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1997-10-31 第141回国会 参議院 国際問題に関する調査会対外経済協力に関する小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十月三十一日(金曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     小委員長        板垣  正君     小委員                 馳   浩君                 山本 一太君                 広中和歌子君                 福本 潤一君                 角田 義一君                 田  英夫君                 上田耕一郎君    事務局側        第一特別調査室        長        加藤 一宇君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件対外経済協力に関する件     ―――――――――――――
  2. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) ただいまから国際問題に関する調査会対外経済協力に関する小委員会を開会いたします。  対外経済協力に関する件を議題といたします。  本日は、前回ODA理念議論の中で、既に意見が出されておりましたODA実施体制政策決定過程等ODAあり方をめぐりまして、意見交換を行いたいと存じます。  意見をお述べになる方は挙手を願い、私の指名を待って御発言願います。なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、挙手をお願いいたします。
  3. 山本一太

    山本一太君 今、小委員長がおっしゃったように、前回のいろんな議論フォローもする中で、きょうは実施体制議論ということなんですが、この間広中先生の方から出たODA大綱大綱自身とそれから運用の乖離の問題ということについては、前回、今までのいろんなケースの検証をしたらどうかという御提案をさせていただいたんです。これまでいろんな場面で日本が、ODA大綱が幾つかの試練を受けてきたわけなんですけれども、例えば中国の核実験の後の日本対応円借款をとめろといういろんな話があったり、あるいはミャンマーに対する、これはかなり欧米とは違った独自の対応をしたわけなんですが、そこら辺のこととか、こういうことはぜひまた小委員会の中で取り上げていただければと思います。  できれば外務省担当官を、担当局長審議官かわかりませんが、お呼びして、その時々の外務省対応がどういう理由でなされたのかということをまた十分ヒアリングをしながら、それについてはかのオプションがあったのか、どういう運用が必要だったのかということをやはり将来のODA大綱運用ということを考える上でやったらどうかなというのが、私の小委員としての提案とさせていただきたいことが一点です。  それからあと、前回実施体制にも絡むんですが、田先生の方から要請主義お話が出まして、コンサルタントとか商社現地プロジェクトの芽を見つけてくること自体は悪ではないけれども、やはりプロセスをもうちょっと透明化したらいいんじゃないかというお話がありました。私もJICAのときの経験を寝ながら思い出してみたり、あるいはちょっと調べてみたりしたんですが、案件発掘プロセスというのは以前に比べるとずっと透明化しているところもあります。  例えば、インドネシアなんかでは昔は援助案件発掘商社なんかがすごく熱心だったんですが、今は、もちろんほかのビジネス、もっと大きいビジネス東南アジアですからあるということもあるんですけれども、援助案件をまとめても自分のところに来る確率が低いということで、余り商社が動かなくなっているという話を聞きましたし、コンサルタントの方もそういうムードがあって、もちろんそれでもコンサルタントの方々は途上国に長く駐在したりしていますから、いろいろ援助案件の芽を運ぶ役目はしているんですが。例えばプロジェクト形成調査に参加したコンサルタントはその後の本格調査に参加できないという規定もあるものですから、どっちかというと形成段階よりも第二段階に一生懸命参加しようというところが多いということをきのうちょっと伺ってまいりました。  ですから、プロセス自体はかなり透明化をしていますし、私もJICAにいたときによくコンサルタントの入札に担当者として立ち会いましたけれども、これはきちっとした基準に基づいてやっております。ただし、もちろん形成段階から、あるいはその実施にかかわってきたコンサルタント情報とかプロジェクトを熟知しているという点で、それは営業努力で有利なところもあるかもしれませんが、調べてみたところで言うと、本格調査に行ったコンサルタントでもオープンビッドで外されるというケースも間々あるということですから、ここら辺のところは田先生のおっしゃったような方向に向かっているんではないかという気がいたしました。  もう一点なんですけれども、要請主義にかわるオプションというのはなかなかないと思うんですが、最近の援助の中である程度オファー的に日本側からサジェストするという傾向も出てきています。例えばきのうお話が出た協力隊の話なんですけれども、青年海外協力隊政府間のきちっとした派遣取り決めに基づいて送っているわけなんですが、いろんな分野の方がいて、例えばこの国ではうち自動車修理は要らないとか、うちは今先生は余っていますという場合は、日本政府の方から、オファー方式というほどじゃないんですが、大体ニーズのありそうな国にアプローチして、うちにこういう専門家がいるんですけれどもいかがでしょうかという感じでこちらからレコメンデーションする形で協力隊員を派遣しているという実態があるということをちょっときのう調べてまいりましたので、そのことを御報告したいと思います。  また研修員についても、例えばその国で今必要としている研修員の枠にないものがあったりすると必要のあるところに勧めたり、あるいはそれは専門家でも同じなんですけれども、うちにこういう専門家がいますけれども、あなたの国のこういう開発ニーズに合うんじゃないですかみたいなオファー的なことを少し組み合わせるという傾向がふえてきたということも、前回議論フォローということでちょっと御報告したいと思います。
  4. 馳浩

    ○馳浩君 日本のまず全体的な話をして、ODAあり方が、戦略的な意味も込めて、戦後補償の意味も込めてアジア地域に非常に目が向いていたと。今後の課題として私はアフリカ地域に対する案件もそれから支援も充実していくべきだと思っておりますが、そのアフリカ地域に対してどのように今現在なっておるのかというふうなことは恐らく非常に手が薄いと思いますので、その点ちょっと充実させる方向をまず考えていかなければいけないんじゃないかと思います。  それから、ODA大綱を改めて見ておりまして思いますことは、実際に、例えば「原則」にあります環境開発の両立ということになりますと、アセスあり方が問題になります。アセスの結果、代替、変更、停止などの措置は我が方から意見として出せるのか、その調整が進んでいるのかということも確認をしていただきたい。  それから、先般私も述べましたが、被援助国の「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避」、それから「軍事支出大量破壊兵器」等の「開発・製造、武器の輸出入等の動向に十分注意」とありますけれども、本当に注意しているのか。だれがチェックしているのか。それに対して我々は日本国民に対して説明できているのかということについては、原則でありますからそのチェック機能が本当に働いているのかということをいま一度私たち国会の場で議論をして、それを生かしていける方向が必要だと思います。  それから、私の秘書にシリアの方に青年海外協力隊として派遣されて行っておった人間がおるんですけれども、話を聞きますと、現地スタッフの充実、それから現地スタッフの考えをどれだけ事前調査評価の中に入れていくかという問題を指摘しておりました。現地スタッフといいましても、日本でいえば東大クラスの特別なといいますか、高いレベルの高等教育を受けた人間が入ってきておる。シリアの公務員の給与が百ドル、彼らの現地スタッフ給与は七百ドルという、それだけのプライドと責任感と能力を持って参加しているにもかかわらず、JICA現地所長との連携が非常にうまくいっていない、言いたいこともなかなか言えないし、伝わりづらいと。  これはもちろん言葉の問題もあると思うんですけれども、それだけではない。JICA現地所長はどれだけ外務省との調整の中で権限を与えられているのか、発言権を与えられているのか。この辺も、案件実施され、そしてその後の進捗状況や、そして設備等の場合にはランニングコストチェック、その管理、そしてそれをさらに次の案件に結びつけるための評価といったものについて、どこまで現地スタッフJICA所長権限責任感発言権を持って対応しているのかということをいま一度私たちは見直さなければいけないのではないかという観点を持っております。  総合的に見ますれば、評価に対する国会のかかわり方という点では、この点こそまさしく何か担保されていくべきものが必要なのではないかという印象を持っております。  以上です。
  5. 田英夫

    田英夫君 ODA体制の問題を考えるときに重要なポイントが大きく分ければ二つあると思います。  一つ体制そのもの国内における政府体制の問題。それからもう一つ体制で問題なのは、今、山本さん、馳さんが言われた現地体制、つまり要請主義というふうに言われているこの問題、これが一つ体制の問題だと思います。  もう一つ透明性の問題ですが、これは国会の承認とかいろいろな問題がありますけれども、別の機会にまた発言させていただきますけれども、最初の体制そのものの問題で、特に国内政府体制の問題では、いわゆる四省庁体制、これは借款については経済企画庁幹事役になって外務省、通産省、大蔵省という四省庁で協議をするというこのことが、OECFが経済企画庁担当ということでそういうことになっているんでしょうが、現実の問題としては、外交を担う外務省がそのワン・オブ・ゼムでいいかどうかということを含めて借款の問題についてのこの四省庁体制を考える必要があるんじゃないか。  もう一つは、もっと重要な問題で、技術協力について現在十九省庁がかかわっているということです。しかも十九省庁がそれぞれ個別にやっているものですから、どこかがすべてを把握しているという体制になっていない。  例えば、外務省経済協力局に他の省庁の分を含めてすべての資料をそろえてくださいと言ってもこれはできない、こういう結果になるわけです。これでは実を言うと正確なODA総額というものもつかむところがない、そういう結果になってしまいますし、それぞれの省庁が何をやっているかということがお互いにわかりませんから、場合によっては人的に同じ国に似たようなプロジェクト人間が行ってみたり、例えば外務省も農水省の担当農業技術援助の問題についても独自にやるということがあり得るわけで、そういう横の連絡が非常によくないと言わざるを得ないと思います。  この十九省庁体制の問題は、現在いわゆる行政改革が行われようとしている、計画が練られているというこの段階で、この論議を急いでこの改革に間に合わせませんと、また改めてということになると大変これはおくれてしまうだろうと思います。一番の重要な点は、目玉をつくるというか、へそをつくるといいますか、コントロールタワーになるような役所をつくることが必要ではないかと思います。  現在、政府行政改革会議で練られていたODA庁外務省の外局につくるという案がまた立ち消えになっているやに聞くんですけれども、ODA外交という言葉があるとおり、外国相手に貴重な予算を投じてやるということですから、やはり外務省中心的にかかわらなければならないのは当然だと思いますが、その仕組みをどう構築するか、しかもできれば内閣の中に、ODAは明らかにだれかが担当していると。今は外務大臣担当であるかのごとくないかのごとく、十九省庁大臣がそれぞれみんなそのプロジェクト責任者ということになってしまいますので、へそをつくるということを中心にして、この十九省庁体制を明確に、お互いに横の連絡のとれるものに少なくともしなければいけない、このことを考えるべきだと思います。  以上です。
  6. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 基本的な問題として、人間中心開発それから環境重視開発、これはODA白書でも強調されたんだけれども、本当にそういうものに変えなきゃならぬという問題点と、二番目に情報公開問題点と、三番目に実施体制一元化ですね、この三つについてちょっと意見を申し上げたいんです。  前回、九六年度の白書人間中心開発を押し出したことを触れましたけれども、九七年度の白書は、今度は環境問題を非常に重視しているわけですね。人類安全保障の問題としてこの環境が重要だということを強調して、環境開発支援としてのODAというのを打ち出した。これは理念としては、僕は、九六年度、九七年度のODA白書人間中心開発それから環境開発支援は非常に重要だと思うんですよね。  ところが、実際にそういうことになっているかというと、現実あり方は、せっかく白書が打ち出したこの方向に沿わないものになっていると思うので、かなりその点では内容の抜本的な改革が要るんだと思うんです。  例えば人間中心という点でいいますと、日本ODA、諸外国がやっている人道的な援助比率は残念ながら非常に少ないんですね。例えば食糧援助、これはOECDDAC諸国の平均、二国間ODAで大体三%食糧援助をやっているんですね。ところが日本の場合は〇・三%から〇・四%というので、八分の一から十分の一という少なさなんですね。飢餓がこれだけ問題になっているので、やっぱり食糧援助をもっともっと重視しなきゃならぬ。  それから、いわゆるLLDC最貧諸国、四十八カ国あるんですけれども、DAC加盟でこの援助実施しているのは二十一カ国あるんですが、二国間のODA総額の中でのこのLLDC援助の割合では日本は十九位というので、かなり低いわけですね。  そういう点では、人間中心開発とうたう以上、こういう人道的な性格の支援をもっともっとふやさなきゃならぬというふうに思うんです。  それから、環境問題について言いますと、これは、東南アジアでも日本の進出の企業がさまざまな有害物質を出している公害問題、しばしば問題になりますけれども。この調査会にも参考人として出席された新潟大教授鷲見一夫教授岩波新書ODA援助現実」という本の中で大問題にされていて、私も質問したことがあるんですけれども。  例えばJICAがマスタープランをつくったブラジルのアマゾン開発の大カラジャス計画、これはあそこの鉄鉱石その他の開発をやるというんだが、鉄鋼をつくる高炉の原料は木炭だと。その木炭をつくるのに結局熱帯林を伐採してやるというので、熱帯林が十数年でなくなるんじゃないかと。それからJICA計画では、原住民のインディオの生活についての影響その他、ほとんど何ら考慮がなくと。インディオはこの大カラジャス計画の推進で住居を失い、追い立てられると。そういう非常に大変な状況になっていることがかなりリアルに持ち出されているんです。  こういうさまざまな問題で、今度日本もようやく環境アセスメントの法律ができたので、これは一つ前進なんですけれども、本当に地球環境の維持をしっかり踏まえたODAになっているかというと、さまざまな問題点が既に現実の上で発生しているわけです。  そういう点を考えますと、一つ非常に重要な問題として、日本の場合、円借款による経済インフラ整備、これが非常に大き過ぎるという構造的問題があるわけです。鷲見教授の本で各国の比較が載っています。これは八九年でちょっと古いんですけれども、日本円借款有償資金協力は五八%、アメリカは少なくて五%で、フランス二六%、イタリア三四%、西ドイツ三〇%という状況で、やはり日本がずば抜けて大きいことは明らかだと思うんです。  経団連担当の方が参考人で見えたときにいただいた資料協力形態別分類が載っていて、これを見ると九六年度の事業予算ODA予算が約一兆八千億、円借款が九千百億だから大体五〇%になっていて、鷲見さんの本の八九年度五八%よりは少ないけれども、やはり五〇%になっているわけです。  こういう経済インフラが非常に大きいという問題点が、人道的援助環境重視援助を実際上裏切ることになっている。にわか勉強でいろいろ本を読んだんですが、今かなり読まれている内橋克人さんの「経済学は誰のためにあるのか」の中では、参考人にも見えた西川潤早大教授がこう言っているんですが、日本国内と同じように日本ODAでも主に土建プロジェクトをやっているんだと、こう言っていて、「ODAの六、七割はいわゆる「箱もの」プロジェクトといわれる土建関係のものです。たとえばいまラオスはダムだらけになっています。」というようなことを批判しているんです。  こういう現状を改革する上で、ちょっと僕が最近の新聞の中で注目したのは、有名な記者の古森義久氏が、日本ケニアに対するODA重視して何回も書いているんです。彼が問題にしているのは、ケニアの独裁的なモイ政権にもっぱら日本援助が行っている。ところが、もうアメリカは、モイ政権への援助が阻害になるというのでODAのほぼすべてを関連のNGOに直接与えている。これはアメリカだけじゃなくて、ノルウェー、フランスなどヨーロッパ諸国NGO援助を主体にしているのに、日本だけ独裁政権にだけやっている。しかも日本援助はもっぱらインフラ建設ばっかりだと。そのインフラ建設がもっぱら独裁政権だけに行くというのがケニアで非常に問題になっているということを古森氏は問題にしているんです。  古森氏が最近、産経の十月十二日号に書いた論説によりますと、アメリカではもう大きな切りかえが進んでいると言うんです。「米国のこの変化でとくに注視されるのは、日本ODAがなお主眼とする道路や港など経済インフラ整備援助の効用をほとんど認めないコンセンサスが確立されたことだ」と。アメリカ国際開発局報告議会予算局報告等々で、「相手国政府インフラ公共事業支援民間経済の発展につながらないという思考は、米国ではすでに定着した。」、急落していると。それで、さっきの比率でも、アメリカが八九年五%というのは、どうもそういう方向なんです。だから「民間の非政府組織NGO)にのみ供与するという政策も確立された。」という論説があります。古森氏はかなりアメリカに詳しい人なので、大体そうなっているんじゃないかと思うんですけれども。  僕はアメリカ追随で批判しているんだけれども、どうもこの問題では余り追随しないで、非常に日本ODAの構造がアメリカが今進めている方向とは構造的にも違っているという問題が出ているので、これは古森氏がこう言っているからまたアメリカへ追随するというんじゃなくて、日本ODA白書が提起した人間中心開発、それから人類安全保障としての地球環境重視、そういう日本としての打ち出した方向からいっても、円借款あり方、私は政府開発援助大綱に「良き統治」というのが出ているというふうに言ったんだけれども、もっぱら現地政府、いいんだか悪いんだかわからない、とにかく現地政府にだけというやり方、これも検討して、NGOに直接支援するということも考えていく必要があるんだろうと思うんです。  これはアメリカだけのことでなくて、鷲見さんの本を見ますと、OECDももう七〇年代からそういう方向を強く打ち出している、それから世界銀行も環境ガイドライン先住民ガイドライン、こういうものを打ち出している、ILOも先住民の保護、これを非常に重視する方向を出しているということで、やっぱり国際機関の全体の方向もそういう方向に行っているんだと思うんです。そういう面で日本の立ちおくれがあるわけで、ODAあり方に対する立ちおくれをこの機会に大いに改善することが課題になっているというふうに思います。  各新聞社説も、今度の一〇%の一括切り下げに直面して、国連機関の問題も社説に取り上げられているし、人道的援助も一〇%を機械的に削減すべきでないというのは読売の社説も書きました。だから、もう現実の問題として、一〇%削減の中で本当に人聞中心開発に切りかえていくことが課題になっているというふうに思うんです。   公開性の問題では、これまでもいつも問題になっておりますけれども、円借款中身について、どこの国にどういう対象でやるかということについても、決まるまではほとんど非公開でわかりませんし、国会がこの問題でどう討議するかということにもかかわるんだけれども、本当に情報公開をこの分野で至急確立することも大きな課題になっていると思うんです。   一元化の問題では、経団連のいただいた資料に、十九省庁中身が非常に詳細に、担当窓口がどこで関係課がどこだというリストをいただいたんだけれども、こういうのを見ていても、これが縦割りで進んでいくのでは本当に手がつかないだろうと思うんです。この一元化をするべきなのに、先ほどもお話がありましたが、行革会議経済協力庁創設というのが書かれたんだが、どうもこれが消えてしまって、十月十七日の毎日新聞によると、「「大蔵省にうまいことやられた」。外務省幹部が悔しさをあらわにする」ということで、「関係者によると、軌道修正に一役買ったのは大蔵省国際金融畑の高官。」だということで、外務省のもとで一元化される案がもう早くも消えかけているということが起きているわけです。  こういうものを放置しておくと、本当に現在の体制がこのまままた行ってしまうという懸念も大きいので、やっぱり国会として、またこの調査会としては、この一元化問題についても明確な結論を出すことが非常に必要になっているというように思います。  以上です。
  7. 福本潤一

    福本潤一君 田先生からもまとめの全体の国内政府体制現地体制透明性、また上田先生からも全般的なお話がありましたので、私も基本的なベースはそういう方向の中から体制を考えていく必要があるなとは思っております。  その中で、今例えばODA予算、具体的に各省庁に配分されているという状況はあると思いますが、これが国家の予算ですと予算委員会で検討して、また決算委員会事後検討、総括するということが行われるわけですけれども、ODA予算も一兆円以上に上る形になると、予算委員会に当たるようなものを、予算委員会の中で具体的に細かい形でやれれば一番いいんですけれども、省庁が分散している中で、全体の細かいところまでなかなかチェックし切れないということがあり得ると思います。一つは、法案が具体的にあればその法案に基づいてやればいいと思いますけれども、公共土木事業が行われるときに、環境アセスメントとか事業アセスメントをやりますけれども、予算を開始する段階で、ODA予算、例えば国別にどこにどれだけの配分になるかとか具体的な形で予算を検討できるような機関が必要だなと。  これは透明性の中の問題とかかわってくるわけですけれども、結果の報告等々だけですと、基本的には事後になって、具体的に現地でもう事業が開始し、進展し、遂行されているという中で、いい形で運用されているものはいいですけれども、取り返しがつかない状況チェックするということになりますので、予算段階で検討する。そういう意味では基本的には基本法というものがあった上で進行していくという形にならないとこういう形での運用をしにくいわけですけれども、していく必要があるだろうと思います。  それと、上田先生から、人間中心開発ということで、開発と言いながら土木建設事業中心になっていると。もちろんバランスの問題、日本事業の中は特にインフラ整備とかそういうのが中いになっているというお話があります。これは先進国が逆に開発を具体的に本当に押しつけているのかどうかということです。  要請主義ということで、具体的に日本でこういう形の事業援助をできますよということがあると同時に、地球環境問題でも、一九九二年でしたか、ブラジルで最初に国連環境サミットがあったときに、現地の人は具体的には地球環境から見てブラジルの開発を抑制しているんではないかと。そういう抑制をブラジルに押しつけられるのは、例えばCO2の問題でもブラジルに過剰に押しつけられるという形で開発ができないというのは先進国の逆にエゴであるという御意見もありましたし、日本国内でも、日本国内の南北問題といいますか、後進低開発地域では開発というものをしたい、そういう思いというのは現実にはかなり強いわけですね。  そうしますと、案外、要請主義だからインフラになっているということ以上に、現場ではそういうインフラ整備というのが基本的には一番必要な国が低開発国なので、要望としては多いんじゃないかというような現実の実態とか、マルコス疑惑やなんかで出てきたためにその予算が正当に使われていないという問題もあるかもわかりません。  開発をするということが環境絶対善ということでかなり批判的になっていますけれども、日本も戦前、また戦後も含めてインフラ整備がかなり中心になって進んでいかざるを得ないという情勢がありまして、その上での現実環境整備ということになりますと、ここらの点を議論する場というのがもちろん必要になってくるわけですけれども、別に環境を破壊するということのとらえ方をむしろ考えていかなければいけない。  自然の保護といいますけれども、自然の保護自体を具体的に、人間が住みやすい状態を自然の保護というふうに考えるのならば、自然というのは必ずしも住みやすい状態なだけではないわけですので、そういう意味で、開発するというよりも、自然を人類の歴史上常に変えてきたわけですから、どういうふうに変えるのが最もそこの人たちにとってもいいのかというのを考えた上でのまた日本国内からの要請というものが必要だろうというのが一つ環境問題についてあると思います。  情報公開に関しましては、先ほどから馳先生上田先生先生方言われたとおり、報告をむしろチェックできるぐらいの国家予算決算委員会に当たるようなものまでできるような形にしていくのがいいというふうに思います。
  8. 広中和歌子

    広中和歌子君 大変、皆様方のすばらしいプレゼンテーションを伺っていていろいろ考えていたわけでございますけれども、貧困の問題というのはどういう形で解消されていくのかということを考えてみましたときに、例えば我が国が戦後もう非常に貧しかったとき、それは国が中心となって、政府中心となってさまざまな形で経済振興をし、そしてインフラの整備をし、そしてそういう中で全体の産業構造とか何かを活性化する形でいわゆる生活レベルを上げていったという国中心でやれる貧困解消もあると思いますけれども、同時に他方、国自身の統治能力というものが、不十分という言葉を言えば語弊があるかもしれませんけれども、そういう国の統治から落ちこぼれるような数多くの貧困というのがあるわけです。  そうした貧困問題に対応していくには、そしてそれに対応していくことは、例えば地球規模の環境問題というものから考えても非常に大切なことで、貧困が環境劣化を生み、また環境劣化が貧困を生むといったようなビシャスサークル、悪循環があるわけですから、どうしてもやはり本当の草の根の人に行き着くような支援も同時にしなくちゃならないということがあるんじゃないかと思います。  ですから、国を通しての支援というのはどういうふうに理念に基づいて実施体制をしっかりさせていくか。そして、その前に案件発掘とか、それから実施された後のチェックとか、そういうようなものは考えなければならないんですが、一方、草の根的な、地球上に広がる非常に多くの貧しい人たちに到達するような支援というのは一国だけではもちろん十分じゃないわけで、こういう形の支援というのは言ってみればレーバーインテンシブというんでしょうか、労働集約的、非常に多くの人が参加しなければこの問題というのは解決しないんではないかと思います。  そうしたときに、やはりNGOとの協力というのが必要なわけでございますが、日本援助体制を見ますと、最近でこそそういうところに対する関心というのは高まってきてはおりますけれどもまだまだ小さい。十年前、私が政治の世界に入りましたときに、こういう言い方は妥当かどうかわからないけれども、大使のポケットマネーというような感じの支援も必要なんじゃないかと、火事場の見舞金ですよね。そこで洪水があったというときに本省に問い合わせて何じゃかんじゃとやっているうちに二、三年たってしまう。  そうじゃなくて、すぐに即応できるような、そういうようないわゆる流動的なお金も必要ではないかというようなところから小規模支援のお金というのが、私だけのあれじゃございませんけれども、何人かの方のそういう熱、心な意見の陳述もあって、そして一億円に始まって三億円になり、次第に積み上げられてきているんじゃないかと思います。それでもまだまだ小規模支援というのは非常に他国と比べて、他国というのは比べる場合つい都合のいい国と比べてしまうんですが、例えばカナダとかアメリカと比べてやはり非常に小さいんではないかと思います。  カナダの場合、NGOを通じての支援というのは全体のODAのたしか半分近くいっているんじゃないかと思いますし、アメリカの場合も一〇%ぐらいある。民間の団体、それから海外の団体、そういうものと一緒になりながら非常に効果的な支援をやっているわけです。  日本もついこの前でしたか、マイクロクレジット・サミットというワシントンで開かれたNGOの団体の会議に出席したわけでございます。そのときに、日本のOECFが三十億をマイクロクレジット、それもグラミンバンクというバングラデシュの銀行を通じて小規模支援、それはどういう支援かと申しますと、最貧層の家庭、要するに銀行が普通であれば担保がないということで相手にしないような、そういう小規模な家庭に百ドルから百五十ドルぐらいの、日本円でいえば二万円前後のお金を融資することによって貧困から立ち直らそうという、そういった支援でございますけれども、日本のOECFが三十億投資するようになっていると。  それはすばらしい進歩だろうと思いますが、こういった種類の支援をこれからどんどんふやしていく必要があるのではないかと思います。その場合に、できるだけもちろん日本NGOに期待し、そしてその人たちとの協力が大切でございますが、こんなことを言ってはなんですが、何事も時間がかかります。日本のすぐれたNGOというのは生まれ始めてはおります、そしてその活動の幅も広がっておりますけれども、やはりより経験の深い世界のNGOと一緒に協力し合うような、そういう支援、そういうものをもっと考えていく必要があるのではないかなと思います。
  9. 馳浩

    ○馳浩君 全体的な流れの中で、今この時期に日本ODAあり方を考えるときに必要な視点が為替レートの変動ですよね。それから、それに基づいて国際機関への拠出金の問題も話し合わなければいけないんじゃないかと思います。円高の時期はよかったですけれども、円安に流れてきて実質目減りする、そして来年度予算で一〇%削減ということになってくれば現実的な予算は減るわけですから、そのときに日本として顔の見える援助ということを考えたときに、どうしても額が少ないわけですから国際機関なども運営を改革していかざるを得なくなってくる。これは恐らく国際的な流れではないかと思いますけれども、そのときに、じゃ円借款、無償、技協、それから国際機関からのマルチな援助、これをどういうふうに位置づけをしていくのかという考え方が必要になってくるのではないかなと思います。  それから、福本委員意見にありましたけれども、ODA予算予算としての国会のかかわり方という点です。私は、これは気をつけなければいけないのは、余りにも相手国に対して期待感を抱かせるような形の予算への国会のかかわり方になってはいけないと思っています。  というのは、国会で承認を受ける受けないの段階になってくると、情報が先に出ていくわけですから、そのようなときに過大な期待を与えないかと。というのは、その過大な期待というのは被援助国の政治状況にまで我々は立ち入ることはできないのですが、政府側の意向に非常に資するものになってしまっては本来のODA原則である民主化あるいは市場経済の導入努力、人権の保障状況に十分に注意するという観点に触れるわけでありますから、予算段階からの国会のかかわり方というものは非常に慎重でなければいけないのではないかという意見を申し上げておきたいと思います。  あと、ODAあり方として考える視点として一つ有償資金協力段階で、今、年次供与国というのが十四カ国ありますが、中国、インドネシア、タイ、フィリピン、マレーシア、ベトナム、モンゴル、インド、パキスタン、バングラデシュ、スリランカ、モロッコ、チュニジア、ペルーと、ほとんどアジア地域になってくるんですけれども、これが今現在この十四カ国があるということで、既得権益化していないか、その国と日本の国いわゆる外務省とのかかわり方の中に透明性が担保されているのかという点もちょっとこれは我々国会としては注視していかなくてはいけないのではないか、これが今後の一つの私は課題であるのではないかなというふうに思います。  とりあえず以上です。
  10. 山本一太

    山本一太君 広中委員のおっしゃった貧困の問題、日本援助というのは随分方向も変わってきていますけれども、やはりNGO民間との協力という点では国連や欧米諸国に比べておくれているというのは委員のおっしゃるとおりだと思いますし、やはりますますそういう方向に行かなければいけないと思います。  広中先生初め、恐らく先輩の方々のいろんな努力で小規模支援が必要だというそういう雰囲気が盛り上がってきて、それが今のきっと小規模無償とか草の根無償なんかにつながっているんだなというふうな考えを今あれしていたわけなんですけれども。マイクロクレジット・サミットについては、日本国会議員でも、広中先生は閣僚も経験されていますが、やはりこういうところに御出席をされる方がいるというのは私は正直言って大変うれしく思いまして、個人的なことなんですが、私の妻が今国連職員をやっておりまして、実はその東京事務所の主催で開いたマイクロクレジットに関するセミナーにも広中委員に来ていただきまして、ありがとうございました。ここで言うべきことじゃないかと思うんですけれども、大変感謝を申し上げたいと思います。  それで、NGOのことについては広中先生が、おとといぐらいの朝日新聞だったでしょうか、ごらんになったかしれないんですけれども、日本NGOの中でもいろんないいNGOが出てきているんですが、まだまだ実施体制とかそういうものに不備があるという形の記事がありましたので、ぜひちょっと先生にも見ていただきたいと思うんです。NGOの運営の問題で、最初本当にそれこそ小さい予算でやっていたのが、今例えば郵政省とかいろんなところがNGOにお金を出すということで一気に九億円ぐらいの予算の団体になってしまったところが、事実上内部分裂がありまして、実は二人の人たち権限が集中して放漫経営があったんじゃないかというそういう側面もあるので、それはぜひ広中先生にも見ていただいて、いろいろまた御意見を伺いたいと思います。  あと、馳先生がいろいろおっしゃった中で、アフリカへの支援を充実させていくべきだというのは私も本当に賛成でございまして、もう既に日本の二国間援助日本が最大のドナーになっているアフリカの国というのは随分あるわけなんですけれども、やはりアフリカの開発というのはすごく大変なことですし、今回TICADⅡというアフリカの会議日本で行われるということもありまして、この中で第一回の会議の結果を踏まえて、アフリカの開発というのをどうやって考えていくべきかということを国際コミュニティーでまたいろいろ議論することになっていますので、その中でやはりこの問題、日本としてもどんどんイニシアチブをとっていくべきじゃないかと思うんです。  よくアジアの経験をアフリカに適用できないかということでいろんな試みがなされてきたんですが、私が初めてアフリカに出張したのはニジェールという国だったんですけれども、実は飛行機の上から見たら二十分、三十分、ずっと赤茶けた砂漠で、文字どおりアメリカがすっぽり入ってしまうようなサハラ砂漠がほとんど国の大部分を占めているところでして、これだけ最初から地理的なディスアドバンテージを抱えた国が本当に開発ができるんだろうかというのが私の本当に率直な最初の感想でした。ですから、アジアの経験をなかなかアフリカに当てはめるということは難しいんじゃないか。  実は、大戦後、日本はこうやって復興してきたわけですけれども、大戦前からやはり人の面、技術の面、それは大変なリソースがあったわけなんで、そこが相当国際コミュニティーが腹を据えていかないと本当のアフリカの開発というのはできないんじゃないかというのを馳先生お話を聞きながら思いました。  それから、現地スタッフとの問題、協力隊の話があったんですが、今ケニアにジョモ・ケニヤッタ農工大学というのがありまして、これは日本技術協力プロジェクトの中でも代表的なもので、もう随分長く続いているんですが、ここは専門家協力隊が随分入っていまして、協力隊員の方は、いろいろ待遇の面でもそうですし、特に現地に近いものですからやはり日本専門家やリーダーと常に摩擦があるんですね、やり方とかいろんなことで。しかし、私が見る限りジョモ・ケニヤッタなんかはいろんな議論を闘わせながら何とかいい方法を見つけてきたということもあると思うんですが、やはり協力隊の入っているプロジェクトについては、現地に近い彼らの意見をどんどん取り入れるという方向は大事かなというふうに思いました。  それからあと、田先生がおっしゃっているお話で、いろいろ本当に示唆に富んだお話で勉強させていただいたんですが、この技協については、十九省庁体制になっていて、ODA日本外交政策の根幹だということを考えれば、上田先生もおっしゃっていましたが、やはり一元化方向に行くというのがナチュラルな流れだと思います。田先生がおっしゃったように援助庁の問題、これは行革の流れからいくと反対の方向に行くような話なんで、もうこれは立ち消えになったとおっしゃっているんですが、今、党内というか自民党の中のことを申し上げれば、外交部会でもいろいろやっているんですが、もちろんこれを目指してやっておりまして、立ち消えにはなっていないと思います。一生懸命これを目指して、党、政府外務省の方は努力をしていると。ただ、この一元化省庁、いわゆる援助庁をつくるということは、行革の今の流れとか、大蔵省、通産省を初めとする他省庁の強い反対が予想される中でなかなか簡単にはいかないという話はあるのかなと思いました。  それで、技協はとにかく多岐にまたがっていまして、田先生がおっしゃったように、私もJICAにいたときの経験なんですが、知らないうちに例えば農水省の関係の団体の調査団が行って調査をしてくるということも随分あって、こういう報告書があったのかというのもありまして、向こうの政府は当然混乱していました、どれが日本の代表なのかどうもわからないうちに。それを外務省がつかめていないというのは非常に大きな問題だと思いまして、余り詳しく言うといろいろ内情をばらすみたいな形になっちゃうんですけれども、やはり何らかの形でODAが一たん全部外務省のところに入る、それで外務省を経由してあちこちに行くというのが一番望ましい形なのかなというふうに思います。  話すとすごく長くなるんですが、短く言いますと、例えばODAの認定ということについては、これは大蔵省はできませんから外務省がやっているはずだと思うんですね。主計局からきちっと照会が来て、外務省がこれをODAと認定すると。ところが、この間、技協の関係の課長に電話して聞いてみたところが、実質的にはこういう照会もほとんどないということでしたので、やはり関係省庁との少なくとも協議というものを踏まえていただかないと、特に大蔵省との間ではほとんど情報が来なくて、田先生おっしゃったように、資料を要求してもわからないという答えが返ってくるような、こういう状況じゃいけないと思いますので、やはり技術協力を含めて援助一元化の方に行くべきではないかというふうに思います。  あと、上田先生がおっしゃった人間中心開発というのは、実は国連開発計画が毎年出しております人間開発報告書という中で初めて言われたコンセプトで、いろんなことを発明しているんですけれども、人間安全保障とか。先生がおっしゃったように、人間中心開発という方向にやっぱりどんどん進めていかなきゃいけないということは私も賛成なんですが、先生のおっしゃったことに一つ一つ私の意見を申し上げると長くなるんですけれども、内容としては環境重視方向日本援助体制は明らかに私は進んでいると思います。  例えば、世界の環境問題でも一番関係があるのは、モントリオール議定書の関係ですけれども、オゾン層の破壊とか、あるいは酸性雨の問題とか、中国ですけれども、中国に対しては随分いろんな酸性雨のモニタリングとか、あるいは環境センターなんかの技術協力を通じて、人のいわゆる技術協力、技協をやることで環境問題を少しずつ好転させていこうということもやっておりますので、これは大きな流れとしてはそちらに進んでいるんではないかなという感じがいたしました。  そして、やはりNGOの比重を少しずつふやしていかなきゃいけないという先生の御意見には賛成なんですけれども、ケニアのさっきの件なんですが、古森さんは、私は直接お話ししたことはないんで、すぐれたジャーナリストで、例の核の話とかかなり華々しく活躍されたので多分優秀な方だと思うんです。ケニアの報道については、外務省の肩を持つわけじゃないんで、現地の大使館の情報をそのままうのみにするわけにはいかないんですけれども、私もちょっと現地の人にいろいろ聞いたりしたんですが、やや不正確なところがあるんではないかと。  たまたまケニアの留学生に聞いてこういう話だったから、恐らく現地の支局に調べたらこれだけの騒ぎだったという話はあるんですが、必ずしも大使館から出したものをそのままとらないにしても、現地の人に聞いたりしましたけれども、やや極端なところもあるし、かなり不正確なところもありますし、独裁的モイ政権に何か日本が加担しているかのような書き方はやはりちょっとおかしいんじゃないかなというふうに思います。  ケニアに対する日本援助というのは、それは完璧な援助というのはないんですけれども、喜ばれておるところもありますので、それはぜひ上田先生とアフリカの援助案件を一緒にやっぱり見て回らせていただいて、先生ケニアのジョモ・ケニヤッタをごらんになったことないかもしれませんけれども、かなり長い年月をかけてやってきたプロジェクトの中には、長期的に見て人づくりに役立っているものもありますので、あといろいろ一個一個言っていくとこの記事についてはいろいろ文句があるんですけれども、長くなるので大体このくらいにしたいと思います。
  11. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 今、山本さんの御意見がありましたけれども、人道的援助支援、それから環境重視支援、そういう方向を進めていく上で、私、前回少し申し上げた読売の解説によると、人道的援助ともう一つ戦略的援助があると。戦略的援助というのはイデオロギーとそれから利潤だと申し上げたんですが、その戦略的援助の問題を真剣に検討することがどうしても不可欠な課題だと思うんですね。  戦略的援助については、やっぱりアメリカはずっと重視していまして、これはソ連がなくなる前ですけれども、八八年のアメリカ下院軍事委員会の小委員会報告書では日本についてこう言っているんです。「対外援助は、防衛支出の代わりにはならないとはいえ、日本が自由世界の安全保障の負担を分担するうえでもっと多くのことができる一つの道であることは明らかである。本小委員会の信じるところによれば、日本は、経済的に援助を必要とすると同時にアメリカ日本にとって戦略的に重要な国々へ、さらに大きい配慮を加えるべきである」と、小委員会でこういう報告書を発表している。  ソ連がなくなってからも、九三年五月にアメリカ議会に同盟諸国の防衛責任分担に関する報告というのが出たんですね。これの引用が防衛庁編集協力の「セキュリタリアン」九四年一月号にあるんですけれども、これを見ますと、とにかくアメリカは非常にはっきりしていまして、日本の防衛費を非常に評価しながら、防衛費以外でもこれは重要なんだと、その意味で、その中で、ODAでの大きな貢献をやっぱり評価しているんですね。それで、このODAを含む分野は「日本が共通の防衛上の一層の負担を負うよう引き続き注視していく」と、これは九三年です。だから、アメリカが、ソ連崩壊で今一極世界になりつつあるんだが、日本ODAの中の戦略援助問題でも依然としてこの要求は強まるばかりだと、責任分担ですね。そういうことがあるんで、これは我々本格的にこの問題では本当に日本政府の、また日本国民の自主性が求められていると思うんですね。  それから、二番目の利潤の分野では、私たちは経済協力問題で五つの原則というのをうたっているんですが、その中で、ちょっと強い言葉だけれども、新植民地主義反対の原則ということをずつと言っているんですよ。新植民地主義反対というのは、つまり多国籍企業がODAを利用して利潤の極大化を求めていくということ、それが結局発展途上国の国民経済、その自立に対して非常にマイナスの結果になるので、そういう多国籍企業が利潤の極大化を求めてODAをも利用していく、それで日本の大企業、多国籍企業がそういう方向で進出の一つの手段としていくということについては大いに警戒が必要だというふうに思っているんです。  最近読んだ本でおもしろかったのは、やはり西川潤教授の訳なんですが、アメリカのデビッド.コーチンという人の「グローバル経済という怪物」という本が、これは多少極端なところがありますけれども、なかなかおもしろかったのは、この人はアメリカの国際開発庁で八年間アジアの開発にかかわったというんですね。八年間やってみて、巨大かつ官僚的なアメリカの国際開発庁では本当の意味での民主的な開発はできないという結論に達して、NGOの世界に身を投じたというんですね。  それで、多国籍企業のさまざまなそういう問題点をずっと分析して、世界銀行もIMFも完全に破綻していると徹底的に批判ですよ。最終的には、世界銀行ももう解体しろとかそういうことまで言っているんです。IMFも解体してそのかわりに国連国際金融機関をつくるというような提案もしていまして、ちょっと極端だなと僕でさえそう思うような面もありますけれども、自分の体験を通じて、アメリカ開発庁のやり方ではなかなか本当の意味での現地の人々の発展がうまくいかないという、そういう結論をこの人は出しているんです。  こういうことまで言っている。「外国からの援助は、たとえ無償であっても、真の発展には役立たない場合が多い。被援助国外国の技術や人材に頼るようになり、輸入品に依存する消費スタイルが広まり、自然破壊や政治腐敗が進み、国産品に代わって輸入品がシェアを伸ばし、生活の糧である土地や水資源を奪われる人が増える、という結果を招きやすい」と。こういう現実は、全部が全部そうとは言えないけれども、本当に人間中心開発、また環境重視、そしてその発展途上国の本当の意味での経済的自立を支援するという意味からいうと、どうしても多国籍企業の利潤を考えますから、そういうやり方に対する防止のシステムをきっちり確立しないと、どうしてもこういう問題点というのは生まれていくだろうと思うんです。そのことが二番目に言いたいことです。  三番目に、そういうしっかりしたシステムを確立する上では、先ほど申し上げた情報公開、これが非常に大事だと思うんです。  鷲見さんの本をもう一度ばらばらっと読み直してみたんですけれども、いろんな問題点が指摘されているんですね。例えば円借款と輸銀融資、それをどちらにするか。これは、円借款か輸銀融資にするかについては、二五%を上回るかどうかということで決めていく。グラントエレメントが二五%を超えるとODAで、それから下がると輸銀融資になるんだというんだけれども、どれをどちらにするかも四省庁間の密室の話し合いで決まる。これはわからぬと。それで、一件について数百億円に上る援助案件国会の審議も経ずに決められているということが指摘されている。  それから、山本さんがいらしたJICAについても情報公開の問題をいろいろ指摘されていて、「JICA、OECF、輸銀の順序で不透明度を増していく。」と。だから、JICAは不透明度はまだましな方だというんだけれども、その中で開発投融資については融資対象者名が秘密に伏せられて一切公表されない。JICA技術協力が主なんだけれども、それに関連する開発投融資というのがあって、やっぱりかなりの額の、後で具体例も出ていますけれども、百五十億なんというのもあるんですね。どの企業に貸したかということもそういう名前は一切明らかにされていないという、具体的な例がインドネシアのアサハン・アルミプロジェクトの資金計画について指摘されているんです。  そういうふうに、本当にすべてが大体決まっちゃった後でしか国会も国民もわからない。それで、発表されるものは極めて簡単だというようなことでは、問題点を我々がしっかりつかんで改善するということがなかなか困難なわけなので、どうしても情報公開が必要だと思うんです。  その点で、これは次の課題になりますけれども、やはり基本法の必要性というのがさまざまな点でそこに集中していくように思うんです。山本さんからもお話があった一元化の問題でもそうだと思うんで、自民党内で大いに努力されているということを聞きましたが、そういう与党の中での議論だけでなくて、これは次の課題なんだけれども、もっときちんとしたシステムをつくるためにはやっぱり基本法の制定が必要になってくるというふうに思っております。  以上、三点です。
  12. 角田義一

    ○角田義一君 私は、恥ずかしながらODAについてはまことにど素人でございますが、皆さんの御高説を拝聴しながら私なりにいろいろ考えておりますと、日本というものが世界の中でどういうふうに生きていくのか、日本なりの一つの世界戦略というものを位置づけて考える中で、ODAというものが一体どういう役割を果たすのか、こういうことを考えるならば、これだけのお金を使っておって今まで省庁一元化されていないということ自身が私はまことに不自然きわまりないんじゃないかと思います。  今の行政改革については私自身もいろいろ意見がありますけれども、少なくともこれだけの規模、これだけの金額の税金を使う以上、これは四省庁体制とかあるいは技術協力が十九省庁でばらばらになっておるとかというようなことは、もう私は許されないと思います。  したがって、皆さんの意見をいろいろ承っておりますと、山本先生お話ですと今一応与党では懸命に一元化のためにやっておられるということでありますが、一つ御提起申し上げたいのは、この委員会はいずれ調査報告を出すんでしょうが、中間報告のまた中間報告のような形でもいいですから、提言として、このODA援助というようなものは当然一元化してやるべきだということを、やっぱり参議院としてこの際提起をすべきではないかというふうに私は思います。  それからもう一つ、これは国内政治との関係で関連をすることですが、例えば食糧援助というような問題一つ取り上げましても、日本の今の農業との関係で減反政策をどうするかというのが大変大きな課題になっておる。そして、私も基本的には賛成ですけれども、中山問地域における農業者の所得補償というようなことが提起されておる。かつてのように減反をしたら金をくれるという単純なものではなくて、むしろ減反ではなくて米をつくってもらって、それに対する一定の補償をする。そして、そのつくった米を一体どうやって、食うや食わずと言っては申しわけないけれども、貧困で食糧がない国に支援として渡すのかと。  いろいろ国際的に制約があるとかなんとかということは私も聞いております。しかし、人間がやることですから、それは国際的にはいろいろな取り決めとか規約があって、なかなか現物でもってどんどん支給することはできないというようなことをおっしゃる人もいるけれども、しかし日本国内の、例えば自然環境を保全する農業の機能、さらにはそこに生きている農民の皆さんの所得の補償、それがさらに国際的にも食糧援助になるというような大局的な立場に立って考えるという、その中でODAというものをどういうふうに生かすかというような発想が私はあってしかるべきだと、そういう連鎖の中で考えてしかるべきじゃないかというふうに思います。  それからもう一つ、例えばの話ですけれども、さっき言われたように森林の問題ですね、熱帯林日本の企業がばさばさ東南アジアや南米あたりで、ちょっと言葉はきついですけれども、上州弁になっちゃうけれども、木をぶった切っておいて、それで今度は片方では木を植えようというようなことを同じ日本がやるということの矛盾ですね、はっきり申し上げて。そして、国内ではもう森林が荒れ放題で、人間をどんどん切っていけばいい、削減していけばいいと。それで世界の森林を守ると言ったってそれは通らないですよ、そんなことは。日本の国は何をやっておるんだという話になるわけです。  そういう形になりますと、だから、私が一元化が大事だと言っているのは、片方では日本の企業なりがどんどん森林を伐採していって、片方では同じ金を出して森林を保護するというようなことで果たしていいのかということになると、やはりODA援助というようなものが一本化されておって、その辺の整合性というものも当然問われるんじゃないかというふうに考えなくちゃいけないんじゃないかということを考えますと、結論はさっきちょっと言いましたけれども、一元化というような問題については、私は中間報告の中間報告の前段、緊急提言としてまとめて政府に出すべきだと。これは自民党さんなり与党さんだけがやることじゃないと私は思います。そういうことをちょっと御提起申し上げます。
  13. 広中和歌子

    広中和歌子君 一元化の問題については、少なくともここに出席しているメンバーとしては、小委員長はまだ御意見はおっしゃっておりませんけれども、コンセンサスは得られているんじゃないかと思います。  ぜひ政府、自民党にも頑張っていただきたいわけですが、ちょっと山本先生がおっしゃったことで気になりましたのは、外務省という特定の省庁のもとに一元化するというようなことは、結果的にそうなってしまえば仕方がないんですが、私はそういう枠をはめない方がいいんじゃないかと思います。既に各省庁でそういう実施体制があり、人間もおり、経験も積んでいるわけですから、そういう人たちを束ねて一元化する、そしてむだを省いていく、そしてより効果的な実施体制をつくっていくということが大切なんであると思いますので、むしろ総理府のもとにやるというような形の方が他省庁の抵抗が少ないんじゃないかなという、これは戦略的な問題でございます。  それからもう一つ、先ほど申しましたよりきめ細かな支援に対しての人的資源の開発。私は先ほど、まだ日本で十分にNGOが育っていないから外国との協力も十分に視野に入れてということを申しましたけれども、この状況がいつまでも続いていいはずはないわけでして、やはり日本国内でもっと人的資源の開発ということを、人的資源なんという言い方は大変失礼な言い方になるかもしれませんけれども、事実そういう方たちがいっぱいいらっしゃるはずでございます。  これから雇用の問題というのがあるわけでございますが、特に環境関係の技術支援なんかになりますと、会社で日本の公害問題が非常に盛んだったときにそういう問題でずっと御苦労なされた方々が定年あるいは定年間近でいらっしゃる。そういう方たちを、OBをもっと活用するような積極的な姿勢が必要なんじゃないかと思います。それには、特に一元化したような中で積極的な対応というのが必要なんじゃないかと思います。  NGOというと、とかくボランティアという色彩があり、ただ働きということがありますけれども、普通の給料よりも多少少なくてもきっちりそれなりの給料は払うべきだろうと思います。ただでさえ日本の給料というのは高いから、海外に行きますと使いでがある。そして、現地の方との格差というものが非常に目立ってかえって反発を受けるというようなこともありますので、私はそれほど多くの支援は必要ないと思いますけれども、やはりそれなりのきっちりとした所得保障をした上で、こういう方たちの新たな第二の人生としての活躍いただくようなそういうシステムを国としてつくっていったらすばらしいなと思います。  それから、国連機関への支援の問題でございますけれども、このたびの概算要求でODA関係の支援は一〇%削減というふうにされておりましたけれども、現実に個々の案件を調べておりますと、国際機関の任意拠出金に関しては二五%から四五%といった大幅なカットで、これはなぜなんだろうかという疑問がわくわけでございます。顔の見える援助というふうに言われておりますから、国連機関だったら見えないというふうに思われてのことかもしれませんけれども、私は逆だろうと思います。  こういう人道的支援、ユニセフとかそれからUNEPとかUNHCRとか、いろいろな国際機関日本の拠出金があって非常に活動がされているわけでございまして、急に大幅に切られるということは、途端に日本への信頼感というんでしょうか、そういうものが失われることであり、日本が顔をつぶすことになるんじゃないかと思います。しかも、そもそもがこうした国連機関への拠出金というのは小さいということも御指摘させていただきたいと思います。  以上です。
  14. 福本潤一

    福本潤一君 人道、人間中心開発ということでさまざまな方が言っていただいていますが、先ほど山本先生の方から言われたジョモ・ケニヤッタ大学とかアジア工科大学もやはりODA予算でかなりの日本の教育研究に対する貢献ということでやっていますし、私も大学在籍のときにはこの二大学には友人関係、かなり日本の運営スタッフもいるということです。アジア工科大学はまだ続いていますし、ジョモ・ケニヤッタ大学はとりあえず一たん完了したようでございますが、こういうところでの人材育成。また、先ほど古森さん等々が調べた現地でのお話。  私の大学のときの同期の加藤和憲さんという人は大学院を出た後、我々が教官をしている最中に二十年間のうちの十八年間はほとんどこういう現地での開発に取り組んでおられます。フランス語ができて技術者ということで対応しておりますけれども、そういう中で現地スタッフをかなり大量に採用していきますと、生活の時間帯から大変な状態。またさらには、例えば数学、計算もできないから、そういう人材養成からまず始まる。もちろんコンピューターが最後はできるようになるまで現地の人材スタッフをやって、具体的なインフラ事業なり、彼の場合はアフリカのフランス語圏でほとんど対応していましたけれども、例えばキリマンジャロのふもとの方で大きな水田開発事業のときには、そこの水田開発によって人材育成もしながらしないと到底対応できないわけですね。  その意味では、人間中心開発一つが大学またインフラ事業の中でも行われているということを最初に御紹介させておいていただきたいと思います。  それで、先ほど馳先生の方から為替レートの方が大事だというふうに言われました。確かに八十円の時代から百二十円になりますと、円建てでやっておりますとそれだけで急に三分の二の予算に減ったという現実の統計、ドル建てベースで考えるとなりますし、それだけで三分の二になるわけですね。百円から百二十円の変化を見ただけでも約二割の削減という形で、具体的にそういう形での減少部分というものはきちっと押さえておかないと、案外統計だけを見ますと急に三分の二になった、二割削減になったという形で見えてしまうという現実はきちっと押さえておかないといけないと思います。  それで、その中で特に予算段階でやるのは余り好ましくない。その反対理由に、当事国に過大な期待を抱かせるというのと、理念の民主化とかいうものに反するんではないかという御意見がありました。過大な期待は日本の方から見たときの過大な期待であって、現地ではある意味では援助してもらうのは当然のような形で対応している国もかなりありますし、むしろ金がある国はない国にくれるのは当然だというような形で具体的に現地事業を推進している人に聞くと対応しておる国もかなりあるということでございます。  そうしますと、そちらの方の具体的な過大な期待は、国で、行政の面でやろうと、それは当然起こってくるわけでして、むしろ民主化とか一つ理念に反するということ以上に、情報公開とか、先ほど環境問題でやったらいいとかいうような形で、予算というものを執行する段階で国がやらないことによることとむしろ矛盾してくるんじゃないか。情報公開もできないという形で、できないというよりも事後報告だけになるという形になると、具体的にそれをどういう運用をしていくのかというところに全然かかわっていない。別に日本の諌早湾の問題ではないですけれども、計画の前段階できちっとそれに対して対応できるような体制がないということによる弊害の方がはるかに、前回理念の討議をしましたけれども、その理念を実現できない形になるんではないかという心配を私はします。  特に、上田先生の方から基本法もやはりきちっと考えないといけないとか、今の民主党の先生から、一元化をして、例えば農業政策と減反との矛盾、また森林伐採と具体的な農林政策との矛盾等も、こういう海外に進出していく段階におきましてどういう形での予算配分をしていくかということも含めて対応できるんではないかというお話がありましたけれども、ならば、むしろそういう基本法をつくり上げた上で、国民の代表と言われる国会内できちっと管理できる体制にするというのが一番望ましいんではないかというふうに思います。
  15. 田英夫

    田英夫君 皆さんのお手元にも配られていると思いますが、調査室でつくってくださった資料の中で国際問題調査資料シリーズナンバー5というのが大変わかりやすいと思いますので、大きい見出しては経済協力関係資料Ⅱと書いてあります。これを見ながら申し上げたいと思うんです。ODAの形態というのは御存じのとおり無償、有償つまり借款、それから技術協力というような分け方ができるわけですけれども、その分け方がこれは一ページから見事に並んでおります。これをもとに見ながら申し上げたいんです。  申し上げたいのは、無償協力が少ないということですね。全体の割合からいっても少ないし、外国の例を見ますとむしろ無償が中心で、有償というのはやっていないところもあるんじゃないでしょうか。日本の場合は有償、つまり借款で、日本政府相手国政府に貸すという形、それを返してもらうという、発展途上国で特に困っているところだからそういうプロジェクトについて援助するんで、それを金は返せというのはもともと根本的に間違っているんじゃないかと思うんですね。だから、無償協力をするところは特に困っているというか発展途上の国というふうに限定をしておりますが、その枠自体もかなり問題がある。  それから内容についても、先ほどから問題になっていたNGOの問題もこの無償協力の中に項目としてはちゃんと入っておりまして、この資料で言うと三ページ目に「草の根無償」という項目があります。まさに「NGO等からの要請に対し援助を行う」、こう書いてありますが、これは実は金額からすると、今ここでちょっとそらで数字を覚えておりませんが、やっぱり少ないんですね。  それから、その次の四ページのところに「文化無償」という項目があります。つまり、無償協力の中の文化的な問題に対する、これは例えば発展途上国の文化財あるいは文化遺産の保存に対して援助するとか、あるいは文化関係の公演あるいは展示、そういうことに対して援助すると。ただ、これは一件につき五千万円以内というような非常に低い方へ抑えているという、こういう考え方が全部に通っていると思います。  私もまだ不勉強でわからないところがあるんですが、三ページに戻りますが、「水産無償」という水産事業に対してだけ特別に一本立ての項目が立っているというのは、農業も含めてならまだわかるんですけれども、これはちょっと私も疑問を持ちます。いずれにしても、無償協力というものこそが本当の発展途上国に対する経済協力であり支援であるという考え方をひとつ強調しておきたいと思うんです。  私の体験からしても、例えばカンボジアの例で言えば、内戦が長く続いて政権も安定しない、そういうところでこれは返してくださいというお金をもらっても非常に困惑するだろうと思います。しかし実際には、例えばプノンペンの市内に通称日本橋という、日本がつくったから日本橋と言っている大きな橋が、戦争中破壊されてだめになっていたものが昨年完成いたしました。これは無償協力でやったわけでありまして、こういうものこそもっともっとやるべきではないか。  その場合、当然当事国には建設の技術も能力もありませんから、金は無償で日本政府が出して、日本の建設会社がこれをつくったということですけれども、現地の皆さんは喜びこそすれ、日本の企業が金もうけしているぞというようなことを批判されることはないわけであります、もともとお金も無償で出しているんですから。技術協力などになって途中でお金が消えてしまうというようなことが過去に例えばフィリピンの例などであって批判を浴びたわけですけれども、もともと無償という形で供与したものについて、以後建設についても日本の企業が協力してもそれは批判の対象にはなりにくいのではないかなと。  こういうことで、無償協力の枠を広げるべきだということをひとつ申し上げておきたいと思います。  以上です。
  16. 馳浩

    ○馳浩君 基本法に基づいて予算の審議を国会において承認していくというふうな方向一つの論点は、もちろんこれはメリットとデメリットをまず考えていくべきだと私は思うんです。年次別にその援助計画国会に出して承認するといったことが、果たして日本の国益に資するODAあり方として考えた場合に、非常に機動的に機能的に活用するという上でどうなのかという点ですね。  それと同時に、以前まとめられた七項目の合意の中にも、本院において国際開発協力に関して審議する場を設けるとありながらも、その場は外務委員会なのか決算委員会なのか、ある意味での行政監視評価委員会なのか、これも具体的になっていない。外務委員会はほとんど条約審査のみですし、決算委員会はある部分追随と。言葉は悪いですけれども一応そういった形になっておりますので、行政府としての受け皿づくりという観点もあるでしょうし、そういったことを総合的な観点としてとらえながらやっていく必要があるのではないかという気が私はいたします。  もう一つは、言葉は悪いですけれども、ODA予算のリサイクル、二次的な有効利用ということを考えたときに、円借款、これは貸すわけですから元本と利息は返していただくんですが、今実際どの程度の回収状況にあるのか。そして、その回収されつつある元本や利息を新たにどう利活用するのか、再活用していくのかという方針、これが一点ですね。  二点目が、南南政策といって、今まで援助してきた国が中進国になりつつある。その中進国が、より低位の国に対してどの程度のまた逆に援助をしていくのか。日本が最初に援助した国が中進国になり、そしてその中進国が自分たちの周辺の国でより一層の援助が必要な国に対してどの程度の援助をしていくのかということを、これをむしろコンサルティングできる支援というのが日本としては必要ではないのか。  あるいは、極論かもしれませんが、青年海外協力隊の年齢というのは原則として二十歳から三十九歳ですね。私、これは非常に青年という言葉も、それから年齢的な枠も、日本の人口比率を考えたときに、むしろODAを利活用していく上では意味がないのではないか。というのは、定年を過ぎて六十歳を過ぎた方の方がより専門性を有しているわけですから、シルバー人材の活用という形で有効に活用していける。  これは別に、国が直接行かなくてもNGOの中に入っていただいてやっていくといったような形でもできるわけですから、そういった人材も予算も含めてリサイクルしていくことが非常にODA予算の有効、効率的な活用に資していくのではないか。その上でのODAあり方理念というものも必要になっていくのではないかということを私は申し上げたいと思います。
  17. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 一元化問題で、先ほど広中さんからも外務省の外局問題での意見がありました。  田さんも引用されたこの資料を見ますと、各国の援助体制がどうなっているかという各国別の比較表が二十八ページからあるんですね。これを見ると、フランスはちょっと複雑だけれども、あとは大体一元化が進んでいるようです。カナダ、イギリスなんかはやっぱり独立した国務大臣のもとにあるようで、アメリカの国際開発庁というのは、これは国務省と密接に協議するというんだから、国務省のもとではどうもなさそうなんですね。  やはり、外務省の外局的なところとそれから独立したところと、どうもそういうふうなところが多いようで、日本のようなところはないということでは、国際的にも余り立ちおくれのないODAを進めるためには一元化がどうしても必要だということをこの比較表を見ても感じたんです。  それから、調査室からいただいた資料のナンバー3を見ると、その比較も出ています。それで、田さんたちがお出しになった参議院四会派の法案では第十七条で、「別に法律で定めるところにより、総理府の外局として、国務大臣を長とする国際開発協力庁を置くものとする。」ということで、総理府の外局で国務大臣を長とするものとなっているんですね。それから、衆議院で新進党の鹿野さんなんかがお出しになったのは、特に規定は存しないと。なるほど、条文を見てもどうもそういう規定はないようなので、新進党がそれについてはどういうお考えなのか、現状でいいとお考えになっているのかちょっとよくわからないんですけれども。  それで、私ども党として、この一元化は必要なんだが、どういう具体的な形態というところまではまだ法案も出しておりませんので結論を出しておりませんけれども、先ほど申し上げた戦略援助アメリカの要求が一番強く来るのは外務省なんで、外務省のもとに置くのはどうも私は賛成できないなというように思うんです。  この問題も、一元化を進める上では田さんたち法案方向へ行くのかどうか、これはやっぱり大きな問題点だというふうに思いますが、これもいろいろ意見交換をして具体的な形も、できれば一致点をつくる必要があるんじゃないかと、そう思っています。
  18. 田英夫

    田英夫君 ちょっと参考のために今のことでいいですか。  上田さんがおっしゃった点について、私どもが法案をつくったときのことを申し上げると、今言われたその役所の点については、言われたとおりなんです。この点については、当時自民党の方ともお話をいたしまして一番問題になった点の一つです。参議院の自民党で大河原さんが政審会長をやっておられた時代、宮澤内閣のころです。そのころに、大変自民党としてもこの問題には関心がある、内容は意見があるけれどもということで、たしか五人ぐらい人間を決めてくださって私どもと話し合いをいたしました。そういう経過があります。宮澤弘さんそれから小委員会の下稲葉さん、そういう方々、特定のメンバーを決めてくださって話し合いを始めたところで実は衆議院解散になって、提出した法案が廃案になってしまったという経過があります。  今の専任大臣の話で申し上げると、私どもの案は、いろいろ考え議論をした末に、やはり外務大臣ではちょっといろいろ問題があるんじゃないか、やはり総理府の外局として専任大臣を置くべきだと、すると内閣法を改正しなけりゃいけないというところまで法制局と詰めて、結果的にはそういう案にしました。  外国の例も、今上田さんが言われたとおりなので調べてみたんですが、イギリスの場合は、この資料に書いてありますけれども、労働党内閣になると省になるんですね。それで専任大臣が置かれる。保守党内閣になると庁に格下げして大臣を置かないという、これは実におもしろいことで、今度はブレア内閣になりましたので、省に昇格して大臣ができた、こういうことになっているということをつけ加えておきたいと思います。  以上です。
  19. 広中和歌子

    広中和歌子君 話がちょっと振り出しに戻るようで大変恐縮なんでございますけれども、理念のところですが、大変いいことを言っているわけですよね。「人道的立場に立って、開発途上国の飢餓と貧困の克服、福祉の向上、経済的自立などのための自助努力を支援することを目的とし、国際的な格差解消と開発途上国の平和と安定が、日本を含む世界の平和と繁栄にとって不可欠であるという国際社会の相互依存性の認識に基づいて行われるべきである。」と書いてあるんです。そのほか、ODA大綱の方の理念でもそうなんですけれども、大変結構なんですが、ちょっと心配しておりますのは、最近日本の経済が非常に先行き不透明ということで不安感を持っている。  なぜODAなのかということで、国民の一部に納得しない人も出てき始めているんじゃないか。だから、ODA予算がカットされるというようなことであっても余り関心がない、あるいはそれに対しておかしいと言う人がいたとしても白けて余りサポートがないと。そういうような感じを私は非常に恐れているわけです。  この理念に加えまして、やはり地球上に住まわせてもらっているそれぞれの国が、そのための一種の義務としての性格というものをもうちょっと加えてもいいんじゃないか。要するに、応能負担という言葉がございますよね。例えば、日本人であれば応能負担で国に税金を納めることが義務であるというふうになっておりますけれども、地球社会に住む以上、それぞれ応能負担で、豊かな国がお金を拠出して人類共通の問題に対して対処するというようなことが絶対必要であるという、ある種の義務的なものも加味した方がいいんじゃないかなと。  そういう考え方を日本の中で定着させると同時に、世界各国、アメリカやヨーロッパの国々やそういう国々にもむしろ働きかけていくことによってきっちりODAをやってくださるような、そういう世論形成というんでしょうか、世界的な世論形成をつくっていくリーダーシップを日本がとるべきじゃないかなと思っているんですが、御意見を例えればと思います。
  20. 山本一太

    山本一太君 馳委員からもあったんですけれども、国連機関支援の問題というのは本当に私も広中先生のおっしゃるとおりだと思います。飢餓議連か何かで今超党派の署名を集められているものは、もう見た瞬間にサインをして送らせていただきました。  さっき、今自民党でこういう議論がと申し上げたのは、別に自民党内だけでこういうことをやっているということを言いたかったのではなくて、田先生の方からどうも立ち消えになったらしいというお話があったので、今の議論状況を私が知る範囲でちょっとお話ししたということで、もちろんこの問題は超党派で考えていかなければいけないというふうには思っております。  国連機関について、特に人道機関、UNDP、ユニセフ、UNFPA、それからWFPも入るんでしょうか、UNHCRももちろん大きなあれなんでしょうけれども、そういうところに対する拠出金は、当初の案では三割から四割削られるという厳しい状況になっています。  それで、大蔵省の方は意外とやはり態度はかたいということで、今はフリーディスカッションだから別に何を言ってもいいと思うんですけれども、多分、外務省予算をかなりたたいて、さらに絞り込んで、それで多少戻してあげたよということを言いたいみたいな、そういう形でどうも議論が進んでいるようです。ある程度は戻ってくるかもしれませんが、今の状況だとかなり厳しいと思うので、広中先生の方も飢餓議連の署名という形でやっておられるんですけれども、やはりこの問題は、党派を超えてある程度のモメンタムを起こさないとかなり危ないかなということ。  例えば最後に予算が来たときに、同じパイの中の奪い合いになると思うんですね。その中で、uNHCRには緒方先生がいるからどうしようとか、UNDPについてはTICADⅡでも協力してもらっているし日本が最大の拠出国だということもあるとか、UNFPAは昔からの大変強力な議連がありますから、そんな中で多分パイの奪い合いになるということなので、ここら辺のバランスは結構難しいのかなという感じがしています。  いずれにせよ、先生がおっしゃったように、今こういう機関に三割、四割のお金を削るということは国際社会に間違ったメッセージを送るということになると思います。いろんな意味協力をして、もちろんこの小委員会でこれを取り上げるというのはちょっとなじまないとは思うんですけれども、やっぱりこれはぜひ全党的に少し行動できるところから起こしていかないと危ないんではないかなという気がいたしました。  それで、国民の関心の話なんですけれども、この問JICAの藤田総裁とある雑誌で対談したんですが、総裁がおっしゃったのは、総理府の調査とかでアンケート調査をすると、日本の一般の人たちの六割か七割がODAに対して好意的だというお話だったんですけれども、私がそのとき総裁に申し上げたのは、これは本当の支援ではありません、何か援助するといいことがあるんじゃないかなとか、特に阪神大震災以来いろんなボランティアに対する認識なんかも高まっている中で、ふわっとした支援ですと。  例えば毎週選挙区に帰っていろんな会合に出ている中で言いますと、一般の方はODAに関心がありません。それに、広中先生が恐れていた現象はもうありまして、これだけいろんなところで予算をカットするのに何でODAにこんなに金を使うんだと、うちの村にODAを支給してくれと言う方もふえていますので、どうやって世論形成をしていくかというのは、ODA政策の中でも広報とかいろんなところになると思うんですけれども、すごく大事な問題だと思います。世界のODAの世論形成について日本がリーダーシップをとるというのは方向としてはすばらしいことだと思うんですけれども、具体的にどういう方策があるかというのはよくこの小委員会でも議論できればいいかなというふうに思いました。  それから、あと一元化の話なんですが、これは上田先生がおっしゃったり広中先生もおっしゃって、それから田先生法案を私も見せていただいて、外務省のもとに置くというよりは総理府の方がいいということなんですけれども、援助政策一元化というのはやっぱり外交一元化にもすごく密接に関係があると思うんですね。だから、外務省が信用できるできないとか、外務大臣が兼ねるのはちょっとよくないんじゃないかとか言う前に、一番最初に出てくるのは、外交との関係を考えると外務省のもとにあっても不自然はないといいますか、常に外交とリンクした形でODA政策を立案できるということでは私は特に問題があるとも思えないということなんです。  いずれにせよ、田先生おっしゃったように、少なくとも政策的なへそとなるボディーがどこかに必要だということについては、そのまま外務省に置くのか、それとも庁が難しければどこかでうまくコーディネートするところをつくるのか、あるいは先生おっしゃったように内閣府というか総理府に何か機関を持ってくるのか。  ただ、昔から援助庁の構想というのはありまして、例えば自民党でいうと加藤六月先生が、もう今は新進党、どちらかわからないんですけれども、(「新進党」と呼ぶ者あり)新進党ですか。済みません、いろいろ政党名がどんどん変わっていくものですから。政調会長だったときに、中央公論か何かに、援助庁をつくるべきだなんという議論をなさったときにも、たしか総理府だったと思うんですけれども、総理府に置いたときの弊害というのもあると思うんですね、また組織の縦割りが持ち込まれるんじゃないかとか。ただ、それはいろんなオプション先生がおっしゃったように考えていけばいいのであって、外務省の下にあるというのは私はすごくナチュラルだと思いますけれども、それが不適当な部分が多いのであれば例えばほかのボディーにくっつけてやると。  角田先生がさっきいわゆる食糧支援のことを言われまして、いつも農林部会でそれは一生懸命やっているんですが、先生のおっしゃることは、政策的な一貫性をきちっとしろと。片っ方で森林伐採をしていて片っ方でこんなことをやっているんじゃなくて、政策的な一貫性をきちっと担保するために一元化せよというお話だと思うんですけれども、それは私も先生のおっしゃるとおりじゃないかなと思いました。  福本先生が例のAITのことをおっしゃったりなさったんですけれども、今度この小委員会でもまた何か外部の方を呼ぶということで、福本先生から、実際にプロジェクトに携わった方の話も聞いたらどうかというお話がありました。先生もいろんなお知り合いの方がいらっしゃるということなのでぜひ相談していただいて、例えば私が思ったのは、JICAの、プロジェクトを終わった本当にバランス感覚のあるいいリーダー、OBとか、あるいは現職の方がプロジェクトリーダー会議なんといって一年に一遍戻ってきますから、その中からお話を聞くということもあると思うんです。先生から、どなたかいい方がいれば、ぜひ現地プロジェクトの実情を話せる方をここにお呼びしたらいいんじゃないかと思います。  あといろいろあるんですけれども、長くなるので、もう一点だけ言いますと、情報公開の話がありまして、これも別に政府の肩を持つわけじゃないんですが、昔に比べると随分情報公開は進んでいると思うんです。例えば、白書とかあるいはいろんな評価報告書とかいうのは意外とつくられていまして、各議員には送られているということもあるんですが、余りにも厚かったりするものですからなかなか読む時間もないというのが実態なんですけれども、私の感覚からいくと、もうこの情報公開の話というのはちょっと認識を変えてもらわなきゃいけないんじゃないかと思うんです。  それは一般論として言えるんですけれども、それはもちろん政党とか政府にも責任があるかもしれませんが、消費税のときもしかり、住専のときもしかりなんですけれども、どんなプロセスを持って、例えば公聴会をやったり説明しても、やっぱり一般の方々が説明不足だと言う傾向はあると思うんです、情報公開がなされていない。  例えば、ODAは悪と考えている人たちからすると、ODAというのはどうも密室だ、あのプロジェクト情報はわからないというのは、実はそうじゃなくて、例えばインターネットやあるいは問い合わせをすればわかることも随分あると思うんです。もうハウ・マッチ・イズ・イナフ、そう  いうことを考えますと、私は少し意識改革をし  て、もちろんこちらも政治がリーダーシップをとって情報公開の努力をしていかなきゃいけないと思うんですが、やっぱりタックスペイヤーである国民の側が自分たちの責任で情報をとる。実は、あなた方がイニシアチブをとれば情報をとるところはいっぱいあるんですと、少しこういう認識になっていただかないと、どんなに例えば情報の入り口を用意しても、そこに来ないうちに全然説明不足だという、その認識をみんなが改めて、一人一人のタックスペイヤーが見ていかなきゃいけないという雰囲気をつくらなければいけないんじゃないかなというふうに思っていますので、それは問題提起をしたいと思います。  あと、田先生のおっしゃった無償資金協力が少ないというお話ですが、これも長くなるのであれなんですが、過去に比べたらだんだん伸びてきていることは事実です。円借款が多過ぎるという議論はいろいろあると思うんですが、ここは福本先生と私が意外と一致しているところだと思うんですけれども、円借款援助の中では私は必要な形態だと思うんです。円借款も必要、技協も必要、無償も必要。このバランスでやはり最も効率的な開発ができるのではないかと思います。  アジアについては、随分日本の企業と結びついているとかいう非難もありましたが、日本東南アジアに対する援助は、経済効果という点ではいろんな問題があるかもしれませんけれども、かなりの効果を上げていると思います。東工大の渡辺利夫先生の円効果じゃないですが、もちろんいろんな問題があると思うんですけれども、ある程度経済発展には貢献していますので、有償が全くいけないかという議論についてはちょっとリザベーションというか保留したいなと思います。
  21. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ちょっと一つだけ、短く言います。  今、贈与とそれから円借款の問題が出ましたけれども、調査室のシリーズ1、この資料の八ページに国際比較が出ているんですよね。やっぱり実態を冷厳に見るところからいかなきゃならないんだが、量的側面からの比較は非常にいいわけですよね。質的側面はやっぱり最低です。グラントエレメント、これも主要国の中で最低です。贈与比率四八・八%で、これは他国はみんな九〇%以上が多いんで、まことに低いです。二国間ODAの贈与比率はさらに低くて三六・九%、そういう低さです。アンタイド、これは一番高い。これは外務省もこのごろアンタイドがふえていると言っているんだけれども、この不況の中で、アンタイドをまたふやしてくれという声が出ているでしょう。そういう点で、やっぱり日本の大企業との関係を国際的な比較の中での冷厳な位置をしっかり見る必要があると思うんですよ。  もう一つ、ユニセフの発表したデータを見ると、ユニセフは、栄養、水,衛生、基礎保健、初等教育、家族計画、これは基本的ニーズで、これを重視しているんですね。それについての各国のODAのデータも発表しているんですよ。平均は六・三%、トップはノルウェー一九・七%、日本は下から二番目で二・七%ですよ、基本的ニーズについては。だから、贈与は少ない、それから基本的ニーズは極めて少ない。日本がこの二・七%を、スイスが一八・一%なんだが、ノルウェー、スイス並みの二〇%ぐらいまで上げることを私はやっぱり国民的目標にすべきじゃないか。  いろいろ立場の違いはあるけれども、同じ発達した資本主義国のODA、それから国連その他、先ほど山本さんも言われたけれども、国際機関がずっと発表している方向日本ODA白書も出しているような方向に基づいて、こういう冷厳な現実のデータをどういうふうに直していくか。これは恐らくいろんな歴史もあるし、利害関係もあって難しい問題だけれども、こういう構造の改革にやっぱり取り組むことが国際的な責任になっているんじゃないか、そう思います。
  22. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) まだまだ御意見は尽きないと思いますが、時間もちょうどでありますので、きょうのところはこの辺で終わらせていただきたいと思います。  ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  23. 板垣正

    ○小委員長板垣正君) 速記を起こしてください。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二分散会