○伊藤
基隆君 民主党・新緑風会の伊藤でございます。
いよいよこの法案の審議も締め総の段階にやってまいりました。この
委員会は、非常に人格円満な
委員長のもとに、人格円満でありますが時に厳しく激しく出てまいりますけれども、我々理事会でも
総理の今後の重要な外交日程のことも十分念頭に置きながら、しかも十分な審議時間を確保しようということで、与党はみずからの
質問時間を割愛しても野党に回すというようなこともしながら本日を迎え、明日を迎えようとしておるわけであります。大変重要な議論をしてきたというふうに私自身も考えております。
さて、私もかねがね財政の危機
状況については強い関心を持ってきておりますから、そのよって来る原因を含めて現状について承知をしておるつもりでございます。さらに、それに対する
財政構造改革の必要性についてももちろん十分重要なことで、必要なことと承知しておるところでございます。
ただ、幾つかの議論をして疑問点も出してまいりましたが、私が総括
質疑、
一般質疑を通じて印象に残ったことは、これらの今の日本の財政
状況または経済
状況の根幹がバブルの発生、崩壊過程の中にあったということを申し上げたところ、バブルの後遺症に対する厳しい
認識をお持ちだということが
総理の
答弁からわかりました。まさに、そこに根本的な解決しなきゃならない問題が、今日、財政出動問題等もありますが、日本の重要な問題になっておるだろうというふうに思います。六大改革のうちの金融システム改革ということが非常に重要だというふうに私は思っております。
ただ、私がこの際申し上げたいことは、総括でも申し上げましたけれども、問題は、政策の優先順位による政府のコントロール、予算編成、執行のコントロールというところにあるんではないかというふうに思います。
討論の中で私は、
個人貯蓄の金利の引き上げ、または特別減税等について申し上げましたが、いずれも答えはノーでございました。しかし、
一つ重要な問題として解決しなきゃならないのが景気対策ないしは金融システムの改革による財政基盤の活性化というところにあると思います。
国民の
立場からすると、多くの人たちに私も触れてそのことを聞いてまいりましたが、今日あらわれている
国民への負担増ということはどうしてもこれは納得のいかないというか、将来に対する不安感ないしは政府の経済政策に対する不満というものがあるのではないかというふうに思うわけでございます。
トリプル高というようなもの、トリプル負担というようなものがございます。このことが将来、日本の社会ができるだけ公平であることを求めてきた今までの日本が、姿を変えて公平を損なうような社会のシステムに転換していくのではないかという不安感があり、それはまた不信感にもなっていっているんではないかというふうに私は思っております。そのことについて、一番
政治に携わる者、または政府、私たちももちろんでございますが、きちんと
認識をした上でこの問題に対応していかなきゃならないだろうというふうに思うわけでございます。
そこで、まず
総理大臣にお
伺いするわけでございますけれども、予算の編成といいましょうか、
総理大臣がどのように予算の編成にみずからの
政治姿勢、意識を注入していくかという問題について、少し長くなりますが、幾つかの点について申し上げて、
お答えをいただきたい、所感を述べていただきたいと思うわけでございます。
予算編成というのは、向こう一年間の国の施策を財政の側面からすべてを決定すると言ってもいいことだと思っています。国の施策を総合的にまとめる大作業でありますし、国の
行政、
政治の中身が決まる予算編成について
政治が真正面から責任を負っていかなければならないのは当然でございます。
今回の
財政構造改革の
推進に関する特別措置法、この法案は、突き詰めれば、
一つには
平成十五年までに一会計年度の国及び地方公共団体の財政赤字の対国内総生産比を百分の三以下とすること、もう
一つは、
一般会計の歳出は
平成十五年度までに特別公債に係る収入以外の歳入をもってその財源とするものとし、あわせて
平成十五年度の公債依存度を
平成九年度に比べて引き下げること、第四条の規定に尽きるのではないかというふうに思います。政府は、この目標を不退転の姿勢で実行することを繰り返し繰り返し表明してまいりました。
私は、そのことを聞きながら予算編成システムの改革あるいは予算編成権という視点から、今日盛んな議論が行われております
行政改革の問題と関連させて考えてみたいというふうに思います。
行革会議の中間
報告は、「内閣機能の強化」として、閣議における首相の基本方針、政策の発議権を内閣法上に位置づけること、首相の指揮監督に関する内閣法の規定の弾力的運用を掲げました。内閣における首相指導の原則の確立を意図したものと私は思っております。
もちろん、当
委員会の総括
質疑においても他の
議員から触れられておりましたが、議院内閣制を前提とした制約要件は確立されていなければならないというふうに考えます。首相指導の原則は予算、人事、法制、組織、情報など多岐にわたると考えられますが、ここでは予算を取り上げて考えたいと思います。すなわち、予算編成に関する首相の指導原則の確立、首相が
政治政策上の判断をするためのシステムの確立が必要と考えます。
ここでイギリスの予算編成システムについて、皆さんのお手元に「英国予算編成機構図」というものを配付させていただきましたが、これに基づいて少し
説明をしながら、関連させていきたいというふうに思います。
私がイギリスの予算編成システムについて関心を持ちましたのは、大蔵省が派遣しました財政制度審議会基本問題小
委員会の海外
調査報告というのが二年ほど前に出されておりまして、これは大変勉強になる資料でございました。そこに、イギリスが「一九九三年度以来、各省から概算要求の後に公的支出の総枠の上限について閣議決定を行い、予算をこの枠内に抑制するべく主要
閣僚からなる会合を通じ折衝を行うという制度を導入し、歳出の削減に努めている。」、さらには「内閣の決めた予算案が、議会において修正されることはほとんどない」という記述を読みまして関心を持ったわけでございます。
そこで、「英国予算編成機構図」を参照していただきたいわけでございますが、まず左下にあります「首相官邸」、「首相」のところに「ポリシー・ユニット」というのがございます。これは七人の民間人メンバーによって構成されているようでございます。ちなみに、これは前政権、メージャー政権の時代に調べたんですが、現ブレア政権時代はどうなのかということを問い合わせましたら、同じやり方でやっているということでございました。それが右の方に、官僚に対して政策案提示を求め、それをこのポリシー・ユニットが事前にチェックをするという制度でございます。これが首相と
政治的な意識、目的を一体的に共有するメンバーによってスタッフとしてそのことを行うということでございます。
右の方に「大蔵省」という点線で囲った枠がございますが、これが実は予算編成の機構でございます。そのような各省庁との事前の折衝にあった首相が、この「大蔵省」の上の欄に「
国会議員」という欄がございますが、ここに「首相」とありますけれども、この大蔵省の中における「首相」は第一大蔵
大臣というふうに位置づけられておるようです。その下に第二大蔵
大臣がおりまして、これが
一般に言う日本における大蔵
大臣、日本で言うと三塚大蔵
大臣でございます。
その下にファイブ・ジュニア・ロードと言われるものがございます。これは正式な名前はロード・コミッショナーズ・オブ・ザ・トレジュリー、大蔵省の
国会議員による
委員会でございますが、与党若手の
国会議員五人が幹事長主導のもとにこの中に参画をしている。さきのメージャー首相もこのメンバーだったようでございますが、このメンバーから優秀な人材が駆け上がってくるようでございます。政策決定、予算の優先順位を決めるこの
国会議員のメンバーの中に政権党の幹事長が助言をする
立場で位置しております。
さらに、第三大蔵
大臣が
閣僚としております。閣外
大臣が制度上三人おりまして、メージャー政権時代は二名が実際におりましたが、現在はどうなのか私はまだ調べが届いていません。大蔵省に属する閣外
大臣が三人おるということでございます。その中に大蔵事務次官が官僚としてはただ一人この
国会議員メンバーの中に参画をしております。
すなわち、そこにおいて予算は政策上、
政治上の優先権によって議論されて方向を決定していく、これに基づいて官僚は相談を受けたり指示を受けたり原案を提供したりしながら予算をつくり上げていくというのがイギリスのシステムでございます。
他国のシステムそのままということを申し上げているわけではございません。イギリスが
財政構造改革に当たって力強い歩みをしてきたということはそういうところに原因があるんじゃないかというふうに私自身が関心を持ったわけでございます。
私は
総理に申し上げたいのは、
政治そのものである予算編成、そのシステムを確立することが行革の最も重要な心棒ではないだろうかということを考えておるわけでございます。さらに、予算執行の監視機構を確立するということがこれに伴えば、私は財政の健全化、国の経済、
政治の健全化というところに向かい得るんじゃないかというふうに考えて、冗漫になりましたけれども、あえて英国の予算編成を資料として出しまして考え方を申し上げたところでございます。
総理の所信をお
伺いいたしたいと思います。