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1997-12-01 第141回国会 参議院 国際問題に関する調査会対外経済協力に関する小委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十二月一日(月曜日)    午後三時開会     ―――――――――――――    小委員異動  十一月二十七日     辞任         補欠選任      木庭健太郎君     広中和歌子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     小委員長        板垣  正君     小委員                 馳   浩君                 山本 一太君                 広中和歌子君                 福本 潤一君                 角田 義一君                 田  英夫君                 上田耕一郎君    政府委員        外務省経済協力        局長       大島 賢三君    事務局側        第一特別調査室        長        加藤 一宇君    参考人        上智大学教授   村井 吉敬君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○対外経済協力に関する件のうち、「国会とOD  Aとの関わり」について     ―――――――――――――
  2. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ただいまから国際問題に関する調査会対外経済協力に関する小委員会を開会いたします。  まず、小委員異動について御報告いたします。  委員異動に伴い欠員となりました小委員補欠として、去る十一月二十七日、広中和歌子君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  対外経済協力に関する件の調査のため、本日、参考人として上智大学教授村井吉敬君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) 対外経済協力に関する件を議題といたします。  本日は、国会ODAとのかかわりについて政府からの説明聴取参考人からの意見聴取及びそれに対する質疑を行います。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  このたびは、御多用中のところ本小委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。  本日は、忌憚のない御意見を伺い、今後の調査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、まず政府から十五分程度説明を聴取し、次いで村井参考人から十五分程度意見を伺った後、午後五時半を目途に質疑を行いたいと存じますので、御協力をお願い申し上げます。  なお、意見説明質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、まず政府から説明を聴取いたします。大島外務省経済協力局長
  6. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 前回、十一月十日でございますが、ODA大綱の問題を中心に当小委員会政府の見解を聴取していただく機会を設けていただき、小委員長初め小委員の諸先生方の御配慮に改めて感謝を申し上げます。本日は、さらに国会ODAとのかかわりという非常に重要な問題につきまして、また意見を聴取していただく機会を設けていただきました。  御案内のとおり、目下外務省におきましても外務大臣諮問委員会の形でODA改革懇談会議論が進められておりまして、ODA政策原則理念それから実施等々、各般にわたります改革の論議を外部からの有識者の御参加を得ながら進めております。  その議論の非常に重要なポイント一つとして国会とのかかわりの問題があるわけでございますが、しかしこれは行政府だけで議論し切れるものではございません。むしろこういう場で御議論いただくというような性格のものでございまして、したがってその大臣懇談会議論におきましても非常に重要な問題領域という認識はなされておりますけれども、十分な議論がなかなかなされにくい、こういうことでございます。したがいまして、こういう機会意見を述べさせていただくということを歓迎するわけでございます。  非常に簡単でございますけれども、お手元に一枚紙でアウトラインをお配りしてございます。これに沿いまして、概略御説明させていただきます。  まず、ODAに関する国会との関係現状でございますけれども一般論として、ODA資金というものが国民の税金あるいは貯金といったものを原資としております以上、国会の場において政府としてこれを十分に報告し御審議を願うということは当然のことであるというふうに考えております。  まず、予算審議現状でございますけれども、これはもう諸先生案内のとおりだと思いますが、ODA予算一般会計予算の一部ということで国会で御審議を願い承認されております。ただし、ODAという国際的に決められております概念を後から日本予算制度に持ち込んだこともありまして、予算書の中でいわばODA予算という形では計上されておりません。種々の項目にまたがっておりますが、各項目内数として含まれている場合があるのが現状でございます。  例えば外務省所管予算で申しますと、いわゆるODA予算と呼ばれているものは、経済協力費国際分担金其他諸費あるいは国際協力事業団事業費、こういったいろいろな経費項目の中にまたがって計上されております。この点につきましては、ODA予算ということが予算書上明確になるような記載の仕方をしていくという方向財政当局で今検討がなされているという話は我々も仄聞いたしておりますけれども現状はそういう状況でございます。  外務省としましては、外務省所管ODA予算のみならず、贈与、借款それから国際機関拠出金等のいろいろな形態別内訳、それから省庁別内訳を取りまとめておりまして、これらの資料国会資料要求に応じまして予算審議参考として御提出させていただいております。  さらに、国会の中におきましては、各種の委員会予算委員会はもとより、外務委員会決算委員会安保委等々いろいろな委員会質疑を通じてODAについて相当突っ込んだ審議が行われているという現状にあるわけでございます。  この参議院外交総合安全保障に関する調査会におきます議論を経まして平成元年に七項目合意事項というものができ、それを受けて、参議院会議決議ということを経ましてその考え方が示されました。御案内のとおり、先般議論させていただきました九二年のODA大綱策定の際には、こうした合意事項あるいは本会議決議というものも背景として、行政府としては十分に考慮いたしたわけでございます。その後、当対外経済協力小委員会も設置され、ODAあり方について中長期的な観点からさらに御審議いただくということになっていることを、私どもとしては歓迎をいたし、喜ばしいことと思っております。  僭越でございますけれども、先ほどの七項目の一部分に、行政府立法府関係についての項目がたしかあったというふうに思います。その中で、「国際開発協力重要性にかんがみ、これに対する国会関与を強める」、「このため、本院に国際開発協力に関して審議する場が必要である。」というごとも指摘されておるわけでございますけれども行政府立場からいたしますと、国会における、委員会におけるいろいろな審議に加えて、こういういわば恒常的な場が設けられてそこで集中的にいろいろな見地から御審議をいただくということは、大変に結構なことであるというふうに考えます。加えまして、もちろん党のレベルでもいろいろ委員会あるいは部会等が設けられておりまして、ここにも適宜行政府外務省その他が呼ばれまして、いろいろな質疑に参加させていただいております。  以上が国会との大まかな現状でございます。  次に、情報公開に関連しましては、近年、私ども情報公開につきましては非常に努力を傾けているつもりでございまして、毎年、閣議への報告という形を経まして我が国政府開発援助実施状況に関する年次報告というものを外務省が取りまとめて公表いたし、国会にもいろいろ諸先生方に御報告いたしております。さらに、毎年、ODA白書あるいは経済協力評価報告書等を作成いたしまして、これも公表し、諸先生方に御報告しております。  ODA白書につきましては、これは二年前のOECDの開発援助委員会DACの対日援助審査におきましても、DAC加盟国が作成する同様の報告書の中でも最も包括的かつ充実したものというふうに評価されております。さらに、実施機関でありますJICAOECF等も年報あるいは評価報告書を公表しているということで、情報公開ということにつきましては形式それから内容ともに近年改善が、これで十分だということでは必ずしもないと思いますけれども、かなり進んできているというふうに考えます。  加えまして、これは補完的でございますけれども、最近は、月一回ベースですけれども月間ODAの動向ということで資料をまとめまして、外務省ホームページ上に白書とかあるいは評価報告書を載せるなど、さらに情報提供強化にも努めております。今後ともこういった努力はますますやっていく必要があると、行政府としての説明責任の重要な一環であると心得まして、強化に努めてまいりたいと思います。  残された時間で、他の主要援助国の比較について簡単に触れさせていただきます。  これは、特に参議院の第一調査室の方で今回配付になっております資料の中にも、非常にコンパクトな形で研究されてまとめておられます。大体そこに尽きると思いますが、ほかの援助国行政府立法府関係ということで比較してみますと、まず援助計画提出という点におきましては、すべてではございませんが、ほとんどの国においては我が国と同様、ODA予算は通常の予算案の一部ということで審議されております。援助計画を特に独立に提出するといったようなことは、アメリカ等若干の例はございますけれども、あるいは国によって若干の相違はありますけれども、概して細かい援助計画提出というものは求められていないというふうに理解いたしております。  政府が非常に詳細な援助計画議会提出しているのは、私どもが承知する一番具体的な例はアメリカであろうと思います。委員の諸先生方案内のとおり、一九六一年の対外援助法に基づきまして、USAIDの長官が政策方針、あわせて援助予算規模国別分野別形態別配分を細かく盛り込んだ予算要求書議会提出している。この予算要求書自体議会承認の対象ではないようでございますけれども、最終的には詳細なチェックを受けるというふうになっておるように理解いたしております。  それから二番目に、年次報告につきましては、議会への提出が義務づけられている国が数カ国あるようでございます。アメリカ、ドイツ、イタリア、カナダ、オランダ、スイス、オーストリア、フィンランド、私どもが把握している限りでは八カ国ぐらいが明確な形で義務づけられている。  さらに、援助基本法についてでございますけれども、特にアメリカ対外援助法援助基本理念とか議会とのかかわりを非常に詳しく規定しているという意味基本法であるというふうに考えますれば、アメリカの例が最も典型的だろうと思いますけれどもDAC加盟の二十一カ国先進援助国の中で、十五カ国はそういう法律を特に設けておらない、アメリカを含みます六カ国が何らかの形で援助に関する法律をつくっているというふうに理解いたしております。ただ、アメリカ以外の国の基本法と一口に言いましても内容は一様でございませんで、議会関与程度アメリカの例を除けば比較的緩いものであるというふうに理解しております。  そのアメリカの六一年の援助法も、毎年修正が入ったりしまして、結果として極めて複雑かつ膨大なものになっている、内容にも一貫性を欠く部分もできていて、援助の非効率化を招いているといったような指摘がかねてから国内的にもなされております。そういう運用上の柔軟性あるいは機動性を阻害しているとの批判が国内的にもございまして、九四年二月にクリントン政権下でこの対外援助法の全面的な見直しが行われ、その結果、援助に関する理念原則立法府行政府関係等の枠組み全体を改める新しい法案議会提出されました。  その改正案ポイントは、アメリカ議会の場合にはイヤマークという特定の目的にあらかじめ議会予算支出を決定づける慣行がございますが、そういうイヤマーク制度を廃止する、それから対外援助実施柔軟性を確保する、そういう方向での見直しであったようでございますが、九四年十一月に共和党が議会で多数を占めるということになった結果、このアメリカ改正法案はいわば棚上げにされて、現在とんざしてしまっていまだ改正には至っていない、こういうふうに承知いたしております。  最後に、国会ODAかかわりにつきましては、従来議論されておりますいわゆるODA基本法にも基本的に関係してくる部分でございますので、一言ODA基本法に関する考え方について申し述べさせていただきます。  過去に、国会におきましても基本法案幾つ提出されておるわけでございます。これに対しましては累次、国会答弁等でも行政府側考え方立場というのは明らかにされてきておりまして、基本的にはこの基本法の制定には慎重に臨むという立場であろうかと思います。  特に、外務省立場からしますと、ODAというのはいろいろな役割、機能を持っておりますけれども一つの重要な役割として外交政策一環であるという側面があると思います。変転する国際情勢の中で、変化していく状況の中で、相手国状況あるいは二国間関係等総合的に勘案して援助実施していくということが必要であるわけでございますが、そのためには援助実施における柔軟性あるいは機動性といったようなことを確保しながら実行していくことが極めて重要であると考えており、これを困難にするようなことはぜひとも避けたいという基本的な考え方がございます。  他方、その理念等を明らかにするというもう一つの重要な課題がございまして、これにつきましては、先ほど触れましたように、当参議院におきます重要な議論、その結果等も十分踏まえながら九二年のODA大綱というものに昇華させて、その適切な運用に努め、あわせまして情報公開にも努めてきているところでございます。私どもとしましても、冒頭申し述べましたように、国会に対する報告というのはきちんとやる必要があると認識いたしておりまして、これまでの情報公開努力に加えて、さらに一層努力をしていきたいと思います。  冒頭の発言、以上でございます。どうもありがとうございました。
  7. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ありがとうございました。  次に、村井参考人に御意見をお述べいただきたいと存じます。村井参考人
  8. 村井吉敬

    参考人村井吉敬君) 本日は、この参議院の国際問題に関する調査会対外経済協力小委員会にお呼びいただき、ありがとうございます。  私は、ODAそのものを専門にしているわけではなくて、東南アジア地域研究、特にインドネシア中心とした地域研究をしております。インドネシア等東南アジアにしばしば出かけ、そこで日本ODAとよく遭遇するわけで、そういう中でさまざまODAの問題について考えさせられることがあります。  特に、きょうは国会ODAかかわりということについて私なりの意見を述べさせていただきたいと思いますけれども国会ODAというのは実はかなり根本的な、ODAについては実は根本的な問題だというふうに考えております。というのは、少なくとも代議制民主主義をとる社会において国会というのは国民を代表する機関であって、その国民を代表する機関ODAについて一体どのような取り組みがあり得るのだろうかということは、ODAあり方そのものを問うことにもなると思います。  ですから、私が用意させていただいた簡単なレジュメというのは、かなり包括的に、国会とのかかわり以上に広がりを持ったことで用意させていただきました。というのは、例えばここで既に御議論になっている基本的な理念の問題であるとか、そういうことにも実はかかわってくるのではないかと思います。ですから、きょうの私の発言というのは必ずしも国会とのかかわりだけに限定されるものではないかもしれませんけれども、なるべくそこを中心に考えていきたいと思います。  私は、大学で教職にあるわけですけれども、一方で市民運動というかNGO関係の仕事を幾つかしております。特に最近では、ODA改革するための市民NGO連絡協議会という幾つかの海外協力に携わるNGOを糾合した組織でODA改革提言等も行って、これはお配りした資料の中にもその提言案がありますけれども、そういうところでも活動しております。ですから、一般市民意見というふうにお受けとめいただければと思います。といっても、私はODA批判というのをかなり厳しくやってきて、外務省の方々からは嫌がられたりしておりますけれども。  ただ、余りにも日本国民あるいは市民というのはODAに無関心であるし、これは国会で申し上げるのは失礼に当たるかもしれないんですけれども国会議論でも、ここにいらっしゃるような先生方ばかりではなくて、ODAというのは選挙にもつながらないということで余り国会の中で議論されてきていないというのが率直な印象です。もちろん、最近は大分議論も盛んになってきて大変私たちは歓迎しておりますけれども、今までのところは外務省あるいはJICAとかOECFとかという行政に任せてきてしまっていたという側面が非常に強いんではないかというふうに思います。  ここは釈迦に説法かもしれませんけれども国会というのは少なくとも国権の最高機関である、国民を代表する唯一の機関である、そこでODAというのは一体行政の範囲の話で終わりなのかどうか。そこは私自身もまだはっきりした解答が出せないし、法律家でもないのでわからないところがありますけれども、憲法七十三条に内閣事務というのがある。その中の「外交関係を処理すること。」、これも内閣事務に入っております。それから、御存じのように「条約を締結すること。」というのが内閣事務に入っておるわけです。つまり、外交関係というのは行政の、特に外務省の一元的な事項として今まで観念されてきたように思いますけれども、果たしてODAというのは外交関係を処理するというだけの問題だろうかというふうに私は考えます。特に、途上国に対しての対外経済協力あるいはODAというものは私たち国民意思反映でもあろう。もちろん外交というのは我々の意思反映でなければいけないわけですけれども、それほど事務的に外交問題として処理されるべき問題ではなくて、やはり私たち意思がその政策の中にかなり反映されるべきであろうというふうに思います。  そういう意味でいえば、外務省を前に大変申し上げにくいんですけれども、今までのODA政策というのは国会を無視した官僚優位の体系でつくられてきたんではないか。これは外務省当局からすればいろいろな言い分がそこにはあるかもしれませんけれども、やはりこれからは、国民ODAにもきちっとした発言、特に国会を通じての発言ができるというその制度的な保障を含めて、私たちは新しい時代に今入ってきているのではないかというふうに感じております。  特に、ODAの財源を考えますと、これはまさに御存じのとおり、税とか郵便貯金であるとか厚生年金とかというものであって、ここで使われるべき予算というのは国会にきちっと、先ほどもお話があったと思いますけれども予算決算はきちっと報告されるべきであろうし、あるいは政策についてもきちっと報告されるべきで、あるいは場合によっては国会そのもの政策にある程度関与していくというぐらいの見識が必要ではないかというふうに私は思います。  私たち市民の間でODA基本法みたいなものをつくったことがあって、もちろんこれは国会の中ではなかなかそのまま通りそうな法案でないことは承知しているわけですけれども、その中で国会関与についてかなり踏み込んだ提案をしたことがあります。例えば国際開発協力基本方針という長期的なODA方針、これを国会に出すべきである。これは、国別地域別、あるいはグラントエレメント国際目標をどの程度盛り込む必要があるのかという長期にわたった計画行政当局が仮に策定した場合でも、国会提出し、その承認を得る必要があるのではないかということが一つあります。  それから次に、これは現在もそういう報告はなされていると思いますけれども中期計画、例えば五カ年計画というようなものを国会提出して承認を得るべきであろう。承認というのはこれは非効率につながるからなるべく避けたいという行政当局の話はわからないではないですけれども、やはり国民の税を使う以上はその承認というのはぜひとも必要ではないか。  ODAの場合、効率ということが最優先課題ではないだろうというふうに私は思うわけです。もちろん緊急援助とかは非常に迅速に行われなければいけないわけですけれども、そうでない一般的な無償資金協力であるとか技術協力あるいは円借款についても、効率性というのはもちろん大事な原則とは思いますけれども、一番大事なのは、その援助が何に使われどのような効果を上げ得るのかという、やはりそこから判断されるべきであろうというふうに思います。  それ以外に、各単年度の計画、これは先ほどちょっと御説明があったわけですけれども、私は前にあの分厚い予算案からODAがどうやって拾えるだろうかということを自分で格闘してやったことがあります。これをやってみてわかったことは、予算案からはODAというものの全貌は見えてこない、残念ながら。もちろん、対外経済協力費等、各省にばらばらに分かれたものを拾い集めればおおよその輪郭はわかってくる。ところが、どの国にどういう方針でどういう援助が行われるかというようなことは、予算案からははっきりしたところがわからない。そういう意味では、国会に出すべき資料というものもODAという一つの枠をつくって、その中で議論していかないとなかなか見えてこないんではないかというふうに思います。  そのこととのかかわりで申し上げますと、特に私たち市民の側で求めているのは、国会の中にODA常設委員会をつくるべきであると。これはさまざまな方面からの提案もあると思いますけれども、一兆数千億という膨大な予算規模を抱えた一つのジャンルについて国会常設委員会がないというのは、私たちからするとやはり不思議でならない。これは恐らく、援助をされる国から見ても、そういうものがあって、そこできちっとした議論がなされ、その内容が伝わるということが非常に大事なことではないか。  情報公開について先ほど大島局長が述べられました。私たちは、日本ODAについて情報公開がまだまだ不十分であるという立場をとっております、もちろんかなり改善努力があるというふうには思うんですが。  例えば八六年にマルコス疑惑というものが発覚して、これは円借款ですけれども、その膨大な資料というのがハワイでアメリカ当局によって押収されたわけです。そのときに国会で果たしてどういう議論がなされたかということ、細かくは存じ上げていませんけれども、私もかなり関心があって見ておりました。しかしながら、例えば商品借款の中身を議会提出してほしいという要求に対して、OECF当局はなかなか出さないというか、最終的にはほとんど一枚のリストで商品の名前と金額が書かれたものだけは出してきたわけです。これではやはり議論のしようがない。  一体どこの企業がその商品を受注していったのかというようなこと、あるいは、その商品借款というのはフィリピンの中で最終的にどう使われたのか。これは報告義務が実は援助ドナー側にあるわけですけれども、そういう何か報告書商品借款報告書であるとか、あるいはよく人道的援助の代表にされる食糧増産援助、ケネディ・ラウンドⅡというようなものがあるわけですけれども、これについての報告書というのは果たして私たちが今OECF要求してすぐに出てくるものだろうか、特に国会先生方要求してすぐ出てくるものだろうかということは、やや疑問に思える。もしそうでないということであれば、これは後で大島局長から御説明いただきたいと思います。  最終的に私が申し上げたいのは、国会での議論が十分なされないのは、ODAというものが省庁でばらばらに予算づけがされていて、外務省ですら実は農水省なり建設省の細かいプロジェクトの中身までなかなか知りようがない。もちろんそれは、知ろうと思えば行政内部では知り得るかもしれない。ところが、国会にこのばらばらな、一元的でないものがなかなか報告しにくいという、そういう行政の側の事情もおありではないか。そういう意味では、省庁一元化というかODA庁なりをつくる、これは私は国会の中のことをよく存じ上げていないわけで、行政改革等で果たして総理府の外局なのか外務省の外局なのかという議論があると思うんですけれども。いずれにしろ、今のOECFJICAというものは全く分離されていて、つまり円借款技術協力あるいは無償というものを統合的にやることにまさにODA効率的な執行の効果があると思うんですけれども、それがなされない。そういう意味では、省庁を一つつくるという提案があり得ると思うんです。  それをやるには、やはりODA基本法というようなものをつくり、国会関与をきちっと明記すべきであろうというふうに思います。それとともに、ODA基本理念基本理念については実はいろんな議論がこの場でもなされたと思いますけれども、まだ私たちにはわかりにくい。人道的配慮、これは立派な理念。相互依存関係の認識、これはよくわからない。そういうものが併存しているわけです。ここで多分議論がおありだった、議事録でちょっと拝見したいじましい国益を誇るようなことではなくて、恐らく地球市民益というようなものを外交目標として日本は追求するんだと、日本は人道的な動機に基づいてしかODAはしませんということをこの際世界に明らかにすれば、日本の評価というのは変わってくるんではないか。それは乱暴な議論だとおっしゃられるかもしれませんけれども日本ODA理念というのはそういう意味基本法にある程度はっきりと盛り込んでいく必要があるんじゃないか。  今までのODAというのは、とかくいろんなうわさがある。それは腐敗、汚職の問題だけではなくて、アメリカ外交に追随しているような側面とか、さまざまなことがある。それは、私は日本が大国を誇示しろと言いたいのではなくて、日本が生きていく道としてこの対外経済協力というのは非常に大事な外交の柱になり得る、そのためにはかなり普遍的な理念を掲げていく必要があるんじゃないか。そういう意味で、この基本法をぜひ制定して、統合的な行政ができ、国会関与がしっかり書かれ、なおかつ理念が明記された、そういうような基本法が必要ではないかというふうに思っております。  非常に雑駁なことをお話ししてわかりにくい点もあったかもしれませんけれども、一応私の話はここで終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  9. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ありがとうございました。  以上で政府からの説明聴取及び参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は挙手を願い、私の指名を待って御発言願いたいと存じます。  なお、時間が限られておりますので、御発言は五分以内におまとめいただくようお願い申し上げます。  それでは、質疑のある方は挙手を願います。
  10. 山本一太

    ○山本一太君 この間は馳先生にお譲りしたので、きょうは私が最初にやらせていただきたいと思います。  両参考人から大変示唆のあるお話を伺いまして、ありがとうございました。村井先生のおっしゃった、ODA政策についてはこれまで国会の方が、我々議員が十分にその責任を果たしてこなかったというのは、おっしゃるとおりだと思って、同感でございます。また、いじましく絡めないという話をしたのは私なんですけれども、地球益というのは非常にいい言葉だな、これから何かで使わせていただこうかな、こう思っております。  今までいろんな議論をこの小委員会でやってきまして、いよいよ国会ODAかかわりという一つポイントを迎えたわけであります。私は、国会ODAかかわりと言ったときに、大きく言うと二つの方向があると思います。  一つは、ここら辺はちょっと先生とは考えが違うかもしれませんけれども、今までのODA大綱を担保するとか運用をしっかりするとか、現行のシステムをいわば強化拡充するという形。すなわちその中には、北欧の国でやっているような閣議決定によってODA大綱理念を加えていくというやり方とか、あるいは公式非公式に議員それぞれと経協関係の役所との間の協議を頻繁にやってくれとか、いろいろあると思うんですが、これはいわば現行のメカニズムを強化していくと。ここにもODA運用をやっておられる中川先生もお呼びしたわけなんですけれども、大綱の運用をどう担保していくかという現行のメカニズムを強くするという方法が一つあると思います。もう一つは、先生おっしゃったように、ODA基本法といういわば非常にわかりやすい法律の形でやる。大きく言うとこの二つの方向があるのかなというふうに思います。  私自身は、正直言ってODA基本法ということについては慎重な立場をとっておるわけでございます。それはさっき大島局長もおっしゃいました。別に外務省の肩を持つわけじゃありませんけれどもODA外交とのかかわりというものを考えたときに、先生がおっしゃったような長期プランを各国ごとにカントリープログラムみたいな形で国会承認を求めるということはなかなか難しいんではないかということがある。この委員会が始まってから、イギリス大使館に行ったり、いろんなところへ行って調べたんですが、援助基本法をつくっている国は比較的少ない。日本がちょっと特別なのかもしれませんけれども国民の間から援助をもっと透明化しろという声が余り欧米諸国にはない感じがした。そしてもう一つは、アメリカ援助法の失敗ですね。今、その改正法案が共和党が多数になってから全然通らないわけですけれどもアメリカ政府自身も認めているような、外交の手足を文字どおり縛ってしまうような法案になっているということだと思います。  しかしながら、今までのいろいろな議論を聞いてきまして、まず大島局長一言お尋ねしたいんですが、援助基本法というものを例えば成立させるとしますと、私は、現行のODA大綱、いろいろなシステムと現実的には余り変わらない法案ができると思うんですね。それでも法律をつくる意味があるとすれば、さっき村井先生もおっしゃいましたけれども国民それから国会におけるODAの認識を高めると。法律をつくるということによって今までとは違った認識が出てくるのではないかということは確かに一つあると思います。もう一つは、地球益というふうにおっしゃいましたけれどもODA基本法を最大のドナーである日本がつくるということである意味では世界に対してメッセージを送れる、こういうところだと思うんです。  私は田先生が出した法律案を何回も読みまして大変尊敬しているんですが、法律議論にならないような形で、いわばODA大綱でやり方によってはカバーできるようなものでも、ある程度時代によって柔軟性を持たせるという条件をつけた上でODA基本法を制定するということについて、これは意味があることだとお思いになるか。そういうODA基本法だったらばあってもいいんじゃないかと思うかどうかという点について、まず大島局長にお伺いしたいと思います。  村井先生も同じ観点から、現行のシステムを強化してできるじゃないかという話を踏まえて、なぜODA基本法が本当に必要なのかという点を簡単にお答えいただければと思います。
  11. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 今、山本先生が御指摘になった点は、行政府が従来とってきた立場に理解を示されつつ、なおかつ基本法をつくることについての意味があるかどうか、こういうことだというふうに理解をいたしました。  確かに、法律ということになりますと、その中に何が書かれているかということで、特に我が国法律の解釈、運用は非常に厳格にやる国でございますので、もちろん内容いかんだということになるのかもしれませんが、法律化することによって、先ほどちょっと申し述べましたけれども、総合的な判断ということで機動的、柔軟にやる場面というのが多いわけでございまして、そういうものの阻害要因にならないかというところがやはり心配になるわけでございます。  特定の、例えば理念なら理念原則なら原則ということが書かれて、この程度ならばいいじゃないかというようなことに仮になったとした場合にも、ある援助の問題についてある立場からこれは法律違反じゃないかということに仮になってきたといたしますと、そこは非常に柔軟な実施ということからしますといろいろな難しい問題が出てくるということを私どもは懸念いたします。  法律解釈ということになりますと、一体それはどこが最終的に有権解釈をするかということになると、恐らく法制局に行くんじゃないかなと思うんですけれども、一々の解釈が問題になって最終的に法制局に行って、法制局の解釈で日本ODA運用されていくようなことも場合によればあり得る事態が生じてくるんじゃないかなというふうに思うわけでございまして、したがってその辺はやはり相当慎重に考える必要があるんじゃないかなと思います。  それから、もう一つポイントとしまして、国民の理解を得る、ODAに対する認識を高める、そういうことによってさらに国民の支持を確かなものにしていくといったようなこと、こういう点からの意義ということは私どもも認めるにやぶさかではございません。これは、国会における十分な審議を通じて、さらにやるべき余地、行政府もそのための協力といいますか努力すべき部分というのは多分にあると思いまして、私どももこれは大いにやらなきゃいけないと思いますけれども、全体、意味があるとすればやはりかなり慎重に考えなきゃいけないんじゃないかなというのが今の認識でございます。
  12. 村井吉敬

    参考人村井吉敬君) 私は、今、山本先生がおっしゃった議論はよくわかるんです。にもかかわらず、基本的な法律の縛りというか、これは行政をがんじがらめにしようという話ではもちろんないわけですけれども、やはり国民の税を多額に使う以上は基本法があってしかるべきである。現在のODAの執行というのは、私が知る限りは、行政組織法の中の例えば外務省設置法で経済協力を行うことができるとかという、その一言だけで行われているというふうに思います。それではやはり不十分ではないか。  一方で、閣議了解の中でのODA大綱とか、あるいはその以前のODA四指針というようなものがあったわけですけれども、これも私たちにしてみると一体どこでだれがどう決めたのかというのがよくわからない。閣議というのは、確かに閣僚は国民の代表から選ばれた議員の中から任命されるわけですから国民と無縁でないことはわかりますけれども、ちょっと距離があり過ぎるのではないか。ODA大綱ということにしても、直接議会の中で徹底的な議論という場を積み重ねていって、本会議議論するなりという、そういう手続的なものが私はもう少し必要ではないかという気がしております。  特に、私は、基本法というのは多分、ごくごく大ざっぱな理念、それから組織のあり方行政の執行の仕方についての取り決めであって、それだけですべて外交方針なりなんなりががんじがらめになるとは思わない。基本法ですから、かなり幅のある解釈がそこではできるのではないか。それは、先ほど伺ったように、確かに国民の認識というものを高める非常に大きな意義があるだろうし、それから、世界に向けてこれを発表すればほかの国も、つまりアメリカ等でやられているもののある種の非効率さというか、それほどがんじがらめでない基本法として、ある意味ではガイドライン的な基本法かもしれませんけれども、やはり必要ではないかというふうに思います。  特に、先ほどもちょっと申し上げたんですけれども、私は人道的支援というものを日本援助中心に置くべきだというふうに思っています。それである限りは国民の理解というのは得られる。どんなに財政的に苦しい状況であっても、世界の中で非常に困った、貧しい人あるいは抑圧された人、あるいは少数民族とか先住民族とか、さらにもっと大きく広げれば、現在ODA一つのターゲットになっている女性であるとか環境の保全であるとかという、つまりこれは外務省ODAの新しい方針の中にもきちっと盛り込まれてきているわけですけれども、そういう方向に転換すれば、それでの例えば長期計画であるとかというのは割とつくりやすい。余り短期的なハードなインフラばかりというとむしろ長期的計画にはなりにくいところがあると思うんですけれども、例えばどこそこの国の貧困者の比率を何%ぐらいまで下げるためにODAがこういうふうに貢献するというような計画であったら、国会の中でも私は議論していくことはできるのではないかというふうに思っています。  これは基本法とちょっとかかわりのない前段のお話に対する私の感想です。以上です。
  13. 馳浩

    ○馳浩君 聞きたいことは山本委員と大筋では同じなんですが、私は、根本的に最初からぜひ基本法を制定してという論者です。  まず、どういった内容基本法なら外務省がリードしておつくりになることができるか、これを端的に大島局長にお伺いしたいと思います。  諸外国、特にアメリカ援助法というのは手足を縛るもので、ああいった内容ならばもちろんつくる必要は全くないのでありますが、日本型の援助基本法というもののつくり方はあると思うんですね。私は、実は議員になった当初、一番最初に非常に感動したのは、議員立法で科学技術基本法ができましたが、それに基づいて非常に機動的に党も政府予算づけとか政策についてなされていると理解しておるんです。これは、ODAの今後のあり方を考えると、基本法に基づいてやって、我々与党も政府と一体となって総合的に支援していくべきではないかと、私はそういう観点から言っておるので、もしそういう観点に立ったときに外務省としてはどういう基本法内容ならば取り組みやすいのか。  これは、国会への提出資料であるとか、ODA白書を出されておりますけれども、以前参考人からお話もありましたように、ODA大綱白書、現在の原則にのっとってどのように援助がなされたかというふうな具体的な報告を我々に出していただいて、あるいは国別援助方針承認を受けると。これはある意味で事前に出すというんじゃなくて、報告をいただいて我々が議論して、それを次年度あるいは中期的なものに生かしていくという方向でやっていくべきであると私は考えているんです。こういった国別地域別援助あり方についての考え方とかは国会報告させて、そして我々は議論させていただくと。  私はいつもここへ来て思うんですが、大島局長、来ていただいて、もっと実はこの対外経済協力について言いたいことがあると思うんですよ。もっと報告したいと、あるいは議論を深めて、我々に逆に教えてやろうかというぐらいのことはたくさんあると思うのですが、継続的に年間を通じて我々はこういう場を持つことができないという現状がありまして、そういう意味では非常にもったいないのではないか。  また、根本的な問題として、これは村井参考人にもお伺いしたいんですけれども、国際援助というのは、参考人のレポートを読ませていただきましたが、国と国の援助ということになっております。本来ならば国民は、日本は金が余っているんだからくれてやればいいじゃないか、お金と技術と人と、そういう感覚でしかいないんですけれども、国と国の援助ということになると非常に意味が違ってくると思うんですよ。必ずここには国益というものが出てくるんですね。ただ、私は、ODAあり方というのは、山本委員も先ほどおっしゃいましたけれども、地球益という観点でなしていただきたい。もちろん原資は国民の税金でありますから、それが地球益に資するためにこういう基準で援助されるんですよということも、我々の中で議論してこそ意味があることだと思っております。  そういう観点から、端的に伺います。どういう援助基本法だったら国会議論をして疑問を解決していけるのか、さらに発展していくことができるのか。本音を言えば、どうすればもっとODA予算を確保していくことができるのかという議論のたたき台にさせていただきたいと思うので、ぜひそれをお教えいただきたいと思います。  最後にもう一点、時間が長引いて済みませんけれども大島局長はこういう事実は御存じなのでしょうか。  それは、十一月二十七日の北陸中日新聞の三面で、政府開発援助ODAを行う「海外経済協力基金が、日本企業が中国で計画していたウナギの養殖事業に融資した十億五千万円が焦げ付いた問題」、こう出ておりまして、非常に私も関心を持っておりますが、これについて外務省は、これは特殊法人ですし大蔵省管轄ですから知らないよと言うことはできないと思うんです。同じくODA一環としてなされておるわけでありますし、下手をすればこれは外交問題にも発展すると私は思うんですね。本来ならば、合弁会社である中国のウナギ養殖場の中国の銀行口座に当初計画では十億五千万払われるはずが、合弁企業の名前で日本の都市銀行に口座があって、そこに振り込まれて、それが恐らく横領という形でどこかへ行って消えてなくなってしまっているわけです。  実は、こういう問題が新聞に出てしまうと、国民ODAに対する信頼と外務省に対する信頼がなくなり、逆に不信というものを非常に増大させてしまうわけですね。私は、ODAの一元化というのは、まさしく国会議論の場を設けてそこで一律といいますか平場で議論していくことが一つの一元化の方針だと思っているんですが、実際にこういう問題が起きたということについて、知っておられるのか知っておられないのか、あるいはどういうコメントを持っておられるのかということをお聞きしたいと思いますので、お願いいたします。
  14. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 馳先生からの御質問のまず第一点でございますが、どういう基本法であれば受け入れられるか、こういう御趣旨の御質問だったと思います。  私どもODA基本法先にありきという考え方をとっておりませんので、実はどういうものであれば外務省として考えられるかということを深く研究してはございません。したがいまして、にわかにその点についてストレートにお答えすることにはちょっと難しい点があるんで、ここは御理解いただきたいと思うんです。  いずれにしましても、確かにいろいろ報告させていただいております。こういう報告について、さらにこういう側面報告をさらに強化すべきであるとかいったような御注意をいただくということは、これは私どもとしても折に触れて必要なことかもしれませんし、それは行政府としてもきちんと対応していく必要があるんだろうと思うんですね。  それから、政策面につきましても、例えばのお話ですが、先ほど村井先生の方から、人道的な目的に絞れと、その中で貧困撲滅なら貧困撲滅に一定の目標を掲げてやったらどうかというような御発言がちょっとございました。  現に、DACの場でも採択されております新開発戦略の中で、一定のこういう目標についての合意がなされておるわけでございます。すなわち、二〇一五年までに開発途上国の貧困を半減させるように努力しようとか、あるいは二〇一五年までに少なくとも初等教育レベルの教育を普及させようと、そのために各国が努力しようというような政策目標が話し合われて採択されておるわけでございます。こういう新開発戦略づくりについても我々はリーダーシップをとってきたつもりでございますけれども、例えばこういう目標について立法府の方からこういう政策を検討すべきであるという意見をどんどん出していただくというようなことは、審議の過程を通じて十分可能だろうと思いますし、私の知る限りではこの問題ではございませんけれども、従来もいろんな形で出ているわけですね。そういうものを集大成して今のところはODA大綱というものをつくっている。この大綱自身も、やはり年月がたっていくときちっと見直しをしていく必要があろうと思っております。  そういう形で、一つは、報告の精微化ということを通じて立法府としてきちっとチェックをされる、それから行政府に対して注文をつけられ、政策上の問題も含めてやっていかれるというようなことは、これは最終的には予算審議というものに全部つながってきて、予算に対する承認を与えられるのは立法府の方でございますので、これはできるんだろうと思いますね。それを法律で担保するかどうかという次元の問題は別であろうかと思いますけれども、これまでもあるいは十分でなかったかもしれませんけれども、それは十分にできることじゃないかというふうに考えます。  第二点の、中国のウナギ事業に対しますOECFの融資の問題でございます。これは私ども、事実として把握いたしております。  ちょっと技術的になりますけれども、この融資は、いわゆる政府間の借款とちょっと違いまして、OECFとして海外の合弁事業に対して融資をするということでございます。政府間の借款事業でございますと、四省庁体制というものの枠の中で、外務省も四省庁の一つとして協議体制に入ってきちっと参加し承認を与える立場にありますが、この種の個別の合弁事業等に対します融資事業は、OECFがいわば単独にといいますか独自に権限としてやっておる分野でございます。  いわゆる四省庁体制の中で承認を与える案件というのとはちょっと筋が違うのでございますが、しかしそれはそうとして、OECF全体でODAの事業をやっておりまして、実際問題として十億超の焦げつきを発生しておると。その原因につきましては、中国の銀行からきちんと銀行保証を取りつけるべきところについて若干の行き違いといいますか何かあって、結局そこの手続がうまくいかないために焦げつきの事態を発生させたということで、既に基金においては、そういう事態を把握した上できちんと内部的な処罰の措置もとり、それから今この債権の問題については別途回収する手だてについていろいろ研究しておると。  もちろん、外務省としましても、この問題は日本の公的な貸出機関からの融資ということではございますけれども、これから外交機関として関与すべきことがあればきちんと関与して問題の解決に向けていくと、こういう態度でおります。
  15. 村井吉敬

    参考人村井吉敬君) 今、馳先生からの御質問というか、私の考えを御披露した方が多分いいと思うんですけれどもODAの原資が税であったり郵貯であったり、つまり日本人のお金でなされている以上は日本にある種の還元は必要である。これは国益というような言葉で言うべきなのかどうかよくわかりませんけれども、少なくとも国民の利益として返ってくるべきだ。それは非常に短期的なまさにいじましい利益であっては困るわけで、例えば憲法の前文にある、我々は国際的に名誉ある地位を占めたいという文言に照らして立派なことを、たとえなけなしのお金であっても払ってやるんだというようなある種の目的を持ってやれるとすれば、それも国益であろうというふうに思います。つまり、企業にすぐ還元されるとか、そういうものを国益と考えるべきではないだろう。  そういう意味で私は、特にこれから、二十一世紀という大げさな話をするわけじゃないんですけれども、国家と国家の壁というか、あるいは国境の高さというのはどんどん低くなっていかざるを得ない、それは必然の勢いだろうというふうに思います。そういう意味では、国益という十八、九世紀的な国益観ではなくて、やがて地球は一つの利益として全員が見守らなければいけないようなものになっていくだろう、そういう見通しの中で私はODAの目標も掲げるべきではないかというふうに思っております。  基本法についてなんですけれども、これはもちろんいろんな御議論がおありだし、そこまで書く必要はないというようなところもあるのかもしれませんけれども、基本的には、ODA基本法というのはやはり理念をはっきり書く。  それから、基本法ODAというものの定義、この定義というのが実はなかなかできていないように思うんです。つまり、どの範囲がODAなのかというようなことはなかなかわからない。ですから、例えばOECFがウナギに融資するというようなものも果たして本当にODAなのかと。つまり、日本の企業あるいは海外で合弁事業に対する投融資事業という枠があるわけです。これは、どんなに当地の開発に貢献しようとも私企業が絡んでいるわけですからODAの定義に入れない、あるいはそういうのはODAに入れないというようなことをまず決めておく必要がある。そういう意味では、基本法の中にある種の定義、余りがちがちではないけれども、定義は必要じゃないか。  それから、先ほど来申し上げている国会関与、どの程度関与が可能なのかということを含めて、国会関与というのがぜひとも必要。それから、ODA行政組織、これについてもやはり基本法の中に入れるべきであろう。もう一つは、これはもう根本理念とかかわるわけですけれども日本は武器輸出とか軍事貢献はしないという憲法上の理念もあるわけですから、そこら辺も原則としてはっきりしておく。それから、まだ触れていないことなんですけれども、例えば腐敗防止、これはほかの法律体系が恐らく必要になる。つまり刑事罰なりなんなりというものも必要になるかもしれませんけれども原則として腐敗防止というようなことも理念の中にあるいは入れるとか、そういうような一つの体系性を持った基本法が必要ではないかなというふうに思います。  市民の側からは、特に強い要求として、やはりNGOの参加というものをきちっと保障すべきであると。日本ODAの中でNGOに回っていくお金の率というのは恐らくはかの先進国に比べると一番低い。それは日本の国の中にNGO自体がまだ十分育っていないという事情もあるかもしれませんけれども、にもかかわらずODA基本法の中でそういうようなことを保障していくことによってまたNGOも育っていく、そういう側面もあるのではないかというふうに思います。  以上です。
  16. 広中和歌子

    広中和歌子君 具体的な御質問をさせていただきますけれども大島局長に伺いますが、ODAの中でNGOを通じて援助されているポーション、それからいわゆる小規模援助というんでしょうか、その部分を教えていただけませんか。そして、ほかの国との比較でございますね、特にカナダ、アメリカ、そしてどこかEUの国の例を引いて教えていただきたいと思います。
  17. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 日本NGOを経由いたしますODAの比率でございますが、これは一九九五年の数字でございますけれども、一・八%でございます。今ございましたカナダが同じく九五年で八・五%、あと比較的目につくところで高いところは、スウェーデン六・六%、スイス六・二%、イギリス二・一%、こんなところでございます。
  18. 広中和歌子

    広中和歌子君 アメリカはいかがでございますか。
  19. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) アメリカは、済みません、ノット・アベーラブルになっておりますので。ただ、アメリカはたしか、ちょっとそこは後でチェックいたしますけれども、一定の目標を最近つくりまして、今後数年間、NGOを通じて執行する比率を高めていくということで……
  20. 広中和歌子

    広中和歌子君 一〇%ぐらいございませんか。
  21. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) たしか一定の比率を目標として掲げたというふうに理解いたしております。これは行政府方針としてそうやっていくと。
  22. 広中和歌子

    広中和歌子君 カナダはもうちょっと多いんじゃございませんか。八・五というのは驚いたんですけれども、かなりの部分NGOを通じて、しかもそういうふうにカナダの大学生と契約してやっているというふうに聞いたことがあるんですが。
  23. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 個々のNGOの定義そのものがかなり流動的でございますので、厳格厳密な比較はどこまでやるかは知りませんが、私どもが把握している、これはDACの議長報告に基づいたデータでございますが、九五年で八・五%、九四年、その前年に五・五%と、こういう数字が出ております。
  24. 広中和歌子

    広中和歌子君 それで、いわゆる小規模支援というのがございますね。そういう場合には現地のNGOと御一緒の仕事になりますね。今いただいた数字はそれぞれの国のNGOとの協力の比率なのでございますか。
  25. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 今、日本のをパーセンテージで申し上げましたけれども、この中には、日本NGOに対します補助金、NGO事業補助金と呼んでおりまして外務省が担当しておりますが、これが九六年度で八徳でございます。それから、さっき先生が小規模無償とおっしゃいました、草の根無償と呼んでおりますけれども、これが九六年度の数字で四十五億でございます。そのほか、地方公共団体関係を通じるものがございます。こういったものを全部含めたものということで、先ほどの約二%弱というのが現状でございます。
  26. 広中和歌子

    広中和歌子君 この額について外務省は満足していらっしゃいますでしょうか、それとももうちょっとふやす方向に行こうと考えていらっしゃるんでしょうか。
  27. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 一般方針としまして、私どもNGOに対します支援を拡大する方向でずっと来ております。  あとは予算の中でどの程度これを拡大するかということでございますが、一つは、やはり私ども援助執行能力といいますか体制に若干制約もございまして、例えば草の根無償というのは在外公館に審査をゆだねる形で、相当フリーハンドを与えるような形でやっております。外国のNGO、もちろん日本NGOもそうでございますが、この草の根無償に要求を行うことができるということになっておりますが、非常に細かい案件がたくさん来ます。審査も同時にしなきゃいけませんので、そういう意味で気持ちとしては私どもはこれをふやしたいところでございますが、一部にはそういう執行体制上の制約がございますので、そこら辺を見きわめながら徐々にふやしていくということでございます。これからもふやす方針ではおります。
  28. 広中和歌子

    広中和歌子君 そうしますと、先ほど馳先生も御質問になりましたように、もしODA基本法などができ、そうした理念というんでしょうか方向性がはっきり示されますと、今、大島局長が代表されている外務省対外経済協力でございますけれども、それはもうちょっと御希望に沿う形に変えやすくなるというふうにお思いでございますか。
  29. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 法律によるかどうかは別としまして、私どもかねてから、いろいろな委員会の場におきましても機会があればそういうことを申し上げさせていただいておるんですが、一つは、実施体制の強化でございますとか、あるいは開発援助に携わる人材育成あるいは研究とか、こういったいわゆる足腰部分が残念ですけれどもまだまだ足りないということだと思います。特に八〇年になりまして急速に援助額を伸ばしてきたわけですけれども、そういう体制面の整備というのがこれは各所から指摘されておりますけれども、必ずしも十分でないと。  したがいまして、そこら辺については随分いろいろな委員会国会の諸先生方にも応援をいただいて強化してまいりましたけれども、まだまだ不十分だと。例えばこういう分野、それから情報公開、あるいはまさにNGO支援とか、こういった分野についてはさらに強力な御支援をいただきたいということでございます。これは法律によるよらないにかかわらずですね。そういうことが私ども行政府立場としても大変にありがたいという感じでございます。
  30. 広中和歌子

    広中和歌子君 どうもありがとうございました。
  31. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 上田でございます。  村井参考人、ありがとうございました。いただきました資料やきょうの御発言は私はほぼ全面的に賛成なんですが、お話の中でODA基本法について私案をおつくりになったと言われておりましたけれども、これはひとつ参考のために資料として小委員会にいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。  それから、お話の中で、例えばこの大綱の人道的援助、人道的見地、これは賛成だと、ところが国際社会の相互依存関係、これはちょっとクェスチョンだとおっしゃいました。確かにこの政府開発援助大綱というのはいいことも書いてあって、人道的援助、それから「原則」もうたわれて、「項目」も、一は地球的規模問題への取り組みで、これは地球主義でいいですよね。二は基礎生活分野、三が人づくり。ところがその次に、インフラストラクチャー整備と構造調整、悪名高い世界銀行やIMFのものですけれども、こういうのが並んでいて、実際には人道的なものよりもインフラストラクチャーとか構造調整というものが金額的にもかなり大きなものになってしまうと思うんですね。  私たちがずっと問題にしてきたのは、アメリカの戦略援助に対する追随なんです。先ほども、戦略援助という言葉は使われなかったけれどもアメリカ外交政策に対する追随とおっしゃったんですね。今、一兆円を超す。非常に規模は大きいんですけれども、そのかなりの部分が、そういうアメリカの戦略援助外交政策に対する日本の追随から生まれるもの、それから、このごろはアンタイドがふえてはおりますけれども日本の大企業の発展途上国への進出やその経済的な安定を図るためのもの、あるいは先ほどの構造調整融資、こういうものがかなり占めていると思うんです。おっしゃるように、本当に人道的支援・援助中心に抜本的に改革すれば、この一兆円を超すというような巨額のものはそれほど要らないで大変いいものになるんじゃないかと、そう考えられるんですけれども、その点について御意見をお伺いしたいと思います。  大島局長には後でお願いします。
  32. 村井吉敬

    参考人村井吉敬君) 最初の基本法については、実は私どものつくった「検証 ニッポンのODA」という本の末尾に載せてありますので、後で事務当局の方からお配りいただければと思います。  戦略援助というのは実は私も使った言葉ですが、外務省当局は戦略援助というようなものはないというお立場なんですけれども、私は数字的な検証を少ししてみたことがあるんです。  というのは、例えばソ連がアフガニスタンに侵攻した次の年にパキスタン援助が急にふえるとか、あるいはベトナムがカンボジアに侵攻した後にタイの援助が急にふえるとか。外務省説明は、これは何も軍事援助じゃないと。実態は軍事援助ではないのかもしれない。ところが、その援助というのは、もらった側にすればその分予算が浮く、それを軍事面に回せるという利点があることは事実です。ですから、紛争当事国はもちろんのこと、紛争周辺国への援助というのは相当気をつけないと、意図はどうであれ、日本外交というのは結局アメリカの軍事戦略に追随しているだけではないかというふうに受けとめられかねない、そういう側面があると思います。  私は、政治とODAというのはやはりきちっと切り離した方がいいという考えなんですが、これは実は大変難しいところがある。中国が核実験をする、そのときに無償資金協力はやめる、本当は円借款をやめた方が効果的なわけですけれども。これはある種の政治的な発言というか内政干渉につながりかねない行動なわけですけれどもODA大綱に照らせばそれは当然のことです。ただ、こういうことはどこでも同じような原則が適用されればいいわけですけれども、ここでもそういう議論はあったと思いますけれども、どこかは非常に重くパニシュメントを下すけれどもアジアの大国については甘いとかという、ある種のダブルスタンダードが出てくる可能性がある。そういう意味で言えば、政治に関与できないようなODAというあり方をむしろ追求すべきじゃないか。  人道援助というのは、どこかで人が飢えている、あるいは苦しんでいるということは政治的考慮抜きにできる話だと思うんですね。そういうことで言えば、ODAは、日本の国益の発動という狭い意味の国益じゃなくて、長期的な地球市民益だというような観点に脱皮していくことによって、逆に政治から離れられるのではないかというふうに思っています。  つまり、アメリカがよく言われるように金に飽かせて、アメリカの人権外交もある意味ではダブルスタンダード、トリプルスタンダードというようなことはあるわけで、アメリカはそれを金とか武器に絡めて外交をやるからいけない。余り金に絡めた人権外交だったら、これはむしろ反発を買う。ですから、日本というのは人道主義大国である、人道主義以外あの国は金が出ないんだというぐらいの世界になっていくと、理想論ばかり言って申しわけないんですけれども、私はそういうふうに思っております。  もう一つはインフラの件ですけれども、これは大分比率が減ってきたというか、世界全体が今や大規模公共事業の時代ではなくなってきている。日本の中でもダムの見直しとかさまざまな議論が進んでいるし、アメリカなんかではもはやダムというのは壊す時代に入ってきている。ところが、アジアではまだインフラが足りない足りないという話ばかりが伝わってくるわけです。私が援助の現場を歩くと、巨大ダムというのはもちろんある種のメリットが当然ある、それは治水、かんがいあるいは電力というような面で大きな貢献はするわけですけれども、そこで立ち退かされたりする人たちがいる。立ち退きの問題というのは、実は世界銀行なんかが今ガイドラインをつくっているほど深刻な問題になってきて、あの中国の三峡ダムにしても多分そうだと思うんですけれども、そういう意味では、大規模公共事業、大型インフラストラクチャーの時代では多分なくなって、それは外務省当局も十分御存じのことだと思います。  そういう意味で、逆に企業は、日本ODAが今受注できないということの焦りが非常に強くなっている。それで民活インフラというような考えが出てきた、私は民活インフラという考えには余り賛成ではないんですけれども。企業の側からすると、日本の企業利益離れをし過ぎたから何とかしろという悲鳴みたいなものがありますけれども、私は、これはこれでよかったと、それが実は今まで日本援助に対する非常に大きな海外からの批判としてあったと思うんです。そこを脱皮しつつある、そういう意味で私はそこは評価しているということです。  あとは、人道援助に限れば一兆円なんか要らないんじゃないかと。確かに、人道援助というのはかなりきめ細かな援助が必要ですから、今の人員体制の中で果たして執行できるかというのは疑問なんです。そういう意味では、減額ということはあり得るかもしれない。ただ、日本の今の経済規模からして、特に国際目標〇・七%というのに対して日本は〇・二ぐらいですから、あと三倍ぐらい、三倍以上出さなきゃいけない状況にある。国際目標というのは、何かでたらめに決められたわけではなくて、恐らくそれなりの意図があるわけで、今の世界の南北の非常に大きな不平等、格差ということを考えれば、私は本当に理想的に援助が執行できればもっともっと実はふやすべきだという考えです。  私たちの主張というのは、援助は要らない、援助はなくせ、それは援助したりされたりする関係をむしろなくせと。そのためのプロセスとしては援助が必要かもしれない。そういう意味では、幾ら必要かというのをはじき出したことはないですけれども日本は世界で一、二を争うGNPの大国なわけですからもっともっと出していい、国内公共事業に何十兆円出すのなら、むしろODAに出した方がいい場合だってよほどたくさんあるんじゃないかと私は思っております。
  33. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうもありがとうございました。  大島局長にお伺いしたいのは、今のお話からもODA改革のために実態をしっかりつかむ必要があると思うんですけれども、その実態がなかなかつかみにくい、情報公開問題と絡みましてね。  実は、この前の小委員会でも若干問題にしたんですが、この前の前の小委員会においでいただいた専門家の山本海徳氏が朝日の「論壇」で書かれていて、最後のところで、外務省ODA白書はよくまとめられているがとして、「技術協力予算の半分を占める外務省以外の十八省庁の技術協力や、大蔵省所管の国際開発金融機関への出資・拠出などの詳細は記述されていない。そのため、日本ODA全体像を正確にとらえるにはかなりの労力を要する。」と。あの一番の専門家の山本さんがそう言うぐらいで、それから村井参考人も、予算書から全体像をつかむのはなかなか困難だというお話をされました。実際こういうふうになっているのかということをお伺いしたい。  それから、これに関連するんですけれども外務省の有償資金援助については、交換公文は官報に載る、だから案件の名前と金額は公表されている、全体像としては毎年出されるOECF報告に概要として書かれている、だから案件名とOECF報告を突き合わせれば一応具体的にわかるシステムになっている、これが経済協力局からの有償資金協力についてのお話らしいんですけれども、じゃ他の省庁のものはというと、果たして公表されているのかどうか、どうもわからない。これは先ほどの山本さんのあれとダブる話なのかもしれないけれども円借款については、案件名と金額だけはわかるけれども、また外務省の扱っているのはわかるけれども、ほかのものはわからないのか、公表されていないのかどうか、これもお伺いしたい。  それから、三つ目に無償資金協力のことで、私は思い出して、以前ここに参考人でおいでになった例の鷲見一夫教授、鷲見さんは一番厳しい意見を述べられたので議事録をもう一度見てみたんです。鷲見さんはとにかくODAはやめるべきだというかなり強いお話で、それは、九四年のNGO会議で、とにかく構造調整融資というのはもうエコノミック・ジェノサイドだ、もう皆殺しなんだという非常に厳しい意見が出たという紹介で、今のままのものではもう有害なのでやめるべきだという御意見なんです。  その中で、一つ、やっぱり無償資金協力外務省が中身を全然明らかにしないということを述べておられますね。それは構造調整融資で、これは鷲見さんがそのとき配った資料なんですが、この構造調整支援、IMF、世銀が決めて日本が有償資金協力無償資金協力を決めると。ずっとリストがあるんですけれども無償資金協力にノンプロジェクト援助というのがある。これを見ても二十億円、三十五億円、ずっとあるんですね、かなりの額だと。ところが、ノンプロジェクト無償援助というのは形がないと。無償援助で橋ができるとかは形があるからわかるけれども、確かめようがない。外務省に私が問い合わせたところ、全然何もタックスペイヤーに対して公開できる資料はありませんと。どうやってチェックしているかと言ったら、国連のUNDPとイギリスのクラウン・エイジェンツに頼んでいるという返事だったというんです。この会議参考人として述べられたことなので、その後これに対するお答えが出たのかどうか、ノンプロジェクト無償資金協力というのは一体何なのか、これも一つお伺いしたい。  ですから、先ほど戦略援助の話も出ましたけれども、本当に改革するためには全体像がもっとはっきりしないといけないと思うんですね。その点について局長のお話をお伺いしたいと思うんです。
  34. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 上田先生の三点につきましてですが、まず第一点の山本海徳さんが「論壇」に書かれていることでございます。  私どもも、援助政策あるいは実務に携わっている同僚としてこういう問題点を書かれておられるということは、まことに申しわけないといいますか、こういう問題があるということは、一面これは否定できない事実であろうと思います。  御案内のとおり、日本援助行政体制が非常に分散型になってきておりまして、外務省予算的に所管させていただいているのは政府全体の五〇%であるわけでございますが、もちろん各省の協力を得まして、先ほど冒頭説明で御報告させていただいたように、各省からいろいろな報告を得て、取りまとめて、国会提出したり、あるいはこういう年次報告に出したり、それから最近ではODA白書に全部まとめて報告するような努力をしております。そういう意味では十分な協力を得ていると思いますけれども、ただ、それじゃ詳細に全部把握し切れているかというと、必ずしもそういうことではございません。  そういうことで援助行政の問題点についてはかねてからいろいろ指摘されておりまして、今回の行政改革会議の中でもそこら辺の問題についてはいわゆる一元化すべきではないかというコンテキストで随分議論がございました。その結果、最終報告案におきましては、個々の経済協力につきましては、「被援助国に対する総合的な戦略など、経済協力に関する全体的な企画については、外務省がコアとなって総合調整を行う。」という全体的な方向が出されております。こういうことになっていけば、先ほど御指摘のような各省関係技術協力、あるいは大蔵省所管の国際開発金融機関等につきましても、政府全体としてきちんと全体的な見地から総合調整を行うという方向政策企画が行われるということになれば、データの点も含めて、この点については相当な改善が今後なされていくというふうに思っておりますし、我々としてはぜひそういうふうにしていきたいと思っております。これは非常に重要な点でございますので、今般そういう意味では、少なくとも経済協力行政についてはかなり改善方向に向かうのではないかというふうに私どもは期待いたしております。  二番目の円借款資料等でございますが、これはもちろん交換公文の段階で公表されますが、事後の調達につきましても一定規模のものについては結果についてちゃんと公表されるようになっている、つまり調達企業名の公表でございますが、これもなされているというふうに理解しております。  それから、三番目にノンプロジェクト無償でございますが、これは、世銀とかIMFが行います構造調整のプログラムを実施しているような国であって非常に経済困難に直面している国に対しまして、プロジェクト型でない、そういう意味では商品借款的な側面がございますけれども、プロジェクト型でない支援を例外的にカンフル注射的に行う形態の援助でございます。
  35. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 では、向こうが勝手に使っていいわけですか。
  36. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) いや、これはもちろん外貨で供与されますので、何をその国が購入してどういう目的に使うかということをあらかじめ事前にちゃんと合意いたします。勝手に使っていいというようなことではございません。  例えば、石油とか石油製品とか鉄鋼とか、そういう緊急に輸入する必要がどうしてもあるといったような場合、しかも極度に困難に直面している、大体非常にまずしい最貧国がそうでございますが、アフリカとかアジアの一部、カンボジア等でございますけれども、こういう国に対しましてまさに文字どおりカンフル注射的に行うものでございます。  その執行につきましては日本機関も調達に立ち会いますが、特にアフリカ等につきましては、これをスタートさせた時点でアフリカ等については日本も土地カンもないし経験もたくさんないものですから、相当信頼の置ける機関を使うという方針を立てまして、この調達の世界では名前が通っておりますけれどもイギリスのクラウン・エイジェンツとか、あるいは国連開発計画、UNDPのこういう専門機関等の調達サービスを一部借りる形で実行しております。きちっと公正に調達が行われ、納品が行われ、使用がきちんと行われていることを確認する。  と同時に、これは無償でございますので政府に対して供与され、主として消費物資ですが、それで政府はそれを国内のマーケットで売ります。したがいまして、その国の通貨で見返り資金が発生しますので、この見返り資金は、例えばカンボジアですとカンボジアの国立銀行に特別勘定をつくらせまして、そこに積み立てさせます。それで、カンボジアでございますと、リエルという通貨で積み上がった資金をどういうふうに使うかということについても日本政府とカンボジア政府原則協議します。例えばワクチンの購入に使うとか、あるいは道路建設に使うとか農道、圃場の整備に使うとか、目的をきちんと合意しまして、それに従ってカンボジアならカンボジア政府はその見返り資金を使用していくといういわば二段階の、最初の商品供与の段階、それから見返り資金の利用についての二段階にわたりましてきちんと援助国であります日本政府と協議して合意の上でやっていく、そういうやり方でやっているものでございます。  冒頭申しましたように、これはそういう意味で非常に困窮している場合のカンフル的なもので、いつまでも癖になってはもちろんいけませんので、そこら辺は余りそういうふうにならないように執行に気をつけながらやっている援助でございます。
  37. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そうすると、外務省が大体五〇%扱っているけれども、ほかの部分については外務省自身もなかなかつかみにくいということになるとこれは非常に大きな問題なんだけれども、ではそのやっていることの全体が本当に統一的に積極的な援助として生きているかどうかという問題が出てきますね。とにかく十九省庁でみんなばらばらにやっている、JICAOECF円借款技術協力を特に打ち合わせてやっているわけじゃないということになると、大変な問題が起きると思うんですね。  山本さんからケニアの問題で資料をいただいて、この間も私は言ったんですけれども、ケニアの農業関係の三つのプロジェクトについて東京農大の教授と講師のお二人が報告書を出している。経済協力評価報告書、これはJICAあての報告書ですか、これを見ると、結局「何らの脈絡のある相互関連性が見い出せない」という結論なんですね。そうすると、ケニアで同じ農業関係で三つやっていてその三つでさえ関連がないという評価報告書が出ているんだから、全体一兆円もの個々の援助がどういうふうになっているか、これはもう群盲が象をなでているみたいなことになる。自然発生的に積み重なってこうなったと思うんですけれどもね。  局長は余り積極的でないようだけれども、一元化の問題というのは必要だ。本当に日本ODAを効果あるものにするためには、情報公開で全体像がわかると、それで一つ一つの支援の有機的な関連を打ち立てると。この十九省庁がばらばらで縦割りでやって、それがもう何十年の間に積み重なってこれだけ大きくなってしまった。しかし、ケニアの同じ農業関係の三つでさえ関連性がないという評価報告書が出てくるようでは、ほかも推して知るべしじゃないかと思うんですけれども、もし一元化に局長が余り賛成でないんなら、どうやってこれを効果的、統一的な観点で実施できるようにするのか、もし対案があればお考えをお聞きしたいと思うんです。
  38. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 先ほどちょっと紹介させていただきましたが、今度の行政改革会議では、特に技術協力に関しましては、「技術協力に関する企画立案機能については、外務省がコアとなって一元的に総合調整を行う。ただし、留学生関係については、教育科学技術省の主導性を確保する。」と、こういう整理になっておるわけでございます。  確かに、従来、特に技術協力については十数省庁が関係していると。大きなところはほんの数省庁なんですが、比較的少額でも予算を計上しているのを含めますと十数省庁ございました。外務省中心になってその十数省庁との会議をやったり連絡調整をやっておるわけですけれども、しかし、そこら辺については必ずしも十分でないという指摘、批判が率直なところございました。  それから、特にプロジェクトのところまで来ますと、そうばらばらなことが行われているということは、私は先生御指摘になったケニアのケースは申しわけありませんが知りませんけれども、通常、プロジェクトのレベルまで来ますとないんですが、むしろプロジェクトに至る前の調査の段階でややもすればばらばらの調査が行われると。調査公害とかいうようなことで言われたり批判を受けたこともあるわけでございますが、こういうものがなかったとは言えないと思います。  ただ、プロジェクトまで来ますと、やはり外務省なりあるいはJICAなりを通じまして、例えば農業案件でございますと農水省がしょせんは関与いたしますので、そこで全体を見ているということですので、そういう意味での大きな調整の問題というのはないはずでございます。ないはずでございますが、今のケニアの具体的なプロジェクトについてはどの程度の問題なのかちょっと私も具体的には存じませんが、一般論としましてはそういうことでございます。  したがいまして、少なくとも政策の総合調整あるいは技術協力の一元的な総合調整ということは、今度の行政改革会議の結論の中にそういう方向で事態が進んでいくことになっているので、これがきちんと生かされていくということで、これはこれでかなりの前進じゃないかというふうに私どもは考えております。
  39. 福本潤一

    ○福本潤一君 では、最初に大島局長の方に。  さまざまな形でODA基本法に対しては慎重に臨まざるを得ないということでございます。各種理由も言っていただいたりしておるわけでございますが、もう一歩、ではなぜ基本法ができたらいかぬのかというのがわかりにくいところがありまして、御質問させていただきます。慎重に臨むというのは、ある程度状況だったらいいという状況の慎重よりも、むしろ反対なのではなかろうかという気持ちになる御意見が多いかと。その中でも、憲法七十三条の関係とか、理念を明らかに情報公開はこういう形でやっていますよと。何とか情報公開しますけれども外交外務省の専権事項にしておいていただいて、法律で規制が一切なければ一番いいなという思いがあられるのかなと思いましてね。  そうしますと、例えば先ほど委員会で一元化したらどうかと。ただ、現実のインフラ整備等々は監督官庁とかかわりがあるからそれも難しいと。例えば先ほど村井参考人から、ODA常設委員会等々もあって、ODA基本原則があった上で、そこの中で対応していくという形が一番いいんじゃないかというお話がありました。そうしますと、ODAのそういう委員会審議するのは、大島局長意見の中には、法律となると犯罪追及とかさまざまな形があるという懸念を抱かれていると。予算委員会等々でかなりそういう追及的な問題というのは出てくるにしても、これは国会事項ですからそういうODA委員会というのは認め、そこでの質疑という形で公開できるか。さらには、さまざまな反対意見の理由があったんですけれども、何が一番基本法が通ったときにまずいのかという一番の根っこ、柱は何かというのをお伺いしたいと思います。  それと、村井参考人予算案の中からODAを拾い集められて、やはり実態がなかなか見つかりにくい、特にどの国へどれぐらい出すかというのもほとんどわからない、ですから基本計画とか単年度基本方針まで検討できるような形になっていくのがむしろ望ましいという御意見をいただきました。私も基本的には村井参考人と同じ関心を持っていまして、こういう基本法があった上でODA常設委員会が、まあ特別委員会でもいいですが、あった上で対応していくのが一番いいと思っています。村井参考人は、特に人道支援というので、むしろ日本ODAを通して人道国家になっていった方がいいのではないかと。これは、ODA予算をどれだけ出しても、その国の文化とか、施政方針みたいなものが変わらないとそういう形での評価というのは受けにくいところだとは思いますが、現在、一兆を超える形の予算規模になっていると。  そうしますと、近所のあらゆる人が困っているときにある金持ちの家が援助するといっても、どうしても限界があるという問題もありますし、と同時に、それだけのお金を出すなら戦略援助もあった方がいいんじゃないかという気持ちが国としてはどうしても起こってくると思います。すべて人道援助というふうになりますと、どこに援助するかとかどういう形でやるかというのも、さまざまな同じレベルがあってかなり高額になるというような形とか、緊急避難事態なら対応できるがというような話があると思いますけれども、人道援助の判断基準と、戦略援助というのもやはりあってよろしいんではなかろうかというようなところをお伺いさせていただければと思います。
  40. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 福本先生のまず第一点の、委員会におきます審議を通じてODA政策とかあるいは実施がチェックされるということは、これはもちろん従来も繰り返し行われておりますし、こういう場が例えばもっと専門的な場にもさらに追加的に、どういう場にこれが設定されるのか私ども申し上げる立場にございませんけれども、それはそれで大変に結構なことだろうと思います。ODAの活動はいろいろな側面にわたりますので、いろいろな関係する委員会のコンテキストで取り上げられる、これは当然のことだと思いますが、加えまして、やはりODAという見地から専門的に、例えばこういう小委員会もその一つかもしれませんけれども、こういう形で専門的に御審議いただくということは私どもからしましても非常に好ましいことだというふうに思います。  したがって、行政府として、こういう委員会でチェックを受けることに基本的に拒否反応があるということではございません。これは資料提出等も含めまして、私どもとしてはそういう意味説明責任があるというふうに認識いたします。  それから、基本法反対、一体何が困るんだと。こういう点につきましては、従来国会提出されております幾つかの法案、私どもももちろん承知いたしております。先ほど村井先生からもまた私案なるものが出ましたが、こういうものを見ますと、アメリカ援助法の例も私どもよくあちこちで聞き知らされておりますので、それに近いような話の事項が盛られたことが示されますと、やや拒否反応的なものがどうしても出てくるという側面がございます。  あえて何が非常に困るかと言いますと、これは繰り返しになって恐縮でございますけれども援助には人道的な側面、いろいろございますけれども、最終的にはやはり外交的な配慮とか考慮に基づく部門というのがどうしてもあるということでございます。そういう意味で、これが行政権の行使かどうかという理論的な問題を超えて、実際上の問題としましても柔軟に機動的にやれる部分というのは必要だろうと思います。かつ、それは国会がきちんとチェックをされていくということと背馳しない形でできるはずでございますし、諸外国のいわゆる基本法的な法制度の立法の実態を見ましても、そこら辺の行政府立法府関係という接点の処理については、そういう外交的な側面というのがどうしても援助行為に伴うという現実認識に立って、恐らく現実的な判断が働いた結果、そういう姿になっているんだろうと私は思います。  したがって、そういう意味柔軟性とか機動性ということの重要性、あるいは外交的配慮で、法律になじむものなじまないものとおのずとあるかと思いますけれども一般論として申し上げますとそういう見地からやはり慎重にならざるを得ないというのが先ほど申し上げた気持ちでございます。
  41. 福本潤一

    ○福本潤一君 そうすると、憲法七十三条の解釈というところが一番外務省益にもかかわってくると。
  42. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 外務省的に申しますと、援助というのは恐らくすぐれて行政権の一部分であり外交の一部分、これはやや外務省的なカラーがちょっと強く出過ぎた言い方になるかもしれませんけれども、そういう面が法的な議論としてはあるんじゃないかなと思います。
  43. 福本潤一

    ○福本潤一君 委員会質疑した場合、国会でもその責任を負うというような形であろうと、この七十三条で外交はもう内閣の専権事項として対応する必要があるということですね、確認ですが。
  44. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) はい。ただ、それと、国会予算承認という問題がもちろんございますので、その接点をどう整理するかということだろうと思いますが、カテゴリーの整理としては、行政権の範囲で処理される問題と国会による予算承認チェックという問題、両問題の重なり合う部分をどう整理するかということじゃないかと思います。
  45. 村井吉敬

    参考人村井吉敬君) 今の大島局長発言の一部なんですけれども外交内閣の専管事項だという憲法上の規定があるにしても、ODAというのは私が先ほど申し上げたようにやはり国民の合意がどうしても必要であろう。事実、外務省の出しているODA白書の中でも、これは九五年度ですか、国民の支持と参加を得たODA、その前の年がODA四十周年の回顧とさらなる飛躍の中で国民とともに歩むODA、九三年が人々の支持と参加を得たODAと、そういうサブタイトルがつけられているわけで、外務省理念としてはやはり国民の支持が必要であるということはお認めになっていると思うんですね。ですから私は、従来の憲法解釈というか外交の範囲を余りODAまで全部取り込まないでいただきたいという感想がちょっとあります。  それから、先ほどの戦略援助あるいは人道援助というようなかかわりについて一言申し上げたいんですけれども、これはある種哲学というかイデオロギーに絡んでくるような問題もあるんですが、私は、現在の南北間の格差、特に南の、あるいは被援助国の貧困問題というものは、ある種非常に人為的な、あるいは構造的な問題だというふうにとらえているわけです。つまり、南の人が怠けている、あるいは南は暖かいから働かないでいいんだみたいな、そういうある種の人種決定論や地理決定論はとらない。つまり、これは構造的な問題である。  日本の国内でも階層間の格差というのが当然ある。そして、最も貧しく自立できない人たちに対しては生活保護という制度があるわけですね。地球規模でも自立できない人たちに何とか自立してほしい、そういう意味の生活保護的な発想は私はあるべきだろうと。私の考えでは、それ以外の、例えばインフラをつくって経済成長させるということまでODAが含む必要はないんじゃないか。これは経済成長促進予算というようなもので処理すべきではないか。これはある意味で全く私の独断の理想論みたいのを語っているわけで、必ずしも御賛同いただけないかもしれませんけれども、私はそういう考えを持っている。  戦略援助というのは、先ほども申し上げたように、非常にダブルスタンダード、トリプルスタンダードになってしまう可能性がある。国民がすべて合意して、ある国に集中的に援助すべきであると。つまり、今はソ連の脅威というようなことが余り語られなくなったわけですけれども、八九年の冷戦体制崩壊以前というのは、ソ連の脅威に対してアメリカがどうするか、それに対して日本はどうするかという外交の決定の仕方があった。これはアメリカにある種追随せざるを得ないというような日本の弱さということがあるのかもしれませんけれども、事ODAに関しては、もっと自律的に先ほど申し上げたような理念を掲げていっていいんじゃないか。  戦略援助というのはもちろん国益という観点から出てくるというふうには思いますけれども、私は、思い切ってその考えは捨てた方が世界の中で日本の人気が上がるというか、外務省念願の常任理事国入りだってそういうことでむしろ果たせるんじゃないかというふうに思います。
  46. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) ちょっとよろしいですか。
  47. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) はい。
  48. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 村井先生が言われた戦略援助、先ほどからいろいろお話が出ているので一言だけちょっと申し述べさせていただきたいと思うんですが、今まで日本がここ二、三十年やってきたODAが非常に戦略援助であったというふうに理解するのは、少なくとも私どもの理解からいうとちょっと行き過ぎているんじゃないかなという感じがいたします。  日本ODAは、基本的には、その国の経済成長それから先ほどの人道的な緊急的な援助も含めて、非常に忠実にやってきたということじゃないかと思います。そういう意味では、例えばアメリカあるいは一部の国が行ってきたような東西対立のコンテキストで急に援助をある国にふやしたり急に少なくしたりというようなところは比較的少なくて、比較的忠実に本来の開発目的でやってきたということだと思います。  もちろん、先ほど来言及がありましたが、紛争周辺国援助というような部分が一部あったということですが、これは、難民が国際紛争の結果ふえたりして援助需要がふえた結果、一部のそういう紛争周辺国に援助を行ったということですし、なおかつ、それがもしかつての冷戦下での日本アメリカの同盟国としてその大きな東西対立のコンテキストで西側の立場に立った行動をしたということであれば、これは何にも謝る必要もなければ言いわけをする必要もないわけですけれども、そういう部分があったと言えばあったと思いますが、大きな理解としてそういう東西対立コンテキストに非常に影響されながら日本援助をやってきたというのは、恐らく評価としてややうがち過ぎているんじゃないかというふうにどうしても聞こえてならないものですから、一言、記録のためにも言わせていただきたいと思います。
  49. 田英夫

    ○田英夫君 ODA基本法をつくるかどうかという問題で大変きょうの議論は煮詰まってきたといいますか、今までずっと議論を重ねてきたものが集約されてきたように思うんです。  私は、かつてODA基本法をつくるときに村井さんには大変お世話になりましたので、おっしゃることはよく理解しているつもりですが、今、大島局長が言われたことと関連して、もう一つ議論を進める意味であえて申し上げたいと思います。  冒頭に村井さんから、長期計画中期計画、年度計画というものをやはり出すようにした方がいい、当然基本法に盛るべきだと。私ども基本法案もこれを盛っていたわけですね。同時に、率直に言って、今外務省はもう大島さんがはっきり言われたし、外務省だけでなくて大蔵省その他政府の中でもODA基本法に対して反対する空気があります。それから、国会の中でも、必ずしも各党全体が進めようとしているということではもちろんない、反対されている方もあるわけですね。  そういう中で、しかしやはり私は依然としてODA基本法というものをつくっていくことがいいと思っているので、その意味一つの例として申し上げたいのは、長期、中期、年度計画というものを盛っていくということは、恐らく大島さんを初めとして、政府の、特に外務省の皆さんは、こういうものを義務づけられるのは非現実的だとか、あるいはかなわぬというお気持ちがあるだろうと思うんです。それはわからないではないので、あるいは反対の論拠になりかねないという感じもしますので、長期、中期、年度というのはどういうことを内容として報告といいますか承認を求めるべきなのかということなんですね。  例えば、私ども法案をつくるときに、大蔵省のODA担当主計官と随分議論したことがあります。年度予算予算案に組んでいく。大島さんも、ODA予算としては出てこないということは認められました。となると、つかみようがないわけです。私どももっかもうとして努力しましたけれども、だめでした。大体大蔵省は、それではODA担当のあなたは、例えば農水省の中からODAを抽出してこれがいいとか悪いとか評価されるときに、どういうふうに評価され何を基準にするんですかと。しかも、多くの場合、ちょうど十年度予算案を今組みつつあるわけですが、来年度予算を組む段階では、来年度は具体的にどこの国にいかなるプロジェクトでODA実施するかということは決まっていないわけです。それなのに、どうして、どう評価することができるんだということを聞きましたら、建設省の箇所づけと一緒ですよ、こういう答えが返ってきました。上田さんは建設委員が長いからすぐおわかりでしょう。  要するに、年度予算を組むとき、前年度、組む段階では、具体的に何に使うか、どこにダムをつくるか、まだそういうことは決まっていない。しかし、年度が始まってからその予算の中から、こういうふうなところへこういうことをやりましょう、道路をつくりましょうとかダムをつくりましょうというふうに決めていくのが箇所づけだと。それと同じように、ある省庁のODA予算予算として組んであるけれども、具体的に国を決めプロジェクトを決めるのは年度に入ってからだ、その意味では箇所づけと一緒だ、こういう意味なんですね。そうなると、あらかじめ年度計画承認を求めるために提出したとしても、それは数字が出てくるだけであって、国やプロジェクトは出てこない。そうなると、国会承認しようにも判定のしようがないのではないかという感じがします。  中期、長期になると、逆にもう少し抽象的で済みますよね。さっきおっしゃったように、人道的とかそういうテーマを大きく掲げていける。こういう問題が一つです。これに対して、村井さんからお答えいただきたい。  もう一つ、今、日本ODAは要請主義になっておりますね。受ける国から要請してきて日本政府が判断して実施するということが原則になっているために、実際問題としては要請する手続をする能力がないような国もあり得る、実際に私は今カンボジアでそれに悩んでおりますが。そうすると、ますますもって、長期計画中期計画、年度計画との関係で要請主義というものをもっと現実に対応できるものに変える必要があるんじゃないだろうかという気がいたします。この点はお二人からお答えいただきたいと思います。  以上です。
  50. 村井吉敬

    参考人村井吉敬君) どうもありがとうございます。  予算と長期、中期あるいは単年度計画との関係なんですけれども、田先生がおっしゃるように、長期計画というのはかなり抽象的なものであろうというふうに思います。  ただ、例えば十年後に日本ODAというのは予算規模でどのぐらいなのか、あるいは対GNP比で何%ぐらいまでいくのかいかないのかとか、あるいは有償無償の比率がどの程度のものか、それから地域的にどの地域、何%ぐらいを目指すのか、そのぐらいのことでしたら長期の計画の中に恐らく盛れる。しかもそれは、ある種の何か、先ほど来使われている戦略ではなくて、ODA戦略というような、日本はどういうODAを本当にしようとしているのかということを十年ぐらいのタイムスパンで見渡せるような計画、それに合わせて被援助国はこういうことだったら日本援助を要請できるというようなことが出てくると思うんですね。  一番大事なのは恐らく中期計画というような、ここが一番ある意味外務省を縛ってしまうようなそういうところになるし、また、日本予算の現在の執行の仕組みの中では非常に動きにくいのが中期計画ではないかと思うんですけれども、被援助国にとってはやはり向こう五年ぐらい具体的にどうするかというのが一番大事で、途上国は多くの場合、開発五カ年計画とかというようなものを持っている、大体は五年単位というのが多いと思うんですね。そういう意味で、それに合わせるような形で日本でもそれぞれの国への対応というのが考えられる。インドネシアならインドネシアという国が五カ年計画を出したときに、インドネシアの場合は開発予算の中でODAの占める割合というのをむしろ先に出すわけですが、それに日本がどう対応するかというようなこと。これは、世銀とかの枠組みの中でもそういうことは決められていくと思いますけれども。  そういうことで、長期計画に対して中期計画はより国別の占める部分というのが大きくなって、幾らというような具体的な数字までは無理かもしれないですけれども、この国を今度は重視する、その国のこういう部門あるいはこういう地域を重視すると。そのぐらいのことは、実は既にJICAが例えば国別パネルというようなことで専門家の方々の調査を経てある程度方針は出されているわけで、それを予算と関連させながら出してくるということができるのではないかというふうに思います。  それで、単年度予算についても、これは多分行政当局からすると、数字がお互い漏れてしまうと大変だと、あの国が多くてわしらはなぜ少ないのか、そういう争いになるから困るというようなことをおっしゃる。それはそれで一つの理屈だと思いますけれども、ある明確な基準で日本がそれを拠出する場合だったら、それほど文句の入る余地はないんではないかというふうに思います。  それから、後段の要請主義、あるいは政策形成能力というんですかプロジェクト形成能力、そういう問題についての田先生のお話は多分そのとおりだと思うんですけれども外務省ももはや要請主義ではない、ある種の政策対話なりこちらから要請するということもあり得るという方向に今歩み出しつつある。それは例えば、ODA大綱というのを日本は持っている、これに合わない場合には援助しませんというようなことからもう一歩踏み込み、おたくたちの策定した計画に対して私たちはこう思う、それはどうだというそのやりとりの中で新しい案件が場合によっては出てくるかもしれない。相手の国に例えばダムをつくるコンサルタントなりなんなり、あるいはその後の実施業者がいない場合、日本の業者が公の入札の中でその部分は相談にあずかると、それは事実やっておられることだと思います。  その場合、先ほど来主張しているような人道的援助というのは、実は非常に規模が小さい、細かい。相手の国の例えば村のレベルとか、そんなレベルだと政策形成というのは村の人ができる、もちろん細かい技術的なところについては相談が必要かもしれませんけれども。ですから、細かくすればするほど、逆に向こうの人の政策能力というのは発揮できるんじゃないかというふうに考えております。
  51. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 田先生から私に向かって要請主義の御下問でございます。  確かに、要請主義につきましては、きちんと中期開発計画、五カ年計画なら五カ年計画をつくってそれで世銀、アジ銀にどの程度支援を頼む、それから二国間ベースで日本その他にどの程度頼むということをきちんとやれる開発途上国、例えば中国なんかはそうだろうと思いますが、他方、そういうことも満足になかなかいかない、いろいろな理由でいかないと、いろいろあるわけでございます。  したがいまして、前者のような国につきましては、割と安心して、相手国が自国の中でいろいろプライオリティーを調整して日本に対して援助要請を出してくる、それを我々なりにきちんと勉強し調査し、それからほかの援助国や国際機関ともすり合わせをして、その上でこの国のこういう要請をそれでは取り上げてやろう、こういう判断が割ときちっといくわけでございます。  そうでない国につきましては、これは確かに我々も実際上告労するところでございまして、今何ができるかといいますと、よくやりますのは、こちらから例えばプロジェクト形成調査団のようなものを派遣いたします、JICA等から。それで先方とよく対話をする、協議をする。そのプロセスの中から相手のプライオリティーを酌み取って、日本ができること、あるいは許される予算とすり合わせをして、具体的にこういうプロジェクトがいいんじゃないですかということを相手側に示唆する。相手側は、そういうことでした、ありがとうございましたということで流れていくような場合もございます。  したがいまして、要請主義の話も、なかなか一概にきれいに割り切れないところがあるのでございます。  それからもう一つは、要請主義のもう一つ側面として従来言われていましたのは、いかにも言葉が受け身的過ぎる、待っていてみずから能動的に援助プロジェクト形成とかをやらないで余りにも受動的過ぎると。ここは我々も相当反省しまして、幾つかの最近の例で申し上げますと、例えばこれから中国との間で大気汚染の大きな環境協力のプロジェクトをやろうとしているわけです。これなんかは中国から特に具体的にそういう要請があったというよりも、これは何とかしなきゃいかぬという政策意識がまずありまして、それでは具体的にどういうふうに進めれば一番効果的、効率的にできるんだろうかということでいろいろ議論した結果、専門家委員会をつくって双方の専門家が協議を重ねていく中からモデル都市をつくっていこうと。これは、従来理解されていた要請主義から一歩踏み込んだ、一種の案件の共同形成の領域に入っているやり方だろうと思います。  最近はこういうアプローチがだんだんとられるようになっておりまして、特に非常に大きな、あるいはカバーする範囲の広いような問題についてはこういう新しい行き方もとり始めております。したがいまして、要請主義というのは、受動的な側面というのはできるだけなくしつつ、できるだけ相手とよく協議、対話をして、共同でその案件をつくり上げていく。最後に要請書が紙一枚ぼんと上がってくるのは、これは証拠書類として必要でしょうからそういう意味での要請書の取りつけというのは残っていいと思いますが、そこに至るプロセスというのは、協議をし対話をし共同でつくり上げていく、こういうふうに動くべきだと思っておりますし、現にそういうふうになりつつあるんだろうと思っております。
  52. 山本一太

    ○山本一太君 ありがとうございました。  村井先生に伺いたいんですけれどもODA理念として人道援助日本中心にしていくべきだというお話がありました。今、御存じのとおり、財政構造改革の中でますますODAをめぐる環境は厳しくなっておりまして、それは言い方をかえれば、タックスペイヤーにこれだけODAを使ってもいいかという説得をすることがだんだん難しい時代になってきたということだと思うんですね。  先生から、人道援助という理念であれば国民の了解を得られるんじゃないか、アカウンタビリティーの面でも大丈夫じゃないかというお話がありました。私は政治家として実際に選挙区を歩きます。自分で見て感じたものしか信じないことにしているんですけれども、毎月帰って講演会の中で、農村では農家の方々、中小企業のお父さん、お母さんがいたりあるいは商店街の方がいたりするんですけれども、その中でいろいろODAの話をするときもあるんですが、人道的見地からということではなかなか了解は得られないと思います。  困った人がいる、人道的に助けなければいけないという形では、市民というか大都市に住んでおられる方は意見が違うかもしれませんけれども、なかなか私はうまくいかないんじゃないかなと思います。いつも話をするのはいかに日本の国益に結びついているかということでして、地区益という考え方では、受け入れられればいいんですけれども、なかなか難しいと思うんですね。何で北朝鮮に支援するのかと、いや、北朝鮮が急に死んじゃうとこれこれこういうことで日本も大変なことになるとか、途上国から四〇%、五〇%農産物をもらっているからこうしないと大変なことになると言うと、いや、うちの村にODAが欲しいと思っていたけれどもまあそういうことだっだら必要なんじゃないかなという話になるんです。そこら辺のところ、人道というコンセプトを立てて先生がおっしゃったように国民に対するアカウンタビリティーを本当に保持できるかという点がまず一つです。もう一つは、基本法の話なんですが、私も援助の仕事をJICAと国連開発計画でやってきまして、実は自分の私案なんかも考えたりしたんですけれども、実際に考えていくとそう安易にはできないというところもあります。外交ODAというものは不可分のところがあるものですから、ODA基本法というと何かすごく響きもいいですし理想的な感じがするんですけれども、実際に考えていくとそう簡単ではないと思います。  何ですぐODA基本法というのが出てくるかというと、今ちょっと考えていたんですけれども、欧米に比べると日本のマスコミの論調というものがODAに非常に厳しい。それは確かにマルコス疑惑もありました。これは、恐らく田先生とか上田先生がぎゃーぎゃーおっしゃったんで透明性が、そういう過程を経て日本援助は多分透明になってきたんだと思うんです。  私がフィリピンの航海訓練所のプロジェクトをJICAで担当していたときに、あるマスコミが来ましてその特集をしたんですけれども、日曜日で動いていないときに来て、わざわざ研修員を呼んで電気をつけさせて、その番組の中でわざと停電になったということを演出させた。これは非常に許しがたい報道だなと思ったんです。こういうマスコミばかりじゃないと思うんですけれども、やっぱりODAは悪だみたいな論調が少しあるんで、役に立っているODAもあるということは、もちろん先生はいろんなODAのプロジェクトを見て御存じだと思うんですけれども、それはぜひ  わかっていただきたい。  透明性の問題は、確かに不透明なところはあったんですが、マルコス疑惑があり、そのフィリピンの航海訓練所があり、JICAとコンサルタントの癒着なんかがあり、そういう中で確実に透明性を増しているし、いわゆる基本設計に入ったコンサルが次に入れないとか、そういうところはある。  あと、情報公開については、実は我々の怠慢もあるんですが、意外といろんな情報が出ております。こういう厚いので送られてくると一切見ませんが、実はその中に意外といろんな情報が出ているということもぜひ先生にはわかっていただきた  いと思うんです。  ちょっと長くなったんですが、大島局長に伺いたい。  ODA基本法については外務省は慎重な立場だという話で、私自身も慎重なんですが、今ODAがこういう変革期にあって、これだけ大勢の議員とか、先生は認識が低いと言われたんです。あのODA大綱ができたのは、私も後で知りましたけれどもこの国際問題調査会議論がもとですから、上田先生あるいは田先生議論がもとで、草の根無償も実は広中先生あたりから出てきたということも聞いたので、まじめな人もいるんですけれども、確かに政治の関心がすごく低かったということはあると思うんです。  いずれにしても、国会の中からもODA基本法という声がこれだけ出てきたということは、さっき言ったように、現行のシステムのままでいくにしても何らかの改革が必要だと思うんです。ODA基本法がいいのかどうかというのはこれからもこういう場でどんどん議論していかなきゃいけないと思うんです。そういう意味で、現行のシステムをいかに強化させていくか。報告の話はあるんですけれども、もうちょっと現行のメカニズムを強化できるアイデアみたいなものがあれば、簡単で結構ですから。  例えば、さっき先生が言った国別援助指針、これはもう少しそのステータスを高めてあげる。JICAが今つくっているのは二十数カ国で、年次協議のある国だと思いますから、ある意味では中期計画の話というのは、UNDPのカントリープログラムじゃないですけれども、そのステータスを上げることで意外と国会が絡めるんじゃないかと思うんです。
  53. 村井吉敬

    参考人村井吉敬君) 人道援助国民の理解を必ずしも得にくいのではないかという御指摘で、多分そういう側面はあると思います。つまり、ODAそのものの構造がよく見えない、何をしているかわからない、疑惑報道ばかりある、こんなものに金を出せるかという、多分そういう形の理解の得にくさというのは私はあると思うんです。  ただ、これも楽観的過ぎるのかもしれませんけれども、例えば阪神・淡路大震災のときに、ボランティア、NGOの方が行政ができない部分をかなり積極的に担う。そこに動員されたボランティア、出かけられたボランティアの方の多くというのは、実は海外協力をやっているNGOが加わっている。つまり、ある人が被災した、厳しい状況にある、これは日本海の重油の回収のときもそうだったと思うんです。日本社会というのは、少しずつだけれども変わりつつある。確かに、欧米のキリスト教を基盤にしたある種の社会と日本の社会の違いというのはあるかもしれませんけれども、私は、ODAのまさにアカウンタビリティー、透明性というようなものを高めていく中、そしてより見えやすくしていく中で、そういう支持というのは得られていくんじゃないかというふうに思うわけです。  これは例えば、私は郵政省の国際ボランティア貯金にちょっとかかわっておりまして、あれが今、二千万口まで口座がふえているんです。それは確かに利子の中の二〇%という、貢献としては非常に小さな貢献かもしれない。しかし、二千万の口座がそこにできたというのは、やっぱり海外で何かしてみたい、何か助けたいというような気分というのは日本の中に随分あるような気がしております。そういう意味で、人道という比較的見えやすい、わかりやすいところに集中していけば、私は何とかいけるというような気持ちを持っております。  それから、疑惑とかアカウンタビリティーの問題については、フィリピンの国立航海技術訓練所拡充計画というのは実は私たちがちょっと火つけをしたようなところがありまして、これは内部の資料を大分提供してくださった方がいて、もちろん取材に当たってテレビが何をしたかというのはよく存じませんけれども、やはりあれは明らかにむだな計画をむだな場所でやってしまったという一つの典型と、そういう報道があって、また疑惑の追及があったからこそ少しずつ透明度が高まった。それは一時的にはODA、何だというような話になりかねないんですけれども、そういう報道を通じて、マスコミと行政当局そして国会とが連携しながらそういうことに対応していく中で、私は日本ODAに対する国民の信頼というのは高まっていくというふうに思っております。  私なんかはむしろ破壊的なことばかりしていると思われておるわけですけれども、私は、さっきも申し上げたように、日本がこれだけ経済大国である以上、もっと実は貢献すべきだというのが基本的姿勢です。
  54. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 山本先生の第二点の、改善できる部分についてでございます。  一つは、これは当然でございますけれどもODA大綱もつくりまして五年たちました。私ども、もう一度全部これを見てみまして、かなりの部分といいますかほとんど、この大綱自身については、今の時点それからこれから先についてもきちんと日本の考えている理念原則等を表現していると思いますが、ただ、これはこれできちっと私ども見直しをする必要がある。新しい問題も出てきていると思いますし、環境の問題なんかについては今のこのウエートの置き方でいいのかどうかといったような問題もございますし、個別的でございますと例えば地雷の禁止条約に伴いますような問題も出てきますし、こういうものを反映する必要があるのかどうかといった点も含めまして、絶えずこういうのを見直す必要が一つはあると思います。  それからもう一つは、先ほど山本先生自身から御指摘ございましたが、国別援助方針をさらにグレードの高いものにしていくと。これは確かになし得るものでございまして、必要だろうと思っております。  実は、もう御案内のとおり、毎年度出しております年次報告の中に、二十数カ国につきましてきちんと国別援助方針というのをつくっているものは公表しておりますが、私どもも十分な掘り下げができているかというと、ややまだ一般的に過ぎるなと。他方、例えばバングラデシュならバングラデシュのこういうものに何億円やるなんて数字はとても書き込めません。書き込みますと、もうそれを相手の方は知って、ああ、もらいというようなことになって、それはディシプリンからいいましても政策上からいいましても好ましくないので、やはり数字はこういうところにはとても書けないと思います。実績は書けると思いますが、将来の計画は書き込めないと思います。  しかし、どういう考え方でどういうセクターに日本は取り組んでいくかという点は、もう少しきちんと政府考え方を書き込んでいく、出していくということは十分可能ですし、本来やるべき方向であろうかと思います。これから予算がしばらくは減るところでございますので、この辺については厳しくやはり見ていくことが必要かと思います。  それからもう一つは、国別と同時に、今ちょっといろいろ中で議論はあるんですが、まだ十分できていないのはセクター。先ほど申し上げましたけれども、例えば新開発戦略なんかに出ております、二〇一五年なら二〇一五年までに世界の貧困を半減する、初等教育を達成するという大きな目標がございます。それではそういう大きな国際的な一つの目標に対して日本自身がどういうふうに取り組んでいくかという各論の部分は、むしろこれから作業が必要な部分でございます。これは大変に難しい仕事だと思いますが、例えばそういうところについてさらに立ち入って考えていく、そういうものも方針として示していくといったようなことは、これは行政側の努力で必要だし、もう少し日本が何を考えて何をやろうとしているかということを世界的に訴えていく上で理解を得られる道ではないかと思います。  こういうことで、まだまだ工夫し研究する余地が相当にあるというふうには私ども感じております。
  55. 広中和歌子

    広中和歌子君 ボランティア貯金が二千万口座にふえたというのは、私はすごいことだと思うんです。つまり、利子収入の二〇%ですよ、私も村井先生がおっしゃるように日本人が人道的な支援に対して前向きであるというふうに信じたい。それには、私たちはいいことをしているんだといい気持ちにさせてもらわなきゃいけないんですが、やはりマスコミとの関係が非常に大切だろうと思います。  ぞれで、ちょっと短くお答えいただきたいんですが、大島局長日本ODAを御自分自身の目でごらんになって、悪いのはどのくらいあるのか。いいものをもっともっと宣伝なさる必要があるんじゃないですかということを申し上げたいんですが。
  56. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 簡単にお答えします。  率直に申しまして、これはかなりの年数この仕事をやってきた私の率直な感じでございますけれどもODAの仕事はうまくいくチャンスは半々、五〇%かなというぐらいに思っております。これは何も日本資金を与え技術を与えてぽんと終わりということではございませんで、基本的にはODAの仕事は共同作業、相手側も参加いたしますし資金も出しますし人も出す、共同作業でございます。日本側に時としてうまくいかない原因があることも間々ありますけれども、往々にして、残念ながら相手の方にいろいろ、計画されたどおりに予算が手当てされないとか、人が配置されないとか、相手が負担すべきものと了解されていたものが計画どおりにいかないとか、そういうようなことでなかなか苦労するケースがございます。  これは、現場の担当者がもう日夜非常に苦労するところでございまして、制度の与えられる、制度で認められる範囲内において難しいところをすくいながらプロジェクトを完成させていくということでございますので、計画どおりに直線的に進んでいかないものです。ですから、ある時点でぽんとプロジェクトを見た場合、例えば先ほどフィリピン航海訓練所計画がございましたけれども、最終的にはこれはうまくいった計画でございますが、ある時点で見たら計画どおりにいっていなかった、そら失敗じゃないかというふうにえてして報じられたり、あるいは会計検査院の検査でそういうところを指摘されたりというのがあるのでございます。  したがいまして、申し上げるまでもなくそういう性格のものですので、そこは人間の一生と似ているところがあると思うんですけれども、プロジェクトにはそれなりの成長カーブというのがあると思うんです。日本側も決して怠慢であったりしているわけではありませんので、絶えずそのプロジェクトがうまくいくように関係者は大変な苦労をするわけですが、そういうことの結果、私は本来五分五分ぐらいのものが八割から九割は成果を上げていると思います。  にもかかわらず、大ざっぱな印象で恐縮でございますけれども、うまくいかないものはどうしても出てきますが、そのどうしてもうまくいかないところをさらにフォローアップとかいろいろ苦労しながら拾い上げてやっているというのが現場の印象的なものでございまして、一〇〇%、どこを向いても胸を張ってすべてがうまくいっているということを申し上げるつもりはございません。それは恐らく正直でないと思います。若干の失敗例は確かに出ますが、本質的にそういう仕事であるということをマスコミも含めてもう少し理解していただいて、その成長カーブというものをもう少し長い目で見ていただければ違うんだと思います。  評価とかフォローアップといったようなところの重要性がいつも強調されますけれども、これは強調され過ぎることはございませんので、そういう意味でそのプロジェクトを見ていただきたいなと。率直に言えと申されましたので、率直に申し上げるとそういうことでございます。
  57. 広中和歌子

    広中和歌子君 いいのをもっと宣伝していただきたいなと思うんです。
  58. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 一元化の問題で、一時外務省は経済協力庁を外務省の外局として創設する方針であったと、どうも大蔵省のいろいろの意見でという報道もあります。それから、通産相の諮問機関の産業構造審議会、これは経団連の国際協力庁設置の提唱を受けて内閣主導によるODA政策の策定という報告書を出したと。  田さんたちは総務庁に担当大臣を置いてというのだったんですが、万一、一元化してそういう庁をつくる場合、どういう具体的な形態がいいとお考えになっているのか、簡潔にお二人から考えをお伺いしたい。
  59. 村井吉敬

    参考人村井吉敬君) 私、行政組織のことは不案内で余りよくわからないんですけれども、一番大事なのは、その独立性をきちっと確保できること、それから、各省に予算が仮にまたがった場合でもきちっとした調整能力を持てること。そういう意味で言えば総務庁に一元化していく、外務省がその場合にどうかかわっていくかというようなことまではわかりませんけれども、そういうふうに考えております。
  60. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 機構の一元化、当面は行政改革会議報告案を見ましても現実的な議論にはどうもならないところでございますが、万一ということでございますけれども、もしそういう機構を設けるといった場合には、これはやはり基本的に大きく全体を担いでいるところに一元化していくというのが現実的であり、必要だろうと思います。  総務庁とか総理府の議論がありますけれども、これは合理性があってそういうふうにやるということではなくて、外務省に一元化しようとすれば各省間の権限争議で恐らくまとまらないだろうと。だから、それじゃ総務庁だ、そこならみんな納得するだろうと、何かそういう、やや安易と言ってはなんですけれども、そういう考慮でなされているので、援助行政の実態を踏まえた議論では必ずしもないんだろうと思います。  したがって、もしこれを機構ということで整理していくのであれば、一番しょって立っているところに権限といいますか一元化して、残りの関係する部分と連携、協議、調整がきちんとなされるようにするという方向で整理されるべきものというふうに思います。
  61. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) まだまだ質疑もあろうかと存じますが、予定した時間が参りましたので、政府及び参考人に対する質疑はこの程度とさせていただきます。  一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、大変お忙しい中、長時間御出席いただき、貴重な御意見を賜りましてまことにありがとうございました。本小委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十八分散会