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1997-11-18 第141回国会 参議院 行財政改革・税制等に関する特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月十八日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  十一月十七日     辞任         補欠選任      武見 敬三君     野村 五男君      益田 洋介君     和田 洋子君      菅野 久光君     峰崎 直樹君      椎名 素夫君     江本 孟紀君  十一月十八日     辞任         補欠選任      阿部 幸代君     橋本  敦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         遠藤  要君     理 事                 片山虎之助君                 高木 正明君                 野間  赳君                 三浦 一水君                 荒木 清寛君                 広中和歌子君                 伊藤 基隆君                 赤桐  操君                 笠井  亮君     委 員                 狩野  安君                 鹿熊 安正君                 金田 勝年君                 亀谷 博昭君                 沓掛 哲男君                 斎藤 文夫君                 清水嘉与子君                 田村 公平君                 常田 享詳君                 長尾 立子君                 野村 五男君                 林  芳正君                 保坂 三蔵君                 宮澤  弘君                 泉  信也君                 今泉  昭君                 岩瀬 良三君                 小林  元君                 菅川 健二君                 高橋 令則君                 寺澤 芳男君                 吉田 之久君                 和田 洋子君                 小島 慶三君                 齋藤  勁君                 峰崎 直樹君                 田  英夫君                 橋本  敦君                 吉川 春子君                 江本 孟紀君                 山口 哲夫君    政府委員        大蔵省主計局次        長        藤井 秀人君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 久雄君    参考人        慶應義塾大学経        済学部教授    島田 晴雄君        立教大学法学部        教授       新藤 宗幸君        元野村総合研究        所副社長     上條 俊昭君        中央大学法学部        教授       貝塚 啓明君        東京国際大学経        済学部教授    田尻 嗣夫君        全国保険医団体        連合会会長   鮫島 千秋君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○財政構造改革推進に関する特別措置法案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会を開会いたします。  財政構造改革推進に関する特別措置法案を議題といたします。  本日は、本法律案審査に関し、参考人の方々から御意見を承ることとしております。  参考人皆様に二言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。皆様の忌憚のない御意見を承り、本法律案審査に反映させてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人皆様からそれぞれ十分程度意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず島田参考人からお願いいたします。
  3. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) 島田でございます。  最初に十分ほど所見を申し上げたいと思います。  三点ほど触れたいと思いますが、一つ財政構造改革法を今次国会で成立させる必要があるというポイント、それから経済構造改革についてなすべきこと、それから三点目に、とりわけその中で法人税改革について触れたいと思います。  第一点は、財政構造改革法案でございます。  これは今後六年間に、つまり二〇〇三年度に、財政赤字GDP比三%水準以内に抑えるという大きな目標もとで、特にこれから三年間を集中改革期間として、あらゆる予算項目に聖域を置かず、数量的な削減目標、いわゆるキャップ、これをかけて過大な予算については削減に努めるという法案は、ぜひ今国会で成立させるべきだというふうに考えます。  この程度改革が実現できない場合には、政府累積債務の利払いの負担がさらに金利負担を生むというような形で、累積債務雪だるま式に膨れ上がっていくおそれが極めて強いわけでございます。そうした累積赤字を放置しておきますと金利の上昇、投資の圧迫による経済の停滞、インフレの加速、為替レート低下実質所得低下、失業の増大といった典型的な経済の衰退に陥るおそれが極めて強いということでございます。  とりわけ財政構造改革法という形で、法律の形で明確に国家の目標を定めていくということは極めて重要な意味を持っていると思います。といいますのは、これまで多く観察されました予算配分懇意性のようなものを排除する、そして不透明性を排除するという意味では、法律の形で基本方針を定めておくということは重要だというふうに考えます。したがって、今度の国会国民の理解を得るために十分な論議が尽くされることを心から期待したいわけでございます。  それを申し上げた上で、経済構造改革について一言触れたいと思います。  今日、景気の足踏みと言われておりますけれども、急速に景気低迷感が強まっているということは何人も否定し得ないところだと思います。私も大変この問題を憂慮しておりますが、これに対して、財政出動あるいは所得減税ということが有力な解決策となるかどうか、私はかなり疑問を持っております。それよりも、規制緩和戦略的推進といった構造改革を強力に進めることが有効ではないかというふうに考えます。  この財政出動所得減税効果が期待しにくいのではないかと思われることについては、次のような理由でございます。  公共投資などの財政支出は、一時的にもちろん需要の創出になります。しかし、サービス経済化の進展しております近年の経済構造の中では、その波及効果は極めて乏しい、ますます乏しくなっていることはさまざまなデータから明らかになっておりますが、それは財政構造改革をおくらせることになるわけですけれども、この改革を先伸ばしにすればするほど累積債務問題というのは困難がいよいよ増幅をいたします。長期的に弊害がますます大きくなるということでございます。  所得減税についてはどうかということでございますが、今日所得低迷をしているということは事実でございますけれども、これは実質可処分所得の伸び悩みということもあることはありますけれども、さらに先行きの金融不安、雇用不安、老後不安といったような将来不安が影を落としている面が大きいと思われます。したがって、一時的な減税をした場合に、むしろ将来不安ということで消費よりも貯蓄に回る、あるいは将来の増税を予測して消費が伸びないということがあるのではないかと思います。  したがって、経済活性化のためには、今日二千八百三十項目規制緩和推進計画ということで行われているわけでございますけれども、この中身をさらに実質的に強力に進めることが必要ではないか。経済構造が変化していかざるを得ない中で、今日、全般的な景気低迷があるけれども、決算の状況などを見ておりますと、業績のむしろ増加している、収益増加している企業が五分の一ぐらいはございます。つまり、経済構造の変化の未来をとらえて、市場ニーズをとらえて伸びている産業部門企業もあるわけでございまして、そういった新しい社会ニーズ市場の機会をとらえた企業産業成長を促進すること、そのために規制緩和を一層本格的に促進することが必要ではないかというふうに考える次第でございます。  ただ、ここで一つ規制緩和相当程度進行中だと思いますけれども、国民がこの規制緩和進行について自信を持てる、安心して規制緩和推進に参加できるというためには、実は私は早い段階で市場システム整備というものを急ぐ必要があるのではないかと思います。これは何かというと、透明性を確保すること、公正な市場競争の仕組みを確保すること、そして安全を確保することでございます。  これはあらゆる産業分野、あらゆる市場について言えることなんですが、最近非常に関心を呼んでおります金融について一つの例でいいますと、金融情報公開は果たして十分なのか、あるいは市場監視制度は本当に機能しているのか。あるいは預金保険機構のような問題がありますけれども、一時八千数百億円まであったのが今日は三千億円台になっている。あるいは保険契約者保護基金が底をついている。こういうようなセーフティーネットでは極めて心もとないわけでございまして、ここら辺の安心して規制緩和を進められる市場システム推進整備ということを急ぐ必要があろうというふうに思います。  最後に、法人税の問題について触れたいと思います。  大変いろいろ政策手段が困難である中で、私は、構造改革としては言うまでもありませんが、景気対策としても最も効果が期待できるのは法人課税改革であろうというふうに思います。  今日、法人税改革について、課税ベースの拡大を引当金見直し等で進めながら数%の国の法人税率引き下げということが意図されていて、それに連動して地方税引き下げということが議論されておるようでございますけれども、私は法人課税全体の見直しをすることが必要だと。とりわけ課税といいますのは、地方法人関連課税でございます。  問題は、特に地方法人所得課税、つまり法人事業税一二%、法人住民税法人税割、これが六・五%ございますが、あえて思い切って申し上げますと、私見でございますけれども、これらの地方法人所得課税を撤廃して、そして地方税収を賄うために付加価値税型の外形標準課税を導入することが適当なのではないかというふうに思います。企業が上げております総付加価値をもし付加価値税型の税で賄うとすると、そして法人事業税税収をその分で賄うとすると約一・五%から二%程度付加価値税率で済むわけでございます。これは地方自治体にとっては税収が減らない、しかも安定化するというメリットがございます。  これは、来年度の法人税改正にはこの地方税改革具体案を盛り込むことは難しいかもしれませんけれども、そういう方向を明確に打ち出すということが将来の投資行動を明らかに刺激いたしますし、恐らく株式市場がすぐこれに反応して株価が反転するのではないか、そういうアナウンスメント効果も期待されると思います。この外形標準課税の導入による法人所得課税の撤廃は、何よりも生産性の高い効率的な企業産業成長を促進いたします。そして、応益税という基本をめぐっての住民自治体当局切瑳琢磨が高まることによって、責任のある地方自治が実現できるのではないか、このように思います。  以上でございます。
  4. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ありがとうございました。  次に、新藤参考人にお願いいたします。
  5. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 新藤でございます。  時間が限られておりますので、最初の私の発言に関しましてはまとめました原稿を読み上げるという形にさせていただきたいと思います。  この財政構造改革法案は、衆議院を通過はしておりますけれども、日本財政構造改革あるいは法的問題といった点を考えますと、なお多くの論点が残されているように思います。とりわけ財政構造改革とこの法案との適合性、それから財政構造改革法案の法としての問題点について申し上げたいと思っております。  この法案は、御承知のとおり、財政構造改革推進に関する特別措置法と名づけられておりますが、条文を読んだ率直な感想を言えば、財政構造改革法案ではなくて歳出削減法案でしかないということです。と申しますのも、歳出削減が問われているのは否定はいたしませんが、歳出削減自体財政構造改革手段とは言えないからです。歳出削減財政構造改革手段たり得るためには歳出削減のターゲット、方法等について明確な戦略を必要とするはずであります。  この法案は、予算総量規制分野別支出に関する歳出統制補助金等地方歳出に対する統制の三点を特徴としております。とりわけ分野別支出に関する歳出統制を中心としているように見受けられます。そこでは、従来のシーリングによる大枠規制からより詳細な分野別総量規制に転換することを法的に定めていると言うことができます。  ところが、例えば公共事業に関する統制に端的にあらわれていますように、公共事業分野別歳出バランスないしシェアには全く手がつけられておりません。事業年度を延長し、単年度当たりについては、言うなれば皆ひとしく泣こうという、日本伝統的歳出削減方法から脱却するものではないと言えます。そのことは、より大きな行政分野別に見ても全く同様であります。  一九八一年三月に土光敏夫氏を会長とします第二次臨時行政調査会が設置されましたが、その際には、一般会計公債依存率は歳入の三〇%強、GNPに占める公債残高の割合も約三分の一でございました。当時も財政危機破綻が言われたわけでありますけれども、にもかかわらず、なぜにこうまで極端な財政破綻状況が生み出されたのか。理由は決して一つではありませんけれども、少なくとも今日、財政構造改革と言うならば次の理由は無視できないはずであります。  第一に、財政危機を常に語りながら、政治、官僚業界の三位一体となった鉄の三角形間のバランスの維持を基本として拡張主義的な財政運営が行われたからであります。その結果、事業実績評価時代状況事業適合性などは顧みられませんでした。しかし、収入を気にせず拡張主義的財政運営が可能であったのは、必要なだけの国債が発行できたからでもあります。  つまり、今議論されている行政改革とも関係いたしますけれども、大蔵省金融業界に強大な監督権を持ち、国債市中消化をなすとともに、他方大蔵省資金運用部資金財政投融資資金によって国債を引き受けてきたからであります。言いかえれば、一方の手で借金証書を発行し、他方の手で引き受けてきたに等しいわけであります。  第二に、時代状況が刻々と変わっていくにもかかわらず、事業系特別会計、公団、事業団政府系金融機関整理は行われず、財政投融資資金が貸し付けられてまいりました。しかし、これらの融資は事実上焦げつき債権を生み出したに等しく、したがって一般会計からの利子補給をするという悪循環に陥っていきました。しかし、一般会計そのもの余裕がないのですから、この利子補給のためにさらに一般会計借金を重ねるというこれまた悪循環に陥らざるを得ません。  第三に、今回の法案には明確に姿をあらわしてはおりませんけれども、道路特定財源に代表される目的税整理が行われず、歳出構造を硬直化させたと言えます。また、特別会計一般会計との間の会計間操作が行われることによっていわゆる隠れ借金が累積されてまいりました。一般会計における借金額を幾らかでも減らし、見かけをよくするためにとられた手法がいよいよ限界に達したということではないでしょうか。このように見てくるならば、財政構造改革に必要とされる視点は、まず何よりも事業実績評価事業時代的適合性評価を行うことでなければなりません。そして国権最高機関である国去は、内閣をこのような観点から法的に縛る制度を創出することが問われているはずであります。また特別会計特殊法人整理をなすこと、財政投融資を根本にわたって改革し、公的資金による国債引き受けという安易な方法を法的に制約することではないでしょうか。  この法案のモデルがアメリカの一連の歳出削減法にあるのは私も推測いたしております。しかし、私がこの法案で最も危惧いたしますのは、全体的歳出規模の縮小に貢献するかもしれませんけれども、既存歳出構造あるいは事業構造を固定化してしまいかねないことです。この法案は、議会制民主主義悪弊と言われてまいりました一種のむしりとたかりの民主主義に枠をはめ、次の世代余裕ある財政を残そうとするものであるかもしれません。法案時限立法ですが、一たんこのことを始めますと次の世代も同様の法律をつくっていくことになるかと思います。  つまり、議会制民主主義悪弊を正すための議会制民主主義の良識ないし自浄能力の発揮の論理は、実は議会制民主主義否定につながりかねないわけであります。財政構造改革法として国権最高機関法的規範を制定するならば、内閣省庁官僚制予算編成制度方法統制システムとして構想するべきなのであって、分野別歳出法的枠をはめ、既存構造を保護し、議会が自縄自縛に陥るような法を制定するべきであるとは考えません。  最後に、国会内閣予算提出権を害さない範囲で予算を修正する機能を有するという、私に言わせれば甚だ意味不明な内閣法制局見解が繰り返されてまいりました。しかし、憲法四十一条こそが内閣に属する行政権にも予算提出権にも上位するのだということを明確にしない限り、いかなる財政改革方策意味を持たないと申し上げておきたいと思います。以上です。
  6. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ありがとうございました。  次に、上條参考人にお願いいたします。
  7. 上條俊昭

    参考人上條俊昭君) 私は、昭和二十九年に社会に出ましてから、野村証券調査部及び野村総合研究所で三十数年日本経済の分析や日本産業調査に当たってきました民間エコノミストとして、この法案日本経済視点で読ませていただきました。  財政構造改革を何で進めるかという視点は、やはりその目的がありまして、日本経済を再活性化するという目的があろうかと思います。そういたしますと、日本経済の担い手は、もちろん政府役割もございますけれども、特に民間企業の果たす役割が大きいと思います。その民間企業政府役割がこの法案の趣旨、目的を見ましても余りはっきりと書かれておりません。政府財政を均衡化する方向に向かう、これは確かに結構でございますけれども、民間との二人三脚と申しますか、役割分担をもう少しはっきりと書いてほしいと思いました。  私は、それをはっきりさせるために、島田先生とはちょっと違った観点ではございますけれども、やはり法人税制というものの抜本改正が必要ではないかというふうに思います。  今、法人税制は御存じのように約五〇%弱と言われております。三七・五%の法人税に一二%の事業税、それから地方税等々で約五〇%ということでございますが、その実効税率を私は先進国の普通の水準であります三〇%台に持っていく必要があるのではないかというふうに考えます。今、大体五〇%の税率を四〇%に二割カットいたしますと約四兆円ぐらいの減税に相なろうかと思います。三割カットいたしますればそれは六兆円ということに相なりますが、四兆ないし五兆の法人税をカットすることによって、これはその資金政府が吸い上げるのではなくて民間に使わせるわけでございますから、当然、民間はその資金もと設備投資をふやしたり、雇用をふやしたり、研究投資をふやしたりするのに使う。政府が使うか、民間が使うかということでございまして、政府はその五兆円なら五兆円をみずからカットするという形で、むしろ背水の陣をしくということに  なりますので、私はもっと切実なといいますか、緊張感を生む財政削減の努力がなされるのではないかというふうに思います。  当然それは民間活性化を通じて日本経済を再浮揚するための戦略的な手段でありまして、もしそれで五年ぐらいたって税収が例えば三〇%ぐらいの増益になれば、当然もと税収に戻るわけでありますから、そのぐらいは民間として、むしろ企業活性化して法人税収を上げるように努力するでありましょうし、そのときに政府が少し小さくなっておれば財政的余裕が生まれるというふうに思うわけであります。  いわゆる、税率を下げて税収を上げるという.ラッハー教授のやったレーガン減税一つの実験を日本でも法人税制についてやられてはどうかというふうに思うわけであります。仮に二割の法人税を下げるといたしますと、企業税引き利益は二割増益になります。したがいまして、株価収益率が一定といたしますれば、株価日経平均は一万六千円から一万九千円ということに相なりまして、これは日本の今行われております金融不安の解消に役立ちますし、年金生命保険等の資産の増加によりまして国民生活に大変重要な安心感を与え、景気にもいい影響を与えると思います。  今、九〇年のバブルがはじけましてから、外国の機関投資家年金等日本の株を二十三兆円、ネットで買い増しました。彼らは日本企業収益増加を信じて二十三兆円というお金を投資しているわけでございます。したがいまして、企業収益を伸ばし、しかも株価水準を上げるということは、国際的な視点からも私は重要な経済活性化視点ではないかというふうに思います。  それから、第二でございますけれども、やはり経済活性化するためには、何といいましても、私は雇用の問題が大事だというふうに思います。この法案にも少し雇用のことは触れておりますけれども、もっと前向きに雇用財政構造の問題についての点で突っ込んでいただければよかったかなというふうに思います。  今、御承知のように、日本高齢化社会を迎えまして、二〇〇〇年には六十五歳以上の人口が一七%を超しまして、日本はスウェーデンを上回る高齢化社会になると言われております。どんどんいきますと、これが二〇%、二五%になるというのは多くの識者が指摘しておるところであります。一体、そういう高齢化を放置して社会運営ができるのかどうか、私は甚だ疑問に思います。  そこで、一つの提案ではございますけれども、この法案に盛り込むというのじゃありませんけれども、日本社会を明るくするためには、私は七十歳までは元気な人は働けるような社会をつくるべきだというふうに思います。農業とかお医者さんの世界では七十歳で現役で頑張っている方がいっぱいいらっしゃいます。サラリーマンだけが六十歳で定年を迎えるというのはいささか不合理な制度ではないかというふうに思うわけであります。  それは、なぜそういうことを申し上げますかといいますと、七十歳まで働きますと、高齢化社会と言いますけれども、七十歳以上を高齢人口と定義しますと、人口に占める比重は現在はまだ一〇%であります。アメリカ先進国の中で今非常に経済が好調なんですが、それは老人人口が少ないからであると思います。アメリカは大体二一%台であります。それで、ちょっと試算してまいりましたけれども、二〇〇〇年になりましても一一・五%ぐらいでありまして、七十歳まで働く社会をつくれば、私は日本経済はかなり活力を維持できるのではないかというふうに考えるからであります。  そういたしますと、年金の問題にも大変好影響を与えます。ここでも何か年金が将来削減されるというように思われるような文脈が書かれておりますけれども、年金財政にもいい影響を私は与えると思いますし、医療、福祉の面でも私は非常にいい効果を与えると思います。  先般、長野県に行ってまいりました。長野県というのは一番長寿県でありまして、しかも医療費が低い県で有名であります。何でお年寄りが非常に元気なのかということを質問しますと、幾つかの要因がありますけれども、長野県というのは非常に高齢者の就業率が高いということを多くの方がおっしゃっておりました。私は、元気で働く社会をつくることがこの社会を明るくし、活性化する源ではないかというふうに思いますので、その点についてもぜひひとつ税制等、この財政構造の面でも一つの御配慮をお願いいたしたいと思います。  あと、少子化の問題についてお話をしたいと思いましたけれども、時間が来ましたので、これは御質問がございましたらお答えいたします。  日本は二〇〇四年から一番厳しい見方をすると人口減少の時代がやってきます。人口が減少して経済成長したという国は私は経済史の中で例を知りません。したがいまして、人口減少というものにいかに歯どめをかけるか。高齢化はある程度高齢者雇用をすることによって解決が可能な面もございますけれども、人口減少というのは、これは別の時点でございまして、これについてはこの構造改革の中に一つも触れられておりませんが、ひとつこういう視点もこれからの財政構造改革の中に入れていただきたいと思うわけであります。  以上三点を申し上げました。
  8. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ありがとうございました。  以上で参考人の方々の御意見の陳述は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 狩野安

    ○狩野安君 自由民主党の狩野安でございます。参考人の先生方、よろしくお願いいたします。  私は参議院議員ではありますけれども、主婦でもございます。そういう意味で私は主婦として質問をさせていただきますので、私以上の年齢の方にもわかるような形で、わかりやすい言葉でぜひお答えをいただきたいと思います。さきの委員会の中でも、何人かの議員の方々がわかりやすい言葉で、そしてある先生は何かNHKの「こどもニュース」のような、あんなふうにわかりやすい説明の仕方をしてくれというようなことの注文もされておりますけれども、そういう意味でも主婦からの質問だということでわかりやすくお聞かせをいただきたいと思います。  まず、島田参考人にお聞きしたいと思いますけれども、私は、時間が二十五分という大変限られた時間ですので、簡単な質問の仕方で大体六つぐらい質問させていただきます。  私、地元へ帰りますと、私の仲間、主婦の皆さんから、国会は何をやっているの、いろんな改革も必要だけれども今すごい不景気なんだ、早く景気対策を何とかしてもらえないだろうかということをよく言われます。財政構造改革というのもそもそも私たち主婦にはわからない言葉でございまして、どうして景気対策より先に財政構造改革というものをしなければならないのかということをぜひ御説明をいただきたいと思います。
  10. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) ありがとうございます。  財政構造改革景気対策ですが、私はこれは本来矛盾しないものだというふうに思います。今どちらが先とおっしゃいましたが、同時に進めなきゃいけないということだと思うんです。  財政構造改革、なぜこんなことをやらなきゃいけないのかということですが、わかりやすく申し上げたいと思いますけれども、今の中央、地方累積赤字というのは、国民一人当たりに引き直してみますと一人四百万ぐらい、赤ちゃんも含めてですね。ですから、我々の知らないうちに普通の家族だと千六百万円も赤字を積んで、これは当然我々の現世代のうちに処理をしないと次の世代がとんでもない負担を負うことになる。我々が子供たちを愛するか、日本の将来に責任を持つかという問題なんです。ですから、これはどんなことがあっても総力を尽くしてみんなで頑張らなきゃいかぬということだと思います。これまでのやり方を変えていくということだと思うんですね。  しかし、同時に景気対策というのは物すごく重要な問題でございます。私が先ほど申し上げたのは、一つ構造改革構造改革という言葉はちょっと子供ニュースには似つかわしくないかもしれませんが、要するに元気のよい、先を見て頑張っている企業や人々が力いっぱい活動できる場面をつくるということです。これまでの日本というのは、先ほど新藤先生もおっしゃいましたけれどもいろんな既得権があって、努力する能力のある人が自由に大活躍できる形に必ずしもなっていないものですから、そこのところを規制緩和して構造改革をやっていくということです。  景気が非常に悪いというのはどこが悪いかというと、御案内のように金融とか不動産とか建設とか、ここら辺がとりわけ悪いわけで、製造業、物づくりをやっている方々はそこそこ頑張っているんです。投資も伸びていますし、生産も鈍くはなってはいますが伸びています。しかし、この力のある製造業の方が、今の日本を放置しておりますと、余りコストが高いものですから外へ出ちゃう。せっかく金の卵があっても外へ出ちゃう。この方々が外へ出ないで日本で活躍をしていただくということをする必要があるので、私はさっき申し上げましたように、景気対策として今一番本当に役に立つのは法人税改革をやるということを明確に言うことだろうと思うんです。  さっき私が申し上げた地方法人課税改革というのは、少なくとも一年ぐらい必死の議論が必要だと思うんですね、制度改革ですから。しかし、その基本方向、やるんだということを今度の税制改正、来年度の税制改正というのはもうあと一、二週間で発表されるはずですけれども、そこへ書き込んでしまう。となると、先ほど上條先生がおっしゃられたように株価が多分これを好感して相当反応すると思います。そして一、二年後にはそれを目標にして投資活動が行われるということが起きると思うんですね。そういうことは構造改革法案と同時に総力を挙げて今やるべきだ、どっちが先ということではないんだと思います。
  11. 狩野安

    ○狩野安君 多分わかったと、私はそう思いますけれども、このいわゆる借金がというか、債務とかいろんなものが大変赤字になっているということを言われておりますが、私たちの想像ができない四百七十六兆円とかいろんな金額が出ているわけですね。それの原因が何だったのか、その原因を究明しないで、分析しないで財政構造改革というのはできないんじゃないかと思いますけれども、その点ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  12. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) 原因は、これは過去から累積してきたものなのでございますけれども、過去を振り返ると大きく分けて二つの原因があり、その原因の中に一つの大きな仕組み上の問題があるというふうに思います。  過去を分けて二つの原因は何かというと、最も直近の原因はこの数年間、つまりバブルが崩壊した後の大変苦しい日本経済状況の中で、これはもう国民総出で政府経済対策をしろ経済対策をしろと言ったわけです。ですから、宮澤先生が総理をなさっていたときからずっと六回にわたって超大型経済対策を打って、その総額は六十六兆円にも及んだわけです。同時に、景気が悪いですから税収がうんと落ち込んでおりますので、税収の落ち込みと政府の特別な支出でもって恐らく百兆円を超える累積赤字がこの数年間で積み上がってしまったということがあろうと思います。これが直近の原因でございます。  そして、もう少し前の原因を考えますと、実は日本経済が高度成長時代が終わって成熟段階に入ってからじわじわじわじわと大きな政府に向かって日本が進んできたんです。一つは、これは避けがたいことなんですが、高齢化が進みますから社会保障費その他がふえてくる。これはもうしょうがないことですが、実はこの中にもメスを入れる必要があるんですけれども、ふえてきた。  それからもう一つは、経済構造が変わりまして大規模な投資をする製造業中心の経済からサービス化ということになってきますと、民間投資経済を引っ張らないものですから、私どもが頑張ればよかったんですけれども、やはりそれは政府に期待をするということで公共投資をどんどんふやしてそれで埋めていったという成熟化経済の問題がございます。これが長期の問題で、そして直近の数年間の問題は、人々は不況になったから国民総出で、政府よもっと経済対策を打てと言ったわけですね。  諸外国はどういうことをしていたかというと、日本は高度成長のまだ余韻があったものですからそういうことをやれると国民が思っていたと思うんですが、諸外国は逆さに振ってもできない状態になっていたものですから、もうできません、構造改革しかありませんと。日本がやったこういうのをケインズ政策と言うんです。つまり、景気が悪いから政府が支出をする、そうすれば経済はよくなろうというのがケインズ政策なんですが、日本だけ世界の中で一周二周おくれのケインズ政策を六回も繰り返してしまったんです。それが最近の問題でございます。  しかし、この成熟化経済の中に含まれている仕組みの問題、それがこのケインズ政策をさらに要請したという構造の問題がございます。これは先ほど新藤先生がおっしゃった問題なんですけれども、二言目には公共投資に頼りたいという政治構造があり、地方財政支出構造があるんです。これは、地方が直接支出をしているので地方が問題といえば問題なんですが、しかし地方にそうさせているのは日本の中央の制度なんですね。この問題、また後ほど機会があればお話し申し上げたいと思いますが、そういう仕組みをはらんだまま国民総出で政府よ支出をせよとやったものですから財政赤字になった。この考え方、原因が明らかでございます。  ですから、成熟社会にどう取り組むのか、改革というのはケインズ政策に頼むだけでいいのかという問題、それから全国各地で公的予算の使い方というのは本当にこれでいいのかという問題、これらの問題にメスを入れる必要があろうかと思います。
  13. 狩野安

    ○狩野安君 原因ということで一つ島田先生お忘れになっていることがあると私は思うんですけれども、それは何かといいますと、これは本当の私見でございますが、今までの政治への参加の中で、女性は家計簿というものを握っていますので、もっともっと女性が政治家になっていたら経済的な面でこういう原因もつくらなかったんじゃというような気もいたしております。ですから、私はこれから女性の声というものをもっともっと大事にしていくべきだというふうに思っておりますし、女性は本当に家計簿を毎日つけていますので、そういう意味でお金の使い方は男性よりももっと上手にできるんじゃないか、それも一つの原因にはなっているんじゃないかなというふうに考えております。  それから、先ほど先生は法人税引き下げということをお話しになりました。そして地方財政も見直すべきだということになっておりました。そしてまたこの法律地方の方も国と一緒に見直すということになっておりますが、これはどういうふうに地方財政と国の財政というものの改革に取り組むようになっているのか。  それから、私もよく経営しているお友だちに言われるんです。赤字経営の会社にも税金をぜひかけた方がいいんじゃないかということを言われております。その辺もちょっとお話を聞かせていただきたいと思います。
  14. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) ありがとうございます。  冒頭に女性のポイントをおっしゃられたのは大変重要なことだと思います。  私、今まで申し上げたことは、男女共同社会の中で行われてきたことだと思いますので、女性の役割を過小評価していたつもりは全くないんですが、しかし、男女平等というだけじゃなくて、あえて女性の役割をもっと重視すべきではないかということについて実は私もぜひ申し上げたいのは、やっぱり女性の方が家庭を持ち、仕事をするというのが必ずしも容易でない、そういう社会構造、経済構造企業の仕組みになっているということです。  先ほど上條先生が人口が減っていくということは非常に憂慮される問題だとおっしゃったわけですけれども、今日、女性の方が学校を出ると仕事をするというのは当たり前になっている。しかし、そこで家庭も持って、子供もつくって、みんなで一緒にやれるということになっているかどうかというと必ずしもなっていないですね。もうスーパーウーマンでなければそれは難しい。  こういうのは異常な状態でございまして、ぜひ将来この仕組みを変えるということを本当は長期計画としてやらなきゃいけないんで、橋本総理が六大改革とおっしゃっている中に何でその問題が入っていないのかということは非常に重大な問題でございます。狩野先生、今度総理に、七大改革にしなさいということをぜひ強く、これは長期の本当に重要な問題、働く女性が結婚して、子供を安心して持てる社会全体の仕組みをつくる、七大改革の一番重要なのはそこだとおっしゃっていただきたいと思います。  それを申し上げた上で本題に入りたいと思いますが、今この国と同じキャップを地方にもかけて財政支出削減に努めていただきたいということと、それから補助金も一〇%ぐらい減らすんだという個別のキャップを今回の改革法案の中でうたっておるわけで、精いっぱいの努力だろうと思います。まだまだもっとその中身に入って議論しなきゃならないところは多々あると思いますので、その中身にぜひ私は入らせていただきたいと思うんです。  仮に、そのような補助金を削減しますよというトータルのキャップをかける、数量目標をかける、あるいは公共投資は全体として前年よりふえないようにしてください、あるいは減らしましょうということをかけたら、本当にそういうものが減っていくのかどうかということについて、私はややそれだけじゃ足りないんじゃないかと思うんです。つまり、仕組みの問題に取り組まなきゃいけない。  どういうことかというと、今日、国民は国税と地方税を納めております。国税が七と言われ地方税が三と言われていますが、国は七の地方税を取った中でそのうちの四を地方にまた戻すというか、交付税と補助金の形で戻しているわけですね。特に補助金で戻したときには、どういうふうに使うんだということを非常に細かく地方に指定をするものですから、国家機関委任事務のような形でやるものですから、地方は実は創意工夫の余地がほとんど残されていない。したがって、ついに地方は余り逆らわずに言うことを聞いておった方がいいということになって私は思考を停止してしまうんだと思います。せっかく優秀な地方の方がおられるのに、余り中央が過保護が過ぎるやり方をするものですから思考を停止する。  そして、仮に地方の自治体の首長が本気になって行政改革をして予算を余したときにどう使えるかということなんです。私は、これの本道は地方税を安くすることじゃないかと思うんです。しかし、地方税は超過税率を取ることはできるけれども安くすることは許されないんですね、事実上は。そして、あえてやると、これは当局の方からそんなことはないと言われるかもしれませんが、あんたのところは税金足りているんだからいいじゃないかということで交付金を減らされるんじゃないかと思うんです。  そして、地方債を発行するというと、これもまた中央の許可を得なきゃいけない。自分で創意工夫でやるというと、元利償還優遇制度で面倒見ませんよと言われる。これだけのいじめが入れば、地方はもう考えないで中央のおっしゃるとおりにして、あとは補助金を下さい下さいと言っているのがいいに決まっているわけですね。ちょっとわかりやすい言葉で申し上げていますが、誤解を呼ぶこともあろうかと思いますがあえて承知で申し上げております。  そうすると、地方は思考をとめて中央依存という形になる。そして、どんどん補助金をいただいて、どんどんいろいろなものをつくれば選挙に受かる、こういう仕組みになっているわけです。この形を変えませんと本当に財政改革はできない。  つまり、財政改革法というのは水道の蛇口を一応とめようということになっているんですね。だから、次々ととめております。しかし、地下に入っている水道の栓のところが、全国三千三百の自治体、四十七都道府県、これの水道管に全部穴があいています。だから、じゅくじゅく出ちゃうわけですね、蛇口をとめても。そういう事態が起きてくるんだろうと思うんです。ですから、これを本当に改革するには、地方自治体がみずからの創意工夫と自己責任において自分が行政改革をした方が自分のためにもなり、住民、県民、市民のためになるんだ、こういうメカニズムを構築しなきゃいけない。  それじゃ、どういうふうにすればいいか。三点セットを私は申し上げているんですが、一つは思い切って本当に地方自治体に課税自主権を渡したらどうか。税率を下げてもいい。行革をしたところで予算が余ったら税率を下げて、そして何々県は日本で一番税率の安い県だということになったらお金持ちも企業も集まりますから、そういうメカニズムをつくってあげたらいいじゃないか。  もう一つは、財政自主権でございます。地方債を発行したかったらどんどん発行したらいいじゃないか。ただ、日本地方債というのは非常に奇妙な仕掛けになっておりまして、発行はするんですけれども、実は大部分の地方自治体が自力で最後まで返し切る力がない、あるいは意欲もないのかと言っては失礼ですが、そんな感じがある。そこで、中央に依存して財政投融資その他の、あるいは交付金で面倒を見てもらいながらそれを最後に賄うという形になっています。そうしますと、それを担当している中央省庁は、特に自治省でございますけれども、これは、地方債というのはそういうことだから全国一律の利率だということになる。  こんなばかなことはないわけですよ。債券を発行するわけですから、頑張っている自治体と頑張っていない自治体との間には当然差があってしかるべきだ。私は教師だからそれよくわかるんですけれども、学生さんがいて、頑張っている学生さんとだめな学生さんに期末テストで同じ点数をつけたらどういうことになりますか。そんな学校は滅びちゃいます。しかし、日本はそれをやっているわけですよ。  つまり、地方はそれを払う能力がないから、国が面倒を見るんだから同じ利率でいいじゃないか。これじゃ資本市場は全く無視されているわけです。だから、努力しようといったって努力しがいかない。ですから、みんな思考を停止して中央に依存する。これが財政を膨らませる根本原因の仕組みでございます。  ですから、これを変えるにはどうしたらいいか。自己責任で財政自主権を渡すということです。ただ、課税自主権を渡して、財政自主権を渡すというのは本当の地方分権でございますけれども、果たして地方の方々がそれだけで立派な地方行政をなさるかというと疑問もあります。  ですから、これはあめだけじゃなくてむちも必要で、それで失敗をなさったところは破産させた方がいい。私はぜひ地方破産制度というのをつくっていただきたいと思うんです。そして、そういう自治体の議会や首長を選んだ住民もみずから責任を負って財政再建をするんです。できなければ地方の合併をしたらいいんですよ。隣の自治体が吸収すればいいんです。そうすれば、合併はしたい人がしてくださいなんて言ったって日本じゅうやりはしませんのですからね。破産したところが吸収されればいい。そういう形でやっていくというような、これはまだまだラフな議論ですけれども、ぜひ先生方、考えてやっていただきたい。  私は日本民族というのは聡明な民族だと思うんです。余り過保護がひどいから地方の方は思考をとめているんであって、本当に責任を持たせて、失敗したら破産させるんだぞという状況の中で自由を与えれば、これは創意工夫でもって頑張ると思う。そうすると、地下に眠っている水道管の穴がふさがってきて、蛇口を閉めたらちゃんと効果が出てくる、こういうことでございます。そういうことをぜひやっていただきたい。  法人税の話ですけれども、法人税上條先生が詳しくおっしゃられたわけですが、はっきり言って日本法人税の仕組みは正直者が損をするという仕掛けになっております。利益を出しているところが法人事業税を払う、あるいは住民税の法人税割を。  私はこういう言い方をすると問題かもしれませんが、あえて言わせていただきますけれども、日本法人税は、地方自治体は選挙権のある個人の方には余り税を取るということを強くおっしゃらない、選挙権のない法人から、取りやすいところから取るというのがあると思うんです。例えば、粗大ごみ回収の実費を取っている地方自治体がどのぐらいあるかということです。かなり少ないんです。  ですから、外形標準課税を導入しますと、企業は赤字が出ても出なくても、地方で水道を使い、土地を使い、ごみを出して、地方公共サービスを要求しているわけですから、当然、外形標準課税というのを払う必要がある。これは赤字の問題とは関係ありません。そうすると、努力する者が得をする、こういう仕組みになる。これも地方行政を責任ある地方自治に持っていく根本的なことだと思うんです。それを含めてぜひシステム改革をお願いしたいというふうに思います。
  15. 狩野安

    ○狩野安君 とてもわかりやすく説明していただいて、ありがとうございました。地方分権の時代が来ていますので、大変大事なお言葉だというふうに考えております。  もう時間も少なくなってきましたけれども、もう既に先生はごらんになっておわかりだと思いますが、自民党が出した緊急経済対策、この中で民間導入、PFI、こんな言葉を使われるとまた私たちは大変わからないんですけれども、社会資本整備について先生はどういうふうにお考えになられますか、お聞かせいただきたいと思います。
  16. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) 私も確かに最近、政府の文書の中に外国語が多過ぎると思います。PFIなんて一体だれがわかるかと思います。もう少しちゃんとわかりやすい言葉を使っていただきたいと思うんですが、これは要するに民間資金も合わせて、場合によると財投資金も含めて、社会資本を整備するための仕組みだというふうに言われておりますが、それはぜひやっていいことではないかと思います。  ただそのときに、先ほど新藤先生も言われたことですが、財投資金というのが今までのような形で使われるというのは私は異論がございます。財投というのは、実は民間が担えない長期の公共プロジェクトを実現していくという意味では歴史的には大きな役割を果たしたものなんですが、やはりもっとスリムに、もっと市場の声を聞いて、本当に意味のあるプロジェクトはやるけれども意味のないプロジェクトはやらないんだということを選別するようなメカニズムを中へ持ち込まないといけないんですね。  私は、財投機関債ということが改革として重要だということが言われておりますけれども、ぜひそれを進めるべきだと。つまり、財投機関債というのは、財投を使って事業をする団体が市場に債券を出して、これを使ってやるんですがいいですかと市場に聞く、市場がそんなものは将来性がないからだめだよと言ったら、ポシャったらいいわけですね。それでもやりなさいと言うものはやる。  しかし、市場評価しないけれども国として絶対にやらなきゃいけないものというものがあるんです。これはもう税金で我々は負担すべきなんですね。何の事業はやるべきだ、何の事業はやめておいた方がいいんだ、何の事業はむだ遣いだからなくせ、こういうことが国民にわからないんです、今の財投の仕組みというのは複雑過ぎて。ですから、市場を参加させる、国民を参加させる、そういう中でPFIをやるということであれば私は大賛成でございます。
  17. 狩野安

    ○狩野安君 もう残りがあと二分なんですけれども、先生は税の専門でいろいろ研究をなさっておられますので、私は相続税で大変苦労いたしましたものですから、相続税の問題をもう一言、ちょっと聞かせていただければ大変幸いに思います。
  18. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) 先生がどういう意味で苦労をなさったのか私もよくわからないんですけれども、私はある意味では相続税で苦労してみたいななんて思ったりもするんです。  日本で相続税が高過ぎるという議論があるんですが、中小企業を承継していく上で、せっかくいい技術を持って皆さん頑張っているのにうまく継げないというのは問題があります。ただ、朝からゴルフをしている人たちが相続税を軽減されたというのは、私はこれはあってはならないことだと思うので、非常に微妙なところがございます。  またこれは別に、場面を改めてぜひひとつお教えいただきたいというふうに思います。
  19. 狩野安

    ○狩野安君 終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  20. 泉信也

    ○泉信也君 平成会の泉信也でございます。  参考人の先生方、ありがとうございました。  まず、私は新藤先生からお話を承らせていただきたいと思います。  先日、先生が御寄稿なさいました新聞の欄で、行政改革に絡んででございますけれども、理念あるいは論理の明瞭さ、緻密さということが既得権にしがみつく集団を退場させるという、そういう論理を展開していらっしゃいました。  きょう承りましたお話も、この法案そのものもさることながら、全体の体系のつくり方にまだまだ不足しておる点がある、こういう御指摘があったと私は受けとめさせていただいたわけであります。特に、憲法四十一条のお話をしていただきました。国会最高機関としての機能ということに言及をされたわけでございます。  この法案が提出されるということは、ある意味では、今後続きます内閣予算編成権を縛るということにもなるのではないか、私はそのような危惧を持つものであります。非常にうがった見方をしますと、大蔵省官僚が政治家不信あるいは政治の不安定の中で歳出が膨張することを恐れてこういう法案を提出する方向に動いたのではないかとすら思うわけであります。  先生のお立場でもう一度、この法律が、新たな立法が必要なのか、ある意味では内閣の現在の権限の中で処理できる歳出削減ではないかとすら私は思いますが、いかがでございましょうか。
  21. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 財政構造改革に関しまして、先ほどの話で申し上げれば、五百兆からの国内総生産にほぼ匹敵するだけの債務が累積されている。そういう状況の中で、財政改革のための法的整備を必要とするのは私は当然だと思います。  ただ、今回の法案というのは分野別にキャップをかけるということを特徴にしておりますけれども、例えば法的根拠を持つ十三本の公共事業計画がございますが、その十三本の公共事業計画そのものが妥当かどうかということについては何ら触れられていないわけであります。  むしろ問題なのは、財政構造改革と言うならば、そうしたことがきちんと制度として事業のスクラップ・アンド・ビルドが確保されるような法的仕組みをつくるべきなのであって、今お話しのように内閣の編成権を縛るということかもしれませんけれども、国会予算審議がまさに民主主義政治の最も基本であることは、つまり歳入歳出を官僚の恣意的な状況もとで行わせないということでありますから、同時にそのことは国会の言うならば予算審議権を縛ることにもなるのではないでしょうか。  ですから、国会財政構造改革のための法規範をつくるとするならば、先ほどの繰り返しになりますが、大蔵省は当然なんですけれども、内閣予算編成についての枠組みを明確にするような法をつくるべきなのであって、既存歳出構造をそのまま固定化してしまうような法案をつくることを了承することは議会制民主主義の死滅になりかねないのではないかというふうに思っております。
  22. 泉信也

    ○泉信也君 この問題について、島田先生から先ほど法の形にすることが重要だという御発言がございましたけれども、先生の御意向をもうちょっと補足していただけますでしょうか。
  23. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) これまでの予算の編成の仕方というのは、もちろん最終決定権は国会にあるわけですから、国会予算委員会でそれを議論して認めるという形にはなっておりましたけれども、しかし現実にはどういう形になっているかというと、例えば復活折衝というような言葉にもあらわれますように、さまざまなそういうプロセスを通じて行われている。また、ちょっとわかりやすく言いますと声の大きいところが勝っていくというような妙な力関係の中でいく。その結果が今日の財政膨張を招いたわけでございますので、私は多々問題はあると思うんです。  新藤先生がおっしゃることも私はほとんど賛成でございまして、多々問題はあるけれども、しかしぎりぎり一つの大きな枠組みをつくって、そして国民がこれを理解して支持して、その枠組みの中でやろうということが不透明な折衝といいますか、声の大きいものが勝つといったたぐいの、あるいは役所の中でのいろいろなやりくりといったものについてそういうことを許さない基本的な枠組みをはめるということですから、私は意味があると。これまでは中曽根総理のとき以来シーリングというのをかけてきたわけですけれども、あれはトータルに、変な話ですがみそもくそも一つでシーリングをかけてきた。今度はあえて各項目に、大項目に踏み込んだということで、私はそれなりのメリットがあると思う。  ですから、ここでまさに重要なのは、先ほども冒頭に、ぜひこの国会を通じて国民皆様方がこれを理解するということを期待したいと申し上げたんですが、これは先生方にぜひやっていただきたいんです。私はこれが議論の最後の段階に来ているというのが実は残念なんですよ。本当に国民の皆さんはこの事態をよく理解しているのかどうか。もっと本当は強力な議論があって、さんざん議論をして国民が納得をして、じゃぎりぎりのところその枠組みでいきましょうねということでなければ、実はなかなか大変。  しかし、私は、今までのやみくもなシーリングとかあるいはさまざまな何とか折衝という中で不透明に行われているものを排除する、そして目標を定めていくという意味ではプラスではないか、こういうふうに思っております。
  24. 泉信也

    ○泉信也君 この法案の意義はそれなりに私も承知をしておるつもりでございますが、現在のこの不況のまさに大変な時期に本当にタイミングとしていいのか。いずれこうした大改革に取り組まなきゃならないことは十分承知をした上でお尋ねを申し上げるわけですが、新藤先生いかがでございましょうか。タイミングとしてこの時期に、歳出削減法案と申し上げていいと思いますけれども、こうした法案を提出し実行することが、我が国のこれから五年あるいは七年という時間を切っての経済の発展、景気の回復にどのような影響を与えるとお考えでございましょうか。
  25. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 私、この委員会最初の審議のときの先ほどの「こどもニュース」の話、あれをちょっとあるところへ行く予定で運転しながらラジオでずっと聞いていたんですが、そういう意味で言えば、いささかわかりやすく申し上げると、我が大学の近くに丸井があるせいもあるんですけれども、例えば学生で、仕送り分の中の五割が丸井へ行つちゃう人と、それから仕送りの中の一割を丸井の返済金に充てている人間とではどちらがいろんな自由度があるかといえば、言うまでもない話でございます。  したがいまして、今不況だと。確かにそのとおりでありまして、その不況対策に対して別途打つべき手というのは、先ほども島田先生上條先生等御発言がございましたが、多々あると思います。しかし同時に、政府財政出動をせねばならない部分というのも当然あるわけであります。ところが、過去からの惰性で現在の財政構造がつくられており、しかも丸井に返す金が一年間の収入というか支出の半分も占めているというような状況の中では機動的な対応ができないわけでありますから、当然財政構造改革を同時に進めるということは必要なんではないでしょうか。  そしてしかも、私はきょうはちょっと申し上げませんでしたけれども、かわりに島田先生がおっしゃってくださいましたが、今のような何々整備何カ年計画という話をそのままやると、例えば道路整備五カ年計画で指定区間の管理を機関委任されているある県の知事が、一昨年度になりますけれども、用意して建設省道路局に出した書類は四万枚なんですね。そして、その設計途中で変更して作成したというとその一・五倍になる、つまり六万枚になる。  こういうばかばかしいことをやっていれば、財政構造改革と幾ら言ったところで直らないだろう。その意味でも、分権的な改革ということを柱に徹底させるということが必要なので、先ほどの話に戻ってしまいますけれども、既存をそのまま、もちろんおっしゃることはよくわかるし、入り口としての意義を私は否定するわけではないんだけれども、全体として今の構造を凍結するようなものが果たして財政構造改革かと申し上げたいと思っています。
  26. 泉信也

    ○泉信也君 上條先生にお尋ねをいたします。  先ほど、日本経済の再活性化のためには民間企業役割が非常に大きいということからお話をお聞かせいただきましたけれども、少子化に触れるところまでいかなかったと先生お話しでしたが、少子化の問題も含めまして、財政改革法と言われるものと先生から御指摘いただきました民間企業役割を大きくするということの関連性、あるいは矛盾というようなものも含めてコメントをいただけませんでしょうか。
  27. 上條俊昭

    参考人上條俊昭君) お答えいたします。  私は、財政構造改革のこの法案をこの時期にやるということについては反対はいたしませんけれども、物事というのは絶えずあめとむちというものがありまして、むちをやる場合にむちだけでは物事というのは進まない。やっぱりいい子をつくるのにはあめとむちが要るというふうに、経済をよくするためにはあめの部分も、これは景気対策という短期的なものではなくてもっと基本的なものとして必要なのではないかというふうに思いますので、私は先ほど、企業活性化するための法人税減税といいますか、法人税の是正はぜひやるべきだということを申し上げた次第であります。  それから、少子化の問題でちょっと触れなかったんですけれども、先進国の中でといいますか、経済学が起こって以来、経済学というのは産業革命以降に起こった若い学問だと思いますけれども、一七〇〇年代の後半、人口減少の経済学をやった学者というのは、私は寡聞にして、両先生御存じかもしれませんけれども、ないように、あっても非常に少ないように思います。先進国はそういうことに直面してこなかったからであります。  ところが、厳しい見方をすると日本は二〇〇四年に人口がピークを迎えまして、それから減少してまいります。人口が減少してきますと、当然労働力も外国人労働者を雇わない限り減少を始めるわけですから、この前ある高名な経済学者に聞きましたら、二〇一〇年以降は日本は五十年ぐらいずっとマイナス経済に陥るおそれがある、幾ら資本装備率で労働生産性を上げるといっても、人口が減るような経済では経済成長しない、そういうことは非現実的であるから、そうなってくれば外国人労働者を入れるというようなことにならざるを得ないのではないかと。そういう大きな問題がもう数年先に迫っておるわけであります。  したがいまして、そういう社会、時代を迎えるときにどうしたらいいのか、これは私は政府だけではできない仕事だと思います。先ほど自民党の女の先生からも御質問がありましたけれども、男性、女性、家庭、社会企業、全部を挙げてこの問題に取り組む必要があろうかと思います。そのときにおいて、経済がやはり元気で社会活性化しておりませんと、私はこの問題に対処できないのではないかというふうに思いますので、そういう意味であえて少子化とか民間活力の問題を申し上げた次第であります。
  28. 泉信也

    ○泉信也君 新藤先生にまたお尋ねをさせていただきますが、先ほど来、諸先生のお話もそうですが、いわゆる構造改革法と言える代物かどうかとの御指摘が言葉をかえてあったかと思います。この法案をこのままやりましても債務残高の絶対額が累増していくということは避けられないと、私はこういう仕組みだと思うんです。  先生のお考えとして、もしこの法案をさらにいじるとすれば、最低限こういうところをいじるべきではないかと、そういう御指摘をもしちょうだいできますれば大変ありがたい、このように思うわけです。幾つか既に、公共事業の一律削減というようなことではなくてというお話もございましたので、そういうことはきっと先生のお考えの中にあるとは思いますけれども、もしもこの法案の足らざるところを補うとすればどういう点がござ  いますでしょうか。  後でこの点については島田先生からもお話を承れればと思います。
  29. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 時間が全く限られておりますので、ごく簡単に申し上げれば、要するに、先ほど申し上げたような公共事業関係の優先順位をきちんと設定するという、そういう仕組みをビルトインさせた法案に修正するということが一つ必要なのではないでしょうか。  それから、今御審議になっていらっしゃる法案に盛り込むことが妥当かどうかということはちょっと判断が迷いますけれども、行革会議、きょうもまた集中審議がされるんでしょうが、財政投融資の問題と入り口の問題並びに対象機関、この大幅な整理をきちんとなさらない限り目先の明るいところは出てこない。その意味で、財投制度そのものの改革を同時に並行されて、もし政府側というか内閣側が出さないならば国会側からきちんと出すということが必要なのではないでしょうか。  それともう一点、これは私は先生方に御注文をつけておきたいことは、二〇〇三年になってGDPの三%というのは単年度当たりの話でありまして、それまで借金していくわけでありますから、一般会計だけ考えましても三百兆近い国債は累積されるわけであります。これをどうするのか、これを私は一有権者として聞いておりまして、ほとんど国会政府側に御質問がないのは不思議な話だと思っております。
  30. 泉信也

    ○泉信也君 島田先生にお願いいたします。
  31. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) 私は、この法案時限立法でございますし、特に集中改革期間というのは来年度から始まるわけでございますから、ぜひ今次国会で通した方が国民のためにもよろしいのではないか。欠点がないとは申しませんけれども、それよりもまずこれは枠組みとして通す。しかし同時に、先ほどから申し上げております法人税改革、これもはっきりやる。それから、この構造改革規制緩和の受け皿としての市場制度整備金融システムの安定化のための強力な整備といったようなことを急いでやるということが必要ではないか、こういうふうに思っております。
  32. 泉信也

    ○泉信也君 この法案と直接かかわり合いかないことにもなりかねませんが、残されました時間、新藤先生、今日の景気の局面を見ましたときに、私どもは内需の拡大が、公共事業ということではありませんが、個人消費をいわゆる九兆円も縮小させたということが今日の景気を後戻りさせつつある、足踏みと政府は何度もおっしゃいますけれども、そうした局面に追い込んできておるのではないか、このような思いを持つものでございます。政策ミスが今日の不況を招いておるのではないか。そしてまた、果たして九年度の政府経済見通しの一・九%ということは達成可能というようにお考えでございましょうか。もしお言葉をいただければお願いいたします。
  33. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 政府経済予測ぐらい当たったことがないのでよくわかりませんけれども、かなり下回るという話になるのかもしれません。ですから、今、個人消費の問題等々ございますけれども、何をやってもある意味ではモグラたたきのような、こちらをたたけばあちらが出てくるという状況的なことがございます。そこの部分、どちらに向かってブレーキを踏み、どちらへハンドルを切ってアクセルを踏むのかということが問われているのではないでしょうか。
  34. 泉信也

    ○泉信也君 もう時間が参りましたので、私のお尋ねをこれで終わらせていただきます。  先生方、ありがとうございました。(拍手)
  35. 小島慶三

    ○小島慶三君 きょうはお三方おいでをいただきまして、本当にお忙しいところをありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  貴重な話を伺ったわけでありますが、私、最初にこの改革の問題が出てきましたときに、これはやっぱり世代間の公平とかいろいろそういう点からすればやらざるを得ないというふうに思いました。しかし、現実に出てきた法案についてはかなり私はいろいろ疑問を持っておりますが、それは別にいたしまして、きょう先生方に少しお伺いをしたいと思うのでございます。  この改革を妨げるものというのは、私は三つあると思っております。  一つは、やはり権利を持っている者といいますか、現在ある利得を得ている者が反対する、これは当然である。それからそのサポーターが、サッカーじゃありませんが、これが反対するのもこれも当然であろうと思う。これが第一。  それから第二は、やはりアメリカの外圧というものであろうと思います。これは、一つはもっと内需を拡大しろ、それからもっと不良資産を徹底的に財政出動して対処しろ、こういうふうな財政出動面の要求、これが第二だろうと思います。財政出動という形になってしまえば、簡略に申しますが、改革の行く末というのは非常に怪しげなものになってしまうというふうに思います。  それから三つ目は、これは私は端的に申しまして景気の問題だろうと思います。  それで、景気状況についてはいろいろ経済企画庁あたりでかなり大本営発表みたいなことを繰り返しておりますけれども、これは私はもう現実には通用しないというふうに思っております。やはり明らかに不況の方向に向かっているというふうに思うのであります。これは昭和四年の恐慌、あのころの計数と対比しましても、あのころは四年間でマイナス〇・七、今の経済が大体一%そこそこでありましょう。それで、ことしの経済は恐らく〇・九ぐらいになるだろうという民間の予測であります。私も一%を切るのは確実だと思っております。そういう時期にこの行革というものがぶち当たりましたのは、大変不幸と申しますか、そういうことだと思うんですが、この点は、やはりこれをやり抜いてこそ景気がよくなる、活性化できると、そういうさっきからの島田先生のお説なのでございますが、果たしてそれでよろしいか。日本経済の体力がこの改革でもつだろうかということを私は心配するわけでありますが、その点、さっきからのお話もありましたし、くどいようでございますが、まず島田先生にお伺いしたいと思います。
  36. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) 私も小島先生が今おっしゃられた懸念というのはほとんど同じように共有をする者の一人でございます。日本経済は大変難しいところへ来ております。  いろいろなことをやらなくてはいけないということで、規制緩和の問題もあり、財政投融資改革の問題もあり、金融システムの問題もあり、もうすべての問題を同時並行で進めなければいけない中で、今この景気の問題というところで財政改革法の成立を一年先延ばしすべきではないかとかいう議論があり得るかもしれませんが、私はそう思わない。  それは、基本的な枠組みとしてこれを今構築いたしませんとどういうことが起きるかということですが、こんなことを具体的に言うのはちょっとうまくないのかもしれませんが、例えば国有林野の問題がございます。国有林は六兆六千億円の資産価値があるというふうに農林省ははじいておりますけれども、三兆八千億円を国債につけろと、こういう議論があるんです。  大変いろんな方々がいらっしゃいますから、力任せにやれば通るんではないかと思っている方もいらっしゃるんじゃないかと思うんですけれども、そういうことが日本のこれまでの財政というのを非常に混沌とさせて、ある意味では大変な膨張体質にしてきたわけですね。住専の処理なんかもそうだったと思います。一部の関係者がこれは力任せに通せばということでもって、実を言うと農協の体力がないことは私もわかっておりますけれども、十分な自己改革をしないでも済む形にしたという面がある。そういうことを放置することになります。  ですから、集中改革期間で、これは力任せに声の大きいところ、力のあるところが押し切るというのじゃなくて、国民が議論をして決めた法律があるんですよと。ですから、これは大蔵省の問題ではない、いろんな問題ではない、国民の決めた法律の枠内で無体なことはできないんだという状況の中で、他面、経済活性化するためにはありとあらゆることを本気でやらなきゃいかぬのですね。  私は、実は政府のおやりになっていることについてはたくさん注文もあるし批判だらけでございますが、この基本的な枠組みがないと無体なことが通る可能性がございますので、ぜひこの基本的な枠組みについては今国会で通すべきだ、欠点は相当あると思いますけれども、基本的な太い線のところは通すべきだと、こんなふうに思っております。
  37. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。  確かに、私もそういうふうに思うんですが、少し先のことを考えてみましても、政府の今度のいろんな施策は、財政構造改革成長率三・五%というのが前提になっているというふうに私は伺って、改革をやらなければ一・七五ぐらいの成長率だろうが、やれば三・五になるというんですけれども、先ほどの上條先生のお話もございますし、これからは日本人口がどんどん減る傾向にある、若年労働力がだんだん不足になるということもございます。そういった意味生産性というものがどうなるかということもございます。  それからもう一つは環境問題。今度京都で会議がございますけれども、環境問題の束縛が非常に厄介になるということもございます。  さらに、最近の金利の動きとかいろんなものもございまして、外国に流れ出る金もかなり多い。いわゆるそういうものをバックにした、エンボディーした空洞化というものも大分先に進むと思うんですけれども、とても一・七五とかそういうことまでは行かない、恐らく一%以下の成長率しか中長期には期待できないんだと思うんですが、その中でこの財政改革というものは果たしてやれるのかどうか、そういう疑問を持っておりますけれども、これもひとつ島田先生にお伺いします。
  38. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) 大変重要な御指摘だと思います。大蔵省が資料をいろいろ整えておりますが、一・七五%の成長を見込んで、そして二〇〇三年にGDP比三%以内に財政赤字を抑えるような目標を達成するということでやっていった場合にでもなお、要調整額という言葉を使っていますが、大体こういう言葉はわかりにくいんですけれども、要するにそれでも足りないよということなんですね。足りないのが、これはどのぐらいの歳出伸び率かにもよりますけれども、七兆円から五兆円ぐらいの幅で足りないよということですね。三・五%の成長なんということができれば、この幅は四兆円から一兆円ぐらいの不足になるんだと。  不足ということは、要するにまた何かの手段で増税をするか、あるいはさらなる財政改革で、削減で出さなきゃいかぬということですね。そういう目標を立てればそういうことだと。しかし、それを外したらどういうことになるかというと、先ほど申し上げたように、とんでもない累積になって、雪だるまになって、先生が冒頭におっしゃられましたように、これはとても我々の世代としては渡せないような国を後世代に渡すということになるわけです。  ですから、ここの問題は何かというと、大変な苦しい状況であるということは私もよくわかります。つまり、これまでの財政支出というのは、特に公共投資のところが裁量的な支出でございますから、調整できればできたわけなんですけれども、そちらの方がむしろ肥大する形で日本経済運営されてまいりました。これの帰結がどういうことになっているかというと、公共投資絡みの日本経済全体に占める比重というのは、特に建設業絡みの比重というのは欧米諸国に比べると約倍なんですね。ですから、今の仕組みで財政出動をすればまたそれが増幅するだけの話。どういうふうにしてそういうものの比重を経済の中で減らしていって民間の活力ある産業で代替するかという、この産みの苦しみですね。ですから、これで大丈夫なのかとおっしゃられて、私は、大丈夫ですと言う自信は全くございません。  そういう中で、私が今一つこだわっているのは、財政改革法は通した方がいいだろうという一点だけでございまして、経済全体には大変な問題がある。一言基本的なことを言えば、諸外国に比べて倍もの比重で肥大してきていたそういう建設業、公共投資絡みの財政構造を長期的には半減していくような形で、それを別の民間セクターが吸収するという経済構造改革が求められている。それをどういう手段で追求していくかということについては、私も先ほどからいろいろ申し上げておりますが、恐らく五つ六つ十ぐらいの総力を挙げたそれこそ構造改革を同時に推進することではないかというふうに思っております。
  39. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。  時間がなくなってまいりましたので、新藤先生に一つお伺いしたいんですけれども、私は新藤先生のような枠組みで今度の法案をつくり直すということについては全く大賛成でございます。今の法案ではその点が大変不備でございます。  それで、ただ、そういうふうなものをつくった場合にも問題になりますのは、例えば公共事業なら公共事業の具体的なプロジェクトのチェックをだれがするかという問題でございます。このチェック、評価ということがなければ今までと同じような土木屋さんのプロジェクト進行になってしまうと思うんですけれども、その点いかがでございましょうか、何かそういったシステムについてお考えがございましたら。
  40. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 評価のシステムといいますか、評価を行う単位というのは私は複数であるべきだと思います。ですから、今、行政改革会議の方で議論されている内閣府、その中の経済財政諮問会議ですか、もうひとつよく見えてこないんですけれども、そういうところでひとつ行うことが必要なんじゃないでしょうか。  それから、前々から議論されているように、参議院がいいのか国会がいいのかはともかくとしまして、そうした評価局をきちんと設けるということも重要なことだろう、それをめぐる議論がこういう場で展開されるべきだと思っております。
  41. 小島慶三

    ○小島慶三君 ありがとうございました。  それで、残りの時間で上條先生にお伺いをしたいと思うんですけれども、先生のお話のようにだんだん少子化というものが進んでいく、そういった場合にどんなふうな対策があり得るか、これが  一つ。  それからもう一つは、先生の法人税減税という問題、私も、これもやはり考えなきゃならぬ一つの大きな要素である、改革景気と両立させるための一つ手段かというふうに思いますけれども、二〇%というのはいかにも大きい、そしてこの財源というものをどういうふうにお考えなのか。この二点お伺いしたいと思います。
  42. 上條俊昭

    参考人上條俊昭君) 少子化の問題というのは先進国共通の悩みでありますけれども、特に今、日本とドイツとイタリーが、旧枢軸国が特殊出生率が一・四、一・三でまた敗戦を迎えるんじゃないかと。その点、連合国側はなかなか成績がいいようでありまして、その中で、フランスは第三子を特別に優遇するということをやっている。日本の結婚している夫婦の間では大体二・二人というふうに生まれておりますので、これは厚生省の調査によりますと大体三人は持ちたいという答えが出ております。したがいまして、健全な夫婦に三人産んでもらうためには何がいいかというと、フランスがやっているように、三番目の子供を優遇するということを真剣に考えるべきではないかというふうに思います。  お金を出したってそうはいかないよと、女性はもっと基本的な、家庭と仕事が両立するようなことが大事だというようなことがございますけれども、私は何らかの対策を今からやっておかなければ、二〇一〇年以降大変な問題が起こるということを申し上げておるわけでございます。したがいまして、片方でもちろんキャップをはめて財政削減するということは私はいいと思いますけれども、もう一方でそういうことが必要だということを申し上げておるわけです。  財源は、確かに四兆円、これは大きいわけですけれども、これは三年ぐらい、これはしようがない。その分何も、政府が小さな政府をつくらないとすれば、それは負債がふえるということになりますけれども、四兆円毎年削るという背水の陣を政府がしくわけですから、大体二〇%の減益、それについて予算を切り込むという努力をしていただくと同時に、企業がもしそのお金をもらってそれを再活性化すれば、一〇〇あったものが五〇、今政府に取られて五〇が自分のところにある、それが六〇ということになりますと、その一〇を使って恐らく一二〇とか二二〇の収益を上げれば、当然またその分は十分法人税収の増収ということに相なるわけでございます。  基本的に言えば企業の活動を担保にして、その間一部は公債の増発ということになると思いますけれども、政府は極力歳出をカットするということと、将来の企業活動ということを担保にしてその減税を行えば、それは三年とか四年の間に恐らく均衡するのではないか。アメリカが八〇年代以来ずっとやってきた政策というのはまさにそういう政策でありまして、ようやく最近になりましてそれが成功をおさめておるわけでございますが、これは相当時間がかかると思います。二年や三年で解決を見ることはないと思いますけれども、そういう実験をやることによって、私は二十一世紀の明るい社会の展望が開けるのじゃないか、そういうふうに思います。
  43. 小島慶三

    ○小島慶三君 終わります。
  44. 田英夫

    ○田英夫君 大変いい話をありがとうございました。  この法案は、今までの政府が出してきたいろんな法案と比べて極めて異例であることは事実だと思います。みずからの権限を縛る、あるいは覚悟を示すという言い方でもいいと思いますが、それだけ重大な段階に来ているということを政府みずから示すことによって財政危機を乗り越えようという、同時に景気を回復させなければいけないという、場合によっては矛盾する当面の目標に対してどう対応するかということ。これは余り表に出ないわけですけれども、重要なこの二つのことをやらなければいけないという状態の中でのことですが、読んでみて気がつきますのは、景気が悪いといえば公共事業と、これが従来は決まり文句のように言われてきました。  これは笑い話のように聞いていただきたいんですが、お題目どおり景気が悪いから公共事業だというときに、大分前のことで飲みながらの話ですけれども、おかしいじゃないか、一体公共事業をやるとどうして景気がよくなるんだという私の質問に、それは私はゼネコンだけがもうかるんじゃないかと言いましたら、そういう政策を進めている側の人は、いや、もちろんもうかる、それはいいことですと。そうすると、公共事業が行われるその現場の町では、夜になりゃ飲み屋がもうかるんだ、それこそ風が吹けばおけ屋がもうかるというような話をしていたことを思い出すんです。  今回のこの法案を見ますと、十四条ですか、公共事業も百分の九十三に減らせと、こうみずからを縛っている。これはこれで私は了解をしているんですが、長年国際問題をやってきました立場から、どうしてもODAの問題が気になりました。  二十一条、二十二条で、これまた十分の九、十年度では削減すると、こういうことをみずから縛って、十一、十二年度は前年度の当初予算を下回ることというふうに縛っているわけであります。これは島田先生にお答えいただければいいかと思いますが、既に国際的にこのことが大変大きな反響を呼んでいることは御存じのとおりであります。特にODAの中には国際機関への拠出金が入っておりますから、これを一〇%削るということだけでも大変なところを、なぜかこういうものについては三〇%、四〇%を削られてしまうという部分があります。例えば難民高等弁務官事務所、UNHCR、緒方さんが責任者ですが、ここでは大体四〇%近く日本の拠出金が減らされることによって事業が大幅に落ち込む、こういうことを言っておられます。  こういう今度の法案を見て、こういう部分があっていいのかな、全部一律でいいのかなという感じがしますが、いかがですか。
  45. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) 今般の法案歳出削減基本方針でございますけれども、私の理解では、大きな項目について一律ではないというところに特徴があるのではないかと思うんですね。例えば社会保障は二%の伸び以内に抑える、公共工事は一〇%は削る、そしてODAは十分の九ということですから一割抑えていく、それぞれ見ているわけです。  そのODAの中で、弁務官事務所の日本の国際的な拠出金を四割減らすということがどこまで確定されていることなのか私はよくわかりませんが、このODA予算をトータルで減らすということ自体大変つらいことですけれども、私は諸外国のやっておられることを拝見しても、例えばアメリカなどはもっと極端に、しかもこういった正当な事由なしにと私なんかあえて言いたいんですが、いろんな政治的な理由でおやりになる。そういうことから見ると、日本は非常につらい状況の中でぎりぎりのことをやっているという意味では、トータルの枠を締めていくということがあってもいい。あってもいいというか、ほかのものを大きく削るわけですから仕方がない面があるのではないかというふうに思います。  しかし、その中で戦略的にどういうところはその枠の中でも生かしていくか。そして、援助のかなりの部分は実は要請主義でまだやっておるわけでございまして、現地に行けば、実はだれのために援助をやっているのかというような予算の使い方もあるものですから、そういうところを精査して、そういうところは大なたを振るうけれども、重要なところは残していく、そしてトータルで十分の九にするというような、それこそが私は本来の戦略的援助なんだと思うんですね。そういうことを一段と当局者は国民と対話をしながら詰めていっていただきたい、そんなふうに思っております。
  46. 田英夫

    ○田英夫君 ありがとうございました。  三人のお話を伺いながら、失礼ながら感じたことは、財政構造改革をやろうというときに、どういう視点、どこに重点を置くかというような意味で、一つ政府、もう一つ民間企業、それにもう一つは庶民といいますか市民といいますか、その生活、そういう三つがあると思います。  これも島田先生にお答えいただければと思いますが、先ほど、可処分所得をふやすということは当然考えなければいけない、可処分所得の問題、しかし、それよりも法人税減税が一番重要だという意味のことをおっしゃいました。その辺のところ、私などはやはり庶民のささやかな懐ぐあいという、さっき家計を預かる女性のというお話がありましたけれども、これはまさにその典型だろうと思いますが、サラリーマンといいますか働く人たちからすれば、可処分所得をふやす、それが積もり積もって使われれば景気にもいいし財政にも助けになると、そういう意味で考えたいのですけれども、やはり法人税減税がより大事だという意味を教えていただきたいと思います。
  47. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) 二つございます。  一つは、私も人々の可処分所得をふやすということは、これはもう経済発展の基本目標ですから、それは最も重要なことだと思います。しかし、その可処分所得をふやす源泉はどこにあるかというと、一番大きなものは雇用所得なんです。つまり、雇用機会が潤沢にあって、生産性が伸びていく中から所得がふえる、そういう中から税をみんな負担していくということなので、私は、今一番求められているのは、勤労所得をふやせる構造をどうつくるかということなんだろうと思います。財政構造改革というのは、実は経済構造改革のまさに突破口でございます。そういうことで申し上げたわけでございます。  もう一つは、なぜそういうときに法人税減税なんだということですが、これは私の説明が足りなかったかもしれませんが、私の法人税減税論は、国税の法人税については引当金等の見直しによってタックスベースをふやすという中でのことでございますから、税収中立て、例えば庶民の方に負担をかけて法人の方の負担を軽くするという話ではなくて、利益を出している効率のいい法人の税率を下げることによって活性化させようと。  それから、もう一つもっと大きいのは地方法人税改革ですが、私が申し上げているのは、外形標準課税付加価値税型の外形標準課税をかけることによって、一・五とか二とか言いましたが、これをかけることによって法人事業税を撤廃する。ですから、事業税を納めているような効率のいい企業を助ける。そして、法人はすべて地方自治体にある程度負担をかけているわけですから、すべからくミニマムの負担は負っていただくということで、これは税収は変わりません。  ですからトータルとして、例えば庶民とおっしゃいましたが、庶民に対して法人の方の負担が軽くなるではないか、それはありません、付加価値税負担させるわけですから。トータルでチャラでございます。
  48. 田英夫

    ○田英夫君 ありがとうございました。  上條さんに伺いたいのは、先ほど七十歳以上の高齢者の働ける社会をつくるべきであるとおっしゃいました。私も全く同感であります。私も実はもうその年齢になっているわけでありまして、まだこうやって働いております。多くの友人が以前に比べればはるかに元気になっているわけですから、そのことの経済的な効果、先ほどは年金とか福祉、医療、こういうものへの影響が非常に大きいとおっしゃいました。このことも全く賛成、同感であります。  どうやったらそういう社会が早急につくれるかということ、これはかなり急がれると思うんですが、お考えを聞かせていただければと思います。
  49. 上條俊昭

    参考人上條俊昭君) 私は、やはり今一番必要とされているのがシルバー産業の分野だろうと思います。高齢者がどんどんふえてきますから、それに関連する仕事が出てまいりますけれども、人手がなかなか確保できない、あるいは確保はできても手間がかかる。したがいまして、そういうシルバー産業の分野にむしろ高齢者の労働力を活用する。介護とか福祉の分野というのはむしろ高齢者の方がいいという面もございますから、私は、高齢者が高齢者を助けるという仕組みをつくって、むしろ若い人は、もちろん若い人も福祉活動に一定限は労働力を提供してもらわなきゃいけませんけれども、若い人はなるだけ生産活動に従事するというような形の労働力の再配分を行う。  そのためには、企業と行政が役割を果たすわけですけれども、企業が少し元気になりましてもっと前向きの仕事を考える、例えば子会社をつくってやるとか、そういうことが必要だろうというふうに思うわけです。そのための一つ資金といいますか財源的なものから、行政、政府が、おまえたちにこれだけの資金をやるから新しい事業を起こして雇用者をふやせと。  ですから、企業収益という場合に、雇用をふやさずに企業収益を上げるなんというのは今の社会では言語道断でありまして、企業雇用創造といいますか雇用市場の創造という一つの責務を課す、その形で政府企業と行政との間の一つの紳士契約といいますか契約を結びまして、七十歳まで働けるような社会をつくるためのいろんな事業を展開する、こういう仕組みではないかというふうに思います。
  50. 田英夫

    ○田英夫君 ありがとうございました。  終わります。
  51. 吉川春子

    ○吉川春子君 日本共産党の吉川春子でございます。  三人の参考人におかれましては大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。  まず私は、新藤参考人にお伺いしたいんですけれども、日本の五百兆に及ぶ借金は、民間企業ならとうに倒産しております。取締役は全員辞任、どこかの社長ではありませんけれども、多少とも良心のある人は自分の財産で一部補うとかということになるわけですが、政府地方公共団体は倒産しないものですから責任があいまいです。これは私は許されないことだと思います。  参考人は、「週刊金曜日」にこのように書かれております。「考えておきたいのは、国鉄解体・民営化を進めた思想であり政治責任である。そこを明確にしないまま、住宅金融専門会社と同様に安易に「国民負担」による二十兆円の債務解消は、許されるべきではない。」と述べておられますが、公債発行の責任はだれにあるのか、それはどうとらせたらいいのか。地方自治体の長などですと選挙ということもあるわけですけれども、もっと直接に責任を問う方法について、どのようにお考えなのでしょうか。
  52. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 非常に難しい質問だと思うんです。少なくとも、冒頭で申し上げました予算の修正に関する内閣法制局見解というものが私は基本的には間違っていると思っておりますけれども、しかし、ともかく国会も歳入予算を議決しているわけです。したがいまして、私は一市民の立場として、政治にかかわっている皆さん全員を含めて過去の責任を問いたいです。  問題は、今この段階になってくれば、したがって先ほど来申し上げているような、安易に公債が発行できる仕組みというものを国会側がきちんと規制をするべきではないでしょうか。お互いに歳入のことには目をやらずに歳出の方に関心を置いた日本型政治そのものに問題があったんだと。だから、本来ならば、九三年段階でもう少しきちんとした政治が展開されていれば、もっと前の段階で財政構造改革ということについても違った具体策が出ていたのかもしれない、そう思っております。
  53. 吉川春子

    ○吉川春子君 予算修正権の政府統一見解で、これは事実上増額修正はできないんだというようなことで言われてきましたけれども、今度の国会の論議の中で、内閣法制局はこの考えを改めたんじゃないかと、私は議論を聞いていて思うんです。  さっき参考人が、国権最高機関として内閣を法的に縛る方法国会は考えよと、このように仰せられましたけれども、具体的に言うと、例えば内閣事業評価を行わせて、それを国会に報告させる、そういうような立法も含むわけですか。
  54. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) それも含みます。  それから、例えば、私は前々から申し上げていることですが、今では当初予算案の提示のときに財政の中期展望、これは参考資料として出されているはずでありますが、あれをごらんいただければわかりますように、環境がどうあれ経年でただ率で伸ばしているだけの中期展望であります。そういう中期展望なのではなくて、中期財政計画をきちんとつくり、その範囲内において歳入歳出予算を確定する、そして中期財政計画、例えば五年でつくれば毎年ローリングしていくというやり方がまさに必要なので、このこと自体は財政構造改革としてヨーロッパ諸国はもうはるか前からやってきていることであります。それによって歳入の方の範囲内において歳出に枠をはめていく、そうしたものを国会側は政府に義務づけていったらどうか、そのように思っています。
  55. 吉川春子

    ○吉川春子君 上條参考人にお伺いいたします。  景気という場所を盛り上げる横綱は消費だというふうに参考人は言われているんですが、最近ある新聞で、野村総研の幹部の方だったと思うんですけれども、消費の伸びない原因の一因として九月からの医療費の負担を挙げていますが、そのことについて参考人はどのように思われるでしょうか。  そして、消費税も四月から五%に引き上げられましたけれども、こういう情勢のもとで財革法が成立するということは一層消費を冷え込ませるんじゃないかと思いますが、見解をお伺いしたいと思います。
  56. 上條俊昭

    参考人上條俊昭君) 確かに今の消費は、消費税の引き上げとか特別減税とか社会保障費の負担増とか、そういうものが集中的に来たというのが景気低迷させる原因になっていると思います。  もう一つは、景気そのものが九三年の十月に底を打ちまして、経企庁の景気判断委員会、篠原三代平先生を座長とする景気循環の大家がつくられました指標によりまして景気は今上昇過程にあるということになっておりますが、既にもう四十八カ月を過ぎております。大体バブルのころでも八六年の十一月から九一年の四月まで五十三カ月でありますし、イザナギ景気という昭和四十年のときの景気が五十七カ月でございますから、景気の寿命ということから見ましても、この秋ぐらいに屈折点を迎えるというのは、これはある程度やむを得ないことではないかというふうに思っております。  したがいまして、ある程度景気は下降して、問題は、来年のどこかの時点でまた景気が上昇するというふうに持っていかなきゃならないわけですが、そのときにいろいろな問題が、じゃ全部撤廃したらどうだということになりますと、これはまた財政の再建等々でいろいろ問題が出てまいりますので、せめて法人税を思い切り下げて、もちろん所得税も今教育減税であるとかそれから子育て減税というようなことが行われているようでございますから、そういうものに反対するわけではございませんで、そういうものもある程度加味をして、少なくとも景気が失速しない程度の諸政策を行う必要があると私は考えております。  そうでなければ、失速して経済がどんどん落ち込むという様態では財政構造改革そのものも進まないわけでございます。非常にこういう難しい時期でございますから、私はあめとむちということを申し上げましたが、やはり両方の政策が必要である。しかし、さることながら、財政も大変な問題点をはらんでいる時期に来ておりますので、これを解決するための筋道だけはつけておく必要があろうかということで、私は両論を申し上げた次第でございます。
  57. 吉川春子

    ○吉川春子君 もう一問、上條参考人にお伺いいたしますけれども、参考人は、規制緩和を大いに進めるとの観点から、例えば大型店を出そうとすれば二千二百枚の用紙を作成する必要がある、それほど規制が多いんだということを述べておられますけれども、「経済学は誰のためにあるのか」という本を最近私読みましたら、間宮先生がこのように述べられていました。  小さな商店を残さなくてはならないのは、かわ  いそうだからとか弱者を救えといった観点から  ではありません。積極的な意味があるから残さ  なければいけないのです。たとえば小さな商店  が街路の周辺にあれば、店からつねに外をみる  ことができる。多くの眼が街路に四六時中、注  がれている。それが路上での犯罪を防止するこ  とにもつながるのです。そういうことまで含め  て、店の効用を考えていかなくてはなりませ  ん。しかし、こうした視点経済学者のなかに  も、規制緩和論者のなかにも、ほとんどないの  ではないかと思います。というふうに書かれているわけですけれども、規制緩和社会的に大きなマイナスになる部分があるのだと、何でも規制緩和すればいいのだということにはならないと思いますが、いかがでしょうか。
  58. 上條俊昭

    参考人上條俊昭君) まず、私は大型店に対して二千幾つの手続があるということはこの席上では述べておりませんので、その点はカットさせていただきたいと思いますが、基本的に先生のおっしゃるように規制緩和が万能だというふうには私も思っておりません。  特に日本は、先ほど七十歳まで働くということを申し上げましたけれども、日本の小売業を支えている分野で、割合お年寄りの方が小さな店を守っているという分野が確かにいろんなところにございます。こういうものを、私はある面で大事にしていかなきゃならないというふうに思いますので、何でも大型店、何でも規制緩和でという、そういう考えは持っていないことを申し上げておきたいと思います。  以上でございます。
  59. 吉川春子

    ○吉川春子君 ありがとうございました。  私が申し上げたのは、日本経済研究センター会報九四年八月一日号で述べていらっしゃることを引用させていただきました。  最後に、時間がなくなりましたが、ほんの一言ずつ、この法案はいろいろ難しい問題が含まれているので徹底審議をしてほしいという要請書が私のところにも来ておりますが、この点についてお三方の見解を一言ずつお伺いしたいと思います。
  60. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) 全く賛成でございます。大いにやっていただきたい。これは、法案にするということは、国会国民の代表が議論するということですから、国民に理解をしていただくというのが最大のポイントなんです。私は、今回参考人に呼ばれましたから一生懸命勉強しておりますけれども、多くの国民がどのぐらいこれを理解しているか、このために国会で徹底的な議論をしていただくというのは大賛成でございます。
  61. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 徹底的に議論するのは国会の当然の責務だと一有権者として考えております。
  62. 上條俊昭

    参考人上條俊昭君) 私は、こういう問題は特に参議院が良識の府として衆議院以上の時間をかけて徹底審議をしていただくようにお願いを申し上げておきたいと思います。
  63. 吉川春子

    ○吉川春子君 それぞれ参考人の皆さんが徹底審議をというふうに言われまして、それは立場を超えてやっぱり徹底審議するということが国会の、とりわけ参議院の責務であると私どもも十分認識しておりますので、この参考人質問を有意義に生かすためにも徹底審議するように頑張っていきたいと思います。本当にありがとうございました。(拍手)
  64. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 新社会党の山口哲夫と申します。  先生方には大変貴重な意見をいただきまして、まことにありがとうございました。  島田先生新藤先生に、同じ質問になるかと思いますけれども、島田先生法人税減税を随分強調されていらっしゃいました。確かに三七・五%そのものを見ると高いかもしれませんけれども、租税特別措置法で随分優遇税制がたくさんありますね。そういうものをきちんと改めていけば、学者の先生の中には三〇%とか二八%くらいになるんではないかと。ですから、むしろそういう租税特別措置で優遇されている面をまず最初に改めるべきでないかと、私はそのように考えるわけでございますけれども、この点についていかがなものでしょうか。  特に新藤先生は、これは歳出削減法だというお話がございました。私も全く同感でありまして、まず構造改革ということになりますと、歳入歳出すべてについてメスを入れていくことが一番大事な問題だと考えたときに、どうしても税に対して国民は応能負担の原則というものを非常に考えていると思うわけです。そういう意味から申しましても、やはりこの際、歳入についての徹底した改革をしていくべきでないだろうかと考えますので、お二人の先生から御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  65. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) 日本法人税率は三七・五というのが現状でございますが、課税標準八百万円以下の中小企業には軽減税率、先生も御指摘なさいました二八%、これは法律で決まっておるわけですね、軽減税率が課されているわけでございます。したがって、日本の法人というのはすべてが三七・五%の税率を課せられていないのではないかということでございますけれども、それはそのとおりでございます。  もう一つおっしゃられたのは、租税特別措置あるいは引当金等いろいろあるということなので、これは今般の税制改革ではそういうものを見直す、そして課税ベースを広げる中で三七・五をもう少し下げようというのが今議論されているところでございます。  今の話は国税の話でございますが、私はちょっとこの場をかりまして先ほどから申し上げている点をもう一つ強調させていただきたいんですが、法人課税、つまり企業から見ると国税と地方税と両方かかってくるので法人課税改革が重要だ、とりわけ地方税改革が必要だと、このように思っております。  この場合の地方税改革というのは、先ほども触れましたけれども、むしろ法人所得課税という、これは中身は法人事業税法人住民税法人税割というのがありますが、これは所得にかかるものなんですね、国税に連動しております。これを撤廃して、そして企業市民として企業地方自治体で活動する以上、事業をする以上必ず地方自治体に負担をかけるわけでございますから、それに見合った税、これを外形標準課税と言いますが、これを付加価値税型で一・五ないし二%を導入することによって地方法人所得課税を全廃することができるわけです。こうしますと、努力をしている企業は大幅減税になります。正直者が得をする、こういう社会をつくるために税制改革推進していただきたいと、こう申し上げております。
  66. 新藤宗幸

    参考人新藤宗幸君) 時間がございませんでしたので、最初から余り詳しく申し上げてはいないんですけれども、私も簡単に申し上げましたように、歳入面で手直しするべき点が多々あるはずでありまして、予算構造か財政構造かはともかく入る方についてのまさに改革法が欠けているということはおかしな話だと思います。  そして、例えば一九七四年のアメリカ連邦政府議会予算法はタックスエクスペンディチャーズ、日本では租税特別措置、私はそれを負の歳出予算と訳すのですが、租税特別措置によって幾らの金が実質的に交付されているのかを議会に資料として明確に提示されます。日本は十二月の段階で税制改正大綱でこれこれこういうような租税特別措置をとるのだということはありますけれども、その結果、幾ら実質的に交付したかということは国会に提出されるわけではないわけでありまして、とりわけこの辺を明確にすることが、税制改正議論をするとき、あるいは予算構造全体を考えるときに重要なのではないか。  それで、私の自分の研究という形で言いますと、かつて財政的にそれなりに豊かで補助金がいろんな意味でいろんなところへ交付できた時代状況でなくなってくるがゆえに、どうも租税特別措置の細々とした話でもって背後のいろんな支持集団に便益を還元するという要素がとりわけ強まっているように見受けます。そういう意味で、租税特別措置の改革問題を法人問題を含めて基軸にすることが必要だと思っております。
  67. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 島田先生にお尋ねをいたします。  所得税は応能負担原則というのが非常に徹底していると思うんですけれども、企業面にはそういうものがないわけですね。今お話があったように、中小企業が二八%、それ以外の大企業は三七・五%の法人税ですけれども、この法人税というのをもう少し四段階か五段階くらいに段階別の税率にするということについてのお考えはいかがでしょうか。
  68. 島田晴雄

    参考人島田晴雄君) 個人所得税は応能税でございます。つまり、能力がある人が所得をたくさん稼ぐから、それを課税標準として税をかけるわけです。法人税というのも応能税でございます。法人所得に対してかけるわけです。  私が先刻から申し上げているのは、地方税は応能税ではないのが基本です。地方自治体のサービスに対する対価ですから、これは応益税。そういうふうにはっきり本来分けるべきなんですね。日本応益税基本とするべき地方税体系の中になぜか応能税の法人所得税がするすると入っているのが実は問題で、あれは取りやすいところから取るという仕掛けの帰結なんだろうと思うんです。  私は応能税は本来は定率であるべきだと。私は中小企業は二八%というのはさまざまな理由があるんだと思いますけれども、本当は所得に対して定率でかけるべきです。所得は小さいんですから、所得が小さい人に定率でかけていても納税額は少ないわけですね。大きな人に定率でかければ納税額は大きい。税率は本来公平にすべきだと。何かの理由税率に格差をつけているんでしょうけれども、私は個人の意見としては本来格差をつけるべきではないというふうに思います。
  69. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 時間が半端になりますので、これで終わります。  ありがとうございました。
  70. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 以上で参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様に一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしましてここに厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時九分休憩      —————・—————    午後一時三十二分開会    〔理事高木正明君委員長席に着く〕
  71. 高木正明

    ○理事(高木正明君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会を再開いたします。  財政構造改革推進に関する特別措置法案を議題といたします。  引き続き、本法律案審査に関し、参考人の方々から御意見を承ることといたします。  参考人皆様に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。皆様の忌憚のない御意見を承り、本法律案審査に反映させてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日の議事の進め方でございますが、まず参考人皆様からそれぞれ十分程度意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず貝塚参考人からお願いいたします。
  72. 貝塚啓明

    参考人(貝塚啓明君) ただいま御紹介にあずかりました貝塚でございます。  最初に、ちょっと私の意見を申し上げたいと思います。  財政構造改革推進に関する特別措置法案には私は賛成いたします。  その理由を二、三申し上げますが、現在の日本財政先進国中でほぼ最悪の財政赤字でありまして、将来歳出がふえるということを考えますと、どうしても新しい仕組みを入れてこの財政赤字に取り組む必要がある。そのために、制度として量的な削減目標制度改革を義務づけることが必要不可欠だと思います。  最近の不況の長期化は非常に深刻でございまして、将来の展望をつけるためにも財政再建の道筋を明記することが重要であろうと思います。細かい点につきましては、社会保障と公共投資に対して歯どめをかけたことは評価いたします。  それから、最近の不況のことについて一言申し上げますが、最近の不況の長期化は、一九三〇年代のアメリカの大不況に似てきておりまして、憂慮すべき状態にあると思います。特に、消費支出が低下していることは大変よく似ておりまして、ただ、アメリカ景気がいいことが一九三〇年代とは違うと思います。  それからもう一つは、日本経済にとって相当程度歳出を削減する必要はあるわけですが、その計画が、英語で言うとクレジブルというんですか、要するに信用できるものであることが非常に重要で、そうであれば民間の人々もそういう計画になるというふうに考えていろんな経済の計画を立てるということになると思います。  現在の日本経済低迷の原因は、将来に関する不安ということで、よくわからないというところが最大の理由でありまして、そういう意味で、仮にこういうかなり財政支出をカットするものであっても、道筋がはっきりすれば民間経済の方々はそれを念頭に置いていろんなことをなされるわけで、現在はそういう非常に不確定な状況にあるということが最大の問題でありまして、その点を特に国会の先生方にお願いしておきたいと思います。  以上で私の意見陳述を終わりにいたします。
  73. 高木正明

    ○理事(高木正明君) ありがとうございました。  次に、田尻参考人にお願いいたします。
  74. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) 本日は、私ごときをかような席にお招きいただきましたことをまずもって光栄と存じ、感謝申し上げたいと存じます。  私は、最近の行財政改革問題を新聞紙上で拝見いたしておりまして、二つの懸念を持っております。  まず第一は、市場経済万能論と申しますか、市場がすべてを律してくれるんだというような、机の上の一種の机上演習と申しますか、そのような考え方が大変強くなってきたように思うわけでございます。私自身は、市場経済を長く見てまいりましてマーケットに信頼を置いておる人間の一人でございますけれども、市場主義の行き過ぎということを第一に感じるわけでございます。  第二は、本来、政府が取り組むべき課題、政府が解決すべき問題を市場の方に投げ出してしまうということ、これはまさに政治の責任逃れということをもたらすわけでありまして、近年の行財政改革とか規制緩和がこの二つの問題につながらなければいいがなということを考えておる立場でございます。  さて、最近の株式市場の混乱、あるいは債券相場、円相場等のトリプル安をきっかけにいたしまして、即効性のある景気対策をやりなさい、そのためには財政再建を少しおくらせてはどうかという御議論があるやに聞いております。もちろん、経済のことは市場に聞けというのが第一義的な姿勢であろうかと思います。しかしながら、市場の声が常に正しいのかということを考えてみますと、やはり市場の声に耳を傾けるための前提条件というものがあってしかるべきかなという感じがするわけでございます。  最近は、金融市場、証券市場に関連された方々の発言力、影響力というものが実体経済に対しても非常に大きな影響力を与えるようになってまいりました。しかしながら、金融市場とかあるいは証券市場の問題を主としてごらんになっているエコノミストなり実務家の一つの共通項と申しますか、がございまして、これは限界的な部分での変化、一種の変化率を大変重視するわけでございますけれども、その絶対水準と申しますか、そこのところは比較的軽く見られてしまうという問題があるわけであります。マーケットは大変せっかちでございますので、長期的な問題につきましてもすぐに結論を求め、すぐに対策、回答を求めるという問題もあるわけでございます。  さらに、マーケットのメカニズムは、金融機関の行動を初めといたしまして市場参加者のいろいろな行動につきましてその善悪を判断する客観的な基準とはなり得ない、そういう問題も持っておるわけでございます。  もう一つ市場の声ということの持っております問題点は、市場の規律と申しますか、そういったものは首尾一貫性を欠いておるわけであります。  ある問題が長期にわたって持続しております場合に、非常に長い期間市場はそれを無視いたしておりますけれども、突如としてその問題に目を向けまして荒々しい規律を発揮するということがあるわけであります。あるいは、同じ経済的要因を、そのときのマーケットの状況によりまして楽観的な材料と見てみたり悲観的な材料として見てみたりするわけであります。そういう意味で、市場関係者の要求いたします即効性のある景気対策財政再建を繰り延べてでもという発言には、私は距離を置いておる立場でございます。  二番目に申し上げたいことは、市場経済化を我が国は今一生懸命進めようとしておるわけでございますけれども、このことは申すまでもなく、政府に需要を管理してもらうという政府頼みの発想から脱却しようということが行財政改革なり規制緩和の根本的な理念であろうかと思います。そういう長期的な流れの中で、現在五百兆円もの経済規模に達しております我が国経済に、一般会計あるいは財投の方からカンフル剤を次々打ち続けることの限界ということが見えてきたように思うわけであります。そういう意味で、政府に需要を管理してもらうというそこのところの考え方から第二に抜け出る必要があろうかと思います。  三番目に申し上げたいことは、財政構造なり行政改革基本的なスタート台でございますけれども、これは申すまでもなく、むだな歳出、その土台になっております既得権益を、あるいはその仕組みを改革していくことでありまして、それが単なる歳入歳出の数字合わせということであってはならないわけでございます。  二番目には、我が国財政は大きな政府になり過ぎたというふうによく言われます。しかしこれは、公共投資を中心といたします固定資本形成におきまして確かに我が国は大きな政府になりました。しかしながら、サービス支出とかあるいは社会保障がGDPに占めます比率ということを比べてみますと、英米に比べますとほぼ同じような水準でございますけれども、フランスやドイツに比  べますとかなり低いところにあるわけであります。まだまだ小さ過ぎる政府の部分があるわけであります。行財政改革は、この大き過ぎる政府と小さ過ぎる政府というものをまずより分けたところから議論がスタートされるべきではないかと思  います。  もう一つ申し上げておきたいことは、これまで六十兆円を超える景気対策が数次にわたって打ち出されてまいりました。そして、史上空前の超低金利政策が既に二年を超えたわけでございます。あるいは、公的資金株式市場等に直接投入されるというPKOなるものも行われてきたわけでございます。しかしながら、こういうマクロ政策あるいは対症療法では、ミクロ段階での構造改革は進むどころか逆に甘えの構造と時間稼ぎの余裕を与えるだけでございます。現在の我が国経済の閉塞状態は、そういう意味で自然の淘汰とかあるいは構造改革を先送りさせる、そういう弊害の方が目立ってきたように考えておるわけでございます。  そういう意味で、今後の対応といたしまして私どもが政府に期待したいことは、ここで改革路線を一時棚上げいたしまして景気のてこ入れに進むんだというようなそういうやり方ではなくて、さらには、改革が生み出しますいろいろな摩擦をそのままただ手をこまねいて、それが市場原理なんだということで黙殺していく、切り捨てていくということであってもならないわけであります。問題は、構造改革、構造対策そのものをいかに景気対策につなげていくかということでございます。そういう意味では、歳入歳出両面でもう一度それを再編成していただきまして、景気対策、長期的な日本経済を安定成長路線に乗せるための枠組みというものをぜひそういう視点から御議論いただければと思います。  現在、我が国には民間にはお金があふれ返っております。金融システムの中には巨額のお金が空回りをいたしております。つまり、お金がないわけではございません。ないのは知恵の方でありまして、あるいはそのお金を誘導する仕組みの方でございます。今まさに政府が打ち出すべき景気対策は、この知恵であり、仕組みの方でございまして、お金の方ではないというふうに私は考えます。  最後に、今回の財政構造改革法案でございますが、これはまた後ほどいろいろ御議論があるかと存じますけれども、何をさておきましても、とにかく早く可決、成立させることが重要だと私は考えております。  いろいろな問題が、技術的には問題はございます。しかしながら、各支出項目別に一つの上限を設けて中期的な方向性を見出したという点では大きな前進であろうかと思います。貝塚先生もおっしゃいましたように、今マーケットに必要なことは、今の閉塞状態にあります日本経済の出口を、突破口をどこに見出そうとしているのかというその道筋を示すことが最も重要ではないかと存じます。そういう意味では、今回のこの法案はその道筋を示す最初の一歩という意味で大変大きな意義のある法案ではないかと考えております。  どうも大変ありがとうございました。
  75. 高木正明

    ○理事(高木正明君) ありがとうございました。  次に、鮫島参考人にお願いいたします。
  76. 鮫島千秋

    参考人(鮫島千秋君) 全国保険医団体連合会会長の鮫島と申します。長崎市内で二十四年間耳鼻科の診療所をやっておりましたが、現在は団体の専従役員をいたしております。  全国保険医団体連合会、略称保団連は、開業医を中心とする医師、歯科医師の団体であります。現在、全国で八万九千名の会員がおります。  九兆円の消費税と医療費の負担増が景気を冷え込ませ、財政構造改革法案がさらに景気に水を差すものだということは、これまでの国会審議や参考人の方々の発言でたびたび出されたことと思いますので、そのことを繰り返すことはいたしません。私は、医師の立場から、財政構造改革法案が医療にどんな影響を与えるのかを中心に意見を述べさせていただきます。  社会保障分野は財政構造改革法案の中でもとりわけ厳しい縮減目標が提起されている分野です。目標の具体的内容は省略させていただきますが、要するに、来年度から三年間は毎年社会保障予算の自然増約八千億円のうち五千億円をカットするという目標であります。  来年度については、五千五百億円カットの目標で、そのうち四千二百億円を医療関連の予算から捻出することが既に厚生省の概算要求に盛り込まれています。私が申し上げたいのは、医療関連予算を四千二百億円削減するとはどういうことなのかということであります。改革法案もそうですが、予算削減の数値目標をあれこれ決められるのは結構ですが、あわせて、その目標を達成するためには何が必要で、そのことによって国民がどんな影響を受けるのかということを十分検討していただきたいということであります。  具体的影響が明らかにならないまま、数値目標だけがひとり歩きして今後数年間の予算が拘束を受けるということは避けるべきであり、財政構造改革法案には反対であります。  厚生省は、来年度の四千二百億円のカットについて、袋詰め要求ということで、何をどう削減するのか公式的にはその内容を明らかにしておりません。患者負担はどうなるのか、診療報酬は引き下げられるのか国民には全く明らかにされず、削減目標だけが先に決められるというのはおかしな話であります。言ってみれば、突然請求書が送りつけられてきて、とにかくこれを必ず払うと約束してください、何の代金かは商品が届けばわかりますよというような話であります。このようなことが今後三年間、毎年続くのでしょうか。医療関連予算の四千二百億円カットというのは大変な数字であります。厚生省のお役人の方々も多分頭を痛めていらっしゃると思います。  九月一日から外来窓口負担の引き上げが実施されました。厚生省の試算によると、平均でサラリーマンが二・四倍、お年寄りが二・五倍となったそうであります。一般に物の値段が一気に二倍以上にはね上がるということはめったにないことであります。それだけ大きな引き上げであったわけですが、これでも国庫負担削減額は満年度ベースで三千億円であります。医療費に占める国庫負担の割合は四分の一弱ですから、四千二百億円の国庫負担削減するためにはこの四倍の一兆六千億円規模の医療費抑制なり患者負担への転嫁なりが必要となります。一兆六千億円といいますと、医療費の自然増は毎年一兆円程度と言われておりますからこれを超える額であります。社会保障予算の自然増を二%程度に抑えるという財政構造改革法案目標からしても、このままでは来年度の医療費予算は削り過ぎとなります。  財政構造改革法案目標達成がいかに大変なことであるかを理解していただくために、三千億円の国庫負担削減となった九月一日からの改定の影響を御紹介したいと思います。  先生方の机の上に一枚の資料がございます。表裏がございまして、大きな字と小さな字がございますが御了承願いたいと思います。  まず大きな字の方なんですが、私どもが全国一千六百八十一の医科、歯科診療所を対象に調査を行いましたところ、医科で六九%、歯科で七五%の診療所で外来患者が減少していることがわかりました。歯科診療所の減少割合が多いのは、健保本人の受診手控えが顕著であることによります。全日本病院協会の調査では、五七%の病院が対前年同月比で外来患者減という結果が出ています。  私が特に深刻だと考えるのは、これは小さな字の方ですが、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を中心に治療を中断する患者さんが出ていることです。医科で四四%、歯科で二八%の診療所で治療中断の事例がありました。  また、四千人の患者さんを対象にした調査では、負担の引き上げにどう対処するかの問いに、二七%が「受診回数減らす」、九%が「売薬ですます」などと回答しています。こうしたことが今後、長期的に国民の健康状態にどのような悪影響を及ぼすかが懸念されます。  私が申すまでもなく、医療費の効率的運用ということを考えた場合に、早期発見、早期治療ほど大切なことはありません。重症患者の高額レセプトが医療費適正化対策のやり玉に上げられていますが、そうした事例を逆にふやすことにもなりかねません。これだけ深刻な影響が出ているにもかかわらず、さらに今後三年間連続して患者負担を一層拡大することを義務づけようというのが今回の財政構造改革法案であります。  それでは、来年度はどんなことが計画されているのでしょうか。袋詰めの袋の穴から見え隠れしている事項を紹介します。  まず、老人医療の定率負担であります。  小泉厚生大臣もこの導入に積極姿勢を示しているようですが、現行の外来受診ごとに五百円の定額負担を一割程度の定率負担とすることが検討されています。薬剤負担がどうなるかは未定ですが、こちらも定率化の動きがありますから、薬代の一割負担がこれに上乗せされる可能性もあります。  御承知のように、お年寄りというのは裕福な方たちばかりではありません。資産はあっても所得は少ないという方も多いわけです。平均値を見ますと所得もそこそこあるように見えますが、実際は一部の高額所得者が平均値を押し上げているわけで、低所得者層への集中度が高いわけです。また、三百二十万人と言われる年間所得百八十万未満で扶養家族となっているお年寄りの経済状況は不明であります。  こうした実態のもとで定率負担となれば、お年寄りは定額と違って財布に幾ら用意していけばよいかわからないわけです。現に、九月から薬代も加わって負担が上がった、そうしたら嫁から余り医者に行くなと言われたという事例がたくさん聞かれるわけです。  それから、これは与党の医療保険制度改革議会で三点セットと呼ばれているそうですが、一つは風邪薬、漢方薬、湿布薬などの全額患者負担。もう一つは入院時の食事代負担。現在は一日七百六十円ですが、これを百円引き上げると国庫負担は百三十億円削減となるそうです。三つ目は高額療養費の負担限度額引き上げ。こちらは現在一カ月六万三千六百円ですが、一万円引き上げると百二十億円の国庫負担削減です。  これらを積み上げてもとても四千二百億円にはなりません。最も財政効果が大きいと言われているのが薬価であります。薬価の一〇%カットで二千億円の国庫負担減と言われています。高薬価の是正は私どもが一貫して主張してきたことでありますが、今回検討されている薬価の一〇%カットは私どもの要求とはかけ離れた内容となっています。九月一日からの患者減に加えて、来年の四月から医療機関の収入減となる薬価改定が行われることになれば、医療機関の経営は大きな打撃を受け、国民医療の確保にも影響を及ぼすことは確実です。このほかにも、公費負担医療の対象となっている難病医療に対して一般の三分の一程度の患者負担の導入が計画されています。これによる国庫負担削減額は十三億円であります。  改革法案目標を達成するためには、こうした削減策を今後三年間連続させなくてはなりません。厚生省のある幹部の方が、来年度の予算編成について、ぞうきんの水を絞り切るように、もう水は出ないがもう一ひねり、二ひねりと発言されていましたが、三年間も絞り続ければぞうきんが破れてしまうでありましょう。  私が医師として最後に訴えたいのは、社会的弱者である病人、お年寄り、さらに難病患者にまで犠牲を強いなければ日本経済と国家財政は再建できないのでしょうか。私は決してそうは思いませんが、この財政構造改革法案に賛成だという方がそうだと言うならば、そんな国にしたのはだれの責任なのでしょうか。そのことを改めて問いたいと思います。  法案が、医療だけでなく今後の国民生活全体に与える影響など、審議を尽くされることを要望いたします。  以上です。
  77. 高木正明

    ○理事(高木正明君) ありがとうございました。  以上で参考人の方々の御意見の陳述は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  78. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 自由民主党の亀谷博昭でございます。  本日は三人の先生方、お忙しいところおいでいただき、貴重な御意見を賜りましてまことにありがとうございました。  初めに、貝塚先生と田尻先生にお伺いをさせていただきたいと存じますが、繰り返すまでもなく、このたびの財政改革法案、二〇〇三年までに財政赤字、対GDP比三%以下とする、特例公債からの脱却を目指す、よって財政の健全化を図るということをねらいとしているわけであります。  たくさんの課題がありますけれども、私たちはまずこの法律を成立させ、さっきもお話ありましたように、量的縮減を達成していく中で体質改善をなし遂げ、活力ある社会を構築していかなければならないと考えているところであります。  しかし、私は、この法律が成立をして財政赤字解消に向けてスタートを切ったといたしましても、我が国の財政の再建をどう図るかということにつきましては重い課題が残っていくのではないか、こう考えております。  九年度の当初予算では、一般歳出、対前年度比一・五%増でしたけれども、平成十年度の概算要求におきましては〇・七%の縮減を図るということにされております。しかしながら、国の意向とかあるいは努力だけで減らないものもたくさんあるわけでありまして、国債の償還をどうするのか、あるいは利払いの問題あるいはまた地方交付税をどうするのか、そしてまたさまざまな、例えば旧国鉄の長期債務の問題もありますし、国有林野の債務処理の問題もあります。そういうさまざまな課題を抱えていく中で、こういうものをどう減らしていくのかということが今後の大きな課題になっているわけであります。  そこで、この財政赤字を限りなく減少させ、解消を図って財政再建を進めていくために、現在審議をいたしております財政改革法案、これを踏まえまして今後我が国の財政再建のためにどんな政策をとっていくべきなのか、私たちもこれから全力を尽くしていかなければならないわけでありますが、我が国の財政再建に向けての先生方のお考えがありましたら、お伺いをさせていただきたいと思います。
  79. 貝塚啓明

    参考人(貝塚啓明君) ただいまの御質問、どういう分野を優先すべきであるか、あるいはどういうやり方でやるべきかということについて私見を述べさせていただきます。  財政支出の中で量的にかなり大きい分野、それから今後拡大するであろう分野、量的に大きい分野は公共投資がございますし、それから社会保障、この二つがやはり私は大きいものだと思います。  公共投資というものについてどう考えるかというのはなかなか議論が分かれると思いますが、私の率直な印象は、ここ数年間どんどん公共投資増加させてきましたが、それほど効果があったとも思えないというところがありまして、やはり公共投資について再検討すべき時期が来たという気がいたします。  それから、社会保障については、先ほど来申し上げておりますが、何といっても高齢化社会を迎えて、今の制度を維持していてもそのまま財政支出のふえる部分が相当あるということは間違いありません。したがって、財政構造改革という場合の構造の一つ社会保障制度、いろいろなものがございますが、そういうものの制度自身をかなり変えていく必要がある。私自身、今個人的に年金議会というところに属しておりますが、今議論が始まったところですが、相当根本に立ち返って公的年金をどうするか考えていく必要があります。  単純に申し上げれば、例えば今の若いサラリーマンの方々が公的年金に入ることによって将来どれぐらい給付が受けられるか、計算をすると必ずしも余り有利でない、そういう状況があります。ですから、問題は相当深刻な状況が予想されるわけです。そういうところをどういうふうに変えて、要するに私の基本的な立場は、多少レベルが下がることは確かであっても、レベルは下がりますが、しかしそれは確実に保障できるということを約束できる形にする必要があると思います。  それであれば、政府がやってくれることはここまでですということがはっきりしていれば、それ以外の部分は自己努力といいますか、自分である程度頑張ろうという形で、そこのところが何か今ぼやっとしているというところがありまして、多分そういう点が一番重要なポイントじゃないかと思っております。
  80. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) まず基本的に、我が国経済の潜在成長率が三%とかあるいは四%弱と言われるところまで鈍ってまいっておるわけでございまして、この中長期的な条件から考えますと、昭和の時代に私どもがなれ切っておりました状況政府が何でも面倒を見てくれるという考え方から脱却しなければならない。つまり、これから安定成長の時代、低成長の時代がむしろ正常な時代でございまして、その時代への調整をするためにいろいろな仕組みを変更するための負担というのは国民のすべてが負担しなければならない、だれかだけがそれから免れるということはあり得ないことではないかと存じます。それがまず第一でございます。  それから第二は、現在、構造改革を一生懸命やり、市場経済化を進めていくことが日本経済に再び活力を取り戻す方法なんだということ、これについては疑問のないところであろうかと思います。  同じようなことを志向いたしました例えば一九八〇年代の英国を振り返ってみますと、私は、一九七七年から二年間労働党政権の末期と、七九年から八二年までのサッチャー政権の最初の三年間を現地で体験いたしました。政策路線が百八十度転換して市場経済化に急激に進んでいったわけでございますが、当時の英国社会は極めて厳しい状況国民のすべてが置かれたわけでございます。  例えば、学校給食におきましては、ミルクが一本ずつ子供たちに配られていたのが、サッチャー政権になりましてなくなりました。彼女は、サッチャーではなくてミルクスナッチャーだ、ミルクを奪った女なんだというふうな声が上がりました。さらには、職場がどんどんなくなってまいりまして、二けたの失業率が当たり前の時代になりました。ついには職場を奪った女だというふうにまた国民の不満が高まったわけでございます。このような状況の中で、所得格差はどんどん開き、人種対立が激しくなり、英国社会は極めてとげとげしい状況に追い込まれていったわけであります。  しかしながら、その当時の状況を考えますと、現在の我が国の経済社会状況というのは、この程度で悲鳴を上げるんだったら市場経済化を最初から目指さない方がよかったのではないか、私は率直にそのように感じるわけでございます。  少しつまらぬことを申し上げるようでありますが、たかがと申しますとしかられますけれども、サッカーの試合を見るために一万人とも二万人とも言われる人間が十数万円のお金を使って南の国までおりていける国でございます。こういう現実を見ておりますと、この程度のことで中長期的な政策路線を右にとるか左にとるかという議論をすること自身が私は理解できないわけであります。  サッチャー政権は十二年間国民のごうごうたる非難、反発の中でもその中期的な路線を絶対に変えようとはしなかったわけであります。大英帝国は二度死ぬかと言われた厳しい状況の中から見事に英国経済はよみがえったわけでございます。我が国はそこまで追い詰められた末での政策転換ではございません。余裕を持った上での転換でございますから、先ほど申し上げましたように、財政一つの枠の中でもいろいろな工夫の余地があり、そのようなとげとげしい社会になるのを少しでも和らげるための方策はまだまだ残されておるわけでございます。したがいまして、中長期的な路線をここで変えることがあってはならないと存じます。  先ほど申し上げましたように、大き過ぎる政府の部分を削れば小さ過ぎる政府の部分に十分回せる財源は出てくるはずでございます。
  81. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 大変貴重なお話を伺いまして、ありがとうございました。もう少し伺いたいこともあるんですが、時間が限られておりますので、今後の取り組みの参考にさせていただきたいと思っております。  次に、国と地方とのかかわりについて、これは貝塚先生に二点ほどお伺いをさせていただきたいと思います。  地方も国と同じように大変厳しい財政状況にございます。こうした中で、今回の構造改革法案では、地方団体が三千三百ある、その団体の自主性あるいはまた地方分権の推進というようなものに視点を置きつつも、地財計画上の地方単独事業費の抑制あるいは地方公共団体における歳出の抑制を促す措置を講ずる、こういうことにされておりますし、十年度の地財計画につきましても、国が一般歳出を抑制していくわけでありますから、したがって地方の一般歳出も抑制されるということになってくるわけであります。  しかし、現実には、地方の歳入は三分の二が地方交付税あるいは補助金等で構成されているわけでありますし、こういう状況の中では特例的な公債発行というものも考えざるを得なくなってくるという懸念もあります。そうであるとすれば、地方への負担の転嫁ということにもつながってくるわけでありまして、そういうことは当然避けなければならないわけであります。  そうした中で、六月十七日、「財政構造改革のための法律案について 閣議報告」というのがございますが、ここでも「地方公共団体は、財政構造改革の当面の目標の達成に資するよう、国に準じ、財政構造改革に努め、財政の自主的かつ自立的な健全化を図るものとする。」と、こういうことになっているわけであります。  それで、第一点でありますが、こうした財政構造改革を進める中で地方財政健全化をどう図っていくかということについてひとつ御所見を伺わせていただきたいと思います。  もう一つは、貝塚先生の地方分権に関する論文をちょっと見せていただいたんですが、その中に、「地方分権化は、財政上と行政上に分けて考えることが議論の整理のためには必要である。」、こういう部分がございました。  このたびの国のこうした動きは、まさに中央から地方へという権限移譲を中心に、先生のおっしゃる行政的な側面から語られてきた地方分権、それに財政上の議論を加えることになっていくのではないか、こう思うわけであります。支出対象が限定されていない地方交付税交付金、あるいはまさにいわゆるひもつきの補助金、あるいは委託金、あるいは起債の許可の制限、あるいは自主財源をどこに求めるかという財政上の問題もございます。  これを機会に、地方財政上の分権化が議論されなければならないと思うわけでありますが、トータルな意味での実質的な地方分権を進める上で、地方の財源確保はどのような仕組みで求められるべきものなのか、あるいは地方自主財源というのはどのように考えられていくべきなのか、二点目、そのことについてお伺いをしたいと思います。
  82. 貝塚啓明

    参考人(貝塚啓明君) 地方財政というのは私の本当の専門ではありませんでというのはおかしいんですが、地方財政というのは非常に複雑でして、私もかなり勉強はいたしました。  今おっしゃった第一の問題は、地方財政の赤字をどういうふうに減らすか。アメリカの場合でしたら、例えばニューヨーク市は昔ほとんど破産しそうになりました。ということは、ニューヨーク市が自分の地方債を出して、それがマーケットで受け入れられなければ調達ができないという状況で、これはある意味では非常にはっきりしているんですが、日本のケースはそこが非常に、ここに自治省のOBの方もおられるかもしれませんが、複雑になっておりまして、要するに中央がある程度財源を保障するという形になっております。しかも、地方債も保証をつけるとかですね。  ですから、相当国が関与して地方の財源は結果的には保障されているというところがありまして、そうなってくると、これは地方分権の話と関係いたしますが、地方自治体が自分で歳出のカットをするということのインセンティブといいますか、動機づけが弱いというところがかなり重要なファクターであります。もちろん、後の方で御質問になりました地方交付税とかそういうものは必要であります。  これは、現在どこの国でも地域間の所得の格差というのはありまして、ある意味で財源の乏しい地方公共団体があることは確かで、それを放置することができないことは確かです。ですから、全体でプールして再配分する制度はどうしても必要でありますが、それが割とドライに行われている限りはいいんですが、どうしても日本の場合は、国がある程度地方の財源に責任を持つという感じになっている。ですから、そこの部分が、多分本当は、もしドライに割り切れば、そこはもう断ち切るとすれば自己努力をするということになるんですが。  ですから、全体として地方政府の赤字の問題、やっぱり今の状況では、基本的にどうしても国ベースである程度抑えて、補助金を抑え、それから交付税をどうするとかいろいろありますが、そういう形でやらざるを得ない。  元来は、もともと地方自治体の方が自主的にやっていた。もちろん個別の地方自治体は随分千差万別でありまして、非常に行政的に努力されている自治体もあります。いろいろありますから簡単に一概には申し上げられませんが、そういう財政システム上の問題が基本的にあって、地方分権ということは、ある段階で言えば地方はそれなりに自分の財政赤字に責任を持つというところですが、日本はそこがあいまいになっているというところは、どうも複雑といいますか問題がやっぱりはっきりしない。  したがって、その結果何が発生しているかというのはある程度御存じのことで、私もそれほど細かい点は知りませんが、国の行財政改革に比べて地方自治体がどうしても、地方の方が住民ニーズに合ったものをやっているというか、それはそのとおりですが、しかし、そこで努力すべき点がやや足りないんじゃないかという印象があって、ここではどうしても国の問題が中心になりますが、地方財政基本的には国の歳出の、全体の政府の歳出を直接担当しているところで言えば三分の二ぐらいの非常に大きなものですので、そこのところを何かいい工夫をして、ちょっと今私、どういうシステムがいいのか……。  ですから、やはり地方財政の方のスリム化もやる必要があるというのが私の基本的な意見でございます。
  83. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 国とともに地方財政のスリム化というのは当然必要なことでありますけれども、とかく地方分権というのはいわゆる行政上の仕組みの話になりがちでありまして、財源が伴わない地方分権はあり得ないということは言われながら、なかなかそこに踏み込めない。そういう意味では、今回のこういう状況を踏まえての地方の財源のあり方というのは大きなテーマであろうと思いますので、今後とも御指導いただきたいと存じます。  次に、財政投融資についてちょっとお伺いをいたします。  財投の原資になります郵便貯金と年金資金、この大蔵省資金運用部への預託を廃止するという方向が打ち出されてきつつあります。それに伴いまして、新たな資金調達方法としてのいわゆる財投債、財投機関債という考え方があるわけであります。この預託廃止あるいはまた財投債、財投機関債というものを考えていく場合に、その出口としての特殊法人整理合理化などの見直しというものが当然前提になるんだろうとは思いますけれども、それを進めながらということで、まず財投を改革していくという中での預託廃止ということを進めるとした場合に、この財投債と財投機関債をどう考えていくべきかということが一つ大きな課題になってきているわけであります。  これは申し上げるまでもなく、財投機関債は財投機関の資金調達にコスト意識を持たせるということができる反面で、利益志向が強くなってしまいますし、また市場動向、市場原理の中でどう受け入れられるかという問題もあるわけであります。また、一方の財投債は第二の国債になるのではないかというような言い方もなされておりまして、いずれの方法にも一長一短があるように思うわけであります。  現行の預託制度を廃止するとした場合に、財投制度における今後の資金調達、財投制度といいますか、現在すべてをなくすというわけにはいかないわけでありますので、当面の新たな資金調達方法としての望ましいあり方というものについて、貝塚先生と田尻先生に御意見を伺いたいと思います。
  84. 貝塚啓明

    参考人(貝塚啓明君) ただいまの御質問は、実を言うと私は、大蔵省に理財局という局がありまして、そこの資金運用審議会というところで、大体の報告書はまとまっておりますが、簡単に申しますと、財投制度を廃止しろという、割と改革論者がたくさんおられる委員会で、大変にぎやかな委員会というか、そう言うとしかられるんですが、大変活発に議論をされております。  そこである程度議論しておりますが、私の基本的な認識としては、財政投融資制度は元来もう少し早く、例えば五年前ぐらいにいろいろ変えるべき点を考えるべきだった。それが時間がおくれて、今の段階へ来てやろうとすると相当大変なことになってきた。要するに、戦後、第二次世界大戦後の高度成長期にうまく合っていた部分が、だんだん安定成長期に入って、民間との競合とかいろんな問題が出てきまして相当おくれがある。それを今直さなくちゃいかぬという状況に来て、相当な改革が必要な段階に来たということはそのとおりです。その点はもう大体かなり世の中の方も皆さんそういうものと考えておられると思うんです。  それから先が預託制度を廃止するということになりますと、大分先の、例えば十年、二十年先のことを考えるという先の話をかなり私どもはやつておりますが、その経過的なところは、当然のことですが、現在財投で運用しているものはみんな長い期間運用していまして、毎年毎年の資金が必要ですから、それはもう必ずやある意味で今の預託にかわるほとんど同じようなものがないとうまくやっていけないということは確かで、一つはそのために財投債を出すということでございます。  それから財投機関債は、これは非常に複雑ですが、一つの考え方は、特殊法人をなるべくやめた方がいいと。いろいろなタイプのものがありますので、余り現在の世の中のニーズに合っていないものは廃止したらどうかというのは皆さんまさに行財政改革の中心的なテーマですが、しかし特殊法人それ自身をやめなさいということは今お金を貸している側からは言えないわけでして、それにかわる手段として財投機関債がうまく出せない機関は、実を言うと、やっぱり単純に言えばマーケットでは存立しにくい。したがって、そこは何らかの意味改革が必要ですと。しかし、つなぎの間もしうまくいかないのであれば政府が保証します。だけれども、グレードにいろいろ差がありまして、非常に千差万別ないろんな財投機関がございますので、そこはやっぱりある程度ふるいにかけていく必要があって、そのときの手段として実を言うと考えている。  それから、資金運用部自身は廃止しますというかなり強硬な意見も全くないわけでもありませんが、現在の段階では、非常にわかりやすく申しますと、政府機関というのはたくさんありまして、そこのお金はどこかに余りがあったらどこか預けるところが必要です、それは資金運用部ですと。郵貯とか簡保とかそういうのは一応別です。それからさらに、いろいろ現在の段階である程度やるべき仕事は、当然必要な仕事はかなり残っておりますし、例えばODAとかそういうものは必ず必要でしょうし、それから日本社会が変わっていく間でもって、例えば林業なんかどうするかということも相当これから重要ですが、いろいろなやり方がありますけれども、そういう部分はかなりありまして、そのつなぎの部分をどうしてもある部分はやっていく必要があるし、それは財投債として資金運用部は発行するということになります。  それから、もう一つだけつけ加えますと、もし仮に郵便貯金、今郵便貯金さんもそれから厚生省の厚生年金さんも自主運用するというふうに一応宣言を出されまして、それは結構なんですが、結構なんですがというのは、それは当然理屈がありますが、しかしそれを実際運用するときに何に運用するのか。非常に大きな資金を持っている人が一体どういうものにお金を運用するか。対象が今余り国債でもそんなにたくさんないんです、実を言うと。ですから、そうであれば今のところはどうしても第二国債的な要素を持つものに運用、安全確実な、安全確実でないとこれまた大変ですので、そういうところで経過的には相当そういう意味で財投債が必要になるというふうに考えております。
  85. 亀谷博昭

    ○亀谷博昭君 済みません、田尻先生、ちょっと時間がここで超過してしまいましたので、また別な機会に御指導いただきたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  86. 寺澤芳男

    ○寺澤芳男君 平成会の寺澤芳男です。いろいろ御質問をさせていただきたいので、ひとつよろしくお願いをいたします。    〔理事高木正明君退席、委員長着席〕  財政構造改革法案を当委員会では審議いたしておるわけでありますが、その周辺にあります日本経済構造改革あるいは行政改革等々さまざまな問題についても我々審議をしているわけであります。その中で私が特に強い関心を持っておりますのが金融日本版ビッグバンでございまして、特に田尻先生がその方面ではいろいろ実体験もロンドンでされておりますし、そういう面でまず田尻先生に二、三お伺いしたいわけです。  先生が冒頭おっしゃいました市場経済万能主義というものは排さなければいけないと。要するに、政府が自分が間違っていることをマーケットのせいにしてはならないんだというような御意見。にもかかわらず、大きな政府ではなくほどよい政府の、私もし理解が間違っていたら訂正していただきたいんですが、一つのディシプリンというか規制というものが市場の規制に任せているとちょっと当てにならないから、絶対的な水準というものをどこかに置かなければいけない。その辺がちょっとよく理解できなかったんです。  市場経済万能主義を排するか、そうかといって管理市場主義に移行するわけでもなくて、要するに市場経済と管理経済というのが両極端に仮にあったとすると、田尻先生、何かその真ん中の、要するにアメリカ的な市場経済、弱肉強食のああいうすさまじい市場経済はいかがなものか、さりとて日本的な管理された計画経済に限りなく近い資本主義社会というのもいかがなものかと、真ん中に何かがあるというお考えなのでございましょうか。
  87. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) 真ん中かどうかちょっとわからないんですが、寺澤先生おっしゃいますアングロサクソン型の荒々しい資本主義あるいはレッセフェール型の資本主義というものが市場経済万能主義だ、それが市場経済化なんだということでありましたならば、私は賛成できないという立場でございます。  今、欧米社会の行き方として幾つかございます。今のような英米型の資本主義の行き方に対しまして、ドイツを中心とする国々はこれはライン型資本主義と申しましてかなり秩序を重視いたしますし、分配の面にも配慮しながらやっていくという、ある程度政府の調整ということも、まあ建設的介入と申しますか、そういったこともある程度認めるという考え方をとっておる国々があるわけでございます。  いずれにいたしましても、管理型経済市場経済型のどちらか、政府がやるのか市場がやるのかということではなくて、私は政府市場の中の一員だと思いますし、それから政府自身がある問題を担当してやることに対して常に市場の方がライバルとして登場してくる、政府市場の間に競争関係、緊張関係があるということが望ましいのではないかと考えております。これは、最近の郵便貯金制度あるいは年金制度等を考えまして、公的な制度は要らないんだ、民間でできることは民間に任せるんだという考え方にはくみしないわけであります。  公的制度民間制度とが競合しながらその間に緊張状態が常にあるという状態、そのことが日本のとるべき道ではないかというふうに考えております。
  88. 寺澤芳男

    ○寺澤芳男君 貝塚先生にも同じようなことをお伺いしてよろしゅうございますか。
  89. 貝塚啓明

    参考人(貝塚啓明君) 今の御質問は、かなり日本は今の世界経済の中で、金融の世界は残念ながらアングロサクソンが完全にヘゲモニーを握って、しかも、例えば東京金融市場とかニューヨークとかロンドン、これはもう完全にアングロサクソンのルールで、日本は結局そこはもうそうせざるを得ないというふうに私は思っておりまして、国際的なスタンダードとしてはどうしてもアメリカ・イギリス型になる。そうなると、結局そこの部分はやっぱり英米型であろうと思います。  あとはいろいろな考え方があって、例えば社会保障とかそういうものをどうするかというのは、ミセス・サッチャーみたいな物すごい勢いで社会保障を切り詰めるというか、理念的に社会保障を相当攻撃するというのは、私は日本ではそういう考え方はかなり無理じゃないかと。もちろん社会保障はスリムにする必要はあります。  ですから、例えば社会保障はどう考えるかということについて日本は、ヨーロッパ大陸のドイツとかフランスとかイタリーとかというところとアメリカ、イギリスのちょうど真ん中ぐらいのところにいて、ですからその辺の選択は、日本はやや中間の道を行くのではないか、その方が多分これからもいいんじゃないかという気がいたします。  したがって、分野分野によって日本のとる道はかなり違ってきて、国固有のそれぞれの制度がうまくとれる部分については、社会保障制度なんというのはまさにそういうものだと思いますが、日本独自のやり方がある程度ありますが、やはり金融の世界はインターナショナルという感じじゃないかというふうに思います。
  90. 寺澤芳男

    ○寺澤芳男君 ありがとうございました。  先日、橋本総理に同じような質問をいたしましたが、結局欧米型の弱肉強食、優勝劣敗の社会に対して、我々は適切なセーフティーネットを用意する必要があるということを橋本総理は強調しておられました。田尻先生のお考えを正確に理解したとするならば、政府民間というのは縦の関係なんじゃなくて、市場経済という中でのプレーヤーとして政府もあれば民間もある、そのような理解をしてよろしゅうございますか。
  91. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) 私は、官があって民があるんだとか、あるいは官は市場の外にあるんだというこれまでの考え方はもう変えるべきだと。官も市場経済を無視しては政策効果を上げることはもはや不可能な時代が来たわけでございます。したがいまして、今、寺澤先生おっしゃいましたように、縦の関係ではなく市場経済のプレーヤーとしての規律も持ちながら、そこに政府の責任とし  て取り組むべきセーフティーネットと申しますか、社会的な歯どめというものを講じていく、市場の失敗を補正し補完していく役割というのは、これから市場経済化が進めば進むほど大きくなるというふうに考えております。
  92. 寺澤芳男

    ○寺澤芳男君 市場経済への移行ということをも含めまして、これは田尻先岳がほかの雑誌でも指摘されているわけですが、日本全体の体質を変えるような、例えば十五世紀のルネサンスとか十八世紀後半の産業革命と匹敵できるぐらいの大変な革命であるというようなとらまえ方をされているわけです。  私としては、その中にどうしても日本的な、非常に官が民を指導してきたような社会、これはちょっと欧米には、発展途上国にはその例がたくさんあるような気がするんですが、先進国にはなかなか見られない。  例えば大蔵省からの天下りで、これは銀行をちょっと調べてみたんですが、百十七行の役員総数二千五百七十五人で、このうちの百九十五人が大蔵省あるいは日銀からの天下りである。こういう体質というか、官優先型の社会からこれはさま変わりという感じがビッグバンを通してだんだんと、若干時間はかかるかもしれませんが、日本全体が変革していくようなとらまえ方をした方がいいのではないかと思っておりますが、これから何年かかけまして完全に今の状態から脱皮した新しいシステムと申しましょうか、そういうものをやはり田尻先生もお考えになっておられるわけですか。
  93. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) 先生のお話、私もかなり同感する部分が多いわけでございます。今私どもが共通の宿題として抱えております問題は、マーケットが一体国家にどこまで取ってかわれるんだろうかというところ、これが先進国共通の政治的な命題ではないかと思います。  しかしながら、八〇年代に欧米社会が経験いたしましたような市場主義というものに対しては国民の方からいろいろな疑問や反発が欧米社会で出ておることも事実でございます。アメリカにおきまして一九九二年に共和党が十二年間の政権を失いました。あるいは最近、英国、フランスで左の政党と言われたところが政権の座に返り咲いたわけでございます。このような流れを見ておりますと、そこには国民の間に市場経済疲れと申しますか、そのような雰囲気がかなり強まってきたやに思います。  しかしながら、一方でグローバリゼーションの中で、さてどのように国民の、国家として国内的な要求にこたえていくかということが非常に大きな問題になってきておるわけでございまして、そういう意味では先進国共通に外なる敵、共産主義とか全体主義はなくなりましたけれども、内なる敵と申しますか、資本主義の持っておりますいろんな面を現実的にどう修正していくかというところがこれからの課題ではないかと考えます。
  94. 寺澤芳男

    ○寺澤芳男君 ありがとうございました。  次に、公的資金の導入と金融システムということで、余り時間がないんですが、先生方の御意見をちょっとお伺いしたいと思います。  月曜日のファイナンシャル・タイムズに、東南アジアの成長の減速とは異なって日本金融システム不安は世界経済の大きな痛手となっている、つまり日本が現在保有する一兆三千億ドルもの外国株式、外国公債を売りに出せば世界経済は非常に危険な状態になるという、要するに日本の、もちろん機関投資家を初めとして持っております世界の債券、株式、これが売りに出るのではないか。  この辺の懸念というのはアメリカにはずっとあるわけでありまして、今、日本を訪問中のサマーズ財務副長官が非常に日本金融システムへの不安を、もちろん内政干渉になりますから直接的には何も言えない状態ではありますが、示唆しているし、そこに対する公的資金の導入ということを一種の示唆をしているような新聞記事をけさ目にしたわけです。  御案内のように、ことしの六月の末に橋本総理大臣がコロンビア大学に呼ばれて図書館のホールでランチをした際に、日本が持っているアメリカの財務省証券を売りたいという欲望、誘惑に駆られたこともあるということだけでニューヨークの株式市場が大暴落をした記憶はまだ新しいのでありますが、日本金融不安というもの、これに対して私自身は公的資金を導入すべきであるという考えを持っておりますが、まず貝塚先生、一言。
  95. 貝塚啓明

    参考人(貝塚啓明君) 今の寺澤議員の御意見に全く私は賛成であります。公的資金は導入しないとどうにもならない。ここに、後ろの方に大蔵省の方がおられて言いにくいんですが、西村銀行局長がかつて国会で、要するに住専問題のときに、二度と公的資金を入れませんという公約をされました。しかし、これは長い目で見るとえらく大蔵省を拘束しておりまして、私は、今できないとすれば、やはり議員の皆さんが議員立法で、日本金融システムに万やむを得ない状況ですので公的資金を入れるという提案を国会で通過させていただかないと日本状況は相当憂慮すべき状況だと思います。
  96. 寺澤芳男

    ○寺澤芳男君 ありがとうございました。  田尻先生、一言。
  97. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) 一般論といたしましては、公的資金の導入を私も否定するものではございませんし、昨年住専問題で六千八百五十億円の問題が政治的な論議になりましたときにも、私は緊急避難としてそれを受け入れざるを得ないというふうに主張したものでございます。しかしながら、現在の局面におきまして直ちに公的資金が必要かどうかということになってまいりますと、まだいろいろなその前に解決すべき、あるいは取り組むべき課題が多いように思うわけでございます。  それから、公的資金というふうに今の御質問でございますが、それは何を意味するのか。公的資金と申しましても、一般会計からの資金あるいは財投からの資金あるいは中央銀行、日本銀行の資金と、大きく分けますと三つあるわけでございます。ところが、現在、この一般会計の方はいろいろな国会の御審議を必要とするということから、中央銀行の資金がなし崩し的に出続けておるわけでございます。したがいまして、このような状況は絶対好ましくない。つまり、中央銀行の資金を使うぐらいなら税金を使うべきだというふうに考えますので、そういう意味では直ちに公的資金をお使いになってもこれはいたし方がないと思います。  しかしながら、公的資金を使うということにはそれなりのやはり前提がございます。アメリカにおきましてもこの公的資金を使うにつきましてはいろいろな条件をつけました。いろいろな制度をつくった上で投入したわけでございます。今公的資金が必要だというふうにおっしゃる方々、あるいはそういうことの提案について読みましても、その前提となる環境整備がほとんど論じられていないということに非常に疑問を感じるわけでございます。
  98. 寺澤芳男

    ○寺澤芳男君 本当にどうもありがとうございました。  これで質問を終わります。(拍手)
  99. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 民主党・新緑風会の伊藤でございます。きょうは先生方には大変御苦労さまでございます。  私に与えられました時間は往復で十五分でございますので、短い時間の中でございますがなるべく能率的にお聞きしたいと思いますが、主として田尻先生にお伺いしたいと思っております。  先ほど、田尻先生の御発言の中で、財政構造改革を進める上では重要なのは政策上のコントロールだというお話が出てまいりまして、私も先般、総括質問の中で、総理にそのような言葉で申し上げたところでございます。すべからく削減ということでございますが、それは全部なくなることではなくて、どこに政策上の優先順位を置くかということの選択によってこの構造改革は進むんじゃないかということを申し上げたところでございます。  さて、私が今回のこの委員会で一貫して主張しておりますのが金融システムと財政構造改革の関係でございます。今日の財政危機をもたらした原因は、もちろん複合的なものでございますが、大きく二つあるんじゃないか、常識的な話でございますが。  一つは、財政運営構造の問題じゃないか。公共投資を中心とした財政運営構造上の問題が大きい。これは歳出に特にかかわることかと思いますし、歴代政権に責任があるというふうにきちんと明らかにしなきゃならないと思っています。  もう一つは、金融システムの危機的な状況でございます。バブルの崩壊によって、当初八千億円という不良債権、今三千二百億円でしょうか、という状況がずっと起こってまいりました。これは歳入にかかわる問題ではないか。すなわち、金融政策の政策上の失敗というものが起因していると。  特に、バブルを発生する経過というのは、アメリカからの対外圧力の中での公定歩合の引き下げ金融緩和ということが発生の要因になっているわけで、見えない神の手にゆだねるといっても、アメリカの神の手にゆだねてしまったのではないかというふうに私は思っておりますけれども、これは、大蔵省民間金融機関、なかんずく都市銀行の責任は大きいんじゃないかというふうに思っております。  財政運営上の問題は、もちろんこの政策の優先順位によって予算編成をすることなんだというふうに考えておりまして、これは後々の総理に対する質問の中でやろうと思っておりますけれども、それとても、金融危機から金融破綻という事態に至れば財政基盤そのものが瓦解するということからすれば、財政構造ないしは経済構造上の政策の第一順位は金融システムを健全化させること。特に民間金融システムまたは公的な金融システム、これらをお互いに緊張関係を持った状態に政策的に誘導していく必要があるんじゃないかというふうに私は考えております。  そこで、田尻先生に質問いたしますけれども、先生はかねてから、世界経済は一九六〇年代は数量によって調整をしてきたと。すなわち、市場経済は必ず需給のアンバランスが生まれるので、そのアンバランスをどのように解決するかといった場合、六〇年代は数量によったと。七〇年代は価格により、八〇年代は金融調整によった、一九九〇年代は各国が肥大化した金融経済の合理化と金融市場の制御に苦闘した時代であったと。  さて、二十一世紀を迎えるわけでございます。大変世界経済は難問山積の中でございますけれども、ずばり二十一世紀の世界経済はどのような状況に置かれていくのか、特にその点についてまずお答えいただきたいというふうに思います。
  100. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) 大変この二十一世紀の展望というのは難しいわけでございますけれども、経済的な世界で予見し得る将来ということに限ってお話をさせていただきますと、先生御指摘のように、一九九〇年代、この世紀末は、二十世紀後半にとってまいりました経済成長よりもかなり多目の通貨を供給することによりまして需要を喚起して経済成長を図るという資本主義の一つの手法があるわけでありますけれども、それがこの金融経済の肥大化を招きまして、今その調整と申しますか清算を先進国共通に余儀なくされておるわけでございます。  しかしながら、二十一世紀を考えてみますと、先ほど寺澤先生もおっしゃいましたように、地球規模で市場経済化が進んでおります。これはまさに世界史でも珍しい爆発的な需要と供給の拡大でございます。同時に、アジアを中心にいたしまして新しい成長を遂げております国々を中心に富の増大ということが大変進んできておるわけでございまして、そういう意味では新しい時代は金融経済の問題が非常に大きな焦点になろうかと思います。  イギリスのある経済学者は、二十一世紀においては国際的な関係の安定も重要だが、それ以上に各国における金融システムの安定がより重要な問題になるだろうと申しております。そういう意味金融システムの安定ということが国民的な課題であろうかと思います。
  101. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 貝塚先生にお尋ね申し上げますが、先ほど財投の問題が話題になっておりました。私は、郵便局の労働組合、全逓の出身でございますから郵便貯金には非常にかかわってきたわけでございますが、世界の中で日本の郵便貯金に匹敵する力を持っておるのは、ドイツのシュパールカッセ、自治体銀行というものがございます。これは、ドイツを旅しているとあらゆるところでその店舗が目につくという広い力を持ったところでございますが、それがブンデスバンクという中央統制機関に集約されて、地方自治の国ですから、地方自治を確かなものにするための自治体融資というものを国内で行っています。ドイツはグローバルな世界での金融戦争をやりながら、国内においては確固たるそういうシステムを持っておるということを私はかねがね見ておりまして、日本の郵便貯金の機能というものに匹敵する、さらにそれ以上の力があるんじゃないかというふうに思っています。  金融のグローバル化が起こったときに、例えばビッグバンを契機にそのことへ突入していくわけですが、そのときに国内的な資金のプールというものと国内的な金融システムによる国内資金の流通を守るという視点は必要なのではないかというふうに私は思うわけでございますが、さらにはこれがローリスク・ローリターンであっても一般庶民の貯蓄意欲と貯蓄を保護するという視点からもあるいは重要なんじゃないかなと思っておりますが、先生のお考えはいかがでしょうか。
  102. 貝塚啓明

    参考人(貝塚啓明君) 特にビッグバンというのはどういうものかと。私の理解は、ビッグバンというのは、単純に申せば大口の取引を東京市場で非常に効率的にやるためにそういう場を整えると。ですから、ビッグバンは主として日本の例えば都銀とかそういう大きな銀行あるいは外資系の金融機関の活躍する場で、そういう場と小口の、例えば銀行さんでも第二地銀さんとか信用組合とか信用金庫とか今おっしゃいました郵便局、そういうものの活躍の場は基本的には少し違って、小口の金融もともと日本のそれぞれの地場の金融が受け持つべきであるというふうに私は思います。  それから、郵便局については、私は基本的に日本の郵便貯金というのは、正直を言いますと、ここに銀行の方がおられるかもしれないんですが、銀行がぼやぼやしているから郵便局がということですね。ですから銀行というのは、ある意味で原則論として民業は非常に重要だというのは私はわかるんです。  例えば、ちょっと脱線して恐縮ですが、私、昔東京大学の経済学部におりまして、みんな卒業生がどんどん金融機関に就職するわけですね。なぜかというと、給料が猛烈に高いわけです。私は前から、金融機関の仕事というのはそんなにおもしろくないよ、余り行くなと言ったんですが、ますます言えば言うほど金融機関に就職する人がふえた。だけれども、今となっては金融機関というのは相当問題を抱えている。ですから、日本金融機関というのは、やはり私は正直言って、基本的にかなり問題があったということはそうでしょうし、そのツケがまさに回ってきた。  郵便貯金さんは官業としては、官業というのは普通ちょっとイメージとしては大体余り仕事をしないというイメージなんですが、それは非常に違いまして、物すごく仕事をする。単純に言えばもしかすると銀行員より働いているかもしれない。ですから、日本の郵便局というのは今の世の中で非常にある意味ではおもしろい存在で、私は基本的には民業は優先すべきだと思いますが、個別具体例になったときに一体どうすべきかということは、実際考えてみると、ちょっと脱線して申しわけありませんが、郵便局を少し形態を変えて、例えば広島何とか会社というふうに変えたとします。  そのときに一番困るのは、昔、大蔵省のOBの橋口さんが地方銀行協会をやっておられて、郵便局の民営化反対と言われたのはなぜかというと、もしかすると、広島銀行の競争相手としては強過ぎて困ると。ですから、日本の場合、その辺を踏まえて、そこのところはよく考えると、どういうふうに事を運ぶかというのはかなり難しい問題だと思っております。  ちょっと話が少しそれましたが、そういうことです。
  103. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 再び田尻先生にお尋ねします。  ただいまの貝塚先生のお話とも関連しまして、先ほど田尻先生のおっしゃった今後の変化ということの予測の中で、公的金融の新たな使命というものがあるだろうというふうに思いますし、こういう絶対的な金融自由化時代の到来の中で、政府役割ということと公的金融の関係ということも確立されなきゃならないというふうに考えますが、その辺に対する御見解をお願いします。
  104. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) 予見し得る将来ということで考えてみますと、金融経済の面では大変厳しい状況になろうかと思います。  確かに、日本国におきましても千二百兆円の個人金融資産がございますけれども、今後十年間を考えますとさらに五百兆円近く上積みされる見通しでございます。世界経済におきましてもその富の創造というのがこの二十世紀に例のなかったようなペースで膨れ上がってまいります。  したがいまして、そういう意味では大変明るい材料だと言えるわけでございますが、市場経済化の中で起きてまいります問題は、持てる者と持たざる者との格差が大きく拡大していく、それが金融経済によってさらに加速されていくという問題が我々の一番当面する問題ではないかと思います。  既に八〇年代以降、欧米社会におきましては、賃金格差の拡大、つまり市場経済化が進んだ国ほど賃金格差が拡大しておるわけでありまして、それが所得格差の拡大あるいは社会的機会の拡大ということにどんどん入っていっておるわけでございます。  さらに、生涯の設計ということを考えてみますと、年金にいたしましてもこれからは確定拠出型ということで、市場に依存した人生設計ということを余儀なくされていくわけでございます。  そのようなことを考えますと、公的な金融役割というのはこれから実はいろいろな役割が要求されるわけでございます。つまり、量的には確かにたくさんお金があふれ返ってまいるわけでございますけれども、回るべきところにお金が回らないという問題は現在の日本経済社会でも起きておることでございます。あるいは質的には、お金の貸出先との関係におきまして、あるいは預金の受け入れにおきまして金融機関にとって歓迎されざるお客は排除するという、私はこれを金融排除のメカニズムと呼んでおりますけれども、それが商品開発なり店舗戦略なりあるいは新しい金融ハイテクなりいろんな分野で進みつつあるのが欧米社会の現状でございます。  したがいまして、民間企業の論理ではない別の論理を持った公的な金融機関の存在というのは、預金とあるいは投融資両サイドで今後も引き続き必要だというふうに考えております。
  105. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 どうもありがとうございました。
  106. 赤桐操

    赤桐操君 参考人の先生方には、本日は御多忙の中、まことにありがとうございました。私は社会民主党の赤桐でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  きょうは財投問題が大分出ておりまして、既にいろいろとお話をちょうだいいたしておるところでございますが、学者先生方の中では財投はもはや必要ないんではないか、こういう意見を出されておる方々もいらっしゃいますが、田尻先生、貝塚先生には財投は必要であるというふうにお考えではないかなと私は思っておりますが、いかがなものでございましょうか。
  107. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) 先ほども申し上げましたように、財政投融資システムそのものは存続されるべきだと考えております心
  108. 貝塚啓明

    参考人(貝塚啓明君) 財政投融資民間でできない非常に長期のお金を貸すという、例えば二十年とか二十五年のお金を貸しておりまして、これは多分民間金融機関ではできないと思います。  ですから、以前よりは縮小したと思いますが、依然としてやるべき仕事はいろいろあるというふうに思っております。
  109. 赤桐操

    赤桐操君 いよいよ年がかわりまするというと、先ほど来お話しのビッグバンの時代に入ると思うのであります。そういたしまするというと、今までは郵便貯金、簡易保険積立金、年金積立金等が大蔵省に入りまして、財投計画の大きな財源になっておりましたけれども、こうした状態がやがてまた変わる時期が来ると思います。  今回、財革法の審議も行われておりまするし、いろいろシステムの転換が始まるわけでございますが、そういうことになると恐らく郵便貯金なども自主的な運用に入っていくことになります。この場合に、財投の方の計画が必要で、これはどうしても遂行しなければならないということになったときには、金の徴収の仕方はいろいろあると思いますが、財投債、財投機関債、こういう形になるとも言われております。  これはまだ明確に決まっておりませんが、これがもし財投債だけではなく財投機関債の方も並行してということになりまするというと選択上の問題が出てくるように思いますが、こうした資金運用の面で財投債、財投機関債、これについての御見解を賜りたいと思います。
  110. 貝塚啓明

    参考人(貝塚啓明君) これは、私先ほどもちょっとお話ししましたが、今理財局の研究会でやっておりまして、ほとんどまとまっておりますが、基本的には二つを併用するという考え方でございます。  併用するというのは、財投機関債、非常にせんじ詰めて言うと少し話が簡単になり過ぎて、あるいはちょっと話が極端にいき過ぎるのかもしれませんが、最初は財投機関債を出してみる、しかも政府保証のないもので出す、それで出せるのならばそれはもう結構ですよと。しかし、それがうまくいかないとすれば政府保証もっけるか、場合によっては財投債で、全部資金運用部で一回調達してそこへ貸すというのはとりあえずの発想法であります。ですから、一応併用して、最初は財投機関債、それも政府保証がついていないケースと政府保証がついているケース、それから財投債という、そういう順序を踏んでやったらどうかというのが一応の考え方でございます。
  111. 赤桐操

    赤桐操君 そうしますと、これからの運用については財投機関債、財投債、両建てでいくことになる。仮に、財投機関債には政府の保証がないからということで郵便貯金等については余りたくさん出すことはできませんということが発生したときには、財投債に恐らく限られることになると思いますね、その場合には。したがって、財投債に限られてくれば、郵貯の運用上からすれば他の運用にもいろいろと動いていくことになると思うんですね、全体の運用が必要でございますから。  そういう場合には、来年、再来年になってくるというと、逆に今度は財投債の方の金も足らないから郵貯の方を回してくれと、こうなっていましても、郵貯の方の金がうまく回るかどうかは、これはそのときの市場の状態等もありますからわからないんじゃないかという感じがします。特に、来年あたりからはビッグバンの関係で大銀行それぞれの間では弱肉強食の争いが始まってくる。こうなるというと、これは利潤の高い方へ高い方へと、また効率が上がる部門へ部門へと資金の流入、活用は集中してくるだろうと思います。  そういう場合に、一体財投債、財投機関債、特に財投債が本当に賄える将来展望ができるのかどうか。今までは全額預託でございましたからそんな心配は何もなかったと思いますけれども、これからは財投計画上これは必要だと言われたときに賄い切れない場合が来るのではないだろうか。場合によってはまた郵貯だって海外に流出したって差し支えないですよ、かたいものであるならば、そういうことも考えていいんじゃないかなと私は考えるんですが、こういうことは考えられるのか考えられないのか、先生の御意見を伺いたいと思います。
  112. 貝塚啓明

    参考人(貝塚啓明君) ただいまの御質問は、公的な金融機関が運用するときにどうあるべきか。ですから、非常に単純に言いますと、今のところ年金も今運用しておりまして、運用しているときに失敗したらどうなるか。これは相当大変な話でして、ですからやっぱり運用の先は限定されるべきで、一番わかりやすく言えば、例えば国債とか、要するに貸し倒れがないとか、そういうものに限るべきだろうと思います。  多分、厚生年金もそうですが、完全に今の郵便貯金は貯金者に一〇〇%保証しているわけです。今まで大蔵省理財局が相当いろいろ苦心をして、ちょっと申し上げればやや無理をしてやっていって、一走懸命やってきたわけですが、これからそれを自分でやったときに、一体何に運用するかというのは大変な問題でして、結局国債類似の保証のついているものにしか運用できないということにとりあえずはなると思います。  したがって、財投債も国債の一種で、それも一応政府保証がついているという、安全な有利な資産というのはそう考えるほどたくさんないので、どうしてもそうならざるを得なくて、ですから財投債が発行できなくなると私は必ずしも思いませんで、財投債に運用したい人は結構たくさん、要するに、郵便貯金にしてもそれ以外に何に運用しますかというときに結構難しいんですね、リスクのあるものに運用しちゃ困るわけですから。    〔委員長退席、理事高木正明君着席〕  多分御存じでしょうが、年金福祉事業団というのは融資に失敗しまして、これは大問題なんですが、年金であるから逆に言うと大変問題であるわけですが、昔そういう話がありまして、やっぱり安全、有利ということになると、結局財投債はとりあえずはかなり有力な対象になるというふうに思っておりますということでございます。
  113. 赤桐操

    赤桐操君 田尻先生のお考えも承りたいと思います。
  114. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) 先生の御質問は、財政投融資機関が新たな資金を必要とするときに、入り口の郵貯なり年金の方から資金がちゃんと入ってくるような仕組みがマーケットを通じてつくれるのかと、こういう御質問ではないかと思います。  それは、貝塚先生が今お答えになったとおりだと思いますが、もう一つお考えいただきたいのは、その出口の方の財政投融資機関が既に貸し付けております債権、これを現金化できれば、新しい資金をどんどん入り口の方から取り入れる必要がなくなってくるわけであります。ところが、現在、この債権の流動化という問題が、日本は非常にマーケットの整備がおくれておるわけであります。したがいまして、政府の持っております優良債権をどんどん流動化していく、現金化していくためのマーケットをつくるということが非常に重要じゃないかと思います。  それから、先ほど先生御指摘のように、外国に対しても運用したらどうかというのは、私、全く賛成でございまして、この二百二十兆円もの巨額の資金日本列島の中だけで運用するというのは、これは投資戦略からいったら最も危険な方法でございまして、世界の各地に危険分散のために資産を配分するということが必要であろうかと思います。
  115. 赤桐操

    赤桐操君 ありがとうございました。  いずれにいたしましても、これからの金融の問題は大変な時代に入るわけでございますが、そこで、ちょっとこれは時間がないので簡単にお伺いいたしたいと思います。  これからは少子・高齢化社会に入ってまいります。そうなってまいりまするというと、今までは、例えば公債などにつきましても、建設公債と特例公債と二つに分かれておりまして、建設公債の方に若干私は偏り過ぎてきた運営ではなかったかと思うんです。昭和五十年代におきましては、これがいよいよ具体的な公債発行の段階に入っておりますが、それまでは二〇%から二五%ぐらいが国の経費で賄われておった、公共投資ですね。ところが、その後における最近の状況は、そういう状態からほとんど大きくダウンいたしまして、国の部分が一%程度、あとは挙げて建設国債に頼らざるを得ない、こういう状況になってきているように思います。  これが続いてまいりますると、建設国債は六十年ですから、そうすると後世の人たちにこれが大半ゆだねられてしまうということになるのでありまして、実際の道路にいたしましても、あるいはその他のいわゆる各種整備されている基盤整備等に用いられる年限等につきましても、六十年というのは今ないんじゃないかと思うんです、二十五年から三十年前後だと思うんです。むしろ、その二十五年とか三十年程度にこうしたものを繰り上げて、償還の額をもっとふやすように努力していくのがこれから将来のあり方ではないのか。  そういうふうにしていかなければ枠がはまらないんじゃないかということも一つは考えられるんですが、私も余り深く考えた問題ではないんですけれども、いろいろやってみているうちに最近矛盾を考えるようになりまして、世代間のお互いの争いということにはならないと思いますけれども、我々現在の人たちが大体大きく享受をしているわけでありますから、後世の人たちにだけかぶせるんじゃなくて、我々もできる限りかぶる、こういう姿勢がそこに必要ではないのかなと思うんですが、いかがでございましょうか。両先生にお伺いしたいと思います。
  116. 貝塚啓明

    参考人(貝塚啓明君) ただいまの御質問の趣旨は、多分建設公債の六十年というのは長過ぎるんではないかということ、これは確かにおっしゃるとおり、実際問題として普通耐用年数が二十年から三十年ぐらいですから、元来そういう長過ぎるという話はあると思う。  それからもう一つは、後代の負担、後代の人が受益をするからという発想法はどうであるかというのは、私は、多分昔ほどそういう議論がだんだん通じなくなるといいますか、今から十年前であれば二十年先、三十年先の受益者と。それから、だんだん公共投資が充足されてきまして、これから先の公共投資というのは大分感じが違ってくる。国土保全とかそういう話はまたいろいろあるんですけれども。だとすると、建設公債の基本的な考え方は、実態とどの程度違いが出てくるかというところはあるかという感じはします。  しかし、いずれにいたしましても、やっぱり建設公債は基本的には財政法の話で、公債発行をある程度抑えるということが元来はあったはずでして、そういう役割等を兼ね備えてありまして、そこのあたりをどういうふうに今後考えるかはかなり重要な問題であるということは確かだろうと思います。
  117. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) 六十年が長過ぎるかどうかという点につきましては、私は、それが長過ぎるかどうかというよりも、むしろ期間構成を多様化する、六十年のほかにもたくさんいろんなものを品ぞろえしていくということが、債券市場を拡大させていくための、あるいは海外からも日本国債が買ってもらえるというような状況をつくり出す条件ではないかと思います。  ちなみに、現在、日本の債券発行市場におきまして十年を超える債券の発行実績がどれぐらいあるかということでございますが、発行残高は四百九十兆円のうち十年を超えるものというのは一割にも達していないわけでございます。そういう意味では、まだ債券市場というのは、どんどん長期化の方策をいろいろ講じて市場整備してまいりませんと、先ほど来御議論の財投債とか財投機関債等については調達できる土俵がないということになろうかと思います。
  118. 赤桐操

    赤桐操君 ありがとうございました。
  119. 笠井亮

    ○笠井亮君 日本共産党の笠井亮でございます。  きょうは、お三方の参考人の方々、どうも大変に貴重な御意見をありがとうございました。  限られた時間ですので幾つかの問題に絞って伺いたいと思いますが、まず鮫島参考人に何点か伺いたいと思います。  第一点なんですけれども、九月からの医療保険改悪による受診抑制の問題、治療中断の実態の問題について幾つか伺いたいんですが、先ほどのお話の中で、全国的な調査結果に基づく深刻な状況のお話があったと思うんです。  当委員会の審議でもこの問題、幾つかの質問がございまして、相当の影響があるんではないかという質問が少なからずの委員からも出されまして、その中で小泉厚生大臣がこういう答弁をしました。受診抑制というのは端的に言えばない、そして、減っているとしたら受診の必要がもともとなかった人が行かなくなっただけだという趣旨の驚くべき答弁をされたんです。  それで、私は、こういう認識だから、九月の改悪にとどまらず、三年連続カット、さらには浪費は温存しながら国民生活のあらゆる分野で予算削減を二十一世紀まで義務づけるようなレールを敷く、かつてない法案が出せるのかなという気持ちを持って聞いたわけでありますけれども、参考人のこういう政府の認識に対する率直な御感想があればいただきたいのと、医師の側から受診抑制や治療中断ということで、これが具体的にどういう形で起こっていて、どんな深刻な事態をもたらすと感じていらっしゃるか、具体例があればお示しをいただければと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  120. 鮫島千秋

    参考人(鮫島千秋君) お手元に資料を差し上げまして、先ほどこれを示しながらお話し申し上げたんですが、もう少し詳しく申し上げますと、小さな字で書いている側の、中断の模様を医科、歯科それぞれ別に挙げたわけであります。  確かに、委員が今おっしゃったように、小泉厚生大臣を初め、受診中断が起こっている事実は認めながらも、その中断ないしはまた抑制というんですか、そういう患者さんはほとんどもともと治療が必要でなかったという認識に基づいての発言を所々方々でなさっておられるようであります。  しかし、それはあくまでも患者さんに対する冒涜ではないのかと私は思っております。患者さんが何を好きこのんで不必要な治療を受けるであろうか。そういう認識で厚生行政をつかさどっておられるということに、私はすさまじい驚きを感じたわけであります。痛くもない腹を探られるという言葉がございますけれども、そういう患者さんが一人たりともおろうはずがないというふうに思っております。確かに症状の軽重はあるかもしれないけれども、必要な患者さんが実際に受診しておられたということであります。そして現実に、今御指摘のように、九月一日以降、医療機関を訪れる患者さんが全国平均で一〇%から一五%減、現実にございます。  ただ、これが向こう二カ月、三カ月にわたって続く状況であるかどうかは、これはたってみないとわからないんですけれども、これまで幾度かのたび重なる患者負担増のたびごとに一時的な減少が起こり、それが再び盛り返すというようなことが起こってきたことを思って一時的な減少であるというふうにおっしゃっておられる向きもございますけれども、今回はそういう状況ではないのではないかということしか今は申せません。  というのは、御承知のように、受診傾向並びにそしてまた診療報酬の支払いというものは三カ月後にならなきゃ確定しないという状況がございますので、その時点で初めて患者数、受診件数、そしてまたそのことに伴う診療費、医療費、そういったものが確定するわけでございますので、正確に申しますと十一月末以降、十二月にならないとわからないという状況がございますけれども、実際に起こっている事態は単に一時的な見合わせというのにすぎないというふうなことは、あくまでも憶測といいますか、ためにせんがためのお言葉ではないかなというふうに思います。  というのは、具体的に申しますと、医療機関に最初に今回の引き上げの状況が伝えられたのが八月の下旬ごろでしょうか、そういうことなので、患者さんのほとんどが九月一日からの状況を御存じないままに医療機関を訪れられて、実際そこで起こった負担増には驚きの余り医療機関の方に不信感をぶつけられた、不満をぶつけられた、怒りをぶつけられたということの報告が全国から来ているわけでございます。どうしてこんなに高いんだと、そしていかにもこの医療機関の側がその引き上げられた分が収入増になるかのように受けとめておられる方々も多かったせいでしょうか、我々医者に直接、または受付の女性たちに怒りをぶつけるというようなこともございまして、もう二度と来るものかみたいな捨てぜりふを残してお帰りになった患者さんも随分おられるわけでございます。  と同時に、中断された患者さんをまた訪問看護などによって調査をしてみますと、もうあれじゃ行けない、特に年金生活などをなさっていらっしゃる方々、そういう世帯においては、やっぱり食べ物をこれまででも切り詰めてきたのにもうこれ以上切り詰められないんだ、治療が大事だと思って今までやってきたけれども、もうどうしようもないからというふうなことで中断なさっている患者さんが多いことは事実なんです。  ですから、私ども医者としては、医療というのは早期発見、早期治療というのが最も重要であるということがわかっていながら、早期治療どころか実際にもうおいでにならない。そしてしかも、それが仮においでになってももう治療が続けられない、中断というような、医療というには余りにも貧困な状況というんでしょうか、そういうものが現実に起こっている。決してこれは誇張でも何でもございません。大臣を初め多くの方々が一生懸命打ち消そうとなさっていらっしゃるようですけれども、医療の現場はそんなものじゃなくて、実に悲惨だということを申し上げておきたいと思います。
  121. 笠井亮

    ○笠井亮君 ありがとうございました。  それに関連してなんですが、今度の財政構造改革法案によって、国民にとって一層の負担増ということに社会保障や医療分野ではなるということだと思うんですけれども、九月からの今おっしゃったような大変な深刻な状況という医療保険の改定について厚生大臣は、単なるびほう策、一時的な間に合わせにすぎないんだ、この法律ができたらそのもと社会保障の革命的な構造改革をやるというふうに言われておりますし、具体案が出た段階でこれまた大変な議論を呼ぶということは覚悟しているとまで言われて、大変なメニューなんだ、中身はこれからだというようなことを繰り返しておられます。  この間、厚生省案とか与党の医療制度改革議会の案とか、それから年金議会なんかでも議論がありまして、私もそこでの会議録を読みますと、相当の突っ込んだ国民犠牲のメニューがたくさん出されてきているなということを感じるんです。医療費の二割負担増に加えて、医療保険の本人の三割から五割負担とか、それから高齢者の医療保険制度の創設とか、年金支給開始年齢をおくらせる問題を初めとしてメジロ押しという状況があると思うんですけれども、これはお年寄りだけじゃなくて将来の世代にとっても非常に大変な問題を提起されているということを感じているんです。  そこで伺いたいのは、こういう法案が通った場合に、この法案では安心で豊かな福祉社会というのを目指すということで二条の趣旨のところで書いてあったりもするんですけれども、一体そういうものになるのか。逆に医療分野でいくとどんな事態に、まあ九月の事態で大変だということを既におっしゃったわけですが、それを上回るということで予想はもっと大変なんだということではあるわけですけれども、どんな事態になるというふうに感じていらっしゃるか。それから、どうすればそういう中で国民の健康を守って、安心してお医者さんにかかれるような医療制度がつくれるというお考えをお持ちか、政治に望む御意見ですね、あわせて例えればと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  122. 鮫島千秋

    参考人(鮫島千秋君) どんな事態になるのかということで言いますと、患者、国民の側の恐るべき事態というのは、先ほど申し上げましたあれを二乗、三乗というふうに考えればわかるかと思いますが、実際に私ども国民の命と健康を守るのが仕事でございますけれども、その仕事ができなくなる、医療機関としての役目が果たせなくなるというのが我々医療機関の側からの起こり得る事態だというふうに思います。  実際に医療機関の経営そのものが立ち行かなくなりますから、医療機関の俗に言う倒産というんでしょうか閉鎖、そういったものが続々起こるであろうということ。現実にはまだまだ伝えられている数は少のうございますけれども、ここ数年、医療機関の倒産、逐電みたいなのが現実にございます。これが、今回の三段跳び的な手法による改悪がもし強行されますと、一挙にそういったものがあらわになってくるであろうというふうに思います。ですから、医療機関の側にとっても、患者、国民の側にとってもゆゆしき事態というふうに申し上げておきたいと思います。  私、時計を見ながら話しているんですけれども、時間がございませんようなので二番目の方に行きますが、じゃどうすればいいのかということで、こういう事態を招いた原因は一体何なのかということを一口には語り尽くせませんけれども、大きく分けて二つあろうかと思います。  一つは、医療費全体を押し上げている薬剤費の負担、これが非常に大きいわけです。今、日本では薬剤費の負担が総医療費の中で三割を超えるような状況であります。これは日本の公定価格と言うべき薬剤費が非常に高く設定されているからでございます。なぜ高く設定されているかといったら、製薬産業とあるところとの癒着みたいなものがもたらしたものだということは明らかでございますが、あえて申しませんけれども、それを正常な価格に戻すこと、それをすることによって二兆円とも三兆円とも言われるような財源ができてくるわけでございます。こういった高薬価というものを是正する、これをやること。  それから、もう先生方御存じのように国庫負担が切り下げられてきております。具体的に申しますと、九二年に政管健保に対しての一六・四から一三%に引き下げられた。八五年度以降七千百三十九億円、利息を含めますと一兆円にもなろうかという繰り延べの額がございます。こういったことですとか、国保への負担率も八四年から四五%から三八・五%に引き下げられた。こういったことが現在の政管健保を含めての健康保険財政、それから国保財政の赤字をもたらしているということは明らかでございます。これをもとに戻すだけでもう既に二兆円という財源が出てくる。  こういった薬価の是正、それから健保財政への補助、これを正常な姿に戻すということ、これをするならば、決して今回強引に行われたような九・一改定みたいなことはなしに、そしてまた、今考えられているような三段跳びと言われるような抜本改革というか改悪が決して必要じゃないということだと申し上げておきたいと思います。
  123. 笠井亮

    ○笠井亮君 時間があともう一分しかございません。貝塚参考人それから田尻参考人にもいろいろ伺いたかったんです。  田尻参考人も、先ほどの大き過ぎる政府と小さ過ぎる政府をより分けた議論が必要だという点なども大変興味深く伺ったところでありますが、きょうはもう時間になりますので、また別の機会にいろいろ例えればと思います。  終わります。(拍手)
  124. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 きょうは、貴重な意見を大変ありがとうございました。  田尻先生と貝塚先生に同じような質問になると思いますけれども、お聞きしたいと思います。  先ほど田尻先生は、この財政構造改革景気対策につなげていくべきである、民間には金があふれているんだけれども知恵がないと、そういうお話でございました。実はその知恵をきょうは授けていただきたいと思っていろいろと聞いていたんですけれども、私はやっぱり景気対策はぜひやらなければならないほど冷え切っているんではないかと思うわけです。  それで、いろいろなところから減税の問題が出ております。私は新社会党に今所属しておりますけれども、まず消費税の五%アップは相当影響が大きかっただろうと思います。購買力の低下につながったと思うんです。それから、特別減税もやはり続けてほしかったと思うんですけれども、これも切られてしまった。これをやっていればそれほど購買力の低下にはならなかっただろうと思うときに、改めてこの際、最低限特別減税は復活をしてもいいんではないだろうか、しばらくの間は。そうしますと、若干でも購買力が高まって、税収も少しはふえてくるだろうと思うわけです。  しかし、だからといって、この財政構造改革、赤字再建を六年間ではとてもできないだろうと思いますので、この際、思い切って十年でも十二年でもかけて、景気対策をやりながら財政赤字の克服も長期にわたってやっていくというような政策をとってもいいんではないかなというのが私の考え方なんですけれども、田尻先生と貝塚先生の御意見をいただければありがたいと思います。
  125. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) 減税の問題につきましては、最初に申し上げましたように、財政構造改革法案の大枠を崩さない範囲での政策減税なりいろいろな社会的な、社会政策上の目的を持った措置というのが十分考え得るんじゃないかと思っております。  それから、じゃその歳入歳出面で景気対策に結びつけていくにはどうしたらいいんだろうかということでございますが、まず全くお金のかからない方法がございます。これは規制をおやめになることでございます。つまり規制は、土地の含み益、株の含み益がなくなった第三の含み益でございます。  アメリカ経済の場合には、七〇年代末にGNPの一六%程度が規制のもと経済活動をいたしておりました。それを約半分に下げることによりまして、理論的には年間六兆円の新しい需要がどんどんつくられておるわけでございます。我が国は現在GNPの約四割が政府の厳しい規制のもとで活動をいたしております。この四〇%のウエートを半分に下げていただくことができれば、日本経済の活力というのは相当のばねを持っておりますので期待できると思います。  一つだけ例を挙げさせていただきますと、情報通信の自由化は大変効果のあった、これはまさに即効性のある規制緩和でございました。現在移動体通信は三千万台というふうに言われておりますが、そのうちの一千万台は過去一年間にふえた分でございます。この自由化に伴って政府は五十億円程度財政資金をお使いになった程度だというふうに聞いておりますけれども、税収入は年間三千五百億円に上がる、二万人の雇用がつくられたというようなことを伺っております。規制緩和は即効性がないとマーケットは申しますが、決してそうではないと思います。  それからもう一つは、今世界的に大きな競争がございます、このデファクトスタンダードと申しますか世界標準を先に押さえた者が全部を取ってしまうという、収穫逓減の法則ではなくて収穫逓増の法則と言われるような世界がどんどん開けてきておるわけでございます。しかし、これは相当の政府のバックアップと申しますか環境整備をいたしませんと、日本の中ではそのようなものはなかなか育ってこないという現実がございます。  そのようなことにつきましては、この通産省の審議会等いろいろなところで既にさまざまの提言が行われておるわけでございまして、このプログラムはたくさんございます。どれを今政府がお取り上げになるかということであろうかと思います。
  126. 貝塚啓明

    参考人(貝塚啓明君) ただいまの御質問で、現在の日本状況をどういうふうに判断するかという、不況の問題でいろいろ御発言になったんですが、私自身は、確かに減税をすれば多少効果があるということはそうだと思いますが、ただ、現在の日本経済状況というのは、ちょっと大げさに言えばかなり深刻な状況でして、多少減税をやっても、多少効果はありますが、景気を上げるという効果はないように思います。  それは先ほど来私が申していますように、現在の日本消費者がどういうふうに考えているかというと、非常に先行き不安であって防衛的に切り詰めているという感じがあります。問題は、ですから私は、これも先ほどの繰り返しですが、やっぱり政府が、今後の日本の人々が生活設計を立てる場合の基本的なプランはどういうものであるかというのをはっきり、これは社会保障を中心ですが、それをきっちりさせるべきだということが一つ。  それからもう一つは、もう既に議論になっておりますが、金融機関の不良債権というのが不況のもう一つの非常に重要な要因でして、これをなるべく早く何らかの意味で解消するということが、貸し渋りということが実際言われておりますが、ですから中小企業はお金を借りられないとかそういう話が今ある程度起きているようですが、やはり金融の方の問題も非常に重要で、その二つをなるべく早く、片一方は、先の将来設計にとって重要な政府の、別にレベルは高くある必要はありませんが、ほぼ確実に保障できる社会保障上の約束と、それから第二は、やはり今言った不良債権その他の金融的な処理をなるべく早くこれはやらないと、単純に言えばちょっとどうにもならないようなところに来ているというのが私の印象でございます。
  127. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 田尻先生にお願いいたします。  一般的に建設国債は良で赤字国債は悪であるという、そういう言われ方をしております。確かに赤字国債というのはもともとこれは禁止されていたわけです、財政法では。しかし、必要に応じて法律を改正しても発行してきたわけです。  それで、今度のこの案によりますと、いわゆる国債費というものをGDP比三%に抑えようというわけですね。今GDPは五百二十二兆円くらいでしょうか、それの三%というと約十五兆七千億円くらいになるわけです。そうすると、予算の約二割近いものになるわけですけれども、これは私はちょっと多過ぎるんではないかなと思うんです。ですから、建設国債はある程度出してもいいという安易な考え方というものがずっと長い間に結局たまりたまって今日の赤字国債発行につながってきたと思うので、そういうことからいうとある程度やはり建設国債についても相当制限をしてやっていかなければいけない。  三%はちょっと多過ぎやしないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  128. 田尻嗣夫

    参考人(田尻嗣夫君) 三%という数字の妥当性について、私、それでは何%ならいいんだというふうにはなかなかお答えしがたいわけでございます。  現在、国債政府が赤字国債にしろ建設国債にしろ発行することが悪なのかというところ、基本的なことを考えてみますと、今、経済政府企業、家庭という三つの部門から成り立っておりますけれども、その家庭の部門では年間三十兆円から四十兆円の資金余剰が生じておるわけでありまして、これを何らかの形で方向づけませんと、それが米国の国債を買ったり、日本の生活基盤なり生活向上に役立たない形でしか使われないという問題があるわけでございまして、国債の発行そのものは決して悪ではないと思います。  もう一つは、先生の御質問の向こう側には次の世代にそのようなものを引き継いでいいのかという御議論もあろうかと思いますけれども、しかし、一定比率の国債は当然次の世代にも負担していただくべきものだと思います。  それから、現在は、国債の累積が将来どうなっていくか、国民負担率がどうなるかという、公的に負担しなければならないものだけが議論されておるわけでございますが、二十一世紀の次の世代は、実は両親から引き継ぐものも極めて多いわけでございます。つまり、国民の六割が、世帯数の六割がマイホームを持って、土地、建物、不動産を持っておる。次の世代は住宅ローンは要らないわけでございます。そのように考えますと、プライベートな面での負担の問題と公的な負担の問題をあわせますと、次の世代はそんなに暗くはないと私は思います。  したがいまして、財政構造改革はもちろん三%以下に抑えていくことは十分必要でございますが、その先に待っておるのが破局的な社会なんだというふうに私は考えておりません。
  129. 山口哲夫

    ○山口哲夫君 ありがとうございました。
  130. 高木正明

    ○理事(高木正明君) 以上で参考人の方々に対する質疑は終了いたしました。  参考人皆様に一言御礼を申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、ここに厚く御礼を申し上げます。(拍手)  明日は午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十三分散会