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1997-11-19 第141回国会 参議院 科学技術特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成九年十一月十九日(水曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         山下 栄一君     理 事                 木宮 和彦君                 畑   恵君                 但馬 久美君                 中尾 則幸君     委 員                 海老原義彦君                 鹿能 安正君                 北岡 秀二君                 沓掛 哲男君                 二木 秀夫君                 松村 龍二君                 吉川 芳男君                 石田 美栄君                 及川 順郎君                 戸田 邦司君                 松前 達郎君                 阿部 幸代君                 奥村 展三君    国務大臣        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       谷垣 禎一君        科学技術庁長官        官房長      沖村 憲樹君        科学技術庁長官        官房審議官    興  直孝君        科学技術庁科学        技術政策局長   近藤 隆彦君        科学技術庁科学        技術振興局長   宮林 正恭君        科学技術庁研究        開発局長     青江  茂君        科学技術庁原子        力局長      加藤 康宏君    事務局側        第三特別調査室        長        塩入 武三君    参考人        動力炉核燃料        開発事業団理事        長        近藤 俊幸君        動力炉核燃料        開発事業団理事  中野 啓昌君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○科学技術振興対策樹立に関する調査  (派遣委員報告)  (科学技術振興策総合調整に関する件)  (核燃料サイクル政策に関する件)  (地球温暖化防止対策に関する件)     ―――――――――――――
  2. 山下栄一

    委員長山下栄一君) ただいまから科学技術特別委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興対策樹立に関する調査のため、本日の委員会動力炉・核燃料開発事業団理事長近藤俊幸君及び同理事中野啓昌君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  4. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 科学技術振興対策樹立に関する調査を議題といたします。  まず、第百四十回国会閉会中、本委員会が行いました委員派遣について、派遣委員報告を聴取いたします。木宮和彦君。
  5. 木宮和彦

    木宮和彦君 去る九月十八日及び十九日の二日間、岩手県及び宮城県において、東北電力株式会社葛根田地熱発電所東北大学電気通信研究所宇宙開発事業団角田ロケット開発センター航空宇宙技術研究所角田宇宙推進技術研究センター及びアイリスオーヤマ株式会社角田工場を視察してまいりました。派遣委員は、山下委員長畑理事高橋理事中尾理事及び私、木宮の五名であります。  以下、調査概要について御報告いたします。  東北電力株式会社葛根田地熱発電所は、全国で六番目、東北電力としては初めての地熱発電所として、昭和五十三年五月に、出力五万キロワットで運転を開始いたしました。その後、平成八年三月には、出力三万キロワットの第二号機が完成しております。同社は、葛根田のほかにも三カ所で地熱発電を行っており、全国地熱発電電力量五十三万キロワットの四二%を占めております。しかし、地熱発電火力発電原子力発電比較すると小規模であるため、同社の総発電電力量の二%を占めるにすぎません。  同発電所十和田八幡平国立公園内にあるため、排水・騒音対策、敷地の緑化等に配慮し、周辺環境と調和するようにしているということでした。特に、蒸気地下から取り出すときに噴出する熱水は、砒素を含んでいるため、五百メートルから二千メートルの地下に戻しています。また、発電を終えた蒸気は、大量の空気とともに七割が大気中に放出され、残りは冷却中和処理の後、冷却水とともに河川に放出されております。  なお、我が国はマグマが小規模で、米国カリフォルニアガイザー地域のような大規模発電ができません。このため、スケールメリットが生かせず、発電コストが高くなるということが指摘されました。また、発電までに多額の調査費用と十数年の開発期間を要し、しかも発電可能な地域国立国定公園内に多く、規制を受けること等から、今後の地熱発電開発は大変難しい状況に置かれているということでした。  東北大学電気通信研究所は、東北大学附置研究所として設置されており、ことして六十二年を迎えます。  当日は、超高密度・高速知能システム実験施設を視察いたしました。同施設では、超高速高次情報処理に必要な極微細構造電子回路加工技術基盤技術等研究を行っています。この研究では、極微細な電子回路を製作するため、目に見えないちりでも回路がショートしてしまいます。そのため、ここでは一万分の一ミリのちりが三十立方メートルに一個以下というクリーンルームを設置しております。しかし、予算の関係で、通常管理会社に委託するクリーンルームや装置の維持・保守管理を教官や学生がチームを組んで行っているとのことでした。  宇宙開発事業団角田ロケット開発センターは、昭和五十五年に事業所として発足しました。同センターには、高空燃焼試験設備供給系総合試験設備タンク熱特性試験設備等が設置されております。  高空燃焼試験設備は、高度三十キロメートルに相当する減圧状態の中で燃焼試験を行い、推力測定等を行うものです。当日は、次週から始まるHⅡAロケットの第二段エンジンLE5Bの開発試験のため、供試体が設置されておりました。この試験では、ロケットエンジンを実際に燃焼させるため、騒音対策には万全を期しているということでした。  供給系総合試験設備は、ロケットエンジン燃焼室液体酸素液体水素を送り込むターボポンプの機能及び性能を確認するための試験設備です。開発に成功したHⅡロケットの第一段エンジン用液体水素ターボポンプは、燃焼ガス駆動力にして毎分四千二百回転し、液体水素を毎分五百リットル送り出します。しかし、ターボポンプは、五百五十度の燃焼ガスとマイナス二百五十三度の液体水素流れポンプが隣り合っているため、開発に当たっては相当苦労したということでした。また、ここでは液体水素という危険物を扱うため、事故には細心の注意を払っており、各種計測機器監視カメラ消火設備等を設置して試験を行っています。現在は、HⅡAロケットの第一段エンジン用液体水素ターボポンプ開発試験を行っているということでした。  タンク熱特性試験設備は、真空槽の中に置いた供試体を加熱、冷却し、その供試体が正常に機能することを確認するものであり、これまで、HⅡロケット用衛星フェアリング等熱特性試験を行ってきました。今後は、機構部品要素試験の実施を検討しているということでした。  航空宇宙技術研究所角田宇宙推進技術研究センターは、昭和四十年に同研究所の支所として設置され、ロケット推進研究部ラムジェット推進研究部及び管理部門から組織されております。  ロケット推進研究部では、輸送コストの大幅な低減を目指すため、再使用型ロケットエンジン垂直着陸実証実験機宇宙空間推進エンジン等研究を行っております。  ラムジェット推進研究部は、地球宇宙を航空機のように往復する、将来の宇宙往還機用スクラムジェットエンジン基礎研究を行っております。同エンジンは、高速飛行による風圧で空気を圧縮し、そこに水素を噴射して燃焼させることにより推力を得るものです。  今回、私たちは、ラムジェット推進研究部高温衝撃風洞施設を視察いたしました。宇宙往還機大気圏内を高速飛行すると、機体周辺大気は数千度から一万度の高温に達し、空気自身化学反応を起こします。同施設はこの化学反応が起こる超高速流れを地上で再現するもので、千五百気圧、一万度、秒速八キロメートルまで再現することができます。しかし、その流れは千分の二秒しか再現できないので、現在、計測方法開発中であるということでした。  アイリスオーヤマ株式会社は、日用生活用品生産から販売、流通までを行い、毎年売り上げを伸ばしている急成長の会社です。今回視察した角田工場は、同社主力工場で、プラスチック製日用生活用品の成形から組み立てまでの一貫したラインに、ロボット等最新設備を導入することにより、省力化無人化を実現し、二十四時間稼働を可能にした最新鋭システム工場であります。また、同工場には、入出庫をすべてコンピューター制御する自動倉庫が付設されており、商品管理を容易にしているということでした。  以上が調査概要ですが、今回は特に地球環境問題等からクリーンエネルギー一つである地熱発電と、独自の宇宙開発に欠かせない純国産ローカット開発した宇宙分野研究を中心に調査を行ってまいりました。  最後に、今回の調査に当たり御協力賜りました関係者の方々に心から感謝を申し上げ、報告を終わります。
  6. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 以上で派遣委員報告は終了いたしました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 北岡秀二

    北岡秀二君 きょうは大臣に対する一般質疑ということで、まず最初激励から一言申し上げさせていただきたい。  一連行財政改革、そしてまたなおかつ特に科学技術庁におかれましては、ここしばらく続いております原子力政策混乱ということで、大変混乱をされていらっしゃるんではなかろうかと思います。いろいろ考えてみますときに、行財政改革一つとってみてもそうでございますが、お金を削るあるいは組織の統廃合をやっていく、そういう部分に今かなりのエネルギーを割かれていらっしゃいます。  しかし、要はこれから先の日本国づくりはどういう姿であるべきか、そういうことが大事であって、私ども日本の国の成り立ちということを考えてみますれば、科学技術庁の果たしていかなければならない使命責任というのは、私は大変重要な役割を担っておるだろうと思います。  そういう観点で、大臣初め科学技術庁皆様方におかれましては、この混乱期の中、基本的な使命責任というのをぜひともお忘れなく今後にお臨みいただきたい、頑張っていただきたいと思います。そういう観点一連の質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、我が国における科学技術現状についての御認識ということで、大臣にお尋ねを申し上げたい。  御承知のとおり、今私ども国民を含みます人類の未来ということを考えてみますときに、地球環境問題あるいは食糧問題、エネルギー問題等々、地球規模人類の存続にかかわる諸問題が大きく立ちはだかっているわけであります。これに加えて、我が国も二十一世紀を目前にして急速な高齢化、さらには経済国際化の中にさらされているというような状況であります。  これらの課題解決科学技術の果たす役割は非常に大きいことは言うまでもありませんが、まず我が国科学技術現状というものを認識し、これを踏まえた基本的な考え方をしっかり持って事に当たらなければならないと私は思うわけでございますが、大臣我が国における科学技術現状についての御認識をお伺いいたしたいと思います。
  8. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 最初に、科学技術庁に御激励をいただきまして、心から御礼申し上げます。  今、北岡先生指摘になりましたように、最近原子力行政等で幾つか不祥事が続いたこともございまして、当庁もその対応に追われているようなこともございます。また、そういう中で、行財政改革、あるいは財政が非常に厳しい状況でございますが、北岡先生は、そういう中で原子力行政で足を引っ張られることによって科学技術行政全体が沈滞するようなことがあってはならない、こういうお考えだろうと思います。  原子力行政につきましては、御心配をかけていることをおわび申し上げますとともに、そっちの方もしっかり立て直すことによって、変化の中で科学技術行政全体を後退させることのないように、科学技術庁一丸となって頑張らなければいけないと思っております。まず、御激励に心から感謝を申し上げたいと思います。  それから、科学技術重要性を御指摘なさった上で、日本科学技術現状をどう見ているのかということでございます。主観的なことを申し上げてもいけませんので、できるだけ客観的な資料でお答えを申し上げたいと思うんです。  まず研究費についてであります。我が国政府民間を合わせた研究費総額は、平成七年度で十四兆四千億円になっております。また、研究者数は六十五万九千人であります。この数字は、いずれもアメリカに次ぎまして世界第二位、アメリカ研究費総額が十六兆八千億、それから研究者数が九十六万三千人で、いずれもアメリカに次いだ世界第二位の数字でございます。  その次に、その中で政府研究開発投資がどうかということであります。これについては国防研究費の割合とか、あるいは民間がどの程度力を注いでいるかによっていろいろ差異がありまして単純な国際比較というのは難しいんですが、我が国政府負担研究費GDP、国内総生産に対する比率は、残念ながら欧米主要国の水準を下回っていると言わざるを得ないわけでございます。ちょっと数字を申し上げますと、日本の場合は九五年度で政府負担研究費GDP比で〇・六七%、アメリカが〇・八六%、ドイツが〇・八四%、フランスが一・〇三%、イギリスが〇・六八%、こういう数字になっているわけであります。  今のは財政的な面あるいは研究者の数でございますが、質的な面で申しますと、これもいろいろ比較が難しいといえば難しいんですが、すぐれた論文はほかの論文に引用される回数が多くなります。したがって、全世界での論文引用回数というものが質を見る場合の一つの基準になるのではないかと思うんですが、国別シェアを見てみますと、我が国は八%、これに対してアメリカが五二%、イギリスが一二%などとなっておりまして、主要各国に比べ低い数値となっております。  それからもう一つは、基礎研究の成果の質をあらわす一つの指標としてよく引用されますのが自然科学分野におけるノーベル賞受賞者の数であります。これについて見ますと、我が国受賞者数はこれまで五人でありまして、アメリカの百八十四人、イギリスの六十八人、ドイツの六十一人などと比べますと大きく劣っていると申し上げざるを得ないわけであります。  今申し上げましたように、研究環境の整備などにおきまして、我が国はまだまだ努力を重ねていかなければならない状況にあるのではないかというふうに考えております。
  9. 北岡秀二

    北岡秀二君 大臣が今おっしゃられたような状況の中で、我が国考えてみますときに、活力に満ちた真に豊かな二十一世紀を迎えるためには、科学技術振興に積極的に取り組み、新産業創出により、産業空洞化社会活力の喪失といった諸問題を克服していくことが不可欠でございます。しかしながら、今おっしゃられましたとおり、欧米諸国と比べて日本科学技術は必ずしも前を走っておるというような状況ではない、技術立国日本の神話が崩れつつあるというのが現状でなかろうかと思う次第でございます。  科学技術創造立国の実現に向けた科学技術振興我が国の最重要政策課題一つであり、このため科学技術基本法が制定をされまして、これに基づいて昨年七月、科学技術基本計画が作成されたところでございます。これに示された諸施策を確実に実施することが重要と私は認識するものでございます。  科学技術振興に当たっての大臣の基本的な考え方をお伺い申し上げます。
  10. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 今、北岡委員が御指摘のように、さっき申し上げた数値は若干諸外国に比べて努力が必要だ、こういうことでありますが、他方、目を将来に向けてみますと、先ほど指摘のようなエネルギーにせよ、人口問題にせよ、あるいは地球環境の問題にせよ、そういう問題を解決していくのは科学技術振興に頼るしかない。我が国国民生活を見ましても、科学技術によってその将来が開かれるという面がございます。  また、この面で我が国が貢献をしていろんな業績を積み重ねていくということが国際社会の中で生きる日本使命ではないかと思っております。こういう考え方は、実はもう一昨年、議員立法全会一致でつくっていただきました科学技術基本法の精神なのではないかと思っております。  当庁の基本的な考え方も、この科学技術基本法にのっとりまして、そして昨年閣議決定をされました科学技術基本計画に沿って施策を推し進めていこう、今おっしゃいました科学技術創造立国をそういう形で実現していこうということになっております。  政府としましては、この科学技術基本計画に言われておりますように、一つ社会的あるいは経済的ニーズに対応した研究開発を行っていかなきゃならない、それからもう一つの柱がやはり基礎研究を充実させていく、この二つが柱だと思うんです。  それで、社会的、経済的なニーズに対応した研究開発としましては、新産業創出やそれから情報通信が飛躍的に進歩しております。そういう諸課題に対応できるような研究開発が必要だろうと。それから、エルニーニョ現象とかいろんなことが言われておりますが、地球規模の諸問題の解決に資する研究開発がまた必要であろう。それから防災とかあるいは疾病に対する生活者ニーズに対応した諸問題の解決に資する研究開発が必要であろう。社会的、経済的ニーズに対応するものとしてそういうものを考えているわけであります。それと同時に、先ほど申し上げたように、基礎研究振興しなきゃならない、これが研究対象であります。  もう一つ研究開発環境でありますが、それはやはり柔軟でそして競争的でオープンなものでなければならない。そういう形で新しい研究開発システムをつくっていけと、これが科学技術基本計画の求めているところでございます。  もう少し具体的な施策を申し上げますと、研究開発課題としては関係省庁の間で緊密な連携が必要でございます。一つは、やっぱりライフサイエンスといいますか、ミクロでいいますと遺伝子ですね、ゲノムの関連研究、それからマクロでいいますと人間の脳、この脳の科学研究、こういったことが一つの柱であろう。  それからもう一つは、情報伝送処理高性能化を目指した情報科学技術というものに重点を置く必要があるのではないか。  それからもう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたが、地球変動予測、こういうものに関する研究開発が必要ではないか、そのあたりに重点を置いて進めているところでございます。  また、研究環境あるいは制度改革等としましては、国の研究者任期つき任用制を導入するという法律をこの間の通常国会でつくっていただきました。現在、国立試験研究機関では、ことしの五月に法律ができましてから既に十八名の任期つき研究員を採用しております。  それから、若手研究者層養成拡充を図るためにポストドクター等一万人支援計画推進して、毎年一万人の研究者研究環境研究の場を与えていこう、こういうことをやっております。  以上のほかにも、国の研究者による民間企業での研究活動がもっと一緒にできないかということで、兼業許可円滑化とかあるいは研究者にインセンティブを与える意味で国の研究者への特許権個人帰属等施策推進しております。  今後とも関係省庁との一層密接な連携のもとに、科学技術創造立国に向けて頑張っていきたいと思っております。
  11. 北岡秀二

    北岡秀二君 いろいろな取り組み考えをお伺いしたわけでございますが、その中でも特にちょっと二、三具体的な領域お話をお伺い申し上げたいと思います。  今の大臣お話の中に、基礎研究部分取り組みもこれからどんどん図っていかなければならないという御答弁をいただいたわけでございますが、特に最近、欧米に比べて基礎研究分野が非常におくれをとっているんじゃなかろうかというような指摘があちこちからされていらっしゃる。そしてまた、基礎研究分野という特性考えてみますときに、採算性の問題から民間が非常に取り組みづらい領域であるということを考えてみますときに、国が積極的に推進をしていく役割というのは非常に大きなウエートを占めておるような感じがするわけでございます。基礎研究推進に当たっての、今、一部お話をいただいたわけでありますが、大臣のさらなる御所見をお伺い申し上げたいと思う次第でございます。
  12. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 基礎研究重要性ということを御指摘になりましたが、創造力を、創造性というものを培っていくためには基礎研究の幅広い基礎がなければこれはうまくいかない、御指摘のとおりだと思います。そして、いろいろ研究者にアンケートをとりまして、先ほどもお触れになったことでありますが、我が国基礎研究状況はどうだということになりますと、ヨーロッパに比べて劣っているところ、進んでいるところ、いろいろございますけれども、アメリカにはちょっとやや劣っているというのが現況ではないかと思っております。  科学技術基本計画一つの柱として、基礎研究の積極的な振興というところを申し上げたわけでありますけれども、もう少し具体的に申しますと、先ほども触れたところでありますが、柔軟かつ競争的で開かれた研究環境をつくらなきゃいけないということから、研究者はできるだけ固定した環境の中で、タコつぼに入ってもらってはなかなか創造性ができないということで、先ほど申し上げたような任期つき任用制の導入ということを今推し進めております。それから、研究資金の分配などにつきましても、公募によって競争的に、よい研究には研究資金をつけていこう、そういうようなことを今拡充しているところでございます。  今まで科学技術庁でやってきたことをもう少し申しますと、科学技術振興事業団による、これはすべての大学や国立試験研究所対象として、今公募と申しましたけれども、戦略的基礎研究推進事業、それから創造科学技術推進制度、こういう制度を使って今申し上げたようなことをやらせていただいております。それから、科学技術振興調整費を活用して各種基礎研究推進しているのと、あとはやはり理化学研究所によってフロンティア研究制度というようなものをやっております。  今後とも、科学技術基本計画推進していく場合には、社会的、経済的ニーズに応じた研究開発と同時に、基礎研究をバランスよくやっていくということが大事ではないかと、こう思っております。
  13. 北岡秀二

    北岡秀二君 続いて、財政構造改革科学技術振興との絡みについてちょっとお伺い申し上げたいと思います。  御承知のとおり、財政再建をやっていかなければならないということで、いろんな意味でむだなお金を削っていこう、そしてまた基本的に体質改善をやっていこうというような流れ、これは当然科学技術庁領域の中にも大きな荒波としてやってくる。ただ、今の日本現状考えてみるときに、将来的にはとにかく経済的に新しい道を開拓していかなければならないということを考えあわせてみますと、科学技術研究費というのは、それはほかの分野と違って特段の配慮をしていかなければならない、両面があるわけでございます。  そういうトータルの状況考えてみましたときに、経済的、社会的により的確にニーズにこたえる技術革新をやっていかなければならないということで、基本的にこの大きな改革の流れの中での科学技術庁としての取り組み姿勢というのも、より鮮明にというか、より的を射た形で取り組んでいかなければならないという状況考えられるわけでございます。財政構造改革状況の中での科学技術振興についての大臣のトータルのお考え、どのようなお考えを持っておられるか、お伺いします。
  14. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 今、参議院で財政構造改革推進に関する特別措置法を御審議いただいているわけであります。その法案の中身は、御承知のように、厳しい財政事情の中で政府全体の予算が厳しく制限されているわけでありますけれども、そういう中で、科学技術振興費については平成十年度の当初予算において対前年度比五%増を上限とする。これは、こういう厳しい環境の中では随分科学技術には配慮をしていただいている、科学技術振興重要性ということをお認めいただいている、こういうふうに思っているわけであります。  しかし、厳しい抑制の中で行われるわけでありますから、我々もその限られた予算といいますか、研究資源というものを適切に配分していかなければいけないと思っております。そのために大事なことは、研究評価をきちっと厳正かつ的確に行う、そして効率的、重点的に予算を配分していかなければならないということだろうと思っております。  この点につきましては、平成九年八月、ことしの八月でございますが、評価の大綱的指針というものを内閣総理大臣決定をいたしまして、四つ基準を設けております。評価基準・過程というものを明確にしていこう、それから第三者による外部評価を入れていこう、そしてその結果を公表する開かれた評価をやっていこう、また、評価というものは評価のための評価であってはならないんで、その評価結果というものをきちっと研究開発資源の分配に生かしていこう、こういう四つの方針のもとで科学技術庁努力をいたしておりますし、各省庁、そういうことで研究開発の評価を進めていただいているところでございます。
  15. 北岡秀二

    北岡秀二君 何度も申し上げますが、これからの日本の将来ということを考えていったときに、科学技術振興というのは日本の国の存続の大きな大きな生命線という状況でございますので、ぜひとも今おっしゃられたような姿勢のもとで、本当に責任使命という部分を十分に自覚されて今後お取り組みをいただきたいと思います。  ちょっと原子力行政について一点だけお伺いしますが、これも総論でございますが、御承知のとおり、最近のエネルギー事情、さらには地球環境問題等々を考えてみますときに、化石エネルギーの消費というのはいろんな意味で大きな制約が出てくる。そしてまた、私どもとしても社会の中で使用するに当たって考えていかなければならないというようなことを考えてみますと、原子力発電重要性というのは、片や非常に浮き立ってくるような感じが私はしておるものでございます。  ところが、今の我が国状況というのを考えてみますときに、一連の不祥事と申しますか、いろいろな事件によりまして、原子力に対する国民の信頼というのは一挙に落ちておる。そういう状況の中で、原子力という問題に対する国民の信頼回復に対してぜひとも全力を挙げてお取り組みをいただきたいのと同時に、今後の原子力行政に対する大臣取り組みのお考えをお聞き申し上げまして、もう時間が参りましたので私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  16. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 今、委員が御指摘のように、我が国エネルギーを海外からの輸入に頼っておりますエネルギー小国でございます。  それからもう一つ、やはり地球温暖化問題等環境問題が重要になってきておりますときに、CO2を出さない原子力エネルギーを推し進めていくということは、私は我が国にとって欠かせないことであろうと思います。  しかし、原子力開発利用を進めていくためには、国民の理解と信頼というものがなければ、これまたできないことは言うまでもございません。今御指摘のように、最近、原子力行政分野では幾つか不祥事といいますか事故が起こりまして、大変御心配をかけますと同時に、国民の信頼を失ってしまったと。このことは大変重要な問題であるというふうに深刻に受けとめているわけであります。  国民の信頼あるいはそれぞれの地域の信頼を早期に取り戻していくためには、いろんな問題の根っこにあるもの、その中にあるうみというものを出し切ると。そして、それを整理して動燃の根本的改革につなげていく。今、いろいろ法案を準備しておりまして、来年の通常国会には動燃の抜本的改革の法案の御審議をお願いしたいと思っているわけでありますが、そういうことをし、それから科学技術庁の自己改革という努力もあわせて行わなければならないのではないかと思っております。  こういうことを進めていくときに大事なのは、一つはやはり安全性の確保、これをきちっと強化していくということであろうと思います。それから、今もそのことに努めておりますのは情報公開、積極的にそれをやっていきたい。それから、国民各界各層との対話の促進、こういうことが必要なのではないかと思っております。こういうことを通じて、原子力行政を再構築するように最大限の努力を傾けてまいりたいと思っております。
  17. 北岡秀二

    北岡秀二君 ありがとうございました。
  18. 畑恵

    ○畑恵君 自由民主党の畑恵でございます。  ただいま北岡議員からの質疑に答えまして谷垣長官から、科学技術庁が現在行っているさまざまな施策についてるる伺ってまいりまして、やはりそうした施策を怠りなく一歩一歩着実に進めていく中で、行政組織をいかにするべきか、これは非常に重要なテーマだと考えております。  そして、折も折、今、行革の中で省庁再編の論議が沸騰しているわけでございますけれども、私、正直申しまして、せっかくの機会が本来の日本科学技術振興に資する行政形態を考える舞台というよりは、庁であるのか省であるのかという、そういう非常に矮小化された部分でとまってしまっているということを実は残念に思っております。  そこで、本日私は、私なりに考えます今我が国科学技術行政が直面している三つの課題指摘させていただきまして、それについてさまざま質疑応答を繰り返した中で、ぜひ谷垣長官に質問のおしまいに伺わさせていただきたいんですけれども、そうした施策を実行していく中では、どのような未来の科学技術庁と申しましょうか省庁の形態がふさわしいのかということについて、ぜひ御所見をいただきたいと思っております。  その三つの課題と申しますのは、一つは、これは決して科学技術だけに関する問題ではございませんけれども、国家戦略的な施策の実施ということでございます。そして二番目は、連携の構築、強化ということでございますけれども、この連携には二つ考えられるのではないかと。一つは、各省庁間及び研究機関との連携の強化ということでございます。つまり、霞が関の横断的な連携機能の強化ということでございます。もう一つ連携は、産学官の連携、この構築をいかにするのかということ。そして三つ目といたしましては、既に長官から言及がございました評価システムの構築ということでございます。  この三点につきまして、それぞれどのような施策をとっていくべきか、伺ってまいりたいと思います。  まず一点目の、国家戦略的な施策の実施でございますけれども、今、国家戦略という問題に関しましては、科学技術会議の方である程度の方向性、指針を示して、それによってさまざまな政策が進められているというふうに、私、党の部会ですとかさまざまなところで御答弁を受けているのでございますけれども、今行革会議から出ている試案の中では、内閣府に総合科学技術会議を制定してこちらで戦略的な基本計画を練る、そういうようなお考えが私の方に伝わってきております。  ただ、どうもこの総合科学技術会議の中には、戦略的な方向性を策定するという役目と総合調整という役目と、二つが混合して見直されているようにその試案を拝見すると読み取れるんですけれども、どのような組織でありましても、戦略と調整という二つの役割というのを一つの機構の中に包み込むというのは非常に難しいのではないかと私は思います。  恐らく、まだきちんとした形が決まる前でございますけれども、もしここで基本的な戦略的な政策を決めるのでありましたらば、どのようなメンバーを皆様方は想定していらっしゃるのか、どのような組織を、この総合科学技術会議がもしできるとしたら考えていらっしゃるのか、そのあたりについて現在お考えのところを伺いたいと思います。
  19. 沖村憲樹

    政府委員(沖村憲樹君) 行革会議の審議状況の御質問でございますので、まず私の方からお答えさせていただきたいと思います。  御案内のように、現在、科学技術会議におきましても、科学技術基本計画の策定等、総合戦略的なことをやっていただいているわけでございますけれども、今回行革会議で議論されております総合科学技術会議、ここは現在の科学技術会議と異なりまして、人文科学、社会科学、それと自然科学を総合した形で国家としての基本戦略を考えていこうということを想定されておるようでございます。  そのほか、戦略の策定のほかに、総合科学技術会議におきましては、資源配分の基本方針といいますか、人材とか予算とか全体の基本方針でございますとか、あるいは国全体の施策あるいは大きなプロジェクトの評価でございますとか、そういうことをやるということの議論がされておるところでございます。  それから、御質問のメンバーでございますけれども、この機構は内閣府に置かれるということになっておりまして、当然、任命は内閣総理大臣が任命されると思います。一方、内閣府は内閣官房長官がお世話するということにもなっておりますので、そういうことで全体が総理大臣の任命でございますので、そういうところで人選が行われていくものというふうに考えております。  人選の考え方の基本としまして、行革会議で行われております議論は、幅広く人文科学の関係の方、社会科学、自然科学の関係の方、学界、産業界も含めて幅広く人選を行う必要があるという議論が行われているというふうに承知いたしております。
  20. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございました。  今の御説明、大変よく理解させていただいたつもりなんですけれども、ただ冒頭にも申しましたように、私自身はやはり基本的に戦略と総合調整という二つの機能を並行して一つの枠の中でというのは難しいのではないかと思っております。  これは私の全く私案でございますけれども、例えば戦略的な策定に関しましては内閣官房の方が、全体として大枠の予算設定も一つの戦略に基づいてしていくという、そういう機能を持たせるという今の予定でございますので、そちらの方で戦略としては内閣官房の中に何かしら科学技術戦略本部のようなものを一つ設置して、そして今度その総合科学技術会議の方では主に全体の総合調整のような、そういう役割分担をした方がむしろ現実的に戦略というのが策定できるのではないか、私としてはそのように考えております。  また、先ほど私、午前十一時から科学技術と政策の会の方に出させていただいて、ちょうどその折に行政機能の話が東京大学の平澤冷教授から出ておりました。平澤教授の御指摘も本質的なところは変わりませんで、やはり調整と戦略を分けた方がいいだろうと。  教授のお考えでは、例えばアメリカのOSTPとNSTCのように、OSTPというのは総合科学技術戦略会議、ですから戦略機能の一つの会議、そしてもう一つ、NSTCというのは総合科学技術行政会議という、この二つにしてそれぞれ役割分担をしたらどうかという試案を出していらっしゃいました。また教授は、ぜひ議会の方にもトップダウンで基本的な戦略を策定する機関をつくったらどうかということで、科学技術国家政策推進機構というのを議会の中に設置して、そこで国としての科学技術戦略を策定して連携をとっていったらどうかというようなお話も出ておりました。  きょうのきょうの話でございますので、こんなことは質問通告にないのでございますけれども、せっかくそういう案が出ておりますし、恐らくこういう動きにつきましては科学技術庁の方、そして長官の方がより早くお耳にもしていらっしゃると思いますので、戦略と総合調整、これは一つの中でよいのか、分けるべきか、その点について何か御見解がありましたらぜひ伺いたいと思います。
  21. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 畑先生の御意見は、戦略と総合調整二つやるのは、何というんでしょうか、二兎を追う者は一兎をも得ずということになりかねないのではないかという御質問だったと思います。  総合科学技術会議という、今行革会議で議論されている機関がどういうようになるのか、まだ集中討議の最中でございますから、私も確固たる見通しを持っているわけではありませんが、やはり我が国の最高の英知を結集していただいて、我が国科学技術といいますか総合的な戦略的な科学技術の目的、方向というものを御議論していただく、これは強力にやっていただく必要があるのではないかと思っております。  総合調整ということになりますと、それぞれその言葉でどういうことをイメージしているのか、論者によってかなり違ってくると思いますが、私は、今、日本では各省の縦割りの弊害というのが指摘をされております。現状を見ましても、各省庁それぞれ独自に研究開発や技術開発を行っていて、必ずしもその間の調整が十分には行われていない場合を間々見受けるわけであります。  大きな方向として、限られた国家予算でありますから、そういうものをどういうところに注いでいくのかという全体の大きな調整はそういう場でやっていただく必要があるのではないかなと。今、畑先生御指摘になるように、二つを分けることについてまだ十分私の考察は進んでおりませんけれども、総合科学技術会議にはそういう意味での総合調整の機能があり得るのではないか、こう思っております。  ただ、いわゆる総合調整と言われますのは、今まで科学技術庁もそういうことをやってきたわけでありますし、環境庁や何かにしてもそれぞれの行政でされているわけでありますけれども、そうなると具体的なプロジェクトの中に入って、どういうものをどうするかというようなかなわ細かな議論が必要になってくるのではないかと思います。そういう意味での総合調整を高次の総合科学技術会議に全部お願いすることはいささか難しいのかなと。そのあたりはもう少し、総合調整といいますけれども、具体的なものについては別途の組織がやはり必要なのではないかと、こんなふうに思っております。
  22. 畑恵

    ○畑恵君 長官の御意見、特に、同じ調整と一言で言ってもさまざまなステージがフェーズがあるというお答えでございまして、非常に私自身も共感するところでございます。  ただ、どうして私が戦略機関と総合調整機関というのを分けるべきと考えるかといいますと、現在科学技術庁の皆様も非常に苦慮していらっしゃるところだと思うんですけれども、やはり総合調整をする中で、各省庁間のそれぞれ御主張がいろいろぶつかり合う、重なり合うところもあると思います。そうした中でバランスをとるということを考えていく、そういう全体の調整機能と、とにかく国としてはこれでいくんだ、この方向性だという戦略を策定する機関というのは、私はやはり両者相立たずではないのかなという気がいたします。  先ほどメンバーについて伺いましたのも、例えば調整機関だから各省庁みんなバランスよくいろいろな方を御推挙してすばらしい方々が集ったと。ところが、全体としてはそれぞれの御意見をバランスとって一つのそれが戦略だということになってしまうと、果たしてそれが国の戦略と言えるのかどうか。非常に国際競争ということを目前にして、国としていかにあるべきかということを策定していく中で、果たしてそういう組織でよろしいのかというのが私の危惧するところでございますので、ぜひさらなる御検討をいただきましてよりよい組織にしていただければと思います。
  23. 沖村憲樹

    政府委員(沖村憲樹君) 先ほど私のお答えしました中でちょっと若干正確じゃないところがございました。  先生、総合科学技術会議の構成員のことをお尋ねになったと思うんですが、現在議論されて大体煮詰まっておりますのは、まずメンバーは内閣総理大臣が入っていらっしゃいます。それから内閣府に置かれる担当大臣、その他任務に関係の深い閣僚、関係行政機関の長、それから学識経験者という構成でございます。学識経験者につきましては、私が先ほどお答えしたような議論が行われているところでございます。それから、常勤の先生が科学技術会議に現在二名いらっしゃいますが、この常勤の先生ははもっとふやすべきじゃないかという議論が行われております。  ちょっと補足させていただきます。失礼いたしました。
  24. 畑恵

    ○畑恵君 それでは第二点目、連携の強化について伺ってまいりたいと思います。  まず、同じ連携でございましても各省庁または研究機関の連携の方から伺ってまいりたいと思うんですが、この点につきましては実は数々の会議の席で質問を私させていただきまして、そしてどのようなそれに対する対策、施策がとられているかということは一応承知させていただいているつもりでおります。非常に御努力なさっていらっしゃるということは私自身も評価させていただきたいと思います。本来でしたらば、いろいろとこういうことこういうことというのをお話しいただこうと思ったんですけれども、ちょっと時間が迫ってしまいましたので、私自身大変評価させていただいておりますし、なお一層進めていただきたいということに今回はとどめさせていただきたいと思います。  同じ連携の中でも産学官の連携、こちらの方について伺いたいんですけれども、この点につきましては既にプロジェクトなども組まれていらっしゃいます。要するに、研究所研究室の中で生まれた発明がいち早く特許を取得して、そしてさらにパテント化されて実用化され、そして国民または世界人類の幸福に資するという一つの道筋といいましょうか、そういうものが若干日本科学技術体系の中ではまだ未整備ではないか、そういう私自身の見解でございます。  ここで、先ほどせっかく木宮理事から委員派遣報告がございました。私そのときに東北大学を皆さんとともに訪れさせていただいて、そのときに大変興味深いといいましょうか、心に残るエピソードがありましたので、そのことにちょっと触れさせていただきたいんです。  東北大学が誇ります発助成果の中でも、特に歴史に残る八木・宇田アンテナというものが、御承知だと思うんですけれどもございます。一九二六年に発明されて、発明当時も非常にすぐれた指向性、方向性を持っているということで、学会でも高い評価を得たと。それから十数年して日本は第二次世界大戦へ突入するわけです。その中で、シンガポール戦線だったとお話ししていらっしゃいましたけれども、事もあろうにイギリス軍がこの八木・宇田アンテナをレーダーとしてありとあらゆるところに装備をしていたという姿を日本軍が見てしまったということで、第二次世界大戦の話をそのまま現代に直結させるわけではないんですけれども、その昔から非常に研究開発能力というのは日本は高いと。  ところが、実際にそれを実用していくところになると、そこまでの道というのがなかなか整備されていないということがいまだにあるように思いますので、こうした産学官の連携といいましょうか、発明、特許、そしてパテント化への道筋の整備ということについてどのように取り組まれているのか、伺いたいと思います。
  25. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) お答えさせていただきます。  産学官の連携の御質問でございますが、産学官の連携の必要性につきましては私どもも十分理解をしているつもりでございます。産学官の連携の効果といたしましては、先生御指摘のいわゆる成果を社会に還元していく、こういう役割、それからもう一つ研究そのものが産学官の連携をもって活発化しかつ活性化される、こういう役割があると考えております。こういう観点から、国といたしましては、六十一年に研究交流促進法でもちましてバリアを少しでも少なくするようなそういうふうなことは進めてきているところでございます。  特に、私どもといたしましては、民間企業における活用の促進の観点について述べさせていただきますと、科学技術振興事業団におきまして、国などの研究成果を企業に委託して開発する委託開発事業というのを進めております。これは平成十年度では約八十六億円ぐらいの予算額で進めております。あるいは開発あっせん事業と言っておりまして、国などのやっておりました研究の成果を民間の方にあっせんしていく、こういう事業も進めているところでございます。  さらに今年度からは、新産業創出を目指しましたデータベースを作成して、民間の方がアクセスしやすいようにする、こういうふうなこと、あるいは研究開発型の中堅・中小企業が持っております新技術の構想を、具体的な試作品という形でもって新技術が直ちに使えるものかどうかということをチェックするといいますか、そういうことをやる事業、独創的研究成果育成事業、こういうふうに言っておりますけれども、こういうものを開始しているところでございます。  さらに、国の研究成果のうちの新産業創出等が期待されるものにつきましては、特許化を支援していくような事業あるいは技術移転を促進していくような事業を進めたい、こういうふうに考えて進めているところでございます。
  26. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございました。  さまざまな施策が進められていると理解させていただきました。ただ、できましたらばもう少し思い切ったといいましょうか、一つのモデルを申し上げますならば、シリコンバレーとスタンフォードの関係、いろんなところで例として引かれると思うんですけれども、やはりあれぐらいの強い連携といいましょうか、一体になっていると言って全く過言でないと思うんですけれども、そのような形の施策がとれないものかと。  御承知のように、例えば慶応大学SFCでさまざまな試みがされておりますけれども、大学の中から例えば第二のSUNであるとか第二のマイクロソフトが生まれるということは非常に難しゅうございます。これは、一人一人の学生の能力がアメリカの学生たちと大きく異なるのかというと決して私はそうは思わないんです。明らかにそのシステムが違っていて、アメリカの方はきちんとスタンフォード大学の中に一つの企業が、ベンチャー企業がその中で生まれて育つ、そういうシステムというのができ上がっております。  SUNというのはスタンフォード・ユニバーシティー・ネットワークでございますので、それぐらいの強いつながりというのを、特に情報通信関係などは、サイバースピードは今の一年というのがコンピューターの中ですと十年に値するぐらいに早いですので、やはり非常に思い切った施策をとらなければいけないと私は思うんです。  何か、先ほど御紹介いただきました以外に、今後、希望としてこういうこともやってみたいなということがございましたらば重ねて伺いたいんです。
  27. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) 先生の御指摘は私どもも念頭には置いているところでございますが、日本現状の中で実現性のある形はどういうやり方をしたらいいか、こういうふうなことを今考えているところでございます。私どもといたしましてもいろいろと勉強は続けております。引き続き勉強させていただきまして、先生の御趣旨に沿うような努力をしていきたいと思いますので、よろしく御支援のほどお願いしたいと思います。
  28. 畑恵

    ○畑恵君 こちらの方こそどうぞよろしくお願いいたします。  それでは、おしまいに三番目の評価システムの問題でございますけれども、先ほど谷垣長官から科学技術評価の大綱的指針、四つの指針というのを既に御説明いただきました。非常に的を得た四つの指針でございますので、ぜひこの方向で進めていただきたいと思うんです。  議院の方でも、先ほど御紹介させていただいた科学技術と政策の会の方で、同じ評価システムといいましても、より戦略的に科学技術の将来を誘導できるような、そういう積極的な評価を行う機関をつくれないだろうかということで研究を進めていらっしゃったと私仄聞しております。実際、私自身もこの会のメンバーになってその計画に携わらせていただいておったんですけれども、この科学技術と政策の会がひな型にしていた議会の中に置かれるべき技術評価委員会、これはアメリカのOTAでございました。  ところが、OTAが本国のアメリカでこのたび廃止になってしまったということがございまして、私不勉強でどういう経過でそうなったのかというところがちょっとわかりませんのと、あと日本版OTAの設置についてどのようにお考えなのか、この二点について伺いたいんです。
  29. 近藤隆彦

    政府委員(近藤隆彦君) 御説明申し上げます。  まず、今おっしゃいましたアメリカのOTAの件でございますけれども、一九九五年に廃止されております。  このOTAは、米国議会の機関としまして議会の求めに応じまして技術利用の結果を、いい面悪い面、いろんな面を評価しまして、その効果とか影響を分析して、それで議会に対しまして報告をするということでつくられたわけでございます。いわゆる技術評価をするべき、そういうことで設置された機関でございます。  しかしながら、比較的短い歴史でこれは閉じておりますけれども、基本的な大きな一つの原因は、財政の赤字の問題がありまして機関が全般的に整理をされたという状況がございます。このOTAにつきまして、特に議会関係者とか政府関係者から仄聞しますと、当初期待されたような効果はなかなかないということで、一番の理由は、どうしても評価に時間がかかって、法案の関係でもっと早く欲しいものが、例えば一年も二年もかかって出てくるとか、したがってよっぽど民間の方が早い、ないしは政府そのものの方が結果的には早かったとかありまして、相当な期待を持ってできた割には議会からすれば十分な期待にこたえていなかったということが大きな実質的な理由のようでございます。議会関係者含めて私どもが伺いますとそういうふうにお話をいただいておりますので、多分そのようなことが大きな原因じゃないかというふうに思っております。  今おっしゃいました科学技術と政策の会でいろいろ検討いただいております国会におきます評価のシステムにつきまして、私どもいろいろお話を伺っております。  現在、科学技術会議でも先ほど大臣から申し上げました格好で今後さらに基本計画を受けまして、評価につきましてはきちっとした体制をとりまして、各研究機関が税金を使った研究につきましてはきちっとした評価をしたいと思っております。  他方、国会の中にこのような機関を別途置いて、国会として評価されるということにつきましてはこれからも議論があると思っておりまして、まだ各党の間でも議論の最中というふうに承っているものでございますから、ぜひ今後もいろんな観点から御議論いただきたいと思っております。  私どもとしましては、現在与えられた科学技術会議というものを十分活用しまして、その役割を果たすべく、評価を含めてこれからも一層総合的な、あるいは整合的な科学技術政策が評価を十分しながら進められていくように努力をしてまいりたいと思っておりますので、よろしく御指導いただきたいと思っております。
  30. 畑恵

    ○畑恵君 今のお話を聞きますとなかなか現実は厳しいものがあって、費用もかかるし時間も要するということだと思うんです。  ただ、やはり先ほどの長官のお言葉にありましたように、評価の前提はやはり情報公開でございます、透明性を高めるということでございますので、例えばインターネットのような新しい技術を使って低コストでそしてスピーディーに正確に情報が公開されてそして評価できるような、そういう方策というのも今後テクノロジーの力でできてくるのではないかとも思います。ぜひ議会の方でも、OTAはそういう形になりましたけれども、日本の方はそれを一つの他山の石としてさらに頑張りたいと思います。  では、お時間にもなってまいりましたけれども、大変駆け足で恐縮なんですけれども、以上の三点を踏まえまして、長官、科学技術振興に資する行政形態でございますが、どのようなものが今後望ましいとお考えになっているか、最後に御所見を伺って私の質疑を終えたいと思います。
  31. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 先ほど畑委員が御指摘になりましたように、やはり高次の科学技術戦略を立てる機関というものが必要だろうと思います。  今の御議論の中では総合科学技術会議というものがそれに当てられると。そのとき大事なのは、先ほどおっしゃったように総合調整の名のもとに、従来の形態でいえばそれぞれの省益みたいなのを主張し合って、結局出てきたものは無個性のものになってしまう、こういうようなことは、先ほど指摘のようにやはり一番警戒しなければならない点ではないかと思っております。  そういう意味での戦略を立てるところがきちっとできましたら、その次に大事なことは科学技術行政を担っていく中核の機関、科学技術担当省と申しましょうか、そういうものが必要なんだろうと私は思います。  具体的にその役割を申しますと、一つはそういう戦略策定機関、総合科学技術会議みたいなものが立てた戦略、予算配分をどうするかとか具体的に総合調整先ほどの繰り返しになりますが、調整し具体化していく役割をひとつ担わなきゃいけないということだろうと思います。  それから、今までの日本の役所のシステムから考えますと、総合調整だけをやっているというと、これはどうも何というかパワーにもう一つだというところが、歯にきぬ着せず言えば私はあると思うんです。やはり科学技術の、もちろん各役所に直接の技術開発、各省庁の行政目的に直接資する技術開発というのは各省庁で担われてもいいかもしれませんが、大きな基礎研究であるとか戦略的な研究目標であるとか、そういうものは直接やるのか、あるいは特殊法人みたいのを使うのか、国立研究所を使うのかいろいろあると思いますが、みずからの手で科学技術政策を、具体的、戦略的な研究開発推進していくということが役割としてなきゃいかぬと思うんです。  それからもう一つは、やはり日本全体を見渡した場合の研究環境と申しますか、研究開発、技術開発の言うなればインフラを整備していくような、そういう今申し上げたような戦略の具体化、それからある意味での戦略研究を実施し、それから技術開発のインフラをつくっていく、こういうことを担当する役所が私は必要なんじゃないかと思います。  それが、具体的に申しますと、行革会議の中では文部・科学技術省、これは仮称でございますけれども、そういう形で今議論されていることは事実でございます。これは議論の最中ですから、私はこれを直接評価するのは差し控えますけれども。  いずれにせよ、それぞれの行政形態なり目標とするところが若干違いますので、もしそういう形で議論をしていくとすれば、注意しなければならないのは、両方がよさを相殺することによって、例えば科学技術行政が文部行政の中に埋没するというような形は避けるべきだろう、やはり両方のよさというものを生かし合うような組織形態というものを考えて、科学技術を担う中核的な組織をつくっていく必要があるのではなかろうか、今、行革会議で御議論がございますから、そういう気持ちで見守らせていただいているというところでございます。
  32. 畑恵

    ○畑恵君 おっしゃられるとおり、本来でしたらば、科学技術分野がどういう問題を抱えているのか、それを解決するにはどういう対策が必要なのか、そしてその上でこういう行政形態を、そういう三段論法に本来なるべきはずだと思うんです。どうも一番最後のところがいきなりぽんと結論として出てきて、それに本来の業務を合わせるような、そういう省庁再編論議がされていたもので若干危惧しておりましたけれども、本日の長官のお話を伺って大変心を強くしました。どうぞ、今後とも頑張っていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  33. 石田美栄

    ○石田美栄君 平成会の石田美栄でございます。  私は岡山県の出身でして、岡山県には動燃の関係の人形峠事業所というのがございます。全国版ではありませんから余り皆様は御存じないかもしれませんが、最近、この二、三カ月岡山県の地方版の新聞にしばしば載っておりまして、この何年か問題になってきております原子力政策あるいは動燃に関係するいろいろな不祥事、そして今、行財政改革にかかわる特殊法人等々の問題が、この人形峠の記事を見るだけで凝縮されたような形で見られましたので、本日はそのことだけに限って質問をさせていただきます。  今、特殊法人の廃止だとか縮小、民営化が検討されている中で、また一連の不祥事が続いた動燃開発事業団の問題についても動燃改革が進められておりますが、動燃が一九七四年から約三百億円をかけて進めてきた高性能ウラン濃縮遠心分離機の実用化がコスト高のために見送られる見通しということで、動燃はウラン濃縮に関するすべての研究開発を中止するというふうに報じられました。  そこで、このウラン濃縮遠心分離機の実用化研究開発を進めてきておりました岡山県の上斎原村という小さい村なんですが、そこに人形峠事業所があります。それも整理、縮小されるという問題が起こってきて、上斎原村では、ウラン鉱層が発見されて以来四十二年にわたって全村を挙げてこの事業所にかかわってきた、また雇用等々も全村に大きくかかわってきておりました。その上斎原村が中心に、地元から雇用確保とか地域振興などで村の将来に重大な問題として新たな事業展開への要望などを出しておりましたが、こうした一連のことは実は八月末のことでした。  その後、この人形峠事業所で違法排水問題がありまして、科学技術庁の職員が現地調査に行かれましたね。そうしたところ、放射性廃棄物の廃棄の記録を怠っていたことや、また放射性廃棄物が不適切な場所に長い間保存されていたというふうなことがわかりました。  これに対して、科技庁は動燃に対して文書で改善を指示されました。この改善指示に対して、一時保管していた廃棄物は既にすべて処理したという報告をしたわけです。ところが、これは虚偽だったということ、そしてまた、一時保管というんですけれども、実は平成五年から保管し続けていたんです。これを岡山県の民主党なんですけれども、現地に視察に入ったところ、ドラム缶が実はたくさん残っていることを確認しましたら、これが十月二十二日でしたか、二十三日に大急ぎでそれは間違いだったという訂正報告をされました。そこに幾つかの言いわけがあったという。  以上のように、さっと人形峠事業所だけに限って一連の出来事を申し上げただけでも、今お聞きになっている方はおわかりになりましたように、こうした動燃のずさんな施設運営や管理、さらには数々の虚偽報告が問題とされてきているにもかかわらず、つい最近でもこのように私の地元の人形峠事業所で廃棄物の保管等々問題が起こっている。  こうした動燃職員の意識の問題というのは一体どうなっているのか。岡山では、県民が非常に長い間いろいろな不安はありながらも、この事業所に、抵抗の活動もありましたけれども、理解を持ちここに至っています。こうした一連の動燃職員の意識の問題について、管轄の長でいらっしゃいます長官の御所見をまずお伺いしたいと思います。
  34. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) ただいま石田先生、地元の人形峠の保管問題、いろいろな経緯、単に保管が問題であったというだけではなくて、保管の後の処理と申しますか報告等についても非常におかしな点があったではないかという御指摘でございます。  これは、人形峠だけではなくて、今までも、事故そのものもさることながら、事故の後の処理もいかにもまずいことが幾つかございまして、地元を初め国民の方々に原子力政策に対する不安感、不信感を与えた、我が国原子力政策に大きな影響が出てきております。これはまことに重大な問題だと思っております。  私としては、そういう意識改革を徹底し、また動燃のうみも出し切らなきゃならないと思っているわけでありますが、こういう問題がどこから起こってきているかということを私なりに整理してみますと、一つは、職員の安全性に関する意識というものが一般社会と少し違って、タコつぼと言うと語弊がございますけれども、そういう感じが一つはあるのじゃないか。  それからもう一つは、何というんでしょうか、自分たちの仕事は国民の理解と信頼があって初めてできるんだ、そのためにはやはり自分たちのやっていることを十分にわかってもらう、オープンにしてもらうというか、情報発信といいますか、そういうところの意識が十分でない。これも、さっきのタコつぼというのとあれかしれませんが、一種の閉鎖性があるということ。  それから、いろんな問題を見ておりますと、意思決定のプロセスなどが不明確である、記録等も十分残っていなくてわからないということも今までのいろんな事例の中にあったわけでありますが、そういう責任関係のあいまいさというものが指摘できるのではないかと思っております。  これを抜本的に改善していくためには、非常に難しい問題がございますが、職員の意識改革ということになってくるわけでありますが、現在、新法人作業部会において具体策を検討していただいておりまして、職員に対する徹底した教育、研修、あるいは厳しい人事評価、あるいは外部との積極的な人事交流など、こういったことを今検討していただいております。  また、動燃内部におきましても、職員の心構えやとるべき行動を示す行動憲章というものをつくって、それによって研修して意識改革を推し進めていこう、あるいは、理事長診断会等で業務品質を向上させていこう、それから全施設や設備の総点検をして安全性の向上を図っていこうというような具体的な作業を今進めております。  私としましては、動燃改革を進めていくためにはさまざまな対応が必要でありますけれども、まず動燃職員一人一人が新たな法人で出直す覚悟で意識改革に努めることが最も重要だと思っておりまして、その促進となるような環境整備を全力を挙げてつくっていきたいと思っております。
  35. 石田美栄

    ○石田美栄君 長官の御認識、それから、これからへの所信、的確に認識されていることと思います。新しい長官、ぜひこれからは、絶対にということはなかなか世の中に、もうまずないような結果を出していただきたいと思います。  今おっしゃいました行動憲章のことは存じておりますが、実はこの行動憲章を定めた直後にこういうことが起こっているということで、虚偽の報告、どうも現地には足は運ばないで、報告を受けたので処理しているというふうに何か発表してしまったらしいですけれども、そのこと自体も地元の者なんかにとっては、特にこういう折ですし、行革も言われておる折、事業所がどうなるのかというふうなとき、本当に不安を感じるところです。  その言いわけの中でも、こういうプレス発表も配られていて御存じの方多いと思いますけれども、思い込みで作成したとか、時間が迫っていたためチェックができなかったとか、意思疎通が十分でなかったとかという、本当に幼稚なというか基本的な言いわけでひど過ぎるという感じがいたしますので、きょうせっかく動燃からおいでいただいております。今後、こういったことにどう対応なさいますか、御決意のほどをお伺いしたいと思います。
  36. 近藤俊幸

    参考人近藤俊幸君) 先生御指摘のとおり、一連の不祥事の反省に立って意識改革を促進するために、十月七日に行動憲章を制定いたしました。しかしその後、人形峠事業所における放射性廃棄物の保管に関する岡山県への報告に関しまして、現場の状況を取りまとめる際に、一時保管していた放射性廃棄物を、処理しているところとすべきものを、報告作成者が勘違いいたしまして、処理したと誤って記載し、十分な確認を行わずにそのまま報告してしまったということでございます。  このようなミス、不注意から関係各方面に御迷惑をおかけしたことを深くおわび申し上げます。  こうした一連の不祥事については、その根底に、職員の安全意識と社会性が一般社会と大きく乖離しているということをかねて痛感しております。現在、全職員の意識改革に全力を挙げて取り組んでいるところでございます。具体的には、全職員がみずから考え行動する意識の定着化を図るために、全職員を対象とした意識改革研修をこの十月二十九日より理事長以下役員が発頭に立って全事業所一斉に開始しております。  今後は、動燃の置かれた厳しい現状に対する認識を共有し、安全に徹する動燃、開かれた動燃、地元重視の動燃、これを達成するため職員がとるべき具体的な行動基準を示し、それに基づく研修を全職員を対象に実施することによりまして、不退転の決意で意識改革に取り組んでまいる所存でございます。
  37. 石田美栄

    ○石田美栄君 人形峠の事業所でも意識改革の研修が十一月に入って行われたということは報道もされておりますし、存じております。ぜひこういう意識改革を中心にして、安全そして公開性、そういうことをよろしくお願いいたしたいと思います。  そして、十月二十三日に訂正のプレス発表をなさいましたときに、液体廃棄物が十四・七立方メートルのうち三・九立方メーターは搬出済みで、残りの十・八立方メーターを開発試験棟内の処理施設で処理作業継続中というふうに発表されているのですが、現在これはどういう状況になっておりますでしょうか。
  38. 中野啓昌

    参考人中野啓昌君) お答え申し上げます。  御指摘の液体廃棄物でございますが、おっしゃいましたように、当初十四・七立米ございました。十月二十三日に発表したとおりでございまして、そのうち三・九立米につきましては既に所内の廃棄物保管庫に搬出いたしてございます。これは、有機系の廃棄物でございます。残りの十・八立米のうち、十一月十八日現在まで、昨日までの間に一・二立米を開発試験棟内の処理施設で処理をいたしております。現在、残りの九・六立米につきましては、処理作業を順調に順次進めておるところでございます。
  39. 石田美栄

    ○石田美栄君 今、まだ処理中というふうに確認してよろしいわけでございますね。  このウラン濃縮に関するすべての研究開発を中止するとの決定があるようですけれども、申し上げましたように、人形峠だけでも三百億円も投入した研究の実用が見送られるという、これは科学技術庁による研究開発の見通しの甘さを指摘しておきたいと思います。  そうなるとして、人形峠事業所の今後の取り扱い、八月二十八、二十九日に雇用の確保とか地域振興への配慮などについて地元から科技庁、動燃に要望がなされておりますが、今後の取り扱いがどうなるのでしょうか。そしてまた、地元からのこういう要望に対して、現時点でどういう回答がなされているのでしょうか。
  40. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 最初に、人形峠で一番問題になっておりますのはウラン濃縮の原型プラントでございますが、先生御指摘ございましたけれども、人形峠には二百トン、ウラン濃縮の単位でSWUと言いますが、その規模の遠心機の原型プラントというのがございます、三百億円ぐらいかかっているのかもしれません。その技術が六ケ所村の日本原燃のつくっております濃縮工場に移転されまして、その試験で良好な成績だったものですから、実際の商業ベースで使われております。  したがいまして、そういう意味で動燃事業団が開発してまいりましたウラン濃縮技術というのは現実に実用商業ベースで使われております。しかしながら、問題点といたしましては、まだなおコストが高いということは先生の御指摘のとおりでございまして、電力会社等と協力いたしまして、もっと安い遠心機の開発というのをこれまでも続けてきているわけでございます。  今回、動燃事業団の改革のことが動燃改革検討委員会で議論されました。そのときに、動燃事業団をスリムにして、安全確保とかいろんなものをもう少し集中してやらなきゃいけない、それから事業ももう少し整理して集中しようという話がございまして、クライテリアがございまして、民間ができるようなものはなるべく民間に移そう、あるいは新型転換炉のように実証炉計画もなくなったようなものにつきましてはなるべくやめよう、そういうような整理が行われました。  その整理の結果、ウラン濃縮、海外ウラン探鉱、それから新型転換炉開発の三つの事業、これは立地の自治体等とも協議しながら適切な過渡期間を置いて廃止する、そういう方針が出されました。  それで、ウラン濃縮につきましては適切な過渡期間を置いて廃止するということになるわけでございますが、先ほど申しました人形峠の原型プラントにつきましては、もともと平成元年から十年間運転するということで地元にも説明しまして、十年たったらこれはもう廃止しなきゃいけませんよということを言ってまいりまして、村の方ではよく御存じではあります。しかしながら、既に雇用をされている方がかなりいらっしゃいますので、当然やめるとなりますとそういう問題は非常に重要な問題でございます。  したがいまして、我々も当初来年度で運転を停止するという予定ではございましたけれども、地元のことも考えまして、これはもともと十年の耐用設計なものですから、一生懸命長く使おうと思いましても数年延長できるかどうか、物理的にそういうものでございますが、その辺も考慮いたしまして、もう少し長く運転するようなことを考えながら、地元の雇用問題に影響をなるべく少なくするようにしながら停止の方向に向かいたいと思っております。  運転を停止いたしましても、遠心機というのは国際的に機微な技術、核不拡散上非常に機微な技術でございますから、そういうものをきちっと廃棄するために結構いろいろとしっかりやらなきゃいけない。だから、そういう廃棄をするにもかなり人手が必要なわけでございますから、その辺も考えながら、地元の雇用になるべく影響が少ないような格好で事業を進めていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。  その辺のことにつきましては、地元自治体でございます上斎原村、岡山県、それから動燃事業団、科技庁の四者で枠組みをどうするかということを相談するとなっておりまして、検討している最中でございます。八月の末に地元からの要望も聞いておりますが、そういう要望も踏まえながら、地元の御理解が得られるようなるべく早く成案がまとめられるように努力している最中でございます。
  41. 石田美栄

    ○石田美栄君 もう時間ですが、ぜひ、原子力については国の将来に非常に重要なエネルギーですので、今いろいろと御回答いただきましたけれども、緊張感のある責任がはっきりとした体制、緊張感ということが非常に重要だろうと思います。今後とも意識改革を中心にしてしっかりとした事業展開をしていただきたいと想います。  ありがとうございました。
  42. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 平成会の戸田邦司でございます。先日からこの科学技術特別委員会の委員に加えていただきました。私自身は、今までの過去を振り返ってみますと、約十年間を除いてほとんど科学技術と深い関係を持ったところで仕事をしてまいりました。もちろん、科学技術庁の皆さんともいろいろお話をするような機会もあったわけであります。  先日の内閣改造で、新進とは言いませんが気鋭の谷垣長官が御就任されました。私、過去を振り返ってみますと、佐藤栄作さんが長官をやられた時代がありました。中曽根先生も長官をやっておられたように記憶しております。いずれにしましても、非常にすぐれた長官が出てきた時代にいろいろ新たなことが決まっていったような記憶がございます。そういった意味では、谷垣長官に対才る各方面からの期待も非常に大きなものがあろうかと思いますし、また科学技術庁の皆さんからの全幅の信頼を得てこれから仕事を進められることになるんじゃないかと思います。  私も役人の経験がありますが、役人というのは、内閣改造があると、だれが大臣で来るか、これはもう非常に大きな関心事でありまして、大臣によっては非常に仕事がしやすい、いい意味で仕事がしやすいということがあります。いろいろ懸案事項を解決していただける、そういうようなこともありますので、今科学技術庁の皆さんは非常に幸せな思いで毎日仕事をしておられるだろうと思いますし、そういう意味では谷垣長官も幸せな大臣だなと私は感じております。  先ほど来、基本的な問題についていろいろ御議論がありました。私は、今回いろいろ質問させていただくにつきまして、科学技術白書を一応隅から隅まで読んだというか眺めさせていただきました。それから、平成八年の七月二十日に閣議決定されました科学技術基本計画も読ませていただきました。この基本計画の内容につきましては白書の中でも相当詳細に述べられているというか解説されている。そういう意味で、私は科学技術白書あるいはこの基本計画に示されている課題、これが非常に重要ではないかと思います。この中に書いてあることは申し上げませんが、まさに我が国が二十一世紀に向かって存続していく一つのかなめではないかと思います。  そういった意味で、抽象論は別にしまして、若干具体的なことについてお伺いしたいと思います。  科学技術白書あるいは基本計画に示されている課題、いずれも非常に重要な課題であります。それから、提言も非常にポイントを得た提言がされている。ですから、この基本計画が一〇〇%実現されるようなことがあったら、我が国科学技術世界に冠たるというか、どこの国も追いつけないような状況になるんじゃないかと思いますが、残念ながら現実はそうなっていないわけであります。  それで、今までの研究開発状況を見ていますと、科学技術庁が中心になって先端的な部分研究開発を進めてきていることは十分承知しておりますが、文部省の大学の研究所あるいは各省のさまざまな研究機関、そういうところとの連携総合調整的な形で科学技術全般を見ていく仕組みというのが欠如していたように思うわけであります。  科学技術会議では、基本的なことを決めはしますが、先ほどもちょっと問題になっていました総合調整的な点、そういった点も含めてというとなかなか難しい。科技庁自身が文部省に文句を言うということはなかなかない。自分のところの予算をそういったところに配分する、そういうような手法を通じていろいろ言うことはあったかもしれませんが、総体的に見てきていない、そういうことが言えるんじゃないかと思います。  そこで、この科学技術基本計画を眺めてみますと、私は、この内容を実現するためには、科学技術基本計画を実施するために我が国現状がいかによくないか、それに沿っていないかということをきちっとあげつらっていかないと問題は解けない、こう思っておりますが、基本計画実現のために科学技術庁としてはこれからどう考えていかなければならないか、基本的な問題についてまず長官の御意見をお伺いしたいと思います。
  43. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 技官として大変御活躍になった戸田先生から、過分の御激励をいただきまして大変恐縮いたしております。  私も科学技術庁に参りまして、先ほどから御議論の一つ原子力行政のいわば曲がり角、非常にある意味では危機に瀕している時期に当庁に参りました。それからもう一つ、今御指摘科学技術基本計画等をつくっていただいて、ある意味では上げ潮のときでありますが、同時にそれを実施していく省庁体制と申しますか行政体制がどうかという議論の最中にまた当庁へ来させていただきました。非常に緊張感を感じますと同時に、やりがいのある時期にこの仕事をいただいたなと思っている次第でございます。  今、戸田先生からどうあるべきかという御質問で、私も十分に頭が整理されていないところがあるわけでありますけれども、科学技術基本計画推進していくに当たって、今行革の中でされている議論、これがきちっと平仄が合っていかなければいけないのではないかと思っているわけです。  先ほど畑先生からも御議論がありましたけれども、我が国の英知を結集して戦略を立てる、大きな方向をきちっと立てていくような機関がどうしても必要だろう。それが従来の省庁の縦割りに災いされて、結局横並びのような決定しかできないところでは先が余り展望できないのではないかと思っております。  それからもう一つ、今まで総合的に科学技術行政というものを見るところがなかったのではないかという御指摘がございました。科学技術庁という役所は総合調整というのも一つ役割であるわけでございますけれども、先ほどもちょっと申しましたが、我が国の役所の中で総合調整だけをやっているところはどうもパワーがなかなか出てこないという過去の現実があったように私は思うのでございます。ですから、総合調整と同時に、みずからの手である程度科学技術の具体的な進展、研究開発を図っていくような役割を担う省庁が私は必要なのではないかと思っております。  もう一つそのことに関連いたしますと、これは今参議院で御審議をいただいている財政構造改革の法案にも書かれているところでありますけれども、要するにこの集中立て直しの期間に国立研究所の再統合の案を出せということが書いてございます。先ほどもちょっと申したことでございますけれども、今まで国立研究所は省庁の縦割りの壁に邪魔をされているところも私はあったと思います。各省庁の行政目的に直接向かっているような研究は各省庁でなさる必要があると私は思います。  それと同時に、今の科学技術状況、戦略的目標に合わせて大ぐくりに再編して、しかもオープンな仕組みで研究推進していくというような仕組みを考えていかなければ、科学技術基本計画というものの達成もなかなか難しいのではなかろうか、そんな気持ちで私は今おります。
  44. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 研究所の再編というのは非常に重要なポイントではないかと思います。各研究所で扱っている研究テーマなどを詳細に見ますと、かなりオーバーラップしている部分があったりするわけですし、一方で防衛予算などで進められている研究部分というのは一般に表に出てこないような性格で、同じようなことを他の研究所でやっているというようなことは往々にしてあるわけで、その辺の問題も一つあるかと思います。  そういったことで、今、大臣からお話があったことというのは非常に重要な点ではないかと思いますが、二、三、具体的な問題についてお話し申し上げたいと思います。  基礎研究の話が先ほど出てきました。基礎研究アメリカと比べますとかなり立ちおくれている。十把一からげで議論するつもりはありませんが、例えばノーベル賞の受賞者数考えても、やはり世界に貢献するような先端的研究をどれぐらいやっていて社会的に評価されているか、そういった点がああいう形ではっきりとあらわれてきているということではないかと思います。  確かに、ヨーロッパあたりと比べますといい点もあるし劣っている点もある。しかし、ヨーロッパと比べても平均的に考えますとまだ立ち行かない面がある。人口比率で考えますと、英国、ドイツ、ああいったところと比べても我が国の方が全然少ない。人口で比べるのは余り正しい比較じゃないかもしれませんが、いずれにしましてもそういった点で劣っているということは言えるかと思います。  基礎研究に関して若干申し上げますと、私はノーベル賞をもらうような基礎研究というのはかなり若い時代に、脳が新鮮なうちにいろいろ思いついてやることが多いように思うんです。私も今まで仕事柄、例えばスウェーデンのカロリンスカ研究所とか、あるいは最近では東北大学の学長さんなどともお話をしてきております。海外の大学の研究者も含めてですが、海外のそういうような研究分野での指導者のあり方、指導教官というか、大体五十歳ぐらいになるともう新しい論文を書くような能力も気力もなくなってくると、彼らは自分たちでそう言っております。しかし、その分野についての見識だけは確かだ。そうすると、その分野で何が新たなテーマで、そこをきわめるとどれぐらいスパイラル効果で全体のレベルが上がっていくかというようなことが大体わかるようになってきますと。そういう見識を持って若い研究者を指導していく、そこに新しい研究の成果が出てくる、そういうようなことが非常に多いんじゃないかということを皆さん指摘しておられます。ですから、日本の大学のように、大教授がいて、そこで若手の研究者がみんな名前を連ねて、大教授の名前も連なって論文を発表するなんということは余りないということを北欧の連中は言っておりました。  そういう意味では、私は、指導的な立場で若い研究者を育ててくれる、そういう人たちをこれから大事に育てなければいけないんじゃないかと思いますが、その点についてはいかがお考えでしょうか。
  45. 宮林正恭

    政府委員(宮林正恭君) お答えさせていただきます。  ただいま委員の方から御指摘がありましたところは、まさに今後の研究開発一つのポイントではなかろうかというふうに私ども思っているところでございます。  研究の指導者という問題でございますけれども、この問題は一朝一夕に解決できるということではないようには思っておりますけれども、できる限りそういう立派な指導者の方を守り立てて、そういう方のもとにいい研究者にお集まりいただき、かつまた資金を投入する、こういうふうな一つのアプローチを私どもしてきているわけでございます。  例えば、創造科学技術推進制度でございますとか、それから理化学研究所によりますフロンティア研究制度、こういうものはまさにそういうふうな思想のもとに打ち立てられた制度でございます。また、一方で競争的な条件というのが非常に優秀な指導者を育てるということになるんではなかろうかと、こういうふうなことから、私どもは戦略基礎研究制度といったようなことで、できる限り競争的な形で物事を進めていくということも進めさせていただいておるところでございます。  また、先生御指摘のようなところでございますと、やはり海外との差異の中で非常に大きいところは、流動性の問題というのが非常に大きいんではないか、こういうふうに私ども思っておりまして、そういう観点から、本年六月には国立試験研究機関等の研究者への任期制というふうな形のものが導入され、また大学におきましても、それぞれの大学におかれて研究生が採り得る、こういう制度的な改善措置もとられているところでございます。  一方、人材問題といいますか、あるいは研究の質のマネジメントといいますか、この問題といいますのは国際的に関心は持たれつつも、なかなかこういう方法でいけばうまくいくんだという決め手が必ずしも十分ではないというふうなこともございます。私どもの科学技術政策研究所におきまして、いわゆるリサーチ・オン・リサーチという表現を使っておりますけれども、研究開発のマネジメントの形態なり進め方といったものにつきましての研究をする、こういうことにつきましても開始をさせていただいているところでございまして、こういう成果を得ながら優秀な研究指導者の育成なり確保を進めていきたい、こういうふうに思っているところでございます。
  46. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 そういう人を育てていくというか、仕組みをつくっていくというのは本当はノーベル賞をとるより難しいかもしれない。ですから、これはぜひ具体的に真剣に考えていただきたいと思います。  余り時間もありませんので私の方から一方的にお話をしておきますが、もう一つの問題は研究者の国際交流の問題。  これは国内でも余り交流していないんですね。産学官、研究者の交流というのはなかなか難しい。学から官に来るのも非常に難しいと言われている。テーマごとにある時期そういうような交流を進めていくというようなことはぜひ必要なことだと思います。  外国人が日本研究機関で満足して帰ったなんという話は余り聞いたことがない。この間、中国人の日本への留学生の問題がありまして、私、中国人からも直接聞きましたけれども、日本に留学すると大体日本嫌いになって帰るというんですよ。だから、それは環境なり扱いなり、そういうところがしっかりしていないために外国の研究者日本で非常に住みやすいと思わないんじゃないかと思います。そういった点も含めて御配慮をいただきたいと思いますが、その辺は基本計画にかかわる部分でもあります。  最後に一つ、「もんじゅ」の話をお伺いしたいんです。  私は原子力船「むつ」の開発の過程もずっと眺めきていますし、それから、先日新たに「みらい」という海洋観測研究船に生き返ったということは、本当に日本の海洋科学技術にとって大きなプラスになるんじゃないかと思うんです。  原子力船「むつ」というのは、私も船体その他全部詳細に見させていただいたことがありますが、不幸なことに、開発の過程で実際に放射能漏れを起こして漂流したなんてことがありますし、また、計画そのものが漂流しかかっていた。途中で行政サイドの意向というのが余りはっきりしないで、政治サイドで予算の関係で相当議論された。その間に時間がたって、余計金がかかったというような点もあるかと思います。  「もんじゅ」もあそこまで金をかけてやってきて、それで技術的な問題、管理の問題が先ほど出ておりましたが、技術的な問題であのまま挫折してしまうというわけにはいかないと私は思いますね。この「もんじゅ」の懇談会の報告を見ますと、いろいろ指摘されておりまして、目的を達成しないまま、問題があるからというだけで「もんじゅ」の研究開発を中断すること自体これまでの成果を無にすることに等しく、大きな損失と言えますと書いてある。私も全く同感であります。  そこで、科学技術庁に申し上げたいんですが、なぜ行政サイドはもっと行政サイドの意向をはっきりと社会に発表してアピールしないのかと。今、何となくこの懇談会の報告でどうなるでしょう、それから、今度アンケートを出してみます、そういうことを考えてそれから再検討します、こういうような言い方になって、何か今まで一生懸命いいことをやってきたんだけれども、ちょっとつまずいて怒られたら、いやいやこれは皆さんの意見を聞いて、意見に従ってやりますという姿勢にとられかねないような姿勢が今の科学技術庁の姿勢ではないかと私は思っております。「もんじゅ」をどうするか、この一点だけお伺いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  47. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 時間が超過しておるもので、大臣、簡潔にお願いいたします。
  48. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 今、戸田先生の御質問は、科学技術庁として高速増殖炉をどうしていくのか、やりたいことは何なのかはっきり言えと、こういう御指摘だったと思います。  ただ、我が国の原子力開発は、原子力委員会が定める原子力開発利用長期計画等に基づき進めることが大前提となっておりまして、「もんじゅ」を初めとする高速増殖炉の開発につきましても、科学技術庁としては今のような枠組みの中での仕事をしてきたわけでございます。  そして、私が申し上げたいのは、先生お読みをいただいた今の報告書、これはもう一回国民の声を聞いて、最終案,多分今月末に出てくると思いますが、その中でも、決して高速増殖炉はこれでペケということになっているわけではございませんで、将来の非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢である、その可能性を追求するために研究開発を進めることが妥当だというふうになっております。私どもは、最終報告書が出ましたら、それをもとにまた原子力委員会で御議論があると思いますので、そのもとでしっかり取り組んでまいりたい、こう思っております。
  49. 戸田邦司

    ○戸田邦司君 ありがとうございました。
  50. 中尾則幸

    中尾則幸君 私は、きょうは原子力政策の基本、問題について何点かこの機会にお伺いしたいと思います。  質問に入る前に、昨日、動燃からウラン廃棄物処理施設焼却施設における発煙というペーパーをいただきました。これは質問通告はしてございません。これを読みまして、少しは動燃の意識が変わってきたかなと思ってございます。  といいますのは、これは詳しく申し上げませんけれども、この発煙があったのが十二時二十五分と。私が、これをいただいたのが五時過ぎです。しかもこの状況を見ますと、火災警報が鳴って若干発煙を認めたということでございます。もちろん、周辺環境への影響もない、人体への影響もないということでございました。  私は、なぜこれを申し上げたいかといいますと、これまでの動燃の体質であれば、少なくともこれ以上のことは隠しておったわけです。あの三月十一日の東海村のアスファルト固化施設のときの情報、あれほどの被曝も出た、あるいは火災も起こった、あれが科学技術庁に伝わったのは六時間後でございました。  私は、先ほど動燃の近藤理事長が話しておられました意識改革運動、少しずつ成果があらわれているかなと。ただ、油断できないのは、私が動燃の理事長にことしの三月の委員会で質問したときに、動燃は一年半前の二月にやはり意識改革推進本部というのをたしかつくっていたはずです。ですから、ちょっと油断はできないなと思っておりますが、こうした第一報をきちっと即座に関係各機関に流すという姿勢はぜひこれからとっていただきたいと私は思っております。  動燃の理事長をお呼びしなかったのは、こうした姿勢について私は一定の評価をいたします。科学技術庁も叱咤激励といいますか、こうした問題についてもぜひともこれから思い切って進めていただきたい、そのことを感想を申し上げたいと思います。  さて、先ほど来から出ておりますけれども、一昨年の「もんじゅ」、それからことしの東海村アスファルト固化施設の問題、「ふげん」、さらにはウランの廃棄物処理問題、先ほどありました、我が党も調査団行きました岡山の人形峠の問題、もう本当に出るところまで出尽くしたのか、まだあるかなというぐらいに、ことし科学技術庁並びに動燃、そして原子力政策は本当に岐路に立たされているなと私は思っております。  何点か質問いたしますけれども、動燃の東海村再処理工場の事故で、使用済み燃料の再処理は国内で行うというのが基本でございますけれども、国内では今ストップしております。海外に依存しなきゃいけない状況にあります。  さて、青森県六ケ所村の日本原燃の民間再処理工場、これは二〇〇三年操業予定というふうに伺っております。計画ではことしから使用済み燃料を搬入する予定でありました。しかし、三月の動燃事故の影響で地元青森県との安全協定の締結がスムーズにいっておりません。ある報道によりますと、搬入の時期を来年の三月に延期したというふうにも伝えられておりますが、安全協定のめどは立っているのか、あるいは使用済み燃料の搬入の時期についての見通しはどうなっているのか、まず伺いたいと思います。
  51. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 先生御指摘の青森県六ケ所村に建設中の再処理工場でございますが、操業は二〇〇三年を予定しておりますけれども、既に使用済み燃料の貯蔵プールがほぼできあがっておりまして、来年の三月から本格的な受け入れをするという計画が届け出されております。それは本格的な受け入れでございます。  それに先立ちまして、そのプールを検査するために実際の使用済み燃料を入れて測定器等をチェックしなきゃいけないわけでございます。そういうことをするために使用前に受け入れるわけでございますので、その前にやはり青森県あるいは六ケ所村と事業者が安全協定を結ばなきゃいけないということで、いろんな調整が行われているところでございます。  その安全協定の締結に当たりましては、動燃事業団の事故で少しおくれてはおりますが、地元青森県等から国に対しましてこれまで要請されてきた点、例えば核燃料サイクル事業に対しては政府一体となって取り組んでほしいとか、それから安全確保をきちっと確認してほしいとか、情報公開を推進してほしい、そのような要望をさまざまいただいておりますが、そういうものに対しましては当庁としましては既に最大限の対応を図ってきたところでございまして、今後地元の御理解のもと、着実にできることを期待しておりまして、見守っているところでございます。
  52. 中尾則幸

    中尾則幸君 私が伺っているのは、めどは立っておるのかどうかを伺っているんですが。
  53. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 我々としましては、地元から要請された点につきましては既に対応しておりまして、青森県の方でこれからも御判断されることだと考えておる次第でございます。
  54. 中尾則幸

    中尾則幸君 六ケ所村への使用済み燃料の搬入のおくれ、先ほど申し上げましたように二〇〇三年の再処理工場の稼働も影響を受けておくれるんではないかというふうに思っております。  仮に、予定どおり稼働をしたとしても使用済み燃料の発生量と再処理能力との関係、これは二〇一〇年ごろには何らかの対策が必要になるんでないかというふうに通産省の見方も出されております。六ケ所村のプールがフル稼働しても二〇一〇年には三十トン程度がため切れなくなる、これは新聞報道でございますが、そんな問題もございます。  さて、平成六年六月に改定しました原子力長期計画には、民間の第二再処理工場について、六ケ所村再処理工場の運転あるいは経験等を踏まえて建設するという方針が出されておるというふうに思いますが、この検討については時期を早めるというような考え方はないのでしょうか。
  55. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 使用済み燃料につきましては、先ほどの六ケ所村の工場の処理能力が年間八百トンでございますが、現在年間約九百トンぐらい使用済み燃料を実際に発生しておりますので、年間百トンぐらいずつふえていくわけでございますが、現在、原子力発電所には十分な容量がございまして、そこにためるわけでございますけれども、先生御指摘のように二〇一〇年ごろには足らなくなるということで、現在そのころをめどに中間的な貯蔵施設、今までは原子力発電所の中にためておりましたが、発電所の敷地外に中間的な貯蔵施設をつくろうということで今検討が始まったばかりでございます。  御指摘の第二再処理工場につきましては、先生も御指摘ございますが、第一工場の運転経験とか、その後の技術開発等を入れながらやっていきたいということで、二〇一〇年ごろにその第二再処理工場の方針を決めるということが長計で言われておりますが、今のところそちらの方のスケジュールはそういうことで動いております。  したがいまして、当面は中間貯蔵施設、そういうものを原子力発電所のサイト外に見つける、そういう対応をしようとしているところでございます。
  56. 中尾則幸

    中尾則幸君 ちょっと確認したいんですが、今、局長の話ではサイト外、いわゆる原子力発電施設のサイト外にも貯蔵施設を想定しているというのは、これは原子炉等規制法、いわゆる炉規法の解釈では現行ではできるんですか。
  57. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 多分今まではそういうのは想定していませんでしたが、この前の一月末の原子力委員会決定あるいは閣議了解で中間的な貯蔵施設を検討しようということになりました。したがいまして、今、先生の御指摘の点も検討の対象になっておりますので、そういうことをあわせながら検討してまいりたいと考えている次第でございます。
  58. 中尾則幸

    中尾則幸君 質問通告の順番を、時間が余りないのでちょっと飛ばしまして、次にバックエンド対策についてお伺いします。この問題は、私も科学技術特別委員会で何度か質問させていただきました。北海道幌延の貯蔵工学センターの問題でございます。  御存じのように、放射性廃棄物、特に高レベルの放射性廃棄物をどう処分するのか大変な問題となっております。高レベルの放射性廃棄物の処理処分については、先ほど言った平成六年六月の原子力長計の中で、高レベル放射性廃棄物の処理については、まず一つは、安定な形態に固化をする、いわゆるガラス固化体にする。二番目が、三十年から五十年、冷却貯蔵する、そして最終的に深地層、百メートル以上の深い地層に埋めるという計画が出されております。  私は、これについては科学的な知識は持っておりませんが、高レベル放射性廃棄物、例えば放射能レベルが十分の一に半減するには約百年かかる、そして放射性物質の崩壊熱が消滅するには千年以上かかる、こういう特性があるように聞いております。  現在のスケジュールでは、高レベル放射性廃棄物処分懇談会というのがありまして、二〇〇〇年までに事業実施主体を決める、その後十年程度をかけて処分候補地を選定する、それで二〇三〇年代から処分事業を開始するというスケジュールのように伺っております。  さて、北海道の幌延なんですが、最終処分地にしないということは、これはもう今までの長官の話にも出ております。ただ、そこに研究施設をつくらせてくれという話が持ち込まれました。これに賛成したのは地元の幌延町だけなんです。あとの周辺の自治体は、温度差はあれ反対しております。北海道ももちろん反対でございます。それでこの十二年間、計画が進んでおりません。地元の住民は、安全性の問題等々がクリアされていない、加えて今回の動燃の一連の体質、事故隠し、隠ぺい体質、閉鎖性、それぞれのさまざまな動燃の体質を含めて、さらに幌延町に予定している貯蔵工学センターを白紙に戻してほしい、見直してほしい、こういう要請がさまざまなところから出されております。  長官、この際、幌延の立地計画を一度白紙に戻して、幅広く議論するというふうにすべきではないかと私は思っているんですが、長官の御所見を伺いたいと思います。
  59. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 幌延の件につきましては、北海道御出身の中尾先生は大変御関心をお持ちになり、熱心に今まで御議論をいただいているところでございます。  もう先生よく御承知のとおり、特に高レベル廃棄物の処理処分というのは、整合性のある原子力開発利用の観点から、残された最も大きな課題だと思っております。これを安全かつ適切に行っていくためには、研究開発をして技術的信頼性を明らかにしておかなきゃならない。  動燃事業団が北海道幌延町に立地を計画しております、貯蔵工学センターと言っておりますが、それは処分そのものを行う施設ではない。それから、先ほどおっしゃいましたように、放射性廃棄物を持ち込まない深地層試験場、それから廃棄物を安全に貯蔵管理する貯蔵プラントから成る総合的研究センターを目指すということになっておりまして、安全な処理処分を行う見通しをきちっとつけていくためには、極めて大事な計画であるというふうに考えております。  ただ、しかしながら、今、中尾先生が御指摘になりましたように、この計画に対してはいろんな御意見があり、随分長い間かかって進展をしていないということが事実でございます。ですから、幅広い立場の方々との対話を図りながら、地元や北海道の理解と協力を得て進められるよう、引き続き努力していきたい、こう思っております。
  60. 中尾則幸

    中尾則幸君 新進気鋭といったら、先ほど戸田先生が新進じゃなくて気鋭の谷垣長官だと。答弁を期待しておったんですが、ここ十年ほとんど変わらないんです。長官、正直に言いまして、これは科学技術庁の方々がそういうふうにずっと決めてきたわけですよ。長官、もうちょっと長官らしさを出して御答弁いただければ、なお私は長官に期待するところが大でございます。  それで、そのお答えしか出ないのかなと、大変残念なんですが、今回私が言っているのは、例えばこの計画を実行に移す段階になってボタンのかけ違いがあったんです。  私は当時、マスコミの立場でこれを見ておりました。たしか十二年前、ちょうど十一月に地元の合意も得ないまま、いわゆるボーリング調査を先にやったんです。こういうことから始まったわけです。対話を重視するというのは全くなかったわけです。それで、少なくとも動燃に対するあるいは最終的に科学技術庁に対する不信感がいまだに根強いんです。  ですから、私はあのときの状況をよく知っております。現地にも何回も行っております。これで信用せいとか、例えば地元の北海道の理解と協力を得てと、ここにうそがある。これはいろいろな立場があるでしょう。環境団体、それから酪農の人たちいろいろ言います。それぞれの立場があっても私はいいと思うんです。そして、原子力の問題についても、当時の十二年前から比べて少なくとも理解が、例えば国のエネルギーの三分の一は脱原発だよと、反原発と言う人が脱原発と言う、そういうふうな風潮もございます。原子力の必要性も認めなきゃいけないなというふうに変わってきております。  しかし、幌延については十二年前の経緯から見て何ら変わっておりません。私はここに問題があるなと思っております。先ほど、動燃の近藤理事長が、開かれた動燃、地元重視の動燃と言っているわけです。十二年後に言っても遅いんです。  だから、地元重視の動燃であれば、しかも国民の理解と協力を得てと、長官も今くしくもおっしゃいました。それであれば、一度決めた計画でも見直す勇気が私は大事だろうと思っております。これについて、再度長官の御所見を伺いたいと思います。
  61. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 過去の計画の進め方に関しまして、今、中尾先生から厳しい御指摘がございました。私どもも、御指摘はしっかり受けとめなければならないと思っておりますが、この計画はやはり必要なものと思っております。ただ、先ほど申しましたことの繰り返しになりますが、十分な対話を図りながら、理解と協力を得て進められるよう努力したいと思っております。
  62. 中尾則幸

    中尾則幸君 十分な対話ということは大変大事なことです。  それで、私の記憶に間違いなければ、少なくともこうした国のバックエンド対策、特に高レベル放射性廃棄物をどうするのか、大変重要なんです。対話と申し上げましたけれども、この十二年間、少なくとも科学技術庁長官で現地のこうしたいろいろなさまざまな動燃の幌延の貯蔵工学センターに懸念を持つ人たちの声をじかに聞いたことがあるでしょうか。私の記憶ではないと記憶しておりますが、いかがでしょうか。
  63. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 北海道の幌延に反対されていらっしゃる方々が科技庁に年に何回かいらっしゃいまして、我々もそういうお話を伺っております。大臣がお会いされたことも過去数回あるかと記憶しております。
  64. 中尾則幸

    中尾則幸君 私が言っているのは、地元との対話と言っているんです。何も難しいことを言っているわけじゃないんです。札幌でもだめなんです、地元に出向いてその場で、実際にどういう立地条件であるか、そこに私は気鋭の谷垣長官にぜひ行っていただきたい。当時、いろんな長官に私は申し上げました。検討すると言った長官も確かにいらっしゃいました。しかし、ただ検討しただけで一向に行く気配はございません。ですから、今、特にことしの原発行政について大変厳しい国民の不信感がある中で、このまま同じような形で理解してください、私はそんな甘いことでは通じないと思うんです。  ちょっと貯蔵工学センター関連の予算を見ました。大体幌延関係だけで、膠着状態にあるにもかかわらず五億円毎年使っている。それで、やることがないと言ったら変ですけれども、事務所があります。事務所の経費も出していますけれども、その中でふえているのは広報活動費なんです。新聞広報等を使って一億円近く使っているんです。財政の厳しい中でこのようなお金があるんだったら、長官みずから行って、科学技術庁のいわゆるバックエンド対策はこうなんだという話をなぜできないのか、私はそう思うんです。ほかの長官だったら言いません。谷垣長官だからこそ、私はこの人ならやってくれるんじゃないかと思っているんです。もったいないじゃないですか。  ただ、一つ気になるのが、これはどうなんでしょう、八年度はとりませんでした、九年度の予算額が一億円減っているんです。四億九百万円なんです。ところが、減っていても、うち広報活動の充実等と書いてあります。さらにふえまして半分以上が広報活動なんです。二億七千三百万円なんですよ。  ここに今の科学技術庁あるいは動燃の迷いというか、小手先のやり方に私は非常に疑問を感ずるんです。責めるために言っているんじゃないんです。もう時間があと二分しかありません。本当はこの問題ばかりやるつもりではなかったんですが、ぜひともお考えいただきたい。こんなむだな予算を使っちゃいけないと私は思うんですが、長官いかがでしょうか。
  65. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 私は、ちょっと数字等いろいろ御指摘になりました。十分きょうは検討の準備がなかったものですから適切なお答えができるかどうか。  ただ、やはり先ほどおっしゃったように、バックエンド対策というのはまだ解決されていない問題でありますから、十分な御理解を得るための、一般論になりますが、広報活動というものは必要ではないかと思っております。その上で、今の予算が適切なものかどうか、それから先ほど指摘になった、私が直接行って対話をするということが必要かどうか、そのようなことも考えてまいりたいと思っております。
  66. 中尾則幸

    中尾則幸君 ぜひとも、今までの取り組みじゃなくて真摯に取り組んでいただければ、私は谷垣長官に大変期待しておりますので、どうぞ地元の生の声を聞いていただきたいと御要望を申し上げまして、質問を終わります。
  67. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 十二月に京都で開かれる地球温暖化防止会議に向けて、二酸化炭素を中心とした温室効果ガスの削減策をめぐって、日本政府がリーダーシップを発揮することが内外から求められています。  このことと関連して原発増設をどう考えるかが今改めて問われているんですけれども、まず、先月ボンで開かれた事前会合で、日本政府が温暖化防止策として原子力発電の利用を提案したが、各国が一斉に反発したため即座に撤回したとの報道、これは毎日新聞の十月二十九日付なんですけれども、この報道について伺います。非公開の会議でのことということですが、途上国が一斉に反発したとの報道です。  原子力の研究開発及び利用に関する長期計画に責任を持つ科学技術庁としては、この種の国際会議で原発の提案をしていく立場なのかどうか。この報道についての感想も含めて大臣に伺いたいと思うんです。
  68. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 事実関係でございますので、ちょっと私から先に説明させていただきます。  本件、COP3の準備会合でございますが、ボンで開かれましたので、これにつきまして外務省にちょっと確認させていただきました。  その結果、その場で我が国は、原子力を含む非化石エネルギーの導入促進が二酸化炭素排出抑制対策として有効という立場から、当時議長提案のテキストがあったわけですが、そこの一部に再生可能エネルギーという言葉がございましたが、その再生可能エネルギーのところを再生可能及び他の非化石エネルギー、原子力ということを言っている言葉でございませんが、そういう言葉で修文することを我が国は主張したと。それに対しましてマレーシアとサウジアラビアから反対がございました。したがいまして、各国が一斉に反発したという事実はございません。  それから、この議長の、議長テキストと言うんですが、それを修正するにはその場の全員が一致しないと修正できないという暗黙の了解がございますので、反対の国が二カ国ありましたから、それは議長テキストに反映されなかった。そういう事実でございまして、代表団としてそういう提案を撤回した、そういう趣旨のものではございません。そういうことでございます。
  69. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 今、加藤局長の方から日本の提案の事実経過について御説明を申し上げましたけれども、原子力については国情の違いによってさまざまな意見があることはよく承知しております。  ただ、原子力はもう既に全世界発電電力量の一七%を占めておりますし、二酸化炭素を排出しないエネルギー源として地球温暖化防止上やはり重要なオプションではないかというふうに考えております。また、我が国が二酸化炭素排出削減を実現するためには徹底した省エネルギーも必要だろう、それから新エネルギー推進ということもあわせて必要だろうと。しかし、それにあわせて原子力発電というものの拡充というものが必要ではないかと思っております。このためには国民の理解が不可欠でございますし、地球温暖化防止に寄与していくためにはこれまで以上に国内外の理解を得ていく努力をしていかなければならないと思っております。
  70. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 原子力の長期計画の中では、確かに今おっしゃったように、原子力は二酸化炭素等の排出が少ないという長所があり、原子力の導入は地球温暖化の防止などに有効ですとか、先進国が原子力発電の導入により、二酸化炭素との関係においても望ましい対応策の一つであり、原子力は地球環境という観点からも国際社会の安定に貢献しますと、こういうことを言っています。  国際会議の場でも、非化石燃料ということは原子力です。新エネルギー以外の再生可能な非化石燃料ということで原子力と言っていくという立場なのだと思いますが、原子力そのものが地球環境問題の一つの大きなテーマになるんだと思うんです、本来なら。そうですね。平常運転でも常に放射能を放出し、大規模な事故が起こったときには大量の放射能を放出し被曝が生じる、そういう危険を目の当たりに世界じゅうの人たちが経験して知っているわけです。ですから、当然原発そのものを増設するということ自体が地球環境問題のテーマになるというふうに思うんですね。CO2削減を口実として原発を推進する日本の路線を、とりわけ動燃の一連の事故で原発不信が高まっているこの折に、京都会議を利用して推進していくというのは私はとても恥ずべきことだなというふうに思うんです。そう思いませんか。
  71. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 今の阿部先生の御認識は私どもの認識とはかなり違っておりまして、私どもは原子力エネルギーを国産の技術として安全を前提として取り組んできたというふうに思っております。確かに、まだ残された問題があることはございます。先ほど御質問にあったようなバックエンド対策というようなものはこれから技術を確立していかなければなりませんけれども、原子力エネルギー自体が地球環境に非常に悪い影響を与える、こういう認識は持っておりません。
  72. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 それでは次に、省エネのことを先ほどおっしゃいましたので、それとかかわりますが、通産省の長期エネルギー需給見通しと科技庁の原子力長期計画、この問題について伺いたいんです。  通産省は、九四年に閣議了解した長期エネルギー需給見通しを修正して、発電量を約〇・〇七%減の一兆五千ワット時にして、二〇一〇年度のエネルギー供給量を原油換算で約〇・〇三%減の六億一千三百万キロリットルにするということ、また原子力発電の比率を現行の三二%から四四%に引き上げる、つまり原子力発電を七千五十万キロワットにするために原発二十基の増設が必要という立場を明らかにしているとのことです、報道によると。  原子力の長期計画については、二〇一〇年七千五十万キロワットの一〇〇%の達成が大前提になっているんですね。ここに見られるのは、化石燃料もそれから原発も減らして、省エネルギーを徹底することによって二酸化炭素を削減するというのではなくて、二酸化炭素を減らさなければならないから原発を推進するということで、省エネルギーとはほど遠い発想だというふうに思うんですけれども、違いますか。
  73. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 先ほどの、通産省がエネルギー需給の見通しを変えたというのは、エネルギー消費の見通しを下げたということかと思いますが、要するに、二〇一〇年に炭酸ガスの排出量を五%下げる、そういうようなことをするためには当然省エネルギーといいますかエネルギーを使う量も減らしていかなきゃいかぬわけでございます。そういう観点からいろいろなスタディーとしましてエネルギーの消費を減らした場合を想定したわけかと思います。  先ほどの、二〇一〇年に七千五十万キロワット、これは現行長期計画に入っておりますけれども、もともとエネルギーの需要供給の観点から代替エネルギーの供給目標として一九九四年に閣議の決定を見て決まっている数字でございます。我々としましては、これは必要なエネルギーとして原子力に期待されているものでございますから、それはもう最大限努力していく、そういう前提の数字かと考えております。
  74. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 省エネルギーというのがどうも納得できないんです。つまり、発電量について見ると、〇・〇七%削減ということで、基本的には右肩上がりを前提としているわけです。二酸化炭素を減らさなければならないからその分原発を推進するということでは、右肩上がりの是正にはならない、つまり省エネルギーへの転換というふうにはとても言えないというふうに思うんですけれども、そうじゃないんでしょうか。
  75. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 今申しました省エネルギーというのは、エネルギーをなるべく使わないようにしていくということでございまして、もともとエネルギー需要が非常に高いものを下げる、下げて〇・二%の増、そういう想定で計算するとそうなるということかと理解しております。
  76. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 省エネルギーへの転換というのは、発電だけではなくて、生産から消費に至るまでさまざまな分野でそれこそ取り組まなければいけないという問題だと思うんです。発電そのものについても減らすというのが省エネルギーの大前提で、そういう観点からするととてもではないけれども右肩上がりの是正というふうには見えない、もうかすかなものでしかないというふうに私は思います。  それで、特に原発を推進していくという立場の問題なんですが、そもそも原子力を温暖化防止、それから二酸化炭素の削減の、何というんでしょうか特効薬扱い、そういうふうにできるのかどうかということなんです。  原発は、発電の効率が低くて温排水という形での廃熱放出が総出力の三分の二にも及ぶということ、それからコージェネレーションなど廃熱利用が温度が三百度Cと低いために期待できないということ、あるいは巨大施設が一カ所に集中するために廃熱の極端な集中があって、その地域の気象や生態系に大きな影響を与えかねないこと、それから送電ロスが大きい、発電施設が集中したそこから消費地に距離があるということです、その送電ロスが大きいということ、それからピーク需要に合わせての原発の導入は年間を通しての設備ないし電力の余剰を来し、全体としてエネルギー消費の拡大を促す方向に寄与することなど、専門家が指摘する原発のデメリットをもっと直視するべきではないかというふうに思うんです。温暖化防止、二酸化炭素の削減という視点から見てです。どうでしょうか。
  77. 加藤康宏

    政府委員(加藤康宏君) 原子力発電に関しますいろんな問題点、御指摘いただいておるわけでございますが、我々としましては、ある地域で集中して電気を起こすとか送電のロスとか、いろいろあるかもしれませんが、そういうものは電気を供給するために必要なことではないかと思っておりますし、おっしゃるデメリット以上に、やっぱり炭酸ガスを出さない、これは地球全体の問題でございますから、それはこういう国際会議で炭酸ガスの排出を抑えよう、そういうような人類共通の目標を達成するためには日本としてはこういうものをやっていかなきゃいけない、やっていかないと普通の生活の維持もできない、そういうことかと思いますので、原子力に関する御理解をよろしくお願いしたいと思います。
  78. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 今言ったように、温暖化防止、二酸化炭素の削減、そのために原発推進というふうになってしまっているんです。温暖化防止という意味では、原発の廃熱というのは本当に侮ることができないものなんです、今言ったように。総出力の三分の二が温排水という形で排出されるわけです。それが局地的に集中していますから、その地域の例えば海水の温度とかに確実に影響を与えるわけですよ。そういうことも含めて言っているわけです。温暖化防止に直接つながらない、むしろ弊害があるということ。  それから二酸化炭素にその問題を換算している人たちもいるんです。NGOの方たちが今回の問題でいろいろ心配をしておられます。原発が過剰に排出する廃熱分を二酸化炭素に換算することができるんです。どういうことかというと、原子力資料情報室の気候変動と原子力問題研究会の報告書を読んでみたんですけれども、例えば天然ガスによる火力発電がコンパインドサイクルなどの技術によって四四%程度の熱効率を達成、これはもっと高い四九とかいう数値もあるんですが、そういう熱効率を達成できますと、三三%の効率の原発は一一%の過剰な廃熱を放出していることになります。これを原発の二酸化炭素相当分というふうにみなすことができるわけです。それは決して小さくないということです。要するに、廃熱それから省エネルギー、こういう観点から原発は特に問題だという指摘なんです。
  79. 谷垣禎一

    国務大臣谷垣禎一君) 阿部先生の御議論とうまくかみ合う答弁になるかどうかちょっとわからないんですが、先ほどから阿部先生は、温暖化防止という観点から原発推進になるのはおかしくないかということをおっしゃっているわけです。私たちは、原発の必要性というものは地球温暖化防止という観点だけから申し上げているわけではないわけです。  今まで主要なエネルギーとして化石燃料を使っているわけですけれども、化石燃料というのはこれからの人類エネルギー消費の予測をしていきますと限界がございます。化石燃料だけに頼っていくというわけにはいかない、そのほかのエネルギー開発も必要ではないか。そういう中の選択肢の一つとして原子力発電というもの、原子力エネルギーというものが重要ではないか、これが一つ観点でございます。そして、その原子力エネルギーが化石燃料に比べると二酸化炭素の放出という点では大きなメリットがあって、地球温暖化の解決にも資するということを申し上げているわけであります。  それからもう一つ、それに使われる熱が必ずしも十分有効に利用されていないという御指摘もあったかと思います、原子力発電から生ずる熱ですね。私も専門の技術者でないから的確なお答えができるかどうかわかりませんが、理論的可能性は確かにそういうことがあろうかと思います。そういうものをうまく解決できる技術というものは、私も当庁に参りまして何かそういうことは考えられないかということで少し勉強させておりますが、まだ十分にそれを解決できる技術は見つからないのだろうと思います。  しかし、全体を通じて、原子力エネルギーというものがCO2を発生させないということによって地球温暖化の防止に資する面があるのではないかというふうに私は思っています。
  80. 阿部幸代

    ○阿部幸代君 誤解のないようにしていただきたいんですが、私どもは、核兵器の廃絶と原子力の平和利用、こういうものを統合して将来的に本当に安全性が確立されれば原発の可能性というのは大きくなるというふうにとらえています。そういう立場に立ちますと、今現在はやはり安全性が確立していない、実際に事故が相次いでいるわけですから。これ以上の原発の増設はしない、そういう立場に立っているんです。  それで、二酸化炭素の削減というのは、やはりエネルギーの浪費を省き、効率を高め、今、大臣のおっしゃったようなことですね、それから新エネルギーの促進を図ることによって進めていくべきではないかというふうに思うんです。省エネ、熱効率の向上、新エネルギー研究開発科学技術庁に大いに期待をしているわけです。実用化に至っているものも含め、今までの実績と今後の計画について伺いたいと思います。
  81. 近藤隆彦

    政府委員(近藤隆彦君) 御説明申し上げます。  新エネルギーと省エネルギー研究開発につきましては、政府全体として取り組む必要があるものでございますので、平成七年にエネルギー研究開発基本計画といいますものを科学技術会議の議を経まして内閣総理大臣が決定をしております。各省庁連携のもとに研究開発を進めております。  この中で具体的なものとしましては、例示でございますけれども、新エネルギーとか省エネルギーに関連するものとしましては太陽光発電でありますとか、それから風力でありますとか、廃棄物の熱利用でありますとか、あるいは産業とか住宅とか輸送の各部門におきますエネルギー利用効率の向上とか、ないしはコージェネレーションシステム技術の向上とかといったことを研究テーマとしまして、各省庁がそれぞれ取り組んでおるわけであります。  科技庁としましても、その中でこれは一部でございますけれども、波力のエネルギーを使いました波力発電でありますとか、あるいは高温ガス炉を利用しました水素製造、高温ガス炉を利用しまして水素を発生させまして、その水素を新しい燃料として使っていこうということでございますが、そういった研究でありますとか、あるいは廃棄物の焼却熱を有効に利用するでありますとか、こういった研究を進めているところであります。  どれをすればすぐ新エネルギーが完璧に供給できる、ないしは省エネルギーが十分できるというものでもないと思いますけれども、いろんなことを各省庁連携しながら研究しまして、少しでも新エネルギーの導入ないしは省エネルギー推進といったことに進んでいくよう、これからも政府一体として努力したいと思っておる次第でございます。
  82. 山下栄一

    委員長山下栄一君) 本調査に関する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十六分散会      ―――――・―――――