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1997-11-20 第141回国会 参議院 国会等の移転に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月二十日(木曜日)    午後三時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         久保  亘君     理 事                 中島 眞人君                 真島 一男君                 平田 健二君     委 員                 石渡 清元君                 太田 豊秋君                 鴻池 祥肇君                 鈴木 政二君                 矢野 哲朗君                 海野 義孝君                 片上 公人君                 長谷川 清君                 瀬谷 英行君                 三重野栄子君                 緒方 靖夫君                 江本 孟紀君    政府委員        国土庁大都市圏        整備局長        兼国会等移転審        議会事務局次長  林  桂一君    事務局側        常任委員会専門        員        八島 秀雄君    参考人        高崎経済大学地        域政策学部教授  横島 庄治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○国会等移転に関する調査     —————————————
  2. 久保亘

    委員長久保亘君) ただいまから国会等移転に関する特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国会等移転に関する調査のため、本日、参考人として高崎経済大学地域政策学部教授横島庄治君の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 久保亘

    委員長久保亘君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 久保亘

    委員長久保亘君) 国会等移転に関する調査を議題といたします。  まず、本委員会が先般行いました委員派遣について、派遣委員報告を聴取いたします。平田健二君。
  5. 平田健二

    平田健二君 去る七月二日及び三日の二日間、武田委員長国井理事石渡委員太田委員佐藤委員鈴木委員円委員山本委員瀬谷委員三重野委員、そして私、平田の十一名は、愛知県及び三重県において国会等移転に関する実情調査を行ってまいりました。  以下、その概要を御報告いたします。  まず、愛知県における実情調査概要について御報告申し上げます。  愛知県においては、平成七年十二月の国会等移転調査会最終報告以後、平成八年四月に移転先候補地として東三河南部地域及び西三河北部地域二つ地域を表明して以来、同年七月には県議会において首都機能移転についての意見書を採択するとともに、後段で御報告をいたします三重県をも含めた中部圏東海四県との連携を図るなど、首都機能移転問題への取り組みを積極的に推進している地域であります。  東三河南部地域は、静岡西部地域と隣接し、太平洋と三河湾に面した豊田市、岡崎市など関係する八市町村から成る地域であり、また、西三河北部地域は、岐阜県東濃地域と隣接する豊橋市、豊川市等内陸部関係する六市町から成る地域であります。今回の調査では、まず、豊橋技術科学大学から東三河南部地域豊橋周辺を視察した後、豊田西広瀬工業団地より西三河北部地域丘陵地を視察いたしました。  次に、概況説明会における愛知県知事ほか関係者方々説明及び派遣委員との意見交換について、その概要を御報告いたします。  まず、鈴木愛知県知事からは、本県国土中央位置しており、本県だけを対象としない、隣県との連携も視野に入れた取り組みを行っているところである。候補地を擁する東海四県相互連携を図り、中部東海地域への首都機能移転実現を図りたい。愛知県は、東海新幹線東名名神高速道路などが集中する交通の要衝であり、全国からのアクセスが極めて容易である。今後、中部国際空港、第二東名名神高速道路リニア新幹線などにより当地域における交通条件は飛躍的に向上することとなる。また、二つ候補地はいずれも既存都市の名古屋とは隣接しておらず、三十キロから六十キロ以上離れており、スプロール化懸念は想定されない、しかもその大都市機能・サービスを十分に活用できる地域である。土地取得容易性については、現段階移転の第一段階に対応可能な用地は、東三河南部地域で約三千ヘクタール、西三河北部地域で約四千三百ヘクタールが分布し、さらにその周辺には長期的開発の可能な土地が分布している。また、地震災害等安全性については、一部に活断層はあるものの、開発区域から避けることは可能である。地形等については、標高二百メートル以下の平たん地丘陵地が広がり、都市整備が容易であるなど、国会等移転調査会報告選定基準等に基づいた説明がありました。  次に、愛知県議会大見議長及び倉知首都機能移転地方分権調査特別委員会委員長からは、首都機能移転東京一極集中によるさまざまな弊害を是正し、均衡ある国土づくり推進するための極めて有効な手段である。社会経済全体に広まる閉塞状況を打破する、新しい日本の進路を開く上でも重要な役割を果たす国家的プロジェクトであり、その早期実現に期待するものである。国におかれては、首都機能移転地方分権推進を車の両輪のごとく進めていただきたいと考える。  そうした認識のもとで、昨年七月には県議会において首都機能移転についての意見書を採択するとともに、政府及び国会に要望いたしており、また、さきの財政構造改革に伴う首都機能移転着工延期方針については、今後その取り組みが停滞することに県議会としても懸念をいたしている。他県との取り組みに関しては、首都機能移転担当特別委員会の正副委員長で構成する首都機能移転東海県議会連絡協議会のもと、東海地域への首都機能移転実現に向けた協力体制をとっている。また、二〇〇五年開催国際博覧会で培うこととなる自然環境との共生を目指した最先端都市づくりのノウハウを首都機能移転にも十分生かしてまいりたいなどの説明がありました。  次に、新首都中部推進協議会の安部、谷口両代表理事からは、移転に伴う国会都市東京との関係は、東西に偏ることなく、日本列島中央部位置するのが望ましい。そのような観点から、交通インフラが高度に整備され、全国とのアクセスにすぐれた、国内各地からの移動コストを最小限に抑えることのできる当地域への移転は、経済効率的に見て望ましいとの説明がありました。  次に、早川豊橋市長及び加藤豊田市長からは、豊橋中心とする東三河南部地域は、六つの市町から成る相互に広域的な地域づくりに取り組んでいる地域であり、移転調査会候補地選定基準についてもお互いの理解が進んでいる地域である。また、周辺静岡、長野との結びつきも強く、全国総合開発計画における地域連携軸全国的モデル地区となるよう、地域発展に向けて積極的に取り組んでいるところでもある。また、豊田市を中心とする西三河北部地域は、全体が丘陵地帯であり、地形の変化をうまく活用した土地利用が可能な地域である。花嵐岩から成る地盤は災害に強く、また気候の面からは、温暖で積雪が少なく住みやすい地域であるなどの説明がありました。  その後行われた関係者方々派遣委員との間では、同一県内から二つ候補地を擁することの理由、国会都市の具体的なイメージ首都機能移転に伴い今後必要となる社会資本、将来的な人口の増減に伴う対策、用地取得のための方策、県議会及び県民首都機能移転に関する認識などについて意見交換が行われました。  次に、三重県における実情調査概要について御報告申し上げます。  三重県においては、平成八年九月以降、鈴鹿山ろく地域移転先候補地とし、国会等移転調査会最終報告に掲げる九つ選定基準候補地適合性について調査結果を報告するとともに、県議会においては同年十月に首都機能移転に関する決議を行うなど、特に近年において首都機能移転問題に関し活発な取り組みをしております。  移転先候補地鈴鹿山ろく地域は、伊勢湾岸に面する鈴鹿市、津市など、関係する九つ市町から成る地域であり、今回の調査では、河芸日本城山青少年公園鈴鹿国際大学など、高台となる地点から候補地状況を実際に視察いたしました。県側説明では、全体として緑豊かでなだらかな山地、丘陵が連なっており、交通アクセスの面でも、今後予定される道路等建設も含め、利便性に富む地域であるとの説明がありました。  次に、概況説明会における三重県知事ほか関係者方々説明及び派遣委員との意見交換について、その概要を御報告いたします。  まず、北川三重県知事から、新都基本イメージは海と森の新都であり、世界に開かれた分権型の環境共生都市、海と森の自然に囲まれた新しい都市の構築を目指すこととしており、また新都基本コンセプトとしては、首都機能移転行政改革地方分権を初めとした一連の構造改革を推し進める契機としてとらえ、均衡ある発展を目指し、技術と文化を生かした新都の創造、世界の人々が共感できる環境共生都市形成、開かれたネットワーク型都市形成などを挙げております。  鈴鹿山ろく地域における利用可能な土地面積は一万四千四百ヘクタールほど存在するものの、行政改革地方分権推進により、新たに居住する人口を約三十万人程度に抑えることができるとともに、実際の利用面積は四千八百ヘクタール程度になるものと見込んでいる。首都機能を一つの地域集中させるのではなく、十のクラスター状の新都市群に政治・行政施設を分散するとともに、相互高速交通網情報通信網によって緊密な連絡をとることとする。また、新都建設費用については、行政改革の断行による首都機能スリム化既存都市機能の活用、用地費の安さなどにより総計約五兆円になるとの試算をしている。国会等移転調査会選定基準からすれば、土地取得容易性については利用規制がなく、開発に適した地域であり、防災上の観点からは、当地域を震源とするマグニチュード七以上の記録はなく、また伊勢平野の平たん、なだらかな里山の連なる風光明媚な地域で、渇水も過去にほとんど経験していないなど九項目すべての基準を十分に満足する地域であるとの説明がありました。  また、国におかれては、公正で透明なルールのもとで調査審議が進められ、国民が納得できる客観的な方法により移転先候補地選定する答申がなされるよう期待するとの要望もありました。  次に、三重県議会末松議長及び萩野首都機能移転地方分権推進調査特別委員会委員長からは、東京一極集中の是正や大規模災害に対する我が国の対応力の強化を図る上でも首都東京以外へ移転させることが重要であり、こうした状況にかんがみ、平成八年九月には、すぐれた条件を備える三重県に首都機能移転されるよう、「首都機能移転に関する決議」を採択した。また、本年六月には、地方分権問題と一体に議論するための特別委員会を設置するとともに、既に東海四県の関係委員長から成る首都機能移転東海県議会連絡協議会を設立し、共同の取り組みを行っているところである。近隣県議会との連携を図りながら、中部圏近畿圏結節点という好適地三重県に新首都実現がかなうよう活動を続けたい。現状を把握した冷静な議論を行い、納得のいく結論に収れんさせるのが我々の責務であるなどの説明がありました。  次に、鈴鹿山麓地域首都機能移転推進協議会会長でもある加藤鈴鹿市長及び三重経済団体首都機能移転推進協議会会長でもある堀木三重商工会議所連合会会長からは、特にアクセス面での優位性を強調し、三重県には国の特定重要港湾の四日市港があり、食料のみならず文化情報が入る、防災上の点からもすぐれた機能を発揮する港の存在は、世界主要都市の大部分が海に面していることからも明らかである。また陸上においても、日本東西南北交流軸が交差する地域である。これら数々の利点を盛り込んだ海と森の新都構想こそ急速に発展する国際化に対応できる首都機能移転構想であるなどの説明がありました。  その後行われた関係者方々派遣委員との間では、首都機能移転問題に関する県民の関心度及び国民へのPR策土地取得容易性となる根拠、用地取得に伴う土地規制のあり方、調査会報告書の六十万人都市とは異なる人口三十万人構想具体策、新都市における廃棄物処理具体策近隣中部四県との連携策クラスター等新都具体的イメージなどについて意見交換が行われました。  以上が調査概略でございますが、ここで愛知三重の両県知事を初め調査に御協力いただいた関係者方々に厚く御礼を申し上げて、報告を終わります。
  6. 久保亘

    委員長久保亘君) 以上で派遣委員報告は終  了いたしました。     —————————————
  7. 久保亘

    委員長久保亘君) 次に、国会等移転審議会審議状況について、政府から説明を聴取いたします。林国土庁大都市圏整備局長
  8. 林桂一

    政府委員林桂一君) 国会等移転審議会事務局次長の林でございます。  昨年十二月の発足以来、今日までの国会等移転審議会調査審議状況について御説明申し上げます。  国会等移転審議会は、昨年六月に一部改正がなされました国会等移転に関する法律に基づいて設置されることとなり、衆参両議院の同意を得て内閣総理大臣より二十人の委員が任命され、昨年十二月に発足をいたしました。  また、審議会が認める専門的事項について調査審議するため、審議会委員八人と新たに内閣総理大臣が任命した九人の専門委員で構成する調査部会が設置されております。これまでに八回の審議会と五回の調査部会開催され、国会等移転先候補地選定等について鋭意調査審議が進められているところであります。  審議会及び調査部会開催経過及び各回の議事は、参考資料1のとおりであります。  まず、昨年十二月十九日に開催された第一回審議会では、会長の互選、会長代理の指名及び内閣総理大臣からの諮問等が行われました。  また、第一回及び第二回審議会においては、首都機能移転について委員によるフリートーキングが行われております。  そして、第二回及び第三回審議会では、調査部会の設置も含め、調査審議進め方について検討が行われ、中心的課題である移転先候補地選定は、三つタームに分けて段階的に進めていくとの方針が確認されました。  すなわち、第ータームは、全国から選定基準に照らして調査対象地域抽出する。第二タームは、調査対象地域について関係地方公共団体協力も得ながら詳細な調査を実施する。またこの際、必要に応じて現地調査を行う。第三タームは、調査対象地域相互比較を実施し、さらに総合評価により移転先候補地選定するという内容であります。  また、これとあわせて、移転費用モデル的試算、新都市像検討を行うこととされました。  さらに、国会等移転意義効果検討関係機関ヒアリング海外事例報告等を随時行うとともに、国民合意形成状況社会経済情勢の諸事情、東京都との比較考量検討も行うこととされました。  第四回審議会以降は、この方針を踏まえつつ、逐次課題検討が行われているところであります。  第一に、調査対象地域抽出選定については、第五回審議会において検討が開始されて以来、調査部会での検討も行われ、第二タームにおいて詳細な調査を行うべき複数調査対象地域選定に向けて検討が進められております。十月八日に開催された第八回審議会においては、参考資料2−1としてお配りしてございます「調査対象地域設定進め方」が了承され、現在はこれに従って調査部会において引き続き検討が行われているところであります。  第二に、移転費用モデル的試算については、第四回審議会検討が開始され、調査部会での検討審議会への報告、さらなる検討が重ねられた結果、第八回審議会において、参考資料3としてお配りした内容により審議会結論とすることとされました。  第三に、首都機能移転文化的側面については、第四回審議会において検討必要性が提起され、堺屋委員中心検討が行われてきたところでありますが、第八回審議会において同委員より検討結果の報告が行われました。報告の要旨については、参考資料4としてお配りしてございます。  第四に、新都市像具体化については、第七回審議会において調査部会検討を求めることとされ、十月二日の第四回調査部会においてワーキンググループを設置して検討を進めることとされました。  以上のような課題ごと検討に加え、第四回審議会において、関係機関ヒアリングとして東京都からのヒアリングが行われております。  また、専門家ヒアリングとして、第五回審議会では、溝上委員片山専門委員から地震及び都市防災について、第六回審議会では、森地専門委員から交通計画について、第七回審議会では、井手専門委員から環境について、第八回審議会では、石井威望委員から情報通信について、それぞれ説明を受けたところであります。  このほかにも、第三回審議会において、移転意義効果東京一極集中問題についての検討及びキャンベラ、ブラジリアの海外事例についての事務局からの報告や、第六回審議会において、総理府世論調査結果の事務局からの報告などが行われております。  一方、調査部会については、本年四月二日に第一回会合が開催されて以来、審議会の求めに応じ、調査対象地域抽出設定移転費用モデル的試算等調査審議が行われており、検討成果については、逐次審議会報告されているところであります。  以上が今日までの国会等移転審議会開催経過概略でありますが、課題ごと検討状況の要点につきましては、お配りしております参考資料に沿って順次御説明申し上げます。  なお、審議会は、当初、来年秋の答申を一応の目安として調査審議が進められておりましたが、六月三日の「財政構造改革推進について」の閣議決定において、「首都機能移転問題については、その経緯及び財政構造改革においてあらゆる分野で痛みを伴う改革が進められている状況を総合的に勘案して慎重な検討を行うことを提起する」とされました。  このため、六月二十日に開催されました第六回審議会において、財政構造改革をめぐる経緯議論について国土庁長官から説明が行われ、意見交換の後、国会等移転審議会の今後の運営方針について確認がなされました。  その内容といたしましては、国土庁長官から、財政構造改革推進に関する閣議決定を踏まえ、六月六日の閣議において、財政構造改革期間、すなわち一九九八年から二〇〇三年度までは、原則として新都市建設事業に対する財政資金の投入は行わないこととし、今後とも、移転先候補地選定等必要な検討を引き続き進める旨の発言を行ったことが報告され、これを踏まえて、現在までの審議状況を考えると、まだまだ課題が山積していることから、必ずしも来年秋の答申にこだわることなく、さまざまな検討課題について十分な調査審議を行うこととされました。  また、答申や第ーターム取りまとめの時期については、本審議会調査部会における審議進捗状況を勘案しつつ、今後改めて審議会において相談していくこととされました。  それでは続きまして、主要な検討課題について、これまでの検討成果も交えつつ、調査審議状況を御説明申し上げます。  まず、移転先候補地選定については、参考資料211をごらんいただきたいと存じます。  先ほども御説明いたしましたが、全体の流れを三つタームに分けて、第ータームにおいて、概括的な調査を行い、複数調査対象地域設定することとされております。  調査対象地域設定進め方としては、まず、国会等移転調査会報告において掲げられている九つ選定基準を、日本列島上の位置あるいは東京からの距離等移転先位置条件に係る項目と、土地取得容易性地震、火山に対する安全性等移転先の新都市開発可能性に係る項目に分け、それぞれの項目について客観的な抽出条件設定し、この条件に適合する調査対象地域候補案抽出することとされました。  こうして抽出された候補案については、機械的な作業の結果であり、第二ターム以降詳細な検討を行う必要がないと明らかに考えられる地域もあるであろうことから、それぞれの地域ごと特性把握グループ分け及びグループごとに見た地域特性把握を行った上で調査対象地域設定するところとされたところであります。  他方、国会等移転調査会報告では、三百キロメートル以遠の地域についても、極めてすぐれた長所を有する地域については検討対象としておりますので、三百キロメートル圏の周辺地域や、地元地方公共団体等移転先候補地として表明している地域についても検討を加え、三百キロメートル圏内において抽出された調査対象地域との比較を行うこととされました。  このような作業を経て調査対象地域設定することとされておりますが、現在は、それぞれの地域特性について議論を行いながら検討が進められているところであり、十二月八日に開催予定の次回調査部会において、部会としての意見取りまとめを行うべく、引き続き検討が行われることとされております。  次に、移転費用モデル的試算について参考資料3により説明させていただきます。  首都機能移転に係る費用については、国土庁長官が主催した首都機能移転問題に関する懇談会平成四年六月の取りまとめにおいて、最大で六十万人、面積九千ヘクタール、費用総額十四兆円と試算されておりました。  しかし、この試算については、全体事業費のうち民間投資公的負担の範囲が分けて示されていない。また、移転事業は数十年の超長期にわたって段階的に行われるにもかかわらず、第一段階事業費について検討されていない。また、行政改革が行われ、行政機関移転規模が縮小した場合の移転費用について検討されていない。さらに、新幹線高速道路空港等整備費用についても検討する必要があるなどの問題があり、このため、国会等移転審議会において、これらの観点に加え、前提データ等を見直し再試算が行われたところであります。  試算結果の概要は、参考資料3の一枚目の表のとおりでありますが、今回の試算では、当面の第一段階事業、すなわち建設開始後十年程度国会中心として移転する事業費用試算が行われております。  これは、移転の全体事業費試算については、数十年の超長期先の不確定要素が多い事業費を提示することとなる一方で、第一段階事業費については、現実的な費用としての試算が可能であり、また公的事業が先行的に行われ、各年の財政支出についても議論しやすいことによるものであります。  その結果、第一段階、すなわち人口十万人、面積千八百ヘクタールに対応した十年間程度費用総額としては四兆円となり、このうち今後特に議論が求められる公的負担額については二兆三千億円となりました。  また、最終的な移転費用についても、平成四年の懇談会取りまとめとの比較検討も必要なことから試算が行われておりますが、移転規模については、現在の行政改革議論等を踏まえつつ検討する必要があるため、とりあえず行政機関の二分の一が移転するケースとすべて移転する最大ケースにより幅を持って示されております。  具体的な試算結果については、二分の一ケース費用総額としては七兆五千億円、うち公的負担額は三兆円、最大ケース費用総額としては十二兆三千億円、うち公的負担額は四兆四千億円となりました。  次に、首都機能移転に係る文化的側面検討について説明させていただきます。  首都機能移転については、その文化的側面を考察することの重要性が審議会委員から提起され、本年五月以降、堺屋委員中心検討が行われ、十月八日の第八回審議会において同委員より検討結果の報告が行われました。  その要旨は参考資料4のとおりですが、報告では、新都市のたたずまいや人々のライフスタイルが日本人すべてにさまざまな影響を与えることを検討すべきとされています。  特に、新都市のあるべき、または予想されるたたずまいについて検討を行い、新都市の個性として、軽やかな都市、落ちつきのある都市、ゆとりのある都市、新しい文化を体現する都市の四点が掲げられています。  その内容の一端を御紹介いたしますと、軽やかな都市とは、ビルが林立するような集中的な都市ではなく、政府の威圧感のないような都市。流動性が高く、生涯定住者が比較的少ない都市。また、落ちつきのある都市とは、物質的、量的な豊かさよりも精神的、質的な豊かさを表現した町のたたずまいを持つような都市。またゆとりのある都市とは、業務のリエンジニアリングや通勤時間の減少等により余暇が充実し、家族とともにゆとりある生活が営まれるような都市。さらに、新しい文化を体現する都市とは、従来の日本文化を継承しつつ、独自の新しい日本文化を体現する都市といったものです。  なお、検討結果については、今後、新都市像検討などに当たって参考とすることとされました。  最後に、新都市像検討について御説明いたします。  移転先の新都市像については、国会等移転調査会報告において、文章により幾つかの姿が記されているところであります。しかしながら、今後、委員の間で共通のイメージを持って候補地選定作業を進めるためにも、また国民的な議論を高めていくためにも、新都市の姿をより具体的に検討し、そのイメージを視覚的にも示すことが必要ではないかとの問題提起が審議会においてなされました。  このため、国会等移転審議会においても移転先の新都市像について検討することとし、調査部会に石井幹子委員を座長とするワーキンググループを設け検討が開始されたところであり、来年春から夏ごろをめどに検討結果が取りまとめられることとされております。  以上が、昨年十二月以降、今日までの国会等移転審議会調査審議状況概略であります。これをもちまして御報告を終えさせていただきます。どうもありがとうございました。
  9. 久保亘

    委員長久保亘君) 以上で説明の聴取は終わりました。  次に、国会等移転に関する件について参考人から御意見を承ることといたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  横島参考人におかれましては、御多忙のところ当委員会に御出席賜りまして、まことにありがとうございます。  本日は、忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人から三十分程度意見をお述べいただき、その後九十分程度、午後五時三十分までを目途に委員の質疑にお答え願いたいと存じております。  なお、御意見及び御答弁とも着席のままで結構でございます。  それでは、横島参考人にお願いいたします。横島参考人
  10. 横島庄治

    参考人横島庄治君) 御紹介いただきました高崎経済大学地域政策学部の横島庄治でございます。  本日は、当特別委員会にお招きいただきまして、私のつたない意見でございますけれども、お聞きいただく機会を得ましたことを大変うれしく思っております。  本日は、高崎経済大学地域政策学部教授という立場でお話を申し上げるわけでございますが、昨年の十一月までNHKの解説委員をしておりまして、その立場から、現審議会の前身であります調査会の専門部会二つ委員を拝命いたしまして、その間の勉強も含めて私のテーマにしております関係からいいますと、その事情からの発言ということになることをまず御了解いただきたい。したがいまして、前身であります調査会は、国会の両院の決議及び法律に基づく国会等移転をどのように進めるかということについてのありようを研究した調査会でございますので、私の意見もおのずとその線に沿ったものであることを御承知おきいただきたいと思っております。  お手元に「首都機能移転のもう一つの発想」ということで私のきょうの意見のレジュメをお届けしてございます。そのほかに資料一、二、三ということで三点資料をお届けしております。このレジュメに従いまして、またこの資料によりまして三十分のお時間をちょうだいいたします。  御存じのとおり、各国においての首都ないしは首都機能移転という問題については、場合によってはその国の独立てあるとか、あるいは革命であるとか、あるいは東西ドイツのような併合あるいは統一であるとかいうような大きな出来事に追随するといいましょうか、対応して行われることが一般的でございました。あるいはブラジリアのようにこの種の大イベントというよりは経済的大開発をやろう、こういう発想から行われた国家的な経済プロジェクトというような発想も例としてはございます。  それに引きかえまして、我が国において行われております目下の首都機能移転のきっかけ及びその目途とするところは、いささか私は事情が異なるであろうと。これは各識者の意見もそのようなことになっておりますが、少しそのような意味でいいますと、乱時の移転あるいは移動というよりは平時、平和時の移動ということになります。  例えて申し上げれば、いい例えでないかもしれませんが、テニスのボールは先方から打ってきたものを打ち返すというリバウンドボールを打っていくわけですが、平時の移転というのはとまっているボールを打つゴルフのようなものでございまして、なかなかエネルギーの生まれ方が難しい、そういうテーマであろうか、そこに我が国が今抱えているこのテーマの難しさが潜んでいるということも言えるのではないかと思っております。  ただ、この問題は今に始まったわけではございませんで、さかのぼれば明治維新以来の問題でもございましょうし、近時におきましては、昭和三十年代に磯村英一先生が富士のすそ野へ遷都という議論を起こされて以来、四十年の歳月を経てここで一気に具体化した議論でございますが、その都度幾つかの理由が出ておりまして、その理由の幾つかが並びかえられまして、一番の理由になったり三番の理由になったり、そういう意味では社会的状況、政治的状況あるいは経済的状況に応じてその理由が順序立てを変えて登場しているという意味でも、他の国に余り例のないテーマの経緯をたどっているということが言えるかと思います。  もちろん、いつの時代にも統一して言えた東京からの首都機能移転問題というのは、東京への一極集中の弊害をいかに解消するかということに大きな主眼が置かれていたことには変わりないことでございますけれども、その後に、地方分権あるいは景気浮揚あるいは危機管理の問題から、そして最近は、新しい世紀に向かって国民の夢をはぐくむ人心一新という視点から主張される方もおりまして、こうした幾つかの理由が人によって時代によって順序を変えているということは先生方御賢察のとおりでございます。  特に、現在、国土審議会審議を進めております四全総に続く国土の総合的な計画という視点から見ますと、この首都機能移転という問題が、新しい国土開発ではなくて新しい国土経営あるいは新しい国土編成という視点からどのように組み込まれるべきなのか、あるいはそれは別の問題とすべきという論者もおいでと思いますけれども、そういう視点も新たに重要な点として加えておかなければ全体像を見失うおそれがあるのではないかということが私の基本的な考え方でございます。  さて、本日、私から申し上げたい論点は二点ございまして、一点は、危機管理という視点がえてして軽んじられるということではないにしても、第一の理由から消えやすいということについていいのかどうかということでございます。第二点は、今、調査会、審議会を通じて検討されている手法が、ある一点に三権の府を統一して動かすということを前提に検討がされておりますけれども、果たしてそれだけの検討の前提で十分かどうか。別の見方として、もう少し幅広い範囲に幅広い機能を分けて移すということが可能ではないだろうか、その場合のメリット、デメリットは何なのかという二点について主に十分間ずつお話をさせていただこうと思います。  第一点の危機管理の問題でございますけれども、これはあいにく先生方のお手元に資料が間に合わなくて恐縮でございましたけれども、日本国土が置かれている極めて恵まれないといいましょうか、自然的に厳しい状況というものを我々はもう少し基本的に認識しておかなければいけないのではないか、こういう視点でございます。  我が国土は三十七万平方キロメートルでございますが、これは地球上の陸地の〇・三%にすぎません。ところが、この三十七万平方キロのうちの平地率はわずか三一%でございまして、残り六九%は丘陵山岳地帯であります。さらに、国土全体の一二%余りは沖積層と言われる非常に緩い地盤の上に乗っております。かてて加えて、日本列島そのものがフィリピンプレートを中心とする複雑な地殻構造の上に乗っております。こうした状況を概括しながら、さらに加わりまする不利な条件が非常にたくさんあるということでございます。  第二点は、列島を非常に急峻な脊梁山脈が貫いております。このことによって太平洋側と日本海側が厳しく分断をされております。しかも、その厳しい山脈から流れ出る川は太平洋側にしろ日本海側にしろ極めて急峻な河川である、こういう状況がございます。  二番目に、そこに降る雨の量でございますが、日本の平均雨量は年間千七百五十ミリでありますけれども、これは世界の平均八百ミリに比べて二倍を超えております。非常に多い雨がこの急峻な国土を襲って急流を流れると、こういう状況になっております。  雨だけではなくて、台風の年間発生率は、これは理科年表による数字でございますが、日本の近くで発生する台風が年間平均二十七・八回でございます。そのうち十一回日本列島に接近をします。そして、年間一丁八回の平均で日本に上陸しております。雨が多い上に加えて、集中的に雨が降る台風が非常に日本列島を襲う頻度が高いということも日本列島の苦しい状況を物語る数字でございます。  このほかに、豪雪地帯が非常に多い、あるいは御存じのように火山が多いという条件がございます。そして、最終的に日本の最も国土的不幸となってまいりますのが地震の発生でございます。この〇・三%の非常に狭い日本国土に、世界じゅうで放出されるエネルギーの一〇%が集中していると言われております。特に、マグニチュード六以上の発生回数だけで見ますと、日本で発生する回数が世界で発生する回数の二八%を占めております。  私は地理学の専門ではございませんけれども、以上拾い上げた数字を見まするに、我が国がいかに自然災害に弱い国か、そして地震において危険な国かということがわかります。その結果、私どもは安全な国土をつくるために、アメリカやヨーロッパ大陸の国のようなことではとてもまいらない多額の社会資本の投資を余儀なくされております。  日本高速道路をつくる場合の用地買収費を含めた一キロメートル単価は、全国平均で八十億円と言われております。首都圏にありましては、三百億円から五百億円と言われております。これは、土地の値段との関係もございますけれども、橋をつくり、トンネルをつくり、地震に対する耐震性を高めるということが絶対条件になっている関係から、日本社会資本というのは他の国に比べて非常に多額の費用を要し、そして厳しい技術開発を求められながら今整備が行われていると、こういう実情を考えなければ、私どもの国土に対する視点というものがやや十分さを欠くことになるんではないかと思います。  こういう中で起きた平成七年一月の阪神・淡路大震災、二年と十カ月を過ぎまして、ともすれば私どもの記憶から消えやすい状況になってまいりましたけれども、そのこととこの首都機能国会等移転の問題は、やはりしっかりと組み合わせた上で位置を決めておかなければいけないんではないか。  財政論的な立場から、先ほど国土庁から報告があったように、最終的には最大限公費として四兆四千億円の負担というふうに言われておりましたけれども、この四兆四千億円が、果たして我々がこの危険な国土の上に安全な首都というものを守り続けていく上で高過ぎるのか安過ぎるのかという財政論もやはり見ておかなければいけないのではないかと私は思っております。  先ほど、一キロメートルの道路をつくるのに八十億から百億と申し上げましたが、四兆四千億という最大幅をとりましょう。そして、これを二十年とすれば、単年度で年間二千二百億円でございます。四十年とすれば千百億円でございます。それですから、千百億円の方をもしとるといたしますと、一キロにかかる道路百億円といたしますと、道路、高速道路をつくるのは十一キロ、十一キロの高速道路をつくる費用を単年度ごとに使いながら、安全な国土のための新しい首都機能の分散を行うということが必要な経費なのか、ぜいたくな財政支出なのかということは、立場上いろいろと見方はあると思いますけれども、一つの参考数字にはなるかと思います。  一方で、小さく見る数字だけでは不公平でございますから、大きく見る数字といたしましては、東京湾アクアラインが来月の十八日に開通いたします。川崎−木更津間を結ぶこの海底トンネルと海上橋の高速道路でございますが、一兆五千億円の費用を要しております。四兆四千億円はおよそ東京湾アクアライン三本分という数字でございます。これは考え方によっては巨額な社会資本になります。高いと見るのか安いと見るのかは道路だけで見ても映り方が大変違うものであると。そこに国家のリダンダンシーをどのように守るかという概念を盛りつけたときに、財政的な視点から三年の凍結はやむを得ないといたしましても、我々がその先で考えなければいけない安全性というものについて少し思いをいたさざるを得ないのかなというふうに私は思っております。  レジュメの(二)がちょっと順序が逆になって飛びましたけれども、少し申し上げておきたいのは、この議論の間で東京との比較考量という議論が出ました。東京一極集中によってすべての機関、すべての人材といってもいいと思います、あるいはすべての資金が集中的に集まっているということは現実でございますけれども、その東京が非常に効率的な首都経営をしてきたこともまた一つのメリットでございます。  ただ、余りに東京にばかり集まって、東京のひとり勝ちという状況が今出ているわけでありますけれども、その東京のひとり勝ち状態が本当に国民全体にとって幸福な状態なのかどうかということについては、地方分権や、本日も盛んに議論が行われておるでありましょう省庁再編成を中心とした行政改革などのポイントから見ましても、やはり見ておかなければならない現象ではないかと思います。  特に、国の国家機能が集まります首都ないしは首都機能というものは、今までは集中的な国家運営による合理性を追求してきたわけでございますが、これからは効率的な国土運営を図るためのいわば新しい視点というものを持ち込まざるを得なくなってきておりまして、今までの合理主義とこれからの効率主義はおのずと時代的には入れかわらなければいけないというふうにも考えられるわけでございます。その点からも東京への、何もかにもが集まっていると。よくパリもそうではないか、ロンドンもそうではないかという議論がございますけれども、ロンドンやパリの一極集中東京一極集中は私はかなり内容的に違いがあるんではないかというふうに思っております。  欧米各国の首都というものは、確かに人口でいいますとパリ市中人口八百万ですから、東京二十三区とほぼ匹敵するような人間が集まっているわけです。しかし、国のそうした首都機能以外のものは全国に確実に点在をしながら、先ほどの文化論も含めて国土に非常によきバランスを得ているわけでありますけれども、どうもその辺で東京のひとり勝ち状態というのは、やや言葉の適切さを欠くかもしれませんが、その種の感じを東京以外の全国各地が持っているとすれば、その状態をどのように解消するかということと首都機能移転とが無関係ではいられないというふうに私は論理的には言えるんではないかと思っております。  レジュメの(四)に移らせていただきます。  論点の二番目でございますが、先生方、あるいは御視察があったかもしれませんが、オーストラリアのキャンベラは一九〇二年に独立したときにどこに置くかということで、百年がかりでつくられた新しい首都でございまして、大変環境的にもよろしい、土地の問題も地価高騰を防ぐような新しい制度を盛り込んだところでございますけれども、いかんせん日本とは社会的状況国土状況が違い過ぎます。確かに環境共生型の都市というモデルにはなると思いますけれども、それ以外のところでは少し教科書になりにくいんではないかと思います。  ブラジルについてもまた同様でございますが、さらにブラジル的な開発で今首都を興そうとしておりますのはマレーシアでございまして、マレーシアのクアラルンプール、首都でございますが、ここから南におよそ二十キロのところにプトラジャヤという新しい首都の分散先を今突貫工事で建設をしております。マレーシアは、ここは国会は動かさずに行政府を動かそうということで、来年の十月に首相府がここで事務を開始するべく、あと一年間の残りを物すごい勢いで開発をしております。本来、ここはアブラヤシのプランテーションだったところでございますが、民有地を国が強制的に買い上げまして、そこを開発することで土地の価値をふやして、それを民間に売却するといういわば不動産的な仕掛けで資金を得まして、その資金を政府が公的に投入して首都機能の建物づくり、開発をする、こういう手法をとっておりまして、極めて危ない手法でございます。  私、この五月に見てまいりましたが、案の定、昨今のマレーシアの金融危機を含め、経済危機を含めてややこの計画が苦しくなってきているそうでございますけれども、日本としては、当然のことながらこの種の開発中心首都機能移転という都市づくりは絶対に許されないという意味では、これはモデルにならないと思います。  よく申し上げるのはドイツのケースでございますが、ドイツはベルリンに二〇〇〇年に首都を開府いたしますが、現在はボンにございます。一般的に伝えられておりますのは、ボンとベルリンの関係が少しひずんで伝えられている感じがいたしますので少し整理をした方がよろしいのではないかと思います。  実は、ドイツの連邦議会はベルリンに移りますけれども、当面、連邦の上院、参議院でございますが、これはボンに残ることになっておりまして、議会そのものが二つ首都機能の町に分かれて存在するという状況がしばらく続くというところは割合に知られておりません。  また、ベルリンに移る政府機関につきましても、全部が移るように伝えられておりますけれども、実はベルリンに移る政府機関は、大蔵省、外務省、法務省、経済省、交通省、主なものでございます。その他ございますが、数で言うとほぼ半分でございます。首相府と今申し上げたような行政官庁はベルリンに移りますが、ボンに残る行政府としましては、環境省あるいは郵便通信省、国防省、保健省などなどはボンに残ることになっております。  はっきり申し上げますと、東西ドイツの統一によるベルリンの象徴性というものを重んじて首都を移すわけですけれども、結論的に申し上げますと、ドイツは二部制度をとると言ってもいいぐらいのベルリンとボンのバランスになっております。  そのほか、日本の最高裁に該当します連邦裁判所はぐっと南のカールスルーエというところに今もございますが、これは移しません。そのほかミュンヘンやフランクフルトに連邦銀行などが点在しまして、詳しい資料は国土庁に用意してあると思いますから御必要ならお取り寄せていただきたいと思いますが、ドイツの場合には、二つ首都機能を持った複眼構造にしつつ、さらに幾つかの行政機関全国各地に点在をするという形をとり続けることになっております。  その意味で申しますと、ベルリンに首都が移るという言い方はあるいは必ずしも正解ではないのかもしれません。もう少し広い視点でドイツは国土全体にバランスをしている。これはナチスドイツの国家統一、いわば独裁政権を生んだ土壌を国土的に再現したくないという西ドイツ時代の基本的な政策を反映したいわば分散配置ということにも起因しているようでありますけれども、非常に独特の行政機関の配置になっておりまして、これは最後のところで結びといたします分散にもひとつつながるものかと思います。  ドイツに続いてイギリスにつきましては、我が国の調査会、審議会は少し視点が欠けていたと私は思うんですけれども、イギリスはもっとはっきりとした行政府の分散主義をとっておりまして、これは資料の二にございますが、ロンドンからの行政機関移転については、資料二のA4に盛ってあるとおり、一九四〇年の第一次分散から始まりまして現在に至るまで、第四次に至るまで何度かにわたってその都度の政権がその都度の理由づけをしながら分散配置をしてきております。  第一次分散は、御存じのように戦争中の危機回避ということで分散を行っておりますので、戦争が終わった後はまた戻しているというふうな行って来いのいきさつもございますが、現在は一九七三年に出されましたハードマン勧告というものに基づいて、一時サッチャー政権ではやや趣旨が変わりましたけれども、全国に行政府の分散を行っております。  このハードマン勧告の趣旨は幾つかございますけれども、一つは地域が活性化するために国の機関をなるべくたくさんの都市に分散した方がいいという地域経済あるいは地域活性化論が一つ根強くございます。それから、なるべくお金をかけないために、既存の中小都市の中にその都市の規模に応じた行政府をはめ込んでいくという手法をとっております。このことによって、新たな都市づくりを必要といたしませんから、社会資本の整備費が安上がりになるということもねらいにあったようでございます。  それから、イギリスと日本は学生諸君の就職志向というものが違いまして、イギリスの場合には一定の大学を卒業すると全員が官僚になるというようなことにはなっておりません。よって、行政府に人材が集まらないという悩みがあったそうでございます。そのために、行政府の方が全国にいわば分散して出かけていってよき人材をその地で確保するというような確保のねらいもあったようでございますし、そのことによって今度はその地域で関連する民間の施設が呼び込まれる、企業が発生するということで、新たな雇用創出も目指そうと。  さまざまな理由づけの中で、イギリスはロンドンに国会を残し、行政の中の企画立案部門を残しつつ、エージェンシーを外に出した、こういう生き方をとっております。  今、我が国では行政府の中のエージェンシー化が熱い議論を続けておりますが、どういう姿になるか。その姿が見えたときに、イギリス的なエージェンシーの全国配置という手法は日本にとって非常によきお手本になるんではないかと思っております。日本の場合には一カ所にということになっておりますが、ただ目下のところ、第一次分としては国会をまず移転する、こういう考え方になっております。そのことは、私はそれでよろしいんではないかと思うんですが、国会移転した後の二次移転につきましては、今申し上げましたような行政府の中のエージェンシー化されたものをなるべくそこに集めずに、むしろ全国に適正に配置をすることによって、新しいポスト四全総に合うような地域活性化と国土全体の調整の図られた機能の配置ということも同時に図られることでよろしいんではないか、そういう考え方が成立してもよろしいんではないかということにつなげてみたいと思います。  もう一点申し上げれば、日本首都機能というものほかくのごとく熱い議論を呼んでいるわけでございますけれども、首都そのものというものが今それほど国家の権威を象徴するようなシンボル性だけが求められているか、そういう時代でもございません。国民が国家を選ぶ時代であります、あるいは国を選ぶ時代であります。どんどん外へ出ていっている時代に、日本が威風堂々たる国会議事堂とそれを守るがごときがっちりとした行政府が高級施設の中へはめ込まれるというような首都イメージがいつまで生きているのかは、若干時代的には疑問になってまいりました。  もう少し身軽で機能性豊かで、そして電気通信の能力を取り込んで、さらりとした首都日本全体の中に機能を分散しつつ配置されるというふうな姿を想像することも、私はこの際一つの可能性として考えておいてもいいんではないか、そんなふうなことを思っております。  いただいた時間が参りましたので、とりあえず三十分間の参考人の話は以上にさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  11. 久保亘

    委員長久保亘君) どうもありがとうございました。  以上で参考人意見陳述は終わりました。  これより参考人に対する質疑を行います。  本日は、あらかじめ質疑者等を定めず、委員には懇談形式で自由に質疑応答を行っていただきたいと思います。質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って質疑を行っていただきたいと存じます。また、委員の一回の発言時間は、おおむね三分程度でお願いしたいと思います。  なお、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  12. 矢野哲朗

    ○矢野哲朗君 先生が、財政的な問題からどうこうということではなくて、あくまでも危機管理という意味合いから首都移転ということを忘れちゃいけないと、私も同感なんであります。  ですから、再確認並びに先生の知識を開陳いただきたいのでありますけれども、今、東京にこのまま首都機能が置かれて、どういうふうな災害が想定されるかわからないけれども、万が一にも阪神・淡路大震災に準ずるような災害があったときにはどれだけの被害が起こるのか。先ほどから繰り返すようですけれども、財政的な話が先行しちゃってその辺が薄れてきたものですから、あえてこの場をかりて、先生の知識なども開陳いただきながら、これだけ危険性があるんだなということを再確認させていただきたいと思うんです。
  13. 横島庄治

    参考人横島庄治君) 私は地震学者ではございませんので今手元には持っておりませんが、東京都が、関東大震災程度地震が来たときにどのくらいの被害が出るかというのをきちっとした数字で出しております。  概数で恐縮でございますけれども、死者九万六千人という数字があったと思います。この数字が出たときに甘いという批判がありまして、その程度で済むのだろうか、もっと甚大な人的被害が出るのではないかというふうに言われた数字でございまして、内輪に見積もった数字かと思います。  関東大震災が起きるかどうかということの地震学者の推定というのは、昨今マスコミでもいろいろな角度で取り上げられておりますけれども、七十年周期説とか百年周期説とか、それは学者によって違うわけですが、しかし現在において、東京あるいは東海で直下型ないしは周辺地震がいつ起きてもおかしくないという状況の中で、この人的被害が十万人という数字が内輪であるということの重大さも考えなければいけないと思います。  東京の下町におきましては、御存じのとおり、非常に旧木造住宅の密集地帯がたくさん残っておりまして、これを再開発で建てかえるということになりますと何百億かかるかわからないという状況のまま残念ながら放置された状況になっております。ここで火が起きた場合の東京の火災の延焼というものは予想がつかないと言われております。  特に東京の場合には、道路が延焼防止帯としての役割を果たすべきなのでありますけれども、御存じのとおり、環七がようやくでありまして環八はまだ半分でございます。広い道路というのは、交通の用に供すると同時に、いざ火災のときの延焼防止帯としての役割が大きいわけでございますけれども、その意味での環状道路が十分に完成していない。まして放射状の道路につきましては高速道路ももちろん完成しておりませんし、それぞれの放射道路が非常に狭くて、日ごろ交通渋滞を来しているような現状の中では縦割りのいわゆる延焼防止帯が全くないに近い。そういうような考え方からいきますと、非常に火災の危険が大きいということが言えると思います。  それから、震災のときの避難地の問題でございますが、どこかにということで必ず一カ所、千二百万の都民は指定された場所を形の上では持っているわけでありますけれども、その場所が、歩いてとても行かれない、二キロも三キロも離れているというようなところに無理をして割りつけをしているのが実態でございまして、避難場所の確保は恐らくパニック状態になったときには何の役にも立たないのではないかと言われております。首都機能移転の場合のいわゆる霞が関周辺の新しい機能として、そこを一気に空閑地として残しておくべきだと言う方がいらっしゃいますが、それは主にその種の避難地がいかに少ないかということとの裏表の話になっておりますけれども、先生の御質問に、私今手元に数字がないのでその程度しかお答えできませんけれども、大変な騒ぎになることだけは事実だと思います。  もう一つ、首相官邸の問題もよく言われますけれども、官邸の建てかえが云々と言われております。  どこに首都機能が移ろうが、あるいは結果的に移るまいが、首相官邸の安全管理の問題につきましては二つなければいけないのだろうと私は思うんです。どこかに移るのに首相官邸を建て直すのかという議論がございますけれども、これは本末転倒でございまして、いわば複眼的なリダンダンシーを置いておかなければ、行政の府としての中心が危険な状態にさらされたときにヘッドクオーターとしての機能を一体どこに果たさせるのかということを考えますと、官邸は二つなければいけない、私はそのように思っております。
  14. 長谷川清

    ○長谷川清君 大変示唆に富んだお話を聞かせていただいてありがとうございました。  私は、この委員会には初めて所属をしましたので、今までの議論やいろんなことはわかっておらないのですが、感じますのに、ヨーロッパの都市日本都市比較で、パリの話も出ましたけれども、これから先東京を離れてどこかに移転をしようという場合の移転先条件の中に、社会資本ですね。  例えば今の災害の問題も、今の東京が困ったのは、電力は電力で地下の中へ入っている、上水道、下水道が勝手に入っている、光ファイバーは別に入っている。パリの地下はありとあらゆる分野が地下共同溝に整然とさあっと、すべての社会資本が、しかしこれは大変なコストもかかる。一電力会社とか一ガス会社とか一下水道とかあるいは通信というだけではない。それらが寄ってたかって、しかも国という単位で、道路工事の何十倍もかかるようなそういうことでありますだけに、そういう分野が、今東京の場合には中央かいわい周辺で後追いで。  だから、道路をほじくり返して地下共同溝をつくって、そこに整理していくということだけでも大変な費用と年月がかかる。決定的に違うのは、やっぱり日本の場合にはそういう目に見えない部分の社会資本というのが非常に脆弱だ。その上一に、東京のように何十階建てのビルがばんばん建っていて、後追いで道路をほじくり返して、それを今やろうとしております。これは今の計画でいっても何十年もかかってしまう。  そういう状況なのに、私はこの調査会のあれをずらっと今見てみますると、そういう部分はまずほとんど出ていないし、九つ基準の中の八項に「水供給の安定性」というのが一言出ているぐらいでして、そこら辺を先生は都市工学上の御専門の立場からどのようにお考えになっているだろうかという点をひとつお聞きしておきたいと思います。
  15. 横島庄治

    参考人横島庄治君) ただいまの御質問は調査会が出しました九項目に絡んでの御質問と承れば私はお答えする立場が発生いたしますけれども、そういう立場でお話をさせていただけば、九項目設定のときの都市基盤の整備をどうすべきかという議論は非常に時間をかけてやっております。  そのときに出てきた話は、今お話しのように、いかに安い形で社会資本整備をするかということが本題でございまして、実は、今東京で先生御説明のとおり道路一本つくるにしても物すごくお金がかかる。この東京の過密状態を解消するために、あるいは安全性を確保するために、あるいは景観を整え美しい首都をつくるためにここをいじればいいじゃないかという御議論は確かにございますけれども、込み過ぎておりましてそれは大変なお金がかかるんですね。そのことよりも、いっそ新しい首都に最低規模のものをきちっと据え込んだ方が安全で安上がりで確実な新しい機能の期待ができるという議論がありました。  ですから、当然のことながら、いわゆる地下共同溝的なものはもう大前提でございます。光ファイバーも埋め込むことがいいということは検討段階では何度も出ました。それから道路につきましても、いわゆるCO2が発生しないような形での電気自動車の導入とか、あるいは道路を全部地下にしてしまって、地表部分については歩行者が歩いて動けるような都市をつくってはどうかというようなことまで考えまして、新しい都市ができるときの可能な限りの経費の節減を図りながら新型の都市をつくりたいということは確かに調査会では夢として語られました。しかし、いずれにしても、これは費用との関係がございますので果たせるかどうかはわかりません。  もう一つは、巨大な構造物をつくるよりは木造の国会議事堂をつくってはどうかというふうな意見もございまして、これは文言上は調査報告に入っておりませんけれども、豊かな緑の中に静かにたたずまう日本古来の木造建築の国会議事堂などというのが一つの新しい時代の象徴性じゃないかとまじめに議論をした経過はございます。私が賛成かどうかということではございませんけれども。
  16. 長谷川清

    ○長谷川清君 そうすると、この費用の中には今のようなものは入った計算でこれだと。
  17. 横島庄治

    参考人横島庄治君) 入っております。
  18. 長谷川清

    ○長谷川清君 それにしては割と安い上がりですね。
  19. 横島庄治

    参考人横島庄治君) そうですね。
  20. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。大変歯切れのいいお話、ありがとうございました。  首都移転の問題では、移転先と同時に跡地、これが非常に重要な問題になると思うんですけれども、国会等移転調査会報告、それを見ますと、東京の整備について、都心部を中心に発生する二百十ヘクタールぐらいの移転跡地、ここを東京災害対応力とかあるいは危機管理強化にに充てる、あるいは国際的な経済、文化機能として利用するなどと書いているわけですね。  この跡地の約二百十ヘクタールの内訳について、参考人はもちろん御存じだと思うんですけれども、この報告が出されたおととしの十二月以来、私はぜひこの内訳が知りたいということを要求していたんですけれども、なかなか国土庁の方でその提出がなくて、結局、出すと物議を醸すとか、ないとか、いろんな話があったわけですけれども、最近手に入れて読んで、これは十三ページにわたる詳しい内訳が書いてあるわけですね。これを読んで改めて思ったんですけれども、確かに移転したら東京が大変なことになるなという実感がこれを見ると迫ってくるわけですね。やっぱりそれだけの確かに物議を醸すものだなということを痛感するわけです。  資料には、国会議事堂や議員会館、首相官邸、最高裁判所、中央官庁など庁舎七十施設、これは計算しますと八十・四ヘクタールなんですね。それから、大蔵省関東財務局が所管する宿舎など、合計四百三十九施設、百三十二・二ヘクタールの施設名、住所、敷地面積の内訳がずらりとリスト化されているわけです。この中からは宮内庁関係の施設は除かれているというのも大変興味深いと思いましたけれども、国土庁はこれらすべてが実際の移転跡地になるわけではないとは言っているわけです。しかし、このリストに記載されていない施設が移転対象とならないのと同様に、記載されているものがすべてその対象になるということは間違いない事実だと思うんです。  そこで、二つお伺いしたいんですけれども、一つは国際都市東京の整備について、国土庁のリストから数えますと、業務商業施設としての利用が可能な恐らく一ヘクタール以上の大規模な敷地というのは、数えますと全部で五十五施設あるわけです。このうち、大半が居住系の用途地域になる宿舎地域を除くと実際は約三十、そして都心五区にそれがあるということになるわけです。これらに国際金融とかビジネスに資するような施設をつくっていくと、結局はやっぱり新たな一極集中が生まれるんじゃないかなという、そういう懸念を持つわけです。これは、東京都が実際にそういう立場から一極集中是正どころかもっと集中することになるという厳しい案を出しておりますけれども、その点で本来の移転の目的との関連で矛盾しないかという、それが第一点です。  それから第二点ですけれども、ちょうど矢野先生から先ほど最初に質問があったことに関連するんですけれども、東京の大規模災害の可能性、危機管理の問題との絡みなんです。  調査会の報告では、移転跡地を利用して東京の大規模災害に対する脆弱性を克服するということが強調されているわけです。しかし、東京都には現在数えますと全部で百四十八カ所の広域避難場所が指定されているわけです。その面積を見ると最低でも三ヘクタールあるわけです。また、東京都の防災会議報告書、これを見ますと、この報告書が定めている避難場所候補地選定基準というのは十ヘクタールの空き地というのが目安になっているわけです。  そういうふうにして考えていくと、この国土庁のリストを見ると、既に指定されている例えば霞が関の官庁街とかあるいは大規模な宿舎の跡を除くと、実際上そういう場所というのはないわけです。可能性のある場所さえもないわけです。だから、空き地をつくるどころじゃなくて、要するにそもそもそういう場所がない。そうすると、災害防止の向上ということを言った場合、あるいは危機管理と言った場合、ちょうどそういう場所がこういうところには見当たらない。そうなると、脆弱性克服といっても、結局そういう対象となる空き地は候補となっているこのリストから探してもそういう場所がないということになる。そうすると、東京の危機管理というのは、あるいは大規模災害に対する対応というのは非常に弱いものになるんじゃないかという気がするんですけれども、その点お尋ねしたいと思います。
  21. 横島庄治

    参考人横島庄治君) 二点のお尋ねだったわけですが、一つ目の国際都市東京首都機能を外したときにどういう形になっていくのか、そういうお尋ねだろうと思うんです。  これはさまざまな見方があると思いますけれども、私自身は、経済都市東京の力というのは、今若干落ちておりますけれども、それはそう簡単にひっくり返るようなもろいものではないと思っております。ですから、お尋ねのような現象が起きないとは限りません。つまり、都心の一等地があけばそこに経済的な業務が進出してくるというおそれはあると思います。しかし、東京がどこまでそれを受け入れるかということは、行政的には国有地でございますから、制約は私は可能だと思います。ただ、それを財政援助のために民間に売却することを目的とすれば別でしょうけれども、一定の制約をした方がいいというふうに国が考えるならば、それはそのような思わしくない進出を食いとめる手だては私はあると思います。そこは政策論ではないかと思いますね、不十分かもしれませんが。  二つ目の部分につきましては、逆に私は、緒方先生がおっしゃるような意味でそういうおそれがあるという土地がもしあるならば、それは非常にいい土地ということになります、一番で心配するような該当地があるとすれば。そこをもしあけておけばそれはある意味では非常に豊かな安全な、狭いとおっしゃったけれども、私は必ずしも巨大な場所がどんとなければ避難場所にならないとは思っておりません。ある地域に絶対安全なスペースが確保できるということが、各所に点在するということが非常に大事でありますから、東京のこのような密集地帯の中で、地価が高い中で、例えば宿舎があいたというようなところはそのまま、もし財政的に許すならば空閑地としてあけておくことで避難場所としての安全性を十分に発揮できると私は思いますけれども、ここはちょっと御意見と違うかもしれません。  もう一つは、今東京がどういう都市になろうかというときに、国土庁の国土審議会で行われている美しい国土づくり、あるいは都市そのものの景観というものを考えていく上での例えば緑化率とかあるいは公園率とかというものに対して、決してそれはむだな貢献ではないということは言えます。ただ、そのことのいわばメリットが、首都機能が出るというふうなこととそろばんとして、あるいは都市としての価値観として合うかどうかということを精査していったときに、全部の対象地域がそれでいいということにはあるいはならないかもしれませんけれども、私はそのような期待を持てるだけの土地が都心に埋め込まれているんだろうと。  ちょっとお時間をいただきますが、今東京というのが過密だと言われておりますけれども、例えば山手線に朝の八時台に乗りますと、身動きがとれない状態でしりを押されて乗るわけであります。新宿から乗って原宿ぐらいまで来ますと、何となく揺れて自分のすき間ができて、こうなっていた手が下がるぐらいの余裕ができるんです。こうなっていた手がこう下がるという余裕が実は非常に大事な余裕ではないか。それはわずかなスペースですけれども、ちょっとした余裕というのが都市の過密状態緩和に非常に大きな役割を果たすというのは、あの満員電車で二、三分揺れたときに何となく周りに少しあきができるという状態の現出というのは、都市の過密状態にとっては、数のカウントは少ないかもしれませんけれども、非常に有効な解消策になるだろうというふうに私は思っておりますけれども、いかがでございましょうか。
  22. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 私は、東京で生まれて東京で育ちました。関東大震災は四つのときに体験しました。そして、後で関東大震災関係の資料を私の父親が集めて、今でも持っているんです。  それを見ますと、東京のいわゆる下町の方は、特に浅草近辺を中心として十万からの人が死んでしまった。それで、一人一人の身元がわからなくて束にして火をつけて焼いてしまった。その焼却した後のお骨が山のようになっている、そういう写真もあるんですよ。  ところが、私が住んでおりました、今の文京区ですが、文京区あたりではあの下町のように大火災が起きなかった。それから、今でも覚えているのは、すぐ向かい側のうちは屋根がわらががさっと土煙を上げておっこちてきて、それでも家屋の倒壊したのはなかったんです。  ところが、震災の記録を見ますと、京浜地帯から神奈川県横須賀あるいはまた熱海の近くまで非常に揺れが大きかったんです。そして、家屋の倒壊もあった。鎌倉あたりでは皇族の方の別荘までつぶれてしまった。そして、死傷者が出ている、こういう状態なんです。だから、同じ東京都でも、いわゆる山の手の地区は割合と無難だった、下町の方がめちゃくちゃにやられているんです。こういう違いがあるんですね。  それで、私も驚いたんだけれども、そういう違いがあったために東京の復興というのは非常におくれました。今でも道路は関東大震災のころと現状とではそんなに違っていないんですよ。これは恐るべきことだと思うんです。道路というのは簡単に広がらないんですね。だから、何とかしなければ渋滞は解決できないということはわかっているんだけれども、道路を拡張することはできないですね、今では。そうすると、そういう状態で災害が起きた場合にはどんなことになるか。これはとても机の上で計算し切れないほど物すごい被害が出るんじゃないかという気がするんですよ。  そういうことを考えると、東京集中する人口を減らさなきゃならない。私のところの埼玉県から一日に百万です、東京へ通う人が。千葉県あるいは神奈川県も同じぐらいです。一日に百万ですから、こういう人が集まっているという状況を何とかしないことには、もし大災害が起きた場合にはその被害の度合いというものは想定できないようなことになると思うんです。そういう状況にあるということを考えるならば、やはり東京人口を減らす以外にないだろうと。  それから、特に道路だって広げなきゃいけない。東京でもってそういう大災害があった場合に逃げ場所があるのは千代田区ぐらいなものです。皇居周辺に逃げるということが割合と被害を少なくする方法だろうと思うんです。しかし一方、浅草周辺とかいわゆる下町周辺にいたら逃げ場所がないです。逃げ場所がないところで火災が起きたらどんなことになるかというと、これはまた大変なことになると思います。東京都全体がそういう危険な状況にあるんです。だから、それをやはり我々としては認識しないわけにいかないと思うんです。  御報告の中で、マレーシアのプトラジャヤとか、あるいはドイツのベルリンとボンでもって分けるという方法、先進国の中で分けるという方法を考えているのはイギリスとかドイツとかあるいはまたオーストラリアとか、こういうところだけだろうと思います。地理的条件が違いますから一概に言えないと思いますけれども、もし東京が学ぶとすれば、参考にするとすればドイツとかあるいはイギリスのような方法でまず分けるということを考える以外にないんじゃないかと思います。  私自身が体験したのでは、関東の震災の復興祭りで花電車が通ったことがあります。四つのときに関東大震災がありまして、復興のお祝いでもって花電車が通ったのは小学校のたしか五年か六年ぐらいです。かなり時間がかかりました。  だから、今ああいう地震があった場合にその復興にかかる年数とか費用とかいうものは関東大震災の比ではない、こういうふうに思わざるを得ないですね。それを考えると、やはり基本的にもう東京のあり方というものを考え直さなきゃいかぬと思うのでありますけれども、その点をお考えになったならば、一体急いでやるべきことは何か、どこから先に手をつけるかということを考えるべきではないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。
  23. 横島庄治

    参考人横島庄治君) 瀬谷先生の震災に対する御危惧というのはまことにおっしゃるとおりだと思います。  確かに、当時よりも悪いところが東京ではあるのかもしれませんね。その意味では、いざというときにどういうふうに避難するかということについては、緒方先生は大して効果ないというふうに御危惧されていたようですけれども、それなりに新しい土地があくということの役割というのは少なくとも果たしておかなければいけないだろうと思います。  何をどこに動かすかという議論は、調査会、審議会で一定の流れのもとに話されているわけでありますけれども、幸いにして今行政改革の中でエージェンシーが具体化してまいりました。首都あるいは首都機能地にすべての行政機関集中する必要はないというのが一定の流れになってきますれば、そのものは国会等移転対象とはまた別の考え方で点在させることも可能ではないか、それが一つの新しい展開になるんではないか。  しかし、国会等をという中の第一段階国会を動かすということは国会の重い決議でもございますし、やはり私は行政府をどのように動かすかを考える前に国会が動かれるという国会側の御意向を尊重している一人でございまして、その意味ではぜひ国会からモデルを示して動いていただくと。そのことによって今机上で議論しているよりは何十倍かの移転効果と、そのことによる地方へのさまざまな波及効果というのははかり知れないものがあると思うんです。  九千ヘクタールというような膨大な土地を考えずとも、千ヘクタール、二千ヘクタールで私はまず最初は十分ではないかと思うんですが、そこに国会機能を動かすことによって見えてくるものがいろいろあるわけでございます。そこに何も外務省や大蔵省が全部一緒にくっついていくのがすぐできないなら、私は百歩譲ったらそれらはしばらく東京に残してもいいと思っているんです。それよりもエージェンシー化したいわゆる実務行政部門、これは極端なことを申し上げれば、北海道から九州まで、均等とは申せませんが、交通アクセスの許す限りいろいろなところに点在させることによってその地域への波及効果を図っていくと。  これはイギリスでは、具体的な資料はきょうこちらにございますけれども、何千カ所という事務所を全国的に再配置しております。そのことで、小さいながらも我が町は何の役所の出先があるんだ、これがその地域の誇りになりながら、その地域の活性化と経済効果を呼び起こしていると。この手法が二番目に来て、そして行政府のもう一方である今の霞が関の官庁街が国会へついていくのか、ここに残るのか、さらには分散型で、必ずしもある一県に全部行くというようなことでなくて、ある県に国会が行ったらそのリンケージのもとで隣の県ぐらいまで私は拡大をしてもいいのではないかと思っているんです。  その意味では、東京が今一勝四十六敗という格好で首都機能をひとり占めしておりますが、どこかへ移せばその県が一勝であとが四十六敗になってしまうわけです。少なくとも三勝か四勝する県がありまして、五勝四十二敗ぐらいの勝率まで上げるような、多極分散型といいましょうか、分散的な分都の役割というものを何とか果たせないか。そういう視点をぜひ私は新たな議論として起こしていただいてもいいんじゃないか。そのためにぜひ私はイギリス型を先生方にも見ていただきたいなと、こんなふうに思っております。
  24. 鈴木政二

    鈴木政二君 今たまたま質問しようとしたところなんですけれども、さっき先生の話で非常に興味深かったのが、国民が国を選ぶ時代が来るという大変示唆に富んだおもしろい話。この間、ワールドカップが、ほとんどワールドカップのときだけ国民という感じがいたしましたけれども。  今の先生の話で非常に興味を持ったのは、昭和三十年代に遷都の話が出たという話であります。私はちょうど愛知県でありまして、万博とか空港とかあるんです。そのときにこの首都移転で我々が感じたのは、一極集中ということが非常にクローズアップされて、その次に地方分権、先生の書いてあるとおりなんですよ。景気浮揚、危機管理、人心一新、それで閉塞感、こういう話が順番にあって権威主義、これは今までの社会というのは権威主義から実用、それから象徴から機能。ただ一つ、首都、都ですね。だから先生がさっきおっしゃったように、これから十年、二十年たてば電気通信なんというのはもう異常なまでに、我々が想像を絶するような発展をする。ですから、首都移転国会移転、行政移転そのものが、全体像が一体どういう体系づくりにしなきゃならないかということが、私は今回一番大事なポイントだと思うんです。  こういう基準をたくさん並べましても、現実問題、その時代を見据えて首都移転させるとなれば、私は大変この基準が、国土庁が一生懸命つくって我々も議論してきたんですけれども、ある面では吹っ飛んでしまうような話も出てくるわけであります。  質問、三分以内でありますから簡潔にしますと、私もきょう行政改革推進本部で党の方へ勉強会に行ってきたんですけれども、こうしてエージェンシーの問題、特にイギリス型のエージェンシーの問題の議論がきょうたくさん出ました。省庁が十三ないし十二出てくるわけであります。そうしますと、それを見据えて国会移転とかまた行政、それから三権分立てありますから裁判所とか、いろんな面が行く中で、先生のお考えになるまず第一点、昭和三十年代から現在にきて将来にわたる首都という基本的な考え方を一遍聞かせていただきたいなと思います。
  25. 横島庄治

    参考人横島庄治君) 昭和三十年代に磯村英一先生が唱えられたのは明確に遷都でございました。富士のすそ野に皇居を含めた遷都をしてはどうかという御発想でございます。その理由は、東京への一極集中をこのまま放置しておくと抜き差しならないものになるという都市計画家としての炯眼だったと思います。  それはさまざまな理由でとんざするわけでありますけれども、亡くなられる直前に私、磯村先生とこの問題でお話をする機会がございました。磯村先生は遷都論を唱えた第一号目の主唱者だった、その先生が今反対をなさっているのは何ゆえなのかという御質問を申し上げたところ、実は、私は遷都なら賛成だけれども首都機能移転はまやかしだから反対だと、こうおっしゃっておりました。お亡くなりになられた今、そういうことをこういう席で申し上げるのは何かと思いますけれども、皇居との関係というものを磯村先生は非常に重く考えながら、皇居との関係を単純に切り離して首都機能ということが果たして日本的かどうかという御疑問があったと思います。  今の鈴木先生のお話はまさにその裏の関係でございまして、磯村先生の理論は理論として、今のこれからの首都というものは、あるいは首府でもいいと思います、国家をすべて象徴するようなあらゆる機能を一括して持って、そしてこれが日本国でございますというふうに形で示すというようなことの必要性が求められている時代ではないと私は思っております。  ですから、ごく能率的に行政の連絡がとれ、立法府としての役割が果たせ、そしてなおかつ申し上げさせていただければ、立法府と行政府がある意味ではよき対立関係にあって、そして立法府が独自にさまざまな調査データ、研究データをお持ちになって、あるときには立法府と行政府が相対立するような議論も繰り返しながら国のあすを考えていく、こういう姿が一番望ましいんではないか。  そのためには、やはりある意味では立法府と行政府を部分的には機械的に分けるというようなことも非常に有効な一つの建設的措置ではないかと私は思っておりますけれども、そんなことも含めますと、電気通信によって、国会に立法府側の局長の答弁が要るならテレビで呼び出してもいいわけでございますから、国会と霞が関が離れても余り痛痒はないはずでございます、行政、企画立案部門がくっついているわけですから。  そうなりますと、我々これから国会にも行政府にも期待したいのは、そのような立場で国会も独立し、行政府も独立して一つのいわばパワーシフトをしていくといいましょうか、そういう関係の中でよき行政運営を行うということが望ましいとすれば、小さな国会を先生方が最もよき議員活動ができるようないい場所に、そしてそれは便利でなければいけないと思いますし、国際的にも便利であることが大事ですから国際空港があるということは譲れない条件でございます。そういうところに置いて、そして必要なものは電気で呼び出す、あるいはテレビで呼び出すということで十分に果たせるのではないか。そうだとすれば、国会の建物から、たたずまいから位置関係までがらりと変わるものが出てくるんではないか、これが一点でございます。  もう一点は、全体像を今審議会で話しているところに水を差すことになるかもしれませんが、おっしゃるとおりでありまして、今地方分権行政改革が片方で怒濤のごとく変化を遂げております。その流れを見届けないまま首都機能移転先の形や姿や中身を考えるということは、実は非常に矛盾した手順になっていることは事実でございます。そのために、財政改革期間中の三年間を凍結と言ったのは別の理由でございますけれども、まさにその矛盾を克服する絶好の三年間ではないかと私は思っておりまして、多少議論が行ったり来たりすることはむしろよき試練と受けとめて、この三年間を有効に使って、少し後戻りの議論といいましょうか、戻った議論もこの際しておく方が  いいんではないか、こんなふうに思っております。
  26. 鈴木政二

    鈴木政二君 ありがとうございました。
  27. 三重野栄子

    三重野栄子君 三重野でございます。  今の先生のお話と関連するのでございますけれども、先ほど身軽でスマートな機能を持った状況、それには電気通信を働かせたらいいんじゃないかということで、私もそのように思います。今、働くことも何もそこに来なくても家でも仕事ができる時代でございますし、それから大学だって自分の家からインターネット、ホームページを通じましてできる時代でございますから、こういう意味での首都機能移転を考えるべきではないかというふうに思います。  それともう一つは、規制緩和の時代でございますから、やはり認可とかそういう状況、何もそこに来なくてもいいようになればもっと変わるんじゃないか。私は福岡でございますけれども、税制の関係もあるんですけれども、みんな本店は東京にあるんですね。工場は出先にあるわけで、税金は全部東京の方でというそういう地方分権の時代、税の関係からしましてももっと地方にも本店があるというか、そういうような形にしていけばもっと首都機能移転の問題も大きく関連していくのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  28. 横島庄治

    参考人横島庄治君) 三重野先生の御炯眼だと思いますが、もちろんこれからはもうほとんど、フェース・ツー・フェースの行政はどんどん姿を消していくというのはもう一定の流れでございましょうから、くっつき合っているということのむだというんでしょうか、それは当然改善されるべきだと思いますからそのとおりだと思いますね。  実は、マレーシアのプトラジャヤという新しい首都は電脳首都という言い方をしておりまして、ほとんどの行政をコンピューター化しております。それが来年の十月から動くために、今政府の役人が全員コンピューター学校に入学をしまして全部勉強し直しているわけです。ですから、もうこれからはマレーシアの行政はコンピューターを使えない人は役割を果たせないというところまである意味では追い込んでいるわけです。  こういう時代が日本でさっと来るかどうかは若干疑問もございますし、マハティール首相が国策としてそういう電脳都市を主張しているということもあってやや無理を承知でやっておいでのようですけれども、日本がそれほど急激に変わらないとしましても、その方向に行くための都市というものがどういうものでなければいけないのか、それはやはりおのずと答えが私は見えているんじゃないかと思うんです。  先ほどの御質問でもかなりお金がかかるはずだという御質問がありました。確かに最初の投資は、光ファイバーを入れるというのは、今の東京に埋まっているものをつくるより実際は初期投資がかかるんです。しかし、これが将来的にどのぐらいの効果をあらわすかといいますと、非常に安い投資で絶大の効果をあらわしてくるというのは十年、二十年先で多分見えてくるんだろうと思うんです。ですから、その辺の時代の先取りをするということもこれからの日本首都機能の中では絶対必要であろうと思います。  世界の各国の首都機能の中で電脳化しているところというのは、実は今それほどはないんです。全部既設の都市の中に後から埋め込んでやっているものですから、非常にむだの多い電脳化作業をしている。その意味では、マレーシアのプトラジャヤというのは世界最初の電脳首都になると思いますけれども、これを追うとすれば次は日本なのかなという気がいたします。
  29. 江本孟紀

    ○江本孟紀君 自由の会の江本と申します。よろしくお願いします。  ちょっと重複するかもしれませんけれども、先ほど先生の方から非常に危機管理ということを中心に前半はお話しされましたけれども、首都機能移転に関しての理由の一つに危機管理という話は何か説得力があるようでないんじゃないか。  というのは、先ほどの話を総合しますと、こういう機能がどこかに移ると。空き地が残ったとしても、東京都の人口密集地、先ほども先生の方からお話がありましたけれども、その人たちが仮にこの辺にゆったり住めるというんであれば別ですけれども、ここをあけておいても、例えば江東区やああいう人口密集地で災害が起きて、さあ避難といったって、ここへ来るのが大変ですよね。  だから、私は、実質的にはこの危機管理というのは首都機能移転ということの理由には余りしない方がいいんじゃないか。むしろ東京というところは、もっとも関東大震災というのがあったかもしれませんけれども、それ以降は大きな災害はありません。私は、五年半前ですか、参議院に参加して災害対策特別委員会におったんですが、これはもういる間に何度か地方で災害が起きて視察に行っております。そういう意味でいうと、東京はむしろ安全なところじゃないかと、危機的に。  危機管理といえば、実際にはそういう自然災害ということじゃなくて、むしろ外敵に対して、この首都機能移転がちゃんとそれに対する防衛体制ができているかというようなことの方が危機管理ではないか。だから、何かいま一つ国民的盛り上がりというかこれがないのは、東京都なんかでも、例えば国会議員とかそれにかかわる行政の人たちがどこか安全な場所へ移って、残ったあとはみんなけがや病気をするのかというようなことで言うと、どうもちょっと納得いかないんじゃないか。  そういうこともあって、私は先生に最後にお聞きしたいんです。非常に単純な聞き方をして申しわけないですけれども、やはり移転することによっての効果が大きいということであれば、この日本人口からいうと今一億二千万です。その土地からいえば大体二千五百万人の人口ぐらいが一番豊かで過ごしやすいと言われておるんですけれども、一億人以上の人間がいる国の中で、平地も非常に少ないという中で検討すれば、余りいろんな理由をつけるんじゃなくて、新しい日本、または新しいそういう効果が大きいということであれば、やっぱりある程度立地はここがいいという場所があるはずなんです。  それを私、まずそこがありきでこういうふうに持っていった方がいいんじゃないかと個人的には思っているんですが、先生は非常に言いづらいと思いますけれども、私はこの辺がいいというところがあると思うんですが、参考に聞かせていただきたいと思います。
  30. 横島庄治

    参考人横島庄治君) 最後の御質問は最後にお答えさせていただきますが、江本委員の御心配は多分こういうことだろうと思うんです。  東京というところは、首都機能が移っても東京東京としての都市があって、そこに居住人口があると。安全のために出ていく、だったら残った人は安全じゃなくてもいいのか、この議論はあるんですね、確かに。それはちょっと姿を変えますと、じゃ、全員が動けるなら一番いいかもしれません。  しかし、それは余りにも現実離れをした選択であるならば、さっきの山手線の話じゃございませんが、足が上がって手が上がって動きがとれない状態からちょっとゆとりをつくるために最も効率的な部分を動かすとすればだれなのか。電車の乗客でいえば、サラリーマンだけ全部おりろと言うか、学生だけ全部おりろと言うか、不要不急の客はおりてくれと言うのか、何か特定の乗客を引き取らないと電車の満員状態が解消できないとすれば、一番強制的に動かしやすいところを動かすのがいわば政策的な対応になるだろう。その最も強制的な対応として国会みずからが自分が出ていくことが一番いいというふうに決議されたことに、私はある種の評価をしてもいいんじゃないか、こういうことであります。  だから、残った東京都民は安全でなくていいんではなくて、出ていった者も安全なところへ行く、残った人も出ていってもらったすき間でより安全な都市の中に住み続けると。ここのところは整合性はないようですけれども、実は都市論としてはあるんですね。自分で去れない人は去れないんです。しかし、そうでない人が去ってくれることによってその人がより安全な状態に転位するならばそれは安全都市ということになるんではないかという論理は、私はしておかなければいけないんだろうと思います。  地震の発生については、江本委員のお話とは違う意見地震の専門学者の間で今まさに議論の真っ最中でございまして、いつ起きてもおかしくない、その時期に来ているということについては、私は御認識いただいた方がいいんではないかと思うんです。  どこに動かすかについては、もちろん申し上げる立場にございませんし、まさにそれを決めるために審議会が今さまざまな調査をしている最中でございますから、それは申し上げられないんではなくてわからないんであります。  ただ、日本活断層の地図がございまして、真っ黒い線が何本か入っておりますね。日本列島全体に活断層地図というのが公表されております。実は、この活断層地図というのは活断層のある場所を書いただけでありまして、ない場所は塗り残してあるというわけじゃないんです。あるとわかったところだけに線が引いてあります。しかし、それ以外の白いところでもあるかないかわからない場所がたくさんございまして、わからない場所は線が引いてありませんから、あそこに引いてない場所は安全だというふうに考えると日本地震の対応を間違えることになりますね。  そうなりますと、これから候補地になるところは改めて地下構造を全部調べなければいけないと思うんです。そのときには今ある地図というのはあくまでも参考でございまして、もっと多くの活断層の線の入った地図が多分でき上がるんでありましょう。私はきょうは災害の立場で申し上げましたが、その地図の完成を待たなければ決められないんではないか、こんなふうに思っております。ですから、私は地震にこだわりません。
  31. 久保亘

    委員長久保亘君) ただいままでに御質疑がありました方も含めて何かさらに御発言のあります方は挙手をお願いいたします。−他に御発言もないようですから、参考人に対する質疑はこれにて終了させていただきます。  この際、参考人に一言お礼を申し上げます。  横島参考人におかれましては、大変お忙しい中、当委員会のため貴重な御意見をお述べいただき、また質疑に対して御懇切にお答えをいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会