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1997-11-11 第141回国会 参議院 行財政改革・税制等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月十一日(火曜日)    午前九時開会     —————————————    委員の異動  十一月十日     辞任         補欠選任      直嶋 正行君     高橋 令則君      田  英夫君     梶原 敬義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         遠藤  要君     理 事                 片山虎之助君                 高木 正明君                 野間  赳君                 三浦 一水君                 荒木 清寛君                 広中和歌子君                 伊藤 基隆君                 赤桐  操君                 笠井  亮君     委 員                 狩野  安君                 鹿熊 安正君                 金田 勝年君                 亀谷 博昭君                 久世 公堯君                 沓掛 哲男君                 清水嘉与子君                 田村 公平君                 常田 享詳君                 長尾 立子君                 野村 五男君                 林  芳正君                 保坂 三蔵君                 宮澤  弘君                 泉  信也君                 今泉  昭君                 岩瀬 良三君                 小林  元君                 菅川 健二君                 高橋 令則君                 寺澤 芳男君                 益田 洋介君                 吉田 之久君                 小島 慶三君                 齋藤  勁君                 梶原 敬義君                 吉岡 吉典君                 吉川 春子君                 西川きよし君                 椎名 素夫君                 山口 哲夫君    国務大臣        内閣総理大臣   橋本龍太郎君        法 務 大 臣  下稲葉耕吉君        外 務 大 臣  小渕 恵三君        大 蔵 大 臣  三塚  博君        文 部 大 臣  町村 信孝君        厚 生 大 臣  小泉純一郎君        農林水産大臣   島村 宜伸君        通商産業大臣   堀内 光雄君        運 輸 大 臣  藤井 孝男君        郵 政 大 臣  自見庄三郎君        労 働 大 臣  伊吹 文明君        建 設 大 臣  瓦   力君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    上杉 光弘君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 村岡 兼造君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  小里 貞利君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)       鈴木 宗男君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  久間 章生君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       尾身 幸次君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       谷垣 禎一君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  大木  浩君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  亀井 久興君    政府委員        首席内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房総務課長   太田 義武君        内閣法制局長官  大森 政輔君        内閣法制局第三        部長       阪田 雅裕君        擬陽性改革会事        務局次長     八木 俊道君        総務庁行政管理        局長       河野  昭君        総務庁行政監察        局長       土屋  勲君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        科学技術庁長官        官房審議官    興  直孝君        沖縄開発庁総務        局長       玉城 一夫君        外務省条約局長  竹内 行夫君        大蔵大臣官房総        務審議官     溝口善兵衛君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  薄井 信明君        大蔵省証券局長  長野 厖士君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        大蔵省国際金融        局長       黒田 東彦君        文部大臣官房長  小野 元之君        文部大臣官房総        務審議官     富岡 賢治君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君        文部省学術国際        局長       雨宮  忠君        文化庁次長    遠藤 昭雄君        厚生省老人保健        福祉局長     羽毛田信吾君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        農林水産大臣官        房長       堤  英隆君        農林水産省経済        局長       熊澤 英昭君        農林水産省構造        改善局長     山本  徹君        食糧庁長官    高木 勇樹君        通商産業大臣官        房長       村田 成二君        資源エネルギー        庁長官      稲川 泰弘君        中小企業庁次長  中村 利雄君        運輸大臣官房長  梅崎  壽君        運輸省鉄道局長  小幡 政人君        運輸省航空局長  楠木 行雄君        郵政大臣官房総        務審議官     濱田 弘二君        郵政省貯金局長  安岡 裕幸君        郵政省電気通信        局長       谷  公士君        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設大臣官房総        務審議官     小鷲  茂君        建設省建設経済        局長       五十嵐健之君        建設省道路局長  佐藤 信彦君        自治省行政局長  松本 英昭君        自治省財政局長  二橋 正弘君    事務局側        常任委員会専門        員        田中 久雄君    参考人        日本銀行総裁   松下 康雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○財政構造改革推進に関する特別措置法案(内  閣提出、衆議院送付)     —————————————
  2. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  財政構造改革推進に関する特別措置法案の審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁松下康雄君の出席を求めることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 財政構造改革推進に関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 久世公堯

    久世公堯君 自由民主党久世公堯でございます。  昨日は当面の景気対策につきまして同僚議員からいろいろと質疑があったわけでございますが、毎月十日過ぎには月例経済報告政府より出されております。これは最近非常に国民からの関心も高く、また報道も大きくされているわけでございますが、今月は少しおくれて十四日に発表されるというふうに内々承っております。この毎月の経済動向につきまして月例報告では、非常な微妙な違いというものがうまく適切に表現がなされているわけでございます。十月の月例では「民間需要中心とする景気回復基調は続いている。」と、このように書かれているわけでございます。  きのうもいろいろと論議がありましたけれども企画庁長官は、現在の景気動向足踏み状態であると、衆議院においても、またここにおきましても既に述べておられるわけでございます。  そこで、十一月の月例は今最終段階調整をされていると思うわけでございますが、この民間需要中心とする景気回復基調というものは失われていないと私は思いますけれども企画庁長官の現在の景気判断について承りたいと思います。
  6. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 月例経済報告につきましてお褒めをいただきまして、大変ありがとうございます。  大本営発表とかなんとかいろんなことを言われておりますが、これは経済企画庁が責任を持って景気についての判断をするものでございまして、数字のチェックも私自身がいたしまして、私としては最善の努力を尽くして適正な判断をしているものを出す方針でございまして、今までもそうでございましたが、今後ともそのようにしていく決意でございます。  現在の景気動向を見ますと、設備投資設備過剰感が薄れつつあることや、あるいは企業収益が緩やかに改善していることを背景といたしまして、製造業中心回復傾向にございます。そして、純輸出は増加の傾向にあるわけであります。個人消費も、回復のテンポは遅いものの、消費税率引き上げに伴います駆け込み需要反動減から立ち直りつつあります。雇用の伸びは鈍化しているものの、消費下支え要因として働いているというふうに理解をしております。しかし、住宅建築は、御存じのとおり、消費税率引き上げに伴います駆け込み需要により大きく増加した反動もございまして、弱い動きを示しております。こういう状況の中で、生産は一部に在庫調整動きが見られますので、一進一退に推移しているという状況でございます。  以上を総合いたしまして、私どもの現在の判断は、民間需要中心とする景気回復基調は失われていないものの、企業景況感に厳しさが見られ、景気はこのところ足踏み状態にある、そのように考えている次第でございます。
  7. 久世公堯

    久世公堯君 当面の景気対策に対しまして私ども自由民主党は、既に先月、緊急国民経済対策の第一弾を発表いたしました。現在、さらに第二弾を今週の半ばに決定する予定でございます。  この内容としては、既に国、地方を通じて現実に行われているわけでございますが、さらにこれにイギリスのPFI方式も加味して、社会資本整備により有効な民間活力を導入する、それに財投も投入するということを含めて、今最終段階の詰めを行っているわけでございます。  また、参議院におきましては、私ども与党三党では、今晩実は景気対策についてのシンポジウムを二時間やることになっております。この前の脳死法のときにもシンポジウムを開きまして広く意見を聞いた上で審議に当たったわけでございますが、これが終わっておりますともう少し良識の府にふさわしい質問ができるかと思うわけでございますが、それは今晩の問題といたしまして、私どももそういうふうに取り組んでいるわけでございます。  そこで、企画庁長官にさらにお尋ねをいたしたいんですが、政府も近く景気対策を打ち出すということでございますが、その内容について承れればありがたいと思います。
  8. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 景気動向は先ほど申し上げたような状況でございまして、いわば回復基調は失われていないものの、景気足踏み状態にある、こういうふうに考えている次第でございます。  自民党あるいは与党三党の方でも近くまた第二弾の景気対策を打ち出すというふうに聞いておりますが、私どもも、橋本総理の御指示によりまして、今月の半ばには、税制の問題はちょっと別なんでございますが、その他の部分については取りまとめをしていきたいというふうに考えております。  現在、消費者あるいは企業は、懐はある程度豊かになっていると思っておりますが、消費などの形で物が余り売れないのは経済の将来に対する信頼感が不足していることが一つの大きな原因であるというふうに考えております。それからまた、景気回復に従来のような力強さを感じることができないのは構造的な問題があるというふうに感じている次第でございます。  そういう中で、財政構造改革を進めながら経済を順調な回復軌道に乗せるということを実現し、財政構造改革経済構造改革とをいわば車の両輪でいくというのが私ども考え方でございます。  そこで、経済構造改革内容でございますが、内容につきましては現在関係各省とも詰めている状況でございます。考え方といたしまして、大きく分けて三つのことを柱としております。  一つは、企業活動が国際的な展開が行われている中で、外国企業やあるいは日本企業ともに、日本という国が企業によって国として選ばれるような状況にならなければいけないと考えております。それは、一つには、企業活動外国と比べてイコールフッティングでできるような事業環境を整えることであるというふうに考えておりまして、その内容は、法人課税の問題であり、あるいは有価証券取引税の問題であり、そして有価証券取引税につきましては、東京市場をニューヨークやロンドン並み市場に育て上げるという前提として、その見直しが必要であるというふうに考えている次第でございます。  二つ目は、経済の立ち直りの大きなしこりになっておりますバブル後の不良債権処理が進んでいないという問題がございます。この不良債権処理を進めることが大事でございまして、そのためには、土地有効利用土地取引活発化という方策を進めていかなければなりません。土地取引に対する規制を緩和するのと同時に、土地税制についても見直しをして、そういう方向を出していきたいというふうに考えている次第でございます。  三つ目は、いわゆる規制緩和でございますが、これにつきましては、新しい事業を起こしたり、あるいは内外価格差縮小等を図って経済活動全般民間活力中心とする体制でやっていくという構造改革の一番基本にもなるものでございますので、そういう意味で、規制緩和前倒し、例えば情報通信とか土地住宅とか福祉分野、あらゆる分野におきまして規制緩和前倒しを進めまして、民間活力が生かせるような構造改革を進めてまいりたいというふうに考えております。  そのほか、短期の問題といたしましては、金融早期是正措置を踏まえまして、自己資本改善といいますか財務内容の見かけ上の改善を図るという動きがあって、それが貸し渋りというような現象につながるおそれもなしとはしない、懸念がなしとはしないということでございまして、それに対する中小企業金融対策等を十二分にとっていかなければならないというふうに考えております。  いずれにいたしましても、経済対策基本は、先ほど言いましたような民間需要中心経済構造に持っていくことを基本としておりますが、同時に、短期経済対策ではなしに、二十一世紀を踏まえた日本全体の将来のあり方の方向性に沿ったものにしていきたいと考えている次第でございます。
  9. 久世公堯

    久世公堯君 ただいまお話がございましたが、ぜひひとつ有効な政策を打ち出していただきたいと思っております。  ただいまもお話がございましたが、民間需要中心としてと。私ども自民党におきましても、この社会資本整備に関して、民間活力を導入する事業あるいは規制緩和というものを大幅に取り入れるという政策を出しております。これは、都市部におきましては景気対策として非常に効果があると思います。土地対策についても同じだろうと思いますが、経済的に恵まれていない地域におきましてはいろいろと難しい問題があろうかと思います。  この財政構造改革法案による公共事業削減につきましても、特に地方への影響を避ける意味におきまして、ことしの六月三日の閣議決定の中で、「真に整備が遅れている分野地域への重点化を図る。なお、地域経済への配慮を行うとともに国土の均衡ある発展と整備水準についての地域間の格差の是正という観点にも留意する。」と、こういうふうにも述べられておられます。また、先週でございましたか衆議院委員会の方で、石川県の谷本知事あるいは全国町村会の会長の黒澤さんが、公共事業の七%削減というものに対応して、ひとつ地方の方に傾斜配分をしてもらいたいという強い意向を出しておられるわけでございます。  そこで、大蔵大臣にお伺いしたいと思いますが、経済的に恵まれない地域に対する景気対策、あるいはそれに伴う公共事業傾斜配分、そういうことについてどのようにお考えになっておられるか、承りたいと思います。
  10. 三塚博

    国務大臣三塚博君) これは、それぞれ関係省が重点的、効率的な視点に立って、ただいま委員御発言のように、立ちおくれておる地域、真に必要とする事業、こういうことの中で全体的な割り振りをして要求しておるもの、要求の中で理念としてはわかりますけれども、具体的な項目のないものについては、さらにその辺について査定の段階でミーティングをいたしておるということであります。  関係省、また第一次産業に関連するもの、中小企業に関連するもの等々については、ただいま説明をいたしました経企庁長官中心になりまして間もなくその案が、対策が取りまとめられると思いますが、それとの整合性の中で対応してまいりたいと思っております。
  11. 久世公堯

    久世公堯君 現在の景気状況のもとでは財政構造改革のスピードを緩めるべきだという意見もございますが、景気という短期視点財政構造改革という中長期視点との折り合いをどういうふうにつけていくかについて、どういうふうに大蔵大臣はお考えでございましょうか。また、財政構造改革を行った場合にどのように日本経済はよくなっていくかということの御所見を承りたいと思います。
  12. 三塚博

    国務大臣三塚博君) まさに委員御指摘のように、経済対策景気対策短期的なものでございます。そういうものと、財政構造改革は長年にわたって吹きだまりましたありとあらゆる要点を整理、分析して真に何が必要なのかという観点に立って取り組むことになり、今日まで来ておるところでございます。  御承知のとおり、中長期視点に立ってこれに取り組んでまいる。その基本は歳入に見合う歳出。しかし、そう言っても必要な歳出はあります、義務的経費はあります、こういうことになっておりますものですから、これの全体的な見直しをしてバランスをとるということであり、本年度予算におきましても、七十七兆の歳出、五十八兆の租税プラスその他の国税収入、足らず前は十七兆でございました。これが国債費として借り入れを起こし、対応をいたしておるという、こういう基本的な問題を頭に入れながら、特例公債は六カ年の期間を設けてゼロにしてまいりたい。痛みは伴います。そういうことの中で、健全財政、受益と負担、こういう問題が国民的な理解が得られるようにしていくことの中で断行することにより、我が国財政中長期に見て安定したものになる、こう思っております。
  13. 久世公堯

    久世公堯君 昨日もいろいろ御議論があったわけでございますが、景気刺激策として財政出動を行うべきであるという声がございますが、やはり過去を振り返ってみますと、バブルの崩壊後に大型補正予算を出したとき、その結果として財政的な危機状態になったわけでございます。ですから、今後は安易に財政に依存することなく、規制緩和等経済構造改革によってやるべきである、私もそう思います。いわば今回が公共事業に頼らない景気対策ができるかできないか、その正念場ではなかろうかと思っております。  また昨日も、法人税減税所得税減税を実施すべきである、こういう御意見もいろいろございましたけれども政策減税等は別にいたしまして、危機的な財政状況のもとにおきまして減税をやろうとすれば特例公債発行せざるを得ないわけでございますから、これは後世代に負担を先送りするということで、財政構造改革には逆行するということになろうかと思います。  そこで、大蔵大臣に承りたいわけでございますが、財政構造改革はもはや待ったなしの状況にあろうかと思います。平成十年度の予算からこれを強力に推進していく必要があるわけでございますが、今後の財政運営について重ねて大蔵大臣の御決意を承りたいと思います。
  14. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 先生のおっしゃるとおりの財政事情の分析、このことが構造的な問題を現代にもたらしました。これを放置することは、おっしゃいますとおり深刻な事態を招く。かつて、国鉄運賃収入の全部を利子払いに回しても足りないという悪循環の中で破産という状態公企体でございましたから、このことは法的手続を待たずしてそう相なりません。公共交通地域に貢献ということで、なおかつその状態であっても国鉄国家と同じだという観点で取り進んだことが破局を招いたという先例がございます。そのことの規模の大きいものが今日の国家財政国家が抱えておる重大な危機だと思っております。  そういう点で、諸施策が断行されるに当たりまして、その負担いわゆる財源、本来は租税をもってこれに充当するというのが原則でございますが、その租税をはるかに上回る歳出になるわけでございますから、前段申し上げました十七兆の利払いが中心、元利の一部と、こういうことの調達のために公債発行を余儀なくされていくということでありまして、その悪循環を遮断するためには痛みの伴う特例公債発行を厳に慎む。しかし、一挙にこのことができることが難しい経済状況でありますから、集中三カ年そしてプラス三カ年、六年をもって九年度発行の七・五兆円をゼロにしていくという、こういうことならば議会の皆様方の御理解国民各位の御理解も得られるのではないかということでありますから、特例公債財源とする諸施策については、内閣としても、また主管大臣としてはなおのこと厳にこれを慎み、減額に立てる全身の努力を傾けてまいる立場にありますので、格段のさらなるサポートをお願い申し上げ、答弁にかえます。
  15. 久世公堯

    久世公堯君 それでは次に、総理の言われております六つ改革の中における財政構造改革について承りたいと思います。  総理が先頭に立って、変革と創造のテーマのもとに六つ改革に取り組んでおられることについて敬意を表しております。  この六大改革を一気に一体的に処理をするということはなかなか難しいことでございますが、しかし少子・高齢化と経済のグローバル化が急速に進む中で、今改革をしなければ社会の活力が失われ、この国のあすはないと総理はたびたびおっしゃっておられます。  世界の潮流を先取りする経済社会システムをつくり上げるために、この六つ改革を有機的に連携させることは非常に大事なことだろうと思います。  そこで、この六大改革の中で、今世紀最後の三年間に、二十一世紀に明るい展望を開くための集中的な財政構造改革は極めて重要かと思われます。国、地方の長期債務は今や四百七十六兆にも上り、さらにこれから少子・高齢化の進展に伴いまして歳出の自然増が見込まれております現在、これ以上将来に負担を残すことは次世代に対する責任を放棄したことになろうかと思います。  財政構造改革は、六つ改革をいわばリードする役割を持っていると私は思いますが、総理の御所見を承りたいと思います。
  16. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 少子・高齢化そして経済のグローバル化が進んでおります中において、我が国の経済社会が活力のある形で二十一世紀を迎え、過ごしていこうと考えましたとき、私は、そのすべてのシステムを改革するこれらの改革内閣としての至上命題だと考えて今日まで参りました。  このシステムというものそれ自体が日本の社会そのものに根をしっかりおろしている、そして相互に密接に関連をし合っている。そして、将来に向けてさらに効率的で信頼のある社会を建設しよう、行政をつくろう、あるいは安心して豊かな福祉社会を築こう、あるいは健全で活力のある経済の実現を図ろう、こうした明るい展望を開こうとするときには、財政構造改革と並びまして行政改革、社会保障構造改革経済構造改革といった改革が一体的に進んでいかなければなりません。また、進めなければなりません。  その中で、特に財政構造改革につきましては、現在の財政構造をこのまま放置いたしました場合に、経済の活力が低下し、将来世代に間違いなく負担し切れないそうした負担を残してしまう、これはもう明らかなことでありますし、一刻の猶予も私は許されないと思っております。  今回、御審議をいただいておりますこの財政構造改革法案も、そのために主要な経費ごとにその性質に応じて量的な縮減目標を設定いたしました。そして、今世紀の残る三年間、これを集中改革期間として一切の聖域なしで歳出改革と縮減を進めていきたい、そのために各種制度改革の検討などを定めた法案を提出させていただいたわけであります。  その上で、一言つけ加えますならば、改革は確かに短期痛みを伴います。しかし、これを覚悟した上でその痛みの期間をどうやれば短くできるか、そして我が国の将来のためにも、行政、財政経済、社会保障といった分野での構造改革を何としてもやり遂げなければならないと考えております。  また、それだけが決してすべてではありませんけれども、昨日来の御論議の中でございました経済対策、私は、こうした改革推進すること自体が最も効果的な経済対策だとも考えておることを申し添えたいと思います。
  17. 久世公堯

    久世公堯君 ありがとうございました。  この六大改革は、今お話がございましたように、経済構造改革金融システム改革のように具体的な進展をもう見せ始めている分野もありますけれども、これからがこれらも含めて正念場だろうと思います。「特に、この臨時国会から次期通常国会までは、行政改革財政構造改革の帰趨を決する重要な時期」だと、総理はこのように今回の臨時国会の所信において述べておられます。私もまさにそういう時期だろうと思います。  財政構造改革と行政改革は密接不可離の関係にございます。いわば、財政構造改革財政面からのスリム化であるとするならば、行政改革の方は行政の仕組みから見たスリム化であって、その両者は重なり合っていると思います。  こういうような意味において、財政構造改革を進めるに当たっては、規制緩和地方分権、行政のスリム化といった行政改革観点、行政改革方向性というものを十分踏まえた上で実施していくことが必要だろうと思います。特に、国、地方を通ずる財政赤字の縮小という観点からは、地方分権の方向性というものを考えて実施する必要があると思いますが、総理の御所見を承りたいと思います。
  18. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 行政改革の主な目的、これは理想の言葉を使いますならば、簡素で効率的な、しかも透明な行政、そして内外の情勢変化や危機に柔軟に対応する、そうした行政組織をつくることということになりましょう。  そのためには、国の果たすべき役割というものを根本から見直していく、その中で徹底的な規制の撤廃、緩和を断行していくこと、これはまさに官から民へということになります。そして、民間にゆだねるものはゆだねていく、同時に地方分権を推進することを大前提としなければ、中央省庁の再編というようなテーマにも取り組むことができないと思います。  そして、既に地方分権推進委員会は四次の勧告を提出され、政府はこれをもとに地方分権推進計画を既に策定する作業に入っております。しかし、これはもう専門家の委員に申し上げるまでもなく、この四次の勧告のもとになりましたものは地方六団体の要望の中からのテーマでございました。そして、そのほかにも、例えば政令都市に対し、あるいは中核市に対し、なお私は権限の面で見直していく部分はあろうと思いますし、それ以外にも、住民に身近な行政ほど住民に身近なところで仕事を願うという視点を持ちますならば、各省庁の抱える機能のうち地方に移し得るものはなお多くあろうと考えております。  一方、財政構造改革というものが、まさに国と地方、国と民間の役割分担を見直しながら、こうした地方分権の推進という観点をも踏まえて、すべての歳出分野を対象とした改革を進めていく必要があることは御指摘のとおりであり、行政改革財政構造改革どちらか一方を先行させればそれで済むといった問題ではない、まさに一体に進めていかなければならないという点では委員の御指摘と方向を一にするものと思います。
  19. 久世公堯

    久世公堯君 ただいま総理もおっしゃいましたように、財政構造改革と行革というものは一体でなければいけない、車の両輪でございます。  そこで、少し行革の問題に入ってまいりたいと思いますが、行革は、基本は仕事減らしであり、それによってスリムな小さな政府をつくることでございます。いわば官から民へ、国から地方へというのが大原則である。こういうことは総理はもう百も御承知でございますし、また豊富な行財政の御体験からこの原理は一番鉄則であると言ってもおられます。  また、きのうも御答弁があったわけでございますが、官から民へは規制緩和で相当の効果を上げている、国から地方へも、今もお話しになりましたように進んでいると。私は、国から地方の方はルールづくりばかりでございまして、機関委任事務の廃止とか紛争処理のシステムの構築とか余り権限や事務の移譲については成果が上がっていないと思うわけでございますが、いずれにしても、今もそれは進めておられるわけでございます。  しかし、大きく言って、行政改革会議の出されました中間報告は内閣機能の強化ともう一つは省庁の再編成、この二つに力点を置かれたわけでございますが、中間報告においても「重要な国家機能を有効かつ適切に実現するための統合・整理」ということをうたってこの二つの問題を出しておられるわけでございますが、総理が一体、あえて内閣機能の強化とともに省庁の再編成をクローズアップさせたのは、私は国民に対して本格的に行革をやっているんだという決意を示しておられる。  案の定、これが出た途端に新聞は毎日のようにこれを連載いたしました。また、各省庁はお家の一大事だということで、それこそ八月の末などは概算要求があるのにそれどころではないといって大騒ぎをしておりました。総理は昨日、それを苦々しく思うというようなことも言っておられたわけでございますが、私は、総理があえて官僚の牙城を、いわば本丸を直撃されたという真意を承りたいと思います。
  20. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 中央省庁再編という問題に取り組み始めましてから、世間からはさまざまな批判が寄せられております。それは要するに、中央省庁の権限を切り張りするだけであろうとかあるいは実際上できない、さまざまな御批判をいただきました。しかし、行革会議の中間報告が出されましたときから非常に真剣に賛否両論を含めまして議論が進行している、それは私は本当に決して悪いことではないし、いいことだと思うんです。  ただその上で、今、議員もお触れになりましたけれども、私自身、冒頭申し上げましたように、地方分権につきまして地方六団体からの御意見というものを土台にここまでの作業が進んでまいりました結果、言いかえれば平均値の部分についての答えが出された。その両極にある問題意識というものにはまだ答えが出ていない。あるいは、政令指定都市、中核市それぞれの規模が違います。その規模に対してならどこまでの権限が移譲できるのかといった考察もまだこれからやっていかなければなりません。しかし、既にその作業は動き始めていることも事実であります。また、規制緩和というものも動き始めております。  そうしたものの中で、効率的な体制をどう国民本位に整えるかということが与えられた私どもへの役割だと考えまして、同時に、このところ従来の行政の仕組みではとっさに対応し切れない幾つかの国家的な危機とでも申しましょうか、大きな問題を生じ、そのたびにある意味では現行制度の限界を感じながら仕事をしてまいりました。  ですから、行政改革会議というものが今日まで取り組んでまいりましたのは、その検討課題を、一つは二十一世紀における国家機能のあり方、それは当然分権とか規制緩和・撤廃というものを視野に入れております。そしてもう一つは、それを踏まえた中央省庁のあり方、再編のあり方です。そしてもう一つは、そうした異常な事態に遭遇した場合における官邸機能の強化の具体的な方策を模索する。この三点に絞り込んで作業をしてまいったということであります。
  21. 久世公堯

    久世公堯君 行革の案を作成する機関というものにつきまして、総理はここ一、二年非常にいろいろ工夫をされたと思います。  最初は第三次臨調という案もありましたけれども、それは時間がかかって、それだけで半年かかるという御意見もあったように承りますし、また一時は経済審議会や財政審議会あるいは行革委員会地方分権推進委員会なんかの会長や会長代理をお集めになっていろいろと調整も図っておられました。結局のところ、この行政改革会議というものをおつくりになったわけでございまして、しかも会長には総理みずから、会長代理には小里長官が当たっておられるわけでございます。  中間報告が出ましてから、いろいろと行革会議の存在に対する批判が多いわけでございますが、この行革会議が最終案をまとめるに当たってこれに臨む基本的なスタンスと申しますか、これについて承りたいと思います。  また、この中間報告の中にも、行政改革を成功させるためには、政党の協力とりわけ与党の協力が必要だ、また政府与党間のコンセンサスの形成が必要であると強調しておられます。そして、最終的には全般的に与党理解が得られた形において最終案をまとめ上げていかなければならないと明記されておられますが、この行革会議の最終案も十一月の半ばから取り組まれるそうでございますが、この政府与党との関係も含めて、総理のお考えをお聞きいたしたいと思います。
  22. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、中間報告を発しまして以降、さまざまな場で活発な御議論をいただいておった、そしてこれは中間報告を出したかいがあった、まずそのような思いを持っております。  なぜなら、中間報告は非常に真剣な検討の結果を取りまとめたものでありますけれども、そして、同時に今後の行政改革を進めていく上での基本的な枠組みを方向づけたものでありますけれども、当然ながら最終報告までに検討すべき課題も少なからず残されておりまして、現在もその論議を継続しているさなかでございます。そして、十一月の十七日から二十日まで行革会議としては集中審議を予定しておりまして、この集中審議で実質的に取りまとめに当たっていきたいと考えております。  現在、与党の側におきまして与党行政改革協議会いわゆる十者協議の場等において御議論をいただいておりますし、自民党もまた党としての御検討をいただいておるわけでありまして、もう取りまとめの時期に近づいておるわけでありますから、与党側といろいろな形でお目にかかる必要性も出てくると存じますし一ぎりぎりまで私は多くの方々の御意見というものに耳を傾けていきたいと考えておりますけれども、その上で、最終的な判断というものは私自身が行わなければならないと思っております。むしろ、その間に合意が形成され、それが国民の求める方向の合意でありますならば、それはもう全く問題のないことであります。  不幸にして、両論併記あるいは幾つかの考え方の併記というような状況になりますなら、本当に国民にとって何が大切なのか、国民が何を望んでおられるのか、この国家というものが将来を考えたとき、すなわち国益というものを土台に据えながら最終的な判断は私自身が行わなければならない、そのように考えており、その前段階として、当然ながら政府部内もでありますし、与党を初めとしたさまざまな御意見に十分に耳をかしながら努力をしていきたいと思っております。
  23. 久世公堯

    久世公堯君 ただいま総理がおっしゃいました、最終的には自分自身が判断をされると。既にサウジアラビアでも記者会見でそのように述べておられるやに承りましたけれども、ぜひそうしていただきたいと思います。  今回の行革は、一つには、政と官とのあり方を正す、議院内閣制のもとにおける政と官のあり方、従来はこれについていろいろと霞が関、永田町ということで批判のあった点でございますが、今回の行革によって、官主導というものに見切りをつけて政主導に転換をしなければいけない、政府の責任で政策の優先順位を政中心でやらなければいけない、こう考えるわけでございます。政策形成と行政執行における政と官の中で政の指導力を発揮しなければいけない、そのためには私どももそれにふさわしい識見と力量を持たなければいけないと常日ごろから考えております。  実は、この中間報告が出されましてから省庁再編成については大変な論議があるわけでございますが、もう一つの大きな柱の内閣機能の強化と申しますか官邸機能の強化、これについてはそれほど新聞でも省庁再編成に比べれば取り上げられていないし、余り論議がないわけでございます。しかし、大変これは重要なことでございます。  そこで、まず内閣機能の強化について数点総理に承りたいと思います。  まず第一は、きのうも議論にございましたけれども、閣議の問題でございます。  この閣議の多数決の採用の問題について総理は前向きの御答弁をされたわけでございますが、私はやはり閣議が議論をする場であるならば多数決原理というものがそこで働くのは当然だろうと思います。単に事務次官会議の議案というものを、案件を出して、そして花押を押すといいますか、それだけの場ではないだろうと思います。  また、議題にないことをいまだに不規則発言というような言葉で閣僚懇談会に切りかえてやるというようなことも承っておりますけれども、やはり私はこれは多数決をこの際採用すべきではないだろうか。もちろん、総理のリーダーシップというものが大事でございますので、総理には拒否権が当然あってしかるべきだろうと思うわけでございます。  そういうような閣議の多数決問題につきましていろいろ論議があるようでございますが、これについての御所見を承りたいと思います。
  24. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、これはたしかこの多数決制の導入それ自身についての私自身の個人の意見は申し述べたことはないと思います。  その上で、行政改革会議の中間報告におきまして、閣議の議決方法について、本来、内閣が定めるものであるが、閣議における閣僚間の討議を活性化するなどの観点から、「必要とあれば、多数決制の採用も考慮する。」というふうにされている部分であります。  また、当然、内閣総理大臣内閣の首長という立場におきまして、閣議において自己の国政に関する基本方針を発議する、そして討議、決定を求め得るということは私は当然だと思いますし、内閣総理大臣のこうした発議権を内閣法上明記すべきであるということも申しております。  その場合の基本方針というものの具体的な範囲につきましては、中間報告では、対外政策や安全保障政策基本、行政、財政の運営の基本やマクロ経済政策予算編成の基本方針などばかりではなく、個別事項でありましても国政上重要なものを含み得る、これが行革会議としての中間報告の内容でございました。  行革会議としては、この中間報告を踏まえて、内閣機能の強化に関し実り多い成果を得べく引き続いて真剣な議論を継続いたしておりますし、十七日からの集中審議におきましても当然ながら真剣な論議がなされると考えておりますが、その中においての結論を求めてまいりたい、そのように思います。
  25. 久世公堯

    久世公堯君 もちろん、この閣議の問題といいますのは本来内閣自体が決するものだろうと思っております。また、今、総理内閣法四条の総理の発議権について中間報告の内容を御紹介賜ったわけでございますが、中間報告の中にはいろいろと例示もされておりまして、今おっしゃいましたように、マクロ経済政策だとか予算編成の基本だとか、そういうことが例示をされておるわけでございます。  今も四条には閣議請議の規定がございますけれども、仄聞いたしますところによりますと、今私ども審議をしております財政構造改革のこの案についても閣議請議は橋本総理がみずからやられた。また、経済構造改革につきましても実は総理みずからがこの閣議請議をおやりになったと思うわけでございまして、私は、この発議権を含めて中間報告が言っておりますように、総理のリーダーシップを確立するということが大事だろうと思います。  もう一つ問題がございますのは、内閣法六条の問題でございます。これにつきましては、中間報告におきましてはどちらかというと慎重な態度をとっているわけでございます。例えば危機管理問題につきましては、既に法制局長官からも御答弁をかつて予算委員会でいただいたわけでございます。そういう特殊な場合あるいは危機管理のような場合については例外だけれども、一般的な個別案件について、個別案件といいますよりは包括的な案件につきまして、あらかじめ内閣法六条を改正して、閣議にかけてということを削除して総理がリーダーシップを発揮できるようにする、これは中間報告自身にも多少議院内閣制の本質から問題を残しておられるようでございますが、これについての総理の御所見はいかがでございますか。
  26. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 議員も御引用いただきましたように、平成九年五月一日に公表いたしました「内閣危機管理機能の強化に関する意見集約」という中におきまして、「突発的な事態の態様に応じた対処の基本方針についてあらかじめ所要の閣議決定をしておき、総理大臣が迅速に行政各部を指揮監督できるようにすること」を求めております。  また、中間報告におきましても、内閣法の規定は弾力的に運用するように求めておられるわけでありますが、この意見集約で求めたことを超えまして、事後の閣議承認というものを条件にして、事前の閣議によらず何事でも指揮監督できるというようなことにするということは、これは単に行政上の意思決定手続の問題を超えておる部分もあるのではないか。幅広い検討を必要とするものではないかと思いますし、そこまで突発事態に対応するときと同様のルールを拡大するということが本当によいことかとなりますと、これは私は慎重な議論を必要とするものだと思います。
  27. 久世公堯

    久世公堯君 今、総理お話しになりましたように、この問題はなお行革会議におきまして慎重な御議論を賜りたいと思います。  ただ、日本国憲法の解釈の中で、基本的人権なんかは別といたしまして、例えばこの国会の規定とか内閣の規定とかそういう行政組織に関する規定の解釈とか運用は、私はできるだけ弾力的に幅広く、また緩やかな解釈が必要ではなかろうかというふうに考えております。  次に、総合調整ということについて、内閣機能の強化とも関連してお尋ねをしたいわけでございます。  この行革会議の中間報告におきましては、総合調整のシステムについてかなり詳しく書かれております。もともと戦前におきましては、日本の行政間の総合調整は主な省庁によって行われておったわけでございますが、戦後は総理府の外局としていわゆる国務大臣庁というものを採用されました。経済企画庁、科学技術庁、環境庁、国土庁あるいは総務庁、北海道開発庁、沖縄開発庁というのがその例かと思うわけでございますが、これは過去三、四十年の歴史を検証いたしますと、私は総合調整機能というものが十分発揮されたとは思わないわけでございます。  と申しますのは、一つはやはり屋上屋になったということ、あるいは権限や予算がないのになかなか調整が難しかったということ、さらに各省庁が人事その他の面におきまして、出店と言っては恐縮なんですが、そういうような言葉さえ使われていたわけでございまして、また一部の省庁を除いてはなかなかそこのプロパーの人材が育たなかった、こういうような問題点も指摘をされているわけでございます。  そこで、今回の中間報告を見ますと、どちらかというと、こういう国務大臣庁的な考え方を廃止して主たる権限を持っているところがあわせて横の総合調整をやるという考え方、そして最終的には閣議でこれを決定するということになるわけでございますので、そういうシステムを採用されようとしているんじゃなかろうかと思いますが、その点について総理はどうお考えでございますか、承りたいと思います。  また、今度は防衛庁と国家公安委員会については内閣府の中に大臣庁を設けられる。それは特殊でございますが、あわせて総合調整をやる事務が出てきたときに内閣府の中にまた国務大臣を置くということになりますと、国務大臣庁の復活ではなかろうか、こういうふうに考えられるわけでございますが、そのあたりお考えを承りたいと思います。
  28. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、この内閣機能の部分についてはまだ議論がさまざまに行われる部分があろうと思います。  ただ、その基本が何かといいますなら、内閣が緊急事態に対して機敏に行動できるように、また多様な政策課題に対して戦略的な判断を下せるように、そういう体制を構築するというものを目的とするわけでありますし、中間報告の中におきましても、こうした視点から内閣機能の強化についてはさまざまな提案をいたしております。  機能の強化の一環として、閣議あるいは関係閣僚会議のあり方や特命事項担当大臣の活用、あるいは内閣及び総理大臣の補佐支援体制の強化、こうした点についてさまざまな提案が行われておりますのも、このような視点から行われているところでございます。  ところで、今、議員からは現行の総理府外局の国務大臣庁が機能しておらないという大変厳しい御評価をいただいたわけでありますが、私は必ずしもそうは言い切れないと思いますけれども一つの限界があるということもまた否定できません。そして、その上で縦割り行政の弊害を克服するための新たなシステム、省庁間調整システムというものを行政改革会議の中間報告は提起をいたしております。  その概要というのは、各省にその主たる行政目的達成のための必要な調整権を付与する、各省レベルにおける調整というものを原則といたしますとともに、全政府的に調整の必要な事項につきまして内閣府に担当大臣を置くなどして総合調整に当たらせる、そして政府としての最高かつ最終の調整というものは内閣総理大臣の直属機関としての内閣官房が行うとしているわけであります。また同時に、この特命事項担当大臣につきまして、複数省にまたがる案件について内閣としてのコンセンサスの形成でありますとかイニシアチブの発揮のために活用する、その点からでありますけれども、関係大臣との任務分担の明確化あるいは補佐をする組織の機動的な整備を求めております。  議員の御指摘もございましたけれども、総合調整機能をどう強化するかということは、これは今回の内閣機能の強化及び省庁再編の中における非常に重要な課題でありまして、行革会議におきましても実り多い成案をまとめたいということから今日までも真剣な議論が進められ、集中審議においても真剣な議論が行われると考えております。  今、行革会議として考えております内容は御紹介を申し上げたような方向でありますが、その方向を御紹介いたしました上で、今の総理府におけるいわゆる大臣庁に対する議員の御批判というものもあわせながら十分検討してまいりたい、そのように思います。
  29. 久世公堯

    久世公堯君 一般的な総合調整問題に関連をいたしまして、この内閣府の中に経済財政諮問委員会という存在が書かれているわけでございます。これは経済企画庁調整局や総合計画局、調査局、そういうようなものが中心になるのかもしれませんけれども、これからのいろんな面において非常に重要な問題だろうと思うわけでございます。  それに関連いたしまして、私はいわゆる全国的な計画のあり方もできれば経済財政諮問委員会でやってもらいたい気もいたしますけれども、各省別の五カ年計画を考えますと、例えば公共投資基本計画を眺めてみますと、公共事業の配分というのは事項別にはかなり変わっております。全体の中で、例えば道路はかつて昭和四十年代に四七・二七%ありましたのが平成九年では二七・九七になっております。それに対して、住宅が五・四だったのが一二・一九、下水道は二・二五が一二・六五と、そういうふうに行政の変化に伴って変わってきているんですけれども、建設省の全体としては昭和四十年の六九・三六%が平成九年には六八・五一と、どの省をとらえましても三十二年間の省間のこのパーセントは変わっていないわけでございます。せいぜい一%でございます。  こうなりますと、この公共事業五カ年計画も含めて、公共投資基本計画なりあるいは経済計画、全総計画、そういう各種五カ年計画を、しかしここまで持っていくとなかなか具体の調整がつかないと思いますけれども、こういうような全国計画あるいは五カ年計画の頭の部分を経済財政諮問委員会あるいは内閣府の中において行うということについての総理の御所見を承りたいと思います。
  30. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今この中間報告の段階において経済財政諮問会議について想定をいたしましたものは、マクロの経済政策予算編成の基本方針など経済財政政策に関する総合戦略というものを具体化するほかに、経済財政に関係の深い個別政策について政府部内の一貫性、整合性を確保するためにこれらの政策について答申をし、または必要な意見を述べることをその機能とする。その構成員は、内閣総理大臣内閣府に置かれる担当大臣その他の関係閣僚とともに、この会議そのものに学識経験者などを想定いたしておるわけであります。同時にその事務局に、内閣府の調整部局のうち経済財政政策を担当する部門がこの会議の事務局となるわけでありますけれども、ここに、まさにお許しがいただけますならば、行政内部の人間だけではなく外部の人材を迎え入れたい。そして、関係省庁の協力を得つつ事務処理をしていこうということについては、当然のことでありますが、確保したいと思います。  今、実は議員から公共事業の問題についての具体的な御提起をいただきましたが、この経済財政諮問会議にどのような事項を諮問する、あるいはこの会議がどのような事項について意見を述べる、現時点でこれを固定することは私は避けておきたいと思います。しかし、その会議の設置目的というものが、経済財政に関係する諸政策に関する内閣のリーダーシップの発揮とともに、それぞれの政策の一貫性、整合性の確保というところにあることを踏まえて、むしろこうした方向がお認めをいただけました時点で検討をしていくべき課題であり、現時点においてやはり私は固定化は避けたいと思っております。
  31. 久世公堯

    久世公堯君 この経済財政諮問会議というのは、あるいはアメリカの大統領府が一つのモデルになったんではなかろうかと思いますが、もう既に御承知のごとく、アメリカでは議会が予算編成権を持っております。したがいまして、アメリカでは経済諮問委員会予算編成について責任というものを持っていない。日本の場合におきましては内閣予算編成権があるということから、経済財政諮問会議というものは一体予算編成に対して責任を負うということになるのかどうか、だれが国会に責任を負うのか、そのあたりも問題点の一つでございますし、今また総理から御答弁いただきました経済財政諮問会議のメンバーと申しますか構成というのも、決して官僚の組織ではないんだと、それはよくわかるわけでございますが、一体現在の大蔵省の主計局や理財局との関係がどうなるんだろうか、いろいろ問題点があるわけでございます。そういう点も含めて実行がスムーズにできるような形で、ひとつ行政改革会議の方でこの御議論を賜ればありがたいと思っております。  そこで、この行革にはまだまだいろんな問題がございます。中央省庁あるいは地方支分部局、それから独立行政法人、いろいろあるわけでございますが、例えば中央省庁につきましてもいろんな議論がありますが、今言われておりますのは、一応一府十二省庁の枠を除いてはいろいろと論議がやかましいわけでございます。しかし、どうかひとつこの中央省庁の意見は、さっき総理がおっしゃいましたように、建設的に意見集約というものを図っていただきたいと思います。  それから、余り議論をされておりませんが、行政委員会、その中にも通信放送委員会というような新しいものも出てまいるわけでございますが、電波監理あたりならこれは行政委員会になじむのでございましょうが、放送・通信行政の中には必ずしも産業という面でない面も残るんじゃなかろうか、そのあたりが一体どういうふうに考えられるのかというのも問題点の一つだろうと思います。  また、地方支分部局についてでございますが、これについては今、国家公務員の中で内部部局、霞が関だけではございませんが、内部部局が約三万九千人、それに対して地方支分部局は約五十一万人いるわけでございまして、国家公務員の大半が地方支分部局の職員でございます。したがいまして、本来は地方支分部局の改革なくして行革はないわけでございます。中間報告では三点ばかり、例えば国と地方の役割見直しに伴い必要最小限にする、存続するものは総合化、都道府県以下のものは機関の整理を行う、三番目に現地完結性、窓口一元化、こういう原則は結構でございますし、非常に地方分権とも関連が深いわけでございますし、地方分権の帰趨を決するのもこの地方支分部局だとも言われているわけでございます。  また、独立行政法人につきましては、今回の中間報告におきまして新しく打ち出されたわけでございますが、初めのうちは小泉厚生大臣のお嫌いなエージェンシーというような言葉で呼ばれていただけに、国民にとっては何物かよくわからないわけでございます。しかし、これは今度の行革の目玉であると言われておりますし、名前だけがどうも先行して実体が明らかではございません。一体その性格なり対象分野なり、組織原理と申しますか、予算とか監督とか職員の身分とか、あるいは責任体制というのか、そういうものについてお考えを小里長官に承りたいし、またあわせて特殊法人との差異についても承りたいと思っております。  また、最後になりますが、小里長官総務庁長官として行革行脚ということが書かれておりましたが、至るところでこの最も橋本内閣の重要課題である行革に真剣に取り組んでおられる。ひとつ薩摩隼人の意気込みを最後にお聞かせいただきたいと思っております。  小里長官、よろしくお願いいたします。
  32. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 一点だけ私から冒頭申し上げ、小里大臣にバトンを渡したいと思います。  予算編成権の関連について御心配をいただきました。これは、予算を作成し国会に提出することを内閣の権限としている憲法のもとにおいて、内閣が現在でも概算要求に当たっての基本方針の設定、あるいは経済見通し、予算編成方針、税制改正大綱によって基本方針を策定してきたところであり、これに変更はございません。  同時に、経済財政諮問会議、これは(仮称)でありますけれども内閣総理大臣の補佐支援体制の強化という一環からこれについては提言をされているわけでありまして、位置づけは諮問機関という位置づけであります。予算の全体を内閣が連帯して国会に対して責任を負う。そして、予算調整につきましては、どういう名称をその時点で採用するかわかりませんけれども、現在の大蔵大臣の立場、当然ながら主計、主税に当たる部分を主管される閣僚、これが責任を負われるという仕組みを前提にしてのものだということだけ私から申し上げ、小里長官に御答弁を願います。
  33. 小里貞利

    国務大臣(小里貞利君) 質問の順序が若干変わるかもわかりませんが、御理解いただきたいと思います。  まず、独立行政法人でございますが、これは昨日も若干申し上げたところでございますけれども、現在国が行っている実施にかかわる事務事業業務、それらのものを国の行政機関とは別に法人格をつくりまして、いわゆる独立行政法人なるものを創設いたしまして、その事務事業等をできる  だけそれに行わせるようにしたい。  先ほども先生お話がございましたように、スリム化、そして民間でできるものは民間。あるいは民間にそのまま渡すわけにはいきませんよ、ゆだねるわけにはいきませんよ、公共性という観点も大きな要素であるよ、それらのことを念頭に置きながら、しかもその新しい行政法人はいわば弾力的な組織あるいは業務運営を可能とし、そして効率性やサービスの質の向上、透明性の確保を図っていきたい、そういう一つ基本考え方でございます。  このため、独立行政法人制度におきましては、組織、運営において、それぞれさまざまの法人が共通の一つのルールに従いまして、いわば基本原則を確立いたしまして、そして国民から見てもあるいはまた政府から見ましても透明性があり、そしてまた意見なり批判が加えられやすいような形にするべきではなかろうか、こういうことが一つございます。  もう一つは、すべての法人ごとに中期的な一つの目標を置きまして、そしてそれぞれその成果を政府もあるいは国民も評価をしやすい一つの仕組みを考えるべきである。あるいはまた、そういう意味から、国民のニーズにもきちんとこたえられる方向に業務の運営あるいは組織体の運営も配慮を必然にされていくものである、さように思っております。  もっと具体的に申し上げますと、企業会計の導入やあるいは財務運営の思い切った弾力化によりまして、弾力化といいましても思い切った、例えば一生懸命働いてみてください、成果が上がったらそれなりに一つの成果還元は職員にも自由に行い得るような仕組みも必要なのではなかろうか。  さらにまた、組織や定員配分等につきましても、自律性あるいは柔軟性を持たせるとともに、給与等におきましても、現場にやる気を起こさせるようなあるいはやる気を引き出し得るような仕組みもこの際考えなけりゃならない。  あるいはまた、法人の全般にわたる情報公開、これは先ほども若干申し上げましたが、政府に対しましても、事後チェックという形でよろしゅうございますから、現在は事前管理というような、政府とその事業体が非常に密接で指揮監督性というものが入り過ぎておりますから、これを事後のチェックに切りかえまして、その辺も緩やかな現場のあるいは事業体の活気を引き出しやすいようにいたしたいものだと。  それから、定期的に事業全体について評価を行うことは大事でありますから、組織、業務の自己増殖を特に防止する。言うなれば、無用な仕事を広げるようなことがないように、そういう自己増殖を防止するということも必要であるなと。  最後に、独立行政法人の対象業務は試験研究機関など多種多様なものがございます。行政改革会議におきましては、現在精力的にその適用事業、適用施設というものを検討中でございますが、昨日も申し上げましたように、郵政事業どもその一つの対象として念頭に置いておるということでございます。
  34. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 簡便に願います。
  35. 小里貞利

    国務大臣(小里貞利君) なおまた、今一番注目されておりまする職員の身分の取り扱いについては、公務員の身分を付与する方向で検討中であり、そしてまた、あるいは対象事業の性格によりましては、公務員とするもの、非公務員とするものの両方があってもよいと考えられるところであり、目下検討中でございます。  時間がないようでございますから、以上で終わります。
  36. 久世公堯

    久世公堯君 終わります。(拍手)
  37. 三浦一水

    ○三浦一水君 自由民主党の三浦一水でございます。  久世先生の広範かつ高尚な質問の後ではありますけれども、引き続き質問をさせていただきます。橋本総理初め関係大臣におかれましては、よろしく御答弁のほどをお願い申し上げたいと思います。  橋本総理、サウジアラビアから帰られまして、昨日はテレビの総括、きょうはまた李鵬首相もお見えになるやに聞いております。本当にお疲れさまでございます。  財政改革の意義につきましては、もう衆議院、本院におきましてもいろんな角度からその意義を問われてきたところでございますが、私としてもお尋ねをさせていただきたいと思います。    〔委員長退席、理事高木正明君着席〕  たびたびこれもまた引用されております、フランスのジュペ首相の「きょうの赤字はあすの増税」という言葉が最もよくこの意義をあらわしているのかなと思うわけでございます。私も、将来、孫子に国と言わず地方と言わず、そのツケを回してはならないと切に考えるわけでございます。そういう観点から、まことに重要な取り組みであることはもちろんでございますが、重要な法案であると私も受けとめさせていただいておるところでございます。  総理並びに大蔵大臣より、その意義について改めてお聞かせをいただければと思います。
  38. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今、議員から御指摘をいただきましたこの財政構造改革、これはもう我が国の財政の実態をごらんになれば、恐らく国民も皆御理解がいただけるテーマであろうと思います。  すなわち、主要先進国中最悪の危機的な状況にあること、そして現在の財政構造をもしこのまま放置していきますと、将来財政赤字を含めた国民負担率が七〇%にもなってしまう。これは、もう双子の赤字を抱えて国民の生活水準自体も低下すると見込まれるような状況であり、こんな将来を子供や孫の世代に残すことは絶対に避けなければなりません。  財政構造改革は、こうした状況にかんがみて、将来に向けてさらに効率的で信頼できる行政というものを確立すること、安心で豊かな福祉社会及び活力のある経済の実現という課題に十分対応できるような財政構造を実現しようとして行うものでございます。そのために、主要な経費目ごとにその性質に応じて量的縮減目標というものを設定いたし、今世紀中の三年間の集中改革期間中には一切の聖域なしで歳出改革と縮減を進めること、そしてそのために必要な各種制度改革の検討などを定めさせていただいたこの法案を提出させていただきました。  私は、財政構造改革の取り組みにはもう一刻の猶予も許されないことでありますし、ジュペさんの言葉を引用するまでもなく、そうした状況に我が国を追い込まないためにもここで歯を食いしばって頑張っていきたいと心から願っております。
  39. 三塚博

    国務大臣三塚博君) もう総理から言われたことでほとんど尽きようと思うのでありますが、一年余、財政構造改革に直接タッチをいたして、ありとあらゆる会議に出てまいりました。そういう中で、ジュペさんの言葉もそのとおりでありますが、ゴルバチョフが、ベルリンの壁崩壊のきっかけをつくった政治家でありました。そのとき、東独を訪れてスピーチをいたした中に、歴史の流れに逆らう者は自滅をしていく、歴史によって罰せられるであろう、それは自分一人であるなら我慢ができるが、そのことによって国家国民がおかしくなることはいかがなものかという演説、非常に感銘深く聞きました。  今日の行財政改革、六改革、これは歴史の潮流を先取りして、立ちおくれることなく俊敏にこれに立ち向かうというのが橋本首相のイニシアチブ、決心でございました。まさに政治家として、政党として、またトップとしてそれにこたえることは、現代における政党政治の中で、議院内閣制の中で総理・総裁をおいてほかにない。幸い与党のサポートをいただきながら今日まで来ているということでありますから、全力を尽くして後世のために現世代の中でこのことにチャレンジをし、よりよき伝統と文化がいつまでもこの国にありますように、そしてこの国が国際社会において名誉ある地位を得られますようにやることが大事だなと、このように思います。
  40. 三浦一水

    ○三浦一水君 総理おっしゃいました、将来にわたって信頼を受ける行政の姿を求めるということは非常に大事なことかと、まさに今、我が国においてもこの点が足りないのかと思います。  また、大蔵大臣に非常に含蓄の深い決意を聞かせていただいて、大臣の決意は日に日に固まっているのではないか、そのような印象も承ったわけでございますが、ぜひとも確固たる信念の中でやり抜いていっていただきたいと思います。  そうは思いますが、どうも国民の受けとめ方の中では、財政改革は先行ではないかという議論があることは否定できない事実ではないかと思っております。  ことし八月の総理府によります橋本総理の六大改革についての調査によりますと、国民が最も関心を寄せているのがやはり行政改革、八五・六%ということでございました。財政構造改革法が先に審議されているという表面的なこともあるかもしれません。あるいは国民の中には、負担増あるいは予算縮減が先行してという受けとめ方が依然として残るわけでございます。  意味は若干違ったと私は思っておりますけれども衆議院の議論の中では、小里総務庁長官の御所見の中で、一府十二省構想については五年以内には確実に実施に移していきたいといったような見解がございました。当然、省庁再編だけが行革の中身ではありませんでしょうし、その他のことも着実に進展していることは知っているわけでございますが、国民にそのような受けとめ方になりましては私はよくないと心配をするものでございます。  その辺につきまして、総理並びに小里総務庁長官の御所見を賜りたいと思います。
  41. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、今の議員の御指摘は非常にある意味で現在の状況を的確に表現していただいたのではないかと思います。そして、行政改革というものの大切さ、現在の状況、これを改めて長々と述べるつもりはございません。しかし、特殊法人の統廃合等々、着実に進んでいる部分、あるいは規制の緩和、撤廃といった形で進んでいる部分、分権という視点から交わされてきている、今提案をされ、同時にこれが分権推進計画としてまとめられている状況、こうしたものは必ずしも国民の目に逐一触れているわけではございませんから、ややもすると中央省庁の議論に視点は移りがちであり、財政構造改革法が審議に入っているのに、まだ中央省庁の問題で議論が右往左往しているんじゃないか、そのような印象を持っておられる方々があることもよく存じております。  その上で、これは当然ながら一体でありますし、むしろここまでは行政改革について特殊法人の見直し等の分野は先行してスタートをしておりました。しかし、ここから一層、一体的にこれを進めていく努力を必要とする御指摘は私は素直にちょうだいし、そのように努力をしていきたいと思います。
  42. 小里貞利

    国務大臣(小里貞利君) 総理の方からお話がございましたから別段申し上げることはどうかと思いますが、決意のほどをということでございますから申し上げたいと思うのでございます。  先生のおっしゃるとおりでございますが、ただ御理解いただきたいのは、行政改革というのはおよそ百十五万人の大部隊の移行でございます。大変な計画があり、そしてまた作業であるわけでございまして、それをできるだけ早く、そして合理的に、そして完成するかということはお話のとおりでございますが、大変な組織や業務、人の移動でございますから時間がかかる、この点だけはひとつ御理解いただきたいと思います。  したがいまして、皆さんの御意見を聞き、近々まとめまして、行政改革、いわゆる省庁再編大綱をつくりますよ、それから具体的に検討して、そして省庁再編に関するいわゆる基本法なるものを策定し、関連法をつくり、そして国民に、国会に御相談をするのが来年の春ごろだろうか、そういうような一つの日程で取り急いでおるところでございます。  なおまた、これは各方面の御意見を謙虚に、本当にじっくりとお聞き申し上げなけりゃならぬことは当然でございますが、よりょく時来たらば、これを節度を持って、総理の方針のもとにきちんと整理をして、そして百年の大計のその計画に誤りがなきよう期さなけりゃならぬ、さように存じておるところでございます。
  43. 三浦一水

    ○三浦一水君 財政改革の実施に当たりましては、抑えるところは抑える、しかし逆に重点的にやるべきところは冷静にめり張りをきかしながらやっていく、そのことがやはり大事かと考えております。国民もそれが最も納得しやすい点ではなかろうかと思っております。  整備新幹線についてお尋ねを申し上げます。  整備新幹線は、私は、国の骨格であることはもとより、ネットワークであり、国民へ機会を均等に与えていくべき一つの大きな手段であると考えております。これが途中で中断されることは許されない、心からそう思いますし、国土の均衡ある発展、住みたい人が住みたいところに住めるということが最も幸せなことじゃないかと思います。都市に住まなければ暮らしができないということでは余りに悲しい我が国の現状ではないかと考えております。その大事な目標を実現していく新幹線、一つのネットワークづくりではないかと考えております。  今、経済界、言論界あるいは識者の方々の御意見を拝聴いたしておりますと、もう既に電力の供給もできない、あるいは産業廃棄物等の処理もできない、あるいはもうまさに都市のキャパシティーをこれ以上ふやすことはできないじゃないかという現状はわかっていながらも、さらなる都市への機能集中を言われているかのごとき、あるいはもう大合唱を行われているかのごとき、最近のそのような各界の意見であります。  私は、ぜひともここを冷静にとらえながら、やるべきことはやるという姿勢を堅持していただければと思っておりますし、そして本当に衣食住バランスのとれ、そして国の守りも考え、力のある国土形成を図っていただきたいと思うわけであります。均衡ある国土、多極分散型国土の達成が既に放棄されたといったようなことになっては絶対にいけないと思います。  この点につきまして、総理大蔵大臣、運輸大臣の御所見を賜りたいと思います。
  44. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 議員よく御承知のように、平成八年十二月二十五日に今後の整備新幹線の取り扱いについての政府与党の合意ができました。そして、この政府与党合意に基づきまして、本年七月から政府与党整備新幹線検討委員会において検討が行われており、収支採算性の見通し、JRの貸付料などの負担、並行在来線の経営分離についての地方公共団体の同意、JRの同意など基本条件が整えられていることを十二分に確認をした上で、財政構造改革と矛盾しないよう、その取り扱いについては厳正に判断してまいりたいと思います。
  45. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 半歳余にわたる財政構造改革会議、三党代表、首相経験者等、御案内のとおりであります。  六月三日の取りまとめ、「財政構造改革推進について」におきましては、拙速に結論を出すことがあってはならない、検討過程での国民への情報開示により検討作業が国民理解を得られるような形で進められることの確保が不可欠である、集中改革期間を設け財政構造改革を進めようという流れに矛盾しないようにすべきである、この三点がただいま行っておる検討委員会、新幹線に関する昨年の暮れの申し合わせによる会議等において真剣に論議がされておるところであります。その取り扱いに厳正に対処してまいるつもりであります。
  46. 藤井孝男

    国務大臣(藤井孝男君) 整備新幹線の整備につきましては、我が国の高速交通ネットワークを形成いたします上で大変必要であり、また高速大量輸送機関であるということでございます。その上に立ちまして、国土の均衡ある発展あるいはまたその地域の活性化、委員も御指摘のことでありますが、そういった観点からこのプロジェクトは重要なプロジェクトと位置づけてこれからも整備をしてまいりたいと思います。  既に着工いたしております三線五区間がございますけれども、そのうち高崎−長野間の北陸新幹線につきましては先般十月一日に開通をいたしたわけであります。その他の三線四区間につきましても着実に整備を続けてまいる所存であります。  そして、先ほど総理また大蔵大臣から御答弁がございましたように、その他の区間につきましての整備につきましては、現在、政府与党整備新幹線検討委員会におきまして、先ほど総理大蔵大臣の答弁でありましたように収支の採算性の見通しであるとか、あるいは在来線の分離につきましての地方公共団体あるいはJR等の了承であるとか、そして結論的に申し上げれば財政構造改革に矛盾しないような、そういったいろいろな確認の上でこれからの整備に適切に対応してまいりたいと思っております。
  47. 三浦一水

    ○三浦一水君 次に、沖縄の問題についてお尋ねをします。  沖縄の問題につきましては、政府も大きな決意とエネルギーを持って今日まで努力がなされておりますことに敬意を申し上げるところです。個人的には、九州人としての同胞意識も持っております。沖縄に制度的な面も含めた抜本的な施策の展開が行われ、沖縄というこの地域が逆に我が国の将来を示すようなモデルケースにでもなるようにぜひなっていただきたいと私は心から念ずるところでございますが、危惧をされますのは沖縄開発庁の一府十二省構想の中での扱いであります。この点につきまして、沖縄開発庁長官の御意見を賜りたいと思います。
  48. 鈴木宗男

    国務大臣(鈴木宗男君) 三浦先生の沖縄に寄せる思いを承って大変ありがたく思っております。  この中央省庁の再編につきましては、私としましては一府十二省、九月三日の中間取りまとめの大枠の中で議論されなくてはいけない、こう思っています。ただ、この中間取りまとめでは、この沖縄開発庁、また私の所管いたします北海道開発庁についての位置づけは明確になってはおりません。まさに今、行革会議において議論されているさなかだと、こう承っております。  そこで私は、あの沖縄の過去の歴史を振り返るときに、沖縄の思い、沖縄の心、沖縄の目というものをしっかり受けとめて沖縄に対して国がしっかりとサポートしていく、これは当然のことかと思っております。ついては今ある沖縄開発庁の機能、さらには予算の一括計上権はぜひとも守らなくてはいけない、こんなふうに考えております。  歴代内閣は、沖縄問題につきましては一生懸命やってきたと思いますが、とりわけ私は今の橋本総理ほど沖縄問題に熱心な内閣総理大臣はいないと思っております。さらに、この内閣のもとで小渕外務大臣は第十代目の沖縄開発庁長官でもありますし、この行革担当の小里大臣におかれましては三年前の沖縄開発庁、北海道開発庁担当大臣でもありますから、これだけの人がそろって、よもや沖縄の皆さん方に落胆をさせたり、あるいは苦渋をなめさせるという結論は私は出ないと思っておりますし、特にこの内閣では私がたまたま最年少、内閣で一番非力でありますので、この気の弱い鈴木宗男を痛めつける結論も出ない、こう思っておりますので、ぜひとも三浦先生を初め委員の方々の沖縄あるいは北海道に対する御支援をお願いしたい、こう思っております。
  49. 三浦一水

    ○三浦一水君 鈴木長官、しっかりお願いいたしたいと思います。  次に、若干農業にかかわる問題も尋ねてまいりたいと思います。  最初に、農業農村の現状についてお尋ねをします。  我が国の農業農村は、食生活の変化や米の自由化を含みましたガット・ウルグアイ・ラウンドの農業合意等の影響で、本当に我が国農業始まって以来の危機状況を迎えているのではないかと考えております。  さきの大戦では率先して農民が徴兵に応じて国を守りました。大戦後はひたすら食糧の増産に努めました。経済の発展も支えました。選択的規模拡大にも取り組み、食生活の多様化にも対応してまいりました。減反あるいは生産調整にも従ってきたわけであります。  しかしながら、本当に農家農民はひたすら国の政策を信じ、従順に受け入れてきただけでありますが、現在のこの農業農村の状況というのは、もう私が説明するまでもないというところでございます。何か農業者が、自分たちが悪いことでもしてきたのか、経営的には何もミスはしていないぞ、国の政策に従ってきたばかりではないかという声が農家の本当にやり場のない率直な声でないかと私も受けとめております。  このような農家農村の現状につきまして、橋本総理の御所見を賜りたいと思います。
  50. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) このところ、実は自分の郷里に帰る余裕もなく、私の本家、現在も農家であり、ブドウ専業農家でありますけれども、どんな状況かを自分の目で見る機会がありません。しかし、手元にあります数字、これを改めて御紹介しても、今、日本の農業の置かれている位置というものは非常にクローズアップできると思うのです。  昭和三十五年に六百六万戸あった農家、平成九年には三百三十四万戸に減少いたしました。昭和四十年に千百五十一万人の方が農業に就業しておられましたが、平成九年にはその数は三百九十三万であります。そして、昭和四十年にはその千百五十一万人のうち六十五歳以上の方の占めている割合は一三%でありました。しかし、現在は三百九十三万人のうちの四八%が六十五歳以上の方々で占められております。そして、農村地域人口も、昭和三十五年には五千二百五十九万人を数えておりましたものが、これは平成七年の数字でありますけれども四千四百三十二万人に減少しております。一方、昭和三十五年には農産物の輸入額は九億ドルでありました。平成七年、農産物の輸入額は三百九十三億ドルであります。この数字が今の我が国の農業の置かれている状況、農村の置かれている状況というものを非常に的確にあらわした数字だと思います。  今、食料・農業・農村基本問題調査会におきまして農政の抜本的な改革に向けた幅広い御論議をいただいております。こうしたものをつくりましたのも、ちょうど我が国がAPECの議長国として非公式首脳会合を開きましたとき日本から問題を提起いたし、二十一世紀におけるアジアは成長の拠点のように言われているけれども、その成長の制約要因は本当にないのか。あるではないか。それは人口の急増であり、それに伴うエネルギー、食糧の消費の増大であり、それをどこから賄うかというテーマであり、同時にもう一つこれに環境が加わる。これは皆が共通の認識として持ち、考えていかなければならないことではないか。日本はこれを議長国として提起いたしました。  そして、こうした議論がAPECで始められたきっかけを日本はつくったわけでありますけれども、私は今御紹介をいたしましたような数字というものを本当に踏まえ、この調査会における御議論というものが今行われておりますものを受け、まさにここから出てきた御議論を受けて二十一世紀に向けた新たな農政の指針というものをつくっていきたいと心から願っております。
  51. 三浦一水

    ○三浦一水君 ありがとうございました。  次に、農政改革について大臣の御所見をお尋ね申し上げたいと思います。  農業農村の将来展望を開くこと、このこと自体が非常に重要だと展望を持つことであります、それぞれ農業者が。そのためにも農政の抜本的な改革を行っていくべきと、この現状の中では。今、総理もおっしゃられたとおりであると考えます。  農政改革を進めるに当たっての基本的な考え方を大臣の方からお述べいただきたいと思います。
  52. 島村宜伸

    国務大臣(島村宜伸君) 社会情勢の変化や国際化の進展に対応いたしまして、新たな基本法の制定を含む農政の改革が必要となっております。現在、食料・農業・農村基本問題調査会におきまして幅広い御議論をいただいているところでございまして、具体的な検討事項といたしましては、食糧の安定供給の確保のあり方、消費者視点に立った施策のあり方、新しい農業構造のあり方、農業農村の多面的機能の位置づけ、そして中山間地域を含めた農村地域の振興のあり方等についてであります。  本調査会におきましては、本年中に第一次答申、来年の夏ごろをめどに最終答申をおまとめいただくことに予定しておりまして、我々はこれらの御答申を踏まえ二十一世紀に向けて農業農村の将来に向かっての展望を切り開いていきたい、こう考えております。
  53. 三浦一水

    ○三浦一水君 加えてUR対策について、また農業農村整備事業についてお尋ね申し上げたいと思います。  まず、UR対策について冒頭に申し上げたいのは、これは農業合意受け入れ時の、そのときにかかわります約束事であります。このことは忘れられてはならないと思っております。  UR農業合意関連対策を計画的にかつ効率的に推進をしていかなければなりません。本年度においてもたくさんの継続の事業が各地域に残っているわけでございます。本対策を実施するための予算を補正予算に計上することがまことに肝要だと考えておりますが、大臣の御所見を賜りたいと思います。
  54. 島村宜伸

    国務大臣(島村宜伸君) お答えいたします。  いわゆるUR対策は我が国農業の体質を強化し将来展望を切り開くために必要不可欠な事業である、こういう認識であります。このため、その趣旨、緊急性を踏まえまして、各年度予算に補正を含む所要額を計上し適切に対応してきたところであります。  本年度におきましても、本対策の効果ある推進が図られるよう追加補正措置の検討を含め万全を期してまいる所存でありますが、いずれにいたしましても、本対策に要する経費の取り扱いにつきましては、事業内容見直しとあわせて予算編成過程で検討することとされており、今後財政当局と鋭意調整を進めていく所存であります。
  55. 三浦一水

    ○三浦一水君 農業農村整備につきましては時間の関係で質問を省かせていただいて、農業農村整備事業の着実な推進をお願い申し上げておきたいと思います。  次に、米政策についてお尋ねをしたいと思います。  米につきましては、まことに深刻な需給状況の中で、在庫の増加あるいは住産調整に対する不公平感の広がりあるいは直接的な米価の下落、一部においては政府買い入れ価格を自主流通米がはるかに下回るという状況まで今出てきているわけでございます。まさに冒頭私が述べましたように、農業農村の崩壊のときが来たと言っている人も数少なくないわけでございまして、大変なことだなと受けとめております。  現在、政府で米政策全般についての見直しが検討されていると聞いております。我が党といたしましても、本日、農林部会におきまして、現在の在庫を半分程度の二百万トンに二年間で圧縮していこうといったような党としての取りまとめもできたようでございます。三党協議にも入らせていただくという状況でありますが、この検討状況につきまして、農林水産大臣にお尋ねをしたいと思います。
  56. 島村宜伸

    国務大臣(島村宜伸君) お答えいたします。  米につきましては、ただいま御指摘のとおり三年連続の豊作に続いて本年もまた豊作、数字の上では一〇九、一〇二、一〇五、一〇二と、こういうぐあいで来ておりまして、このような需給関係を背景に、今御指摘がありました自主流通米の価格が下落し、しかもかなりのレベルで下落し、かつ計画外米が増大いたしておるわけであります。また、生産調整にいたしましても、まじめに生産調整に取り組んだ結果がかえってそれに協力しない方々に利するというような不公平感も指摘されているところでありまして、これらについて我々はできるだけ公平を期する内容に変えていかなければならない、こう考えております。  また、政府の備蓄も上限となる水準を大幅に超過している状況にあります。  このような状況のもとで、食糧法の目指す米の需給と価格の安定を図りますために、現在、生産調整、そして備蓄運営、稲作経営等、米政策全般の再構築に向けまして財政構造改革の趣旨を踏まえつつ、鋭意検討しているところであります。  今後、遅くとも月内には結論を得るべく、政府与党、関係団体の間で協議、調整を進めておるところでありますが、ただいまもお話がありましたように、皆様の非常に真剣な御努力にこの機会をおかりして敬意を表したいと思います。
  57. 三浦一水

    ○三浦一水君 次に、農村におきます高齢者福祉の展開につきまして、農林水産大臣と厚生大臣にお尋ねをしてまいりたいと思います。  現在、我が国の総人口に占めます六十五歳以上の高齢者人口は、平成七年に一四・五%、平成十七年には一九・六%になるものと見込まれております。これに対しまして、農村人口、非DID地区人口と申すようでございますけれども、のうち六十五歳以上人口は、平成七年には一八・三%、三%以上平均を上回るということであります。平成十七年にも二二・六%というふうな見込みが立っているようでございます。このように、農村地域におきましては高齢化率が非常に高うございます。高齢者福祉推進するに当たっても、大都市と異なった取り組みが必要になる部分もございます。  そのような中で、農業協同組合は、平成四年の農業協同組合法の改正によりましてホームヘルプサービス事業を実施することができるようになりました。加えてショートステイあるいはデイサービスの事業も取り組みの道が開かれたわけであります。農村地域中心に既にホームヘルパーの研修事業等の実施も始まっておりまして、在宅福祉事業に対する需要と熱意が高まっている現状におきまして、そのような法改正は非常に適宜であったと私も考えるところであります。  つきましては、現在の農協によりますデイサービス、ホームヘルプサービスあるいはショートステイ、高齢者福祉事業への取り組み状況について、まず御確認をさせていただきたいと思います。
  58. 島村宜伸

    国務大臣(島村宜伸君) 御指名順に私からまず答弁をさせていただきますが、農村地域では、急速に高齢化が進行する中で特に介護を要する高齢者の増大が見込まれておりまして、高齢者福祉活動の強化が重要な課題となっておるところであります。  このような中で、農業者の協同組織であります農協が、市町村との適切な連携と役割分担のもとで高齢者福祉活動に積極的に取り組み、農家組合員が安心して営農活動に専念できるようにすることが重要である、こう考えております。  そのため、農林水産省といたしましては従来から農協の行う高齢者福祉活動に対して支援を行ってきたところでありますが、今後ともこの充実に努めてまいりたい、大変大事な課題と心得ております。
  59. 三浦一水

    ○三浦一水君 取り組み状況と公的サービスの受託状況についてもお答えをいただきたいと思います。
  60. 熊澤英昭

    政府委員(熊澤英昭君) お答え申し上げます。  最近におきましては、農協は高齢者福祉事業につきまして力を入れて取り組んでいるところでございまして、ただいま大臣から答弁をいただいたところでございます。  具体的な取り組みの状況について補足して御説明申し上げます。  お尋ねのホームヘルパーにつきましては、第一級ホームヘルパーから第三級ホームヘルパーまで合わせまして、これまで約三万七千五百人の養成を行ってきておるところでございます。また、デイサービスセンターにつきましては、現在五つの農協が施設を設置し、運営をいたしております。さらに、ホームヘルプサービス等の公的サービスにつきましては、現在三十四の農協が委託を受けまして実施をしているという状況にございます。なお、ショートステイにつきましては、現在取り組んでいる農協はございません。  以上が具体的な取り組みの状況でございます。
  61. 三浦一水

    ○三浦一水君 今それぞれお答えいただきましたが、まさに大臣もおっしゃいますように、農協は日本全国津々浦々に支所という形でネットワークを持っております。農家の事情に非常に精通した職員さん方が多い。極端に言うならば、農協のネットワークで言うなら全国津々浦々、各家庭の状況はけがのことから病気のことまでよくわかるといったようなネットワークをお持ちになっております。私は、そういう農協のネットワークを使っていく、活用ができるならば非常に農村の福祉を有効かつ財政的にも負担の少ない形で進めていけるのではなかろうかと思いながら、この質問をさせていただいているわけでございます。  今お話にありましたように、平成四年から事業は取り組みができるようになっております。ホームヘルパーの派遣事業につきましては、その整備に要します資金は余り多額の資金が必要ない。しかし、デイサービス、ショートステイになりますと非常に多くの資金を必要とする場合があるということで、今御説明がありましたとおり、デイサービスをやっているところは五件、ショートステイをやっているところはまだゼロだといったような状況であることは、そのような理由かなと考えております。  今後、介護保険の制度の導入を図っていかれることになるわけでございますが、介護サービスの基盤整備をより充実しながら、そして事業の効率化を図っていくためには、在宅介護サービス分野における、先ほど申しましたように、農業協同組合の参入をより一層促進していくことが私は有意義であると考えております。厚生大臣の御見解をお願い申し上げたいと思います。
  62. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 介護保険の導入を展望しますと、できるだけ民間事業者の参入を期待することによって水準が向上していくのではないか。  そういう点を考えますと、農協はまさに御指摘のとおり全国津々浦々、地域に密着した活動を展開しております。でありますから、できるだけ農協にもこの福祉事業に参加していただけるように各地方自治体、関係団体を通じて協力をお願いし、また指導すべき点は指導していかなきゃならないなと、そう思っております。
  63. 三浦一水

    ○三浦一水君 最後にもう一点、施設整備の補助制度の改正につきまして厚生大臣にお尋ねをいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。  デイサービス事業やショートステイ事業を実施するにはデイサービスセンター等の施設を整備することが不可欠であります。機械ぶろが要りましたり、リハビリの機材が要りましたり、いろんなものが要るわけでございます。  現在、施設整備費の補助は市町村や社会福祉法人に対してのみは行われております。しかしながら、農業協同組合がこの施設の整備を図ろうとするときにはその費用はみずから出していかなければならないという状況になっております。これは、社会福祉法人を農協が別途設立しなければ、そのような補助の対象にはならないということでございます。  御存じのとおりに、社会福祉法人は今いろいろな形で設立をされておるようでございますが、土地をまず法人に対して提供しなければいけない、それならば今度は農協の理事会での審議が要る、非常に複雑な手順にもなってくるわけでございます。一方で、それに利用できる農協の遊休な資産というのは少なくないものがあります。人材については先ほど申したとおりであります。  このような状況の中で、農業協同組合に対しても社会福祉法人と同様に施設整備の補助を行うことができるならば、この隘路をなくして農村における福祉の展開をより効率的に行うことが私はできるのではないかと確信をするところでございます。  厚生大臣の御見解をお願い申し上げたいと思います。
  64. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 老人福祉施設の整備に対する公費による補助というのは、憲法八十九条ですか、憲法によって禁止されているということであります。  でありますから、これはできないんですが、現在でも農協を母体として設立された社会福祉法人に対しては施設整備費補助が行われておりますので、今後もこうした形を通じて適切な支援をしていきたいと思っております。
  65. 三浦一水

    ○三浦一水君 憲法上の解釈あるいは法的な解釈、それについては理解を持つものでありますけれども、社会福祉法人も今いろんな形で問題を抱えております。  まずは、福祉の担い手として何が重要か、その地域において信頼に足り得る方々かということは非常に重要なポイントであると考えております。雨後のタケノコのようにへんちくりんな福祉法人が出てきたということもまた否めない事実でありまして、その目的は福祉ならばいいけれども福祉でない目的でもって福祉法人が出てきたというのも事実であります。私は、農村における協同組合、この信用と実績というものは非常に大きなものがある。そういう状況の中で、現実的な比較の中で、今あります福祉法人に劣るものではない、現実的な側面も見るべきではないかと考えております。  そういう点で、本当に解釈上の問題、これは今後も議論をする必要があると思います。余地は全くないものではないのではないか。それを言うならば、ほかにも補助すべきでないものはたくさん我が国の運営の中であるのではないか、そのような気もするわけでございます。  ぜひともそのような現実的な、現場的な側面を見落とさずに今後も御検討を、あるいは分析をお願い申し上げたい、最後にこのことを重ねて要望申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  66. 今泉昭

    ○今泉昭君 平成会の今泉でございます。  内外に大変重要な課題を抱えておる中で、大変忙しい毎日を真剣に課題の解決のために努力をされている橋本総理に対して、まずもって敬意を表する次第でございます。  さて、昨日のマスコミ等の報道によりますと、株価は週末の下落に続きまして一万六千円台を割ってしまいました。さらにまた、景気の大変重要な指標だと思われております機械受注の状況も、前期に比べまして一二%も大幅に下落をするというような状況が明らかになってまいりました。これまで、どちらかといえば構造転換を既になし得ていると言われている製造業の比較的好調な業種であった自動車も、十月の販売台数は何と二けた台も落ち込むというような状況になりました。景気の牽引車の一つであるというふうに見られておりました電機産業のパソコンも、前年の伸びを大きく下回る下方修正がなされなきゃならないというような状況になってまいりました。  こういうものをマクロ的に見ますと、既に御承知のように、四−六月期の我が国のGNPの成長率は二・九%、年率にしますと一一・二%というこれはもう石油ショック以降の大変大幅な落ち込みを示しましたし、円安はますます加速をしているような状況に実はなっているわけでございます。こういうような状況を見まして、国民の皆さん方は、私ども地方に行きまして聞く声というのは、景気は何とかならないものか、このまま続いたら大変なものだよという声、怨嗟の声を大変多く聞くわけでございます。  このような景気の実態を見まして、いろいろな閣僚からの発言が聞こえるわけでございます。一つは、これはあくまでも我が国の経済の体質の変化、構造変化の中の一つ状態であるから、いましばらく見ていたら大丈夫だという意見があります。しかし私は、どう見てもこれは構造変化という条件だけでの実態とは考えられないわけでございます。この間に幾つかの政策的な課題をこなすような政治の行動があれば避け得た問題が幾つかあったのではないかと思うわけであります。したがいまして、現在我が国が直面している景気の不健全性、停滞感、あるいは不況と言っていいかもしれない、これは政策不況ではないだろうかというふうに私は考えるわけであります。  私は、政府は今日の経済に対して大きく分けまして三つの失敗をやらかしているんではないかと思うんです。  まず第一の失敗は何か。これは、昨年やっと我が国の景気バブルの崩壊からある条件をそろえて立ち直りかけてきた、そしてこのままいけば幾らか明るい展望が見えるかなと思っていたやさきに、この立ち直りの足取りを過信して水をぶっかけてしまった。何か。消費税の引き上げ減税の打ち切りそして医療費の引き上げという、いわば消費の伸びに対しまして水をかけるような政策をまず政府が打った。いわば、昨年の我が国の経済回復基調を過信し過ぎたという政策判断ミスがあったんじゃないかと思うわけであります。これが第一点。  それから第二点は、橋本総理大臣を初め企画庁長官のこれまでの答弁の中にも見られましたように、消費税の引き上げの影響をこんなにまで大きいものだとは思っていなかったという答弁がございましたけれども、いわゆる消費引き上げの影響に対する判断が大きく誤っていたんじゃないかと思うのであります。もし誤っていたとするならば、その点でそれに対する対応策を打たなきゃならないのに、これに対して何ら手を打っていなかった、これが今日の景気の不況感をさらに悪化させているんじゃないかと思うのであります。  第三点は、消費税の駆け込み需要が大きくて、それの反動が大きいのを予測しなかったというふうに言われましたけれども、その落ち込みがかつてないほど石油危機以降の大変大きな落ち込みであった、これは大変なことでございます。  しかも、その後の足取りが思わしくないにもかかわらず、依然として何ら手が打たれていない。ということは、この落ち込みの影響というものが今後の我が国の経済に与える大きな影響に対して過小評価をしていた判断ミスではなかったかと思うわけであります。  そういう意味で、私どもも我が国の経済が確かに構造的な変化を今遂げつつあるという認識は持っております。しかしながら、その中でそれを順調に持っていくためには、有効なその時々の変化に応じた政策判断に基づいた景気対策が必要であると思うわけでございますが、それがなされなかったがために、今置かれている私が申しました種々の経済の実態につきまして、橋本総理大臣は政策判断というもののミスがなかったかどうか、どのようにお考えになっているか、まずお聞きしたいと思います。
  67. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 景気の現状についての認識でございますが、私ども、今泉委員とやや異なった考えを持っております。  設備投資につきましては少なくとも上昇傾向にある、昨年と比べてふえているということでございます。それから、企業収益もふえているということでございます。それから消費につきましては、いろんな数字がございますが、例えば実質消費支出、九月の水準は前年同期比で二・六%、前月比でプラス〇・九%という数字になっておりまして、七月−九月も前年同期比で見まして一・九%の伸びということになっております。  それから、九月の水準で見ますと、雇用者数も三十六万人対前年九月に比べましてふえておりまして〇・七%の増、雇用者一人当たりの所得もふえているということでございます。  確かに、おっしゃるような余りよくない指標もございます。それからいい指標もございます。それを全体として総合的に判断をして、景気回復基調は変わっていないけれども足踏み状態にある、私どもはそういう認識をしているわけでございます。  そこで、どうしてこの見通しが間違ったかというようなことのお話がございましたが、私どもは確かに、実は消費税の引き上げに対応する駆け込み需要の大きさについての認識が、これは一般の方々もそうでありますが、間違っていたと思っております。つまり、ことしの三月までの九六年度中に住宅建築の関係と消費の関係を中心といたしまして大きな駆け込み需要がございました。経済の実質も、実質成長率で二・五%と見込んでいたものが、九六年度で実は二・九%の予想より高い成長になったわけであります。そして、四月以降の駆け込み需要反動減というのも実は予想より大きいものがございまして、そういう意味で四月−六月がGDP大きなマイナスを示した、こういうことになっているわけでございます。  最近の状況におきまして、全体として見ると、緩やかながらいわゆる駆け込み需要反動から回復しているという兆しも見られているわけでございますが、なお全体として消費及び設備投資は伸びておりますが、消費が思ったほど伸びていないという実情にございます。  こういう実情の原因が何かということでございますが、私は先ほど申しましたように、消費者の懐もそれから企業家の懐もそこそこ豊かであるにもかかわらず消費や投資が思ったほど伸びていないのは、経済の先行きに対する信頼感がやや低下している、それが原因であるというふうに考えております。これに対して、やはり民間需要中心として経済が活性化するような経済対策を打っていかなければならない、そういう考えでございまして、総理の御指示もございまして、近く、二十一世紀も展望しながら規制を緩和したりあるいは土地の流動化を図ったりして、しっかりとした対策を出していきたいと考えております。  そして、そういう対策を出すことによりまして将来の経済に対する展望が開けてくれば、いわゆる信頼感回復することによって景気がしっかりとした回復軌道に乗っていく。もちろん、その後の将来展望も大事でございますが、そういう意味で、安易に財政に頼らず民間主体の経済の活性化  を図っていきたいと考えている次第でございます。
  68. 今泉昭

    ○今泉昭君 最初に、実は総理大臣に基本的な大きな意味景気に対する見解をお聞きしたがったんですが、今具体的な回答を先に企画庁長官にいただいたものですから、細かい具体的な問題にこれはどうも入らなければいけなくなってしまいました。それでは、今、企画庁長官が言われました問題について一つ一つ照査をさせていただきたいというふうに思うわけでございます。  我が国の消費税の引き上げということは二回目の経験であります。前回の経験があったはずであります。前回のときの状況と今日のときの消費税の引き上げ状況をどのように考えていらっしゃいますか。  前回のときは、御存じのように、物品税が廃止になった上で消費税が引き上げられているわけです。したがいまして、もし前回と同じような形での消費動向というふうな考えで立っていらっしゃるとするならば、今、企画庁長官が言われたとおりかもしれない。基本的に違うんですよ、今回の消費引き上げの影響というものは。その点につ  いて、どうお考えですか。
  69. 新保生二

    政府委員(新保生二君) お答えいたします。  先生御指摘のように、前回の場合、物品税の廃止というのがありました点、今回と違う要素があるというのは御指摘のとおりだと思います。それに加えて、前回と今回のもう一つの大きな違いは、前回の場合は駆け込み需要という規模が今回より相対的には小さかったという点が違います。  例えば、前回の消費引き上げ前の八九年の一−三月期の消費の伸びは前期比で二%ということでございました。今回の場合、九七年一−三月期の消費の伸びは四・四%という伸びですから、大ざっぱに言えば倍以上の駆け込み需要の規模があったということで、その点今回の方が反動減も大きくならざるを得ない、そういう要素があるかと思います。
  70. 今泉昭

    ○今泉昭君 私もそれは十分承知しているわけであります。承知した上で質問しているということは、御存じのように、物品税の対象である品目が前回は今回と違う動きをしているわけです。その物品税の影響というものを今回の消費税の引き上げのときに、要するに考慮していなかったせいでしょう。  だから、全体的な数字ではそうかもしれないけれども、今回は自動車なり家電なりの動きというものが前回と違う動きをするのは当たり前のことなんです。そういう大きな判断ミスをしているから、甘く見過ぎたんじゃないですか。
  71. 新保生二

    政府委員(新保生二君) 今回の場合、御指摘のように、家電であるとか自動車の関係の反動が大きくなっているというのはそのとおりであります。  ことしの春ごろにいろいろ業界等から事情を聴取しましたときに、昨年の後半あたりから家電とか乗用車が非常に売れたわけです。この点につきましては、駆け込み需要というよりもバブル期に購入した乗用車とか家電の買いかえ需要がようやく出てきた、そういう業界の評価もありまして、我々は、駆け込みはあるとしてもごく一部のファクターであるというふうに春ごろの時点までは判断しておったわけです。  しかし、現実にこれだけ反動が大きくなってきていることから、後で考えますと、買いかえが出てきたというファクター以外に、駆け込み需要の部分が実は我々が思っていた以上に大きかったということであろうというふうに推察しております。
  72. 今泉昭

    ○今泉昭君 そこで、ある意味では過小評価をした判断ミスがあったというふうに受けとめるわけでございますが、企画庁長官は、とはいえいろいろなファンダメンタルズの指標が必ずしも悪い指標ばかりではない、要はこれからの将来の展望というものが明らかになれば今の景気でも皆さん心配する必要ないよと、こういう答弁でございまし  た。  御存じのように、我が国のGNPを構成する、GNPではなくてGNEかもしれませんが、構成する最大の要素は消費支出であります。それに民間支出と公的支出、これが三大要件になっているはずでございますが、六割を占める個人消費支出を増大していくということがいかに全体の景気に少しの力でもって大きな影響を与えるかということは、これは数字の比率で明らかでございます。  ところが、この個人消費支出を将来の展望が明らかだということで増大するためには、少なくとも四つの条件が必要なんじゃないですか。何か。一つは物価です。二番目には雇用、三番目には所得の上昇、四番目には公的負担の減少ということです。この四つ比べてみてください。将来展望で見まして、今まあまあ安心できるというふうに考えられるのは物価だけじゃないですか。  一つ一つ検証していきたいと思うんですが、雇用にしろ所得にしろ公的負担にしろ明るい展望は一つもありません。  まず、所得を見てください。確かに三%から四%程度の賃上げがことしありました。一時金も支出しています。これは年間どれだけの所得の増加になると思いますか。大体四兆五千億円です、GNPに与える影響。ところが、政府がやったのは何ですか。それに倍するだけの負担国民に投げかけたんじゃないですか。九兆円の負担を新たに加えることにしているわけでしょう。そうすると、四兆五千億円の所得の上昇があったとしてもマイナスになるじゃないですか、これは。  こういうような所得の実態の中で所得がそこそこ伸びているなんということは、それは現状の数字としてはあり得るかもしれないけれども、将来的なものとしては明るい展望は一つもないはずであります。まず、この点についてはどうですか。
  73. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 所得につきまして、直接に消費者の懐に幾ら所得が入るかということのような御議論をされておられますが、私ども考えておりますことは大きく分けて三つのことをやる。  一つは、企業活動の国際的な展開の中で、日本という国が日本企業外国企業に選ばれるような環境条件、事業環境の条件を整えるということが必要であるというふうに考えております。もっと言いますと、空洞化の逆のような現象を起こしたいということでございます。そのためにも、法人課税減税を図る、そして有価証券取引税のようなものについても見直しをする。そして、もっと企業活動が国内で活発になるような、企業日本という国を生産活動の拠点として選ぶような体制をつくる、こういうことでございます。  それから二つ目は、現在、どう言いましても実は経済の活性化の大きなしこりになっておる、障害になっている不良債権処理というものがまだ完全に進んでいない。特に、担保不動産の処理というのがほとんど進んでいないという状況のもとにおいて、土地取引の活性化、土地有効利用を図ってそのしこりを取り除いて経済を活性化する、そういうことをやっていきたいと考えております。  それから、もう一つ規制の緩和でございまして、例えば電気通信分野における規制の緩和とか、容積率のアップによります規制緩和とか、あるいは地域においては農地の転用の規制緩和とか、そういうことをやりまして、都市部においても農村地域においても全体としての経済活動を活発化して、その中から所得もふやしていく、雇用もふやしていくということでございます。  そういう筋を通して、民間中心経済活動を活発化することによりまして所得を上げていく、雇用を上げていく、そして消費をふやしていく、そういう基本的な構造改革の中で経済を活性化していきたい、こういう考え方でございます。
  74. 今泉昭

    ○今泉昭君 言わんとされることは私も理解はできます。しかし、個人消費というものは、景気を支える意味で積極的な要因よりも底支えをするという意味での意味合いが大変強いわけです。私が言いたいのは、結果的にそういう施策をとった後で所得は条件ができるから出てくるだろうということではなくして、今この景気を底支えしている個人消費というものが落ち込んじゃったらどうするのかということなんですよ。これを考えてもらわないことには、我が国のこれからの見通しというのは大変違ってくるんです。これがまず所得という面での指摘でございます。  今いろいろ申されましたので、先に全部言ってしまいます。  二番目の公的負担、これはもう言うまでもないですね。減税があり、あるいはいろんな意味での公的負担がふえれば所得の増加につながるわけですから、これはもう所得についての側面的な大変重要なファクターになるわけですけれども減税は見送りだ、消費税はかかってくるわ、九月の一日からは医療費が値上がりするわですよ。現に七月の給料をもらった一般のサラリーマンは何と言っていると思いますか。七月の手取りの賃金は昨年の七月よりも減っているんですよ。なぜだかわかりますか。減税がない、そして去年の地方税がかさんでくる。だから、賃上げがあったにもかかわらず減ってきているわけですよ。そういう状況において、景気を支えている消費を待ちなさいということが将来展望につながりますか。私は、決してそれは展望としてつながらないんじゃないかというふうに判断をしているわけであります。  それから第三点、雇用の問題であります。  雇用は着実にふえているということをおっしゃいました。数字的には確かにそれは言えると思います。ところが、その中身を見ていただきたいんです。どういう種類の雇用がふえていると思いますか。常用雇用は減っているんです。パートタイマーです。短時間労働者ですよ。実質的な意味でこれは雇用の改善という意味合いではない。アメリカ的な意味で言うならば、後ほど述べますが、これは確かに雇用改善ということになると思うんですが、我が国の場合の雇用改善というのは、常用雇用者が伸びなければ雇用の改善という意味合いにはならないんじゃないですか。  まず、そういう中において今我が国が一番注目をしているのは、建設業界の行く末でございます。御存じのように、建設業界は五百万とか六百万とか、すそ野を全部広げれば雇用者がたくさんいらっしゃる産業一つでございます。六十万社からの数多くの企業がここに存在をしているわけでございますが、この建設業界、そしてそれに関連する不動産業界は、御存じのように金融ビッグバンの影響を受けて、今雇用の不安におびえている状況ではございませんか。  さきに起こりました東海興業の倒産、多田建設、大都工業と連続して更生法を申請しましたね。これはビッグバンの影響をまともに受けているわけでしょう。御存じのように、金融界が建設業界に貸している残高というのは六十兆を上回ると言われている。そして、この建設業界が抱えているいわゆる債務保証した債権というのは四兆円になるんじゃないかと言われている。  そういうような状況を見ながら、今ビッグバンを控えた銀行は、自分たちの生き残りのためにみんな援助を打ち切り始めているでしょう。金を貸さなくなっているでしょう。あのバブル期に大量に土地を買いあさった建設業界、不動産業界が、その不良資産を抱えて、銀行からの融資を切られて今大変不安な状況になりつつあるわけです。  そこでお聞きしたいんですけれども、来年の四月の一日から早期是正措置が行われる。それでも問題があるんだけれども政府から流れた資料によりますと、三段階に分かれた一つの指標が出されておりますが、現在、銀行の中で一番上の四%の基準をクリアした金融界というのはどのくらいあるんですか。これは大蔵の方にお聞きしたいと思うんですが、どうですか。
  75. 山口公生

    政府委員山口公生君) お答え申し上げます。  自己資本比率の基準は、国際的に活動しているものはBIS基準に一応八%の基準というのがございます。それから、専ら国内でやっておりますのは四%でございます。八%の基準の場合は全部と言っていい銀行が今達成をしているという状況でございます。一行だけ国際的活動から引いた銀行がありますので、それは今度は国内基準が適用されるということでございます。  また、国内基準の適用される銀行、地銀の一部とか第二地銀でございますけれども、そういったところもほとんどの銀行は今のところ基準を達成しているという状況でございます。
  76. 今泉昭

    ○今泉昭君 間違いないでしょうね。
  77. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私が申し上げていますのはことしの三月期での話でございます。そういった場合におきましては、ほとんどの銀行が大体感じとしては九割ぐらいは達成しているという感じでございます。
  78. 今泉昭

    ○今泉昭君 きのう大蔵大臣の答弁の中で、銀行の不良債権、去年の場合は三十四兆八千億ぐらいあった、一年間で七兆分ぐらい減ったと。依然として二十七、八兆円の不良債権を抱えているわけです。  しかも、アジアにおいてこの金融不安が今盛んに喧伝をされているような状況でございます。日本の銀行も相当アジアに対して投資をし融資をしているはずでございます。タイ国一国だけで調べてみても、タイが受け入れている海外投資の三分の一は日本の銀行が貸しているという話でございます。  そういう状況の中で、先ほど申し上げましたが、不良債権がそんなに残っている中でクリアしているというのは、対象を何行にしているんですか。我が国の金融機関は少なくとも三千七百ぐらいあるはずですね。都市銀行の数は限られていますけれども、私は都市銀行のことだけを聞いているわけじゃないんです。全体の状況はどうなんですか。全部がそれをクリアしていると言えないでしょう。
  79. 山口公生

    政府委員山口公生君) 私が御報告申し上げた数字は全部の金融機関の総体での感覚でございます。
  80. 今泉昭

    ○今泉昭君 感覚ですか。
  81. 山口公生

    政府委員山口公生君) そうでございます。  約九割が達成をしている。少なくとも、大臣からもしばしば御答弁申し上げていますように、不良債権問題はマクロの数字でいいますとかなり改善をしてきております。しかし、個別の銀行におきましてまだいろいろと問題を解決しなきゃいけない銀行が残っているというような状況でございます。つまり、不良債権問題はマクロで見た場合には、かなりの銀行がそこを必死のリストラ等でクリアしょうとしているという状況でございます。
  82. 今泉昭

    ○今泉昭君 金融ビッグバンの先進国と言われるアメリカにおきまして、この金融ビッグバンが行われました八〇年代、三年か四年連続して銀行倒産が三けた起こっているわけです、そういう基準を満たせないがために。我が国において、今当局の方から報告されたように、九割以上のものがクリアしているなんというのはちょっと信じがたいです。  それはまあいろんな影響を考えて、このことは余り公表すると影響するところが大きいからという意味でそういう表現になっているんじゃないかと思うんですが、私が言いたいのは、特にもう既に起こっている建設業界においての雇用不安というもの、去年なんかの雇用増というのはどちらかといえば住宅建設の駆け込み需要によりまして、大量の人が建設業界に雇われたわけですよ。建設業界の雇用数というのは膨れ上がったわけです。だから雇用増になったでしょう。ところがこれからは、むしろ建設着工件数は、去年が百八十万戸だったのがことしは百三十万戸台、五十万戸減るわけです。これが雇用に影響しないわけがない。  そういう意味で、建設業界の雇用の問題をどのように建設大臣は見られておりますか。
  83. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) ただいま今泉議員がお話しのように、住宅における着工戸数はバブルの当時から比較いたしますと相当に減じておるわけでありまして、これが雇用の問題にも大きく影響いたしておることは先ほど来お話しのとおりでございます。  平成二年から平成九年の建設業者数、建設投資額、こういった点で見ますと、建設業者数が五十万九千社のものが平成九年は五十六万五千社と一一%ほど業者は多くなっている。また、建設投資を見ますと、八十一兆四千億が七十九兆八千億、いわゆる二%減になっておるわけでありまして、これはバブルのときから移行しておるということを如実に示しておるわけであります。  こういう背景を受けまして建設業界は極めて厳しい経営環境にある。そこからいわゆる雇用の問題、それぞれ課題を生じておることは委員御指摘のとおりでございます。
  84. 今泉昭

    ○今泉昭君 そこで、労働大臣もいらっしゃっていると思いますが、今我が国の雇用の実態を見てみますと、一つは、昨年比較的景気がよかったときの雇用増ということからこれからの展望をはかってみた場合、さらにそれよりも雇用が拡大をしていくという条件はまずちょっと見当たらないわけであります。しかも、雇用の中身を見てみますと、パートはふえているけれども常用雇用者はどんどん減っていっているような状態でございます。  こういう雇用の現状に対して、労働大臣としてはどのようなお考えをお持ちですか。
  85. 伊吹文明

    国務大臣(伊吹文明君) 全般的に申せば、構造改革が進むことによって、あらゆる政策に効果と副作用がございますように、雇用が抑えられる部分もあり、新たに雇用が創出される部分も当然出てくるわけであります。  そこで、先生が今御指摘になりました建設関係について言えば、特に先生が御指摘のように、今、全体の雇用の中では建設業の状態はマクロとして見て雇用面ではよくありません。これは、やはりバブル期に過剰投資をされたその金利負担等が経営を圧迫しているということが大きな原因だろうと思います。  しかしながら、今お願いをしておる構造改革の法案が通った場合に、公共事業は七%の削減に当然なります。そのなるということは、ある意味では有効需要、つまり雇用の受け皿である有効需要が公共事業面では七%減るということでございますから、今のままの状況でほっておけば私は非常に厳しいと思います。  しかし、この法案が財政削減法案と言わずに財政構造改革法案と言っているのは、私はそれなりの重要な意味があるわけであって、既に景気対策として我が自由民主党で検討しております中にもそういうことが入っておりますが、民間資金の公共事業への導入ということが一部あります。それから同時に、従来の公共事業の支出の中で、土地等の高コスト部分の公共事業よりも民間に流れる事業量がふえる公共事業を優先的に契約するということを実は考えておるわけであります。  両々相まって、私は当面、先ほど企画庁長官が申し上げたように、中期的に規制緩和等によって雇用が出てまいりますまでの間も、建設業においてはそのような措置が講じられて、構造改革によって少ない財政支出で多くの有効需要を創出する公共事業構造になっていくと考えております。  ただ、極めて短期的に、今おっしゃったような摩擦的な失業が出るということは当然想定されますので、労働省としては、既に現在でも倒産しておるゼネコン等について適用いたしておりますように、継続雇用の調整助成金でありますとか職業紹介とかというあらゆる手段を用いまして、できるだけ御不安のないように最善の努力を尽くしたい、こういうふうに考えております。
  86. 今泉昭

    ○今泉昭君 そこで、もう一度企画庁長官にお聞きしたいと思うんですが、ことしの政府予算は、ことしの我が国の経済動向を見据えて決められて、これこれこういう状況のもとでこれだけの税収があるということが頭に当然あってつくられているはずでございます。そういう中で、ことしの経済成長率は一・九%というのが決められているわけでございます。  経済企画庁長官は、景気の実態は心配ない、政府のしかじかこれだけの政策がとられれば心配ないよということを盛んに言われるわけでございますが、当初予定の一・九%の実現は自信はございますか。
  87. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 先ほど申し上げましたとおり、昨年度の消費引き上げ前の駆け込み需要が、住宅建築中心とした消費も大変ございまして、予想以上に昨年の伸びが高かったわけでございます。予想が二.五に対して二・九%伸びた。そして、その後の四月以降の駆け込み需要反動減というのも住宅を中心として予想以上でございまして、そういう意味で非常に低かったという状況でございます。  景気の現状につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、緩やかな回復過程にあるものの足踏み状態にある、一言で言いますとそういう状況でございまして、私どもは、これからの経済対策を打っていきたい、こう思っているわけでございますが、現状において一・九%の今年度の政府経済見通しを達成することは難しい状況にあると考えております。  しかし、先ほど来申し上げておりますような、民間需要中心経済活動を活性化して経済を正常な回復軌道に乗せる、そして消費者あるいは企業家の将来に対するコンフィデンスといいますか、いわゆる将来の経済に対する信頼感というものを回復することによって、できるだけ一・九%に近づけていきたいと考えている次第でございます。
  88. 今泉昭

    ○今泉昭君 実は駆け込み需要によりまして、ことしの一−三月期のいわゆる我が国の成長のげたというのがえらく高くなっているわけです。一−三月期の上昇によりまして、何と三月時点のげたは一・八%程度いっているはずです。  そうしますと、我々は今九年度のことを問題にしているわけですから、四月から来年の三月までのことであります。実は三月期の経済情勢が全くよくならないで、そのままずっと横に推移したって一・九%近い水準は達成するということでしょう、げたが高くなったということは。〇・一だけしか上がらないわけです。しかも、御存じのように、四−六月期には逆に大きな落ち込みをした。げたがどうなったか、げたがマイナス一・三%まで落ち込んでいるわけでしょう。そうすると、今のような状況をずっと続ける限り、これはマイナス成長しか考えられないわけですよ。だから、この間に何か打たなくちゃいけないんじゃないかどいうことを先ほどから私は申し上げているわけです。私は、悠長な長期的なことでこれは解決する問題じゃないと思うんです。そうしますと、とれは大蔵省が当初から予定したような税収などというのは期待できません。  そういう意味で、景気判断のミス、対策の手おくれということは考えられませんか、感じていらっしゃいませんか。
  89. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 先ほど来申し上げておりますとおり、一・九%の達成は難しいと考えておりますが、今、今泉委員がおっしゃったようなそれほどの数字には絶対にならないと思っております。  そして、私どもは近く経済対策政府として決定をいたしまして、税制の問題はまだ先でございますが、規制緩和とか土地の流動化等々に関する対策を決定して、全体として先ほどのお話にございました建設関係、不動産関係がよくないというお話がございましたが、私はそのとおりだと思っております。それはいわゆるビッグバンが原因ではございませんで、基本的な原因はバブルの最中の後始末がついていないというところが基本的な原因でございます。私どもの方はその後始末をしっかりつけて、不良債権というしこりを解消するべく対策をとっていく必要がある。そのためには、規制緩和も必要でございますけれども土地の流動化、有効利用ということに力を入れていきたい、そういうふうに考えております。  そして、そういうことをやることによって、日本経済はこれから二十一世紀に向かって民間需要中心で、発想の転換でありますから、今までのように公共事業中心ではなしに、民間需要中心で上がっていくなという、そういう考え方企業家の皆さんや消費者の皆さんが切りかわってくれば先は順調に上がっていく、私はこういうふうに考えております。
  90. 今泉昭

    ○今泉昭君 そこで、橋本総理大臣にお聞きしたいんですが、今までのやりとりの中で私の考え方や意向というのは大体お酌み取りいただけたと思うわけであります。  私どもは、財政構造改革は大変必要だというふうに考えております。そのためには、入るをはかって出ていくものをどのように制していくか、両面の対策が必要ではないだろうかというふうに考えているわけでございますが、どちらかといえば、この法案の中身というのは、出ていくものを制すという面の視点が大変強いわけでございます。私どもは、そういう視点だけではなくして、入るをはかるという視点も両々相まって財政改革というものができるはずだと思うわけであります。それはいろいろな対応策を考えなきゃならないと思いますけれども、そういう視点は一切、今後とも総理としては考えられませんかどうか。  と申しますのは、御存じのように、ちょうど我が国の今の経済の実態というのは中年に差しかかっている、壮年を過ぎて中年に差しかかっているはずでございます。中年を過ぎますと、体力というのは弱ってくるものなのであります。ちょっとした病原菌にすぐ傷みやすい、病気になりがちなのであります。そういうものが来た場合に、中年になった体質の改善をするためにそれは待てよというわけにはいかないはずなんです。それをやらないと、もとの体力が弱ってしまって死んでしまうことになるわけでありまして、私どもはそれを言いたいわけです。  入るをはかって出るを制すという両面作戦でもってやっていくことだって考えなきゃいけないんじゃないかと思うわけでございますが、その点について橋本総理の御見解をひとつお聞きしたい。
  91. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まず、私はここまでの非常に精緻な真剣な御論議というものには敬意を表したいと思います。  そして、この法案がまさに出るを制すということに偏っているのではないかという御批判を受けたわけでありますが、これはまさにその出るを制することを目的としてつくったものでありまして、この法案自体がその内容としておりますものは、それぞれの主要な項目ごとの量的縮減目標を示しながら、その量的縮減目標を達成するために今度はそれぞれの制度を改正する必要というものに迫られる。迫られるという言い方はちょっと不謹慎でありますけれども、そういう形でキャップがきいてくる、まさにこれは出るを制するということに問題意識を持った法律案であります。ですから、その意味では、議員がこの法案に対して入るをはかる部分がないと言われるのは、私は甘受をいたします。  なぜなら、その入るという部分はまさに歳入の部分でありますから、税制であり、あるいはそれにかわる何らかの方法があり得るのかどうかという部分として、これは年末に向けて、当然ながら税制の議論というものを政府部内においても真剣にしていかなければなりません。(発言する者あり)  今わざわざ増税とおっしゃってくださった方がありますけれども、今増税ができるような状況だとお考えでありますか、というぐらい我が国の財政は主要先進国中最悪とも言える財政状況にあることは申し上げるまでもなく御承知のことでありまして、この財政状況あるいは今の仕組みをそのままにして改革を怠りました場合には将来財政赤字を含めました国民負担率が七〇%を超えるという試算は既に出ております。そして、そういう状況になりました場合に双子の赤字になる、これは国民の生活水準が低下することが既に見込まれている、そういう中で我々は財政構造改革推進は一歩も許されない、おくらせることはできないと本気で考えております。  昨日来、これについてはしばしばいろんな角度からの御論議がありました。そして、私は、これには短期痛みを伴う、しかしその短期というものをできるだけ短くしたいとは思いますけれども、その痛みは覚悟した上で、何としても財政構造を含む他の改革を進めていかなければこの国のあすはないと本気で信じておりますし、またその改革そのものが一番大事な経済対策だと私は思うんです。  そして、これは議員がお聞きになったのではありません。しかし、議員の真剣な御議論の中で、私自身それを拝聴しながら一部感じておりました印象を多少つけてよろしゅうございますでしょうか。  私はその意味では議員の御議論を真剣に拝聴いたしておりましたけれども、最後の部分で経企庁長官が申しましたように、現状を見た場合に二つの視点が要るのではないだろうか。  それはまさにバブルの後遺症というものをどうとらえるか。これは実は企業にもそうでありますし、個人の暮らしの上にもさまざまな影響を及ぼし、今日もなお尾を引いております。それはあるいはお人によって金利の水準というとらえ方をなさる部分もありましょうし、あるいはバブル期において人生設計をし住宅ローンを組まれた方が、その後における給与の伸びがそれほど大きくなく、これに対して苦労をしておられるというような、私はその意味ではさまざまな意味バブルの後遺症というものをとらえなければならないと思います。言いかえれば、日本経済全体として申しますなら、いかに解消して国民の暮らしをバブル以前の健全な状態に戻すかということを見なければならない。  もう一つは、まさに国際大競争時代と言われる時代において、企業が国を選ぶと言われる時代の中で、経済においても金融においても我が国が競争力を維持し続けるためにどうするかという視点ではなかろうかと考えております。  昨日来さまざまな角度で御議論がありました中に、例えばレーガン税制の功罪の評価等もございました。これは人によって評価の分かれるところでありますけれども、あの時期において、意外に皆さんがお取り上げにならないんですけれども、私は、アメリカにおいて人材派遣業というものが非常にしっかりしておりましたことが労働力の水平移動の上でも非常に大きな役割を果たしてきたということを私自身の一つの教訓として見ております。そのような考え方を持ちながらこの問題に取り組んでおるということはぜひ御理解をいただきたいと存じます。
  92. 今泉昭

    ○今泉昭君 誤解をされちゃまずいものですから、ちょっとお断りを申し上げておきたいと思うんですが、私は、入るをはかるという際に増税を意識しているわけでは決してございません。景気を浮揚して、景気がよくなれば自然増があるからというような意識の方が強いわけですから、それだけはひとつ誤解のないように。  そこで、もう時間がなくなりましたので、今、総理大臣が言われましたその派遣法の問題も含めましたアメリカの対応と我が国のこの構造改革の問題の違いという点、少し考えていただきたいと思うわけでございます。  アメリカは御存じのように市場優先主義でありまして、自由が大変中心となるお国柄でございます。そういうお国柄におきましては優勝劣敗がはっきりとした形で出る。成功者は成功者、あるいはもう弱肉強食の中で成功する者は物すごく成功して強くなるけれども、失敗した人たちはどん底に落ちていかなきゃならないという社会でございます。あの社会はこれを救うために何があるかといいますと、一つは宗教の世界でしょう。宗教的な立場でそういう人たちを救うというのと、もう一つはそれに関係のあるNPOの組織がしっかりしている、あるいはそのNPOの組織をいろんな形で使いながらその負けた人たちを、落ち込んだ人たちを救っていくという条件のある社会であります。  我々を見てみた場合は、アメリカと全く違う社会であります。私はアメリカと同じような構造改革の手法をとるべきではないと思うわけであります。と申しますのは、この構造改革というのは規制緩和の問題と表裏一体の問題でございます。考えてみますと、確かにアメリカはこの十年間、苦しみの中から立ち直ってまいりました。この十年間、アメリカはその自由な社会の中で二千万人の人が実はレイオフをされているわけですよ。あの社会というのは自由に雇用者を首切りすることもできる社会。私も三年ばかりアメリカにおりましたけれども、そういうことが現実の姿としてどんどん起こっていっている。ところが成功したと言われるのは、この十年間、二千万人レイオフで仕事を失いながら三千万という新しい雇用を創出した。したがって、一千万人の新しい雇用が創出されたじゃないかと。これが失業率を下げた、これが実は財政構造あるいは規制緩和の成果だというふうな一面でとらえられている。  しかし、その中でどんなにひどいことが行われてきたかということは余りみんなわかっていない。例えばどういうことかといいますと、アメリカのこれまでの最大の企業であったGMあるいはIBM、かつて四十万人からの大雇用者を抱えておりまして、今どのぐらいいると思いますか。十四万人ですよ、両社とも。首を切られた二十六万人の人たちはどうなったのか。みんなこれ雇用されているんです。  というのは、分社化が始まり、分社化をされてどんどん小さな企業が起こっていった。その企業に追い出されていった人たちはもとの職場の半分の賃金で雇われているわけです。ですから、この十年間、アメリカの賃金というのは、賃金コストはほとんど上がっていないでしょう。ことしになってやっと上がり始めまして、それでもってアメリカは国際競争力をつけてきたと言っているけれども、そのためにどれだけ多くの犠牲があったか。かつての賃金の半分で雇われるという土壌があったから、そしてそれを支えるための社会的な組織もあったということです。  日本の場合はどうだ。同じような形で派遣労働者を自由化し、同じような形の労使慣行が持てるかどうか。これは違うと思うんです。これまで日本が大変成功していた時期には、日本とアメリカとEUが世界の三大経済の極だというふうに言われていた。日本的な手法というのもある意味では認められていた。アメリカ的なやり方、ヨーロッパ的なやり方ということで、世界の一つの大きな代表例として言われてきた。  我々は、これから改革する場合に、それはアメリカから学ぶ点もあるでしょう、ヨーロッパから学ぶ点もあるでしょう。しかし、日本独特のいい点を失わないようにしなきゃいけないと思うんです。そのためには、やはり政府に必要なことは、二十一世紀の日本はこうするよ、こういう国づくりをするんだ、そのためにこういういろいろな改革国民に協力をしてくれという訴え方をしていかなきゃならないけれども、現在の政府の二十一世紀に向けての我が国の再構築構想というのが見えてこないんです、実は。国民の皆さん方にいろいろ聞くけれども、そうおっしゃる。だから、そこがまず前提でなきゃならない。これは大変重要なことだと思うんです。私どもは、日本的な独特のやり方というものがあると信じているわけです。  私、昨年十一月ニューヨークの国連本部で行われました社会主義インターの総会に行ってまいりました。社会主義と聞くと、今はもう古いことで何か死語みたいになっているけれども、この社会主義インターの社会主義というのは違うのですよ。  御存じのように、ヨーロッパは資本主義を生んだ土地柄であります。共産主義あるいは広い意味での社会主義を生んだ土地柄であり、いずれも経験した国々であります。そういう中から欧州諸国というのは、御存じのように政治的には民主主義だ。経済的には、社会主義のいいところを生かす混合経済体制をつくって支えてきているわけです。アメリカの実態と全く違う一つ国家運営を持ってやっている、非常に水準の高い福祉制度を持っているわけです。  そういう背景があるわけだから、この社会主義インターに出席した百三十カ国の代表というのはほとんどが欧州の代表でございます。世界会議の中で、アメリカの姿が見えない会議というのはこの会議ぐらいでしょう。アメリカからも二つの社会主義政党が出席していましたけれども、ほんのちっちゃな政党でございますから、アメリカはもう民主党と共和党だけでしょうから、そういう意味じゃ出席していない。  その中で言われたことは何か。我々は、アメリカの市場優先主義、自由優先主義、ああいうやり方に基づいて国家再構築をしようとは思わない、あれは行き過ぎだ、弱い者を放置しているようなやり方はまずい、我々は独自の欧州なりのやり方をやっていく、苦しいけれども、それをやっていくのだ。確かに今欧州諸国は苦しんでいます。そして、この社会主義インターの代表はフランスの首相をやったモーロワさんでございますが、異口同音に演説をする方々は現職の総理大臣あるいは前総理大臣です。そういう方々がみずからのヨーロッパ流の新しい財政構造改革をやっていこうという意気に燃えている。アメリカはアメリカなりに、今大成功していますから、それを世界に押しつけようとする。そういう中にあって、我が国がとるべき道というのは、我が国独特の方法があってしかるべきだと思う。  ところが、この改革法案の中にはそれがかいま見えないということが大変残念なわけでございまして、そういう意味で、ぜひひとつ、我が国が二十一世紀に向けてどのような国家像をつくるのか、それに基づいてこういう改革をやっていくのだというようなやり方をしていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  93. 高木正明

    ○理事(高木正明君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    正午休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  94. 遠藤要

    委員長遠藤要君) ただいまから行財政改革税制等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、財政構造改革推進に関する特別措置法案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  95. 菅川健二

    ○菅川健二君 平成会の菅川健二でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  午前中の質疑にもございましたけれども財政構造改革と行政改革というのは密接に結びついておるということでございまして、私もその意味で、この十七日から政府の行政改革会議で最終意見調整をされるやに聞いております各省庁の再編の問題と、それから付託議案の財革法案につきましての質疑総理並びに関係大臣にさせていただきたいと思います。  まず、橋本総理には昨年来六つ改革を進めておられるわけでございますが、改革には必ず痛みを伴うんだということにつきまして、一般にもそう言われておりますし、橋本総理もしばしばそう発言しておられるわけでございます。  ところが、これまでの政策を見てみますと、午前中に同僚の今泉議員からも御指摘がございましたように、消費税の引き上げとか特別減税の廃止、医療費のアップ、低金利政策の継続など、国民にばかり痛みを押しつけておるのではないかと思うわけでございます。この結果、国民は自衛策として財布のひもをきちっと締めまして、住宅、自動車や百貨店の販売の買い控えやいろいろな消費が冷え込んでおるわけでございまして、容易に回復しそうにはないと思うわけでございます。まさに、消費需要を中心とした経済が失速状況に陥っておるのではないかと思うわけでございます。  けさのNHKのテレビにおきましても、世論調査におきまして暮らし向きが悪くなったというのが五割を超えておるわけでございます。その中でも、とりわけ景気対策についての要望が一番多いわけでございます。こういった経済不況の中で財政構造改革法案審議するというのはいかがなものかと思うわけでございます。  中央省庁の再編につきましても、政府の行政改革会議の中間報告やその後の与党の協議を見る限り、単なる数合わせにすぎない。郵政省を除きましてほとんどの省庁が焼け太りないしは従来と中身が変わっていないということで、中央省庁の役人の皆さん方も現段階のところはほっとしておられるのじゃないかと思うわけでございます。  先ほど申し上げましたように、橋本総理改革には必ず痛みを伴うと言っておられるわけでございます。こういった中で、現在議論を進めております中央省庁の再編案につきまして、だれがどのような痛みを伴うのか、その点につきまして見解をお聞きいたしたいと思います。
  96. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は繰り返し申し上げてまいりましたけれども、改めて多少今までの答弁と重複する点をお許しいただきたいと存ずるのでありますが、中央省庁の改編の前段階として、既に私が就任をいたします前から作業が始まっておりました地方分権推進委員会における御議論、そして、それを受けた四次にわたる勧告というものがあり、これで足れりとするものではございませんけれども地方六団体からの要望というものを中心に今日まで分権推進委が勧告を既に政府に四回お出しいただいたことは、議員御承知のとおりであります。  そして、これを受けて、現在、政府地方分権推進計画を策定中であります。そして、規制緩和あるいは撤廃というものも一方で進めておることも御承知のとおりであります。これは中央省庁からすれば現在までの持っていた権限を手放すということでもありますし、当然ながら中央省庁が再編される、それはそれぞれの職員にとりましては、現在の姿を前提にそれぞれの省庁に職を奉じたその人生設計に変化を生ずるということでもありましょう。  しかし、そういうことで私はこの言葉を使ってきたつもりはございません。言いかえれば、例えば行政改革というもの自体、肥大化し硬直化してしまった、この戦後五十年余りを支えてまいりました制度というものがいわば制度疲労の状況にあるということは、今まで本院においてもしばしば御指摘を受けてきたテーマでございました。そして、こうした中から自立的な個人を基礎とする自由かつ公正な社会を形成することを目指しながら今作業が行われておるわけであります。  その痛みを伴うという言葉を用いますと、こうした改革を断行してまいりますためには国民お一人お一人がその責任や負担を分かち合っていただかなければならない。言いかえるなら、今までまさに平等、等しさというものを中心考えられてきた制度というものがまさに自立自助の時代に入っていかなければならない。言いかえれば、自己責任の時代に入っていかなければならない。行政もまたそうしたことを目指しながら、あるいは地方に権限をお渡ししていく、行政が握ってまいりました規制というものを民間の手にゆだねていく、そうしたことをまとめて私としては申し上げてきたつもりであります。
  97. 菅川健二

    ○菅川健二君 総理の発言ではございますけれども、少なくとも行革会議で今まで出ております中においては、省庁の袋の詰めかえというようなことばかり出ておるわけでございます。その中身にどういったものが詰め込んであるのかということが国民の目では不分明であるわけでございます。そういった面で、行政改革でだれがどのように汗をかいておるのか、だれがどういう痛みを感じながら進めようとしておるのかということがはっきりしない、そういうことにおける国民のいらいらが募っておるんじゃないかと思うわけでございます。  私は、去る三月十三日の予算委員会におきまして、中央省庁というものはいわばいろいろな制度、仕組みを運営する建物のようなものである、土台がきちっとしっかりしてないと立派な建物は建てられませんよ、十一月の段階で果たして土台がしっかりしている状況になるでしょうかということを総理に御質疑をいたしたわけでございます。  ただいま総理の方から御答弁はあったわけでございますが、私が土台、地盤と申しますのは、一つは官から民へ、規制緩和・撤廃でございます。もう一つは中央から地方へ、地方分権でございます。  この二つにつきましても、今御指摘のように、規制緩和につきましては遅々とはしておりますけれども、徐々に今進んでおるという状況はあるわけでございます。ただ、地方分権につきましては、なるほど推進委員会の勧告の方は四回出て、ほぼ出そろったと言われておるわけでございます。しかしながら、政府推進計画をこれから約半年間近くかけてつくられるやに聞いておるわけでございます。  したがいまして、私が判断している限り、恐らく国民の皆さんもそうじゃないかと思うのでございますけれども、今、地盤ががたがたまだ揺れておる状況ではないか、はっきり固まっていない、そういったところで家を建てようとしておられるのじゃないか。したがって、どうもさすがの有能な棟梁でございます橋本総理もきちっとした家を建てられるのだろうかと皆さん不安を持っておるわけでございます。ひとつ不安のないように御答弁いただきたいと思います。
  98. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 決して優秀な棟梁だなどとうぬぼれておりません。しかし、真剣に取り組んでいる気持ちは御理解をいただきたいと思いますし、同時に、中央の行政も地方の行政も熟知しておられる委員のような方から、私は、この分権推進計画というものになお加えるべき点、こうしたものを御指摘いただきながら、より安定した地盤ができればそれにこしたことはない。  先刻御答弁申し上げました中でも、分権推進委がここまで作業をしてこられた四次にわたる勧告の土台は地方六団体の御意見というものであった。それを超えて、これは当然ながら六団体の御意見ということは共通項ということでありますから、例えば政令市あるいは中核市といったレベルでもっと加えるべきものはないのか。これは分権推進委の方に私自身がお願いを申し上げておることでありますし、こうした点についての御協力もぜひ賜りたいと存じます。
  99. 菅川健二

    ○菅川健二君 この議論につきましては昨日も自民党の片山委員の方から話があったわけでございまして、地盤がほぼ固まっておるのか、まだ流動化しておるかということについては意見が分かれるところでございますが、いずれにしても、固まった先を十分見通した上で建物を建てていただきたいと思うわけでございます。  そこで、十七日から集中審議が行われると言われております政府の行政改革会議の性格について御質問をさせていただきたいと思います。  行政改革会議というのは、本来民間の有識者が構成員となって、行政の外から客観、公平にこれからの行政組織のあり方について議論し、大所高所から提言していただけるものであって、現実の妥当性を追求します政治の場での議論とはおのずから次元が異なるものではないかと思うわけでございます。少なくとも、これまでの諮問機関でございました行革絡みの臨調なんかを見ましても、いずれも答申はそのようなものであったわけでございます。ところが、今回の場合は、行革会議の会長に橋本総理がなっておられるということでやや性格が怪しくなってきたのではないかと思うわけでございます。  この十七日から行われます行政改革会議の集中討議の中で与党自民党考え方とのすり合わせをされるやにも聞いておるわけでございますが、無理にすり合わせをしようとすれば、やはり何らかの意味で妥協が出てくるわけでございます。こういったことで行革会議そのものが政治の渦の中に巻き込まれて政治のかわりをさせられるということになりますと、これからの百年の大計でございます行政改革のあるべき姿というものがややもすれば見失いがちになりまして、場合によっては会議の構成員の考え方与党自民党の政治の考え方とが乖離するということも十分考えられるわけでございます。  したがいまして、私が申し上げたいのは、行政改革会議はあくまでも筋を通した結論を出していただきまして、その後、政治の場で引き取って現実的な妥当性を議論していただく、そういう手順を踏むことが重要ではないかと思うわけでございますが、いかがでございますか。
  100. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、行革会議の会長を私自身がしていることについての委員の御意見はそのままにちょうだいをいたしたいと存じますが、この中間報告自身、その時点における真剣な検討の結果を取りまとめたものであることは事実でありまして、この中間報告を骨格としながら全力を挙げて行政改革を進めてまいりたいと繰り返し本院でも申し上げてまいりました。現在、与党の側におきましては、与党行政改革協議会など、あるいはそれぞれの党内において議論が行われております。  私は、中間報告を出す以前と以降と非常に違ったと思いますのは、中間報告を出します前と後とでは御議論が非常に活発になり、真剣味のある議論がなされているという点で、これは政党の中だけではなく、報道等で承知をいたします限り、民間におけるそれぞれの立場の方々の御議論も非常に真剣かつ活発なものになったと思い、その意味ではいいものを議論の素材として提供できたとも思っております。  取りまとめの時期も確かに近づいておりますから、当然ながら与党側といろいろな形でお目にかかる必要性も生じると思いますし、ぎりぎりまでできるだけ多くの方々の声に耳も傾けたいと思っておりますし、その中で集約できる部分はそれが集約される、それにこしたことはありません。その上で、最終的に判断をするその集約の責任を負わなければならないときが参りましたなら、それは私の責任でいたします。  その場合に、国民にとって何が大切なのか、国民が何を求めておられるのか、まさに国益というものを土台に据えながら、私はその判断を必要になりました時点ではさせていただくつもりでおります。
  101. 菅川健二

    ○菅川健二君 この行革会議の中間報告の最後のところを見て私はちょっと驚いたわけでございますが、「最終的には全般的に与党理解が得られる形で最終案をまとめ上げていかなければならない。」と書いてあるんですね。この中には、我々野党の意見も、野党も無視されておるわけでございますけれども、それはそれとして、国民理解というのも入っていないわけでございます。  ただ、ここで私は特に問題にしたいのは、行革会議というのはあくまで良識ある学識者の集まりでございまして、この集まりに対して何か最終報告というのはもうとにかく政治の意見をしゃにむに聞かなくてはいけないんだ、しかも与党意見をしゃにむに聞かなくちゃいかぬのだというような恫喝ともとれるような表現がこの中間報告の中に入っておるというのは私非常にびっくりしたわけでございます。  まさか、総理が会長としてこのような文言を入れられたのではないと思うのでございますけれども、こういった考えに立つ限り、行革会議そのものの性格といいますか、構成員に非常に私は失礼に当たるようなことになりはしないかなという危惧があるわけでございますが、再度いかがでございますか。
  102. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) まず第一に、行革会議で何か説明を求められ説明をいたしましても、その片言隻句がひとり歩きをし、その結果として全体に大変迷惑をかけることを私はこのしばらくの期間に学びました。ですから、なるべく私自身はそうした発言を気をつけていたしております。また、中間報告取りまとめの中でそのようなことをもし私が申し、方向をつくったとすれば、当然のことながら今までにマスコミの皆さんはそれを大々的に報道しておられるでありましょう。  私はそのような発言をいたしておりませんし、行革会議が会議全体としてそのような中間報告をまとめられたこと、これは事実でありますが、そうした議員の御指摘のような方向で私は行革会議に臨んでおりません。
  103. 菅川健二

    ○菅川健二君 行革会議の集中討議はこれからでございますので、行革会議の構成メンバーが、非常にこれは我々の意見がきちっと通った満足のできる案だというような報告にまとめ上げられるように、ひとつ会長たる総理もその辺を十分御留意  いただければありがたいと思うわけでございます。  次に、中央省庁の行革につきまして、先ほど申し上げたことについて各論に少し入ってみたいと思うわけでございます。  中央省庁の行革について、いろいろ内閣機能の強化とかそういったものもございますけれども基本はまさに仕事減らしに尽きるのではないかと思うわけでございます。その点で、一つは官から民への規制緩和・撤廃が進めば、当然経済官庁のスリム化ということが問題になるわけでございます。GDPに占める公的規制分野がアメリカが七%に対して日本は四二%でございまして、これが経済力の格差を生んだのではないかとも指摘されておるわけでございます。民のできることは民に任せるという原則のもとに経済官庁の役割を考えますと、従前の事前チェック型の許認可、裁量による産業振興、護送船団方式の行政から国際ルールに基づく事後チェック型の行政へと転換が要請されておるわけでございます。  したがって、経済官庁もいろいろあるわけでございまして、その中の代表格は通商産業省ではないかと思うわけでございます。通産省は今度の改革案では郵政省の情報通信分野を取り込んでほくそ笑んでいるやにも言われておるわけでございますが、これはとんでもない話でございます。一方では無用論すら出ておるわけでございますが、それも極端でございまして、少なくとも従来の各業種ごとの指導を行っている部門、例えば基礎産業局とか機械情報産業局とか生活産業局、こういった部門については大幅にスリム化すべきであると考えますけれども、通産大臣、いかがでございましょうか。
  104. 堀内光雄

    国務大臣(堀内光雄君) 菅川委員にお答えを申し上げます。  規制緩和は、先生おっしゃるとおり新規産業の創出や高コスト構造の是正等に資するものでありまして、産業構造改革の実現に向けて極めて重要な課題であると認識をいたしております。こうした観点から、通産省といたしましては、石油製品の輸入の自由化だとか、発電分野への競争原理の導入だとか、あるいは保安規則の合理化、そういうものを含めて当省の所管の規制緩和に従来から積極的に取り組んでまいっております。こういうような取り組みを通じまして、産業行政については、市場機能の強化や技術の開発、情報化等による事業環境整備へと転換を図ってきております。  そういう関係からまいりまして、施策の展開に当たっては、経済産業の実態の把握、その実態を踏まえた政策の企画立案、その遂行が不可欠であるというふうに考えております。  そういう意味で、産業を所管する部局はこうした機能を果たしているところでございますが、当省といたしましては、これまでも必要に応じて組織の見直しを行ってきたところでありまして、本年度におきましても、より広い観点から産業実態を把握するために、産業を所管する部局の課の統合なども行ってまいっているところでございます。  今後とも、先生御指摘のとおり、規制緩和を初めとした経済構造改革推進に全力を挙げていくとともに、その推進状況に合わせて施策の遂行に必要なより効果的な組織のあり方、こういうものに取り組んでまいる覚悟でございます。
  105. 菅川健二

    ○菅川健二君 通産省の方も、より規制緩和を進めて、組織もスリム化し、かつ業者行政というものを払拭するようにひとつ頑張っていただきたいと思うわけでございます。  次に、地方分権に伴います中央省庁のスリム化でございますけれども地方分権が進めば、当然内政に関する業務を所管する中央官庁の権限や財源が大幅に地方自治体に移譲されまして、政府の役割も大幅に縮小されるわけでございます。特に、中央政府地方とのかかわり合いで私は一番問題になろうかと思うのは国庫補助負担金ではないかと思うわけでございます。  国庫負担金の中にも、例えばナショナルミニマムとして責務を負う義務教育費とか生活保護費の負担金があるわけでございますが、これは別といたしまして、その他の補助金は全廃をして地方への一般財源化を図るべきだと思うわけでございます。  今回、財革法案によりまして公共事業関係予算は前年度比七%減の量的な縮減が図られようとしておるわけでございますが、従来のように、各省が各事業ごとに事業採択をやったり優先順位を決定するように、そのままにそういった状況でございますと、依然としてむだな投資や優先度の低い事業に投資される弊害があるわけでございます。私自身、大阪の財政課、兵庫県の財政課長、広島県の総務部長と、財政当局に大体十年近くおったんでございますけれども財政の査定というのは、自分のところの一般財源がいかに少なくより大きな額の投資ができるかというのが一番の優先順位でございまして、事業そのものの優先度よりも別の判断によったということが経験上も言えるわけでございます。  そういった意味からいいまして、この際、公共事業の国庫補助金というものは全廃をしていただきまして、全廃してなくしてしまうと困るわけでございますが、一定の基準により地方に一括して交付する、そこで地方団体が事業の採択なり優先順位を地域の実情に合ったように決めていただくということが税金のむだ遣いもなくする、公共事業のむだもなくする最大の政策ではないかと思うわけでございますが、総理ないし大蔵大臣、いかがでございますか。
  106. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 地方分権につきまして、先ほど行革の基本的な取り組みの重要な柱と総理からも言われたところであります。  委員言われますとおり、補助金をなくして、国と地方、官から民へ、中央から地方へ、こういう哲学を充足することができ得た暁にはそんな形で出るのでしょうかとおぼろげながら見とれることができます。  しかし、そこまでまいりますためには、今日の制度の中で、御指摘のありました制度的補助金、義務教育でありますとか社会保障関係費でありますとか災害の補助でありますとか、いろいろとあります。そういうのは今次の財政構造改革推進についての特別措置法の中にも、三十五条一項及び二項に明示をいたしておりまして、この制度的な補助金につきましては諸制度を見直し、改めることによって目的を達しよう、言うなれば削減合理化を図る、こういうことになります。しかし、当分の間これを維持していかなければならないものについては、財源方式を補助金から一般財源化をするのかどうかを含めまして真剣な検討が行われるものであろうと思っております。  そういう中で、その他の補助金というのは、御案内のとおり、集中改革期間内の毎年度、各省庁ごとに一割を目指して減額をしてまいる、こういうことを特別措置法の中には三十五条二項において明示をいたしておるところでございます。  そういう中で、もう一度申し上げますが、行政の各分野における官と民及び国と地方の役割分担のあり方を踏まえて、すべての分野においてこの法律が通りますと見直すことに相なります。そして、補助金等の見直しに当たりましては、地方自治、地方分権の視点を留意しつつ、現下の国、地方の極めて厳しい財政状況を踏まえ、まず第一に、そもそも財政が関与すべきか否かという視点、また関与する場合の程度、方法としてどのようなものが望ましいのかという観点から補助金等の廃止の検討を行い、国、地方双方の歳出抑制につながる施策見直しを行うことが必要であると考えておるところでございます。
  107. 菅川健二

    ○菅川健二君 総論としてはそういうことになろうかと思うんですが、私がお聞きしたのは、公共事業の補助金、特にその弊害が目立っておるということで、それをきちっと整理合理化をまずすべきではないかと申し上げたわけでございます。その点いかがでございますか。
  108. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 本件は、もう既に委員も御承知のとおり、七%、百分の七を上回らない、こういうことで、わかりいい言葉で言うと七%カットということでございます。それは費用対効果を目指すということ、真にインフラ整備のために必要なものということで見直ししていくということになります。  既に建設省は建設コストの削減について大胆な提言、また実行を約束いたしておるわけでございますから、限られた資源再配分の中で、真に国民各位から理解をされ、納得されるものに変えていくということで、量的縮減目標を対前年比七%減にさせていただきますと、こう申し上げ、また長期計画は二年延ばすことによりまして、その縮減効果として生まれますのは効率的な運用、またその決定というものにかかわるわけでございますから、改善方向に向けて、また地域の要望、国家の要望にこたえて行い得る公共事業の配分というものができてくると存じております。
  109. 菅川健二

    ○菅川健二君 公共事業の量的縮減について私は申し上げておるわけではございませんで、質的な配分システムを転換すべきではないか、それがやはり公共事業のむだをなくし、国民のためになるのではないかということでございます。  建設大臣は公共事業に一番お詳しい大臣でございますので、ひとつ御答弁いただきたいと思います。
  110. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 菅川委員にお答えをいたします。  大蔵大臣からこれからの方向づけにつきましてお話がありましたし、総理もこの行政改革を進めなおかつ財政の基盤を固めるという形で今作業をやっておるわけであります。よって、これから資源配分につきましてはいろいろ検討がなされていくわけであります。  現在、私ども考えておりますことは、国土の均衡ある整備を図ってまいらなければなりません。そのためには、住宅社会資本整備というものは国と地方の適切な役割分担、責任分担を一体的に進めることが必要でございまして、補助制度で申し上げて、例えば地方自治体を超える広域的な観点から施設の整備一つの自治体を超えるわけでございますが、これはネットワークとして機能する道路であるとか水系全体の計画的な整備を要する河川、こういったものがございます。  また、全国的にバランスのとれた施設整備推進を図るという問題では、いわゆる整備水準が低くかつ整備の急がれる下水道、これも相当ばらつきがありますが、ナショナルミニマムの確保という観点から補助制度というものがなお必要であると考えるわけであります。  また、国家的プロジェクトがございまして、これは国際空港であるとかあるいはまた国際的な博覧会等を開く場合、いわゆるアクセス、周辺整備等に集中的に投資をしなければならぬ、こういう課題があるわけでありまして、的確に実施するための有効な方法である。こういう中で、国庫補助金を廃止すれば目的を達成することができなくなるのではないかというようなことで、この補助金制度に対して今取り組んでおるわけであります。  今、委員御指摘のように、地方公共団体の創意と選択を生かしつつ、何が必要な事業か、これをよく見きわめまして、メニュー化、統合化など制度の改善を行いまして、今後ともさようなことで補助制度の目的とするものを果たしてまいらなきゃならぬと思っておるわけであります。  従来から要員について問題もありますので、要員増を極力抑制しつつ実施してきたところでございますが、これらに対する御批判もあるわけでありますので、これからいわゆる効率的に執行できるような体制をとりまして目的を達成してまいりたいと考えておるわけであります。  委員御指摘の問題につきましては、冒頭申し上げましたように行政改革を進め、なお財政再建があり、そして地方分権というものが形がだんだんでき上がってくるわけでありますが、その中で何を渡し、何を国はなし得るか、このことをさらに詰めていくという過程をたどると考えるわけであります。
  111. 菅川健二

    ○菅川健二君 私が申し上げたいのは、ナショナルプロジェクトとして国が直接やるというのは直轄事業でおやりになればいいわけでございまして、補助事業はもう基本的に地方団体に任せていく、地方団体の単独事業とあわせてやっていく、そういうことによって地域の総合的な観点から優先順位なり重点配分がより効率的にできるのではないかということを申し上げたわけでございます。  したがいまして、将来方向としては直轄事業と単独事業と二分化していくという形が今後の方向づけとして望ましいのではないかということを申し上げたわけでございます。この点についてやりとりをやっておりましても時間がかかりますけれども、もう一度建設大臣、その点、将来方向としていかがですか。
  112. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 先ほど申し上げましたように、今その作業を進めてまいりますと地方分権がおのずからそういう方向に参る、こう考えるわけでございます。  今、国土の均衡ある発展と社会資本の整備というものに急いで取り組んでおるところでありますので、私は補助制度はそれなりに役割を果たしておるということを申し上げ、将来につきましての問題につきましては、総理大蔵大臣からの御発言もございましたが、地方がそれらの問題に取り組み、執行できる体制に移行し得る、そういう機構をこれからつくり上げていくという作業の過程にありますので、私は今その必要性だけ申し上げさせていただいたわけであります。
  113. 菅川健二

    ○菅川健二君 今、申し上げましたように、将来方向としてぜひそういう方向で補助金の整理合理化を進めていただきたいと思うわけでございます。  次に、これは昨日も質問があったわけでございますが、国の公共事業というのが縮減になりますと地方の単独事業が問題になるわけでございます。地方の単独事業というのは、地域住民に密接に関係の深い事業が多いわけでございます。  そういった中で、地方財政ももとより緊迫の度を加えておりまして、単独事業を縮減する動きが広がっているというのが先般の日経の調査でも出ておるわけでございます。全国の都道府県、市の六五%が来年度予算地方単独事業削減に踏み切る方針であり、削減幅も半数以上が国の七%を上回り、三〇%減の地域もあるというようなことも調査結果に出ておるわけでございます。  そこで、私は、やはり地方単独事業については事業量について十分配慮していただかなければならないのではないかと思うわけでございます。昨日、自治大臣からそれなりの御答弁をいただいたわけでございますが、地方団体はこの点について一番不安を持っておるわけでございまして、早く一定の方針を示していただいて、安心して予算査定ができるように御配慮いただきたいと思うわけでございますが、自治大臣、いかがですか。
  114. 上杉光弘

    国務大臣(上杉光弘君) お答えいたします。  たびたびお答えをいたしておりますように、地方単独事業につきましては、平成十年度において対前年度比マイナスにすることとされておるわけでございます。  しかしながら、一方で、住民の要望に的確に対応し、また地域住民の要望が非常に強く、密着をした生活関連施設等の整備地域経済を下支えする事業としての重要な役割などもあるわけでございます。このような地方単独事業でございますから、地方分権の推進とともに、今後におきましてもその役割は増大をするものと認識をいたしております。  平成十年度の地方単独事業事業量につきましては、このような点や国庫補助事業における補助対象の縮減など、その動向に十分配慮しまして地方財政計画の策定の中で決定をしてまいりますとともに、財源措置としての地方債や交付税の必要額を確保しまして、またその配分に当たりましては、各地方公共団体の計画的な事業執行に支障が生じないように十分配慮をしてまいりたいと考えております。
  115. 菅川健二

    ○菅川健二君 また行政改革会議に戻りますけれども、特に昨今の報道等でいろいろ情報が流れておるわけでございますが、いわゆる垂直的減量といいますか、アウトソーシング、エージェンシーとか、独立行政法人とか、いろいろ議論されているものでございます。  この点について、いろいろな議論があるわけでございますが、基本的に各省庁の行政事務を企画立案部門と実施部門とに区分して、実施部門を分離して効果的な効率的な運営を図るという考え方には十分うなずけるものがあるわけでございます。  ただ、その実施部門を原則として独立法人にほとんど移管をしていくということについては、いささかいかがであろうかなという感じもいたしておるわけでございます。これまでさんざん批判されてきました特殊法人とどのような違いがあるのか。今検討対象になっておる機関が百十三機関あると言われておるわけでございますが、目減りしても八十も九十も大量に独立の法人ができるとしますと、私は実はぞっとするわけでございます。その法人の役員数も勘定いたしますと、これは大変なことになりはしないかという危惧をいたしておるわけでございます。  まず、特殊法人とどのような相違があるのかということにつきまして、端的に総務庁長官にお答えいただきたいと思います。
  116. 小里貞利

    国務大臣(小里貞利君) 特殊法人と今新しく私どもが創設せんといたしておりまする独立行政法人ともども行政機関の外にある、その意味においては同じであると思います。しかしながら、その事業体と申し上げましょうか企業体の仕組み、これは根本的に違いますとあえて申し上げていいんじゃないかと思うのでございます。  その主なるところをちょっと申し上げてみますと、例えば独立行政法人は自立性、企業体自身の自主性というものを尊重しますよと。したがって、質あるいは効率性あるいは透明性の向上を重点的に期待できる仕組みを考える。しかも、今の特殊法人等々はいろいろばらばらでありますけれども、共通の基本的なルールをこの際きちんとつくります。  それからまた、大きく異なる点ほどこか、こういうようなお話でございます。例えば、午前中も若干申し上げましたが、予算、大事などの統制は必要最小限に行います。したがいまして、そのような意味で、政府として、あるいは主務大臣としての事前チェック、事前管理と申し上げていいと思うんでございますが、できるだけ取りやめにいたします。そのかわり自主的にやってもらって、その事後のチェックはそういう特性にかんがみまして一応やらせていただきますよと、このような一つのねらいがございます。  それからもう一つは、一方、情報公開は徹底してやってください、これはもう必然の原則であるわけでございまして、あるいはまたそこで働く公務員、いわゆる職員は、特殊法人は非公務員でありますけれども、独立行政法人は、これはちょっと細々と説明も必要でありますが、公務員としての概念をちょっと広げて新たに公務員という一つの職分をつくる、そういうようなねらいもありまして、公務員であり得ます、あり得ることもあります、こう申し上げていいかと思うんです。  というのは、先ほど先生の方からお話がございましたように、百数十幾つの受け皿団体と申し上げますか適用事業体がたくさんございますから、その中で公務員を望むもの、あるいはそれで適切であるもの、でないもの等も予想されるようでございますから、そういう意味で申し上げておるのであります。  それから、最後に先生が、今の特殊法人というのはもっと整理統合できないのかという意味のお尋ねであったかと思うのでございますが、私どももその点は強く期待をいたしております。廃止、民営化あるいは整理統合を進めた上で残ったものを、どうですか、独立行政法人という一つの形ができましたが、というその方向に流れ込んでくることを強く期待もいたしておる、こういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  117. 菅川健二

    ○菅川健二君 独立行政法人はカメレオン的ないろいろな性格を持っておるんだなと思って、そんな魔法遣いができるのかなと思って感心するわけでございます。  具体の事業を少し見てみますと、例えば病院とかそういったものはかなり企業的な性格が強いものでございますけれども、逆に研究機関なんていうのは企業的な性格が非常に薄いわけですね。そうしますと、研究機関については財政、人事、いろいろな面での国の関与がないとむしろおかしいのではないだろうか。自前の銭で、自前の人間でできるような国立の研究機関が果たして幾らありましょうか。だから、そういった面で非常にたくさん事業の性格の違いがあるのではないかと思うわけでございます。  そこで、とりわけ私がやっぱり心配しますのは、一つの法人格をつくりますと、これは人間と同じでございまして人格があるようなものでございますので、ずっと自己回転して、自己増殖をしていくという性格のものでございます。途中でちょん切ったりすることはできない性格のものでございます。  したがいまして、私は、もう一つの概念として、イギリスのエージェンシーというのは国家行政組織の一環として位置づけられておるという方式であるやに聞いておるわけでございます。そう  いった面で、国家行政組織の一環であるけれども、独立の管理者を置いて、そして企業会計方式を導入し、そして業績評価はきちっとする、そういう性格の方式がもう一つあっていいんじゃないかと思うわけでございます。それと独立行政法人とをうまく仕分けしてやっていただく。  それで、独立行政法人が国家公務員か国家公務員でないか、これも二種類ありますと言われると、もう働く人間にとってみれば、わしはA型の国家公務員、あなたはB型ということになっちゃって、わけがわからなくなつちゃうんですね。やはり基本は、独立行政法人は公務員でない、もう一つのいわゆる外庁的な性格のものは公務員であるというふうにきちっと組織は単純明快にすべきであると思うんですが、いかがですか。
  118. 小里貞利

    国務大臣(小里貞利君) 先生が今前段で企業会計原則に連なる話があったのでございますが、私どもが今説明申し上げておりまする独立行政法人も企業会計方式です。  もっと極端に申し上げますと、例えば今までは、年度予算を事前に組んで、そして国会に報告して承認を受けておりました団体も相当数ございます。そのような一つの会計のあり方を持っておった企業体も、この際、その企業体自身で一年度といわず、単年度でなくて二年、三年の多年度主義でもいいじゃないですか、そういうような気持ちで、概念で今取り組んでおるところでございまして、したがって企業会計原則の導入や業務の運営においても弾力的なことになりますよと。あるいはおっしゃったように財務運営等においても、あるいは先ほど申し上げましたように職員の給与等においてもその辺は活力を引き出せるような仕組みでいかなければいけませんね。うんと働いて知恵を絞って、それだけ今度は生産効果が出たら、余剰金が出たらそれを職員に還元するような仕組みもあってほしいですなと。そういう一つのアイデアが入っておるということを申し上げておるわけでございます。  それからもう一つは、病院会計、研究センターなど云々のお話がございましたが、確かにおっしゃる点の側面も持っておるわけでございます。そのような分野においては相当数ございますが、今までのうちに吟味をいたしました範囲で申し上げますと、私が先ほど申し上げた廃止、統合、整理の対象になるものも相当あると、私どもはそういうふうに前向きに踏んでおるわけでございまして、残ったものはでき得ればこの独立行政法人で吸収できる体質性を持っているものは可能な限りここに組み込んでいきたい、そういう考え方でございます。
  119. 菅川健二

    ○菅川健二君 若干かみ合わないわけでございますが、この事業の性格で非常に企業的な性格の濃いもの、これは民に限りなく近いものですね。しかし、民に任せては十分機能しないもの、それから非常に限りなく公的な行政の色彩の強いもの、これは研究機関とか文化施設とか、そういった余り歳入も上がらないようなもの、例えば登記なんかもまさにそれは行政事務そのものでございますが、そういったものもあるわけです。それを一つの独立行政法人にくくるのは非常に難しいんじゃないか。だから、むしろその機能というものを、実施部門の機能を二つに分化して、それぞれに適当なものの器をつくりなさい、つくったらどうですかということを申し上げておるのでございまして、ちょっと時間がございませんので、一応そういう方向でひとつ御検討いただければありがたいと思うわけでございます。  それから、最後に文部大臣、全然出番がなくて非常におつらいようでございますので、私ずっと実は議員に当選以来、文教委員にならせていただいておりまして、国政の最重要課題は教育にありというふうに思っておるぐらいでございますけれども一つだけ御質問申し上げたいと思います。  この財革法でやはり問題になりますのは、文教予算の抑制でございます。教育改革ということが六大改革一つとして大変ウエートを持っておるわけでございます。その中でも、教育は人なりと言われておりますように、教員の人材確保ということが一番重要な課題でございます。そういった中で、義務教育や高校の教職員定数改善計画を二年先延ばしをするということは到底容認できないところでございまして、文部大臣も新しくなられて、お気持ちはそうだろうと思うわけでございますが、これに対してどう対処しようとしておられるのか、お聞きいたしたいと思います。
  120. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) お答え申し上げます。  先生も広島県でもう既に大変な御経験をお持ちの教職員の人材確保の問題でございます。あと、本来であれば来年度完成をさらにそれを二年延ばすということになりますので、実は来年一年間で全体としては四千七百八十二名の改善ができればと、こう思っていたのでありますが、今概算要求段階では千六十七名の要求ということで、その残った部分につきましてさらに十一年、十二年と、こういう計画を大体今持っているところであります。  御承知のように、今の計画では一つの教室に二人の先生を配置して、その個々の生徒さんの言うならば理解の度合いに応じた個別教育ができるようにというようなチームティーチングでありますとか、あるいはできるだけきめ細やかな生徒指導をやれるようにと、さらには学校に行って教室に行かないで真っすぐ保健室に行ってしまうというようなケースも最近ふえてきているといったようなことから養護教諭の数をふやす、そのあたりを今中心にやっているところであります。  いずれにいたしましても、来年、概算要求は完全にそれを確保させていただいた上で、さらにそのことも含めて今後三年間で目標を到達していきたい。それはもう財政にゆとりがあるならば来年一遍に全部やってしまいたいという気持ちはもとよりあるわけでございますが、聖域なしということで法律案にも今回、そのことが明記されているわけでございます。  そういう方向で、私どもも所与の条件の中で最大限の工夫、努力をしてまいりたい、かように考えているところであります。
  121. 菅川健二

    ○菅川健二君 もう一分ございますので、私学に対する助成費もやはり抑制されることになっておるわけでございますが、これから個性教育というのが非常に重要でございまして、私学の役割が一段と重くなるわけでございます。こういった中で、私学費の抑制を図るというのは大変私学関係者にとっては苦痛でございます。  文部大臣として、そういった金以外にどういった私学の振興策を考えておられるのかお聞きいたしたいと思います。
  122. 町村信孝

    国務大臣町村信孝君) お答え申し上げます。  確かに、経常費は横ばいということでございますが、その中にあっても、特に特色ある教育をやろうという方々にはその経常費補助の中の特別補助というものをふやしたり、私学の施設あるいは装置、大型のコンピューターを入れるでありますとか、そうしたものに対しては、厳しい予算の中ではございますが予算増加の要求をしているといったような点もございます。  さらには、できるだけ私学に寄附が集まるようにということで税制上の措置も引き続きやっているというようなことも含めまして、今後しっかりとした、私学の皆さん方に特色ある人材を育てるために頑張っていただけるような環境整備に努めてまいりたい、かように考えております。
  123. 菅川健二

    ○菅川健二君 どうぞよろしくお願いします。  ありがとうございました。(拍手)
  124. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 私は、民主党・新緑風会の伊藤でございます。  まず、質問の前提として少し申し上げたいと思います。  本特別委員会の任務は、委員会の名称にもありますとおり、行財政改革の実をいかに上げるか、また税制についてどうあるべきかということもあわせて審議をする委員会であるというふうに思っております。  行財政改革は、財政削減に象徴されるように切り詰めが前提であるために、今日までの討論でありますように、ややもすると景気に対して対立的になってまいります。  ところで、財政を再建するためには、財政のむだを削減することも大切でありますが、同時に、必要とするところには財政を投入したり、国民からの徴収を手控えたり、また国民に戻したりして、経済を活性化することによって税収を高め、財政の健全化を図る方策もあろうかと思います。すなわち、政策の優先順位によるコントロールということであろうし、将来に備えるというところに重点を置く必要があるのではないかというふうに思うわけです。  橋本内閣が「経済構造の変革と創造のための行動計画」を五月十六日に閣議決定いたしました。その一から十五、医療・福祉から生活文化、情報通信、ずっと並んでいる重点項目がございますが、その中で私は「情報通信の高度化」というところに着目しますけれども、ここにこういう行動計画が載っております、もちろん総理は御存じでございますが。  平成十三年度、二〇〇一年度までを来るべき高度情報通信社会の実現のための助走期間と位置づける、この間に各種の対応策のすべてを集中的に講ずることにより、我が国の情報通信を世界最高のレベルまで高度化することを目指す。まさにこのとおりでありますし、こうすることが非常に大切というふうに私も思っております。  すなわち、財政構造改革経済構造改革も、その他六つ改革を同時にやっていくと。特に総理は、きょうの主題ではございませんが、教育改革はすべての改革の根本となるものだというふうにおっしゃいました。私もそのとおりだと思っていまして、別の機会にまた御意見具申し上げたいと思っております。  そういう観点に立ちまして、私の質問は、どちらかというと削減ということよりは税収を高める条件である経済景気について重点的に見解をお伺いしたいというふうに思っております。  まず、総理にお伺いいたしますが、橋本総理は十月三十日の衆議院予算委員会で、経済の現状について、日本経済のファンダメンタルズは悪い状態ではない、株式市場やアジア各国の通貨を注視していきたいとの認識を示されました。私は、日本経済のファンダメンタルズは必ずしもよいとは思っておりませんけれども、その見解は後ほど申し上げますが、今日時点でこの認識に相違はないのかどうか、改めてお伺いいたしたいと思います。
  125. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 正確に何日の答弁かを記憶いたしておりませんが、たしか海外市場の変化が大変問題になっておりました時点で同じような趣旨の御答弁を申し上げたことがあると存じます。  そして私は、確かに最近の経済状況景気動向というものを見ましたときに、個人消費について、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要反動減というものが薄れつつはありますけれども駆け込み需要そのものが予想していたよりもずっと大きかったというようなこともありまして、回復のテンポは予想よりおくれているということも認めております。  そして、それ以外にもいろいろなことを申し上げてまいりましたけれども、要は、こうした中で景気がこのところ足踏み状態にある、また企業景況感にも慎重さが見られるということを申し上げてまいりました。しかし同時に、緩やかではありますが個人消費回復傾向が続いている、あるいは設備投資回復傾向にあるといったことから、民間需要中心とする景気回復基調は続いている、私はそう考えております。  今後とも経済動向というものは注視してまいりたい、そのように考えておることを申し添えます。
  126. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 ただいま、景気回復基調は続いていると。正確なデータに基づいて申されたことだと思いますけれども、私は予算委員会で同趣旨の質問をいたしましたが、今、日本経済で最も危機的な不安感といいますか状況にあるのは金融システムのことと、それからゼネコンあるいはゼネコン破綻と言うぐらいの不安感、不信があるというふうに思っております。それは、データ的には消費動向設備投資回復基調を持っていても、ダムが一カ所決壊すると全体が崩れるような状況があるいはここから起こりはしないかというおそれを持っております。  そういうことからすると、総理が何かを言えば大変な事態になりかねないということも私はわかりますけれども、今財政改革をする、国民痛みを求めるというときに、経済状況に対する、先行きの見通しに対する国民の不安をどのように除去するかということで、私はこの金融不安またはゼネコンの問題についてどのように見て、どのように対処するかと。差し支えなかったら、そのことについて明快にわかりやすく国民に語りかけていただきたいというふうに思います。
  127. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私は、後ほど関係閣僚の補足答弁を場合によってはお許しいただければと思いますけれども、今一番我々が考えなければならないこと、先ほど実は国民生活の中におけるバブルの後遺症にも触れたところでありますけれども、議員が今触れられました不良資産関係の問題を含めた問題点、これはまさにバブルの後遺症から脱却し得ていない部分、その問題点を指摘されたものと思います。そして、それは我が国の金融機関等に対する不良債権状況に象徴されるものであろうと存じます。  現在、各金融機関が経営合理化等を行いながら不良債権の早期処理に努めている状況、またそれに伴いまして不良債権総額あるいは要処理見込み額ともに減少しておることも昨日来の御審議の中で政府側から答弁を申し上げてまいりました。そして、個々の金融機関の経営状況というのは当然さまざまでありますが、全体としては不良債権問題の状況というのは改善してきておりますし、そうした意味で御、心配をかけてはならぬと思います。  昨年、通常国会において金融三法を成立させていただけたわけでありますが、これにより整備された制度の基本的な考え方というものを踏まえながら、私どもは引き続きこの不良債権問題というものに適切に対処することを求められる、また預金者を保護すること、金融システムの安定性を確保することを求められていると存じます。そうした中で、我々としては最善を尽くしてまいりますが、要は、その問題を集約しましたとき、バブルの後遺症から脱し切れていない、その部分に委員は焦点を当てられた、そのように私は理解をいたします。
  128. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 経済企画庁長官にお尋ねいたしますが、日本製造業は技術革新と品質管理を徹底することによって世界に冠たる地位を築きました。しかし、この間日本金融は、護送船団方式という批判を受けるような状況の中で、製造業に比してほとんど何も努力をしていなかったんではないかというふうに私は考えております。これが非常に悔しいわけであります。現在の不況がそのようなことから製造業をたたいている、空洞化現象が起こっているということで非常に残念でございます。  経済企画庁長官は設備投資回復含みということをけさから再三にわたって述べておりますけれども総理が今認識をおっしゃられましたように、私もその意味の深さについては十分わかっておるつもりでございますが、企画庁長官からもそのお立場からお答えいただきたいというふうに思います。
  129. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 景気の現状は、先ほど来申し上げておりますとおり、緩やかな回復基調にあるものの足踏み状態にあるというふうに一般として申し上げております。  ただ、業種別に見ますとかなりの格差がございまして、いわゆる消費税の引き上げに伴う駆け込み需要反動減が長引いております卸、小売等についてはまだなかなか順調な回復基調にあるというふうに言えないところがございます。  それから、ただいまのお話の不動産、建設等、いわゆるバブル期の後遺症を引きずっている業種につきましてもなかなか厳しい状況にある。そして、そのもとにありますのが金融関係の業種の状況であるというふうに考えております。金融業のパフォーマンスが悪かったとか製造業がよかったとか一概に言えるものではないと思いますけれども、現実問題として、不良債権処理はある程度は進んでおりますものの、もうちょっと具体的に言いますと、金融機関における帳簿のつけかえということでは進んでいるかもしれませんが、なお担保不動産の処理、処分が終わっていない、これが流動化していないという点が景気の上昇に対する大きなしこり、障害となっているという実態にあると考えております。  したがいまして、私ども土地の流動化に対する規制緩和とか、あるいは土地有効利用に関する税制見直しの問題とか、そういうものを含めまして、本当の意味バブルの後処理が終わって日本経済が活性化するように、そういうふうなところに重点を置いて対策考えていきたいと考えている次第でございます。
  130. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 ただいま総理企画庁長官バブルの後遺症をいかに解決するかというところに答弁の力点があったというふうに思います。六大改革のうちの金融システム改革というところも同時に行っていくという決意で進められているというふうに思います。  この日本型ビッグバンを行ったときに、世界のハイリスク・ハイリターン市場国民の総資産といいましょうか個人貯蓄も含めて出ていくわけであります。日本の中で果たしてハイリスク・ハイリターンに全部たえ得るのかどうか、情報の偏在がありますからかなり苦しい場面に陥る人たちも出てくるのではないか、バブルのときのような状況を一般庶民が受ける危険性もあるのではないかというふうに思います。  私は、日本型ビッグバンがどのように推移するか、なかなか難しいかと思いますけれども、その中にあっても個人資産を守るためのシステム、それがローリターンであってもローリスクというシステムも必要なんではないか。あるいは国民資金といいましょうか、国外に逃げ出せない仕組みを持った国民資金ということも、私はそういうものを日本としてはビッグバンの状況を見きわめるまでは確保する必要があるのではないかというふうに考えております。  そのことについては質問予告しておりませんけれども大蔵大臣に御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  131. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 外為法改正を先国会で成立をいただきました。それに伴う税法二法もつくり上げ、衆議院の本日の本会議で可決、参議院に送付をされ、御審議を賜るということになりました。  二〇〇一年までにロンドン、ニューヨーク並みのマーケットをつくろうというのがビッグバンのねらいでございまして、自由であり公正であり、そして国際化基準を満たすニューヨーク並み、ロンドン並み市場と。そのことによりまして一千二百兆の個人預貯金が使いでのあるお金として流通していくであろう。また同時に、委員御指摘のように、ローメリットでありましてもローリスクであるということで商品その他が開発をされてマーケットに出てまいると思っております。  そういたしますと、預貯金者、契約者はそのことによって今日ただいま利子として受け取るものよりも、またハイリスク・ハイリターンということでけがをなされるということなく取り進められていくのではないだろうか。その辺のところは情報公開をし、またさらにビッグバンの目指す基本的な方向ということで広報をしてまいり、国民各位理解を得るということでしていかなければなりません。  それと、よく言われます早期是正措置、四月からスタートであります。自己資本比率、財務内容がオープンにされて預金者、寄託者、契約者が自分の選択でとり行うことができるということであり、特にこの市場は多種多様な商品がそれぞれのセクターから発売をされるものでありますから、ベンチャービジネスと言われる企業群の資金獲得に便宜が出てまいります。こういうことの中で、画期的な改革でありますから、誠実にプログラムに従いまして取り進めてまいります。  それと金融の問題については、金融三法がおかげさまでさきの国会で成立をいただきまして、たびたびの案件にこのことが下支えになり、預金者保護という観点から機能いたしておりますことをつけ加えさせていただきます。
  132. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 質問の展開の中で、突然の質問をして申しわけございませんでした。  経企庁長官が、回復基調にあるけれども足踏み状況という答弁をずっとされておるわけですが、日本の主要企業の経営者について日経新聞が十一月三日にまとめた社長百人のアンケートによりますと、頭取も入っているんですが、政府・日銀が繰り返し言ってきた緩やかな回復と同じ見方の回復基調と答えた人はわずかに三人、これに対して、停滞感が強まっているが五十七今後退の可能性が出てきたが三十八人、既に後退していると見る人が九人という状況であります。  景気後退の一つの例として見たときに、十一月十日の国債指標銘柄は一・六五〇%でございます。日本経済のファンダメンタルズがしっかりしていれば資金需要の強さの尺度である長期金利がこんなに低いはずはないんじゃないかというふうに思います。今の金利が、産業革命後の先進国で大恐慌のときにアメリカが記録したものを下回る、そういう金利のようでございました。この状況というのは、まさに日本経済の基礎力または回復力ということが考えられている以上に悪くなっているのではないかというふうに懸念いたします。  この辺について大蔵大臣の見解をお尋ねいたします。
  133. 三塚博

    国務大臣三塚博君) ただいまの御指摘は昨今経済関係者からも出ておるところで、私どもも承知をいたしております。本動向景気の見方に対し悲観的であるという前提でなされておるものと承知をいたしておりますが、長期金利につきましては、御案内のとおり、景気動向を含めたさまざまな要因を背景として、市場における債券の需給関係等で決まってくるというのが定説でございます。私もそのとおりであると思っております。  我が国経済は、総理及び経企庁長官から申されましたとおり、基調はきちっとして上向いておるのでありますが足踏み状態、そういうことで言われております。回復基調が続いておるという大前提があります限り、谷があればまた山と、こういうことになるわけでございますから、そのことを期待いたしております。  政府経済構造改革等の前倒し総理命令によりまして経企庁長官中心に関係閣僚が真剣な作業に入っております。企業消費者経済の先行きに対する不透明感がこのことを機に晴らされていくのかなと思いますし、我が国経済回復基調がより確実に力強いものだなと受けとめられるようになることを期待いたしておるところであります。
  134. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 今、大蔵大臣の答弁にありましたとおり、日本経済はある部分だけを取り出してみれば確かにしっかりした面がある、しかし別の面を見ると非常に悪い状況もある、今二極化しているというふうに思います、それほど単純ではないでしょうけれども。  まず、私なりに二極化というふうに見たときに、その一つの側面として、昨年末から今年にかけての株価の動向を見るとよくわかるんですが、株安の局面でも近ごろのような全面安というのは余りなくて、下げの主役は金融、建設、不動産など、先ほどの答弁にありましたとおり、バブルをあおり、バブルに踊ってぬれ手にアワのような暴利をむさぼり、あげくの果てにバブルが崩壊して墓穴を掘った、国民経済を破綻のふちに追い込んだ業種。反面、日本経済を支え株式市場の動揺を最小限に食いとめてきたのが国際優良株と言われる電機、自動車など一部の業種であったろうというふうに思います。こうした業種が、円高の厳しい環境の中で、経営者と従業員が一体となって痛みを分かち合ってリストラを進め、新技術、新商品の開発に努めて頑張ってきたのだというふうに思っております。  リストラの状況を四月十一日の日経新聞が掲載しておりまして、ちょっと古いんですが、これによりますと、民間金融機関、保険業の一九九六年の一カ月当たりの賃金は約五十五万円で、製造業は約四十万円でありまして、一・三六倍の水準にあります。事業所数を数えてみても、一九九五年の都市銀行の国内外の本支店、出張所数はわずか〇・一%しか減っていませんが、製造業は一一・一%減らしている。ゼネコン関連について見ると、この間、政府が不況対策として公共事業をふやしたこともありまして、雇用者数はこの一年間だけで三十万人、十年前に比べると百七十万人も増加している。  ところが、こうした業種の企業の経営者は反省するどころか、私利をむさぼったり談合したり総会屋に法外な利益供与をしておりまして、十一月五日、国税庁が発表した使途秘匿金の総額は二百四十五億円で、その中でも建設業が断トツのトップの百八十億円というふうに報道されました。  なぜ悪いことをしているのがぬくぬくとしていて、そのしわ寄せを懸命に働いている国民がかぶらなければならないのか。懸命に働いている国民は、政府に言われなくても後世の世代にツケを残してはならないとみんなわかっているだろうというふうに思います。国が貧乏をしたら自分たちも貧乏になって痛みを分かち合うということについてはいとわないのではないか。  ところが、現実はそうではございません。住専の不良債権処理に税金をつぎ込みました。消費税は引き上げられ、特別減税も廃止され、医療費も引き上げられ、国民から見たときにまさに踏んだりけったりというような感じだと思います。貧しきを憂えるのではなく等しからざるを憂えるというのが国民の心情であって、そういう不満が政府にぶつけられているのじゃないかと思います。橋本総理が懸命の努力をしているにもかかわらず最近内閣の支持率が下がり続けている原因も、大きなお世話かもしれませんが、こうしたところにあるのではないかと私は思います。  総理から直接国民に対して見解を発表していただきたい、言っていただきたいというふうに思います。
  135. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今何点かの問題点、国民の暮らしの立場から見たときに感じられる声をそのままに御紹介いただいたと私は思います。  そしてその場合、所得税減税が先行し、それに見合う消費税率引き上げをお願いし、しかもそのうちの一%が地方への財源ですというようなことはなかなか御理解がいただけないものであることも承知をいたしております。あるいは、特別減税というものを実施するためにこれ以上赤字国債をふやせるだろうかということも、理屈ではわかっても感情的にはなかなか御理解がいただけないものかもしれません。  むしろ逆に、将来ともに社会保障、言いかえれば医療保険制度にせよ年金制度にせよ、国民の暮らしのセーフティーネットとして我々はこれを保ち続けなければならないわけですが、毎年新たに年金の受給権の発生される方々が百万人の単位である。それは一方で、子供が生まれなくなってきているために保険料を負担する若い働き手の数が減ってきている中で、これからこの仕組みを全く変えずに将来に向かっていくとすれば、一体いつまで支えられるんだろうかという問いかけも、これは当然のことながら、例えば年金でありますなら保険料でちょうだいしたものを運用して原資に充てるのか、税をどこまでこれに充てるのか。  いずれにしても、国民負担してくだすったものを使っていくわけでありますし、医療保険の世界でありますなら、給付の水準の問題と同時にこれに自己負担の問題が加わる。どれだって実は国民にとってその限りにおいて感覚的に喜んでいただける種類の話ではありません。一方で、議員が先ほど指摘をされましたように、まさにバブルに踊り、経済を破綻に追い込んだ一部の産業が存在する一方でとおっしゃるような気持ちを味わわれる、それも私は無理からぬと思います。  そして、今証券市場をめぐる状況の中で起きておりますような事態が一般投資家の方々に、特定の人間にだけ利益を与えて我々は見捨てられたという思いから市場から一般投資家が去ってしまう、そういうおそれを彼らは感じなかったんだろうか、私は本当にそう思います。  言いかえれば、どうやって一般投資家の市場に対する信頼を取り戻すかは、証券市場関係者そのものが本気で考えなければならないことではないかと思いますが、我々もまたその問題を収束——収束というのは市場の混乱を収束させるという意味でありますけれども、国際経済の中で日本の持つウエートを考えますとき、この状況というものを何とか安定させなければなりません。  バーツ危機から通貨の市場が揺れ、そしてその影響が今度は香港において株式市場にあらわれた。世界的に大きな上下動の続くものをどこかで食いとめなければならぬ。我々もその責任を持っております。  私は、議員が御指摘になりましたようなそれぞれの思いというものは素直に受けとめながらも、そうした中で我々は、公定歩合は政府というより日銀の専管ですから触れることは御遠慮をさせていただきますけれども、今までさまざまな財政を含んだ施策を講じ、バブル崩壊後の景気に対応してきた。それぞれに下支えの役割は果たしてくれたけれども、完全な上昇気流に乗せるには至らなかった。そして国債という名前で赤字が累積をしてきている。  もうこの状態はとめなければならない、何とかしてこれはもうストップしなければならない、そして財政を立て直していかなければならない、私どもがそういう思いで日々深刻にこの問題に取り組んでいることだけはどうぞ御信頼をいただきたいと、心から願うものであります。
  136. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 財政改革の法律は、必要なものが必要のように書かれているだけでありまして、これでもかこれでもかと責め立てられるような気がいたします。それを埋めるのが総理の答弁や閣僚の答弁であろう、国会の論議であろうというふうに思っています。  時間がないのでまた後の機会にしたいと思いますが、今経済状況を非常に悪い状況に置いている原因として、バブルの後遺症がいえていない、金融システムの問題、それからゼネコンの問題がある。国民の批判も、そういうものが放置されていてそれが瓦解することのおそれと、またはそういうものがぬくぬくとやっていることに対する批判というものがあるわけでありまして、それをどうするかというところに注目しておる。そういうことの上に、じゃ国民はどのようにこたえていくかということになっていくんだと思います、余りにも善意に見過ぎているかもしれませんけれども。  しかし、今の総理の答弁はその方向を示唆したというふうに私は思いますので、ぜひこの金融システム改革ということにも国民の立場に立った慎重な、しかし時流、今の経済状況に合わせた大胆な改革をお願いいたしたいというふうに思います。  さて、もう一つ日本経済の二極化の問題について触れたいと思いますが、それは大企業中小企業製造業と非製造業の二極分化であろうと思います。  まず、大企業中小企業ですが、これを生産指数で見てみると、一九九〇年を一〇〇とすると、バブル崩壊直後の九三年には大企業中小企業とも八八まで低下いたしました。これが九七年九月期は大企業が一〇五・八まで上昇しましたが、中小企業は九三・六と低迷したままでございます。大企業中小企業の格差は一二・二ポイント、過去最大となりました。  通産大臣にお尋ねしているわけでございますが、製造業と非製造業の二極分化は先ほど述べたとおりでございまして、この二極化の要因を簡単に言うと、一つバブル崩壊による資産デフレのバランスシート調整の痛手が製造業と大企業は小さく、非製造業中小企業は相対的に大きい、その処理が長期化しているということだろうと思います。もう一つは、情報革命と世界経済の統合による生産、市場の一体化、すなわちグローバル化を製造業と大企業は追い風としているのに対して、非製造業中小企業はこのトレンドに追いつくことができず、むしろ価格破壊などが逆風となっているということではないだろうかというふうに思います。  ところで、国民経済への寄与度を見ると、資本金十億円以上の大企業が全産業に占めるウエートは付加価値で三〇%、雇用では一九%にすぎません。また、製造業は付加価値、雇用とも三三%であります。別の言い方をすれば、六七%がサービス業、金融業、流通業や建設業にかぶさっているということになろうかと思います。とりわけ、バブル崩壊の痛手が相対的に小さく、情報革命とグローバル化を追い風としている大企業製造業のウエートは付加価値で一五%、雇用で一〇%にすぎません。ファンダメンタルズはしっかりしているという認識は、明らかに大企業、それも製造業中心の見方ではないだろうかというふうに思うわけです。  今産業構造の転換の中で第三次産業の就業者は六割を超えておりまして、しかも中小企業で働く人が断然多い。また、就労形態もパート、派遣社員など非正規労働者と言われる人が多くなっております。こうした現状では、ごく一部の大企業製造業景気回復状況、好況状況があっても、国民の圧倒的多数はこのらち外に置かれている、こういう私の見方に対して、通産大臣の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  137. 堀内光雄

    国務大臣(堀内光雄君) お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘のとおり、今の景気状態というのは非常に複雑でありまして、製造業の大企業製造業中小企業、非製造業の大企業、非製造業中小企業、それぞれ大変な違いがございます。製造業の大企業は大変よろしいが、非製造業中小企業は本当に冷え切っているというような状態であると思います。  それで、中小企業の景況というものを見ますと、本年の九月に行いました中小企業景況調査によりますと、業況で三一・〇マイナス、売り上げで二九・六マイナス、経常利益で三三・三マイナス、すべて対前年でありますが、というような指数が出ております。もちろん、これは景気動向指数でありますからマインドが大きく入り込んでいるものではありますが、悪化の幅が拡大傾向にあるというふうに思います。  業種別に見ますと、製造業では悪化の幅が拡大するとともに、規模別の製造業の生産指数を見ますと、九月の速報で、ただいま先生のお話のとおり、八月に比べ九月は若干改善はされてはおりますが、大企業との格差が拡大をいたしておりまして、中小企業は九三・六、大企業は一〇五・八というような状態になっております。  非製造業では特に建設業、卸売業、小売業が低迷をいたしておりまして、ちなみに九月の小売業の販売額というのは前年同月比で約二・七%減になっております。このうち、特に従業員数が五十人未満の中小企業の小売数は、通産省の推計によりますと前年同期比四・〇%の減少というような厳しいものでございます。  また、設備投資につきましても、中小製造業設備投資は伸びてはおりますものの、九年度の中小企業設備投資について先行きに不透明感がやはりございます。八年度の実績は一〇・九%、九年度の修正の計画は三・五%というぐあいに設備投資も伸びが鈍化をしてきているというふうな感じであります。  中小非製造業について言いますと、中小商業・サービス業設備投資動向調査によれば、特に小売業が低迷いたしておりまして、非常に厳しい状態だというふうに考えております。したがいまして、これからの中小企業対策というものには全力を挙げて融資の面あるいは対策を深めてまいらなければならないと考えております。
  138. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 本件に対して経企庁長官にもお尋ねしょうと思いましたが、時間の関係で割愛させていただきます。  大蔵大臣にお尋ねいたします。  ファンダメンタルズはしっかりしているということでございますけれども、今多少景気が低迷していても、例えば生産調整と在庫の減少などの景気循環によりいずれ回復することになる、これがファンダメンタルズがしっかりしている場合の認識だろうというふうに思います。  しかし、これまで述べたように、日本経済の長期低迷の要因はいわゆる景気循環的なものではございません。答弁にありましたように、中期的にも短期的にもかなり、特に中期的なバブルの問題等、人為的な要因があるんじゃないか。これは答弁にはなかったわけですけれども経済政策上の問題があるのじゃないかと私は思っております。  中期的には、一九八〇年代後半からの低金利政策の持続によるバブル経済の誘発と、その後急激な金融引き締めを行って極端な資産デフレを引き起こしたこと、これは後に別の機会に詳しくお尋ねしたいというふうに思っておりますけれども短期的には、景気の現状認識の甘さから消費税の引き上げ、特別減税の廃止、それに九月からの医療費の自己負担増と、消費を冷やす政策をこれでもかというふうに行ったことではないだろうかというふうに思っております。  最近の統計を見ると、九月の消費支出が二・六%増になりましたが、これは昨年九月がO157と天候不順の影響で落ち込んだこととの比較でありまして、実質的な増ではないというふうに思っております。  これ以外では、先ほどからの議論にもありましたとおり、自動車の新車販売は十月が前年同月比マイナス一三・〇%、四月以降一けたのマイナスは九月のマイナス八・九%だけであり、それ以外の月は全部二けたのマイナスとなっております。住宅も今年度上半期四月から九月は前年同期比マイナス二八・七、建設受注額も上半期はマイナス一四・七%であります。百貨店、スーパーの九月期売り上げは、百貨店が前年同月比マイナス三・九%、スーパーが同じくマイナス四・三%であります。また、これまでやや好調を伝えられていた海外旅行も五十一カ月ぶりのマイナスとなりました。消費の落ち込みや耐久消費財だけでなく、日常品やサービスの分野にも及んできているということを示しております。  また、消費は所得の結果と言われますけれども、九月の労働省の毎月勤労統計によれば、所定外労働時間は伸びどまり、実質賃金は二カ月連続で前年同月を下回っております。九月の完全失業率は三・四%と依然高どまりで推移しております。有効求人倍率は〇・七一%と前月比〇・〇一ポイント悪化しました。雇用情勢は依然として厳しいままでございます。  この間の、中期的な政策は後の問題といたしますが、短期的な政策の失敗を認め、政策を転換し、この際思い切った減税に踏み切ったらどうか、まずこのことを大蔵大臣にお聞きいたします。
  139. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 委員からは経済状況についての御指摘がございました。  経済がこれほど複雑化してまいりますと、いろいろな見方がありますこと、御案内のとおりでございます。そういう中で、一点だけ申し上げさせていただきますと、三十六万の雇用増が、パートでありますという先ほど指摘がありましたが、現実にあるわけです。春闘、その幅は小さかろうとも所得環境がわずかながら好転している。二極化ということでありますが、企業収益等については先ほど来お話がありますように前進を続けておる。スーパー、コンビニに至っては、これだけは売り上げが確実に伸びております。こういうデータ、これ以上申し上げませんが、そういう中で、力強さは感じませんけれども、構造的なあらわれ、今後これを一つ一つ前倒しで解決をしていくということで産業企業ベースが安定してくるのではないだろうか。  こういう視点をつかまえてまいりますと、財政出動に頼るということは、つらいからもう一度カンフル注射をということになります。バブル崩壊後、幾たびかこの点を繰り返してまいりました。その結果として巨大な財政赤字を背負うことになり、このことをそのままにしておきますと後世代に払い切れない借金を残して日本経済がアウトになるという実は危機感を持っておることであります。三党協議の財政構造改革大会議におきましても、基本的にこの点は御認識をいただきまして本日の法案になったということでございます。  よって、減税をどうするかということでありますが、その過ちをまた繰り返してはならない。国民各位理解を得て、痛みを分かち合っていただきながらここを乗り越えなければならない。乗り越えるための理解を求めるためには、行財政改革を大胆にやり抜いて、なるほど政府与党はそこまでやり抜いたかという共感の中で理解をいただく。そして、不透明な経済展望、また将来不安というものがその中から解消されていくようになるのであろう。一にかかって政府与党、官界を巻き込んだその中でやらなければならないのではないでしょうか。  私は、この会議に参画をして感じましたことは、与党の先生方から言われましたけれども減税にせよ公共投資にせよ、景気拡大による税収入増は財政赤字の拡大額に及びません。ケインズ経済学では効果がないということは定説になりつつあります。それと、G7諸国、またヨーロッパの統一通貨に向けて頑張り抜いておるOECD加盟国が財政構造改革、行政改革に渾身の努力を傾けておるということで、我が国ひとりが確立された今日の経済実学を無視して、いや、私どもはこれでいくのだということにしては余りにもリスクが大きい。  私どもは、そのことによって危機状況をもたらすというシミュレーションを持っておりますものですから、国民のためにある政治に対して責任を果たすことはこの道しかない、こういうことでお願いしております。
  140. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 私は、財政改革で各予算項目の削減ということは言っているけれども、廃止をするということはないわけでありまして、ですからコントロールなんだと。どの部分に優先順位を与えて、コントロールすることによって景気回復国民消費マインドを高める、さらに構造改革をするという道が、私にやれと言っても無理ですけれども、あるはずだというふうに思ってさまざまな角度からお聞きしているわけです。コンダクターでありますから、内閣は。ぜひそういうふうに考えていただきたいと思います。  さて、日銀総裁にお尋ねいたします。  総裁は、十一月四日の衆議院の財特の委員会で、消費税率引き上げが尾を引いているけれども景気回復基調を損なうまでには至っていないとの認識を示しました。当面の金融政策の運営は景気基盤をしっかりしていくことに重点を置いていくと述べておりますが、そういう中で超低金利政策の継続を示唆しておられます。しかし、先進国の歴史上最低の超低金利が示すように、資金需要が乏しい現状では日銀の超低金利政策景気の浮揚にはそれほど役に立っていないのではないかというふうに思います。役に立っているとすれば、国民だれもが感じている不良債権処理の手助けだというところに認識があるわけでありまして、これが不信感を増しているわけでございます。  この際、消費の拡大のためにも超低金利政策をとめて公定歩合を引き上げたらどうかというふうに思いますが、御見解をお伺いしたいと思います。
  141. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 金利を引き上げました場合の個人消費あるいは経済全体に及ぼす影響ということでございますが、確かに我が国におきましては、家計部門で預貯金、国債のような金利に連動いたします資産の額が、住宅ローンのような金融債務の約二倍に達しております。したがいまして、金利収支を見ます限り、金利の上昇に伴いましてネットの利息収入は増加をするはずでございます。  ただしかし、その一方で企業の側を見ますというと、金利の上昇は投資採算の悪化でありますとか企業収益の減少、資産価格への下押しというような経路を通じまして経済活動の全般を制約してまいることになります。このことは、ひいては雇用の悪化や給与所得の減少を通じまして家計部門の方にもむしろ総体としてマイナスの影響をもたらすということになる筋でございます。我が国の家計部門の給与所得は総収入の約八割を占めている現状でございますので、給与所得の減少に伴いますマイナスの影響は相当に大きなものでございます。  こういうことで、金利の引き上げをいたしました場合、設備投資あるいは住宅投資を制約いたしますとともに、全体としての家計所得、ひいては個人所得を減少させる方向で作用するということになりますと、やはり景気に対しましては全体として抑制的な効果を持ってまいるというふうに考えるわけでございます。  私どもといたしても、主として金利収入に依存している家計が大変御苦労なさっていらっしゃる事情は十分承知をいたしておりますけれども、やはり全体として見まして、現在の景気情勢のもとにおきましては、当面の金融政策の運営に当たって、引き続き金融の緩和基調を維持しながら景気回復の基盤をよりしっかりとすることに重点を置きまして適切な運営を図ってまいりたいと考えております。
  142. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 金利の問題についてはまた別途の機会に御意見をお伺いしたいと思っております。きょうは今日時点の認識をお伺いいたしました。  さて、ここで私は具体的な公共事業について提案したいと思っておりました。総理大臣に対して総括的な問題点をお伺いして、あとは建設大臣、運輸大臣、文部大臣、郵政大臣、通産大臣にお伺いする予定でありましたが、時間がございませんのでまたの機会にさせていただきます。そのときはまたよろしく対応いただきたいと思います。  そこで、まだ四分ありますので、その時間を使って少し私の考え方を行革の問題について申し上げたいと思います。  私は、実は郵便局の労働組合、全逓信労働組合の中央執行委員長をしておりました。中央本部の役員を二十数年間やっておりました。郵便局は群馬県の田舎の、小渕外務大臣の選挙区であります群馬旧三区の二十三人の特定局であります。特定局長と全逓は非常に仲が悪かったんですが、私は大変大事にされまして、周辺の局長からも大事にされたために非常にいい環境の中で仕事ができたと思っております。  そういう郵便局員の立場、すなわち鳥瞰図ということからすれば虫瞰図、虫の視点かもしれませんが、後に私も羽化しまして虫瞰図の上の方からも見ましたので、そのことについて少し思いを申し上げたいと思っております。  今郵政事業をめぐる、郵政三事業の問題についての与党の協議というものを、まさにかたずをのんで見守っております。私もあちこちでいろんな人とお話ししておりますが、それがあるいは総理大臣のかんにさわるところはあるかもしれませんけれども、思いあぐんでやっていることでありまして、お許しいただきたいと思うわけでございます。  実は、私が全逓の実質的な指導をする立場になりましたのが今から十二年前でございますけれども、そのときにまず組合組織に提起しましたのは、郵政省と労働組合の間でさまざまな問題を協議してもそこではほとんど解決できない。そうでなくて、いかに外からの問題、技術革新とか民間との競合とかということとどう対応するか、国民の支持をどう得るかというところに力点を置かなきゃならないというふうに自分でかねがね思ったことを実践に移したわけであります。  まず言ったのは、にっこり笑ってありがとうを言うようになれ、まず気持ちを口であらわせ。それと、あらゆる考えられるだけの新商品をみんな提案してそのことをやろうじゃないか。待っていて仕事が来る時代は終わった、これから仕事を積極的にとりに行くようにしなきゃならない。すなわち、労働組合も郵政省、企業と一体となって改革に踏み込んだわけであります。  私はその改革努力は一回も休んだことはありませんでして、休めばだめになってしまいます。ですから、そのことが今日国民世論の支持をいただいているわけですし、黒字経営という状況をこの膨大もない企業形態で行っているんじゃないかというふうに思っております。  ふるさと小包、どこにいてもカタログを見れば物産名物が買えるというシステムがございますが、これは実は一番最初に考えて言い出したのは私でございます。年寄りに声をかけようという運動をずっとやってまいりました。これも私が呼びかけました。これはぜひ、(「もう時間だ」と呼ぶ者あり)時間で申しわけございません。もうちょっとお待ちください。それは、郵便局員ははがきが出ればどこへでも行く、そういう使命があります。しかし、はがきがないところは行けません。これから雪の時期になると、廊下の外から、ばっぱあ生きているかと郵便局員が聞くわけです。中から、生きているぞというふうに答えられるとほっとして次の家に行くというのを今続けているわけです。  定員の事情もあって都市部ではなかなかできませんけれども、田舎の方ではそういうことをやれと、やった時間は超過勤務の賃金を要求してはならない、それはボランティアとしてやれということで、郵政省と話をつけてやってまいりました。社会機構の中の一部と思っております。  すなわち、国が優しさを国民に発揮する、そういう仕事なんだと。国の強さと優しさがあって、優しさを体現するのが郵便局ネットワークだというふうに思ってやってまいりました。ぜひ、郵便局ネットワークが健全な姿で将来もいけるように、閣僚の皆さん、総理によろしくお願いしまして私の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)
  143. 吉川春子

    ○吉川春子君 日本共産党の吉川春子でございます。  財政構造改革法案について質問をいたします。  予算内容は、私が言うまでもないんですが、予算総則、歳入歳出予算、継続費、国庫債務負担行為等でありますけれども、歳入歳出予算予算の本体であるというふうに言っていいと思います。  国会の議決対象は一般会計、特別会計、政府関係予算ですが、財政構造の概念の中には少なくともこれらの予算歳出だけではなくて歳入が入るのは当然ではないでしょうか。なぜ財政構造改革法案に歳入の改革を入れなかったんでしょうか。総理、お伺いいたします。
  144. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今と同趣旨の御質問、言葉をかえて昨日来、何回かちょうだいをいたしております。  しかし、財政構造ということについてお尋ねをいただきましたが、今我が国の財政というものが、繰り返し申し上げてきておりますように、バブル崩壊の後、累次にわたる景気の下支え策として公共投資の追加などのほかに、人口の高齢化、あるいはキャッチアップ経済の終えんなどの財政を取り巻く状況の変化、あるいは社会保障分野に見られるような政府の役割の増大に伴う歳出拡大、そしてこれまで大量の公債発行を続けてまいりました結果、利払いなどに要する国債費が巨額に上っている、こうした要因を背景として極めて悪化していることは今さら申し上げるまでもありません。  こうした状況を我々は構造的なものととらえておりますし、同時に、個々の歳出財政支出の内容につきましても、例えば社会保障のように制度に基づいたものがございます。しかも支出の中で大きな割合を占めております。このような支出というのは少子・高齢化の進行に伴って増大は不可避の性格を持っております。こうした点も財政構造という言葉を用いるに至った一つの理由でありました。そして、主要経費の割合につきましても、これは言いかえれば財政支出の構成に当たるわけでありますが、これも構造ととらえております。そして、めり張りをつけた歳出削減目標というものを策定してまいりました。  税制につきましては、当然ながら毎年度その折その折の実態を見ながら税制改正を行ってきていることは御承知のとおりでありまして、年末に向けまして当然ながら歳入の形としての税制改革、この議論は現在党内におきましても、また政府税制調査会においても行っておるところでございます。  しかし、まずこの歳出をいかに縮減するか、すなわち財政構造をどう変えるか、そのような認識からこの法律案を提案させていただいた次第であります。
  145. 吉川春子

    ○吉川春子君 総理は昨日もそのような趣旨の御答弁をされました。  毎年、与党などで税制についても見直しを行っているんだというお話ですけれども……
  146. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 政府税制調査会。
  147. 吉川春子

    ○吉川春子君 税制見直しを行っているんだというお話でございますけれども、それならば歳出の方も単年度主義でやればいいのに、なぜ歳入だけ毎年見直して、この法案には入れないというのは私は非常に疑問を感じます。  財政構造という言葉が法律上出てきたのは今回が初めてです。ところが、法文にはこれについての定義の規定がありません。大蔵省にどういう定義ですかとお伺いいたしましたら、財政構造改革考え財政制度審議会のこの四節の六ページをコピーで送ってきて、これが定義ですと、こういうふうに言われたわけなんですけれども、これでは余りにも漠としていると思うんです。法第三条では、たびたび衆議院でも参議院でも問題になりましたけれども、国会を初め三権が責務を負うものとされています。定義も範囲もはっきりしないものをどうやって責務を負ったらいいのでしょうか。私は、これは法形式上も重大な欠陥があると言わなくてはならないというふうに思います。  私たちの党の立場としては、財政構造改革と言うならば大企業の優遇税制の解消などの歳入の改善も含むべきではないか、そのことをまず最初に指摘して、具体的に総理にお伺いしていきたいと思います。  その中で、まず例を補助金等の見直しの項目にとってお伺いいたします。  本法案は、社会保障費の自然増を八千五百億を三千億しか認めないとか、文教の国立学校特別会計への繰り入れ、私立学校振興助成、私立学校経常経費国庫補助、義務教育諸学校の教職員給与の抑制、農水の主要食糧関係費の抑制など各分野にわたって、キャップ方式というのだそうですけれども予算の量的縮減を規定しております。その上、十二節で「補助金等の見直し」という節をわざわざ設けて一律に合理化、削減、一〇%のカットを決めています。  これは縦からも横からも国民負担を強いるという仕組みになっているわけですけれども、なぜこういうことをなさるんでしょうか。総理、お伺いいたします。
  148. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 財政構造改革推進につきまして、この法律案で主要な経費ごとにその性質に応じてめり張りのきいた量的な縮減目標を設定しているということはそのとおりです。  同時に、補助金などにつきましては、この法案におきまして、経済社会情勢の変化や官と民及び国と地方の役割分担、このあり方を踏まえてすべての分野見直しを行うこととしておりますけれども、それは各歳出分野ごとに量的縮減目標を設けた上に重ねて縮減しなければならないという趣旨ではございません。  しかし、いずれにしても我々はこの縮減目標に従って財政構造改革を強力かつ確実に進めてまいりたい、そう考えておることはそのとおりでございます。
  149. 吉川春子

    ○吉川春子君 これでは国民の側からするとたまったものではありません。  大蔵省にお伺いいたしますけれども、三十四条から三十八条まで補助金の全面的見直しを定めています。三十四条はこの節の総則的な規定だと私は思うんですけれども、「国は、」という言葉で始まり、政府だけでなく国会も責務を負う形になっています。見直しの対象となるものは、「国の補助金、負担金、交付金、補給金、委託費その他相当の反対給付を受けないで国が交付する給付金であって政令で定めるもの」となっています。  そこでお伺いいたしますけれども、本条で対象にしております補助金その他のそれぞれの数と九七年度予算の額をお示しいただきたいと思います。
  150. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 平成九年度の一般会計におきます補助金等の件数は二千二百件、その総額は十九兆二千二十億円でございます。
  151. 吉川春子

    ○吉川春子君 補助金、負担金、交付金、補給金別の金額をお願いします。
  152. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 補助金六兆七千百八十億円、負担金十兆四千二百九十億円、交付金一兆三千百十六億円、補給金五千九百二十三億円、委託費千五百十一億円でございます。
  153. 吉川春子

    ○吉川春子君 一般会計だけの数字を今言っていただきましたけれども、大変な件数と金額ですね。これが全部この法案によって一律に見直しの対象にされているということは恐るべきことだと思います。  本法では「補助金等」などとして国庫負担金、補助金を一まとめにしておりますけれども、国庫負担金といえば義務教育諸学校の校舎に要する費用とか先生など小中学校の教職員の給与、生活保護に要する費用などです。  自治省、これはそれぞれ性格の違うもので、補助金と負担金というのは同列には論じられないのではないですか。
  154. 二橋正弘

    政府委員(二橋正弘君) 国庫支出金につきましては、地方財政法においてその性格に応じて二つに分けておりまして、国庫負担金といたしておりますのは、国と地方団体が相互に密接に関連する事務について、共同責任という観点からいわば割り勘的に国と地方負担し合うというものを国庫負担金というふうに言っております。  それから、国が地方団体に対しまして一定の政策を奨励する目的で交付するものを国庫補助金というふうに地方財政法では規定をいたしております。
  155. 吉川春子

    ○吉川春子君 総理、お伺いいたします。  今お聞きのようなことですけれども、例えば財政法十条について、石原信雄氏著の「地方財政法逐条解説」には次のように書かれています。  「本条の規定による国の支出金は、「国庫負担金」と呼ばれるものであり、奨励的な意図に基づいて支出される「国庫補助金」とは、明らかに区別される。「負担金」とは、恩恵的ないわばくれてやる金ではなく、国と地方公共団体とに密接な関連をもつ事務について、」、今お答えがありましたように、「共同責任という観点から国が義務的に支出すべきいわゆる割勘的な経費である。」というふうに書かれています。  例えば、生活保護費、義務教育費の国庫負担金などは憲法に直接由来し、二十五条の生存権、二十六条の義務教育の無償などの規定に基づいて実行しなければならない事業地方公共団体に行わせて、補助金等の形で支出しているものです。したがって、大企業などへの補助金やむだな公共事業の補助金などと同列には絶対に論じられない、そういう性格のものです。  総理、この点についての御認識をお伺いしたいと思います。
  156. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 今回の財政構造改革法案におきましては、補助金を含めすべての歳出について聖域なく制度、施策にさかのぼって見直すということでございまして、補助金もその例外ではないということでございます。
  157. 吉川春子

    ○吉川春子君 補助金もその例外にしていいのかどうかということを聞いています。法律にそういうふうに載っているということは私も読んでいますから知っているんです。  今おっしゃったでしょう、国庫負担金と補助金とは性格が違うものだ、そういうものを一律に社会経済の変化とかあるいは官と民と地方公共団体の役割の見直しとか、そういう一般的なものでもって同列に論じられないということは地方財政法の十条と十六条を見れば明らかじゃないんですか、どうですか。
  158. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 義務教育国庫負担金の例で申し上げますと、今回の法律案におきましても教職員の定数改善につきまして二年延ばすということで、この法案で御審議いただいているわけでございます。要するに、負担金といえども聖域なく見直すということでございます。
  159. 吉川春子

    ○吉川春子君 もうけしからぬことですね。  例えば六月三日の閣議決定を今度は財政構造改革法という形で法案化しているわけですね。この閣議決定におきましては、これは生活保護費とか義務教育負担費を制度補助金という形で扱っているんですけれども財政構造改革法では憲法上の国民の権利を保障するという文言が全然出てきておりませんけれども、これはどういうことなんでしょうか。
  160. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。  第三十五条第一項第四号におきまして、「この法律の規定に基づき、集中改革期間中に当該補助金等の給付の根拠となる制度の改革に関する検討又は制度の見直しを行うこととしているものその他政令で定めるもの」と、この規定の中に入っておるわけでございます。
  161. 吉川春子

    ○吉川春子君 閣議決定では、「憲法上の国民基本的権利を保障するためのもの」ということで「生活保護費負担金、義務教育費国庫負担金等」というふうに書いてありますが、この明確な憲法上の言葉を法律の文言から落としたのはなぜかと聞いております。
  162. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 閣議決定を法文化する段階で、先ほど申し上げました第四号のような規定が適当であるということで、先ほど申し上げました第三十五条第一項第四号の規定になっているわけでございます。
  163. 吉川春子

    ○吉川春子君 ちょっと時間がもったいないので端的に答えてください。  閣議決定にはあって法文には載っていないということは見ればわかるんです。その理由を聞いているんです。その過程でどういう理由で落としたのかということを聞いているんです。
  164. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 閣議決定の文言を法文化した場合にはこういう法文になるということでございます。
  165. 吉川春子

    ○吉川春子君 なぜそれを法文化しなかったのかということを聞いているんです。事実はもうわかっているんですよ、載っていないんですから。
  166. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 法制局での審議段階で、「憲法上の国民基本的権利を保障するためのもの」という規定では余りにも概念として広過ぎてこの法文化にはなじまないということでございます。
  167. 吉川春子

    ○吉川春子君 要するに、憲法上の権利を保障することさえ棚に上げて、そして歳出削減しょう、そういう意図がこの法文にはあらわれているということをおっしゃっているわけですね。もうとんでもないことだと思うんですよ。少なくとも、閣議決定には挙げていて、それを法文化するというんだったら法文にも載せるべきです。  じゃ、その問題もう一つ伺いますけれども、三十五条の二項、制度補助金とその他補助金というふうにその範囲が決められております。それで、三十五条はその他補助金の効果を書いてあるわけですけれども、その法的効果は補助金の削減、合理化が三十五条一項あるいは一割カットが二項ということで二つになっているんですけれども、その他補助金は各省庁ごとに前年比一割カットである、こうしていますね。  そこで、トータルでこの集中改革期間中にその他補助金はどれだけ削減されるんでしょうか。数だけで結構です。
  168. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 制度等の見直しの対象となる補助金とその他補助金等の区分けにつきましては、先ほど申し上げましたように、二千二百件ある補助金につきまして予算編成段階でただいま精査しているところでございます。最終的に予算編成が終わり、予算書という形での段階でお見せすることになっております。
  169. 吉川春子

    ○吉川春子君 質問をよく聞いていてくださいね。それはその次に質問すると通告してあるじゃないですか、今のことは。  私が今聞いているのはもっと単純でして、法律の条文で「十分の九を乗じた額を上回らないようにするものとする。」としているが、これを三年間削るわけでしょう。だからトータルで幾つですかと。算数の問題を聞いているんです。
  170. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 失礼いたしました。  毎年一割カットしていきますので、おおむね三割ということでございます。
  171. 吉川春子

    ○吉川春子君 おおむね三割ということは、一兆円のものはおおむね七千億になるということですね。そういうカットをしようとしているわけです。  それでは、さっきの質問に入りますけれども、その他補助金とは具体的に何を指して言うのかという問題です。  じゃ伺いますが、各省の提出した来年度予算概算要求は、六月三日の閣議決定を受けて既に補助金削減を行っています。削減している補助金は、例えば厚生省分は八百五十三億六千九百万円、それから文部省は三百三十五億六千八百万円。私これを足してみましたらこういう金額になりました。そして、その厚生省分のカットの対象の中には、母子保健衛生費補助、これが七十四億円を四十一億円に三十三億円減らしているなど、福祉に直接関係するものも含まれているわけです。  今申し上げました金額には明らかに制度補助金である生活保護費なども入っているので全額ではないと思いますけれども、もしこのほとんどがその他補助金ということならば、文部省、厚生省両省のみで三年間続けば三千億以上も削減することになるんじゃないですか。そうですね。
  172. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 先ほど御答弁申し上げましたように、最終的な区分は予算編成で決まるわけですけれども、現段階で各省から出ております概算要求の数字、あくまでこれは要求の数字でございます、最終の姿ではございませんが、その他補助金等の九年度の予算額は約五千七百億となっております。  そうしますと、仮にこれを前提に考えますと、三年間でのカット額は全体として全省庁で千五百億程度になるということでございます。
  173. 吉川春子

    ○吉川春子君 その他補助金の定義なんですけれども、もう五千七百億が対象で、その一割というのももちろん大変な額ですが、要するにどういうふうに定義するか、区分けするかということなんです。法律に基づく補助金と予算に基づく補助金という区分けをするんでしょうか、それとも地方財政法で言う国庫負担金と奨励的補助金で区別するんですか。この点だけでもはっきりさせていただきたいと思います。
  174. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 地方財政法の第十六条補助金の中には、例えば国有提供施設等所在市町村助成交付金のようなものがございますけれども、これはこの財革法の中のその他補助金でなくて、むしろこれは制度そのものがあるわけですから、その制度、施策を直さない限り補助金も変わらないということになるものですから、それはむしろ制度的な補助金というようなことで、地方財政法の補助金等とこの財革法の補助金等とは考え方が違います。
  175. 吉川春子

    ○吉川春子君 考え方が違うというだけでは答弁にならないんじゃありませんか。どこで線を引くのか、それをお答えいただきたいんです。
  176. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) この構造改革法案におきまして、三十五条に例えば「国の安全の確保及び対外関係の処理等に係る国の責務に関するもの」等例示がございますけれども、最終的にはその補助金あるいは負担金等の制度、施策見直しの対象になるというものは制度等見直しの補助金ということで、それ以外のものはその他補助金ということになるわけでございます。
  177. 吉川春子

    ○吉川春子君 今のお答えは問いをもって問いに答えるたぐいだと思うんです。要するに、それは何なのかと聞いているんですよ。  それで大臣、これは大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、提案者の政府が一割カットを行う補助金の種類を具体的に示さずに、国会はどうやってこの法案を審議し是非の判断を下せというんでしょうか。国費を削る金額が何千億なのか何兆になるのか言えない、補助金の種類が何百になるのか言えない、また幾つの法改正を必要とするのかも言えない、すべて政府にお任せいただきたい、こういう法案なんですか。
  178. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) お答え申し上げます。  個々の歳出、あるいは補助金を含めての個々の歳出金額については、これは予算編成段階で数字が決まるわけでございます。あくまでこれは内閣予算編成権に基づいて行うものであるわけです。
  179. 吉川春子

    ○吉川春子君 大臣、これは予算編成権の問題じゃないんですよ。大体予算編成権なんて憲法に書いてなくて、予算編成の事務を内閣は行って国会へ提出する義務があると、こうなっているわけです。  それはそれとして、ともかくこの法律でその十分の九をカットします、それは三年間続きます、その場合にはそれはその他補助金です、こういう法律をお出しになってきているんだから、法律には定義が必要じゃないですか。  私は予算額を示せなんて言っていません。百歩譲って、予算額は予算編成の過程で決まるものとしても、この法律で示されている概念についてはっきりしなければ国会は審議できないんじゃありませんか。
  180. 三塚博

    国務大臣三塚博君) これは主計局長が今言われましたとおり、法律に基づく制度的補助金は御案内のとおりですね。それに基づく一括的にあるのもあるでしょうが、ほぼその他の補助金等ということは、調査費等の委託費や各種事業の奨励、助成ということで各省から毎年度要求をされてくるものであります。これを査定してとり行うものでございますから一主計局長のような答弁になりますので、予算編成の際にこの精神に基づいてこれに該当するものは一割カットさせていただきますと、こういうことであります。
  181. 吉川春子

    ○吉川春子君 私は予算額を聞いているんじゃなくて法文上の定義を聞いているだけです。これにお答えにならない。  それから、かつて補助金一律カット法というものが昭和六十年、六十一年に出てまいりました一そのときも全く不当ないろいろの補助金のカットが行われたんですけれども、しかしその法律の形式は、私ここに持っておりますけれども、具体的な法律で、例えば「国土調査法の一部を次のように改正する。」というふうにして、「都道府県又は市町村が行う地籍調査に要する経費の負担」を六分の五を十分の八にするとか、こういうふうに示されていたわけです。  今回は、どの法案がカットの対象になるか、幾らが対象なのか、法律上の措置なのか予算措置なのか、こういうものさえはっきりしていないので、これは法案として審議にたえないものだと。  それから三番目に、大蔵省の裁量でこれでは幾らでもできるということになるじゃないですか。特に名を秘しますが、ある省が、予算折衝の中で制度補助金に入れてほしいものもその他補助金にされそうなものが多数あるんだと、こう言って泣いていらっしゃいましたよ。だから、やっぱりこれは本当に大蔵省の裁量を非常に広く認めるということになりかねない。  しかも、法案は国民に数千億あるいは兆の単位で犠牲を強いることになる。地方自治体にとっても大変な内容です。こういうものを国会にも明らかにしないで、ただ十二月の予算編成の中で明らかにしますなどという答弁では、これは説明したことにはならない。私はこのことを厳しく指摘しておきたいと思います。  それで、こういう法文上もあいまいなものを出してきたねらいというのは、政府が十数年その他補助金のカットを行ってきたわけです。その定義も実はあるわけです。しかしそれを示さない。今回はその範囲を拡大して、さらに多くの補助金を一律にカットできる法律を今回成立させてしまおうと。しかも、これはたくさんある条文の中のたった四条でこういうことをやっちゃうわけですから、昭和六十年代の最初に行われたあの補助金のカットの法律の比じゃないということを私は強く指摘しておきたいと思います。  それで、その次にもう一つ具体的な中身について、法文についてお伺いしたいんですけれども、法案の第十条では、公的年金の……  済みません、ちょっと戻ります。  総理大臣、こういうような法案の出し方、私は非常に遺憾だと思うんですけれども、その点についてちょっと総理大臣のお答えをいただいてから次へ移りたいと思います。
  182. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 先ほど来議員の御質問に対しましても、また昨日来繰り返し政府側として御説明を申し上げ、御答弁を申し上げておりますように、現下の危機的な財政状況の中におきまして、私どもはこのような法律を国会に成立させていただくことが必要だと信じて提案をさせていただきました。一日も早く通過成立に御協力をいただけることを心から願っております。
  183. 吉川春子

    ○吉川春子君 いかに歳出カットが必要であっても、やっぱりルールというものがある。そのルールというものは憲法であり各法律であり、国会のさまざまな審議のやり方であるわけです。そういうものよりももっと価値の上回るものというのを私は知りません。  そういう形であいまいなままこういう法律を通すということに対して、私は重大な疑念がある。これは国会の審議権が制約されるのかされないのかという議論もいろいろありましたけれども、そういう問題も含めて、私は非常に疑義があるということを指摘しておきたいと思います。  その次の質問なんですけれども、法案の第十条に「年金制度改革に関する検討」という項目があります。ここにはかなり詳しく書いてありまして、例えば「一 主として高齢者が長期にわたり療養を行う医療施設その他の施設に入所している者に対する年金たる給付の在り方」とか、あるいは「年金の額の改定の方法」とか、あるいは「年金たる給付を受ける権利を有する者となる年齢」とか、いろいろ具体的に書いてあるわけです。ほぼ全面的とも言える見直しをここで義務づけています。  言ってみれば、入り口は公共事業のむだ遣いや軍備拡大等による財政危機ですけれども、出口は社会保障の切り捨てというのが本法案の構造になっています。特に公的年金制度の問題を、高齢者の生活保障、これは憲法二十五条と言いかえてもいいと思いますけれども、そういう観点からとらえるのではなくて、財政負担の問題としてしかとらえない。非人間的だと私は思います。  検討項目の一番目に挙げております、今も読みました「主として高齢者が長期にわたり療養を行う医療施設その他の施設に入所している者に対する年金たる給付の在り方」。  大蔵省に伺いますが、ことし七月に出された大蔵省財政金融研究所の高齢社会における雇用と社会保障に関する研究会報告「高齢社会における生活設計」の八十九ページで、この問題についてどう述べているんですか。
  184. 涌井洋治

    政府委員(涌井洋治君) 「高齢社会における生活設計」、これは大蔵省財政金融研究所の、これは大蔵省の見解というよりも、あくまでもその財政金融研究所の中に設けられました民間の有識者を集めた委員会での結論でございますけれども、その中でこう述べております。   公的年金の給付水準の見直しに関連して、本来、高齢者の暮らしを経済面で支えるための公的年金制度が、医療等の他の社会保障制度と給付面で重複していることがある。すなわち、高齢者の生活費に充てられるために給付される年金が、病院に入院しており、室料、食事代等生活関連費の自己負担をほとんど行わなくて済むため、入院期間中は所得をそれほど必要としない高齢者にまで支給されていることに留意する必要がある。 という報告でございます。
  185. 吉川春子

    ○吉川春子君 つまり、病院とか特養老人ホームとかに入っているお年寄りに対しては、そこで食事代も見ている、部屋代も見ている、だからそれに重ねて年金まで支払う必要があるのかどうか、こういうことが露骨に書かれているわけです。私はここのくだりを読んで本当にあきれたわけです。  厚生省に伺いますが、老人の入院者数はどうなっていますか。病院に入院しているお年寄りとそれから特養ホームに入所している人の数、これをお示しいただきたいと思います。
  186. 羽毛田信吾

    政府委員羽毛田信吾君) お答えを申し上げます。  まず、病院に入院をしているお年寄りの数ということであります。平成五年の十月、ちょっと古うございますけれども、六十五歳以上の入院患者数、推計になってございますが、六十八万八千人というふうになっております。これは十月の一時点におきまして六十五歳以上で入院されている方のいわばすべてであります。それから特別養護老人ホームに在所しておられるお年寄りの数でございますが、これはちょっと時点が違っていて恐縮でございますが、平成八年十月一日現在で約二十三万五千人という人数になってございます。
  187. 吉川春子

    ○吉川春子君 総理がちょっと席を外されましたので厚生大臣にお伺いいたしますが、かつて高齢者福祉は枯れ木に水をやるようなものと発言されて厳しい世論の批判を受けた大物政治家がいましたけれども、この発想というのは私は同じじゃないかというふうに思うわけですよ。  それで、今お答えがありました合わせて九十二万人のお年寄りから年金を奪おうかというようなこれは計画なんです。さらに重大なのは、病院給食の自己負担制度を実施しておきながら、食事代は自己負担をほとんどしなくても済むなどと書いてあります。  それで、厚生省の外郭団体である医療経済研究機構の調査では医療費の保険外負担は五兆円。これは報道されましたけれども国民総医療費、これは健康保険が二十五兆何千億かですから、合わせて三十兆、国民総医療費三十兆円の実に六分の一に達しているんです。しかも、こういうお年寄りは扶養家族だっているわけです。病院にいたって家賃は払わなくてはならないんですよね、室料は払わなくてもいいようなこと書いてありますけれども。それとも、病院に入院するときは家を引き払って入院せよと言うんでしょうか。お金のことだけを考えて、政府財政負担をひたすら軽くしようと、社会保障の理念も何もなしにこんな問題を提起するとは、私は人の血が通っているのかとさえ思わざるを得ません心このような検討項目は直ちになくしていただきたい。
  188. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今回の財政構造改革というのは、このまま制度をほっておきますと厚生省関係予算だけでも年八千五百億円の増が見込まれる。大方の人は、もう増税はだめですよ、歳出削減で徹底的にむだな面を排除しなさい、非効率な面をなくしなさいということで、厚生省予算のみならず全省庁、増税はしないんだから、赤字国債も発行しないんだから徹底的にむだを切り詰めて歳出削減しなさいという中で出てきた案であります。そして、これから厚生予算はわけてもマイナスにはできませんから、三千億円増までは認めるといういわゆる上限が設定されました。それでも八千五百億円に比べれば五千五百億円削減しなきゃならない。その中で一切の聖域がないということで見直すんです。  いろんな意見ありますよ。共産党が言っている意見もあります。あるいは全く違う意見もあります。そういうのを勘案して、これからなんですよ、決めるのは。大変苦しいんです。医療も年金も福祉もあらゆる項目について検討いたしたいと。  そういう中で、今後、毎年二%程度の伸びしか厚生省関係予算は認められない。だからこそ制度改革しなきゃもたないなと。年金にしてみれば、もらう人にとってみれば給付は多ければ多いほどいいんです。しかし、若い人のことを考えると保険料まで上げるわけにはいかぬ。じゃ税金どういうふうにするか、これはもう増税はだめです、枠がはめられた中でやるんですから。私はいろんな意見聞きます、賛否両論。その中で、最終的にこれから年末の予算編成に向けて徹底的な議論の上に結論を出さなきゃならない。大変苦しい作業ですけれども、これはやらざるを得ない。どうか御理解をいただきたいと思います。
  189. 吉川春子

    ○吉川春子君 何が赤字財政の原因かとか、どこを削れとか、私たちは衆参を通じてずっとやってきて、これからもやっていくわけです。きょうはそこは入りませんけれども、厚生年金の、ここが赤字の原因じゃないということは私は別の機会に証明しょうと思うんです。  大臣、いろんな意見がある、賛否両論ある、苦しいんだと、こういう大まかな議論で、特養老人ホームにも入っている、入院もしている人たちの年金を削るなんということ、大ざっぱなことはさておくとして、そのことを私は聞いているんです。そういうことまで切り込まないとならないのかと、経済大国日本が。しかも、それは今言ったように理屈の上でも不当なんですよ。お年寄りの、そういう施設に入っている人の年金を切り刻む、支給しないなどという、こんなとんでもないことはやめるべきだと思うんですよ。  総理、どうでしょうか。厚生大臣と同じ考えですか。
  190. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 今の御意見についても議論の俎上に上っているんです。  施設入所者の所得保障の必要性が低いことを理由として年金支給を制限すべきである、そういう意見が一方にあるんです。他方では、社会保険方式のもとでは一定年齢への到達といった保険事項に対して一律に経済的な保障を行うべきものであること、年金保険者が施設や病院への入退所等の情報を随時正確に把握する必要が生じるが、実務的に極めて困難であること等を理由に入所者に適切な自己負担を課すことにより調整すべきであるという意見がある。  いずれにしても、こっちにはこういう意見がある。年金を……
  191. 吉川春子

    ○吉川春子君 どっちを選ぶんですか。
  192. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) それはこれからいろんな意見を聞いて、最終的に国民世論はどっちが納得するかというところで判断したいと思います。
  193. 吉川春子

    ○吉川春子君 いろんな意見があるのは当然ですよ、一億二千万も人口がいるんですから。いろんな意見があるからといって、そうじゃないんですよ、厚生大臣というのは社会保障の担当大臣でしょう。憲法二十五条に基づいて社会保障、国民の暮らしを守る、年金を守る、それを大事にしていかなきゃならない大臣が、こういうものもありますという大ざっぱな理論、理屈で、賛成もあるし反対もあるし、こうだとか何だとか、そういうようなことじゃないんですよ。  いろいろありますけれども、いろいろやっておられない、一番典型的な許せないと思うものをやっているので、私はこういうものを絶対にやるべきじゃないと。どっちかを選ぶときに、やっぱり憲法二十五条を頭に描いて、国民の暮らしを守る、それから老人福祉を守る、ぜひそういう立場に立ってやるべきだと。しかし、そういうことまで切り刻もうとしているこの法案は不当だということで、もう一つ具体的に例を申し上げたいと思います。  もう一つ、年金事務費のカットということが実に具体的にこの法案には出てきています。公的年金制度の根幹にかかわる重要な改悪を含んでいる法律案です。本法律案で実質的な改正というのは、長期計画の期間の延長を除けば保険事務費の国庫負担の点だけなんですね。  それで伺います。これは額を伺います。現在事務費を国庫負担にしている意義と、今回の措置で幾ら節約しようとしているのか、その二点、お伺いします。
  194. 矢野朝水

    政府委員(矢野朝水君) まず意義でございますけれども、公的年金は国が保険者として実施しているわけでございます。そういうことで、制度の安定的な運営を図る、あるいは保険料の負担の軽減を図る、こういう観点から国が全額負担してきた、こういうことでございます。  それから、今回削減する具体的な額でございますけれども、これは平成年度予算額が二千八百七十六億円ございますけれども、これに対しまして十年度の要求額は六百二十六億円減の二千二百五十億円を要求しておるということでございます。ただ、これは保険料でその差額を賄うわけでございますけれども、保険料を引き上げるというようなことは毛頭考えておりません。
  195. 吉川春子

    ○吉川春子君 これは、今御答弁ですけれども、保険料の軽減を図るための、そういう性格を持って国庫負担にしているんではありませんよね。「事務費の国庫負担については、厚生年金保険事業は、国が経営の責任を負うことになっているので、国庫が経営上の費用を負担することは、当然のこととされる。」、これは「健康保険法・厚生年金法」という本、労務行政研究所が一九五九年に出している本です。  それから、もう一つ例を挙げますけれども、民間でも簡易保険でも、純粋の保険料のほかに一定率を付加保険料として保険料に付加してこれに充てているが、厚生年金保険では社会保険の公益性、特殊性に基づき、事務費について国庫負担をする旨を明らかにしている。こういうことじゃないんですか。
  196. 矢野朝水

    政府委員(矢野朝水君) 先ほど答弁したとおりでございまして、国が保険者として制度を運営しているわけでございますので、制度の安定的な運営を図る、あるいは保険料負担をできるだけ軽減する、こういう見地から事務費を国庫負担で賄ってきておる、こういうことでございます。
  197. 吉川春子

    ○吉川春子君 保険の比率にすると、比率としてはそんなに多い比率じゃないんですけれども、これは金額の問題ではなくて、制度の根幹にかかわる重大問題だ。こうした重大問題は専門委員会で徹底的に議論されていかなくてはなりません。それを議論を経ないで、今回のこういうような法案の提起の仕方というのは、国会審議をないがしろにするばかりか、今おっしゃった制度の安定的運営、こういうものを台なしにするんじゃありませんか。これは大臣、いかがですか。
  198. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 制度の安定的な運営のために事務費を国庫負担しているのは事実でありますが、制度の安定的な運営の事務費負担でも、むだはないか、非効率な運営はないかということに着目して徹底的に削減する。しかし、削減した場合でも保険料を上げるようなことはしませんよと。ぎりぎりとむだな点を見出しましょうということで努力をしているわけであります。御理解をいただきたいと思います。
  199. 吉川春子

    ○吉川春子君 事務費を国庫負担にしている意義、そこから起こして、今回それを削減するというのは本質的な問題として私は提起をしているわけです。公的年金制度をつぶしてしまえと言わんばかりの議論が今出されている、その中でこれを削るという問題なんですね。  例えば公的年金の民営化論、これは財界を初め大蔵省や通産省など政府関係からもさまざまに提起されています。例えば、産業構造審議会総合部会基本問題小委員会、九六年の十一月ですけれども、「公的年金から私的年金へのシフトによる効率の向上が可能となるよう、公的年金の限定と私的年金の安定的な受給を確保するための制度的な整備を併せ行う。」、こういうようなことを言っています。それから、「高齢社会における生活設計」、大蔵省の財政金融研究所、九七年の七月ですけれども、年金の民営化に関する世銀の動きを詳細に紹介しています。「政府の対応」として、「公的年金の役割の限定が重要な検討課題になってくるものと思われる。」と、こういうことまでおっしゃっています。それから新聞の記事にも、大蔵省財政金融研究所の高齢社会における雇用と社会保障に関する研究会の委員である方が公的年金の民営化を急げ、こういうような議論をされていますけれども、こういうことを政府考えているんですか。とんでもないでしょう。簡単にお願いします。
  200. 小泉純一郎

    国務大臣小泉純一郎君) 次期制度改正に向けて、給付と負担の問題あるいは今お話しの民営化論、いろいろ選択の材料、議論の材料を提供します。その中でどういう改正がいいかということをこれから決めるんです。この一つだという選択肢は出しません。幾つか選択肢を出して、今のままの給付だったら保険料負担はこのぐらいになりますよ、あるいは、ある程度国の役割は制限しなさい、民営化論者がいます、民営化論者の議論を取り入れた場合には民営化のプラスとマイナスはこういうのがありますよと。.そういう国民判断できる材料を、これから論点を整理して、そして大方の国民の議論の欲するところを見ながら、こういう制度がいいなという形を厚生省としては出したいんです。一つだけは出しません。選択肢を提供します。
  201. 吉川春子

    ○吉川春子君 もう時間がなくなりまして、私は言いたいことがいっぱいあるんですけれども、あっという間に時間がたちました。  本格的な高齢化社会が来るといいながら、公的責任からだんだん手を引いて民営化を画策するなんというのは極めて重大です。こうした政府の姿勢が公的年金に対する信頼性を失わせています。  国民年金は、対象者二千万人のうち、未加入と保険料の免除、二年間の滞納者を合わせて三分の一の六百六十万人にもなって、公的年金の空洞化ということにもなりかねない。こういうことを指摘して、私の質問を終わります。(拍手)
  202. 西川きよし

    西川きよし君 よろしくお願いいたします。  昨日は年金制度について質問させていただきました。若い世代そして将来世代、いろいろ皆さん方の負担考えますと、その負担を和らげるためには、我々世代がお互いが支え合って、譲り合って、必要であれば負担がふえるということもやむを得ないのではないかというふうに私自身は考えているわけです。しかしそこで、国民負担を求める以上は、政府といたしましてもみずから危機感を持って取り組んでいるんだ、また取り組むんだというような決意を本日は確認させていただきたいと思います。  そんな思いを込めて質問をさせていただきたいと思うわけですけれども、法律案の十二条であります。「雇用保険制度の見直し」、高年齢求職者給付金のあり方について廃止を含めて検討という項目がございます。確かに、年金と求職者給付金の両方もらうということは、公平という観点からしますと問題があることは私自身も理解をいたします。しかし、年金額が低い方にとりましては、そういう方ほど仕事をお探しにならなければいけないわけです。一律にこれを廃止するということではなく、所得の低い方への配慮というのは残してもらいたいなというのが私の率直な気持ちでありますが、まず労働大臣の方から御所見をお伺いしたいと思います。
  203. 伊吹文明

    国務大臣(伊吹文明君) ただいま御質問のございましたところについては、先生よくこの法案の趣旨は御存じで御質問になっていると思いますが、六十五歳を過ぎて働いておられて退職をされた方は、年金をもらうと同時に今の雇用保険の給付をお受けになる。ところが、六十五歳を過ぎてお働きに出ておられない方は年金だけでお暮らしになっている。そうすると、雇用保険の保険料というのも、これは国民の汗とあぶらの結晶である保険料か、さもなければ税金から入っておる給付でございますので、そこのところの公平感からこれを調整したいというのが御指摘の条文の趣旨だろうと思います。  そこで、先生はかねてから年金問題について特に細やかな御配慮をなすっておるということは私よく存じておりまして、かつて、土曜日、日曜日に年金の支払いがある方を公務員と同じように金曜日にしようという活動を御一緒にしたことを今思い出しておるわけですが、弱い方に対する、低所得層の方に対する御配慮というのはまことに私はごもっともなことだと思います。しかしながら、同じ年金をもらっておって、一方は働いておられて退職の雇用保険からの給付をお受けになる方と、そうでない方が、低所得の年金の方にも両方ともあるわけでございまして、そこのところの配慮は、雇用保険からするよりもやはりその他の福祉の配慮、そういうところでなされるべきではないか、そんなふうに思っております。
  204. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございました。  そこで、雇用保険三事業のうちの雇用福祉事業の一環として行われております介護の福祉助成金制度、つまり介護クーポン制度ですけれども、これについてお伺いしたいと思います。  この介護クーポン制度について、まず労働省の方から御説明をいただきたいと思います。
  205. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 御指摘の介護クーポン制度でございますが、これにつきましては、家政婦紹介所の全国団体、これは社団法人が三つございます。これで全体をほぼ網羅いたしておるわけでございますが、この団体が雇用保険適用事業所と協定を締結し、家政婦紹介所を通じて協定事業所の従業員に紹介手数料、これは家政婦に支払う賃金の一〇・五%を限度といたしておりますが、これを割り引いて家政婦を紹介し、必要な介護サービスを提供する制度でございます。  この制度を通じてこれを利用した場合に、この割り引いた分につきましては、三団体で構成します介護クーポン運営協議会を通じてただいま御指摘の介護福祉助成金を支給する、こういうことでございます。  この制度につきましては、基本的な考え方といたしまして、在宅分野での介護サービスの確保に資すること、勤労者の方々に対して在宅での介護サービスを確保することによって安心して働くことができること、そういうことをねらいとして発足いたしたものでございます。
  206. 西川きよし

    西川きよし君 これからはいつでもどこでもだれでも、朝でも昼でも夜でも夜中でもそういうお助けをいただけるという部分では大変結構なことなんですけれども、実はこの制度について、こちらの新聞を持ってまいりました。「介護クーポン制度 予算二十一億円」と書いてあります。そして「消化は四百万円」という見出してございます。  橋本総理が今日の厳しい財政状況を説明なさって財政改革を訴える一方で、例えば国民がこの見出しを見たときに、財政が苦しい、厳しいということですけれども、本当に日本の国は苦しいのかな、本当に貧乏なのかな、今困っているのかな、本当は金持ちじゃないのかなというふうに首をかしげたくなるわけです。市民がこれを見たらそういう素朴な感情が出てくると思うんですけれども、これは新聞社が個別にすっぱ抜いたとかなんとかということではなしに、総務庁の行政監察結果で明らかになったわけですから、まず総務庁の調査結果について御説明をいただきたいと思います。
  207. 土屋勲

    政府委員(土屋勲君) お答えいたします。  当庁の調査結果によりますと、本事業の対象となる雇用保険適用事業所、これが百九十五万あるわけでございますが、本事業により協定を締結したのは平成九年二月現在で二千二百十七事業所のみでございます。また、予算の執行状況を見てみますと、平成年度予算額十六億一千六百万に対しまして、執行見込み額約四千四百万、予算額の二・七%ということになっております。  したがいまして、私どもの勧告といたしましては、当面、年度目標を設定し、計画的に協定事業所及び利用の拡大を図るようこの事業を実施しております介護労働安定センターを指導すること。それから第二点としまして、介護保険制度が導入された場合には、同保険制度の影響及び事業実績を勘案し、廃止を含め事業のあり方を見直すということを勧告いたしておるところでございます。
  208. 西川きよし

    西川きよし君 お聞きいただきましたように、平成七年度で予算額が二十一億五千万円に対して利用者は全国で五十七人、使われた予算は四百十三万円、次の年の平成八年度では十六億一千五百万円の予算に対して使われた額が四千四百三十七万円、そして今年度の予算額が八億六千百七十一万一千円、こうなっておるわけですけれども、今年度のこれまでの実績をお伺いしたいと思います。そしてまた、来年度の要求額についても労働省の方からお伺いしたいと思います。
  209. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) 平成九年度のこれまでの実績といたしましては、提携企業数三千百十九社、これ十月末現在でございます。クーポンの利用者数が五百三十人、介護福祉助成金の支給実績が四千四百九十四万五千円でございます。  また、平成十年度の介護福祉助成金に係る予算要求といたしましては、約八億六千万円余を要求いたしておるところでございます。
  210. 西川きよし

    西川きよし君 平成六年六月の健康保険法の改正で、約十万人近い家政婦さんにとって最大の職場であった病院の付添看護が解消されたわけですけれども、職場を失った方々へ何とか配慮しようという趣旨は本当に私もよく理解できます。  しかし、余りにも予算と実績との差が大き過ぎる。さらに、今お伺いいたしまして、来年度の予算要求額が八億六千百七十一万一千円、今年度の予算額とまるっきりこれが同額になっているわけですけれども、これについても余りにも機械的過ぎやしないかなというふうに思うわけです。政府は本当に危機感を持って取り組んでくれているのだろうか。残念ながら私自身不信感さえ感じるわけですけれども、労働大臣に御所見をお伺いしたいと思います。
  211. 伊吹文明

    国務大臣(伊吹文明君) ただいま政府委員が御答弁を申し上げましたような実績であり、またこの制度ができました経緯は今先生がおっしゃったとおりでございます。  そこで、この制度は働く方、そして働きながら介護しなければならない方と企業の双方にとってそれなりのメリットのある制度だと私は思いますし、公的介護制度が導入された後もいろいろなニーズが当然介護を受ける側にはあるわけでございます。何もかも国にあるいは公的なものに頼るというのではなくて、自助努力型のこのような介護の方が介護をしてもらう方にもいいという場合もあると思います。  したがって、これだけいい制度があるわけですから、事務当局はもっとPRをして、そして大勢の方にわかっていただいて、先生のようにテレビや何かで著名な、知名度のある方も大いに宣伝をしていただきたいと私は思っております。  そして、この制度は実は、御承知だと思いますが、労働保険特会と申しまして、労働省がお預かりをしている特別会計の予算でございます。したがって、一般会計のように大蔵省から予算の計上を受けて不用が出たから流用するとかどうこうするという性格のものではございません。それはできません。不用が出たものはきちっと資金として積み立てられて将来のために備えられているということだけは一言申し添えさせていただきたいと思います。
  212. 西川きよし

    西川きよし君 労働大臣、ありがとうございました。  いろいろいい制度がたくさんあるから活用しなければというお話をお伺いしたんですけれども、病院また福祉の施設でお世話になる、いろいろございます。私も昨日は総理が六十歳になったという還暦のお話をさせていただいたんですが、私もこちらの方へお世話になってもう丸十一年が過ぎます。本当に初登院のときには不安で、たった一人だったものですから、廊下を一人で歩いておりましたら——十一年前と申しますと総理はどういう役職でございましたでしょうか。ちょっと余分な……。
  213. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 多分、大蔵大臣をする前ぐらいではないでしょうか。
  214. 西川きよし

    西川きよし君 通告も出さずに大変御無礼ではございますけれども、ただそのことを今ふと思い出したものですから。本当に不安で不安でいっぱいでございました。  廊下を歩いておりましたら、何人かの方とお座りになっていたと思うんですけれども、西川さんと声をかけていただいて、福祉のことをおやりになりたいということをニュースで知りましたというふうに声をかけていただいた。一生懸命頑張りますからひとつ今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます、こういうふうにごあいさつさせていただいたら、何か厚生省関係で福祉のことがあったらぜひまた事務所の方にでも電話をいただけたら御相談に乗らせていただきますというふうに、それまで政治家というのは口先だけというんでしょうか、普通一般にはそういうふうにやっぱりみんな思うわけです。(「漫才師も同じだよ」と呼ぶ者あり)漫才師の場合はちゃんとネタをつくって、見えない部分で僕らは原稿用紙に活字を埋めるわけですけれども。  そうした中で、橋本さんと今呼ばせていただきますが、その当時の橋本総理が声をかけてくださった。そして、再度御連絡を申し上げても多分、え、そんなことを言ったかな、事務所の方は橋本の方からはお伺いしておりませんがというようなことを言われるんではないかなと思ったけれども、私は電話を思い切っていたしました。  そうすると、事務所の女性の方ですか、橋本の方からお伺いをしておりますと。電話をしたのはわずか三日か四日後だったと思うんです。不安だったものですから電話をかけさせてもらったら、聞いておりますということで、厚かましく寄せていただいて、そしていろいろ福祉のこと、それからは御迷惑をかけたらいけませんので直接役所へ出向くようにいたしました。  今労働大臣からおっしゃっていただいたように、お年寄りの年金の振り込みを変えたりというのは、たしかあのときは山下徳夫厚生大臣のときだったと思うんですけれども、なぜこういう話をさせていただくかといいますと、今労働大臣の方からいろいろ各施設によってと。  実は、せんだって僕も五十一歳になりました。きょうは思い切ってお話しさせていただきますけれども、やっぱり正直にお話をさせていただきますことが一歩でも福祉が前に進むのではないかなというふうに思うんです。親子三代で生活をしておりまして、この間、父親がちょっとお漏らしをしまして、ちょうど僕がいたときでよかったんですけれども、大阪弁でえらいこっちゃと。どないしたんやと言うと、おじいちゃんがということで、ずっとおしめのお世話になっているんです。  大変なことになりまして、ついにおやじも来たかということで、それで手分けして、家内が掃除をして、あんた何ぼさっとしてんのと。私はそこで立っておっただけなんですけれども、はよう自分の父親をおふろへ連れていってちゃんとせんかいな、こう家内に言われたものですから、大正四年生まれの父親をおふろへ連れていきまして、おしめもおろして全部、五十一になっておやじのおしりからおちんちんの方からずっと洗ってなんというのは、本当に日ごろ福祉のことを、ここ以外でも、そして国会でもまじめに一生懸命頑張らないかぬなというふうに思って、きょうはきのうに続いてこの質問をさせていただいたわけですけれども、本当に人手も要りますし、お金も要ります。  その中で、こういうことがあってはいかぬな、こんなお金があったらどこかへ回してもらいたいなと思うんですけれども、この予算をいただくときに、僕は不思議に思ったのは、この査定をする大蔵省の立場として大蔵大臣に一言お伺いしたいんですけれども、いかがなものでしょう。  二十一億という最初の予算で、お使いになったのが四百万円で、その次も差は余りないんですけれども、大蔵省にそういう要求が行った場合、こういうような実態という結果が出ているわけですけれども、どういうふうに大蔵大臣としてお考えになるか、言いただきたいと思います。
  215. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 具体的な御提案、御紹介です。担当局からも、また労働大臣からも見解がございました。  高齢化社会、介護制度の充実はまさに社会保障制度、福祉国家の究極のあり方であろうと思います。これは若い中堅の方が、介護者も含めまして我が父、我が母という気持ちで協調相和し助け合って初めて心が通じ完成するものだと思います。そういう意味も含めて、雇用主も従業員が御両親なりお年寄りの介護をし、介護を必要とするということでクーポン制ということでそれに乗られたのかな、こんなふうにも今気づかさせていただいたところであります。  いずれにしましても、大きなお金が趣旨のとおりに使われることなくわずかで終わっておるというのはどこに欠陥があるのか、そこは十二分に検討、分析をしまして、せっかくよいものであればそれも生かしていくということが大事なのかな、こう思ってお聞きをさせていただきました。
  216. 西川きよし

    西川きよし君 ありがとうございました。私は悪意だとか他意を持って質問をしているのではございませんので、御理解をいただきたいと思うんです。  今労働大臣の方からもお言葉をかけていただきましたように、我々で本当に役に立つことがあれば、私はよくタレント議員タレント議員と言われるんですけれども、そのタレント議員というのに誇りを持ってここへ寄せていただいています。休まずにまじめに一生懸命やることは当然のことですけれども、より一層、一山何ぼのタレント議員みたいなことをよく報道されたりするんですけれども、そんなことのないようにこれからもしっかり頑張りますから、どうぞ労働大臣、何かございましたら僕らはどこでも出向きますので、おっしゃっていただけたらと思います。
  217. 伊吹文明

    国務大臣(伊吹文明君) ぜひ先生にもこのいい制度をテレビを通じて多くの方に呼びかけていただきたいと思うんですが、御指摘があってから私なりにいろいろ、なぜだめなのかなということを考えてみました。  一つは、労働省はやはり雇用保険というのを企業との間にやっております。ところが、これの利用者は実は企業の従業員の方でございます。企業とだけやつちゃだめだよと、使っていただく従業員の方への周知徹底のパンフレットだとか、そういうものをきちっとつくりなさいということは一つ言い渡したわけであります。  それからもう一つは、残念ながらこれは介護に来てくださる家政婦の方の紹介料に対する補助なんですね。そして、実は介護の費用というのは、家政婦さんの費用というのは結構高いんで、その負担が大変だということにも理由があるのかなと。  そこで、公的介護制度ができましたらこれはすべての人がカバーされるわけですから、今の育児休業手当のようなものを少し介護の部分について雇用保険の中で考えなければいけないんじゃないか。それも参議院で今御討議をいただいている介護保険法にあわせて検討するように事務局に指示をしてございます。  その他いろいろ気づかぬことがありましたら、また先生の目線でおわかりになったことを教えていただいて、御一緒にいい制度をつくりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  218. 西川きよし

    西川きよし君 よろしくお願いいたします。  最後に総理に御質問したいと思います。  火だるまになって取り組む、頑張ると。本当にお体に気をつけて頑張っていただきたいと思うんです。本当に思います。国民が信頼して理解をするためにも、やはり政府が一丸となって全部の省庁にやってもらいたい。難しいというのはこの中におって本当によくわかります。ここへ来たらわかるだろうと思って来たんですが、ここへ来て余計にわからなくなったことがたくさんあります。本当に危機感を持って取り組んでいただいているんだというような姿を国民に示していただいて頑張っていただきたいんですけれども、最後に総理のお気持ちを聞かせていただいて質問を終わりたいと思います。
  219. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) きょうもまた非常に身近なところから大事な問題を拾い上げていただき、問題を提起された。そして労働大臣から、この制度をより有効に働かせるように考えてみる、あなたのお知恵もかしていただきたいという答弁を申し上げました。私も本当にそう思います。そして、いい問題をきょうも提起していただいたと思います。また、御自身の御家族に触れてのお話も、笑われた方もありましたけれども、私はとても笑う気にならずに聞いておりました。  その上で、本当に高齢社会というものを考えましたときに、私ども考えなければならない問題をいっぱい持っております。しかも、この少子化の中で若い人々が少なくなっていく、若い働き手が減っていくという中で、今の仕組みのままその負担を勤労世代に負わせていたら、その負担にたえ切れなくなる日が必ずやってまいります。  今もう長い御答弁を申し上げることはできませんけれども、私は、現在ももちろん考えなければなりませんが、我々の世代から次の世代にどこまでツケを回していいのだろう、もうやめなければいけないのじゃないかという思いでこの財政構造改革に取り組み始めました。同時に、先ほど来の御議論で大変厳しい御意見もありましたけれども、私は、やはり今のうちに社会保障の構造というものは見直して、複数の選択肢の中からの国民の選択によって次の世代との負担の公平というものも考えながら、セーフティーネットとして、医療保険にしても年金にしてもその他の福祉サービスにしても、将来にわたって維持できるものを今のうちに築き上げなければならないと思っております。  全力を尽くしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  220. 西川きよし

    西川きよし君 お願いします。  ありがとうございました。(拍手)
  221. 梶原敬義

    梶原敬義君 総理初め閣僚の皆さん、毎日大変御苦労さまです。それからまた、日銀の松下総裁には、ありがとうございます。簡単なことを聞きますので、よろしくお願いをいたします。  第一点は、バブルの後遺症の話が先ほど出ましたが、私もバブルの後遺症というのは本当に大変なものだなという実感を持っております。日銀の松下総裁に、この後遺症の状況はどこまで回復しているのか、この傷の深さはどこまで回復しているか、その度合い、山でいうと何合目まで来ているのかということを教えていただきたいと思います。
  222. 松下康雄

    参考人松下康雄君) バブルの後遺症についてのお尋ねでございますが、私の立場から、主として金融機関を中心といたしましてバブルの後遺症の現状につきまして申し上げたいと存じます。  バブルの崩壊の後、御承知のように金融機関の多くに非常に大きな不良資産が累積をいたしました。各金融機関は、厳しい経済情勢の中で自分の背負い込んだ不良資産の早期解消を図るために今日までそれぞれが真剣な努力を重ねてまいったと存じております。  その結果といたしまして、多くの金融機関におきましては毎期毎期、殊に最近におきましては各期の業務純益をずっと大幅に上回るような幅におきまして自分の持っている不良資産の償却に努力をいたしましたので、今日のところは、バブル崩壊の初期の状態に比べますとそれぞれの金融機関の抱えております不良資産はかなり整理をされ、この処理の先行きのめどがだんだんと立つようになってまいっていると思います。  総じて申しますとそういう状態でございますので、金融機関の方は、もう一方で現在は金融資本市場の抜本的な改革をこれから行っていくという時期でございますので、そういう非常に重い課題を果たしてまいりますためにそれぞれが前向きの努力をいたさなければなりませんけれども、その前提としての過去の大きな負担というものの処理はかなりに進んでまいったと。  ただ、この過程の中で、幾つかの金融機関につきましては破綻を生ずるのやむなきに至ったということは残念でございますけれども、いろいろの法律上その他の手当てによりまして、それらの破綻の処理につきましても今日までのところ経済界に大きな混乱を与えることなしに進行しているというふうに見ております。
  223. 梶原敬義

    梶原敬義君 金融関係のお話でしたが、産業界全般といいますか、経企庁長官、ちょっとそこは補足してください。
  224. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) ただいま日銀総裁からお話がございましたが、私、金融面では確かに日銀総裁のおっしゃるとおりでいわばある程度の償却も進んでいると思っておりますが、ただ、その償却したいわゆる不良債権が実はどうなっているかといいますと、担保資産がまだ処分されていないと。  金融機関の帳簿上は損失として落としてありますからそれで当面はいいわけでありますけれども、しかし、その担保資産がまだ動いていないという意味においては、その資産が金利を生むというような形で経済の体制の中にまだ入ってきていないという感じがするわけでございまして、その担保資産の処理がうまく進むことが本当の意味不良債権処理を進めることになるだろうというふうに考えております。そういう意味で、土地流動化、土地有効利用を目指した規制緩和とかあるいは税制の問題とかが大変大事なことになるのではないかというふうに考えております。
  225. 梶原敬義

    梶原敬義君 国民にとりましては、一体いつまでこういう状態が続くのかと。先ほど聞いておりましたら、景気は足踏みとかなんとかでそうファンダメンタルズは悪くない、こういう議論がありながら、一方ではその溝の深さといいますか、不良資産、バブルの影響というものはどこまで回復しているのかというのはどうもわかりにくい。やっぱり国民はその辺をもう少し知りたいし、私どもも知りたいんです、ずばっと突っ込んで言うならば。どなたかそこを聞かせてください。
  226. 尾身幸次

    国務大臣尾身幸次君) 経済のファンダメンタルズという意味で、何回か申し上げておりますが、消費消費引き上げに伴いますいわゆる反動で少し減りました。それは回復過程にある。それから、設備投資の方も企業収益はふえているわけであります。そして、消費について言いますと、消費者の懐の方はいわゆる個人金融資産千二百兆円の問題も含めましてそこそこ豊かであるというふうに認識しておりますが、経済の先行きに対する信頼感がもう一つという状況の中で、消費も思ったほど伸びていない、それから設備投資も伸びてはおりますけれども大幅な伸びではないという状況になっております。  もう一つは、先ほど来お話にありますような大企業中小企業の格差、それから製造業と非製造業の格差、なかんずく建設、不動産あるいは金融機関等のバブル関係のところがまだ非常に雨降り状態でございまして、そういう中で財政が厳しいということで、私ども規制緩和を進めながらバブル処理をし、そして民間活力を十分に生かした形での経済の正常化を図っていきたい、経済活動の正常な発展を実現していきたいと考えている次第でございます。
  227. 梶原敬義

    梶原敬義君 バブルの後遺症よ、いつまで続くのかということを知りたいわけですが、もういいです。  それで、我が国は第一次オイルショックのときに、ドイツの連銀の場合の例でよく言われますが、あの狂乱インフレのときに卸売物価、消費者物価はほぼドイツの二倍強上がっているんですね。これはやっぱり金融政策に問題があったということはもうはっきり言われております。  今回のバブルも、日銀が長期低利のこの金利を、あるいは金融を非常に緩和状態で放置しておった、あるいは日銀の考査というのをやって現場をつかみながら非常に不十分な指導、大蔵省も監査をやりながら、銀行が不動産にどんどん金を貸していったような状態を放置していった。この責任を明確に位置づけて、いや、そこは悪かったんだ、だからこういうような形になったんだと。そしてまた、そのバブルをつぶすときのつぶし方がぶすっと突き刺して空気を抜いたような形ですから、非常にこれも問題があった。  私はよく言うんですけれども日本は経企庁もあるし、大蔵省にも優秀な人材がおる、日銀も立派だと。しかし、経済運営に関する限り、高原のハイウエーを上がり下がりしながら車で走るようにどうしてスムーズな経済運営ができないのか。悪い道路を急にエンジンを吹かして走って、そして今度はばっと急ブレーキを踏む、そういうことを何度か繰り返しておる。これはもう宿命かな、変えられないのかな、このように思うんですが、この点は一体いかがでしょうか。もうそういうことはやらないよ、狂乱インフレと今度と経験して、もうそういうことはしないよ、こういうことは大蔵大臣言えるんですかね。簡単でいいです、簡単で。
  228. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 万般の反省と、また同時に分析をした結果、再び国民各位から御批判を受けることがあってはなりませんし、同時にもう一点は、過去を生かすということにおいて健全な財政運営のベースをつくり上げていくことをおいてほかにない。そのことは異常な決意と決心と責任で橋本総理中心にやり抜いておることであります。必ず国民の信頼を得ることができるでありましょうし、G7を初め各国の視線も、橋本内閣日本の政治がこの困難を乗り切って、かつての華やかな安定した日本経済を再来してくれるのであろうかと。そういうことにつなぎ、進めることができるのではないでしょうか。
  229. 梶原敬義

    梶原敬義君 先ほど政府の皆さんの答弁を聞いておりまして、民活、民間活力というのがよく出るんですが、中曽根総理のときに日本は大変黒字がたまり、国際的な批判を浴びました。そのとき中曽根総理は、後ろに黒板か何かを置いて書いてテレビでやりましたよね、内需拡大を一人がどうすればどうなると。非常に今また似ているんです。あのとき六十ぐらいの民活法案を一括審議しまして、私もへそ曲がりですから、こんなことをしてだめじゃないのか、こういうことを言っておりましたが、やっぱり狂乱インフレに火をつける役割を政治が主導して果たしたんですね。  それはそれといたしまして、低金利の問題につきましてきのう大蔵省から資料をいただきました。  公定歩合が平成四年に二・五%であったものが、平成五年、六年は一・七五、七年、八年が〇・五パー。それで金融機関全体の業務純益というのは、昭和六十三年三兆六千百八十四億、それが平成四年には四兆六千八百五十六億、それから平成七年には六兆七千四百三十五億、平成八年が六兆三千九百六十億、非常に業務純益が低金利でふえております。非常に銀行はこの低金利でもうかっておるわけですね、純益がふえている。  一方、企業の借入金を四季報でちょっと調べてみました。大体大きなところを私のところで引き抜いてみたんですが、鉄鋼の場合は、新日鉄が借りている金が約八千億。これは大体三%ぐらい金利が下がっているので実質収入がふえた形になると思うんです、コストが下がりますから。三%下がった場合に二百四十億、これは年間ですね。それから川崎製鉄の借入金が約五千百九十億、これは百五十億ぐらい黙って金利差で転がり込む。東京電力につきましては借入金総額が五兆二千二百三十億、それの金利が三%下がったことによってメリットが出るとすれば一千五百六十億入ってくるんです。関西電力は七千七百億。私のところの九州電力なんかも一兆五千九百三十億借りておりますから四百七十八億、不労資産というんですか不労収益みたいなもの。例えば大きな商社で言いますと、三菱商事が二兆五千八百億借りておる。それから三井物産が二兆四千億。伊藤忠商事が二千二百八十億。こういうようにたくさん金を借りているところというのは金利が下がったことによって黙って入ってきているわけですね。  この部分は一体どこから出ていくのかというと、これは年金生活者とか、まさかのときのためにお金をためている人たちの家計の部分からそっちに移動しておるわけですね。経済全体からとらえると、プラスマイナスするとそれはいいかもしれぬけれども、個人になりますと、おれに当然五%なら五%の金利ぐらいあっていいはずが〇・五%しかない、これじゃ不公平じゃないかと。それで、たくさん金を借りた人たちは黙っていても入ってくる、おれたちの利益は物すごく減っている、こういう不公平感というのが具体的に出てくると思うんです。  だから私は、今の段階景気にいろいろあるかもしれないけれども、この国の社会というのは公平さが基本になきゃいけない。公平さを基本考えた場合には、今の〇・五%の公定歩合というのは低過ぎる、これはたまらぬ、みんなお年寄りがそう言うのです。  この点について、松下総裁、日銀の管轄ですからもう一度お考えを聞かせてください。
  230. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもが二年前に公定歩合を〇・五%へ引き下げをいたしました時期におきましては、日本経済は当時の急激な円高の影響等もございまして非常に苦境下にあったと思っております。  当時の緩和政策のねらいと申しますものは、一つは、当時の我が国経済がデフレの悪循環に陥るのではないかというようなおそれさえ言われていた時期でございますが、そのようなことを回避しなければならない、またこれによりまして企業や家計の自信を強化いたしまして、それらを通じて経済を自律的な回復軌道にしっかりと乗せていくようにいたしたいということでございました。  このような金利の低下の結果といたしまして、ただいま御指摘がございましたように、借入金の多い企業の金利負担につきましては、中小企業、大企業を含め負担の軽減が図られております。  他方でまた、家計部門のように、金利に感応いたします資産が住宅ローンのような金利を払わなければならない負債の倍にも達しているという部門につきましては、全体として金利収入が非常に減少をいたすわけでございます。そういう点から見まして、家計の金利収入が現在全体として非常に減少している状態が続いていることにつきましては私どもも認識をいたし、またその中で特に利子所得に対する依存度の強い家計の方々に対しては心苦しく感じているところでございます。  ただ、日本経済全体を見てみますというと、こういう低金利、金融緩和の政策によりまして今御指摘もありましたような企業の収益の増加ということもあり、またそれが原因となって設備投資の増加やあるいは住宅投資の需要喚起というような経済を活性化させる、元気をつける要素も出てまいる。また、資産価額の下支えによりまして企業消費者につきましての自信というものの回復も図られるのではないか。そういった道筋を通しまして我が国の経済活動全体が活発になってくるということになりますというと、やはりそれは企業が雇用しております勤労者の皆様方の雇用やまた収入に対しましてもプラスの影響を持つはずのものでございます。  そういった点で、全体として見まして、家計におきまして利子収入よりも量でいいますと勤労所得、雇用者所得収入が非常に大きなわけでございますので、この大きな部分が全体として改善をしてまいりますならば、その恩恵というものが広く家計全般、また広くは日本経済全体に対しても及んでいくというふうに考えているところでございます。  経済の現状を見まして、なおしばらく私どもは、日本経済が自律的な回復過程に戻りますためには、現状の私ども金融緩和の姿勢というものを踏まえまして、今後の経済回復の本格化の状況というものをよく見きわめてまいりたいと思っているところでございます。
  231. 梶原敬義

    梶原敬義君 もう答弁要りませんが、ぜひ日銀でも考えていただきたいんですが、一つは、なぜ最初にバブルの傷の深さを聞いたかというのは、この低金利状態が一体いつまで、その見通しを含めて知りたかったものですから、それが一つあったんです。  それからもう一つは、家計全般、日本全体の家計をトータルでとらえて答弁すればそういうことになる。しかし、おれのところは今これだけ金を預金している、預金をちゃんと個々に積んでおると。そういう積んでおった金を一つ一つ持っていかれた場合にはみんな文句言うんですよね。そうでしょう。ですから、この問題は個々の問題なんです。個人個人の問題です。個人個人の問題としてとらえなきゃ公平さというのを欠くと思うんですよ。  ですから、人それぞれ違うわけですから、人それぞれの家計をどう考えるかということにも配慮しなければならない。日本経済全体もそれは大事ですよ。大事ですけれども、一軒一軒の皆さんは生活をしているわけですから、そこも考えなきゃならない。このように思いますから、日銀の方でぜひもう少し頭を冷やして考えていただきたいという強い希望があります。  それから次に、総理、我が国の一般会計の累積赤字というのは大体二百五十四兆ですね。うち建設国債が約百七十二兆、それから赤字国債が八十二兆。聞いておりますと、子孫に悪い遺産を残すという答弁が何度もありますね。しかし、これにはなかなか納得できない部分もあるんです。  どういうことかといいますと、私なんか昔金があって土地を買って家を建てたんじゃないんです。借金してやってああうまくいったなと思っているんですね。それは道路にしても、昭和三十二年から四十四年にかけまして東名と名神高速道路を我が国はつくっているんです。四十四年に完了している。当初の建設費は一キロメーター当たり約九億円でできているんです。全体の建設費が四千五百七十億円、うち用地費が一千百四十九億円。東名・名神、延長五百三十四キロメーター、これをもし仮に、今何ぼでやれるかというのを建設省の方に試算してもらいました。その場合には、今だったら八十七億円、九億円でできたのが八十七億円かかると。そして、うち用地費が約二十倍ぐらいにこれは膨らんでおるわけですね。しかし、これに金利を入れてみても、入れる必要はないと思うんです、あれができ上がって国民は非常に助かっておりますから。しかし、金利を入れてみても八十七億円には到底ならぬ、五%ぐらいの金利で六十億円ちょっとぐらいじゃないかと。  ですから、いろいろ申し上げましたが、言いたいのは、要するに百七十二兆円の建設国債は私はもっと前にやった方がいい。悪い遺産を残すとは限らない。これは相当前にやった分が先で子供たちや孫たちのときには生きてくる、こう思うんですね。建設大臣、いかがでしょうか。
  232. 瓦力

    国務大臣(瓦力君) 梶原委員にお答えいたします。  おっしゃるとおり、一九六一年六%であった我が国の下水道でございますが、我が国の処理能力、普及率は、この九六年、三十五年間で五五%になっている。着実にある面では社会資本整備ができつつありますし、道路につきましてもそれぞれ整備が行われておるところでありますが、私は我が国土はやっぱりコストがかかる国土だと思います。沖積平野に、一〇%の可住地域に五〇%の人口がいる。そして七五%の資産を有して集中して経済活動が行われておる。災害もあるわけでありますので、やっぱり強靱な国土にしていかなきゃならぬ。  まして経済企画庁長官が言うように、魅力ある国土にして、企業が国境を越えて選ぶわけでありますから、そういたしますと、これから安心、安全、そういったことを踏まえていかなる国土にするかということを考えてまいりますと、早く、この二十一世紀初頭といいますが、少子・高齢化社会もやってくるわけでありますけれども、それまでにいかに国土基盤整備を整えておくかということは喫緊の課題だと思っておるわけであります。  今御指摘をちょうだいしながら、幾つかの資料を見ておるわけでありますが、いかに財をつぎ込むべきかということになりますと、総理大蔵大臣の御指導を得なければなりませんが、国土整備につきましては、効率化とかいろんな工夫をいたしまして、コストをできるだけ切り詰めながら効率的に運営をしていくという視点に立ちまして国土整備に取り組んでまいりたい、こういう考えでございます。
  233. 梶原敬義

    梶原敬義君 ぜひやっていただきたい。石頭のように何でもかんでも借金は悪いというような論争は本当に情けない。我が国は、私が小さいときには戦争、戦争と、こう言っていたのに、負けたらぐるっと変わるんですね。この前の選挙法の改正のときもだあっと行ったんですね。だから、これは待てよと。日本はそこらを振り返ると民主主義というのにはまだ到達していないんじゃないかと思う。要するに、三十二年から四十四年に東名高速道路一キロを九億円でつくった。これは今八十七億以上はかかる。これを一体どう説明するか。  もう少し申し上げますと、日本公共事業を例えば海外と比較しますと、下水道普及率は五四%、イギリスは九六%、ドイツは九〇、フランスは七八、アメリカは七一。都市公園等一人当たり公園面積、東京では二・八平米、全国では七平米、イギリスは二十五・六、ドイツは三十七・四、フランスは十一・六、アメリカは二十三・〇。例えば高速道路、千人当たり高速道路延長というのは、日本は〇・〇四五キロメーター、つまり四十五メーター、イギリスは〇・〇五六、ドイツは〇・一三七、フランスは〇・一五六、アメリカは〇・三三八。よそに比べても非常に低いんですね。治水もそうなんです。テムズ川やライン川やセーヌ川、ミシシッピ川、こういうところはもうほとんど完成しているんです。まだ日本は大河川でも六六%。大雨が降れば危ないんです。こういうところですから、やっぱりこれはやるべきだと、このように思うんです。  だから、百七十二兆円の建設国債については余り気にすることはないんじゃないんですか、総理。それで、問題の八十二兆円の赤字国債についてはやっぱり気にしなきゃいけない。どうでしょうか。
  234. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今社会資本整備状況について挙げられました数字を私は否定するつもりはありませんし、厳しい財政事情の中とはいいながら今後とも、現在やはり欧米諸国に比べまして分野によっては公共投資と申しますか社会資本整備のおくれがあることも事実でありますから、相対的に立ちおくれた部分に対する投資が必要であるということを私は否定するものではありません。  同時に、建設国債といわゆる赤字国債、この違いを私は無視するつもりもありません。財政法におきましても、負担の世代間公平という考え方から、見合いの資産などが残る公共事業などに限っての建設公債発行を認めているわけでありまして、その違いを私は否定するわけではありません。  ただ、現状をお考えいただきたい。建設公債発行に伴う国債費を賄うために特例公債発行する、その増加を招くといった問題がある状況であります。ですから、これが平時でありましたなら議論の内容として議員の御意見を私は否定するものではありませんけれども、やはり建設公債発行に伴う国債費を賄うために特例公債発行の増加を招くといったこの状況、これは何としても離脱をしなければならない。そう考えますときには、公債発行総額そのものを抑制しなければならないということはお認めいただきたいと思います。基本線において議員が主張されたことが誤りだと申すのではありません。
  235. 梶原敬義

    梶原敬義君 地方に帰りますと、道路、橋をやってくれとか、それはもう多いんです。公共下水道も、ちょっと田舎の町に行きますと全部まだ昔と同じですからね。だから、ODAもいいけれども、こっちにODAと同じようなことをやってくれと言う人もたくさんおりますから。そういう意味では、苦しい状況はわかります、しかしこれは主にバブルが余りにも大変な状況だったから、まあ当たることはないんじゃないかと私は思うんです。  そこで、財政構造改革推進に関する特別措置法案に関して少し質問します。  当初は二〇〇五年までに大体やろうということだったのが、財政構造改革五原則を三月十八日に出されまして、これは三年短くしたわけです。これはこれでそのときの判断はあったと思いますが、今のように株価は低迷するわ景気は悪いわ、このままいったら税収も相当落ち込んでいくだろう。やっぱり経済は生きておりますから、経済を殺して何かを達成しようといったって結果的には達成できないんじゃないか。  だからそういう意味では、見直し規定の中に前倒しは入っている、前倒しは。もっと早く財政の縮減をやるということはうたわれておる、「縮減のための措置を講ずるものとする。」と。前倒しは入っているが、後ろ倒しはこの附則のところには入っていないんです。ここは少し余裕を見た方がいいんじゃないかと。責めるわけじゃないんですよ。お互いに肩の力を抜いて、現実のものとするためにいいんじゃないか、こう思いまして、その辺を伺いたいと思います。
  236. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 私も、委員に対して論戦を挑むほどおこがましい考え方を持つわけではありません。  しかし、昨年の十二月閣議決定をいたしました財政健全化目標について、二〇〇五年までのできるだけ早期という考え方をとりましたのは、平成十七年度以降、戦後生まれのベビーブーム世代が六十歳を迎える、そして平成七年十月のG10レポートの中におきまして、このころになりますと我が国において貯蓄率が顕著に低下し始めるという予測がなされていること、こうしたことから平成十七年ごろが我が国の社会経済構造のターニングポイントという考え方があるわけであります。  ですから、本年三月、財政構造改革五原則で、私どもがこれを二〇〇五年度よりできるだけ早くという考え方をとり、後ろに延ばすということを全く考えませんでしたのは、このG10レポートにありますように、貯蓄率が下がり始めるという予測が公になされている、そういう状況の中で改革をその時期より後ろに持っていくということは非常に危険度が高い、むしろできるだけ可能な前倒しをしていくべきだ、そういうことから考えたということもこれは事実問題として御理解をいただきたいと思うのであります。
  237. 梶原敬義

    梶原敬義君 五時にやめますから。  最後に一つ、大蔵省と通産省にかかわるんですが、信用保証協会ですね。  今銀行は天気のいい日に傘を貸して、雨が降り出したら傘を取り上げるというのは、もう今みんな中小企業はきついですから、確かに銀行も健全化指数やなんかがあってわかるんですが、やっぱりここは県にあります信用保証協会、これが枠を拡大したり、あるいは無担保でも少し貸す、ここに二割か三割やっぱり節をつけるということをやらなきゃもたぬのじゃないですかね、この年末から来年にかけて。ぜひお願いをしたいと思います。
  238. 堀内光雄

    国務大臣(堀内光雄君) お話しのとおり、信用保証協会の保証枠の拡大の問題、中小企業信用保険につきましては、信用力、担保力の脆弱な中小企業者に対しまして無担保で借り入れを可能とする無担保保険制度、それから無担保、無保証人で借り入れを可能とする特別小口保険制度を設けておりまして、普通保険に対して保険料率を低率に設定するなど政策的な保険を実施いたしております。  この保険の制度につきまして、平成七年の十一月に中小企業信用保険法を改正いたしまして、無担保保険については保険料率の引き下げを行うことにいたしております。現在、〇・四六%を〇・四三%に下げる、また保険限度額の引き上げで二千万円を三千五百万円に引き上げるという措置を行いました。中小企業者の資金ニーズを踏まえた抜本的な制度拡充を図っております。さらに、特別小口保険につきましては、五百万円を七百五十万円、保険料率を〇・三三から〇・三一、それぞれ対象者の枠も従業員五人以下というものを二十人以下に拡大をするというような措置を行います。
  239. 三塚博

    国務大臣三塚博君) 既に総理大臣から、中小企業者に対する融資制度、なかんずく保証協会の強化、窓口等、また迅速化等に資金枠を十二分に担保しながら、確保しながら対応するようにということで、特に通産大臣は中小企業担当でございますから、両省協議の上、万全を期せということになっております。  ただいま通産大臣が言われましたとおりの諸要綱を十二分に、全力を尽くしてまいります。
  240. 梶原敬義

    梶原敬義君 もう時間ですからやめますから。  問題は、通産大臣も大蔵大臣も言われたことはわかるんです。よく知っているんです。私も頼まれて話をするんです。できない場合が多いんです。だから、わかった上で聞いていますから、それをさらにどう超えるかということを年末に向けまして真剣に考えていただきたいと思うんです。  よろしくお願いします。
  241. 橋本龍太郎

    国務大臣橋本龍太郎君) 今の御指摘は大変大事な点でありますし、大蔵大臣、通産大臣には既に指示をおろしておりますが、一層御注意を踏まえて努力をするようにいたします。
  242. 遠藤要

    委員長遠藤要君) 明日は午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時一分散会