○今泉昭君 誤解をされちゃまずいものですから、ちょっとお断りを申し上げておきたいと思うんですが、私は、入るをはかるという際に増税を意識しているわけでは決してございません。
景気を浮揚して、
景気がよくなれば自然増があるからというような意識の方が強いわけですから、それだけはひとつ誤解のないように。
そこで、もう時間がなくなりましたので、今、
総理大臣が言われましたその派遣法の問題も含めましたアメリカの対応と我が国のこの
構造改革の問題の違いという点、少し
考えていただきたいと思うわけでございます。
アメリカは御存じのように
市場優先主義でありまして、自由が大変
中心となるお国柄でございます。そういうお国柄におきましては優勝劣敗がはっきりとした形で出る。成功者は成功者、あるいはもう弱肉強食の中で成功する者は物すごく成功して強くなるけれ
ども、失敗した人たちはどん底に落ちていかなきゃならないという社会でございます。あの社会はこれを救うために何があるかといいますと、
一つは宗教の世界でしょう。宗教的な立場でそういう人たちを救うというのと、もう
一つはそれに関係のあるNPOの組織がしっかりしている、あるいはそのNPOの組織をいろんな形で使いながらその負けた人たちを、落ち込んだ人たちを救っていくという条件のある社会であります。
我々を見てみた場合は、アメリカと全く違う社会であります。私はアメリカと同じような
構造改革の手法をとるべきではないと思うわけであります。と申しますのは、この
構造改革というのは
規制緩和の問題と表裏一体の問題でございます。
考えてみますと、確かにアメリカはこの十年間、苦しみの中から立ち直ってまいりました。この十年間、アメリカはその自由な社会の中で二千万人の人が実はレイオフをされているわけですよ。あの社会というのは自由に雇用者を首切りすることもできる社会。私も三年ばかりアメリカにおりましたけれ
ども、そういうことが現実の姿としてどんどん起こっていっている。ところが成功したと言われるのは、この十年間、二千万人レイオフで仕事を失いながら三千万という新しい雇用を創出した。したがって、一千万人の新しい雇用が創出されたじゃないかと。これが失業率を下げた、これが実は
財政構造あるいは
規制緩和の成果だというふうな一面でとらえられている。
しかし、その中でどんなにひどいことが行われてきたかということは余りみんなわかっていない。例えばどういうことかといいますと、アメリカのこれまでの最大の
企業であったGMあるいはIBM、かつて四十万人からの大雇用者を抱えておりまして、今どのぐらいいると思いますか。十四万人ですよ、両社とも。首を切られた二十六万人の人たちはどうなったのか。みんなこれ雇用されているんです。
というのは、分社化が始まり、分社化をされてどんどん小さな
企業が起こっていった。その
企業に追い出されていった人たちはもとの職場の半分の賃金で雇われているわけです。ですから、この十年間、アメリカの賃金というのは、賃金コストはほとんど上がっていないでしょう。ことしになってやっと上がり始めまして、それでもってアメリカは国際競争力をつけてきたと言っているけれ
ども、そのためにどれだけ多くの犠牲があったか。かつての賃金の半分で雇われるという土壌があったから、そしてそれを支えるための社会的な組織もあったということです。
日本の場合はどうだ。同じような形で派遣労働者を自由化し、同じような形の労使慣行が持てるかどうか。これは違うと思うんです。これまで
日本が大変成功していた時期には、
日本とアメリカとEUが世界の三大
経済の極だというふうに言われていた。
日本的な手法というのもある
意味では認められていた。アメリカ的なやり方、ヨーロッパ的なやり方ということで、世界の
一つの大きな代表例として言われてきた。
我々は、これから
改革する場合に、それはアメリカから学ぶ点もあるでしょう、ヨーロッパから学ぶ点もあるでしょう。しかし、
日本独特のいい点を失わないようにしなきゃいけないと思うんです。そのためには、やはり
政府に必要なことは、二十一世紀の
日本はこうするよ、こういう国づくりをするんだ、そのためにこういういろいろな
改革を
国民に協力をしてくれという訴え方をしていかなきゃならないけれ
ども、現在の
政府の二十一世紀に向けての我が国の再構築構想というのが見えてこないんです、実は。
国民の皆さん方にいろいろ聞くけれ
ども、そうおっしゃる。だから、そこがまず前提でなきゃならない。これは大変重要なことだと思うんです。私
どもは、
日本的な独特のやり方というものがあると信じているわけです。
私、昨年十一月ニューヨークの国連本部で行われました社会主義インターの総会に行ってまいりました。社会主義と聞くと、今はもう古いことで何か死語みたいになっているけれ
ども、この社会主義インターの社会主義というのは違うのですよ。
御存じのように、ヨーロッパは資本主義を生んだ
土地柄であります。共産主義あるいは広い
意味での社会主義を生んだ
土地柄であり、いずれも経験した国々であります。そういう中から欧州諸国というのは、御存じのように政治的には民主主義だ。
経済的には、社会主義のいいところを生かす混合
経済体制をつくって支えてきているわけです。アメリカの実態と全く違う
一つの
国家運営を持ってやっている、非常に水準の高い
福祉制度を持っているわけです。
そういう背景があるわけだから、この社会主義インターに
出席した百三十カ国の代表というのはほとんどが欧州の代表でございます。世界会議の中で、アメリカの姿が見えない会議というのはこの会議ぐらいでしょう。アメリカからも二つの社会主義政党が
出席していましたけれ
ども、ほんのちっちゃな政党でございますから、アメリカはもう民主党と共和党だけでしょうから、そういう
意味じゃ
出席していない。
その中で言われたことは何か。我々は、アメリカの
市場優先主義、自由優先主義、ああいうやり方に基づいて
国家再構築をしようとは思わない、あれは行き過ぎだ、弱い者を放置しているようなやり方はまずい、我々は独自の欧州なりのやり方をやっていく、苦しいけれ
ども、それをやっていくのだ。確かに今欧州諸国は苦しんでいます。そして、この社会主義インターの代表はフランスの首相をやったモーロワさんでございますが、異口同音に演説をする方々は現職の
総理大臣あるいは前
総理大臣です。そういう方々がみずからのヨーロッパ流の新しい
財政構造改革をやっていこうという意気に燃えている。アメリカはアメリカなりに、今大成功していますから、それを世界に押しつけようとする。そういう中にあって、我が国がとるべき道というのは、我が国独特の方法があってしかるべきだと思う。
ところが、この
改革法案の中にはそれがかいま見えないということが大変残念なわけでございまして、そういう
意味で、ぜひひとつ、我が国が二十一世紀に向けてどのような
国家像をつくるのか、それに基づいてこういう
改革をやっていくのだというようなやり方をしていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)