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1997-11-19 第141回国会 参議院 環境特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月十九日(水曜日)    午前十時三分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         菅野  壽君     理 事                 狩野  安君                 河本 英典君                 松 あきら君                 竹村 泰子君     委 員                 景山俊太郎君                 小山 孝雄君                 谷川 秀善君                 西田 吉宏君                 馳   浩君                 平田 耕一君                 山本 一太君                 加藤 修一君                 高野 博師君                 和田 洋子君                 千葉 景子君                 清水 澄子君                 須藤美也子君                 末広まきこ君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  大木  浩君    政府委員        環境庁長官官房        長        岡田 康彦君        環境庁企画調整        局長       田中 健次君        環境庁企画調整        局地球環境部長  浜中 裕徳君        環境庁大気保全        局長       野村  瞭君        環境庁水質保全        局長       渡辺 好明君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君    事務局側        第二特別調査室        長        村岡 輝三君    説明員        経済企画庁調整        局調整課長    谷内  満君        経済企画庁経済        研究所次長    吉川  薫君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部地球規模        問題課長     津曲 俊英君        文部省初等中等        教育局中学校課        長        河村 潤子君        文部省高等教育        局大学課長    清水  潔君        通商産業省環境        立地局環境政策        課長       松永 和夫君        通商産業省環境        立地局環境指導        課長       林  明夫君        資源エネルギー        庁長官官房企画        調査課長     松村 博史君        資源エネルギー        庁石炭・新エネ        ルギー部省エネ        ルギー対策課長  野口 泰彦君        資源エネルギー        庁公益事業部開        発課長      勝野 龍平君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (地球温暖化対策に関する件)  (ダイオキシン及びホルモン様化学物質問題に  関する件)  (環境教育推進に関する件)  (地球温暖化防止の国際的・国内的取組推進  に関する決議の件)     ―――――――――――――
  2. 菅野壽

    委員長菅野壽君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。  公害及び環境保全対策樹立に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 山本一太

    山本一太君 自由民主党の山本一太でございます。きょうは、初めて大木大臣に御質問させていただきたいと思います。  京都会議もいよいよ間近に迫ってまいりまして、大臣におかれましては交渉道筋を何とかつけようということで連日飛び回っておられる大変多忙な毎日だと思いますけれども、大臣の御努力に対します一言敬意を表させていただきたいと存じます。  私は、この間のテレビのニュースを見ておりまして、ボン事前会議はたしか大臣は行かれなかったので東京会議だと思いますけれども、大木大臣が背の高いヨーロッパ閣僚と通訳を介さずにいろいろ会話を交わしたり意見交換をしているシーンが出まして大変心強く思ったわけでございます。環境庁の若い何人かの官僚にもちょっと聞いてみたんですけれども、外交交渉に大変なれていらっしゃるので心強いということでございました。  参議院きっての国際派ということですので、良識の府という言い方は大変何か古くさいんですが、参議院の大臣にふさわしい御活躍をこれからもしていただきますことを御期待申し上げております。いろいろお忙しいポストで、やりがいもあるでしょうけれども、いろんな批判とかプレッシャーも大変ある中でございますが、大臣の御活躍を応援させていただきたいと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  ところで、大臣日本提案でございますけれども、これは原則削減率五%ということで、日本に当てはめると二・五%ということになると思うんですが、この削減率数字については本委員会でも各委員の方々がかなり厳しい御指摘をされておりまして、余りにも国際的にディスアポインティングといいますか、ちょっとやはり踏み込みが足りないんじゃないかとか、五%のこの積み上げ根拠は何なんだろうとか、こういう随分厳しい御指摘もありましたので、あえて改めてここでこの数字の是非について申し上げるつもりはございません。  ただ、どなたか委員の方からも御指摘がありましたが、これはあくまでも日本議長国として提案する目標値ということだと思います。アメリカがゼロ%でヨーロッパが一五%で、EUは非常に外交交渉にたけていて、国連外交でもかなりしたたかですからそのまま文字どおりとれないところもあるし、何かイタリアとフランスはちょっと違うことも言っているようです。  交渉一つのテーブルにのせるための材料ということもあるかもしれませんけれども、それにしてもアメリカEUの間で一五%も乖離があって、そんなこともありますし、あるいは先進国途上国立場も、多少は妥協のムードは出てきたというふうにも聞いておりますけれどもなかなか縮まらない中で、議長国として何とか妥協案を探らなきゃいけないという中のいろんな配慮からこの苦しい二・五%というのが出てきたんだと思います。しかしながら、これはあくまでも交渉材料であって最終的な数字ではない。  先般、一週間前ぐらいに橋本総理柔軟性のことについておっしゃいましたけれども、いろんな中でこれから妥協を探られていくわけですけれども、最後まで、本当にどこまで踏み込めるかわかりませんけれども、適正な数値目標妥協を図っていただきますように御努力をぜひともお願いしたいと思います。  そのことについて、もうこの委員会で六回ぐらい決意を聞かれていると思いますし、大変お疲れだと思いますが、その柔軟な姿勢で臨むということについて一言大臣のコメントをいただければと思いますので、お願いいたします。
  4. 大木浩

    国務大臣大木浩君) まずもって、私に御激励をいただきましてまことにありがとうございました。  山本委員国際機関ではいろいろと御経験が豊かなので国際会議のあり方というのはよく御存じだと思いますが、なかなか最終段階まで本当の意味でのまとめというのは時間がかかるということはひとつ御理解いただけると思います。  そこで、日本案についても既によく御存じでありますから内容について細かいことは申し上げませんが、日本案というのは、一言で言えば全体を議長国としてまとめるという点からの要素と、それからもう一つ日本としてやはり自分ができることを案として出す、二つの要素が入っているわけでございます。  たまたま今もお話がございましたように、数字だけをとって言いますと、アメリカが一九九〇年比ゼロ%、それからEUの方は全体として、実は厳しく言いますとEUの案というのは一〇%が基礎になって、よその国が協力してくれるなら一五%まで伸ばすと、こういう案でありますが、通常は一五%案と言われております。一見非常に離れているようでありますけれども、先般来ボン会議あるいは東京におきまして閣僚会議をやりまして、必ずしも私はその意見の収れんというのが不可能ではないと思っております。  ただ、日本の案にも御存じのとおりに差異化という考え方が入っております。これは各国が置かれました経済状況産業構成あるいはエネルギーの使い方、そういったものを考えますと、すぐに今の数値目標で完全に同じような数字からスタートするということが必ずしも現実的でないという点もありますから、そういった点は考えながら、しかし、今とりあえず数値目標を出せと言っているのは先進国の中での話でありますけれども、先進国が総体としてできるだけ大きな目標を立てて前進できるようにと、そういうことで今努力をしておりますので、そういう状況だというふうに御理解をいただきたいと思います。
  5. 山本一太

    山本一太君 いずれにせよ、この会議CO2削減についての大変大事なステップであって、だるま落としの一番下を何とか落として全体への流れをつける会議でございます。  私は、今ちょっと国連のことをやっておりまして、環境重視ODAということでいろんな協力をしているわけですが、特に今回のODA削減国際機関、特に社会開発分野国連機関については三五%から四五%カットということで国連の方からも相当悲鳴が上がっておりまして、この間小渕外務大臣にくっついて一日だけ、一泊二日でニューヨークへ行ってアナンに会い、オルブライト長官にも会ってきましたけれども、日本が今常任理事国問題等でも大事なときに間違ったメッセージをどうも国際社会に送っている風がありますので、ぜひこの会議においては日本がリーダーの役を果たしてきちっとこの大事な国際会議成功に導いたと、そういう方向にぜひ大臣に持っていっていただきたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いをしたいと思います。  次にちょっとお聞きしたいんですけれども、今の目標日本が掲げている目標二・五%というのがありますが、具体的なこの数字積み上げについてはどうなっているのかと。これは一九九〇年比ゼロ%までの積み上げしか今できていないというふうに聞いておりますけれども、これについてどういう現状になっているのか、それと今後どういう取り組みをしていくのかについて一言御質問したいと思います。
  6. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  我が国政府が先般数値目標提案を行ったわけでございますが、その裏打ちといたしましてできる限り実行可能性のある削減見積もりを行ったわけでございます。  その結果をかいつまんで申し上げますと、エネルギーの使用に由来する二酸化炭素につきましては、一九九〇年比でゼロ%と申しますか、同じレベルまで削減をする、これは既に一九九五年度で二酸化炭素排出量が八・三%九〇年比で増加をしてございますので、その八%余り、九%近くを実際には二〇一〇年に向けて削減をしていくという数値に相当するものでございますけれども、そうした削減をしようということで積み上げをしているわけでございます。  その内訳は産業部門なりあるいは民生部門あるいは運輸部門という形で分かれるわけでございますけれども、産業部門につきましては、二〇一〇年に九〇年比で約七%の削減をしていこうということでございます。民生部門につきましては、既に一九九五年で九〇年比一六%の増加ということでございますから、これを大幅に削減いたしまして二〇一〇年にはおおむね一九九〇年と同じレベルまで戻すと、こういうことでございます。運輸部門につきましても同様に、既に九五年度で一六%も増加をしております。今後放置いたしますと、二〇一〇年には九〇年比で四割近くふえてしまう、こういう見通してございますが、これに対しまして厳しい努力を積み重ねまして、これは結果としては二〇一〇年には九〇年比では一七%増加と、こういうことになってしまうわけでございますが、九五年に既に二八%増加をしておりますので、その九五年との比較で申しますとわずか一%の増加に抑え込む、こういうような見通しでございます。  以上のような削減対策積み上げを全体として合計いたしまして、エネルギー由来二酸化炭素排出量につきましては九〇年比でゼロ%という対策積み上げをしているところでございます。  このほかに、我が国提案におきましては、二酸化炭素以外のメタン及び亜酸化窒素などについての排出抑制対策積み上げているところでございまして、これらの他のガス対策によりましておおよそ二酸化炭素の量に換算をして九〇年比〇・五%分の削減をさらにこの上に積み上げていると、こういう状況でございます。
  7. 山本一太

    山本一太君 今の浜中部長の御説明ですと、今のところとにかくゼロ%までの積み上げということなんですが、京都会議できちっと二・五%を提案するというからには、やはり具体的な根拠をきちっと積み上げていかなければいけないと思うんですね。京都会議まで余り間がないんですけれども、それまでにはきちっとその数字をつくると、こういうことととってよろしいんでしょうか。
  8. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  ただいま申し上げましたとおり、我が国提案には二酸化炭素のみならずメタン及び亜酸化窒素も含めるということにしてございますので、この三つのガスを総合いたしました我が国における削減対策見積もりでは一九九〇年比でマイナス〇・五%というところまで積み上がっているわけでございます。今後御指摘のとおり我が国としては二・五%の削減をするということを国際的に提案しているわけでございますので、基準削減率は五%でございますが、我が国に当てはめました場合に二・五%であるということを言っておりますので、したがいましてこの二・五%と〇・五%のギャップといいますか、このギャップを具体的にどの分野でどれだけ削減が可能であり、そのためにどのような政策が必要となるかについては、今後技術の進歩がどの程度進むであろうか、あるいは国民各界各層取り組みの進展がどのぐらい進むであろうか、こういったことを考慮に入れながら今後鋭意検討をしていきたいと考えているわけでございます。  ただ、この検討につきましては、もちろん京都会議に向けて結論を得ることが望ましいとは考えておりますが、一方で数値目標に関する国際交渉の結果は必ずしも予断できないところもございます。したがいまして、我が国削減量の一層の積み上げにつきましては、京都会議での国際合意に基づいて改めて鋭意検討してまいりたいと、このように考えているところでございます。
  9. 山本一太

    山本一太君 改めて検討したいということは、京都会議までは二・五%の積み上げは特にしないと、こういうことですか。それとも、二・五%分についてはきちっと準備をした上で京都会議の推移によってまたいろんな計算をしていくということでしょうか。もう一度ちょっとお聞かせください、よくわからないものですから。
  10. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 具体的な説明は必要がありましたら後で部長からしてもらいますが、今私どもが目標数値を出しておりますのは、一応二〇〇八年ないし一二年というところを予想して数値を出しておるわけでございまして、当然ながらこれからのいろいろな措置というのが必要なわけであります。したがって、今積み上げができていないというお話は、確かに現実に今すぐ目に見えておるというものでは積み上げが少し足りませんけれども、これからいろいろな法制の整備あるいは予算措置等々国としてもやらなきゃいかぬ問題がありますし、もちろん産業界とか国民一般にも御協力いただかなきゃいかぬところがありますけれども、それは普通に常識的に考えてこれからその二〇〇八年ないし一二年というところに行けるであろうというある程度の見通しを持って二・五%という数字を出しておるわけです。  しかし、先生がさっきからおっしゃっておりますように、目に見えて積み上げかと、こういうことになりますと、積み上げのところは非常に一般的にこれから努力してその積み上げギャップのところを埋めていくと、こういうことになるわけでございますので、そのように御理解いただきたいと思います。
  11. 山本一太

    山本一太君 今、大臣説明で大体の状況はわかりましたが、できるだけ数字の面でも万全な準備をもって臨んでいただきたいと、このように思います。  東京非公式会合、いろんなことがあったわけですが、数値目標についてはなかなか合意ができなかったということですけれども、少なくとも京都会議で何らかの合意をしなきゃいけないという雰囲気は醸成されたという報道なんかもちらちら見たわけでございます。アメリカは依然として大変強硬でしたけれども、義務化については少し柔軟な発言をしていたようにも思いますし、ヨーロッパはやや、何かEU委員が、どの新聞かわかりませんでしたけれども、一五%可能だなんという方もいましたが、多少柔軟な姿勢を見せてきたということもありますので、だんだん妥協雰囲気は少しずつ整ってきたということは言えると思います。  しかしながら、これから、余り時間がありませんけれども、京都会議に向けて非公式、公式の場でいろんな道筋を立てるために大臣にも東奔西走していただくということになると思うんですが、その中で京都会議前の最後閣僚会議ということになりますとAPECになると思います。  APECでは、やはり主に先進国でいえば対米交渉といいますかアメリカとの協議が非常にメーンになると思いますし、また途上国とのいろんな関係も整理していかなきゃいけない。特に途上国立場というのはやはり依然としてまだ強硬なところもあるように思うわけでございます。特にアジア太平洋でいえば中国というアメリカに次ぐCO2排出国などもありますので、ここら辺のところからどういう合意を引き出せるか、どういう柔軟な姿勢を引き出せるかということがやはり京都会議に向けての交渉のポイントになってくると思うんですが、これに臨む上での戦略といいますか、それをどういうふうにお考えかということをちょっとお聞きしたいと思います。
  12. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  ただいま御指摘APECにつきましては、今週末からカナダのバンクーバーにおきまして閣僚会議及び首脳会合が開かれる予定でございます。このAPEC会合は、御指摘のとおり、京都会議に向けた交渉を直接行うものではございませんものの、京都会議の直前に開かれる最後の大きな首脳レベル会議でございます。したがいまして、この機会を活用し、中国東南アジア諸国に対しまして首脳レベルを初めさまざまなレベル京都会議成功に向けた働きかけを行いたいというふうに考えております。  この際、我が国といたしましては、途上国取り組みに関しまして、京都会議におきましては途上国数量目標の設定を求めるということはベルリン・マンデートの枠外であると考えられますので、これは京都後に取り組み強化のための話し合いを開始するということをぜひ合意を得たい、そういうことを十分にお伝えしたいと思います。  それから、途上国の求める資金や技術移転強化につきましては、多国間の枠組みでございます地球環境ファシリティーGEF、それからさらに我が国等先進国途上国との間の二国間協力、こうした既存の枠組みの拡充によって対処をしていきたい。それからまた、共同実施によって温室効果ガス削減のためのプロジェクト先進国との間で行うことは技術移転などの観点から見ても途上国にとって利点がある、こういったようなことから、ぜひ途上国地球温暖化対策を一層推進していただくことについての理解を得ていきたい。こうしたことを考えておりまして、今回のAPEC会合で、ただいま申し上げましたような方向中国あるいは東南アジア諸国に対して働きかけを行ってまいりたい、このように考えております。
  13. 山本一太

    山本一太君 大臣、何か。
  14. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 今回のAPEC会議は、今、部長からも申し上げましたように、必ずしもCOP3を主たる議題とはしておりませんけれども、ちょうどいい機会でございますから、もちろん首脳レベルでひとつCOP3の成功に向けての基本的な合意というものはぜひ固めていただきたいと思っております。  ただ、先般、李鵬さん一行が来られまして、そのときにAPEC会議にどういう人が行くのかということを調べたところ、必ずしも私のカウンターパートになるような人が来られるということでもありませんので、これは今回は総理を初め外務大臣やら通産大臣にお願いしてあります。  ただ、一番今度のAPEC会議アメリカが関心を持っておりますのは、中国との話を少し詰めていきたいというようなことでございますから、これについては当然アメリカも、中国最高首脳が来るわけですから、そこでひとつ話をしてもらうということを私ども期待しておりますし、もし日本としてもそれに協力するような場があればそれはまた当然にやっていただく、そういうふうに考えております。
  15. 山本一太

    山本一太君 今の大臣お話については私の同僚の馳委員からまた詳しく質問があると思いますので、ここでは深くお話を伺うことはしません。  今の浜中部長大臣お話をちょっと伺って、途上国といいますか中国に対するアプローチというのは、外交のエンゲージメントの関与政策じゃありませんけれども、硬軟両方アプローチということなんだと思います。厳しい方は、いわゆる国際社会において国際世論を巻き起こして、しっかり中国もやってくださいというふうに言い続けるということで、どうも今おっしゃったGEF日本語訳地球環境ファシリティーでしたですか、UNDPにいたときによくGEFのこともやったんですけれども、それに対する増資なんという話もちょっと聞いておるわけなんですが。あるいはODAでは例の日中環境センターとか酸性雨モニタリングプロジェクトとか、そういうODAに対する協力、いわばあめとむちという言い方をすると余りよくないかもしれませんけれども、そういったものがどちらかというと支援策の部分かなというふうに思うんです。  私は、ちょっとおもしろい話を聞いて、中国との共同実施活動の中で、特に中国石炭は非常に質が悪くて燃焼効率も悪い、これについて何らかの協力といいますか、施設とかあるいは技術なんかを提供するという話が進んでいるといいますか、今なさっているのかどうかちょっとわからないんですが、あると聞いたんです。何か大連効率のいいボイラーか何かを導入するという計画があるやにも聞いているんですけれども、それをもう少しわかったら詳しく教えていただけませんでしょうか。
  16. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  先生指摘のとおり、いわゆる共同実施活動という形で我が国から現在中国政府提案を申し上げているプロジェクトがございます。これは御指摘のとおり、大連市におきまして非常に中小ボイラーが多数ございます。これらのほとんどは石炭を燃料としているものでございますが、大変燃焼効率が悪いというふうに聞いておるわけでございます。たまたま我が国では北九州市がこうした公害対策も含めまして大変経験を持っている。北九州市のいわゆる市の職員あるいはそのOBのみならず、北九州市で公害対策に取り組んできた企業の関係者も多数おられます。こうした人的資源を活用いたしまして、北九州市の大変な御尽力で、現在、大連市との間でさまざまな協力話し合いが進められておりますけれども、そうしたものの一環として、中小ボイラー効率を改善するということをねらいとした共同実施活動プロジェクト提案を今しているところでございます。  中国政府においてもこれを前向きに検討を今進めておられるというふうに聞いておりますので、私どもといたしましては、一日も早く正式に中国政府の認可と申しますか、正式の協力の意思表示をいただきまして、共同実施活動としてこれをスタートさせたい、このように考えているところでございます。
  17. 山本一太

    山本一太君 こうしたボイラーの普及活動なんというのは適正技術といいますか、非常にいいことだと思いますので、ぜひ進めていただきたいと思います。  中国についてはまた馳委員がいろいろお聞きするということなんですが、やはりアジア太平洋というか世界経済全体についても、あるいはアジア太平洋の安全保障を考える上でも、やはり中国をいかに国際社会の中に取り込んでいくかということが今一つの大きな国際政治の課題になっていまして、その意味で中国がこのCOP3に対してどういう方向を打ち出すのかというのを大変興味深く見ているわけでございます。APECやあるいは京都会議の中でこれを一つの契機として中国に対する働きかけをぜひやっていただきたい、このように希望させていただきたいと思います。  私はきょうの質問をきのうちょっと準備をしていたんですけれども、ぱらぱら今までの記事を見ていた中で非常におもしろい点が一つありまして、それは地方自治体の取り組みということでありました。  十一月十七日に、これは新聞で見てびっくりしたんですけれども、名古屋市は一〇%の目標をきちっと掲げているということで、いわば国よりも地方自治体が踏み込んだ姿勢をとっているということを昨日発見したわけであります。何か聞くところによると、京都とかあるいは埼玉、それから熊本、鎌倉市もそれぞれ国よりも踏み込んだ地方自治体としての目標値をきちっと発表しているというやにも聞いておるわけであります。  ちなみに、私の選挙区である群馬県の取り組みを早速調べてみたんですけれども、例えば群馬県でいうと、県の環境基本計画というのを策定しておりまして、これによれば二〇一〇年に九〇年比一〇%から二〇%の削減目標を掲げると、結構大胆なことを言っております。そして今年度は、県庁に問い合わせたところが、温暖化防止地域推進計画というのをきちっと策定する、こういうことでございます。自分の県の自慢をするわけじゃないんですが、意外とうちの県は環境先進県でございまして、先般、群馬県の県議団が南極視察なんかをしまして、賛否両論はありましたけれども、私は非常にいいことだったと今でも思っております。その後、帰ってこられた県議の方々があちこちでセミナーをやられたりして、非常にいいことだと思っておるわけですけれども。  いずれにせよ、地域の実情に合わせてそれぞれに創意工夫をするというアプローチは非常に大切だと思うんですが、これについて、例えば名古屋の話とか、もうちょっと具体的に教えていただきたいのと、これについて環境庁としてどういう支援を行っているのか、これについてお聞きしたいと思います。
  18. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  私どもも、先生指摘のとおり、この地球温暖化対策我が国の国内で実効ある形で進めてまいりますためには地方公共団体の果たす役割が大変大きいというふうに考えております。地域の実情に合わせて二酸化炭素などの温室効果ガスの排出抑制あるいは削減対策を実効ある形で進めていくという役割があるというふうに考えているわけでございます。  私ども平成七年度に、地球温暖化を含めました地球環境保全施策が地方公共団体でどのように実施をされているかという調査をいたしました。その結果を見てまいりますと、地球温暖化対策というふうに一応考えられるそういう施策を行っている地方公共団体が既に全体の三分の一に及んでおりまして、地方公共団体においてこの地球温暖化対策というものの重要性が非常に急速に認識されているのではないかというふうに考えております。  具体的な例を申し上げますと、例えば京都会議が開催されます地元の京都市でございますけれども、これはことしの七月に地球温暖化防止地球温暖化対策地域推進計画というものをつくられたわけでございますが、この計画によりますと、二〇一〇年までに地域における排出量を一九九〇年レベルの九〇%に抑える、つまり一〇%削減をするということを目指すという目標を掲げておられます。  このほか、ただいま先生から御指摘のございました群馬県あるいは名古屋市といったところにつきましても、私どもの把握しておりますところでは、群馬県は二〇〇五年までに一人当たりの排出量を一九九二年から二〇%削減する、こういう目標だというふうに理解をしております。名古屋市につきましても、二〇一〇年までに排出の総量を九〇年比で約二〇%削減をする、こういう目標だというふうに理解をしております。  このほか、埼玉県、それから鎌倉市、それから熊本市、こういったところでそれぞれ具体的に二〇〇五年あるいは二〇一〇年といった目標年次におきまして一九九〇年レベルから、地域によって多少相違はございますが、おおむね二〇%程度の削減を図る、こういったような目標を掲げられているわけでございまして、それらを達成するための具体的な対策についても、地方公共団体みずから率先実行的な取り組みをするといったことを初めといたしまして、いろいろな対策が企画をされ、実施をされようとしているわけでございます。  これらに対しまして私どももぜひ協力をしたい、支援をしたいということで、平成四年から地球温暖化対策地域推進計画策定費補助という予算制度を設けまして推進を支援してまいったわけでございますが、この九年度、本年度におきましては、新たに地球温暖化対策の事業費を補助の対象とする地球温暖化対策地域推進モデル事業費補助という制度を創設いたしました。今年度は、モデル事業を地方公共団体五団体、計画策定事業は十団体を既に内定したところでございます。  このような形で、私どもといたしましても、ぜひ地方公共団体のユニークでその地域の実情に即した取り組みを今後とも支援をしてまいりたい、このように考えております。
  19. 山本一太

    山本一太君 大変まとまったわかりやすい御説明をありがとうございました。  こうしたアプローチは非常に大切だと思います。日本の地方自治体も捨てたものじゃないなと、改めてちょっと取り組みを拝見して思ったので、ぜひとも環境庁としてこれからも引き続きそういった支援を強化していただきたい、このことを一言御要望申し上げたいと思います。  きのう、中央環境審議会の中間取りまとめ素案というのを取り寄せたんですけれども、これはどうもきのう出たてだということで、厚い方はちょっと読む時間がありませんでしたけれども、これをずっとぱらぱらと読んでみました。  いろんなことが書いてあったんですが、ポイントは、やはりこのCO2対策のメカニズムといいますか、これをどうやって制度化していくか、そのメカニズムをいかにつくっていくかというところが一番のポイントかなと思ってばらぱら見ていたんです。その中で、この委員会でも何人かの委員の方が取り上げたと思うんですけれども、炭素税の導入の一節がありまして、こんな観点でというような切り口が書いてあったんですけれども、中環審の中でいろんな議論は漏れ聞いているんですけれども、この炭素税の導入についてはどういう議論があったのか。環境庁としてはこの京都会議を契機にできれば導入したいというもちろん意図があったようですけれども、これは当然経済界、特に経団連なんかはかなり反対していますし、通産省も、これは国際競争力の低下にもつながるし、産業の空洞化にもつながる話だからだめだということで、これから引き続き検討ということにはなったんでしょうけれども、この京都会議で導入するというのは断念をされたわけなんですよね。そういうふうに理解しておるんですが、中環審の中でどういう議論があったのかというのを改めてお聞きしたいと思うんです。
  20. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  昨日公表をされました中央環境審議会の中間取りまとめでございますけれども、これは京都会議以降、我が国における地球温暖化防止対策検討していくに当たっての検討課題というものにつきまして、中央環境審議会として中間的に整理をして取りまとめ、公表をしたものでございます。  この中で、御指摘のとおり炭素税導入についての議論もされておりまして、その点について触れたところがございます。この議論の内容についてかいつまんで御紹介を申し上げますと、炭素税の導入に積極的な立場からの御議論といたしましては、税率は必ずしも高くなく、低い税率でも、その税収を地球温暖化防止対策の補助金として効率的に使用することによって効果が出るのではないか、こういう御指摘がございました。また、炭素に課税をするということによりまして、国民が炭素税を意識し、そのことによって地球温暖化問題への意識の喚起を図ることができる、いわゆるアナウンスメント効果、こういうものが非常に大きな効力を発揮するのではないか、こういう御指摘もございました。  一方で、導入に対して消極的なお立場からの議論といたしましては、なかなか短期的に二酸化炭素削減効果は期待できないのではないか、短期的な削減効果が小さいのではないか、こういう御指摘がございました。また、削減効果を得ようとすれば税率はどうしても高くなっていく、そのことによって経済へのいろいろな影響が出てくるのではないか、こういった御懸念も表明されたところでございます。  こうした御議論を踏まえまして、中央環境審議会としては、COP京都会議以降、さらにこの炭素税の問題について、あるいはそれらを含めた経済的な措置につきまして集中的な審議を行うこととされたわけでございます。  環境庁としてCOP3の前に導入することをあきらめたのではないかという御指摘もございましたが、私どもといたしましては、地球温暖化対策を進める上で、こうした炭素税などの経済的な手法は規制あるいは自主的取り組みの促進などとともに有効な手段の一つであると考えておりまして、これらを組み合わせることによって対策の有効性を高めることが重要であると、このように考えておるところでございます。  今後、これまでの御議論も踏まえまして、幅広い視野からの御意見をいただき、国民的な議論のもとでさらに検討を深めてまいりたいと、このように考えているところでございます。
  21. 山本一太

    山本一太君 炭素税の導入については慎重な意見も多いですし、考えてみたら大蔵省も余り積極的じゃないということもあるので、いろいろハードルは高いと思いますけれども、これは一つのやっぱり意識改革というものをもたらすということにおいては非常に大きな意味があると思いますので、引き続きこれはここで殺さずに検討を続けていただきたいと、このように思います。  今、意識改革という言葉をちょっとお話ししたんですけれども、今、実は参議院の方で国際問題調査会というのがございまして、その下に経済協力の小委員会というのをつくっております。ここですと馳委員もメンバーなんですけれども、この間アフリカの技術協力の専門家を呼んでいろいろ援助の話を聞いたんですが、とにかくアフリカで援助を定着させるためには意識改革が必要だと。例えば大蔵省からアフリカ開銀に出向していた理事の話を聞いたら、大体お金を預けるという習慣がない、たんすにしまっておこうという人たちに何で預けなきゃいけないかというところから話をしなきゃいけない。ソフト、ハードと言うけれども、まず意識改革からやらなければいけないという話を聞いて、非常に目からうろこが落ちたような気がしたわけなんですけれども、地球温暖化問題、こういうことについても同じことが言えると思います。  やはり地球温暖化問題、この対策というものは、もちろん産業界からいろんな協力を得なきゃいけないんですが、突き詰めていくと、実は一人一人のライフスタイルの問題ではないかというふうに思われるわけでございまして、つまり、具体的に言えば、今の豊か過ぎる生活を少しあきらめてもらう、こういう実は選択ではないかというふうに思うわけなんですけれども、この点について、特にホスト国ですから、ホスト国の国民というか、足元からきちっと意識改革をするということで、京都会議の重要性とか地球温暖化の問題についてはいろんなことを環境庁もなさっていると思います。しかしながら、やはりまだまだ足りないということで、これはもう永遠のテーマかもしれませんけれども、ここら辺についてやはりもう少し普及・広報活動を続けていただきたいと思うんです。  この点についての環境庁の御見解、大臣でも結構なんですけれども、言いただきたいと思います。
  22. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 広報活動については後で部長から具体的な例を申し上げたいと思いますが、先ほどの炭素税の話も、実はこれは国民の意識に訴えて環境問題の重要性、緊急性ということを意識していただくためには一つ非常に重要な方策じゃないかと思っております。ただ、炭素税の内容につきましては、一体だれを対象として、どういうところを捕捉して税金をかけるかというようなことは、まだそこまで決まっておりませんので、今後も検討させていただきたいと思っております。  実は、税金といいますと、税という言葉が出た途端に拒否反応も出るところもありますけれども。ということで、私も環境庁長官を拝命したすぐ後の記者会見では、それは一つの考え方だけれどもいろいろと難しい問題はあるなというようなことを申し上げたんですけれども。かなりいろんなところで御協力を願わなきゃいけないということになりますと、やっぱり国民が共通して意識をしていただく。それから、税率その他の問題もありますけれども、そういった環境というものを視点に入れた目的税というものは一つ非常に効果のある方策じゃないかと私は今個人的に感じておりますので、今後ともこれはひとつ十分前向きに検討させていただきたいというふうに思っております。  それから、PRにつきましては、また部長から具体的な方策を申し上げますけれども、これもなかなか国民一般に訴えるということで、おかげさまでというか、最近は新聞、テレビでも大分環境問題というのは取り上げておりますけれども、具体的に何をやっていただきたいかというところをきちっと焦点を当てて広報活動もやらないといけないと思っておりますので、そういうことを意識しながらまたこれから進めさせていただきたいと思っております。なお、具体的な例につきましては部長からまたちょっと御説明させていただきます。
  23. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) ただいま大臣から申し上げましたように、具体的に国民の皆様方に何をしていただくことが大事なのか、こういうことにつきまして、私どもも大臣を先頭に最近あちこちで最大限の努力をさせていただいているわけでございます。大臣御自身も最近テレビにしょっちゅう出ておられますし、それから文芸春秋のような雑誌でも対談をしていただいているところでございます。  そのほかに、パンフレット等の政府広報におきまして、最近でも、今月でございますが、政府広報のパンフレットといたしまして百万部を配らせていただいております。それから、新聞折り込み広告も先週十七日に百万部を入れさせていただきました。また、全国三十七の放送局で、来週二十四日から京都会議直前の三十日までの間、テレビスポットを出させていただくことにしております。  また、環境庁におきましても、最近の例といたしまして、タブロイド版の夕刊紙の中に「環境ブジ」というような形で百五十五万部を入れさせていただきました、これは既に五月にやらせていただきましたけれども。こんなこともさせていただきましたほかに、わかりやすい形で地球温暖化対策の現状、あるいはそれぞれの立場でどういうお取り組みをしていただくことが重要なのかということを訴えた「体温、異常」というような表題で、ちょっと今ここに持ち合わせてきておりませんが、これも三月から始めまして五月、十月と三回にわたりまして改定を重ね、六十万部を配布させていただいております。  つい最近では、「地球温暖化防止のために」ということで、表紙はちょっとショッキングな、お母さんの胎内にいる赤ちゃんの写真を表に掲げさせていただきまして、「これから生まれてくる子供たちからのお父さん、お母さんへの十の質問」というような形で、「車を買うとき、燃費を確かめて、環境に少しでも優しい車を選んでいますか」といったようなところでございますとか、「毎日の買い物や、休日の外出に自動車を使いすぎていませんか」、「冷蔵庫を買うとき、電気代の安いものを選んでいますか」などなど、できるだけ具体的に、商品の選択でございますとか、あるいはいろいろな機器の使用等々、日常生活の中でいろいろな工夫なり取り組みができることを、中に十の質問という形で入れさせていただいている、このようなものも配らせていただいているところでございます。  今後とも、国民各界各層を対象として、多様な媒体を活用し、なお一層の普及啓発に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  24. 山本一太

    山本一太君 浜中部長が今御説明になったパンフレットを私も拝見しまして、非常によくできているなと思って感心をいたしました。「これから生まれてくる子供たちからのお父さん、お母さんへの十の質問」というものですね。何か何年か前にベストセラーになった環境の本のタイトルにちょっと似ているかなと、そこら辺からヒントを得られたんじゃないかなとも思っているんですけれども。もう一つ、「地球温暖化の重大影響 -二十一世紀の日本はこうなる-」というのもかなりよくできているので、早速三十部取り寄せて、私の県の県会と市町村の主な方々には配る手配をいたしました。  この話はちょっと私ごとなんですが、自民党の中で米消費拡大プロジェクトチームというのを今つくっていまして、国民一人一人が馳浩と橋本聖子と同じだけ食べると米余りが解消されるということで、私は座長を引き受けておりまして、いよいよ街頭活動に移るものですから、これをちょっと参考にして、「お米を食べなければいけない十の理由」とかいうのをつくりたいと、このようにも思っておるところでございます。  またODAの話になって恐縮なんですが、この間経済協力委員会関係でイギリス大使館にふらっと行ってまいりました。ちょうどイギリスの援助庁の幹部が来ていたものですから、一時間ぐらいいろいろディスカッションする中で、イギリスはODAに関するパンフレットをどこで配っているかといいますと、スーパーマーケットで配っております。大変な数のパンフレットをスーパーマーケットで配っている。これは、直接国民に訴えるということではなかなかいいルートではないかというふうに思います。  例えば、環境問題というのは、詳しくは知らなくても、何となくオゾンのことがあったり、あるいは今のCO2のことがあったり、意外と日本の一般の国民にも、まだまだ不十分ですけれども関心のあるところなので、一つはそういったところで配るということもヒントになるのではないかなと。かなりの部数が、そのODAという結構かたい題目であるにもかかわらず、スーパーでイギリス人がリーフレットを持っていくという話を聞いて、こういう視点もあるのかなと思いましたので、お答えはいいですけれども、参考までに申し上げたいというふうに思います。  まだもうちょっと時間がありますので、もう少しそれでは質問させていただきたいと思います。馳委員が一分でも長くということで待っておりますので、なるべく早目にさせていただきたいと思いますけれども。  もう一つ、資料をぱらぱら見ていましたら、「地球温暖化防止のための企業のボランタリーアクション等調査研究会報告書」というのを見つけました。これも十七日となっていますから、一昨日出たものだと思います。経団連なんかはもう従来から、CO2の削減とかそういう話は業界の自主的なアプローチでやらせてくれと、従来からこういう主張をなさっているわけで、そういうことを受けてこれをまとめられたんだと思います。  いろいろおもしろい話も書いてありますし、いわば業界の自主的な取り組みというアプローチ自体は私は間違っていないと思うんですが、こういうことを環境庁としてどういうふうに推進していくのか、促進していくのかということについてまずお聞きしたいと思います。
  25. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  ただいま御指摘のこの調査研究でございますが、目的といたしましては、事業者による排出削減のための自主的な取り組みを一層促進したい、こういうことを目的にしたものでございます。具体的に、この調査研究におきましては、経団連が定められました環境自主行動計画を対象にいたしまして、経団連のほか六つの産業団体、業界団体に対しましてインタビューをさせていただきまして、その概要と特徴について整理、評価をいたしました。また、産業界の自主的な取り組みが政府の政策の中に位置づけられておりますオランダですとかドイツ、こういったような諸外国の事例についてレビューをいたしました。その上で、特に参考になりましたオランダ型の取り組みを念頭に置きまして、産業界の自主的な取り組みを国全体の取り組みの中に位置づけ、活用するための方策に関して論点を整理した、これがこの調査研究の内容でございます。  環境庁におきましては、この成果を踏まえまして、産業界の自主行動計画といったものをどのように社会的な枠組みの中で策定をしていくのか、こういった手続の充実、それから第三者によるモニタリングなどの仕組み、それから自主的取り組みをより一層促進するような仕組み、こういったものについて検討してまいりたいと、このように考えておるところでございます。  先ほど御指摘のございました中央環境審議会の企画政策部会におきましても今般中間取りまとめを発表いたしましたところですが、今後国民からの御意見もいただきながら、京都会議後さらに検討を続けることにしておりまして、その中でこうした自主的取り組みをどのように国の取り組みの中に位置づけて活用していくか、こういった点についても御審議を賜ることになろうかと、このように考えております。こうした審議結果も参考にさせていただきながら、私どもとしてさらにこの自主的な取り組みを促進をしてまいりたいと、このように考えております。
  26. 山本一太

    山本一太君 このボランタリーアクション等調査研究会の報告書の中で私が一番面白いと思ったのは、今、浜中部長がおっしゃった、オランダの自主協定の締結手続のところでございまして、本当に簡単で結構ですから、これについても、どういう仕組みになっているのかというのを教えていただければと思うんですが。簡単で結構です。
  27. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) 簡潔に申し上げます。  オランダの自主協定の締結手続でございますけれども、これはまず政府から、政府としてはどのような目標を立てて取り組みを進めることが必要と考えているかの説明産業界に対してございまして、産業界はこれを受けてみずからいろいろな目標達成の可能性に関する調査を行い、その報告を政府に対して提出いたします。その後、政府と産業界の間で合意できる目標の設定についての相談がございまして、その結果、合意できる目標が設定をされるわけでございます。そして、自主協定が政府と産業界の間で締結をされ、その実施に入る。その実施の段階では第三者機関ということで、オランダの第三者機関で各企業が提出をいたしました報告書に基づいてモニタリングを行う、自主協定の実施状況等について調査を行い、その結果を政府に提出をする、こういったモニタリングが行われているというのがオランダにおける自主協定の実施状況でございます。
  28. 山本一太

    山本一太君 ありがとうございました。  最後にもう一つだけちょっとこの自主的取り組みについてお聞きしたいんですけれども、企業の自主的取り組みというその方向性は大変いいと思うんですが、これだけで果たして本当に必要な削減が可能かという問題が出てくると思います。企業にはそれぞれやはり利潤を追求しなきゃいけないという側面がどうしてもあります。ここら辺についてはどういうふうに対応していかれるおつもりなのか、それをお聞きしたいと思うんですけれども。
  29. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  地球温暖化対策を進めます際には、もちろん政府、事業者、その他国民各界各層それぞれの立場において排出削減のための取り組みを自主的に拡充強化していくことはもちろんでございますが、これにとどまらず、規制的な措置や経済的な措置、さらに公共的な事業なども的確に組み合わせ、総合的に実施することが必要であるというふうに考えております。  こうした対策の具体的なあり方につきましては、京都会議の成果も受けまして、先ほど申し上げましたとおり、中央環境審議会で審議をしていただく予定でございます。こうした御審議の結果も踏まえまして私どもとしても的確な対策を進めていきたいと、このように考えているところでございます。
  30. 山本一太

    山本一太君 ありがとうございました。  これから京都会議まで公式、非公式にいろんな場所で大臣が環境分野のリーダーとして交渉に当たられるということになると思います。二十一日ぐらいからたしかヨーロッパにも行かれるということで、向こうでもいろんな交渉をされると。さらにはAPECもあるということでございますけれども、いろんな批判、あるいはいろんなプレッシャーはあると思いますが、ぜひとも国際派大臣として遺憾なく外交手腕を発揮していただいて、必ずこの京都会議成功に導いていただくことを最後にお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  31. 馳浩

    ○馳浩君 自由民主党の馳浩です。山本委員に引き続きましてよろしくお願いいたします。  冒頭に、質問通告はしておりませんが、今般の行革会議の方から、省庁再編の中で環境庁は環境安全省としての枠組み一つお約束いただいたというふうな結果が報道されておりまして、私も党内におきまして議論に参加した身としまして非常にすばらしいことであるなと思っております。大木長官にお伺いしたいのは、二十一世紀に向けて環境庁が環境安全省として格上げされる場合に、組織が拡大するとかそういう問題ではなくて、ぜひ権限を持った官庁として、事業官庁に対する発言権を大きく持ってもらいたいと思っておりますが、今後の恐らく組織がえで局の編成等、再編成されると思いますが、今現在大木長官はどういった組織として二十一世紀の環境行政のあり方を考えておられるかという御決意をひとつお聞かせください。
  32. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 今、馳委員からもお話がございましたように、環境庁を環境安全省というか、名前はまだ最終的にはなっていないようですが、そういった組織をつくろうということで、政府部内あるいは関係政党の中で御議論いただいておるということは、やはり環境問題がそれだけ重視されているということで、私としても非常に望ましい動きだというふうに考えております。  おっしゃいましたように、ただ組織を大きくするとかということではなくて、確かに今の環境行政というのは十分な権限を持った環境庁ということになっておりませんので、そこら辺が非常に問題である。これは、一つはまず行政府の中で、中央官庁の中でいろんな縦割り行政がございますから、そこをもう少しきちっと整理をしなきゃいかぬという問題がある。もう一つは、これはやはり国、中央と県、それから市町村、この間の関係も必ずしも明確でない。その結果として環境行政に私は何か空白を生じているところが多いんじゃないかということがあると思います。  それからまた環境問題は、きょうもまたいろいろ後で問題が出てくると思いますけれども、非常に早く手を打たないといけない。地球温暖化の問題はこれは五十庫、百年の問題でしょうけれども、もっと目前にいろいろと迫っている問題もある、そういう問題についてはやはり早く手を打たなきゃいかぬ。それに対する権限ないしは措置をとれるような体制というのを整備するということが非常に大事だと思いますので、まさしく馳委員が今おっしゃったように、必要な権限というものはやっぱり持たせていただかないといろんな手が打てないじゃないか。そのための法令の整備とか、あるいは実際の運営するための組織とか、そういったものの充実については、これからまたひとつ国会の方の御協力もいただきながら充実をさせてまいりたいというふうに考えております。
  33. 馳浩

    ○馳浩君 では、引き続きましてCOP3関連の質問に入らせていただきますが、十一月八日、九日の二日間、東京で行われました非公式閣僚会議での結果、特にベルリン・マンデート・アドホックグループ会合からどんな点が進展したのかをお聞かせください。
  34. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  十一月八、九の二日間にわたりまして東京で行われました非公式の閣僚レベル会合におきましては、第一日目は先進国間で議論を行いまして、第二日目は大木長官が議長を務めまして、先進国に加え途上国も参加をして議論を進めたわけでございます。  具体的には、第一日目には排出権取引や共同実施も含めた数値目標をめぐるいろいろな課題、それから第二に、途上国の参加の促進方策、こうしたことにつきまして率直な意見交換が行われたわけでございます。  二日目につきましては、すべての締約国による努力の促進に関しまして意見交換が行われたわけでございまして、ここでは先進国が率先して努力する必要が強調されますとともに、途上国からも自国での取り組み状況、あるいは直面する課題が紹介をされまして、さらなる国際協力の必要性などが訴えられたところでございます。  この会合は非公式という性格のものでございまして、特に何か具体的な結論をまとめるということを目的にしたわけでは必ずしもございませんけれども、しかしながら、参加した閣僚の間で忌憚のない意見交換を行うことができたということ、それから閣僚レベルの判断を要する事項、重要事項が何であるか、こういった点についても明確になってきた。そういうことでございますので、京都会議での妥結に向けて各国それぞれが努力をし、京都会議成功させるという政治的な意思を確認することができた。この点で京都会議において政治的な決断を得て合意を形成する道筋がより明確になったということでございまして、そのような意味で大変有意義な会議であったというふうに考えているところでございます。
  35. 馳浩

    ○馳浩君 大木長官初め環境庁取り組みに比べて、通産省の取り組み方や政策判断に問題はなかったのかということを次の質問とさせていただきます。すなわち、政府案作成をめぐりまして環境庁と通産省が激しく対立したことが新聞等々で伝わってまいります。政府案がまとまる以前の両省庁のCO2削減率は九〇年比でどう対立していたのか、具体的な数字をもって確認したいと思いますので、環境庁、通産省の順でお答えください。
  36. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  エネルギーの使用に起因をいたします二酸化炭素排出量削減につきましては、環境庁におきましては、エネルギー利用の効率が高い、したがって二酸化炭素の排出削減に効果的な技術が経済合理的に導入されるという前提を置いたモデルを使いまして、技術的な観点から見てどのような削減の可能性があるかという点について検討をしてきたわけでございます。その過程では、そうしたモデルについて一定の前提を置きまして計算をいたしまして、結果として二〇一〇年時点で九〇年比七%程度の削減技術的な観点からは可能性があるというような見通しも示したところでございます。
  37. 松永和夫

    説明員(松永和夫君) お答えいたします。  地球温暖化問題の重要性につきましては、通産省におきましても非常に深く認識しておりまして、二十一世紀に人類が直面する最大の問題である、最大限の政策努力を払うべきである、こういう認識でございます。一方で、何らかの対策を講じてまいりますと当然国民経済にはインパクトを与えますので、地球温暖化防止とそれから国民経済の健全な発展ということの両立をどう図るのかというところが大きなポイントであるというふうに認識をしていたわけでございます。  こうした認識のもとで、我が国の国内対策として、エネルギー起源のCO2の排出削減について、一つエネルギー供給面で、もう一つは省エネルギーを初めといたしますエネルギー需要面でぎりぎりどこまで削減が可能なのかということにつきまして、環境庁とも鋭意相談をしながら政策的な努力積み上げというものを行ってきたということでございます。
  38. 馳浩

    ○馳浩君 通産省からは数字は出てこなかったのですが、報道によりますと三%増かゼロ%といった数字が出ております。この環境庁がお示しになった七%、通産省の三%増ないしはゼロ%という削減に関する数字の違いの対立のポイントは、これは前提条件の違いであると思います。そのポイントが二つ、一つは炭素税の導入問題と、もう一つは新技術の普及率予測の問題であると思います。環境庁は炭素税を導入して温室効果ガスの排出の抑制等新技術のさらなる普及、ひいては新産業の創出、経済構造の変化をもくろむ案でありまして、通産省は炭素税の導入に反対し、省エネと従来の経済手法であります補助金交付と税制優遇で新技術の普及に努める案と言えると思います。  そこでまず確認したいのでありますが、環境庁が考えている炭素税案についてであります。これは、環境庁からいただいた資料によりますと「環境税案検討に当たってのオプション」ということで四つ示されておりますが、大きく分けて二つに分けられます。一つは、低税率で税の使い道を温暖化防止対策に使う低税率・補助金併用型、これは炭素一トン当たり三千円、これはかソリンーリットル換算でしますと二円の水準とするものであります。総額としては年一兆円の税収を予想するものです。もう一つは北欧型で、税収は一般財源にするものです。これは炭素一トン当たり三万円、これはガソリン一リットル当たり二十円に換算できますけれども、これで総額年十兆円の税収を見込むものでありますが、このどちらを環境庁の案として通産省と交渉に臨んだのでしょうか、お聞きします。
  39. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  今回の検討に当たりましては、環境庁といたしましては、先ほども申し上げましたモデルを用いて将来の二酸化炭素排出削減技術的な可能性を探るという目的を持って検討いたしました。この検討におきましては、削減政策措置をモデルに入力するに当たりまして炭素一トン当たり三万円に相当する炭素税を課税した場合を仮定して将来の見通しを計算いたしました。  なお、この場合の炭素税はあくまで政策の代表例として考えたわけでございまして、実際の政策といたしましては、規制、自主的な取り組みあるいは補助金もしくはこれらと組み合わせたより低率の炭素税などによりましても同等の効果を得ることが可能であると考えているものでございます。  したがいまして、高率の炭素税の導入を不可欠の前提とするものではないということでございますが、私ども、いずれにいたしましても先ほど申し上げたようなモデルの計算は、そのような前提を置いて計算をしたものでございます。
  40. 馳浩

    ○馳浩君 十兆円の場合というふうに想定されたそうでありますが、この大きく分けた二つのタイプで温室効果ガス削減効果に差はあるのでしょうか。
  41. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  先ほども先生指摘になられました環境に係る税・課徴金等の経済的手法研究会の最終報告で示されました幾つかのオプションがございますけれども、この中で特に触れられました御指摘の二つの案の環境改善効果というものについては、私どもは環境改善効果はほぼ同じであるというふうに考えております。
  42. 馳浩

    ○馳浩君 どちらの案にしても削減効果というものは同じであるということでありますから、国民からすれば負担が少ない方がいいなというのがこれは正直言って当然なのでありますが、ただこういったことにしても、もうちょっと国民に対してオープンに出していただかないと比較検討できないのではないかなという点も指摘させていただきます。  次に、環境庁の炭素税案は国立環境研究所と名古屋大学の共同研究開発をしたいわゆるAIMモデルを参考にしているのは周知の事実であります。この炭素税案は既存の化石燃料税に上乗せする形をとっております。しかし、既存の化石燃料税を潜在的な炭素税と認識し、税収の総額を変えずにこれらを炭素負荷量に応じて純粋炭素税に組みかえる案が経済企画庁の経済研究所から出ておりますので、この案の概要についてお教えください。
  43. 吉川薫

    説明員(吉川薫君) お答えいたします。  先生指摘の研究は、植田和弘京都大学教授を中心とします当経済研究所の研究グループがその責任で取りまとめたものでございます。したがって、この研究成果は当該研究グループの研究私論でありまして、経済研究所及び経済企画庁の公式の見解というわけではございません。  その研究ですが、化石燃料に対しまして既に揮発油税等諸税が課せられておりますが、本研究ではこれら既存の化石燃料諸税から得られる税収総額を変更しない、先生の言われたように税収総額を変更しないという条件のもとで、税体系を炭素税の炭素含有量に応じた税率、すなわち純粋炭素税に変更した場合の二酸化炭素の排出削減効果についてシミュレーションを行っております。  前提条件によりまして影響されますため、結果については幅を持って見る必要がございますが、例えば、先行研究を参考にしまして、すべての化石燃料の需要の価格弾力性を〇・二と仮定したケースにおきましては、純粋炭素税率は炭素一トン当たり約一万九千円ということになります。またこの場合、既存の化石燃料諸税によります二酸化炭素排出削減量が炭素換算で約千九百万トンになりますが、これに対しまして、今言いました純粋炭素税によります二酸化炭素排出削減量というのを推計しますと、約七千万トンに達するという推計になつ七おります。  このように、結論としまして、既存の化石燃料諸税よりも純粋炭素税の方が二酸化炭素排出削減効果というものが大きいことをこの研究では指摘しているところでございます。
  44. 馳浩

    ○馳浩君 ところが、実は大枠では税収は恐らく五兆円前後でありまして変わらないのでありますが、資料をいただきましたので見ますと、実効税率のところで、現行とそれから経済企画庁の試案で見ますと、ガソリンがキロリットル当たり五万六千円から一万九千円ぐらいに下がる。軽油は三万四千円から一万九千円ぐらいに下がる。ジェット燃料も二万八千円から下がる。ではありますが、ガソリンなんかの税が下がると我々国民は車を運転するときに助かるわけでありますから、喜ぶんですが、軽油引取税とかは道路特定財源でもありますし、それからジェット燃料については空港整備特別会計に入っているお金でありますよね。これらが下がるというのは、余りインフラ整備の上においてはよろしくないのではないか。  あるいは逆に、石炭などは今は実効税率ゼロでありますけれども、これが一万九千円に上がるということは、鉄鋼産業などの企業からすれば大変な負担になるわけでありますから受け入れがたいという、税収の総額は変わらないけれども、個々に見れば受け入れがたいという世論も巻き起こってくるわけでありまして、この点、経済研究所でありますから研究の試算を出すだけでよいのかもしれませんが、国民からの御意見とか業界団体等からの御批判とか、そういったものに対する配慮というのは経済企画庁にはあるんでしょうか。
  45. 吉川薫

    説明員(吉川薫君) 私は経済研究所の次長でございまして、経済企画庁としての見解というのをお答えする立場にございませんので、研究所の研究私論ではそういう結果になっているということでございます。
  46. 馳浩

    ○馳浩君 お答えできないのは当然の、立場上問題があるとは思いますが、現実には総額は変えなくても、個々に見ればこれだけの御負担がありますよということを国民の皆様に示した上で、これでもいいですかというふうな議論に入る方が、非常に私のように攻撃的な人間からすればオープンにして議論した方がむしろよいのではないかと思いまして、申しわけありませんが、いただいた資料で指摘をさせていただいたということであります。  次に、通産省にもお伺いしますが、この経済企画庁の案は、総額でいえば増税はしないわけですし、税の使い道も今までどおりでよいわけでありますから、非常に炭素税反対論者にも受け入れやすいものと思われますが、環境庁がお示しになった案や経済企画庁がお示しになった案などのこういった炭素税の導入に向けて非常に信頼に足る研究があるというにもかかわらず、いまだに通産省が導入に反対をされている理由を改めてお伺いしたいと思います。
  47. 松永和夫

    説明員(松永和夫君) 温暖化対策検討するに当たりまして、通産省の中でも、炭素税を初めといたします環境税の問題につきましてはいろいろ議論をしております。  その一環といたしまして、昨年から産業構造審議会におきまして議論をいたしました。その審議会での議論の整理といたしましては、こうした炭素税のような、環境税のような経済的な手法というものを活用する方が、削減につきまして、市場メカニズムを活用して有効な対策が打てる、こういうメリットがあるわけでございますが、ただ、税制を導入しまして温暖化対策を講ずるためには、一義的にはまず高率の税制が必要になります。非常に高率な税制が必要になった場合には、非常に経済に与える影響もそれだけ深刻になるという問題がございます。  それから、先生今御指摘のとおり、低率で入れて、その財源を使って温暖化対策を講じる、こういうやり方もあるわけでございますが、この場合には、低率で入れるがためにCO2削減という効果につきましては非常に小さいものにならざるを得ない。  税収を使うということにつきましてはもちろん有効な場面もあるわけでございますが、ただ例えば省エネルギー対策にしましても、新エネルギーの導入にしましても、既に今御指摘のガソリン税あるいは石油税といったような既存の税制がございますので、こういったものを全体としてどう見直していくのかということの中で議論をする必要があるのではないか、こういう整理をしております。  いずれにしましても、国民経済に与える影響あるいは現在の税制構造全体の見直しの中で慎重に考えていく必要があるのではないかというのが省内における議論の結果でございます。
  48. 馳浩

    ○馳浩君 この点が、私は本当に日本のリーダーシップを世界で持っていただきたいなと思うんですが、炭素税の導入にしても、国際的に導入するという形にすればいいのではないかと私は思うんですね。  従来、通産省が言われております、これは報道によりますが、国際競争力が落ちたり失業者が増加する、あるいは国民の合意が得られないというふうな現実的な問題に対応しましても、だからこそ国際的に炭素税を導入してやっていこうじゃないか、それによって、むしろ炭素削減率をできるだけ各国大幅に上乗せしていこうじゃないかというコンセンサスを得ることになると思います。そのリーダーシップをこそ日本がとるべきであると私は考えております。  国際競争力の問題についてですけれども、現実に炭素税を導入しておる国もありますよね。北欧型の炭素一トン当たり三万円の税として一般財源にする案だと特にその心配がありますけれども、国と企業の排出削減に関する協定が結ばれた場合は税を減免するデンマークやノルウェーの減免措置を導入すればかなり緩和されると考えます。また、低税率・補助金型では、抑制技術の導入を図れば、これは税は還元されるわけでありますから問題はないと考えます。それでも負担が重くなるところは、国との削減協定を条件にする減免措置や法人税の減税と組み合わせればよいのではないでしょうか。  さらに、経済企画庁案の組みかえ案は、減税になる企業も多く出ますし、増税になる石炭産業等は、今言いました減免措置や法人税減税をすればよいというふうな考え方も出てくるのでありまして、この点、こういった考え方に対して通産省はどうお考えなのでしょうか。
  49. 松永和夫

    説明員(松永和夫君) 委員指摘のとおり、環境税的な経済手法を投入するに当たりましては、国際的な協調というものが必要になってまいります。そういう意味で、今御指摘の北欧諸国において導入されております前例というものにつきましてきちんと分析する必要があろうかと思います。  そこでは、確かに石炭産業等非常に大きな影響を受ける産業につきましての増税につきまして何らかの軽減措置が講じられているわけでございますが、ただこれはそういう軽減措置を講じられるがゆえに、炭素税を通じて温暖化対策を講じる、あるいはCO2の削減を講じるという当初の目的もその分だけ減殺されてしまうという、そういう面がございまして、総じて炭素税の導入によってどれだけの効果があったのかということにつきまして、さらに分析をして評価を加えていくということも必要ではないかというふうに考えております。
  50. 馳浩

    ○馳浩君 さらにまさしく分析をして評価を加えていただきたいんですが、それを積極的に環境庁とともにやっていただきたいと思います。  それから、失業の問題なんですが、これは私も九月三十日の読売新聞朝刊を見て非常にびっくりしたんですけれども、CO2、九〇年比五%削減なら二〇一〇年において雇用が百七十五万人も減ってしまうという、見出しだけでびっくりしてはいけないのかもしれませんが、これは非常に国民に誤解を与える試算であると思っております。  業界の自主目標を見ても、鉄鋼業は省エネで二〇一〇年までに一〇%減を計画しております。また、省エネ技術を導入することによる省エネ分の削減余地はまだまだあります。さらには、CO2削減は逆の観点からいえば雇用創出機能もあります。にもかかわらず、省エネの部分を十分に考慮に入れないで失業者の数の予測を出すことは、国民の省エネ努力に水を差す悪質なデータ開示に思えますが、省エネ分を踏まえての試算を公表していただきたいと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  51. 松永和夫

    説明員(松永和夫君) CO2の削減対策がマクロ経済に与える影響につきましては、いろんな観点からいろんな分析を行っているところでございまして、報道されましたのはそのうちの一つではないかと思われますけれども、これは一定の前提のもとで産業連関表あるいはマクロモデルを使いまして機械的に試算をしたものでございまして、その結果につきましては相当な幅を持って解釈をされるべきではないかというふうに考えております。  この試算の前提をお話しいたしますと、二〇一〇年までに可能な限りの省エネ等の努力を行いまして、その上でCO2の排出量につきましては九〇年レベル安定化が実現できる、こういう対策をつくったわけでございますけれども、したがいまして、さらに削減をした場合には、省エネルギー対策がもう限度でございますので、このモデル上の計算では、産業部門におけるCO2の排出削減はいわばそれぞれの産業部門における生産量の減少ということにしか対応できない、こういう前提を置いておりますので、今御指摘のような試算の結果になっているということでございます。そういう前提を持って、その評価につきましては慎重に行うべきではないかというふうに考えております。
  52. 馳浩

    ○馳浩君 ですからこそ、省エネのエコビジネスによる産業の創出に関する分野に対して積極的に取り組んでいただきたいということを要は言いたいわけなんですよね。余りにも刺激的な数字、失業者が百七十五万人というと、それはやっぱりやめておこうぜという、そういうふうな印象を国民に与えてしまいますので、慎重にお願いしたい。むしろエコビジネスに対する取り組みはもうちょっと積極的にやっていただきたいということなんです。  いずれにしても、この地球温暖化問題は今後も継続して議論されていくわけでありますから、先ほども私申し上げましたが、国際的に先進国は炭素税の導入を議論していく、そのリーダーに日本はなっていただきたいと思っておりますので、通産省も本格的に炭素税の導入に関する議論をしていただきたいと思っておりますが、改めていかがでしょう、この点。
  53. 松永和夫

    説明員(松永和夫君) 先ほどもお答えいたしましたように、炭素税も含めまして、経済的な手法あるいはその他の規制的な手法等も含めまして、今後とも幅広く議論をしていくべきであるというふうに考えておりますけれども、この問題につきましては、内閣総理大臣のもとに置かれました関係審議会の合同会議の場でも幅広く議論が行われまして、炭素税の問題につきましては、当面の問題としましては慎重に対応すべきであろう、ただ、今後の国際的な議論の流れを見ながらさらに鋭意検討していくべきであろう、こういう報告書がまとまっておりますので、通産省におきましても、そういう報告書を踏まえて、引き続き検討していきたいというふうに考えております。  加えまして、先ほど御指摘の環境産業の問題でございますけれども、CO2の削減対策がそういう新しい市場をつくり出していく、そういう側面にもきちっと光を当てて、通産省におきましても前向きにいろんな観点から検討していきたいというふうに考えております。
  54. 馳浩

    ○馳浩君 余りそういったところを審議会任せにせず、リードしていっていただきたいと何度も繰り返し申し上げますとともに、これは世論にありましても、炭素税の導入に対しては、やむを得ない、積極的にも含めまして四割から五割近い人が、これは未来の世代に対して私たち今こそやるべきだというふうなマスコミの世論も出ておるわけでありますから、こういったところも十分に参考にしながら私はやっていただきたいと思います。  次に、十月十四日公表の政府案、それはほぼ通産省案と同じだったものでありますが、その検討に移りたいと思います。  政府案の柱は二本ありまして、一本が省エネ法の改正による省エネ基準の引き上げで、これを従来の経済手法と規制措置で達成させるものであります。もう一本が、原発二十基の増設であります。  そこで、まず、省エネ基準の引き上げについて質問します。  これが実現されるか否かの成否は補助金や優遇税制のあり方次第と思いますが、そうなると問題は財源になります。政府案は試算でどのくらい財源が必要と考え、炭素税なしでどう財源を確保しようとしているのか、ぜひ教えていただきたいと思います。
  55. 野口泰彦

    説明員(野口泰彦君) お答え申し上げます。  地球温暖化問題は全世界的な対応が求められる極めて重要な問題でございます。二酸化炭素の排出抑制を図るためには、省エネルギー、新エネルギー対策の抜本的な強化が必要不可欠だと考えております。  当省といたしましては、厳しい財政事情の中で、政策の優先度の見きわめを厳格に行いまして、省エネルギー対策費につきましては、九年度予算額の四百八十億円に対しまして、百六十八億円の増額を要求しているところでございます。また、新エネルギー対策費につきましても、九年度予算額の五百六十億円に対しまして、百八十億円の増額を要求しているところでございます。  具体的には、産業用燃料消費の半分以上を占める工業炉、ボイラーの飛躍的省エネを図る高性能工業炉、ボイラーの開発、普及の促進、またクリーンエネルギー自動車を率先して導入する事業者に対する助成の実施、住宅用太陽光発電の普及措置の実施などの意欲的な政策を展開いたしまして、我が国提案している削減目標達成に向けて全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。  先生指摘の財源の問題でございますが、COP対策としての省エネ対策、新エネ対策につきましてはただいま申し上げましたとおりでございますが、石油税、電源開発促進税によりまして必要な額を確保するよう努めているところでございます。  今後とも、予算の効率化に努力しながら、対策の充実を図ってまいりたいと考えております。
  56. 馳浩

    ○馳浩君 今、数字を私お伺いしまして、暗算しましたが、省エネ関連で六百四十億、新技術推進で七百四十億、それに石油税、電源開発等を合わせて一千三百から五百億ぐらい。先ほど申し上げました炭素税の環境庁の案でも少なくとも一兆円の案が出ておるわけでして、この財源にも通産省の試算と大きなこれだけの差があるわけでありますから、財源を活用して省エネの基準を引き上げた分を新技術を導入をしたりして引き上げていこうというふうなことに対する財源としては非常に足りないというふうな印象をまず受けますので、予算のスクラップ・アンド・ビルドが必要なことではありますけれども、これではまだ十分な財源としては足りないということを指摘させていただきまして、次に行きます。  原発については、AIMモデルでは新設を八基と予想しております。政府案の二十基新設は実現性があるのでしょうか。
  57. 勝野龍平

    説明員(勝野龍平君) お答え申し上げます。  御指摘の原子力発電所、二〇一〇年、二十基の新増設に相当いたします七千五十万キロワットにつきましては、通産大臣の諮問機関でございます総合エネルギー調査会、平成六年六月に取りまとめられました長期エネルギー需給見通しに基づいて試算しているわけでございます。  現在運転中の原子力発電所が五十三基ございまして、四千五百二十五万キロワットの発電を行っているわけでございますけれども、さらに、本年三月に電気事業者から通産大臣に届け出のありました電力供給計画によりますると、二〇〇六年までに新たに運転を開始する発電所として九基、千百二十八万キロワットが計画されているところでございます。また、二〇〇七年度以降運転を開始予定している原子力発電所も相当数考えられるわけでございます。  ただ、御指摘のように、今後二〇一〇年までに十三年間あるわけでございますけれども、二十基を増設するということは確かに容易ではございません。しかしながら、通産省といたしましては、原子力発電所の安全性の確保、これをまず万全を期しながら、また原子力発電所の必要性とかあるいはその安全性に関する国民の理解、こういったことを求めながら、原子力発電所の立地市町村の振興にも努めながら、何とか最大限二十基の建設に取り組んでいきたいというふうに考えている所存でございます。
  58. 馳浩

    ○馳浩君 原発の増設については私も意見がありまして、国民的な意見というよりも、その立地の住民の合意なんですよ、これは。これと、それから、安全問題とおっしゃいましたけれども、安全問題について、通産省云々ではなくて、科技庁、あるいは今度省庁再編されましたら文部・科学技術省になるわけですか、この点に来るわけですから、私が今お伺いした、実現性はあるのですかというと、これはないんですよ。  私も、早く安全性も確保して、住民の合意も得てそれはしていただきたいというふうに事あるごとに申し上げておりますが、けれども実現性はどうかというと、やはり十分慎重に考えなければいけないので、通産省、資源エネルギー庁の計算しているとおりにはいかないでしょう。ということをもうちょっと視野に入れて、余りこういう原発二十基増設が必要ですというふうな前提条件を出すようなことをして、逆にある意味では不安を与えないでいただきたい。  まさしく、環境庁のAIMモデルでは八基というふうに抑え目にして言っておって、それ以外の分野での前提条件を出しておるわけでありますから、もうちょっとここら辺を現実問題を踏まえて私は議論をしていただきたい。でなければ、原発立地が予想されている住民に対していたずらに地域の不信感、不安感を与えますので、この辺はもうちょっと慎重な情報開示と議論の進め方をしていただきたいということを指摘させていただきます。  さて、以上、政府案というよりも通産省案と環境庁案を比べてまいりましたが、わかりやすく誤解を恐れずに言うならば、新たな国民負担としては、さらなる省エネ努力をするという点では共通しております。違いが出てくるのは、政府案が原発二十基新設で、環境庁案が炭素税の導入であるというふうに色分けできると思います。  二〇一〇年を基準にした場合、どちらが政府がよく言う実現可能な削減案になるのでしょうか。国民世論を前提にするならば明らかであると思います。また、中期的な経済展望をしても、国際競争力に配慮した形の炭素税であれば日本の経済産業構造を変革して新たな経済成長へと導く導火線になることは多くの経済学者が認めるところでもあります。  この質問の最後に、過去の事例を思い出す必要があると思います。我が国の自動車排ガス規制です。  アメリカでは、日本と同じ基準を提案したマスキー法は経済へのマイナス影響が大きいと延期されましたが、日本は実施しました。その結果、短期的に技術開発が進み、ほとんどコスト上昇や失業などのマイナス影響を見ずに排ガス規制が実現できた事実があります。この成功の要因は、第一に技術的基盤があったこと、第二に公的支援がうまくかみ合ったこと、第三に社会的コンセンサスが得られたことと言われております。  これらを考えましても、詳細に分析する時間がないままでありますが、今は炭素税を導入して新技術をより普及させるチャンスであると思います。現在は環境革命の到来という時代であります。それを見据えた大胆な政策の転換を図ってほしい、そしてそのリードオフマンに環境庁がなってこそ環境安全省に値する官庁だと思いますが、この点、大臣はどうお考えですか。
  59. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 大変に環境庁、あるいは今後の環境安全省になるかどうか、いずれにいたしましても、環境を扱う政府機関が従来以上にも頑張らなきゃいかぬという御激励、そしてまた叱咤激励と私は受けとめておりますが、それについてはもちろん私としてもできるだけ全力を尽くしてこれからやらせていただきたい。  それから、先ほどから通産省の方からといいますか、もちろん政府全体としても日本の産業の国際競争力ということについての懸念があると。これは当然、産業界としてはみずからの問題として、また政府としてももちろんそういうことについて全く目を閉じておるということではないわけでありますが、今回のCOP3におきましてもいろいろな国内対策を進めなきゃいかぬということを言っておるわけでございますから、いろいろな数値等々の共通の目標を立てるとともに、各国がそれぞれ国内で強力なる政策を進めると。  ただ、それについては一国だけがするということではなくて、お互いにやっぱりある程度共通の認識を持って、どこか一国だけが非常に国際競争力で不利になるというようなことではなくて、一緒にスタートしょうという考えはCOP3の中にもあるわけでございますので、そういったところを上手にとらえながら、これからまたひとつ日本としての国内対策も強力に進めさせていただきたいと考えております。
  60. 馳浩

    ○馳浩君 続きまして、COP3での日本案が出るまでの決定プロセスについて質問いたします。  私も、ある日突然、党から資料が一枚ファクスされまして知ったという事実です。今回の政府案が決まるまで、与党を含めて広く国民的議論がなされずに密室で決定されたという問題が一点あります。もう一つは、地球温暖化問題が通産省と環境庁の主導権争いに矮小化されたという問題があります。  こういう経緯があったということはそれとして、この問題は継続して審議されるものでありますから、今後国民的議論を踏まえてオープンに削減目標等の議論がされるのか、この点を政府は約束していただけるのか、お聞きしたいと思います。
  61. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  関係省庁におきましても、これまでも審議会を開催するなどいたしまして国民各界各層意見の集約や反映に努力をしてきたところでございますが、今般の日本政府案の策定におきましては、これが外交の基本にかかわる問題であるということ、それから高度の政治的な判断が求められるということから、この七月来、官邸主導で作業が進められ、最終的に総理大臣の御判断を仰いだということでございました。  ただ、その後、官邸に設けられました地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合会議におきましては報告書を先般取りまとめられましたが、その報告書をまとめる上で今回の判断に関する意見も含めて広く国民からヒアリングを実施させていただいたところでございます。また、環境庁といたしましても、昨日、中央環境審議会から、今後の地球温暖化防止対策のあり方に関する検討課題の中間的な取りまとめをいただきましたけれども、現在その中間取りまとめに対する国民の御意見を伺っているところでもございます。  私どもといたしましては、地球温暖化防止対策を進める上で、国民的な議論を反映して実効ある対策が実施されていくことが極めて重要であると考えております。これまでの政府の対応に対する御批判も念頭に置きまして、今後は各界各層の御意見に一層耳を傾けますとともに、国民の判断に必要な情報については積極的にお示しをするように、関係省庁ともども前向きに対応をしてまいりたいと、このように考えております。
  62. 馳浩

    ○馳浩君 これまでの決定プロセスに対する批判があったというのは事実のところでありますので、COP3以降の、削減目標を設定した後の実施のプロセスについての透明なあり方というのをぜひ慎重にしていただきたいということをお願い申し上げて、次の質問に移ります。  新聞によりますと、十月六日に政府案が出されるまでに、九月二十五日、総理への報告を前にしくその数旦別から環境庁と通産省が激しく協議しておられます。協議のあり方が納得できませんので質問いたします。  すなわち、環境庁は、さきにも述べましたAIMモデルをベースに削減案を説明しました。これに対して通産省は、これを批判する形でAIMモデルの信頼性を失わせ、みずからの案の合理性を主張したとあります。これが事実ならば、まさに省益あって国益なしの事態と言えます。  産業部門の情報は所管官庁である通産省が独占しており、信頼に足りるモデルを環境庁がつくろうとしているときは通産省は積極的に情報を提供してこれに協力すべきではなかったか。さらには、共同でプログラムを作成するなり、それもかなわないのならば、少なくとも通産省もモデルをつくり、AIMモデルと比較検討させて、同じ土俵でそのよしあしを決めるべきではなかったのか。このあたりの事実関係を私たちはわかりませんので、その事実関係と同時に、今後AIMモデル改正の際にも、試算を作成するときにどういうふうにお進めになるのか。通産省にお聞きしたいと思います。
  63. 松永和夫

    説明員(松永和夫君) ことしの夏から政府案の決定に至ります間、あるいはもっとそのずっと前から、環境庁、外務省、通産省の三省庁が特に中心になりまして、COP3に向けてどういう政府案、対策を講ずるのかということにつきまして非常に活発に議論を積み重ねてきたというのは御指摘のとおりでございます。ただ、一部の報道にございますような、AIMモデルの信頼性を失わせたというような、そういうようなやりとりがあったわけではないというふうに私どもは承知をしております。  ポイントは、先ほども御説明いたしましたように、温暖化防止対策ということと国民経済の健全な発展ということの両立をどう求めていくのかということにつきまして、いろんな観点から関係各省で意見の積み重ねを行ってきたというふうに考えているわけでございます。  ただ、産業部門につきましての情報を通産省が独占して情報開示をしないというような御批判があるとすれば、そこは十分に私どもも自戒をすべきであるというふうに考えておりまして、今後とも、通産省の中でのいろんな検討結果というものにつきましては広く国民の皆様にもきちんと情報開示をしていくということは当然でございますし、また関係各省とのいろいろな今後の協議の中でもそういう基本的な考え方のもとに対応していきたいというふうに考えております。
  64. 馳浩

    ○馳浩君 今後のことを指摘したわけでありますので、よろしくお願いいたします。  この地球環境問題というのは、モニタリングのあり方とか科学的知見、モデル分析がストレートに政策の決定に結びつく問題と言われておりますので、非常に両省庁の連携を期待するものでありますが、先ほど指摘いたしましたこのAIMモデルに対して、具体的に言うならば、粗鋼生産量、二〇一〇年時点の発電電力量、自動車燃費改善率、低燃費自動車の普及率、電炉比率上昇の各予測について通産省から批判されたわけでありますが、環境庁はどう返答し、どうこの点を国民に御説明なさるのか、伺いたい。  五つはちょっと多いので二つ、私が関心のある点をお聞きしたいのが、自動車燃費改善率、低燃費自動車の普及率、この二点でありまして、どのように通産省から批判を受け、逆にどのように返答して私たちに説明していただけるのか、お願いいたします。
  65. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  ただいま御指摘のございました自動車の燃費改善率あるいは低燃費自動車の普及率ということでございますが、これらはいずれもAIMモデルで検討をいたしました際の検討の前提になるものでございまして、自動車の燃費改善率につきましては私どもでは、昨年あたりから発売がなされております低燃費のガソリン乗用車についてメーカーが明らかにしております性能値を用いたものでございます。また、低燃費自動車の普及率につきましては、先ほども申し上げましたが、炭素一トン当たり三万円の削減費用に相当する政策措置により普及する可能性を示したものでございます。これらの値につきましてはいろいろな見解がございまして、その適否についての議論はございますけれども、モデルに投入する前提として私どもとしては根拠が明確なものを用いたものでございます。  このAIMモデルにつきましては広く公開をしておりまして、各方面の意見も踏まえながら改良を重ねてきているところでございまして、今後とも各方面からの御疑問や御意見には私どもとしても積極的に対応し、不断の努力を払いまして改善を重ねてまいりたい、このように考えているところでございます。
  66. 馳浩

    ○馳浩君 この問題については、例えばハイブリッド車などはAIMモデルには反映されておりませんので、今後の改善の中でより通産省と連携をとりながらいいモデルを出していただいて、それに基づく政策決定をぜひオープンに出していただきたいということをお願い申し上げます。  次に、日本案の修正について質問をさせていただきます。  まず、人類は今後二、三百年間にCO2濃度をどのレベルに安定化させる国際的合意ができつつあるのか。まずこの前提がないことには、先進国途上国間の排出権の衡平の問題とか、現在世代と将来世代の排出権の衡平の問題が議論されていかないと思います。とりわけ、現在の地球環境は将来世代からの借り物という価値判断が必要であるわけでありまして、衆議院でも答弁しておられるようですけれども、改めて、今後二、三百年間、CO2濃度をどのレベルに安定化させるという国際的な合意ができつつあるのか、お聞きしたいと思います。
  67. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  私どもの現在の地球温暖化に対する国際的な取り組みの基礎となっております気候変動枠組み条約の第二条におきまして、この条約の究極的な目的が定められております。第二条によりますと、「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」、これが究極的な目的であるというふうにしております。  問題はこの安定化濃度に関してでございますけれども、現時点では必ずしも明確な科学的知見が得られているわけではございません。しかしながら、京都会議に向けた議定書交渉などにおきまして、大気中の二酸化炭素安定化濃度に関する具体的な目標を設定することが重要ではないか、こういう考え方に基づいて、おおむね産業革命前の水準の二倍に相当いたします五百五十ppmを下回る水準に安定化することが当面の目標になり得るのではないかという認識が現在のところ一般的になりつつあるのではないかというふうに考えております。  ただし、これはあくまでもそうした認識が一般的になりつつあるということでございまして、このことに関する国際的な合意がなされたものではございません。
  68. 馳浩

    ○馳浩君 衆議院での御答弁でも同じようにあるわけですよね。今後、二、三百年の間で平均気温の上昇が二度以内、海面上昇が五十センチ以内となるようにするには五百五十ppmぐらいと。ただ、二度上昇、海面上昇五十センチというのも、これも中程度の予測でありますので、高程度の予測も前提としておかないといけないので、中間的な予測だけではなくて最悪の場合も十分に想定しておいていただきたいということをまず申し上げます。  次に、では五百五十ppmを前提にすると、今後二、三百年の世界の温暖化ガスの総排出量のシナリオが描かれると思います。IPCCはこの点、二つのシナリオを用意しておりますが、これはIPCCの二次レポートにありますけれども、この二つのシナリオについて説明してください。
  69. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  IPCCが一九九五年にまとめました第二次評価報告書におきましては、幾つかの異なる濃度で大気中の二酸化炭素濃度を安定化させるための二酸化炭素排出量の推移を計算しております。この中で、五百五十ppmに安定化するための排出量の経路といたしましては二つのシナリオが作成をされております。  一つは、今後直ちに排出削減努力を開始いたしまして、今後の排出量増加を抑制した上でその後削減を進めていくという経路でございます。もう一つは、早期には余り削減努力はしない、そのために排出量増加をいたしますが、二〇三〇年ないし四〇年ごろから大幅かつ急激な削減を開始する経路でございます。  いずれの場合におきましても、二百年から三百年後には現在よりも大幅に二酸化炭素排出量削減しなければなりませんが、特に後者の、一たんは排出量増加をして二〇三〇年ないし四〇年ごろから大幅かつ急激な削減を開始する経路におきましては、二一五〇年ごろまでかなり急激な排出削減が必要となりますので、このような急激な排出削減が実現可能かどうかという問題があるのではないかと考えております。  また、削減を始める前の数十年間におきまして、二酸化炭素の排出増加による急激な温度上昇が生態系に相当厳しいストレスを与えるということも予測されるわけでございまして、なおまだ科学的な不確実性は相当残ってはおりますけれども、予防原則に立って、合理的に説明可能な限り安全サイドに立った対策を講ずることが望ましいのではないか、このように考えております。
  70. 馳浩

    ○馳浩君 今説明いただいたように、生態系や社会経済系に与える急激な変化を緩和するためには今から始めなければいけない問題ということになると、いただいた資料により、IPCC二次レポートのグラフによりますれば、今からでも緩やかに始めなければ、二一〇〇年以降はがくんと将来世代が削減幅を大きくせざるを得ないという現実なわけでありますから、私はこの点をぜひ踏まえて、合意に向けて数値目標を設定していただきたいと思います。要するに、今回のCOP3は今後五十年間の削減努力のシナリオを作成するための会議と考えてよろしいんですね。
  71. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  いずれにいたしましても、危険のないレベルで大気中の温室効果ガス濃度を安定化させるためには、中長期的には温室効果ガス排出量の大幅な削減が必要でございまして、この場合に、ただいま申し上げましたような二つのシナリオをIPCCは用意しているわけでございますけれども、技術開発が今後どのように進むか、こういった点について不確実性もございますし、先ほど申し上げました急速に温暖化が進むということに伴う未知の危険ということなども考慮をいたしますと、極力早い段階からできる限りの対策に取り組むことが重要だというふうに考えられるわけでございます。  こうした観点に立って、これまでデンバー・サミットや国連環境開発特別総会などで議論が積み重ねられてまいりまして、そうした中で、COP3におきましては当面の削減目標といたしまして意味のある実現可能で衡平であるそういった目標の設定が求められていると、このように考えているところでございます。
  72. 馳浩

    ○馳浩君 大体先行きが見えてきたと思いますが、このグラフを拝見いたしますと、本来ならば、二〇一〇年までは九〇年比で先進国で一〇%から二〇%の削減をしなければならないはずです。これでは先進国間で三・二%削減日本案ではかなり足りないということになります。この点をどう考えるのかがまず一点。  さらに、日本案を前提にして、その後理想のシナリオに戻すためには、二〇二〇年、二〇三〇年とどういう削減先進国はすべきなのか。途上国義務化がなく、共同実施途上国の自主的削減もないと仮定するとどういう最悪のシナリオになるんでしょうか。
  73. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  日本提案におきましては、IPCCの第二次評価報告書を踏まえまして、二酸化炭素の大気中濃度を五五〇ppm以下に保つためには二一〇〇年には世界人口一人当たり排出量を一トン以下にするという長期的な目標を達成することが必要である、こうした考え方を念頭に置きまして、まず先進国削減に踏み込むための着実な第一歩になるものとして提案したものでございます。  この第一歩が確実に刻まれることによりまして技術の進歩も促進され、また社会制度も改められることになるわけでございまして、こうしたことによりまして一層の対策の可能性が高まるわけでございます。二〇一三年以降のいわゆる第二バジェット期におきましては、先進国削減対策が一層進むことが期待できるわけでございます。また、先進国の率先した削減取り組みに呼応いたしまして、将来的には途上国対策に取り組むことになるということが期待されるわけでございまして、そうしたことでさらなる削減がなされるというふうに考えております。  このような道筋が開かれるよう京都会議においてはもちろん、それ以降についても私どもとして引き続き努力してまいりたいと、このように考えております。  二〇二〇年あるいは二〇三〇年にどうなるのか、こういう御指摘でございますが、京都会議での国際的な約束を合意いたしまして、そしてその確実な実施を果たした上で、先進国による二酸化炭素排出量削減に向けた努力をさらに強化すべきである、このように考えておりますが、現在具体的にどのような目標になるのかといったようなことについて申し上げるのには時期尚早ではないか、このように考えております。  我が国といたしましては、一層の削減に向けまして、革新的な技術開発等に取り組むグリーンイニシアチブというものを既にことしのデンバー・サミットあるいは国連環境開発特別総会において橋本総理から国際的に提唱をいただいたところでございます。さらに、地球温暖化防止のためには、先進国が率先して削減することに加えまして、将来的に途上国にも排出抑制、削減に取り組んでいただくことが不可欠でございます。こうした取り組みを促すために、共同実施を含めさまざまな措置を講ずることが必要である、このように考えておりまして、我が国といたしましては、二十一世紀に向けた環境開発支援構想、ISDというイニシアチブを提案いたしまして、環境ODAを中心とした地球温暖化対策に関する途上国の支援を充実させる方針を明らかにしたところでございます。  以上のような措置によりまして、先進国途上国取り組みをお互いの連携を図りつつ高め合って、取り組みが世界的に順次強化されていくように我が国として引き続きリーダーシップを発揮してまいりたい、このように考えております。
  74. 馳浩

    ○馳浩君 午前中最後の質問にしますのでよろしく。  COP2では途上国義務化をしないと決定しておるので、そういった国際的な合意を大事にしなきゃいけないとは思いますが、途上国削減がなければ先進国の負担は大変なものになる。二〇一〇年で先進国途上国排出量で追いつき、二〇三〇年には先進国の二倍になるという数字がもう出ておるわけでありますから、これは途上国に対する削減義務を課す道筋をつけなければいけないのがCOP3の一つの役割ではないかとも思います。具体的に言えば、途上国削減率削減時期といったものについてこれはCOP3でも考えなければいけない。  ぜひ今回のCOP3で、議定書の形ではなくとも、コミュニケの形でもまとめられないんでしょうか。この辺の根回しをしておかないと、これは外交交渉にも関係することかもしれませんが、国際的な合意は得られないと思いますので、この点を今ここで明言すると支障があるかと思いますが、大きな気持ちでこの辺も視野に入れた形で臨んでいただきたいということを申し上げて、御意見をいただきたいと思います。
  75. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 今度の京都会議で、今もまさしく御質問の中にもありましたが、どういう形でということについてはいろいろまだ決まっておりませんけれども、将来に向けて途上国も参加してもらうということは非常に重要な要素でございますので、それに向けて全力を尽くしたいと思っております。
  76. 馳浩

    ○馳浩君 どうもありがとうございました。
  77. 菅野壽

    委員長菅野壽君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午前十一時五十七分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十分開会
  78. 菅野壽

    委員長菅野壽君) ただいまから環境特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公害及び環境保全対策樹立に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  79. 馳浩

    ○馳浩君 休憩前に引き続き、日本政府案の修正について提案を幾つか申し上げたいと思います。  まず、先進国間の共同実施だけではなく、先進国途上国間の共同実施を法的拘束はできないとしても努力義務として議定書で定めていただきたいと思います。  その際、重要なのは、途上国での削減量先進国には一切カウントせず、すべて途上国削減分とすべきであるということです。その理由は、先進国削減目標日本案の上限五%とするわけであり、途上国にとり非常に低いからであります。また、先進国分を経済支援等によって途上国が請け負わされるといったような不公平感も途上国の考え方の中にはあります。  将来世代への配慮を優先する大原則にも資する、こういう点からも、先進国間の共同実施だけでなく、先進国途上国間の共同実施を議定書に何らかの形で定めるような方向をぜひしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  80. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  共同実施についてでございますが、これまでのところこの共同実施につきまして途上国は反対の姿勢でございます。また、先進国の中におきましては、先進国間の共同実施につきましてはおおむね見解の一致がございますけれども、先進国途上国の間の共同実施を含めるかどうかという点につきましては、アメリカはこれを含めるべしと強く主張しておりますけれども、EUはこれについては慎重な姿勢を崩していない、こういう対立がございます。  環境庁といたしましては、共同実施そのものが先進国途上国協力して排出を削減していくための柔軟性のある措置であるということを考慮いたしまして、先進国途上国の対立、あるいは先進国間でも対立が見られるという点にも留意しまして、また現在試験的に共同実施活動というものが実施中でございますけれども、この共同実施活動について二〇〇〇年までにこの評価を行うということになっておりますことにも留意をして、段階的に先進国途上国の間の共同実施が認められていく道筋を引くのが適切なのではないかと考えているところでございます。  なお、途上国における共同実施による削減量につきまして、先進国にはこれをカウントせず途上国削減分とすべきとの御指摘でございますけれども、この共同実施事業に対します投資、これは主として先進国からなされるものと考えておりますが、こうした投資を行うインセンティブがなくなるという点がございまして、米国も含め、そうした点につきましては国際的に受け入れられるかどうか、なかなか困難ではないかと実は考えている次第でございます。  いずれにいたしましても、共同実施につきましては国際的合意を得て実施に移してまいります上でいろいろな課題があることは事実でございまして、先ほど申し述べましたような段階的に実施に移していくという基本的考え方で各国と協議をし、ぜひ京都会議で何らかの形で議定書に盛り込まれるように努力してまいりたいと、このように考えております。
  81. 馳浩

    ○馳浩君 途上国あってこその先進国の発展があり、経済関係があってこそ我々も発展してきたのでありますから、この点は論点の一つとして今後ともぜひ注目をしていただきたい分野であります。  次の質問に移ります。  議定書の中で途上国の区別をすべきであると考えます。韓国、メキシコのOECD加盟国は今後中進国として別途の取り扱いをすることを明記すべきであると考えます。  そして、中国、インドの取り扱いをどうするのか、京都会議でも十分議論していただきたいと思います。とりわけ、中国は九四年で排出量全体の一三・四%を占め、アメリカに次いで第二位でありますし、今後経済大国になることが予測され、同時に排出量も一位になる可能性が高いのでありますから、中国は中進国扱いすべきと思います。いかがでしょうか。今後の中国排出量の予測とともに、この提案について考えてみてください。
  82. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  韓国やメキシコについての御議論がございましたが、これらの国に対しまして直ちに先進国と同様の削減義務を課すことは難しいとは思いますけれども、これらの国々が他の途上国とは異なる何らかの義務を進んで果たすことになるような取り決めを行うべきという提案もなされておりますし、現にベルリン・マンデート・アドホックグループの議長を務めておりますエストラーダ大使の交渉テキスト、これは京都会議に提出を予定しておりますが、この交渉テキストにおきましても、韓国やメキシコといった国名を名指しては挙げてはおりませんが、そうした国々を想定いたしまして、そうした国々の自発的な申し出により一般の途上国とは異なる何らかの義務、排出量に関する義務を果たしていただくようなそういう枠組みを実はエストラーダ議長の提案でも設けているところでございます。  ところで、中国あるいはインドについての御指摘がございました。これらの国々は総排出量は大変大きいことは事実でございます。そのような観点から、地球環境保全上私どもとしても重大な関心を持ってしることも事実でございます。ただ、これらの国々は先進国や韓国あるいはメキシコなどと比べまして一人当たりの排出量で見てまいりますとまだ大変低いレベルにあるということでございますので、果たして他の途上国と区別して扱うことができるかどうか、なかなかこれは困難なところがあるのではないか。御案内のとおり、ベルリン・マンデートにおきましても、途上国には新たな義務は課さない、こういうことが決定されているわけでございます。そうした点との関連でどのように中国やインドのような大排出国の扱いを検討していくのか、大きな課題であると認識をしております。  いずれにいたしましても、従来のとおり先進国途上国を二つに分けるというようなそういう考え方はこの際改めて、京都議定書にはいわゆる中進国に対しては少なくとも途上国より厳しい義務を進んで引き受けてもらうための規定を設ける方向で議論が現に進められておりますし、我が国としてもそうした考え方に賛同してその実現に向けて働きかけてまいりたいと考えております。  なお、中国の将来排出量についての御質問がございました。この点につきましては、国立環境研究所と中国エネルギー研究所が共同で行った予測の事例を見てまいりますと、二〇一〇年には一九九〇年に比べ約一四四%ほど増加する結果となっております。一四四%の増加ということでございますから倍率にいたしまして約二・四倍余りと、こういうことでございます。
  83. 馳浩

    ○馳浩君 今のところ、最後の一点なんですけれども、中国等の途上国排出量の将来予測はしなくてよいことになっているらしいんですね。やっぱり十分な将来予測の義務をまず中国等に求めるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  84. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  現在、既に条約上のすべての締約国に課せられる義務、これは当然途上国を含めてでございますが、途上国を含むすべての締約国の義務といたしまして、国別報告書の作成と公表、地球温暖化対策計画の策定と実施が求められておりまして、京都会議におきましてもこうした既存の義務のより明確化、具体化が課題となっております。  その中で、御指摘の将来予測の実施でございますが、こうしたことの実施を求めていくといったことも考えられておりまして、我が国としても内実のある国際合意の形成がなされますようにその方向で力を尽くしてまいりたいと、このように考えております。
  85. 馳浩

    ○馳浩君 次に、削減目標について質問いたします。  日本案は上限五%を最低基準値にしておりまして、GDP当たりの排出量、一人当たりの排出量、さらには人口増加率による国別の差異化は認めておりますが、これによりまして五%未満に削減率が下がる国が出てきます。これを認める趣旨は、一般に他国に比べて省エネに取り組んでいる国の実績を評価して設けられたものと言われておりますが、人口増加率はその趣旨に含まれない基準と思いますが、いかがでしょうか。
  86. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  我が国提案をいたしましたその際に、差異化の問題につきましては、まず第一点として、科学的検証に基づいて各国間の衡平性をできるだけ確保する、第二点といたしまして、交渉が進展しやすいように方式が簡単であるということ、第三点といたしまして、できるだけ多くの国が受け入れ可能であること、こうした三点を可能な限り満たすように検討を続けてきたところでございます。その結果といたしまして、一人当たり排出量、それからGDP当たり排出量、そして人口増加の三つの指標を用いまして差異化をするという提案をしたわけでございます。  人口増加率による差異化についての御指摘でございますが、私どもは、やはり一人当たりの排出量を長期的には減少させていくということが衡平性を確保する上で重要だと考えておりまして、こうした一人当たり排出量の減少を相殺するような人口の社会増などによる急激な増加がある場合には、排出総量の削減幅が他国よりも多少少なくなってもある程度は許容されるべきであると考えているわけでございます。  いずれにいたしましても、我が国の考え方は、考慮すべき事情のある国に対して差異化によって現実的で実行可能な目標を与えようとするものでございまして、我が国提案に対する各方面の理解を求めていきたいと考えているところでございます。
  87. 馳浩

    ○馳浩君 この人口増加による差異化の衡平性というのは私は認めないわけであります。なぜかと言いますれば、例えばAとBという両国がありまして、どちらも人口増加率が同じであるとした場合に、Aという国は省エネ等をして、あるいは炭素税を導入するなどして削減努力をしているということで三%の削減率を課せられたとする、ところがB国は何にも努力しないで出しつ放しと、同じような人口増加率であるにもかかわらず、省エネの努力をしているかいないかによって一方は三%になり一方は二%になるというふうな差も出てくるわけでありまして、悪い言い方をすれば、削減努力がうまくいかなくなれば意図的に人口を増加させればよくなり、極めて乱用される危険がある基準であると思います。そういう観点からもこの人口増加率というのは撤回すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  88. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  先ほども申し述べましたが、我が国提案は、二酸化炭素排出量を二一〇〇年に世界人口一人当たり一トン以下という長期的な目標に向かって着実に削減を進めていくという考え方のもとに提案されたものでございます。したがって、こうした長期的には人口一人当たりの排出量を非常に低いレベルに抑えていこうという基本的な考え方のもとでは、一人当たり排出量削減されておりますれば、社会増などによる急激な人口増のために排出量削減幅が他国より多少小さくなったといたしましてもある程度は受容されるべきものではないだろうかと考えております。  このような意味で人口増加を指標とした差異化提案したものでございますが、衡平性の観点から問題があるのではないかという御指摘でございますけれども、私どもは削減目標を緩くするためにあえて人口増加を図ろうとする先進国があるとは考えておりませんで、そういう意味で乱用のおそれはないのではないかと考えております。  いずれにいたしましても、日本政府の提案では、人口増加を指標とした場合の削減率について、具体的算定方法は今後確立されるべきものとしております。差異化目標をそもそも採択するかどうか、あるいは差異化目標の具体的な設定をどうするかということにつきましてはこれからの国際交渉事項でございまして、その帰趨はもちろん予断できないわけでございますが、仮に差異化目標の具体的手法を具体的に考えていこうという場合には、衡平性についての懸念が生じないように慎重に検討をしてまいりたいと、このように考えております。
  89. 馳浩

    ○馳浩君 次に、修正の方向について三点お伺いいたします。  一点目は、EU案、途上国案、アメリカ案等々、日本削減目標というのはなかなかまとまり切っておりませんが、もしまとまらなければ二〇一三年から一七年の削減目標も立てるべきではないかというまず御指摘。  もう一つは、十一月十五日の毎日新聞に出ておりましたが、これは政府案修正の方向で基準年の変更、九〇年を九四年にする、削減基準を二〇〇八年から二〇一二年で九四年比で九%削減するというふうなショッキングな報道がありましたが、これは信頼すべき筋からの情報というふうに新聞にも出ておりましたので、これまた我々の知らないところで勝手に政府案が変えられているのかというふうな心配もありますので、これについてのコメントをいただきたいと思います。このとおりなんですか。
  90. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 今の毎日新聞の記事は、私どもがいろんな議論をしている中で、基準年をどうするかというような議論は確かにあります。しかし、日本政府が今の段階でこれを日本政府案として考慮しておるということは全く根拠がありません。これは、私からも関係方面にそのようにはっきりと申し上げました。  それから、これからどういうふうに意見を取りまとめていくかということでありますが、今のところ、たまたま具体的に議論になっているのが二〇〇八年から一二年あたりでその数値目標を議論しておりますけれども、もちろん今後のことも考慮しなければいけない。例えばアメリカなんかが第一バジェット、第二バジェットということを言っておりまして、二〇一三年以降のことについても今後議論しようという話にはなっているわけです。ただ、今二〇一二年までのところをちょっとうまくいかないからすぐに一三年以降のことについて話を移そうと、こういうことではございませんので、あくまで全体の姿の中でこれから最終的に取りまとめてまいりたい、そういうふうに考えております。
  91. 馳浩

    ○馳浩君 わかりました。誤解が解けました。  日本案によれば、日本は九〇年比で二・五%の削減目標となりますが、現在の政府の積算によれば、エネルギー由来のCO2でゼロ%、エネルギー以外のCO2、メタン亜酸化窒素を加えても〇・五%しか九〇年比で削減されない積算しか出ておりません。つまり、二・五%の削減目標があるのに〇・五%しか削減できる見込みが立っていないわけであります。残り二%分をどうするのか。聞くところによると、二%分は柔軟性を持たせる考えであるというようですが、この柔軟性とは何でしょうか、わかりづらいので説明してください。
  92. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  各国に課されます数値目標は二〇一〇年ごろを目標にしている、二〇〇八年から二〇一二年、こういうことでございます。その時期に至りますまでの間に技術革新あるいはエネルギーの事情、それから産業構造の変化、こういったものがどのようになるか、このようないろいろな要因によって数値目標は規定される性格を持っているわけでございますから、そういうことを前提とした上で、そういう要素が変動する中で極力高い目標を掲げようという、そういう考え方に基づくものでございます。  したがいまして、こうした現在予見できない不確定な要素によって規定される部分、これは我が国の例に照らしますと大体二%程度と考えておりますが、この部分につきましては、最大限の努力を行ったといたしましてもこうした事情によりまして目標が達成できない場合に、漫然として努力を欠いた場合の目標非達成の場合とは区別をいたしまして、直ちに議定書違反とはすべきではない、こういう趣旨でございます。
  93. 馳浩

    ○馳浩君 議定書違反とはできないというようでありますが、簡単な問題ですけれども、達成できなきやどうするのかという問題です。せめて今回の京都会議に参加した国々の中で査察団でもつくって今後の基準をチェックするような、そういう機構も必要なのではないかという気がいたしますが、いかがでしょうか。
  94. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) 現在、先ほど述べましたベルリン・マンデート・アドホックグループのエストラーダ議長が提案をしております交渉テキストにおきましても、目標が定められ、そしてその実施状況について締約国会合というものがチェックをしていくことになるわけであります。各締約国から所要の情報の提出を求めまして、その提出された情報を専門家から成る審査チームが審査いたします。その結果の報告書が締約国会合に提出をされる、そしてその提出を受けて締約国会合でその各締約国の実施の状況について詳しくチェックをしていくというようなシステムが提案されているわけでございます。  こうした中で各国の目標に向けての取り組み努力がチェックをされていくということになろうかと思いますので、そうした中で各国が真剣に努力をしているか、あるいは漫然としているかというようなことにつきましても含めまして評価をされていくことになろうかと考えております。
  95. 馳浩

    ○馳浩君 達成目標が達成されなければ制裁措置はどうなるんでしょうか。
  96. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) 制裁措置につきましては、現在まだ十分議論が収れんしておりませんで、エストラーダ議長のテキストにおいても明記がされていないところでございますけれども、これまでに出てまいりました提案といたしましては、排出権の国際取引あるいは共同実施といったものを実施できる権利、これを制限するというような考え方が例えばアメリカから提案されております。また我が国からは、対策努力の内容をレビューし、それを踏まえて対策強化を勧告するといったようなことが考えられるのではないかといった提案もなされておりますが、先ほど申し上げましたとおり、まだ議論が収れんしておりませんで、具体的な内容についてはさらに今後検討が必要な状況になっております。
  97. 馳浩

    ○馳浩君 重要な聞きたい点を一点。  バスケット方式にするのかガス・バイ・ガス方式にするのかという問題です。この点、バスケットに入れるような形で温室効果ガス、窒素、亜酸化ガス、CO2、一緒にやるのではなくて、そういうバスケット方式ではなくガス・バイ・ガスでやるべきだと私は思います。なぜならば一番排出量が多く影響も大きいCO2をこそ実際には削減しなきゃいけないという観点があるわけでありますから、この点はいかがでしょうか。
  98. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) 二酸化炭素が最も寄与の大きい温室効果ガスであるということは御指摘のとおりでございまして、これをまず削減していかなければいけないというお考えについては私どもも全く同様でございます。ただ、現在国際的にもバスケット方式というものが多くの先進国から支持をされておりますが、それは、その採用によりましてそれぞれのガスが有する温暖化への寄与度を考慮した上で講じやすいところから対策を行っていくことが可能であるという意味で、対策柔軟性を与えるという点でバスケット方式がすぐれているということでございまして、そういうことで我が国もバスケット方式を提案しているということでございます。御趣旨は大変よくわかりますし、私どもとしてまずCO2対策を優先して講じていきたいと思っておりますけれども、いろいろな議定書上の取り扱いということにつきまして二酸化炭素だけでこれを行うというのは必ずしも適切ではないのではないか、このように考えております。
  99. 馳浩

    ○馳浩君 今の点に加えて、森林や農地や草地やあるいは植林などによりましてのネット方式、CO2吸収源をも計算に入れたこのネット方式としても対策としてはやるべきだと思いますので、今回は入っておりませんが、今後日本としてより一層の科学的知見を積み重ねて、この点も問題点があるということをぜひ引き続き注視していただきたいということを思います。  最後に、要は日本案を修正してでも合意に臨んでいただきたいという私の希望がありますので、大臣の御決意をいただいて私の質問を終わります。
  100. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 先ほども御説明申し上げたと思いますけれども、日本案というのは、できるだけ多くの国が参加してもらってこのCOP3をとにかく合意に至りたいということが一つ、それから日本としてももちろんこれはやっぱり自分ができないことを絵にかいたもちを出してはいけないということから、ある程度現実的なものとして出すという二つの考慮がございますが、あくまでもこれは現段階における交渉一つの基礎として出したものでございますから、今後の交渉によりましてまた各国等の意見も十分に取り入れてできるだけいいものをつくる、そういう意味におきましては当然日本案の修正というものは必要があれば考えるという体制でございますので、そのように御理解いただきたいと思います。  ありがとうございました。
  101. 馳浩

    ○馳浩君 ありがとうございました。
  102. 高野博師

    ○高野博師君 平成会の高野でございます。  きょうはダイオキシンの問題について、これまでもいろんな委員会で取り上げられて議論もされてきたんですが、自分は所沢に住んでおりまして、特に問題が深刻化しているということもあります。それから市民運動も盛んでありますので、この問題について幾つか長官と関係省庁に問いたいと思います。  まず最初に、大木環境庁長官にダイオキシン問題についての現状認識をお伺いいたします。
  103. 大木浩

    国務大臣大木浩君) いろいろな環境問題がたくさん出ておりますが、このダイオキシン問題というのは今一番、何と申しますか、目前に迫って、早く解決を迫られているという問題だというふうに理解をしております。私もいろいろなところへ行って環境庁長官として御意見を伺っておるので、たまたま今地球の温暖化の問題もありますが、このダイオキシン問題というのはもっとじかに関係の地域、関係の人々にとっては関心事項でございますから、それはそのとおり早くひとつ対策をしなきゃいかぬということで、関係省庁、厚生、労働、農水等々ありますから、そういったところとも協力して、本年九月にはダイオキシン類総合調査検討会というのも設置して、これからひとつ強力に対策を考えてまいりたいというふうに考えております。
  104. 高野博師

    ○高野博師君 私のこの問題についての認識は、地球温暖化の問題は今長官の言われたとおりでありますが、まさにこの問題はグローバルな国際的ないわばマクロの問題であると思うんですが、一方、ダイオキシンの問題というのは我々の生活環境に密着したいわばミクロの世界の問題であろうと思います。しかし、いずれも我々の健康とか環境に重大な影響を及ぼす、いわば生存権が脅かされているような状況にある、そしてこの二つの問題は我々自身が被害者であると同時に加害者にもなっているという、そういうところに共通点があると思います。そして、このダイオキシンの問題、この汚染の問題は一刻の猶予もならないほど深刻化している。緊急の対応策をとらなければ取り返しのつかない重大な事態になるのではないか、私はそう認識しております。  ところで、実は私、地元の埼玉県内の東松山とか小川町の方面に行ったときに、地域の住民の方から、最近槻川とか都幾川で魚の異常とか奇形が見られるので、川の汚染状況について心配なので調査してほしいという要望がありました。具体的には、二センチほどのザリガニに足がないとか、あるいは魚の、これはウグイとかハヤですが、体じゆうに黒い斑点があるとかあるいは目玉が飛び出しているとか、こういう魚が時々見られるということであります。環境庁は八五年から国内の河川の汚染状況について調査していると思うんですが、魚あるいは貝類等の異常や奇形についての情報あるいは調査結果について持っておられるのかどうか、お伺いいたします。
  105. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 三点お答えいたします。  まず、槻川、都幾川の水質の状況でありますけれども、化学物質を中心とした健康項目、これにつきましては、過去三カ年間水質はすべて基準をクリアしております。それからBOD、生物化学的酸素要求量を中心とした生活環境項目につきましては、槻川はB類型でやや基準を充足していない、それから都幾川はA類型で基準を充足しているというふうな状況にございます。  それから二点目でありますけれども、今御指摘がございました奇形の問題につきましては、県と東松山市に確認をいたしましたが、県、市にはそういった情報が入っていないそうでございます。私は、やはり先生の御指摘がありましたように、この種の問題は、これからエンドクリンの問題、環境ホルモンと言ってもいいと思いますけれども、そういうこととも関係をいたしますので、もう少しっぷさに事情をお教えいただいて、必要に応じ県、市と協力しながら調査をしたいと考えております。  それから三点目でございますけれども、化学物質の中にはこれから基準づくりの対象にしていかなければならないものもございますので、昨年の秋以来、検討会を設けてどういうふうな方向でやるかということを議論してまいりました。今、中央環境審議会にこれから先基準をつくって規制をしていくべき化学物質というのを審議を諮問しておりますので、そういったことも踏まえていきたいと思っておりますし、この研究会の報告の中には、水生生物も含めた生物の生態系というものも水質という観点から考えるべきであるという中間報告もいただいておりますので、そうしたことも検討していきたいというふうに考えております。
  106. 高野博師

    ○高野博師君 魚の奇形等については、小さい魚はほぼ一年とか二年しか生きられない魚でありますから、たまたま生きている状態でたまたまそこを通った人が発見したということで、実際には相当数が発生しているのではないかと私は思うんですが、今の調査の方法、やり方を含めて私は甘いのではないかなという印象を持っております。それで、ダイオキシンとの関係で、因果関係というのはすぐには出ないと思いますけれども、これはできるだけ詳細な調査をやっていただきたい、そう要望いたします。  ところで、ダイオキシンの汚染、被害の恐ろしさというのは、御承知のとおり、ベトナム戦争当時の枯れ葉剤による被害、あるいは一九七六年のイタリアのセヴェソ市の工場の爆発事件、このときの被害等が挙げられますが、政府はベトナムでのダイオキシン問題の実態についての情報を有しているのか、何らかの調査をしたのかどうか、お伺いいたします。
  107. 野村瞭

    政府委員(野村瞭君) ベトナムでの汚染の状況についての認識でございますけれども、これはもう御案内のとおりでございますが、ベトナム戦争におきまして一九六二年から七一年まで米軍の枯れ葉剤散布作戦というのが続けられたわけでございますが、ことしの五月に私ども環境庁で設置をいたしましたダイオキシンリスク評価検討会におきましてこの問題についても議論がなされまして、その報告書において記載をされているわけでございますが、ベトナム戦争につきましては、米国においてベトナム戦争退役軍人の子供の出生異常の解析をした結果、枯れ葉剤の暴露とその子供にあらわれた脊椎の奇形のリスクの増加との関連が示唆をされているというように記載をされているところでございます。
  108. 高野博師

    ○高野博師君 ほとんど調査をしていないんだろうと私は思うんですが、このダイオキシンの問題というのはもう二十年前から日本で問題になっている。そういう中で今までちゃんとした調査もやってこないというのは私は問題があるんではないか、行政の責任ということが言えるんではないかと思うんですが、私は実際に写真を持っておりますので一部紹介したいと思います。余り生々しいので、ためらったのでありますが、やはりこういう実態を知ってもらうということが大事だろうと思いまして、きょう持ってまいりました。(写真を示す)  これは十四歳の女の子ですが、体じゆうに黒いあざができておりまして、ここに体毛が生えている。それから、これは四人の子供ですが、全員目が見えません。この一人の子は目が実際に飛び出ている。ここにある、これは大きくした写真ですが、これが九歳の男の子で目が飛び出しております。それからもう一つ、これは女の子ですが、黒い斑点が体じゆうにできております。これは足であります。それから、これは十六歳と十八歳の子供ですが、生まれながらにして白痴だと。歩くこともできません。それから、これは有名なツーズー病院の中のホルマリン漬けの胎児であります。これも同じ病院のホルマリン漬けであります。これも同じであります。皆奇形であります。これは水頭症の子供であります。それから、これはこの病院にいた子供さんですが、手と足が奇形であります。それから、これは両手と足がない子供さんであります。これは水頭症の二歳ぐらいの子供であります。これも同じであります。  まさに目を覆わんばかりの悲惨な姿でありますが、こういう問題についてやはりきちんとダイオキシンの恐ろしさというものを国民に知らせるという、そういう認識してもらうということは国の責任ではないかと私は思うのであります。要するに、正確な情報を与えるということは政府のアカウンタビリティーということが言えるんではないかと思うんですが、このダイオキシンの問題については、アカゲザルを使っての動物実験ということで発がん性とか免疫異常とか、あるいはダイオキシンは環境エストロゲンとも言われて生殖機能の異常等を引き起こす、あるいは催奇性等の情報、こういうものがあるということについてもっと具体的に公表して、そして広報すべきではないかと私は思います。  ところで、我が国の、このダイオキシンの問題の関連で一般焼却場とか産廃焼却炉あるいは家庭用の簡易焼却炉、学校の焼却炉、これは廃止されますけれども、野焼き等と、さまざまな形で国全体として年間どのぐらいのダイオキシン量が排出されているか、これの試算というものはあるんでしょうか。
  109. 野村瞭

    政府委員(野村瞭君) ダイオキシンの発生源といたしましては、今御指摘ございましたように、廃棄物の焼却施設でありますとか金属の製錬施設などが主要なものとして報告をされておるわけでございます。このような量的に分析、集計をしたものがあるわけでございますけれども、これによりますと、年間の排出量全体でございますけれども、約五千百グラムから五千三百グラムと見積むられておりまして、このうち燃焼工程から排出入れるものがほとんどを占めるということになっております。  若干中身、内訳を申し上げますと、排出割合下ございますけれども、一般廃棄物焼却施設が約八〇%、産業廃棄物焼却施設が約一〇%、金属の製錬施設が約五%といった試算が現在のところござ  います。
  110. 高野博師

    ○高野博師君 今のお話だと年間五・数キロということでありますが、学者によっては年間十五キロぐらい排出されているんではないかということも言われておりまして、この十五キロあるいはまた五キロにしても、十五キロの場合はベトナム戦争当時のダイオキシン総量の約十分の一と、こう言われておりまして、このダイオキシンの猛毒性はもう周知のとおりでありまして、サリンの二倍とも言われる。十二キロあれば日本国民全員の致死量に匹敵するとも言われております。  今の五・数キロにしても、このダイオキシンの問題はもう二十年以上たっているわけですから、ベトナム戦争当時のダイオキシン総量以上のものが日本全国にあるということが言えると思うんです。そうなると、我々は当時のベトナムに住んでいるのとほぼ同じような状況に置かれている、あるいは恐らくそれ以上ではないかと思うんです。とすると、ベトナムで起きているようないろんな問題、この奇形の問題とか流産とかあるいはがんとか、いろんな問題が既に発生しているんではないかという推測ができるのであります。これが自然な疑問だと私は思います。  それで、ダイオキシンとの因果関係は別としても、最近地域によっては催奇性の赤ん坊が生まれているというような情報を持っておられるのかどうか、お伺いいたします。
  111. 野村瞭

    政府委員(野村瞭君) 先ほどからダイオキシンの暴露による被害のお話が御指摘を受けているわけでございますが、ベトナム戦争における枯れ葉剤としての使用は非常に短期の間に大量に散布をしたという条件がございます。  今、私どもこれから考えなけりゃならないのは、そういう特殊な状況下ではなくて、先ほど申しましたように、焼却施設等からダイオキシンが排出されるわけでございますが、これは確かに欧米先進国等から比べて我が国は大変ごみの焼却の割合が多いということもございますし、そういう意味で迅速な対応をしていかなければならないわけでございますが、ただ、ベトナム戦争で見られるような大量に短期に排出するというような状況ではないわけでございます、これまでもそういうことだったと思いますけれども。  したがいまして、奇形がどのくらい出ているかどうかということにつきましても、これまでそういう意識を持っておりませんでしたのでデータを持っておりませんが、ただ、これからきちんとそういうデータも集めていかなければならないということで、奇形だけではございませんけれども、ダイオキシンによる人の汚染状況を把握しなければならないということで、厚生省ともども検討会、総合的な検討をする場を持ちまして現在具体的な中身を詰めているということでございます。
  112. 高野博師

    ○高野博師君 今の環境庁の発言は大変問題があると思います。なぜかといいますと、短期のうちにベトナムの場合はまかれたといいますが、ダイオキシンそのものは難分解性でありますから蓄積性があるんです。したがって、年間数キロ、五キロとか十キロ、十五キロという排出量があれば同じような状況になるということは、これは認識を改めなくちゃいかぬと私は思います。  そこで、まずこの問題で、実際に被害が出てきてからではもう手おくれだと、私はそう思うのでありますが、犠牲者が出てからでは手おくれだという認識について長官にお伺いいたします。
  113. 大木浩

    国務大臣大木浩君) これはダイオキシンに限らず、私も環境庁長官になりましてからいろいろなところで感じておるんですが、危機管理と申しますか、非常に緊急に措置をとる必要が出たときにどういうことができるかということについては、正直申し上げますが、これはまだそういう体制が不十分であるという感じを私は持っております。  その辺のところは、言うなれば私は環境行政がまだそこのところが空白というか欠落というか、ところがあると思いますので、もちろん関係各省といろいろと協議をしながらという、常に答弁に出てくるんですが、そういった問題も含めてもう少し強化しなきゃいかぬということは私自身が痛切に感じております。
  114. 高野博師

    ○高野博師君 この問題について、それでは、私地元の埼玉県の所沢に住んでいるんですが、そのある地域について独自の調査をいたしました。その結果について取り上げたいと思うんですが、プライバシーの問題もありますのでお名前については一切出さないことにしたいと思いますが、地元の市会議員さん等にも協力をいただきました。  この地域は有名なくぬぎ山から約四キロぐらいの地点にありまして、半径五百メートル以内に住む七十三世帯の方を対象としておりますが、その中で、最近一、二年以内に子供を産んだ女性六人のうち五人全員が流産をしております。一人が催奇性というか、いわゆる奇形の赤ちゃんを出産するという大変にショッキングな結果でありました。  ことしの六月に左手首のない女の子を産んだ女性は、狭山市に二十年住んでおられて、その後結婚されて所沢に住んでから二年になる方でありますが、親戚とかあるいはそういう関係の方に催奇性の人は一人もいない、本人は薬も飲んでいない、たばこも飲まないという方でありますが、本人の許可をもらいまして写真も撮らせていただきました。公表してもいいという許可もいただいておりますのでここに公表したいと思います。(写真を示す)これが左手の手首からない状態であります。同じですが、かすかに指がございます。これも同じであります。ちょうどはいはいをする時期になって、左の手が支え切れなくて転がっちゃうというようなことを言いながら、この御婦人は泣きながら訴えておりました。  それから、もう一人の方は長男が口蓋裂というかいわゆる三つ口の子供であります。二番目を流産した、三番目の子は無事出産したと。口蓋裂の子供さんについては、もう既に数回手術をしていると。成長とともにまた何回か手術をしなくてはいけないということで母親は大変苦しんでおりまして、私もその長男の子供さんには会ってまいりました。  また、ある女性は、ことしの五月に流産した、現在妊娠二カ月である、しかし流産するおそれがあるので医者から安静をとるように言われている、薬も飲んでいる、大変不安な毎日を送っているということであります。さらにもう一人の女性は、昨年三月に浦和からこの地域に引っ越してきた、ことし八月に妊娠して間もなく流産したと。  これらの女性に私は直接会って話を聞いてまいりました。この地域に大体数年から十年ぐらい住んでいる方たちでありますが、彼女たちの話によりますと、通っているある病院では、ことし半年間だけで十数例の催奇性の子供が生まれている、あるいは中絶をされているということでありました。具体的には、両腕がないということがおなかにいる間にわかったので中絶をしたケース。いわゆる多重奇形で、食道閉鎖とペニスがないという新生児でありまして、直ちに手術を受けたというケースがあります。また、肛門がなくて人工肛門をつけているという、さまざまな実態であります。  問題は、催奇性の子供さんが生まれた場合に、親御さんはできるだけこれを隠したいという心理が働きますし、また病院側も、流産が多いとかあるいは奇形児が生まれたというようなことについては、病院の評判にもかかわるということがありましてなかなか公表したくないという事情がありまして、実態をつかむのは難しいという実情にあります。  そこで、ダイオキシンとの因果関係調査をやらなければいけないと思うんですが、ダイオキシンが原因でないとしても、これはやっぱり異常な事態であると思います。母乳にダイオキシンが含まれているということについて、赤ちゃんが大人の十三倍ほどダイオキシンを吸収している、極めて危険だというような指摘はいろんなマスコミ等にも報道されておりますが、私はそれ以前の、妊娠中の母体が最も危険にさらされているんではないかなと、これは推測の域を出ませんけれどもそう思っております。  くぬぎ山については私も視察に行ったことがあります。これは何度も国会でも取り上げられておりますので繰り返しは避けたいと思うんですが、ドイツでは全国で六十カ所に産業廃棄物の施設がある。アメリカは百五十二カ所。このくぬぎ山については五十キロ平方メートル以内に五十カ所もある。一日五百トンから千五百トンもの廃棄物が焼かれていると推定されます。昨年までの総焼却量は百万トンから三百万トンに達すると。ダイオキシンの発生量は四百グラムから千二百グラムに上ると推定されておりまして、これは八百万人から二千四百万人の致死量に匹敵するとも言われております。これは非常に重大な危機的な状況にあると私は思います。  ところで、催奇性の新生児とか流産の問題は、このくぬぎ山の焼却場で発生するダイオキシンと因果関係があるのかどうか、これは緊急に調査すべきではないかと思うんですが、この件について長官と厚生省に簡単にお伺いいたします。
  115. 野村瞭

    政府委員(野村瞭君) 先に私からお答えをさせていただきたいと思います。  今初めてお聞きした話でございますが、当然のことながら問題意識を持たざるを得ないということでございます。  ただ、これはあくまでも一般論でございますけれども、ある地域の集団で流産でありますとか奇形が多発をしているという判断をいたすためには、多くの関連情報が必要になってくるわけでございます。例えば、これはあくまでもプライバシーを保護するという前提でございますけれども、妊婦さんの年齢でありますとか、奇形がどういう種類のものであったとか、あるいは妊婦さんの職業でありますとか、それからどういう医療機関で診断を受けたのかどうか。それから、当然この地区とその他の対照地区との比較もしなきゃならぬということが情報として必要になってくるのではないかと思います。  先ほど申し上げましたように初めてお聞きした話でございますが、ここでなかなか全部はお話しいただけないかと思いますので、後ほどでも結構でございますのでぜひ、限界もあるでしょうけれども、詳細な情報をいただければ、埼玉県なり関係自治体、それから厚生省とも連絡をとりながら専門の先生方にも聞いてみたいと思っております。
  116. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) ダイオキシンの関係に関しましては、国民の健康に重大な影響を及ぼすということで早急な取り組みが求められているわけでございますが、ダイオキシンがどういう影響を及ぼすかということについてはいろんな御指摘がございます。  私どもといたしましては、以前より専門家の御意見を聞いてきたところではございますが、総合的な調査検討をいたしますために、平成九年十月にダイオキシン類総合研究検討会議を設置いたしまして、汚染状況を把握いたしまして、その人体に対します健康影響を評価いたしますために、食品に関する調査、あるいは母乳、血液等の人体の汚染状況調査というふうなこと等を実施することといたしておりまして、これらをとりあえず五年をめどに強力に推進をしてまいりたいと考えております。  それから、今、環境庁の方から御答弁がございましたけれども、先生指摘の流産あるいは異常出産等につきましては、そういう点がどうなっているのかということを現在埼玉県に資料をお願いいたしておりますが、今環境庁の方から御答弁がありましたように、私どもも先生お持ちの資料を利用させていただけるのであれば、関係する資料を突合しながら、専門家の御意見を聞いてまいりたいと考えているところでございます。
  117. 高野博師

    ○高野博師君 全然前向きな答弁ではありませんが、いずれにしても調査はやるという理解でよろしいでしょうか。  今、環境庁の方で年齢の問題とか言っておりましたけれども、これは二十代から三十代前半ぐらいの女性であります、すべて。それから医療機関については、もちろんちゃんとした病院であります、名前は挙げませんけれども。もうほとんどほかの理由は考えられません。  今、厚生省の方で、検討委員会で五年をめどにというような悠長なことを言っておりますが、これは非常にもっと危機感を持ってやっていただきたいと私は思います。今のままでいきますと大変な事態になると私は思っておりまして、行政の責任問題あるいは訴訟問題というようなことは当然起こり得ると私は思うのでありますが、そのときの国家賠償等の問題になるおそれがあるということも指摘しておきたいと思います。サリドマイド禍とか薬害エイズとか、こういう問題の二の舞になるおそれが私は十分あると思います。  ここに出席されている政府委員の皆さんは、できれば、この五年をめどと言っておられますので、五年間ぐらいくぬぎ山の近くに住んでもらいたい。そして、今私が持っている写真のコピーでも壁にかけて見ながら、じっくり考えていただきたいと、私はそう思います。  このくぬぎ山周辺の所沢とか狭山とかあるいは入間とか三芳とか、周辺の病院、特に産婦人科に対して、新生児の問題あるいは流産、中絶等の実態について、緊急にそれだけでも調査すべきではないかと思うんですが、その点についてもう一度確認しておきたいと思います。
  118. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 御指摘の点を含めまして、早急に埼玉県の方に照会をいたしまして資料を取り寄せたいと考えております。
  119. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 今、とりあえず厚生省の方で調査をしていただくということでございますが、先ほどから私が申し上げておるとおり、これは一般論として申し上げますけれども、環境行政でも非常に緊急性で何かすぐに手を打たなきゃいかぬというときになかなか打ててないというのは、先ほど私が申し上げたようなことがいろんなところで起きておると思いますので、本件も実際に今そういうお話でありますから、非常に緊急性があると思いますので、厚生省ともどもに十分に注意してまいりたいと思っております。
  120. 高野博師

    ○高野博師君 私が先ほど取り上げました川魚の奇形の問題とか、この所沢市の催奇性の問題、これがベトナムで発生したあの被害状況の事例と余りにも酷似しているということを強調したいのでありまして、ダイオキシンの発がん性については、もうこれはWHOが発がん性があるというのは認定しております。しかし、催奇性について言えば、このベトナムとかあるいはイタリアのセヴェソ市等の事例もあって、究明あるいは調査の手がかりというのはっかみやすいのではないかなと、私はそう思っております。  繰り返しますが、日本全国で既に相当数の問題の赤ちゃんが生まれているんではないかなと私は懸念しておりまして、このダイオキシンの問題というのは、放置しておけば対応がおくれるほどこれはもう大変な事態になる、そしてまた、我々の次の世代にとっては恐るべき事態になると、私は警告しておきたいと思います。  ところで、日本国内には一般焼却場が千六百、産廃焼却場が一千八百カ所、家庭の簡易焼却炉等を含めると十万ぐらいあると。これは世界のごみ焼却炉の七割が日本にあるとも言われております。この焼却炉については後で取り上げますが、現実に今最大の問題は焼却灰の処分であります。  この焼却灰については、飛灰も含めて相当のダイオキシンが含まれていると言われているわけでありますが、全国で今ある一般廃棄物の処分場、焼却灰の処分場が二千三百カ所あると。そのうちいわゆる素掘りという、土の中に穴を掘っただけで捨てているという状況が一千二百カ所以上もあると言われておりますが、実態はどうなっているんでしょうか。
  121. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 市町村のような一般廃棄物の最終処分場におきまして、いわゆる素掘りのような不適正と考えられる処分というのを中止いたしますように指導してきているわけでございますが、その指導が徹底をしていないという事例も散見されているわけでございます。  現在、市町村の一般廃棄物最終処分業の実態につきまして、都道府県を通じまして調査を行っているところでございまして、可及的速やかにその結果をまとめ、対応について必要な指示をしたいと考えております。
  122. 高野博師

    ○高野博師君 一九七七年に廃棄物処理法の改正を行いましたけれども、この法改正前の欠陥処分場についてはこの素掘りというのは適用外となつておりまして、いわば二十年間放置した状態に置かれたわけでありまして、去る十月一日に厚生省は早期閉鎖というのを地方自治体に指示したようでありますが、これはもう大変な問題だと思うんですが、簡単に言えばダイオキシンという猛毒をそのあたりに埋めているということになりまして、焼却灰というのはいわば死の灰だと、そういう私は認識をしておりますが、国民が知らず知らずのうちにこの死の灰を吸っている、あるいは食べているという現実があると思います。この二十年間にこの素掘りによって、あるいはほかの方法によって土壌の汚染とかあるいは地下水の汚染、これは相当進んでいると、私はそう認識しております。  ドイツではダイオキシンというのは放射性物質と同じ扱いを、厳しい扱いをされておりますが、我が国の場合はほとんど野放し状態であります。焼却灰が素掘りとかあるいは水田とか畑のど真ん中に野積みになっているという場所もあると言われます。処分場の遮断シートも破れているところもあると。本当に我々が主食にしている米とか野菜というのは大丈夫なのかと懸念しております。  この処分場の跡地に公園をつくったり、住宅を建てたり、あるいは福祉施設をつくっているところもあると言われておりまして、いわば猛毒の中に住まわされているという極めて危険な状況、恐るべき実態だと私は思っております。いたずらに危機感をあおるつもりはございませんけれども、実情を正確に、正直に国民に知らせるという、そういう責任が行政にあるんだろうと私は思います。  したがって、この素掘りの状態、今までのボーリング調査も含めて、実態の緊急調査をすべきだと思いますが、この点についてお伺いいたします。
  123. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 現在、最終的に都道府県からの報告を整理いたしまして問題を精査しているわけでありますが、まだ報告が来ていない県が実は一県ございます。  これにつきましては迅速に報告をしていただくよう重ねてお願いをしておりまして、その実態というものを見ながら、水の調査でありますとか等々の調査が必要と考えられるところにつきましは早急に調査を実施するよう指示するなどの措置を考えてまいりたいと考えているところでございます。
  124. 高野博師

    ○高野博師君 ダイオキシン問題、一般的な問題ですが、政府はどうか知りませんが、各地方公共団体でダイオキシン関連の調査について事実を隠すといいますか、虚偽の報告とか、あるいはできるだけ数字を低く出すための調査の方法等をやっているというような報道もされておりまして、これは国民に対する重大な背信行為ではないかと私は思うんですが、これが事態をさらに悪化すると、そう私は思っておりますが、長官はどう思っておられるでしょうか。
  125. 渡辺好明

    政府委員(渡辺好明君) 私の所管の土壌のことでちょっとそれを例にとりましてお答え申し上げたいんですが、意図的に数値を低くするような調査をしているかどうかという点ですけれども、調査のサンプリングなり分析手法につきましては、環境庁の方から一定の指針を出しております。これは、一般的な土壌のサンプル抽出のやり方とダイオキシンの分析方法ということでございますので、もうちょっと突っ込んで言いますと、五地点混合方式というふうなことで指示を出しておりますが、その限りでは、意図的ないしは恣意的ではないと思っております。    〔委員長退席、理事狩野安君着席〕  ただ、今、先生の方からも御指摘ありましたように、ダイオキシンというのは、その影響なり濃度が局所的に出る可能性が非常に強い。したがって、データ間のばらつきが大きいということも想定をされますので、ダイオキシンに固有のサンプリングなりあるいは分析手法について現在検討を急いでおりまして、できれば、できればというよりはぜひとも年内にはその新しいやり方を取りまとめまして、年明け早々にも関係地方公共団体にこういった統一的なやり方、標準的なやり方でやってほしいというふうな指示を出したいと考えております。
  126. 高野博師

    ○高野博師君 サンプリングの問題ですが、これは報道によると、できるだけダイオキシン濃度が低く出るような深さを、このサンプリングは、見本はあるかもしれませんが、そういうやり方をしているという報道もされております。  それから、局所的な、所によって濃度が違うということでありますが、やっぱり高いところ、出そうなところも含めて調査しなければ意味がないと私は思います。そういう調査をぜひやっていただきたいと思います。  そこで、十二月一日から大気汚染防止法と廃棄物処理法の政省令改正が実施されるということになっておりますが、これはダイオキシンを有害物質に指定するとなっておりますが、この指定そのものが非常に私は遅いと、そう思います。  それと、新設のごみ焼却炉とか産廃焼却炉からのダイオキシン排出量を〇・一から五ナノグラム以下にするという法定基準を定めるということになっておりますが、問題は、既存の焼却炉については改正から五年間の猶予期間を認めている。そして、その間、排出量の暫定基準も八十ナノグラムだと。この数字はドイツの八百倍の規制の緩い数字であります。この高い基準値を認めているということでありますが、この猶予期間の五年間にさらに人体汚染が深刻化するのではないかと私は思うんですが、これを環境庁と厚生省はどのようにとらえているんでしょうか。そして、五年間という根拠は何でしょうか。
  127. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) ダイオキシン対策に関します各種の基準の適用についてでございますが、施設の改造、これも程度があります。大幅な改造、小幅な改造でございますが、改造を伴うもの、あるいはごみの投入方法を改善するといったような維持管理により対応可能なものがございます。  したがいまして、例えば大幅な改造を要するものにつきましては、短期間に改造するというのは必ずしも容易でございませんので、猶予期間を設けているわけでございますが、今申しましたように、ハードなものとソフトなものがございますので、実施可能性を考慮いたしまして、施行日から適用されるもの、あるいは一年後から適用されるもの、五年後から適用されるものというふうにしたわけでございます。  こういった段階的な施策を講じていくことによりまして、順次ダイオキシンの削減に資するものと考えておりますが、厚生省といたしましては、ダイオキシン類の削減のための施設改造の事例集を提供する等によりまして、五年後に適用されます基準値をできる限り達成するよう、市町村や民間の事業者に指導をしてまいりたいと考えているところでございます。
  128. 高野博師

    ○高野博師君 人体汚染が深刻化するという点についてはどうお考えでしょうか。簡単に答えてください。
  129. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 燃焼条件の改善あるいは基準の強化等によりまして、現在よりもふえない、むしろ低下するものと考えております。
  130. 高野博師

    ○高野博師君 非常に甘い認識だと思います。これはもう大変な問題になると私は思います。  ふえないという根拠は何でしょうか、五年間に。
  131. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 一例を申し上げますと、例えば焼却施設のたき上げのときに十分温度を上げてから廃棄物を投入する、あるいは焼却をやめる際に高温のまま炉をとめるというふうなことで、相当程度の削減が図られた事例が現在わかっております。  したがいまして、そういう事例を徹底させますことによりまして、現在よりも削減できる部分があるのではないかと考えているわけでございます。
  132. 高野博師

    ○高野博師君 ふえないということはないと思うんですね。ダイオキシンというのは体内に蓄積性があるわけですから、どんどんふえていっているという現実があるわけです。それについては非常に甘い認識だと私は思います。  この五年間に、業者によってはこの五年間今のままで焼却をできるだけやる、焼却をやっちゃおう、五年後はもうストップするということを考えていると、こうも言われております。  それは、産廃業者は全国に七万社あると言われているんですが、ダイオキシン排出を抑制する集じん器とかバグフィルターの増設だけで三億円程度かかるとも言われておりまして、五年後については産廃焼却炉の九割がこの基準をクリアできないだろうと言われておりまして、したがって五年間やれるだけやってもうストップしちやう、やめちゃうというようなことを言っているそうであります。  問題の私の地元のくぬぎ山では、この五年間の猶予期間に過去二十年分の総排出量に匹敵するダイオキシンが出るとも推定されておりまして、厚生省にもう一度これについての認識を伺います。
  133. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 御指摘のような事実があるかどうか、私、今、手元の資料で確認できませんので、埼玉県当局に十分お問い合わせをいたしまして事実を把握し、とれるべき対策があればその対策をとってまいりたいと考えております。
  134. 高野博師

    ○高野博師君 もう一度確認いたしますが、この五年間で被害がさらに大きくなったということに対しては行政側は責任とるんでしょうか。
  135. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 先ほどから御答弁申し上げておりますように、市町村の焼却炉の事例ではございますけれども、運転管理を適正にする、あるいは不完全燃焼を少なくするというふうなことで、例えば五分の一あるいは二分の一というふうなダイオキシンの排出量削減された事例等がございますので、そういう運転管理の徹底ということで削減される部分もあろうかと考えておりますので、施設の改造あるいは運転管理の徹底というふうなことを強力に進めてまいりたいと考えております。
  136. 高野博師

    ○高野博師君 全然答えになっておりません。責任をとるかどうかということを聞いているんです。もう一度答弁をお願いします。
  137. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 私ども行政といたしましては、これらの施策を着実に実行に移していくというのが私どもの行政の責任であると考えております。
  138. 高野博師

    ○高野博師君 実行に移した結果の責任はとるということでよろしいでしょうか。
  139. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) どのような結果が出るかということにつきましては、ダイオキシンに関しましては、先生指摘のように、非常に長期慢性的な影響等もございます。そういったものをモニターもしていかなきゃならないわけでありまして、それらの結果を踏まえてとるべき対応を考えるべきと考えております。
  140. 高野博師

    ○高野博師君 全然答えになっておりません。行政の責任を明確にしてもらいたいということでありますが、この今言いました私の質問に対してきちんと答えてください。
  141. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 先ほどと同じ答弁になるかもしれませんが、私どもの今の行政としての責任はダイオキシンの削減を着実に実行すること及び現在のダイオキシンが人体にどのような影響を及ぼしているのか、そういったことを明らかにし、国民の皆さんの不安を取り除くこと、あるいは必要な措置を講ずることが私どもの責任というふうに考えております。
  142. 高野博師

    ○高野博師君 先ほど私が写真を公開しましたが、こういう問題について因果関係が明らかになったときは、今政府が答弁したような発言については重大な責任問題になると思いますが、長官の御感想をお伺いいたします。
  143. 大木浩

    国務大臣大木浩君) ダイオキシンの話を、実は私も今いろいろと過去の経過を見ていて非常に驚いたというか意外に思いましたのは、ダイオキシンがこれだけ問題になっているのですが、今の大気汚染防止法に基づく指定物質になったのがつい最近なんですね。だからその辺が一体どういう認識であったか、私も十分にまだ勉強しておりませんので一遍調べてみますけれども、いずれにしても行政の方の認識と現実に進んでおる事態とがかなりギャップがあるということはどうも私も感ずるものですから、それについて責任責任というのは、私もよその省庁の分まで責任はちょっとここで云々できませんけれども、やはり政府として十分に心して取り組んでいかなきゃいけない問題だというふうに認識しております。
  144. 高野博師

    ○高野博師君 今、長官の、現実と行政側の対応がギャップがあるという認識は非常に重要だと私は思います。  そこで、ダイオキシンの問題ですが、焼却という、いわば出口の規制ばかりではなくて、要するに入り口、すなわち製造の段階での規制、チェック、いわゆる発生源の抑制というのが必要ではないかと思うんですが、このダイオキシンの発生の原因としての塩化ビニール製品でありますが、年間二百五十万トン以上も製造されていると言われていますが、例えばこれを生分解プラスチック製品等に材質転換をしていくというような政策が必要ではないかと思うんですが、技術開発等も含めて、通産省の対応について伺います。
  145. 林明夫

    説明員(林明夫君) お答えいたします。  我が国のダイオキシンの総排出量の約九割は廃棄物の焼却によるものと、このように承知しております。ダイオキシンの発生メカニズム、またごみの中の塩素量とダイオキシンの発生量との因果関係につきましては必ずしも解明されているわけではございませんけれども、通産省といたしましては、焼却のごみの減量化という観点から、塩化ビニールを含みますところのプラスチックのリサイクル、これを促進していくことが適当であると、このように認識しておりまして、容器包装リサイクル法の円滑な運用、技術開発等に積極的に取り組んでまいりたい、このように考えております。  なお、通産省のダイオキシン対策検討に当たりましては、環境庁等の関係省庁とも産業界の排出実態等の必要な情報の交換等を行いつつ実施しておりまして、今後ともダイオキシンの排出抑制を促進するため密接な連携を図ってまいりたいと、このように考えております。
  146. 高野博師

    ○高野博師君 塩ビ製品については、国によってはもう製造を中止しているという国もあるわけであります。私はもっと通産省に前向きに積極的に取り組んでいただきたい、そう思います。  焼却主義をやっぱりやめるという方向に持っていかなくちゃいけない。先ほど言われたように、容器包装リサイクルの方法とか、分別収集も含めて、ごみの再資源化とか、あるいは固形燃料化等いろんな方法、これも技術開発等も必要であろうと私は思います。  この焼却主義でいきますと、大規模な焼却施設をつくると、これまた膨大な建設費もかかる、維持費もかかるということと、施設そのものがごみを要求するということになりまして悪循環になるという問題があると思います。この点についても、ごみ増量の潜在的な圧力になっている、こういう現実がありますので、発生源の抑制ということについて力を注いでいただきたい、そう思います。  それでは最後に、このダイオキシン問題について危機管理という観点から環境庁長官の認識を伺います。
  147. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 先ほどから一般論一般論といって申しわけないんですけれども、ダイオキシンにつきましては、今申し上げましたように非常に国民の間で危機感があるにもかかわらず、具体的に措置をとれる体制というのが少し十分じゃないのかなということは感じておりますから、これから危機管理ということについて、環境行政の中でそういう緊急性を要するものについてどういう措置がとれるかということは、これは必要に応じて法令の整備ということもあるかと思いますけれども、とりあえずは現実にできるところでどういうふうにできるか。それから、中長期的にはそういった法令の整備、それから特に今の中央政府とそれから県、地方自治体、その辺の関係もきちっとしなきゃいけないというふうに思っておりますので、そういう点を含めてこれから精力的に取り組んでまいりたいと考えております。
  148. 高野博師

    ○高野博師君 これまでの政府の答弁を聞いておりますと、このダイオキシン問題について、ダイオキシン汚染が危機的な状況にあるという認識はほとんど見られません。  我々自身がベトナム戦争当時の、あるいはチェルノブイリ事故あるいはイタリアのセヴェソ事故、こういう問題のただ中に置かれているという厳しい現実があると私は思います。例えばサリンを全国的にまがれたらどうなるか、日本は恐らく非常事態宣言でも発令するのだろうと思いますが、そういう状況余り変わらないという私は認識をしております。これまで阪神大震災とか重油の流出事件とか、あるいは放射性物質の漏れとかペルーの人質事件等さまざまな問題について、政府の危機管理能力が欠如しているということが露呈されてきたわけでありますけれども、ダイオキシン問題も同じではないかと私は思っております。    〔理事狩野安君退席、委員長着席〕  国民の生命を守るという理念も政策もない政府の責任というのが厳しく問われるべきではないかと私は思っておりまして、危機管理能力がないということは統治能力、ガバナビリティーがないということではないかと、私はそう思います。  この問題についてはまた引き続き取り上げたいと思っております。きょうはこれで終わります。
  149. 加藤修一

    ○加藤修一君 平成会の加藤修一でございます。  私は今の高野委員質疑内容を聞いていて、さらにダイオキシン問題について認識を深めた次第でございますけれども、八月二十二日に厚生省が廃棄物焼却にかかわるダイオキシン削減のための規制措置、これを発表したわけですけれども、その中で、排ガスのみを年一回だけ測定するということが書かれておりますけれども、これについて答弁をお願いいたします。
  150. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 排ガス中のダイオキシン濃度の測定は年一回でございますが、ダイオキシン発生に非常に関連が深いと考えられております燃焼温度及び一酸化炭素濃度につきましては連続測定をすることといたしております。
  151. 加藤修一

    ○加藤修一君 私はこの排ガスだけでは不十分であると思うわけですけれども、例えば焼却灰、飛灰あるいは排水、それも対象にすべきだと思いますし、それから温度が不安定な立ち上げあるいは立ち下げ、その段階についてもそれは調査の対象にすべきだと思いますけれども、その辺についての御見解を示していただきたいと思います。
  152. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 飛灰に関しましては、基準等を検討していただいております専門委員会におきまして、今後特別管理産業廃棄物として処分をするということでございますので、厳格な処分がなされますので測定の必要は必ずしもないと考えております。  なお、立ち上げ、それから火を消す際の濃度についてでございますが、これは火を燃やす際あるいは火を消す際にどうしても温度が下がり、あるいは不完全燃焼をし、ダイオキシンが発生しやすいと言われておりますので、これはむしろ、先ほども申し上げましたが、立ち上げますときには十分加熱をした上でごみを投入する、それから炉を落とすときには十分加熱した状態で燃やし切ってから火を落とすというふうなことで対応できるというふうに考えておりますので、むしろ運転管理を徹底することの方が重要であるというふうに考えております。
  153. 加藤修一

    ○加藤修一君 排水についてはどうですか。それから焼却灰。この焼却灰は、排ガスの中に含まれるダイオキシンと焼却灰に含まれるダイオキシンと、構成はどういうふうになっていますか。
  154. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 一般的に焼却灰よりも飛灰の方にダイオキシンが含まれる量が多いということが言われておりますので、今申し上げましたように、飛灰については特別管理産業廃棄物として処分をするというふうに申し上げたわけでございます。  それから水につきましては、これは施設によりましてはいわゆる循環をしておりますものもございます。  なお、水についてどうするかは、まだ専門家の間で御検討をいただくべき事項というふうに考えております。
  155. 加藤修一

    ○加藤修一君 非常に対応がおくれていると思うんですよ。調査の対応もおくれている。今、先ほど申し上げました焼却灰と排ガス、その構成、どういうぐあいにダイオキシンが含まれているか、その構成率は何%ぐらいですか。例えば、焼却灰は全体のうちのどのぐらいが含まれていると、そういう調査結果はないですか。
  156. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 大変申しわけありません。今ちょうどその数字が手元にございません。後ほど資料として御提出を申し上げます。
  157. 加藤修一

    ○加藤修一君 はい、わかりました。  それでは、今回の規制案、その中で、法改正の話になるわけですけれども、要するに毎時二百キログラム未満の産廃炉、これについて規制の対象になっていませんが、これはどういう理由によりますか。
  158. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 従来、日量五トン以上というのを規制の対象としていたわけでございますが、例えば、所沢の例で言われておりますように日量四・八トンというふうな炉があるというふうなこと等が指摘をされておりますし、それから稼働時間との関係もございますので、時間当たり二百キロというふうにしたわけでございます。  全部をすべきだという御指摘もございますが、非常に小さな炉につきましては、規制をかけるという御意見も一部にございましたけれども、私どもといたしましては、規制の実行可能性を考慮いたしまして時間当たり二百キロというふうにしたところでございます。
  159. 加藤修一

    ○加藤修一君 産廃炉についてだけじゃなくてほかの問題についても同じなんですね。環境アセスメントの関係でも、私はこれに類する質問をしたわけですけれども、要するに、毎時二百キログラム未満の産廃炉について規制がかかっていないとすると、例えばこの毎時二百キログラムというのを八時間操業をやる、そうすると一日大体二六トンになるわけですね。一・六トンの処理能力を持つ産廃炉が拡大する可能性があるんですよ。一・六トン未満の、一・五トン程度のやつが相当数林立する可能性もあると。  そういうことを考えていきますと、確かに規制の法案では清掃工場、そういったものが広域化するしあるいは大型化するということは私は間違いないと思うんですよ。しかし、産廃炉は小型化していく中でさらに多数ふえていく可能性があると。  そうすると、先ほど高野委員が質問した、将来ふえないという可能性があると言いますけれども、ふえる可能性があるんですよ。答弁でふえないという話がありました。高野委員は、体内の濃度は高まっていきますよ、ふえていきますよという、そういう話もいたしましたけれども、そういう小型の産廃炉がふえていくことが考えられるんじゃないですか、可能性として、十分。ほかの事例から考えてもそういうことは言えるわけですから、この辺についての見解をきちっと示していただきたいと思います。
  160. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 正確に申し上げます。ちょっとはしょった部分がございます。  時間当たり二百キロといいますのは許可対象施設、ですから二百キロを超えれば許可対象の施設となるわけでございますが、この許可対象にならない施設につきましても、すべての焼却施設につきまして廃棄物を焼却する際に守らなければならない処理基準というものを明確化したところでございます。  具体的に申し上げますと、焼却設備の構造につきましては、空気の取り入れ口及び煙突の先端以外に焼却設備内と外気とが接することなく燃やせるようにしなければいけない、あるいは燃焼に必要な量の空気の通風が行われなければならない、あるいは焼却の方法といたしましては煙突の先端以外から燃焼ガスが出ないように焼却すること、あるいは煙突の先端から火炎または黒煙を出さないように焼却すること、煙突から焼却灰及び未燃物が飛散しないように焼却すること等の基準を定めたところでございまして、この処理基準に違反をいたしますと、どのような焼却施設でありましても改善命令の対象となりまして、この命令に従わなければ罰則が科せられるということになっているところでございます。
  161. 加藤修一

    ○加藤修一君 高野委員に関連しての質問でしたけれども、私はダイオキシンに限らず化学物質は非常に恐ろしいと、焼却とか放置とか、先ほどの答弁の中でも非意図的という話がございました。こういう化学物質が非意図的でかつ複合的に発生する、そういった毒性を考えていくと非常に将来を大きく心配するわけです。  薬害エイズで行政責任が問われた厚生省、あるいはいまだ十分でない環境アセスメント法をつくった環境庁、大変な覚悟でこういった問題については取り組むべきだと私は思います。廃棄物の処理を抜本的に統合的に扱う省、例えば廃棄物処理省なんということをつくるぐらいの覚悟が必要だと。そうでないと大変な状態になるということが今の状況から考えていくと容易に私は推察されるように思います。  ダイオキシンについては一本の煙突の個別規制を考えているようですけれども、日本全体あるいは地域別に総量規制、それをすべきだと思います。これについてはどのようにお考えでしょうか。
  162. 野村瞭

    政府委員(野村瞭君) 御案内のように、大気汚染防止法におきましては、SOxとNOxにつきましては一部地域で、指定地域だけでございますけれども、総量規制をやっているわけでございます。  私どもダイオキシンにつきましては法的な規制の枠組みとしては先般から始めたばかりということでございまして、先ほど排出源の御指摘もいろいろございましたが、例えばこの前の告示におきましては焼却施設と金属の製錬施設の一部について適用ということでございましたが、その他の焼却炉あるいは小規模の焼却炉、先ほど二百キログラム・パー・アワー以下の御指摘もいただきましたけれども、これについては私ども実際にどのくらいのダイオキシンが排出されているかということもきちんとデータをそろえなきゃならぬということで今進めているわけでございます。そういう総合的な対策をとった上で、さらに総量規制が必要ということであれば、その時点でやはり検討しなければならないというように考えております。
  163. 加藤修一

    ○加藤修一君 その答弁というのは非常におかしな答弁だと私は思います、あえて追及しませんけれども。  そういう総量規制等を含めて各種の汚染防止法があるわけですから、その体系的な整理を進めていかなければいけないと思いますし、さらに、水、空気、土壌、そういったものをつなげていく。大気はあります、防止法。水質汚濁防止法もあります。しかし、土壌汚染防止法というのはないわけですよね。この水、空気、土壌、これをつなげるためにはやはり土壌汚染防止法、やはり非常に必要な時期に来ていると思います。さまざまな研究をされているとは思いますけれども、その辺について進行状況を聞かせてください。
  164. 野村瞭

    政府委員(野村瞭君) 今、総量規制の御趣旨が私は十分理解をできないので間違ったお答えを申し上げたかもしれませんが、私ども今、ダイオキシンの環境中における挙動といいますか、動きがどのようになっているかというデータすら必ずしも十分持っておらないということでございます。きょう土壌の関係の御指摘もいただきましたが、土壌につきましては環境基準もできていないという状況下にございます。  したがいまして、今御指摘いただきましたように、水、土壌、大気、全体を含めたいろいろなデータをも整備していかなければならないというように考えております。
  165. 加藤修一

    ○加藤修一君 整備は大変結構なことなんですけれども、要するに、土壌汚染防止法についてどう取り組んでいくか、前向きの答弁をいただきたいのですが、どうでしょうか。
  166. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 私もまだ十分に環境庁の中でのいろいろな行政を全部みずからレビューというか、再検討したわけではございませんけれども、確かにダイオキシンというもの一つとって考えましても、大気中に出る、あるいは処理の灰の中に出てくる、あるいは土の中だ、水の中だということですから、これを総合的にきちっと常に追求していくということがやっぱり必要だと思います。  これは政府の中でのいろんな関係各省の縦割りということ、あるいは同じ環境庁の中でもいろいろと担当が分かれていてどこまできちっと連絡しているかなというようなことがありますから、そういった今の御指摘の問題は十分心にとめて、これからひとつしっかりとした体制をつくりたいと思っております。  大変一般的なお答えではありますけれども、とりあえず私の感想を述べさせていただきました。
  167. 加藤修一

    ○加藤修一君 至急、土壌汚染防止法の制定を含めて積極的にその辺を考えていただきたいと思います。  私は、外からのいわゆる魔物が地球温暖化あるいはそういった地球環境問題とするならば、人間の内部に巣くい始めた魔物、それは先ほどから質疑がありましたようにダイオキシンであると。このダイオキシンを含むいわゆるエンドクリン撹乱化学物質、人間の生殖機能などに対して阻害を与えるものでありますけれども、これが現代科学文明における魔物の一つだと思いますけれども、まさに日本はテオ・コルボーンが著しました「奪われし未来」、そういう書物の中に書かれている現実化への道をたどっているような感覚さえするわけです。  このエンドクリン撹乱有害化学物質、あるいはホルモン様化学物質あるいは環境ホルモンあるいはにせ女性ホルモンとも言われているわけですけれども、これは配付資料に述べております。その中には、ダイオキシン、PCB、有機すず、そういった疑惑物質、七十三種類があると言われておりますけれども、そこには全部載っておりませんが、国立環境研究所の堀口研究チーム関係も重大な関心と研究成果を発表しているわけです。  アメリカはこれに対して昨年の八月ですけれども、クリントン大統領が食糧品質保護法、これはこういうふうに訳するのが適切かどうかわかりませんが、フード・クオリティー・プロテクション・アクト・オブ九六、もう一つは安全飲料水の修正法、この二法案に署名したわけですけれども、この結果、アメリカの環境保護庁というのは、ダイオキシンを含むそのほかの化学物質で、エストロゲンあるいはそのほかの内分泌撹乱作用のある化学物質のスクリーニングプログラム、それを二年以内に開発しなければいけないと。しかも、開発した後にその二年を含めて三年以内にそのプログラムを実行することになったわけですけれども、この辺の問題について日本政府はどのように対応をお考えかということです。
  168. 野村瞭

    政府委員(野村瞭君) 一名環境ホルモンと言われている内分泌撹乱化学物質の件でございますけれども、この問題につきましては、厚生省の方においても取り組んでおられるわけでございますけれども、私どもも今御指摘いただいたような国際的にこの問題が大きく取り扱われているということを十分承知をいたしております。  私どもとしても、これは緊急にまた取り上げなければならないという意識を持ちまして十二月に調査研究班を設置いたしまして、特に環境庁といたしましては、環境中のこういう物質のモニタリング、それから野生生物にどういう影響が出ているのだろうかというようなことを中心にデータ整備それから研究、検討を始めたいと思っております。
  169. 加藤修一

    ○加藤修一君 可及的速やかにそういう調査推進していただきたいと思います。  長官にお尋ねしたいのですけれども、こういう問題でよく言われるようになってきているわけですけれども、新生児の性器の検査とか、あるいは母乳の多様な検査、あるいは正常精子の検査、血液あるいは髪の毛、そういった面に関してもちろん疫学的な調査、そういったものを含めた総合的な調査研究、それをやはり国を挙げてやる必要があると思うんです。  このエンドクリン問題に関しては、殺虫剤もありますし農薬もありますし、あるいは労働環境でこういったものを使うという生産工程も考えられるわけですから、そういった点から考えていきますと、通産省、厚生省あるいは労働省、農水省、そこまでかかわってくる話だと思いますけれども、私は環境庁が強烈なイニシアチブをとってこれを国家プロジェクトで、国がやりだしたら全部国家プロジェクトですけれども、本気になってこれはやっていくべき必要があると思いますので、環境庁がイニシアチブをとるべきだと思いますけれども、どうお考えでしょうか。
  170. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 本年九月に、環境庁を含めてというか、環境庁が中心と言ってもいいと思いますが、関係省庁が連携してダイオキシン類総合調査検討会というのをつくったんですが、今のところまだ今おっしゃったような全省庁が入っておるかどうか、とりあえずは環境庁、厚生省それから労働省、農水省あたりですが、今例えば通産省というようなこともおっしゃいましたので、現在のものが十分かどうか、それからまた体制が十分ということと、先ほどからのお話でやっぱり緊急にきちっとその答えが出せるような体制ということも含めて、ひとつ見直しをしたいと思っております。
  171. 加藤修一

    ○加藤修一君 文献調査とか研究レポートをいっぱい集めるとかという、そういうのは共同というか、あちこちで同じことをやらなくたっていいとも思うんです。それで、私が調べた範囲では、労働省、農水省はこれについて一切まだ動いていないわけなんですよ。ですから、環境庁はこういうことに対して、これこれこういった現実がありますよという形で私は要請すべきだと思いますけれども、どういうふうに考えたらよろしいんでしょうか。私に理解できるようにお願いします。
  172. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 本日の当委員会におけるいろいろな御質問等も十分またしんしゃくいたしまして、一遍関係省庁と現状を少し確認し、さらにいろいろな仕事を促進するための実際の方法も検討したいと思っております。
  173. 野村瞭

    政府委員(野村瞭君) 大臣の発言の補足でございますが、あくまでも事務レベルでございますけれども、この問題に対しましても厚生省、通産省、農林水産省、労働省に環境庁から呼びかけましてそういう連絡の場を持っておる現況にございます。
  174. 加藤修一

    ○加藤修一君 では厚生省にお尋ねいたしますけれども、先ほど環境庁にも質問いたしましたけれども、新生児の性器の検査とか母乳の多様な検査あるいは正常精子の検査等、そういった意味を含めたいわゆる疫学的調査、そういったものについてどのようにお考え、お取り組みでしょうか。
  175. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 先生指摘のように、内分泌撹乱物質あるいはPOPsといったようなものが人体に影響を与えるのではないかという御指摘がされているわけでございます。  私どもも研究班を設置いたしましていろいろ文献調査等を行っているわけでございますが、現在までのところ、どういう医学的な指標を用いてどういう対象で何例ぐらい調査をすればいいかということ等につきまして、まだ確定的なものを得るに至っておりません。しかしながら、問題の重要性にかんがみまして、本年度の厚生科学研究におきまして、内分泌撹乱作用メカニズムに関する研究といたしまして、標的モデルによります内分泌撹乱メカニズムの研究をOECD等と共同で実施をすることといたしておりますほかに、健常男子の精子数測定に関しましてデンマークの教授が中心になって進められております国際的な研究に参加をいたしまして、同一の検査方法によりまして我が国の精子数の測定等に取り組むことといたしているところでございます。
  176. 加藤修一

    ○加藤修一君 ただいまOECDの話あるいはデンマークの話が出ましたけれども、その中に新生児の性器の調査云々ということについてはどうなんでしょうか。
  177. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) まだ研究の中に予定をいたしておりません。順次国際的にプロジェクトが立ち上がっていくと思いますので、それらに的確に対応できるようにしたいと考えているところでございます。
  178. 加藤修一

    ○加藤修一君 ことしの五月にマイアミで環境サミットがあったわけですけれども、先進八カ国の環境担当者閣僚会議ですけれども、そこでもダイオキシンを含むこういった問題について話題が出されて、いわゆるエンドクリン問題あるいはPOPsいわゆる残留性有機汚染物質について取り上げたわけですけれども、そのときに、乳幼児というか、子供を基本にした安全基準の確立が極めて重要である、大切である、今後それについて積極的に取り組んでいかなければいけないという話があったわけですけれども、子供、私が言いたいのは、乳幼児あるいは胎児を含めて、そういった面での対応をどのように政府はお考えかと。よろしくお願いします。
  179. 野村瞭

    政府委員(野村瞭君) このマイアミでの会議には私どもの環境保健部長も出席をいたしたわけでございますが、ここで今御指摘のような結果、レコメンテーションが出たものですから、私どもといたしましても、子供の特徴を考慮に入れて今後対応していかなきゃならないと思っております。  これまでにも我が国、特に環境庁関係におきましては、トリクロロエチレン等の有害大気汚染物質に関する環境基準を設定する際には乳幼児等の比較的感受性の高い方々をも考慮した計数を使用しているところでございます。また、NO2の環境基準の評価に際しましては、感受性が高いとされる学童を対象として大気汚染とぜんそく様症状との関連について疫学調査等を実施いたしまして、子供の健康影響についての評価を行っているところでございます。  いずれにいたしましても、今後とも子供に関する知見の収集に努めまして、先ほども申し上げましたけれども、子供の特徴を考慮に入れました健康影響評価、さらには基準の設定に努めてまいりたい、そのように考えております。
  180. 加藤修一

    ○加藤修一君 ちょっと教えてほしいんですけれども、先ほどの話にちょっと戻るかもしれませんが、病院がかかわってくる話の面もあると思うんですけれども、特に大学病院ですね、文部省とか厚生省管轄の病院とかそういったところの連携とか、そういった面は考えられることなんでしょうか。
  181. 野村瞭

    政府委員(野村瞭君) もちろん省庁間の連携ということも必要でございますが、まず基本的に、今いろいろこの種の調査をすること自体、人権問題とのかかわり合いもありましてなかなか難しいというのが状況でございます。保護者の了解なり学校長の了解をとるということの方にどちらかというとエネルギーを割いているというのが実情でございます。
  182. 加藤修一

    ○加藤修一君 人権の話を出されましたけれども、人権を考えているからこそ逆に私は先ほど来から質問しておりまして、よく説明して御協力を仰げば私は協力していただける可能性は極めて高いのではないかと思っていますので、その辺よろしく積極的にお願いしたいと思います。  それから、厚生省にお願いなんですけれども、いわゆる人口動態調査がございますけれども、その死因についてさまざまな複雑なものをリストアップしているわけですけれども、さらに私は、エンドクリン問題がまだまだ疫学的にも明確になっていない部分もある。そういうことから、直接死因とどういうふうに具体的につなげるかという話は非常に難しいわけですけれども、要するに死因の詳細項目調査と、あるいは地域別にどう分析するか、あるいはさらに地域の生命表との関係をどうするかということも含めて、今後積極的に研究をしていっていただきたいと思います。よろしくお願いしたいと思います。  それでは次に、地球温暖化防止京都会議関係について質問したいと思います。  大臣にお願いしたいんですけれども、何回も聞くようで申しわけないんですけれども、法的拘束力を受ける日本数値目標は何%ですか。
  183. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 毎回申し上げておりますが、二・五%でございます。  それで、先取りして恐縮でございますが、いろいろとその説明柔軟性とかというようなことが言われておりますけれども、これはあくまでも予測不可能で、日本政府というか、日本としての責任ではないような事情が起こってどうしてもその二・五%が達成されなかった場合には、何と申しますか、その法的な責任を問われない、法的責任を阻却するような事態があったということで直ちには法的責任は問われない、こういうことがあり得るということをくっつけてありますけれども、法的拘束力のある目標はあくまで二・五%でございます。
  184. 加藤修一

    ○加藤修一君 今回のCOP3において仮に、仮にというより私はそう願っているわけですけれども、法的拘束力を伴った議定書が決まった場合に、当然我が国はそれを批准するということになると思うんですけれども、それに対応して、法的拘束力の数値目標に対応して、現在の我が国取り組みと違う対応が今後必要になると思うわけですけれども、どういうことをその辺お考えでしょうか。
  185. 大木浩

    国務大臣大木浩君) いろいろな対策が必要だと思います。必要な法令の整備ということも恐らくいろいろと京都会議の後で検討しなきゃいけませんけれども、仮に二・五なら二・五と決まったとすれば、法的な措置、法令の整備、あるいは現実に実際にいろいろと政府としての持っております能力、法的な強制力、あるいは実際のPR、あるいはいろいろな関係諸団体等々に対する要請、要望といったようなものを通じてやっぱり二・五を達成するための努力をしていかなければならないというわけだと思います。  先ほども何か積み上げがあるとかないかというお話がございましたけれども、積み上げは、ですから、二・五というのは決して絵にかいたもちではございませんけれども、完全にもちができ上がってそろっておるかといえば、そういうことではなくて、これからそのためのいろいろな施策を進めなければならないという形であります。
  186. 加藤修一

    ○加藤修一君 先ほど午前中の答弁の中でぎりぎりに積み上げ数値であるという話があったんですけれども、ぎりぎりに積み上げ数値というのは私はそれなりに工夫して考えて積み上げたという理解でいるんですけれども、そうすると、二・五%法的拘束はきくということと、さらにそれから、結局は対応策として考えているのはゼロ%であると、CO2レベルで考えた場合は。ぎりぎりで積み上げて考えてきた数値というのはどういう意味合いを持ったぎりぎりなんですか。つまり、ゼロ%と二・五%のその辺が非常にわかりにくいんですよね。私だけじゃないと思いますよ。世界の方々もよくわからない部分だと思うんです、この辺の話というのは。お願いいたします。
  187. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  確かに、私ども御説明を申し上げるときに、現段階においてぎりぎりの対策積み上げをしたものだということを申し上げたことはございます。その意味するところは、あくまでも現時点における最善の対策積み上げをしたという意味でございまして、しかしながら、この我々の目標の到達期限といいますか達成期限というのは二〇一〇年前後ということでございますから、現時点から考えますと十年あるいは十数年先の時点でございます。したがいまして、その時点において現在想定しておりますような技術の進歩、技術の開発というものが実際にどのような形で進むのか、この点についても必ずしも現時点で十分に見通し切れるわけではないと思います。  これは私どもの過去の公害対策で自動車排出ガス規制を行った場合においてもかなりの技術の進展が見られたわけでございますが、そのような形で必ずしも事前には見通し切れないようなファクターがございます。同様に、エネルギーの事情につきましても、片や原子力という問題も先ほど来御指摘もございましたが、他方で別の新たな天然ガスのようなエネルギーの利用が可能になる事態もあるかもしれません。それから、産業構造も今後の社会経済の変化に伴ってどのように変わっていくか、こういったことも見通し切れない要素があるわけでございますから、そういった面についてはできるだけプラスの方向で、プラス思考で考えていこうということで、そのあたりの不確定な要因についてはできるだけ野心的な目標を掲げようということで、積み上げ切れないところではございますが、その二%程度の部分については今後それを前向きに考えてより高い目標を掲げよう、こういう思想で、考え方でまとめたものが政府案であるということでございます。
  188. 加藤修一

    ○加藤修一君 先ほど環境庁長官の答弁にもありましたけれども、私が十一月五日の環境特のときに答弁を受けた内容というのは、日本は二・五%が義務だが、予測不可能な事故とか災害というようなことを申し上げたと思いますが云々とありまして、それと今の答弁のいわゆる技術革新、エネルギー事情云々ということと、通産省の説明はどっちかというと技術革新、エネルギー事情云々なんですけれども、この不可避的な状況が起こってできなかったとき云々という話は、地震とか災害という話ばかり私の方に長官の方から伝わってくるんですけれども、ちょっと違うように私は理解しているんですね。通産の説明ではこういう説明は一切ないんですよ。一〇〇%ないんですよ、実は。  これ、表現としては適切でないように私は思っているんですけれども、どうなんでしょうか。
  189. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 私は確かに、地震とかいうようなことも一つの例として、一番わかりやすいということで予測不可能と申し上げましたけれども、仮に日本政府の能力以外のところで国際情勢の変化が起こったというようなことで、全くエネルギーの供給とかそういうものが変わったときに、これはやっぱり予想どおりのことができなかったというようなことはあり得ると思います。その辺は通産省も言っているところだと思いますが。  そういうことですから、あくまで目標としては二・五ということで、これからの科学技術の発展とかそういうことも考えればできるはずだということで、これはやはり、先ほどから申し上げておりますけれども、全くできないことを言ったということではなくて、普通に努力していけばできるはずだというところを二・五というふうにとらえておるわけでございます。
  190. 加藤修一

    ○加藤修一君 いや、通産省はそういう説明をしていないんですけれどもね。将来いろんなことが起こって、エネルギー需要がどうのこうのという話、そういった不測の事態をそういう表現にしていないように私は理解しているんですけれども。  そもそも、そういうことを文言として最初から入れておくこと自体が僕はちょっと理解できないんですね。非常に大きく出てくるんですよ、そういう文言が。例えばここでは、「予見し難い部分も含んで」と、あえてこういう言葉は、普通の経済予測なんかでしませんよ、こういうことは。前提条件はほとんど決まっているんですから、モデルの与件というのは大体。それは与件でいった場合という形で出すわけですから。あえてこれは、予見しがたい部分も含んでおりますということで、それは神様でも仏様でもないんですから、それはそういうところはありますよ、不確実性というのは。でも、これを表に出してあえて言おうとするところに私はほかの意図が働いているというふうに、邪推かもしれませんけれども、そう受け取られてもしようがない場合があるんですよ。  そのほか、私はなぜこんなことを言うかといいますと、今回政府が出されたパンフレット、お手元に配付されていると思いますけれども、このパンフの表現の仕方も非常に私としては、悪い方に国民に誤解を与えるような意図があるのではないかというふうに疑われます、これ。こういうのは、日本地域学会とかそういうところで発表したら、何ですかこの表というのは、作為的ですねと言われますよ、恐らく。今後学会に出入りしないでくださいと、まあそこまでは言わないかもしれませんが。この部門別エネルギー消費量の推移等々を含めて、それから見開きの右側の一番下にある二つの、原子力発電と新エネルギー、これだって縦軸の単位が違うわけですから。縦軸の単位が違うのに、こういうふうにあたかも新エネルギーが断トツに伸びるような表現をして、原子力と同じ程度に伸びるような言い方をされていますけれども、事実は違いますよ。  それから、最後の、後ろの表にしても、最高水準にあるというのはわかりますけれども、今CO2の問題があるわけでありまして、CO2とGDPを対比して書くならまだしも、エネルギーという形でちょっと間接的になっているんですね、ある意味で、  それから、スイスなんかはまだ日本より下の方に行くわけですから、そういうもっと水準の上の国は抜かされているということもあって、非常に誤解を招きやすいパンフレットになっておりますので、私は善処を要求したいと思います。  以上です。ちょっと答弁だけ。
  191. 大木浩

    国務大臣大木浩君) ちょっと今、このパンフレットのことの前に、予測が、経済予測だっていろんなものはそれは予想不可能なものはあるけれども、ひとつ予測を出そうじゃないかというお話がございましたが、今回の環境会議でそれぞれの国が出すプレジというのは、やっぱりプレジであり、法的拘束力があるということでございますから、やっぱりそういったできないときということは、非常にまじめに考えれば、できなかったときに、しかも一生懸命努力してできなかったときにどうするんだというところまで、取り越し苦労というか、取り越し苦労でなくてちゃんとできることを期待はいたしますけれども、やっぱり法的拘束力があるんだという点からそれをきちっとするために、あえてこういう文章もひとつくっつけて日本提案としては出しておるということでございます。日本だけということではなくて、こういったものは、お互いに同じような状況が各国にもあり得るであろうということも考慮しながら提案の中に書いてあるわけでございます。  しかし、確かにわかりにくいとおっしゃればわかりにくいわけでございますが、もう一遍繰り返しますけれども、法的拘束力のあるコミットメントをつくろうということで、そちらの方からこういったことを一つ入れさせていただいたということでございます。
  192. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) パンフレットについての御指摘がございましたので、お答えを申し上げたいと思います。  まず、部門別のエネルギー消費量の推移でございますが、これは過去二十年余りの各部門別のエネルギー消費量の相対的変化をわかりやすくお示しをしたいということで指数でお示しをしたものでございまして、確かに我が国の最終エネルギー消費に占める産業部門というのは大変大きな割合を占めていることは事実でございますが、他方で、推移を見ておわかりいただけますように、とりわけ運輸・旅客部門の乗用車など、それから民生・家庭部門、こういったところの伸びが大変大きいということで、これは今後の対策を講じていく上でも一つ大きく念頭に置いておくべきことでございます。そういったことも含めてわかりやすくお示しをしたいという趣旨でございまして、産業部門をあえて低く見せるような意図は毛頭あるわけではございません。  それから、エネルギー供給面での対策について、原子力と新エネルギー、確かに縦軸の物差しは左右で異なってございますけれども、これはいずれも、その導入の現状とそれから二〇一〇年段階での石油代替エネルギーの供給目標との関係をわかりやすく伝えるために縦軸のスケールを工夫したものでございまして、殊さらに原子力と新エネルギーを同様な形で対比しようという意図ではございません。  それから最後の、各国のGDP当たりエネルギー消費の図でございますけれども、これも確かに御指摘のとおり、スイスの値はGDP当たりエネルギー消費で見ましても我が国よりも小さいということは事実でございますけれども、全般的なメッセージといたしまして、我が国の省エネルギーが世界的に見て最高水準レベルにあるということをわかりやすくお伝えしたいということで、主としてサミット参加国を対象に入れさせていただいたということでございます。   以上でございます。
  193. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 きょうは、先ほどからダイオキシン問題で大変緊迫した議論が続いております。  大臣、通告しておりませんで大変失礼でございますけれども、関係省庁会議などございますね。私、さっきからの質問を聞きながらPCBのことをほうふつと思い起こしていたわけでありますけれども、通常国会でも、ダイオキシンにつきましてはかなりこの委員会で質問が続けられてまいりました。しかるに、余り進んでいないという状況でございまして、もしあと五年も、その調査の終わってからでは多分間に合わないと思いますので、少し調査が進みましたら大臣、閣議などで発議をなさいまして、ぜひダイオキシンに対する取り組みをきちんと大きくなさるような、そういうおつもりがおありかないか。  それからもう一つは、環境安全省という構想が行革の中で出ております。環境安全省ということになれば、こういった廃棄物問題その他についてはすべて包括的な省庁になると思いますので、それについての御感想なども一言冒頭に聞かせていただきたいと思います。
  194. 大木浩

    国務大臣大木浩君) まずダイオキシンでございますけれども、これは先ほどから五年というような話が出ておりますけれども、五年かけてゆっくりやるというつもりでは全くないわけで、一応五年ということを計画の対象としてはしておりますけれども、いろいろとこれから調査結果が出てくれば、もちろん中間的にでも発表というか、皆様方にも御説明したいと思います。また、政府としてさらに対策強化するために、閣議が適当な場かどうかは別といたしまして、しかるべきところでそういったこともきちっと担当大臣として申し上げるようにしたいと考えております。  それから、環境安全省の方の話でございますが、私も、自分が長官になってから見ておりますと、これは確かに随分いろんな仕事があるなと。それに比べると、今の体制というのは不十分じゃないかということは痛切に感じておりますので、これからどういう名前になるか、それから仕事が具体的にどういうものが入ってくるかは別といたしまして、総合的にしかも強力に環境行政ができるようにひとつ政府の中で、また関係方面ともお話をいたしまして、そういった体制をきちっとつくるように努力をしたいと考えております。
  195. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 ありがとうございます。  十二月の京都会議まであと半月です。時間的にももう余裕がない。この委員会も、そう何回もそれまでに開けるとは思いません。  きょう私は、議長国である日本にこれだけはというポイントを幾つか絞って、特に、私どものところにも情報が入ってきております幾つかの議定書の抜け穴的な問題について質問をさせていただきたいと思います。  AGBM交渉では、一部の附属書Ⅰ締約国は排出義務を純排出量アプローチに基づいて定めることを提唱して、アメリカとかニュージーランドとかノルウェーとかオーストラリア、ロシアですね。これは、例えば林業などによるCO2の吸収分を除去または蓄積、これを化石燃料から発生する排出量から差し引くという、つまり純排出量アプローチしょうとしているというふうに聞いております。  この純排出量アプローチを用いた場合は、気候系への危険な干渉を防ぐレベルにCO2濃度を安定化させるなど、条約の目標達成が非常に難しくなるというふうに考えます。純排出量アプローチの広範な適用は、気候系保護への努力を妨げる危険性があります。特に、気候変動自体が陸上の生物から大気に炭素を放出する山火事や干ばつにつながることを考えれば、この危険性は非常に高いと言わなければならないと思います。  ネットアプローチと言われている純排出量、ネットと言われているこのネットアプローチの危険性を一言で言いますと、植林による二酸化炭素の吸収量の計測またはその検証についての科学的な不確実性、幾ら森林が吸収してくれるのかというふうなことは、私もちょっと素人考えで考えただけでもなかなかこれは難しいと思うわけですね。計測の誤差範囲はプラ・マイで二〇%ぐらいになる可能性があるのじゃないかという計算もあります。削減数値目標の達成の検証を非常にあいまいにするものであるというふうに思うわけです。  日本政府は、小島興国連合の国々とともに、ネットアプローチ京都で導入することに関しては科学的な不確実性を理由に強く反対をしていらっしゃるというふうにお聞きしております。吸収源の定量的な計測、検証の方法が科学的に明らかになるまでこのネットアプローチを導入すべきではないという現在のポジションをぜひ固持していただきたいと私どもは考え、また多くのNGOもそういうふうに考えているんです。つまり、基準年も目標年もグロスで計算すべきであると思いますが、このことに関してどう考え、また京都会議ではどうしようと思っておられますか。
  196. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 今、純排出量、ネットと言っていますね。英語でネットとかグロスとかいう言葉でやっておりますが、これは決して関係各国が、排出量削減をできるだけ少なくしよう、削減努力を減らそうということではなくて、現実にいろいろな地球温暖化ガスがどういうふうに排出されまた吸収されるかというような実態をきちっと確認した上で、それぞれがどういう数値目標を出すのがあえて言えば公平というか妥当であるかと、そういう議論の中でネットとか今のグロスという話も出ておるわけでございます。  日本政府としては、今まさしく竹村委員がおっしゃったように、ネットにする場合、それじゃ計測がきちっとできるかというような問題については私どももまだ十分じゃないんじゃないかという認識は持っております。ただ、いろんなそういった議論が出てくる背景というのは、決して抜け穴ということではなくて、むしろ全体として温暖化ガスの排出とか吸収とか、そういったものが実態としてどうなっているかということをきちんと把握した上で、それぞれがどういうことができるかということを考えようということの話し合いの中で出てきておる問題だということだけ申し上げさせていただきたいと思います。  あと、必要でございましたらまた政府委員の方から御説明申し上げますが、一応私の方からの答えとしては、以上申し上げたようなことをひとつまず最初に申し上げたいと思います。
  197. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  基本的には、私どもも数値目標は温暖化防止上意味のあるものとすべきだという考え方でございす。しかも、これは法的拘束力を有する目標を定めようというわけでございますから、相当程度の確実性を有するものを対象にするべきであろう、こういう認識をしているところでございます。   吸収源による吸収量の見積もりにつきましては、御指摘のとおり依然として大きな不確実性が残っていて、さまざまな解決すべき課題が残されています。測定推計精度の問題でございますとか、あるいは人為的吸収というのが基本的な概念でございますけれども、そういうものをどういうふうに定義していくか、いろいろな課題が残されているわけでございまして、我が国としては、そうしたことから吸収源は数値目標の対象としないというグロスアプローチをこれまでとってきているところでございます。  一方で、これまでの国際交渉では吸収源についての最新の科学的知見に基づく議論をしているわけでございますが、諸外国の中には吸収の増進、吸収源の保全のためのインセンティブということでネットアプローチを主張する国も多い状況でございます。こうした状況を私ども見きわめながら、最終的には不確実性が少なく、極力実効が上がるような、そういう国際合意を目指していきたい、このように考えております。
  198. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 日本が不確実性を理由に強く反対をしてきたと。私たちは、日本政府が出した数値その他について、これで議長国が務められるのかと非常に心配をしたり怒ったり、いろいろあったわけでありますけれども、この点は私たちは、日本政府の、不確実性、経過、計測、検証の方法論が明らかになるまでは導入すべきではないとしている態度を評価するものですけれども、今の大臣とそれから局長お答えでちょっとよくわからなかったんですが、このアプローチ京都会議では却下なさるでしょうか、どうでしょうか。現状のそういった姿勢をきちんと固持なさるでしょうか、どうでしょうか、答えていただきたいと思います。
  199. 大木浩

    国務大臣大木浩君) このネットの問題というのは、先ほど申し上げておりますとおり、排出とか吸収というのは全体の姿を見るときの問題として注目しなきゃいかぬ要素であるということはありますから、それをどういうふうに京都会議で扱うかは別として、私どもとしては、今のところそれを数値目標の中に計算できるというようなところまできちっと科学的な知見ができておると思いませんので、それは反対だということを言い続けておるところでございます。
  200. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 ぜひその姿勢を崩さないでいただきたいと、強い要望なのでございます。  それから、きょうは外務省にもおいでいただいておりますけれども、我が国以外の各国の主張とかそれから姿勢とか、そういった各国のポジションについて、余り時間がないのでグラフあるいは表でというふうにお願いしておきました。簡単な表を出してくださっております。実は、私はもっと国別に欲しかったんですね。EUと言っても姿勢がさまざまですから国別に欲しかったんですが、この皆様にお配りした表を出してくださいました。  これについて外務省、説明があったら聞かせてください。
  201. 津曲俊英

    説明員(津曲俊英君) 諸外国の提案につきましては、それぞれ対象がいろいろポイントがございますけれども、中心になっております数値目標につきまして概要を御説明申し上げます。  EUは、九〇年対比二〇一〇年で一五%削減と言っております。これは域内では差異化を認めつつ、域外の先進国に対しては一律の一五%削減を求めているということでございまして、私どもといたしましては、この提案はやっぱりまだ衡平性、責任関係の不明確性等の問題があるのではないかと考えております。  それから米国でございますが、世界最大の二酸化炭素排出国でございまして、これは二〇〇八年から二〇一二年の排出量を九〇年レベルに戻すとの提案を行っております。これにつきましては、さらなる削減努力を期待しているというところでございます。なお、米国は途上国取り組み強化を強く主張しておりまして、具体的にはすべての締約国に数量目的を、例えば二〇〇五年までに設定することを主張しております。  一方で、途上国グループでございますが、これは気候変動枠組み条約に規定されている義務以外のいかなる新たな義務も負うことはできないということを主張しつつ、片や先進国に対しましては、例えば二〇二〇年の排出量を一九九〇年レベルから三五%削減するということを要求しております。  このように主張は大きく隔たっておりますけれども、これらの各国の議論を収れんさせて京都会議で各国の妥協が出てくるというふうにまとめてまいりたいというふうに考えておりまして、そのために努力をしてまいりたいと思っております。
  202. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 ありがとうございました。  今のネットアプローチが抜け穴の第一点目であります。  抜け穴の第二点目なんですけれども、それは排出枠取引の問題です。  排出枠取引は、世界ではホットエアと呼ばれているそうですね。私は英語に強くありませんが、英語では一般的に口先だけで物を言うことをホットエアと言うんだそうで、できるだけ政治家はそういうことをしたくないと思いますけれども。  それで、ロシアが温室効果ガスの国際的な取引の枠組みを通じて自国の温室効果ガスの排出予算、目標期間中排出してもよい量、これの一部を売る場合に生じる問題。ロシアの現在の排出量が、九〇年レベルと比較してもう既に約三〇%低いということから、ロシアは実際に国内で必要な排出量よりはるかに大きな排出枠を与えられる可能性が高いわけですよね。この結果、排出枠取引制度がなかった場合と比べて、いわゆるホットエア取引によって実際に排出される温室効果ガスの量は大幅に増加することになってしまう。  ILASA、国際応用システム分析研究所が最近、本部はオーストリアですが、ロシアを含む中央・東ヨーロッパ地域に関して二〇一〇年までの一連のシナリオをまとめて、公式エネルギー予測に基づいた基準シナリオでは、排出量は九〇年レベルから三〇%以下という現在のレベルから、二〇一〇年には一〇%以下のレベルまで増加すると言っております。  このシナリオからわかりますことは、二〇一〇年に安定化という目標値の場合、CEEの国々は、二〇〇八年から二〇一二年の予算期間に年間三億トン以上もの過剰な排出枠を持つことになるのではないでしょうか。  ホットエア取引、本来ならないはずの排出量、これを枠が低いからといって他国に売ることができる。アメリカ日本のような排出量の多い国はロシアのような低い国から買い取ることができ、その分多く排出をすることができるわけで、これは地球全体で考えた場合、排出量は全然減らない、むしろふえていくということになるわけですね。ホットエアの取引による本来ならないはずの排出量は、少なくとも九〇年の附属書国全体の二酸化炭素排出量の二・三%に当たるという計算もあります。  そもそも、こういった取引のようなことが認められるならば、これはオゾン層、フロンガスなどでも言えることですけれども、地球全体で物を考えていった場合には、次の世代に何を残していくかということには全然ならないわけで、一国の排出量枠さえ守ればいいことになってしまうわけです。こういうことについて議長国としてはどうお考えになりますか。
  203. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) 先生指摘の問題、いわゆるロシア・東欧諸国におきます社会経済上の変動に原因があって排出量が減少した、いわゆるホットエア、あるいはアメリカではペーパートンというような言い方もされておりますけれども、こういったものが取引されることによりまして実際の排出削減が進まないのではないか、こういう御指摘がNGOなどからなされていることは私どももよく承知をしているところでございます。  国際交渉の場におきましても、こうしたホットエアの取引を認めるべきではないという意見も出されております一方で、しかし他方、何がホットエアなのかということを定義することがなかなか難しいのではないか、あるいは、実際に一九九〇年と比べて排出量が他の要因によるものが多いとはいえ減少していることは評価すべきであるというような意見もあるわけでございます。結局のところこの問題は、市場経済移行過程国の持つ特殊な状況というものをどのように評価をしていくか、そしてこうした移行期国も含めまして各国の対策努力をどのようにして積極的に引き出すのか、そういうことによりまして全体として長期的に環境保全上の効果が上げられていくようなそういう制度をどのようにつくっていくか、そういう問題であろうというふうに考えております。  こうした観点から、私どもといたしましては、ホットエアの問題にも十分注意を払い、かつ先生の御指摘のような考え方も参考とさせていただきながら慎重に対処をしてまいりたい、このように考えております。
  204. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 もし、このCEEの国々が九〇年以降の実際の排出量と九〇年レベル排出量との差をすべて貯蓄できる、バンキングできる場合、これはロシア提案にもあるわけですけれども、排出量の過剰分は年間炭素換算で二十億トンにもなるのではないか。これは附属書Ⅰ国全体の二酸化炭素排出量の一五%に当たるという計算をしておられる学者たちがおられます。この数字はもしかしたら非常に控え目なものだとも言えるわけで、このため、ホットエアによって生じる問題の規模はさらに大きくなる可能性もあるというふうに思います。  例えば、ロシアに対して何か無制限にそういったホットエアを認めず上限を認めるとか、あるいは買う側に規制をかけるとか、そんな工夫をなさるおつもりはありませんか。
  205. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) ただいまの御指摘のうちで、特にホットエアと申しますか、既に実際に排出量が減少しているということでそれをいわばクレジットのような形で早期にバンキングといいますかそういう形で認めて、それを将来の排出権取引という制度ができましたときに移しかえる、そういう対象として認めさせようというのが一つの考え方なんだろうと思います。それは一部の方々からは、ホットエアどころではなくてスーパーヒーテッドエアであるというような御指摘もあるわけでございますが、他方で、先ほども申し上げましたが、そういう現実に九〇年から排出量が減っているということ、これはその原因が何であれ評価すべきことではないかという意見もあるわけでございます。  そういう減少している現在のレベルというものを将来にわたってなるべくふやさないように、あるいはさらに減らせるところであれば減らしていただく、そういうことに対するインセンティブを与えていくということも大事であろうというふうに考えるわけでございます。そのような意味で、そういった考慮と、それから他方で、余りにも多いそういうホットエアというものを取引の対象として認めることに伴う弊害、考えられる弊害というものを両方をどのようにバランスをしていくかという問題もあろうかと思います。  そういった点もよくよく考えた上で、先生御示唆のようなお考えも含めて、私どもとしては慎重に検討させていただきたいと思っております。
  206. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 慎重に検討していただきたいですが、ぜひ規制をしていただきたいと、先進国側に住む一人としてそういうふうに思います。  さっき外務省から出していただいた表の日本のところ、一番最初の枠のところに「HFC、PFC、SF6については二〇〇〇年までに追加」と書いてありますけれども、このハイドロフルオロカーボンあるいはパーフルオロカーボン、六弗化硫黄ですか、これらのガスは強力な温室効果ガスであります。もし、日本政府やEU提案しているように、京都でこれらのガスを規制対象から外した場合、先進工業国の排出量は二〇一〇年までに約五%の排出が追加される計算もあります。推定値の幅は、国別報告書に基づいて算出した場合の二・九%から、オランダの研究所の調査の推定値を使った場合の五から一%などという数値もあります。  西ヨーロッパで一九九五年に販売された自動車から漏れたHFC134aの量は、新規の火力発電所五基分から排出される二酸化炭素量に匹敵すると。多分日本では計測されたことがないと思いますけれども、こういった自動車からただ漏れたHFCだけでこういう数字が出ています。エアコンの装着率の高い日本では十基分ぐらいになるのではないだろうかというふうに思います。  HFCの製造そのものもまた温暖化に寄与する、困ったものですけれども、一トンのHFC134aを生産するのに二酸化炭素三八・八トンに匹敵する温暖化効果が発生すると、オーストリアやイギリスやいろんなところの学者たちがこういう計算をしているようであります。  もし、このHFC、PFC、SF6が京都で規制対象から除外された場合、これらのガスの今後の排出急増によって京都合意されるほかのガス削減効果をすっかり打ち消してしまうのではないか、そういう可能性も高いわけです。除外されるのかどうなのか、それからEUもなびくだろうかどうなのだろうかというところでお答えをいただきたいと思います。
  207. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  我が国といたしましては、HFC等の代替フロン類につきましても高い温室効果を持っておりますので、これらの大気中への放出は極力抑制することが重要であるというふうに認識をしております。  他方で、このHFC等につきましては、御案内のとおり、オゾン層破壊物質として製造が禁止されたフロンなどの代替として用いられていることがございます。そしてまた、これらのHFCにより代替される前のフロンに比べますと、HFCは温室効果が相対的に低いといったこともございます。こういった点などが検討すべき課題として残されていると考えておりますので、それらの点につきまして、一方でその大気中への放出を極力抑制しつつも、国際目標に加えるということにつきましては、これらの課題を検討を急ぎまして、二〇〇〇年までに結論を得た上で今後の国際目標に加えることについて検討してまいりたいというのが我が国の考え方でございます。  EUの動向についての御指摘がございましたが、我が国でこういった種々の課題があると考えておりますが、これらについてEUとしてはどのような判断をされるのか、その内容が我が国としては賛同できるものであるか否か、こういった点も十分見きわめた上で我が国としての判断を行うことになるものというふうに考えております。
  208. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 私たちもオゾン層の破壊に大変心を痛めておりまして、何とかストップしなければ、もう既に出ちゃったものでかなりのオゾン層が破壊されているわけですから、皮膚がん初めいろんなものの心配がございます。  しかし、日本ではフロン規制の法律がまだない。環境庁に出してほしいと私たち思っているんですが、もし環境庁が出せなければ、私たちは議員立法で出す準備を今整えているところであります。ぜひ、その節には環境庁とよいタイアップができるといいなと考えておりますけれども、今の浜中さんのお答えからすれば、京都で規制対象に入るかどうか、これはあと半月しかないですけれども、各国の成り行きを見ながら、会議中に少し地ならしをして考えてということになるわけでしょうかね。そういうふうにとってよろしいんでしょうか。
  209. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 必要があったらまた部長から追加してもらいますが、今のこのHFC等を京都会議でどう扱うかという問題と、それから現実に不必要に外へ出ないようにということでいろいろとそれを抑えるという努力とは別というか、関連はありますけれども、むしろそちらの後の方は今既にいろいろと努力をしているところでございまして、京都会議で書く書かないとは別に、そのHFCを必要な分野以外では使わないとか、それからまた使う場合にも外に出ないようにするとか、そういったいろんな取り組みは今既に進めているところでございますので、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  210. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 議長国としての日本努力に期待したいと思います。  四つ目の抜け穴、これで多分最後になると思いますけれども、国際的な航空・船舶燃料からの排出、この分野の排出が規制対象から除外されることで、二〇一〇年までに五%から一〇%ぐらいの排出増加が許されることになるのではないかと思いますけれども、これについては検討課題として残されるのでしょうか。少なくとも国際約束の課題ぐらいにはしてほしいなというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  211. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  国際交通のための航空機や船舶からの排出量の取り扱いでございますが、これにつきましては、積み荷国からの排出とするのか、それとも船籍がある国の排出とするのかなと幾つかの方式が考えられるわけでございまして、まだ現状では国際的に結論が得られていない状況でございます。こうしたことから、これらの排出量は、各国の排出目標の約束に含めるべきという提案は今までのところは行われていないということで対象外になるのではないかという御指摘、御批判があるわけでございます。  これらの対策につきましては、国際交通のための航空機や船舶からの排出に対して、国際的に共通の対策を実施することが可能ではないかという考え方に立って適切な方策を検討するようにそれぞれの分野における専門機関がございます。こうした専門的な国際機関に、条約締約国会議の補助機関、これは科学上及び技術上の助言に関する補助機関、SBSTAというものがございますが、その補助機関から検討を依頼したところでございまして、その成果を踏まえて将来的に政府間の検討が進展するものと期待をしているところでございます。
  212. 竹村泰子

    ○竹村泰子君 時間がなくなりましたのでやめなければなりませんが、議長国として本当に責任も重大であり、大変な重責を担われるわけでございますが、ぜひ未来世代のためにも勇気と決断を持って臨んでいただきたいと強く要望しておきます。  ありがとうございました。
  213. 清水澄子

    清水澄子君 まず最初に、京都会議に向けてのこの政府提案国民一般、そして国会に対して情報を提供することなく、また広く意見を聞くこともなく、全く密室の中で決められたことに対して、私は大変問題の大きいことだと思っております。地球温暖化対策というのは、これは国民的な運動といいますか、国民の大きな協力がなくして成果を上げることはできないと思うわけです。  そこで、本日のけさからの審議の中でも皆さん方がいろいろおっしゃっているわけですけれども、産業界の問題もそうですが、国民のライフスタイルをどう変えるかというのはとても大きな意味があると思います。その中で、やはり意識改革が必要だという御質問に対して、私は環境庁お答えを聞いていて、ううんわかっていないなと思って伺っておったんですね。  というのは、具体的に国民に何を訴えたらいいかよくわからない。しかし、一生懸命工夫していますと言って新聞に百万部広告を載せたとか、いろいろ大変なお金を使っておられるなというのを感じたわけですけれども、やはりこういう問題はもっと国民とかNGOと話し合って、そして一緒に何ができるかということでNGO、国民の知恵をそこに参加させるといいますか、参加型のこういう温暖化防止対策というのが必要だと。そういうことをやっていくことの中で、PRというのは当然NGOたちによって工夫されてきますし、みんながそういうことを意識化していく。  そういう意味で私は、日本の行政全体なんですが、環境庁は特に環境問題というのは、NGOとか住民とか国民とのパートナーシップをどう強めていくか、このことが非常に大事だと思うわけです。ですから、そういう点でこの温暖化対策についても、公開性と透明性という原則に加えて、市民参加のルールを確立していくべきだと思いますが、大臣、どのようにお考えになりますか。
  214. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 私も、環境庁長官を拝命いたしましてからいろいろとNGOの方とお話ししておるんですけれども、いろんな行政官庁の中でも、これから環境問題を実際にやっていく場合に、特に環境庁はNGOと申しますか、NGOに限らないんですけれども、国民一般にいかにして理解してもらうかということが非常に大事な要素だと思っております。  そういうことですから、たまたまこの間の政府の最終案をつくるときに、十分にいろんな方に御説明もできなかったし、国会にも十分御説明しない、最終段階でということにつきましては総理も遺憾の意を表されましたし、私どもも遺憾に存じます。ただ、いろいろと時間的制約やら、それからまた外交上の考慮というようなことでどうしてもそういう面が残るということは、外交交渉の面から言いますとひとつ御理解いただきたいと思いますが、環境行政一般について言えば、当然に国民にもっと理解してもらいながらやらなきゃいけないということでございますので、NGOとの関係というものももっと従来以上に強化し、そしてまた、いろいろな我々の政策についても公開の場でもっと広く御説明するように努力をしたいと思っております。
  215. 清水澄子

    清水澄子君 次に、地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合会議というのがあって、ここの報告書についてなんですけれども、この合同会議も非公開で、そして市民からのヒアリングも極めて限定された形で行われた。しかも、当日は十八人の委員のうち四人しか出席していなかった、こういうことを伺っております。  十一月十四日に総理に提出された報告書は、関係省庁、特にまたここでも通産省の従来の説明と同じ内容が並べられて、抜本的な対策を示さない一方で国民の負担だけは強調されているという、こういう内容で、これは今までの政府提案を追認したにすぎないものだという批判が各地から、また各階層から私どもに寄せられております。  私は、このように国民に閉ざされた過程を経て省庁の主張にだけ耳を傾けてまとめたような、このような報告書が、日本がとるべき温暖化対策に関する最終的な結論としていいのかどうか、その点では大変疑問に思います。  一方、中央環境審議会の企画政策部会が、「今後の地球温暖化防止対策のあり方について 中間取りまとめ」というのを公表しておりますけれども、その中ではまた違った、より突っ込んだ対策検討されております。私は、ぜひ長官、政府としてはこの合同会議の報告書を結論とするのではなくて、より積極的な対策を出しているそちらの、中環審の方向で今後この内容を具体化していっていただきたいと思いますが、どのようにお考えになりますか。
  216. 大木浩

    国務大臣大木浩君) まず最初に、こういう合同会議というのが行われたというのは、いろんな審議会がある、たしか今度も九つ審議会があって、それが合同会議をやったというのは、建前上と言うと言葉は悪いんですけれども、できるだけ広い範囲の御意見を聞いてということで、しかも京都会議もあるからというようなことである程度時間も決めておやりいただいたということです。  この合同会議の報告書を受けて総理も、これはこれで一応いただいたけれども、さらにまた、いろいろと関係の審議会もあるので、必要な勉強、検討は進めてもらいたい、こういうことでございます。合同会議の報告書の内容については、今余り細かい議論は、私もコメントを避けた方がいいと思いますけれども、いずれにしてもそれはそれとして、中央環境審議会の方では引き続き精力的に議論を続けていただくということにしておりますので、そちらからまた前向きのいろんな議論が出てくれば、私どもはそれを受けてこれからの環境行政に十分反映させていきたいというふうに考えております。
  217. 清水澄子

    清水澄子君 ぜひその点、しっかり努力していただきたいと思います。  京都会議に向けての議定書交渉では、二〇一〇年前後の時点での温室効果ガス排出量削減を中心に議論がされているわけですが、この問題は、さらに長期的に大気中の温室効果ガス濃度をいかにして安定化させるか、そのためにどれだけの大きな幅でガス削減をしていくかということが非常に重要なのだと思います。  ですから、目標を二〇一〇年に設定した場合でも、一〇年といっても一二年になるんでしょうけれども、本当は二〇一〇年ですから、やはりその目標を二〇一〇年以降の取り組みにつなげていく、私はそういう政策がないといけないと思うわけです。IPCCは二酸化炭素を例えば産業革命前の二倍に安定化させるためのシナリオを示しているわけですが、日本政府はそういう意味ではどのような長期展望に立ったシナリオを描いていらっしゃるのか、どういう展望を持って会議に臨もうとしておられるのか、その点ぜひ長官、お答えいただきたいと思います。
  218. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 今、清水委員も言及されましたように、IPCCの報告書等も出ておりまして、一つの目安だと思いますけれども、例えば二一〇〇年に二酸化炭素の濃度を五五〇ppm以下というのは、これは一つ目標だと思います。それを言い直せば、その時期におきまして総排出量で七十五億トン程度、一人当たり換算一トン以下というのも、これも実は人口の増加がどれだけということもある程度の誤差があると思いますからなかなか精密なことは言えませんけれども、その辺が一応二一〇〇年の一つ目標ということでありまして、その間にまたいろいろと科学的な知見も出てくると思いますので、一応そこら辺を目標にしながらだんだんに削減を進めてまいりたい、そういうふうに考えております。
  219. 清水澄子

    清水澄子君 けさから各同僚議員の皆さんたちが今度の条件、パンフレットにも三つの条件とありますけれども、これは全部中身が余りにも柔軟になり過ぎて、特に「差異化」というふうなところなんかは、やはりこういうことではやらなくても終わるような内容になっていると思うんです。その点はいろいろ皆さん御質問がありましたので省きますけれども。  長官は二十一日から訪欧されると伺っているわけですけれども、そこでEUとの事前調整に当たられるんだろうと思いますが、日本としてはEUバブルについてこれを容認していくという方向提案修正を検討しているんだというふうに伝えられておりますけれども、やはり削減率については日本の案と非常に大きな隔たりがあると思います。  そういう中で、同時に、アメリカ途上国などとどう調整を図っていくのかという非常に大きな課題が残っていると思うんですけれども、長官はEUとの交渉でどのような決意と提案を持って臨まれるのか、その点についてひとつ御見解をお願いいたします。
  220. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 国会の方のお許しがいただければ二十三日ごろからちょっと二、三日、ヨーロッパへできれば出張したいと思っておりますが、今お話しのありました差異化という話は、これは結局、差異化というスキームというか概念を導入することによって、何か排出量削減努力を減らすということではなくて、むしろ差異化という要素を持ち込まないとなかなかみんながそろってスタートできないんじゃないかというわけであります。  厳密にみんなが全く同じ数字でスタートするということができれば結構なわけでありますが、各国が置かれている状況というのが、経済的な発展状況とか、あるいは各国のエネルギーに関する現状とかこれからの見通しとかいうことを考えますと、それぞれ努力はしてもなかなかすぐに大きな数字削減できないというところと、それから割に努力しなくてもいけそうなところもあるわけです。そういったある意味におきましては努力の均衡というようなことも考えながらみんなでスタートできるシステムということを考えますと、どういう使い方をするかという細かいことは別といたしまして、差異化という概念というかスキーム、要素というものをどこかに入れないとなかなか一緒にスタートできない。  今お話しのございましたEU差異化についてどういう態度を示すか、まだそれは最終的に議論しているわけじゃありませんけれども、考えてみますと、EUのいわゆるバブルというもの、これも差異化といいますか、それぞれ国によって違った数字を出して、それで一つのものにまとめているわけですから、もう一遍繰り返しますけれども、差異化排出量削減努力を減らすための言いわけではなくて、やっぱりみんなが一緒に、できるだけ多くの国が同時にスタートできるというためにはそういったものも必要かなというふうに考えているところでございます。
  221. 清水澄子

    清水澄子君 馳議員が言っておられたように、日本としては少なくとも第一期の削減目標に関しては、衡平性の観点からも問題のある人口増加率規定とか、そういう差異化提案をやっぱり一度検討し直す必要がある、私はこのように要望をしておきたいと思います。  次に、日本政府の提案は、基本的にこれまでの趨勢を踏まえた省エネ対策積み上げて行った推計になっていると思うわけです。しかし一方で、一九九〇年に閣議で決定された地球温暖化防止行動計画というのがあります。これは、二〇〇〇年以降のCO2排出量を九〇年レベルで安定化するよう努めるということを閣議で九〇年に決定しているわけですね。  ところが、一九九〇年以降、二酸化炭素排出量は九六年度までに九・四%増加しているわけです。そうすると、ここで閣議決定した計画は全く効果を上げなかったどころか逆に状況の悪化を許してきたわけですけれども、それがなぜそうなったかという事態の検証を行わないままにこのような対策積み上げても、ただ積み上げてきたというだけでは、そこには非常に何か大きなからくりがあると私は思います。  環境庁長官にお伺いしますけれども、この地球温暖化防止行動計画が効果を上げていないその原因と責任の所在をどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  222. 大木浩

    国務大臣大木浩君) これは今、日本のことをお話しになったわけで、日本につきましても、一九九二年のころからいろいろと計画があったにもかかわらず、現実に一九九七年の現在においてむしろ一〇%近くふえてしまったということにつきましては、これはやはり計画の目標はあったけれども個々の政策が十分に結びついていなかった、それからまた、いろいろと施策の効果を定量的に十分に把握できなかったので、計画の今までの管理についても十分にそれが行われていなかったという反省はございます。  これは、実は顧みて他を言うわけじゃないんですが、アメリカの場合もそういう状況があったし、それからその他にも、九〇年あるいは九二年に決めた以降むしろ削減ではなくて増加した国が多いということはそのとおりであります。  だからこそ、今度はひとつCOP3におきまして法的拘束力のあるものをつくろうということで努力しておるわけでございますので、過去のことについてはそれは非常に残念だ、遺憾だと思いますが、その反省を踏まえて、今度はきちっと拘束力のあるものをつくり上げたいし、国内的にもそれが実現できるような体制というものをつくりたいと考えております。
  223. 清水澄子

    清水澄子君 なぜそれができなかったか、はっきり問題の所在を明らかにする、その中でその反省を教訓にして次に前進ができるんだと思いますけれども、それらをあいまいにしたままの議論というのはまた同じことが繰り返されかねない。もう現実にそうなっております、縦割り行政で。今度は環境安全省というのがどうなるのか、私どもはもっと強い権限を持った省が必要だということで一生懸命努力はしておりますが、そういう点で過去になぜそれができなかったかをぜひ克服していただくように要望をいたします。  そして、この温暖化防止行動計画は二〇〇〇年以降九〇年レベルで安定化するという目標を掲げていたわけですね、九〇年のときに。ですから、今私たちの話はつい何か二〇一二年とかというそっちへ飛んじゃっているわけですけれども、その先送りした目標ではなくて、二〇〇〇年までにはまだあと三年あるわけですから、じゃ、それまでには具体的に一体何をするという話し合いになっているんでしょうか。
  224. 大木浩

    国務大臣大木浩君) これは私は、京都会議までに今すぐにできることと、それから京都会議をてこにしてと言うと言葉が悪いんですけれども、さらに強力なるいろいろな措置を進めるということと両方あると思うんです。例えば、新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法、これに基づくいろんな事業者等への指導というのは通産省と一緒にやっておるわけでございますから、エネルギー対策というのはいろいろとあるんですが、それがこのCO2の削減に直接きちっと結びつくかというと、正直申し上げましてまだまだ十分じゃないという感じがしております。  これはそういうことでございますので、今申し上げたとおりに、京都会議でまたいろんなものが決まってくれば、それをばねにして国内体制を、必要に応じての法令の整備も含めてひとつ措置を進めたいというふうに考えております。
  225. 清水澄子

    清水澄子君 今度は通産省にお聞きしたいと思います。  温室効果ガスの排出を削減していくためには、やはりこれまでの大量生産とか大量消費、大量廃棄に基づく日本の経済社会構造そのものを転換していくことなくしてこの目標は難しいと私は思うわけです。政府の推計はその将来ビジョンがないんじゃないかと思います。まさに現在の延長上で考えられているんではないか。  また、省エネ推進によって生み出されてくる新たなビジネスチャンスとか新規雇用のコスト節約効果など、経済的なプラス要素というのはほとんど示していないんですね、通産省は。さっきの質問にもあったんですが、大量な失業が出るぞ、日本の経済はもうだめになるとか、何かおどしに近いようなそういうマイナス面が非常に通産省は強調されていると思います。  私は、何も国民に今の生活を全部、もうそれこそ先行き見通しのないようなそんな不安感をあおる必要はないのであって、少しこういうふうに工夫したらこういうふうにできるよというふうな、それから今の経済でもそんなに無理なくもう少しこういう削減の手段なり技術革新をすればこのようにはできるのだというふうな、もう少しプラスの影響というものをやはり打ち出すべきだと思いますし、それを研究するべきだと思うんです。  温暖化対策というのは、今日までの経済、産業のあり方をもう少し私たちは方向を転換しなきゃいけないんだという、国民全体も含めた、産業界も含めた将来の日本の経済社会構造をどう転換していくのか、そういうビジョンを描いていくということがとても大事なことだし、二十一世紀に向けてはそれこそが日本の経済が今後持続できることではないかなと私は思うわけです。  そういう点で、通産省はどういうふうにビジョンを描いていらっしゃるんでしょうか。
  226. 松永和夫

    説明員(松永和夫君) 地球温暖化防止対策につきましては、本日午前中の答弁でも強調させていただきましたけれども、地球温暖化の防止と国民経済の健全な発展の両立ということが最大の課題であるというふうに考えております。  また、具体的に地球温暖化防止対策を講じていくに当たりましては、企業等におきましては省エネルギー技術の開発や具体的な新たな設備の導入、あるいは中長期的な技術開発に向けましての一定のコスト負担というようなことが必要になってまいりますので、日本の経済自体が引き続き活力を持っていくということがこうした対策を確実に実施していくための前提条件であるというふうに考えている次第でございます。  ただ、清水委員指摘のとおり、環境問題への積極的な対応ということにつきましては、近年の国際的な環境の意識の高まりを考えてまいりますと、むしろ早目に環境問題に積極的に対応していくことによりまして環境産業という成長が期待される分野あるいは新たな市場の創出といったような面もあることも確かでございまして、そうしたプラスの面に着目をしていくというアプローチも非常に大事であるというふうに考えております。  環境産業につきましては、ことしの五月に閣議決定いたしました「経済構造の変革と創造のための行動計画」というのがございまして、その中で今後成長が期待される新たな十五分野一つに環境産業を位置づけているわけでございます。通産省としましては、この行動計画に基づきまして、例えばIS〇一四〇〇〇といったような取り決めがございますけれども、こうした事業者の事業活動全般にわたる環境配慮の促進の問題でございますとか、あるいは温暖化防止対策技術もそうでございますけれども、関連の技術開発を初めとした環境産業の発展の基盤整備といったような各種施策をその中で網羅しておりまして、早急にこうした対策を実施していく、こういったプランを立てているというところでございます。
  227. 清水澄子

    清水澄子君 私は通産省のこれまでの発言、行動に非常な不信を持っている一人なんですけれども、私どものところにもこの国立環境研究所のAIMモデルなんというのは全く意味のないものだ、根拠のないものだという文書を持ってこられました。  私どもは、それをすべて一〇〇%とは言いませんけれども、やはりAIMモデルとかWWFとかCASAとか、そういういろんな団体や研究者たちがシミュレーションを出して、どうすればCO2を削減できるかという問題提起をされていることを私たちは真剣に見ながら、その中から私たち自身が自分の生活に取り入れられることとあわせて、政策として何ができるかというのを一生懸命そういうもので真剣に研究をしているわけなんです。  そこへ向かって、同じ政府の中で国立環境研究所のああいうAIMモデルなんというのは全く科学的根拠も何の根拠もないものだという文書を配付するほどこれは大変な感情的、感情というのか、私はなぜこうなるのかわかりませんが、縦割りというのはすごいものなんだなというのを感じましたし、今度の政府の推計を出すには通産省が一番大きな役割を買っているというのはあらゆるところが知っているわけです。しかしそういう意味で、民間やいろんなところが出した試算がなぜそんなに問題があるのか、じゃその政府の出した推計は理論的にも非常に正しいかといえば、やっぱりみんな疑問を感じているわけですね。  ですから、そこで通産省にお伺いしたいのは、それぞれAIMモデルとか市民団体等の他の試算と政府推計との間にはどのような違いがあって、政府推計がいかに正しいのか、その正当性はどこにあるとお考えになるんでしょうか。その点についてお答えいただきたいと思います。
  228. 松村博史

    説明員(松村博史君) 私どもの試算では、二〇一〇年の最終エネルギー消費というものを一応のマクロフレームを前提といたしまして四億五千六百万キロリットルのエネルギー消費になるのではないかということを見込みまして、それに伴いますCO2の排出量は三億四千七百万トンとなる、これは供給面において非化石のエネルギー源というものを最大限導入するという前提に立って試算したものでございます。  いわばこの自然体ケースから需要対策として現在見通せる経済的に可能な範囲でのすべての対策を見込みまして、省エネルギーを五千六百万キロリットルと見込みまして、エネルギー消費は二〇一〇年時点で四億キロリットルというものを見込んでおります。この四億キロリットルに相当するCO2の排出量というものが二〇一〇年時点におきまして二億八千七百万トン、これは九〇年のレベルとほぼ一致しますものですから、九〇年比安定化のレベルに到達するというふうに見込んでおります。
  229. 清水澄子

    清水澄子君 余りわかりませんね、国民の皆さんが聞いて。これでなぜ他のシミュレーションに対しての正当性があるかというのは全然わかりません。それは通産省の推計だろうと思います。  時間がありませんから、この問題はずっと今後残ると思いますけれども、まだいろんな疑問が出てきておりますので、またいずれ質問させていただきます。  次に、まず経済企画庁。経済企画庁は経済政策とか景気対策とかの計画を立てるわけですけれども、環境関連分野への投資というのは、これは短期的な効果だけではなくて、非常に長期にわたる経済効果をもたらすものと考えられます。景気対策においてもこういうことがほとんど即効性がないみたいなことで余り問題にされていないわけですけれども、やはりこういう日本の経済全体の体質を転換していくという意味では、この地球温暖化対策に対する機器とか設備とか、その購入とか導入に対する税の減免措置とか補助金とか融資の拡充とか、もっとビジネスチャンスを拡大していけるようなそういう計画を、またはそういう考え方を国民に、社会にアピールしていく。そういうことも、それは消費者に対しても、そういうことでビジネスチャンスへ何か挑戦してみるという、そういう一つの刺激を与えていくという意味でも、これは決して景気対策にはならないと見るんじゃなくて、私はむしろこういう時代だからこそ有効ではないかと思うわけですね。  そういう意味で、税とか財政のあり方も含めて、経済政策の観点からこの環境政策の効果をどう研究していらっしゃるか。そして、そういう積極的な問題提起を経企庁はなさる必要があると思うんですが、どのようにお考えでしょうか。
  230. 谷内満

    説明員(谷内満君) 今、清水議員の御指摘されたことは大変重要なことだと思います。  昨日、経済対策閣僚会議で経済対策を御決定いただきましたけれども、この経済対策では、いわゆるバブル景気が終わった後、長期に低成長を続けています日本経済の体質を改善して将来の展望を開いて、日本経済をできるだけ早急に順調な回復軌道に乗せるという観点から、大胆な規制緩和の具体策あるいは土地の取引の活性化、有効活用といったものを中核的な柱として取りまとめられております。  清水議員御指摘の環境関連の措置につきましては、このような今回の景気対策の基本的な性格から、中核的な柱にはなってございませんけれども、しかし、今回の対策の中でも環境政策推進のための各種措置ということで七つほどの措置を盛り込ませていただいております。  その内容を若干紹介させていただきますと、企業がオゾン層保護に資するフロン回収システムを構築するために投資をするような場合には、そうした企業の環境対応投資に対して開銀融資を拡充するといった措置を盛り込んでおります。  それから、廃棄物発電あるいは風力発電などの施設を日本版PFIで整備する具体的方策を検討するとしております。PFIとは御案内のようにプライベート・ファイナンス・イニシアチブの略でございまして、民間資金を活用してインフラなどを整備するという考え方でございますが、これにつきましては、今年中に新エネルギー・リサイクル等PFI推進協議会というものを設立いたしまして、民間事業者のニーズに関する実態調査やモデルプロジェクトの構築を行うということにしております。  そしてさらに、新型の低公害車や一〇〇%古紙利用の再生紙などの環境に対して負荷を余りかけない製品、低環境負荷型製品の市場を育成するために政府が物品の消費に当たってガイドラインといたします物品調達推奨リストというものを今年度中に作成することにしております。そして、そのリストを政府自身が行いますグリーン調達のガイドラインとして使うだけではなくて、地方公共団体や産業界などにもこの推奨リストを広く広報して低環境負荷型製品の普及を図っていくという措置を盛り込んでおります。  以上です。
  231. 清水澄子

    清水澄子君 最後に、環境庁長官にお尋ねします。  一つは、ただ、抜本的な温暖化防止対策というのは京都会議だけが目標じゃありませんから、これらを実行していくためには具体的な施策をすぐ実行しなきゃならないと思います。そういう点で、次の来る予算編成でやはりそれらを具体化していくということが非常に大切だと思いますので、その点ではどのように考え、検討中なのかということが一点。  あともう一つ、一緒に質問します。  この中環審の取りまとめでは、地球温暖化防止対策のために法律をつくるべきだと、そして法制度を主張しておりますね。私ども社民党も既に同様の提案をしております。私は、この法律には温室効果ガスの排出削減目標量とかそういうものをきちんと定めて、そしていつまでに何をしようという一つの拘束力というんですか、明確な時期の設定とか、そういう拘束力のある推進策を明示していく、そういう内容のものを一日も早く制定することが、むしろ今数値をいろいろ議論しているよりも私はそれを具体的に推進する効果があると思います。同時に、関連する既存の法律の改正も必要となってくると思いますけれども、その辺について環境庁長官の御所見と御決意をお伺いして終わりたいと思います。
  232. 大木浩

    国務大臣大木浩君) まず、予算でございますが、この予算は実は御存じのとおりに各省の概算要求を既に終わっておりますので、今の時点で明年度について大幅にどうということはちょっとなかなか難しいんじゃないかと思っております。十一年度以降はひとつ京都会議の結果も踏まえ、それからまた今おっしゃったように京都会議だけではなくて、先ほどからのお話のとおりに二一〇〇年まで続く、続くというか、そこまでに着実に前進しなきゃいけない問題でございますから、そのための措置を強力に進めたいと思っております。  正直申し上げまして、今まで地球温暖化対策に関する予算というのが、今度の概算要求でも地球環境保全関係予算ということで平成十年度四千九百億ばかり計上してあるんですけれども、これは前年度より二、三%ふえているはずです。ただ、環境庁といたしまして、これは私も実はゼロが二つ足りないんじゃないかと思っていますけれども、平成十年度で環境庁自体の予算は四十五億しかついていないということで、これも前年度に比べれば十億ふえているのでパーセンテージからいうとふえたふえたということですけれども、とてもこれじゃいけないと思いますので、将来に向かってまた強力に予算措置は進めたいと思っております。  それから、関係法律を整備する、あるいは新しい法律をつくるということでございますが、まさしくこれは総合的に地球温暖化を視野に入れた法律というものもどういうものができるか。おっしゃったようにいろいろと既存の法律もあるわけでありますけれども、どうもそれだけじゃ足りないんじゃないかなという感じがしておりますので、これはひとつ京都会議が終わりましたら早速取りかかりたいと考えております。
  233. 清水澄子

    清水澄子君 どうもありがとうございました。
  234. 須藤美也子

    須藤美也子君 いろいろダブるかもしれませんけれども、十二月の京都会議を前にして国内の削減対策を取りまとめました関係審議会合会議の最終報告書、これを読ませていただきました。これに関連して若干質問したいと思います。  この報告書には、こういう報告書に示された「対策が所期の効果を発揮すれば、二〇一〇年時点のエネルギー起源のCO2排出量は九〇年レベルとほぼ同レベルとなる。」と。ということは、削減ゼロということになるじゃありませんか。  政府は原則五%削減差異化二・五%ですから、事実上ゼロというようなこの報告書というのは、この関係審議会合会議では削減するという姿勢がここに反映されていない、こういうふうに思うわけですけれども、この政府の原案からも外れているような感じもしますし、先ほど大臣は、政府はこの報告をそのまま受け入れるものではないと。しかし、これは関係審議会合会議の最終報告でありますから、これは京都会議前に出されている報告書ですから、これも一つの基準になると思うので、どういう対応をするのか、そこをまず大臣にお聞きしたいと思います。
  235. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 直接のお答えの前に私はちょっと感想を述べさせていただきたいんですが、とにかくもう何かやたらと審議会が多いなという感じを持っております。温暖化問題についての関係だけでも今九つばかりあるので、とにかくこの時点で一遍皆さんの意見を広く聞いていこうということでこの時点におまとめいただいたと思いますけれども、正直言いまして、いろんな審議会、それぞれのお立場がありますので、そういう意見を全部並べるとこういうことになるかと思います。  しかし、政府といたしましては決して今の削減率ゼロということではなくて、総理のところできっちりと共通目標五%減、それから日本として差異化を含めても二・五%減というのはこれはもう政府の方針でございますから、午前中からの議論で、積み重ねがまだできていないところがあるんじゃないかというお話になりますと、確かに細かくは積み上げができていないところもありますけれども、あくまで目標は二・五%減でございますので、この報告書が出たからといって政府の方針を変えたものではないと。  それから、総理もこれを受けて、さらにそれぞれの審議会で勉強を続けろということでございますから、当庁といたしましては中央環境審議会で引き続き審議をしていただくということはもうきっちりとお願いをしてございますので、決して合同会議の方の報告書が将来のことを決めてしまった一つの基礎だということではなくて、これは今の時点でいろいろな審議会の御意見をあえてまとめるとこういうことであったというふうに受けとめております。
  236. 須藤美也子

    須藤美也子君 これも先ほど午前中に質問がありましたように、原発を二十基設置するというのも書いてあるんですよね。原発はCO2以上に、動燃の問題とか、それから新潟の巻町では住民投票で原発設置反対の投票が多く出たわけですよね。そういうことを踏まえるならば、簡単に原発二十基というのはこれはいただけないものだ、これはやめるべきだと、私はこういうふうに思うわけです。  エネルギー効率的利用効果、これをもっと強化すべきではないか。安易に原発に頼ったりするのではなくて、エネルギー効率的利用対策をもっと強化すべきだという観点から、発電の段階から消費の段階で排熱している、むだになっている、その部分はどのぐらいあるのですか。
  237. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えをいたします。  芝浦工業大学の平田教授、この方はエンジンの御専門の先生でいらっしゃいますけれども、この平田教授の行われた計算によりますと、一九九四年におきまして、エネルギーの国内供給量のうち三三%が有用なエネルギーとして使われ、残りの六七%が排熱として捨てられている、これが我が国の全体としてのエネルギー効率といいますか、そういう状況でございます。  それで、その平田先生の御試算の中で、ただいま発電用のエネルギーとしてはどのぐらい有効かというお尋ねがあったように承りましたけれども、発電用につきましては、パーセンテージで我が国の一次エネルギー供給量のうちの四一%が発電用に使われておりまして、その四一%のうちの二七%が損失ということになっておりますので、実際の電気エネルギーに転嫁されたものはその差額、大体一四%程度であろうかと。したがって、ごく概算でございますけれども、三分の一強が電気にかえられている、残りは排熱ということで損失ということで失われているということであろうかと思われます。
  238. 須藤美也子

    須藤美也子君 続けてお聞きいたしますけれども、ただいまおっしゃいました平田先生が座長になっている環境庁地球温暖化対策技術評価検討会というのがありますね。この中でこれだけ削減できるという数が出ております。これはエネルギー転換すれば百八十万トン、この技術評価検討会では言っております。さらに、平田先生は二〇一〇年まで千九百九十二万トンの削減を言っております。この数値は政府の方で今回のCO2の削減目標を立てるときにこれが参考になっているのかどうなのか、そこをお聞きしたいのです。
  239. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  平田先生に座長をお願いいたしまして、環境庁地球温暖化対策技術評価検討会と申しますものを設置しております。ここからいただきました報告、平成八年五月に一たん報告をいただいておりまして、二〇〇〇年までに導入可能な技術とその対策効果を取りまとめているわけでございます。  その後、この検討会では、ただいま御指摘がございました二〇一〇年までの技術的な観点から見た削減可能性、こういったものについて引き続き検討を行っていただいておりまして、私どもが政府部内で検討を行った際にはこうした検討過程の、ただいまちょっと言及されましだそういったものも活用をさせていただいたところでございます。  ただ、この検討会ではあくまでも技術的な観点から削減見積もりの作業をしたわけでございますので、実際の政府部内の検討におきましては、これに加えまして、制度的な観点、あるいは経済的な観点、社会的な観点からいろいろなエネルギー効率の高い技術の導入可能性も含めて吟味をしたわけでございますので、技術評価検討会での検討結果の数値がそのまま使われているわけではございませんが、実質的な観点から政府部内の検討過程ではこの成果は反映されたものというふうに理解をしております。
  240. 須藤美也子

    須藤美也子君 第二回日本国報告書があります。この中で火力発電技術などは技術面で非常に効果を上げていると、こう報告されております。例えば、現在のコンパインドサイクル発電はガスタービンと蒸気タービンの組み合わせにより熱効率四八%以上、あるいは五〇%以上の熱効率を達成する技術開発のめどはついていると、こういうふうな報告をされているわけですけれども、こういうのはどこに生かされているのでしょうか。今回の京都会議に向けて政府が出している差異化二・五%ですね。それから、この最終報告書では、二〇一〇年では九〇年レベルという、ゼロというような方向で出されているようなんですけれども、それはどう生かされているのでしょうか。
  241. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘になられましたコンパインドサイクル発電などは、最近つくられます天然ガスを燃料とする火力発電所で多く採用されておりまして、大変熱効率の高いものでございます。こうしたものによる温暖化防止効果といいますか、CO2削減効果につきましては、当然政府において削減見積もりを行ったものには盛り込まれているところでございます。
  242. 須藤美也子

    須藤美也子君 こういうふうに、排熱されるものをむだにするのでなくて、それを生かしていけばもっとCO2の削減はできるのではないか。それにもっと政府としても政策的な力を入れていく必要があるのではないかというふうに考えるわけです。  とりわけ、国民的問題として、省エネに民生部門というとすぐ何か家庭の節約とかというふうなアピールが出されるようですけれども、私は、まず何よりもこの発電、供給している側の電力会社に対しても、その点の技術効果も含めて、技術面の構造的な面も含めてもっと強力な指導を進めていただきたいというふうに思うわけです。その点ではどうでしょうか。
  243. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  私ども、現時点でも実用可能で有望な排熱の利用方法といたしましては、下水道や河川水などの都市排熱をヒートポンプという方法を使いまして熱を回収する未利用エネルギー活用方法、これはもう既に現実に一部施設では使われております。  それから、自家発電でみずからの施設で必要な電気とそれから熱の両方を賄うコージェネレーションがございます。コージェネレーションにつきましても、これは平田先生も非常に重要なエネルギーの有効利用方法であるということで御指摘になっておられますけれども、これは我が国で民生用、産業用等においてかなり広く普及をされ始めているところでございます。  御指摘のございました発電に伴って発生する排熱の利用でございますけれども、これは電気を起こしました後、まだかなり熱エネルギーが残っております。これをいかに有効に使えるかという発想であるわけでございますけれども、熱は電気と異なりまして、その輸送に多大な設備とコストが要るわけでございます。  問題は、供給地と需要地が近接していればこの有効活用の可能性が広がるわけでございますが、実際の火力発電所を見てまいりますと、大都市のような熱の需要地から遠いケースも多いわけでございます。それから、原子力発電所ももちろんそうでございます。そういうことから、現在の技術のもとでは排熱を大規模に活用するのはなかなか難しいという事情もございます。今後、相当の技術開発が必要ではないかというふうに考えている次第でございます。
  244. 須藤美也子

    須藤美也子君 国全体の半分以上を占めているのが産業部門だと思うんです。そういう点では、先ほど来もいろいろ質問があったようですけれども、この産業部門の省エネ対策で、この報告書では、世界最高水準のエネルギー消費効率となっていると、さらなる省エネの余地が小さい、こういうふうに報告書の中にはあるんですけれども、それでは、九〇年以降エネルギー原単位は悪化していると思うんですが、省エネ努力がなおざりになっているのではないのか。例えば、鉄鋼、紙・パルプ、化学、窯業・土石、製造業平均のエネルギー消費原単位の九〇年以降の推移は一体どうなっているのか、そこをお尋ねいたします。
  245. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えをいたします。  産業部門の各業種におきまして、オイルショックがございました一九七三年以降、一九九〇年前後まではエネルギー消費原単位は継続的に低下の傾向を見せておりましたが、一九九〇年前後以降を見てまいりますと、御指摘のとおりこのエネルギー消費原単位はやや悪化をしているという傾向が見られるように思います。  具体的に、鉄鋼でありますとか紙パルプ、化学あるいは窯業・土石といった産業部門ごとにデータがございますけれども、いずれも、多少の業種ごとの傾向の違いはあるにせよ、全般的に眺めまして、おおむね九〇年以降はこの消費原単位がやや悪化をしているというのが全般的な傾向であるというふうに認識をしております。
  246. 須藤美也子

    須藤美也子君 時間がなくなってきましたが、政府は公共投資の基本計画を改定し、十年の長期計画を十三年に見直しました。二〇一〇年まで公共事業は縮減されるはずですね、このとおりにいけば。そうしますと、原則五%削減と言っているわけですが、その公共事業の縮小、この分は計算に入れられているんでしょうか。
  247. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) 政府提案に基づく我が国目標は二・五%削減ということでございまして、その裏打ちについては、本日もいろいろ御議論がございましたが、御説明を申し上げておりますとおり〇・五%削減分までは積み上げをしているということでございます。  その内訳でございますが、御指摘の公共事業からの二酸化炭素排出量削減分としては特別には計上をしていないということでございまして、これは公共事業に関連する二酸化炭素の排出を見てまいりますと、建設資材の生産や運送にかかわる排出につきましては産業部門運輸部門として削減取り組みの中にカウントしている、こういうことによるものでございます。
  248. 須藤美也子

    須藤美也子君 私ども党で試算したんですけれども、仮に道路、河川だけで一五%削減した場合は一・四%CO2が削減になる。それから、衆議院の我が党の藤木議員は、一五%の削減でセメント、鋼材だけの分でもCO2百五十三万トン削減できる、これはおよそ〇・五%のCO2削減に当たるというふうに指摘をしております。これは御存じのはずだと思います。関連の運輸などを入れればもっと減ると思うんです。  そういう点で、むだな公共事業を縮減すべきと思っているわけですけれども、政府でさえ公共事業を縮小する、こういうことを言っているわけですから、そういう面におけるCO2削減検討すべきだと思うんですが、大臣どうでしょうか。
  249. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 一般論として、いろいろな計画が縮小されればそこから何らかの数値が出てくると思いますが、実は先ほども政府委員の方からお答えいたしましたように、特に公共事業のところだけを取り出して計算はできていないと。しかし一般的には、それは当然そこから何らかの数値削減数値として出てくると思いますが、今のところ計量的に把握はしていないということでございます。
  250. 須藤美也子

    須藤美也子君 九〇年からの国内の地球温暖化防止行動計画の達成はだれが見ても困難だというふうに意識は一致していると思うんですが、温暖化防止実施の義務づけを本当に実行するのであれば、先ほど来論議にもなっていましたが、これを義務づける法的根拠、法的なものが必要だと思うんですね。それはどう考えていられるでしょうか、大臣、簡単に。
  251. 大木浩

    国務大臣大木浩君) この温暖化防止行動計画というのをつくりまして、九〇年から二〇〇〇年までに安定化という目標をつくったわけですが、結果としては全く残念ながらそれが実施されていなかったということで、反省として考えれば、計画の目標と個々の施策の結びつきが不十分でなかったかと。そしてまた、いろいろな施策の効果等が定量的になかなか把握できなくて、とにかく非常に一般的に計画計画ということであったというだけだというところでありますから、これはもう確かに反省としてはこれでは不十分であったので、だからこそ京都会議の結果も踏まえて、国内的にも必要な法令を整備いたしましてしっかりと実現できるように努力をしたいと考えております。
  252. 須藤美也子

    須藤美也子君 この合同審議会の最終報告書の中には、一番多くCO2を排出している産業部門は自主的努力ということだけで表現しているわけですね。これはやっぱり、先ほどもいろいろ御質問があったようですけれども、規制するガスの種類や削減数値目標など、新たな法律をつくったらそれで定めるような必要な政策措置も含めてこれをやる必要があるんでないか。  特に、毎日毎日、新聞報道でいろいろな景気対策が報道されております。その中で非常に気になるのは、二〇〇〇年まで大型店の出店計画は合計しますと七百万平方メートル、東京ドーム百五十個分の計画がされているわけですね。この大型店だけでも、ずっと深夜営業とかいろいろやりますと相当なCO2の排出というか、それだけでなくいろんなものの温暖化を促進するようなそういうものを排出する。  そういう点で、こういう企業、産業部門に対してもきちんと規制する、そういう法律をきちんと設定するというふうに考えますが、いかがですか。
  253. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 大型店対策というか、大型店に対するまた取り扱いというのは……
  254. 須藤美也子

    須藤美也子君 大型店だけでなく、いろいろ産業部門で。
  255. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 産業全体について、一方ではこれはやはり日本の産業振興ということでいろいろとそちらからの要望もあるわけでございますけれども、しかし、この今のCO2の削減というのは、これをほかっておきますと日本の経済、日本の社会自体が沈没してしまうという問題ですから、これはやはり早目早目に対策をしなきゃいかぬということでございますので、先ほどからいろいろとお話はございますけれども、必要な規制措置はとる。  それからもう一つは、産業の方からいえば、やはり環境産業というようなものも大いにこれから発展させて、環境の方のいい結果が出るようにひとつ頑張りたいと考えております。  ただ、これは環境庁だけでなかなかできませんので、これからひとつ関係省庁とも十分協力しながら政府全体として措置を進めてまいりたいと考えております。
  256. 須藤美也子

    須藤美也子君 いろいろ不況対策とか景気対策ということでそういうのも一方で進められているようですけれども、繰り返すようですけれども、そういう浪費部分、例えば公共事業も含めてですけれども、浪費部分や経済的な規制の緩和、これによって温暖化防止の観点からそういうものを見直す、こういう必要が今国民的に求められているんでないか、こういうふうに思います。  その点のことを踏まえて、例えば十八日に開いた中央環境審議会は、先ほど来お話ありましたけれども、実効性ある対策枠組みを構築しなければならない、そういう点ではこの議定書の削減目標の実現には法制度に裏づけられた政策措置が必要だと。仮に地球温暖化防止計画、こういうものを提起しているわけですね。こういうことを踏まえて、政府としてこういう政策措置をとる必要がある、こういうふうに思うんですが、いかがでしょうか。
  257. 大木浩

    国務大臣大木浩君) やはり京都会議の結末も踏まえて今おっしゃったような総合的な地球温暖化防止の計画というものをつくり、それに必要なまたいろいろな法令的な整備もしたい、また単に法令だけではなくていろいろと政府としてできる施策あるいはいろんな現存の法令の運用、そういうようなものを総合的に動員いたしましてこれからひとつ必要な措置を進めてまいりたいと考えております。
  258. 須藤美也子

    須藤美也子君 何か抽象的な答弁でなかなかぴんとこないんですけれども、それをぜひ京都会議にはきちんとしたものが出されるように議長国としてのリーダーシップをとっていただきたいと思うわけです。  最後に、温暖化防止対策として法的措置と、先ほど来、助成金とか補助金制度、お金の方の問題も出されました。  私は山形県なんですけれども、環境庁で出したリーフの中にもありますが、立川町でやっている風力発電があります。「フォト」というこれに載っているんですね。(資料を示す)この二基というのは民間の風力発電なんです。こちらの山の方にあるのが町でつくった三基なんですが、風力発電をやっています。  問題なのは、これを二〇〇〇年まで風力発電で一〇〇%、これを町としてはやりたい、こういうことを目標に掲げているわけですね。環境庁のリーフの中にもそう書いてあります。しかし、聞いてみましたら、町でつくった風力発電は三基、これは町の持ち出しが物すごく大きい、あんなのはやってもらいたくない、そういう住民からの声も上がっているほど大変だというんです。というのは、今売電という形では売っていませんから、そこの三基ある山に公園のようなものをつくって、風力発電で遊園地的に子供が乗るような車、それの収入が百万から二百万、それを維持していくのに大体町の持ち出しが三千万ぐらいある、持ち出さなくちゃならない。だから、幾ら努力をして風力発電とかいろいろな温暖化対策をつくろうとしてもなかなかお金がかかる、そういう点での国の助成措置、制度的な補助金とか、そういうものは考えていないのでしょうか。
  259. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 今たしか山形県の立川町でしたか、風力発電、いろいろと立川町で実験しておられるということは存じておりますが、たしか一九八一年でしたか、科学技術庁がその風力発電実用化のための委託の実験をお願いしたということは私も聞いておりますが、ただ、今、町でおやりになっていることについては、政府の方で通産省の補助金の制度はございますけれども、従来は立川町のプロジェクトについてはお金が出てないというふうに理解しております。    〔委員長退席、理事狩野安君着席〕  ただ、そういう制度はあるわけでありますから、条件が整えば通産なりあるいはほかの協力ができるのか、ひとつ検討してみたいと思っています。
  260. 須藤美也子

    須藤美也子君 時間が来ましたから終わりますけれども、温暖化防止というのは非常に重要な課題ですので、ぜひリーダーシップをとって、議長国として積極的な提案をしていただきたいということを申し上げて終わります。
  261. 末広まきこ

    末広まきこ君 自由の会の末広まきこでございます。  前回、京都会議を少しでも実りあるものにするべく京都市の具体的な二酸化炭素削減への取り組み案をお願いしておりました。それで質問を終わらせていただきましたが、二週間たった現在の進捗状況はいかがでございましょうか。
  262. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  御指摘京都市の計画でございますが、これは本年七月に京都市が策定をされたものでございまして、京都地球温暖化対策地域推進計画というふうに呼んでおります。目標といたしまして、二酸化炭素の一〇%削減を掲げております。この計画を今後着実に実施していくために、現在、市民、事業者、行政の対話を推進しているというふうに承知をしております。  具体的には、十二月の京都会議の成果も踏まえまして、今後の取り組みといたしましては、第一に庁内、市役所の中の取り組み体制を強化する、それから第二に市民の中でリーダーを養成していく、第三に市民のライフスタイルの見直しを推進していこう、第四に事業所における環境管理を推進しよう、そして第五にことし五月に市が策定をされました京都市役所エコオフィスプランというものがございますが、これを実践していこう、こういう取り組み推進しているところというふうに伺っております。  このほか、京都会議も念頭に置きまして、先ほども申し上げましたが、群馬県や名古屋市などの他の自治体におきましても温室効果ガス削減目標を掲げるなどの積極的な取り組みが進められているところでございます。
  263. 末広まきこ

    末広まきこ君 会場になりますのが京都市でございますので、訪れた方が肌で実感できるような政策をぜひ見せていただきたいなと思います。  京都会議は、新聞等の記事によりますと、設営は外務省、内容は通産省、議長は環境庁というまことに不思議な構成になっております。しかも我々国会議員は参加できない。IDカードをもらって一般傍聴のみ。せめて参議院環境特別委員会としてはNGOのメンバーたちと京都で懇談会を開いてその意見をじっくりと聞くべきで、地方公聴会形式でやれないものかなと思いますが、環境庁長官の御見解はいかがでしょうか。
  264. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 今何か設営は外務省とかいろいろお話がございましたが、これは私どもの方とそれから外務省と通産省が中心でございますけれども、その他いろいろと関係各省とも御協力いただいて進めておりますので、そのようにひとつ御理解をいただきたいと思います。  それから、国会議員の先生方ができるだけまたひとつ京都へもおいでいただいてという話は、実は今度の会議は、COP3というのはわかりやすく言えば準国連機関がやっておる会議だということでございますので、どういう方に来ていただくかということについては一応そちらの事務局が判断いたしますが、NGOの中でいろいろと登録していただいて、その中には国会議員の方もたくさん入っておられる、そういう形で今のところは来ていただきます。ですから、日本の代表団には入っていただくということはちょっと無理かと思いますけれども、実際にはいろんな会合がございますから、そういうところには今の登録されているNGOのメンバーとしてお入りいただくのが一番現実的じゃないかなというふうに考えておりますので、今具体的に私の手元にどの団体が入ったか、入り得るかは持っておりませんけれども、もし必要がありましたら、末広先生とまた後で個別にちょっと協議をさせていただきたいと思っております。
  265. 末広まきこ

    末広まきこ君 一番大事な私の質問のポイントにお答えがなかったですね。つまり、地方公聴会ができないものかというのが私の質問ポイントです。
  266. 大木浩

    国務大臣大木浩君) この委員会として何かそういう御要望があれば、ひとつ委員会としてお申し出いただいて、私どもがそれをどういうふうに受けとめるか検討いたしたいと思いますけれども、これは末広先生の個人的なお考えと言っては失礼ですけれども、なのか、あるいは委員会としての御要望なのか、ちょっとその点を確認させていただいた上で対応を考えさせていただきたいと思います。  ただ、先ほどから申し上げておりますように、できるだけまた国会議員の方にも来ていただきまして、実際にできる会議には来ていただくとか、できる会議というのは、いろんな会合がございますから、それは私どもの方ではできるだけそういう場はつくりたいと考えております。
  267. 末広まきこ

    末広まきこ君 ところで、行政改革会議の中間報告では独立して環境行政を担う環境安全省の設置がほぼ固まったようでございます。地球温暖化問題が追い風になったことは否定できないし、橋本総理の強力な後押しがあったとも聞いております。    〔理事狩野安君退席、委員長着席〕  環境安全省は従来各省に分散しておりました環境行政を一元化すると中間報告にはあります。これは環境行政のためには非常に重要なことで、大いに期待しております。しかし具体的には、どんな仕事や権限が環境安全省に任されるのかということになりますといま一つはっきりしてこない。例えばリサイクル行政を例にとりましても、今までどおり各省庁と共管する、こうなっていると聞いております。  そこでお伺いしたいんですが、環境安全省の守備範囲についてお示しいただきたいと思います。
  268. 岡田康彦

    政府委員(岡田康彦君) 端的に申し上げますが、環境庁といたしましてはこれまで、環境行政を一元化した新しい組織をつくっていただくことが必要だということと、そこで新しい組織の中では、要するに、今先生もおっしゃいました環境行政を一元化すること、それから一元化されない領域についても環境に影響のあるような行政分野については何らかの形で適切に関与できるような道が開けること、こういうことを申し入れてまいりました。その理解を得るべく最大限の努力をしてきたつもりであります。  十七日から四日間、あしたまでの予定で行革会議で最終的な取りまとめについての審議が現在なされている最中でございます。私どもも実は、努力をしてきた受験生が試験結果を見守っているような状況でございまして、明確に私どもの方から今御質問のあった輪郭について申し上げ得る状況にはございません。  ただ、先生も御指摘になりましたように、十七日からの議論につきましては、事務局の方でたたき台というのが出ております。たたき台につきましては幾つかの分野で専管だとか共管だとかあるいは関与するものというような分類が示されております。これは私の方も手に入っていますからお示しすることはできますが、そんなような状況で、私どもの方としてまだ答え得る状況にはないということは御理解いただきたいと思います。
  269. 末広まきこ

    末広まきこ君 どこの省庁にまたがる問題であろうとも、環境問題に関する限り、独自の判断でもって調査並びに内容の公表、そして勧告権を持つというこの中心軸はしっかりしていないともとの環境庁と少しも状況は変わらない、このように思いますが、この点、新しい環境安全省に自発的権限は盛り込まれているのでしょうか。
  270. 岡田康彦

    政府委員(岡田康彦君) この点も先ほどの御答弁と同じになりますが、たたき台の中ではこういう議論が持たれています。集中審議におけるたたき台ですが、環境庁の機能として「環境安全省の所管ではない各省所管事務・事業についても、環境保全の見地から関係行政機関に対し、勧告等を行う」という一項がございまして、行革会議の審議の中では、これまでの総理府の外局たる総合調整官庁でなくても各省庁にその所掌に関する調整権を付与する方向で議論が進んでいるというふうに聞いております。
  271. 末広まきこ

    末広まきこ君 地球温暖化防止については京都会議成功に向けた問題とそれ以降の国内対策の問題があると思います。国内対策については温暖化防止合同会議の報告が出されましたが、その結果と審議のあり方については各方面から批判が出ております。  報道によりますと、炭素税は見送り、車の燃費を二〇%改善、国民のライフスタイル変更。どうも国民に負担を負わせる話ばかりではないでしょうか。オイルショック対応を私は思い出してしまいました。CO2排出の半分近くを占める産業界の話はどこに行っちゃったのかなという印象を受けます。  このあたりの事情について、毎日新聞に解説記事が載っておりました。それによりますと、温暖化防止合同会議では関係省庁にまたがる九つの審議会から十八人のトップメンバーで一回二時間の審議が開かれ、そのうち約半分の時間が政府からの説明に当てられ、委員同士で十分な議論ができなかった、こういうふうな記述さえございます。それで計算してみるとこれは一人三分しかないなという気がするのでございますが。合同会議のメンバーの中には報告書の骨子は通産省の作文だったと認めている方もいらっしゃるんですね。しかも、国民生活や産業に直結している問題を審議しているのに非公開になった。私は、我が国の国内対策がこういう密室審議で生まれ、国会の関与なしに決められてしまっていいのかなと大きな疑問を感じます。  その点について環境庁長官はどうお考えでしょうか。
  272. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 先ほども同じような御質問があって御答弁いたしたと思いますが、これは、いろんな審議会があるので少し私は個人的には多いなと思っているんですけれども、やはりいろんな省庁あるいはいろんな方面を代表される審議会、代表というかそれぞれの所管の問題についての審議会があるということで、京都会議という非常に国際的な会議がある前でもあるから、ひとつこの時点で各審議会に一緒に来ていただいて合同会議をやろうということでありましたから、確かにお話しのとおりに、十分な時間もなかったような気がしておりますし、そういう意味では、各審議会の御意見が十分にお互いにそしゃくし合って一つ立場をきちっとまとめたというよりは、全体をまとめて出してこられた、こういう感じを受けております。  総理もそういう意味で、一応これはもらったけれども、それが終わりじゃないぞということで、各審議会はまた引き続き勉強してもらいたいということでございますから、環境庁としては、中央環境審議会等というか、一番中心になるのは中央環境審議会でございますが、で引き続きいろいろな問題を検討していただくというつもりでございますので、合同会議の方のレポートだけが今の政府の立場を反映しているというふうには私は受けとめてはおりません。
  273. 末広まきこ

    末広まきこ君 今回の国内対策の結果を見れば、求められているのは国民の耐乏生活とライフスタイルの変更と。産業界における大量生産、大量販売、大量消費という現実はそのままという印象を受けます。産業界に求めているのは省エネ対策だけで、産業構造、経済構造の転換には十分に触れられておりません。通産省の意向のみで国内対策が決められているような印象を与えてしまいます。これでは環境政策はだれがつくるものなのかと疑いたくなってしまいます。  環境先進国と言われる国々では、住民参加型の環境政策が形成される仕組みになっておりまして、産業や開発サイドの省庁の意見が先行しないようになっています。こういった仕組みを我が国に取り入れていくおつもりはございませんか。長官の御見解を。
  274. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 今後の地球温暖化対策の中で、やっぱりライフスタイルの見直しというのはこれは非常に重要なことだと思うんです。しかし、それと、これから産業界がそういったライフスタイルの見直しということを見ながら、それに適応した一つまた産業政策というのがあるんじゃないかというふうに考えております。  国民の方でライフスタイルを変えていけば、おのずから国民の需要というものも変わってくるわけでありますから、それに応じたいろいろな製品というものが出てくる、あるいはその製品を幾つつくるというような問題も出てくるわけですから、そういったところはお互いに相関関係にあるんじゃないかというふうに考えております。  ただ、やはり日本の経済というものをさらに発展させたいという、これはまた一つ国民共通の要望だと思いますから、それは今温暖化対策ということは非常に個別的な問題ですけれども、それには十分焦点を当てながら、日本の経済というものも順調に発展させていかなきゃいけない。そこら辺のところは、お互いに相対立するものではなくて、やはり一緒に共存していける考え方ではないかというふうに私どもは考えております。
  275. 末広まきこ

    末広まきこ君 次に、環境教育について何点かお伺いしたいと思います。  我が国の社会構造を循環型社会に転換していくためには、国民一人一人の強い意思と協力がなければ成り立っていきません。その点から考えてみますと、今回の国内対策の中で当然触れられなければならない点が欠落しております。それは、子供たちへの環境教育です。  国民一人一人の強い意思と協力を得るためには、環境保全への関心を常に持ち続けてもらうようにしなければなりません。そのために有効な方法は、小さいころから充実した環境教育を行うことではないのかなと私は思います。今回の国内対策の重要な柱として、子供たちへの環境教育のあり方について触れてほしかった。この点について環境庁長官の御見解をお伺いします。
  276. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 子供の教育一般でございますけれども、子供の教育というのは、大きく分けて学校教育とそれから家庭の教育とあると思うんですね。  環境問題について考えてみますと、最近いろいろと一般社会でもジャーナリズムに取り上げていただいておるし、学校でもかなりそういうことについてのお話は行われているようでございますけれども、同時に家庭の方でもひとつそういったことを進めていただけるように我々としても努力をしたいと思っております。  環境問題について子供がどういう気持ちを持つかというのは、これはいろいろな子供のしつけの一部だと思うんですね。物を節約するとか、もったいないとか、そういう気持ちを持つとか、あるいは公共のところでごみを出してはいけないとか、そういうのは私は広い意味での子供のしつけの一部だと思いますから、環境問題について常に意識をして必要な行動をとるということも、そういった意味でのしっけの一つじゃないかと思いますが、それをあるいは学校において、あるいは家庭において、あるいは地域社会においてそういうことをひとつ取り進めていただきたいと思っております。  ただいまのところ、教育まではなかなか具体的な方策ということで私の方でも余り今まで言及しておりませんけれども、確かに大変重要な問題だと思いますので、今後十分にそういったことも意識して私どもの仕事を進めてまいりたいと思っております。
  277. 浜中裕徳

    政府委員浜中裕徳君) 合同会議の報告についてお触れになられましたので、一言だけちょっとつけ加えさせていただきます。  合同会議の報告におきましては、「大量消費・大量廃棄型のライフスタイルの見直しに向けて」というところがございまして、その中で、「ライフスタイルの見直しに向けた仕組み作り」というところがございます。その③というところに、「将来を担う子供たちや若い世代への働きかけ」と題する項目がございまして、子供たちや若い世代の選択や行動が本問題、つまり地球温暖化問題の解決のかぎであるとした上で、環境などとライフスタイルなどとのかかわりについて理解を深め、環境に優しい行動を実践する態度を身につけるよう環境教育を充実するという旨が書き込まれております。  この点だけつけ加えさせていただきます。
  278. 末広まきこ

    末広まきこ君 我が国環境教育の実態は、循環型社会の基礎を築く上で十分なものになっているのでしょうか。早い話が、受験教育一辺倒の中で環境教育が軽視されているように思えて仕方がないんですね。  私は、小学校編と中学校・高等学校編と両方をめくってみましたら、小学校の方はかなりおもしろいテキストに上がっております。中学・高等学校編になりますと、これはもうおざなりといいますか、だれもこれにはアプローチしないだろうという感じでございます。小学校にしても、じゃ授業でしっかり取り上げられているのかなと。これはおもしろい内容ですよ。これを一年かけてやれば、非常に生きていく何かおもしろみが発見してもらえるんじゃないかなというように思うんですが。  文部省にお伺いします。環境教育のカリキュラムはできておりますね。このカリキュラムに従って教育は行われているはずなんですが、学校や先生によって随分とその取り組みに温度差があるというふうに漏れ聞こえております。その原因をどう見ておられるか、これで環境の教育は十分であるとお考えですか。
  279. 河村潤子

    説明員(河村潤子君) 小学校から高等学校段階におきます学校の教育課程でございますが、これは基準として国が定めております学習指導要領に基づいて各学校が編成を行うということになっております。  この学習指導要領の中で、環境教育については、社会科とか理科とか家庭科といったような教科の中でその児童生徒の発達段階に応じて取り扱うということにされております。  先生指摘の循環型社会ということにつきましても、省資源あるいは省エネルギーというようなことを進めまして、再使用、再利用を促進していこうということにつきまして、それぞれの学校段階の中で取り扱うようにということで内容が示されております。例えば、先生ごらんになって、その資料の中にもございましたかと思いますが、小学校の社会科でごみなどの廃棄物の処理について学ぶでありますとか、中学校の理科になりますと、地球と人間とのかかわりということの中で環境保全を大切にしようという態度を育てていくというふうなことを取り扱うことになっております。  こういう学習指導要領で書かれております内容については基本的にはすべての学校で指導されるものでございますが、ただ、授業の際に具体的にどういう教材、題材を扱うかとか、どんな活動を展開するかといったようなことについては、その地域、学校、子供の実態に応じて学校が判断するということになっております。学校によっては、例えば近くを流れる川を題材として水質調査をずっと継続的にやったり、あるいは清掃活動まで突っ込んでいく、あるいはそのデータをほかの学校と交換するというふうにへ大変積極的に取り組んでいる例も見られますが、まだ学校全般として環境教育に対する取り組みを行っておりますのは歴史が浅いということもございまして、十分な実践の経験が積み重ねられているとは言えないというふうに思っております。  そういう状況でございますので、今後の環境教育のあり方として私ども三点ほど留意点を考えておりまして、いろんな教科でやっておりますものを連携して学校全体のものとすることが一つ、それから二つ目には、単なる知識ということではなくて、環境保全にどう参加していこうかという態度を育てること、それから三つ目には、体験的な学習がやはり大事だということでございまして、その際、家庭や地域との連携も図っていくという方向が必要だと思っております。さらに言えば、環境教育については、学校だけでは到底達成できないねらいを持つものでございますので、地域におけるさまざまな取り組みを進める、家庭との連携を進めるということも大事だと思っております。  そんな観点でこれまでも、先ほど先生ごらんいただきましたのは教師用の指導資料というものでございますけれども、そういうものを作成して全国の学校に配付をいたしましたり、あるいは教員の講習会、研修ということを進めて教師の指導力の向上に努めるようなことをいたしてまいりましたけれども、今後もさらに幅広い施策の充実が必要だというふうに考えている次第でございます。
  280. 末広まきこ

    末広まきこ君 そういうふうになっていても、学校の現場でやらないと何にもならないなと思います。私の耳には、そういうのはやったことないよ、テキストはあるけれども、先生は開かせないよと。私なんかの教育を受けた者には、じゃ授業はどうやってやっているのと聞いたら、ペーパーだけよと。つまり受験に役立つことを先生がたあっとペーパーにまとめてきて、それをやる。こういう教科書なんかの類は一度もあけたことがないというのが現実なようでございますね。  環境庁にお伺いしますが、文部省の今の答弁をお聞きになっていて、今の環境教育というのが循環型社会をつくっていく上で本当に役に立っておるというふうにお思いになりますか。
  281. 田中健次

    政府委員(田中健次君) 地球温暖化問題を初めといたしまして、今日の環境問題を解決していくためには、学校教育の場のみならず、地域あるいは家庭、職場、野外活動など多様な場におきまして互いに連携をとりながら環境教育推進するということが重要でございます。  文部省の取り組みにつきましてはただいま文部省の方から御説明があったとおりでございますけれども、環境庁といたしましては、先生が先ほどお示しになりました教師用の環境教育指導資料、この作成への協力を行うなど、これまで連携を図ってきたところでございます。  環境庁といたしましても、今後、学校におきます環境教育、環境学習の重要性はますます高まってくるものと考えておりまして、文部省との連携の強化に努めてまいりたいというふうに考えております。  また、環境庁といたしましても社会教育、その他多様な場におきます環境教育、環境学習の推進に努めているところでございまして、具体的に申しますと、こどもエコクラブ事業によりまして小中学生の自主的な環境学習を支援しておりますし、また国連大学と共同いたじまして青山に地球環境パートナーシッププラザを設置いたしまして、環境保全活動に関します資料の提供、あるいは交流の場を提供いたしております。また、国立公園や国定公園等におきまして自然との触れ合い体験を重視した施設整備を実施いたしまして、地域の中での環境活動体験あるいは自然との触れ合いの体験の機会を広く提供いたしておるところでございます。  また、環境庁では、市民や事業者などに対しまして適切な助言を行い得る人材を確保するために環境カウンセラーの登録制度というものも実施をしているところでございまして、今後とも関係省庁と協力しながら環境教育あるいは環境学習の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。
  282. 末広まきこ

    末広まきこ君 中環審は地球温暖化防止法が必要であると提案しましたが、この法律作成に当たっては、環境教育の徹底、地球を守るのは私たちであるという人類共通の理念と実行力をしっかり身につけてもらうことを明記していただきたいなと思っております。大臣、いかがでしょうか。
  283. 大木浩

    国務大臣大木浩君) 実は、その基本法なるものがまだ全部できておりませんけれども、どこへ入れるかは別といたしまして、これからの環境行政の中で環境問題についての教育、広い意味の教育、私はあえて広いと申し上げますが、広い教育についてもきちっと対応ができるようにひとつ考えていきたいと思っております。
  284. 末広まきこ

    末広まきこ君 ありがとうございます。ぜひ頑張っていただきたいと思います。  次に、大学教育でございます。専門家が非常に少ないのが現実でございます。文部省の学校基本調査という一番基礎的な統計資料を見て、環境関係の学部、学科が幾つあるのかと調べようと思いました。ところが、トータルの数字が出ない。文部省が日ごろから言っているように、環境と福祉がこれからの教育の柱だとするならば、専門家が足りないというのは非常に問題です。早急に何らかの対策を立てなければならないのではないでしょうか。
  285. 清水潔

    説明員清水潔君) お答え申し上げます。  近年、大学におきましては、学問の進展あるいは社会のニーズに対応いたしまして、環境関連の特色ある学部、研究科の整備充実が図られてきております。  今、先生指摘になりました学部レベルにおきまして、これは平成八年度の数字でございますが、六十七大学、七十八学部、八十五学科ということでございまして、例えば学科名でとりますと、地球環境学科でありますとか、環境工学科でありますとか、生態環境科学科でありますとかというふうなことでございますが、それらの数字になっております。  大学院レベルで見ますと、七十大学、八十八研究科、百八専攻というようなことで、例えば専攻の名称でいいますと、環境資源工学とか環境資源学とかいうような専攻名となっております。これらにおきまして環境に関連した学科、専攻等の設置によりましてさまざまな研究あるいは先生指摘の専門家の養成等を図ってきているところでございます。  近年の状況で申し上げますと、例えば平成九年度におきまして、国立大学でございますが、長崎大学に環境科学部を新設し、豊橋技術科学大学工学研究科にエコロジー工学専攻を設置するなどしてきておるところでございます。  御指摘のように、今日の環境問題の重要性にかんがみますと、大学における自然環境の維持、保全に関する教育研究を推進していくことは、私どもとしても重要なことだというふうに考えておりますし、その意味で今後とも頑張っていきたいというふうに思っております。
  286. 末広まきこ

    末広まきこ君 ここで私が何学部何学科というのを聞いているのはありがたいんですが、ぜひ一般の人がわかるようにしてあげてください。  先月の十月二十四日、名古屋で行われました地球環境シンポジウム、一般席で聞いておりましたが、ある企業人の方が人間は地球のがんである、こういう大胆な御意見というか、御発想と申しますか、確かに地球の側から見れば、ほじくり返すわ、ごみだらけにするわ、不愉快な温室効果ガスで呼吸困難にするわで人間の所業は迷惑千万な存在と言えると思います。しかし、人間は考えるアシであるとするならば、迷惑な腫瘍とかいぼという存在ではあっても、これは悪性のがんではなくて大変良性の腫瘍やいぼでありたいなと、こう私は自然との共生という思いをするわけでございます。  京都会議という国際的な舞台で環境庁が十分にリーダーシップを発揮なさって、環境安全省の将来像がはっきりと国民の皆様に御認識いただけるような環境庁の主体的な踏ん張りに期待しまして、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  287. 菅野壽

    委員長菅野壽君) 本日の質疑はこの程度といたします。  河本君から発言を求められておりますので、これを許します。河本英典君。
  288. 河本英典

    ○河本英典君 私は、自由民主党、平成会、民主党・新緑風会、社会民主党・護憲連合、日本共産党及び自由の会の各派共同提案による地球温暖化防止の国際的・国内的取組推進に関する決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     地球温暖化防止の国際的・国内的取組推進に関する決議(案)   今や、地球環境問題は、人類の生存基盤を脅かす重大な問題となっている。特に、地球の温暖化は、このまま進行すれば、世界的に、海面上昇による低地の水没、また、洪水、干ばつや疫病の発生が心配され、我が国でも健康や農産物への影響が避けられないと予測されている。地球環境を保全し、将来の世代に美しい地球を残すことは、人類共通の課題であるとともに、今日の国際政治の重要なテーマであり、同時に、本委員会に課せられた重大な責務である。   よって政府は、本年十二月に京都で開催される気候変動枠組条約第二回締約国会議において、地球に生きる未来世代に負担を先送りすることなく、二〇〇〇年以降の温室効果ガスの排出削減数量目標等について、積極的な取組への国際合意がなされるよう、議長国としてのリーダーシップを遺憾なく発揮すべきである。   また、京都議定書等を踏まえ、地球温暖化防止のための法制度を整備するに当たっては、問題の深刻さ等を十分認識して、勇気と決断をもって、現在の社会経済システムを早急に見直して、長期的、継続的な温室効果ガスの排出削減を着実に推進し、環境基本法に規定する持続的発展が可能な社会の構築に向けて、各界挙げて取り組むこととすべきである。   さらに、先進国による温室効果ガスの排出削減に加え、今後、温室効果ガス排出量の増大が見込まれる途上国に対して、早期に排出抑制・削減に参加するよう、環境教育技術、資金等の面でできる限りの支援・協力を行うべきである。   右決議する。  以上でございます。
  289. 菅野壽

    委員長菅野壽君) ただいまの河本君提出の決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  290. 菅野壽

    委員長菅野壽君) 全会一致と認めます。よって、本決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。(拍手)  ただいまの決議に対し、大木環境庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。大木環境庁長官
  291. 大木浩

    国務大臣大木浩君) ただいま御決議いただきました件につきましては、その御趣旨を十分に尊重いたしまして努力いたす所存でございます。(拍手)
  292. 菅野壽

    委員長菅野壽君) 本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十四分散会