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1997-11-27 第141回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月二十七日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  十月三十日     辞任         補欠選任      山本 一太君     笠原 潤一君  十一月二十六日     辞任         補欠選任      岩崎 純三君     山本 一太君      小山 峰男君     釘宮  磐君  十一月二十七日     辞任         補欠選任      釘宮  磐君     小山 峰男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大久保直彦君     理 事                 須藤良太郎君                 武見 敬三君                 田村 秀昭君                 松前 達郎君     委 員                 笠原 潤一君                 野間  赳君                 宮澤  弘君                 山本 一太君                 高野 博師君                 寺澤 芳男君                 田  英夫君                 立木  洋君                 佐藤 道夫君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君                 小山 峰男君                 武田邦太郎君    国務大臣        外 務 大 臣  小渕 恵三君    政府委員        内閣官房内閣安        全保障室長        兼内閣総理大臣        官房安全保障室        長        江間 清二君        防衛庁防衛局長  佐藤  謙君        防衛庁運用局長  太田 洋次君        防衛施設庁長官  萩  次郎君        防衛施設庁総務        部長       西村 市郎君        外務大臣官房長  浦部 和好君        外務大臣官房領        事移住部長    内藤 昌平君        外務省総合外交        政策局長     加藤 良三君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  阿部 信泰君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     朝海 和夫君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省北米局長        事務代理     田中  均君        外務省欧亜局長  西村 六善君        外務省経済局長        事務代理     横田  淳君        外務省経済協力        局長       大島 賢三君        外務省条約局長  竹内 行夫君        通商産業省通商        政策局次長    佐野 忠克君        運輸省運輸政策        局長       土井 勝二君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    説明員        防衛庁長官官房        防衛審議官    小林 誠一君        大蔵省国際金融        局次長      井川 紀道君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国際情勢等に関する調査  (国連安保理改革に関する件)  (ODAに関する件)  (海外旅行邦人の保護に関する件)  (アジア金融・経済不安に関する件)  (対人地雷に関する件)  (日米防衛協力のための指針に関する件)  (地球温暖化防止京都会議に関する件)  (北方領土・日ロ関係に関する件)  (日・ブルガリア関係に関する件)  (核廃絶に関する件)  (日朝関係に関する件)  (青木ペルー大使発言に関する件)  (APECにおける日米首脳会談に関する件)  (外務省予算に関する件)     —————————————
  2. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十月三十日、山本一太君が委員辞任され、その補欠として笠原潤一君が選任されました。  また、昨日、岩崎純三君及び小山峰男君が委員辞任され、その補欠として山本一太君及び釘宮磐君が選任されました。     —————————————
  3. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) 国際情勢等に関する調査を議題といたします。  この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。浦部官房長
  4. 浦部和好

    政府委員浦部和好君) 青木アフリカ紛争問題担当大使が、去る十月二十八日に、出張先ケニアで在ペルー日本大使公邸占拠事件について記者に対して発言を行ったことに関し、十月三十日に本委員会において、私より同大使発言内容を確認の上、委員各位に御報告する旨申し上げました経緯がございますので、以下その御報告をさせていただきたいと思います。  青木大使に対しては、先日の委員会でも申し上げましたが、本件発言が報ぜられた後、出張先ケニアからザイールに向かっておりましたが、直ちに連絡をとりました。  また、帰国後は青木大使より発言内容を確認いたしました。それによると、同大使は、アフリカ紛争問題担当大使としてアフリカ諸国を訪問したことに関し、十月二十八日、ケニア記者会見を行っており、右会見後の懇談が終わり雑談になったときに、ある記者からペルー事件及び外務省調査報告書についての感想を聞かれたため、報告書が同大使公邸内部でとった危機管理行動について触れていないことは今後の教訓として生かすとの観点から残念であった、この種の事件はどうしても起こる天災のようなものであり、今後再び起こり得るとの趣旨発言を行った由です。  これは、青木大使としては、ぎりぎりの状況下で精いっぱいやるべきことはやったとの気持ちを有しており、人質となった方々の身の安全を守るために公邸内で同大使がとった行動については、危機管理上、自分としては重要と考えており、調査報告書にそれが触れられていないことについてはその意味で残念だったということ、並びに警備体制についても、あのような武力攻撃を防ぐために従来の警備あり方を抜本的に変える必要があるとの持論を述べたものと理解しております。  新聞の見出し等が、青木大使が「不満を表明」となっておりますため、青木大使政府対応を含め批判したと一部に受けとめられた嫌いがありますが、そのようなことでは全くないことは青木大使自身が種々の機会発言をしていることでもあり、また在ペルー大使としての責任についても、青木大使見解は五月十三日の本委員会で同大使が表明したとおりであります。  ちなみに、在ペルー日本大使公邸占拠事件調査委員会報告書は、政府としての対応を点検するとの観点から、事実関係の究明と反省点及び今後の改善点についての調査分析を行ったものであり、青木大使を初めとする人質方々がとった行動を取り上げなかったのもそのような理由からであります。この点、青木大使理解をされております。  なお、青木大使はさらに、外務省調査報告書に同大使行動について言及がないことは、身内の話でもあり客観的な立場がとれないのでやむを得なかった旨、二十八日の会見の際付言しておりましたが、これは青木大使の個人的な見解であり、政府としての対応を検討するとの観点から同大使行動を取り上げなかったことを改めて申し上げたいと思います。  また、政府としては、本事件人質となった方やその御家族を初めとして多くの方に多大の苦痛をもたらし、日本ペルー両国を初め、世界各国政府、国民に非常な御心配をおかけした重大な事件だったと認識をしております。また、警備体制情報収集面で問題があったことは調査報告書でも指摘を受けており、このような事件の再発を防ぐべく、警備面情報収集面を含め全力を挙げて取り組んでおります。  青木大使発言趣旨はさきに述べたとおりであり、報道では必ずしもその真意が伝わっていないのではないかと思いますが、いずれにせよ、青木大使発言が無用な誤解を招いたとすれば大変残念なことであり、大使本人も今後はこうしたことのないよう一層注意をする旨申しておりました。  以上、御報告をいたします。
  5. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 山本一太

    山本一太君 小渕大臣は私と同じ群馬県、上州の御出身でございまして、今私の地元では福田、中曽根総理に次ぐという期待を込めて第三の男、こういうニックネームで呼ばれているわけでございます。きょうはその地元の大先輩に、自民党両理事の御好意もありましたけれども、こうして外務委員会の場で初めて質問をさせていただくということで大変うれしく光栄に存じております。  いろんな意味も込めて、きょうは一時間ということでまず国連の話、特に安全保障理事会改革の話とODAの話を中心にこれから大臣の御見解をいろいろ伺っていきたいと思うんですが、その前に一言だけ大臣を御激励申し上げたい、このように思っております。  大臣国際舞台での本格的なデビューは八月の国連総会であった、このように思うわけでございます。私も一泊二日というかなり厳しい日程ではございましたが、大臣に御同行させていただきましてアナン事務総長、それから今度の新しいウクライナ総会議長、そしてまた私の元の同僚であった日本人職員との懇談等々、同席をさせていただき大変勉強をさせていただいたわけでございます。その現場にいた雰囲気、あるいはまたその後内外からのさまざまな情報を総合的に考えますと、率直に大変いいデビューを飾られたのではないか、このように思った次第でございます。  大臣オルブライト長官日米外相会議に入る直前に、ジョージタウン大学時代の恩師であった長官にお目にかかる機会がございました。もう一人、私の衆議院の盟友である河野太郎議員もやはりジョージタウンでオルブライト教授の授業をとった仲間でございまして、大臣がまず日米外相会議部屋に行く途中で二人してオルブライト長官をつかまえて少しお話をさせていただきました。  そのときにオルブライト長官に、小渕外務大臣は今までの外務大臣とはやや重みが違いますという話を河野太郎と二人でしたところが、そのままお伝えしますが、いろんな方からそういうふうに聞いてきた、きょうは大変楽しみにしていますというふうにおっしゃって部屋に行かれたわけでございます。大事な日米外相最初の遭遇も極めてスムーズにいったということはその後の大臣長官関係を見ていれば想像にかたくない、このように思っておるわけでございます。  日本外交大変課題が山積しておるわけでございます。日米関係日ロ関係日中関係そして朝鮮半島の問題、テロの問題、国連外交の問題、大変難しい時期ではございますけれども、ぜひとも大臣対人地雷全面禁止条約の署名で発揮をされたあのリーダーシップ、イニシアチブを用いていただきまして、外交を間違いのない方向に牽引していただくことをお願い申し上げたいと思います。そして、常任理事国入りについては、小渕外務大臣時代日本常任理事国入りが決まったと、こういうふうに歴史に名前を残すような大臣を目指して頑張っていただきたいと思いますので、一言激励を申し上げたいと思います。  ちょっと激励の時間が予想よりも長くなってしまったんですけれども、早速質問の方に入らせていただきたいと思います。  今、日本では橋本内閣行革が最後の正念場を迎えておるわけでございますが、大臣御存じのとおり、国連行財政改革というのも長年にわたって議論をされてきたわけでございます。そして、国連行革の一番の目玉が何といっても安全保障理事会改革安保理の改組ということになるわけでございまして、私はこの中で日本常任理事国入りをするというのは極めて当然のことだ、このように思っているわけでございます。  例の枠組み決議もなかなか年内実現が難しくなったというようないろんな状況を受けて、改めて大臣常任理事国入り問題に対する御決意を伺いたいと思います。
  7. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 参議院の外務委員会出席をいたしまして御質疑をちょうだいする機会をいただき、また答弁申し上げるチャンスをいただいたことに感謝いたします。  こういう席でございますが、ただいま山本一太委員から冒頭御激励をちょうだいいたしました。私も、質疑者の御父君の山本富雄先生と同県の、また同郡の出身として長きにわたって政治活動をともにしてきたわけでありまして、きょうこうした席で御子息に当たられる委員質疑を受けることに感慨無量なものを覚えております。  また、お話しのように、私も九月に大臣を拝命いたしまして初の舞台国連総会出席ということでございました。この機会に、国連職員としても長きにわたって活動されてきた、UNDPで御苦労された山本委員、また衆議院熊代議員、さらにまた河野太郎下地幹郎衆参議員の皆さんが国連に参られまして、いわゆる議員外交というものを展開していただくと同時に、私に対しましても叱咤御激励をちょうだいいたすことができまして、改めて感謝を申し上げておる次第でございます。  さて、御質疑のありました国連安保理改革枠組みにつきましては、申し上げましたような国連総会における私自身の演説のそれが焦点でございまして、願わくはぜひこの機会国連におきましても我が日本政府対応について御理解をいただきたいということを申し上げたわけでございます。三月に当時のラザリ総会議長が包括的な改革案を提示したことなどにより改革機運は非常に高まって、我が国としても早期改革大枠につい、て加盟国間の合意を得るべく努力もいたしてまいりましたし、そのムードは非常に高まってきたと認識をいたしておりました。  しかしながら、残念ながら改革の具体的なあり方につきましては、十分な意見の収れんを見ることが現在に至るもできず、本年中の改革大枠を定めることは困難な見通しとなっております。しかしながら、安保理改革早期実現国連加盟国の総意と言うべきものでありまして、これによって現在高まっている改革機運が損なわれたわけではない、このように考えております。  我が国としては、来年以降も引き続き改革早期実現のため各国との緊密な協議を通じてさらに努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  8. 山本一太

    山本一太君 大臣の御決意を聞いて改めて力強く感じましたけれども、申し上げるまでもなく、国連創設当時から比べて加盟国は三倍以上になっております。また、それに比べて安保理拡大というのは六五年の非常任理事国を六カ国から十カ国にしただけということでございますし、国連に対する財政負担のP5、常任理事国が占める割合も落ちてきております。さらに、日本分担金の話は御存じのとおり一五・六五%ということでございまして、これはやはり日本常任理事国としてきちんとした役割を果たすポジションにあるということを物語っているんではないかと思います。  よく軍事貢献の話なんかも出ますけれども、これはもう政府立場としても憲法の範囲内でしつかりと責任を果たす準備があるということを繰り返し表明しているわけでございます。やはり国連の仕事は安全保障だけではなく、開発がありあるいは人道があり、そうした大切な政策一つ一つ最初からきちんとプロセスに入っていく、このことが日本責任ある国際社会でのポジション責任を果たす上で私は必要不可欠であるというふうに思っておりますので、ぜひともその御決意を持って引き続きこの問題に取り組んでいただきたい、このように思うわけでございます。  今、大臣の方からもございましたが、安保理をめぐる動きはいろいろございました。文字どおりラザリ提案が出た後で、大臣がおっしゃったように改めて新しいモメンタムができた。その後四月か六月か、たしかOAUの首脳会議があったりあるいは非同盟の閣僚会議があったり、時間的な制約は受けないみたいな話もありました。七月にリチャードソン大使御存じのとおり初めて公式に途上国常任理事国にしてもいいというようなことをおっしゃって、その後いよいよこの十二月にかけて最終的な詰めが行われるのかなと思っておりましたところが、例の枠組み決議案事件といいますか、どうも動きが思わしくないということを伺ったわけでございます。  推進派は、大臣御存じのとおり、日独常任理事国の一部、随分ドイツが走ったやにも聞いておりますけれども、そんな中でどうも数とそれから拒否権の問題でなかなかうまく調整がつかなかった。これに対して、イタリア初め九カ国は先送り決議案を出すとか、かなり活発に動いて、結局痛み分けになったというようなことを聞いておるわけでございます。  これについて、いわゆる推進派の間の枠組み決議案議論といいますか、中身が余り伝わってこないものですから、そこら辺の経緯がどうなっていたのか。すなわち、ドイツアメリカの間には決定的な差があったんですけれども、この枠組み決議案年内提出ということについてどのくらいのところまで行っていたのか。そこら辺の経緯について改めて伺いたいと思います。
  9. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 安保理改革の論点の中の安保理改革必要性そのこと自体、それから常任、非常任双方の議席の拡大必要性、それから日独に加えて途上国からも新たに常任理事国を選ぶべきであるということについては、おおむね各国の間に意見の一致が見られるわけでございますけれども、拡大後の安保理規模、いわゆる数の問題、それから拒否権扱いの問題、それから途上国からの常任理事国の選出の方式についての各国意見というものが十分に収れんしていないという状況にございます。  このうち特に最初の二つ、規模の問題と拒否権扱い問題等については推進派の中でもいろいろな考え方があるということで、ラザリ総会議長枠組み決議案というものについての議論が収束しなかったという事情がございます。
  10. 山本一太

    山本一太君 今、収束しなかったというお話ですが、どのぐらい具体的に枠組み決議案の話が詰まったのか、そこら辺をもうちょっと教えていただけますか。
  11. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 具体的な例を申しますが、この数の問題につきましては、米国は二十一カ国、これを限度とするという立場を堅持いたしております。これに対して、ドイツは二十四カ国ということでないとおさまりがつかないのではないかという立場でございます。双方、その点において今現在に至るまで変化がございません。  ただ、拒否権扱いにつきましても、これを原則の問題ととらえて、現常任理事国と新たに常任理事国となる国の拒否権等扱いをどうするかという問題についての議論が収束していない、そういう状況があると申せると思います。
  12. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ちょっと敷衍させていただきましてその努力の経過を申し上げたいと思います。今の総政局長の話のように、日独常任理事国入りについては諸外国ともその方向性はほとんど理解しておるわけですが、ただドイツにつきましては、御承知のように、イタリアを初めとして先ほど御指摘のありました決議案を提出しようかどうかという背景にはこのドイツに対してのいろんな考え方もあると思います。日本に対しては、それこそ最も各国とも理解をしていただいておるんじゃないかと思います。  そこで、日独については、先般キンケル外相日本に参りました折、ぜひひとつ日独で提携をして努力を続けていこうということを申し上げておきました。  加えて、米国につきましては、今お話しのように上限二十から二十一と主張されておりますので、先般バンクーバーで行われましたオルブライト米国務長官と私との話し合いの中でも、日本としては、この数字アメリカがこだわられますとなかなか解決のめどがつかない、もう少し柔軟性を持って対応していただけないかということでお話は申し上げておきました。米国側理解を現段階では得られておりませんが、そういう努力を傾注しておるということだけ申し上げておきたいと思います。
  13. 山本一太

    山本一太君 ありがとうございました。  今、大臣が二十一と二十四のお話をされたんですけれども、アメリカはとにかくこの二十一という数字に大変こだわっておりまして、これはアメリカ政府信念なのかあるいはオルブラィト長官信念なのかよくわからないんですが、大臣バンクーバーで会われた感触として、やはりかなりアメリカのこの問題に対する立場はかたい、こういう感触を持たれましたでしょうか。
  14. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御案内のようにオルブライト国務長官は、長い間国連大使として国連でも大活躍をされた方でありまして、あの安保理における議事の進みぐあい、そういったこと、あるいはアメリカ側の長い間の主張に対しての安保理における各国との対応等を考えますと、やはりそこに加わる国の数が多くなれば多くなるほどいろんな主張が多く提案されてなかなか難しい運営になるという体験上のものを非常に持っておるのではないかと思います。安保理効率化の維持を重視した結果だと承知はいたしておりますが、率直に申し上げて大変まだ厳しい感じでございました。
  15. 山本一太

    山本一太君 ありがとうございました。  十一月二十四日のウクライナウドベンコ議長の御発表によれば、もうこの問題は年内先送りをして来年仕切り直しということになると思うんですけれども、今後ともやはりこの枠組み決議をどのように実現するかということが日本側の戦略の中心になっていくと思うんです。まず有志推進派の国々の中でコンセンサスを得なければいけない。今、大臣がおっしゃった二十一と二十四の問題もございますし、ドイツがこだわっている拒否権の問題もあると思うんですけれども、もう一つはやはり反対派動きもある程度牽制をしていかなければいけないというふうに考えます。  先般、明石人道問題担当次長にお目にかかったときに、小渕外務大臣に今会長を務めていただいている国連貢献議連の第一回の総会で、私は事務局をやらせていただいているわけですけれども、そのときに明石次長ともお話ししたところ、やはり国連外交は、外交はそうかもしれませんけれども、どうもパーソナリティーの力が非常に大きいと。今回の問題については、フルチというけしからぬけれどもなかなかダイナミックな大使がいて、物事は守るより壊す方が簡単だということもあるんですけれども、このフルチさんの個人的なイニシアチブによって相当ひっかき回されたというような話も伺いました。  そのときに明石さんから、小和田大使は今までの国連大使と違う、文字どおりエース日本外務省にもしっかりとした発言力を持っているので、もちろん日本の方も小和田大使の力で随分交渉を進めてきた経緯があるけれども、フルチを抑えなきゃいかぬというような話をされていたのが大変印象的だったんです。  ここら辺を含めて、有志の国との間のコンセンサスづくり、そしてまた反対派に対して一体どういうような手を打っていくのか、そして来年どのくらいのタイミングで、これは来年のことはわからないかもしれませんけれども、枠組み決議を準備していくのか、そこら辺のところについてちょっとお答えいただければと思うんです。
  16. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 確かにフルチ大使を筆頭にしたイタリア動きというものに活発なものがあったということは事実であったろうと思います。  ただ同時に、委員指摘ウドベンコ総会議長提案と申しますか、イタリアパキスタン決議案も含めて、これを投票に付さないという方向物事が動いているということ自体、それは議員がこれも御指摘になられましたとおり、物事が振り出しに戻ったという表現もできるところかとは存じますけれども、同時にフルチさんの努力というものが相当行われたにもかかわらず、そのイタリア決議案が実際に投票に付されそうでない状況になってきたというところに一つ象徴的な意味があろうかと思います。  すなわち、国連国連として現状維持がなされれば現状維持がなされるだけのことであるわけでございますけれども、しかしこのままでは国連自体がおかしいのではないか、もし国連時代の要請に合わないことになれば、国連自体がその敗者になるのではないかという国際社会認識というものが一九六五年の改革以来また高まってきている。そういう意味での底流と申しますか大きなうねりと申しますか、そういうものが明らかにあって、ウドベンコさんのいわば間を保つような提案になってきたということも言えるのではないかと思うわけでございます。  したがいまして、そういう一般的な意味での追い風があるのだ、国際社会の総意が国連改革に向けてあるのだということを十分念頭に置いて、明年初めからと言わず、今後も引き続き政府としてできるだけ志を同じくする国との間の協議を始め、それから必ずしも志を同じくしていない国についても、日本立場というものについての理解を深めるために積極的な努力をしてまいりたいと思っております。
  17. 山本一太

    山本一太君 ありがとうございました。  地道に、しかもいろんなチャンネルから説得をしていくということのようなんですけれども、実は小渕大臣総会に来いという御指示をいただく前に、たまたま河野議員と二人でふらりとニューヨークに一週間ほど行きました、八月の初めごろだったと思うんですけれども。そのときに巷間いろいろ各国立場は聞いていたんですが、二人で常任理事国大使を少しお訪ねして、アジア大使にも会いましたけれども、直接いろんなお話を伺ってきたわけでございます。  リチャードソン大使にもお目にかかりましたし、ドイツはヘンツェ次席大使だったんですけれども、ロシアはラブロフ常駐代表だったんですが、それぞれ一時間ぐらいいろいろお話をさせていただく中で、アメリカ立場御存じのとおり、イギリス、フランスももちろん日独常任理事国入りを支持しているということで、中国は公使すら会ってくれなかったということは、これはもうほとんど反対しているんじゃないかという感じを受けたわけでございまして、ロシアもどうもいま一つはっきりしないという感じがございました。  アジアの中でも、御存じのとおり、インドネシアとかやや複雑な感情のあるところはなかなかサポートがないような感じがいたしました。また、アルゼンチンはローテーションを依然として何かそのときは言っているようでしたし、ブラジルは自分のところに黙っていれば来る、そんなことを言っていたんです。  そこら辺の各国立場について最新のお話があれば、今私が言ったような状況なのか、あるいは例えばローテーション制についてのラテンアメリカ地域の議論に進展があったのか、ちょっと各国立場ということについて最新の情報を教えていただけますか。
  18. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) ちょっと個々の国から始めさせていただきますけれども、委員指摘の中国については、状況は比較的変わっていないと思います。ただし、ロシアにつきましては、デンバー・サミット以来、最高首脳のレベルで日本常任理事国入りを支持するという立場を明確にいたしております。その他の地域等については、まだ収れんが今までと比べて急速に進んだという状況ではないと思います。
  19. 山本一太

    山本一太君 ありがとうございました。  今のお話で、ロシアの態度が少しずつ変わってきたというのは大変いいことだと思いまして、これは総理や小渕大臣の日ロ外交の成果かなというふうに思うわけでございます。  さっきの二十一と二十四の話で、やはり各国の間に二十一ではまとまらないのではないかというムードがそのときもあったように思います。やはり二十一では非常任理事国の枠が非常に少ないですし、やっぱり二十四ぐらいかなと。日本は、今立場が変わっていればあれですけれども、二十台前半というようなことをたしか言っていたと思うので、やはりここら辺をどういうふうにすり合わせていくか。もっと言うならば、アメリカをもう少しいかに説得できるかということがこれからのキーなのかなというふうに考えるわけでございます。  その中で私が非常に印象的だったのは、ドイツの次席大使ですけれども、非常によく発言をするあのヘンツェ大使のところに行ったときに、とにかく拒否権のこともおっしゃっていましたけれども、枠組み決議については日本と組んで通してしまおう、こういうようなお話をされていました。こういう言い方は正しいかわかりませんが、アメリカをバイパスしてもとにかく枠組み決議に持っていくべきだということをおっしゃっていました。  これはどういう意図なのかなということを河野議員ともいろいろ話をしたんですが、何かドイツの大国意識といいますか独自外交のあらわれなのか、アメリカをバイパスしてアメリカの議会が承知するはずもありませんし、非常に何か稚拙な、これもちょっと言葉に気をつけなきゃいけないんですけれども、アプローチのような気もいたしましたし、とにかく一遍に持っていって後からアメリカがついてくるというようなお話をされたんです。ここら辺のドイツ動きということについてはどういう分析をなさっているのか、お聞きしたいと思うんです。
  20. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 結論から先に申しますと、アメリカとの協調は今後の国連改革、特に安保理改革の働きかけの中核ということになる、その点は不動でございます。
  21. 山本一太

    山本一太君 ドイツ動きについてはどんな評価をなさっていますか。
  22. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) ドイツは、公平に見ますと、これまで安保理改革をとにかく推進するのだというエネルギーをぶつけて、事態をここまで進展させてきたというその貢献はしてきたのではないかと思います。しかし、ドイツが仮にアメリカをバイパスしてでも安保理改革ドイツペースで実現しようということは、まず確率の問題からいっても無理だということだと思いますので、私たちはそういうことも含めてドイツとの協議を相当緊密に行っております。いろいろな場がございます。  とにかく、安保理改革の場合には、数の問題のほかに拒否権扱いの問題、さらにはこれは途上国の問題でございますけれども、どういう仕組みで途上国が選定されるのかといったような問題、この三つが一丸となって動いている非常に複雑な方程式の様相を呈しておりますので、そう簡単になかなか進まないというのが実感でございます。
  23. 山本一太

    山本一太君 わかりました。  それで、今ちょうど局長の方から拒否権の話が出ましたが、これについては、拒否権の問題をセットにした場合には安保理改革議論が進まないということで、別途改めてパッケージの中でということがやはり最も現実的だと思うんですけれども、そこら辺についてはいかがでしょうか。
  24. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) 御指摘のとおり、拒否権扱いというのは非常に機微な問題でございまして、物事がまとまっていく最終段階で決着が図られるべき問題だという認識小渕大臣以下外務省として有しております。
  25. 山本一太

    山本一太君 拒否権の問題はいろいろ難しい問題だと思いますけれども、総政局長がおっしゃったように、私もパッケージで全体として考えていくのが一番現実的かなという感じを持っております。いろいろなお考えもあると思うんですけれども、最初から拒否権なしの常任理事国になるべきだという話は、私にとっては余りメークセンスしていないという感じがいたします。やはり拒否権の問題については柔軟に対応していくべきではないかということを改めて感じた次第でございます。  今後の戦略ということで、先ほど枠組み決議のことをお聞きしたわけですけれども、この安保理の改組、すなわち日本常任理事国入りの問題については先ほど申し上げたとおり、推進派内のコンセンサスをつくったり反対派を説得したり、あるいは枠組み決議のタイミングを考えたり、実際の選挙になった場合の対策も考えていくということなんだと思います。  この中で、我々議員の方も、あらゆるチャンネルがつながっているということが国の安全保障であり、外交の強みだと思いますので、できる限りのチャンネルといいますか議員外交を展開しながら、側面サポートといいますか、常任理事国入り安保理改組の実現に向かって進んでいかなければいけない、このように思っております。  随分時間がたってきましたので次の質問をさせていただきたいと思うんですけれども、もちろんこれは安保理改革日本常任理事国入りとも関係のある問題だと思いますが、分担金の問題がございます。  これは十二月末ということですけれども、クリスマスになればもう皆さん休みに入ってしまいますからクリスマス前に決着をということだと思うんですけれども、大臣御存じのとおり、アメリカの議会にはヘルムズ上院委員長という大変親切な方もおられまして、いろいろ御配慮をいただいているんですが、アメリカの方は今の分担金の二五%を段階的に二〇%にまでするという主張をしているわけでございます。  もともと御存じのとおり、滞納金支払いの条件として引き下げをバーターにしていたところがあるんですが、先般法律が通りませんでしたのでアメリカ立場は非常に弱くなっているんではないかなと思います。  ニューヨークに行ったときに、リチャードソン大使と二人でお目にかかったんですが、あの閣僚級のリチャードソン大使が二年しかたっていない私に会っていただいたというのはいろいろな意味がありまして、会った途端にリチャードソン大使がおっしゃったことは、とにかく日本の役人に説明してもわからないと、文字どおり訳すとこうおっしゃいました。  この分担金の問題については常任理事国の話があるからなかなか日本政府としても対応が難しいらしい、おれはいつも応援していると言っている。これについてはあんたたち政治家がきちっと国民に説明をしてくれ、だからあんたに会ったと。あんたは国連のことを一生懸命やっているらしいなと、こういうことだったわけです。そこで私は、大使のお立場はよくわかりますと、日本の官僚用語で検討させていただきますということで帰ってまいりました。  これについては常任理事国入りと絡めるのはどうかなんという話もありますが、常任理事国入り、いわゆる安保理責任を果たすということについての進展がないまま、アメリカ立場は十分考慮しなきゃいけないと思います、大事なパートナーですから。しかしながら、アメリカの議会との関係で二〇%になった、そこで日本分担金二〇%を出してくれという理屈は通らないと。これはやはり日本政府としては受けられないという立場をぜひ明確にしていただきたいというふうに私は思います。  このままほっておいても恐らく分担金の見直しで、GNPかなんかをもとに多分やるんだと思うので、バブル時代あたりの数字になるんでしょうか、それを考えたら一八%ぐらいにきっとなるんだと思うんです。それはやむを得ないにしても、その点についてははっきりとした態度で臨むべきだと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。
  26. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 分担金につきましては、今の山本委員のお考えのとおりだろうと思います。特にアメリカが滞納金支払いの条件として、分担金を二五プロから二二ないし二〇に下げることを主張いたしております。これは米議会において滞納金支払いに関する法案が成立しなかったためでございまして、我が国としては米国対応を見守っていかなければならないと思います。御指摘のように、日本の分担率の数字というものをどうとらえるかだと思います。  基本的考え方としては、日本国連協力という意味からいえば、特にこの分担金あるいはまた国連の各機関に対する協力というものは、我が国が果たし得るある意味での国際協力の大きなポイントですから、そういった意味では、国民のお許しをいただければ可能な限り協力するということは基本的には必要なことだと思います。  しかし、委員指摘のように、さればこそ他国との比較論もまた存在するわけでありまして、そういった意味では日本は真摯に誠実にこたえてきておるところであります。しかし、各国数字というものは委員御案内のように非常にいろいろな角度から検討しなけりゃならない。例えば、常任理事国に入っているビートを持っている国の分担率などを見ましても、日本との比較において必ずしも多いものでないということを考えると、重々検討していかなきゃならぬと思っております。
  27. 山本一太

    山本一太君 ありがとうございました。  今大臣の方から国内のお話が出ましたけれども、やはり大事な時期でもあり、大変な時期でもあり、全く安保理改革が進展しないのに二〇%払えという話は国内的にもなかなか説明がつかない話ではないか、このように思いますので、ぜひここら辺につきましてはきちっとしたスタンスを持って、今おっしゃったような形で交渉に臨んでいただきたいと思います。  ただ反面、私も常任理事国大使にお目にかかったときに感じたんですが、分担金問題についてはこの法律が通る前から、イギリスの次席代表のゴマソールさんもフランスの方も、ラブロフさんも言っていましたけれども、アメリカのやり方はちょっとよくないということで、どうもアメリカ立場がよくなかったということもありまして、今回のこういうことは、恐らく安保理のイラク問題なんかのアメリカの戦略に微妙に影響を与えるような話なんでしょうけれども、アメリカがややこの問題では孤立する傾向もあるのかなという感じもしております。  先ほどとちょっとコインの裏側のようなことを申し上げますが、アメリカ国連外交においても日本の最も大切なパートナーだということがありますので、そこら辺の対応はなかなか難しいところもあると思うんです。もちろん分担金二〇%というのは受け入れられないけれども、しかしアメリカをなかなか孤立にも追いやれないところもあるんです。そこはやや難しい微妙な対応が必要かと思うんですが、そこら辺についてのお考えはいかがでしょうか。
  28. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) アメリカの分担率引き下げの主張あるいは滞納金の問題、さらにつけ加えますれば滞納金の支払いのいわば条件としての分担率の引き下げ、ほかにも条件はございますけれども、いろいろ条件をつけているという問題があるわけでございます。私どもの基本的な立場は、分担率というものはその国の経済力などに従いまして一定の数式に基づいて計算されるものでございますけれども、決められた分担金の支払いはその国の義務であるので当然支払われるべきものであるというのが第一点ございます。したがいまして、滞納金については速やかに遅滞なく支払う、これが原則でございまして、滞納金の支払いについてあれこれ条件をつけるのは納得できない、そういう基本的立場でございます。  ただ、御指摘のような点もございますし、国連という多国間の場において多くの国が納得のいく解決を図る必要があることも事実でございます。実際問題として、国連を支援してまいりますのは、日本ももちろんその一人でございますけれども、日本のみならず多くの国が十分に支援してこそ有効な国連であるわけでございますから、この分担金の問題につきましても各国が納得のいく、かつ公平な解決策を見出すべきだと考えております。
  29. 山本一太

    山本一太君 ちょっと一つ教えていただきたいんですが、十二月末までにこの分担金の問題は決めなければいけないということなんですけれども、これはそうすると投票で決定するということになるんでしょうか、このまま行きますと。
  30. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 国連におきますこれまでの慣行としては、コンセンサスで分担率を決めております。
  31. 山本一太

    山本一太君 コンセンサスというのは、これは全体のコンセンサスということですか。コンセンサスができない場合には、投票に付して決めるというようなことも考えられるわけですか。
  32. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 従来の慣例によれば、コンセンサスによる解決のために力が注がれると思います。ただし、それにもかかわらず結論が出ない場合は投票ということもあり得るかと思います。
  33. 山本一太

    山本一太君 ありがとうございました。  分担金の問題については、外務大臣がおっしゃった方向でぜひ取り組んでいただきたいということを御要望申し上げたいと思います。  続きまして、日本人職員のことについて幾つかお聞きをしていきたいと思います。  国連に勤める日本人職員の現状でございますけれども、依然として不足をしているということであると思います。先般、前ジュネーブ大使がたしか座長をやっておられるんでしょうけれども、「邦人国際公務員の増強のための施策に関する報告書」というのを送っていただきました。邦人国際公務員の増強のための懇談会、九七年十一月となっているんですけれども、これをぱらぱら読ませていただいたところで改めて日本人職員の数というのは少ないということを痛感いたしました。全体の二・六%しかいないということでございまして、望ましい職員数も、国連本部でいえば今百人前後でずっと推移をしてきておりますので、二分の一以下というようなことだと思います。  特に、やはり幹部職員が非常にいないという問題があるのではないかと思うんですけれども、今国連の事務次長と呼ばれるUSGの方は三人おられて、明石人道問題担当次長は恐らくことしじゅうで勇退をされるということでございますし、緒方難民高等弁務官は来年までがたしか任期だったような記憶がございます。中嶋WHO事務局長は次の選挙には出ないということですから来年の八月か九月にたしか任期が切れるということで、この三人が短い間に国連から去ってしまった後で日本のいわゆる国連の顔というものがいなくなってしまう、こういう心配があるんです。  これについて、例えば国連本部でUSGが今度いなくなるわけなんですが、これをどうやって確保していくのかということがやはり大事な問題になってくると思うんですけれども、そこら辺のめどはついているのか、どういう状況になっているのかということをちょっとお聞きしたいと思います。
  34. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、山本委員指摘国連職員、なかんずくその中で日本人職員の活動についてでございますが、今御指摘のように非常に憂慮しておりまして、先般、御指摘のありましたように外務大臣あてに、邦人国際公務員の増強のための懇談会が設置をされまして、報告書をいただいております。  具体的に国連職員をどう配置していくかということは大変大切なことでございまして、今お話しのように次長クラスの方々がそれぞれもう退任の時期に来ておる。それを補ってなお活動の場を与えていただくということについて、国連の事務総長さんとしては、日本人の職員がそうした立場にあって活動してほしいということで、ある意味ではポストも用意しておるということであります。  問題はそこにどういう方に入っていただくかということでありまして、現在そうした意味で、長い間国連の場で活躍されてきてそれぞれ重要な地位を占めておられる方にさらにその後の任に当たっていただくか、あるいはまたその他に人材を求めていくか、喫緊の問題だと思って今対処しておるところでございます。
  35. 山本一太

    山本一太君 大臣御存じかと思いますけれども、この懇談会の報告書にもあるんですが、大体国連のスタッフの位でいうとP4、P5という課長クラスぐらいまでは自分の力でも努力によっていけるということがあるんですけれども、やはりそれ以上、D1、D2、いわゆるASGと言われる事務次長補ということになりますと極めて政治的なものも出てきまして、ここはやはり日本政府からのサポートがないと、これは計画的にやらないとなかなか幹部を送り込めないということがございますので、ぜひそこら辺をまた踏まえて応援していただきたいと思うんです。  外務省の方にも聞きたいんですが、この人事戦略、今、小渕大臣からは全体の方向お話しいただいたんですが、具体的にはどういう対策を日本人国際公務員の増強のために行っているのか、ちょっと簡潔に教えていただけますか。
  36. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 外務省におきまして国際機関人事センターというものを設けておりまして、そこで国連あるいは国際機関で働く用意のある方々の名簿を整備してございます。あるいは国際機関の側から、こういうところに空席があります、あるいはありそうですよという情報が入ってまいりますれば、そこのセンターを通じてファクスその他でなるべく広く国内に連絡したりする体制もとってございます。  ただ、P4、P5以上のポストになりますと、通常の実務的なレベルでの活動を超えて政治的にも働きかける必要が強いということ、御指摘のとおりでございます。  したがいまして、この邦人国際公務員の増強のための懇談会の報告書に書いてございますけれども、今後、政府の側において国際機関に対してその種の働きかけをいろいろな手だてを講じて一層強化することが一つうたわれておりまして、さらに力を入れてまいりたいと思います。同時に、国内における人材の発掘、ネットワークというようなこともこの報告書でうたわれておりますが、そういうことにも努めてまいります。他方、国際機関の側に対しては、一定のプログラム、計画をつくって、より積極的に日本人職員の採用あるいは登用に取り組んでもらうよう求めてまいりたいと考えております。
  37. 山本一太

    山本一太君 今、部長の方からお話があったネットワークの話でございますけれども、十月三十日の読売新聞で国際人材ネットワークのことが報道されておりました。  主流の国家公務員とか、いわゆるそういうところ以外のいろんな人材を幅広く求めようということで、経済界とか学界とかそういうところにウイングを広げて、いろんな方を募集しようということで大変いいメカニズムだと思うんですけれども、やはり内部の方々、いわゆるプロパーで国連で苦労してきた日本人の中にも優秀な方がいらっしゃいます。よく外務省の方で、中にはなかなか人がいないということもおっしゃるときがあるんですが、もちろん外部から人材を引っ張ってくることも大事ですけれども、国連の中で一生懸命努力をしながら経験を積んできた方々についても、やはり内部登用についてもぜひ力を入れていただきたいと思うんですけれども、それについてはいかがでしょうか、外務大臣
  38. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御指摘のとおりだろうと思いますので、長い間国連職員として活動して、世界のそれぞれの地域の国連機関で活躍している方々、率直に申し上げますと、外務大臣としてそういう方々がどこにどうおられるかということを正確に全部把握し切れない点があるのですが、御指摘のような点を十分踏まえながら、世界の国連機関で活躍している方々をいま一度、どのように努力をされているかということを評価する努力もしていかなきゃならないんじゃないかと思っております。  委員最初に御指摘されましたが、国連の中で随分若い人たちが育ってきている。しかし残念ながら、ピラミッド型に層が厚いのが上の方までもなかなかそういう形になっていないというようなところで、先ほど申し上げたように外からの人材あるいはまた外務省の中にも人材はおられますし、どういう方が適材適所であるかということも十分検討しながら対応していきたいと思っております。
  39. 山本一太

    山本一太君 ありがとうございました。  ささいなことなんですけれども、大臣がニューヨークに来られて邦人職員との懇談に出られまして、二十八人ぐらい集まっていましたが、全員と握手をされたと。小さいことですけれどもこれは私の同僚がみんな感激をしておりまして、ぜひ内部の人間についても優秀な人はどんどん登用する、こういう御姿勢をまた続けていただければというふうに思います。  今大臣は、若い方々もとおっしゃいましたけれども、今のアナン事務総長は一番下のP1という位から始めて、いわば町会議員の選挙に出て総理大臣になったという方でございますので、ぜひ若くて国連に入ってくる邦人スタッフについてもできるサポートを政府の方で考えていただければと、このように思っております。  もう一つ申し上げたいことは、ニューヨークの国連代表部にも随分優秀な方々が多くて、デー・ツー・デーでいろいろ邦人職員との間のコミュニケーションを図っていただいて、いろんな意味でポストの面から相談に乗っていただいております。ただ、まだ外務省の代表部の方々の意識の中に、国連のスタッフを日本国連外交を進めていくためのパートナーというよりは、やや自分たちとは違うという意識が、もちろん違うんですけれども、どうも強いように思われます。  これは実名を出してどうかと思うんですけれども、私は三年ほどUNDPにいた中で、今の小和田大使はスーパー大使だと思いまして、とにかく大変な大使なんですが、別な意味で瀬崎大使という方がおられました。この方は副常駐代表だったんですけれども、ニューヨークに来るJPO、ジュニア・プロフェッショナル・オフィサーにほとんど全部約束をとって会われました。JPOの方が来ると私のUNDPのオフィスに来るというのが恒例になっておりまして、みんな私の部屋に来て、そこから直接瀬崎大使に電話をしてアポイントメントをとるということで、そのJPOの人たちが今でもその瀬崎大使の話をするということがありまして、そういう意味の意識を持った活動をぜひ外務省方々にもやっていただけるといいんではないかなというので、ちょっと今思い出しましたので一言つけ加えさせていただきました。  随分時間が過ぎてしまいまして残り少なくなってきたんですけれども、ODAのことについて簡単にお聞きしていきたいと思います。  御存じのとおり、ODA一〇%削減ということになりました。大臣よく御存じのとおり、先般初めて大臣国連総会に行かれてアナン事務総長に会ったとき、私も御同行しましたけれども、最初アナン事務総長から出た言葉は、ODAのことをよろしく頼むということでございました、覚えていらっしゃると思いますけれども。国連からはとにかく悲鳴が上がっておりまして、事務総長は総理に書簡を送るし、あるいは緒方高等弁務官は独自のキャンペーンを日本に来られて総理に直訴されたり、いろんなことをされていて、図らずも、皮肉にも、いかに日本の存在が国連で大きいかということをこのODAの一〇%カットが示した形になっていると思います。  特に、国連の社会人道分野の自発的拠出金、UNDPとかユニセフとかUNFPA、人口基金とか、あるいは世界食糧計画、WFPですか、そこら辺の拠出金は軒並み四割近くのカットになるということで大変に危機感があるところであります。これについてはもう大臣十分御認識をいただいていると思うんですけれども、国際社会に対して、先ほどの常任理事国入りの問題とも絡みまずけれども、誤ったメッセージを送ることのないようにぜひそこは外務省としても、もちろん大蔵省との交渉もあると思うんですが、やはり最大限の御努力をいただきたい、このように思っております。  もう一つ忘れてはいけないことは、どうも国連機関の方は随分認識が浸透してきたかのように思われるんですが、実は技協と無償の分野もこのODAの一〇%カットの影響をもろに受ける分野でございまして、国連の削減分が百五十億か百六十億であるという感じだとしますと、ちょっと正確な数字は覚えていませんが、JICAの方も百三十億か百四十億円ぐらい減ると。無償資金協力に至っては二、三倍、三百億以上減るということになりまして、協力隊なんかも削減をするし、無償の新規のプロジェクトもなかなか採択できないという状況になっておりますので、国連機関の方はぜひお願いしたいんですが、こちらの方も一応大臣のおなかの中におさめていただいて、技協、無償についてもある程度また御考慮をいただければというふうに思いますので、一言申し上げさせていただきます。  ちょっと時間がもう迫ってきたものですから、最後に申し上げたいことは、今の外務省の予算の件は大臣中心になって大蔵省の方と交渉をいただいているというふうに思うんですけれども、きのう河野太郎から電話があって、大蔵省については私がばんばんやるから、一太さんは外務省の方からお願いするだけでいいという電話がありましたので、大蔵省の方はきょうはお呼びしませんでした。  もう大臣御存じのことかと思いますけれども、援助は、マルチであろうがバイであろうが、あるいは借款であろうが無償であろうが技協であろうが、全部必要だと思います。大蔵省で使っているお金、借款のお金あるいは国際金融機関に対する拠出がむだに使われているということは、これはないと思います。  ただし、全体の援助ファミリーの中で、やはり困っているところがある。大蔵省の説明はいろいろあると思うんですけれども、少なくとも今までの実績を見ればOECFのお金も多少は余裕があるでしょうと。世銀やアジ銀に出しているお金もこのぐらいは余っているでしょうというものはあるわけなので、これは緊急避難的に、どれも必要な援助ファミリーのお金なんですけれども、一部やはり日本の国益を考えて、今回は技協とか無償とか、そこら辺のところに一たん集めてもらう。  そういうコンセプトで大蔵省との協議を、もちろん大臣はそういう御認識でやっていただいていると思うんですけれども、ぜひとも進めていただきたいと思います。その点については大蔵省の方に直接やるべきですので、これ以上は申し上げません。  最後に、もう時間になりますので、ODA改革について、改革懇談会のことなんかもいろいろあるんですが、これからODAの取り組みについてどういう形で進めていくのか。量から質への転換とか、実施体制の一元化とか、あるいは国会とODAのかかわり、援助大綱を強化するのか、あるいは法律みたいなものを考えるのか、そういうことも含めて全体としてODAにどう取り組んでいくかということを簡潔にちょっとお話をいただいて、私の質問を終えたいと思います。
  40. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ODAにつきましては、たまたま来年度予算は一〇%下回るという、政府の厳しい財政構造改革という大きな改革の中で対処しなければならなくなったわけでございますが、私はある意味では、この機会をとらえて改めてODAあり方についてきちんと見直しもしながら対応していかなきゃならないというふうに考えております。  そういった意味で、二十一世紀に向けてのODA改革懇談会というのを外務大臣のところで勉強させていただいておりますし、また本院でも対外経済協力小委員会で熱心に御審議もちょうだいいたしておるということでございますので、そうしたことを十分受けとめながら対処していきたいと、こう考えております。
  41. 山本一太

    山本一太君 ありがとうございました。外務大臣としてのますますの御活躍をお祈り申し上げます。
  42. 武見敬三

    ○武見敬三君 先般、エジプト南部ルクソールでテロ事件が発生し、我が国国民の中に痛ましい犠牲者が出たことは御案内のとおりであります。そこで、今後ますますこうした海外旅行者等がふえていく趨勢の中で、でき得る限りこうした痛ましい事件を回避し、そして予防し対応をする、そうしたことを考えるためにもこれから御質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、海外旅行の自己責任の原則についての考え方をお尋ねいたします。  最も厳しく海外旅行自己責任の原則を考えるとするならば、こういうことになるんではないかと思います。すなわち、新聞であるとかテレビなどの一般のメディアを通じて、あるいは主体的に訪問を計画している地域の安全情報の入手を心がけることで情報を的確に収集し、みずからその安全度を判断し訪問をする、これがまず一番厳しく考えた自己責任の原則ではないかと思います。  これをもう少し今度は緩やかに考えてみますと、まず政府がこうした海外の安全情報に関する一般国民に向けたサービスを積極的に行う。この場合には外務省が担当されると伺っております。そしてさらに、その次は外務省と運輸省が連携をする形で、旅行代理店及び航空会社等を通じて当該地域に対する安全情報あるいは危険情報といったようなものを渡航希望者に対して的確に伝達をする。そしてその上で、当人らがみずからの責任に基づいて判断をする、そういう機会政府が積極的につくり出す、こういう格好になるんではないかと思うわけであります。  我が国の場合、海外の自己責任の原則についてどちらの立場をとっておられるのかを改めて確認させていただきたいわけでありますが、いかがでございましょうか。外務省にまずお伺いしたいと思います。
  43. 内藤昌平

    政府委員(内藤昌平君) 先生御指摘のとおり、海外においては日本国の主権が及びません。したがいまして、現地での安全は、まずはその国の政府の治安維持にゆだねられざるを得ません。そういう中で、日本方々は一人一人が安全対策には意を使っていただくという必要があります。政府といたしましては、その意を使っていただくことをお助けするように、できるだけ危険が少なくなるように大使館を通じて現地では御支援しているわけでございます。  ただ、出発前に日本で行えることとしては、大使館が集めました現地での情報を国内に周知徹底方の努力をすることによって、出発前からその情報日本人の旅行者に十分知っておいていただくように努めるようにしております。
  44. 武見敬三

    ○武見敬三君 特に外務省の場合には、恐らく外務省設置法に基づいて海外における邦人の保護というのが一つの大きな役割として法的に規定されているものと思います。それだけに、旅行する前の段階でいかに的確に適切な情報をそうした渡航希望者に与えるかということが、その大きな役割として認知されるものと思います。こうした考え方は、我が国における海外旅行自己責任の原則というものに基づいてそれをしかるべく実行する際に、私は必要不可欠な政府の役割と、こういうふうに認識をしているわけであります。  そこで、それでは改めて政府内部におけるこうした役割を行う上での分担とその責任の所在についてお伺いをしたいと思うわけであります。  まず第一に、海外の情報を入手して、一般渡航者にとっての安全確保の視点からそうした情報を分析し、三つのレベル、すなわち渡航自粛、観光旅行自粛、注意喚起の三つに分類をし、各省庁、旅行業界組織等を通じて、あるいは直接旅行代理店に対してそうした情報を伝達し、渡航希望者に自己責任に基づく判断の機会を与える。これが外務省の役割であって、それを担当しておられるのが外務省の官房の領事移住部と、こういうふうに理解をしてよろしゅうございますか。
  45. 内藤昌平

    政府委員(内藤昌平君) はい、そのとおりでございます。  外務省としては、渡航情報を発出しますと、直ちに報道機関に対して公表いたします。さらに関係省庁、それから都道府県における旅券発給事務所及び旅行業団体等に周知いたします。さらには、現地では大使館が、ホテル、レストラン等に対してもこの情報の周知を図っております。  旅行会社に対する情報提供は、日本旅行業協会及び全国旅行業協会を通じて外務省が直接団体を通じても行いますが、旅行業者に関しましては特に所管官庁である運輸省と連携をとっております。
  46. 武見敬三

    ○武見敬三君 この場合、航空機会社はそうした情報伝達の対象にはならないんですか。
  47. 内藤昌平

    政府委員(内藤昌平君) 航空機会社も入っています。
  48. 武見敬三

    ○武見敬三君 そこで、まず海外情報を的確に、一般渡航者にとっての安全確保という視点から情勢分析をするという役割がまず外務省の中できちんと行われなければいけないことになります。この場合、例えばエジプトの例をとって考えてみたいと思います。  エジプトの場合の渡航者数は、我が国邦人の中でも特に人気スポットに近年なってきております。平成八年、一年間で六万百三十人、六万人台を超えました。前年比でも三五%増。その三年前の平成五年と比べますと二・五倍と、近年急速にふえているわけであります。しかし他方、エジプト南部において特に原理運動が先鋭化し、特に外国人の観光客に対するテロ活動というものが始まり、それが極めて警戒すべき対象となってくるという情勢が認識できるようになりました。  そこで、外務省は一体いつの時点でそうした情勢についての分析に基づいて注意喚起というカテゴリーで認知をされたのでありましょうか。
  49. 内藤昌平

    政府委員(内藤昌平君) これは既に平成四年の段階から問題を分析しておりまして、平成五年四月八日以来、累次渡航情報を注意喚起とテロの危険があるということで出しております。
  50. 武見敬三

    ○武見敬三君 そうすると、近年急増する状況というものと注意喚起を出した状況というものが重なっているわけでありますが、注意喚起を出しつつも、人気スポットとしてこうした観光客が急激にふえている状況というものをどのように外務省では分析をし、認識をしておられたんでしょうか。
  51. 内藤昌平

    政府委員(内藤昌平君) 私どもは現地の情勢を、具体的にいろいろな事件が起きておりますのを注意喚起の中に織り込みまして、さらに注意がきめ細かく払われるように渡航情報の中に盛り込んでおります。
  52. 武見敬三

    ○武見敬三君 そこで次に、情報を伝達する役割としての運輸省運輸政策局の役割とその責任についてお聞きしたいと思います。  外務省から伝達された渡航情報というものを、旅行代理店及び航空会社等を通じて渡航を希望する邦人に対してより確実にその伝達を行い、しかるべく自己責任に基づき各自が判断する機会を与える、こうした伝達努力義務とその責任というのを運輸省の運輸政策局が担っておられると思うのでありますが、いかがでしょうか。
  53. 土井勝二

    政府委員(土井勝二君) お尋ねの件でございますが、運輸省におきましては、運輸政策局の中に観光部がございましてこの部が中心になるわけでございますが、外務省からただいまいろいろお話のあったような渡航情報が発出された際には、直ちに旅行業協会に通知をし、同協会を通じて傘下の旅行業者すべてに対して周知徹底を図っている、そういうルートで行っております。
  54. 武見敬三

    ○武見敬三君 例えば今回のルクソールのテロ事件の邦人の犠牲者というのは、特に新婚カップル等もいらっしゃって大変嘆かわしい悲劇的な事件になってしまったわけでありますけれども、これらの犠牲者たちはこうした注意喚起の対象地域に自分たちは行くんだということを事前にきちんと情報伝達されていたのでありましょうか。どのような御認識をお持ちでいらっしゃいますか、伺いたいと思います。
  55. 土井勝二

    政府委員(土井勝二君) 先ほど申し上げましたように、注意喚起地域につきましては外務省から情報をいただきまして旅行業協会に渡す、それで旅行業協会が傘下の事業者に通知するわけでございます。旅行業者は協会からそういう通知を受けますと直ちに各営業所に周知徹底をして、注意喚起地域へのツアーでございますと販売時に旅行者の方にその旨口頭で御説明をしているというふうに承知しております。  今般のツアーでございますが、この事件の直後に私ども観光部の方からその当該旅行業者に照会いたしましたところ、販売の際にエジプトが注意喚起地域であるということを旅行者に必ずしも十分明確に説明していなかった可能性があるというふうに運輸省としては感じております。
  56. 武見敬三

    ○武見敬三君 まさにその情報がきちんと伝達されていなかった可能性があるという御認識、貴重な御認識だと思います。口頭でその情報を営業窓口で渡航希望者の方に御連絡をするということになっているわけでありますけれども、それがどうも現実には周知徹底して行われていなかったというのが業界一般の常識であったという気が私はしてなりません。  そこで、私自身も自分の個人的なルートを使ってこうした業界の各社、幾つかピックアップいたしまして調査をしてみました。そういたしますと、まずおおよそそれぞれの旅行代理店の窓口においては、渡航希望者の方が特に渡航しようとしている地域の安全情報を知りたいという希望がなければ、たとえそこが注意喚起の対象地域であったとしてもあえて積極的に営業サイドから知らせることはしません、これが現実のようであります。  そして、さらにもう少し後退したような旅行代理店の場合には、営業本部あたりでこうした運輸省や外務省からの情報については内部情報としてそこで管理され、とめられてしまって、実際に各支店の責任者レベルにおいてもそうした情報が周知徹底して伝えられていないというケースさえもあったやに思います。  そういう意味では、実際のそうした業界に対する行政指導の立場にある運輸省の担当局として、このような実態を現実にきちんと認識をして指導することができなかったという一つの問題が私はこの中から発生してしまうと思うのでありますが、いかがお考えになりますか。
  57. 土井勝二

    政府委員(土井勝二君) 旅行業者の営業活動でございますが、先ほど来の旅行者の自己責任の原則というのが一つあります。それから、旅行業者は率直に申しましてやはり営業活動を一生懸命やりたい、契約をたくさんとりたいというのも一つの経営姿勢としてまたあるというふうに考えております。  そこのところが、先ほど申し上げましたように、注意喚起地域について私どもとしては旅行者に口頭で説明をするということで言っているわけでございますが、ただいま先生の御指摘のように必ずしも十分な説明が行われていないということもあろうかと思います。私どもとしてはその二つのバランス、自己責任の原則あるいは営業の姿勢というなかなか難しい問題があるわけでございますが、やはり事は人の安全、命にかかわることでございますので、しかるべく改善を図りたいと考えております。
  58. 武見敬三

    ○武見敬三君 その場合、感染症のような病気が発生した地域で危険が十分認識される場合には、これは口頭の場合もあります。またその当該地域を領土としている国が、入国する場合に予防接種等の条件をつける場合にはイエローカードというようなものが現実にあって、それをきちんと取得して手続を踏まないと入国できないというようなこともありますから、そういう場合には旅行代理店もきちんとそういう手続を行っているようであります。ただ、こうした感染症にしろテロにしろ、実は人の命にかかわるという点では同じような課題であります。  したがって、私自身は、こうしたテロに関連する海外の危険情報を国民に対しその周知徹底をする上で、こういう旅行代理店を通じて的確に、もし注意喚起対象地域に行きたいという人があった場合には文書を通じてその旨を伝達する努力が今後なされるべきであろう、こういうふうに考えますので、文書による一定の情報の提示というのを営業窓口でもその場合行う必要があると認識するのでありますが、いかがでございますか。
  59. 土井勝二

    政府委員(土井勝二君) 先生の御認識と改善の一つの具体策をおっしゃられたわけでございますが、口頭での説明というのは、必ずしも本当にお客さんに言わないケースもあり得るのかなというふうに私どもとしても考えております。文書でお客さんに示すということも今おっしゃっていただいたわけでございますが、運輸省としてそういう方向で改善をいたしたいと考えております。
  60. 武見敬三

    ○武見敬三君 実際に、旅行代理店などを通じて渡航される邦人というのは全体の渡航される邦人の約五割前後だと、こういうふうに言われております。最近やはり旅行なれをした方々もふえてきて、安売りの航空券などを直接購入をしたり、さまざまなルートで自分の判断でそうやって海外に渡航される、そういう方々が現実にはふえてきているわけであります。  しかし他方で、そういう方々であればあるほど当然自己責任の原則というものが明確になってくるわけでありますが、海外旅行にやっぱりふなれな方々というのは当然パック旅行等、旅行代理店が主催するような旅行計画に乗って海外に行かれるというケースがあります。その場合には、特に海外にふなれであり海外の情報にも疎いという方が結果としては多くなってしまいます。  したがって、そういう人たちに対してはある程度より親切にそうした情報を提供申し上げて、御自身の判断で行くか行かないかを決定していただくというような形をとることが私は基本的に必要であろう、こういうふうに考えます。そして、また同時に、航空会社等に対しても旅行代理店と同じような形で情報伝達の一つの媒体になっていただくことがよりその情報を的確に徹底させる上で必要と考えるわけでありますが、この二点についてのお考えを運輸省にお聞きしたいと思います。
  61. 土井勝二

    政府委員(土井勝二君) 先生おっしゃられるように、約千六百万人ぐらいの日本人の方が現在海外にたくさん出ておられまして、その中には確かに旅行にふなれな方々もおられると思いますので、運輸省といたしましても、これまでも旅行業界あるいは航空会社を通じてできる限り情報の周知徹底というのを行ってきたつもりではございますけれども、今回の事件も踏まえまして、さらにもう一度関係業界に対して十分な指導を行ってまいりたいと思います。
  62. 武見敬三

    ○武見敬三君 それでは、最後に外務大臣、このような政府の邦人保護の役割というものと実際に政府内部における役割分担というものを見てみますと、なかなか現実とそぐわない部分が出てきているように思うわけであります。それだけに、今後ますます邦人の渡航数はふえていくわけでありますから、こうした安全確保に向けて、そして自己責任の原則というものについて国民により深い理解を得ていただくためにも政府の積極的なそうした情報の伝達、そして判断をする機会の提供というものをつくっていただきたいと考えますので、外務大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  63. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいまの武見委員の御質疑、また政府側の答弁をお聞きいたしておりまして、なかなか難しいことだとは思いますけれども、さらに政府としての責任を果たしていく努力をしていかなきゃならない、こう考えております。  海外における治安の維持は言うまでもありませんが、基本的にはその国の政府責任でありますが、または身の回りの安全について邦人旅行者個々の人にも十分注意を払っていただきたい、これは自己責任の問題でありますが。  今回のエジプトにおけるテロ事件にかんがみまして、渡航情報の重要性に注目し、外務省としてその広報をさらに強化し周知徹底に努める考えでございますが、先ほど注意喚起とか観光自粛勧告等いろいろ政府としては行い、これに対して運輸省も適切に処置を講じておるんだろうと思いますが、外務省としても今回の事件を考えれば、さらに情報の的確な掌握というようなことについても徹底していかなきゃならぬと。  例えばテロ事件が発生しましたが、聞くところによると、犯人側が前々からいろんなアピールをしておったんじゃないかというようなことも伝えられているわけです。ですから、こうしたアンテナをしっかり張って取り上げながら、外務省としての幾つかの段階があって、既に注意喚起その他発せられてはおるものの、さらに加えていろんな情報を的確に把握しながらそれらの旅行者等に対して適時適切に周知徹底をするという手段をどう講じていくか、さらに検討してみたいと思っております。
  64. 武見敬三

    ○武見敬三君 ありがとうございました。
  65. 高野博師

    ○高野博師君 小渕外務大臣はこの委員会で初めてでございますので、最初外務大臣外交理念とは何なのか、何に重点を置いて外交をやられようとしているのか、簡単にお伺いいたします。
  66. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 私、外務大臣に就任をいたしましたときに記者会見で申し上げましたが、言うまでもありませんが、外交の基本方針は我が国自身の安全と繁栄を確保して国民一人一人の豊かな平和な生活を実現していくこと、これに努めることに尽きると思っております。  具体的には、何といっても日米関係、これが基軸でございます。その維持強化に努めていきたい。また、中国、ロシア、韓国等の近隣諸国との関係の強化に努めていきたい。と同時に、アジア太平洋を中心とする地域協力の強化、国連などにおけるグローバルな取り組みへの積極的な協力を着実に進めてまいりたいと思っております。  こうした主要な外交課題の取り組みの中で、自分としては、そのとき申し上げましたが、誠実、堅実、果断、この三つをモットーにして努力を傾注してまいりたい、こう考えております。
  67. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、最近のアジアの経済危機についてお伺いいたします。  この経済金融危機について基本的にどのような認識をされているのか、外務大臣にお伺いいたします。
  68. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) アジア経済は、基本的には良好なファンダメンタルズに基づいて高い潜在成長率を維持しており、今後とも自立的な経済発展基盤の強化等を通じてさらなる成長が可能であると認識をいたしております。他方、東南アジアに端を発した通貨、株式市場の変動は、先進国や他の地域の経済を含めた世界市場に影響を及ぼしており、我が国としてもこのような事態を憂慮いたしております。  こうした観点から我が国としては、アジア地域の経済、通貨の安定、ひいては世界経済の発展を確保するために可能な限りの支援や協力を実施していく所存でございます。アジアについては、いわゆる経済発展の著しい国の幾つかを称してフォードラゴンズとかあるいはジャイアントタイガーとか、アジア経済の目覚ましい発展ぶりが隆々としてきたわけでございます。ここへ来て、御案内のように金融の問題も含めましていろいろ起こってきておるわけでございますが、冒頭申し上げましたようにファンダメンタルズは私は極めて強いものがある、こう考えておりますので、この危機は必ず乗り越えられるものだと、このように考えております。
  69. 高野博師

    ○高野博師君 アジア経済に関しては日本経済そのものが深くかかわっている。アジア金融危機、経済危機というのは日本経済を大きく左右するほど緊密な関係にある。例えば、日本の輸出総額はアジア全体の四二%、また信用供与額は、これは一九九六年末の統計ですが、全体の三五%、約三十二兆円の金額があるわけですが、今回のこの危機によってこれまで世界の成長センターとも言われていたアジアが、台風の目だと、あるいはアジアのビールスだというようなことも言われている。  そこで、このアジア型の経済発展モデルというものが私は破綻をしたのではないか、あるいは修正をしなければいけないのではないかという認識をしているんですが、この点について伺う前に、まずタイの通貨危機についてどうとらえているのか、簡単にお伺いいたします。
  70. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) タイの通貨危機につきましては、今大臣の御答弁の中でアジア各国の経済は基本的にはファンダメンタルズは良好というお話がございましたが、タイの場合にはいささか悪い面もございまして、輸出の不振、不良債権の増大というようなことから今回のバーツ危機に至ったというふうに考えております。
  71. 高野博師

    ○高野博師君 先ほどの大臣のファンダメンタルズは良好だという認識は、私はいささか甘いのではないか、楽観的に過ぎないかなという感じを持っております。  韓国と香港についてはいかがでしょうか。これも簡単で結構でございます。
  72. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 韓国経済は、御案内のように大変順調な発展をしてきたというふうに言われておりましたが、九六年以降成長が鈍化の傾向を示しておりまして、また経常収支赤字も拡大をしてまいりました。最近の動向といたしましては、財閥系企業の経営破綻と金融機関の不良債権の増加というようなことで、経済の先行き不安が増大いたしました。そういう中で株価、為替相場の下落が起こったというふうに考えております。  香港につきましては、これは一般にファンダメンタルズはしっかりしているということでございますが、金融市場は証券市場で乱高下の動きがあったというふうに承知をしているわけでございます。
  73. 高野博師

    ○高野博師君 タイの通貨危機については、パーツが他のアジア諸国の通貨に比べて割高感があったということ、これはもうIMFなんかも指摘しているわけであります。前の大蔵大臣がドル・ペッグ制を維持するという人だったんですが、新しい大臣になってからこれに柔軟性を持たせるような発言があったということで、国際投機筋がペッグ制を放棄するのではないかという危機感からこの通貨の売り抜きに出たということが今回の通貨危機の原因だと思うんです。  香港については、今のドル・ペッグ制を堅持しなければ中国の改革・開放政策というのに影響を与えるということで、これを必死になって維持しているんだと思うんです。韓国についても、ウォンとか株価の下落がある、財閥の倒産というようなこともあって非常に厳しい状況にあると思うんです。  私は、このアジア型経済発展モデルというのは三つあると思うんです。一つは、開放経済ということで、関税の引き下げによって資本財とか中間財、これの輸入によって産業の高度化を図った。外資流入促進のために、特に為替リスクを解消するために現地通貨とドルのリンク制をとってきた。これが安易に外国資本に依存する体質をつくってきたのではないかなと。  もう一つは、輸入インフレ抑制のために為替レートを高目に設定してきた。そして、金利を高目に設定して景気の過熱を抑制すると。また三つ目として、政府主導による経済運営ということで、市場の未成熟さを補うという意味政府主導でやってきたんですが、これが企業の競争力低下を招いたのではないかと。  いずれにしても、開発最優先ということでやってきたということで、産業基盤の整備等地道な努力を怠ってきた面があるのではないか。したがって、今回の破綻については、実際には現地通貨がドル・ペッグということで実力以上の評価をされてきた。これが先ほど言ったような国際投機筋の現地通貨売りになったということが言えると思います。この現地通貨が大幅に下落したということによって対外債務返済が困難になった、大量の不良債権が発生した。  特に、アジアの場合は短期の資金中心のファイナンスが行われていた。短期の場合には非常に逃げやすいという特徴を持っているわけですが、これが今回の特徴だと思うんです。また、政府による市場のコントロール、これも限界があるということで、競争力のない企業が倒れていった、倒産していった。  アジアから資本が逃げて、アメリカの国債とか株を買う、あるいは日本の資金もアジアから引き揚げることになると、アジアの景気等に相当影響するのではないか。日本の資金もアメリカの方に逃げている。これが回り回ってアメリカからも日本の資本が引き揚げるようなことになると、これはもう世界恐慌になるのではないか、こういうことも言われるわけでありますが、このアジア型の経済発展モデルについて、どういう認識をされているんでしょうか。簡単で結構です。
  74. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、高野委員の御指摘の三点の問題をお聞きいたしておりまして、その分析はそのとおり正しいと認識をいたしております。と同時に、顧みて、我が国の戦後の経済発展の過程を思い起こしながら、実はこうした過程も踏みながら日本経済が今日あることを考えておりまして、そういった点では我が国も経験した幾つかの難しい状況一つにあるような気がいたしております。  したがって、こうした状況につきましては、若干先進国といいますか、経済的にこれだけの力を持つ日本としても、いろいろのノウハウも含めてこの危機に際して協力をいたすべきだと。具体的に、金融の問題につきましてはIMFと協調しながら、それぞれの国の状況を十分勘案しながら我が国としての対処を今日も続けておる、こういうことだろうと思っております。
  75. 高野博師

    ○高野博師君 そこで、今回のアジア各国の経済金融危機に関して、関連の情報収集というのはどういうふうに行っていたんでしょうか。  この危機に対してある程度の予測というものはできなかったのかどうか、外務省と通産省と大蔵省にそれぞれお伺いいたします。
  76. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) アジアの経済情勢一般につきましては、先生も御案内のように、現地在外公館におきまして任国政府からの情報はもとより、関係各国、国際機関、さらには日本の進出企業の方々からの情報等の収集、分析に努めてきたところでございます。  他方、金融資本市場におけるグローバリゼーションが急速に進展するという状況の中で、一国の通貨、金融危機は世界市場に影響を及ぼし得るものでございまして、今回の通貨不安定については、我が国としても七月のタイ・バーツ切り下げ以降、インドネシア等周辺諸国への波及につき、注意を持って見守ってきたところでございます。  御指摘のとおり、こういう状況でございますので、情報収集・分析に一層努力をする必要を感じております。
  77. 高野博師

    ○高野博師君 それはこの危機が起きてからの話でありますが、私が言っているのは、危機が起きる前にある程度の予兆なり予測というものができなかったのかどうか、その点について伺います。
  78. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 今申し上げました情報収集・分析の体制は、これは常時とっているわけでございまして、今回のタイにつきましてはもちろんいろいろな情報がございました。チャワリット政権が不安定になった、これは経済情勢の悪化が非常に大きな原因であるというようなことも含めまして、その国々の経済情勢についてはその時々の判断をしております。
  79. 井川紀道

    説明員(井川紀道君) 今回の危機が事前に察知できなかったか、日ごろからどういう情報を収集しているかということにつきましてお話しさせていただきたいと思います。  まず、アジア各国のマクロ経済あるいは為替動向を中心といたしました経済金融情勢につきましては、大蔵省財務官、国際金融局を中心といたしまして、さまざまなチャネルを通じまして情報の把握、分析に努めておるところでございます。  具体的には、IMF・世銀、あるいはアジア開発銀行の国際会議の場を通じて、あるいはアドホックにアジア各国の通貨当局の幹部の方々との電話を通じての連絡、日々密接な連絡をいたしております。それから今日、東京にこういった国際機関の幹部クラスが訪れる機会が多くなっておりますけれども、そういった機会をとらえて密接な情報交換を行っております。  それから、外務省との連携協力関係についてでございますけれども、アジア各国に存在する在外公館から、逐次情報収集を行っていただいた結果を私どもも聞いた上で意見交換をさせていただいております。  それから、タイのバーツの切り下げについて、あるいは今回の通貨危機について事前に把握できなかったかということについてでございますけれども、タイにつきましては大幅な経常赤字になっている、GDP比で見まして八%ぐらいの規模になっている、あるいは短期の外貨の借り入れに対する依存度が高いということ。それから議員も御指摘でございましたけれども、硬直的な為替相場制度をとっておる、しかもタイ・バーツが実力以上に過大評価されているのではないかと。こういった点につきましてはIMFも問題意識を持っておりましたけれども、私どもといたしましてもこういった点は問題であるという意識を持っていたことは事実でございます。  ただ、これが今回のような通貨危機あるいは経済危機につながるかということにつきましては、こういったアジアの国々が幾つかの問題をはらみつつもこれまで七〇年代、八〇年代、九〇年代にかけて成長してまいりましたので、今回のような危機につながるということにつきましては、IMF等の国際金融機関あるいは周辺の国も含めまして確信を持って予想することはできなかったものと考えております。
  80. 高野博師

    ○高野博師君 外務省も大蔵省も一般的な情報の収集のあり方じゃなくて、今回の危機に限って予測できていたのかできていなかったのか、その辺について簡潔にお答えください。  通産省、お願いします。
  81. 佐野忠克

    政府委員(佐野忠克君) 事前に察知できていたかどうかというのは、今、大蔵省の井川次長がお話をされましたように、確信を持ってこういうことになるのかならないのかということについては、残念ながら通産省といたしましてもそこまでの確信を持てるような予測ができたわけではございません。  しかしながら、我が国にとってのアジア経済の大変な重要性にかんがみまして、日ごろより私たちの組織の一つでございますジェトロとかアジア経済研究所等とも連携をいたしまして、また産業界との意見交換を通じましていろいろな情報収集に努めて、アジアの経済の状況について議論をしてまいったところでございます。それから外務省さん、大蔵省、適宜関係省庁とも連絡をとりつつ、アジア経済の現状に関する認識我が国対応ぶりについての意見交換を行ってまいったところであります。
  82. 高野博師

    ○高野博師君 それではお伺いいたしますが、通貨危機の予測をするときのポイントとは何でしょうか。大蔵省で結構です。
  83. 井川紀道

    説明員(井川紀道君) アジアの通貨制度、仕組みにつきましてはいろんな考え方があるかと思います。  一つは、先ほど議員の方から、アジア型発展モデルということで外資の流入を促す、あるいは為替リスクを生じさせないということのために通貨をドルとかあるいは通貨のバスケットにリンクさせるというような行き方があるかと思います。  ただ、こういった為替のリンクあるいは為替をどこかの通貨に固定させるということは、その国のファンダメンタルズが非常に強固である、外貨準備の水準もいいし、成長あるいは輸出の動向も極めて良好である、こういうことが背景にあろうかと思います。例えば、今日でも香港あるいは中国につきましては基本的にドルのペッグが行われているわけでございますけれども、香港、中国につきましては、合わせますと外貨準備が二千億ドルに上るわけでございます。  したがいまして、為替のポイントというのはその国の経済の実力、ファンダメンタルズと現在の水準がどうであるかというところの判断に尽きるかと思います。
  84. 高野博師

    ○高野博師君 そうしますと、先ほど外務大臣はファンダメンタルズについては楽観的な見通しをされておりましたが、このファンダメンタルズが強固でなければこういうペッグ制はとれないという基本的な認識があるんであれば、これはファンダメンタルズが強固でなかったということになりませんか。  それで、通貨危機の予測を行う場合のポイントは、このペッグ制維持の期間の長短とかアメリカとのイシフレ率の差が相当あるとか、あるいはないのかどうか、外貨準備高はどのぐらいあるのかとか、それからまたマクロ経済全体の状況を系統的にフォローしなくてはわからないんではないかと思うんですが、そのファンダメンタルズについての認識はいかがでしょうか、外務大臣
  85. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 基本的には、将来の成長性も含めてファンダメンタルズ、潜在的な成長力は持っている、これは間違いないことだろうと思います。しかし国々によって、先ほど御指摘のように、経済運営その他も含めまして状況は若干変わっておるというようなところが今回の国別の金融危機を迎えておるゆえんではないかというふうに考えております。
  86. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、先ほど外務省、通産省、大蔵省は情報収集・分析をやっていたということなんですが、この収集した情報とか分析結果についてはどの程度の公開をしていたんでしょうか。  これは、危機があるからということでの公開はできないと思いますが、基本的にどんな状況にあるのかというような情報については民間等に流していたんでしょうか。
  87. 佐野忠克

    政府委員(佐野忠克君) 各省庁いろいろな形での情報の提供があるかと存じますが、通産省の場合で申し上げますれば、先ほど申し上げましたジェトロというのは「通商弘報」というのを毎日出しておりまして、各国における状況についてはそこに適宜、今の経済状況等、また通貨の状況、それからそれがどういう影響を与えるかということについては公表をしてまいりました。  また、アジア経済研究所におきましては、ちょうど九月の初めでございましたが、「東アジアの長期経済見通し」というのを発表させていただいております。そういうような形で、一体アジアの経済がどうなっていくのかということについての私たちなりの考え方を出させていただいているところでございます。  加えて申し上げますが、今般のアジア諸国の通貨の変動に伴って経済混乱が表面化していることは、それはそのとおりでございますが、外務大臣が申し上げられたとおり、これらの地域の中長期的な経済発展の可能性というのは依然強いものがあるという見方は、APECの会議だとか、またこの間、九月の末でございましたが、アジアと欧州の経済閣僚が集まった会合体等々のフォーラムにおいてもいろいろな我が国見解を示すとともに、各国と共通の認識が得られているというふうに私たちは認識いたしております。
  88. 高野博師

    ○高野博師君 今回の経済危機について、アジアに最も日本はコミットしているわけですが、日本が一番アジアの経済事情をよく知り得る立場にあるし、知っていなくてはいけないと思うんです。今、ジェトロとかアジ研とかいろいろ言っていましたけれども、一体どういう見通しをしていたのか。  私の知り得る限りでは、政府部内ではこの危機についての現状をきちんと情報を収集した上で分析して把握していた、ある程度の予測ができていたということは全くなかったと、私はそう認識しているんです。もしある程度のことがわかっていたというのであれば、そういうペーパーでもつくっていたんであれば、それはぜひ見せてもらいたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  89. 井川紀道

    説明員(井川紀道君) 大蔵省といたしましても、最近のアジアをめぐる情勢につきまして、非常に関心も深い、あるいは重要な問題であるということでございまして、国会の御審議あるいは各種の記者レク等の場で御質問をいただく機会が多いわけでございます。  私どもといたしましても、こうした機会を通じまして、私どもが知り得たところをできるだけ御説明させていただこうと思っております。
  90. 高野博師

    ○高野博師君 もっと具体的に言ってください。
  91. 井川紀道

    説明員(井川紀道君) ただ、私どもが知り得た情報につきまして、相手国当局との信頼関係とかあるいは市場に不測の影響を与える可能性があることにかんがみまして、必ずしも公表に適したものばかりでないものもあるということを御理解いただきたいと思います。
  92. 高野博師

    ○高野博師君 大蔵省は、タイヘの輸銀融資で二十億ドルあるいはインドネシアのスワップ支援ということで五十億ドルを限度として通貨の交換をする、こういうことをやっているんですが、やはり事後処理的な面が強過ぎる、どうしてもっと事前に対応できないのかということを私は感じております。そういう中で、直接国益とか国民生活にかかわるアジアの経済危機だと、私はそういう認識をしているんですが、どうも政府としては真剣に取り組んできたのかなという疑念を私は持っております。  そこで、先ほどファンダメンタルズの話が出ましたが、アジアに対しては日本が相当の経済協力をやってきた、そういう中でファンダメンタルズが強固になったのかどうかをも含めて、アジアの経済協力、ODAについてはある一定の成果が上がった、したがってこれからはアジアからアフリカにODAの重点を移す、そういう方針だということを政府は言っているのでありますが、今回の金融危機を踏まえてこの方針に変更はあるんでしょうかないんでしょうか。
  93. 大島賢三

    政府委員大島賢三君) 我が国は、これまでODAを実施するに当たりましてアジア中心できたということでございます。数年前までは二国間援助全体の約七割をアジアに向けてまいりました。最近は若干その比率が下がって五割前後だと思います。  いずれにしましても、歴史的、地理的、さらに経済的に非常に強い密接な関係にありますアジア地域に対して、これを重点地域としてODAを実施していく、この方針は不変でございます。アジアの経済発展、底上げに日本の資金協力、技術協力というものが重要な貢献をしてきたということは事実だと思います。  ただ、いろいろアジアの中も状況が変わってきておりますので、工夫を加えるべき点、例えば人づくりの問題、それから民活をより活用するといったいろいろ工夫を要すべき点はございますけれども、いわゆる伝統的なODAを行っていくという余地は南西アジアの六億人と言われる貧困の問題も含めましてありますので、アジア中心にやっていくということは不変でございます。  と同時に、アフリカにつきましても一言だけ申し上げますと、四年前にアフリカ開発会議を東京で行いました。その第二回目の会議日本とそれから国連開発計画と共同しまして東京で行うということになっておりますので、アフリカの問題についても力を入れていく、こういう考えでおります。
  94. 高野博師

    ○高野博師君 経協のあり方について問題はなかったかということなんですが、例えばタイの場合には、対外民間債務の七百三十億ドルのうち三分の一が不動産に行っているわけです。インフラ関連の日本がやった援助等が一つの呼び水になってはいないかなという感じがするのであります。  いずれにしても、アジアの経済基盤が弱かったから今回の金融危機が起きたということであれば、経済基盤をしっかりさせるためにやってきた経協のあり方というのももう一度考える必要があるのではないかなと私は思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  95. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) アジアに対しての経済協力は原則としては効果を発揮しているんだろうと思います。さればこそ、今日のアジア諸国がこれだけ発展をしてきたことについてのお手伝いもでき、その成果も上がっていると思っております。  しかし、御指摘にありましたように、今回ODAにつきましての見直しを真剣に考えておりますが、こうした観点アジア諸国に対しての経協のあり方について、さらに今度の金融不安、こうしたものが起こったアジア経済の中で我が国の果たしてきた経協のあり方についてさらに検討をすべきものと考えております。
  96. 高野博師

    ○高野博師君 今回の経済危機について、一つは、日本側の経済についての危機管理能力というのが問われているのではないかと私は思うんです。私はいろいろなところで指摘をしてきているんですが、いろいろな事件が起きる、起きなければほとんどやらないというような現状があって、これはまさに政府としての統治能力にかかわる問題だと思うんです。  今回の行革の中で、行革の本質というのは、こういう経済、金融のグローバリゼーションの中で、こういうような危機を予測したり、予見したり、こういうことに事前に対応できるような体制をつくることが一つ重要ではないかと思うんですが、この経済の危機管理能力を含めて、大臣の所見をお伺いいたします。
  97. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今回のアジアにおける金融・通貨危機の問題について、先ほど来委員からの御指摘をちょうだいいたしております。この問題について、外務省、それから通産省、大蔵省、総合的な分析と判断をしておったとは思いますけれども、正直申し上げて、それぞれの役所の縦割りの中で私自身には外務省の経済局と、こういうような形になっているんだろうと思います。  そういった意味で、総合的にそれぞれの国々の状況について、我が政府としては、もう少しく緊密な連絡をとりながら、詳しい分析をすると同時に協調していくべき点があるのではないか、こう考えております。
  98. 高野博師

    ○高野博師君 残りは午後にしたいと思います。
  99. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) これより午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      —————・—————    午後一時開会
  100. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、釘宮磐君が委員辞任され、その補欠として小山峰男君が選任されました。     —————————————
  101. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) 休憩前に引き続き、国際情勢等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
  102. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、午前中に引き続いて質問をいたします。対人地雷禁止条約に関しまして、これは我が国も署名することになったわけですが、これに対する小渕大臣イニシアチブについて評価したいと思います。  これは署名前に、日本の場合は米国とはいろんな了解を得るとか協議をしているということでありますが、この条約に署名した後、在日米軍が日本国内で持っていると思われる地雷、あるいはその使用についてはどういう扱いをするんでしょうか。
  103. 阿部信泰

    政府委員(阿部信泰君) 在日米軍が現実に地雷を保持しているかどうかということは確認しておりませんが、もしあった場合に、在日米軍が基地に地雷を保有できるかということにつきましては、最終的にはこの条約の締約国間で解釈というものを確定する必要がありますけれども、今のところ私どもの見方としましては、そこに保有するということは条約上認められると考えております。
  104. 高野博師

    ○高野博師君 認められるんですか。
  105. 阿部信泰

    政府委員(阿部信泰君) はい。  次に、使用ができるかということにつきましては、この条約の詳細な解釈、適用というものはこれからNATO諸国の考えなどを踏まえまして検討していく必要がありまして、今のところはこれはさらに検討を要すると考えております。
  106. 高野博師

    ○高野博師君 日本政府としては、日本国内での使用を断る方向でしょうか。
  107. 阿部信泰

    政府委員(阿部信泰君) 外国軍が駐留を認められております場合に、駐留している国で地雷を使用できるかどうかという問題は条約の規定上は必ずしも明確ではございませんで、その規定解釈については、これから条約に入ります主要国との意見交換などを踏まえまして検討していく必要があると思います。
  108. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、対人地雷の代替兵器というものを開発する意向があるんでしょうか。  防衛庁に伺います。
  109. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 対人地雷につきましては、現在日本の防衛上、重要な意義を有しているわけでございます。  今回、この対人地雷全面禁止条約に加盟するということになりますと、この防衛上の観点からそこのところをどういうふうにしていくかということが問題になってまいります。そのために、私どもとしてはこの代替手段の検討、開発ということを急いでいるところでございます。
  110. 高野博師

    ○高野博師君 急いでいるというのは問題があると思います。  今年度予算は、対人地雷として七億円ついているわけですが、この七億円で指向性散弾地雷を購入するというような情報がありますが、これは事実でしょうか。
  111. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) 九年度予算につきましては、約七億円の対人地雷の購入経費が計上されているわけでございますが、これの扱いにつきましては、まさに今回の条約加盟の問題とあわせまして現在検討中ということでございます。
  112. 高野博師

    ○高野博師君 この指向性散弾地雷というのは、遠隔操作をすればこの禁止条約で言っている地雷には当たらない、条約上の地雷には当たらないと、こういうことなんですが、この辺の事実関係はどうでしょうか。これは日本で生産されているんでしょうか。それとも、買うとすれば輸入するものでしょうか。
  113. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) この指向性散弾地雷でございますけれども、これはわな線機能を有しているわけでございます。この対人地雷に該当しないものと、こう考えますと、結局それは自動的に作動しないようなものか、あるいは自動的に作動しても殺傷しないような形で行動を制約するようなものかというようなことになろうかと思います。今申しましたように、指向性散弾地雷というのはわな線機能を有しておりますけれども、これを外した、このわな線機能を有しないで要員が目標を目視して作動するようなもの、これは地雷ではない、こういうふうに思います。  それから、製作と申しましょうか生産でございますけれども、これは国内において行っていくということでございます。
  114. 高野博師

    ○高野博師君 これまで、どのぐらい生産されているんでしょうか。
  115. 佐藤謙

    政府委員佐藤謙君) これまでも装備の量等につきましては、特に継戦能力にかかわるようなものについては、この量について申し上げることは差し控えさせていただいている、こういうことでございます。
  116. 高野博師

    ○高野博師君 これはもう大変重大な問題だと思うんですが、まずこういう地雷をつくっているという事実がある。それと、この対人地雷禁止条約に参加というか署名するというのは人道観点から踏み切ったわけです。防衛上の問題はいろいろある、それにもかかわらず人道上の観点から締結をするということを決定したわけだと思うんですが、まさに人道的な観点から言うのであれば、それにかわるものをすぐ買うとか、あるいはほかの代替兵器を開発するという方向に行くのはやはり問題があるのではないかと思うんですが、この点について大臣のお考えをお伺いいたします。
  117. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 現時点で実用可能な対人地雷の代替手段は、世界的に見てもまだ一般的に実用化していないのが実情であると承知をいたしております。  我が国におきましても、対人地雷の機能を代替し、かつ一般市民に危害を与えるおそれのない手段の導入が必要という観点から、現在対人地雷の代替手段の検討を行うべきものと考えておりまして、防衛庁においてこのような観点から鋭意検討が行われておると承知をいたしております。  ただいま委員から御指摘がございました、代替手段となるべきものがいわゆる対人地雷を禁止しようという趣旨によりましてこれが禁止されるべきものであるかどうか。そうでなくて、純防衛的な観点から、その機能を持ちながら禁止をしなければならないもともとの理由に合致するものかどうか、こういう点については今後検討しながら、開発についても検討していかなきゃならぬ、こう思っております。
  118. 高野博師

    ○高野博師君 この対人地雷にかわる代替兵器を開発しようとしている、あるいはそういう動きのある国はヨーロッパにあるんでしょうか。
  119. 阿部信泰

    政府委員(阿部信泰君) 私ども、この条約の署名の準備の段階でヨーロッパ各国意見交換しておりますが、何カ国か代替手段を開発している国があると承知しております。
  120. 高野博師

    ○高野博師君 ヨーロッパの場合は、まさに防衛上の問題がいろいろあるけれども、この禁止条約に踏み切ったという国が多いわけですが、やはり日本も将来的に見れば兵器のない世界というか戦争のない世界を目指すという理念を持っているのであれば、持っていなければ問題ですが、持っているのであれば、やっぱり第一歩としてこの禁止条約に踏み切ったわけですから、この代替兵器開発はぜひやめていただきたい、そういうことを申し上げたいと思いますが、大臣、何かコメントございますか。
  121. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御指摘のように、戦争のない平和な世界実現、これは理想でございまして、そこに進んでいかなければなりませんし、また今回のこの地雷の禁止そのものも、ある意味ではその第一歩たり得れば大変幸いだと思っておりますが、現実にはなかなかこの世界の状況から考えまして難しい段階でありまして、防衛庁においても先ほど申し上げましたような観点から検討を進めております。  いずれにいたしましても、この対人地雷は、人道立場においてまず第一歩としてその禁止に進んでいくという姿勢からスタートしなければならない、このように考えております。
  122. 高野博師

    ○高野博師君 それでは、ガイドラインについてお伺いいたします。  周辺事態という問題についてはもう今まで何回となく議論されてきたんですが、私はちょっと自分として疑問に思っている点も含めてお伺いいたします。  周辺事態の周辺とは地理的概念ではないということは何度も言われているとおりなんですが、地理的概念でなければ周辺という言葉のかわりに緊急事態とかあるいは急迫事態とか別の表現をした方がよいのではないかとも言えると思うんです。  しかし、ガイドラインの性格からして、また目的からして、まさに周辺という言葉に意味があるんだと思うんですが、この周辺という言葉を取ってしまったならばガイドラインの本来の意義というのは半減してしまうのではないかなと私はそう思うんですが、この点についてどう思われますか。簡単に答えてください。
  123. 田中均

    政府委員(田中均君) 御指摘にありました周辺事態と申しますのは、日米安全保障条約全般の観点から防衛協力のガイドラインというのはつくられているわけございますが、その中でまさに備えをつくるという観点から考えておりますわけで、周辺事態というのは地理的に特定の地域を一線を画してやるということではなくて、まさにそこにある事態、そういう事態の性格に応じた概念であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  124. 高野博師

    ○高野博師君 ちょっと理解できません。  周辺という言葉を取ったときにガイドラインの意味がなくなるんではないか、半減するのではないかと私言っているんですが、イエスかノーかで答えてください。
  125. 田中均

    政府委員(田中均君) 周辺と申しますのはまさに日本の周辺ということであって、そこで起こる事態というのが日本の平和と安全に重大な影響を及ぼし得る、そういう概念として使っております。
  126. 高野博師

    ○高野博師君 ということは、まさにそれは地理的概念そのものじゃないでしょうか。
  127. 田中均

    政府委員(田中均君) 地理的概念でないというのは、具体的にここからここまではその地域であるというような形で一線を画することはできないということを申し上げているわけでございまして、今ここで申し上げているのは、まさに日本の平和と安全に重大な影響を与えるそういう事態、そういう事態に関する防衛協力のガイドラインということでございます。
  128. 高野博師

    ○高野博師君 どうも言っていることに僕は矛盾があると思います。  それでは次の質問に移りますが、この新ガイドラインとの関係で中国側は台湾を範囲に入れるならば当然受け入れられないと、かなり強硬な姿勢をとっているわけです。しかし、台湾問題と台湾海峡の問題というのは別問題じゃないかと思うんですが、そもそも海峡の定義とは何でしょうか。
  129. 田中均

    政府委員(田中均君) 国際法上、海峡ということについて具体的な定義があるわけではございません。
  130. 高野博師

    ○高野博師君 台湾海峡には公海というものはありませんか。
  131. 田中均

    政府委員(田中均君) もちろん海峡というか、その幅から言いまして公海部分も含むものだと思っております。
  132. 高野博師

    ○高野博師君 思っているなら、事実として公海があるわけですね。  そうすると、公海では一般にだれでも無害通航権というのがあるわけです。その海峡で他国に危害が及ぶようなそういう行動がとられれば、これはアメリカだけじゃなくて日本も相当懸念を抱かざるを得ない、こう思うんです。そうすると、中国側が台湾と台湾海峡をどうも混同して使っているような、あるいは意図的に使っているのか、その辺でこれは別問題だという認識をしてよろしいでしょうか、あるいはそう政府はとっておりますか。
  133. 田中均

    政府委員(田中均君) ガイドラインとの関係で申し上げますと、まさに繰り返し御説明を申し上げておりますように、あらかじめ具体的な線引きをして、それが周辺地域だということではございません。ですから、その事態の性格、どういう事態が起こるかということに着目した概念であると思います。
  134. 高野博師

    ○高野博師君 僕は周辺事態を聞いているんではありません。台湾問題と台湾海峡問題は別だろうと、そこは明確に区別できるんではないかと聞いているわけです。その点、どうでしょうか。
  135. 田中均

    政府委員(田中均君) 私、中国が台湾問題と台湾海峡の問題というのを峻別して使っているというふうには承知をしておりません。
  136. 高野博師

    ○高野博師君 していないんですか。それはすべきじゃないかと言うべきじゃないでしょうか、いかがでしょうか。
  137. 田中均

    政府委員(田中均君) 私どもの中国・台湾問題に対する立場というのは累次明らかにしているとおりでございまして、まさに両岸の当事者間で平和的に解決をされるべき問題だというふうに考えております。
  138. 高野博師

    ○高野博師君 全然答えになっておりません。僕の聞いていることに答えてください。
  139. 田中均

    政府委員(田中均君) 先生の御指摘趣旨は、中国側に対して台湾問題と台湾海峡問題は違うではないかと、こういうことを指摘すべきだということですか。
  140. 高野博師

    ○高野博師君 その前に、日本側がきちんと認識しているかどうかということを確認した上でそこを確認いたしたいと思いますが。
  141. 田中均

    政府委員(田中均君) 私どもの認識といたしまして、台湾における問題あるいは台湾海峡に起こる問題、そういう問題がいろんな意味で平和ということに対して大きな意味合いを持つという観点から考えているということです。
  142. 高野博師

    ○高野博師君 これはまた別な機会に取り上げたいと思います。  それでは、温暖化防止京都会議について伺います。  この会議に対する政府外交上の方針あるいは戦略とは何でしょうか。何をもってこの会議外交上の成果と言えるんでしょうか。
  143. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 京都会議におきましては、意味があり現実的で公平な法的文書が採用されるよう議長国として国際的なリーダーシップの発揮に努めることが必要であると認識いたしております。このため、京都会議におきましては非公式協議、二国間協議等のさまざまなチャンネルを通じまして、国際的なリーダーシップを発揮し、現時点で意見の異なる各国立場を収れんさせ、地球温暖化防止に向けた第一歩が踏み出せるように、その合意を得る努力をいたしてまいりたいと思っております。
  144. 高野博師

    ○高野博師君 そこで、意味のある合意、中身のある合意が得られるようにということですが、これは非常に重要なことだと思うんですが、我が方の提案の五%削減目標等について、これで会議をリードできるとお思いでしょうか。
  145. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 温暖化の問題に関しましては、各国それぞれ異なる経済事情あるいは社会事情にあると思います。そして、そのことを反映して各国それぞれ異なる主張をしていることは委員も御承知のとおりでございます。  そこで、まさにそういう事情を踏まえまして提案しましたのが基準削減率としての五%という先般の提案でございまして、この提案は多くの国の異なる事情を勘案すべきものであることと、同時に議長国として多くの国が交渉のベースになり得るような提案を行おう、そういうようなこと考慮して提案したものでございまして、五%を基準削減率として、その上でGDP当たりの排出量、一人当たりの排出量、人口増加率といった指標を使いまして、附属書I国と呼んでおりますが、先進国とロシア等について数量目標を決定しよう、こういう内容提案でございます。  そこで、いよいよ来週からこの京都会議が開かれるわけでございまして、現在のところ各国、例えば米国とEUあるいはその他の先進国、あるいは先進国と発展途上国、あるいは発展途上国の中でも立場の相違がございます。そういうふうにいろいろ意見が分かれている状況でございまして予断を許さない状況ではございますけれども、こうしたいろいろな国の立場を勘案したつもりでございますので、日本提案に基づいて温暖化防止のために意味があり現実的で公平な結果、法的文書が採択されるよう最大限の努力をしてまいるつもりでございます。
  146. 高野博師

    ○高野博師君 二十五日のAPECの会議の中で、二十一世紀に向けた環境開発支援構想、いわゆる京都イニシアチブというのを日本側で橋本さんの方から発表されたんですが、これは非常に私は評価できると思うんですが、温室効果ガスの削減、抑制に途上国をどうやって巻き込むかという点が一つのポイントになるんだと思うんです。  その点ではこれは非常に効果があるかなと思っておりますが、日本側は通産省、環境庁を含めてどうも足並みが乱れているということが言われておりまして、日本の態度、姿勢というのがなかなか見えてこないということが指摘できるんだと思うんです。人類の生存権を将来的に脅かすような、そういう大事な問題であるし、この温暖化の問題は我々自身が、一人一人が被害者であると同時に加害者でもあるという現実があるわけです。この大事な会議をぜひ成功に導くように、先ほど大臣が言われたように大きなリーダーシップを発揮して成功させていただきたいと思います。  時間がないので、幾つか断片的になりますがお伺いいたします。  橋本総理の先般のロシア訪問の中で、一つの合意として、東京宣言に基づいて二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことに合意したということで、これはもう歴史的な和解を見せる重要な会談だった、画期的だとこう評されているんです。  問題は幾つかあると思うんですが、東京宣言というのは四島の帰属を決めるとしているだけで返還を明記しているわけではない。また、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう努力すると言っているだけで締結するとは言っていない。ロシア国内でも平和条約と領土返還は無関係だというような声もかなり出始めている。あるいはエリツィン大統領自身が会談の最大の成果は経済協力の合意だと、こういうことを言われているんですが、まさにこれからこの領土問題というのは日本の対ロシア外交の真価というか、それが問われる問題かなと思うんですが、大臣のコメントを簡単にお伺いいたします。
  147. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今委員指摘のように、クラスノヤルスクでの橋本・エリツィン会談につきまして御言及がございましたが、東京宣言は御指摘のとおりでございます。しかし、平和条約を二〇〇〇年までに東京宣言というものを基礎にしてやるということは、当然領土問題についての決着も図るという前提でこれから対処していきたいと思っております。  ただ、御指摘のように過去数回にわたって盛り上がりはありましたけれども、結論を得ないままに今日に至っておるわけでございますので、これからこの首脳会談をもとにいたしまして外相会談も頻繁に行い、かつ来年四月のエリツィン大統領の訪日、こういう機会に大きな前進が図れるように努力をいたしていきたい、こう思っております。
  148. 高野博師

    ○高野博師君 日本の対ユーラシア外交とか対中央アジア外交についてもお伺いしたがったんですが、時間がないので一つだけ。  日米中ロの四極時代ということが盛んに言われているんですが、最近この四カ国の首脳会談が活発に行われている、非常にダイナミックな動きがある。各国それぞれの外交方針があって戦略があって思惑があると思うんですが、基本的には、中国とロシアというのは米国による一極支配に反発するというか、これを牽制したいという意図があって多極化を志向している、こう言えると思うんです。しかし、一方でまた、経済的にこの四カ国の相互依存関係が非常に強まっている、貿易・投資問題あるいは技術協力等で関係が強まっている。  私が注目しているのは、日本を除く三カ国の間には戦略的パートナーシップという言葉がよく使われているんですが、この三カ国の中には日本を四極のうちの一極と認めたくないような国もあるのかなという感じがいたします。いずれにしても、この米中ロの三大国がいろんなパワーゲームをこれから繰り広げるだろう、そう思うんですが、このパワーゲームの中で日本が翻弄されないためには、きちんとした方針、戦略、姿勢が必要ではないかと思うんですが、大臣の所見をお伺いいたします。
  149. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御指摘のように、日中米ロ四極時代と言われるような形になってきております。今お話しのように、パートナーシップという言葉が使われておるか否かは別にいたしましても、日本といたしましては他の三国と緊密な連携をとりながら対応していかなきゃならぬと思っております。  いずれにいたしましても、日本を除く三国というのは軍事的にも大きな力を持っております。我が国はそうした力を用いずして世界の平和を念願しておるということでございますので、そういった意味では他の三国とはまた立場も異なるかもしれません。いずれにしても、この四カ国が緊密な連携をとっていくということが世界の平和につながるという考え方のもとに、それぞれの国々と十分適切に対応していきたい、このように思っております。
  150. 高野博師

    ○高野博師君 もう終わりますが、今この三大国の中での軍事衝突だけは絶対に避けるというような平和志向の外交日本に求められているのではないかと思うんです。先ほど質問しましたガイドラインとかあるいは日米安保条約とか日米同盟、これに頼るということは非常に危険があるのではないか。そういう意味では、こういう同盟関係あるいは条約を発動しなくても済むようなそういう国際環境づくりに努力すべきではないかと思うんですが、まさにそこで予防外交とか信頼醸成とかが必要になると思うんです。  大臣に一番最初にお伺いいたしましたように、外交理念という中で、今まで橋本総理は何度も創造的外交とかあるいは自立的外交と、こういうことを言っていたんですが、大臣の言葉からはそれは聞こえなかったんですが、まさに創造的、自立的外交、その真価が問われるのではないかなと私は思っております。  きょうはこれで終わります。
  151. 松前達郎

    ○松前達郎君 きょうは、日ロ関係、あるいは日ソ関係と言ってもいいでしょうけれども、これを中心に幾つかの質問をさせていただきたい、こう思います。  これは小渕大臣御存じかどうか知りませんが、かつて日ソ協議会というのが開催されたことがあるんです。これは三回ぐらいだったと思うんですが、この協議会の中身といいますと、日ソの今後の課題、平和条約も含めて、そういったような問題が自由討議の形で討議をされたわけであります。日本から参加した方は、今の橋本総理、当時は自民党幹事長代理だったと思うんですが、それと大木浩議員、それに私ということで、議員も何人かこれに参加をしてまいりました。  この中で一番やはり食い違いが多かったといいますか、議論になったのが北方領土の問題だったわけです。その領土の問題としての考え方の中に、共同管理という考え方もありましたし、それから潜在的主権をお互いに認め合おうという問題もありました。あるいは返還という言葉を使わないで国境線の画定という言葉で返還にかわるものとして考えたらどうか、こういうことも言われたわけなんです。国境線の画定といいますと、まさに中国とロシアの今回の会談でもそういう表現がどうも使われているようであります。そういったことが何回も討議をされたんですが、どうもそれは進展が見られなかったわけです。もちろん国家間交渉というのもほとんど行われていなかったわけです。  そういう中で、これは日ソ共同宣言というのが一九五六年でしたか行われておりますが、そのときは二島返還論だったわけです。この二島返還でしばらく来たのに、それが国後、択捉を含む四島返還に切りかわってきた。国後、択捉をもし含まないような日ソ共同宣言であるならば、アメリカは沖縄を返還しない、こういう圧力がアメリカ側からもかかったということも聞いていますが、これは私、事実かどうか知りません。そのうち四島一括返還というものが俎上に上ってきたんですが、ロシア側としては当然、国後、択捉に関しては、アメリカ軍が沖縄から撤退しない以上だめであるというふうなことも主張したように私は記憶しております。それは今までのいきさつです。  しかし今回、東京宣言もありましたし、また先ほどお話がありましたクラスノヤルスクの橋本・エリツィン会談も行われたわけであります。そうなりますと、二〇〇〇年までということが目標に一応掲げられておりますけれども、この二〇〇〇年という期限を考えてみますと、一番重要なのは一九九八年だと思うんですね、来年。一九九九年というのは、恐らくエリツィンの方も、これは立候補するかどうか知りませんが、選挙になってくる。そうすると、やはりいろいろと国民感情も考えなきゃいかぬ、いろいろ出てきますから。なるべく一九九八年中に問題をさらに進展させなければいけない、こういう事態になるんじゃないか、こういうふうに思っておるわけであります。  そしてまた同時に、エリツィンは訪日も考えていますし、小渕さんもロシアへ行かれると思います。そのほか、チェルノムイルジンが来るとか、あるいはプリマコフはもう何回も来ていますが、そういう要人の交流が非常にこれから頻繁になってくると思うんです。  ただ、一筋縄ではいかないものですから、やはりその辺は、幅広いしかも粘り強い交渉というのも必要だと思いますから、これから先の両国間の交渉、これが一体どういうふうに展開するであろうか、これはもう予測ですからそのとおりにならないかもしれませんが、内容は結構ですから、プログラムがもし立てられているようでしたらそれを教えていただきたいと思います。
  152. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 長い間、日ソ時代からこの両国の関係に御苦労いただきました松前先生でございまして、先ほどの経過もお話しのとおりでございます。  何回か山場があったんだろうと思いますけれども、橋本総理も私自身も、今回のチャンスを逃してはいかぬというような決意のもとで対応をしていきたいというふうに思っております。クラスノヤルスク以降、プリマコフ外務大臣も、あの会談には同席をされておりませんでしたが、先般参られまして、十分大統領の意を受けてこれから積極的に対応するという意思を申し上げられておりました。  私自身も、今までこの領土問題をめぐりましての事務レベルの委員会がございましたけれども、格上げといってはなんですが、外務大臣同士が責任を持ってやろうじゃないかということで一致をいたしました。そのスキームをどう考えたらいいかということで、一月にモスクワに事務担当の者に行ってもらいまして、相手方はぜひ二月に外務大臣の訪ロを期待すると言っておられました。国会のお許しをいただければ、ぜひその段階で参りまして、四月のエリツィン大統領のいわゆる非公式、ネクタイなしの訪問ではございますけれども、極めて重要な時点だという認識のもとに積極的に取り組んでまいりたい、そういうスケジュールで考えていきたいと思います。  先ほど二〇〇〇年までというお話がございまして、これは橋本総理も申し上げておりますように、何とか今世紀で起こったことですから今世紀中に解決を見たいという強い意思でございます。また、エリツィン大統領自身も任期中の時点で一たん参られる、こういうことでございますので、ここ一両年、非常に重要な時期と心得て対処していきたいと思っております。
  153. 松前達郎

    ○松前達郎君 これから大変な時代といいますか非常に頻繁な往来が考えられるわけですから、これをうまく前進の方向に導いていっていただければと思うんです。  先ほどもちょっと出ましたけれども、ちょっと気にかかるのは、いわゆる返還ということと解決ということはどうも内容が違っているような、これは都合よく解釈すれば、解決というのは返還であるというふうに解釈してもいいんですが、恐らくロシア側はそう考えていないんじゃないかと。ですから、平和条約が締結される時点ですべて国境線が画定されるというふうには恐らく考えていないと思うんです。先送りしてくるんじゃないかと思うんです。中ロ会談でも一部の島についてはそういう扱いになっているわけです。ですから、その辺十分気をつけてやっていかなきゃならないんじゃないか、こういうふうに思います。  しかし、いずれにしても、新しい進展が見られているということは事実ですから、今おっしゃったように一年間がどうもリミットだと思いますけれども、その一年間大いに精力的にひとつ進展を図って努力をしていただければ大変ありがたい、こう思います。  それからもう一つは、経済交流。これも恐らくロシア側はこの経済交流というのを一番最初に挙げてくるんだろうと思うんです。日ロの経済交流はいわゆる極東、シベリアと言ってもいいでしょう、この資源開発。これもロシア側はどのぐらい資源があるか自分でもわからないと言っているぐらいですから、これからここにどういうふうにこの資源を開発するかという問題も含めて協力体制ができるんじゃないか、こういうふうに思うわけであります。  そうなってくると、やはり何らかの担保が必要なんですね。日本側がロシア側に協力をするにしても、例えばお金を投入していく場合、その協力の裏づけというもの、投資保護協定といいますかね、そういうふうなものがあった方がやりやすいのではないか、こういうふうに思うわけです。そういったようなものも含めて総合的な経済協力体制というものを考えなければいけないだろう。これについて大臣、お考えがございましたらお聞かせいただきたいと思います。
  154. 加藤良三

    政府委員加藤良三君) ただいま委員指摘の点もございまして、それでありますがゆえに、先般来お話が出ております橋本総理とエリツィン大統領との間で合意された橋本・エリツィン・プランというものは、三つの分野と六つの柱というものから成り立っておりまして、六つの柱の中の例えば第一番目に投資協力イニシアチブという項目が明記されておるわけでございます。そういうことを踏まえまして、今後とも日ロの経済関係というものを両国関係全般の発展にとって重要であるという視点から推進してまいりたいと思います。
  155. 松前達郎

    ○松前達郎君 そういったような総合的な交渉というものがどうしても必要だろう、こう思います。  実は、私もことしに入ってからモスコーに参りましたし、そのときにロシア外務省の、これは御存じだと思います、サップリンというのがいるんですが、以前日本におりました。この彼は第二局というんですかね、とにかくアジア担当なんですが、彼がやってまいりまして、橋本・エリツィン会談を一体どこでやるべきかという問題が今起こっていると。私は個人的にはなるべく極東でやってくれ、できればウラジオストクでやったらどうかというのを提案したんですが、どうもそれはだめで、やはり中央部にあるクラスノヤルスク、これは工業都市ですけれども、そこで行うことになった。  極東のウラジオでやるとなると非常に北方領土に近いわけですね。沿海州の知事あたりが黙っていないぞなんということも言っておりましたから、大分ロシアも事情があるんですね。そういうことも十分頭に置きながらやる必要があるんじゃないかと思っているんですが、しかし一歩前進になるように御努力いただきたい、こう思います。  ロシア関係については、これ以上余り申し上げても戦略的にうまくないと思いますのでこのぐらいにさせていただきます。  もう一つは、先ほどもちょっと触れられた方がおられますが、ガイドラインの問題なんです。  私は、新しく策定されたガイドライン、これが日本あるいはアジアの平和を推進するとは考えていません。これは安全の問題であって平和の推進には余り役に立たないだろう、こういうふうに思っています。私の言っている平和というのはちょっと戦略的な意味と違う平和です。  しかし、その平和というのはやはり各国の相互理解と協力がどうしても基本になければいけないわけであります。とりわけ極東、東アジア、この平和に関しては日本ですとかロシアですとかあるいは韓国、中国、こういった国々の間での協力体制がどうしても必要であろう、こういうふうに考えております。先ほどのお話にありました中国もまだ十分これをのみ込んでいないわけです。台湾と中国の問題があります。  そういうことでまだすっきりしないところはあると思いますが、これらについて、外務大臣として今後どういうふうな努力をされようとしていますか。それについてお伺いできたらと思います。
  156. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ガイドラインをめぐりましては、近隣諸国の懸念を払拭するように最大の努力をいたし、機会あるたびにそれぞれの国の担当者の皆さんに御説明申し上げ、具体的には、中国におきましては橋本総理御自身が訪中のときに申されました。私自身も、中国の外務大臣にもよくお話を申し上げております。  この安全保障の問題についてはそうした条約上の事柄もございますが、実態的にそれぞれの国々との軍事、防衛関係者同士のハイレベルの交流というのが非常に深まってきておるわけで、委員承知のように、ロシアも先般、軍艦が我が国を訪れたというようなこともありますし、また中国側からも副総参謀長の訪日も決定しておるようでございます。そういった意味で、日ロ間におきましても、防衛庁長官が既に訪ロをし、今度ロシアの方からも参る、こういうようなことを通じまして、お互い軍事関係当事者同士の話し合いが非常に深まってくるというようなことも全体の安全保障のためにも極めて有効なことではないかというふうに考えて、これを促進してまいりたいと思っております。
  157. 松前達郎

    ○松前達郎君 今のような国々との条約とか協定とか、そういうものまでは行かないと思いますけれども、相互に理解するという意味でディスクローズするというのは非常にいいことだと思うのでこれは大いに続けていただいて、お互いに懸念を持たないようなそういう状態をつくり上げていくというのも一つの方法である、こういうふうに考えておるわけでまさに同感なんです。  そういったような中で、やはり今後の日本外交というのがアメリカ一辺倒、一辺倒という言葉がいいかどうか知りません、アメリカの御機嫌を伺いながらやるのではなくて、自主的な考え方における外交が展開されて、堂々とやっていいと思うんです。そういう意味で、私は小渕外務大臣に大変期待をしているところであります。  さて、時間が余りないのでもう一つ、これはロシアではありません。日本とブルガリアの関係なんです。  日本とブルガリアの関係というのは、比較的友好国としては歴史的な友好状態が続いているわけです。お互いに尊敬し合っていると言ったらいいと思います。しかし、ブルガリアそのものは昔サテライトでしたから共産党が主導する政治体制だったんですが、今はもう民主化の道を歩いている。そういう状況でありますけれども、どうも経済がヨーロツパの中でアルバニアより悪いんですね。恐らく最低じゃないか、こういうふうに言われているんです。経済的に非常に停滞もしています、悪化もしている。そういう状況なので若い大統領を選んで新しく立て直そうじゃないか、こういうことで新しい大統領が選出されたと私は聞いているわけです。ストヤノフという大統領で、お会いになったかどうか知りませんが、この前国賓で日本に来られたわけであります。  このブルガリアに対する協力、これは累積債務が多いからさらに協力しろというのも言いにくいんですけれども、ブルガリアヘの協力について今後どういうふうな展開をされようとしているのか、それを最後にお伺いしたいと思います。
  158. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ブルガリアは現在真剣に経済改革も行っておると思っております。  御指摘のありましたように、若干前大統領時代混乱をしておりまして、今お話しのストヤノフ大統領が真剣に経済改革を行っておる。そして、経済再建、国づくりのみならず、バルカン地域の平和と安定、ひいては欧州全体の平和と安定のためにも重要であると我々も考えております。  我が政府としては、ブルガリアに対してODAを含むさまざまな経済協力を実施いたしてまいりましたけれども、先般、国賓として大統領が参られました機会に、その要望にこたえまして、橋本総理は新規の円借款案件のプレッジを行うなど各種の支援措置を発表いたしました。また、私とミハイロバ外相との間でも文化無償の交換公文等に署名いたしました。  いずれにしても、ブルガリアの具体的な需要の把握に努め、効率的、効果的な援助を行ってまいりたいと思っておりますし、さらに支援の要請等も承っておりますので、これから検討いたしまして最大限協力を申し上げていきたい、こう思っております。
  159. 松前達郎

    ○松前達郎君 終わります。
  160. 田英夫

    ○田英夫君 最初に、私は核兵器の問題について意見を述べながらお尋ねをしたいと思います。  先日、国連の第一委員会で二つの核廃絶についての決議案が採択されております。一つは、マレーシアが提案をいたしました、名前をつけるとすれば、いわば時限的核廃絶決議案とでも言うのでしょうか、正式の名前を私は承知しませんが。もう一つは、日本政府提案の究極的核廃絶決議案。  両方とも結果は採択されたようでありますが、マレーシアの提案は、賛成百三、反対二十六、棄権二十四という結果と聞いております。その棄権の中に日本が入っている。日本は時限的核廃絶決議には意思を表示しなかった。これは一体なぜなのかという声が核廃絶を求めておられる国民の皆さん、広島、長崎の皆さん、そういう中から強く起こってきていることを私も承知しております。  時限的と私が実は名前をつけたのは、CTBTのときにインドが示しました考え方と基本は同じだと思うんですけれども、要するに期限を切って核保有国はその期限までに核を廃絶しろ、こういうことだと思いますが、一方、日本の方の提案は、核兵器を究極的にはなくしていこうじゃないかと、いわば呼びかけのような、比較的緩いといいましょうか、そういう決議案と私は理解しております。  まず最初に、この二つの決議案の、今私が申し上げましたような意味を含めて特徴をお答えいただければと思います。
  161. 阿部信泰

    政府委員(阿部信泰君) ただいま委員から質問のありましたマレーシア提案の決議ですが、これは正式な名前は核兵器の脅威または使用の違法性に関する国際司法裁判所の勧告的意見という表題の決議案でありまして、その第一パラグラフにおきまして、国際司法裁判所の全員一致の意見で、核兵器国が核軍縮に向けて交渉を誠実に継続して交渉を妥結する義務があるということを確認しております。この点は我が国も賛成するものでありまして、この段落については支持いたしました。  しかしながら、前文と第二パラグラフにおきまして、この決議案は先生がおっしゃいましたように時間的枠組みを設けて核廃絶の交渉を開始する、それを九八年、来年から開始するということを要請しております。  現在、核兵器廃絶に向けまして世界の中で二つの大きな動きがございまして、一つは、既に核を持っている国にまず核兵器を減らせという、それは究極的には廃絶ですけれども、それに向かえということと、もう一つは、持っていない国に核兵器が広がる危険を防ごうと、この二つがあるわけでございます。  このマレーシアの決議の方は核兵器国に対して時間を限ってそれをまず進めろということを求めておりますが、残念ながら、第二番目の今持っていない国に核兵器が広まるということを抑制するために現在提案されておりますのは、核兵器用の核分裂物質の生産を停止するというカットオフ条約、これが今、次の目標と言われているわけでありますが、これについては残念ながら一切触れていないわけでございます。  したがいまして、これでは残念ながら今目標とするところの核軍縮になかなか向かえないということで、日本としましては全体については残念ながら棄権ということをしたわけでございます。
  162. 田英夫

    ○田英夫君 今、阿部さんは二つお挙げになった。それは確かに二つの意見があって、一方は核保有国を主として対象とする、一方は広がらないようにする。これは確かに以前からずっとありますね、核拡散防止条約というようなことも既に実現をしている。こういう二つの流れがあると同時に、今核をなくそうということでは一致しながらももう一つ別の二つの流れがあると私は思っているんです。  つまり、CTBTのときのインドの態度に象徴されるような期限を切って、そのときまでにすべての核兵器をなくそうじゃないかという考え方、これは主として非同盟諸国とかそういうところを中心にして、発展途上国の中にもこれに賛成する国がある、こういうことではないかと思います。  もう一つは、日本の今度の提案に象徴されるような、時間を切るというようなことは現実的に難しいから核兵器をなくそうじゃないかという声を常に言い続けるというような、そういう態度、本当に核兵器をなくそうと考えている市民とか運動家あるいは国、そういうところでは一致してやはり期限を切ってなくそう、こういう方向に進みつつあります。  私は、核廃絶に対して国を挙げて世界で一番熱心なのはニュージーランドだと思っておりますし、現地へ何度かそのことを見に行っております。しかし、そういうニュージーランドを先頭にして、一方でそういう動きがある、非同盟も一致している。そういう中で日本が、しかも広島、長崎の体験を持ちながら非常に緩い呼びかけのような感じの決議案を出しているということに対する不満が非常に強くある。私のところにも実はいろいろな方から寄せられております。  それで、きょうあえてこの問題を取り上げたんですけれども、今の御説明では私はなかなか納得できませんし、そういう気持ちを持っている方々を納得させることは難しいと思います。地雷禁止で示された小渕外務大臣に、最後にこの問題についてのお気持ちを聞いておきたいと思います。
  163. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、田委員からお話し核廃絶をめぐりましてのいろいろ考え方各国との話をお伺いいたしました。  申すまでもありませんが、我が国は世界でただ一つの被爆国でございますので、究極的にどうしてもその理想を達成しなければならないということで、これから最善の努力をしていかなければなりません。今回のマレーシアの提案の決議につきましては、先ほど事務当局から御答弁をいたしましたような答弁を政府としてはいたしておる次第でございますけれども、今後ともこの問題については真剣に取り組んでまいりたい、このように考えております。
  164. 田英夫

    ○田英夫君 十二月には国連総会でこの問題の採択があると聞いておりますので、ぜひひとつ日本政府としていい方向対応していただきたいということをお願いしておきたいと思います。  次に、時間がありませんので、先日、私は与党代表団の一員で北朝鮮へ行ってまいりました。そのときに一度ならず、政治会談を正味三日間やりましたけれども、その中でしばしば批判の言葉として出てきたのが日米防衛協力のための指針、ガイドラインの問題、そしてそれに伴ってと彼らは言っておりましたが、十一月の初めに日本海で行われました海上自衛隊とアメリカ海軍との合同演習の問題、これは明らかに北朝鮮の人たちは自分たちを対象にしている軍事的な脅威を与えるものであるといって口をきわめて非常に厳しい言葉で非難をしておりました。  この演習の問題ですけれども、日本海における演習というのはどういう目的で、規模あるいは演習の項目、それから演習を行った海域、この点を防衛庁からお答えいただきたいと思います。
  165. 小林誠一

    説明員(小林誠一君) 先生が今お尋ねの平成九年度の海上自衛隊演習につきましては、防衛出動あるいは海上における警備行動等の際の海上自衛隊が実施いたします日本防衛のための海上諸作戦について演練することを目的として、十一月六日から十二日までの間実施したところでございます。  具体的には、自衛艦隊あるいは各地方隊の艦艇約百二十隻、航空機約百八十機が参加いたしまして、日本周辺海域におきまして対潜戦、防空戦、対水上戦等について演練を行ったところでございます。  なお、この海上自衛隊演習の一部におきましてお尋ねの日米共同訓練を実施しておりまして、米軍艦艇十一隻等と対潜訓練、防空戦訓練、対水上戦訓練を行ったところでございます。
  166. 田英夫

    ○田英夫君 ガイドラインの問題は、私も与党のガイドライン問題協議会のメンバーで数カ月間激しい議論を自民党、さきがけの皆さんとやってきましたので、内容はかなり承知しているつもりです。  私がその中でも強く主張したのは、こうした軍事的な問題を考える以前に、北朝鮮に限らないかもしれませんが、まず北朝鮮を中心に、紛争があり得るというそのところ、その国を対象にして平和を確立するための外交努力をまずやるべきではないか、これが先じゃないか。軍事的な問題を考え、アメリカに対する軍事的な協力を考える以前に、外交努力としてどういうことがあり得るかということを考え、それを実行に移すということが一番大事じゃないだろうかという主張をしました。  そして、北朝鮮というのは、客観的に見て、やはりそういう意味で対象にしなければならない。したがって、北朝鮮との間の国交正常化ということを積極的に進めることがまず第一じゃないかと思っているわけです。  ところが、その国交正常化交渉が進もうとしているやさきにこういう軍事演習があるということはいかがなものかと思わざるを得ないんです。今度は外務省立場外務大臣から、この演習の問題と日朝国交正常化交渉、あるいは四者会談も始まろうとしているわけですから、北朝鮮との関係を改善し平和を確立していくというそのことと、この演習の問題とを外交責任者としてどうお考えか、お答えいただきたいと思います。
  167. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 御指摘の日米共同訓練は、ただいま御説明いたしましたような範囲で行われたわけですが、これはあくまでも日米安保体制のもとで、双方の戦術技量の向上を図ることを目的として行われたことは説明のとおりだろうと思います。  しかし今、田委員指摘のように、北朝鮮側から見れば、それはいろいろ批判の発言もあったと言われることについてはそれなりに理解をいたします。それは我が国としては、やはり北朝鮮の現在の我が国との関係が不正常な関係にあることにかんがみて、かつまた、北朝鮮がいわゆる国際社会の中で他国との関係においてまだ開かれざる状況にあるがゆえに、特に我が国といたしましても極めて不透明な感じを持っておる。したがいまして、こうした誤解が生まれないためには、どうしても国交の正常化を図り、お互いの国の理解が深まるような関係を築くことが前提になってくるんじゃないか。  そういう意味でぜひ、その第一歩としては、近い将来といいますか、できればことし中にでも第九回の正常化交渉が始まることを期待し、その努力を今傾注しているところでございます。
  168. 田英夫

    ○田英夫君 時間がなくなってきましたから簡単に申し上げますが、大臣が今言われたことは、ある意味で私も全く同感なんです。  北朝鮮の今までの態度というのは国際社会に対して閉鎖的であるばかりでなく、残念ながら、こういう言葉を使っていいかどうかわかりませんけれども、ややかたくなだと言ってもいいような態度さえあったと思います。  私は、友人としてと言っては口幅ったいんですが、率直にそういうものは変えるべきだ、もっと門戸を開くべきだということを言い続けております。したがって、北朝鮮の指導者の中の一部の人は、私に対して非常に嫌なことを言うやつだと思っているようでもありますが、しかし、それは率直に言った方がいいと思っているんです。  そのくらいの気持ちで申し上げるんですが、国交正常化交渉をやり、日韓基本条約のこともありますからいろいろ配慮をしながら、最終的に日韓基本条約と同じようなものを結んでいくという段取りがいいのか、北朝鮮のそういう今までの態度が大分緩くなっていることも今度は感じましたが、同時に、いっそのことと言ってはおかしいんですが、北朝鮮を国家として承認するということを先にやってはいかがか、こういう気持ちを持っております。  このことは、外務省のOBで名前を申し上げればすぐ皆さんおわかりの人ですが、あえてきょうはお名前を申し上げませんけれども、全く私と同意見であります。ということは、国際法的にも、それから過去の例から見ても、そういうことは可能である。まず国家として承認する、その上でお互いに国交を結んでいく関係をどういうふうに復活していくかということを条約で定めていく、こういう段取りですが、この点について最後に大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  169. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) お考えとしては理解するつもりでありますけれども、やはり政府としては一つ一つ着実に歩を進めていくという観点に立ちますれば、先ほど申し上げたように、予備交渉の結果、正常化交渉が久々に開かれるわけですから、そうした正常化交渉を通じて最終的には両国間に新しい関係が生まれることが今の政府立場だろうと思います。
  170. 田英夫

    ○田英夫君 終わります。ありがとうございました。
  171. 立木洋

    ○立木洋君 ガイドラインの問題についてお尋ねしたいと思います。  周辺事態が発生して、国連として何もまだ決定されていない状態のもとで米軍が武力行使を決めたと。それに基づいて、結局ガイドラインに沿って、定められた内容について米軍の行動に協力するということを行わなければならなくなるわけですが、米軍の行っているそういう武力行使に対するさまざまな、これは一々言いませんが、後方地域支援というところにずらっと書いてあります。こういうことを行うというのは、米軍の行っている戦闘行為の重要な一部分をなすというふうにやっぱりみなされるんじゃないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
  172. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) ただいま御質問状況と申しますのは、いわゆる周辺事態の状況だろうと思います。それは、我が国の平和と安全に対して非常に重要な影響を及ぼすような事態が生じているというところがまず大前提だろうと思います。そこで、日米安保条約の目的に合致する行動といたしまして米軍が対応する、まだ安保理であるとか国連対応はされておらない、こういう状態だろうと思います。  そこで行われますアメリカの活動というのは、これは先生とは前提が違うかもしれませんけれども、アメリカの活動というのはいわゆる国連憲章に合致したものであり、そのことは日米安保条約の一条でも明記されております。
  173. 立木洋

    ○立木洋君 ここに書いてあることはいいんです。
  174. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) そういうことでございまして、私が申し上げたいと思いますのは、今御指摘の後方地域支援であるとかいろんな日本側の活動というものは、我が国の平和と安全に重要な影響が及ぶ、こういう事態において対応している米軍に対して、その内容及び態様におきまして武力の行使に至らない限度において支援をしている、こういうふうなことでございます。
  175. 立木洋

    ○立木洋君 米軍の行っている戦闘行動日本側が協力をしている、この協力をしているということは、アメリカと交戦状態にある相手国は日本のそういう協力をどういうふうに見るんでしょうか。
  176. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 御質問の点は、相手国といいますか当該の国が事実の問題として日本の活動、行動をどう見るか、どう評価するかということと、それから……
  177. 立木洋

    ○立木洋君 いや、私の質問を繰り返さなくて結構です。
  178. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) そういうことだろうと思いますけれども、それは事実の問題といたしまして、相手国が日本に対していろんな評価を行うということはあろうかと思います。それは、政策的にどういう態度をとるかということでございますけれども、これはいわば法律的な問題ではございませんで、事実問題としてはいろんな評価があり得よう、一概には申せないということでございます。
  179. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカの交戦国である相手国は、アメリカの戦争遂行能力を維持するために必要な協力をするということはアメリカの戦争行為を助けているわけですから、相手国にとってみればこれは敵性行為であるというふうに判断するのは当然だと思うんです。それが敵性行為であるかないかという判断をするのはアメリカでもなければ日本でもない、交戦国の相手国がそれを判断するということになるんじゃないかと思うんですが、その判断するのはどこがするんですか。
  180. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 今の御質問は、もう繰り返しませんですけれども、事実上の判断といいますか、事実上の評価をするというのは、もちろん相手国といいますが御指摘の当該国であろうと思います。
  181. 立木洋

    ○立木洋君 これは、一九六六年当時の椎名外相は、ベトナム戦争時に日本の基地が使われていることについて、一種の敵性を持ったものと認められ、攻撃脅威を受け得る、そういうことはあり得ると明確に述べられました。宮澤元総理は、読売新聞の去年の四月十九日の新聞の座談会でも、「有事の際、戦闘機が横田基地から出撃することを認めれば、逆に基地が攻撃を受ける可能性もあります。」ということを明確に言っているんです。  これはつまり、相手側の交戦国に対してその戦闘能力を高めるというふうな行為をすれば、それを相手側が敵性行為だと判断した場合にはこちらに対して攻撃することがあり得るということは、日本の元総理大臣、元外相自身もこれは明確に認めているわけですね。  ですから、ここで言えるのは、つまり一般的な国際法においては、いわゆる中立国の人物であっても、敵対行為に参加をし、あるいは交戦国の利益になる行為、つまり利敵行為であるということで敵性が認められたら敵国人と同じ扱いを受ける、そういうふうに明確にされているわけです。  そうなると、結局この問題については、相手側に、日本が米軍に対してガイドラインで協力をするということが敵性を持っているというふうに判断され、攻撃を受けるということがあり得るということは、小渕外務大臣、いかがでしょうか。ここのところは大切なんで、ちょっと大臣に御判断をいただきたいんですが。
  182. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 事実関係として、先に失礼いたします。  今、先生は宮澤元大臣発言を御引用なされましたけれども、かつて宮澤外務大臣は、次のようにも言っておられます。事実問題として、しかしそういうことがあり得るのではないかとおっしゃれば、それを私は否定いたすことはできないと思いますけれども、そのような行為はしかし法律上認められ得る行為であるかといえば、今の通念で申せばそのようないわゆる報復というような行為は法律上認められるものではない、こういう意味合いでございます。  すなわち、私が先ほどから強調しておりますのは、事実上の評価というので相手国がいろんな評価をすることはあろうと。しかし、それと相手国の対応、反応というのが法律上どういうものであるかという評価になるかということは全く別問題であるということでございます。
  183. 立木洋

    ○立木洋君 判断と行動との違いがあるということは、相手が攻撃をしかけてくる能力がないというふうに判断すれば、そういうふうな行動をとるということもあり得るでしょう。私は、アメリカの海軍省が作成した「指揮官のための海軍作戦法規便覧」というのをここへ持ってきました。アメリカでは海軍のいわゆる海戦法規は一九五五年までありました。それが何と一九八七年にこれが全面的に改訂されて増補されているんです。  ここにその文章の重要な部分を持ってきています。この内容を見てみますと、この第八章には、これは何のためにつくられたものかというと、これは国際法の現在の状況にかんがみて、海上での戦争法あるいは武力紛争法をアメリカの海軍として解釈し、指揮官向けに編集した教範であると、そういう目的でつくられた。その第八章に「合法的攻撃目標の諸原則」というのがあります。だから、米海軍が攻撃してよろしいという目標とは一体何かということがこの中に書いてあるんです。これは海軍攻撃目標法というところに明確に書いてある。  そこにはこう書いてあります。軍事目標とは、つまり攻撃する目標ですが、「軍事目標とは、その性質、位置、目的又は使途により敵国の戦争遂行能力又は継戦能力に効果的に貢献するものであって、しかもその全面的若しくは部分的破壊、拿捕又は無力化がその攻撃時の状況下において攻撃者にとり明確な軍事的利益を構成するものをいう。」と。そういうものであるならば攻撃してよろしい、軍事目標になるんだと、こういうことが明確にここに書いてある。第八章の中に書いてあります。  つまり、そうすることはどういうことかと。だから、アメリカと戦っている相手国に対して、米軍が相手と戦う戦闘遂行能力あるいは戦争を続ける能力、これに効果的に貢献すれば、それは攻撃の目標になるんだと。これを逆の形で言えば、アメリカが戦争している相手国の軍事目標にもなり得ますよということをアメリカが書いているんです。  こういうふうなことになりますと、当然これを全部調べてみて、これにその例示が全部書いてあります。そうしますと日本の全土がほとんど攻撃の対象になるんです。これは大変なものですよ。米軍に協力する自衛隊の艦船、航空機、軍用車両、米軍基地、米軍に提供される港湾、飛行場、軍艦の修理施設、部隊集結地、乗船地、通信線、鉄道車両、操車場、貨物運搬船、それから軍に利用される産業施設、発電所、これ全部入るんです。日本全土が全部重大な相手国の攻撃にさらされるということさえ意味するんです。  それを実際やるかやらないかというのは相手国の判断だと、局長がそう言われるならばそれはそうですよ。だけれども、そういうことをもアメリカの法律では認めているということだけはこれは明確なんです。  これについてはどういうふうな御所見でしょうか、大臣大臣、私に対しては一つもお答えになっていただかないのではあれですから、一つは何かおっしゃってください。
  184. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) 国際法の問題でございますが、この「指揮官のための海軍作戦法規便覧」、いわゆるマニュアルでございますけれども、そこで先生が今引用されましたところは、いわゆる軍事目標主義といいますか、戦闘が行われる場合に、攻撃目標というのはいわゆる軍事目標をねらったものといいますかターゲットにしたものであるべきである、それ以外のいわゆる市民、文民に被害を与えるようなことをやっちゃいかぬということを中心概念として定められているいわゆるマニュアルの部分だろうと思います。
  185. 立木洋

    ○立木洋君 それは解釈にならない。説明にならない。
  186. 竹内行夫

    政府委員(竹内行夫君) むしろ問題となりますのは、米国がいかなる場合に武力を行使するかということにつきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、国際法上許されない武力行使ということは前提としておらないわけでございます。国連憲章に反するような武力行使はしないということが大前提でございます。
  187. 立木洋

    ○立木洋君 この第四章の合衆国の国益保護というところに先制自衛という項目があります。これは何かといいますと、いわゆる相手国がアメリカに対して攻撃をしかけていない状態のもとでもアメリカ側が先制的に自衛のために攻撃をしてよろしいと、武力行使を含むと書いてあるんです。  御承知のようにこれは安保条約の問題で、第五条が問題になったとき、国連憲章五十一条の枠内において発動するものでありますけれども、国連憲章においても自衛権は武力攻撃が発生した場合にのみ発動し得るものであり、そのおそれや脅威がある場合には発動することはできず、したがっていわゆる予防戦争などは排除されていることは従来より政府の一貫して説明しているところであります。これは国連憲章でも明確になっている。  しかし、自衛の攻撃というのがあり得るというんですよ、先制攻撃が。これはアメリカのこの戦争法規に書いてある。これで国際法に準じたものだなどとどうして言えますか。  もう一つ私は追加して言っておきましょう。この中に中立の問題について書いてあります。この間条約局長はうちの上田議員に対して答弁して、中立云々のことを述べました。だけれども、これについては第七章の中立法というのがあります。中立ということは、敵対行為の拡大を制限し、紛争に参加していない国に対する交戦国の行為を規制し、そのような敵対行為の国際通商への有害な影響を縮減するという重要な役割を引き続き果たしているものであると。米軍はちゃんと中立の意義を認めているんです。その意義を認めた上で、こういうことをしてはいけませんよ、この中立国はと。これたくさんありますから全部読み上げられません。「中立国領域におけるすべての敵対行為は禁止されている。」と。  もう一つ、「中立国領域を違法に使用している軍艦、軍用機を含む敵国軍に対し、当該中立国領域で敵対行為に訴えることができる」と。攻撃することができると言っているんです、日本アメリカ軍の飛行機がいたら。その次に、交戦国が中立国領土を通過して部隊や軍需物資、補給品を移動させることは禁止されると書いてあるんです。日本の領土領域をアメリカが戦争している状態のもとで、彼らは物品を輸送してもならない、ましてやそれを日本の自衛隊が輸送してやるなんというようなことは論外なんですよ。米軍の法規によってさえそうなっているんです。  このような問題について言うならば、ガイドラインというものは、アメリカの法規でさえいけないと言っているいわゆる中立の立場に違反させる方向日本を追い込んでいく。これはまさにここに書いてあるようにいろいろな取り決めが確定されるわけですから、あらかじめ確定された実施要綱に基づいて協力をしていかなければならないと。だから取り消すことができないわけですから。そうすると、そういう自動参戦の状態にアメリカの法規は明確に日本の自衛隊を、そして日本の国家機関を、地方自治体を、民間の機能を、そういう方向に向けさせていくという内容のものがいわゆるアメリカの法規で明確なんです。  これ、日本にありますよ、この本。一回条約局長、全文読んでください。それから大臣にもぜひお読みいただきたい。これが日本にどういう事態をもたらすか。だからこそ我々は、日本の自動参戦にならざるを得ないのがこのガイドラインであるということを述べているわけです。  この点について、もうそろそろ終わりになりますので、外務大臣一言何とかコメントしてください。
  188. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今先生がお読みいただきましたアメリカの軍事法規につきましては、さらに私も勉強してまいりたいと思います。思いますが、日本といたしましては、このガイドラインをつくりましたことはあくまでも日米間で協力をし、極東の安全について両国とも共同して努力をするということでございまして、米軍の武力の行使と一体化の問題を生ずることは想定されるものではありませんで、さらに国際法の基本原則にも合致して対応することでございますから、御指摘のような不安はないと確信いたしております。
  189. 立木洋

    ○立木洋君 もう時間がないんです。二十分しかないので、本当はもっといろいろとお尋ねして確かめてみたいわけですけれども、最後に一言だけ申しておきます。  この前文の中に、日本の憲法の枠内でと書いてあります。あるいはまた国際法に合致したものであり、国連憲章にも合致したものだというふうにも述べられています。しかしこれは全部、国連憲章にも国際法にも憲法にも違反した、逸脱した大変なものです。日本を大変な危機に導くものです。私はそれだけは明確に述べておきたい。ただの一つも合致しておりません。みんなペテンであり欺瞞である。悪い言葉を使って大変失礼ですけれども、それほど言いたくなるぐらいのものである。  アメリカで十年前に作成された、いわゆる全面的に改定されたいわゆる国際法に基づくアメリカの海軍法規です。それに基づいて私はそういう考え方を持っているので、最後にそのことを厳しく申し述べて私の質問を終わらせていただいて、次の機会には今度はお読みになったときの時点でいろいろお尋ねさせていただきたいと思います。終わります。
  190. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 私からは、そういう戦争にもつながりかねないような大問題ではなくて、身近な一つ二つの問題を取り上げて、ちょっと御意見を承れればと思います。  最初は、けさほどの官房長の報告に関連しての問題であります。  私は別に難しいことをお尋ねしているわけではなくて、白か黒かはっきりさせてほしい、それだけのことなわけであります。  従来のいきさつ、外務大臣は余り御承知ないかもしれません。ちょっとかいつまんで要約しておきますと、ペルー事件が終わってから、橋本総理は参議院の本会議で、あの事件については情報収集が不十分であった、警備体制にも問題があった、責任を感じておるという発言をされました。これは政府のトップとしての発言。それから、現場の最高責任者としての青木大使は当委員会にも参りまして、責任を感じております、判断ミスでありました、伏しておわび申し上げます、本当に反省しております、責任を痛感するという言葉を計六回も彼は使われました。  要するに、現場責任者としては自分の判断ミス、責任があったということを明確にお認めになったわけでありまして、これはこれで結構なことだと。責任の所在を明らかにするのはこの手の事件の再犯防止においてどうしても必要なことですから、あいまいにはしておけない、結構なことであったと、こう考えておりましたら、その後青木大使はどういう考えからか、再三テレビあるいは雑誌等マスコミに登場いたしましてどういうことを言っておるかというと、事件に巻き込まれた、結果責任を感じておりますと、この手の発言を再三繰り返しております。  事件に巻き込まれたというのは、要すれば第三者の言い方なんです。アメリカ大使公邸でパーティーが開かれまして招待された日本大使出席したら、そこをテロリストに襲われて何カ月も監禁された。こういう場合に巻き込まれたという言い方が当たろうかと思いますけれども、パーティーを主催したアメリカ大使が私は巻き込まれたと言ったら世界じゅうから非難されるでしょう。  それから、結果責任というのは、これ責任がないことをえんきょくに表現する日本語なんです。結果責任を認めますと。交通事故を想定してみますると、安全運転でスピードも控え目に走ってきた車、全然過失がないところに子供がいきなり飛び出してきたので子供をはね飛ばしてしまったという場合に、日本人は気持ちが優しいですから結果責任です、自分の車ではねました、これは結果責任ですという言い方をする。要するに、責任がないということをえんきょくに言おうとしているわけであります。青木大使もそういうお気持ちであったろうかと思います。  私、それはおかしいなと思いまして、この委員会ですぐ取り上げまして、当時の池田外務大臣にどういうふうに考えておられるのか、外務大臣としての見解をお聞きしましたら、外務大臣自身もいぶかしく思っておる、青木大使に早速尋ねてみたいと思うということで、本人は当時無任所か何かだったので、わざわざ外務省本省に来てもらって注意をしましたら、彼は参議院で述べたことが本当であります、誤解を招いたことを反省しております、こういうふうな言い方であったような報告を受けております。  その後もまた一回、二回あったものですから、私、本当にあなた注意したんですかということを外務大臣にお尋ねしましたら、注意しましたけれども念のためもう一回ということで、はっきり本人もいずれにしろ責任は認めます、参議院で申し述べたとおりであります、こういうことであったというので、これで以上終わりか、こう思っておりましたら、全然終わらないのであります。  アフリカのナイロビだという新聞報道ですけれども、一番詳しいのが日経新聞でありまして、あの事件について青木大使はどうしても起こる天災みたいなものだと、これは新聞報道ですけれども、ぎりぎりの状況下で私とすれば精いっぱいやるべきことをやった、こういうことを述べておるわけであります。  天災だと言えば、これはだれもそこに責任があるなんということを言いませんから、しょうがないな、こういうことで終わるわけであります。それから、最善を尽くしたと言えば、その人をつかまえてあんたに過失があるとか責任があるとか言う人はまずいないと思います。よくやってくれた、話はそこで終わるわけでありますが、一体青木大使はこれどちらが本音なんだろうか。  外務大臣から再三再四注意を受けながらもこういうことが何回も続いてくることを見ますると、どうもこっちが本当だ、自分は責任は感じていない、あれは天災だった、自分に判断ミスも何もない。そういうことになると、参議院で参考人として呼ばれて述べたことは、あれはうそだ、こういうことになるわけです。こっちが本当だとすると、今マスコミに対して彼が物語っていることはうそだ、こういうことになりまして、うそか本当か、白か黒か、どっちか一本に絞ってくれと、これだけのことなんです、私がお尋ねしているのは。難しいことでも何でもない。  当然、官房長はこの点について、あなたは御自分の責任を認めるんですか、認めた上での発言ですか、こういう質問を今回もしておられると思いますから、それに対して青木大使がどういうお答えだったのか、もう簡単で結構ですからお答えいただきたいと思います。
  191. 浦部和好

    政府委員浦部和好君) 私はそのようにまさに青木大使に尋ねました。青木大使は、自分の表現が誤解を生んだとすれば大変残念だと。自分の本旨は、今後も日本がこうしたテロの標的となり得ることについて注意を喚起するとともに、二度とこういう事件が起こってはならない、そういう考えのもとでこういう事件の再発防止を防ぐべくいろいろな改善が必要だということでございまして、五月十三日にここで述べたような彼の立場を変えるとか責任を回避するというようなことでは全くないという御説明がございました。だから、私の方からは、ぜひこういう誤解が生じないように、発言には注意をしてくださいという注意をしておきました。
  192. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 官房長に青木大使が言ったようなことならばそれはそれでわかりいいんですけれども、なぜそれならば、ぎりぎりの状況下で最善を尽くしたんだとか、あれは天災だったんだとか、強いて誤解を招くような表現を好んでお使いになるのか、それがよくわからない。やっぱり本音は、自分は最善を尽くしたんだ、どこにも過失はない、まさかゲリラが後ろから来るとは思っていなかった、だれでもあれは思わないでしょう、あれは天災ですよ、判断ミスなんかありませんよと、そういう考えがあるから再三再四こういうことになるんじゃないでしょうか。発言に注意して、また誤解を招かないように談話をしているような内容だとはとても思えないんですよ。  ですから、本音はこれだとすると、またこれからも二回三回同じことがありまして、皆さん方に言わせれば何でそんなにしつこいんだとおっしゃるかもしれませんけれども、やっぱり黒か白かがあいまいなままにはこれは終わらせたくないわけですから、終わらせるべきでもないと思いますから、くどいほど何回にもわたってお尋ねしておるわけであります。青木大使自身が一体何を考えているんだろうかなといぶかしい気持ちがしてしょうがないんですけれども、どうなんでしょうかね。
  193. 浦部和好

    政府委員浦部和好君) 繰り返しになって恐縮でございますが、青木大使も五月十三日に本委員会で述べた点というのを全く変えようとかなんとかということは毫にも思っていないわけでございまして、大使は、表現が適切ではないという注意についてはそのとおりだということを言いながら、自分が申し上げたかったことは、やはり日本というのはこれからもできるだけいろんな面で注意をしていく必要があるんだ、そういう注意喚起をしたいんだということで彼は発言をしたという説明でございます。
  194. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 世間に対して注意を喚起したい、そういう親切心、老婆心からならばそれなりの言い方もあろうかと思いますので、もう二度と本当にないように厳重に御本人にも申し渡しておいていただきたいと思います。  今までこういうことにつきまして、国会でいいかげんなことを言ったんだとか、いやあれは本当なんだとかうそなんだとか、そういうことでいろんな議論がされたこともまずないと思うんですけれども、国家公務員としてあるべき姿なんだろうか、大いに反省してもらいたい、彼も公務員ですからね。そういう気がいたします。  最後に、この件について、大臣もしちょっと御感想でもあればお伺いしたいと思います。
  195. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) いやしくも、事件後本人がこの委員会の場所において発言いたしたことでございます。したがって、それがすべてであると理解をいたしておりますが、段々の経緯の中でそうした記事が出るということ、それはどこかで何らかの発言があってかとは思いますけれども、その経緯については今官房長からお話ししたとおりでございます。  やはり、この国会の場所で発言したことをもって大使の正確な気持ちの表現だと、こういうことでありますが、なお誤解のないように私からも注意喚起をいたしておきたいと思います。
  196. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 これが最後で、二度とこういうばかげた質問のやりとりのないようなことを希望して、この問題は終わります。  その次に、北朝鮮に対する食糧支援の問題を取り上げたいと思います。  先般、北朝鮮に対して国連を介してそれなりの食糧支援が行われたというふうに伺っております。実は、この食糧支援につきましては、北朝鮮政府のだれから、いつ、どういう方法、口頭か書面か、我が国政府のだれに対して、我が国は大変困っているのでぜひお願いしたいというふうな要請があったのか、そのことをちょっと教えていただきたい、こう思うわけであります。
  197. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 先般の北朝鮮に対する食糧支援につきましては、北朝鮮政府から我が国に対して直接公式の支援要請が行われたわけではございませんで、北朝鮮側から国際機関に要請をいたし、その要請に基づき国際機関が支援アピールを発出いたしました。我が国といたしましては、それを受けて緊急人道支援という立場から決定した、こういうことでございます。
  198. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 二年前に五十万トンの支援を行った際に、北朝鮮のさる要人が、だれも頼んだわけでもないのに持ってきたから、賠償の意味か、謝罪の意味かと、そういうことで受け取ってやったという発言をしまして大変非難されたことは記憶に新しいわけであります。  国際機関という言葉を使われましたけれども、国際機関もあえて言えば第三者なわけでありまして、何か北朝鮮が困っているから援助してやってくれよと、つぶやいているといえばつぶやいているだけなんであります。  これは北朝鮮を国と認めるかどうかは別としまして、国対国の問題ですから、やはり北朝鮮政府から最高責任者の名前でもって、責任でもって、我が国政府に対してきちっとした支援要請がある、それが問題の最初ではないか。だれかがつぶやいているからとか、あるいは北朝鮮政府の下部機関の者が困っているなとつぶやいているからとか、そういうことで食糧支援なんというのを行うべき問題なんだろうかな、こういう気がしてしようがないわけであります。  国民の貴重な税金を使うわけですから、政府は国民に対して責任があるわけですから、やっぱり北朝鮮政府からこういうことを言ってきた、これは国民の皆さん方、支援してよろしいでしょうかと、そういう問いかけがあって、みんなが、ああそれほど困っているならやるべきではないかと。いや、やるべきではないと言う人もなおいるかもしれませんけれども、そういう政府のアクションがあって問題が進んでいく、こういうことだろうと思うんです。  ただ、米が余っているから、まあ欲しいところにくれてやれ、そういうふうな発想から行われたのだとすれば大変無責任だろうと思いますし、北朝鮮政府にしましても、別に頼んだわけでもないのに前と同じようにただ持ってきただけか、じゃ受け取っておけや、何に使おうとこっちの勝手じゃないかと、こう言いたくもなるでありましょう。  私は法律家ですから、手続、形式というのは大変大事だと思うんです。やっぱり物事というのは、頼む人がおって頼まれる人がおって、それから頼まれる人は無責任に、またじゃやってやれと、こういう問題でもない。  この前は議員団を構成して訪朝団が行きましたけれども、あれはあれといたしまして、食糧問題の専門家、輸送問題の専門家、その他の技術専門団を派遣しまして、彼らが、まさしく北朝鮮政府にあれこれ言われない自由な立場で北朝鮮の国内を調査しまして、なるほどこれなら大変困っている、人道問題は欠かせない、このままほっておけば何万人という餓死者が出るというような報告をして、それを受けて、それでは支援しましょう、こういうことになっていって、かつまた支援したら、それらしい応答があるんでしょう。  あの国は大変儒教精神、礼儀作法のやかましい国ですから、人から物をもらっておいて知らぬふりということはないはずですから。一番偉いのはだれか知りませんけれども、その人の名前で、日本人民の方々、大変ありがとうございましたというお礼の一言ぐらいあってしかるべきだろうと思うんですけれども、そういうこともどうも耳にしておりません。これは何かすべてがあいまいなままにぼやっと進んでおるのでこういうことになっておって、やっぱり良識のある国民は我慢できないんじゃないでしょうか。  これが東洋の伝統の儒教の国のやり方なんだろうかなと、こういう気もしてくるわけでありますが、こういう問題でありますから、大臣からちょっとお言葉をいただければと思います。
  199. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいま委員のお考えについては、我が国の国民の中にもそうしたお考えが存する一つの御意見かと思っております。  ただ、前回五十万トンのときにも、今御指摘ありましたが、北朝鮮側の高官の発言というのも、実はこれは韓国における雑誌に掲載された記事として載ってきたことでございます。そういったことを考えますと、その真意なるものが那辺にあるかということにつきましても実は十分捕捉できないといいますか、そういう形になっておりまして、何よりもかによりもやっぱり両国の間が不正常な形になっておるためにいろいろな誤解も生じてきているのではないか、こう思っております。  結論から申し上げますと、そうならないような両国間の関係を一日も早くつくり上げ、透明性を持って、そして両国ともお互い国民同士が理解した上で協力すべきものは協力するという体制を整えることが大切なことだ、こういうように考えております。
  200. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 正式に北朝鮮から感謝の意思表示はあったんでありましょうか。そのことだけ確認しておきたいと思います。
  201. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) そのお尋ねに関しましては、謝意の表明がございました。十月十一日、我が方で決定して三日後でございますが、在北京の北朝鮮大使館から我が方の大使館に対しまして、日本政府が食糧支援及び医療分野の支援を決定したことに感謝するという謝意が、外交関係はないんでございますが、表明されてきております。
  202. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 こだわるわけじゃありませんけれども、大使館のどの程度の人から我が国のどの程度の人に対してそういう謝意の表明があったのか。これはもう大変大事なことなんです。やはり感謝の気持ちがあれば、なるべく地位の高い人がありがとうございましたと我が国の地位の高い人に対して言うのが東洋の儒教の精神だと私は思っております。下の者が走り使いみたいにしてやってきてありがとう、ありがとうと、そんな失礼なことは許されないことだろうという気もしますけれども、どうでしょうか。
  203. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) レベルの点につきましては、通常連絡をしております参事官レベルでございますが、本国政府の訓令により謝意を表明するということでございました。また、北朝鮮国内のラジオ放送でも、今回の日本からの援助は両国人民間の友好関係を発展させていく上で非常に好ましい寄与だということを国内にも報道はしています。
  204. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 我が国と北朝鮮は正式な国交はございませんけれども、これは国交があるなしの問題ではなくして、まさしく人道問題でありますから、国交がないから援助はしないとか、そんなことではないんだろうと思うんです。大変困っておると言われれば国交問題は別として援助をしましょうと、それだけのことだろうという気がいたしますので、国交がないからどうだこうだとかいうことは理由にもならないし、もし受け入れてかつ感謝の気持ちをあらわしたいといえば、下の者かどうか参事官クラスかどうか知りませんけれども、それはなるべく上の方から、北朝鮮の外務大臣クラスの人から親書でも発してもらって、それを我が国外務大臣あてに届ける、それぐらいのことはお互い考えましょうと、こんなことを申し入れるのは別に何でもないことだと思うんですけれども、どうなんでしょうか。
  205. 阿南惟茂

    政府委員(阿南惟茂君) 先生の御指摘が道理であり人情にかなったやり方かもしれませんが、現在、日本と北朝鮮との間に特定の問題についての意思疎通、協議、交渉というものはございますが、そういう平常のやりとりはございません。また、謝意の表明ということについて、こちらからどのレベルで言うのがよいのか検討したいと思います。
  206. 佐藤道夫

    佐藤道夫君 国民の税金を使って送ったんでしょう。当然でしょう、要求するのは。国民の皆さんに、日本の人民に対してお礼を言ってくださいよ、それが当たり前でしょうと言ってほしいなという気がいたします。でも、これはこれで終わりまして、最後に、日本人妻の一時帰国の問題についてちょっと取り上げたいと思います。  このたび、北朝鮮政府の特別な計らいで千八百人中の十五人が一時帰国を認められて帰ってきまして、郷里には三日ぐらいですか、何か日程まで全部縛られて来たと。それで、帰ってきた彼女たちは口々に、北朝鮮政府に感謝いたします、こういうことを申しておりまして、我が国のマスコミが大騒ぎをしたということは記憶に新しいわけであります。  これは戦前やあるいは大昔の帝国主義時代ならいざ知らず、あるいは国家万能主義ならいざ知らず、今はもう個人の方が国家の上にあると言ってもいい時代ですから、人間が自由に行き来する、自分の生まれ故郷に帰る、あるいは肉親のいるところを訪問する、これは人間としての基本的な権利ではないか。別に憲法を持ち出すまでもないんですけれども、人間の尊厳そのものが問われていることだろうと思うので、これまた日本と北朝鮮は国交がないとかあるとか、そんな問題でもないと思うんです。どうぞいらっしゃいと。  また北朝鮮政府に対しても、これは本当の人道問題で、食糧支援だとか拉致問題とか、それはまたそれとして、人間として自由に往来するのは当たり前のことでしょう、こういうことが認められない国はもはや近代国家とは言えませんよというぐらいのことは言ってやってもいいんじゃないでしょうか。少しは北朝鮮も反省するかもしれません。今あの国だけじゃないでしょうか、こういうふうに門戸を閉ざして人民の往来を認めていないというのは。大変問題だと思います。もう国家ではないというぐらいのことを言い切ってやったっていいと思うんです。その点、これは大臣、いかがでしょうか。
  207. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 自由往来の問題につきましては、現時点でこれを実現することは難しい状況でございますが、北朝鮮との協議の上、できるだけ早期かつ着実に第二回以降の故郷訪問を実現していく中で委員の御指摘を踏まえて考えてまいりたいと思います。  御指摘のように今回第一陣十五人が参られまして、その経過については日本の国内で大きく報道されております。今回のこうした事柄を通じて、大変重い扉でありますけれどもだんだん開いていくということの必要もあるのではないか。さればこそ、長い間かかってようやくこれだけの方が故郷を訪問できるというような環境になってきたわけでございまして、御指摘のことは十分理解をしつつ、この趨勢をさらに大きなものにしていくように努力をいたしていきたい、このように考えております。
  208. 矢田部理

    ○矢田部理君 日米新ガイドラインについて、とりわけ外務大臣認識、事務方の説明ではなくて大臣としての認識中心に伺っていきたいと思います。  もともと現行安保条約六条では、日本と極東の平和と安全のためにアメリカ軍が日本に駐留する、その米軍に日本は施設や区域を提供するというのが六条の趣旨でありまして、それ以上のものではありません。しかるに今回は、周辺事態という新しい用語をつくり出し、施設・区域の提供だけではなしに、後方地域支援という言葉を使っておりますが、後方地域支援を官民挙げて行う、後方地域支援の区域は日本の国内が中心であるが、日本の周囲の公海で後方地域支援をやるというような枠組みになっているわけです。  そうなってきますと、従来から議論をして既に答弁済みでありますから繰り返しませんが、従前の安保条約の枠組みを超えた新しい軍事的取り決め、私どもは新軍事同盟と呼んでおりますが、を事実上結んだことになるということで、大変な問題を生み出しているわけであります。  そのポイントの大きな一つに、周辺事態という用語が何カ所か出てまいります。それの定義、その基本認識についてまず外務大臣に伺いたいと思うのであります。  文章は、正確に読みますと、「日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」と、二つの用語が組み合わされているわけです。そして二つをくくって、これは地理的概念ではなくて事態の性質を示す言葉であるという解説まで本文に施すわけでありますが、それは勝手な解説だとしか言いようがないのであります。  そこで、この言葉そのものを正確に私なりに理解をしますと、まず第一には、日本周辺地域における事態であること、その日本周辺地域における事態の中で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合と、二つからの組み合わせになっているわけです。  そこで、前段の日本周辺地域における事態の日本周辺というのはどこを想定し、どういう言葉なのか、地理的要素が全くないのかどうかについてまず第一に伺いたいと思います。
  209. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 今、矢田部先生は、これは二つに分けられると、こうおっしゃいましたけれども、指針に言う周辺地域というのは、日本周辺地域における事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合、これは地理的な概念でなく事態の性質に着目した概念であると常々御答弁申し上げております。これが一つ、すべてで、分けられるものではないのであります。
  210. 矢田部理

    ○矢田部理君 用語はやっぱり正確に読まなきゃならぬと思うんです。  だから、まず日本周辺地域における事態があるわけです、一つは。その中で日本に影響のある事態もあれば影響のない事態もあるはずなのでありまして、その中で日本の平和と安全に重大な影響を与える場合というふうになるわけでありまして、これを一つくくって、事態の性質に着目した概念で地理的要素は全くないんだという説明は、言葉の説明にもなっていないんじゃありませんか。
  211. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 日本の周辺地域は、日本周辺の地域ということで、地理的な要素は含まれているが、どこからどこまでと明確に線を引くことはできない、こう考えております。
  212. 矢田部理

    ○矢田部理君 安保条約の六条ですが、極東有事というふうに言われている表現の中に極東という言葉があって、極東の範囲ということがしばしばかつての安保国会では議論になりました。この極東という範囲と日本周辺地域における事態というのは同一でしょうか、違うのでしょうか。あるいはまた、同一でないとすれば、極東の範囲を超えるものでしょうか、そうでないものでしょうか。
  213. 田中均

    政府委員(田中均君) お尋ねでございますけれども、今、大臣から御答弁をされましたとおり、周辺事態というのは、地理的に一線を画することができないという意味で周辺地域という言葉を使っております。  一方、極東の方は、安保条約の目的を達成する上で国際の平和と安全の維持に日米が共通の関心を有している区域であり、その範囲につきましては昭和三十五年の統一見解において明らかにされているとおりでございます。  したがって、両者は、我が国の平和と安全という観点から見れば密接に関連するということでございますけれども、性格は異なる概念でございます。
  214. 矢田部理

    ○矢田部理君 周辺事態ということになるとあるいは性格が少し違ってくるのかもしれませんが、周辺という地理的要素をそれなりに含んでいる概念と比較をした場合にどうかということを私は伺っているので、あなたの説明は十分なものではありません。日本の平和と安全に重大な影響を与える事態に着目するとすればそれでいいのであって、周辺という言葉を入れたのはどういう意味なのかというふうに逆に聞いてもいいのでありますが、これはいかがでしょうか。
  215. 田中均

    政府委員(田中均君) 周辺と申しますのは、まさに日本の周辺ということでございまして、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼし得るような事態が生じ得る地域である、こういうことでございます。
  216. 矢田部理

    ○矢田部理君 あなたの説明は論理が逆立ちしているんだよ。事態の性質に着目して言うのであれば、周辺が先に出るんではなくて事態そのものを言えばいいのであって、日本の周辺地域でという限定がまずあって、そして日本の平和と安全に重要な影響を与える場合と、こう言うから、後ろから前を説明するのはやっぱり間違っていると言っているんです、私は。論理が逆立ちしているというふうに言えるわけであります。  もう一つ、この議論を発展させまして、日本が後方地域支援をやるということになっているわけですね。この周辺事態が発生した場合に日本が行う後方地域支援は、日本の国内でやることが中心だが、同時に公海でも行うと。その公海の範囲は、日本の周囲の公海及びその上空というんですね。そうすると、この周辺事態の周辺という言葉と、もう一つ日本が後方地域支援をやる範囲は日本の周囲の公海及びその上空となっている。この周辺と周囲はどういうふうに関係するのかしないのか、これはどうなりますか。
  217. 田中均

    政府委員(田中均君) 後方地域支援を我が国が行う場合、基本的には日本の領域というのが中心になるだろうと。しかしながら、一定の場合には戦闘地域とは一線を画される地域、公海及びその上空においての後方地域支援ということはあり得るであろうということでございます。
  218. 矢田部理

    ○矢田部理君 ですから、周辺事態で周辺があるんでしょう。これをあなた方は言わないことでまた意味を持たせるわけですが、その周辺のほかに、周辺の中で紛争が起こった、米軍が出動するが、日本が後方支援を行う地域は、周辺ならどこでも行くのではなくて、その中で日本の安全と平和に重要な影響を与える場合で、出かけていくのは公海のうち戦闘地域と一線を画する場所で日本の周囲である、こういうふうになるんですね。周囲と周辺という言葉がまた二つ出るわけですが、そこの整理はどうなっているのかと、こう聞いているんです。
  219. 田中均

    政府委員(田中均君) 基本的には前提がございまして、ガイドラインにおける周辺事態の四十項目の協力、この中には後方地域支援という概念も含まれているわけですけれども、これは憲法の枠内にとどまらなければいけない、基本的な国際法規と両立するものでなければいけない、そういう前提の中で物事を考えているわけでございます。  戦闘地域と一線を画する地域ということを申しておりますのは、まさに日本の憲法の制約ということを踏まえた場合に、その行為自体が武力の行使に当たるようなものであってはいけない、あるいは武力行使と一体化をしていくようなものであってはいけない、そういう中から、日本が想定される行動としての考え方、こういうものに基づいて戦闘地域と一線を画するということを言っておるわけでございます。
  220. 矢田部理

    ○矢田部理君 この議論は、もう少し各論を言えば山ほどあるわけでありますが、大変あいまいな概念で、そして勝手な解釈をガイドライン自体に盛り込んで一方的に日米間で合意をした。合意の性質からいえば安保条約の枠組みをはるかに超えるものであって、私は率直に言って条約事項だと、国会にかけなきゃならぬものを国会にもかけずに、行政協定ですらないわけですね。このガイドラインの法的性格は何ぞやという議論もしなければなりません。  こういうことで、本来日本防衛のためにつくった自衛隊を、日本防衛を超えたアメリカ軍の軍事行動に加担、協力をする体制をつくるというのは外務省政府もやり過ぎであると。安保条約も憲法をも超えた新しい枠組みをつくることは不遜だというふうに私は考えます。  もう一つちなみに申し上げておきたいのは、安保条約の極東条項の中には台湾は入ると言ってきた。しかしその後、日中国交回復や平和条約が結ばれて、台湾は中国の一部であるという中国の考え方を受け入れたということになるわけでありますが、依然としてガイドラインにおける周辺事態の周辺の中には、これを外すのか外さないのかが非常に不鮮明なために中国からも再三の懸念が表明をされているわけであります。先般来日された李鵬首相も、台湾は適用範囲には入らないという明確な説明があれば大変懸念をなくすことができるという発言を残して日本を去ったわけであります。  小渕外務大臣、かつて加藤幹事長は台湾は入らないと言った。それから梶山前官房長官はいや入るんだと、こう言っておられるということで、与党や政府内部にも混乱が実はあったわけでありますし、またその混乱を整理したかのような文章にはなっているのであります。やっぱり台湾は入らないと、アメリカの大統領もこれは直接の対象じゃないという発言なども伝わってきているわけでありますが、外務大臣としてここは明確に宣言できませんでしょうか。
  221. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 先ほど、与党並びに政府責任者がこの台湾の問題について触れられたことのお話がございました。  政府としては統一して、今回の問題につきましては、極東の範囲については昭和三十五年の政府見解どおり、台湾問題に対しては我が国の基本的な立場は日中共同声明において表明されているとおり、そして当事者間の話し合いによりまして台湾問題が平和的に解決することを強く希望しておると、こういう立場でございます。
  222. 矢田部理

    ○矢田部理君 今の説明には私は不満でありますが、次の議論も少ししておきたいと思います。  内閣を中心に今、新ガイドラインを受けて有事法制、有事立法の準備に入っているということが伝えられているわけでありますが、旧ガイドラインの文章を読んでみますると、「極東における事態で日本の安全に重要な影響を与える場合に日本が米軍に対して行う便宜供与のあり方」について研究を行ってきたということで研究の中身が旧ガイドラインには盛られているわけであります。この文章の最後には、この研究は日米間の安保条約を初めとするさまざまな取り決めと日本関係法令によって規律をされると。この法的枠組みの範囲内でどういう便宜供与のあり方があるのかが研究対象だったというふうに旧ガイドラインは言っておる。  憲法や日本の法令の枠内ということを明記しておったのに、今回は親である安保条約に背いて、その範囲をはるかに超えただけではなくて、新ガイドラインが先行して逆に今度はそのための制度をつくる、有事立法をつくるということで、旧ガイドラインと論理が全く逆転をしてしまったということにも大変問題があると思うのです。  その指摘をした上で、内閣で有事立法の法制化準備が既に行われつつあるということですが、その準備状況、それから今後の予定、来期通常国会に出すとすればどんな法案を予定しているのか、私は反対でありますが、御説明をいただきたいと思います。
  223. 江間清二

    政府委員(江間清二君) お尋ねの点でありますけれども、もう御案内のことなので改めて詳しくは申し上げませんけれども、去る九月二十九日に新しいガイドラインに関連しまして総理の方から、今後このガイドラインの実効性確保について政府全体として取り組んで検討を実施してまいりたいという御指示がございまして、古川官房副長官のもとに関係省庁の局長等の方々にお集まりをいただいて、日米防衛協力のための指針の実効性確保に関する関係省庁局長会議というのを設置いたしました。これの第一回目の会議というのを持ったわけでありますが、これが十月二十一日でございます。  今後の具体的な進め方として、課長レベルのいわゆる幹事会というようなものも設けて具体的な問題点の整理等、検討を進めていこうということで、現在、部分的にはそれぞれの関係省庁の課長レベルの間での議論は進めておりますけれども、このことは大変広範な内容にかかわるものでございますので、今、具体的にどういう点が整理されておるというようなことは申し上げられる状況にございません。  具体的な今後のスケジュールについても、現段階でこういうスケジュールだというふうに申し上げられる確たる状況にはいまだ至っておりませんということでございます。  それから、冒頭にお話がございましたけれども、今度の新ガイドラインも……
  224. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっとそこは、ほかの質問ありますから。
  225. 江間清二

    政府委員(江間清二君) よろしゅうございますか。
  226. 矢田部理

    ○矢田部理君 結構です。
  227. 江間清二

    政府委員(江間清二君) ちょっと憲法云々の関係については……
  228. 矢田部理

    ○矢田部理君 もう一点だけ質問残しておりますので。  防衛施設庁と防衛庁にもおいでいただいているのですが、先ほども同僚議員から御指摘がありましたが、例えば日本海で行われた日米合同演習。秋田県また京都からもそういう申し入れがあったそうでありますが、どの海域で行うのかについて事前に知らせてほしいと。秋田沖には漁船が二百隻もずっと操業している。前にも事故があったりして、そういうことを防衛庁等に申し込んだのに、日本周辺海域というだけで説明できないと。周辺という言葉がやたらに乱用されたり、ごまかして使われるわけでありますが、これでは安心して漁業もできない。先ほど御指摘があった朝鮮にいろんな緊張をもたらすということもあるわけで政治的に大きいわけでありますが、そういうことがある。  それからまた、沖縄の米軍が宮城県の王城寺原、ここで実弾の訓練を行っているわけでありますが、夜間訓練をやられるので大変不安だと。それから、アメリカ軍の責任者が外出は自由だという発言などもあって、もう授業時間を短縮して早く集団で下校させるとかいろんな心配が広がっている。にもかかわらず、訓練の内容状況もほとんど公開されない。一度説明があったそうですが、この司令官が英語でしゃべっただけで何を聞いたのかさっぱりわからぬというようなこともあったそうであります。  沖縄の基地の移設の問題などもありますし、またそこでの訓練もいろいろ反対もあるわけでありますが、同時にまた、もう少しやっぱり説明をしたり夜間は控えるとか、外出についてもいろんな心配があるわけでありますから、抑えるとかということがあってしかるべきでありますが、防衛施設庁と防衛庁、それぞれについてお答えをいただいて私の質問を終わります。
  229. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) 申し合わせの時間が来ましたので、今のが最後の質問でよろしゅうございますか。
  230. 萩次郎

    政府委員(萩次郎君) 施設庁の方からは王城寺原におきます米軍の百五十五ミリりゅう弾砲の射撃訓練についてお話し申し上げます。  この件は、御承知のように、従来は沖縄の一〇四号線越えの射撃ということで、沖縄の負担を軽減しようということで、本土の五カ所の陸上自衛隊の訓練場で持ち回りで肩がわりするというか、そういうことで始まりましたもので、五カ所のうち四カ所ずつ毎年かわりばんこにやっていくというものでございます。  そこでの訓練の中身につきましては、防衛施設庁のそれぞれの地域の防衛施設局がございますが、ここが現地の米軍と十分連絡をとって、現地の方たちに御連絡、御報告する、こういう体制をとっております。  御質問の夜間訓練と外出の件でございますが、日米間では、米軍はそこの演習場で陸上自衛隊が行っていると同等の条件で訓練ができるということになっておりまして、それぞれの地域において従来から陸上自衛隊が何時から何時まで射撃ができるということになっておりまして、その一部が午後六時以降もできるようになっているということでございます。  王城寺原におきましては十日間訓練をするということになっておりましたが、天候の関係で八日間になりました。そのうち、夜間は一日のみ、午後六時過ぎにほんの数発撃ったというようなことがございますが、現地での米軍との交渉で、夜間訓練を行う場合には事前に連絡をするということになっておりまして、事実そのようにやっております。  それから外出の件でありますが、御存じのとおり、地位協定上、米軍人といえども国内の自由な行動は認められております。ただ、各地域におきまして、沖縄の事件等もありまして余り出歩かれては困るという話があったものですから、米軍人が外出する場合は防衛施設庁の職員が自発的に行動をともにすることで処理をするということで現地の皆さんに御了解を得ている、こういう状況にございます。
  231. 太田洋次

    政府委員(太田洋次君) 本年行われました海上自衛隊の演習等についてお答えします。  この海上自衛隊の演習は十一月上旬に行われたんですが、その具体的な期間等もお知らせしました。それから、これにどのような部隊が参加するか、どういう訓練を行うかということで、必要な訓練内容についてもお知らせしております。ただ、具体的な詳細の海域につきましては、これも保全の観点だとか相手方の米軍との関係もございまして、この海上自衛隊演習の間、米軍と行った訓練の具体的な内容については、さっき申しましたような理由から従来差し控えさせていただいているところでございます。
  232. 小山峰男

    小山峰男君 外務大臣、就任以来大変ハードな外交日程をこなしているわけでございますが、早速でございますがAPECにおける日米首脳会談に関して御質問をしたいと思います。  バンクーバーで開かれましたAPEC首脳会議の際、外務大臣オルブライト国務長官と会われたり、また、橋本総理はクリントン大統領とそれぞれ会談したというふうに伝えられているわけでございます。その際、オルブライト長官からは、日本の貿易収支の黒字拡大日米関係に大変悪い影響を与えるのではないかと。それで、日本の内需拡大及び金融システムの信用、規制緩和、こういうものが大変大事であるというふうに指摘されたというふうに報じられております。  また、クリントン大統領も、景気の回復を目指すため、日本に内需拡大と規制緩和、さらに金融システムの安定を提案したというふうに伝えられているわけでございます。アメリカ日本の経済運営についてこういうはっきりした注文をつけてきたわけですが、具体的にどのような発言あるいは提案であったのか、それに対して外務大臣、橋本総理はどのように応じたか、この点につきまして御説明いただきたいと思います。
  233. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) APECにおきましての日米首脳会談では、特に経済問題としてアジア金融情勢と日本経済の現状が取り上げられまして、金融・通貨の安定に向けたアジア地域協力強化のための新フレームワークの合意を歓迎するとともに、我が国の経済について内需拡大、対外収支黒字及び規制緩和の問題について意見が出され、特に規制緩和につきましては、我が国自身の問題として、来年のバーミンガム・サミットまで目に見える成果を上げていくということが確認をされました。外相会談がその前に行われましたが、同様な発言オルブライト国務長官からもございました。経済の内需拡大、対外収支黒字、規制緩和の問題が同様に取り上げられました。  ただ、この問題につきまして、貿易黒字につきましては確かに今、日米間のインバランスがまことに大きくなってきておりますけれども、かつての日米経済摩擦と異なりましてと言ってはなんですが、具体的個別の問題での指摘よりも、全体的に日本の経済、これに対して、アジアにおける中心的な国としてきちんとした対応をしてもらうことが、現下いろいろお話にありますような金融問題に対しましても日本の果たすべき役割に期待をしているという趣旨で、日本の経済あるいは日米間の経済問題について触れられたものと思っております。  確かにインバランスがまことに大きくなりつつはありますが、ある意味ではこれはアメリカの経済そのものが極めて好調の中で、購買力も非常に高まっているというようなこともございます。数字的にはそういうことではありますが、しかし日本としては、日米間ももとよりでございますが、日本経済そのものがきちんとやってほしいという強い要請と受けとめて、その努力を橋本総理もまた私もお約束をした、こういうことだろうと思います。
  234. 小山峰男

    小山峰男君 日本の経済等についてアメリカは今のお話のとおり大変懸念を持っているというふうな状況かと思います。日本の経済がなかなか思いどおり回復基調に向かっていない、依然として成長が停滞しているというような現状、またアジア全般に金融問題等が大きくクローズアップされてきたという状況に対して、日本の役割が要請されたというふうに思っているわけでございます。  黒字の問題はもう既に十分御存じでございますが、十月まで十三カ月連続で前年実績を上回っているとか、輸出だけを見ましても十九カ月連続で上回っている。  これは、新たに駐日大使となったフォーリー大使も、着任後初の記者会見等で、いわゆる対米貿易黒字の急激な増大を憂慮しているとか、あるいは急速に貿易黒字がふえるという予測があるとの認識を示して、これが今後の日米関係を悪化させるおそれがあるというような御指摘をされているというふうに報じられています。さらに大使は、橋本総理は内需による経済成長を図り、急激な対米輸出の増加を避けたいと言っている、アメリカもこの路線を支持していくというふうに述べているわけでございまして、日本政府の経済回復に向けた努力を求めているというふうに思うわけでございます。  きのうのテレビ放送を見ましても、具体的な日本名を挙げない中で、貿易黒字がたくさんあって、しかも国内貯蓄のある国は財政再建なんかはやる必要ないじゃないかというようなことを、クリントンさんの報道官ですか、言ったのが言葉として伝えられているようでございます。貿易黒字についても、日米の個別の問題ということではなくてというようなお話が今あったわけでございますが、かなりいら立ちが募ってきているんではないかなというふうに思うわけでございますが、もう一度この辺の感触をお聞かせいただきたいと思います。
  235. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) もとより二国間において貿易額が、今先生御指摘のような形で、ますます我が方の黒字幅、アメリカの対日貿易の赤字がふえるということは、これは大変なことだという認識はいたしております。ただ、この日米首脳会談におきましてもそのことが指摘をされましたが、我が方の総理といたしましては、現在構造改革あるいは金融システムの改革や財政改革、規制緩和、土地の有効利用等について経済の活力を見出そうという極めて大きな改革の途中であるということでございます。  そういう意味で規制緩和その他につきましても、先ほど申し上げましたように、来年のバーミンガム・サミットまでに整理して成果を上げたいという答弁を申し上げて、その実現努力を約束したということでこれを実行していくことだろうと思っております。
  236. 小山峰男

    小山峰男君 今回、アメリカが内需拡大だとか規制緩和あるいは日本金融システムの改善など、いろいろ求めてきているわけでございます。この実現のためには、人によっては大幅な所得税減税というような財政出動による内需拡大に踏み切らない限り、なかなかできないだろうというようなお話を言っている人もあるわけでございます。  一方、現在、政府は財政構造改革というような形で歳出削減というような政策をとっているという状況下というふうに思うわけでございまして、アメリカ等の要請にこたえるにはなかなか選択肢が大変だろうというふうに思うわけでございます。  そういう意味で、国内における財政改革と今の要請のような問題とをどのように両立していくのか。これは外務大臣に聞くのもちょっと筋違いかと思いますが、橋本内閣の大変有力閣僚である小渕外務大臣にその辺の考え方をお聞きしたいと思います。
  237. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) ただいまのお尋ねにつきましては、日本の財政運営の根本にかかわることでございます。そういった意味で、橋本総理のクリントン大統領に対してのお答えぶりを御紹介しながら政府考え方を申し上げさせていただいたわけでございまして、私自身、今の立場で経済全体の問題に触れることはちょっと避けさせていただきたいと思います。
  238. 小山峰男

    小山峰男君 それでは次に、CO2等に関する京都会議に向けての状況等についてお聞きしたいと思います。  日本政府は五%削減というような方向を打ち出した、しかし実際に計算してみると日本は二・五%削減程度になってしまう、それでいいんだというような状況だというふうにお聞きしているわけでございますが、これは五%がなぜ実際には二・五%になってしまうのか、まずその辺の状況をお聞きしたいと思います。
  239. 朝海和夫

    政府委員(朝海和夫君) 先般、日本政府として提案しましたことの内容は、多くの国が温室効果ガスの排出についてそれぞれ異なった事情にあるということを勘案しなければいけない、あるいは多くの国がそうした事情に伴って違う主張をしている、それも勘案しなければいけないというような点を考慮して提案したものでございます。提案内容は、ただいま御指摘のとおり、基準削減率としてマイナス五%としております。  ただ、それだけではなくて、GDP当たりの排出量、一人当たりの排出量や人口増加率の指標を使いましてこの五%をいわば調整する、それによってできるだけ多くの国の事情も配慮するということでございます。日本の場合、この点を具体的に当てはめますと、GDP当たりの排出量が附属書I国、先進国プラスロシア、東欧でございますが、それの平均よりも相当低い、つまりそれだけ効率が高いという国柄でございます。したがいまして、GDP当たりの排出量の指標を使いまして基準マイナス五というのを調整しますと約マイナス二・五になる、そういうことでございます。
  240. 小山峰男

    小山峰男君 私は、議長国としての立場というのはある程度理解できるわけでございまして、参加国ができるだけ共通認識を持つ、そういう立場で今の五%なりの提案というのはわかるわけでございます。日本政府立場として、環境に大変重点を置いているということからいくと、京都会議の目標としては五%、しかし日本は一〇%なりあるいは一五%なりの削減を目標としてやるんですよというような姿勢が少なくとも欲しかった。  今の五%なりあるいは二・五%なりというような目標だと、もうここまでは逆に言うといいんだみたいな形になってしまう可能性が大変強い。学者先生なんかに言わせると、今の状況でいけば百年で二度ぐらい上がるのではないか。動植物が対応できるのは百年でせいぜい一度が限界だというふうに言われているわけでございまして、経済が発展しても地球が滅びるような状況ではもうそれこそ元も子もなくなってしまうのではないか。そういう意味で、日本としてはかなり大幅な努力をする必要がある。  先ほど、総理が環境のための人材養成だとかあるいは支援だとかというのを打ち出したと。これはこれでもちろん一つの成果だと思うわけでございますが、やっぱり日本としての目標設定というのはかなり高くすべきだ、そういうふうに私は思っているわけですが、大臣、いかがでしょうか。
  241. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 我が国としてこの五%数値目標を提案するに至る間につきましては、国内的に関係省庁との十分なすり合わせの中でこれを提案しておるわけでございます。一方、御承知のように、EUにおきましては非常に高い二五プロというのがありますし、またアメリカの〇%というのもありまして、その開きもまことに大きいわけであります。  そういった意味で、今、小山委員指摘のように、我が国としての目標設定についてさらに考慮した数字が出てこないかという御指摘でございますが、いよいよ京都会議が間近に迫って各国との話し合いに入るわけでございますので、そういう過程の中で日本としてぎりぎりこの五%を提案しておるわけでございます。  いろんな数字についてこれから議論が起こってくると思いますし、また世界全体でどういうふうな解決をしたらいいかという本番での議論がいろいろ提案されますので、そうした事柄を十分注視してまいりたいというふうに思っております。
  242. 小山峰男

    小山峰男君 ぜひ日本がグローバルな環境保全について先頭を切ってというぐらいの意気込みでこれからも臨んでいただきたいという要望を申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  243. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 これは外務大臣が新しく就任なさるたびにお願いしている問題でありまして、先生方の中にはまたあの話をするかとお考えの方もあろうかと思いますが、外務省の予算、これは新しい数字がないから九四年の外務省の資料で見ますと、大体全予算の一%弱です。ドイツは二・五%強、カナダは二・二%、日本は一%弱です。その中で四分の三はODAなんです。ODAの多いことは私も熱望するところでありますけれども、一%の外務省の予算が、ODAの四分の三を除けば四百分の一です。  今の外務省のお仕事というのは、諸外国とおつき合いをするというようなことではなくて、非常に問題の充満している今日の世界を、いかにして望ましい平和な共存共栄的な世界にするかということを目指して、極力犠牲や混乱を少なくそこに到達する、いわば世界政策の主体を担うのが外務省の仕事だと思うんです。ほかの省はそういう総合的な重大なお仕事を担当する省はありませんから。私なんかに言わせれば、防衛庁なんかよりもはるかに重大な、しかも現実的な仕事を担当する省がわずか全予算の四百分の一だと、こういうことは到底後世の歴史から見れば耐えがたいおかしな予算だと。  これはもっとも、外務大臣は要求される方で、私と一緒に大蔵大臣に要求していただければいいので、さっきの小山委員と同じように、外務大臣に要求する筋合いのものでありませんけれども、どうかこの認識は私と一つにしていただけないかと思うのであります。  特に、先ほど来、武見委員もおっしゃったし、高野委員もおっしゃったし、いかに総合的、的確な情報を把握して対策を講ずるか、これは今日非常に重大な問題であります。  例えば、この間香港の新聞を見ておりましたら、三年後の三月は台湾の総統の選挙だと。まず台湾海峡は風雲急を告げるだろう、アメリカの航空母艦がまた来るだろう、同じことになるに違いないと。ただ、決定的に違うのは、航空母艦に従って日本の自衛艦が機雷を処理する、それにくっついてくるということは決定的な違いだ、こういうことを書いているんです。これは香港のジャーナリストの余りに単純過ぎる分析かもしれませんけれども、先を読んでそういうことを言っているわけです。しかし、これは後方では意味をなさないので、アメリカの航空母艦の前方を日本の自衛艦が遊よくして機雷を処理しなければ全く意味をなさないわけで、言葉は後方だけれども、現実には前方となる公算が決定的に大きい、こういうふうに思うんです。こういうふうな事態を、一つの問題を出されたと考えて、どう考えるのか。  それから、もっと視野を長くすれば、中国の核ミサイルがニューヨーク、ワシントンを直撃する段階はいつ来るのか。それまでの間にアメリカだけが核ミサイルを独占して中国は核ミサイルを持たないということはちょっと考えられないです。もちろん、アメリカも中国も持たないというのは私ども熱望おくあたわざるところでありますけれども、これも考えられない。そうすると、残るところは米中核兵器の対立が一番大きな可能性としてあるわけです。  そういうふうな状態になりますと、これは軍事学上の問題になりますけれども、陸軍も海軍も全く役に立たぬわけです。核ミサイルで、しかも今の多くの人は都会をねらうように思いますけれども、非常に膨大な破壊力を持っておりますから、都会だけじゃない、山川草木すべてがやっつけられる。これが核戦争の常識的な展望でございまして、そういうようなことをどうして回避するのか。こういうようなことは、私は、世界政策省たる外務省の最大なる任務にならざるを得ない。  ところが、恐らくこれに対して明確な回答を出すような情報の予算もないし、これも池田大臣に申し上げたのですが、ことしの情報関係予算は六十億しかないというのです。一企業だって六十億なんていうことは、ちょっとした企業ならもっとたくさんの情報の予算を用意するはずなんです。それは情報の予算という費目以外に情報関係のお仕事をなさるのが随分あるはずだし、だから六十億という数字にとらわれるわけじゃありません。  いずれにしましても、これから先日本の運命を決定する重要な費目として外務省情報関係のシステムと予算、これは今の何十倍とってもおかしくない。こういうふうに思いますので、これはさっき申し上げたように、外務大臣と私どもが一緒になって大蔵大臣に要求したい、こういうふうに思うのです。  さっき申し上げましたような情勢分析などは、きょうお尋ねするつもりではないんです。現在の外務省の予算で十分御満足でしょうか、足りないとすれば、どの部分であるかということがお尋ねするところでありまして、金がないとは言わせない。  私は、本来は農業畑の人間でありますけれども、例えば第四次土地改良長期計画は十年間に四十一兆円の事業費を計上しておるわけです。私どもの計算では三十兆はかかりません。たちまちそこに十兆円以上の誤差というか、節約でもありません、合理化ですね、浮くわけです。しかも、それをやれば、お米なんか自由化されても十分対応できる農業が実現するわけで、補助金農政はなくなるわけです、原則として。農業だけ考えましても、外務省の望ましい予算を賄うだけのむだはあります。そのほかにも恐らくあるのではないでしょうか。そういうことを考えあわせて、外務省と私どもが一つになって、大蔵省なり農水大臣でもいいですけれども、こういうことを考えたいのです。  それで、現在の予算で十分満足でしょうかといったって、御満足じゃないのは想像にかたくありませんが、足りないとすればどういう部分が足りないとお考えか、お伺いしたいと思います。
  244. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 外務省予算につきまして大変力強い御支持をいただきまして感謝いたしております。  日本外交は、申すまでもありませんが、憲法によって軍事的な力を背景にして国際紛争の終結をすることはできないわけであります。それだけに、日本としては、世界の情勢というものについて大きな耳を持ってこれを掌握していかなきゃならないということだろうと思います。  そのためには、先ほど武田先生御指摘のような情報関係、この収集のためには古今東西といいますか、歴史的に見ましても、また各国のこれに対する対応から考えましても、かなりの予算を必要としてきたのじゃないかと思います。戦前はいろんな形でこうした予算がそれぞれの役所にも配分があったのだろうと思いますが、今の時期ではそういうことはありません。  したがいまして、この額そのものが先生御指摘のように、対前年度比四三%の五十五億円計上しておる。大変な金額といえば金額で、これを最大活用してより質のいい情報を把握しなければなりません。しかし、これで足りるかと言われれば、さらに多くの予算を持って、間違いない世界の情報を確実にキャッチし把握して、日本外交政策の基本にこれを参考にしていかなきゃならぬ、こう思っております。  よって、先生に御指摘をいただきましたことでございますので、今後ともお力添えをちょうだいしながら、外務省としての全体的な情報関係、さらにまた外務省自体につきましては、来年度予算は残念ながらODAにつきましてはカットになっておりますけれども、機構改革その他の点につきましてはかなり橋本総理大臣自身のお考えもありまして、今の外務省はいま少しく機構的にも整備、整頓し、かつ人員についても考慮してもいいのではないかという考え方も出てきておりますので、先生の御指摘を受けながら、さらに努力をしていきたい、こう思っております。
  245. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 よろしくお願いします。  カナダの全予算の二・二%、ドイツの二・五%を上回る三%くらい、せめて二兆円くらいを目標に頑張っていただきたい、こう思います。  それからその次に伺いたいのは、人類の歴史の今の段階でこういうことを言うと、非常に遠くのうろんな空想論、理想論を説くようでありますけれども、例えば、アーノルド・トインビーは、今の人類は核兵器で地球世界を破局に陥れるのか、それとも国家対立のない平和世界をつくるのか、その分岐点にいると。こういうことを二十世紀最大の歴史家と言われた人が、亡くなったのはもう二十年も前でありますが、そういうことを言っているわけです。これはトインビーの史観には異論を言う学者もおりますから、それだけを正しいととる必要もないと思いますけれども、人類の歴史の今の段階はどういう段階かということを考えることは、そのこと自体は非常に大事な問題だろうと思うんです。  そういう見方で見ますと、現在は国家主義全盛、一国の利益だけを考える時代は過ぎ去って、国家連合といいますか、例えばヨーロッパのEU、東南アジアのASEAN、北米のNAFTA、最近は南米のメルコスール、それからロシアとかウクライナの独立国家共同体、すべて文明の伝統が比較的共通で国境が接している国々が集まって一つの統一体を形成するのが今の段階だと思うんです。  これを正しいとすれば、この前クリントン大統領が南米に行って南北米一つになってやろうかということを呼びかけたときに、南米側はひじ鉄を食らわせているんです。これは非常に興味深い現象でありまして、一つになったってよさそうなものだけれども、一つにならぬとあえて言ったことは、メキシコはちょっと違うと思いますけれども、やはり文明のキャラクターが北米と南米ではかなり違うということがひじ鉄の一つの要因だと思います。  いずれにしましても、そういうふうに考えますと、北東アジア日本としては、現実の今の状態ではちょっと考えにくいかもしれませんが、中国、韓国、北朝鮮、モンゴルあたりも入るかもしれませんが、それぐらいの国家連合形態をつくるのが人類の歴史の大きな流れの今の状態に即した世界政策の一翼ではないか。これはちょっと論理的に過ぎるかもしれませんけれども、そういう形でアメリカと戦うわけではもちろんありません。北東アジア国家連合がNAFTAと本当に仲よくするということは十分あり得るし、望ましいことでありますから。  ただ、かつてマレーシアのマハティール首相が東アジア共同体を提唱したときに猛烈な勢いでアメリカが反対しましたので、今申し上げたようなことを言ってもアメリカがああそうか、それは結構だと言うはずは、まず可能性としてはあり得ないと思うのであります。しかし、歴史を長い目で見た大きな論理、あるいはアメリカというのは、これは非常にレベルの高い知性があります。大統領の権力とはまた別のキャラクターがあります。したがって、正しい世界政策で訴えればアメリカの了解も得られるのではないかと。  そういう前提に立って、少なくとも二十年、できれば三十年の間、日本、中国、アメリカが戦争をしないという条約を結べるのか結べないのか、こういうようなことがいろいろと考えられるわけであります。  先ほどの田委員お話もありましたが、ちょっと手を握りにくいような北朝鮮でも、この歴史の流れからいえば、こちらの態度いかんではやはり国の許可なくして行ったり来たりできるような状況を近い将来実現可能性ありとして、努力する目標として取り上げられるのではないかということにもなり得るわけです。  いろいろ申し上げましたが、お尋ねしたいのは、アメリカの世界政策的な了解を得ながら、日本が中国、韓国、北朝鮮、モンゴルあたりと国家連合形態を形成することについて、今すぐ御判断ということはちょっと無理かもしれませんが、問題として検討していただけるかどうかということを伺いたいと思います。
  246. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) 委員指摘のように、国家連合といいますか、そういう形でそれぞれの地域がかつての国の枠を離れて連合しようという動きのあることは承知をしておりますし、顕著な例が、EUのごときは同一通貨をもってこれから移入をしていこうという時代を迎えておるというふうに思っております。  ただこのアジア、特に日本周辺につきましては、それぞれ文化的な背景も異なりまして、それぞれの国々はむしろその多様性を活力にして発展しているというような現段階のような気がいたしておりまして、他の国家連合という形をとっておる地域と必ずしも同一にはできないのではないかと思います。しかし、それぞれお互い地理的に近隣に存することでございますから、いかなる形での統一的といいますか、同一の行動がとり得るかどうかということについては十分話し合っていきたいというふうに思っております。
  247. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 前向きに御検討をお願いします。  終わります。
  248. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後三時四十九分散会      —————・—————