵大臣に報告されなかったんですかと、それをお聞きしているわけですよ。こんな結果になるような問題ですよ、結果論じゃなくても。重大な問題だという認識があればなぜその報告をされないんですか。大臣は十一月十七日まで知らなかったと言われるわけだから。
  131. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 銀行証券をめぐりますいろいろな報道はございます。ただいま申し上げましたように、本件につきましては監視委員会からもし報告すべき事項があれば報告が上がるべき案件と考えておりました。
  132. 上山和人

    ○上山和人君 同じことの繰り返しになるんですかね。余りにも私は無責任だと思います。そんなふうに処理していい性格のものでしょうか。  証券取引等監視委員会が報告をするまでは大蔵省からは何も言わない、大蔵大臣にもこの報道がなされたことは知っているけれども報告もしないで済むような問題なのかということがやっぱりどうしても納得できない。そういう体制だからみすみす四月二十一日から報道されているのに、そういう兆しが一般紙でも金融専門誌でも報道されているのに、深く立ち入って実態を明らかにする努力を、実態を把握する努力を怠ってきた、これが本当の姿じゃないですか。そういう状態だから、証券局長が言われるような状態だからそうなったんじゃないですか。私はまさに大蔵省責任だと思う、今の証券局長答弁を聞けば。  大蔵大臣証券局長の対応等について、それでいいと大臣はお考えになりますか。
  133. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 山一から局長に連絡があり、局長がこういうことで極めて遺憾なことであると。それに対して、先ほども申し上げましたとおり、同社に対しては簿外債務の額の精査を指示いたしますと同時に適切早急に必要な情報開示を行うべしと、こう申し上げたということであります。
  134. 上山和人

    ○上山和人君 大臣ですから失礼なことを申し上げたくはないんですけれども、随分ピント外れなお答えをなさっていますよ。今のような証券局長の対応で本当に大蔵省はこれからも金融問題、証券問題、金融機関等の問題に対応できるんだろうかとやっぱり思いますよ。  就任されても全然報告をしなかったということについて、大蔵省の体制のあり方として、それでいいとお考えになっているんですかと聞いているんですよ。端的にお答えください。
  135. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 全力を尽くして証券局長は管轄の証券の問題をやられておることであり、組織が証券取引等監視委員会もあり、局長の言わんとする意味わからぬわけではありませんが、その認識いかん、こういうことでありますけれども、事実は十一月十七日に簿外債務の存在について口頭で報告を受けたと、こういうことであります。御案内のとおり、二月のG7会合以降、我が国の為替また金融システムの安定策について全力を尽くしておった時期でございます。そういう中で、それぞれの判断で監視委員会の報告を待つというのが担当局長のこれまた心構えであろう、こういうことでございます。
  136. 上山和人

    ○上山和人君 まことに大臣の、こんな深刻な事態を招きながらのこの委員会の大臣答弁とも思えないような、私は本当に残念でならないですよ。本当に今のような大蔵省の体制でいいんですかと聞いているのに、それは職員をかばうお気持ちはよくわかりますよ、でも本当にこれからはこういうことはこんなふうに改めたいといった決意の一言も聞けないじゃないですか。  私は、大変大きな責任大蔵省にあるということをはっきり申し上げたい。きょうの私の質問に対する御答弁をお聞きしながら、そんな体制だったのかと唖然とする思いですよ。国民に対してどういうふうに説明なさいますか。局長が今答えられるようなことをどうやって説明して理解を求めることができるとお考えになりますか。到底理解できませんよ。私は、大蔵省に大変な責任があるということをはっきり申し上げておきたいと思います。  そこで、証券取引等監視委員会、それから日銀総裁にお尋ねしたいんですけれども、十一月二十七日の参議院予算委員会参考人質疑に対する答弁の中で水原委員長は、誠心誠意検査したが発見できず残念だったとお答えになっています。先ほどもちょっとお答えになりました。それから、日銀総裁はそのとき日銀考査は法的権限に基づく強制力はない、金融機関協力がなければ限界がある、こんなふうにお答えになっています。また、水原委員長検査は任意で相手方協力が必要なんだとおっしゃっています。ここにやっぱり限界があるんじゃないですか。今の我が国の対応の仕方について法制上も問題をお感じになりませんか。特にアメリカのSECとの比較で日銀総裁もおっしゃっています、なぜ強制力がないんだと。そして、水原委員長相手方協力が必要だと。  これは先ほど相互信頼のもとに考査をするのがというお話も副総裁からありましたけれども、この仕組みはこのままでいいと、証券取引委員会の監視あるいは日銀の考査、そういうもののあり方は今の法律に規定されているままでいいとお考えなのかどうか。改めなければいけないとお考えになっているなら、どこをどう改めてほしいとお考えになっていらっしゃるか、時間がありませんので端的にお答えいただけますか。
  137. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもの行います考査は、これは行政権の発動として例えば相手方の非違を摘発するという種類の性格のものでございませんで、中央銀行といたしまして取引金融機関取引をし、最後の貸し手として場合によりましては融資をする、そういう立場から相手の信用はどうであろうか、それからそれがこの国の金融システムに何か影響を及ぼすようなリスクがないだろうかどうだろうか、それを把握するために日銀と相手先との間で契約を結びまして、その契約に基づいて、相手方の自発的協力を前提として相手の内情を聞き取る調査をするということでございます。  そして、この点は先般この国会で成立をさせていただきました新日銀法におきまして法律に取り入れられましたけれども、それも考え方は同じでございまして、契約に基づいて考査を行うという趣旨の規定を入れていただいたわけでございます。  ただ、私どもといたしましては、内容的には今後ともリスクの把握の精度が向上いたしますように、例えばリスクに対する内部の管理機構が適正に動いているかどうか、そういうところを従来以上に強く考査の対象とするようなやり方で進んでまいりたいと考えております。
  138. 堀田隆夫

    政府委員堀田隆夫君) 私どもの過去の検査で飛ばし行為を発見できなかったということは、これは大きな反省点でございます。先生おっしゃいましたように、私ども検査行政検査でございまして、相手の会社協力を前提とする検査である、その点に一つの難しさがあるということも事実でございます。  今回見つからなかったことにつきましては、先ほど引用がございましたけれども、水原委員長からも厳しい御指摘といいますか、おしかりを受けておりまして、私どもこれからの検査におきましては飛ばし行為、なかなか簿外で行われるので難しいのでございますけれども証券会社役職員が関与する以上は何らかの痕跡が残っている可能性はある、そこを現物検査できっちりやる、あるいは顧客に当たって顧客から事情を聞くということを通じてさらに飛ばし行為の実態に迫れるようにしてまいりたい、法令違反があれば厳正に対処してまいりたい、そういう経験を通じて検査能力の向上を図っていきたいと思っているところでございます。
  139. 上山和人

    ○上山和人君 いろいろお聞きしましたけれども、やっぱりこのままではいけないなという思いを深くいたしております。特に立法府として、現行法のままでいいのかということについてはこれから私どもとしても検討しなければならない、国会にもやっぱり大きな反省点、責任があるように思うことを申し添えまして、私の質疑は時間が参りましたので、きょうは終わります。
  140. 志苫裕

    志苫裕君 法案の審議に入る前に、二、三、金融機関の破綻問題をお伺いします。  相次いで起きました三洋証券山一証券の破綻処理の違いは基本的にどういう事由によるものか、いかなる物差しによるものか、ひとつお聞かせ願えますか。
  141. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 三洋証券山一証券の処理の違いのお尋ねでございます。  三洋証券につきましては、三洋証券から裁判所に対しまして会社更生法の適用の申し立てをいたしまして、それが受理されております。その受理された背景、裁判所の御判断ですから公のものがあるわけではございませんけれども、その過程で審尋等を受けた私どもの立場で考えますと、一般債権者というものが限られた銀行であってしかも国内金融機関だけであるという点が一点と、それから一般顧客には御負担をかけないという仕組みが、三洋証券の場合には寄託証券補償基金が一般顧客の権利をすべて代位する、肩がわりをして自分がお客にかわって三洋証券に対する債権債務関係を持つという形になる、したがって他の債権者をそのことによって阻害することにならないという御判断がありまして、一般顧客に対する保全処分は例外としつつ会社更生法の適用という御判断があったことと考えます。  山一証券につきましては、会社更生法の具体的な申請が行われておりませんでしたので、申請が行われた場合に裁判所がどういう御判断になったかということはわかりませんけれども山一証券の場合には多数の顧客を海外におきましても抱えておりますので、その段階で保全処分がそういった顧客に対してもかかるということになりますと、要するに日本の証券会社取引している海外の大勢の方がすべて支払いがストップするわけでございますから、そうしますとほかの証券会社銀行はどうだということで大変日本の金融証券界が混乱に陥ったであろうということは一つ想定できますから、その点を裁判所がどう御判断になるであろうかということがございます。  それからもう一つ、先ほど申しました一般顧客に少なくとも迷惑をかけないという形をやろうとしますと、二百八十万口座山一証券にはございますけれども、この二百八十万口座の債権債務関係を全部肩がわりして、私が肩がわりしますということを裁判所に事前に申し出る人が要るようでございますけれども、それが出る目途は立たなかったということではなかろうかと思います。そういったことも山一証券の方は弁護士とも相談した上で、会社更生法の適用が難しいと判断して自主廃業を選択したということでございますけれども、そういった背景を多少の想像も交えながら御報告いたしますとそのようなことかと思います。
  142. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、一方は破産、一方は廃業ですね。破産と自主廃業、それによって顧客の影響の受け方も当然違ってくるわけで、どういう破産のシナリオを描くかによって大分答えも違ってくるだろうということで、どこに大きい違いがあったのかということを私は聞いているわけなんです。
  143. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 結果といたしましては、御指摘のとおり、片や会社更生、片や自主廃業ということでございまして、結果として一番違っておるのは一般債権者の扱いでございます。通常顧客につきましては、すべてお取引を従前どおり行って、証券会社に預けているものがあれば引き出してよろしいということでありますから同じでございますけれども、一般債権者、すなわち三洋証券のケースでいいますと銀行等、恐らく四、五十行になると思いますけれども、これは債権を持っておりますけれども、これは会社財産を今後精査の上、もし再建が行われないということになりますと残余財産を分配して何割かの配当を受けるという形になろうかと思います。  山一証券につきましては、そういった取引先、海外も含めてすべて債務を履行できるということになっております。その背景には、山一証券がこの飛ばしによりまして減少はいたしましたけれども、十一月二十五日時点の有価証券報告書にもあらわれておりますように、ネットとしては千億の純財産が残っておる、したがってすべての債務を履行しても財産がまだあるという状況のもとでそういう措置になっておるわけでございます。
  144. 志苫裕

    志苫裕君 何かあなた難しい答弁をするけれども、一般顧客に影響の少ない破綻処理と大きい破綻処理があるのであれば、大蔵省の指導で小さい破綻処理を選べばいいわけであって、どこにその違いがあったのか聞いているんだが、余りはっきりしませんね、これは。  次に、山一の自主廃業というシナリオは大蔵省が描いたもので、債務超過はないという前提に立って日銀特融を受けられる条件整備があったという観測記事が出ています。先ほど来紹介のあった今発売のエコノミストにはそういう記事が載っていますが、この観測記事について何かコメントございますか。
  145. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) マーケットの混乱を最大に防止しつつ事態を処理するということでは自主廃業ということが選択の道であったということはただいま答弁申し上げました。  この自主廃業をやりました後に、そうしますと顧客は一斉に自分の預けておる資産などの返還を求めてまいります。その手だてができておりませんと取りつけということになりまして、その瞬間にデフォルトが起こるということでございますので、その点につきまして、そういう顧客の資産が完全に顧客の要求に応じて返せるような手だてを講じなければいけないということで、会社の自主廃業の判断を前提といたしまして日本銀行とも相談いたし、最終的には会社の財産を全部売れば返せるわけですけれども、土地建物があした売れるわけではございませんので、その間の資金繰りを日本銀行が特融という形でやっていただいて、顧客は必ず守られるという仕組みができ上がったわけでございます。
  146. 志苫裕

    志苫裕君 私は、この間の委員会で破綻処理のシナリオをコントロールする能力を大蔵省は失ったんじゃないかといって悪口を言いましたけれども、今聞いてみると、やっぱり何にもなかったんだね、能力が。よろよろと歩いている人を行き倒れが出るかもしれないと倒れるまで見ていたわけだ、皆さんは。よろけているうちに何で手を打てなかったんだ、これが今度の山一の問題についてみんながいま一つすとんと落ちない問題点なんですよ。
  147. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) 手を打つということの意味内容は、例えばほかの会社なりが支援の手を差し伸べる、そういったことをあっせんすることについて大蔵省がやるべきかやるべきでないかという御議論もしばしばございますけれども、今それはやるべしというお立場での御質問として承りますればそういったことは考えるべき事柄かもしれませんが、本件の一番の難しさはそのときに会社自身が二千六百億円という簿外損失をはらんでおるんだということを投資家、一般の取引関係者に発表いたしておらぬということでございまして、それを発表しておらぬ前提でほかの証券会社等々に支援の手をといいましても、知らない状態であっせんをすることは私どもとしては許されないことだろうと思っております。  したがいまして、すべてはこの二千六百億の簿外債務というものが会社によってきちんと世の中に明らかにされた上で、その上で支援の手を差し伸べる方がいるかどうかということになろうかと思いますが、限られた時間でございますし細かくは御報告申し上げられませんけれども、最後のぎりぎりの段階でそんな人がおるだろうかというのは、ある意味では少し間接的な形でございましたけれども、それは私なりに探りはいたしましたけれども、そういう支援の見込みはございませんでした。
  148. 志苫裕

    志苫裕君 次に、法案について順次お尋ねします。  まず、一般に刑罰には教育的効果を期待するものと一罰百戒、因果応報の処罰を求めるものとがあります。刑法理論でも二つに分かれて神学論争を続けているそうだが、この法案は一体どの立場に立つものですか。
  149. 山口公生

    政府委員山口公生君) 例えば、銀行検査回避虚偽報告の例で申し上げますと、現在は五十万円以下の罰金ということでございますが、これはある意味では五十万といえども恥ずかしい思いをさせる、こういうことだったと思うのでございます。ただ、この事件が現に起きまして、何だたった五十万なのかという、ある意味ではそんなことなら軽微であると、そういう手続的なものあるいはその程度のものなら軽微であって何ら問題でないというふうにとられてはこれは大間違いでございまして、真実が明らかにならなければ行政もできません。  したがいまして、今回は厳しい抑止力を持たせようということでございます。確かにもっと厳しくしろという意見もあります。しかし、懲役刑を設けました。しかも、三百万以下にしましたし、法人に対しては二億円と、五十万に比べますとそれは全然考え方を変えたということでございます。私どもとしては、これで抑止効果は果たせるのではないかというふうに期待しております。
  150. 志苫裕

    志苫裕君 いや、金融不祥事抑止効果を期待するのであれば、やっぱりこの世界では二度と立ち上がれないくらいの罰則が必要だというのが私の立場です。先ほど牛嶋委員発言に対して銀行局長は、今も述べたが、ちょっと何かへまをしたらすぐにつぶすようなのはいかがなものかという慎重論を唱えたが、あなたの仏心もわかったが、少なくとも不正利得の没収とかあるいはそれが経営者行為にかかわるのであれば資産の没収等は行うべきだという考えです。  しばしば言及されておりますように、破綻処理において、最終的には預金者を守るために財政資金を投入せざるを得ないこともあり得るでしょう。だが、市場や預金者を裏切って何にも感じない不健全な金融機関はこの際思い切って市場から一掃するぐらいのことでなければだめだ。それに伴う混乱や緊張に耐え得る時間と辛抱が必要なことはもう言うまでもない。  先ほども議論がありましたが、アメリカの貯蓄組合の場合、二千人の者たちが手錠をかけられて刑務所に入ったと聞く。金融犯罪には三十年以下という刑事罰もある。三十年といったら大変なものですよ。三年じゃない。気が遠くなる。一生いるようなものだ。証券取引法では相場操縦詐欺行為に対しては十年以下の罰則、懲罰規定がありますが、罰則強化というなら再検討に値する。報道によりますと、インサイダー取引に没収規定を盛り込む、次期国会にそれを提案したいともされておりますが、ちょっとその辺も含めてひとつコメントしてもらえますか
  151. 長野厖士

    政府委員(長野厖士君) インサイダー取引というものは日本の証取法の罰則の世界では、こういう言い方が許されるかどうかわかりませんが、比較的軽微な方の部類に入っておったように感じられます。しかし、この取引の重大性にかんがみまして、今回の罰則強化ではワンランクずつアップしておる中でインサイダー取引は二段階特進と申しますか、罰則を非常に重くいたしております。そのような意味アメリカに近い形の厳しいペナルティーにいたしたところでございます。  あわせて、インサイダー取引の場合には利得が生じますので、その没収ということが大変重要な課題でございます。これは、インサイダー情報があって安いうちに株を買ってそれが情報発表後は高くなったというケースですと、その持っておる株あるいはそれを売って得た代金というものは現行の制度上犯罪によって得たものということで没収が可能でございます。  今、先生が御指摘になりました検討中というのは何を検討しているかといいますと、売り抜けた場合でございまして、五千円の株をインサイダー情報でこれは間もなく安くなりそうだということで、その段階で五千円で売ってしまったと。しかし、重要事実が発表になった後に三千円、二千円、千円と値下がりしたというときには、犯罪によって得たものというものはございませんので没収規定はございませんけれども、やはり反社会性という意味でこの売り抜けたときにも何がしかの没収ができないかということを今検討中でございます。  ただ、今例で申し上げましたように発表になった次の日が三千円で、その次の日が二千円で、さらにその後は経済状態がさらに悪くなって千円だというときに、五千円で売った人が一体どれだけ得したのだというものを確定するというのは、法務当局とも御相談しましたけれども、なかなか現在のところ大変難しい問題がございます。ならば、五千円で売ったならば根っこから全部五千円がもうけだと考えてしまうというのも、それでよろしいかどうかというあたりを今法務当局と御相談しておりますが、そういう規定を結論を得て来年御提案させていただきたいということでございます。
  152. 志苫裕

    志苫裕君 これで最後にしますが、大蔵大臣罰則強化ももちろん大事ですが、しかし罰則強化だけでは再発防止は不十分で、監督官庁あるいは監視委員会などの体制の強化、能力の向上が必要です。そういう視点で権限あるいは体制を見直す必要があるというのが私の主張ですが、いかがですか。
  153. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) かねがね委員からは体制強化についての御指摘をちょうだいいたしておりました。九年度予算の際もそのことについて、行革の真つただ中でありますが、それなりの手だてがわずかでありますが講じられたと思います。  人員による強化は厳しい諸状況でありますけれども、かかる事件が次の段階で体制が強化してなおかつ起きるということであってはなりませんし、その強化が全体から見ても不十分であるということであっても、その衝にある者、市場の信認を高めるためにまさに全力を尽くしてやらなければなりません。そのためには、定時ではなく抜き打ち的な検査というものが常態化していかなければなりませんし、諸情報の解明もその都度行ってまいるということも必要であります。  そのためには、能力の向上、精いっぱいやっておるのでありますが、さらにやはり我が国の経済の中心である市場の安定、信頼ということで強く指示し、対応してまいるつもりであります。
  154. 志苫裕

    志苫裕君 わかりました。  信用秩序の維持とかあるいは預金者の保護を事あるごとに強調されますが、よくアメリカと比較しますが、アメリカのSECは二千七百人、日本のSECはたった二百人、これはもう信用秩序の維持にかける熱意が足りないと言われても仕方がないでしょう。今の大臣の答弁を信頼して体制の強化を期待しましょう。  以下は次に譲ります。  主税局長、きょうは質問を予定させてもらいましたが、済みませんでした。この次にゆっくりやらせてもらいます。
  155. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮でございます。  最初に、罰則整備のための法律の改正案について端的に伺っておきたいと思います。  もう既に、午前以来議論がありますので、多くの問題に触れられたと思います。いわゆる総会屋に対する利益供与など証券会社銀行等の金融機関の不公正取引再発防止策として違法行為に対する刑罰を重くすることは、私は当然の措置だというふうに思います。  特に、午前からの議論を伺いながら私も痛感するのでありますが、検査忌避とともに虚偽報告に対する罰則の内容の問題であります。午前からの質疑にもありましたが、諸外国で、特にアメリカの場合は、虚偽報告についての罰則規定というのは、禁錮三十年または罰金百万ドルということで非常に重いわけであります。そして、アメリカで見ましても、その他の行為に対する罰則よりもはるかに重刑を科すというふうになっているということでありまして、私はこの問題、思うんですけれども、やはり金融というのは信用が大事な世界でありますので、そういう世界でうそをつくということがいわば最大の犯罪ということでなければならないし、それにふさわしい罰則が必要だということになると思うんです。  そういう点で見ますと、本法案では初めて刑罰刑を導入したということはありますけれども、そうはいってもやっぱり甘いんじゃないかというのが率直な感じでございます。うそをつくということになりますと、例の山一簿外債務の問題もありますし、それから粉飾決算の問題、あるいは総会屋との結びつきとか、こういう一連の問題、それを隠匿するとかいう問題も含めて虚偽報告がなかなかなくならないということだと思うんです。  抑止効果ということもありましたが、刑罰を重くすることでそういう違法行為を思いとどまらせることができるかもしれない、そういう意味ではこの問題は非常に重要な問題だと思うわけであります。したがって、今後の検討課題としてさらにどうしたらいいかということを大蔵当局においてもきちっとやるべきだというふうに私は思うんですね。  大蔵大臣に一言だけちょっと確認をいただきたいんですが、その点で、今法案を出されているので、これでは不十分だということはとてもおっしゃれないということだと思うんです。ですから、局長も先ほど、妥当なところかというふうに言われましたが、アメリカでも何段階にもわたって法改正がありまして、八九年、それから九〇年という形で罰則規定が充実強化されているという経過もございます。したがって、今回の改正に終わらせず、実際にやってみてということもあるでしょうが、問題点も既に言われているわけでありますし、さらに実効あるものとするために検討を進める必要は少なくともあると思うんですけれども、その点について、大臣、いかがですか。
  156. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 大変先々まで御心配をいただきながらの二段的措置を考えておくべきではないのかという御趣旨の笠井委員の御質問かと存じます。  応報刑主義と教育刑主義という論争が先ほども御紹介ありましたが、刑の重みを強くすることで行くべきだと、これは永遠の論争だと思います。日本人は名誉を重んずる民族だと思います。特に、経営者となってやられる各位、また職員の皆さんも、そこに結集をされていくことで今後は発生が自制され、正しい方向で自由化が進められ、信任が得られるものと信ずる次第でございます。  全体の流れを見てどうやるかということでありますけれども、ただいまの段階は、このことを強く知らしめることによって大変な事態になりますということの認識を強めることが、この改正の重みが信任に結びつくのではないでしょうか。     —————————————
  157. 石川弘

    委員長石川弘君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、広中和歌子君が委員辞任され、その補欠として今泉昭君が選任されました。     —————————————
  158. 笠井亮

    ○笠井亮君 まずはこの法案でもって知らしめるということでありましたが、引き続き必要な充実強化については検討をお願いしたいというふうに思います。大臣、よろしいですね、それは。確認いたします。  それでは次に、北海道拓殖銀行の破綻に至った乱脈経営大蔵省の対応の問題について幾つか伺いたいと思うんです。  この問題の冒頭に具体的な問題でまず伺っておきたいんですけれども、中小企業への支援の問題でございます。  長引く不況に加えて、北海道はこれから長い寒い大変に厳しい冬を迎えるということで、もう既に入っているわけですけれども、特別に資金繰りが大変ということで、それに今回の拓銀の事態がございました。いわばトリプルパンチと言ってもいいんじゃないかと思うんです。先月二十八日にば、天塩川木材工業という木材販売でいいますと道内で最大手の会社が主力取引銀行拓銀の破綻の影響で、それが直接のあれになって資金繰り行き詰まりの自己破産ということを遂げるということも起こっております。私も中小企業の皆さんから具体的な要望を伺っているところなんです。  そこで、国民金融公庫なども対応を強めることになっておりますが、審査などになかなか手間取って、今のままでは融資開始が春先になってしまうということになりかねないということも言われております。当然ボーナス資金には間に合わないということがあるわけであります。  北洋銀行に限らず、道内の各金融機関が積極的な対応ができるように具体的な指導と援助を行うのは当然ですけれども、先ほど局長政府金融機関がきちっと対応するという必要性は言われましたけれども、具体的に国民金融公庫などを通じて緊急に特別枠も設けて道内の中小企業に支援を行う必要があるというふうに私は思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  159. 山口公生

    政府委員山口公生君) 北拓の破綻によりまして、北海道での中小企業の皆様方の御心配はよくわかります。幸いにして北洋銀行が受け皿となり、またほかの銀行も極力協力するという体制ができましたので窓口を閉めないでその機能は継続できるわけでございますので、健全なところはそれで対応できるわけでございます。  ただ、北海道全体として、やっぱり一番大きい拓銀というものが破綻しておりますので、今、先生のおっしゃったようないろいろな事情は生じてくるでしょう。そのときに政府金融機関がきっちり対応していくということは大変大事なことでございます。  ただ、この北拓のためだけの枠ということではちょっと無理かと思いますが、今度の対策で大きく枠を設けてきておりますので、改めて大蔵省や中小企業庁等で国民公庫、中小公庫、商中、環衛公庫等に要請をいたしております。そういった方々に対して親切に対応していただきたい、また、まず窓口をつくってそうした方々の相談に乗ってほしいということにしております。  例えば、国民金融公庫は道内に九支店ございますが、北海道拓殖銀行関連特別相談窓口ということで個別企業の実情に応じた相談を実施しておるわけでございます。中小公庫においてもしかり、商工中金でもそうでございますので、いろいろ御相談いただければと思うわけでございます。
  160. 笠井亮

    ○笠井亮君 既に問題も起こっているわけでありまして、努力をしているということについては今言われたようなことがあるわけですけれども、やはりこの問題が直接の引き金になったということでいえば、特別に緊急に枠も設けて支援するということもきちっと検討いただきたい。これは本当に時間が迫っている問題、年末に向けて非常に深刻な問題ですから、ぜひともその点、大臣、うなずいていらっしゃいますけれども、具体的な検討をお願いしたいというふうに思います。  それを踏まえた上で、拓銀の経営破綻については、一九八〇年代に始まったバブル企業への多額の融資が焦げついて不良債権を膨張させた結果というふうに言えると思うんですね。  バブル企業への融資の典型例というように言われているのが建設不動産のカブトデコムという本社が札幌にある会社との関係であります。拓銀はメーンバンクとしてこのカブトデコムと二人三脚で歩んできたと。  その象徴が洞爺リゾート開発ということで、洞爺湖と噴火湾に挟まれた標高六百五十六メートルの山の山頂に総事業費六百六十五億円をかけて展開した事業であります。北海道はもとより、東日本で最高級と言われるぜいたくの限りを尽くした地上十一階、地下一階、延べ五万九千七百平方メートルのホテルということで、私ここにパンフレットを持ってきましたけれども、すごいんですね、これを見ると。すばらしいものができている、すごいものができているということであります。すばらしいというのはある意味ではすごいという意味で言ったわけでありますが、それにゴルフコースと、洞爺湖と噴火湾に向かってそれぞれ滑りおりるように設計された二カ所のスキー場を含めたリゾート施設を整備したということでございます。  拓銀はこの計画の当初から深く関与していたということでありますけれども、このカブトデコムグループ関連への融資の実態、金額とそれから債権の状況はどうなっているでしょうか。
  161. 山口公生

    政府委員山口公生君) せっかくのお尋ねでございますけれども、現に存在する個別の企業にかかわる話でございますので当局からのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  162. 笠井亮

    ○笠井亮君 存在する企業といいましても、カブトデコムにしても今は裁判で拓銀と争っているという状況であって、そういうことも踏まえて、この問題、拓銀の不正をただすことに協力しないとは思えないわけでありますし、言えないならばこちらで申し上げますが、ピーク時の融資総額が一千億円、それから迂回融資やグループ全体の融資を入れると二千億とも三千億に上るとも言われております。九二年の三月末、拓銀のカブトデコム一社への貸出額が八百億円余りに増大して、さらに四月から一年間の借入金支払い、手形決済資金の需要が一千億円以上見込まれることになったという経過があったというのは事実で明らかになっていると思うんです。  そこで伺いたいんですけれども銀行法の第十三条で信用供与限度額というのが定められておりますが、資本及び準備金から見て、この九二年の拓銀の信用供与限度額というのは幾らになっていたでしょうか。
  163. 山口公生

    政府委員山口公生君) 銀行法上、大口信用供与の枠というものの規制がございます。一社を相手にした場合には広義の自己資本の二〇%相当額、それからグループでやりますと、これは保証まで含めまして四〇%ということになってございます。
  164. 笠井亮

    ○笠井亮君 九二年、拓銀は幾らですか。
  165. 山口公生

    政府委員山口公生君) そうすると、九二年の拓銀の広義自己資本の二〇%でございますから約九百四億円でございます。それで、四割になるとその倍ということでございます。
  166. 笠井亮

    ○笠井亮君 九百四億円ということでありましたが、どんなに健全な相手でも同一人に過大な貸し付けをするのはリスクが大きいということで、それを許さないというのが信用供与限度額だと言えると思うんです。その九百四億円を超えそうになったということで拓銀がカブトデコムとやったのが、物件シフトというある種の債権の飛ばしみたいなことをやるごまかしの手口だと思うんですよ。  カブトデコム所有のマンションなどを子会社であった兜ビル開発に拓銀が買い取り資金を融資した上で買い取らせる、そういう方法で売却益をつくり出して、カブトデコムが拓銀に対する借入金の一部を返済する。そうやって信用供与限度額を超えないように新規の融資を改めて拓銀から受けるということがあったわけですけれども、こういう物件シフトの事実、大蔵省は知っていたのか、拓銀側からそういう報告があったのかどうか、いかがでしょうか。
  167. 山口公生

    政府委員山口公生君) 現在、拓銀については検査をやって債権の状況等を見ております。そうした中で、もしそういう大口融資規制の違反ということがありますればそれは厳正に対処することでございますけれども、今、先生の御指摘のような事実は私はまだ聞いておりません。
  168. 笠井亮

    ○笠井亮君 現在やっているということですけれども検査でいえば九四年の八月からもう検査に入っているわけですよね。ですから、現在やっているという以前の問題がまずあるわけであります。  この物件シフトについては、九四年の二月に札幌地裁で行われたカブト事件での検察側の冒頭陳述によってもはっきりしております。これによれば、その後の一年間に何と三十回もやっているということで、兜ビル開発などに拓銀は総額九百七十二億円の融資を行ってカブトデコムの物件を買い取らせて売却益をつくり出したと。そして、カブトデコムは借入金を返済しながら新規融資を受けて、拓銀からの借入残高が九百五十一億円に達したと。物件シフトをして信用供与限度額の超過を隠すというふうになっていたと思うんですよ。  これは事実を知らなかったと言うのなら一般論として伺いますが、その信用供与限度額の超過を隠していたということで、そういうやり方でやっていたとすれば銀行法十三条の違反にならないですか。それとも、そういうやり方は問題ないというふうに断言できますか。
  169. 山口公生

    政府委員山口公生君) 法令違反するかどうかという点につきましては、十分に事実関係、その背後の関係も含めまして調査した上で適切に対応するということだろうと思います。
  170. 笠井亮

    ○笠井亮君 私、さっきも言いましたけれども、今検査に入っているというより、以前に相当問題になって、三十回もやっていたという経過の中で、九四年八月、そういう時期に検査に入っているわけです、大蔵省は。  こういう問題はやっぱり早くから手を打っておく、そして検査で見つけてきちっとそれに対処するということが大事なわけでありまして、そのときにきちっと対処してやっていれば今日の破綻は防げたかもしれない。そういうことでありまして、しかもことし十月からもう検査に入っているわけでありますから、当然こういう事実についても、もう新聞でも書かれている、そして裁判の中でも具体的に検察側から冒頭陳述があるということでありますから、知らないということでは済まされないと思うんです。知らなかったとしたら、一体どういう検査をしていたのかということになるんじゃないでしょうか。
  171. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 個別の金融機関並びに私企業のことでございますので直接的な答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますれば、検査の過程でいろんな法令に不適切な事項があった場合には適切に指導しているところでございます。
  172. 笠井亮

    ○笠井亮君 適切に指導していればこういう問題が今まで引きずられてきて結局破綻につながるということはなかったはずでありまして、やはりそういう態度が表面を取り繕ってごまかす金融証券、そういう問題の経営体質を助長すると言われてもこれは仕方がないんじゃないかというふうに私は思うんです。  これは非常に問題になったことでありますけれども大蔵省銀行法の違反ということで告発をしたのは過去何件ありますか。どの場合でしょうか。
  173. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 本年七月二十五日に第一勧業銀行に対して行った告発一件でございます。
  174. 笠井亮

    ○笠井亮君 そうなんです。一件だけなんですよね。  大蔵大臣にこれはぜひ伺いたいんですけれども、これだけいろいろ金融不祥事だとかあるいは不正事件とかということが過去ありながら、結局銀行法に基づいてその違反ということで告発したのが第一勧銀の本年七月の一件だけというのはいかにも監督当局としては怠慢だというそしりを免れないというふうに思うわけでありまして、たくさんの金融関係事件があった中で、国民はそれ以外になかったなんということをだれも信じないと思うんです。結局、すべて見えないところで処理されてきたということを言われても仕方がないわけであります。  そんなことで、私伺いたいのは、まさにみずから金融システムの真の改革をおくらせてきたんじゃないかということを言われても仕方がないと思うんですけれども、厳格にこの問題も、今拓銀の問題を伺いましたけれども、対処すべきだと思うんですが、いかがでしょうか。
  175. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 御説は受けとめて今後の対応の進め方に生かしてまいります。  御案内のとおり、検査検査の限界がございます。その限界を超えるためには何があるのか、この機会に対応策をとるべしという趣旨かと思いますが、既に大蔵省としては、就任以来、自己責任原則の徹底と市場規律の十分な発揮を基軸とする透明性の高い金融行政を行うべし、こういうことで適切な監督ということは重要でありますし、金融検査においても金融機関法令遵守体制等に重点を置いた検査に徹底すべし、こういうことを申し上げてきておるところでございます。この上に立って、金融機関法令違反行為に対しましては告発を含め厳正に対処していくという方針で進めておるところであります。
  176. 笠井亮

    ○笠井亮君 私、具体的に拓銀の問題を取り上げて、厳正に対処すべきだ、告発をすべきだということも含めて申し上げたわけですが、告発も含めて厳正に対処するというお答えがありました。  私は、ごまかそうとしたのは、大蔵省や日銀をごまかそうとしただけじゃなくて、拓銀は経営会議の中でカブトデコムを表向きは支援するという方針を明確にしながら、記者会見までして北海道経済や道民を欺いて時間稼ぎしながら、裏でカブトデコムを切り捨ててその不動産を取得していったという経過もあったと思うんです。そして、みずからの不正融資などの事実ももみ消したということも明らかになっているわけでありまして、これはもう社会的道義も経営者としてのモラルもないというふうに言わざるを得ない問題があると思うんです。  しかも、これらは拓銀の不良債権のまさに氷山の一角でしかないということでありまして、不良債権がどれだけあるのか、どこまで膨らむのか実態もわからずに、関係者の責任もあいまいということで、そんな乱脈経営のツケを国民に回すことは許されないという問題だと思うんです。  金融業界にも国民無視の横暴勝手なやり方は通らないというルールをぜひとも確立すべきだということを申し上げて、質問を終わります。
  177. 山口哲夫

    山口哲夫君 今回提案されております罰則強化法案でございますけれども、結論的に言えば大変甘いというふうに私は思います。これは通常国会のときにも申し上げましたけれども、やっぱりアメリカ並みにもっと罰則を強めなければ、恐らくこういう犯罪というのはなくならないだろうと思います。特に、金融機関犯罪行為を行った役員の人たちは、前にも申し上げましたけれども、何か会社のためにやっているのだという、そんな気持ちがどうもあるのではないだろうか。ですから、一般的に社会の人たちが見る大変な犯罪という意識が私は欠けているんじゃないかなと思うんです。  そういうことをなくするためには、先ほども意見として出されておりましたけれども、とにかくこういう犯罪行為を行ったらその人間の一生を台なしにしてしまう、それだけではなくして家族も路頭に迷うくらいの大変な罰則を設けない限り恐らくなくならないだろうと思うわけです。  そういう意味で、私はぜひもう少し強化をすることについて今後十分ひとつ検討していただきたい。先ほど大臣も前の議員にそのようにお答えしておりますので質問はいたしませんけれども、ぜひそのことを御努力いただきたい、このことを特にお願いをしておきたいと思います。  さて、先ほど来山一の飛ばしの問題が出ておりましたけれども、私も聞いておりまして、ずっと以前からうわさとしてもう業界の中では常識化されていた簿外債務の問題について、監督官庁がこれに深入りできなかった、取り調べができなかったということについては大変残念に思います。しかし、先ほど来のお答えを聞いておりますと、これ以上望むべくもないと思いますが。  そこで、通告しておりませんけれども、聞いていて私は思ったので大臣にお聞きしたいんですが、やっぱり行政権の発動ですから、もう少しこれは捜査する人たちに権限を与える方法がないものだろうか。例えば、法律改正して捜査権を与えるくらいのことをしなければ、これは恐らく金融監督庁ができてその役割を果たそうと思っても同じようなことが今後起きてくるんじゃないだろうか。そういう点では、検査官が思い切りできるような捜査権ということを一度考えてみられない問題だろうかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  178. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 監視委員会にはその権限が付与されておるところでございます。そういうことで全力を尽くしていただいておるところで、御趣旨は今後の問題として考えなければならないのかなとは思いますが、今回の法制定に当たりまして、内外のこの種の罰則の体系、それと我が国の法制との関連の中で、精いっぱいのところを規定をさせていただき、御審議を煩わせております。二度と再び起きませんように、さらに監視、検査に対し強力な体制をつくり上げることによりまして、今後国民各位の御期待にこたえたい、こう思っております。
  179. 山口哲夫

    山口哲夫君 私の不勉強でしたけれども、捜査権があるのであればもう少し踏み込んだ捜査はできなかったんですかね。それだけ広くうわさが飛び交っているわけでしょう。しかも、報道関係でもそういうことが言われている。それならば、なぜ踏み込んでそういう簿外債務の帳簿を出しなさいというようなことで強制捜査ができないんですかね。
  180. 堀田隆夫

    政府委員堀田隆夫君) 監視委員会には二つ機能がございまして、一つ通常行政検査権限でございます。それから、もう一つが犯則調査権限でございます。  この犯則調査権限につきましては、強制調査権限を含めた強い機能を与えていただいているということでございますけれども、犯則調査権限は犯則事件について発動するということでございまして、証券取引法違反の中で刑事罰則のついている事案の違反行為がありそうだ、そういう端緒がありそうだというときにこれを発動して徹底的な刑事捜査をするという形になっているわけでございます。
  181. 山口哲夫

    山口哲夫君 そうすると、今回の山一の飛ばしの問題については、犯則しているのではないかということを感じたならばそういう捜査権を発動できたわけですね。
  182. 堀田隆夫

    政府委員堀田隆夫君) 先ほど申し上げましたように、飛ばし取引の実態解明を現在進めているところでございまして、その飛ばし行為がどういう証券取引法違反になるかという段階が幾つかございまして、果たして犯則事件になり得るかどうかということでございますけれども、現在私ども山一証券に入りまして特別検査をしておりますので、その段階で犯則の端緒が出てくるようなことがございましたら犯則調査をしてまいりたいと思っているところでございます。
  183. 山口哲夫

    山口哲夫君 ちょっと理解できないんですが、飛ばしという行為が仮に事実だとすれば、それは犯則事件ですよね。どうですか、それ。
  184. 堀田隆夫

    政府委員堀田隆夫君) 先例で申し上げますと、監視委員会発足以来、二つの会社について飛ばし行為を法律違反として把握いたしまして、大蔵大臣に対して行政処分の勧告をいたしておりますけれども、これは証券取引法関係省令上の特別の利益を提供して勧誘する行為に該当するという認定をしたということでございまして、その段階でございますとそれは犯則事件にはなっておりません。  さらに、利回り保証がある、あるいは損失補てんがある、あるいは、別の話になりますけれども粉飾決算といいますか有価証券の虚偽記載がある、そういった端緒が見つかるようであれば、そういう違反になるということでございますれば、これは犯則事件ということでございます。
  185. 山口哲夫

    山口哲夫君 いずれにしても、これは犯則事件に発展する可能性のある事件だというふうに思うわけですね。そうすると、私はやっぱりその時点で捜査権を発動するべきだと思うんです。もし、それでもそこまで立ち入ることができないというのであれば、一般捜査の中でもある程度そのくらいの捜査権を与えて踏み込むようなことをしなければ、なかなかそこまで事件を引き出すことはできないんじゃないかなというふうに思うんですね。  ですから、一般捜査についてももう少し強力な捜査権というものを与えておいた方が私はいいのではないかなと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  186. 堀田隆夫

    政府委員堀田隆夫君) 私どもの立場といたしましては、現在与えられている機能のもとでベストを尽くして検査なら検査を効率的に進めていきたいと考えているところでございます。
  187. 山口哲夫

    山口哲夫君 この問題はぜひ一度検討してください。もう少し深く踏み込んで、今後やっぱりこういうような事件というのが起きる可能性があるわけですから、監督庁がちゃんとした権限を発動してきちっとした捜査をできるようにしないと、これは金融機関と行政監督庁との癒着の問題として国民から誤解されると思うんです。私は、そういう癒着ということで国民から見られるということは、行政を執行する上において極めてまずいことだろうと思うんですね。ですから、そういうことが起きないように捜査権の問題についてはよく検討していただきたい、このことを要請しておきたいと思います。  それからもう一つ、今、海外との取引というのが非常に多いわけですね。そういう犯罪行為を行っている関係が海外で取引していることもあり得るわけでしょう。そういう場合に、やっぱり海外のいわゆる監督を行う行政庁に協力を求めていかなければならないときが随分来るのではないかと思うんです。そういう場合に、海外の行政機関に対して協力を求めるような総合監視体制というか、そういう関係の条約なんかもやっぱり私は結んでおいた方がいい時代ではないだろうか、そういうふうに思うんですけれども、そういうことについても、できれば大臣に、そういうことを一回検討してみる必要があるのではないかなと思うんですけれども、御所見があればお聞かせいただきたいんです。
  188. 堀田隆夫

    政府委員堀田隆夫君) 当然のことでございますけれども、外国にあります法人、例えば現地法人について私どもの直接的な検査権限が及ぶあるいは調査権限が及ぶということは、それはないわけでございます。先生がおっしゃいましたように、外国の証券規制当局と連携をしながら、その理解を得て事実行為として検査を行うということになっていくだろうと思っております。
  189. 山口哲夫

    山口哲夫君 ぜひきちっとしたそういう体制を組んでいくためにも、私は条約問題等についても一度検討しておいていただきたいものだと問題提起しておきたいと思います。  それでは、通告した問題についてですけれども、第一勧業銀行事件について大蔵省検査官との接待疑惑が明らかにされております。そこで、大蔵省はこの関係職員に対して処分を行っております。大臣官房付の日下部さんが戒告、それから大臣官房金融検査部管理課金融証券検査官室長の宮川が戒告、大蔵事務次官が文書厳重注意、その他八人、官房金融検査部検査官が口頭厳重注意ということでございます。  それで、同じ日に大臣から検査部長に対して指示事項が出ております。それを読んでいる時間がありません。要するに、一層の綱紀の厳正な保持に努めるということで、具体的に「抜き打ち検査としての機能・効果を真に確保すること」と指示しております。ということは、今回の問題についてはやっぱり抜き打ち検査の面で問題があったというふうに解釈してよろしいですね。
  190. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 先生お尋ねのように、検査は原則抜き打ちでやっておりますし、これまでも厳正にやってきた所存でございます。ただ、一方で検査の周期が大体この程度の規模の金融機関であればこれぐらいということが割かしパターン化しておったという実態もございまして、比較的金融機関の側ではぼつぼつ大蔵省検査があるころであるということで準備をされるというような実態があったことも否定できない事実でございます。  そういうことで、抜き打ち的な検査というのは、今まで抜き打ちでなかったということではなくて、そういうことが読まれないようにと。それからまた、今後早期是正措置ということをやってまいる。この場合、自己査定を前提として検査をやっているということをかねがね申し上げております。その場合、自己査定の結果、十分行き届いており経営内容もいい銀行、それから自己査定の内容もまだしっかりしていなくて経営内容、資産内容に問題のあるところ、こういうものは検査の間隔を変えていこうということも今検討しております。そういうことを合わせながら、ある意味で一般的に予想されないようなそういうことも十分考えていきたい、そういう趣旨で抜き打ちということの表現が大臣から御指示があったというふうに御理解いただきたいと思います。
  191. 山口哲夫

    山口哲夫君 抜き打ちでなかった、連絡がそこにはあったなんということは、それは恐らく大蔵省としても言えないでしょうけれども、しかしいろんな新聞を読んでおりますと、やっぱりこれは抜き打ちに問題があったんだなと思いますよ。  例えば、第一勧業銀行の接待攻勢が行われたのは、検査検査結果の取りまとめに手心を加えてほしいという第一勧銀の意図が反映しやすい時期を選んだ巧みな日程設定であった。実に巧妙にやっているようですね。もし抜き打ち検査をしないで事前に検査日程だとか内容が漏れているということになったら、これは重大な問題ですよね。検査する相手に検査する側がそういうことを教えたなんということになったら、これはもう犯罪行為だとさえ思うわけですね。  もし仮にそういう問題が発生した場合には、これは私は当然懲戒免職に該当するくらいの罪だと思うんですけれども、どうでしょうか。
  192. 原口恒和

    政府委員(原口恒和君) 金融検査対象金融機関の実態を効果的に把握するために原則予告なしということで行っておるものでございますから、当然のことながら、その予告をしないケースにおいて検査の日程等につきましては特に厳重な情報管理を行っているところでございます。  お尋ねのように、仮に検査情報の事前漏えいなど秘密を守る義務に違反した事実が確認されました場合には、国家公務員法に基づき厳正な処分が行われることになるというふうに認識しております。
  193. 山口哲夫

    山口哲夫君 厳正な処分というのは懲戒免職もあり得るというふうに解釈したいと思いますけれども、どうですか。
  194. 武藤敏郎

    政府委員(武藤敏郎君) 処分の量定をどういうふうにするかということに関係するお尋ねかと思います。  行為の原因でありますとか動機、性質あるいは結果、影響、行為者の職務内容、改俊の程度、その他社会に与える影響等さまざまなことを総合的に勘案する必要があると考えております。もちろん、御指摘の免職ということもありましょうし、それから停職ということもありましょうし、戒告というのもあるわけでございますけれども、その中のどれかというのは具体的なケースにおきまして今申し上げたような量定の結果ということになろうかと思います。
  195. 山口哲夫

    山口哲夫君 検査の日時、内容等について漏らしたという、そういう事実が発覚した場合には、私は当然これは懲戒免職に該当すると思います。今回の処分は、私に言わせると非常に軽い、軽過ぎるなというふうに思います。そこは意見として申し上げておきます。  そこで、なぜ金融機関大蔵省の人たちの接待の場が設けられるのか、私にはどうしてもこれは理解できないのですね。情報をとるために必要だなんていっか言っておりましたけれども、とんでもない話だと思うんですよ。そういう監督する側と監督される側との関係というのは接待行為は一切私は禁止するべきだというふうに思うんですけれども、大臣、どうでしょうか。
  196. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) 厳正な対処を要望しますと同時に、批判をされるようなことはあってはならないということでありまして、ございません、ただいまの段階。厳正なことでやられておると理解をいたしております。
  197. 山口哲夫

    山口哲夫君 もしやっていないというのであれば、やつちゃいけないということも通達していると思うんですね。
  198. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) そういうことです。
  199. 山口哲夫

    山口哲夫君 じゃ、今後そういうことが起きた場合には厳正にひとつ処分していただきたいと思うんです。  それからもう一つ金融機関にはMOF担当という職員がいるんだそうですね。常に大蔵省に出入りして接待攻勢をかけては情報をとる、いまだにそういうMOF担という人たちが大蔵省に出入りしているようですけれども、何か情報が入ると検査が近いということで本店や支店の幹部が集まって、それこそ国会じゃないけれども想定問答集をつくって一生懸命対処しているんだそうです。  ことしの大蔵検査の重点というのは、銀行関係者に言わせますと、不動産、ゴルフ場、ノンバンク向けの融資だったというふうに言われているのですけれども、ということは明らかに情報が漏れているというふうに私は考えざるを得ないわけです。だから、そんなこと自体が許されるというのは、私はこれはゆゆしき問題だと思うんですけれども、いわゆる銀行のMOF担と言われるような人たちの出入りというものは禁止できないのですか、大蔵省として。
  200. 山口公生

    政府委員山口公生君) いわゆるMOF担と言われている人たちの存在についてかなり先国会でも議論になりました。ただ、このMOF担と俗に言われております人たちはどういう役割を今果たしているかといいますと、例えば報告書を持ってきたり、役所が何かあったときに連絡する相手先という意味であれば、今だってそういう人はおります。  私どもが仮にあることを伝えなきゃいけないというときに、一つ一つ名簿を見て、これは業務第何部のだれだれさんじゃなきやわからないというようなことを探すのは事実上不可能でございます。担当の人を決めておいていただければそこに連絡すればいい、それから何か書類をいただくというときもその人が持ってくればいいというふうにしているわけです。それが、ともすればその関係が癒着の関係を生み出してきたという批判があることも承知しております。それは絶対あってはならないと。  ただ、MOF担という言葉が悪い意味で使われるのであれば、それはやめなきゃいけませんけれども、そういう連絡役とか私どもが伝える先とか、いろいろなことのそういうインフォメーションのルートというのはきちっとなければ私ども行政は大変難しくなります。そういう点での存在は私どもとしては認めていく必要があるというふうに思っておりますので、そこは峻別して考えていきたいというふうに考えております。
  201. 山口哲夫

    山口哲夫君 そういう連絡等の職員が何か常時大蔵省に出入りしていなければならないこと自体がやっぱり誤解を招くのではないかなと思うんです。ですから、そういう誤解を招かないような対策というものを講じてもらわなければ、いつまでもMOF担というのはいるんだなというふうに、随分報道もされておりますから、誤解のないようにしていただきたいと思うんです。  それから、時間がなくなったので余り突っ込んだお話はできなくなりましたけれども、九月二十二日のアエラを読んでおりましたら、証券取引検査官室長が、初代の人、二代目、いずれも天下りをしているんです。その天下り先が商事会社なんかで証券に直接は関係していないと言うんでしょうけれども、いずれも証券会社関係するところの顧問で天下っているわけですね、事実は申し上げませんけれども。  中身を読んでみますと、例えばナショナル証券のある方はこう言っていますよ。この二年間、証券業全般について天下ってきた顧問の人からアドバイスをしてもらった、監視委員会証券会社への検査に対するアドバイスや大蔵省検査の思想を経営上の提言として生かしてもらった。監視委の同僚への顔つなぎもやってもらっていると。  初代の人に対しては、「いろいろアドバイスを頂いている」、そして「新日興商事本来の仕事は、ほとんどしていないようだ。事実上の日興証券社員として、大蔵省や監視委対策をやっている。」。名前が出てきますね、「西沢氏が日興関連会社にいることで、現場には仕事がやりにくい、という声がある」と。それは現場の人にしてみたら、自分の上司が天下っているわけですから、そういう人との関係考えると仕事がやりにくいということを告白しているわけです。  ですから、私は、証券会社に直接天下ってはいないけれども、しかしそれに関連する企業に天下ったということは全く同じだと見なければいけないと思うんです。私は、今後そういう監督の立場にある人は証券関係を持つ系列の企業には天下りは絶対にさせないということを約束していただきたいと思うんですけれども、どうでしょうか。
  202. 堀田隆夫

    政府委員堀田隆夫君) 委員会職員が退職いたします際に、その委員会のこれまでの仕事の経験を生かして再就職をするということは当然あり得ることでございまして、それは個々に最終的には当該企業と本人との合意に基づいて再就職が行われるということでございますが、私ここで申し上げておきたいと思いますけれども監視委員会は、前回の証券不祥事の反省の上に立ちまして、証券行政を転換しなきゃいかぬ、保護育成的な行政から転換しなきゃいかぬ、その端的なありようとして監視あるいは検査機能を独立させる、独立した機関としてやろうということでつくられたものでございます。合議制の委員会のもとで指導を受けて日々仕事をしておりまして、仮に先輩職員が退職して再就職するようなことがありましても、それで私どもの仕事が曲げられるというようなことは絶対にあり得ないということを申し上げさせていただきたいと思います。
  203. 山口哲夫

    山口哲夫君 甘いです、それは。  終わります。
  204. 石川弘

    委員長石川弘君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。——別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  罰則整備のための金融関係法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  205. 石川弘

    委員長石川弘君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、牛嶋君から発言を求められておりますので、これを許します。牛嶋正君。
  206. 牛嶋正

    牛嶋正君 私は、ただいま可決されました罰則整備のための金融関係法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、平成会、民主党・新緑風会、社会民主党・護憲連合、日本共産党及び新社会党・平和連合の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     罰則整備のための金融関係法律の一部     を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、十分配慮すべき  である。  一 今般の金融機関の不祥事により著しく損な   われた国民の信頼回復のため、いわゆる総会   屋等との絶縁に向けた株主総会への取組み等   について、金融機関経営者の意識改革を促す   とともに、金融機関の法律違反等の行為に対   しては、今後とも的確な行政処分の執行等厳   正に村処すること。  一 我が国の金融証券市場に対する内外の信   頼を高めるため、ルールの透明化、経営情報   の開示等市場のインフラ整備を行い、市場規   律が発揮され、公正な競争原理が徹底される   市場の構築に努めること。  一 金融機関経営の健全性確保の観点から、重   点的・効率的な検査の実施に努めるととも   に、検査監督体制の一層の充実・強化を図   ること。また、証券市場における取引の公正   確保のため、証券取引等監視委員会等の監視   体制の充実・強化を図り、引き続き厳正な監   視に努めること。  一 公正かつ透明な金融証券市場の構築を図   る観点から、金融関係法律罰則規定の在り   方については、今後とも社会経済情勢の変化   に対応して不断の見直しを行うこと。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ御賛同いただきますようお願いいたします。
  207. 石川弘

    委員長石川弘君) ただいま牛嶋君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  208. 石川弘

    委員長石川弘君) 全会一致と認めます。よって、牛嶋君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、三塚大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。三塚大蔵大臣
  209. 三塚博

    ○国務大臣(三塚博君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
  210. 石川弘

    委員長石川弘君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  211. 石川弘

    委員長石川弘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三分散会