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1997-10-30 第141回国会 参議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十月三十日(木曜日)    午前九時五十分開会     —————————————    委員異動  十月二十九日     辞任         補欠選任      笠原 潤一君     山本 一太君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大久保直彦君     理 事                 須藤良太郎君                 武見 敬三君                 田村 秀昭君                 松前 達郎君     委 員                 岩崎 純三君                 成瀬 守重君                 野間  赳君                 宮澤  弘君                 山本 一太君                 高野 博師君                 寺澤 芳男君                 田  英夫君                 立木  洋君                 佐藤 道夫君                 椎名 素夫君                 矢田部 理君                 小山 峰男君                 武田邦太郎君    国務大臣        外 務 大 臣  小渕 恵三君    政府委員        外務大臣官房長  浦部 和好君        外務省条約局長  竹内 行夫君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    説明員        外務省中南米局        長        田中 克之君        特命全権大使ア        ルゼンティン国        駐箚       荒船 清彦君        特命全権大使ウ        ルグァイ国駐箚  石和田 洋君        特命全権大使ブ        ラジル国駐箚   塚田 千裕君        特命全権大使ぺ        ルー国駐箚    小西 芳三君        特命全権大使メ        キシコ国駐箚   寺田 輝介君     —————————————   本日の会議に付した案件国政調査に関する件 ○国際情勢等に関する調査  (中南米諸国政治経済等に関する件)     —————————————
  2. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、笠原潤一君が委員辞任され、その補欠として山本一太君が選任されました。     —————————————
  3. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) 次に、国政調査に関する件についてお諮りいたします。  本委員会は、今期国会におきましても、国際情勢等に関する調査を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) この際、小渕外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。小渕外務大臣
  6. 小渕恵三

    国務大臣小渕恵三君) このたび外務大臣に就任いたしましたので、大久保委員長を初め委員各位に謹んでごあいさつをさせていただきます。外務大臣といたしましての職務を遂行するに当たり、これまでの外交成果維持発展に努めつつ、誠実、堅実、果断をモットーとして全力を尽くす決意であります。  当面の外交課題として次の諸点を申し上げます。  まず、日米関係に関しては、先般策定された新たな日米防衛協力のための指針につき、本委員会での御議論を踏まえ、今後その実効性確保に向けた作業を促進してまいります。また、先週末沖縄を訪問し、大田知事とも会談いたしました。沖縄県における米軍施設・区域にかかわる諸問題については、沖縄に関する特別行動委員会最終報告の内容を着実に実施するため全力を挙げて努力をいたします。  ロシアとの間では、今週末の首脳会談両国首脳間の信頼関係が一層強化されることを期待しております。このような首脳レベルを初めとする政治対話を維持強化し、さまざまな分野における協力を進めるとともに、両国関係の完全な正常化の展望を開いていくよう引き続き努めてまいります。中国との間では、橋本総理の訪中及び来月の李鵬総理訪日を通じ、相互信頼を強化していくことが重要であります。外務大臣としてこれら首脳レベル対話を的確に後押ししてまいります。  新しい漁業協定に関しては、中国との間では、九月初めにその大枠について実質合意に達し、現在、できれば李鵬総理訪日時に署名を行えるよう日中両国作業中であります。韓国との間では、双方の立場にいまだ隔たりがあり、交渉を続けておりますが、一日も早く締結に至るべく全力を傾けております。  日朝関係については、今後とも、第二次大戦後の不正常な関係を正すとともに、朝鮮半島の平和と安定に資するようにするとの観点を踏まえ、韓国等と緊密に連携しながら対処してまいります。現在、第一回の日本人配偶者故郷訪問早期実現に向け努力しております。人道支援については、国際社会の一員として応分の役割を果たすとの考えに立ち、先般、その実施を決定いたしました。他方、拉致疑惑問題については、我が国国民の安全にかかわる重要な問題との認識に立ち、真剣に対処してまいります。  十二月には京都で気候変動枠組条約第三回締約国会議が開催されます。我が国議長国として先般発表した数値目標等に関する提案を軸に各国立場を収れんさせ、会議成功に導くべく、関係閣僚とともに全力を尽くします。また、同じく十二月には対人地雷全面禁止条約署名式が予定されており、我が国としても同条約署名に向けて調整に入ったところであります。  このように課題は山積しておりますが、外交を進めるに当たっては、国民皆様の御理解と御支持が不可欠であります。本日は、中南米駐在の一部大使委員皆様方との意見交換が行われますが、こうした試み外交に対する国民の御理解を深める上で極めて有意義であり、この場をかりまして、本委員会の御発意に感謝申し上げます。  最後に、外務大臣の重責を果たすに当たり、大久保委員長を初め委員皆様の御指導と御協力を賜りますようお願い申し上げ、私のあいさつとさせていただきます。(拍手)     —————————————
  7. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) 次に、国際情勢等に関する調査のうち、中南米諸国政治経済等に関する件を議題といたします。  本日は、中南米各国に赴任されております大使が一時帰国されている機会を利用いたしまして、中南米諸国政治経済等事情説明を聴取し、それに対する質疑を行いたいと存じます。  大使各位には御多用のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。  従来から本委員会は、外交の第一線に立うておられる大使から直接赴任国事情等をお聞きする機会を設け、あわせて我が国外交に対する国民的な理解協力を広げたいと考えていたところでございます。今回、初めての試みとして、中南米主要国在任大使との間でそれが実現したわけでございますが、ぜひともこれを有意義なものといたしたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。  議事の進め方でございますけれども、まず外務省中南米局長から中南米大使会議概要について御報告をいただき、本日出席いただきました五名の大使の方々から各七分程度、順次赴任国についての説明を聴取いたしたいと思います。それから、おおむね正午をめどに質疑を行いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  それでは、田中中南米局長より中南米大使会議概要について説明を聴取いたします。田中中南米局長
  8. 田中克之

    説明員田中克之君) まず最初に、こういう機会を私どもに与えていただきまして、大変ありがたく思っております。心から感謝いたしております。  この二十八日及び二十九日の両日、東京で、中南米から二十二名の大使及び臨時代理大使、さらには米国の公使の参加を得まして、中南米大使会議を開催させていただきました。私の方から概要について、ごく簡単でございますけれども御説明させていただきたいと思います。  この会議では、経済協力であるとか広報、さらには領事移住文化交流といったようなことについても話をしておりますが、大使方の主たる関心は、一つには最近の中南米経済統合に見られるような目立った動き、これについてどう見るかということ、そしてこれに我々としてはどういう形で対応していくかということ、それから第二番目に今後の対中南米外交はどういう方向でやっていくべきか、こういうようなところに議論関心が集中したように思われました。  最近の最も目立った動きとして取り上げられましたのは、中南米地域経済統合進展という問題でございます。先生方既に御存じのとおり、中南米にはNAFTAであるとか、あるいは南の四国、すなわちブラジルアルゼンチンウルグアイパラグアイで構成いたしますメルコスールという地域経済統合体がございます。そのほかにも、中米には中米地域経済統合体、さらにはベネズエラであるとかコロンビアなんかを含みますあのアンデス地域ではアンデス地域統合体、さらにはカリブ諸国にもそういった地域経済統合体というものがございます。  ただ、今、非常に注目を浴びておりますのはメルコスール進展ぶりでございます。他方、同時にNAFTAにつきましても、メキシコから見ますと非常にメリットのある話と、こういう状況で見られております。  他方において、このメルコスールあるいはNAFTAというものが存在するわけでございますけれども、同時に中南米全体、さらにはアメリカ、カナダを包含した米州全体の自由貿易取り決めをつくろうという動きも出てきております。これは二〇〇五年までに交渉を終えたいということで、一応の合意が全中南米諸国及び北米の間でできております。  そこで、議論になりましたのは、このFTAA米州自由貿易取り決めてございますが、一体これはどういう方向取り決めがつくられるのであろうか、こういうことでございましたが、結論から申しますと、このFTAAをつくる上では現在のところ非常にいろいろな問題がある。特に、今見られるのは、米国中心とするNAFTAグループと、それからブラジル中心とするメルコスールグループが綱引きをやっておって、なかなか一筋縄では簡単に交渉が妥結するというようなことにはならないであろうということでございます。  他方中南米には既に欧米からの投資が非常に進んでおります。中南米は、最近はアジアに次ぐ第二の経済成長センターということで呼ばれておるわけでございますが、欧米からの投資は非常に進んでおります。他方日本からの投資というのは、自動車関連産業ブラジルあるいはアルゼンチン、さらにはメキシコに出ておりますけれども、全体として見ますとまだ及び腰というようなところが見てとられます。  そういう中で日本としては、こういう地域経済統合体にいろいろなところで動きが出てきて、全体としてFTAAというような方向に動いていくそのプロセスの中で、どういう対応を日本としてはとるべきなのかというところがこのテーマでの議論中心でございました。  いろいろな議論が出ましたけれども、一つにはWTOとの整合性を常にやはりきちっと守ってもらうように我々としては注文をつけるべきだというような意見、あるいは、そうはいっても既にもう成立したメルコスールというようなものについては、これはやはり日本もEUが行っているような何か枠組み協定でもつくって動かしていった方が早いのではないか、こういうような意見とかいろいろ出ました。  いずれにしましても、この大使会議というのは結論を得るための会議ではございませんものですから、いろいろな意見が出たわけでございますけれども、主たる意見としては今のような意見があったということを御紹介させていただきたいと思います。  それから、もう一つ関心事項として取り上げられましたテーマは、資源確保観点から中南米をどう見るかという点でございます。  最近の日本石油輸入という観点からいいますと、中東への原油依存度は八〇%にまで達しております。これは、例の石油危機が叫ばれました直後にはいろいろな多角化努力がございまして、かなり低い数字まで行っておったのでございますが、最近はまたもとに戻って八〇%というようなところまで来ておるわけでございます。さらに、アジア経済成長、それに由来します将来のエネルギー需要が非常にふえるであろう。こういうことから、将来は中東原油をめぐってアジア諸国による争奪戦が起こるのではないか、こういうようなぐあいに予想されるわけでございます。  そういうところにあって中南米は、例えばメキシコであるとかベネズエラであるとかコロンビアであるとかというような資源を持ったところがあるわけでございます。そういう国の石油状況はどうか、それから将来我が国として、この多角化方向で考えるときには我々としては何をなすべきか、こういうような点についていろいろ御議論をいただいたわけでございます。  さらに、食糧の問題もございます。日本食糧自給率は今四〇%で、先進国の中で一番低いと言われておるのでございますけれども、将来経済成長、特にアジア経済成長が続いてまいりますとどうしても食糧不足が予見される、こういう状況になります。そういたしますと、不足している食糧を供給できる先ほどこかということを考えてまいりますと、やはり中南米、特に南のアルゼンチンブラジルパラグアイウルグアイ、こういったところが一つの大きな候補として挙がってくるわけでございます。  そういうことで、今回の大使会議では、こういった食糧という観点から見たときのアルゼンチンブラジル重要性、さらには将来の供給源としてこういった国を確保しておくためには我々としては何をなすべきかというようなことをいろいろ議論していただきました。  さらにもう一つ……
  9. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) 時間がなくなりますので、短くお願いをいたしたいと思います。
  10. 田中克之

    説明員田中克之君) 申しわけありません。  あとペルー事件教訓ということをいろいろ御議論いただいたというところでございます。  以上が大体の概況でございます。
  11. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) ありがとうございました。  続きまして、各国大使から赴任国についての説明を順次聴取いたしたいと思います。  初めに、ペルー国駐箚特命全権大使小西芳三君。
  12. 小西芳三

    説明員小西芳三君) 小西でございます。よろしくお願いします。  ただいまペルー事件教訓というお話がありましたけれども、これにつきましてはむしろ御質疑と申しますか、質問のところでお答えさせていただくという形にさせていただきます、時間の関係もありますので。確かにこの事件は大変なインパクトを与えていまして、いまだにいろんなところで人質その他後遺症は残っておりますけれども、それはできれば質問のところに回させていただきたいというふうにお願いします。  私、七分間で三点申し上げたいと思います。  一つは、フジモリ大統領は一九九〇年から七年間大統領を、これは二期目ですがやっておりまして、二つの大きな成果を上げている。一つは、それ以前のペルー経済というのは、これは言ってみれば非常に混沌とした、インフレ率は四けたとか、外貨はもう払底するとか非常にひどい状況で、国民全体に対して大変な負担を強いるといいますか、希望のない状態だったわけです。フジモリさんが一九九〇年に選ばれて以来、いわゆるワシントンコンセンサスと申しますか、ネオリベラリズムといいますか、現在の世界のマクロ経済政策の趨勢となっております政策をきちんと取り入れて、非常に強い意思を持って一部の抵抗も排しながら、特に第一期の五年間集中してその努力をやってきました。  その成果が上がって、例えばインフレ率もことしはもう一けた台、九%ぐらいにおさまるだろうと。それから、外貨大統領になった時点ではもうゼロというかほとんどなかったのですけれども、七年たった現在百億ドルの外貨というところまで来ております。それから、民営化ということを非常に積極的にやりましたので、長期の資本がどんどん入ってきております。  それ以外にも、国営企業民営化のみならず、やはりペルー資源国ですから、その資源に対する投資がチリ、スペイン、米国、それから英国、最近はカナダも、近々カナダ工業大臣が来て多分四十億ドルぐらいの投資案件を発表するんじゃないかということで、経済のパフォーマンスをマクロで見ますと非常によくなってきております。それが第一点でございます。  ただし、二期目に入りまして、今のワシントンコンセンサスマクロ経済政策をやりますと、途上国共通問題点としてその政策で取り残される非常に重要な分野というのがあるわけです。それは貧困の問題であるとか失業者の問題です。フジモリ大統領は第二期に入って、九五年から政策重点を、従来のものは続けながら貧困対策、それから失業者の救済といいますか、雇用をふやすという方向努力重点を移しております。ただ、この二つの問題は、マクロ政策の転換に比べまして実は時間もかかるし、非常に難しい問題です。そこで非常に苦労しております。そこでまた、日本の援助の必要性もあるということかと思います。それがフジモリさんが今直面している問題ということで第二点目です。  三番目に、テロ現状がどうなっているのかということで、これは諸先生方関心があると思いますけれども、既に昨年の十二月十七日のあの事件が起こった時点で、実はフジモリさんの第一期のもう一つの大きな成果テロ対策であったわけです。これは大成功をおさめた。それ以前の、例えば一九八〇年代の末からフジモリさんが大統領になっての二、三年間、これはリマ市内でほとんど毎晩のように爆弾が破裂するとか、もう何千という人が生命を奪われるというような、テロがしょうけつをきわめた時期があったんですが、これは、軍、警察の協力を得てはぼ九三年の半ばぐらいにはおさまったわけです。  したがって、あの事件が起こるまで三年半ほど、一応ペルーテロ、もちろん一つの流れはMRTAで、これはいわゆるカストロ主義と言われておりますし、もう一つは昔のも沢東主義に近いセンデロ・ルミノソ、これもほぼテロが終わったんじゃないかというのが一般的な認識であったわけです。  しかし、テロについての情報収集というのはペルー関係当局は十分やっていますが、やはり少数になったとはいえ残党が若干残っているわけでして、それが、今までのフジモリ政権テロ対策に対して一種の自分たち存在力を誇示するという目的があったと思いますが、ああいう事件を引き起こした。それに対してペルー側も大きな反省を持っておりまして、したがって内務大臣警察庁長官、これは直ちに辞任、それからそれ以外の指揮系統にあった二十三名の関係者も今軍事法廷で裁判が続いております。  現状はどうかといいますと、その後、対策をさらに強化しておりまして、MRTAの方はセルパに匹敵するもう一人の指導者が生き残っております。これはボリビアペルーとの国境の間を行き来しているという情報をつかんでおります。それから、むしろこれからもし仮に何かあるとすれば、センデロ・ルミノソ、こちらの方が毛沢東主義で非常に手段も強硬ですから危険なんですけれども、これが一般的に今情報関係者の間で言われているのは、百八十ないし二十が、アンデスのどっちかというとボリビアに近いような地域山岳地帯にまだ残っている。それに対するシンパが、シンパというのは自分武力活動をやらないけれども便宜を図るというのが約千人ぐらい全国にいるんではないか。そういうのが現状でございます。  以上です。
  13. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) ありがとうございました。  次に、アルゼンティン国駐箚特命全権大使荒船清彦君。
  14. 荒船清彦

    説明員荒船清彦君) 荒船でございます。  アルゼンチンにつきまして、私が駐在していて一番大きな悩みというのは、やはり大きな認識ギャップでございまして、日本側ではアルゼンチンと申しますと、タンゴ、あるいは若い人たちはサッカーのマラドーナというところまではいくんですけれども、その先がよくわかっていない。これまでそういった意味で、遠いという点もあるでしょうけれども、重要性に十分な注意が払われてきたとは言えない状況が続いてきたことにもよるとは思います。  アルゼンチン側も、やはり日本は大国であり伝統ある文化国家であるとはわかっていても、それ以上細かい話はわかっていない。しかも、アジアの次は中南米というような世界的な一種の常識に対して、何となくお互いなくても生きていけるんじゃないかというような感じを持った人が非常に多いということで、その認識ギャップをどうやって縮小していくかというのが日ごろの悩みでございます。  そういった意味では、日米関係にでももちろん認識ギャップはあるわけでございますけれども、意識している点、あるいはお互い重視はしているという点がここと異なりまして、ただし大きな救いは、両方ともお互いに好意的な感情を抱いているということではなかろうかと思います。その意味では、先般両陛下が御訪問されましたけれども、非常に自然発生的な大歓迎で、しかもこのイメージチェンジから、あるいは対日関心に非常に大きな影響を与えることができた、結果的にはそういうことになったと思います。  現在、政治でございますが、ついこの日曜日に下院の総選挙がございまして、与党が過半数を割りました。しかしながら、不満は別に経済改革にあるわけではなくて、その結果から出た、要するに、マクロ経済ではよかったけれどもミクロで失業が一六%とか、あるいは給与が低いとかいうようなことに対する不満、それからあとは、新聞記者のカベサスという記者が虐殺されたり、あるいは政府の一部なんかでの腐敗がいろいろと問題になったりというようなことに対する一般的な不満が影響したんだろうということです。しかしながら、民主化経済改革という点では、これは選挙のイシューにはなっておりませんで、今後も一貫性が保たれるであろうと思われます。  また、経済については、一言で申しまして、つい最近発表されましたIMFの報告書の中で、アルゼンチン中南米のお手本であるという指摘がございまして、これにほぼ尽きるのではないかと思います。成長率も、九五年のテキーラ効果によるマイナス成長を除いては大体七、八%の成長を続けておりますし、ことしも多分八%になると言われております。それから、民営化自由化日本以上に進んでいる面がございまして、メルコスールでは先頭を切っているという感じがございます。  また、食糧についてもあるいはエネルギーについても非常に重要な国でございまして、例えば、あそこの大草原パンパというのはアルカリ土壌でございまして、しかもその面積が日本の一・六倍もある。植えれば肥料もなしにおいしい野菜が育ってしまうというようなところで、豪州やら何かと並んで、少なくとも欧米諸国は大変な関心を持って投資している。例の投資家のジョージ・ソロスなんかも大いに土地を買い上げまして、今やアルゼンチン最大土地所有者にまでなっております。天然ガスも良質ですし、銅は全然手がつけられていない。大変想像もしがたいような豊かな国でございます。  メルコスールにつきましては、これは既に二億の人口を抱える地域ですし、しかも全体の経済規模からいって九千億ドルぐらいの規模、要するに、比較しますと中国経済規模よりも二、三割大きいという大変な経済体でございます。中南米全体の五四%を占める大変大きな地域でございます。これが現在、ラテンアメリカの政治的、経済的な中核的役割を果たしつつあるという意味でも注目すべきかと思います。しかもこれは、いわゆる中南米三大国と普通言われるメキシコブラジルアルゼンチンのうちの二つがやっているだけに重視せざるを得ない面があるわけでございます。  じゃ日本との関係はどうかといいますと、地理的には日本から最も遠いアルゼンチンでございます。しかしながら、実は外交的には日本と一番近い国の一つ、数少ない国の一つでございます。  例えば、非同盟からは脱退いたしまして、その点ブラジルやらチリやメキシコと違うんですけれども、最近は、クリントン大統領の訪問で、ラテンアメリカで唯一米国の一種の同盟国扱いということになったり、北朝鮮の軽水炉問題でも、KEDOというのがございますが、ラテンアメリカで唯一遠路はるばる参加してくれている国でございますし、過去百年常に大体対日支持という国でございます。  そういった意味で、非常に重要な国でもございますが、ようやく両陛下の御訪問あるいは外務大臣の御訪問、あるいは政府対話の強化というようなことと連なりまして、ことしには経団連の会長が史上初めていらっしゃいましたし、日本商工会議所会頭の稲葉さんを団長とする使節団も参りまして、大変なジャパンラッシュが続いておりまして、ようやく上向き調子になってきたかなという感じでございます。  来年は、ちょうど修好百周年という大事な節目を迎えますので、このモーメンタムを維持強化していく絶好のチャンスではなかろうかと。そうでもしないと大魚を逃すことにもなりかねないというような気持ちで、日亜両国でいい記念すべき事業をやろうじゃないかというムードになっております。御理解、御支援を賜りたいと存じます。  どうもありがとうございました。
  15. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) ありがとうございました。  次に、メキシコ国駐箚特命全権大使寺田輝介君。
  16. 寺田輝介

    説明員(寺田輝介君) メキシコの寺田でございます。  私の方も、改めて本日、本委員会で任国事情についてのお話をさせていただくという機会を与えていただきまして心から御礼を申し上げます。  私は、四点について簡単に御説明いたしたいと思います。第一に移住百周年、二番目にメキシコ政治経済情勢、三番目にNAFTA、四番目に一言でございますが白墨修好条約でございます。  第一の移住百周年、おかげさまで本年の五月十二日にメキシコシティーで無事式典が挙行されました。これには御案内のとおり、日本から秋篠宮、同妃両殿下、加えましてセディージョ大統領夫妻、ダリア外務大臣夫妻等メキシコの閣僚も出席いたしました。加えまして、私どもにとりまして大変光栄に思いましたのは、まさに立法府を代表されまして奥田議員を団長とされる衆参両院の議員団五名の先生方出席を賜ったということでございます。  さて、この移住百周年でございますけれども、メキシコはまさに中南米におきまして最初に日本人を受け入れたということでございます。それだけに、一年以上の時間をかけましてこの百周年に取り組んだわけでございます。  私は、この百周年事業で非常に大事だと思いますのは、もしこの記念式典のみにとどめたならば五月十二日のわずか二時間ばかりの式典で終わってしまう、それではいけないんだと、やはり一年間を通じて日本メキシコの一層の緊密化を図る、これがやはり百周年の式典の一つのねらいではなかろうかと、こう考えたわけでございます。  そこで、セディージョ大統領の賛同も得ましていろいろな事業を行いました。その中には、コンサートをやったり、図書の寄贈をやったり、あるいは総理府の青年の船にも来てもらう、また海上自衛隊の練習艦隊にメキシコに来てもらいまして、特に象徴的に百年前に、あのチャパス州の港もないようなプエルト・マデロというところがございますが、そこに入港してもらい、チャパス州州民あるいは州政府に対して敬意を表した、こういう事業を行ったわけでございます。  しかし、最初から考えたわけでございますけれども、百周年に何かメキシコに残すことはないかと。なかんずくメキシコ三十一州の中でチャパス州というのは一番貧しい州でございます。そこにアカコヤグア、あるいは俗称エノモト村という村がございます。そこに何か残すことはできないかと。そこで、私ども考えましたのは、政府のODAを可能な限り使う、あるいは成功している日系社会に呼びかける、あるいは商工会議所の皆さんにお手伝いを願うと、こういうことの結果として今三つの点が実現しつつあるわけでございます。  一つは、この日本人の子孫がおられるアカコヤグア村、それからメキシコのチャパスに入ってまず行きましたところはタパチュラという現在人口十万の都市、そこに日墨交流会館をつくると。これはやはり百年前に日本人を受け入れてくれたお礼ということで寄贈することにしたわけでございます。  ところで、現在日系人がおりますアカコヤグア村でございますが、私は昨年の一月に行きまして、そこで日系の方に言われたことは、日本は百年たってこれだけ繁栄した、自分たち経済水準は依然として高くない、大使、何かしてくれませんかと、こういう要請でございました。  私はやはりこれは二つの道があると考えまして、短期的にはこの村の基盤である農業を何とか生産性を向上できないかと、こういうことで本省とかけ合いまして、これまたODAの使用でございます。ここに農業開発調査団を派遣するということで、既に派遣いたしました。問題はこれからのフォローアップでございます。  それからもう一つは、中長期的に考えますと教育でございます。ここには学童百数十名を対象とした中学校のみある。私が行ってみまして驚きましたことは、先生は非常に熱心な先生でございましたが、教室にはほとんど教材がない。そういう状況でございましたので、これまたODAの草の根無償というものを使うことにいたしまして、私は十二月の中旬にでも、これで恐らく五回目になると思いますが、この村に行きまして、教材を寄贈し、改めてこの百周年の最後の締めくくりをしたい、こう思っておるわけでございます。  私は、この百周年関連の事業がほぼ終わりつつありますが、そこで感じられますことは、一万数千名の日系人の方、中には前の政権で厚生大臣の要職を占められる方も出てきたわけでございますが、この百周年で日本がオールジャパンということでいろいろな行事を行ってきたということで、日系人社会に対するメキシコ人の温かい感情が一層強まったという気がするわけでございます。私どものメキシコにおける経験というものが、今後、ペルーあるいはブラジルアルゼンチン等々、移住百周年事業がございますので、参考になるのではないかと思っておるわけでございます。  ところで、こういった百周年、実はことしだけですべてうまくいったわけではございませんで、その前の段階で私は二つの大事な日本からの要人訪問があったということをこの際申し上げたいと思います。  一つは、昨年の七月にまさに参議院より斎藤議長においでいただいたということでございます。その際に、政治的に非常に高いレベルで、来年は移住百周年だと、よろしくお願いするということをおっしゃっていただいたということでございます。加えまして、八月でございますけれども、橋本総理においでいただいたと。こういう中で無事移住百周年関連事業が終わりつつある、こういうことでございます。  第二点でございますが、メキシコ政治経済情勢、かなり厳しい状況にございます。やはり三年前の話になりますが、一九九四年、これはメキシコにとって大変激動的な年であったというふうに総括できると思います。  具体的に申し上げますと、九四年の一月一日、待ちに待ったNAFTAが発効したと。まさにそのお正月の日にこのチャパスの山岳地帯でサパティスタ民族解放軍が蜂起するという事件が起きた。三月には大統領候補のコロシオ氏が暗殺された。そういう状況の中で、八月に大統領選挙が行われたと。それで、御案内のとおりセディージョ大統領となったわけでございます。大統領選挙が終わった途端、今度は九月にはルイス・マシューという与党の幹事長がこれまた暗殺されたと。十二月一日からセディージョ大統領は就任したわけでございますが、まさに就任して二十日後の十二月二十日に通貨危機が発生してしまった。大変な重荷をしょって大統領は新政権を発足させたわけでございます。  こういうことでございますから、九五年、九六年というのは経済面、政治面、社会面にも大きな影響を及ぼしたと。具体的に申しますと、九五年につきましては、経済成長がマイナス六・九%になってしまうと。せっかくサリーナス政権の後半にはインフレを一けた台に持っていきましたのが、五二%になってしまうと。  こういうことになりますと、政治面、経済面に当然影響が出てくるわけでございます。その一つのしっぺ返しと申しましょうか、本年の七月六日の中間選挙で与党は大敗北いたしました。  社会面を見てみますと、犯罪が増大している、かつまた恐るべき営利誘拐がふえていると。あるいは、私は二回目の勤務でございますが、今回非常に気がつきましたのは、日本のホームレスと違いましてストリートチルドレンが非常にふえている、かつまたインフォーマルセクターも増大している、こういう状況になったわけでございます。  しかし、こういう苦しい状況にもかかわらず、セディージョ政権というのはマクロ経済運営に関する限りしっかりかじをとって少しずつ経済改善に努めている。ちなみに、恐らくことしは成長率は四・五%程度になろうかと思われますし、インフレもようやく一五%ぐらいになってくる、こういうことでございます。  しかし、こういう中で、メキシコにとって一つの明るい材料といいますのは、第三の点は、NAFTAでございます。まさに、北アメリカと自由貿易地帯をつくったと。この効果というのは貿易の面と投資の面で出ている。かつまた、このNAFTA動き出しましてことしの四月までのメキシコに入ってきました投資の額を見ますと、二百四十一億ドルも入っている。これがメキシコにおいて次から次と労働集約的な産業を興している。しかし、このNAFTA効果と落ち込んだミクロの面におけるマイナス面とまだまだつり合いがとれていない、こういう実情にあるわけでございます。  さて、最後に一言のみ。ことしは移住百周年、来年は日墨修好条約百十周年でございます。この条約意味といいますのは、まさに明治維新政府が列国に抑えつけられて不平等条約を締結させられたと。その中で、メキシコのみが平等条約を締結してくれたわけでございます。また来年も感謝の念を込めて新しいいろいろな記念事業を考えておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  ありがとうございました。
  17. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) ありがとうございました。  次に、ウルグァイ国駐箚特命全権大使石和田洋君。
  18. 石和田洋

    説明員石和田洋君) 石和田でございます。  人口規模で申しますと数千万から一億六千万という大国の中で、人口三百二十万のウルグアイをこういう場にお招きいただきまして、ありがとうございました。せっかくの機会ですのでぜひPRに励みたいと思います。  ただ、御案内のとおり、ウルグアイというのは、非常に小さいというだけではなく、白人国家という南米の中では非常に珍しい国でもありますし、日本からの移民がなかったということで日本人社会というものがそれほど大きい規模でないというようなこともありまして、なかなか日本で知られるという機会がございません。恐らくウルグアイ・ラウンドというような言葉、あるいはペルー事件で多少話題になるようなことがあったということで記憶されるという面が多かろうと思いますが、このウルグアイ・ラウンドにしましても、あるいはペルー事件の対応という面につきましても、ある意味ウルグアイの特色をあらわしているようにも思われますので、そうした切り口で少しお話しさせていただきたいと思います。  ウルグアイが民主制体制に移行しましたのは十一、二年前ということでございますが、その最初の大きい国際的、外交的なイベントとして、ガットの閣僚会議ウルグアイにございますプンタデルエステというリゾート地に招待した。そのときこれをウルグアイ・ラウンドという形で名づけたのは、当時の倉成外務大臣であったというふうに聞いているわけです。  そのウルグアイ・ラウンドというものが世界の自由貿易の流れを大きく加速したということがございますが、この自由貿易を大きく加速するという流れの中でメルコスールというものが一九九五年に発足したわけでございます。ウルグアイはもともとブラジルアルゼンチンとの関係を考えないで経済を計画するということが不可能な国柄でございますので、当然のことながら、このメルコスールに当初から参画するということになったわけでございます。  この流れの中で、経済規模は小国ながらかなり拡大してまいりました。昨年もGDPが五%弱伸びておりますし、ことしも七%近い伸びが期待されているということで、経済規模が大きくなる一方、それまでウルグアイ一つの大きい特色であった中間層がだんだん薄くなってきたという面がございます。貧富の格差が拡大してきて、それが社会問題化するという面がございます。  実はウルグアイは、第二次大戦後間もない時期に世界の食糧供給国として大変な経済繁栄を謳歌したわけですが、その時期に世界的にも非常に先進的な社会福祉政策を実施したということがありまして、その負担が一方では今非常に重荷になってかかってきております。これを改革するといううたい文句で今のサンギネッティ政権は努力しているわけですが、民主制が非常に長い歴史を持っている国であるだけに、なかなかその改革のテンポが思うように進まないという面がございます。  そうした中で、もともとMRTAと非常に似たような組織でトゥパマロスというゲリラ組織があったわけですが、民政移行するときにその組織を合法化して、現在その代表者も一つの政党を構成するというような状況でございます。そういうこともありまして、なかなか貧困対策というものに対して政府が思い切った手を打つというのが難しい状況に現在ございます。  それは、例えば失業率が、経済が拡大しているにもかかわらず、その一方で増加する傾向にございます。メルコスール発足時には一〇%を切っていた失業率も、現在では一二%を超える割合になっております。しかも、その一二%というものが、農村部の失業者が都市部に流れ込むという形で都市部の失業率がかなり大きくなって、都市での問題が非常に難しい状況でございます。ただ、メルコスールという枠組みの中でこの国の経済を何とか立て直そうというのが現在のサンギネッティ政権の方針でもございます。  そうした中で、実は三年ほど前から、このウルグアイ・ラウンドの成果でもあるわけですが、数十トンから数百トンという規模ではございますが、日本へ米を輸出するという実績をこの三年間積み重ねてまいりました。  また、つい二、三週間ほど前に、ウルグアイの牛肉に対して口蹄疫の清浄国であるということで輸入禁止が解除されたということで、ウルグアイ政府としては非常に日本に期待するところが大きいわけでございます。  メルコスールという地域経済の枠組みの中でウルグアイが今努力しているわけです。一方で、もちろんグローバリゼーションという大きい流れがあるわけですが、南米には、冒頭に田中局長の方からお話がございましたような形でいろいろな地域経済の統合の形がございます。  これは矛盾するようにも見えますが、グローバリゼーションという大きい流れの中にいきなり例えばウルグアイのような国が飛び込むというのは非常に難しい問題もあります。メルコスールという枠組みの中で、全体としてスケールメリットを生かしながら経済力をつけ、そうすることがグローバリゼーションに資するという面もあるように思われますので、ぜひこのメルコスールという枠組みの中で日本としても貢献できるようにということを考えておりますので、先生方の御理解も賜りたいということでございます。  ありがとうございました。
  19. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) ありがとうございました。  最後になりましたが、ブラジル国駐箚特命全権大使塚田千裕君。
  20. 塚田千裕

    説明員(塚田千裕君) このような機会をちょうだいいたしまして心から御礼申し上げます。  私は、ブラジルの最近の事情、日伯関係及び非常に大きな日系人社会がございますので、その日系人社会の状況等を中心にお話をさせていただきます。  ブラジルは一九六四年から八五年まで二十一年間軍事政権が続きました。その後、民主制になりまして現在に至っております。現在のカルドーゾ政権は一九九五年にスタートしたわけでございますが、その前、大蔵大臣として有名なレアル・プランというものを策定いたしまして長年のインフレの克服に成功いたしました。経済はカルドーゾ大統領の采配によって立ち直ったというわけでございます。昨年はインフレが一〇%にとどまりまして、ことしはもっと低い、恐らく六%から八%でおさまるであろう、先進国並みの一けたのインフレにおさまる、そういうところまで戻ってまいりました。  一方、いろんな意味ブラジルは大きな国になりまして繁栄をしております。安全保障理事会の改革、国連改革が進めば、ラ米からはブラジルが安保理の常任理事国に選ばれるであろうという展望が開けておりまして、ブラジル自身も当然それになりたいという気持ちでいろいろ活動をしております。  インフレがこのようにおさまったというのは実に四十年ぶりのことでございまして、ブラジル人の八〇%は物価というものは毎日上がるものだと思っていたわけでございますが、四十年ぶりにそういう普通の国になったというわけでございます。  一方、日伯関係でございますが、九五年は修好百周年、外交関係を持ってから百年を祝いましていろいろ行事がございました。昨年の三月にはカルドーゾ大統領が国賓として日本に招かれまして、国会におきましても演説をいたしたことは私どもの記憶に新たなところでございます。昨年の八月には橋本総理中南米四カ国訪問をなさいました。ブラジルにお見えになられたのは八二年の鈴木善幸総理のとき以来、十四年ぶりでございました。  さらに、ついこの間、史上初めて天皇、皇后両陛下がブラジルアルゼンチンを訪れられまして、官民挙げての自発的な歓迎を受けて大きな成功をおさめられました。私もすべての行程にお供いたしました。特にサンパウロのサッカー場では七万人の大観衆のどよめく中で大変な歓迎を受けられまして、私も深い感動を覚えた次第でございます。全体としてブラジル社会には大きな感動を与え、また日系人社会には精神的励みになった、これでまた頑張ろうという気持ちを与えられたという日系人が多かったと私は思います。  さて、その日系人社会でございますが、ブラジルでは百三十数万、六世までの日系人がございます。中南米全体ではペルーアルゼンチンメキシコボリビアパラグアイコロンビア、それぞれ数の大小の違いはありますが、全部まぜると百五十万人ほどの日系人がございます。この日系人社会の紹介をしたいと思います。  六世まで出ておりまして、各界に人物を輩出しております。全体としてはおおむね安定的な生活を営んでおられる、あるいは繁栄をしていると言っていいと思います。また、ブラジル社会からも相応の尊敬を得ている、これを目の当たりにすることは、大使としてブラジルに駐在しておりましてこんなにうれしいことはございません。  ただ、日系人社会も幾つかの問題点に遭遇しております。それを一、二御紹介したいと思います。  一つは、一世が老齢化していることでございます。百三十数万の中で一世、つまり日本で生まれてブラジルに渡った人は今や十万人を切ろうかという数に減りつつあります。これは、ある意味では当然でございまして、ブラジルは一九七〇年代に移民受け入れ国であることをやめました。東京オリンピックのころは七千万の人口が今や一億六千万でございます。日本に追いついたのが私がブラジリアにおりました一九八〇年でございました。したがって、ブラジルは今や移民受け入れ国ではございません。  一方、日本の方も高度成長以降、移民、移住者ということで外国に行く日本人はいなくなりました。そういうわけで、移住者の供給がございませんので一世は減る一方でございます。非常に寂しいと。  一例を申し上げますと、天皇、皇后両陛下が移住六十周年、七十周年、二十年、三十年前においでになられたときはサンパウロで七万人のサッカー場を超満員にした歓迎会であったわけでございますが、今回は一万人規模のスポーツセンターでの会合であった。ただし、サンパウロの一つ南のパラナというところでは非常にまだ元気でございまして、サンパウロに負けない大歓迎会が行われました。こういう老齢化の問題がございます。  二つ目には、日本語、日本文化の継承の問題がございまして、残念ながら二世三世四世と世代が下るにつれて日本語の能力が落ちていくのは当然でございます。それにつれまして日本のいろいろな純風美俗といいますか、いい徳目が失われていく、これは一世が嘆くわけでございますが、そういう問題がございます。  三番目は、これも日本と同じなんでございますが、お年寄りがふえる、そうすると孤老と呼ばれるひとり暮らしの老人の問題、あるいはこういう老人をどうやって介護するかというのが日系社会の大きな問題でございます。  四番目は、リーダーの交代の問題でございます。やはり日系社会を活力あるものにしていくためにはいろいろ活動をしなければいけませんけれども、団体をつくり、まとめ、事業をするためには指導者が必要です。ところが、顔となるような指導者が老齢化してどんどんかわる。二世三世になりますとやはり感受性が違ってきますので、今までのリーダーとは肌合いが違う。新リーダー、日本の方にも十分に顔を向け、なおかつブラジル社会の中でコミュニティーを引っ張っていくリーダーをどうやって養成するかという問題がございます。  五番目に、ちょっと視点は変わりますけれども、日本へ逆にやってまいりまして就労するいわゆる出稼ぎの問題がございます。現在、二十万人とも言われております。これはペルーボリビアからも来ておりますが、こういう人たち日本でいろいろな問題に直面している、この問題がございます。  日系社会は、以上申し上げたような問題に直面しておりますが、我々は何をしているかと申しますと、政府レベルではかってのような大量の移住者は送れませんけれども、青年ボランティアというような形で若い人に何らかの形で行ってもらってそのまま永住してもらう、あるいは企業進出があれば社員として行っていてブラジルが好きになって事実上永住してもらう、例えばそういう形のものがございます。あるいは日本語の問題につきましては、JICAだとか交流基金だとか、日本の都道府県、市町村あるいは日本の宗教団体、果てはことしから始まりましたNHKのケーブルテレビ、こういうようなものを通じまして日本語の維持発展ということに努めております。  私もこのNHKのケーブルテレビを見ておりますが、これは大変なインパクトがございます。リアルタイムで放送されますので、私、職住接近でオフィスには二分で行けるのでございますが、朝九時、日本のNHKの夜九時の総括のニュースを見て、それから事務所に行きますので日本のことは何でも知って仕事が始められる、大変ありがたい状況でございます。これは私だけではなくてすべての日本人、日系人がブラジルでその恩恵にあずかっております。  以上、総括、結びといたしまして、日系人は日伯関係の大きな外交資産、宝であると私は思っています。また、三世以降になりますと、三世は六四%が非日系人と結婚するということで、ブラジル人と血を分けた、国民同士血を分けた関係になっております。私はブラジルをいとこの国と呼んでおります。こういう国は恐らく日本はほかに持っていないんではないかと。これまた日本にとっての大きな武器ではないかと私は思っております。  昨年の二月、カルドーゾ大統領に私、信任状を奉呈いたしました。そのとき、カルドーゾ大統領にこのように申し上げました。日本ではどんな日本人でも、家庭の中か、友達か、知り合いか、あるいは村のどこそこにはブラジルへ今行っている、こういう人がいるんだよと、そういう立場にあると。それは庶民だけではなくて、政界でも財界でも、偉い人でもみんな同じような状況、つまりブラジルはそれほど親しみを持たれている国なんですよと言ったところ、カルドーゾ大統領は莞爾といたしまして、それはいいことを聞いた、自分日本を知ることがブラジル政治家、ブラジルのリーダーの資格としたい、そのように努めたいと、こう答えておりまして、私は、このようなブラジルは非常に大事にしていかなくてはいけないんじゃないかと思って日夜励んでおります。  どうもありがとうございました。
  21. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) ありがとうございました。  以上で、大使の御発言を終了させていただきますけれども、これから各委員質疑に入らせていただきたいと思います。  その前に、私から、今多岐にわたる御発言を伺っておりまして、特に中南米諸国の治安状況並びに寺田大使からも言及がございましたがODAの問題等について、各国全部というわけにまいりませんので、小西大使にODAについてのお考え方、状況を御発言いただきたいのと、塚田大使に治安状況についてお尋ねをいたしたいと思いますので、その二点だけ先によろしくお願いをいたしたいと思います。
  22. 小西芳三

    説明員小西芳三君) 日本ペルーとの関係につきましては、これは否定しがたい事実ですけれども、現総理が大蔵大臣の一九九一年当時、まさにフジモリ大統領が政権をとって一年ぐらいたった時点で非常にやはり対外債務等で苦しんでおったと。そのときに当時の橋本大蔵大臣のイニシアチブによりまして、とにかくブリッジローンという形で債務の軽減が当面できたということが出発点になっておりまして、それ以来、日本ペルーに対する援助というのは着実にふえてきております。  それで、援助の使い方ですけれども、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、要するに、ペルーという国は先ほど申し上げたワシントンコンセンサスという方式で救われる、言ってみれば経済エスタブリッシュメントとか金融界とかそういうところがある反面、人口二千三百万のうち一千万人ぐらいは貧困あるいはもっと下の極貧と言われる層でございまして、かなりの部分がアンデスの山岳地域にほぼ自給自足のような状態で住んでいる。一時テロがしょうけつをきわめた時期に相当数の人が町へおりてきまして、これは海岸にあるんですけれども、リマを中心にして新しい彼ら自身の町をつくって、そこで戦後のやみ市と申したら失礼かもしれませんが、似たような形でインフォーマルなセクター、これがペルーでかなり今育ってきております。  恐らく、例えばペルー失業率は七%とか八%と言われると驚かれると思うんですけれども、実はそのインフォーマルセクターに吸収されているいわば不完全就業労働者、これが三〇%を超えていると思います。したがって、いわゆる本当の意味での就業者というのは五〇%から六〇%の間ということでございます。  したがって、援助も何をやるかといいますと、まず一つは、ペルーの地理的な条件というか海岸地帯、これは乾燥地帯、一番深いところでも二百キロぐらい砂漠なんですね。それからもう急にアンデス山岳地帯に上がって、これが二重に走っております。高いところは五千メートルぐらいあって雪がかぶっている。それを越えるとこれはアマゾンの上流で、地域的には実は一番広いんですけれども、原住民の数は少なくなります。そういう日本ではちょっと考えがたいような地理的に分断された地形がある。それに加えて、住んでいる人もやはり白人は海岸地帯を中心に住んでいる。  それからもう一つは混血ですけれども、これは四割近い。白人が一二%ぐらい、混血が四割近い、残ったのがいわゆる原住民ということなんですけれども、その間の文化的な交わりとか、それから交流といいますか、彼らが、三つのグループが国としての一体感をいまだに十分持ち得ていないと。これはちょっと日本にいてはなかなか想像しがたいような困難だと思います。  したがって、そういう条件を踏まえて何をやるかということで、私どもとして一番大事なことは、まず混血の人あるいは山に住んでいる原住民あるいはアマゾン地域にいる人に対して、少なくとも義務教育、それからプライマリーヘルスケアといいますか最低限度の医療面の手当てです。これは衛生状態が悪いということのためにちょっとした下痢その他で、日本では考えられないような状況で死ぬということが多いものですから、そういうベーシック・ヒューマン・ニーズといいますか、そういうところの手当てをきちっとやるということが一つ重点になっています。  それからもう一つは、今申し上げました地理的な条件とそれから人種的な構成、これは住んでいる地域が違いますので、要するに、交通網というのは、あるいは通信網も同じかもしれませんが、北から南にパンアメリカンロードに沿ってでき上がっているわけです。つまり海岸沿いにですね。それを今度は横にアマゾンに向かって、つまりアンデス山脈につないで、さらにアマゾンにつなげる。つまり横の道路と横の通信網というのが緊急の課題になっている。  したがって、いずれもこれはペルーの抱えている最大の問題ですけれども、人種を越えて国民の一体感といいますか、国民としての統合といいますか、それをつくるというその目的に資するために、つまりインフラ関係で道路、通信網をつくる。それから貧困層に対して少なくとも教育とプライマリーヘルスケアを重点的にやっていく。  もちろん、それ以外にも産業の発展のために港湾の整備とか、その他幾つかインフラ関係のプロジェクトというのはございますけれども、あるものについてはペルー政府はかなり大胆に民活方式ということを取り入れておりますので、彼らが民活というか、民営化でやるものはどんどんやってもらって、ペイしないといいますか、ビジネスのレベルに乗らないものについてODAでやっていくというのが現状かと思います。
  23. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) ありがとうございました。  では、ブラジルの治安状況につきまして簡潔にお願いいたしたいと思います。
  24. 塚田千裕

    説明員(塚田千裕君) 治安の問題、ブラジルは現在は中南米の中ではましな方かと思います。  実は、ブラジルでも二十年前までは都市ゲリラというものが盛んに跳梁しておりまして、一九七〇年には大口サンパウロ総領事が誘拐されるというような事件がございましたが、これは当時の軍事政権の強力な施策によりまして壊滅、根絶いたしまして、それ以来そういう政治ゲリラに基づく治安の悪さというものはなくなっております。  中南米の場合は治安は大体三つの視点から分析できるのでございますが、一つ政治的なゲリラ、もう一つは麻薬犯罪によるテロですね。三番目が一般犯罪、これは都市化が進んでおりますので都市に人が集まる、失業者がふえる、ファベラができる、そういう一般犯罪、三つの要素がございます。  ブラジルの場合は政治ゲリラはございません。また、麻薬のテロもございません。ただ、急速な都市化が進んでおりまして、リオ、サンパウロ、サルバドール、各地に百万都市がありますが、そういうところはファベラという貧民街が都市の周辺ないしは内部にできるということで治安情勢がどうしても悪くなる。  ブラジルの場合のもう一つ最近の事例は、おおむねいいんですけれども、政治ゲリラではございませんが、土地なし農民運動というのがございます。一万人ないし二万人ぐらいの土地のない農民が、ファゼンダと称する大きな荘園、農園に実力でもって座り込んで土地よこせ運動をやっている。これが今のところは平和的な手段で座り込みですが、時には衝突してけがをする、あるいは人が死ぬというようなことがございます。これがもしもこのまま広がっていったりすると非常に心配な要因であろうかと思います。  以上を総括しまして、一般犯罪による特に都市での治安というものは必ずしも好ましくございませんけれども、全体として見ますとアンデス諸国のような、ペルーのような、あるいは中米、カリブの方もそうなんでしょうか、政治的な動きあるいは麻薬によるテロとかそちらの方はブラジルの場合はございません。
  25. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) ありがとうございました。  それでは、これより質疑を行います。  本日は、あらかじめ質疑者を定めませんで、委員各位に自由に質疑を行っていただきます。  質疑を希望される方は挙手をしていただきまして、私の指名を待って発言をいただきたいと存じますので、御協力をよろしくお願いいたしたいと思います。  なお、多くの委員が発言の機会を得られますように、一回の発言は二分以内にとどめていただきますようお願い申し上げますし、また御答弁の方もなるべく簡潔によろしくお願いいたしたいと思います。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いしたいと思います。
  26. 高野博師

    ○高野博師君 大使皆様、大変御苦労さまでございます。  最初に、ペルーについてお伺いいたします。  二〇〇〇年のフジモリの三選についてどういう見通しを持っておられるか。最近、特に支持率が非常に下がっていて、今十数%だと思いますが、フジモリさんのイメージが非常に強権的だとか、あるいはユダヤ人のテレビ局経営者の市民権を剥奪するとかユダヤ人を敵に回したのではないかということも言われているとか、あるいはモンテシーノス顧問とか軍部のかいらいではないかとか、あるいは僕がちょうどペルーに行っていたころに出生地の疑惑の問題がちょっと出ておりまして、近隣諸国の要人からよく聞かれました。  こういう問題があって、先ほど大使がおっしゃったように経済状況失業問題もあるということで、この三選がもし二〇〇〇年になくなった場合に、今まで強権的と言われるフジモリさんの進めてきた経済改革等について後退があるのか、あるいはこの三選がなくなったことによって日系社会に何らかのはね返りがあるのかどうか、その辺についてお伺いしたいと思います。  それとの関連で、日本が今やっているODAとか経済協力について今のままでいいのかどうか。私は経済的にはいいんだろうと思うんですが、もう少し文化面あるいはスポーツ面とか、そういう交流も盛んにやった方がいいのではないかと思っております。  それから、メキシコについては、先ほど大使のお話がありましたけれども、移住百周年ということで移住に関しては一つの区切りがついているのかなという印象を持っているんですが、これから日系人の役割というのを新しく見直す必要があるのかどうか。  それから、特に最近メキシコでは麻薬問題が深刻になっている、さまざまな犯罪も起きているということで、この麻薬組織が軍部とか政府内部にもかなり浸透しているという情報もありますが、この点について大使は現地におられてどのようにとらえておられるのか。
  27. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) できれば一国一問ぐらいにとどめておいていただきたいと思います。
  28. 小西芳三

    説明員小西芳三君) 私は今、高野先生から十以上の質問を受けたと思っておりまして、とても全部答えられないんじゃないかと思うんです。  三選についてですが、憲法裁判所というのがございます。ペルーの憲法裁判所の役割は、日本の最高裁と違いまして、要するにある法律が憲法に違反しているかどうかということについてのみ権限を持っています。つまり、具体的なケースを通じてそれに適用される法律がどうかというケースは取り上げないというのが憲法の規定になっています。これは与党がイニシアチブをとったわけですが、新しい憲法上は三選は許される、つまりそういう解釈法というのをつくったんですけれども、この法律そのものは合憲であるという判定が一つ出ています。  ただ、それに対して、じゃフジモリさんが三選に出ることはどうだ、これが具体的なケースなんですけれども、これはマンデートに入っていないというのが七人の裁判官のうちの四人の判断でございまして、その四人は判断を留保した、したがって残った三人だけがそれは許されないという判断をしたんですが、これは憲法上疑義が残っているというのが今の一般的な解釈であります。  むしろ、高野先生の質問の主たるポイントですが、フジモリさん自身は要するに三選に出るとか出ないとかということを明示的には何も言っていません。周りにそういうことを言う人が、特にフジモリさんに近いところではいるんですけれども、その点はフジモリさん自身は慎重に何も言っていません。  ただ、今の御質問で、フジモリさんが仮に三選がない場合にどういうふうになるかということですけれども、これは将来の話でわからないんですが、少なくともフジモリ路線といいますか、マクロ経済政策をきちっとやる、それから第二期目に入って貧困層、失業問題、これに真っ正面から取り組むということをやれるようなほかのリーダーが出てくれば、フジモリさんが今敷きつつある路線、これまでやってきた路線というのは正しいわけですから、それを引き継いでくれる人が次の大統領になってくれれば問題はなくいくと思います。  ただ、野党は非常に分裂状態でございまして、まとまった有能なリーダーが出てくるかどうかという見通しは今のところ私どもとしては持ち得ておりません。  イフチャーの問題がちょっとありましたけれども、これも法律問題プラス、つまりこれは国籍法の問題があるんですが、個人的に利害の問題が根底にあったというのが一般的な解釈でございまして、したがって単にこれが言論の自由に対する圧迫であるとか、必ずしもそういうふうに割り切れない面も残っているということだけちょっと申し上げておきます。  それから、フジモリさんの出生地問題、これはもうほとんど解決しております。要するに、フジモリさんがペルーで生まれたということはれっきとした事実で、たしか日本のジャーナリストがフジモリさんは日本で生まれたんですかということをフジモリさんのお母さんに聞きに行ったら、はかたれと言われて追い返されたと、自分が一番よく知っているということで、ほとんどそれでけりがついたというようなことでございまして、その問題はない。むしろ、その問題を出したために、その出した背後にいた野党側がかえって不利な状況になっているということかと思います。  それから、仮にフジモリさんの三選がない場合に日系人にどういう影響があるかという御質問、これは私は基本的にはないと思います。つまり、政治家、官界、弁護士、医者、それからビジネス、もういろんなところへ、ペルーでは四世までありますけれども、それぞれ三世、四世というのはペルー人と同じように生活しておりますし、教育も高い教育を親御さんの御指導で受けております。しかも日本に対してペルー人の持っている、日本というのはやっぱり大変な国だという気持ちは揺るぎないものがあると思いますので、フジモリさん個人の問題とは別にしても、その辺の逆に日系人がいじめられるとかそういう時代はもう終わっているというふうに考えております。  それから、スポーツ交流、文化交流をもっと盛んにということについては全く賛成でございます。ペルーも移住百周年というのが九九年、再来年ですけれども、特に南米はサッカーが盛んでございますから、ペルーチームと日本のナショナルチームの交流、これは高野先生にもいろいろ御尽力いただいていると思いますが、そういうこと及び音楽その他文化関係の交流についても、やはりあれだけの、十万人の日系人がいる国ですから、その関係を深めていくという意味で非常に大事なことであるというふうに思っております。  ちょっとカバーし切れない点があったかもしれませんが、また時間があったら発言させていただきます。
  29. 寺田輝介

    説明員(寺田輝介君) 高野議員より二点御質問がございました。メキシコにおける日系人の役割、メキシコにおける麻薬問題。  日系人の役割、メキシコにおきましては、冒頭御説明申し上げましたように、一万二千から三千名の規模でございます。私が見ておりまして、チャパス州については例外だと思いますけれども、一般的に非常にメキシコの各層によく溶け込んでいる。そういう中で、移住百周年を契機にしまして自分たちが日系人であるという認識、意識を強く持ち、かつまたそういう日系人に対して百周年を一つの弾みとしまして一層尊敬の念が強まった、こういう状況下にあるわけでございます。  しかし、私どもとしましては、やはり日本メキシコのかけ橋になっていただきたいという気持ちがあるわけでございまして、これは日本語教育だとかいろいろの事業がございますので、これを一層推進したい、こういうふうに思うわけでございます。他方、日系人におかれましても、もし日本語を十分駆使できるようになりますと、目下増大しつつある日本投資、実際に工場を見ておりますとスペイン語すら十分にしゃべれるマネジャーはいないわけでございますから、そういうところに入っていく、そういう形のかけ橋があろうかと思います。  なお、新しい点で一つ始めたことでございますけれども、いわゆるJET計画でございます。今までメキシコに適用はなかったわけでございますが、昨年、日本で余り知られておりませんけれども、太平洋岸にありますシナロア州と和歌山県とが姉妹都市関係を結んだわけでございます。そこで、この関係をより発展させようということで、初めてメキシコ人を一人、日系の方でございますけれども、和歌山県に送り込んだと、こういうことをもっとしなきゃいかぬと思います。  この移住百周年のときに、先ほど申し上げましたように、石川県の松任市より「炎太鼓」を迎えました。その際、市長がおいでになりましてすっかりメキシコ関心をお持ちになりまして、この松任市にJET計画にのせてぜひともメキシコ人を送ってくれと。これはぜひとも日系メキシコ人を出したいと思っていますが、こういう形で、草の根運動だと思いますけれども、一段と両国間の日系人を中核とする関係を深めたいと考えておるわけでございます。  第二の麻薬の問題ですが、これは実はコロンビアとの関係がございますわけで、一言で申し上げれば、従来のコロンビアにおける有力な麻薬のカルテル、これがメキシコを中継基地にしてアメリカに麻薬を出していた。現時点ですと、どうもコロンビアにおけるカルテルの力が弱まったそうで、その結果メキシコの方がみずから仕入れ、販売までやるようになった。かつまた、そういうようなグループが多数出てまいりまして、その中の抗争が発生している。その中において、一部のメキシコの軍部の最高レベルまで麻薬汚染が浸透してきたということがございます。  しかし、メキシコの場合にはまさにアメリカの隣接国でございますので、第三者から見ておりましても、アメリカの監視は厳しいと同時に、メキシコも麻薬問題に関しましてはアメリカに対して一〇〇%協力しているということでございます。この問題は簡単に解決する問題ではございませんけれども、メキシコとアメリカの関係当局協力体制が続く限り少しずつ問題は、解決とは申しませんけれども、前向きに処理されるのではないかと思います。  一つだけ申し上げますと、メキシコにおきましては、一般市民の中における麻薬汚染、そういう現象はまだ顕在化しておりません。
  30. 山本一太

    山本一太君 メルコスルの話とかODAとか、いろいろお聞きしたいことはあったんですが、質問時間が二分以内ということですから、一問だけ簡単にお聞きしたいと思います。  先ほど塚田大使の方から安保理の改組の問題が出たんですが、今、小渕外務大臣に会長をやっていただいている日本の国連貢献を考える議員研究会という議連の事務局長をやっておりまして、常任理事国入りの議論を自民党内で少し活性化させようという運動をやっております。  安保理改組の枠組み決議は、どうも今の状況ではなかなか年内には通らないという状況のようなんですけれども、ブラジル大使によると、どうもブラジル地域代表は固まりつつあるようなお話もございましたが、大変いい機会なので、簡単で結構ですから今の最新の各国政府状況についてちょっと教えていただきたいと思うんです。アルゼンチンブラジルメキシコの各大使に簡単で結構ですから言いただきたいと思うんです。
  31. 荒船清彦

    説明員荒船清彦君) アルゼンチンは、この安保理の改革については、ラテンアメリカに関する限りローテーションであるべきだという考えでございます。したがって、一国が未来永劫常任理事国の地位を占めるということには強く反対しております。
  32. 寺田輝介

    説明員(寺田輝介君) 一言で申し上げますと、メキシコの場合には安保理の改革の必要性を認めながらも常任理事国がふえていく形には賛成していない。最近の動きですと、どうやらふやす場合には非常任理事国のローテーションの形でふやしていくべきだという態度をとっているようでございます。
  33. 荒船清彦

    説明員荒船清彦君) 一言言い忘れました。  アルゼンチンは最初から日本支持でございます。
  34. 塚田千裕

    説明員(塚田千裕君) ブラジル日本と同じでございまして、グローバルな問題に対しましてそれを果たす責任を持ち、かっ能力があるという立場でございます。したがって、結果としてはう米の代表というような形になるかもしれませんけれども、あくまでもそういう基準で選ばれるのであって、ラ米の代表ではないという立場でございます。世界を代表する能力があるのだから、新しい事情があって自分がなるべきだと。  それと、ラ米というか周りを見回して、あえて言わなくてもわかるでしょう、ブラジル以外にありますかと、こういう態度で、対決という事態に至る前に当然ブラジルじゃないかということで押し切ることを、横綱相撲を考えています。
  35. 立木洋

    ○立木洋君 中南米の動向を全体的に見てみますと、グローバル的には一つの変わる時期に来ているのではないかというような感じがするんです。長期にわたった大変な内戦の問題についても、昨年のグアテマラの和平合意によって大きな規模でのそういう内戦状況というのは一応おさまりました。それからまた、経済状態を見てみましても、一九八二年から生じた累積債務の危機の問題、これも九〇年代になって変わってくるという状況が生まれてきております。こういう状況の中で、中南米に対する世界の見方というのが変わってきておるという状況が私はあると思うんです。  それで、先ほど局長もお話しになりました今度の会議の中で、経済問題というのが一つの非常に大きな問題として意見交換されたというふうにおっしゃいました。  見てみますと、あそこではメルコスールの問題、この結成が一つ動きとして出てきております。さらには、NAFTAの問題がどうなるのか、これに加盟するのかどうするのか。そうなると、FTAAとの関係がどうなっていくのかという問題、さらには、EUの投資が増大してくるというふうな状況の中から経済関係が変わってきているという問題があると思うんです。  その経済状況がどうなるのかということについてお聞きしたいわけですが、全体的に述べていただきますと長くなりますので、こういう状況の中でアメリカがとった態度の中では、御承知のように、アメリカがアルゼンチンに対してNATO域外同盟国の関係を八月に結ぶということを決定したんです。これは、NAFTAに対して加盟したいというアルゼンチンの態度があります。そして湾岸戦争のときにPKOに協力したということもあるでしょう。  さらにまた、チリに対しては、御承知のように、これまで南米の軍事政権に対しては武器の輸出はしないということを二十年間やられてきましたけれども、二十年ぶりにそれが破棄されて、そしてF16戦闘機がチリに売却されるというふうな新たな決定がされました。チリもNAFTAとのかかわりでは加盟の問題が問題になっております。  こういういろいろな動向を見てみますと、さまざまな経済の動向の中でどうなっていくんだろうか。なぜこの時期にアメリカがこういう態度を中南米に対してとったんだろうか。これをどうお考えになるかということなんです、聞きたいのは。  そして、それに対して、特にこの間の八月にパラグアイで開かれました中南米政策協議機構での首脳会議においては、南部共同市場の問題の結成を広げる方向を示しながら、こうしたアメリカの動きに対する警戒が比較的出されました。アメリカのこうした動きに対しては、これは主権を侵害する、あるいは中南米動きに対し分裂を図る新たな動きじゃないかというふうな問題点も出されております。あるいはメキシコ等の新聞等によりますと、メルコスールに対して、アメリカに対する自決権を確認するものでなければならないというふうな報道もあるというふうに、ちょっと舌足らずですけれども、そういうようなさまざまな反響が出ております。  それで、きょうおいでになっておるアルゼンチン荒船大使ブラジルの塚田大使にお聞きしたいんですが、アメリカの態度をどういうふうにごらんになっているのか。大使御自身の発言として発言されにくいんでしたら、その国ではどういうふうに見ているかということでも結構です。それから、そういう動向を中南米全体がどういうふうに受けとめているんだろうか、経済の新たな動向の中冷そういう動向をどういうふうに受けとめているんでしょうか。本心は御本人の御意見をお聞きしたいんですが、そこらあたりは結構です。その国の考え方でも結構ですから、お二人の大使にその点についての御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  36. 塚田千裕

    説明員(塚田千裕君) NATOの域外同盟国指定の話、あるいは武器禁輸解除の話、これはブラジルは直接自分には関係ないという態度でございます。  メルコスール地域統合とFTAAとの関係でいいますと、この間、クリントン大統領が十月の半ばにブラジルを訪問し、ほかの国も訪ねましたが、そのとき整理ができまして、両方ともやりましょうと。ブラジルはもともとメルコスールを推進して、特にアルゼンチンとの関係を強化しながら自分たちの利益を守る、全米自由貿易地域というようなものは先の将来の目標ということで、二〇〇五年ぐらいでいいんじゃないか。当面はメルコスールということを言っていまして、どちらをどうするかということが綱引きだったわけでございますけれども、結果はその辺のところは両方やりましょうということで、具体的にはブラジルメルコスールの統合ということに力を注ぐ。  理由は、やはり地域の中ではブラジルは断然産業がしっかりしておりまして、それなりにワンセット持っている。特に製造業、二次産業は非常に強い。しかし、サービスだとか先端分野は非常に弱いところを抱えている。したがいまして、アメリカのペースではなくてブラジルのペースで、ブラジルの土俵で相撲をとりたい、しかし行く行くは全米全体で自由貿易地域というのも結構でしょう、こういう非常に現実主義的な態度でございます。
  37. 荒船清彦

    説明員荒船清彦君) まず、米側の動機といいますか、もくろみでございますけれども、もともと十九世紀のモンロー宣言以来の考え方があると思いますが、しかしながら同時に、現在の米国にとってはAPEC、これが二〇一〇年ないし二〇年に自由になっていく。それからEU、ヨーロッパに対する思惑というようなことで、自由貿易取り決めというものをてこにして、アメリカの資源確保なり、そういったものをFTAAを通じて確保していきたいという気持ちがあるというふうな見方が一般的でございます。  メルコスール側でございますけれども、一応自由貿易取り決めという大義名分がございますから、これに異議を唱えるわけにもいきませんし、なおかつアメリカ側がNAFTAについてでさえ議会の大変大きな抵抗があって、それのためにもつと前の段階でFTAAを提唱する余裕もなかった。その時間的余裕をうまく南米が利用して自分一つの関税の障壁を中心としたメルコスールをつくってしまった、あるいはつくる余裕を与えたということで、これから相互の綱引きはもちろん続くのでございましょうが、そういう状況だと思います。  それから、同盟関係の話でございますけれども、これは実態がよくお互いにわかっていない。要するに、チリは非同盟の国でございますから、これが米国の同盟になることはないわけで、しかしそこにF16を確かに送るという話、じゃ非NATO主要同盟国というのは何だろうか。アルゼンチン側に聞いてもだれも実は本当のことは、一体何を意味するのかわかっていない。ただ何となく、アメリカにおまえは特別だということを言われて、意味もよくわからぬけれども、これは余り悪い気はしないんだよという感じでございます。
  38. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私からちょっと特別な問題につきまして、中南米局長にお尋ねしたいと思うんです。  本日のこの委員会で適当な議題かどうかわかりませんけれども、中南米にかかわる問題でもありますし、本日御列席の大使各位も皆関心を持つ問題だろうと思いますので、取り上げてお尋ねいたします。  つい二、三日前の新聞、けさの新聞にもちらっと出ておりましたけれども、青木前ペルー大使がナイロビかどこかで記者会見をされましたその内容であります。この前のペルー事件に対する外務省報告が率直に言うとかなりいいかげんで本当ではない、真実はまた別にあるという趣旨の発言をしたということが出ておりました。どういう趣旨なのかよくわかりません。あるいは記事の間違いなのかどうか。当然これは大問題でありましょうから、外務省本省は直ちに発言の事実関係を確認されたと思います。どういう発言だったのか、それをちょっと御紹介してください。
  39. 田中克之

    説明員田中克之君) 実はこの発言につきましては、私ども昨日まで会議をずっとやっておったものでございますから、率直に申しまして私はまだ発言の中身を新聞で読んだだけでございまして、事実関係を私自身は確認しておりません。したがいまして、今の御質問に対してお答えできないのは申しわけありませんが、そういうことでございます。
  40. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 あの事件につきましては外務省から正式に当委員会報告を受けまして、池田外務大臣が熱弁を振るいまして、また、我々もこれが外務省の最終報告、間違いのない責任のある報告なんだ、こう承っておりましたら、現場の責任者である大使がこれは違うということをまた言い出しておると。  一体、そうすると我々はどちらを信じたらいいのか。国会でうその報告をされたのかというふうなことにもなりかねないわけでありまして、やっぱりこういうことは放置しておいていいことじゃないんですから、きちっと対応いたしまして、間違いなら間違いでもいいと思いますよ。これは青木大使の言うとおり、この点この点は間違っておったので訂正させてくださいとか、それはそれでいいと思うんですよ。  しかし、絶対に外務省として責任ある報告をしたんだということになりますれば、それに対してあれこれ言っている青木大使が問題だ、こういうことになりまして、青木大使の責任問題にまで発展しかねない。場合によったら、余りやりたくないんですけれども、またこの委員会に来て、一体どこが違うんだということを青木大使から直接指摘していただいて、それについて外務当局のまた話を聞くということも必要になるんじゃないかな、こういう気もしております。  今後の調査、実はこの委員会がいつ開かれるかわからぬということを先ほど聞いたものですから、そこで、あえてこの委員会で本日取り上げたわけでありますけれども、なるべく早い機会にこの点、白か黒かはっきりさせてもらいたいな、こういう気がいたしております。  委員長にもついでにお願いしておきますけれども、この点、委員会としてもやっぱりきちっと外務省に申し入れた方がよろしいんじゃないでしょうか。我々、うそを聞かされたんじゃたまりませんからね。
  41. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) 官房長から御発言を求められておりますので、許します。浦部官房長。
  42. 浦部和好

    政府委員(浦部和好君) ただいま先生御指摘の新聞報道、新聞報道といいますか通信社の報道を我々も承知しまして、きのうの段階で現地の青木大使にどういうことなのかということで、今、事実関係の確認中でございます。  我々としては、今の段階で、青木大使の実際の発言を知らない段階で想定して物を言うのはあれでございますが、外務省としてはここできちんと御報告をさせていただいたことが我々の御報告ということに当然考えておるわけでございます。  ただ、いずれにしましても、今、青木大使がどういうことをおっしゃられたのか、現地に確認中でございますので、それを待って、またさらに御報告をさせていただきたい、かように考えます。
  43. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) ただいまの件につきましては、青木大使の御発言を外務省から当委員会に御報告いただくことにつきまして、正式に外務省に申し入れたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) では、よろしくお願いいたします。
  45. 小山峰男

    ○小山峰男君 地球温暖化というような関連で、今、日本ではいわゆるCO2の削減問題というのが大変話題になっているわけでございますが、こういう点について、それぞれの国で政治的な課題というか、そういうことになっている国がありましたらお話をいただきたいということと、あわせて、ブラジルのいわゆる環境問題、特にアマゾン等についての対応というようなものがどんな形になっているのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  46. 荒船清彦

    説明員荒船清彦君) アルゼンチンの件につきまして簡単に御報告申し上げます。  アルゼンチンは自国産の天然ガスを主として使っております。これは、例えばインドネシアの天然ガスと比べますと、聞くところによりますとあそこは七五%ぐらいが炭酸ガスが入っている、それをまた海に戻さなきゃいけないという点があるようでございますが、アルゼンチンの場合はそのままほとんど使用できます。  それから、あと原子力産業もございますが、そういった意味でCO2の排出量は非常に低いという面が一つございます。同時に、この間クリントン大統領アルゼンチンを訪問しましたときに、メネム大統領と環境問題について意見交換しておりまして、そして今回の京都会議についても意見交換がありました。そして、CO2の削減は、これは非常に重要であるという認識においてお互いが一致しております。
  47. 塚田千裕

    説明員(塚田千裕君) ブラジルはアマゾンの保全あるいは環境問題がつとに指摘をされておりまして、それなりに関心は強いものがございます。  ちょっと古い話でございますけれども、軍事政権時代、一九七〇年代も、自動車のエンジンにつきましてアルコールエンジンというものを採用しまして、いっときは全体の半分近くまでアルコール車が走ったという時代もございます。その後、また石油の値段が相対的に下がったということでアルコールがまた一割を切ってしまったのでございますが、最近再び復活の兆しがございます。  アマゾンにつきましては、ブラジルの中の関心ももちろんでございますが、国際的に関心がございまして、アマゾンの熱帯雨林の保存、保全ということで、例えばG7のヒューストン・サミットで、特別なことをしなければいけないというようなことでパイロットプロジェクトというようなものが発足しておりまして、日本もマルチの資金を通じて参加しております。  さらに、最近の動きとしましては、ことしの六月だったですか、ニューヨークで環境特総が開かれたときに、ドイツ、南ア、シンガポール、それとブラジルの四首脳が共同でこの問題について世界的なアピールを出しております。  したがいまして、ブラジルは、政府も含めまして意識は非常に高いものがあります。ただし、実際問題として国土も広くて、アマゾン一つ自分たちでなかなか有効に管理する、目を光らせるということもしにくいのが実情でございまして、気持ちは随分進んでおりますけれども、実行の点では随分ギャップがあります。  状況はそういうことでございます。
  48. 田英夫

    ○田英夫君 中南米は、世界の中でも大変珍しいことだと思いますが、域内でお互いの国同士のいがみ合いといいますか、戦争状態というようなことがない。フォークランド紛争がありましたけれども、これはイギリスとアルゼンチンの問題でありますから。そういう意味でいうと、それぞれの国で軍事政権がかなり続き、また、麻薬とかテロという問題は今もなおあるわけですけれども、国同士のいがみ合い、紛争、戦争状態ということがないというのが私は大変注目すべきことで、それは一体何が原因かなという気もするんです。  もう一つ、一九六七年にトラテロルコ条約を結んで、世界で最初の非核地帯、非核兵器地帯になったわけです。メキシコがイニシアチブをとってやったわけでしょうけれども、それにしてもアルゼンチンブラジルも加わって批准して、完全に非核地帯として発効している。  この雰囲気というのは、つまり平和の雰囲気といいますかね、世界で最初にやったわけですが、その後、実は非核というか核兵器をなくそうというようなことが、オーストラリア、ニュージーランドは依然として非常に活発にやっていますが、中南米では余り伝わってこない。そういうものはもう既にできたからいいということなのか、やはり一つの運動といいますか雰囲気としては残っているのか。  これはやはり寺田大使でしょうか、この前の中心の国ですから。お答えいただけますか。
  49. 寺田輝介

    説明員(寺田輝介君) まさに議員におかれて御指摘のとおり、このトラテロルコ条約を動かした一人のメキシコの有力な外交官、ガルシア・ロペス、既に亡くなられました。しかし、この伝統は確かにまだメキシコ外交の中には確実に生きております。  したがいまして、今後、今ごろの時期になりますと国連総会第一委員会の中でいろいろこの核の問題が扱われる、こういう場合にはやはりメキシコ外交伝統というのは生きていると思います。  ただ、メキシコという国からメキシコのマルチ外交を見ておりますと、どうも最近のメキシコ政府というのは経済が第一であると。そういうことでございますが、せっかくトラテロルコ条約の締結を推進したというメキシコの外務省は、そちらの経済の方に隠れてしまうという点が非常に気になるところでございます。  しかし、あくまでも核軍縮、核問題については強い関心と熱意をメキシコ政府は持っております。
  50. 田英夫

    ○田英夫君 ありがとうございました。
  51. 松前達郎

    ○松前達郎君 先ほど地球環境問題について質問がありました。これに関連して、ちょっと細かくなると思いますが、塚田さんにお伺いしたいんです。  実は、アマゾンのロンドニア地方というのがありますね。そこの衛星画像を見ますと、相当顕著な森林破壊が行われている。これはちょっと古い話になるかもしれません。しかし、その森林破壊が最近一体どういう状況になっているのか。また、これを破壊することでブラジルの皆さんに何かメリットがあるのかどうか。これは生活上の問題等あるかもしれません。それとODAとの関係ですね。この辺、何かありましたら教えていただきたいと思います。
  52. 塚田千裕

    説明員(塚田千裕君) 森林を伐採する、焼き畑をやる、そして主として牧場にするわけでございますけれども、これをやっているのはブラジル人なんですね。あるいはアジア系、マレーシア系の企業が最近入っていって随分木材を切らせているということが国内で問題になっています。非常に客観的に言えばブラジル人が切っているわけでございます、直接にはですね。しかし、ブラジルという国は、率直に申しまして、何か問題が起きるとき、敵は必ず外にいると、自分が悪い、ブラジル人が悪いということは絶対に言いませんですね。こういうことを言うと言い過ぎかもしれませんが、日本と対照的ではないかと思います。  私は、やはり問題は複雑ですから、生活上の問題もかかっていますし、もっといろんなことをやれるじゃないかという気はするんですけれども、実際問題として広くて、精密な地図もできていないというようなところもあるし、川だとか山だとかそういうようなものも、とても日本のようには事細かに把握できていないということで目が光らない、それほど広いところで起きている話だと。これはもう過去二十年ぐらいずっと続いて、政府は一生懸命やっています。それで、また環境保全の役所をつくったり監視員を置いたりするんですが、何せ大き過ぎて手が届かないというのが実情でございます。  したがって、この間のクリントン訪伯でも、大きな政治的な問題というよりは、こういう問題だとか麻薬の問題だとか教育の問題だとかそういうことが専ら話し合われまして、アマゾンの熱帯雨林保全のためにアメリカはさらに一千万ドル追加拠出をして環境保全のためにさらに協力をしようという話が出ております。  おおよその状況はそんなところでございます。
  53. 松前達郎

    ○松前達郎君 ODAは。
  54. 塚田千裕

    説明員(塚田千裕君) 先ほどもちょっと申しましたが、日本はヒューストン・サミット以来、アマゾンのパイロットプランということで、マルチの金を通じて基金に出しております。したがって、直接は日本ということではなくてG7の金ということでございますが、これに出しておる。たしか六百万ドル弱だったと思いますが、これはODAになっていると思います。それ以外に技術協力で、これはバイで日伯間でやっておりますけれども、森林保全のための技術協力ということで、マナオスあるいはベレーンの方でも過去二十年間幾つかのプロジェクトをやっております。  大きな課題に対しまして日本の貢献はささやかではございますが、そういう形でODAが使われているという事情にございます。
  55. 武見敬三

    ○武見敬三君 既に質問はかなり出てきておりますけれども、ひとつ安全保障に関しての質問をさせていただきたいと思います。  アジアに続いて、新たに中南米経済の発展が予見されるようになってまいりまして、果たしてこの中南米諸国においてアジアと同様な安全保障上の問題点を抱え込むようになるのかということが気になります。  アジアでは経済成長が持続し、その過程で内政上安定化が図られ、ゲリラ活動等についての鎮圧に各政権が成功してくる。そういたしますと、軍隊の質というのも内政上の治安活動から徐々に対外的な防衛に向けてその視点が移ってまいります。結果として、特に海空軍力を中心とした近代的な兵器を購入し軍事力の増強に動き出すという傾向がアジアでは全般的に、残念なことでありますが、出てまいりました。  これをいかにその地域の安全保障の枠組みを模索しつつ管理していくかということが大きな課題になってくるわけでありますが、中南米諸国の場合、八月一日にアメリカは、先ほど立木委員からも指摘されましたように、武器輸出を解禁いたしました。チリに対するF16の輸出というようなことも具体的な課題として上がってきているわけであります。特にチリの場合にはGDPの二%を超える国防予算というものを設定しようとしているわけでありまして、こうしたことが隣の国のアルゼンチン、さらにはアルゼンチンブラジルといういわば大国の間に挟まれているウルグアイのような小国に安全保障上どのような影響を及ぼすようになるのか。  これは軍拡の流れを促進する可能性があると同時に、好ましい動きとしては、こうした軍事力の増強を地域で管理しようという動きが本来は出てきてしかるべきであろうかと思うわけであります。こうした状況について、チリの隣国でありますアルゼンチンと、さらにはアルゼンチンブラジルの間に挟まれている、別の視点からの安全保障論が期待できますウルグアイ立場と、その二点、お聞きしたいと思います。
  56. 荒船清彦

    説明員荒船清彦君) アルゼンチンは、ゲリラに関しては中南米で最初にゲリラを抑えた国であります。現在ゲリラはおりませんが、逆にその過程で軍部がいろいろと激しい抑圧をやった、人権侵害をやったということで、国民一般の大変な軍への不信が根づいてしまったという側面もあって、それはダーティーウオーという言葉で呼ばれておりますけれども、スペインやその他でもこれに関する裁判が続いております。同時に、このメネム政権以来あるいはその前のアルフォンシン以来の民主化の流れというのがありまして、しかも財政赤字の大幅削減を毎年やっていかなければいけない、そうでなければIMFからのスタンドバイクレジットも得られないというような状況の中で、現在幾つかの手を打っております。  一つは、例えば隣のチリとの間には既に、一番南の方の氷の張り詰めた一部を除いて、二十二、三の国境のポイントについて全部国境協定が成立いたしました。もともと時々軍事的におかしな衝突が起きそうな事態が続いていたのが、これでこれからは極めて起きにくくなるという状況一つございます。なおかつ、この間はブラジルとの間で、そして今度はチリとの間でいろいろと軍部同士の話し合いが進んでいまして、共同演習とかそういうような形によって、要するにいわゆるコンフィデンスビルディングと申しますか、そういったものをお互いの間に確立していこう、こういう動きもございます。  いずれにいたしましても、軍部の力が非常に弱まっているという現状の中で、そしてまた財政赤字の中で、仮に軍が力を持とうとしても限界は大きいと思います。  特にアルゼンチンの場合、財政赤字の点で米国から買いたいのは中古品でございまして、例えば隣のチリとの軍事的な比較をしますと、陸軍の数ではチリの方が大きいのでございます。GNPでチリの四、五倍のアルゼンチンですが、しかし人口はチリの方が非常に小さい、千四百万です。アルゼンチンは三千五百万でございますけれども、軍の力は、向こうの方が数は多うございますが質はアルゼンチンの方がいいとも言われています。  いずれにしましても、そういう状況がございます。
  57. 石和田洋

    説明員石和田洋君) ウルグアイという、ブラジルアルゼンチンの大国に挟まれた国として安全保障をどういうふうな観点から考えているかということなわけですが、一九八五年までの七年間続いた軍事政権は、先ほどもちょっと触れましたが、主としてトゥパマロスというゲリラ組織に対応するということであったわけですが、その後、民政に移行するという過程で多少の妥協が軍事政権との間でありました。過去は問わないという法律上の、法制上の保障を与えたということだったわけですが、最近、その軍事政権時代から民政に移行する過程で知られていなかった新たな事実が出てきたからということで、またさらに昔の軍事政権時代の関係者に対する追及が始まるというような動きもややあったわけです。もともとそうであったと思いますが、軍事政権が非常に力を持つという素地は今かなり薄いというふうに国内的には見えます。  ただ、国際的には、先ほど荒船大使の方からも御指摘ございましたが、せんだってブラジルの方でブラジルアルゼンチンウルグアイの合同演習というようなものが開かれて、ウルグアイ大統領も出ているわけですが、こういう国際社会でつき合うという意味では、例えばPKO活動に参加するということもありますし、小国ながら各国に駐在武官をすべて置いているというようなこともありまして、形は整っているものの、国内的な影響力というのは今余り考えられません。  現に最近、貧困問題に関連して国内的に、内務省の管轄下にある警察ではなかなか対応し切れないというような問題に対して、武器を携行した軍人を治安対策に使いたいというような動きがあります。これに対して国内的にそれほど抵抗がないというのは、軍事政権を恐れるという雰囲気が一般的にウルグアイの中にはないという一つの証左ではないかという感じがいたします。  そういう状況でございます。
  58. 矢田部理

    ○矢田部理君 キューバの大使においでいただきたかったのでありますが、それはそれとして、キューバは中南米各国の中では独自の政治経済の体制をとっており、経済は市場経済の考え方も導入しつつあると聞いております。中米がいいかと思いますが、メキシコ大使にお伺いをしたいのは、あの周辺各国がキューバに対してどんな対応をしておるか。アメリカはまだ依然として厳しい態度で臨んでいるように思われますが、中南米各国の受けとめ方なり対応について、とりわけ新しい動きなどがあればつけ加えてお話しいただきたいのが第一点であります。  それから二点目は、先ほども常任理事国問題が出ておりました。アルゼンチン大使にお伺いしたいと思いますが、戦勝五大国中心の安全保障、国連の体制には私たちも意見があり、全体として国連改革、民主化の要求が強いわけでありますが、そういう中にあって、この常任理事国問題については少し時間をかけて議論すべきだという決議案をイタリアが既に十月に出している。アルゼンチンなどもこれに同調するという動きなどが伝えられておるのでありますが、逆に日本は、そういうことをやってもらっちゃ困るという要請も各国にしているなどという話も別便で伝えられておりますが、アルゼンチンなどはこのイタリアの考え方にどんな対応をしておられるのか。  以上、二点をお伺いします。
  59. 寺田輝介

    説明員(寺田輝介君) 最初のキューバとの関係についてお答え申し上げます。  中米の方はそれぞれ大使がおりまして、必ずしもメキシコから見ておりませんので残念ながら答えにくいんですが、メキシコにつきましては、もうこれは一九五九年の革命にもかかわらず、そのときにかなりアメリカからの強いプレッシャーがございましたけれども外交関係を維持して今日に来ていると。かつまた、歴史的事実としまして、カストロ議長すら革命に先立ってメキシコに一時いた、こういう事実がございます。  それから、メキシコ政府をずっと見ておりますと、例えば一番顕著なことでございますけれども、一九七〇年から七六年、エチェベリア政権、この政権の時代を考えてみると非常におもしろいことに気がつくわけですが、その前の政権におきまして一九六八年の学生弾圧などを起こしたわけでございます。その結果、このエチェベリア政権といいますのは、かなり右から左の方向に向かって政権、外交政策を維持したと。こういうこともございまして、これはその時々の政権によるわけでございまして、いわゆる振り子の理論というのがメキシコにもございまして、右に揺れたり左へ揺れたりすると。  しかし、そのときはやはり常にキューバというのが問題になってくるわけでございます。アメリカの強い外交的な影響力を受ける国にとっては、いわば自国の主権的外交を守る象徴としてキューバがございますので、キューバとの関係は非常に緊密に維持されております。したがいまして、お互いの人的関係も緊密でございます。最近見ておりまして気がつきますのは、メキシコの一部の産業はキューバに投資すら行っている、こういう状況でございます。  残念ながら中米の方は十分承知しておりませんので、御勘弁いただきたいと思います。
  60. 荒船清彦

    説明員荒船清彦君) 先ほども若干触れましたけれども、ただ、この決議案の話は私が現地を立った後起こったものでございますから詳しい情報は得られていないので、私の推論ということでよろしければ、私個人の責任において若干の推論をさせていただきます。  このイタリーの立場というのは、多分ドイツの常任理事国化に対する抵抗感、これがあるとは思います。アルゼンチンの場合は、先ほど申し上げましたとおり、日本、ドイツは常任理事国になるべしという強い態度で、その点ブラジルメキシコと若干違う立場でございますが、それが目的では全くなくて、要するにこのままほっておくとローテーションがどこか宙に浮いてしまう、そうなるとアルゼンチンの基本的立場が侵されてしまう、もう少し時間をかけてというのが恐らく真意ではなかろうかと推測しております。
  61. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 時間もありませんので簡単で結構ですけれども、今回の会議でも食糧問題が討議されたということであります。アジアに向けての二十一世紀の供給ということで、特にアルゼンチンブラジル等を中心にいろいろ考えるんでしょうけれども、具体的で申しわけないんですが、ブラジルはしばらく前から例のセラードの開発をやっておるというふうに思います。これは相当時間がたっておりますけれども、効果は上がっているという話もあるし、最近非常に負担といいますか金利の問題で苦しんでいる、こういう話があるので、その辺を簡単にひとつお願いしたい。  先ほどの話では、四十年ぶりにインフレがおさまっている、こういう話の中でこの問題をどう考えておられるか。それからさらには、北の方に第二セラードと言われるような形で開発を進めたい、こういう計画が動いておるようですけれども、これについて簡単なコメントをお願いいたしたいというふうに思います。  それから、先ほどメキシコの寺田大使は、百周年と前後して農業総合開発のプロジェクトを始める、こういうことですけれども、私のこれはお願いで、ぜひひとつ積極的に生活安定なり貧困問題等で進めてもらいたい。これはお願いであります。  以上でございます。
  62. 塚田千裕

    説明員(塚田千裕君) レアル・プランが成功いたしましてインフレを克服できたのは結構なんですけれども、まさにそれと裏腹で高金利の問題が生じております。実効金利で現在一五%以上になっておりますから、日本から見ると大変な高金利でございますが、これがセラードの入植者を直撃しているという問題がございます。  セラードは過去二十年以上の間に、最初はブラジリアの近くのセラードから始まったのでございますけれども、現在はほかの州にも広がっておりまして、北はアマゾンに近いところまで、パラ州あるいはトカンチンスというような州までやっております。したがいまして、私もこの後帰国しましたら早速しなければならない仕事の一つが、入植者の債務繰り延べと高金利をもう少し政策的に下げられないかという交渉を側面的に手伝うということでございます。  先ほど第二セラードとおっしゃいましたが、北の方で第二期、第三期というようなことで計画がございます。日本側ブラジル側の要請に従って検討中でございますけれども、この高金利問題に伴う当面の問題の見通しを得ないとそちらの方の検討もスムーズにはいかないおそれがありますので、この辺のところを何とか手を打たなければいけないな、そう感じております。
  63. 寺田輝介

    説明員(寺田輝介君) ただいま須藤理事よりの御発言、私はやはり自分自身がアカコヤグアの村に参りまして、そこで日系の方に言われたことは忘れられない一言でございまして、やはりあの状況において何とかしなきゃいかぬと。まずはこの村を中心とした周辺社会の農業開発にあるわけでございまして、幸いにも調査団を派遣されました。しかし、問題はこれからどういう協力を具体的に行うかということでございますので、私ども出先としましては、本省とも協力しながら一番望ましいプロジェクトを推進すべく全力を尽くしたいと思います。  須藤議員におかれましても、ぜひとも引き続き御支援を賜りたいと思います。
  64. 須藤良太郎

    須藤良太郎君 ありがとうございました。
  65. 大久保直彦

    委員長大久保直彦君) 他にも御質疑があろうかと存じますけれども、申し合わせの時間が参りましたので、本調査に対します本日の質疑はこの程度にとどめたいと存じます。  大使各位におかれましては、大変公務御多端の中を本委員会に御出席いただきまして本当にありがとうございました。  短い時間ではございましたけれども、本日の試みは双方にとりまして大変有意義であったと確信いたしております。  大使各位には、これから必ずしも気候の温暖な地ばかりとは言えない中南米の国々に赴任されるわけでございますが、どうかくれぐれも御健康に御留意いただきまして、日々の任務を果たされるよう心から要望申し上げて御礼にかえさせていただきたいと思います。きょうは大変にありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時四分散会      —————・—————