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1997-11-27 第141回国会 参議院 厚生委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月二十七日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員の異動  十一月二十五日     辞任         補欠選任      牛嶋  正君     水島  裕君  十一月二十六日     辞任         補欠選任      釘宮  磐君     小山 峰男君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         山本 正和君     理 事                 上野 公成君                 南野知惠子君                 浜四津敏子君                 清水 澄子君     委 員                 尾辻 秀久君                 田浦  直君                 中原  爽君                 長峯  基君                 宮崎 秀樹君                 木暮 山人君                 水島  裕君                 山本  保君                 渡辺 孝男君                 今井  澄君                 西山登紀子君                 小山 峰男君    事務局側        常任委員会専門        員        大貫 延朗君    公述人        総合ケアセン        ター泰生里総        合施設長     雨宮 洋子君        生活クラブ生活        協同組合千葉理        事長       池田  徹君        地域自治を考え        る文京会会員  石田 玲子君        神戸看護大学        教授       岡本 祐三君        白梅学園短期大        学教授社会福        祉法人ひまわり        の会理事長    佐野 英司君        特別養護老人        ホーム信愛泉苑        施設長      鈴木 恂子君        立教大学教授        (コミュニティ        福祉学部開設準        備室所属)    高橋 紘士君        サポートハウス        年輪介護コー        ディネーター   安岡 厚子君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件介護保険法案(第百三十九回国会内閣提出、第  百四十回国会衆議院送付)(継続案件) ○介護保険法施行法案(第百三十九回国会内閣提  出、第百四十回国会衆議院送付)(継続案件) ○医療法の一部を改正する法律案(第百三十九回  国会内閣提出、第百四十回国会衆議院送付)(  継続案件)     ―――――――――――――
  2. 山本正和

    委員長山本正和君) ただいまから厚生委員会公聴会を開会いたします。  本日は、介護保険法案介護保険法施行法案及び医療法の一部を改正する法律案につきまして、八名の公述人方々から御意見を伺います。  御出席いただいております公述人は、総合ケアセンター泰生里総合施設長雨宮洋子君、生活クラブ生活協同組合千葉理事長池田徹君、地域自治を考える文京会会員石田玲子君、神戸看護大学教授岡本祐三君、白梅学園短期大学教授社会福祉法人ひまわり会理事長佐野英司君、特別養護老人ホーム信愛泉苑施設長鈴木恂子君、立教大学教授コミュニティ福祉学部開設準備室所属高橋紘士君、サポートハウス年輪介護コーディネーター安岡厚子君、以上の方々でございます。  この際、公述人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙中のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。  三法案につきまして、皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、審査参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。  次に、議事の進め方について申し上げます。  まず、公述人方々からお一人十分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えをいただきたいと存じます。  なお、御発言は御着席のままで結構でございます。  それでは、まず雨宮公述人にお願いいたします。雨宮公述人
  3. 雨宮洋子

    公述人雨宮洋子君) お手元資料に沿ってお話しさせていただきます。  私は、痴呆性老人専用特別養護老人ホームを運営しています。施設内容資料の一のようで、入所対象者は、徘回が目立ち、一日に二、三十キロも歩いてしまうようなアルツハイマー型の痴呆性老人です。そのため、建物内に自由に歩けるスペースを確保、資料二のようにハイテクを応用し、安全快適に暮らせる構造としています。施設運営理念資料の三のようで、専門性と尊厳、在宅ケア拠点づくりを三本柱としています。  さて、本論の公的介護保険ですが、私はその基本理念において賛成であり、本日は、痴呆介護現場から、介護保険導入された場合の問題点を挙げ、よりよい介護保険導入の御参考にしていただければと考えております。  資料の四は年齢階層別痴呆有病率で、八十五歳以上の女性では三〇%が痴呆となり、二十一世紀痴呆介護が大きな課題となります。  次は、痴呆診断の問題です。当施設地域医療福祉機関から痴呆だとの診断で紹介され相談に来ます中の二、三〇%は、結果的に痴呆ではありません。介護認定チェック表かかりつけ医意見書だけでは痴呆の正確な診断は無理であり、そこをどうするかが介護保険運用一つ課題と考えます。  次は、痴呆を起こす病気には資料の六のようなたくさんの病気があり、病気により介護法が異なり、最低限、アルツハイマー型か脳血管性かそれ以外かの区別が必要です。そして、資料七にアルツハイマ一型痴呆脳血管性痴呆特徴を、資料の八に両者ケアの違いを対比させましたが、両者介護はある意味で全く逆であり、介護保険の中で痴呆基礎疾患の鑑別とそれに合わせたサービス提供が可能になるか危惧します。  ここで当施設在宅サービスを利用している事例を紹介します。資料の九をごらんください。  七十四歳の女性Sさん、アルツハイマー型痴呆です。Sさんは、ひとり暮らしで約五年前から痴呆症状が見られ、一たんは東京の息子と同居しましたが、なれない場所での生活に不適応を起こし、郷土に戻り、当施設相談に参りました。Sさんは歩行も普通にでき、身体面ADLは自立しています。痴呆もまだ比較的軽く、介護認定モデル事業判定基準では六段階中のⅢ段階以下と思われます。しかし、Sさんは、夜中に起き出して外に出たり、近くの山から木の枝を持ち帰りたき火をしたり、不要な物をいっぱい買い込んだり、なべは真っ黒に焦がしてしまいます。  そこで、私どもは資料の表のような介護計画を作成、サービス提供を行っています。表の下に一週間分のサービスを集計した数字がありますが、介護保険になりますと恐らくこれだけのサービス提供はできなくなり、Sさんの生活は破綻してしまうと思われます。  アルツハイマー型痴呆では、比較的初期の段階で一見すると生活は自立しているようでも、一人では火を消し忘れ火事になったりなどのため二十四時間の見守りが必要となります。さらに、中等度になりますと、さまざまな問題行動が出現、介護量は極めて大きくなりますが、それでも目の前に出された食事自分で食べ、衣服も自分で着脱しますから、要介護認定では低いレベルとなってしまいます。逆に、痴呆末期になると、意欲が低下し問題行動もなくなり、介護量は中期よりも減りますが、ADL低下のため、介護度認定ではより重いレベルと判定されるという矛盾が生じます。寝たきりの場合は、食事排尿便、入浴といったポイントポイントでの介護支援で済みますが、アルツハイマー型の歩く痴呆の場合、二十四時間の介護となり、Sさんのように濃厚サービスがなければ在宅ケアは継続できません。アルツハイマー型痴呆介護認定に当たっては、寝たきりあるいは脳血管性痴呆とは別の基準が必要と考えます。  次に、介護保険介護専門性や質の関係について述べます。  痴呆性老人最大問題行動弄便があります。弄便は病的で異常に見えますが、私は、資料の十に書きましたように、その動機は非常に健康なものと考えています。弄便を防ぐには、排尿便のリズムを観察し、それに合わせてトイレ誘導おむつ交換をすればよいのです。その手段として当施設では、資料の十一のおむつぬれ感知センサーを利用し、ぬれたらすぐのおむつ交換が可能となりました。  ところが、多くの施設、病院では、弄便に対し上下つなぎ服を使用します。この服は、上着とズボンがつながっており、背中やそでにはかぎつきのファスナーがあり、手がお尻に入らないし、それを脱ぐこともできませんから弄便は物理的に防げます。しかし、私は、これはおむつの汚れを始末して気持ちよくなりたいという健康な行動を物理的に制限する介護であり、手足をひもで縛ると同じ人権侵害、もっと言えば犯罪行為だと思っています。  ある新聞報道によると、この上下つなぎ服が九州だけで年間一万着売れているといいます。上下つなぎ服使用は、老人に大変につらい思いを強いるわけですが、介護者は非常に楽になります。一方、上下つなぎ服を使わなければ、人手や経費は多くかかりますが、老人QOLは向上します。これを介護保険ではどう評価し介護報酬に反映していただけるのでしょうか。つまり、介護提供者の努力で老人QOL自立度が向上すると要介護レベルは低下し介護報酬が減少し、逆に介護の手を抜いて老人自立度が低下したり、問題行動がふえれば介護報酬がふえるという矛盾をどのように解決できるか、検討していただきたいと考えています。  福祉領域では、医療に比べ専門性資格があいまいでした。福祉施設施設長資格はあってなきに等しいことを指摘します。社会福祉士介護福祉士資格制度化されましたが、名称独占にとどまっています。そのため、福祉従事者間には技術、専門性に大きな格差があり、共通言語すらない実情です。介護保険では関係者間の連携が非常に重要ですが、共通理念言語がなければそれはできません。介護保険では新たにケアマネジャーという職種が登場しますが、この専門性には大きな不安を持っており、この点も御検討いただきたいと考えます。  資料の十二に二十一世紀老人特徴を挙げましたが、彼らは今の老人とは考え方も行動も全く異なる新人類老人となります。その一つのキーワードは、高学歴、インテリ化情報化などであり、二十一世紀老人自分の健康や介護について高い知識を持ち、現状介護従事者レベル専門性では通用も満足もできません。第二は、価値観や生き方の多様化であり、現状措置制度では対応できず介護保険導入は必須でありますが、介護保険サービス自由性選択性が確保できるか危惧します。第三は、個人主義自己決定権人権意識の高揚です。痴呆性老人が拘束、抑制されたり、望まないサービスを強要されたりの人権侵害が生じないことを介護保険でどれだけ担保できるか心配です。もしかすると、介護をめぐる訴訟問題が頻発する可能性もあります。  いずれにせよ、介護従事者専門性のための教育、資格問題は緊急の課題です。具体的には、施設長資格明確化取得後の研修の義務化介護福祉士資格業務独占とし、大学卒業資格とし、医学系介護学科とすることを提案します。  最後に、痴呆性老人向けグループホームについて触れます。  私もグループホーム推進派で、現にグループホームを運営しています。しかし、グループホームも決して万能ではなく、資料の十三のようないろんな問題点があります。  私が最も心配するのは人権侵害です。グループホーム介護保険対象となれば、アパート経営をする感覚で専門性経験もない人々が参入してくる可能性があります。グループホームは小さいだけに密室になりやすく、痴呆性老人人権がいとも簡単に、しかもやみの中で侵され、あるいは財産や権利が侵害されてしまう危険があります。グループホーム介護保険給付対象になるには、管理者資格、スタッフの資格と数などについてきちんと決めること、チェック機能オンブズマン制度整備が前提となります。  日本精神障害者は、病気になった不幸に加え、我が国に生まれたという二重の不幸を背負わされていると嘆かれている東京大学の呉秀三先生がいらっしゃいますが、どうか後世、日本痴呆性老人は、痴呆になった不幸に加え日本に生まれたという二重の不幸を背負うなどと言われないよう、介護保険制度をつくっていただきたいとお願いして、私の意見陳述を終わらせていただきます。
  4. 山本正和

    委員長山本正和君) ありがとうございました。  次に、池田公述人にお願いいたします。池田公述人
  5. 池田徹

    公述人池田徹君) 私は、介護保険法案賛成立場意見を申し述べたいと思います。  私が責任者をしております生活クラブ生協千葉では、四年前から助け合いネットワーク事業に取り組んでいます。本格的な高齢社会を前にして、これまで生協は食、食べ物の分野地域社会に貢献してきましたが、今後は地域ケアシステムづくりに積極的に関与していかねばならないとの使命感から在宅ケアサービス事業に取り組んできました。また私は、介護社会化を進める一万人市民委員会運営委員並びに同委員会千葉県組織の代表として介護保険問題について研究をしてきました。その活動経験を踏まえて介護保険法案に対する意見を述べたいと思います。  介護保険法そのもの福祉のビッグバンとも言えるものだと思います。先ごろ、厚生省社会福祉事業等の在り方に関する検討会が終了し、措置制度廃止する方向を打ち出しました。介護保険法はその象徴的な存在になります。救貧的な性格を持つ措置制度廃止は、低所得者層にとって不利な側面を持つなど問題点が必ず出てくると思いますけれども、だから措置制度がよいということにはなりません。施しの福祉から利用者供給者が対等の関係で向き合う福祉制度に移行することを支持し、介護保険法案にもこの立場から賛成いたします。  しかし、介護保険制度市民本位利用者本位制度として機能していくためには多くの課題があります。限られた時間ですので、以下大きく三点に絞って意見を述べます。  第一に、介護基盤整備に全力を尽くしていただきたいということです。  言うまでもないことですが、保険制度導入によってこれまで表に出てこなかった潜在的なニーズが一挙に顕在化することが予想されます。これに対して、介護サービスの担い手は極めて不十分です。法施行が予定される平成十二年までに介護基盤整備に向けたさまざまな施策を実施しなければ、保険あってサービスなしという事態になりかねません。  まず、法が施行されれば、これまでの高齢者福祉政策公的負担が減少します。一万人市民委員会の試算によると、国庫負担年間五千億円、市町村負担が二千二百億円減少することになっています。この減少額を前倒しして介護基盤整備に重点的に配分していただきたい。これについては法整備も含めて検討をしていただきたいと思います。  また、介護報酬決定に当たっては、民間事業者参入を促し、質の高いサービス提供が可能になるよう適切な報酬額を設定することが大切です。これまでのところ、民間事業者サービス事業への参入動きは必ずしも十分とは言えないのではないでしょうか。少なくとも、私たち活動しているエリアでは新しい動きはほとんど見られません。間接経費減価償却費などを加味すると、かなり高目単価設定をしないと民間事業者参入は多くを期待できないように思います。  また、介護サービスの量的な充足にとってはもちろんのこと、特に質的な水準を維持する上で、非営利団体住民参加型団体参入を促進することが極めて重要です。  全国各地住民参加型団体在宅サービス地域にはなくてはならないものとして位置づいています。これらの団体は、今介護保険事業者になるか否かを悩んでいます。事業者にならないという選択を考えている事業体も多いのですが、その最大の要因は、民間在宅サービス事業者がこぞって介護保険事業者になってしまったら、そこからあぶれる介護ニーズにだれが対応するのか、こういう問題をだれも真剣に考えようとしていないということにあります。介護保険が施行されても要介護認定を受けられない人、六十五歳未満の人、要介護認定を受けられても対象サービスだけでは不十分な人など地域に広範に存在します。非営利住民参加型の団体はこうしたニーズを日常の生活の中で全身に受けとめているんです。ですから、介護保険事業体になる力は十分備えており、事業体になれば自分たちの働く条件がかなりよくなることはわかっていても、なお参入をためらっているという現状があります。  法施行に当たっては、こうした良質な介護サービス団体活動しやすいような配慮をすることが大切です。  さらに、非営利団体である農協生協介護事業に積極的に参入するか否かが基盤整備にとって極めて重要な要素になります。  農協は既に介護事業への参入のための法整備が終わっていますが、生協は、デイサービス訪問介護ステーションなど一部の委託事業を除いて参入がしにくくなっています。それは員外利用禁止規定があるためです。介護保険対象事業はもちろん、高齢者福祉事業全般に対する組合員以外の利用禁止規定緩和措置を早急にとることで、生協介護事業への参入を促進することが大切だと思います。生協はこれまで食の安全の分野地域社会に貢献してきましたが、これからは良質な地域ケアのスタンダードをつくっていくという役割を担っているというふうに私は考えております。  第二に、介護保険事業計画策定等計画運用のさまざまな場に広く市民、被保険者参加することを求めます。特に計画策定に当たっては、高齢者介護にかかわってきたボランティア団体住民参加型団体など、介護現場で活躍している人が参加することを強く求めます。  また、ケアマネジャーを養成するに当たっては、現在九分野のいわゆる有資格者対象になっておりますけれども、そこに偏重することなく現場経験が豊富な住民参加型団体ケアコーディネーター資格取得が容易になるように、九分野等という資格要件がありますので、この「等」という部分の弾力的な運用をぜひ図っていただきたいというふうに考えます。  最後に、来年度には、全国市町村介護保険事業計画と並行して新しい老人保健福祉計画策定されることになります。さきに述べたように、地域介護ニーズ介護保険を施行するだけでは満たされません。市町村はそれぞれの地域に潜在するニーズを十分掘り起こし、介護保険サービスでカバーし切れないニーズにこたえる独自サービス提供計画をつくることが必要です。現在実施中の老人保健福祉計画策定に当たっては、民間業者にその計画を丸投げしてしまった自治体も少なくありませんでした。今回はそのようなことがないよう地域実情に合った計画をつくることが大切です。そのためにも、新しい老人保健福祉計画策定に当たっても介護現場経験豊かな市民参加を図っていただきたいと思います。  また、さきに述べたように、介護保険対象外サービスを引き続き行っていくであろう住民参加型団体に適切な支援を講じていただきたい。こうした団体は高い理念に支えられて活動を続けていますが、ヘルパー労働条件は決してよくありません。年金生活者など利用者生活実態を考慮すると高い利用料を設定することもできず、結果として低い労働条件に甘んじています。  また、介護保険施行が近づくにつれ、新たに参入する介護保険事業者は、こうした団体活動するヘルパーさんたちの引き抜きを活発に行いつつあります。どこで働くかは個人の自由ですけれども、介護保険対象外サービスを担う団体がなくなってしまうと地域ケアシステムは崩壊します。住民参加型の団体地域介護ニーズ底辺を支えていることを理解していただきたいと思います。  以上で意見陳述を終わります。
  6. 山本正和

    委員長山本正和君) ありがとうございました。  次に、石田公述人にお願いいたします。石田公述人
  7. 石田玲子

    公述人石田玲子君) 御紹介をいただきました石田です。  原稿を読ませていただきますので、お手元に差し上げました陳述要旨をごらんいただけますと幸いでございます。  東京文京区に住み、母の在宅介護を四年間経験して介護社会化を痛感し、介護保険法案利用者住民立場から注目してまいりました。  しかし、この法案は、衆議院可決に際し十六項目の附帯決議がつきましたように、多くの問題を抱えています。保険料利用者自己負担介護報酬介護認定基準参入業者の指定や基準など重要なことはすべて厚生省権限下に置かれ、私たち住民の前に実態がほとんど明らかにされておりません。今のまま法案可決成立すれば、二〇〇〇年の実施時における混乱と利用者の不満、制度に対する不信は避けることができないと思われます。  また、戦後の社会保障制度は、憲法二十五条の生存権規定をよりどころとして、国民生活保障は国家の責任とする考えに立って進められてきました。介護保険原則はこの原理に根本的転換を迫るものでございます。介護保険は公費にかわって保険料住民自己負担を中心に運用されます。保険料利用料徴収方法は、従来の個人負担能力に応じた応能負担から、提供されるサービスに見合って定額を一律に支払う応益負担型に変わります。  現在、高齢者世帯の約六割が年間所得三百万円以下であり、うち年収百万円以下が一七%を占めています。このような低所得高齢者から介護保険定額保険料利用者負担を徴収することは、経済的弱者に対する逆進性として働き、高齢者世帯を直撃することになります。  私は、法案内容情報開示が全く不十分で納得できる議論が行われていないこと、戦後社会保障制度原則転換という重大な問題について論議が尽くされていないという二点から、今国会での法案成立に反対いたします。さらなる慎重審議法案抜本的見直しを要請したいと思います。もし可決の場合でも、参議院の良識と独自性を発揮されまして、以下に述べます五つの点について修正を考慮されることを強く要望いたします。  第一点は、第二号被保険者年齢及び疾病条項法案一条です、による適用除外の削除です。このような条項年齢差別にも通じるものと思われます。  第二点目は、経済的弱者への救済措置です。  その一として、保険料の低所得者への逆進性解消です。  参考資料の表①を見ていただきますと、ここにありますように月額収入に対する保険料の比率は、低所得者に対して極めて逆進性の強いものになっております。この逆進性解消が必要です。また、老齢福祉年金受給者など底辺に位置する層には保険料減免措置検討していただきたいと思います。  その二は、保険料未納滞納者に対する厳しい罰則規定廃止緩和検討です。  保険料逆進性に加えて、さらに高齢者に追い打ちをかけるのが未納者滞納者への細かい罰則です。未納滞納者給付率の引き下げや給付の全額もしくは一部の差しとめ、特に介護保険料国保一括徴収者に対する滞納による医療保険適用停止人権問題になるのではないでしょうか。  その三は、介護給付は十割給付原則として利用者負担をなくすことです。一割の自己負担は低所得者には大きな負担となります。  第三点は、要介護認定審査に関する問題です。  その一として、一カ月の審査期間の短縮です。  申し上げるまでもなく、介護認定申請をする人はほとんど限界状況です。現在、東京都内では早くて即日、一週間以内に支援が来ます。手続のスピードアップと簡素化をお願いいたします。  その二は、申請認定の審査に関してであります。  第一次コンピューター判定は参考程度とし、第二次判定の機能を強化して市町村認定審査会の判定の独自性を尊重していただきたいと思います。そのために、aとして、第二次判定の根拠資料となる特記事項の調査項目に社会環境、地域的特性に関する項目を加える。bとして、第二次判定の資料に本人、家族の意見聴取を義務づけることであります。  aについて御説明を加えますと、参考資料の表②をごらんください。厚生省平成八年度認定審査会モデル事業の報告結果によりますと、一次判定が二次判定で変更されたものは一千五百三十八件、二七・六%ですが、このうち軽度の区分状態への変更が三百八十三件、二四・九%であるのに対し、重度の状態への変更は一千百五十五件、七五・一%で、三倍近くあります。東京都の品川区、保谷市のモデル事業でも同様の結果が出ております。  なぜコンピューター判定が軽度になるのか。三十一点七十三項目の調査票は本人の身体機能に関するものが中心で、高齢者の家族、社会環境、地域の特性に関する項目が欠けております。東京都の場合、職員の面接調査の記述報告で、ひとり暮らし高齢者が多いこと、住宅事情の悪さなど大都市地域の特性が反映されたことが第二次判定でたくさんの変更になったと思われます。  その三は、認定審査のプロセスの情報開示保障と身近な苦情処理機関の設置であります。  要介護認定の申請却下、要介護状態区分のランク決定の不服は介護保険審査会に不服申し立てができますが、これは都道府県に一つでは高齢者を抱える家族がどれだけ利用できるか疑問です。身近な市町村に苦情処理機関の設置が必要です。また、不服審査申し立てには認定審査がどのように行われたかについて本人、家族に対する情報開示が不可欠と思われます。  第四点目は、住民参画型オンブズパーソン機関の設置を市町村に義務づけることです。  その一として、メンバーは、保健、医療福祉の専門家と公募による同数の在宅介護中あるいは在宅介護経験のある住民で構成します。この機関の仕事と役割については、その二として、苦情処理機能と認定審査会、事業者市町村に対する改善勧告の権限を持ちます。ここで認定審査に関する不服や介護サービス内容及び提供事業者市町村についての苦情、不服を処理することになります。その三として、市町村サービス提供事業者関係についての指導と監視、サービス内容のチェックもここで行います。福祉事業関係者市町村厚生省の役人との汚職が何度となく繰り返され、そのたびに犠牲になるのは高齢者でした。こうした事態を未然に防止するためにも、市民参画型オンブズマン機関での両者関係のチェックと監視が必要と思われます。  第五点目は、利用者すなわち消費者の権利保障条項の新設であります。  今、四兆円市場と言われる介護事業への参入関係企業は色めき立っています。野放しの企業の参入で過度の競争や利潤追求が起これば、高齢者は食い物にされるおそれもあります。そうした事態を未然に防止し、高齢のサービス利用者の消費者としての権利を保障する法律上の措置はこの法案には見当たりません。これは利用者、消費者の権利にかかわる問題なので、ぜひ国会で周到な論議を重ねて権利保障条項を新設されますことを願いまして、一つのたたき台として第五の提案をいたしました。  まず、利用者サービス選択権の保障について説明します。  民間事業者としては指定居宅サービス事業者と指定居宅介護支援事業者の二つがありますが、この指定居宅介護支援事業者介護支援専門員についてであります。  介護支援専門員は、市町村の委託を受けて介護認定手続、認定審査会の認定調査員として認定申請者の訪問調査を行い、介護認定資料を作成します。また、介護認定された人の依頼を受けてケアプラン、サービス計画の作成も代行いたします。認定審査会の決定の基礎資料になる申請者の訪問調査を業者の一員である介護支援専門員に委託するのは、審査の公平、客観性にかかわる問題であり、再考が必要ではないでしょうか。また、ケアプラン作成にかかわる介護支援専門員が自分の属する系列企業への利益誘導になるようなケアプランをつくらないという保証はありません。その歯どめとして、介護支援専門員の中立性の確保を入れました。方法としては、介護支援専門員の所属事業者選択対象から外すとか、在宅サービス事業介護支援事業の兼業を認めないなど、いろいろな方法が考えられると思います。  次に、市町村サービス指定事項の削除であります。これは簡単なことですので説明を省きます。  次に、第五点目の二は、サービス提供事業者サービス情報公開と情報提供の義務づけ、誇大広告、虚偽報告に対する罰則規定を設けていただきたいことです。  その三は、サービス内容に関する利用者と提供事業者との利用契約書の義務づけであります。  こうしたものが必要と思われますが、業者の参入という新事態に対する消費者の権利保障法案に新設してくださることを強くお願いいたして、私の報告といたします。  ありがとうございました。
  8. 山本正和

    委員長山本正和君) ありがとうございました。  次に、岡本公述人にお願いいたします。岡本公述人
  9. 岡本祐三

    公述人岡本祐三君) 一九八九年にゴールドプランが施行されまして、実質わずか七年で、国政の場で、介護は家族責任ではなく社会的な介護システムで支えるべきであるという合意が全党一致で成立いたしました。そのための制度として、公的介護保険制度は今まさに成立しようとしているわけであります。この間わずか七年という驚くべき短期間に進展を見たということについて、長年この問題に携わってきました者として非常に感慨を禁じ得ないものがございますし、法案成立に向けて尽力された国会議員の方々の御努力に敬意を表したいと考えます。  ただ、ここで幾つかの留意事項というものを強調しておかねばならないと思います。  それは、法案提案当初、多くの人々がこの制度は通らないんじゃないかと予想したにもかかわらず、一種粛々とここまで進んできた。一体このような短期間に社会的介護システムのための制度成立へと推進してきた勢力はどういう人々であったのかということを考えてみなければいけないと思います。  何回も反復した世論調査でも、この制度への支持は常に過半数を超えておりまして、高いときは九〇%近くございました。最も直近の読売新聞の調査でも七六%が賛成だと、反対は六%。御承知のように、制度導入はできるだけ早くが八〇%、制度導入後に今住んでいる市町村で十分な介護を受けられるとは思わないという人が六〇%もございました。要するに、不十分な点は承知しているが、とにかく早く、一刻も早く社会的なシステムをまず立ち上げろ、猶予はならないということでございます。  もう一つ、最近私が直接経験しましたエピソードでありますけれども、十一月初めに長野県の山奥の四賀村という人口六千の典型的な過疎化した農村の社会福祉大会というものに呼んでいただきまして、お話をしてまいりました。  ここはもう三年来行っておりまして、毎回介護保険等の説明をしておりますけれども、最後に御質問はということで二、三人の方が質問をされました。司会の方が、じゃもうこれでお開きにしましょうと言ったときに、四十代後半の女性が一人、おずおずと手を挙げられまして、こういうことをおっしゃったんです。  今、ケアマネジメントとかケアプランというお話をお聞きしましたと。お話を伺うと、家に介護の要るしゅうとめさんがいる、その場合にお嫁さんが外へ働きに出たいと言えば、そういうふうなケアプランもつくっていただけるんですねと、こういう質問が出ました。私は、もちろんそのお嫁さんもお年寄りも保険料を払うんだから当然それはそういうケアプランをつくってもらえますよとお答えしながら、非常に感動しておりました。封建的遺風が色濃く残っていると言われるこういう村で、女性からとうとうこういう意見が出るようになった。介護保険制度という一つ制度の提案によって、ようやくこういうニーズというものが表面化できるようになってきた。  日本市民は、個人対社会という関係で存在しているんではございませんで、まず個人の周りに親戚も含めた家という構造がある。その周りにさらに世間という構造があるわけです。その二重の壁を突き破ってやっと社会的な介護ニーズが出ていっても、そこでさらに行政による極めて制限的な壁に突き当たる。日本高齢者介護問題というのはこのような三重の壁に塗り込められた極めて抑圧された構造の中に内在しておりました。今も内在しております。この中で、不条理に苦しむ家族介護者によって、まさに介護に関連した高齢者への虐待事件というようなものは大量に内在し蓄積されていった。  私は、二十年間地域医療現場におりまして、この抑圧構造の中から、老若両世代の人々の社会的介護サービスヘのニーズをいかにすれば解放できるか、もうほとんどこのことばかり考えておりました。その回答としてまさに出てきた現状で考えられる最良のものが公的介護保険制度であるというふうに認識しております。  世論調査でずっと賛意を表してきた市民は、まさにこのような非常に抑圧された構造の中で、不十分でもいいからとにかく、行政も努力するんであれば新たな保険料負担するのはやぶさかでない、社会的な制度を推進せよという、これまで声を出したくても出せなかったそういう市民たちの静かな決意であったろうと思います。非常におとなしい、しかし新たな保険料負担を決意した市民たちであります。公的介護保険制度を推し進めたのは、声高にあれこれ言う人たちではなくて、こういう静かな市民たちの決意であった。  ここで御留意願いたいのは、新たな保険料負担に関しては、当然それに連動する国とか行政側の努力というものが前提として予定されている。また、新しく国民が負担を決意する以上、それなりの可能な限りの公費も投入されて、最大介護のための資源整備をするということは当然前提とされている話なんです。ここのところをもう一度、最後にこの段階で強調したいと思います。  要するに、基盤整備の着実な前進、推進ということでありますが、当初出ましたスーパーゴールドプランとか新新ゴールドプランとかいった基盤整備の話が、どうもこの間の国会の審議の過程でもあいまいなままに終わってきている。これを推進するために新たな財源は原理的に必要ないわけです。市民が新たな保険料負担することによって、従来国や市町村負担していた行為が大きく浮いてくるわけでありまして、いわゆる浮き財源、これが五千億。これを確実に介護基盤整備に使うということをこれまで厚生省の担当者も何度も発言し新聞にも出ております。  この財源が、この財政構造改革の中で他の公共事業などに使われるということになれば、これは重大な背信行為として国民に映ることになると思います。そもそも、今公共事業の見直し等で大きな社会的批判が起こっている中で、この大きな国民に対する約束は忠実に履行されるべきであるというふうに考えております。  この基盤整備にかかる費用というのは、大体大したものではないんです、そもそも。新ゴールドプランに関して言えば、この五年間で六千億にも満たない。一方、今年度完了する第十一次道路整備計画の総予算は七十八兆円である。道路予算の一%にも満たないそれだけの金額がここでまたほかに流用されるとしたら、国民は承知しないと思います。そのほかに、介護保険によっていろんな介護事業は償還可能な事業となるわけでありますから、年金積立金等の財政投融資も当然介護保険基盤整備として、先行投資として前倒しでこれは用いられるべきである。この二つのことをぜひお考え願いたいと思う。  それから、西暦二〇〇〇年に、昭和元年生まれの方が七十五歳になります。二〇一〇年になりますと、昭和元年生まれの方は八十五歳になる。ちょうど介護を受ける年齢層になるんでありますが、終戦のとき二十歳であったこの人たちが今の四人部屋、六人部屋の介護施設で耐えられるわけがないと思う。  先般も大阪で、同室者のトラブルによって特別養護老人ホームの中でついに殺人事件が起こった。隣のベッドまで行ってぶすぶすと刺して殺したわけでありますけれども、そんな人殺しできるような元気な人が何で介護施設に入っているのか、こういう問題はあるのでありますけれども、とにかくこの問題は絶えないんです。そうすると、老朽化した古い特養を建てかえていくという大きな需要もございます。これは確実にやらなくちゃいけない。いろんな意味で財源の確保は必須でございます。  かつて、消費税が導入されたときのことを想起していただきたいと思います。このとき、消費税について、高齢社会の財政安定のためにということで二代にわたって総理大臣がテレビで国民に訴えられた。実は、これは増減税一体処理という財政対策であったんですけれども、国民は、もう消費税は高齢者福祉に使うんだなと了解して思っておった。ところが、実はそうではなかったとわかったときに、国民は大怒りに怒りまして、次の選挙で政権与党は大敗された。その結果、後追いでゴールドプランというものが消費税導入の趣旨にかんがみということで出てまいりました。  要するに、おとなしい国民が、政府が背信行為をやったときには非常に怒ると。先日、朝日新聞の紙上で副議長の渡部恒三さんが宮城県の選挙結果をごらんになって、国民が怒ると権力も吹っ飛ぶんだなということをおっしゃっていた。この言葉を十分銘記していただきたいというふうに存じます。以上です。
  10. 山本正和

    委員長山本正和君) ありがとうございました。  次に、佐野公述人にお願いいたします。佐野公述人
  11. 佐野英司

    公述人佐野英司君) 佐野でございます。  私は、これから表明させていただきます意見についての原稿と、もう一つ、少し大型の横に広がっております資料の二つをごらんいただきながらお聞きいただければ幸いでございます。  私は、川崎市にある特別養護老人ホーム緑陽苑の施設長を五年経験し、現在は白梅学園短期大学で高齢者福祉を中心に教鞭をとりながら、緑陽苑を運営する社会福祉法人ひまわりの会の理事長を務めております。  私は、これまで約三十年間地域福祉高齢者福祉に携わってきた経験から、今参議院で審議されている公的介護保険法案が、高齢者のみならず高齢者を抱えた家族においても、また豊かな老後生活を願う多くの国民にとっても、期待に反し、福祉福祉でなくなるものであり、性急なる制度づくりが将来禍根を残すものになることは疑いないと考える立場から、介護保険制度についての総論的な考え方をまず述べ、その上で三点に絞って本法案に対する意見を申し述べさせていただきたいと思います。  まず、最初は総論的な考え方です。  超高齢社会の到来が目前に迫っている今日、我が国の高齢者福祉は大きく立ちおくれ、長寿を喜び合える状況ではなく、介護負担あるいは介護はリスクであり、介護地獄などという言葉が平気で使われるなど異常な状態にまで達しています。まさに、特別養護老人ホームは申請しても入居できず、介護が家族内介護、私的介護となり、長生きをすることが家庭生活を破綻にまで導くといった状況が言われています。そして、特段治療を要しない高齢者がやむを得ず病院での入院生活を送る社会的入院などという珍語が通用し合う時代となっています。  そのようなときに、多くの国民の願いは、介護の社会的保障であり、公的な介護保障制度をつくることにより長生きを老若男女喜び合える、そういった高齢者福祉をつくっていくことではないでしょうか。公的な介護保障制度を国民的合意でつくり上げる、そのことが多くの国民の願いではないでしょうか。公的な介護保障制度の中身が介護保険であるのか、それとも公費負担によるものかはさまざまな国民的論議にゆだねることが国家百年の計に値するのではないかと考えます。  さて、第二点からは各論です。  人生の最終段階に至り、特別養護老人ホームに入居できた高齢者の多くは、ここが自分にとっての人生最後の住みかとの思いをします。しかし、現実の特養生活は、職員配置の最低基準の劣悪さから医師が常勤として配置されておらず、また看護婦も夜勤を可能にするだけの人数が配置されていません。こうした中で、多くの居住者がついの住みかの願いもかなわず病院で息を引き取るといった状況が一般的状況になっています。  そうした中で、工夫を凝らしながら終末介護、ターミナルケアに取り組んでいる特養も少なからずあります。私がかつて施設長をし、現在理事長として運営に当たっている緑陽苑もその一つです。  資料の方の二枚目をごらんいただきたいんですが、資料として配付させていただいた家族など身元引受人に対して行った「終末期ケアについてのアンケート」の結果と家族による自由記述、職員の終末介護に関するアンケートを参照していただきながら、緑陽苑、定員七十名で平均年齢は八十五歳に達します、女性は八十七歳を超えておりますが、そこの入退院状況を示した資料の一枚目の表をごらんいただきたいと思います。  緑陽苑では、この表によりますと、一九九六年四月一日から現在に至る一年八カ月の間に何と二十九名が四十二回の入院生活経験しています。私もこの資料をつくって本当に驚いてしまったのですが、実は定員七十名の全居住者の四一・四%に当たる二十九名がこの一年八カ月の間に入院をしているという、そういった実態でございます。  今回の公的介護保険法案が成立したならば、そのもとで入院し医療保険の対象となった特養からの入院者に介護保険給付は一体どうなるのでしょうか。  これまでの説明から考えるならば、介護保険のもとでこうした入退院は不可能となり、一度入院したならばそのベッドは経営上の見地から空きベッドにはできず、したがって入院者は再び自分が使っていたベッドに戻り生活を営むことができなくなることは言うまでもありません。ベッドや居室を介護報酬のないままにして退院を待つことは経営上許されないからです。  入院は、特養からの退所とイコールであり、速やかに退所してもらうためには家具や品々の持ち込みは極力控えさせられるでしょう。そのことは終末介護そのものを不可能にさせることであり、老人福祉法制定以来、一人一人の高齢者の人生と生活現状を踏まえて、当たり前の生活を実現するため努力してきた老人ホームの生活援助実践の基礎が根底から覆されることになります。このように、高齢者の入院も認められない特養は福祉施設であることを放棄せざるを得ないということにほかなりません。  第二に、介護保険法案特別養護老人ホーム生活する高齢者にも保険料介護給付の一割負担を求めています。しかし、特養居住者の大半がその負担にたえられない低所得の実態にあります。特養の場合、介護報酬の額がどのようになるのか具体的には明らかにされていませんが、二十万から三十五万、平均しますと二十九万円とも言われ、居住者の負担額は平均でも月四万七千円、これは一割負担か二万四千円それに食費か二万三千円、合計しますと四万七千円という数字でございますが、最高だと月五万三千円以上になります。  特別養護老人ホーム緑陽苑の居住者の収入と支出の関係からの試算を参考にすると、これは資料の方の三枚目にございます。この三枚目を参考にすると、居住者七十名のうち、介護保険導入された場合、現行よりも負担増になる方は全居住者の七三%に当たる五十一名、三枚目の資料の右側の方がそれで、負担増でございます。五十一名であり、収入から保険料医療費、さらに一割負担を差し引いた残金が月額一万円以下になる居住者が六七%の四十七名、さらに一割負担できない方が六三%、四十四名にも達することが明らかになっています。これは高齢者から生きる力を奪い取る余りにもむごい仕打ちと言えないでしょうか。  何行か飛ばさせていただきます。原稿の下から二行目に参りますが、最後にデイサービスなど在宅福祉介護度別、出来高払いの介護報酬に変わることで現在の職員数の確保が困難となり、少ない職員数で多くの利用者を確保することが求められる中では、デイサービスの援助内容が最低限度の形だけのものになることは避けられません。  これは資料の四枚目にございますが、実は介護保険の中において、これは業界で説明されておりますけれども、デイサービスについての介護報酬の額が言われているんですけれども、これでは、現在、例えば緑陽苑のデイサービスの場合は実際約半分の金額になる。ですから、職員は半分に減らさなければならないという形になってしまいます。  さて、時間がありませんので結論を申し上げたいと思います。  以上述べた点から、私は、今回審議されている公的介護保険法案は、国民が待ち望んでいる公的な介護保障制度とはかけ離れたものであると考えます。  いずれにしましても、武蔵野市のこのパンフレットにもありますように、「一度創った保険制度は簡単に数年で変えられるのでしょうか?」と書いてあります。今、新聞やあるいは地方公聴会でもかなりの疑問が出されております。どうか各先生方、英断をもって本法案を廃案にし、そして再審議いただきたくぜひともよろしくお願いしたいと思います。  以上でございます。
  12. 山本正和

    委員長山本正和君) ありがとうございました。  次に、鈴木公述人にお願いいたします。鈴木公述人
  13. 鈴木恂子

    公述人鈴木恂子君) 私は、現在特別養護老人ホーム施設長をしております鈴木と申します。きょう発言の機会を与えていただいてありがとうございます。  私たちは、特別養護老人ホーム施設長で二十年や三十年の経験を長く持った施設長の集まりとして、現場から公的介護保障を考える会という会を持ちまして、この公的介護保険法案についていろいろな検討現場サイドから、本当にお年寄りにとってこの法案がいい法案なのか、あるいは御家族、利用者にとってどうなんだろうということを考えてまいりました。もとより、介護につきまして公的に社会的に支えるということは、本当に一日も早く進めなければいけないことだというふうに認識しております。しかし、この介護保険法案につきましては根本的な点から見て非常に疑問があります。  きょう発言の機会を与えられておりますので、根本的な面から、また基本的な点から、そして具体的な点ということで、それぞれ一点ずつについて意見を述べさせていただきたいと思います。  初めに資料の説明をさせていただきますと、公述要旨ということで二枚書かせていただきました。  次に、三枚目に、介護保険法案で言われております考え方と、私たちが今まで老人福祉法の中で積み重ねてきた考え方との違いを対比した表を用意いたしました。  次に、現在、特別養護老人ホームは、措置費と、東京の場合ですと都加算、あるいは自治体加算ということで運営しておりますけれども、それが介護保険法案になったときの収入の違い、考え方の違いについて図表にしたものを一枚用意いたしました。  その次には、肩に資料二の一と書いたものですけれども、東京特別養護老人ホームに入所しておられます二万数千人の中からの一万六千人余りの要介護状況を調査したものをまとめたものです。  そして、次の資料二の二というのは、その理由を書かせていただいております。  そして、その次には、在宅サービス介護保険制度になったときにどのような手続を経てサービスを得ることができるかということを現行制度との比較においてまとめた表でございます。  次には、人口の構成比ということで、二〇二五年に向けてこの介護保険法案はつくられたというふうに言われておりますけれども、団塊の世代等が高齢になったときに逆三角形の形をとって、とても賦課方式としてたえられる保険法案ではないのではないかというふうに理解しております。  最後のページは、私が総括的に介護保険法案についての問題点というか、不安な部分をまとめた点です。  初めに戻ります。  まず、介護保険法案は、介護負担ということで、保険制度にすることでリスクという概念を持って導入されておりますけれども、私どもは施設でお年寄りと対応しているときに、介護負担だというふうに思ったことは一度もございません。まして、自立できないことがリスクというような考え方は全く持っておりませんでした。  介護負担なのは、公的な介護保障がしっかりしておらず家族にその負担が集中しているために負担という現象があるわけであって、介護そのものは本来介添え、見守り、いたわりということが基本になっているかと思います。自立できないことは、火災や地震や事故のように、決してあってはならないことではありません。年をとってくれば必ず体は弱っできますし、機能が鈍ってまいります。その老いを受け入れ、安心して生きていくことができる社会をつくることが望まれていると思っております。  次に、基本的な面から老人福祉法との対比において申し上げたいと思います。  現在の老人福祉法は措置制度に基づくもので、措置制度は非常に硬直していてよくない、だから介護保険だということが言われておりますけれども、公的責任において国民の生きる保障生活保障をすることと、措置制度にまずい点があるということは別の問題だというふうに思います。  老人福祉法に基づく特別養護老人ホームは、社会福祉事業法に言う第一種社会事業として憲法二十五条の公的責任のもとに置かれています。介護保険在宅サービス施設サービスに分かれておりますけれども、先ほどのグラフにいたしました資料一をごらんいただきたいんですけれども、在宅サービスで言うところの在宅機能というのは、住まいの機能であり、生きるための必要な生活基盤を前提としております。特別養護老人ホームは、この住まいと生きることを生活の基盤に持ち、そしてなおかつ介護保障介護の力というものを持ったものが特別養護老人ホームだというふうに私たちは理解して仕事をしてまいりました。  そのために、次の資料二の一ですけれども、実際に現在特養に入っておられる方一万六千人のうち、このような形で介護度が要支援から要介護度Vという全ランクに分類できるほどの幅広い構成をしているわけですけれども、介護保険になりますと要支援対象外ということになります。ここに言う六百五十名余りの方です。そして、要介護度Ⅰ、Ⅱに当たる方、この方々を全部入れますと、二五%、四分の一ほどに当たります。こうした方々は、介護も必要だけれども、住む家がない、あるいは生活をともにする家族がいない、いても障害を持っていたり、高齢者であったり、生活基盤を持たないという方々であって、こういう方々こそ早目に、介護度はそれほど重くなくとも特養ホームに入所せざるを得ないというのが現状であって、特養ホームはその機能を地域の中で社会の中で果たしてきたというふうに思っております。  ところが、介護に着目した制度に組み込まれてしまいますと、住居の保障はございません。実際、この制度の中では、入所の段階でまず退所を目指したケアプランを立てるようにということが求められております。これは、まさに生活保障はなくなるということです。  そして、現在、措置費の中に賄われております生活費、これはお年寄りが実際に生活をしていくための費用でございますけれども、これらの費用については介護保険法案のもとでは全額本人負担ということになっております。しかし、このことについてしっかりとした議論がされたというふうには思っておりません。介護保険法案が通ることによって、今まで老人福祉法で保障されてきた高齢者生活保障ということは非常にあいまいになってきてしまいます。  しかし、老人福祉法で対応してきた住居の保障生活保障ということを介護保険でカバーすることは、恐らく法の原則的な考え方や在宅サービスとの均衡からいっても無理があると思われます。居住権の保障生活権の保障はやはり老人福祉法によることが妥当ではないでしょうか。その場合に、措置制度の中で一番問題だと言われております扶養義務者の費用負担の条文については削除していただきたいと思います。老人ホームの入所者の本人の負担のみにとどめていただきたいということで、関連法案の御検討をいただきたいと思っております。  具体的な問題について最後に触れたいと思います。  要介護度による分類と一割負担ということについてですけれども、介護の必要量というのは、本人の状況、そして同居者、住居、福祉機器、環境等によって決まってまいります。しかしながら、この介護の状況を御本人の体だけで判定しようというのがこの制度になっております。そして、ランクを設定するために調査員、認定審査会、コンピューター等の中間経費が非常に膨大になってきて、何千人何万人という単位で動かなければとても認定の作業が進むというふうには考えられません。制度の仕組みを非常に膨張させております。  実際は、申請したときがサービスが必要なときです。もう届けを出したときが即SOSでサービスが手に届いてほしいというのが実態なんですけれども、認定までに三十日以内ということ、そしてそれからアセスメント、ケアプランとなり、調査ばかりが続いてなかなかサービスが届かないというのがこの法案の仕組みになっております。介護支援専門員は、専門職、経験、試験、研修を受けた人ということで非常に限定されてまいります。そして、その上で合議制で援助計画を立てるということならば、財源上の上限のみを設定し、申請したと同時に介護計画に入り、すぐサービスが提供できるような、まさに現行はその姿でやっております。その現行に近い姿に変えていただきたいと思います。  また、手続の問題が解決されても、一割の負担があるために、高目に認定されてもお年寄りにとりましては自分の手持ち金を見ながらサービスをコントロールするということになってしまいます。現在、在宅生活しておられる方も決して高額所得者ではございません。多くの方は千円で三日の食事代に充てている、つましく買物をしてやりくりをしているという現状を知っていただきたいと思います。  介護保険には数々の問題点があります。保険料負担する国民の期待にこたえられるものではなく、各自治体の自由な創造的な施策も展開しにくいものだと思います。法案の成立を急がないで、まず国民に内容を正しく知らせることが必要だと思います。  以上でございます。
  14. 山本正和

    委員長山本正和君) 各公述人は時間の範囲内でよろしくお願いいたします、他の公述人方々との関係もございますので。  次に、高橋公述人にお願いいたします。高橋公述人
  15. 高橋紘士

    公述人高橋紘士君) 時間が限られておりますので、手短に私の話をさせていただきます。  日本の高齢化の段階につきましては、皆様御案内のとおりでございますが、改めてその重大性をきょう指摘しておき、その流れの中で公的介護保険の意義についてお話を申し上げたいというふうに思います。  ただいま佐野鈴木公述人福祉現場から非常に迫真力のある御提言をいただきましたが、現在の福祉サービス介護を必要としている高齢者のごく一部にしか対応していないところこそ問題であるというふうに私は日ごろ思っております。  残念ながら、膨大な介護ニーズに対して公的責任の名のもとに大都市では三年待ち何年待ちの入所が通常でございます。これは公的責任という名の公的無責任がまかり通っているということを意味するわけでございますし、そのような入所に対応できなかった人々がいわば社会的入院と、先ほど珍語と言われましたが、他に選択がないからこそ社会的入院が発生したという現実があるわけでございます。  従来のシステムというのは、財源とかサービスの限定に制約された資源のみを考慮しニーズを切り捨ててしまう、やや横文字を使って恐縮でございますが、リソースを見た供給サイドのシステムであったというふうに言えるかと思います。私は、国民の介護への切実な社会的要請に敏感に反応することのできるニーズセンシティブな仕組みというものをどうやって構築するかということが重要であろうかというふうに思います。  最近、私の調査の過程でこんな事例に出会いました。ぼけを進行させている祖母をお孫さんが見ているケースでございますが、御両親は外国に在住しておりまして工場の立ち上げのために数年はとても日本に帰れない、そのためにぼけの進んだ祖母を大学に通いながら孫が世話をしているという事例でございます。  痴呆型のデイサービスを運よく利用することができますと、そこでは送り迎えが義務づけられているために、四年を終えて就職したときにその就職をやめまして、いわばフリーターになって祖母の介護を見る。もはや事態は嫁、しゅうとめの問題ではなく三世代の孫にまで及び始めているという現実。そして、そこの大都市では特別養護老人ホーム入所、特に痴呆性は非常に受けてもらえませんので数年待たなければということでございます。  逆に、あるイギリス人の述懐を聞きました。彼はオックスフォードを出まして日本にある外国籍の製薬会社に勤めております。彼は八十歳の両親をロンドンに残して赴任をしておりますが、彼に言わせると、私が赴任できるのは母国にそういうソーシャルサービス、彼らはパーソナルソーシャルサービスというふうに呼んでおりますが、あらゆる市民が利用できる福祉サービスが充実しているからこそ我々はこうして外国で活動できるのだということを言っているわけでございます。そういうことを含めて、このような事例が象徴しておりますのは、従来の福祉対象者からはるかにさまざまなサービスニードが拡大をしてきているというその一点をどういうふうに評価するかという点でございます。  きょうお持ちいたしました厚生省資料等を含めて、これはもう先刻御案内の資料でございますが、厚生白書に出ておりました先進諸国における高齢化の進展を比較した表を参考表としてつけてございますが、私はこの数値を見るたびにテリブルという感じをいつも持つのでございます。  要するに、日本では端的に申しますと新しい高齢化の段階に二十一世紀に達しようとしております。従来、ヨーロッパの高齢化先進国は一五%から二〇%ラインの高齢化の段階でございます。二十一世紀には我が国は二〇%から三〇%ラインの高齢化の段階に達するということをまず指摘しておかなければなりません。そして二〇〇七年以降、日本の総人口は縮小に向かいます。そして高齢人口の高齢化が急激に進みます。そしてそれは、どこの国も経験したことのないという意味で未踏の高齢社会段階日本の社会が達するということでございますし、なおかつここに数字をお示ししておきましたのは、日本の社会保障給付費の対国民所得比率の数字、各国の比較をここに並べておきました。  要するに、厚生省の試算でございますと、社会保障給付費は二〇二五年にわずか三三・五%でいわば二五%―三〇%ラインの高齢化にこれから対応しょうとしているという、非常に貧しい社会保障費でこれから高齢化に我が国は対応しようとしているということを指摘しておかなければなりません。そして、言うまでもなくその中で社会保障給付費の中に占めます福祉等の割合はわずか一割を切っておるわけでございます。福祉等というのは、ここで問題になっております介護サービスの資金投入額が言ってみれば国際標準からははるかに少ない形でしか投入されてこなかった。これが現在までの福祉システムの構造の帰結であるというふうに私は思っております。  要するに、公費投入を前提とするために常に財源の拡大が後手後手に回ってきた累積が貧しい福祉と強大な経済力の対比にあらわれているというふうに思いますし、国民は老後貯蓄をしております。実はその老後貯蓄が福祉サービスに回らない構造を公費優先型の仕組みが加速してきた現実があるということを、これは余り指摘をされておりませんが、ここで申し上げておきたいというふうに思っております。  我が国の高齢化レベルに比べて社会保障給付費は極めて低いというふうに申しました。これは、新しい事態にとても対応できないということを意味するわけです。とすれば、資源投入のための新しい構造改革が福祉の領域に求められているということでございますし、その中で現実的な選択肢が保険のシステムを導入するということであるというふうに私は考えております。もっとも、保険のシステムといいましても、今提案されているシステムは公費半分保険料半分という、そういう意味では公費か保険かというそういう二項対立は誤りでございます。公費制度の仕組みと保険の仕組みを相乗的に組み合わせた仕組みにしていくための、逆に言うと、これからの制度運営が求められているということをここで指摘しておかなければいけないかというふうに思います。  それでは、公的介護保険の意義を一般論から各論に移して若干申し上げておきたいというふうに思います。時間がございません。  一つは、要介護認定ケアプラン作成、サービス給付という一連のシステムというのは、これは従来の個別的サービスを個々に措置するという福祉の措置の仕組みから総合的な仕組みへ転換させようとするものだというふうに私は考えております。  その中に新しい専門職としてのケアマネジャーという仕組みを導入いたしますが、これは従来の行政裁量に基づくいわば恣意的、逆に言うと、先ほどの鈴木公述人の御意見は、ある意味では恣意的な措置が行われてきたということを裏書きするようなデータも含まれているわけでございまして、これはそれなりの理由が現実にあることは鈴木公述人のおっしゃったとおりでございますが、とすれば、それを専門職によるニーズ判定のシステムを導入することにより、より公正な、フェアな仕組みに変えていく一つの道筋を開くものだというふうに思っております。  言うまでもなく、保険の仕組みは高齢者生活福祉を守る上では部分的な仕組みでございます。介護ニーズが一般化いたしましたから、介護ニーズに対応する一般的な仕組みとしての介護サービスシステムを構築し、専門職認定の仕組みを導入しながら新しいケアプランの仕組み、総合的なケアの道を開くという、そういう道筋で制度が設計されております。これは各公述人から既にさまざまの批判があるとおり、不完全な制度であることは残念ながら認めざるを得ません。  しかしながら、私は、それにかわる代替案があるかということでいえば、例えば介護技術につきましてはきちんとした介護技術の開発、それから介護手法の開発が具体的に制度にフィードバックしていくような仕組みを残念ながら我が国の仕組みは欠いておるという現実がございます。  人材一つをとりましても、四万人の介護ケアマネジャーをどこから調達するかということでいえば、大変大きな課題を抱えていることも事実でございます。医療・看護研究に比べて福祉の実践的な研究は、現実の豊かな経験制度に反映するための技術開発、科学的な理論研究等大幅におくれております。これは、単なる人材の不足ではなくて、介護基盤の基盤が不足をしているということを物語っているわけでございますし、あるいは地域福祉サービス、いわゆるケアマネジメントと言われていますが、福祉サービスシステムのマネジメントの能力もある意味では大変劣っております。これは、市町村福祉、保健の政策当事者の能力の問題、これは現在の人事システムのもとでは一般職でございますのでなかなか経験が蓄積されていないという、そういう現実がございます。  そういう意味では、私はあえて申し上げれば、介護基盤の基盤をどう整備するかということもぜひ視野に置きながら、この介護保険の円滑な運営と、これは五年後に見直されるということにな?ておりますが、その見直しの期間の中にさまざまな議論が起こることを期待いたしまして、やや権利保障あるいは幾つかの点で、予防サービスの重要性等について言及することはできませんでしたが、私の公述は終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  16. 山本正和

    委員長山本正和君) ありがとうございました。  次に、安岡公述人にお願いいたします。安岡公述人
  17. 安岡厚子

    公述人安岡厚子君) 今回、こういった機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。  私は、日経新聞の夕刊の記事と、東京都の社会福祉協議会が出しております「福祉展望」、昨年の春号なんですけれども、そこに書きました「いま求められること――発想の転換」という資料をお手元の方にお届けさせていただいておりますので、ぜひお読みいただければというふうに思います。  公述の最後なんですけれども、いろいろな指摘があったかと思いますが、私の方は、非営利民間住民が立ち上げた団体で四年目に入っております。そちらの方で活動する中で、利用者の権利擁護の問題と、それから担い手でありますホームヘルパー実態について意見を述べさせていただきたいというふうに考えます。  私は、実は出版社におりまして、それから特別養護老人ホームに約七年勤めまして、やめまして、現在、サポートハウス年輪というものを地域の仲間でつくりまして四年目に入って活動を続けております。それで、先ほど来老人ホームの施設長さんの方からいろいろ公述がございましたけれども、私がこういった民間の非営利団体をつくろうと思った大きなきっかけのお話を一つさせていただきます。  私とかかわりを持っておりましたある九十五歳のお年寄りの方が、事情がございまして老人ホームに入られることになりました。その前の晩に私の家に電話がありまして、私は訪ねていきました。夜の十時でした。九十五歳の女性は着物を着まして、羽織、それから白い足袋をはかれまして、実は私はこの家は最後なんで、あしたの朝まで一睡もしないでいるんですよというふうにおっしゃったときに、座敷に上げていただきましたら、床の間に荷物がボストンバッグに三つ置いてありました。老人ホームに入るのに、老人ホームから指導員という方が見えて、荷物をボストンバッグ三つにしてくださいというふうに言われましたと。そのことを彼女は、まるで裸でホームに入ってこいというようなものだということで、私の手をとって泣かれました。私はその当時ホームの職員でしたけれども、何人もの入所されているお年寄りを見てきました。ですけれども、そういった思いをして入っていらっしゃるお年寄りの心まで至らなかったということを、非常に私はそのとき衝撃を受けたんです。  私たち日本人は、長年働いていらっしゃった、生きていらっしゃった高齢者に対して非常にひどいことをしているんじゃないかというふうに実は思って、地域で安心していつまでも暮らせるシステムを何とかつくり上げられないかという思いを強めまして私がつくったのがサポートハウス年輪です。先ほど高橋公述人からお話がありましたように、私は、ニーズありき、まずお年寄り、高齢者の家族のニーズに沿うシステムをつくろうと思いましたので、二十四時間三百六十五日、時間制限のないサービスを現在もやっております。  この中で、介護保険法案が今審議されているわけなんですけれども、心配なのは、これから利用者の権利を守るということに焦点を絞って発言させていただきますけれども、やはりサービス提供業者の情報をいつでも入手可能にすることと、それからサービス提供業者の事業報告を市町村に報告させる義務、これを法的に義務づけるということはぜひお願いしたいというふうに思います。  それと、サービスを選ぶということが利用者の方にはなかなかできないんですね。何を基準に選んでいいかわからない。ですから、そのサービスをどういうふうに選んだらいいかというような啓蒙活動を、ぜひ市町村がやるようなことも入れていただきたい。  それと、苦情処理機関を都道府県に一カ所、国保連合会ということが載っているようですけれども、やはり市町村の窓口に設置し、あるいはオンブズパーソンのような機能を持たせることが私は必要ではないかというふうに思います。  それと、最も気になりますのはサービスをどう評価していくか、それをどういうふうに住民情報開示していくかということが非常に大事なことだというふうに思っております。  それと、契約書をやはりつくっていく。利用者に提供業者とが契約をしていくということは必要だと思います。  これを考えますと、利用者の権利を守るためには、その利用者サービスを提供します担い手の問題が非常に大きな問題だというふうに思います。私も自治体の登録ヘルパーを三年ほど経験してまいりましたけれども、私は出版関係から特養ホーム、それから在宅ヘルパーの仕事をしました。  この中で特に声を大にして訴えたいのは、だんだん給料が下がっていきまして、ヘルパーでは食っていけないということです。利用者に質のいいサービスを提供し、あるいは安定して継続的に提供していくには、担い手であるヘルパーの身分保障というのが必要だというふうに思います。現在ヘルパーの身分保障がされておりません。ですから、ヘルパー業界によい人材が参入してこれないシステムになっております。これは、今、新ゴールドプランで十七万人のヘルパー確保ということが目標に挙げられておりますけれども、現在確保されております十万人程度のヘルパーの中身を、一度ぜひ議員の先生方の方で検証していただきたいというふうに思います。ほとんどがパートヘルパーではないでしょうか。このパートヘルパーで、身分の保障されないヘルパーを基盤にしてこの介護保険を遂行していくときには、非常に大きな問題が出てくるのではないかというふうに思います。  私が日経新聞に書いております「ヘルパーとの付き合い方」というのをぜひ読んでいただきたいと思うんですけれども、ヘルパーを家族がわりだと思っていらっしゃる方が、日本の国民の中に非常に多いんですね。ヘルパーと家族の違いということ、専門性を培えるような財源をぜひ国会の中で審議していただいて、ヘルパーの人材養成あるいは身分の保障に財源を確保することに尽力をしていただければ、この介護保険法案が通りました暁にも利用者の権利が守られるようなサービスが提供できるのではないかなというふうに思っております。  それと、最後になりますけれども、利用者の権利を守るための幾つかの条件を私も指摘いたしましたけれども、自治体職員の福祉に関する専門性がほとんどない状態で、要介護認定あるいはケアプランあるいはこういったサービスの評価というものが本当にできるのでしょうか。自治体職員の専門性をどうつけていくか、これが非常に大きな、介護保険制度ができ上がりましたときに住民サイドに立ったいいサービスができ、あるいは住民の方からもその制度に対して参画ができる制度になるかどうかというのは、自治体職員の専門性をいかにつけていくかということが大きなポイントだというふうに思います。  ぜひとも、ソフトの充実のために財源の確保をいただきたいというのが私が今回申し上げたかったことです。  ありがとうございました。
  18. 山本正和

    委員長山本正和君) ありがとうございました。  以上で公述人方々の御意見の陳述は終わりました。  速記をとめてください。    〔速記中止〕
  19. 山本正和

    委員長山本正和君) 速記を起こして。  それでは、これより公述人に対する質疑を行います。  なお、委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。  また、御発言は私の指名を待ってからお願いをいたします。  それでは、質疑のある方は順次御発言願います。
  20. 中原爽

    ○中原爽君 自民党の中原でございます。限られた時間でございますので、皆様全員の方に御質疑を申し上げる時間がないと思います。その点につきましてはお許しをいただきたいと思います。  最初に、雨宮公述人にお尋ねをしたいと思います。  ナーシングホームのお立場から、痴呆性の内容について脳血管型、アルツハイマーという大ざっぱに分類をされておりますけれども、したがって疾患の種別についてそのケアの仕方が違うということをおっしゃっておられました。そういう意味では、こういう方々はいわゆるかかりつけの医師という方がおられると思いますので、この関係と、現在のホームのお立場で引き続いて医療的な問題を抱えていくということについて、かかりつけ医との現状について少しお話をいただきたいと思います。  それから、ケアマネジャーについて不安があるということをおっしゃいましたので、簡単で結構でございますけれども、どういう不安かということについて御説明をいただければと思います。  それから、石田公述人にお尋ねをしたいと思いますが、修正提案をお出しになっておられます。その中で、(2)の②のところでございますが、いわゆる未納滞納者に対する罰則規定廃止する、あるいは緩和すると。それから、③といたしまして、介護給付は十割給付原則として利用者負担をなくすというふうにおっしゃっておられます。もちろん、③が実施されれば②は発生しないということでございますけれども、その十割給付原則として利用者負担をなくすという制度を、いわゆる社会保険方式、社会的な介護保険方式ではなくて、税金方式、税方式といったことで考えておられるのか、その点を伺いたいというふうに思います。  それから、佐野公述人にお尋ねをいたします。  介護保険制度とそれから公的負担、いわゆる税負担方式について、国民的議論にゆだねるというふうにおっしゃっておられるわけでありますけれども、それは具体的にはどういうような手段、方法で国民的な議論、論議ということにゆだねるのか、その内容について簡単で結構でございますが、お尋ねをしたいと思います。  それから、特養の老人ホームに入っておられる方々が入退院を繰り返すということをおっしゃっておられまして、そのデータもお示しいただいております。そうしますと、この福祉施設という施設の考え方でありますが、入居が長くなればそれなりに年齢加算が加わりますのに伴って疾病が出てまいります。そういう意味で入退院を繰り返すということが起こってくると思いますが、それでは特養の老人ホームから見た老人保健施設あるいは療養型病床群との関係はどういうふうに考えたらいいのか、この点をお尋ねしたいと思います。  それから、鈴木公述人にお尋ねをしたいと思います。  リスクということについて、自立できないということ、それから介護という意味が単に介護保険ができるということではなくて社会として支え合う社会が必要だという理論をおっしゃっておられまして、大変明快な理論であろうかというふうに思います。  それで、特養ホームについては、従来の老人福祉法から考えて住居の保障あるいは生活保障という場面が特養ホームにあるべきだと、そういう御意見でありまして、もっともな御意見であろうと思います。したがって、もう少し今後の特養ホームの考え方、そのあたりを、これから老人福祉法等の関連法を整理していくわけでありますけれども、もう少し住居の保障あるいは生活保障と特養、それから先ほどの加齢に従いまして特養の老人ホームに入っておられる方が年齢加算による疾病を伴ってくる、いろいろなことがあります。しかし、これは住居と生活、一人一人の老後の生活を国が保障するんだということでおっしゃっておられるんだというふうに理解をしておりますけれども、このあたりをもう少し追加の御説明をいただければと思います。  それから、高橋公述人には新聞のコピーをいただいておりまして、この一番下の段に「予防の制度化を」ということを書いておられますけれども、この点について、成年後見制度と、予防的福祉とおっしゃっておられますので、疾病保険に対する予防保険ではなくて、予防という意味が福祉的な予防というふうなことの御説明になっておられると思います。ここをおっしゃっておられませんでしたので、簡単で結構でございますが、御意見をいただきたいと思います。  それから最後でございますけれども、安岡公述人に、ホームヘルパー、おっしゃっておられるように十七万人を目標にしておりますし、この役割分担について、ホームヘルパーとのつき合い方ということ、単純に十万人であるとか十七万人であるとかそういう問題ではないわけでありまして、実際に介護サービス、家事のサービス、区分けもありますし、そういった問題で、非常にこの一級から三級までの区分けという……  それでは申しわけありません、時間がないようでございますので、ごく簡単に回答をいただきたいと思います。どうぞお願いいたします。
  21. 山本正和

    委員長山本正和君) ちょっと公述人皆様に申し上げます。  中原委員の質問の時間が四十三分までということになっておりますので、大変申しわけございませんが、お一人一分以内ぐらいでひとつよろしくお願いしたいと思います。
  22. 雨宮洋子

    公述人雨宮洋子君) 私の施設特別養護老人ホームですので、ナーシングホームといいましても医療関係ではございません、生活の場としております。かかりつけ医といいますのは特別にそれぞれに持っているわけではございませんけれども、精神科の医者が常駐しておりまして、その医師がいつも診ているという状態です。ですから、引き続きそれは診ていける状態にあります。  それから、脳血管性痴呆アルツハイマー関係なんですけれども、アルツハイマーにおいてはやはり施設でしか介護できない。脳血管性痴呆においては病院でも施設でも両方介護できる状態になると思います。  それから、ケアマネジャーの不安ということなんですけれども、これは施設経験が五年以上あればどういう方でもケアマネジャー資格の試験を受けられるということですので、例えば痴呆の判定がその人たちにできるだろうかという危惧を大変持っております。普通のドクターでもなかなかその判定が難しい。ちょっと時間がありませんけれども、痴呆と言われてきた方のうちに栄養失調で痴呆になっている状態、脱水症で痴呆になっている状態、そういう方が見分けられるかどうかということが大変大きな問題になります。ですから、ただおかしなことを言うから痴呆だとか、きちんと答えられないから痴呆だという、その辺の判定がケアマネジャー専門性を持ってできるかということを私は今危惧しております。
  23. 石田玲子

    公述人石田玲子君) 「介護給付は十割給付原則として利用者負担をなくすこと」というこの(2)の③についてのお尋ねですけれども、私は、これは修正提案として提出しておりますので、これは現方式を前提としたというふうに考えてやっております。  ただ、私としては、保険方式よりか税方式がいいかどうかということについての論議が必ずしも十分でなかったというふうに思っております。
  24. 佐野英司

    公述人佐野英司君) 国民的な議論をどのような手段で行うかという御質問でしたが、大変難しい質問だというふうに思うんですけれども、現実の問題としてはやはり国民的な議論がなされていないというふうに私自身は思っております。というのは、一時期、新聞紙上等で七割、八割の賛成論がアンケート結果として出ているということがございましたが、やはり公的な介護保障公的介護保険というのがごちゃまぜになりながら理解されていたというふうに私は思っております。  そういう意味で、今この保険の問題点が新聞紙上でもここ数日、朝日新聞、読売新聞、各新聞がそのことを訴えております。そういうことから考えましても、今マスメディアが中心になりながら、やはり国民に介護保険問題点介護保障という問題をきちんと区分けしながら、どのような公的な介護保障を求めていくのかということを明らかにしていく必要があると思うんです。実は厚生省が出している問答集を読みましても肝心なところは一切わからない。私どももわからないという感じがします。  それからもう一つは、資料最後のページに載せましたが、これはテレビ朝日のサンデープロジェクトが東京都内老人ホームに問い合わせをしたところ、公的介護保険について、早期実現すべきだというのはわずか二〇%にすぎず、廃案にすべきだ、あるいは抜本的見直しをという、こういった疑問点が数多く今出てきている。やはり今こそこの論議をしていく必要があるだろうというふうに思っています。  それから、時間がないのでもう一点なんですが、特養とそれから老健施設、療養型病床群との関係ですけれども、やはり特養が現在数が少ないということ、そしてまた同時に、今御存じのように新ゴールドプランにおいても部屋ではなくてベッドでもって数えている状況にあるということ。やはり私たちはこれから特養が人間が生活する場所としてふさわしい、私たち自身が、先生方、皆さんが入ってもいいかな、どうしようかなと考えられるような素地の特養にしていく、その中において老健施設は老健施設としての、中間施設としての役割、あるいは療養型病床群は今とは違った形になっていくだろうと。お互いのやはりそのあたりの、特養をきちんと人間が生活する場所として確立することによってそれぞれの関係が変わってくるだろうというふうに思っています。  以上です。
  25. 鈴木恂子

    公述人鈴木恂子君) 特養ホームは第一種の社会事業ということで、確かに限定された方をまず対象にしていると思います。それはやはり低所得者で住居がなくて、アパートを追われて行くところがない、あるいは家族がいないというような、ほかに生活の場を求めることができない方々が措置という形で現在入所をされているわけです。  介護保険は、私たちの仲間では中間層の方々のための制度だと。月収二十万ほどないと無理なくこの制度の中では生活が難しいだろうと思うわけです。ホームにおられる方は年収五十万以下の方が半分、百万円以下の方で考えますと七五%。ほとんどの方が、この介護保険下で生活費も負担して、なおかつ一割の利用料、食費を負担するということはできない方々になってしまう。救済というと言葉がおかしいですけれども、老人福祉法で保障されている低所得の、生活に困る方々生活を、中間層の制度の中であいまいに脅かすようなことがないようにしていただきたいという意味でございます。
  26. 高橋紘士

    公述人高橋紘士君) 一言でお答えします。  私は、最近ちょっと手がけております研究の中から御紹介をいたしましたが、ある奈良県の町で、十五年間予防活動高齢者のボランティア活動を徹底的にやっております町がございます。そこでは、数年前から国民健康保険が黒字転換をしたという大変貴重なケースがございます。これが予防的福祉、実は医療費対策は医療ではできないということかと思っています。  具体的な制度では、例えば社会福祉協議会が取り組んでおります生き生きサロンとかアクティビティーサロンのような、さまざまな社会関係性を維持しながら高齢者活動性を維持する、そういうサービスという形でこの手法が展開し始める。  それから、成年後見制度につきましては、これは従来は、要するに禁治産等でとことんいったときの制度というふうに理解されておりますが、実は成年後見制度を適切に福祉サービスとしてやるべきだというふうに私は思っております。そういうふうになった場合に、市民の権利保障、それから安心した生活保障するという意味で、予防的な役割をこの制度が果たしていく、またそういうねらいでこれを制度化すべきだというふうに私は考えておりますので、そのことを申しました。
  27. 水島裕

    水島裕君 平成会の水島でございます。  本日は各公述人の方、それぞれ御自分の専門、あるいは具体的なこれまでの御自分経験から大変貴重な御意見、また具体的な資料をお見せいただきまして大変ありがとうございました。必ず審査参考にさせていただきたいと思います。  そういうことをお聞きするにつけても、我々国会あるいは議員というものの責務、義務というのは大変重要で、この法案のように骨組みだけ国会で決めて、あと細かいところは政省令、厚生省の方でいいかどうかということを大変疑問に思うわけでございまして、そういう議員の責務みたいなことについてもちょっとお伺いしたいと思います。  何でこういうことを申し上げるかと申しますと、通常国会で実は廃棄物処理法案というのがありまして、御存じのように、ダイオキシンが非常に問題になった。その法案をよく見ますと、新しいところは〇・一ナノグラムでなくちゃいけないけれども、今までのところは八十ナノグラムでもいいということが書いてありまして、実に千倍違うわけですね。その後は徐々に厚生省の方で指導して〇・一ナノグラム、これは国際基準に合う方ですけれども、そっちに近づけようと。ですから、千倍違うものをいいと言っておいて、後どういうふうに、年に一回したらとか、住民に知らせたら、そういうことを一生懸命この国会で決めて、一番肝心なところがその後の政省令、厚生省で決めるというのでは、我々も本当に何を議論して法案を通しているかというのがわからないわけでございます。  今度の法案はそれほどひどくないわけでございますけれども、それでも一番問題になっております基盤整備が二〇〇〇年までにちゃんとできるかどうかとか、それから先ほどから話がありました規制緩和によっていろんな人がそこに参加できるかどうか、あるいは保険料率、あるいは自己負担、先ほどから結局負担増になってしまうんじゃないかという御意見もございました。そういうことが果たして法を施行するときにどうなっているかということを政省令の方にお任せしておくというんでは、我々もいかにもこれは義務が果たせないと思います。私の意見では、やはり重要事項が厚生省等で決まりましたら、それはこの委員会で承諾を得ることぐらい必要だと思いますけれども、そのためによく説明していただくというふうにしなくてはいけないんじゃないかと思います。我々はそのぐらいきちっとやらなくちゃいけない義務があるんじゃないかと思っておりますので、そういうことについて皆様方の御意見をお伺いしたいと思います。  もし、特になければ、我々議員の方に、これだけはひとつ考えてほしいということをおっしゃつていただいても結構でございますけれども、せっかくでございますから、皆様方に御意見をお伺いしたいと思いますので、手短にお願いしたいと思います。
  28. 安岡厚子

    公述人安岡厚子君) 介護社会化を進めるというこの法案ですよね。私は、介護社会化ということをもう一回皆さんぜひ考えていただきたいというふうに思うんです。  私は、「発想の転換」という文章を書いて皆様のお手元にお届けいたしているんですけれども、やはり今までの福祉サービスとか家族のあり方とか社会全体の慣習とか教育制度の問題、それからあと女性施策の問題もそうなんですけれども、介護社会化という問題はすべて絡んでいる大きな問題だというふうに思います。ですから、この日本介護の問題を通して大きく転換していく時期に今来ているんじゃないかということで、ぜひそういう視点を持って審議を進めていただきたいというのが私の希望です。
  29. 高橋紘士

    公述人高橋紘士君) 介護保険導入の中で、私は先ほど構造改革ということを申し上げましたが、これは一に厚生行政の内部的な調整ではないということ、これは明らかでございます。例えば人材ということであれば、人材育成は広くさまざまな行政が関係をしておりますし、あるいは居住福祉ということになれば住宅行政が関係しております。そういう意味では、介護の問題を軸にしながら、改めて問題の多面性といいましょうか、そういうものに立脚した総合的な見地からのさまざまな制度運用のモニタリングといいましょうか、そういうものをぜひお願いしたいというふうに考えております。  以上でございます。
  30. 鈴木恂子

    公述人鈴木恂子君) 今、先生のおっしゃられましたように、重要事項につきまして私たちには本当にまだ何もわからないという法案になっております。三百近い法令、省令、政令、大臣にということになっておりまして、ぜひ重要事項を初めとして、国民の生活にじかにかかわってくることだけに、委員会等での御審議を経るような形で内容が細部決められて、国民が納得できるものであってほしいと。そうでなければ、やはり国民の代表としての先生方に対しての非常に心細さを感じてしまうのではないかと思います。
  31. 佐野英司

    公述人佐野英司君) 新潟県に大和町という町がございます。そこで私はじかに聞いたお話なんですけれども、現在、ぼけたお年寄りを介護している方に、本当に疲れ切っている姿に接しながら、どんな要求があるのかと聞いてみましたら、一カ月に一度でいいから、あの人の声が聞こえないところで、あの人の姿が見えないところでぐっすり眠りたい、それが本当にささやかながら本音だという話を聞いたことがあります。  そのように、今の介護という問題が家族内、家庭内、そしてそれが女性による介護になっている。これを社会的な保障をしていくということはとても大切なことだと思いますが、私は先ほど一番最後に時間がなくなってしまって、はしょってしまったんですが、ぜひこの二十一世紀高齢社会を目前に控えて、私たち自身もやがて老いる、そのときに安心して老いることができる、人間として過ごすことができる、そういう公的な介護保障という問題をどのような形で形づくっていくのか、それを本当にすぐ欠陥で変えるのではなくて、十年、二十年、三十年先にも通用する、そういった根幹を持ったものをぜひ先生方に審議をし練り上げていただきたい、そして国民に声をかけていただきたい、お願いしたいと思います。
  32. 岡本祐三

    公述人岡本祐三君) きょうの公述人方々意見を対比しますと、佐野公述人とか鈴木公述人の場合は、今特養に入っている方、入れている方のことを問題にしている。私どもは、特養に入れない、あるいは社会サービスヘの申請すらできかねている人々のニーズをどう開放できるか。  それは、これまでの制度ニーズというものを供給側が一方的に決められることになっている制度である限り、この問題は解決できないという認識であります。これが社会福祉の構造改革ということです。これからはニーズが供給を引っ張れるような仕組みに変えていく、それがこの制度の本質にある。  つきましては、今回は、資源の整備状況に応じて保険料を上げ下げしてもいいという点において、原理的に保険料あってサービスなしということはなくなりました。逆にそれは、保険料をどれぐらいに設定するか、それによって地方自治体のこの問題に対する取り組みの温度差が確実に市民にわかる。そういう意味でいうと、国はガイドラインをつくって、あとの問題は地方自治体に基本的にゆだねるという形でよろしいと私は思っております。
  33. 石田玲子

    公述人石田玲子君) 私は以前にもこの委員会の審議を傍聴させていただきましたけれども、そのときの印象としては、委員の先生方が厚生省に極めて基本的な資料を要求されてもそれが正しく出てこないという発言をなされているのを最初は耳にいたしました。最近の資料委員が直接要求されましてもきちんと出てこない、こういう状態は非常に国会無視じゃないか。ただ厚生省は、先生方がおっしゃることはもっともというふうに聞かれますけれども、要するにこの場だけをしのいでしまえばこっちのものだと、はっきり言ってしまえばそういう態度が非常に傍聴者にもわかるんです。私は非常に腹が立ちました、正直言って。ですから、ぜひ頑張ってやっていただきたいと思います。
  34. 池田徹

    公述人池田徹君) 私は、先ほどの発言の中でも触れましたけれども、基盤整備というところで、私がかかわっております生活協同組合の扱いについて、今後より検討していただきたいということについてお話をしたいと思います。  皆さんの中にも家庭で生協を利用している方はいらっしゃると思うんですけれども、今、農協が約四万人程度のヘルパーの研修をして養成しておりますけれども、残念ながらまだ農協がそのヘルパーを十分に利用した介護事業参入するというところまでのいわばコーディネート能力が不足しているといいますか、そこにまだ積極的になっていないというふうな現実があります。  生協の会員の方というのは大方主婦の方ですけれども、この方たちはこの三十年ぐらいの間いろんな環境問題や福祉の問題のボランティアとして活発に活動してきた方たちで、みずからコーディネートをして活動事業を組み立てていくという能力を持っているという意味で、私は地域介護資源として最高のものだというふうに思っています。ただ、残念ながら生協本体がまだそのことに気がついていなくて、十分にその資源が利用されていないという面がありますし、同時に、先ほど申しました員外利用禁止規定ということによって福祉事業への参入が難しくなっているというふうな面がありますので、その点について今後ぜひ御検討いただきたいというふうに考えております。
  35. 雨宮洋子

    公述人雨宮洋子君) 基盤整備という点では、私は、実際に特別養護老人ホームを運営しておる立場から、今までの特別養護老人ホームとは違った形になっていく、そして今まで措置費という制度でやっていた段階から介護保険という形に変わりますので、今まで入っていた方が今度入れなくなるというような可能性も出てきますし、それから基盤が足りないという点では、あらゆる業界の方たちがこれから参入してくる可能性があるというふうに考えます。ですから、もっと専門性のある方にきちんとした基盤がつくれる体制をつくっていただきたいと、だれでもかれでも福祉に入れるんだということでは困るということを大変強く言いたいと思います。
  36. 水島裕

    水島裕君 先ほど申し上げました廃棄物の処理法案でも、よく説明すると厚生大臣もよくわかるんですね。それで、これは何とかしましょうということで一応前向きなんですけれども、それでも結果としては、住民の人が困らない、害にならない廃棄物処理法案厚生省つくってくださいねと、我々の方とするとそれで終わっているわけでございますので、この介護法あるいは医療法はそういうことにならないように、何人かの方から肯定的な意見も伺いましたので、ぜひ我々で頑張っていかなくちゃいけないと思います。  時間があればいろいろお尋ねするんですけれども、きょうお聞きしまして大変感銘を受けましたのは、一々お名前を申し上げませんけれども、痴呆診断、認定がうまくいっていないんじゃないかと、ですから介護矛盾が起きてきてしまうということはもっともだと思います。  それから、やはり循環器疾患などがありますと、自治体職員の専門性を上げろと、これも大変もっともでございまして、そういう人が行ってもうまく判定はとてもできないと思います。  それから、認定にスピードアップをという複数の御意見がございましたけれども、これもできる人がやれば必ずスピードアップできるわけでございますし、コンピューターの判定に矛盾があると、これも我々も随分難病その他の認定もして、これはきちっとした人がきちっとやるのとコンピューターで数字ではっとするのとではすごい違いが出てきてしまいますので、そういうこともおっしゃるとおりだと思います。  あとは、特養でのターミナルケア、それからいろいろのデータからお示しした負担増の問題といろいろございまして、大変参考になりました。時間があったら個々についていろいろお尋ねするところでございますけれども、時間がございませんので、これで終わりにしたいと思います。
  37. 今井澄

    ○今井澄君 民主党・新緑風会の今井澄でございます。きょうは、大変いろいろ参考になる御意見をありがとうございました。  私の感想としては、きょうの公述人八人でフリーディスカッションをやっていただくのを聞かせていただくと大変おもしろいんじゃないかなと思ったぐらいです。特に今、水島委員も言われましたけれども、雨宮さんの方からは資料四ページの九で具体的にこれだけかかるんだということを出していただいて、これから介護報酬の設定や何かやっていく上で非常に大事だと思います。  認定や要介護度の問題、ポイントはぼけの問題だということはもう明らかになってきているんですね。ぼけ以外のことについては、コンピューターで点数を出せば任せられるということも相当わかってきているので、もう問題は絞られてきている。ぼけの問題をどうするか、介護報酬をどう設定するか、これを入所と在宅にどう振り分けられるかということのような気がいたします。ちょっと時間がないものですから、三人の方にお尋ねしたいと思います。  池田公述人は、参入へのためらいがあるということを言われたんですね。そして、その参入へのためらいは介護保険給付対象外のサービス、横出し、上乗せをやるには、むしろ認定事業者というか指定事業者にならない方がいろいろ自由にできるんじゃないかと言われたんですが、それはどうしてなんでしょうか。介護給付のことを事業者として指定を受けてやりながら、なおかつ現在介護給付対象になっていないものをやるということは不可能だということなんでしょうか。その点をちょっとお伺いします。
  38. 池田徹

    公述人池田徹君) 私と一緒に活動している住民参加型の介護団体の代表をしていらっしゃる方が、多分近々に各市町村がやるニーズ調査で自分のところにもいわばサービス団体としての供給量についての打診が来るだろうと、自分としては拒否をするつもりでいるというお話だったんですね。かなり高度な介護をやっている団体ですから十分やれるはずだけれども、拒否をすると。  彼らが言っているのは、今の住民参加型の団体がこぞってそちらの方の、いわばこれからかなりニーズに対する供給量を介護保険事業計画で合わせていくわけですけれども、そこに全部賄われてしまいますと、それ以外の、これまでいわば高齢者じゃなくても障害を持っている人にケアをしてきたとか、あるいは産前産後のケアをしてきたとかという、地域の多様なニーズにこたえていたようなケアをする団体が全部なくなってしまうじゃないかと。そうすると、介護保険には何とか対応できても、それ以外の多様なニーズを担うような、いわば有償ボランティア的な団体がなくなってしまって、トータルとして地域ケア水準が落ちてしまうというふうなことをおっしゃっていました。  ただ本音としては、当然介護保険対象サービスもやって、それは一定の保険料が出るわけですから、そこである程度働くヘルパーの身分保障をしながら、なおかつそれ以外の活動もやっていこうと、両面をやっていきたいというふうな考え方があるんですけれども、その際には結局自分たちが持っている介護時間量の力量がありますね、例えば月間一千時間とかという、そのうちの五百時間程度は介護保険サービスの方に振り向けてもいいけれども、残り五百時間ぐらいはそれ以外のものにとっておきたい、そういうふうな気持ちが強いようです。
  39. 今井澄

    ○今井澄君 そこのところはやっぱり実践をしている中から、すべてをそういう介護にとられるのではないかという危機を感じられているのかもしれませんが、その辺はまたさらにこちらの方も研究、勉強させていただきたいと思っております。  今ヘルパーの身分保障の問題が出ましたが、安岡公述人にお聞きしたいんですが、私も大変そこを心配しているところなんです。もちろん、パートとか時間で働く方がいることは非常に柔軟なサービスができるというプラス面があるんですが、どうも安易に今のままの行政に任せておくとパートばかりになって人件費節約になっていく。これが民間になった場合は、営利、非営利を問わず民間事業者の皆さんに今度は介護保険で公開をしていこうということになりますと、介護報酬をある一定以上のレベルに設定していけば少なくともヘルパーさんの待遇保障はできるんじゃないか。逆にいえば、だからこそ介護報酬を高く設定しないとまずいと思うんです。  もう一つ、身分保障の点については、これは市町村が雇うということで考えているからパートか常勤かという身分保障の問題になるんですが、民間営利、非営利事業者が主として担うようになれば、身分保障ということはちょっと違った概念になってくるのかなと思うんですが、その辺はいかがなんでしょうか。
  40. 安岡厚子

    公述人安岡厚子君) 現在、やはりおっしゃるとおり、市町村でとなりますと条件が限られてくる、あとはパート、登録が主になってくるということになります。  何で登録が問題かといいますと、質が担保できないんですね。「年輪」も登録制でやっておりますけれども、ヘルパーの質を上げたいと思いまして研修するにしても、縛りがかけられないわけです。ですから、スタッフの意思に任されて研修がなされていくというふうになってきますので、どうしても質が担保できないし、安定できない、自分の御都合で登録なさっていますので。ですから、そういう意味では、今後きちんとしたプロの  ヘルパーとして働いてくださる層を介護保険になったときに何とかつくり上げていかないといけない。  話がちょっと前後しますが、現在、ヘルパーの仕事の内容市町村の場合ほとんど家事援助が主ですので、自治体に介護のできるヘルパーがどこも非常に少ないんです。介護ヘルパーをこの二年、三年の間にどうやって養成していくかというのは、もう本当に自治体にとって急務になっている、国全体としても大きな問題だと思うんですね。そのためには多様な若い人たちも入ってこれるようなシステムにしないと、手のあいた主婦の方だけで担っていけるものではありませんので、そういう意味では介護報酬をきちんと単価を上げていただいて、身分保障できるようなシステムにぜひしていただきたいというのが意見です。
  41. 今井澄

    ○今井澄君 形としてはサービスの受給者の側が選択できる、選ぶ権利があるということになっているんですが、実はそこの権利保障ができるかどうか非常に大きな問題で、先ほど安岡公述人から詳細に何点か出ましたが、高橋公述人もきょう時間があれば権利保障のお話もされたいということを言っておられました。安岡公述人が言われたことと重複しない範囲で、できれば権利保障のことについてのお考え、あるいはシステムをお述べいただければと思います。
  42. 高橋紘士

    公述人高橋紘士君) 権利保障にはいろいろな考え方がございますが、まずその前提としては、介護サービス及びその地域にかかわるサービスの状況を含めてさまざまな資源に関する状況まで含めた情報の提供と開示のシステムをきちんとするということ、これはあらゆることの前提かというふうに思います。  その上に立ちまして、さまざまな自治体あるいは社会福祉協議会で試行的にささやかに始められております、財産管理というふうに呼ばれておりますが、それは今後大きくなります社会的後見サービスというふうに見ておりますが、これはさまざまな弱い立場に置かれた高齢者、障害者も含めましたシステムを予防的な視点で導入する。これは早い時期にその人の立場に立って代弁できる人々を家族以外に社会的な仕組み、コミュニティーの仕組みの中へ形成する、これもそういう意味では構造をつくるということかと思います。オンブズマンとかさまざまなことが言われておりますが、やはり構造的にそういうシステムを導入する、それがあって初めてさまざまな多元的なサービス選択する能力をサポートするということになろうかと思っております。  簡単ではございますが、お答えにかえさせていただきます。
  43. 今井澄

    ○今井澄君 あとちょっと時間がありますので、岡本公述人にお伺いしたいと思います。  介護社会化ということで一つのシステムをつくる必要があるということの出発点は二つあると思うんです。一つは、日本福祉が貧困だと、介護福祉という分野に考える。もう一つは、そのために医療の方で福祉というか介護を抱え込んできた。そのことが費用だけではなくていろんな矛盾をもたらしたということから、医療から介護を一度分けようじゃないか、そのためのシステムだというふうに出てきていると思うんです。先ほどから何人かの公述人の御意見を伺ってみますと、その福祉というものももう一度分解しなければならない、生活保障という面と介護という問題ですね。介護は、これを福祉という言葉で一括するのはどうもまずいような気がするんです。  そこで、先ほど岡本公述人は、もともとお医者さんとして現場でやってこられて、そして現在学問的にあるいは福祉的に見ておられると思うんですが、医療介護といわゆる低所得者層を主として対象とするような福祉を今介護保険制度あるいは介護保障制度を軸にどういうふうに組み立て直していったらいいだろうかということをちょっとお尋ねしたいんです。  というのは、さっき特養の中で殺人があったと、そもそも人を殺せるような人が特養に入っているのはおかしいと、私もそう思うんです。それで、鈴木公述人の方からも出された資料の二の一、これはこの前、地方公聴会のときにも同じ資料が出されましたが、特養で要支援者が四・一%いるということ自身が私は異常な事態だ、これが日本福祉のゆがみでもあるし、あるいは家族と本人との関係のゆがみでもあるというふうに思っているんです。  私も精神障害者施設の嘱託医やこういう福祉施設の嘱託医をやってきましたけれども、福祉施設の場合は家族が入れたまま全然面会に来ないというのが多いんです。障害者の施設は非常に家族がよく面倒を見る。これも権利擁護にも関係するかもしれませんが、この辺のことを含めて、そもそもこの要支援者は養護老人ホームに入るべき人であって、特養に入るべき人じゃないんですね。それが入って成り立っているというところが今あるんです。  それはそれとして、医療介護といわゆるその他の福祉と、ちょっと御意見を伺いたいと思います。
  44. 岡本祐三

    公述人岡本祐三君) 極めて近未来的に日本でも招来する問題であると思います。  おっしゃった問題は、要するに貧困対策としてあった養老院の延長線上に今特別養護老人ホームができてしまったというところにあると。やっぱり参考になるのは北欧の例であって、デンマークなんかでもナーシングホームという施設はやめて、ホームを壊してケアセンターにして、個別の老人住宅をその周りにずっとつくって、元ナーシングホームのケアセンターからホームヘルプをそこへ派遣していくと。スウェーデンなんかでも施設の費用体系はいわば家賃と食費と介護費用は三本立て、全然別々に払っている、あそこは所得に応じてですけれども。  今、日本では介護施設と言っていますけれども、概念としては在宅一つの延長線上である。その位置づけにおいて在宅でいる方に必要なサービスを提供していくというふうに分けていけば、そこは介護というものが純粋に社会福サービスとして分離できる。そこに医療が必要であれば医療もひっつける。将来はそういう考え方になるんではないでしょうか。丸ごと収容してしまうという、函館のフィリップ・グローダさんは、日本の特養は一種の老人の難民収容所だと言い切っていますけれども、そういう形そのものはいずれ解体を迫られるだろうというふうに思います。
  45. 今井澄

    ○今井澄君 どうもありがとうございました。以上です。
  46. 清水澄子

    ○清水澄子君 きょうは公述人の皆さん、それぞれ大変貴重な御意見で、全く同感するところがほとんどでございました。  その中で、まず雨宮公述人、今度のこの介護保険在宅サービスのメニューの中には配食サービスとか移動サービスが入っておりませんけれども、こういうもののないメニューというのが実際にどうなのかということをお聞きしたい。  私はまとめて皆さんに申し上げるので、後で簡単にお答えください。  それから池田公述人介護認定から外れた人の受け皿は絶対必要だと思います。それはどのような手段でやったらいいとお考えでしょうか。  それから石田公述人、御指摘と御提案、本当にそれは参考にしますし、私もそう思っておりますが、この中の利用者の権利保障、これについて、今消費者契約適正化法という、今後この契約が介護サービスで非常にふえてきますから、そういう法制度をつくって消費者の権利を保護しようという動きがあるんですが、そういう中でこれは一緒にカバーできないのかどうか。この介護という狭いこの保険法の中だけでいいのかどうか、こういうふうに思います。その点についてどうお考えでしょうか。  それから岡本公述人、今の今井議員ともちょっと重なるかもしれませんが、私はこの介護というのは生活支援が絶対含まれるものと思っているんですが、今度の場合は全く介護という部分だけになりますね。その辺で、生活支援という本来の介護基本理念と今回の介護保険法との関係といいますか、それをどういうふうにお考えになるでしょうか。そして、浮き財源、これを私は介護基盤整備にさらに引き続き投資すべきだと思いますが、どういう方法をイメージしておられるでしょうか。  それから安岡公述人ですが、今もしNPO法案が成立すれば、このサポートハウス年輪、安岡さんの組織ですね、これは法人化していけると思いますが、NPO法案が成立すればそういう形にされるおつもりでしょうか。  それからもう一つは、サービス評価システムを確立することの必要性を訴えておられるんですが、これについて、保険事業者である市町村がこれをつくるのは実際非常に難しいと思うんですね、この評価というのが。客観的で中立て公正な立場で評価機関をつくるにはどのようにしたらいいとお考えでしょうか。これも雨宮さん、岡本さん、安岡さんに一緒にお聞きしたいと思います。  そして最後に、やはり安岡さんに、ヘルパーの使い捨てとか非常に安い登録制度ではだめだというお話があったんですが、ヘルパーの質の問題で、それが利用者にどういう影響をもたらすかということと、それからヘルパーの身分保障について、具体的にはどのような条件内容を備えておればいいか、このことについてお答えいただきたいと思います。
  47. 山本正和

    委員長山本正和君) 公述人に申し上げます。  清水委員の持ち時間があと六分しかございませんので、今五人の方に御質問でございますが、そのことをお含みの上、よろしく御答弁をいただきたいと思います。
  48. 雨宮洋子

    公述人雨宮洋子君) 私も時間がありましたらこの配食の問題を取り上げたいと思っておりましたので、御質問していただいてありがとうございます。  私は、現在、特別養護老人ホームのデイサービスの中で三百六十五日、一日二食の配食サービスを行っております。このために、食事を届けてくれるからということで特養に入らなくて済む。これがもしできませんでしたら、一週間に一回とかいう配食でありましたら、食べることができませんので特養に入らなければいけないという現実です。ですけれども、一日二食配達しておりますと、そのために特養に入らなくて済むということがありまして、現在ずっと続けておりますけれども、介護保険ではこれが見てもらえないということです、食べることはみんな同じだからという理由なんですけれども。  私は、届けるというところに介護保険をぜひ導入していただきたい。届けるためには人手が要ります。人件費がかかります。ですから、食材に関しては個人の費用負担でいいと思いますけれども、届けに行くその部分に人手を要するときは、配食の届けるという部分でぜひ介護保険に入れていただきたいということを強く希望いたしております。
  49. 池田徹

    公述人池田徹君) 介護保険対象サービスを行うためには、先ほども言いました国やあるいは市町村の浮き財源の一部が何らかの形で使われていくべきではないかというふうに思っております。  ただその際に、多分当面、行政が公的ヘルパーとして行っていた部分は介護保険対象サービスからはだんだん外れていくと思うんですが、その際に、市町村が上乗せ、横出しサービスをしていくというふうな方向になっていくのだろうと思います。しかし、これはコストがかかっているということに関しては全く同じことですから、そうした対象サービス上乗せ、横出しということに関しても将来的には民間団体が担っていくということがふさわしいと思います。  この際、営利団体対象サービス参加する場合にはかなり法外ないわば時間単価、利用料金を設定しなければペイしませんから、そうしますと、それを受給できる人間というのはかなりのお金持ちじゃないと利用できないというふうになりますので、当面やはり住民参加型団体でこうしたサービスを担っていこうとする団体が多く存在してくることがやっぱり一番重要ではないかというふうに思っています。  ですから、支援の方向は、そうした住民参加型団体、NPO団体介護団体への直接支援という方向を考えていただきたいというふうに思っております。
  50. 石田玲子

    公述人石田玲子君) 消費者契約を法的に広く保障する法律を目下検討されているというお話ですが、私は不勉強でちょっとその内容を知りませんので、果たしてそれが消費者が高齢者であり非常にいろいろな障害を抱えているというそのようなハンディキャップを負った人たちに直ちに有効に働くものかどうかという点についてはちょっと保留をしたいと思います。ですから、その点の考慮が十分されるのであれば、そうした一般法で保障されるということはいいことだと思っております。
  51. 岡本祐三

    公述人岡本祐三君) まず、この介護保険で使われています介護という言葉は非常に幅の広い概念である。例えば、介護の名のもとに、訪問看護も医師の往診もこれは医療福祉サービスが統合化された制度なんですね。広い意味での介護はお世話ではなくて、いろんな意味を含んでいる。例えば食事とか掃除、給食サービスに関してはこれは市町村の独自給付で可能にした。その次に掃除等でありますけれども、清潔保持というのはやっぱり介護なんですね。清潔保持を拡大解釈すれば、いわゆる生活動作の援助に行ったついでにその最低限の掃除をしたってそれは構わないと。そこらはやっぱり弾力的に考えればいい話であって、市町村の独自給付も含めて弾力的に考えるべきである。今回の介護は、自立支援のために必要なサービスを提供する、そのための医療福祉、非常に幅の広いものを含んだ概念であるということが第一点ですね。  浮き財源の話でありますけれども、何といっても先ほど来の利用者の権利擁護の最後の頼みの綱は、弱い立場利用者選択制を保持できるということです。選べる、嫌だったらそこを変える。そのためにも資源の量、供給量をふやすということが最優先の課題であろうと思います。  介護保険制度が発足すれば、ランニングコストはこれでほとんど十分賄えますが、その前に一種の先行投資的に資源を整備しなくちゃいかぬ、人的資源の養成も含めて。これに関しては、デイ、特養、在介センターを含めて。したがって、そのための前倒しの先行的な財源としてやはり補助金方式をとらざるを得ないだろうと思っております。
  52. 安岡厚子

    公述人安岡厚子君) 何点か質問をいただきました。  NPO法案についてははっきりまだ結論は出しておりませんけれども、法人化を目指したいというふうには思っております。  それから、サービス評価システムなんですけれども、一つ参考としては、スウェーデンが行っておりますケア査定委員というのがいいのかなというふうに私も向こうに行きまして思いました。そのケア査定委員というのは、在宅介護在宅訪問経験のある保健婦、PT、OT、それから社会福祉士で成り立っている委員なんですけれども、資格があっても在宅の訪問経験がない人では介護の査定ができませんので、在宅介護についてはこういったケア査定のやり方をしているようなので、これを参考にしながら日本に合った評価システムができればというふうに考えております。  それから、ヘルパーの質のことなんですけれども、利用者に対しての安定的、継続的サービスが登録ではできないということと、昨年、国民生活センターが調査した中に、ヘルパーに被害を受けた利用者が六割という報告があったんです。そういったようなことが常勤、身分保障のあるヘルパーでしたら、教育制度がきちんとできますので防げるのではないかというふうに思います。  それから、身分保障なんですけれども、この介護保険法案利用者の自立支援システムを目指すものですので、ヘルパーも自立できる生活保障をということを私は考えております。ですから、ヘルパー生活ができる、社会保険等が完備できる、そういったヘルパーを根幹に置いた制度であってほしい、そうでなければ介護保険法をつくっても、在宅の方は総崩れになるのではないかというふうに思います。
  53. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。  きょうは、本当に専門的な立場から皆さんの貴重な御意見をお伺いいたしまして、ありがとうございます。私の持ち時間は三十五分までということなんですが、皆さんにお伺いできるかどうか、ちょっと時間の制限がございますので、その点は御了解をいただきたいと思います。  まず、施設関係で、佐野公述人鈴木公述人にお伺いしたいわけですけれども、実際、今特養でお世話をされていらっしゃって、その方々介護保険導入によってどのような状態になるかということは、やはり私もいろいろ調査をさせていただきましたが、特養老人ホームの待機者というのは年々加速的にふえております。年間二万人近くふえているということが調査でわかっているわけですけれども、現在特養に入っていらっしゃる方々の処遇がどうなるかということは、待機をしている皆さんにとっても非常に重要な問題だというふうに思うわけです。  そういう点で、佐野公述人にお伺いしたいんですけれども、貴重な資料をいただいたと思っております。私の地元は京都なんですけれども、特養の施設を訪問させていただいたときに、介護保険導入されると一体どうなるのか本当によくわからない、五里霧中だというような言葉を使われる施設長もいらっしゃったんですけれども、とりわけ、すべてと言ってもいい施設長から出された疑問はこの入退院の問題なんです。現在、特養に入っていらっしゃる方が病院に行くといったときにどうなるのか、それが一番心配だとおっしゃったわけです。  ですから、具体的な事実をこうして見ますと、これはまさに本当に大変な事態が起こるんじゃないかと思いますので、その点について、佐野公述人それから鈴木公述人の順番で、もう少し詳しくお話をいただけたらと思います。
  54. 佐野英司

    公述人佐野英司君) 先ほど配らせていただきました資料、入退院の状況表でございますが、実は私も老人ホームの中で、やっぱりノートにはきちんとつけていても、こういう表にまとめるという作業を余りしてこなかったんです。今回、やはり介護保険の問題でこのことが非常に気になったものですからつくってみたんですが、本当にこれで私自身もつくりながらびっくりした次第です。  ごらんになっていただくとわかりますように、実は、ABCDという形で氏名を書いてありますが、Dさん、上から四番目の方については、七月三十日に入院して九月十三日に退院し、翌日また入院しているんです。これはどういうことかというと、やはり入退院のことが一番心配だというふうにお年寄り、それから家族の方が申されるのは、おおむね三カ月という入院期間、その間は特養のいわゆる籍を保証していこう、三カ月を過ぎた場合には措置切れ退所扱いというようなことを、三カ月というのもおおむねなんですけれども、それがやはり足かせというか非常に気がかりになって、それで家族の方も大変心配されている。  やはり、特養を利用される方がどういう方なのかと考えますと、御存じのように、精神的、身体的に著しい障害がある、その場合には脳血管障害の後遺症を持っておられる方が多いわけです。それは、脳梗塞でありあるいは脳内出血であり、脳梗塞の場合なんかは本当に何回も何回も脳梗塞を思って、多発性脳梗塞とか、いつ倒れるかわからないような身体的状況を抱えながら生活を営んでおられる。やはりその方が体が悪いときに安心して医療にかかり、そしてまた再び元気になって、そして老人ホームの中で自分なりの生活、本当についの住みかとしての住まいを在宅から特別養護老人ホームというところの部屋に変えたににすぎないというふうな状況を職員はできる限り実現するよう、非常に厳しい職員配置の中で頑張っている。  そういう中において、この表を見ますと、本当にそれを保障していくということの大切さ、改めて、やはり高齢者福祉福祉というのは高齢者一人一人が人間としての尊厳を守って生きていく、それを援助するのが福祉の仕事である。そういう点からすると、体の状態にかかわらず、安心して早くよくなってくれ、それを願い、また戻ってきて元気な生活を営んでいただく、それをつくるのが私たちの役割だというふうに思っております。
  55. 鈴木恂子

    公述人鈴木恂子君) 入所者の処遇が介護保険になってどうなるかという御質問です。先ほどもございましたけれども、要支援レベルの方が特養ホームにいること自体がおかしいということもありまして、退所プランということが強く指導されるようになるかと思います。  ただ、こうしたことにつきましては、高齢者のまさにバリアフリーの住宅施策等々、十分な在宅サービスがセットされていない限り、資料二の二に書きましたように、実際にほかに生活する場がないというぎりぎりの選択の中で特養ホームによりどころを求めておられるというのが実態であること、そして十分な住宅施策、在宅サービス生活保障ということがセットされていない限り、退所に向けてのプランというのは、私たちもやはりお年寄りの命を守るために、先の見えないところでの退所プランということは立てられないと思います。  そしてもう一つは、お金が非常にかかるということです。今回の制度によりまして生活費が全額負担ということになりましても、現在、老齢福祉年金の方が約半数ですので、とても生活費等全部負担するだけの能力がなくなりますと、多分生活保護法というような道しか残されていないのかなというところが非常に不安に思われる点です。  今度、契約という形で権利発生ということになってまいりますと、いい側面もあると思いますけれども、非常に施設の中での職員と利用者との信頼関係等が、安心したケアというよりも事故のないケアを目指さざるを得ないだろうと。安全にするためには、どうしてもけがのないようにとか、そうしたことにばかり配慮して生活の場としての機能が損なわれてしまう。家族に訴えられるのではないかというようなことも絶えずつきまとってくるようなことになるのかなということで、現在培っている職員とお年寄りとの信頼関係のもとにある生活の場というのはお金次第というようなこと、あるいは生活者としてのお年寄りではなく被介護者としての存在になってしまう、そのあたりはとても心配な部分です。
  56. 西山登紀子

    西山登紀子君 もう一点、佐野公述人にお伺いしたいんですが、デイサービスをやっていらっしゃるというところで介護保険導入されたときに問題が起こるということを具体的な資料で指摘されたわけですが、この点も非常に重要な点だと思いますので、もう少し詳しくつけ加えていただきたいと思います。
  57. 佐野英司

    公述人佐野英司君) 資料の三枚目にございますけれども、三枚目の左側の下の方に「デイサービス 九七年十月実績による試算」という表がございます。  これはまだデイサービスの想定単価がまさに想定でありましてはっきりしておりません。ただ、老人ホーム業界の中においてはこういう線があるらしいという形で一般的に言われているという事実がありますから、それをもとにしながら、デイサービスについては、重度、中度、軽度、痴呆と分けながら、一回当たり、いわゆる日額単価というのがこういうふうに決められております。これを緑陽苑のデイサービスの十月の利用者の数で割り振ってみたわけです。その一週間の利用人員一そしてそれに対して重度、中度、軽度、痴呆という形でもって割り振ってみますと、一週間分で四十五万五千円という金額になる。これを年間でもって合わせていきますと、収入が約二千二百七十五万円という金額になっていくわけです。  ところが、現実に今、川崎市から委託を受けているわけですけれども、その委託費は四千三百七十万円余りであるし、それの約半分の金額になってしまう。そしてまた、国の方で定めているB型デイサービスの運営費補助の基準額をも下回る。こうなってきますと、現実にデイサービスを運営していくときに、現状の形でやっていった場合には職員の数を半分にしなければならないか、あるいは今の職員数で倍のお年寄りをという形になっていきます。  ただ、ここにおいてデイサービスが非常に利益が上がる場であるということも一方で言われております。ただその場合、福祉のデイサービスの職員たちは、単にその一日を楽しく過ごしてもらう、預かって安全に保つだけではなくて、その人その人なりの生活、例えば痴呆が出ていれば集団的な行動をするということはなかなか難しいし、個別援助というところに力を割いたり、あるいは自宅でもっておふろに入ることが困難な場合にはふろの入浴介助までしている。さまざまなそういった個別的なケアというところに力点を置いて、そして楽しいから来週また来ようねという気持ちを醸し出せるような援助をしているということが、やはり今の福祉施設におけるデイサービス特徴だろうというふうに思うんです。  単に、在宅ケアを必要とする人を一日預かるだけではなくて、その人の持っている人間性を尊重していくケア、そこに力点を置くならばやはりこの人数で一定の数のお年寄りとのかかわりというのが保障されていかないと、お年寄り自身の楽しい場、生きがいを発揮する場になり得ないんではないか、そんな懸念を持っています。
  58. 西山登紀子

    西山登紀子君 どうもありがとうございました。  安岡さんにちょっとお伺いしたいんですけれども、二十四時間三百六十五日、「年輪」という形でやっていらっしゃる。この皆さんのグループの賃金あるいは身分保障というものはどのように工夫をされていらっしゃるんでしょうか。
  59. 安岡厚子

    公述人安岡厚子君) 資料の中にもあるんですけれども、東京都の社会福祉振興財団から助成をいただいてやっているんです。ですから、御利用者の方には一時間千五十円というお金をいただいて活動しているんです、介護サービスについて申しますと。ですから、その中の百円が「年輪」の運営費に入りますから、スタッフの方には九百五十円行くというふうになるんですね。  私は、これをつくったときから何とか福祉の仕事で食べていける人をつくっていきたいというのがありましたので、今現在、コーディネーターを常勤で給料制にして、社会保険はことしの六月からつけることになったんですけれども、そういうことで一人ずつ一人ずつ常勤のコーディネーターをふやしていくということで、少ない財源の中から努力はしているところです。
  60. 西山登紀子

    西山登紀子君 ありがとうございます。  では、最後石田さんにお伺いいたしますけれども、地域自治を考える会をつくって、国会を見詰めたり、介護保険の問題を熱心に考えていらっしゃるわけですけれども、今国会で成立を急ぐ動きも一方ではありますが、特に地域から見てこの際つけ加えてこのことだけは言っておきたいということがあったら言っていただきたいと思います。
  61. 石田玲子

    公述人石田玲子君) 地域で特に高齢者の方なんかの御様子を見ますと、介護保険というものができれば保険証一枚で介護が受けられるというふうに思っていらっしゃる方がほとんど大多数だと思います。それはそうじゃないですよ、やっぱり介護認定申請というのがあって,その壁を突破しなければ介護を受けられないんですよという話をすると、大概皆さんびっくりなさいますね。  ですから、その程度のことしかまだ皆さんに行き渡っていないということは、私は非常に不安があります。委員会では熱心に先生方議論をしていただいておりますけれども、決して正しく伝わっているとは思えないんですね。そういう意味で、私たちもできるだけ正しい保険の姿というか、ここで議論されておりますこと、それを皆さんにお話しをしようとしておりますけれども、なかなかそれは伝わっていないというのが実情だと思います。
  62. 西山登紀子

    西山登紀子君 どうもありがとうございました。
  63. 小山峰男

    小山峰男君 太陽党の小山峰男でございます。  きょうは、それぞれの先生方にはお忙しいところをおいでいただき、大変貴重な御意見をいただいたわけでございまして、厚く御礼を申し上げたいと思います。  時間の関係もございますので、私は最初に岡本先生と高橋先生にお願いをしたいと思っております。  私は、二十一世紀の社会というのは、やっぱり自助、互助、公助というような機能、この三つがバランスよく機能する社会が理想的だというふうに思っているわけでございます。  それで、私は長野県でございますが、伊那谷の喬木村というようなところでは、結いの制度というか、お互いに助け合う制度というのが大変完備してきておりまして、例えば寝たきり老人についてはこの近所の五軒がそれぞれ面倒を見るというような組織ができ上がってきて、大変地域活動としてすばらしいと。これを全県に広げたいというようなことで私も一生懸命やった時代もあったわけでございます。  今度の介護保険、そういう意味では非常に官製版の福祉ができ上がってしまうんではないかと。私は、基本的な部分は別として、かなりの部分が地域なり市町村で独自にアイデアを持ってできるような道を開いておかないと、むしろ権利意識ばかりが強くなってしまうとか、あるいはもう当然公でやるべきだというような意識が強くなって、そういう地域でお互いに助け合うというような芽がかえって摘まれてしまうんではないかなという大変危惧を持っているわけです。そういう意味で、両先生のお考えをお聞きしたいと思います。
  64. 岡本祐三

    公述人岡本祐三君) 私は全く逆の考えを持っているわけです。  まず、今回の介護保険の構想は市町村が独自に財源の金額を調製できるようになると、それは第一号保険料というものを設定することによって、あと一対二対三の割合で二号保険料、租税負担がやってくる。この財源は議会で自由に決められるわけですね。いわば、この公的介護保険の財源は地方自治体ごとの共同の共有資産として登場してくる。町の人々、村の人々は我が町にどれだけの財源があるかということは明確に知り得るわけです。今までのような一般的な財源の中からひねり出すものでは全くない。この財源をいかにうまく管理して使うか、あるいは財源を膨らませて市町村独自給付として、例えば給食サービスもやるか、給付の上限を上げるか、これはすべて自治体においてみんなで議論して議会で決めていかなければいけない。そういう意味で言うと、これはまさにそういう互助の精神の基盤になるものである。これは決して、むしろ官製の福祉制度では全くないというふうに私は考えております。
  65. 高橋紘士

    公述人高橋紘士君) 今の岡本公述人意見に私は基本的に賛成をいたします。その上で、やはり保険という考え方は、これは釈迦に説法でございますが、そういう意味でいえば、ローカルの相互扶助の限界を打ち破るシステムとして登場したというところが非常に重要でございます。そして、契約ということで当事者性を担保する、そしてその当事者性を担保する仕組みとして、これからどういうあり方を入れていったらいいかということについていろんな議論をしていただきたいのでございます。そして、なおかつ大変重要なのは、安岡公述人のやっておられるサポートハウス年輪のようなさまざまな非営利のセクターが参入できるということが大変重要なポイントかというふうに思うんです。  従来、社会福祉法人はややパターナリズムの傾き、供給者サイドのサービスを提供していたという限界があったというふうに私は思っております。それを当事者性の立場からサービスをつくる、これはまさに新しい意味での相互扶助の理念市民社会の中で新しく展開しようというものでございます。それは、先ほど岡本公述人がおっしゃったとおり、市町村のさまざまな創意工夫を可能にする制度的な仕組みがございますので、それと相まちながら新しい社会的介護の仕組みができていくというふうに考えております。
  66. 小山峰男

    小山峰男君 いろいろの見方があると思います。確かに、市町村が独自にできる部分もあるわけですが、もっと幅広い独自性が発揮できるような制度にする必要があるのではないかなというふうに思っておるところでございます。このことについて、安岡公述人意見がもしございましたらお願いしたいと思います。
  67. 安岡厚子

    公述人安岡厚子君) 私も高橋公述人と同じような考え方を持っているんです。これからは住んでいる地域住民が主体となって、この制度をどう発展させ、あるいは自分たちも活用していくかということをやはり考えていかなければいけないというふうに考えるんです。  ですから、地方分権と言われていますけれども、それを住民にどう分権していくかとか、市民参加をどういうふうにやっていくかとかということがこれから自治体の中で考えられていくべきことだと思います。大枠はもちろん国の方で決めていますけれども、あとは自治体の住民がどういうふうにやっていくかということをどういうふうにPR、啓蒙していくかということが私には非常に関心があるところです。
  68. 小山峰男

    小山峰男君 それでは、雨宮公述人によろしくお願いしたいと思いますが、先ほど痴呆症の認定のお話もいろいろあったわけでございまして、この問題については一般の高齢者の場合と別の認定制度が必要だというようなお話がございました。このことについてもう少し詳しくお話しいただけますか。
  69. 雨宮洋子

    公述人雨宮洋子君) 皆さん方のお手元にお配りしました資料で、さっき今井議員に指摘していただきましたけれども、九番目に今私どもでしている活動を挙げております。これは現在私どもがしておりますけれども、二〇〇五年に厚生省が目標としているモデルに当てますと、重介護度でもこれだけのサービスが受けられないという形になっております。  それで、判定度からいいますと低い段階に抑えられているということをとても残念に思いますし、現在これだけのサービスを措置の中で行っておりますので、どうか今後もお考えを変えられて、痴呆の問題をもう少し深く検討していただきたいと思います。外に出ますと、自立度は高くても事故が起きる方々ですので、常に何かの介護が必要になるということをぜひ知っていただきたいということです。
  70. 小山峰男

    小山峰男君 どうもありがとうございました。  それから、もう一点追加でお願いをしたいというふうに思っておりますが、施設福祉につきましては、この介護保険がスタートするときに施設整備されているかどうかというようなことでかなりいろいろ論議されてきておりますが、いわゆる在宅福祉関係でいきますと、やっぱり人材の確保というか、その辺がかなり問題だというふうに思っております。  私は、先ほども申し上げましたように、できるだけその地域で人材を確保していくということを基本に、専門性を持たせるような人材もというふうに思っておりますが、たまたま雨宮公述人は大分県ということでございまして、過疎地なんかを多く抱えているわけでございますが、そういう人材の確保について現状あるいは問題点等がありましたらお願いをしたいと思います。
  71. 雨宮洋子

    公述人雨宮洋子君) 人材においては、今のところ人が育っていっているという感じがしております。例えば、いろいろな点でやめていかれる方についてまた追加募集しますと、すぐにそういう方は確保できる。それから、今こういうふうに介護保険が問題になりましたら、やはりそういう仕事につきたいと言われる方もたくさん出てきております。学校その他いろいろなところでふえてきております。  ただ、ふえてきてはおりますけれども、全体的に見たときにはそういう介護する方たちが足りないというのは現実です。私は別府と宇佐に施設がありますけれども、その両方を比べたときでも、やはり主要都市に関しては人材は豊富にあるけれども、過疎地のところは人材が確保しにくい状態にある。現実には賄えることがありますけれども、これからはそういう状態で過疎地になれば人手も不足してくるという可能性は大きくあると思います。
  72. 小山峰男

    小山峰男君 どうもありがとうございました。以上で終わります。
  73. 山本正和

    委員長山本正和君) 以上で公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際、公述人方々に一言お礼を申し上げます。  皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。拝聴いたしました御意見は、本委員会審査に十分反映してまいりたいと存じます。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。  これをもって公聴会を散会いたします。    午後零時四十八分散会