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1997-11-13 第141回国会 参議院 行財政改革・税制等に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月十三日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  十一月十二日     辞任         補欠選任      峰崎 直樹君     小川 勝也君      本岡 昭次君     小島 慶三君      緒方 靖夫君     山下 芳生君      西川きよし君     佐藤 道夫君      椎名 素夫君     末広まきこ君  十一月十三日     辞任         補欠選任      吉川 春子君     阿部 幸代君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         遠藤  要君     理 事                 片山虎之助君                 高木 正明君                 野間  赳君                 三浦 一水君                 荒木 清寛君                 広中和歌子君                 伊藤 基隆君                 赤桐  操君                 笠井  亮君     委 員                 狩野  安君                 鹿熊 安正君                 金田 勝年君                 亀谷 博昭君                 沓掛 哲男君                 斎藤 文夫君                 清水嘉与子君                 常田 享詳君                 長尾 立子君                 野村 五男君                 林  芳正君                 保坂 三蔵君                 宮澤  弘君                 泉  信也君                 今泉  昭君                 岩瀬 良三君                 小林  元君                 菅川 健二君                 高橋 令則君                 寺澤 芳男君                 益田 洋介君                 吉田 之久君                 小川 勝也君                 小島 慶三君                 齋藤  勁君                 志苫  裕君                 清水 澄子君                 阿部 幸代君                 山下 芳生君                 吉川 春子君                 佐藤 道夫君                 末広まきこ君                 山口 哲夫君    国務大臣        大 蔵 大 臣  三塚  博君        文 部 大 臣  町村 信孝君        厚 生 大 臣  小泉純一郎君        農林水産大臣   島村 宜伸君        通商産業大臣   堀内 光雄君        運 輸 大 臣  藤井 孝男君        建 設 大 臣  瓦   力君        自 治 大 臣        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    上杉 光弘君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  小里 貞利君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       尾身 幸次君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  亀井 久興君    政府委員        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第三        部長       阪田 雅裕君        総務庁長官官房        審議官      西村 正紀君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        国土庁計画・調        整局長      河出 英治君        国土庁土地局長  窪田  武君        国土庁大都市圏        整備局長        兼国会等移転審        議会事務局次長  林  桂一君        外務省経済協力        局長       大島 賢三君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省国際金融        局長       黒田 東彦君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省体育局長  工藤 智規君        厚生大臣官房総        務審議官     田中 泰弘君        厚生省医薬安全        局長       中西 明典君        厚生省社会・援        護局長      炭谷  茂君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  高木 俊明君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        社会保険庁運営        部長       真野  章君        農林水産大臣官        房長       堤  英隆君        農林水産省構造        改善局長     山本  徹君        林野庁長官    高橋  勲君        中小企業庁長官  林  康夫君        中小企業庁次長  中村 利雄君        運輸省鉄道局長  小幡 政人君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設大臣官房総        務審議官     小鷲  茂君        自治省行政局長  松本 英昭君        自治省財政局長  二橋 正弘君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 久雄君    参考人        日本銀行総裁   松下 康雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政構造改革推進に関する特別措置法案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政構造改革推進に関する特別措置法案の審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁松下康雄君の出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 財政構造改革推進に関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 小林元

    小林元君 平成会小林元でございます。  昨日の東京市場の動きを見ますと、大変な事態になっております。通告はしておりませんけれども、株が四百三十四円安、一万五千四百三十四円というような状況でございました。トリプル安と、大変な事態でございます。我々新進党は、財政構造改革も極めて大事であるけれども、ここはしっかり経済対策をやらなければいけないというふうに考えております。  大蔵大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  6. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 本日の早朝のニューヨーク市場の下落、昨日の流れを受けておると思いますが、御指摘のように安値圏を構成いたしております。今後、株式市場の動向については、引き続き十分な注視をしてまいります。同時に、党におきまして、三党を中心に経済問題、政策について第二次の案を御検討いただき、いずれそう遅くない時期に発表になるかと思います。政府においても、経企庁長官中心関係閣僚一致協力をしまして、経済対策具体案をつくり上げるべく鋭意努力をし、来週早々には発表の段階になるのではないかと見ております。  以上でございます。
  7. 小林元

    小林元君 これまでも何度も繰り返してまいりましたが、ただいまの御答弁にもありましたが、十分注意して見守っていく、来週には対応策を出したいということでありますが、やはりこれは政策不況といいますか、見守り続け過ぎたのではないか、このように思う次第でございます。  これはもう国民全体の問題、日本がどうなるか、二十一世紀を本当に安心して迎えられるか、そういうふうに国民は大変心配しているのではないかと考える次第でございます。そういう意味で、これはもう党派を超えて全国民的な御意見を早急にまとめられて、あらゆる対策をおとりいただくように切望する次第でございます。  今回の法案質問に入らせていただきます。  平成年度の当初予算編成に当たりまして、政府は、財政構造改革元年、こういうことで財政健全化に向けて第一歩を踏み出した、一般歳出を一・五%増に抑えた九年ぶりの低水準であり、特例公債も四兆五千億減額をしたと、そういうふうに胸を張って言われました。  しかし、その内容を見ますと、減税を打ち切る、そして消費税率をアップする、さらには、これは国の歳入にはなっておりませんけれども医療費患者負担を先取りするというようなことで九兆円にも上る国民負担、そういうものがこの予算の中でも取り込まれて財源不足というような形でづぎ込んでしまう。めり張りのきいた対応策に使われたというようなところが見えなかったのではないか。したがって、とても胸を張って財政構造改革元年とは言えなかったのではないかなというふうに私どもは受けとめております。  今回の財政構造改革は、九年度予算ベースにしてそれ以下に抑える、あるいは一〇%カットする、七%カットする、二年先送りする、そういう内容でありますが、この九年度予算を、いろいろ努力されたのはわかりますけれども、膨らませておいて、そしてそれをベースにして減らそうと。何をやっているんだろうか、これが国民の見方ではないでしょうか。  そういうことだと私どもは考えておりますけれども大蔵大臣の率直なお考えをお伺いしたいと思います。
  8. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 御指摘のとおり、九年度予算編成財政構造改革スタート年としてプライマリーバランスをとるということ、すなわち国債費を除き租税に見合う歳出ということで、ただいま小林委員指摘のとおり、対前年度比一・五%増に抑えてスタートを切らさせていただきました。  四・五兆という公債発行減、正式には四・三ということになりますが、そういうことの中でスタートを切りました最大の理由は、先進国中、財政事情が極めて深刻な状態に立ち至りましたというところに原点がございました。公債残高二百五十四兆、これに歯どめをかけてまいりませんと、高齢化社会少子化時代を迎えている中で大きな問題に逢着をし、財政運営国民経済運営の足を引っ張るということになりかねないということでありました。  同時に、本法案に明示をされておりますそれぞれの諸項目に基づいた会議が持たれまして、そのことが法律として御提案をし御審議をいただくという段取りに結びついたわけでございます。  諸制度の全体の見直し聖域なき歳出見直しカット、もちろん必要なものは必要として措置をするわけでございますが、全体的に抑制基調縮減基調ということは法律に書いておるとおりでございまして、社会保障関係が御案内のとおりのポリティカルキャップでございます。科学技術振興基礎研究基本にかんがみて、これは対前年度比五%増ということに相なっておるわけで、目配りをして九年度予算は元年、いわゆる集中三カ年の前年としての基礎固めをした、こういうことでございます。
  9. 小林元

    小林元君 ただいまの御答弁によりますと、プライマリーバランスをとるというようなことで、公債発行額あるいは元利償還との関係を十分に考える、なおかつ聖域なき削減というようなことでこの法案を作成した、こういうふうにおっしゃいました。  ところで、プライマリーバランスというんでしょうか、この法案によりますと「財政構造改革の当面の目標」ということで三つの目標が書かれております。非常にわかりにくい表現がございます。  国、地方貯蓄投資差額合算額、つまりそれが財政赤字の額、のGDP比を三%以下に抑えると。なぜか大蔵省の方でも、このような推計値といいますか数値を余りお出しになっていないようですが、現在はこれが五・四%ある、これを三%以下に抑えたい。それから、十五年度までに特例公債から脱却をする。そして、公債費平成年度以下とすると。公債費ということでありますから、現在の発行額以下にするということとはまた違っていると思います。  二と三については国民理解できるといいますか、わかりやすいわけでございますが、突如として国際連合が定めた国民経済計算といいますか、そういうようなことで貯蓄投資差額と。言うならば、欧米諸国はこれを使っているのかもしれませんが、日本では大変なじみがない、突如ここへ来て出てきたわけでございまして、一体これは何だと。  財政構造改革というのは国民の痛みを伴うものであるというふうに総理大臣以下ずっと説明をしてこられております。したがいまして、この構造改革をどうしてもやり遂げるというのであれば、国民理解協力公共事業カットしていろいろ社会資本整備、あるいは生活基盤につきましても皆さんの御要望に十分にこたえられませんよ、あるいは年金保険にしても大変な状態で、このままの状態ではシステムが破壊しかねない、そういうふうにおっしゃっているわけでございます。やはり国民理解協力というのは不可欠だと私どもも考えている次第でございます。  そういう中で、今まで政府は、建設公債というのは後世代のために役立つ財源ということで、財政法四条に規定された建設公債というものを発行し、景気対策等に使ってきたわけでございます。これは、現世代ばかりではなくて後世代への負担も当然あっていいんだ、善玉だというふうに説明してき続けたわけでございます。しかし、ここに来て、総理以下皆さんからもお話がありましたけれども、とにかく建設国債赤字国債もないんだ、もう四百七十六兆円にも及んでいる、GDP比でも九三%になっている、大変なんだ、だから建設国債がよくて赤字国債は悪いというようなことではなくて、全体として考えてほしい、こういう説明を受けてきたわけでございます。  したがいまして、投資差額などという、大蔵省の役人のテクニカルタームで国民の目をごまかすとは言いませんけれども、目くらましをして何が何だかわからない、政府は本当に目標に向かって進んでいるんだろうか。計算して数値を出せばわかるだろうと言いますけれども小泉大臣でしたか、国民に向かってむやみに横文字を使うなと。デイサービスだと。お年寄りデイサービスというのは一体何だと。中学校も出ていない小学校だけのお年寄りもたくさんいるわけでございます。ですから、ケアハウスとかわからない言葉がいっぱいあります。  そういうふうに、やはりこれは国民に気を使っていただく、これが政府の使命だ。よらしむべし、知らしむべからずではない、もう徳川時代ではないわけでございますから。国民に向かって、大蔵大臣、非常にわかりやすい言葉財政赤字というのはどういうものなんだ、こういうものなんですよと説明していただけませんでしょうか。
  10. 三塚博

    国務大臣三塚博君) この三%の根拠は、御案内のとおり、国際連合の規則、ルール、こういうことで定められた基準でございます。その中で、いわゆる貯蓄投資差額という何となく理解が難しい基準規定いたしております。  簡単に言いますと、家計が黒字か赤字かを判断する際に、一年間の収入と支出差額を見る。一カ月のサラリーの中で、月給の中で一カ月の支出バランス、均衡するようにやるというのも主婦の皆さんの知恵であり、このごろはだんなさんもその辺に参加をしている、こういうことでございます。いわゆる貯蓄投資差額を見て、公共団体、国の場合は基準とすることは極めて自然なことであり適切な指標ではないのか。  もう一つつけ加えさせていただきますと、御指摘のように、マーストリヒト条約という欧州通貨統合の際の基準として、国、地方財政赤字を統合したものが全体において国民総生産対比で三%以下にする、単年度でございますが、そういう取り決めをいたしたと。総額の債務ストックにおいては六〇%以下ということでありますが、我が国はそこは集中三カ年と後の三カ年、六カ年を経て借金のための公債発行を下げていく、九年が七・五兆でございましたからそれを下げて、六年で割りますと一兆二千五百億円ずつ返していきますと発行額がゼロになります、こういうことにさせていただき、いわゆる建設国債部分があります債務については、本件は九〇%を超えないように特例公債の減を行うことによってバランスをとってまいります。こういうことであります。
  11. 小林元

    小林元君 国民皆さんが聞いてどうもわかりにくいんじゃないか。私も頭が悪いものですから、何かこれはフローの話とストックの話というかそこがどうも……。大蔵大臣は今貯蓄投資差額と、こういうふうにおっしゃったんですが、それは債務残高の、例えば家計でいえば、貯蓄があり、それから例えば長期借入金というか借金があるということとは別に、勤労所得ならサラリーマン家庭であれば給料、それではやっていけないから、それとは別に毎月二万円を借りなきゃいかぬというようなものは年間で幾らになってと、そういうものなのかなと私は理解しているんですが、いかがでしょうか。間違っていますでしょうか。
  12. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 解説をいただきましてありがとうございました。非常にわかりよく御質問いただきました。
  13. 小林元

    小林元君 どうぞ国民にわかるように、納得ができるように、そして国民もみんな一緒になって、日本は大変だ、だから頑張ろうじゃないかという気持ちを起こさせることが一番この改革の要請ではないかというふうに思っている次第でございます。  それから、先ほど来、建設国債とか赤字国債とかいろいろ法律上もありまして、現にこういうものをずっと使い続けてきたわけでございます。これはちょっと質問通告をしておりませんけれども、大変初歩的な質問で恐縮でございますが、欧米諸国においてはこういうような区分というものはどうもないんじゃないのか。やっぱり借入金というか長期借入金というか、そういうもので財政運営をしているんではないかなというふうに思うんですが、御承知でしたら、あるいは事務方でも結構でございますが、お教えいただきたいと思います。
  14. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) お答え申し上げます。  欧米諸国の中で日本と同じように投資的な経費について国債発行を認めるという制度をとっている国はドイツがございます。それから、逆にそういう区別をとっていない国としては例えばアメリカのような国もあります。  一方で、例えばイギリスのように、そういう建設国債的な考え方を取り入れるべきだという議論をしている国もあるようでございます。
  15. 小林元

    小林元君 それでは、もう一つの目標規定をされているといいますか、目標というふうにはこの法案の中では言っておりませんけれども、第六条で国民負担率と。これはGDP比ではなくてGNP比である。これは従来からそういう形でこの指標を扱われてきました。それを百分の五十以下にするということで、これまで租税あるいは社会保障負担合算額GNPの比というような形で国民にも理解されているんではないかと思いますが、今回はさらにその中に財政赤字というものを合算して対GNP比、こういうふうに言われて規定をされているわけです。  この辺も非常にわかりにくいといいますか、大蔵省の資料の中でも探してみたんですけれども、現在は三八・二%であるというような数字になっていたかと思います。これは従来の国民負担率数字でありまして、新負担率については出されていないわけでございます。そういうわかりにくい目標をどうして次々と設定するのかなと思うんですが、いかがでしょうか。
  16. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) 先生御指摘のように、従来は国民租税と、それから社会保障負担国民所得に占める割合を国民負担率としてきたところでございます。  ただ、その場合は、実際に現在でも相当膨大なる公債発行をしておりまして、それによる公共サービスの供給が行われているわけでございまして、その部分、隠れた負担が出てこないということで、むしろ最終的には公共サービス国民負担に裏づけられるものであるわけでございますので、この法案におきましては、今後の財政運営に当たっては、やはり将来世代負担の先送りである財政赤字を含めた国民負担率抑制する必要があるということで、こういう規定を設けたわけでございます。
  17. 小林元

    小林元君 本当に何か理解しにくいなというのが実感でございます。先ほど同様に国民十分説明をしていただきたい。  そこで、大蔵省の「財政事情試算」というのがございます。この法案の線に沿って一般歳出カットする、公共事業削減するというようなことで三千二百億円の減、それから国債を一兆九千五百億円減をする。しかし、なお二兆一千億ないし二兆九千億、これは名目成長率のところでこのような要するに要調整額といいますか、さらに切り込まないと大変だよというような数字かと理解をしておりますが、その辺、本当にこれはそういうことで切り込む、そしてこの目標達成に向けて頑張る、こういうことなんでしょうか。  これは平成年度の話をしましたけれども、単年度ごと数値目標というのはもちろん掲げて、もちろんといいますか、この法案の中では掲げておりませんが、ただいま私が申し上げましたように、公共事業あるいは一般歳出量的削減目標を超えてさらに切り込まないといけないんだと、こういうふうに理解してよろしいんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
  18. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 「財政事情試算」に基づいて委員から御質問をいただいておるわけでございます。  十年度、御説のとおり成長率によって二・一兆円、さらに二・九兆円と、こうなるわけでありまして、私どもは、掲げられました最大目標でありますし、この達成のためにはありとあらゆる努力をしていかなければなりません。特に、法律に基づいての基準に従って歳出予算を決めてまいったトータルと歳入差額でありますものですから、この点について、一般歳出における調整を行いながら、調整という意味は決められた数字に向かって、また明示された縮減抑制というその基本原則を踏まえて制度等見直しを徹底して行いまして、歳出カットをしていくことによって取り進めなければならない。  こういうことに財政構造改革集中初年度における決心がここに強くあらわれておるものですから、この至上命題に向かって、困難な道ではございますが全力を尽くす、こういうことでございます。
  19. 小林元

    小林元君 今、大臣が御答弁になられましたように、大変厳しいんだと。この試算表を見ますと、歳出の方は、国債費はこれはどうしようもない、元利償還といいますか、償還をしていく。これはまさかカットするということ、先送りするということはないと思います。  そして、一般歳出をもっともっと切り込まなきゃいかぬと。それでも足りないという場合には地方交付税、これしかないわけであります。別な試算も、一般歳出と公共投資に分けたりしたものもあるようでございますけれども、この「財政事情試算」によりますと、そういう三分割になっておりまして、この交付税というものは、これはもう法律で三税の率がそれぞれ決まっているわけでございます。  そういうものも聖域なし、カット対象だということもあり得るかどうか、お考えをお聞きしたいと思います。
  20. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 要調整額を減らし、法律に明示をされた基本に到達するということになりますと、ありとあらゆる努力を尽くしていかなければなりません。  特に、地方交付税についてはいかん、どう考えるかという御質疑でございますが、地方交付税の取り扱いにつきましては、国と地方の税収動向、地方歳出削減努力等を踏まえました上で、今後、予算編成過程において自治省と折衝をしてまいります。  いずれにいたしましても、十年度予算は、財政構造改革を進める観点から、歳出全体につきましては、前段申し上げました制度、また今日までの取り決め等、本件について十二分に精査をして歳出全般について厳しく抑制してまいることが必要である、こう思っておるところであります。
  21. 小林元

    小林元君 これは、大蔵大臣、大変重大な御答弁ではないか、お考えではないか。  この地方分権推進という中で、勧告には盛り込まれておりませんが、国と地方財源配分は大変偏っているわけでございます。そういう中で、にもかかわらず、地方分権を推進するという傍らでいろいろ調整をして、地方団体にゆとりといいますか財源があるならば、どうもそちらも対象にする、聖域ではないと。自治大臣もおられますので、後ほど自治大臣に聞きたいと思いますけれども、私自身も地方財政はやはり非常に大変なことだと思います。  これは地方財政制度の根幹にかかわる問題でございます。こういうものをいわゆる地方の自主財源といいますか、独自のものは三割程度、三割自治だと。交付税はもちろん国が交付するということでありますから、自主的な財源ではありませんが、使い方としては自主的に使えるという制度になっているわけでございます。したがいまして、到底これは容認できる問題ではない。  国の歳出カットというような形での努力をされまして、交付税制度は交付税制度として、現に地方団体もこの財政改革財政再建というものをもちろん一緒に頑張っていくわけでございますが、そういうものが崩れてしまうんじゃないか、国と地方が一緒になって頑張るのを崩しかねない、そういうことになるのではないかと思います。  時間もありませんのであれですが、自治大臣、いかがでしょうか。今の大蔵大臣答弁を聞かれまして、自治大臣、どういうふうにお考えでしょうか。
  22. 上杉光弘

    国務大臣(上杉光弘君) 交付税のあり方と財政構造との関連でのお尋ねでございます。  国税五税の一定の割合でございます地方交付税は、委員御承知のとおり、地方公共団体の固有の財源でございます。地方にとっては歳入でございますので、国の他の歳出と同列に論ぜられるべきものではないと思っております。  また、地方財政は、平成年度以降巨額の財源不足が続いておりまして、四兆円台から五兆五千億円幅のものでございまして、本年度は五兆九千億円にも上るわけでございます。  このような財源不足でございますから、地方交付税法第六条の三第二項に該当する極めて厳しい状況の中で、地方交付税の原資の不足を借金、すなわち借入金によりまして補てんをしておるというのが実情でございます。したがいまして、地方交付税の必要額を確保していくということは地方財政にとりまして当然のことでございます。  このような状況を考えれば、一般会計から交付税特別会計に繰り入れるべき交付税の額の抑制などというものは到底考えられないところでございまして、いずれにいたしましても、明年度地方財政の収支見通しが明らかになりました段階で、地方財政の運営に支障がないように、必要な地方交付税総額の確保に努めてまいりたいと考えております。
  23. 小林元

    小林元君 どうぞ自治大臣大蔵大臣答弁にもめげずに頑張っていただきたい。これでは地方団体つぶれますよ、やっていけません。それでは国として本当に大変なことだと。車の両輪だというふうに私は考えておりますので、この制度を堅持していただき、よい知恵を出して頑張っていただきたい、死力を尽くしていただきたい、このようにお願いを申し上げます。  次に、予算編成のあり方でございますけれども公債残高は四百七十六兆円ということに加えまして、いわゆる隠れ借金、ただいまも自治大臣から交付税先送りどいうふうなことでいろいろ借り入れをしている、あるいは国負担を繰り延べているというようなこともございました。法律規定はされておりますけれども、そういうものは十二兆円。そしてこの年金、例えば保険会計から借り入れをする、繰り延べをする。本来は公債発行して年金資金を借り入れる、これをやらずに繰り延べをする、こういうような措置をもってやりくりで五兆円。あるいは国鉄、林野の債務残高も大変でございます。四十八兆円を超えるというようなことになっているわけでございます。  今回の考え方は、当面、単年度の収支均衡を図っていくんだ、そして多額の債務処理といいますか財政赤字についてはその後で処理をするということになるわけでございますが、これはやっぱり財政構造改革の第一歩でありますから、ただいま申し上げましたような会計間の貸借関係といいますか隠れ借金といいますか、あるいは債務を棚上げするということで先送りをしていく、これはまさに財政改革でも何でもありません。    〔委員長退席、理事高木正明君着席〕  そういうことで、こういうことはぜひやめていただきたい。表で明らかにしていただきたい。大変苦しいとは思いますけれども大蔵大臣、いかがでしょうか。
  24. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 問題点の先送り、棚上げいかん、こういうことでございます。特例的な歳出削減措置、いわゆるこれを隠れ借金と呼んでおります。棚上げも、さらに先送りもその中に入るものでありますが、それぞれの制度あるいは施策をめぐる状況を検討した上で、中長期的な観点から制度、施策がバランスのとれたものとして安定的に機能するようその都度とられた措置であります。あるいは、その時々の運営に支障を生じない範囲でやむを得ざるものということで措置がとられたと御理解をいただきたいと思います。  今後においては、それぞれの制度、施策をめぐる状況、これまでの考え方、また国の財政事情を踏まえながら適切に対応していくものであると考えております。当然のことながら、不透明であるといった世の批判を受けることのないようにしてまいりたいと考えております。
  25. 小林元

    小林元君 どうもいまいち歯切れが悪い御答弁のように伺いました。  九月十八日の東京新聞によりますと、平成年度予算編成に当たって国民年金特別会計への支出を五千億円繰り延べる。これは何か大蔵省事務方説明ですと間違いで、厚生年金ではないかと、どちらでもあれでございますけれども。  いずれにしても、ただいまお伺いしましたような、要するに隠れ借金というか、繰り延べ方式というか、そういうことをこれからも続けていくというようなことが報じられているわけでございますが、会計間のツケ回し、後年度処理あるいは前借り制度というのは、本来これは財政法に照らしてみても違反しているんじゃないか、違法ではないか、こういうふうに思うんです。  そういうことも含めまして、ちょっと小泉厚生大臣、このようなことを承知しているんでしょうか。
  26. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 確かに委員指摘のとおり、これは好ましいことではなく、窮余の策だと思うんですね。繰り延べしてきたという、隠れ借金も。窮余の策であり、なおかつ特別に例外な措置が当然視されてきている傾向があると思うんです。  今の御趣旨を踏まえて、こういうことを改めるべきだと予算編成過程において申し入れていきたい、そう思います。
  27. 小林元

    小林元君 大変前向きな、積極的な御答弁ありがとうございました。  大蔵大臣、いかがでしょうか。
  28. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 厚生年金のことだと思います。  十年度におきます厚生年金国庫負担の繰り延べ措置につきましては、厚生大臣のお言葉もございましたが、危機的な財政状況、社会保障関係費の量的縮減目標等を勘案しながら、予算編成過程において歳出削減の必要性、また制度のあり方などを踏まえまして慎重に検討の上、適切に対処してまいりたいと考えております。
  29. 小林元

    小林元君 どうぞ正々堂々と、こういうやみに隠れてやるんではなくて、借りるべきものは借りるという手続において、表でやっていただきたい、このように考えております。  次に、地方財政の問題でございます。  国は、平成年度財政赤字比、先ほども申し上げましたが五・四%、これは三角がつくようでございますが、それをマイナス三%にするという明確な目標がございます。  ところが、地方団体の場合には、この資料をいただいたのでございますが、全体としては、現在はその五・四の内訳は国が三・四、地方が二・二というような現状にあると。したがいまして、その割合でひとしく頑張れと、そうは法案には書いてないようでございますけれども。ということになりますと、それが国が一・九とか一・一というような、これはまさに仮のお話かと思いますが、例えば仮に一・一%だと、目標設定をどういうふうにするのか私はわかりませんけれども地方公共団体というのは、全体としては一・一にしたにしましても、三千三百余の自治体があるわけでございます。個々の自治体から見れば、この健全化目標というのはどうも見えないんじゃないか。大変厳しい状況で、地方団体もこれから財政構造改革あるいは行革に取り組む。それは法律にも書いてありますように、自主的、自立的に健全化を図るんだ、こういうふうになっております。しかし、個々の団体としましては、先ほど来言っておりますように、どうしたらいいか、それぞれの自治体の感覚で目標を設定するということはなかなか難しいんじゃないか。おれのところはまだまだやっていけるというふうな考えもあるでしょうし、いや、やっぱりもうとても大変な状態だということもあると思います。  そういう意味で、自治省として、地方財政健全化目標達成の道筋というようなものをお示しして対処するのかどうか、その辺、お伺いしたいと思います。
  30. 上杉光弘

    国務大臣(上杉光弘君) お答えいたします。  御指摘のように、財政赤字GDP比目標は、地方財政全体すなわち地方財政計画ベースのマクロ目標でございます。ストレートに個々の地方公共団体目標の設定とはなっておりません。御指摘のとおりでございます。  地方財政計画は、地方財政全体の標準的な歳入歳出を見積もることによりまして地方財源を保障するものでございますが、この計画におきまして、再建目標達成するため地方一般歳出地方単独事業等の抑制をするということにいたしておるわけでございます。そのような動向が個々の地方公共団体にとりましては財政運営指標となるものでございまして、各地方公共団体は、このような意味地方財政計画や国の予算を踏まえつつ、地域の実情に応じ自主的な財政の健全化に努めていただきたい、このように考えております。
  31. 小林元

    小林元君 自治大臣にもっと伺いたいのですが、どうも時間もありませんので、私は地方行政委員会に属しておりますので、いずれまたお尋ねをしてまいりたいというふうに思います。  先ほど来申し上げておりますけれども地方におきましても国と一体となって財政改革をやる、しかし交付税制度は堅持をしていただきたい、こういうことを要望する次第でございます。  今回のこの法案では、その内容といいますか、内容の是非はともかく、財政構造改革という内容に踏み込んでいるのは大変少ないわけでございます。大部分は量的縮減目標あるいは補助率カット、補助金のカット率を定める、そして一般的にはその中身といえば重点的あるいは効率的、これは総理大臣もおっしゃっておりましたけれども、量が少なくなれば質も変わるであろう、優先順位を考えざるを得ないだろうというのですが、量から質へというふうな表現も法案の中にございましたが、大変抽象的でございます。  しかし、その中で本当に危機的な状況にあるというか、少子・高齢化を迎えて大変だということのせいかどうか、そういうことに起因しているのかもしれませんけれども、閣議決定の内容に比べて、これは法案化できるとかできないとかいろんな理屈はあるでしょう。しかし、かなり具体的な閣議決定もなされているわけでございます。そういう中で、一般的にはただいま申し上げたように余り突っ込んでいない。医療保険制度とか年金制度については、保険料の問題、支給年齢の問題あるいは年金の支給額の問題とかかなり具体的に考えております。  この辺について、何か厚生省だけが危機意識を持っているのかなと。まさかそうではないというふうに、私は、これは政府全体が、内閣全員が一緒にやるということだと思うんですが、どうもばらつきがあるというふうに見えて仕方がありません。  厚生大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
  32. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 現在の財政状況が深刻をきわめている、こういう中から行政改革財政構造改革をしなきゃならぬというその認識に立って橋本内閣が一丸となって対処していかなきゃならない。そういう中で、この財政構造改革法案を提出したわけでありますので、その趣旨にのっとって厚生省としても協力していかなきゃならないということで今努力をしているわけであります。  厚生省としてはやるべきことをやる。他の省庁も同じ気持ちで各大臣当たってくれているものと期待しております。
  33. 小林元

    小林元君 今、厚生大臣からもお話がありましたが、各大臣も頑張ってやるんだろうと、やることを期待していると、そういうふうに答弁をいただきました。しかし、各大臣がやる気があるとかないとか、こういうことを逐一あげつらうつもりはございません。踏み絵を踏ませるつもりもございません。しかし、法律を見た限りではどうも差があるのではないか。キャップ方式とか量的縮減目標を掲げておりまして、シーリングの延長ということで、本当に構造改革というものに踏み込まなければこの財政改革はできないのではないかと私も受けとめております。  そういう意味で、例えば平成年度一般会計で公共事業は九兆七千億にも及んでいるわけでございます。これまでも国会の中でもいろいろ議論されてまいりました。むだが多いのではないか、あるいは環境が激動する中で事業別のシェアは変わらない。例えば下水道に傾斜してきたというような御説明がありましたが、実際によく見てみますとほとんど変わっていないわけです。そういうようなこと。あるいは地域振興と称して少しずつ、百メートルずつ道路建設をやるとか、そういう細切れ的な対応とか、あるいは事業の費用対効果を考えていないとか考えるべきではないかとか、いろいろ指摘をされているわけでございます。  そういう意味で、やはりこれは公共事業の執行、例えば高コスト構造を改革して事業量を確保せよというような考えもあるわけでございますが、この多額の公共事業を所管している建設大臣、そして農林大臣に、この構造改革につきましてどのように取り組む御決意か、所信をお伺いしたいと思います。
  34. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 小林委員にお答えいたします。  先ほど来、大蔵大臣との広答におきまして、大変厳しい財政事情下における今後の公共事業の取り組み、このことについての御質問かと存ずるわけでありますが、御案内のとおり、本法案の第十三条に示されておりますように、重点化、効率化、こういった点につきまして格別の努力をしていかなくちゃならぬ問題がある、かように存じておりますし、また広く国民理解を得るために、この透明度の確保を図っていかなきゃならぬ、こういう観点に立ちまして公共事業推進してまいりたいと思っておるわけであります。  重点化につきましては、国と地方の的確な役割分担を進める、そういう中で、経済構造改革関連や地域格差の是正に資するものへ思い切った配分を行う。こういうことで、経済構造改革関連への重点化の例といたしまして、高規格幹線道路網の整備地方から非常に強い要請がございまして、ここにおきまして五%増とか、地域高規格道路の整備について九%増とか、あるいは魅力ある国土をつくっていかなきゃならぬわけでありますから、情報ハイウエーの構築支援に一二%増とか、また市街化におきまして虫食い状態になっておりますので、活性化を図るためにも、大変厳しい財政事情でありましても、要求といたしまして九%増とか、さらにまた生活関連におきましては、町村の下水道整備が大変おくれておる地域もありますので、ここへも配慮しなきゃならぬ。また、高齢化社会でありますので、住宅供給も取り組んでいかなきゃならぬ。この分野においても、思い切り三八%増。  他に安全な国土をつくるためにどうするかという問題におきましては、緊急土砂災害防止対策に九五%増等の要求をしながら、さらに新規箇所については厳選をするという心意気で取り組んでおるわけであります。  効率化につきましては、類似事業間の調整を図るということで、農林であるとかあるいは運輸であるとか国土庁と十分連携をとりながら取り組んでまいること、さらに厳しく財政の事情等もありますが、効率をこれから考えてまいりますときにコストの縮減、このことにはもう取り組んでいかなきゃならぬ、こういうようなことを目指して効率化を進めてまいりたいと思っておるわけであります。  いずれにいたしましても、大変厳しい状況下にありますので、公共事業を多く担当する建設省といたしましては、いかにこれらの資源を使いながら民間の活力を旺盛にしていくかということも配慮して取り組んでまいりたい、こういうぐあいに今取り組んでおるところであります。
  35. 島村宜伸

    国務大臣(島村宜伸君) お答えいたします。  土地改良事業につきましては、財政構造改革の方針に基づきまして第四次土地改良長期計画の四年間の延長を行いまして、投資規模の実質的縮減を図ることといたしております。  また、この事業の実施に当たりましては、担い手の育成や中山間地域の活性化など、農政の課題に対処するための重点的な予算配分を行うとともに、コストの縮減のための新技術の開発、普及を積極的に推進することとし、その重点化及び効率化に努めてまいることといたしております。
  36. 小林元

    小林元君 大変時間を超過しまして申しわけございません。  さらに農水大臣、運輸大臣にもいろいろお聞きしょうと思いましたが、時間が足りませんので、御理解をいただきたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  37. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 平成会の岩瀬でございます。  連日、多岐にわたっておる質問でございますので、できるだけダブりを省きながらやりたいと思いますが、よろしくお願いいたしたいと存じます。  構造改革法案中心質問させていただきたいと思うわけでございますが、多岐にわたっておる内容法案としてはよくまとめられておるというふうに私は思っておるわけでございますけれども、こういう形では初めての法案であるし、印象としてはちょっと変わった法案だなと、こんな印象を持っておるわけでございます。  橋本首相が提案された六つの改革の一つの構造改革、これについての一つの成果としての法案であろうと思うわけですけれども、いろんな方が指摘されておりますように、構造改革そのものというのは、これは全体を通しての刷新であって、また既得権を守る非効率な体質、こういうものも切り込んでいかなければならない、そういうような制度そのものの組み方を考えていかなきゃならないんだろうというふうなのが構造改革だろうというふうに思うわけでございます。そうしますと、御指摘もありますように、構造改革の要素がかなり少ないんじゃないか。  それとともに、財政の健全化と申しますか、これも大事なことであることは間違いないと思います。ないと思いますけれども財政収支の改善、こういうことに力点が置かれているのじゃないか。  また、このことを同じ扱いにしますとちょっと考え方にも差が出てくる。財政収支は当面の問題のことであるし、構造改革は長期にわたってこれは考えていかなきゃならない。こういうものが一つになっておるのでなかなかわかりにくいのかなと、こういうような感じを持つわけでございます。  そのような前提に立って、以下、質問をさせていただきたいというふうに思うわけでございます。  今までいろんな方にいろんな論戦をしていただいている。そういう中で、この法案の当面の目標とか基本方針とか量的縮減目標等あるわけでございますが、罰則規定等はないわけでございます。衆議院などでも質疑がなされておりますが、その後の質疑の経過も踏まえまして一政治責任と申しますか、責任の点はどうなるかということと、この構造改革法案が通過した場合のいわゆる拘束と申しますか、どのような拘束があるのか。もちろん、政府もありますし、国会の方も当然であろうかと思いますが、こういう点について、法制局長官の方からお答えいただきたいと思うわけです。
  38. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) まず、この法律案が成立した場合にどういう効果を生ずるのかという点から申し上げます。  この点につきましては、この法律案の一つの大きな目標であります量的縮減目標について申し上げますと、この法律が成立いたしますと、予算編成に当たっての政府のよるべき基準、方針が、平成年度以降の三年ないし六カ年にわたって国会の意思として示されることになります。したがいまして、内閣が、この間みずからの判断によって自由に、法定された方針を変更して予算編成することは許されなくなるという拘束力が内閣にかかります。したがって、この量的縮減目標と申しますのは、内閣が予算を作成するに当たっての拘束規範であるということが言えようかと思います。  それから次に、では、この法律が成立いたしますと、内閣がこの法律案の内容に抵触するような事態に至った場合にどうなるのかということでございますが、内閣の方で作成いたしまして提案申し上げている法律案でございますから、ゆめゆめそのような事態が生ずることのないように努力すべきことは当然でございます。  ただ、万が一にも内閣がこの法律案の内容に違反するというような事態が生じた場合には、それが内閣の責めに帰する事由によって生じたという場合にはこの法律に違反するという評価を受けるわけでございますけれども、ただその制裁等についてはもちろんこの法律には特別の定めをしておりませんので、その責任と申しますのは強いて言えば政治的な責任が生ずるということになろうかと思う次第でございます。
  39. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 もう一つ、国会の方の審議権、また予算修正権、こういう点と、それからもう一つ、補正予算にわたった場合にこれは最終的に平成十五年度目標値を定めておるわけで、そこには影響すると思うんですけれども、そういう点についてお答えいただきたいと思います。
  40. 大森政輔

    政府委員(大森政輔君) この法律案と予算審議権、議決権、ひいては修正権との関係についてでございますが、ただいま御説明申し上げましたように、この法律案の第二章及び第三章では大くくりの主要経費ごとの量的縮減目標規定しているものでございますが、これはあくまでも当初予算を作成するに当たって内閣を拘束する規範でございます。したがって、国会における予算審議権あるいは予算の議決権、これを拘束するという内容ではございません。  ただ、従前も指摘されたところでございますが、この法律案の第三条は、国は財政構造改革推進する責務を負う、この主体は国と書いておりますので、この第三条との関係におきましては、政府のみならず、国会も一応責務を有することになるということにはなります。  したがいまして、国会も立法その他の活動を通じて財政構造改革推進する責務を抽象的には負うわけでございますが、この責務の内容は、この法案においては具体的に定められているわけではございません。したがいまして、いかなる方法でどの程度に責務を果たすかということはひとえに国会の裁量にゆだねられているということでございます。  考えてみますに、国会は多種多様な国政上の課題につきましてさまざまな観点から総合勘案されまして審議、議決をされるということでございまして、この三条は、ただいま申し上げましたような国会の有される判断あるいは配慮を否定するものではないというふうに私ども理解しているわけでございます。したがって、この法律案の第三条との関係におきましても、この三条があることによって国会の予算審議あるいは議決権、ひいては予算修正権というものを制約するものではございません。  ただ、一言だけ申し上げさせていただきたいのは、一般的な予算の修正権につきましては、御案内のとおり、内閣の有する予算提出権と国会の有される予算審議権の調整の問題として、内閣の予算提出権を本質的に損なわないという限界が潜在的に存在するということを従前申し述べているところであります。
  41. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 ありがとうございました。  今、財政が危機的状況にある、国の借金も三百四十四兆、全体として五百二十兆円あるんじゃないか、こういうようなことが言われておるわけでございます。  そういう中で、財政の健全化、国家予算の健全化ということが入れば、中身のことはともかくとして、それは議論がなくても量的削減をするということがまず必要であろうということはわかるわけでありますけれども、この法案におきましてそこに書かれておりますものは、前年度の当初予算の範囲内だとか、七%以内、一〇%以内というのもあるように、中身が個々によってアンバランスになっておるというようなことがあるわけでございます。  今一番言われておりますのは、後世代に対してこういう負担を持っていってはいけないんだろう、そういう中でのこういう努力だろうというふうに思うわけでございますけれども、後世代への負担ということから考えれば国の借金、こういうことになるわけでございまして、平成年度予算でも公債発行が十六兆円余ということで、その依存度が二〇%を超えている、こういうようなことであろうかと思うわけでございます。  そういうことから考えますと、歳出削減目標だけを記述してあるわけですが、歳入、殊に公債費関係を申し上げたいわけでございます。歳入全般についてもこれの記述がしていないのはおかしいのではないか。税制問題につきましても、これからの我が国の行くべき道は国際的ないわゆるグローバルスタンダード、こういうような形での税制をとっていかなければならないということを大蔵大臣も言われておるわけでございまして、そういうような記述もない。  そういうことでございますけれども、もう一つ私ども今議論しております国債の総額の縮減計画、こういうのもはっきり出ておらない。こういう形でございますが、国債縮減計画、こういうものを出すべきではないか、そういうふうに思うわけでございますが、いかがでございましょう。
  42. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 歳入の点にも言及され、債務縮減計画、総体の債務総額は国、地方を合わせますと四百七十六兆円、御指摘のように公債残高政府部分二百五十四兆と、こうなっております。  こういう中で、三%以下に下げる、目標とするということを置くことによりまして、特例公債赤字国債だけではなく建設国債にもコントロールが及んでいくということだけは間違いございません。六十年国債でありましても利子は毎年現在高に対して付加されるわけでありますし、それは国債費として、御説のとおり、毎年必ず乗ってくる額なものでございますから、その部分建設国債が、また特例公債も合わせた総額が累増していくということだけはコントロールしませんと財政構造改革基本に沿いません。  よって、利払いといえども建設国債で払えませんから、特例公債で払ってまいるわけでございます。特例公債縮減目標を明示することにより、その努力によりまして効率的な費用対効果の上がる事業についてプライオリティーが与えられる。以下、物流の整備でありますとか生活関連の問題でありますとか、国民生活上、地域振興上必要なものがセレクトされてまいるのではないでしょうか。こういうことであります。
  43. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 今、大蔵大臣いろいろ言われましたけれども、私がお聞き申し上げておりますのは、公債発行についての縮減目標をつくるべきじゃないか、こういう点を申し上げておるわけでございます。  今、ここの後半の中で言われておりますのは、平成年度の総額に対して十五年度はその額を超えてはならないというようなことが記されておるわけですけれども、その過程の年度年度のことは言われておらないわけでございます。ただ、特例公債の方については率でもって示しておる点があるわけですけれども、実際問題として、これで国債公債発行残高というのは下がっていくのかなというような疑問を持つわけでございます。  そういう意味で、せっかくこういう構造改革ということで言われ、しかも一番我々が問題にしているのは、借金を後世に残さない。それはある程度の理屈の立つものはいいんですけれども、後世の、これからの貯蓄の減少等を考えるとかということも御答弁なされておるわけでございますが、そういう中で、できるだけ残さないということを考えれば、これを縮減していかなければならないわけでございまして、そういう計画を持っていかなきゃいけないんじゃないか、こう思うわけでございますが、この点いかがでございましょうか。
  44. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 前段申し上げましたのもその意味を含めて申し上げたつもりでありますが、基本的に総額を抑制するプログラム、特例公債目標が六年度発行をゼロにするという、これは出ていますね、しかし残っておるんじゃありませんかと、こういうことであります。よって、量的縮減目標に七%を上回らない、いわゆる七%カットのキャップをかけたわけであります。  公共事業建設国債財源として行うというのが今日の基本でございますから、七%が縮減される、また長期計画が短縮をされていくということで量より質への転換が行われるということがここに含まれておりますでしょうし、民間の参画による公共事業、インフラの整備というのが強く今度は打ち出されておるところでありますし、関西国際空港がそのことによって成功した事例の一つであるということであろうかと思います。
  45. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 またちょっと後で触れたいと思います。  それからもう一つ、今、小林議員からの質問の中での話にもございましたけれども特例公債、これについては平成十五年度までにゼロとするというようなことが書かれておるわけでございますが、特例公債建設公債、これの区分と申しましょうか、これについての考え方、先ほども議論出ましたけれども、片方が何だか悪いようなふうに思う点があるわけですが、この点について、大臣、どうお考えになっておられるんでしょうか。
  46. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 御案内のとおり、負担世代間公平という考えに立つ財政法の観点から、見合いの資産が残る公共事業に限りまして建設公債発行ということを認めております。資産がそこに残って活用されていくであろう、こういうことであります。見合いの資産の残らない公債、これを特例公債ということであり、基本的な相違がここに出ておるということで、決してこのことを差別するということではございません。
  47. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうしますと、特例公債建設公債とを分けるという理由がちょっと乏しくなってくるわけでございます。これからのことを考えると、今までの建設公債の範囲があれでいいのかなという点が一つ私も疑問に思っておるわけでございます。  環境面などを考えた場合に、地球的環境問題の改善を図っていった場合、それは見えるものとしては残っていかないんじゃないか。だけれども、それもやはり後世のためにそういういい環境を残していかなきゃならないというような事業があった場合に、それは特例公債というよりも、どちらかというと、今の段階では物は残っていかないんですが、建設公債のような形になるわけです。  もうこれからの特例公債建設公債という区分を少し変えていかなければ、後に見合いが残っていくという考え方が変わっていかなきゃいけないんじゃないか、そう思うわけでございまして、特例公債のこういう形での区分け、そしてここでの特例公債だけをゼロにしていくんだというような考え方は除かなきゃいけないんではないか。言うならば、ここの条文を除かなきゃいけないんじゃないか、それほどまでに思うわけでございますが、どうでしょうか。
  48. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 特例公債をゼロというのは、九年度発行の七・五兆円に対してであります。これは公債依存の財政体質からの脱却を目指すという決定のもとに行われております。  前段申し上げました見合いの財産が残るか残らないかということは、財政法に基づく節度ある財政運営の観点からいいますと歯どめが一つ必要ではないか。いずれも国債という流れの中で行うということであれば今後の財政節度の問題に問題を残すということで、従前この方式をとらさせていただいておるということであります。
  49. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 余りこればかりに時間をとっていてもいけませんけれども建設公債の範囲というものもやはりこの財政構造改革の一つだと思うので、ひとつ御検討をいただければというふうに思うわけでございます。  それから、もう一つ補正予算の点について伺いたいと思いますけれども、補正予算の記述がほとんど書かれておらないということでございます。そうしますと、今までも我々便利に補正予算を使ってきた感があるんじゃないか、財政法規定はされておるんですけれども、それを非常に拡張解釈するような形で便利に使ってきているんじゃないか、そういうふうに思うわけでございます。こういうように、この法案でもってぎゅっと歳出を絞り厳しくしている段階では補正のことについてもやはり触れていかなきゃいけないんじゃないか。今までの使い方ということも反省して、そういうことが必要なんじゃないかというふうに思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  50. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 補正予算は、何回も申し上げておりますように、法律上、契約上、国の義務に属する経費の不足ができた場合、また予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出を行う場合、大災害その他内閣が決定したことについて行うということであります。  この法律案においての運営ということになりますと、二十九条の趣旨に、今申し上げました基本に沿って厳正に対処し、適切にまいらなければならない、こう思っております。  法律に書いておらぬのではないかということについて申し上げますと、この法律案におきましては、財政健全化目標は実績値あるいは補正後の数値としておりますことから、財政構造改革の趣旨は補正予算にも反映されることになるという基本を踏まえて、そのような措置をとられていると思います。
  51. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 大臣の言を信じて、やはり当初と同じような形での補正の計上がなされるべきだというふうに思います。  それからもう一つ、これは事務方の方でも結構でございますが、債務負担行為、これについてはいかが適用になるんでしょうか。
  52. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) お答え申し上げます。  債務負担行為は、いずれそれが歳出化されるわけでございますので、今回の法案においてのキャップは歳出予算についてのキャップとしております。
  53. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうしますと、債務負担行為をする段階では適用外で、それを支払う段階で適用になる、こういうふうに考えてよろしいんでしょうか。
  54. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) 先生のおっしゃるとおりでございます。
  55. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうしますと、財政集中期間または財政改革法案の六年間、この間に債務負担行為をして、それを過ぎてから支払いになるというと、何かこれはしり抜けになってくるんじゃないでしょうか。
  56. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) 毎年度の国庫債務負担行為の予算作成に当たっては、当然のことながら、後年度歳出化を見ながら債務負担予算を決めてまいりますので、この法律の趣旨に沿っていけば、債務負担行為は当然のことながら縮減することになると思います。
  57. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 問題点を指摘した点は後で御検討をいただきたいと思いますが、使い方によってはかなりこれはしり抜けになっていくのではないかというふうに思うわけでございます。  それから、この法案が、冒頭で申し上げましたように、健全化のための量的縮減目標財政構造の改革、こういう二つの命題を負っているわけでございまして、それはもう法案自体にも書いてあることでございますけれども、具体的に一つ二つお聞きしたいと思います。  公共事業、これは先ほど来からも議論にありましたが、公共事業のシェアが長い間変わらない。こういうことは余り予算計上の上では考えられないことなんですけれども、国の予算も大きいということもありまして、ほとんどこのシェアが変わっていかない。ところが、世の中は変わっていっているわけでございまして、これが変わっていかないということもちょっとおかしな話であるわけでございます。  この構造改革という中で、先ほど建設大臣いろいろ力説されておりましたけれども、この変わっていかない。ただ、予算というものは一つ計上しますと次の年度からはもう縮減することはなくてふえる性格を持っているわけでございまして、これが今までの財政の膨張の原因であり、累積債務の拡大してきた原因でもあるわけでございます。こういう観点からも、新しい方法をもってこのシェアと申しますか、公共事業の中身を変えていかなきゃならない。  先ほど建設大臣は、一〇%ほど効率化を図っていきたいというようなことも言われまして、これも大事なことだろうと思うんですけれども、このシェアを変えられるのかどうか、そういう点についてちょっとお話をいただければ。
  58. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 岩瀬委員にお答えいたします。  建設省所管事業につきましては、前年度実績主義による事業別配分の考え方によることなく、時々の政策課題に対応して重点的に配分する工夫をいたしておるところでありまして、ある程度のシェアの推移が見られるところであります。  なお、今後とも社会経済情勢の変化と国民のニーズに対応いたしまして、整備水準について地域間格差のある下水道の整備など政策的に必要な分野に重点的に取り組むことにより、めり張りのある事業の実施に努めたい。  建設省関係の一般公共事業の国費のシェアの推移でございますが、四十年代から見てみますと、これは相当に時代の要求、政策遂行のために内部では調整を積極的にいたしておりまして、例えて申し上げますと、四十年代で七・九%でありました住宅対策は今日一七・八%でございますし、道路につきましては四十年代六八・七%であったものが実は四〇・八%というシェアで取り組みをいたしております。時代時代におきましてそれぞれの時代のニーズもございますので、下水道であるとかあるいは治山治水に加え、公園さらに再開発等の要因も出てきておりますので、そちらの方のシェアもこれから広げてまいらなきゃならぬ。  いずれにいたしましても、魅力ある国土、安心できる国土をつくるということになりますと、中央のみならず地方からの要請も非常に強いわけでありますので、厳しい財政下ではありますが、これからも鋭意努力をしてまいりたい、こう考えておるところであります。
  59. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 私も市町村を回ったりなんかしますと、今もってやはり要望の強いのは道路なんです。ですから、そういう意味での事柄はわかるわけなんですが、ただ、国民皆さんが怒っておるのはいわゆる談合組織なんです。談合をもって非常な費用の高いものをつくっているんじゃないか、こういうことに一番怒っているわけなんで、そういう談合組織を何とか遮断しなきゃいけない、こういうことだろうと思うわけでございます。ぜひそういうふうな点でお骨折りをいただくとともに、時代の移り変わりとともに必要としているもの、下水道は確かにそのとおりです。そういう問題をふやしていただくような形での努力をお願いしたいと思うわけでございます。  それから、同じような形なんですけれども、厚生大臣にお伺い申し上げたいと思いますが、七条二項で社会保障の範囲を定めておるわけですが、これと今問題になっております医療保険制度年金制度とのかかわりと申しますか、こういう点はどうでしょう。いかがでございましょうか。
  60. 田中泰弘

    政府委員田中泰弘君) お答え申し上げます。  今回の財政構造改革特別措置法案の七条二項で一般会計に計上されます予算の範囲を決め、そして八条以下、量的縮減目標を定めておるわけでございまして、その後の九条以下の条項の中で医療保険を初め改革が書かれておるわけでございます。  そういう面で、量的目標を守りながら、九条以下規定されております医療保険改革年金改革構造改革を進めていくということでございます。  以上でございます。
  61. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 ちょっと質問に対してのお答えじゃないんですけれども、もっと具体的に申しますと、七条二項で「社会保障関係費とは、生活保護、社会福祉、社会保険、保健衛生対策及び失業対策に関し一般会計予算に計上される経費をいう。」と、こういうふうになっておるわけです。第九条では「医療保険制度改革に関する検討」、また十条では「年金制度改革に関する検討」という大表題があるわけですが、この医療保険制度、それから年金制度、こういうものと先ほど申しました七条二項の関係、この中にどれくらいのものが入っておるんだと。これは制約を受けるんだということなんですけれども、これはどういうものなのかという点をお答えいただければと思うんです。
  62. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) お答え申し上げます。  七条の規定は、これは社会保障関係費、今、先生が御指摘ありましたような一般会計に計上される社会保障関係費でございますが、それについての基本的な方針を規定しているわけでございまして、当然のことながら、それ以降の九条の規定もこの中に含まれるわけでございます。
  63. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 医療保険制度というものは、国の一般会計予算関係なく物事がなされているのか。そうじゃないと思うんですね。国の予算もかかり合いを持っていると思うんですが、そのかかり合いの点はどういう点なんだと、こういうことをお聞きしているんですけれども、出ませんか。
  64. 田中泰弘

    政府委員田中泰弘君) お答えいたします。  今、先生御指摘のとおり、医療保険年金その他国庫補助という形で一般会計から予算が入れられておるわけでございまして、その医療保険年金等に一般会計から繰り入れられております予算は、当然、今回の量的縮減目標でございます厚生省全体のキャップのもとで制限を受けるということでございます。
  65. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 それがどういう項目でどのくらいあるのか、こういうことなんですけれども、今はお答えできないですか。
  66. 田中泰弘

    政府委員田中泰弘君) お答え申し上げます。  九年度で申し上げますと、厚生省の九年度予算全般で十四兆一千二百三十一億円でございますが、その中で医療関係が六兆五千七百八十五億円、老人医療給付の関係が一兆九千百十八億円、それから年金関係は四兆一千五百十七億円等でございます。  以上でございます。
  67. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうすると、これに対しては社会保障の量的縮減目標というのが減額対象になるわけでございまして、来年度は三千億円を加算した額を下回ること、以下それ以降の年度はいろいろ書かれておるわけでございますが、こういう減額対象になっていくわけでございます。そのウエートは厚生省の方でいろいろやられると思うんですけれども、全体として減額対象になっていく。  そうしますと、今、九条、十条で医療保険制度改革についての検討をするということがうたわれておりまして、これは、厚生大臣、熱意を持ってお話をされたわけでございますけれども、そうしますと、この検討というのは国の予算の減額を前提として検討しているのか。そういう点についてどうでしょうか。
  68. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 当然増が八千五百億円程度と見込まれますが、その中で三千億円増しか認められないということでありますので、五千五百億円程度削減する。その削減の項目を、予算編成にこれから十二月に入ると思いますけれども、その中で具体的項目を削減していかなきゃならないということであります。
  69. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうすると、年金制度改革なり医療保険制度改革は、一方では、こっちの方はもうふやせない、そういうふやせない中で、こっちだけで検討してくれということにもなりかねない。  厚生大臣は、国民皆さんに幾つかの数値を出して、モデルを出して、その中で検討してもらうんだよと言っておられるわけなんですが、一方では、ここからこっちは減額なんだ、それを除いたこっちで検討してくれと、こういうふうにもとれるわけなんですけれども、この点はいかがでしょうか。
  70. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 五千五百億円程度減額しなきゃならない中で、医療関係については大体四千二百億円程度ですから、これを予算編成で現行制度の中で削減しなきゃならない。  さらに、今後制度的にも構造的にも改革しないと、毎年二%増ぐらいしか認められませんから、これは容易なことじゃない、制度改革に踏み込まないととてもできません。構造的な改革に踏み込まないと、年金にしても医療にしても多額の国費を投入しているわけですから、これは給付と負担等の関係を見ながら、国民的な議論を呼ぶと思いますので、いろいろ選択肢を提供して構造的な改革に踏み込む。量的な削減は、必然的に制度的、構造的な改革にならざるを得ないということであります。
  71. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 厚生大臣が意図しておられるところはわかりますけれども、どういうことが日本の将来の年金制度なり医療保険制度なりにいいんだということの検討の中には、やはりフリーな形で、その場合には国の予算もふえる場合もあるよという、そういう一つのモデルもその中で提示するような形で、それを外すというんじゃなくて、そういう中のモデルの一つにそういうものもあるよというような形での自由な検討をしていただければというふうに思うわけでございます。また、それを提示していただければというふうに思うわけでございます。これは要望ということでお願いしておきます。  今、幾つかのことをお尋ねいたしました。ちょっと整理させていただきますと、この法案は、内閣が予算編成する場合の一つの制約を持つということでございますけれども、また、国会の方につきましては、私は法律家ではありませんので端的な言葉になってしまいますけれども、今までの国会の修正権だの検討する権利だの、そういうものについては余り影響ないよと、こういうようなお話であったかと思うわけでございます。  そうしますと、内閣の中での、政府の中での各省の予算の中で新たなものがあって、それが入らない事態、こういうものも考えられてくるんじゃないか。例えば介護保険、今参議院で審議しておりますけれども、介護保険というのは保険ということが前提になってきておりますが、これは一つの例でございますけれども、自由な議論をしていった場合、新しいものもその中に入ってこないものが出てくるんじゃないか。非常な制約を各省の発案の中に持ってくるんじゃないか、そういうふうに思うわけでございます。歳出の面ではそういう制約が出てくるんじゃないか。  それからもう一つは、歳入の面では、これは先ほども申し上げましたように入っておらないということで、言うならば、余り規制されたくないよと、こういう意思があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  それともう一つ、国債の現在高、これについてお聞きしたいと思うわけでございますけれども、なかなか私は減っていかないんじゃないかなというふうに思うわけでございます。歳入のことについての規制を余りしておらない。せっかく後代への負担を残さないというような趣旨でのものでございますし、お示しいただきましたモデル、今四・四という目標を三以下にするよと。その四・四というのが三というのは小さいように思うわけでございますけれども、そのボディーは国内総生産ですか、こういうものになっておるわけで、ボディーが膨らんでくるわけなんで、そういう中では国債の現在高というのが余り減っていかないんじゃないかという印象を持っておるわけでございます。  それともう一つは、平成年度予算についての縛りが非常に明確になっておるわけでございますけれども、これは恐らく十一年度、十二年度もそういう形のものが見られます。十年度ほどじゃないにしても見られるわけでございます。  例えば、きょうの新聞に出ておりました国鉄の債務償還の問題にしましても、国鉄の債務を民間資金の方に有償分については肩がわりする。そうしますと、これは今五・何%くらいのところだそうでございますが、二%くらいで借りられるんじゃないかというふうなことを書かれております。非常な節約になることは事実でございますけれども、国鉄の債務を実際上引き受けるところがあるのかなという感じもしております。それは、政府が何らかの形で保証しないと引き受ける方も心配な点が、保証がないわけですからあるんだろうと思うわけでございますが、そういった場合の選択幅、そういうのも非常に制約するんじゃないか。これは端的に言えば、政府国債で肩がわりしていきますと三%の方にすぐ響いてくる、そういうことはできないよというような、今度いろんな施策をやっていく上での制約が非常に出てくるんじゃないかということに思うわけでございます。  それから、その縮減目標にしても、我々今まで大蔵省の毎年度シーリングを聞いてきたわけでございまして、かなりこの中で、予算編成方針と申しますか、そういうシーリングでやる、今ことしの場合キャップというようなことを言っておられますけれども、そういう大蔵省の方針で済む問題もかなり入っているわけなんでございまして、何かこれは予算編成大蔵省のバックアップ法案というようなことも思うわけでございますけれども、この点、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  72. 三塚博

    国務大臣三塚博君) バックアップ法案ととられますと、特別立法までしてスタートを切らさせていただいたものでございますから、そうではなく、内閣全体がこの法律が成立いたしました暁には縛られるわけでございます。  まさに編成の規範、基準ということになるわけでございまして、逆に政府原案をつくる立場にある大蔵といたしますと、そのことに縛られて全力を尽くして目標達成のためにやり抜いていかなければならないという、初めての法律でありますが、極めて厳しい規範を決め、歳出カット委員が言われる構造改革、諸制度見直しについては聖域なくこれをやり抜いていかなければならない、こうなっておるわけでございます。
  73. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 時間もなくなってきましたので、ちょっと個別的な方に少し入らせていただきます。  一つは、先ほど議論になりました貯蓄投資差額でございます。先ほど話がありましたように、非常にわかりにくい、これは事実だろうと思うわけでございますし、またこの計算方法というのも普通の人はできないんじゃないかというふうに思うわけでございます。先ほど来、大蔵大臣小林議員も貯蓄投資差額をわかりやすくということでのお話はありましたので、私からはそれ以上申し上げませんけれども、何かもう少しわかりやすい指標平成十五年度はこういうものがこうなるんだよというような指標を示すべきじゃないかというふうに思うんです。これは一つの提案でございます。  それから、質問の方でございますが、これは五条で、見込み数値を計算して公表します、こういうふうにうたわれておるわけでございますが、実際の確定値というのはいつになるんでしょうか。その辺、事務方の方からお願いします。
  74. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) 予算を提出する段階では当該年度のGDP等がまだ決まっておりませんのであくまでも見込み指標で出さざるを得ませんが、最終的な数字は、これは国民経済計算が出てきた段階ですので、決算の終わった翌年度の二月ごろに確定数値が出てくるということでございます。
  75. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうしますと、年度が終わりまして翌年度の二月までに確定値がなされると、こういうふうに考えていいんでしょうか。
  76. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) そのとおりでございます。
  77. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 できるだけ早くしていただきたいということが一つあるわけです。  そうしますと、推計値と確定値の差というのは今までどのくらいあったか、そういう計算はしておられましょうか。
  78. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) 今までそういう計算はしておりませんが、経済というのはこれはなかなか予測どおりにはいきませんのでその分が非常に流動的であるということで、見込みどおりになるかどうかはそのときの経済情勢によって変わってくると思います。
  79. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 そうしますと、平成十五年度において物事を議論した場合に、これは例えば離れているときはそれほど問題になりませんが、三%前後のところでいった場合には、これは達成したんだか達成しないんだかというのが非常にわかりづらい話で、一年先になればもうそういう議論はどうでもよいということになりかねないんです。そういう意味で、どうかこの精度を高めていただく、それともう一つ、早くしていただくということでこの貯蓄投資差額というのを取り扱っていただく必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  それからもう一つ、これはわかるかどうかわかりませんけれども、三%が達成されたときの状態はどういう状態になるんだろう。これは、先ほど国債の現在高という議論がありましたけれども、それと別に、予算の姿はどうなるんだろうか。予算の姿というのはもう先のことでよくわからないわけですけれども、そのとき、少なくとも国債発行、この姿はどういうふうになっていくんだろうというふうに思うわけでございます。  結局、我々一生懸命達成する努力をするわけです。そうした結果、三%を達成しました、まだ国債の依存度は二〇%を超えるという姿では、何のためのものだかわからないわけで、これが一〇%になりますよとか七%になりますよという、そういう姿がわかるものなんでしょうか。
  80. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) 二〇〇三年度までの財政事情は、現在のところ、先般お示ししております「財政事情試算」、これはあくまでも一定の仮定のもとに機械的に計算したものでございますが、その数字に沿って申し上げますと、平成十五年度にはGDPは二・五から二・六、もちろん、これは大変な要調整額を解消した上での話でございます。  その段階でまず一般歳出の姿がどうなるかといいますと、これはもちろん仮定計算例でもごらんのとおり、一般歳出〇%、一%、二%と伸ばすことによって数字が変わってくるわけですが、大体八十・九兆円から八十八・一兆円という程度になる。その段階での国債発行額は、平成十五年度では八兆五千億、これは特例債をゼロとした場合でございます。そうすると、その段階での国債の残高は二百九十九兆円程度ということで、平成十五年度まではGDP比率で上がらないようにするということでございますので、残高はある程度ふえてまいります。そのときの公債依存度は、今年度は二一・六でございますが、大体一〇%程度になるのではないかと思います。
  81. 岩瀬良三

    ○岩瀬良三君 後でちょっと資料をいただきたいと思うんですけれども、そういう一つのわかりやすい指標国民に示してこの法案理解を得ることが必要なんじゃないか。貯蓄投資差額ということでいくとちょっと見当がつかないわけでございます。どうかひとつそういうようなPRもしていただければというふうに思うわけでございます。  時間がなくなりまして、自治大臣をお呼びしてその所信をお聞きしたがったんですけれども、また私も地行の委員でございますので、きょうはやめまして、これでもって終わりたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  82. 高木正明

    ○理事(高木正明君) 午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時二分休憩      —————・—————    午後一時三十五分開会
  83. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会を再開いたします。休憩前に引き続き、財政構造改革推進に関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  84. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 自民党の保坂三蔵でございます。  順次お尋ねをしていきたいと存じます。  日銀の松下総裁に御質問をさせていただきます。  総裁、スイスから帰国早々連日の委員会の御出席、まことに御苦労さまでございます。松下日銀総裁はスイスのBIS、国際決済銀行の国際会議出席をいたしましたが、早速会議の成果を御披露いただきたいと思います。  今回の会議では、当然アジアの金融安定につきまして論議がなされたものと思います。特に、先般のインドネシア・ルピアの相場下落に関しましては、対アジア向けとして初めて日銀が協調介入に乗り出したという一幕もありましたが、今後のアジアの市場動向についてどのような見通しを持っておいでになりますか。また、我が国の今後の対応ぶりについても伺いたいと思います。その際、できましたらば、各国が最近の日本の経済の現状をどう見ているか、何かお話が聞ければ幸いでございます。
  85. 松下康雄

    参考人松下康雄君) まず、東南アジア地域の通貨・金融市場の動向でございまRけれども、七月にタイを初めとして周辺諸国が為替の変動相場制へと移行をいたしました。その後、各国の通貨は下落を続けまして、現在は六月末に比べますと、対米ドルで二、三割方は切り下がった水準になっております。この間、株価につきましても多くの国で大幅な下落を見たところでございます。  このような東南アジア地域におきます通貨・金融市場の不安定化ということの背景といたしましては、各国の経常収支が悪化しておりますことや、また金融部門に脆弱な要素があるというようなことなどが指摘されているところでございまして、こういった状況に対しまして、これらの国におきましては、これまでIMFの指導や支援を受けることなども含めまして経常赤字削減をするための総需要抑制策とか、あるいは金融部門のリストラ対策というようないろいろの経済調整策を実行に移してまいっております。  私どもとしましては、そういった各国の調整策が今後着実に成果を上げまして、各国の通貨・金融情勢が早期に落ちつきを取り戻すことを強く期待しているところでございまして、先般のバーゼルにおきます国際決済銀行の会議におきましても、私といたしましては、各国の総裁の御質問に答えて、以上のような状況についてのお話をいたしたわけでございます。  そこで次に、そういったアジアの通貨・金融不安というものがそれでは日本経済にどんなふうな影響を持つだろうかという点でございます。  この点につきましては、実際、大きな変動が始まりましてからまだ日が浅うございますから、その結果が十分に見通せるところまでは立ち至っておりませんけれども、現在の段階で私どもの考え方を申し上げますと、まず我が国のアジアに対する輸出でございますが、これはタイ向けの輸出が現在、自動車関連を中心にしてかなり大幅に減少をいたしておりますほか、その他の諸国でも現地工場が我が国からの部品調達等を先送りするというような例も見られかかっているところであります。  ただ、日本全体といたしましては、米国、欧州、中国というようなその他の地域の経済は引き続き好調でございますし、こういう点を踏まえて考えますというと、我が国の輸出全体の環境といたしましては、総じて今なお引き続いて良好な状態が維持されていると見てよろしいように考えております。  また、我が国の直接投資でございますけれども、やはりこういう事態になりましても、現在、我が国の企業は、アジア経済が中長期的には成長力を失わないという点にかなり高い信頼を置いているところでございまして、そういう点からは、これまでのところアジアに対する投資計画を大きく見直すというような動きはあらわれていないように見られます。  こういったいろいろの点から判断をいたしまして、アジア経済の変調が我が国の輸出面やあるいは直接投資というものに及ぼしていく影響は、とりあえずのところは限定的であると見ているところでございます。  ただ、我が国とアジアとの間の密接な貿易・資本関係ということを踏まえますというと、仮に東南アジア経済の成長の鈍化が長期化していくというようなことがありますというと、そのときには我が国経済にもさまざまな面から影響が及ぶ可能性もございます。  私どもとしましては、そういった観点からも今後の動向につきましてなお十分注意をしてまいりたいと思っております。
  86. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 ありがとうございます。  続いて、ドメスチックな面でお尋ねいたしますが、景気の見通しであります。  十一月五日、内外情勢調査会におきまして松下総裁は御講演をなさっております。その中で、我が国経済は消費税率引き上げなどの影響から引き続き四月以降も景気減速局面にありますと講演されております。一方、政府は、当委員会におきます尾身企画庁長官の発言など、足踏み状態にあると説明されております。このように、松下総裁と尾身長官の説明には微妙な違いを感じるのであります。減速と足踏みであります。  景気回復の面では、減速と言いますと、文字どおり読んでいきますとスピードは落ちているが回復は続いている、動いているというふうに読めますが、足踏みと言うと回復がストップしたというふうに読めます。そうだといたしますと、日銀総裁の方が景気に楽観的な見方をしているというふうに読めるわけでありますが、この点の違いについての御見解を伺いたいと思います。  また、民間の経済アナリストなどは、景気は後退局面に入った、いわゆるリセッションに入った可能性が強いなどと深刻な判断を示す傾向がふえておりますが、総裁は今の時点でどのように認識されているか、お聞かせいただきたいと思います。
  87. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私の方から経済の現状に対します考え方を御説明いたします際に、先般の講演で申し上げましたような言い方をよくいたしているところでございますけれども、その全体の意味づけと申しますのは、最終需要面の中での個人消費とか住宅投資とか、個人の消費その他の支出にかかわる部分につきまして、どうも動きが低調であると考えざるを得ない状態でございます。  ただ一方、企業の生産というような側の状況を見ますというと、一部の業種では在庫調整の動きもございまして、引き続いて生産は横ばい圏内でございますが、そういったことを背景にして、このところ企業の景況感も慎重なものになっている面は確かにございます。ただしかし、一方で純輸出でありますとか設備投資という面は増加傾向を続けておりまして、これがこの経済活動を下支えしている面がございます。  こういった設備投資の増加ということの背景には、企業の売り上げや収益が全体としてはなお増収、増益の傾向を維持しているというようなことも挙げられるわけでございます。その効果が今の消費者、家計という方に対しましては、雇用とかあるいは家計の所得の面で景気の減速の影響もありまして増加のテンポは鈍化をしておりますけれども、全体として見れば、引き続いてごく緩やかな改善の基調にあると言えるかと思います。  こういったことでございまして、消費税率の引き上げその他の影響がいろいろの点にあらわれておりまして、殊に家計の面にそれが強く見られるように思いますが、全体としての経済の基本である景気回復の基盤そのものという点では、必ずしもそれはまだ損なわれていないと考えております。  したがいまして、今後、企業面からの好ましい影響が続きまして個人消費もそれによって回復に向かっていく、あるいは企業の側の在庫調整圧力が下がってまいりますのにつれて景気全体もいずれ再び緩やかな回復テンポを取り戻すと見てよいのではなかろうか。  ただ、この点につきましては、最初に申しましたような消費の回復するテンポでありますとかあるいは在庫調整の進みぐあいでありますとか、また企業や家計の将来に対するいろんな自信の持ち方というようなものの動きを含めて、注意深く点検をしていく必要があると思っております。  こういう考え方を私は総括いたしまして先般のような表現をさせていただいたわけでございますので、基本のところは政府の考えておられることとおおむねにおいて一致しているのではないかと思っております。
  88. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 決して揚げ足をとったわけではありませんが、一番心配しているところですからお尋ねいたしました。  この間、小さなローカル紙を読んでおりましたらこんな狂歌がありました。「消費税医療費上がって減税なし 金利低くて民はふらふら」。これは、私が与党で質問してはおかしいんですけれども、率直な庶民の心じゃないかと思うんですね。  低金利政策について総裁にお尋ねしたいと思いますが、このような景気の動向に対しまして悲観的な見方がある中で、我が国の三年目に突入した超低金利政策に対しまして疑問視する声もここのところ出てきております。  最近の景気の推移を見ますと、金利を引き上げにくい側面もあるんだと私は思いますが、先日の講演会の中でも総裁は、低金利は相応の設備投資の増加を引き出してきたと考えられる、またあるいは企業の前向きの経済活動をサポートする効果をしっかりと発揮しているなどと述べまして、低金利の必要性を述べております。  しかし、低金利は、申し上げるまでもなく多くのメリットをもたらす反面、年金など利息収入に依存する世帯へのしわ寄せがあること、結果として家庭の金融資産がふえずに消費に水を差す懸念が生じること、また経済界の構造調整の先細りや対外不均衡の拡大など、いわば弊害が生じることは当然であります。  新聞では、昨年の五月に幻の利上げチャンスがあったと伝えておりますが、今回、松下総裁が超低金利の維持を強調された事情について改めて御説明をいただきたいと思います。
  89. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 二年前に私どもが公定歩合〇・五%といいます非常に思い切った金融緩和をいたしましたときのねらいを簡単に申し上げますと、一つは当時の円高等の影響によります日本経済の苦境に対しまして、経済がデフレの悪循環に落ち込むというようなことを回避いたしたいということ、また、これを通じまして企業や家計の自信を回復させ、そして経済を自律的な回復軌道にしっかり戻していきたいということでございました。  私どもは、その当時から今日までの間に、こういう金融緩和が企業の設備投資でありますとか、あるいは一般の住宅購入という際の資金調達のコストを引き下げることによりまして、また企業収益を下支えするというような経路を通じまして経済活動の回復に役立ってきたところと考えております。  ただ、我が国の経済は、現状を見ますと、やはりまだ企業のバランスシートの傷んだものの調整でありますとか、また産業構造の再編の圧力といったような重荷を負っておりまして、そういう点でまだ自律的な回復軌道へ確かに移行したという点までは確認できない状況が続いていると考えております。  また、最近の情勢を見ましても、先ほど申しましたように、全体としましては回復の基盤は損なわれていないにいたしましても、やはり四月以降の減速局面が続いておりますので企業も慎重でございます。  私といたしましては、こういった経済情勢におきまして、まず経済全体のために一番効果があるような、そういう金融政策を考えるにはどうすべきかという点で考えますと、やはり経済の足取りを確かなものにしてまいりますためには、当面、現在の政策基本の姿勢というものを維持しながら、経済全体の活動の回復を図っていくことが大事だと思っております。  ただ、そういった面での低金利は、家計の面におきましては、家計は金融の資産の方が金融の負債の倍ぐらいございますから、金利が下がれば差し引きでネットの利息収入が減少いたすことは事実でございますので、やはり家計の中にはこの利子収入の減少で非常に苦しいお立場の方々もいらっしゃるということは承知をしているところでございます。ただ、やはり全体の立場で経済がしっかりいたしますと、それがひいて雇用を改善させる、あるいは雇用者の所得をふやすというような経済全体にいい影響を持ちまして、それがひいて家計の改善、経済状態の改善につながっていくと思いますので、この点はぜひ御理解をいただきたいと思っております。
  90. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 ありがとうございました。  公定歩合の点もこのポイントが重要でございますから、決して遅きに失するようなことをなさらないように御判断いただきたいと思っております。  適当なところで総裁、御退出していただいて結構でございます。  次に、中小企業の金融支援策について政府にお尋ねしたいと思います。  ただいまも日銀総裁から御説明がありましたが、景気は回復どうこうとか足踏みと言われて久しく、バブル経済の破綻後既に六年が経過いたしました。この間、多くの中小企業は、親会社の海外移転、国内国際双方を通じての大競争時代の激化、消費の伸び悩み、資産価格の低落による担保力の低下などなどの厳しい現実に直面してまいりました。その結果、今に至るも倒産件数はなお高い水準で推移しておりまして、景気への不安感は募っております。  中小企業がこうした苦境に対処していくためには、まずは資金繰りが生命線ですが、この資金繰りの苦しさを訴える者は依然として多数あります。  この七日の日本経済新聞の調査を見てみますと、当期の資金繰りを見てみると、全体で四八・八%の企業が苦しいと回答している。前期と比べて九・七ポイントの大幅増加となっております。特に小売業、建設業、不動産業では、苦しい企業の割合は過半数を超えて、小売業に至っては六割に達しております。また、長期的な推移を改めて見てみますと、前期までは資金繰りを苦しいとする企業の割合が緩やかながらも減少傾向にあった。今期は急増をいたしまして、変調の兆しがはっきりと見えております。特に小売業では、今期の五九・二%の苦しいと訴えている人は九五年の第二・四半期の五四・九%をはるかに上回り、九〇年代の最悪の数字になっていると警告をしております。  中小企業は我が国経済の活力の源泉でありまして、中小企業への資金供給が行き詰まっては絶対にならないと私は思っております。我が党は、去る十月二十一日の緊急国民経済対策で中小企業向けの特別融資枠の設定を決めました。  そこで、何点か改めて通産大臣にお尋ねをしたいと思います。  まず第一点でありますが、金融機関による貸し渋りの実態はどうなっているんでしょうか、お聞きしたいと思います。特に地価の低落や取引先の倒産などによりまして担保力が落ちている中小企業に対して、金融機関が融資をとめたり減らしている実態をたびたび聞くようになりました。来年から金融機関に導入される早期是正措置が一層の選別融資をはびこらせているとも言われております。今後とも、担保力の低下を理由に従来の信用供与高を減らすことのないように、全金融機関へ指導監督を徹底すべきと思いますが、いかがでありましょうか。
  91. 堀内光雄

    国務大臣(堀内光雄君) 保坂先生の御質疑にお答えを申し上げます。  先生おっしゃるとおり、中小企業が経済の活力の源泉でなければならないわけでありまして、その中小企業が非常に現在、特に非生産業の中小企業は苦しい立場に追い込まれていることは確かでございます。こういうところに対して最善を尽くして、万全を尽くしてまいらなければならないと考えております。したがいまして、金融機関の貸し渋りというようなことがあって、それのために中小企業が苦しいところに追い込まれるということがありますと、年末を迎えて大変重大なことになると考えて、今対応に万全を期しているところでございます。  ただいま申し上げましたような中小企業の厳しい状況を踏まえまして、中小企業のための金融対策については具体的な措置の検討を強く指示いたしております。  例えば、年末の金融繁忙期を迎えることに当たりまして、政府系金融機関及び信用保証協会に特別の相談窓口を開設いたしまして、貸し出し、保証手続の迅速化と一定の条件下での返済猶予、あるいは既に貸し付けている既往債務に対する適切な対応を図ることにいたしております。また、金融機関との取引に著しい変化が生じて資金繰りに支障を来すおそれのある中小企業者に対しましては、別枠の融資制度の速やかな創設を行うことにいたしております。  別枠の融資制度につきましては、具体的に申し上げますと、中小企業金融公庫におきましては現在一般貸付枠は四億八千万円でございます。これの別枠として一億五千万円上乗せをすることにいたして、また国民金融公庫につきましては現在一般貸付枠が四千八百万円でございますが、これの別枠として三千万円を上乗せするという措置をとるべく現在大蔵省とも協議を進めておりまして、少なくとも十二月の早々にはこういう対策が打ち出せるということを申し上げておくところでございます。  政府系金融機関においてこれまでも、例えば担保の面のお話もございましたけれども、担保の範囲に動産、ソフトウエアを含めるなどという担保の範囲のとり方だとか評価を弾力的に行って、中小企業の実情に十分配慮をした運用を行ってきているところではありますが、当面の景気動向を踏まえまして、さらに緊急的措置として、これまでの対応に加えましてさらなる措置の具体的検討を指示しているところでございます。  例えば、今まで行っているほかに、機械、船舶等の動産、入居保証金、有価証券、ソフトウエア等幅広いものも対象にしようということで考えておりますし、民間における担保の掛け目が六、七割を乗じているところを、中小企業金融公庫におきましてはおおむね時価において評価をするというようなことも考えております。  当省といたしましても、中小企業金融公庫、国民金融公庫等の政府系金融機関に所要の資金は十分確保されておりますので、これらの機関に対しまして中小企業の貸し付け要請に十分の対応を行えるよう指導いたしますとともに、今後とも、いやしくとも政府系金融機関において貸し渋りがないよう十分注視をしてまいりたいと思っております。あわせて、民間金融機関の貸し渋り懸念への対応もしっかりと講じてまいる覚悟でございます。  また、先ほどの御質疑の中に保証業務のお話もございました。  保証業務については……
  92. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 いや、具体的にはその次に。  御丁寧にありがとうございます。  その貸し渋りの防止のためには従前の融資枠を特別に設けるだけでは問題は解決しない、これは明らかでありますが、民間金融機関の保有資金自体が不足しているとは思えないからですね。東京都を例にとりますと、民間金融機関による中小企業向けの融資は今や資金全体の六〇%を超えるに至っています。つまり問題は、長きにわたる不況の中で信用力や担保力が不足してしまった中小企業に対しまして、民間金融機関が企業として貸し出しにくい中小企業に対するいわゆる資金供給の円滑化が問題になるわけです。  したがって政府は、中小企業に対する信用補完を任務とする中小企業信用保険の拡充や、各都道府県の信用保証協会への保証原資の補助を行いまして、民間金融機関が貸せない場合でもこうした公の機関の補完機能を十分に発揮させるような、そういう手だてが必要ではないかと思うのでございますけれども、通産大臣の御見解を承りたいと思います。
  93. 堀内光雄

    国務大臣(堀内光雄君) お答えを申し上げます。  先ほども申し上げましたような資金繰りがますます厳しい中小企業の状態を踏まえまして、中小企業のための金融対策、保証面を含めて万全を期してまいりたいと思っております。  特に、保証業務につきましては、信用保証協会に特別な相談窓口をこれまた設置いたしまして、保証手続の迅速化などに適切に対応することが第一でございます。同時に、担保不足等により資金繰りが悪化しているところに、担保等についても十分な対応をしていくことにいたしております。さらに、中小企業の年末の状態に対しまして、金融機関及び信用保証協会の一定の条件のもとでの返済猶予など円滑化を図ってまいる覚悟でございます。  信用保証協会の、中小企業を支援いたすべく、例えば中小企業信用保険法の特例保険に関しまして、関係各省とも今協議をいたしながら、先ほど先生のお話にございましたような小売関係あるいは建設関係というようなものに大変銀行の貸し渋りがございますので、こういうものに対して今まではこういう保証の対象になっておりませんでした。それを小売業並びに建設業を対象に含めまして、こういう低迷している業種に対して対象拡大とともに保険限度額を倍額にしようということに考えておりまして、保証内容を十分強化するように努力をしてまいりたいと思っているところでございます。
  94. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 今、朗報もいただきました。大変力強く感じました。  また、これは要望でございますけれども、金融の構造改革の中には信用組合も視野に含まれています。信用組合は町の中小企業となじみの深いいわば町の金融機関でありまして、しかも激しい競争から、将来不幸にして信用組合の統廃合などもあります。そんなときに、信用保証協会が信用組合の顧客である中小企業への保証を機動的に行うことができるわけです。もって町の中小企業への資金供給が円滑に滞りなく進む、こんなことができるわけでありまして、年末も近づいてまいりました。重ねて、政府におかれましては信用保険や信用保証協会に対する保証原資の補助などを惜しむべきじゃないと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。  次に、財政構造改革地方財政についてお尋ねをしたいと思います。  我が国の長期債務、これは地方、中央政府両方合わせてでございますけれども、GDP対比の数字を見てみますと、GDPに占める長期債務日本の場合は御案内のとおり九〇%を超えております。アメリカは六三・八、英国が六〇・八、ドイツが六五・〇、フランスが六四・三であります。イタリアだけは一二四と大変すごい数字でございますが、このように我が国の財政は主要先進国中最悪な危機的状態の中にあります。  このような状況の中から今回提出された法案は、財政構造改革となっておりますが、それでは従来の財政危機対策とどのように異なるのか。何回も御答弁いただいておりますが、このあたりをもう一回、この法律の作成が一体どのような効果を期待できるのかを含めて御説明いただきたいと思います。
  95. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 先ほども答弁しましたが、特にその違いを明確にしろ、こういうことであります。  九年度予算編成に当たりまして、至上命題特例公債の減額でございました。財政を圧迫する国債費の比率が累増、累加していくという状態の中で、赤字公債発行を減に立てることが極めて重要ということで、二十一兆円ありましたうち四・三兆の減を立てたところでございます。当然、九年度予算編成におきましても、シーリングでありましたけれども歳出カットに向けて全力を尽くした結果、対前年比一・五増にとどまるということであります。  予算編成をやった結果、内閣、首相を中心にその中で出てまいりましたことは、もう一度総点検をして財政構造改革を取り進める必要があるというので、一月以来六カ月弱にわたりまして熱心な議論が行われた結果として、やはり財政再建、構造改革の前年ということではなく、集中三カ年を設け、プラス三年を入れた形の中で本格的に取り組むべきではないのか。単年度年度でやることによって、その時々の諸要素で大きくずれるということもなしとしないわけでございますから、構造改革を原点として、その中で有効適切な施策をつくり上げる。旧来の制度を見直す中で取り組んでいくことであり、六年間を集中三カ年プラス三年と、三カ年計画が二つになった形を明確にすることで取り組むことといたしたというところが第一点の大きな違いであります。
  96. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 ところで、こんなエピソードを拝見しました。ことしの一月二十一日、首相官邸の大食堂で開かれた財政構造改革会議の第一日の会合におきまして中曽根元首相が、財政再建にはいろいろと社会的コスト、政治的コストがあり、光と影の面がある、影の部分としては株価が下がるとかいろいろな影響もある、しかし問題はこれを断行する内閣の強い意思だ、退かないという姿勢で団結すればいずれ株価も上がり、景気もよくなる、途中で断念すればみんなだめになる、こう言っております。これに対しまして竹下元首相からも賛意があった後に、ケインジアンとして名高い宮澤元首相も、正月にフィナンシャル・タイムズの社説で、日本財政再建よりますは経済の体質を改善することが先決と言っているが私の意識とは違う、明らかにケインズ政策からの決別を促したと言われております。橋本首相が戻ることのできないルビコン川を渡るに際しまして、これほど力強い理解はなかったのではないかと思っております。  そこで、上杉大臣にお尋ねいたしますが、今回の財政構造改革推進法案の提出の理由といたしまして、国及び地方公共団体財政が危機的状態にあることを踏んまえていることを掲げておりますが、上杉大臣におかれましては、地方公共団体財政の危機的な状況をどう認識されているのか、具体的に御説明をいただきたいと思います。
  97. 上杉光弘

    国務大臣(上杉光弘君) 地方財政平成年度以降毎年度多額の赤字を出してきたわけです。財源不足を来してまいりました。本年度は五兆九千億に上るものでございますが、このような結果、借入金の残高は本年度末では百四十七兆円に達するというものでございます。流れから見ると平成年度末の二倍強になるなど極めて厳しい状況にございます。  このような地方財政の健全化を図ることが緊急の課題であることは申すまでもないことでございますが、国と同じように地方も次世代に残してはならない、財政構造改革は私ども世代でやり遂げなければならない極めて重要な課題であると認識しております。  ただ、財政構造的に申し上げますと、地方財政は公共投資、社会保障及び教育の三分野で一般歳出の約七割を占めておるわけでございます。これらの分野の歳出は国の施策や予算と密接に関連しておりますために、地方の自主的な努力のみでは歳出削減を行うことは極めて難しい状況にあることはもう御承知のとおりでございます。地方財政はその上に三千三百の地方公共団体財政の総体であり、その多くは財政力の弱い市町村でありますために、個別の財政事情に十分目配り、気配りをして対応していかなければならないと考えております。
  98. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 ありがとうございます。  先ほども出ましたが、されど財政構造改革、再建をしていかなくちゃいけない、こういうことが地方政府にも求められているわけでございます。  そこで、現在のGDPに占める長期債務の五・四%を国と地方の内訳で見ますと三・四%と二・二%、こういうふうになっておりますが、これをこのまま六年後の平成十五年までにスライスした数字で持ってまいりますと一・九対一・一、こういう数字になります。  これ自体が完全に金科玉条として覆いかぶさってまいりますと、国の方は一・九%をクリアしましたよ、残りは一・一%、地方政府どうぞと、こう言われましても、ただいま上杉大臣から御答弁がありましたとおり、三千三百それぞれの顔を持って、しかも自分の努力を超える国からの影響を受けたり、社会の影響を受けながら翻弄されている部分も大きいわけでございまして、この一・一%というのを国、地方の義務的なシェアといったものに見られてしまいますと、地方政府はもう破産状態になってしまう、あるいはまた立ち上がることができない、こういうふうに思うわけでありますけれども、このあたりの御見解ももう一回念のために承っておきたいと思います。  大蔵大臣、お願いいたします。
  99. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいま明示されました一・九、一・一、これは相互に補完し合いながら、国の財政地方財政は車の両輪でありますから、いかなければなりません。同時に、この財革法に盛られております理念の基本的な部分は、国及び地方の持っております債務残高、それと財政支出の問題について三%という明示がありますが、こちらのストック部分については九〇を超えない歯どめを、特例公債発行を六カ年かけてゼロにすることによってベースが定まるであろう、こういうことであります。  歳出それぞれは、地方自治体は三千三百が独自の自治体でありますから編成をされます。編成をされる中で、健全な自治体もある、赤字の自治体が多いわけでございますが、どうしてまいりますかは首長初め議会の皆様方の基本的な権限ということになるわけでございますから、五原則ではございませんが、全体の制度見直しながら、財政の効率的な運用、また自主財源がどうあるべきか等々の地方自治の原点、原則を踏まえて御努力をいただく、こういうことになるんだろうと思います。国のベースと一体的に取り進められていくというのが基本ベースじゃないでしょうか。
  100. 上杉光弘

    国務大臣(上杉光弘君) お答えをいたします。  国、地方を通じて財政赤字を対GDP比三%、地方の場合丁一でございます。財政構造改革は、先ほど申し上げましたように、ぜひとも私ども世代でこれはやり遂げなければならない、次の世代に残してはならない重要課題だということをたびたび申し上げておりますが、このため、国、地方を通じる財政赤字三%以下とする目標達成に向けましては、これはあらん限りの知恵と努力をして取り組んでまいらなければならない問題であります。そのために、国、地方双方の歳出抑制につながる施策の見直し、それから地方単独施策の抑制等によりましてこれに取り組んでまいりたい。  今後あらゆる機会をとらえまして、地方団体に対しましても、財政の現状と財政構造改革の趣旨を徹底いたしますとともに、財政の健全化に向けまして自主的にかつ最大限の努力がなされますように要請をしてまいりたいと思います。
  101. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 ありがとうございます。  全くそのとおりでありまして、地方単独事業につきましては、真に必要、重要な事務事業に重点化を図る、こう求められておりますが、地域住民の福祉の増進こそが地方公共団体の責務なんです。したがって、必要な事業は積極的に推進することもまた必要、こういうふうになってくるわけですが、現実を見ますと、個別の地方団体の財政硬直化の状況は非常に厳しいところにありまして、警戒ライン、いわゆる公債費負担比率が一五%以上の団体がもう既に半分以上になっているわけですね。  そういうことを考えますと、これから見てみましても、既に地方公共団体は締めた予算平成年度予算で組もうということを答えておりまして、調査によりましても、既に平成年度予算では六五%の団体が削減する、こういうふうに言っているわけであります。  今まで公共事業というとどんどん国から地方におろしましたけれども、国が五十兆円であれば、そのうちの地方単独事業は二十兆円でありますから、全体の公共事業の四割は地方がやっている。こういうような状況の中で、言ってみれば、景気回復でお金が上から流れてきた、それにこたえた、その結果、地方財政赤字がふえてしまった。施設としてインフラやなんかが残っても、結果的に財政の悪化の原因は国にもあるということも私たちは考えていかなくてはならない、このように思いますが、自治大臣、いかがでしょうか。
  102. 上杉光弘

    国務大臣(上杉光弘君) お答えいたします。  御指摘のとおりでございまして、公共事業費の削減により、地方歳出抑制及び地方負担縮減が図られ、地方財政の健全化に資するものと考えております。  これは御案内のとおり、例えば補助事業を地方が受け入れます。国の方で計画していきますと、地方財政では、地方負担分は、国の財政運営国債に依存しておる限りどうしても借金にその負担分は頼らなければならない、財源措置をしなければならない。それがどんどんふえてこのような状況の苦しさになったというのは御指摘のとおりでございまして、このような点も十分踏まえた上で、各種の長期計画の延長を伴うようなことは避けられませんけれども予算の重点化や効率的な執行というものは、当然これは厳しくしていく必要があろう、こういうふうに考えております。  また一方、必要な基盤整備や生活関連施設の整備に支障が生じないようにすることも大切な案件でございまして、このようなものに十分留意した上で、各省庁とも適切な対応がなされますように十分話し合いをしてまいりたいと考えております。
  103. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 ありがとうございます。  されど、今回の財政構造改革の一環として、財政集中改革期間における公共事業の前年対比削減あるいは据え置きが打ち出されているわけでありますが、地域によってば、現実的に公共投資自体が雇用や所得を提供する、そういう役割を持っているということも実態なんです。  こうなってまいりますと、この赤字削減のために、縮減のために、当面の課題として短期的にこれらをやるのではなくて、やはり本法律案の三十九条に、「財政構造改革推進に関する地方公共団体の責務」が規定されており、そこでは、「地方公共団体は、」「財政構造改革に努め、その財政の自主的かつ自立的な健全化を図るもの」とされており、地方のひとり立ちを含めて健全化が求められております。そして、そのためには「行政上及び財政上の措置」が四十条で規定されている。こういうふうになっているわけでございます。  自主的、自立的な財政運営というのが今日ほど地方政府に求められたことはないと思うわけでございます。しかし一方では、公共事業の配分などを見ますと、結局、地方対都市という問題、あるいは東京問題や過疎問題というような問題に見られますように、都市部の税収の地方への移転に疑問を持ったり、対立する構造が地方団体間で出てきてしまうことを私は非常に懸念しているわけでございます。  そこで、時間もございませんので、まだいろいろ地方財政と今度の財政構造改革についてお尋ねしたがったのでございますが、一部署愛いたしますことを関係大臣におわびいたしますが、景気対策公共事業予算の配分について一点だけお尋ねしておきます。  この予算配分でございますけれども、本来景気対策財政構造の改革というのは二律背反に近いぐらいな難しさがあるように思えてなりません。しかし、それでも両方やるというふうになりますと、結局ないものは知恵を使えということになって、地方に厚く、都市圏に薄い、こういう重点的な配分が必要である。各大臣から実はお答えがあったわけでございますが、しかし私どもから言わせますと、本来公共投資は、それを行うことによって得ることのできる便益もしくは効果と費用との相対比の中から優先順位をつけるべきでありますが、残念ながら費用対効果の評価はなかなか難しいことから、ないがしろにされてきたのが実態だと思うわけであります。今のような時期であればこそ公共投資のガイドラインになってもらいたいなと思いつつ、東京の例を一つお話ししたいと思います。  それは、東京都で最近開通した環状八号線、杉並区の井荻の立体工事についてであります。  東京都の道路は、御存じのとおり、昔の旧街道以来放射状に発展してまいりましたが、近年、モータリゼーションの発展から、急速、道路網の整備が進んでまいりました。特に、都内に流入する自動車の分散を図るために環状線の整備、七号線、八号線と重点整備をやってまいりました。七号線は七十年かかった。八号線は昭和二十一年の都市計画決定で全線四十四キロ着工しましたが、大変大事業で、オリンピックの関連道路に指定されたりしてやってきましたが、現実には、今ではまだ七四%しか完成しておりません。  この井荻の立体というのは、四面道から谷原までの四・六キロの部分でございますが、実に重要な環八のキーポイントになっております。着工以来八年を費やしまして、やっと今月で開通をいたしました。建設の費用は何と六百四十億円かかりました。完成後は、今まで通過時間に五十分かかったのが何とわずか十一分で通過できまして、一日の通過量は倍になりまして、五万五千台がその便益を享受しております。利用者は、これは都民でないんですね。都心の通過車両であり、また関越自動車道関連の車両が非常に多いんです。にもかかわらず、時間便益及び走行便益を計算いたしますと年間で約二百億円の利益を受けたというふうに言われておりまして、瓦大臣からも、今度は圏央道しっかりやれよ、そういうことによってお金を生かせと、こう言われているところでございます。  なお、東京都内の道路を計算してみますと、交通渋滞による損失は少なく見積もっても年間一兆六千億円も損失を受けているという計算もあります。例えばノーマルな走行速度で時速三十キロと言っていますが、これを仮に全車両が確保したといたしますと、できないんですけれども、得べかりし利益は四兆九千億円、これを我々はみすみすCO2を出しながら、NOxを出しながら損をしている。  そこで、都議会では、道路建設の特定財源であるガソリン税の都内シェアは七%もある、しかし四・四%しか投入してくれない、四〇%はほかへ行っているんじゃないかと、こういう論議も続いております。また、都民の租税負担率は全国で第一位、しかし還元率は全国最低の三〇%。この例のように、効率化の上からも都市部への投資は私はおろそかにできないと思っているんですが、自治大臣、建設大臣、御見解を承りたいと思います。
  104. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 保坂委員はすべて御精通でございますので、私からお答えすることは限られるわけでございますが、昭和四十二年、いわゆる三環状九放射、東京の道路体系整備が大変おくれておることを懸念されての御質問でございますし、それらを受けて全力を挙げて御支援することができればと思っておるわけであります。  雇用の問題、また社会資本整備一東京が日本の顔でありますので、これが立派に整備されるための作業がこれから進むと思いますので、最善を尽くして努力をしてまいりたいと思っております。
  105. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 東京だけではなくて、大都市圏という例なんです。  もう時間がありませんが、もう一つの例を改めて聞いていただきたいと思います。  限られた公共予算の配分ですから、大都市圏は冷や飯をここのところ食うよ、地方に重点配分して大都市は二二%のカットだなど、こう言われているんですが、具体的に東京都の区部における街路整備事業で得ました生産誘発効果をちょっと例にとって御説明したいと思います。  平成年度の建設白書に、生産誘発効果というのが実例で出ております。国道十七号線、これは北区の滝野川というところの例でございますけれども、確かに地方に比べて安くない補償で用地を取得しました。しかし、道路を拡幅しまして、沿線の住宅はすべて改築されて、大変町がよくなりました。完成後の結果は、事業前の建物の平均二・四階から四・七階と二倍になりまして、個々の事業費は、用地買収費を一〇〇といたしますと、これに自己建設費や借入金を入れますと二〇三の生産誘発効果を発生しております。  都市への投資効果が地方より数段大きくなった例でありまして、都市への集中投資こそ実は最も経済効果が大きい、こう私は言いたいわけなんでありますが、残念ながら、財政構造七%カット縮減策は、地方経済は厳しいので傾斜配分をするよ、都市部は二二%だと、こう言われますけれども、本当にこれでいいんだろうかということを改めてお訴えしておきたいと思います。これは結構でございます。  それから、首都機能と五全総について、この際ちょっと聞いておきたいと思います。  今回の財政構造改革は、公共事業削減を初め、ODAから防衛費までいわば聖域なしで縮減を図る原則であります。あらゆる長期計画について大幅な縮減を行い、歳出を伴う新たな長期計画は作成しないとなっております。また、財政制度審議会の答申でわざわざこの点にも触れておきまして、十分な論議を行うべしとしておりますが、このことから、国土庁長官、私はこの首都機能移転というのはしばらく凍結状態になると思っておりましたところ、漏れ聞くところによりますと、来年の早々には移転先候補地の絞り込みを終えて発表できるところまで調査が進んだそうであります。これは本当でありましょうか。  また、最後の全総と言われる第五次全国総合開発計画がいよいよ今年度中に公式発表になるという計画部会の答申を拝見いたしました。実は、この中で、首都機能移転は具体化に向けて積極的に検討を進めよ、開かれた手続のもとで国民の合意を図れと踏み込んでおりまして、さらに東京の機能から政治を明瞭に削除してしまうという徹底ぶりであります。  財政縮減整備新幹線計画にまで及ぶと言われている財政構造のさなかに、超ビッグプロジェクトの首都機能移転は一体聖域に入る事業になっているんでしょうか。このあたりを御答弁いただきたいと思います。
  106. 亀井久興

    国務大臣(亀井久興君) 首都機能移転につきましては、今さら申し上げるまでもございませんけれども平成二年の国会決議によりましてスタートいたしまして、国会主導で七年にわたって検討されてきたことでございます。  東京一極集中の是正ということもございますし、それからさらに災害対応力の強化という重大な視点もございまして、私どもといたしましても大変重要な課題である、そのように受けとめておるところでございます。  こういう経緯もあるわけでございますが、今、委員が御指摘になりましたように、現在の財政状況というのは大変なことになっておるわけでございまして、御指摘のございました財政構造改革期間、二〇〇三年度までは新しい都市の建設には着手をしない、財政資金は投入しない、そういうことにいたしております。ただ、移転先候補地の選定作業、こうしたことにつきましては引き続き検討を進めていこうということで進めておるところでございまして、国会等移転審議会におきましても、こうした観点から今移転先候補地の選定作業等については進めているところでございますが、今御指摘になりましたように、一切の聖域なしに財政構造改革に取り組むという、そのことは十分に踏まえながらやっておるところでございます。  また、新全総のことに御指摘がございましたけれども、新全総につきましてもこの首都機能移転につきましては、今、委員がおっしゃいましたように、やはりこれだけの大プロジェクトでございますから、国民の合意の形成ということがなくてはとてもできることではございませんので、そのことについて十分に配慮をしながら進めてまいりたい、このように考えております。
  107. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 また、このことにつきましては特別委員会でお尋ねをしていきたいと思います。  最後に、ささやかな地方分権と言っては恐縮でございますが、東京都と二十三区の問題について、上杉自治大臣、ぜひ承っておきたいと思います。  ことしは地方自治法施行五十年という記念すべき年に当たっております。ところで、この国会が位置しております千代田区を初め、東京都内二十三区がかねてから基礎的地方公共団体に位置づけてほしいと、八百万区民の願いが一本化いたしまして政府に働きかけてきたところであります。御承知のとおり、特別区は七十七万人の世田谷区を初めといたしまして、本来、基礎的な自治体になるには当然のような規模の二十三区で形成され、八百万人の区民が生活を展開し、毎日三百万人の人々が働きに、あるいは勉学にと都外から入ってきており、およそ一千百万人のための区政の運営が行われております。しかし、東京市以来の歴史から複雑な行政上の仕組みとなっておりまして、自立を望みましても二十三区と東京都の合意が必要でありました。  幸い、関係者の願いと努力が実りまして、平成二年、七年前でありますが、二十二次地方制度調査会は八項目の事務事業の移管とともに二十三区をひとり立ちさせると、条件つきながら答申を出してくれました。自来、平成八年の改正、平成十二年の改正のチャンスがめぐってまいりましたが、調査会がつけた条件、すなわち関係者の同意の中に、労働組合との協議が調わないために法律改正の準備が極めておくれております。  確かに、今回の都区制度の目玉は清掃事業の移管であります。そこで、清掃局職員九千名の問題が根底にありまして、東京都と労働組合に話し合いを一任してきたというのが今日までの経緯であります。しかし、平成八年の見直しも不成立、しかも平成十二年の見直しのためにはことしがぎりぎりであります。労働組合は清掃事業の区移管の条件が完璧でないと、要するに判を押さないわけでありまして、私はどこに不信があるのかわからないわけであります。  八百万人と九千人とはあえて言いたくありませんが、地方分権推進のおひざ元東京で、ほとんど条件が満たされているにもかかわらず、都区の計画が気に入らないから待てでは主人公の都民が納得いたしません。真の地方分権が始まるその年に特別区が基礎的自治体に移行できるということは、長い間の悲願達成にふさわしい舞台回りであったと思っておりました。  そこで、おおむね法改正の条件が整った今日、都知事が事業移管の平成十二年までには必ず組合との約束は履行すると明言しておりますし、特別区側の努力を見ても、また条件未整備区の懸命に住民を説得している姿を担保にいたしまして、ぜひとも法の改正準備に入っていただきたいと思っているわけであります。  地方分権のフロントランナーとして、労使、議会、住民、中央政府一体となって、地方分権のスタートにふさわしい成果を出させていただきたく、地方議会出身の上杉自治大臣に懇願と御質問をいたしたいと思います。
  108. 上杉光弘

    国務大臣(上杉光弘君) お答えいたします。  都区制度改革につきましては、委員指摘になりましたように、平成二年九月の地方制度調査会答申において関係者における速やかな意見の一致が求められたところでございます。また、清掃事業の移管に関しましては、平成六年十二月に都と清掃労働組合との間で条件整備の確認が必要である旨の覚書を締結されております。  したがって、自治省といたしましては、従来から関係者間での清掃事業の移管に伴う条件整備の確認が前提であると考えてきたところでございます。ことしになって都と職員団体との間で条件整備の確認のための交渉が進められてまいりしましたが、最近になりまして、いまだ条件整備の確認に至っていないということが明らかになってきたところでございます。  特別区への清掃事業の移管につきましては、移管に伴いまして住民サービスに支障が生じないように万全を期す必要があり、そのためには、今回の制度改正について引き続き関係者間での意見の一致が得られるように努力を続けていただきたいと考えております。  自治省といたしましては、法改正については、諸条件が整えば、平成十二年の四月の改革実施に向け、来年の通常国会に地方自治法改正案を提出できるよう努力をしてまいりたいと考えております。
  109. 保坂三蔵

    ○保坂三蔵君 どうもありがとうございました。(拍手)
  110. 長尾立子

    ○長尾立子君 自由民主党の長尾立子でございます。  私は、この行財政改革の中における社会保障の改革という問題を中心質問をさせていただきたい、このように思っております。  この委員会の御審議はきようで四日目になるかと思いますが、御審議の状況を伺っておりまして、行財政改革という非常に大きな国家的な課題の重みをひしひしと感じる、このような印象を御審議の中から持ったわけでございます。  ことしは、福祉関係では実は児童福祉法という法律ができまして五十年という一つの節目の年になっているわけでございますが、この五十年の間の我が国の社会保障のさまざまな分野の制度的な改正、中身の充実、これは国民の皆様のいろいろな要望、また関係者の方が福祉社会を日本の社会につくっていこう、こういう非常に大きな課題の中に進んできたわけでございますが、今財政の中で考えてみますと、社会保障費と言われておりますものは一般歳出の三割を超えるような大きさになっております。  また、これは午前中でも御質疑があったかと思うのでございますが、社会保障の関係費用は、一般歳出に計上されておりますいわゆる国庫の直接の支出部分以外に、一般歳出以外の特別会計、またその他の分野で負担をいたしておりますものは国民所得の中におきまして極めて大きな比率を占めつつある、このことが現状であるように思うわけでございます。  したがいまして、二十一世紀という新しい世紀へ向けまして、私どもが社会や経済のさまざまな分野での改革をしていかなければならない中で、社会保障の分野の改革というものも非常に大きな課題であるということは十分に認識をいたしているわけでございます。私も社会保障の分野に長くかかわってまいったわけでございますし、大蔵大臣は党の重鎮として政策の分野で取りまとめをしてこられた、日本の福祉の充実に非常に大きな役割を果たしてこられた方、このように承知をいたしております。私は個人的には、大臣が低肺機能の障害者に対して何らかの対応をするべきではないかという問題提起をいただいたということを記憶いたしているわけでございます。  現時点におきましてこの社会保障の改革ということの問題点は、この三日間を通じましても、さまざまな角度から皆様から問題の提起がなされているわけでございますが、まず最初に大蔵大臣から、このような社会保障の改革ということが、我が国の行財政、またひいては非常に大きな意味で我が国の社会の新しい時代への改革に向けてやはりやり遂げなくてはならない課題なのであるということについて、御決意のほどを聞かせていただければと思います。
  111. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 長尾委員にお答えを申し上げますが、長年社会保障関係に専念をされておるエキスパートでありますことをよく皆様方も存じ上げておると思います。  我が国の国是は、福祉国家、老若男女を問わず、またその立場を問わず、生ある限り全うできるようにサポートしていこう、その国是のもとで今日の日本が築かれてまいりました。そういう中で、少子・高齢化という、世界に例を見ないスピードで激しく流れております中でどうこれに取り組むかということでありますと、もう一度福祉の原点に戻りまして考えることが大事ではないのかと。  それと、政治、行政でございますから、その分野における行政のあり方ということについて、ひとり厚生省、社会保障関係省だけではなく、全内閣としてこれに取り組んでいくことが大事なのではないだろうか。当然増が本年度、九年度八千億円、そして十年度八千五百億円、確実にそれがカーブを描いてこれから続いていくわけでございますから、受益と負担という問題について、国民論議を盛んにしながら、国民の皆様の声を大事にお聞きしながら、同時に政治の側も政府の側も地方自治体もみずから発信することによって、協調と信頼の中でどうあるべきかということで取り組まなければならぬ重要な課題であろうと思います。  国家と国民存立の基本ベースが、本政策によって世界にまれな差別のないお国ができ上がってきておるわけでございますから、これを大事にしながら、それを支えてまいりました社会保障制度、二十一世紀に向けてどうあるべきか、この制度と理念を守っていくという観点でそうあらねばならない、こう思っております。
  112. 長尾立子

    ○長尾立子君 ありがとうございました。  次に、社会保障全体の費用の中で大きなウエートを占めておりますものは医療保障と年金の費用でございます。最近の推計から見まして、ほぼ九割ぐらいがこの二つの制度によって占められていると申し上げてよろしいのではないかと思っておりますので、まず最初に医療の問題につきまして質問をさせていただきたいと思っております。  医療保障の改革につきましては、既に厚生大臣は医療保障の抜本改革に取り組むということを明言されまして、厚生省からの試案も既に発表されておりますし、また与党のプロジェクトにおきまして医療保障の改革基本的な方向というものも既に発表されているわけでございます。  厚生省では、従来の医療に関する審議会を再編成されまして、新しい医療保険福祉審議会、これは福祉の問題も視野に入れたという観点でこのような名称になさったのかと思いますが、委員の任命も終えられて本格的な検討が始められるように承知をいたしております。  本委員会は財政構造改革審議するところであると思いますので、このような医療改革の中身に入るのは不適当であるかと思うのでございますが、この中で一つ、問題は二つになろうかと思いますが、医療費そのものの全体的な動向、またこの医療費の抱えております状況といったことにつきまして御説明をいただきたいと思っております。  よく厚生省は、国民所得の伸びの範囲内に医療費をとどめたいということを従来から言っておりましたけれども、最近の動向では国民所得の伸びを上回る傾向を示しているわけでございます。  まず最初に、医療費の伸びの原因、これについてどのような分析をされているのか、そのことを伺いたいと思います。
  113. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 医療費は毎年かなり大幅に伸びておりまして、そういった意味では、昨今の経済が非常に厳しい状況にある中で経済の伸びを上回る伸びが続いておるわけであります。  私どもとしては、やはり国民保険を維持しながら、しかもこれからの若い世代の人たちが過重な負担にならないようなそういった制度というものを早急につくっていかなきゃならないということで、抜本的な改革ということに着手いたしております。  この医療費の伸びの一番大きな原因というのは、これから高齢化が進んでいく、いわゆるお年寄りの数が非常にふえていく、そういった中で、現状はお年寄りの一人当たりの医療費というのが若い人に比べますと五倍ないし六倍という額でございますので、お年寄りの数がこのままの状態でふえていくに従ってやはり医療費も増嵩していくことにならざるを得ないということでありますが、これをいかに適正化していくか。そして、お年寄りが健康な、あるいは病気を持っていたとしてもその中で健やかに生活できるようなそういった対策を講じながら、適正な医療費の伸びにとどめていかなきゃいけないというふうに考えております。  それからまた、我が国における医療制度が、医療機関の機能分化というようなものも進んでいないというようなことから、やはりそういった中でいわゆる医療費についても高コストの構造になっているんではないか。  そういうような観点で見ますと、一つにはいわゆる入院医療、こういったものも入院期間が非常に長いということで伸びておりますし、それからまた、とりわけ我が国の場合は医療費に占める薬のシェアが非常に高いというようなことで、この薬の伸びというものも毎年大幅でございます。  こういったような大きな問題について一つ一つ抜本的に改革をしょう、そして医療費そのものの合理化、それから制度そのものの効率化、こういうものを図っていくということで考えておるわけでございます。
  114. 長尾立子

    ○長尾立子君 今後進みます改革というのを考えていきますと、多分三十六年に発足いたしました皆保険体制の仕組み、もちろんその多くの部分はその後基本的な部分についてまで修正が行われているわけでございますが、今までの修正を超えるような、皆保険体制そのものを基本的に見直すような改革になるのではないか、こういう議論がされているように思うわけでございます。やはりこのときに一番押さえるべきことは、国民負担の公平性、これは単に額が同じであるという意味ではなくて、それぞれの置かれた状況の中で負担が納得のいく形で公平性を保っていくということが非常に必要なのではないかと思っているわけでございます。  保険局長に、国民保険と今現実に言われておりますけれども保険料の負担においてはどれくらいの差があるのか。国保の場合には、これはすべての市町村単位で保険者になっておりますし、その保険者の規模は、大阪市から数百人というような規模の保険者まで非常に大きなばらつきがあるように承知をいたしております。また、健康保険組合は、これは企業単位で設けられておりますので、大企業と、それから中小企業は政府管掌健康保険ということになるわけでございますけれども、それぞれの中にどれくちいの保険料の負担の格差が実質あるのか、このことについてお答えを  いただきたいと思います。
  115. 高木俊明

    政府委員高木俊明君) 保険負担の格差でございますけれども、まず国民健康保険で見てみますと、保険料そのものの実額という点で見ますと、一番高いところは、一人当たりの保険料を平成年度で見てみますと十万五百八十四円というような、これは富山県の大山町でありますが、これが一番高いのでありますけれども、一方、一番低いところが、鹿児島県の十島村というところがございますけれども、ここが一万五千二百七円ということで、これだけ比べますと六・六倍からの差でございます。  ただ、この保険料だけを見て不公平かどうかということは論じられないわけでありまして、委員御承知のとおり、国民健康保険につきましては、平均的に見ますと医療費の半分を国庫で負担しておる。そういった中で、それぞれの町なり村における医療費の高さ、それからまたそこに住んでいらっしゃる方々の所得の水準、そういったものを見まして国庫における必要な手当てというものをしております。  例えば、今申し上げた例で申しますと、六倍強の格差があると申しましたが、十島村の場合、非常に保険料の軽減世帯も多うございます。そういった意味で、それを補う意味で国庫負担も高く入っております。そういうような調整をやった上で、また医療費につきましてもそれほどかかっていないという問題がありますので、そういった意味では、国民健康保険は相当多額の国庫負担を入れることによってその辺のところを調整しておるという面がございます。  ただ、こういった中でも、国民健康保険の場合は非常にお年寄りの数がふえておりますし、とりわけ年金受給者の方が国民健康保険の中に入っておるわけでありまして、それが毎年ふえておりまして、そういった意味では財政力はそれぞれそれほど強くないという状況にございます。  それから、被用者保険の方で見てみますと、いわゆる政府管掌健康保険と組合健保というものを比較いたしますと、これは時点は平成年度でございますけれども政府管掌健康保険の平均保険料額は月額約二万四千円ということになっております。御承知のとおり、政府管掌健康保険には一三%の国庫補助が入っておりますので、保険料は二万四千円ということであります。一方、健保組合の平均保険料額を見ますと、平成八年の九月末で比べてみますと月額約三万円ということであります。ただ、この数字の中には、政管健保の場合はいわゆるボーナスの保険料というのを千分の十、一%取っておりまして、この二万四千円の中にはボーナスの保険料、いわゆる特別保険料も入っております。健保組合の場合は、これは大部分の健保組合がボーナスからの保険料を取っておりませんので、ボーナスの保険料は入っていないということでございます。  健保組合の中でも高い保険料を取っているところとかなり低い保険料で済んでいるところとあるわけであります。それぞれの組合のいわゆる組合員の所得あるいは医療費によってかなり格差がございますけれども、健保組合自体の規模の違いといったものによる格差もございまして、そういった中で、非常に財政が苦しい、企業自体が非常に苦しくなっている場合にはやはり健保組合も苦しくなるというような構造でありますから、そういった面では相当開きがありますけれども、平均的に見ますと今申し上げたような状況であるということでございます。
  116. 長尾立子

    ○長尾立子君 政府の検討のいわば改革案という現在の案におきましても、保険集団を見直していく幾つかの複数の御検討がされているように思います。この検討を拝見しておりまして、私はちょっと気になることが一つございます。それは低所得者に対する医療保障ということについての今後の考え方をどう定めていくのかということでございます。  ちょっと現在の生活保護の医療扶助の実態について伺いたいと思うのでございます。国民保険でございますので、すべての方はどこかの被保険者になっている、または被保険者の被扶養者になっている、このはずでございます。ところが、そういう保険の網の目から漏れて医療扶助を受けている人が現実にはおられまして、現在の生活保護の経費の中では相当なウエートをこれは占めているのではないかと思います。  この実態、またなぜこのような医療扶助が行われるようになるのか、そういった生活保護の中のいろいろな事情があるかと思うのでございますが、御説明をいただきたいと思います。
  117. 炭谷茂

    政府委員(炭谷茂君) 最近の医療扶助の動向でございますけれども、昭和五十九年度には約九十  一万二千人をピークとしていたわけでございます。平成年度におきましては約六十五万九千人まで減少してきました。しかし、その後増加傾向にありまして、平成年度の実績では約六十九万五千人となっているわけでございます。これは、現在の生活保護を受給されている方の約八割が医療扶助を受けていらっしゃるという状況でございます。  また、これが保護費に占める割合、生活保護費においてどれだけ占めるかということでございますけれども、約六割、これは平成年度予算額で見ますと約五八%が医療扶助費で占めているという状況でございます。  現在の生活保護の被保護者の状況を見てみますと、生活保護になる状況としては傷病、いわゆる病気とか障害という形でなられる方が多うございますので、やはりどうしても医療扶助を受ける方が多くなるという状況にあると承知いたしております。
  118. 長尾立子

    ○長尾立子君 皆保険をつくりましたときには、国民健康保険は自営業者、農民のための保険であるというふうに私どもは考えてきたわけでございますが、現実の今の時点の国民健康保険の被保険者の四割は無業者であるというふうに聞いております。これは健康保険のグループの卒業生、ある程度の年齢が来まして退職をされた方々が国保に入っているというケースであるかと思いますが、その意味で、今お話のありましたように、公的扶助である医療扶助にこれらのグループの一部が動いていく、こういう構造があるのではないかと思っております。  後ほど、社会保障の財源として保険料というものと税金をどう考えていくかという問題につきまして質問をさせていただきたいと思っておりますけれども、現在の皆保険体制の中で、この低所得者医療というのが一つそういう意味では問題を含みながら現在の状況を呈しているということを指摘させていただきたいと思います。  もう一つの社会保障の大きな問題であります年金制度につきまして質問をさせていただきたいと思っております。  年金制度におきましては、人口推計、これは国勢調査をもとにいたしまして実施をいたしますから、五年に一回ぐらいは新推計が出ますので、年金財政再計算はこのようなリズムで行われております。平成十一年度がこの財政再計算の時期であるというふうに伺っております。従来から年金制度は、この財政再計算の時期に制度全体を見直しまして財政の計算をすると同時に、懸案になっておりますさまざまな課題の制度改正を行う、こういうルールをとってきたわけでございますが、現在の状況下において、この十一年の財政再計算、大変に大きな課題を負っているのではないかと思っております。  今、年金の給付費の規模を国民所得の範囲内から見て適正な範囲内にとどめていかなければならないということを考えていきますと、抜本的な意味での改革ということになるのではないかという気もいたすわけでございますが、この中で公的年金制度というものの役割をどう考えていくのか、また最近規制緩和の観点から議論をされております年金の民営化問題、これは企業単位の年金ということであると思っておりますけれども、こういった議論を中心質問させていただきたいと思います。  まず第一点に、昭和六十年の基礎年金のときに、高齢者の生活状況を見まして年金の水準を考えるという仕組みをとったわけでございますが、今後の公的年金制度の役割、いろいろな形で社会保障が国民の生活を支えるわけでございますが、公的年金としてはどのような役割を果たしていくべきであると考えておられるのか、質問をさせていただきたいと思います。
  119. 矢野朝水

    政府委員(矢野朝水君) 公的年金の役割をどう考えるかということでございますけれども、公的年金につきましては、やはり老後生活の中心、主要な柱として長い老後を確実に支えていく、これが基本的な役割じゃないかと思います。そういう意味で、制度の長期的な安定ということが極めて重要であるということを認識いたしております。
  120. 長尾立子

    ○長尾立子君 何かちょっと簡単なお答えであったように思うわけでございます。六十年のときの考え方を踏襲するというふうに理解をさせていただきたいと思うのですけれども、これは実際問題としては大変に難しい課題ではないかという気もいたしております。  六十年の大改正、基礎年金の創設のときには、将来の年金の期待権というものについて実は非常に大幅なメスを入れたというふうに記憶しております。世代間の負担の均衡ということが今非常に議論になっておりまして、将来世代保険料の負担というものが現在の受給者が拠出した保険料に比べて極めて大きくなるのではないかというような御議論が世上行われております。  私は、年金制度は公的な扶養のシステムを社会的に確立していく、こういうものであると思っております。我々は家計というものを通じまして私的な扶養という形で高齢者や障害者の扶養を行ってきたわけでありますけれども、これのある部分を公的な扶養に切りかえていくということが年金制度の創設であり、その成熟化ということであろうと思っております。  年金制度の発足時に、四十年改正ぐらいから申し上げた方がよろしいかと思いますが、このときに修正保険料という形で保険料を設定してきたわけでございます。これは、急激な保険料という形での費用負担は、家計におきましても企業におきましても負担をすることは不可能であります。なだらかな形で私的な扶養から社会的な扶養へ切りかえる、こういう仕組みを我々はとらなくてはならなかったわけでございますから、現在の受給者の大部分は、この過程におきまして御自分自身はお父さんやお母さんを私的な形で扶養してきて、そして自分自身の老後、その他の方々のものを拠出してきた、二重の負担をしてこられた方々であるわけでございまして、その意味ではこういった年金の長い役割変遷の中でこの議論はぜひしていただきたい、このように考えているわけでございます。  次に、さっきちょっと申し上げました民営化に絡みまして御質問をさせていただきたいと思います。  同じく四十年改正のときに、厚生年金基金制度というものを創設いたしました。それ以後、多くの企業が厚生年金基金を創設したわけでございますが、まず最初に、現状においてどの程度の企業がこういった基金の給付の設計をしているのか、またそれは全被保険者の中でどのようなシェアを占めているのかということについてお伺いいたしたいと思います。  また、企業の年金という意味では、これは大蔵省の所管であると思いますが、いわゆる適格年金というふうに称せられる年金につきまして、現在どの程度の企業がこういった適格年金というものを持っているのか、被保険者としてはどのようなシェアがあるのかということにつきましてお答えをいただきたいと思います。
  121. 矢野朝水

    政府委員(矢野朝水君) まず、厚生年金基金でございますけれども平成九年十月末現在で基金数が千八百八十三でございます。加入員数が千二百三十六万人、こうなっておりまして、厚生年金保険者に占めます割合といいますのが約四割ということになっております。
  122. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 適格退職年金制度についての御質問でございますが、昭和三十七年度につくられたものでございますが、平成九年三月末現在で、適格年金の加入者数は、比率がちょっと手元にございませんが一千六十三万人、契約件数は九万二百三十九件となっております。  なお、積立金額の残高が十八・五兆円と承知しております。
  123. 長尾立子

    ○長尾立子君 その税制適格年金でございますけれども、私どもは退職金のような形で一時金の支払いをするような形の給付、つまり分割の支払いのファンドとしてこのような制度を利用されている企業が圧倒的に多いのではないかという認識を持っておりましたが、現実にいわゆる一時金払い的な給付を支払っているケース、年金的な給付を支払っている、年金の場合多くは有期の年金であると思いますけれども、このような状況についておわかりになりましたら教えていただきたいと思います。
  124. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 正確な数字を持っておりませんので、今取り寄せますが、選択一時金は多分その八割とか九割の方がとっているのではないかというふうに承知しております。
  125. 長尾立子

    ○長尾立子君 厚生年金基金を創設いたしまして、その後、局長から今報告がありましたように相当多くの数の企業が参加をされているわけでございますが、この企業年金の怖さといいますか、企業年金の不安材料の一つはスライド問題であると思います。  厚生年金基金は厚生年金の報酬比例部分の代行でございますので終身給付でございます。今御説明がございましたように、適格年金は一時金払いであることが大部分でございますので、ある程度企業の外に積み立てるという形で財政的な不安は余りないのではないかと思いますけれども、こういった終身給付の設計をするということは非常に財政的に将来に大きな問題を残すわけでございます。  四十八年にいわばスライド制が厚生年金につきましたときに、これは大蔵大臣も御承知であると思いますけれども、このスライド部分は本体が見る、つまり企業の年金にかぶせないで厚生年金の本体の事業が見るという形で制度を仕組んだわけでございます。現実にそれは基金がどれくらいの額を給付していて、そのスライド部分というのは本体がどれくらいを負担しているのか、このことについて御説明をいただきたいと思います。
  126. 矢野朝水

    政府委員(矢野朝水君) ただいまお話のございましたように、厚生年金基金は国の年金の一部を代行しておる、それに上乗せをしているわけでございますけれども、代行しておるというのはあくまで再評価スライド部分を除いたそれ以外の部分でございます。  そこで、四十年加入平成年度価格というようなことで標準的な給付水準を考えてみますと、代行部分が約六万三千円でございます。これに対しましてスライド部分が三・八万円ということになっております。さらに、代行部分に上乗せする企業独自の上乗せ給付というのが代行部分と同じぐらいございまして、これが約六万四千円、平均しますとこういう数字になっておるわけでございます。  したがって、厚生年金基金だけの給付を見ますと十二万七千円、それ以外に国の方からスライド分として三万八千円が出る、こういうことですから、基金の給付に占めるスライドというのは約三割程度になる、こう見込んでおります。
  127. 長尾立子

    ○長尾立子君 民営化の議論につきましては多分いろいろな考え方がおありになるのであろうと思っております。例えば、世銀が発展途上国のために推奨いたしましたものと、我が国のようなある程度発展いたしました国、年金制度におきましても相当な受給者を抱え成熟度も高い国というものとは多分比較にならない部分が私はあるように思うのでございますが、もし今民営化をしたといたしまして、報酬比例部分をすべて民営化にゆだねていくということになりました場合、どのような問題点があるというふうに考えているか、御説明をいただきたいと思います。
  128. 矢野朝水

    政府委員(矢野朝水君) このいわゆる厚生年金の民営化論でございますけれども、これは論者によってその内容が必ずしも一定していないわけです。ただ、全体として言えますのは、公的年金としては基礎年金プラスアルファぐらいにとどめる、一階建ての年金にすると。二階建ての厚生年金につきましては、民間の個人年金なり企業年金にゆだねる、その場合積立方式でやる、できたら個人別の拠出勘定を設けまして個人別の管理をする、こういうことが民営化の内容として言われておるわけでございます。  こういったことを実際実行するということになるとどういう問題が起きてくるかということでございますけれども、これは大体三つ問題があるんじゃないかと思います。  一つは、中小零細企業のサラリーマンでございまして、企業年金といい個人年金といい、大企業は問題ないでしょうけれども、中小零細企業はなかなか普及しづらい、こういう問題があるわけでございます。したがいまして、中小零細企業のサラリーマンの方々は、結果としては基礎年金、それにせいぜいプラスアルファというようなことで、これで果たして老後の生活が十分やっていけるだろうか、こういう大きな問題が一つあろうかと思います。  それから二つ目が、ただいま御指摘のございましたインフレの場合に、個人年金なり企業年金で果たして実質的な価値のある年金を支給できるだろうかということでございます。  インフレが来ればそれに応じて運用利回りが上がるので問題ない、こう言う方もいらっしゃるわけですけれども年金制度というのは、掛ける期間が四十年、もらう期間が二十年、六十年の長い期間に及ぶ制度でございますので、その間に大きなインフレが来ないとも限らないわけでございまして、そういった場合に積立金が価値がなくなってしまう、こういうことで果たして本当に実のある年金が払えるかどうか、こういう点が懸念されるわけでございます。  三つ目が、切りかえ時のいわゆる二重負担と言われる問題でございます。切りかえ時点におきましては、現に年金を受給されている方の保険負担に合わせまして自分自身で自分の将来のための年金を積み立てなきゃいけないということで二重負担が生ずるわけでございます。厚生年金の二重負担部分ということで計算したわけでございますけれども、三百五十兆にも上るということでございます。こういった二重負担というのをどうやって解消していくのか。これは容易ならざることでございます。  民営化をするということになりますと、こういった二重負担分を世代間で公平になるようにどうやって解消していくのかという、そこのところの解決策がなければなかなか民営化といっても現実問題としては困難じゃないか、こういうふうに感じております。
  129. 長尾立子

    ○長尾立子君 今厚生省の年金局長から話がありましたけれども、もう一つの適格年金、このお立場で、さっき適格年金というのはほとんど一時金じゃないかということを申し上げたのですが、今、年金給付というものへの希望が非常に強い状況の中で、また今申し上げたように民営化議論があります中で、この適格年金ということについてどのような方向を今模索しておられるのか、お話をいただきたいと思います。
  130. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) 本格的な高齢化社会が進展していくという中で、公的年金を補完する所得保障制度の一つとして適格年金制度はやはり重要な役割を果たしていくものと理解いたしております。  いずれにしましても、適格退職年金制度についての税制上の措置のあり方につきましては、厚生年金基金制度とかあるいは公的年金制度、こういったものを含めた年金制度全体の中で、法人税のみならず拠出時あるいは受給時の所得課税の問題についても広範な検討が必要と思っております。  なお、あわせて、今申し上げましたような公的年金等と言われているもののほかに、確定拠出型の個人年金の話も出てきております。  私ども税の立場から申し上げますと、上乗せ上乗せでこの制度ができてきて、一番最初の、一番甘いと言ってはおかしいんですが、御老人が少ないときにできた入り口も出口も割に税制上緩やかなものをもとにして、つけ加えていってどんどん減税制度が肥大していくということはとても計算上うまくいかないんではないかなと。  そういう意味では、公的年金制度あるいは私的年金制度を含め、こういったものの全体像がどうなっていくかということとあわせて、税制上入り口と出口でどうするのか。アメリカはアメリカで確かに個人年金制度が進んで四〇一Kなどありますけれども、あれはあれできちっとした税制が仕組まれている。その辺危惧を持っていますし、一方で公的年金制度を含めた年金制度全体の今後の行く末といいますか、重大な関心を持っているというところでございます。
  131. 長尾立子

    ○長尾立子君 ありがとうございました。  それで、大蔵大臣、医療保険年金保険については非常に駆け足でさっと表面的な議論をさせていただいたわけでございますが、けさほども御議論がありましたように国民負担率の問題でございます。  この法案におきましては、国民負担率租税社会保障負担を合わせたものを五〇%にするという目標を掲げておられます。私もこの五〇%は非常におかしい数字だというふうに思っているわけではないのでございますが、御承知のように、現在の先進諸国の負担率を見ますと、フランスにおきましても六〇を超えている。日本の社会保障というのは非常にドイツに勉強しまして、介護保険もドイツを一生懸命勉強したりしているわけでございますけれども、ドイツも五〇を超えているという状況でございます。スウェーデンは非常に大幅に超えている。  これは、それぞれの国のいろんなほかの仕組みとの関連がありますので簡単にこの辺は議論はできないものであると思いますが、国民負担率の五〇%ということの持つ意味、これを国民の皆様に御理解をいただくには、どのような観点でこれが設定されたのか、ぜひお話をいただければと思っているわけでございます。
  132. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) お答えいたします。  この国民負担率を五〇%以下とすることにつきましては、今回は総理から指示が出ました五原則の中に示されているわけでございますが、もともとの考え方としては、長尾先生御承知のとおり、昭和五十八年の臨時行政調査会の答申におきまして、当時の文書そのものを読ませていただきますと、「現在のヨーロッパ諸国の水準(五〇%前後)よりはかなり低位にとどめることが必要である。」とされております。これは、当時先進国病と言われるような弊害があらわれていた西欧先進諸国の国民負担率を参考に、これらの水準からかなり低い水準にとどめるべきとするいわゆる経験的な考え方によるものでございます。  ただ、当時の考え方は、今回とちょっと違いますのは、財政赤字部分を除いたところの税負担社会保障負担を合わせたところでございます。御承知のとおり、現在平成年度の見込みといたしましては、租税負担社会保障負担の合わせたところが三八・二でございます。それとこの法律による財政赤字部分七%を含めると、今現在の数字は四五・二ということで、そういう意味では五〇%を一つの財政運営目標とすることは適切なものではないかと考えております。
  133. 長尾立子

    ○長尾立子君 先進国病にならないようにというような表現をとられたわけでございますけれども、今いろいろ例示に出ました諸外国が現在我が国と比べてみてどうかというと、先ほど来御議論がございますように、国家財政も経済自体も良好であるということが現実にはございます。そのような状況の中で、このことを大きな課題としていく。国民の皆様にとって、何かもう少しわかりやすいといいますか心に響くような形での妥当性というものがあるのではないかという気がいたしますが、いかがでしょうか。
  134. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 小泉厚生大臣がストレートに委員の言われた趣旨に近い質問に対して答えております。  受益と負担という、これは人間社会が協調していける基本的な枠組みの一つであろうと思うんです。今日の税負担社会保障負担とを加えた国民負担で全体の年金制度が、また医療制度が運営されていくという見通しが出ておるのであれば、その中でいかれて当然だと思います。  高齢化社会という、先進国の中でもトップを走る状態になりました。これは社会保障制度が、医療制度が完備しましたからこれだけのすばらしい高齢化社会、このことをまともに受けて、生きとし生けるもの、生を全うできるように生きがいを持ってと、こうなるわけですが、取り組むのは政治だけではなく、我が日本国民の果たす義務でもあろうかと思いますと。その辺のところでシミュレーションをわかりよく、ケース・バイ・ケースで、年次を区切る方は専門家にお任せ申し上げるとしても、そういうことをデータとして情報開示して、そこで御論議をいただく。  財政構造改革の中で、高給を得ておる方はどうすべきかという議論が出ました。現役で頑張られて高給をもらわれておる人の年齢は、やっぱり働いているうちはいいんじゃありませんかと、隗より始めよのような話でした。しかし、年金制度は法制度にきっちりと裏打ちされているものですから、直ちにその議論は、議論としては聞くが、国民理解と世論の動向を見てやるべきなのではないのでしょうかと。行政は行政としての責任があるが政治とすればそうだ、こんな話でございました。
  135. 長尾立子

    ○長尾立子君 ありがとうございました。  高齢社会が皆さんのお話の中に必ず出てくる。年をとる、長生きをする、長生きをしても元気であるということはこれはすばらしいことで、私たちにとって理想の社会であると思います。一方、子供の数が減っている、少子化ということが非常に大きな問題なんだろうと思います。少子化の対策というのは大変に難しいと思うのでございますが、先般、人口審から、やはり女性の今の意識の変革というものに即応した形でこういった対策を考えていくべきであるというような御趣旨のものが出たのではないかというふうに思っております。  この少子化のための国の施策ということにつきまして二点質問させていただきたいと思うのですが、税制の中でこういった子供を育てている家庭に対してどのような優遇の措置をしているのか、そしてこのことについて、今の少子化対策という観点から、これは税の構造全体を今後どう持っていかれるかという全体構想とも絡むと思いますが、何らかの対策ということは考えられないのかどうか、質問させていただきたいと思います。
  136. 薄井信明

    政府委員(薄井信明君) お子さんを育てておられる特に若い御夫婦の場合、結局はトータルとしての所得税負担あるいは住民税負担をどう負担していただくかということに集約されるというふうに考えてきているのが現在の税制だと思います。  端的に申し上げますと、日本の所得税、個人住民税におきましては、年収が七百万円程度の、これは普通のと言えると思いますが、サラリーマン、お子様が二人いらっしゃるというようなケースですと、税金が年間四十六万円ちょっとになります。これに対しまして、アメリカでは多分その倍、百万円以上になっております。そういう意味では、日本の場合は、お子さんが一人いるから何をするというのは、いわゆる扶養控除という形ではどこの国も同じようにやっておりますが、それに加えての新たな控除というのはございませんけれども、全体として中低所得者家計について税負担がなるべく安くなるようにということで措置されているというのが現状でございます。  なお、教育との関係もありまして、義務教育を終わった後の十六歳から二十三歳までのお子さんについて、扶養控除について上乗せをさせていただいているというのが一つの特徴かと思います。
  137. 長尾立子

    ○長尾立子君 少子化で一番問題になる制度の一つに年金制度がありまして、年金の仕組みの中でこの少子化対策というのを考えられないのかという議論がございます。フランス等の欧米諸国においては、年金制度の中で、いわば子供さんを育てる期間の、これは男性も育てますけれども、女性が例えば職業からリタイアした場合に、その期間を年金制度として優遇措置をつける、こういった形で年金の中でこういった少子化対策というのを考えている例もあるように思います。少子化の問題というのは、今こそ本気になって対策に取り組んでいかなければ、これはもう本当に時間が足らなくなってしまうというものではないかというふうに思っております。  一番最後になりましたが、実はODAのことにつきまして質問をさせていただきたいと思います。  一番冒頭に、私は児童福祉法ができてから五十年ということを申しました。実は五十年前に、これは大蔵大臣も覚えていらっしゃるかと思いますが、ララ物資というのがありまして、日本の福祉施設はアメリカの福祉団体からいただきましたこのララ物資で非常にありがたい、生き延びられたということがございます。それで、福祉施設の関係者が、ある程度復興いたしましてから、みんなでお金を集めまして、このララ物資をくださった皆さんにいわば恩返しをしようという議論をいたしました。しかし、アメリカに恩返しをするということではなくて、我々が助かったように、東南アジアの皆さんの福祉にこのお金を何か役立てるということを考えまして、大したお金でないものですから、職員の研修事業を始めたわけで、非常にささやかな研修事業をやっております。  それで、その研修生の一人がインドネシアのジャカルタの郊外で施設を経営いたしておりまして、私はことしの夏そこへ行ったのでございますが、日本の大使館から一千万ほど、草の根という、あれでお金をいただきまして、井戸を掘りました。これはもう非常にこの施設の皆さんは喜びまして、私が行きましたら、子供さんがみんなでダンスをして歓迎してくれたわけでございます。  ODAを削減していかなければならないという状況の中では、その一つ一つのODAが本当に生き生きしたものになる、我々にとっても効果があった、お金を負担したということが意味の持てるようなものにぜひしていただきたいと思いますし、このような、ある意味では非常にささやかな事業ではあると思うのでございますが、その国の皆さんと私どものきずなを非常に強めるという効果もあるように思っております。こういったものについて今後とも充実をしていただきたい、このように思いますが、いかがでございましょうか。
  138. 大島賢三

    政府委員(大島賢三君) ただいま長尾先生からお話のありましたのは、インドネシアのウサハ・ムリア財団に対する草の根無償のお話でございます。大変に心強い御指摘をいただきまして、感謝申し上げます。  ODAの援助におきましても、経済成長を進めるための経済インフラ整備等、いわゆる伝統的な分野、これは引き続いて重要な役割を果たしておりますけれども、最近では御案内のとおり、国際的にも人間を中心とした開発という考え方が重視されるようになってきております。国連でもそうでございますし、それから別途援助国で組織しておりますDACの場におきましても新開発戦略といったようなものが採択されておりまして、例えば西暦二〇一五年までに貧困人口の割合を半減させるとか、あるいはすべての国に初等教育を普及させようとか、こういった目標も掲げられるようになっておるわけでございます。  また、橋本総理が昨年のリヨン・サミットにおきまして世界福祉構想ということも提唱されておられます。もちろん、これは開発途上国だけの問題ではございません。もっと大きな構想でございますけれども、ODAも開発途上国関連の部分におきまして大きな関連を持っておりますので、その肉づけをやっておるところでございます。  こういったいろいろな背景、大きな流れを酌み取りまして、私どものODAの事業におきましてもできるだけきめ細かく、草の根レベルにも手が届くように制度に工夫を加え、執行にも配慮をしてまいりたいと思っております。同時に、教育とか保健とか、そういった社会福祉全般に及びます分野にもきめ細かく配慮をしてまいりたいと思っております。
  139. 長尾立子

    ○長尾立子君 ありがとうございました。(拍手)
  140. 小川勝也

    小川勝也君 民主党・新緑風会の小川勝也でございます。  総務庁長官にまずお伺いをしたいと思います。  行政改革についてでありますが、最近、全国いろいろなところに出かける機会がありまして、地元の方といろいろなお話をさせていただきます。いや、ところで行革というのは非常に評判が悪いね、何か地方にとっても我々にとってもいいことは何もないよ、こんな話をよく聞きます。我が意を得たりということで悪口を言わせていただいておるんですが、実は、私は学生のころ、ちょうど土光臨調のころでありまして、行革を考える学生の会などというのに入っておりまして、私なりにいろいろ勉強した経験もございます。  しかしながら、今、橋本内閣がやろうとしていること、あるいは行政改革会議でまとめようとしていることが本来の行革からちょっと離れているのではないかなというような気がしております。  堂々と私なりの理論をいろいろな方に御説明申し上げているのでありますが、そもそも行革の視点というものがあるとするならば、代表質問のときに民主党の菅直人代表が質問の中で申し上げましたように、中央省庁の仕事のうち、地方に任せられるものは地方に任せる、市場に任せられるものは市場に任せる、市民の手にゆだねられるものは市民の手にゆだねる、そしてその残ったことを中央省庁の中でどのような仕事の配分にすれば効率がいいのだろうか、それが省庁再編である、そんな理論に私も全く共鳴するものであります。  しかしながら、昨今の新聞紙上等で行革の中心とも言えるようににぎにぎしく論じられておりますのは、その最後の省庁再編の部分だけでございます。ただし、その省庁再編の部分でさえも、与党との関係において、行政改革会議でのその省庁再編の理念がどこまで通用するのかということも疑念が残っておるわけでございます。私に言わせれば、枝葉末節な論議が新聞紙上あるいはマスコミ報道の中心にあって、国民に本当の行革というものが知らされないということであるならば本当に悲しいことだなと思います。  この私の考えについて、総務庁長官、いかがでしょうか。省庁再編は枝葉末節な、枝葉の論議だと私は思うのでありますが、御見解をお伺いしたいと思います。
  141. 小里貞利

    国務大臣(小里貞利君) 官邸機能の強化あるいはまた省庁再編等々、行政改革の大きな柱であることはお話のとおりでございます。そしてまた、九月三日に中間報告を申し上げまして以来、各界で活発な議論が行われておりますことも御承知のとおりであります。  こういうような一つの現在の姿を見て、何となく一府十二省庁が先にありきではないか、中身はどうするのかと。あるいはまた、お話のとおり、民間にゆだねるべきものは積極的にゆだねます、あるいはまた中央から地方へ移せるものは移すんです、さらにまた規制の緩和あるいは規制の廃止も積極的に行います、そういうようなさまざまな一つの体系をもって目下進んでおりますことも大体御承知のとおりでございます。  ただ、ただいま議員のお話をお伺いいたしておりまして感じましたことは、現在やっている省庁再編というのは、今その絵を具体的にかきつつあるところでございまして、私は決してこれがいわば先にありきという見方に相応するものではないのではないかと。  それはなぜかといいますと、省庁再編も、一府十二省一行政委員会八庁の大きな既存の体系の中にあったものを、今申し上げましたような一つの基準あるいは姿勢におきまして、理念と言っていいでしょう、そういう気持ちから、とるべきものはとる、捨てるべきものは捨てる、そしてゆだねるべきものはゆだねる、実はそういう構想のもとに一府十二省庁という新しい体系は出てきた。出てきたけれども、中身の、現在ある仕事あるいは業務をそのまま当て込んだものではないのでありまして、どういうふうにこちらにあったものを具体的に取捨選択をして新しい体系の中に織り込むかというのはこれからの作業である。  したがって、この前から申し上げておりまするように、省庁再編の考え方というものは、一応そういう理念のもとに、中身をこういう体系でやっていけるという大体のアウトラインをかいて、今その作業が始まったと。そして、大体のアウトラインの基本における構想というものが初期の段階におきまして定着しつつある、こういう理解をしていただきたい。  したがいまして、二十日まででございますが、大体これを最終的に取りまとめをしていただきますから、そこで内閣はそれを受け取って、そしてお話がございましたように、政党を初め各方面の話もそれに参酌をして、きちんと一つの改革大綱、言葉をかえて申し上げますと省庁再編大綱的なものを即座に決定して、それから具体的作業が始まる。そして越年をいたしまして、できるだけ早い時期に省庁再編推進基本計画法なるものを策定して、それに並列して各省庁の再構築、再配置のための関連法等も順次整理されてくるものである。  そして、それが決定いたしましても、これの具体的執行につきましては、大体五年以内にはこれを実行に移さなければいけませんよ、早いものは二〇〇一年一月一日に移行したい、そういう一つの半ば中期的、具体的作業展望の中で進んでおりますことも御承知をいただきたいと思います。しかもその間におきまして、規制緩和等、ゆだねるものはゆだねる作業をどんどん今進めておるわけでございますから、総合的な形で御判断をいただきたい。
  142. 小川勝也

    小川勝也君 長い御答弁をいただきましたけれども、私は一点しか聞いていませんでした。それは、先ほど言いました省庁再編をめぐる順番の話であります。  今、長官が答弁された内容によりますと、中身が何になるか決まってないけれども、一応箱を先に十二個つくるんだと、そして今ある中央官庁の仕事の中でそれを移すんだという議論だったと思います。それは明らかに僕は手法が間違っていると思います。行政改革が仕事を減らしてスリムにしていくということであるならば、どのぐらい減らすかによってその箱の大きさとか数も決まってくる、変わってくるわけですね。最初に箱ありきで、例えば大きい箱がたくさんそろっていれば中身もそのまま余すことなく入っていくというのが自民党が描いている行革なんじゃないかなと、うがった見方をしてしまうものでございます。  今、長官から理念という言葉が出ましたけれども、私は全くその理念がないからこういう行革しかできないんじゃないかなと思うわけであります。どういう国にしようか、今こういう問題を抱えているからこういう国の制度にしなければならない、そういう理念からあふれ出てくる行革ではなくて、選挙のときに公約してしまったから行革が重要なテーマとなって、自分たちも行革をテーマにしないと国民世論の理解が得られないだろう、そんなところから出発したという行革が見え見えだと思うのであります。  さっきはたくさん御答弁いただきましたけれども、次の質問で長官に自由に御答弁いただこうと思ったわけですけれども、短く御答弁をいただきたいと思います。  行革の理念とか効能にたくさんのことがあると思います。たまたま先日、文芸春秋を読みましたら、現役の大蔵省の高級官僚の方が載せておられました。そこに国際化という、行革は国際化に対応するためのものだという言葉がありました。なるほどなと納得をしたわけでございます。  そして、そのほかに私なりに幾つかの点を挙げたわけでございますけれども、その一つに明治以来続いた官僚主導型国家あるいは官僚主導型社会からの脱却を目指すということ、そしてもう一つは、当然の本分であります行政の効率化を目指すということ。ほかに、当然地方分権とか規制の緩和とかいろいろありますが、国際化、そして官僚主導型国家からの脱却、効率化、この三点で今回の総務庁長官が目指しておられる行革の中でこの分野がこの点に当てはまるというものがもしございましたら、簡潔に御答弁を願いたいと思います。
  143. 小里貞利

    国務大臣(小里貞利君) 先ほどはもっと基本的なところをお話ししたがったんでございますが、時間がないとおっしゃるから、私はあなたの質問に直接お答えしたわけでございます。  今もお話がございましたように、新時代に対応できる簡素で効率的な行政体系をつくることが一つあります。あるいはまた国民の主体性が生かされる行政体制、行政の姿勢、あるいはまた国民に開かれた信頼される行政でなければならない、あるいはまた国民に対しまして質の高いサービスを提供できる行政の姿勢、こういうような観点から今作業を始めております。  なおまた、私が先ほど申し上げました一府十二省庁というのも、そういう視点を基準にして、今ある既存の体系の中の仕事あるいは業務、規模、機能等を分析しながら、大体それを大綱的に判断して、そしてこういう形でいかがだろうかという一つの基本を整理して、たたき台と言えばなんですが、今基本として中間報告を申し上げました。そういう観点であることも御理解をいただきたい次第でございます。  なおまた、今お話がございましたいわゆる国際化に対してどう対応するかというようなお話でございますが、ただいま申し上げましたような国民本位の体制をつくることも大事でありますが、御指摘の国際化への対応、あるいはまた官僚主導からの脱却、これなどは特に私どもは配慮してかからなければならない基本の一つだと思っております。  そういう考え方で取り組んでおるわけでございまして、御指摘の点等も踏まえて対応いたしたい、そういうふうに思います。
  144. 小川勝也

    小川勝也君 これから対応していただくのはありがたいんですけれども、今までもいろいろな対応をされておったと思うんですね。  その中で、私も丁寧に質問をして、総務庁長官が行革を考えるに当たってこんなことをやらなきゃいけないということで、今まで盛り込んでおる中で国際化の部分、そして官僚主導型国家からの脱却の部分、効率化の部分ということで、丁寧に御質問を申し上げたところでございますが、一つもお答えがいただけなかったと思いますので、政府の目指している行革の中に、今の三点が含まれていないものと理解をしていいものかと思います。  そして、行政改革、あるいは次に御質問申し上げますけれども財政構造改革の問題、非常に大切な問題だと思っています。しかしながら、先ほど総務庁長官からも官僚主導型社会からの脱却については当然力を入れるべきだという御意見をいただきました。私は、今回の財政構造改革、行革の中にも、どちらかというと、というよりもはっきりと官僚主導の色がありありと見てとれるわけでございます。その中心となるものが、いわゆる財政構造改革の中での一律七%削減という、その一律のものであります。  本来、政治というのは、国家の将来を見据えた上で、今の国のあり方そして将来の理想像と比べて何が重要であろうか、どういう国を目指すのであろうかということによって優先順位をつけるのが僕は政治家の役割だと思っています。それを、大蔵省主導で一律カットというのに甘んじているというのは、私は、政治の持つ責任を放棄しているのではないか、あるいは政治家としてのリーダーシップを放棄しているのではないか、そのように思うわけでございます。  各論に入らせていただきますけれども、今行政改革をやる、あるいは財政構造改革をやる、非常に重要なことだと思いますし、その方向性につきましては大賛成でございます。しかしながら、財政構造改革というのは、今まで一回もやりたくなかったわけではございません。これは大蔵省の悲願でもありましたとおり、いつの世でも目指していたものであります。それがなぜ今までできなかったのか。それは、財政構造そのものが、財政構造改革をすると地方中心に経済的に大きな影響を与え、一時的な混乱を招くおそれがあるからということで先延ばしにしていたのではないかと私は考えています。  しかるに、今の景気、経済をめぐる状況はいかがでありましょうか。私は北海道の選挙区でありますが、北海道に帰るたびに景気が悪い。外的な要因といたしましては、御承知のとおり株価の問題、あるいは大手企業、建設業関係の倒産などというニュース、金融機関の経営がどうも思わしくないというような情報も毎日ニュースに乗っかっております。そして、後で触れますけれども、北海道におきましては米の価格が大幅に下がりまして、地方経済に大きな打撃を与えております。  そんな中、いわゆる一律削減、そして経済が冷え切った状況でそんな改革をするということが短期的に地方にどういう混乱を招くのか、その辺の御認識をまず三塚大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。
  145. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 大改革をやろうといたしましたときに痛みは伴います。しかし、掲げた大目標は、後世にツケ回しをしない、これが一つあります。それは、世代ギャップを埋めて日本のよき伝統と文化が継承されるからにほかなりません。その点に視点を置きながら、財政構造改革に手をつける最大の理由は、健全財政は安定した持続的成長をもたらすという経済原則がございます。この原則が崩れたことはございません。そういうことを考えますと、忠実にこれを実行しなければならない。  そこで、しからば今の経済状況は大変なことではないかと。北海道を例に出されました。私も東北ですが、大農業地帯であります。そういう中で、公共事業依存型の経済体質とよく言われてまいりました。それぞれの地域は、努力をして工業立地その他二次、三次産業の誘致で調和をして行われておるというところも多々見かけるところであります。  そんなことから、今日の時点に立ってやらなければなりませんことは、六頭立てとよく言われますが、経済的な問題で五頭立て、これが着実に前進をしていくことによって不透明な展望が透明な展望に変わるだろう。要すれば、掲げたことが看板倒れではなく、やり抜いて着実に一つ一つ前進しておりますね、やはり本気だったんだなと、これが期待と希望に変わる。こういうことで、橋本さんを中心に全内閣、与党の各位に大変なサポートをいただきながら頑張っておるというところであります。
  146. 小川勝也

    小川勝也君 財政構造改革をやらなきゃいけないというのは同じ認識でございますが、しかしながら、国、地方合わせての借金が五百兆円になるまでやるチャンスが一回もなかったのかというと、そうじゃないと思います。当然のことながら、一義的に三塚大蔵大臣のせいにするつもりは毛頭ございません。  しかしながら、こういう大改革を行うにはそれに伴う条件というのがあると思います。景気の上向きのときにやる方がむしろ影響が少ないんではないか。これは素人でもそう考えるわけであります。  しかるに、私が考えるには、今やるには余りにも、非常な悪条件のもとではないか。そして政府のやり方が、いわゆるその悪条件に対応する施策というのが全くメニューに含まれていない。これが地方経済を中心に悪影響を及ぼすと私が考えている内容でございます。  しからば、大蔵大臣にもう一つ質問をしてみたいと思います。  こんな状況だけれどもやらなきゃいけないんだと、その御決意は立派なものでございます。それで、二者択一で選んでいただきたいんですが、この財政構造改革は経済に与える影響を大変少ないままにやり通すことができるのか、それとも経済に与える影響が物すごく大きくてもやらなければいけないのか、どちらかを中心に御答弁をいただきたいと思います。
  147. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 影響が少ないか、影響が大きいか。それは痛いという、つらいという影響、これを二つ調和させますと、ちょうどいい形になってまいります。
  148. 小川勝也

    小川勝也君 先日、別の調査会で社会保障費の将来というような勉強をさせていただきました。私は、どちらかというと若い方のメンバーなものですから、将来のことや、小さい子供が大人になったときどうなのかなとすごく心配に思っております。  今中途半端な御答弁しかいただけませんでしたが、もし今この苦しいときでも政府の言う財政構造改革をやればバラ色の将来が待っていますよということであれば、百歩譲って納得いたしましょう。  しかしながら、私は、今この中途半端な、そして先ほど言いましたように経済を上向きにさせるようなメニューも用意せずに、ただいたずらにこういう悪条件のもと、やらなきゃいけないからということで一律削減という無策の財政構造改革に着手することによって、将来に向けての本当の意味での改革を先送りすることになってしまうのではないかなという懸念を持っています。  本当に今回の財政構造改革が将来に向けて大きな道しるべとなるものかどうか、御決意をお伺いしたいと思います。
  149. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 国家予算は七十七兆余であります。同額といたしましても七十七兆、成長率がそこに加味されますと若干のものが出てまいります。そういう中で歳出カット聖域なく行うというのは、人間窮地に立ちますとやらなければならないものは何かと腹が据わります。  要すれば、今のままの制度でいいことには決まっておるわけでありますが、これは全員ハッピーが全員ハッピーでなくなる道でございますから、ハッピーの道は世界の潮流に合わせて諸改革を断行し、グローバルスタンダードとよく言われますが、国際的な水準に合わせてよりよきものを政策として打ち出していく、未来のために必要なものをこれに厚く政策として位置づけをしていく、こういうことではないでしょうか。展望はそれによって開けてまいります。
  150. 小川勝也

    小川勝也君 大事なところに厚くと言ったって、一律削減なんじゃないですか。一律削減というのは、それをしないから一律削減と言うんですよ。  先ほど来の議論に通ずるんですけれども、先ほど省庁再編の議論が枝葉末節だと私は申し上げました。それで、どんな枠組みになっても、今のいわゆる部局とか内容とかがそのまま残って一律削減をしても、ほとんど意味も効果もないと私は思います。中央省庁の権限や、今まで余分な仕事を持っているという認識を私は持っていますので、それをカットしてから財政を絞り込んで、その中で政治家がその優先順位とか確かなものを選び出す、そんな手法こそが本当の改革だと思うわけでございます。  そして、行革論、財政構造改革論、ともに不満な点が多々ありますけれども、その中で特に聞いておきたいことだけ質問させていただきたいと思います。  そんな中で一つお伺いをしたいのは、先ほど行革の三本柱のお話をさせていただきました。第一番目は、地方に任せられるものは地方に任す、いわゆる地方分権の理論でございます。これはさんざんいろんな場面で議論をさせていただいておりますし、大臣ももう苦いほど御答弁の回数もふえたと思いますが、そんな中で地方に権限を移譲することは何か。さまざまな審議の中でおぼろげながらも結論は見えていると思います。それは、地方にどういう形でお金を渡すかということであります。今回の行政改革にも財政構造改革にもほとんどそんな雰囲気は見えませんけれども大臣の個人的な決意でも結構でございます、地方に税財源、あるいは別な形でも構いませんけれども、渡す必要があるのかないのか、それをどんな形で実現したいのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  151. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 税制の問題と密接に絡めながら、国税、地方税、法令に準拠する地方税、独自の地方税、こうあります。三割行政とよく言われるような中で、自立がいまいち、もう大東京のように幾つかの自立をしておる自治体があります。そういう中で、地方自治法という法律に明示されましたとおり、おのれの両足で立つ自治体をつくらなければなりません。それは法律によってやるのではなく、そこの地域住民が自立の気迫を持って進めるとき、必ずそのことは全国的な広がりになります。しかしながら、国の政治として大事な分権、地方分権が極めて重要であります。そういう点で、たびたびの答申が出ておりますが、それを実行するということでなければなりません。  そういう点で、地方制度を含め、地方財政制度を含め、これから論議が盛んに行われ、自立するために必要なものは何かということでありましょうし、私はもともと道州論者でありますが、そういうことで道州制が最終的に仕上がるようにしてまいりますことが、中央政府は国際的に必要なもの、危機管理、安保その他と、こうなるわけでございますから、そういうことでこれからのスタートは着実に一歩前進二歩前進といくようにしなければならぬと思います。
  152. 小川勝也

    小川勝也君 先ほどは、財政構造改革というのは、中途半端で時期も悪いけれども待ったなしだからやらなきゃいけないと、そういう御答弁をいただいたすぐに、議論をしていますという話でございました。地方分権も僕は待ったなしたと思いますよ。大蔵大臣がやるつもりだったらこれはやれるというのが政治の仕組みなんじゃないでしょうか。大蔵大臣はもう並の政治家じゃないんですから、いつまでもいつまでも議論してないで、もうやろうと思ったことはやってくださいよ。それぐらいのことじゃないと何も進まないと思います。  結局、枝葉末節な論議とか小手先の改革に終始していて、先ほども申し上げましたとおり、一律のカットというのは、政治の哲学とリーダーシップと責任が欠如しているあらわれだ、そして先ほどの行革の中身にもありました官僚主導型社会から脱却できないでいる、このことを証左しているのだと思います。  そんな中で、きょうは島村農水大臣にもおいでいただきまして、本当ならば、どういう国を目指すのか、国にとって大事なことは何かという議論をした上で、じゃ財政をこうしようかという話になるのが普通だと思うわけであります。ところが、今は時期は悪いけれども改革しなきゃいけないということで一律カットだと。これは何の哲学も優先順位もない話なんです。官僚が決めてきたことをそのまま実行する。地方分権も、三塚大蔵大臣は、議論はしていただいているようですけれども、実行は全然やっていただけない。  そんな中で、大げさな話になるかと思いますが、一つのことをきょうはぶつけてみたいと思います。一つは、先ほどの米の問題にもありましたとおり、食糧の問題であります。何度も農林水産大臣のもとに現地の実情をお話しさせていただきまして聞いていただきました。  それは、特に米農家の話であります。当然大蔵大臣も御案内だと思いますけれども政府は、国際化に対応するために経営規模を大きくすることが国際競争に打ち勝つ道だということで、農水省の指導がありましていわゆる営農面積を拡大いたしました。当然拡大するためにはただでは済みません。いわゆる借金をして田んぼをふやして大きな経営にする。例えば十五ヘクタールであるとか二十ヘクタール。  そして、そのときの営農計画というのは、借金をして、ありがたいことに据置期間というのがありますね、借金に。五年たったら返しましょう、あるいは何年たったら返しましょうというような制度の資金だったと思います。そしてそのとき、農水省の指導をいただきながら、その米が何年先にはこのぐらいの価格になっているだろうという試算を当然いたします。そのときの価格が二万一千円だと私は聞いております。一俵当たり二万一千円で売れるからということで資金計画をつくって田んぼの面積をふやして、特に面積をふやしたのは、言うまでもなくやる気のある、意欲のある優秀な後継者がいるところが中心であります。  ところが昨今、一万五千円だと言われていた米価が、いろいろな事情がありまして、これは農水大臣全部御案内だと思います、一万二千円台で取引されております。そうしますと、もうどんなことがあっても経営が成り行かないわけですね。それで、当然のことながら、米をつくっておられる方からは、年が越せないので何とか頼むという陳情があります。それはそれで当然大切なことなので、私は島村農水大臣にもお願いに伺いました。  しかしながら、その米の価格をめぐる問題、あるいは食糧安全保障の問題、米の備蓄の問題、そして米以外の食糧の自給率の問題などというのは、本来、国に幾らお金があるかという前に議論をする話だと思うんですね。国家としての存立の基盤に直結する話なので、私は、これは財政が厳しいから大蔵が厳しいからということではなくて、国民のコンセンサスを堂々と得る時期だと思うのであります。そして国民が、いや、国際化の時代だから、もし米が来なくなったらそのときはそのときじゃないかという結論になればそうかもしれませんけれども、僕はそうならないと思うんですね。  金がないからということで片づけられない問題というのが幾つかある。私はそれを今まで農林水産省が逃げてきたと言わざるを得ないと思うのであります。国民に、日本という国は米の自給率をどこまでにしましょうか、そのほかの穀物の自給率はどこまでにしましょうか、食糧全体の備蓄あるいは自給率はどこまでにしましょうか、そのために財政はどこまで出動しましょうかという大もとの議論を僕は避けてきたんだと思う。それを都会型の農業議員と呼ばれました島村先生にお願いをしたいわけでございますが、御決意をお伺いしたいと思います。
  153. 島村宜伸

    国務大臣(島村宜伸君) 小川議員が御指摘になったことは非常に大事なことだと思います。  御記憶にあるとおり、我が国は四十年代の終わりと五十年代の初めに二度にわたる石油ショックを経験しました。エネルギーの安全保障もまさに産業の血液として大事ですが、食糧の安全保障はまさに国民の死活問題にかかわることですから非常に重要だと思います。  現状では、日本は御承知のようにカロリー換算四二%、穀物自給率は三〇%です。そういう状況ですから、一たん緩急ある場合にどうするのか。例えば、四年来豊作で米の生産者は大変に不安におののいておりますが、私が十四年前に政務次官をやったときには、五十六、五十七、五十八、五十九と四年間八七、九六、九六、九六で、もう減反政策なんかやめちまえ、幾らでもつくらせろと、こういう雰囲気でございました。これは何も我々が変な策を弄したわけじゃなくて、自然の摂理でございます。  そういうことごとを含めまして、今あなたの御指摘になったこの安全保障というのは党派を超えてこれからも大いに勉強しなきゃいけないことだと、まず基本的にそう考えております。  現状につきまして申し上げますと、御承知のように、米の消費は今御指摘があったとおり減少する一方であります。特に私が憂慮するのは、高齢者を戸主とする家庭は結構食べてくださるんですが、二十代、三十代前半ぐらいの戸主の御家庭は半分ぐらいしが食べません。将来に向かって、米の消費というものを、やっぱり日本の主食として大事にしていく、これをまず基本に置かなきゃいけないと思います。  また、輸入の飼料に頼らざるを得ない畜産、これまた先生のお地元に関係が深いんですけれども、またもう一つは輸入原料に頼らざるを得ない油脂の消費、これが一方では大変に増加してきているわけでありまして、食生活の中身が非常に大きく変わってきております。  そんな中で、なるほど現在は米は過剰ですから、食べるものに困らないというような錯覚を覚えますし、日本人は今世界で一番ぜいたくな食事をとっておりますから、健康を過信すると同じように何か安全なような錯覚を覚えますが、一たん緩急ある場合には自分の輸出余力を持たない国は一気に今度は輸出の窓口を閉ざすわけでありますから、これは将来に向けて大いに検討していく必要があるんだろう、こんなふうに思っております。
  154. 小川勝也

    小川勝也君 正々堂々の議論をお願いしたいと思います。食糧の自給できない国が栄えたという歴史はございませんので、その辺しっかりとしていただきたいと思います。私のような人間は自分の生まれ故郷の田畑のことを気にすればいいと思います。島村農水大臣は国の将来のことを考えるお立場だということを認識していただきたいと思います。  そして、それに匹敵する大きな問題がまだ残されていると思います。それは、先日私は視察をさせていただきましたけれども、森林の問題であります。これもいろいろな御議論があるかと思います。  今、時あたかも京都会議日本で開かれる、そんな時期でもございますし、大きな議論になればと期待をしておりますけれども、いろいろな役割を森林が果たしておることは皆さん案内のことだと思います。水源の酒養であるとか、川に水をためる、あるいは災害を防ぐ、あるいは大気の保全であるとかCO2の固定化、さまざまな役割を持った森林。  この間、私は北海道の大雪山のふもとに視察に行ったわけでございますけれども、現地に行く途中にシカがおりました。それで、現地の人が何と言ったかといいますと、シカがいたって当たり前だよ、ここはもともと林や森であって、クマやシカがいたところに人間が後から来たんだと。それは僕は北海道だけだとは思いません。日本全国、森がうっそうと生えていたところに人間が住みついて、人間が生活しやすいように木を切り倒して、そして私たちの生活を豊かにするためにいろんな山を削り木を切り、そして申しわけ程度に木を植えてきたんでしょう。これは僕はもういろんな意味で考え直す時期なんじゃないかと思うわけであります。  国の赤字を減らして後世の世代に大事な日本を残すということも当然大事でありますけれども、本来あった山、本来あった自然、これをどんな形で未来の世代に残していくのか。これは非常に大事な話だと思います。それを財政の話の前にしろとはとても言いにくい話でございますけれども、僕はそんな話だと思うわけでございます。  先般、子ども国会がございまして、担当で傍聴させていただいたりお世話をさせていただいたりしました。子供たちの中に森林に対する認識が物すごく高いのにびっくりいたしましたし、私は非常にうれしい思いをいたしました。税の導入などという声も子供たちから聞かれるぐらいでございました。  しかしながら、今どんな状況でございましょうか。私がたまたま視察に行ったいわゆる森林の保全をやっておられる担当の方は、本当はやりたい仕事の一割しかできていないんですよと。それは間伐であるとか植林であるとか手入れであるとか、さまざまなことを指してだと思います。ちょっと大げさかなと思っていますけれども、人員の問題、お金の問題、山が荒れていくのを非常に忍びない思いで見ておられる方もいるし、それはだれの山でもない、国有林と民有林がありますけれども、これは未来の子供たちから預かっている山だと、そんな認識で僕は考えていただきたいと思うわけであります。  行政改革の中でもさまざまな議論が出ていると思います。詳細は割愛いたしますが、食糧に引き続いて森林に対しても、本当に国民を巻き込んで、山を大切にするんですか、皆さん、というような本格的な議論を私は農水省、林野庁は、現在の場合でございますけれども、起こすべきだと思います。財政当局から幾らしかもらえないからこの分だけ保全しますというようなやり方は、私は先ほどから申し上げているとおり、政治家が哲学を放棄したそんな行政だと思うわけであります。  農水大臣の森林をめぐる御決意をお伺いしたいと思います。
  155. 島村宜伸

    国務大臣(島村宜伸君) 御高承のとおり、我が国は今六六・六%の森林率を誇る世界第三位の緑豊かな国であります。その森林は、今御指摘がありましたように、木材の供給のほか、国土の保全、自然環境の保護等、またあるいは水資源の涵養という大きな役割を担っておりまして、この多面的な機能を有する森林の重要性については今御指摘があったとおりでありまして、私は全く同感であります。  問題は、森林整備のための施策について積極的かつ計画的に推進していくことが重要であると認識はいたしておりますが、じゃ具体的に何をするのか。  これにつきましては、森林の持つ公益機能、これは何も話を逃げるわけではないのですが、かつては木材が売れました。しかもかなりの値段で、採算がとれました。今はとれません。ましてや、今お話のあった間伐材も半分は売れ口を持ちません。こういうことを含めまして、非常に森は病んでいるわけであります。このいわば公益機能というのは、御承知のように、いわば土砂の流出を防ぐとか、あるいはまた水資源の涵養のためにダムをつくって置きかえたら幾らになるのか、専門家の試算によりますと約三十九兆円に該当する、こういうふうに出ております。  今いろいろ御指摘があった森林の持つ重要性、またこれからもこれを大切にしていこうという姿勢を守るためには、私どもは林業白書やパンフレットによってこれらのことを具体的に広くPRしていこう。これが一つです。  二つ目は、都市住民に対して森林との触れ合いの機会を提供してもっと理解を深めてもらう。ただそのときだけをせつな的に楽しむというのでなくて、彼らにもその理解協力を求める。これが第二です。  第三は、森づくりのボランティアに対する支援や緑の募金や上下流の連携による森林の整備推進すること。これらを柱にしてこれから大いに取り組みたい、こう思っております。
  156. 小川勝也

    小川勝也君 ありがとうございました。  行政改革財政構造改革も非常に大事な問題であることは十二分に認識しております。しかしながら、その中に未来を見据えた哲学が欠如していると言わざるを得ないと私は指摘をしたいと思います。日本の国の将来にとって何が大事であるのかという論議を経ずして小手先の改革をすることは後々にツケを回すことにほかならないと思うわけでありますが、その部分、農業あるいは食糧、そして森林の分野、御検討をお願いすると同時に、抜本的な改革がもし現在の内閣でできない場合には、ほかにもいろいろあるかもしれませんので、あしからず。  どうもありがとうございました。(拍手)
  157. 志苫裕

    志苫裕君 座ったまま失礼します。  早速、法案に関して順次お伺いいたします。  構造不況とか経済構造改革とか、このごろやたらと構造という言葉がはんらんをしておりますが、財政構造改革というのは余りなじみのある言葉じゃありませんね。法案の中身を見ると、歳出削減とか抑制、あるいは財政収支の改善もしくは均衡、あるいは単に財政健全化と言った方がわかりやすい、納得がいく、そういう内容です。それなら、簡単、簡明直截にそう言えばいいんであって、あえて構造改革などと意味不明の文言を使うのは一体いかなる理由なのか、財政構造というのは具体的にどういう意味なのか、わかりやすく説明してくれますか。
  158. 三塚博

    国務大臣三塚博君) まさに構造改革という四文字が特徴的なエッセンスと言ってもいいくらいの重みを持つものであります。建築も、地盤と構造が完璧なときに御案内のとおり地震にも強く万全であります。  そういう中で、ようやく戦後五十二年を経まして、我が国の行政、財政そして万般が時代の潮流に取り残されていくのではないかということ。それと、巨大な債務を抱えて利子で自分の首を絞めていかざるを得ない状態が展望できる事態に遭遇いたしましたときに、一刻の猶予もないがしろにできないなと。こういうことで、まさに構造改革というこの四文字がその中核になりました。  聖域なき見直し、全体の制度を見直す、そしてよりよきものを新しく立案、そこから誕生をせしめる、こういうことであろうと思います。
  159. 志苫裕

    志苫裕君 行革でも財政改革でもそうですが、橋本内閣が手がけているテーマで一番大事なのは国民理解協力です。国民には経済や財政の専門家ばかりがそろっているわけじゃない。後に出てくる貯蓄投資差額なんというのもそのたぐいですが、わかりにくい用語で素人を困惑させて納得を強制するのは専門家公害だ、これは。官僚の不遜だ。御注意を申し上げておきたい。  一般に、構造というのは、幾つかの材料を集めて物をつくる組み立てとか組み合わせのことをいうのでありまして、広辞苑によりますと、全体を構成する諸要素とその諸要素相互間の対立や矛盾、それらの総称を構造というとありますね。社会現象の場合には、伝統や歴史、習慣さらには文化、そんなものがその諸要素に含まれる。直接観察されるものよりもその根底にあってそれらを生み出すものをむしろ構造というと、このように記述がございます。  ならば、これに従って、財政の構造の諸要素は何と何ですか。そして、財政悪化をもたらしている構造的要因はどれか。改革とはその何をどう変えようというのか。これをひとつ少し説明してくれますか、あの日曜日の「こどもニュース」くらいにわかりやすい言葉でね。
  160. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 御指摘をいただきましたわかりやすいことということになるわけでございますが、財政構造改革がなぜ必要なのかということになりますと、一年の家計もそうで、国の予算もそうでありますが、歳入に見合った歳出をやってまいるというのが基本的な家計の姿であります。  ところが、お国には必要なもの、やらなければならない取り決めがございます。歳出を固めて税収を求めるわけです。税収がそれとイコールしておるのであれば、まさにそれでオーケー、よろしいと、こういうことになるわけでありますが、税収が歳出に及ばないものでございますから、その足らず前を国債費借金として導入せざるを得ない。これをしばらくやってまいったものでございますから、それによって債務が吹きだまりました。利払いをするために予算の二〇%近いものを拠出していかなければならないと。額にして、ことしは十七兆でありますけれども、ちょうど税収と歳出歳出の分の利払いと、こういうことでありますので、やはりこれの、借金歳出関係を遮断していかなければならないのではないか、こういうことであります。
  161. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣、私は、なぜ構造改革をするのかということを聞いているんじゃないんですよ。構造改革とは何だということを聞いているんです。  法案は、これでもかこれでもかというように歳出抑制削減一点張りでしょう。また、よく言われるように、聖域なき削減とか、そういうたぐいのものを構造改革とは言わぬのです。経費の伸び率を抑制するだけではなくて経費そのものの存廃を決める、国と地方の役割を見直す、官と民との区分をし直す、こういうことを構造改革と言うのでして、そういう規定はないじゃないの。  重ねて聞きますが、例えば法案では補助金について、交付の対象となる事業の検討を行うとか見直しを行うというくだりがありますね。だが、事業の採択基準や中止もしくは廃止の条件など、そういうものは別に載っているわけじゃないですね。こういうことは一体どこがいつごろまでにどういう物差しで答えを出すのですか。その辺答えられますか。
  162. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) お答え申し上げます。  補助金等につきましても、これは予算編成段階で個々に検討していくわけですが、その基本的な考え方としては、ただいま志苫先生の方からお話のありました、例えばこれは国がやるべきか、地方がやるべきか、民間がやるべきか、あるいは国と地方との関係ということで個々の事業をすべてそういう観点から見直して、やめるものはやめるという結論が予算編成段階で出てくるということでございます。
  163. 志苫裕

    志苫裕君 いや、だから私この際申し上げておきますが、そういう大事な仕事は大蔵省がやるんだというふうに思い上がっちゃいかぬと。地方もあれば民間もあればさまざまな交付を受ける人もいるわけですから、さまざまな立場の者がみんな寄って事業の存廃、採択したりあるいは中止したり廃止するような物差しを決めていくと。もう要らなくなってもずっとやっているじゃないですか、どこどこのため池だとか何とかダムとか。  そういう意味では、とにかく大臣日本政府はすっかりもう貧乏しちゃったからこれからは余りお金のかかることはしない、財政は余り働かないようにしたいと、こういうことですか、構造改革というのは。一家の家庭に例えますと、おやじもそろそろ年だから、何かあったらおやじに頼むようなことはやめなさいと、こういうことを子供に言いたいんですか、一口に言うと、構造改革というのは。
  164. 三塚博

    国務大臣三塚博君) お言葉ですけれども、決してそうではないんです。この時期に来て大変なものですから、もう一回自分の家を見直そう、見直しをしてむだはないかと。隣の奥さんが、あそこはぜいたくしてむだしていますね、人から借金までしてどうしているんでしょうねと。例えが余りよろしくありませんでした。例えばの話、そういう声をしっかりと体しまして、しからばどうするのかということであれば、これも隣の奥さん、近所の尊敬する恩師、どうしたものだろうと。こういうことであれば、いや、おまえさん、ここはこう直せ、これはこうしろと、やっぱり将来のために、子供は頭のいいお子さんなんだからアメリカの大学にでもやって頑張らせるとか、いろいろあると思うんです。そういうことをやろうと。  ちょっと余り俗過ぎまして申しわけないのでありますが、要すればあと三年で二十一世紀なものですから、二十一世紀に入るときは、我が日本が名実ともに、世界から大変な国家でよくあそこまで戦後五十年で来ましたねと言われた誇りと名誉、これをさらに挽回して評価をされるようなものに仕上げていきたい。そのためには、大蔵省が決めるわけじゃありません、この法律によって明示をいただきましたところを内閣が責任を持って決めますし、与党の皆様方の御進言、御提案を受けて、また野党でありましょうとも、お国のため、国民のためになるほどというのであれば御提案をいただき検討して進める、民主主義の原点に戻らなくちゃいけない時期に来ましたね、こういうことであります。
  165. 志苫裕

    志苫裕君 じゃ、ちょっとこの構造改革のまとめをしますが、そうすると、資源配分の適正化とか所得の再分配とか景気の調整とかといった伝統的な財政の役割がありましたね、役割とか働き。こういうものはこれからはもう期待ができないという意味ですか、もう余り期待してくれるな、そういうものを放棄する、変更するというのが構造を変えるという意味ですか。
  166. 三塚博

    国務大臣三塚博君) そうではありません。キャップをかけて七%減ですとか……
  167. 志苫裕

    志苫裕君 それは財政削減の方法じゃないですか、そんなことは。
  168. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ありますね。それで抑制縮減もありますね。政策を出しできますのはそれぞれの担当省が、今の行革で一府十二省というのがありますが、今の省庁が提出してまいります。この出た省庁の政策法律によって政府原案をつくる大蔵省がそれぞれのセクションで真剣な政策論争をして取り組む、こういうことになります。
  169. 志苫裕

    志苫裕君 いや、私は構造改革意味を聞いているので、大蔵省一生懸命やるのは結構、それはそれで結構ですがね。  だから、国民にはもう余り政府に甘えぬでくれ、できるだけ自分でやれることはやってくれ、道を直すのも、昔は道普請で村の人が出てやったんだからそれでやってくれ、年寄りの面倒はできるだけ隣近所の人がみんなでやってくれ、年金も昔のような高い水準じゃだめだからちょっと下げて我慢してくれというわけですから、結局政府はもう働かない、働きたくないということを決めてかかっているのがこの法案だというふうになれば、おぼろげながら法案意味がわからぬわけじゃないが、そうではないと。あなたは一生懸命汗かいて答弁されているが、キャップをかけて幾ら幾らと歳出を減らすのはなぜか。節約しよう、けちけちしょうというのであれば、けちけちやって、節約して何をしようとするのか、どこにも書いてないんです。  一般の家計であれば、食費を詰めて衣類を買おうとか、食費を詰めて家族で旅行に行こうとか、そういう楽しみがあるんですよ。今の財政構造改革というのは、節約とけちけちは言っているけれども、だから何をしようという将来に対する希望も楽しみもないんですよ。だから国民はしおしおしている以外にないんだな、毛利元就みたいだけれども。しおしおする以外にないんだ。そうしたら暗い気持ちになる。不況だ不況だと言うが、精神的な不況だ、これは。政府の不況だな、本当に。  そういうことを言いたいので、そうではなくて、これからも例えば経済に対する政府や国の関与というのは続くんですか。もうそういうことは一切排除するんですか。本来、経済社会に国なり政府は関与しちゃならぬものなんだという認識なり哲学でこの法案が出るんですか。どういうことですか。その辺を聞かせてください。
  170. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 公的機関である行政、政府国民によって選ばれ内閣を構成されるわけでございます。それぞれ国家理念、国民の今後のあり方の展望をしっかりとお持ちでございます。そういう中でこの国の誇りを、またこの国の伝統と文化をしっかりと堅持しながら、同時にこの国の、今経済問題が盛んな論議になっておりますが、持てる力、このことがフルに発揮をされていくことによりまして展望が開ける経済体制になるわけであります。  そのために政府は、基本をしっかりと踏まえながら頑張れと、こう激励もしなければならぬことは当然のことでありますし、一生懸命頑張り抜いておる国民に対して、要請があれば、これは企業者の話であります、サポートをしてやることも当然のことでありましょうし、地域社会厚生に、ここまではやりましたがこの部分はサポートしてくれ、応援してくれというものについては、分析と最終的な政策決定によって行うこともあることであります。  まさに、今日までの日本経済を支えた、護送船団とよく言われますが、政府中心に、政治中心に経済界と一体になってやってきたことに問題がありますね、いい点もありますが問題もたくさんありましたねと。ここを分析し、経済は民によって行わしめる、こういうこと。民によって行い切れない部分は従前どおり政府が行わなければなりません。外交、危機管理、まさにそういうことになるわけでございます。  そういう点で、決して委員が言われるようにあとは勝手にそっちでおやりなさいということではなく、公として、政府としてやり得るものの仕事は憲法に定められておる、法律にも定められておるわけですから、しっかりとやると。しかし財政構造、そして債権でございますから、この赤字体質からの脱却のために国民の皆様とともに辛抱し、頑張らせていただきましょう、こういうことだと思っております。
  171. 志苫裕

    志苫裕君 それならそういうふうに言えばいいので、右向けば年金を切る、左を向けば医療費を上げるでしょう、それから何か道が壊れても直さぬという話だけれども。ですから、このままやりますともう国土が荒れようと行き倒れが出ようと国は知らぬよ、財政はお手伝いしないよということじゃないの、この内容は。  そうではないのならないように、それは政府をつくって国家を構えている限り、経済が不安定になれば政治が不安定になるんですから、政治が不安定になれば体制が揺らぐんですから、体制を守るために政府や国家が関与するのは当たり前、民生安定のために財政が出動するのは当たり前、それは国家存立の理由なんですよ。  このままいきますと、財政構造改革というのは国家が国家でなくなるという道だ。その辺もう少し、今辛抱せいと言うのなら国民も辛抱するでしょうから、辛抱したら先に明るさがあるとか、何かそういう政治宣言をするとか、法文でそのような希望をうたうとかというようなやり方があってもいいと思うな。私は、きょう本当は総理がいたらその辺のところを議論したいところなんだけれども。  本当に暗いね、この法案。貧乏して大威張りこくようなばかなことはできませんけれども、それにしても暗いね、これ。後で言いますが、財政赤字で大変だ大変だと言いますけれども、それは何百兆円も投資をしたということはどこかに何百兆円の財産があるということなんですから、そんなに危機だ危機だと言うのは正鵠を射ている話じゃないと思うんですよ、これは。そういう話じゃございませんか。もう少し何か明るい話をなすった方がいいわ。
  172. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 明るい話は、これが仕上がりますと展望が開いできます。  というのは、国鉄改革の話ばかりして申しわけありません、最終的に御支援いただき成功をさせていただいたものでありますから。運賃収入をもって利払いが賄えなくなったとき、まさに破産でした。ですから、分割・民営化方式という革命的な手法が取り入れられ、今日のJR各社生き生きと、これがあの国鉄だったかともう言う人がいなくなるほど、ありがとうございますと感謝をされまして、またしっかりと頑張っておられるというところになりました。この国鉄改革の破産状態を再生させたときの何十倍のスケールの大きいものだとお考えいただければおわかりいただけると思います。  そういうことで全力を尽くす。集中三カ年は、まさにこの三カ年を勝負として、二十一世紀の扉をたたくときにはさすが日本と言われるようにしなくちゃいけない。一時の御辛抱です、しかし大事な仕事はやりますと。こういうことで、これは各省から重要政策が出てくるわけですから、もう基本的な国の業務として放置できない、やらなければならないものはしっかりと下支えをやります、しかしむだなところは削りますよ、辛抱していただけるところは辛抱してください、しかしそんなに長いことお待たせばいたしません、こういうことであります。  橋本首相にも志苫先生の本日の言をよく伝えておきます。
  173. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣、大事な仕事はやりますと根性よくほいほいと言っておるのであればこんな法案は要らぬのですよ。だけれども、それは断るものもありますよということをちゃんと言っておるわけでしょう、我慢してくださいと。我慢してくださいと言うのなら、我慢が終わった後にはこんな明るさがありますということぐらい一緒に言ったらどうですかということを私は言っておるわけです。  こういう法案をもしお書きになるんでしたら、一体どんな国を目指すのか、どんな社会をつくるのかということぐらいは法案の趣旨説明に出すべきですよ。あなた、総理大臣が減らすと言ったらみんな減らす減らすばっかりで、念を押されると、いや、大事なことはふやすんだと言うけれども。  そうすると、日本は平和で豊かな福祉社会、福祉国家を目指してきたんですが、その路線を変えるわけじゃないんですね。
  174. 三塚博

    国務大臣三塚博君) その基本は国是でございますから変えません。
  175. 志苫裕

    志苫裕君 念のために、憲法十三条には、すべて国民は生命、自由及び幸福追求に対する権利がある、二十五条には、国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の増進に努めなければならないとありますね。  これは、見ようによっては国民の権利は抑圧されるし、国の責任は放棄されるしと、そういう非常に際どい法案ですね。そうお思いになりませんか。
  176. 三塚博

    国務大臣三塚博君) そう思いません。  という理由は、憲法を基本として国家をつくっておるわけでありますから、そのシビルミニマムを決めたもの、また基本的な義務というものはきちっとお互いが実行しながら権利の追求、これもしっかりと全体として押し上げていくということになろうと思います。  第二条に書いておりますが、将来に向けてさらに効率的で信頼できる行政を確立したい、そして安心で豊かな福祉社会及び健全で活力のある経済を実現する、以下そのためにと、こうここには書いてあるわけです。できるだけこのことをわかりやすく訴えてまいりたいと思います。
  177. 志苫裕

    志苫裕君 わかりました。そう暗い話ばかりでもないということが少しわかったので、次へ行きましょう。  この改革目標によりますと、一つは二〇〇三年にはGDPの三%に財政赤字をとどめたい、それからストックの累積赤字も確実に減らしたい、こうなっておりますね。  それらに関連して聞きますが、二〇〇三年、六年後ですね。志を立てて遠大な計画を立てるときには五年後とか十年後というのが普通ですね。六年後というのは余りないです。清水次郎長は五年後に海道一の親分と言ったものだ。そうでしょう。それから、自民党の有力な代議士は十年後に総理大臣と言ったでしょう。五年後とか十年後というのはあるが、六年後に三%というのは余り知りませんね。六年後の意味と三%の根拠をちょっと聞かせてくれますか。
  178. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 三%は国際連合の定めたルール、あと必要があれば専門的に答えさせますが、お役人が答えますと私よりわからなくなりますから私から申し上げます。  いわゆる世界的ルールでありますから、投資、所得のバランスをとって計算したその差額分をどう見るか。いわゆる三%というのは単年度においてはぎりぎりだな、それ以上赤字を出しちゃいかぬな、こういうことが健全財政基本でありますと、こういうことになっております。  さて、なぜ六年なんだと。最初、九カ年計画というのが言われておりました。しかし六年になりました。六年になりました意味は、前三カ年を集中三カ年とする。このときは、つらいことでありますが、大事なものはきっちり納めさせていただきますが、辛抱できるものは御辛抱ください、時に廃止するものもありますよと。補助金等にあるわけでございますが、これも一〇%カットをめどにということにしております。  集中三カ年でやることで、後の三カ年はいい形でいくのではないでしょうか。この三年が勝負です。この三年が諸条件によってずれるということになれば六カ年かかります。二段構えですが、一段構えの三年ですべてをかけて全力を尽くし、今申し上げました国のベースをつくり、生まれ変わらさせ、展望の開ける日本経済のこれまたベース、地域社会もそのベースを構築しよう、こういうことであったと思います。
  179. 志苫裕

    志苫裕君 いや、大臣、前段にお答えになった国際ルール云々は、それは財政赤字の定義の話じゃないですか、三%には国際ルールなんかないんでして。  それから、六年を二つに割れば前半三カ年、後半三カ年になるのは当たり前の話で、その程度の理由なら大した六年の意味がないじゃないですか。景気対策のために、場合によればスローダウンすることだってできないほどの話でもない。地震が来たから少し国土建設費でもふやすかということもできぬ話でもない。そしてまた、六年には金科玉条の最大の理由でもあるのか。六年後には何か天変地異が起きるとか、ハルマゲドンでもやってくるとかなんとかといろんなら、これはまた別ですよ。そうでもなければ、それはもう少し弾力的に考えることもできるんですね。そうやって緩みが出ることはいけませんがね。
  180. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 先ほど申し上げました三プラス三というのは、まさに集中三カ年は待ったなしという意味であります。つらいからここでもう一回痛みをとめるためにカンフル注射をするかな、これが実はバブル後、累次にわたる財政投資の中で今日の最悪の状態をもたらした原因です。もちろん、投資したものがむだであったと私は申し上げるつもりはありません。それなりに下支えがありましたけれども、それによって投じた莫大な赤字借金の利払いで自分の首を絞められるという状態になってしまいましたねと。ここが基本であります。  ですから、ここのところは辛抱して頑張り抜くことによって通り抜けさせていただく、我慢と辛抱だ。しかし、ベースのことはきっちり、国民生活の基本は憲法と法律によってきっちりとなっておるわけですから、これはこれで大事にしながら、総体の予算獲得のためには担当しておるその役所が優先順位を与えてやはりきちっとやってもらう。ですからお役人も、我が局、我が課ではなく、全日本、こういう形で視点を変えていただきますと物事は前に進むのではないでしょうか、こう申し上げているわけです。
  181. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣、あなたは何を聞いても財政が大変だということの説明しかしませんね、余り。私の聞いていることにもう少し正確に答えてくれますか。三%は何ですか、三%は。どうぞ、どなたでもいいです。
  182. 尾身幸次

    国務大臣(尾身幸次君) 一応、三%は、いろんな学者その他の専門家の計算によりまして、財政赤字幅が三%であればGDPに対します債務の残高が累増しないという、一応のめどとして三%という数字が出てきたというふうに聞いております。  ただいま現在は、債務残高地方、国を合わせまして約一〇〇%に近いわけでございますが、その数字、GDPつまり経済の大きさに対する累積する債務残高がふえない限度が三%である。三%以内であれば全体の経済の枠に対する残高がふえないという、そこをめどにいたしておりまして、それが確保されればあとはいわゆる雪だるま式の段階から脱却できる、こういうふうに理解をしております。
  183. 志苫裕

    志苫裕君 三%もそういう意味だということになると、私はまた、何かよくマーストリヒト条約でEUの統合、これに門限があって、そこまで間に合うには実行しないと仲間に入れてくれぬのだというような説明をする方がいますが、それはEUの話であって、日本は別にEUに行くわけでも何でもない。今のような三%のメルクマールというのは、この辺を超すとむしろ雪だるま式に債務残高がふえていく、そういう意味であれば、これも割合にそうせっぱ詰まったものというよりは弾力的に考えてもいい。六年もある程度の弾力性があるし、三%もそういう意味のものであるとすればもう少し、ルーズにならない程度に弾力的な運用は可能だ、急に国家が国家であることをやめるほどのしゃちほこばった話でもないということだけ念を押しておきましょう。  法文によりますと財政赤字の定義がうたわれておりますが、ここでも貯蓄投資差額、これも耳なれない言葉ですね、これ。冒頭にも言いましたが、財政改革の成否は国民理解協力なんでして、余り聞いたこともない言葉も私は余り感心しませんね。それなら、一般会計の国債の残高と発行額地方団体の地方債の発行残高の合計額をいうとか、その程度の方がわかりやすいし、予算書や決算書をひもといても容易にわかる数値も出そうだ。これじゃ何のことだかわかりませんね。  大体、会計の数にしたって、特別会計だけでも気が遠くなるほどたくさんあるわけですから、これに企業会計だ何だと入ってきますと、そんなに簡単にこの投資差額などというものが国民にわかる数字でもない。出回っている予算書や決算書を見たってこんなもの容易にわかる話でもない、そのように思いますね。これらも、今後のこともありますが、今後はそういうのはみんな役所が計算してちゃんと公表することになっているから心配するな、あなたなんか、志苫なんか余り計算せぬでよろしいと言えばそれだけの話ですがね。  ところで、ここで地方政府というコンセプトが初めて登場しますが、地方政府という法律用語は、今までどこかの法律に載ったことがございますか。
  184. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) 地方政府という文言は、法令検索を行った限りにおいては前例はございません。
  185. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと意地悪質問なんで悪いが、同じ地方公共団体に関してこの法律では四つの文言がありますね。地方団体、地方公共団体地方自治体、地方政府、それぞれ、赤字のところへいきますと地方政府になるんですが、けちけち節約せいというのは地方公共団体になっていますね。何か使い方の意味がありますか。
  186. 涌井洋治

    政府委員涌井洋治君) この法律の文言上、地方政府という文言を用いましたのは、先生にしかられております財政赤字規定国民経済計算の体系における概念を使っているものですから、そこで今まで前例のない表現であります地方政府という言葉、文言を使っておるわけでございます。
  187. 志苫裕

    志苫裕君 これは、さっき大蔵大臣がお答えになった国際的なルールに合わせるという意味があるんでしょう。そのように解しましょう。  ですが、私、非常に気になりますのは、六〇年代の後半に東京とか京都のようにいわゆる革新自治体と言われるものが続々と登場しまして、地方の時代を主張し地方政府を標標したことがございました。その当時は、中央の政治や政府によって一蹴されて日の目を見ることもなかった。  ところが、今回登場します背景を見ますと、地方主権を主張して確立しようというときには地方政府という文言は出てこない。中央の言うことを聞いておまえも国に倣って財政を節約してくれというように、逆に主権が制約をされる、こういうときには地方政府論として登場するというのは非常に不幸な文言の使われ方だと私は思います。地方自治をライフワークとしている人間にとっては非常にこれは気になるということだけは申し上げておきましょう。  さらに、自治大臣もいらっしゃいますね、これは言うまでもないことですけれども、ここで私は主張しておきたい。地方政府は一つにまとまった団体ではございません。それぞれに個性を持った三千三百の自治体のことです。気候、風土はもちろん、歴史も伝統も文化も違うし、地域公共財の提供の仕方も違っておる。それを一括して十把一からげにして同じ物差しで、何とか三%減らせ、何とか五%減らせというふうに財政改革を強制すべき筋合いのものではない。  ですから、この法律地方政府も一律に論じられるのは著しく分権の思想や潮流に反する。具体的な財政改革においては、自治体固有の事情とか工夫もしくは地域主権、これらの行使が尊重されて配慮されるべきだ。  これはひとつ自治大臣大蔵大臣にお答えいただきましょうか。
  188. 上杉光弘

    国務大臣(上杉光弘君) お答えいたします。  委員指摘のとおり、地方三千三百の団体にはそれぞれ違った個性のある顔がございます。したがいまして、これらの認識を踏まえて申し上げますが、財政構造改革は国も地方公共団体も一緒に足並みそろえて取り組まなければならない重い課題でございまして、地方自治の観点から、個々の地方公共団体財政運営法律により直接拘束するような手法はとるべきでないと考えております。  また、御指摘のとおり、それぞれ財政事情その他、事情の違う、個性の違う三千三百の地方団体の集合であることについては十分注意しなければならない。極端な例を申し上げますと、たびたびお答えしておりますが、地方財政は公共投資、社会保障及び教育の三分野で一般歳出の七〇%を占めるわけでございます。これは地方がどんなに自主的な努力をいたしましても、国の施策や予算と密接に関連をしておるわけでございますから、地方だけで歳出削減努力は実るものじゃありません。  したがいまして、そのような立場にも立ちまして、財政力の弱い市町村が基本の三千三百でございますから、十分目配り、気配りをして対応しなければならぬと考えております。
  189. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 自治大臣が言われた基本に私も賛同であります。  国と地方が車の両輪でありますから、両々助け合い、そして地域と国民は同一人でありますので、一生懸命相努めてまいる、こういうことになります。
  190. 志苫裕

    志苫裕君 もう時間が来ましたから結びにしますが、いろいろやってきましたが、財政の状況は厳しい、それは認めないわけではありませんが、財政危機と言われるほどのキャンペーンを張らなきゃならぬという状況だとは私は思いません。  さっき言いましたけれども、もちろん累積債務は大きいけれども、同時にそれだけのお金を使って何らかの資産をつくってきたんですから。その資産は、例えば国債でいえば国債の四〇%以上は政府機関が持っておるんですから、そこから利子も生み出しておる。その利子の収入だって歳入に組み込んだっていいわけです、今は組み込んでいないようだけれども。そのほか、これは民間の会計のように貸借対照表で置いたらそんなに大騒ぎをするほどの大きいものではない。  そう考えると、私は財政危機のキャンペーンというのは歳出削減のプロパガンダの意味を持っておるんだな、このように善意に解釈しますが、同時に、もう少し正確に実態に即して事実を検証して説得力のある説明をしたり提案をなさった方がよろしいということを最後に申し上げておきます。これはよろしいですか。いいですね。ではこれで。  どうもありがとうございました。(拍手)
  191. 山下芳生

    山下芳生君 先月下旬に起きた世界同時株安は、日本経済の不況の深刻さを鮮明にいたしました。他国の株価が持ち直した中で、低落傾向が続いているのは日本だけであります。七日には二年四カ月ぶりに一万六千円台を割り込んで、国民の不安を一層駆り立てております。  そこで、大蔵大臣にお伺いをいたします。  バブル崩壊に始まる九〇年代の初めからの構造的な不況を今日のように深刻化させた主な要因は何か。専門家の間では、消費税の増税、特別減税の廃止、医療保険改悪による九兆円の国民負担増がもたらした個人消費の落ち込みだとする分析が専らですが、大臣、この分析、お認めになりますか。
  192. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 消費税引き上げによる二%でありますが、これが回復が遅くなってきたことの一つの要素であることは間違いありません。しかしこれも、今後の構造改革、規制緩和等を真剣にやることによってビジネスチャンスを広げ、活力を押し上げるということになりますので、克服できる範囲であります。
  193. 山下芳生

    山下芳生君 今、大臣は一つの要素とお言いになりましたが、私それは少し甘い見方だというふうに思うわけです。  いろんな要素がありますけれども、今度の景気が深刻になっている主な要因は個人消費の低迷だと。実際、四−六期の個人消費は前期に比べて年率で二〇%落ち込んでおります。  大臣は例えが大変お上手ですので、私も倣いまして、野球に四番打者、相撲に横綱がいるように、景気にも主役がいる、それが個人消費だ、こう言う方もあります。実際にGNPの六〇%を個人消費が占めている。間違いなく主役なんです。その主役が今落ち込んでいる。主役の役割は大きいと思いませんか。
  194. 三塚博

    国務大臣三塚博君) それに異論を唱えるつもりはございません。  しかし、全体の需要を見ておりますと二つに分かれておるわけでございまして、スーパー、コンビニは順調であります。百貨店も売れ行きが対前年比プラスになってまいりました。機械受注が設備投資に結びつくわけですが、この部分も安定しております。こういうことを考えますと、消費との関連をどう見るかということですと、スーパーもコンビニも消費者の皆さんがたくさん行く、しかし日常商品が中心でないかと言われればそれがベースかもしれません、しかし、全体的な、全国的な兆候がそこにあらわれておるということであることは間違いないかと思います。
  195. 山下芳生

    山下芳生君 個人消費という主役が落ち込んでいることに異論はないと大臣もお認めになりました。そうであるなら、景気対策、内需拡大のためにはその主役である個人消費を直接暖める政策が今何よりも必要だと思うんです。ところが、財政構造改革法案が想定している改革を見ますと、歳出削減ばかりで、個人消費を一層冷え込ませる要因しか見当たりません。  大臣にお伺いしたいんですが、この法案に、景気をよくする、個人消費を暖めることにつながる要因があるでしょうか。あるとしたら法案の第何条、条文のどこにそう書いてあるとお思いになるのか、ぜひお聞かせいただきたいと思います。
  196. 三塚博

    国務大臣三塚博君) あるということであります。行政改革があります。高コスト是正の経済構造改革があります。こういうセッティングの中で見ていただくというのが大変大事なことであります。  特に、ポイントだけ申し上げますと、財政が健全になることによって経済運営の基盤が安定してまいります。持続的な成長がそこに確認をされる、  こういうことになると思いますが。
  197. 山下芳生

    山下芳生君 私は、主役である個人消費を暖める要素はあるのかないのか聞いたんですけれども、行革や経済構造改革が結果としてとお言いになりましたけれども、今の個人消費の落ち込みというのはそこまで待てないほど深刻に落ち込んでいる。その落ち込んだ個人消費を、結果としてじゃなくて、直接暖める要因が法案の中にあるでしょうか。あれば教えていただきたい。
  198. 三塚博

    国務大臣三塚博君) その前に、これは不透明さというのが不安感につながりまして、消費者の皆さんが多事に備える、有事に備える、生活ガードであることはわかります。ですから、不透明、不安感を払拭するための最大努力をただいまやらさせていただいております、こう申し上げたいわけであります。
  199. 山下芳生

    山下芳生君 結局、条文のどこにあるかは答えられません。  私は、法案のどこを見ても個人消費を暖める要因はないと。あるのは、大臣がおっしゃった不透明、不安感を、国民の消費購買力をより増長させる社会保障や教育費などの国民生活に直結する予算を三年間向こう連続で削減するわけですから、これはむしろ個人消費を冷え込ませる、実質可処分所得が伸び悩んでいるもとで社会保障や教育の分野での負担増というのは他の分野の消費を冷やしていく、深刻な不況に追い打ちをかけることにならざるを得ないというふうに思うんです。  そこで、今の消費低迷の特徴について少し考えてみたい。  今の消費低迷の特徴の一つは、中堅ないし低収入層の消費が一番落ち込んでいることにあります。  配付した資料の一枚目をごらんになっていただきたいんですが、総務庁の家計調査を見ますと、勤労者世帯で年収上位二〇%に属する層の実質消費支出は、確かに政府の言うように、消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動減からほぼ脱して、八月には前年同月比横ばいになりました。ところが、下位二〇%の層では、税率上げ前の駆け込み需要もほとんど見られないまま四月以降落ち込みが続いて、八月は一〇・七%減となっております。  中低収入層の消費低迷はきわまっているというこの事実、大臣、お認めになりますか。
  200. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 国民経済計算経企庁長官いなくなっちゃったんですが、全体の中で、先ほど来申し上げておりますとおり、不透明感が消費を落ち込ませて慎重にさせておる、こういうことであろうかと思います。  ですから、不透明感を払拭して、直接話法ではありませんが、大目標が、第二条に書いておりますとおり、将来に向けてさらに効率的で信頼のできる行政府をつくり上げていく、そして安心で豊かな福祉社会及び健全な活力ある経済を実現します。ここに信頼を寄せていただく。そのバックデータが、堀内通産大臣がやっている高コスト構造の是正、ビジネスチャンスの拡大、こうなります。  それと行政改革、本当にやるんかいなと。大体、歴代の各首相、一省を廃止するのに一内閣で仕上がることはないという名言を吐いた、何人かおります。しかし今度は、全体を見直そうということにしておるわけですから、やれっこないよというのができるところまで来ました。来週その最終結論が出ると思いますが、そこからまた変わるんです、全体の空気がですね。私は、そうなると信じております。
  201. 山下芳生

    山下芳生君 私、全体の中でも特に中低収入層の消費支出が落ち込んでいることをお認めになるのか聞きましたが、なかなかお答えになりませんでした。しかし、これは事実ですから認めざるを得ないと思います、数字で出ておりますから。政府の統計ですから。  この点で、私、問題提起したいのは、財政構造改革法案が示している各歳出分野における改革基本方針などが、中低収入層の家計負担をふやしてこの層の消費の落ち込みを一段とひどくするのではないかという問題であります。  まず検討したいのは、社会保障の分野であります。  法案と直接関係はありませんが、この九月から実施された医療保険制度の改悪はこれから国民に重い負担となってのしかかってきます。マスコミなどでは年二兆円の国民負担増と予想しておりますし、厚生省も、患者負担増九千八百億円、政管健保の保険負担増二千二百億円、合計年一兆二千億円の国民負担増になると推定をしております。過去の医療保険制度の改悪と比べましても、一けた違う大幅な負担増であります。  この九月からの医療費負担増が個人消費にどんな影響を与えるとお考えでしょうか。大蔵大臣、お願いします。
  202. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 個人消費にどう影響を与えるかということですが、その前に社会保障制度年金もございますが、医療分野において、まさに万人にひとしくお金がありませんから、難病を治すことができませんでした、助かるところが助かりませんでしたと、かつて戦前ありました。そのことだけはなくなりましたですね。高額医療、これも一定の負担はございますけれども、ほぼ支払いができるラインにきちっと決めておりますですね。そういうことで、我が国は社会保障国家として、福祉国家としてきちっとそこのところはキープされて福祉国家建設の国是に沿って進められておる、こう見て間違いがないんだと思うのであります。  そういう点から、高齢者が急速にふえてまいり、介護がひとつ重要なことになり、今真剣な論議が参議院において行われておりますけれども、これらを制度として二十一世紀以降も機能するようにしていく努力をされておると私は見ておるわけでございます。  そういう点で一つ一つ見ますと、それぞれの問題点、人によってあるかと思いますが、万人にひとしく平等に愛情を持ってというのが民主主義の原則ですから……
  203. 山下芳生

    山下芳生君 個人消費について。
  204. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ですからそういう意味で、そういうことから見れば、個人消費も今後の不透明な、前段にまた戻らさせていただきます、霧を払って見通しが立つようになりますと安心をしていけるのではないかと思います。
  205. 山下芳生

    山下芳生君 今の答弁聞いてもだれも霧が晴れそうにないと私は思います。  個人消費にどんな影響を与えるのか、この点でもう一つ指摘したいのは、保健医療分野の負担増というのは高収入層と比べて低収入層により重くあらわれるということであります。  配付した資料の二枚目をごらんになっていただきたいんですが、これも総務庁の家計調査から作成いたしました。病院の窓口での診療費などをあらわす保健医療サービス支出の収入に占める割合であります。これまで常に高収入層よりも低収入層の方がこの医療負担の割合というのは高かったんですね。しかも、それが九〇年代になって格差が年々拡大している。そのグラフであります。  この間、不況のもとで年収自身が格差が拡大している。これが一つのベースの要因にあります。同時に、入院給食費の患者負担の導入などの影響がここには出ているんじゃないか。つまり、医療費負担増というのは低収入層により重くのしかかる、不況のときにはそれがより顕著になるということであります。  九月からの二兆円の医療費負担増もこの不況のど真ん中でやられたわけですから、低収入層により大きな打撃となってあらわれ、落ち込んだ低収入層の個人消費をさらに冷え込ませる要因になる、その危険があると私は思いますが、大臣、この点いかがですか。
  206. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 収入の比率の中で個人負担分が重くなる、高収入の人とこんな明らかな差になります、そういう点でございますが、本件を見ておりまして、一つの傾向を総務庁統計局が調査によって作成されたと思いますけれども、これがすべて全体をあらわしておるのかどうかは検討させてください。
  207. 山下芳生

    山下芳生君 いや、政府自身ですよ。
  208. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 「保健医療サービス支出負担率」と、こういうことになっているわけですね。
  209. 山下芳生

    山下芳生君 政府の資料からつくったんですよ。
  210. 三塚博

    国務大臣三塚博君) それわかるんです。ですから、具体的にどういうことなのか検討させて、また機会を見て申し上げさせていただきます。
  211. 山下芳生

    山下芳生君 検討は大いにしていただきたいんですが、私もこれが全部一々〇・一ポイントまで正確だということを認めろと言っているんじゃないんです。不況のときには医療費負担の逆進性がよりあらわれる、拡大されるという傾向が政府の資料からこのグラフにはあらわれているということなんです。これはもう事実なんです。結局、医療費負担増が低収入層に重くかぶさってくる、検討はされるでしょうけれども、これは否定できないはずです。  財政改革法案では、社会保障の分野でいいますと、この九月の九兆円負担増というのはいわば出発点です。これから義務的経費の自然増だけでも八千五百億円必要なのに、集中改革期間の初年度に当たる来年度は三千億円増に抑える、五千五百億円削減するわけであります。そのうちどの程度が国民負担増になるかは未定ということですが、国民負担がふえることは間違いない、減ることは絶対にありません。しかも、国庫負担削減の数倍の規模で国民負担増はあらわれるということであります。  それからさらに、厚生大臣がだから大変だとお認めになったように、来年だけにとどまらずに向こう三年連続、社会保障予算の伸び率が高齢者人口の伸び率よりはるかに下の二%に抑えられることになっている。つまり、法が施行されますと、今後、保健医療分野で国民負担の増大が連続する可能性が極めて高い、そうなればこれまた中低収入層の個人消費にさらなる打撃となるんじゃないか。個人消費問題です。どうでしょうか、大蔵大臣
  212. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 個人消費問題はその都度その都度の調査によって動いてきているわけですが、決してその傾向を私は否定するつもりはないんですよ、毎月毎月の中の動きを短期でなくもっとミドルで見るということが大事なのかなといつも思うんです。この間、第二・四半期で一一・何がし対前年比下落の数字がございました。三カ月を半年にならしますとまた別な数字があらわれるというケースもありました、これ以上申し上げませんが。  そういう点で、ちょっとミドルで見ていきませんとならないのではないでしょうかという感想を申し上げておきます。
  213. 山下芳生

    山下芳生君 傾向は否定するものではないとお認めになりましたし、それからこれは月ごとじゃなくて年度ごと、五年間の変化をあらわしたものですからかなりロングスパンなんですね。もうこれはいいです。個人消費問題、冷え込むおそれがないかと私は聞きましたけれども、とうとう否定されませんでした。  次に、個人消費と並んで景気のもう一つの主役である中小企業について聞きます。  法案には中小企業の活力を尊重すると記述した条文があります。その中小企業の経営の実態はどうか。  大阪府中小企業家同友会が十月の末に実施した緊急調査というのがあるんですが、わずか四日間で五百五十四社からの回答があった。大変高い関心といいますか、危機が迫る状況だということがあらわれております。調査結果を見ますと、四−六期の対比で、売り上げが減った、四二・一%。利益が減った、五〇・四%。減収減益の企業が急速にふえているんです。尊重すべき中小企業の活力が失われているのが今の実態だと思います。  ところが法案では、その中小企業の対策費まで前年度の額を上回らないこととされております。中小企業対策費というのはもう皆さん御承知のとおり年々額が減らされてきた。  通産大臣にお伺いしますが、こういうことで中小企業の活力の減衰に歯どめをかけられるとお考えでしょうか。
  214. 堀内光雄

    国務大臣(堀内光雄君) 中小企業の活力を維持しなければならない、また産業の中での基本的な重要な地位を占めていることは先生のおっしゃるとおりでございます。  そういう意味で、中小企業対策費の総額につきましては、大変厳しい財政事情の中ではございますが、平成年度におきまして九年度と同額の千八百六十五億円を要求しているところでございます。中小企業対策の重点化、効率化を図ることを通じて中小企業対策に万全を期してまいりたいと思っております。  具体的には、市街地を中心とした中小小売商業活性化対策、あるいは物づくり基盤を支える人材育成対策、情報化等による経営革新対策等へ重点化を図っております。  また、小規模企業対策等の補助につきましては、事業のメニューの統合を図りまして、使いやすいように六本を一本にする、あるいは十四本を一本にするというようなことをいたしまして、使いやすさの向上を図るなどの工夫をしているところでございます。  さらに、政府系中小企業金融機関の貸付規模については、引き続き中小企業者の資金需要に十分こたえられるように規模を確保いたしてまいるとともに、高度化融資事業、設備近代化事業についても、既往の貸付金の回収等を最大限活用いたしまして中小企業者の資金ニーズにはこたえてまいりたいと思っております。
  215. 山下芳生

    山下芳生君 やっぱり額を抑えたままいかざるを得ないと。なかなか苦しい御答弁だったというふうに私は思います。  そこで、中小企業問題でもう一点聞きたいんですが、今都市銀行を中心に、中小企業に対するなりふり構わない債権の取り立てや貸し渋りが急増しております。中小公庫の調査でも、銀行からの借り入れの難易度を示す指数がことしに入って月を追って悪化、十月は二月に比べ一〇ポイントも落ち込んでおりますし、資金繰りに余裕があるか苦しいかを示す数値はマイナス一四・五、ことし最悪の水準であります。これまでも中小企業に対する貸し渋りはありました。しかし、今起こっている貸し渋りはこれまでとは質が違うものであります。  具体的な話を私もいっぱい聞きましたけれども、例えば、何十年もつき合ってきた、きちんと返済もしてきた銀行に突然融資を断られたですとか、追加融資を求めたら追加担保を出せと言われた、こんなこと初めてだという声であります。経営が大変になっているんじゃない、健全経営をやっている企業に対して銀行が突然貸し渋りを始めたということであります。  大蔵大臣にお伺いしますが、このような銀行による急激な中小企業への貸し渋りや債権回収は、本来地域経済に貢献すべき銀行の存在基盤そのものを崩してしまうことになるんじゃないでしょうか。
  216. 三塚博

    国務大臣三塚博君) たびたび本委員会におきましてもこの貸し渋りの話は出て、山下委員からまた改めて個別のケースの御紹介ありながらお話がありました。  貸出残高はここ数年必ずしも伸びてはおりませんが、その主たる原因については、金融機関側のいわゆる貸し渋りにあるという見方がある一方、企業側の資金需要の低迷にあるとする見方と二つに分かれ、一概に断定できるところまでは来ておらないと思っております。他方、金融機関におき  ましても、バブル期の反省などがございまして、リスク管理の強化が一般化いたしております。このような変化が取引先の企業から見れば貸し渋りと映るであろうと思います。  そういうことが考えられるわけですが、いずれにいたしましても貸し渋りがあるというようなことで指摘をされております。そういう意味の正常な取引の中の貸し渋りがあってはならぬと思いますし、委員指摘のように、金融機関の社会的使命というのはそれなりにあるわけでございますから、各金融機関が経営の健全性を確保しつつ、その資金、仲介機能を十分に発揮することは重要と考えておりますので、その点について必要があれば対応をしなけりゃならぬが、民間の金融機関なものですから、そこのところは自制しながら今注目して見ている、こういうことであります。  特に、今度は政府機関の問題、大蔵、通産、橋本さんの指示もこれあり、真剣に今論議し、中小企業庁担当の通産大臣政府機関金融の活用について、先ほども申されておりましたが、具体的な取り組みを始めております。私も、政府金融機関に思い切って融資申し込みに対応するようにと、こういうことで、もちろん窓口は貸し出し方針がありますが、信用保証協会の強化などもあると堀内さんも申されておるところでありますから、相協調して取り組んでまいります。
  217. 山下芳生

    山下芳生君 私も今御答弁の中にありました中小企業信用保証制度の果たす役割がますます大きくなっていると思います。  そこで、問題になるのが法案が示す補助金一律削減の対象となっている信用保証協会基金への補助金のカットであります。中小企業信用保証制度というのは、中小企業が市中銀行から融資を受ける際に乏しい信用を補完するために設けられたものであります。保証協会の基金の補助を削減することは、政府の補助金だけじゃないんです、基金というのは、それに連動して地方自治体や民間金融機関の出指金の減額につながる。保証の枠というのは基金の三十倍に設定されておりますので、この政府の補助金のカットというのが非常に大きな枠に対する影響になる、結果的には百倍程度になるわけです。これが毎年カットされていくことになるわけですから、これは私は、保証協会の基金が減っていくということで金融政策に対して貸し渋りを加速することになるんじゃないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  218. 堀内光雄

    国務大臣(堀内光雄君) 信用保証協会基金の補助金につきましては、所要の予算規模を確保すべく年末の予算編成の過程で財政当局と議論をしてまいりたいと思っております。
  219. 山下芳生

    山下芳生君 二十七億円が概算要求で減っておりますということを指摘して、この法案が個人消費と中小企業に対するさらなる一層の冷や水を浴びせることになる、廃案にすべきだということを申し上げて、質問を終わります。(拍手)
  220. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 明日は午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十三分散会