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政府委員(岩村敬君) 先生今御指摘のとおり、米国の連邦海事
委員会、FMCと略しておりますが、
我が国におきます
港湾の労使慣行でございます事前協議制度の改善を求めるということで、直接に
関係のない
日本の船社に対して制裁
措置を講ずるという決定をいたしましたのは本年の二月二十六日でございます。
そういう意味でこの経緯、非常に長い経緯がございますが、ここ数カ月とりましても非常に大きな動きがございました。制裁の決定はいたしましたが、その後いろいろ改善が進んだということで幾度か制裁の期限の延長等も行われたわけでございますが、結果的には九月四日に
日本の船会社三社に対して制裁
措置を発動したところでございます。その後も
関係者である船社、
日本港運協会等といろいろ協議をしながら改善策を見出すべく努力をしたわけでございますが、最終的には政府間で
議論をしなければいけないということで、十月十日からワシントンで日米の政府間協議を行ったわけでございます。
この際には、
二つの目的を持って協議を行いました。すなわち、
一つはこの制裁
措置自体が日米友好通商航海条約に違反するということで、即時無条件の撤回を申し入れるという、それが
一つの目的でございました。もう
一つは、この制裁の発端となっておる
我が国の港運問題、
戸田先生も問題なしとしないという御指摘ございましたが、その改善を図るということで、その問題解決のための協議という
二つの目的を持って始めたわけでございます。
十月十七日に港運の問題については以下のような内容で大筋合意を見たところでございます。すなわち、三点ございますが、
一つは、現在行われております事前協議制度の意味のある改善を図ること、その具体的内容。
それから、現在行っております事前協議制度にかわる別方式について、
日本政府は労使問題不介入の原則のもと、法令の許す範囲内で最大の支援をするということ。
この第二点目の労使問題不介入の原則、さらには法令の範囲の問題、ここが日米政府間で非常に対立をしたというか、なかなか
理解が得られなかった。彼らとしてはそういうことではなくてとにかく何でもやれと、アメリカの船社が望むことは政府は何でもやれというような交渉態度でございまして、それに対して、労使問題には政府としては介入できないのはアメリカと同様であるというようなことを主張いたしまして、結果的に我が方の主張が受け入れられて、労使問題への不介入の原則ということははっきりうたわれておるわけでございます。
それから三番目が、
港湾運送
事業の免許でございますが、当然のことながら免許基準に合致する場合でございますが、そういう場合であれば、現在、行政手続法等で標準処理期間が決まっております。二カ月ということで処理をするということになっておりますので、きちっと免許基準に合うのであれば外国の企業であろうと免許はおりるということを確認いたしたわけでございます。
その後、細かいところでまた政府間でいろいろ
議論がございましたが、最終的には十一月十日に斉藤駐米大使とオルブライト国務長官との間で書簡の交換が行われまして、本件の協議が終わったところでございます。
そういうことで、港運をめぐる事前協議制度の問題については改善が図られたわけでございますが、また日米の政府間でその改善についての合意が図られたわけでございますが、FMCは
日本船社に対して九月分の課徴金として百五十万ドルを徴収したということ、それから、じゃそれですべてが終わりかというふうに我々は考えておったわけですが、制裁
措置は無期限の停止ではあるが撤回はしないという決定をしたわけでございます。
これに対する対応でございますが、
運輸省、外務省も一緒に今動きをしておりますが、これまでもFMCの一方的な制裁
措置が日米友好通商航海条約に違反するということで、直ちに撤回すべきであるという要請を繰り返し繰り返ししてきたところでございます。今後とも、条約違反だということで、日米友好通商航海条約に基づきます二国間協議を速やかに開催をする、そしてその場で制裁
措置の全面的撤回を求めていきたいというふうに考えております。
また、先ほど御説明申し上げましたように制裁
措置が撤回されているわけではございませんので、撤回されるまでの間は再度制裁が発動されるおそれがございます。そういうことのおそれがございますので、制裁の発動を牽制して日米で対等な立場で交渉ができる、
議論ができるというふうにするためにも制裁への対抗
措置が必要であろうというふうに政府としても考え、対抗立法の
整備を強く希望しておりましたところでございますが、今般、衆議院の
運輸委員会におきまして法律の改正草案を提案していただきまして、先ほど衆議院の本
会議において対抗立法の一部改正が可決したということでございます。これまでのことについては条約に基づく協議で撤回を求め、今後はそういう新たに法
整備していただいたものを使いまして、対等な立場での
議論を粘り強くやっていきたいというふうに考えておるところでございます。