○椎名素夫君 自由の会の椎名であります。
きょうは一つだけですが、ぜひお
考えいただきたいことについてお伺いしたいと思うんですが、企業その他の
資産の再評価と、それから時価による会計表示の問題をお伺いしたいと思うわけです。
今、
総理、六つの
改革ということで一生懸命御
努力なさっておられますが、とりわけ
経済構造の
改革、構造の
改革というところに重点があるわけでしょうけれども、これはもう非常に喫緊の仕事である。現にもう来年の
ビッグバンから実際、
金融、為替の自由化だけでなしに、それに引きずられていろんなことが起こってくるだろうと思うんです。
そこで、三つの原則ということを言っておられます。フリー、フェア、
グローバル。フリーというのは
市場原理が働くような自由なマーケットでなきゃいかぬ、
金融市場だけじゃなしに全体としてもですね。それからフェアというのは透明で信頼できるマーケット。これにはルールの明確化、透明化というようなことがありましょう。それから
グローバル、さっき
大蔵大臣ですか、企業が国を選ぶような時代になったというお話がどなたかからありましたけれども、そういうことからいっても、その
グローバル化に
対応したような
法制度、とりわけ会計
制度、それから必要な監督体制というのを整備しなきゃいかぬ、こんなことだろうと思うんですね。
これ一つずつかじっていってもいいんですが、基本的には要するにマーケットエコノミー、
市場経済体制というものについての
考え方というのをきちっと確立しておきませんとなかなかうまくいかないだろうと思うんです。
少し青臭い話ですが、言ってみれば、
市場経済体制というのは、私有財産制のもとに独立した自主的な自由な市民が自己責任の原則でマーケットに参加する、こういうことでしょうね。その
経済行為が目的を達成できるような合理的なルールがなきゃいかぬ、そのルールのもとにできるだけの情報の開示、公開が必要である、これが原則だろうと思うんです。
というのは、自由な自主的なマーケットにおけるプレーヤーがきちっとした判断をするためには、情報の開示ということがなければ判断の基礎ができないということであろうと思います。また、もうちょっと別の角度から見ると、
市場の役割、マーケットの役割というのは、資源の最適配分になるべく近づけるような機能をマーケットが持たなきゃいかぬ、こういうことですね。それをマーケットにゆだねるためには、先ほど言いました
経済の主体であるマーケットの中のプレーヤーが自由を持っていなきやいかぬ、それから競争のための公正なルールと先ほど言いました情報、これが重要なわけです。
会計なんですけれども、要するに
会社が
会社の株を上場する、そしてこの
会社は一体どういう
会社かということが元来基本でありまして、最近の
日本の株のやりとりというのは、どうもキャピタルゲインをねらって売ったり買ったり、これは株を扱う
証券会社の手数料稼ぎというような問題も一方にあるんでしょうけれども、よく言われる話ですが、元来はその
会社のファンダメンタルズをきちっと見きわめてこれは判断されるべきものですね。
そのためには、その会計というものが、もう五百年昔から複式簿記ができたときからの原則ということになっていますが、真実性の原則というのがある。それを
考えますと、
日本での
経営の一つの特徴みたいになっている含みで物を
考えるというのは、どうも真実性の原則というのから非常に外れているということを言わざるを得ない。
これは、これからの
経済構造改革の中で相当早い時期に直していかないと私はいかぬのだろうと思うのです。やはりなるべく早い時期に
資産の再評価をやる。そして会計というものは、
資産勘定ではきちっと時価に、一日一日の時価は無理でしょうけれども、時価に近いところできちっと表示をされるということに早く転換をしなきやいかぬのじゃないかと私は思うんですが、これをぜひ
考えていただきたいと思っております。
というのは、いろんなことがこれから発生いたしましたけれども、
経営者にとっては実は非常に楽なんですね、含みというものを持っているということは。含みで損が出ても、じっと寝かしておけば別にあの社長の時代に損が出たという話にはならない。それから含み益が出ると、これもまた黙っていても、特に益出しして税金を払う必要もない。
日本の
経営が右肩上がりでずっと伸びていったところを見ると、ある
会社が新しい事業を展開しようかどうしようか、これにはこのぐらいの金がかかる、成否の見込みは五〇、五〇だったり、六、四だったり、七、三だったり、あるいはちょっとばくちみたいで四、六だというようなときに、何を見るかというと今までの含みを見るんですね。マーケットシェアを拡大するためには四、六でもやっちまうかというような行動というのがしばしば見られた。これがうまく当たればそれはそれでいいんですが、これが
日本の企業の過当競争、これを海外まで拡大するような振る舞いにいささか貢献したと言えないこともない。こういうことをいろいろ
考えまして、これから特に
グローバルということからいうと、
日本の
会社というのは本当のところは
幾ら財務諸表を見ても何もわからない、こういうことではいかぬと思うんです。
それから、それに付随して、これはちょっと差しさわりがあるかもしれませんけれども、そういうようなことをそのままにしていかに外部監査の形を整えたりしても、そういうことでやっていらっしゃる公認会計士のような方々はよそへ行って通用しないんですね、そんなインチキやっていたら。向こうに言わせる
言葉で、私がインチキと言うわけじゃないんですが、外国では
日本のああいうやり方で公認会計士、監査
法人でどうのこうのと言っていても、こっちへ来たらあんなものは役に立たぬというような声も聞いたりする。
東京のマーケットもこれまたきちっとサウンダーなものにしていかなきゃいかぬというようなときに当たって、
ニューヨークとも
ロンドンとも競争しようというときに、これはちょっとほっておけないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。